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フィンテック(その2)(「フィンテック」って結局 何?、元・日銀マンがフィンテック企業に転身 安定人生を捨てた理由) [金融]

フィンテックについては、昨年2月27日に取上げた。今日は、(その2)(「フィンテック」って結局 何?、元・日銀マンがフィンテック企業に転身 安定人生を捨てた理由) である。

先ずは、ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長の安東泰志氏が8月30日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「フィンテック」って結局、何?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
金融界は、ここ数年、フィンテック(FinanceとTechnologyを合成させた造語)の話題で持ちきりである。そして、ここに来て日本でもいくつかのフィンテック系ベンチャーが軌道に乗り始め、銀行界もようやく本格的に取り組みを開始している。本稿では、今なぜフィンテックが重要なのか、それが我々の暮らしや産業をどのように変えてくれるのかについて簡単にまとめてみたい。
・なお、フィンテックについては、取り上げる側面次第では際限なく議論が拡散してしまうので、本稿では、筆者が東京都側で事務局を務める「国際金融都市・東京のあり方懇談会」において日本銀行決済機構局長である山岡浩巳氏が提示した資料を敷衍する形で議論を展開することとする。
▽フィンテックが勃興した背景事情
・フィンテックがここ10年間で爆発的にもてはやされるようになった背景には、金融分野以外でのソフト・ハード両面での技術革新がある。すなわち、ビットコインを生んだブロックチェーン技術の登場、AIやビッグデータ分析技術の進展、そして07年のiPhone誕生を契機とするスマートフォンの普及などである。
・ブロックチェーンは、従来の集中管理型のデータベースではなく、多数のコンピュータ端末で構成されるネットワークだけを用い、データの改ざんを防止する技術を組み込んだデータの束(ブロック)の連なりによってデータベースを構築する。
・したがって、従来のデータベースと異なり、24時間停止せず、改ざんが不可能であるという特徴を持つ。これまでのブロックチェーン技術は、ビットコインなど仮想通貨分野がハイライトされてきたが、上記特徴を生かすことにより、例えば不動産の登記とか証券取引システム等々、社会の様々な分野のシステムを根本的に変える可能性を持つ。 もちろん、現在非常に重いコンピューターセンターを運用し、二重三重のセキュリティーを要する銀行のシステム構成も大きく変化する可能性がある。
・AIやビッグデータ分析技術は2010年頃からIBMが開発した質問応答システムであるWatsonや、アップルがiPhoneに組み込んだSiri、そして、ディープラーニング(深層学習)などが一気に花開いた。それが可能になった理由は、ITインフラの高速化といったハードウエア面の進化もさることながら、SNSやecサイトでの購買履歴や閲覧履歴など、分析すべきデータが豊富に出現したことなどであろう。AIの発達により個々人のニーズに則した金融サービスの提供が可能になった。
・そして、スマホの爆発的な普及により、これまで普通の金融インフラが未発達だった途上国や新興国などで、携帯上で決済等の金融サービスが受けられるようになった。
▽「フィンテック」と言っても種類はさまざま
・一口にフィンテックと言っても、その種類はさまざまだ。もちろん、既に触れたビットコインなどの仮想通貨もその一つだが、それ以外にも以下のように個人向けから大企業向けまで多種多様のサービスが提供されようとしている。
・支払決済の分野では、スマホによるクレジット決済、SNSアプリを通した送金サービスなどが既に普及し始めている。PayPalApple Pay、AliPay、WeChat Pay、Google Wallet、M-Passなどについては、それらを利用しているか、少なくとも知っている人が多かろう。これに加えて、TransferWireなど安価な国際送金サービスも提供され始めている。
・金融仲介分野では、クラウドファンディングやP2P(ピア・ツー・ピア)ファンディングが米国を中心に既に市民権を得ており、日本にもその萌芽が見られる。クラウドファンディングとは、ネットを介して不特定多数から資金調達できるスキームで、「寄付型」「購買型」「融資型」「投資型」などの種類がある。P2Pファンディングとは、ウェブサイトを通してお金を貸したい人とお金を借りたい人を結びつける融資手法だ。
・クラウドファンディングは、資金の出し手が必ずしも金銭的な見返りを求めないケースが多いことや、融資型が少数であることなどから、P2Pファンディングとは異なる。P2Pファンディングを行っている企業は英米だけで数十社にのぼり、典型的なのが米国のレンディングクラブだ。銀行は人件費や店舗等の固定費がかかる分だけ、融資スプレッドが高くなり、一方の預金者には低金利しか提供できないのに対し、P2Pファンディングの場合、これら費用が削減できている分だけ融資金利は低くできる一方、資金の出し手にも相応に金利を支払うことができる。
・同じく、金融仲介分野の中でも証券投資に関しては、ビッグデータやAIを活用した投資サポート(ロボアドバイザーなど)が既に日本でも活用され始めている。これも有人店舗のように固定費がかかる投資助言サービスに比べて低コストで投資サポートが提供できる。
・また、個人や企業向けの資産管理や会計サービスの提供も活発になってきた。これにより、後述する銀行APIの進展次第ではあるが、国民全般の利便性が高まるばかりでなく、企業経営の効率化による生産性の向上も期待できる。 こうして見ると、フィンテックは、国民の利便性を高める反面、既存の金融機関の本業である預金・融資・決済などにおいて、そのビジネスモデルを根本から脅かす存在であると言えるだろう。
▽フィンテックによって何が実現できるか
・フィンテックは、我々の日常生活を一変する可能性を持つ。 例えば、今の決済アプリが進化すれば、買い物の後にレジを通らなくても店を出る時に自動的に決済が終わっているインフラや、下車時に自動的に支払いも済ませる配車アプリなども考えられるし、事実、既に米国ではそれらはある程度まで実現している。
・さらに、企業間の決済分野においても、銀行の対応ができるのであれば、送金指図の際に「XML(eXtensible Markup Language)電文」と呼ばれる方式を採用することにより、より詳細なEDI(Electronic Data Interchange、企業間でデータ形式を決めて受発注・納品データなどをデータ交換すること)が送れるようになれば、現在、受取企業側が手作業で行っている売掛金の消し込み作業が自動的にできるようになるほか、フィンテックを応用した受発注システムや会計システムとの連動も簡単にできる。これによって企業の経理業務が大幅に効率化され、生産性の向上が見込めるだろう。
・AIを活用したフィンテックは、怪しげな取引をブロックしてお年寄りの詐欺被害防止に役立てることもできる。例えば、既に車の運転が不可能と思われるほどの高齢者が突然高額なスポーツカーを買う取引などはAIがはじき出して決済を止める。また、生体認証の発達は、暗証番号の漏洩リスクを大きく減らすことになろう。
・同じくAIによる資産運用助言サービス(ロボアドバイザーなど)は、有人対応の場合に必要となる店舗や人員配置といった固定費がかからない。その分を販売手数料の削減に充当できれば、顧客の利便性は大きく向上する。 その資産運用の前提として、家計管理や資産把握などが必要だが、これも、後述する銀行のAPI対応次第で、ほぼフィンテックによって実現できる時代が来るだろう。
・さらに、ブロックチェーン技術を応用すれば、美術品管理、農産物のトレーサビリティを確保したり、複数の病院に通う患者のカルテを管理したりすることが容易になる。もちろん、既に述べたように、銀行の重厚長大な勘定系システムが不要になったり、証券取引所に代わる証券取引システムや、不動産の登記、契約の管理などにも応用できるようになり、これら業界のビジネスモデルを大きく変革することにもなり得るだろう。
・最後に、人類全体について言えば、いわゆる「金融包摂(Financial inclusion)」がある。すなわち、これまで銀行店舗やATMなどの金融インフラが未整備だった地域においてスマホによる決済や融資が実現していくことは、途上国や新興国にとっては、国民に金融サービスを一気に普及させ、先進国に追いつくチャンスとなろう。
▽メリットを享受するために これから求められる取り組み
・このように、フィンテックは我々の暮らしを大きく変化させる可能性を秘めているのだが、人々が十分にそのメリットを享受するためには、まだいくつかの課題が残されている。 第一に、オープンイノベーションの促進だ。先に述べたように、フィンテックは、国民の利便性を高める半面、既存の金融機関の本業である預金・融資・決済などにおいて、そのビジネスモデルを根本から脅かす存在でもある。
・しかし、ここは金融機関、特に銀行とフィンテック企業が協力し、そのための基盤であるオープンAPIや金融EDIを実現させていく必要がある。EDIについては先ほど説明したがオープンAPIはそれにもまして重要なポイントである。
・APIとは、Application Programming Interfaceの略で、他のシステムやソフトウエアに機能を提供するための規約のことだ。例えば、「食べログ」は、Googleが地図情報サービスに設けたAPIを活用し、店舗の地図を添付している。同じように、銀行がAPIを通して口座情報を家計管理システムや会計システムを扱うフィンテック企業に供給すれば消費者利便性は飛躍的に高まるだろう。今年3月には全銀協が事務局を担う「オープンAPIのあり方に関する検討会報告書(中間的な整理案)」が提示され、API仕様の標準化やセキュリティ対策などについての考え方が示されている。
・第二に、フィンテック技術の研究開発や実験の推進だ。ブロックチェーン、分散型台帳、AI、ロボティックスなどは、金融分野だけでなく産業界で幅広く使える新技術であり、学会や業界横断的な取り組みや資金の確保が重要だ。
・第三に、セキュリティ対応だ。フィンテックは、銀行の口座情報はもとより、SNS上の個人情報等を含め、膨大なデータを扱うことになる。情報セキュリティーのあり方やプライバシー保護の方針を確立し、「日本のフィンテックは安心」という信頼を得ることが必要だ。
・最後に、行政の取り組みも重要だ。例えば、英国では2014年に当時のオズボーン財務相がロンドンをGlobal Fintech Capitalとして発展させると宣言した。ロンドン東部のカナリーワーフ地区には「Level 39」というフィンテック産業の集積地が整備され、100を超えるフィンテック企業が集結。フィンテックの業界団体は積極的に政府に情報を発信し、政府・規制当局もRegulatory Sandbox(イノベーションを促すために革新的な事業者に対して現行規制の適用を猶予する制度)を用意してフィンテック企業の育成に力を入れている。また、シンガポール通貨庁とシンガポール銀行協会が「Fin Tech Hackecelerator」というコンテストを実施し、優秀なフィンテック業者を表彰するスキームを用意している。
・東京都が推進しようとしている「国際金融都市・東京」構想においても、フィンテックの育成は極めて重要な課題だ。強い金融機関や金融インフラを持つ民主主義国家、日本が、その強みを生かしてフィンテック分野において少なくともアジアで第一の地位を固めることは、「東京をアジアナンバー1の国際金融都市として復活させる」という小池知事の意欲的な目標達成のための試金石になると言っても過言ではなかろう。
http://diamond.jp/articles/-/139965

次に、9月19日付けダイヤモンド・オンライン「元・日銀マンがフィンテック企業に転身、安定人生を捨てた理由 神田潤一(マネーフォワード渉外・事業開発責任者)特別インタビュー」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは神田氏の回答、+は回答内の段落)。
・9月1日、ある人事に金融業界は騒然とした。直近は出向先の金融庁で、金融とテクノロジーの融合である「フィンテック」の関連政策を担当した名物官僚が、23年間在籍した日本銀行を退職。フィンテック企業に移籍を果たしたのだ。本人にその異例の転身の真意を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
Q:官僚という政策の世界から、有力フィンテックベンチャーであるマネーフォワードというビジネスの世界へと異例の転身。その決断に至った経緯を教えてください。
A:この2年、日本銀行から金融庁に出向して、黎明期のフィンテック業界の推進に携わってきました。その間、多くの人の尽力でフィンテック業界が盛り上がり、その発展の後押しとなる銀行法改正が2年連続で決まった。しかし、いよいよ今からビジネスが花開くという大事な時期で出向期間が終わり、日銀に戻ることになりました。
+そのときは日銀で普通に仕事をすると思っていました。ただ、このタイミングで離れてしまうことに寂しさもあった。そんな思いをフィンテック業界でお世話になった人たちに打ち明けると、「戻ってきて一緒にやりましょう」という話を幾つか頂きました。
+これはもしかしたら、フィンテックの世界に戻れるかもしれない。そこで初めて日銀を辞めるという選択肢が出てきました。それからは、激変の時代において、この大事で面白い時期を1日も逃したくないという思いが強くなった。
Q:数あるフィンテック企業の中で、マネーフォワードを転職先に選んだ理由は何だったのですか。
A:民間企業でありながら、業界全体を盛り上げていく仕事ができる会社を探していました。 その点、マネーフォワードは個人向けの家計簿・個人資産管理アプリでも、法人向けのクラウド会計ソフトでも実績がある。さらに、(マネーフォワードの創業者で社長の)辻(庸介)さんと話をする中で、もっと新しいビジネスもやりたいという話を伺いました。
+その辻さんの人柄も理由の一つです。自分たちも日本のフィンテックもまだまだこんなものじゃない。もっと金融サービスを便利にしたい。業界でトップを走るような会社なのに、そうしたハングリー精神を失わず、ベンチャーとしてチャレンジしていきたいという辻さんの熱さに心が動きました。
Q:金融庁への出向でフィンテックと出会ったそうですが、そこで人生が変わったのでしょうか。
A:そうですね。フィンテック関連の勉強や仕事をする中で、金融が大きく変わる局面に立ち会える、そこで自分が主体的に働き掛けられると思いました。金融も自分の人生も変わるかもしれない。そう気合を入れたのは確かです。 金融庁に出向して携帯電話をiPhoneに変えたときに、その思いを数字に込めたパスコードを設定したんです。ホーム画面のロックを解除するたびに初心に帰って、日本の金融を変えるんだという思いを持ち続けてきました。
Q:東京大学卒・日銀という神田さんのようなキャリアの方は、一般的に保守的なイメージが強いですが、今回の転職は大胆でした。
A:「ここでチャレンジしないと後悔する」という場面ではリスクを取ってきたように思います。 大学時代に陸上競技の長距離走をやっていたのですが、東大って箱根駅伝の本大会に1度だけ出場したことがあるんです(1984年第60回大会)。そして、私の代では「10年ぶり、2度目の出場を果たす」というスローガンを掲げて練習を重ねてきました。 ただ、実は東大初出場の10年後に当たるのは、本来であれば私が卒業した翌年に開催される大会でした。それでも、私は当時チームのエースでキャプテンだったこともあって、大学を留年して箱根駅伝出場にチャレンジしました。
+結果は、チームの成績は伸びたものの、予選突破はかないませんでした。しかし、この挑戦は自分の人生に大きな影響を与えました。 転職のときも、「今決断しないとずっと後悔する」という予感があって、大学の留年を決めたときとすごく似ていました。
+転職では悩みましたし、家族の反対もありました。何かを変えるには勇気が要るし、失敗のリスクも当然ある。日銀に23年勤めて、このままいけば安泰で85~90点という人生が固まりつつありました。それでも十分合格点だったかもしれません。ただ、お金や安定のためではなく、やるべきことに突き進むフィンテック業界の人を見ているうちに、自分も熱い思いを持ってチャレンジして、120点を目指したいと思ったんです。
Q:ご家族の説得は大変でしたか。
A:大変でした。熱い気持ちを語る私と冷静な妻では、「安定を捨ててリスクを取る」という決断に対して議論がかみ合わない。 最終的にお互い冷静になろうと、転職に対する私の考えを紙にまとめることになり、2日ほど徹夜して16ページくらいのレポートを書いて、妻にメールで送りました。そこで私の気持ちが変わらないと悟ったのか、妻も仕方がないと諦めてくれました。
Q:最後に、今後マネーフォワードでやるべき仕事の優先順位について教えてください。
A:転職を決めた後に知ったのですが、マネーフォワードが(東京証券取引所マザーズに)上場するというタイミングでの入社となりました(9月29日上場予定)。上場で調達した資金をどこに振り向けるか。投資家やユーザーに訴求するためにも、このタイミングだからできることを考えたいです。
+(米国の)シリコンバレーでは、面白そうな分野にさまざまな業界の人材が流れ込むという事例を見てきました。日本では今までそうした事例は少なかったかもしれませんが、フィンテックのような成長分野に異業種の人材が流入して市場を拡大していけば、日本全体の経済や金融の活力になると思います。 だから、私のような転身が続いてほしいし、そのためにも私は成功しなければいけません(笑)。
http://diamond.jp/articles/-/142535

第一の記事で、 『フィンテックは、国民の利便性を高める半面、既存の金融機関の本業である預金・融資・決済などにおいて、そのビジネスモデルを根本から脅かす存在でもある。しかし、ここは金融機関、特に銀行とフィンテック企業が協力し、そのための基盤であるオープンAPIや金融EDIを実現させていく必要がある』、と指摘しているが、既に協力した実験的試みも行われている。 『学会や業界横断的な取り組み』、については、既にビジネスチャンスとして動き出しているので、実際には簡単な話ではなさそうだ。  「国際金融都市・東京」構想については、安東氏は事務局をやっているほどの中心人物のようだが、私自身は、政策で推進できる部分は実際には小さいと思っているので、「せいぜい頑張ってくれ」と言うほかない。
第二の記事に関しては、日銀から金融庁に出向するのは、日銀のなかでもエリートなのに、フィンテックに惹かれて転職するとは、なかなか骨がある人物のようだ。もっとも、今後、金融政策が「出口」を迎えると日銀は槍玉に上げられるので、その前に逃亡したと見ることも可能なのかも知れない。マネーフォワードでの活躍を期待したい。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 人類全体 クラウドファンディング マネーフォワード フィンテック 安東泰志 (その2)(「フィンテック」って結局 何?、元・日銀マンがフィンテック企業に転身 安定人生を捨てた理由) 「「フィンテック」って結局、何?」 国際金融都市・東京のあり方懇談会 日本銀行決済機構局長である山岡浩巳氏が提示した資料を敷衍する形で議論を展開 金融分野以外でのソフト・ハード両面での技術革新 ビットコインを生んだブロックチェーン技術の登場 AIやビッグデータ分析技術の進展 ビットコインなど仮想通貨分野 不動産の登記とか証券取引システム等々、社会の様々な分野のシステムを根本的に変える可能性 、ITインフラの高速化といったハードウエア面の進化 、SNSやecサイトでの購買履歴や閲覧履歴など、分析すべきデータが豊富に出現したこと スマホの爆発的な普及により、これまで普通の金融インフラが未発達だった途上国や新興国などで、携帯上で決済等の金融サービスが受けられるようになった 「フィンテック」と言っても種類はさまざま 支払決済の分野 金融仲介分野 P2Pファンディング 投資サポート(ロボアドバイザーなど) 個人や企業向けの資産管理や会計サービスの提供も活発になってきた 国民の利便性を高める反面、既存の金融機関の本業である預金・融資・決済などにおいて、そのビジネスモデルを根本から脅かす存在 我々の日常生活を一変する可能性 銀行の重厚長大な勘定系システムが不要になったり、証券取引所に代わる証券取引システムや、不動産の登記、契約の管理などにも応用できるようになり、これら業界のビジネスモデルを大きく変革することにもなり得るだろう 金融包摂(Financial inclusion) 金融インフラが未整備だった地域においてスマホによる決済や融資が実現していくことは、途上国や新興国にとっては、国民に金融サービスを一気に普及させ、先進国に追いつくチャンス オープンイノベーションの促進 金融機関、特に銀行とフィンテック企業が協力し、そのための基盤であるオープンAPIや金融EDIを実現させていく必要 オープンAPI フィンテック技術の研究開発や実験の推進 セキュリティ対応 行政の取り組みも重要 元・日銀マンがフィンテック企業に転身、安定人生を捨てた理由 神田潤一(マネーフォワード渉外・事業開発責任者)特別インタビュー 融庁で、金融とテクノロジーの融合である「フィンテック」の関連政策を担当した名物官僚 23年間在籍した日本銀行を退職。フィンテック企業に移籍 個人向けの家計簿・個人資産管理アプリでも、法人向けのクラウド会計ソフトでも実績がある 業界でトップを走るような会社なのに、そうしたハングリー精神を失わず、ベンチャーとしてチャレンジしていきたいという辻さんの熱さに心が動きました フィンテックのような成長分野に異業種の人材が流入して市場を拡大していけば、日本全体の経済や金融の活力になると思います
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暗号通貨(仮想通貨)(その4)(ICOの現在(前・後篇)、「ビットコインは詐欺だ!」1,2) [金融]

暗号通貨(仮想通貨)については、9月15日に取上げたが、今日は、(その4)(ICOの現在(前・後篇)、「ビットコインは詐欺だ!」1,2) である。

先ずは、9月14日付けダイヤモンド・オンライン「『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(前篇)」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・世界的ベストセラー、『ブロックチェーン・レボリューション』で予言された数々の変革が日本でも起こり始めた。なかでも、大きなインパクトが予想されるのが、ICO(Initial Coin Offering)というこれまでにない資金調達手法だ。 有限責任監査法人トーマツにてFinTech領域の戦略立案に従事し、『ブロックチェーン・レボリューション』の翻訳協力者でもある勝木健太氏に、最新情報を整理してもらった。 (注)当該記事は公開情報に基づいた執筆者の私見であり、有限責任監査法人トーマツの公式見解ではない。
・最近、ICO(Initial Coin Offering)という資金調達手法が大きな注目を集めている。ICOは資金調達の仕組みとして極めて画期的であり、現在の資本市場のあり方を根本的に変革する可能性を秘めている。 書籍『ブロックチェーン・レボリューション』の中でも、ICOのコンセプトは「ブロックチェーンIPO」という名称で紹介されており、著者のドン・タプスコットは「ブロックチェーンIPOが主流になれば、やがて世界の金融システムから多くの役割が消えることになるだろう。証券会社や投資銀行は時代遅れになる」と述べている。
・一方で、ICOには法規制の問題をはじめとして、数々の克服すべき課題が存在する。本稿では、ICOの概要や最新の動向についてお伝えするとともに、海外を中心に盛んになりつつある法規制面の議論について紹介する。
▽ICOとは何か
・ICOとは新規株式公開IPOになぞらえてつくられた言葉であり、簡単に言えば、企業が独自の仮想通貨を発行することで、資金調達を行なう仕組みのことを指す。 これまでは、スタートアップ企業が資金調達を行なう場合、自社の株式を発行することで、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから資金を調達したり、新規株式公開IPOを目指すやり方が一般的だった。
・しかし、ICOの場合、株式を発行する代わりに、ブロックチェーン上で独自トークン(仮想通貨/暗号通貨)を発行し、一般投資家に向けて販売することで、資金調達を行なうことができる。 これは企業側からすれば、実現すべきビジョンを掲げ、ICOを実施することで、世界中の一般投資家から資金を調達できることを意味する。
・投資家側の立場でも、ICOに参加することによって、世界中の有望なスタートアップ企業に対し、アーリーステージの段階から少額投資を機会を得ることができる。 また、トークンによっては、ICOを実施してから数週間の間に仮想通貨取引所で取り扱われる場合があり、セカンダリーマーケットが存在していることも大きなメリットの一つだ。  (ただし、これらの取引所で扱われたものの、取引量が著しく少ない場合や当局が規制対象と認定したトークンについては、取扱いが突然停止される可能性がある点には注意がする必要がある。)
・一方で、冒頭に記載した通り、現状行なわれているICOには数多くの克服すべき課題が存在する。ICOの課題については、後篇で詳細に述べる。
▽ICOで証券会社やベンチャーキャピタルが不要になる可能性も
・冒頭で述べた通り、ICOを活用した資金調達のプロセスにおいては、従来のような「中間管理者」が介在しないため、既存の証券会社やベンチャーキャピタルが「ディスラプト」される可能性が指摘されている。 実際、ICOトークンに投資を行なうベンチャーキャピタルとして知られるPantera Capital(パンテラ・キャピタル)のDan Morehead(ダン・モアヘッド)は「長期的に見れば、VCが資金調達を仲介する必要がなくなる可能性はある」とTech Crunchのインタビューで述べている。
・ただ、逆に、先進的な証券会社やベンチャーキャピタルの中には、ICOをいち早く自社ビジネスに取り込むような動きを見せている企業も存在する。 具体的には、米国において、ICOトークン発行のアドバイザリー業務を提供する証券会社のArgon Group(アルゴン・グループ)が挙げられる。同社は米モルガン・スタンレー出身者が中心となり、2016年に創業された企業だが、すでにいくつかの企業のICOトークン発行をサポートした実績がある(参考 Blockchain Capital / Civic)。
・また、トークンに投資を行なうベンチャーキャピタルとしては、先ほど紹介したPantera Capital(パンテラ・キャピタル)の他にPolychain Capital(ポリチェーン・キャピタル)が挙げられる。 Polychain Capital(ポリチェーン・キャピタル)には、Anrdreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)やUnion Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)といった著名なベンチャーキャピタルが出資している点も見逃すべきではないだろう。
▽ICOの市場規模
・ICOの市場規模は急速に拡大している。米国に本拠を置く調査会社であるSMITH+CROWN(スミス・クラウン)によれば、ブロックチェーン関連企業がICOを活用して資金調達を行なった金額は、2017年では6月時点で約850億円に達しており、昨年の年間実績の7倍に達する水準に到達している。現在では、ブロックチェーン関連のスタートアップに限定すれば、ベンチャーキャピタルではなくICOを活用した資金調達を行なうほうが主流になりつつある。
▽ICOの代表的な事例
・続いて、ICOの代表的な事例を見ていこう。
+ブレイブ・ソフトウェア(BAT:Basic Attention Token) まずはサンフランシスコに本拠を置くBrave Software(ブレイブ・ソフトウェア)が発行したBAT(Basic Attention Token)。24秒で35億円もの金額を調達したことで業界を騒然とさせた。資金調達の成功の要因としては、同社を率いるBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏がブラウザ「Firefox」の開発を手がけるMozilla(モジラ)の最高経営責任者を務めた経験があり、一定の実績を有していることが挙げられる。 また、すでに商用化されているBrave Browser(ブレイブ・ブラウザ)が存在することも強みの一つだ。このBrave Browser内に出稿された広告をユーザーが閲覧したり、シェアすることで、ユーザーに独自トークン「BAT(Basic Attention Token)」が与えられる仕組みだ。デジタル広告の中央集権的な構造を変革することを目的しており、個人的に注目しているプロジェクトである。
+バンコール・ネットワーク(BNT:Bancor Network) イスラエルに本拠を置くBancor Network(バンコール・ネットワーク)は、イーサリアム・ブロックチェーン上で発行されたトークン同士の変換を行なうことを目的とするプロジェクトだ。3時間で160億円もの資金を調達したことで、大きな話題となった。 余談だが、筆者もBNTのICOには参加したが、参加希望者が相次いだため、イーサリアム・ブロックチェーンのネットワークが大混雑し、ETH(イーサ)の送金がなかなか届かず、約1時間にわたり悪戦苦闘した記憶がある。
+イーサリアム(Ethereum) また、上で紹介したEthereum(イーサリアム)も分散型アプリケーションのプラットフォームとして、2014年にICOを実施したことで誕生した。当時のイーサの価値は「1ETH=0.0005BTC」であったため、当時ETHに10万円分投資していただけで、数億円のリターンを得ることができていた計算になる。 ( ちなみに、ICO当時の販売価格からトークンの価格が何倍になったかについてリアルタイムに知る手段としては、「ICO STATS」という海外のウェブサービスの「ROI Since ICO」が参考になる。)
▽投資家としてICOに参加する方法
・投資は自己責任だが、上述のイーサリアムの事例のように、ICOの時点でトークンを購入することで、莫大なリターンを得る可能性も存在するため、ICOトークンへの投資が世界的に注目を浴びている。 Skype(スカイプ)やBaidu(バイドゥ)の初期投資家として著名なTim Draper(ティム・ドレーパー)氏も、Bancor(バンコール)やTezos(テゾス)といったICOに参加しており、大きな話題を呼んだ。
・ICOトークンへの投資は極めてハイリスクであり、個人的には推奨はできないが、少額ならトライしてみるのも悪くないかもしれない。スマートコントラクト機能を体感できる良い機会でもある。一般的には、以下の手順を踏む。
 1.ICOを実施する事業者のウェブサイトにて、ICOが行なわれる日時を確認する
 2.あらかじめウォレットをダウンロードしておき、指定された日時に、指定されたアドレスに仮想通貨を送金する。
 3.送金が完了すると、スマートコントラクト機能により、自動的にトークンがウォレットに送金される
 4.換金を行なう場合は、数週間後、発行されたトークンが仮想通貨取引所で取り扱われた後、換金を行なう 
・ただし、仮想通貨で売却益を得た場合、税金がかかる可能性があるため、在住地の税務署に個別に確認することを推奨する。
▽事業者としてICOトークンを発行する方法
・ICOトークンの発行に関しては、いくつかのやり方がある。我が国では法的な位置づけが定まっていないため、現時点での発行は「慎重さ」を要するが、最も一般的な方法は、イーサリアム・ブロックチェーン上で発行するやり方だ。ソースコード等もGithubに記載されている。代表的なイーサリアムウォレットの一つであるMetamask(メタマスク)のインストールを済ませれば、開発環境も容易に構築することができる。
・また、最近では、Mobile Go(モバイル・ゴー)やStarta(スタータ)のように、Wavesプラットフォーム上でICOを行なうプロジェクトも登場してきている。さらに、NEMベースのブロックチェーン上で発行されたICOも登場してきている。我が国で話題のVALU(バリュー)は「OpenAsset」というプロトコルを採用している。
http://diamond.jp/articles/-/142118

第二に、上記に続きとして、9月18日付け「『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(後篇)」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・(初め書き出しは前編と同じなので省略)
▽世界でもバラつくICOの規制
・前篇で述べた通り、ICOには克服すべき数々の課題が存在する。なかでも、企業が発行する独自トークンの法律上の位置づけについては、いくつかの金融当局が関連するペーパーを出しているが、世界的に明確な共通の基準が存在しているとは言えない状況だ。 その中で、比較的ICOに「寛容」とされてきた国のひとつがシンガポールである。2017年4月にICOを実施したBlockchain Capital(ブロックチェーン・キャピタル)は米国を拠点としているが、ICOを実施するためにシンガポールにも拠点を設けている。
・2017年6月にICOを実施したCofound.it(コーファウンド・イット)という企業もシンガポールに拠点を置き、ICOのプラットフォーム事業を構築している。また、Fund Yourself Now(ファンド・ユアセルフ・ナウ) という企業が同様のプラットフォーム構想を掲げており、シンガポールにてICOを活用した資金調達を実施済である。その他、Digix Dao、TenX、Golem、Qtumといったプロジェクトもシンガポールを拠点として過去にICOを実施している。
・ただし、2017年7月31日、シンガポールの金融当局として知られるMAS(シンガポール金融監督局)が、ICOに関する声明を公式に発表しており、米SEC(証券取引委員会)と同様、トークンの性質によっては「証券」とみなす可能性がある旨、アナウンスした事実は押さえておきたい。
・また、スイスのツークも「クリプトバレー」と呼ばれていることからもわかるように、ICOフレンドリーな都市として知られており、スイスを拠点にICOを実施するプロジェクトも少なくない。 Bitcoin Suisse AGという組織がICOのトークン発行のサポートを行っており、この組織のサポートにより、Bancor、Status、Tezos、OmiseGoといったプロジェクトがトークン発行を実施している。
・他にも、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)で議長を務めるGreg Medcraft(グレッグ・メドクラフト)氏が、「ICO市場を規制する必要があるか​​についての明確な見解が出るまで、規制を急ぎすぎるべきではない」との見解を明らかにしている。 実際、オーストラリア発のICOも現れてきており、具体的には、Power Ledger(パワーレッジャー)という企業が「太陽光発電」×「ブロックチェーン」の領域で独自トークンを発行する予定であり、ICOを実施中である。
・さらに、英国の当局であるFCAがレポートの中でICOについて言及しており、状況を注視していることが伺える。 加えて、カナダの金融当局のオンタリオ証券取引所が開催したハッカソンの中で、ICOを規制するアイデアについての募集が過去に行なわれている。そこでは、金融当局がICO案件の情報をまとめた情報ポータル運営し、事業者のスクリーニングを行なうようなアイデアが出された。2017年8月25日には、CSA(カナダ証券管理局)がICOを監督する必要があることを明らかにしている。
▽米国と中国の動向は
・米国に関しては、SEC(米国証券取引委員会)はこれまでICOに対するスタンスを明確にせず沈黙を続けていたが、先日、米SECが書簡を公開し、トークンの性質によっては「金融商品」とみなされるうることを明らかにした。 米国を拠点とする企業の中には、こうした事態を見越し、あらかじめ拠点を米国外に移したり、免除規定を活用する動きが既に見られる。たとえば、サンフランシスコに本拠を置くBlockchain Capitalは、シンガポールに拠点をつくり、全世界の投資家に向けて独自トークン「BCAP」のICOを実施している。
・一方、米国民に対しては、過去2年間にわたって年間所得が20万ドル以上、総資産100万ドル以上の総資産を有すること等が要件とされる「Accredited Investor:認定された投資家」に限定して、クラウドセールを行なっており、米国向けのトークン販売については「慎重さ」を崩していない。これはSECの「Rule 506 of Regulation D」という免除規定を活用したものである。
・ただし、2017年7月以降、独自トークンを発行したいくつかの米国の仮想通貨関連企業がSECの立ち入り調査を受けた結果、取引停止を言い渡されており、今後、さらなる引き締めが行なわれることが予想される。
・最後に、中国の動向について述べる。2017年9月4日、中国人民銀行はICOを全面的に禁止し、過去にICOを実施したすべての案件について調査を行った上で、これまでにICOを通じて調達した資金の返金を求めることを決定した。 今回、中国当局がICO規制に乗り出した背景としては、投資家保護の観点からのICO詐欺の防止やマネーロンダリング対策等があると言われており、取引所に上場済みのICOトークンについても、「上場廃止」となるケースも現れてきている。
・こうした中国政府の流れを受け、今後は、世界的にICOを厳格に取り締まる流れが加速化する可能性がある一方、ICOを通じた資金調達を全面的に禁止にするのではなく、米国やシンガポールの金融当局が示唆しているように、投資家に配当を与えるような「配当型トークン」については「有価証券」とみなし、従来型の規制の枠組みの中で扱うような法規制のデザインの仕方が主流となる可能性も考えられる。
・SEC(米国証券取引委員会)はICOを通じて発行されたトークンの「セキュリティ監査」の重要性についても公式にアナウンスしており、今後は、プロジェクトを行う事業者の「デューデリジェンス」や「第三者評価」の重要性がますます高まる可能性がある。 こうした一連の流れを踏まえると、今後、世界全体で詐欺的なICOプロジェクトが淘汰される流れが顕在化する可能性が高いように思われる。いずれにせよ、海外のICO関連の法規制の動向については、今後も十分な注意を払う必要があるだろう。
▽日本での法規制はどうなるのか?
・我が国においては、いくつかのICOプロジェクトが現れつつある状況である。法規制面の詳細については、規制当局や弁護士に判断を仰いでいただきたいが、焦点としては、ICOで発行した独自トークンが改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたるか否か、金融商品取引法上の「有価証券」にあたるか否か、「集団投資スキーム」にあたるか否か、出資法に抵触するか否か等が挙げられる。その他、民法や消費者契約法等も絡んでくる可能性がある。 一方、ICOはグローバルなクラウドファンディングであり、購入型クラウドファンディングに類するものとの見方を示す有識者も存在する点は押さえておきたい。
・ICOを通じて発行・販売されるトークンが仮想通貨にあたる場合、仮想通貨交換業の登録が必要になる。また、金融商品取引法に抵触する場合、投資家保護の枠組みを整備することが必要になる。 トークンの発行および販売はまったく前例のないスキームであるため、議論は途方もなく難航するだろうが、規制に関する議論を行なう上で、参考になるのが米国のHowey Test(ハウイー・テスト)だ。
・Howey Test(ハウイー・テスト)とは、1946年に米国最高裁判所が扱った判例であり、W.J ハウイー社がフロリダ州の柑橘園を出資者に販売したことが「投資商品」の販売に該当するか否かを争う裁判の結果、下された判決である。米国の証券法”SECURITIES ACT OF 1933”における”Securities”の定義に関する基準を示した判例として知られている。 その判決において、最高裁判所は、以下の4つの条件、つまり 、
 +お金(money)の投資(invest)に関することであり
 +投資先が共同事業(Common Enterprise)であり
 +収益(Profit)を期待して行なわれ
 +収益(Profit)が他人の努力に依存している
に該当した場合に限り、「投資契約(investment contract)」とみなされるという判決を下した。
・現在行なわれているICOのスキームにHowey Test(ハウイー・テスト)が適用されると仮定した場合、「利益」や「投資」、「リターン」といった言葉を用いて投資勧誘を行なっているものについては、法に抵触する可能性がある。詳細については、規制当局や弁護士に相談することを推奨する。
・さらに、ICOの法規制について考える場合、ブロックチェーン企業として世界的に著名なCoinbase(コインベース社)がCoin Center(コインセンター)、Consensys(コンセンサス)、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)と協力のうえ作成した法的なフレームワークも参考になる。これは公的な文書ではないものの、ICO関連のビジネスに取り組むなら、是非とも読んでほしい。
・また、ICOで発行された独自トークンの中でも、その性質は様々である。Bitcoin(ビットコイン)やZCASH(ジーキャッシュ)のような「デジタル通貨」としての性質を持つものもあれば、Ethereum(イーサリアム)におけるETH(イーサ)、Factom(ファクトム)におけるFactoid(ファクトイド)のように、分散型アプリケーション内で使用される「内部通貨」としての性質を持つものもある。The DAOのようにトークン保有者に対して「議決権」や「配当」を与えるタイプのトークンも過去には存在した。
・また、The Dao以外でも、トークン保有者に対して「配当」を約束するようなタイプも存在する。具体的には、SingularDTV(シンギュラー・ディー・ティービー)やChronobank(クロノバンク)等である。このうち、特に、議決権や配当を与えるようなトークンは前述のHowey Test(ハウイー・テスト)を踏まえれば、「投資商品」とみなされる可能性が高いと思われる。
▽最後に
・ICOは資金調達の方法として極めて画期的だが、現状、法規制面が十分に整備されていないこともあり、詐欺的なICO案件も数多く存在すると言われている。 ニューヨークに本拠を置くブロックチェーン関連企業のMONAX(モナックス)にて共同代表を務めるPreston Byrne(プレストン・バーン)氏は、「トークンを個人投資家向けに投資対象として売り出そうとして、登録なしに手続きを進めれば恐らく法に触れる」と述べている。
・また、国際的な法律事務所として知られるHogan Lovells(ホーガン・ロヴェルズ)のパートナーであるLewis Cohen(ルイス・コーエン)は、ロイターのインタビューにおいて、「投資目的で他人から資金を調達することを意図している場合、売却されたコインは証券と見なすことができる」と述べている。
・真偽のほどは定かではないが、投資家から調達した資金を経営者の休暇費用に使っているプロジェクトも存在するとの話もあり、トークンを発行する事業者のデューデリジェンスや資金使途などもチェックする枠組みの整備が求められる可能性がある。また、投資家側の「本人確認」や「適合性の確認」も要件として課される可能性があるだろう。
・イノベーションを促進するうえでも、適切な規制を課すことは極めて重要だ。しかし、あまりに強固に規制の枠をはめることもイノベーションを阻害する要因となりうる。詐欺的なICO事業者を擁護するつもりは一切ないが、VCから調達した資金を私的な目的に流用しているスタートアップ経営者も存在する。ICOを規制するのなら、VCから調達した資金をも徹底的に監視する仕組みを構築するのが筋というものだ。
・規制をできるだけ行なわずに詐欺的なICOを防ぐやり方も考えられる。たとえば、一気に巨額の資金を調達させるのではなく、段階的に少額ずつ事業者に資金を渡すような仕組みをつくることも検討してもよいだろう。 実際、シンガポールに本拠を置くFund Yourself Now(ファンド・ユアセルフ・ナウ)は段階的な資金調達を行なうスキームをつくっており、良い先行事例となる可能性がある。また、同社はNew Alchemyという企業による「スマートコントラクト監査」を受けていることでも知られている。デューデリジェンスを踏まえたICOを実施するプラットフォームの事例として、個人的には注目している。
・また、投資家保護を考えるうえでは、Blockchain Capital(ブロックチェーンキャピタル)のように、「Rule 506 of Regulation D」のような免除規定を活用することで、一定以上の資金を有する「洗練された投資家」にのみトークンを販売するというやり方もある。
・適切に活用することができた場合、ICOは社会を大きく前進させるポテンシャルを持つ革新的な仕組みだ。我が国の対外的な競争力の向上を目指す上で、ICOという仕組みをどのように生かしていくかについて適切な議論を行なっていく必要があるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/142119

第三に、9月15日付け闇株新聞に掲載された「「ビットコインは詐欺だ!」」を紹介しよう。
・表題はJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが9月12日、NYでの投資家会議で言い放った言葉です。 これ以外にも「ロクな終わり方をしない」「チューリップよりタチが悪い(注)」「ベネズエラやエクアドル、北朝鮮などに住む人や、麻薬密売人や殺人者の類には利用価値があるかもしれない」「(自行の社員が)取り引きすれば即刻解雇する)」「誰も現実が見えていないことにショックを覚える」などとも言い放っており、米国金融界の代表的経営者で少なくとも表面的には紳士であるはずのダイモン氏が痛烈な表現でビットコインを批判しています。 (注)17世紀のオランダで発生した人類最古のバブルで、8月22日付け「世界経済史における3大バブルとは?」に書いてあります。
・ダイモン氏は代表としてビットコインを名指ししただけで、もちろん仮想通貨全般やその参加者やICOなど「安直な資金調達手段」、それにいつまでたっても何の規制も加えない(中国を除く)各国政府の対応などすべてを批判したはずです。
・リーマンショック前には粗悪モーゲージ関連商品を「しこたま」販売して、米国司法省などに140億ドル(現在の為替で1兆5000億円)もの罰金を支払ったJPモルガンのCEOとして、自ら関与できない分野で誰かが大儲けしている事態は放置できなかったはずです。 そうはいっても米国金融界の重鎮による過激な発言は、さすがにビットコインを含む仮想通貨全般の価格を大きく下落させています。ビットコイン価格はダイモン氏の発言前の4400ドルほどから、本日(9月14日)午後10時すぎには3500ドルまで下落しています。
・ビットコイン価格は9月2日に一時4969ドルの史上最高値となりましたが、中国政府が9月4日にICOを前面禁止し、9月8日には国内の仮想通貨取引所を取引停止としたため、それぞれ4000ドル近くまで下落したものの、またすぐに回復していました。 つまり中国政府の規制よりダイモンCEOの過激な発言の方が効いたことになります。
・さて本誌も一貫してビットコインをはじめとする仮想通貨については懐疑的でしたが、かといって「投資すべきではない」とも「弾ける」とも言っていませんでした。 さらに「ビットコインをはじめとする仮想通貨はバブルか?」と聞かれれば、「バブルとはその価値をこえて価格が大きく上昇すること」であり、そもそも仮想通貨に本源的価値などないため(強いて言えばブロックチェーンを維持するための人件費と電気代だけ)、正確には「バブルですらない」となり、そういう意味では綺麗な花が残るチューリップよりはるかにタチが悪いと考えています。
・しかしバブルでも「バブルよりタチが悪いもの」でも、価格が上昇しているうちは(市場に懐疑的な見方があるうちは)簡単に弾けるものではなく、多少の悪材料が出て価格が調整してもすぐにまた大きく上昇するものと考えているからです。この辺は理論的に説明できるものではありません。
・しかし市場から懐疑的な見方が消えた瞬間に「不思議と」価格は下落を始めるもので、その時点では市場には強気が蔓延しているため「必ず」買い下がる参加者が大量に出現し、それでも価格は下落を続けるため「そのうち」持ちきれなくなってもっと大きな下落に見舞われることになります。 それが「バブルが弾ける最も一般的なパターン」となります。ここでビットコインをはじめとする現在の仮想通貨全般が「その過程に入った」とまでは言い切れませんが、ここのところ「市場から懐疑的な見方が消え始めている」とは感じていました。
・そこにダイモン氏の発言が飛び出したことは決して偶然ではなく、百戦錬磨のダイモン氏がまさに最も効果的なタイミングと感じ、意識的に過激な表現を使ったはずです。1か月前では何の効果もなかったはずです。 仮想通貨全般の時価総額はビットコインが史上最高値となった9月2日に1800億ドル(20兆円)もありましたが、現在は1200億ドルを割り込んでいます。つまり短期間に時価総額の3分の1が「吹っ飛んだ」ことになり、仮想通貨価格が上昇する最大の要因だった「慌てて売らない」も崩れ始めるはずです。
・仮想通貨バブルが(バブルよりもタチが悪いものですが)弾けるところを、目の前で見られるかもしれません。だとすると「絶対にやってはならないこと」は中途半端な水準で買ってしまうことです。それがバブルで大やけどをする最も多いパターンだからです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2086.html

第四に、上記の続きである9月19日付け闇株新聞「「ビットコインは詐欺だ!」  その2」を紹介しよう。
・昨日は衆議院の解散・総選挙について書こうと思っていましたが、うまくまとまらず結局お休みしてしまいました。 そこで「やっぱり気になる」ビットコインについて、通常より半日遅れで更新します。9月15日付け「同題記事」を書いた直後もビットコインは急落し、一時3000ドルを割り込んでいました。
・記事にも書いたダイモンCEOの過激発言もありますが、やはり中国政府がビットコイン取引所を9月末までに取引停止(取引所閉鎖)にするとのニュースの影響が大きかったようです。 
・ビットコインは9月初めに一時5000ドルをこえていましたが(9月15日付け記事ではこえていないと書きましたが、よく調べるとこえていました)、中国政府は9月4日にICOを全面禁止し、9月8日に取引所閉鎖を発表していましたが詳細がよくわからず4000ドル台前半の取り引きが続いていました。 中国政府は9月14日になって人民元によるビットコイン取引を全面禁止としましたが、中国人によるビットコイン(あるいは仮想通貨全般)の保有自体は禁止していないようで、また仮想通貨同士の取り引きも禁止していないようです。したがって取引所によっては生き残るところも出てくるはずです。
・さらにビットコイン価格は急落後に急速に値を戻し、本日(9月19日)朝方には4000ドルを一時回復しています。とりあえず中国政府の規制も(それもかなり過激な規制も)ダイモンCEOの過激は警鐘も、跳ね返したことになります。
・ここで中国政府の「真意」を推測してみますと、もちろん国内資産の海外流出(つまり中国人が人民元を外貨または海外資産に換えて保有すること)を規制する流れの一環ですが、それに加えて中国の資産が本源的価値のないビットコインなど仮想通貨に交換されていくことは許容できないと考えたはずです。 もっと正確に言うと中国政府に帰属する通貨発行益が、正体の見えない誰かに奪われていくことは絶対に許容できないはずだからです。
・例えば中国人が人民元を金(きん)に換えて保有しても、それは本源的価値のある(変動はしますが)資産に交換しただけであり、全体として中国の富が「正体の見えない誰か」に奪われていることにはならず、また中国政府が外貨準備としてドルを保有することも「ギリギリ許容範囲」と考えられます。 先日のダイモンCEOの過激な警鐘も、基本的には同じ論点であるはずです。
・少し考えるとわかりますが、例えば誰かがビットコインを4000ドルで購入すると(基軸通貨である4000ドルを支払う必要があります)、その4000ドルは当然にそのビットコインを売却した人に全額支払われます。  その売却した人がそのビットコインを購入したときは、そのビットコインを売却した人に全額を支払っています。こうやって考えていくと、もともとビットコインはタダ同然だったため(マイニングコストは考えないとして)、この4000ドルは「全額」開闢以来ビットコインを取得した人(もちろん複数です)の儲けでしかありません。  つまりビットコイン価格の中に本源的価値の取得に要する部分が「ゼロ」となります。つまりどこにも「本源的価値」がありません。
・よくマルチ取引では支払った資金の「大半」が親の儲けとなるため詐欺であるとされていますが、ビットコインは「全額」が誰かの儲けとなり、マルチよりもタチが悪いことになります。 まあマルチはそれでも鍋とかマットレスが届きますが、ビットコインは「いまのところ」売却(現金化)できるとか、限られた店舗で財の購入やサービスが受けられるという「特典」がついているだけです。
・また中国政府が真っ先に禁止したICOも、実体のない未公開株を売却すると犯罪となりますが、とりあえず仮想通貨で調達してそれを現金と交換するだけで「先端の資金調達方法」となってしまいます。
・つまり中国政府の過激な規制も、ダイモンCEOの過激な警鐘も、きわめて当然のものとなります。 翻って日本では、金融庁が本年4月からか改正資金決済法により仮想通貨取引所を登録制とし、仮想通貨全般に「お墨付き」を与えたような印象になっています。そこで日本人の参加が爆発的に増えたはずです。 また少なくとも現時点においてビットコインなど仮想通貨全般や、ICOによる「資金調達」や、VALUなど「もっといかがわしいもの」に対する批判的な風潮はほとんどありません。 また金融庁も引き続き仮想通貨を法体系の中に押し込もうと(つまり最低限のルールを作ることにより正当な商取引と認めようと)しています。 漠然とした不安を感じざるを得ません。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2089.html

第一、第二の記事では、9月15日のこのブログでも取上げたICOについて、より深くみている。 『ブロックチェーン関連企業がICOを活用して資金調達を行なった金額は、2017年では6月時点で約850億円に達しており、昨年の年間実績の7倍に達する水準に到達している。現在では、ブロックチェーン関連のスタートアップに限定すれば、ベンチャーキャピタルではなくICOを活用した資金調達を行なうほうが主流になりつつある』、というのは、ブロックチェーン関連企業にとってみれば、自らが強みを持つ方法なので、当然だろう。 『世界でもバラつくICOの規制』、については、全面的に禁止した中国を除けば、概ね米国SECが打ち出した 『トークンの性質によっては「金融商品」とみなされるうる』、との考え方に収束しつつあるようにも思える。 『一気に巨額の資金を調達させるのではなく、段階的に少額ずつ事業者に資金を渡すような仕組みをつくることも検討してもよいだろう』、というのは良さそうなアイデアだ。
第三、第四の記事で、 『リーマンショック前には粗悪モーゲージ関連商品を「しこたま」販売して、米国司法省などに140億ドル(現在の為替で1兆5000億円)もの罰金を支払ったJPモルガンのCEOとして、自ら関与できない分野で誰かが大儲けしている事態は放置できなかったはずです』、というのは強烈な嫌味だ。  『ここのところ「市場から懐疑的な見方が消え始めている」とは感じていました。そこにダイモン氏の発言が飛び出したことは決して偶然ではなく、百戦錬磨のダイモン氏がまさに最も効果的なタイミングと感じ、意識的に過激な表現を使ったはずです』、との見方はさすがだ。ただ、 『中国の資産が本源的価値のないビットコインなど仮想通貨に交換されていくことは許容できないと考えたはずです』、には違和感を感じた。というのも、中国人のビットコイン取得の基本は、人民元と交換に購入したものではなく、大量の電力を使ったマイニングの報酬として取得したものだからだ。ビットコインに 『「本源的価値」がありません』、というのはその通りだが、本源的価値がないのは、円やドルなどの法定通貨も同様である。 『マルチ取引』との比較は、確かにその通りだが、闇株新聞が仮想通貨に対して抱くマイナスイメージが強く表れたのだろう。
タグ:仮想通貨 JPモルガン・チェース ダイヤモンド・オンライン 闇株新聞 暗号通貨 (その4)(ICOの現在(前・後篇)、「ビットコインは詐欺だ!」1,2) 『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(前篇)」 ブロックチェーン・レボリューション 勝木健太 ICO(Initial Coin Offering) 株式を発行する代わりに、ブロックチェーン上で独自トークン(仮想通貨/暗号通貨)を発行し、一般投資家に向けて販売することで、資金調達 企業側からすれば、実現すべきビジョンを掲げ、ICOを実施することで、世界中の一般投資家から資金を調達できることを トークンによっては、ICOを実施してから数週間の間に仮想通貨取引所で取り扱われる場合があり、セカンダリーマーケットが存在 現状行なわれているICOには数多くの克服すべき課題が存在 既存の証券会社やベンチャーキャピタルが「ディスラプト」される可能性が指摘 先進的な証券会社やベンチャーキャピタルの中には、ICOをいち早く自社ビジネスに取り込むような動きを見せている企業も存在 ブロックチェーン関連企業がICOを活用して資金調達を行なった金額は、2017年では6月時点で約850億円に達しており、昨年の年間実績の7倍に達する水準に到達している 現在では、ブロックチェーン関連のスタートアップに限定すれば、ベンチャーキャピタルではなくICOを活用した資金調達を行なうほうが主流になりつつある 投資家としてICOに参加する方法 事業者としてICOトークンを発行する方法 「『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(後篇) 世界でもバラつくICOの規制 MAS(シンガポール金融監督局)が、ICOに関する声明を公式に発表しており、米SEC(証券取引委員会)と同様、トークンの性質によっては「証券」とみなす可能性がある旨、アナウンスした スイスのツーク リプトバレー 米SECが書簡を公開し、トークンの性質によっては「金融商品」とみなされるうることを明らかにした 017年7月以降、独自トークンを発行したいくつかの米国の仮想通貨関連企業がSECの立ち入り調査を受けた結果、取引停止を言い渡されており、今後、さらなる引き締めが行なわれることが予想 中国人民銀行はICOを全面的に禁止 これまでにICOを通じて調達した資金の返金を求めることを決定 米国やシンガポールの金融当局が示唆しているように、投資家に配当を与えるような「配当型トークン」については「有価証券」とみなし、従来型の規制の枠組みの中で扱うような法規制のデザインの仕方が主流となる可能性も考えられる トークンの「セキュリティ監査」の重要性についても公式にアナウンス プロジェクトを行う事業者の「デューデリジェンス」や「第三者評価」の重要性がますます高まる可能性 米国のHowey Test(ハウイー・テスト) お金(money)の投資(invest)に関することであり 投資先が共同事業(Common Enterprise)であり 収益(Profit)を期待して行なわれ 収益(Profit)が他人の努力に依存している 投資契約 、「利益」や「投資」、「リターン」といった言葉を用いて投資勧誘を行なっているものについては、法に抵触する可能性がある ・イノベーションを促進するうえでも、適切な規制を課すことは極めて重要 あまりに強固に規制の枠をはめることもイノベーションを阻害する要因となりうる 規制をできるだけ行なわずに詐欺的なICOを防ぐやり方 段階的に少額ずつ事業者に資金を渡すような仕組みをつくることも検討してもよいだろう 「「ビットコインは詐欺だ!」 ジェイミー・ダイモンCEO ロクな終わり方をしない チューリップよりタチが悪い ・リーマンショック前には粗悪モーゲージ関連商品を「しこたま」販売して、米国司法省などに140億ドル(現在の為替で1兆5000億円)もの罰金を支払ったJPモルガン 自ら関与できない分野で誰かが大儲けしている事態は放置できなかったはずです 仮想通貨全般の価格を大きく下落 中国政府が9月4日にICOを前面禁止 国内の仮想通貨取引所を取引停止 市場から懐疑的な見方が消えた瞬間に「不思議と」価格は下落を始めるもので、その時点では市場には強気が蔓延しているため「必ず」買い下がる参加者が大量に出現し、それでも価格は下落を続けるため「そのうち」持ちきれなくなってもっと大きな下落に見舞われることになります それが「バブルが弾ける最も一般的なパターン」となります 百戦錬磨のダイモン氏がまさに最も効果的なタイミングと感じ、意識的に過激な表現を使ったはずです ビットコインは詐欺だ!」  その2 中国の資産が本源的価値のないビットコインなど仮想通貨に交換されていくことは許容できないと考えたはずです 中国政府に帰属する通貨発行益が、正体の見えない誰かに奪われていくことは絶対に許容できないはずだからです つまりどこにも「本源的価値」がありません マルチ取引 日本では、金融庁が本年4月からか改正資金決済法により仮想通貨取引所を登録制とし、仮想通貨全般に「お墨付き」を与えたような印象になっています 。そこで日本人の参加が爆発的に増えたはずです また少なくとも現時点においてビットコインなど仮想通貨全般や、ICOによる「資金調達」や、VALUなど「もっといかがわしいもの」に対する批判的な風潮はほとんどありません 漠然とした不安を感じざるを得ません
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北朝鮮問題(その11)(自衛隊の電磁波攻撃対策、北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白、骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった、北朝鮮「完全破壊」警告 メルケル独首相は賛同せず) [世界情勢]

北朝鮮問題については、9月10日に取上げたが、今日は、(その11)(自衛隊の電磁波攻撃対策、北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白、骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった、北朝鮮「完全破壊」警告 メルケル独首相は賛同せず) である。

先ずは、9月15日付け東洋経済オンライン「自衛隊の電磁波攻撃対策は本当に「ない」のか 海上自衛隊は対策済み、実は古くから議論」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・北朝鮮が9月3日に行った6回目の核実験以降、日本で「電磁パルス攻撃」という言葉が注目されるようになった。にわかにこの攻撃への対策が叫ばれるようになったが、これはどのような被害と影響を与えるのか。
・北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」9月3日付は核実験が成功したことを報道、その中で「戦略的目的によって高空で爆発させて広大な地域に対する超強力EMP攻撃まで加えられる」と発表している。EMPは電磁パルス、ElectroMagnetic Pulseの略。これを発生させる方法としては、高度30キロメートル以上の高高度で核爆発を起こし、そこから放出されるガンマ線によってEMPを発生させるものと、強力なEMPを発生するミサイルや爆弾を爆発させるものとがある。
・北朝鮮にとっては、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射させて狙ったところに着弾させるまでの技術よりも、ただ高高度に飛ばすミサイル技術でEMP弾頭を爆発させる方法がより簡単だ。すでにICBMを飛ばす技術は持っているので、EMP攻撃の可能性にも言及したのだろう。3日付の「労働新聞」には、「朝鮮労働党の戦略的意図に合わせて」など、「戦略的」という言葉が使われている。これは「核攻撃においていろんなオプションを持っているのだ」と誇示したいがための修辞だ。
▽EMPは社会基盤・インフラの運用を狂わせる
・EMP攻撃はコンピュータや通信機などの電子機器を破壊し、敵の作戦能力をマヒさせることが最大の目的だ。人体への影響としては熱や電流を身体に受ける可能性があるが、原子爆弾のように相対的に低空で爆発するものではないため、死に至るほどの被害はないとされる。
・とはいえ、すでに社会基盤・インフラの運用に使われているコンピュータなどの電子機器をEMPが破壊してしまうため、大規模な被害が生じ社会的に大混乱する可能性があることが最大の懸念となっている。実際に1958年、米国が太平洋中部のジョンストン島の上空約76キロメートルで核弾頭を爆発させた際、約1500キロメートル離れたハワイの家庭や工場のヒューズやブレーカーが切れて大停電が発生したことがある。
・北朝鮮がEMP攻撃に言及すると、菅義偉官房長官は「万が一の事態への備えとして、国民生活の影響を最小限にするための努力が必要だ。対応策を検討したい」と述べた。 当然、警戒・対策はすべきだが、EMP攻撃をいたずらに恐れる必要もないようだ。
・「海上自衛隊の艦船など、対策はすでに十分取られている」と紹介するのは、金沢工業大学教授で元海上自衛隊海将の伊藤俊幸氏だ。EMPの原理について伊藤教授は、「ひどい落雷と同じであり、備えとしては建築物から落雷を逃す避雷針の役割を思い浮かべればいい」と指摘する。落雷を受けても避雷針をつたって外に逃がすという方法のことだ。自衛隊の装備では、すでにEMPを受けても大丈夫なようにシールドで覆うなどしており、海上自衛隊の場合は艦船全体としてうまく逃がすように設計段階から対策が取られているという。
・伊藤教授はまた、「北朝鮮が言うような核爆発によるEMP攻撃は影響が広範囲にわたりすぎて、北朝鮮側も影響を受ける」と指摘する。北朝鮮は日本や米国と比べ電子機器が少なく、インフラなどの運営もさほど電子化されていないという見方もあるが、北朝鮮の電子化はそれでも進んでいる。したがって、彼らがEMP攻撃を仕掛ける可能性は極めて低い。
▽EMP攻撃に備えるシステムを提供する企業も
・EMP攻撃に備えるためのシステムを提供している日本企業もある。三菱電機はオフィスビルなどを対象に「電磁シールドシステム」という強力なEMPなどの電磁波攻撃に備えたシステムを提供しているほどだ。実は、EMP攻撃対策で、日本企業が貢献してきた歴史があるのは、あまり知られていない。
・電磁波パルスによる影響は、前述した1958年のジョンストン島の例に加え、1960年代と1980年代前半に真剣に考えられたことがある。トランジスタの開発が本格化した1960年代に、米国がトランジスタを使った人工衛星を発射したが、運用中に、水素爆弾の爆破実験で大気中に放出された放射線によって6週間動作しなくなったことがある。これを受けてトランジスタやその後のIC(集積回路)の開発では、EMPの被害を最小限にすることを念頭に置いてきた。
・また、米国のロナルド・レーガン大統領が「スターウォーズ構想」と呼ぶ戦略防衛構想(SDI)を発表し、これを契機に冷戦が激化した1980年代前半には、弾道ミサイル防衛(BMD)の必要性が騒がれ、この時期にもEMP攻撃と対策が議論された。イージス艦によるミサイル発射によって大気圏外で敵のミサイルを爆破するという現在のBMDとは違い、当時は発射されたミサイルを成層圏内で核爆発の威力によって除去することが想定され、その際に発生するEMPによる被害が懸念された。当時、日本でも国会で取り上げられたことがある。
▽1980年代にすでに対策は存在していた
・1986年11月6日の衆議院予算委員会で、故・楢崎弥之助議員(社会民主連合)がEMP攻撃を取り上げ、対策などについて政府に質問している。EMP攻撃が「今米国の猛烈な関心事になっている」とし、1984年に北米防空司令部と空軍基地を結ぶ光通信装置を日本電気が納入した事実を、EMP対策で購入したのだと紹介、自衛隊の対策はどうなっているのだと追及した。さらに楢崎議員は、海上自衛隊第2術科学校(神奈川県横須賀市、機関科関係、情報、外国語等の教育訓練を行う)で使われている教科書に、対策が書いてあることにまで言及している。
・これに対し、防衛庁防衛局長(当時)だった西廣整輝氏(故人、元防衛事務次官)は、「現在特段に私ども十分な知識があるわけでもないし、その対策を特にとっておるということではございません」と答弁している。また中曽根康弘首相も「電磁パルスの問題については私も前に聞いたことがありまして、個人的には多少勉強もしてみたことがあります。研究課題でもある」と発言している。
・小野寺五典防衛相は9月7日、記者会見で「電磁パルスによる攻撃でどのような影響が出るのか知見が確定しているわけではない」と発言した。少なくとも30年以上前から対策の必要性が指摘されていたにもかかわらず、自衛隊は何もしていなかったということか。防衛省は2018年度予算の概算要求で電磁パルス攻撃対策として14億円を計上、電磁パルス弾の試作や防護技術を研究するという。
・核を使った攻撃は威力は最大だが、その技術は古い。同盟国の米国では対策がなされ、米国と共同行動をとる海上自衛隊でも対策がなされているというならば、小野寺防衛相の発言はどのような意味なのか。
http://toyokeizai.net/articles/-/188717

次に、9月16日付け東洋経済オンラインがロイター記事を転載した「北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・北朝鮮は弾道ミサイル発射、核兵器実験、軍事演習など、バカげているが、世界を動揺させることを数多く行っている。しかし、この数カ月の北朝鮮「危機」は、おおむねでっち上げられた危機だ。 1年前、北朝鮮が米国に核弾頭を搭載したミサイルを発射する可能性は、基本的にゼロだっただろう。つまり北朝鮮は、そのような攻撃を行う能力を持ち合わせていなかったのだ。それ以来、北朝鮮政府は技術的な進歩を遂げてきた。
▽北朝鮮が米本土を攻撃することはない
・しかし、一部の軍事アナリストたちがそう信じている一方で、北朝鮮が米国本土を攻撃する飛距離を持つミサイル、それに装備できるように小型化された核弾頭、大気圏に再突入するときの熱と圧力に、弾頭部分が耐えられるようにする大気圏再突入技術を保有しているという、信頼できる公開済みの証拠は存在しない、と主張するアナリストたちもいる。
・もちろんこのことは、北朝鮮危機という「ショー」が無害であると言っているわけではない。しかし、たとえ北朝鮮がそのような技術的能力を持っていたとしても、同国が米国を核ミサイルで攻撃する可能性は、「ある決定的な理由」のために、限りなく低いままだろう。 それはバラク・オバマ政権のジョン・ウルフストホール元軍備管理担当シニアディレクターが詳しく説明したように、北朝鮮の指導者金正恩氏はクレージーでもなければ、自暴自棄にもなっていないからだ。北朝鮮の指導者は、もし核兵器を使用すれば、自らの政権が数時間(それどころか数分)以内で消滅させられるであろうことを知っているのだ。
・米国の弾道ミサイルと爆撃機に装備されたざっと1590発の核弾頭が、その予想を確実なものにしている(この問題について最も信頼のおける報告内容の公表によると、北朝鮮は10発から20発の核弾頭を作るための核分裂性物質を獲得したにすぎない)。
・米国が通常兵器か核兵器で、北朝鮮に先制軍事攻撃を行うということもまた考えにくい。なぜならば、それによって韓国とおそらくもっと多くの地域で、数十万人の死傷者が出ることはほぼ間違いないからだ。北朝鮮はたとえ核兵器を使用しないとしても、北朝鮮の国営通信社が脅してきたように、ソウルを「火の海」に変えるような通常爆薬の集中砲火で、戦争の序盤は数千に及ぶロケット砲やあらゆる砲撃を行うことができるだろう。 北朝鮮政府はまた、化学兵器爆弾、ロケット弾頭もたくさん保有しており、ソウルをサリンとVX神経ガスの海に変える能力も持っている。
・相互抑止力の否定しようがない現実に照らし合わせれば、2017年の北朝鮮「危機」はもっと正確に言えば、自国の宣伝目的のために、金正恩氏とドナルド・トランプ大統領が催しているメディアを使った人形劇のように思える。
▽侮辱と感情的な反応という悪循環
・過熱した報道の中で、政治的影響力、交渉上の強み、自己満足のために始められた正恩氏やトランプ大統領による国際劇場が発する情報は、ケーブルテレビとインターネットで一日中繰り返されているので、あっという間に拡大してしまう。そして、こうした情報は、恥さらしの国家的侮辱と考えられるようになっている。
・その侮辱への感情的な反応には、破局への悪循環が存在する。もっと具体的な言葉で言うならば、もし米軍が、最近日本上空を飛行した北朝鮮のミサイルを打ち落としていたら、正恩氏は立腹、あるいは虚勢を張るためにグアム島の方向に別のミサイルを発射しなかっただろうか。そして、それに対してトランプ大統領は、マッチョな対応を取らざるをえないと感じなかっただろうか? つまりこれは、キノコ雲という最終的な可能性に通じているのだ。
・今回の北朝鮮危機は、でっち上げられた芝居がかったものだが、これによって生じる不慮の戦争の脅威を緩和する最善策は、正恩氏とトランプ大統領という主役を説得することだろう。彼らが催しているショーは信じがたいものだし、これを通じて両者が求めているものを手にすることはできないだろう。
・が、私が言うところの説得では、2人の自己陶酔型指導者たちに、生と死とテレビ視聴率の問題に関して、自らのポリシーをすぐ変更させる完全な動機づけにはならないだろう。
・だから私は、2番目に最善だと思うアプローチを提案する。それは、メディアがあたかもすべてが変わってしまい、戦争がすぐそこに近付いているかのように、記事を書いたり、放送するのをやめるべきだ、というものだ。 
・北朝鮮は何年間も、使用可能な核兵器の貯蔵に取り組んできた。最新の地下核実験は以前の爆発よりも、より高い核出力を持ち、TNT換算で10万トンをやや超える爆発力を生み出した。これは、長崎に落とされた原爆の規模の4倍から5倍に相当する。より高い核出力は、水素同位体で「強化された」核分裂爆弾か、あるいは水素爆弾として一般的に知られる本物の核融合爆弾によるものである可能性が高い。だが、現在わかっている情報だけでは、どちらなのかはハッキリとわからない。
・しかし9月3日の実験が、本当の水素爆弾を取り入れていたとしても、これは「形勢を一変させるもの」にはならないだろうと、ロスアラモス国立研究所の元所長であり、米国の北朝鮮核開発プログラムに関する米国随一の専門家であるジークフリート・ヘッカー氏は最近、私が編集する雑誌『the Bulletin of the Atomic Scientists(原子力科学者会報)』に語っている。 もし米国の都市に核が落とされれば、それが核分裂爆弾だろうが核融合爆弾だろうが、核出力が20、100、あるいは800キロトンだろうが、その都市は荒廃し、数十万人が即死することになるだろう。とはいうものの、核兵器を米国かその同盟国に発射することは、確実に国家的自殺行為となるであろうことを、北朝鮮の指導者は知っている。
▽危機の伝え方が危機を拡大させている
・明らかに、北朝鮮の核爆弾と弾道ミサイル実験は重要な出来事であり、ニュースメディアが報道しなければならない国際ニュースだ。しかし世界のメディアによるその「危機」の伝え方は、実際に危機を拡大する要因となっていて、それゆえ判断の誤りや戦争の可能性を生じさせているのだ。
・もしもっと多くのジャーナリストが正恩氏とトランプ大統領の人形劇を取るに足らないものと扱い始めれば、北朝鮮問題の状況は、一種の長い骨の折れる外交交渉に移行し始めるかもしれない。これなら、受け入れ可能な解決策につながる。 北朝鮮は、米国に深刻な攻撃を行おうものなら、たちまち消えてなくなってしまうような小さく、貧しい国だ。なので、深刻な攻撃を行う可能性はほぼゼロに等しい。メディアが危機感をあおるようなことをしなければ、米国の先制攻撃の可能性も同様に低下するだろう。
・ジャーナリストが米国と北朝鮮の指導者に、責任感のある振る舞いをさせることはできない。しかし、北朝鮮の「危機」が実際には朝鮮半島の膠着状態にすぎず、大言壮語にあふれた人形劇が、プロの外交交渉とは比べものにならない稚拙な代替手段にすぎないということを、メディアは読者や視聴者に理解してもらう手助けはできるのだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/188833

第三に、軍事評論家、ジャーナリストの田岡俊次氏が9月17日付け日刊ゲンダイに寄稿した「骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった」を紹介しよう。
・北朝鮮が9月3日に水爆実験を行った翌日、国連安全保障理事会緊急会合でのヘイリー米国連大使(インド系女性、強硬右派でトランプ氏のお気に入り)の演説をCNNで聴いて迫力を感じた。 「(北の核開発が始まって以来)この24年間、徐々に制裁を強めてきたが無駄だった。もうたくさんだ」として最も強力、決定的な制裁を求めた。これまで8回の制裁決議が北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止できなかったのは事実だから、彼女の叫びにも一理はあった。
・6日に米国が示した制裁案は石油の全面禁輸、北朝鮮国外労働者(推定9万人余)の雇用禁止、金正恩委員長の資産凍結と渡航禁止、承諾なしの船舶の臨検、など極めて厳しかった。
・ところが、米国はそれをほとんど骨抜きにする修正案を10日、安保理メンバー国に示し、11日にそれが全会一致で採択された。「原油の輸出は過去1年間の実績以下」「石油精製品輸出は年200万バレル(27万トン)以下」「国外労働者の新規雇用には安保理の許可が必要」「船舶の検査は旗国(船籍を置く国)の同意を得て行う」などで、金正恩氏への制裁には触れていない。原油供給を減らさないのは「おまえはクビだ!」と怒鳴ったあと、「基本給は従来通り」と言うような形だ。
・ヘイリー大使は「今回の決議はトランプ大統領と中国の習近平国家主席の間で築かれた強い関係がなければ成し得なかった」と安保理で述べた。
・石油の全面禁輸をすれば北朝鮮に致命的で、自暴自棄になりかねない。日本の南部仏印(南ベトナム)進駐に対し、米国が1941年8月に石油禁輸をしたため、日本が「800万トンの石油備蓄が尽きて降伏するよりは」と真珠湾に打って出たのと似た状況になる可能性があった。中国は必死で米国説得につとめ、当初の米国の制裁案には拒否権を行使する構えを示した。
・米国防長官マティス海兵大将(退役)、大統領首席補佐官ケリー海兵大将(同)、安全保障担当官マクマスター陸軍中将(現役)ら軍人も、北朝鮮に武力行使をして、1953年以来休戦状態にある朝鮮戦争が再燃すれば、北朝鮮だけでなく韓国、日本にも途方もない被害が及ぶから慎重で、大統領に現実を説いた。
・今回、北朝鮮が実験した威力160キロトン(爆薬16万トン相当)の水爆の「熱効果」は半径約4.5キロ以内で全員を死亡させ、約6・5キロ以内で「第2度火傷」(皮膚の30%以上に及べばすぐ治療しないと致命的)を生じさせる。もし都心に落ちれば6.5キロ圏内の人口は200万人、昼間ならさらに多い。その半数は死亡する計算になる。それ以外に放射性降下物の犠牲者も出る。
・これを考えれば、戦争になる危険を知らないように、ひたすら厳しい制裁を求めて回った安倍首相や外務省の行動は軽率、滑稽で、それと逆の姿勢を取った中国は米国に感謝され、「強い関係」を裏付ける結果となった。安倍首相は12日「格段に厳しい制裁決議が迅速に全会一致で採択されたことを評価する」と語ったが、予期に反し、北朝鮮を追い詰めないよう、大幅に後退した制裁案を米国が出し、それが9回目の安保理決議となったことで大ヤケドした体面をなんとか保とうと努めているように聞こえる。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/213819/1

第四に、9月21日付けロイター「北朝鮮「完全破壊」警告、メルケル独首相は賛同せず」を紹介しよう。
・ドイツのメルケル首相は20日、トランプ米大統領が前日、米国は北朝鮮を「完全に破壊」せざるを得なくなる可能性があると述べたことについてドイツは賛同できないとし、北朝鮮問題は外交手段のみを通して解決する必要があるとの考えを示した。
・トランプ大統領は19日にニューヨークの国連本部で行った就任後初の一般討論演説で、「米国、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」述べた。
・これについてメルケル首相はドイチェ・ヴェレ放送に対し、「こうした警告には賛同できない」とし、「いかなる軍事行動も完全に不適切であると考えており、ドイツは外交的な解決を主張する」と述べた。 そのうえで「北朝鮮問題に対しては制裁措置の実施が正しい対処法で、それ以外のすべては誤った手法となる」と語った。 メルケル氏は数日前にトランプ氏と電話で会談し、外交的な解決策を模索する必要があるとの考えを伝えたとしている。
http://jp.reuters.com/article/np-de-merkel-0920-idJPKCN1BV2KC?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Weekday%20Newsletter%20%282017%29%202017-09-21&utm_term=JP%20Daily%20Mail

第一の記事で、電磁パルス攻撃(EMP)に対し、 『海上自衛隊の場合は艦船全体としてうまく逃がすように設計段階から対策が取られている』、にも拘らず、自衛隊全体としては、まだということらしい。鋼鉄製の艦船であれば、シールドも簡単だが、陸上自衛隊や航空自衛隊の場合はそう簡単ではないのかも知れない。『1986年11月6日の衆議院予算委員会で、故・楢崎弥之助議員(社会民主連合)がEMP攻撃を取り上げ、対策などについて政府に質問している』、衆院の「爆弾質問男」に相応しい、いい質問だ。 『2018年度予算の概算要求で電磁パルス攻撃対策として14億円を計上』、ということは、 『少なくとも30年以上前から対策の必要性が指摘されていたにもかかわらず、自衛隊は何もしていなかったということか』、なんとも頼りない話だ。或いは、PKO日報問題にみられる文書管理のいいかげんさが影響している、のかも知れない。
第二の記事で、 『2017年の北朝鮮「危機」はもっと正確に言えば、自国の宣伝目的のために、金正恩氏とドナルド・トランプ大統領が催しているメディアを使った人形劇のように思える』、 『もしもっと多くのジャーナリストが正恩氏とトランプ大統領の人形劇を取るに足らないものと扱い始めれば、北朝鮮問題の状況は、一種の長い骨の折れる外交交渉に移行し始めるかもしれない』、などの指摘には同感である。
第三の記事で、 『戦争になる危険を知らないように、ひたすら厳しい制裁を求めて回った安倍首相や外務省の行動は軽率、滑稽で、それと逆の姿勢を取った中国は米国に感謝され、「強い関係」を裏付ける結果となった』、との指摘もその通りだ。
第四の記事で、 『メルケル首相は20日、トランプ米大統領が前日、米国は北朝鮮を「完全に破壊」せざるを得なくなる可能性があると述べたことについてドイツは賛同できないとし、北朝鮮問題は外交手段のみを通して解決する必要があるとの考えを示した』、というのはメルケル首相らしい穏当な反応だ。安部首相がトランプを煽っているのとは大違いで、国際社会がメルケル首相を支持するのは明らかだろう。
タグ:三菱電機 ロイター 東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ 北朝鮮問題 田岡俊次 ロイター記事を転載 電磁パルス攻撃 (その11)(自衛隊の電磁波攻撃対策、北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白、骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった、北朝鮮「完全破壊」警告 メルケル独首相は賛同せず) 自衛隊の電磁波攻撃対策は本当に「ない」のか 海上自衛隊は対策済み、実は古くから議論 1958年、米国が太平洋中部のジョンストン島の上空約76キロメートルで核弾頭を爆発させた際、約1500キロメートル離れたハワイの家庭や工場のヒューズやブレーカーが切れて大停電が発生したことがある 海上自衛隊の艦船など、対策はすでに十分取られている 元海上自衛隊海将の伊藤俊幸氏 オフィスビルなどを対象に「電磁シールドシステム」という強力なEMPなどの電磁波攻撃に備えたシステムを提供 トランジスタやその後のIC(集積回路)の開発では、EMPの被害を最小限にすることを念頭に置いてきた 1986年11月6日の衆議院予算委員会で、故・楢崎弥之助議員(社会民主連合)がEMP攻撃を取り上げ、対策などについて政府に質問している 少なくとも30年以上前から対策の必要性が指摘されていたにもかかわらず、自衛隊は何もしていなかったということか 防衛省は2018年度予算の概算要求で電磁パルス攻撃対策として14億円を計上、電磁パルス弾の試作や防護技術を研究するという 北朝鮮で「核危機」?こんなの"でっち上げ"だ 原子力技術者向け専門誌の編集長が激白 、北朝鮮の指導者金正恩氏はクレージーでもなければ、自暴自棄にもなっていないからだ 2017年の北朝鮮「危機」はもっと正確に言えば、自国の宣伝目的のために、金正恩氏とドナルド・トランプ大統領が催しているメディアを使った人形劇のように思える もしもっと多くのジャーナリストが正恩氏とトランプ大統領の人形劇を取るに足らないものと扱い始めれば、北朝鮮問題の状況は、一種の長い骨の折れる外交交渉に移行し始めるかもしれない 北朝鮮の「危機」が実際には朝鮮半島の膠着状態にすぎず、大言壮語にあふれた人形劇が、プロの外交交渉とは比べものにならない稚拙な代替手段にすぎないということを、メディアは読者や視聴者に理解してもらう手助けはできるのだ 骨抜き北朝鮮制裁 安倍首相と外務省は軽率で滑稽だった 国連安全保障理事会緊急会 6日に米国が示した制裁案は石油の全面禁輸、北朝鮮国外労働者(推定9万人余)の雇用禁止、金正恩委員長の資産凍結と渡航禁止、承諾なしの船舶の臨検、など極めて厳しかった 米国はそれをほとんど骨抜きにする修正案を10日、安保理メンバー国に示し、11日にそれが全会一致で採択された ・ヘイリー大使は「今回の決議はトランプ大統領と中国の習近平国家主席の間で築かれた強い関係がなければ成し得なかった」と安保理で述べた 、戦争になる危険を知らないように、ひたすら厳しい制裁を求めて回った安倍首相や外務省の行動は軽率、滑稽で、それと逆の姿勢を取った中国は米国に感謝され、「強い関係」を裏付ける結果となった 北朝鮮「完全破壊」警告、メルケル独首相は賛同せず
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電気自動車(EV)(その1)(ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情、急加速のEVシフトに潜む5つの課題、日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている) [科学技術]

今日は、電気自動車(EV)(その1)(ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情、急加速のEVシフトに潜む5つの課題、日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている) を取上げよう。

先ずは、8月9日付けダイヤモンド・オンライン「ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・イギリスやフランスが2040年までにガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのクルマの販売を終了させるプランを発表するなど、欧州各国で内燃機関に代わるクルマの電動化を推進しようとしている。なぜ、最近になって欧州各国でガソリン車やディーゼル車の全廃宣言が相次いでいるのか、本当に2040年までに全廃できるのか。その背景や理由を検証してみた。(ジャーナリスト 井元康一郎)
▽欧州で相次ぐEV化の話題
・欧州がいきなりクルマの電動化に前がかりになっていることが今、大変な話題となっている。マクロン政権下のフランスの二コラ・ユロ環境大臣が2040年にガソリンエンジン、ディーゼルエンジンを搭載したクルマの販売を終了させるというプランを7月6日に発表し、世界を驚かせた。それに呼応するかのように同月、イギリス政府もまったく同様のコミットメントを打ち出した。
・人口の少ない国ではもっとラディカルなプランもある。例えば、ノルウェーは内燃機関全廃ではないが、2025年までに販売車両のすべてを純EVもしくは充電可能なPHEV(プラグインハイブリッドカー)にするとし、オランダもそれに似た政策を推進している。
・政府ばかりではない。民間でもスウェーデンのボルボが傘下のスポーツカーファクトリーであるポールスターをEV(電気自動車)専門ブランドにすると宣言した。ドイツのスポーツカーメーカー、ポルシェは2023年までに販売車両の半分をEVにするという「ミッションE」計画を発表。それ以降もEV化の話題が欧州から毎日のように伝わってくる。
・事実、EU圏でのPHEVを含むEVの販売は伸びている。今年上半期のEV、PHEVの販売台数は13万3000台。前年同期の9万8000台から、35%も伸びたことになる。新車販売台数の総数は850万台であったことを考えると、比率は微々たるものではあるが、普及初期の段階に差しかかっているのは確かだろう。  ただし、これらのセールスは他の市場におけるEV、PHEVの販売と同様、手厚い補助金の支給、高額な新車登録費用の免除、公営駐車場を無料で使えるなどの各種恩典あってのもので、実際のEVのセールスパワーはそれよりもずっと低いのが実情だ。果たして、本当にEVへのパラダイムシフトを急激に推し進めることができるのだろうか。また、なぜ急にそういうムーブメントが先鋭化したのか。
▽EV推進の背景には蓄電池の性能・コストへの期待感
・まず、2040年にガソリン、ディーゼル車の販売を禁止し、電動車両一本でパーソナルモビリティや物流をまかなえるようになるかどうかだが、これはきわめて困難ではあるが、本気でやれば技術、インフラ整備の両面でやってやれないことはないというところだ。
・今日、欧州のEV推進論者たちが「EVで行ける」と主張する背景にあるのは、EVの足かせとなっている蓄電池が技術革新によって性能、コストの両面で改善されることへの期待感だ。すでに日本、韓国、アメリカ、ドイツ、フランスなど電気化学を得意としている国を中心に、現行の液体電解質リチウムイオン電池の数倍の性能と高い安全性を両立させた固体電解質リチウム電池の試作品が続々と登場している。
・そのコストも、マッキンゼーとブルームバーグ新エネルギーファイナンスは2030年に1kWhあたり100ドルに下落するという予測を発表している。その先さらにバッテリー技術が進化し、十分な航続距離を持つEVが補助金なしでも今日のエンジン車に対してコストメリットが出るようになれば、消費者は自ずとEVを選ぶようになるだろう。
・クルマ以上に課題が大きいのはインフラ側。現状では日米欧、また中国でもそうなのだが、自宅外の急速充電器の運用はどこも大赤字だ。機器の性能が低く、価格が高いこともあるが、それ以上に、エンドユーザーに数十kWhという大電力量を短時間でデリバリーするように社会ができていないのだ。インフラ整備といえば急速充電器の設置がまず語られるが、それより重要なのは、急速充電器を設置する際に巨額の工事費をかけないでも済むような電力供給の方法を考案し、社会のインフラを整備し直すことだ。これには巨額の費用がかかるが、道路を造るようなものだと考えれば不可能な投資ではないだろう。
・もちろん短時間で大電力量を充電可能な充電器や、それを受け入れる側のクルマ側の技術革新も必要だ。今日、800V充電をはじめ急速充電に関する新技術の提案がなされているが、実際にEVが多数派になったあかつきには、そんなものでは到底追いつかない。1000アンペアクラスという、電車を走らせるような電流を自在に使いこなせる技術が必要だ。2040年にはまだ23年ある。いい方法を考える頭の良い人も出てくるだろう。
・ただ、人口が少なく、再生可能エネルギー比率の高い小国はともかく、フランスやイギリスが打ち出したエンジン車全廃計画は、そういう技術展望を踏まえた合理的な判断だけで出されたものではない、という指摘も少なからず出てきている。
▽急進的なEV推進策は トランプ大統領のパリ協定離脱への牽制!?
・日本に駐在した経験を持つフランス文部省のある上級幹部は、急進的なEV推進策が出てきたのは、今の国際政治情勢と深く関わっているという見方を示す。 「まずはトランプ大統領がCO2規制の枠組みである『パリ協定』からの離脱を宣言したこと。世界最大排出国のアメリカに抜けられては、世界の環境政策を主導するのは欧州という地位が崩れてしまいますし、低迷しているCO2排出権相場に悪影響が出かねません。大気汚染防止が理由なら、排出ガス処理の技術革新の将来性を無視した話ではありますが、ディーゼル車を段階的に排除すればいいだけ。 ガソリン車まで2040年に全廃すると宣言した動機は、化石エネルギー依存からの脱却というのが世界の流れなんですよというメッセージを発することでしょう。不確実な未来の夢を語る時によく使われるのは2050年なんですが、よりアグレッシブに響かせたいということで2040年にしたのでしょう」
・資源・エネルギー問題を取材するフランス人ジャーナリストは、欧州内の情勢も政策に影響を及ぼしている可能性が高いと言う。 「欧州は今、EU離脱を決めたイギリスを含め、現実主義と理想主義の両極端に分断されている状態です。リーマンショック以降はとくにEU統合、多文化共生主義のリベラル派が勢力を伸ばしてきましたが、テロや移民問題で彼らの旗色が急に悪くなった。求心力を回復させる材料が欲しい彼らにとって、環境は格好の材料に映ったのでしょう。フランスもマクロン大統領が右寄りのルペン候補に勝利したものの、支持基盤は非常に弱い。そこで急進的環境活動家で左派に人気があり、環境派のパリ市長、アンヌ・イダルゴ氏との折り合いも良いユロ氏を環境大臣に登用した。
・今回のエンジン車廃止プランは、マクロン大統領というよりは、一時は大統領の座を夢見たこともあるユロ氏にとっての目玉政策という側面が強いと思います。イギリスのメイ首相も人気がなく、歴史的な経緯から大気汚染に敏感な国民に受けのよさそうな政策ということで追随した可能性が高い」 2040年にガソリン車、ディーゼル車を廃止するという目標は前述のようにラディカルなもので、その背後には少なからず政治的な思惑も横たわっているのだが、EV化が絵に描いた餅に終わるとは限らない。
▽電動化に一番合理的で冷静なのは日本の自動車メーカー
・前述のように、電気駆動関連の技術革新のスピードは速い。コスト吸収力の高い高級車の世界では、ユーザーが高性能化には電気駆動の導入が最適という認識を持てばメーカー側はたちどころにそれに対応するであろう。また、大衆車でもエンジン車とトータルコストが完全に逆転するところまで行けば、長距離ドライブを伴うバカンスに不向きだという、ライフスタイル上のネガティブ要素を乗り越えてEVに飛びつく層が増えるだろう。
・だが、今回の政治的発言のようにエンジン車が今世紀後半を待たずして欧州から消えることになるかどうかとなると、また話が違ってくる。欧州の大手自動車メーカー幹部は言う。 「電動化について一番合理的で冷静なのは、日本の自動車メーカーだと私は思っています。『電気が一番素晴らしいんだ』とヒステリックに叫ぶのではなく、エンジン車を含め、全部の技術についていいところと悪いところをきちんと見て、何をどう良くできるのかを考えながら少しずつ変わろうとしている。技術もちゃんと蓄積している。あくまでこれは私個人の考えなのですが、EVは間違いなく増えていくものの、自動車用の内燃機関は2040年になってもなくせないと思う。
・もちろん、環境や資源のことは考えなければいけないのですが、許される範囲内であればクルマの使い方は顧客の自由。できるだけ安いクルマで済ませたい人もいるでしょうし、遠くまでバカンスに出かけたい人もいるでしょう。そういう人間の気持ちを無視した地球至上主義は、少し感情的なのではないかと思います」  欧州からいきなり火の手が上がった空前の“EVムーブメント”とエンジン車終結宣言。それが本物になるのか、アドバルーンに終わるのかは、技術革新と顧客の心次第と言えそうだ。
http://diamond.jp/articles/-/138011

第二に、本田技研からサムスンSDI常務を経て名古屋大学客員教授/エスペック上席顧問の佐藤 登氏が9月14日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「急加速のEVシフトに潜む5つの課題 日欧米韓中の鍔迫り合いとビジネスリスク」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・9月6日、日産自動車は7年ぶりに全面改良した電気自動車(EV)「リーフ」を発表した。実際の国内販売は10月2日からとのこと。新規開発したリチウムイオン電池(LIB)は、従来の30kWhから40kWhに容量アップしたことで航続距離はJC08燃費モード表示で400kmに達したと言う。急速充電するとLIB容量の80%まで充電が可能。LIBの保証は8年または16万kmとしている。
・一方、EVブームをつくったとも言える立役者のひとつ、米テスラも従来の高級EV「モデルS」に加え、価格を3万5千ドルに抑えた普及型「モデル3」の販売を7月末に開始した。富裕層のみだけではなく、一般顧客を取り込む戦略に出たことで受注は50万台に達したと言われている。
・また、米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規制、中国新エネルギー自動車(NEV)規制を受けて、日米欧韓中の自動車各社がEVシフトを鮮明に打ち出している。中でも、2015年にディーゼル自動車の燃費不正事件を起こした独フォルクスワーゲン(VW)は、グループ全体で25年までに30種以上のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を発売することを既に明言した。世界販売の20~25%に相当する200万~300万台規模と言うから、極めて大規模かつチャレンジングな目標である。これはVWのみにとどまらず、独ダイムラーや独BMWも同様な目標を掲げている。
・そのような折、9月12日の日本経済新聞夕刊に、VWが2030年までにEVに200億ユーロ(約2兆6千億円)を投資するとの記事が掲載された。同時に、25年までに30車種としていた上記の計画を、EVで50車種以上、PHVが30車種以上の計80車種以上に上方修正した。車載用電池に対しては2兆6千億円とは別に、約6兆5千億円分を調達するとも報道されている。
・9月12日に開幕した「フランクフルト国際自動車ショー」での主役は電動車、中でもEVのオンパレードと各メディアが報じている。EVに対して腰の重かったホンダも、量産型EV「アーバンEVコンセプト」を世界初公開し、このモデルをベースにしたEVを19年に欧州で発売すると言う。
・米国ZEV規制はカリフォルニア州に端を発しているものだが、他にマサチューセッツ州、ニューヨーク州、コネチカット州、メイン州、ニュージャージー州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州、メリーランド州が追随している。18年から強化されるZEV規制は、トヨタとホンダが主導してきたハイブリッド車(HV)が対象から外れることで、EVやPHVの開発に拍車がかかる。
・同様に、中国NEV規制もZEV規制の基本的な考えを踏襲し、EVやPHVを主体に規制をかける内容である。中国政策はHVを除外した理由を公言している。それは、「内燃機関エンジンでは、いかに立ち向かっても日本には勝てない。EVならばエンジンは不要、部品点数も少なく、参入障壁が低い」という消去法的選択でEVを重点化している。PHVはエンジンを搭載するのでHVと同様に難度が高いが、EV走行ができることでNEV規制枠に取り込んでいる。しかし、中国ローカル自動車メーカーでPHVを販売しているのはBYDのみで、他はすべてEVに集中している。
・これも9月12日の日経新聞の一面に紹介されたが、英仏が宣言した2040年までのガソリン車・ディーゼル車の販売禁止政策に追随し、中国もガソリン車・ディーゼル車の製造・販売禁止に関する導入時期の検討に入ったとのこと。
・このように、グローバルにEV化が急速に進んでいる。こんな中、業界が抱える課題も徐々に明らかになってきたる。以下、5つの観点からまとめる。
▽①EVを購入する顧客層はどれだけいるか?
・上記のように自動車各社が2025年まで拡大させようとしているEVであるが、NEV規制はともかく、ZEV規制では販売された台数で初めて自動車各社の実績としてカウントされることになる。このためEVを生産しても販売までに至らなければ意味をなさない。それを決定するのは自動車各社ではなく、消費者側である。  1998年、ZEV規制(日米各ビッグ3が対象で、98年に販売台数の2%をEV化することを求めた)をクリアするために、97年にはトヨタもホンダも400台規模のEVをカリフォルニア州に供給した。しかし、市場の反応は冷めていた。当時の両社が搭載したニッケル水素電池容量は27kWhで、モード走行は215km、充電時間は約8時間。リース販売としたのだが、航続距離の短さ、家庭への充電器の導入と長い充電時間、電池価格と車両価格の高さ(当時は搭載電池が1台分約500万円、車両価格はまともに販売すると約2500万円、そのためリース対応を実施)などがネックとなり、EVはその後、カリフォルニア市場から姿を消した。
・それから20年経過した現在、モード走行が400kmにも及ぶEVが出現している。しかし、夏冬場のエアコンの使用前提で市街地走行した場合には、モード燃費よりは明らかに低下するため、実際での走行はおおよそ300km前後となろう。とすれば、EVの中では高性能商品に入るであろうが、従来のガソリン車やHVに比べれば、まだまだハンディを背負った自動車である。
・急速充電のインフラは徐々に整備されつつあるとしても、充電器の導入と充電時間は20年前と同様な状況だ。LIB価格や他のコンポーネントのコスト低減が進み、車両価格という視点では相当な進化が実現された。車両価格は300万~400万円程度、電池も20年前の約20万円/kWhから2万円/kWh程度まで、すなわち10分の1までのコスト低減が実現されている。今後も、LIBのコストは更に1.5万円/kWhを標榜しつつ、30%程度のコストダウンが期待されている。
・このように20年間の進化は大きいとしても、ガソリン車やHVに比べてはまだ劣勢のEVであることに変わりはない。全世界の自動車各社が、そして新興の中国新規参入組も入って商品を市場に供給することになるが、そこに消費者がどれだけの価値を見出し、そして購買意欲を示すかが大きな関心事項となる。
・言い換えれば、世界のEV消費者層のパイは暫くの間は限られていると考えるべきであろう。世界各国の自動車各社がEVを市場に供給する今後を考えれば、選ばれるEVはどのようなものか?そしてどのEVが消費者から支持されるのか? EVシフトの裏にはこのような過激な競争が待ち構える。それはテスラも例外ではなく、今後は同社の真価が問われることにもなるだろう。
▽②中古車市場で見劣りするEV
・ガソリン燃料より安く走行できるEVの電気代ランニングコストは、消費者にとっては魅力の1つである。しかし一方では、同一年式、同一車両価格帯のガソリン車やHVに比べれば、中古車市場でのEVは大きな下落を強いられているという面も見過ごせない。年数が経過したEVの価値が低ければ、それだけ新製品に寄せる想いは高まらない。
・ガソリン車やHVの中でも中古車市場価格が高めに維持される商品は、新車市場でも人気車に位置付けられている。筆者自身も、自動車購入に当たっての1つの条件としており、中古車市場での価格は重要な指標と位置付けている。同様な考えをもつ消費者は少なくないはずだ。 実際に購入して使用した消費者の意見は最も大きな影響を及ぼす1つであろうが、電池の劣化と共に進む航続距離の低下に対する消費者の不満は、これまでの最多のものではなかっただろうか。それだけに、電池劣化を制御する素材や電池マネジメントは今後も大きな課題である。
・ともかく自動車各社は新車EVの新規開発と同様に、いかに中古車市場でも力を持つ魅力あるEVの製品開発を考えるべき段階に突入したのではないだろうか。今後、各社のブランドでEVが市場に出回ることで、中古車市場で相対的に優位な価格を提示できるEVこそが選ばれるEVと言う指標になるはずだ。
▽③電池メーカー、部材メーカーの投資チャンスとリスク
・ここは上記①と関連する部分であり、選ばれるEVと連結される電池メーカー、そしてそこにつながる部材メーカーにとってビジネスチャンスになるだろう。一方、選ばれないEVにつながる電池メーカーや部材メーカーにとっては、ビジネスリスクと化すことも考慮すべきであろう。  2009年に発売された三菱自動車のEV「i-MiEV」、そして10年に市販された日産の「リーフ」が市場供給される前段階で、そこに連結する電池メーカーや部材メーカーは大きな投資に打って出た。
・と言うのも、自動車各社のEV販売目標が高かったことで、それをそのまま受けて投資に踏み切ったからだ。例えば、11年に日産自動車が掲げた16年度までの目標は、仏ルノーとの累計販売で150万台と設定された。ところが実際の累計販売は目標の30%程度の42万台にとどまった。目標比で30%という実績は目標自体の設定根拠に誤りがあったか、あるいは非常に過度な期待があったからに他ならない。このような高すぎる目標に対峙するために、電池メーカーや部材メーカーも大きな投資を決断した。しかし、市場と言う蓋を開けてみたら、EVの存在感は非常に小さく、結果として過剰投資をしてしまった過去の事例は記憶に新しい。
・現在、自動車各社は電池メーカーへの投資促進、電池各社は部材メーカーへの投資促進を働きかけている。電池メーカーでは韓国のサムスンSDIとLG化学が中国の西安市と南京市に、いち早く車載用LIB生産工場を建設したものの、中国政府のホワイトリスト(バッテリー模範基準)に登録されないまま当てが外れ、中国でのビジネスに苦慮している。
・その両社は、新たに欧州に拠点を構えることで、欧州自動車メーカーを中心にした顧客開拓を進める。LG化学はポーランドにLIB工場を建設し、今後も増産体制を構築すべく拡大する。サムスンSDIはハンガリーに約400億円規模の投資でLIB工場を建設し、顧客開拓を進める。
・また、韓国で3番目の地位を築こうとするSKイノベーションも潤沢な資金を背景に欧州拠点を構えようとしている。同社のLIB生産キャパは1.1GWhであったが、18年下半期には3.9GWhまで拡大する計画と言う。韓国の瑞山工場を中心にグローバル拠点の設立を着々と進めようとしている。さらには、中国のCATLも同様に欧州拠点の構築に積極的である。
・LIB事業も、現時点では日韓中の競争のまっただ中にあり、投資競争と顧客開拓で熾烈な展開が繰り広げられている。電池各社、部材各社も広い視野と高い視点から自社の事業戦略を描かないと、大きな過ちを犯すリスクにもつながる。
▽④安全性・信頼性に関する徹底した取り組みの必要性
・さて、EVやPHVに関する安全性についてはまだ解決されていないのが実態である。すべての製品に共通した問題ではないが、EVではいまだに火災事故が発生している。
・三菱自動車の「i-MiEV」と日産自動車の「リーフ」は、火災事故に関しては1件も報道されていない。リーフは市販から7年になり、累積販売は30万台になろうとしている。走行距離では35億kmを超えたとされる。安全性に関しては誇れる根拠であろう。
・一方、テスラの「モデルS」は2013年に米国市場で立て続けに5台の火災事故が起こり、大きく報道された。16年には、フランスでの試乗会での火災事故、他にもノルウェーや中国等でも少なからずの火災事故を起こしていると聞く。
・中国もLIBを搭載したタクシーや乗用車、EVバスで、2010年以降から火災が多発し、現在も大きな課題となっている。それが背景にあり、安全性・信頼性に高いエコカーを実現するためのエコカーライセンスの発行、およびLIBの安全性を担保するためのホワイトリストの政策実施により、危険なLIBを排除しようとする中国政府筋の計らいが見られる。
・車載用電池ではドイツが主導してきた国連規則、ECE R-100.02 Part2が2016年7月に発効した。電池パックまでに及ぶ9項目の評価試験が課せられる認証制度が導入された。試験項目には電池パックの圧壊試験、外部短絡試験、耐火試験などの相当危険な試験法が導入されている。 筆者が在籍するエスペックでは、2013年に宇都宮事業所に「バッテリー受託試験センター」を開設した。そして国連規則導入計画を勘案し、いち早く15年9月には同事業所に「バッテリー安全認証センター」も開設した。
・上の左の写真は認証センター内の電池圧壊試験室とその装置であるが、開設を祝う開所式の時の写真であり、未使用状態を示したものである。以降、ちょうど2年が経過したが、国内外から多くの電池が持ち込まれる中、試験室内は試験に供されたLIBの爆発や火災等で発生した煤により、常時清掃しているものの、現在は右写真のように相当黒ずんでいる。
・もっとも、そういう過激な結果事象を想定した堅牢な建屋と試験装置設計を具現化した当センターは、国内外からも非常に注目され高い評価を受けており、国内はもとより海外からの委託試験ニーズも日に日に高まっている。
・認証試験を義務教育と例えれば、自動車メーカー個社単位で構築している独自試験項目や限界試験項目は高等教育に値する。筆者がサムスンSDIに在籍していた際には、日米欧韓の自動車各社を訪問し、安全性・信頼性に対する考え方、評価試験法、そして判定基準について多くの議論を交わしてきた。高等教育領域での内容、すなわち各社の独自試験や限界試験、そして判定基準は、他国に比べて日本勢が圧倒的に厳しい評価試験と判定基準を構築している。だからこそ、HV、PHV、EV、そして燃料電池車(FCV)のいずれにおいても火災事故を起こしていないと言う実績につながっているのであろう。
・ここに紹介した後方支援としてのエスペックの役割は、第三者的な客観性をもって安全性確保の担保につなげることはもちろんのこと、認証試験以外でも各社の高度な独自試験に柔軟に対応してLIBに対する不安感を一掃していくこと、自動車業界と電池業界の発展に寄与することにほかならない。 まだ完全に担保されていない海外勢のLIBについても、エスペックはオープンスタンスでのビジネスを提供している。高度な対応が可能な当社のセンターを国内外関連企業が最大限活用いただくことで、EV等のエコカーの火災事故を市場からなくしていくことを可能にする重要な機能となっている。
・拡大するEVシフトの中で火災事故が多発していくような状況が生じれば、全世界でのEV事業にブレーキがかかり急降下する。その結果、各業界への甚大な影響を招くことになる。それだけに、現時点から着実な評価試験を通じた安全性確保のための開発が重要な意味をもつことになり、後方支援の担う役割は一層拡大する。
▽⑤中国市場でのビジネスのリスク
・中国政策が国策優先として進めているNEV規制におけるエコカーライセンス制度では、ようやく外資系合弁企業のVW-JACがライセンスを取得するに至った。独中のトップ外交が功を奏した結果と受け止めるが、トヨタ、ホンダ、日産、および韓・現代自動車はライセンス未取得のままである。
・現代自動車に至っては、エコカーどころか既存事業にも大きな影響が出ている。中国市場での自動車販売では、2017年1月から8月までの前年同期比で45%減になったとのこと。また、合弁を組んでいる北京自動車との関係も悪化の一途をたどり、一説では合弁解消のような状況も今後あり得るとのこと。エコカーライセンス取得には程遠く、中国市場でのビジネスチャンスは遠のくばかりのようである。勘案すれば、終末高高度防衛ミサイル(THAAD:Terminal High Altitude Area Defense Missile)を設置した韓国に対する産業分野での報復と見る向きが大きい。
・日本勢の自動車各社も、エコカーライセンスは未取得であるが、ここは時間の問題と映る。日系大手自動車各社は個々のロビー活動を推し進め、一方では来年からのNEV規制に適合するEVやPHVを中国市場に供給する戦略に打って出た。逆に、中国市場が日本勢を排除するようなことになるなら、中国のエコカー技術開発にブレーキがかかることになり、中国の産業界にとっては大きなマイナスになるだろう。
▽まとめ
・今後、世界市場に出現することになる数多くのEVであるが、消費者の需要が同時に比例して拡大するとは思えない。すなわち市場に出てくる各社のEV群が、まんべんなく売れるとは思えないのである。選ばれるEVのみが勝ち組となっていく一方で、選ばれないEV製品も出現するだろう。
・そのためにも自動車各社、電池各社、および部材各社の世界戦略は、今後の各社の命運を決める。一方で、どちらに主流が動こうとも、後方支援のような普遍的ビジネスにはかなりの追い風である。 しかし部材業界も試験機器業界も、中国のような価格重視の市場においては、そこに適合する部材や評価装置などを持ち合わせないと市場開拓にはつながらない。その理由は、価格の安い中国ローカル製品に対して、自動車業界や電池業界は特段の不満はなく適用したり使用したりしている実態があるからだ。
・従来の先進諸国を対象主体に開発してきた製品だけでは立ち行かなくなる状況に陥る。新興国をも攻略できる事業戦略が、日本企業に改めて問われているのではないだろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/246040/091200057/?P=1

第三に、元大手銀行のマーケット・エコノミストで法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が9月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ここへ来て急速な勢いで、電気自動車(EV)に注目が集まっている。その背景には、欧州の主要国や中国が、一斉にガソリンエンジン車の禁止、電気自動車への転換を発表していることがある。 その動きは、今後、さらに大きな“大波”になることが考えられる。自動車業界はすそ野の広い産業分野であり、これから主要国の関連分野が“大波”にいかに対応していくかが注目される。仮にこの“大波”に乗り遅れると、世界の自動車市場から取り残されることも懸念される。
・9月12日、“フランクフルトモーターショー2017”のプレスデーが始まった。ディーゼルエンジンのデータ不正で世界を震撼させたフォルクスワーゲンは、グループ全体でのEV戦略を示した。EV化の動きには、自動車業界の勢力図を根本から覆すほどのマグニチュードがある。まさに“大波”と呼ぶべき構造変化が進もうとしている。
・フランクフルトを訪れたある自動車メーカーの知人は、「今後の競争が電気自動車を軸に進むことがはっきりした」と危機感をあらわにしていた。EV化の波は先進国だけではなく新興国にも押し寄せている。そのスピードはかなり速い。競争に与えるインパクトも計り知れない。新興国メーカーが、先進国メーカーの座を奪う可能性を評価する投資家も増えている。
▽EV化という自動車業界を襲う厳しい構造変化
・世界的な自動車のEV化の動きは、ディーゼルエンジン不信の震源地となった欧州からスタートした。 もともと、欧州各国はガソリン車が排出する温室効果ガスの削減を狙い、ディーゼル車の普及に力を入れてきた。しかし、2015年に独フォルクスワーゲンが、ディーゼルエンジンの排ガスデータを不正に改ざんしていたことが発覚した。 フォルクスワーゲン以外の不正疑惑も続き、世界中にディーゼルエンジン不信が広がった。この結果、一時はガソリン車よりもクリーンともてはやされたディーゼルエンジン離れが加速し、窒素酸化物(NOx)による健康被害への懸念も増幅された。
・この事態を受けた欧州各国の対応はかなり迅速だった。各国政府は、すぐに新しい技術を政府主導で導入しようと計画をまとめ始めた。昨年9月末、ドイツの連邦参議院は2030年までに内燃機関(ガソリン、ディーゼルを燃料とするエンジン)を搭載した新車の販売禁止を求める決議を採択した。本年7月には仏英の両政府が2040年までに内燃機関を搭載した新車の販売を禁止する方針を示した。
・このように、欧州では政府主導で自動車の脱化石燃料化の動きが加速している。とりあえずは各国が、ハイブリッド車など環境負担の少ない自動車にかかる税率を引き下げるなどして、環境に配慮した車種への乗り換えを促していくだろう。しかし、長い目で見た本命は電気自動車であることは間違いない。
・今後、電気自動車の充電スタンドなどインフラを整備することで、社会全体でEV化の動きがスピードアップしていくことが予想される。言い換えれば、政府がトップダウンで社会全体のイノベーションを進め、新しい需要を生み出そうとしている。こうした取り組みは、将来の潜在成長率にも影響するだろう。 環境問題に頭を悩ます中国も、脱化石燃料を重視している。電気自動車の開発競争がし烈化することは間違いない。自動車業界全体が、EV化という大きな潮流という構造変化を迎えようとしている。
▽世界的にし烈化を極める電気自動車の開発競争
・構造変化に対応するためには、いち早く新しい技術を開発し、その実用化を進めてシェアを獲得することが必須だ。その時、これまでの発想に固執してしまうと、初動動作が遅れてしまう。 1990年代以降、わが国の電機メーカーは完成品を自社内で生産し、それを輸出して稼ぐビジネスモデルを刷新することができなかった。そうした教訓をもとに、今後の競争戦略を練るべきだ。一言でいえば、これまでの成功体験を捨て、虚心坦懐にゼロから新しい技術・モノを生み出す姿勢が求められる。
・特に、日本の自動車メーカーは、幸か不幸か、ハイブリッドという優秀な技術を持っている。わが国のハイブリッド技術は、ドイツのメーカーにとって大きな脅威だったはずだ。それがディーゼルエンジンのデータ不正問題の一因となった可能性もある。
・EV化の動きが進み、近い将来に脱内燃機関の社会が実現するかを考えると、それは口で言うほど容易なことではないだろう。まだ紆余曲折があるはずだ。ただ、フォルクスワーゲン問題を受けて、ドイツはディーゼルエンジンとの決別を余儀なくされた。ある意味、EV化の流れはドイツメーカーが過去の負の記憶を払しょくし、生まれ変わりを目指すための“渡りに船”かもしれない。
・また、ガソリン車の生産実績が乏しい新興国のメーカーにとっても、EV化の動きは世界の市場に打って出るチャンスになるかもしれない。これは、ベンチャー企業にも当てはまる。それは、自動車業界の勢力図を大きく塗り替えることになる可能性がある。
・特に、中国は国を挙げてEV分野の強化に力を入れている。中国政府はガソリン車などの販売停止に向けた工程表を作成し始め、今後は比亜迪(BYD)などを支援することが見込まれる。 この動きが加速すると、中国企業の動向が世界の自動車業界での競争を左右する展開も考えられる。これは、中国との関係を強化してきたドイツのメーカーにとって追い風となるだろう。
・わが国の自動車メーカーがこうした状況に対応するためには、技術開発を急ぐだけでなく、中国の政府・メーカーとの関係を強化するなど、これまでの経営戦略の見直しと方針転換が必要だろう。
▽EVシフトを織り込み始めた株式市場
・世界的な内燃機関からEVへのシフトの動きを見越して、株式市場でも変化が表れている。国内では、トヨタ自動車をはじめガソリン車を生産してきたメーカーの株価は、足元でやや不安定化している。一方、パナソニックやGSユアサなどバッテリー関連の製品・部材を供給する企業の株価は上昇基調にある。
・9月12日には、アップルが“iPhone X”などの新型スマートフォンを発表したが、株価は期待されたほど堅調ではなかった。一方、同日、プレスデーが開かれたフランクフルトモーターショーで今後の戦略を示した、フォルクスワーゲンをはじめダイムラー、ルノーなどの欧州自動車メーカーの株価は堅調だ。それに加え、中国ではBYDの株価が上昇している。米国のテスラの株価はハイテク株を凌駕する上昇率を遂げてきた。
・明らかに、自動車業界における構造変化をマーケットは認識し始めている。これまで世界のトップシェアを占めてきた企業が、中長期的にその座を維持し続けるとは限らない。競争が激化する中でシェアを維持するためには、他社に先駆けてEVの開発を進めるだけでなく、ネットワーク技術の普及を見越した自動運転技術の導入など、従来にはなかったコンセプトを実用化しなければならない。
・こうした取り組みを進めるためには、国=政府の関与も欠かせない。社会全体でEV化を進めるためのコンセプトをまとめ、規制の緩和、EV自動車の普及を加速させるためのインフラ投資を、欧州各国以上のスピードで進めなければならない。
・すでに、世界のファンドマネージャーらの間では、EV化競争の先頭を走る企業、出遅れた企業の選別が進んでいる。株価を見る限り、わが国の自動車メーカーは出遅れ組と見なされているようだ。従来の発想を続けている以上、テスラや新興国メーカーの台頭に対抗することは難しいかもしれない。 かつてハイブリッドシステムで世界を席巻したように、EVでも世界の先頭を走る取り組みを進められるか否かが、中長期的な企業の競争力を左右するだろう。
http://diamond.jp/articles/-/142349

第一の記事で、 『急進的なEV推進策は トランプ大統領のパリ協定離脱への牽制』、とのフランス文部省の上級幹部の見方は、トランプ大統領に対するフランス側の怒りについては理解できるとしても、「穿ち過ぎ」との感を受けた。 『欧州からいきなり火の手が上がった空前の“EVムーブメント”とエンジン車終結宣言。それが本物になるのか、アドバルーンに終わるのかは、技術革新と顧客の心次第と言えそうだ』、というのはその通りだろう。
第二の記事で、 『米国ZEV規制はカリフォルニア州に端を発しているものだが、他にマサチューセッツ州、ニューヨーク州、・・・が追随している。18年から強化されるZEV規制は、トヨタとホンダが主導してきたハイブリッド車(HV)が対象から外れることで、EVやPHVの開発に拍車がかかる』、環境規制は州の権限が強いので、トランプ大統領といえども手出しできないのだろうか。 『従来の先進諸国を対象主体に開発してきた製品だけでは立ち行かなくなる状況に陥る。新興国をも攻略できる事業戦略が、日本企業に改めて問われているのではないだろうか』、というのは正論だ。
第三の記事で、 『欧州では政府主導で自動車の脱化石燃料化の動きが加速している。とりあえずは各国が、ハイブリッド車など環境負担の少ない自動車にかかる税率を引き下げるなどして、環境に配慮した車種への乗り換えを促していくだろう』、との指摘は、欧州はハイブリッド車など無視していると思っていた私にとっては、違和感がある。日本車を大きく利するようなことはしないのではなかろうか。 『これまでの成功体験を捨て、虚心坦懐にゼロから新しい技術・モノを生み出す姿勢が求められる』、と正しく指摘しながら、 『日本の自動車メーカーは、幸か不幸か、ハイブリッドという優秀な技術を持っている。わが国のハイブリッド技術は、ドイツのメーカーにとって大きな脅威だったはずだ』、とハイブリッドの栄光を捨て切れてないようだ。ただ、 『株価を見る限り、わが国の自動車メーカーは出遅れ組と見なされているようだ。従来の発想を続けている以上、テスラや新興国メーカーの台頭に対抗することは難しいかもしれない』との指摘はその通りだ。
タグ:電気自動車 EV 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 フランクフルト国際自動車ショー 佐藤 登 (その1)(ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情、急加速のEVシフトに潜む5つの課題、日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている) ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情 ・イギリスやフランスが2040年までにガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのクルマの販売を終了させるプランを発表 欧州がいきなりクルマの電動化に前がかりになっている ノルウェーは内燃機関全廃ではないが、2025年までに販売車両のすべてを純EVもしくは充電可能なPHEV(プラグインハイブリッドカー)にするとし、オランダもそれに似た政策を推進 EU圏でのPHEVを含むEVの販売は伸びている 、手厚い補助金の支給、高額な新車登録費用の免除、公営駐車場を無料で使えるなどの各種恩典あってのもので 実際のEVのセールスパワーはそれよりもずっと低いのが実情 EV推進の背景には蓄電池の性能・コストへの期待感 、自宅外の急速充電器の運用はどこも大赤字だ エンドユーザーに数十kWhという大電力量を短時間でデリバリーするように社会ができていないのだ 短時間で大電力量を充電可能な充電器や、それを受け入れる側のクルマ側の技術革新も必要 急進的なEV推進策は トランプ大統領のパリ協定離脱への牽制!? リーマンショック以降はとくにEU統合、多文化共生主義のリベラル派が勢力を伸ばしてきましたが、テロや移民問題で彼らの旗色が急に悪くなった 求心力を回復させる材料が欲しい彼らにとって、環境は格好の材料に映ったのでしょう 電動化に一番合理的で冷静なのは日本の自動車メーカー 欧州からいきなり火の手が上がった空前の“EVムーブメント”とエンジン車終結宣言。それが本物になるのか、アドバルーンに終わるのかは、技術革新と顧客の心次第と言えそうだ 急加速のEVシフトに潜む5つの課題 日欧米韓中の鍔迫り合いとビジネスリスク 米テスラ 価格を3万5千ドルに抑えた普及型「モデル3」の販売を7月末に開始した 一般顧客を取り込む戦略に出たことで受注は50万台に達した 米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規 中国新エネルギー自動車(NEV)規制 EVのオンパレード 米国ZEV規制 18年から強化されるZEV規制は、トヨタとホンダが主導してきたハイブリッド車(HV)が対象から外れることで、EVやPHVの開発に拍車がかかる 中国NEV規制もZEV規制の基本的な考えを踏襲し、EVやPHVを主体に規制をかける内容 業界が抱える課題 EVを購入する顧客層はどれだけいるか? 中古車市場で見劣りするEV 電池メーカー、部材メーカーの投資チャンスとリスク 安全性・信頼性に関する徹底した取り組みの必要性 EVではいまだに火災事故が発生 テスラの「モデルS」は2013年に米国市場で立て続けに5台の火災事故 中国市場でのビジネスのリスク 日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている 今後の競争が電気自動車を軸に進むことがはっきりした EV化という自動車業界を襲う厳しい構造変化 欧州では政府主導で自動車の脱化石燃料化の動きが加速 とりあえずは各国が、ハイブリッド車など環境負担の少ない自動車にかかる税率を引き下げるなどして、環境に配慮した車種への乗り換えを促していくだろう。しかし、長い目で見た本命は電気自動車であることは間違いない これまでの成功体験を捨て、虚心坦懐にゼロから新しい技術・モノを生み出す姿勢が求められる 日本の自動車メーカーは、幸か不幸か、ハイブリッドという優秀な技術を持っている 中国政府はガソリン車などの販売停止に向けた工程表を作成し始め、今後は比亜迪(BYD)などを支援することが見込まれる EVシフトを織り込み始めた株式市場 トヨタ自動車をはじめガソリン車を生産してきたメーカーの株価は、足元でやや不安定化 株価を見る限り、わが国の自動車メーカーは出遅れ組と見なされているようだ。従来の発想を続けている以上、テスラや新興国メーカーの台頭に対抗することは難しいかもしれない
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医療問題(その8)(群大病院「8人死亡」事件 執刀医の暴走はこうして起きた、危険な精神科薬何種類も投与されるキケンな現実、広がる“偽造薬”リスク) [社会]

昨日に続いて、医療問題(その8)(群大病院「8人死亡」事件 執刀医の暴走はこうして起きた、危険な精神科薬何種類も投与されるキケンな現実、広がる“偽造薬”リスク) を取上げよう。

先ずは、「大学病院の奈落」の著者で新聞記者の高梨 ゆき子氏が9月11日付け現代ビジネスに掲載した「群大病院「8人死亡」事件、執刀医の暴走はこうして起きた 問題は、組織にあった」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽信じられないほどの杜撰さ
・3年前、ある医師からこんな言葉を聞いた。 「医療の安全性を追求していくと、倫理の問題に行き着く」  医療の世界には患者を救うため、一か八かで手術することもやむを得ないと考える雰囲気がいまも根強くある。そのなかで安全のために立ち止まり、慎重に点検する態度は弱腰に映ることがあるかもしれない。しかし挑戦するだけの十分な技量や体制、周到な準備もなく行うのであれば、それは無謀というほかない。
・群馬大学医学部附属病院で、同じ医師が執刀した肝臓の腹腔鏡手術を受け、8人の患者が死亡していた。いずれもまだ有効性や安全性が確立されておらず、保険診療として認められていない高難度の手術である。それなのに、倫理審査もせず、患者に事実を告げることもなく、手術は行われた――。 
・地域住民の信頼も厚い大学病院で、にわかには信じがたいほど杜撰な医療が行われていた事実について、2014年11月、私は新聞に記事を書き始めた。だが死亡続発は腹腔鏡手術という最新医療のわくにとどまらなかった。開腹手術でも同様に無理な手術が行われていたことが次々に判明し、冒頭の医師の警句にたどり着く。 単なる技量不足ではない。倫理の問題だったのである。
・取材を進めると、「穏やかでまじめ」と周囲の人々に評される執刀医の横顔が浮かんだ。その医師がなぜ暴走したのか。手術を重ねるごとに、患者の死亡例も重なっていくのをなぜ漫然とやり過ごしたのか。 執刀医は、まさに無謀なチャレンジを当然と考え、十分な技量も体制もないまま、「やるしかない」と思い込み、患者をいたずらに危険にさらしてきたのではないか。何が彼をそこに駆り立てたのか。
▽死亡事件は氷山の一角
・疑問をとき明かしていくと、旧弊のからまる大学病院の構造に突き当たる。第一外科と第二外科の覇権争い、新しい技術をなし崩しに導入する甘さ、医療保険システムの弱点――一つの大学病院で起きた特殊な出来事といえない負の作用が様々に働き、起こるべくして起こった問題といえる。氷山の一角であるかもしれない。
・第三者の調査委員会が発足したうえ、各症例の医学的検証には日本外科学会の50人を超える外科医が携わるという大がかりな調査が行われたこの事件は、医療法の改正にもつながる改革のきっかけになった。昨年7月に調査報告書が公表された後、病院側の遺族への説明や示談交渉、遺族と執刀医らの話し合いがいまも続く。
・ある外科医は言った。 「外科医なら、自分の技術がどれくらいあるか試したいというのは、誰でもある。どこまでチャレンジが許されるのか、そこに、それぞれの外科医の人間性が問われている」と。 外科診療の安全性を向上させるには、医療現場に意識変革が必要である。そのことが今、広く認識されつつある。
・事態が発覚してから、執刀医の暴走は、ネット上で「殺人鬼」「連続殺人」とまで書かれた。断片的な情報からは、とんでもない悪人が起こした特異な事件というイメージで見られているのかもしれない。しかし、全体像を知れば、そのような表現が、問題をむしろ矮小化するものだとわかるだろう。
・新聞には多くの関連記事を書いてきた。それでも、書ききれないことがたくさんあった。しかも、一日で古紙となり消えていく日刊紙では、一度に伝えられる内容は断片的で、それらをすべて丁寧にフォローしていなければ全体の理解は難しいが、そのような読者は、いたとしても少数派だろう。
・一連の出来事の本質を少しでも多くの人にお伝えするには、一冊にまとめるしかないのではないか。 それは、長年、新聞記者として文章を書くことを仕事にしながら、本を出したいなどとはほとんど考えたこともなく、ただ目の前のテーマを追い掛けて記事にすることに邁進し、それが少しは世の中の足しになっていると感じることにささやかなやりがいを見出してきた凡庸な私が、『大学病院の奈落』出版を考えるに至った動機である。
・この本を通じて、群馬大学病院の事件が残した教訓について理解し、よりよい医療とはどういうものか自分なりに考えてみてくださる方が一人でも増えるとしたら、それは望外の喜びである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52768

次に、元高校教諭の水谷修氏が9月13日付けZAKZAKに寄稿した「夜回り先生・水谷修 天に向かって、つばを吐く」シリーズの「1220万人がこころの病抱えるニッポン 危険な精神科薬何種類も投与されるキケンな現実」を紹介しよう(▽は小見出し)
・私は、ずっと日本の精神医療について危険性を感じています。いや、厳しく言えば、精神科や心療内科、神経科を一度解体し、再度治療の在り方を再考すべきだと考えています。 現在、日本の精神科医のほとんどは、投薬による治療に専念しています。医師に、「眠れない」と訴えれば睡眠薬を投与されますし、「いらいらする」と言えば向精神薬、「死にたい」とこぼせば抗うつ剤を投与されます。しかし、環境要因による後天的な精神疾患を、環境を変えることなく、精神科薬の投与によって、脳自体の活動に大きな影響を与え、環境適応できるようにすることは、本当の意味での治療といえるのでしょうか。
・たとえば、虫歯で歯が痛くて歯科医院に行ったとします。「歯が痛い」と相談したら、痛み止めを2週間分渡されたとします。2週間後には、痛み止めがなくなり、再度行ったら、また痛み止めを2週間分。こんな治療では、半年後には虫歯がさらにひどくなります。痛みの原因である虫歯の治療をすることが、本当の治療です。
・精神科医も、なぜ眠れないのか、なぜいらいらするのか、なぜ死にたいのか、その原因を探り、突き止め、解決することが、本来の治療なのではないでしょうか。原因が、家庭の問題にあるのなら、家族を呼び家庭環境を変える。学校にあるのなら、校長や教育委員会に連絡して、その解決に当たる。職場環境にあるのならば、上司に連絡し、職場環境を変える。ここまで動いている精神科医は、日本にいったい何人いるのでしょう。
・また、みなさんに聞きたい。何かの病気で医者にかかり、何ヶ月もその病気が治らなければ、その医者は「ヤブ医者」。使い物にならない医師となるでしょう。でも、精神科医の場合、何ヶ月も何年も、投薬の量を増やしながら、治療と称して、投薬を続け、患者の脳を破壊しています。これは、許されることなのでしょうか。私は、ある意味で殺人行為だとすら考えています。
・しかも日本では、たばこの中のニコチンやアルコールは、子どもたちのこころや身体、脳の健全な成長に大きな害を与える可能性があるという理由で、法律によって厳しく禁止しています。にもかかわらず、ニコチンやアルコールよりはるかに危険な精神科薬を、中学生や高校生に何年にもわたり投与すれば、どうなるでしょう。その子どもたちの脳や身体、こころに消すことのできない大きな害をもたらします。しかし、日本の多くの精神科医は、平気で何年にもわたり多量の投薬を続けています。
・すべての医師は、その治療計画及び、副作用、治療後の成果について、きちんと患者に伝える義務があり、その行為に責任を取らなくてはなりません。でも、これをきちんとやっている精神科医や、こころの病の治療に関わる医師はいるのでしょうか。
・今、我が国では120万人がうつ病認定を受け、1100万人が、こころの病の治療を受けています。彼らの受けている治療は、ほとんどが精神科薬の投与のみです。ここで使われている治療費は2兆6000億円に及びます。ほとんどが薬代です。この10年間で60倍に増えています。日本は、世界で数少ない精神科薬の複合投与をする国です。危険な精神科薬を何種類も患者に投与します。
・かぜを早く治したいからと行って、ブロンやセデス、ルルやバッファリン、葛根湯を一度に飲んだらどうなりますか。先進国の多くは、その危険性に気づき、単薬投与を基本としています。しかし、日本の多くの精神科医は、必ずと言っていいほど数種類の薬を投与します。こんな危険なことはないのに。
・みなさん、国民の10人に1人が、こころを病み、完全な労働ができない国に、明日はあるのでしょうか。私は、ないと考えています。それほど、現在の日本は危機的な状況です。 今、精神医療を受けている人たちへお願いです。必ず医師に、治療計画及び副作用をきちんと書類で書いてもらってください。そして、治療がきちんとできなかった場合は、完治しなかったり、それによって症状が悪化した場合は、医師を訴えることを伝えてください。ほとんどすべての医師が、治療を拒否するはずです。その医師は、“使い物にならない医師”です。それをきちんとしてくれた医師から治療を受けてください。
・私は、あまりにも精神医療によって壊され殺された子どもたちを見過ぎました。先日も1人失いました。  最後に、私は、医師による精神科薬の投与を、すべて否定しているわけではありません。眠れない状態が何日も続けば、その患者の身体は壊れてしまいます。死にたい状況を続けていれば、自らいのちを絶ってしまうことにもなります。二ヶ月から四ヶ月程度、精神科薬を投与し、その症状を緩和させ、そしてその間に、環境を変えさせていく。このような治療は否定していません。それこそが本来の治療の姿ではないでしょうか。  ▽水谷修(みずたに・おさむ) 1956年、神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部哲学科を卒業。83年に横浜市立高校の教諭となり、子供の非行や薬物汚染拡大防止のため「夜回り」と呼ばれる深夜パトロールを行う。2004年9月に辞職。現在は「夜回り」のほか、メールや電話による相談を受け、講演活動で全国を駆け回っている。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170913/soc1709130035-n1.html

第三に、9月13日付けNHKクローズアップ現代+「広がる“偽造薬”リスク あなたの薬は大丈夫?」を紹介しよう(▽は小見出し、──はナレーターの質問)。
・医師の処方に基づいて薬局で受け取った薬がニセ薬だったら?ボトル1本150万円もするC型肝炎治療薬、その中身がビタミン剤などにすり替えられていた!正規の流通ルートで偽造薬が見つかったことは、患者や医薬品業界の関係者に大きな衝撃を与えた。一体なぜ?さらに、世界の“偽造薬ネットワーク”が日本をターゲットにしていることもわかってきた。“偽造薬”リスクからどうやって身を守ればいいのか?最新の実態と対策を伝える。
・出演者 谷本剛さん (医薬品セキュリティ研究会 理事) 出雲博子医師 (順天堂大学医学部客員教授)  武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)
▽広がる偽造薬リスク あなたの薬は大丈夫?
・1本153万円。去年(2016年)、国内の医薬品売り上げ高1位の薬です。 これを医師に処方され、薬局で受け取ったところ…、なんとニセ薬だった。そんな、あってはならない事態が起きてしまいました。 誰も気づかぬまま、正規の流通ルートに混入。薬局から患者の手に渡ってしまったのです。
・偽造薬を患者に売った 薬局チェーン幹部 「世間をお騒がせいたしまして、大変申し訳ございませんでした。」  全国の患者の間で衝撃が走りました。  患者団体 事務局長 「自分の飲んだ薬が本当に本物だったのか。患者は何を信じて、どうすればいいのか。」
・今、日本で偽造薬のリスクが広がりを見せています。インターネットで手に入る勃起不全・ED治療薬や、ダイエット薬、育毛薬。その多くが偽造薬と判明。世界中の犯罪組織が新たな資金源として、偽造薬に注目している実態がありました。
・不正サイト監視会社 社長 「世界の偽造薬ネットワークが日本を狙っています。」  私たちは偽造薬からどう身を守ればいいのか。最新の実態と対策をお伝えします。
▽追跡!偽造薬流入ルート なぜ正規の薬局に?
・事件が発覚したのは、今年(2017年)1月。奈良の住宅街。C型肝炎の治療を受けていた70代の女性。医師の処方箋に基づき、薬局から出された薬「ハーボニー」を飲もうとしたところ…、前に飲んでいたものと色や形が違うことに気づきました。その時、女性が飲もうとしていたのは、黄色いだ円形。一方、いつも飲んでいたハーボニーは、オレンジ色でひし形。アルファベットや数字が刻印されていました。
・とはいえ、薬局の出す薬がニセモノのはずがない。悩んだ末、女性が薬を出した薬局に相談に行くと…、そこで初めて、薬剤師は薬がニセモノであることに気づきました。それは、ただのビタミン剤だったのです。ビタミン剤ならば健康被害はないのでは…、と思うのは危険。実は深刻な事態を引き起こします。
・C型肝炎の治療に長年取り組み、ハーボニー開発時の治験も担当した、八橋弘医師です。 C型肝炎は多くの場合、予防接種や輸血などによるウイルス感染で、り患。肝硬変などになる可能性が高い病気です。それを治す画期的な治療薬として、2年前に登場したのがハーボニーです。実際、服用すると、ウイルスが激減。3か月間毎日飲み続ければほぼ消滅することが実証されています。
・しかし、偽造薬など何らかの理由で服用を中断してしまうと…。 国立長崎医療センター 八橋弘医師 「かなりの確率で治療が失敗してしまう。それはもう一度やり直せばいいという単純なものではなくて、薬が効きにくくウイルスが変わりますので、複雑な耐性になってしまうと、もう治ることがなくなってしまう。」
・最悪の場合、がんになる可能性が出てくるのです。 患者 「病気が治るチャンスを奪われるのは、患者にとってたまらない、許せない。」 
・では今回の事件、偽造薬はどうやって流通ルートに紛れ込んだのでしょうか。最初に偽造薬が見つかった薬局のチェーンでくまなく探したところ、合計5本の偽造薬が発見されました。それらは全て、むき出しのボトル。特に問題ないように見えますが…、通常ハーボニーは説明書とともに箱に入れられ、密封された状態で出荷されています。 ボトルだけの状態はありえないと、製造・販売元の製薬会社は言います。
・ギリアド・サイエンシズ社 折原祐治社長 「もう本当に面食らうというか。これは弊社の工場では起こりえない、100%起こりえない。」 中身を調べると、ビタミン剤の他、別の肝炎の薬や漢方薬。なぜか本物が混じっているものまでありました。
・さらに流通ルートをさかのぼると、広い範囲に及ぶ経路が浮上してきました。中でも、多くの業者が関わっていたのが、東京。都は、ただちに調査に乗り出しました。その結果、都内の卸売業者5社が関わり、10本の偽造薬が見つかりました。奈良の分と合わせて、全部で15本。患者に渡ったものは他にはありませんでしたが、やはり全て、ボトルむきだしの状態でした。都の担当者は、関与した全ての卸売業者に聞き取り調査を行い、ある事実をつかみました。
・東京都 薬事監視担当課長 河野安昭さん「最終的には、ある卸売業者さんが『個人』から買い取っていたことがわかった。」 その個人とは、いったい誰なのか。 東京・神田。古くから薬の商いが盛んな街です。個人が薬を持ち込んだ卸売業者は、その一角の古い雑居ビルにありました。訪ねてみると、業者は既に廃業し連絡先もつかめませんでした。
・しかし事件の2か月後、その業者が公の場でこう証言していました。 偽造薬を買い取った卸業者 「(売りに来たのは)普通の人だと思う。若い人ではない、関西風。ほとんど男性ですけど、(持ち込む人が)毎回違いますから。C型肝炎という特殊な薬だったので、調剤薬局か病院の人だと思いました。」 
・そして、薬の取り引きの意外な実態についても…。 偽造薬を買い取った卸業者「(薬の)買い取りの条件に『秘密厳守』と書いて、やっていたものですから。そううたった方が(薬の)持ち込みの話が来るだろうと思ってやりましたので、私から(身元確認は)言いづらかったところもあります。」
・秘密厳守だから身元の確認は行わない。この業者は、薬を持ち込んだ個人の情報を全く持っていませんでした。 なぜ、秘密厳守なのか。 実は今回、事件に関わった卸売業者は、全て「現金問屋」と呼ばれています。医薬品の業界で長く続く業態です。
・現金問屋は、他の卸と同じように病院や薬局などに薬を売りますが、それだけでなく、逆に病院などから薬を買い取ることも行います。病院や薬局では、薬の使用期限が切れると、廃棄せざるを得ず、大きな損失が出ます。その期限切れの前に現金問屋が買い取るのです。本来、病院が薬を売ることは認められていませんが、個人の立場で、薬が現金問屋に持ち込まれる実態があると言います。こうした事情から、秘密厳守という商慣習が生まれ、現金問屋という存在を必要とする病院もあったと言います。
・元現金問屋 「調剤薬局、病院、クリニックを少しでも楽に運営したいという部分もあるのに、そこに我々(現金問屋)のような業種がいるわけじゃないですか。だから我々の商売というのは、絶対に必要だと思います。」
▽追跡!偽造薬流入ルート なぜ正規の薬局に?
・ゲスト 谷本剛さん(医薬品セキュリティ研究会 理事)
・鎌倉:秘密厳守という商慣習は、業者の長年の経験によって行われてきたといいます。業界団体は、偽造薬が入り込むことは、本来ありえないと話しています。では、なぜ多くの薬のプロが関わっていたにも関わらず、誰もニセモノと見抜けなかったんでしょうか。 そのポイントの1つは、こちらの薬の容器、ボトルにありました。今回、見つかった偽造薬のボトルは、正規のロット番号が入った本物のボトルだったんです。 犯人は、使用済みのボトルを何らかの方法で手に入れ、中に別のものを入れて、改めてアルミで封印したと見られています。詳しい経路は判明していませんが、患者が飲み終わった後の容器や、病院が廃棄した薬の容器が、ネットオークションなどを通じて売買されていた可能性もあるといいます。
── 世界中の偽造薬を実際に分析され、流通にも詳しい谷本剛さん。 病院で処方されて、薬局で出された薬がニセモノだった。これは衝撃だと思うが、谷本さんはどう受け止めた?
・谷本さん:私は、こういう研究を長年やっている。日本でもとうとう出てきたかというのが、第一感でした。日本の薬は大体安全だという、いわゆる安全神話というものがあったんですが、それが崩壊したということで、国民の、あるいは患者さん方の、日本の医療に対する信頼性が失われるんじゃないか、それが一番懸念されたところです。
── 今回の事件の背景には、現金問屋が薬の出どころを確認せずに売買する場合があるという、いわゆる秘密厳守というような商慣習がある。なぜ、このようなことが行われている?
・谷本さん:医薬品の販売に関しては、いわゆる医薬品販売業という許可が必要なわけなんです。薬局とか卸は販売することはできるんですが、病院には、医療機関として販売はできないということになっています。ですが病院の方は、不良在庫といいますが、あんまり在庫を抱えたくないと。有効期限も残り少なくなると、早く処分したいというところがあって、それを病院としては売れないんだけれども、個人の名前で現金問屋の方に持っていかせるということになれば、やはり、これは法的にはちょっと違法な行為なので、売る方も、買う方も、お互いにあまり深く追及しないということで、いわゆる秘密厳守という習慣ができたんじゃないかというふうに思います。 (同じようなケースは薬局でも起こる?) 同じことが起こりうると思います。
── 犯人の人物像や目的は?
・谷本さん:犯人の意図というのはちょっとつかみきれないんですけども、海外の偽造薬の実態と比較してみると、今回のこの偽造医薬品、これは非常に幼稚というか、稚拙な作り方なんです。薬自身、高価な薬だし、偽造薬として見つかったのが、ボトルとしても、わずか15本ぐらい、非常に少ないわけなんです。ですから、あまり多くの組織が、組織だった形で、こういう事件を引き起こしたとは考えられない。むしろ小さなグループが、当面の金もうけ、あるいは小遣い稼ぎというような感覚で、この事件を引き起こしたんじゃないかなというふうに思っております。
・鎌倉:では、偽造薬の被害、どう防げばいいんでしょうか。
・まず、製薬会社は事件の後、すぐに包装を変え、ボトルではなく、1錠ずつ外から見える形にしました。そして、厚生労働省は6月、再発防止の中間取りまとめを出しました。現金問屋などの卸売業者は、取り引き先の連絡先など、身元確認を徹底すること。それに違反した場合は、販売許可の取り消しなどの行政処分を行うとして、今月(9月)中に省令の改正を予定しています。秘密厳守という、長年の商慣習を断ち切るのが狙いです。現金問屋の組合でも、秘密厳守の禁止を加盟する会社に通知しました。
── 実は日本では、この処方薬以外でも、偽造薬がまん延している実態が分かりました。背景には、世界で暗躍する犯罪組織の存在があるといいます。
▽まん延するニセED薬 犯罪組織が暗躍!?
・薄毛に悩む人が使う育毛・養毛薬。そして、ダイエット薬や抗うつ薬。インターネットによる個人輸入で、手軽に海外から入手できる薬の中に、偽造薬がまん延しています。特に多いのが、男性の勃起不全ED治療薬です。
・ファイザー社 セキュリティ担当部長 池田哲也さん「こちらは全く存在しない色のバイアグラ。(有効成分が)100mg以上は存在しませんので、300mgというのは明らかに偽造品。」
・ED治療薬の大手製薬会社は、日々個人輸入サイトをチェックし、実際に商品を購入。成分を調べています。
・ファイザー社 セキュリティ担当部長 池田哲也さん「分析すると(成分の)分量については、非常にバラツキがあります。」
・消費者が本物だとだまされないように警鐘を鳴らしています。去年暮れ、大手4社が合同で世界各地から日本に個人輸入されているED治療薬の実態調査を行いました。すると、実に4割が偽造薬という結果が出ました。 これまでも、偽造のED治療薬を扱う不正サイトは問題視されてきましたが、後を絶ちません。それどころか…。
・ファイザー社 セキュリティ担当部長 池田哲也さん「(不正サイトは)昔よりも、はるかに頻繁にURL(アドレス)を変えている。サイトを見つけて、試買(しばい)して、その間に変わってしまっている。偽造品を売る業者も、より知恵をつけている。」
・この調査を監修したED治療の専門医、佐々木春明医師です。 偽造薬を製造している海外の現場の実態に危機感を強めています。
・昭和大学 藤が丘病院 佐々木春明医師 「(ここで作られた薬には)ネズミを殺す薬が含まれていたり、おそらく、ED治療薬の前に、別の薬を偽造していたと思われる、その成分が残っていて、ED治療薬の中に含まれている。」 特に多いのは、血糖値を下げる成分が入った偽造薬で、それを服用して意識障害を引き起こすケースもあると言います。そこには、EDに悩む人ならではの切実な問題がありました。
・昭和大学 藤が丘病院 佐々木春明医師 「健康被害が起きたときに、“公にしたうない”という心理が働きます。恥ずかしい、人に知られたくない。患者さんが何が入っているかわからない成分を含んだ物を口にするということは、場合によっては死に至る。」
・偽造薬がまん延する背景には、世界的に取り引きが活発化している実態があります。市場規模は、今や750億ドル。およそ8兆円まで拡大しています。 この7月、韓国で…。 韓国 MBC 「中国から搬入した偽造ED薬120億ウォン相当を流通させようとした組織が摘発されました。」 一方、ポーランドでは、ED治療薬を偽造する世界最大の工場を摘発。押収物の中には、中国製とみられる原料がありました。こうした中、日本では、厚生労働省が海外から流入する偽造薬を未然に阻止する取り組みを強化。その業務を委託した会社がアメリカ・オレゴン州にあります。医薬品の不正サイトを監視・削除する世界有数の調査会社です。  ICPO国際刑事警察機構と協力し、世界中の不正サイトを監視。日本への偽造薬の流入に目を光らせています。調査の結果、国際的な犯罪組織が資金源として偽造薬に注目している実態が浮かび上がってきたと言います。
・レジットスクリプト社 ジョン・ホートン社長 「私たちが発見した偽造薬ネットワークの首謀者が最近逮捕されました。偽造薬の売り上げで得た資金を『殺人』や『麻薬の転売』に使っていました。さらに兵器の技術情報を中東へ流出させる活動にも使っていました。まさにこれは世界的な問題なのです。」
▽追跡!偽造薬 世界から狙われる日本
・ゲスト 出雲博子医師(順天堂大学医学部客員教授)
── 偽造ED治療薬で健康被害を起こした患者を、実際に診察された出雲博子先生。その患者は、どんな状況で運ばれてきて、どう対応された?
・出雲医師:この患者さんは、自宅で朝仕事をしていたところ、意識がふらふらしてきたもので、救急室に来られました。意識障害の原因として、血糖が非常に低いことが分かりましたので、ぶどう糖を注射いたしましたけれども、なかなか回復しませんでしたので、集中治療室に入院させて、高濃度のぶどう糖の点滴を続けました。20時間ぐらいして、やっと患者さんは回復してきたということです。意識の戻った患者さんに尋ねると、糖尿病の治療薬は使っていないということでしたので、その他の低血糖を補佐するようなものをいろいろ調べましたけれども、何も見つかりませんでした。 (なぜ、偽造薬を飲んだということが分かった?) それで、米国のある医学誌に10年ほど前に、偽造の勃起治療薬を飲んだ患者さん4人が低血糖を起こして死に至ったという報告が出ておりましたので、患者さんに再度、尋ねましたら、実は入院の前日に、そういう薬を服用したということが分かったということです。
── ED治療薬をネットで個人輸入するリスクは?
・出雲医師:患者さんのお飲みになってた薬がポケットに残っていたもので、製薬会社に分析してもらったところ、糖尿病の薬が通常量の10倍ぐらい含まれていたということです。
・ 個人輸入することの以前に、そもそもED薬というのは、その作用機序からして、心臓に送る血流を低下させるということがございますので、狭心症を持った患者さんが服用して、心筋梗塞を起こして死に至った例があります。ですので、医師の診察を受けた上で、処方してもらうということが重要です。 (ましてや出所不明の薬を飲むのは危険だと。) 今回の偽造薬には、血糖を下げるものが混入されていたわけですけれども、何が含まれているか分からないわけですし、それを突き止めるのは難しいし、治療が遅れると死に至ることもあるということですから。
── 犯罪組織が資金源として偽造薬に注目しているのは、なぜ?
・谷本さん:この偽造薬もやはり薬、医薬品の範ちゅうのものです。ですから、麻薬とか覚醒剤、あるいは非常に厳しい規制がかかっている。それに比べると、非常に医薬品としての取り扱いになりますから、非常に規制が甘いというか、緩いということになります。したがって今、高価な薬も出てきております。ですから、うまくこれを普通の流通に乗せれば、十分な資金源になるんじゃないかということで、そういう世界で見ている。外国では、実際にもうそういう形で、資金源、犯罪組織の資金源になっています。
── 対策は?
・谷本さん:ですから、そういうものが流通しないようにするために、やはり日本ではまだ確立していないんですが、いわゆる「トレーサビリティ」、それが早く確立するということが、まず大事ではないかと。 (薬の流通を追跡していく仕組みが大切だと。) それができても、完全に抑制はできませんけれども、抑止力にはなると思います。
── 薬に対する信頼が揺らぐという影響は?
・出雲医師:日本の製薬会社は基本的に信頼していいと思います。ですので、処方がされている薬が治療に必要な場合は、きちっと飲む、かえってあまりにも何でも怖いというではないということを知っていただきたいと思います。
── 皆さん、少しでも変だと思ったら、医師や薬剤師に相談してください。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4032/index.html

第一の記事は、肝心の部分は説明せずに、本に誘導するスタイルなので、第三者委員会報告を具体的に見てみよう。2016年7月30日付け日経新聞では、『2009年度に死亡事案が8例あった時点で、適切な報告や検証などの対応が取られていれば「その後の続発を防ぐことができた可能性がある」などと指摘。また長年見過ごされてきた要因について、「患者中心の医療とは大きくかけ離れた旧弊が存在し、病院全体のガバナンスに不備」。一方、日本外科学会は第三者委の委託で男性医師の執刀を含む同病院の外科手術を検証。死亡50例のうち、手術することが妥当だったのはほぼ半数の26例で、4例は手術すること自体に問題があった。残る20例は患者の容体などから妥当性に疑問があると判断。50例のうち37例は、死亡後に症例検討会を開いた記録がなかった。報告書によると、同病院では09年度に肝臓の開腹手術を受けた患者5人、膵臓(すいぞう)などの手術で3人が死亡。いずれも男性医師が執刀していたが、手術を一時休止しただけで、特別な改善策を取らないまま再開。また当時の第1外科と男性医師が所属していた第2外科が、潜在的な競争意識で独立した診療体制をとり、死亡事例の情報が共有されていなかった』、とのことである。 『50例のうち37例は、死亡後に症例検討会を開いた記録がなかった』、というのでは、医師個人の問題もさることながら、病院全体のガバナンスにより大きな問題があったようだ。
第二の記事で、 『環境要因による後天的な精神疾患を、環境を変えることなく、精神科薬の投与によって、脳自体の活動に大きな影響を与え、環境適応できるようにすることは、本当の意味での治療といえるのでしょうか』、 『今、我が国では120万人がうつ病認定を受け、1100万人が、こころの病の治療を受けています。彼らの受けている治療は、ほとんどが精神科薬の投与のみです。ここで使われている治療費は2兆6000億円に及びます。ほとんどが薬代です。この10年間で60倍に増えています。日本は、世界で数少ない精神科薬の複合投与をする国です。危険な精神科薬を何種類も患者に投与します』、などの指摘は深刻だ。日本の精神科の学会の見解を聞いてみたいところだ。
第三の記事で、 『医薬品の販売に関しては、いわゆる医薬品販売業という許可が必要なわけなんです。薬局とか卸は販売することはできるんですが、病院には、医療機関として販売はできないということになっています』、という法律の基本がおかしいようだ。  『病院の方は、不良在庫といいますが、あんまり在庫を抱えたくないと。有効期限も残り少なくなると、早く処分したいというところがあって、それを病院としては売れないんだけれども、個人の名前で現金問屋の方に持っていかせる』、ということであれば、病院や薬局による買戻しを法的に認めるようにすれば済む筈だ。無論、その際には、買い戻した中古医薬品の品質保証をどうするのかといった付随的問題もあるが、現在でも事実上やっているので、同じだろう。いずれにしろ、流通ルートの闇を厚労省も認識しながら、長年、放置してきた責任は重い。 『秘密厳守の禁止』、だけではなく、抜本的見直しが必要なのではないか。
タグ:医療問題 水谷修 ZAKZAK 現金問屋 現代ビジネス 調査報告書 群馬大学医学部附属病院 ハーボニー NHKクローズアップ現代+ (その8)(群大病院「8人死亡」事件 執刀医の暴走はこうして起きた、危険な精神科薬何種類も投与されるキケンな現実、広がる“偽造薬”リスク) 高梨 ゆき子 群大病院「8人死亡」事件、執刀医の暴走はこうして起きた 問題は、組織にあった 同じ医師が執刀した肝臓の腹腔鏡手術を受け、8人の患者が死亡 倫理審査もせず、患者に事実を告げることもなく、手術は行われた 執刀医は、まさに無謀なチャレンジを当然と考え、十分な技量も体制もないまま、「やるしかない」と思い込み、患者をいたずらに危険にさらしてきたのではないか 第一外科と第二外科の覇権争い 新しい技術をなし崩しに導入する甘さ 第三者の調査委員会 どこまでチャレンジが許されるのか、そこに、それぞれの外科医の人間性が問われている 大学病院の奈落 1220万人がこころの病抱えるニッポン 危険な精神科薬何種類も投与されるキケンな現実 精神科や心療内科、神経科を一度解体し、再度治療の在り方を再考すべきだと考えています 環境要因による後天的な精神疾患を、環境を変えることなく、精神科薬の投与によって、脳自体の活動に大きな影響を与え、環境適応できるようにすることは、本当の意味での治療といえるのでしょうか ニコチンやアルコールよりはるかに危険な精神科薬を、中学生や高校生に何年にもわたり投与すれば、どうなるでしょう。その子どもたちの脳や身体、こころに消すことのできない大きな害をもたらします 我が国では120万人がうつ病認定を受け、1100万人が、こころの病の治療を受けています 彼らの受けている治療は、ほとんどが精神科薬の投与のみです。ここで使われている治療費は2兆6000億円に及びます。ほとんどが薬代です この10年間で60倍に増えています 日本は、世界で数少ない精神科薬の複合投与をする国です。危険な精神科薬を何種類も患者に投与します 必ず医師に、治療計画及び副作用をきちんと書類で書いてもらってください 治療がきちんとできなかった場合は、完治しなかったり、それによって症状が悪化した場合は、医師を訴えることを伝えてください ほとんどすべての医師が、治療を拒否するはずです その医師は、“使い物にならない医師”です。それをきちんとしてくれた医師から治療を受けてください 広がる“偽造薬”リスク あなたの薬は大丈夫? ボトル1本150万円 C型肝炎治療薬、その中身がビタミン剤などにすり替えられていた 偽造薬など何らかの理由で服用を中断してしまうと かなりの確率で治療が失敗してしまう。それはもう一度やり直せばいいという単純なものではなくて、薬が効きにくくウイルスが変わりますので、複雑な耐性になってしまうと、もう治ることがなくなってしまう 病気が治るチャンスを奪われるのは、患者にとってたまらない、許せない 都は、ただちに調査に乗り出しました 都内の卸売業者5社が関わり、10本の偽造薬が見つかりました。奈良の分と合わせて、全部で15本 ある卸売業者さんが『個人』から買い取っていたことがわかった 買い取りの条件に『秘密厳守』と書いて、やっていたものですから。そううたった方が(薬の)持ち込みの話が来るだろうと思ってやりましたので、私から(身元確認は)言いづらかったところもあります 薬を持ち込んだ個人の情報を全く持っていませんでした 医薬品の業界で長く続く業態 逆に病院などから薬を買い取ることも行います。病院や薬局では、薬の使用期限が切れると、廃棄せざるを得ず、大きな損失が出ます。その期限切れの前に現金問屋が買い取るのです 本来、病院が薬を売ることは認められていませんが、個人の立場で、薬が現金問屋に持ち込まれる実態があると言います 日本の薬は大体安全だという、いわゆる安全神話というものがあったんですが それが崩壊 医薬品の販売に関しては、いわゆる医薬品販売業という許可が必要なわけなんです。薬局とか卸は販売することはできるんですが、病院には、医療機関として販売はできないということになっています ですが病院の方は、不良在庫といいますが、あんまり在庫を抱えたくないと。有効期限も残り少なくなると、早く処分したいというところがあって、それを病院としては売れないんだけれども、個人の名前で現金問屋の方に持っていかせるということになれば、やはり、これは法的にはちょっと違法な行為なので、売る方も、買う方も、お互いにあまり深く追及しないということで、いわゆる秘密厳守という習慣ができたんじゃないかというふうに思います 現金問屋などの卸売業者は、取り引き先の連絡先など、身元確認を徹底すること。それに違反した場合は、販売許可の取り消しなどの行政処分を行うとし 秘密厳守の禁止 まん延するニセED薬 犯罪組織が暗躍
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医療問題(その7)(成功率低すぎ!日本の不妊治療の残念な実態、日本人は「不妊治療のリスク」を知らなすぎる、事故相次ぐ「無痛分娩」は何が問題か) [社会]

医療問題については、8月20日に取上げたが、今日は、(その7)(成功率低すぎ!日本の不妊治療の残念な実態、日本人は「不妊治療のリスク」を知らなすぎる、事故相次ぐ「無痛分娩」は何が問題か) である。

先ずは、ジャーナリスト・ノンフィクション作家の草薙 厚子氏が4月26日付け東洋経済オンラインに寄稿した「成功率低すぎ!日本の不妊治療の残念な実態 60カ国で実施件数最高なのに、出産率は最低」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨今「不妊治療の末にようやく子どもを授かった!」という女性タレントのニュースが後を絶たない。晩婚・晩産化などを背景に、不妊に悩むカップルが増えるなか、不妊治療が急速に広まっている。周囲でも珍しいことではなくなり、近所の不妊クリニックで治療、とカジュアルに考える人も増えているかもしれない。
▽生殖補助医療の実施件数は多いのに…
・いつ終わるかわからない不妊治療は、精神的にも肉体的にも金銭的にも負担が大きい。年齢やキャリア、親からのプレッシャーなどが頭をよぎり、治療に突き進む人もいるだろう。 しかし、意外と知られていない事実がある。日本では生殖補助医療の実施件数が多いにもかかわらず、出産率が低いのだ。 世界各国の生殖補助医療の実施状況をモニタリングしている組織「国際生殖補助医療監視委員会」が実施した調査では、日本の生殖補助医療の実施件数は60カ国中、第1位だったにもかかわらず、出産率は最下位の6.2%というショッキングな結果が出ている。
・つまり日本は国際的に見ると、不妊治療が世界でいちばん行われているにもかかわらず「いちばん出産できない国」ということになる。 いったい、なぜそうなってしまうのか。不妊治療に踏み切る前に、ぜひ知っておいてほしいことがいくつかある。
▽あまり触れられない「顕微授精」のリスク
・ひとつは「顕微授精」のリスクだ。 不妊治療に用いられる生殖補助医療技術には、大きく分けて「体外受精」と「顕微授精」がある。 体外受精とは「体外に取り出した卵子に精子をふりかけて、精子の自力で卵子に侵入して受精させるための環境を整え、培養液内で受精させてから子宮に戻す技術」のことをいう。
・一方、顕微授精とは「体外に取り出した卵子に顕微鏡をのぞいて極細のガラス針で1匹の精子を人間の手で人為的に穿刺注入して、人工的に授精させてから子宮に戻す技術」である。ここに自然に受精させる体外受精と、人工的な手を必要とする顕微授精には根本的な違いがある。
・現在、不妊治療の8割を占めるのは、顕微鏡下で卵子にガラス針を刺して、精子を注入する「顕微授精」と呼ばれているものだ。針を刺すことによって卵子に傷がつくのだが、あくまでも問題はなく、安全だといわれている。しかし、卵子に針で穴を開けるのだ。本当に大丈夫なのかという単純な疑問が頭をよぎる。そこで不妊治療についての参考文献を調べてみると、ある海外のニュースにたどり着いた。
・「顕微授精に代表される不妊治療だが、その不妊治療による妊娠で生まれた子は、自然妊娠で生まれた子に比べ、自閉症スペクトラムになるリスクが2倍になる」 このショッキングな記事は、米疾病対策センター(Centers for disease Control and Prevention:CDC)に所管・公表された大規模疫学調査による記事であった。
・この調査結果は、1997年から2007年にかけて、カリフォルニア州で出生した590万例の小児に関するデータを基に分析した数字だ。筆者が知るかぎり、この報告に関しては日本ではまったく報道されていない。筆者が調査・取材した日本の不妊クリニックの多くのケースでは、不妊治療に関するリスクの説明はほとんどなされておらず、「顕微授精は安全・安心である」と患者に伝えていたのだ。
・臨床精子学研究の第一人者でもある黒田優佳子医師(黒田インターナショナル メディカル リプロダクション)は、「欧米では顕微授精によって生まれた子どもには、自然に妊娠して誕生した子どもに比べて、先天性異常の発症率が高い傾向があることが多数報告されている」と言う。
▽「精子の質」を判断できないクリニックがある
・詳しくは『本当は怖い不妊治療』にも書いたが、日本の場合、不妊クリニックによっても異なるが、体外受精や顕微授精の生殖補助医療の費用は、1回につき約20万〜100万円かかる。国際的に見れば、もっと高額の国もあるし、逆に国側が全額を支給する場合もあるが、費用の面から見ると、誰でも受けられるものではない。しかし、筆者が取材した20~50代の夫婦のなかには、9つの専門クリニックを回り、トータルで5000万円もかけて治療をしたが、それでも子どもを授かることができなかったというケースもあった。
・ある夫婦が語る。 「前に通っていた不妊クリニックで『精子は大丈夫です。運動率、数ともに完璧です。受精しない原因としては、加齢に伴う卵子と子宮の劣化、いわゆる“老化卵子”だから』と指摘され、顕微授精をしないと受精しませんよと言われました」(40代の夫婦)
・ちなみに「老化卵子」とは、加齢により卵子の質と量が低下することである。具体的にいえば、年齢とともに卵巣組織単位重量あたりの「原始卵包(将来成熟した卵子に成長する可能性を備えた未成熟な卵子をひとつ入れている袋)」の数が急速に減ることだ。筆者の取材では、不妊クリニックに行くと、女性側に問題があり、「卵子の老化」を原因にされることが非常に多い。
・しかし、黒田医師は「不妊の40〜50%は精子の“質”で決まります」と言う。先の40代の夫婦に関しても黒田医師が診断してみると、夫の精子は「先天性先体欠損の精子」であり、精子に問題があったことが判明した。全体の90%以上に「精子頭部空胞」も認められ、異常な頭部構造を持っている精子だったのだ。言葉にすると少々専門的で難しいが、「先体欠損」とは卵子に入り込もうとする精子の先体が欠損しているということだ。 つまり、前に通院していた不妊クリニックで「精子の運動率と数と共に完璧」と言われたとおり、見た目の精子は数や運動率はいいのだが、不妊に40~50%も影響を与える精子の質までは診断できていなかったことになる。
・この事例のように、見た目では精子は正常であり、卵子のほうに問題があると言われるケースは多い。そして不妊の真の原因が解明されないまま、何度も顕微授精が繰り返され、結果、妊娠に至らない。これが、日本の不妊治療による出産率が低くなる1つの要因ではないだろうか。
・不妊治療はブーム的に急速に広まっており、2008年時点の日本産科婦人科学会のデータによると、不妊治療患者は約120万組いるとされているが、現在ではさらに増加し、驚くべき数字になっていると思われる。 心身にも金銭的にも負担の大きい不妊治療。「みんなやっているから」「一刻でも早く」と突き進む前に、もっと現実を調べるのがよいのではないだろうか。
http://toyokeizai.net/articles/-/168431

次に、同じ草薙氏が9月11日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本人は「不妊治療のリスク」を知らなすぎる 不妊治療の成功率は「世界で最下位」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・日本は不妊治療を受けている患者数が世界第1位にもかかわらず、その治療による出産率が世界最下位――。そう知っている人はいったいどれだけいるだろうか。
・日本における不妊治療、生殖補助医療は始まってからまだ歴史が浅く、進んでいるとはいえない面がある。記事「成功率低すぎ!日本の不妊治療の残念な実態」と「日本の不妊治療の現場に関する『2つの不安』」でも取り上げてきたが、サイエンスの視点からいえば、生殖補助医療と先天異常には「因果関係がない、安全である」と言い切ることは、極めて困難である。逆に「因果関係が否定できないから、安全とは言い切れない」ということを証明するほうが簡単なことなのである。
・不妊治療に関するシリーズ最終回の今回。実際にいくつかのクリニックで不妊治療を受けた人の声を挙げながら、日本の生殖補助医療が抱える問題点について考えてみたい。
▽不安はつねに付きまとっていた
・「自分は20代でまだ若いし、当然、健常児が生まれると思っていました。不妊治療を受けたクリニックのドクターたちも『顕微授精は安全です。元気な子がたくさん生まれていますよ』と、リスクはまったくないとおっしゃっていました。でも、夫の精子が少なくて動きも悪いと言われていたので、どこかで『そんなに悪い精子を卵子に入れて、無理やり受精させても大丈夫なのだろうか?』という不安はつねに付きまとっていたんです」 そう語るのは30代半ばのAさん。その不安が現実になったのが、6年前のことだった。出産時、Aさんはつらい現実に直面する。生まれた子どもは誕生してすぐに、心臓の手術をしなくてはならなかったのだ。
・手術は無事成功し、健康になったと安心していたAさんにその後、医師からさらなる衝撃の説明があった。  「精神遅延を指摘されたのです。月日が流れ、子どもが成長していく過程で、ただ言葉の発育が遅いだけかと思っていたのですが、精神遅延が指摘され、発達障害とも診断されて、目の前が真っ暗になりました」  Aさんは、現在も子どもから目を離すことができないという。
・もし、不妊治療によって染色体異常児が生まれたとしても、医療過誤などのケースとは違い、直接的な関連性を実証するのは非常に難しい。筆者はある医師から、「因果関係が実証できないのだから、問題が起きても逃げればいい」と発言している医師もいると聞いて驚愕したこともある。 もちろん強い責任感と倫理観でもって生殖医療に取り組む医師や関係者はたくさんいるだろう。しかし筆者が取材する中では、全員がそうとは思えないような話を聞くことも少なくない。
・不妊治療のプロセスまで患者は見ることができないため、医療機関を信用するしかない。 採卵や採精をした段階から患者は卵子や精子の状態を確認できなくなる。実際、2009年香川県で他人の受精胚で妊娠するという取違えが起こり、中絶を余儀なくされるなど、あってはいけない医療ミスが起きている。生殖補助医療に関する法律が整備されていない日本では、何か起きた場合に責任の所在は明確にはなりにくく、 冒頭でも書いたように生殖補助医療と先天異常の因果関係も立証は容易ない。したがって、最終的には不妊治療を選択した当事者である夫婦や、それによって生まれた子どもに、その後の責任がのしかかってくる。
▽卵子の質だけでなく、精子側の質も
・次に紹介するのは40代のBさんのケース。 「不妊治療を始めたのは30代半ばでした。通っていた不妊治療クリニックでは『精子は完璧です』と説明される一方で、低受精率の原因として、『加齢に伴う卵子と子宮の劣化』を指摘されました。『老化卵子だから顕微授精をしないと受精しません』と言われ、顕微授精を10回、繰り返し行いました。まったく受精しないので、治療をすることに疲れました」  顕微授精を反復して行う過程で、まったく受精しないという結果に心身ともに疲れ、しだいに通院している不妊クリニックへの不信感が生まれたという。
・いったい彼女に何が起きていて、どうすべきだったのか。長年にわたり臨床精子学(ヒト精子の研究・臨床)をライフワークとしている産婦人科の黒田優佳子医師に訊いてみた。 「一般的な不妊治療クリニックで行われる精子の検査(具体的には精子数と運動率等の顕微鏡所見)で、精子の数、運動率とも良好であり、外見的には健康な精子に見えても、精子頭部の内部構造を解析してみると、精子DNAに損傷があったり、卵子との接着に関与する先体が欠損していたり、空胞が認められるなど、異常な頭部構造を持っている機能異常精子であることもあるのです。
・この患者ご夫婦の場合は、男性側の精子が『先天性先体欠損』であることが主たる不妊原因であったと考えられます。言い換えれば、極めて低い受精率の原因は、先天的に先体が欠損していることが関与している可能性もあるのです」(黒田医師)
・昨今、不妊というと、その原因は女性側、特に「卵子の質の低下(俗にいう、卵子の老化)」だと一方的に言われ、女性のみが心理的プレッシャーを感じるのが常だった。しかし、最近の研究では男性側の「精子の質の低下」も注目されるようになった。わかりやすく言えば、精子の機能異常率についても、生殖補助医療において重要であり、精子検査の必須項目として考えなくてはいけないことがわかってきた。
・そのため、夫は妻を安心させるためにも、卵子の質だけでなく、精子側の質も一緒に診断してもらうという必要があるのではないだろうか。 「その具体的な方策として、精子側技術(高品質な精子を選別する技術と、高品質精子であることを評価する技術)の高度化、ならびに授精技術の高度化により、できるかぎり顕微授精を回避し、一方、顕微授精をせざるをえない症例では、精子品質管理を徹底して、安全性の向上を図ることを提唱しています。医療行為には必ずリスクが伴うのですから、限りなく自然妊娠に近づけるように技術を開発して、人為的な医療技術の介入(医療行為)を極力減らす技術に徹するべきなのです」(黒田医師)
・前回記事でも少し取り上げたが、顕微授精実施には前提とすべきことがある。1つは、精子数や運動率よりも、得られた精子の質が良好であること、つまり精子の機能が正常であって、穿刺注入できるレベルの高品質な精子であることを確認できているということだ。もう1つは、生殖補助医療は、人工的な技術を加えるほど異常が起きやすく、なるべく自然に近い方法をとったほうが安全だということだ。
・一般的な不妊クリニックでは「問題があるわけではないから、顕微授精を実施しても構わない」という考えであるのに対し、最近では「生まれてくる子どもの安全が最優先。安全性が確認できたわけではないから、なるべく顕微授精を回避しよう」という新たな潮流も出てきている。
・「『精子の質の選別と評価』の技術開発に関しては、少し難しい表現になりますが、『性交で自然に膣内に射精された精液中の精子が、卵管内の卵子まで到達するまでの間に、精子の質の選別が自然に行われていることを再現すること』が重要です。そこでは精子の優劣を人為的につけているわけではありません。言い換えれば医療行為には必ずリスクが伴うため、限りなく自然妊娠に近づけるように技術開発し、人為的な医療行為を極力減らす技術に徹することによって、生殖補助医療、特に男性不妊治療の安全性の向上に貢献することを目指すことが大事なのです」(黒田医師)
・生殖補助医療の技術的な安全策として、卵管型の微小環境での体外受精である「人工卵管法」が開発された。それによって高品質な精子が選別できれば少ない精子数でも自然に受精させることが可能になり、顕微授精を回避できるようになった。顕微授精をしなくても受精させることができる安全な不妊治療を確立することが可能になったのだ。この方法によって、顕微授精を何回も試みても妊娠に成功しなかった夫婦が、受精、妊娠、出産に至っている。
▽生殖補助医療は「夢の治療」なのか
・不妊治療の真の目的は、生まれてくる赤ちゃんが健やかに育ち、元気な一生を送ること。不妊クリニックをいくつも回って、生殖医療技術を駆使した治療を受け、貯金を使い果たしたとしても、確実に成功するわけではない。赤ちゃんはあくまでも授かりものだ。それを踏まえたうえで、患者は納得がいく治療法を選択し、また、医療従事者は、患者に生殖補助医療のリスクについて説明する義務があるのではないだろうか。
・「夢の治療」と言われている生殖補助医療の取材を始めてみると、不妊治療はまだ発展途上にあるということがわかってきた。繰り返すが、日本は不妊治療を受けている患者数が世界第1位にもかかわらず、その治療による出産率が世界最低なのである。
・自由診療のため、ほかの国と比べても費用負担は高額で、関連する法律もなく、法制化の議論が止まったままでいまだに多くのことが議論されていない。その結果、医者と患者との間に齟齬が生じているのが現状で、さまざまな問題が積み残されたままだ。 医療の進化は日進月歩だと言われている。世界的にも体外受精は開始から40年弱、顕微授精は25年しか経っていない。社会や文化、価値観、宗教、信条などを十分に考慮したうえで議論を重ね、生まれくる子どもの幸せを考えた法律を、一日も早く制定してほしいと願う。
http://toyokeizai.net/articles/-/187886

第三に、9月12日付け日刊ゲンダイ「事故相次ぐ「無痛分娩」は何が問題か 麻酔専門家に聞いた」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・麻酔で出産時の痛みを和らげる「無痛分娩」が改めて注目を集めている。「東京マザーズクリニック」(世田谷区)の柏木邦友医師(麻酔科指導医・標榜医)に話を聞いた。 今年に入り無痛分娩の事故が相次いで報告されたことから、日本産婦人科医会は調査を開始。8月末には厚労省の研究班が初会合を開き、無痛分娩が増加傾向にあり、2016年度は全体の6.1%だったことなどを報告。リスク評価や安全管理体制の構築に関する提言をまとめるとした。
・一連の流れから「無痛分娩=危険」と思うかもしれない。しかし、無痛分娩で死亡率が高まるとの調査結果はなく、無痛分娩を積極的に勧めていない医師も、無痛分娩自体は否定していない。 「無痛分娩は医療行為なので、ほかの医療行為と同様に、合併症や副作用の可能性はゼロではありません。しかし、ゼロに近づけるための対処策はいくつもあり、当クリニックでも無痛分娩の事故はゼロ。しかし、その対処策が不十分な医療機関が多く、それが問題なのです」
・無痛分娩は一般的に「硬膜外麻酔」で行われる。刺した針を通して管を硬膜外腔に入れ、管だけを残して針を抜き、管から麻酔薬を注入する方法だ。この時、管が間違った場所に刺さると死に至ることがある。  「そうならないように、少量の麻酔薬でテストを行い、管の位置を確認します。間違った場所であれば足のしびれや動かないなどの症状が出るので、異変を見逃さない。不適切な場所に刺さっている恐れがあれば、すぐに管を抜きます」
・15年に無痛分娩で出産し、その後意識を失い今年5月に亡くなった女性は、麻酔直後、足に力が入らなくなり異変を訴えていた。しかし医師は外来診察でその場にいなかったため、一気に状態が悪化。医師が異変に速やかに対応していたら、全く違う展開になっていたかもしれない。
▽無痛分娩にガイドラインはなし
・硬膜外麻酔は全身麻酔と違い、麻酔科医以外でも行える。だから麻酔科医を置いていない産科は珍しくないが、急変に対応するには麻酔科医がいることが理想だ。 「そうでないのなら、医師、看護師、助産師らが救急対応の資格を持ち、適切な処置を行えるようにすべき。ところが実際は、人員不足や、無痛分娩に対する認識不足などのさまざまな理由から、それらがおざなりになっているのです」  無痛分娩には、教科書のような存在であるガイドラインがない。だからこそ、徹底した安全対策が重要になる。
・無痛分娩の豊富な経験と適切な知識を持つ医療スタッフがいる医療機関であれば、無痛分娩はメリットが非常に多い。痛みがないため、脳内出血やくも膜下出血を招く妊婦の血圧上昇を避けられる。脳内出血、くも膜下出血は妊婦の死因の3位と4位。結果的に、出産による死亡のリスクを下げることができる。
・痛みは呼吸回数を減らすが、無痛分娩であれば、母子ともに安定した酸素を提供できる。また、1~2分を競うほど緊急に帝王切開へ移行しなければならない事態が起こった場合、硬膜外麻酔をすでにしているので、速やかに行える。
・もし、無痛分娩を考えるなら、医師や看護師などの医療スタッフの麻酔分娩に対する知識、そして、無痛分娩の件数などを確認すべき。麻酔科医の間では、「1人の医師につき硬膜外麻酔月10件が確かな技術を維持できる指標」という見方もある。ひとつの目安にしてもいいかもしれない。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/213343/1

第一の記事で、 『60カ国で実施件数最高なのに、出産率は最低』、となっている要因については、明示的に書かれてないのは残念だ。 『体外受精や顕微授精の生殖補助医療の費用は、1回につき約20万〜100万円かかる・・・筆者が取材した20~50代の夫婦のなかには、9つの専門クリニックを回り、トータルで5000万円もかけて治療をしたが、それでも子どもを授かることができなかったというケースもあった』、ということから、類推すると、不妊クリニックにとっての「メシのタネ」として、不必要な治療が行われている可能性があるのではなかろうか。顕微授精は体外受精に比べ、受精する確率は高くなるのだろうが、リスクも高くなるのに、その説明が行われていないケースが多いのも問題だ。
第二の記事では、顕微授精に比べリスクの少ない、「人工卵管法」が開発されたというのは喜ばしいことだ。
『生まれくる子どもの幸せを考えた法律を、一日も早く制定してほしいと願う』、というのはその通りだ。
第三の記事で、 『無痛分娩は一般的に「硬膜外麻酔」で行われる』、ということは、麻酔としてはリスクが高いようだ。専門の麻酔医がいない場合には、 『医師、看護師、助産師らが救急対応の資格を持ち、適切な処置を行えるようにすべき。ところが実際は、人員不足や、無痛分娩に対する認識不足などのさまざまな理由から、それらがおざなりになっているのです』、ということは恐るべき怠慢だ。8月20日付けのブログでも、日本の無痛分娩の遅れを指摘したが、少子化対策にもなり得ることなので、早急な対策が望まれる。
タグ:医療問題 東洋経済オンライン 顕微授精 日刊ゲンダイ 米疾病対策センター 生殖補助医療 (その7)(成功率低すぎ!日本の不妊治療の残念な実態、日本人は「不妊治療のリスク」を知らなすぎる、事故相次ぐ「無痛分娩」は何が問題か) 草薙 厚子 成功率低すぎ!日本の不妊治療の残念な実態 60カ国で実施件数最高なのに、出産率は最低 不妊治療が急速に広まっている 「国際生殖補助医療監視委員会」が実施した調査 日本の生殖補助医療の実施件数は60カ国中、第1位だったにもかかわらず、出産率は最下位の6.2%というショッキングな結果 「体外受精」と「顕微授精」がある 卵子に顕微鏡をのぞいて極細のガラス針で1匹の精子を人間の手で人為的に穿刺注入して、人工的に授精させてから子宮に戻す技術 不妊治療の8割 顕微授精に代表される不妊治療だが、その不妊治療による妊娠で生まれた子は、自然妊娠で生まれた子に比べ、自閉症スペクトラムになるリスクが2倍になる 管・公表された大規模疫学調査による記事 日本の不妊クリニックの多くのケースでは、不妊治療に関するリスクの説明はほとんどなされておらず、「顕微授精は安全・安心である」と患者に伝えていたのだ 欧米では顕微授精によって生まれた子どもには、自然に妊娠して誕生した子どもに比べて、先天性異常の発症率が高い傾向があることが多数報告されている ▽「精子の質」を判断できないクリニックがある 20~50代の夫婦のなかには、9つの専門クリニックを回り、トータルで5000万円もかけて治療をしたが、それでも子どもを授かることができなかったというケースもあった 老化卵子 不妊の40〜50%は精子の“質”で決まります 先体欠損 卵子に入り込もうとする精子の先体が欠損 不妊治療はブーム的に急速に広まっており 「日本人は「不妊治療のリスク」を知らなすぎる 不妊治療の成功率は「世界で最下位」 サイエンスの視点からいえば、生殖補助医療と先天異常には「因果関係がない、安全である」と言い切ることは、極めて困難 因果関係が否定できないから、安全とは言い切れない」ということを証明するほうが簡単なことなのである 無理やり受精させても大丈夫なのだろうか?』という不安はつねに付きまとっていたんです 生まれた子どもは誕生してすぐに、心臓の手術 精神遅延を指摘 はある医師から、「因果関係が実証できないのだから、問題が起きても逃げればいい」と発言している医師もいると聞いて驚愕 責任の所在は明確にはなりにくく 最終的には不妊治療を選択した当事者である夫婦や、それによって生まれた子どもに、その後の責任がのしかかってくる 顕微授精を10回、繰り返し行いました 不妊クリニックへの不信感が生まれた 最近の研究では男性側の「精子の質の低下」も注目されるようになった 医療行為には必ずリスクが伴うのですから、限りなく自然妊娠に近づけるように技術を開発して、人為的な医療技術の介入(医療行為)を極力減らす技術に徹するべきなのです 生まれてくる子どもの安全が最優先。安全性が確認できたわけではないから、なるべく顕微授精を回避しよう」という新たな潮流も出てきている 人工卵管法」が開発 高品質な精子が選別できれば少ない精子数でも自然に受精させることが可能になり、顕微授精を回避できるようになった 不妊治療はまだ発展途上にあるということがわかってきた 法制化の議論が止まったまま 生まれくる子どもの幸せを考えた法律を、一日も早く制定してほしいと願う 事故相次ぐ「無痛分娩」は何が問題か 麻酔専門家に聞いた 無痛分娩が増加傾向 「硬膜外麻酔」で行われる。刺した針を通して管を硬膜外腔に入れ、管だけを残して針を抜き、管から麻酔薬を注入する方法 無痛分娩にガイドラインはなし 急変に対応するには麻酔科医がいることが理想 そうでないのなら、医師、看護師、助産師らが救急対応の資格を持ち、適切な処置を行えるようにすべき ところが実際は、人員不足や、無痛分娩に対する認識不足などのさまざまな理由から、それらがおざなりになっているのです
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ネットビジネス(その3)(通販急伸のヤフー ステマ疑惑への「言い分」、質屋アプリ「CASH」再開の理由、メルカリ「夏休みの宿題」出品に見るベンチャー育成の問題点、「VALU騒動」で問われるベンチャー企業のモラル) [企業経営]

ネットビジネスについては、7月16日に取上げたが、今日は、(その3)(通販急伸のヤフー ステマ疑惑への「言い分」、質屋アプリ「CASH」再開の理由、メルカリ「夏休みの宿題」出品に見るベンチャー育成の問題点、「VALU騒動」で問われるベンチャー企業のモラル) である。なお、CASHやVALUについては、バンチャーとして、8月21日にも取上げた。

先ずは、8月2日付け東洋経済オンライン「通販急伸のヤフー、ステマ疑惑への「言い分」 宮坂社長「早く気づけばと反省しているが…」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「会員を増やし、ショッピングの事業を伸ばそうというシナリオは、今のところ非常に順調に実現できている」。ヤフーの宮坂学社長は7月28日に行われた決算説明会の場で、こう手応えを語った。
・ヤフーの今期(2017年4月~2018年3月)業績が順調な滑り出しを見せている。第1四半期(4~6月期)の決算は、売上高が前期比4.1%増、営業利益は同2.6%増と微増益にとどまった。だが、現時点で会社が発表している通期計画は、販促コストを増やすことによる営業減益だ。このまま進めば、上振れ着地も期待できる水準といえる。
・牽引役となった広告事業は、トップページや天気、乗換案内など同社のメディア面に掲出する「ディスプレイ広告」、ユーザーの検索内容に連動して掲出する「テキスト広告」の両方が伸びた。一層スマートフォン対応が進んだほか、急速に需要が高まる動画広告の拡大などが貢献している。
▽ショッピングが大幅拡大
・もうひとつ目を引いたのは、モール型EC(多数のショップが独自の方法で出店する)「Yahoo!ショッピング」の成長ぶりだ。ソフトバンクのスマホユーザーなら「毎日・全品ポイント10倍」とする施策が功を奏し、ショッピングの取扱高は前年同四半期比で4割近く拡大した。 ヤフーでは2013年10月から、ヤフーショッピングにおける毎月の出店料、売り上げロイヤルティ(システム料)を無料化することでストア数と商品数の拡大を推進。その甲斐あって、足元では出品商品数が2.9億を超え、国内最大規模となっている。
・とはいえ、出店料などの手数料収益がなくなる分は、別のビジネスモデルを確立して補填しなければならない。そこでヤフーが力を入れたのが、ストア向けに提案する広告メニューだ。ヤフーショッピングのサイト内、各商品カテゴリーや検索結果の一覧ページに広告枠を設け、商品やストアの認知を促進するものだ。
・直近ではこのショッピング広告売上高が順調に拡大。一方でポイント付与にかかる費用は一定範囲に抑えられており、「持続可能なモデルになってきている」(宮坂社長)。 ヤフーの中でますます重要度が高まるショッピング事業だが、危うい側面もある。ヤフーショッピングのサイト内、商品一覧ページの一部に、広告であることを隠した広告、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)が横行していると、報道機関などから指摘を受けているのだ。
・サイト内で買いたい商品カテゴリーを選択したり、商品検索をしたりすると、まずは「おすすめ順」という並びで一覧が表示される。この際、広告料を多く払っている商品が上位に出る場合があるが、ほかにも「おすすめ」の評価軸が複数あるため、ユーザー側にはどれが広告による上位表示なのかわからない。 また、商品一覧の最上位に表示される「アイテムマッチ」という広告枠については、文言自体が広告とわかりにくいことに加え、「おすすめ順」だけでなく「売れている順」という一覧にも掲出していたことに「不適切では?」という声が上がった。
▽宮坂社長「われわれのミス、反省している」
・これらの指摘を受け、ヤフーはいくつかの対応を行っている。まず「アイテムマッチ」は「ストアのイチオシ」へと文言を修正。「おすすめ順」の掲載について、ストア側が支払う販売促進費を加味している旨の説明を拡充し、商品一覧ページにその説明へ直接アクセスできるリンクを設置した。また、「売れている順」への広告掲出は取りやめた。
・これらの点について、宮坂社長は「われわれのミス。もう少し早く気づけばよかったと、深く反省している」と語った一方、ヤフーとして従前の考え方を貫く部分も強調した。 「(ヤフーニュースなど)メディア面と(ヤフーショッピングなど)小売り面の編集の在り方は、別物と考えている。どちらもいい情報を届けるのは同じだが、小売りの場合はいい商品を、お得にお届けする必要がある。そのために、小売りの歴史の中で販売促進費、販売インセンティブなどさまざまな工夫がなされてきた。ECも小売りの一形態として、お得を実現するのがユーザーファースト。そのための工夫や仕組みとして、取り入れられるものは積極的に取り入れていきたい」(宮坂社長)。
▽販促費は小売店舗では当然の行為だが…
・スーパーや量販店などリアルの小売りにおいては、店頭で商品棚を確保したり、特設コーナーを作ったりするために、メーカー側が小売り企業に販促費を支払うことが当たり前に行われている。ヤフーの主張は、その“当たり前”がインターネット上のモールで許されないのはおかしい、というものだ。
・加えて宮坂社長は「広告費を払えばどんな商品でも上位表示できるオプションではない」という点を説明。「現在、ヤフーショッピングの広告枠を買えるストアは全体の1割程度。この売り主さんなら大丈夫だと、ヤフーとして推薦できる、限られたところにだけ開放している」(宮坂社長)
・ヤフーの説明にはうなずける点もある。だが、その考え方がユーザーにすんなり受け入れられるかは別問題だ。現に、楽天やアマゾンなど、ほかのEC大手では、今回ヤフーで指摘されたような仕組みは採用されていない。 また、ECではないものの、カカクコムが運営する飲食店評価サイト「食べログ」では、店を検索した際、デフォルトで表示される「標準」という一覧に広告出稿が加味されていることが明らかになり、バッシングを受けた過去がある。その後「標準【広告優先】」へ、現在は「標準【会員店舗優先】」へと表示を改めているが、ユーザーの信頼を裏切りかねない騒動となった。
・成長の道筋が見えてきたヤフーショッピング。だが、手数料無料のモデルの中で収益機会を広げ、顧客満足度を上げるためには、今後「ステマ騒動」以外に乗り越えなければならない試練が出てくるかもしれない。
http://toyokeizai.net/articles/-/182849

次に、8月25日付けダイヤモンド・オンライン「質屋アプリ「CASH」再開の理由、社長が騒動後初激白!」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは光本社長の回答、+は回答内の段落)。
・スマホで商品を撮影して送信するだけで瞬時に現金化できるアプリ「CASH」。あまりの反響にサービス開始後わずか16時間で停止に追い込まれていたが、8月24日、運営するバンク社はサービス再開に踏み切った。光本勇介代表取締役兼CEOが騒動後、その真相を初めて語った。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 山口圭介)
Q:6月28日にスタートした現金化アプリ「CASH」は、手軽に瞬時に現金化できる斬新さが大ウケして、ネット上では大きな騒動になりました。
A:お騒がせしてしまいましたが、CASHのコンセプトは目の前にあるアイテムを瞬間的にお金に換えることで、潜在的な少額資金ニーズに応えるというものです。ただ、私たちの予想を超えた反響をいただいて、ものすごく利用された結果、当日24時間経たずしてサービスを止めざるを得ませんでした。 CASHはフリマアプリのように、撮影したアイテムを送信してもらいますが、その瞬間にアプリ上で現金化されます。そのお金を実際に「受け取る」か「受け取らない」のチョイスがあり、「受け取る」ボタンを押した瞬間に私たちはユーザーにお金を振り込んでしまいます。
Q:たった1日で3.6億円が現金化されたそうですね。最大の買い取り額が2万円と少額とはいえ、審査なしに振り込むという仕組みは、厳密な審査に基づいてお金をやり取りする既存の金融サービスの関係者からすると、考えられません。
A:CASHはファッションやガジェットなど中古品の二次流通が確立しているアイテムを買い取るビジネスであって、世の中のマジョリティの人たちはそこまで悪い人ではないんじゃないかという、「性善説」に基づいたビジネスモデルです。 取引している人はいい方だと信じて先に振り込んでしまう。馬鹿げていると多くの人が思うからこそ大きな反響をいただいたと思うのですが、真面目に信じて事業設計しました。 もちろん一部には悪用するユーザーがいると思います。ただ、大半のユーザーが誠実な人であれば、やり方としては馬鹿げているかもしれないけれど、事業として成り立つはずだというチャレンジでした。
Q:ただ、実際は1日でサービスを停止してしまいました。
A:停止した理由は2つあります。1つは、最初にすぐお金を振り込んでしまうので、想像していたよりも遥かに多くのお金が出ていってしまって、継続的に運営していたら資金が追いつかないという問題に直面したからです。 もう一つは物流の問題。16時間が経過した時点で1万個近いアイテムが集荷依頼されていました。これを数人の会社で対応するのは無理。サービスを停止しないと運営ができなくなって、結果的にユーザーに迷惑をかけると判断しました。
+サービス停止のリリースから2ヵ月が経ってしまいましたが、その間、会社としては情報発信をしていませんでした。知人ですら、お金がなくなって倒産するんじゃないかと思っていたようです。
Q:2ヵ月間、実際は何をしていたのですか。
A:翌日からこのオフィスにトラックに積まれた大量のアイテムが届き始めました。トラック1台分で500個(写真)。それが1万個届きます。オフィスは足の踏み場もありません。カオスでした。 アルバイトを雇いまくって、2週間ほどはこの対応に追われました。その後は2つのことに時間を割きました。 まず、サービスを再開したらあれだけの荷物が再び動き始めるのが目に見えているので、その物量をハンドルできる体制を整えなくてはいけません。同時に、かなりの規模のキャッシュが出ていくことになるので、安定的に提供する金銭的体制の整備を進めました。
+具体的には、物流については天王洲や埼玉などに拠点を設けました。資金面については、まだ公表していませんが、これに絡めた事業を作っているところで、いずれかのタイミングでどのような仕組みでお金を用意しているかお知らせできると思います。 はたから見れば、私たちのサービスはお金をばらまいているようにしか見えないわけで、ソーシャルメディア上では、「馬鹿なんじゃないか」とか、「事業として成り立つわけがない」と言われることも多かったんですが、8月24日にサービス再開にこぎ着けることができました。
+再開に至った最大の理由は、この事業にポテンシャルがあり、採算性を担保して事業展開できる見込みがあると判断したからです。
Q:性善説は通用したというわけですか。
A:そうですね。今日(8月22日)の時点で91%の人がちゃんと取引してくれています。
Q:ウソをついて取引をする人もいたと思います。例えば、アイテムの写真は送って現金を受け取っておきながら、実際には商品を送らないケースなど、悪質な取引の割合はどの程度になりますか。
A:騙そうとする人はアイテムを送ってきませんから、まだ取引が終わっていない残りの9%に入っていると思います。アイテムは日々送られてきていて、最終的にちゃんと取引してくれる割合は95%程度になりそうなので、5%程度に収まると想定しています。
Q:ビジネスとしての成立ラインは。
A:当初は悪い人たちが2、3割に収まったらいいなと思っていました。それくらいいてもギリギリ事業として成り立つ設計をしていたので、想像以上の結果です。 会社として私たちが取り込みたいのは、消費者金融ではカバーしていない少額の資金ニーズ。こうしたニーズは潜在的に消費者の中にものすごくあると思っていますが、手軽にカジュアルにスピーディに応えられる企業、サービスはありませんでした。
+たった1日ですが、実際にこのサービスを提供してみて確信したのは、やはりこの需要は大きく、市場として成り立つ規模が潜在的にあるということです。
Q:サービスを再開するに当たってどんな改善をしたのでしょうか。
A:大きな改善点は3つです。一つ目は、一日に私たちが現金化する予算の上限を設定しました。口を開けていたらいくらでもお金が出ていくことが明白なので、1日の上限を1000万円にしました。予算がゼロになるとキャッシュ化できなくなって、次の日の午前10時になると「満タン」に戻る設計です。今後、予算はどんどん増やしていくつもりですが、安定的にサービスを運用する経験を持ちたいという狙いがあって、再開初月は3億円を想定しています。
Q:今後、どれくらいの規模に拡大していきたいと考えていますか。
A:マスのサービスにはなりたいと思っているし、その需要もあると考えています。インターネット業界で著しい成長を遂げて一大市場を作ったのがフリマ市場です。その流通規模は大手で1000億~1500億円。まずはそれくらいの規模のお金を供給できるようになりたいです。ビッグマウス過ぎますかね……。いかにお金を用意する仕組みを構築できるかにかかっていると思います。
Q:二つ目の改善点は。
A:新たに評価制度を導入しました。これは私たちがユーザーを評価する仕組みです。例えば、新品と言っているのに古いものを送ってきたり、違うものを送ってくる、誠実に取引しない人は評価が下がる仕組みです。評価が下がると利用できる機能に制限が出たり、査定金額が著しく低くなってしまい、結果的に損することになります。 最後の改善点として、「返金」(返金の場合はキャンセル料15%が上乗せされる)の機能をなくしました。
Q:「CASH」はメディアで質屋アプリとして紹介されることが多かったですが、その根拠となっていた導線がなくなるわけですか。
A:そうです。当初は、現金化後にアイテムを私たちに送るか、受け取ったお金を返金するかチョイスできる設定にしていましたが、ふたを開けてみたら、返金を選ぶユーザーは2%に過ぎませんでした。98%はモノのキャッシュ化を選んでいたので、ほとんど使われていなかった返金の機能をなくしました。
Q:ネット上では貸金業法違反など、違法性を指摘する声もありました。
A:ビジネスのスキーム作りの段階から法律事務所に入ってもらって、準備を進めてきましたので、違法性の問題はありません。(CASHの件で)金融庁や消費者庁から連絡が来たことも、指導を受けた事実もありません。モノを買い取るので古物商の免許も取得しています。契約している法律事務所にはサービス開始当初から今なお変わらず支援してもらっています。
Q:CASHに次ぐ第2の現金化アプリとして、給与前借りアプリ「Payday」のリリースを控えています。
A:「Payday」についてはいったんペンディングします。私たちはまだ10人に満たない会社。CASHという事業に想像を遥かに超えたポテンシャルを感じたので、あれもこれもと手を出して中途半端になるよりは、一つの事業にフォーカスすべきだと考えました。
+私たちの会社名は「バンク」。その使命として実現したいのは、世の中の少額の資金ニーズを埋めまくるということ。これは一つのサービスではなし得ないし、市場があまりに大きいので、1年2年で取り切れる規模でもありません。 少額資金ニーズは金融の観点じゃなくても埋められると思っています。(金融の)ド素人だからこそ、一般の人の気持ちで一般の人の需要を推測しながら、その人たちが最も求めるものを提供できると考えています。
http://diamond.jp/articles/-/139732

第三に、元大手銀行のマーケット・エコノミストで法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が9月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「メルカリ「夏休みの宿題」出品に見るベンチャー育成の問題点」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・先日、公園で“フリーマーケット”が開催され、大勢の人で賑っていた。興味本位で品物を覗いてみると、雑貨から衣服、加工食品、骨董品など、ありとあらゆるものが出品されていた。中にはかなり年季の入った品物もあったが、どこも売れ行きは順調だったようだ。 最近、インターネットなどを通した個人間の取引を見ると、企業が提供しきれていないモノやサービスが多いように思う。そうした分野の潜在的な需要も大きいということだ。
・そうした取引に目をつけ、個人同士で取引するネット空間=マーケット・プレイスを提供し、急成長を遂げる企業が出てきた。国内ではメルカリがフリマアプリを提供し、断トツの成長を遂げている。個人の価値を評価しあい、それをトレードすることや、ネット上で物品を査定し現金との交換を行うビジネスも登場している。 個人同士が取引を行う、C to C(Consumer to Consumer)ビジネスのプラットフォーム構築は世界的な拡大を続けるだろう。その中で、これまでの常識を覆すようなケースも増えるはずだ。
・そうした新しい潮流は重要なのだが、今後、さまざまな問題が出てくることが想定される。中には、法令遵守への姿勢が問われるケースも出てくるかもしれない。ネットビジネスが急拡大する中、企業を含め社会全体でしっかりしたルール作りが必要だ。
▽急速に拡大する“C to C”ビジネス
・ネット業界では、電子商取引プラットフォーム上で企業が個人に対して物品やサービスの提供を行うことが普及してきた。今、このB to Cに代わり、C to C取引のサービスが急速に発達している。 その代表格がメルカリだ。同社はインターネット上でフリーマーケットを開催するアプリ(マーケットプレイス)を提供している。このアプリを使えば、誰でも、不要なものをインターネット上のフリーマーケットに出することができる。
・「なんでもメルカリに出品できる」と考える人は多いようだ。それほど、同社のサービスは支持されている。個人間で取引が成立すると、メルカリは購入者から手数料を徴収する。これが同社の収益源だ。すでに、日米合わせて7500万ものアプリダウンロード件数を達成するなど、急速な勢いでメルカリは成長している。
・多くのユーザーにとってメルカリは、不要なものを現金に換える「打ち出の小槌」のようなものなのかもしれない。ある大学生は、「捨てるならメルカリに出品する」と話していた。しかも、代金支払いのやりとりはメルカリが仲介するため、代金のやり取りに関する不安や煩わしさを感じることもないようだ。こうした手軽さと安心感が多くのユーザーを引き付けている。公園のフリマに出品する労力もかからない。
・海外でもC to C市場は急拡大している。米国ではLetgoやOfferupなどのベンチャー企業がC to C向けのマーケットプレイスを展開している。こうした動きを受けて、Facebookがフリーマーケット機能“Marketplace”を開始するなど、C to C市場の競争は世界的にし烈さを極めている。
▽今後、明確化すると見られる さまざまな問題
・個人同士の取引が増える中で、社会的な倫理観・価値観に照らした場合に許容されるか否か、議論の分かれるケースや、法律にも触れる恐れのあるトラブルや問題が増えている。メルカリのサイトを見ると、夏休みの宿題らしき小中高生向けの作文や読書感想文、自由研究の作品などが出品されている。本来、こうした学習課題は、児童・学生自らが取り組まなければならないことは言うまでもない。学生を教える立場から言えば、他人が作成したものを“自らの成果物”として提出することは言語道断だ。
・また、メルカリやヤフオクでは象牙を使った製品が取引されている。象牙の国際取引はワシントン条約によって原則禁止されている。国内で象牙製品を取引するためには、登録または届出が必要だ。すでに中国政府は、本年末までに象牙の商用取引を全面禁止すると発表した。世界自然保護基金(WWF)はマーケットプレイスの運営業者に対して象牙製品の取り扱い停止などを求めている。社会的な価値観に照らした場合に取引に問題がないか、批判を浴びないか、ユーザーと企業双方で冷静な検証が必要と考えられる。
・法令遵守への懸念もある。個人の価値を評価し、それを取引するトレーディングプラットフォームを運営するVALU社では、特定の個人が自らの価値を吊り上げた上で高値での売り逃げを狙った疑いのある案件が発生し、物議を醸した。 問題は、同社が個人の価値を株式に見立てていることだ。株式には配当の請求権をはじめとする客観的な価値=実体がある。しかし、同社のシステムに登録され、取引される個人の“価値”は、登録者と評価者の主観に左右される。円で配当が受け取れるわけではない。実体なき砂上の楼閣と取引しているというのが正確だろう。
・その他にも、バンク社が運営するCASHが貸金業法に抵触するのではないかとの批判も出た。新しいネットビジネスが基本的な定義を押さえ、法令を遵守した上で運営されているかは入念に確認されるべきだ。それが社会的な信用につながる。
▽各企業のコンプライアンス強化 社会全体での法整備の加速化は急務
・情報とコミュニケーション技術(ICT)の向上に伴い、従来にはないアイデアをもとに起業を試みる人は増えるだろう。それがベンチャービジネスの創出と育成につながり、競争を促進する。そうした動きが経済全体で進むようになると、わが国の潜在成長率の向上にもつながるだろう。
・そのためには、新しい企業のチャレンジと、コンプライアンス=法令遵守の両立が求められる。ベンチャー企業経営者の発言などを見ていると、ごく一部ではあるものの、企業ではなくユーザーに問題があるという認識があるのではないかと感じることがある。
・新しい試みであるだけに、どのような展開になるかはやってみなければわからない。しかし、それが始まった段階で企業は社会的な責任を負うことを忘れてはならない。規模の大小、歴史の長短にかかわらず、企業は社会的な公器である。各企業には個人ユーザーの法令を無視した行動を防ぎ、公正なC to C市場の育成を支える責務がある。それぞれの企業がビジネスに対する倫理観・価値観を提示し、それにそぐわないユーザーには利用を認めないといった取り組みは不可欠だ。それでも、個人の行動を100%コントロールすることはできない。性善説にのっとった発想では限界がある。
・政府はこの状況に危機感を持つべきだ。世界経済フォーラムが公表するICTの国際競争力ランキングでは、法規制面の整備に関するわが国の評価が低い。企業のコンプライアンス意識の向上だけでなく、それを支える社会インフラとしての法制度の整備は喫緊の課題だ。それができないと、ベンチャー企業の育成は難しいかもしれない。
・そうした取り組みこそが、規制の緩和や環境変化に対応した法規制の策定につながり、成長戦略の重要な基礎作りにつながる。新しい技術が普及し、これまでにはない経済活動が広がる中、対策を企業だけに任せることはできない。社会全体で取り組むことが必要だ。
http://diamond.jp/articles/-/140999

第四に、同じ真壁氏が9月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「VALU騒動」で問われるベンチャー企業のモラル」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・現在、世界的な流れとして、いわゆるネット企業が注目を集めている。その要因は、いうまでもない。ネットワーク社会の中で、彼らのビジネスには莫大な成長余地が存在するからだ。その代表格がアマゾンやグーグルであり、わが国のメルカリ、さらにはVALU(バリュー)などがある。 ただ、ネット企業のすべてが無条件に成長するわけではない。中には、ネット分野ゆえの問題点を抱える企業もある。今後、ビジネスのルールを構築したり、法律や制度の整備が必要になるだろう。
・最近、わが国のネットベンチャー企業に対する批判をよく耳にする。その理由の一つに、彼らが、基本的な理念やリスクへの対応を欠いたまま事業を開始してしまったことがある。それにもかかわらず、ネット企業に対する期待が風船のように膨らみ、根拠なき期待に支えられて人気のみが先行することになってしまうケースもある。
・海外でも物議を醸すITベンチャー企業はある。企業サイドに問題があることに加え、これまでになかった発想が事業化されたため、法制度などの対応が追い付いていないことも事実だ。問題は、そうしたマイナス面をいかに解消することはできるかだ。
▽株とは異なりまったく実体のないVALU
・今年8月、IT業界で大きな注目を集めたイベントの一つが“VALU騒動”だ。同社が扱う“VALU”が、常識では考えられないほど急騰する事態が発生したのだ。 VALUとは何か。同社のサイトでは、個人が自らの価値を発行することができる。ここでいう価値とは、特技、アイデアなどさまざまだ。発行された価値は第三者に評価される。
・第三者は、VALUを登録した人が将来ブレイクする、応援したいと思うなら、そのVALUを取得する(これをVALUER=評価者という)。それによって価値の取引が成立する。 VALUERは発行者から特別な情報を得たり、何らかの優待を得ることができる。なお、VALUの取引はビットコインによって成立する。
・個人の価値を取引するインセンティブは、基本的に購入する側の“期待”のみだ。VALUを登録した人の考えに共感したり、何らかのメリットがあると考える人が増えれば、VALUへの需要は高まる。需要が高まれば価格(価値)は上昇する。この関係を見ると、個人の価値を取引することは、ある意味では、金融商品のトレーディングに似ている。
・VALU社はVALUERを株主になぞらえてきた。一見すると、この例えはそれなりの説得力があるように思えるのだが、大きな落とし穴がある。VALUにはまったく実体がないのである。
・例えば、代表的な金融商品である株式には、法律によって配当の請求権、株主総会での議決権、残余財産の分配を請求する権利等が定められている。つまり、実体が備わっている。 ところが、VALU社のアプリで取引される個人の価値は、まず、発行者の意図によってイメージがつくられる。それを、評価者の期待や憶測が増幅する。発行者の義務と評価者の権利などは明示されていなかった。
・価値の厳密な定義や権利・義務の関係が明示されない中、評価者の間では、「VALU(株)を手に入れれば動画閲覧などの優待(株主優待)を受ける権利が得られる」とのイメージが独り歩きしてしまった(なお、現在の利用規約にはVALUは株式ではないことは明記されている)。
・この結果、8月上旬、人気ユーチューバーのVALUを手に入れれば優待を受けられるとの期待のみが先行し、買いが買いを呼んでVALUが急騰した。これが騒動の一因である。この騒動を知ったある経済学者は、「今回の騒動はオランダのチューリップバブルそっくりだ」と指摘していた。
▽リスクに関する認識の欠如が生んだ騒動
・その後、ユーチューバー本人が自らの価値を「売り」に出したことをきっかけに、このVALUバブルはあっけなく崩壊した。急落を受けて、「このユーチューバーは、初めからVALUの急騰を狙っていたのではないか」、「売り逃げ目的でVALUを登録したのではないか」など様々な憶測や非難が殺到し騒動が広がった。
・今回の騒動を一言で言うならば、評価者にとって期待と違うことが多すぎたため、価値急落による失望感が一気に溢れ出たと言えるだろう。 騒動が広がった原因の一つは、VALU社が価値変動のリスクを十分に理解し、評価者に周知徹底することができていなかったことにもある。市場参加者間の考えが偏りやすいほど期待先行で人気が高まり、短期間で価値が大きく変化する可能性は高まる。
・同社はVALUを、希少価値のあるトレーディングカードにもなぞらえている。一部のマニアの間では、特定の野球選手のレアなカードの価値が急騰することはしばしばある。ユーチューバーのファンの場合にも同じことが起きたのかもしれない。 その他にも、VALU社が認識できていなかったリスクは多い。ユーチューバーの自己顕示欲=目立ちたいという欲求が、今回の騒動の根底にありそうだ。騒動が起きたことによって、VALUの発行者と評価者間の情報の格差=“情報の非対称性”があまりに大きすぎることが白日の下に晒されたともいえる。
・同じような騒動を防ぐためには、VALUの発行者に関する情報の開示を進める必要がある。例えば、金融市場で一般企業が資金調達を行う場合、調達した資金の使用目的がどのようなプロジェクトか、どの程度の期間で事業を行うか、どのような成果が見込めるか、リスク要因は何か等、事細かな事業計画を作成することは当たり前だ。
・そうした情報があれば、購入側は冷静かつ客観的にVALUを評価することができるだろう。VALUの取引には、金融商品と同じくらい十分な情報開示が必要だ。今後、同社がこうした認識を深め、ユーザー、業界団体や金融庁をはじめとする利害関係者との議論を深めることが求められる。
▽ネット企業の今後のあるべき展開
・VALU社が、今のビジネスモデルを続けることで成長を実現できるかは不透明だろう。ただ、個人同士がそれぞれの考えなどを評価し、その価値を取引するという点でVALUの目の付け所は斬新であり、興味深い。 個人レベルでの事業計画への支援が受けられやすくなることで、さまざまなビジネスモデルを持ったベンチャービジネスが活性化されるなど、ダイナミックな展開につながる可能性もある。この点は評価に値する部分はある。
・新しい発想をビジネス化した際、ユーザーや社会がどのような反応を示すかは予見が難しい。VALU社は、このリスクについて事前の準備が不十分だったとも言える。今後も、ICT技術の発達やネットワークサイエンスの発展につれて、新しいアイデアをビジネス化する動きも加速するだろう。企業家には、一段のリスクマネジメントへの意識と、法令順守=コンプライアンスの精神が求められる。
・ネット企業としては、株式の新規公開(IPO)を目指すことも一つの選択肢だ。それによって、自社のビジネスモデルが、不特定多数の投資家の目に晒されるからだ。不特定多数の投資家に受け入れられるか否かを客観的に理解できる。 株式の新規公開を考える場合、経営者はビジネスが法令だけでなく一般社会の価値観にも適合しているか否かを常に考えなければならない。それが、リスクマネジメントや情報公開の改善につながり、企業の成長を支える可能性は高い。
・世界のベンチャー市場では、企業価値が10億ドル(約1080億円)を超える“ユニコーン企業”への関心が高まっている。その筆頭格と目される配車アプリのUBER(ウーバー)のトラビス・カラニック前CEOは、ハラスメントを容認する組織文化を放置したこと等への批判が高まった結果、辞任に追い込まれた。それでもライドシェアの先駆者としてのウーバーのビジネスモデルへの評価は高い。メルカリの上場への期待も高まっている。
・VALU社は今回の騒動への反省を生かし、ビジネスモデルが社会的な意義を備えていることを示さなければならない。それが当面の課題だ。その上で、同社は将来的なIPOを念頭に、法規制の整備などにも能動的に取り組み、イノベーションの実現を目指すべきだろう。
http://diamond.jp/articles/-/141834

第一の記事は、第二以降のベンチャー企業と違って、押しも押されぬ上場大企業である。それが、 『ステルスマーケティング(ステマ)が横行していると、報道機関などから指摘』、され、部分的には修正したが、まだ独自の考え方にこだわっているようだ。これは、ユーザーからの利用という形で審判を受けることになるだろう。
第二の記事で、改良後は、 『「返金」(返金の場合はキャンセル料15%が上乗せされる)の機能をなくしました』、ことで、質屋アプリではなくなり、貸金業法違反の疑いの余地も消えたようだ。 『91%の人がちゃんと取引してくれています』、らしいが、悪質な人間のサークルにその存在が広まれば、悪質な人間の割合がもっと大きくなる可能性も否定できない。
第三の記事で、 『メルカリのサイトを見ると、夏休みの宿題らしき小中高生向けの作文や読書感想文、自由研究の作品などが出品されている』、というのは笑ってしまうが、サイト運営者として、公序良俗に反してないかきちんとチェックしていれば、防げた筈だ。 『それぞれの企業がビジネスに対する倫理観・価値観を提示し、それにそぐわないユーザーには利用を認めないといった取り組みは不可欠だ』、というのはその通りだ。
第四の記事で、 『VALU社は今回の騒動への反省を生かし、ビジネスモデルが社会的な意義を備えていることを示さなければならない』、としているが、これはどう考えても、「ないものねだり」に過ぎないように思われる。
タグ:ネットビジネス ヤフー 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 (その3)(通販急伸のヤフー ステマ疑惑への「言い分」、質屋アプリ「CASH」再開の理由、メルカリ「夏休みの宿題」出品に見るベンチャー育成の問題点、「VALU騒動」で問われるベンチャー企業のモラル) 通販急伸のヤフー、ステマ疑惑への「言い分」 宮坂社長「早く気づけばと反省しているが…」 宮坂学社長 ショッピングが大幅拡大 売り上げロイヤルティ(システム料)を無料化 出品商品数が2.9億を超え、国内最大規模となっている 力を入れたのが、ストア向けに提案する広告メニュー ステルスマーケティング(ステマ)が横行していると、報道機関などから指摘 宮坂社長「われわれのミス、反省している」 メーカー側が小売り企業に販促費を支払うことが当たり前に行われている。ヤフーの主張は、その“当たり前”がインターネット上のモールで許されないのはおかしい、というものだ 質屋アプリ「CASH」再開の理由、社長が騒動後初激白! CASH ・スマホで商品を撮影して送信するだけで瞬時に現金化できるアプリ サービス開始後わずか16時間で停止に追い込まれていたが、8月24日、運営するバンク社はサービス再開に踏み切った 手軽に瞬時に現金化できる斬新さが大ウケ たった1日で3.6億円が現金化 ファッションやガジェットなど中古品の二次流通が確立しているアイテムを買い取るビジネス 性善説」に基づいたビジネスモデル 継続的に運営していたら資金が追いつかないという問題に直面 物流の問題 再開に至った最大の理由は、この事業にポテンシャルがあり、採算性を担保して事業展開できる見込みがあると判断したからです 91%の人がちゃんと取引してくれています 消費者金融ではカバーしていない少額の資金ニーズ。こうしたニーズは潜在的に消費者の中にものすごくあると思っていますが、手軽にカジュアルにスピーディに応えられる企業、サービスはありませんでした 一日に私たちが現金化する予算の上限を設定 新たに評価制度を導入 、「返金」(返金の場合はキャンセル料15%が上乗せされる)の機能をなくしました 金を選ぶユーザーは2%に過ぎませんでした メルカリ「夏休みの宿題」出品に見るベンチャー育成の問題点 C to C(Consumer to Consumer)ビジネスのプラットフォーム構築 急速に拡大する“C to C”ビジネス 購入者から手数料を徴収 日米合わせて7500万ものアプリダウンロード件数 不要なものを現金に換える「打ち出の小槌」のようなものなのかもしれない 社会的な倫理観・価値観に照らした場合に許容されるか否か、議論の分かれるケースや、法律にも触れる恐れのあるトラブルや問題が増えている 夏休みの宿題らしき小中高生向けの作文や読書感想文、自由研究の作品などが出品されている 象牙を使った製品が取引 ワシントン条約によって原則禁止 VALU社では、特定の個人が自らの価値を吊り上げた上で高値での売り逃げを狙った疑いのある案件が発生し、物議を醸した 各企業のコンプライアンス強化 社会全体での法整備の加速化は急務 世界経済フォーラムが公表するICTの国際競争力ランキングでは、法規制面の整備に関するわが国の評価が低い 「「VALU騒動」で問われるベンチャー企業のモラル 彼らが、基本的な理念やリスクへの対応を欠いたまま事業を開始してしまったことがある ネット企業に対する期待が風船のように膨らみ、根拠なき期待に支えられて人気のみが先行することになってしまうケースもある 株とは異なりまったく実体のないVALU ・個人の価値を取引するインセンティブは、基本的に購入する側の“期待”のみだ 評価者の間では、「VALU(株)を手に入れれば動画閲覧などの優待(株主優待)を受ける権利が得られる」とのイメージが独り歩きしてしまった 騒動が広がった原因の一つは、VALU社が価値変動のリスクを十分に理解し、評価者に周知徹底することができていなかったことにもある 、VALUの発行者に関する情報の開示を進める必要 VALUの取引には、金融商品と同じくらい十分な情報開示が必要だ VALU社が、今のビジネスモデルを続けることで成長を実現できるかは不透明だろう 個人同士がそれぞれの考えなどを評価し、その価値を取引するという点でVALUの目の付け所は斬新であり、興味深い ・VALU社は今回の騒動への反省を生かし、ビジネスモデルが社会的な意義を備えていることを示さなければならない
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安倍政権の教育改革(その6)(大学無償化問題を論じる前に持っておくべき問題意識、日本には「教育無償化」が本当に必要なのか? 徹底図解で考える 「勘と経験」で政策を決める危うさ) [国内政治]

安倍政権の教育改革については、7月23日に取上げた。今日は、(その6)(大学無償化問題を論じる前に持っておくべき問題意識、日本には「教育無償化」が本当に必要なのか? 徹底図解で考える 「勘と経験」で政策を決める危うさ) である。

先ずは、経産省出身で文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授の鈴木 寛氏が7月31日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「大学無償化問題を論じる前に持っておくべき問題意識」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・こんにちは、鈴木寛です。 2017年も半年が経ってしまいました。本年初の記事となりますが、あらためてよろしくお願いいたします。
・さて、永田町・霞が関のニュースは、本質的な政策課題とは乖離したところで盛り上がっています。スキャンダリズムが蔓延している政治では、もっと考えなければならない重要な議論が表面化されないまま進んでしまいます。インテリジェンスを鍛えるには、メディアには「報道の自由」と表裏一体で「報道しない自由」があるとまず知ることが重要です。報道機関が報道しない重要なことにアンテナを立ててください。
・教育改革でも、「教育国債」「大学教育無償化」が重要課題でしたが、いつの間にか、見なくなってしまいました。そこで今回は、昨今の政治報道で埋没した観のある教育国債、大学教育費の無償化に関して私の意見を述べたいと思います。
▽高校無償化実現から始まった教育無償化の流れとは
・いま議論されている教育の無償化は、高等教育(大学)の無償化です。 今年の1月に安倍総理が施政方針演説で「どんなに貧しい家庭で育っても、夢をかなえることができる。誰もが希望すれば高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければならない」と、高等教育の無償化について言及していたことで、議論が盛り上がるようになりました。
・ついでにいえば、高校の授業料無償化は私が文部科学副大臣であった2010年に「公立高校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度」としてスタートしています。2014年に、公立は有償に戻ったため「高等学校等就学支援金制度」として、低所得者の子女向けの就学支援が残っています。高校無償化を実現させた私こそが、“元祖・高校無償化”です(自称ですが(笑))。
・そもそも中等教育と高等教育の無償化というのは、世界人権宣言・国際人権規約の13条2のbとcに明記されています。ちなみに、高校は後期中等教育に該当します。
・国際人権規約 第13条2 (外務省訳) (b)種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,一般的に利用可能であり,かつ,すべての者に対して機会が与えられるものとすること。 (c)高等教育は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,能力に応じ,すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
・日本政府は、ずっと、この(b)(c)条項の批准を留保していましたが、2012年9月11日に、その留保の撤回を国際連合事務総長に通告しました。 これは「公立高校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度」が成立し、高校は完全に無償を実現したことで、b項は完全にクリアし、高等教育(大学)についても、大学生希望者全員に奨学金貸与を実現し、大学の授業料免除者を全大学生の5%から10%に引き上げ、また、2012年から、本人の年収が300万円以下の場合、申請により通算10年間返済を猶予できる返済期限猶予制度を導入したので(ちなみに、2017年から、年収に応じた返還額[所得の9%程度]を設定できる、所得連動返還型無利子貸与奨学金も導入)、「漸進的」には無償教育の方向にむかっているということで、cの「高等教育の漸進的無償化」も併せて批准留保を撤回しました。
▽こども保険や教育国債が提案された背景
・かなりの進展は見たものの、「大学授業料の無償化」を完全に実現できているわけではないので、さらなる充実をめぐり議論になっているわけです。当然、無償化のためには、財源が必要となりますが、消費税もなかなか上げられませんし、既存の予算は社会保障費に充てられしまうため、新財源確保のために教育国債の議論が併せて浮上してきているわけです。
・さらに、大学教育よりも幼児教育のほうが優先すべきとの意見も飛び出し、こども保険の提案もなされています。国際人権規約に従えば、幼児教育無償化は含まれていませんので、高等教育からということになるのでしょうが、高等教育は、その効果が明確に当該学生にもたらされるので受益者負担にすべきだが、幼児教育は、その効果はより社会全体に及ぼされ、犯罪率の低減、就業率の向上、保護者の就業率の向上にも直結するので、より公益性が高く、かつ、社会への波及効果も高いので、幼児教育の無償化を優先すべきとの意見も有力です(すでに、幼児教育については、第3子並びに、ひとり親家庭及び市町村民税非課税世帯の第2子は無償化されています)。これを加速し、さらに、そのほかの育児関連費用にあてるべく、こども保険が提案されています。
・現在、国債は二種類あります。建設国債と赤字国債です。建設国債は公共事業費等に使途が限定されているのに対して、赤字国債・公債というのは、どんな使途にも使えます。しかし、負担する国民の側からは、何に使われてしまうのかわからない国債ではなく、教育に使途限定をかければ、納得感が高まるということで、第三の国債としての教育国債という提案が出てきています。しかし、教育国債とて、借金は借金です。一方、子ども保険は、企業などの雇用主にも負担してもらう仕組みですが、これはこれで、企業の理解が必要です。
・教育国債であれ、子ども保険であれ、細かい議論はありますが、方向としては素晴らしい提案ですので、充実した熟議を国会やテレビで盛り上げてしてほしいと思っています。
▽先進国の多くは大学授業料無償 その経費は誰が負担しているのか?
・さて、大学授業料無償化です。国際人権規約もあり、イギリスを除く多くの欧州の国で大学授業料は無償になっています。大学にかかる経費を誰が負担しているのかを見てみると以下の通りです。 まず、高等教育に対する投資が、GDP比で2.5%を超えている国は、カナダ、チリ、韓国、アメリカの4ヵ国です。アメリカの場合はGDPの2.6%が高等教育に使われていて、内訳は1%が公財政支出、残りの1.6%が私費(寄付含む)となっています。韓国の場合は、公財政支出が0.7%で、私費が1.9%です。カナダは公財政支出が1.5%で私費が0.9%です。
・ちなみにOECD平均は公財政支出がGDPの1.1%、私費が0.5%で、合計1.6%となっています。日本の場合は、公財政支出が0.5%、私費が1.0%で、合計1.6%となっています。フィンランドは2%で、公財政支出が1.8%で私費が0.1%です。フランスは公財政支出が1.3%で私費が0.2%で合計1.5%、ドイツは公財政支出が1.1%で私費が0.2% 合計1.3%、英国は公財政支出が0.6%で私費が0.7%で合計1.3%です(出典「教育指標の国際比較 平成25(2013)年版」)。
・この数字を見て、おわかりかと思いますが、論点はいくつかあります。一つは、投資総額の水準をどうするのか?公財政支出と私費の合計の対GDP比で何%くらいが妥当なのか?日本は今1.6%ですが、それを引き上げるのかどうか?第二は、投資の重点・優先順位をどこにおくのか?どのような大学の、どのような学生にウエイトを置くのか?第三は、それぞれ公私別の負担割合をどうするのか?日本の公費負担は0.5%で主要国最低レベルです。私費は韓国についで二番目に高くなっています。さらに、私費の中での授業料と寄付との割合です。
・無償化の議論は、この私費の授業料・自己負担を、まず、削減するのか、しないのか?削減するとすれば、授業料収入が減るが、提供する教育の量や質を落とすわけにいかないので、学生からの授業料の減少を、だれが補填するのか?公費によるのか?民間・個人からの寄付で増やすのか?果たして、それは実現可能なのか?を議論することでもあるのです。
▽大学は国際競争時代に突入 いくら投資すればいいのか現実的な議論を
・今回のコラムでは、教育の投資総額の規模はどれくらいであるべきか、「第一の論点」について考えていきます。 まず投資水準についてです。そもそも教育というのは、ソーシャル・ヒューマン・サービスですから、その質は、サービスを提供する人材の質と数、そして、マネジメントの質に依存します。加えて、教育の場合、生徒・学生同士の横の関係と先輩・後輩の斜めの関係の充実による、学びの共同体の充実が教育の質に影響を与えます。
・日本の大学教育の質を上げたいのであれば、投資を増やすこと、とりわけ、総人件費を増やすことが不可欠です。教員の質と数の充実については、総人件費と直結することは明白ですが、マネジメントの質を決めるのも、携わる人材の質ですから、マネジメント人材の採用と研修にどれだけの人件費を投入できるかにかかっています。さらに、いい学生をとるためには、奨学金・授業料免除の原資が必要となります。
・さらに、大学は国際競争時代に突入しています。大学にしっかり投資をしている米国、カナダ、韓国、中国の大学と日本の大学の差がどんどん開いています。そのことを放置するのか?改善するのか?国民的議論が必要だと思います。国会でぜひ議論してほしかったです。
・改善であれば、大学への投資水準を引き上げなければなりません(ちなみに、チリの今後の動向が気になりますね。これから企業の海外展開を考える上でテイクノートしておいたほうがいいかもしれませんね)。今のままの質でいいのであれば、投資水準を変える必要はありません。
・日本の学生も、米国、カナダ、中国などの大学に行けばいいのだから、日本の大学の水準は安かろう、悪かろうで構わないという考え方もあるかと思います。現に、日本の有力高校から海外大学への進学が激増しています。しかし、問題は、米国の高い授業料です。授業料分の資金が海外に流出していることもさることながら、その高額な授業料を払える家庭は一部ですから、海外の一流の高等教育を学べる機会を巡って、さらなる格差が広がります。
・そして、彼ら彼女らはその高い授業料を回収するために、給料の高い企業に就職します。給料の安い日本の企業には就職してくれません。カナダ、中国は、相対的に学費は安いかもしれませんが、いずれにしても優秀な人材の海外流出が止まらなくなってしまします。こうした問題をしっかり認識したうえで、国民的に熟議して、投資水準を決めなければなりません。
▽ICT・医療・グローバル人材養成… 成長が見込める知的産業は大卒者が担う現実
・私は、もちろん、投資水準を引き上げて、日本の大学教育を維持・改善すべきだと思っています。その理由は、今、世界は工業社会から知識基盤型社会に急速に移行しているからです。日本でも、高卒で就ける仕事がどんどん減っていて、今後、人工知能やロボットが普及していくと、さらに、加速していきます。製造業は、全従業員に占める大卒(短大含む)比率は4割で、つまり、六割は高卒。製造業は、高卒の最大の受け皿でしたが、この製造業の雇用力はどんどん落ちていきます。
・一方で、これからの雇用創出力がある産業はICTと医療・福祉とグローバル人材ですが、医療福祉分野の大卒比率は9割。看護師養成は、国立大学はすべて4年制になりましたし、看護師のみならず、言語療養士や運動療養士、医療物理士などの専門職に大学教育が必要になっています。
・IT産業も就労者の95%が大卒者です。ほぼすべてのグローバル人材は少なくとも大卒並みの教育水準が求められます。さらに、これから増える起業についても、技術力・研究力・経営力など、文理融合の知識・能力を身に着けるため大学卒は必須です。つまり、大卒以上でないと仕事に就けないという状況が加速するわけです。
・残念ながら、いまだに製造業中心の経済界トップは、このことが十分に実感できていません、産業構造転換への対応をするためにも、社会人も含めて大学進学者の数や割合は増やしていかねばなりません。私の友人にも、中卒や高卒ですばらしい起業をされた立派な方々も大勢いっらっしゃいますし、心から尊敬していますが、確率論から言えば、やはり、大卒のほうが、こうした産業への適用確率は上がります。
・現に昨今の起業状況は東大が一人勝ちで、東大発ベンチャーが約300社、時価総額が1兆円を超えています。かつての大学発ベンチャーの王者、慶應SFCも巻き返しのために頑張っていますが、現在、慶應SFCで一番元気なのは、鶴岡キャンパスのバイオテクノロジー系の高度な知識を持った若者たちです。
▽一部文系大学・学生の質は問題だが減らすだけではなく質の維持向上が必須
・私は、まずは高等教育修了者の全人口に占める比率をしっかり議論していくべきだと思っています。この10年間で、学部改組や教育力向上活動(FD)などでかなりの改善が図られてはいますが、投資不足により一部文系大学が依然多くの問題を抱えていることも事実です。今の一部の日本の一部文系大学や文系学生の現状を見て、「こんな大学なら、こんな学生なら、いらない」と印象を持たれるのはやむをえません。
・ただ、そこから一挙に「少子化になっているのだから、学生の数を減らせ、大学の数を減らせ」と短絡的に結論づけるのは暴論です(よくよく聞いて来みると、大学の数を問題にしているのか、学生の数を問題にしているのかすら整理されていないことも多々あります)。今のような一部文系大学のままなら、いらないかもしれませんが、日本にも、本物の本格的な大学教育は絶対に必要です。
・ST比(教員と学生の比率)を改善し、教育内容・教育分野は再考・再編・洗練したうえで、学生数総数は維持し、その分野は洗い直し、全人口に占める大学並びに大学院修了者の比率を上げるために、しっかり投資し、学びの質を向上すべきだと思っています。その際、大学の連携、統合、再編は必須になっていくでしょう。
▽大学側にも求められる意識変革 大学経営に総括責任者ポストを
・大前提として、大学側の努力は不可欠です。活きた投資にしていくためのあらゆる努力をすべきです。大学を改善するために、学長はじめ執行部にふさわしい人材をいかに獲得するのか、特に、大学経営の総括責任者であるプロボストを置くというアイデアが盛り上がっています。
・私は大賛成ですが、今の日本で、果たしてだれがその任を全うできるのか?また、今の教授の選び方・評価の仕方を、どのように変えていくのか?学生の選考をいかに改めるのか?議論していかねばなりません。良質なガバナンスの下で、良質な教育が行われ、良質の人材が輩出されるための大学改革は絶対に必要なのです。
・そのための必要条件は各大学における資金の確保でありますが、十分条件は、学長・理事、教員、学生のそれぞれのパフォーマンスが的確に把握され、フィードバックされ、かつ、単なるトップダウンでなく、現場の自発性と多様性が担保された自律・協調・分散型のガバナンスがしっかり効いていくことです。
・私は、これからのリーダーシップやプロデュースの概念として、ソーシャル・オーケストレーションという概念を提唱していますが、大学経営はまさにそれにあてはまります。そのためには、様々な情報が組織の内外に共有され、多様なコミュニケーションが図られることが重要です。 
・たとえば、経営財務、教育研究、学修のパフォーマンスの的確な把握と蓄積と分析評価ですし、大学内外のステークホルダー間の熟議など、従来の会議中心の形式的なコミュニケーションを変えていくことも重要です。こうした意思決定を支えるInstitutional Research(IR)の充実などの充実も不可欠です。大学の持てる力を最大限発揮するために必要なスタッフの確保もしていかねばなりません。
▽「象牙の塔」に籠もる時代の終焉 研究者にもマネジメント感覚が必要だ
・教育の質を上げるとともに、ステークホルダーとの対話を重ね、理解と共感と支援の輪を広げることがすべてのスタートです。よく研究者の中に、自分の研究は世の中のためには役にたたない、研究とはそういうものだと開き直る方がいますが、そうした態度は改めるべきです。研究内容を改めろと言っているのではありません。
・自分のやっている研究は、研究対象こそ一見浮世離れしているように感じられるからもしれないが、ここで使われている研究手法や研究プロジェクトのマネジメント手法、研究を通じて輩出される人材並びに育成法は、社会に直接的に貢献していると言い切っていただきたいと思います。特に、研究論文指導というのは、メタ思考、情報収集能力、批判的分析力、思考力・判断力・表現力を発揮して、主体的に多様な他者を巻き込みながら、板挟みと想定外に満ちた知的プロジェクトをマネジメントし、プロデュースする力を培っているのだと、しっかりと説明してほしいと思います。
・現に、そこで鍛えられた人材は、研究以外の分野でも社会に様々なグッドインパクトを与えています。教員を支える、コミュニケーションのプロも育成し、抱えるべきです。ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター(URA)という専門職がありますが、こうした専門職の役割も重要になっています。
・くどいですが、産業構造の転換を考えると、18歳の進学率を引き上げることもさることながら、社会人こそ大学に通い、その能力をアップデートしていただくことが必須となっています。私は、人生で3回大学に入る、つまり、15年に一度、つまり、20歳ごろ、40歳手前、55歳から60歳ごろに、大学や大学院に通う人々を増やしていくべきだと思います。
・現に、大学生のうち25歳以上の比率は日本では5%ですが、OECD平均は20%です。人口が日本よりはるかに少ない韓国のほうが、修士号取得者の実数が日本よりも多いという状況もあります。この状態を放置して、高度知識集約型のビジネスが日本に創業・立地するわけがありません。
・すでに、日本の大学進学率はOECD平均を下回っています。アセアン諸国に追いつかれるのは時間の問題です。日本の大学進学率は50%でしかありません。米国、韓国は70%、オーストラリアは90%です。ざっくりいうと、中卒の無業率が20%、高卒が10%、大卒が5%ですから、大学進学率が落ちると若年無業者が増えるのは確実です。そういう社会になることをわかったうえで、大学投資を増加させる議論が盛り上がらないのは、歯がゆい限りです(大学進学率の国際比較等については文科省のサイトにデータ[PDF]があります)。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52467

次に、世界銀行やユニセフなどで勤務し現在はNPO法人サルタック理事の畠山 勝太氏が8月7日付け現代ビジネスに寄稿した「日本には「教育無償化」が本当に必要なのか? 徹底図解で考える 「勘と経験」で政策を決める危うさ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・わが国では現在、大学教育と幼児教育の無償化に向けて議論が行われている。しかし、現在の厳しい財政状況下で、そもそも政府は教育に支出をすべきなのだろうか? そして、支出をすべきだとして、それは教育の無償化なのだろうか?
・本稿では、①なぜ政府が教育に支出をすべきなのか、②そしてどのような教育支出をすべきなのか、③それに対して日本の教育状況はどうなのか、④幼児教育と大学教育の無償化に乗り出すべきなのか、について論じたい。
▽大学教育は文字通り「人への投資」
・そもそもなぜ政府は教育支出を行わなければならないのであろうか? この問いには、人権と経済の二つのアプローチから答えを出すことが出来る。 人権アプローチからこの問いに答えると、質の高い基礎教育を受けられ、能力に応じた高等教育を受けられることは人権であるため、子供がその権利を行使できることに対して、その義務を負う者である保護者と政府はその権利が行使できる状況を実現する義務がある。この義務を履行するために政府は教育支出を行うと考えることが出来る。
・経済アプローチ(人的資本論)から見ると、教育を受けることで個人は所得向上及び支出削減が見込める(私的収益)。 この個々人の私的収益が足し合されると、税収増・公支出削減につながるため、政府はそれに見合っただけの支出を行い、個人が教育を受けられる環境を整備するのが得策となる(社会的収益)。  さらに、詳しくは後述するが個々人に完全に教育投資を任せてしまうと社会的に望ましい教育水準よりも低い教育投資水準になりがちであるため、政府による介入が必要となる(外部性)。
・人権アプローチと経済アプローチは、教育政策を考える上でどちらかが大事なのではなく、この両輪を回して教育システムを発展させていくことが重要となる。 しかし、日本の教育議論では、「教育の価値は金銭なんかでは計れない」という美辞麗句の下、経済アプローチが無視され、効果も効率も怪しい教育政策を実施しがちな伝統がある。そのため、本稿は経済アプローチに基づいて議論を進めて行くことにする。
・もう少し人的資本論の話を具体的にするために日本の大学教育を例としよう。 文部科学省・私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果を参考に国立私立理系文系の全ての平均を取ると、日本の大学生は初年度納付金を含めて4年間で約400万円を大学に納めている計算になる(直接コスト)。  しかし、大学教育を受けるコストは授業料だけではない。なぜなら、大学に行かずに働いていれば得られたであろう賃金を放棄してまで教育を受けているからである(間接コスト)。
・厚生労働省・平成27年度賃金構造基本統計調査を参考にすると、男性高卒労働者が最初の4年間で得られる賃金の平均は約1000万円になる。しかし、22歳から59歳の間で男性大卒労働者は平均して高卒労働者よりも約5200万円多く稼いでいる。 つまり、日本の大学教育は平均すると1400万円の投資を行い、5200万円のリターンを得る投資であると言える。しかし、賃金の上昇のように教育を受けるメリットが教育を受ける個人にしかないのであれば、政府が公教育支出を行うことは正当化できない。
▽トクをするのは本人だけではない
・しかし、前述のように教育を受けたメリットはその教育を受けた個人以外にも波及することがある(外部性)。これの代表例として、知識が他者へと波及すること(スピルオーバー)を挙げることが出来る。 国際教育協力業界では、「女子教育は家族全体を教育するのと同じ効果がある」と言われることがある。実際、母親の教育水準が上昇すると、その子供の教育水準も上昇する傾向があることが広く確認されている。
・これはもちろん、女子教育の拡充が起こると、教育を受けている期間の分だけ平均初婚年齢も上昇することによって、子供を産める期間が減少する。 これにより女性が産む子供の人数(合計特殊出生率)が低下し、同じ資源量の下でも子供一人当たりの教育投資額が上昇することにもよる。この働きは、教育の価値を理解した女性が子供1人当たりにより多くの教育投資を行うために産む子供の人数を少なくすることによってさらに強化される。
・さらに母親の教育水準が高い世帯ほど世帯所得も高い傾向があるので、これにもよって子供一人当たりの教育投資額が上昇するという効果に拠る所もある。 しかしそれだけではなく、より良い家庭教育など(卑近な例として子供の宿題を見てあげられることなどを挙げられる)を通じて母親から子供への知識のスピルオーバーが発生する点も見逃せない。
・教育投資の外部性は、知識のスピルオーバーだけでなく、治安や公衆衛生でも見られることがある。  一般的に個人が教育を受けると、罪を犯したときに失う所得が増加したり、健康に関する情報収集・解釈能力が向上したりするため、罪を犯さなくなったり健康状態が良くなったりする。
・犯罪は治安という形で、健康は公衆衛生という形(地域住民の知識が十分でなかったためにエボラ出血熱が感染拡大したり、近年先進国でも予防接種を拒否する個人がいるために風疹が流行したり、という例が挙げられる)で、地域全体に影響を与える。
・治安の悪化が経済活動に悪影響を及ぼすのは、私の住むアフリカのナイロビやヨハネスブルクのような大都市を見れば明らかだが、日本でも治安が悪いとされる地域で経済活動が盛んな所は稀である。 また、公衆衛生の悪化が経済活動に悪影響を及ぼすのは、日本から遠い所であればエボラ出血熱やジカ熱の拡大からも明らかだが、2000年初頭にアジアでSARSの感染拡大が起こった時のことを思い起こせば、決して日本とて無縁な話ではないだろう。
・しかし、個人が教育を受けるかどうか選択する際に、このような外部性まで考えることは一般的ではない。このため、個人に教育投資の水準を完全に委ねてしまうと、この外部性の分だけ社会的に望ましい水準よりも過少な教育投資水準になってしまう。 さらに、個人が教育を受けることで政府財政に恩恵がもたらされるという社会的収益が存在するため、政府は外部性に加えてこの分も公教育投資を行う余地がある。
・教育によって個人の生産性が向上した場合、所得税の税収が向上するだけでなく、特に教育を受けていなければ貧困層から脱出できず生活保護による支援が必要だった層に対しては公的扶助の減少という公支出の削減効果も期待できる。 さらに、教育の普及で国民の健康水準が向上すれば、より働けるようになった個人からの税収だけでなく公的な医療費の削減につながるし、治安が改善すれば法人税や固定資産税の増加といった税収増だけでなく、刑務所の運営といった公支出の削減も期待できる。
・しかし、日本ではまだこの外部性と社会的収益がどれぐらいの規模のものになるのか不明瞭な所が大きい。今後の公教育支出のあり方を考えるためにも、この分野の分析がより一層進むことが望まれる。
▽文系より理系、男より女が「ハイリターン」
・政府が公教育投資を行うべき理由はあるわけだが、もちろんすべての教育投資が望ましい結果を導くわけではない。では政府が優先すべきリターンの高い教育投資とはどのようなものであろうか? 一つ目の特徴は教育の質への投資である。人は学校教育だけからではなく、労働や日常生活を通じても知識や技能を習得する。 それでも学校教育を受ける価値があるのは、労働を通じた知識や技能の習得よりも、より効率的にそれらを手にすることができたり、労働からでは得ることが難しいそれらを手にできたりするからである。
・つまり、質が低く、労働市場で求められているスキルと関連性が薄い教育であるならば、それを受けずに労働に従事した方がましな場合も出てくる。 上の図は、国民の平均教育年数が増えただけではそれが国の経済成長には結びつかないが(左)、国際学力テストの結果に表されるような学習成果の高さこそが国の経済成長に結びつく(右)ということを示している。
・このため、むやみやたらに教育へのアクセス拡大を図るような教育投資を行うよりも、確実に質の高い教育を提供できるような教育投資を実施することが高いリターンへとつながる。 
・二つ目の特徴は貧困層に対する質の高い就学前教育への投資である。人間の脳や免疫機能の発達は母体に宿った時から始まり、小学校に入学するまでに急激に進む。 つまり、この時期は認知・非認知能力の双方から、小学校入学以降に学習が円滑に進むための土台が形成される時期である。このため、この時期に栄養不良を経験すると脳の発達に悪影響があり、生涯を通じて影響し続ける。
・元々適切なケアを受けている子供に対してこの時期に英才教育を施しても脳の発達が2倍や3倍になるわけではないが、貧困層の子供は適切なケアを受けられていないケースが多く、これをカバーするような就学前教育は高いリターンを生み出す。 この分野の研究はノーベル経済学賞受賞者のヘックマン教授を中心に進められており、それによると、貧困層を対象にした良質な就学前教育の収益率は13%にも上るとされている。
・三つ目の特徴は科学・技術・工学・数学に代表される理数系(STEM系)教育への投資である。 日本では理系と文系ではそれほど給与の差が大きくないとするデータもあるが、人材の移動が盛んになったグローバル化した現代において、諸外国ではSTEM系の技術や知識を持つ者の平均給与は高いため、日本の技術者の海外流出も時折話題になるようになってきた。
・上の図は、ジョージワシントン大学が実施した卒業学部別の中位数年収を分析した結果である。図から読み取れるように、アメリカでは高卒と大卒の賃金格差よりも、大卒の中での卒業学部別の賃金格差の方が大きなものとなっている。 例えば、工学や建築系の学部を卒業した者の収入は、教育学部・社会福祉系学部・人文科学系学部を卒業した者の収入の倍近くにもなる。
・これは、STEM系学部の卒業生が、生産性が高く労働者の平均賃金も高い産業へ就職していることが関係するが、同じ産業内でもSTEM系学部の卒業生の平均賃金が高い傾向が見られることから、STEM系学部で身に付ける数的処理などの能力がより高い生産性に結びついていることも示唆している。
・四つ目の特徴は女子教育への投資である。表1が示すように、世界的に女子教育は男子教育よりも私的収益率が若干高い傾向がある。 男性の大学進学は平均コストが1400万円、平均リターンが5200万円になると前述したが、女子は高卒と大卒の賃金差が6300万円と男性のそれより大きく、日本でも女子教育の私的収益率は男子のそれよりもやや大きくなっている。
・さらに、女子教育には男子教育には見られない次世代の教育水準を向上させるという外部性が存在するのは先に言及した通りだが、子供の健康面についても、母親の教育水準が高まると低体重出生児比率や子供の肥満率に改善が見られる。 このように、女子教育の拡充は教育・健康面を通じて次世代の人的資本投資水準を向上させることから、赤字国債が「次世代へのツケ」であるなら、女子教育は「次世代への遺産」だと言えるだろう。
▽日本の「教育投資」が抱える問題点
・このように、教育投資には高いリターンが見込める分野が存在する。では、日本の教育状況はこれに合致したものとなっているのであろうか? 教育段階別にアクセスや質の状況がどのようになっているのか簡単に見ていこう。
・まず就学前教育であるが、日本の就学前教育の就学率は90%を超えており、アクセス面に大きな課題を抱えているわけではない状況にある。しかし、就学前教育の、他国や他の教育段階と比較した相対的な質は決して高いとは言えない。 まず、図3が示すように教員一人当たり生徒数が多過ぎる。 日本でもしばしば少人数学級政策が話題になるが、例えば予備校や大学なら100人以上も入る教室でのクラスを安くはない授業料を支払って受ける人たちもいるが、幼稚園・保育園や小学校低学年で100人以上を相手にした活動はあり得ないだろう。
・このことが直観的な説明になるが、教員一人当たり生徒数は、子供の年齢が低いほどその影響力を増す。それにもかかわらず、日本の就学前教育における教員一人当たりの児童数は先進諸国の中では群を抜いて多い。
・これに加えて、図4・5が示すように小学校以降の教育段階の教員と比較して、日本の就学前教育の教員の準備教育水準と勤務年数は明確に低い。 就学前教育段階にある子供の発達の複雑さや、小学校以降の教育段階と比較して教育・保健・衛生など就学前教育段階はセクター横断的な複雑さがあることを考慮すれば、就学前教育段階の教員の教育水準や経験年数がそれ以降の教員よりも低くて良いはずはない。
・日本の基礎教育段階(小学校から高校まで)は、高校への進学率・中退率も諸外国と比べて良好で、アクセス面に大きな課題を抱えているわけではない。 そして、ゆとり教育世代などと世間では揶揄されることもあるが、PISAやTIMSSなどの国際学力調査で日本は常にトップクラスの成績を残しており、ICTの活用などいくつかの課題はあるものの、基礎学力面でもこの段階には大きな課題が存在しているわけではない。
・一方、これまでの教育段階と比べて、日本の高等教育はアクセス面で致命的な課題をいくつも抱えている。 まず、図6が示すように、日本の大学就学率は先進諸国と比べて高くないうえに、進学者に占める女性の割合(Gender Parity Index:GPI – 女子の就学率/男子の就学率、で表されるのが一般的)が先進国の中で最低であるのは大きな課題として挙げることができる。
・さらに図7が示すように、これらの傾向は大学院レベルになると顕著になる。日本の修士課程の就学率は先進諸国では群を抜いて低く、その男女比も先進国の中で最低となっている。 スペースの都合で提示しないが、博士課程においても状況は同様であり、高度な技術と知識を持った人材、とりわけ女性のそれの育成に失敗しているのが現状である。
・そして、数年前に「リケジョ」という言葉が流行したが、日本はこのリケジョの育成にも大きな課題を抱えている。 例として工学部における女子学生比率を図8で示したが、日本は先進国の中でもSTEM系に進学する女子の比率が最低水準にある。 その裏返しになるが、例としてサービス系学部における女子学生比率を図9で示したが、教育や社会福祉、人文系学部に進学する女子学生に比率が極めて高い。
・つまり、日本は高等教育への進学率が全般的に低く、特にそれは女子学生に顕著で、かつ卒業後に高い賃金を得ることが期待できない学部に集中してしまっている。
▽「無償化」の前にやることがある
・結論を先に述べると、日本は幼児教育と大学教育の無償化に乗り出すべきタイミングは今ではない。 リターンの高い教育投資は、アクセスの拡大よりも質の向上であると解説したが、教育の無償化は教育へのアクセスを拡大させるが、教育の質を向上させる効果は持たない。
・加えて、教育へのアクセスが拡大するということは、学生の学費負担分を政府が肩代わりするだけでなく、アクセスが拡大した分だけ学校建築や教員採用を行わなければ、教室の混雑や教員の多忙化を引き起こし、教育の質が低下する。
・つまり、「学費+α」の大幅な公教育支出の増加が行われなければ、教育の無償化は意味がないどころか、最悪の場合は無償化以前よりも教育のリターンが悪化し得る。 特に、日本の大学就学率はそれほど高くないため、無償化による就学率の上昇幅の余地が大きい。これは+αの部分で必要になる金額が大きくなることを意味するため、もう少し段階的に大学就学率を上げた後でなければ、現在の日本の財政状況的に+αを手当てすることは難しいだろう。
・確かに、日本は大学教育へのアクセスに課題を抱えているので一見すると大学教育の無償化は正しい政策のように見える。しかし、この+αの部分を除いても現時点では無償化が正しい政策だとは考えづらい。  なぜなら、日本でここ20年間に進んだ大学教育の拡大は、女子学生が短大に取り残されたまま私立文系型の教育が主導したもので、高いリターンが見込める教育投資が計画されていたとは言い難く、現在の高等教育政策の路線上でアクセスの拡大が起こっても、それは決して高いリターンが見込めるものとはならないからだ。
・この背景として日本で教育政策のプロフェッショナルが不足していることが挙げられる。現在の日本の教育大学院や公共政策大学院では教育政策のプロフェッショナルを養成できる体制が整っていない上に、官庁の採用システム的にもそのような専門家を採用するシステムが構築されていない。
・このため、今回の無償化政策の提案に象徴されるように、日本の教育政策・教育計画は人権アプローチにも経済アプローチにも基づかない、教育政策関係者の勘と経験に基づく突拍子もないものが出てくることがある。
・教育無償化を導入する前に、健全な教育計画を作成できる体制を整えなければ、無償化政策を活かすことはできないであろう。 幼児教育無償化についても、教育へのアクセスよりも質が重要であるにもかかわらず、日本の幼児教育の質は相対的に高いとは言えない。 特に、既に就学率が90%を超えアクセスに大きな課題を抱えているわけでもない状況で、教育資源を幼児教育の質向上に投じるのではなく、アクセス拡大のための政策手段として用いられる無償化に投じるのは得策ではない。
・以上のことから、日本は幼児教育と大学教育の無償化に乗り出すべきではないと考えられる。 より良い教育政策を目指すのであれば、無償化政策よりも、幼児教育については質改善のために教員の増員と準備教育の要求水準を大学レベルに引き上げることで待遇改善を図ることを目指すべきである。
・大学教育については、STEM系に進学する女子学生を増やすために、STEM系に進学する女子学生に対して、授業料が無償になるだけでなく放棄所得分も幾分かカバーされる奨学金を提供したり、公立の女子工科大学を設立したりすることを目指すべきだと筆者は考える。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52467

第一の記事は、教育論議の基本的事項の論点整理しており把握しやすい。 『高等教育に対する投資が、GDP比で・・・OECD平均は公財政支出がGDPの1.1%、私費が0.5%で、合計1.6%となっています。日本の場合は、公財政支出が0.5%、私費が1.0%で、合計1.6%となっています』、と日本の公財政支出の少なさが顕著だ。 『日本の大学進学率はOECD平均を下回っています。アセアン諸国に追いつかれるのは時間の問題です。日本の大学進学率は50%でしかありません。米国、韓国は70%、オーストラリアは90%です』、というのも由々しい問題だ。 『一部文系大学・学生の質は問題だが減らすだけではなく質の維持向上が必須』というのもその通りだろう。ただ、次の記事の教育の効果もよく考える必要がある。
第二の記事は、日本では軽視されがちな教育の効果を論じたもので、興味深い。 『日本は幼児教育と大学教育の無償化に乗り出すべきではないと考えられる。 より良い教育政策を目指すのであれば、無償化政策よりも、幼児教育については質改善のために教員の増員と準備教育の要求水準を大学レベルに引き上げることで待遇改善を図ることを目指すべきである。 大学教育については、STEM系に進学する女子学生を増やすために、STEM系に進学する女子学生に対して、授業料が無償になるだけでなく放棄所得分も幾分かカバーされる奨学金を提供したり、公立の女子工科大学を設立したりすることを目指すべきだと』、との結論は説得的である。こうした理論的見地からの教育論は有意義だ。
タグ:国際人権規約 ダイヤモンド・オンライン 教育改革 現代ビジネス 安倍政権 (その6)(大学無償化問題を論じる前に持っておくべき問題意識、日本には「教育無償化」が本当に必要なのか? 徹底図解で考える 「勘と経験」で政策を決める危うさ) 鈴木 寛 大学無償化問題を論じる前に持っておくべき問題意識 高校無償化実現から始まった教育無償化の流れとは 中等教育と高等教育の無償化というのは、世界人権宣言・国際人権規約の13条2のbとcに明記 批准留保を撤回しました 先進国の多くは大学授業料無償 高等教育に対する投資が OECD平均は公財政支出がGDPの1.1%、私費が0.5%で、合計1.6%となっています 日本の場合は、公財政支出が0.5%、私費が1.0%で、合計1.6%となっています 大学は国際競争時代に突入 いくら投資すればいいのか現実的な議論 ICT・医療・グローバル人材養成… 成長が見込める知的産業は大卒者が担う現実 今の一部の日本の一部文系大学や文系学生の現状を見て、「こんな大学なら、こんな学生なら、いらない」と印象を持たれるのはやむをえません 大学側にも求められる意識変革 大学経営に総括責任者ポストを ソーシャル・オーケストレーション 「象牙の塔」に籠もる時代の終焉 研究者にもマネジメント感覚が必要だ 日本の大学進学率はOECD平均を下回っています。アセアン諸国に追いつかれるのは時間の問題です 畠山 勝太 日本には「教育無償化」が本当に必要なのか? 徹底図解で考える 「勘と経験」で政策を決める危うさ 大学教育は文字通り「人への投資」 人権アプローチ 質の高い基礎教育を受けられ、能力に応じた高等教育を受けられることは人権 保護者と政府はその権利が行使できる状況を実現する義務 経済アプローチ(人的資本論) 所得向上及び支出削減が見込める(私的収益)。 、税収増・公支出削減につながるため (社会的収益 個々人に完全に教育投資を任せてしまうと社会的に望ましい教育水準よりも低い教育投資水準になりがちであるため、政府による介入が必要となる(外部性)。 日本の教育議論 、「教育の価値は金銭なんかでは計れない」という美辞麗句の下、経済アプローチが無視され、効果も効率も怪しい教育政策を実施しがちな伝統がある 女子教育の拡充が起こると、教育を受けている期間の分だけ平均初婚年齢も上昇することによって、子供を産める期間が減少 親の教育水準が高い世帯ほど世帯所得も高い傾向があるので、これにもよって子供一人当たりの教育投資額が上昇するという効果に拠る所もある より良い家庭教育など(卑近な例として子供の宿題を見てあげられることなどを挙げられる)を通じて母親から子供への知識のスピルオーバーが発生する点も見逃せない 教育投資の外部性は、知識のスピルオーバーだけでなく、治安や公衆衛生でも見られることがある 日本ではまだこの外部性と社会的収益がどれぐらいの規模のものになるのか不明瞭な所が大 文系より理系、男より女が「ハイリターン」 むやみやたらに教育へのアクセス拡大を図るような教育投資を行うよりも、確実に質の高い教育を提供できるような教育投資を実施することが高いリターンへとつながる 貧困層に対する質の高い就学前教育への投資 科学・技術・工学・数学に代表される理数系(STEM系)教育への投資 女子教育への投資 日本の「教育投資」が抱える問題点 日本の就学前教育の就学率は90%を超えており、アクセス面に大きな課題を抱えているわけではない状況 就学前教育における教員一人当たりの児童数は先進諸国の中では群を抜いて多い 高等教育はアクセス面で致命的な課題をいくつも抱えている 学就学率は先進諸国と比べて高くないうえに 進学者に占める女性の割合 先進国の中で最低であるのは大きな課題 日本の修士課程の就学率は先進諸国では群を抜いて低 リケジョの育成にも大きな課題 日本は幼児教育と大学教育の無償化に乗り出すべきタイミングは今ではない 教育の無償化は教育へのアクセスを拡大させるが、教育の質を向上させる効果は持たない 教育へのアクセスが拡大するということは、学生の学費負担分を政府が肩代わりするだけでなく、アクセスが拡大した分だけ学校建築や教員採用を行わなければ、教室の混雑や教員の多忙化を引き起こし、教育の質が低下 最悪の場合は無償化以前よりも教育のリターンが悪化し得る 日本でここ20年間に進んだ大学教育の拡大は、女子学生が短大に取り残されたまま私立文系型の教育が主導したもので、高いリターンが見込める教育投資が計画されていたとは言い難く、現在の高等教育政策の路線上でアクセスの拡大が起こっても、それは決して高いリターンが見込めるものとはならないからだ 教育政策のプロフェッショナルが不足 本は幼児教育と大学教育の無償化に乗り出すべきではない より良い教育政策を目指すのであれば、無償化政策よりも、幼児教育については質改善のために教員の増員と準備教育の要求水準を大学レベルに引き上げることで待遇改善を図ることを目指すべきである 大学教育については、STEM系に進学する女子学生を増やすために、STEM系に進学する女子学生に対して、授業料が無償になるだけでなく放棄所得分も幾分かカバーされる奨学金を提供したり、公立の女子工科大学を設立したりすることを目指すべき
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暗号通貨(仮想通貨)(その3)(ビットコイン分裂 仮想通貨間競争の勝敗は「使いやすさ」が決める、仮想通貨を用いた新しい資金調達法が爆発的に拡大、中国「仮想通貨取引全面禁止」のインパクト 自由な通貨 vs 党による管理) [金融]

暗号通貨(仮想通貨)については、7月12日に取上げたが、今日は、(その3)(ビットコイン分裂 仮想通貨間競争の勝敗は「使いやすさ」が決める、仮想通貨を用いた新しい資金調達法が爆発的に拡大、中国「仮想通貨取引全面禁止」のインパクト 自由な通貨 vs 党による管理) である。

先ずは、財務省出身で早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏が8月10日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ビットコイン分裂、仮想通貨間競争の勝敗は「使いやすさ」が決める」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・8月1日に、中国の大手マイニング会社らが主導して「ビットコインキャッシュ」(BCC、またはBCH)という新しい仮想通貨が生み出されたが、滑り出しは低調だ。これに対して、ビットコイン(BTC)は、取引処理速度の高速化を図り、まったく新しいタイプの取引を可能にしようとしている。こうした見通しもあり、ビットコイン価格は史上最高値をつけた。 仮想通貨間の競争は、かつて経済学者のハイエクが夢見た貨幣発行が自由化された世界を実現しつつある。
▽新通貨BCCは、低迷 BTCは史上最高値
・8月1日にビットコインキャッシュ(以下BCC)という新しい仮想通貨が生み出された。 ビットコイン(以下BTC)には、取引が急増する中で、取引スピード低下などの「拡張可能性問題」があったが、これを解決するための1つの方策として、取引を記録するブロックのサイズの上限を8メガバイトまで拡大しようとしたのがBTCだ(現状では1メガバイト、(注)BTCではなく、BCCの間違いでは?)。
・しかし、滑り出しは低調だった。 最初のブロックが採掘されるまでに5時間かかり、つぎのブロックが13時間かかった(BTCでは1ブロックが10分間)。 これは、マイナーの支持を集められなかったためだ。 現状ではViaBTC、Bitcoin.comなどごく一部のマイナーしか採掘に参加しておらず、計算力がBTCに比べると低い。このため、BCCを売って他の仮想通貨にするのも困難だった。
・ただし、8月4日には、少し改善され、1時間に1ブロック程度になった。これは、プログラムの規則にしたがって、マイニングの難度を自動的に引き下げたからだ(「Bitcoin Cash Block Production Accelerates as Mining Difficulty Adjusts」参照)。
・しかし、マイニングの難度をあまり下げてしまうと、大手マイナーの優越性が失われる。ブロック形成のための時間は短縮されるが、マイナーにとっては「痛し痒し」といったところではないだろうか? 新通貨誕生後、図表1に示すように、BTCの価格は上昇して、史上最高値をつけた。これに対して、BCCの価格は、図表2に見るように、下落している。
▽BCCにはエコシステムがない 利用者が増えるほど「価値」上がる
・BTCが作られた背景は、この連載の「ビットコインは8月1日頃に本当に分裂するのか」(7月20日)で書いたとおり、取引処理能力を高める新規格「Segwit」が導入されると、ジハン・ウーが率いるマイニング会社ビットメイン(Bitmain)の製品「ASICBoost」が使えなくなってしまうからだ。 その意味では、BCCの創設は、ジハン・ウーによる「反乱」とも言えるもので、利用者の便宜を向上させるために作られたとは言えない。そのようなものに人気が集まらないのは、考えてみれば当然のことだ。
・重要な点は、BCCには開発者、利用者、取引所、受け入れる店舗などが結びついて形成される「エコシステム」が整備されていないことだ。「The Bitcoin Cash Price: Questions, Answers and More Questions」もこの点を指摘している。 仮想通貨は、使われることによって初めて価値を持つ。そして、利用者が増えるほど価値が上がる。つまり、「ネットワーク効果」が顕著に働く。
・BTCの場合は、日本では、資金決済法が改正されて仮想通貨の法的な位置づけが明確化されたこともあり、取引所も増えている。全世界的に見れば、取引所もウォレット(財布)も、すでに多数存在している。 また、いまだ限定的であるとはいえ、BTCを受け入れる店舗が増えている。 マイナーも多数いるし、優秀なコア開発者も多数いる。
・また、流動性も重要だ。1ブロックの取引を確定するのに何時間もかかるのでは、通常の経済取引では使えない。流動性を高めるには、多数の取引者、取引所、マイナーが存在することが必要だ。 こうしたインフラは、BTCから「分岐」したからといって自動的に生まれるわけではない。BCCが生き残るためには、インフラを整備し、BCCがBTCと同じように便利で使いやすい仮想通貨であることを、一般の利用者に説得的に示さなければならない。 そう考えた場合、BCCを受け入れる店舗や取引所が今後、増えるだろうか? BCCがBTCを上回るインフラを持つようになるとは、とても考えられない。
▽ライトニングネットワークの導入でBTCは高速化を図る
・他方で、BTCには今回の改善で「Segwit」が導入されることとなったが、これによって「ライトニングネットワーク」という仕組みを導入するための基礎的な条件が整備された。 8月3日の前回に指摘したように、これによって高速化とコスト引き下げが可能になり、マイクロペイメント(少額決済)が実用的になる。
・これまでの商取引で利用されている現実通貨がBTCに代替されるだけでなく、まったく新しいタイプの取引も可能になる。例えば、機械間でごく少額の金銭の受け渡しを行なうことなどができるようになるだろう。 これに対して、BCCではブロックの容量を増やすといっても、最大8倍になるだけだ。仮に取引量が増えたら、さらに拡張する必要が生じるだろう。
・ビットコインを巡る今回の一連の出来事で何よりも重要なのは、「Segwit」の導入が、強権的に行なわれたのではなく、民主的な方法で行なわれたことだ。 ただし、これですべてが決着したわけではない。「Segwit2」の合意では、11月にブロックのサイズを引き上げることになっている。これがどうなるかが注目される。
▽良貨が悪貨を駆逐する ハイエクの夢見た貨幣自由化が実現
・現在起きているのは、BTCとBCCの競争だ。そして、使い勝手でいえば「良貨」であるBTCが、「悪貨」であるBCCを駆逐している。 ところで、「悪貨が良貨を駆逐する」という有名な「グレシャムの法則」がある。これと、以上で述べたこととの関連について述べておこう。 オーストリア学派の経済者であるフリードリヒ・フォン・ハイエクは、1930年に出版した『貨幣の非国有化』(Denationalisation of Money)の中で、つぎのように論じた。 ハイエクは「悪貨が良貨を駆逐する」のは、「悪貨と良貨で貨幣の価値が違うにもかかわらず、同一の価格付けがなされているためである」と指摘する。仮に価値に応じて価格付けがなされるなら、「良貨が悪化を駆逐する」ことになる。 これこそが、BTCとBCCの間で、いま起こっていることだ。
・ハイエクによれば、現在の経済のさまざまな問題は、国家が貨幣発行を独占していることによって生じている。「そこで、これを改革し、銀行がそれぞれ独自の預金通貨を発行できるようにする。そしてお互いに価値の競争をさせる。そうすれば、価値の高い通貨が生き残るだろう」というわけだ。 ハイエクのこの提案は、実現することはなかった。
・しかし、仮想通貨間の競争は、かつてハイエクが夢見た「貨幣発行が自由化された世界」の実現だと考えることができる。
http://diamond.jp/articles/-/138209

次に、同じ野口氏が8月31日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「仮想通貨を用いた新しい資金調達法が爆発的に拡大」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・ICO(Initial Coin Offering)が、ブロックチェーン関係のスタートアップ企業の新しい資金調達方法として注目を集めている。 ブロックチェーン関連企業がICOで調達した資金総額は、この数ヵ月で急激に増えており、ベンチャーキャピタルからの調達額を上回っている。
・これまでスタートアップ企業は、アイディアを実際の事業に具体化する段階でベンチャーキャピタルの資金力に頼る必要があったが、もはやそれに頼る必要性がなくなった。このため、さまざまなイノベーションがビジネスとして孵化するスピードが高まる可能性がある。 ICOは、このように新しい可能性を開く革新的方法だが、最近の状況にはバブルの様相があることも否定できない。
▽独自の「トークン」を発行 仮想通貨取引所に「新規上場」
・ICO(Initial Coin Offering)は、これまでスタートアップ企業が行なってきたIPO(新規株式公開)のようなものだ。ただし、株式ではなく、仮想通貨を用いて資金調達を行なう。 これは、一種のクラウドファンディングであり、すべてはインターネット内で完結する。
・IPOより遥かに簡単であり、投資銀行や証券会社のような第三者の補助を必要としない。このため、IPOの場合のような巨額の手数料を必要としない。 『ニューズウィーク』(日本語版、2016年7月4日)は、「仮想通貨の投資ファンド『The DAO』が市場ルールを変える」の中で、ICOは投資家にも資金調達者にも新しい可能性を与えるものであり、「資本の民主化」だと評価した。
・新しいプロジェクトに関する「ホワイトペーパー」と呼ばれる事業計画を書けば、誰でもICOを実行できる。  逆に言えば、インチキも多い(これについては、後で述べる)。 ICOに関するニュースは、CoinDesk ICO Trackerで得ることができる。
▽プレセールからローンチへ そして上場
・資金調達は、つぎの3つの段階を経て行なわれる。
 (1)第1段階 ICO 新しいサービスを開始する前に、そのサービスで利用される仮想通貨を販売する。この仮想通貨は、「トークン」と呼ばれる。 プロジェクトの主催者は、サービスに使われる技術やビジネスモデルを「ホワイトペーパー」と呼ばれるレポートにまとめて公表する。 投資家は、ホワイトペーパーを読んで、投資する価値のあるサービスか否かを評価し、成功するだろうと考えれば、トークンを購入する。
+この段階では、サービスが実際に提供されるには至っていない。開発すらされていないかもしれない。だから、トークンの価値を評価するのは、きわめて難しい。 この段階がICOだが、「クラウドセール」とか「プレセール」とも呼ばれる。 投資家に情報を与えるため、プレセールの予定を取りまとめて公開しているウェブサイトが存在する。 そうしたサイトのリストを、CoinDeskが、The Ultimate List of ICO Resourcesとして作成している。 この中で有名なものとしては、ICO Countdownがある。
 (2)第2段階 ローンチ システムが開発されれば、実際にサービスの提供が開始される。これを「ローンチされた」ということが多い。
 (3)第3段階 上場 有望と判断されたトークンは、仮想通貨取引所で取引される。これは、「上場される」と表現されることが多い。
▽今年に入り14.9億ドル調達 日本でも今秋、立ち上げ
・上述したCoinDesk ICO Trackerが示しているグラフによると、今年に入ってから8月22日までのICOによる資金調達は、14.9億ドル(約1600億円)にのぼり、2016年通年の2.6億ドルをすでにはるかに上回っている(図表1参照)。
・ICOによる最高の調達額は、Tezosというプロジェクトが今年7月に調達した2.32億ドルだ。 これは、バグやシステム修正が必要な場合にブロックの分岐(フォーク)を行なわずに修正ができるブロックチェーンを開発しているプロジェクトだ。 また、エストニア共和国が、「e-Residencyプログラム」の一貫として、ICOを計画している(「This European country may hold an ICO and issue its own cryptocurrency」参照)。
・16年までのICOの主要なものは、拙著『ブロックチェーン革命』(日本経済出版社、2017年、第9章)で紹介した。そこでは、The DAO、Augur、Etherium、DigixDAOなどを紹介した。  その後の注目すべきICOとして、つぎのようなものがある。
*IOTA IOTAのプロジェクトは、前回コラム「仮想通貨はウェブコンテンツ有料配信の支払い手段として有望だ」で紹介した。 15年の11~12月にICOを行なっていたが、今年の6月に大手取引所Bitfinexに上場した。当初の資金調達額は3000BTC(約1億2000万円)だったが、bitfinnexに上場してすぐに、価格が500倍も上昇した。 そして現在は、仮想通貨の時価総額リストで第6位だ。  +Gnosis 17年4月にICOを行ない、10分で目標額に達した。
*Brave ブラウザ開発企業Braveが、今年の6月に、わずか30秒間で3500万ドルを調達した
*バンコール ブロックチェーン・プロジェクト「Bancor Protocol」が、ICOを通じ、3時間で1.5億ドル相当を調達した。
*COMSA 日本では仮想通貨取引所運営のテックビューロが、今年の10月に、COMSA(コムサ)というプラットフォームを立ち上げ、トークンを販売する仕組みを提供する予定だ。
▽プロジェクト失敗すれば無価値に 当局も規制対象にする動き
・ICOに関しては、「どうすれば儲かるか」という類いの話が多い。 しかし、もっとも重要なのは、対象とされているプロジェクトが成功するかどうかの見極めだ。 この評価は、普通はきわめて難しい。プロジェクトが失敗すれば、無価値なコインを入手することになる。
・そうでなくとも、ICOを利用した詐欺は多く発生している。 Chainalysisによると、仮想通貨関連の詐欺による被害額は、2017年で約2億2500万ドル(250億円)に達した(「Cryptocurrency Cyber Crime Has Cost Victims Millions This Year」参照)。
・アメリカ証券取引委員会(SEC)は、17年7月に、ICOで発行される仮想通貨は条件によって「有価証券」に該当し、規制対象になるという警告を発した。シンガポールでも同様に規制の動きがある。
▽値上がり期待でバブルの様相 可能性つぶさない規制の仕組みを
・18世紀のイギリスで、南海会社の株価値上がり期待からバブルが発生し、多くの人々が投機に走った。これに刺激されて多くの株式会社が設立されたが、その中には、「誰もそれが何であるかわからないが、とにかく莫大な富を生み出す企業を運営する会社」というのもあった(チャールズ・マッケイ『狂気とバブル』、パンローリング、2004年、原著は1852年)。
・これと似たようなICOが最近、実際に行なわれた。 それは、EOSという仮想通貨でのことだ。 「トークンの使い道がなく、無価値だ」と、EOSの公式サイトにはっきり書かれている(The EOS Tokens do not have any rights, uses, purpose, attributes, functionalities and features, express or implied, including, without limitation, any uses, purpose, attributes, functionalities and features on the EOS Platform)。  それにもかかわらず、今年6月に行なわれたICO開始後18時間で、16億円超の資金を調達してしまった。その後も資金調達が進み、第1回の調達額は時価191億円となった。 そして、EOSは、bitfinexという取引所に上場された。その一方で、ICOが1年も続く。つまり、「プレセール」中の公式サイトで安く買えるのに、取引所で価格が上昇し続けているという、なんとも不可解なことが起こっている。
・18世紀のイギリスでは、バブルが崩壊して暴落し、大きな社会問題となった。この経験から株式会社が禁止され、イギリス経済の発展に大きな制約となった。 ICOについても、同じようなことが起きれば、せっかくの新しい可能性をつぶしてしまうことになる。どのような規制の仕組みを作るかが、考えられなければならない。
http://diamond.jp/articles/-/140439

第三に、ジャーナリストの福島 香織氏が9月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「中国「仮想通貨取引全面禁止」のインパクト 自由な通貨 vs 党による管理、攻防の行方は…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・中国が全面的にICO(仮想通貨発行による資金調達)の禁止に踏み切った。そのせいで元建てビットコインは大暴落。9月8日までの一週間で20%ほど値下がりしたとか。今のタイミングで決断したのは、党大会前に金融リスク要因を少しでも減らしたいから、らしい。党大会後に中国経済のハードランディングは避けられないとみて、資本家や企業家、小金持ちの官僚・政治家たちは資金移動や資金洗浄の道を探しているのだが、習近平政権は徹底してキャピタルフライトへの監視の目を光らせている。近年、資金洗浄、資金移動の手法として需要がのびていたICOも9月4日、ついに全面的に取引所閉鎖の通達を出されたという。中国のビットコイン大手三大取引所、OKコイン、ビットコイン・チャイナ(BTCチャイナ)は8日までに、この情報を確認しており、中国では当面、ICOは締め出されることになる。
▽26億元以上が凍結・払い戻しに
・改めて説明すると、仮想通貨というのは、ブロックチェーンというコンピューターの分散型台帳技術を使って作り出すデジタルトークン・暗号通貨のことだ。ビットコインやイーサリアムといった名前がよく知られているだろう。その仮想通貨によるクラウドファンディングで資金調達をしてプロジェクトを遂行したり、あるいは資金洗浄、資金移動に使うことが中国ではこのところのブームだった。
・仮想通貨の魅力はとにかくその価値の乱高下の激しさだ。わずか数カ月で3倍から10倍の価値になるなど普通だ。ときには1000倍の収益率もあるとか。中国人はもともと博打が好きなので、一攫千金的なビジネスに惹かれる傾向がある。さらに中国の電気代の安さが、コンピューターによる高速計算が必要な仮想通貨を“掘り出す”マイニングを行うのに適しており、玉石混交の仮想通貨投資に熱狂する一種のバブル状態に突入していた。
・仮想通貨は中国の一般市民の家計にはほとんど影響はないが、2017年上半期のICO発展状況報告(国家インターネット安全技術専門家委員会)によれば、中国国内で65のICOプロジェクトがスタートしており、その累計融資規模は26.16億元、参加人数は10.5万人以上。つまり10万人以上が、65の仮想通貨プラットフォームによって集めた26億元以上の資金が事実上凍結、あるいは払い戻し処理を受ける、という話だ。この数字はむしろ控えめで、実際は200万人以上が仮想通貨投資を行っているという統計もある。
・中国当局側の規制理由の建前は、仮想通貨によるクラウドファンディングなどは一種の非合法融資であり、金融詐欺やねずみ講などの違法犯罪活動にかかわる行為、金融秩序を著しく乱すもの、というものだ。一説によると、中国の仮想通貨は700種類ぐらいあり、そのうち、まともな仮想通貨は1%に満たず、その他は詐欺まがいのものだとか。また匿名取引を可能にするICOはテロや反政府活動に資金が流入する可能性もあり、当局の監視をぬって北朝鮮を含めて第三国に資金移動することも可能という点では、中国で規制がかかるのは時間の問題とも思われていた。
▽公式不良債権は51兆元、実態は…
・ただ、この半年間で、ここまで企業家、資本家たちがICOバブルに熱狂したのは、習近平政権下での、いわゆる企業家や資本家への管理・監視強化の動きとも関係がある。対外投資一つ、国外資本の購入一つ、いちいち党の許可を受けなければならないようになっていく中、中国の正規金融システムが関与しない仮想通貨は柔軟な資金調達や資金移動の裏口という面もあった。
・中国の金融状況を少し整理しておくと、中国が目下抱える最大の経済リスクは言うまでもなく金融リスクである。英格付け会社フィッチ・レーティングスの中国⾦融アナリストがまとめたリポートでは中国の金融システムが抱える不良債権は公式数字を6.8兆ドル上回り、今年末までに最低7.6兆ドル(51兆元)、不良債権比率は公式値の5.3%を大きく上回る34%と発表したことが、フィナンシャル・タイムスなどによって報じられた。四大銀行の不良債権比率が今年6月時点で5年ぶりに低下したとして、改善傾向にあるとの報道もあるが、実際のところは、不良債権受け皿会社(バッドバンク)に不良資産を移しただけで、数字のごまかしともいえる。ウォールストリート・ジャーナルの最近のコラムによれば、バッドバンク業界二位の中国信達資産管理会社は大手銀行の不良資産の6割を引き受けているが、すでにその処理能力を超えており、引き受けた不良債権の減損額はこの半年で2倍以上に膨らんだという。
・しかも、習近平が打ち出す新シルクロード構想「一帯一路」戦略に従って、大手銀行四大銀行は目下最低でも一行につき100億ドル以上の融資を命じられている。当たり前のことだが、一帯一路戦略は経済利益を見込んだプロジェクトではなく、中国の軍事上の戦略の意味が大きい。一帯一路に投じられた資金が回収される見込みはまずないのだから(というより途中で頓挫するプロジェクトも多々あると予想される)、これは中国四大銀行がさらに不良債権を背負わされていくだろう、ということでもある。
▽シャドーバンキングの影
・さらに中国の金融リスクを複雑化しているのは、シャドーバンキングの存在である。シャドーバンキングは、当局の金融引き締めの網をかいくぐって地方政府やデベロッパーが資金を調達するために発達したが、その規模は金融管理当局の管理監督が及ばないだけあって不確かである。ムーディーズはその規模を8.5兆ドルと推計しているが、18.8兆ドルという推計を出しているリポートもある。中国が昨年、金融リスク回避のために債権市場のレバレッジ解消、不動産投機への資金抑制を行ったがため、今年に入ってシャドーバンキング経由の資金調達が再び増えているという。シャドーバンキングを規制すれば、債券市場の流動性が細り暴落するといわれ、債券市場を安定させるためにレバレッジ抑制強化するとシャドーバンキングが活発化し、リスクが一層複雑化する、という悪循環に陥っている。
・中国はこれまでシャドーバンキングによる理財商品のデフォルトをできるだけ回避する方向で来たがために、シャドーバンキングによる理財商品人気は一向に萎えていない。今後はデフォルト発生を増加させることで、痛みを承知で金融市場の健全化を進めるべきだという考え方も党内で出てきているのだが、そうなると金融のシステミックリスクに波及するおそれもある。
・こうしたリスクを内包しながら金融市場を安定させる微妙なかじ取りは、かなりのセンスが必要とされるはずだが、習近平政権はこの一年の間で、中国保険監督管理委員会(CIRC)主席だった項俊波を含む金融規制当局のトップ4人中3人を更迭、失脚させた。その後釜は習近平に忠実なイエスマンばかりの「お友達人事」と揶揄されている。同時に銀行、証券、保険を含む金融業界全般に積極介入し、党のコントロールを強化する方針を打ち出している。
▽金融安定優先も、かじ取りは…
・これは、習近平政権当初に打ち出されている金融市場の自由化、規制緩和に逆行する方針転換となる。規制強化、党の介入強化は、おそらくは中国の経済成長エンジンに大きなブレーキをかけることになるが、習近平としては経済成長を多少犠牲にしても金融の安定化を優先させたい、ということだろうか。だが、習近平にこうしたリスクを内包する金融市場のかじ取りをうまくできるほどの経済センス、金融センスがあるかどうかについては、疑問を持つ人が多い。
・なにせ、習近平はすでに二度、マクロ経済政策で大きな失敗をやらかしている。一度は株高誘導による国有企業債務危機の緩和政策。これは2015年夏の上海株大暴落「株災」という散々な結末で終わった。もう一つは2015年夏の人民元大幅切り下げ。これは国内外を震撼させ、人民元の信用低下を招いただけで、目的を達成しないまま軌道修正された。
・なので、中国の金融市場は、党大会までは安定優先で無理やりリスクを抑え込み経済の安定成長を演出したとしても、その後は、習近平は何かをやらかす可能性は非常に高く、それがリーマンショックより10年ぶりの金融危機の引き金になるのではないか、と中国の投資家たちは気が気ではない。この半年の、仮想通貨への投資バブルは、既存の証券や理財商品や不動産や人民元とは違う、新しい投資対象に資産を分散させたいという心理も手伝ったとみられる。中国の今回のICO規制は、こうした投資家に対する嫌がらせめいたものも感じる。そのあたりが、米国やシンガポールのICO規制と本質的に違うところだろう。
・では今後中国で、仮想通貨は全面的に排除されてしまうのだろうか。そうではないだろう。中国当局はブロックチェーンシステムについてはむしろ非常に期待を寄せており、人民銀行は「法定数字貨幣(仮想通貨)」の研究開発加速を打ち出して専門部署まで設けている。これは中国が官製仮想通貨を創設し、いち早く流通させ、まだその命運の定まっていない仮想通貨・暗号通貨の主導権を握りたいということらしい。
▽「一幣、二庫、三中心」で「党の完全管理」へ?
・人民銀行数字貨幣研究所長の姚前が昨年9月に行った講演録がネット上に掲載されていたので、それを参考にすると、中国としての設計原則として、コントロールの中心化、電子マネーのような生活の中で使えるような携帯化、簡易支払い機能、匿名性、安全性を確保するという。
・さらに「一幣、二庫、三中心」という抽象的概念をあげている。中央銀行が管理する暗号通貨は一種類とし、それを発行庫(人民銀行クラウド)と商業銀行庫(私有の仮想通貨を貯金するクラウド銀行)の二つに置き、認証センター、登記センター、ビッグデータセンターの三つのセンターによって管理するという。そう遠くないタイミングで、モデル地区で試験導入されるという話もある。 
・人民銀行が管理する仮想通貨が他の仮想通貨に先んじて中国国内で広がれば、一つには金融リスク監視や経済全体の取り引きの追跡が簡単となり、経済インフラそのものを劇的に変える可能性がある。そしてその市場の大きさを考えれば世界の基軸仮想通貨の地位も狙えるかもしれない。これは党が完全管理する金融という野望への一つの道となるかもしれない。実際、中国国内のスマホ(電子マネー)決済利用率が98%に上る中で、個人の消費追跡はビッグデータ化され、市民管理に応用されつつあるという。中国にこうした長期的目標があると考えれば、今回のICO規制は、人民銀行版仮想通貨ができる前に、競合するライバル仮想通貨を完全に排除しておく、という意味にもとれる。
・だが、これは暗号通貨の代表であるビットコインが掲げる「中央銀行の存在しない国境のない自由な通貨」という理念と完全に真逆の発想で、よくよく考えると、こんな通貨に支配された世界はなんか怖い。中国のフィンティックがすごい、とやたら持ち上げる記事が最近増えたが、未来をよりよく変えるイノベーションというポジティブなイメージでは到底受け取れないでいる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/091100117/

野口氏の第一の記事では、ビットコインの分裂で新たに生まれたBCCは今のところ、人気はないようだ。 『BCCには開発者、利用者、取引所、受け入れる店舗などが結びついて形成される「エコシステム」が整備されていない・・・仮想通貨は、使われることによって初めて価値を持つ。そして、利用者が増えるほど価値が上がる。つまり、「ネットワーク効果」が顕著に働く』、というのでは、当然のことなのかも知れない。 『良貨が悪貨を駆逐する ハイエクの夢見た貨幣自由化が実現』、との指摘はなるほどと納得させられた。
同氏の第二の記事で、 『今年に入ってから8月22日までのICOによる資金調達は、14.9億ドル(約1600億円)にのぼり、2016年通年の2.6億ドルをすでにはるかに上回っている』、というのは無視できない大きな規模になってきたようだ。 しかし、『仮想通貨関連の詐欺による被害額は、2017年で約2億2500万ドル(250億円)に達した』、ようであれば、 『当局も規制対象にする動き』というのも当然だ。
第三の福島氏の記事は、中国がICOを禁止した背景を、中国ならではの金融状況から見たものだ。金融状況の説明が長すぎるきらいはあるが、あえて全文を紹介した。確かに金融状況は、「薄氷の上を歩いている」ようなもので、割れるのは時間の問題かも知れない。それなのに、 『習近平はすでに二度、マクロ経済政策で大きな失敗をやらかしている』、というのでは、甚だ心もとない感じだ。 当局が 『「一幣、二庫、三中心」で「党の完全管理」へ』、といいうのも、 『ビットコインが掲げる「中央銀行の存在しない国境のない自由な通貨」という理念と完全に真逆の発想で、よくよく考えると、こんな通貨に支配された世界はなんか怖い』、そんな当局の目論みは、水泡に帰するのではなかろうか。
タグ:野口悠紀雄 ニューズウィーク 仮想通貨 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン ローンチ 暗号通貨 福島 香織 、(その3)(ビットコイン分裂 仮想通貨間競争の勝敗は「使いやすさ」が決める、仮想通貨を用いた新しい資金調達法が爆発的に拡大、中国「仮想通貨取引全面禁止」のインパクト 自由な通貨 vs 党による管理) ビットコイン分裂、仮想通貨間競争の勝敗は「使いやすさ」が決める ビットコインキャッシュ」(BCC 中国の大手マイニング会社らが主導 滑り出しは低調 ビットコイン(以下BTC)には、取引が急増する中で、取引スピード低下などの「拡張可能性問題」 、BCCの創設は、ジハン・ウーによる「反乱」とも言えるもので、利用者の便宜を向上させるために作られたとは言えない そのようなものに人気が集まらないのは、考えてみれば当然のことだ BCCには開発者、利用者、取引所、受け入れる店舗などが結びついて形成される「エコシステム」が整備されていないことだ 仮想通貨は、使われることによって初めて価値を持つ。そして、利用者が増えるほど価値が上がる。つまり、「ネットワーク効果」が顕著に働く ライトニングネットワークの導入でBTCは高速化を図る 良貨が悪貨を駆逐する ハイエクの夢見た貨幣自由化が実現 仮想通貨を用いた新しい資金調達法が爆発的に拡大 ICO(Initial Coin Offering) ブロックチェーン関係のスタートアップ企業の新しい資金調達方法として注目 ベンチャーキャピタルからの調達額を上回っている 一種のクラウドファンディング IPOより遥かに簡単であり、投資銀行や証券会社のような第三者の補助を必要としない 「資本の民主化」 プロジェクトの主催者は、サービスに使われる技術やビジネスモデルを「ホワイトペーパー」と呼ばれるレポートにまとめて公表 投資家は、ホワイトペーパーを読んで、投資する価値のあるサービスか否かを評価し、成功するだろうと考えれば、トークンを購入 実際にサービスの提供が開始される 有望と判断されたトークンは、仮想通貨取引所で取引 上場される 今年に入ってから8月22日までのICOによる資金調達は、14.9億ドル(約1600億円)にのぼり、2016年通年の2.6億ドルをすでにはるかに上回っている プロジェクト失敗すれば無価値に 当局も規制対象にする動き 中国「仮想通貨取引全面禁止」のインパクト 自由な通貨 vs 党による管理、攻防の行方は… 全面的にICO(仮想通貨発行による資金調達)の禁止 元建てビットコインは大暴落 26億元以上が凍結・払い戻しに 参加人数は10.5万人以上 実際は200万人以上が仮想通貨投資を行っているという統計もある 規制理由の建前は、仮想通貨によるクラウドファンディングなどは一種の非合法融資であり、金融詐欺やねずみ講などの違法犯罪活動にかかわる行為、金融秩序を著しく乱すもの、というものだ シャドーバンキングの影 金融安定優先も、かじ取りは… 習近平はすでに二度、マクロ経済政策で大きな失敗をやらかしている 一度は株高誘導による国有企業債務危機の緩和政策。これは2015年夏の上海株大暴落「株災」という散々な結末で終わった もう一つは2015年夏の人民元大幅切り下げ。これは国内外を震撼させ、人民元の信用低下を招いただけで、目的を達成しないまま軌道修正された 新しい投資対象に資産を分散させたいという心理も手伝ったとみられる 人民銀行は「法定数字貨幣(仮想通貨)」の研究開発加速を打ち出して専門部署まで設けている 中国が官製仮想通貨を創設し、いち早く流通させ、まだその命運の定まっていない仮想通貨・暗号通貨の主導権を握りたいということらしい 「一幣、二庫、三中心」で「党の完全管理」へ? ビットコインが掲げる「中央銀行の存在しない国境のない自由な通貨」という理念と完全に真逆の発想で、よくよく考えると、こんな通貨に支配された世界はなんか怖い
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民泊解禁(その3)(民泊トラブルが郊外マンションを脅かす、9割が「ヤミ民泊」 プロが教える“怪しい家主”の見抜き方、京都市が「民泊締め付け」策連発、みずほ銀がAirbnbと連携し空き社宅を民泊化する真の狙い) [経済政策]

民泊解禁については、7月19日に取上げたが、今日は、(その3)(民泊トラブルが郊外マンションを脅かす、9割が「ヤミ民泊」 プロが教える“怪しい家主”の見抜き方、京都市が「民泊締め付け」策連発、みずほ銀がAirbnbと連携し空き社宅を民泊化する真の狙い) である。

先ずは、マンション問題について、管理組合向けにコンサルタントをしている須藤桂一氏が6月23日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「外国人が深夜に呼び鈴…民泊トラブルが郊外マンションを脅かす」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・マンション住まいは便利ですが、人間関係をはじめ、ペットや音を巡る問題、不誠実な対応をする施工会社や管理会社など悩みやトラブル、困りごとは尽きません。こうしたマンションのさまざまな問題について、管理組合向けにコンサルタントをしている須藤桂一さんが専門家の立場から、生々しい実例や対応策などをご紹介します。
▽突然、夜中に鳴り響いた  ピンポンから悪夢が始まった
・Aさんは東京郊外の急行の止まらない私鉄駅から15分ほど歩いた30戸程度の小規模マンションに妻と共に暮らしている。リタイヤして住宅ローンからも解放され、巣立った子供の部屋を趣味のオーディオルームに改装して楽しむ、子育て世代にはちょっと羨ましい生活をエンジョイしていたのだが……。 
・ある晩、寝入りかけていたところにドアホンがけたたましくなって“恐騒”曲は突然始まった。Aさんのマンションは玄関がオートロック仕様であり、各住戸のドアホンが鳴るのは玄関で来訪を確認した宅配便業者くらいしかいない。小規模のマンションで他の住人とは顔見知りだが、夜中にピンポンするような人はいないはず。インターホンをとって応えると無言で切れてしまった。恐る恐る外の様子をうかがうと外国人風の男が隣の住戸のドアを同じようにピンポンしている。そして、さらにその向こうの住戸をピンポンするとそのドアが開いて中に入ってしまった。
・このマンションは所有者の意識が高く、協力的で比較的良い管理がなされている。築約20年の割には小綺麗で、今まで集合住宅特有のペット問題や騒音などのトラブルもない。唯一の懸念といえば、入居者が引っ越して賃貸マンションとして使われる家が増えつつあることだった。
・深夜のピンポンから数日後、今度は夕食時にピンポンが鳴り響いた。ドアを開けると見知らぬ外国人女性。持っていた空の醤油差しを指して何やらまくし立てている。どうやら切らしたので分けてくれということらしい。 新築で買って20年以来、居住者同士でもそんなやり取りをしたことはなかったが、勢いに気圧されて分けてあげると、彼女はお礼もソコソコに例の家に戻っていった。その夜、不安になって隣家を訪ねると、ご夫婦が困り果てた顔で“被害” を話してくれた。
▽まさか自宅のマンションに 外国人風旅行者が続々
・最近は数日単位で外国人風の人々がカップルやグループで、入れ替わり立ち替わり出入りしていた。Aさん同様、深夜のピンポン、調味料の無心、果ては電球が切れたので分けてくれと言われる始末。夜中のどんちゃん騒ぎで起こされるのもしばしばとのことだった。しかし、言葉も通じそうにない大勢の若者に文句を言うことも怖く、「我慢するばかり」だという。
・それ以来、Aさんが気をつけて様子をうかがっていると、数日から数週間のうちにキャスター付きのスーツケースをガラガラしながらやってくる、明らかに旅行者風の外国人を頻繁に見るようになった。中には若者男女6人のグループもいた。これでは旅の恥はかき捨ての大宴会になるのは目に見えている。 そういえば最近、今までにはなかったゴミ出しルール違反もよく見られる。ゴミ置場を観察していると、やはりあの部屋の利用者だ。そればかりではない、別の階にも同じように使われている部屋があることを発見してしまった。  え!もしかしてこれって「民泊?」――。
・Aさんは何週間か前にテレビで見た迷惑リポートを思い出した。民泊は自宅を旅行者に宿泊施設として運用する仕組みだが、集合住宅ではトラブルも多いというものであった。 でもまさかである。 Aさんのマンションは都心でもないし、観光地でもない。確かあの番組でやっていたのも東京とか京都とかの話で、「自分とは無縁の話」とスルーしていたのだ。 まさか、なんの変哲もない各駅停車駅から徒歩15分のマンションに民泊なんてあり得ないと思いたかったが、間違いない。セキュリティー重視で購入したファミリーマンションが、不特定多数が出入りする民泊マンションになってしまうのか?憂鬱で趣味も心から楽しめないAさんの今日この頃だ。
▽観光に無縁に見えるマンションが外国人旅行者には好都合という事実
・この事態の背景には、外国人観光客数に宿泊施設数が追いつけないという現実がある。2020年の東京オリンピックまでにと立てられた政府の誘致目標は当初2000万人だったが、急激な増加(2013年/1036万、2015年/1974万)を受けてその目標は2016年に4000万人と上方修正された。
・しかしすでにホテルは慢性的な客室不足、室料の値上がりが起こり、玉突き的にビジネスホテルにさえ影響が現れ、ついにはラブホテルさえ外国人観光客向けに改装され始めている。そしてそれが大都市圏、観光地の民泊数の増加を後押ししているのだ。
・しかし、なぜ観光とは無縁に見える、Aさんが住むようなマンションにまで及んできたのだろう。 実は、今民泊用の物件は都心を中心としてドーナツ状に存在している。理由はいくつか考えられるが、一つには都心の部屋数が頭打ちになっていることがあげられる。民泊に使われていた大規模タワーマンションの多くは管理規約に民泊利用の禁止が盛り込まれつつある。セキュリティー、プライバシーが売りの高級タワーマンションの資産価値を落としかねない事態に、所有者たちが動いたのだ。
・もう一つの理由は、都心、観光地どっちつかずの郊外が、実は旅行者のニーズにマッチしていたということだ。 一見、観光地からも都心からも離れているベッドタウンだが、それは逆に言えば離れている観光ポイントに同じような距離感で行けるというメリットになる。 例えば東京都町田市や神奈川県相模原市などは典型的だ。外国人観光客には外せない東京都心、高尾山、箱根、横浜へ60分以内で到着できる。公共交通機関はどの国よりも便利で安全で正確、スイカやパスモがあれば券売機で悩む必要もない。多言語案内もある。こうして都心や観光地のホテルで高い宿泊料を払うより、買い物や観光につぎ込みたい旅行者は郊外民泊を選ぶのだ。
▽貸す側にも都合がいい民泊という制度
・アメリカ生まれの世界最大の民泊予約サイト「Airbnb」が2014年に日本に登場して以来、提供も利用も気軽にできるようになり民泊は急速に増えている。Airbnbをはじめとする民泊システム自体は善意の提供者、利用者にとって素晴らしいものであることは言うまでもない。 例えば、ありきたりの観光旅行ではなく、アメリカの郊外生活を体験してみたいと思えば、知り合いがいなくてもホテルよりも安く部屋が借りられる上に、ホスト次第だが親しい友人のように迎えられる。
・しかし日本のマンションの場合、まったく異なる使われ方がされている場合が多い。資産運用目的で管理は業者任せ、所有者は遠隔地というケースで問題が起こるのだ。中には賃貸した自室を民泊として貸しているというケースも少なくない。
・所有者はなぜ賃貸ではなく民泊を選ぶのだろう。 話は簡単、より気軽に貸せてより儲かるからだ。「家賃月20万円で貸せるマンション」だとしよう。5人グループに一人4000円で10日貸せば同額だ。短期なので賃貸に関わるトラブルも起きない。突然解約されて収入のない月が発生することもない。やめたい時にはいつでもやめられる。例えば、転勤で帰ってくる予定だが、いつになるかは未定という人にはありがたい。
▽管理規約の改正で民泊利用を禁止
・民泊トラブルは住民と旅行者という立場の違い、文化の違いで発生する。旅行者とすれば高揚した気分で毎晩宴会になるのも自然の成り行きだが、それまで静かに暮らしていた居住者にはたまらない。 すでに起こり始めているトラブルは、冒頭に紹介した突然の訪問や騒音に止まらない。マンションという庶民にとっては安くはない大切な財産が、迷惑どころか犯罪行為の温床になりかねない事態が進行しているのだ。滞在中に勝手に合鍵を作り滞在期間後に侵入する、鍵を転売するといったことが懸念される。
・冒頭で紹介したAさんは、「なんとかしよう」と管理組合の理事長と相談した。その結果、管理組合の理事会は管理会社に他のマンションの規約改正の事例などを調査してもらい、次回の定期総会では民泊禁止に向けて規約改正を目指しているそうだ。 Aさんのマンションのように、管理規約改正で民泊利用を禁止とするのが対策の第一歩だが、規約ができたからといって安心してはいられない。居住目的のはずの賃借人が実は「民泊ビジネスに利用していた」ということまで起きるのだから……。
・新しい住人には所有者、賃借人を問わず、規約を厳守する旨の誓約書を提出してもらう等の対策も考えておかなければならない。さてあなたのマンション、あなたの隣室は大丈夫だろうか?
http://diamond.jp/articles/-/132767

次に、7月22日付け日刊ゲンダイ「9割が「ヤミ民泊」 プロが教える“怪しい家主”の見抜き方」を紹介しよう。
・一般の民家に有料で宿泊する「民泊」絡みの事件が相次いだ。 今月13日には新潟・阿賀町の無職男(73)が、農業体験ツアーの客として自宅に宿泊させた10代女性の体を触り、強制わいせつの疑いで逮捕。
・16日には福岡市のワンルームマンションで民泊を営む男(34)が、利用客の韓国人女性(31)に部屋の中で酒を飲ませて乱暴し、強制性交等致傷の疑いで逮捕された。 「男は『韓国語を勉強している』と言って女性に酒を勧め、女性は2杯ほど飲んで意識を失ったそうです。最初から乱暴目的だったとしか思えません」(捜査事情通) 被害女性は、民泊仲介サイト世界最大手「エアビーアンドビー」を通じて部屋を借りたというから、他人事ではない。
・朝鮮日報電子版(17日付)によると、6月末には福岡県の別の民泊で、天井の火災報知器に隠しカメラが設置されているのが見つかり、20代の韓国人カップルが盗撮されたという。民泊を利用して気ままな夏旅行も悪くないが、ろくでもないホスト(家主)には用心した方がいい。
・ちなみに、福岡市生活衛生課によると、旅館業法の「簡易宿所」として許可を得ている市内の施設は3月末時点で68件。ところが、エアビーアンドビーに登録されている市内の民泊は1500件ほどあるという。 「国内で実際に稼働している民泊は4万件以上といわれますが、福岡市に限らず、9割方は無許可のヤミ民泊というわけです」(厚労省関係者)
・旅行ライターの渡辺輝乃氏がこう言う。 「民泊を利用する前に、仲介サイトなどに載っている利用者のコメントやホストの評価をチェックするのは基本ですが、ホストのフェイスブックなどSNSも閲覧してみてください。これは国内外を問いません。ゲストをきちんともてなし、管理が行き届いているホストのSNSには大抵、家族やゲストと一緒に撮影した明るい写真が多数アップされている。明らかに利益目的の怪しげな民泊は、ホストのSNSもなく、様子がうかがい知れなかったりする。どの自治体も、違法民泊の実態を把握しきれていないというのが現状です。裏を返せば、それぐらいしか良し悪しを見分ける方法がありません」
・そもそも、怖い思いをしてまで民泊を選ぶ必要はない、と渡辺氏はアドバイスする。ゲストハウスや民宿、海外ならB&Bなど、安くていい“合法の宿”は、他にいくらでもある。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/209908/1

第三に、9月5日付けダイヤモンド・オンライン「京都市が「民泊締め付け」策連発、民業圧迫や住民トラブルで」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「これまで管理規約を見直したマンションの内、『民泊禁止』の決定は聞いても、民泊OKとしたという組合は寡聞にして知らない」 日本を代表する観光都市・京都市。今月開かれる定例市議会に、東京都、大阪府に続く「宿泊税」の導入に向けた条例案が提出される。可決されれば、来年度中にも導入される見通しだ。  東京都と大阪府が宿泊料の安い施設を課税対象外としているのに対し、京都市のそれは“全施設”を対象とする見込みだ(修学旅行生は非課税)。年間の税収見込みは市内の宿泊施設全体で20億円に上る。
・背景は、来年6月に施行される民泊新法への対策で、宿泊税の真の狙いは、市内に増え続ける民泊施設にある。 8月、京都市は市内に約1700ある分譲マンションの管理組合に「管理規約の見直しを!」と題した文書を送付した。京都市が管理規約の変更を求める文書の送付は初で、門川大作市長が掲げる集合住宅(マンション)での民泊原則禁止の実現を図るものだ。
・文面では「民泊を禁止しようとする場合は、(中略)管理規約を変更(改正)していただくことが最も確実です」と、個々のマンションで民泊禁止への具体的な行動を求める。 京都市の関係者は、「自分が知る限り」と断った上で、冒頭のようにその効果を語る。「新法施行後に禁止に動いても、民泊営業者の同意が必要となりかねず手遅れになりかねない」(同じ関係者)。
▽ヤミ民泊利用者は110万人
・京都市がこうした民泊の締め付けに動くのには、もちろん理由がある。 目下、市内に5000施設あると推計される民泊物件の内、約9割が無許可のヤミ民泊とされる。そして、高まるインバウンド(訪日外国人客)人気で過去最高を記録した京都市の昨年の宿泊客数1415万人(実数)のうち、修学旅行生客とほぼ並ぶ110万人がこのヤミ民泊を利用したと推計され、ホテルや旅館など既存の宿泊施設を圧迫している。
・その上で、ヤミ民泊の数と比例して、住民トラブルも増加している。 京都市が開設した「民泊通報・相談窓口」に寄せられた「通報件数」は1年間で1400件超。その中身は、近隣のヤミ民泊の相談を始め、民泊利用者の騒音やゴミだし、タバコのポイ捨てといったマナーの問題、さらには「マンションのオートロックが意味をなさない」と言った保安上の不安を訴える声まで様々だ。
・政府が推進する民泊新法の施行まで一年を切った。観光客の増加はありがたいが民泊はお断り、という古都の憂鬱は続く。
http://diamond.jp/articles/-/140995

第四に、7月31日付けダイヤモンド・オンライン「みずほ銀がAirbnbと連携し空き社宅を民泊化する真の狙い」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・7月25日、みずほ銀行が全世界で民泊仲介サービスを提供するAirbnb(エアビーアンドビー)と業務提携を結んだ。 民泊とは、一般の民家に宿泊することを意味するが、近年、民家やマンションの空き部屋を、ホテルや旅館より安い料金で旅行者に貸し出して収益を得るビジネスが、人気を博している。  民泊事業を牽引する存在が、最大規模の民泊仲介サイトを提供するAirbnbだ。貸し手が自分の保有する宿泊先をサイト上に掲載し、その中から借り手が希望に沿った宿を選ぶという仕組みで、その取引量が「市場規模の8~9割を占める」(業界関係者)ほど、民泊市場を席巻している。
・今回のみずほ銀行とAirbnbの業務提携では、みずほ銀行が持つ取引先企業のネットワークを活用。社宅の空き部屋を抱える企業に対して、Airbnbに登録して民泊の宿泊先として利用するよう提案を始める。銀行としては、施設のリノベーション費用の融資によって利益を得る考えだ。
・社宅以外にも、寺や無人駅の駅舎といった、活用されていない資産を宿泊先に作り変えることも検討している。防犯対策が難しい空き家を減らしつつ、宿泊施設の増加によって、地域の観光産業を拡大させることが狙いだ。
▽Airbnbとの業務提携の先にある二つの狙い
・「住宅のリノベーション資金だけで大きなビジネスになるとは思っていない――」 山田大介・みずほ銀行常務執行役員がこう述べるように、みずほ銀行はこの提携によって二つの波及効果が起きることを期待している。 一つ目が、銀行の顧客ネットワークのさらなる開拓だ。 取引先の企業に対して、民泊という新たな成長分野を提案することで、それを足がかりにビジネスの機会を「重層的に伸ばしていく」(山田氏)ことを目指す。
・二つ目が、民泊以外のサービスを提供するスタートアップ企業(新しいビジネスモデルを提供する新規企業)とのさらなる連携だ。 今回の提携には、6月30日にみずほ銀行がベンチャー投資会社のWiLと設立した新会社のBlue Labも参画する。 もともとBlue Labは、先端IT技術を駆使して異業種との間に新事業を作ることを目的に設立され、前出の山田氏が社長を務める。民泊に付随する新事業の創出のために、第1号の業務提携契約を結んだ。 今回の業務提携で一定の効果が出れば、それが“呼び水”として、「民泊の次のアイデアを持った企業がBlue Labに集まってくる」(山田氏)という可能性を期待しており、そこから新しい事業領域に進出する考えだ。
▽銀行の“外”だからこそ成立した業務提携
・実は、このBlue Labこそ、みずほ銀行とAirbnbを結びつけた存在であった。 Airbnbが日本の銀行と連携するのは初めてであり、連携に踏み切った背景に「みずほ銀行の客基盤の広さに加えて、Blue Labの先進的な取り組みを評価した」(田邉泰之・Airbnb日本法人代表)という事情がある。
・一方のみずほ銀行にとっても、Blue Labは提携に必要不可欠な存在だったと見られる。 そもそもBlue Labは、みずほ銀行の持ち株会社であるみずほフィナンシャルグループの出資比率を15%未満に留め、グループ外の企業として打ち出された。 それゆえ、既存の制約に縛られずに企業と連携することが可能であり、山田氏も「銀行主体で行うと、銀行の取引先にホテルがいるのに民泊を支援してよいのかという意見も出たはず。銀行主体では、これだけ素早く業務提携できなかったのではないか」と果たした役割の大きさを指摘する。
・3社連携の詳細な枠組みはこれから固める予定だが、「(みずほ銀行が取り組む)社宅を含めた空き物件の仲介そのものは、奇抜なスキームではない」(前出の関係者)という意見もあり、この連携が他社にはない相乗効果を生み出せるかは未だ不透明だ。 銀行の“外”に出たことの意味を示すためにも、成功事例を早急に生み出すことが必要だろう。
http://diamond.jp/articles/-/136808

第一の記事で、 『都心、観光地どっちつかずの郊外』、の 『自宅のマンションに 外国人風旅行者が続々』、というのでは、当人はさぞかし驚いたことだろう。 『管理規約の改正で民泊利用を禁止』、というのは当然だが、 『居住目的のはずの賃借人が実は「民泊ビジネスに利用していた」ということまで起きるのだから……』、という利用実態からは、実効性は必ずしも期待できないだろう。
第二の記事で、 『「国内で実際に稼働している民泊は4万件以上といわれますが、福岡市に限らず、9割方は無許可のヤミ民泊というわけです』、ということは事実上の「無政府状態」に近いということだ。そうしたなかで、 『「民泊」絡みの事件が相次いだ』、というのはやむを得ない部分があるとしても、「悪評」が一旦立つと、なかなか消えないだけに、困ったことだ。
第三の記事で、 『京都市が「民泊締め付け」策連発』、というのは当然のことだ。 
第四の記事の、 『空き社宅を民泊化』、というのは法人取引強化策としては、面白い試みだ。ただ、集合住宅で一部が空いている場合では、それを民泊にすると、入居している社員とのトラブルも懸念されるため、現実的には難しいだろう。
いずれにしろ、民泊はきちんとした形で発展してもらいたいところだ。
タグ:京都市 業務提携 みずほ銀行 日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン 須藤桂一 Airbnb 民泊解禁 (その3)(民泊トラブルが郊外マンションを脅かす、9割が「ヤミ民泊」 プロが教える“怪しい家主”の見抜き方、京都市が「民泊締め付け」策連発、みずほ銀がAirbnbと連携し空き社宅を民泊化する真の狙い) 外国人が深夜に呼び鈴…民泊トラブルが郊外マンションを脅かす 東京郊外の急行の止まらない私鉄駅から15分ほど歩いた30戸程度の小規模マンション 入居者が引っ越して賃貸マンションとして使われる家が増えつつあることだった まさか自宅のマンションに 外国人風旅行者が続々 今民泊用の物件は都心を中心としてドーナツ状に存在 民泊に使われていた大規模タワーマンションの多くは管理規約に民泊利用の禁止が盛り込まれつつある 都心、観光地どっちつかずの郊外が、実は旅行者のニーズにマッチしていたということだ 賃貸した自室を民泊として貸しているというケースも少なくない 管理規約の改正で民泊利用を禁止 9割が「ヤミ民泊」 プロが教える“怪しい家主”の見抜き方 農業体験ツアーの客として自宅に宿泊させた10代女性の体を触り、強制わいせつの疑いで逮捕 福岡市のワンルームマンションで民泊を営む男(34)が、利用客の韓国人女性(31)に部屋の中で酒を飲ませて乱暴し、強制性交等致傷の疑いで逮捕 福岡県の別の民泊で、天井の火災報知器に隠しカメラが設置されているのが見つかり、20代の韓国人カップルが盗撮されたという 国内で実際に稼働している民泊は4万件以上といわれますが、福岡市に限らず、9割方は無許可のヤミ民泊というわけです 「民泊を利用する前に、仲介サイトなどに載っている利用者のコメントやホストの評価をチェックするのは基本ですが、ホストのフェイスブックなどSNSも閲覧してみてください 京都市が「民泊締め付け」策連発、民業圧迫や住民トラブルで 「宿泊税」の導入に向けた条例案が提出 真の狙いは、市内に増え続ける民泊施設 京都市は市内に約1700ある分譲マンションの管理組合に「管理規約の見直しを!」と題した文書を送付 門川大作市長が掲げる集合住宅(マンション)での民泊原則禁止の実現を図るものだ 市内に5000施設あると推計される民泊物件の内、約9割が無許可のヤミ民泊とされる ヤミ民泊の数と比例して、住民トラブルも増加 みずほ銀がAirbnbと連携し空き社宅を民泊化する真の狙い みずほ銀行が持つ取引先企業のネットワークを活用。社宅の空き部屋を抱える企業に対して、Airbnbに登録して民泊の宿泊先として利用するよう提案を始める 施設のリノベーション費用の融資によって利益 社宅以外にも、寺や無人駅の駅舎といった、活用されていない資産を宿泊先に作り変えることも検討 二つの波及効果 取引先の企業に対して、民泊という新たな成長分野を提案することで、それを足がかりにビジネスの機会を「重層的に伸ばしていく 民泊以外のサービスを提供するスタートアップ企業(新しいビジネスモデルを提供する新規企業)とのさらなる連携 のみずほ銀行にとっても、Blue Labは提携に必要不可欠な存在 みずほフィナンシャルグループの出資比率を15%未満に留め、グループ外の企業として打ち出された 銀行主体で行うと、銀行の取引先にホテルがいるのに民泊を支援してよいのかという意見も出たはず 3社連携の詳細な枠組みはこれから固める予定
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