So-net無料ブログ作成
前の10件 | -

安倍外交(その2)(今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥、横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる、エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ) [外交]

安倍外交については、1月7日に取上げたままだったが、今日は、(その2)(今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥、横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる、エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ) である。

先ずは、11月20日付け日刊ゲンダイ「安倍外交のツケ 今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ついに白旗か――。この5年間、中国を敵視し、「中国包囲網」を築こうとしてきた安倍政権。ところが、対応を一変させ、嫌いな中国が推し進める国家プロジェクト「一帯一路」構想に参加しようとシャカリキになりはじめている。
・河野太郎外相は18日、「一帯一路」について、「世界経済にメリットがある」と講演で明言。さらに、経団連の榊原定征会長など250人の財界人が、20日から中国を訪問し、「一帯一路」に対する日本企業の取り組みについて話し合う予定だ。
・「一帯一路」構想は、習近平肝いりの国家プロジェクト。海と陸の2つのルートでヨーロッパまでつなぐ現代版のシルクロード構想だ。「一帯」はユーラシア大陸を通ってヨーロッパまで鉄道を敷き、「一路」は東南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパまで各地の港湾を整備して海路でつなぐ。5月に行われた「一帯一路」のフォーラムには、130カ国以上が代表を送っている。
▽トランプ大統領も強い関心
・世界各国が「一帯一路」に関心を強めているのは、巨額な利益を得られるチャンスだからだ。中国が整備する陸運ルートと海運ルートにうまく加えさせてもらえれば、企業の海外展開を加速させられる。 なにしろ「一帯一路」経済圏のGDPは、2400兆円に達する。中国と対立しているように見えるアメリカも、加わっている。
・「トランプ大統領がビジネスマン出身ということもあって、アメリカも一帯一路に強い関心を持っています。9月中旬には、一帯一路で連携しようと米中の企業関係者50人が北京の高級ホテルで密かに顔を合わせています。エネルギー、電力、建設、鉄道……業種はさまざまです。アメリカ側は、北京のアメリカ大使館が呼びかけたようです。ヨーロッパでは、ドイツが熱心に動いています」(外交関係者)
・日本は「このままでは取り残される」と慌てて動きだした形だ。しかし、いまから動きだして間に合うのか。元外交官の天木直人氏が言う。 「日本企業は相当な危機感を持っているはずです。ただでさえ、日本企業は国際競争力が低下しているのに、ビジネスチャンスを逃すことになりかねないからです。一帯一路の玄関となる東南アジアには、日本企業の拠点が数多くありますからね。安倍首相は、世界の動きを完全に見誤った格好です。どうせ一帯一路に参加するなら、もっと早く動くべきでした」  安倍外交は、ことごとく失敗している。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/218005/1

次に、元レバノン大使の天木直人氏が12月10日付けの同氏のブログに掲載した「横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる」を紹介しよう。
・ニュースの醍醐味はやはりスクープだ。 きょう12月10日の東京新聞が一面トップで大スクープを報じた。 日本政府は横田空域の返還交渉を米国に求めない方針である事が、外務省と国土交通省、そして在日米軍などの取材でわかったというのだ。
・横田空域とは、東京都心上空を含めた首都圏の広大で、高度の空域を、米軍が日米安保条約によって排他的に使用している空域の事である。 その空域を避けて民間航空機は飛行しなければいけないので危険極まりない。 そして、その危険性は、2020年の東京五輪に向け、羽田空港の国際線発着枠を増やすため、さらに高まる。 当然ながら、日本政府は米国政府と協議して来たはずだ。
・ところが、東京新聞の問い合わせに、外務省は「横田空域の削減(返還)は求めない」と答え、国交省は「2008年の削減で当面の航空需要には対応できており、これ以上の削減を求めるのは米軍の運用上もむつかしい」と答えたというのだ。
・一方で、在日米軍司令部は、「横田空域のいかなる部分に関しても、永久的な返還の実質的な交渉は行っていない」と答えたという。 これを要するに、日本政府は米国の大きな壁の前に横田空域の返還交渉求めても応じてもらえなかった、だから断念せざるを得なかった、ということだ。
・これは大スクープだ。 東京五輪に参加する世界中の国々の国民に、この事を知らせなければいけない。 このような主権放棄を許しているのは、世界広しといえども日本しかない。 そして、この主権放棄は、たんに日本国民の生命と安全を犠牲にするだけでなく、東京五輪に参加する世界中の選手や、東京五輪を見に来る世界中の国民の生命と安全を危険にさらすことになる。
・日本は、唯一の被爆国でありながら、米国の核の傘に守られているからといって、核兵器廃絶に反対して世界に恥をさらした。 恥さらしのついでに、この横田空域という恥さらしを世界に知らしめて、世界の圧力で、少なくとも東京五輪期間中だけでも横田空域の全面開放を米国と交渉して勝ち取るべきだ。
・その蟻の一穴が辺野古移設阻止につながり、歪んだ日米不平等条約の改定につながる事になる。  日本政府は横田空域の返還交渉を断念してはいけない。 それが出来ないようでは、何をやっても日本は世界からまともな国に見られない。 これ以上世界の笑いものにならないためにも、この東京新聞の一大スクープを活かさなければいけない。
・はたしてきょう12月10日の東京新聞のスクープ記事は、他のメディアが後追い記事を書いて、ひろく国民の知るところになって、世論を気にする対米従属の安倍首相を追い込む事になるだろうか(了)
http://kenpo9.com/archives/2960

第三に、東洋大学教授の薬師寺 克行氏が12月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界中の首脳たちが、「エルサレムをイスラエルの首都と認め、大使館を移す」という米国トランプ大統領の決定に困惑し、異口同音に異議を唱え、非難の声を上げている。ところがひとり、日本の首脳だけが固く口を閉ざし、不安げにあたりを見回している。世界第3の経済大国であることを誇り、トランプ大統領との緊密な関係を自慢している日本が、この問題に対して黙り込んでいる異常な光景だ。
・米国のメディアを中心に、トランプ大統領の決定については、中東和平への具体的な道筋を描いての戦略的判断などではなく、中間選挙を有利に進めたいためなど内政が理由と報じられている。歴代の米大統領はイスラエルとパレスチナのトップ会談を設定するなど、和平実現に汗をかいてきた。トランプ大統領の決定はこうした努力を否定する自己中心的なものである。
・同時にこの決定は中東に新たな悲劇を生み出す。ガザ地区を実効支配するハマスの指導者は「インティファーダ―」(住民蜂起)を呼び掛け、すでに多くの死傷者が出ている。今後さらに無数の人たちが危険にさらされ、生活を破壊されるであろう。中東の地以外でのテロの可能性も高まっている。1人の人間の誤った決断が世界中を新たな混乱に陥れるのであるから、非難されるのは当然である。
▽先進国首脳が非難、行動的だったマクロン大統領
・各国首脳らの反応を見ると、親米国を含めほぼ例外なくトランプ大統領の決定を、「国連決議などに反する」「中東のみならず世界中を不安に陥れる」などと批判している。アラブ諸国が激しく批判するのは当然だが、英国のメイ首相、ドイツのメルケル首相、イタリアのジェンティローニ首相ら主要国も同じトーンで批判している。中でも行動的だったのはフランスのマクロン大統領で、トランプ大統領が正式に決定する前に電話で再考を促してさえいる。ロシアや中国も「状況を複雑化させる」などと懸念を表明している。
・それに対し日本政府は、菅義偉官房長官が記者会見で記者から繰り返し質問受けたが、「本件の動向については大きな関心を持っており、これからも注視して参りたいと思っております」などと書かれた紙を読み上げるだけで、政府としての評価は言わずじまいだった。河野太郎外相は「トランプ氏が恒久的な和平合意の促進への強固なコミットメントと二国家解決への支持を表明したことは評価する」と、ピント外れのコメントをしている。安倍晋三首相はこれまでのところ、この問題について一切、発言をしていない。そして、政府の反応に合わせてか、欧米に比べ日本のメディアの報道ぶりは極端に少ない。国民にとって中東はあまりにも遠く関心を持てない地域なのである。
・むろん日本政府が何も考えないでいい加減な対応をしているのではない。外務省などを中心にどう対応すべきか検討したうえでのコメントだろう。したがって意識的、意図的な判断停止、ノーコメントなのである。しかし、その理由をだれも公に説明はしていないから正確なことはわからない。
・おそらく北朝鮮の核ミサイル問題に直面している今、トランプ大統領の対応を批判することでこれまで築き上げてきた信頼関係を崩すわけにはいかないというのが最大の理由だろう。 パレスチナ問題は欧州の帝国主義や植民地支配の生み出した問題であり、日本には関係のない話である。一方で北朝鮮問題は直接の脅威であり、政策の優先順位は明らかだ。またトランプ大統領は、相手が外国の首脳であっても自らを批判する者に対して非常に激しい反応をしてきた。日本政府が欧州各国と同じように大統領の決定を批判すれば、機嫌を損ねてしまい、北朝鮮問題への対応で協力を得られなくなるかもしれない。そんなことは何としても避けなければならない。もちろん判断停止の姿勢をとれば、日本が国際社会で浮いてしまうことはわかりきっている。それよりも北朝鮮問題を優先するという判断だろう。
▽「安倍首相がトランプ大統領と親密」は本当か
・となると安倍首相が作り上げてきたトランプ大統領との信頼関係を疑ってみたくもなる。 昨年の米大統領選でトランプ氏が当選後、安倍首相は各国首脳に先駆けて就任前に会い、その後も繰り返し会談するとともに頻繁に電話で話し合い、大統領と最も親しい首脳であることを喧伝してきた。首相秘書官らは政治や外交の経験がまったくなかった大統領に対して安倍首相が指南役としてさまざまなアドバイスをし、大統領もそれを素直に受け入れていると強調していた。
・11月のアジア歴訪でも、大統領は安倍首相の発案である「自由で開かれたインド太平洋戦略」を気に入って、ベトナムの講演などで繰り返し発信してくれたなどと説明していた。それほどの信頼関係があるのであれば、なぜエルサレム問題でアドバイスをしないのだろうか。TPP(環太平洋パートナーシップ)協定や地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱についても、日本政府は米国に苦言を呈することを控えている。「物言えぬ信頼関係」なのだろう。
・米国に対する日本の外交姿勢は冷戦中を含めしばしば「対米追随」と揶揄されてきた。1970年代には中国の国連加盟反対などで最後まで米国と歩調を合わせた。そのため各国からは、米国の対応を見れば日本がどうするかわかるとさえ言われてきた。しかし、貿易摩擦問題などでは米国と正面衝突してきた歴史もある。またアジアを中心に時に米国と対立しつつも日本独自の外交を展開してきた歴史もある。
・外務省幹部の1人は現在の状況について、「トランプが嫌がりそうなことは一切、言わないしやらない。戦後歴代政権の中で、最も米国への従属に徹した政権だろう」と話している。 残念なことに、物言わないのは米国に対してだけではない。例えばカンボジアだ。かつて日本は初めてPKO(国連平和維持活動)のため自衛隊を派遣し選挙実施と復興を支援した。いまカンボジアはフン・セン首相が野党を解党に追い込み独裁体制を敷きつつある。しかし日本政府は何の反応もしていない。ミャンマーで起きている少数民族ロヒンギャの迫害問題に対しても日本は目立った動きを見せていない。
▽対北朝鮮以外は視野にない「外交小国」
・まるで外交のあらゆるエネルギーを米国との良好な関係維持と北朝鮮問題への対応だけに注入しているかのような単線的外交になっているのだ。 安倍政権は外交面で今、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を看板にしている。その中核は、自由や民主主義、市場経済、人権、法の支配など「普遍的価値」を共有する国々との連携である。また、国会演説などでは機会あるごとに「積極的平和主義」や「地球儀を俯瞰する外交」という言葉を多用している。
・今回のトランプ大統領の決定のように「普遍的価値」に反する政策や出来事に対して政府として明確な評価を示すべきであろう。そうした行動が伴わなければ、「インド太平洋戦略」を信じる者はいなくなるだろう。
・世界の政治や経済がグローバル化した時代に、自国の利益実現のためだけに奔走する狭い外交は、結果的に他国から信頼されず軽蔑さえ受けかねない。「普遍的価値」「地球儀を俯瞰する外交」を掲げるのであれば、それを踏まえた「徳のある外交」が世界から信頼を得るためには不可欠だ。
・残念ながら安倍政権からはそのような発想を感じられない。このままでは日本は引き続き「外交小国」であり続けることになる。
http://toyokeizai.net/articles/-/200802

第一の記事で、日本の財界人による訪中団については、11月22日付けの産経新聞では、『経団連の榊原定征会長は「中国が再び日本経済から環境や企業管理などを学ぼうとする姿勢が出てきたことを歓迎する」と評価。中国側には、習近平国家主席が提唱する広域経済圏構想「一帯一路」に日本企業の協力を得たいとの思惑があるが、透明性があやふやな事業も多く、日本企業には慎重論も根強い』、と「一帯一路」については、日刊ゲンダイの記事はやや先走り過ぎのようだ。
http://www.sankei.com/politics/news/171122/plt1711220034-n1.html
第二の記事で、横田空域返還問題については、一時は決まった既定路線であるかのような報道も出たが、結局、 『日本政府は米国の大きな壁の前に横田空域の返還交渉求めても応じてもらえなかった、だから断念せざるを得なかった』、というのは誠に残念である。 『この主権放棄は、たんに日本国民の生命と安全を犠牲にするだけでなく、東京五輪に参加する世界中の選手や、東京五輪を見に来る世界中の国民の生命と安全を危険にさらすことになる』、との指摘はその通りだ。ただ、『東京新聞のスクープ記事は、他のメディアが後追い記事を書いて、ひろく国民の知るところになって、世論を気にする対米従属の安倍首相を追い込む事になるだろうか』、というのは、他のメディアが黙殺したため、多くの国民は知らないままとなった。メディアの安部政権に対する「忖度」のあまり、国民の知る権利は無視されたようだ。
第三の記事で、 『世界第3の経済大国であることを誇り、トランプ大統領との緊密な関係を自慢している日本が、この問題に対して黙り込んでいる異常な光景だ』、 『先進国首脳が非難、行動的だったマクロン大統領』、とは好対照だ。 『政府の反応に合わせてか、欧米に比べ日本のメディアの報道ぶりは極端に少ない』、というのは第二の記事と同様に、残念なことだ。 『戦後歴代政権の中で、最も米国への従属に徹した政権だろう」』との外務省幹部の発言は、確かにその通りだ。 『対北朝鮮以外は視野にない「外交小国」』、というのも残念ながら、その通りだ。カンボジアやミャンマー問題でも、沈黙を続けるのは、日本外交の世界の中での地位をますます貶める愚策だろう。
タグ:カンボジア ミャンマー 東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ 天木直人 安倍外交 薬師寺 克行 (その2)(今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥、横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる、エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ) 「安倍外交のツケ 今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥」 「一帯一路」 河野太郎外相 「一帯一路」について、「世界経済にメリットがある」と講演で明言 経団連の榊原定征会長など250人の財界人が、20日から中国を訪問し、「一帯一路」に対する日本企業の取り組みについて話し合う予定 「一帯一路」のフォーラムには、130カ国以上が代表を送っている トランプ大統領も強い関心 どうせ一帯一路に参加するなら、もっと早く動くべきでした 「横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる」 日本政府は横田空域の返還交渉を米国に求めない方針 このような主権放棄を許しているのは、世界広しといえども日本しかない この主権放棄は、たんに日本国民の生命と安全を犠牲にするだけでなく、東京五輪に参加する世界中の選手や、東京五輪を見に来る世界中の国民の生命と安全を危険にさらすことになる 唯一の被爆国でありながら、米国の核の傘に守られているからといって、核兵器廃絶に反対して世界に恥をさらした 「エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ」 世界第3の経済大国であることを誇り、トランプ大統領との緊密な関係を自慢している日本が、この問題に対して黙り込んでいる異常な光景だ 歴代の米大統領はイスラエルとパレスチナのトップ会談を設定するなど、和平実現に汗をかいてきた。トランプ大統領の決定はこうした努力を否定する自己中心的なものである 同時にこの決定は中東に新たな悲劇を生み出す。ガザ地区を実効支配するハマスの指導者は「インティファーダ―」(住民蜂起)を呼び掛け、すでに多くの死傷者が出ている 先進国首脳が非難、行動的だったマクロン大統領 政府の反応に合わせてか、欧米に比べ日本のメディアの報道ぶりは極端に少ない 北朝鮮の核ミサイル問題に直面している今、トランプ大統領の対応を批判することでこれまで築き上げてきた信頼関係を崩すわけにはいかないというのが最大の理由だろう 安倍首相が作り上げてきたトランプ大統領との信頼関係を疑ってみたくもなる 自由で開かれたインド太平洋戦略 トランプが嫌がりそうなことは一切、言わないしやらない。戦後歴代政権の中で、最も米国への従属に徹した政権だろう
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

企業不祥事(その15)(レオパレス21が抱える オーナーの集団訴訟を招く「火種」、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める、「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が) [企業経営]

企業不祥事については、8月6日に取上げた。今日は、(その15)(レオパレス21が抱える オーナーの集団訴訟を招く「火種」、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める、「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が) である。

先ずは、9月7日付けダイヤモンド・オンライン「レオパレス21が抱える、オーナーの集団訴訟を招く「火種」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・賃貸アパート大手のレオパレス21が複数の集団訴訟にさらされている。そんな中、9月7日、新たに2名のアパートオーナーが訴訟を起こすことが「週刊ダイヤモンド」の取材で分かった。管理戸数約57万戸、賃貸オーナー数約2万7000人を誇る同社は、サブリース契約をめぐる度重なる集団訴訟という難局に直面している。
▽1万人以上もいる?10年未満の家賃減額
・レオパレス21は、アパート建築を地方の地主に提案し、その地主がオーナーとなった物件を一括借上げして30年間家賃収入を保証する「サブリース契約」を武器に、建築請負業で成長してきた。しかし、2008年のリーマンショックで大幅な赤字に陥り、経営方針を転換した。今では建築請負は都心に絞り、サブリース契約による賃貸管理をメーンに経営の安定化を図っている。
・この家賃保証に関わる訴訟が、今年2月に起こされていた。愛知県の男性が05年に同社とサブリース契約を結んだ際、契約書には「家賃は当初10年間は不変」との記載があったにもかかわらず、リーマンショックによる経営悪化を理由に、同社から10年未満で家賃減額を求められたという。
・同じように10年未満で減額されたオーナー約50名が代理人弁護士を通じて、9月4日付で同社側に家賃増額一斉請求の内容証明郵便を発送しており、さらなる家賃増額訴訟の予備群となっている。今回はその内の2人が、合計1214万円の不当利得を返還請求する訴訟に踏み切るのだ。
・訴状によれば、減額交渉において賃料減額調停などの客観性の高い法的手段ではなく、全国支店の担当者が、減額に応じなければ同社が賃貸借契約を解除できるといった誤った説明をしたり、オーナーが退去を命じても長時間自宅に居座るなど困惑させる態度をとって強引に合意書に押印させ、減額に応じさせていたというのだ。
・同社の宮尾文也取締役は本誌の取材に対し、「家賃減額に関してはきちんと戸別訪問し、9割以上の方に了承していただいた」と答える。一方で、今回の原告を含む一部オーナーらで構成されるLPオーナー会の前田和彦代表によれば、「原告オーナーは最近に至るまで、法的に誤った説明をされたこと自体、認識していなかった。当会の調査活動を通じて、減額時のレオパレスの説明の問題点が判明した。全国的に見ても減額された方が1万人以上いるため、今後は毎週のように訴訟が提起されるのではないか」と話す。
▽サブリース契約違反か?「いずれはっきりする」と社長
・同社に対する訴訟はこれだけではない。実は先月29日にもオーナー29人による集団訴訟に見舞われている。 訴状によれば、同社のサブリース契約には、賃貸借契約の他に「建物メンテナンス契約」があった。「屋根の塗り替えが築10年目」などといった国土交通省のガイドラインに沿った修繕目安を基に、同社がアパートの修繕を実施する。それに対し、オーナーが毎月一定額のメンテナンス費用及び前払い金を支払うというものだ。
・前田氏によれば、「目安表に従った修繕がほとんど実施されていない実態が明らかになった」という。29人分の費用総額は1億4743万円に達しており、これを不当利得とみなして返還請求する集団訴訟に発展した。この訴訟に対し、同社の宮尾氏は「当社では定期的に建物調査をしており、その記録もある。修繕が必要かどうかは、その都度きちんと判断している」と主張しており、両者の見解は真っ向から対立している。
・これらの訴訟に先駆けて、昨年11月にはオーナー129人が「家具・家電総合メンテナンスサービス契約」が守られていないとして集団訴訟を起こしていた。 同社物件の売りは、入居時から家具・家電が備え付けられていることだ。その利便性を、テレビCMなどでも学生や単身赴任者に対して盛んに訴求している。そのサービス料が1戸当たり2000円、オーナーの家賃収入から天引きされているのに、一定期間が経過しても新品に交換されていないことを理由に4億8684万円の返還を求めたのだ。
・こうした一連の訴訟に対し、同社の深山英世社長はどう答えるのか。同社は“開かれた会社“を目指し、今月4日に東京・帝国ホテルで初の試みとなる記者懇談会を開催したが、そこには社長自らの声を聴こうとメディアが詰めかけていた。 訴訟のことを問われた深山社長は、「あまり余計なことを言うなと広報から言われるかもしれないが、1つだけ言いたいのは、修繕費に関してはあちら(オーナー)も経費で落としているということ。そういう契約をしていたわけだから、今さら言われても……まあ、いずれはっきりすることです」と歯切れが悪い。
・同社にとって、サブリース物件のオーナーは重要なパートナーだ。彼らからの集団訴訟が今後も相次げば、経営の屋台骨が揺らぎかねない。建築請負主体から脱却して黒字転換し経営は安定してきたが、不透明なサブリース契約の“火種”がくすぶり続けている。
http://diamond.jp/articles/-/141420

次に、健康社会学者の河合 薫氏が10月10日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「えっ、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「○○を追いつめる高揚感」について考えてみる。 先週、NHKの記者だった女性(31歳)が4年前の2013年7月に、心不全で亡くなっていたことがわかった。原因は長時間労働による過労死。亡くなった翌年、労災認定された。
・亡くなる直前の1カ月間の時間外労働は159時間37分。5月下旬からの1カ月間も146時間57分。また、亡くなる直前には都議選と参院選の取材で、「深夜に及ぶ業務や十分な休日の確保もできない状況」で、「相当の疲労の蓄積、恒常的な睡眠不足の状態であったことが推測」されたそうだ(渋谷労働基準監督署による)。
・亡くなったのは参院選の投開票から3日後の7月24日。同月末に横浜放送局への異動が決まっていたことから、前日の23日は勤務終了後に送別会に参加。翌24日未明に都内の自宅に帰宅したあと倒れたとみられる。
・「忙しいしストレスもたまるし、1日に1回は仕事を辞めたいと思うんだけど踏ん張りどころだね」――。 泣き言や弱音をめったに吐かない彼女から、両親に心配なメールが届いたのはひと月前。  「明るくいつも笑顔。ヒマワリの花のような子。亡くなった時、携帯を握ったままだったのは、何かメールしようとしていたのかもしれない」 朝日新聞の取材に母親は悔しさを滲ませた。
・いったい何人の命を奪えば、この国の人たちは「過労死・過労自殺」と正面から向き合い、この“異常”を異常なこととして受け止めるのか。
▽ご両親は最初は公表を望まなかった
・そもそも今回、3年以上前のことが報じられた理由も、NHK側の対応のずさんさにある。 昨年までは命日にNHK幹部が弔問に訪れていたが、今年は連絡はなし。電通の過労自殺事件はNHKはかなりの時間を使い報じてきたが、NHK内部で起きたことは公表しなかった。 そればかりか局内にも知らされていなかった。
・ご家族は当初、公表を望んでいなかった。NHKの幹部からお嬢さんの死後、長時間労働対策を進めていると説明されてきたそうだ。 しかし、お嬢さんの元同僚から、今夏から対策は始まったものの、そのきっかけとなったのがお嬢さんの過労死にあることは職員に周知されていないと知らされた。 そこで「娘の死を風化させたくない」との思いで、命日の7月以降、局内でお嬢さんの死の“事実”の周知、自発的な対外公表を要望。そして、やっと。ホントにやっと4日の夜「ニュースウオッチ9」で、マイクを握る彼女の写真が画面に映し出された。
・番組では、「二度と同じようなことを起こさないという決意を組織内で共有し、改革の徹底を図るため、全職員に伝え、外部に公表することが必要だと判断した」と説明、 「このことをきっかけに記者の勤務制度を見直すなど働き方改革に取り組んでおり、職員の健康確保の徹底をさらに進めて参ります」とコメントした。
・……先々週、私は「現電通社長の山本敏博氏が公開の法廷の場に立った」という事実が、日本中のトップの意識改革に繋がればいいと、心から願うばかりだ」と書いた(こちら)。 そして、「法人の代表として、社長が裁判所に顔を見せるまでの26年間(1991年の過労自殺事件から)、トップにいた方たちは、この死をどう考えていたのか」と。 この言葉をまんまNHKのトップに聞きたい。
・お嬢さんの死の公表を望んでいなかったご家族が、なぜ、「自発的な対外公表を要望」したのか。その心情を少しでも考えたことがあるのだろうか。過労自殺や過労死は、ご家族が公表を望まないことも多いし、労災(過労死)申請が行われないこともある。大切な人を亡くし「そっとしておいて欲しい」。その気持ちは“自分の大切な人”を亡くした経験があれば、痛いほどわかるはずだ。
・そして、NHKのトップはいったいどんな気持ちで高橋まつりさんの死を報じる自局の報道を見ていたのか? まさか「黙っておけばバレない」とでも思っていた? あるいは「うちは過労死だから、過労自殺とは違う」とでも考えていたのだろうか?
・確かに、これまでも繰り返し指摘しているとおり過労死と過労自殺は別物である。 2014年に過労死遺族たちの「過労死をなくそ う」という活動がやっと実を結び、制定された「過労死等防止対策推進法」が、“等”となっているのはそのためだ。
・過労死等防止対策推進法では「過労死等」を、以下のように定義している。  業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡  業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死  (これら脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害も、死に至らなくとも「過労死等」に含まれる)
・1の「過労死」と2の「過労自殺」は、どちらも「過労」による「死」であることに変わりはない。が、過労死と過労自殺は明確に分けて考える必要がある。 過労死では長時間労働が直接的に関係し、過労自殺は長時間労働が引き金となる。 「過労死」は長時間労働に肉体が耐えきれず、脳疾患や心臓疾患にいたる「突然死」。一方、「過労自殺」は、長時間労働の影響以上に目標の達成ができないなど精神的なストレスの比重が高く、「仕事による過労・ストレスが原因となって自殺に至ること」だ。
▽止められる死を、なぜ止めない
・長時間労働もトップの責任だし、業務の過剰なプレッシャーやパワハラなどもそうである。トップの判断で救える命だ。 「娘がいなくなり、体半分がもぎ取られた気持ち。心から笑える日は一生こないと思う」――。 こう語るご家族の言葉を過労死や過労自殺を出した企業のトップたちはどう思うのか? 申し訳ないけど、私には全く理解できないのです。
・2009年、ある裁判が起こった。 過労死発生企業の公表を求める裁判である。 原告は、「全国過労死を考える家族の会」の代表の寺西笑子さん。ご自身も過労自殺で夫を亡くしている。 現状では遺族が労災を申請し、公表しないと、企業の社会的な責任が問われないため、過労死企業の情報公開を申請したところ、不開示とされたため決定の取り消しを求めた。
・一審の大阪地裁は、過労死企業の開示を認めたが、二審の大阪高裁は、ブラック企業との風評が生まれると判断。最高裁も高裁判決を支持したため、逆転敗訴となった。 トップもトップなら、裁判官も裁判官だ。 「ブラック企業との風評が生まれる」だって? いったいどこまで人の命を軽んじているのか。 なぜ、企業がきちんと向き合えば「止められる死」を、救おうとしないのか。
・そして、おそらく私がここで憤っていることを、「感情的なことをいうなよ。長時間労働したって全員が死ぬわけじゃないだろ。俺もやってるけど元気だよ。第一、そんなにストレスなら辞めればよかっただけだ」などとのたまう人が少なからずいる。
・長時間労働しても俺は大丈夫、だって? なるほど。確かに。そのとおりだ、今はね。 たまたま、まだ、死んでないだけ。ただ、それだけだ。 そして、世間には「長時間労働はダメだよ。ホントトップ次第なんだよね」と言いつつも、自分が寝る時間がないほど忙しいことを、どこか自慢げに言う人たちも少なくない。
・奇しくもNHKの過労死事件が明るみになったその日。 元電通社員で「青年失業家」の田中泰延さんのコラム「ひろのぶ雑記」が、SNSで話題となった(こちら)。 ブログは高橋まつりさんの事件のことを書いたもので、 「私は古巣のことを悪く言うつもりはサラサラない。逆に、大きな、悲しい事件があり、いろいろな社会的制裁を受け、変革を余儀なくされている電通という会社をことさらに擁護する立場にもない。
・そもそも、わたしは電通を卒業したわけではない。それは、定年退職したり、役員になって退任したり、その職務を全うできた者だけが使える言葉だ。私は、『中退』であり、ドロップアウトした人間だ」 という文章から始まっている。  電通は忙しすぎたこと 何度もクライアントから戻ってきた営業担当の「明日までに再提出しなければならない」という言葉で、プライベートの予定がぶっ飛んだこと  24年間の会社員生活で、1か月以上の入院を4回もすることになったこと などがリアルな表現で書かれ、 高橋まつりさんが亡くなる数ヶ月前に、深夜3時ごろ、会社で徹夜作業をしていたときに、「まだ会社にいる しんどい」といった内容のTwitterを見て、 「おれも会社で徹夜 がんばろう」と言葉を返してしまった、と。
▽エールを送ってしまった悔悟
・そのTwitterこそが高橋まつりさんのもので、「私は、彼女の訃報を知ったとき、過去を検索して自分のそのツイートを探し出し、慌てるように消去した。慚愧の念が私を包んだ。後悔してもしきれない」 と告白されている。 自分も心身を酷使しながらやっているときに、悲鳴をあげている人に「自分もがんばってる。あなたもがんばって」とエールを送ってしまうことは誰にでもある。
・「お互い大変だ。でもさ、もうちょっとだけがんばろう」と。 田中さんがこの「エールを送ってしまった自分」を後悔されているお気持ちは、痛いほど伝わってくる。 ただ、大変失礼な物言いを承知で言えば、問題はエールを送った行動にはない。
・「私は、『中退』であり、ドロップアウトした人間だ」と田中さんに言わせてしまう組織にこそ、大きな問題がある、私にはそう思えてならない。 ブログには、この田中さんが体調を壊して入院をしていたときのことが書かれていた。 何度目かの入院から戻っておそるおそる出社した時、職場のホワイトボードに、 【田中 入院中 そっとしておいてやろう 必ず戻ってくるから】 と上司が書いてくれてあったのを消しながら、 【田中 本日より元気に出社】 とマジックで大きく書いた時は涙が止まらなかった。(※田中様からは快く引用をご許諾いただきました。ありがとうございます。なお、行間隔はオリジナルと異なります)
・なぜ、「そっとしておいてやろう。必ず戻ってくるから」なのか?  自分たちの仲間が肉体を酷使し、心身が限界を超え、“大切”で“大好き”な仕事が出来ない状態になっているなら、「そんな働き方はおかしい」と声をあげられないのか? 「金曜の夜にクライアントからNGが出て、月曜日にプレゼンだ? それは断っていい。いや、断るべきだ」と、なぜ、現場から声をあげられない? 当然ながら、それを「そんな仕事は請けなくていい」と徹底しないトップの責任であり、先日の最終意見陳述で山本社長が「『仕事に時間をかけることがサービス品質の向上につながる』という思い込みがあった」と述べたように、そういった組織風土に問題があったわけだが、…どうにも納得できない。
・だって、知的な発想を要する仕事についている人たちほど「業務の成果を時間ではなく結果で評価してほしい」とホワイトカラーエグゼンプション、すなわち裁量労働制を訴える。 時間じゃないという人たちが、時間をかけることを美徳とする。このダブルバインドもまた、“悲劇”があとを絶たないことにつながっているように思えてならないのである。
・だからこそ、あくまでも私の個人的な気持ちだが、田中さんに「ドロップアウトした人間だ」とは言って欲しくなかった。 仕事で心身を蝕み、入院を4回するなんておかしい。体を休めること、仕事を離れること、そして、仕事以外の環境に身を置くことが、豊かな発想をもたらし、結果的にいい仕事につながる。と言って欲しかった。
▽「いい仕事をしたい」から無理をすると高揚感につながる
・でも、それは外部の人間の感覚であり、無理なことを言っているというのも実は分かる。 現場にいれば、目の前の仕事に集中するのが当然だ。 「いい仕事をしたい」「会社に貢献したい」「お客さんを喜ばせたい」 という気持ちが高い人ほど、「いい仕事をするためには、私的な時間を犠牲にしてもやむをえない」と、過剰に自分を追い込んでいく。
・仕事の要求とプレッシャーが高まることで、社会に認められたいという承認欲求に加え「人に迷惑をかけたくない」という意識が、“働き過ぎ”を拡大する。 働き過ぎに人を向けるのは、いわゆる「高揚感」。高揚感こそが、自らを追いつめ、周りの人たちをも追いつめる。 身も心も疲れ果ててボロボロになっているのに、あたかも、そのぼろぼろになっていること自体が「すごいこと」「できる人」の証明のように思えるのだ。
・だからこそ、ご自身や上司、同僚の方との、涙が止まらなかった思い出とは別のお話として、「これはおかしい」と、その環境を“卒業”した人に言って欲しかった。やってきたことを否定するようなことを言え、というのは、我ながら何様だろうと思うのだけれど……。
・本来「体を休める」時間に、「体を酷使する」ことがいかに危険かを最後に紹介する。 今年のノーベル生理学・医学賞を受賞した、米ブランダイス大学名誉教授のJ.ホール博士と同大学のM.ロスバッシュ博士、ロックフェラー大学のM.ヤング博士。 博士らの功績は、「体内時計(概日リズム)を生み出す遺伝子とそのメカニズムの発見」だ。
・人間の身体は24時間のリズムで変化。活動や睡眠の変化だけでなく、 朝が来ると血圧と心拍数が上がり始め、  昼には血中のヘモグロビン濃度が最も高まり、 夕方には体温が上がり,夜には尿の排出量が多くなり、 真夜中には免疫を担うヘルパーT細胞の数が最大になり、成長ホルモンがさかんに分泌する。
・その身体の1日のリズムを遺伝子レベルで解き明かす道を開いたのが、今回ノーベル賞を受賞する3人の博士である。 で、その人間の体内に宿る「体内の時計」と「生活のリズム」がうまく同期しなくなると、がんや神経変性疾患、代謝疾患などのリスクが高まることが近年の研究で確かめられ、更なる研究が進められている。
・たとえば、WHOの行なった調査では、乳がん、前立腺がんなどの、性差に特徴のあるがんで大幅にリスクが上がることがわかり、デンマークでは、看護師さんなどの交代制勤務をする人が乳がんにかかった場合、労災の対象になる。
・また、昨年にはハーバード大学などの共同研究グループが、看護師約7万5000人分の経年データから分析した結果、以下のことがわかった(1988年から2010年までのデータ)。  1988年から2010年の22年間に、対象者のうち約1万4000人が亡くなり、うち約3000人は心臓や血管の病気、約5400人はがん。  交代制夜勤のある人は、全く夜勤の無い人よりも死亡率が11%高く、中でも夜勤を6~14年続けている女性は、心臓や血管の病気による死亡率が19%、15年以上続けている人は23%も高い。肺がんによる死亡率は25%高い。
▽体内時計には逆らえない
・日本でも山口大学時間学研究所の明石真教授らの研究から、「体内時計と生活リズムのずれ」がもたらす影響は確かめられている。 早出や夜勤など勤務の交代制がある職場で働く人たちに、3時間に1回“ヒゲ”を抜いてもらい、毛根の細胞を利用して、体内時計と勤務の関係を調べたところ……、「早出と遅出のシフトが1週間ごとに入れ代わるシフト勤務についている人の場合、睡眠や食事の時間が7時間ほどズレが生じるのに対し、体内時計の変化は2時間程度」 ということが分かった。 内臓は“就寝時間”になっているのに無理に働くという“不自然な勤務”が、動脈硬化や高血圧、肥満、糖尿病などの引き金になっていたのだ。
▽夜は何のために夜なのか?
・私たちは「労働者」である前に、「人」という霊長類の動物である。 仕事のために生きているのではない。生きるために仕事しているだけだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/100600126/?P=1

第三に、金融ジャーナリストの伊藤 歩氏が12月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「カラオケまねきねこ」と女性向けフィットネスジム「カーブス」を2本柱に、快進撃が続くコシダカホールディングス(HD)が、法曹関係者の間で注目を集めている。 11月24日に開催された、同社の2017年8月期定時株主総会の招集手続きについて、「上場会社にあるまじき不手際」(株主総会運営に詳しい弁護士)という声が出ているのだ。
・コシダカHDは2007年6月の上場以来、目下のところ10期連続で増収営業増益を継続中。上場当時と比較すると、営業利益は9倍、時価総額はおよそ15倍になっている、急成長企業である。
▽監査報告書を未受領のまま招集通知発送
・そのコシダカHDが、11月9日、発送済みの定時株主総会の招集通知から、会計監査人の監査報告書と監査等委員会の監査報告書を削除することを公表した。 監査法人からも、監査等委員会からも、監査報告書を受領していないのに、受領したことにして招集通知を出してしまったが、実はまだ受領していないから削除する、というものだった。
・4日後の11月13日には監査法人の交代議案も撤回した。今総会で新日本監査法人から仰星監査法人に変更する予定だったが、仰星が辞退したためだ。11月17日になって会計監査人と監査等委員会から監査報告書を入手できたので、招集通知の監査報告書のページを時間差で差し替えた形を取り、24日の総会に臨んだ。
・結果的に監査報告書は総会に間に合い、波乱なく総会は終了したわけだが、そもそも定時総会の招集通知を送るには取締役会決議がいる。招集通知を送るには、総会に上程する議案決定に関する取締役会決議が必要で、そのためには決算の承認決議も必要になる。
・それではその決算の承認決議を、いったいどのようにして行ったのか。通常は、決算期末からおよそ7~8週間後までに会計監査人から無限定適正意見のついた「独立監査人の監査報告書」を監査役会が受領する。 監査役会は会計監査人が行った監査の方法と結果を「相当」と判断したら、その旨を記載した『監査役会の監査報告書』を作成して取締役会に提出する。 取締役会は監査役会の見解を踏まえて決算承認決議をすると、決算が確定し、株主総会には『報告事項』として上程できる。
・もっとも、会計監査人と監査役会、経営陣の見解が一致せず、会計監査人から不適正意見や限定付き適正意見がついたり、意見を表明しないというケースもありうる。その場合、監査役会が決算は適正であると判断するのなら、その理由を明示した監査報告書を取締役会に提出、取締役会が決算を承認することは可能だ。 そうすると株主総会での扱いは「報告事項」ではなく「承認事項」となり、判断は株主の手に委ねられる。
・さらに、粉飾が発覚して第三者委員会の調査中である場合など、定時総会の招集通知発送までに会計監査人の監査報告書を会社側が受領できないという事態は起こりうる。 企業は定款で基準日を定めており、定時株主総会は必ず開催しなければならないし、決算の報告もしくは承認は、定時株主総会でなすべき事項として会社法に定められている。
・実務上は次善の策として、定時株主総会では取締役の選任など、できることだけを決議しておき、決算に関しては後日、臨時株主総会を開催して報告もしくは承認を得る方法がとられている。
▽浮かび上がる2つの疑問(コシダカは監査等委員会設置会社なので、上記の監査役会の業務は監査等委員会が担う。 会社側は「監査報告の受領を前提とした条件付きで、決算承認と定時株主総会に決算を報告事項として上程することを決議した」ことを認めている。
・会社側によれば、「10月25日になって、新日本監査法人から追加の資料提出も含めた追加の手続きが必要であり、当初予定していた監査報告を提出できないことを通告された」という。 11月30日の同社開示によれば、多岐にわたる勘定科目の誤り、関係会社株式評価プロセスの運用不備、カラオケ事業におけるカード未収売掛金の適切な消し込み処理の不備などを監査法人から指摘されていた、とある。
・同時に開示した2017年8月期決算短信の一部修正も、損益科目では売上総利益が144億5664万円から142億8497万円へと、1億7166万円減額訂正されたが、販管費も同額減額されており、営業利益には影響がなかった。つまり、原価計上すべき費用が販管費計上されていたということだろう。 数字が大きく動く可能性があるような見解の相違ならば、もっと早い段階で問題になっていたはずで、会社側は細かい確認の次元と考え、確認が済めば当然に無限定適正意見がもらえると考えていたのだろう。
・実際、総会開催1週間前に会社は無限定適正意見が付いた監査報告書を入手している。それでもなお、一連の手続きには2つの疑問が浮かび上がる。 1つ目は新日本の動きだ。11月30日の開示にあるような、細かいながら見逃すべきではない不備を、新日本はいつから指摘していたのか。第3四半期まで四半期報告書がつつがなく提出されていることからすると、最近まで新日本は問題視してこなかったことになる。 10月25日になって突然追加資料の提出を求めたのであれば、担当の公認会計士が監査法人内のレビューで指摘を受け、確認を余儀なくされた可能性が浮上する。
・同社の定時総会が11月下旬に予定されていること、そのためには遅くとも11月2週目の前半には招集通知を発送しなければならず、招集通知のゲラチェックや印刷の時間を考慮すれば、10月末までには監査報告書を必要としていたことは承知していたはずだ。 この点については、会社側は回答を控えており、真相は明らかにされていない。
・最大の疑問は監査等委員がどう行動したのかである。会社側が監査等委員会の監査報告書を受領したのは新日本の監査報告書を受領した日と同日だから、少なくとも監査等委員会は新日本の監査報告書を見ずに監査報告書を作成したわけではない。 さらに、決算承認を報告事項で上程するのか、承認事項で上程するのかで議案は変わる。株主総会提出書類の調査は監査等委員会の義務だ。
・会社側は、決算承認と議案決定について「条件付き」で、全会一致で決議をしたことは認めているが、監査等委員を含め、各取締役がどういった意見を述べたのかについては明らかにしていない。  加えて、11月7日に発送された招集通知には、仰星監査法人への交代が盛り込まれていた。会社側は「11月6日に適時開示をする予定だったが、辞退されてしまった」ことは認めている。
・ただ、印刷、ゲラチェックの時間を考えれば、10月中には決定していておかしくないのに、仰星への交代リリースは出ないまま、11月13日になって「(仰星が)辞退してしまったので交代しない」というリリースが出されている。 仰星への変更をいつ決議したのか、そして会社側は決議後速やかに開示をしたのか、それともしなかったのかも明かにされていない。
・会社側は11月30日の開示で、さまざまな不備の発生について、経理に必要な人材を確保できていなかったことや、内部監査人の退職、期末直前での経理担当者の退職などを原因として挙げている。  加えて、「株主総会招集手続きにかかる事務処理ミスについては、財務報告に係る内部統制とは直接関係ないものと認識しているが、内部統制における課題として認識している」とある。
▽新興企業にとっては他山の石
・有価証券報告書と同時に提出する内部統制報告書は、あくまで財務報告に関する内部統制を対象としているので、招集手続きに関する部分が“直接関係ない”のは間違いない。 しかし、総会招集手続きについて、「事務処理ミス」と認識している点は重い。予定稿として決議したのに、予定稿のまま招集通知を発送してしまったことを事務処理ミスと認識していて、「条件付き」で決議したこと自体は問題がないと考えていることになる。
・11月24日の定時株主総会では、取締役選任議案の賛成割合は、監査等委員長のみ76%で、残る7人は9割以上。創業一族が発行済みの4割強を保有しているとはいえ、一連の不手際を株主が問題視している形跡は見られない。 業績は絶好調であり、優待狙いの個人投資家からの人気も高いゆえんだろう。
・しかし、ガバナンスの脆弱さは思わぬ落とし穴になりかねない。株主総会実務に詳しい弁護士は、「招集手続きに瑕疵(かし)があるとして、株主から株主総会決議取り消し訴訟を起こされてもおかしくないケース」だと指摘する。特殊株主に付け入る隙を与えれば、経営が混乱する可能性もある。  会社の機関に関するガバナンスは会計監査人の領域からも外れるため、外部からの監視も効きにくい。だからこそ社外取締役の機能が重要になる。
・小規模かつ新興の上場会社の実態に詳しい弁護士は、「上場会社にふさわしいガバナンスを備えているとは言いがたく、苦笑するしかない」という。 「よくある、とまでは言わないが、新興の小規模な上場会社では、表面化していないだけで、似たような話はそこそこ耳にする。現場はずさんな体制を危険だと感じているが、トップがその危機感を共有しておらず、リスクにも自覚がない。今回のケースはぜひとも“他山の石”としてほしい」(同弁護士)
http://toyokeizai.net/articles/-/200713

第一の記事で、 『同社の宮尾文也取締役は本誌の取材に対し、「家賃減額に関してはきちんと戸別訪問し、9割以上の方に了承していただいた」と答える』、しかし、『LPオーナー会の前田和彦代表によれば、「原告オーナーは最近に至るまで、法的に誤った説明をされたこと自体、認識していなかった。当会の調査活動を通じて、減額時のレオパレスの説明の問題点が判明した。全国的に見ても減額された方が1万人以上いるため、今後は毎週のように訴訟が提起されるのではないか」と話す』、確かに、法律に詳しくないオーナーは、会社側からの一方的な説明で一応、応諾したケースも多いと思われる。 『彼らからの集団訴訟が今後も相次げば、経営の屋台骨が揺らぎかねない』、と目が離せない状況が当面続きそうだ。
第二の記事で、 『過労死発生企業の公表を求める裁判で・・・一審の大阪地裁は、過労死企業の開示を認めたが、二審の大阪高裁は、ブラック企業との風評が生まれると判断。最高裁も高裁判決を支持したため、逆転敗訴となった。トップもトップなら、裁判官も裁判官だ。「ブラック企業との風評が生まれる」だって? いったいどこまで人の命を軽んじているのか。 なぜ、企業がきちんと向き合えば「止められる死」を、救おうとしないのか』、については全く同感だ。『元電通社員で「青年失業家」の田中泰延さんのコラム「ひろのぶ雑記」・・・「お互い大変だ。でもさ、もうちょっとだけがんばろう」と。田中さんがこの「エールを送ってしまった自分」を後悔されているお気持ちは、痛いほど伝わってくる』、『知的な発想を要する仕事についている人たちほど「業務の成果を時間ではなく結果で評価してほしい」とホワイトカラーエグゼンプション、すなわち裁量労働制を訴える。時間じゃないという人たちが、時間をかけることを美徳とする。このダブルバインドもまた、“悲劇”があとを絶たないことにつながっているように思えてならないのである』、『仕事の要求とプレッシャーが高まることで、社会に認められたいという承認欲求に加え「人に迷惑をかけたくない」という意識が、“働き過ぎ”を拡大する。働き過ぎに人を向けるのは、いわゆる「高揚感」。高揚感こそが、自らを追いつめ、周りの人たちをも追いつめる。身も心も疲れ果ててボロボロになっているのに、あたかも、そのぼろぼろになっていること自体が「すごいこと」「できる人」の証明のように思えるのだ』、などの分析は河合氏ならではのもので、説得力がある。
第三の記事で、コシダカHDが 『監査報告書を未受領のまま招集通知発送・・・発送済みの定時株主総会の招集通知から、会計監査人の監査報告書と監査等委員会の監査報告書を削除することを公表』、とはいくら急成長企業とはいえ、上場企業とは思えないようなお粗末さだ。 『小規模かつ新興の上場会社の実態に詳しい弁護士は、「上場会社にふさわしいガバナンスを備えているとは言いがたく、苦笑するしかない」という。「よくある、とまでは言わないが、新興の小規模な上場会社では、表面化していないだけで、似たような話はそこそこ耳にする。現場はずさんな体制を危険だと感じているが、トップがその危機感を共有しておらず、リスクにも自覚がない。今回のケースはぜひとも“他山の石”としてほしい」』、というのは同感だ。
タグ:東洋経済オンライン レオパレス21 労災認定 企業不祥事 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 河合 薫 コシダカHD (その15)(レオパレス21が抱える オーナーの集団訴訟を招く「火種」、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める、「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が) 「レオパレス21が抱える、オーナーの集団訴訟を招く「火種」」 複数の集団訴訟にさらされている 管理戸数約57万戸、賃貸オーナー数約2万7000人 サブリース契約をめぐる度重なる集団訴訟という難局に直面 30年間家賃収入を保証する「サブリース契約」を武器に、建築請負業で成長 リーマンショックで大幅な赤字に陥り、経営方針を転換 今では建築請負は都心に絞り、サブリース契約による賃貸管理をメーンに経営の安定化を図っている 契約書には「家賃は当初10年間は不変」との記載 全国支店の担当者が、減額に応じなければ同社が賃貸借契約を解除できるといった誤った説明をしたり、オーナーが退去を命じても長時間自宅に居座るなど困惑させる態度をとって強引に合意書に押印させ、減額に応じさせていたというのだ 家賃減額に関してはきちんと戸別訪問し、9割以上の方に了承していただいた 原告オーナーは最近に至るまで、法的に誤った説明をされたこと自体、認識していなかった。当会の調査活動を通じて、減額時のレオパレスの説明の問題点が判明した。全国的に見ても減額された方が1万人以上いるため、今後は毎週のように訴訟が提起されるのではないか LPオーナー会 「家具・家電総合メンテナンスサービス契約」が守られていないとして集団訴訟 「えっ、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める」 NHKの記者だった女性 2013年7月に、心不全で亡くなっていた 長時間労働による過労死 ご両親は最初は公表を望まなかった 「過労死」 「過労自殺」 長時間労働もトップの責任だし、業務の過剰なプレッシャーやパワハラなどもそうである。トップの判断で救える命だ 2009年、ある裁判 過労死発生企業の公表を求める裁判 一審の大阪地裁は、過労死企業の開示を認めたが、二審の大阪高裁は、ブラック企業との風評が生まれると判断。最高裁も高裁判決を支持したため、逆転敗訴となった トップもトップなら、裁判官も裁判官だ。 「ブラック企業との風評が生まれる」だって? いったいどこまで人の命を軽んじているのか 元電通社員で「青年失業家」の田中泰延さんのコラム「ひろのぶ雑記」 高橋まつりさんが亡くなる数ヶ月前に、深夜3時ごろ、会社で徹夜作業をしていたときに、「まだ会社にいる しんどい」といった内容のTwitterを見て、 「おれも会社で徹夜 がんばろう」と言葉を返してしまった、と 「私は、彼女の訃報を知ったとき、過去を検索して自分のそのツイートを探し出し、慌てるように消去した。慚愧の念が私を包んだ。後悔してもしきれない」 知的な発想を要する仕事についている人たちほど「業務の成果を時間ではなく結果で評価してほしい」とホワイトカラーエグゼンプション、すなわち裁量労働制を訴える。 時間じゃないという人たちが、時間をかけることを美徳とする。このダブルバインドもまた、“悲劇”があとを絶たないことにつながっているように思えてならないのである 「いい仕事をしたい」「会社に貢献したい」「お客さんを喜ばせたい」 という気持ちが高い人ほど、「いい仕事をするためには、私的な時間を犠牲にしてもやむをえない」と、過剰に自分を追い込んでいく 仕事の要求とプレッシャーが高まることで、社会に認められたいという承認欲求に加え「人に迷惑をかけたくない」という意識が、“働き過ぎ”を拡大する 働き過ぎに人を向けるのは、いわゆる「高揚感」。高揚感こそが、自らを追いつめ、周りの人たちをも追いつめる 身も心も疲れ果ててボロボロになっているのに、あたかも、そのぼろぼろになっていること自体が「すごいこと」「できる人」の証明のように思えるのだ 「体内の時計」と「生活のリズム」がうまく同期しなくなると、がんや神経変性疾患、代謝疾患などのリスクが高まる 「早出と遅出のシフトが1週間ごとに入れ代わるシフト勤務についている人の場合、睡眠や食事の時間が7時間ほどズレが生じるのに対し、体内時計の変化は2時間程度 伊藤 歩 「「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が」 監査報告書を未受領のまま招集通知発送 発送済みの定時株主総会の招集通知から、会計監査人の監査報告書と監査等委員会の監査報告書を削除することを公表 監査法人の交代議案も撤回 結果的に監査報告書は総会に間に合い、波乱なく総会は終了 担当の公認会計士が監査法人内のレビューで指摘を受け、確認を余儀なくされた可能性が浮上 小規模かつ新興の上場会社の実態に詳しい弁護士は、「上場会社にふさわしいガバナンスを備えているとは言いがたく、苦笑するしかない」という よくある、とまでは言わないが、新興の小規模な上場会社では、表面化していないだけで、似たような話はそこそこ耳にする。現場はずさんな体制を危険だと感じているが、トップがその危機感を共有しておらず、リスクにも自覚がない。今回のケースはぜひとも“他山の石”としてほしい
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

トランプ大統領(その26)(小田嶋氏:トランプ大統領は犬の夢を見るか?) [世界情勢]

昨日に続いて、トランプ大統領(その26)(小田嶋氏:トランプ大統領は犬の夢を見るか?) を取上げよう。

コラムニストの小田嶋 隆氏が12月8日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「トランプ大統領は犬の夢を見るか?」を紹介しよう。
・マイケル・フリン前大統領補佐官が、自身のFBIへの偽証を認めたのだそうだ。 あわせて、氏は、司法取引に応じて当局の捜査に協力する意向を示しているという(こちら)。 この種のニュースは、専門家の解説を仰がないと意味がわからない。
・もう少し詳しく述べると、私のような国内限定仕様の人間は、海外発のニュースを、背景にある政治状況や国際関係や歴史的経緯にあてはめて、全体的な文脈として把握する能力を持っていないということだ。 これは、サッカー初心者が中盤でのパス交換の意味を理解せず、野球のルールを知らない観戦者が牽制球の無意味さに苛立つのとよく似たなりゆきで、要は、文脈としてのゲームの流れを理解していない人間は、単独のプレーの意味を知ることができないということでもある。
・トランプ政権のかつての主要メンバーであったフリン氏への捜査が、新しい局面を迎えたというこのニュースが、政権の基盤を脅かす深刻な変化なのか、それとも一過性の危機に過ぎないのか、また、ロシア疑惑の捜査の進展を意味しているだけなのか、でなければ、トランプ米大統領の今後の行動を変える緊急事態であるのかを、正しく、適切に弁別するためには、幅広い知識とそれなりに深い洞察力が必要だ。
・私はそれらを持っていない。残念なことだが、事実なのだからしかたがない。 ただ、「専門家」の解説にも、色々とバラつきがある。 というよりも、ことトランプに限って言えば、単独の専門家の発言はあまり参考にならない。 国際政治の研究者はこの大統領の言動や手法に面食らうばかりだし、ホワイトハウスの事情に詳しいジャーナリストやアメリカ政治の専門家の多くは、単純にトランプを嫌っている。一方、トランプ氏の出身母体である不動産取り引きやプロレスの世界の人間は政治や外交の基礎知識を持っていない。そんなわけなので、トランプ関連のニュースには、相容れない解説コメントが両論併記のカタチで並べられるケースが多い。
・一貫してトランプ大統領の資質に疑問を投げかける立場から分析する人たちもいれば、そうでない人たちもいる。いずれを採るのかは、なかなか難しい問題で、どの専門家に従うべきであるのかについても、もしかしたら専門家の助言が必要なのかもしれない。
・私は、なるべく公平に事態を観察したいと思っているので、かねてからツイッターのリストに何人かの立場の異なるトランプウォッチャーを並べて入れている。で、適宜、彼らの分析に耳を傾けてつつ、遠いアメリカの空の下に思いを馳せている次第だ。
・その、彼らの反応が、ここへ来て、足並みを揃えている。 具体的には、トランプ支持派の声も、トランプ批判派の声も、要約すれば 「あーあ」という感じの間投詞に終始しているのだ。 トランプ批判派のものの言い方は、もともと辛辣だったのが、さらにぞんざいな口調に傾いている。 「アタマおかしい(笑)」「っていうか、何も考えてないんだろうか」「おやおや」「自分が言っていることの矛盾に気づかないんだろうか」「医者に連れて行けば診断がつくと思う。マジで」
・対して、擁護派はというと、彼らは沈黙している。あるいは、意味のある論評を避けている。 大統領選挙直後や、就任半年ぐらいまでは、トランプ大統領の型破りな政治手法を「ビジネスマンならではのリアリズム」などと評してしきりに称揚していた彼らも、夏以降は、ほとんどまったくトランプ関連の話題に言及しなくなっている。
・結果、ここしばらく、トランプ大統領にまつわるニュースへの解説ツイートは、茶化したりまぜっ返したりが中心のネタツイートが席巻している状況だ。 私自身も、真面目にトランプ氏関連のニュース記事を読むことがむずかしくなってきている。 特に、金正恩総書記とトランプ大統領の間で繰り広げられる罵倒合戦は、自分ながら困ったことに、毎度毎度ネタとして楽しんでしまっている。反省せねばならない。そう思っている。でも、反省できない。なにもかもがあまりにもくだらないから。
・北朝鮮がICBMとみられるミサイル「火星15号」を発射した11月29日、トランプ米大統領は、中西部ミズーリ州セントルイスで、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ちびのロケットマンは病気の子犬」呼ばわりにする、まあ、なんというのか相当にとんでもない内容の演説をしている(こちらとか、こちら)。
・英語でいう「sick puppy」というこの言葉が、どの程度の侮蔑をこめた表現であるのかは、私にはよくわからない。が、北朝鮮では、人間を「犬」にたとえることは、最上級の侮辱だ。このことは、9月のニュースで知った。 9月のニュースというのは、トランプ大統領が9月19日、国連の演説で 「米国は強大な力と忍耐力を持ち合わせているが、米国自身、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」 と言明した時の、その演説を受けて、22日にニューヨークを訪れた北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相が、記者団に語ったコメントに関するものだ。
・その時、李外相は、「彼が犬の吠え声で我々を威嚇出来るだろうと考えるなら、それは犬の夢だ」 と述べたとされている(こちら)。 このコメントについてのテレビのニュースの中で、人間を犬に例えることが北朝鮮では 最も強い侮辱の表現とされていたのだ。 まあ、どこの国のどんな文化であれ、人を犬にたとえることが無礼でない道理はないわけなのだが、北朝鮮ではとりわけ致命的なニュアンスを帯びているということのようだ。
・トランプ大統領は、果たして、北朝鮮における「犬」の事情を知悉した上で、「sick puppy」という言葉を発音したのだろうか。 それとも、特定の言葉が持つ固有のニュアンスを知らずに発言したのだろうか。
・知っていて言ったのなら、彼は、極めて愚かで危険な挑発をしたことになる。 というのも、もし仮に、トランプ氏が常々揶揄している通りに、金正恩総書記が、小児的な独裁者であるのだとしたら、そのミサイルのボタンに人差し指をのせた状態の小児的な人間を侮辱して挑発することは、アメリカならびにその同盟国にとって、軍事衝突勃発の可能性をいたずらに高める行為にほかならないからだ。
・一方、トランプ大統領が北朝鮮における「犬」のニュアンスを知らずにその言葉を発したのであれば、彼は、愚かな失言を漏らした愚かな年寄りだったということになる。
・どっちにしても、愚かな態度であった事情は変わらない。 ここへ来て、トランプ大統領の言動は、ますます奇矯さの度を加えている。 私は、専門家ではないが、彼のツイートには必ず目を通すウォッチャーの一人ではある。 その私の目から見て、この夏以降、トランプは、やはり錯乱しているようにしか見えない。
・BBCニュースが伝えているところによれば、ドナルド・トランプ米大統領は29日、英極右団体「ブリテン・ファースト」の副代表がツイートしたムスリム(イスラム教徒)排斥の扇動的ビデオ3本をリツイートした。テリーザ・メイ英首相が報道官を通じてこれを非難すると、大統領は首相を名指しで反論している(こちら)。 話題の動画を見て唖然とした。 どこからどう見てもイスラム教徒に対する偏見を助長するようにしか見えないこんなあからさまに扇情的な映像を、4000万人のフォロワーを擁する自由世界のリーダーが拡散することが、どんな意味を持つのか、トランプさんは、想像することさえできなくなっているのだろうか。
・あるいは、自分が為していることの結果を、ある程度予測した上で、それでもあえてRTのボタンをクリックしたということなのだろうか。 どっちにしても最悪の選択であることに大きな違いはないが、後者の場合、トランプ氏は、本気でイスラム世界との対立を煽っているのか、あるいはもっと良くない可能性として、心底からイスラム教徒を憎んでいる、てなことになる。
・こういうことをやらかす大統領については、もはや「専門家」の専門的な分析はあてにならない。  われらド素人も含めた世界中の人民が、自分たちが直面している近未来に対して感覚を研ぎ澄ますほかに、対応の方法がないと思う。 凶悪な動画ツイートに付いているRTボタンをクリックすることのできる愚かな指は、もっと凶悪な未来を招くボタンをクリックすることができる指であるのかもしれない。その可能性を、私は排除しない。すべての選択肢がテーブルの上にあるということは、われわれがあらゆる人類の未来を根こそぎに破滅させるボタンによって葬り去られる可能性がテーブルの上に並べられているということでもある。
・ついさきほど(12月6日午後、日本時間7日未明)、トランプ大統領が、ホワイトハウスで演説し、エルサレムをイスラエルの首都として「公式に承認する時だと決断した」と述べ、宣言文書に署名した。現在は商都テルアビブにある米大使館をエルサレムに「可能な限り速やかに」移転させる手続きを始めるよう、国務省に指示したというニュースが流れてきた(こちら)。
・この唐突な宣言も、正気の沙汰とは思えない。 異論はあるだろうが、いまこの時に、半世紀以上にわたって中東における利害対立と宗教対立の核心であり続けているエルサレムにいきなり手を突っ込むことが、彼の地の平和に貢献すると考えているのだとしたら、トランプ氏の頭脳は正常に機能していないと思う。いったいトランプ氏は何を狙ってこんな決断を下したのだろうか。
・さきほど来、「奇矯さを増している」「錯乱している」「正気の沙汰とは思えない」「正常に機能していない」と、強めの表現を連発してしまっている。 本来なら、批評対象の精神の健康を疑わしめるようなこの種のものの言い方は、相手が権力者であっても慎まねばならない。 ポリティカル・コレクトネスを云々する以前に、その種の形容を連発することは、文章の書き方として下品だし、効果的でもないからだ。
・それでもなお私が、ややもすると下品な表現でトランプさんについて語っているのは、結局のところ、彼自身の言動が、上品なボキャブラリーで形容しきれる範囲を超えているからだ。 ジャパンタイムズという日本の英字新聞が、 "The madness of King Donald" というタイトルの論説記事を書いている(こちら)。 この見出しは、たぶん、"The madness of King George"(1991年にロンドンで初演された舞台、および、1994年制作のイギリス映画。邦題は『英国万歳!』)を踏まえたものだ。
・ストーリーは、ウィキペディアによればだが、「18世紀の終わり、時の国王ジョージ3世が突然乱心してしまう。この機会に政権を手に入れたい皇太子、阻止したい側近たちなどが入り乱れ、英国王室は大混乱に陥る」というものらしい。私は未見だが、とにかく、狂った王の物語ではあるようだ。
・相手が権力者であるとはいえ、先方の正気を疑ってかかるような、この種の論評は、本来ならルール違反だ。記事の中にも、「アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association)が個別に診断していない人間について診断を下さないルールを定めている」旨の記述がある。 が、記事は、何人かの精神科医が、「国難」(言語では”national emergency”)に際して、あえてルールを破ることを決断したことを知らせた上で、トランプ大統領の言動が「自己愛性パーソナリティー障害」の症状にぴたりと当てはまる点を指摘する精神科医の声や、大統領が初期の認知症を患っているという見方を紹介している。
・こういうある意味でルール破りの論評記事が出てくるということは、書き手がそれだけ深刻な危機感を抱いていることを意味している。 敏感な人々は、精神のバランスを崩したリーダーが、世界に災厄をもたらす近未来を、具体的なイメージとして共有しはじめている。
・その、彼らが共有しているイメージは、もしかしたら被害妄想なのかもしれないし、だとすれば、そのイメージを恐れている私のような人間は、いくぶん狂気の領域に足を踏み入れている人間であるのかもしれない。 ともあれ、私は、トランプ大統領の「乱心」を、昨年の今頃よりは5倍ほど真剣な気持ちで憂慮している。
・独裁者というのは、無抵抗な民衆を不本意な決断に向かって駆り立てる強引な人物なのであろうと、つい10年ほど前までは、私自身、そんなふうに思っていた。 しかし、世界で起こっているさまざまな出来事を観察するうちに、現在では、結果として独裁者になるのは、むしろ同調的な人物なのではなかろうかと考えるようになっている。
・でなくても、形式上は民主主義が機能している国家において真におそろしいのは、いやがる民衆を戦争に導く強権的な独裁者ではなくて、どちらかといえば、民衆の中にある狂気を掬い取り、それを自らに憑依させ、行動として体現してしまうような、ポピュリストのリーダーであるはずだ。 同調的なポピュリストが、私たちの内心にわだかまっている嫉妬心や攻撃欲求や縄張り根性を糾合する近未来の到来を、私はかなり高い確度で予感している。
・しばらく前にある人に聞いた話では、昨今は、「狂気」「精神異常」「狂う」といったあたりのボキャブラリーは、小説や評論の中で軒並み、使用を控える流れになってきつつあるのだそうだ。 侮辱や差別を含む「○ちがい」が使えないは当然なのだとして、テレビドラマやCMの世界では、それ以前に、精神のバランスを崩した人間の様態に言及することそのものが敬遠されつつある。
・当たり前の話だが、特定の状態を表現する言葉を使用不能に追い込むことで、その表現されているところの実態が消えなくなるわけではない。 むしろ、その言葉を使わなくなることは、その言葉が指し示している事実から目をそらす結果を生むはずだ。
・私は、人間の精神がその正常さを失うことを描写するボキャブラリーを、安易に排除すべきではないと考えている。 なぜなら、狂気という言葉を排除するのは自分以外の誰かを狂人であると断ずることと同じく、ある種の狂気を孕んだ態度であり、わたしたちが全体としての自分たちのマトモさを維持し続けるためには、狂気という言葉を排除しないことと同時に、常に狂気に対して感覚を研ぎ澄ます心構えが大切だと考えるからだ。
・私が抱いているタイプの恐怖を、犬の夢だと断ずる人々がそんなに少なくないことは承知している。 私自身、自分の恐怖が犬の夢であってくれたらありがたいと思っている。 が、それでも夢見る犬にとって、夢が現実よりもリアルである事情は変わらない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/120700122/?P=1

いつになく小田嶋氏の危機感が伝わってくるコラムだ。 『私のような国内限定仕様の人間』、と謙遜しながら、 『私は、なるべく公平に事態を観察したいと思っているので、かねてからツイッターのリストに何人かの立場の異なるトランプウォッチャーを並べて入れている』、と情報収集だけは怠りないようだ。 『トランプ米大統領は29日、英極右団体「ブリテン・ファースト」の副代表がツイートしたムスリム(イスラム教徒)排斥の扇動的ビデオ3本をリツイートした。テリーザ・メイ英首相が報道官を通じてこれを非難すると、大統領は首相を名指しで反論している(こちら)』、『凶悪な動画ツイートに付いているRTボタンをクリックすることのできる愚かな指は、もっと凶悪な未来を招くボタンをクリックすることができる指であるのかもしれない』、 『私は、人間の精神がその正常さを失うことを描写するボキャブラリーを、安易に排除すべきではないと考えている・・・わたしたちが全体としての自分たちのマトモさを維持し続けるためには、狂気という言葉を排除しないことと同時に、常に狂気に対して感覚を研ぎ澄ます心構えが大切だと考えるからだ』、などは危機感がビビッドに伝わってくるようだ。 『私自身、自分の恐怖が犬の夢であってくれたらありがたいと思っている。 が、それでも夢見る犬にとって、夢が現実よりもリアルである事情は変わらない』、あー、コワイコワイ。
タグ:ジャパンタイムズ 日経ビジネスオンライン トランプ大統領 小田嶋 隆 (その26)(小田嶋氏:トランプ大統領は犬の夢を見るか?) 「トランプ大統領は犬の夢を見るか?」 私のような国内限定仕様の人間は 全体的な文脈として把握する能力を持っていない 「専門家」の解説にも、色々とバラつきがある 私は、なるべく公平に事態を観察したいと思っているので、かねてからツイッターのリストに何人かの立場の異なるトランプウォッチャーを並べて入れている 彼らの反応が、ここへ来て、足並みを揃えている 「あーあ」という感じの間投詞に終始 「ちびのロケットマンは病気の子犬 人間を犬に例えることが北朝鮮では 最も強い侮辱の表現 知っていて言ったのなら、彼は、極めて愚かで危険な挑発をしたことになる ミサイルのボタンに人差し指をのせた状態の小児的な人間を侮辱して挑発することは、アメリカならびにその同盟国にとって、軍事衝突勃発の可能性をいたずらに高める行為にほかならないからだ ドナルド・トランプ米大統領は29日、英極右団体「ブリテン・ファースト」の副代表がツイートしたムスリム(イスラム教徒)排斥の扇動的ビデオ3本をリツイートした テリーザ・メイ英首相が報道官を通じてこれを非難すると、大統領は首相を名指しで反論している(こちら) 凶悪な動画ツイートに付いているRTボタンをクリックすることのできる愚かな指は、もっと凶悪な未来を招くボタンをクリックすることができる指であるのかもしれない トランプ大統領が、ホワイトハウスで演説し、エルサレムをイスラエルの首都として「公式に承認する時だと決断した」と述べ、宣言文書に署名した 半世紀以上にわたって中東における利害対立と宗教対立の核心であり続けているエルサレムにいきなり手を突っ込むことが、彼の地の平和に貢献すると考えているのだとしたら、トランプ氏の頭脳は正常に機能していないと思う "The madness of King Donald" 何人かの精神科医が、「国難」(言語では”national emergency”)に際して、あえてルールを破ることを決断したことを知らせた上で、トランプ大統領の言動が「自己愛性パーソナリティー障害」の症状にぴたりと当てはまる点を指摘する精神科医の声や、大統領が初期の認知症を患っているという見方を紹介 ルール破りの論評記事が出てくるということは、書き手がそれだけ深刻な危機感を抱いていることを意味 私は、トランプ大統領の「乱心」を、昨年の今頃よりは5倍ほど真剣な気持ちで憂慮 形式上は民主主義が機能している国家において真におそろしいのは、いやがる民衆を戦争に導く強権的な独裁者ではなくて、どちらかといえば、民衆の中にある狂気を掬い取り、それを自らに憑依させ、行動として体現してしまうような、ポピュリストのリーダーであるはずだ 同調的なポピュリストが、私たちの内心にわだかまっている嫉妬心や攻撃欲求や縄張り根性を糾合する近未来の到来を、私はかなり高い確度で予感してい 狂気という言葉を排除するのは自分以外の誰かを狂人であると断ずることと同じく、ある種の狂気を孕んだ態度であり、わたしたちが全体としての自分たちのマトモさを維持し続けるためには、狂気という言葉を排除しないことと同時に、常に狂気に対して感覚を研ぎ澄ます心構えが大切だと考えるからだ 私自身、自分の恐怖が犬の夢であってくれたらありがたいと思っている。 が、それでも夢見る犬にとって、夢が現実よりもリアルである事情は変わらない
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

トランプ大統領(その25)(中国の策にはまった日米韓 トランプ氏は大統領ではなくやっぱり経営者だ、トランプ大統領の支持率が上昇しているワケ、トランプの権力を支える対立構図) [世界情勢]

トランプ大統領については、10月29日に取上げたが、今日は、(その25)(中国の策にはまった日米韓 トランプ氏は大統領ではなくやっぱり経営者だ、トランプ大統領の支持率が上昇しているワケ、トランプの権力を支える対立構図) である。

先ずは、政治評論家の田原 総一朗氏が11月16日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「東アジアの緊張続く、中国の策にはまった日米韓 トランプ氏は大統領ではなくやっぱり経営者だ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・トランプ大統領は11月14日、初のアジア歴訪を終えて帰途についた。とりわけ9日の米中首脳会談の内容は、日本のマスメディアの予想が大きく外れた展開となった。僕の予想も大外れだった。そのせいで、翌日の新聞各紙には批判的な見出しが並んでいた。
・朝日新聞は「巨額商談、かすむ『北朝鮮』」。東京新聞は「米中首脳会談 利害優先、違い封印」。毎日新聞は「理念失うトランプ外交」。読売新聞は「米中首脳会談『北』への危機感にズレがある」と報じている。
・トランプ氏は、日本、韓国を訪れた時は、「北朝鮮に対する圧力を最高限度まで強める」と強調していた。安倍晋三首相も、韓国の文在寅大統領も、それに対し「完全に一致した」と表明した。 当然ながらトランプ氏は、最高限度まで圧力をかけるその先には、武力行使も視野に入れている。安倍首相は、それにも同意した。
・その中で、韓国で一つ理解し難いことがあった。文在寅氏とトランプ氏の7日の晩餐会で、元慰安婦の女性が招待されて、「独島エビ」を使った料理が出されたことだ。 トランプ氏が、日韓米で完全に同一歩調で北朝鮮に対峙すべきだと言っているところで、韓国はわざわざ日韓の間に溝を作ったのだった。これらの行動は謎だったが、中国との関係改善に向けた動きだと言われている。後で触れるが、これは日米韓の3国合同演習を韓国が拒否したことにも繋がっている。
・トランプ氏は、日本と韓国を訪問した時に「北朝鮮の圧力を最大限に高める」と主張していたが、日韓は圧力をかける具体的な手段を持っていない。 一方、中国は立場が全く異なる。中国は、北朝鮮に圧力をかける具体的な手段を持っているのだ。例えば、北朝鮮の貿易は、約9割が中国との取引である。もし、中国がこれを完全にシャットアウトすれば、北朝鮮経済は破綻する。 あるいは、中国が北朝鮮に原油を送り込むためのパイプを閉めてしまえば、北朝鮮の国民の生活は成り立たなくなる。中国が本気になれば、北朝鮮は核廃棄も認めざるを得なくなるだろう。
・その点から、米中首脳会談の行方は全世界に注目されていた。トランプ氏は北朝鮮に対する圧力について、どこまで習近平に迫るのか。習近平は、どのように対応するのか。
▽想定外の展開になったアジア歴訪
・結果は、意外なものだった。中国はトランプ氏に対し、「国賓プラス」というレベルの異例の厚遇で迎えた。世界遺産の故宮を丸一日貸し切りにする大歓迎ぶりだ。 しかも、トランプ氏が強調する米中の貿易不均衡問題に対し、習近平氏は「両国は2500億ドル以上の貿易契約・投資協定に署名した」と発表した。エネルギーや製造業などの分野で、総額2535億ドル(約28兆7800億円)の米国製品を買うという大盤振る舞いで応えたのだった。
・ところが、肝心の北朝鮮問題について、習近平氏は「安保理決議の全面的かつ厳格な履行を継続する」としか言わない。つまり、「圧力を強める」とは言っていないのだ。 9月の国連安保理決議は相当抜け穴が多く、原油と石油製品の輸出は過去1年間の実績を上限に設定、つまり現状維持である。北朝鮮労働者の国外での雇用についても、現状維持だ。
・しかも、トランプ氏は習近平氏の発言に対して何の抗議もせず、理解を示したうえ、「中国は米国にとって非常に大事な国だ」とまで言った。 もっと驚くべきことがある。習近平氏は、「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言した。太平洋を米中二大国で仕切るということである。 これは、トランプ氏が進めようとしている「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは全く矛盾する。インド太平洋戦略は、中国への対抗策だ。 ところが、習近平氏の「米中二大国で太平洋を仕切る」という発言を、トランプ氏は飲んでしまったようだ。
・想定外の展開は、まだまだ続く。11日の中韓首脳会談では、習近平氏と文在寅大統領との間で、北朝鮮問題について「対話による解決」を目指すことで一致した。米韓首脳会談とは全く異なる内容だ。  10日にベトナムで行われた中露首脳会談では、習近平氏とプーチン大統領が北朝鮮問題に対し、中露が連携して対話による解決を目指すと表明した。
・さらにその後、日韓米の3 カ国合同演習の構想について、韓国側が拒否したことが明らかになった。 どうも、背後には習近平氏の圧力があったのではないかと思われる。その前には、韓国の高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD」の配備について、中国が大反対していた。ところが、習近平氏と文在寅氏は、トランプ氏が訪韓する前に和睦している。
・韓国は、それだけ中国を恐れているのか、あるいは中国から圧力をかけられているのか。事実は定かではないが、少なくとも中国と和解する方がメリットが大きいと考えているのだろう。米国は、相当不愉快だろうが。 以上のことを考えると、韓国、日本、そして米国までもが、習近平戦略にはまったのではないかと思われる。
▽トランプ氏は大統領ではなく経営者だ
・僕は、12日放送の「激論!クロスファイア」(BS朝日)で、河野太郎外務大臣と国際政治学者の三浦瑠麗氏を招き、米朝問題について議論をした。その時、僕は河野氏に「安倍首相は、米中首脳会談の展開を見て、不愉快に感じているのではないかな」と聞いたら、言葉を濁していた。 繰り返すが、米中首脳会談の内容は、日米首脳会談とは相当異なっている。さらには、トランプ氏はベトナムで「私は頑張って、金正恩氏の友人になろうとしてみよう。それはいつかは実現するかもしれない」とツイッターで発言したことが話題になった。
・これは一体、どう考えれば良いのか。 トランプ氏は、本当は大統領ではなくて、生粋の経営者ではないのだろうか。最近、米国内では改めて、皮肉としてこのように言われている。 確かに、結果から見ればその通りだ。日本、韓国、中国では、ディールはうまくいった。日本には米国製の武器を買うことを了承させ、韓国には米国製の原子力潜水艦を買わせた。中国にも、28兆円もの米国製品を輸入するよう約束させた。
・特に、韓国は原子力潜水艦などを買ってどうするのか。原子力潜水艦とは、海上に上がる必要がなく広い範囲を動くためのものである。しかし、脅威の相手は隣国の北朝鮮だ。原子力潜水艦では、全く圧力をかけられない。 これらはまさに、経営者として、米国の国益を最大限に優先した内容ではないか。一体、日米首脳会談とは何だったのかと思わざるを得ない。
・僕は、11日の「激論!クロスファイア」で、河野氏からこんな話をきいた。「米国の武力行使は、おそらく起きないだろう。おそらく、米朝の緊張関係は来年秋に控える米中間選挙まで続くのではないか」ということだ。 緊張関係が続いた方が、トランプ政権としては有利だ。米国は今、ロシアゲート問題や雇用問題などが山積みである。米朝関係がクローズアップされれば、それらの問題は影が薄くなる。
・安倍首相にとっても実はプラスだ。北朝鮮という脅威が目の前にあると、外交で日本の存在感が大きくなる。トランプ氏、習近平氏、プーチン氏と友好的で自由に話せるのは、安倍首相くらいしかいないからだ。国内では、安倍政権の支持率が下がりにくい。これは自民党にとっても損ではない話だ。
・中国にとっても、大きなメリットがある。北朝鮮は、中国にとっての大事な外交カードだ。北朝鮮の崩壊は絶対に避けたいと考えている。28兆円の取引で北朝鮮への武力行使が避けられるのであれば、中国にとっては安いものである。
・つまり、北朝鮮問題は、トランプ氏のアジア歴訪によって少なくとも各国の政権にとって、ほぼウィン・ウィンの形で終わったと言える。 問題は、北朝鮮がこれからどう動くかだ。中間選挙の前に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するといった挑発をしかねない。やれば、米国も対応せざるを得ないだろう。 ただ、核実験はしない可能性が高い。最近も核実験を実施していないが、これは中国が圧力をかけて抑えているからだと思われる。この後、北朝鮮がどのような行動に出るのかに注目したい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/111500046/?P=1

次に、米国弁護士の湯浅 卓氏が12月2日付け東洋経済オンラインに寄稿した「トランプ大統領の支持率が上昇しているワケ 不人気だった大統領に2つの追い風が吹いた」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・11月29日未明、北朝鮮はついにICBMミサイル実験を敢行した。その2時間弱後、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスで記者会見を行い、この問題に対して、従来どおり確固たる姿勢で臨むと表明した。
・その会見をつぶさに見た筆者には、トランプ氏がアジア歴訪で得た大統領としての堂々たる自信と風格のある気合いとが見て取れた。米調査会社ギャラップが10月27日から29日にかけて実施した世論調査の結果によると、トランプ米大統領の支持率は過去最低の33%を記録。しかし、その後の支持率は上昇傾向にある。保守系世論調査会社ラスムッセンによる調査では、アジア歴訪を終える直前に、トランプ支持率は46%に跳ね上がり、帰国後も40%台に安定している。
▽なぜ支持率が急上昇したのか
・この支持率急上昇は、アジア歴訪の成功だけではない。アジア歴訪中に米国内で、トランプ氏に追い風が吹いたことが影響していると筆者は見ている。それについては、前回の本欄「日本のメディアが見逃した『トランプの幸運』」で詳述したが、そこで述べた「オバマ政権時代のロシア疑惑」が、ここへきて米メディアはもちろん、とくに米議会の上院、下院において、猛烈な勢いで急浮上しているのだ。
・「オバマ政権時代のロシア疑惑」とは、オバマ政権が米国ウラン資源の20%の権益を持つ、カナダ企業の「ウラニウム・ワン」を、ロシアに売却する計画を承認する際、当時、担当責任者の1人である国務長官のヒラリー・クリントン氏や、陰の実力者であるビル・クリントン元大統領、そしてクリントン財団がどう関わったのかという疑惑だ。これこそが「本物のロシア疑惑」というわけである。
・一説によると、この「ウラニウム・ワン」買収とほぼ同時期に、ロシア関係者から何と1億4500万ドル(約165億円)という巨額の献金がクリントン財団になされたという。 この「ウラニウム・ワン」売買について、ヒラリー国務長官を含む担当責任者らが承認したのは、2010年のことだ。当時、この疑惑発生当初から捜査に全責任をもつFBI(連邦捜査局)長官はロバート・ミュラー現特別検察官だった。
・この事案をめぐっては、「ロシア側からの国際的な贈収賄、リベート、強要、資金洗浄」に関して、FBIに情報提供者を通じて、証拠が蓄積されていたと報じられていた。その報道内容にバラツキはあるものの、クリントン夫妻やクリントン財団が疑惑の渦中にあることに変わりはない。
・そのFBIへの情報提供者は議会証言をしたい意向だったにもかかわらず、オバマ政権の司法長官はそれを阻止したとされる。議会証言すれば刑事訴追するとまで脅されたというのだ。これは明らかにFBI情報提供者に対するオバマ政権による「言論弾圧」であり、「議会からの情報隠し」のそしりを免れない。
・この「言論弾圧=議会からの情報隠し」の疑いは、FBI情報提供者が雇った弁護士によって、米メディアに明らかにされた。それを知った議会は烈火のごとく怒り、司法省に対して、その解除を強く要求した。オバマ政権からの残留組が多い司法省のキャリア官僚たちは、議会の剣幕に脅え、「言論弾圧=議会からの情報隠し」はすぐさま解除された。
・この「すぐさま解除」したことは、逆に言えば、オバマ政権による「議会からの情報隠し」が、ズルズルと長年にわたって実在したことを意味する。たしかに、この事案は刑事問題のほかに、ウランに関わる国防問題の側面もあり、非公開にする必要があったかもしれない。だとすれば、秘密会で議会証言させるという手もあったはずだ。
▽ミュラー氏のほかにもう1人の特別検察官を要求
・このオバマ政権による「引き延ばし戦略」、すなわち、議会に情報開示せずに問題を引き延ばす戦略には、似たパターンがつきものだ。2009年の段階でFBI情報提供者が、ロシア側による違法行為の多くの証拠をもたらしたと伝えられる。 ところが、当時、そのロシア疑惑の捜査は、ミュラーFBI長官の下で、延々と引き延ばされたと、米メディアは報じている。ロシア側の担当者が逮捕されたのは、何とミュラーFBI長官が退職した翌年の2014年だった。
・オバマ政権時代、オバマ大統領とミュラーFBI長官とは切っても切れない関係にあった。FBI長官の任期は10年というのが慣習になっているが、オバマ氏の要請でミュラー氏は2年延長してFBI長官を務めている。 この2人の関係には、カリフォルニアの絆があると筆者は見ている。ミュラー氏は若き日に故郷を離れ、サンフランシスコで法律家生活を長年送ったことがあり、他方、オバマ氏はロサンゼルスで学生時代を過ごしている。法律論は別にして、この2人がクリントン夫妻やクリントン財団に、甘く対応していたことは衆目の一致するところだ。
・そのミュラー氏は、ブッシュ元大統領には強く反発した。こんなエピソードがある。ミュラー氏がブッシュ氏と意見対立したとき、当時、彼の部下だったジェームズ・コミー氏を連れて一緒にFBIを同時辞職すると、ブッシュ氏に政治的脅しをかけたという。
・その後、オバマ氏とウマが合ったミュラー氏は、オバマ再選戦略の中軸であるクリントン夫妻や、クリントン派閥支配下のクリントン財団に不利な情報を、議会にはまったく情報開示しなかった。もし情報開示を急いだら、クリントン夫妻の政治的命運はそこで尽きてしまうかもしれず、いわんや、オバマ再選のチャンスは、ほぼ確実に水泡に帰してしまうという「大人の判断」が働いたからではないか。
・そうした論点は、今後の議会上院・下院における調査の重大関心事となろう。というのは、共和党の有力議員が、「本物のロシア疑惑」に関して、ミュラー氏は「足元が危うい」状況にあると明言しているからだ。
・その共和党の有力議員は、この「本物のロシア疑惑」を、ミュラー氏は「米議会だけでなく、米国民にも明らかにしなかった」と厳しい言葉で糾弾している。そこで、国民のための捜査をするには、ミュラー氏以外に、もう1人の「特別検察官」が必要だという意見が議会で強まっている。
・この「本物のロシア疑惑」には、日本企業もとばっちりを食っている。東京電力と東芝は、国際協力銀行とともに「ウラニウム・ワン」に出資し、20%近くの株式を保有していた。しかし、同社のロシアへの売却に伴い、同社株を手放すことになった。
▽トランプ大統領にとっては「2つの追い風」
・この「本物のロシア疑惑」の捜査が急浮上していることが、トランプ大統領にとって追い風になっていることは間違いない。支持率の急上昇はそれを物語っている。 もう1つ追い風になっているのは、ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏のセクハラスキャンダルが明るみに出たことだ。ハリウッドメディアを牛耳ってきたワインスタイン氏の落ち目は、ハリウッドメディアの落ち目であり、さらに米メディアに対する国民の目が厳しくなることを意味する。
・トランプ大統領にとっては「2つの追い風」であり、1つ目の「本物のロシア疑惑」も、2つ目のハリウッドスキャンダルも、法的にはRICO法の角度から論じられている。 RICO法とは、もともとギャングなど組織犯罪を取り締まる法律として成立されたものだが、現在では、組織犯罪に限らず、何らかの仲間たちや企業、さらに政治家たちの民事および刑事訴訟など適用範囲が拡大している。
・現在、「本物のロシア疑惑」では、RICO法が大きな争点の1つとして報じられ、FBI情報提供者が証人として喚問される可能性がある。また、ハリウッドスキャンダルでも同様に、思わぬ人物が証人喚問されることもあり得る。
・ハリウッドスキャンダルのワインスタイン氏の全盛期は、オバマ政権時代とぴったり重なる。ワインスタイン氏は民主党の有力スポンサーであり、同時にオバマ氏の強力プロモーターだった。そうした長年の縁からなのであろう、オバマ氏の長女マリアさんが、ワインスタイン氏のオフィスでインターンとして働いたこともよく知られている。
・そのマリアさんが、ワインスタイン氏に対する民事の集団訴訟の、将来的な証人として呼び出される可能性もゼロではない、という見方がある。たしかに、これからの訴訟の展開次第では、その可能性は論理的に残る。
▽トランプ氏のメディアとの相性は悪くない?
・今回、ワインスタイン氏のセクハラ報道が全米を揺るがしているあいだ、オバマ氏は沈黙したままだった。メディアは「5日間の沈黙」と報じた。その後にオバマ氏がやっと出したコメントは、かなり浮世離れしたものだった。 オバマ氏の「(ワインスタイン氏の)高い地位や富にもかかわらず」という条件付きでの用心深い批判の言葉からは、手厳しさはまったく感じられない。オバマ氏はワインスタイン氏に対して、この期に及んで、なおゴマをすっている感じがする。
・これは、いくらメディアがオバマ氏の肩を持とうとしても、オバマ氏には、内心、メディアとの相性がよくないという不安感があり、それがオバマ氏のメディアに対する臆病なほどの神経過敏につながっているのではないか。 これに対して、トランプ氏はメディア嫌い丸出しで、メディアとはまるで「水と油」のような相性の悪さ、どうしようもない敵対関係を思わせる。しかし、情報論理学的な意味では、トランプ氏とメディアとの相性は悪くないのではないか。
・オバマ氏とビル・クリントン氏の2人には共通点がある。1つは、メディアに対する緊張感が強いこと、2つは、雄弁と沈黙を戦略的に使い分けることだ。これに対して、トランプ氏は、毎日どころか毎時間、平気でメディアにすぐ反発し、反論する。 実は、トランプ氏本人も周りもまったく気づかないでいるが、トランプ氏とメディアの相性のほうが、むしろ、いいし、より健全かもしれない、と筆者は分析している。
http://toyokeizai.net/articles/-/199458

第三に、在米作家の冷泉彰彦氏が、12月9日付けメールマガジンJMMに寄稿した「トランプの権力を支える対立構図」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・本稿の時点では、アメリカの税制改正については、上院案と下院案を一本化する協議が進行中です。ですから、法案が可決成立したわけではありません。そうではあるのですが、上院案と下院案はそれぞれは可決されており、トランプ政権が鳴り物入りで提案していた、この「税制改正」は、クリスマスまでに成立しそうな雲行きです。
・今年の1月に発足して以来、この政権は様々な政治的なメッセージや政策の提案を続けてきましたが、例えば健保改革の廃止がそうであるように、大統領が力み返って政策を指示しても、議会の、特に議会共和党が言うことを聞かないために物事が進まなかったわけです。従って大統領としては政治的成果として誇れるものは、まだ何もないという状態が続いていました。 ですが、この「法人税率を35%から20%へ」「個人所得税の税率段階や控除を総見直し」という大きな税制の改正が成立すれば、トランプ政権の実績になるのは間違いありません。
・そんな状況ではあるのですが、依然として一つの大きな疑問が残ります。 2016年11月の劇的な大統領選の結果を受けた「勝利宣言スピーチ」で述べた「和解」とか「団結」ということを実現するという約束を、この大統領は全く守っていません。それどころか、2017年8月に発生したヴァージニア州での極右暴力事件を受けて「反対派にも非がある」という表現で、白人至上主義者を認めるような発言を行い、これを撤回していないばかりか、この12月には英国の極右団体の差別的なビデオをツイートするなど、「分断を煽る」ような言動を改める気配はありません。
・また、北朝鮮の金正恩委員長に対しては、激しい罵倒の言葉を浴びせ続けていますし、今週は「イスラエルの首都はエルサレムであり、米国大使館もエルサレムに移設したい」という発言を行って、中東世界に動揺を与えています。和解ではなく、分断と紛争のエスカレーションを煽る政治が続いているのです。
・疑問というのは、そのような大統領の言動にもかかわらず、どうして議会共和党との間では協調が取れるのかという問題、いや場合によっては12月7日の「政府閉鎖回避」などでは民主党とも協調ができているわけですが、とにかく、どうして議会はこの大統領を認めたのかということです。
・つまり、分裂を煽るスタイルはそのままに、どうしてトランプ政権は回り始めているのか、政策が動いているのかということです。勿論、その一方でムラー特別検察官を中心とした「ロシア・ゲート」捜査は進んでいます。また、民主党は何かにつけてトランプ批判の「ジャブ」を加えています。面白いのは世論調査で、例えば「リアル・クリア・ポリティクス」が発表している各種調査の平均値では、12月7日現在で 「支持が38.4%、不支持が57.4%」という非常に低い状況が続いているのですが、では、政権は崩壊一歩手前なのかというと、決してそうでもないのです。
・世論調査からは見放されているし、分裂を煽るスタイルを改める気配もない、にも関わらず、政治が回り始めている、こんなことは、ここ半世紀のアメリカ政治の中で前代未聞の状況でしょう。一体、その背景には何があるのでしょうか、トランプ政権の政治権力は、いったいどこから生まれているのでしょう?
・そのメカニズムを考える上で、何といっても興味深いのが12月12日(火)に投開票の迫っている、連邦上院のアラバマ州補選です。この選挙については、共和党のロイ・ムーア候補が30年以上前の話ではあるものの、大勢の未成年女性に対して性的な行為を行なっていたという告発があり、議会共和党の幹部も不快感を表明する中で、選挙情勢としては不利な展開になっていました。そして、この深南部の保守州における貴重な上院議席が民主党に行くかもしれないという感触が広まっていたのです。
・トランプ大統領は、このムーア候補のスキャンダルを11月上旬にアジア出張中に知ったわけですが、その時から「セクハラ告発はフェイクニュースだ」として、ムーア候補擁護の姿勢を取ってきています。その後、告発がどんどん増えてムーアの支持率が下がっても、トランプはムーアを突き放すことはしませんでした。余りにも批判が多かった時期は、さすがに正面切った支持は口にしなかったのですが、少し事態が好転したところで「民主党に議席を渡すわけには行かない」として正式に支持を表明しています。
・そのトランプ大統領は、本稿の締め切り直前の12月8日(金)夕刻に、フロリダ州のペンサコーラで「ラリー(選挙運動)形式の演説会」を行っています。内容は、すぐ隣のアラバマの有権者に向かって「ムーア候補に投票するように」呼びかけるというもので、「この議席にアメリカの未来がかかっている」などと強い調子で投票を促していました。 このペンサコーラは、アラバマとの州境まで25マイル(40キロ)と至近の地です。だったらアラバマ州に乗り込んで、それこそムーア候補と一緒の運動をすればと思うのですが、トランプは、それはやらないのです。「ムーア候補と並んだ写真」を撮られるのを避けるということ、万が一ムーア落選の場合に責任論にしないため、など色々な理由が考えられます。
・ですが、それだけではありません。つまり「ムーアはリベラルのフェイクニュースの被害に遭っている」とした上で、その「ムーアと大統領が一緒に運動ができないぐらい、自陣営は追い詰められた被害者だ」と強調、その「被害状況」を訴えるには、「大統領は行きたくてもアラバマに行けない」というポーズを取る方が効果的、そんな計算があるようなのです。
・ムーアの方はどうかというと、10人以上という「告発女性」については、「全部が政治的陰謀で、会ったこともない」と全面否定の構えであり、女性たちが持っていた「若き日のムーアの自筆サイン」なども「全てニセモノ」としています。そんな中で、ムーア候補への支持は回復基調にあります。一時は劣勢が伝えられたのですが、ここへ来て2~4%リードしているというデータも出て来ました。
・では、このムーア候補、「セクハラ疑惑に対する全面否定戦術」で復活して来ているのかというと、そうではありません。アラバマ州の最高裁判事として、その前は検事として散々有名になった「宗教保守派的言動」を思い切り繰り広げているのです。
・「オバマはアメリカ生まれではない」「イスラム教徒は議会から追放すべき」「同性愛は法律で取り締まれ」「911は信仰を失った米国への天罰」・・・もう無茶苦茶であり、ブッシュ時代の「草の根保守」どころではありません。
・一時期はやめていたトレードマークの「白いカウボーイハット」を再び被って、この種のアジ演説を徹底しているのです。そんな中で、少し以前の9月の発言ではありますが、ムーア候補が「アメリカが本当に偉大であった時代とは、家族が大切にされた時代のことだ、たとえ、その頃は奴隷制があったにしても」と述べていたということが、改めて問題になっています。ですが、そうした「過激な右派的言動+疑惑の全否定」という作戦がジワジワと支持を拡大しているのです。
・では、アラバマの共和党支持者は、本当に「奴隷制の時代が偉大だった」とか「同性愛者を逮捕せよ」などと思っているのかというと、それは少し違うと思います。また、ムーア候補の「未成年の少女たちに対するわいせつ行為疑惑」の全てが嘘だとは思っていないと思います。では、どうして「右派的言動+疑惑の否定」を歓迎しているのかというと、そこには「敵味方の論理」があるのです。
・とにかく、「オバマとヒラリー」そして議会の「ペロシ(下院院内総務)とシューマー(上院院内総務)」という民主党の「悪しきリベラルども」は自分たちの敵であり、そう考えたときに、問題はあるかもしれないが、ムーア候補は明らかに味方であり、トランプも味方である、そんな感覚です。そして、ムーア候補にしても、トランプ大統領にしても、「過激な発言」を行うのは、その内容を「額面通り正義」だとか「そのまま実行せよ」というために言っているのではなく、「偽善者から偽善的な批判を引き出して敵味方を峻別するためにやっている」という理解があるのだと思います。
・この「敵味方の論理」ですが、トランプ政治の面白いところは、そこに「柔軟性」があるのです。通常は、政治にしても外交にしても、あるいは世界の極左や極右の過激集団にしても、「敵味方の論理」を突き詰めて行くと、「信じられるのは自分たちに近い少数」ということになり、「少数だからこそ思想が過激化する」というスパイラルに入って行くわけです。
・ところが、トランプ政治のユニークなのは、敵味方の論理で、社会の、あるいは国家間の分断を煽りに煽ってはいるのですが合従連衡が極めてフレキシブルなのです。 例えば、スチーブン・バノンを重用する、でもスタッフとの軋轢があれば解雇する、ではバノンを追放したかというと、クビになったバノンは相変わらず場外からトランプ応援団を続けるという具合です。
・議会もそうで、あれほど罵倒合戦になっていた共和党上院議員の重鎮たちとも、今回の予算や税制の件では、是々非々で協調もしているわけです。ですから、ある種のリスクを取って、ムーアを応援しながら、アラバマには入らないし、仮にムーア落選の場合は知らん顔をするということになるのだと思います。
・この敵味方の論理で分断を煽るというのは、外交という姿でも出て来ています。今回世界中を呆れさせた「エルサレムをイスラエルの首都として認知」という方針も、そこに冷静な軍事外交上の戦略戦術があるのではなく、ただひたすらに「この種の問題における敵味方を峻別したい」という行動パターンから来ているのだと思います。
・もっと言えば、トランプの「エルサレムがイスラエルの首都だ、文句あるか」と言う姿勢は、ムーアの言う「同性愛を非合法化せよ」と一種のシンクロ効果を現出させている、そう考えることもできるのです。 とにかく異常な政治が進行しているわけですが、こうした事態に立ち至ったもう一つの理由としては「民主党の体たらく」、つまり「敵失」を指摘しなくてはなりません。
・今回の一連の「セクハラ告発」と言うトレンドですが、当初は保守系のFOXニュースにおける経営者(ロジャー・アイレス、本年5月に物故)、キャスター(ビル・オライリー)から始まったわけです。また政治家としては、今回のロイ・ムーア(共和党)の問題があります。ですが、それ以上に民主党系の芸能人や政治家がゾロゾロ失脚しているわけで、これこそ正に「敵失」以外の何物でもありません。
・今週は、コメディアン時代の不適切な行為への責任を問われて、アル・フランケン上院議員が辞職に追い込まれました。選挙区はミネソタで、当面は民主党の下院議員から上院議員に指名がされるので、民主党の議席は安泰です。ですが、2018年には補選になるわけで、その際には共和党はポウレンティ(元知事=中道右派)あるいはバックマン(元下院議員=茶会系)をぶつけて来るらしく、貴重な上院の議席を失う可能性もあります。
・また、ムーア支持にしても、エルサレム問題にしても、トランプの「好き勝手な言動」に対して、民主党は有効な手が打てていません。一本調子で批判することは「敵の思う壺」だということにも、恐らくは気づいていないぐらいの稚拙な対応が目立ちます。
・そんな中で、民主党はムラー特別検察官の指揮する「ロシア疑惑の捜査」に大きな期待を寄せているわけです。この捜査においては、鍵を握るマイケル・フリン前ホワイトハウス安全保障補佐官が「有罪を認めて捜査協力する」という進展がありました。 ですが、このロシア疑惑については、そもそもトランプのコア支持層や共和党支持者に取っては、「国益を毀損するような行為はない」という理解があり、まさに「敵味方の論理」に収束してしまうわけです。
・例えば、現在の政権の周辺から、あるいはトランプ一族の周辺から「ウィキリークス」への不法な情報提供があったという疑惑があるわけですが、そもそも「ウィキリークス」というのは、若い世代に取っては「政府の暴走を監視する告発サイト」という評価があるわけですから、それをいくら批判しても限界があるわけです。
・そんな中で、株価は史上空前の水準をつけていますし、それでも、11月の労働統計は更に改善しており、失業率は4.1%という夢のような数字になっています。大統領は、自分の成果だとしていますが、就任10ヶ月を超えた現在は、そう言われても否定できない状況になって来ました。そして、法人減税と個人所得税の減税を進めるというのは、この株価と景気を更に引っ張ろうということに他なりません。
・民主党は、そこに注目して「超先進国型の格差社会」をどう克服するのか、雇用拡大の方策を自由貿易と国際分業の中でどうやって実現するのか、あるいは再分配によって経済社会の安定を図る道はあるのか、もう一度頭を冷やして考え抜く時期に来ているのだと思います。その地道な取り組みをしないで、イデオロギー上の「敵味方の論理」を持ち出されると、そこにホイホイと乗せられて「トランプ批判」ですませてしまう、その結果として対立の片棒を担いでしまう、このパターンから抜け出さなくてはなりません。
・いずれにしても、景気と株価が堅調である限り、そしてトランプの繰り出してくる「敵味方の峻別」という罠に、メディアや民主党が載せられている限り、この異常な政権は、不思議な政治的権力を維持し続ける可能性があります。その点で、2018年11月の中間選挙は、大きな試金石になるわけですが、その前に、何よりも直前に迫ったアラバマ補選の行方に注目したいと思います。

第一の記事で、 『韓国はわざわざ日韓の間に溝を作ったのだった。これらの行動は謎だったが、中国との関係改善に向けた動きだと言われている』、というのはなるほどである。『トランプ氏は習近平氏の発言に対して何の抗議もせず、理解を示したうえ、「中国は米国にとって非常に大事な国だ」とまで言った。 もっと驚くべきことがある。習近平氏は、「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言した。太平洋を米中二大国で仕切るということである。 これは、トランプ氏が進めようとしている「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは全く矛盾する。インド太平洋戦略は、中国への対抗策だ。 ところが、習近平氏の「米中二大国で太平洋を仕切る」という発言を、トランプ氏は飲んでしまったようだ』、というのは、『「国賓プラス」というレベルの異例の厚遇・・・総額2535億ドル(約28兆7800億円)の米国製品を買うという大盤振る舞い』の前には、肝心の安全保障問題などはけし飛んでしまったようだ。ただ、 『(米朝の)緊張関係が続いた方が、トランプ政権としては有利だ・・・安倍首相にとっても実はプラスだ・・・中国にとっても、大きなメリットがある・・・つまり、北朝鮮問題は、トランプ氏のアジア歴訪によって少なくとも各国の政権にとって、ほぼウィン・ウィンの形で終わったと言える』、ということであれば、「けし飛んでしまった」のではなく、トランプの計算ずくの行動だったのかも知れない。
第二の記事で、 トランプ米大統領の支持率が急上昇しているというのは、初めて知り、トランプ氏を再評価した。 『ヒラリー・クリントン氏や、陰の実力者であるビル・クリントン元大統領、そしてクリントン財団がどう関わったのかという疑惑だ。これこそが「本物のロシア疑惑」』というのは、事実であれば、これまでの「ロシア疑惑」よりはるかに悪質だ。 『トランプ氏とメディアの相性のほうが、むしろ、いいし、より健全かもしれない、と筆者は分析している』、というのは面白い見方だ。
第三の冷泉氏の 『「敵味方の論理」ですが、トランプ政治の面白いところは、そこに「柔軟性」があるのです。・・・敵味方の論理で、社会の、あるいは国家間の分断を煽りに煽ってはいるのですが合従連衡が極めてフレキシブルなのです』、『トランプの繰り出してくる「敵味方の峻別」という罠に、メディアや民主党が載せられている限り、この異常な政権は、不思議な政治的権力を維持し続ける可能性があります』、などの深い分析は言われてみれば、その通りという気もする。単純なステレオタイプで見ない方がいいのかも知れない。 目先的には、『12日(火)に投開票の迫っている、連邦上院のアラバマ州補選』の結果はどうなるのだろうか。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 冷泉彰彦 アジア歴訪 田原 総一朗 トランプ大統領 JMM (その25)(中国の策にはまった日米韓 トランプ氏は大統領ではなくやっぱり経営者だ、トランプ大統領の支持率が上昇しているワケ、トランプの権力を支える対立構図) 「東アジアの緊張続く、中国の策にはまった日米韓 トランプ氏は大統領ではなくやっぱり経営者だ」 米中首脳会談の内容は、日本のマスメディアの予想が大きく外れた展開 韓国はわざわざ日韓の間に溝を作った 中国との関係改善に向けた動き 中国はトランプ氏に対し、「国賓プラス」というレベルの異例の厚遇 総額2535億ドル(約28兆7800億円)の米国製品を買うという大盤振る舞い 肝心の北朝鮮問題について、 現状維持だ ランプ氏は習近平氏の発言に対して何の抗議もせず、理解を示したうえ、「中国は米国にとって非常に大事な国だ」とまで言った 習近平氏は、「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言した。太平洋を米中二大国で仕切るということである。 これは、トランプ氏が進めようとしている「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは全く矛盾する。インド太平洋戦略は、中国への対抗策だ。 ところが、習近平氏の「米中二大国で太平洋を仕切る」という発言を、トランプ氏は飲んでしまったようだ 日韓米の3 カ国合同演習の構想について、韓国側が拒否 トランプ氏は、本当は大統領ではなくて、生粋の経営者ではないのだろうか 緊張関係が続いた方が、トランプ政権としては有利だ 安倍首相にとっても実はプラスだ 中国にとっても、大きなメリットがある 北朝鮮問題は、トランプ氏のアジア歴訪によって少なくとも各国の政権にとって、ほぼウィン・ウィンの形で終わったと言える 湯浅 卓 「トランプ大統領の支持率が上昇しているワケ 不人気だった大統領に2つの追い風が吹いた」 トランプ米大統領の支持率は過去最低の33%を記録。しかし、その後の支持率は上昇傾向にある 「オバマ政権時代のロシア疑惑」 国務長官のヒラリー・クリントン氏や、陰の実力者であるビル・クリントン元大統領、そしてクリントン財団がどう関わったのかという疑惑 「本物のロシア疑惑」 ロシア関係者から何と1億4500万ドル(約165億円)という巨額の献金がクリントン財団になされた 「ウラニウム・ワン」を、ロシアに売却する計画を承認する際 捜査に全責任をもつFBI(連邦捜査局)長官はロバート・ミュラー現特別検察官 FBIへの情報提供者は議会証言をしたい意向だったにもかかわらず、オバマ政権の司法長官はそれを阻止したとされる 「言論弾圧=議会からの情報隠し」 ミュラー氏のほかにもう1人の特別検察官を要求 オバマ政権時代、オバマ大統領とミュラーFBI長官とは切っても切れない関係にあった 「本物のロシア疑惑」に関して、ミュラー氏は「足元が危うい」状況にあると明言 日本企業もとばっちり 京電力と東芝は、国際協力銀行とともに「ウラニウム・ワン」に出資し、20%近くの株式を保有していた。しかし、同社のロシアへの売却に伴い、同社株を手放すことになった トランプ大統領にとっては「2つの追い風」 う1つ追い風になっているのは、ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏のセクハラスキャンダルが明るみに出たことだ ワインスタイン氏の落ち目は、ハリウッドメディアの落ち目であり、さらに米メディアに対する国民の目が厳しくなることを意味 RICO法 トランプ氏とメディアの相性のほうが、むしろ、いいし、より健全かもしれない、と筆者は分析 「トランプの権力を支える対立構図」 税制改正については、上院案と下院案を一本化する協議が進行中 大きな税制の改正が成立すれば、トランプ政権の実績になるのは間違いありません 「勝利宣言スピーチ」で述べた「和解」とか「団結」ということを実現するという約束を、この大統領は全く守っていません 「分断を煽る」ような言動を改める気配はありません イスラエルの首都はエルサレムであり、米国大使館もエルサレムに移設したい 中東世界に動揺を与えています 和解ではなく、分断と紛争のエスカレーションを煽る政治が続いている 議会共和党との間では協調が取れるのか どうして議会はこの大統領を認めたのかということです 連邦上院のアラバマ州補選 共和党のロイ・ムーア候補 30年以上前の話ではあるものの、大勢の未成年女性に対して性的な行為を行なっていたという告発 「敵味方の論理」 「オバマとヒラリー」そして議会の「ペロシ(下院院内総務)とシューマー(上院院内総務)」という民主党の「悪しきリベラルども」は自分たちの敵であり、そう考えたときに、問題はあるかもしれないが、ムーア候補は明らかに味方であり、トランプも味方である、そんな感覚です この「敵味方の論理」ですが、トランプ政治の面白いところは、そこに「柔軟性」があるのです 通常は、政治にしても外交にしても、あるいは世界の極左や極右の過激集団にしても、「敵味方の論理」を突き詰めて行くと、「信じられるのは自分たちに近い少数」ということになり、「少数だからこそ思想が過激化する」というスパイラルに入って行くわけです トランプ政治のユニークなのは、敵味方の論理で、社会の、あるいは国家間の分断を煽りに煽ってはいるのですが合従連衡が極めてフレキシブルなのです トランプの「好き勝手な言動」に対して、民主党は有効な手が打てていません。一本調子で批判することは「敵の思う壺」だということにも、恐らくは気づいていないぐらいの稚拙な対応が目立ちます 景気と株価が堅調である限り、そしてトランプの繰り出してくる「敵味方の峻別」という罠に、メディアや民主党が載せられている限り、この異常な政権は、不思議な政治的権力を維持し続ける可能性があります
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日本の政治情勢(その15)(本当は弱い安倍政権、“極右”の安倍政権が左派的政策をとり 共産党が「保守」と呼ばれる訳、「党首討論なし」「首相は逃げ恥」では酷すぎる 傲慢自民に混乱野党で 国会は機能不全に、質問時間見直しの裏で 自民が国会から“安倍首相隠し”画策) [国内政治]

日本の政治情勢については、11月2日に取上げた。今日は、(その15)(本当は弱い安倍政権、“極右”の安倍政権が左派的政策をとり 共産党が「保守」と呼ばれる訳、「党首討論なし」「首相は逃げ恥」では酷すぎる 傲慢自民に混乱野党で 国会は機能不全に、質問時間見直しの裏で 自民が国会から“安倍首相隠し”画策) である。

先ずは、エコノミストの浜矩子氏が11月12日付け週刊金曜日に寄稿した「本当は弱い安倍政権(浜矩子)」を紹介しよう。
・総選挙明けの10月23日、月曜日に本稿を執筆している。今の心境はどうか。 やれやれまたか。もとより、この思いはある。自公で解散前勢力をほぼ維持した。なんとうんざりすることか。だが、その一方で、それなりのワクワク感が、実をいえばある。「立憲民主」を掲げる政党が誕生した。そして、野党第一党のポジションにつけた。 そしてさらに、一時は妖怪アホノミクスを凌ぐ毒の鼻息を吹き散らすかにみえた緑の妖怪、グリーンモンスターが色あせた。と同時に、緑の衣の下に潜む鎧の性格がかなりよくみえて来た。「改憲踏み絵」が鎧の色合いをよく示していた。
・かくして、対峙の構図がかなりすっきりみえてきた。民主主義と国粋主義が正面切ってにらみ合う。この関係が鮮明に浮かび上がった。わけの解らない与野党対決の時代は終わった。これでいい。あるのは、市民側対権力側の攻防だ。政治家たちは、このいずれの側につくのか。そのことで、彼らの知性と品格が試される。
・ところで、今回も盛んに「安倍一強」ということが言われた。「一強の驕り」が出ないよう、身を慎め。選挙後の自公政権に対して、多くのメディアがこのメッセージを投げかけた。重要な戒めだ。 ただ、彼らは本当に強い政権なのか。実はそうではないように思う。彼らは、本当は弱い政権なのだと思えてならない。弱虫政権である。
・弱虫の特徴は何か。それは、空威張りをすることだ。彼らには自信がない。だから必死で突っ張る。すぐに被害妄想に陥る。そして、過激な言動をもって逆襲に出ようとする。弱虫にはゆとりがない。だから、批判を封じ込めようとする。逆らう者たちを黙らせようとする。言論の自由を制限しようとする。何とも肝っ玉が小さい。
・弱虫には、怖いものがたくさんある。だから、それらの怖いものを全部押しつぶそうとする。弱虫は、決して謙虚になれない。なぜなら、彼らは臆病だからだ。臆病者は、常に虚勢を張っていなければ生きていけない。そのような者たちの中に、謙虚であるおおらかさは芽生えない。
・その意味で、彼らが披露してみせているのは、「一強の驕り」ではない。あれは「一弱の怯え」だ。人間は、怯えれば怯えるほど、行動が無茶なものになる。過激になる。容赦なくなる。形振り構わなくなってしまう。
・市民とともに闘い続けるまともな野党組の皆さんには、弱虫の怯えと上手に対峙し、それを上手に退治してほしい。その点で、一つやや気掛かりなことがある。選挙戦中、立憲民主党の枝野代表は「右でもない、左でもない」という言い方をしていた。多くの市民とともに前に進む。それはいい。だが、右はやはり少々まずいと思う。なぜなら、その道には、どうしても国粋につながる面があるからだ。国家主義に踏み込んでいく扉がそこに開いているからだ。
・振り返ってみた時、今この場面が、日本における市民主義の本格的夜明けの場だったと思える。そのような時として、今を輝かせる。それがまともな野党組の使命だ。立ち去れ、弱虫政権と偽野党たち。
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2017/11/12/keizai-23/

次に、11月17日付けダイヤモンド・オンライン「“極右”の安倍政権が左派的政策をとり、共産党が「保守」と呼ばれる訳」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・週刊ダイヤモンド11月18日号の特集は「右派×左派 ねじれで読み解く企業・経済・政治・大学」。保守とリベラルの対決が鮮明となった衆院選が終わってもなお、「右派・左派」「保守・リベラル」などイデオロギーにかかわる議論が続いている。左派政党の代表格であるはずの日本共産党に対し、若い有権者は「保守」のイメージを抱いているという。しかも、その誤解は一部で現実化している。
・若い有権者は、最も左派色の濃い日本共産党を“保守”と呼び、保守を代表する自民党や日本維新の会を“リベラル”と認識している──。本来の立ち位置とは正反対の政党認識が話題になっている。
・今年7月から8月にかけ、「読売新聞」と早稲田大学が実施した共同調査で明らかになった。この調査結果をまとめたのが、下図である。 これによると、70歳以上の認識は、最も保守的な方から順番に自民党、次いで維新の会、公明党、民進党、共産党と続き、伝統的なイデオロギー軸と整合性の取れた並び順になっている。
・ところが、これが18~29歳の認識になると、見事に逆転しているのが分かるだろう。さらに30代の共産党に対する認識に至っては、20代より右寄りとなる一方、維新の会はもう一段左に寄っており、認識のねじれはさらにひどくなっている。 共産党と維新の会のグラフは40代と50代の間で交差しており、50歳前後を挟んで、政党間の対立軸の認識に世代間の断絶があるといえそうだ。
・40代以下の有権者から、共産党が保守的と認識されているというのは驚きだが、確かに、「変わらない」という点に限れば、共産党は“保守”かもしれない。 もともと日本における政治的イデオロギー対立は、安全保障をめぐる保守陣営と革新陣営の対立を基本軸に展開されてきた。
・しかし、冷戦終結によって対立構造が見えにくくなる中、冷戦を知らない若い有権者ほど、変えようとしない政治勢力を文字通り、単純に保守と認識するようになった可能性が高い。 つまり、共産党はぶれずに愚直に時の政権と対峙し続けてきたという点で、変わらないが故に“保守”なのだ。
▽憲法問題では若い有権者の誤解が現実化
・実のところ、若い世代のこうした「誤解」は現実化している。 例えば憲法問題。共産党をはじめとする左派政党は一貫して憲法護持を訴えてきており、何が何でも憲法改正を阻止したい考えだ。 逆に、自民党の安倍晋三首相は改憲が悲願である。
・10月の衆院選で圧勝し、与党の自公や、維新の会など「改憲勢力」が憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を衆参両院で確保したことを受け、11月には来年の通常国会での改憲案提出を目指す方針を明らかにした。 変えたくない共産党と変えたい自民党。激しい攻防が予想される改憲論議では、保守とリベラルが実際に入れ替わっているのだ。
・経済政策もまた、若者たちの誤解を先取りしている。1970年代、『列島改造論』を掲げて首相となった自民党の田中角栄は保守政党の総裁でありながら、都市と農村の格差是正や福祉の充実を図り、左派層の取り込みを狙った。安倍首相も働き方改革で非正規雇用の処遇改善を進めるなど、リベラル寄りの政策を取ってきた。
・下図を見てもらいたい。これは日本の政党の立ち位置を示したものだ。自民党は一般的に政治・文化的には保守、経済的にも右派で小さな政府を志向する右上に配置されることが多い。ただ、時に“極右”とやゆされる現安倍政権は経済政策の面では左派であり、右下の「保守左派」のカテゴリーに分類される。
・逆に、リベラル派の旧民主党などは緊縮的な財政政策を取りがちで、「事業仕分け」はその典型だろう。こうした政策はむしろ経済右派の考え方となる。 安倍首相は自らの野心のため、この「保守左派」という立ち位置を非常に都合よく使い分けてきたといえる。 どういうことかというと、安倍政権は先の衆院選で国政選挙5連勝を達成したが、実は選挙のたびに有権者に受けのいい左派的な経済政策を掲げ、選挙を乗り切ると保守色の強い右派的な政策を進めるというサイクルを繰り返しているのだ。
▽「保守左派」を都合よく利用する狡猾な安倍政権
・具体的に見ていこう。2012年の衆院選で政権を奪い返すと、安倍政権は13年にアベノミクスを本格始動させる。その年の7月に行われた参院選は株高の後押しを受けて圧勝。参議院で野党が多数を占める衆参のねじれの解消に成功する。 この辺りから抑えていた保守色が強まっていく。同12月に特定秘密保護法を成立させた安倍首相は、靖国神社にも参拝した。
・その後、支持率が低下しだすと、左派モードに切り替えて「地方創生」を提唱。さらに消費税の増税先送りを決定し、14年の衆院選と15年の統一地方選にも勝利した。その後に出てきたのが、国民的な議論を呼んだ安全保障関連法案だ。これも同9月に強行採決で成立に持ち込んだ。
・強引な政権運営への不満が高まってくると、今度は「1億総活躍社会」を打ち出し、参院選に完勝する。すると再度保守モードに切り替わり、いわゆる共謀罪法を実現するといった具合だ。 聞こえのいい左派的な経済政策を隠れみのに、本丸である保守色の強い政策を通す。その手腕は見事だが狡猾さも透ける。
・共産党の愚直な“保守”と、自民党の狡猾な保守。この二つの保守の根っこにあるのも右派と左派のねじれといえる。
http://diamond.jp/articles/-/149808

第三に、政治ジャーナリストの泉 宏氏が11月28日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「党首討論なし」「首相は逃げ恥」では酷すぎる 傲慢自民に混乱野党で、国会は機能不全に」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・師走の寒風に通行人が首をすくめる永田町では週末の9日、特別国会が閉幕する。衆院選を受けて安倍晋三首相が発足させた第4次政権の初舞台で、39日間という異例に長い会期設定となったが、与野党論戦はまったく盛り上がらないまま終戦となり、国内政局は年末年始の休戦に入る。
・今春の疑惑発覚時から野党の攻撃材料となった「森友・加計学園問題」は、新たな材料も浮上して疑惑が深まったのに、首相や関係省庁の固いガードと開き直り答弁による"逃げ恥作戦"が奏功して、追及は尻切れトンボに終わった。しかも、与野党党首が1対1で切り結ぶ党首討論も、制度導入以来初の「年間開催ゼロ」に。衆院選圧勝で傲慢さを増す自民党の国会運営に、民進党分裂による"バラバラ野党"が押しまくられた結果だが、国権の最高機関としての国会の劣化も際立つ年の暮れとなった。
・特別国会冒頭で自民党がいきなり仕掛けたのが、与野党の質問時間配分の見直し。1強首相の「最大のウイークポイント」(自民幹部)とされる「森友・加計学園疑惑」での野党追及に歯止めをかける狙いからで、「各党議席数に応じた質問時間」を前面に押し出し、前国会までの与野党「2対8」を「7対3」に逆転させようとする「とんでもない暴論」(立憲民主党)を野党側に突きつけた。
▽「質問時間見直し」で押し切られた野党の無力
・もちろん野党側は「民主主義の根幹にかかわる」(共産党)などと猛反発し、自民党内からも「やりすぎ」(参院国対)との批判が出たが、党執行部は「与野党1対1が大原則」として各委員会で野党側に圧力をかけ続けた。その結果、論戦の主舞台となる衆院予算委で野党側が渋々応じた「5対9」が新たな慣例となり、年明けに召集される通常国会でも与党の質問時間は倍増し、野党は大幅削減を余儀なくされそうだ。
・質問時間については今回衆院選で3回目の当選を果たした"安倍チルドレン"と呼ばれる自民若手議員達が「国会での質問の機会を与えて欲しい」と党執行部に陳情し、首相もこれを後押しする姿勢を示したことで、自民執行部が強硬姿勢に転じた。同党内でも委員会の自主性に任せている参院側が苦言を呈し、「いまこそ1強政権の懐の深さをアピールすべきだ」(自民長老)との批判も出た。だが、衆参で野党第1党が異なるという過去に例のない事態で、野党側が無力化し、自民のゴリ押しを許した格好だ。
・首相や政府与党幹部が選挙後も合言葉にしていたはずの「謙虚」とはかけ離れた高圧的な国会運営はその後も続いた。8月3日の前内閣発足以来初めてとなった11月17日の首相所信表明演説は、約3500字(15分)という安倍政権下での最短記録を更新した。「長ければいいというわけではない」(自民幹部)が、選挙戦で首相が「真摯で丁寧な説明」を約束したはずの森友・加計問題に一言も触れなかったことは「国会軽視」(共産党)のそしりを免れない。
・今年2月に発覚した森友問題の国会での疑惑解明がまったく進展しない中、特別国会後半の11月22日には、会計検査院が、疑惑の核心とされる約8億円値引きでの同学園への国有地売却について、「値引き額の根拠がなく不適切」などとする厳しい検査結果を報告・公表した。
・「絶好の攻撃材料」と勇み立った野党側は、11月27日からの衆参予算委員会やその後の関係委員会での追及を強め、通常国会の段階から取り上げられていた財務省近畿財務局と籠池泰典前森友学園理事長との価格交渉をうかがわせる音声データについて、財務省に「本物」と認めさせた。しかし、会計検査院が「不適切」と指摘した大幅値引きについては、国会答弁で「価格算定は適正」と繰り返してきた首相や麻生太郎財務相が、「所管官庁の適正との報告を信用してそう申し上げた」などと開き直り、野党の謝罪要求も無視したが、野党側は二の矢を放てなかった。
・会計検査院が、森友問題での首相や昭恵夫人への忖度の有無などについては「検査の対象外」としていっさい触れなかったこともあり、首相らは人気テレビ番組によって流行語ともなった「逃げるは恥だが役に立つ」という"逃げ恥"作戦を決め込んだ格好だ。これに対し、野党側も独自調査による追及材料発掘への努力不足が際立っており、「年明けの通常国会での徹底追及」(立憲民主幹部)も掛け声倒れに終わるとの見方が広がる。
▽野党側も党首討論を想定せず?!
・そうした中、通常国会に続いて特別国会でも党首討論の開催が見送られた。首相と野党党首の差しの勝負となる党首討論は、2012年11月に、当時の野田佳彦首相(民主党)が安倍自民党総裁との対決で突然、衆院解散を宣言するなど、「政局大転換の舞台」となった実績もある。しかし、第2次安倍政権発足後は年1~2回の開催となり、とうとう今年は制度発足以来初の「開催ゼロ」となった。
・現在のような衆参両院の国家基本政策委員会合同審査会での党首討論がスタートしたのは2000年通常国会。国会での政策論議を官僚主導から政治家主導にするのが狙いで、英国下院議会の「クエスチョンタイム」がモデルだ。小沢一郎氏(自由党共同代表)が自民党幹事長時代に提案したもので、導入当初は「国会改革の切り札」として国民からも期待された。しかし討論時間が合計45分間と短いこともあって、首相と野党党首の「言いっ放しのすれ違い」(野党幹部)に終わるケースが多く、野党側も首相追及の時間が十分確保できる予算委での質疑を優先するようになった。
・野党党首としての討論参加資格は、(1)衆参両院のいずれかで10人以上の議員を有して院内交渉団体の資格を持つ政党(会派)の党首、(2)国会議員で国家基本政策委員会に所属、と規定されている。(1)の条件を満たす党首は枝野幸男・立憲民主党代表、玉木雄一郎・希望の党代表、大塚耕平・民進党代表、志位和夫・共産党委員長、片山虎之助・日本維新の会共同代表の5氏だが、衆院会派無所属の会(13人)の岡田克也代表も理論上は有資格者となる。
・岡田氏は民進党籍があるため、参院野党第1党の同党に所属する衆院側議員と見ることもできるが、その場合は民進党籍を持つ議員で構成される衆院無所属の会(13人)を加えると衆参の総議員数では民進党が「野党第1党」となってしまう。こうした過去に例のない異常事態について、自民党の森山裕国対委員長は「野党でしっかり決めて欲しい」と野党間の調整を求めたが野党側の対応が混乱、これが特別国会での党首討論見送りにつながった原因だ。
・そもそも、特別国会での衆参国家基本政策委員会の登録議員をみると、大塚、岡田両氏の名前はなく、ルール上では初めから両氏は今国会での党首討論への参加資格はなかった。このことからも、野党側は党首討論開催を想定していなかったと見られても仕方がないのが実情だ。
・さらに、質問時間配分は原則的に所属議員数との見合いで決まる。仮に来年の通常国会で岡田氏を除く5人の党首が討論に参加する場合、これまでの経緯から枝野、玉木、大塚3氏が各10分強、志位、片山両氏が各5分という"細切れ討論"となり、各党首が緻密に連携しない限り、野党側の追及不足となるのは避けられない。
▽世論調査では、首相3選に「反対」が上回る
・国会論戦の主舞台となる予算委員会は各委員の質問に首相ら政府側が答える「一方通行方式」だが、党首討論では首相の「逆質問」も認められており、本来は丁々発止の緊迫したやり取りになるはずだ。ところが、首相からの逆質問はまれで、むしろ長広舌による時間稼ぎが常態化していた。このため、野党が小党乱立となった現状では党首討論自体が形骸化し、来年も開催できなければ存続の是非すら問われかねない事態だ。まさに「言論の府の機能不全の象徴」(首相経験者)ともみえる。
・国政選挙5連勝で"1強"を維持する首相にとって、野党陣営が民進党分裂の後遺症で「戦闘能力」を喪失していることは、10カ月後の自民総裁選での「3選」への追い風ともなっている。自民党内でも「首相の強運はまだまだ続く」(執行部)との見方が広がる。しかし、衆院選後に実施された各種世論調査では、首相の「3選」について「反対」が「賛成」を上回る状況が続く。「国民の"安倍疲れ"の表れ」(自民長老)とすれば、年明け以降も強引な政局運営を続けると、「ちょっとしたミスが政権危機につながる」(同)可能性は否定できない。
http://toyokeizai.net/articles/-/200414

第四に、11月29日付け日刊ゲンダイ「質問時間見直しの裏で 自民が国会から“安倍首相隠し”画策」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・野党の質問時間を減らすために、安倍自民党がゴリ押しした「質問時間の配分見直し」。案の定、質問時間が増えた自民党議員は、安倍首相をヨイショする愚にもつかない質問を連発している。 さらにフザケているのは、自民が画策している安倍首相のための“国会改革”だ。なんと、首相の国会出席日数を減らそうとしているのだ。
・「今月21日の自民党正副幹事長会議で、日本の国会がイギリス議会をモデルにしていることに触れ、“イギリスにならうべし”と首相の議会出席日数の削減が持ち出されました。ご丁寧にも、会議では『議院内閣制をとる国における議会への首脳出席状況等』と題された資料が配布され、日本の首相が欧州各国の首脳と比べて議会出席が多いと指摘された。国会が嫌いな安倍首相のために、自民党は本気で首相の出席日数を減らすつもりです」(永田町関係者)
・たしかに、欧州各国と比べて首相の出席日数は多い。有識者による民間団体「日本アカデメイア」の国会改革に関する提言(2012年)によると、各国首脳の年間の議会出席日数は<日本127日><フランス12日><イギリス36日><ドイツ11日>である。
▽仕事量を増やしているのは安倍首相自身
・しかし、議会の制度も政治風土も違うのに、出席日数だけを比べるのは、ナンセンスもいいところだ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。 「イギリスの議会制度をモデルとするなら、首相の解散権についても見直さないと比較になりません。イギリスでは、解散に下院の3分の2以上の賛成多数が必要で、解散権に制限があります。そもそも、仕事量を増やしているのは、安倍首相自身です。モリカケ問題など、国会に呼ばれるような原因をつくらなければいい話です。出席日数が多いと悲鳴を上げるのは、裏を返せば『激務に耐えられない』ということ。そんな人は辞めたらいいと思います。戦後70年間、日本の首相が普通にやってきたことをできないということでしょう」
・なにより、イギリスでは毎週水曜日に「クエスチョンタイム」という党首討論が行われ、野党議員から事前通告ナシの質問を受ける。それに比べ日本は今年、1回も党首討論が行われていない。 これまで与党は、首相が国会に長時間拘束され、外国訪問や国際会議への出席ができないと、出席日数削減を声高に叫んできたが、安倍政権の誕生後、野党が首相の外遊にストップをかけたことはほとんどない。今月1日召集の特別国会も、安倍首相の“外交日程を考慮して”所信表明演説は2週間遅れの17日に行われた。
・野党の追及から逃れようとするより、国会で国民が納得する答弁をしたらどうだ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/218518/1 

第一の記事で、 『彼らが披露してみせているのは、「一強の驕り」ではない。あれは「一弱の怯え」だ。人間は、怯えれば怯えるほど、行動が無茶なものになる。過激になる。容赦なくなる。形振り構わなくなってしまう』、というのは逆説的だが、説得力がある。さすが浜氏だ。
第二の記事で、 『40代以下の有権者から、共産党が保守的と認識されているというのは驚きだが、確かに、「変わらない」という点に限れば、共産党は“保守”かもしれない・・・冷戦終結によって対立構造が見えにくくなる中、冷戦を知らない若い有権者ほど、変えようとしない政治勢力を文字通り、単純に保守と認識するようになった可能性が高い。つまり、共産党はぶれずに愚直に時の政権と対峙し続けてきたという点で、変わらないが故に“保守”なのだ』、との調査結果には私も驚いた。 『時に“極右”とやゆされる現安倍政権は経済政策の面では左派であり、右下の「保守左派」のカテゴリーに分類される。 逆に、リベラル派の旧民主党などは緊縮的な財政政策を取りがちで、「事業仕分け」はその典型だろう。こうした政策はむしろ経済右派の考え方となる。 安倍首相は自らの野心のため、この「保守左派」という立ち位置を非常に都合よく使い分けてきたといえる』、『聞こえのいい左派的な経済政策を隠れみのに、本丸である保守色の強い政策を通す。その手腕は見事だが狡猾さも透ける』、などの指摘は、残念ながらその通りだ。
第三の記事で、『「質問時間見直し」で押し切られた野党の無力』、『野党側も党首討論を想定せず?!』、などは細分化した野党の弱さを物語っている。民進党前代表前原の罪は極めて重い。 『世論調査では、首相3選に「反対」が上回る』、ということであれば、自民党内で反安倍の動きが強まるのを期待するほかないのかも知れない。
第四の記事で、 『国会が嫌いな安倍首相のために、自民党は本気で首相の出席日数を減らすつもりです』というのは、由々しいことだ。 『そもそも、仕事量を増やしているのは、安倍首相自身です。モリカケ問題など、国会に呼ばれるような原因をつくらなければいい話です』との五野井教授の指摘はその通りだ。国会審議をこれ以上形骸化させるようなことを許してはならない。
タグ:東洋経済オンライン 週刊金曜日 日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン 会計検査院 浜矩子 日本の政治情勢 泉 宏 (その15)(本当は弱い安倍政権、“極右”の安倍政権が左派的政策をとり 共産党が「保守」と呼ばれる訳、「党首討論なし」「首相は逃げ恥」では酷すぎる 傲慢自民に混乱野党で 国会は機能不全に、質問時間見直しの裏で 自民が国会から“安倍首相隠し”画策) 「本当は弱い安倍政権(浜矩子)」 彼らは本当に強い政権なのか。実はそうではないように思う。彼らは、本当は弱い政権なのだと思えてならない。弱虫政権である 弱虫の特徴は何か。それは、空威張りをすることだ。彼らには自信がない。だから必死で突っ張る。すぐに被害妄想に陥る。そして、過激な言動をもって逆襲に出ようとする。弱虫にはゆとりがない。だから、批判を封じ込めようとする。逆らう者たちを黙らせようとする。言論の自由を制限しようとする。何とも肝っ玉が小さい 弱虫には、怖いものがたくさんある。だから、それらの怖いものを全部押しつぶそうとする。弱虫は、決して謙虚になれない。なぜなら、彼らは臆病だからだ。臆病者は、常に虚勢を張っていなければ生きていけない。そのような者たちの中に、謙虚であるおおらかさは芽生えない 彼らが披露してみせているのは、「一強の驕り」ではない。あれは「一弱の怯え」だ。人間は、怯えれば怯えるほど、行動が無茶なものになる。過激になる。容赦なくなる。形振り構わなくなってしまう。 「“極右”の安倍政権が左派的政策をとり、共産党が「保守」と呼ばれる訳」 「読売新聞」と早稲田大学が実施した共同調査 70歳以上の認識は、最も保守的な方から順番に自民党、次いで維新の会、公明党、民進党、共産党と続き、伝統的なイデオロギー軸と整合性の取れた並び順 れが18~29歳の認識になると、見事に逆転しているのが分かるだろう。さらに30代の共産党に対する認識に至っては、20代より右寄りとなる一方、維新の会はもう一段左に寄っており、認識のねじれはさらにひどくなっている 40代以下の有権者から、共産党が保守的と認識されているというのは驚きだが、確かに、「変わらない」という点に限れば、共産党は“保守”かもしれない 冷戦終結によって対立構造が見えにくくなる中、冷戦を知らない若い有権者ほど、変えようとしない政治勢力を文字通り、単純に保守と認識するようになった可能性が高い 安倍首相も働き方改革で非正規雇用の処遇改善を進めるなど、リベラル寄りの政策を取ってきた 時に“極右”とやゆされる現安倍政権は経済政策の面では左派であり、右下の「保守左派」のカテゴリーに分類される リベラル派の旧民主党などは緊縮的な財政政策を取りがちで、「事業仕分け」はその典型だろう。こうした政策はむしろ経済右派の考え方となる 実は選挙のたびに有権者に受けのいい左派的な経済政策を掲げ、選挙を乗り切ると保守色の強い右派的な政策を進めるというサイクルを繰り返しているのだ 「保守左派」を都合よく利用する狡猾な安倍政権 聞こえのいい左派的な経済政策を隠れみのに、本丸である保守色の強い政策を通す。その手腕は見事だが狡猾さも透ける 「「党首討論なし」「首相は逃げ恥」では酷すぎる 傲慢自民に混乱野党で、国会は機能不全に」 森友・加計学園問題 新たな材料も浮上して疑惑が深まったのに、首相や関係省庁の固いガードと開き直り答弁による"逃げ恥作戦"が奏功して、追及は尻切れトンボに終わった 党首討論も、制度導入以来初の「年間開催ゼロ」に 与野党の質問時間配分の見直し 衆参で野党第1党が異なるという過去に例のない事態で、野党側が無力化し、自民のゴリ押しを許した格好 首相や政府与党幹部が選挙後も合言葉にしていたはずの「謙虚」とはかけ離れた高圧的な国会運営 首相所信表明演説 安倍政権下での最短記録を更新 厳しい検査結果を報告・公表 国会答弁で「価格算定は適正」と繰り返してきた首相や麻生太郎財務相が、「所管官庁の適正との報告を信用してそう申し上げた」などと開き直り、野党の謝罪要求も無視したが、野党側は二の矢を放てなかった 野党側も党首討論を想定せず?! 世論調査では、首相3選に「反対」が上回る 「質問時間見直しの裏で 自民が国会から“安倍首相隠し”画策」 自民党正副幹事長会議 国会が嫌いな安倍首相のために、自民党は本気で首相の出席日数を減らすつもりです 仕事量を増やしているのは安倍首相自身 イギリスでは毎週水曜日に「クエスチョンタイム」という党首討論が行われ、野党議員から事前通告ナシの質問を受ける
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

フィリピン(その2)(フィリピン「深刻すぎる薬物戦争」は日本が蒔いた種が原因だった、薬物依存症患者と接するなかで学んだ二つの大事なこと、マラウィ 避難民35万人の厳しすぎる未来 イスラム武力衝突は現地に深い傷跡を残した) [世界情勢]

フィリピンについては、昨年11月6日に取上げた。1年以上経った今日は、(その2)(フィリピン「深刻すぎる薬物戦争」は日本が蒔いた種が原因だった、薬物依存症患者と接するなかで学んだ二つの大事なこと、マラウィ 避難民35万人の厳しすぎる未来 イスラム武力衝突は現地に深い傷跡を残した) である。

先ずは、筑波大学教授の原田 隆之氏が8月9日付け現代ビジネスに寄稿した「フィリピン「深刻すぎる薬物戦争」は、日本が蒔いた種が原因だった 日本人が直視しなかった現実」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「薬物戦争」の1年
・私は今、マニラの巨大なショッピングモールにあるカフェでこの原稿を書いている。 週末とあって、モールは家族連れやカップルなど買い物客でごった返しており、街は一見平和そのものだ。幸い、心配されていた台風は、ルソン島をかすめただけで済んだ。日本とは違って、すぐ隣で台風が生まれ、あっという間に去って行った。
・マニラに来る前日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、就任2年目を迎えた機会に、就任以来2度目となる施政方針演説を行った。 直前にミンダナオ島の戒厳令が延長されたこともあって、イスラム国やテロ対策などに話の大半が割かれるだろうとの予想を見事に裏切って、冒頭から長時間、薬物対策に話が及んだ。彼の姿勢は、本当に一貫している。
・ドゥテルテ大統領が就任したのが昨年6月。彼は、就任するや否や、薬物対策を政権の最優先課題として打ち出し、「薬物戦争」を宣言した。薬物撲滅のため、薬物に関わった者の殺害も辞さないとの強行的な姿勢を示し、世界中から大きな非難を浴びた。 実際、正体のよくわからない「自警団」などに殺害された者は、数千人に上ると報道されている。しかし、支持率70%とも80%とも言われる絶大な人気を背景に、彼のその姿勢にはまったく揺るぎがない。
▽アジアで1、2を争う治安の悪さ
・なぜ薬物政策がそれほど重要で、それほど国民の支持を集めるのか。 それを理解するには、この国の深刻な薬物汚染について知らなければならない。 途上国では、公式な統計があっても、それがそのまま信頼できるわけではないが、この国の統計では薬物使用人口はおよそ180万人と推定されている(一説には、300万人を超えているとも言われている
・180万人という数字を信じれば、国民の50人に1人が薬物を使っているという現状であるから、近所や職場、友人の中に、1人や2人の薬物使用者がいてもおかしくないわけであり、誰もが身近にその脅威を感じている問題だということがわかるだろう。 今、私のすぐ横でコーヒーを飲んでいるカフェの客の中にも薬物使用者がいるかもしれないし、ショッピングモールを歩いている買い物客の中にも何十人、何百人という薬物使用者がいるかもしれない。 そう考えると、一見平和そのもののこの景色が、違った色を帯びてくる。
・また薬物使用は、ほかの犯罪を招く元凶ともなる。薬物の影響で暴力的になったり、幻覚妄想状態になって粗暴行為に及ぶこともあるし、薬物を入手するために新たな犯罪に手を染めるということもある。 さらに、身近なコミュニティが薬物密売の巣窟になると、治安が一気に悪化する。フィリピンの治安の悪さは、アジアでは1、2を争うくらいの深刻な状況であり、それが社会の健全な発展を阻害している。
▽世界的な批判、国民の大きな支持
・現在公開中のフィリピン映画『ローサは密告された』は、昨年のカンヌ映画祭で主演女優賞を受けた秀作であるが、庶民の生活の中にどれだけ薬物が入り込み、それが犯罪や警察の腐敗に結びついているかが、まるでドキュメンタリーのようなリアリティをもって描かれている。 映画では、マニラのスラム街にある小さな商店主が、タバコの包みに覚せい剤を隠して売りさばき、密告によって逮捕される。彼らはどこにでもいる庶民であるが、さしたる罪悪感もなく、日常的に覚せい剤が売り買いされている状況は異常である。
・そして、逮捕者に賄賂をせびり、さらなる賄賂のために密告を唆す警察も汚れ切っていて、正義や希望はどこにもない。 この映画を絶賛したというドゥテルテ大統領は、元検察官であり、大統領になる前はミンダナオ島最大の都市、ダバオの市長を長年務めた。
・彼は市長在任中も徹底した犯罪対策、薬物対策を断行し、その結果ダバオの治安は劇的な改善を見せ、現在はフィリピンで一番治安が良い都市と言われるまでになった。その実績を引っ提げて見事大統領まで上り詰めたというわけである。 ドゥテルテ大統領は、命を賭けて薬物戦争を断行すると述べている。
・おそらく、その決意に嘘はないだろう。フィリピン社会を蝕むどす黒い影であり、誰もが身近に感じて怯えている薬物と犯罪を一掃するという彼の政策に、フィリピンの人々にとっては、明るい希望の光を見たのだろう。 このような背景があって、世界的な批判にもかかわらず、彼の政策は国民の大きな支持を集めている。
・日本の場合、逆に平和すぎて国の公的な薬物統計がないため(これは先進国では日本くらいのものである)、犯罪統計に頼るしかないのだが、犯罪白書によると毎年約1万人強が覚せい剤取締法違反で検挙されている。 フィリピンの人口は約1億人であるので、薬物使用者の割合は日本の約180倍という計算になる。この数字を見るだけで、いかにこの国の薬物問題が深刻で、日本とは比べものにならないことがわかるだろう。 おそらく、フィリピンの薬物汚染は、世界最悪と言ってよい。そして、日本と同じく、使用薬物の大半は覚せい剤である。
▽薬物問題の起源
・ところで、覚せい剤が最も中心的な違法薬物となっている国は、世界中を見ても日本とフィリピンくらいしかない。これは世界的に見て、非常に特殊な状況である。 フィリピンでは覚せい剤を指して「シャブ」という言葉が日常的に使われているが、このことから、覚せい剤を持ち込んだのは日本の暴力団であることがわかる。
・そもそも、覚せい剤は日本で生まれた薬物である。戦前、ある著名な化学者が世界で初めて合成に成功し、しばらくはヒロポンという名称で薬局でも売られていた薬物が、覚せい剤にほかならない。 その後、依存性や毒性が明らかになり、戦後になってから「覚せい剤取締法」が制定され違法薬物となったわけだが、その後暴力団が資金源として目をつけ、密輸や密売を始めてから、違法な使用が拡大していった。
・最初は日本だけの乱用に限定されていたが、90年代以降になって、東南アジア、アメリカ、オーストラリアなどに乱用が拡大していった。 つまり、フィリピンの国中を蝕む国家的な「害毒」は、恥ずかしいことに、その生まれも日本であるし、持ち込んだのも日本であるという、二重の意味で日本が蒔いた種なのだ。(「薬物依存患者と接するなかで学んだ、二つの大事なこと」につづく)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52506

次に、上記の続きを同じ8月9日付け「薬物依存症患者と接するなかで学んだ、二つの大事なこと フィリピン支援プロジェクトの現場から」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨年6月、フィリピン大統領に就任したドゥテルテ氏。大々的に「薬物戦争」を宣言し、世界最悪の薬物汚染状況をどうにかしようと取り組み始めた。しかし、薬物に関わる人物の殺害も辞さない強行的な姿勢が世界的に批判されている。支援プロジェクトの当事者として、現状と未来を見通してみたい。▽短期間で160万人が出頭
・昨年10月、ドゥテルテ大統領は日本を訪問し、安倍首相と首脳会談を行った。 その中で、日本側は、港湾や鉄道整備などのインフラ整備に加えて、薬物対策への支援を申し出た。支援の規模としては、インフラ支援のほうがはるかに大きいにもかかわらず、大統領はじめフィリピン側政府に大歓迎されたのが、薬物対策への支援であった。
・しかし、この支援が非常にセンシティブなものであることは言うまでもない。この時期はドゥテルテ大統領の「薬物戦争」と「超法規的殺害」などに対して、既に世界中からの非難が渦巻いていた最中である。 例えば、国連人権高等弁務官事務所が「国家は国民の生命を保障する法的義務がある」と批判したが、それに対しドゥテルテ大統領は「国連のクソ野郎」と罵倒し、国連からの脱退も示唆するなど、過激さをますます強めていた。
・このような中でフィリピンの薬物問題に支援するとなると、日本がドゥテルテ大統領の「薬物戦争」「超法規的殺害」に賛同し、それを後押ししているととらえられかねない。 しかし、日本側が申し出たのは、薬物使用者の治療や更生に対する支援であり、それによって蛮行をやめさせようとする意図があるのは明らかである。
・フィリピンが国際的に孤立するなかで、このまま国際社会からの非難が集中すれば、ますます頑なになったドゥテルテ大統領はさらなる強硬措置に出るかもしれない。 また、ドゥテルテ大統領の薬物政策のなかで、強硬な側面ばかりが強調されるが、実は薬物使用者の治療やリハビリにも重点を置いており、自首をすれば逮捕はせずに治療や教育を提供するという施策も併せて行っている。 その結果、「超法規的殺害」を恐れて、短期間で何と160万人に及ぶ人々が警察に出頭したと言われており、彼らへの治療やリハビリが今後、きわめて重要なテーマになってくるわけである。
▽支援プロジェクトの始動
・安倍・ドゥテルテ会談を受けて、首相官邸のリーダシップの下、外務省、国際協力機構(JICA)が支援策の具体化に動き始めた。 フィリピンへの支援は、上に述べたような人道的な面からの意味合いは大きいが、ただそれだけではない。このとき、同時に中国も薬物問題への支援を名乗り出て、急ピッチでのプロジェクトが展開され始めていた。
・例えば、中国の篤志家が日本円で数十億円という巨額を投資し、なんと1万人を収容できる巨大薬物使用者使用施設の建設を始め、昨年の11月に収容を開始した。その開所式には大統領自らが出席し、テープカットを行った。今後同様の施設をあと3ヵ所建設する予定だという。 おそらく、中国には薬物依存の治療についてのノウハウはなく、「閉じ込めておけばよい」という考え方なのだろう。
・しかし、1万人もの薬物使用者を突貫工事で建設した施設にただ閉じ込めておくというのは、人権上も大きな問題があると言わざるを得ない。 しかも、160万人もの薬物使用者を片っ端から閉じ込めておくなど、どう考えても不可能である。
・一方、日本の支援は、治療プログラムの開発や更生に向けてのヒューマン・サービスの提供を目指すものであり、そもそものフィロソフィーが根本的に違う。 ドゥテルテ大統領は、したたかに日中両国それぞれに働きかけて、両者の援助合戦を上手に利用しているところがある。 言うまでもなく、尖閣諸島などでの領土問題を抱える日中両国にとって、同様に中国と南沙諸島を巡る問題を抱えるフィリピンは地政学上重要な位置を占める。ドゥテルテ大統領はそのことは百も承知の上である。
・支援計画が動き出してから、私は薬物問題の専門家として、プロジェクトにかかわることとなった。 言うまでもなく、JICAと言えば、国際的にきわめて高い評価を得ている援助機関であるが、これまで薬物問題を取り扱ったことはなく、当初は何をすればよいのか、おそらく雲をつかむような話だったのではないかと思われる。 しかし、これは何もJICAに限ったことではない。当の官邸も外務省も同様だ。
▽子どもたちが収容され…
・そこで、私はまず「エビデンス・ベースト」をキーワードにして、つまり科学的根拠に基づいた治療プログラムの開発を目玉にすることを提案した。 具体的には、治療施設だけではなくコミュニティ内での治療サービスの提供、アセスメントのためのツールの開発、現地の専門家の研修、子どもの保護や教育、貧困対策や雇用対策、自助グループの育成などをパッケージにした支援計画の骨組みを提示した。
・そこからの動きは驚くほど速かった。JICAの担当者が初めて私の研究室に訪れてからわずか1ヵ月後、私は総理補佐官、関係省庁の担当官、そしてJICA担当者たちとともにマニラにいた。 激しいスコールとマニラ名物の渋滞に行く手を阻まれながら、最初に訪れたのはマニラ郊外にある薬物リハビリセンターである。そこには定員をはるかに超えた薬物使用者が収容されており、息も詰まるような光景であった。
・何より驚いたのは、まだ小学生くらいの子どもが収容されていたことである。本人たちに話を聞くと、彼らはストリートチルドレンで、小遣い稼ぎに薬物密売人の手先をする中で、空腹を紛らわせるために覚せい剤を使っていたという。 この国では食料よりも覚せい剤が安く手に入るのだ。そして、覚せい剤を使用すると、その薬理効果として空腹を感じなくなるのである。
・彼らはセンターの一角で算数の授業中だったが、生涯で初めて受ける教育が薬物リハビリセンターの中だという現実が、この国の薬物問題の深刻さを突きつける。 そして、「薬物は犯罪」という信念にがんじがらめになっていたわが国の警察庁からの同向者も「薬物問題の根本には貧困があるのですね」という感想を口にするのだった。 薬物乱用が犯罪であることは確かだが、この国では貧困問題であると同時に、それが疫病のように拡大している公衆衛生上や医療上の問題でもあるのだ。
▽フィリピンならではの明るさ
・その後、私はほぼ2ヵ月おきにフィリピンを訪れているが、最初の暗澹とした気持ちは、次第に薄らいでいっている。 それは1つには、JICAや日本大使館の人々の支援に対する献身的な姿勢を見て、大いに力づけられたということがある。 途上国支援の最前線では、このような地道な取り組みが、日本に対する信頼を高めていることを日々実感している。
・そしてもう1つは、この国の明るさと、薬物問題に取り組む専門家たちの熱意のお陰である。 何かにつけいい加減なところや、物事がなかなか前に進まないところには、この先も何度もイライラさせられるのかもしれないが、この国で仕事するのは悪くないという気持ちになっている。 何より、この国を訪れるたびに、私のほうが彼らから学ぶことが大きいのだ。
▽「依存症からの回復は楽しいこと」
・薬物依存の治療について、フィリピンから学んだ大事なことが2つある。 先日、フィリピン保健省との会合で、フィリピン人医師が「Recovery is fun.」(依存症からの回復は楽しいことだ)と述べたのを聞いて、私ははっとさせられた。 これこそが、治療を受けている薬物依存症者に対して、一番大切なメッセージではないだろうかと感じたからである。
・日本人は何かにつけ、物事に深刻になりすぎるところがある。確かに薬物使用は褒められたものではない。 しかし、ひとたび過ちを認め、そこから回復していく道のりは、楽しいものであってよいはずだ。薬物の呪縛や罪悪感から解き放たれ、心身の健康を取り戻し、悪い仲間やライフスタイルを捨て、新しい仲間や健康的なライフスタイルを身に付けて、生まれ変わった自分になっていく。 新しい趣味を見つけたり,新しい学びに取り組んだりすることもできる。薬をやっていたのではできない多くの楽しい体験が待っている。
・依存症の治療は、いつも反省を口にしつつ申し訳なさそうな顔をして、失ったものや暗い過去を見つめてばかりで、後悔や罪の意識に苛まれた中での修行や苦行であってはならない。 もちろん反省や償いを忘れてはならないが、明るい未来のための、希望に満ちた楽しい活動であるべきだ。これは、日本の薬物依存治療に決定的に欠けている姿勢かもしれない。
▽もう1つの「薬物戦争」と戦う
・もう1つは、家族やコミュニティからの支援の豊かさである。フィリピンは家族の絆がとても強く、地域社会のつながりもとても密接である。また、教会を通して深い信仰でも結ばれている。 フィリピンの専門家を日本に招いて、日本のある薬物治療施設を見学していたとき、その入所者のほとんど全員が、薬物が原因で離婚したという話を聞いて、一同ものすごく驚いていた。 日本では、例えば夫が覚せい剤で逮捕されたとなれば、妻が離婚を選んでも誰も不思議に思ったり驚いたりすることはないだろう。それどころか、むしろ周りは離婚を勧めるに違いない。
・しかし、フィリピンの人たちはこう言う。「離婚して一人ぼっちになってしまったら、誰が彼を支えるというのですか。われわれの国では、必ず家族や地域の人々が立ち直りを支えます」 過ちを犯した者を社会から排除し、必要以上に晒し者にして、侮辱したり非難したりする社会と、過ちを反省し悔い改めて立ち直ろうとする者を、温かく迎え入れ、回復に向けて共に進もうとする社会。
・果たしてどちらが、成熟した居心地のよい社会だろうか。 「薬物戦争」に見られるフィリピンの人権状態は,きわめて深刻な状況にあることは確かである。報道や映画で見るフィリピンは、薬物犯罪者は殺されて当然と叫ぶ大統領に多大な支持が集まり、スラムの一角では、殺害された死体が転がっているような社会である。
・しかし、その中にあっても支え合って、愛情や信仰を武器にして薬物問題と戦っている人々がいることも事実である。対策に駆け回っている役人や専門家、真面目に職務を遂行している警察官を私はたくさん知っている。 ニュースにはならないもう1つの「薬物戦争」がそこにはある。そして私は、日本とフィリピンの心強い仲間とともに、科学という武器を頼りに、この「薬物戦争」を戦っていくつもりである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52507

第三に、 ジャーナリストの中坪 央暁氏が11月8日付け東洋経済オンラインに寄稿した「マラウィ、避難民35万人の厳しすぎる未来 イスラム武力衝突は現地に深い傷跡を残した」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・フィリピン南部ミンダナオ島のマラウィで5カ月間続いたイスラム過激派による武力衝突は、約1200人の死者を出して10月23日に終結した。 しかし、人口約20万人のマラウィと周辺町村から戦闘を逃れて退避した避難民35万人の大半は、今も避難生活を余儀なくされている。
・写真をみてもわかるように、マラウィ中心部は激しい戦闘によって破壊し尽くされている。その復興と避難民の帰還には数年かかる見通しで、日本を含む国際社会の支援がカギになりそうだ。
▽5カ月余りも狭いテントで生活
・マラウィの北隣に位置するサギアラン町の小学校。大屋根に覆われた吹き抜けの集会場に、白色や青色のシートを継ぎはぎしたテントが密集して並び、65世帯500人近くの避難民が暮らしている。ほとんどが今も政府軍によって完全封鎖されている市街南東部の下町界隈の住民である。 リーダー格の農民、ルマ・アンプアンさん(58)は「5月23日に戦闘が始まって5日後、政府軍に強制退去を命じられて、わずかな着替えだけ持って逃げてきました」と話す。
・フィリピン政府や国連機関、国際赤十字、国内外のNGOが食料、衣料、毛布など救援物資を配付しているものの、「コメなどの食料配給は不足ぎみで、近くに市場はあっても現金を持っていないので何も買えません。家や畑は今頃どうなっているのか……」。
・テントをのぞくと、内部をシートで仕切って複数の家族が同居し、4.5畳見当のスペースに子供を含めて6~7人が寝るという。衣類や毛布の救援物資以外は何もない。「互いに助け合っているが、プライバシーが保たれないので、みなストレスがたまっている」(アンプアンさん)。
・避難所には乳幼児や子供が多く、赤ん坊を抱いた若い母親が目立つ。生後3カ月の男児をあやしていたノミラ・ウランカヤさん(26歳)は「夫と一緒に3人の子供を連れて歩いて逃げてきましたが、身重で山道を下るのはつらかったです。8月末に避難所近くの病院で出産しましたが、ミルクがないので困っています。いつになったら家に帰れるのでしょうか」。
・事件を引き起こしたイスラム過激派について尋ねると、避難民たちは口々に「彼らは同じイスラム教徒とはいえない。こんなことが起きるなんて誰も予期しなかったし、すぐに終わると思っていた。ごく一部の連中が私たちの暮らしも街も何もかも壊してしまった」と訴えた。 フィリピン社会福祉開発省(DSWD)によると、5月以降発生した避難民の総数は7万8466世帯・35万9680人、この半数近くがマラウィ市民である。
▽一部帰還も「将来に不安」
・サギアラン町の避難所のように“evacuation centers”と呼ばれる政府公認の避難所は78カ所あるが、実は避難所にいるのは全体の1割足らずに留まる。9割超の7万0895世帯・33万5064人は、車で1時間余りの北ラナオ州イリガンなど都市部の親類宅に身を寄せたり、経済的な余裕があれば自前で部屋を借りたりしている。
・一方で、そうした避難民への食料配給は早々に打ち切られたため、一時的に親類を頼った後、マラウィ周辺の避難所に移る例も多い。マラウィから10キロメートル余り離れた南ラナオ州バロイ町パカルンド地区には、イリガンから再移動してきた120世帯が72張りのテントに暮らしている。DSWDが砂利を敷いて整地し、電線も引かれているが、ジョワド・パカルンドさん(36歳)は「病気がちの両親と4人の子供を抱えて転々としている。地元の援助団体が親切にしてくれるが、テントの中は暑くて暑くて……」。
・ところで、ニュース映像や写真だけを見ると、マラウィ全体が壊滅したかのように思うかもしれないが、直接影響を受けたのは市内98地区のうち33地区、ちょうど3分の1に限られる。市街戦は中心部から南東方面に移っていったため、市街西寄りは比較的早く安全が確保され、北西部にあるミンダナオ国立大学は8月末には授業を再開した。
・ちょうどこの頃、避難先からマラウィに戻ってサリサリ(雑貨店)を再開したクスナ・マカランドゥンさん(47歳)は「菓子やたばこ、洗剤などを売っていますが、住民がみな帰ってきたわけではないので、商売はさっぱりです」。事件については「ただ悲しいだけ。同じイスラム教徒、同じマラナオ人なのに、どうしてこんなことをしたのか……。間違った思想や考え方に毒されてしまったら、この町はどうなるのか、若い人たちの未来はどうなってしまうのか不安でなりません」と表情を曇らせた。
・マラウィ市街では現在、陸軍工兵隊が不発弾処理や瓦礫(がれき)の一部撤去を行っている。フィリピン政府は当面の復興予算として150億ペソ(約320億円)を見込み、関係省庁や政府軍で構成する復興タスクフォースがニーズ調査と復興計画策定を担うが、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は「少なくとも500億ペソ(約1050億円)は必要だ」と発言している。
▽マラウィ復興プロジェクトの行方
・マラウィ復興はフィリピン政府単独ではなく、日本を含む先進援助国や国際機関による“国際プロジェクト”である。すでに水面下の折衝が始まっており、国連、世界銀行、アジア開発銀行を中心に米国、オーストラリア、欧州連合(EU)などの復興支援資金を一括して管理・運用するプールファンドを設立する方向で調整が進む見通しだ。
・ドゥテルテ大統領は事件終結直後の10月29~31日に来日し、安倍晋三首相と首脳会談を行った。安倍首相はマラウィおよび周辺地域の復興を最大限支援することを表明したが、日本としては資金協力に留まらず、国際協力機構(JICA)を通じて都市開発計画、インフラ整備など得意分野で独自性のある貢献を打ち出したいところだ。
・もともとマラウィは道路や給水など社会インフラ整備が立ち遅れていたこともあり、現地では「単なる復旧・復興ではなく、本格的な再開発を通じてマラウィを再生したい」という声が聞かれる。日本の技術力やノウハウが生かされる場面は少なくない。
・筆者がもうひとつ強調しておきたいのは、マラウィの武力衝突とはまったく別のストーリーとして、当地最大のイスラム勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)とフィリピン政府によるミンダナオ和平プロセスが進行中であり、わが国が“日本にいちばん近いイスラム紛争”の終結と平和構築に大きな貢献をしてきたということだ(日本が貢献した「イスラム紛争終結」の舞台裏参照)。
・マラウィの事件では「IS(イスラム国)系勢力がミンダナオ島を拠点化しようとしている」という報道ばかりが目立ち、より本質的なミンダナオ和平に向けた取り組みがかき消されてしまった感がある。確かにミンダナオ島あるいはフィリピンがイスラム過激思想の浸透の危機に直面しているのは事実だが、現地取材を重ねてきた感触から言うと、ミンダナオ本島にIS系の支配地域が確立される可能性は非常に低い。
▽戦闘は終結したが本当の戦いはこれから
・国際テロ組織は不安定で貧しい国・地域に入り込むのを常とする。1970年代から紛争が続いて開発が遅れたミンダナオ島のイスラム地域バンサモロは、確かに狙われやすく、イスラム過激派残党の取り締まりやテロ警戒が重要なのは当然である。他方で中長期的には、バンサモロを政治的・経済的・社会的に安定させることを何より考えなければならない。
・地元ミンダナオ出身のドゥテルテ大統領の任期中(~2022年)に、イスラム勢力主導のバンサモロ自治政府を樹立する現行の和平プロセスを実現するとともに、1人当たりの国内総生産(GDP)がマニラ首都圏の15分の1と極端に貧しい同地域の経済開発を進める必要がある。最終的には、それがイスラム過激派を排除する最も有効な対策になるからだ。 戦闘は終結したが、本当の戦いはこれからである。マラウィの復興はミンダナオ和平のシンボルになるだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/196212

第一の記事で、 『そもそも、覚せい剤は日本で生まれた薬物である。戦前、ある著名な化学者が世界で初めて合成に成功し、しばらくはヒロポンという名称で薬局でも売られていた薬物が、覚せい剤にほかならない。 その後、依存性や毒性が明らかになり、戦後になってから「覚せい剤取締法」が制定され違法薬物となったわけだが、その後暴力団が資金源として目をつけ、密輸や密売を始めてから、違法な使用が拡大していった。 最初は日本だけの乱用に限定されていたが、90年代以降になって、東南アジア、アメリカ、オーストラリアなどに乱用が拡大していった。 つまり、フィリピンの国中を蝕む国家的な「害毒」は、恥ずかしいことに、その生まれも日本であるし、持ち込んだのも日本であるという、二重の意味で日本が蒔いた種なのだ』、というのは初めて知った。日本の責任が大きい以上、支援もそれを考慮する必要があろう。
第二の記事で、 『ドゥテルテ大統領は、したたかに日中両国それぞれに働きかけて、両者の援助合戦を上手に利用しているところがある。言うまでもなく、尖閣諸島などでの領土問題を抱える日中両国にとって、同様に中国と南沙諸島を巡る問題を抱えるフィリピンは地政学上重要な位置を占める。ドゥテルテ大統領はそのことは百も承知の上である』、とういうものの、ドゥテルテ大統領は南沙諸島を巡る問題では中国寄りの政策を展開、日本政府は「ハシゴを外された」形になっているのは、残念だ。 『依存症の治療は、いつも反省を口にしつつ申し訳なさそうな顔をして、失ったものや暗い過去を見つめてばかりで、後悔や罪の意識に苛まれた中での修行や苦行であってはならない。 もちろん反省や償いを忘れてはならないが、明るい未来のための、希望に満ちた楽しい活動であるべきだ。これは、日本の薬物依存治療に決定的に欠けている姿勢かもしれない』、というのは、日本のあり方を見直すヒントになるのかも知れない。
第三の記事の写真にあるマラウィの市街の崩壊ぶりは、目を覆いたくなるような惨状だが、『直接影響を受けたのは市内98地区のうち33地区、ちょうど3分の1に限られる』というのが、せめてもの救いだ。 『戦闘は終結したが本当の戦いはこれから』、というのはその通りだろう。
ただ、上記の3つの記事とも、JICA関係者などが書いていることもあって、ドゥテルテ大統領や日本政府への遠慮がありそうなのが気になる。ドゥテルテ大統領が国際的に強い批判を浴びているからには、それなりの理由がある筈なのに、それに言及していないのは物足りない。今後、そうした角度からの記事があれば、紹介してゆきたい。
タグ:フィリピン 東洋経済オンライン イスラム過激派 現代ビジネス 日本の場合 ドゥテルテ大統領 原田 隆之 (その2)(フィリピン「深刻すぎる薬物戦争」は日本が蒔いた種が原因だった、薬物依存症患者と接するなかで学んだ二つの大事なこと、マラウィ 避難民35万人の厳しすぎる未来 イスラム武力衝突は現地に深い傷跡を残した) 「フィリピン「深刻すぎる薬物戦争」は、日本が蒔いた種が原因だった 日本人が直視しなかった現実」 薬物戦争 薬物撲滅のため、薬物に関わった者の殺害も辞さないとの強行的な姿勢 正体のよくわからない「自警団」などに殺害された者は、数千人に上ると報道 アジアで1、2を争う治安の悪さ 薬物使用人口はおよそ180万人と推定 毎年約1万人強が覚せい剤取締法違反で検挙 薬物使用者の割合は日本の約180倍 フィリピンの薬物汚染は、世界最悪 覚せい剤が最も中心的な違法薬物となっている国は、世界中を見ても日本とフィリピンくらいしかない そもそも、覚せい剤は日本で生まれた薬物である。戦前、ある著名な化学者が世界で初めて合成に成功し、しばらくはヒロポンという名称で薬局でも売られていた薬物が、覚せい剤にほかならない その後、依存性や毒性が明らかになり、戦後になってから「覚せい剤取締法」が制定され違法薬物となったわけだが、その後暴力団が資金源として目をつけ、密輸や密売を始めてから、違法な使用が拡大していった 最初は日本だけの乱用に限定されていたが、90年代以降になって、東南アジア、アメリカ、オーストラリアなどに乱用が拡大していった フィリピンの国中を蝕む国家的な「害毒」は、恥ずかしいことに、その生まれも日本であるし、持ち込んだのも日本であるという、二重の意味で日本が蒔いた種なのだ 「薬物依存症患者と接するなかで学んだ、二つの大事なこと フィリピン支援プロジェクトの現場から」 国連人権高等弁務官事務所が「国家は国民の生命を保障する法的義務がある」と批判したが それに対しドゥテルテ大統領は「国連のクソ野郎」と罵倒し、国連からの脱退も示唆するなど、過激さをますます強めていた 強硬な側面ばかりが強調されるが、実は薬物使用者の治療やリハビリにも重点を置いており、自首をすれば逮捕はせずに治療や教育を提供するという施策も併せて行っている 短期間で何と160万人に及ぶ人々が警察に出頭したと言われており、彼らへの治療やリハビリが今後、きわめて重要なテーマになってくる 安倍・ドゥテルテ会談 中国も薬物問題への支援を名乗り出て、急ピッチでのプロジェクトが展開され始めていた 巨大薬物使用者使用施設の建設を始め、昨年の11月に収容を開始 日本の支援は、治療プログラムの開発や更生に向けてのヒューマン・サービスの提供を目指すものであり、そもそものフィロソフィーが根本的に違う ドゥテルテ大統領は、したたかに日中両国それぞれに働きかけて、両者の援助合戦を上手に利用しているところがある 言うまでもなく、尖閣諸島などでの領土問題を抱える日中両国にとって、同様に中国と南沙諸島を巡る問題を抱えるフィリピンは地政学上重要な位置を占める。ドゥテルテ大統領はそのことは百も承知の上である 依存症の治療は、いつも反省を口にしつつ申し訳なさそうな顔をして、失ったものや暗い過去を見つめてばかりで、後悔や罪の意識に苛まれた中での修行や苦行であってはならない もちろん反省や償いを忘れてはならないが、明るい未来のための、希望に満ちた楽しい活動であるべきだ。これは、日本の薬物依存治療に決定的に欠けている姿勢かもしれない 中坪 央暁 「マラウィ、避難民35万人の厳しすぎる未来 イスラム武力衝突は現地に深い傷跡を残した」 ミンダナオ島のマラウィ 5カ月間続いたイスラム過激派による武力衝突は、約1200人の死者を出して10月23日に終結した 避難民35万人の大半は、今も避難生活を余儀なくされている マラウィ中心部は激しい戦闘によって破壊し尽くされている 直接影響を受けたのは市内98地区のうち33地区、ちょうど3分の1に限られる マラウィ復興プロジェクトの行方 フィリピン政府単独ではなく、日本を含む先進援助国や国際機関による“国際プロジェクト”である イスラム勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)とフィリピン政府によるミンダナオ和平プロセスが進行中であり、わが国が“日本にいちばん近いイスラム紛争”の終結と平和構築に大きな貢献をしてきたということだ 戦闘は終結したが本当の戦いはこれから
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

今日は更新を休むので、明日、金曜日にご期待を!

今日は更新を休むので、明日、金曜日にご期待を!
nice!(2)  コメント(0) 

介護施設(老人ホーム)問題(その2)(旧ワタミ・旧メッセージの老人ホームは今どうなっているか、岐阜の老健施設「ひどすぎた地元の評判」、食堂に3時間放置 朝3時に着替えの介護現場)  [社会]

介護施設(老人ホーム)問題については、5月4日に取上げた。今日は、(その2)(旧ワタミ・旧メッセージの老人ホームは今どうなっているか、岐阜の老健施設「ひどすぎた地元の評判」、食堂に3時間放置 朝3時に着替えの介護現場) である。

先ずは、7月4日付けダイヤモンド・オンライン「旧ワタミ・旧メッセージの老人ホームは今どうなっているか」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは回答、+は回答内の段落)。
・SOMPOホールディングスは7月から子会社化していた介護事業2社(旧・ワタミの介護=現・SOMPOケアネクスト、旧・メッセージ=SOMPOケアメッセージ)の一体運営を開始した。経営や人事、総務など本社機能を一体化し、社長以下役員を含め、本社勤務社員も2社を兼務する。そこで、7月から両社の社長を兼務する遠藤健氏(前・SOMPOケアネクスト社長)に話を聞いた。
▽大手老人ホーム2社を買収したSOMPOホールディングス
・「高齢者市場」の代表格のビジネスである介護事業――。近年、その需要増を見込んで、異業種の大手企業が老人ホーム事業会社などを買収して介護業界に参入する事例が相次いでいる。SOMPOホールディングス(当時の社名は損保ジャパン日本興亜ホールディングス)は、まさにその主役となった。
・2012年9月に有料老人ホーム「ラ・ナシカ」などを展開するシダーへの資本参加をきっかけに、15年12月には有料老人ホーム「レストヴィラ」を展開するワタミの介護を完全子会社化、16年3月には有料老人ホーム「アミーユ」、サービス付き高齢者向け住宅「Sアミーユ」などのメッセージをTOBで完全子会社化し、一気に介護業界2位に躍り出たからである。
・話題性も大きかった。 旧・ワタミの介護、旧・メッセージの両社とも、カリスマ性の高い経営者(ワタミ創業者の渡辺美樹氏、メッセージの橋本俊明氏)が運営する老人ホームとして有名であり、時期的にも両社では介護職員による入居者への虐待や事故、介護職員の過酷な勤務状況などが大々的に報じられていた最中だったからだ。
・さらに、買収の規模に加え、参入・運営の手順も過去の「業界常識」と大きく異なるものだった。これまで大手保険会社など異業種が老人ホームを手がける場合、比較的リスクの少ない富裕層向けの高級老人ホームから始めるのが常だったからである。いきなり、ボリュームゾーンとなる大量の一般大衆向けの介護施設で、両社合わせて299施設の有料老人ホーム、132棟のサービス付き高齢者向け住宅の運営を始めることになったからだ。
▽入居率は徐々に改善 一体運営で強みを生かす
Q:両社を子会社化した当時、入居者への事故や事件の報道の最中にあり、両社のホームの入居率は低迷していました。特に旧・メッセージは、非常に入居率が高い人気のホームで有名でしたが、職員による入居者の殺害という致命的な事件がありました。入居率やクレームの状況はどうなのでしょうか。
A:SOMPOケアメッセージの入居率は、昨年の4月前後は85%程度まで落ちていた。今年の1月以降は有料老人ホームで87.6%、サービス付き高齢者向け住宅で84.9%まで回復している。18年度中には90%台の回復を目指している。これまでは積極的な営業よりも、人員や組織、職員教育などの体制固めを重視していたためでもあり、今後は回復していくと思う。
+SOMPOケアネクストの入居も順調に回復しており、2017年3月には単月入居数が過去最大の239人を達成した。ちなみに、過去の最大は12年2月の234人(旧・ワタミの介護時代)だった。 正直に言えば、クレームの件数自体は増えた。ただし、これはクレームや意見を吸い上げる体制がきちんと整ったためであり、むしろ、深刻なクレームや事故・事件性の高い案件は減少している。入居者・家族から寄せられるご意見のハガキも私はすべて目を通している。
Q:今回の一体運営の狙いは何ですか。両社の合併は視野には入れなかったのでしょうか。
A:両社の子会社化から1年ちょっと経過し、それぞれの強みや課題が分かってきた。ケアメッセージは個々の入居者に対してケアプランを作って、細かいケアを行うことにこだわりを持ち、介護や勤務シフトの効率性も重視している。その半面、経験の少ない施設長が運営するなど場合によっては、職員や入居者にとっても余裕のない介護になってしまう危険性もあった。
+一方、ケアネクストは入居者の幸せやおもてなしを大事にする文化があり、食事やレクリエーションなどを重視しているが、ケアプランなどへのこだわりや介護の効率性などはケアメッセージより劣る。
+とにかく、その強みは相乗的に生かす一方で、課題は少しでも早く解消するのが目的だ。社長を含め役員が両社兼務する体制となれば、スピード感のある意思決定が可能となる。経営の効率化にも役立つ。例えば、共同購買をすれば、コスト削減にもつながる。
+老人ホームなどの介護現場やブランドは従来通り維持する。ただし、今秋から現場レベルでも両社の人事交流は始めたいと思っている。 両社の合併という選択肢も考えたが、手続きのほか、システムや人事制度等のインフラ整備が大変で時間がかかると判断した。やるとしても、しばらく先になるだろう。 昇格や処遇、福利厚生などの人事制度については、今年度中から着手して、2018年度から統一したいと考えている。
▽介護職員の離職率減少が重要課題
Q:両社を子会社化し、介護事業を本格的に始める際、介護職員の処遇改善や離職率の減少などを強調していました。順調に進んでいるのでしょうか。
A:当然、一体運営に伴い、処遇面なども底上げしたい。 キーになるのが、何よりも離職率の減少だと思っている。周知の通り、介護業界は離職率が大変高い業界だ。弊社の場合も、両社の介護職員の離職率は平均で約20%である。そのうち、1年未満での離職者が6割もいる。
+これは業界の特徴とはいえ、なんとかしたい。介護職員の10~15人程度の小規模なミーティングに参加したことがあるが、そこで、入社の動機を聞いてみると「子どものときにおじいちゃんやおばちゃんに世話になったけれど、十分なお世話ができないうちに亡くなってしまったので、恩返ししたい」と夢を語る人が5割くらいいた。そういう人が入社しても、十分な教育も受けられず、ミスした際にはもの凄く怒られる…という状況では、嫌になって辞めてしまうのではないか。
+課題としては、介護職員の離職率を半分の10%にしたい。17年度中には15%程度にし、18年度中には達成したい。これは全役員の共通の目標としている。離職率を10%に減らせば、採用コストが削減できる。その減らしたコストを職員の処遇改善に回すことができる。長く勤める人が増えれば、業務も効率化が進み、介護技術も向上する。
+現在、LINEで社長以下役員と新入社員でグルーピングして、いろいろ悩みがあったら聞くなど会話を試みている。まず、新卒から大事に育てたいと思っている。幸いなことに、2017年度は両社合わせて、193人(メッセージグループ121人、ネクスト72人)の新卒者が入社している。
Q:介護の質を上げるために、ICT(情報通信技術)の積極的な導入や、職員教育の強化、介護職員の介護福祉士(介護の国家資格)の有資格者を増やすなどの目標も掲げていました。
A:人材の教育は何よりも重要だ。まず、2016年6月にケアネクストが開設した研修センターは、7月からはさらに拡大しており、従来以上に研修面には力を入れていく。 介護福祉士の常勤介護職員に占める比率は、ケアネクストが39.1%、ケアメッセージが49%と、2016年3月時点と比較してもそれぞれ、約4%、約8%と上昇している。
+ICTの導入については、超音波センサーで膀胱内の尿量の変化を検知することにより、排尿パターンを把握できる排泄予知デバイス「DFree」の導入を進めてきた。入居者をトイレに連れて行く必要がないのに、無理に連れて行ったりする「空振り」も減らすことができる。これは入居者や介護者にもメリットが大きい。今年の10月からケアネクストすべてのホームに導入する。10月以降はケアメッセージのホームにも順次、導入していく。
▽慢性的人材不足に付随するリスクを常に認識できるか
・介護業界は人件費が6~8割を占めるという典型的な労働集約型産業だ。サービス自体、良くも悪くも極めて属人的な面が強い。しかも、給与や休みの取りやすさなどの処遇面が悪く、慢性的な人手不足の状態が続いている。とはいえ、給与などの処遇面を上げれば、社会保障費や利用者の負担も増すために、改善は容易ではない構造にある。
・また、老人ホームなどの介護施設は必要最低限の人員配置が事業の条件となっているため、事業継続のためには何が何でも一定の人手を確保しなくてはならない。その結果、「面接に来た人はほぼ100%採用」(業界関係者)というのが、業界の実態となっている。
+先述した通り、これまで異業種の大手企業が介護事業に参入する場合、富裕層向け中高級ホームから始める場合が多いのも、(1)家族ではなく、入居者本人が決めることが多いのでサービスが差別化しやすい、(2)人員を多く配置するなどして、上乗せ料金を得ることができる、そして何よりも(3)比較的に職員の募集が容易、等の理由があるからだ。
+SOMPOホールディングスが着手した一般大衆向けの老人ホームは、富裕層向けに比べると、必要に迫られた家族が選ぶことが多いため、サービスの差別化やブランドの訴求が難しい。介護職員の募集も容易ではない。 「何よりも職員の離職率の低下と教育が重要と意識している」と繰り返し強調する遠藤社長は、その点の課題を理解しているのだろう。問題は今後事業が成長に転じて、緊張感がなくなった頃だ。
+これまで大きな事件・事故を起こした老人ホームや介護施設は、事業の成長や継続のためとはいえ、「苦しさのあまり、本来なら介護職には向かないような人物を採用してしまったことが根底にある」と多くの介護事業経営者らが口にする。
+具体的には、「急成長」→「施設数の増加」→「経営者や本部の目が行き届かなくなり、ますます人材不足になる」→「無理な人材募集や長時間勤務」→「ベテラン職員の離職」→「現場の破綻」→「事件・事故の発生」→「経営悪化」というパターンを辿ってきた。
+慢性的な人手不足、増える競合先、厳しくなる介護報酬など、むしろ介護業界を取り巻く環境は厳しさを増している。もし、「現場の悲鳴」を見逃し続ける事態が発生すれば、改めて大きな事故・事件が発生するというリスクは、常に意識する必要があるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/134040

次に、9月4日付け現代ビジネス「5人死傷・岐阜の老健施設「ひどすぎた地元の評判」 遺族には十分な説明さえなく」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは回答)。
・飛騨高山では赤十字病院と並んで、知らぬ者はいない老健施設だ。ここで老人たちが次々と不審死したというので、町中が大騒ぎだ。疑惑の主の正体は――。
▽疑惑の男
・自宅前には、「防犯カメラ作動中」「これ以上の取材にお答えする事はありません」と物々しい掲示がされている。高橋寛治(仮名・敬称略)は集まった報道陣にこう答えた。
Q:話すことは?
A:「不可能です。疲れているんです。こういうことがあって精神的に疲れない人はいないと思う」 Q:ご自身は関わっていないのですね?
A:「間違いないですよ。それでもういいですね」
・岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」で、7月末から半月で3人が死亡し、2人が負傷した。5人すべての介助に関わっていた職員は一人しかいない。30代男性の高橋だ。 岐阜県警は特別捜査本部を23日に設置、事件・事故の両面から捜査を開始した。疑惑の目は高橋に向けられているが、本人は一切の関与を否定している。
・高橋の関与の有無は現時点ではまったく不明だ。だが、この高橋は、介護職員としての適性を著しく欠いていたようだ。「それいゆ」の前に高橋が勤務していた老健施設の関係者が語る。 「高橋君は'15年10月から、認知症患者のフロアで介護助手として勤務していました。介護の仕事は初めてのはずです。 介護の現場、とりわけ重度の認知症患者さんを相手にしていると、スムーズに物事が進まないことばかりです。そのときに、彼は感情をコントロールすることができなかった。
・車椅子に乗った患者さんについているとき、突然怒り出して車椅子を蹴っ飛ばしたことが何度もありました。上司が目にして注意したこともありましたが、反省している様子もなかったですね」 高橋の突然の「激昂」は施設内でも有名だったという。そのため、3ヵ月の試用期間が経過しても、正社員採用は見送られた。関係者が続ける。「'16年の8月頃のことです。その日彼は首から下を入浴介助する担当になっていました。これは大変な業務なのですが、彼はその日6人を担当したんです。 翌週、別の職員が同じ業務をやったとき、その日の利用者さんは4人だった。日によって人数がまちまちなのは当然です。 ところが、それに気づいた高橋君は『なんで俺は6人やったのに、あいつは4人なんだ!俺ばっかり!』と大声で叫んだ。みんな呆然としましたよ」
・常にこんな調子だったので、職員たちは腫れ物に触るような扱いだった。 「問題行動が相次ぐので、夜勤のシフトからは外されていました。夜勤は基本的に1フロアを2人でまわすため、1人が休憩に入ると2時間ほどは1人で対応せねばならないからです。高橋君は何をするかわからないと言われていた」
▽監視カメラは故障していた
・やがて高橋は自己都合退職の扱いで施設を退職した。だが、同僚たちが驚いたのは、その後の高橋の行動だ。 退職からほどなく、高橋が転職したのは、同じ市内の老健施設「それいゆ」。またしても介護職員となったのだ。 そこから今回の事件は起こった。被害者はいずれも高橋が勤務していた2階の認知症患者のフロアにいた。
・門谷富雄さん(80歳)は7月31日、喉に食べ物が詰まった状態で見つかり死亡。8月6日には石本きん子さん(93歳)が頭を強打した状態で見つかり、翌日死亡。 8月13日に死亡した中江幸子さん(87歳)は、肋骨が肺に刺さった外傷性血気胸で死亡している。体調に異変をきたした前日、家族は中江さんの首や胸に赤いあざの痕があるのに気づいた。
・中江さんの長男(60代)が語る。「病院からのちゃんとした説明もありません。22日の昼頃に、理事長たちが『お参りさせてください』とお線香を上げに来ましたけど、10分くらいですぐ帰りました。お参りに来るのも遅いと思います。 母が『それいゆ』に入所するのは今回が初めてではなかったんですが、まさかこんなことになるとは……。職員の高橋?スタッフは入れ替わり立ち替わりしているから、誰かわかりませんよ」
・職員が入れ替わり立ち替わり――。実際、「それいゆ」の地元での評判はあまり芳しくない。 元従業員がこう語る。「人の出入りが激しいのは有名です。求人募集は常時といってもいい。人使いが特に荒いわけではないんですが、理事長から『君たちの代わりはいくらでもいるんだから』と言われたこともありますし、働く人の気持ちをないがしろにしている施設でしたね。給料もよくはなかった」
・中江さんの死亡後も、8月15日に女性(91歳)の肋骨が折れ、16日には女性(93歳)に肺挫傷が見つかり、いずれも入院している。 家族を入所させていた60代男性が語る。「人間扱いしてくれないんですよ。私の義父を『それいゆ』に入れていたんですが、ある日いつもの部屋に行ったらいない。  たしかに義父は少しボケがあったけれど、大部屋に移されて、GPSのタグまでつけられていた。何考えてんだ、と怒って別の病院に移しました」
・施設近くに住む60代男性も言う。「『あそこに入れると、認知症になって帰ってくる』と言われていますよ。近所のおばあちゃんも、亡くなってから体中にあざが見つかったこともあった。評判は悪いですよ」 皮肉なことに、他の施設は満床が多くなかなか入れないが、「それいゆ」は割とすんなり入れる、という意味で人気があったという。
・折茂謙一理事長の古くからの友人が語る。「'97年設立の『それいゆ』は飛騨高山地方で最初の介護老健施設だったんです。デイサービスが大当たりして、多いときは1日に100人ほど受け入れていましたから、『それいゆ』建設時の借金は数年で返せたと理事長は言っていました。 経営する医療法人同仁会は病院も含めて、十数の施設を運営しています。理事長の奥さんがやり手で、住宅型有料老人ホームを3年前に開設するときは『飛騨高山を売りにしてネットで集めれば、一時金1500万円でもすぐに集まるわよ』と強気の発言をしていました。
・けっきょく人が集まらず金額を下げたようですが、そういうお金の勘定はすごかったですね」 折茂理事長は「短期間で5例発生したことは問題で異常だ。警察に依頼して原因究明をしている」と語る。 捜査関係者は言う。「警察の捜査はやや後手に回った。理由は不明だが監視カメラが故障していたり、施設の記録もきちんとしていない。 認知症の入所者同士でも暴行はあり得るし、不明な点は山ほどある。高橋からの本格的な聴取はこれからで、先に施設関係者から始める。長期化する可能性もある」
・高橋の母親に問うと、こう答えるのみだ。「警察からは何もないし、むしろこちらが教えて欲しいくらいですよ」)
▽虐待はどの施設でもある
・介護施設での暴行事件は枚挙にいとまがない、と語るのは首都圏の老健施設に勤務する介護士(30代・女性)だ。 「介護職として初めて勤務したとき、ある先輩がこう言ったんです。『蹴るんだったら膝から下にしてね』耳を疑いましたが、彼女はこう続けました。『顔や手はダメですよ。膝下だったらベッドにぶつけたとか階段にぶつけたとか、いくらでも言い訳できるでしょう』表情も変えずに言うもので、怖くなりました」
・九州地方の老人ホームの介護士(40代・男性)も言う。「介助させるといつも利用者を転倒させてしまうという介護スタッフがいました。基本的な介護の素養がまったくなく、まるでモノを扱うように利用者に接するのです。 襟首をつかんで持ち上げて車椅子にドシンと落としたり、ベッドにも放るように落としたりする。高齢になると、骨は思いのほかもろくなります。まして言葉を出せない人であれば、骨折しているかどうかもすぐにはわからない。 このスタッフは、骨折事件を何度も起こし、解雇されました」
・こんな証言はぞろぞろあるのだ。 今から3年前、川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で80~90代の入所者3人が相次いで転落死した事件があった。 発覚から約1年後の'16年2月に殺人で逮捕されたのはホームに勤務する職員(当時23歳)だった。動機を「介護の仕事にストレスがたまっていた」と語っている。
・この事件を丹念に取材したノンフィクション作家の中村淳彦氏は言う。「虐待はどこにでもあります。だが、目の前で見ているわけではないから証拠はないし、施設側は完全な防止をしようがない。とりわけ認知症の入居者の対応に耐えられなくなって虐待に走るケースが多い。
・そもそも高齢者が終末期を過ごし、日常に死がある環境です。人手不足により、資質に欠ける人間でも、介護職員に紛れ込んでしまっている現状と、死が日常にある閉塞した環境が虐待の背景にあるのです」 「それいゆ」は氷山の一角なのだ。一刻も早い捜査の進展が望まれる。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52745

第三に、健康社会学者の河合 薫氏が11月21日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「食堂に3時間放置、朝3時に着替えの介護現場 「対策は職員のストレスケア」という厚労省のピンぼけっぷり」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・なぜ、こんなにも“温度”が下がってしまったのか。 慣れっこになった? 仕方がないとあきらめた? あるいは「自分には関係ない」と思っているのか。
・数年前には連日連夜大々的に取り上げられた“介護施設での事件”が、今回はテレビではあっさりと、紙面では三面で小さく報じられている。 はい、そうです。今年の8月に東京都中野区の有料老人ホームで、入所者の男性(83歳)を殺害したとして元職員の男(25歳)が逮捕された事件です。
・「介護に対する自信がなくなった」として9月に依願退職していた元職員の男は、8月22日の早朝、ホーム内の浴室で入所者の男性を浴槽に投げ入れてお湯を張り、沈めて殺害。男性の死因は溺死で、首を絞められた形跡もあった。 「布団を何回も汚され、いい加減にしろと思ってやった。ベッドで一度首を絞めた。その後、浴室も汚したので風呂に沈めた」――。
・男はこう容疑を認め、「大変なことをしてしまった」と泣きながら当時の状況を自供。昨年6月から現場のホームに勤務していたが日常的な暴行や他の入所者の被害は確認されていない。また、殺害された男性は校長などを勤めた方で、難病で介護が必要だったが支えがあれば歩くことができた。
・ホームを運営するニチイケアパレスは 「遅刻や欠勤はほとんどなく、まじめに勤務していた。メンタルヘルスのチェックもしていたが、ひっかかることは一切なかった。当時の勤務体制は国の基準を満たしている」と説明。
・また、厚労省は介護施設の職員による高齢者への虐待が年々増加していることから(※)、自治体に再発防止策をとるように通知。施設長を対象に研修を実施し、「職員のストレス対策」として対人関係スキルの向上や感情コントロールスキルの習得などの教育を求めている。 ※厚労省の調査で介護施設での虐待は06年の54件から9年連続増加し、15年度は408件、被害者は778人だった(こちら※PDFファイルです)。
▽これで「基準を満たしている」なら、基準が間違ってるのでは
・さて、……なんと言ったらいいのだろう。気の利いたコメントが思いつかない。 ただ、介護施設での事件を「個人の問題」にしていては悲惨な事件があとを絶たないことは明白である。 つまり、「国の基準を満たしている」とか、「職員のストレス対策を厚労省は指示している」とか、「体制に問題はありません!」とするのではなく「介護現場の問題」として改善策を講じる必要があることが、もはや確実になった、ってこと。
・これまでも介護現場の問題点を指摘してきたが、改めて「終の住処の“今”」のデータや証言をもとに、私たちの未来を考えてみようと思う。 まず最初に、今回の事件でホームの運営側が「国の基準を満たしている」としている点だが、特別養護老人ホームや有料老人ホームでは、職員1人が入所者3人を受け持つという決まりがある。 だが、実際にはこの基準で高齢者の「日常ケア」を行なうのは厳しく、夜勤の1人勤務や連続16時間勤務、月10回以上の夜勤が横行している(こちら※PDFファイルです)。
・一方、数年前に介護施設の虐待が社会問題化したため「1対2.5」「1対1.5」といった具合に国の基準を上回る割合で職員を置く施設も増えた。 厚労省が行った調査では、特養ホームの人員配置は全国の平均で「1対2」。基準の見直しを求める声はすでにあがっている。しかし、最低基準が厳しくなれば運営できない施設が急増する怖れもある。
・言わずもがな、介護施設は慢性的な人手不足だ。 介護保険制度が施行された2000年の介護職員は55万人。その後徐々に増加し、2013年には171万人と約3倍になったが、高齢化のピッチが速すぎて職員の数を増やしても増やしても追いつかない現実がある。
▽介護施設は人手不足と競争激化で倒産が増加
・実際、62.6%の事業所が「人手が不足している」と回答し、職員側の悩みも「人手が足りない」(53.2%)がトップだ。職員への「今の仕事を続けたいか?」との問いに「はい」と答えた人は53.7%で、前年に比べ11.8ポイント下がった。年間の離職率は前年より悪化し16.7%で、全産業平均の15%を上回っている。
・懸念されている賃金だが、16年9月時点の平均賃金(月給)は22万4848円で、前年の21万7753円から7095円増えた。しかしながら全産業と比較すると月給で約10万円、年収では100万円超低く、低賃金も解消されていない(これらの数字は全て厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」調べ)。
・重労働、急激な高齢化、さらには低賃金による離職率の高さから生じる慢性的な人手不足は、経営も圧迫している。 老人ホームなどの介護事業者の倒産件数はここ5年間で急増し、昨年は過去最多の108件。今年も8月時点ですでに62件が報告されており、昨年を上回る可能性が高い。 負債額を比較すると、昨年は108件の倒産で94億600万円だったのに対し、今年は62件で121億7,000万円の倒産ペース。つまり、大型の施設の倒産が相次いでいるのだ(東京商工リサーチ調べ)。
・もともと介護施設の経費は、7割を人件費が占めている。 2015年の介護報酬引き下げ(2.27%減)は業界には大きな打撃だったが、追い打ちをかけたのが国の「介護の受皿を増やす」政策。競争相手が増え、人員確保がさらに難しくなり、体力を増々低下させた。
・需要は増す一方なのに、報酬の減少、コスト増、競争激化による倒産という、魔のスパイラルが出来上がってしまったのだ。 それだけではない。
・倒産に伴い入所者は他の施設に転院するわけだが、高齢者にとって環境の変化は想像以上のストレスになる。元気に施設で暮らしていた高齢者が、転院後は突然口数が少なくなったり、うつ傾向が強まったり、歩けなくなったり……、つまり、施設の経営悪化が引き金で一気に老け込んでしまうのである。
・ふ~む……。ここまでで既に青息吐息というほかないのだが、数年後にはざっくり今の100倍は深刻な、暗澹たる未来が待ち受けている。 38万人――。 これは8年後の2025年に不足する介護職員の人数である。 団塊の世代が75歳以上になる2025年度には、介護職員が約253万人必要になるとされるのに対し供給の見込みは約215万人。およそ38万人の介護職員が足りなくなる(こちら※PDFファイルです)。
・これがいかに深刻な問題なのかは、いまの現場のリアルを知ればお分かりいただけるはずだ。 先日、91歳の誕生日を迎えた“友人”が見た「今の老人ホーム」の有り様を紹介しよう。
▽朝3時に起こさないと「朝食に間に合わない」
・友人は90歳のときに「老人ホーム連続転落死に見る『介護崩壊』の予兆」で、介護現場の職員の方たちの苦労を話してくれた女性と同一人物である。そちらも是非お読みいただきたいのだが、そこでも書いたとおり、ご主人が要介護となりご夫婦でホームに入所。終の住処で3年の時が過ぎた。
・「夫のような車いすの入所者は毎朝、6時過ぎになると食堂に連れて行かれます。70人近い入所者の配膳、投薬などをわずか3~4人のヘルパーが行うのですが、ヘルパーの中の2人は夜勤を終えたまま引き続き働いているので、気の毒で見ていられません。 人手が足りなすぎて物事が進まず、結局、車いすで部屋へ連れ戻されるのは9時過ぎ。つまり窮屈な車いすに3時間近くも座らせられているのです。
・週2回の入浴日はもっと大変です。朝食後、入浴時間まで食堂で車いすのままずっと待っていなくてはならない。終わるとまた食堂に連れて来られて、そのまま昼食になるので、部屋に戻ってくる時には6時間も経っているのです。入所者は増えてもヘルパーの数は変わらないので、そのしわ寄せが夫のような、車椅子で介護度4か5の人たちにもろにきています。そういう入所者のほとんどは、自らの意志表現ができない状態なので、じっと我慢しています。
・午前3時少し過ぎに隣室の夫の部屋から物音がするので、すぐ様子を見に行ったところ、ヘルパーが夫の着替えをしているところでした。3時頃はぐっすり眠っている時間なのに、無理やり起こされて おむつ替えなどさせられている夫が哀れでならなかったです。ヘルパーに文句を言ったところ、『今から始めないと朝食に間に合わない』という返事が返ってきました」 「ホームを運営する本社に『改善してほしい』という要望は出しているのですが、答えは『低賃金のためヘルパーを募集しても応募がない』の一点張りです。
・前途が真っ暗になるような回答しか返ってきません。結局、ヘルパーの数が増えない限りどうにもならない、ということを再認識させられ、途方に暮れるのです。 このホームに入所して3年近くの間、人生の末期の棲み家を求めて老人ホームに入所した高齢者を観察してきましたが、痛切に感じるのは会話の大切さです。ホームの生活は自室で話し相手もなく過ごすため、会話が非常に少ないのです。
・入所当時は杖なしでさっさと歩き、私の問いかけに即答していた人が、毎食時とレクリエーションの時間以外は、ほとんど自室で過ごすため、みるみるうちに反応が悪くなっていきます。幸い夫は私が一緒に入所したため、比較的会話の機会があるので、今でも私の問いかけには声こそ小さくなりましたが、いつも即答しています。
・昨年6月、某有名銀行支店長の奥様が入所しました。食事の席が同じだったので、私は早速、彼女に話しかけました。彼女はホームに入所した経緯や、2人の子供の話、12年前に他界されたご主人のこととか、家庭の情報をよどみなく話してくれました。
▽みるみるうちに何も出来なくなっていく
・入所後は自室では何をすることもなく一日中会話もなく、ぼんやりと過ごしているようでした。近くに住む娘さんも滅多に姿を現しません。そして、彼女が入所してから半年が経過する頃、私は彼女の脳細胞が破壊されていることを感じるようになりました。私の問いかけにとんちんかんな返事をしたり、髪は乱れたまま、服のボタンは掛け違ったままで食堂に来るようになったのです。それと並行して歩行が困難になり、杖、そして車いすを使うようになっていきました。 彼女は今では私の顔も認識できないのです。わずか1年で変わり果てた姿に驚いています。こんな例は彼女だけではなく、他にも同じような人が数多くいます」
・たったひとりの親のケアだって大変なのに、3名で70人近い人たちに、ご飯を食べさせ、お風呂に入れ、部屋まで付き添うだなんて想像しただけで恐ろしくなる。その間、トイレをもよおす人だっているし、具合が悪くなる人だっているかもしれない。ちょっとした行き違いで、怒鳴ったり、わがままを言ったり、ぶつかり合うことだってあるだろう。
・尋常でない激務と人手不足が、職員の人たちだけでなく高齢者をも極限状態に追い詰めている状況は、“友人”の話から痛いほどわかる。 本当は職員の人たちだって、おじいちゃんやおばあちゃんがちょっとでも笑顔になるようなサービスをしたいし、ふとした会話で元気になる様子をみたい。  「おしゃべりな人は認知症になりにくい」とは介護業界ではよく聞かれる話だし、「会話は生存率にも影響する」との指摘もある。が、“今の現場”では次から次へとやらなくてはならないことだらけで、会話の時間が奪われ、言葉のやりとりのない世界で、おじいちゃん、おばあちゃんたちの生きる力が奪われているのだ。
・人生最後の時間がこんな悲惨な状況でいいのか? これで納得できるのか? もっとできることがあるのではないのか? 半年ほど前出演しているテレビ番組で、介護現場にIoTを導入し人手不足に役立てている施設を特集したことがある(介護付ホーム アズハイム町田 以下、数字は当時のものです)。
・ここでは55人の入居者を50人のスタッフで介護。つまり、1対3ではなく、1対1.5以下だ。 だがこの人数でもケアスタッフはてんやわんやで、「レクリエーション」で高齢者の精神的ケアを行なうとともに、「食事の補助」「排泄介助」などの身体的ケア、さらには入所している部屋を巡回し、シーツ交換や掃除、歯磨きコップの衛生状態をチェックしたり、消毒するなどの雑務をこなすなど、常に「やること」に追われていた。
・その切迫した状況を変えたのが「1台のスマホ」だった。 スタッフが常にスマホを携帯し、それを活用することで、施設全体の1日当たりの総労働時間を17時間削減することに成功したのである。 スマホの画面には瞬時に、ベッド上に入所者がいるか、寝ているか起きているかが映し出される。これだけでケアスタッフの作業効率が格段に上がったのだ。
・仕組みは実にシンプル。入居者のベッドのマットレス下に「眠りスキャン」とよばれるセンサーがついたシートを敷くことで、睡眠時間・呼吸状態などを24時間モニタリング。離床のタイミングでナースコールを鳴らす機能もあるので、入居者に合わせた設定が可能だ(※日経デジタルヘルスの記事はこちら)。
・「スマホを見ながら優先順位を付けて離床の準備ができるようになった。それまでは部屋をノックして、起きているかどうかを確認する必要があったが、入居者の方の眠りを邪魔せず、こちらもケアできるようになった」(職員談) 「夜間に入居者の排泄介助を行っていても、他の部屋から物音が聞こえると、排泄介助を中断し状況を確かめる必要があったが、スマホを確認すればいいので目の前の入居者に集中できるようになった」(同じく職員談)
・IoTで、介護をする人の負担が減り、データに基づきケアすることで介護の質が上がり、入所者も快適になる。施設の担当者によれば「システム導入には入所者55人に対し2000万円かかるが、2年間で回収できる」そうだ。
▽個人で解決できるわけがない
・厚労省は「職員のストレス対策を指示する」くらいなら、「世界最先端IT国家創造宣言(IT宣言)」の膨大な予算のうちの一部を介護現場に使えばいい(こちら※PDFファイルです)。 なぜ、それをしない? なぜ、議論にもあがらない? 所詮、介護現場の事件は「個人の問題」と考えているからなのか?
・生きていれば誰もが老いる。昨日まで出来ていたことがひとつひとつできなくなる。 そんなときにはどうしたって他者からのケアが必要となる。 そういう老後を迎えるのが望ましいのか、自活できなくなったときの尊厳を守るにはどのような条件が必要なのか。 それを正面から議論しない限り、悲しい事件はなくならないと思う。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/112000132/?P=1

第一の記事で、SOMPOケアネクスト、SOMPOケアメッセージとも入居率は改善しているようだが、その度合いは思ったほど大きくない。『介護職員の離職率減少が重要課題』、というように離職率も大きくは下がっていないのも、不思議だ。両社の一体化も、まずは人事交流からということに表れているように、SOMPOの統合に向けての方針は、非常に慎重なようだ。 『SOMPOホールディングスが着手した一般大衆向けの老人ホームは、富裕層向けに比べると、必要に迫られた家族が選ぶことが多いため、サービスの差別化やブランドの訴求が難しい。介護職員の募集も容易ではない』、『介護業界を取り巻く環境は厳しさを増している。もし、「現場の悲鳴」を見逃し続ける事態が発生すれば、改めて大きな事故・事件が発生するというリスクは、常に意識する必要があるだろう』、との指摘はその通りだろう。
第二の記事で、理事長は医療法人など幅広く事業を展開しているやり手のようだが、『理事長から『君たちの代わりはいくらでもいるんだから』と言われたこともありますし、働く人の気持ちをないがしろにしている施設でしたね』、当初の成功で自信過剰になっていたのではなかろうか。こんな事件を起きたので、今後、どうなるかを注視したい。
第三の記事で、 『数年前には連日連夜大々的に取り上げられた“介護施設での事件”が、今回はテレビではあっさりと、紙面では三面で小さく報じられている』、確かに、余りに事件が相次ぐので、一般国民には、「またか」といいかげんうんざえりしていることを反映しているのだろう。 『朝3時に起こさないと「朝食に間に合わない」』、『みるみるうちに何も出来なくなっていく』、『“今の現場”では次から次へとやらなくてはならないことだらけで、会話の時間が奪われ、言葉のやりとりのない世界で、おじいちゃん、おばあちゃんたちの生きる力が奪われているのだ』などは悲惨そのものだ。  
『厚労省は「職員のストレス対策を指示する」くらいなら、「世界最先端IT国家創造宣言(IT宣言)」の膨大な予算のうちの一部を介護現場に使えばいい』、との主張には大賛成だ。
明日は更新を休むつもりなので、明後日、金曜日にご期待を!
タグ:飛騨高山 それいゆ 厚労省 介護施設 日経ビジネスオンライン 岐阜県警 ダイヤモンド・オンライン 介護老人保健施設 現代ビジネス 河合 薫 SOMPOホールディングス (老人ホーム)問題 (その2)(旧ワタミ・旧メッセージの老人ホームは今どうなっているか、岐阜の老健施設「ひどすぎた地元の評判」、食堂に3時間放置 朝3時に着替えの介護現場) 「旧ワタミ・旧メッセージの老人ホームは今どうなっているか」 (旧・ワタミの介護=現・SOMPOケアネクスト 旧・メッセージ=SOMPOケアメッセージ 大手老人ホーム2社を買収したSOMPOホールディングス 両社では介護職員による入居者への虐待や事故、介護職員の過酷な勤務状況などが大々的に報じられていた最中だったからだ これまで大手保険会社など異業種が老人ホームを手がける場合、比較的リスクの少ない富裕層向けの高級老人ホームから始めるのが常だった いきなり、ボリュームゾーンとなる大量の一般大衆向けの介護施設で、両社合わせて299施設の有料老人ホーム、132棟のサービス付き高齢者向け住宅の運営を始めることになった 入居率は徐々に改善 一体運営で強みを生かす 両社の子会社化から1年ちょっと経過し、それぞれの強みや課題が分かってきた 介護現場やブランドは従来通り維持する 現場レベルでも両社の人事交流は始めたいと思っている 介護職員の離職率減少が重要課題 両社の介護職員の離職率は平均で約20%である。そのうち、1年未満での離職者が6割もいる ICTの導入 超音波センサーで膀胱内の尿量の変化を検知 慢性的人材不足に付随するリスクを常に認識できるか 一般大衆向けの老人ホームは、富裕層向けに比べると、必要に迫られた家族が選ぶことが多いため、サービスの差別化やブランドの訴求が難しい。介護職員の募集も容易ではない もし、「現場の悲鳴」を見逃し続ける事態が発生すれば、改めて大きな事故・事件が発生するというリスクは、常に意識する必要があるだろう 「5人死傷・岐阜の老健施設「ひどすぎた地元の評判」 遺族には十分な説明さえなく」 7月末から半月で3人が死亡し、2人が負傷し 5人すべての介助に関わっていた職員は一人しかいない。30代男性の高橋だ この高橋は、介護職員としての適性を著しく欠いていたようだ 退職からほどなく、高橋が転職したのは、同じ市内の老健施設「それいゆ」 理事長から『君たちの代わりはいくらでもいるんだから』と言われたこともありますし、働く人の気持ちをないがしろにしている施設でしたね。給料もよくはなかった」 『あそこに入れると、認知症になって帰ってくる』 『それいゆ』は飛騨高山地方で最初の介護老健施設 経営する医療法人同仁会は病院も含めて、十数の施設を運営 虐待はどの施設でもある 蹴るんだったら膝から下にしてね とりわけ認知症の入居者の対応に耐えられなくなって虐待に走るケースが多い 「食堂に3時間放置、朝3時に着替えの介護現場 「対策は職員のストレスケア」という厚労省のピンぼけっぷり」 東京都中野区の有料老人ホームで、入所者の男性(83歳)を殺害したとして元職員の男(25歳)が逮捕された事件 ホーム内の浴室で入所者の男性を浴槽に投げ入れてお湯を張り、沈めて殺害。男性の死因は溺死で、首を絞められた形跡もあった ニチイケアパレス 施設長を対象に研修を実施し、「職員のストレス対策」として対人関係スキルの向上や感情コントロールスキルの習得などの教育を求めている 介護施設での事件を「個人の問題」にしていては悲惨な事件があとを絶たないことは明白である 「介護現場の問題」として改善策を講じる必要 職員1人が入所者3人を受け持つという決まり 数年前に介護施設の虐待が社会問題化したため「1対2.5」「1対1.5」といった具合に国の基準を上回る割合で職員を置く施設も増えた 厚労省が行った調査では、特養ホームの人員配置は全国の平均で「1対2」 介護施設は人手不足と競争激化で倒産が増加 2015年の介護報酬引き下げ(2.27%減)は業界には大きな打撃だったが、追い打ちをかけたのが国の「介護の受皿を増やす」政策。競争相手が増え、人員確保がさらに難しくなり、体力を増々低下させた 倒産に伴い入所者は他の施設に転院するわけだが、高齢者にとって環境の変化は想像以上のストレスになる。元気に施設で暮らしていた高齢者が、転院後は突然口数が少なくなったり、うつ傾向が強まったり、歩けなくなったり……、つまり、施設の経営悪化が引き金で一気に老け込んでしまうのである 「今の老人ホーム」の有り様 朝3時に起こさないと「朝食に間に合わない」 みるみるうちに何も出来なくなっていく “今の現場”では次から次へとやらなくてはならないことだらけで、会話の時間が奪われ、言葉のやりとりのない世界で、おじいちゃん、おばあちゃんたちの生きる力が奪われているのだ IoTで、介護をする人の負担が減り、データに基づきケアすることで介護の質が上がり、入所者も快適になる 生きていれば誰もが老いる。昨日まで出来ていたことがひとつひとつできなくなる。 そんなときにはどうしたって他者からのケアが必要となる そういう老後を迎えるのが望ましいのか、自活できなくなったときの尊厳を守るにはどのような条件が必要なのか。 それを正面から議論しない限り、悲しい事件はなくならないと思う
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日本のスポーツ界(その5)(小田嶋氏:ジョン・レノンと日馬富士の共通点) [社会]

昨日に続いて、日本のスポーツ界(その5)(小田嶋氏:ジョン・レノンと日馬富士の共通点) を取上げよう。

コラムニストの小田嶋隆氏が12月1日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「ジョン・レノンと日馬富士の共通点」を紹介しよう。
・横綱日馬富士が引退の意向を表明した。 私は、詳しい事情を知らない。 引退を表明したというニュースの見出しを読んだだけだ。 横綱を引退に追い込むことになった状況や、その背景に関しても、他人に向けて開陳するに足る情報は持っていない。 ありていに言えば、私は、この騒動を、余儀なく知らされることになる断片的なウェブ情報として知っているだけで、きちんとした分析や背景を解説した記事は、ひとつも読んでいない。テレビも見ていない。なので、何も知らないと言ったほうが実態に近いだろう。
・にもかかわらず、今回は、大相撲の話を書くつもりでいる。 まず、この半月ほどの間、世間を大いに騒がせていたこの日馬富士と貴ノ岩の間に生じた暴力事件について、当欄で取り上げなかった理由を説明しておく。 私は、これまでに当欄において、大相撲関連の話題をテーマに4篇ほど(あるいは5つか6つぐらいあったかもしれない)の原稿を書いている。 内容的には、朝青龍の引退騒動や、八百長疑惑問題や、暴力団との交際報道など、力士に関連する不祥事からわれわれの文化的な恥辱の部分を考察した記事だった。
・それらの原稿の出来に満足していないというのではない。 というよりも、当欄にアップした大相撲関連の記事は、いずれも思うところを過不足なく表現することのできたそれはそれでまずまずの文章だったと思っている。 ただ、それだけに、「大相撲と日本人」というテーマについては、ある程度書き尽くした自覚がある。だから、この先、大相撲の周辺で起こる出来事に関して何を書いたところで、重複は避けられないだろうとも思っている。
・とはいえ、書く書かない以前に、私自身が、この話題に関与すること自体を、当初の段階から明らかに忌避していたこともまた事実ではある。 つまり、私は、大相撲から逃避していたわけだ。そうでなくても、情報を遮断していたことは間違いない。 テレビはこの2週間ほど視聴していない。 理由は、この話題を扱っているテレビの画面を見ると、ほんの10秒ほどで、画面の中にいる全員を嫌いになってしまうからで、無駄な敵意を燃やして体力を消費しないためにも、私は、この話題を扱ったテレビにはチャンネルを合わせなかったということだ。 新聞の記事も、ウェブに流れてくるニュースも、見出しより先の部分は読んでいない。
・時系列に沿った主な記事は、習慣としてクリップ(エバーノートにコピペしています)しているのだが、まだ目を通していない。 録画してあるニュースも再生していない。 この記事を書くにあたって、20分ほど前から、クリップしてある記事にざっと目を通すことをはじめていたのだが、その作業も、さきほど投げ出した。 というのも、このニュースに関しては、細かい情報を知れば知るほど、気持ちが沈んでくることをどうすることもできなかったからだ。
・なんというのか、大相撲への愛情が減退し、日本人と日本文化への忌避感が募り、われわれの社会を社会たらしめているものへの苛立ちが亢進することがはじめからわかりきっていたからこそ、私は、このニュースに触れることをためらい、この騒動を扱った論考へのアクセスを拒絶し、そもそも、日本に大相撲があることを思い出すことから逃れようとしていた次第なのだ。
・話を整理すれば、私が大相撲関連のニュースを遮断していた理由のひとつは、「いやな日本人」が群がっていることを伝える情報を読みこなすことが自分にとっては過大な精神的負担であったからで、もうひとつは、その種の「いやな日本人」のニュースに触れた時に自分が示すであろういやな反応に自分ながらうんざりしていたからということでもある。
・おそらく、私は、「オレみたいな視野の広い人間から見れば、君たちみたいな直情的な日本人たちは、これこれこんなふうに見えているのだぞ」 という感じの上から見下したカタチの原稿を書くことになる。 というよりも、このテーマで原稿を書く以上、その書き方から逃れることは事実上不可能なのだ。
・なんとなれば、大相撲の周辺で起っていることは、もうずっと前から、多かれ少なかれ「日本人の悪いクセ」というタグからほとんど一歩も外に出ない話題に終始していて、その「日本人の悪いクセ」をテーマとする原稿は、「自分のことを棚に上げたエセ文化人」の立場からでないと書き起こすことができない種類の文章だからだ。 そんなわけなので、その自分が書くに違いない原稿のイヤミったらしさに、あらかじめ食傷していたからこそ、私はこの件について書くことを自らに禁じていたのであり、それ以上に、この件を考えること自体を拒絶していたのだ。
・しかも、私は、苛立つばかりで、改善策をひとつも持っていない。 自分たちが日本人であるというところから発しているこの問題を解決するためには、われわれが日本人でなくなること以外に方法がない。 とすれば、私が心がけなければならないのは、せめて自分自身だけでも「悪しき日本人の典型的な行動パターン」を踏まないように努力することであるはずで、その典型的な醜い日本人として振る舞わないための具体的な第一歩がすなわち、日馬富士暴行問題に群がって騒ぎ立てる人間たちの一員に加わらないことだった…というわけだ。
・さて、以上が、私がこの話題についてこれまで書かなかった理由なのだが、ここから先、私は、自分がこの話題について原稿を書く理由を説明しなければならない。 この説明はちょっとむずかしい。 読者に届くものなのかどうか自信がないのだが、書くだけ書いてみる。
・さきほど私は、大相撲の問題に通底している「日本人の悪いクセ」を論じるためには、「自分が日本人であることを棚に上げた腐れ文化人」の視点から物申すほかに方法がないという意味のことを書いたのだが、これは、書き方の問題だけではなくて、もしかしたら、われわれの身の処し方全般についてそう言える話なのかもしれない。 どういうことなのかというと、われわれが、「日本人の悪いクセ」から逃れるためには、自分自身が日本人であることを一旦棚上げにして、「国際人」というありもしない架空の立場に依って立って芝居を打つ以外に、スタンスの取りようがないということだ。
・そのためには、原稿を書く人間は、自分のものの言い方がイヤミったらしい出羽の守の言い草であることを重々承知した上で、それでも日本人を叱りつける言説を繰り返さねばならないということだ。  このことは、「おい、さっきから日本人に説教をカマしてるお前はいったい何人なんだ?」「オレか? オレは未来の日本人だよ」 という、この胡散臭い小芝居を図々しくやり通す覚悟がない人間は、はじめから大相撲には言及するべきでないということでもある。
・なんとなれば、このほど「大相撲」という枠組みの中で体現されてしまった「日本」なるものは、われわれにとって、等しく恥辱そのものでもあるからだ。
・今回の事件を私が見聞した範囲の情報から思い切り単純に要約すると、「モンゴル力士社会」という異様に狭っ苦しいムラ社会の中で勃発した暴力事件を、「大相撲社会」というこれまた異様に狭っ苦しいムラ社会の人間たちが処理するにあたって外部に漏れたほころびを、「平成の日本」というこれまた盛大にも広大にも狭っ苦しいムラ社会のメディアがよってたかって突き回しつつ娯楽として消費している姿だったわけで、つまり、私が立っている場所から見ると、このお話は、三重の同心円構造を持つ巻き貝の中身みたいな螺旋的ムラ社会カタツムリぬらぬら事案だったということになる。
・と、細々とした事情はともかくとして、この問題を解く鍵は、「ムラ社会の外にいる人間の目から見ると、ムラ社会の中の出来事はただただ異様に見える」 という至極当たり前な観察の周辺にある。  相撲界全体から見ると、モンゴル力士社会内部でやりとりされている関係や言葉や感情は、どれもこれもバカみたいに狭量で低劣に見えるわけなのだが、その相撲社会がモンゴル力士社会を断罪しようとした態度を日本の一般社会の人間の視点で見ると、これまたとてつもなく狭量粗雑なやりざまに見える、と、ここまでは良い。
・大切なのは、その日本の良識ある横綱審議会だのマスコミ言論人だのが、相撲界に対して物申している「相撲の美」だの「日本の伝統」だの「横綱の品格」だのといったお話にしたところで、彼らの属しているムラ社会の外側かたあらためて見直してみれば、およそ滑稽なポエム規範に過ぎないということだ。
・もうひとつ私が、この事件の発生以来ずっともやもやと考え続けているのは、日馬富士が体現してみせた「暴力」は、もしかしたら、相撲の世界の中の人たちが口を酸っぱくして繰り返している「相撲の美」や「横綱の品格」ひいては「日本の同調」の本質を純化した果てにあるものなのではないか、ということだ。
・このお話も、ちょっと説明を要する。 外国からやってきた人間は、その国の文化の本質の部分を、その国で生まれつきの人間として暮らしている者には思いもつかぬやりかたで掴み取っている場合がある。 私の知っている例では、ジョン・レノンという人が、いくつかそういう歌を書いている。 ひとつは、あの有名な「Imagine=イマジン」で、これは、現在では、オノ・ヨーコさんとの共作でクレジットされるようになった歌でもあるのだが、この歌の中には、レノン氏が、日本からやってきた女性であるヨーコさんから吹き込まれた東洋思想へのあこがれや、架空の平等社会日本のイメージが、極めてシンプルなカタチで反映されている。その点で、世界中の人々の詩的イマジネーションをかきたてる歌に仕上がっている。
・死後に発表されたアルバムの中の1曲「Borrowed Time」というのも不思議な歌だ。 ジャスラックの皆さんへの配慮で、内容を詳しく紹介することは控えるが、タイトルにある通り人生を「借り物の時間」と喝破する内容を持つこの歌の底流にも、ヨーコさんをネタ元とする東洋思想の大胆な翻案が採用されている。
・この種の外国人の立場からの異文化への言及を、安易かつ粗雑な要約に過ぎないと見る向きがあることは承知している。 が、私自身は、われわれの文化の中にある世界や人生についての洞察を「borrowd time」 というたった二つの単語で要約してしまうような荒業は、これは、むしろ外国人だからこそできたことなんではなかろうかと考えて、それを積極的に評価することにしている。
・余談だが、私もひとつこの関係のネタを持っている。 リンク先(こちら)にあるのがそれだ。これは、ビートルズの「Nowhere man」という歌のパロディーで、1998年にテポドン発射記念として、当時開設していたホームページに掲載した作品だ。
・タネを明かせば、「nowhere=どこにもない」という単語の間にスペースを1個挿入すると「now here=いま、ここ」になるということで、これを踏まえると個人的な妄想の中に生きる男である「nowhere man=空しい男」は、ひとっかけらの想像力も持たない自己啓発的な「now here man=即物野郎」に変貌する。 nowhere を now here に読み替えるみたいなこの種のあまりにも単純な地口は、案外、外国人だからこそ発見できるものだというお話でもある。 外国人は、海外の文化を単純化したうえで摂取する。 その単純化が正しいのか間違っているのかという問題ではない。 彼らの立場からすれば、あるフィルターをかけて、単純化してからでないととてもじゃないけど飲み込むことなんてできない。それだけの話なのだ。
・日馬富士に話を戻す。 モンゴルからやってきた力士は、日本語はもちろん、言葉として明示されないメッセージのやりとりを含めて、日本的な対人関係の築き方や、日本の力士としてのコミュニケーションの取り方をすべてゼロから身につけることを求められる。
・先輩力士が特定の場所で特定の所作を繰り返しているのは、いったい何を意図した意思表示なのか。 あるいは、ご祝儀として受け取った金品をどんな基準で分配するのが部屋に所属する者としての最も適切な振る舞い方であるのか。 そういった細々とした先方の意図の読み方やこちらの意思表示の方法を含めて、さしあたり自分の周囲にわだかまっている空気を読むということが、彼らにとっての死活問題であり、処世訓でもある。で、そうした日常的な適応の物語の先に「横綱の品格」があり「相撲の美」があり「ニッポンの文化」があったはずで、彼らからしてみれば、お箸は右手茶碗は左手みたいなことすらも、「勉強」だったに違いないのだ。
・引退会見の中で、日馬富士が後輩を指導するために時には厳しい説諭もすることが先輩力士としての心得であるという意味の話を強調したことを、言い訳がましいと感じた人たちもいることだろう。  実際に、「後輩を厳しく指導する」ことと「アタマに裂傷ができるほど激しく殴打打擲する」ことは、まったく別の話だし、前者が後者を免罪する筋合いの話でもない。両者は、正反対の態度だと言っても良い。
・が、日馬富士の中では、それらはひとつながりの所作の中の別の局面に過ぎなかったのかもしれない。 われわれの中でも、「過労死に至る過酷な残業」と「自分のノルマを果たすために精一杯頑張ること」は、全く別のことだという建前になっている。 が、働く者の目に、「一心に全力を尽くして働くこと」と「過労死に至るまで残業を繰り返すこと」の間の境界線が、常に明らかに見えているのかというと、必ずしもそうだとは言い切れないと思う。
・横綱として、日馬富士に求められていたモラルは、彼の目から見れば、同化しようと一励めば励むほど、結果としてその規範から逸脱してしまうタイプの、極めてわかりにくいスタンダードだったのではなかろうか。 厳しく指導しなければならないが、殴ってはいけない。 いや、素手で軽く殴る程度のことは土俵に生きる男が相手ならあってしかるべきところだが、道具を使って殴ってはいけない。
・すすめられた酒を断るのはもってのほかだが飲みすぎてはいけない。 番付がすべてだが鼻にかけてはいけない。
・いったいどこの世界の人間が、こんなダブルバインドの中で正しい道を見つけることができるだろうか。 品格も同じだ。 何が品格でないのかは、ことあるごとに列挙されている一方で、何が品格なのかは一向に明示されない。 どんな言動が品格から外れていて、何が品格を裏切ることになるのかについては、いちいち具体的に指摘されているものの、どんな振る舞い方が品格にかなっているのかということは、ついぞ説明されたためしがない。
・とすると、横審の爺さんたちの言う「品格」という言葉に「オレたちにとって都合の良い外国人横綱」以外の意味が宿っているものなのかどうか、私は疑わずにおれない。 このわかりにくい規範を学び取ることのために思春期から青年期にかけての十数年間を費やしてきた1人の格闘家が、「日本人としての正しい振る舞い方の極意は、つまるところウチのためのスタンダードと、ソトのためのスタンダードを使い分けることだ」 ぐらいな認識に至ったのだとして、いったい誰が横綱を責められるだろうか。
・私は、今回の出来事を「日本人の典型」を学び取ることに懸命でもあれば、その道で最優秀でもあった青年が、結果として「最も日本人らしい逸脱」をやらかした結果、日本人であることから排除された事件として記憶の底に沈めようと思っている。
・もし大相撲が立ち直りたいなら、オープンでフェアなレギュレーションを取り入れたうえで、アルファベットの「SUMO」として再出発を果たすぐらいしか道はないと思うのだが、そうなると、それは「相撲」ではなくなる。伝統も美もすっかり跡形もなく消え去ることだろう。
・もうひとつの方法として、スポーツ競技としての作り物の構えや建前をかなぐり捨てて、テレビ放送もやめて、戦前にそうであったような、マイナーな興業として、細々と伝統を繋いでいく道がないわけではない。 そのためには、相撲協会全体が大幅に減量しなければならない。それが彼らにできるだろうか。
・いずれにせよ、大相撲の未来はあんまり明るくないと思う。 相撲の興業を「場所」と呼ぶ習慣は、なかなか示唆的だ。 なぜなら、場所がなくなった時、われわれは存在できなくなるからだ。 でもまあ、なくなってみないと先のことはわからない。 個人的には、大相撲は一度 nowhere になってみるべきだと思っている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/113000121/

小田嶋氏の切り口は、さすがに鋭い。記事の中で、 『大相撲の周辺で起っていることは、もうずっと前から、多かれ少なかれ「日本人の悪いクセ」というタグからほとんど一歩も外に出ない話題に終始していて、その「日本人の悪いクセ」をテーマとする原稿は、「自分のことを棚に上げたエセ文化人」の立場からでないと書き起こすことができない種類の文章だからだ。 そんなわけなので、その自分が書くに違いない原稿のイヤミったらしさに、あらかじめ食傷していたからこそ、私はこの件について書くことを自らに禁じていたのであり、それ以上に、この件を考えること自体を拒絶していたのだ』、 『このほど「大相撲」という枠組みの中で体現されてしまった「日本」なるものは、われわれにとって、等しく恥辱そのものでもあるからだ』、 『「モンゴル力士社会」という異様に狭っ苦しいムラ社会の中で勃発した暴力事件を、「大相撲社会」というこれまた異様に狭っ苦しいムラ社会の人間たちが処理するにあたって外部に漏れたほころびを、「平成の日本」というこれまた盛大にも広大にも狭っ苦しいムラ社会のメディアがよってたかって突き回しつつ娯楽として消費している姿だったわけで、つまり、私が立っている場所から見ると、このお話は、三重の同心円構造を持つ巻き貝の中身みたいな螺旋的ムラ社会カタツムリぬらぬら事案だったということになる』、 『横綱として、日馬富士に求められていたモラルは、彼の目から見れば、同化しようと一励めば励むほど、結果としてその規範から逸脱してしまうタイプの、極めてわかりにくいスタンダードだったのではなかろうか』、などの指摘は、いずれも秀逸で説得力がある。 最後の、『私は、今回の出来事を「日本人の典型」を学び取ることに懸命でもあれば、その道で最優秀でもあった青年が、結果として「最も日本人らしい逸脱」をやらかした結果、日本人であることから排除された事件として記憶の底に沈めようと思っている』、も問題をよくぞここまで深く掘り下げたものだと、感服した。  なお、ダブルバインドについては、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89 を参照されたい。 
タグ:小田嶋隆 日経ビジネスオンライン 日本のスポーツ界 (その5)(小田嶋氏:ジョン・レノンと日馬富士の共通点) 「ジョン・レノンと日馬富士の共通点」 自身が、この話題に関与すること自体を、当初の段階から明らかに忌避していたこともまた事実 私が大相撲関連のニュースを遮断していた理由のひとつは、「いやな日本人」が群がっていることを伝える情報を読みこなすことが自分にとっては過大な精神的負担であったからで、もうひとつは、その種の「いやな日本人」のニュースに触れた時に自分が示すであろういやな反応に自分ながらうんざりしていたからということでもある 大相撲の周辺で起っていることは、もうずっと前から、多かれ少なかれ「日本人の悪いクセ」というタグからほとんど一歩も外に出ない話題に終始していて、その「日本人の悪いクセ」をテーマとする原稿は、「自分のことを棚に上げたエセ文化人」の立場からでないと書き起こすことができない種類の文章だからだ。 このほど「大相撲」という枠組みの中で体現されてしまった「日本」なるものは、われわれにとって、等しく恥辱そのものでもあるからだ 今回の事件を私が見聞した範囲の情報から思い切り単純に要約すると、「モンゴル力士社会」という異様に狭っ苦しいムラ社会の中で勃発した暴力事件を、「大相撲社会」というこれまた異様に狭っ苦しいムラ社会の人間たちが処理するにあたって外部に漏れたほころびを、「平成の日本」というこれまた盛大にも広大にも狭っ苦しいムラ社会のメディアがよってたかって突き回しつつ娯楽として消費している姿だったわけで、つまり、私が立っている場所から見ると、このお話は、三重の同心円構造を持つ巻き貝の中身みたいな螺旋的ムラ社会カタツムリぬらぬら事 日馬富士が体現してみせた「暴力」は、もしかしたら、相撲の世界の中の人たちが口を酸っぱくして繰り返している「相撲の美」や「横綱の品格」ひいては「日本の同調」の本質を純化した果てにあるものなのではないか、ということだ モンゴルからやってきた力士は、日本語はもちろん、言葉として明示されないメッセージのやりとりを含めて、日本的な対人関係の築き方や、日本の力士としてのコミュニケーションの取り方をすべてゼロから身につけることを求められる 横綱として、日馬富士に求められていたモラルは、彼の目から見れば、同化しようと一励めば励むほど、結果としてその規範から逸脱してしまうタイプの、極めてわかりにくいスタンダードだったのではなかろうか 私は、今回の出来事を「日本人の典型」を学び取ることに懸命でもあれば、その道で最優秀でもあった青年が、結果として「最も日本人らしい逸脱」をやらかした結果、日本人であることから排除された事件として記憶の底に沈めようと思っている
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日本のスポーツ界(その4)(マラソンを軽視する駅伝大国ニッポン、貴乃花と日馬富士 被害者が悪者になる「バカげた事件」の不快さ) [社会]

日本のスポーツ界につぃては、3月28日に取上げた。今日は、(その4)(マラソンを軽視する駅伝大国ニッポン、貴乃花と日馬富士 被害者が悪者になる「バカげた事件」の不快さ) である。

先ずは、11月13日付け日刊ゲンダイ「日本勢トップは5位…マラソンを軽視する駅伝大国ニッポン」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・外国人には理解できないシーズンがやってきた。 12日に行われたさいたま国際マラソンは、2020年東京五輪の女子マラソン代表を決めるグランドチャンピオンシップ(GC)のキップがかかっていた。日本人のトップは岩出玲亜(22)の5位。2時間31分10秒の記録は、GCキップが得られる2時間29分00秒には遠く及ばなかった。
・岩出がゴールした直後、東日本女子駅伝が福島県(福島市)でスタート。千葉県が2年ぶり9度目の優勝となった。ちなみに、8月の世界陸上マラソン代表だった清田真央(24)と安藤友香(23)は、4位の静岡代表としてこっちを走っていた。 国内の駅伝は、10月末の全日本大学女子対校選手権から本格的なシーズンに入った。来年元日の全日本実業団対抗(男子)まで、東日本女子、全日本実業団対抗女子、全国中学、全国高校、全日本大学女子選抜など大会が目白押し。
・今月26日には、全日本実業団対抗女子駅伝が控えるため、さいたま国際にはマラソンの有望選手が毎年出場しないのだが、五輪や世界選手権の種目でもない駅伝が、五輪代表につながるマラソン大会より重要視され、大いに盛り上がっていることが「理解できない」という外国人は少なくない。 日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーはさいたま国際マラソンの結果について「(岩出は)風が強く、高低差のある難しいコースで頑張ったという評価をしているが、2時間29分00秒はクリアしてほしかった。これでは世界に太刀打ちできない」とボヤいた。
・岩出の持ち時計は2時間24分38秒。さいたまのコースなら、この記録が精いっぱい。それより瀬古リーダーは、26日の全国大会のために女子選手をマラソンに出さない実業団の監督にこそ文句を言うべきだ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/217521/1

次に、筑波大学教授の原田 隆之氏が12月3日付け現代ビジネスに寄稿した「貴乃花と日馬富士、被害者が悪者になる「バカげた事件」の不快さ 横綱に媚びる道徳なんていらない!」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽被害者の名前を言わない引退会見
・日馬富士が貴ノ岩を殴ってケガをさせたとされる事件が、発覚してから2週間。とうとう、日馬富士が引退するところまで追い込まれた。 引退会見では、冒頭「貴ノ岩関にケガを負わせたことに対し、おわびをさせていただきます」と述べたものの、その後「国民の皆様、相撲ファンの皆様に大変ご迷惑をお掛けしたことを心から深くおわび申し上げます」と謝罪し、そこに貴ノ岩の名前はなかった。  このような大事な場面で、謝罪の対象に被害者の名前をうっかり忘れるということは普通考えにくいから、これは意図的なことなのだろう。
・また、暴行に至った原因としては、「先輩の横綱として、礼儀と礼節がなっていないときにそれを教えるのが義務だと思っている」と語った。 同席した伊勢ケ浜親方は、「やった事実はあるわけなので、横綱として責任は取らなければいけない」と述べたが、会見を通して「横綱という名前を汚してはならない」という信念が貫かれていた。
・また、記者の質問に気色ばんだり、質問を遮ったりする場面も見られ、当初の反省の色がどこかに行ってしまったような様子だった。 端的に言えば、不快な会見だった。 最初のほうは、残念なことになったものだと同情しながら聞いていたが、途中からそんな気持ちは吹き飛んでしまった。 
・まだ捜査中ではあるが、自らの暴行で相手に大怪我をさせておきながら、まるで「横綱を辞めさせられた自分のほうが被害者だ」と言いたげな態度が滲み出ており、「相手のことを思う一心だったのに」「相手のほうが悪かった」との言い訳に至っては甚だ聞き苦しい。 さらに、「一件の後、貴ノ岩から謝罪があって握手して別れたから、事がこれほど大きくなるとは思っていなかった」と平気で言ってのけるあたり、まったく共感性というものが欠如しているのではないかと疑ってしまう。
・親方の態度は、弟子を庇うことは美しい姿なのかもしれないが、なぜこのような事態になったのかという肝心のところが抜け落ちている。 「横綱としての品位」に傷をつけたから引退ではなく、人に暴力を振るってケガをさせたから引退だということがわかっていない。 こんな親方だから、弟子がこんなことになってしまったのだ。親方の責任はとても大きい。
▽危機管理委員会という茶番
・それに輪をかけて酷かったのが、日本相撲協会の危機管理員会なるものが出した「中間発表」である。 そこでは、以下のようなことが発表された。
 1 一次会で、白鵬が貴ノ岩の言動に説教をしたが、日馬富士はそれを庇った。
 2 貴ノ岩は両親を亡くしており、似た境遇にある日馬富士は日ごろから彼を気にかけ可愛がっていた。
 3 二次会になって、白鵬がまた説諭を始めたとき、貴ノ岩がスマートフォンをいじっていたので、日馬富士は大横綱の白鵬に何たる態度かと腹を立て、貴ノ岩の顔面を平手で殴った。
 4 貴ノ岩がそこで謝罪していればよかったのに、それどころか睨み返してきたため、さらにカラオケのリモコンなどで殴った。
・危機管理員会なるものが、中立的な立場ではなく、明らかに「加害者寄り」であることがはっきりとわかる。 そもそも、被害者の貴ノ岩から事情を聞くことができていないのに、加害者側からの一方的な言い分だけを聞いて、「中間発表」を出したところにも、その性格が如実に現れている。 貴乃花親方が貴ノ岩の聴取を拒否しているから、貴ノ岩の事情聴取ができなかったということは事実であっても、肝心の被害者から事情を聞けていないのであれば、この時点でこれを出すことは拙速である。
・そして、その内容自体についても、論評をするのも嫌になるほどのあまりの酷さである。まるで、日馬富士が主人公の安っぽいメロドラマである。 日馬富士は確かに人望もあり、人情家だったに違いない。しかし、そんな修飾語はいらない。事実をきちんと客観的に書くべきだ。日頃から面倒を見ていたとか、庇っていたとかという誘導的なストーリーにはうんざりするほかない。
・また、それとは対照的に、貴ノ岩を一貫して「悪者」として描き、「謝罪をしていればこんなことにはならなかった」と、あたかも彼一人にすべての責任を負わせるかのような態度は、卑劣としか言いようがない。 前回の記事(「日馬富士事件」大相撲からいまだに暴力沙汰が消えないワケ)で述べたように、この世に無抵抗の人間を殴ってよい理由など1つもない。百歩譲って、日馬富士がどれだけ善人でも、貴ノ岩がどれだけ悪人でも、それは同じことだ。
・聞くところによると、危機管理員会の委員長は、元高検検事長だという。検察官が正義の味方とは思わないが、あまりのポンコツさに呆れるばかりである。 『レインメイカー』という映画で、マット・デイモン扮する青くさい正義感溢れる弁護士が、老練な悪徳弁護士に「あなたはいつから堕落したのですか」と怒りに満ちたまっすぐな問いを発する場面がある。危機管理員会の中間発表は、そんなシーンを思い出させる茶番劇だった。
▽理事会という伏魔殿
・そして、極めつけが、中間発表と同日に開催された相撲協会の理事会でのやり取りである。理事会は、貴乃花親方が久しぶりに公の場所に姿を見せ、八角理事長や伊勢ケ浜親方と顔を合わせるとあって、大きな注目を集めた。 理事会では、聴取に協力しない貴乃花親方に対して、複数の理事が詰め寄り、翻意するよう説得したという。まさに、多勢に無勢の有様である。
・マスコミ報道も、貴乃花親方の「頑固さ」ばかりをクローズアップしているが、この風景もなんとも異様である。貴乃花親方は、被害者側であって、被害者を守る立場である。 彼は、繰り返し「この一件は、もはや関取同士の内輪もめという範疇を超えているから、警察に届けを出し、その捜査を優先する」と主張しているだけなのに、そのどこがおかしいのだろうか。
・それに、これまで述べてきたように、明らかに「加害者寄り」の相撲協会を信用して事情聴取に応じろと言われて、「はいそうですか」と言えるはずがない。 理事会では、冬巡業から巡業部長である貴乃花親方を外すことが決定されたという。これは、親方への「処分」ではないことが強調されていたが、寄ってたかっていじめをしているように見えてしまう。
・また、それで恐れるのが、今後の貴ノ岩への風当たりである。これまで相撲協会が描いてきたのは、「悪者の貴ノ岩のせいで、後輩思いの熱血漢、日馬富士が引退に追いやられた」というストーリーである。 だとすると、貴ノ岩はこの後、相撲の世界に居づらくなって、居場所がなくなってしまうのではないか、まさにいじめのようなことが起こってしまうのではないかと危惧してしまう。
▽加害者と被害者が逆転する
・この国では、弱い者が声を上げたり、虐げられた者が自分の権利を主張したりすると、煙たがられ、悪者扱いされることがよく起こる。 あるスポーツ新聞では、貴乃花親方を吉良上野介になぞらえていた。だとすると日馬富士やその取り巻き連中は、日本を代表する悲劇のヒーロー、赤穂浪士だと言いたいのだろうか。そして、その記事は、赤穂浪士は切腹、吉良は無罪放免だったことを取り上げ、「『喧嘩両成敗』の知恵に学びたい」と結ぶ。
・貴乃花親方を「稀代の悪人」イメージの代表格である吉良上野介になぞらえ、喧嘩両成敗にすべきということは、つまり日馬富士は「切腹」したのだから、貴乃花親方も無罪放免にはせず、彼も罰するべきだと言いたいのだろうか。 季節はもう12月。まさに忠臣蔵の季節である。あの時代には、忠君という道徳が最高の美徳であり、主君のために仇を切りつけた赤穂浪士はヒーローになった。しかし、妙なアナクロニズムを持ち出して、話を捻じ曲げないでほしい。
・相撲協会や横綱に媚びへつらう道徳などいらないし、被害者と加害者を逆転させるような馬鹿げたことは、厳に慎むべきである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53691

第一の記事の 『マラソンを軽視する駅伝大国ニッポン』、ついては、このブログの3月28日に取上げたが、こんなことでは日本のマラソンの復活は期待薄だ。『瀬古リーダーは、26日の全国大会のために女子選手をマラソンに出さない実業団の監督にこそ文句を言うべきだ』、との指摘はその通りだ。
第二の記事で、危機管理員会の「中間発表」について、『肝心の被害者から事情を聞けていないのであれば、この時点でこれを出すことは拙速である』、というのは同意できる。ただ、被害者と加害者を加害に至る事情を度外視して、加害者だけを悪者扱いするのは、違和感を感じる。また、『貴乃花親方は、被害者側であって、被害者を守る立場である。 彼は、繰り返し「この一件は、もはや関取同士の内輪もめという範疇を超えているから、警察に届けを出し、その捜査を優先する」と主張しているだけなのに、そのどこがおかしいのだろうか』、『明らかに「加害者寄り」の相撲協会を信用して事情聴取に応じろと言われて、「はいそうですか」と言えるはずがない』、などと貴乃花親方を庇っているが、警察の捜査優先はいいとしても、協会の事情聴取に一切応じないというのも、極めて不自然だ。本件では、2通の診断書といい、不自然で未解明のことが多過ぎる。時間はかかっても、真相を解明してほしいものだ。

タグ:日馬富士 日刊ゲンダイ 現代ビジネス 貴ノ岩 さいたま国際マラソン 日本のスポーツ界 (その4)(マラソンを軽視する駅伝大国ニッポン、貴乃花と日馬富士 被害者が悪者になる「バカげた事件」の不快さ) 「日本勢トップは5位…マラソンを軽視する駅伝大国ニッポン」 日本人のトップは岩出玲亜(22)の5位。2時間31分10秒の記録は、GCキップが得られる2時間29分00秒には遠く及ばなかった 東日本女子駅伝が福島県(福島市) 8月の世界陸上マラソン代表だった清田真央(24)と安藤友香(23)は、4位の静岡代表としてこっちを走っていた 国内の駅伝は 大会が目白押し 五輪や世界選手権の種目でもない駅伝が、五輪代表につながるマラソン大会より重要視され、大いに盛り上がっていることが「理解できない」という外国人は少なくない 瀬古リーダーは、26日の全国大会のために女子選手をマラソンに出さない実業団の監督にこそ文句を言うべきだ 原田 隆之 「貴乃花と日馬富士、被害者が悪者になる「バカげた事件」の不快さ 横綱に媚びる道徳なんていらない!」 日馬富士が引退 自らの暴行で相手に大怪我をさせておきながら、まるで「横綱を辞めさせられた自分のほうが被害者だ」と言いたげな態度が滲み出ており、「相手のことを思う一心だったのに」「相手のほうが悪かった」との言い訳に至っては甚だ聞き苦しい 「横綱としての品位」に傷をつけたから引退ではなく、人に暴力を振るってケガをさせたから引退だということがわかっていない 危機管理員会 「中間発表」 肝心の被害者から事情を聞けていないのであれば、この時点でこれを出すことは拙速である この世に無抵抗の人間を殴ってよい理由など1つもない 理事会では、聴取に協力しない貴乃花親方に対して、複数の理事が詰め寄り、翻意するよう説得したという 貴乃花親方は、被害者側であって、被害者を守る立場である。 彼は、繰り返し「この一件は、もはや関取同士の内輪もめという範疇を超えているから、警察に届けを出し、その捜査を優先する」と主張しているだけなのに、そのどこがおかしいのだろうか 明らかに「加害者寄り」の相撲協会を信用して事情聴取に応じろと言われて、「はいそうですか」と言えるはずがない
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感
前の10件 | -