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健康(その1)(健康情報のウソを見破る一覧表、「1日1万歩」は間違い?「ストレスチェック」の効果、「睡眠負債」を溜めないために) [社会]

今日は、健康(その1)(健康情報のウソを見破る一覧表、「1日1万歩」は間違い?「ストレスチェック」の効果、「睡眠負債」を溜めないために) を取上げよう。

先ずは、昨年5月14日付け現代ビジネス「【保存版】60歳すぎたらコレを食べちゃダメ! 健康情報のウソを見破る一覧表大公開 魚もコーヒーも納豆もNG?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「肉より魚」「牛肉より鶏肉」はどちらも間違い? 納豆は1日1パック以上食べてはいけない? 生野菜は身体に悪い? 「白米より玄米」も間違い? 運動は健康にいいと思い込み、長時間歩き続けたがために膝を痛めてしまう。それと同じで、実は体にいいと思っていた食材が、寿命を縮める可能性がある。常識を覆す、目からウロコの情報を公開する。
▽「脂肪は悪」は古い常識
・「よく『歳をとったら肉をやめて、魚を多く食べたほうがいい』と言いますが、それは大間違いです。動物性脂肪を摂り過ぎるとコレステロールが上がり、動脈硬化が進むと思われがちですが、近年の研究で、コレステロール値が高い人のほうが長生きすることが明らかになっているんです。 コレステロールは骨や筋肉にとって欠かせないビタミンDの素になっているので、これが減ると寝たきりになるリスクも高まる。また『ハイポゴナディズム』と呼ばれる男性の更年期障害や老化にもつながります」
・こう語るのは、『生涯現役「スーパー老人」の秘密』や『なにをどれだけ食べたらよいか。』などの著者で、桜美林大学名誉教授の柴田博氏だ。氏はさらに続ける。 「肉には脳を動かすセロトニンを作り出す必須アミノ酸のトリプトファンが多く含まれていますが、これが不足すると、うつや認知症を引き起こす可能性がある。魚からもトリプトファンは摂れますが、肉に比べて含有量が少ないので、60過ぎてもボケないで健康に長生きするためには、肉をしっかり食べる必要があるんです」
・実際に長生きしている人は、魚より肉を摂っている。たとえば、92歳で亡くなった女優の森光子さんは、120gのステーキを毎日食べていたというし、史上最高齢でエベレストに登頂した冒険家の三浦雄一郎さん(83歳)も毎日1kg近い牛肉を食べていると明かしている。
・「肉を摂らずに、マグロばかり食べていると水銀が体内に蓄積します。青魚も同様。そればかり食べていたら、体に害を及ぼす可能性がある。魚が健康にいいというのは神話に過ぎない」(柴田氏)
・食事療法によるアンチエイジングに明るい、Rサイエンスクリニック広尾院長の日比野佐和子氏も「60をすぎると肉を摂ったほうが良い」と言う。 「魚しか食べないと栄養が偏ってしまいます。特に干物は塩分の摂り過ぎで高血圧になり、食道がんの発症率も高まる。肉を食べると血管が強化されるので、高齢者に多い、脳出血などのリスクも少なくなります。 また年をとるとヘルシーだからと勘違いして、鶏肉のささみなどを好んで食べる人がいますが、栄養価が低いので、むしろ赤身(牛、馬、鹿)の肉を積極的に摂ったほうがいい。
・特に牛肉の赤身は鉄分を多く含んでいるので、鉄欠乏性貧血になりやすい女性は積極的に食べてほしいですね。鉄は体内の酸化物質を取り除いてくれるので、アンチエイジングにも効果的です。また白身の肉(鶏や豚)は鉄分が赤身と比べて2分の1しかないので、やはり牛肉のほうが望ましい」
・高齢になってくるとついカロリーを控えることを意識しがちだが、日比野氏によると、カロリーを気にする前に栄養をしっかり摂るほうが大事だという。その上で基礎代謝を上げることが長生きには必要だというのだ。  さらに前出の柴田氏は「肉の脂身もちゃんと食べることが大切」と主張する。 「肉の脂肪は健康の大敵なんて『古い常識』です。肥満の原因はたいていが炭水化物の摂り過ぎ。脂肪に含まれる一価不飽和脂肪酸はエネルギー源となり、高齢者に不足しがちですから、ちゃんと食べないといけない。湯通しして脂を落としたり、脂身を切り取ったりすれば、栄養が不足してしまうのでやめたほうがいい」
・では肉の中でもレバーやホルモンなどの内臓系はどうか。栄養満点で血液をサラサラにするというイメージがあるが、柴田氏は「内臓は高齢者にとってはおススメできません」と断言する。 「『内臓にはコラーゲンがたくさん含まれているから体にいい、若返る』なんてバカなことを言っている人がいますが、実はコラーゲンを食べても体内にはほとんど吸収されません。
・肝臓(レバー)はたしかに栄養素を貯めていますが、高齢者は吸収が遅く、栄養素とともに貯蔵されている有害物質を分解する力も落ちている。単純にレバーが体にいいからと信じ込み、積極的に食べるのは極めて危険です」
▽朝のフルーツは要注意
・「60をすぎると食べてはいけない食材」はまだまだある。 「海藻もそうです。風評被害になるので、あまり言われませんが、あおさ、ワカメ、昆布などすべての海藻は、採れる海域によってヒ素などの有害物質を含有しています。しかも、産地によって含んでいる有害物質が違うので要注意。健康にいいと思い込んで、そればかりを食べていると、どんどん毒素が体内に溜まっていく。若い時は問題ない量かもしれませんが、高齢になると分解し排泄する機能が衰えてきますから」(柴田氏)
・糖尿病や高血圧を改善するため、糖質はできるだけ摂らないほうがいいと勧める専門医もいる。その最たる例が、炭水化物をほとんど摂らない、「糖質制限ダイエット」だ。だが柴田氏によればこのやり方は「論外」だという。 「年をとるにつれて、全摂取カロリーに占める動物性タンパク質の割合を少し上げていく必要があることは確かです。
・ところが、最近は、『糖質を摂らずに肉だけ食べていればいい』というような本が出回っています。これはとんでもない話ですよ。『肉を食べていれば体の中でケトン体ができ、それが糖の代わりを果たすので、炭水化物はいらない』なんてことを主張していますが、ケトン体を生み出すために筋肉が失われているんです。  つまり自分の体を食って生きるのと同じことになり、長生きの観点からみると非常に危険な行為と言わざるを得ない。当然、糖が不足すると認知症のリスクも高まる」
・それならばせめてと、白米を玄米に替える人も多いが、実は玄米も食べないほうがよい食品だと柴田氏は言う。 「高齢者が玄米をまともに食べたら消化できませんよ。せいぜい七分づきのお米でビタミンBを補給するぐらいの心がけはいいと思いますが、白米を否定して玄米を食べるのは間違いです。玄米は稲の果実である籾から籾殻を除去しただけの状態なので、農薬が付着したままの可能性が高い。有機農法などで作られたよほど良質のものでないかぎり、玄米を食べるのは安全性の面からも問題があります」
・「特に60をすぎた人は、身体を冷やすことに注意すべきです」と語るのは、東京有明医療大学の川嶋朗教授だ。 「食事が持つ大切な役割のひとつが身体を温めること。体温が上がると血行がよくなり、体の隅々にまで栄養素がいきわたるようになります。また、体内酵素や白血球の働きが活性化するので、免疫力が高まるんです」 つまり、健康に過ごすためには体を冷やすものは食べないようにする必要がある。
・「たとえば、その代表的なものが朝のフルーツです。朝にバナナやパイナップルを食べることは健康に良いという説もありますが、これらの果物は体を冷やすので、冷え性や血流が悪くなっている高齢者にはお勧めできません。体温がまだ上がっていない朝ならなおさらです」(川嶋氏) 一方で果物の中でもリンゴやオレンジは体を温める効果があるので、食べても問題ないとされている。
・ほかにも体を冷やすものとしてはキュウリやトマトなど夏が旬の野菜が挙げられる。 「その中でも身体を冷やす代表的なものがナスです。ナスはカリウムが豊富に含まれますが、利尿効果があり、体内の熱を外に逃がしてしまいます。ただし熱を加えると、体を温める性質に変わります。要は『生』で食べずに調理して食べればいいのです」(川嶋氏)
・温かいものなら当然、問題ないと思いがちだが、実はそうでもない。コーヒーや緑茶も身体を冷やす飲み物に分類されるというから驚きだ。 「コーヒーや緑茶は、漢方医学的に涼性の食材とされています。確かに温めれば熱は摂れますが、それはあくまで一時的なもの。ホットコーヒーを飲んでいても冷えを感じる人は要注意です。
・身体を温めるためには、紅茶や烏龍茶などの発酵茶を飲むといいでしょう。また生姜を加えたお茶や、生姜湯などは体を温めるのに最適です。生姜は、生姜焼きなど料理に加えるのも効果的ですね」(川嶋氏)
・人間は高齢になるほど腸の機能が衰えていくため、便秘になりやすくなる。だからといって繊維質の高いもの、たとえばごぼうやセロリを食べ過ぎると逆効果になることもある。 「食物繊維をたくさん摂れば便秘が治ると勘違いしている人が多いですが、それは違います。カリフラワーやブロッコリーも腸にいいと言われていますが、固形物が増えて腸が詰まった状態になります。そうならないために水溶性の繊維が多い、キノコ類などと一緒に摂ることが大切です」(前出の日比野氏)
・こちらも身体にいいとされる豆腐や納豆などの発酵大豆製品はどうか。 「納豆は一日1パックまで、豆腐なら3分の1丁ぐらいまでにしておきましょう。それ以上摂ると、イソフラボンには女性ホルモンと似た作用があるため、ホルモンバランスが崩れ、体に害を及ぼす可能性がある。
・また納豆はプリン体を多く含んでいるので、食べ過ぎるとプリン体が体内に溜まり痛風を発症しやすくなります」(前出の柴田氏)
・逆に今までは食べてはいけないと言われていたが、意外にも、60すぎると積極的に食べたほうが体にいい食材もある。 「高齢者は肝臓などに負担がかかるので、辛いものなど刺激物はあまり摂らないほうが良いとされますが、そんなことはありません。唐辛子の成分であるカプサイシンは血管を広げて血行をよくし、体温を高めて発汗作用を促す作用もある。60過ぎになると血管が細くなるので、七味唐辛子、タバスコ、ラー油、キムチなどは積極的に摂っていいのです。ただしあまりに汗をかくと体が冷えるので注意が必要です」(川嶋氏)
・さらに前出の日比野氏は、朝食にチーズを食べると良いと勧める。 「チーズは良質なたんぱく質であり、肉と同じくトリプトファンを含んでいるので、成長ホルモンを増やしてくれる。つまりセロトニンを作ってくれるのです。そうすることで質の高い睡眠をとることができ、成長ホルモンが作られるので、老化の進行を遅らせる効果があります」
▽粗食が寿命を縮める
・チョコレートや飴など甘いものも、高齢者になると実はたくさん摂ったほうが望ましい。 「ブドウ糖は脳の栄養分です。ごはんもパンも消化されればブドウ糖になりますが、高齢者にとって効果が高いのは、消化吸収のいい砂糖、つまりチョコレートや飴です。
・高齢者になると消化能力が落ちますから、口のなかでごはんやパンを噛んでも、なかなか甘くなってきません。だから味覚的な面でも、単糖類を摂ったほうがいい。高齢者になったら、炭水化物は減らしてスイーツを増やすこと。僕もそれを実践しています」(前出の柴田氏)
・さらにコレステロールの王様と認識される卵についても、別に我慢する必要はないという。 「ちょっとコレステロール値が高いと、『卵は食べるな』などと指導されますが、はっきり言って、卵なんて一日何個食べたって大丈夫なんです。たとえば一日に5個10個食べようが、血中コレストロール値は、ある一定以上増えない。  それは人間が基本的には肉食動物だからです。同じ肉食動物であるラットに、人間なら何百個に相当する卵を与えても一定以上コレステロール値は増えない研究結果が出ています。つまり人間も、一定量以上のコレステロールが作られないように、体ができているわけです」(柴田氏) しかも前述したようにコレステロール値が高い人のほうが長生きで、がんや脳卒中のリスクが下がることも分かっている。
・「『日本人は飽食だ』なんていうのは大嘘です。でも医者もみんなカロリーが増えていると思い込んでいて高齢者に『メタボや肥満は危険だ』と言っている。 これだけきちんと国民栄養調査をやっている国は日本しかないのにもかかわらず、医者すら知らないんですよ。『粗食は長生きする』なんてのはまったくの誤解で、高齢者だからこそ、もっと肉を食べなければならない」(柴田氏)  健康で長生きするために、もう一度食生活を見直してみよう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/111700008/090600099/?P=1

次に、昨年9月7日付け日経ビジネスオンライン「「1日1万歩」は間違い? 5000人研究で判明! 「1日8000歩」と「20分の中強度運動」が運動の黄金律」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは青栁氏の回答、+は回答内の段落)。
・東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利・運動科学研究室長の著書『やってはいけないウォーキング』(SB新書)が、発売後3カ月で7万部を突破するなど、反響を呼んでいる。その内容は、これまで多くの人が健康にいいと信じて疑わなかった「1日1万歩」が、実は寿命を縮める可能性もあるという衝撃的なもの。新聞や雑誌などでも注目を浴びている「健康で長生きするためのウォーキング法」を、青栁さんに直接うかがった。今回から2回に分けてお届けする。
▽「1万歩を続けさえすれば大丈夫」「歩くほど健康になる」 というわけではない
Q:「やってはいけないウォーキング」というインパクトの大きいタイトルですが、これまで推進されてきた“1日1万歩”は、今すぐやめたほうがよいのでしょうか?
A:いいえ。1日1万歩が悪い、間違っているというわけではありません。これまで地道にウォーキングを続けてきた方はそのまま続けて大丈夫です。 ただ、著書の中でも1日1万歩以上歩いていた旅館の女将さんが骨粗しょう症になった話に触れていますが、いくら毎日1万歩以上歩いても、やり方が悪ければ何の効果も期待できませんし、歩き過ぎるとかえってそれが病気を引き起こすこともあります。
+着物を着た旅館の女将さんの場合、足を上げず、小股で静かに歩く毎日のため、運動の強度が骨密度を保つのに十分ではなかったことや、館内で過ごすことが多いため1日に浴びる紫外線量が不足したことが、骨が弱くなることにつながったと考えられます。
+そうした例も含め、私が著書を通じて伝えたかったのは、「1万歩を実現できてさえいれば大丈夫」と過信したり、「歩けば歩くほど体にいい」と間違った思い込みをするのはよくないということです。
Q:ウォーキングはすればするほど健康になると思っていましたが、そういうわけではないんですね?
A:そうなんです。意外に知られていませんが、実は、歩き過ぎも含め、運動のし過ぎは、健康効果がないどころか、免疫力を下げてしまうリスクがあります。 象徴的な例を挙げると、私はカナダに留学しているとき、オーストラリアのメルボルン大学で水泳のナショナルチームの選手の血液検査を行ったことがあります。あのイアン・ソープが活躍していた時代です。検査の結果、世界レベルの水泳選手は、持久力や筋力、ヘモグロビンの数などは素晴らしい結果にもかかわらず、ハードなトレーニングが原因で免疫力が落ちており、風邪などの病気にかかりやすいことが分かりました。 スポーツをやり過ぎると病気予防はあまりうまくいかないということは、昔から実験的にも解明されています。
▽40歳を超えたらジョギングからウォーキングへ移行すべき!?
Q:一般の人の“やり過ぎ”に目安はありますか?
A:たとえばウォーキングの場合、どれだけ歩いても疲れていなければやり過ぎではありません。歩き終わったあとや翌日に疲れが残っている感覚があれば、それはやり過ぎでしょう。疲労を感じるということは、つまり免疫機能が下がっているということなので無理をするのはよくありません。 また、若いときには軽く1日1万歩をこなせてきた人でも、加齢とともに体が悲鳴を上げ始めることを覚えておいてください。
+悲鳴を上げる場所は、ずばり“関節”。年をとっても筋肉や体力をつけることは可能ですが、関節は鍛えることができません。体力はあっても膝関節がガクガクしたり、膝がすり減ったりして痛みが出やすくなるのです。それはどこかで体が無理をしている証拠なので、そうした体のサインを見逃さないようにしましょう。
+人は痛みが出た瞬間から体を動かすのがおっくうになります。それをきっかけに歩くのをやめ、急激に体力を落とす人も少なくありません。 ですから私は40歳を超えたらジョギングをしていた方はウォーキングへ移行し、1日1万歩いていた方は歩数を減らすとともに、生活の中に「中強度の運動」を組み込むことが長生きするためには必要だと考えています。
▽「1日8000歩」と「20分の中強度運動」が運動の黄金律
Q:青栁先生が推奨するウォーキング法とは具体的にはどのようなものですか?
A:私がお勧めしている歩き方は「1日8000歩。その中に20分の中強度の運動を取り入れる」というもの。これは、私が群馬県中之条町に住む65歳以上の住民5000人を対象に、15年以上の年月をかけて身体活動と病気予防の関係を調査し、導き出した「病気にならない歩き方の黄金律」です。
+下の図は、「1日当たりの歩数と中強度の活動時間」と「予防できる病気」との関係を示したものです。15年にわたる研究の結果、「1日8000歩/中強度運動20分」であれば、要支援、要介護、うつ病、認知症、心疾患、脳卒中、がん、動脈硬化、骨粗しょう症の有病率が低いこと、さらに高血圧症、糖尿病の発症率がこれより身体活動が低い人と比べて圧倒的に下がることが分かりました。
+ちなみに「1日1万歩/中強度運動30分」はメタボリックシンドロームに悩んでいる人には有効です。しかし、それ以外の人にとっては1万歩や1万2000歩の生活を送っても病気予防という点では8000歩と効果が変わらないという結果が出ています。むしろむやみに歩数を増やすと、疲労により免疫力が下がったり、関節を痛めたりする可能性もあるので、「1日8000歩/中強度運動20分」がベストだと考えます。
Q:歩数だけでなく、「中強度の運動を20分取り入れる」という視点が盛り込まれているのが目を引きますね。中強度の運動とは具体的にはどういった運動でしょう? また、こういった視点がなぜ必要なのでしょうか?
A:ウォーキングにおける中強度の運動とは、「なんとか会話できる程度の速歩き」です。鼻歌が出るくらいののんびりした歩き方は低強度、競歩のような会話ができないくらいの歩き方は高強度、そのどちらでもなく、なんとか会話ができるくらいを中強度と考えてください。
+強度は骨や筋肉にどれだけの刺激があるかを示しています。私たちはふだん何気なく「歩く」という言葉を使っていますが、「歩く」という行為には“量と質”という2つの観点があります。量は歩いた「歩数」。質とはどれだけの強さで踏み込んで歩いたかという「運動強度」。これまでは「歩数」だけを気にする方が多かったと思いますが、実はどれだけの運動強度で骨や筋肉に刺激を与えることができるかが運動においては重要なんです。
+なぜなら、多くの人は加齢とともに骨密度が減ったり、人体最大の“熱生産工場”である筋肉の量が減ることで体温が低下したりし、病気を引き起こしやすくなります。しかし、運動により体に適度な刺激を与えることで、骨密度や筋肉量の低下、ひいては体温の低下を防ぐことができるからです。
▽体温が1度下がると免疫力が30~40%低下
Q:骨密度の維持が骨粗しょう症の予防と関係があることは先ほどの説明にもありましたが、「体温」も健康の維持のためには大事なんですね。
A:はい。下の「年齢と体温」の図を見ても分かるように、人は加齢とともに平均体温が低下してくる傾向にあります。この平均体温の低下は、健康を大きく左右します。というのも、平均体温が1度下がると免疫力は30~40%低下するからです。逆に、体温が1度上がると免疫力は約60%アップするといわれています。
+また、人間の体温は1日の中で変化しており、若くて健康な人の場合、睡眠中が最も体温が低く、起床後に徐々に体温が上がって夕方にピークに達し、夜に向けて体温がどんどん下がっていきます(下の図を参照)。この体温の降下が「眠気」をもたらすのです。 さらに就寝後も体温は下がり続け、深夜から早朝の時間帯に最も低くなります。なぜ就寝中に体温が低くなるかというと、それが「体を休める」のに最も適した状態だからです。
+従って、「就寝時」よりも「起床時」のほうが体温が低いのが理想ですが、歳を重ねたり、不健康になると、体温のリズムが狂い、夕方になっても体温が十分に上がらなくなったり、「起床時」より「就寝時」のほうが体温が低くなってしまう人が多くなります。 群馬県中之条町の住民1600人を対象にした調査では、「起床時」より「就寝時」の体温が低い人は不眠に悩まされているということが分かっています。不眠は認知症の原因になるともいわれており、免疫力アップのためにも、不眠や認知症の予防のためにも、体温のコントロールは重要です。
+みなさんに知っておいてほしいのは、若い時と同じように体温リズムを刻むことができていれば何も問題はないということです。年をとったから病気になるのではなく、加齢に伴い人体最大の“熱生産工場”である筋肉の量が減り、体温のリズムが狂うことで病気を引き起こしてしまうのです。ですから、体温を少しでも理想の形に近づけるために、1日に20分の中強度の運動を取り入れることをお勧めしているのです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/111700008/090600099/?P=1

第三に、5月10日付けダイヤモンド・オンライン「ストレスチェック義務化で逆に “偽患者”が増えてしまう理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2015年12月からストレスチェックが義務化され、企業の大部分が実施し始めた。しかし、「問題解決の効果は乏しい」との声も根強い。しかし、現場からは「実施しても問題解決の効果は乏しい」との声が出ており、逆に弊害も生まれ始めている。ストレスチェックの現場を取材した。(ダイヤモンド・オンライン副編集長 田島靖久)
▽ストレスが高くなるよう あえて回答して産業医面談に
・ある市の交通局に雇われている産業医は、ここ半年、企業を訪れて職員と面談するたびにイライラするという。 「治療が本当に必要な人などほとんどいないのに、グダグダと話につきあわなければならないから」というのがその理由。しかし、治療の必要もないのになぜ産業医と面談するのか。 この産業医は、声を潜めて語る。「ストレスチェックであえて悪い結果になるように回答して産業医面談を取り付け、会社や上司に対する文句や不満をぶちまけに来ている人ばかり」。
・一昨年の12月から、職場でのメンタルヘルス対策として労働者の心理的な負担の程度を把握する検査が義務付けられた。通称「ストレスチェック」と呼ばれるもので、従業員数50人以上の事業者は年1回以上、従業員にチェックを受けさせなければならない。
・たとえば国が推奨している「職業性ストレス簡易調査票」は、ウェブ上か紙で回答するもので、57項目の質問に4段階で答える方式。結果は、本人のみに通知され、「ストレスが高い」との結果を受けた人のうち、医師に相談したい場合は自ら申し出て面接指導を受けることができる。就業上の措置が必要と医師が判断した場合、会社側は改善しなければならないという流れだ。
・こうしたストレスチェックを“悪用”して、“病気のふり”をする職員が後を絶たないというのだ。 この産業医は、「ストレスチェックの質問項目は分かりやすく、ストレスが溜まっているように答えるのは簡単。健康なのにもかかわらず、わざとストレスが溜まっているように回答する職員が後を絶たない」と打ち明ける。
・その上で、「本当に治療が必要な人たちは、産業医などに訴えられない人が大半。だから病気になってしまうのだ。逆に訴えて来る人たちは、会社に相手にされないので産業医を使って会社に不満を言いたいという“偽患者”ばかりでたちが悪い」と憤る。
▽嘘の診断書を書いてくれる病院情報を共有する職員たちも
・しかも、である。冒頭で紹介した交通局の職員たちは、「精神的な疾患であるとの診断書を書いてくれる病院の情報を職員間で共有している」(産業医)という。職員たちは、非番の日に交代でその病院を訪れ、「精神疾患の診断書を書いてもらい、それを手にして産業医の所に来て、病気なんだから話を聞けと迫ってくる」(同)というのだ。
・この産業医曰く、そうした診断書を「手軽に書いてくれる病院はいくつかある」と明かす。というのも、職員が持ってくる診断書の病院名が共通しているからだ。「病院側にとっても定期的に職員がやってきてくれて診療報酬の点数が稼げるのだから、喜んで書いているのではないか」と見ている。
・症状が分かりやすい他の病気と違って、ストレスに伴う精神疾患は周りから見ても分かりにくい。そのため、「“偽患者”だと思っても指摘しづらいのが難しいところ。本当に苦しんでいる人たちは早期にみつけ、改善させなければならないのに…」と別の産業医は語る。
▽結果が企業に提示されないため職場環境の改善につながらず
・しかし、たとえストレスが溜まって危険な状態だと分かっても、その対応は容易ではない。というのも、ストレスチェックの結果は、企業ではなく個人に送られるからだ。 個人情報保護の観点から、結果は個人が特定されないよう「一定規模の集団」として加工した上でしか企業には提供されない。
・「従業員がストレスを受ける最大の理由は、上司など職場での人間関係であり、企業側にも情報提供されなければ改善しようがない」(企業の担当者)というわけだ。 そもそも、ストレスは疾病や家庭の問題など、仕事外の問題も複雑に絡み合っており、「簡易的なストレスチェックだけでは、根本的な原因を把握できないのが現状」と、ストレスチェックを手掛ける企業の担当者も指摘する。
・従業員の健康状態は、企業にとって生産性や効率性に直結する重要な問題。また、早期発見を図って医療費を抑制するという意味合いもあって義務化されたストレスチェック。だが、これでは効果があるとは思えない。まだスタートしたばかりだが、その中身を有益なものにしなければ、「無駄な業務が増えただけ」という事態にもなりかねない。
http://diamond.jp/articles/-/127270

第四に、医師・医学博士、ハイズ株式会社代表取締役社長の裴英洙氏が5月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「睡眠負債」を溜めないために「1日1分」でできること」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「睡眠負債」という言葉を知っていますか?  自分では「十分寝ている」と思っている人でも、わずかな睡眠不足が徐々に蓄積すると、それが「睡眠負債」となって命に関わる病のリスクを高めたり、日々の仕事のパフォーマンスを低下させると言われています。
・ここでは、寝不足になりがちな人のために、「翌日に眠くならない睡眠の具体策」を集めたベストセラー書籍『一流の睡眠』の著者が、睡眠負債をためずに自分の理想的な睡眠時間が見つかる、1日1分でできるカンタンな方法をお伝えします。
▽睡眠は「貯金」できない
・毎日終電近くまで猛烈に働いて睡眠不足が続けば、どうしても週末に「寝貯め」して、翌週に備えようとします。無理もありません。 でも、結論から言うと、寝貯めはできません。 これは、少し極端な例で考えると、体感としてわかるはずです。
・たとえば平均睡眠時間7時間の人が14時間眠ったとしても、その翌日に徹夜をすれば、やはり眠気に襲われます。もし前日に寝貯めできるのならば、翌日の眠気はないはずなのに。 また、同じ人が、5時間たっぷり昼寝して、その夜の睡眠が2時間だったとしたら、翌日いつも通りに快活に動けるかというと、そうはいかないはずです。前日の合計睡眠時間は7時間だったにもかかわらず。
・たしかに、週末に長く寝ると体調が回復することがあります。しかし、それは「寝貯め」ではなく、睡眠不足を補っているだけです。平日に理想的な睡眠時間より不足した時間を「借金」と考えれば、週末に借金返済しているわけです。
・実際に、医学的にも「睡眠負債」という概念があります。自分では「十分寝ている」と思っている人でも、わずかな睡眠不足が徐々に蓄積すると、それが「睡眠負債」となって命に関わる病のリスクを高めたり、日々の仕事のパフォーマンスを低下させると言われています。 一気に睡眠負債を返済しようと思って、休日に昼すぎまで寝ていたり、長時間昼寝してしまうと、生活リズムの乱れにつながって、かえって翌週の睡眠に悪影響を及ぼすことになります。
・睡眠は、借金返済はできても、「貯金」はできません。 だからこそ、良好な睡眠習慣で常に睡眠負債をため込まない「無借金状態」をキープすることが大切なのです。 では、「良い睡眠習慣」や「理想的な睡眠時間」とは、どのようにして見つければよいのでしょうか?
▽1行のメモで眠りの「問題点」が見えてくる
・人それぞれ、生活スタイルや仕事のハードさ、持っている悩みは異なります。また、ベッドの硬さや枕の高さ、寝室の騒音、温度、湿度、誰と眠るかなどの眠る環境もによって、睡眠の量と質は大きく左右されます。つまり睡眠は、本来極めて個人的にカスタマイズされるべき生活習慣なのです。
・私は『一流の睡眠』という書籍で、「快適な睡眠の条件」と、忙しいビジネスパーソンが翌日に眠くならないために、深く良質な眠りを得るための32の具体策を提案しました。ここでは、その中から、自分だけの睡眠習慣の「正解」を発見するために有効なツールを紹介します。 それが、「睡眠ログ」です。 実際にやることは、たった1行のメモを書くだけです。
・食べたものを日記として記録することで食行動を可視化し、正しい食生活へと導く「レコーディング・ダイエット」という方法をご存じでしょう。睡眠習慣は、食習慣以上に、一人ひとりの環境によって状況が異なるものです。だからこそ、睡眠を可視化することに大きな意味と効果があります。
・睡眠はその日の状態や季節などによって大きく質が左右されますから、特徴を把握するためには、一定期間測定してから振り返るのが有効です。ビジネスも睡眠も、原因分析をせずに解決法の提案はありえません。 ということで、まずは、「自分の睡眠の問題がどこにあるのか?」ということにアプローチしていきましょう。
▽「○△×」でササっとメモするだけ
・睡眠ログには、入眠時間、起床時間、そこから導き出される睡眠時間、睡眠効率、そして目覚め感、その日の仕事のパフォーマンスを記載します。 「目覚め感」は、自分の主観でOKです。すぐれないと感じたら「×」。調子がいいなと思ったら「○」。ちょっとだるい程度なら「△」。 その横に、仕事と体調に関するコメントを添えておいてください。気づいたことを、ひと言だけで構いません。 「寝不足、遅刻した」 「足がむくんでいない、商談成立」 「会議で眠くならなかった、快便」 そんな具合です。続けることに意味がありますから、簡単にできることが重要です。これならば1日1分で書けるでしょう。
・それだけでも十分ですが、より詳細なデータを取りたい場合は、次の3つを軸にするとよいでしょう。
 (1)日中の眠気とだるさ(頭がぼんやり、あくび、目が疲れる、全身がだるい など)
 (2)集中力の低下度(頭が回らない、根気がない、直前のことが思い出せない など)
 (3)身体の疲労残存感(肩こり、頭痛、腰痛、まぶたがぴくぴくする など)
・さて、次の表は、ある人の睡眠ログです。 8時間30分眠った日は、日中にだるさが残っているようです。一方で、6時間15分の日は居眠りをしてしまい、7時間30分の日はパフォーマンスが良かったようです。 もちろん、3日分のデータから確定的なことは言えませんが、こうしたデータをある程度の日数分ためていくと、自分の睡眠傾向がわかり、「7時間半くらいが自分のベストな睡眠時間なんだな」と「当たり」をつけやすくなります。
・運動の有無や食事の内容等、さらに詳細なデータを記録すればより精度が上がるでしょうが、最初は、簡単に書けて、傾向がわかるくらいの精度で十分です。  さて、この睡眠ログをしばらく続けると、どんなことが見えてくるでしょうか?
▽「何時に寝ればぐっすり眠れるか?」がわかる
・たとえば、目覚め感が「×」の日が3日続いたとしましょう。そこで、3日間の睡眠効率と入眠時間をチェックしておきます(※睡眠効率とは、寝床にいた時間のうち、実際に眠れた時間の割合のこと。睡眠効率は、85%以上が合格ライン)。 そして、その3日間と、目覚め感が「○」だった時の睡眠効率と入眠時間を比較してください。それだけで、自分のベストな入眠時間が、ある程度わかるはずです。そのデータを元に、「○時に寝るのがいいのかも!」と、仮説検証ができるのです。 それを繰り返せば、確実にあなただけの「ベスト睡眠時間」に近づいていきます。
▽「体調を崩さないギリギリの睡眠時間」がわかる
・少しでもやってみるとわかるのですが、睡眠と仕事のパフォーマンスの関係性が見えてくると、俄然、睡眠への意識が高まります。見えなかったものがどんどん見えてくるので、単純に楽しいのです。 さらに1か月ほど睡眠ログをつけ続けると、「自分はどれくらい睡眠を犠牲にできるのか?」が見えてきます。「これ以上睡眠を犠牲にするとパフォーマンスを落とす・体調を崩す」という限界ラインがわかるようになるのです。 また、平均睡眠時間と比較して、どれくらい「睡眠負債」が溜まっているかが簡単にはじき出せるので、リアルタイムで翌日からの睡眠時間を考える有効なデータになります。
・もし、本格的な不眠症に悩まされ、専門医にかかる必要がある場合にも、この睡眠ログを持参することで、より適切な診断やアドバイス、治療法を受けやすくなるでしょう。 睡眠は、毎日の生活習慣と密接に結びついています。特に、忙しいビジネスパーソンは、どうしても睡眠の優先順位が下がり、知らない間に睡眠負債を溜め込むことが多いのです。 『一流の睡眠』では、そんな中で、どうやって戦略的に良質な睡眠をとるか。朝、昼、夜、1日の流れの中に即して、現実的で戦略的な「快眠の技術」をお伝えしています。ぜひ、参考にされてみてください。
http://diamond.jp/articles/-/131875

第一の記事については、私自身は栄養士などから食事指導も受けたが、世間の健康情報は信じず、食事はバランスが大事と考えている。しかし、この際、世間の健康情報を見てみようと取上げた次第だ。 『「脂肪は悪」は古い常識』、 『コレステロールの王様と認識される卵についても、別に我慢する必要はないという』、など科学の進歩と共に、常識がコロコロ変わるので、余り惑わされずに、バランスのとれた食事を心がけていきたい。
第二の記事については、私自身は1日1万歩の早足と後ろ向き歩きを続けている。早足と後ろ向き歩きで中強度運動になっているのではないかと思っている。 『体温が1度下がると免疫力が30~40%低下』との記述には驚かされた。というのも、私自身は体温は低い方だが、風邪は10年以上引いたことがなく、免疫力は高目だと思っていたからだ。やはり例外はあるのだろう。
第三の記事で、 『ストレスチェックを“悪用”して、“病気のふり”をする職員が後を絶たないというのだ』、については、考えてみれば、あり得る事態だ。悪用者に対するペナルティはストレスチェックの目的上、馴染まないだろうが、質問項目の工夫による振るい落とし、人口知能(AI)を活用したフィルタリングでの振るい落とし、など工夫していく必要がありそうだ。
第四の記事で、 『睡眠は「貯金」できない』、 『自分では「十分寝ている」と思っている人でも、わずかな睡眠不足が徐々に蓄積すると、それが「睡眠負債」となって命に関わる病のリスクを高めたり、日々の仕事のパフォーマンスを低下させると言われています』、というのは確かにその通りだろう。 『1行のメモで眠りの「問題点」が見えてくる』、との改善法は、なかなか面白いアイデアだ。私もリタイアする前に知っていれば、活用できたのに・・・。
タグ:健康 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 裴英洙 (その1)(健康情報のウソを見破る一覧表、「1日1万歩」は間違い?「ストレスチェック」の効果、「睡眠負債」を溜めないために) 「【保存版】60歳すぎたらコレを食べちゃダメ! 健康情報のウソを見破る一覧表大公開 魚もコーヒーも納豆もNG?」 「脂肪は悪」は古い常識 コレステロール値が高い人のほうが長生きすることが明らかになっているんです 実際に長生きしている人は、魚より肉を摂っている 「魚しか食べないと栄養が偏ってしまいます。特に干物は塩分の摂り過ぎで高血圧になり、食道がんの発症率も高まる。肉を食べると血管が強化されるので、高齢者に多い、脳出血などのリスクも少なくなります。 また年をとるとヘルシーだからと勘違いして、鶏肉のささみなどを好んで食べる人がいますが、栄養価が低いので、むしろ赤身(牛、馬、鹿)の肉を積極的に摂ったほうがいい カロリーを気にする前に栄養をしっかり摂るほうが大事だという 内臓は高齢者にとってはおススメできません 朝のフルーツは要注意 「糖質制限ダイエット」だ。だが柴田氏によればこのやり方は「論外」だという 糖質を摂らずに肉だけ食べていればいい』というような本が出回っています。これはとんでもない話ですよ。『肉を食べていれば体の中でケトン体ができ、それが糖の代わりを果たすので、炭水化物はいらない』なんてことを主張していますが、ケトン体を生み出すために筋肉が失われているんです。  つまり自分の体を食って生きるのと同じことになり、長生きの観点からみると非常に危険な行為と言わざるを得ない。当然、糖が不足すると認知症のリスクも高まる」 玄米も食べないほうがよい 特に60をすぎた人は、身体を冷やすことに注意すべきです 朝にバナナやパイナップルを食べることは健康に良いという説もありますが、これらの果物は体を冷やすので、冷え性や血流が悪くなっている高齢者にはお勧めできません コーヒーや緑茶も身体を冷やす飲み物に分類される 納豆はプリン体を多く含んでいるので、食べ過ぎるとプリン体が体内に溜まり痛風を発症しやすくなります 朝食にチーズを食べると良いと勧める 粗食が寿命を縮める コレステロールの王様と認識される卵についても、別に我慢する必要はないという。 「ちょっとコレステロール値が高いと、『卵は食べるな』などと指導されますが、はっきり言って、卵なんて一日何個食べたって大丈夫なんです。たとえば一日に5個10個食べようが、血中コレストロール値は、ある一定以上増えない 「「1日1万歩」は間違い? 5000人研究で判明! 「1日8000歩」と「20分の中強度運動」が運動の黄金律」 『やってはいけないウォーキング』 青栁幸利 「1万歩を続けさえすれば大丈夫」「歩くほど健康になる」 というわけではない 運動のし過ぎは、健康効果がないどころか、免疫力を下げてしまうリスクがあります 40歳を超えたらジョギングからウォーキングへ移行すべき 「1日8000歩」と「20分の中強度運動」が運動の黄金律 ウォーキングにおける中強度の運動とは、「なんとか会話できる程度の速歩き 体温が1度下がると免疫力が30~40%低下 ストレスチェック義務化で逆に “偽患者”が増えてしまう理由 現場からは「実施しても問題解決の効果は乏しい」との声 ストレスが高くなるよう あえて回答して産業医面談に であえて悪い結果になるように回答して産業医面談を取り付け、会社や上司に対する文句や不満をぶちまけに来ている人ばかり」 「職業性ストレス簡易調査票 本当に治療が必要な人たちは、産業医などに訴えられない人が大半。だから病気になってしまうのだ。逆に訴えて来る人たちは、会社に相手にされないので産業医を使って会社に不満を言いたいという“偽患者”ばかりでたちが悪い 嘘の診断書を書いてくれる病院情報を共有する職員たちも 結果が企業に提示されないため職場環境の改善につながらず 「「睡眠負債」を溜めないために「1日1分」でできること」 自分では「十分寝ている」と思っている人でも、わずかな睡眠不足が徐々に蓄積すると、それが「睡眠負債」となって命に関わる病のリスクを高めたり、日々の仕事のパフォーマンスを低下させると言われています 一流の睡眠 睡眠は「貯金」できない 睡眠は、借金返済はできても、「貯金」はできません 1行のメモで眠りの「問題点」が見えてくる 睡眠ログ 「○△×」でササっとメモするだけ 「何時に寝ればぐっすり眠れるか?」がわかる 「体調を崩さないギリギリの睡眠時間」がわかる
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シェアリングエコノミー(その1)(「民泊」解禁どころか後退へ 経産省の不作為、ウーバーは利用者もドライバーも「搾取」 米で批判高まる、シェアリングエコノミーの税逃れ 保障漏れに誰が責任を負うべきか、配車サービスのウーバーにまたも難題 「灰色ビジネス」に巨額罰金) [経済政策]

今日は、シェアリングエコノミー(その1)(「民泊」解禁どころか後退へ 経産省の不作為、ウーバーは利用者もドライバーも「搾取」 米で批判高まる、シェアリングエコノミーの税逃れ 保障漏れに誰が責任を負うべきか、配車サービスのウーバーにまたも難題 「灰色ビジネス」に巨額罰金) を取上げよう。

先ずは、2月28日付け日経ビジネスオンライン「「民泊」解禁どころか後退へ、経産省の不作為 シェアリングエコノミー後進国に忍び寄る圧力」を紹介しよう(▽は小見出し9.
・自宅を他人に貸すホームシェアリング、いわゆる「民泊」を国内でも合法的に実現しようと、観光庁を中心に「住宅宿泊事業法案(民泊新法)」の整備が進む。法案は既に自民党による審査に入っており、政府は3月10日前後の閣議決定、今国会での成立を目指している。
・この民泊新法について、一般には「民泊解禁へ」と報じられている。だが実態は解禁どころか、その逆。むしろ、国内に根付きつつある民泊が後退しかねない。 民泊業界からは、「シェアリングエコノミーという新産業の振興を後押しすべき経済産業省は何をやっているのか」との恨み節も聞こえてくる。そのはず、民泊に関して経産省は何もやっていないに等しい。まずは、経緯をおさらいしよう。
・一般人が自宅を旅行者に貸すとしても、現状では旅館業の登録やフロントの設置などを義務付けている「旅館業法」の順守が求められる。だが、インターネットやアプリを介して気軽に貸し借りできるプラットフォームが世界的に普及。自宅を貸す「ホスト」の多くは旅館業法を無視した違法状態にあるのが実情だ。 こうした状態を改善し、ホストが貸しやすい制度、宿泊する「ゲスト」が安心して利用できる制度を作ろう、というのが、そもそも民泊解禁の議論の発端だった。
・2013年、国家戦略特区諮問会議は、特区で民泊を解禁する方針を示し、昨年から東京都大田区など一部自治体では、旅館業法が定めるフロントの設置や、一部の提出書類を省いても民泊として営業可能となった。次いで、全国的な解禁に向けた作業が進む。これが民泊新法だ。 ところがこの法案は、民泊を推進したい勢力からすれば目を疑うような内容であることが最近、明らかとなったのだ。
▽世界の趨勢の逆をゆく日本の民泊新法
・新法はまず、ホスト(住宅宿泊事業者)への規制を定めている。都道府県知事への届け出を義務付け、かつ、ゲストへの宿泊サービス提供の上限を年間180日以内と定めている。加えて、「外国語による説明」「宿泊者名簿」「年間提供日数の定期報告」「標識の掲示」といった適正な遂行のための措置もホストに義務付けている。
・これに眉をひそめるのが、民泊世界最大手のAirbnb(エアビーアンドビー)だ。エアビーが民家などへ送った宿泊者数は2008年の創業以来、世界で1億5000万人を超えた。同社の関係者はこう漏らす。 「世界の多くの都市では、年間上限までは無届け・無許可で営業可能。法案は一般人ホストからするとガチガチ。シンプルで誰にでも分かりやすく、利用しやすい法律にはなっていない。例えば70歳のおばあちゃんが亡くなった旦那の寝室を気軽に貸せるような制度ではない」
・例えば英ロンドンでは年間上限90日まで、米フィラデルフィアでは同90日、仏パリでは同120日までであれば、無届けで自由に自宅をゲストに貸すことができる。オーストラリアでは民泊を法律の適用除外とする法案が通り、一切の規制が排除された。ポルトガルでは届け出が必須だが上限規制などはなく、ゲスト向けのオンライン登録制度も極めて簡潔のため、物件数が急増しているという。
・しかし、日本の新法は、こうした世界の趨勢と逆行するように、一般人のホストに対して過剰な負担を強いるものになっている。すべてのホストに届け出を義務化するだけでも世界からしたら珍しいのだが、その他の義務付けも壁が高い。 最たるものが、標識の掲示。詳細は煮詰まっていないが、住宅宿泊事業者の届け出番号や氏名、連絡先などが書かれたステッカーのようなものを、玄関などの見える場所に掲示することを義務付ける方向で議論が進んでいる。「ひとり暮らしの女性はどうするのか。危険ではないのか」。そういった声に、法案を担当する観光庁の官僚は「仕方がない」と答えたという。
・国内でも民泊仲介のトップをゆくエアビー。そこに掲載されている都内の物件数は1万7000超、大阪府内は1万2000超あるが、その多くが無許可で旅館業法の規定違反と見られる。一般人ホストは、旅館業法が定める煩雑な登録作業を回避しているからなのだが、新法が施行しても、これでは結局、無届けの違法民泊物件が減らない、との指摘が民泊の現場からは噴出している。
・話はこれで終わらない。新法は新たに、エアビーなどの仲介業者への規制も盛り込まれる。この新たな規制により、エアビーが事実上の撤退に追い込まれる可能性すら出てきた。 新法はまず、エアビーのようなホストとゲストを仲介する事業者に対して、観光庁長官への登録を義務付けている。さらに、「信義・誠実に義務を処理」「不当な勧誘等の防止」といった適正な遂行のための措置も義務付け、守られない場合は立ち入り検査や登録の取り消しといった行政処分が課せられることになる。
・適正な遂行のための措置をどう読み解くのかにもよるが、エアビーは数万件ある違法物件の多くを削除せざるを得ない状況に追い込まれる可能性がある。そうなれば、エアビーは日本市場から撤退を余儀なくされるかもしれない。法案はそうした含みを残した。 表向きは「民泊解禁」の顔をしながら、実態は「民泊後退」、もしくはエアビーの締め出しを迫る新法。なぜ、こういう帰結になろうとしているのか。理由は明白。ホームシェアリングという新たな市場に怯えるホテル・旅館という旧市場。そこと蜜月にある観光庁が法案作成の主体だからである。
・民泊の利用が進むいずれの海外の国・都市も、ホームシェアリングという新市場をいかに健全に育てるか、を主眼に制度を整えてきた。ところが日本では、旧市場をいかに守るか、という議論が先行している。 実は、国土交通省傘下の観光庁だけではなく、衛生面で監督する厚生労働省もホテル・旅館業界と蜜月。観光庁は厚労省と密接に連携しながら法案準備を進め、前提となる委員会・検討会などでは、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)などの業界団体が徹底抗戦を仕掛けていた。
・新勢力に怯えるホテル・旅館業界の顔色をうかがいながら新法を作れば、規制・後退色の強いものとなるのは自明。結果、新市場の勢力からすれば、極めて難解で利用しにくい制度となってしまいそうなのだ。  こうなってしまった遠因として、もう一つ、「経産省の不在」も挙げられる。エアビー関係者は言う。 「当初は新産業の振興を担う経産省に大きな期待を寄せていたが、結局は何もしてくれない。もはや、経産省に行くことはほとんどなく、もっぱら観光庁や厚労省と付き合っている」
▽経産省不在の政策議論
・経産省は、シェアリングエコノミー協会という社団法人を監督している。協会には、シェアリングエコノミーに関連する国内ベンチャーのほか、エアビー日本法人や、ライドシェア世界最大手、米ウーバーテクノロジーズの日本法人、ウーバージャパンも名を連ねる。 だが、新産業の監督官庁である経産省は、民泊新法にほとんどかかわることができずにいる。
・やったことと言えば、シェアリングエコノミー協会と連携する形で、「シェアリングエコノミー促進室」の設置に手を貸したことくらい。促進室は、内閣官房傘下のIT総合戦略室内に設置され、その役割を「情報提供・相談窓口機能のほか、自主的ルールの普及・促進、関係府省等との連絡調整、ベストプラクティスの紹介、その他のシェアリングエコノミーの促進に関する取組を推進」としている。
・要するに、シェアリングエコノミーに関連する事業者や個人向けの「相談窓口」。民泊新法に関する委員会や検討会は、観光庁と厚労省の主導で進められ、本丸の政策議論について経産省は蚊帳の外だった。  なぜ、経産省は新産業の創生を前に、すくむのか。
・「経産省がやると出ていけば、(観光庁などの)他省庁は頑なになるんですよ。例えば経産省が『民泊研究会』を作ってやるといったら、もう絶対に話が先に進まない。経産省がダイレクトに行って物事が遅くなるなら、行かないほうがいい。僕らは、シェアリングエコノミーを推進するという目的を達成すればいいんです」  経産省幹部はこう話す。すくんでいるわけではなく、シェアリングエコノミーを推進するための、あえての戦術が「攻めない」というわけだ。しかし、それでは「攻める」連中にやられてしまう。
・22日、自民党は民泊新法の審査に入ったが、ホテル・旅館業界に近い議員からの物言いが相次ぎ、了承は持ち越しとなった。前述のように民泊業界の現場からはかなり厳しい法案なのだが、「宿泊提供の年間上限を30日以下にすべき」と主張する旅館業界を擁護する声が噴出した。 さらに新法が定める年間上限の180日はあくまで、国としての上限。自治体はこの上限を条例によって低くすることができる建て付けになっているが、旅館業界に近い自民党議員からは「条例で制限できるという法的根拠を法律に盛り込むべき」といった声も出たという。
・これでは、「宿泊提供の年間上限はゼロ日」という自治体が出かねない。政府の規制改革推進会議が翌23日に開いた会合では「民泊の普及を阻害する可能性がある」との指摘があった。シェアリングエコノミー協会も同日、声を上げる。 同協会は23日、「民泊新法の在り方に関する意見書」を公表。「住宅宿泊仲介業者(プラットフォーマー)は登録制にすべきではない」「宿泊提供の上限日数制限に反対する」「標識の掲示は家主の個人情報をさらし、家主自身の安全を脅かす」などと表明した。 しかし、経産省は例によって黙したまま。現状、アクションを起こすことができていない。ところが、安穏としてはいられなくなる事態が海の向こうで起きつつある。
▽米国勢の圧力、尻ぬぐいするのは経産省
・米グーグルやフェイスブックなどが加盟する米最大のIT業界団体、米インターネット・アソシエーションは米国時間の24日、日本のシェアリングエコノミー政策を痛烈に批判する声明文を公表した。照準は、民泊新法。以下、内容を抜粋する。 「今、ホームシェアリングのプラットフォーム事業者を規制する動きが広がっている。仮に誤った規制がまかり通れば、せっかくのイノベーションと経済成長が阻害され、後退しかねない事態につながる」 「日本政府の方針には、登録されたプラットフォーム事業者に厳しい義務を課すことによって、日本国内、そして他国でホームシェアプラットフォームの運営を目指す事業者を排除する可能性が含まれている。これは競争と消費者の選択を大幅に制限するばかりか、イノベーションの妨げとなる」 「日本の政府がシェアリングエコノミーを公的に支援すると表明しつつ、同時にプラットフォーム事業者の自発的な抑制を検討するという矛盾をはらんだ動きだ」
・これとは別に、「民泊新法の内容が、世界貿易機関(WTO)協定違反の疑いがあるとして、既に米大使館などが動いている」(業界関係者)という話も出てきた。エアビーのような仲介業者を締め出すような規制は、外資の自由参入を認めるWTO協定に背いている、という指摘だ。 米国の環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱で、今後、米国との2国間貿易交渉が本格化する見込みだが、こうした「インターネットサービス業の排除」についても米国が槍玉に挙げる可能性がある。そうなれば、尻ぬぐいをさせられるのは経産省である。
・何もしないことが戦略と評価されるのか、それとも「不作為」と断罪されるのか。少なくとも新勢力は、経産省の「介入」を待望している。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022400113/022700002/?P=1

次に、4月6日付けダイヤモンド・オンライン「ウーバーは利用者もドライバーも「搾取」、米で批判高まる」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽どこまでデータを“活用”しているのか
・配車サービスのウーバー(Uber)やリフト(Lyft)、自宅をホテルのように提供するエア・ビー・アンド・ビー(Airbnb)などの民泊サービス。これらを総称する「シェアリングエコノミー」は、ごく普通の人々をつなぎ、余剰の時間や所有物を利用して収入を得る手段を与えるインターネット時代の新しい経済体系だとされてきた。
・ところが、シェアリングエコノミーにはそうした利点がある一方で、両方の利用者を搾取する「テイキングエコノミー」にもなっているという論文が発表された。シェアリングエコノミーの負の実態がよくわかる内容だ。  論文を書いたのは、ワシントン大学法大学院准教授のライアン・ケイロー氏と、データと社会研究所の研究者アレックス・ローゼンブラット氏だ。ケイロー氏はロボットの倫理など、テクノロジーにおける新たな法律に関する研究が多く、ローゼンブラット氏は、テクノロジー時代の人間性を研究してきた人物だ。
・『The Taking Economy: Uber, Information, and Power(搾取経済:ウーバー、情報、そして権力)』と題されたこの論文は、搾取の背後にあるのは情報の非対称性だとしている。著者らの言い分はこうだ。 「シェアリングエコノミーは、情報と権力の非対称性の上に成り立っている。これまでもビジネスは、消費者の行動を自分たちの利に結びつくように仕向けてきたが、シェアリングエコノミー企業は消費者とサービス提供者の間に立って、すべての参加者をモニターし操作することが可能になっている」
・最近、アメリカではウーバーの行動に対して批判が高まっている。たとえば、「グレイボール」問題がある。これは、ウーバーが法的に禁止されている地域で取り締まり係員や役人を特定し、彼らが取り締まりの一環で配車アプリを利用しても付近に車がないように見せかけるという手だ。ニューヨークタイムズ紙が今年明らかにした。
・数年前にも同社に批判的な記事を書いたジャーナリストに対して、「どこへ出かけているとか、どこに住んでいるなどはすぐわかる」と同社重役が語り、個人利用者を特定してプライベート情報を明らかにできることを漏らしたことがあった。この場合は、それを脅しにも使えるという意味だが、グレイボール問題とも併せ、ウーバーがそれだけ詳細にわたるデータを取得しているのだとわかる。
▽「サージプライス」という収益モデルが影を落とす
・ウーバーに関しては、男女差別的な社内環境やCEOの性格にも問題点が指摘されているが、それ以前にシェアリングエコノミー企業は手にしたデータや情報をもとにして、利用者とサービス提供者を左右し、ごまかしたり不利な立場に置かせたりすることが可能で、すでにその兆候があると、この論文は指摘している。  論文にはいくつかの例が挙げられている。 たとえば、ウーバーのデータサイエンティストたち自身が明らかにしたところによると、同社は「利用者がいつ『サージプライス』を払ってもいいと考えるか」を詳細にわたって調査しているという。サージプライスというのは、週末の夜や大きなイベントが開かれる時など、利用者が多い時間帯に需要に応じて値段が上がるしくみだ。
・調査によると、スマホのバッテリーがなくなりかけているユーザーは、高い値段でも受け入れる傾向があるという。バッテリーがなくなってしまうとアプリが使えなくなるから、目的地に到達するためには、高くても乗るしかない、と焦るのだろう。だが、ウーバーがここまで情報を手にしているとなれば、個人を標的にした価格操作があり得ると論文の共著者らは警告している。
・さらにサージプライスに関して、同じ地域の同じ時間帯でも、ユーザーによって異なったサージプライスが提示されることがわかっている。著者らによると、これは処理するサーバーの違いによって引き起こされているのだが、公平さに欠けたものだ。  サービス提供者であるドライバーはもっと弱い立場だ。 たとえば、ウーバーはドライバーの条件を刻々と変えることで知られている。ドライバーの中にはこれで生計を立てている人が少なくなく、新しい条件に同意するしかない。だが、そうでなくともドライバーがどの条件が変化したかを理解できないとか、そもそも変化の頻度が高くてフォローできないことによって、ウーバーは利益を得ていると著者らは指摘する。
・また、上記のサージプライスが起こりそうな時には、ドライバーのアプリのマップ上にその可能性がヒートマップのような色の濃淡で示されるが、ここにはどの程度の値上がりが予想されるのかについて正確な数字が提示されない。サージプライスはドライバーにとっては儲け時でもあるのだが、結果的に翻弄されるだけに終わることもある。
▽将来の自動運転車のためにデータを蓄積している?
・さらに、ウーバーは自動走行車を開発中だ。そのために、現在のウーバーで取得された走行データが利用されている。ひどい見方をすれば、ドライバーらは自分たちの仕事を奪う相手のために尽くしているということになる。これも搾取の構造というわけだ。
・搾取が放置されている背景には、ふたつの要素がある。ひとつはユーザー自身、そしてもう一つは当局だ。 こうした利用者から取得するデータによってビジネスを運用する会社は、いくらでもあるだろう。グーグルやフェイスブックもユーザーデータを元に収入を上げており、インターネット時代にはこうしたビジネスモデルはもう当然のこととされている。
・だが、グーグルやフェイスブックは利用が無料で、ユーザーはその代償としてのデータ利用であることに同意している。一方、シェアリングエコノミーには有料であるにもかかわらず詳細なユーザーデータが取得されている。著者らは、シェアリングエコノミーがこれまでのインターネットサービスとは異なることを、ユーザーは見抜けていないとしている。
・さらに大きな問題は、消費者を保護する法律が追いついていないことだ。非対称的に膨大な情報を握るこうした会社が、その立場を乱用することを防がなければならないのだが、まったくそうした手が打たれていない。著者たちは、データ利用の方法は表からは隠されているが、当局はもっと情報を要求して、そのしくみを理解し、問題となる行為を明確に定義する必要があると強調している。
http://diamond.jp/articles/-/123730

第三に、財務省出身で中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員の森信茂樹氏が5月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「シェアリングエコノミーの税逃れ、保障漏れに誰が責任を負うべきか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・情報が氾濫する社会で、SNSなどで流される「フェイクニュース(嘘のニュース)」が大きな問題となっているが、では、だれが情報の正確性をチェックすべき責任を負っているのか。国際的な議論を見ると、ニュースの場を提供するプラットフォーム事業者が一義的な責任を負うべきだ、ということのようだ。 このような議論に触発されたわけではないが、シェアリングエコノミーでの、所得の情報把握や、税や社会保険料の負担の責任を誰が持つべきなのか、考えてみたい。
▽見えない税や社会保険料の負担 プラットフォーム企業が責任を持って
・Facebook、Googleなどの全世界に広がるプラットフォーム事業者は、多大な影響力を持っている。それを背景に、広告などで莫大な収益を上げており、扱う情報コンテンツの品質に責任を持つことは当然で、その負担を負うだけの資金もあるということだろう。この考え方を踏襲すれば、シェアリングエコノミーのビジネスでも、筆者は、税や社会保障で、事業者の「プラットフォーム企業」に、可能な限りの義務や責任を負わせることが必要ではないかと考えている。
・具体的には、プラットフォームに参加して所得を得る者(ウーバーの運転手、民泊のホストなどのネットワーカー)については、各国の税制や社会保障当局へ情報を提供する義務を課すこと、場合によっては、税や社会保険料の源泉徴収義務を負わせることも検討の視野に入れることである。
・より重要なのは、プラットフォーム事業者の責任だ。事業者自らが、事業を行っている地域や国で、適切な租税負担を行うことについても自覚を促す必要がある。 とりわけ筆者が関心を持つのは、4月26日付本コラム(「『働き方改革』はセーフティーネットの議論を置き去りにしている」)で指摘したように、シェアリングエコノミーが拡大し発達するなかで、そのビジネスで所得を得る者に対するセーフティーネットが十分ではないことだ。早急にその対策を講じるべきだという問題意識をもっている。
・以下、プラットフォームを提供する企業(事業者)の責任について、税制面に焦点を当てて、具体的に議論してみたい。 ウーバーやエアビーアンドビー(以下、Airbnb)のようなシェアリングエコノミーの構図をわかりやすく説明すると、プラットフォームを提供して利益を得る、「胴元」ともいうべきプラットフォーム企業(その多くは、米国シリコンバレー企業)と、そのもとで、不特定多数の人がさまざまなサービスを請け負い、空室などの遊休資源を提供したり、時間のある時に副業をしたり自分のライフスタイルにあった働き方をする「ギグ・エコノミー」の、いわば2層に分かれる。
▽広がる租税回避 英伊などは独自の税制導入
・第1の問題は、プラットフォーム企業が「実際に事業活動を行う場所」で、適正な税負担をすべきだという点である。 ここへの課税が適正・公平でなければ、税負担の問題だけでなく、同業企業とのイコールフッティング(同じ競争条件)の問題に波及する。つまり、アマゾンと楽天、ウーバーと既存のタクシー業界との競争条件、Airbnbと既存のホテルや旅館の競争条件が、大きくゆがむという問題である。
・アマゾン、ウーバー、Airbnbなどは、自らの所得は複雑なプランニング(私的契約の積み重ね)を行い、自ら「胴元」として得た利益の大部分(とりわけ米国外で得る利益)を、アイルランドやオランダといった低税率国やタックスヘイブンに移転させる租税回避を行っている。つまり実際に彼らが「事業を行っている」国には、納税していないのである。
・多くの先進諸国ではこれに対して強烈な問題意識を持ち,様々な対策を考えている。例えば英国は、「グーグルタックス」と称される税制を導入して対応している。これは Diverted Profit Taxとよばれるもので、大企業(主に多国籍企業)が考案したイギリスの課税ベースを浸食する節税スキームに対抗するため導入された税制である。 具体的には、(1)イギリスでのPE(課税のとっかかりとなる恒久的施設)認定を回避する仕組みを利用している場合、又は(2)経済的実態を欠く取引を行う仕組みを利用している場合について適用される。(1)の場合は、そのPEに帰属したであろうと推認される外国企業の利益に対して、(2)の場合は、妥当な価格と当該取引との差額に対して、それぞれ25%の税率で課税するものである。
・イタリアも類似の税制を導入している。またオーストラリアやカナダの税制当局も、ウーバーやAirbnbなどの租税回避に大きな関心を表明している。 この問題では、日本だけで対処できる方法はない。だが幸い、OECD租税委員会では、「BEPS(税源侵食と利益移転)2」として、対応策の議論が始まるようなので、各国政府が可能な手立てを考えることも必要だ。BEPSで議長国を務め、見事な報告書とまとめ上げた日本の税制当局に期待したい。 プラットフォーム企業から適正な税の負担を求めることは、ギグ・エコノミーで働く人々へのセーフティーネットの財源に回すことができるというプラスの側面もある。
▽ネットワーカーの所得把握 セーフティーネット再構築に必要
・第2番目に、プラットフォーム企業の下で働くネットワーカーの所得把握の問題である。これは単に税収確保という理由だけではなく、彼らの社会保障、つまりセーフティーネットの再構築をするという意義もある。   ギグ・エコノミーの場合、所得が不安定だったり、低賃金で長時間労働をしなければいけなかったりの例も少なくないうえ、年金や医療保険では事業主負担がないため、相対的に重い負担になる。その結果、社会保険に未加入だったり、そもそも所得の申告もしなかったりということもある。
・こうした状況を改めるには、まずはネットワーカーの正確な所得を把握することが必要だ。そのためにはプラットフォーム企業に、マイナンバーを活用した所得情報の提供や、源泉徴収の義務を負わせることができるかどうかの議論を早急に行う必要がある。
・例えば、Airbnbでホストを行う個人・法人の宿泊情報、ウーバーで働く運転手が(今のところ日本では事業が行われていないが)いくらお客から支払いを受けたかという情報の入手だ。これらはホストや運転手が自身で申告するのが本来の姿だが、シェアリングエコノミーが拡大してくると、申告の内容を正確に追跡しようとすると、莫大な徴税コストがかかるからだ。
・日本再興戦略を議論している政府の産業構造審議会でも、シェアリングエコノミーが広がっていく中で、「企業との雇用関係に基づかない働き手が増えることが見込まれる。 国民健康保険・国民年金への加入者増加が見込まれ、 事業主負担がないことなどにより本人負担が相対的に重いことや給付が少ないことを懸念する声がある。(一方で) 兼業・副業の増加が見込まれるとの指摘がある。兼業・副業による副収入等が把握できていないことが多く、個人の負担能力に応じた負担となっていないことに加え(逆に社会保険などへの未加入の人が)本来受けるべき給付が受けられないと指摘する声もある」と指摘されている。
・カギをにぎるのは昨年導入されたマイナンバー制度で、これを活用してシェアリングエコノミーのプラットフォーム会社(事業者)に適切な責任を持たせる必要がある。 第4次産業革命と呼ばれる社会変革に柔軟に対応するような具体的な税制・社会保障制度の検討は急務である。
http://diamond.jp/articles/-/127626

第四に、6月26日付けダイヤモンド・オンラインが総合自動車情報誌CAR and DRIVERの記事を転載した「配車サービスのウーバーにまたも難題、「灰色ビジネス」に巨額罰金」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今年に入り、ボイコット運動を起こされるわ、セクハラ問題で炎上するわと、トラブル続きのウーバー(配車サービスのベンチャー企業)に、またも難題が。カリフォルニア州が、ウーバーに対して110万ドル(約1億2500万円)の罰金を科す可能性が高まっているのである。理由は「飲酒、もしくはドラッグを使用した状況で運転していた」と顧客から寄せられたドライバーに対する苦情に、迅速に対応しなかった、というもの。
・カリフォルニア州は飲酒やドラッグ影響下の運転に関して“ゼロ・トレランス(問答無用)”という方針で、厳しく対処している。ところがウーバーにはこうした苦情が2014年8月から1年間で151件も寄せられていた、という。平均するとおよそ2日に1件だ。苦情が事実であれば、危険に直結するだけに看過できない。
・州政府はこのような苦情があった場合、「タクシー、ハイヤーなどのライドサービス業者は直ちにドライバーに事情聴取を行い、事実が確認できれば即座に停職処分にする」と定めている。ところが151件の苦情に対し、ウーバーが停職処分にしたドライバーはたったの3人。そのうえ、少なくとも64件に関してはウーバーはほとんどなんのアクションも起こさず、苦情対象となったドライバーは苦情が寄せられてから1時間以内に別の顧客を乗せていた業務実態が判明している。
・州政府は「州のゼロ・トレランス規制に従わないことで、ウーバーはその顧客ならびに公共に対し大きなリスクを負わせた」として、今回の110万ドルの罰金を求める提訴に踏みきったのだ。 カリフォルニア州だけではない。マサチューセッツ州も、「ドライバーのバックグラウンド調査が不十分」として、ウーバーにドライバーの経歴確認を迫る方針だ。犯罪歴、飲酒運転歴、ドラッグ使用歴、とくに児童に対する性犯罪などはドライバーを雇用する際に厳重にチェックされるべき項目だが、州が独自にドライバーの経歴調査を行ったところ、10%以上が“灰色”だったという。
・ウーバーは急成長を遂げた企業だけに、こうした法令順守のための部門が整備されていない、という面もある。同社は「飲酒などの疑いがある、と3件以上の苦情が寄せられたドライバーは、事実関係を問わず直ちに停職」というポリシーを持っているというが、カリフォルニア州ではそのポリシーが適用されていなかった例も多く見られた。
・ライドシェアサービスを世界中に広め、宅配サービスから自動運転の分野に至るまで積極的に事業を広げていたウーバーだが、ここにきて急激な成長戦略に伴う“つまずき”が一気に噴出しているようだ。さらにウーバーには「グーグルの自動運転セクション、ウェイモからの人材引き抜きと機密情報の使用」という疑惑があり、司法判断によっては業務停止命令が出される可能性もあるという。ウーバーはいま、まさに正念場を迎えている、といえる。
http://diamond.jp/articles/-/132775

第一の記事に関連して、「民泊解禁」については、このブログで昨年7月19日に取上げた。この記事にあるように、 『英ロンドンでは年間上限90日まで、米フィラデルフィアでは同90日、仏パリでは同120日までであれば、無届けで自由に自宅をゲストに貸すことができる。オーストラリアでは民泊を法律の適用除外とする法案が通り、一切の規制が排除された』、というのと、日本では日数に拘らず規制対象で、営業日数は年間180日が上限になるというのでは、 『世界の趨勢の逆をゆく日本の民泊新法』との指摘はその通りだ。ただ、旅館などの既得権益を持つ業者の肩を持つ訳ではないが、悪徳民泊業者、宿泊客と住民の間のトラブルなどを考えると、エアビーなどの仲介業者への規制も含めある程度の規制は必要なのではなかろうか。
第二の記事は、 「シェアリングエコノミー」の陰の部分を取上げたもので、 ウーバーについては、第四の記事でより詳しくみよう。
第三の記事で、 『見えない税や社会保険料の負担 プラットフォーム企業が責任を持って』、 『ネットワーカーの所得把握 セーフティーネット再構築に必要』、などの指摘は正論で、公正な社会構築には不可欠だ。
第四の記事で、 『ウーバーには苦情が2014年8月から1年間で151件も寄せられていた、苦情に対し、ウーバーが停職処分にしたドライバーはたったの3人。そのうえ、少なくとも64件に関してはウーバーはほとんどなんのアクションも起こさず、苦情対象となったドライバーは苦情が寄せられてから1時間以内に別の顧客を乗せていた業務実態が判明している』、 『州が独自にドライバーの経歴調査を行ったところ、10%以上が“灰色”だった』、などの指摘は、 『急成長を遂げた企業だけに・・・』といって許される問題ではなく、コンプライアンス上の大きな手抜きだ。同社は正念場を乗り切ることが出来るのだろうか。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン ホームシェアリング 森信茂樹 シェアリングエコノミー (その1)(「民泊」解禁どころか後退へ 経産省の不作為、ウーバーは利用者もドライバーも「搾取」 米で批判高まる、シェアリングエコノミーの税逃れ 保障漏れに誰が責任を負うべきか、配車サービスのウーバーにまたも難題 「灰色ビジネス」に巨額罰金) 「「民泊」解禁どころか後退へ、経産省の不作為 シェアリングエコノミー後進国に忍び寄る圧力 自宅を貸す「ホスト」の多くは旅館業法を無視した違法状態にあるのが実情だ。 こうした状態を改善し、ホストが貸しやすい制度、宿泊する「ゲスト」が安心して利用できる制度を作ろう、というのが、そもそも民泊解禁の議論の発端 世界の趨勢の逆をゆく日本の民泊新法 英ロンドンでは年間上限90日まで、米フィラデルフィアでは同90日、仏パリでは同120日までであれば、無届けで自由に自宅をゲストに貸すことができる。オーストラリアでは民泊を法律の適用除外とする法案が通り、一切の規制が排除された エアビー。そこに掲載されている都内の物件数は1万7000超、大阪府内は1万2000超あるが、その多くが無許可で旅館業法の規定違反と見られる。一般人ホストは、旅館業法が定める煩雑な登録作業を回避しているからなのだが、新法が施行しても、これでは結局、無届けの違法民泊物件が減らない、との指摘が民泊の現場からは噴出 エアビーなどの仲介業者への規制も盛り込まれる エアビーは数万件ある違法物件の多くを削除せざるを得ない状況に追い込まれる可能性がある。そうなれば、エアビーは日本市場から撤退を余儀なくされるかもしれない 日本では、旧市場をいかに守るか、という議論が先行 経産省不在の政策議論 米国勢の圧力、尻ぬぐいするのは経産省 ウーバーは利用者もドライバーも「搾取」、米で批判高まる シェアリングエコノミーにはそうした利点がある一方で、両方の利用者を搾取する「テイキングエコノミー」にもなっているという論文が発表された Taking Economy: Uber, Information, and Power 搾取の背後にあるのは情報の非対称性 「シェアリングエコノミーは、情報と権力の非対称性の上に成り立っている。これまでもビジネスは、消費者の行動を自分たちの利に結びつくように仕向けてきたが、シェアリングエコノミー企業は消費者とサービス提供者の間に立って、すべての参加者をモニターし操作することが可能になっている ウーバーの行動に対して批判が高まっている サージプライス」という収益モデルが影を落とす 消費者を保護する法律が追いついていないことだ。非対称的に膨大な情報を握るこうした会社が、その立場を乱用することを防がなければならないのだが、まったくそうした手が打たれていない シェアリングエコノミーの税逃れ、保障漏れに誰が責任を負うべきか 見えない税や社会保険料の負担 プラットフォーム企業が責任を持って 広がる租税回避 英伊などは独自の税制導入 英国は、「グーグルタックス」と称される税制を導入して対応している。これは Diverted Profit Taxとよばれるもので、大企業(主に多国籍企業)が考案したイギリスの課税ベースを浸食する節税スキームに対抗するため導入された税制である。 具体的には、(1)イギリスでのPE(課税のとっかかりとなる恒久的施設)認定を回避する仕組みを利用している場合、又は(2)経済的実態を欠く取引を行う仕組みを利用している場合について適用される。(1)の場合は、そのPEに帰属したであろうと推認される外国企業の利益に対して ・イタリアも類似の税制を導入 ネットワーカーの所得把握 セーフティーネット再構築に必要 CAR and DRIVER 「配車サービスのウーバーにまたも難題、「灰色ビジネス」に巨額罰金 ボイコット運動を起こされるわ、セクハラ問題で炎上するわと、トラブル続きのウーバー カリフォルニア州が、ウーバーに対して110万ドル(約1億2500万円)の罰金を科す可能性が高まっているのである ・カリフォルニア州は飲酒やドラッグ影響下の運転に関して“ゼロ・トレランス(問答無用)”という方針で、厳しく対処している。ところがウーバーにはこうした苦情が2014年8月から1年間で151件も寄せられていた 151件の苦情に対し、ウーバーが停職処分にしたドライバーはたったの3人。そのうえ、少なくとも64件に関してはウーバーはほとんどなんのアクションも起こさず、苦情対象となったドライバーは苦情が寄せられてから1時間以内に別の顧客を乗せていた業務実態が判明している マサチューセッツ州も、「ドライバーのバックグラウンド調査が不十分」として、ウーバーにドライバーの経歴確認を迫る方針だ。犯罪歴、飲酒運転歴、ドラッグ使用歴、とくに児童に対する性犯罪などはドライバーを雇用する際に厳重にチェックされるべき項目だが、州が独自にドライバーの経歴調査を行ったところ、10%以上が“灰色”だったという
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蓮舫代表の二重国籍問題(その2)(小田嶋氏の見方) [国内政治]

蓮舫代表の二重国籍問題については、昨年9月14日に取上げた。今日は、(その2)(小田嶋氏の見方) である。

コラムニストの小田嶋隆氏が7月14日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「戸籍謄本開示と魔女裁判について」を紹介しよう。
・民進党の蓮舫代表が、近々「戸籍(謄本)」を公開してご自身のいわゆる「二重国籍」問題を説明する意向だ、と報じられた(こちら)。 まったく予想していなかったニュースで、正直なところ、びっくりした。 というのも、この問題は、すでに終わった話だと思っていたからだ。
・「終わった話」というのは、「きれいにカタがついた話」という意味ではない。「世間はもう忘れている」という意味に近い。いずれにせよ、私は、いまさらこんな話を蒸し返すのは、不自然な態度だと思っている。 単に不自然なだけではない。 不適切で不道徳で不気味で、そして、少々不憫でさえある。
・もう一度言うが、世間は忘れている。 それ以前に、そもそも、はじめからたいした問題だと思っていない。 仮に、蓮舫氏が二重国籍だったのだとして、 「それがどうしたの? 二重国籍で何か問題があるわけ?」 といったあたりが、現代に生きている多数派の日本人の平均的な認識なのであって、だからこそ、彼女の二重国籍問題のニュースは、去年の9月に一時的にメディアを賑わせたものの、ほんの半月ほどで忘れ去られた、と、少なくとも私はそう考えている。
・ちなみに、日本テレビが昨年の9月に実施した世論調査(こちら)では  《民進党の新しい代表に選ばれた蓮舫議員は、日本国籍以外に、台湾籍を持っていたことがわかりました。あなたは、このことについて、どのようにお考えですか?》 という設問に、以下のような回答が寄せられている。
 (1) 国会議員がいわゆる二重国籍であることは問題だ 14.6 % 
 (2) 当初の発言と食い違っていたことが問題だ 15.5 % 
 (3) 日本国籍を持っており問題ない 30.4 % 
 (4) そもそもいわゆる二重国籍自体を問題にすることはない 31.7 % 
 (5) その他 1.1 % 
 (6) わからない、答えない 6.7 % 
・その、時間の砂の下に埋もれたはずのゾンビネタを、またぞろ掘り返して白日の元に晒すことに、いったい何の意味があるのだろうか。 また、掘り返そうとしている人々は、いったいどのような狙いを持って、それをしているのだろう。 もしかして、蓮舫氏は、この約1年ほどの間、戸籍の開示を迫る周囲の圧力をずっと感じていて、ついに耐えられなくなって、戸籍の開示を決意した、と、これは、そういうスジのお話なのだろうか。
・それとも、彼女は、都議選の惨敗に伴う内外からの批判を、戸籍開示という自爆ネタをカマすことで有耶無耶にしようと画策しているのであろうか。あるいは、あえて万人の前に戸籍を晒される「被害者」のポジションをとることで、苦境を打開するつもりでいるのだろうか。
・…と案じていたら、13日に本人が記者会見で「戸籍謄本そのもの(を公開する)という風には言っていない」と発言した(こちら)。やれやれ。だが、ともあれ、公開する内容をどうこう言う前に、私は、もっぱら、「公人が(一部であれ)戸籍謄本を開示することの副作用」を心配している。
・こういうことが当たり前になれば、開示しないところについてさらに公開圧力が増すのは目に見えている。悪い前例ができれば、日本中にあまた散らばっているはずの帰化者や混血の子どもたちが影響を受ける。彼らだけではない。帰国子女や、外国生まれで出生地の国籍をあらかじめ併せ持って生まれてきた日本人や、ほかの民族の血筋に連なる日本人や、あるいはたまたま異国的な風貌を持って生まれてきた子供のような、「誰の目にも一目瞭然で日本人とわかる典型的な多数派の日本人」とは別の、「マイノリティーの日本人」が、様々な場面で、戸籍の全面開示を求める圧力にさらされることになるはずだ。こういうバカな近未来を招来してはならない。
・今回述べたいことの本筋ではないし、ここが論点で荒れるのは面倒だが、改めて述べれば、私自身の「二重国籍」の件自体についての認識は、昨年の9月に当欄で書いた内容から基本的には変化していない。  ひとことで言えば、蓮舫氏が、日本国籍を有している以上、国会議員として、また、公党の代表として執務するにあたって、法律的な問題はないということだ。
・彼女のもともとの国籍(台湾籍)が、どの時期にどういう経緯で処理され、現在どういうことになっているのであれ、また、その自分の過去の国籍についての彼女自身の認識が事実に即した正確なものであったのであれそうでなかったのであれ、すくなくとも、蓮舫氏が、現に日本国籍を有している限りにおいて、その余のことは言ってみれば瑣末事で、大筋としてはたいした問題ではないのだと考えている。 つまり、二重国籍であるのだとしてもそれがただちに法律違反にはならないということだ。
・相手が政治家であれ公務員であれ、二重国籍を「疑惑」と呼び、それを問題視し、戸籍の開示を迫ることは、外国籍を持っている(あるいは持っていた)日本人に対する差別と言っても過言ではない。 何人かの人が既に指摘していることだが、わが国では、2007年に、ペルーの元大統領であり、日本とペルーの二つの国籍を有する明らかな二重国籍者でもあるアルベルト・フジモリ氏が、国民新党(当時)から参院選に立候補した事例がある。この時、フジモリ氏の立候補は当局によって何の問題もなく受理された。二重国籍であることを理由に彼の立候補に異を唱える声も特に出なかった。本国のペルーで、大統領が二重国籍であることを隠していたことが批判されていたにもかかわらず、だ。とすれば、今回、蓮舫氏の二重国籍だけが問題化されているのは、話のスジとしておかしい。
・蓮舫議員に関して 「中国のスパイだ」 といった種類の中傷が、いまだにネット上にあふれていることからしても、彼女の国籍に執着する人たちの質問は、あまり真に受けるべきものではない。 蓮舫氏が二重国籍問題を問いただす質問に対して、きちんと筋道の通った説明ができていないことがその通りだとしても、そもそも、質問自体が不当であったことを思えば、結局のところ、たいした問題ではない。
・ついでに言えば、帰化した日本人の元の国籍は、当然のことながら、相手国の処理に依存している部分のある話で、それゆえ、単純に一本化できるとは限らない。そう思えば、純粋にひとつだけの国籍にこだわるものの考え方は、時代遅れであるのみならず、非現実的でもあると言わなければならない。
・比較的簡単に国籍を取得できる国もあるし、そうでない国もある。発行の基準も国ごとにまちまちで、なおかつ、国籍抹消の事務手続きについては、基本的に他国は関与できる話ではない。それゆえ、法務省も、「国籍唯一の原則」を立てた上で、帰化日本人の元の国籍の離脱については「努力義務」にとどめている。なぜなら、外国の国籍を、日本にいる日本人が意図どおりにコントロールできるとは限らないからだ。
・蓮舫氏の場合、台湾の「国籍」をどう扱うのかについて、微妙な外交問題が生じる可能性がある。台湾を「国」として認めるのか、あるいは、国籍の発行国はあくまでも中華人民共和国であるとするのかによってこちらの扱いが違ってくるわけで、ここのところを一刀両断にはっきりさせることは、必ずしも簡単ではない。おそらく法務省としても、彼女の国籍問題は、あまり表立って問題化したくないのではなかろうか。
・このような事情があったとしても、国籍を「忠誠の対象」と考えるタイプの思考の持ち主からすると、二重国籍が「二君に仕える」的な不忠の証のように見えるのかもしれない。 が、そういう世界は、もう100年以上前に滅び去っている。 話を戻す。
・彼女の「国籍」に関して証言の内容が、説明の機会ごとに、二転三転していたことは事実で、責められても仕方がない。私は、その彼女の説明のでたらめさ加減を見て、彼女の政治家としての資質を疑う人が出て来るのは、仕方のないことだと思っている。 ただし、蓮舫氏の説明が不十分だったことと、戸籍謄本を公開することは、話がまるで別だ。彼女の説明が不明瞭だったのだとして、だからといって、戸籍を公開して説明すべきだという話にはならない。
・そんな展開になってはいけないのだ。 なぜなら、「疑われたら戸籍の公開が当然」のような社会になってしまえば、それは、説明の出来不出来みたいな話とは別次元の、極めて重大な影響をもたらす個人情報の危機だからだ。
・蓮舫氏が「戸籍謄本を開示する」旨を表明したとするニュースが流れた11日から翌日にかけて、私は 《つまり、混血だったり外国生まれだったり顔つきがエキゾチックだったり帰国子女だったり両親のうちのいずれかが外国籍だったりする日本人に対して、公然と戸籍謄本の開示を要求できる時代がやってきたのだな。で、その開示要求を拒絶した場合は、愛国心を疑われても仕方がないわけだ。》 《自分以外の誰かに対して、戸籍謄本の開示を要求している人間は、結果として、自分が出自によって他人を差別する人間であることを告白しているのではなかろうか。》 たとえば私が誰かに「オダジマには強烈な田舎者のにおいがする。こいつが東京生まれだというのはウソに違いない。戸籍謄本を公開してみろ」と言われて、言われた通りに戸籍謄本を開示したら、結果として、私は、「東京出身者以外は田舎者だ」という先方の見解を認めたことになってしまうと思うのだが》 という一連のツイートを投稿したのだが、これらの書き込みに対しては、合計で100件以上の反論(2割ほど賛同の意見もあったが)が寄せられた。
・反論の主なものは、 「手当たり次第に戸籍の開示を求めているのではない。蓮舫氏が国会議員であり、総理になる可能性を持つ野党の党首だから国籍をはっきりしろと言っているだけだ。論点をズラすな」 という感じのお話だった。そのうちには 「二重国籍という明らかな法律違反」 という書き方で当件に言及している人たちが、相当数含まれている。
・なるほど。いまだに国会議員が二重国籍であることを、法律違反だと思っている人が少なからず生き残っていて、そう思っていない人たちの中にも「現行法に触れてはいなくても、常識としてあってはならないことだ」と考えている人たちがそれ以上たくさんいるということのようだ。 この点については、もうすでに昨年の9月の段階で、すっかり議論が尽くされていると思っていたのだが、一部の人々の民意は、いまだに同じところを行ったり来たりしているわけだ。
・結局、不信感を持っている人たちには、「議員になっている時点で、国籍の問題はクリアされているはずじゃないか」という話が、まるで通じていなかったということだ。 が、多数派の日本人は、冒頭で示したとおり、この問題をほとんど忘れている。
・にもかかわらず、どうしてまた蓮舫氏は、日本中の在日外国人や、帰化日本人や、外国生まれの日本人や、二重国籍者や、婚外子や、養子や、離婚者や、その他、心無い人たちに偏見を持たれるかもしれない戸籍をかかえてやっかいな思いをしているたくさんの日本人に要らぬ心理的プレッシャーをもたらし、一部の日本人が牢固として捨てようとしてない純血主義や国籍至上主義や神話的家族主義に勢いを与えるような挙に出たのだろうか。 ご本人の心境は、おそらく、私のような人間の理解を絶したところにあるものなのだろう。心労の深さも、私には想像がつかない。
・であるから、一人の人間としての蓮舫代表のこの度の決断に対して、外野からどうこう注文をつけようとは思っていない。 ただ、この状況のこのタイミングで、あえて自らの戸籍に注意を集める挙に出た蓮舫代表の政治的直感の鈍さには失望した、ということだけは申し上げておきたい。 中世末期に横行したと言われる異端審問では、魔女と見なされた容疑者に、重たい石をくくりつけて水に沈めることで罪の有無を判断したのだそうだが、どんなふうに判断したのかというと、そのまま沈んだら無罪で、浮かび上がってきたら魔女として有罪認定されたということらしい。
・おそらく、戸籍の開示を求めていた人々は、会見や一部の公開をもって満足することはないだろう。彼らは、魔女が沈むまで次のツッコミどころを探すはずだ。 魔女狩りって、教会や王様がやらせたわけではなく 民衆主導だったんだそうですね…
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/071300102/?P=1

小田嶋氏が、 『時間の砂の下に埋もれたはずのゾンビネタを、またぞろ掘り返して白日の元に晒すことに、いったい何の意味があるのだろうか。 また、掘り返そうとしている人々は、いったいどのような狙いを持って、それをしているのだろう。・・・それとも、彼女は、都議選の惨敗に伴う内外からの批判を、戸籍開示という自爆ネタをカマすことで有耶無耶にしようと画策しているのであろうか。あるいは、あえて万人の前に戸籍を晒される「被害者」のポジションをとることで、苦境を打開するつもりでいるのだろうか』、 『「疑われたら戸籍の公開が当然」のような社会になってしまえば、それは、説明の出来不出来みたいな話とは別次元の、極めて重大な影響をもたらす個人情報の危機だからだ』、 『この状況のこのタイミングで、あえて自らの戸籍に注意を集める挙に出た蓮舫代表の政治的直感の鈍さには失望した』、などの指摘はその通りだ。やれやれ。
タグ:日本テレビ 小田嶋隆 世論調査 日経ビジネスオンライン アルベルト・フジモリ 二重国籍問題 蓮舫代表 (その2)(小田嶋氏の見方) 戸籍謄本開示と魔女裁判について 戸籍(謄本)」を公開してご自身のいわゆる「二重国籍」問題を説明する意向 私は、いまさらこんな話を蒸し返すのは、不自然な態度だと思っている。 単に不自然なだけではない。 不適切で不道徳で不気味で、そして、少々不憫でさえある 世間は忘れている。 それ以前に、そもそも、はじめからたいした問題だと思っていない 「それがどうしたの? 二重国籍で何か問題があるわけ?」 といったあたりが、現代に生きている多数派の日本人の平均的な認識 日本国籍を持っており問題ない 30.4 % そもそもいわゆる二重国籍自体を問題にすることはない 31.7 % 時間の砂の下に埋もれたはずのゾンビネタを、またぞろ掘り返して白日の元に晒すことに、いったい何の意味があるのだろうか 彼女は、都議選の惨敗に伴う内外からの批判を、戸籍開示という自爆ネタをカマすことで有耶無耶にしようと画策しているのであろうか。あるいは、あえて万人の前に戸籍を晒される「被害者」のポジションをとることで、苦境を打開するつもりでいるのだろうか 蓮舫氏が、日本国籍を有している以上、国会議員として、また、公党の代表として執務するにあたって、法律的な問題はないということだ 相手が政治家であれ公務員であれ、二重国籍を「疑惑」と呼び、それを問題視し、戸籍の開示を迫ることは、外国籍を持っている(あるいは持っていた)日本人に対する差別と言っても過言ではない 国民新党(当時)から参院選に立候補 「中国のスパイだ」 といった種類の中傷が、いまだにネット上にあふれていることからしても、彼女の国籍に執着する人たちの質問は、あまり真に受けるべきものではない 帰化した日本人の元の国籍は、当然のことながら、相手国の処理に依存している部分のある話で、それゆえ、単純に一本化できるとは限らない。そう思えば、純粋にひとつだけの国籍にこだわるものの考え方は、時代遅れであるのみならず、非現実的でもあると言わなければならない 法務省も、「国籍唯一の原則」を立てた上で、帰化日本人の元の国籍の離脱については「努力義務」にとどめている 彼女の「国籍」に関して証言の内容が、説明の機会ごとに、二転三転していたことは事実で、責められても仕方がない この状況のこのタイミングで、あえて自らの戸籍に注意を集める挙に出た蓮舫代表の政治的直感の鈍さには失望した、ということだけは申し上げておきたい
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タカタのリコール問題(その3)(臭い物に蓋をする企業文化は米敏腕弁護士の格好のターゲット、タカタはどこで何を間違えたのか 銀行はこうして創業家を見捨てた、破綻したタカタを最後まで追い詰める日本自動車業界の「いじめ体質」、タカタ倒産劇で透けて見える「銀行側の事情」 ) [企業経営]

タカタのリコール問題については、昨年3月27日に取上げたままだった。処理案の基本がみえた今日は、(その3)(臭い物に蓋をする企業文化は米敏腕弁護士の格好のターゲット、タカタはどこで何を間違えたのか 銀行はこうして創業家を見捨てた、破綻したタカタを最後まで追い詰める日本自動車業界の「いじめ体質」、タカタ倒産劇で透けて見える「銀行側の事情」 ) である。

先ずは、ジャーナリスト堀田 佳男氏が6月30日付けJBPressに寄稿した「タカタ倒産、日本企業はもう米国で事業できなくなる?臭い物に蓋をする企業文化は米敏腕弁護士の格好のターゲット」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・タカタが倒産した。 正確には「民事再生法の適用申請」という表現なのだろうが、ここではあえて倒産という言葉を使いたい。それはまさしく築き上げた「資産」を「倒した(された)」からである。 倒産の詳細は他メディアに譲り、当欄では倒産から学ぶべき2つのことを中心に話を進めたい。
▽3年前から倒産は読めていた
・実は2014年12月、当コラムでタカタについて「倒産はあり得る」と書いた(「米弁護士に寄ってたかって食い物にされるタカタ」)。3年前から倒産は読めたのだ。 当時、タカタ製エアバッグによる米国内の死亡者は4人。すでに事件として大きく報道されていた。それから現在まで、米国内の死亡者は計11人(全世界では17人)で、今後も増える可能性がある。 これが日本国内だけの問題であれば、倒産までには至らなかったかもしれない。だが問題の中心地は訴訟の国、米国だった。
・3年前に指摘した通り、米国の貪欲な弁護士たちがタカタを標的にして、いかにカネを巻き上げるかに力を注ぐことは容易に想像できた。 弁護士たちはその時点でタカタから、製造業界で過去最大の賠償金を奪えると踏んでいた。願ってもないほど典型的な懲罰的賠償訴訟に持ち込めると考えていたはずだ。 しかも、事故が起きてから数年を経てもタカタの動きは遅く、それがさらに賠償金の上乗せにつながっていく可能性があった。
・2014年12月時点で、タカタは全米規模でリコールを実施していなかったのだ。「全米でリコールするデータの裏づけがない」というのが会社側の言い分だった。 この動きの遅さが米国の消費者を苛立たせ、弁護士の活動をさらに加速させた。タカタが倒産したところで、賠償金さえ獲れれば弁護士や被害者にとってはさほど大きな問題ではないという姿勢が見え隠れした。 実際、タカタが倒産してもなお、ロサンゼルス市の弁護士ブラッドフォード・チャイルド氏は「タカタは米国の連邦破産法11条(民事再生法)を利用して、エアバッグで死傷した被害者への責任を逃れようとしている」と糾弾してさえいる。
▽3年前の時点でも「時すでに遅し」
・その背後には、タカタは全資産を売却して消えてなくなるべきとの思いを感じさえする。 中国系部品会社キー・セイフティー・システムズ(KSS)が事業と資産を買収して再建支援する合意案が出ても、多くの弁護士は不満を抱えたままなのだ。 というのもタカタが倒産したところで、弁護士が抱える顧客一人ひとりに対する賠償金は満足のいく額ではないからだ。1円でも多くの賠償金を勝ち取ってこそ、弁護士としての腕が評価される世界では、まだまだ不十分なのである。
・タカタが欠陥エアバッグの隠蔽工作を認めて、刑事事件で10億ドル(約1110億円)の賠償金を支払うことに合意したのは今年1月のことである。 リコール対象車は米国だけで計4200万台になり、負担額は計1兆円に達する。しかもAP通信によれば、今年4月までにリコールされた車は全体の22%でしかない。
・2014年12月の時点ですでに米国内では55件の集団訴訟が起こされていた。3年前に原稿を書いた時ですら、「時すでに遅し」の印象があったくらいである。しかも、今後エアバッグの交換を待つ間に事故が発生することもある。 ミズーリ州の弁護士ケント・エミソン氏はエアバッグ事故で顔面に大怪我をした女性顧客のために、これからタカタと自動車メーカーに対する訴訟を検討している。
・タカタの倒産で、問題がすべて終わったわけではないのだ。これから始まる訴訟もあることをタカタだけでなく、すべての日本企業は知っておくべきだろう。  もう1つの論点は隠蔽という行為である。
▽社員が欠陥を発見した2004年に隠蔽しなければ・・・
・悪いものを隠そうとする意識は、多くの人が抱えるものである。誰にも話さず、自分だけ、または数人の秘め事として何事もなかったかのようにやり過ごすことは日常生活で垣間見られる。 ここであえて書かなくとも誰もが思い当たるはずだ。些細なことで、誰も傷つかない事例であればいいが、組織ぐるみの隠蔽となると話は違ってくる。
・しかも今回のように事故につながる案件であれば、徹底した報告と改善が必要になる。タカタがエアバッグのテストで、社員が欠陥の兆候を発見したのは2004年のことである。テストに立ち会った社員2人は、テスト最中にインフレーターに亀裂が入ることを発見。上司に報告したが、報告を受けた上司はテスト結果を破棄するように命じた。この隠蔽工作がのちに、内部告発としてニューヨーク・タイムズに告げられるのだ。
・報告を受けた上司は、すぐに頭の中でリコールや抜本的改良に費やされるコストを計算していただろう。  その時点で億円単位のコストがかかったかもしれない。だが同時に、事故につながる危険性も理解していたはずで、2004年、2005年の段階で手を打っておけば、少なくとも倒産はなかっただろう。 それよりも世界中で亡くなられた17人の命は助かっていたはずだ。負傷者は180人にのぼる。この議論は、単なる結果論として片づけられない。
・結果論だからこそ見えてくる教訓があり、「あの時こうすればよかった」が他社に生かされなくてはいけない。 タカタは長い間、隠蔽を否定し、高田重久会長兼最高経営責任者(CEO)も表舞台に姿を現さなかった。今年になって米司法省から鉄槌をくらって、ようやく隠蔽を認めるという体たらくである。 友人のドイツ人経済記者と話をすると、悪い意味での日本らしさを口にした。
▽タカタに限らず日本企業全体の問題
・「家族経営の弊害が悪い形で出た。日本的な、事なかれ主義で済ます空気が社内に充満していたのではないか」 「すべてを欧米流の合理主義にする必要はないし、日本的なものを貫くことも大切だが、モラルに反することをすると、どの世界でも最後には痛い目に遭う」 最後に再び指摘したいが、米国の訴訟文化は日本だけではなく、世界企業にとっても大きな課題である。ドイツ人記者は「こんなことを続けていたら、米国で事業をしたいと思う企業がいなくなる」と言った。
・ドナルド・トランプ大統領が行動の人であるならば、訴訟文化の軌道修正をするくらいの動きに出てもいいが、トランプ氏自身が訴訟好きであるので、弁護士たちの飯の糧である訴訟件数が大きく減ることはないだろう。 となると、米国に進出する日本企業は、タカタのような事件に遭遇する可能性を十分に想定しながら事業をする覚悟が必要になる。 その前に、不測の事態が生じた時はすぐに手を打つという態度が重要さを増す。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50379

次に、7月3日付け現代ビジネス「戦後最大の「1兆円倒産」タカタはどこで何を間違えたのか 銀行はこうして創業家を見捨てた」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・自動車業界でも例を見ない巨額のリコール問題の中心になったタカタ。だが、創業家会長は説明責任を果たす気もないらしい。世界トップシェアを誇った優良企業が転落するにいたった失敗の本質とは。
▽最後まで抵抗した高田一族
・「6月16日に日経新聞が『タカタが民事再生法申請へ』と報じましたが、このような形で民事再生法手続きの報道が先行することは極めて異例です。 株式も16日当日は報道の真偽確認のため、終日売買停止。週明けの19日は取引は再開されたものの大量の売り注文が残り、大混乱。東京証券取引所もタカタの情報開示の遅さに業を煮やしていました」 こう語るのは東京商工リサーチ松岡政敏氏。
・タカタ自身は「現時点において当社として何ら決定した事実はございません」と法的手続きに入る予定を否定しているが、26日にも申請されるという報道もある。そうなれば負債総額は1兆円を超え、製造業の倒産としては戦後最大になる。
・「タカタは、TKJという不動産事業などを行う高田家の資産管理会社、高田重久会長とその母である暁子氏が全株式の6割も握る典型的なオーナー企業。一族はぎりぎりまで私的整理を望み、民事再生法適用による再建に抵抗していた。私的整理ならオーナー一族も経営陣に残ることができるし、株式も紙切れにならずに済みますからね。
・しかし、いつまでもリコールの処理が長引いて余計なとばっちりは受けたくない自動車メーカー、再建のスポンサー候補、そして監督官庁である国交省などの思惑が一致し、タカタの外堀を埋めるためにリークしたというのが市場関係者の見立てです」(大手経済誌記者)
・もともとタカタはエアバッグで約2割という世界のトップシェアを誇る超優良企業だった。それがこうして破綻寸前に追い込まれるに至るまでには、いくつもの経営判断の誤りがあった。 事が大きくなった発端は'14年9月に米NYタイムズ紙が、タカタとホンダがエアバッグの欠陥を認識していたにもかかわらずそれを公開していなかったと報じたこと。だが、問題の根源はその10年以上前から明らかになっていた。元ペンタックス社長で現エクスキャリバー代表浦野文男氏が語る。 「'04年に、アメリカ本社は問題があることを把握していたことがわかっています。アラバマでエアバッグの破裂事故が報告された後、ミシガンにある米国本社で試験を行っていたのです。この段階で問題の火薬を使った製品の製造をストップするべきでした。
・当時の社長、高田重一郎氏(重久氏の父)まで情報が上がっていたかはわかりません。もし上がっていて、それを握りつぶしていたのならば言語道断ですが、現場が『問題はあるようだが、事故が実際に起きる危険性は極めて低い。社長に上げるような案件ではない』と、殿様社長を『忖度』した可能性が高い。
・このとき問題に正面から向き合っていれば、リコールの対象車が1億台というとんでもない数になることもなかった。小さな問題であっても上に報告するコンプライアンスがまったく働いていなかったことがいちばんの原因でしょう」
▽謝罪を嫌がるトップ
・問題がメディアで大々的に報じられてからも、タカタの対応は後手後手に回る稚拙なものだった。佃モビリティ総研代表の佃義夫氏が語る。 「問題発覚後、本来であれば、高田会長が出てきてきちんと謝罪をするべきなのに、ほとんど表に出てこない。今年の3月期決算でも会長本人ではなく、野村洋一郎取締役が出てきて改めてエアバッグの件を謝罪していた。
・ホンダをはじめとしたメーカーは、創業家によるガバナンスを問題視し、改革の提言を行ってきましたが、タカタに一切変化の兆しが見られないので見切りをつけざるをえなかったのです」 そもそもタカタは、エアバッグ問題が発覚してもかなり強気だった。それどころか、 「タカタが破綻したら、搭載するエアバッグはどこが作るんですか」と自動車メーカーに対して支援を要請していたともいわれる。
・「タカタの経営者はダウンサイドリスクを見誤ったということに尽きる。ダウンサイドリスクとは、被る可能性のある最大限のリスク。エアバッグ以外にもシートベルトやチャイルドシートなどで高いシェアを誇っていたため危機感が薄れていたのだろう」(経営コンサルタント小宮一慶氏) 
・これまで安定した優良経営が続いていたので、銀行からの貸し付けも少なかった。最も多いメインバンクの三井住友銀行で約130億円。銀行側も大きな貸し付けがあれば、一緒になって本気で再建策を練るだろうが、この程度の額なら、最悪ドブに捨ててもしかたないくらいにしか考えていない。 主要行は連鎖倒産を防ぐための特別融資枠にも応じる予定だが、タカタを本気で再建できるとは考えていないだろう。
・経済ジャーナリストの町田徹氏が語る。 「ホンダとタカタはもともと一蓮托生でしたが、リコール問題が拡大するなか、あまりに危機感の薄いタカタに業を煮やしたホンダが'15年11月に他社のエアバッグを採用することを発表し、完全にタカタと決別しました。
・自動車メーカーは消費者との大きな接点を持っているので早めに率先してリコールに対応しなければいけないし、実際に対応してきた。しかし、タカタは自動車メーカーのエアバッグの設置場所が悪かったと主張するばかりで、なかなか責任を取ろうとしなかった。 自動車メーカーに提供する試験データを隠蔽したことで、タカタの社員3人が訴えられたこともありました。自分たちの隠蔽は棚に上げて、配置レイアウトの問題だと言っていたのですから、自動車メーカーが頭に来るのもわかります」
▽実権を握るゴッドマザー
・タカタの危機対応が遅れたのは、部品メーカー独特の企業文化も根底にある。これまではリコール問題があっても、自動車メーカーが矢面に立つことが多かった。だから部品メーカーは、あえてメディアに出る必要もなかったし、広報戦略などほとんどないに等しかったのだ。 「部品メーカーの社長がメディアにしゃしゃり出てきて、悪目立ちすると自動車メーカーににらまれる。『そんなに景気がいいことを言うなら、納入価格をもっと下げられるだろう』と脅されかねないから黙っているんです。
・高田会長が表に出てこないのは、『良いときに出ないなら、悪いときにも出なくていい』という意識なのでしょう」(大手自動車メーカー下請け社員) たとえば、トヨタは'09年に大規模リコールがあり、全米でバッシングの嵐が吹き荒れたが、米議会での公聴会に豊田章男社長が出席し、しっかりした英語で質疑応答を行った。対してタカタの場合は公聴会に高田会長は出席せず、代わりに品質管理の担当者を出した。 「技術的な質問をされたら答えに窮するという理由もあったかもしれませんが、こういうときはトップが出ていくのが当然のこと。
・同族経営の会社には往々にしてこういうことがあります。私がかつて社長を務めたペンタックスも同族企業だったが、いいときも悪いときも創業家が表に出ることを好まなかった。創業家は江戸時代の大名と同じで、次世代に引き継ぐことが最大の使命なので、表に出てもなんの得にもならないと考える人が多いのです」(前出の浦野氏)
・以前タカタに勤めたことのあるバリエント・マーケット・リサーチのCEOスコット・アップハム氏が高田会長のことを語る。 「私は20年ほど前の彼のことを知っています。頭はいいのですが、引っ込み思案で物静かなパソコンオタクでした。タカタのような危機に陥った会社の経営には、向いていないタイプではないでしょうか。一方、会長の母親である暁子氏は非常に実務能力の高い人です」 暁子氏は表向きは直接経営に関与していないことになっているが、隠然たる影響力を持っている。今年5月には日経新聞のインタビューにも答えているから驚きだ。
・「なぜ息子の重久氏でなく母の暁子氏が答えるのか、理解に苦しみます。リコール拡大が止まらなかった理由を問われ、『クルマの中に組み込まれる安全部品メーカーとしての限界もあり、問題が起きた時に自主的に動き、自動者メーカーともっと共同で取り組むべきだったと反省しています』と、あたかも自動車メーカーが問題解決に協力してくれなかったような口ぶりでした」(全国紙経済部デスク)
・法的整理ということになれば、タカタの株は紙切れになる。保身に走るあまり、表舞台に出て頭を下げることを嫌った創業家の人間が、再び経営の手綱を握ることはないだろう。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52158

第三に、経済ジャーナリストの町田 徹氏が7月4日付け現代ビジネスに寄稿した「破綻したタカタを最後まで追い詰める日本自動車業界の「いじめ体質」 問題はまだ終わっていない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽負債総額がいまだに見えてこない
・自動車部品大手のタカタが、エアバッグの異常破裂問題に端を発した経営危機に沈んだ。6月26日に、東京地裁に民事再生法の適用を申請、これを受理された。 タカタは今後、中国系の米自動車部品会社キー・セイフティー・システムズ(KSS)の傘下に入り、もう一つの収益の柱であるシートベルトなどを中心に、再建をめざすという。
・タカタ問題では、新聞各紙が報じている通り、早くから同社製のエアバッグに欠陥製品疑惑が浮上していたにもかかわらず、米政府やマスコミへの対応の遅さや拙さばかりが目立った。こうした対応が、同社の苦境を増幅した感は拭えない。 また、行政や自動車メーカーが依然としてエアバックの経年劣化問題に手をこまねいており、消費者のための部品の定期交換制度がいまだに確立されていないことも大きな問題だ。安全確保の視点が抜け落ちている。
・加えて、民事再生法に基づく再建策づくりが本格化する中で、筆者が注目しているのが、負債総額をめぐるマスコミの下馬評と、タカタ自身の認識のあまりにも大きなギャップだ。 負債総額が1兆円を超えてわが国の製造業者として過去最大の倒産劇になるというマスコミ報道と、同社自身が26日に発表した今年3月末の負債総額(約3800億円)を単純に比べても、実に3倍近い開きが存在する。この大きな格差にこそ、タカタの直面した自動車業界の闇の深さが潜んでいるのではないだろうか。
▽再発防止が進まなかった理由
・2016年版の会社案内によると、タカタは1933年、滋賀県で織物製造業者として創業した。 自動車分野では、1960年に2点式のシートベルトの製造・販売を、1980年に世界初の運転席用のエアバックの量産を開始。最近までタカタのエアバッグの世界シェアは約2割を保ち、世界最大手スウェーデン・オートリブ社に次ぐ2位につけていた。2016年3月末現在で、世界21カ国に57の生産拠点を有し、従業員数は約5万人に達していた。
・エアバッグの欠陥が原因で最初に死亡事故が起きたとされたのは、2009年5月のことだ。米オクラホマ州で、衝突事故の際にインフレーター(ガス発生装置)が異常爆発。飛散した金属片が、当時18歳の女性の頸(けい)動脈を切断、命を奪った。2016年2月2日付のロイター通信によると、米国を中心に死者が少なくとも16人、負傷者が150人以上に達したという。
・最初の悲劇から7年ものあいだ、再発防止策の導入が進まなかったのは許しがたいことだ。しかし、そこにそれなりの事情や原因が存在するのも事実だ。 第一は、最初の死亡事故が、何かあるとすぐ日本車バッシングに火がつく米国で起きたことだ。 米国のメディアは、タカタ製エアバッグを「殺人エアバッグ」とセンセーショナルに報じた。米当局は政治的な思惑から、原因が特定できない段階で、部品のサプライヤーに過ぎないタカタにリコール実施を強要して、問題を複雑にした。本来なら前面に立つべき日本車メーカーが尻込みしてしまい、タカタ自身も機動的に効果的な対応策を打ち出せなかった。
・第二に、最初の死亡事故以前にも、リコール騒ぎがあったことが影を落とした。 タカタは当初、不具合を主に自動車メーカーの責任とし、メーカーはリコールを進めた。ところが、その後リコール対象以外の車種でも、死亡事故を含む事故が急増した。原因究明のために不可欠だったとはいえ、エアバッグ問題でリコールをくり返す事態に追い込まれたことが、自動車メーカーにとって不本意な事態でなかったはずがない。
・第三に、タカタが調査を委託したドイツの研究機関が、タカタの製造管理ミスや火薬の経年劣化だけでなく、エアコンの傍にエアバッグを置くという自動車メーカーの車両設計ミスにも異常爆発の原因の一端がある、と指摘したことも無視できない。自動車メーカーとタカタのあいだで深まっていた亀裂を決定的なものにする要因になったからだ。
▽事故のリスクは消えていない
・当初、車検制度のない米国とは違い、日本では偶数回の車検時などに定期的にエアバッグの火薬を交換する仕組みをつくることは容易とみられていた。 だが、自動車メーカーとタカタの不協和音、さらには火中の栗を拾いたがらない国土交通省の逃げの姿勢が仇となり、こうした安全対策はいまなお整備されていない。
・基本的には、火薬の経年劣化についてきちんと公表し、消耗部品として、消費者のコストで定期交換する制度を整えればよいはずだ。しかし、すでに販売してしまったエアバッグの改修費用を、メーカーとタカタがどう分担するかという問題が背景にあった。 ここで筆者が指摘しておきたいのは、現行のエアバッグは、タカタ製に限らず、すべての製品に火薬が使われており、すべての火薬が経年劣化するという問題だ。およそ6年で定期交換する必要がある。つまり、いざというとき、エアバッグが安全かつ正常に膨らまないリスクは依然として存在しているのである。
・このことは、2015年5月12日公開の記事『タカタ製だけじゃない。経年劣化ですべてのエアバッグが危ない!? 』(※閲覧にはプレミアム会員登録が必要です)にも書いたので、興味のある読者は一読してほしい。
・上記に加えて、創業家出身の高田重久会長兼社長が、なかなか公式の記者会見の場で責任の所在を明確にしようとしなかったことが、社会的なタカタ不信を掻き立てたことも見逃せない。 こうしたなかで、自動車メーカーからの受注激減と、リコール関連費用の増大によって、タカタの屋台骨は音を立てて崩れ落ちた。2017年3月期の連結最終損益は、マイナス795億円と3期連続の赤字に沈んだ。
▽新聞は負債総額を「1兆円」と
・先週、タカタ本体と米子会社TKホールディングスを含むグループ15社が、内外で法的整理を申請した。  タカタは、新旧会社分離を行ったうえで、債務整理を行うことになった。過去に販売したエアバッグのリコール対応を行う部門を旧会社に残し、新会社は中国・寧波均勝電子傘下の米KSSに譲渡。同社の傘下で再建を目指す。また、再生計画策定中のつなぎ資金として、三井住友銀行が250億円の融資枠を設定したと発表した。
・新聞各紙は競うかのように、タカタの負債総額は連結ベースで1兆円を超える見通しと報じている。この数字は、昨年破たんしたパナソニックプラズマディスプレイ(負債総額5000億円)や、2012年に破たんしたエルピーダメモリ(同4480億円)を上回って製造業では最大の規模だ。
・遅ればせながら、高田会長兼社長が6月26日の記者会見に出席し、再生計画の策定にメドがついた段階で身を引く覚悟を表明したことは、評価していいのではないか。 各方面に相応の債権カットを依頼する以上、創業家出身者を含む経営陣が居座るのは論外だ。経営責任をとって退任するのは当然のことだろう。減資により、創業者一族の保有株も償却原資に回す措置をとらないと、債権整理もままならない。
▽タカタの認識と大きくズレている
・ただし、タカタが東京地裁に提出した債権者リストを見ると、今後の再生計画づくりは容易でないことが予見される。 リストによると、タカタが現時点で認識している債権額は1412億円(債権者数767社)と、前述の3月末残高(約3800億円)を大きく下回っている。 タカタ代理人の小林信明弁護士は6月26日の記者会見で、最終的な負債総額について、「概数としても民事再生手続きのなかで決まっていくので、認識していない」「リコールに基づく負債がどれくらいあるかなかなかわからない」「自動車メーカーと協議してどちらの責任でどれくらいになるかまとまっていない」としている(日経QUICKニュース)が、下馬評の1兆円との開きは歴然だ。
・ちなみに、トヨタ自動車・ホンダ・日産自動車の自動車大手各社は、タカタに対する貸倒引当金をすでに計上済みで、「今後の業績への影響は軽微だ」とコメントしている。 ただし、トヨタがタカタに対する債権額を5700億円としているのに対し、タカタはトヨタの債権額をわずか266億2000万円と見積もるなど、両者の見解には大きな開きがある。
・いったい、なぜ、これほどの開きが生じるのだろうか。 銀行筋の見立ては、「自動車メーカー側にタカタの責任の所在がなお不明確という意識から、どうせ破たんするのならば、タカタにできるだけ多く負債を抱えて破たんしてほしいという思惑が働き、債権額の見積もりが適正でなかった可能性がある」というものだ。
・そこにあるのは、債権カットの分担額を確定することの難しさを予感させる意見対立だけではない。1歩間違えば、日本の自動車業界で完成車メーカーによる”下請けいじめ”が横行していることを、満天下に知らしめることになりかねない“爆弾”が存在しているのである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52193

第四に、マネックス証券 執行役員の大槻 奈那氏が7月17日付け東洋経済オンラインに寄稿した「タカタ倒産劇で透けて見える「銀行側の事情」 変わるメインバンクと企業の距離感」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・6月26日、エアバッグのタカタが1.5兆円もの負債総額を抱え民事再生法の適用を申請した。製造企業としては戦後最大の倒産である。ということは、言い方を変えれば、この規模の製造業はこれまで法的整理を回避し、何らかの形で生き延びてきたということだ。タカタはなぜ法的整理を余儀なくされたのか。
▽メインバンクと大企業の蜜月時代
・かつて日本で問題企業処理といえば「私的整理」が一般的だった。私的整理とは、取引銀行たちが貸し出しなどの債権を放棄する比率などを話し合い、企業の再生を図るものだ。東芝は今のところこのルートに乗っている。 私的整理の場合、「法的整理」、すなわち「倒産」ではないので、弁護士などの費用が少なく、多くの場合上場も維持できる。社債も通常はデフォルト(債務不履行)とは見なされない。
・反面、私的整理の弱点は、裁判所という第三者が介入しないため、取引銀行に不満が出やすいことだ。もめ始めると、時として収拾がつかなくなる。このため、私的整理では、結局メインバンクが負担額を大きくすることで、ほかの取引銀行をなだめるのが一般的だ。
・私的整理の最初の事例は1995年に経営難に陥った石原建設だった。このケースでは、主力の三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)らが貸出債権を全額放棄して決着した。交渉開始当初、三菱信託銀行は、全取引銀行に同等の負担を求めたが、一部の銀行は納得しなかった。結局、中には金利だけ減免し元本はまるまる回収した銀行もあった。
・2000年代に入り、企業業績の低迷とともに私的整理が活発化した。この頃、「民事再生法」も施行され、以前よりは簡単に法的整理ができるようになったが、やはり、大企業については私的整理が主流だった。 この頃から製造業のケースも増加した。たとえば、集団食中毒事件で2002年に経営難に陥った雪印乳業。メインバンクの農林中央金庫は、雪印の借入総額に占める融資シェアは35%にすぎなかったが、債権放棄額全体の77%を負担した。
・同じく2002年に私的整理を行ったケンウッドでは、メインバンクのあさひ銀行 (現りそな銀行)の融資シェアは借り入れ全体の43%程度を占めるにすぎなかった。しかし結局あさひ銀行は、250億円の債権放棄額の全額を負担した。按分負担なら、250億円のうちせいぜい100億円の負担で済むはずだった。
・ちなみに、米国にも司法を介入させずM&AやDES(債務の株式化)のみで再生する手法は存在する。しかし、米国では倒産のイメージが日本ほど悪くないため、再生型倒産のチャプター11が選ばれやすい。さらに、日本と異なり、裁判所に代わって銀行間の調整を図るメインバンクが存在しないことも大きな違いだ 。
▽タカタもかつては「日の丸企業」だった
・このように私的整理は、メインバンクが先頭に立って、銀行間の利害を調整することが前提になる。相当な犠牲を強いられるため、メインだからといってどの企業でも支援するわけではない。 では銀行は、どんなときに、どんな企業なら支援するのか。たとえば筆者が格付け会社にいた頃、企業の信用格付けには、メインバンクによる支援の可能性も織り込まれていた。
・その判断基準には、その企業の市場地位、技術力の高さ、倒産した場合の社会的影響度、銀行との株式持ち合いや人的つながりの有無、メインバンクの体力などが含まれていた。この基準でいけば、日本の製造企業は支援を受けやすい。現在東芝は、銀行から手厚い支援を受けて存続しているが、この辺りの条件を見ればそれも納得できる。
・タカタのケースはどうか。エアバッグやシートベルトにおけるタカタの世界市場シェアは20%と高い。570社とされる下請け企業の数やそこで働く60万人の従業員などから倒産の影響も大きい。これらの点を考えれば、十分銀行に支援されうる企業だろう。 実際、タカタも1995年に苦境に立たされたときには手厚い支援を受けている。米国においてシートベルトの事故で訴追を受け、対象は800万台と過去最大級のリコール問題に発展した。
・このときは、取引銀行はそれまでどおりの融資を継続していたとみられる。当時日本の運輸省(現国土交通省)のある官僚が、タカタのシートベルトの事故について、「米国では車内を汚くするから壊れるのだ」という趣旨の発言をして、物議を醸した 。銀行も政府も、そこまでタカタを擁護した。 
・しかし今回は、結局民事再生が選択された。当初は、私的整理か、との報道も出ており、経緯は見えにくい。しかし近年、タカタに限らず、メインバンクの企業支援の姿勢に変化が出始めているのも事実だ。
▽企業は「再生」しなくなっている
・全国の裁判所に持ち込まれる広義の「倒産」案件には、今回のタカタのように、一部の借り入れをチャラにして再生を図る「民事再生・会社更生」と、完全に経営をギブアップする「破産・清算」の2種類がある。 このうち、「再生型」案件の比率は、近年減少傾向にある。2001年のピークで12%程度だった再生型倒産の比率は、2014年には2%程度にまで減少している。 そして、「再生型」を選んで裁判所に駆け込んだ企業でも、その後活動をやめた企業が6割以上を占める。経営難の企業は「再生」しなくなっているのだ。
・その背景には、いくつかの要因があると考えられる。 第一に、銀行の体制の変化がある。最近は、コーポレートガバナンスの厳格化で、銀行員が企業に天下りするようなウェットな人間関係は減少し、株式の持ち合いも大きく減っている。株主の企業統治への見方も厳しくなっているので、銀行も、経済合理性のない、問題の先送り的な救済はできない。また、かつては銀行自体の体力が脆弱だったため、損失の発生を先送りするために私的整理を行うケースも見られた。しかし、今ではドラスチックな処理を行う体力もある。
▽「再生」という名の「延命」は割に合わない
・第二に、マイナス金利の影響がある。平均貸出金利が年3%を超えていた1990年代半ばなら、支援して延命させれば、金利収入で元本を回収できる可能性もある。たとえば、債権を3割放棄しても、4%の金利が取れれば、7年半で回収できる。ところが、今や平均貸出金利は1%程度である。債権を3割放棄してしまったら元本回収に30年かかる計算だ。まして、当局からは、事業性を丁寧に評価し、新規貸し出しを拡大するよう迫られる。時として新規融資の何倍もの時間がかかる企業再生は、割に合わない。
・第三に、主に中小企業においてだが、信用保証協会案件の問題がある。一般に、銀行は公的機関である信用保証協会からの保証付きで貸し出しを行えば、企業が倒産しても貸出元本の毀損は2割で済む。ならば、あれこれと手間をかけて再生プランを練るよりも、企業が何とか金利だけ支払えるうちは金利をもらっておいて、いよいよとなったら信用保証協会に補てんしてもらうのが合理的とも考えられる。
・このような問題を背景に、今年2月に信用保証制度の改革が行われた。銀行は、企業の再生を後押しすることで協会とリスクシェアを行うよう求められる。ただし、保証割合の引き下げが見送られるなど、抜本的な変革とはいえない。今後は、企業の経営改善に協力するよう銀行に促す方針だが、具体策はまだ見えない。  さらに、メインバンク以外の第三者から再生資金を得られるDIPファイナンス(事業再生支援融資)などの新たな貸し出しも行われるようになっている。米国では一般的な手法だが、かつて日本では主に政府系金融機関が行ってきた。まだ主役になるには程遠いが、最近では一部の民間金融機関も手掛けるようになるなど若干の広がりも見える。
・銀行が安易に企業を破産に追いやるようでは、意欲的にリスクを取る企業は育たないだろう。しかし一方で、商品や技術が時代遅れになっているケースで延命させても、企業の新陳代謝を遅らせてしまう。銀行は、企業の経営が比較的良好な今のうちに、企業との関係をあらためて整理しておくべきかもしれない。
http://toyokeizai.net/articles/-/180556

第一の記事で、 『タカタがエアバッグのテストで、社員が欠陥の兆候を発見したのは2004年のことである。テストに立ち会った社員2人は、テスト最中にインフレーターに亀裂が入ることを発見。上司に報告したが、報告を受けた上司はテスト結果を破棄するように命じた。この隠蔽工作がのちに、内部告発としてニューヨーク・タイムズに告げられるのだ』、 『「家族経営の弊害が悪い形で出た。日本的な、事なかれ主義で済ます空気が社内に充満していたのではないか」 「すべてを欧米流の合理主義にする必要はないし、日本的なものを貫くことも大切だが、モラルに反することをすると、どの世界でも最後には痛い目に遭う」』、などの指摘はタカタを馬鹿な対応をした例外としてみるのではなく、コンプライアンスの重要性を改めて示した例として考えるべきだろう。
第二の記事では、 『最も多いメインバンクの三井住友銀行で約130億円』、という少なさでは、メインバンクからのガバナンスが働く余地もなく、このオーナー型企業には誰も「鈴」をつけられなかったことになる。
第三の記事で、 『負債総額が1兆円を超えてわが国の製造業者として過去最大の倒産劇になるというマスコミ報道と、同社自身が26日に発表した今年3月末の負債総額(約3800億円)を単純に比べても、実に3倍近い開きが存在する』、というのは立場の違いがあるにしても、解せない開きだ。タカタの監査法人は、条件付きで約3800億円としたのだろうが、これでは財務諸表の信頼性とはほど遠い。さらに、『リストによると、タカタが現時点で認識している債権額は1412億円(債権者数767社)と、前述の3月末残高(約3800億円)を大きく下回っている』、とのことらしいが、最終的な決着はどうなるのだろう。 『現行のエアバッグは、タカタ製に限らず、すべての製品に火薬が使われており、すべての火薬が経年劣化するという問題だ。およそ6年で定期交換する必要がある』、との指摘は確かにあり得る問題だ。 『日本の自動車業界で完成車メーカーによる”下請けいじめ”が横行していることを、満天下に知らしめることになりかねない“爆弾”が存在』、との指摘は私の理解力を超えているようだ。
第四の記事で、『企業は「再生」しなくなっている』、 『「再生」という名の「延命」は割に合わない』、などの指摘はその通りだが、経営陣が希望した私的整理が使えなかったのは、やはりリコール費用のメーカーとの分担、被害者からの損害賠償請求、などを切り離すためだったと単純に考えるべきだろう。
タグ:東洋経済オンライン JBPRESS 現代ビジネス タカタのリコール問題 堀田 佳男 町田 徹 大槻 奈那 (その3)(臭い物に蓋をする企業文化は米敏腕弁護士の格好のターゲット、タカタはどこで何を間違えたのか 銀行はこうして創業家を見捨てた、破綻したタカタを最後まで追い詰める日本自動車業界の「いじめ体質」、タカタ倒産劇で透けて見える「銀行側の事情」 ) タカタ倒産、日本企業はもう米国で事業できなくなる?臭い物に蓋をする企業文化は米敏腕弁護士の格好のターゲット 3年前から倒産は読めていた 2014年12月時点で、タカタは全米規模でリコールを実施していなかったのだ。「全米でリコールするデータの裏づけがない」というのが会社側の言い分だった。 この動きの遅さが米国の消費者を苛立たせ、弁護士の活動をさらに加速させた 欠陥エアバッグの隠蔽工作を認めて、刑事事件で10億ドル(約1110億円)の賠償金を支払うことに合意したのは今年1月 タカタがエアバッグのテストで、社員が欠陥の兆候を発見したのは2004年のことである。テストに立ち会った社員2人は、テスト最中にインフレーターに亀裂が入ることを発見。上司に報告したが、報告を受けた上司はテスト結果を破棄するように命じた。この隠蔽工作がのちに、内部告発としてニューヨーク・タイムズに告げられるのだ タカタは長い間、隠蔽を否定し、高田重久会長兼最高経営責任者(CEO)も表舞台に姿を現さなかった。今年になって米司法省から鉄槌をくらって、ようやく隠蔽を認めるという体たらくである 家族経営の弊害が悪い形で出た。日本的な、事なかれ主義で済ます空気が社内に充満していたのではないか」 「すべてを欧米流の合理主義にする必要はないし、日本的なものを貫くことも大切だが、モラルに反することをすると、どの世界でも最後には痛い目に遭う 戦後最大の「1兆円倒産」タカタはどこで何を間違えたのか 銀行はこうして創業家を見捨てた 最後まで抵抗した高田一族 一族はぎりぎりまで私的整理を望み、民事再生法適用による再建に抵抗していた 理が長引いて余計なとばっちりは受けたくない自動車メーカー、再建のスポンサー候補、そして監督官庁である国交省などの思惑が一致し、タカタの外堀を埋めるためにリークしたというのが市場関係者の見立てです エアバッグで約2割という世界のトップシェアを誇る超優良企業だった '04年に、アメリカ本社は問題があることを把握していたことがわかっています。アラバマでエアバッグの破裂事故が報告された後、ミシガンにある米国本社で試験を行っていたのです。この段階で問題の火薬を使った製品の製造をストップするべきでした 謝罪を嫌がるトップ タカタの対応は後手後手に回る稚拙なものだった ・ホンダをはじめとしたメーカーは、創業家によるガバナンスを問題視し、改革の提言を行ってきましたが、タカタに一切変化の兆しが見られないので見切りをつけざるをえなかったのです」 そもそもタカタは、エアバッグ問題が発覚してもかなり強気だった。それどころか、 「タカタが破綻したら、搭載するエアバッグはどこが作るんですか」と自動車メーカーに対して支援を要請していたともいわれる 最も多いメインバンクの三井住友銀行で約130億円。銀行側も大きな貸し付けがあれば、一緒になって本気で再建策を練るだろうが、この程度の額なら、最悪ドブに捨ててもしかたないくらいにしか考えていない トヨタは'09年に大規模リコールがあり、全米でバッシングの嵐が吹き荒れたが、米議会での公聴会に豊田章男社長が出席し、しっかりした英語で質疑応答を行った タカタの場合は公聴会に高田会長は出席せず、代わりに品質管理の担当者を出した。 「技術的な質問をされたら答えに窮するという理由もあったかもしれませんが、こういうときはトップが出ていくのが当然のこと 破綻したタカタを最後まで追い詰める日本自動車業界の「いじめ体質」 問題はまだ終わっていない 負債総額がいまだに見えてこない 負債総額が1兆円を超えてわが国の製造業者として過去最大の倒産劇になるというマスコミ報道と、同社自身が26日に発表した今年3月末の負債総額(約3800億円)を単純に比べても、実に3倍近い開きが存在する 最初の悲劇から7年ものあいだ、再発防止策の導入が進まなかったのは許しがたいことだ 現行のエアバッグは、タカタ製に限らず、すべての製品に火薬が使われており、すべての火薬が経年劣化するという問題だ。およそ6年で定期交換する必要がある リストによると、タカタが現時点で認識している債権額は1412億円(債権者数767社)と、前述の3月末残高(約3800億円)を大きく下回っている タカタ倒産劇で透けて見える「銀行側の事情」 変わるメインバンクと企業の距離感 「私的整理」 、「法的整理」、すなわち「倒産」ではないので、弁護士などの費用が少なく、多くの場合上場も維持できる。社債も通常はデフォルト(債務不履行)とは見なされない 私的整理の弱点は、裁判所という第三者が介入しないため、取引銀行に不満が出やすいことだ 私的整理の最初の事例は1995年に経営難に陥った石原建設 企業は「再生」しなくなっている 、「再生型」案件の比率は、近年減少傾向にある。2001年のピークで12%程度だった再生型倒産の比率は、2014年には2%程度にまで減少している。 そして、「再生型」を選んで裁判所に駆け込んだ企業でも、その後活動をやめた企業が6割以上を占める。経営難の企業は「再生」しなくなっているのだ 「再生」という名の「延命」は割に合わない
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ネットビジネス(その2)(「アマゾン1円詐欺」の巧妙で抜け目ない実態、ウォルマート、アマゾン対抗の秘策、アマゾンがリアル小売りへ進撃する真の意図) [企業経営]

ネットビジネスについては、昨年4月19日に取上げた。今日は、(その2)(「アマゾン1円詐欺」の巧妙で抜け目ない実態、ウォルマート、アマゾン対抗の秘策、アマゾンがリアル小売りへ進撃する真の意図) である。

先ずは、5月4日付け東洋経済オンライン「「アマゾン1円詐欺」の巧妙で抜け目ない実態 購入者の個人情報と嗜好が盗まれている」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・アマゾンの「1円出品」「激安出品」が実は詐欺なのかもしれない――。そんな話を聞いた読者は「そもそも1円で出品されている商品があるのか」と驚いたかもしれない。 「アマゾン1円詐欺」とも呼ばれる、傍目には摩訶不思議な、しかしその背景を探ってみると実に巧妙な、電子商取引サイトの仕組みを活用した新種の詐欺とはどのようなものなのだろうか。
▽販売業者はアマゾンと「セラー」に分かれる
・アマゾンを普段からお使いの方はご存じだろうが、アマゾンを通じて商品を販売している業者は大きく2つに分けることができる。ひとつはアマゾン自身のリテール部門で、「この商品は、Amazon.co.jp が販売、発送します」と書かれている場合、それはアマゾンのリテール部門が仕入れ、販売している商品である。
・それ以外は“セラー”と呼ばれ、アマゾンに販売業者として登録し、アマゾンの決済システムを利用して商品を販売する「アマゾンマーケットプレイス」という仕組みを用いる。リテールとセラーは競合する間柄と言える。セラーが販売する商品でも「お急ぎ便」が無料で使えるなど「アマゾンプライム」に対応しているものもある。
・もっとも、アマゾンを頻繁に利用している方ならば、ひとことでセラーと言っても、製造メーカーや輸入代理店が自社管理のECサイト代わりにアマゾンのシステムを活用しているケースもあれば、セレクトショップのネット版のような会社が、アマゾンのシステムを間借りして営業するケースなどさまざまであることは、なんとなく感じているのではないだろうか。 そうした中に、本を1円で販売している店が多くあることにお気づきの方もいるだろう。ただし、1円で古本を販売している業者は以前から存在しており、脱法性があるわけではない。
・彼らは書籍をメール便(送料100~160円程度)で安価に配送できることに対し、アマゾンの書籍配送料が257円固定であることなどを活用し、アマゾンの販売手数料を差し引いても残る差額で利益を上げているのだ。
・しかし、今回の場合は話が異なる。在庫管理をアマゾンが行っていない場合、発送先をセラーに通知する必要がある。つまり、購入者の個人情報がセラーに渡されることになるわけで、「アマゾン1円詐欺」の背景には個人情報収集がある。 実際にどこまで紐付けているかはわからないが、売買契約が成立した相手はどの商品を購入したかも知っているわけで、「どのような商品をほしがっている人物か」といった嗜好属性と個人情報のセットを入手できる。 ここでは「アマゾン1円詐欺」と書いているが、実際には必ずしも1円で出品されているわけではない。圧倒的に低価格で、アマゾンのランキング上位に位置する商品で行われることが多い。
▽あの手この手で「到着遅れ」を正当化
・安さで釣って購入契約をさせるものの発送する商品は存在しないため、アマゾンから実際に入金があるまでは、あの手この手で商品到着の遅れを正当化するメールを送り続ける。たとえば海外発送であることを理由に“遅くなる”と通知しておき、ギリギリのタイミングで今度は荷物の追跡番号を送って安心させる(実際には荷物は送っておらず、追跡番号もデタラメ)。
・業者はアマゾンからの入金を確認した段階でセラー契約を解約してしまう。実に腹立たしいと感じるかもしれないが、消費者に対してはアマゾンが返金を保証するため被害は及ばない。 しかし、こうしたことを繰り返していれば、アマゾン側も対策を練ってくる。そこで詐欺業者は上記の取引で得た、善意の第三者の個人情報を用いて再度セラー登録を行う。こうすることで、(おそらくは海外に在住する)詐欺業者は、実際に日本に在住している人の個人情報を用いて詐欺を働けるのだ。そして、そこで新しい顧客の情報を得たならば、その情報を用いて新たなセラーとして登録。これを繰り返すことで被害を拡大する。
・アマゾンマーケットプレイスのセラーからの購入においては、セラーの評価システムもあるため、極端に悪い点数がついているセラーから購入しなければよいと思うかもしれない。しかし、彼らはセラー登録を何度も繰り返し、途中までは正当な理由を振りかざして問題発覚の先延ばしをしている。詐欺業者であることが明らかになったときには、別のIDに乗り換える頃合いだ。
・悪質業者の狙いは個人情報の収集ではないかと書いた。ではまったく利益が得られないかと言えば、そうではない。たとえ1円、あるいは対象商品の標準価格として圧倒的に安価であったとしても、そもそも発送する商品がないのだから、振り込まれた売り上げはまるまる利益になる。
・ここで問題なのは、詐欺に遭った購入者の支払分は返金が保証されるものの、個人情報の流出と、それに伴う被害(自分の個人情報を詐欺業者のデータとして使われるなど)に関してはまったくフォローされていないことだ。 もちろん、返金を負担し消費者の損害を相殺するアマゾンも被害者としての側面がある。悪質業者が入っていることによって得られるメリットなど何ひとつない。
・しかし、アマゾンにも加害者としての側面はある。アマゾンのシステムを用いて商品を購入した結果、個人情報が漏れたり、詐欺の片棒を担いだような形になってしまっている利用者からすれば、「アマゾンの対策が行き届いていないからだ」と矛先を向けたくなるだろう。 一方、利用者の自己責任という言い方もできる。販売者のプロフィールや評判をきちんと確認せずに購入手続きを行った利用者にも責任の一端はあるというわけだ。確かに「1円」などのありえない価格を信じた結果による被害と考えれば、そうした意見にも説得力はある。しかし、中古書籍などでは1円販売が現実に存在しているため「ついつい」買ってしまう人が後を絶たないのかもしれない。
▽極端に低価格な商品は警戒すべき
・こうした問題を解決するためなのか、アマゾンはマーケットプレイスへのセラー登録に関して審査のハードルを上げているようだ。それは今回のような詐欺案件が横行しているのに加え、コピー商品をあたかもオリジナル商品のように販売する業者もいるからだ。
・利用者側としては、今回紹介したような業者がいることを念頭に、極端に低価格な商品に対しては「ありえない価格だからおかしい」と警戒するほかない。安価な商品には理由があるはずだ。その理由が明らかにされていない場合、もしくは納得できない場合には手を出すべきではない。
・このような詐欺業者が今後も横行し続ければ、プラットフォーマーとしてのアマゾンに疑問符を投げかけざるをえない。現在は盤石の体制を誇るアマゾンだが、よりよい解を見つけられないようであれば、ユーザーはもちろん、アマゾンマーケットプレイスに参加する企業からの信頼を失うことになる。
http://toyokeizai.net/articles/-/170459

次に、6月9日付け日経ビジネスオンライン「ウォルマート、アマゾン対抗の秘策 ネット通販ベンチャー出身の部門トップが仕掛けるラストバトル」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米アマゾン・ドット・コムの攻勢にさらされている米ウォルマート・ストアーズ。ここに来て、ようやく反転攻勢に向けた体制を整えつつあるようだ。 「われわれの会社は正しい方向に進んでいる」 6月2日、米南部アーカンソー州フェイエットビルで開催された年次株主総会の冒頭、ウォルマートの取締役会長を務めるグレッグ・ペナーは力強く宣言した。同社の株主総会は世界28カ国、1万5000人の従業員が集まる年に一度の一大イベントである。 ペナーが拳を握りしめたのも理解できる。
▽eコマースの売上高は63%増に
・2017年度の連結売上高は4858億ドル(約53兆4000億円)と前年比で0.8%増加した。米国の既存店売上高も、直近の2018年第1四半期を含め11四半期連続の前年同期比プラスだ。何よりeコマースの売上高が直近の四半期で前年同期比63%と大幅な伸びを見せた。 アマゾンに比べてウォルマートのeコマースは伸びが見劣りしていただけに、60%超という成長は経営陣を安堵させたに違いない。「ウォルマートのeコマースは本当によくなっている」。サンフォード・C・バーンスタインのシニアアナリスト、ブランドン・フレッチャーは評価する。
・ここ数年、アマゾンとウォルマートについてはeコマースの王者と攻勢にさらされるリアルの巨人という構図で語られることが増えていた。 アマゾンは従来の書籍や雑貨、家電などから食品や飲料、アパレルなど全方位で戦線を拡大している。米国の小売売上高に占めるeコマースの比率は8.5%に過ぎず拡大余地は大きい。その中でも、今後の伸びしろが期待されているのはウォルマートのような大手スーパーが強みとしている食品や飲料だ。
・売上高で比較すればアマゾンはウォルマートの3割弱だが、時価総額で大きく水をあけているのは、今後の伸びが期待されるeコマースの市場拡大の中で恩恵を最も受けると見られているためだ。 eコマースの大幅な改善――。それは昨年8月に買収したネット通販ベンチャー、ジェット・ドット・コムと、同社のCEO(最高経営責任者)から米国eコマース部門の会長兼CEOに横滑りしたマーク・ロアの存在が大きい。
・「高すぎる」という声が市場から上がったように、ジェットの買収金額は33億ドル(約3600億円)と創業1年あまりの新興ベンチャーに投じる資金としては桁外れに高い。しかも、スタートアップのCEOにウォルマートという巨大企業のeコマース事業を任せるのも思い切った決断だ。今回の買収には小売業界やウォール街からは驚きの声が上がったが、それだけの高値を払っても、ジェットのテクノロジーとロアの才能を求めたということだ。 2016年9月以降、eコマースの責任者に就任したロアが進めているのは、テクノロジーを駆使したeコマース版の「エブリデイ・ロー・プライス(EDLP)」の実現である。
▽配送料含め消費者ごとのコストをガラス張りに
・買収前、ジェットが投資家から高く評価されていたのは独自のプライシングシステムを持っていたためだ。「スマート・カート」と呼ばれる仕組みで、商品を買い物かごに入れるたびに、買い物の中身や量、商品が保管されている倉庫、支払い方法などを勘案して合計金額が変わる。 考えてみれば当然だが、同じ配送センターにある商品であれば、同じ箱に詰めて配送できるのでその分配送料は抑えられる。また、支払いをクレジットカードではなくデビットカードにすれば、手数料の分だけ合計金額を引き下げることが可能だ。買収前、ロアは米CNBCで「本当の限界コストを反映させる」と語った。まさに、配送コストなど消費者ごとに異なる商品のコストをガラス張りにしようとする試みである。
・これは「99ドルの年会費で2日以内無料配送」というアプローチを取るアマゾンとは対極に位置している。  アマゾンの場合、プライムメンバーになると消費者は買えば買うほど配送料がお得になる。どれだけ注文しようとも、年会費以上には配送料がかからないからだ。見方を変えれば、年会費というシステムを取ることで、消費者が一つひとつの送料を考える心配をなくしたということでもある。
・物流に占めるコストの70~80%は配送センターから消費者の家までの「ラストマイル」といわれる。その部分のコストを年会費で解決したという点で、アマゾン・プライムはeコマースの分野に革命を起こした。一方でジェットは一つひとつの注文に関わるコストによりこだわり、そのコストを極限まで引き下げる仕組みを作りあげた。だからこそ、業界に衝撃を与えたわけだ。 「価格の透明性」にこだわるジェットの哲学、これはEDLPというウォルマートの哲学に合致する。
・ウォルマートを創業したサム・ウォルトンは経費を極限まで切り詰めることで、他社が採算が取れないと判断した地域に進出した。その後も店舗の大規模化やドミナント戦略、IT(情報技術)を用いたサプライチェーンの効率化などに多額の投資を進め、一つひとつの商品のコストを切り下げた。その結果がEDLPであり、”Saving Money(節約)”という価値の提供である。
▽EDLPをeコマースで実現
・もっとも、店舗に決まった商品を大量に配送するのと不特定多数の個人に異なる商品を配送するのが根本的に異なるように、EDLPをeコマースで実現するには既存のリソースや従来の方法論だけでは限界がある。そこで、似たような哲学とウォルマートにはないテクノロジーを持つジェットの買収に踏み切った。「ロアを引き入れたということは買い物かごを作るということ」。米カンター・リテールのディレクター、ローラ・ケネディはこう指摘する。
・まだジェットのスマート・カートはウォルマートのネット通販サービス「ウォルマート・ドット・コム」に適用されていないが、商品ごとのコストを透明化するというコンセプトは取り入れられている。 例えば、4月に発表したピックアップディスカウントがそうだ。これはオンラインで購入した商品を最寄りの店舗まで取りに行けば、その分をディスカウントするというサービスだ。配送コストのかなりの部分を占めるラストマイルを顧客が代行すれば、その分のコストは大きく下がる。それを消費者に還元していく。
・6月1日には、アーカンソー州やニュージャージー州など3カ所で“Associate Delivery”の実験を始めると発表した。これは店舗で働く従業員に配送させるというアイデアだ。 ウォルマートの従業員は大半がクルマで通勤している。彼らの近所にはウォルマート・ドット・コムのユーザーも多くいる。そこで従業員に専用のアプリを配り、帰宅時にウォルマート・ドット・コムやジェットで購入した消費者の家まで届けてもらえば、ラストマイルのコストが下がるーーと考えたわけだ。
・同社が開発したアプリに従業員の住所を打ち込むと、その帰り道の最も近い配送先が提示される。配送をお願いするのはあくまでも希望者で、デリバリーに対しては配送料を払う。配車サービスを手がけるウーバー・テクノロジーズのようにドライバーと荷物をマッチングさせる方式を採る場合、運転手は配送先に直接向かうが、今回の仕組みは従業員がそもそも帰るところに行く。「これはラストマイルで極めて大きな時間の節約になる」とロアは期待を寄せる。
・ウォルマートはここ数年、店舗や専用拠点でのピックアップサービスの拡充に力を入れてきた。 同社は全米におよそ4500の店舗を持ち、米国の人口の90%が店舗から10マイル(16km)に住んでいる。日本のようにラストマイルの配送網が充実していない米国では、消費者に店舗に取りに来てもらうというアプローチは全米に張り巡らした店舗網を最大限に生かすという意味で理にかなっている。今回、発表した従業員による配送も全米で160万人という人的資産を生かす動きの一環だ。
・ロアがもたらした変化はそれ以外にもある。 アマゾンへの対抗で始めた年会費49ドルのウォルマート版のアマゾン・プライム、シッピングパスは廃止した。その代わりに導入したのは、ジェットで導入していた35ドル以上の購入で2日間の無料配送を提供するプログラムだ。もちろん、年会費は取らない。
▽専門EC相次ぎ買収、商品点数は1000万から5000万に
・1月以降、ウォルマートはオンライン靴販売を手がけるShoebuy、女性向けビンテージ衣料のModCloth、アウトドア専門のMoosejaw、家具のHayneedleといった中小の専門ECサイトを買収した。こういった専門ECを買収し、それぞれの会社のCEOを各カテゴリーのリーダーに据えたのは、貧弱だったウォルマート・ドット・コムの品揃えを強化するためだ。この1年で、eコマースの商品点数は1000万から5000万まで拡大した。
・さらに、「リーダーを変えるということは、他のやり方を許可するという意味もある」とサンフォード・C・バーンスタインのフレッチャーが語るように、ロアの就任後、サイト内の検索機能などこれまで疎かにされてきた機能向上が進められるようになった。システムの安定性を重視して頻繁な変更を嫌うカルチャーも変わり始めた。前年同期比63%という大幅な成長はそういうことの積み重ねだ。 実店舗とeコマースの融合を進め、買い物の際の消費者のストレスを軽減する「シームレス・ショッピング」の取り組みも引き続き進んでいる。
▽決済アプリも普及
・店舗以外のピックアップポイントは昨年末の600カ所から今年の終わりには1000カ所になる見込みだ。レジでの精算の手間を大幅に省く決済アプリ「ウォルマート・ペイ」もクレジットカードやデビットカードに次ぐ支払い手段になっている。ウォルマート・ペイは、買い物の際にレシートのQRコードを携帯のカメラで読み取れば、その場で決済が終了するというアプリである。
・5月には「Easy Reorder」というサービスも始めた。これはピックアップサービスの一種で、購入頻度の高い商品についてアプリ上で再注文すると、店舗で事前に商品を確保してもらえる。ウォルマートのスーパーセンターは巨大なため店内を歩き回るだけでもかなりの時間がかかる。定期的に購入する商品を買い物かごに入れる手間が省ければ、忙しい主婦の時間は大きく節約できる。
・「所有するすべての経営資源を利用して勝つというのがわれわれの計画だ」。ウォルマートCEOのダグ・マクミロンは総会後の質疑応答でこう述べた。実店舗の既存店売上高とeコマースの両方が伸びているということは、ウォルマートが進めるシームレス・ショッピングが奏功しているという証左。ロアというピースを得たことで、ようやく目指すべき方向が固まったように見える。
・裏を返せば、ここで実店舗とeコマースを融合させた新たな成功モデルを作らなければ、グロッサリーなど既存スーパーの領域を侵食し続けるアマゾンとの戦いには勝てないだろう。アマゾンは彼らのやり方でラストマイルの配送を効率化しようとしており、ウォルマートに残された時間は恐らくそれほど多くない。その間にどこまで先に進めるか。最後の戦いが始まろうとしている。(敬称略)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/060700692/?P=1

第三に、6月20日付け東洋経済オンライン「アマゾンがリアル小売りへ進撃する真の意図 ホールフーズ買収は一例にすぎない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米小売り大手のホールフーズ・マーケットを137億ドル(約1.5兆円)で買収――。 6月16日に駆け巡ったアマゾンの発表にアメリカの株式市場は大きく反応した。クローガー、ターゲット、コストコ、ウォルグリーン、CVSヘルス、そしてウォルマート。アマゾンがリアル店舗の領域へ本格的に踏み出したことから、今後アマゾンと競争を強いられることになる小売り関連の銘柄は、買収の発表後に軒並み株価が下落したと報じられている。
▽リアルへの侵食は今に始まったことではない
・アマゾンにとって今回の買収は過去最大の規模となる。それまで最も大きい買収は2014年のゲーム実況配信企業・ツイッチで、金額は9.7億ドル(約1450億円)だった。ホールフーズは1978年にテキサス州オースティンで設立された自然・有機食品専門のスーパーマーケットだ。16年度時点で年間160億ドル(約1.8兆円)の売上高があり、店舗数は米国、カナダ、英国で計460を数える。
・アマゾンがリアルの消費を取り込もうとしているのは今に始まったことではない。先がけは2014年に投入した家庭用の音声認識端末「アマゾン・エコー」だ。「アレクサ」と呼ばれるAI(人工知能)を内蔵し、生活空間の御用聞きとして米国で大ヒットしている。 米国みずほ証券では、2018年にエコーを経由したeコマースの消費額が、エコーの端末販売額を追い抜くと予測する。パソコンやスマートフォンではなくエコーに向けて「アレクサ、~を注文して」と呼び掛ける消費行動が、米国では当たり前のように行われ始めているのだ。ポスト・スマホとして有望視されるこの分野では、グーグルやアップルも巻き返しに動いている。
・リアル店舗の開発にも乗り出している。一つ目は2015年にオープンした専用書店の「アマゾン・ブックス」、二つ目は2016年に存在が明らかになった無人コンビニ「アマゾン・ゴー」だ。アマゾン・ブックスは現在米国に8店舗あり、追加で5店舗のオープンが予定されている。店内にはアマゾンのサイト上でユーザーの評価が高い本を重点的に陳列したり、お急ぎ便や動画視聴の使い放題サービス「アマゾン・プライム」の会員なら安く買える仕組みがあったりするなど「リアルとネットの融合」が巧みに行われている。
・アマゾン・ゴーは現在、シアトル市の本社1階部分のみに存在し、まだアマゾンの社員しか利用できない。ただ、レジを通らずに商品を購入し持ち出せる画期的な仕組みは小売り関係者の間で注目の的となっている。将来的にアマゾン・ゴーの機能が今回買収したホールフーズに導入されることがあるかもしれない。
・またもう一つ、今年に入ってから「アマゾン・フレッシュ・ピックアップ」というドライブスルー型の商品受け取り専用店舗が始まった。 これは日本でも今年4月から始まった生鮮食品の販売・配送サービス「アマゾン・フレッシュ」と連動した店舗だ(ピックアップの展開は現在米国のみ)。利用者はフレッシュで注文した商品を専用店舗で直接受け取ることができる。スーパーマーケットの店内を回遊せずとも事前にオンライン上で注文を済ますことができるため、ユーザーが買い物にかける手間は大幅に減る。これもホールフーズとの将来的な連携が期待される。
・4月下旬に行われた2017年度第1四半期(1~3月期)の決算説明会でアマゾンのブライアン・オルザブスキCFOは「リアル店舗の開発はわれわれにとって顧客にリーチするもう一つの手法だ。リアルの顧客がどう共鳴(resonate)してくれるかをテストしている」と語っている。eコマースで断トツのシェアを誇るアマゾンとはいえ、小売り全体に占めるeコマースの消費額は米国でも10%未満とされている。リアルを取り込むことはまさに必然の流れであり、ホールフーズの買収はその一環に位置付けられる。
▽増築続けるアマゾンのシアトル本社に潜入
・6月24日号の週刊東洋経済では「アマゾン膨張」を特集。アメリカ西海岸の最北部にあるワシントン州シアトルの本社に潜入し、2016年度にグローバルで1360億ドル(約15兆円)の売上高を記録した流通王国の全貌に迫った。広大な本社群周辺の様子からは、世界で膨張を続けるアマゾンのイメージとは別の側面も見えてくる。 シアトルはアマゾン以外にもマイクロソフト、フェイスブックなどの大手IT企業が拠点を置いている街だ。全世界的にカフェチェーンを展開するスターバックス発祥の地としても知られている。約70万人の人口に対し、シアトルに勤めるアマゾン社員は約4%に当たる3万人。同社は市内に30もの社屋を構えており、現在も周辺地域で複数の社屋を建設中だ。
・本社には、IT企業らしい発想の自由さが見られる。「DAY1」(2016年11月)、「DOPPLER」(2015年12月)など、各社屋につけられたユニークな名前は、すべてアマゾンの理念や成長の歴史と縁の深いフレーズだ。ちなみに「DAY1」は、創業者・ジェフ・ベゾスCEOが掲げる経営理念「(インターネットは)まだ1日目」から取られたもの、DOPPLER」はAI搭載スピーカー「アマゾン・エコー」の、開発段階における愛称から取られたものである。
・一方で本社群を見て回ると、普通のIT企業とは違うアマゾンならではの特徴にも気づく。まず、各社屋の外観に「amazon」という社名やロゴの表示がほとんどないことだ。建物に入り、受け付けに行けばさすがにロゴが目に入るが、それ以外の部分では露出が控えめだ。シアトルという都市とアマゾンという企業が混ざり合い、溶け合っているような印象を受ける。
・社員数が増える中で、アマゾンが新しい本社群づくりのテーマに設定したのは「Great neighborhood(よき隣人)」だ。社員以外にも振舞われる無料のバナナスタンドを設置しているほか、飼い犬を遊ばせることができるスペースや、建物1階部分にある休憩スペースを誰でも利用できるようにしている。 よき隣人――。それは膨張を続ける日本市場にとっても当てはまるテーマになりそうだ。2016年度は日本の売上高が108億ドル(約1.2兆円)、社員数は4400人までになったアマゾン ジャパンは、ヤマト運輸との配送料の価格交渉など難しい局面に立たされている。
・書籍事業では商品の納期短縮を進めるため、卸(取次)最大手の日本出版販売との取引を一部打ち切るなど、大胆な策にも打って出ている。よき隣人としていかに顧客と共鳴できるか。巨人・アマゾンがこれから向き合わなければならない課題である
http://toyokeizai.net/articles/-/176999

「アマゾン1円詐欺」については、この記事のほかには、4月28日付け読売新聞「Amazonマーケットプレイス詐欺が大量発生」程度しかなく、その後の展開も不明であるが、一応、注意喚起の意味で紹介した。 『問題なのは、詐欺に遭った購入者の支払分は返金が保証されるものの、個人情報の流出と、それに伴う被害(自分の個人情報を詐欺業者のデータとして使われるなど)に関してはまったくフォローされていないことだ』、というのは、確かに被害者はたまったものではないだろう。
『ウォルマート、アマゾン対抗の秘策』にある  『ジェットの買収金額は33億ドル(約3600億円)と創業1年あまりの新興ベンチャーに投じる資金としては桁外れに高い。しかも、スタートアップのCEOにウォルマートという巨大企業のeコマース事業を任せるのも思い切った決断だ』、それが 『eコマースの売上高は63%増』、という成果につながったのだろう。 『配送料含め消費者ごとのコストをガラス張りに』、 『専門EC相次ぎ買収、商品点数は1000万から5000万に』、などウォルマートが今後、どこまでアマゾンに対抗してゆけるのかは、大いに注目される。日本のセブン&アイなども注視している筈だ。
第三の記事にある ホールフーズ・マーケット買収以外にも、『専用書店の「アマゾン・ブックス」、・・・無人コンビニ「アマゾン・ゴー」』、などの開発など、アマゾン側からの『「リアルとネットの融合」』、も着実に進展しつつあるようだ。
タグ:ネットビジネス 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン (その2)(「アマゾン1円詐欺」の巧妙で抜け目ない実態、ウォルマート、アマゾン対抗の秘策、アマゾンがリアル小売りへ進撃する真の意図) 「「アマゾン1円詐欺」の巧妙で抜け目ない実態 購入者の個人情報と嗜好が盗まれている アマゾンの「1円出品」 “セラー”と呼ばれ、アマゾンに販売業者として登録し、アマゾンの決済システムを利用して商品を販売する「アマゾンマーケットプレイス」という仕組みを用いる 1円で古本を販売している業者は以前から存在しており、脱法性があるわけではない 書籍をメール便(送料100~160円程度)で安価に配送できることに対し、アマゾンの書籍配送料が257円固定であることなどを活用し、アマゾンの販売手数料を差し引いても残る差額で利益を上げているのだ あの手この手で「到着遅れ」を正当化 悪質業者の狙いは個人情報の収集ではないかと書いた。ではまったく利益が得られないかと言えば、そうではない。たとえ1円、あるいは対象商品の標準価格として圧倒的に安価であったとしても、そもそも発送する商品がないのだから、振り込まれた売り上げはまるまる利益になる 問題なのは、詐欺に遭った購入者の支払分は返金が保証されるものの、個人情報の流出と、それに伴う被害(自分の個人情報を詐欺業者のデータとして使われるなど)に関してはまったくフォローされていないことだ ウォルマート、アマゾン対抗の秘策 ネット通販ベンチャー出身の部門トップが仕掛けるラストバトル ようやく反転攻勢に向けた体制を整えつつあるようだ eコマースの売上高は63%増に ジェットの買収金額は33億ドル(約3600億円)と創業1年あまりの新興ベンチャーに投じる資金としては桁外れに高い。しかも、スタートアップのCEOにウォルマートという巨大企業のeコマース事業を任せるのも思い切った決断 eコマース版の「エブリデイ・ロー・プライス(EDLP)」の実現 独自のプライシングシステム 配送料含め消費者ごとのコストをガラス張りに ・物流に占めるコストの70~80%は配送センターから消費者の家までの「ラストマイル」といわれる。その部分のコストを年会費で解決したという点で、アマゾン・プライムはeコマースの分野に革命を起こした ジェットは一つひとつの注文に関わるコストによりこだわり、そのコストを極限まで引き下げる仕組みを作りあげた EDLPをeコマースで実現 3カ所で“Associate Delivery”の実験を始めると発表した。これは店舗で働く従業員に配送させるというアイデアだ 専門EC相次ぎ買収、商品点数は1000万から5000万に 決済アプリも普及 アマゾンがリアル小売りへ進撃する真の意図 ホールフーズ買収は一例にすぎない ホールフーズ・マーケットを137億ドル(約1.5兆円)で買収 リアルへの侵食は今に始まったことではない 専用書店の「アマゾン・ブックス」、 2016年に存在が明らかになった無人コンビニ「アマゾン・ゴー」 アマゾン・フレッシュ・ピックアップ ドライブスルー型の商品受け取り専用店舗 アマゾンが新しい本社群づくりのテーマに設定したのは「Great neighborhood
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医療問題(その5)(徹夜明けの外科医に手術されるの 嫌ですか?、その「ひと口」が遺伝子を変える!?、高齢者優遇と医療費拡大、悪いのは誰だ?) [社会]

医療問題については、5月5日に取上げたが、今日は、(その5)(徹夜明けの外科医に手術されるの 嫌ですか?、その「ひと口」が遺伝子を変える!?、高齢者優遇と医療費拡大、悪いのは誰だ?) である。

先ずは、外科医の中山 祐次郎氏が5月8日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「徹夜明けの外科医に手術されるの、嫌ですか? 第6回 ブラック企業も真っ青の外科医という仕事」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2017年2~3月まで滞在していた福島県広野町を離れ、4月に郡山市に引っ越してきました。現在は、総合南東北病院で外科医長として勤務しています。さて、まずは近況と郡山の街について少し。 郡山市は、東京から新幹線で約1時間半とそれほど遠くない場所にある人口30万人ほどの都市です。広野町のある「浜通り」(福島県の海沿いの地域)よりも気温の低い「中通り」(浜通りの内陸側の地域)に位置するため、かなり厚着をしての新生活スタートになりました。
・1月まで住んでいた東京に比べて気温が4~5度は低く、風も強いのが特徴。今年は桜の見頃が東京の約1週間後となり、私は唯一の移動手段である自転車(ドン・キホーテで9000円で購入しました)を漕ぎながら横目で楽しんだだけでした。 冬にはマイナス10度にもなるそうですから、早く車を買わねばなりません。知人のフェル(ディナンド・ヤマグチ)さんが日経ビジネスオンラインで書いている連載も購入の参考にと拝読していますが、価格の面で全く参考になりません(笑)。
▽「豊富な人材がいる」病院はなかなかない
・今回のテーマは「徹夜明けの外科医による手術」。外科医の話ですから、私の勤める病院についても少し触れておきたいと思います。 総合南東北病院は、ベッド数は約450床、JR郡山駅から車で15分ほどの便利な場所にあります。隣にある第二病院が約150床ですから、まあまあ規模の大きな病院と言っていいでしょう。私はここで、腹腔鏡手術という小さなキズで済む手術を中心に、大腸がんの最先端手術や治療を実施しています。
・当院には外科医が全部で13人、大腸がんの手術を専門とする医師は私を入れて4人もいます。これほど豊富な人材がいる病院は、全国でもなかなかないと思います。ちなみに院長先生も外科医で、今もよく手術室や病棟に来られる現役バリバリの先生です。 と宣伝のようになってしまいましたが、「豊富な人材がいる」ということは今回のテーマと深い関わりがあります。
▽手術中に居眠り? 助手ならあり得ます
・「おい、お前! 何寝てんだ」 こんな怒り方はしないものの、疲れ切った研修医が手術中に寝てしまうことはあるものです(まだ当院では見たことがありませんが……)。3番目か4番目の助手をしている時は何もしないで見ているだけなので、彼らも眠くなってしまうのでしょう。
・そうでなくても外科医は、しばしば徹夜明けで手術を執刀します。もちろん私も、過去に何度も経験があります。完全な徹夜でなくても、睡眠1時間とか2時間で手術なんてことは、間違いなく外科医全員が経験のあるところなのです。 なぜ外科医は、徹夜明けで手術をしなければならないのか。不眠症? いいえ、「当直」です。
・当直という勤務形態は「宿直」と似た意味で、病院に泊まり込んで何か問題が発生した時に対応することを指します。一部の科ではしていないところもあるかもしれませんが、外科医に限らず基本的に全ての勤務医が週に1~2回は当直を担当します。医療法により、病院には常に医師がいなければならないと決まっているためです。
・当直の日は、夜中に来院する(救急外来の)患者さんの治療をする上、入院患者さんに何か起きた場合もすっ飛んで行って対応します。救急外来の患者さんが一晩に30~40人も来るような病院もありますし、受け付けていない病院もあります。 夜中に患者さんがひっきりなしに来たり、かなり重症の患者さんが来たりすると、そのまま緊急手術になるなどして、医師はほぼ徹夜で働き続けることになります。当直の前と後にも通常勤務をするため、当直明け(病院では短く「明け」と呼びます)には連続24時間の勤務が終わったことになるわけです。
▽帰りたくても帰れない外科医の実態
・ではここで、当直明けがどのような状況かをのぞいてみましょう(フィクションですが、限りなくリアルです)。  午前4時半。夜中から立て続けにやってきた救急車や熱を出した入院中のお子さんの対応がようやく一息つき、私は1階の救急外来室から明るくなったばかりの外に出ます。冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、「うーん」と一つ、大きく伸び。鳥の鳴き声が聞こえるような気もしますが、本当に聞こえているのか幻聴なのかも分かりません。
・すると間もなく、看護師さんのこんな声で我に返ります。 「先生、ホットライン(救急車からの受け入れ要請)です!」 血走った目とベタベタの髪ですが、「オシッ」と気合を入れ、救急外来室に戻ります。目の前に現れたのは、朝だというのに酔っ払いの患者さん。その患者さんに「なんだよー、テメエ!触るんじゃねえよー」とか言われながら点滴を打ちます。
・1時間くらい仮眠をとったら、そこから翌日の通常業務が始まります。午前7時半から回診をし、9時から手術。「今日のオペは5時間の予定だけど、あんまり出血しないといいな……」などと思いながら手術室に入ります。 手術が終わると、患者さんのご家族に手術内容の説明。そして、夕方からは院内のリスクマネジメント会議に出席し、ここでついコックリコックリとしてしまいます。
・会議が終わると、午後6時過ぎ。今度は夕方の回診が始まります。「さあ、今日は明けだから帰るぞ!」と思っていると、内科医からこんな電話が入るのです。 「先生、すみません。虫垂炎(アッペ)の患者さんがいて、手術のお願いなのですが……」  「今日は帰りたかったんだけどな」と心の中でつぶやきながらも緊急手術を執刀し、やっとのことで帰宅するのは午後10時――。 これを外科医は週に1~2回、(人によりますが)58歳くらいになるまで続けるのです。年収はもちろん、他の科のドクターと同じです。
▽睡眠不足では手術の質が下がって当たり前
・外科医が眠い中で手術を執刀すると、そのクオリティー(質)はどうなるのでしょうか。もちろん、明らかに低下します。 「いや、俺の時だけは前日、よく寝てくれよ」 読者の皆さんはこう思われることでしょう。 当直明けの手術は質が低下する――。至極当然のことですが、何十年もの間、誰も公言してきませんでした。それは外科医の矜持でもあり、体制側(厚生労働省)のコスト意識でもあったのだと思います。外科医の矜持は武士のそれととてもよく似ていて、「武士は食わねど高楊枝」ならぬ、「外科医は眠らねど余裕で執刀」という文化が脈々と続いてきたのです。
・長年にわたってこの慣習は変わりませんでしたが、最近になって「当直明けの外科医の執刀は手術関連の死亡を増やす」という論文(Taffinder NJ, et al. Lancet 1998;352:1191)が発表されたこともあり、厚生労働省はあるルールを作りました。「当直明けの外科医が手術を執刀しない病院は加算(お金)を付ける」というものです。
▽外科医の9割は「過労死ライン」超え?
・この新ルールは全くニュースにならなかったばかりか、実際に採用している病院もわずかだと考えられます。しかし、私の勤める病院では外科医が多いこともあり、明けの外科医は基本的に執刀しないことになっています。 待遇とか外科医の労働負担軽減というより、医療の質の担保のためにそうしているという印象を私は持っています。明けの外科医をそのまま働かせた方が病院経営の視点ではいいに決まっていますし、外科医も絶対に文句を言わないことが分かっているからです。ちなみにこの新しい加算は執刀医にならなければいいだけで、手術の助手になるのはOKです。
・調査したわけではありませんが、当直明けの日の朝、帰宅できる外科医は日本中探してもほぼいないでしょう。 「労働基準法を守っていないじゃないか!」というご指摘も、その通りです。外科医の9割は厚労省の定める「過労死ライン」の労働時間を軽々と超えているというデータもあります。また定期的に労働基準監督署がさまざまな病院をガサ入れすると、数億~十数億円の残業代未払いを指摘される病院が必ずと言っていいほど出てきます。ついこの間も、某有名ブランド病院が10億円を超える残業代未払いを指摘され、ニュースになりました。
▽「患者さんの生命ファースト」が基本
・こんなブラック企業も真っ青の外科医という仕事ですが、なぜこれほど多忙なのでしょうか。その理由は(1)業務そのものの性質、(2)手術件数の増加、(3)外科医数の減少、の3つにあると考えられます。
・まず(1)の業務そのものの性質。 我々外科医は基本的に、「手術をしなければ生命が危うい」という疾患を持つ患者さんを相手に仕事をしています。手術は、患者さんの体に一定のダメージを負わせて実施する「激しい治療」。全身麻酔で行う手術であれば、筋弛緩剤を使って患者さんの呼吸を一時的に停止させます。 手術をしたらそれで終わりというわけでもありません。術後、患者さんの状態は不安定になります。血圧が下がったり、尿が出にくくなったり、止血できていたはずなのに後で大出血することだってあります。看護師さんが見ていてはくれますが、基本的に医療行為はできないため、医師が張り付くことになります。
・つまり外科医は、かなり「濃厚な医療」を提供しなくてはならないのです。「濃厚な」とは「熟練の外科医が患者さんを付きっ切りで見る」という意味。現場を離れられないため、必然的に業務時間が長くなります。 さらに外科医の仕事は、完全に「患者さんの生命ファースト」。間違いなく緊急手術をした方がいい患者さんが目の前にいたら、「オレ、今日は結婚記念日だし奥さんが料理作って待ってくれているから帰る」と言って帰る外科医はいません。米国では保険証の種類(ランク)によって手術をするかどうかが変わりますが、日本では基本的に、あらゆる理由に優先して、手術が必要な患者さんには手術をします。
▽高齢化が進むほど手術件数も増える
・次に(2)手術件数の増加です。 日本全体の高齢化がすさまじいスピードで進んでいるため、がんなど手術の必要な疾患を持つ人口が急増しています。多くのがんでは50~70歳くらいが発症しやすい年代になりますから、その年代の人口が増えれば増えるほど手術件数も増えます。 次のグラフはがん(悪性腫瘍)の手術件数と一般病院数の推移を示したものです。 これを見れば、がん(悪性腫瘍)の手術件数が年々、増えていることが分かります。2002年の水準と比べて2014年は、ほぼ倍となっています。
▽小児科医は増えているのに外科医は減少
・最後に(3)外科医数の減少です。 下のグラフでは、外科医の数は増えるどころか微減しています。医師全体の数が増加し続けていることを考えると相対的です。一般に「減った」と言われている小児科医や産婦人科医と比較しましたが、実際には小児科医が増加傾向、産婦人科は横ばいという結果でした。
・手術件数は増える一方で外科医数は減っているのですから、単純計算でも1人当たりの手術件数は増えることになります。忙しいわけです。
▽正直なところ外科医は増えない。ではどうするか(これを解決する方法は、外科医を増やすか、外科医の仕事を効率化するかしかありません。 前者については先日、外科学会で発表したばかりですが、正直なところ私は、今後、外科医数がぐんぐん増えるとは考えていません。外科医の本来の仕事である手術の件数が増え続けているからです。給料が同じなら誰だって、仕事がきつくなくて訴訟リスクが低い道を選びます。となると、あとは後者の業務の効率化を図るしかありません。
・方策はいくつかありますが、私が最も重要だと考えているのは「複数主治医制」です。 現在は、1人の患者さんに対して主治医が1人付き、その医師が全ての責任を負う体制をとっています。どんな些細なことであっても、その患者さんに関することは全て主治医に連絡をして主治医が指示を出し、決定の全責任を主治医が負います。
・もちろんほかの医師もカルテを見て、議論しながらの決定にはなりますが、担当する患者さんの決定を全て1人の主治医が担当するのは負担が大きいと私は考えています。複数主治医制が実現すれば、医師が週末に遠出をすることも可能になります。その期間は別の主治医に判断をゆだね、遠方で開かれる学会などに参加できるようになるわけです。
・この他にも厚生労働省は、さまざまな手段を考えています。先日、発表された、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の報告書では、医師以外のスタッフ(看護師など)が医師の業務を一部担当する「タスク・シフティング/タスク・シェアリング」の考え方などが提唱されました。これは法改正などを必要とするため、すぐには実現しないと考えられますが、私も強く期待しているところです。 外科医の生活が少しでも改善され、その結果、手術や診療の質が上がることを願いつつ、今回は筆をおきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000038/050200007/?P=1

次に、6月12日付けダイヤモンド・オンライン「その「ひと口」が遺伝子を変える!? 「遺伝学者×医師」が明かす“遺伝子スイッチ”の真実」を紹介しよう(▽は小見出し、――はインタビュアーの質問、+は回答内の段落)。
・「遺伝で決まったことを、変えられるわけがない」 ――もしこれが、「完全に間違っている」としたら? いまホットな遺伝子のトピック「エピジェネティクス」を解き明かした極上のノンフィクション『遺伝子は、変えられる。』著者、シャロン・モアレム氏に遺伝にまつわる最新情報を聞く特別インタビュー! 私たちの日々の食事や暮らしが、遺伝子にどう影響するのか――「遺伝学者×医師」として活躍するモアレム氏だからこそわかった、その真実とは?(インタビュアー:大野和基)
▽「遺伝子は、変えられる」は本当か?
―― 近著“Inheritance”(邦訳『遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』)のサブタイトルは“How Our Genes Change Our Lives and Our Lives Change Our Genes”(遺伝子はいかにして私たちの人生を変えるのか、そして私たちの人生はいかにして遺伝子を変えるのか)となっています。この“Our Lives Change Our Genes”の部分は、一見すると信じられないことのように思われます。いったいどういうことなのでしょう。
モアレム まずここで申し上げておきたいのは、遺伝子がいかにして発現するか、つまりエピジェネティックな現象が非常に重要だということです。 
―― エピジェネティクスとは、「1世代のあいだに遺伝形質がどのように変化し、変化させられるか、さらにはその変化がどのようにして次の世代に引き継がれるかを研究する学問」と本書では述べておられます。もう少し詳しく説明していただけますか?
モアレム たとえば、台所にシンクがありますね。そこには水が出る蛇口と湯が出る蛇口があります。それぞれの蛇口をどれくらい開けるかによって、出てくる水(湯)の量と温度が決まります。 それと同じようなことが、遺伝子にも起こります。私たちの体が、特定の毒にさらされたとします。すると、それに反応して特定の「遺伝子のスイッチ」がオンになります。こうした変化は、カフェインでさえ起こります。そのようにして日常生活で行うすべてのことが、遺伝子の働きを変え、さらにそのことが私たちの暮らし方、そして人生までも変えていくんです。
―― つまり、その結果起きるエピジェネティックな変化が、将来の世代に伝わるかもしれないということですか?
モアレム そうです。この研究はとてもワクワクするものです。エピジェネティックな変化のどの程度が次世代に伝わるかは、完全にはわかっていません。マウスの実験では、かなりのストレスを受けると、それによるエピジェネティックな変化が次世代に継承されることがわかっています。しかもそれは、数世代にわたって継承されます。
―― 特定の遺伝子のスイッチがオンになったことは、どうやってわかるのでしょうか。
モアレム 遺伝子のスイッチがオンになったのか、オフになったのかを調べるテストがあります。逆に現在のところ非常に難しいのは、脳内のエピジェネティックな変化と肝臓のエピジェネティックな変化が同じかどうかを知ることです。こうした「まだわからないこと」が、この分野の研究を難しくさせているところでもあるし、一方でワクワクさせるところでもあります。 たとえば、運動が重要であることはわかっていますし、時には少し辛いものを食べたほうが体にいい、ということもわかっています。なぜ体にいいかというと、つまるところそれは特定の遺伝子のスイッチをオンにするから、ということです。
▽DNAが同じなのに、違う病気にかかる双子がいるのはなぜ?
―― 我々のほとんどは、自分が受け継いだ遺伝的運命を変えられないと思い込んでいます。
モアレム 特定の遺伝子が特定の病気にかかりやすいかどうかを決定するという意味ではそれはほとんどの場合本当のことでしょう。しかし私が読者に伝えたいことは、インタラクション(相互作用)の重要性です。自分が前世代から受け継いだことを変える能力だけではなく、次世代に受け継ぐことを変える能力がある、ということです。ひと世代前の日本人と今の日本人とを比べると、今の日本人のほうが背が高くなっています。遺伝子の影響があったとしても、食べる量や質、そしてどのように生活を送るかで、遺伝子の発現に対して非常に大きなインパクトを及ぼせることがわかっています。
+もし人生というものが、生物学的に、また遺伝子的にあまりにもたやすいもので、自分の体や自分に対して何の挑戦もしなくていい、というのであれば、私たちは繁栄しなかったでしょう。日本の武術をみるとわかると思います。鍛えれば鍛えるほど強くなり痛みを感じなくなります。私たちの体も、遺伝的にそれと同じように機能するのです。
+私がいつも患者に説明するのは、宇宙飛行士の話です。宇宙飛行士が無重力の宇宙に行くと、骨量の減少が生じます。体を支える必要がない宇宙では骨が必要とされなくなってくるので、特定の遺伝子のスイッチがオンになります。これは宇宙では適応的かもしれませんが、地球に戻ってくると大きな問題になります。だから、宇宙飛行士が地球に戻ってきて、ミッション完遂を知らせる報道写真を撮る際、特別にあつらえられたリクライニングチェアにそっと横たえてもらわなければならないのです。
―― 一卵性双生児はDNAが100%同じですが、遺伝子発現は異なります。遺伝子発現がどれくらい重要であるか、説明していただけますか?
モアレム 遺伝子発現は生命そのものである、と言っても過言ではありません。DNAそのものは不活性で核の中でじっとしているだけです。それ自体はあまり活動をしません。音楽にたとえると、DNAは楽譜のようなものです。楽器で演奏しないかぎりそこに書かれたメロディは聞こえません。
+細胞はその遺伝子が発現して機能するのです。それが私たちの生命が辿る道を決定します。一卵性双生児に遺伝子発現の違いをみることができるのは、興味深いことです。彼らは同じような生活を送ってきたはずですが、実際にはそれほど同じにはなりません。その理由は、遺伝子発現が異なることに起因しているのです。
http://diamond.jp/articles/-/131028

第三に、医療政策学の若手論客・津川友介氏への6月19日付け日経ビジネスオンラインのインタビュー記事「高齢者優遇と医療費拡大、悪いのは誰だ? 医療政策学の若手論客・津川友介氏に聞く」を紹介しよう(▽は小見出し――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・いわゆる「シルバー民主主義」の克服をテーマにした連載「さらば『老害』ニッポン」。 今回は、増え続ける医療費の問題にスポットを当てる。高齢化が医療費拡大に拍車をかけ、それが社会保障制度の「高齢者優遇」を招いているとの批判がある。こうした状況について、医療政策学・医療経済学の若手論客、津川友介氏に話を聞いた。 津川氏は教育経済学者・中室牧子氏との共著『「原因と結果」の経済学』(ダイヤモンド社)などで、エビデンス・ベース(科学的根拠)に基づく政策立案を提言している (聞き手 大竹 剛)
――まず、お聞きしたいのが、若者が選挙に行かず、高齢者の意見が政治に反映されやすい、いわゆる「シルバー民主主義」は、米国でも見られる現象なのでしょうか。 
津川友介氏(以下、津川):私はシルバー民主主義の専門家ではありませんが、米国でも若者より高齢者の方が選挙に行くという状況は同じで、日本特有のことではないと思います。民主主義をやっている以上は、良く見られる現象でしょう。 「シルバー民主主義」というのは、日本によくあるラベリングではないでしょうか。言葉が独り歩きしています。若者が選挙に行かない問題などは、なかなか解決が難しいですよね。そもそも、それが本当に問題なのかと考えてみる必要もあると思います。
+今はトランプ氏が大統領になっていますが、バーニー・サンダース氏であれヒラリー・クリントン氏であれ、特に民主党系、リベラル系の政党は、若い世代にアピールするだけでなく、高齢者に対しても、子供や孫があなたたちよりも良い生活を送れるようになってほしくないですか、というような訴え方をするんですね。子供や孫が貧しい生活をするのはかわいそうなので、そうならないように、大学無償化などの制度設計をしましょうと、高齢者に訴えるのです。
+他人の子供に自分の富を再分配することには反対する高齢者もいるでしょうが、自分の子供や孫が自分と同等、もしくはそれ以上の良い生活ができるようにする。この主張に反対する人は、あまりいないのではないでしょうか。そうすることで、若い世代が選挙に行かなくても、高齢者優遇になり過ぎないような政策が実現される可能性もあるわけです。
+むしろ、「シルバー民主主義」とラベリングすることは、世代間対立をはっきりさせ、高齢者を悪者扱いしてしまうことにつながるのではないかと危惧しています。それは、あまりいいやり方ではないでしょう。 日本は、医療費の問題にしても、高齢者に高額の抗がん剤を使うのはどうなのかとか、透析患者さんに医療費をたくさん使うのはどうなのかとか、そういう国民間の対立構造を生む議論を、何かと持ち出す傾向にあります。しかしそれは、非常に際どい発想だと思います。米国やヨーロッパで起きているような、人種間や性別間の対立と同じで、国民をセクターで分けていって、どのセクターが得をしている、どこのセクターが損をしているといった議論は、社会の分断を生むことにつながりかねません。
――米国や欧州では、人種間や宗教間の対立などが問題になっていますが、日本も同じことを世代間でやっているだけではないか、と。
津川:おっしゃる通りです。要するに、いろんなことに不満があると、不満のはけ口を探すわけです。日本の場合、それが高齢者だったり、小さい子供を持つ母親だったり、透析患者さんだったりということになっています。日本では、ここ最近は財政上の問題などもあり、そのはけ口の矛先が高齢者に向いているような気がしてなりません。 そういう議論が本当に問題解決に向けて正しい方向性なのかを、少し冷静になって考えた方がいいと思います。放っておくと、こうした議論はどんどん極端になり、米国のような状況になってしまうと思いますよ。
▽そもそも、医療費のコントロールは難しい
――世代間の不公平感、つまり高齢者が優遇され過ぎているという議論では、特に年金や医療費など社会保障の在り方が問題視されています。津川さんの専門である医療で考えると、どうしたら、こうした世代間の不公平感が生まれるような状況を是正できるのでしょうか。
津川:医療では、いくつかの問題があると思います。まず、日本の医療費が高いというのは、その通りです。しかも、コントロールが非常に難しくて、世界中どの国と見ても、医療費をうまくコントロールしているところはほとんどありません。つまり、答えがないことを解決しようとしているんですね。
+基本的に、国の財政では防衛費や教育費などは政治的な判断で決定できます。一方、医療や年金については、政治が直接的に決定することはなかなか難しいわけです。特に医療費は、医療サービスがどれだけ使われているかや、どれだけ新しい高額の薬が開発されるかなど、外的に決まる要素が非常に大きい。間接的にコントロールすることはできても、予算配分できちっとコントロールすることは難しいという現実があります。
+ちなみに、社会保障費というと、基本は年金と医療ですが、これらは全く異なる性格を持っています。米国では「医療費の問題」と言うのですが、日本では年金も含めて「社会保障費の問題」と言いますよね。おそらく、社会保障費とすると額が大きくなるので、インパクトを出すためでしょう。その方が、危機感をあおりやすいからかもしれません。
+年金は基本的に富の再分配をする仕組みなので、政治的な判断をすれば、コントロールできるはずです。政治家がリスクを取って「支給額を減らします」と言えば、減らせるでしょう。 しかし、医療は全くの別物です。ロボット手術やC型肝炎治療薬、抗がん剤「オプジーボ」といった高額な医療技術の開発がどのように進むのかは、かなり予測が困難です。高齢化が医療費の増加の一端を担っていることは確かなのですが、少なくとも米国のエビデンス(科学的な根拠)では、医療費高騰を招く最も大きな理由は高度技術の開発だと言われています。
+医療費の高騰は、高齢化で医療需要が増加するから仕方がないという側面はありますが、それ以上に高度技術の開発をコントロールすることは、高齢化の問題以上に難しいと考えるべきでしょう。新しい薬を開発させないわけにはいきませんし、日本で開発しなくても海外から入ってきますから。何よりも病気で苦しんでいる人の希望を閉ざすことになりかねません。
――医療費をコントロールするのが難しいとしても、このまま医療費が拡大し続ける状況を何とか抑制しないと、結局、その恩恵を主に受けているのは高齢者だという不満につながりかねません。どういう手立てを取り得るのでしょうか。
津川:日本での議論で足りていないのは、エビデンスと医療経済学的な理論に基づいた制度のデザインだと思います。具体的に日本で耳にする議論のほとんどは、自己負担を上げる、もしくは診療報酬点数を引き下げるという方法だけですよね。
――高齢者が優遇され過ぎているから、自己負担をどれだけ上げるかというのが、政治のせめぎ合いになっている面は、確かにあります。
津川:自己負担を上げるのは有効な手段なのですが、どちらかというと対処療法的な方法です。もっと重要な構造的な解決策を考える必要があると思います。 医療費については、2つのことを考える必要があります。1つは、今、どれくらいかかっているかという、医療費の水準です。そしてもう1つが、毎年どれくらい上がっているのかという、増加率の問題です。自己負担を少し上げるというのは、1つ目の医療費の水準を下げることなのですが、増加率は変えてくれません。つまり、例えば財政が破綻するのが10年先だったら、それをさらに数年先延ばしにすると言ったくらいの話です。
+しかし、本来は2つ目の医療費が増える傾きをなだらかにすることが大切なんです。それをしないと、問題を少し先送りをするだけで、根本的な解決にはつながらないからです。 もちろん、消費税の税率を上げるといった、財源を増やすという議論もあります。しかしこれも、医療費が増える傾きを下げるわけではありません。長期的に医療費の問題を根本的に解決する議論が、ほとんどなされていないのです。 本来であれば、しっかり医療政策学者や医療経済学者が集まって、理念も含めてグランドデザインを作り直すべきなのです。
▽診療報酬制度は、もう制度的に持たない
――高齢者優遇を是正するために、若い世代、子供への再分配を強化しようという、小泉進次郎氏らの提言(参考:「小泉進次郎氏らが激論!高齢者優遇は行き過ぎだ)も、グランドデザインという意味では物足りないと。
津川:若い世代への再分配を何とかしてやろうというのは、悪くないと思います。ただ、どこかから財源を取ってきて、若い世代にばら撒くということだけではなく、もう少し構造的にどう直すのかという議論を深めるべき時期が来ていると思います。特に、医療費の問題については、抜本的な改革が不可欠でしょう。
+日本の医療費の問題は、基本的には診療報酬制度にあります。2年に一度、診療報酬を上げ下げするというのは、国民皆保険制度が始まった時から、ずっと続けてきているわけです。当初は、それなりに上手くいっていたのですが、もう、制度的に持たなくなっているのではないかと私は考えています。
+過去、診療報酬を使い過ぎたところを、懲罰的に下げるということを、基本的に繰り返してきています。しかし、下げるとどうなるかというと、病院はあまり利幅が大きくないので、何らかほかのサービスを増やそうとするわけです。コンピューター断層撮影装置(CT)の診療報酬が下がったら、その代わりに磁気共鳴画像装置(MRI)を増やそうとか、どうにか失った収益を穴埋めしようとします。
+こうしたことを繰り返していて、結果的に、日本は世界で一番、MRIとCTが多い国になり、外来の件数や入院日数も米国の2~3倍、ベッド数も病院数も多いのです。分かりやすく言えば、医療サービスの単価が非常に低く、薄利多売によって経営を成り立たせている状態だと考えられます。 例えば、外来(再診)は1人700円くらいしかもらえないのですが、血液検査をすると数千円もらえるわけです。外来をやること自体の経済合理性を持たせようとしたら、山ほど患者を診てたくさん検査をしなければならなくなります。血液検査を毎回しないと、経営上、患者を診れば診るほど赤字になってしまいます。
+米国では6カ月に1回、病院に来てもらえばいいものを、日本では毎月来てもらうとか、来てもらうだけだと赤字だから、検査もしています。糖尿病では毎月コレストロールを調べる必要はないのに、毎月調べる。患者さんも、それでしっかり診てもらっているという気になるから、嬉しく思う。患者さんが腰が痛いと言ったら、比較的簡単にMRIを撮ります。患者さんの自己負担割合も低いので、お金の面でもブレーキがかからない。要するに、構造的に歪んでしまっている。これ以上、この制度を続けても、どうしようもないところまで来てしまっているんです。
+この制度を続ける以上、どんどん医療費が持たなくなって、また診療報酬を下げることになる。そうなると、薄利多売がさらに進む。そして現場の医師や看護師は忙しいと悲鳴を上げるようになる。これ以上、医療サービスの供給量を増やせなくなるところまで行き着いたら、病院が潰れていく。外来も、検査も、もうこれ以上増やせなくなり、それでも赤字だったら、もう、潰れるしかありません。 つまり、診療報酬制度そのものを見直すしかないと私は考えています。それには専門家がエビデンスをベースに、数年かけてじっくりと解を見出していかなければならないと思います。
▽民間企業である日本の病院は利益を最大化しようとする
――単価が安く薄利多売になっている状況を変えるには、どのような改革をすればいいのでしょうか。
津川:大切なのは、既存の仕組みの中でどうにか解決しようという発想から抜け出すことです。 大きな医療改革は、トップダウンで政治的に実施せざるを得ないと思います。ただし、拙速にやってはいけません。医療改革は、ハイリスクです。米国のオバマケアの時も、英国のトニー・ブレアの医療改革の時もそうでしたが、何が起きるかわからないですから。
――薄利多売をから抜け出すために、医療サービスの単価を上げることはできますか。
津川:今の状況では、単価を上げることはできません。病院が儲かるだけで、その結果として日本の財政破綻を早めてしまうでしょう。単価を上げても、外来や検査の量を減らすというようなインセンティブは全く無いからです。日本の病院は民間企業ですので、利益を最大化するように制度設計されています。
――では、どうしたらよいのでしょうか。
津川:今の診療報酬制度は、いわゆる「出来高払い」という仕組みです。これは、「量に対する支払い」とも言われるのですが、提供するサービスの量が増えるほど収入が増えるというものです。しかし、これはほとんどの国で、需要よりも供給が多くなってしまうという状況を招き、不十分な制度設計であると言われています。
+そのため、多くの国で「包括支払い」の方式を取り入れています。例えば、外来では「人頭支払い」と呼ばれる制度があります。患者1人当たりいくら、かかりつけ医の患者1人当たり1年間いくら、もしくは、風邪や糖尿病などで病院に来たら1回いくらといったように、医療機関への支払額を固定額にする仕組みです。そうすると、病院側としては、1人当たりのサービスの提供回数を減らした方が儲かるようになり、無駄なサービスが減るというわけです。
+ただ、この仕組みの問題点は、患者さんにとって必要なサービスと、必要でないサービスの両方を減らしてしまうことです。本来であれば、必要でないサービスだけを減らしたいわけですよね。腰が痛いという患者さんに湿布を出すとか、風邪を引いた患者さんに抗生剤を出すとか。その一方で、患者さんがひどい腹痛で来院したらお金がかかってもきちんとCTをオーダーして欲しい。患者さんにとってメリットのある医療まで控えられたら困ります。
+そこで多くの国では「ペイ・フォー・パフォーマンス」、つまり、業績に対する支払いを組み合わせているのです。ちゃんとガイドラインに沿った診療しているか、術後の30日死亡率は全国平均より低いかなどの実績を見て、悪かったら経済的なペナルティーを与えて、良かったらボーナスを与えるといったことをしています。
+この包括支払いにペイ・フォー・パフォーマンスを組み合わせるというのが、欧米では標準的になりつつあるのですが、日本でも「包括支払い」が部分的に導入されているとはいえ、まだ不十分だと思います。もちろん、この仕組みが全て正しいと証明されているわけではありません。特にペイ・フォー・パフォーマンスのエビデンスは弱く、日本でも実証研究が行われるべきだと思います。しかし、いずれにしても近い将来、何らかの形でより包括的な支払いを導入する必要があると考えます。
+日本で取り入れられている包括支払いは「DPC」という仕組みなのですが、これは米国の「DRG」という仕組みを日本版にアレンジしたものです。米国では、「入院1回当たりいくら」なのですが、日本では「入院1日当たりいくら」で、だんだん報酬が減っていくというものです。医療費を抑制するインセンティブは、米国のDRGほどは強く無いと考えられます。おそらく、そこには何らかの政治的な妥協があったと思われます。
▽しっかりとした死生観を持つことが大切
―なぜ、こうした「妥協」が生まれてしまうのでしょうか。
津川:病院が強く反対したからではないでしょうか。包括支払いになったら、その後、徐々に報酬も下げられて、いずれ梯子を外されてしまうのではないかと病院は考えるでしょうね。歴史的にも、日本はそういう「梯子を外す」ことをやってきた傾向がありますから、医療提供者の多くは厚生労働省に対して不信感を抱いているのかもしれません。
+もちろん、国と医療提供者は、同じ方向を向かなければなりません。病院もつぶしてはいけないし、医者も失業させてはいけないけれども、国が破産するわけにもいかない。そのことには、誰もが同意するはずで、本来であれば二人三脚で改革を進めるべきです。
――時間がかかりそうですね。
津川:いや、そうとも限りませんよ。米国でも、クリントン元大統領の時代には、医療改革に医師会は反対をしましたが、オバマ前大統領の時には反対をしませんでした。医療費が拡大して持続可能な状況ではないという問題が見えていれば、同じ方向を向いて議論することができると思います。 医師はすごく強欲なわけではありません。一般よりは高い報酬を得ているかもしれませんが、極端な高給取りではありません。人をだましてカネを儲けようとしているのではなく、基本的には患者さんを助けたいと思って医者になっている人がほとんどです。医療費で国の財政が破綻するまで、今の制度を続けようとは思っていません。
+ただ、自分たちだって生活が心配だし、国に対する不信感があるから、なかなか前に進まないのだと思います。それでも、問題が顕在化していけば、二人三脚で問題解決に取り組むようになってくると思います。
――医療費拡大の要因の1つに、延命治療など終末期にかかる高額の重装備医療があるとも言われています。
津川:ここで注意をしなければいけないのが、ほとんどの研究は、亡くなった患者さんについて、例えば亡くなる前の6カ月間にかかった医療費を調べ、生涯の医療費に占める割合を算出するといったものです。亡くなったというのは結果なので、医療行為を施して回復した患者さんのデータは含まれません。 つまり、亡くなった患者さんの終末期にかかった医療費が高額なのは、ある意味当然で、その数値が独り歩きしがちです。そもそも、健康な人には医療費はほとんどかかりません。具合が悪くなって、突然、多額の医療費がかかるわけです。そうした背景も、考慮しなければなりません。
+もちろん、日本ではやたらと胃ろうを作ったり、おそらく患者さんが望んでいないであろう終末期医療が多いことは確かです。終末期医療には、痛みを緩和していい時間を過ごせるようにしようといった、患者さんが望むものもあります。しかし、寝たきりで意識もないのに胃ろうが入って何年も生き続けるといったこともあります。本人が望んでいないのに、誰も意思決定ができずに、ズルズルと延命してしまうのは不幸な状況でしょう。
+終末期医療の議論で注意すべきなのは、本来、生きたい人に対して社会的なプレッシャーをかけるようなことはあってはならないということです。高齢者なのに抗がん剤を打ったらもったいないではないか、といった意見も聞きますが、90歳を超えてもしっかり歩いてご飯も食べて元気な方だっているわけです。 終末期医療はお金がかかるので削減しましょう、という議論ではなくて、本当に患者本人や家族はどのような医療を望んでいるのか、といった議論を進めるべきです。胃ろうを入れたり、意識のないまま寝たきりで生き続けたりすることは、患者さんの多くは望んでいないはずです。
+日本では多くの場合、家族に「どうしますか」と意思決定を求めますが、患者さんの生き死にを家族はなかなか決断できません。ですので、国民一人ひとりが、あらかじめ寝たきりになったら、延命は止めてほしいという意思表示をしておくべきなのです。 医療費が高いから延命をやめましょう、という議論ではなく、それはみんなにとって望むべき理想的な医療ではないのでやめましょう、という議論を展開すべきです。医療費が高いから、という議論にすると、必ず、高齢者や病気の人が悪者にされてしまう。
――それは、冒頭で指摘した世代間の対立をあおり、社会を分断するリスクを高めてしまうことにつながってしまいますね。
津川:そうです。どの国でも、「高齢者だから」というように年齢で区切って医学的な適用を拒否することはしていません。年齢を判断材料にすることはあっても、医療行為を拒否することは倫理的に問題があります。  重要なのは、無駄な医療をやめることです。そもそも、医療費の2割は無駄と言われています。年齢によって医療の適用を区別するのではなく、どうしたら医学的に必要な医療に限りある財源を有効活用できるかという議論を、国民レベルで深めていくべきでしょう。
――その際に大切なのは、私たち一人ひとりが、どう生き、どう死ぬかという、死生観をしっかりと持つことなのかもしれませんね。
津川:それこそが、幸せに暮らし、幸せに死ぬために必要なことだと思います。そして、それによって副次的に、医療費が減っていくのだと考えられます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/051000049/061200007/?P=1

中山氏が語る外科医の勤務実態は、想像以上に厳しいことに驚かされた。 『「外科医は眠らねど余裕で執刀」という文化が脈々と続いてきたのです』、 『睡眠不足では手術の質が下がって当たり前』、 『外科医の9割は厚労省の定める「過労死ライン」の労働時間を軽々と超えているというデータもあります』、など驚きの連続である。 『高齢化が進むほど手術件数も増える』、のに 『小児科医は増えているのに外科医は減少』、というのは困った事態だ。報酬での優遇については触れられてないが、外科医としては自らは言いだし難いということなのだろうか?「複数主治医制」については、連絡ミスへの対応策が必要だろう。
モアレム氏が語る最新の遺伝子科学の成果も、驚きだ。 『もし人生というものが、生物学的に、また遺伝子的にあまりにもたやすいもので、自分の体や自分に対して何の挑戦もしなくていい、というのであれば、私たちは繁栄しなかったでしょう。日本の武術をみるとわかると思います。鍛えれば鍛えるほど強くなり痛みを感じなくなります。私たちの体も、遺伝的にそれと同じように機能するのです』との指摘は、人類の進化の必然性を示唆しているのかも知れない。
津川氏の記事にある  『「シルバー民主主義」とラベリングすることは、世代間対立をはっきりさせ、高齢者を悪者扱いしてしまうことにつながるのではないかと危惧しています』、 『診療報酬制度は、もう制度的に持たない』、 『重要なのは、無駄な医療をやめることです。そもそも、医療費の2割は無駄と言われています。年齢によって医療の適用を区別するのではなく、どうしたら医学的に必要な医療に限りある財源を有効活用できるかという議論を、国民レベルで深めていくべきでしょう』、などの指摘は正論だ。津川氏のようなバランスのとれた考え方をする若手医療政策学がいることを知っただけでも、なにやら嬉しくなった。
タグ:医療問題 シャロン・モアレム 総合南東北病院 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン (その5)(徹夜明けの外科医に手術されるの 嫌ですか?、その「ひと口」が遺伝子を変える!?、高齢者優遇と医療費拡大、悪いのは誰だ?) 中山 祐次郎 徹夜明けの外科医に手術されるの、嫌ですか? 第6回 ブラック企業も真っ青の外科医という仕事 外科医長 外科医が全部で13人、大腸がんの手術を専門とする医師は私を入れて4人もいます 手術中に居眠り? 助手ならあり得ます 帰りたくても帰れない外科医の実態 当直明けがどのような状況 睡眠不足では手術の質が下がって当たり前 外科医の矜持 「外科医は眠らねど余裕で執刀」という文化が脈々と続いてきたのです 当直明けの外科医の執刀は手術関連の死亡を増やす」という論文 外科医の9割は厚労省の定める「過労死ライン」の労働時間を軽々と超えているというデータもあります 業務そのものの性質 術後、患者さんの状態は不安定になります。血圧が下がったり、尿が出にくくなったり、止血できていたはずなのに後で大出血することだってあります 高齢化が進むほど手術件数も増える 小児科医は増えているのに外科医は減少 給料が同じなら誰だって、仕事がきつくなくて訴訟リスクが低い道を選びます 複数主治医制 その「ひと口」が遺伝子を変える!? 「遺伝学者×医師」が明かす“遺伝子スイッチ”の真実 『遺伝子は、変えられる。』著者 日常生活で行うすべてのことが、遺伝子の働きを変え、さらにそのことが私たちの暮らし方、そして人生までも変えていくんです エピジェネティックな変化のどの程度が次世代に伝わるかは、完全にはわかっていません 細胞はその遺伝子が発現して機能するのです。それが私たちの生命が辿る道を決定します 津川友介 高齢者優遇と医療費拡大、悪いのは誰だ? 医療政策学の若手論客・津川友介氏に聞く 「シルバー民主主義」というのは、日本によくあるラベリングではないでしょうか。言葉が独り歩きしています。若者が選挙に行かない問題などは、なかなか解決が難しいですよね。そもそも、それが本当に問題なのかと考えてみる必要もあると思います 、「シルバー民主主義」とラベリングすることは、世代間対立をはっきりさせ、高齢者を悪者扱いしてしまうことにつながるのではないかと危惧しています。それは、あまりいいやり方ではないでしょう 日本は、医療費の問題にしても、高齢者に高額の抗がん剤を使うのはどうなのかとか、透析患者さんに医療費をたくさん使うのはどうなのかとか、そういう国民間の対立構造を生む議論を、何かと持ち出す傾向にあります 社会の分断を生むことにつながりかねません 日本では、ここ最近は財政上の問題などもあり、そのはけ口の矛先が高齢者に向いているような気がしてなりません。 そういう議論が本当に問題解決に向けて正しい方向性なのかを、少し冷静になって考えた方がいいと思います。放っておくと、こうした議論はどんどん極端になり、米国のような状況になってしまうと思いますよ そもそも、医療費のコントロールは難しい 国の財政では防衛費や教育費などは政治的な判断で決定できます 医療費は、医療サービスがどれだけ使われているかや、どれだけ新しい高額の薬が開発されるかなど、外的に決まる要素が非常に大きい。間接的にコントロールすることはできても、予算配分できちっとコントロールすることは難しいという現実があります 医療費については、2つのことを考える必要があります。1つは、今、どれくらいかかっているかという、医療費の水準です。そしてもう1つが、毎年どれくらい上がっているのかという、増加率の問題です 自己負担を少し上げるというのは、1つ目の医療費の水準を下げることなのですが、増加率は変えてくれません 診療報酬制度は、もう制度的に持たない 日本は世界で一番、MRIとCTが多い国になり、外来の件数や入院日数も米国の2~3倍、ベッド数も病院数も多いのです。分かりやすく言えば、医療サービスの単価が非常に低く、薄利多売によって経営を成り立たせている状態だと考えられます 日本では毎月来てもらうとか、来てもらうだけだと赤字だから、検査もしています。糖尿病では毎月コレストロールを調べる必要はないのに、毎月調べる。患者さんも、それでしっかり診てもらっているという気になるから、嬉しく思う。患者さんが腰が痛いと言ったら、比較的簡単にMRIを撮ります。患者さんの自己負担割合も低いので、お金の面でもブレーキがかからない。要するに、構造的に歪んでしまっている 民間企業である日本の病院は利益を最大化しようとする 大きな医療改革は、トップダウンで政治的に実施せざるを得ないと思います。ただし、拙速にやってはいけません。医療改革は、ハイリスクです 包括支払いにペイ・フォー・パフォーマンスを組み合わせるというのが、欧米では標準的になりつつあるのですが、日本でも「包括支払い」が部分的に導入されているとはいえ、まだ不十分だと思います 日本ではやたらと胃ろうを作ったり、おそらく患者さんが望んでいないであろう終末期医療が多いことは確かです 本人が望んでいないのに、誰も意思決定ができずに、ズルズルと延命してしまうのは不幸な状況 終末期医療はお金がかかるので削減しましょう、という議論ではなくて、本当に患者本人や家族はどのような医療を望んでいるのか、といった議論を進めるべきです どの国でも、「高齢者だから」というように年齢で区切って医学的な適用を拒否することはしていません。年齢を判断材料にすることはあっても、医療行為を拒否することは倫理的に問題があります
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アベノミクス(その21)「働き方改革」7(企業は50歳以上を“使う”しかないのだ では、使われる側はどんな努力をなすべきか?、「働き方改革」を「賃金カット」の体のいい口実にさせるな、「74歳まで働く人生」になってしまうのか?) [経済政策]

アベノミクス(その21)「働き方改革」については、5月6日に取上げた。今日は、)「働き方改革」7(企業は50歳以上を“使う”しかないのだ では、使われる側はどんな努力をなすべきか?、「働き方改革」を「賃金カット」の体のいい口実にさせるな、「74歳まで働く人生」になってしまうのか?) である。

先ずは、健康社会学者の河合 薫氏が5月23日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「現実、企業は50歳以上を“使う”しかないのだ では、使われる側はどんな努力をなすべきか?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・3年後の2020年。大人(20歳以上)の「10人に8人」が40代以上になる。50代以上に絞っても、「10人に6人」だ。 要するに東京オリンピック開催時(予定どおり開かれれば…)、どこの職場も見渡す限りオッさんとオバさんだらけになるってこと。 いかにこれが深刻な状況かは、下のグラフをごらんいただけば一目瞭然である。
・このグラフのように「0」を50歳に日本人口を二分割すると、すごくないですか? しかも、現在はまさしく“上下”が逆転する転換期で、50歳以上対策をどうにかしなきゃで悪戦苦闘する時期なのだ。 50歳を過ぎた社員をどうやって「会社の戦力にする」かで、会社の寿命が決まるといっても過言ではない。“追い出し部屋”だの、希望という名の“絶望退職”で、働かないオッさんをやっかいばらいしたがる会社は後を絶たないけど、使えるものを使わないことには、会社がつぶれることになりかねないのである。
▽大和証券は再雇用した営業職の年齢制限を撤廃
・先々月、昭和のオッさんたちの常備品だった“仁丹”のアノ会社が、第四新卒を始めたことを取り上げたが(日本と仁丹を救うオッサンの「根拠なき確信」)、「第四新卒採用」には、なんと1800人の応募があったそうだ。 ふむ。世の中のオッさんも捨てたもんじゃない。というか、やっぱり「オッさんたちがこの国の“希望”なのかも」と思ったりもする。
・と、そんな中、大和証券が「70歳まで」としていた営業職の再雇用の年齢制限を撤廃するとの方針を固めたとの報道があった。 「年齢を重ねて経験や知識が豊富で、この世代はバブル期に多額の収益を稼いだ社員が多い。顧客も高齢化していくので、営業も同世代の方が効果的だ。多くの顧客と信頼関係を築いてきた社員に長く勤め続けてもらうことで、業績向上につながると期待している」(朝日新聞より)
・実に喜ばしい報道である。ちなみに現在の営業職最高齢は、67歳。後に続く“70歳営業マンの星”となるべくご活躍することを心から期待している。 でも、その一方で「ホントに企業にとってプラスになるのか」という心配もある。
・いや、もちろんベテラン社員が若い人より稼ぎが悪いとか、50歳以上を雇用し続けることで企業の生産性が低下するといった証拠はないし、私自身「年齢を重ねることで得る経験や知識」はどんなに若手にお金を投資しようとも得られない企業の資産だと断言してきたので、「業績の向上につながる」と信じている。
・だが、「ああ、自分たちの時代は終ったなぁ」と感じることも少なくないので、ちょっとばかり心配なのだ。  どんなに社員の長期雇用のメリットのひとつに、「彼ら彼女らに付いた顧客のロイヤリティーが向上することがある」とさまざまな研究から確かめられていて、担当者の変更は高齢者ほど嫌うばかりか、“乗り換え”の機会にもなりがちであるとしても、「オッさんたちがニッポンの希望だ!」ともっともっと強くアピールして、オッさん、オバさんたちと一緒に私もがんばりたい。
・そこで今回は、「オッさんの価値」というテーマでアレコレ考えてみようと思う。 まずは「体力」について、「あ~やっぱりね~」という調査結果から紹介する。
・東京都老人総合研究所が1992年と2002年に、約4000人を対象にふだんの歩行スピードを調べ、比較した結果がある(「日本人高齢者における身体機能の縦断的・横断的変化に関する研究―高齢者は若返っているか?―」)。 「歩行スピード」は年齢と共に低下するため、身体機能のレベルの総合的な測定に多く用いられるのだが、ごらんのとおり1992年から劇的に伸びていることがわかる。 (出典:経済産業省「長寿社会における成長戦略」参考資料3ページより引用) 
・1992年の64歳の歩行スピードは、2002年の75歳とほぼ同じ。  つまり、10年前にくらべ11歳も身体機能が若く、70歳は59歳、60歳は49歳。 身体的には、60歳定年はおろか65歳定年でも早過ぎる。 っというか、こんなにカラダが元気な人たちを、職場で放し飼いにしておくのはもったいないとしか言いようがない。
▽身体だけでなく、アタマも意外に劣化しない
・「でもさ~、カラダだけ元気ってのが案外、部下には困るといかウザいというか……」 はい、そのお気持ちよ~くわかります。でも、安心してください。 なんと「日常問題を解決する能力や言語(語彙)能力は、年齢とともに磨かれ、向上している」ということが、いくつもの調査で確かめられているのである。
・そもそも人間の知能は「流動性知能」と「結晶性知能」の2つの側面に分かれる。 流動性知能とは、「新しいことを学んだり、新しい環境へ適応したり、情報処理を効率的に行ったりするための問題解決能力」で、記憶力や暗記力、集中力などを指す。 結晶性知能とは、「学校で学んだことをや日常生活や仕事などを通じて積まれた知識や経験を生かした応用する能力」で、いわゆる経験知や判断力だ。
・かねてから「身体能力のピークは20代であるのに対し、知力は発達し続ける」とされていたのだが、近年、経年データを使った分析(縦断研究)が行われるようになり、「どちらの能力も、60歳代前半までは大きく低下しない」ことがわかった。
・具体的には……、流動性知能のうち、記憶力や暗記力は40歳代後半から急速に低下する。しかし語彙力は、若干低下する傾向はあるもののさほどではなく、統計的にも有意じゃない。 一方、結晶性知能は60~70歳前後まで緩やかに上昇。74歳以降緩やかに低下するが、80歳ぐらいまでは20歳代頃と同程度の能力が維持される。
・つまり、「業績の向上」につながる経験を「結晶性知能」とすれば、カラダさえ元気ならエイジレスで業績に貢献することが可能なのだ。 さらに、脳科学の発達により「認知機能が衰え始めるのは亡くなる5年ほど前」ということもわかった。しかもその低下は決して急激ではなく、ゆるやかに低下することが確かめられている。
・このコラムでも何度も取り上げた、米マサチューセツ州にあるヴァイタニードル社は、まさしく「結晶性知能」を生かすことで企業の業績を向上させた企業だ。(「定年延長で激化する「“オッサン”vs若者」バトル」) 経験と専門知識を持つスペシャリストも積極的に雇用することで、効率的に生産性を向上させている。 私が記事にしたとき、99歳で最高齢だった方は100歳で辞めたのだが、理由は「転居により通勤が難しくなった」こと。裏を返せば、100歳を超えても、いちサラリーマンとして、企業に勤めることは可能。
・「そんなに働きたくないよ~」という悲鳴も聞こえてきそうだが、ヴァイタニードル社のHPに掲載されている高齢者たちの表情をみると、ちょっとばかりうらやましいというか、勇気がでるので是非ともごらんいただきたい(こちら)。
▽高齢者雇用で業績が下がる証拠はない
・政府の「働き方改革実行計画」には、 ――高齢者の7割近くが、65 歳を超えても働きたいと願っているが、実際に働いている人は2割にとどまっている。労働力人口が減少している中で、我が国 の成長力を確保していくためにも、意欲ある高齢者がエイジレスに働くため の多様な就業機会を提供していく必要がある。
・としているけど、「意欲ある人」のための就業機会ではなく、「企業が生産性を上げる」ために、65歳を超えても能力発揮の機会を提供していく、といった雇用する側の意識改革が必要であることは、体力と知能のエビデンスから明らか。 ただし、ただ単に「年を取れば上昇する」というものではない。 低下しないことと、上昇することは別で、「年取ったから知能が低下する」わけでもなければ、「若いものより、年寄りのほうが知恵がある」わけじゃない(ややこしいですけど……)。
・まぁ、当たり前といっては当たり前なのが、気になるのはその個人差が高齢になるほど拡大するということだ。 つまり、50歳を超えても「企業に貢献できる存在」になるには、「経験知」としての結晶性知能を高めておくことが大切なのだ。
・結晶性知能を高める方法として、近年、急速に注目されているのが「認知の予備力(Cognitive Reserve)」である。 これは本を読んだり映画を見たりするなどして言語能力を高め、学校の勉強をし、仕事に主体的に取り組み、仕事以外の活動に積極的に参加することで、平たくいえば、よく学び、よく遊び、よく働くこと。仕事だけじゃダメ、勉強だけでもダメ。体と頭を使い、いろいろな人と交流することが「認知の予備力」につながっていく。
・認知の予備力は、私の専門である健康社会学や組織心理学の「暗黙知(tacit knowledge)」と極めて近く、「難しい相手との交渉」や「部下の心を掴む」など、特定の目標を達成するための手続き的な知識で、単なる仕事に関する知識や一般知識ではない。 で、こういった経験を繰り返し、「大きな顧客をゲットできたぞ!」「○●君(部下)もずいぶんと成長したな」といった成功体験や、上手くいかなくとも「なるほど。そういうことだったのか!」と失敗から学ぶ体験で、暗黙知は飛躍的に伸びる。
▽心の定年に甘んじてはダメだ!
・つまり、何だか古くさくて、説教くさいけど「若い時の苦労は買ってでもしろ」ってことが科学的に実証されているのだ。 「え? オレ、苦労してないかも……」という人は、今からでも遅くない。自分の能力を超えたチャレンジを今のうちにやっておいたほうがいい。 40代後半で「心の定年」を迎えている場合ではない。腹の出具合や足腰の衰えや、増えた白髪や広くなった額を気にするだけじゃなく、今のうちから「認知の予備力」を高める努力もやるしかない。
・現状に甘んじている人の「未来の価値」は残念ながら低く、カラダ“だけ”が若いという、厄介な存在に成り下がってしまうのである と同時に、企業も「動けば動くほど周りの負担を増やす」やっかいなオッさんを量産しないためには「経験信仰」に頼るのではなく、「認知の予備力」を蓄える働かせ方を模索し、長期的目線で「高齢者(イヤな言葉ですけど)雇用」を捉えることが肝心なのだ。
▽オッさんと若手のペアが面白そう
・て、最後に興味深いことをもうひとつだけ話して終わりにします。  このコラムでは何度も書いている、人間が持つたくましさ、困難を乗り越える内的な力である「SOC(Sense of Coherence)」も、年齢と共に高まることが、国内外の実証研究の積み重ねによって確認されている。 ピークは70代前半。先の結晶性知能と同じだ。
・で、高齢者のSOCは、「主観的健康、人格的成長(詳細は森下仁丹コラム)、経済的豊かさ、周囲の人たちとの良好な人間関係」が高さと関連があり、「経済的な不安定さ」はSOCを低下させる。 さらに、他者に「教える」という経験が、高齢者のSOCを高めることもわかっている。
・暗黙知の高いオッさんと、記憶力の高い40歳以下の社員がタッグと組めば、互いに知能を補完しあえるし、生産性に貢献する化学変化が期待できる。 「10人に8人が40代以上」という現実は、すぐそこ。 オッさんもがんばる。オバさんもがんばる。でもって、企業は何年もかけて培ってきた経験知をもつ人々を、いかに活用するかで、10年後が決まる。
・10年か…。私がここで書き始めたのは10年前。10年後…。私もがんばります! 悩める40代~50代のためのメルマガ「デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』」(毎週水曜日配信・月額500円初月無料!)を創刊しました!どんな質問でも絶対に回答するQ&A、健康社会学のSOC概念など、知と恥の情報満載です。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/051900105/?P=1

次に、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏が6月1日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「働き方改革」を「賃金カット」の体のいい口実にさせるな」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・安倍内閣は「働き方改革」政策で、長時間労働を厳しく規制する方向を打ち出している。この結果、何が起こったか? 「毎月勤労統計調査」によると、超過労働時間は減った。ただし、これは所定外給与を減らす結果にもなっている。他方で、本当に問題となる「過労死レベル」に近い長時間労働は減っていない。 労働時間の適正化は、生産性の向上よって実現すべきものである。「所定外労働時間」という表面的な現象だけにこだわって強制的に労働時間を減らせば、その歪みは労働者に及ぶ。
▽超過労働減ったが、所定外給与も2016年6月以降、落ち込んでいる
・まず、労働時間や給与の推移を、実際のデータで確認してみよう。 「毎月勤労統計調査」によると、30人以上の事業所の一般労働者の労働時間は、図表1のとおりである。 所定内労働時間には、2013年以降、あまり大きな変化が見られない。それに対して、所定外労働時間は、14年以降かなり増えたが、長時間労働が社会問題化した16年以降は減少している。 指数の年平均値で見ると、13年に96.0であったものが15年に100.0となったが、16年には98.2に減少している。
・これは、長時間労働に対する社会的批判の高まりと、長時間労働を抑制しようという政府の政策に影響されて、企業が所定内労働時間は一定に保つ半面で、所定外労働を減らした結果であると解釈できる。 給与の推移は、図表2に示すとおりである。 所定内給与は、若干の例外を除くと、15年以降、17年2月まで増加を続けた。 しかし、所定外給与は、16年後半からかなり大きく落ち込んでいる。対前年同月比は、17年2月を除くと、16年6月以降一貫してマイナスだ。超過勤務手当てが減ったのである。
(注)労働基準法では、1週40時間、または、1日8時間を超えて働かせてはならないことになっている。この労働時間を、「法定労働時間」という。 それに対して、「所定労働時間」とは、会社で定めた労働時間のことだ。
・厚生労働省、「平成27年就労条件総合調査結果の概況」によると、1日の所定労働時間は、1企業平均7時間45分、労働者1人平均7時間45分である。週所定労働時間は、1企業平均39時間26分、労働者1人平均39時間03分となっている。
▽長時間労働が多いのは パートより一般労働者
・以上で述べたことを、いわゆる正社員の一般労働者とパートタイム労働者に分けてみよう。 最近の状況は、図表3に示すとおりだ。 月間総労働時間について、調査対象の産業全体で見ると、一般労働者は170.7時間で、パートタイム労働者85.7時間の1.99倍になる。
・所定外労働時間は、一般労働者の場合には、総労働時間の8.9%にあたる15.2時間だ。 これに対して、パートタイム労働者の場合には2.6時間で、これは総労働時間の3.0%にすぎない。 したがって、長時間労働が問題になるのは、主として一般労働者であることが分かる。
・図表1には示していないが、所定外労働時間の総労働時間に対する比率が最も高いのは運輸業、郵便業で、15.0%である。それでも、月間所定外労働時間は28.1時間だ。これは、健康に障害が出るほどの値ではないように思われる。
▽平均値では実態がわからない 分布を見る必要がある
・上で述べた数字を見る限り、長時間労働は、日本全体の問題としてはあまり深刻ではないような印象を受ける。 しかし、これは、統計数字を平均値だけで見ることによって生じる錯覚だ。平均で見ると大きな問題でないが、一部の人にとっては大きな問題なのだ。 したがって、労働時間の平均値だけでなく、「分布」を見る必要がある。
・これは、図表4(2016年3月のデータ)と図表5(17年3月のデータ)に示すとおりだ。 なお、前者は月末1週間の就業時間、後者は月間就業時間と、統一が取れていない。しかし、労働力統計のデータには同一形式の統計表がないので、やむを得ない。 図表4を見ると、週35時間から59時間の間に3782万人いる。これは、就業者総数6339万人の約6割だ。 また、図表5を見ると、就業者全体の約3分の2の人々の月間就業時間は、約121時間から240時間の間である。 いずれの数字を見ても、日本人の大部分の人にとって、労働時間はそれほど長くはないことが分かる。これは、図表3を見ての印象と同じものだ。
▽残業月平均80時間の「過労死ライン」 全体の1割を占めるのは大問題
・しかし、図表4を見ると、2016年3月において、「週60時間以上」が543万人いるのである。これは、就業者総数の6433万人の8.4%だ。 週80時間以上も67万人で、全体の約1%いる。 また、図表5を見ると、月間就業時間241時間以上の就業者が584万人いる。これは、就業者総数の6433万人の9.1%だ。 仮に、全就業者の平均月間労働時間167.4時間を所定内労働時間と考えると、超過勤務が約80時間程度以上ということになる。
・時間外労働時間数が月平均80時間は、「過労死ライン」と呼ばれている。それを超えている人が、全体の1割近くいるわけだ。 図表6に示すように、正規の職員・従業員の場合は、月間就業時間が241時間以上の就業者の比率は12.0%と、就業者平均より高くなる。さらに、役員では、15.6%と、もっと高くなる。
▽2.7%の企業で該当! 深刻な長時間労働は減っていない
・すでに述べたように、図表4と図表5の数字を、直接には比較できない。 ただし、「週60時間以上」と「月241時間以上」を同一視しても、大きな間違いはないだろう。 そうだとすると、長時間労働者(図表4では「週60時間以上」、図表5では「月241時間以上」)の比率は、この1年間に、就業者総数の8.4%から9.1%に上昇していることになる。つまり、深刻なレベルの長時間労働は減っておらず、むしろ増えているのだ。
・なお、2016年5月に厚生労働省が発表した報告書によれば、1ヵ月間の残業が最も長かった正社員の残業時間が「過労死ライン」の80時間を超えた企業は、調査対象の22.7%にのぼる。
▽現実は「体のいい賃金カット」 労働生産性の引き上げが重要
・結局、平均的な所定外労働時間が減って所定外給与が減った半面で、深刻な長時間労働は減っていないということになる。 これは、減らせない事情があるからだろう。 強制される長時間労働が問題であることはいうまでもない。しかし、超過勤務をしても働きたいという人も、一方にはいる。超過勤務手当を得たい人もいるだろうし、組織の中での地位上昇を望むために、できるだけ長く働きたいと思う人もいるだろう。
・また、仕事のノルマがある以上、「オフィスで仕事ができなければ、自宅に持ち帰って仕事をする」ということにもなりかねない。もしそういうことになれば、仕事量は変わらずに賃金だけが減らされることになる。これでは、「体のいい賃金カット」ということになりかねない。
・労働生産性が上昇し、それによって結果的に労働時間が減るのでなければ、本当に問題となる長時間労働は減らず、労働者の所得を減らすだけの結果に終わってしまうだろう。
http://diamond.jp/articles/-/130136

第三に、みずほ証券チーフ。マーケット・エコノミストの上野 泰也氏が6月20日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「74歳まで働く人生」になってしまうのか? 経産省若手プロジェクトから考えたこと」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽連載200回を機に考える、「人はなぜ働くのか」
・「上野泰也のエコノミック・ソナー」と題したこのコラムをお届けするのは、今回で区切りの200回目になる(※参考 連載第1回=2013年6月3日配信記事はこちら)。よく続いたものだと自分でも思う反面、次々と書くネタが出てくる経済・マーケットの世界は終わりのないドラマのようなもので実に奥が深いとあらためて感じ入る。今回は、筆者の人生観も交えながら、「なぜ働くのか」や世代間対立について考えてみたい。
・5月18日に経済産業省で開催された第20回産業構造審議会総会で、中長期的な日本の社会の在り方に関する次官・若手プロジェクトの提言 「不安な個人、立ちすくむ国家」(→資料 ※経済産業省内ページ)が発表された。このプロジェクトは省内で公募された20代・30代の若手30人で構成されており、メンバーは自分の担当業務をそれぞれ行いながらプロジェクトに参画。「国内外の社会構造の変化を把握するとともに、中長期的な政策の軸となる考え方を検討し、世の中に広く問いかけることを目指すプロジェクト」である。世代を越えて傾聴すべき若者の意見か、それとも税金の無駄遣いにすぎないかで、SNSなどで論争を巻き起こしたペーパーなのだが、結論の部分に以下の文章がある。
▽少子高齢化、逆算するとこの数年が勝負
・「2025年には、団塊の世代の大半が75歳を超えている。それまでに高齢者が支えられる側から支える側へと転換するような社会を作り上げる必要がある。そこから逆算すると、この数年が勝負。かつて、少子化を止めるためには、団塊ジュニアを対象に効果的な少子化対策を行う必要があったが、今や彼らはすでに40歳を超えており、対策が後手に回りつつある。今回、高齢者が社会を支える側に回れるかは、日本が少子高齢化を克服できるかの最後のチャンス。2度目の見逃し三振はもう許されない」
・かなりマイルドで婉曲な表現が使われているが、端的に言うと、できるだけ多くの高齢者が働き続けて社会を「支える側」に回ることにより、少子化対策の失敗をカバーしようという発想である。
▽若い世代が高齢者に向ける視線はかなり厳しい
・筆者がこのペーパーよりも大きな関心を抱いたのが、そうしたアイディアがより強く前面に出ていた上記の約1年前の文書である。2016年5月16日に開催された第18回産業構造審議会総会に提出された、次官・若手未来戦略プロジェクトのディスカッションペーパー「21世紀からの日本への問いかけ」(→資料 ※経済産業省内ページ)がそれ。すでに50代半ばにさしかかっている筆者は内容を一読して、若い世代が高齢者に向ける視線には(本人が意図するとせざるとにかかわらず)相当厳しいものがあるなと痛感させられた。 「日本の立ち位置」というタイトルがつけられた2番目の章に、以下の記述がある。
▽最先端技術を活用し、高齢者はずっと働いて
・「バイオ技術の活用で世界に先んじて健康寿命が延び、 AI・ロボット技術の積極導入によるサポートが可能になれば、高齢者も、支えられる側から、むしろ価値創造側に回ることができるのではないか」 「わが国の平均寿命は戦後と比較して30年延伸。健康寿命も70代に。今後、AI・バイオ技術の導入で健康寿命が延びれば、高齢者は、知識・智恵を活用した人的資源となるのではないか」
・そして、「今後の仮説」と題された章の「基本的な方向性と仮説」には、次の文章がある。 「高齢者の智恵・人脈・経験等を活かした労働参加の促進が社会的に大きな利益。→ AI、IoT、バイオ技術を活用し、世界最高レベルの高齢者の労働参加(戦後の社会保障・雇用制度の抜本見直し)」 「第4次産業革命がもたらす所得格差が世界的な課題となる中で、我が国は、①高齢者の労働参加、②様々な『差異』を生み出す人材の創出によって、大きな政府による所得再分配策に依らずとも所得の二極化を解決できるのではないか」 
▽高齢層の就労拡大により、社会保障制度は維持できるか
・「AI・IoT・バイオ技術等を活用し、高齢者の就労を促進することができるのではないか。健康寿命の伸びに実態を合わせていけば、現役世代2人で高齢世代1人を支える構造を今後も維持できるのではないか」  この「現役世代2人で高齢世代1人を支える構造を今後も維持できる」という見方のエビデンスとして「高齢者の現役参画と生産年齢人口比率の関係」と題した数表があり、①2015年時点で65歳以上人口/15~64歳人口=2.3、②2035年時点で70歳以上人口/15~69歳人口=2.4、③2055年時点で75歳以上人口/15~74歳人口=2.5という数字が、丸で囲ってある。要するに、健康寿命が伸びれば、2035年時点で69歳までの人の多くが就労した状態であることができ(現役世代にとどまることができ)、2055年時点ではこれが74歳までになり得るから、海外からの移民などの積極的受け入れを含む人口対策を強化しなくても、高齢層の就労拡大によって、社会保障制度はなんとか維持できるのではないかという、なんとも大胆な仮説である。
・若年層から出てきたこうしたアイディアに厳しさ、さらには冷たい視線さえ筆者が感じたのは、「人は何のために働くのだろうか」「健康寿命の間はひたすら働き続ける人生が本当によいのだろうか」「そういう人生が楽しいと思える人は多数派なのだろうか」といった、素朴な疑問を抱くからである。
▽働きづめの人生は幸せか?
・率直に言うと、自分の父親がそうだったような働きづめの人生には、筆者は全く魅力を感じない。働くことそのものに人生の大きな意義を見出してきた人は、団塊の世代などではそれなりに多いのかもしれない。だが、筆者は好奇心の塊のような人間であり、もともと多趣味ということもあって、引退したら健康なうちにいろいろなことをやりたいという欲求が非常に強い。悲しいことに膨らむ一方の子どもの教育費などを支払っても十分おつりがくるだけのお金をなんとか稼いで、自分の老後の自由な生活を少しでも楽しいものにする原資を得るために、心身ともに極度に疲弊している時でも必死に耐えながら、自分の仕事に日々全力を注いでいるわけである。
・働く目的について筆者がきわめて例外的な考え方の持ち主ではないことを示すため、ここで内閣府の「国民生活に関する世論調査」から、人々がなぜ働いているのかの調査結果を見ておきたい。
▽働く目的は何ですか? 「お金を得るために働く」が最多
・2016年6月23日~7月10日に実施された最新の調査結果で、「あなたが、働く目的は何ですか。あなたの考え方に近いものをこの中から1つお答えください」という問いに対する回答では、「お金を得るために働く」が最も多く、半数を超えた(53.2%)。むろん、働いて手にしたお金の使途はケースバイケースなのだが、筆者もこのグループに属している。 第2位は「生きがいをみつけるために働く」(19.9%)。以下、「社会の一員として、務めを果たすために働く」(14.4%)、「自分の才能や能力を発揮するために働く」(8.4%)、「わからない」(4.1%)となっている<■図1>。
・むろん、世代によって考え方には違いがある。年齢別の集計結果を見ると、「お金を得るために働く」が最も多かったのは「40~49歳」(68.3%)。「18~29歳」「30~39歳」も60%を超えた。筆者が属している「50~59歳」は58.5%である。一方、「60~69歳」では49.1%にとどまり半数未満。70歳以上では34.4%しかおらず、「生きがいをみつけるために働く」の32.0%とほぼ拮抗している。
▽若い世代は、高齢世代に「落とし前をつけてほしい」と思っている
・若い世代からすれば、日本政府の借金が後先を考えずにここまで膨大な額になってしまったのは自分たちより上の世代の責任であることは明らかだし、少子化対策や外国人受け入れ策を早い段階から積極的に推し進めなかったのも上の年代の人々の責任だということになるのだろう。したがって、そうした世代の人々は自分の健康をしっかり維持しながら(国の医療費の面で迷惑をできるだけかけないようにしながら)、70歳代半ばあたりまで現役世代として働くことにより、いわば「落とし前をつけてほしい」ということなのだろう。
・政治の表舞台にはまだ出てきていないものの、世代間の利害対立は、日本でも潜在的には非常に深いものになりつつあるように思える。そして、「引退して悠々自適の生活を送る」という、筆者のような世代が漠然とイメージしてきた人生のゴールのようなものは、だんだん遠くなりつつある、もしかするとなくなりつつあるのかもしれない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/063000099/?P=1

河合氏が 『東京オリンピック開催時、どこの職場も見渡す限りオッさんとオバさんだらけになる』、との指摘は確かに刺激的だ。 ただ、良く読むと、 『身体だけでなく、アタマも意外に劣化しない』、 『高齢者雇用で業績が下がる証拠はない』、 『心の定年に甘んじてはダメだ!』、などの指摘はもっともで、元気づけてくれるなかなかいい記事である。
野口氏が労働統計を基に、 『超過労働減ったが、所定外給与も2016年6月以降、落ち込んでいる』、 『長時間労働が多いのは パートより一般労働者』、 『平均値では実態がわからない 分布を見る必要がある』、 『残業月平均80時間の「過労死ライン」 全体の1割を占めるのは大問題』、 『2.7%の企業で該当! 深刻な長時間労働は減っていない』、 『現実は「体のいい賃金カット」 労働生産性の引き上げが重要』、などと指摘しているのはその通りだ。
上野氏が 経産省の産業構造審議会総会で示された次官・若手プロジェクトの提言 「不安な個人、立ちすくむ国家」のなかにある 『最先端技術を活用し、高齢者はずっと働いて』について、総論では理解しつつも、個人的には 『働きづめの人生は幸せか?』と問いかけている。しかも、『若い世代は、高齢世代に「落とし前をつけてほしい」と思っている』、のであれば、悠々自適などという選択肢は許されないのかも知れないが、高齢者にどのように働いてもらいたいのかのイメージなしに、経産省が問題提起だけしたというのも、画竜点睛を欠く印象を受けた。
タグ:経済産業省 野口悠紀雄 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 河合 薫 アベノミクス 上野 泰也 (その21)「働き方改革」7(企業は50歳以上を“使う”しかないのだ では、使われる側はどんな努力をなすべきか?、「働き方改革」を「賃金カット」の体のいい口実にさせるな、「74歳まで働く人生」になってしまうのか?) 現実、企業は50歳以上を“使う”しかないのだ では、使われる側はどんな努力をなすべきか? 要するに東京オリンピック開催時(予定どおり開かれれば…)、どこの職場も見渡す限りオッさんとオバさんだらけになるってこと 50歳を過ぎた社員をどうやって「会社の戦力にする」かで、会社の寿命が決まるといっても過言ではない 大和証券が「70歳まで」としていた営業職の再雇用の年齢制限を撤廃するとの方針を固めたとの報道 オッさんの価値 10年前にくらべ11歳も身体機能が若く、70歳は59歳、60歳は49歳。 身体的には、60歳定年はおろか65歳定年でも早過ぎる 身体だけでなく、アタマも意外に劣化しない 人間の知能は「流動性知能」と「結晶性知能」の2つの側面に分かれる 流動性知能とは、「新しいことを学んだり、新しい環境へ適応したり、情報処理を効率的に行ったりするための問題解決能力」で、記憶力や暗記力、集中力などを指す 結晶性知能とは、「学校で学んだことをや日常生活や仕事などを通じて積まれた知識や経験を生かした応用する能力」で、いわゆる経験知や判断力だ 流動性知能のうち、記憶力や暗記力は40歳代後半から急速に低下する。しかし語彙力は、若干低下する傾向はあるもののさほどではなく、統計的にも有意じゃない。 一方、結晶性知能は60~70歳前後まで緩やかに上昇。74歳以降緩やかに低下するが、80歳ぐらいまでは20歳代頃と同程度の能力が維持される 高齢者雇用で業績が下がる証拠はない 仕事だけじゃダメ、勉強だけでもダメ。体と頭を使い、いろいろな人と交流することが「認知の予備力」につながっていく 心の定年に甘んじてはダメだ! オッさんと若手のペアが面白そう 暗黙知の高いオッさんと、記憶力の高い40歳以下の社員がタッグと組めば、互いに知能を補完しあえるし、生産性に貢献する化学変化が期待できる 「「働き方改革」を「賃金カット」の体のいい口実にさせるな 超過労働減ったが、所定外給与も2016年6月以降、落ち込んでいる 長時間労働が多いのは パートより一般労働者 平均値では実態がわからない 分布を見る必要がある 残業月平均80時間の「過労死ライン」 全体の1割を占めるのは大問題 2.7%の企業で該当! 深刻な長時間労働は減っていない 現実は「体のいい賃金カット」 労働生産性の引き上げが重要 「「74歳まで働く人生」になってしまうのか? 経産省若手プロジェクトから考えたこと 産業構造審議会総会 中長期的な日本の社会の在り方に関する次官・若手プロジェクトの提言 「不安な個人、立ちすくむ国家」 少子高齢化、逆算するとこの数年が勝負 若い世代が高齢者に向ける視線はかなり厳しい 最先端技術を活用し、高齢者はずっと働いて 高齢層の就労拡大により、社会保障制度は維持できるか 働きづめの人生は幸せか? 若い世代は、高齢世代に「落とし前をつけてほしい」と思っている
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誇大広告(弾けた「水素水バブル」、飲んでも効かない「サプリ」一覧、「美容医療」のトラブルが一向に絶えないワケ、「油脂で健康に」の落とし穴) [社会]

今日は、誇大広告(弾けた「水素水バブル」、飲んでも効かない「サプリ」一覧、「美容医療」のトラブルが一向に絶えないワケ、「油脂で健康に」の落とし穴) を取上げよう。

先ずは、2月26日付け東洋経済オンライン「弾けた「水素水バブル」、日本トリムの言い分 国民生活センターの報道発表が大打撃」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・恨み節あふれる、業績の下方修正だった。整水器販売を手掛ける日本トリムは1月30日、第3四半期(2016年4~12月期)の業績を発表すると同時に、2017年3月期通期の業績見通しを引き下げた。従来予想の売上高173億円(前期比13.2%増)、営業利益34.7億円(同11.1%増)を、売上高153.5億円(同0.5%増)、営業利益30.2億円(同3.3%減)にするというものだった。
・同社は1982年6月、電解水素水整水器の製造および販売を目的として設立された。その後全国各地に営業拠点を広げ、2004年3月に東証1部へ上場。現在整水器では国内トップシェアを誇る。150億円余りの売上高のうち、整水器販売を中心とするウォーターヘルスケア事業が約95%を占めており、まさに水素水でのし上がってきた会社だ。
・それだけに悔しさが大きいのか、リリースでは業績を下方修正した理由をこう述べている。「昨年5月の産経ニュースを発端とする水素水に対する否定的な一連の報道の影響からは回復に向かう基調でした。しかし、昨年12月に国民生活センターから水素水に関する報道発表がなされ、その風評による影響が新たに発生し、販売効率が下がる結果となりました」。同社の株価は下方修正を公表した翌日に7%近く下落(終値ベース)、その後も膠着状態が続いている。
▽国民生活センターがテストを実施
・昨年5月の産経ニュースとは「美容、ダイエットと何かと話題の『水素水』 実はかつてブームを巻き起こした『あの水』と同じだった…」という記事。昨今水素水が注目されているが、一時期ブームとなったアルカリイオン水と基本的に中身は変わらない、といった内容だった。
・ただ、この記事に日本トリムの名前は登場していない。直接的なきっかけは、独立行政法人国民生活センターが2016年12月15日に報道発表した「容器入り及び生成器で作る、飲む『水素水』――『水素水』には公的な定義等はなく、溶存水素濃度は様々です――」という文書だ。 同センターは、水素水に関する相談が2011年度から2016年9月末までの間で累計2260件に上ったことを踏まえ、水素水に関する調査を実施。飲用水として販売されている水素水10銘柄と水素水生成器9銘柄の計19銘柄について、商品の表示や広告のあり方、溶存水素濃度(水に溶けている水素ガス〈水素分子〉の濃度)をテストした。
・このテストは、水素水の機能を科学的に分析することよりも、表示や広告のあり方、表示どおりの水素濃度があるかなどを調べることを主眼としたものだった。テストでは溶存水素濃度が表示値より測定値のほうが低かったケースがあったほか、製品に記載された「様々な病気の原因といわれる悪玉活性酸素を無害化する」「アトピーに かゆい部分に水素水をつけて下さい」などの表示も、健康増進法や景品表示法などに抵触するおそれがあるとされた。
▽テスト対象になった影響は甚大
・日本トリムの製品では定価17万7120円(税込み)の水素水生成器がテストの対象となった。テスト対象銘柄は「相談のあった銘柄をもとに選んだわけではない」(国民生活センター)とするが、日本トリム・執行役員経営企画部長の田原周夫氏は怒りを隠さない。「われわれは全国28カ所の事業所を通じ、毎月1回必ず消費生活センターに『何か問題はありませんか』と聞きに行っている。これまで消費者からは『だまされた』というクレームは一件もない。なぜわれわれが調査の対象に選ばれなければいけないのか。相談件数の内訳こそ、開示されるべきだ」。
・それに対して、国民生活センター商品テスト部の担当者は次のように反論する。「今回のテストは多くの消費者が飲用していると考えられる水素水の実態を調べることを目的としているため、消費者が購入するに際し、広く一般に流通している商品群の中から選んだ。消費者が銘柄を名指しして相談しているケースばかりではないため、集計結果の内訳は出していない」。世の中への影響を考えれば、相談件数の内容よりも大手をテスト対象にしたほうがいいという説明である。
・消費者から見て最も大きな問題は、同社が販売する整水器が本当に「まがい物」かどうかという点だろう。田原氏は「当社の整水器は厚生労働省が所管する医薬品医療機器等法(旧薬事法)に規定された医療機器であり、厳しい基準を満たしている。管理医療機器として胃腸症状の改善も認められている」と語る。
・この点については国民生活センターも、日本トリムの製品が「管理医療機器として認証されている」と認めている。問題にしているのは「医療機器について認証を受けていない効能・効果をうたうこと」(担当者)だ。  日本トリムのホームページには「抗酸化性のある水素がたっぷり」と胃腸症状の改善以外の効果・効能をうたっているとみられる表現がいまだに残っている
・センターは調査当時、日本トリムのホームページに「(還元性のある水を飲むと)胃腸症状の改善以外にも様々な効果が期待できます。(中略)還元性、つまり抗酸化性がある電解水素水は(中略)様々な疾病の原因といわれている活性酸素を抑制することが国際学術誌で発表されています」との記載があったことを問題視。これが「医薬品医療機器等法や健康増進法、景品表示法に抵触するおそれ」に該当するというわけだ。
・日本トリムの田原氏は同記述について「あくまで研究中の話であり、販売サイト上で顧客を誘導しているわけでもない。誤解を避けるために報道発表前には記述の内容を修正している」と話す。両者の溝は一向に埋まらないままだ。
▽パナソニックや伊藤園も水素水
・今回のテストではパナソニックや伊藤園といった大企業の製品も対象となっている。生成器が対象となったパナソニックは、東洋経済の取材に対し、「国民生活センターの調査において、当社の生成器の水素濃度は本体の液晶表示と同程度という評価結果だった。製品カタログやホームページでは水素水の効能をうたう表示もしていない」とする。アルミボトルの「水素水H2」(税込み購入単価199円)がテスト対象となった伊藤園は「商品の販売をやめるということはない。商品に正確な情報を記載するほか、ホームページなどでも情報を充実させていきたい」と回答した。
・日本トリムの業績は当面伸び悩みそうだ。「いまだに販売状況が戻らない。急いでPR戦略の見直しを進めている」(田原氏)。同社は2016年4月に中国の病院運営事業に参入すると発表し、「家庭用整水器事業の中国での飛躍的拡大」(リリース原文)を目指しているが、国内でつまずけば今後の海外展開にも支障が出かねない。
・そもそも水素水ビジネスを問題視する向きもある。科学ジャーナリストの松永和紀氏は、水素水について「人における効果を確認した研究が非常に少なく、研究の信頼性も低い。『健康効果あり』とは今のところはいえない」と指摘する。「独立行政法人国立健康・栄養研究所のデータベースでも、水素水は『ヒトに対する有効性については信頼できる十分なデータが見当たらない』とされている。消費者は注意深くなったほうがいい」(同氏)。 「水素水バブル」がはじけた今、各社は新たな戦略を打ち出す必要に迫られている。
http://toyokeizai.net/articles/-/160059

次に、4月30日付け現代ビジネス「ダマされるな! 飲んでも効かない「サプリ」一覧 えっ、あれも…? 巨大な健康食品市場の深い闇」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・これだけ新聞やテレビで大々的に宣伝しているんだから効くのだろう。医学的根拠もあるに違いない。そう信じて飲み続けてきたのに……。メーカーが決して言わない、サプリの「不都合な真実」。
▽膝の痛みに効く?
・階段の昇り降りの際、膝がズキッと痛む。そんな変形性膝関節症を抱える中高年を対象に、「関節痛を和らげる」「擦り減った軟骨が再生する」と喧伝され、現在最も売れているサプリがグルコサミンとコンドロイチンだ(両方が配合された商品も多い)。
・だが、武蔵国分寺公園クリニックの名郷直樹院長は「飲んでもほとんど効果はない」と語る。 「グルコサミン、コンドロイチンが軟骨の成分であるのは事実ですが、サプリメントとして経口摂取しても軟骨は再生しません。 グルコサミンやコンドロイチンは、糖やアミノ酸からできており、体内に入ると分解される。それが、再びグルコサミンやコンドロイチンに再合成され、膝の軟骨になるとは考えづらい。 髪の毛の成分を飲んだからといって髪は生えないのと同じで、軟骨の成分を飲んだからといって、軟骨は再生されないのです」
・その上、膝などの軟骨部分には血管が少なく、摂取したものが届くのかも不明だ。 '10年9月には英国医師会誌『BMJ』に「グルコサミン、コンドロイチンが関節や股関節の痛みに効くという明確な結果は得られなかった」という研究報告が掲載された。 また世界的権威のある医学総合誌『ニューイングランド・ジャーナル』('06年)でも「1583人を4グループに分け、コンドロイチン単体、グルコサミン単体、その両方、偽薬単体を6ヵ月間投与したが、はっきりとした差は出なかった」との報告が発表されている。
・「本当にその症状に効くというデータが実証されれば、医薬品として承認されるはず。しかし、グルコサミンやコンドロイチンのサプリに、今のところそんな気配はまったくありません」(名郷氏) サプリの広告やパッケージに謳われている効果は、医学的に実証されたものではない。にもかかわらず、あたかも効果があるように宣伝するのは「誇大広告」と言われても仕方がない。
▽消費者庁も問題視
・先頃、バストUP効果とダイエット効果を同時に叶えることができると謳ったサプリメント「B-UP(ビーアップ)」に対して、消費者庁は「景品表示法違反」に当たるとして措置命令を下した。 消費者庁・食品表示対策室の担当者が語る。 「販売元のミーロードにこのサプリの効果の裏付けとして、合理的な根拠を出すように指示しましたが、適切な資料は出てきませんでした。
・つまり、パッケージやWEBサイトに書かれたような効果は実際はなく、『いい加減な商品』だったというわけです。 このまま販売すると消費者を欺く可能性があるので、景品表示法違反として、消費者へ周知徹底をするように指導しました」 サプリには医学的、科学的根拠がない――。
・グルコサミン同様、変形性膝関節症に効くと言われているヒアルロン酸も、国立健康・栄養研究所の報告では「ヒアルロン酸注射(関節内投与)については一定の効果が認められているが、経口摂取によるヒトでの有効性について信頼できるデータは見当たらない」と断言されている。 『そのサプリ、危険です!』の著者で、予防医療サプリメントアドバイザーを務める柴田丞氏が語る。 「いくらサプリでヒアルロン酸を飲んでも、グルコサミンやコンドロイチンと同じく、それが直接関節に作用するわけではありません。体内でブドウ糖とアミノ酸に分解されるだけです。
・メーカーの宣伝には『痛みが消えた』『歩くのが楽しくなった』という使用者の声が多数掲載されていますが、それが本当かどうか確かめるすべはありません。そもそも痛みは数値化できるものではないので、本人の思い込みによる部分が大きく、エビデンス(医学的証拠)に乏しい。 効果が解明できないことを逆手にとって、悪質なメーカーが粗悪品を出していることもある」
▽あくまで「健康食品」
・サプリを含む健康食品は、今や売り上げが2兆円に迫る巨大な産業にまで成長。'12年に内閣府消費者委員会が発表した調査によると「50代以上の約3割が健康食品をほぼ毎日利用している」という。 だが、そもそもサプリメントとは「医薬品」ではなく、あくまで「健康食品」でしかないことを忘れてはならない。
・「サプリと医薬品の違いは、規格があるかないかです。医薬品には規格があり、原料がどのようにして製造され、どのような保管をされ、どのように販売されるかすべてに対して一定の基準を満たしていなければならない。 当然、効果に対しての根拠も厳しく求められる一方で、どの病気や症状に効くのかをはっきりと表示することができる。
・これに対して、サプリは栄養補助食品であり、病気を治す医薬品とは明らかに違います。なのでサプリは『〇〇に効く』という露骨な表現はできません。しかし、それさえ謳わなければ、確固とした根拠がなくとも、食品なので販売できてしまうのです」(前出の柴田氏) サプリは12種類のビタミンと5種類のミネラルのいずれかが一定量含まれていれば、厚生労働省に届け出をすることもなく「栄養機能食品」と表示することができる仕組みになっている。 そのためサプリ市場への参入は敷居が低く、極端なことをいえば一般人でも原料を買って、工場と契約すればサプリを作り、販売できてしまう。実際、そういった受注を請け負う工場も存在する。
・とはいえサプリを飲んでいる人の中には、実際に効果を感じている人もいるだろう。 「確かに、効くと信じて飲むことで『プラシーボ効果』(思い込みによる偽薬効果)により、体調がよくなったと感じる人がいます。 しかし、それはあくまで気持ちの問題であって、医学的に効果があったことを証明することにはなりません」(大学病院の内科医)
▽ビタミン剤も…?
・グルコサミンなどに次いで多くのメーカーが販売しているのがビタミン剤である。 だがその効果のほどはやはり怪しい。 サプリ大国、アメリカでは、'13年にマルチビタミンサプリを含むほとんどのビタミン剤について、「明白な恩恵があることは証明されなかった」という論文が科学誌『アナルズ・オブ・インターナルメディシン』に発表され、大きな話題を呼んだ。
・テキサス大学教授で、同誌の副編集長でもあるシンシア・マルロウ医師が言う。 確かに現代の食生活ではビタミン不足の人が増えています。だからといって、マルチビタミンのサプリを摂るのは間違いです。 その人にどんなビタミンが不足しているか検査もせず、個々人の体調を無視してマルチビタミンを摂り続けても意味はない。それどころか、飲みすぎると害になる可能性すらあることがわかりました」
・マルロウ氏によれば、ビタミンAやビタミンE、ベータカロチンなどは、体内の酸化を防ぐ抗酸化作用があり「アンチエイジングやがんの予防にもつながる」と宣伝されているが、摂取しすぎると「若返るどころか、がんを促進し寿命を縮める」危険性があるという。
・サプリメントに詳しい銀座東京クリニックの福田一典院長が解説する。 「抗酸化作用があると宣伝されているサプリは老化を防ぐと言われますが、それは激しい運動をして活性酸素がたくさん出た場合には多少は効果があるかもしれない、という程度の話です。運動もせずに抗酸化サプリを飲むと、逆に健康を害する。  身体というのは多少の酸化傷害があると、それを消去するために、自分の体内で抗酸化酵素を作ります。ところが抗酸化サプリを飲むと、そういう身体の働きが無くなってしまい、がんの発生を促進するのです」
▽アレルギーを引き起こす
・日本では早くから健康食品として製品化され、「がん予防にもなる」と喧伝されるクロレラ。だが、実は国民生活センターの健康被害報告では上位にのぼる。 『病気になるサプリ 危険な健康食品』の著者で法政大学教授の左巻健男氏が語る。 「動物実験の結果しかないため、がんに対するクロレラの有効性を示した科学的データはありません。クロレラは細胞壁が非常に硬いため消化分解しづらく、過剰に摂取すると肝機能障害を起こすことが分かっています」
・近年「元気の源」「疲労がとれる」サプリとして一気にブームになったのが、コエンザイムQ10だ。 エネルギー代謝を活発にして、疲労回復や美肌効果、加齢による体力の衰えを回復させる効果が期待できると喧伝されているが、体内のコエンザイムQ10が減ってしまった後、外から補給したとしても、本当にエネルギー生産が活性化されるかは分かっていない。
・男の夜の営みにビンビン効くというマカはどうか。 「これも科学的な有益性は認められていません。しかも粗悪品が非常に多い。'08年に愛知県の食品販売業者が販売したマカサプリが原料の段階で放射線照射されていたことがわかり、回収命令が出たことがあります。 最近、個人輸入でサプリを購入する方が多いのですが、マカなどの男性機能改善系サプリを調べたところ50種類中35種類にバイアグラの成分が入っていたという事例もあります。 バイアグラは医薬品であり副作用も多く、心臓への負担も大きい。だから、男性器機能改善系のサプリは極力、個人輸入で買うのは避けたほうが良いでしょう」(前出の柴田氏)
・お肌がプルプルになると言われ、アンチエイジングのサプリとして女性に親しまれるコラーゲン。だが、このコラーゲンもまた経口摂取による効果は認められていない。 コラーゲン鍋を食べた後、肌がプルプルになったという人がいるが、それは思い込みにすぎないのだ。 薬剤師で医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー取締役の堀美智子氏が語る。 最近は『低分子コラーゲン』といって、吸収を早めると謳うサプリも出ていますが、結局は体内でアミノ酸やペプチドに分解されてしまい効果はないという説もあり、効果のほどは未知数です」
・同じく美白や若返り、更年期障害に効果があると、盛んに宣伝されているプラセンタも効果のほどは疑問だ。 「プラセンタとはいわゆる『胎盤』のことです。この胎盤から抽出したエキスに美容効果があると考えられ、医薬品としても使われていますが、その医薬品ですら効果は不確かなものです。 ちなみに市販されているプラセンタはヒトではなく牛や豚、馬などの胎盤を使っている。これがヒトにどの程度、効果があるのかは不明です」(前出の左巻氏)
・さらにサプリで心配されるのがアレルギーだ。 蜂蜜を原料にして「抗菌作用がある」「炎症を抑える」などと言われるローヤルゼリーやプロポリスは、経口摂取における有効性については十分なデータが見当たらないばかりか、アトピーや喘息などの既往歴がある人は、アレルギー反応が高い頻度で起きることが分かっている。 重篤な場合は「アナフィラキシーショック」を発症し、死に至ることすらあるのだ。
▽巧妙なテレビCM
・またサプリを摂る際は薬との「飲みあわせ」も重要になってくる。 「青魚に含まれるDHAやEPAなどは血液を固まりにくくし、サラサラにする作用がありますが、ワーファリンなどの抗凝固剤を飲んでいる人がこれらのサプリを併用すると、出血などの副作用を引き起こす可能性があります。クロレラ、納豆、青汁などのサプリも摂ってはいけません。
・サプリといえば、普通カプセルをイメージしますが、たとえば『DHA入りのソーセージ』や『大豆イソフラボンもやし』のように食品形状のものもあります。  国立健康・栄養研究所のHPには、機能性表示食品について『一日の(目安)摂取量』が掲示されていますが、知っている人はほとんどいないと思います。知らず知らずのうちに摂りすぎていて体調を崩している人も多い」(前出の堀氏)
・前出の左巻氏も続ける。 「中高年の中には、サプリにおカネをたくさんかけている人がいます。でも基本的にほとんどのサプリには、効果がないと思ったほうがいい。栄養ドリンクで『タウリン1000㎎配合』とか謳われると沢山入っている気がしますが、わずか『1g』ですからね。効果が分からず、しかも微量しか入っていない。これはサプリも同じです」 
・それでも「人より少しでも健康になりたい」とサプリに飛び付く人が大勢いるのはなぜか――。 それは広告による影響が大きい。 サプリの広告を見ると、あたかも抜群の即効性があるかのような宣伝文句が並ぶ。だがよくよく見ると、決して「効果がある」とは謳っていない。繰り返しになるが、サプリは医薬品ではないため「○○に効く」とは法律上、謳えないのだ。
・そこで各メーカーは「それっぽい言葉」を並べ、巧妙に消費者の購買意欲を煽っている。分かりやすいのがダイエット系のサプリである。 「『ブヨブヨお腹がたったの1粒で……』『飲むだけでドンドン落ちる』といった文言がありますが、これは虚偽誇大表示に当たるおそれがあります。 摂取カロリーを消費カロリーが上回らないかぎり人は痩せないというのが専門家の見解です。よくもっともらしい体験談やもっともらしい試験結果が載っていますが、消費者の方は気をつけてほしいですね」(前出の消費者庁担当者)
・テレビCMや新聞広告で、有名人が「このサプリのおかげで元気になりました」と満面の笑みで語っている姿をよく見かけるが、画面や紙面の端には小さく「個人の感想です」と、しっかり注釈が出ている。 「サプリの世界は、騙したもん勝ちなんですよね。特許出願とか、学会に発表されたとか、新聞報道されると、すぐそれで権威付けして売るわけです。たとえ効果が仮説段階であっても、メーカーはいかにも実証されたように宣伝することができる。
・以前、クルクミンとか赤ワインに含まれるレスベラトロールなどの効能をねつ造したとして、アメリカの大学の教授が自殺した事件がありましたが、会社から研究費をもらったら、その会社にネガティブなデータなんて出せないですよ。売るために法律ギリギリのところでやっているメーカーも少なくない」(前出の福田氏)
・このように売り上げを伸ばすために、法律の隙間を縫って「誇大広告」を続けるメーカーが跡を絶たない。しかし、なぜそんなことが許されるのか。 それは「違反しても厳しい罰則がないから」と前出の柴田氏は語る。 「東京都福祉保健局の最新の調査によると、125品目中105品目が表示広告に関する法例違反またはその疑いがあることが判明しています。それだけ誇大広告が多い。
・もちろん国も注意してはいるのですが、再発防止を求める措置命令だけで回収や営業停止命令は滅多にない。仮に数百万円の罰金を科せられても、その間に何億円と稼いでいますから、メーカーは痛くもかゆくもないのです」
・その結果、ネット通販などでは怪しげなダイエットサプリなどが横行する事態となっている。特に価格が安すぎるものや海外産のサプリには注意が必要だ。 「100円ショップなどで売られている『安すぎるサプリ』はやはり安全面が心配されます。海外の衛生状態がよくない工場で製造されている可能性もあるので、生産地を見てください。栄養素は10%で残りの90%はすべて添加物といった粗悪なサプリも少なくありません」(前出の柴田氏)
▽ネットで買うのが最も危ない
・過去にはサプリによる死亡事件も起こっている。 「中国産のダイエットサプリ『せん之素こう嚢』をネットで購入し、飲んだ女性が肝機能障害を起こして亡くなったという事例がありました。 しかも恐ろしいことに、今度は商品名とパッケージだけを変えて、中身は全く同じものが販売されていたのです。このようにネット販売だとどんな成分が使われているかも確かめることができません。もし何かあった時に確認できるリアル店舗で買ったほうがまだいいでしょう」(前出の堀氏) 
・パッケージに記載されている成分表示をきちんと確認することはもちろんだが、中には成分表示がきちんと明記されていないサプリもあるので、それらには手を出さないほうがいい。 では値段が高いものを選べばいいかと言うと、そう単純でもない。 「『高いほうが効きそう』という消費者の心理をついて、本当は安い原価の商品を何十倍もの値段をふっかけて販売している業者もあります。
・業界の常識では、ほとんどのサプリは原価率が10%以下と言われている。これだけ原価が低いのは、大量の宣伝広告に多額の費用がかかるため。その宣伝費を確保するために原価に大幅な上乗せをしているのです。 値段の高い、天然ものは安全かもしれませんが、だからといって効果があるとは限らない」(前出の左巻氏)
・サプリメントは「魔法の薬」ではない――。 「サプリは、高額なおカネをかけて飲むほどのものじゃないと思います。生活習慣の改善をせずに、『サプリさえ飲んでいれば健康になる』と安易に考えるのは大きな間違いです」(前出の名郷氏) メーカーの甘い宣伝文句に踊らされ、生活習慣を見直す努力を後回しにしてはいけない。 呑んでも効かないサプリ一覧の表①、②が下記のリンク先にあり
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51559

第三に、6月13日付け東洋経済オンライン「「美容医療」のトラブルが一向に絶えないワケ 法規制の抜け穴が強引な契約をのさばらせる」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・5月17日の衆議院厚生労働委員会における民進党・大西健介青年局長の発言をめぐって、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が、同議員や民進党の蓮舫代表などに損害賠償と謝罪広告を求めて起こした裁判。美容外科の強引な勧誘等に関する質問の中で、「陳腐なCM」として明らかに高須クリニックをさしている発言が発端になった。
▽美容医療の分野は契約内容をめぐるトラブルが多い
・美容医療の分野はトラブルが多く、高須院長が提訴をした理由も陳腐なCMとされたうえに悪徳美容外科という誤解を生じさせたからとしている。確かに美容医療をめぐっては、悪徳業者が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している。そのトラブルは身体的な被害もあるが、契約内容をめぐるものも多い。
・毎日新聞が5月14日に報じたところによれば、全国展開のあるエステ店が顧客を傘下の美容外科医院に紹介し、高額な契約を結ばせて、解約にも応じず、エステと美容医院の提携について厚生労働省と消費者庁が調査に乗り出すことになったという。 報道ではエステ店と同様のサービス内容であるにもかかわらず、契約金額がエステ店での契約と比べて10倍にもなるものもあったとされている。
・国民生活センターでは、美容医療に関する相談例をホームページ上に掲載し注意喚起を図っているが、そのなかでは、契約の解約をめぐる相談例が報告されている。 具体的には、脂肪溶解注射の契約を医師の説明もないままさせられ解約したいというものや、無料チケットで施術を受けていたところ高額な契約をさせられてしまったのでキャンセルしたいなどというものだ。
・実はエステ店と美容医療では法規制に大きな違いがある。エステ店は、特定商取引法で利用者の保護が図られているが、美容医療には契約を縛る法律がない。 エステの場合、たとえば無料体験に行って強引なセールストークに根負けして契約を結んでも、法律上はクーリングオフが認められている。クーリングオフとは、契約書面を受け取ってから8日以内は理由なく契約を解除できるという制度だ。支払った代金は原則返還され、すでにサービスが始まっていても代金を支払う必要がなくなる。 クーリングオフの期間を過ぎていたとしても、途中で解約をすることも法律上認められている。解約を認めない契約は法律違反で無効となる。
▽消費者の無知に付け込んだ不誠実なビジネス
・ところが、同じ痩身(そうしん)というジャンルのサービスであっても、医療機関側に有利なように中途解約を認めない契約内容であれば、原則解約はできなくなってしまう。 エステから美容外科への紹介はこういった法律の穴を利用しているという疑いがある。厚生労働省と消費者庁がそろって実態調査に乗り出す理由も、消費者の無知に付け込んだ不誠実なビジネスが行われている可能性があるからだろう。
・美容医療は以前からエステと同様に特定商取引法の規制をかけるべきではないかとされてきた。特定商取引法が適用される業種は限定されるが、新たに美容医療を加えようとする法改正作業が進められており、本年中にも施行される予定だ。 この法律が施行されると、エステの契約と同様、美容医療で行う痩身や歯のホワイトニングなどについてもクーリングオフや中途解約などが認められるようになる。
・クーリングオフをすると特に理由がなくても契約を解除できることになるが、業者としては何かと理由をつけてクーリングオフをさせまいとしてくる場合もある。 すでに法の規制があるエステにおいても、脱毛や痩身といったサービスのほかに化粧品などの商品を購入させられることも多いが、クーリングオフの場面では何かと問題となってきた。
・サービスの契約と合わせて化粧品も同時にクーリングオフできるが、化粧品は未使用の場合に限られる。業者側は「お試しに」などとその場で使わせてしまい、あとになって「もう使ってしまったものはクーリングオフできません」などと言い出すこともある。 結論から言えば、業者がお試しで使わせたような場合についてはクーリングオフが可能なのだが、このあたりは知識がなければ、業者から押しきられてしまうこともあるので注意が必要になるだろう。
▽改正案でクーリングオフの対象になるのは
・もちろん、法律の改正が予定されているからといって、すべての契約がクーリングオフの対象となるわけではない。改正案を見ると、たとえば保護の対象となるのは契約期間が1カ月以上の長期に及ぶものに限られ、1回限りの整形手術などは対象外だ。 美容医療をめぐるトラブル事例の中には、数百万円にものぼる高額な手術費用をめぐるものもあるが、このようなケースでは今回の改正案でも保護が及ばない可能性が高い。検討されている法律の改正案でも、美容医療のうち保護の対象とされるのは一部の契約のみとなりそうだ。
・消費者トラブルは法律知識の差が原因となる場合が多数ある。エステ店から美容医院を紹介された客のほとんどは解約に関する法律の違いを知らなかったのではないか。事業者との情報量格差を埋めて消費者保護を図るために法律はあるのだが、そもそも法律を知らなければトラブルへの対応すらできない。 美容医療はケガや病気と違って急いで受けなければいけないものではないはずだ。高額なサービスを契約する際には施術の内容や料金などしっかりと下調べをすることで、トラブルを少しでも回避できるよう、事前準備を欠かさない姿勢が大切となる。
http://toyokeizai.net/articles/-/174930

第四に、6月14日付けダイヤモンド・オンライン「「油脂で健康に」の落とし穴、DHAで脳出血しやすくなる人も!」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「良質な脂肪はダイエットや健康にいい」と謳うメディアがここ数年で爆発的に増えている。ただ、こうした脂肪を摂ると、なぜ健康やダイエットにいいのか理屈はよく分からないという人は多いのではないだろうか。メディアの情報を鵜呑みにして、大量の脂肪を摂ることに問題はないのだろうか?(清談社 喜屋武 良子) 
▽欧米発のオイル系ダイエットは日本人の体質に合うのか?
・ダイエットや健康ネタに関心がある人なら一度は聞いたことがあるだろう。オリーブオイルにココナッツオイル、グラスフェッドバター、ナッツに含まれる油、などなど…。近年紹介された「良質な脂肪」にも実に様々な種類がある。
・たとえば、健康的な油として知られるオリーブオイル。この油をよく摂る地中海沿岸地域は心臓病の死亡率が低いことが判明し、注目を集めた食材だ。オリーブオイルに多く含まれるオレイン酸がコレステロールを下げて心臓病の発症を防ぐとされ、20年以上前に一度ブームになった。その後、2000年代後半には、1日大さじ2杯のオリーブオイルを飲む「オリーブオイルダイエット」が提唱されブームが再燃。今では「オリーブオイル=健康、ダイエットに良い」という認識が広く浸透している。
・さらに、2010年代以降になると、オリーブオイルに限らず「良質な油」を使った新手のダイエットや健康法が次々紹介されるようになった。書籍のタイトルだけ見ても、『ココナッツオイル健康法~病気にならない 太らない 奇跡の万能油~』『スプーン一杯のアマニで脳も体も若返る』『「糖質制限+中鎖脂肪酸」で確実にやせる! 驚異のMCTオイルダイエット 』『スプーン一杯で認知症を防ぐ! えごま油健康法』など、まるでこれらの油が万能薬であるかのように取り上げられている。
・一方気になるのが、そうしたメソッドでの中で推奨されている脂肪の「摂取量」だ。たとえば、オリーブオイルやココナッツオイルダイエットでは、1日大さじ2杯の油を「飲む」ことを提唱する識者も多い。昨年(2016年)に流行った「バターコーヒーダイエット」では、コーヒー1杯に大さじ1杯のグラスフェッドバターと大さじ1杯のココナッツオイルを入れるという、かなりオイリーなコーヒーを勧めている。
・これらのダイエット法は、もともと欧米で人気があったものが日本に輸入されてきたものも少なくない。ただし、オリーブオイルひとつとっても「日本人は欧米人と比べて内臓脂肪がつきやすいため、体にいいからと言って大量に摂取すると、かえって動脈硬化や心臓病のリスクを上げてしまう」と指摘する専門家もいる。
▽良質な脂質がもたらす健康効果 メカニズムが不明な点も
・実際のところ、これらの脂肪は「摂りすぎると危険」ということはあるのだろうか。 『日本人なら知っておきたい「異所性脂肪」の恐怖』(ワニブックス)の著者で、九州大学大学院医学研究院の小川佳宏教授は、「どの種類の脂肪をどの程度とるかは、年齢・性別・体質などによって変わってくるので、良質な脂肪と言われているものでも10人中10人に効果があるとは限らない」と話す。
・「たとえば、青魚などに含まれる油(EPA、DHA、オメガ3系)は血液をサラサラにする働きがあると言われていますが、その成分が濃縮されたサプリなどを高血圧や糖尿病の患者が摂り過ぎると、脳出血を起こすこともあります」(小川氏、以下同)  青魚の油のほか、オリーブオイルを始めとする他の「良質な脂肪」についても、摂りすぎると逆効果な人は存在するのだろうか。小川氏は「実は、まだ明確な基準は判明していない」と言う。
・「オリーブオイルやココナッツオイルといった脂肪の健康・ダイエット効果については、様々な実験や観察事実が報告されています。しかし、なぜこのような効果が得られるのか、十分なメカニズムは分かっていないのが現状です。そのため、長期的に大量にこれらの脂肪を摂取することで、どのような影響が出るのかも定かではないのです」(同) 「良質な脂肪」も、その効果とメカニズムについては研究途上。私たちはまだ解明されていない食材について、当たり前のように「体に良い」と思い込んで購入していたのだ。
・「もちろん脂質は体に必要な栄養素ですし、質の良い油を摂ることも大切です。しかし、ひとつの食品を過剰に取れば、他の栄養素が不足する可能性もあります」(同) 過ぎたるは及ばざるが如し。メディアの宣伝を鵜呑みにして、そればかりを口にするのは少々早計かもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/131692

第一の記事にある水素水については、バブルが弾けたためか、最近ではテレビCMで見かけなくなったようだ。 『パナソニックや伊藤園も水素水』、というのは、二匹目のドジョウ狙いとはいえ、これら企業の良識を疑うに足る話だ。企業は結果が全てであるとはいえ、「イカサマ」にまで手を出すようでは、持続的成長は期待できなくなる筈だ
第二の記事にある 『「グルコサミン、コンドロイチンが軟骨の成分であるのは事実ですが、サプリメントとして経口摂取しても軟骨は再生しません。 グルコサミンやコンドロイチンは、糖やアミノ酸からできており、体内に入ると分解される。それが、再びグルコサミンやコンドロイチンに再合成され、膝の軟骨になるとは考えづらい。 髪の毛の成分を飲んだからといって髪は生えないのと同じで、軟骨の成分を飲んだからといって、軟骨は再生されないのです」』、との指摘はサプリ商法のウソの本質を言い表している。それにしても、 『サプリを含む健康食品は、今や売り上げが2兆円に迫る巨大な産業にまで成長。'12年に内閣府消費者委員会が発表した調査によると「50代以上の約3割が健康食品をほぼ毎日利用している」という』、大きな市場となった以上、CM収入を考慮するとマスコミも批判的記事を掲載できないという現実も困ったものだ。 『「東京都福祉保健局の最新の調査によると、125品目中105品目が表示広告に関する法例違反またはその疑いがあることが判明しています。それだけ誇大広告が多い』、もっと当局には本腰を入れて取り締まってほしいものだ。
第三の記事にある 『全国展開のあるエステ店が顧客を傘下の美容外科医院に紹介し、高額な契約を結ばせて、解約にも応じず、エステと美容医院の提携について厚生労働省と消費者庁が調査に乗り出すことになったという』、というのは遅きに失した感がある。本来は、消費者保護の観点からいち早く調査すべきことだ。美容医療の一部に漸く特定商取引法の規制がかかるようだが、これも遅きに失している。やはり、消費者行政よりも、業者行政を重視する姿勢が抜け切らないようだ。
第四の記事で、 『ひとつの食品を過剰に取れば、他の栄養素が不足する可能性もあります」(同) 過ぎたるは及ばざるが如し。メディアの宣伝を鵜呑みにして、そればかりを口にするのは少々早計かもしれない』、との最後の指摘は正論だろう。
タグ:アレルギー コラーゲン プラセンタ コエンザイムQ10 東洋経済オンライン 誇大広告 オリーブオイルダイエット クーリングオフ ダイヤモンド・オンライン グルコサミンとコンドロイチン 日本トリム 現代ビジネス ココナッツオイル健康法 バターコーヒーダイエット (弾けた「水素水バブル」、飲んでも効かない「サプリ」一覧、「美容医療」のトラブルが一向に絶えないワケ、「油脂で健康に」の落とし穴) 弾けた「水素水バブル」、日本トリムの言い分 国民生活センターの報道発表が大打撃 整水器販売 電解水素水整水器の製造および販売 国民生活センターがテストを実施 一時期ブームとなったアルカリイオン水と基本的に中身は変わらない 製品に記載された「様々な病気の原因といわれる悪玉活性酸素を無害化する」「アトピーに かゆい部分に水素水をつけて下さい」などの表示も、健康増進法や景品表示法などに抵触するおそれがあるとされた 。問題にしているのは「医療機器について認証を受けていない効能・効果をうたうこと」( 日本トリムのホームページには「抗酸化性のある水素がたっぷり」と胃腸症状の改善以外の効果・効能をうたっているとみられる表現がいまだに残っている パナソニックや伊藤園も水素水 水素水について「人における効果を確認した研究が非常に少なく、研究の信頼性も低い。『健康効果あり』とは今のところはいえない」 ダマされるな! 飲んでも効かない「サプリ」一覧 えっ、あれも…? 巨大な健康食品市場の深い闇 「グルコサミン、コンドロイチンが軟骨の成分であるのは事実ですが、サプリメントとして経口摂取しても軟骨は再生しません。 グルコサミンやコンドロイチンは、糖やアミノ酸からできており、体内に入ると分解される。それが、再びグルコサミンやコンドロイチンに再合成され、膝の軟骨になるとは考えづらい。 髪の毛の成分を飲んだからといって髪は生えないのと同じで、軟骨の成分を飲んだからといって、軟骨は再生されないのです 膝などの軟骨部分には血管が少なく、摂取したものが届くのかも不明だ サプリの広告やパッケージに謳われている効果は、医学的に実証されたものではない。にもかかわらず、あたかも効果があるように宣伝するのは「誇大広告」と言われても仕方がない 消費者庁も問題視 あくまで「健康食品」 サプリは『〇〇に効く』という露骨な表現はできません。しかし、それさえ謳わなければ、確固とした根拠がなくとも、食品なので販売できてしまうのです」( 効くと信じて飲むことで『プラシーボ効果』(思い込みによる偽薬効果)により、体調がよくなったと感じる人がいます ビタミン剤である。 だがその効果のほどはやはり怪しい 運動もせずに抗酸化サプリを飲むと、逆に健康を害する。  身体というのは多少の酸化傷害があると、それを消去するために、自分の体内で抗酸化酵素を作ります。ところが抗酸化サプリを飲むと、そういう身体の働きが無くなってしまい、がんの発生を促進するのです 体内のコエンザイムQ10が減ってしまった後、外から補給したとしても、本当にエネルギー生産が活性化されるかは分かっていない 青魚に含まれるDHAやEPAなどは血液を固まりにくくし、サラサラにする作用がありますが、ワーファリンなどの抗凝固剤を飲んでいる人がこれらのサプリを併用すると、出血などの副作用を引き起こす可能性があります サプリの広告を見ると、あたかも抜群の即効性があるかのような宣伝文句が並ぶ。だがよくよく見ると、決して「効果がある」とは謳っていない。繰り返しになるが、サプリは医薬品ではないため「○○に効く」とは法律上、謳えないのだ 「東京都福祉保健局の最新の調査によると、125品目中105品目が表示広告に関する法例違反またはその疑いがあることが判明しています。それだけ誇大広告が多い 再発防止を求める措置命令だけで回収や営業停止命令は滅多にない。仮に数百万円の罰金を科せられても、その間に何億円と稼いでいますから、メーカーは痛くもかゆくもないのです ネットで買うのが最も危ない ・サプリメントは「魔法の薬」ではない 呑んでも効かないサプリ一覧の表 「美容医療」のトラブルが一向に絶えないワケ 法規制の抜け穴が強引な契約をのさばらせる 美容医療の分野は契約内容をめぐるトラブルが多い 国展開のあるエステ店が顧客を傘下の美容外科医院に紹介し、高額な契約を結ばせて、解約にも応じず、エステと美容医院の提携について厚生労働省と消費者庁が調査に乗り出すことになったという エステ店と同様のサービス内容であるにもかかわらず、契約金額がエステ店での契約と比べて10倍にもなるものもあったとされている エステ店は、特定商取引法で利用者の保護が図られているが、美容医療には契約を縛る法律がない 消費者の無知に付け込んだ不誠実なビジネス 改正案でクーリングオフの対象になるのは 保護の対象となるのは契約期間が1カ月以上の長期に及ぶものに限られ、1回限りの整形手術などは対象外だ 油脂で健康に」の落とし穴、DHAで脳出血しやすくなる人も! 欧米発のオイル系ダイエットは日本人の体質に合うのか? 日本人は欧米人と比べて内臓脂肪がつきやすいため、体にいいからと言って大量に摂取すると、かえって動脈硬化や心臓病のリスクを上げてしまう」と指摘する専門家もいる 良質な脂質がもたらす健康効果 メカニズムが不明な点も ひとつの食品を過剰に取れば、他の栄養素が不足する可能性もあります」(同) 過ぎたるは及ばざるが如し。メディアの宣伝を鵜呑みにして、そればかりを口にするのは少々早計かもしれない
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暗号通貨(仮想通貨)(その2)(メガバンクの仮想通貨、成功のカギは他行への送金コスト、「値上がり期待」だけの仮想通貨ブームの不健全、ビットコインは中銀の終わりの始まりか) [金融]

暗号通貨(仮想通貨)については、2月25日に取上げたが、今日は、(その2)(メガバンクの仮想通貨、成功のカギは他行への送金コスト、「値上がり期待」だけの仮想通貨ブームの不健全、ビットコインは中銀の終わりの始まりか) である。

先ずは、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏が5月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「メガバンクの仮想通貨、成功のカギは他行への送金コスト」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・メガバンクが発行する仮想通貨を一般の人々が使える日が近づいている。これが広く使われるようになれば、社会に大きな影響を与えるだろう。以下では、それが成功するための条件は何かを検討する。最も重要なのは、他行預金保有者への送金コストをどれだけ低くできるかだ。この点でビットコインと競争するためには、変動価格制を導入する必要があると思われる。
▽銀行が独自に仮想通貨発行 来春から一般の利用に
・三菱東京UFJ銀行が、今年の5月1日から独自の仮想通貨「MUFGコイン」の実証実験を始めると、4月30日付の朝日新聞が伝えた。読売新聞なども同じニュースを伝えた。 それによると、5月に役員ら200人で始め、年内で全行員約2万7000人が行員同士の送金や行内のコンビニでの支払いなどに使えるようにする。  そして、来春には一般向けに発行する方向だ(これまでは今秋としてきたが、先送りした)。
・もし一般の人が使えるような仮想通貨が発行されれば、世界で最初のケースとなる可能性がある。それが広く使われるようになれば、日本の通貨と金融の世界は大きく変わるだろう。通貨・金融にとどまらず、経済活動全体に大きな影響を与えると考えられる。
・<どれだけ広い範囲での送金に使えるか> これが成功するかどうかについて、いくつかのポイントがある。 第1は、どれだけ広い範囲での送金に使えるかだ。 ビットコイン型の仮想通貨の場合には価格が変動するので、値上がり益を期待して保有することもかなりある。つまり、取引に使えなくても、ビットコインを保有する需要はあるわけだ。 ところが、メガバンクの仮想通貨の場合には価格が固定されているので、保有しているだけでは意味がない。送金に使って初めて意味がある。 その場合、限られた数の保有者の間で割り勘の清算のようなことをしているだけでは意味がない。 さまざまな相手への支払い手段として使えて初めて利用価値が高まる。
・<取引コストをどこまで下げられるか> 成功のための第2の条件は、取引コストだ。これには、いくつかの側面がある。 第1は、現実通貨からの入金コストである。現在でも、ビットコインの取引所が指定した銀行からの入金であれば、ビットコインを購入する手数料はゼロである。MUFGコインの場合も、三菱東京UFJ銀行の預金を用いて購入するのであれば、多分手数料はゼロに設定されるだろう。 なお、ビットコインの場合には価格変動が激しいので、ビットコインで受け取った後、直ちに現実通貨に転換することが要請される場合がある。しかし、MUFGコインの場合は、価格変動がないので、コインのまま保有していても、損失を被る危険はない。
・第2のコストは、仮想通貨の送金コストだ。前回述べたように、現在でも、同一取引所の異なるアカウント間のビットコイン送金であれば、手数料ゼロのサービスが提供されている。MUFGコインの場合も、MUFGのウォレット(仮想通貨用の口座)間の送金であれば、多分、手数料はゼロに設定されるだろう。 ただし、大量の送金要求による攻撃からシステムを防御するために、ごくわずかの手数料を課す可能性もある。
▽普及のカギを握るのは他行の預金者への送金
・ところで、当然のことながら、MUFGのウォレット間の送金(つまり、三菱東京UFJ銀行の預金口座保有者間の送金)だけでは、利用価値は限定されたものとなる。 他行口座保有者への送金も可能とされなければならない。この場合のコストはどうなるだろうか? これが、第3のコストである。 以下で述べるように、このコストがどの程度の水準になるかが、最も重要だ。それは、他行預金保有者への送金をどのようなシステムで処理するかに依存している。
・他行預金保有者へ送金する仕組みとしては、まず、MUFGコインを円に転換して三菱東京UFJ銀行の口座に出金し、それを他行に口座振替で送ることが考えられる。しかし、これでは、現在のシステムとほとんど変わらないものになってしまう。 送金のコストは、現行の他行送金コストとなるので、かなり高くなる。  これでは、仮想通貨を用いる意味はない。ビットコインとの競争で勝つことはできないだろう。
・<他行預金保有者への送金コストで、利用者の範囲が決まる> 以上で述べた2つの問題(利用者の範囲とコスト)は、密接に関連している。 なぜなら、同一銀行のウォレット間であれば、コストをかなり低くすることも可能だが、それだけでは利用価値がない。利用価値を高めるには、他行のウォレットへの送金が可能である必要があり、そうした取引がなされるためには、そのコストを低める必要があるからである。
・冒頭に述べた新聞報道によれば、三菱東京UFJ銀行の実証実験は、主として同行内での取引にかかわるものであるように思われる。そのことは大事だが、本当に重要なのは、他行との取引なのだ。他行との関係をどのようなものとするか、それが最大の問題である。 言うまでもなく、これは三菱東京UFJ銀行だけでコントロールできる問題ではない。
・<他行も仮想通貨を発行する必要> 他行預金保有者への送金問題を解決するには、他行も仮想通貨を発行している必要がある。そして、MUFGコインを他行コインに交換できるようにする必要がある(受け取り者は、それを円に転換して、自分の銀行口座に出金する。あるいは、コインを持ったままでもよい)。 そうすれば、コストを現行より引き下げられるだろう。また、利用時間等の面でも、現在より使いやすくなるだろう。  時間がたてば、そうしたことになるだろう。実際、みずほフィナンシャルグループも三井住友銀行も、仮想通貨を発行する計画を持っている。ただし、そのタイムスケジュールはまだはっきりしない。
▽最大の問題は仮想通貨間の交換手数料
・最大の問題は、仮想通貨間の交換の手数料がどうなるかだ。 この問題は、仮想通貨の価格について固定価格制を取るかどうかに依存する。 現在考えられているように固定価格制を取ると、日銀ネットを用いて、現在の銀行間決済と同じ仕組みで、銀行間で資金を移動させることが必要になる。
・そうなる理由を説明しよう。 その前に、現在の銀行間の口座振替を見よう。A銀行とB銀行があるものとし、A銀行からB銀行への振り込みが、その逆の取引よりも多かったとしよう。その場合、A銀行の預金残高は減り、B銀行の預金残高が増える。これは、A銀行が日本銀行に持つ当座預金の残高が減り、B銀行の当座預金の残高が増えることによって行なわれる。この取引は、日本銀行が運営する日銀ネットによって行なわれる。
・仮想通貨を用いる場合も、これと同じことだ。 銀行が発行する仮想通貨は、銀行にとって負債である。預金者が預金を用いて仮想通貨を買うと、銀行のバランスシートで、預金が減って同額だけ仮想通貨が増える。 A銀行の仮想通貨保有者が、これをB銀行の仮想通貨に交換して、B銀行の預金保有者への支払いにあてるとする。受け取り者は、仮想通貨をB銀行の預金に出金するとしよう。すると、B銀行の預金が増える。 結局、A銀行の預金残高が減り、同額だけB銀行の預金残高が増えるわけだ。これは、現在の銀行間の口座振替と同じように、日銀ネットで処理される。
▽変動相場制にすれば コストを下げられる
・変動価格制であれば、価格が調整して、B銀行仮想通貨に対する需要とA銀行仮想通貨に対する需要は同じ額になる。だから、資金を銀行間で移動させる必要はない。しかし固定価格制では、B銀行の仮想通貨に対する需要がAの仮想通貨への需要より多いという場合が生じ、すでに述べたように銀行間の資金移動が必要となり、日銀ネットに依存せざるをえなくなるのだ。 現行のシステムを使うため、手数料の引き下げには限界があるかもしれない。
・この手数料がどの程度になるかが、仮想通貨利用者数に影響するだろう。 もしこの手数料が1%を切れば、クレジットカードの場合より安くなる。また、前回述べたことを参照すれば、ビットコインよりも有利になる可能性もある。そうなれば、多くの人が銀行の仮想通貨を導入し、利用が拡がるだろう。しかし、そうしたことになるかどうか、現在のところ、判断ができない。 銀行が発行する仮想通貨が成功するかどうかは、この点にかかっている。
・<仮想通貨の取引ができるためには変動価格制がよい> この問題は、外国為替取引の場合と同じである。固定為替レート制において日本とアメリカを考えた場合、貿易収支で日本がアメリカに対して黒字を記録すれば、資本収支においてアメリカから日本に資金を移動させることが必要になる。  しかし、この問題は、変動価格制にすれば回避することができる。日本の黒字が大きくなれば、円高になって貿易収支が縮小するからだ。
・異なる銀行の仮想通貨は、理想的には、外国為替の変動相場制と同じように、変動価格で交換できるようにすべきだ。 つまり、現在のビットコインとその他の仮想通貨の交換と同じようにする。そうすれば、日銀ネットのような銀行間送金システムに依存する必要がなくなり、完全に仮想通貨の世界の中で取引が行なわれる。そして上述の手数料は、かなり引き下げられる。 なお、メガバンクの仮想通貨の場合には、価格を変動させたとしても、相対価格はそれほど大きく変動することはないだろう。 ただし、円との間の相対価格はかなり変わる可能性がある。これはメガバンク仮想通貨の供給スケジュールがどのようになるかに関連しているので、供給スケジュールを調整することによって、価格変動を抑えることができるかもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/127468

次に、上記記事の続きとして、同氏が7月6日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「値上がり期待」だけの仮想通貨ブームの不健全」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ビットコインなどの仮想通貨の価格が暴騰している。多くの人が仮想通貨を保有するのは、顧客や利用者が増えるほど価値が高まるネットワーク効果の観点から望ましいことだ。 しかし、日本の場合には、「値上がり期待」での購入がほとんどだと考えられる。仮想通貨の価格変動は激しく、暴落の危険もあることに注意が必要だ。
▽価格高騰、昨年初めの6倍に 日本での購入増が原因
・今年1月5日の本欄で、「2017年は仮想通貨とブロックチェーンの年になる」と述べた。実際にその通りのことが起きている。 ビットコインの価格は、今年初めには1BTC=1000ドル程度だったが、6月11日には2962ドルまで上昇した。昨年1年間で2倍以上に値上がりしたので、昨年初めから見ると6倍程度に値上がりしたことになる(図表1参照)。 このような値上がりを示す金融資産はめったにないから、強い関心が集まるのも当然のことだ。
・これまでビットコインの価格が上昇したのは、中国での購入増加によることが多かった。しかし、今回の価格上昇は、日本での購入増加によるものといわれる。その原因は、資金決済法によって仮想通貨に一定の地位が認められたことだとされている。 このような仮想通貨ブームをどう評価すべきだろうか?
・私は、多くの人が仮想通貨に関心を持ち、仮想通貨を保有すること自体は、歓迎すべきことだと思う。 なぜなら、それによって通貨としての仮想通貨の利便性が増すからだ。通貨が通貨として機能するには、多くの人が受け取ってくれないといけない。そして、受け取り手が増えるには、多くの人が保有していることが必要だ。 通貨に関しては、このような「ネットワーク効果」が非常に顕著に働く。
・これまでの日本では、人々が保有していなかったから、仮想通貨を受け入れる店舗が少なかった。そして、受け入れる店舗が少ないから、人々は保有しなかった。このような悪循環に陥っていたのだ。 この状態が、いま変わろうとしているのである。 後で述べるように、現実の経済における仮想通貨のシェアは、著しく小さい。これが変わることが期待される。
▽暴落があり得るこれだけの理由 需要面の変動のみで決まる価格
・しかし、この数ヵ月間の日本の「仮想通貨ブーム」を全面的に肯定するわけにはいかない。 なぜなら、多くの人の購入動機は、「送金手段として用いること」ではなく、「値上がり待ちでの保有」にあると考えられるからだ。 この事態に対しては、警告を発する必要がある。
・日銀券などの現実の通貨では、金融政策によって通貨の供給量が調整される。外国の通貨に対する価格(為替レート)があまりに大きく変動した場合には、当局が為替市場に介入して安定化を図る。 それに対して、ビットコインを含めて多くの仮想通貨の供給のスケジュールは、あらかじめ決められている。 供給スケジュールが決められているので、ビットコインなどの仮想通貨の価格は、需要面の変動のみによって決まる。これが現実の通貨や株式などと大きく違う点だ(注)。 (注)供給スケジュールが固定されているのは、ビットコイン型の仮想通貨の特徴であり、すべての仮想通貨がそうであるわけではない。例えばメガバンクが発行する仮想通貨の場合、発行量は変動し、価格が円に対して固定されるようになると考えられる。価格が固定されるので、値上がりを目的とする人は、メガバンク発行の仮想通貨に関心を持たないかもしれない。
・供給を調整できる場合に比べて、ビットコインの価格変動は、大きくなるのである。 また、仮想通貨の残高は、現実の通貨に比べると、非常に少ない。これも、価格変動を大きくする要因だ。 また、仮想通貨の場合、どこが適正な価格かについて、指標がない。これも、これまでの資産と違う点だ。
・株価や土地であれば、将来発生する収益の予想値を適切な割引率で現在の価値に直したものが、適正な価格の基準であると考えられる。これが、現実の価格を評価するメドあるはアンカー(よりどころ)になる。  しかし、ビットコインの場合には、こうした基準は考えられない。 ビットコインの適正価格がどのくらいかについての試算が、いくつか行なわれたことがある。しかし、多くの仮定に基づいた計算にすぎず、あまり当てにならない。
・さらに、ビットコインの場合には、差し迫った問題として、「スケーラビリティ(拡張性)とハードフォーク(強制的分岐)の問題」がある。これはやや技術的な問題だが、重要だ。これについては、別の機会に述べる。  以上のような事情があるので、ビットコインの価格暴落は十分に起こり得る。 そうなると、日本人の関心が一挙に冷えてしまうかもしれない。そして、2014年頃にそうであったように、ビットコインを危険なもの、胡散臭いものとして遠ざけてしまうかもしれない。
・そうなれば、ネットワーク効果が逆向きに働き、ビットコインを送金に用いる動きがストップしてしまうかもしれない。こうした事態が起こることが危惧される。 なお、ビットコイン型の供給スケジュールが望ましいという意見もある。例えば、経済学者のミルトン・フリードマンは、マネーストックの伸び率は一定値に固定すべきだと主張した。
▽ビットコインを使った新しいビジネスに関心が向かうべきだ
・しばしば、「仮想通貨には価値の裏づけがない」と言われる。しかし、送金のコストが安く、全世界にほぼ瞬時に送金できるということの意味は、非常に大きい。それこそが、仮想通貨の価値を支えているものだ。  そうした機能を多くの人が認め、関連サービスが数多く供給されるようになれば、仮想通貨の価値はさらに上昇する。
・ビットコインの送金コストの大部分は、現実通貨との交換を行なう際に生じる。仮にビットコインの利用者が広がり、「ビットコイン経済圏」が形成されれば、現実通貨への交換は必要なくなるから、コストはさらに低下する。 われわれは、このような方向を目指すべきだ。
・ところが、先に述べたように、日本ではどれだけ値上がりするかに関心が集まっており、ビットコインを使ってどのような新しいビジネスができるかといったことに議論が進まない。これは残念なことだ。 技術開発や新しいサービスの開発は他国に任せ、それによる利便性の向上をビットコイン価格上昇という形で待つだけでは、いかにも情けないではないか。日本もビットコインシステムの発展に貢献することを考えるべきだろう。
・もし仮想通貨としてビットコインしか存在せず、かつ、人々が送金手段としての優れた特性を認めたとする。その場合、ビットコインの供給スケジュールでは,供給量の増加が4年ごとに半減していくので、価格は上昇するだろう。この価格上昇は、健全なものだ。 ただし、仮想通貨はビットコインだけではない。さまざまな仮想通貨間の激しい競争がある。また、メガバンクや中央銀行が仮想通貨を発行すれば、ビットコイン型仮想通貨の競争相手になるだろう。だから、ビットコインの価格がどうなるかは分からない。
▽日本での時価総額は3000億円 通貨としての比重はまだ非常に低い
・現実の通貨に比べれば、仮想通貨のウエイトは、まだ非常に低い。 図表2や図表3に示すように、ビットコインの時価総額は、約400億ドル(=4.5兆円程度)だ。これは全世界での数字である。日本の国民総生産(GDP)は世界のGDPの約6.5%なので、この割合で計算すれば、日本では約3000億円ということになる。  それに対して、通貨残高は、日銀券だけで約100兆円である(日本銀行調査統計局、マネタリーベース参照)。3000億円に比べれば、300倍以上ある。まるで比較にならない。
・日本銀行が今年の2月に発表した「決済動向(2017年1月)」によると、電子マネーの決済額が2016年に、はじめて5兆円を突破した。 発行枚数は3億2862万枚、残高は2541億円となっている(なお、1件当たり決済金額は991円)。 このデータは、プリペイド方式のうちIC型の電子マネーが対象となっている。具体的には、楽天Edy、Suicaなどの交通系、WAON、nanacoだ。なお、交通系については、乗車に利用されたものは含んでいない。 
・プリペイド方式の電子マネーは1回使えば発行者に回収されてしまうため、転々流通する仮想通貨の場合の「残高」とは意味が異なるのだが、単純に比較すれば、ビットコインの残高は、電子マネーの残高とほぼ同じレベルにまで成長していると言える。
http://diamond.jp/articles/-/134335

第三に、日銀出身で早稲田大学院教授の岩村充氏が6月19日付けロイターに寄稿した「オピニオン:ビットコインは中銀の終わりの始まりか=岩村充氏」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ビットコインは、その設計上の限界から、仮想空間における最大の貨幣ソリューションとはなり得ないものの、「枯れた技術」を用い、国家や中央銀行が支配する通貨の世界に、独自の生態系を作り出して見せた点において、「コロンブスの卵」と呼べる存在だと、岩村充・早稲田大学大学院教授は語る。
・今後、追随する他のソリューション(アルトコインやデジタル銀行券)が、現在のビットコインに足りない「価値安定」に力を入れていけば、将来的に中銀による通貨発行の独占が崩れる可能性もあるという。 同氏の見解は以下の通り。
▽ビットコインの潜在力
・ビットコイン登場の最大の意義は、中銀の提供する通貨(銀行券)とは異質の「価値のよりどころ」を有する貨幣ソリューションが、仮想空間において存在し得ることを証明した点だろう。 実は、その要素技術自体は長年にわたって試されてきた「枯れた技術」だ。基本的には権利者確認に暗号技術を用い、権利量確定にブロックチェーン(分散型台帳)と呼ばれる仕組みを応用している。
・ただ、誰にでもできそうなことでも、最初に行うのは難しい。やってみせたら、アルトコイン(代替的コインを意味するalternative coin)と総称される追随者や模倣者が次々と現れたことが、ビットコインを「コロンブスの卵」たらしめている所以(ゆえん)だろう。 通貨としてのビットコインの強みは、独自の価値の源泉を持っていることだ。Suicaなど、いわゆる「電子マネー」とはそこが違う。電子マネーは、円やドルなどの既存通貨の価値の容れ物であり、新たに価値を作り出しているわけでない。一方、ビットコインは、そうした外からの価値の取り入れをせず、「マイニング(採掘)」と呼ばれる行為に価値の源泉を見いだしている。具体的には、取引の正しさを証明したマイナー(採掘者)には、その報酬として、新たなビットコインが与えられる。
・分かりやすく言えば、採掘費用が市場価格を作り出しているという意味では、ビットコインは金や銀に近い。ビットコインの場合、主な費用はマイナーの電気代と言えよう。銀行券が国家信用本位制ならば、ビットコインは電気代本位制とでも呼べるものだ。
・このように自ら価値の源泉を持つビットコインは、理論上、円やドルと同じように独立した金融システムを構築できることになる。決済用途だけでなく、金利が生じて預金や貸し出しに使うことも、SuicaのようにICチップ型電子マネーにすることも可能だ。冗談のような話だが、実物コインのような姿にして流通させることも難しくはない(実際、すでに実物を作った企業も存在する)。
▽「暗号通貨」の課題と限界
・ただし、今のビットコインの「出来の悪さ」では通貨として人々の信頼を維持することは難しいだろう。理由は、2100万BTC(ビットコインの通貨記号はBTC)の総発行上限に向かって生成速度が固定(4年に1度の割合で半減)された設計になっている点だ。 こうした硬直的な供給スケジュールの下では、ビットコイン価格が上がればマイナーが集まりマイニングが難しくなって価格がさらに上がり、下がればマイニングへの人気離散から価格がさらに下がるという意味での価値不安定化は避けられない。実際、すでに乱高下を繰り返している。
・設計者である「サトシ・ナカモト」の真意は分からないが、要するにビットコインは「投機向き」の資産なのだ。アルトコインとも呼ばれるビットコインの追随者たちが通貨の世界で存在感を高めようとするのなら、この出来の悪さを修正する必要がある。 なお、私は、ビットコインやアルトコインを「仮想通貨」と呼ぶのは適切ではないと考えている。プルーフ・オブ・ワーク(作業証明、POW)を伴うという共通項で言えばPOW型の通貨、あるいは「クリプト・カレンシー」という英語を直訳して「暗号通貨」と呼んだ方がすっきりする。
・円やドルもそうだが、通貨にはそもそも「仮想」の要素がある。仮想というのなら、法制度によって主要通貨との交換が可能とされる国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)をそう呼んだ方がずっとすっきりする。また、通貨供給量を増やせばインフレになるという主張などは、円やドルなどの通貨も、裏付けとなる価値実体を持たない、つまり「仮想」だと思っているようにも感じられる。それに対して、膨大な電気代の対価として生成されるビットコインは、ずっと実物貨幣に近い。
・ただ、マイニングを価値の裏付けにするPOW型の通貨には泣きどころもある。それは、金や銀と同じく、採掘コスト(この場合は電気代)が貨幣の供給費用そのものとなってしまうことだ。一方、銀行券は、国債その他の資産を中銀が買い入れるだけで発行される、いわば「ただ乗り」の信用貨幣だ。歴史の中でも、実物貨幣は信用貨幣に取って代わられてきた。同じことが、デジタル空間でも起こる可能性は高いだろう。
▽デジタル銀行券の可能性
・具体的には、デジタル化された銀行券が、ブロックチェーンによるP2Pネットワーク上でやり取りされるようになれば、ビットコインやアルトコインを押しのけていくのではないか。 ただ、ビットコインたちが今後も果たしていく役割を過小評価すべきではない。コロンブスの航海は、行き着いた先の米大陸の状況を一変させたが、同時に欧州の社会も大きく変えた。ビットコインたちも、既存の金融世界に対して同じ役回りを演じることになるだろう。
・その先には、円やドルをデジタル化してブロックチェーンで送るだけでなく、例えばA銀行が自社の資産を価値の源泉としてAマネーなるデジタル銀行券を発行するような時代も来るかもしれない。 突飛な発想に思われるかもしれないが、そもそも円やドルにしても、最初は金や銀に価値を紐(ひも)付けて出発したのだが、その後、金や銀とのひも付けを止めて、発行体である政府と中銀との関係性を価値の根拠とする信用貨幣として独り立ちしていった。例えば、1Aマネー=1円としてスタートしたデジタル銀行券も、Aマネーへの評価が定着したら、自らの信用だけに基づく貨幣へと発展することも可能だろう。
▽中銀の役割はどう変わっていくか
・かつてハイエクは、通貨を国家のコントロール下に置かず、その発行と流通に「競争」を導入すべきだとの考えを示したが、今まさにそうした可能性について頭の体操をすべき時だろう。 これまで国家は国民に対し、その地域的支配力によって強制的に自国の造幣局や中銀が発行する貨幣しか使用できないように強制してきた。ところが、ビットコインは、そうした通貨流通に対する国家の地域的支配力に風穴を開けてしまった。それはまだ小さな穴だが、徐々に広がっていく可能性が高い。
・無国籍通貨であるビットコインたちを規制するためには、世界政府が必要だが、それは夢物語だ。各国が懸命に規制で取引を制限しようとしても、穴をふさぐことはできないだろう。 また、銀行券をデジタル化して、ブロックチェーンで送るようになれば、少なくとも小口の決済や送金では、全銀システムはもとより、日銀ネットも不要になる。そうした決済システムを通じて業務を運営してきた中銀も、その影響力に限界を感じ始めることになるだろう。
・さまざまな通貨の選択肢がある世界では、中銀も現在のように、「インフレを起こす(通貨価値を下げる)から、今のうちに消費した方がいい」といった景気対策としての金融政策は志向しにくくなるはずだ。そのロジックは今の通貨発行独占でこそ通用するが、ハイエクが描いたような貨幣発行競争の下では、より価値の安定している他の貨幣ソリューションに人々は向かうはずだからだ。
・つまり、通貨の選択肢が増えれば、中銀は通貨の価値を貨幣保有者のために安定させるという「利用者本位の行動原則」に戻らなければならなくなる。ハイエクはその世界を主張していたのだと思う。
*本稿は、岩村充氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。
*参考文献:岩村充著「中央銀行が終わる日 ビットコインと通貨の未来」(新潮社「新潮選書」)
 (聞き手:麻生祐司)
*岩村充氏は、早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。1974年東京大学経済学部卒。日本銀行企画局兼信用機構局参事を経て、1998年より現職。近著に「中央銀行が終わる日 ビットコインと通貨の未来」(新潮社「新潮選書」)。「電子マネー入門」(日本経済新聞社)「貨幣の経済学」(集英社)「貨幣進化論」(新潮選書)など著書多数。
http://jp.reuters.com/article/opinion-bitcoin-mitsuru-iwamura-idJPKBN19707N

野口氏の第一の記事で、 『他行預金保有者へ送金する仕組みとしては、まず、MUFGコインを円に転換して三菱東京UFJ銀行の口座に出金し、それを他行に口座振替で送ることが考えられる。しかし、これでは、現在のシステムとほとんど変わらないものになってしまう。 送金のコストは、現行の他行送金コストとなるので、かなり高くなる』、 『異なる銀行の仮想通貨は、理想的には、外国為替の変動相場制と同じように、変動価格で交換できるようにすべきだ。 つまり、現在のビットコインとその他の仮想通貨の交換と同じようにする。そうすれば、日銀ネットのような銀行間送金システムに依存する必要がなくなり、完全に仮想通貨の世界の中で取引が行なわれる。そして上述の手数料は、かなり引き下げられる』、との指摘は確かにその通りだが、現在想定されているMUFGコインは、「1コイン=1円」と固定価格となっているので、ここを変える必要があろう。
同氏の第二の記事で、 『日本ではどれだけ値上がりするかに関心が集まっており、ビットコインを使ってどのような新しいビジネスができるかといったことに議論が進まない。これは残念なことだ。 技術開発や新しいサービスの開発は他国に任せ、それによる利便性の向上をビットコイン価格上昇という形で待つだけでは、いかにも情けないではないか。日本もビットコインシステムの発展に貢献することを考えるべきだろう』、というのは正論である。
岩村氏の記事で、 『円やドルもそうだが、通貨にはそもそも「仮想」の要素がある。仮想というのなら、法制度によって主要通貨との交換が可能とされる国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)をそう呼んだ方がずっとすっきりする。また、通貨供給量を増やせばインフレになるという主張などは、円やドルなどの通貨も、裏付けとなる価値実体を持たない、つまり「仮想」だと思っているようにも感じられる。それに対して、膨大な電気代の対価として生成されるビットコインは、ずっと実物貨幣に近い』、との指摘はその通りだ。 『ただ、マイニングを価値の裏付けにするPOW型の通貨には泣きどころもある。それは、金や銀と同じく、採掘コスト(この場合は電気代)が貨幣の供給費用そのものとなってしまうことだ。一方、銀行券は、国債その他の資産を中銀が買い入れるだけで発行される、いわば「ただ乗り」の信用貨幣だ。歴史の中でも、実物貨幣は信用貨幣に取って代わられてきた。同じことが、デジタル空間でも起こる可能性は高いだろう。 具体的には、デジタル化された銀行券が、ブロックチェーンによるP2Pネットワーク上でやり取りされるようになれば、ビットコインやアルトコインを押しのけていくのではないか』との大胆な予測は、あり得るシナリオとして念頭に置いておく必要があろう。
タグ:野口悠紀雄 ロイター 三菱東京UFJ銀行 ダイヤモンド・オンライン 暗号通貨 MUFGコイン (仮想通貨) (その2)(メガバンクの仮想通貨、成功のカギは他行への送金コスト、「値上がり期待」だけの仮想通貨ブームの不健全、ビットコインは中銀の終わりの始まりか) メガバンクの仮想通貨、成功のカギは他行への送金コスト 来春には一般向けに発行する方向 どれだけ広い範囲での送金に使えるか 取引コストをどこまで下げられるか 普及のカギを握るのは他行の預金者への送金 他行預金保有者への送金コストで、利用者の範囲が決まる 他行も仮想通貨を発行する必要 最大の問題は仮想通貨間の交換手数料 変動相場制にすれば コストを下げられる 「「値上がり期待」だけの仮想通貨ブームの不健全 価格高騰、昨年初めの6倍に 日本での購入増が原因 これまでビットコインの価格が上昇したのは、中国での購入増加によることが多かった 今回の価格上昇は、日本での購入増加によるものといわれる。その原因は、資金決済法によって仮想通貨に一定の地位が認められたことだとされている 暴落があり得るこれだけの理由 需要面の変動のみで決まる価格 株価や土地であれば、将来発生する収益の予想値を適切な割引率で現在の価値に直したものが、適正な価格の基準であると考えられる。これが、現実の価格を評価するメドあるはアンカー(よりどころ)になる。  しかし、ビットコインの場合には、こうした基準は考えられない 日本ではどれだけ値上がりするかに関心が集まっており、ビットコインを使ってどのような新しいビジネスができるかといったことに議論が進まない。これは残念なことだ。 技術開発や新しいサービスの開発は他国に任せ、それによる利便性の向上をビットコイン価格上昇という形で待つだけでは、いかにも情けないではないか。日本もビットコインシステムの発展に貢献することを考えるべきだろう 日本での時価総額は3000億円 通貨としての比重はまだ非常に低い 岩村充 オピニオン:ビットコインは中銀の終わりの始まりか=岩村充氏 現在のビットコインに足りない「価値安定」に力を入れていけば、将来的に中銀による通貨発行の独占が崩れる可能性もあるという ビットコインは、そうした外からの価値の取り入れをせず、「マイニング(採掘)」と呼ばれる行為に価値の源泉を見いだしている。具体的には、取引の正しさを証明したマイナー(採掘者)には、その報酬として、新たなビットコインが与えられる。 円やドルもそうだが、通貨にはそもそも「仮想」の要素がある。仮想というのなら、法制度によって主要通貨との交換が可能とされる国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)をそう呼んだ方がずっとすっきりする 膨大な電気代の対価として生成されるビットコインは、ずっと実物貨幣に近い マイニングを価値の裏付けにするPOW型の通貨には泣きどころもある。それは、金や銀と同じく、採掘コスト(この場合は電気代)が貨幣の供給費用そのものとなってしまうことだ 一方、銀行券は、国債その他の資産を中銀が買い入れるだけで発行される、いわば「ただ乗り」の信用貨幣だ。歴史の中でも、実物貨幣は信用貨幣に取って代わられてきた。同じことが、デジタル空間でも起こる可能性は高いだろう デジタル化された銀行券が、ブロックチェーンによるP2Pネットワーク上でやり取りされるようになれば、ビットコインやアルトコインを押しのけていくのではないか さまざまな通貨の選択肢がある世界では、中銀も現在のように、「インフレを起こす(通貨価値を下げる)から、今のうちに消費した方がいい」といった景気対策としての金融政策は志向しにくくなるはずだ。
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高齢化社会(その3)(日本の高齢者は、なぜこうも「不機嫌」なのか、日本の高齢者が不平不満を抱える根本原因 「人生=仕事」という日本ゆえの悲劇だ、作家・藤原智美氏が改めて語る「暴走老人!」論) [社会]

高齢化社会については3月27日に取上げたが、今日は、(その3)(日本の高齢者は、なぜこうも「不機嫌」なのか、日本の高齢者が不平不満を抱える根本原因 「人生=仕事」という日本ゆえの悲劇だ、作家・藤原智美氏が改めて語る「暴走老人!」論) である。

先ずは、ミュニケーション・ストラテジストの岡本 純子氏が5月16日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本の高齢者は、なぜこうも「不機嫌」なのか 会社にへばりつこうとすることと密接な連関」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界中に「怒り」が蔓延する中で、特に最近、日本で話題になるのが、キレる高齢者だ。駅や病院などでの暴力、暴言、犯罪などが取りざたされ、高齢者に対する若い世代の反感の声が強まっている。まさに、世代間闘争の様相を呈しているが、なぜ、日本の高齢者は「不機嫌」なのか。そこに処方箋はあるのだろうか。
・気がつくと、確かに、身の回りでも、頑迷で不機嫌なお年寄りを見掛けることが多くなった。筆者も先日、こんなシーンを目撃した。電車内で、やや足を伸ばして座っていた若い女性に対し、途中から乗ってきた高齢の男性がその足を軽くたたき、「邪魔じゃねえか」とキレ、つかみかかるようにして声を荒げた。その後、その女性も負けじと「あんた、触ったでしょ」と応戦、すさまじい言い合いバトルに発展した。高齢男性にとっては、その反撃が意外だったようで逃げるように降りたが、女性が猛然と追いかけていく展開となった。
・別の日には、バスの中で、子供が泣いているところを母親が必死であやしていたのだが、後ろに座っていた老夫婦が顔を見合わせ、「ああいうのは親が何とかすべきだよねえ」などといらいらしながら話しているのを聞いた。
▽高齢者は本当に「キレやすい」?
・保育園の建設に「うるさくなる」と反対する。若い駅員を怒鳴りつける。店員にいちゃもんをつける。人の言うことを聞かず、自分の主張ばかりを声高に叫ぶ――。そんなイメージばかりが増幅し、高齢者害悪論がはびこるが、はたして、高齢者は本当に若年層よりも「キレやすい」のだろうか。
・確かに、高齢者が怒りやすい、という説はよく聞く。高齢になると脳の前頭葉が収縮し、判断力が低下し、感情の抑制が利かなくなるというものだ。また、男性の場合、男性ホルモンであるテストステロンが低下し、60代、70代になると女性の更年期にも似た抑うつ症状が起きるという。こういったことから、欧米でもGrumpy old man syndrome (気難しいお年寄り症候群)、Irritable male syndrome(イライラ男性症候群)といった症状が顕在化するとも言われている。
・しかし、驚くことに欧米では、「年を取ると、より性格が穏やかになり、優しくなる」というのが定説だ。筆者も通算6年ほど、イギリスやアメリカで暮らしたが、お年寄りになればなるほど、話し方がゆっくりになり、気は短くなるというより、長くなる印象がある。一昔前までは日本でもこちらのイメージのお年寄りが多かったように思う。
・科学的に見ても、そういう傾向を実証するデータは多い。今年1月にイギリス・ケンブリッジ大学の脳科学者たちは脳の分析調査を発表、「年を取るほど脳の前頭皮質が薄くなり、よりしわになることなどから、気が長くなり、穏やかになる」と結論づけた。 ケンブリッジの科学者の言葉を借りれば、「人間は年を取るほど、神経質ではなくなり、感情をコントロールしやすくなる。同時に、誠実さと協調性が増し、責任感が高まり、より敵対的でなくなる」のだそうだ。これはまさに、日本の高齢者に対する評価とは真逆である。
▽人は年を取るほど幸せを感じるはずなのに…
・不満を抱える日本の高齢者。これは世界的な幸福度の調査からも垣間見える。そもそも、幸福度を測るランキング調査などにおいて、日本は先進国の中ではかなり低い順位に終わることが多い。たとえば国連の「World Happiness Report 2017」によれば、日本の幸福度は世界155カ国中51位。サウジアラビアやニカラグア、ウズベキスタンなどよりも低い。
・OECDの「Better Life Index(2015)」によれば、人生に対する満足度は38先進国中29番目だ。これについては、日本人はこうした調査において、低めの点数をつける傾向があるとの指摘がある。だから、国際比較にはあまり意味がないという人もいるが、それはさておき、問題は、日本では年を取るほど、不幸だと感じる人が多いという結果である。
・人は年を取るほど幸せを感じる人が増える。これは欧米などで顕著な傾向だが、日本では、まさにその逆。年代別の幸福度を追った調査では、先進国においては、幸せは若いころに高く、中年で低くなり、高齢になって再び上がるというまさにUカーブの傾向がある。17~85歳までの2万3000人を対象にしたロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの調査では、最も幸せなのは23歳と69歳だったそうだ。一方、日本では年を取るにつれ、幸福度が下がっていく。
・年を取れば幸福になるという傾向について、英『エコノミスト』誌は「年を取るほど、争いごとが少なく、争いごとに対するより良い解決法を出せる。感情をコントロールすることができ、怒りっぽくなくなる。死が近づくと、長期的なゴールを気にしなくてよくなり、今を生きることが上手になる」と分析しているが、なぜ、こうした現象が日本では起きないのか。
・これには多くの原因が考えられるだろう。朝日新聞の声欄では、「キレる高齢者が増えている」と指摘する若者の意見に対し、高齢者の立場からさまざまな意見が寄せられている。 「暇なんだ」「話し相手が欲しい」「自分にイライラしている」「私たちは一生懸命働き、そのおかげで日本は先進国入りをし、東京オリンピックまでやれた。お国のために働き続けてきた私たちの言動を大目に見てほしい」「昔のように3世代が一緒に暮らすことも、お寺で法話を聞いた後に他の信者と会話を楽しむことも少なくなった。人生に対する不安や不満を誰も本気で聞いてくれない。老年期は寂寥(せきりょう)感がつのるばかり」などといった声が集まった。
・病気、身体的な不自由。金銭的な不安。さまざまな要素は折り重なるとしても、これは世界各国共通の話である。「なぜ、日本だけが」という話については、次回、専門家のインタビューで詳しく分析する予定だが、筆者が特に、大きな要因ではないかと考えるのは、高齢者の深刻な孤独感、そして、満たされない承認欲求だ。
・以前、日本の中高年男性が特に孤独であるという話(日本のオジサンが「世界一孤独」な根本原因)を書いたが、社会的孤立感は幸福度を最も大きく下げる原因であり、都市化、過疎化、核家族化、少子化などによって、その度合いは年々、加速している。と同時に、人としての生きがいの重要な柱である「人に認められたい」という欲求が満たされる機会がほとんどなくなってしまっている。「承認欲求」は人間の根源的な欲求の1つだ。子育てや仕事で認められ、感謝され、必要とされていた自分がいつの間にか、邪魔な存在になっている、と感じるとき、人は生きがいを失うのではないか。
・そこに重なるのが、「特に、経済的ニーズがない人でもいつまでも会社や組織にへばりつこうとするのか」という疑問だ。企業のトップなどを経験した後、顧問や相談役などとして、会社に残り続けようとする人たちは少なくない。今、大変なことになっている電機メーカーを含めて、顧問や相談役がワンフロアに集結し、「老人クラブ状態」というのはよく聞く話だ。何でも、こういう人々は、「部屋」と「黒塗りの送迎の車」と「秘書」、この3種の神器を失うことが何より怖いのだという。
▽エグゼクティブは退職後、チャリティ活動へ
・ひるがえって、欧米などでは、企業のトップや幹部は日本のエグゼクティブの10倍も100倍も稼ぎ、とっとと辞めてリタイアメントライフを送るのを楽しみにしている。世界に散らばるセカンドハウスを行き来したり、好きな趣味に没頭したり、講演活動をしたり。リタイアメントはまさに、夢を実現する待ち焦がれた時間でもある。
・こうしたエグゼクティブは退職後、チャリティ活動にいそしむ。たんまり稼いだおカネをごっそりと寄付し、〇〇図書館、××ホール、などと名前を冠した施設を造ってもらう、慈善事業に寄付して、ありがたがられる。また、それほど余裕がなくても、ボランティアなどして、社会貢献をする。こうしたことで「承認欲求」「名誉欲」を満たしていくのだ。日本ではこうした話はあまり聞かない。黒塗りに固執するおじさま方が恐れているのは、社会から認められなくなる、必要とされなくなる、そういった高齢者特有の喪失感なのだろう。
・批評家の浅田彰氏は、「(ドナルド・トランプ勝利の背景には)白人男性を中心とする『サイレント・マジョリティ』の『承認』欲求、つまり、過剰な『承認』を受けているかに見えるマイノリティへの嫉妬と憎悪が異様に亢進していたことがある」と看破したが、日本のキレる高齢者の怒りのマグマの源泉は、同様の「満たされぬ承認欲求」といえるのかもしれない。
・キレる高齢者が増えている、というが、それは社会全体に高齢者が増えたからそう見えるという側面はあるだろうし、単に、年を取れば、気が短く怒りっぽくなるからということで片づけられるものでもない。そうした意味で、高齢者を疎外したり、単に批判したりしても、何ら問題は解決しないし、今若くても、誰もがいつか同じように自らの成功体験をひけらかす頑固で怒りっぽい高齢者になるかもしれないのだ。
・高齢者の承認欲求という渇望を満たすためには、新たな顕彰のシステムやコミュニティづくりのアイデアも必要だろう。また、世代間、さらに高齢者同士のコミュニケーションが、質量ともに絶対的に不足している。声をかける。あいさつをする。感謝をする。褒める――。何げない言葉がけや会話から、お互いをハッピーにするきっかけは生まれてくるはずだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/171469

次に、上記記事の続きである5月30日付け東洋経済オンライン「日本の高齢者が不平不満を抱える根本原因 「人生=仕事」という日本ゆえの悲劇だ」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは岡本氏の質問、Aはニック・ポータヴィー教授の回答、+は回答内の段落)。
・前回の記事「日本の高齢者は、なぜこうも『不機嫌』なのか」には、たくさんの反響の声をいただいた。以下はそのうちの一部だ。
 *長年「滅私奉公」で働いてきた人が、いきなり用済みにされ「私」に放り出され、行き場がなくなる。
 *日本人はすべてを仕事に振りすぎている。だからリタイア後に不安定になったり、無気力になる高齢者が多いのだろう。
 *若者は年金も減り(もらえるかもわからないが)、高齢者からはきつく当たられる。若者も不機嫌である。互いに不機嫌である今の社会では、互いを思いやる余裕がない。
 *封建制度とか、男尊女卑とかの概念がまだ日本人の中に根強くある。その中で苦しんだ年配の特に女性が怒っていて、パートナーである男性にも冷たくしてしまう。
 *高齢者に限らず日本全体がピリピリしてる。言いたいことも言えない、やりたいこともできない、周りに合わせるばっかりで自分を見失う。そのうえ、長時間労働やストレスフルな労働環境で疲弊している。
▽閉塞感は加速度的に深刻化していく可能性
・誰もが身近で喫緊の問題としてとらえていることが伝わってくる。実際にキレる高齢者に遭遇し、不快な思いをした経験を語る方の声が多く、この問題が幅広い年代の人々の心に影を落とし、日本社会にきしみをもたらしていることがうかがえた。問題の根は深く、少子高齢化が進む中で、この圧迫感、閉塞感は加速度的に深刻化していく可能性がある。
・その背景にあるのは、世界の中でも日本の高齢者はとりわけ、幸福実感が低いということだ。日本の高齢者の「幸福観」ははたして特殊なのだろうか。そこに解決策はあるのか。幸福経済学の専門家で『幸福の計算式』の著者であるイギリス・ウォーウィック大学のニック・ポータヴィー教授に話を聞いた。
Q:日本の高齢者は特に幸福感が低いというデータが出ているが。
A:世界の調査統計で確認したところ、日本人の場合、最も不幸、つまり怒りに満ち、人生に満足していないのは、65~75歳の年代グループという結果だった。人の幸福感はほとんどの国において、通常、30代から下降線をたどり、40代で底を打ち、50代からまた盛り返すU字型カーブになっている。だから、苦悩する40代の人々を形容して「ミッドライフクライシス」(中年の危機)という言葉もあるほどだ。 一方で、日本では最も幸せなのは25歳以下の年代で、その後は一貫して下がり続けるL字型カーブ。75歳を過ぎて若干、幸福感は上昇するが、それほど大きなものではない。歳を取るほど、不幸になる。こうした状況は世界の中でも極めて特異のものといえ、日本では人生のクライシス(危機)は、中年より老年にやってくるということだ。
Q:一般的に、人は、高齢になると不機嫌になるということではないということか。
A:なぜ、幸せはU字型になるのかといえば、われわれは歳を取れば、過度な期待をしなくなり、より賢くなり、現実を受け入れることができるようになる、と考えられているからだ。一方で、アジアでは「お年寄りは敬われるべき」といった社会的通念が強く、日本でも歳を取るにつれ、(年功序列などで)ステイタスを手に入れる構造になっており、「期待値」が下がりにくく、現実との乖離が生まれてしまっているのかもしれない。
▽期待値が高いから不幸に感じる
Q:期待値が高いことが不幸感につながっていると。
A:幸福は「現実」と「期待値」との乖離により大きく影響を受ける。その幅が小さいほど、幸せになりやすい。西洋では「歳を取れば、若者から敬われるべき」などといった通念はなく、そういったことは期待していない。しかし、日本の高齢者は、長い間、一生懸命働いてきて、それがまだ報われていないという気持ちが強いのではないか。収入や金銭的な心配や不安が彼らの不幸感の源泉とは言い切れない。特に収入に問題がない人でも、歳を取るほど、不幸に感じるという傾向があるからだ。
Q:収入と幸福には相関関係はあるか。
A:もちろん、おカネがある人のほうがない人より、幸せを感じやすいという傾向はある。しかし、たとえばある国の国民の収入が過去に比べて総体的に上がったからといって、その国民がより幸せになったと感じているかといえば、そういうことにはならない。また、その国のトップ1%の金持ちだとしても、自分をトップ0.1%の人と比較して、不幸に感じる人もいる。つまり、幸福感や満足度は、どれぐらい期待値を上げ、それがどれぐらい満たされるかによって、変わってくるのだ。
Q:幸福の決め手、幸福感に影響を与える因子とは何か。
A:健康や金銭的な充足度など幸福に影響を与える要因はいろいろとあるが、最も大きな決め手となるのが、その人の社会的な関係性だ。孤独は健康面にも支障を来し、幸福感に大きなダメージを与える。特に関係性の中で、日本が西洋の国と大きく異なるのは、たとえばアメリカやイギリスのような個人主義の国では、歳を取って子供と一緒に住むことを期待していない、ということだ。だから、定年後は高齢者向けのホームなどに移り住み、その中で自分が好きなことをして暮らしていく、という人も多い。
+アジア、日本においては、やはり、家族主義なところがあり、家族に面倒を見てもらいたいという期待値が高い。しかし、それがかなわない場合、そのセーフティネットとなるコミュニティのようなものがあまりないために、孤独に陥りやすい。 特に日本では、現役時代に世界の中でも最も長い労働時間に耐え続けた人たちは、そういったコミュニティを探したり、つくる暇もなく過ごしてきた。退職したら、もっと報われるはず、とずっと我慢して働き続けても、結局、願ったとおりにはならず、期待値と現実の差に打ちのめされてしまう。
+最近、ネットフリックスで「侍グルメ」という日本の番組を見たが、ひたすら働き続けてきた男性が退職し、何をしていいのかわからない、という前提の話だった。いろいろと食べ歩きをするが、彼はずっと1人。友達もネットワークもない。まさにそういう人が日本には多いのだろう。「人生=仕事」という日本ゆえの悲劇ではないか。
▽失業が与える傷は男性のほうが女性の2倍深い
Q:人生における仕事の比率があまりにも高いということか。
A:そもそも、人はどのような経験に対しても「慣れ」によって、順応性を身に付けていくことができる。この特性によって、たとえば、「離婚」などといった経験から比較的早く立ち直ることができる。しかし、「失業」と「通勤時間」にはなかなか順応できない。どんなに時が経っても、そのストレスや不快感を受容していくのが難しい。なぜなら、失業期間中は、時間がたくさんあり、おカネがあまりなく、ほかにすることもない状態で、気を紛らわせることができない。こうした負の考えにずっと付きまとわれてしまうのだ。これは通勤時間中も同じことだ。
+また、失業が与える傷は男性が女性の2倍ほどであることわかっている。「失業」は誰にとっても痛手だが、「仕事」の比重が非常に高い日本のサラリーマンの場合は特にそのメンタルダメージがとても強いということなのだろう。
Q:何か解決策はあるのか。
A:特に個人主義的な西洋に比べて、アジアでは家族や地域など同一グループ内でのつながりを重視するが、そういった社会の場合、そのグループや家族のほかにつながりを作っていこうとせず、「閉鎖的」になりがちだ。個人主義的な社会では、自らの独立性を保ちながらも何かあれば、外部のセーフティネット(たとえば、フロリダの高齢者ホームに移り住むなど)に頼ることをいとわない。日本においても、もっとオープンなネットワークやコミュニティのあり方を考える価値はある。
+また、人生において、その満足感に大きく影響するのが「生きる目的」である。仕事という目的を失った人たちが新たに「生きがい」を見いだせるような仕組みがあればいいと思う。それは国や文化、そして個々人で違うものだが、その解が出しやすくなるように社会として取り組んでいく必要があるかもしれない。
http://toyokeizai.net/articles/-/173790

第三に、5月18日付け日経ビジネスオンライン「「老人を嫌うのは老人自身なんです」 作家・藤原智美氏が改めて語る「暴走老人!」論」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・日経ビジネス5月1日号の特集「さらば老害ニッポン 10の提言」では、各分野の識者に超高齢化社会を迎える日本の課題や、高齢者を取り巻く状況について分析してもらった。2007年に著書『暴走老人!』(文芸春秋)を発表し大きな反響を呼んだ芥川賞作家の藤原智美氏(61)は、「キレる老人」の問題は「10年前に比べてより深刻化している」と警鐘を鳴らす。我々はどのように課題と向き合うべきなのか、藤原氏に聞いた。   ――「キレる老人」が社会問題化し、頻繁に報道などでも取り上げられるようになっています。まず、シニア層を取り巻く問題について、藤原先生はどのように考えておられるのでしょうか。
藤原:まず、高齢者の様々な問題については、環境や制度を論じる前に個人の問題としてあると考えています。高齢者というのは若い頃と比べて、確実に身体的に衰えている。これは自分でも把握できますよね。だから、健康を維持するために散歩をしたり、スポーツクラブに通ったりする。ヨガの教室などでは生徒の平均年齢が70歳という教室もあるくらいです。
+ただ、身体に比べてより見えにくいのが、思考力やメンタルの部分です。これらも体同様に、ストレスへの耐性や克服する力というものが弱くなっていく。メンタルが「老化」するということですよね。しかし、自分自身がそれを自覚することは非常に難しい。本来であれば身体と同様に鍛えていくことが必要なのに、それができていない人が多いのです。
+だから、体はピンピンしているのだけど、思考力や心は弱っているというアンバランスな状況が生まれてしまうのです。特に影響が顕著なのがコミュニケーション。ボキャブラリーや考えることだけでなく、人と会って会話をして、顔の表情を動かすこと。こうしたことが十分にできなくなっていくということです。
――『暴走老人!』の中でも、コミュニケーション不全というか、他者と満足にやり取りできない高齢者の実例などが取り上げられていましたね。
藤原:表情筋をうまく動かせないから喜怒哀楽があまり表に出ない。その結果いつもブスッとした表情で生活して、身振り手振りも落ちてくる。そうすると表現力自体が、自分が頭の中で思っているのとは全く異なってくるわけです。それについて本人は自覚していないし、周りから見たら怒っているようにしか見えない。
+加えて、60代に入って仕事をリタイアすると、現役時代のコミュニケーションの場を失うわけですよね。体を動かさないと体力が落ちていくように、コミュニケーションを維持し続けないとその力は弱っていく。その悪循環が他者と満足にコミュニケーションが取れず、それが時に暴発して「キレる」ということにつながってしまうのだと思います。
▽10年で事態はより深刻に
――藤原先生が『暴走老人!』を書かれたのは2007年。10年経って状況はどのように変わってきたのでしょうか。 
藤原:状況はより深刻になってきていますよね。高齢者の数が増えて本の中で書いたような問題点が増えているのに、何か改善が進んだかというとほとんど変わっていない。「キレる老人がいるのだ」という社会的認識は広がっているとは思いますが、それに対する手立ては模索が続いているということでしょう。
藤原:例えば今ではすっかりスタンダードになったスマートフォン(スマホ)やSNS(交流サイト)。独居老人だってスマホは持っていますが、20~30代が自由に使いこなしているように使えているわけではない。つまり、若い世代のようなスタンダードからは完全に外れているということです。SNSの世界にも乗っていけていない。
+だから、高齢者にスマホを渡して、一人暮らしだけどスマホで外の世界と繋がっているから大丈夫ということは全くないわけです。やはり土台はリアルな世界の中で、どれぐらい他者と繋がりを持って、どれぐらい喜びを持って生きているかが重要なのだと思います。その繋がりの上にSNSが補完的に存在するというのがあるべき姿ではないでしょうか。
――役所などの公共施設や小売店、病院などでのトラブルの多さについては、どのように捉えられていますか。
藤原:高齢者がたくさん来るところはトラブルが多い。だから、役所や店舗の側も非常に気を使うし、過剰に接客するということですよね。それでは解決にならないと考えています。単に、いわゆるキレる閾値を下げているだけで、「これまでは一礼していたのに今日はしない、けしからん!」ということになるわけです。だから、先ほどの話に戻りますが、表面的な配慮ということではなく、やはりリアルな人間関係をどれだけきちんと構築するかが大事なのです。
+これは高齢者に限った話ではないですが、地域のコミュニティーが崩壊寸前で、老人会や消防団などの組織率もどんどん下がっている。現代人というのはあらかじめ用意された繋がりではなく、趣味や人生のテーマなどで共通項のある仲間を意識的に求めていますよね。高齢者も、老人会に行ったって面白くないわけですよ。だから行かない、仲良くなろうとも思わない。
+そういう状況を見ていると、実は老人が嫌いなのは老人自身なんだと思ったりしますよね。例えばJR横須賀線なんか乗ると、向かい合わせの4人席にお年寄りが4人乗っているけど、ブスッとして全然話そうともしない。昔は他人同士でもそういう場で会話が弾むようなシーンがあったと思うのですが・・・。
――お互いに不機嫌そうで、話しかける雰囲気でもない。
藤原:そう。実は、自分もそうなのですが、相手が不機嫌そうで、すぐ怒りそうだし・・・ということですよね(笑)。
▽国の抜本的な社会設計が必要
――キレる老人に関しては、極端な形では犯罪に走る事例も目立ちます。こうした社会不安の増大という意味でも、問題は非常に根深いと思うのですが。
藤原:ものすごく大きいですよね。社会不安ということでもそうですが、経済的にも医療や介護の問題に関連しても、社会的な損失やコストは非常に大きいのです。逆に言えば、そうした高齢者を生み出さないようにするために、国家が果たすべき役割はより重要になってきていると感じています。
+例えば教育。19世紀以降、国家運営の一つの柱は教育だったと思いますが、それは21世紀も続いていきます。子供の教育は国家を成長させ、支えていく柱ですから。それでは、高齢者はどうかといえば、平均寿命が80代まで延びてきている状況で、もうすぐ死ぬから放っておけばいいということでは全くないわけですよね。
+そうであれば、子供の教育に匹敵するような場所や、退職してから死ぬまでの時間をどのように過ごしてもらうかというノウハウを国が公的に提供するような仕組みが必要だと考えます。 自分からそれを積極的に求めていくバイタリティーや資産のある高齢者はいいけれど、そうでない多くの人は取り残されてしまう。それが結果的に、甚大な社会的損失を招くことになってしまう。だからこそ、国は高齢者に対して、学びやスポーツ、娯楽や趣味などを提供する場と機会を提供しなければならないと思います。
藤原:国家財政が逼迫されるような事態は避けなければならないですが、医療や介護といった社会保障費については、むしろ心身ともに健康な高齢者が増えれば、そうしたコストが減るというメリットも大きいです。実際にいくつか実験的な施策で効果が上がっている事例もある。そうした社会設計を本格的に導入していくべきでしょう。
▽団塊の世代はまだ、「老人」ではない
――団塊の世代が全て75歳以上の「後期高齢者」になる「2025年問題」も議論されています。藤原先生はどのように考えておられますか。
藤原:「老人=団塊の世代」というイメージは強いですが、僕に言わせると、まだ老人ではないですよね。以前ある民間の老人ホームに取材に行く機会があったのですが、そこで感じたのは「老人というのは社会の中で見えないところにいる人たちだ」ということだったのです。
+つまり、街中を出歩かない、百貨店などで色々な買い物をしない、部屋に閉じこもって一日中過ごしている。そういう人たちですよね。団塊の世代については、まだ多くの人々はそうではないですよね。消費の担い手でもあるし、産業の世界でバリバリ働いている人も中にはいる。社会の中で目に見えるところで活動しているわけですよね。
+それでは、あと5年、10年経った時にどうなるでしょうか。団塊の世代が後期高齢者になり、老人ホームに入居する。体が弱り、身動きが取りづらくなる。そうして街の中から、社会の中で老人の姿が見えなくなる。そうした時には医療費や介護費はとんでもない額に膨れ上がるでしょう。その社会的コストは本当に深刻になると思います。
――そうした問題を控えている今、我々はどのように高齢者と向き合うべきなのでしょうか。
藤原:個人の立場では、まず高齢者とはどのようなものであるのかをきちんと理解し、接するということが大切でしょうね。例えばコミュニケーション力が落ちている、人付き合いが下手になっていることを想像して向き合うということです。 それから、行政や企業の側も、施設のバリアフリーなどハード面だけではなく、ソフト面をどのように充実させていくかが重要でしょう。過剰に接客するということではなく、高齢化社会の中で、どうすれば高齢者とうまく接して、サービスを回していけるかを考える。それこそが今求められていることだと思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/051000049/051700002/?P=1

第一の記事にある 『ケンブリッジの科学者の言葉を借りれば、「人間は年を取るほど、神経質ではなくなり、感情をコントロールしやすくなる。同時に、誠実さと協調性が増し、責任感が高まり、より敵対的でなくなる」のだそうだ。これはまさに、日本の高齢者に対する評価とは真逆である』、との指摘は、欧米では高齢化にはバラ色の側面があるのに、日本では真逆とはやっかいな問題だ。 欧米では、『エグゼクティブは退職後、チャリティ活動へ』、というのは確かにうらやましい。 日本では「会社人間」で自分の属する社会を狭くしていた上で、退職したとたんに、社会とのつながりが絶たれてしまう。 『高齢者の承認欲求という渇望を満たすためには、新たな顕彰のシステムやコミュニティづくりのアイデアも必要だろう』との指摘はその通りだ。ところで、私が毎週土曜日に観ることにしているBS日テレ「小さな村の物語」は、イタリアの小さな村が舞台で、どこの村にもバル(カフェ)があって、老人たちのたまり場になっている。日本にもこういうのがあればいいのにと、毎回思っている。
第二の記事では、イギリス・ウォーウィック大学のニック・ポータヴィー教授が 『幸せはU字型になるのかといえば、われわれは歳を取れば、過度な期待をしなくなり、より賢くなり、現実を受け入れることができるようになる、と考えられているからだ。一方で、アジアでは「お年寄りは敬われるべき」といった社会的通念が強く、日本でも歳を取るにつれ、(年功序列などで)ステイタスを手に入れる構造になっており、「期待値」が下がりにくく、現実との乖離が生まれてしまっているのかもしれない』との指摘は、やや昔の日本をイメージしているような気がする。既に、日本でも年功序列などが崩れ、おいしい思いをしないまま会社を去るケースが増えており、それに対する「怒り」はあっても、「期待値」は既に下がっているのではなかろうか。
第三の記事で、『実は老人が嫌いなのは老人自身なんだと思ったりしますよね。例えばJR横須賀線なんか乗ると、向かい合わせの4人席にお年寄りが4人乗っているけど、ブスッとして全然話そうともしない』、との指摘は男性の老人には確かに当てはまるようだ。ただ、 『国は高齢者に対して、学びやスポーツ、娯楽や趣味などを提供する場と機会を提供しなければならないと思います』、との指摘は、国が面倒をみるべき分野は、もっと他にも保育、医療、介護など多くあるので、一般的な学びやスポーツ、娯楽や趣味などを提供する場と機会などは自己責任で見出すべきだと思う。ここまで国に「おんぶにだっこ」では、財政のパンクを加速するだけではなかろうか。
タグ:東洋経済オンライン 高齢化社会 藤原智美 日経ビジネスオンライン (その3)(日本の高齢者は、なぜこうも「不機嫌」なのか、日本の高齢者が不平不満を抱える根本原因 「人生=仕事」という日本ゆえの悲劇だ、作家・藤原智美氏が改めて語る「暴走老人!」論) 岡本 純子 日本の高齢者は、なぜこうも「不機嫌」なのか 会社にへばりつこうとすることと密接な連関 キレる高齢者 欧米では、「年を取ると、より性格が穏やかになり、優しくなる」というのが定説 ケンブリッジの科学者の言葉を借りれば、「人間は年を取るほど、神経質ではなくなり、感情をコントロールしやすくなる。同時に、誠実さと協調性が増し、責任感が高まり、より敵対的でなくなる」のだそうだ。これはまさに、日本の高齢者に対する評価とは真逆である 年代別の幸福度を追った調査では、先進国においては、幸せは若いころに高く、中年で低くなり、高齢になって再び上がるというまさにUカーブの傾向がある 日本では年を取るにつれ、幸福度が下がっていく 大きな要因ではないかと考えるのは、高齢者の深刻な孤独感、そして、満たされない承認欲求 エグゼクティブは退職後、チャリティ活動へ 高齢者の承認欲求という渇望を満たすためには、新たな顕彰のシステムやコミュニティづくりのアイデアも必要だろう 日本の高齢者が不平不満を抱える根本原因 「人生=仕事」という日本ゆえの悲劇だ 閉塞感は加速度的に深刻化していく可能性 イギリス・ウォーウィック大学のニック・ポータヴィー教授 歳を取るほど、不幸になる。こうした状況は世界の中でも極めて特異のものといえ、日本では人生のクライシス(危機)は、中年より老年にやってくるということだ 期待値が高いから不幸に感じる 、現役時代に世界の中でも最も長い労働時間に耐え続けた人たちは、そういったコミュニティを探したり、つくる暇もなく過ごしてきた。退職したら、もっと報われるはず、とずっと我慢して働き続けても、結局、願ったとおりにはならず、期待値と現実の差に打ちのめされてしまう 仕事という目的を失った人たちが新たに「生きがい」を見いだせるような仕組みがあればいいと思う 「老人を嫌うのは老人自身なんです」 作家・藤原智美氏が改めて語る「暴走老人!」論 著書『暴走老人!』(文芸春秋) 、「キレる老人」の問題は「10年前に比べてより深刻化している」と警鐘を鳴らす 実は老人が嫌いなのは老人自身なんだと思ったりしますよね。例えばJR横須賀線なんか乗ると、向かい合わせの4人席にお年寄りが4人乗っているけど、ブスッとして全然話そうともしない。 国の抜本的な社会設計が必要
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