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エプスタイン事件(その1)(エプスタイン怪死事件とマックスウェルの亡霊、MITメディアラボのスキャンダルが「テック産業全体」への不信感に繋がる理由) [世界情勢]

今日は、米国で大問題になっており、日本人スタープレーヤーにも影響も与えているエプスタイン事件(その1)(エプスタイン怪死事件とマックスウェルの亡霊、MITメディアラボのスキャンダルが「テック産業全体」への不信感に繋がる理由)を取上げよう。

先ずは、在米作家の冷泉彰彦氏が8月17日付けでメールマガジンJMMに投稿した「エプスタイン怪死事件とマックスウェルの亡霊」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・『大統領選挙は「前年の夏」を迎え、本来であればトランプへのチャレンジャーを選ぶ民主党予備選はもっと盛り上がっていてもいはずです。また、連続して発生している乱射事件の報道も、直後はともかく全体として低調です。一方で、中国との通商戦争、そして大統領の連銀への介入などから、米国株は急速に調整が入り実体経済原則(正しくは→減速)の兆候も指摘されていますが、こちらの報道も経済紙やビジネス局が中心となっています。 その代わりと言っては何ですが、この2019年の夏、アメリカでは一つの事件が大きく報道される中で、意外な展開を遂げています。ヘッジファンドを主宰し、巨万の富を築いた億万長者であると同時に、未成年の女性の多くを人身売買や性的虐待の対象とした容疑で逮捕・起訴されたジェフリー・エプスタインの事件に他なりません。 この事件ですが、7月6日にニュージャージーのテターボロ空港に自家用機で着陸したところで、エプスタインが逮捕されたことで、一気に報道が拡大しました。その後一旦は鎮静化していたのですが、8月10日の早朝に、拘置所で死亡しているのが発見されると、改めて大きな騒動となっています。 このエプスタインの事件が話題となった理由としては、容疑そのものが極めて悪質だったことがまずあります。金の力で女性を食い物にしたという話は古今東西に色々とあるわけですが、ここまで大規模なものは珍しいと思います。 カリブ海のUSバージン諸島の一部である、リトル・セント・ジェームス島という島を1998年に買って別荘とした上で、この島を舞台に多くの少女を「人身売買で連行」してきて、虐待の対象としたというだけで、まるで小説や映画のような話です。 更に、話題となっているのが、エプスタインの交友関係の中にビル・クリントンや、その側近であったジョージ・スファノポロス、また英国王室のアンドリュー王子、そして外でもないドナルド・トランプ夫妻の名前があることです。ですから、全貌が明るみに出たとしたら、大きな政治スキャンダルに発展する可能性があるわけです。 これに加えて、エプスタインが死亡したことで、現在この事件の中心人物として、追及を受けつつある一人の女性の問題があります。この女性ですが、20世紀末の欧米で「メディア王」として著名であった故ロバート・マックスウェルの遺児であるギスレーヌ・マックスウェル女史(現在57歳)です』、超弩級のスキャンダルで、確かに「大きな政治スキャンダルに発展する可能性がある」ようだ。
・『このギスレーヌ・マックスウェルですが、ある時期にエプスタインの愛人であったとされています。その一方で、エプスタインは少女性愛の病癖があるので、ギスレーヌは、その幇助をしていた容疑があります。つまり交際相手のエプスタインのために、少女を「調達」していたという疑惑です。 現時点では、ギスレーヌに対する逮捕状は請求されていませんが、彼女に対する民事訴訟が提起される中、メディアは彼女の行方を必死になって追っています。数日前には、カリフォルニアのファーストフード店に現れたとして、『ニューヨーク・ポスト』というタブロイド紙がその写真をスクープして話題になりました。 しかし、他でもない『ニューヨーク・ポスト』が、ロバート・マックスウェルの遺児をスキャンダルで追跡しているというのは、何という因縁でしょう。『ニューヨーク・ポスト』というのは、FOXグループの総帥であるルパート・マードックが1970年代から保有していますが、このマードックこそ、マックスウェルとのメディア戦争を戦った仇敵であったからです。 ちなみに、ロバート・マックスウェルは、その最晩年である90年代初頭に、同紙のライバル紙である『ニューヨーク・デイリー・ニュース』の経営権を保有していたこともあるわけで、何とも言えない巡り合わせを感じます』、「マードックこそ、マックスウェルとのメディア戦争を戦った仇敵であった」、とは確かに「何とも言えない巡り合わせ」までおまけがつくとはまさに超弩級のスキャンダルに恥じない内容だ。
・『この事件ですが、大きく分けて3つの謎を秘めていると思います。 1点目は、外でもないエプスタインの「怪死」という問題です。そもそも、エプスタインの「身柄」に関しては、不自然なことだらけでした。まず、7月6日にどうしてアメリカに入国したのかという疑問があります。報道によればパリから自家用ジェットで戻ってきたところを捕まったのだというのですが、アメリカに入国すれば逮捕される危険がある中で、どうして堂々と戻ってきたのでしょうか? どうしてもアメリカに来て「しなくてはならないこと」があったとして、それは何だったのでしょう? 全くもって小説のような話ですが、もしかしたら何らかの証拠となる文書なりを自分の手で隠滅する必要があったとか、あるいはアメリカ国内に潜伏している何者かと、直接会って会話する必要があったなどの理由が考えられますが、謎のままです。 ところで、逮捕後のエプスタインについては、様々な動きがありました。中でも大きな話題になったのは弁護人からの保釈請求でした。弁護人側は、6千万ドル(約630億円)の保釈金を積んで、エプスタインの身柄を未決囚用の拘置所からマンハッタンの自宅での軟禁に移そうと請求しました。その交渉の過程では、「検察はパスポート、現金、貴金属を押収する」という条件で保釈が認められそうだとか、いやダメだというようなニュースが連日報道されていたのです。 これに対しては、「拘置所から出したら『消される』のでは?」といった説がネットでは飛び交っていました。この保釈請求という問題も、全くの謎です。必死の思いでアメリカに入国した以上は、自宅コンドミニアムにある「証拠隠滅」あるいは、何者かとの面会にこだわったのか、あるいは、弁護人の方が刺客を用意していてエプスタインを「消す」ために保釈を狙ったのか、これも謎のままです。 結果的に、保釈は認められませんでしたが、そのエプスタインは8月10日(土)の早朝6時30分ごろに、拘置所の房内で死亡しているのが発見されました。首には絞めた跡があり、警察は明らかに自殺であると発表しています。 このニュースを受けて、メディアは騒然となりました。警察は「明らかな自殺」としていますが、疑わしい点が数多くあるからです。まず、エプスタインは、一旦、7月27日に自殺未遂を起こしており、直後に24時間のスーサイド・ウォッチ(自殺防止の監視)の対象となっています。ですが、なぜか2日後の29日にはその監視が外されています。これは拘置所の規則違反だそうです。 そのほかにも、2人の房であったのに、同室の被疑者が他に移されて結局は独房状態だったそうで、これも規則違反でした。また、死亡の直前には弁護人が「エプスタインは落ち着いているので、監視の厳しい房から通常の房に出してくれ」という申し立てをして、それが認められたそうです。そこで房を移動したその晩に自殺したというのです。また規定にあった「30分間隔での監視」もされておらず、7時間にわたって監視が外れていたのだそうです。これも規則違反ですが、一連の違反については「人手不足のため」という説明がされています。 極め付けは、検死結果です。エプスタイン側の人間が、遺体を運び出して第三者による検死を行ったところ、通常の縊死ではあり得ないような形で、首の骨が折れていたというのです。仮にそうであれば、他殺説が浮上しそうで大変なのですが、今のところ、この疑惑については多くの疑惑の一つという扱いで、それほど決定的なインパクトは持っていません。そのこと自体が不自然でもあるのですが、この事件の全体が謎であり、闇であることを示しているのかもしれません』、警察が「「一連の違反については「人手不足のため」という説明」、というのはいかにも不自然、自殺との「検死結果」にも疑惑が出るなど、突っ込みどころ満載のようだ。
・『ところで、本稿のこの部分を書いている正にその時点で、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトからプッシュで送られてきた情報によれば、警察の公式的な検死結果としては、自殺であることは間違いないという結果が出たそうです。 ちなみに、著名人で、事件への関与も噂されている人物がこの「他殺説」を吹聴しているのですから困ったものです。それは、合衆国大統領であるトランプ自身であり、「下手人はビルとヒラリー」だという陰謀説を、何の根拠なくツイートで拡散しているのです。要するに、クリントン夫妻は、過去に多くの悪事を働いてきたと批判するパフォーマンスの延長ですが、全くもって困ったものです』、トランプ大統領が「下手人はビルとヒラリー」だという陰謀説を、何の根拠なくツイートで拡散している」、というのもおどろくべきことだ。
・『2番目の問題は、そのトランプとエプスタインの「接点」です。 両者の「接点」を具体的に示唆した問題としては、アコスタ問題があります。今から12年前の2007年、エプスタインは、未成年者への性的虐待で起訴されそうになったのですが、フロリダの連邦検事と「秘密の司法取引」を行って、罪を免れたことがありました。その当時の検察官の一人を、こともあろうにトランプは自分の政権下で労働長官に任命していたのです。 それは、アレキサンダー・アコスタという人物です。こんなことをやっていると、本来であれば重罪になるはずのエプスタインを「不起訴にした」ことへの見返りとして閣僚にしたような印象を与えるわけです。この問題については、報道とともに大騒ぎとなり、結局、アコスタは大臣から罷免されました。 更に取り沙汰されているのは、エプスタインがトランプの持っている有名な、フロリダのマー・ア・ラゴを性的虐待の舞台にしていたという疑惑です。両者は、1990年前後から極めて親密で、マー・ア・ラゴを舞台として、多くの美女を集めたパーティーを繰り返していたそうです。 一部には、そもそも奥さんのいるトランプに、メラニアを紹介したのはエプスタインだという噂もあるぐらいです。中でも話題になっているものとしては、レイプ疑惑の問題があります。2016年の大統領選の最中に、匿名の女性が名乗り出て、「自分は13歳の時に、エプスタインのパーティーで、トランプにレイプされた」として、損害賠償請求の民事訴訟を提起したという事件です。ただ、この事件は原告が匿名を貫いたこともあり、信憑性が疑われる中で、トランプ支持者からは「根拠なき誹謗中傷」という抗議が出ました。そんな中で、メディアもこの事件を一旦は敬遠していたという経緯があります』、トランプも叩けばいくらでもホコリが出てくるようだ。
・『3番目の問題は、最初に少しご紹介したギスレーヌ・マックスウェルという女性の位置付けです。エプスタインが死亡した現在、彼女が事件の核心を知る人物として、当局も、またメディアも重大な関心を寄せています。 このギスレーヌ・マックスウェルですが、どうやらエプスタインの交際相手であったのは間違いないようです。但し、エプスタインは少女性愛の病癖があるので、ギスレーヌは、愛する男性のためにその幇助をしていた共犯という可能性が指摘されています。さて、このギスレーヌのことを語るには、やはり父親であるロバート・マックスウェルに触れないわけにはいきません。マックスウェルというのは、ルパート・マードックのライバルとして、英国のデイリー・ミラー、そして当時は米国最大の出版社であったマクミラン社などを手中に収めてメディアの企業帝国を築いていた存在でした。 そのマックスウェルとマードックの確執については、英国の政治家で作家のジェフリー・アーチャーが "The Fourth Estate(1996年、邦題は『メディア買収の野望』)でフィクション化していますので、当時は世界的に大変に有名なライバル同士でした。 また、マックスウェルは、ユダヤ系の実業家としても有名で、一部には秘密組織モサドの工作員だったという説もあります。そのマックスウェルは、1991年11月に地中海で事故死したとされています。その葬儀は、イスラエルのオリーブ山で行われたそうですが、参列した財界人から直接聞いた話では、大変に盛大なものであったそうです。 このマックスウェルの死については、モサドに殺されたなどの噂が多数ありますが、結局のところ彼の死後に明らかとなったのは、裏金を含めた資金繰りが行き詰まっていたということです。ですから、金策尽きて自殺したという考え方が一番自然ではあるのですが、公式的には事故死ということになっています。 ところが、今回の事件などを通して明らかとなってきたのは、その晩年のマックスウェルが、個人的な金融アドバイザーとしてエプスタインを雇っていたという事実です。またその際に父親とエプスタインの連絡係をやっていたのが、ギスレーヌだという説もあります。 そこで一つの疑問が浮かび上がってきます。1991年にロバート・マックスウェルが急死すると同時に、彼が一代で築いたメディア帝国はガラガラと崩壊していきました。グループ全体の本当の財務状況は、マックスウェルだけが把握する中で、総帥の死は綱渡り的な資金繰りを滞らせ、グループの崩壊を招いたのですが、その崩壊は同時にグループの経営の違法性を暴露したのでした。 つまり企業年金資産を抵当に入れて資金調達をするとか、子会社を上場させて調達した資金を非上場の親会社に流したりといった違法行為によって、この企業グループの資金繰りが成立していた、その違法性が明らかになったのです。 マックスウェル帝国が総帥の死によって崩壊したのちに、家業に参画していたその子達、つまりギスレーヌの兄たちは負債を相続したと同時に、違法な企業経営に参画した責任を問われて破滅していったのでした。多くの場合、民事上も、そして刑事上も責任を問われていったのです。 疑問というのは、多くの兄たちが破滅していった一方で、どうして末子のギスレーヌが「経済的にも社会的にも生き残ったのか?」という問題です。同時に、このマックスウェル帝国の崩壊に当たって、マクスウェルの相談相手であったエプスタインが、むしろ財を成している可能性があるという点です。 何しろ、マックスウェルの残したのは、最低でも4億ポンド(530億円?)という巨額の負債と、主として英国と米国を舞台にした刑事訴追というマイナスでした。 そこから、エプスタインとギスレーヌがどうして逃げおおせたのか、どうしてもその点に疑問を感じざるを得ないのです』、これだけ多くの疑惑が山積しているのであれば、当面、アメリカのメディアは大忙しだろう。
・『いずれにしても、エプスタインの死の真相、そしてトランプとの関係、更にはエプスタインとマックスウェル家、特に亡くなった総帥ロバートと、残されたギスレーヌとの関係と、謎が謎を呼ぶストーリーであることは間違いありません。そこには、セクシャリティの異常性という問題、あるいは政治やスパイ組織の陰謀という可能性も含まれており、そうした要素を完全に排除することはできません。 ですが、この一連の問題を整理するには、やはり「カネ」という観点を軸に考えるのが一番の近道である、そのようにも思うのです。つまり、1991年のロバート・マックスウェルの死も、その28年後、2019年のジェフリー・エプスタインの死も、同じように資金繰りに窮する中での自滅であったという可能性です。 その上で、ギスレーヌがエプスタインに接近したのは、男女の関係という要素もあったかもしれませんが、それ以上に亡くなった父の財産を、少なくとも母であるマックスウェル夫人と自分の手元にはある程度残しておきたい、そのためにエプスタインの協力が必要だったという可能性はあります。もしかしたら、マックスウェル帝国の破滅に巻き込まれないためには、エプスタインの方もギスレーヌを必要としていたのかもしれません。 トランプとエプスタインとの関係も、同じように「女性を集めて支配するのが好き」という悪癖で仲間になったのかもしれませんが、それ以上に、破産法を駆使して事業を整理しながら私財はチャッカリ確保してきたトランプにとって、エプスタインの才覚と組む理由はあったのかもしれません。 そう考えると、やはりこのエプスタインとトランプというのは、最近はともかく相当に抜き差しならない関係であり、エプスタインの事件の捜査が続く限り、トランプは恐らく気が休まることはないのではないでしょうか。決定的な証拠が出て来る可能性は薄くても、2020年の選挙へ向けて、中間層におけるトランプの印象にはダメージになる可能性はあると思われるからです』、「エプスタインとトランプというのは、最近はともかく相当に抜き差しならない関係であり、エプスタインの事件の捜査が続く限り、トランプは恐らく気が休まることはないのではないでしょうか」、トランプのコア支持層である「忘れられた白人層」への影響は余りないだろうが、その他の支持層へは影響しそうだ。
・『ちなみに、捜査の現状としては、やはりエプスタインによる、多くの当時未成年であった女性たちへの虐待についての事実確認ということが中心です。当局も、メディアも、当面は、そうした捜査の状況を追いながら、最終的にはエプスタインとギスレーヌがあらゆる手段を使って保全した父ロバート・マックスウェルの遺産が、エプスタインから虐待を受けた被害者救済に使われることを目指している、現在進んでいるのは事実上そのような方向性であると考えられます。 いずれにしても、この事件、主役は死んだとはいえ、全くの現在進行形であり、今後の展開が注目されます』、劇場型のトランプ政治に、飛んでもない1幕が加わったものだ。「今後の展開」が楽しみだ。

次に、マイナースタジオ代表取締役CEOの石田 健氏が9月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「MITメディアラボのスキャンダルが「テック産業全体」への不信感に繋がる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/214469
・『MITメディアラボの所長を務めていた伊藤穣一氏が9月7日に辞表を提出した。「Joi」の愛称で知られ、日本とアメリカのテクノロジー・コミュニティーから尊敬を集めていた同氏の去就は、日本国内でも話題を集めている。 この辞任の引き金となったのは、アメリカの実業家として知られるジェフリー・エプスタイン被告の獄中自殺を発端とした報道だ。エプスタイン被告は多数の少女を性的虐待したことで起訴された後、不審とも言える自殺を遂げた。その後、被告からメディアラボが寄付を受けていたことが明らかになり、複数の研究者が抗議辞任。先月15日、伊藤氏は自身の個人ファンドも被告から出資を受けていたことを明らかにした上で謝罪文を公開した』、伊藤穣一氏はNHK番組にもよく登場し、参考になる意見を述べていたので、尊敬していたが、このような結果になり残念だ。
・『The New Yorkerのスクープで事件が急変  謝罪文を公開した時点では伊藤氏が「飛び火」を受けたかのような印象だったが、今月6日にThe New Yorkerが新たな記事をスクープしたことで事態は急変する。 それによれば、エプスタイン被告はMITの寄付者データベースに「不適格」と示されていたものの、メディアラボ側はそれを知りながら寄付を受け取っていた。しかも、リークされたメールでは、伊藤氏がスタッフに対して被告に関係した資金を匿名処理するよう指示しており、メディアラボにおいて被告が「ヴォルデモート」(小説『ハリー・ポッター』シリーズ)に登場する“名前を言ってはならない人”)と呼ばれていたことも明かされた。また被告に関係した資金は当初80万ドルとされていたが、750万ドルにのぼることも示唆されている。 一連の報道は、伊藤氏が違法行為に手を染めていたわけではないものの、明らかに倫理的逸脱があり、当初の謝罪にも虚偽が含まれていることを示した。たとえば朝日新聞は今回の辞任を「混乱を収束させる狙い」と記事で述べるなど、日本の主要メディアでは未だに伊藤氏が飛び火を受けたかのような論調で報じているが、事件のインパクトと経緯を考えれば、より踏み込んだ理解が必要になる』、確かに「伊藤氏が飛び火を受けたかのような論調」、というのは通用しないようだ。
・『起業家、投資家としての手腕も買われた伊藤氏  伊藤穣一氏は、日本のテック産業で広く知られる存在である。TwitterやFlickrなど名だたるネットサービスの投資家として知られ、日本でも東証一部に上場するデジタルガレージの共同創業者を務めるほか、ソニーやカルチュア・コンビニエンス・クラブなど名だたる大企業で取締役などを務めた。 最近では、NHK教育テレビ「スーパープレゼンテーション」でナビゲーターを務めたことで世間一般での知名度も高まっていた。2011年、伊藤氏がメディアラボ所長へと就任した際は、学位を取得していない人物の選任という「異例」の人事が注目を集めたが、彼の実績を考えても適任だという声が出てくるほど、業界内では知名度のある存在であった』、「学位を取得していない人物の選任という「異例」の人事が注目」、よほど他の能力が優れていたのだろう。
・『「#MeToo」ムーブメントに連なる事件の重大性  事件の重大性は、たんに伊藤氏が有名人だからという点ではない。そこには3つの重要なポイントが指摘できる。 まず、この事件が2017年から続く「#MeToo」ムーブメントの延長線上の出来事として理解される点だ。今回、The New Yorkerで記事を執筆したのが、ローナン・ファロー氏。同氏は、MeTooムーブメントのきっかけとなったハーヴェイ・ワインスタイン被告によるセクハラの調査報道記事を執筆したことで知られる。 驚くべきことに、ファロー氏は女優ミア・ファロー氏と映画監督ウディ・アレン氏の実子であり、最近ではミア・ファロー氏が「(アレン氏の子どもではなく)フランク・シナトラの息子かもしれない」と明かしたことで話題を集めた。セレブリティの息子でありながらジャーナリストとして申し分のない実績を上げている同氏が、この問題を1つの研究機関の醜聞としてではなく、アメリカ社会を揺るがすムーブメントのなかに位置づけていることは想像に難くない。 当初メディアラボに批判が集まった際、業界の著名人らが伊藤氏を擁護するサイトを立ち上げたが、メディアラボの院生アルワ・ムボヤ氏は「なぜエプスタインによって傷つけられていた少女に心を傷めなかった人が、伊藤が職に留まることを気にかけるのでしょうか?」と批判した。おそらく伊藤氏を擁護した人々は、この問題が#MeTooムーブメントに連なる重大な局面にあるという認識はなかっただろう』、なるほど。
・『NYTは最も酷「い真実を印刷しなかった」  もう1つは、本件がThe New Yorkerで報じられる前に、The New York Times(NYT)に持ち込まれていたものの、根幹部分が報道されなかったという疑惑だ。これは、ジャーナリストのジーニ・ジャーディン氏が指摘しており、内部告発者がすべてを話したにもかかわらず「最も酷い真実を印刷しなかった」と述べている。 ジャーディン氏の指摘にNYTから応答はないものの、重要な事実は伊藤穰一氏がNYTのボードメンバーであった(すでに辞任)点だ。言うまでもなく、NYTには本件に対する説明責任が求められる。 そして最後に、メディアラボ自体の問題がある。日本でも知名度の高いメディアラボだが、今回の事件を受けて批判的な声も出始めている。メディアラボの研究成果について疑義を投げかけるBusiness Insiderやテクノエリートの欺瞞(ぎまん)を指摘するGuardian、メディアラボを「疑似科学の学術機関」とすら述べるFortuneのような声は、近年の巨大テック企業への不信感と相まってますます増えていくだろう。 メディアラボに限らず、誇大宣伝された研究や理想主義的な美辞麗句によって内実が覆い隠されたプロジェクトを検証する動きは、今後強まっていくかもしれない。 またメディアラボの行く末自体も不透明だ。人身売買の被害者が、エプスタイン被告が所有する島において人工知能の大家マーヴィン・ミンスキー氏(2016年死去)と性行為をさせられたという告発がすでに報道されている。ミンスキー氏はメディアラボの共同創設者であり、研究機関のスタート時点から問題を抱えていたことが明らかになれば、その存続に影響が出てくる可能性もある』、「メディアラボの研究成果について疑義」が出てきたとは大変なことだ。
・『テック産業全体の不信感につながる可能性  今後、事件が起きた背景も解明されていくはずだが、伊藤氏がメディアラボの資金調達を期待されていたという点は見逃せない。 所長就任に際してNYTは、伊藤氏がメディアラボの資金調達を推進する役割があることを報じていた。メディアラボの創設者ニコラス・ネグロポンテ氏によれば、政府や大企業のスポンサーから得ているメディアラボの運営費用は過去10年間で減少しており、伊藤氏は他候補よりも資金調達を推進するリーダーシップが際立っており、その点が評価されたことを明言している。 「自戒:クソ野郎から投資話や金を受け入れてはならない」と自らTwitterで表明していた伊藤氏にとって、資金調達を重視するあまりの倫理的逸脱が本件を招いたのか、あるいはエプスタイン被告の愚行を軽視していたのかは、まだ明らかではない。しかし伊藤氏が被告の行為を「知らなかった」と述べているが、2008年にはエプスタイン被告の罪は明らかになっていた。自宅に足を運ぶ間柄でありながら、被告の罪を知らなかったことに疑念の声もあがっており、MITの調査によって踏み込んだ事実も明らかになっていくだろう。 テック産業と不透明な資金の関係性は、今回だけの問題ではない。 サウジアラビアのジャーナリストが暗殺された事件にムハンマド・ビン・サルマン皇太子が関与していた可能性を受けて、サウジアラビア政府から出資を受けているソフトバンクにも批判が集まっている。完全に透明性を持った資金を探してくることは容易ではないが、MITやソフトバンクのような業界のリーダーたちが不透明な資金を受け入れていたことは、産業全体への不信感に繋がっていくことだろう。 テック産業がアメリカ西海岸のユートピアを体現するカウンターカルチャーであった時代はすでに終焉した。いまやそれは、プライバシーや倫理的観点から強い疑義を向けられる巨大産業であり、その資金源に注目が集まるのは至極当然のことである。産業で最もよく知られた研究機関の1つが直面したスキャンダルは、当初の印象よりも広い範囲に影響を及ぼすかもしれない』、広く「テック産業」にも「当初の印象よりも広い範囲に影響を及ぼすかもしれない」、というのは重大なことだ。今日は、長くなったので、明日はエプスタイン事件とMITメディアラボの関係を、さらに掘り下げてみたい。
タグ:石田 健 冷泉彰彦 ダイヤモンド・オンライン メールマガジンJMM エプスタイン事件 (その1)(エプスタイン怪死事件とマックスウェルの亡霊、MITメディアラボのスキャンダルが「テック産業全体」への不信感に繋がる理由) 「エプスタイン怪死事件とマックスウェルの亡霊」from911/USAレポート」 拘置所で死亡 リトル・セント・ジェームス島 、この島を舞台に多くの少女を「人身売買で連行」してきて、虐待の対象としたというだけで、まるで小説や映画のような話 エプスタインの交友関係の中にビル・クリントンや、その側近であったジョージ・スファノポロス、また英国王室のアンドリュー王子、そして外でもないドナルド・トランプ夫妻の名前がある 大きな政治スキャンダルに発展する可能性 ロバート・マックスウェルの遺児であるギスレーヌ・マックスウェル女史 エプスタインは少女性愛の病癖があるので、ギスレーヌは、その幇助をしていた容疑 マードックこそ、マックスウェルとのメディア戦争を戦った仇敵 3つの謎 1点目は、外でもないエプスタインの「怪死」という問題 どうしてアメリカに入国したのかという疑問 どうしてもアメリカに来て「しなくてはならないこと」があったとして、それは何だったのでしょう 弁護人からの保釈請求 拘置所の房内で死亡しているのが発見 警察は明らかに自殺であると発表 エプスタインは少女性愛の病癖があるので、ギスレーヌは、その幇助をしていた容疑があります 24時間のスーサイド・ウォッチ(自殺防止の監視)の対象となっています。ですが、なぜか2日後の29日にはその監視が外されています 死亡の直前には弁護人が「エプスタインは落ち着いているので、監視の厳しい房から通常の房に出してくれ」という申し立てをして、それが認められたそうです。そこで房を移動したその晩に自殺したというのです 「30分間隔での監視」もされておらず、7時間にわたって監視が外れていた 一連の違反については「人手不足のため」という説明 エプスタイン側の人間が、遺体を運び出して第三者による検死を行ったところ、通常の縊死ではあり得ないような形で、首の骨が折れていたというのです トランプ自身であり、「下手人はビルとヒラリー」だという陰謀説を、何の根拠なくツイートで拡散 2番目の問題は、そのトランプとエプスタインの「接点」 エプスタインは、未成年者への性的虐待で起訴されそうになったのですが、フロリダの連邦検事と「秘密の司法取引」を行って、罪を免れた その当時の検察官の一人を、こともあろうにトランプは自分の政権下で労働長官に任命 エプスタインを「不起訴にした」ことへの見返りとして閣僚にしたような印象を与える エプスタインがトランプの持っている有名な、フロリダのマー・ア・ラゴを性的虐待の舞台にしていたという疑惑 匿名の女性が名乗り出て、「自分は13歳の時に、エプスタインのパーティーで、トランプにレイプされた」として、損害賠償請求の民事訴訟を提起したという事件です 3番目の問題は、最初に少しご紹介したギスレーヌ・マックスウェルという女性の位置付け エプスタインが死亡した現在、彼女が事件の核心を知る人物として、当局も、またメディアも重大な関心 マックスウェルは、ユダヤ系の実業家としても有名で、一部には秘密組織モサドの工作員だったという説も 晩年のマックスウェルが、個人的な金融アドバイザーとしてエプスタインを雇っていた 一連の問題を整理するには、やはり「カネ」という観点を軸に考えるのが一番の近道 トランプとエプスタインとの関係も、同じように「女性を集めて支配するのが好き」という悪癖で仲間になったのかもしれませんが、それ以上に、破産法を駆使して事業を整理しながら私財はチャッカリ確保してきたトランプにとって、エプスタインの才覚と組む理由はあったのかもしれません 「MITメディアラボのスキャンダルが「テック産業全体」への不信感に繋がる理由」 伊藤穣一氏が9月7日に辞表 被告からメディアラボが寄付を受けていたことが明らかになり 伊藤氏は自身の個人ファンドも被告から出資を受けていたことを明らかにした上で謝罪文を公開 The New Yorkerのスクープで事件が急変 エプスタイン被告はMITの寄付者データベースに「不適格」と示されていた メディアラボ側はそれを知りながら寄付を受け取っていた。しかも、リークされたメールでは、伊藤氏がスタッフに対して被告に関係した資金を匿名処理するよう指示しており、メディアラボにおいて被告が「ヴォルデモート」(小説『ハリー・ポッター』シリーズ)に登場する“名前を言ってはならない人”)と呼ばれていた 被告に関係した資金は当初80万ドルとされていたが、750万ドルにのぼる 起業家、投資家としての手腕も買われた伊藤氏 学位を取得していない人物の選任という「異例」の人事が注目 「#MeToo」ムーブメントに連なる事件の重大性 NYTは最も酷「い真実を印刷しなかった」 テック産業全体の不信感につながる可能性 テック産業がアメリカ西海岸のユートピアを体現するカウンターカルチャーであった時代はすでに終焉した。いまやそれは、プライバシーや倫理的観点から強い疑義を向けられる巨大産業であり、その資金源に注目が集まるのは至極当然
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アスクルVSヤフー(窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?) [企業経営]

今日は、アスクルVSヤフー(窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?)を取上げよう。

先ずは、ジャーナリストの大西 康之氏が7月24日付けJBPressに掲載した「窮地のアスクル、ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57106
・『8月2日の株主総会直前にIFRS(国際財務報告基準)で連結子会社アスクルの岩田彰一郎社長に退任要求を突きつけたヤフーに対し、ガバナンスの権威が一斉に異論を唱え始めた』、総会はヤフー勝利となったが、問題を改めてみてみよう。
・『「大株主なら何をやってもいいわけじゃない」  7月23日には元パナソニック副社長の戸田一雄氏らアスクルの独立取締役が、独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士とともに記者会見し「大株主なら何をやってもいいということではないはず」(戸田)と訴えた。同日には日本の商法の大家、上村達男早稲田大学名誉教授も「退任要求は提携違反」とする法律意見書を出した。 23日、都内で開いたアスクル独立委員会の記者会見には戸田氏のほか、アスクルの社外監査役の安本隆晴氏、弁護士の松山遥氏も参加した。 戸田氏は記者会見の冒頭で「(アスクルの個人向けネットショッピング事業)『ロハコを売れないか』と言ってきて『売れない』と答えたら『社長を辞めろ』。これでは支配株主の立場で圧力をかけているとしか思えない。1週間後には(株主総会で大株主のヤフーが岩田社長の取締役選任案に反対して)そうなってしまう。本当に悩んでいる」と苦しい胸の内を明かした。 7月18日に岩田氏が記者会見で「ロハコ事業の譲渡を要求された」と語ったことに対し、ヤフーが「事業を譲渡する意向があるかどうか打診しただけ」とのコメントを発表したことについては、「実際には、事細かな条件を提示して譲渡を求めてきている」と反論した。 その上で独立役員会の意見として、 (1)岩田社長退任の是非については、指名報酬委員会で議論・決議した後の交代は現場を混乱させ、企業価値にマイナスになる (2)ロハコ事業の譲渡については、2018年12月にロハコ事業の再構築プランを発表したばかりであり、その効果を検証してから検討すべき (3)(ヤフーが今後もアスクルにロハコ事業譲渡を求めるなら)支配株主であるヤフーとの利益相反取引であることを十分に理解し、対等な立場で交渉することが求められる の3つを公表した。 コーポレートガバナンスの権威として知られる久保利弁護士は、「株式の過半を握っていれば何でもできる、というわけではない。世界でも稀な日本の親子上場(親会社と子会社がともに上場企業であるケース)は非常に大きな問題を抱えている」と語った』、「上村達男早稲田大学名誉教授」や「独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士」の主張は説得力がある。
・『「ヤフーに最低限のモラルがあると過信していた」  記者会見での質疑応答は以下の通り(Qは聞き手の質問)。 Q:今回のアスクルとヤフーの一件で一番の問題は何か。 戸田氏 「自分は一体、何をやってきたのか」ということだ。アスクルの独立取締役、指名委員会の委員長として一生懸命ガバナンスをやってきたのに、土壇場でゴロッと変わってしまう。 久保利氏 ガバナンスは日本の資本市場を機能させる上で大変重要だが、世界でも稀な日本の親子上場、多層上場は果たして合理的なのか。1つの会社の資産を二重三重に勘定する仕組みでもあり、非常に多くの問題を抱えたスタイルだと思う。私はJPX(日本証券取引所)の社外取締役でもあるので、この問題を座視する訳にはいかない。 松山氏 支配株主の義務とは何かという問題だ。(業績不振などの場合)株主には取締役を交代させる権利がある。だが今回のように、事前には一声も上げず、株主総会の招集通知案内が印刷の校了を迎える1週間前になって、突然「トップには辞めてもらう。後任は好きに選べ」という姿勢には問題がある。 Q:今回、ヤフーから社長の退任要求があったことで親子上場が問題視されたが、その前に「親子上場には問題がある」とは考えなかったのか。 戸田氏 正直に言うと(支配株主としての権利を乱用しない)最低限のモラルが(ヤフーには)あるものだと過信していた。(取締役会や独立委員会などで)親子上場の問題点については何度か議論をしたこともあるが、性善説にぶら下がりすぎたと反省している。 Q:株主総会でヤフーから派遣されているアスクル取締役2名を候補者から外す考えはないか。 戸田氏 一昨年まで、ヤフーとアスクルは非常にうまくいっていた。イコール・パートナーシップの一番いい例ではないかと思えたほどだ。ヤフーから派遣されている二人の取締役も非常によくやってくれていて、感謝の気持ちがあった。それがこんなことになるとは、という思いだ。 安本氏 アスクルの生みの親であるプラスの今泉公二社長が、岩田氏の取締役選任を否決すると聞いた時には、非常にがっかりした。もう少し長い目で見て欲しかった』、「親子上場」の問題点が、改めてクローズアップされたことは確かなようだ。「生みの親であるプラス」がヤフー側についた理由を知りたいところだ。

次に、8月24日付けダイヤモンド・オンライン「アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは吉岡氏の回答)。
https://diamond.jp/articles/-/212710
・『筆頭株主であるヤフーと対立しているオフィス用品大手のアスクル。8月2日の株主総会では、創業社長だった岩田彰一郎氏の再任にヤフーが反対し、吉岡晃COO(最高執行責任者)が社長に昇格した。新社長はヤフーとどう対峙するのか、直撃した。 Q:前社長を解任した筆頭株主のヤフーに、後継社長としてどう向き合っていきますか。 A:ヤフーとの資本提携は解消したい。その考えは、社長が代わっても全く変わることはありません。 こんな形で社長を代えられて、いつまた同じことが起こるか分からないし、経営陣や社員のしこりは消えない。それにヤフーは独立社外取締役まで3人全員解任したので、会社が壊れてしまった。社長が新しくなったからといって次の日から仲良くしましょうということになるはずがない。 Q:ソフトバンクの宮内謙社長は、記者会見で「アスクルは本当に資本提携の解消を求めているのでしょうか」と述べましたが。 A:われわれは本当に解消したい。そのスタンスで間違いありません。ただ、ヤフーとすぐに資本提携を解消しようとすれば、ヤフーが保有するアスクル株の売り渡しを求める権利(売り渡し請求権)を行使することになります。今の段階でそれに踏み切れば、先方は拒否すると思うので、間違いなく法廷闘争になるでしょう。それを望んでいるわけではないので、慎重に事を進めていきます。 Q:ヤフーと話し合いはできそうですか。 A:早速、アスクルの社外取締役でもある小澤隆生・ヤフー専務執行役から協議の提案をいただいたので、話し合いを始めます。最初のテーマは独立社外取締役の選任。資本提携を解消するにも、独立した役員からガバナンスの意見を求めて進めるのが最良の方法ですから。) Q:独立社外取締役はヤフーが決めることになる? A:いいえ。独立社外取締役を全員解任したのはヤフーですが、もともと独立社外取締役には支配的株主をけん制する機能があるので、それをヤフーが選ぶのは絶対に間違っています。すでにわれわれで新たな社外役員のリストアップに入っています。実際に誰にお願いするかは、独立した指名報酬委員会で議論して決めるプロセスを踏みたいと思っています。 Q:ヤフーが解任したので、今のアスクルに指名報酬委員会はありませんが。 A:ですから、臨時にでも指名報酬委員会を設置したい。独立社外取締役は全員解任されましたが、独立した社外の監査役が2人残っているので、その2人を中心に第三者の弁護士を入れて組成することを考えています。 それはアスクル内部の機関なので、そこが新しい独立社外取締役を選定し取締役会に提案する。そして臨時株主総会を早期に開催し、独立役員の承認を受けることになります。ヤフーには、こうしたプロセスで進めることをお話しするつもりです。 Q:本当に資本提携を解消することはできるのでしょうか。 A:ヤフーのプレスリリースによると「ヤフーよりよい相手がいるなら話を聞く意向はある」ということですから、話し合いの糸口はあると思います。これも独立役員の意向を聞きながら進めていくので、臨時株主総会の後に本格化することになるでしょう。 Q:ヤフーが保有する45%のアスクル株の譲り渡し先として、ヤフーよりよい相手がいますか。 A:現在、事業会社や国内外のファンド4社から提案を受けています。そこから複数社を選んでいきます。1社だけを選ぶとまた同じように独立性を脅かされかねないので。 Q:そこは、ヤフーよりも企業価値を高める相手になりますか。 A:まさにそうした視点で、4社の提案を精査しています。ヤフーとの提携は、BtoCのロハコ事業の集客で大きな効果を発揮しましたが、BtoBも含めて考えると、ヤフー以外の方が有効かもしれない。どんな相手とどんなシナジーを生み出せるのか。それを精査して、最終的には、これから選ぶ独立役員の意見を聞いて決めます。) Q:ヤフーの傘下で、ロハコ事業を成長させた方がよいとの見方もあるのではないでしょうか。 A:いいえ。もはやヤフーと一緒にいることがアスクルの企業価値にとってよいという結論にはなりません。ヤフーの連結子会社でいることの最大の問題点は、ヤフーもアスクルもeコマース(電子商取引、EC)をやっていることです。結果、ヤフーのECにとってはよいことでも、それがアスクルにとってはそうではないという利益相反が生まれることがはっきりした。 例えば、ECでアマゾンや楽天を追い抜くという目標を立てているヤフーは、赤字を拡大してでも流通総額をどんどん増やしたいが、われわれは赤字を拡大して規模を大きくしていく戦略を取り得ない。 仮にECを巨大グループの中の一つのコストセンターとして位置付けるなら、赤字を出して流通総額を拡大する戦略は有効かもしれませんが、上場企業であるわれわれが、赤字を出して規模を大きくするなんてあり得ないわけです。 Q:ヤフーがアスクルのロハコ事業の流通総額を一気に増やそうとするなら、アスクルを完全子会社化するしかないと。 A:契約では、ヤフーがアスクルの株を買い増すには両社の合意が必要ですから、そんなことは想定もしていません。先方がどう考えるかは計り知れないが、われわれとしてはそんなことはできない話だと思っています。 Q:ヤフーはロハコ事業の92億円の赤字を「由々しきこと」としているが、その移管は「考えていない」としている。彼らのそもそもの狙いは何ですか。 ヤフーのEC事業の成長の定義は流通総額の増加です。そのためにロハコ事業をコントロールしたいという狙いは明白です。私は、これまでヤフーとロハコ事業について何度も協議しましたが、「こんな赤字なんて大したことない」「むしろ流通総額を上げろ」という意向の方が強かった。だから、この期に及んで急にロハコが赤字じゃないかと問題視するのは非常に違和感がありますね。 Q:ヤフーの川邊健太郎社長は、ソフトバンクグループの孫正義社長から、アマゾンと楽天を追い抜くようにプレッシャーをかけられていたのでしょうか。吉岡さんは、そうした話を聞いたことはありますか。 A:ああ、1月11日に川邊さんが来社されたとき、「孫さんから、楽天とアマゾンをいつ超えるんだという質問ばかりされる」という話をしていましたよ。岩田の隣で私も聞きました。まあ、孫さんのプレッシャーって私は直接見たことがないので断定的なことは言えませんが、お立場としてそういうものもあるのかもしれませんね。でも、だからといって、アスクルが赤字を出してロハコの流通総額を拡大させるという話には全くならないです』、誕生した新社長もヤフーに対する反感が強く、このままではヤフーの思い通りにはなりそうもなさそうだ。ヤフーもソフトバンクグループから「楽天とアマゾン」超えの圧力を受けていたようだ。今後の展開が大いに注目される。

第三に、早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授の鈴木一功氏が9月4日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「アスクル社長と独立社外取締役の不再任は、本当に問題だったのか?」を紹介しよう。なお、注は省略。
https://diamond.jp/articles/-/213626
・『アスクルの年次株主総会において、大株主のヤフーとプラスの反対により、同社の岩田彰一郎社長と独立社外取締役の再任が否決されたことは大きく報道された。川邊健太郎社長をはじめとするヤフー経営陣の決定はあまりに一方的であるとして、業界団体や個人投資家などから批判の声が上がっている。だが、ヤフーによる決断は本当に問題だったのだろうか。M&Aの専門家でファイナンス理論の第一人者である、早稲田大学ビジネススクールの鈴木一功教授は、コーポレートガバナンスや法律の原則論を軽視した感情的な議論が展開される現状に警鐘を鳴らす。 2019年8月2日、アスクルは年次株主総会を開催し、大株主であるヤフーとプラスの反対により、社長である岩田彰一郎氏、および独立社外取締役の位置づけにある戸田一雄氏、宮田秀明氏、斉藤惇氏の会社側提案の取締役候補4名について、再任を否決した。 本件については、ヤフー側とアスクルの現経営陣側で激論が闘わされ、特に独立社外取締役を実質的に大株主が解任した形となったことから、「少数株主の利益を護る立場にある独立社外取締役」を大株主の一存で交替させることは、コーポレートガバナンスの観点から問題であり、大株主の株主権の濫用ではないか、という批判が各種団体や証券取引所の関係者から相次いだ。 筆者は、こうしたヤフー批判の論調に違和感を覚えるとともに、今回のヤフーへの批判が、2006年のライブドアによるニッポン放送の株式公開買付(TOB)によらない株式取得を巡る、ライブドアへの批判と酷似している、という意味で既視感を覚えた。 本稿では、本件の簡単な経緯と双方の主張の中で問題視された点を整理し、今回の不再任の是非、および少数株主保護と親子会社間の利益相反問題について考察する』、珍しくヤフーの立場をファイナンス理論の立場から擁護する記事なので、参考までにみてみよう。
・『アスクルとヤフーによる提携から現在に至るまでの事実関係  まず、アスクルとヤフーとの資本業務提携の経緯を確認しておこう。 両社が提携を発表したのは、2012年4月27日である。ヤフーは第三者割当増資によって、1株1433円で、2302万8600株のアスクル株を取得した。その投資金額は330億円、議決権比率で42.6%を握る大株主となった。アスクルの親会社であったプラスも株主として留まったことから、2社合算での持株比率は過半数を超えることとなり、その状況は現在も続いている。 当時の新聞記事によると、アスクルは、2009年に自社で始めた個人向けの通販サイトが営業赤字になり、また全社でも最終赤字となったので、ヤフーのポータルから顧客を自社サイトに誘導することで、個人向け通販を立て直そうという意図があった。他方ヤフーも、自社の個人向けショッピングサイトが楽天やアマゾンに取扱高で水をあけられていて、アスクルの持つ配送網を活用して利便性を高める必要があった。 そして資本業務提携により、アスクルは、ロハコ(Lohaco)という個人向けショッピングサイトを立ち上げ、ヤフーのトップページからリンクされるようになった。 資本業務提携後のアスクルの業績は、図表1のように推移した。なお、2018年5月期、2019年5月期のロハコ部門の数字には、2017年7月に買収したペット用品通販のチャーム社のデータを含む(図表中∗を参照)。 提携から7年間で、ロハコ部門の年間売上は21億円から652億円(チャーム社分を除けば513億円)と大きく増えているものの、他の大手ネット通販が1兆円規模の売上であることと比べれば、到底及ばない。また、2019年5月期においても、アスクルのロハコ部門は営業赤字であり、2020年5月期予想でも営業赤字が続く予想(赤字幅は縮小)である。 株価については、どうだろうか。図表2は、両社が提携を発表した直後の2012年5月における株価を100として、アスクル、ヤフー、楽天の株価の推移を示したものである。 株価については、2019年6月末時点で、アスクルの株価は業務資本提携発表直後の約1.9倍となっており、同期間にヤフーや楽天の株価が1.3~1.4倍程度にしかなっていないことに比べれば、パフォーマンスがよい。ただし、同期間に東証株価指数(TOPIX)も約1.9倍になっているので、アスクルの株価のパフォーマンスが格段によかったとはいえない。なお、2019年6月末時点で、ヤフーが保有するアスクル株は約200億円の含み益を抱えていた計算になる』、なるほど。
・『以上を踏まえたうえで、今回の案件について考えてみよう。 本件には、いくつかの異なる次元の問題点があり、それが議論を複雑にしている。そこで、以下のように論点を整理する。なお本稿では、主に(1)と(2)について議論し、(3)については(1)との関連で簡単に触れたい。 (1)過半数を超える議決権を持つ株式による、現社長および現在の指名委員会委員長を兼ねる独立社外取締役の再任に反対することに正当性はあるか。また、その結果として、一時的にとはいえ独立社外取締役が存在しない企業となることに対する、コーポレートガバナンス・コード上の問題はないか。 (2)上場子会社において、大株主である親会社と、子会社の少数株主の利益相反に問題はないか。独立社外取締役が果たすべき役割は何か。本件における、大株主と少数株主間の利益相反問題の本質はどこにあるのか。 (3)子会社上場について、どのような規制が必要か。また、親子上場を認める場合、望ましいガバナンス上のあり方とは何か』、論点整理は問題なさそうだ。
・『論点(1)社長と独立社外取締役の不再任は不当で、コーポレートガバナンス・コード上の問題があったのか  まず、過半数を超える議決権を持つ株式による、現社長、および指名委員会委員長を兼ねる独立社外取締役の再任への反対。これが、今回の最大の論点であることは間違いない。 特に、独立社外取締役を大株主が再任しないことについては、「親子上場企業のガバナンス上、重大な問題」(日本取締役協会)、「上場子会社のガバナンスの根幹を崩すもの」(日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)、「議決権行使を行い、それによって子会社の安全装置とも言われる独立社外取締役の解任にまで至ったことを懸念」(日本取引所グループ清田CEO)と、数多くの反対意見や懸念が表明されている。 しかしながら、そもそも取締役の選任は、会社法によって株主総会の普通決議事項として認められているものである。少なくとも現行の法律上は、上場子会社に関する特別の定めはなく、取締役に社内、独立社外の区別もない。今回の手続きに格段の問題はないように思える。 また不再任の背景についても、図表1に示したように、ロハコ事業の業績が提携から7年を経ても必ずしも芳しくないことを考えれば、株主権の濫用というほどまでに、説得力のない理由による不再任とはいえないように思える。 さらに言えば、コーポレートガバナンス・コードでは、“comply or explain”(遵守せよ、さもなければ説明せよ)の原則に基づき、遵守が望ましいものの、遵守せずにその理由を説明する、という選択肢が認められている。不再任によって、一時的に独立社外取締役が不在になるとしても、その理由がきちんと説明できれば、違法状態とはいえない。加えて言えば、経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」も、あくまでも「指針」である。 むしろ、こうしたいわゆるソフトローにおける、社外取締役やグループ・ガバナンスに関する考え方を理由に、会社法に基づく株主総会での株主の取締役選任が制約されるとは考えがたい。もしそのようなことが許されるのであれば、少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう。すなわち、経営陣の保身(エントレンチメント)の口実として、少数株主保護が使われかねないことを意味する。 筆者は、今回の不再任騒ぎに既視感を覚えている。それは、2005年に株式公開買付(TOB)規制の裏を掻いて、ニッポン放送の議決権の過半数を握るに至ったライブドアのケースである』、mply or explain”の原則に基づき、遵守が望ましいものの、遵守せずにその理由を説明する、という選択肢が認められている」、のは確かだが、今回は「その理由」の説明はどうもないようだ。「少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう」、というのはもっともらしいが、議論を単純化した極論のようにも思える。
・『これはライブドアが、本来であればTOBにより取得することが強制されているニッポン放送の過半数の議決権を、市場内取引(株式市場の立会外取引ToSTNeT-1と通常取引の組み合わせ)によって取得してしまった事例である。このときにも、ライブドアの行為が、少数株主も平等に支配権プレミアムを享受するために存在するTOB規制の趣旨がないがしろにされた、という批判がなされた。 しかしながら、TOB規制にこのような抜け道があることは、当時筆者を含めたM&Aの専門家の間では広く知られていた。だが、たとえば大崎貞和によれば、公開買付制度による厳しい規制を、子会社化等による企業グループ再編や他の企業との戦略的提携の妨げとなるとして嫌ってきたのは、むしろ経済界であったとされる。なお、ニッポン放送の件を契機に、2006年証券取引法が改正され、この抜け道は塞がれた。 今回の独立社外取締役問題も構図が似ているように思える。田中亘によれば、平成26年改正会社法の検討過程において、一定の株式会社に対し、社外取締役の選任を義務づけるべきかが、法制審議会会社法制部会で議論された。しかし、「各会社がその特性に適した企業統治を採用する自由を妨げるべきではないことなどを理由とする反対論」により義務づけは見送られた。 田中によると「こうした反対論は、主として産業界出身者から寄せられた」、とされる。すなわち、経済界の経営の自由度を重視する姿勢が、社外取締役の選任を努力義務的位置づけにし、社外取締役が不在となっても、違法ではない状況への道を開く遠因となったと考えられる。 ニッポン放送とアスクルの件に共通しているのは、経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまったということである。 実際にそのような事例が出てくると、「このような抜け道の利用は、規制の趣旨から認められない」といった批判の嵐になる。しかしながら、抜け道を残すということには、それが自分たちの都合の良いようにも悪いようにも利用される可能性を残すことでもある。それが嫌なのであれば、ある程度みずからの手足を縛ることになるとしても、曖昧さを残さず、可能な限り規制や制度の趣旨が達成できるような形で当初から文言を設計すべきである。 なお、秋に開かれる臨時国会で、上場企業や非上場の大会社に社外取締役の設置を義務づける方向で、会社法を改正することが審議される予定という。今回の件は、法律改正が後手に回るという意味でも、ニッポン放送の件と酷似している』、「経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまった」、というのはその通りだろう。しかし、「コンプライアンスとは単なる法令順守ではなく、社会的要請に応えていくこと」という元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏の考え方に従えば、ヤフーの行為はやはり問題がある。筆者は「法令順守」という狭義の考え方に束縛されているようだ。
・『論点(3)で掲げた親子上場問題についても、類似の問題がある。 経済界は従来から、親子上場の規制には消極的であり、今回ヤフーに批判的意見を開示した団体においても、「上場子会社は、独自の資金調達手段による成長の加速や社員のモチベーションの維持・向上という利点を有する。」(日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)、「親子上場は子会社の事業成長を加速するインキュベーション支援機能もあり」(日本取締役協会)と、親子上場制度自体には肯定的な見解をわざわざ述べている。 親子上場については、学識経験者の中でも、その賛否は分かれる。たとえば、宮島英昭らは、上場子会社にとっては、親会社という大株主によるモニタリング機能により、業績が独立企業よりも良いと報告している。 しかしながら、アスクルは、ソフトバンクグループから見ると曾孫会社(アスクルは、ヤフー〔親〕、ソフトバンク〔祖父〕、ソフトバンクグループ〔曾祖父〕という支配構造を持つ)である。アスクルに対して、親、祖父、曾祖父の誰がモニタリングを提供するかとなると、責任の所在は曖昧といわざるを得ない。むしろ、積み重なった4つの親子関係といういびつな支配構造の中で、より複雑な少数株主問題が内在しているように思える。 かつて、ニッポン放送・ライブドアの件を契機に、TOB規制が見直されたように、今回のアスクルの件は、親子上場に関する規制や制度設計、そして上場子会社のガバナンスに関して議論する格好の機会を与えてくれたといえる。経営の自由度を理由に、こうした議論を封じるのでなく、親子上場のメリットとデメリットを検証し、どのような形態や条件の下で上場子会社が許容、もしくは規制されるべきかという議論を進めるべきであろう』、これはその通りだ。
・『論点(2)少数株主利益の保護に背き、支配株主との利益相反を招いたのか  ここからは2つ目の論点である、少数株主保護についても考察しておこう。 たしかに、コーポレートガバナンス・コードにおいては、独立社外取締役に少数株主の利益の代弁することを期待していると思われる。しかしながら、今回のアスクルの件に関して、ことさらに少数株主利益の保護が持ち出されていることに対して、筆者は違和感を覚える。 そもそも、ロハコ事業はもちろんのこと、BtoB事業を含めても、アスクルの業績は芳しくない。2017年2月の倉庫火事や、近時の配送料高騰という事情はあるにせよ、売上高営業利益率は、2012年5月期の3%台から、直近2決算期には1.2%弱にまで低下している。 このような状況において、現社長の再任を決定した指名委員会や独立社外取締役は、はたして少数株主利益のために行動したと言い切れるのだろうか。 独立社外取締役といえども、経営陣によって、株主総会に候補として提案され、選任される。そのような独立社外取締役が、自身を候補として推薦してくれた経営陣に、どこまで厳しい意見を言えるのだろうか(あまり厳しいことを言っていると、次の株主総会では取締役候補から外されてしまうかもしれない)。独立社外取締役は、社内取締役よりは、しがらみに囚われない意見を述べられるであろうことは認めるが、経営陣に対する監視役という意味では絶対の存在ではない。 さて、少数株主の利益という観点から、ヤフーが取締役の不再任を発表した前日の7月16日から、株主総会の開催された8月2日までのアスクルの株価の推移を見ておこう。この間、アスクルの株価の上昇率は17%、同期間のTOPIXの上昇率は-2%である。もし今回の不再任のニュースが、少数株主利益を害するものであると市場が判断したのであれば、株価は下落したはずである。少なくとも、株価の反応を見る限り、不再任の発表によって少数株主利益が棄損されたとはいえない。 大株主であるヤフーとアスクルの利益相反と、少数株主利益の保護が問題になるとすれば、ロハコ事業を安値でヤフーに譲渡することであろう。この点については、アスクルの独立役員会が7月10日付の意見書で、ロハコ事業の譲渡への現経営陣の反対が、今回の不再任の背景にある可能性を主張している。これに対して、ヤフー側は7月29日付の開示資料で、不再任の理由はアスクルの業績低迷であるとし、こうした可能性を全面否定している。 今後、ロハコ事業を巡って、利益相反が生じる可能性は否定できない。だが現時点では仮定の話であり、どちらか一方の見解に与することは難しいというのが、筆者の意見である』、これもその通りだろう。
・『以上、アスクルの取締役不再任問題について、3つの論点を整理し、筆者の見解を述べた。 2019年を振り返ると、本件を含めて、上場企業の経営権を巡る問題が多い。 伊藤忠によるデサントへの敵対的TOB成立、廣済堂のMBOに対する旧村上ファンドの対抗TOBによる阻止、LIXILの会社側取締役候補の否認と株主提案取締役の選任という、3つの従来にはない形の経営権争いが行われ、いずれもその後、経営陣が交代している。また、HISによるユニゾホールディングスへの敵対的TOBは失敗には終わったものの、議決権の過半数を取得せず、比較的少ない資金で企業の経営権を掌握しようとするTOBが可能であるという、現状の制度の問題点を明らかにしたように思える。 こうした事案は、2014年以降、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの導入により目指してきた、株主によるコーポレートガバナンスが、本格的に機能し始めている証左とも考えられる。それは経営者に対して、株主に説明責任が果たせる、より理論的な企業経営への転換を迫っているように思える。今回のアスクルのケースも、株主を主体とするガバナンスの新しい形を模索する過程で起こった事案と考えられるかもしれない。 少数株主利益は軽んじられてはならないが、その一方で、支配株主が経営陣を選任し、企業の経営の方向性を決められるというのが、株式会社の経営の原則でもある。「一所懸命に経営してきた現社長を、冷徹に解任する大株主」という構図に感情的に惑わされるのではなく、経営陣の保身(エントレンチメント)に悪用されないための独立社外取締役を含めた社外取締役の選解任方法や、ガバナンス上、社外取締役にどこまでの責任を期待するのかを考え直す機会として、本件が受け止められることを期待したい』、総論的で特に違和感はない。いずれにしても、アスクル新社長が今後、ヤフーとどのように提携関係を深めてゆくのか、注目したい。
タグ:郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 大西 康之 アスクルVSヤフー (窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?) 「窮地のアスクル、ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」」 「大株主なら何をやってもいいわけじゃない」 独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士 上村達男早稲田大学名誉教授も「退任要求は提携違反」とする法律意見書 『ロハコを売れないか』と言ってきて『売れない』と答えたら『社長を辞めろ』。これでは支配株主の立場で圧力をかけているとしか思えない 独立役員会の意見 (1)岩田社長退任の是非については、指名報酬委員会で議論・決議した後の交代は現場を混乱させ、企業価値にマイナスになる (2)ロハコ事業の譲渡については、2018年12月にロハコ事業の再構築プランを発表したばかりであり、その効果を検証してから検討すべき (3)(ヤフーが今後もアスクルにロハコ事業譲渡を求めるなら)支配株主であるヤフーとの利益相反取引であることを十分に理解し、対等な立場で交渉することが求められる ヤフーに最低限のモラルがあると過信していた 「アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー」 ヤフーとの資本提携は解消したい。その考えは、社長が代わっても全く変わることはありません。 こんな形で社長を代えられて、いつまた同じことが起こるか分からないし、経営陣や社員のしこりは消えない。それにヤフーは独立社外取締役まで3人全員解任したので、会社が壊れてしまった。社長が新しくなったからといって次の日から仲良くしましょうということになるはずがない 慎重に事を進めていきます ヤフーの連結子会社でいることの最大の問題点は、ヤフーもアスクルもeコマース(電子商取引、EC)をやっていることです 「孫さんから、楽天とアマゾンをいつ超えるんだという質問ばかりされる」 鈴木一功 「アスクル社長と独立社外取締役の不再任は、本当に問題だったのか?」 今回のヤフーへの批判が、2006年のライブドアによるニッポン放送の株式公開買付(TOB)によらない株式取得を巡る、ライブドアへの批判と酷似している、という意味で既視感を覚えた アスクルとヤフーによる提携から現在に至るまでの事実関係 論点(1)社長と独立社外取締役の不再任は不当で、コーポレートガバナンス・コード上の問題があったのか そもそも取締役の選任は、会社法によって株主総会の普通決議事項として認められているものである コーポレートガバナンス・コードでは、“comply or explain” ソフトローにおける、社外取締役やグループ・ガバナンスに関する考え方を理由に、会社法に基づく株主総会での株主の取締役選任が制約されるとは考えがたい。もしそのようなことが許されるのであれば、少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう 経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまったということ 「コンプライアンスとは単なる法令順守ではなく、社会的要請に応えていくこと」 論点(3)で掲げた親子上場問題についても、類似の問題 親子上場のメリットとデメリットを検証し、どのような形態や条件の下で上場子会社が許容、もしくは規制されるべきかという議論を進めるべき 論点(2)少数株主利益の保護に背き、支配株主との利益相反を招いたのか 伊藤忠によるデサントへの敵対的TOB成立 廣済堂のMBOに対する旧村上ファンドの対抗TOBによる阻止 LIXILの会社側取締役候補の否認と株主提案取締役の選任 従来にはない形の経営権争い いずれもその後、経営陣が交代している 株主によるコーポレートガバナンスが、本格的に機能し始めている証左
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防衛問題(その13)(トランプ高笑い 陸上イージス日本配備で米は10億ドル節約、イージス・アショアに大金を払い 日本は米国の「不沈空母」にされる 6000億円出して これですか…?、「予算1兆円」イージス・アショア 噴出する反対論といくつもの問題 再考 そして引き返す勇気が必要だ) [国内政治]

防衛問題については、6月16日に取上げた。今日は、(その13)(トランプ高笑い 陸上イージス日本配備で米は10億ドル節約、イージス・アショアに大金を払い 日本は米国の「不沈空母」にされる 6000億円出して これですか…?、「予算1兆円」イージス・アショア 噴出する反対論といくつもの問題 再考 そして引き返す勇気が必要だ)である。

先ずは、6月21日付け日刊ゲンダイ「トランプ高笑い 陸上イージス日本配備で米は10億ドル節約」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/256520
・『地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を巡る防衛省の適地調査が、ズサンすぎると猛批判を浴びている。東北の調査地点19カ所のうち9カ所で、山を見上げた角度を示す「仰角」が過大に計算されていた上、秋田・男鹿市付近の山の標高が3メートル低く報告されていたことも発覚。防衛省は、急峻な山が「レーダーを遮蔽する」として「不適」と判断していたのに、その根拠はグラグラ。改めて、秋田市の「陸自新屋演習場ありき」の調査だった可能性が浮き彫りになっている。 日刊ゲンダイは8日付で「陸上イージス配備 秋田市ありきの“アメリカ・ファースト”」と報道。北朝鮮のミサイル基地から新屋演習場の延長線上にはハワイ、もう一つの予定地、山口・萩市の延長線上にはグアムの米軍施設があり、これらの施設を効率的に守ることが防衛省の真の狙いと指摘した。さらなる調べで、安倍政権のアメリカ・ファーストを裏付ける新たな資料が見つかった』、「新たな資料」とは期待できそうだ。
・『米政界とつながりが強いシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は今年5月、〈太平洋の盾:巨大な『イージス駆逐艦』としての日本〉との論文を公表。論文には〈秋田・萩に配備されるイージス・アショアのレーダーは、米本土を脅かすミサイルをはるか前方で追跡できる能力を持っており、それにより、米国の本土防衛に必要な高額の太平洋レーダーの建設コストを削減できる。(中略)恐らく10億ドルの大幅な節約が実現できる〉などと記されているのだ。 つまり、総額6000億円もの血税がつぎ込まれる可能性がある配備計画は、米国にとっていいことずくめ。日本円にして1000億円以上も軍事費を削れれば、トランプ米大統領は高笑いだろう。ステルス戦闘機「F35」の爆買いといい、安倍政権の“トランプ・ファースト”には呆れるしかない』、確かにハワイやグアムの米軍施設防衛に寄与するので、「10億ドルの大幅な節約」は可能だろう。

次に、東京新聞論説兼編集委員(元防衛省担当)の半田 滋氏が6月29日付け現代ビジネスに掲載した「イージス・アショアに大金を払い、日本は米国の「不沈空母」にされる 6000億円出して、これですか…?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65539
・『防衛省が秋田市と山口県萩市への配備を計画している地対空迎撃システム「イージス・アショア」をめぐり、防衛省のミスがとまらない。両市の演習場を「適地」と断定した根拠は根底から揺らいでいるが、岩屋毅防衛相は「結果に影響はない」との主張を変えようとはしない。 弾道ミサイル迎撃に対応できるイージス護衛艦は4隻から8隻へと2倍に増える。そもそもイージス・アショアは必要なのか、という話だ。 イージス・アショアの導入決定に至る経緯を振り返ると、政治主導の足跡がみえる。同時に「米国製武器の『爆買い』」と「米国防衛」というふたつのキーワードが浮かび上がる。 防衛省のミスは、いつまで続くのだろうか』、ミスは質量とも信じられないような酷さだ。
・『あまりにミスが多すぎる  昨年6月、防衛省は秋田市の新屋演習場、萩市のむつみ演習場へのイージス・アショアの配備を両自治体に説明した。地元からは、強力なレーダー波(電磁波)による健康被害や攻撃対象となる不安から、「配備反対」の声があがった。 防衛省は約2億円の公費を投じて他の配備候補地を調査し、秋田県へは5月27日、新屋演習場が「適地」とする報告書を渡した。 ところが6月になって、19ヵ所の候補地のうち、9ヵ所でレーダー波を遮る山の仰角の数値を過大に計算して「不適」と断定していたことが判明。職員が「グーグルアース」のデータを読み間違えたことが原因だった。 このことを謝罪するため、防衛省は6月8日に秋田市で周辺住民に対する説明会を開いたが、その場で職員の一人が居眠りしていたことに住民が激怒。翌日、東北防衛局長が職員の居眠りを認め、陳謝した。 一方、岩屋防衛相は6月18日の記者会見で「津波の影響はない」としてきた新屋演習場に「津波対策の必要がある」と説明を一転させた。秋田県が公表している津波浸水想定と照合した結果、浸水域は2~5mに達することが判明したという。資料の見落としである。 さらに岩屋氏は、18日の記者会見では、あらたに1ヵ所の山の標高を誤表記していたと発表。また25日には、電波の強度を示す「電力束密度」という数値を示した部分に2ヵ所誤りがあることを発表し、「職員が手作業で打ち込み転記する際に間違いが発生した」と陳謝した。 データの「読み間違い」に「見落とし」「写し間違い」、さらには「居眠り」だ。秋田県の佐竹敬久知事は「念には念を入れて丁寧に説明しようという基本姿勢が欠けている。秋田弁で言えば『わっぱが(いい加減な)仕事』」と防衛省を批判した。 なぜ、防衛省は当事者意識を欠いたような仕事ぶりなのだろうか。 それは、イージス・アショアの導入経緯と関係している』、ここまで酷いミスを見せつけられると、「イージス・アショアの導入
」が政治主導で決められたことに対する、防衛官僚の「サボタージュ」ではとの疑いすら抱かせる。
・『そもそも、なぜ買うことに…?  日本のミサイル防衛システムは、飛来する弾道ミサイルをイージス護衛艦から発射する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃を試み、失敗したら地対空ミサイル「PAC3」で迎撃するという二段階で対処する。 2003年12月、これらを米国から導入することを閣議決定し、これまで2兆円近い経費が米政府に支払われた。 その後、北朝鮮がミサイル発射を繰り返すのを受けて、防衛省は弾道ミサイル迎撃ができるイージス護衛艦を4隻から8隻に倍増することを決め、「あたご」型の2隻の改修を2012年度から開始、また最初から弾道ミサイル迎撃ができる「まや」型2隻の建造費を15、16年度防衛費に計上した。 イージス護衛艦に搭載する日米共同開発中の迎撃ミサイル「SM3ブロックⅡA」は従来型と比べ、射程がほぼ2倍に広がることから、防衛省は日本海に浮かべるイージス護衛艦は3隻から2隻に減らすことができるとも説明していた。 つまり、「イージス護衛艦の追加」と「迎撃ミサイルの高性能化」により、日本防衛に必要な武器類は揃うことが決まっていたのである。 そうした中で、イージス護衛艦の機能を地上に置き換えたイージス・アショアの導入が突如浮上した。安倍晋三首相の国会答弁がきっかけとなった。 安倍首相は17年2月15日の参院本会議で「わが国は米国の装備品を導入しているが、これらはわが国の防衛に不可欠なもの」と語り、「安全保障と経済は当然分けて考えるべきだが、これらは結果として米国の経済や雇用に貢献する」と続けた。 首相はこの答弁より前の同年2月10日、就任して間もないトランプ大統領とワシントンで首脳会談を行った。 会談後の記者会見でトランプ氏は「両国がさらなる投資を行い、防衛力をさらに高めていくことが大切だ」と強調。これを日本政府は「米国製武器のさらなる購入」を要求するものと受けとめ、前出の首相答弁につながった』、安倍首相の「わが国は米国の装備品を導入しているが、これらはわが国の防衛に不可欠なもの」との答弁は、イージス護衛艦で十分に足りているのに、あえて「イージス・アショア」を導入する必要性は何ら触れていない不誠実な答弁だ。
・『あっという間に1兆8000億円  早速、同月23日には自民党政調会が「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」を発足させ、翌月、安倍首相に提言を手渡した。 この提言は「新規アセットの導入」として「イージス・アショアもしくは終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の導入について検討し、早急に予算措置を行うこと」を求めている。 この提言を受けて防衛省は、同年5月にはイージス・アショアを導入する方針を固め、8月には小野寺五典防衛相(当時)が訪米してマティス国防長官(同)にイージス・アショア導入の意向を伝えている。 そして同年12月19日、安倍内閣はイージス・アショア2基の導入を閣議決定したのである。 この間、わずか10ヵ月。「バイ・アメリカン(米国製品を買え)」を主張するトランプ氏との日米首脳会談をきっかけに、安倍首相が「米国製武器の追加購入」の方針を打ち出し、自民党との二人三脚により、イージス・アショア導入への道筋が付けられた。 防衛省によると、イージス・アショア2基の配備にかかる総額は4664億円。1発30億円ともされる48発分のミサイル購入費を含めれば、総額6000億円を超える。 安倍内閣は昨年12月、「105機のF35追加購入」を閣議了解しており、105機の購入費は安く見積もって約1兆2000億円とされる。 安倍政権はたった2回の閣議で総額1兆8000億円もの武器購入費を米政府に手渡すことを決めたことになる』、米国のご機嫌とりのために「総額6000億円を超える」「イージス・アショア導入」を決めたとは、いかにも安倍政権らしい。
・『「やらされている」防衛省  防衛省がイージス・アショアの「適地」をめぐる説明でミスを繰り返すのは、イージス・アショアが政治案件であることと無関係ではない。国防担当にもかかわらず、脇役に回され、地元対策を押しつけられた防衛省の不満がにじみ出た結果といえる。 ミスのいくつかは、地元紙や秋田県などの指摘で明らかになった。「やらされている」から「やっているフリ」をしているだけの防衛官僚と、イージス・アショアが配備されれば生活が一変しかねない地元とでは真剣さの度合いが違う。 秋田市と萩市が選ばれた理由について、防衛省の説明資料は「わが国全域を防護する観点から北と西に2基をバランス良く日本海側に設置する必要から候補地とした」としている。 しかし実は、北朝鮮の弾道ミサイル基地「舞水端里(ムスダンリ)」と秋田市を結んだ延長線上には米軍のアジア・太平洋方面軍司令部のあるハワイがあり、同じく萩市の先には米軍のアンダーセン空軍基地、アプラ海軍基地を抱えるグアムがある。 日米は弾道ミサイルの発射情報を共有しており、イージス・アショアが探知した情報はただちに米軍の情報ともなる。これにより、米軍は日本近海にイージス艦を配備することなく、北朝鮮はもちろん、ロシア、中国の弾道ミサイル発射情報を入手できるようになる。 ロシアのラブロフ外相が日本政府との北方領土交渉で「米国がアジア地域にミサイル防衛システムを展開することは、ロシアの安全保障に直接関わる問題だ」などと批判を繰り返し、日本のイージス・アショア配備に反対するのは、こうした理由からだ』、ロシアを怒らせることで、「北方領土交渉」が犠牲になるのも覚悟の上なのだろう。
・『本当に「日本防衛」のためなのか  一方、米国にとって日本のイージス・アショア配備はプラス材料以外の何ものでもない。 米国の保守系シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は昨年5月、「太平洋の盾・巨大なイージス艦としての日本」との論考を発表する中で、かつて中曽根康弘首相が「日本列島を浮沈空母にする」と発言したことを引き合いに出し、イージス・アショアの有益性を論じた。 具体的には以下のように指摘している。 「日本のイージス・アショアは米本土を脅かすミサイルの前方追跡としての目的を果たす可能性があり、米国が本土防衛のために高価なレーダーを構築する必要性を軽減する。おそらく10億ドル(約1100億円)の大幅な節約となる」「ハワイ、グアム、東海岸、その他の戦略的基地などの重要地域を弾道ミサイルなどから守るため、イージス・アショアを使うことができる」 そして「日本のイージス・アショアに対する前向きで革新的な努力は日米の協力関係をさらに強化するだろう」と、安倍政権を持ち上げる言葉で締めくくっている。 この論考を読む限り、イージス・アショアは米国防衛に貢献する道具となるのは間違いない。日本からのカネで対日貿易赤字が減り、しかも米国の防衛に役立つのだから、トランプ氏は笑いがとまらないだろう。 岩屋防衛相は防衛省のミスが次々に明らかになった現在も、「秋田が『適地』」との判断を変えようとしない。萩市への配備に至っては、イージス・アショアの正面にあり、まともに電磁波を浴びかねない阿武町が町挙げて反対しても、岩屋氏はやはり「萩が『適地』」を撤回しない。 イージス・アショアは日本防衛ではなく、むしろ米国防衛のためのものではないかと思えてならない』、「日本防衛」のためではないので、「「やらされている」から「やっているフリ」をしているだけの防衛官僚」にとっては、サボタージュしたくなる気持ちは理解できる。米国にとっては、「本土防衛」費用が「10億ドルの大幅な節約」になり、「対日貿易赤字が減り」、「トランプ氏は笑いがとまらないだろう」、ここまで米国に貢いでも、日米貿易交渉では厳しく絞られるとすれば、踏んだり蹴ったりとなるだろう。

第三に、ジャーナリストの伊藤 博敏氏が8月15日付け現代ビジネスに掲載した「「予算1兆円」イージス・アショア、噴出する反対論といくつもの問題 再考、そして引き返す勇気が必要だ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66538
・『地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」は、今年4月、1399億円で2基分の本体購入費の一部を米政府と契約するなど、秋田市の陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)、同むつみ演習場(萩市)への配備に向けて、着々と既成事実を積み重ねている。 だが、イージス・アショアの導入を閣議決定した17年12月から燻っていた反対論がやむ気配はない。 イージス・アショア構成品の選定過程から不評は数多く、1基800億円から始まった取得費は、2基で2474億円と膨らみ、30年間の維持・運営費を含め、4459億円と公表されている。それに、迎撃ミサイルの取得費、建屋などの整備費を加え6000億円超となるのが確実だという。 加えて地元が「配備反対」の民意を示しており、配備計画を抜本的に見直すべきという意見が高まっている。「性能」と「価格」と「民意」で反対論が優勢となっているなか、イージス・アショアをゴリ押しする必要があるのか。以下に検証してみよう』、興味深そうだ。
・『防衛の専門家と住民の懸念と否定  まず、防衛の専門家は総じて懸念を表明、いずれも説得力がある。 『週刊新潮』は、軍事アナリストの豊田穣士氏が、<「神の盾」に穴という「亡国のイージス・アショア」>というタイトルで、7月18日号から3回連載。 「イージス」とはギリシャ神話の「あらゆる邪気を祓う盾」であり、それと陸上を意味する「アショア」とを掛け合わせた。そこに「穴」が空いているという豊田氏の指摘は深刻だ。 本サイトでも、防衛省担当記者歴27年という大ベテランの半田滋氏が、<イージス・アショアに大金を払い、日本は米国の「不沈空母」にされる>(19年6月29日配信)と題する記事を始め、何度も警鐘を鳴らし、指揮官としてイージス艦を運用したこともある坂上芳洋元海将補が、<イージス・アショア搭載レーダーの選定に専門家が抱いた「違和感」>(19年3月28日配信)と題して、苦言を呈した』、「防衛の専門家」がこれだけ「懸念を表明」するのは、武器導入では異例のことだ。
・『不評は、Googleアースに分度器で資料を作成、住民説明会では職員が居眠りをするなど防衛省側の真剣さ欠いた対応もあって、秋田県や山口県など地元に共通のものとなった。 なかでも秋田県では、参議院議院選挙で安倍晋三首相、菅義偉官房長官が、それぞれ2度も駆け付け、自民党の中泉松司候補にテコ入れしたが、野党統一の寺田静候補に2万票を超える大差で敗れた。 参院選で問われたのは、「イージス・アショアの配備計画に賛成か否か」の一点であり、「民意」は否定だった。 それを受けて佐竹敬久県知事は、「自分が応援した人が負けるのは悔しい」といいつつ、「再調査の前に新屋が最適地というのはおかしい」と反発、このままでは協議に応じない姿勢を示した。 反発を受けて防衛省は、予算計上を見送った。20年度予算の概算要求について、米軍再編関連経費を含め5兆3000億円超を計上する計画だが、イージス・アショアの導入費については、敷地造成や建屋整備などの関連経費を計上せず、金額を明示しない「事項要求」とした。配備地の正式決定を踏まえて額を見積もる。 その場しのぎの印象は拭えない』、地元を説得できないので、「事項要求」といった裏技まで使うとは、安倍政権も面子の維持に必死のようだ。
・『3つの疑義  ただ、民主党政権下で防衛政務官、防衛副大臣を歴任、外交・防衛問題に一家言を持つ長島昭久代議士は、今年6月、自民党に入党したが、「今回、明らかになった民意は、イージス・アショア配備計画を、一度、立ち止まって考えるいい機会になったのではないか」という。 長島代議士は、イージス・アショアを含むミサイル防衛網の構築に賛成の立場を明らかにしつつも、これまでイージス・アショアに関して3回の質問主意書を提出、6月18日の安全保障委員会で岩屋毅防衛相に「国防の所要を満たしているか」と、質した。 長島代議士には、少なくとも3つの疑義があるという』、「疑義」とはどういうものなのだろうか。
・『「第一に、イージス・アショアはBMD(弾道ミサイル防衛)対応として導入されましたが、弾道ミサイルの脅威だけでなく、巡航ミサイルや極超音速滑空弾など多種多様な備えが必要になっています。また10年後、20年後を考えると、北朝鮮以外の脅威に備えるシステムでなくてはならない」 長島代議士が想定しているのは、迎撃対象を広範囲にした統合防空システム(IAMD)。ここ数日、北朝鮮が日本海に向けて発射しているのは、弾道が低高度飛翔の新型短距離ミサイル。イージス・アショアで配備を予定されているSM3では対応し切れず、広範囲をカバーするIAMDが求められるという』、確かにIAMDの方が汎用的でよさそうだが、費用面ではどうなのだろう。
・『「第二は、昨年7月に選定されたレーダーが、未だ開発中で構想段階にとどまるロッキード・マーチン社製のLMSSRであること。しかも、2024年以降、米海軍がいっせいに配備するレイセオン社製のSPY-6との相互運用性がなく、今後、必須となるCEC(共同交戦能力)も持っていません。以上から、選定に大きな疑問を感じざるを得ません」 このレーダー選定問題は、前述の識者などが等しく指摘している。レーダーは、SPY-6とLMSSRで争われ、防衛省は「公正性、公平性を担保しつつ、選定作業を行なった」という。 だが、SPY-6は、米海軍が正式に採用を決め、製造を開始しているのに比べ、LMSSRは未完成品。日本企業の参画も加点材料とされたが、これも富士通の参加が見送られ、優位さが消えている』、防衛省がSPY-6ではなく、未完成品のLMSSRを決めた理由は何なのだろう。
・『「第三は、ソフトウェアの問題です。LMSSRは、ベースライン9というソフトウェアとの組み合わせですが、現在、最新ソフトのベースライン10が開発中で、24年には米軍の最新鋭イージス艦で、SPY-6とベースライン10が稼働することになっています。アナログデータ用の『9』に比べデジタル・データ用の『10』は、処理能力が飛躍的に向上する。開発スケジュールが確定している以上、『10』を採用すべきです」 ベースライン10の採用は、米軍との緊密な連係に基づくIAMDシステムの必要性の観点からも求められるという』、あえて旧式化するベースライン9を採用した理由も知りたいところだ。
・『こうしてイージス・アショアの問題点を論点整理すれば、最初にイージス・アショアありきだったうえ、レーダー選定にみられるようにSPY-6の優位性を無視してLMSSRを選定したように、「日本にとって必要な防衛装備」という観点を忘れた拙速さを指摘できる』、米国にいい顔をするために拙速に走ったとすれば、長期的な国益には反することになるが、安倍政権にとっては長期的な国益などどうでもいいようだ。
・『予算が1兆円近くになる  問題は、それにとどまらない。前出の坂上元海将補は、「今後、発生する費用も問題だ」と指摘する。 「未完成品のLMSSRは、完成してもミサイル実験を日本の責任において行なわねばならず、そのための試験施設建設や迎撃実験などに1000億円以上の費用が発生します。また、LMSSRは、DCS(一般輸入)で導入が計画されており、この場合、維持整備、技術更新等の経費は、全て日本政府が負わねばならないのです」 このように、算定されていない費用も莫大で、現時点で見積もられているのは、約6000億円だが、実験費用に加え、イージス・アショア自身を守るためには、巡航ミサイル対応のSM6の配備も必要になる。そうしたもろもろの費用を加算すると1兆円近くになるという。 そこで、立ち止まって再考、レーダー選定をもう一度、やり直して安く改変するとか、あるいはいっそイージス・アショアを高高度迎撃ミサイルシステムのサードに切り替えてはどうか、といった意見も出始めている。 サードは自走式も用意されており、地元の反対を経ずに、自衛隊及び米軍基地の数カ所の配備が可能となる。しかも1基千数百億円で、イージス・アショアより費用対効果は高い。巡航ミサイルは、イージス艦のSM-6に寄らなければならないが、対応は可能だ。 再考の次に必要なのは引き返す勇気。臨時国会は10月1日の消費税アップの直後に開かれる。その絶妙なタイミングを利用、1兆円を削り込むべきではないだろうか』、「未完成品のLMSSRは、完成してもミサイル実験を日本の責任において行なわねばならず、そのための試験施設建設や迎撃実験などに1000億円以上の費用が発生します。また、LMSSRは・・・維持整備、技術更新等の経費は、全て日本政府が負わねばならないのです」、何故こんなLMSSRの不当な条件を受け入れてまでこれを選択したのか、ますます疑念が募る。「再考の次に必要なのは引き返す勇気」、というのはその通りだろう。このまま安倍政権のイージス・アショアでの暴走を放置すべきではない。
タグ:日刊ゲンダイ 防衛問題 現代ビジネス 伊藤 博敏 半田 滋 イージス・アショア (その13)(トランプ高笑い 陸上イージス日本配備で米は10億ドル節約、イージス・アショアに大金を払い 日本は米国の「不沈空母」にされる 6000億円出して これですか…?、「予算1兆円」イージス・アショア 噴出する反対論といくつもの問題 再考 そして引き返す勇気が必要だ) 「トランプ高笑い 陸上イージス日本配備で米は10億ドル節約」 東北の調査地点19カ所のうち9カ所で、山を見上げた角度を示す「仰角」が過大に計算されていた上、秋田・男鹿市付近の山の標高が3メートル低く報告されていたことも発覚 「陸自新屋演習場ありき」の調査だった可能性が浮き彫りに 北朝鮮のミサイル基地から新屋演習場の延長線上にはハワイ 山口・萩市の延長線上にはグアムの米軍施設があり、これらの施設を効率的に守ることが防衛省の真の狙い 戦略国際問題研究所(CSIS) 米国の本土防衛に必要な高額の太平洋レーダーの建設コストを削減できる。(中略)恐らく10億ドルの大幅な節約が実現できる 「イージス・アショア」をめぐり、防衛省のミスがとまらない 「米国製武器の『爆買い』」と「米国防衛」 地元からは、強力なレーダー波(電磁波)による健康被害や攻撃対象となる不安から、「配備反対」の声 防衛省は当事者意識を欠いたような仕事ぶり 防衛官僚の「サボタージュ」 そもそも、なぜ買うことに…? 「イージス護衛艦の追加」と「迎撃ミサイルの高性能化」により、日本防衛に必要な武器類は揃うことが決まっていた イージス・アショアの導入が突如浮上 あっという間に1兆8000億円 日米首脳会談をきっかけに、安倍首相が「米国製武器の追加購入」の方針を打ち出し、自民党との二人三脚により、イージス・アショア導入への道筋が付けられた 「やらされている」防衛省 やらされている」から「やっているフリ」をしているだけの防衛官僚 ロシアのラブロフ外相が日本政府との北方領土交渉で「米国がアジア地域にミサイル防衛システムを展開することは、ロシアの安全保障に直接関わる問題だ」などと批判を繰り返し、日本のイージス・アショア配備に反対 本当に「日本防衛」のためなのか 「「予算1兆円」イージス・アショア、噴出する反対論といくつもの問題 再考、そして引き返す勇気が必要だ」 地元が「配備反対」の民意 防衛の専門家は総じて懸念を表明 「民意」は否定 反発を受けて防衛省は、予算計上を見送った 敷地造成や建屋整備などの関連経費を計上せず、金額を明示しない「事項要求」とした 3つの疑義 長島昭久代議士 長島代議士が想定しているのは、迎撃対象を広範囲にした統合防空システム(IAMD) 選定されたレーダーが、未だ開発中で構想段階にとどまるロッキード・マーチン社製のLMSSRであること LMSSRは、ベースライン9というソフトウェアとの組み合わせですが、現在、最新ソフトのベースライン10が開発中で、24年には米軍の最新鋭イージス艦で、SPY-6とベースライン10が稼働することになっています 「日本にとって必要な防衛装備」という観点を忘れた拙速さ 予算が1兆円近くになる LMSSRは、完成してもミサイル実験を日本の責任において行なわねばならず、そのための試験施設建設や迎撃実験などに1000億円以上の費用が発生 LMSSRは、DCS(一般輸入)で導入が計画されており、この場合、維持整備、技術更新等の経費は、全て日本政府が負わねばならないのです 立ち止まって再考、レーダー選定をもう一度、やり直して安く改変するとか、あるいはいっそイージス・アショアを高高度迎撃ミサイルシステムのサードに切り替えてはどうか、といった意見も出始めている 再考の次に必要なのは引き返す勇気
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格差問題(その5)(“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、正社員「逆ギレ」も 非正規の待遇格差が招く荒れる職場) [社会]

格差問題については、4月16日に取り上げた。今日は、(その5)(“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、正社員「逆ギレ」も 非正規の待遇格差が招く荒れる職場)である。

先ずは、BNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎氏が2月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』(上・下)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/194007
・『世界的大ベストセラー『サピエンス全史』では、人類がどこから来たのかが論じられた。7万年前、人類が人類たり得た最初の「認知革命」が起こった。人類は、他の動物とは異なり、想像力で社会を構築し、ルールや宗教など虚構(物語)を共有することで、仲間と緊密に協力して地球最強の生物となった。 本書では、最新科学の知見を盛り込み、人類の行く末を論じる。 まず、生体器官もアルゴリズムに過ぎないという最新の生物学の知見を基に、前著で論じた認知革命や、その後の農業革命(1万2000年前)、文字や貨幣の発明(5000年前)、科学革命(500年前)などをデータ処理の観点から論じる。個体の制約から解放されたデータ処理能力は、ヒエラルキーの強化や仕事の細分化で、一段と効率化する。それが、人類が集団として進歩した理由だ。 300年前には自由主義など人間至上主義が誕生し、その追求の結果、人類を長年苦しめた飢餓や疫病、戦争の三つの大きな問題は20世紀末にほぼ解決された。人間中心の考えをさらに推し進め、今や私たちは、不死や至福という神の領域に踏み込もうとしている』、「個体の制約から解放されたデータ処理能力は、ヒエラルキーの強化や仕事の細分化で、一段と効率化する。それが、人類が集団として進歩した理由だ」、その通りなのだろう。
・『生物工学やAI(人工知能)の発展で、近い将来、生体情報は全てクラウド上に蓄積される。健康を望む人は、進んでデータを提供するはずだ。いずれ体だけでなく、頭脳や精神状況もモニターされ、自分以上に自分を知るネットワークシステムが誕生し、人間はその支配下に入る。人間は脇役に追いやられ、データ至上主義の時代が訪れる。同時に、サイボーグ工学の進展により、富裕層は体や頭脳のアップグレードを繰り返す。 多くの経済書は、技術革新で経済格差が拡大すると懸念してきた。本書は、データを握りアップグレードを続けホモ・デウス(デウスは神)となったエリートが支配する階級社会の到来を警告する。 評者は、AIの発展は恩恵だけではなく、ダークサイドももたらすと懸念していたが、自由主義が歯止めになると楽観していた。しかし、自由主義も私たちが作り上げた虚構の一つに過ぎず、むしろ不死や至福の追求を促し、自らを切り崩す。著者の執筆動機は、本書で描くディストピア(反理想郷)の到来を避けるためだという。 さて、私たち日本人は、自然との共生を重んじ、人間中心主義だけを拠(よ)り所(どころ)としてはこなかった。幅広い生物に仏性を認めるだけでなく、神と人を区別せず、万物を神と崇(あが)める土着信仰もある。西欧近代主義の帰結がホモ・デウスだとしても、別の未来も描けるように思えるが、手遅れなのか』、「本書は、データを握りアップグレードを続けホモ・デウス(デウスは神)となったエリートが支配する階級社会の到来を警告する」、まさに「ディストピア」そのものだ。「私たち日本人は、自然との共生を重んじ、人間中心主義だけを拠(よ)り所(どころ)としてはこなかった」、という面があるのは事実だが、楽観視は禁物だろう。

次に、作家の橘玲氏が8月26日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212972
・『死者35人、負傷者33人という多くの被害者を出した「京都アニメーション放火事件」は、放火や殺人というよりまぎれもない「テロ」です。しかし犯人は、いったい何の目的で「テロ」を行なったのでしょうか。 報道によれば、容疑者はさいたま市在住の41歳の男性で、2006年に下着泥棒で逮捕され、2012年にコンビニ強盗で収監されたあとは、生活保護を受けながら家賃4万円のアパートで暮らしていたとされます。事件の4日前に起こした近隣住民とのトラブルでは、相手の胸ぐらと髪をつかんで「殺すぞ。こっちは余裕ねえんだ」と恫喝し、7年前の逮捕勾留時には、部屋の壁にハンマーで大きな穴が開けられていたとも報じられています。 身柄を確保されたとき、容疑者は「小説をパクリやがって」と叫んだとされます。アニメーション会社は、容疑者と同姓同名の応募があり、一次審査を形式面で通過しなかったと説明しています。 ここからなんらかの被害妄想にとらわれていたことが疑われますが、精神疾患と犯罪を安易に結びつけることはできません。これは「人権問題」ではなく、そもそも重度の統合失調症では妄想や幻聴によって頭のなかが大混乱しているので、今回のような犯罪を計画し、実行するだけの心理的なエネルギーが残っていないのです。欧米の研究でも、精神疾患がアルコールやドラッグの乱用に結びついて犯罪に至ることはあっても、病気そのものを理由とする犯罪は一般よりはるかに少ないことがわかっています。 じつは、あらゆるテロに共通する犯人の要件がひとつあります。それが、「若い男」です。ISIS(イスラム国)にしても、欧米で続発する銃撃事件にしても、女性や子ども、高齢者が大量殺人を犯すことはありません。 これは生理学的には、男性ホルモンであるテストステロンが攻撃性や暴力性と結びつくことで説明されます。思春期になると男はテストステロンの濃度が急激に上がり、20代前半で最高になって、それ以降は年齢とともに下がっています。欧米の銃撃事件の犯人の年齢は、ほとんどがこの頂点付近にかたまっています』、「あらゆるテロに共通する犯人の要件がひとつあります。それが、「若い男」です」、というのはその通りだ。「テストステロン」も不可欠のものだが、副作用も大きいのは困ったことだ。
・『日本の「特殊性」は、川崎のスクールバス殺傷事件の犯人が51歳、今回の京アニ放火事件の容疑者が41歳、元農水省事務次官長男刺殺事件の被害者が44歳など、世間に衝撃を与えた事件の関係者の年齢が欧米よりかなり上がっていることです。さまざまな調査で、20代の若者の「生活の充実度」や「幸福度」がかなり高いことがわかっています。日々の暮らしに満足していれば、「社会に復讐する」理由はありません。 このように考えると、日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中していることがわかります。当時、正社員になることができず、その後も非正規や無職として貧困に喘ぐ彼らは、ネットの世界では自らを「下級国民」と呼んでいます。とりわけ低所得の男性は結婚もできず、社会からも性愛からも排除されてしまいます。 この国で続発するさまざまな事件は、「下級国民のテロリズム」なのかもしれません。そんな話を、新刊の『上級国民/下級国民』で書いています』、「日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中」、というのは確かに深刻だ。政府も対応策をアリバイづくりで打ち出しているが、実効性は期待薄だ。

第三に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が9月10日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「正社員「逆ギレ」も、非正規の待遇格差が招く荒れる職場」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00039/?P=1
・『「非正規と呼ぶな!」と指示したメールが厚生労働省内に出回ったらしい。先週あちこちで批判されていたので、ご存じの方も多いと思うけれど簡単に振り返っておく。 問題のメールは今年4月に同省の雇用環境・均等局の担当者名で省内の全部局に「『非正規雇用労働者』の呼称について(周知)」という件名で通知されたもので、国会答弁などでは「パートタイム労働者」「有期雇用労働者」「派遣労働者」などの呼称を使うことを指示。「非正規」のみや「非正規労働者」という言葉は用いないよう注意を促すものだった。 また、「『非正規雇用』のネーミングについては、これらの働き方には前向きなものがあるにもかかわらず、ネガティブなイメージがあるとの大臣の御指摘があったことも踏まえ、当局で検討していた」と記載され、「大臣了」という表現もあったという。 報道を受け根本匠厚生労働相はメールの指示や関与を否定。また、厚労省は内容が不正確だとし、文書やメールを撤回している。 厚労省は、2010年版の「労働経済の分析」(労働経済白書)で、1997年と2007年の年収分布を比較し、10年間で年収が100万~200万円台半ばの低所得者の割合が高まり、労働者の収入格差が広がったのは、「労働者派遣事業の規制緩和が後押しした」と自ら国の責任を認めていたのに……。この期に及んで言葉狩りに加担するとは実に残念である』、「「非正規と呼ぶな!」と指示したメールが厚生労働省内に出回った」、というの初耳だが、自らの失政を「言葉狩り」でしのごうとするのは余りにお粗末だ。
・『「非正規」の言葉を避ける“空気”が醸成されている  いったい何度、発覚、否定、撤回、が繰り返されていくのだろうか。 今回の問題を、役所の知人など複数名に確認したところ、かねてから永田町では「非 正規という言葉はイメージが悪い」「希望して非正規になっている人も多い」という意見があったそうだ。 「老後資金年金2000万円問題」が浮上し野党が行ったヒアリングでも(6月19日)、年金課長が「根本厚労相から『非正規と言うな』と言われている」と発言し、21日に根本厚労相が記者会見で課長の発言を否定したこともあった。 要するに、メールを撤回しようと何だろうと、「非正規という言葉はなくそうぜ!」という“空気”が出来上がっていたのだろう。 いずれにせよ、大抵こういった悪意なき無自覚の「言葉狩り」が起こるときは、決まって知識不足、認識不足、無知が存在する。 実際、3日の記者会見で、根本厚労相は以下のようにコメントしており、私はこのコメントの方がむしろ問題だと考えている(抜粋要約)。 「正社員に就けずにパートなどの働き方を余儀なくされている方や、積極的にパートなどの働き方を選択している方など、多様な働き方が進んでいる。単に『正規』『非正規』という切り分け方だけでよいのか、それぞれの課題に応じた施策を講ずるべきではないか、と思っている。 パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者に寄り添った政策を展開して、同一労働同一賃金の実現に向けて全力で取り組んでいく、これが私の姿勢であり、基本的な考え方です」 ……ふむ。「それぞれの課題」「同一労働同一賃金」という言葉を大臣が使っているので、一見問題があるとは思えない発言だし、ご本人からはいっさい悪意は感じられない だが、「働き方」と「働かせ方」は全くの別物である。これを混同していることにこそ、大きな問題がある。 働き方の主語は「働く人」。働かせ方の主語は「会社」だ』、「「働き方」と「働かせ方」は全くの別物である。これを混同していることにこそ、大きな問題がある」、というのは鋭い指摘だ。
・『「非正規雇用」vs「正社員」という構造が生まれた  パートタイムだろうと、有期雇用だろうと、派遣だろうと、はたまた正社員だろうと「働く」ということに全く違いはない。にもかかわらず、企業が非正規と正規という単なる雇用形態の違いで、 賃金が低い 残業代が出ない 産休や育休、有休が取れない 時短労働ができない 社内教育の機会がない 昇進や昇給の機会がない 雇用保険に入れない 簡単に「雇い止め」にあう、etc.etc.… と「働かせ方」を区別したのだ。 労働基準法や男女雇用均等法で禁止されていることを企業側が理解していない場合も多く、非正規雇用者は権利があるのに行使できない。 しかも、非正規社員が雇用契約している相手は「企業」だ。ところが企業による「待遇格差」が慣例化したことで、まるで「正社員さま」と契約しているかのような事態も発生している。 「私たちが、誰のために働かされているか分かります? 正社員のためですよ。何もしない正社員のために、契約社員は必死で働かされているんです」 ある会社で非正規社員として働く女性が、こう漏らしたことがある。 彼女の職場は転勤が多かったため、出産を機に退職。その後は育児に専念していたが、転勤問題が取り上げられるようになり、人事部のかつての同僚から「もし働く気があれば、契約社員として同じ部署で働けるけど?」と誘われ、昨年、会社に復帰した。正社員だった時と比べると、年収は4割ほど下がったという。 「以前は自分の仕事が終わればさっさと帰ってしまう契約社員たちを『楽でいいよなぁ』と、腹立たしく思ったことも正直ありました。でも、いざ自分が逆の立場になってみると、契約社員の方が真面目に働いていることに気づきました。 契約を更新してもらうためには、数字で成果を出さなければならない。残業代も出ませんし、限られた時間の中で効率よく仕事をこなさなければなりません。 正社員だった時の方が楽だったようにさえ思います。とりあえずは毎月の給料は出るし、ある程度結果を出せば、昇給も昇進もありますから」 「自分が契約社員になったら、正社員の怠慢と横柄な態度も目に付くようになってしまって。例えば、契約社員が事務書類の提出が遅れると、『意識が低い』だの『モチベーションが低い』だのマイナスの評価を受けます。ところが正社員だと『ちょっと忙しくて』という言い訳が通る。上司もそれを容認するんです。 それにね。正社員ってある程度までは横並びで昇進し、仕事も任されるようになるけど、契約社員は採用される時点で会社が求めるレベルに達しているので、その意味では契約社員の方が仕事ができます。おそらくそのことを正社員も肌で感じているのでしょう。特に私のように出戻りだと、年下の正社員はなめられたくないのか、ものすごい上から目線で対応してきます。 20代の正社員が顧客にてこずっていたのでアドバイスしたら、『正社員をなめるなよ!』と言われて驚きました。同期からは『非正規は気楽でいいよな?』と言われることもあります。給料が下がっても仕事が好きで、仕事をしたくて復帰したのに……。正社員ってそんなに偉いんでしょうか」』、企業にとっては、「正社員」の下に「非正規」を位置づけることで、正社員の自尊心をくすぐっているのだろう。
・『バカにされたくない“正社員”が契約社員を責める  この女性はインタビューに協力してくれた半年後に退職。メンタル不全に陥り、「やめる」という選択肢しかなかったという。 “正社員”から冒涜(ぼうとく)された経験を持つのは、この女性に限ったことではない。 「『パートなんていつだってクビにできるんだぞ』といつも言われるんです」と嘆く30代のパート社員もいたし、上司に意見したら『契約の身分で偉そうなこと言うな!』と恫喝(どうかつ)された40代の契約社員もいた。 人は自分が満たされないとき、他人に刃(やいば)を向けることがある。自分がバカにされたくないから、他人をバカにする。そんなとき、非正規という会社との契約形態が、かっこうのターゲットになることだってある。会社が待遇格差をつけたことで、正社員が妙な優越感を持つようになり、本来の性格までゆがめてしまったのだ。 揚げ句の果てに、何か事件が起こると「非正規」だの「契約社員」だのといった雇用形態の違いに原因があるかのように利用されるようになった。 繰り返すが、その“身分格差”を生んだのは、「非正規」という言葉ではなく、企業による待遇格差だ。働かせ方の問題である。「それぞれの課題に応じた施策を講ずるべきだ」(by 根本厚労相)などとまどろっこしいことを言っている場合ではないのではないか。 これまで、政府は基本的に「待遇格差」を禁じ、「正社員化」を進める法律を制定してきたのだから、法の抜け穴を巧妙に利用し、差別をしている企業を根こそぎ罰すればいい。それだけである程度非正規の問題は解決されるはずだ』、「“身分格差”を生んだのは、「非正規」という言葉ではなく、企業による待遇格差だ。働かせ方の問題である」、「法の抜け穴を巧妙に利用し、差別をしている企業を根こそぎ罰すればいい」、などはその通りだ。
・『実はこの“身分格差”問題は、日本の労働史を振り返ると「男社会」により生まれたことが分かる。 さかのぼること半世紀前。1960年代に増加した「臨時工」に関して、今の「非正規」と同様の問題が起き社会問題となった。 当時、企業は正規雇用である「本工(正社員)」とは異なる雇用形態で、賃金が安く不安定な臨時工を増やし、生産性を向上させた。 そこで政府は1966年に「不安定な雇用状態の是正を図るために、雇用形態の改善等を推進するために必要な施策を充実すること」を基本方針に掲げ、1967年に策定された雇用対策基本計画で「不安定な雇用者を減らす」「賃金等の処遇で差別をなくす」ことをその後10年程度の政策目標に設定する。 ところが時代は高度成長期に突入し、日本中の企業が人手不足解消に臨時工を常用工として登用するようになった。その結果、臨時工問題は自然消滅。その一方で、労働力を女性に求め、主婦を「パート」として安い賃金で雇う企業が増えた。 実際には現場を支えていたのは多くのパート従業員だったにもかかわらず、パートの担い手が主婦だったことで「パート(=非正規雇用)は補助的な存在」「男性正社員とは身分が違う」「賃金が低くて当たり前」「待遇が悪くても仕方がない」という常識が定着してしまったのだ』、労働組合が「非正規雇用」の問題を真剣に取り上げてこなかった罪も大きい。
・『非正規社員が正社員より給与が高い国も  それだけではない。 「なぜ、何年働いてもパートの賃金は上がらないんだ!」という不満が出るたびに、企業は「能力の違い」という常套句(じょうとうく)を用いた。正社員の賃金が職務給や年功制で上がっていくことを正当化するために、パートで働いている人の学歴、労働経験などを用い、能力のなさを論証することで、賃金格差を問題視する視点そのものを消滅させたのである。 私は今の非正規雇用の待遇の悪さは、こうしたパートさん誕生の歴史が根っこにあると考えている。それゆえ、とりわけ女性の非正規の賃金は低い。さらに「正社員を卒業」したシニア社員が非正規で雇われるようになり、ますます非正規雇用の全体の賃金も抑えられるようになってしまったのだ(参考記事:「他人ごとではない老後破綻、60過ぎたら最低賃金に」)。 だいたい雇用問題では、常に「世界と戦うには……」という枕詞が使われるけど、欧州諸国では「非正規社員の賃金は正社員よりも高くて当たり前」が常識である。 フランスでは派遣労働者や有期労働者は、「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金が支払われている。イタリア、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでも、非正規労働者の賃金の方が正社員よりも高い。「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるのだ』、「「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるのだ」、というのは確かに合理的だ。日本でそうなってないのは、歴史的経緯などが要因になっているのかも知れない。
・『また、EU諸国の中には、原則的に有期雇用は禁止し、有期雇用にできる場合の制約を詳細に決めているケースも多い。 4割が非正規の今の日本社会ではかなり極論にはなるかもしれないけど、私は一貫して有期雇用のマイナス面を指摘しているので、有期雇用は原則禁止した方がいいと考えている。人間の尊厳のために仕事は必要だし、有期契約のような不安定な仕事は、人間の尊厳を満たすには十分ではない。生きる力の土台をも奪うものだ。 ただ、その一方で、非正規社員、正社員に関係なく企業とのつながりが不安定になり、同時に企業と働く人との繋がりが重要ではなくなってきていることも否定できない。 その上で、改めて考えると、働く人が生きていく上で、仕事ができることと、生活を送るのに十分な収入があることを、法律で担保することが極めて重要になる。 くしくも、厚労省メール問題が浮上したのと時を同じくして、日本企業が持つ「内部留保(利益剰余金)」が7年連続で過去最大を更新したと財務省が発表した。2018年度の金融業・保険業を除く全産業の「利益剰余金」は463兆1308億円で、前年に比べ3.7%も増えていたのだ。 使わないでため込んでいるくらいなら、まずは非正規の賃金を上げるよう政府は“通達メール”でも出してはどうか。 あと数週間で消費税も上げられるのだ。 政府は消費が一向に盛り上がらないと嘆いているけれど、4割も非正規がいるのだから、使おうにも金がない世帯が増えているわけで。徹底的に「労働者を保護する」という観点に立てば、できることはたくさんある。 変えるべきは「非正規」のイメージではなく、差別的な働かせ方だ』、最後の部分は諸手を上げて同意する。
タグ:橘玲 格差問題 日経ビジネスオンライン 河野龍太郎 ダイヤモンド・オンライン 河合 薫 『サピエンス全史』 (その5)(“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、正社員「逆ギレ」も 非正規の待遇格差が招く荒れる職場) 「“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』(上・下)」 個体の制約から解放されたデータ処理能力は、ヒエラルキーの強化や仕事の細分化で、一段と効率化する。それが、人類が集団として進歩した理由だ 300年前には自由主義など人間至上主義が誕生し、その追求の結果、人類を長年苦しめた飢餓や疫病、戦争の三つの大きな問題は20世紀末にほぼ解決された 人間中心の考えをさらに推し進め、今や私たちは、不死や至福という神の領域に踏み込もうとしている いずれ体だけでなく、頭脳や精神状況もモニターされ、自分以上に自分を知るネットワークシステムが誕生し、人間はその支配下に入る。人間は脇役に追いやられ、データ至上主義の時代が訪れる データを握りアップグレードを続けホモ・デウス(デウスは神)となったエリートが支配する階級社会の到来を警告する 私たち日本人は、自然との共生を重んじ、人間中心主義だけを拠(よ)り所(どころ)としてはこなかった。幅広い生物に仏性を認めるだけでなく、神と人を区別せず、万物を神と崇(あが)める土着信仰もある。西欧近代主義の帰結がホモ・デウスだとしても、別の未来も描けるように思えるが、手遅れなのか 「「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?【橘玲の日々刻々】」 あらゆるテロに共通する犯人の要件がひとつあります。それが、「若い男」です テストステロンが攻撃性や暴力性と結びつくことで説明 日本の「特殊性」は、川崎のスクールバス殺傷事件の犯人が51歳、今回の京アニ放火事件の容疑者が41歳、元農水省事務次官長男刺殺事件の被害者が44歳など、世間に衝撃を与えた事件の関係者の年齢が欧米よりかなり上がっていること 日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中 当時、正社員になることができず、その後も非正規や無職として貧困に喘ぐ彼らは、ネットの世界では自らを「下級国民」と呼んでいます この国で続発するさまざまな事件は、「下級国民のテロリズム」なのかもしれません 「正社員「逆ギレ」も、非正規の待遇格差が招く荒れる職場」 「非正規と呼ぶな!」と指示したメールが厚生労働省内に出回った 「労働経済の分析」(労働経済白書)で、1997年と2007年の年収分布を比較し、10年間で年収が100万~200万円台半ばの低所得者の割合が高まり、労働者の収入格差が広がったのは、「労働者派遣事業の規制緩和が後押しした」と自ら国の責任を認めていた この期に及んで言葉狩りに加担するとは実に残念である 「非正規」の言葉を避ける“空気”が醸成されている 「非正規雇用」vs「正社員」という構造が生まれた バカにされたくない“正社員”が契約社員を責める 身分格差”問題は、日本の労働史を振り返ると「男社会」により生まれた 非正規社員が正社員より給与が高い国も 「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるのだ EU諸国の中には、原則的に有期雇用は禁止し、有期雇用にできる場合の制約を詳細に決めているケースも多い 変えるべきは「非正規」のイメージではなく、差別的な働かせ方だ
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宗教(その2)(宗教施設が一等地に突然建つ裏事情 反社会的勢力の元構成員が暴露、科学が「神の領域」に近づいた今 改めて「宗教の役割」が見直される時代がくる、日本人の「宗教偏差値」が世界最低レベルになった3つの理由、間違いだらけのイスラーム教!日本人は なぜこうも誤解してしまうのか?) [社会]

宗教については、昨年10月9日に取り上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(宗教施設が一等地に突然建つ裏事情 反社会的勢力の元構成員が暴露、科学が「神の領域」に近づいた今 改めて「宗教の役割」が見直される時代がくる、日本人の「宗教偏差値」が世界最低レベルになった3つの理由、間違いだらけのイスラーム教!日本人は なぜこうも誤解してしまうのか?)である。

先ずは、昨年10月12日付けダイヤモンド・オンライン「宗教施設が一等地に突然建つ裏事情、反社会的勢力の元構成員が暴露」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/181610
・『『週刊ダイヤモンド』10月13日号の第1特集は「新宗教の寿命」です。3大新宗教である創価学会、立正佼成会、真如苑を中心に、信者数や政治力、将来予測、課題、そして金の流れや周辺ビジネスまで、大解剖しています。教団を問わず、宗教法人は突然、巨大な宗教施設を一等地に建設します。なぜそんな事が可能なのでしょうか。その裏側を特集班が取材しました。本誌掲載記事をダイヤモンド・オンラインで特別公開します』、興味深そうだ。
・『税制優遇だけではない 反社会的勢力の元構成員が暴露  なぜ宗教法人はある日突然、都心のみならずあなたの住む街にも巨大でゴージャスな教団施設を建てることができるのだろうか。 よくある説明では、宗教法人はその原資となるお布施や寄付といった収入などが税金面で優遇されているため、宗教施設の取得・維持が企業などよりも容易だからだとされる。 だが、「それは事実だが片手落ちだ」と苦笑するのは、かつて反社会的勢力の一員だった男性だ。 男性は組織にいたころ、「複数の新宗教教団の不動産売買を幾つも手掛けた」と具体事例を挙げながら明かした。特に10年ほど前まで、新宗教団体による自前施設の取得が全国で盛んに行われたという。 「より重要なのは、新宗教の施設が『迷惑施設』だということ。非信者の目には奇異に映る新宗教団体にも売ってくれる(または貸し出す)物件をどう探し出すか。そして、住民の反対をいかに抑えるか。これは反社会的勢力のテリトリーだ」(男性) また、ある新宗教教団が新たな場所に拠点を構えようとすると、先に進出していた別の新宗教教団の妨害が起こることもある。そういう場合も組織が後ろ盾となるという。 「組織側が地元の不動産業者と組み、候補となる物件を教団側に幾つか提示する。その多くはいわく付きの物件。カネは腐るほど持っているので糸目は付けない。相場よりも法外に高い値段で売れる。お互いにウィンウィンの関係だ。その意味で彼らは、非課税でたんまりもうけていても、“ウラの税金”を支払っている」 崇高な理念を掲げる新宗教教団の施設建設には、神も仏もない現実が隠されていることもあるのだ』、「新宗教の施設が『迷惑施設』だということ。非信者の目には奇異に映る新宗教団体にも売ってくれる(または貸し出す)物件をどう探し出すか。そして、住民の反対をいかに抑えるか。これは反社会的勢力のテリトリーだ・・・ある新宗教教団が新たな場所に拠点を構えようとすると、先に進出していた別の新宗教教団の妨害が起こることもある。そういう場合も組織が後ろ盾となる」、「神も仏もない現実が隠されていることもある」、想像以上に酷い実態があるようだ。

次に、元外交官の山中俊之氏が8月23日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「科学が「神の領域」に近づいた今、改めて「宗教の役割」が見直される時代がくる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/211972
・『アメリカ・ヨーロッパ・中東・インドなど世界で活躍するビジネスパーソンには、現地の人々と正しくコミュニケーションするための「宗教の知識」が必要だ。しかし、日本人ビジネスパーソンが十分な宗教の知識を持っているとは言えず、自分では知らないうちに失敗を重ねていることも多いという。本連載では、世界94カ国で学んだ元外交官・山中俊之氏による著書、『ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)の内容から、ビジネスパーソンが世界で戦うために欠かせない宗教の知識をお伝えしていく』、確かに多くの日本人は宗教に無知なので、「世界で戦うために」は不可欠の知識だ。
・『宗教と科学が未来のカギを握る  国際的な場で、現在の世界が抱える問題や未来の課題について論じるとき、外国人や異なる宗教を信じる人とやりとりすることがあります。その際は、宗教の知識を土台に、自分ならではの意見を伝えることが極めて重要です。同時に、相手の立場、歴史観、宗教観に寄り添うことができてこそ、世界における教養人となります。 「現在の問題や未来の課題に、宗教は関係ないのでは?」と思う人もいるかもしれません。 確かに進化論や相対性理論が提唱され、二一世紀はゲノム編集や人工知能など、人類はまさに「人智を超えた神の領域」と思われていたところに足を踏み入れつつあります。もはや人間ができないことなど存在せず、宗教は神話の世界に封じ込まれるかのようにさえ思えます。しかし、私の意見は異なります。 宗教は科学など存在しない古代に起こり、中世までは「人智を超えた世界」と「人間がわかっている現実世界」の間に、まだまだ距離がありました。 だからこそ人々は、神を恐れながらも尊重していたのでしょう。落雷とエネルギーの関係もわからず、万有引力の法則もなかったら、その答えを宗教に求めても不思議はありません。また、「自分とは、生と死とは? 災害はなぜ起こるのか?」という人類共通の課題に答えを出すものは宗教しかありませんでした。 当時、必要不可欠だった宗教はそれぞれ系統立てて整理されながら、世界へと広がっていったのです。 近代になると科学が進歩し、様々な解けなかった謎が解けていきます。なぜ嵐が起きるのか、なぜ病にかかるのか、合理的に説明できることが増え、科学によって人類共通の課題への答えが出されることで宗教のニーズが相対的に下がっていきました。 民主主義の広がりによって、政治が宗教の権威を借りないことも多くなり、政教分離の観点から、宗教を用いた政治はむしろ忌避されるようになったのです。 宗教の重要性が薄らぐ流れは、つい最近まで続いていたと思います。 ところが二一世紀になった今、科学があまりに進歩していくなかで、なおざりにされてきた倫理や哲学が改めて問われるようになってきています。 「科学技術で人を誕生させることができるとしても、本当にやっていいことなのか?」 「医学によって命を永らえることと、満たされた死を迎えることは両立するのか?」 まさにこうした問いが突きつけられています。私たちはあたかも万能なもののように科学に魅了されて近代を生きてきました。しかし、科学はかなり進歩したとはいえ、災害や死の謎について完全に解き明かしたわけではないのです。これからは、改めて宗教の役割が見直される時代がくる――私はそのように考えています。 科学ばかりではありません。絶えることのない紛争、拡大し続ける経済格差についても、科学や論理ではなく、宗教が持つ倫理観や道徳が解決のヒントを与えてくれる、そんな気がします。 ただし、これから述べるのは、今わかっている事実に私の見解をつけ加えているにすぎません。 教養に知識は必要ですが、知識だけではグローバルな教養は身につきません。大切なのは読者のみなさんが、宗教をはじめとした知識をもとに批評的に事象を考えること。そして、その思考訓練によって、「独自の見識」を持っていただくことです。 知識に裏打ちされた自分の意見をしっかりと持つことは、ビジネスパーソンとしてのブランディングにもなり、仕事上のリアルな局面でも役立つでしょう』、「科学はかなり進歩したとはいえ、災害や死の謎について完全に解き明かしたわけではないのです。これからは、改めて宗教の役割が見直される時代がくる」、「絶えることのない紛争、拡大し続ける経済格差についても、科学や論理ではなく、宗教が持つ倫理観や道徳が解決のヒントを与えてくれる」、というのは確かだろう。
・『AIは人を超えるのか?  私たちの生活のなかに、すでにAIは溶け込んでいます。たとえば、グーグルアシスタントやアップルのSiri、アマゾンのアレクサは人工知能ですし、テレビや掃除機などの家電にもAIが搭載されています。自動車業界もAIモデルの開発を進めており、自動運転は技術的にすでに可能になっています。 これは世界的な動きですが、そのなかで日本人はやや特殊といわれています。それは、「ヒューマノイド」といわれる人間と同じ姿形をしたAI搭載の人型ロボットを好む点です。 たとえば、大阪大学の石黒浩教授はタレントのマツコデラックスにそっくりな「マツコロイド」や自身に似せたヒューマノイドを製作しています。私も日本科学未来館でヒューマノイドを見て、「限りなく人に近づける」という、そのこだわりように驚嘆しました。 日本人が抵抗なく人間と同じものをつくるのは鉄腕アトムの影響もあるかもしれませんが、仏教・神道の影響が非常に大きいと私は考えています。 ユダヤ・キリスト教の価値観で言うと、人間と機械はまったく違うもの。この世に存在する動植物も人も神のつくったものですが、なかでも人間は特別な存在です。動植物を含めた自然や機械は人間が支配する対象であり、「支配すべき存在を、神がつくりたもうた人間に似せるなんてとんでもない!」となり得るのです。 ゆえにヒューマノイドは、ユダヤ・キリスト教文化から見るといささか気持ちが悪く、抵抗感が強いこともあります。だから創作の世界で人型ロボットをつくるときも、欧米ではサイボーグという金属的な造形のものが比較的多いのでしょう。 そういえばAI機能に特化しているグーグルホームやアレクサは「機械そのもの」という非常にシンプルな形をしています。仮に日本の会社で日本人が開発したら、かわいらしい人間型であったかもしれません。 AIについてはしばしば「神の領域に到達するのか」という議論があります。人間の能力を超え、多くの仕事はAIが担うようになると盛んにいわれていますし、優れた頭脳を持つ囲碁や将棋のプロが、AIに敗北した例もあります。 私の個人的な意見を言えば、「AIが神の領域に到達する」というのは、失礼ながら科学信奉者の思い上がりではないでしょうか。 確かに、データ分析やそれにもとづく一定の判断という面では、AIは人間の脳を凌駕するかもしれません。しかし、人間の心や感情まで科学の力でつくり出せるかと言えば、甚だ疑問です。 科学の専門家ほど、「科学は神を超える」というのは言いすぎだとわかっているのではないでしょうか。人工知能をつくり出せるだけで「神」としてしまうのは、あまりにも神の力、言葉を変えれば人智を超えた力を矮小化しています。 イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの世界的ベストセラー『ホモ・デウス』(河出書房新社)は、これからの社会はヒトより優れたアルゴリズムによる「データ至上主義」に支配され、それを生み出せるものは「超人=ホモ・デウス」になると予言しています。 ホモ・デウスを神と同一視しないまでも、このようなデータ至上主義の時代には、これまでの人間の存在範囲、能力範囲を超える情報があふれることになり、そこで判断を誤らないようにするのは、容易ではありません。 人間のキャパシティを超えるデータの中で生きていくのであれば、宗教を含めた「人智を超えた存在」への理解が再評価されるべきだと私は考えています』、「ヒューマノイドは、ユダヤ・キリスト教文化から見るといささか気持ちが悪く、抵抗感が強いこともあります。だから創作の世界で人型ロボットをつくるときも、欧米ではサイボーグという金属的な造形のものが比較的多いのでしょう」、というのはなるほどと納得した。「人間のキャパシティを超えるデータの中で生きていくのであれば、宗教を含めた「人智を超えた存在」への理解が再評価されるべき」、というのはそうなのかも知れないが、割り切れないものが残る。
・『遺伝子研究で「才能」も買えるようになる?  AIはどれだけ優秀でもあくまで機械であり、人間はいまだゼロから生命をつくり出すことはできません。しかし逆に言えば、ゼロは無理でもイチの生命をコピーし、編集するところまで科学技術は進んでいます。 その代表と言えるのが遺伝子研究。難病治療などに役立つと考えられており、「人間の遺伝子を自由に編集する」といわれるクリスパー・キャス9という技術を発明した学者はノーベル賞候補だともいわれています。 二〇一八年の終わりには、中国の科学者がゲノム編集によって「エイズウィルスへの抗体を持った双子の赤ちゃんを誕生させた」と発表して世界を揺るがせました。このニュースの真偽はさておき、遺伝子は生命のあり方を決める重要な指令のようなもの。 「遺伝子改変が技術的に可能になったとしても、行っていいのか?」「生命のあり方という、言わば神の領域に踏み込むことは倫理的に許されるのか?」 世界中の科学者、哲学者、政治家、宗教家が議論を重ねています。 プロテスタントには「神から天職、才能を与えられた」という概念がありますが、しかし才能が科学でつくれるとしたらどうでしょう? 「美しくて優秀な人間」「病気にならず、身体能力が高い人間」が遺伝子の改変によって誕生すれば、人は神から与えられるはずの能力を人為的に手にできるようになります。 また、受精卵から人間であると考える宗教観を持つ人々は、人間のゲノム編集に反対する可能性もあります(現時点では私の知る限り宗教界からの強い反対はありませんが)。 人為的とは、言い換えれば「お金の力」。最先端の遺伝子操作が高額なものだとすれば、豊かな人はお金の力で優秀で健康な子どもを生み、その子どもは高い能力を生かして成功し、子孫もますます豊かになるという連鎖が起きます。 病気や怪我をしてもお金持ちであれば、ゲノム編集のような最先端技術で健康を取り戻せるかもしれません。そうなれば、「健康な天才ぞろいの富裕層」と「普通の人と弱い人からなる貧困層」が誕生するでしょう。 かつて、ナチスは「優秀なアーリア人」をつくろうと、非道な人体実験を行いました。これは明らかに犯罪ですが、今後「科学の発展」の名のもとに、似たようなことが世界規模で行われる危険すらあります。これは科学者だけに任せておいて良い問題ではありません。 このように遺伝子研究とは、宗教や倫理の問題ばかりか、私たちにとってより身近な社会的格差につながるという問題もはらんでいるのです。 確かに、難病から救われる人が増えるのは素晴らしく、研究が進むこと自体は歓迎されるべきです。しかし、生態系への影響もあるでしょう。生物はお互いつながっているので、人類のあり方、地球のあり方すら変えてしまう可能性に配慮しなければなりません。 これだけ科学が進んでいても、人間はゼロから生命をつくる技術を持っておらず、微生物すらつくり出せていません。いうまでもなく人工知能は生命ではなく、生命を持つクローンにせよ、今ある生命の複製です。iPS細胞は細胞をゼロからつくり出すものではなく、すでにあるものをもとにしています。まだまだ畏敬の念を抱くべき「神の領域」は残っているということでしょう。 「人間とは何か」を真摯に問い、「人智のおよばない領域」に想いを馳せながら、私たち一人一人が科学と向き合っていく。それには、改めて宗教が必要とされるのではないでしょうか』、「宗教」まで求めるかはともかくとして、謙虚な気持ちを忘れないようにしたいものだ。

第三に、上記の続きを、8月30日付けダイヤモンド・オンライン「日本人の「宗教偏差値」が世界最低レベルになった3つの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/211948
・(冒頭省略) 日本の宗教偏差値が低い三つの理由  もしも「世界宗教偏差値」があるとしたら、日本はおそらく世界最低レベルです。理由はいろいろありますが、私は次の三つの影響が大きいと考えています。 1 地理的な理由 世界5大宗教のうち、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三つは発祥が中東ですが、中東で生まれた宗教が伝わるには、日本は距離があります。残る二つのうちヒンドゥー教と仏教はインドで生まれ、日本には中国経由で仏教のみ伝わりました。 また、島国でもあるので、世界の宗教を信じる他民族と本格的な戦争もあまりありませんでした。日本的な宗教観・価値観でぬくぬくとやってこられたのです。 2 神道がもともとあり、その上に仏教を受け入れた 仏教が日本に伝来したのは六世紀半ばですが、当時の日本にはすでに神道が存在しました(もっとも、この時代には神道という言葉は使われておらず日本古来の民族宗教と言ったほうがより正確です)。 この神道というのは自然崇拝がベースになっています。「空にも海にも山にも川にも、自然界のすべてに神様がいる」という考えですから、キリストやムハンマドやお釈迦様のような開祖もいなければ、聖書やコーランのように、教えを系統化したものもありません。 宗教とはっきり意識しないまま、八百万(やおよろず)の神様を信じ、神様を信じたまま仏教を受け入れたのですから、曖昧になるのもうなずけます(世界でも自然信仰をしている上に新たな宗教を受け入れたところは多数ありますが、もともとの宗教は多くの場合現存していません)。 このような曖昧な宗教観の上には、難しい教義や厳しい戒律はなじみにくいと考えられます。 3 江戸時代の檀家制度と明治以降の国家神道 一六~一七世紀になるとキリスト教が世界的な布教活動を展開しましたが、日本では豊臣秀吉や徳川家康により禁教とされ、全国民が仏教徒としてどこかのお寺に属すること(檀家と言います)になりました。 この檀家制度は、寺を幕府や藩の下部的な行政組織として位置づけるものであり、仏教本来の宗教的側面は失われてしまいました。寺は、檀家である住民を管理・監視して、後は葬式だけをしていれば良いということになったのです。 明治時代には、その仏教も一時期弾圧され、天皇を神のように崇める「国家神道」となりました。人間である天皇を神とするという考え方は、世界の他の宗教とはまったく異質のものです。 第二次世界大戦終了後、それが全否定される一方、一部の新興宗教の犯罪や不祥事に関する報道により「宗教には近づかないほうが良い」という意識が高まりました。こうして、宗教偏差値が最低レベルの国となってしまったのです。 日本への外国人観光客の数は急増中で、二〇一八年には、初めて三〇〇〇万人を超えました。従来型の東京の都心や富士山、京都の有名社寺といった観光地に加え、高野山、日光、平泉などにも多くの外国人が訪れています。 外国人観光客の日本の宗教への関心が高まっていることは確実であり、外国人観光客に日本の宗教について話ができるようになれば、人間関係の構築も進み、宗教偏差値も上がることでしょう』、「日本的な宗教観・価値観でぬくぬくとやってこられた」、「曖昧な宗教観の上には、難しい教義や厳しい戒律はなじみにくいと考えられます」、「第二次世界大戦終了後、それ(国家神道)が全否定される一方、一部の新興宗教の犯罪や不祥事に関する報道により「宗教には近づかないほうが良い」という意識が高まりました。こうして、宗教偏差値が最低レベルの国となってしまったのです」、というのはクリアな特徴づけで、大いに参考になる。
・『もしも中国人に「スシの握り方」を習ったら?  日本、韓国、ベトナムなど東アジアの国々は中国の影響を強く受けています。宗教にしてもそれは同じ。つまり日本に入ってきた仏教は、「中華味の仏教」なのです。 あなたも海外旅行に行った際、外国人がつくる日本料理を食べて「ん? なんか違う」と感じたことがあるでしょう。それはたいてい現地に住んでいるアジア人が経営する店だからです。 もしも欧米人が、現地で日本料理店を経営する中国人に「スシの握り方」を習ったとしたら、それは本来の寿司とは、かなり違うものになるはずです。 これと同じく中国の仏教は、インド発祥のもともとの仏教とは異なります。インドで生まれた初期仏教から枝分かれした大乗仏教が主に東アジアに広がったのですが、中国にきた時点で、孔子を祖とする儒教や、古代からある民間信仰に道家の思想を合わせた道教が混ざり合ったものになりました。中華味の仏教の誕生です。 中華味の仏教が日本にやってきて、もとからあった神道と混じり合ってできたのが日本の仏教ですから、本来の仏教とはいろいろと違っています。 たとえば、インドで仏教が生まれた頃、仏教の開創者であり悟りを開いた後は釈尊と呼ばれるガウタマ・シッダールタは、「男女を差別してはならない」と説いていました。 ところが中国に渡ると儒教の影響を受け、仏教は女性差別的なものになります。ゆえに日本に伝わった仏教の教えのなかには「女性の場合、男性に生まれ変わらないと成仏できない」と考える、変成男子という言葉があるのです。 また、中国では儒教の影響のため、仏教がより国家や皇帝の権威に近い位置づけになりました。 つけ加えておくと、伝来の過程で宗教が変化していく現象は、仏教に限った話ではありません。たとえば、中東のイスラム教と東南アジアのイスラム教とでは戒律の厳しさなどが違います。アラビア半島発祥のイスラム教が伝来する過程で、東南アジアでは現地の文化や宗教と融合していき、中東のような厳格さが失われた面があります』、「中華味の仏教の誕生」とは言い得て妙だ。「インドで仏教が生まれた頃、仏教の開創者であり悟りを開いた後は釈尊と呼ばれるガウタマ・シッダールタは、「男女を差別してはならない」と説いていました」、というのは初耳だ。「アラビア半島発祥のイスラム教が伝来する過程で、東南アジアでは現地の文化や宗教と融合していき、中東のような厳格さが失われた面があります」、イスラム教でも、「伝来する過程」で同じコーランがありながら、「中東のような厳格さが失われた面があります」、伝わり方で変化することは避けられないようだ。
・『東アジアを一歩出たら「宗教の知識」が特に必要  かつて毛沢東はダライ・ラマに対し「宗教は毒だ。宗教は二つの欠点を持っている。まずそれは民族を次第に衰えさせる。第二に、それは国家の進歩を妨げる。チベットとモンゴルは宗教によって毒されてきたのだ」と断じました。やがて二人は決定的に断絶し、宿敵となりました。 二〇一九年現在の中国は、共産党の支配下にない宗教が弾圧される国です。新疆ウイグル自治区に住むイスラム教徒に宗教弾圧を行い、「地下教会」と呼ばれる非公認教会の牧師を逮捕するなどキリスト教にも圧力を加えています。中国には非公認教会を含めるとキリスト教徒が一億人近くいるとの報道もあり、社会的に小さな問題ではありません。 また、カトリック信者への影響を嫌った中国政府は、バチカンとも外交関係がないのです(もっとも近年は関係修復の動きがあるようですが)。 韓国では、最近キリスト教信者が増加していますが、日本と同じく「中華味の仏教」や儒教の影響が強い国です。中国や韓国でも宗教についての知識がないと失敗することはありますが、儒教や、中国の場合には共産主義の影響もあり、宗教について曖昧であったり、社会の前面に出てこなかったりします。 しかし、宗教の影響が比較的弱いのはこれら東アジアの国々に限られます。そこでビジネスパーソン対象のグローバル研修の際、私はしばしば「東アジアを一歩出たら、宗教のことに特に気をつけてください」とアドバイスしています。 敬虔な仏教徒が多いタイ、カトリックが多いフィリピン、イスラム教徒も多く住むインドネシアやマレーシア。シンガポールは多民族国家だけあって、人種ばかりか宗教のるつぼです。 日本のビジネスパートナーとして、今後関係が深まっていく東南アジア諸国は、「宗教偏差値が高い国」と考えておくべきです。 なにより日本に対して多大な影響力を持つアメリカは、世界でもトップレベルの宗教的な国家。そんなアメリカ人が、日本人に自分たちの宗教の話をしてくることが少ないのは、「よく知らないだろう」と思っているからです。それなのに日本人が雑談をしているうちに宗教に関連する話題になり、無知であるために地雷を踏むパターンが多い……。 これはアメリカ生活が長い友人の意見ですが、私もそう感じます。 また、欧米の人たちが聞きたがるのは、日本人から見たユダヤ教、キリスト教の話ではなく、自分たちがよく知らない仏教や神道についてです。宗教偏差値を上げるには、まず、自分たちの宗教を知っておくことが大切です。 さらに最先端とされているIT企業はグローバル企業でもありますが、そこで働く人々は、現在アメリカでも人気が高まっている禅や瞑想への興味から「日本人なら仏教について詳しく教えてくれるだろう」という期待を持っています。 話題にのぼる可能性が非常に高いのに、まったく答えられないのは危険です。 「今のままの宗教偏差値ではまずい!」 最低限、この意識は必要ではないでしょうか』、確かにその通りだ。これからは、このブログでも宗教の問題を取上げる頻度を上げていきたい。

第四に、8月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元ライフネット生命社長、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏へのインタビュー「間違いだらけのイスラーム教!日本人は、なぜこうも誤解してしまうのか?」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://diamond.jp/articles/-/211594
・『世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU(立命館アジア太平洋大学)学長。歴史への造詣が深いことから、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では世界史の講義を受け持った。 その出口学長が、3年をかけて書き上げた大著がついに8月8日にリリースされた。聞けば、BC1000年前後に生まれた世界最古の宗教家・ゾロアスター、BC624年頃に生まれた世界最古の哲学者・タレスから現代のレヴィ=ストロースまで、哲学者・宗教家の肖像100点以上を用いて、世界史を背骨に、日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説したとか。 なぜ、今、哲学だけではなく、宗教を同時に学ぶ必要があるのか? 脳研究者で東京大学教授の池谷裕二氏が絶賛、小説家の宮部みゆき氏が推薦、原稿を読んだ某有名書店員が激賞する『哲学と宗教全史』。発売直後に大きな重版が決まった出口治明氏を直撃した』、『哲学と宗教全史』とは意欲的なタイトルだ。
・『八百屋の主人でも聖職を兼業できる  Q:日本人は、なぜイスラーム教を誤解してしまうのでしょうか。なぜ、イスラーム系のテロ組織は多いのでしょうか。 出口:イスラーム教は、ユダヤ教とキリスト教と同じYHWH(ヤハウェ)を唯一神とするセム的一神教です。最後の審判で救われた善人は天国へ、悪人は地獄に行きます。そして唯一神YHWHをアッラーフと呼びます。アッラーとも呼ばれますが、現在ではアッラーフの呼称のほうが一般的なようです。 イスラーム教の聖書に相当するものは『クルアーン』で、原義は「詠唱すべきもの」の意味です。クルアーンには、イスラム教の開祖、ムハンマドが神から託された言葉が書かれています。 Q:イスラーム教の特徴を教えていただけますか? 出口:イスラーム教の大きな特徴は、キリスト教や仏教のような専従者(司祭や僧)がいないことです。すなわち教会や寺院を経営して、布教や冠婚葬祭などを専門とする聖職者が存在しません。 イスラーム教では、たとえば八百屋の主人が聖職を兼業していて、必要なときは法衣を着てクルアーンを読み、儀式を進行させます。ですからイスラーム教では、聖職者の生活のために寄付をする必要がありません。モスクと呼ばれる寺院や墓地などの管理は、自治体やNPO的な組織が行います。イスラーム教を学ぶ大学も、もちろん存在します。そして神学者も存在します。しかし、専従者はいないのです。 イスラーム教の信者はインドネシア、パキスタン、バングラデシュ、インド、マレーシアなど、東南アジア各国に数多く存在します。 アジアの人たちはイスラームの商人を見て、自分たちもイスラーム教を信じれば、もっと商売がうまくいくようになるかなと思ったことでしょう。 イスラーム教には専従の聖職者はいませんから、たとえばインドネシアの商人で、イスラーム教に興味を持った人がビジネス相手のアラビア人に、「イスラーム教徒になりたい」と言えば、仲間の商人や船乗りで聖職者を兼業している人が仲介してくれます。そういう気安さが、この地方に信者を増やしていったのです』、イスラーム教には「教会や寺院を経営して、布教や冠婚葬祭などを専門とする聖職者が存在しません」、イランには「最高聖職者」がいる筈だが、これは国や宗派による違いがあるのだろうか。
・『シーア派とスンナ派が争う理由  Q:イスラーム圏ではシーア派とスンナ派が、常に争っているように認識している人が多いのではないでしょうか。なぜ、2つの派は争っているのですか? 出口:シーア派とスンナ派の対立は、実は宗教的な対立ではありません。キリスト教では、ローマ教会とプロテスタントとの間に激しい宗教戦争が起きましたが、イスラーム教の世界では、何が真実の教えかという疑念や対立は生じませんでした。 それでは、シーア派とスンナ派の対立点は何か。極言すれば、派閥争いです。本書に詳しく説明していますが、スンナ派とシーア派は、「誰を現世のリーダーと考えるのか」を争っているのであって、イスラーム教の教義に関わる争いではありません。 「スンナ派とシーア派の争い」という言葉が、よくジャーナリズムには登場します。しかしそのほとんどの事例をよく見ると、原因となる部分に、西欧列強が石油資源などの利権を得て、それを守るために起こした政争が内在していると思われます』、「西欧列強」の分断支配がきっかけになったとはいえ、「政争」が長期化し、定着したのではなかろうか。
・『なぜ、イスラーム原理主義によるテロ行為が起きるのか?  Q:「イスラーム原理主義によるテロ行為」などという表現で、中東の争乱が語られることがあります。なぜ、イスラーム原理主義はテロ行為を起こすのでしょうか? 出口:もともと原理主義という言葉は、アメリカで19世紀末から20世紀初頭に盛んになった、過激なキリスト教のグループを指す言葉でした。この言葉がイスラーム教に転化されたのです。 ではなぜ、ISなどが「ムハンマドに帰れ」とか「クルアーンの世界に戻せ」とかを主張するのか。 それは歴史的に見ると、イスラーム世界も中国や日本と同じように、産業革命とネーションステート(国民国家)という人類の2大イノベーションに、乗り遅れたからです。 日本は明治維新によって、どうにか世界の趨勢(すうせい)に追いつきました。しかし一部の中東のイスラーム世界は、うまく追いつくことができなかったのです。 ISの主張は、わが国の明治維新の際の「尊皇攘夷(そんのうじょうい)」や「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」の考え方によく似ています。現代の中東の窮状は、優れた政治的指導者が登場しない限り、なかなか挽回できないかもしれませんが、それはイスラーム教の教義とは何の関係もない、歴史的、政治的な問題だと思います。それと、頻発するテロ行為については、ユースバルジの問題も視野に入れるべきでしょう。 Q:ユースバルジとは、何ですか? 出口:ユースバルジ(youth bulge)とは、「若年層の膨らみ」の意味です。政情が不安定で経済が低迷している中東では、人口の多い10代から20代の元気な若者が働きたくても働く場所がありません。イラクもシリアも国が壊されているのです。 若者がたくさんいる、けれども働く場所がない。一方でこれらの若者も恋をしたい、デートをして充実した青春をすごしたいと思っている。でも働けないからお金がないし、娯楽の機会も少ない。 そこでこれらの国の若者は、絶望してテロに走ってしまう……。このようなユースバルジが、中東のテロ問題の基底部分を形成していると考えられます。 Q:テロとイスラーム教を表裏一体の問題として考えてはいけないのですね。 出口:そう思います。もちろんイスラーム教の置かれている現状と無関係ではないかもしれませんが、表裏一体の問題として考えるのは、極端すぎると思います。 むしろ、ユースバルジのほうがはるかにテロとの親和性は高いと思いますね。 なお、ユースバルジについては、グナル・ハインゾーンの『自爆する若者たち 人口学が警告する驚愕の未来』(猪股和夫訳/新潮選書)という優れた本が参考になります』、「もともと原理主義という言葉は、アメリカで19世紀末から20世紀初頭に盛んになった、過激なキリスト教のグループを指す言葉でした。この言葉がイスラーム教に転化されたのです」、確かにその通りだ。「イスラーム世界も中国や日本と同じように、産業革命とネーションステート(国民国家)という人類の2大イノベーションに、乗り遅れたからです・・・ISの主張は、わが国の明治維新の際の「尊皇攘夷(そんのうじょうい)」や「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」の考え方によく似ています」、というのは本当に困ったことだ。「ユースバルジが、中東のテロ問題の基底部分を形成している」、そ通りだろう。
・『【著者からのメッセージ】 なぜ、今、「哲学と宗教」を同時に学ぶ必要があるのか? 現代の知の巨人・出口治明が語る  はじめまして。出口治明です。 今回、『哲学と宗教全史』を出版しました。 僕はいくつかの偶然が重なって、還暦でライフネット生命というベンチャー企業を開業しました。 個人がゼロから立ち上げた独立系生保は戦後初のことでした。 そのときに一番深く考えたのは、そもそも人の生死に関わる生命保険会社を新設するとはどういうことかという根源的な問題でした。 たどり着いた結論は「生命保険料を半分にして、安心して赤ちゃんを産み育てることができる社会を創りたい」というものでした。 そして、生命保険料を半分にするためにはインターネットを使うしかないということになり、世界初のインターネット生保が誕生したのです。 生保に関わる知見や技術的なノウハウなどではなく、人間の生死や種としての存続に関わる哲学的、宗教的な考察がむしろ役に立ったのです。 古希を迎えた僕は、また不思議なことにいくつかの偶然が重なって、日本では初の学長国際公募により推挙されてAPU(立命館アジア太平洋大学)の学長に就任しました。 APUは学生6000名のうち、半数が92の国や地域からきている留学生で、いわば「若者の国連」であり「小さな地球」のような場所です。 もちろん宗教もさまざまです。 APUにいると、世界の多様性を身に沁みて感じます。 生まれ育った社会環境が人の意識を形づくるという意味で、クロード・レヴィ=ストロースの考えたことが本当によくわかります。 僕は人生の節目節目において哲学や宗教に関わる知見にずいぶんと助けられてきた感じがします。 そうであれば、哲学や宗教の大きな流れを理解することは、間違いなくビジネスに役立つと思うのです。 神という概念が生まれたのは、約1万2000年前のドメスティケーションの時代(狩猟・採集社会から定住農耕・牧畜社会への転換)だと考えられています。 それ以来、人間の脳の進化はないようです。 そしてBC1000年前後にはペルシャの地に最古の宗教家ゾロアスターが生まれ、BC624年頃にはギリシャの地に最古の哲学者タレスが生まれました。 それから2500年を超える長い時間の中で数多の宗教家や哲学者が登場しました。 本書では、可能な限りそれらの宗教家や哲学者の肖像を載せるように努めました。 それは彼らの肖像を通して、それぞれの時代環境の中で彼らがどのように思い悩み、どのように生きぬいたかを読者の皆さんに感じ取ってほしいと考えたからに他なりません。 ソクラテスもプラトンもデカルトも、ブッダや孔子も皆さんの隣人なのです。 同じように血の通った人間なのです。 ぜひ彼らの生き様を皆さんのビジネスに活かしてほしいと思います。 本書では世界を丸ごと把握し、苦しんでいる世界中の人々を丸ごと救おうとした偉大な先達たちの思想や事績を、丸ごと皆さんに紹介します。 皆さんが世界を丸ごと理解するときの参考になればこれほど嬉しいことはありません。(目次の紹介は省略)』、リンク先で目次を一瞥すると、宗教と哲学の流れを理解するには、『哲学と宗教全史』は格好の本のようだ。
タグ:宗教 出口治明 ダイヤモンド・オンライン 派閥争い ユヴァル・ノア・ハラリ (その2)(宗教施設が一等地に突然建つ裏事情 反社会的勢力の元構成員が暴露、科学が「神の領域」に近づいた今 改めて「宗教の役割」が見直される時代がくる、日本人の「宗教偏差値」が世界最低レベルになった3つの理由、間違いだらけのイスラーム教!日本人は なぜこうも誤解してしまうのか?) 「宗教施設が一等地に突然建つ裏事情、反社会的勢力の元構成員が暴露」 税制優遇だけではない 反社会的勢力の元構成員が暴露 新宗教の施設が『迷惑施設』だということ。非信者の目には奇異に映る新宗教団体にも売ってくれる(または貸し出す)物件をどう探し出すか。そして、住民の反対をいかに抑えるか。これは反社会的勢力のテリトリーだ 先に進出していた別の新宗教教団の妨害が起こることもある。そういう場合も組織が後ろ盾となる 山中俊之 「科学が「神の領域」に近づいた今、改めて「宗教の役割」が見直される時代がくる」 『ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社) 宗教と科学が未来のカギを握る 二一世紀になった今、科学があまりに進歩していくなかで、なおざりにされてきた倫理や哲学が改めて問われるようになってきています これからは、改めて宗教の役割が見直される時代がくる AIは人を超えるのか? ヒューマノイドは、ユダヤ・キリスト教文化から見るといささか気持ちが悪く、抵抗感が強いこともあります。だから創作の世界で人型ロボットをつくるときも、欧米ではサイボーグという金属的な造形のものが比較的多いのでしょう 『ホモ・デウス』 遺伝子研究で「才能」も買えるようになる? 「日本人の「宗教偏差値」が世界最低レベルになった3つの理由」 日本の宗教偏差値が低い三つの理由 1 地理的な理由 日本的な宗教観・価値観でぬくぬくとやってこられたのです 2 神道がもともとあり、その上に仏教を受け入れた 曖昧な宗教観の上には、難しい教義や厳しい戒律はなじみにくいと考えられます 3 江戸時代の檀家制度と明治以降の国家神道 第二次世界大戦終了後、それが全否定される一方、一部の新興宗教の犯罪や不祥事に関する報道により「宗教には近づかないほうが良い」という意識が高まりました もしも中国人に「スシの握り方」を習ったら? 日本に入ってきた仏教は、「中華味の仏教」 インドで仏教が生まれた頃、仏教の開創者であり悟りを開いた後は釈尊と呼ばれるガウタマ・シッダールタは、「男女を差別してはならない」と説いていました 東アジアを一歩出たら「宗教の知識」が特に必要 「間違いだらけのイスラーム教!日本人は、なぜこうも誤解してしまうのか?」 『哲学と宗教全史』 イスラーム教の大きな特徴は、キリスト教や仏教のような専従者(司祭や僧)がいない シーア派とスンナ派が争う理由 イスラーム教の教義に関わる争いではありません 原因となる部分に、西欧列強が石油資源などの利権を得て、それを守るために起こした政争が内在している なぜ、イスラーム原理主義によるテロ行為が起きるのか? もともと原理主義という言葉は、アメリカで19世紀末から20世紀初頭に盛んになった、過激なキリスト教のグループを指す言葉でした。この言葉がイスラーム教に転化されたのです イスラーム世界も中国や日本と同じように、産業革命とネーションステート(国民国家)という人類の2大イノベーションに、乗り遅れたから ISの主張は、わが国の明治維新の際の「尊皇攘夷(そんのうじょうい)」や「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」の考え方によく似ています ユースバルジ(youth bulge)とは、「若年層の膨らみ」の意味 人口の多い10代から20代の元気な若者が働きたくても働く場所がありません。 著者からのメッセージ
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医療問題(その21)(相次ぐ高額医薬品 国民皆保険制度は維持できるか、がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤、健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ) [生活]

医療問題については、8月4日に取上げた。今日は、(その21)(相次ぐ高額医薬品 国民皆保険制度は維持できるか、がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤、健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ)である。

先ずは、8月8日付け日経ビジネスオンライン「相次ぐ高額医薬品、国民皆保険制度は維持できるか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00067/080600007/?P=1
・『発売当初は年間で約3500万円の費用がかかったオプジーボや、2019年5月に承認された1回投与で3349万円のキムリアなど、高額な医薬品の登場が相次いでいる。気になるのは医療保険財政への影響だ。日本が世界に誇る国民皆保険制度は、このまま維持できるのか。 このまま高額医薬品が増え続ければ、医療保険財政は破綻するのではないか――。オプジーボの登場以降、こうした議論が盛んに繰り広げられるようになった。財務省秘書課長の吉野維一郎氏(取材時の肩書は主計局主計官、厚生労働係第一担当)も「こうした高額医薬品が次々と出てくるようになれば、それなりに医療保険財政への影響はある」とみる。 医療保険財政が圧迫されれば、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入し、お互いの医療費を支え合う「国民皆保険制度」も揺らぎかねない。では、どう財政への影響を最小限にするか。現状は医薬品の公定価格(薬価)を下げる「薬価下げ」に頼っているが、これ以外にも財政負担を軽減するための手立てが検討されている。 代表的な例が、医療費の自己負担割合の見直しだ。現状では、病院や薬局で処方される医療用医薬品は原則3割負担で、75歳以上は1割負担となっている。 この負担率を、病気の重さによって変動させようという案がある。例えばドラッグストアなどでも購入できる一般用医薬品(OTC)があるなら、患者の負担額を引き上げるべきだという考え方だ。 湿布薬や鼻炎薬などのOTCには、医療用医薬品と同じ成分のものも多い。ところが、現状ではドラッグストアなどで市販薬を買うよりも、医師に処方してもらった方が患者が負担する金額は数分の1程度まで抑えられる。金銭的なメリットから気軽に病院に通う患者が少なくないが、負担率を上げれば、一定の歯止めをかけることができる。外来の診察料に定額負担を求めることで、割安な薬を求めて病院に足を運ぶ患者を減らす考え方もある。 財務省の吉野氏は「一般用医薬品がある薬は、保険でカバーするかどうかまで踏み込んでもよいのではないか。単価は小さいものの、合計すれば全体の薬剤費は決して小さくない」と話す。法政大学で財政学を専門とする小黒一正教授も、「市場規模が大きく、患者が負担する費用が小さいものから自己負担率を上げるといった見直しをすべきだ」と指摘する』、「ドラッグストアなどで市販薬を買うよりも、医師に処方してもらった方が患者が負担する金額は数分の1程度まで抑えられる。金銭的なメリットから気軽に病院に通う患者が少なくないが、負担率を上げれば、一定の歯止めをかけることができる」、こうした負担率引き上げは必須だろう。
・『一方で、強い口調でこれに反対するのが日本医師会だ。日本医師会は自由民主党の大票田としても知られ、政治的な影響力を持つ。日本医師会常任理事の松本吉郎氏は「“軽い病気の薬は保険から外すべき”という意見もあるが、日本医師会としては絶対に反対」と対抗姿勢を見せる。 同氏の説明によれば、初めは症状が軽くとも徐々に病気は重くなっていくのだから、軽症なときに医療保険でしっかりカバーして重症化を防ぐべきだという。また、そもそも実際に医師の診察を受けるまで本当に軽症かどうかは分からないとも説明し、医師による診察の重要性を訴える。 確かに、命に関わる病気であっても、軽い症状を示す病気はある。例えばがんの自覚症状は少なく、発熱や倦怠(けんたい)感、せきなど一見すると風邪と勘違いしかねない。患者の負担額を引き上げれば、通院を控える人が出て発見が遅れるということだ。 自己負担の在り方を巡っては、高額医薬品について、一定額を超える部分を自己負担にすべきだ、という案もある。所得水準によって、薬を手にできない患者も生まれかねないが、この場合は、民間の保険でカバーするという考え方だ。 製薬企業が取り組むべき課題もある。例えば、薬の値段の決め方。日本では製薬企業が開示する原価データを基に国が公定価格として決めるが、そもそもその原価計算が不透明との指摘がある。単にコスト面だけでなく、薬の価値を認めて欲しい、という意見も製薬業界にはあるが、少なくとも透明性を高める取り組みは欠かせないだろう。 医薬品の費用対効果を評価して、薬価に反映させる考え方もある。すでに2019年4月から同じ病気に使う新薬と既存薬の費用対効果を調べて、効果の割に新薬の価格が高いと判断されれば、薬価を下げる仕組みが導入されたが、これを古くからある薬にも適用すべきだ、という声も出ている。 40兆円を突破し、今後も高齢化を背景に増加するとみられている国民医療費。保険財政の破綻を危惧する声が大きくなる中で、国民一人ひとりがどう負担を分かち合うか。国民を巻き込んだ幅広い議論が欠かせないことだけは確かだ』、「同じ病気に使う新薬と既存薬の費用対効果を調べて、効果の割に新薬の価格が高いと判断されれば、薬価を下げる仕組みが導入されたが、これを古くからある薬にも適用すべきだ、という声も出ている」、当然のことだ。過度な抑制には問題があるとしても、まだまだ、抑制の余地は大きそうだ。

次に、外科医の中山 祐次郎氏が8月22日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00135/00010/?P=1
・『こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。 私の住む福島では、猛暑は足早に過ぎ去り、もう涼しくなってきました。考えてみればセミの声もそれほどうるさいと感じることはありませんでしたね。みちのくの夏はやっぱり少し短いのかな、と感じます。昨年は灼熱(しゃくねつ)の京都で過ごしたので、その落差で勘違いしているのかもしれませんが。 さて、今回も前回までに引き続き2019年6月に出した著書「がん外科医の本音」から、日経ビジネス電子版読者の皆様の関心が特に高そうな「がん検診」の項から引用してお届けします。 ここを書くにあたり、私は非常に多くの論文と医療ガイドラインを読み情報をあらためて精査し、市販のがん検診について書かれた本10冊以上に目を通すことで今世に流布している意見を把握しました。さらには、京都大学大学院医学研究科の健康情報学の教授に意見を仰ぎ、ディスカッションをした上で監修をしていただき、医学的な信頼性を担保しました。そこに、がんを専門とするいち医師である私の意見を付記しています。 非常に苦心して書きましたが、これほど情報を俯瞰(ふかん)し、さらに複数の専門家の見解をもとにまとめたものは他にないと自負しています。 それではどうぞ』、確かに「医学的な信頼性を担保」したのはさすがだ。
・『検診はすればするほどよいわけではない  誤解のある人が多いのですが、がん検診にはメリットとデメリットのどちらもあります。「検査をすればするほど、病気がちゃんと見つかっていいのではないか」「若い人全員にもしたほうがいいのではないか」と考えている方もいらっしゃるでしょう。実は、どちらも答えはNOです。 今回、皆さんにお伝えしたい最も大切なこと。それは、検診を受けるべきかどうかを決めるには「メリットとデメリットをてんびんにかけた結果、どちらが上回っているか」を考えなければならない、ということなのです。 そして、このてんびんにかけた結果は、「人によって答えが異なる」という点が極めて重要です。それはつまり、人それぞれの価値観によって結論が真逆になる可能性が十分にあるということを意味します。ですから、ここではまずメリットとデメリットを説明し、最後に私の価値観で考えた結果を本音でお話しすることにいたしましょう』、「メリットとデメリットをてんびんにかけた結果」は、「人によって答えが異なる」とhどういうことなのだろう。
・『ステージⅣで急激に悪くなる  まず、がん検診を受けることのメリットから。メリットは、「そのがんで死亡することを防ぐこと」です。がんというものは、原則的に「早期に見つけて早期に治療を行えば治るもの」。そして、「あるポイントを超えてしまうと、どんな名医がどれほどすごい治療を行ったとしても、どうしても治らないもの」でもあります。 では、あるポイントとはどこにあるのか。これは残念ながら、はっきり「ここ!」と分かるわけではありません。がんにかかってしまった人によっても、がんの種類によっても、そして治療法が年々進化している現代ではかかった時期によっても異なるでしょう。 ただ、だいたいの予測はつけられます。例えば私の専門の大腸がんであれば、ステージⅠの人が標準治療を受けると、5年後に生きている確率は97%を超えます。しかし、ステージⅡになると90%、ステージⅢでは84%と下がっていきます。そして、ステージⅣになると急に下がり、なんと20%ほどになってしまいます。 そうです。ステージⅣになると急激に悪くなるのです。これは大腸がんだけに限ったことではなく、多くのがんで見られます。それもそのはず。ステージは生存率を反映するように作っている面もあるからです。もう少し詳しくお話しすると、ステージⅣはほとんどのがんで「遠隔転移あり」という状況を指します』、「遠隔転移あり」では、「5年後に生きている確率」が「20%ほどになってしまいます」というのも納得だ。
・『2つの武器で「タチの悪さ」を見る  遠隔転移とは、最初にできたがんの臓器と離れた別の臓器にがんが転移してしまっている状態を指します。「なんだかタチが悪そう」と思いますよね。このタチの悪さを測るものは何でしょうか? そんな検査があったらいいのに、と思いますよね。 実は、現代の医学は2つの武器を持っています。1つは、「経過を見る」という方法です。これは、時間による経過を見ることで「がんの勢い」がどれほどかを推測するもの。例えば、もともとの大きさが1cmのがんがあったとして、2年かけて1.2cmになるものより、1カ月で大きさが5cmになり他の臓器に転移するもののほうがはるかにタチが悪そうです。現実的にはがんを放置することはなく、見つけたらすぐに治療をしますが、それでも検査や患者さんの仕事の都合などで1~2カ月ほど治療が遅れ、たまたま増殖スピードが見えてしまうことがあります。はからずもタチの悪さが見えてしまうのです。 もう1つは、「病理診断」という武器です。これは、調べたいがん細胞を取ってきて、その細胞を顕微鏡を通して見ることで、どれくらいタチが悪いかを測定することができます。現在では、乳がんなどでは「病理診断」の結果によって治療法が変わる場合もあるのです。 がん検診では、定期的に検査することで、がんがないかどうかをチェックします。ですから、タチがとても悪いものに対してはあまり効果を発揮することができません。1年間隔で検査しても、発生して半年で手がつけられないほど進行してしまうがんであれば、検診は無力です。 一方で、今の医学では「誰がどれくらいタチの悪いがんにかかるか」は分かりません。ですので、年齢を区切って全員一斉に検査をする。そして中には運良く早めにがんが見つかり、治療を受けて治る人がいる。ここまでが、がん検診のメリットの説明になります』、「1年間隔で検査しても、発生して半年で手がつけられないほど進行してしまうがんであれば、検診は無力です」、運が悪かったとあきらめるしかなさそうだ。
・『知られていないがん検診のデメリット  一方、がん検診のデメリットはどんなものでしょうか。 1つ目は「過剰診断・過剰治療」です。過剰という言葉が入っている通り、本来は不要だったのに検診を受けたことで生じてしまったものです。 具体例を挙げましょう。例えば、乳がん検診で、マンモグラフィー検査という乳房をレントゲンに撮る検査を受け、がんを疑うようなしこりが見つかったとします。すると、今度は「病院で精密検査を受けてください」ということになり、医師の診察を受けます。同時に採血検査、超音波検査、MRI(磁気共鳴画像)検査などを行います。その結果、「まずどう見ても良性なのでここでおしまい」となることもあれば、「悪性の可能性があるため、針生検をしましょう」となることもあります。針生検では、怪しいしこりそのものに針を刺し、しこりの成分を1mmほど取ってきて、顕微鏡でがん細胞やがんの組織がないかをチェックします。 その結果、もしがんの診断だったら手術や抗がん剤治療へ進みますし、がんではなかったら「大丈夫でした。よかったですね」で終わります。 さて、もし検診をしていなかったらどうなったでしょうか。病院で受診することはなく、従っていろいろな検査はしないでしょう。生検という、針を刺して傷をつくる検査もしなくてよかったことになります。 これが、過剰診断です。ここまでならまだよいのですが、「やはり悪性が否定できない」として、手術になることがあります。メスを入れ、手術をした結果「いやあ、良性でした。よかったですね」と言われることもあるのです。これは、人によって受け取り方が大きく変わるところでもあります。「ラッキーだった」と思う人がいる半面、「それならば最初からすべて不要だったのではないか」と思う人もいるでしょう』、医師が手術すべきと診断して手術を受けた結果が、「良性」だったのであれば、「ラッキーだった」と思うべきだろう。
・『検診そのもので起きる合併症もある  2点目は、「検診そのもので起きる合併症」です。合併症とは、「検査や治療によって起きた良くないこと」を指します。確率はさまざまですが、この世のあらゆる治療や検査にはすべて一定の割合で合併症が起こります。2人に1人以上起こるものから、隕石(いんせき)に当たるより確率が低いもの(インフルエンザワクチンの接種で死亡するなど)までさまざまです。 がん検診では、検査を行いますので、残念ながら検査に伴う合併症の危険性があります。胃がん検診を例に挙げましょう。胃がん検診では胃カメラもしくはバリウム検査があります。胃カメラの合併症について、2016年に発表された全国調査報告(08年~12年までの5年間)では、前処置(鎮静剤など)に関連した合併症は約3万6000人に1人(0.0028%)で、死亡数は9件で200万人に1人(0.00005%)でした。そして観察のみ(生検を含む)の胃カメラでは約7000人に1人(0.014%)の割合で合併症が起きています。合併症は出血や胃・食道に穴が空いたというものでした。 これを見ると、胃カメラを受けるだけで死亡する可能性がゼロではなく、合併症も起きていることが分かります。頻度が低いだけで、一定数は確実に起きているのです』、「胃カメラ」でも「死亡する可能性がゼロではなく、合併症も起きている」、というのは確かに留意すべきことのようだ。
・『根拠のない検診を避ける  もう1つ大切なことを述べます。「どんながん検診が採用されているかは、お住まいの市区町村によって異なる。中には科学的根拠がまだはっきりしないものを採用し、検診を受けてくださいと勧めているところもある」という点です。この点は本や雑誌ではあまり触れられていません。 がん検診を受けるかどうかは、3つの段階で決まります。 第1段階は国です。まず国がどんな検診を行うかを決めます。ここにガイドラインを作る集団が意見を言い、検診のためのガイドラインの案が作られます。第2段階は市区町村です。市区町村、つまり自治体ごとに、「どの検診をやり、どれをやらないか」を判断しています。そして最終である第3段階はあなた個人です。あなたがお住まいの市区町村などから届いたはがきを見て、実際に検診を受けるかどうかを決めるのです。 ここで注意すべきは第2段階です。実は、ガイドラインの対策型検診で推奨されていないが、市区町村の判断で行われているがん検診が非常に多いのです。国の資料から引用します。 「指針に定められていないがん種に対するがん検診を実施している市町村は、全体の86.5%(1496/1730)となっている」(平成29年度の市区町村におけるがん検診の実施状況調査集計結果) そのほとんどは前立腺がんの検診(1411自治体)で、続いて子宮体がん(501自治体)、卵巣がん(94自治体)、口腔(こうくう)がん(64自治体)、甲状腺がん(63自治体)……と続きます。 さて、事実はここまでです。ここからは私の個人的な意見になります』、「ガイドラインの対策型検診で推奨されていないが、市区町村の判断で行われているがん検診が非常に多い」、いささか驚かされた。市区町村は地域の医師会から圧力でもかけられているのだろうか。「ガイドラインで推奨されていない」ものについては、国からの補助金を出さず、独自財源とするべきだろう。
・『一人の医者の価値観は?  これは、医師一人の経験に基づく話なので、私の人生観、(偏っている可能性を否定できない)現場経験に基づいています。ですので、最も科学的根拠が低い(あるいはほとんどない)ことを先にお伝えしておきます。悲しいことに、どんな人間も自分の経験と知識の中でしか議論をすることはできません。また私の考えも今後、変わる可能性があります。 補足すると、世に出ている多くのがん検診にまつわる本や雑誌は、書き手の価値観を大きく押し出したものにすぎません。つまり、デメリットを重く感じた人は「がん検診はけしからん」となり、メリットが上回ると感じた人は「受けましょう」となるのです。 では私のチョイスはどうか。下記に要約します。 対策型検診は、すべて前述した日本の「科学的根拠に基づくがん検診」ガイドラインの推奨通りにきっちり受ける 「科学的根拠に基づくがん検診」ガイドラインでの推奨度が低い、あるいは現時点で不明のものは受けない です。そして推奨は変わる可能性があるため、きっちり情報を追いかけていき、推奨度が変更されたらそれに従います。 断っておきますが、私はガイドラインを推奨したところで利益を得る立場にはありません。「いやいや、あんたはがんの外科医なんだから、がん疑いの患者が増えたらうれしいのではないか」と言われるかもしれませんが、患者さんの人数で医師の給料は決まりません。ただでさえ多忙極まる現場ですし、がん患者さんが減ることでのメリットは少なくありません。 さらにここだけの話、私は医者業に経済的依存をしておらず、もの書きとしての収入もあります。「業界からの回し者では?」という陰謀論は、少なくとも私には当てはまりません。 では追加として、任意型、つまり人間ドックなどはどうするか。こちらは対策型検診で求められるレベルで見ると科学的な根拠が必ずしも十分とは言えないので、基本的には受けません。ただ、自分の専門である胃や大腸にがんが進行した状態で見つかったらいろいろカッコがつかないので、胃カメラ・大腸カメラは1~2年に1度やろうと思っています。胃については逆流性食道炎もあるので、悪くなっていないか、がん化していないか定期的にチェックしたいと思います。そして、妻や家族がそれ以外の検査の人間ドックをどうしても受けてくれ、と⾔ったら、まあしぶしぶ受けようかな、と思っています』、「人間ドックなどはどうするか。こちらは対策型検診で求められるレベルで見ると科学的な根拠が必ずしも十分とは言えないので、基本的には受けません」、なるほど。
・『高級人間ドックはどうか  いろいろな病院で、さまざまながん検診が提案され、また人間ドックが提案されています。中には超豪華なものまでありますが、過剰診断・過剰治療のことを考えると今はあまり乗り気になれません。お金ももったいないですし。 では、お金がジャブジャブあったらどうするだろうか、と私は考えてみます。私の知るお金持ちの多くは、1回10万円以上を支払って人間ドックを毎年受けています。しかし、がんについては、今のところメリットがデメリットを大きく上回るものは対策型の検診以外にないでしょう。ですから、私はお金があったらその分をがん予防のほうで、例えば、運動のためのパーソナルレーナーでもつけようかなと思います。お金持ちの皆さんには、過剰診断・過剰治療のデメリットについてご存じであることを心より願います。 そして、それらのデメリット以上に「検診を受け、がんによる死亡を避けたい」という気持ちになっておられるならよいのですが。 私の意見は以上です。お読みのあなたは、ご自身の価値観でがん検診を受けるかどうかを決めてください。あ、その前にまずたばこを吸っている人は、検診がどうのこうの悩むより、まず禁煙することをおすすめします。そして、私の父の話です。父は医療関係ではない仕事をしてきた60歳代後半の男性ですが、「がん検診は受けたくない」と言っています。毎年毎年、私は一生懸命、市区町村のがん検診を受けるよう説得しています。 最後に注意点として、「医学界の重鎮による意見は、偏っている可能性がある」とお伝えしておきます。重鎮とは、教授や〇〇学会の理事などです。別に重鎮が嫌いなわけではありませんが、彼ら、彼女らは業界の大切なポジションになり、ポジショントークが入ります。ポジショントークとは、例えば「本当は〇〇はあんまり勧められないんだけど、理事をやってるナントカ学会はこれを推進しているしな」というようなもの。偉くなれば、製薬会社や検査会社との関係も濃厚になっていくでしょう。もちろんポジショントークを一切排した、科学者としての誠意のみで動く重鎮もいらっしゃいます。しかし、まったく影響がないかと言われたら、言い切れないことはあるだろうと私は想像します。 さらに、重鎮になるとどうしても自身の経験が増えるため、自分の経験に引っ張られた発言になってしまうということです。これは、医者としての経験年数が増えれば増えるほど悪化していきます。これからは、この私も悲しいことに逃れることはできません。がん検診についての本稿は、元臨床医で長年、健康情報学の学者をやっている先生に加え、さらに2人の医師にも読んでもらい意見をいただきました。それほど、私は自身の意見が偏っていることを心配したのです。そういう極めてデリケートなテーマであることを、お伝えしたいと思います』、「父は医療関係ではない仕事をしてきた60歳代後半の男性ですが、「がん検診は受けたくない」と言っています。毎年毎年、私は一生懸命、市区町村のがん検診を受けるよう説得しています」、がん外科医でも検診を嫌がる父親を説得できないというのは、人生の皮肉だ。「医学界の重鎮による意見は、偏っている可能性がある」、というのはその通りなのだろう。

第三に、9月8日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190907/dom1909070004-n1.html
・『企業の健康保険組合で構成する健康保険組合連合会(健保連)が、急増する医療費の抑制に向けた政策提言をまとめた。柱の1つは、医療機関を受診して処方される花粉症薬のうち、同じような効果の市販薬で代替できる薬を公的医療保険の対象外とすること。実施されれば、薬剤費が年597億円削減できると試算している。 この件について、私が学長を務める「ビジネス・ブレークスルー大学」の大学院生から「アレルギー薬よりも、生活習慣病のような食事や運動で改善する可能性のある疾患こそ対象にするべきだ」という指摘があった。そのとおりだ。 ちなみに健保連では、比較的薬剤費の高い先発品が処方されることの多い生活習慣病の薬について、同じような効果のジェネリック医薬品(後発薬)を優先的に処方すれば薬剤費を年3141億円減らせるとの試算も示している。 日本の場合、花粉症はおろか、風邪をひいたというだけで、病院で薬をもらってくる。なぜそんなことをするのかというと、医療機関でかかる費用の7割以上を公的医療保険でまかなっているからだ。医者もそれに乗っかり、ほかの国では普通に薬局やドラッグストアで売っているOTC医薬品(いわゆる大衆薬と呼ばれる一般用医薬品)も医療用医薬品として処方している。 今回、健保連がこういうことを言い始めたのは、軽症の患者が薬目的で医療機関を受診すると、医療費が膨らんで企業健保の財政を圧迫し、健保組合そのものの存続が危なくなってきたからだ』、「健保連」の「政策提言」は当然の要求で、むしろ遅きに失した感すらある。
・『高齢化を背景に医療費は増え続け、この30年で倍増している。2017年度の医療機関に支払われた医療費の総額は、前年度より1兆円増加の約42兆円。過去最高を更新している。そのうち調剤費は約7兆円。馬に食わせるほど薬をくれる病院もある。 ビタミン剤を処方する医師もいれば、1回の診察で処方できる上限70枚の湿布をもらう患者もいる。どう考えても余ってしまう。 こういったものは、すべて市販品で代用できる。これらを含め、すべて費用対効果を考えないと、健康保険は持たない。だから、これを見直すというのは私も大賛成だ。 これに対し、日本医師会は「冗談ではない」と批判している。以前は医師会が反対するとニッチもサッチも行かなくなることが多かったが、現在ではそれほど強くない。 国民皆保険というのは素晴らしい制度だが、すべての病気を保険の対象にするというところが、ヨソの国とは違う。例えばオーストラリアは、医師が「はい、これは薬局で買ってください。ウチは関係ありません」とはっきりしている。 救急車についても、オーストラリアの場合、「救急車が早く来たおかげで助かった」ということを医師が証明してくれれば、その費用を払わなくて済むが、基本的には患者側が払うことになっている。呼んだ後、タクシー代よりも高い請求書がくる。だから、呼ぶ側も考えてしまう。 日本では軽症なのにタクシー代わりに救急車を呼んで病院に行く人も結構多い。その辺も医療費が下がらない理由。国民皆保険に甘えているところがある。これを見直すのは当然だと思う』、オーストラリアの救急車利用ルールは、極めて広い国土面積という要因もあるにせよ、日本でも参考にするべきだ。投薬ルールも同様だ。
タグ:医療問題 日経ビジネスオンライン ZAKZAK 中山 祐次郎 (その21)(相次ぐ高額医薬品 国民皆保険制度は維持できるか、がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤、健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ) 「相次ぐ高額医薬品、国民皆保険制度は維持できるか」 高額医薬品が次々と出てくるようになれば、それなりに医療保険財政への影響はある ドラッグストアなどで市販薬を買うよりも、医師に処方してもらった方が患者が負担する金額は数分の1程度まで抑えられる。金銭的なメリットから気軽に病院に通う患者が少なくないが、負担率を上げれば、一定の歯止めをかけることができる 日本医師会としては絶対に反対 同じ病気に使う新薬と既存薬の費用対効果を調べて、効果の割に新薬の価格が高いと判断されれば、薬価を下げる仕組みが導入されたが、これを古くからある薬にも適用すべきだ、という声も出ている 「がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤」 京都大学大学院医学研究科の健康情報学の教授に意見を仰ぎ、ディスカッションをした上で監修をしていただき、医学的な信頼性を担保しました 検診はすればするほどよいわけではない がん検診にはメリットとデメリットのどちらもあります 検診を受けるべきかどうかを決めるには「メリットとデメリットをてんびんにかけた結果、どちらが上回っているか」を考えなければならない てんびんにかけた結果は、「人によって答えが異なる」という点が極めて重要 ステージⅣで急激に悪くなる ステージⅠの人が標準治療を受けると、5年後に生きている確率は97%を超えます。しかし、ステージⅡになると90%、ステージⅢでは84%と下がっていきます。そして、ステージⅣになると急に下がり、なんと20%ほどになってしまいます 「遠隔転移あり」 2つの武器で「タチの悪さ」を見る 1つは、「経過を見る」という方法 もう1つは、「病理診断」という武器 知られていないがん検診のデメリット 過剰診断・過剰治療 検診そのもので起きる合併症もある 根拠のない検診を避ける 市区町村によって異なる。中には科学的根拠がまだはっきりしないものを採用し、検診を受けてくださいと勧めているところもある 一人の医者の価値観は? 高級人間ドックはどうか 私はお金があったらその分をがん予防のほうで、例えば、運動のためのパーソナルレーナーでもつけようかなと思います 医学界の重鎮による意見は、偏っている可能性がある 父は医療関係ではない仕事をしてきた60歳代後半の男性ですが、「がん検診は受けたくない」と言っています。毎年毎年、私は一生懸命、市区町村のがん検診を受けるよう説得しています 「【大前研一のニュース時評】健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ」 健康保険組合連合会(健保連) 急増する医療費の抑制に向けた政策提言 花粉症薬のうち、同じような効果の市販薬で代替できる薬を公的医療保険の対象外とすること。実施されれば、薬剤費が年597億円削減できると試算 生活習慣病の薬について、同じような効果のジェネリック医薬品(後発薬)を優先的に処方すれば薬剤費を年3141億円減らせるとの試算 オーストラリアは、医師が「はい、これは薬局で買ってください。ウチは関係ありません」とはっきりしている 救急車についても、オーストラリアの場合、「救急車が早く来たおかげで助かった」ということを医師が証明してくれれば、その費用を払わなくて済むが、基本的には患者側が払うことになっている
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安全保障(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟) [外交・防衛]

安全保障については、7月22日に取上げた。今日は、(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟)である。

先ずは、7月18日付け日経ビジネスオンライン「台湾有事、米国は在日米軍基地の確実な使用を求める」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/071600079/
・『大阪で6月に開催されたG20首脳会議後の記者会見で、トランプ米大統領が「日米同盟はアンフェア」だと発言した。同大統領は日米同盟の本質を理解しているのか。その不満を解消する手段はあるか。台湾や朝鮮半島有事に日米はいかなる連携をするのか。米ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員に聞いた。 (ホーナン氏のインタビューの前編「ホルムズ海峡で低強度紛争起これば、日本に後方支援求む」はこちら) Q:ドナルド・トランプ大統領の「日米同盟はアンフェア」発言について伺います。 同大統領は日米同盟のありようを理解しているでしょうか。日本は基地を提供。米国は日本とシーレーンの防衛を提供。提供するものは異なるけれども平等な条約というのが日米の共通理解だと思います。 ホーナン:残念ながら理解していないと思います。トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されているのでしょう』、「トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されている」というのはとんでもないことだ。米政府関係者は何をしているのだろう。
・『それでも、基地の提供はスタート地点  日本はその後、湾岸戦争に臨んで海部俊樹首相(当時)が自衛隊による貢献に一歩を踏み出したのを皮切りにさまざまな努力をしてきました。国連PKO(平和維持活動)への参加、後方支援に対する地理的限定の削除、イラク戦争やアフガニスタン戦争での貢献--。 これらは米国を直接防衛するものではありません。しかし、日本は確実に貢献してきました。それが、トランプ大統領の目には入っていません。 また、日本の基地がなければ、米国は西太平洋からインド洋にかけて前方展開することができません。日本はその基地の経費も多額を負担しています。トランプ大統領がこうした日本の貢献について語るのを聞いたことがありません。彼は米国と日本の関係は、米国とNATOの関係とは異なるのを理解していないのです。同盟国の役割を、互いを「守るか」「守らないか」という狭い範囲に限定してしか見ていない。 日本の一部には以下の意見があります。日本が提供する基地の価値は非常に大きい。米国が負担する防衛義務とバランスが取れている。これ以上、日本の負担を増やす必要はない。これをどう思いますか。 ホーナン:基地の提供と米軍駐留経費の負担は「ベース」になっています。日本は「平成」の時代に安全保障法制を成立させました。「令和」の時代は、同法の下で何を実行するかが問われると思います』、安倍首相は日本の役割をトランプ大統領に説明すべきだ。
・『米軍駐留経費の増大は日米に不満をもたらしかねない  Q:令和の時代に何をするか。次の4つの案があります*。評価を聞かせてください。第1は、米軍駐留経費の負担を拡大させる、です。 *:防衛大学校の武田康裕教授が、以下の案を実現するプランや装備を具体的に設定し、必要なコストを試算している。概要は「日米同盟へのトランプ氏の不満、解消にかかる金額は?」を参照。 ホーナン:その案は、日米双方が不満を残す結果になる恐れがあります。日本が100%負担すれば米国は満足でしょう。「家賃がただ」なわけですから。 Q:でも、その場合は、日本国内で日米地位協定の改定を求める世論が高まるでしょうね。 ホーナン:おっしゃる通りです。では、現行の水準と100%との間のどこを落としどころとするか。日本は、負担するパーセンテージを増やすたびに「この上昇がいつまで続くのか」という不信感を抱くことになります。一方、米国側も「もっと増やすことができるのでは」と考える』、。
・『ミサイル防衛システムの拡充は「ウィン・ウィン」  Q:第2の案は、ミサイル防衛システムの拡充です。新たにTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)を加える。迎撃ミサイルは現在、イージス艦に搭載するスタンダードミサイル(A)と、地上に配備するパトリオットミサイル(B)で構成しています。これにイージス・アショア(C)を追加することが決まっています。(C)は(A)を地上に配備する仕様のものです。THAADを加えることで、弾道ミサイルの軌道のミッドコース(弾道の頂点)とターミナル段階(大気圏に再突入し着弾に至る過程)のカバーを強化することができます。 ホーナン:これはよいですね。日本、在日米軍、そして米軍のみなに利益をもたらします。この分野はすでに日米の協力が進んでいますが、協力をさらに深められる分野です。 Q:第3の案は、シーレーン防衛のため、空母を導入する案です。F-35Bを48機搭載できるクイーン・エリザベス級の空母を3隻導入し、それぞれを中心に3つの空母打撃群を構成する。1つの打撃群は6隻の護衛艦(うち3隻は艦隊防空を担うイージス艦)、2隻の潜水艦、1隻の補給艦で構成する。 ホーナン:理論的には良い案だと思います。しかし、実現が難しいのではないでしょうか。3つの空母打撃群を運用するには、それ用の訓練を受けた多数の人材が必要です。今の海上自衛隊でそれを賄えるでしょうか。最も適切な質問は、日本に空母が必要かどうか。私はまだ100%確信してはいません』、「第3の案」の「空母を導入する案」は問題があり過ぎる。
・『島しょ防衛は、統合運用の強化を  Q:第4の案は、島しょ防衛の強化です。在沖縄米海兵隊が使用するキャンプバトラーと普天間基地の施設管理を自衛隊が引き継ぐ。加えて、強襲揚陸艦とドック型輸送艦、ドック型揚陸艦の3隻で構成する部隊を3組整える。 ホーナン:これは良い案ですね。この分野の力が十分ではなかったので、陸上自衛隊が水陸機動団を2018年に設置しました。 ただし、私が見るところ、島嶼防衛の問題は装備ではなく、統合運用の練度です。水陸機動団が力を発揮するには、航空自衛隊と海上自衛隊による上空と海上からの支援が欠かせません。仮に尖閣諸島をめぐって中国と争うことになった場合、陸上自衛隊だけで戦うなら日本は負けます。 陸上自衛隊と米陸軍、海上自衛隊と米海軍、航空自衛隊と米空軍のインターオペラビリティー(相互運用性)の向上や情報共有はかなり進みました。しかし、自衛隊の中の陸・海・空の統合運用が不十分だと思います。 例えば、航空自衛隊と海上自衛隊はLink-16と呼ぶ情報通信ネットワークを通じて情報を共有していますが、陸上自衛隊は今のところこのネットワークに入っていません。各自衛隊間の通信は一定程度確保できているものの、使用する機材、システム、周波数が異なるため、まだ改善の余地があると思っています。情報が共有できなければ、陸上自衛隊の水陸機動団の装備をいくら増やしても、それを生かすことはできません。陸上自衛隊が同ネットワークに加わるのはイージス・アショアの導入を待つ必要があります。 陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊が参加する統合訓練を強化する必要があると思います。仮に水陸機動団が尖閣諸島奪還のために上陸を試みる場合、これに対するミサイル攻撃を防ぐべく上空の安全を確保しなければなりません。これを提供するのは航空自衛隊や海上自衛隊です。例えば陸上自衛隊のオスプレイと航空自衛隊のF-16が連携する訓練などをもっと行うべきでしょう。 自衛隊は優秀な装備を所有しています。これの統合度が高まれば、米国にとっても利益になると思います。 Q:トランプ大統領は米国製装備を日本にもっと買ってほしいようですが。 ホーナン:日本が戦闘機をもっと買ったとしても、パイロットや整備士が足りなければ意味がありません。トランプ大統領の視点は近視眼的なのではないでしょうか』、「航空自衛隊や海上自衛隊」と「陸上自衛隊」の「統合度」向上は必須の課題だ。
・『台湾有事には、在日米軍基地の確実な使用を求める  Q:対中国の抑止力を高める施策で、米国が日本に求めるものはありますか。 ホーナン:日本はすでにいろいろ取り組んでいます。例えば、中国のA2AD戦略*に対峙すべく、南西諸島における体制を強化していますね。 *:Anti Access/ Area Denial(接近阻止・領域拒否)の略。中国にとって「聖域」である第2列島線内の海域に空母を中心とする米軍をアクセスさせないようにする戦略。これを実現すべく、弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦、爆撃機の能力を向上させている。第1列島線は東シナ海から台湾を経て南シナ海にかかるライン。第2列島線は、伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアに至るラインを指す。 陸上自衛隊が今年春、宮古島に駐屯地を設置しました。来年以降、地対空ミサイルや地対艦ミサイルの部隊を配備する予定です。奄美大島の奄美駐屯地には03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を、瀬戸内分屯地には12式地対艦誘導弾(SSM)を配備しました。石垣島でも駐屯地を置く計画が進んでいます。これらに先立つ2016年には、日本の最西端である与那国島に沿岸監視隊を配備しました。 ホーナン:この取り組みは米国にも利益をもたらします。在沖縄の米軍基地を守る能力が高まります。さらに、宮古海峡を封鎖し、中国海軍が第1列島線を出て西太平洋に展開するのを防ぐ力も充実します。 Q:日米の一部に、中国が台湾に軍事侵攻する可能性が高まっていると見る向きがあります。 ホーナン:仮にそうなったら米国は日本に、在日米軍基地の使用(アクセス)とその防衛を求めるでしょう。特に沖縄の基地は重要です。これは日米安全保障条約の第6条に基づく要請です。基地が使えないとしたら、米国から見て、同条約が存在する意味がありません。 加えて、日本は攻撃されていない限り、日本のEEZ(排他的経済水域)の中で情報 · 監視 · 偵察 (Intelligence, Surveillance and Reconnaissance)や米軍の艦船の護衛を求めることがあるかもしれません。 日本が攻撃されていない限り、それ以上のことはないと考えます。台湾防衛戦に日本が参加(engage)したら、それは中国と戦うことを意味します。さまざまな政治問題が生じます。日本にとって難しい選択でしょう。そうした議論は、米国の公文書を読んでも全く書かれていません。国防総省内でそのような議論があったかもしれませんが、それは分かりません。 Q:基地使用には、事前協議が必要になります。しかし、ベトナム戦争をはじめ、これまで事前協議が行われたことはありません。日本人はここに不安を感じています。 ホーナン:台湾が対象となる場合、米国は日本と必ず事前協議する必要があります。中国を空爆した米軍の爆撃機が沖縄の基地に直接帰還する可能性があります。台湾から最も近い基地ですから。その場合、日本が中国の攻撃対象になるかもしれません。漁業に携わる人や海上保安庁の要員に犠牲者が出かねません。 Q:朝鮮半島有事の場合は、事前協議はありますか。2017~18年にかけて、米国が北朝鮮を武力攻撃する可能性が高まったのは記憶に新しいところです。 ホーナン:朝鮮半島有事の場合は戦闘の規模によると思います。局地的なものであれば、在韓米軍だけで十分に対処できるでしょう』、台湾有事の場合の「事前協議」は明確化しておくべきだろう。
・『朝鮮半島有事には必ず事前協議する  Q:しかし、朝鮮戦争のような規模に拡大し、在日米軍を派遣する必要が生じた場合には、事前協議が必要と考えます。 米国が戦争するのに日本の基地を使用する場合、基本的には事前協議をするのだと思います。ベトナム戦争の時にしなかったのは、北ベトナムが日本を攻撃する可能性が全くなかったから。一方、相手が中国や北朝鮮である場合、日本に被害が及ぶ可能性がある。よって、これに関わるかどうか、日本は自分で判断したいでしょう。そのため事前協議が必要です。 米国が今後、在韓米軍を撤収させる可能性をどう見ますか。第3回目の米朝首脳会談が6月30日に行われ、トランプ大統領が北朝鮮に足を踏み入れました。これによって、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出すハードルが低くなったという見方が浮上しています(関連記事「日韓会談を見送った日本、米朝韓協議を見守るだけ?」)。 ホーナン:現時点で撤収させる可能性は100%ないと考えます。米下院が5年、在韓米軍の規模を現行の2万8500人から減らしてはならないと定める法律を可決していますし。 終戦宣言が出れば、韓国の国民が米軍の撤収を求めることがあるかもしれません。しかし、米国は受け入れないでしょう。在韓米軍は米韓同盟に基づいて駐留しています。終戦宣言を出すことと、米韓同盟の破棄とは連動しません。ただし、韓国の政府が、その国民の声を無視できるかどうかは不透明です。 Q:トランプ大統領は今年2月、「現時点で撤収する計画はない」と明言しましたが、その一方で、「いつかするかもしれない」とも発言しています。 ホーナン:トランプ大統領は軍事的な視点ではなく、コストの視点から発言しています。米国が2017年12月に発表した国家安全保障戦略や2018年1月に発表した国家防衛戦略には在韓米軍が持つ軍事的な重要性が記されています。 Q:在韓米軍は、アジアにおける事実上唯一の米陸軍部隊です。在日米軍の陸軍は規模が非常に小さいので。これを維持する必要があるわけですね。対中国の抑止力として重要視されています。 ホーナン:そうした目的があると思います。米軍は認めないかもしれませんが。 ただし、在韓米軍の活動範囲は原則として朝鮮半島内に限定されます。在日米軍の活動範囲がアジア全体に及ぶのとは性格が異なります。 例えば、イラク戦争の時に、当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官が在韓米軍の一部を割いて、イラクに派遣しました。この部隊は、その後、韓国に戻してはいません。戻すと、条約違反になる可能性があったからです。 朝鮮戦争の終戦宣言が出たら、在韓米軍の性格も変わるかもしれないですね。冷戦が終結したのを受けて、NATOはその役割を見直しました。同様のことが起こる可能性があります』、日本としても主体的に日米同盟のあり方を見直してゆくべきだろう。

次に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が8月22日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212434
・『7月31日の朝日新聞夕刊は、同21日に来日した米大統領補佐官(安全保障担当)ジョン・ボルトン氏が米軍の駐留経費について「現在の5倍の支払いを求める可能性があると述べた」と報じた。 米政府の中にそのようなことを言った人がいたのだろうが、あまりに法外な話だ。 「3倍」「5倍」説を流して日本側を驚かせ、イラン包囲網の「有志連合」に参加させたり、2021年3月に期限切れとなる在日米軍経費負担に関する特別協定の再交渉が来年に始まる前にベラボウに高い「言い値」を出し、交渉で値引きすることで増額を狙うトランプ式の駆け引きか、とも思われる』、トランプ流の「ディール外交」には冷静に対応すべきだ。
・『協定改定や貿易交渉にらみ「安保終了」などで駆け引き  この報道について、菅義偉官房長官は31日の記者会見で「ボルトン氏がそのようなことを言った事実はない」と述べた。 だが、トランプ大統領は2016年の大統領選挙中から「日本に駐留する米軍経費は100%日本に支払わせる。条件によっては米軍を撤退させる」と叫んでいた。 最近でも、今年6月26日のFOXビジネスネットワークのインタビューで、「日本が攻撃されれば米国は我々の命と財産をかけて日本人を助けるために戦闘に参加する。だが、もし米国が攻撃されても日本は我々を助ける必要が全くない。米国への攻撃をソニーのテレビで見ておれる」などと日米安保体制の不公平を強調した。 トランプ政権では理性的な閣僚、大統領補佐官など高官が次々に更迭されるか辞任し、ボルトン氏やマイク・ポンぺオ国務長官ら極度の強硬派が牛耳る状態だ。 今後、日本との米軍経費の特別協定や貿易を巡る交渉では理不尽な要求を突き付け、「日米安保条約終了」を切り札に増額受け入れを迫る可能性は高い。 実際、“前例”はある。韓国では昨年の米軍駐留経費負担が9602億ウォンだったのを、今年は1兆389億ウォン(約910億円)と8%余、増額させられた。これは1年限りの仮協定で来年はさらなる増額交渉が行われる予定だ。 在韓米軍は17年7月、主力の第2歩兵師団をソウル北方約30キロの議政府(ウィジョンブ)から、ソウル南方約40キロの平沢(ピョンテク)に移した。さらに昨年6月には、在韓米軍司令部もソウルから平沢に移転した。 北朝鮮軍のロケット砲、長距離砲による損害を避けるとともに、平沢の港や近くの烏山(オサン)空軍基地から世界の他の地域への出動が容易だからだ。 米軍の韓国防衛への関与を減らしているにもかかわらず、駐留経費負担増額を要求するのは強欲だが、米国は「韓国からの全面撤退」をちらつかせ、増額をのませたのだ』、「米軍の韓国防衛への関与を減らしているにもかかわらず、駐留経費負担増額を」のませたというのは、韓国の弱みにつけこんだやり方だ。
・『日本は74.5%を負担 日本防衛には関与せずの米空軍  米国防総省の04年の報告書では、日本は米軍駐留経費の74.5%を負担している。韓国の40%、ドイツの32.6%をはるかに上回っている。 それを3倍、5倍にするのはほぼ不可能だ。実現するには米軍人の給与や、艦艇、航空機などの調達、維持、運用経費を出すしかない。「そうすれば米軍は日本の傭兵になりますな」と防衛省幹部たちも苦笑する。 日本では「駐留米軍が日本を守っている」との観念が刷り込まれているから、米国側の無理な要求に屈しやすい。だが、実は日本防衛に当たっている在日米軍部隊は無きに等しいのだ。 最も顕著なのは空軍(日本に1万2000人余り)だ。 1959年9月2日に航空総隊司令官松前未曾雄空将と、米第5空軍司令官アール・バーンズ中将が結んだ「松前・バーンズ協定」によって、航空自衛隊がレーダーサイトや防空指揮所など管制組織の移管を受け、日本の防空を行うことが決まった。 米空軍は航空自衛隊の指揮下に入らないから、日本の防空には一切関与しないのだ。 以来すでに60年、日本の防空には現在330機の日本の戦闘機と対空ミサイルが当たっている』、「日本では「駐留米軍が日本を守っている」との観念が刷り込まれているから、米国側の無理な要求に屈しやすい。だが、実は日本防衛に当たっている在日米軍部隊は無きに等しいのだ」、一般マスコミもこうした実態をもっとPRし、国民の誤解を解いておくべきだ。日本が「米軍駐留経費の74.5%を負担している。韓国の40%、ドイツの32.6%をはるかに上回っている」、という突出した日本の負担割合には改めて驚かされた。
・『中東などに出動「本国に置くより節約に」  米空軍は沖縄県の嘉手納基地にF15戦闘機27機、青森県の三沢基地にF16戦闘攻撃機22機を常駐させ、ステルス戦闘機F22なども訓練のため嘉手納に飛来している。 72年の沖縄返還後は、沖縄の防空も航空自衛隊(現在那覇にF15約40機)が担い、嘉手納の米軍戦闘機は約半数が交代で烏山に展開し、韓国の防空に当たっていた。 当時、第5空軍は日本と韓国を担当していたから、家族や後方支援部隊は安全な沖縄に置いたのだ。 だが86年に韓国を担当する第7空軍が編成されたため、嘉手納の戦闘機が韓国に行くことはなくなり、91年の湾岸戦争など、中東に出動することが多くなった。 三沢のF16は対空レーダー、対空ミサイルの破壊が専門で、これもしばしば中東で活動してきた。 日本の米空軍基地は米本国の母基地に近い性格となったから、米議会では「日本にいる空軍機は本国に戻し、そこから中東などに派遣する方が合理的ではないか」との質問が何度も出た。 そのたびに米国防当局者は「日本が基地の維持費を出しているから、本国に置くより経費の節約になる」と答弁している』、米軍にとって日本は本来、「ありがたい存在の筈だ。日本政府ももっとこうした実態をPRすべきだ。
・『在日陸軍や海兵隊は情報収集や後方支援が中心  在日米陸軍も、ほとんどが補給、情報部隊だ。 陸上自衛隊は13万8000人余り、戦車670両、ヘリコプター370機を持つのに対し、在日米陸軍の人員は約2600人で、地上戦闘部隊は沖縄のトリイ通信所にいる特殊部隊1個大隊(約400人)だけだ。 これはフィリピンのイスラム反徒の討伐支援などで海外に派遣されていることが多い。 在日米海兵隊約1万9300人の主力は沖縄に駐留する「第3海兵師団」だが、「師団」とは名ばかりで歩兵は第4海兵連隊だけ。それに属する3個大隊(各約900人)は常駐ではなく、6ヵ月交代で本国から派遣される。 実際には1個か2個大隊しか沖縄にいないことが多い。戦車はゼロだ。 沖縄の海兵隊も司令部や補給部隊、病院などの後方支援部隊が多い。地上戦闘部隊は歩兵1個大隊を中心に、オスプレイとヘリコプター計約25機、装甲車約30両などを付けた「第31海兵遠征隊」(約2200人)だ。 この部隊は佐世保を母港としている揚陸艦4隻(常時出動可能3隻)に乗り、第7艦隊の陸戦隊として西太平洋、インド洋を巡航する。 歩兵約900人では本格的戦争ができる規模ではない。海外で戦乱や暴動が起きた際、一時的に飛行場や港を確保し、在留米国人の避難を助けるのが精一杯だ。沖縄の防衛は陸上自衛隊第15旅団(約2600人)の任務だ』、米軍の規模が予想外に小さいのに驚かされた。
・『第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊  米海軍は横須賀に第7艦隊旗艦である揚陸戦指揮艦「ブルーリッジ」、原子力空母「ロナルド・レーガン」、ミサイル巡航艦3隻、ミサイル駆逐艦7隻を配備している。 佐世保には空母型の強襲揚陸艦「ワスプ」とドック型揚陸艦3隻、掃海艦4隻を配備してきたが、「ワスプ」はすでに本国に戻り、より大型の「アメリカ」が交代に来る。ドック型揚陸艦も1隻増強の予定だ。 第7艦隊は東経160度以西の太平洋から、東経68度(インドとパキスタンの国境線)以東のインド洋まで、広大な海洋を担当している。横須賀、佐世保を母港とする米軍艦がもっぱら日本の防衛に当たっているわけではもちろんない。 食料の自給率が37%の日本(同じ島国の英国でも70%余り)にとっては、海上の通商路「シーレーン」の確保が海上防衛の最大の課題だ。 だが米国は食料も石油も自給自足が可能だから、商船の防護に対する関心は低い。 米海軍は巡洋艦、駆逐艦、フリゲートを計101隻(うち太平洋・インド洋に46隻)持っているが、これは米海軍の11隻の空母と海兵遠征隊を運ぶ揚陸艦7個群を護衛するのがやっとの数だ。 日本のシーレーンを守るのは、海上自衛隊の護衛艦47隻に頼るしかないのが現状だ』、「第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊」、との役割分担は初めて知った。
・『日本への武力攻撃に対する「一義的責任」は日本に  2015年に合意された「日米防衛協力の指針」(ガイドラインズ )では、日本に対する武力攻撃が発生した場合の作戦構想として、防空、日本周辺での艦船の防護、陸上攻撃の阻止撃退などの作戦には自衛隊が「プライマリー・リスポンシビリティー(一義的責任)を負う」と定めている。 これでは「何のために米軍に基地を貸し、巨額の補助金を出しているのか」との疑問が出るから、邦文では自衛隊が「主体的に実施する」とごまかした訳にしている。 自衛隊が日本防衛に一義的責任を負うのは当然だが、当然のことを何度も繰り返して指針に書き込んだのは、いかにも訴訟社会の米国人らしい方策で、なにもしなくても責任を問われないようにしている。 この指針は、すでに自衛隊が日本防衛に主たる責任を負っている実態を追認した形だ。 米国防総省は、在日米海軍の人員を18年9月末で「2万268人」と発表している。2010年には3497人、それ以前も常に3000人台だったが、11年には6833人に急増し、今日では2万人を超えるにいたった。 これは日本を母港としている軍艦の乗員を計算に入れたためだ。第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう。 他の諸国、例えばイタリアのナポリ湾には米第6艦隊がいるが、イタリアでは米海軍の人員は4000人と米国防総省は公表しており、艦隊の乗員は計算に入れていないようだ』、「第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう」、というのも初耳だが、こんな数字の操作を認めた日本側も情けない。
・『「安保破棄」で困るのは米国 横須賀など使えず制海権困難に  もしトランプ大統領が安保条約を破棄すれば、米海軍は横須賀、佐世保を使えなくなる。軍艦は年に3ヵ月ほどドックに入り点検、修理をするが、グアムのアプラ港にはドックが無い。 ハワイのパールハーバーにはドックがあるが、背後に工業が無いから潜水艦などの簡単な整備程度しかできないようだ。 横須賀、佐世保には巨大なドックがあり、熟練した技師、工員がそろい、部品の調達も容易だから早く安く整備ができる。第7艦隊がそこを使えなくなれば米本土西岸サンディエゴまで後退せざるをえず、西太平洋、インド洋での米国の制海権保持は困難となるだろう。 米国防総省の発表では在日米軍の総人員は5万4200人余りで、最大の受け入れ国だ。第2位のドイツが3万7900人、3位の韓国が2万8500人、4位のイタリアが1万2700人だ。 米国の同盟国は50以上あるが、1万人以上がいるのは4ヵ国だけ。「駐留無き同盟」か、米軍がいてもごく少数、の同盟国が一般的だ。 歴史的には、平時に対等な同盟国に兵力を常駐させた例はまずない。「駐兵権」は清朝末期の中国など半植民地国に列強が認めさせたものだ。 冷戦時代には西ドイツの米軍はソ連軍の侵攻経路の1つとされたフルダ渓谷に展開し、フランクフルトを守っていた。韓国ではソウル北方の議政府付近に布陣し、北朝鮮軍の南侵を迎撃する構えだった。 ところが日本では米軍はソ連に近い北海道ではなく、日本列島の南端で最も安全な沖縄に米軍基地の70%が集中、人員の過半がそこで待機し海外への出動に備えてきた』、在日米軍は、「ソ連」に備えたものではなく、朝鮮やその他地域向けなのが、改めて明確になった。
・『「在日米軍削減」を提案し理不尽な要求に対抗する手も  日本は今年度予算で、「思いやり予算」といわれる米軍基地労働者2万3178人の給与1539億円や光熱水費219億円など駐留経費3888億円のほか、グアム島への海兵隊の一部の移転や辺野古の飛行場建設など米軍再編関係費に1679億円、民有地の地代や周辺対策に1914億円などを防衛省が出す。 このほか、米軍基地のある自治体に総務省が381億円を支払うなど、日本政府は計6204億円を支出する。 米軍に無償で貸している国有地の推定地代は、自治体に貸す場合の安い地代で計算しても1640億円に達し、これも米軍経費負担に入れれば7844億円になる。 日本を直接守っているわけではない米軍に対し、他国と比較にならないほど巨額の補助金を出していること自体が日本政府の弱腰の表れだ。 トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は、トランプ大統領が、「人種差別」を批判した自国の女性議員について言ったように「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか。 「在日米軍を削減して貴国の財政赤字縮小の一助とされてはいかが」と、攻守を一転させる論を持ち出すのも対抗手段になるだろう』、「トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は・・・「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか」、との主張には、諸手を上げて賛成したい。

第三に、グーグル日本法人元代表でアレックス株式会社代表兼CEOの辻野 晃一郎氏が8月17日付け現代ビジネスに寄稿した「日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか、その不安と恐怖 そして今、経営者に求められる覚悟」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66572
・『戦争に近づいていく不安  この原稿を書いているのは2019年8月15日の終戦記念日。「8月ジャーナリズム」という表現もあるそうだが、毎年8月は戦争についての報道を目にする機会が多い。 しかし、毎年ただ儀式のように戦争を思い出し平和の尊さを語っているだけで平和を維持し続けることはできない。 特に最近は、戦争から遠ざかるにつれてまた戦争に近づいていくようなそこはかとない不安を感じることが多くなった。 今、世界に目を向けると、ドナルド・トランプ米大統領が仕掛けた米中の貿易戦争や技術覇権争いは激化の一途をたどる。また、同氏が一方的に核合意を破棄して悪化したイランとの関係はホルムズ海峡における緊張を高めている。冷戦終結の象徴となった米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約も失効した。 欧州では、英国のEU離脱を図るBrexitを扇動したボリス・ジョンソン氏が新首相となり、交渉期限の10月末までに合意無き離脱も辞さないと宣言している。 日韓関係も、文在寅大統領の政治スタンスに端を発して史上最悪といわれるほど悪化しつつあり、北朝鮮は再び中短距離ミサイルの発射を繰り返している。 米国内では銃の乱射事件が後を絶たず、香港では「逃亡犯条例」改正案への抗議デモや警察による弾圧が過激さを増す一方で、アジア有数のハブ空港が機能停止に追い込まれた。 国内に目を転じると、京アニ放火事件やあいちトリエンナーレの「表現の不自由展」騒動などが続き、ネットを覗けば、自分の意に沿わない出来事や他人の意見に対して、「ボケ」「クズ」「非国民」などと口汚く罵るような攻撃的なメッセージが溢れている。 今や国内外で、対立、分断、憎悪(ヘイト)、差別、恫喝、威嚇、脅し、暴力の連鎖が異様に目立つようになった。ここ数年の間に、かつてないほど不寛容でネガティブなエネルギーが一気に世間に充満した印象だ』、最後の部分はその通りだ。
・『戦争を知らない大人たち  人間の「怒り」や「憎しみ」といった感情は恐ろしい。一人の小さな怒りや憎しみが最後は殺人やテロ、戦争に繋がっていく。 1970年代初頭、『戦争を知らない子供たち』という歌が流行ったが、当時の戦争を知らない子供たちも、今では皆いい歳だ。 安倍晋三総理をはじめ現政権を担っている人たちや、中西宏明経団連会長など経済界の人たちも皆戦後生まれの「戦争を知らない大人たち」だ。 かつて、田中角栄元首相は「戦争を知らない世代が政治の中枢となった時は危ない」と言っていたそうだ。 北方領土視察で暴言の限りを尽くし、挙句の果てには戦争による領土奪還を口にして物議をかもした国会議員がいたが、戦争を放棄して平和国家になったはずのこの国で、いつの間にかまた戦争を肯定するような言動が目立つようになってきていることには激しい嫌悪感を禁じ得ない。 2015年、多くの憲法学者が違憲立法と指摘する安保法制が強行採決で成立し、武器輸出三原則が防衛装備移転三原則に置き換えられて、長く封じ込められてきた戦争ビジネスが実質解禁された。 防衛省主導のもと、経団連をはじめとした経済界もその動きを歓迎している。政権の暴走にあからさまに異を唱える経済人は一人もいない。 海外の武器展示会で、防衛副大臣が不慣れな手つきで武器を構える映像や、防衛省の課長クラスが「今後防衛産業を国家の成長産業にする」と公然と発言する映像がネットに流れたが、実におぞましい思いがした』、今どきの経営者には珍しくハト派のようだ。
・『安倍総理がやってきたこと  今年の広島、長崎の平和記念式典では、両市の市長が、国連の核兵器禁止条約に加わるよう、来賓の安倍総理にあらためて訴えかけた。だが、安倍総理は型通りのあいさつを繰り返しただけで核兵器禁止条約について触れることはなかった。 かつて、ICANのノーベル平和賞受賞に際しても冷たい対応に終始し、沖縄に対しても、何度も示された沖縄の民意に反して一貫して冷淡かつ強引な態度を取り続けていることは、現政権のスタンスを如実に示している。 本来、米軍基地負担を一身に担う沖縄へ寄り添い続けること、および唯一の被爆国として、核不拡散や核兵器の全面的な廃絶に向けて先頭に立って尽力し続けることは、日本国としての基本的立ち位置である。 それを自ら踏みにじるような数々の行為は、多くの国民にとって決して気持ちのよいものではない。 2年前、安倍総理が、長崎の被爆者代表に「あなたはどこの国の総理ですか?」と面と向かって問われていた光景はまさに鮮烈だった。 昨年2月、トランプ政権が米国の核戦略の指針「核態勢見直し(NPR)」を発表し、爆発力を小さくして機動性を高めた小型核兵器の導入に言及した際には、河野太郎外相が「高く評価する」という談話を発表したことにも驚いた。 米国は、世界で唯一、人類に対して実際に核攻撃を実施した国だ。その標的とされた我が国の責務は、今や同盟国である米国の暴走を煽ることではなく、抑えることであるのを間違えないでもらいたい。 憲法で明確に戦争を放棄した我が国を、強引な手法でなし崩し的にまた戦争が出来る国に仕立て直そうとするやり口は尋常ではない。 改憲はその総仕上げとしての目論見にしかみえない。参院選後も安倍総理は改憲に執心の様子だが、改憲を持ち出す前に、日本国憲法について「押し付けられたみっともない憲法」などと公言して現行憲法を軽視する態度こそをまずは改めていただきたい。 「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している。悪しき歴史も悲惨な過去も、それを実際に体験した人たちがこの世からいなくなることによって、貴重な体験が忘れ去られたり薄まったりしてまた同じようなことを繰り返すからだ。 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない。 戦後生まれの戦争を知らない世代がマジョリティとなって社会の要職を占めるようになると、「戦争は二度と起こしてはならない」という当たり前のことすらだんだんわからなくなっていく。田中角栄氏の予言がまさに現実となりつつあるのは実に恐ろしいことだ』、米国が「小型核兵器の導入に言及した際には、河野太郎外相が「高く評価する」という談話を発表」、には私も驚いた。「「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している・・ 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない」、同感である。
・『戦争と経営者と覚悟  ノンフィクション作家の立石泰則氏が『戦争体験と経営者』(岩波新書)という本を出している。 フィリピン戦線から奇跡的な生還を果たしたダイエーの中内功氏や、インパール作戦に従軍して九死に一生を得たワコールの塚本幸一氏など、生き地獄のような戦場を体験したからこそ、生き延びて復員してからは徹底して平和主義を貫いた戦後の経済人を数名取り上げ、彼らの平和へのこだわりと迫力ある生き様を簡潔に描いている。 この本の前書きに、立石氏が長年にわたってインタビューして来た多くの経済人を振り返ったとき、「経営理念も経営手法もまったく異なる、そして様々な個性で彩られた経営者たちであっても彼らの間には『明確な一線』を引ける何かがある」とあり、それは「戦争体験」の有無だ、としている。 私が世話になった企業であるソニーの起源は、終戦直後の今でいうベンチャー企業だった。 創業者の井深大氏も盛田昭夫氏も戦争体験者だ。一般的に、戦争は最先端の技術開発を促すと共に、市場拡大や需要喚起など、経済を拡大させる手段として位置付けられてきた。 しかし、井深大氏の主張は真逆だった。彼は、軍需をやりたがる経団連に異を唱え、「アメリカのエレクトロニクスは、軍需をやったためにスポイルした」と述べて憚らなかったそうだ』、井深大氏の識見と勇気は大したものだ。
・『また、「財界の鞍馬天狗」の異名を持つ戦後の経済人、中山素平氏は、1990年、湾岸戦争で自衛隊の派兵が論議されていたとき、派兵に反対して「派兵はもちろんのこと、派遣も反対です。憲法改正に至っては論外です。第二次世界大戦であれだけの犠牲を払ったのですから、平和憲法は絶対に厳守すべきだ。そう自らを規定すれば、おのずから日本の役割がはっきりしてくる」と語ったそうだ。 今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない。 戦争体験者や被爆体験者が高齢化して次々とこの世を去っていく。 今や太平洋戦争のことを知らない若者が普通にいて、戦争を煽るようなことを軽々しく口にする政治家や経営者が少なからず出現し始めている。 冒頭述べた通り、世界的に対立、分断、格差が広がっていく中、日本においても子供や若者、高齢者の貧困が拡大している。 対立や分断、格差や貧困から生まれる怒りや憎しみは、好戦家たちのあおりによって容易に増幅していく。 政治家たちが暴走し、内閣に人事権を握られた官僚や検察や司法が機能不全に陥り、権力を監視する役割を担うはずのマスメディアもその役割を果たせずにいる。 そのような中で、この国が「戦争」との距離を再び縮めるようなことがないよう、問題解決の手段から徹底して「戦争」を排除するコンセンサスを再び創り上げる実行力を持つのはもはや経営者しかいない。 大小問わずビジネスをつかさどるリーダーたちには、その覚悟が求められているような気がする』、「今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない」の残念なことだ。「辻野氏」にはハト派経営者の輪を広げてほしいものだ。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 田岡俊次 辻野 晃一郎 安全保障(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟) 「台湾有事、米国は在日米軍基地の確実な使用を求める」 トランプ米大統領が「日米同盟はアンフェア」だと発言 米ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員 トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されているのでしょう それでも、基地の提供はスタート地点 米軍駐留経費の増大は日米に不満をもたらしかねない ミサイル防衛システムの拡充は「ウィン・ウィン」 島しょ防衛は、統合運用の強化を 台湾有事には、在日米軍基地の確実な使用を求める 「事前協議」は明確化 朝鮮半島有事には必ず事前協議する 「「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ」 ジョン・ボルトン氏が米軍の駐留経費について「現在の5倍の支払いを求める可能性があると述べた」 協定改定や貿易交渉にらみ「安保終了」などで駆け引き 日本は74.5%を負担 日本防衛には関与せずの米空軍 中東などに出動「本国に置くより節約に」 在日陸軍や海兵隊は情報収集や後方支援が中心 第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊 日本への武力攻撃に対する「一義的責任」は日本に 「日米防衛協力の指針」(ガイドラインズ ) 防空、日本周辺での艦船の防護、陸上攻撃の阻止撃退などの作戦には自衛隊が「プライマリー・リスポンシビリティー(一義的責任)を負う」 第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう 「安保破棄」で困るのは米国 横須賀など使えず制海権困難に 「在日米軍削減」を提案し理不尽な要求に対抗する手も トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は、トランプ大統領が、「人種差別」を批判した自国の女性議員について言ったように「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか 「日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか、その不安と恐怖 そして今、経営者に求められる覚悟」 戦争に近づいていく不安 戦争を知らない大人たち 田中角栄元首相は「戦争を知らない世代が政治の中枢となった時は危ない」と言っていたそうだ 安倍総理がやってきたこと 「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している 悪しき歴史も悲惨な過去も、それを実際に体験した人たちがこの世からいなくなることによって、貴重な体験が忘れ去られたり薄まったりしてまた同じようなことを繰り返すからだ。 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない 戦争と経営者と覚悟 『戦争体験と経営者』(岩波新書) 中内功氏 塚本幸一氏 生き延びて復員してからは徹底して平和主義を貫いた戦後の経済人 井深大氏 軍需をやりたがる経団連に異を唱え、「アメリカのエレクトロニクスは、軍需をやったためにスポイルした」と述べて憚らなかったそうだ 今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない
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不動産(その5)(100均の家ついに登場 深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題、2022年 タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識、大阪・西成を買い占める謎の中国人) [産業動向]

不動産については、7月17日に取上げた。今日は、(その5)(100均の家ついに登場 深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題、2022年 タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識、大阪・西成を買い占める謎の中国人)である。

先ずは、住宅ジャーナリストの山本 久美子氏が8月1日付け東洋経済オンラインに寄稿した「100均の家ついに登場、深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/294273
・『人口・世帯数の減少や家余り社会の到来で、今後ますます空き家が増えると見られている。空き家が管理されないまま放置されると、その地域に防災、防犯、景観上などのさまざまな問題を引き起こす。 国や自治体も手をこまねいているわけではない。法律の整備などを進めているが、決め手に欠けるというのが現実だ。それを埋めるように民間でも、新しい動きが出始めた。 そこで、空き家問題について、次のような観点から見ていくことにしたい。 1. 空き家が問題になる理由は? 2. 空き家対策特措法の効果は? 3. 空き家対策に取り組む地方自治体は増えている 4. 「100均空き家」にどんな意味があるのか』、興味深そうだ。
・『空き家が問題になる理由は?  総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国に空き家は846万戸(全国の住宅の7戸に1戸)。この5年間で26万戸増加するなど、その数は増加し続けている。 ただし、この調査でいう「空き家」は、何種類かに分かれる。 ・別荘やセカンドハウスなどのように普段は住んでいない「二次的住宅」 ・賃借人を募集中の「賃貸用」 ・売却を予定している「売却用」 ・上記いずれにも当てはまらない「その他」) 別荘など常時ではないが利用しているものは、管理をしている可能性が高い。賃貸や売却を予定しているものなら、高く売ったり貸したりするために管理をするだろう。その他の中でも、建て替えなどで「取り壊し予定」の空き家であれば、いずれ誰かが利用することが期待できる。つまり問題となるのは、「その他」の中でも、使い道が決まっていない、長期間誰も住んでいない空き家だ。しかも、こうした空き家が増え続けていることが、問題を深刻化させている。 さて、空き家が問題視されるのは、建物は人が住まなくなると急速に老朽化が進み、庭の草木が茂ったり害虫等が発生したりして、トラブルの原因になるからだ。 街の景観が損なわれるのはもちろんのこと、はたから見ても空き家とわかるので、誰かが住み着いたり隠れ場所として使われたりすると、犯罪の温床になる。また、ゴミが投棄されるようになると、衛生上の問題が生じてくる。老朽化した建物の屋根材が隣家や道路に落下したり、伸び切った草木が越境したり、ブロック塀が壊れたりすると、近隣にとって迷惑なだけでなく、災害時に被害を増大させる要因にもなってしまう』、「使い道が決まっていない、長期間誰も住んでいない空き家」は確かに大きな問題だ。
・『空き家対策特措法の効果  このような迷惑な空き家が認識されるようになって、まず動いたのが地方自治体だ。地元住人からの相談やクレームを受けて、条例を設けるなどして、空き家問題に取り組むようになった。遅れて国が動いて制定したのが、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空き家特措法)で、2015年5月に施行された。 「空き家特措法」の狙いは2つあり、1つがこれまで説明してきた問題のある空き家への対策だ。法律で問題のある空き家を「特定空家等」と定義して、市町村が立入調査を行ったり、指導、勧告、命令、行政代執行(所有者が命令に従わない場合や所有者が不明な場合)の措置を取ったりできるように定めた。 所有者が命令に従わない場合は、罰則も設けている。また、登記があいまいで空き家の所有者がわからないという問題については、固定資産税などの課税のための個人情報を、必要な範囲で利用できるようにも定めている。 空き家特措法のもう1つの狙いは、活用できる空き家の有効活用だ。市町村に、空き家のデータベースを整備し、空き家や空き家の跡地の活用を促進することを求めている。 一方、空き家を助長するとも指摘されている固定資産税の問題もある。空き家を撤去して更地にすると、住宅用の土地ではなくなってしまう。すると固定資産評価額を1/6に引き下げるといった「住宅用地の特例」が受けられなくなるので、空き家の放置につながるというわけだ。 この点に対しても、空き家特措法の規定に基づいて、「特定空家等」の所有者に撤去などの必要な措置を勧告した場合、この住宅用地の特例の対象から除外する税制改正も行った。 空き家特措法で市町村に求めた「空家等対策計画」について、2019年3月末日時点で全市区町村の約6割(60.4%)となる1051団体が策定し、2020年3月末には7割を超える見込みとなっている。 また、周辺の生活環境などに悪影響を及ぼす「特定空家等」について、2019年3月末日までに市区町村長が1万5586件の助言・指導を実施し、うち勧告を行ったものは922件、命令を行ったものは111件、代執行を行ったものは165件となっている。 加えて、空き家特措法では、空き家のデータベースの整備と情報提供を促している。以前から「空き家バンク」などを整備する地方公共団体は多かったが、それぞれで仕様が異なり、一覧性がなく検索しづらいといった課題があった。 そのため不動産情報を扱う事業者に「全国版空き家・空き地バンク」の構築や運営を委託し、全国の空き家情報をワンストップで検索できるサイトを2018年4月から運用している。2019年2月時点で、LIFULLとアットホームが運営する全国版バンクに603自治体が参加し、延べ9000件(一部重複あり)を超える空き家などの情報が掲載され、成約に至った物件数は、累計で1900件を超えたという』、「「空家等対策計画」について、2019年3月末日時点で全市区町村の約6割(60.4%)となる1051団体が策定」、というのはまずまずだが、「「特定空家等」について、2019年3月末日までに市区町村長が1万5586件の助言・指導を実施」、については、助言・指導をすべき母数がどの程度あるかが分からないので、評価不可能である。
・『「100均空き家」にどんな意味があるのか  こうした空き家問題に対する環境整備を行うことと合わせて、地方公共団体と各種専門家団体などとの連携の動きも活発になっている。とはいえ、空き家を活用したり処分できなかったりする理由はさまざまだ。 空き家の所有者の高齢化によって、自宅から介護施設に移ったり、判断機能が低下したりして、自宅の処分が進まないということもある。また、空き家の相続などを繰り返すことで、今の所有者がわからなくなったり、相続人が多数いて合意形成ができないといったことも理由の1つだ。 もう1つの大きな理由が、「市場性の問題」だ。とくに、人口減少地域で老朽化した住宅の場合、売っても諸費用のほうが高くつく、貸すために修繕しても借り手がつかない、修繕した費用を回収するだけの賃料が得られないといった事例が多くなる。そのために、売ることも貸すこともできない空き家が増えるという構図になっている。 こうした市場性の問題に対して、民間企業でも新しい取り組みが出始めている。不動産会社が空き家を買い取って改修したうえで販売したり、空き家を一定期間借り上げて賃貸住宅や宿泊所として活用したりといった事例が増えている。 そして、ついに「100均空き家」を掲げるところも現れた。YADOKARIとあきやカンパニーが連携して開設した「空き家ゲートウェイ」がそれだ。 使い物にならないと諦めている、売りたいが値がつかないので不動産会社が扱わない、といった空き家を日本中から集めて、それを活用したいというユーザーとマッチングするプラットフォームになっている。 具体的に事例を見ていこう。100均物件として掲載されている「宮城県栗原市花山の築40年の平屋」の売却価格は100円だ。建物面積140m2の平屋に73m2の納屋まで付いている。 現オーナーは、地域おこし協力隊を経て花山に移住し、譲り受けたこの空き家を地域づくりに活用したいと考えている。そこで付けたキャッチが「最寄りは湖 U-30 花山代表求ム!」。つまり、地域に貢献したい30歳以下の若者に100円で売りたいというメッセージが込められている。 「空き家ゲートウェイ」プロジェクトマネジャー川口直人さんに、100均物件を集める理由を聞いた。 「新しいライフスタイルを提案するメディアとして、空き家の問題を解決したいと考えていましたが、空き家をカジュアルに、もっと気軽に見てほしいと思いました。それを端的に表現するのが100均です。資産価値がないと思われている物件でも、自然豊かな場所に安くて広い住まいを手に入れて思い通りの暮らしを実現したいという、そこに価値を認める人がどこかにいると思うのです」』、「空き家ゲートウェイ」とは面白い動きだ。ただ、ネットマッチングだけで、現地調査サービスや仲介業務は原則行ってないので、ユーザーニーズに果たして応えられるのかが、課題だろう、
https://akiya-gateway.com/vacant-house/
・『資産価値のない物件が価値をもつ  プラットフォーム上で売りたい人と買いたい人をマッチングするだけで、仲介業務を行うわけではない。もちろん売却価格100円といっても、売却時の諸費用などがかかるし、DIYやリフォームなどの改修も自分で行う必要がある。それでも、そこでの暮らしをイメージできるようにオーナーの思いも伝えることで、そのストーリーに共感する人に引き継ごうというのがコンセプトだ。 空き家が100均物件として「空き家ゲートウェイ」に掲載可能かを判断する、物件査定ページ「カンタンゲートウェイ」が用意されているが、資産価値のある物件の場合だと「残念!掲載できません」と査定される。通常の査定とは真逆だ。ここでは、資産価値のない物件が価値を持つわけだ。2019年7月1日に空き家ゲートウェイ開設後、10日間で70件ほどの掲載問い合わせが寄せられ、順次検討しているところだという。 空き家を100円でも売りたい、オーナーに交渉しながら100円で買いたい、という人が今後どれだけ多く集まってくるか、注目したいポイントだ。 さて、空き家というと負の面ばかりが注目されるが、空き家をポジティブにとらえることができるようになれば、空き家の利活用も進むのではないだろうか。新しい取り組みに大いに期待したい』、同感だ。

次に、8月17日付け現代ビジネス「2022年、タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56992
・『リタイア世代から外国人家族まで、さまざまな人が住むタワマン。最大のネックは「修繕費」の問題で、見て見ぬふりをしているうちにタワマンが廃墟になってしまった、という可能性もあるのだ』、「タワマンが廃墟に」というのは穏やかではない。
・『「修繕ラッシュ」が来た  都心の最高級リゾートをあなたの手に――。 東京湾を望む一棟のタワーマンション。歯の浮くようなコピーに夢を抱き、当時は購入希望者が殺到した人気レジデンスだったが、いまは見る影もない。 築15年、400戸近いマンションに、現在の居住者は3割にも満たない。外壁に割れが目立ち、エントランス前は雑草が伸び放題になっている。 ジムやバーなどの共用部は閉鎖されて数年が経つ。次のマンションの頭金にもならないほど資産価値は下がり、引っ越すこともできず、逃げ場を失った人たちがただ住んでいるだけ……。 いま、タワマン人気はピークにある。不動産経済研究所の調査によると、'08年から'17年の10年間で、首都圏には341棟もの高層マンション(20階建て以上)が建てられた。戸数にして、じつに11万1722戸にのぼる。 だが、そのタワマンが巨大な廃墟と化してしまう冒頭のような光景が、日本中に現れる事態を想像する人は少ない。 不動産業界ではかねてから都心部の住宅の過剰供給がささやかれてきた。デベロッパーにとってタワマンはまさに「打ち出の小槌」であり、いまだ根強いタワマン人気に応えるように、フロンティア開拓は進んでいる。 これまでタワマンといえば、豊洲や芝浦といったベイエリアか、武蔵小杉や川口など都心にアクセスしやすい郊外が人気を集めていた。近ごろ、デベロッパーは「第三の道」として、都心の再開発地域に目をつけ、新たな購入層の獲得に躍起だ。 たとえば東京下町の代表格・月島の「もんじゃストリート」には低層建築のもんじゃ屋が軒を連ねるが、肩を並べるように地上32階建てのタワマンが建とうとしている。 また、日本有数の商店街がある武蔵小山の駅前にも41階建ての巨大レジデンスが建ち、東京五輪直後の2021年に入居を控えている。 そんなタワマンブームに火が付いたのは2000年前後のこと。当時建てられた超高層マンションは早くも15~20年選手になろうとしているわけだが、ここにきて重大な問題が表面化してきた。 それは、類を見ないほどの大規模で高額な「修繕」をどうするか、ということだ』、「タワマン」で「築15年、400戸近いマンションに、現在の居住者は3割にも満たない」、とは恐ろしいような現象だが、それが次々に顕在化しつつあるとは、大変なことだ。
・『売り手はリスクを伝えない  基本的にマンションは、12年から15年の周期で大規模修繕を行う。最初は外壁の修理などを行い、次にエレベーターや排水などの内部的な不具合を改修する。 これはタワマンも同様で、目下第一次修繕ラッシュに突入しているが、なにぶん戸数が多いため、一棟の修繕計画は10年以上、2ケタ億円のカネがかかることもザラにある。 高層マンションブームの先駆けとなったのが、川口にある「エルザタワー55」だ。 '98年に竣工した総戸数650、地上55階建て、高さ185mのこの物件は、'15年にはじめての大規模修繕工事を開始し、2年がかりで完了した。総費用は約12億円。単純計算で1戸あたり約185万円の負担だ。 修繕にいたる長い道のりを取材してきた住宅ジャーナリストの山本久美子氏は次のように語る。 「超高層の工事は通常の足場だけではできないうえ、エルザタワーは低層・中層・高層でそれぞれ外観のフォルムが変化するデザインになっていて、工事は難航することが予想されました。 そこで修繕は、マンションを建設した元施工会社に工法の提案を依頼するところからはじまったのです」 管理組合に修繕委員会を設置したのは'07年のこと。施工の妥当性や料金を見積もるコンサルタントを募集したのは'12年になってからだった。 「コンサルタント会社を1社に絞り、業務委託契約を締結したのが'13年。マンション所有者への説明会もきちんと開き、'14年に施工業者の決定にこぎつけました」(山本氏) 途中3.11の影響もあったが、修繕完了までに10年。ただし、これは幸せなケースだ。エルザタワーのように投資目的の所有者が少ない物件は、管理組合もしっかり機能している。 だが新しく建てられたタワマンのなかには投資用に購入されているものも多い。最初の修繕時期にあたる築15年を迎えるころには、すでに所有者が入れ替わっているケースが大半だ。 しかも300戸をゆうに超えるようなタワマンでは、実際の入居者も子育て世代から外国人までさまざま。その全員が管理組合に協力的、ということはさすがに考えにくい。 こうした状況をさらに難しくするのが、デベロッパーの態度だ。タワマンの売れ行きが好調な折、あえて15年後に訪れる修繕の難しさなど、口にするはずがない。 オラガ総研代表の牧野知弘氏はこう指摘する。「これまで、デベロッパーは修繕積立金の費用負担を実際の想定以上に安く設定してマンションを販売してきました。 タワマンは高層用のエレベーターやジムなどの共用設備が多く、修繕コストが膨らみやすい構造にあるにもかかわらず、『戸数が多いから一人あたりの負担が少ない』と販売元は説明するわけです。 ところがいざ修繕となると積立金が足りず、住民のあいだで大モメになる。こうした事態がこれから頻発するでしょう」』、「デベロッパーは修繕積立金の費用負担を実際の想定以上に安く設定してマンションを販売してきました」、「新しく建てられたタワマンのなかには投資用に購入されているものも多い。最初の修繕時期にあたる築15年を迎えるころには、すでに所有者が入れ替わっているケースが大半だ。 しかも300戸をゆうに超えるようなタワマンでは、実際の入居者も子育て世代から外国人までさまざま。その全員が管理組合に協力的、ということはさすがに考えにくい」、入居者の責任だけでなく、デベロッパーにも責任がありそうだ。
・『住民の意見がまとまらない  国土交通省は、ガイドラインで12年周期前後の大規模修繕を行うことを推奨している。 大手デベロッパーが販売するマンションの場合は、長期修繕計画書を売り主か施工業者が作成することが多いが、ここに書かれた数字がデタラメだったというケースもある。 管理組合向けコンサルティング会社・ソーシャルジャジメントシステムの廣田晃崇氏は次のような例を挙げる。 「長期修繕計画書では、何年目の工事にいくらかかるか概算が記されていて、そこから積立金の月額を割り出します。 ところが中央区のあるタワマンでは、基礎的な数値に間違いが散見されました。自動ドアの枚数が実際の半分だったり、消火設備の数も少なかったりして、30年間でかかる修繕費が5億円近くも過少に見積もられていたケースがあったのです」 こうした明らかな見積もりの甘さには、デベロッパーの「売らんかな精神」があることは否定できない。住民側が問題に気づくためには、やはり結束力の強い管理組合が必要になってくるが、ことタワマンではそううまくいかない。 首都圏にある総戸数600超の某タワーマンションでは、30年の修繕累計コストは50億円以上におよぶと見積もられている。ところが、その間に見込まれる修繕積立金は半分にも満たない23億円。 今後どうやってその差額を埋めるのか、そもそも15年目の第一次修繕を終えられるのか。管理組合の議論は今日も続いているという。 このマンションで理事の経験がある60代の住民の一人はこう嘆息する。 「私は早期退職で入ったおカネで家を買い、終の棲家と思って住んでいますが、上層階には若いお金持ちや投資目的の外国人もいる。普段の生活では没交渉ですから、理事会での発議も実現しないことが多いです。 たとえば、あるとき立体駐車場の共用部に重大な不具合が見つかり、1億円近くの費用がかかることがわかった。 そこで理事会で一時金の徴収を提案したのですが、想像以上に反対意見が多く、ロクに話し合いも設けられないまま否決されてしまったことがありました。それぞれ、マンションについての見解があまりにも違うと感じましたね」 実際、「私が住んでいるうちだけ大丈夫なら、あとはどうなってもかまわない」と考えたり、一方で共用部の破損で資産価値が下がることに神経質な人がいたりと、「コミュニケーションなき利害関係」がこじれがちなのがタワマンの現状といえる。 さらにいま大量に建てられている新築のタワマンの管理組合は、これまでのタワマン以上に難しい問題を抱えている。 「東京五輪に向けて上昇しているのは地価だけでなく、人手不足による人件費や資材費も同様。ですが、五輪後に地価の高騰が落ち着いたとしても、人件費や資材費は右肩上がりになる可能性が高い。 五輪後、建物に大きなトラブルが露呈すれば、修繕積立金の値上げを余儀なくされますし、修繕しなければ資産性に大きな問題が生じるかもしれません」(前出・牧野氏) つまり、資産価値はこれから下がっていく一方なのに、修繕費は高騰を続けるのだ』、「総戸数600超の某タワーマンションでは、30年の修繕累計コストは50億円以上におよぶと見積もられている。ところが、その間に見込まれる修繕積立金は半分にも満たない23億円」、さらに「人件費や資材費」の高騰で修繕積立金の不足は膨張する可能性が高いのであれば、事態は深刻だ。
・『壊すこともできない  はたしてタワマンを住居として修繕しつつ、維持し続けることは可能なのだろうか。 「じつは、ほとんどの物件で長期修繕計画は30年分しか組まれておらず、その先はどうなるのか、国などでも問題視されています。 30年以降の修繕となると、給排水管や電気系統、エレベーターなどの設備系の大規模改修も必要になってきて、その費用は1回目の比ではありません。 いざ修繕積立金を値上げするとなると、投資目的でマンションを買い、人に貸している人は利回りが悪くなるので、なかなか首をタテに振らない。そうすると修繕の時期になってもおカネが用意できない事態に陥ります」(経済評論家の平野和之氏) 修繕できないのなら、いっそ壊して新しくするという手もあるだろう。しかし、老朽化したタワマンに住んでいるのは、簡単に引っ越すことができない「取り残された人々」。 そうした住民を立ち退かせたとしても、タワマンを壊すには、これまた膨大な費用がかかる。 「大規模修繕ができていないタワーマンションは次から次へと売りが出る可能性がある。値段をどれだけ下げても、高い修繕積立金を肩代わりしなければいけない物件に買い手はつかないでしょう。 結果、修繕されずに放置され続け、壊すこともできず廃墟と化したタワマンの誕生です。 とくに心配なのは、武蔵小杉など、同じような時期にたくさんのタワマンが建った地域です。売りが売りを呼ぶ負の連鎖が街全体で起こる可能性がある。そう考えると、街が一瞬にしてゴーストタウン化するリスクもあります」(平野氏) 一度建てたら、簡単には修理することも壊すこともできないタワマン。その姿はさながら「住む原発」といえる。 ひとたびの建設ピークを迎えた'08年に建てられたタワマンが、15年目になるのは2022年。まさにこれからタワマンの問題は深刻化する。あなたは、それでもまだタワマンを買いますか?』、「住む原発」とは言い得て妙だが、「廃墟と化したタワマン」が次々に出現するとはまさに「現代の怪談」だ。

第三に、8月8日付け日経ビジネスオンライン「大阪・西成を買い占める謎の中国人」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00069/080600001/?P=1
・『“異次元”とも形容された日銀の金融緩和とインバウンドブームが相まって、一部の都市の不動産価格は上昇の一途をたどっている。外国人観光客の増加に沸く大阪もそんな活況を呈するエリアの1つ。とりわけ労働者の町として知られる西成は外国人観光客の増加で注目を集めている場所だ。 日経ビジネスでは、9月2日号(予定)で過熱する不動産市場を分析した特集記事を掲載する。低い調達金利と、他の金融商品に比べて相対的に高い利回りを背景に、一般のビジネスパーソンから日本の不動産を割安と見る外国人投資家まで様々なマネーが国内の不動産に流れ込む。その中では、西成のようにこれまで過小評価されていたような不動産も動き始めた。 今の状況をバブルと見るか、グローバル水準に適正化していく過程と見るかは意見が分かれるかもしれない。その結論を出す前に、全国各地で起きている現象を見てみよう。 大阪市西成区――。地下鉄御堂筋線・動物園前駅を駆け上がると、キリンや象のオブジェが飾られたアーケード街にたどり着く。通天閣やジャンジャン横丁のある新世界の南隣に位置する動物園前一番街である(正式名称は飛田本通商店街)。 今から100年ほど前、にぎわいを見せる飛田遊郭に隣接したこともあり、自然発生的に商店が集まったといわれている。動物園前駅から旧飛田遊郭大門跡まで、およそ500メートルにわたって50軒以上の商店が軒を連ねる』、西成の釜ヶ崎といえば、東京の山谷と並ぶ有名な「ドヤ街」だったが、「過小評価」が見直されつつあるようだ。不動産の「バブル」も来るところまで来たということなのだろうか。
・『真っ昼間から大音量のカラオケが通りに響く  この歴史ある商店街に“異変”が起きている。カラオケ居酒屋に転換する店舗が急速に増えているのだ。飛田本通商店街振興組合の村井康夫理事長によれば、一番街では既に11店がカラオケ居酒屋だという。 商店街をぶらりとしながらカラオケ居酒屋をのぞけば、店を切り盛りしているのは片言の日本語を話す中国人女性。メニューは基本的に中華料理で、客は1曲100円のカラオケを熱唱している。 もともとは隣接する「あいりん地区(通称・釜ヶ崎)」に集まる日雇い労働者らを主に対象としたビジネスだったが、歌って飲んでも2000円程度という値ごろ感もあり、最近は新世界や天王寺界隈から流れるサラリーマンなどの2次会需要でにぎわっている。 真っ昼間から大音量のカラオケが通りに響く様子は、この商店街ならではの情景と言える』、「一番街では既に11店がカラオケ居酒屋」、「店を切り盛りしているのは片言の日本語を話す中国人女性」、「最近は新世界や天王寺界隈から流れるサラリーマンなどの2次会需要でにぎわっている」、変われば変わったものだ。
・『日経ビジネスは2002年に「不動産大革命」と題した特集記事を掲載した。今でこそ将来的に生み出すであろう利益から逆算する収益還元法で不動産を評価するのは常識だが、当時は収益還元法の考え方が浸透し始めたところで、利便性の割に賃料が低く抑えられているエリアがいくつも存在していた。 そこで、弊誌は不動産データサービスを提供しているアトラクターズ・ラボ(現スタイルアクト)の沖有人社長の協力を得て、首都圏の759駅のマンション利回りを算出、それぞれの将来性を「AAA」から「C」の9段階で格付けした。 「2002年7月22日号 不動産大革命 マンション購入安全度」 この時に最高評価のAAAを得たエリアのひとつに江東区豊洲が挙げられる。今でこそ豊洲は高層マンションや大規模商業施設が立ち並ぶ屈指の人気エリアだが、もともとは石川島播磨重工業の工場が広がる準工業地域。1990年代後半にマンション建設が始まったが、当時はららぽーと豊洲もできておらず、住宅地として人気のあるエリアではなかった』、不動産の評価が「収益還元法」に変わったなかで、「首都圏の759駅のマンション利回りを算出、それぞれの将来性を「AAA」から「C」の9段階で格付けした」、「最高評価のAAAを得たエリアのひとつに江東区豊洲」、手法の先見性は確かだったようだ。
・『利回りの取れる掘り出し物をさがせ  だが、銀座まで地下鉄で10分という圧倒的な利便性とリーズナブルな物件価格、日々進化していく町の魅力が相まって、豊洲はファミリー層が選ぶ屈指の人気エリアに発展した。 過去17年を振り返れば、不動産大革命で「AAA」や「AA」の格付けをしたエリアの中古マンション価格は20%上昇した。一方、最低評価の「C」格エリアは31%の下落である。賃料をベースにした収益還元という考え方が一般化したことで、不動産のアービトラージ(裁定取引)が働き、適正な期待利回りまで価格が適正化したのだ。 日銀による異次元の金融緩和以降、利回りを求める投資マネーの流入で不動産価格は高騰している。東京・都心部の大規模ビルの中には表面利回りで3%を切る物件も出ているほど。情報が広く行きわたったことで、利回りの取れる掘り出し物を見つけることは困難だ。 ただ、目をこらせば過小評価されている場所がないわけではない。本記事で紹介してきた大阪の動物園前一番街・二番街や隣接する釜ヶ崎、飛田新地のある山王地区などはそんな割安と見られる場所だ。現に、相対的に高い利回りを求めて様々なマネーが流入している。 動物園前一番街・二番街でカラオケ居酒屋が増加している理由を端的に語れば、中国人による“爆買い”だ。そして、その背景には一人の男がいる。盛龍不動産の林伝竜氏である。来日後、職を転々としながら動物園前商店街で不動産会社を興した苦労人だ』、中国人の不動産屋が仕掛けていたとは、さすがだ。
・『カラオケ居酒屋をつくり、投資家に貸し出す  林氏がここでやっているのはカラオケ居酒屋をつくり、投資家に貸し出すビジネスだ。商店街の空き店舗を購入後、バーカウンターと調理器具、カラオケ機材を設置し、仲間の中国人に貸し出す。実際に看板ママを雇ってカラオケ居酒屋を営業するのは借りた中国人だ。 最近は民泊業にも進出しており、カラオケ居酒屋の2階部分を民泊として外国人観光客に貸している。なかなかアグレッシブに事業を展開しているようで、取材に訪れた6月下旬に盛龍不動産を訪ねると、大阪市違法民泊撲滅チームの名刺を持つ人物と鉢合わせした。聞けば、未登録の闇民泊の調査をしているのだという。 盛龍不動産を筆頭に、中国系の不動産業者が店舗を積極的に取得するため、動物園前一番街・二番街の物件価格は上昇している。「実際の取引価格は3年前の3倍。それを牽引しているのは盛龍不動産だ」。地元の不動産業者からは驚きともやっかみともつかない声が漏れる。 福建省出身の林氏が釜ヶ崎に来たのは阪神・淡路大震災後の1996年にさかのぼる。被災地の復興需要が立ち上がる中で、雇用の機会を求めて釜ヶ崎に引き寄せられたのだ。ただ、国内景気の落ち込みのため、90年代終わりごろになると日雇いの仕事は急速に減少し始める。生活の糧を失った労働者が路上にあふれる中、日雇い家業に見切りをつけた林氏はラーメン屋に転職した。1999年のことだ。 そんな林氏がカラオケ居酒屋という業態を始めたのはリーマン・ショックの少し前。高齢化が急速に進む西成で、生活保護受給者が楽しめる場所を提供しようと考えた。そして、動物園前二番街に最初のカラオケ居酒屋を開業すると、安く遊べると高齢者の人気に。チャンスと見た林氏は空き店舗を次々に取得、カラオケ居酒屋に業態を変えていった。 現在、林氏がつくったカラオケ居酒屋は一番街と二番街に20店ほどある。その大半は日本に住む中国人に貸している。「カラオケ居酒屋を開発したのはボク。そのあとみんなマネし始めた。ボクは店をつくって貸しているだけ。みんなもうかってるよ」』、「日雇い家業」、「ラーメン屋」、「カラオケ居酒屋」と時代に合わせて職業を変えているのもたくましい。
・『星野リゾートもホテルを開業へ  釜ヶ崎周辺はJR大阪環状線・新今宮駅や動物園前駅から目と鼻の先と利便性は抜群。ただ、「昔は駅前で寝ている人も大勢いた」と手荷物預かりサービスを営むダイコクロッカーの岡西義友代表が語るように、外部の人間には近寄りがたい場所だった。林氏が空き店舗を取得できたのも、イメージの悪さから周辺の不動産価格が低く抑えられていたためだ。 それが、インバウンドの増加に伴って状況は変わりつつある。 星野リゾートは2017年に、新今宮駅の北側(浪速区)に「OMO7(おもせぶん)」という観光特化型のホテルを開業すると公表した。南海電鉄も新今宮駅至近のFP Hotels Grand 難波南を取得した。 「新今宮の周辺は心斎橋に近く、神戸にも京都にも楽に行ける。目の前は広い幹線道路で観光バスの横付けも可能。周囲のイメージも観光客には関係ない」。FP Hotels Grand 難波南を含め、新今宮駅周辺で2軒のホテルを運営するフリープラスの柿内将也氏は語る。 インバウンドの増加はビザ発給要件の緩和や円安、LCC(格安航空会社)の就航などが影響している。ただ、釜ヶ崎の構造変化と地元の簡易宿所(簡宿)事業者の地道な努力も大きい。 1960年代、70年代の高度経済成長期に活況を呈した釜ヶ崎だが、バブル崩壊後は日雇いの仕事が激減、労働者向けの簡宿も大打撃を受けた。「2000年ごろの空室率は70~80%。借金もあってどないすんねんという状況だった」。ホテル中央オアシスやホテルみかどなどの格安ホテルを運営するホテル中央グループ会長で、大阪府簡易宿所生活衛生同業組合の理事長を務める山田純範氏は振り返る。 ただ、捨てる神あれば拾う神もある。2000年にホームページを開設したところ、安価な価格に引きつけられた外国人旅行者からの問い合わせが増え始めた』、インバウンドがこんなところにまで影響しているようだ。
・『簡易宿所はバックパッカーシフトで大成功  釜ヶ崎の簡宿の広告を日本人向けに出しても仕方がない――。そう割り切った山田氏は外国語での情報発信を強化。バックパッカーとして世界中を旅していた息子が会社に参画した2004年以降は海外のバックパッカーが利用しやすいように施設を改修したり、ネット販売を強化したり、外国人シフトをさらに推し進めた。 その戦略は奏功した。 労働者の高齢化によって西成の高齢化率は40%に達しており、簡宿に住んでいた労働者は亡くなるか、サポーティブハウスなどの福祉施設に移動している。一方、2004年に9000人だったホテル中央グループの外国人宿泊者数は2018年に20万人まで拡大した。 「労働者の減少分をインバウンドで補うことができている。ウチのホテルだけでなく、同業者全体で取り組んだ結果だ」と山田氏は語る。 住民の顔ぶれが変わりつつある釜ヶ崎。その土地のポテンシャルに目をつけた人が続々と資金を投下している。 例えば、動物園前一番街の阪神高速松原線をはさんだ反対側、山王地区は木造の長屋が目立つ「ザ・下町」という風情の地域だが、路地をぶらりと歩くと、長屋を改造したこぎれいな民泊物件がそこかしこにある。玄関に貼られている緊急連絡先を見ると、中国人と思われる名前も少なくない。 西成区全体にフォーカスを広げても同様だ。西成区役所のある天下茶屋。ここも下町情緒あふれる地域だが、10分も歩けば、古民家をリノベーションした民泊物件をいくつも見つけることができる。 大阪に来る外国人観光客はLCCで関西国際空港に入る場合が多い。その多くは大阪に泊まり、大阪を拠点に京都や神戸などに足を延ばす。その文脈で見れば、天下茶屋は関空となんばを結ぶ南海電鉄の特急ラピートや空港急行が停車する主要駅であり、同駅に乗り入れている地下鉄堺筋線に乗り換えれば黒門市場のある日本橋にも近い。 このように外国人観光客にとっては抜群の立地だが、なんばや天王寺などの中心部に比べれば不動産価格はまだ割安。それゆえに、天下茶屋は民泊オーナー注目の場所になっているのだ。「天下茶屋は狙い目」。民泊オーナーでサラリーマン投資家に民泊投資を指南している新山彰二氏は語る。かつての弊誌特集「不動産大革命」における豊洲のような裁定取引が起きている』、インバウンドや「関西国際空港」が、「不動産価格はまだ割安」の地域を生み出し、「裁定取引が起きている」とはやはりダイナミックだ。
・『「中華街にして、ここをもっといい商店街にしたい」  盛龍不動産の林氏は現在、あるプロジェクトに取りつかれている。動物園前一番街・二番街の北と南、そして商店街の東西に横浜中華街風の中華門を設置、商店街全体を中華街にするという「大阪中華街プロジェクト」だ。この計画を推進するため、林氏は仲間の中国人経営者とともに華商会という団体を設立した。世界のどこに行っても中華色に染め上げる華僑らしい発想だ。 「中国にこんな(アーケードがある)立派な商店街はない。中華街にして、ここをもっといい商店街にしたい」 もっとも、降って湧いた中華街構想に地元は困惑気味だ。「4月に華商会の人々と初めて協議した。東西南北に中華門を建てて一流の中華料理店を北京から呼ぶという話だが、どこまで実現性があるのか疑問。地元としては賛成できない」と飛田本通商店街振興組合の村井理事長は言う。 中華街構想のパンフレットを見ると、2025年に224億円の売上高が見込めると試算、著名中華レストランの参画もうたっている。だが、過去10年でカラオケ居酒屋が増えているといっても、もともと中国とは何の関係もない。地元が警戒するのは当然だろう。 隣接する飛田新地の飛田新地料理組合は中国人による買収を警戒して空き家だった近隣のビルを取得、防災用の備品を備蓄する防災会館に転換した。「彼らはかなりの高値で物件を買う。ここは統率が取れているが、(高値での買い占めに)周囲の人は恐れているのではないか」。飛田新地料理組合の徳山邦浩組合長は語る。 文字通り動かない不動産は基本的に立地が全て。そして、不動産を金融商品と捉えるのであれば、物件の特性に応じた利回りに収れんしていく。それは、過去20年の歴史が証明している。 急激な開発に対する地元の反発もあり、右肩上がりで不動産価格が上がるかどうかは定かではないが、高齢化が進み、釜ヶ崎が労働者の町からインバウンドの町に変わりつつある以上、西成は10年後には様変わりしているのではないか』、林氏の「中華街構想に地元は困惑気味」、地元にすれば無理からぬところだろう。「西成は10年後には様変わりしているのではないか」、どんなになるのだろう。
タグ:不動産 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 現代ビジネス (その5)(100均の家ついに登場 深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題、2022年 タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識、大阪・西成を買い占める謎の中国人) 山本 久美子 「100均の家ついに登場、深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題」 空き家が問題になる理由は? 問題となるのは、「その他」の中でも、使い道が決まっていない、長期間誰も住んでいない空き家だ 空き家対策特措法の効果 空き家特措法で市町村に求めた「空家等対策計画」について、2019年3月末日時点で全市区町村の約6割(60.4%)となる1051団体が策定 「特定空家等」について、2019年3月末日までに市区町村長が1万5586件の助言・指導を実施 「全国版空き家・空き地バンク」 「100均空き家」にどんな意味があるのか 「空き家ゲートウェイ」 「100均空き家」 使い物にならないと諦めている、売りたいが値がつかないので不動産会社が扱わない、といった空き家を日本中から集めて、それを活用したいというユーザーとマッチングするプラットフォームになっている 資産価値のない物件が価値をもつ 売却価格100円といっても、売却時の諸費用などがかかるし、DIYやリフォームなどの改修も自分で行う必要 「2022年、タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識」 「修繕ラッシュ」が来た 築15年、400戸近いマンションに、現在の居住者は3割にも満たない。外壁に割れが目立ち、エントランス前は雑草が伸び放題になっている タワマン人気はピークにある デベロッパーにとってタワマンはまさに「打ち出の小槌」であり、いまだ根強いタワマン人気に応えるように、フロンティア開拓は進んでいる そんなタワマンブームに火が付いたのは2000年前後のこと。当時建てられた超高層マンションは早くも15~20年選手になろうとしているわけだが、ここにきて重大な問題が表面化してきた 類を見ないほどの大規模で高額な「修繕」をどうするか、ということだ 売り手はリスクを伝えない 住民の意見がまとまらない 総戸数600超の某タワーマンションでは、30年の修繕累計コストは50億円以上におよぶと見積もられている その間に見込まれる修繕積立金は半分にも満たない23億円 大規模修繕ができていないタワーマンションは次から次へと売りが出る可能性 タワマン。その姿はさながら「住む原発」といえる 「大阪・西成を買い占める謎の中国人」 西成は外国人観光客の増加で注目 西成のようにこれまで過小評価されていたような不動産も動き始めた 真っ昼間から大音量のカラオケが通りに響く 既に11店がカラオケ居酒屋 店を切り盛りしているのは片言の日本語を話す中国人女性 最近は新世界や天王寺界隈から流れるサラリーマンなどの2次会需要でにぎわっている 首都圏の759駅のマンション利回りを算出、それぞれの将来性を「AAA」から「C」の9段階で格付け この時に最高評価のAAAを得たエリアのひとつに江東区豊洲 利回りの取れる掘り出し物をさがせ カラオケ居酒屋をつくり、投資家に貸し出す 星野リゾートもホテルを開業へ 簡易宿所はバックパッカーシフトで大成功 「中華街にして、ここをもっといい商店街にしたい」 降って湧いた中華街構想に地元は困惑気味
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日本・ロシア関係(その8)北方領土6(北方領土「日本人が知らない」真実 占領の黒幕・返還交渉の矛盾、北方領土での共同経済活動 日本がつかまされた“残りカス”、三井物産が出資するロシア巨大LNG その命運を握る「黒い金庫番」の正体) [外交]

日本・ロシア関係については、2月21日に取上げた。今日は、(その8)北方領土6(北方領土「日本人が知らない」真実 占領の黒幕・返還交渉の矛盾、北方領土での共同経済活動 日本がつかまされた“残りカス”、三井物産が出資するロシア巨大LNG その命運を握る「黒い金庫番」の正体)である。

先ずは、ジャーナリストの粟野仁雄氏が4月26日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「北方領土「日本人が知らない」真実、占領の黒幕・返還交渉の矛盾…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/201097
・『ロシアにとっては「南方領土」 北方領土と日本の複雑すぎる関係  「今、日本でニュースになっているクリル列島(千島列島)の問題をどう思いますか。日本じゃ北方領土と呼ぶのだけれど……」 1月末、モスクワでの首脳会談に合わせて旧島民たちの取材に訪れた筆者は、北海道根室市のラーメン店で、隣に座った若いロシア人男性に拙いロシア語でこう尋ねた。サハリンから商売に来ていた体格のよい男は、「北方領土ではないよ。あの島は絶対に我国の『南方領土』なんだ。でも日本はいい国だよ。仲良くしたいね」と笑った。 安倍首相とプーチン大統領による日ロ首脳会談の度に取り沙汰される北方領土問題だが、3月15日、ロシアの『コメルサント』紙が「大きく交渉スピードが後退した」とプーチン大統領が発言していたことを報じた。足もとでは、5月上旬の対ロ協議を前に、河野太郎外相が国会答弁においてロシア側を刺激しない配慮を見せるなど、交渉の「難しさ」が伝わってくる。 近づいたとか思うと離れるブーメランのような「北方領土」とは、日本人にとってどんな存在なのか。筆者が若き記者時代から関わったこのテーマについて、まずは地理や歴史などの基本事項を解説したい。 背の低い白い灯台が立つ根室半島先端の納沙布岬。眼下の岩礁にはかつて作家の三島由紀夫を信奉する国粋主義団体「楯の会」がペンキで描いた「千島を返せ」の文字があったが、積年の波で消えている。沖へ視線をやると、水平線上にまっ平で樹木の1本もない不思議な水晶島が見える。貝殻島の「日本時代」からの古い灯台が見える。右には勇留(ゆり)島。いずれもロシアの実効支配下にある歯舞群島の1つだ。 「うわあ、ロシアが見えるなんて」-――。若いカップルが驚いていたが、寒がって車に引っ込んでしまった。夏のシーズンは濃霧で見にくいため寒い時期がいいのだが、この地域の冬の寒さは半端ではない。見えていた数隻の漁船は、あまりの近さに日本の船かと思いたくなるが、潜水でウニを採るロシアの船である。ここから日露の海上の「中間ライン」(固有の領土、領海を主張してきた国は国境とは言えない)はわずか1.7キロだ。 「ロシア人はウニなんて食べないから、みんな日本に売るんです。この寒いのによく潜るよ」とは食堂兼土産物店「請望苑」を経営する竹村秀夫さんだ。訪問者たちの「北方領土って、こんなに近かったんですか」の言葉に地元民は辟易しているが、北海道旅行も根室まで行く人は少ないから、それも仕方がない』、「訪問者たちの「北方領土って、こんなに近かったんですか」の言葉に地元民は辟易している」、というのは地元民の偽らざる実感だろう。
・『北方領土は、北から択捉島、国後島、並列する歯舞諸島と色丹島の「4島」だが、沖縄本島より大きい最大の択捉島と2番目に大きい国後島が、全面積の93%を占める。国後島は根室市からも見えるが、標津町からはより近く、好天なら主峰の爺々岳も見える。 北方領土をめぐる国際的な取り決めの柱は、(1)1855年の日露通交(和親)条約、(2)1875年の千島樺太交換条約、(3)1904年のポーツマス条約、(4)1951年のサンフランシスコ講和条約、そして(5)1956年の日ソ共同宣言だろう。日ロ間における北方領土を巡るターニングポイントについて、おさらいしてみよう』、歴史をなおざりにしがちな我々にとって、おさらいする意味はありそうだ。
・『開国時にロシアだけは友好な態度だった  1855年2月7日、江戸幕府はロシア帝国と「日露通好条約」を結ぶ。「日露和親条約」ともいう。ロシア語では「貿易と国境の条約」だが、日本語では「貿易」も「国境」も消え、和親だとか通好とか、わけのわからぬ言葉になる。 このとき、ニコライ一世の訓令・プチャーチン提督と対峙したのが、幕府の川路聖謨(かわじ・としあきら)という旗本。NHKの元モスクワ支局長の石川一洋解説委員は、2月に鳥取県倉吉市に招かれた講演会で、川路について「優れた人でしたが、ロシアの交渉団が彼の写真を撮ろうとしたら固辞した。『私のような醜男が貴国に紹介されては日本の恥です』と言ったのです」と素朴な人柄を紹介した。川路は戊辰戦争で幕府軍に殉じて自決した。 この時期、米国のペリー提督が軍艦を連ねて開国を迫るなど、欧米列強が「鎖国日本」を力でこじ開けようとしたが、石川氏は「ロシアだけは非常に友好的な態度で日本に接してきたのです」と強調した。確かにその通りだ。 この条約で国境線が得撫(ウルップ)島と択捉島の間とされ、樺太は「日露混住の地」となるが、20年後の1875年、ペテルブルグ(今のサンクトぺテルブルグ)で締結された「千島樺太交換条約」で、樺太は全島がロシア領、千島列島すべてが日本領となる。日本は大政奉還から7年目の明治8年、ロシア側は革命で銃殺されるロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ二世の父、アレクサンドル三世の時代だ。 20世紀初頭、日露戦争で日本が勝利し、1905年に「ポーツマス条約」で樺太の南半分が日本領となる。これはロシア人にとって大変な屈辱だった。南樺太のロシア人は北緯50度以北へ追いやられ、代わりに日本の開拓団が多数樺太へ移住し、石炭生産、製紙産業、林業、農業、漁業などを繁栄させた。樺太や千島の日本人は、第二次大戦末期に日本本土の人たちが空襲などに苦しんでいた頃も平和を謳歌した』、丸山穂高衆議院議員の認識とは異なり、戦争以外でも「千島樺太交換条約」で、領土が動いたことがあったようだ。
・『それが破られたのが、ポツダム宣言受諾後の1945年8月。日ソ中立条約を一方的に破ったソ連軍が、満州、樺太、北方領土へ侵攻したのだ。戦闘らしい戦闘もなかった北方領土では、樺太や満州のような悲劇は少ないが、金品を奪うソ連軍との諍いや、本土への脱走時に船が銃撃を受けるなどして、幾人かが命を落とした。 その後、色丹島などでは2年間ほど日露混住の時代もあった。色丹島の混住時代に小学生時代を過ごした得能宏さん(85)は、「先生は怖がっていたけれど、ロシア兵が黒板のほうに来て、生徒の算数の間違いを直してくれた」と振り返る。 最終的に4島から日本人すべてが追われた。根室や羅臼などに裸一貫で引き揚げた彼らの戦後の苦労は想像に難くない』、戦後も「色丹島などでは2年間ほど日露混住の時代もあった」、というのは初めて知った。
・『意外に知られていないサンフランシスコ平和会議での失態  ソ連の対日参戦は1945年2月の米、英、ソのヤルタ会談で密かに決められた。戦争を早期終結させ、米兵の犠牲を減らしたいルーズベルト・米国大統領の求めによるものだが、スターリン・ソ連書記長の談話録には「問題が起きているわけではない日本と戦争することに国民は納得しない」と、代償に領土拡大を求める巧みな会話が残されている。 後にスターリンは、釧路と留萌を結ぶライン以北の北海道の北半分までも要求したが、米国が拒否した。実現していたら北海道は今頃、どうなっていたのだろうか。 1951年、米国との単独講和だったサンフランシスコ平和条約で、日本は「クリルアイランズ(千島列島)」を放棄した。実はこのときに、現在に至るまで禍根を残す失態が生じる。批准国会で野党議員に「放棄した千島に国後や択捉を含むのか」と訊かれた西村熊雄条約局長が、「含む」と答えてしまったのだ。 外務省はこの大失敗に触れられることを今も嫌がるが、和田春樹・東大名誉教授(ロシア史)は「どんなにつらくとも、放棄したことを認めて交渉すべきだ」と話す。外務省は、「サ条約にはソ連が参加していないから、ロシアのものとされたわけではない」としている』、「批准国会で野党議員に「放棄した千島に国後や択捉を含むのか」と訊かれた西村熊雄条約局長が、「含む」と答えてしまったのだ」、初耳だが、そうなのであれば、「和田春樹・東大名誉教授(ロシア史)は「どんなにつらくとも、放棄したことを認めて交渉すべきだ」、というのが筋だ。「「サ条約にはソ連が参加していないから・・・」は苦しい言い逃れに過ぎない。
・『1956年、鳩山一郎首相とソ連のブルガーニン首相との間で「日ソ共同宣言」が締結された。今、盛んにニュースになっている史実だ。「平和条約締結後に、色丹島と歯舞諸島は日本に引き渡すとされた」が、「引き渡す」(ロシア語では「ペレダーチ」)とは、「返す」ではなく、「私の物ですが差し上げます」というニュアンスだった。 結局、平和条約を結べないまま、世界は冷戦時代に突入。日本を自由主義陣営に引き込みたい米国のダレス国務長官が、「歯舞・色丹の返還を目指してソ連と平和条約を結ぶなら、沖縄を永久に占領する」とした有名な「恫喝」が大きな楔だった。 そして、1960年の日米安保条約延長でソ連は態度を硬化し、「領土問題は解決済み」とされる。1973年、田中角栄首相がブレジネフ書記長に「両国間の未解決諸問題」に領土問題が含まれることを認めさせたが、その後進展はなかった。80年代にゴルバチョフ政権が誕生し、91年にソ連が崩壊、続くエリツィン政権ではロシアが一旦態度を軟化させたものの、日本は何度も好機を逃してきた(これについては、後述する)。 日本人の最も身近にある国際問題の1つ、北方領土問題はこうした経緯を辿って来たのである』、「「日ソ共同宣言」では、「平和条約締結後に、色丹島と歯舞諸島は日本に引き渡すとされた」が、結局、平和条約を結べないまま、世界は冷戦時代に突入日本を自由主義陣営に引き込みたい米国のダレス国務長官が、「歯舞・色丹の返還を目指してソ連と平和条約を結ぶなら、沖縄を永久に占領する」とした有名な「恫喝」が大きな楔だった」、ここまでダレス国務長官に「恫喝」されれば、日本側が断念したのも理解できる。ただ、こうした歴史的経緯を無視・単純化して一方的に返還を要求する日本政府の姿勢にも無理がありそうだ
・『忘れられがちな史実 本当の先住民は誰だったのか  2月7日、筆者は大阪は中の島公会堂の「北方領土返還要求大会」に出かけた。入り口で「アイヌ民族抜きで交渉を進めることはおかしい」と抗議の横断幕を掲げる人たちがいた。 北方領土史で忘れられがちなのは、「本当の先住民は誰だったのか」だ。筆者は1980年代、北海道で知り合いのソ連担当の公安関係者から、「ソ連の学者たちが北海道のアイヌ民族の存在を口実に、北方領土が古来、自分たちの領土だったことにしようとしている」と聞いた経験がある。アイヌはロシア側にも居ることをテコに、「日本人より先にロシアのアイヌが千島にいた」として、日本が主張する「固有の領土」を否定しようとし、「AS協会」という組織を立ち上げたと、といった話だった。 詳細は省くが、国境という観念も希薄だったその昔、千島列島ではアリュート、樺太アイヌ、北海道アイヌら、様々な民族が狩猟生活や物々交換などをしていた。政府は、第二次大戦までは一度も外国の手に渡っていない「固有の領土」と強調している』、確かに「アイヌ民族」という先住民にまで遡れば、「国境」を超えて「アリュート、樺太アイヌ、北海道アイヌら、様々な民族が狩猟生活や物々交換などをしていた」、というのは動かし難い事実で、なかなか難しい問題だ。
・『ソ連の北方領土占領に米国が協力 なぜか後追いされない衝撃の事実  2017年12月30日の北海道新聞に「歴史の常識を覆す」報道があった。タイトルは「ソ連の北方四島占領、米が援助、極秘に艦船貸与、訓練も」というものだ。 概要は、1945年8、9月に行われた旧ソ連軍の北方4島占領作戦に、米国が艦船10隻を貸与していたというものだ。大量の艦船の提供だけではなく、ソ連兵の訓練も行ったといい、4島占領の背景に米国の強力な軍事援助があったことを示唆する内容だった。 ヤルタ会談の直後、連合国だった米ソは「プロジェクト・フラ」という極秘作戦を実施した。米国は45年5月から掃海艇55隻、上陸用舟艇30隻、護衛艦28隻など計145隻の艦船をソ連に無償貸与。ソ連兵1万2000人を米アラスカ州の基地に集め、1500人の米軍人が艦船やレーダーの習熟訓練を行った。 8月28日からソ連兵が攻め込んだ択捉、国後、色丹、歯舞の占領作戦には、米国に借りた艦船10隻を含む17隻が参加。ソ連軍は各島で日本兵の武装解除を行い、4島の占領は9月5日までに完了した。 記事には、和田春樹・東京大学教授が次のような談話を寄せている。 「北方4島を含むソ連の対日作戦を米国が軍事援助していたことは、日本ではほとんど知られておらず、発見と言える。ソ連が勝手に行ったのではなく、米国をリーダーとする連合国の作戦だったことを示す」 日本がポツダム宣言を受諾して降伏した後に、ソ連は日ソ中立条約を破棄して千島列島を南下、樺太からのソ連軍は米軍がいないことを確認して、択捉、国後島、歯舞群島、色丹島に侵攻したという「常識」を覆す話だ』、「ソ連の北方領土占領に米国が協力」というのは、全くの初耳だが、驚くべき話だ。日本のマスコミが政府を「忖度」して、この事実を無視しているとすれば、恥ずべきことだ。
・『ソ連が樺太南部と千島列島での作戦に投入した全艦船を調べた、ロシア・サハリン州戦勝記念館のイーゴリ・サマリン科学部長の論文を、同紙根室振興局が入手した。調査を主導した谷内紀夫前副局長は、「ボリス・スラビンスキーの著書『千島占領・一九四五年夏』(1993年)には、この経緯の一端が出ているが、話題にならなかった」と言う。 記事を見た千島歯舞諸島居住者連盟の宮谷内亮一・根室支部長は、「驚いた。ソ連の占領に関わっていたのなら領土問題はアメリカにも責任がある」と話す。旧島民も初耳の人は多い。一方、連盟の脇紀美夫理事長(元羅臼町長)は、「日本が降伏しているのに攻めて占領したソ連に対して、当時、アメリカが強く非難したということは聞かないから、米国のソ連軍支援は十分考えられる」と話す。 日本政府が「米軍の援助」を知らなかったはずはないが、冷戦下、米国とともに反ソ感情を煽るためにも都合の悪い事実だった。納沙布岬にある北方館の小田嶋英男館長も「ソ連は当時、連合国の一員なのでおかしくはない。引き揚げてきた人は国籍不明の船を見たとか、ロシアの船ではないと話していた。でも、ソ連軍の4島の占領にアメリカが関わった歴史を出さない方がいい、ということだったのでしょう」と推測する。 事実は北海道新聞の報道後、釧路新聞と根室新聞が報じたが、全国紙は無視した。中央メディアも外務省などに問い合わせはしたはずだ。米国に追従する安倍政権に「忖度」したのなら、情けない話だ。現代史の中で語られる出来事は、今の政治に直結しているケースが多いため、こうしたことは多い。日露首脳会談のときだけ賑やかになる北方領土問題も、その実、4島をめぐる現代史の根本事実すら国民には知らされていない』、こんなことでは、「北方領土問題」の解決など夢のまた夢だ。
・『一般人が島へ行くことはできるか?「渡航禁止」にも矛盾はらむ外務省  さて、こうした複雑な歴史を持つ北方領土だが、日本人が島を訪れることはできるのか。結論から言えば、行けないことはないものの、一般人が訪れるのはなかなか困難だ。 時代を遡れば、1989年4月、北海道新聞がメディアとして戦後初めて北方領土、国後島の上陸取材を報じた。まだソ連時代でロシア人でも簡単には入れなかった。歴史的快挙だ。 当時、筆者が親しくしていた札幌領事館のイワノフという副領事(日本語が堪能だった)は、「あんなところに大した秘密も何もないんです。日本のような発展した国の人に、あんな遅れた場所を見せたくないんですよ」と話した。 残留日本人や韓国人などの取材でサハリンに通っていた筆者は、自然やロシア人の素朴さには魅かれたが、「何と後れた場所か、1世紀前に戻ったようだ」と感じていた。戦後初めて故郷を再訪した引揚者の女性も、「ロスケ(筆者注:ロシア人。必ずしも蔑称ではない)は何してたのよ。日本時代の方が進んでたわ」と呆れていた。 ソ連社会の中で、極東地方はモスクワから見放された地域。筆者は「サハリン本島でこれなら、北方領土(同じくサハリン州)なんてどんなに原始的か」と感じていたので、イワノフ氏の話は納得できた。 1992年に「ビザなし交流」が始まった。4島交流、墓参り、自由訪問などがあるが、誰でも行けるわけではない。元居住者(子孫を含む)、返還要求運動関係者、報道関係者、学者などの専門家に限定される。日本政府は一般人の渡航を自粛するように求めている。「旅券や査証を取っての上陸はロシアの領土であることを認めてしまう」というのが言い分だ』、日本政府の言い分は苦しい言い訳に過ぎない。
・『ソ連に億単位のカネを払って北方領土の海域で漁をさせてもらう  とはいえ、北方領土や領海をめぐっては、政府とて「建前と本音」の狭間で矛盾だらけ。たとえば、一時期の中断を含めて1960年代から続く夏場の「貝殻島の昆布漁」は、ロシアに億単位の入漁料を払って北方領土の海域で昆布漁が続く。「日本固有の領土、領海」なら金を払うのは明らかにおかしいが、漁民救済の一助として止むを得ないのだ。 旅券、ビザで上陸した北海道新聞の記事をきっかけに、1990年代はピースボートなど様々な団体が旅券を取って、サハリン経由で北方領土へ渡っている。政府とて、こうした行為を日本の法律で取り締まることはできない。 1988年、アイヌ民族の男性が「国後のアイヌと共同事業をする」と言い、北海道水産部の制止を振り切って小舟で国後島へ渡った騒動があった。仲間と「ウタリ合同」というソ連との合弁会社を立ち上げて、色丹島海域で大量のカニを水揚げしてきた。北方領土を外国と認めてしまうことになる。結局、北海道海面漁業調整規則違反に問われ、国内法がソ連の実効支配海域に及ぶか どうかが最高裁まで争われたが、「及ぶ」と認定され、有罪となった。 検疫も税関も無視だから、戻れば検疫法違反や関税法違反などに問われる可能性があった。しかし、そうすると「北方領土を外国と認めてしまう」ことになるためか、その男性の罪は問われなかった。政府としても「痛し痒し」だったのだ。 日本人にとって「近くて遠い」北方領土――。返還を唱えるならば、まずはかの地を取り巻く状況がどうなっているのかを、日本人一人ひとりが深く知ることから始めるべきではないか』、マスコミは不都合な事実を含めて広く関連した情報を公開すべきだろう。

次に、6月11日付け日刊ゲンダイ「北方領土での共同経済活動 日本がつかまされた“残りカス”」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/255786
・『いつまで“外交の安倍”の幻想を振りまくつもりなのか。自民党は参院選公約のトップに「外交・防衛」を掲げ、「力強い外交・防衛で、国益を守る」とうたっているが、7年に迫ろうとする安倍政治で国益はむしろ失われる一方だ。ロシアとの平和条約締結交渉が暗礁に乗り上げる中、ロシアは北方領土の実効支配を強めている。 ロシアは国後、択捉両島の軍事拠点化を進め、色丹島では経済開発を進めている。色丹と歯舞群島は、1956年の日ソ共同宣言で平和条約締結後の日本への引き渡しが明記されているにもかかわらず、である。色丹島では7月中旬にもロシア資本の水産加工場が稼働するという。延べ床面積約7750平方メートルにのぼり、マイワシやサバ、スケトウダラを冷凍の切り身などに加工。日量900トンの処理能力を持ち、同じ敷地にある既存工場の日量200トンを合わせると、ロシア最大級となるという。 日ロは先月末、日本が3000億円規模で投資する北方領土での共同経済活動の早期具体化を外相会談で合意したばかりだ。河野外相とラブロフ外相による会談は、平和条約締結に向けた交渉責任者として4回目の協議だったが、こちらは成果なし。ロシアの関心が高い共同経済活動の調整を急ぎ、海産物の養殖、温室野菜の栽培、観光ツアー開発、風力発電の導入、ごみ減らし対策――の5項目の実現促進を確認した』、「ロシアは北方領土の実効支配を強めている」、のは確かで、日本は経済協力だけをタダでさせられているとの懸念が拭えない。
・『オイシイ資源はロ中で分配  筑波大教授の中村逸郎氏(ロシア政治)は言う。 「北方領土は漁業資源の宝庫。色丹島には中国資本の缶詰工場なども展開し、オイシイところはすでにロシアと中国が分け合っています。漁業をめぐって日本側にうまみがあるのは販路が広いコンブやサケ、カニなどですが、中国が権益を握っているため、袖にされてしまった。代わりにウニの養殖が振り分けられたわけですが、これは中国人がほとんどウニを食べないためです。ウニの養殖にしたって、技術提供がメインで加工工場を運営できるわけではない。その上、販売先は日本ですから、日本は支援させられるだけで、カネはロシアに落ちるという青写真なのです」 共同経済活動の具体化に向けた外務省の局長級作業部会が11日、都内で開かれるというが、ロシアの食い物にされるだけなのは目に見えている』、「オイシイ資源はロ中で分配」というのでは日本は「ロシアの食い物にされるだけなのは目に見えている」、これが「外交の安倍」の実態のようだ。

第三に、7月2日付けダイヤモンド・オンライン「三井物産が出資するロシア巨大LNG、その命運を握る「黒い金庫番」の正体」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/207369
・『三井物産がロシアのLNGプロジェクトに出資することを決めた。このプロジェクトに懸ける三井物産の安永竜夫社長の思いと、三井物産の命運を握る男の正体に迫った。 6月6日からロシア・サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラム。ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席といった超大物が顔を揃える中、三井物産の安永竜夫社長の姿があった。 ロシアの民間ガス大手ノバテクが北極圏で計画する液化天然ガス(LNG)プロジェクト「アークティックLNG2(アーク2)」へ出資判断の期限が迫っていた。 同じくアーク2への出資要請を受けていた三菱商事の垣内威彦社長の姿はなかった。アーク2に対する三井物産と三菱商事のスタンスの違いが明確に表れていた。 三井物産と政府出資の独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は6月29日、アーク2に出資することを決めた。出資総額は3000億円超で、その出資割合は三井物産が25%、JOGMECが75%となる』、「三井物産」にすれば、リスクの75%はJOGMECが負うので割が良さそうに思えるが、三菱商事が乗ってこなかった裏には理由があるのだろう。
・『思惑絡み、安倍首相とプーチン大統領の前で署名式  アーク2は2023年から年間約2000万トンのLNGを生産する予定の巨大プロジェクトだ。このプロジェクトは日本、米国、ロシアそれぞれの政府の思惑が絡み、極めて政治色が濃いと業界関係者は見ている。 G20サミット(20ヵ国・地域首脳会議)に合わせた日ロ首脳会談後、安倍晋三首相とプーチン大統領の前で署名式が行われたことがそれを物語っている。 シェール革命の恩恵を受けた米国のトランプ政権は、世界のLNG市場で覇権を握ろうとしている。それに対抗するかのように、豊富な天然ガスの埋蔵量を誇るロシアは、アーク2をはじめとする北極圏のLNGプロジェクトで米国の同盟国に揺さぶりをかけている。 アーク2にはすでにノバテク(注)が6割、仏メジャーのトタールが1割、中国海洋石油集団(CNOOC)が1割、中国石油天然気集団(CNPC)の子会社が1割、それぞれ出資することが決まっていた。ノバテクは三井物産、三菱商事に出資を要請し、回答を待っていた。 日本側にも思惑があった。6年以上の長期政権となり、後世に評価されるレガシーをつくりたい安倍晋三首相は、北方領土返還を含む日ロ平和条約の締結に向け、日本企業のアーク2への出資を交渉カードとして切る準備をしていた。だから三井物産と三菱商事の出資を“援護射撃”するかたちで、JOGMECはアーク2に出資を決めたのである。 三井物産と三菱商事は事業性を見極めるだけでなく、政府の思惑も意識しなければならなかった。悩みに悩む三井物産、三菱商事の足下を見て、ノバテクはG20サミット(20ヵ国・地域首脳会議)が開かれる6月末を出資への回答期限とした。もともと出資に前向きだった三井物産は、それに応えた。三菱商事は引き続き、出資の検討を続ける模様だ。 LNGプロジェクトは、数十年にわたって投資を回収する息の長い事業である。物産は大きなリスクを抱えながら、プロジェクトを完遂させていくことになる。このアーク2には、成否の鍵を握り、リスク要因ともなる、キーマンが存在する』、「ノバテク」とは、ロシアの独立系天然ガス生産・販売会社。天然ガス生産量はガスプロムに次いでロシア国内2位。主要株主はプーチン大統領の旧友でもある石油トレーダーのゲンナジー・チムチェンコ(後述)の所有するルクセンブルクのファンド、ヴォルガ・リソーシーズで、同社株の20.77%を保有する。次いでガスプロムが10%の株式を保有(Wikipedia)。
・“黒い金庫番”は米国の制裁対象  キーマンとなる男の名はゲンナジー・ティムチェンコ。プーチン大統領の“黒い金庫番”と呼ばれ、ロシアのクリミア半島併合をきっかけに始まった米国の経済制裁対象に指定されている。 ティムチェンコ氏は急成長を遂げたノバテクを支えたとされ、ノバテクの株を23%超保有する大株主で、取締役も務めている。米経済誌フォーブスの19年の億万長者リストに名を連ね、保有資産は2.2兆円にも上る。 ティムチェンコ氏とプーチン大統領の関係は、プーチン大統領がサンクトペテルブルク市長を務めていた1990年代から始まったとされる。ティムチェンコ氏はサンクトペテルブルクの柔道クラブを創設し、プーチン大統領はその柔道クラブの名誉総裁を務めている。 ティムチェンコ氏は石油トレーダー業の発展に力を入れ、2000年に石油貿易会社のグンヴォルを設立。ロシア産原油の輸出を手掛け、世界第4位の石油トレーダーに成長した。ロシア国内の製油所やパイプラインの建設も引き受け、巨万の富を築いた。 さらに2007年、ルクセンブルクに投資基金「ヴォルガ」を設立し、ノバテクに出資。ノバテクは北極圏のLNGプロジェクトで急成長を遂げた』、「“黒い金庫番”は米国の制裁対象」、でプーチン大統領とは腐れ縁もありそうな人物のようだ。
・『プーチンが退任すれば、キーマンの地位も危うい?  グンヴォル、ノバテクの急成長の陰には、いずれもプーチン大統領の後押しがあったとされている。アーク2を含むノバテクが手掛ける北極圏のLNGプロジェクトは、ロシア政府の補助金や免税措置によって“げた”を履かされている。 米政府はティムチェンコ氏がプーチン大統領の資金源になっていると断定し、民間人ながら制裁対象に加えたのである。 権力闘争が激しいロシアでティムチェンコ氏の隆盛がいつまでも続くか見通せない上、プーチン大統領が退任すれば、ティムチェンコ氏の地位も危うくなる可能性は小さくない。業界関係者は「プーチンの後はプーチンとも言われるが、永遠には続かないはずだ。プーチンがいなくなれば、ノバテクは厳しい立場に追い込まれるに違いない」と指摘する。 物産がアーク2に出資するのは、米政府による経済制裁、ロシアの政策変更のリスクを負うことを意味するわけだ』、三井物産はずいぶん思い切ってリスクを取ったものだ。
・『前のめりになる三井物産社長の思い  三井物産にすれば、ノバテクもティムチェンコ氏についても、大きなリスクがあるのは重々承知の上での判断だ。なぜ、そこまでしてアーク2に賭けたのか。 「サハリンで苦労した安永さんは、ロシアにはよほどの思い入れがある」と三井物産関係者は明かす。 サハリンとは、ロシアの国営ガス会社であるガスプロムが極東で手掛け、物産も参画したLNGプロジェクト「サハリン2」を指す。安永社長は、このサハリン2の事業立ち上げや最終投資決定に携わっていた。 2007年、パイプライン建設をめぐる環境問題をきっかけに、三井物産は上流権益をガスプロムに譲渡せざるを得なくなった。 だからこそ、安永社長には前のめりになってでも、ロシアのプロジェクトを成功させたい思いがあるという。 三井物産はこれまで世界のLNGビジネスを牽引してきた。アーク2に参画することはそのプレゼンスを示す絶好のチャンスでもあり、需要が縮小する日本以外でLNG市場を開拓する物産の戦略に合致する。 物産関係者によれば、アーク2で生産されたLNGの多くは欧州やアジア市場に向かうとされ、物産が二つの市場にさらに食い込むきっかけになるという。 トップ自らが賭けたプロジェクトは果たして吉と出るか、凶と出るか』、三井物産で思い出されるのは、1973にイランで始めたイラン・ジャパン石油化学(IJPC)プロジェクトである。イラン革命、イラン・イラク戦争などを経て、85%まで工事が完成しながら、1988年に合弁事業を解消。プロジェクト総額6000億円のうち、日本側損失は3000億円超とされた。
https://www.nikkei.com/article/DGKDZO57831850X20C13A7TY8000/
無論、三井物産にはその教訓が生きており、二の舞を踏むことはないだろうが、やはり気になるプロジェクトだ。日本・ロシア関係も安倍政権が考えるほど簡単には行かないのではなかろうか。
タグ:日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン 日本・ロシア関係 粟野仁雄 (その8)北方領土6(北方領土「日本人が知らない」真実 占領の黒幕・返還交渉の矛盾、北方領土での共同経済活動 日本がつかまされた“残りカス”、三井物産が出資するロシア巨大LNG その命運を握る「黒い金庫番」の正体) 「北方領土「日本人が知らない」真実、占領の黒幕・返還交渉の矛盾…」 ロシアにとっては「南方領土」 北方領土は、北から択捉島、国後島、並列する歯舞諸島と色丹島の「4島」 開国時にロシアだけは友好な態度だった 「日露和親条約」 国境線が得撫(ウルップ)島と択捉島の間とされ、樺太は「日露混住の地」となる 「千島樺太交換条約」で、樺太は全島がロシア領、千島列島すべてが日本領となる 日露戦争で日本が勝利し、1905年に「ポーツマス条約」で樺太の南半分が日本領となる。これはロシア人にとって大変な屈辱 ポツダム宣言受諾後 ソ連軍が、満州、樺太、北方領土へ侵攻 その後、色丹島などでは2年間ほど日露混住の時代もあった 最終的に4島から日本人すべてが追われた サンフランシスコ平和会議での失態 批准国会で野党議員に「放棄した千島に国後や択捉を含むのか」と訊かれた西村熊雄条約局長が、「含む」と答えてしまったのだ 外務省は、「サ条約にはソ連が参加していないから、ロシアのものとされたわけではない」としている 「日ソ共同宣言」 平和条約締結後に、色丹島と歯舞諸島は日本に引き渡すとされた」 平和条約を結べないまま、世界は冷戦時代に突入 日本を自由主義陣営に引き込みたい米国のダレス国務長官が、「歯舞・色丹の返還を目指してソ連と平和条約を結ぶなら、沖縄を永久に占領する」とした有名な「恫喝」が大きな楔だった 1960年の日米安保条約延長でソ連は態度を硬化し、「領土問題は解決済み」とされる 日本は何度も好機を逃してきた 忘れられがちな史実 本当の先住民は誰だったのか 国境という観念も希薄だったその昔、千島列島ではアリュート、樺太アイヌ、北海道アイヌら、様々な民族が狩猟生活や物々交換などをしていた ソ連の北方領土占領に米国が協力 なぜか後追いされない衝撃の事実 旧ソ連軍の北方4島占領作戦に、米国が艦船10隻を貸与していたというものだ。大量の艦船の提供だけではなく、ソ連兵の訓練も行ったといい、4島占領の背景に米国の強力な軍事援助があったことを示唆する内容 米ソは「プロジェクト・フラ」という極秘作戦を実施 米国は45年5月から掃海艇55隻、上陸用舟艇30隻、護衛艦28隻など計145隻の艦船をソ連に無償貸与。ソ連兵1万2000人を米アラスカ州の基地に集め、1500人の米軍人が艦船やレーダーの習熟訓練を行った ソ連兵が攻め込んだ択捉、国後、色丹、歯舞の占領作戦には、米国に借りた艦船10隻を含む17隻が参加。ソ連軍は各島で日本兵の武装解除を行い、4島の占領は9月5日までに完了した ソ連が勝手に行ったのではなく、米国をリーダーとする連合国の作戦だったことを示す ロシア・サハリン州戦勝記念館のイーゴリ・サマリン科学部長の論文 『千島占領・一九四五年夏』(1993年) 事実は北海道新聞の報道後、釧路新聞と根室新聞が報じたが、全国紙は無視した 一般人が島へ行くことはできるか?「渡航禁止」にも矛盾はらむ外務省 元居住者(子孫を含む)、返還要求運動関係者、報道関係者、学者などの専門家に限定 日本政府は一般人の渡航を自粛するように求めている。「旅券や査証を取っての上陸はロシアの領土であることを認めてしまう」というのが言い分だ ソ連に億単位のカネを払って北方領土の海域で漁をさせてもらう 「北方領土での共同経済活動 日本がつかまされた“残りカス”」 ロシアは北方領土の実効支配を強めている ロシアの関心が高い共同経済活動の調整を急ぎ、海産物の養殖、温室野菜の栽培、観光ツアー開発、風力発電の導入、ごみ減らし対策――の5項目の実現促進を確認した オイシイ資源はロ中で分配 ロシアの食い物にされるだけ 「三井物産が出資するロシア巨大LNG、その命運を握る「黒い金庫番」の正体」 アークティックLNG2(アーク2) 出資総額は3000億円超で、その出資割合は三井物産が25%、JOGMECが75%となる 思惑絡み、安倍首相とプーチン大統領の前で署名式 “黒い金庫番”は米国の制裁対象 ゲンナジー・ティムチェンコ プーチンが退任すれば、キーマンの地位も危うい? 前のめりになる三井物産社長の思い 安永社長は、このサハリン2の事業立ち上げや最終投資決定に携わっていた。 2007年、パイプライン建設をめぐる環境問題をきっかけに、三井物産は上流権益をガスプロムに譲渡せざるを得なくなった イラン・ジャパン石油化学(IJPC)
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公務員制度(その3)(財務省は生まれ変われるか?再生プロジェクトの中身を元財務官僚が検証、”市職員の政治的中立性”を蔑ろにする菅今治市長の責任、元駐イラン大使が強制わいせつで刑事告訴 公邸でセクハラ) [国内政治]

公務員制度については、昨年6月4日に取上げたままだった。今日は、(その3)(財務省は生まれ変われるか?再生プロジェクトの中身を元財務官僚が検証、”市職員の政治的中立性”を蔑ろにする菅今治市長の責任、元駐イラン大使が強制わいせつで刑事告訴 公邸でセクハラ)である。

先ずは、元財務官僚で明治大学公共政策大学院教授の田中秀明氏が昨年10月25日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「財務省は生まれ変われるか?再生プロジェクトの中身を元財務官僚が検証」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/183284
・『10月19日、決裁文書の改ざん、事務次官のセクハラ疑惑といった不祥事が続いた財務省が、コンプライアンス(法令順守)や内部統制などについての自己改革案をまとめた中間報告書として、「財務省再生プロジェクト進捗報告」を発表した。上司だけではなく部下からも人事評価する「360度評価」などが盛り込まれている。具体策は今後さらに詰めることになっているが、果たして、これで財務省は立ち直れるだろうか。 報告書を読み解くと、それなりにまとまっていると言えるが、結論を先に言えば問題点の分析が十分とは言えない。報告書で指摘されているように、コンプライアンスや内部統制、あるいは長時間労働・ハラスメントは問題だが、これらは、財務省の使命を達成する上で、最も大きな問題であろうか』、「問題点の分析が十分とは言えない」というのは、こうした報告書の通例だ。
・『360度評価と内部通報制度は改革の柱となるか  最初に、今回の報告書のポイントを整理する。 報告書は冒頭に、一連の不祥事により財務省の信頼が大きく低下していると述べる。そして、改革の目的や方向として、「こうした問題行為を二度と起こさないようにするためには、一連の問題行為の発生を許した財務省の組織風土を抜本的に改革することにより、常に国民の皆様の視点に立って時代にふさわしい仕事のやり方や働き方ができ、高い価値を社会に提供できる組織へと自らを変革し、コンプライアンス・内部統制が実質的に機能する組織風土を創り上げていく必要があると考えています」と記述する。 そこで、職員に対するアンケート調査やヒアリングを行い、財務省が組織として抱える課題を抽出し、改革の推進体制の設計を行った。その上で、若手・女性職員など幅広い職員の参画も得ながら、秋池玲子参与(ボストン・コンサルティング・グループ)と担当職員で今後必要となる改革の具体策について議論し、「財務省再生プロジェクト」として、具体策の方向性とその工程表を整理したのが、今般の報告書である』、通常の報告書とは違って、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の秋池氏が中心となって「アンケート調査やヒアリング」、「議論」などを行って出した力が入ったもののようだ。
・『アンケート調査及びヒアリングで抽出された問題としては、「継続的な実行や見直しが行われておらず、PDCAが回っていない」「今回の問題は、一部の部局に固有の問題ではなく、財務省全体に共通する問題」「様々な職員の役職・業務に応じた組織的な能力開発があまり行われていない」「360度評価の導入と内部通報制度の強化が必要」「人事評価について、何が評価されるのか、どのような人物像が求められているかがよくわからない」「本省では長時間労働が前提となっており、効率的な働き方をしようという意識が低い」「多様な人材の活躍・登用が必要」といったことが挙げられている。「財務省が人に推薦できる職場かと問われると、どちらとも言えない」という回答もあり、正直に答えた結果と言える。 そして、今後取り組むべき課題を整理し、コンプライアンスの確保と内部統制の構築を目指すためには組織風土の改革が必要とし、具体的には、(1)財務省の組織理念の確認・共有、(2)働き方改革・業務効率化、(3)人材育成、(4)双方向のコミュニケーション、(5)省内コミュニケーションを挙げる。 また、具体的に改革を推進するため、事務次官を本部長とするプロジェクト本部を立ち上げるとともに、(1)コンプライアンス推進、(2)人材育成、(3)働き方改革・業務効率化、(4)コミュニケーション向上の4つのタスクフォースを設置するという。来年夏頃までに、細部を検討し、報告書を出すという。 以上、改革案を概観したが、問題はこれで財務省が変わるかどうかである。書かれている内容の1つひとつに、特に違和感を覚えることはないが、全体として、問題を解決できるのか大いに疑問がある。コンプライアンスや内部統制などの問題は整理されているが、それで十分とは言えないからである。360度評価や内部通報制度は速やかに導入すればよいが、これらが果たして問題解決の最も重要な処方箋なのだろうか。また、内部統制を強化するということに異論はないが、何をどうやって強化するのか、よくわからない』、問題点を深く掘り下げずに、対応策だけ並べた印象だ。
・『コンプライアンスだけでは不十分 専門性の低下こそ問題の根元  今般の改革案は、直接的には、不祥事を繰り返さないために、コンプライアンスを徹底することに主眼が置かれている。職員からのヒアリングやアンケートなども実施され、問題点の洗い出しも行われている。コンプライアンスは当然に取り組むべき課題であるが、それが強化されれば、財務省の組織としてのパフォーマンスは向上するのだろうか。 一連の不祥事は、当事者の個人的な問題という側面もあるが、報告書も指摘するとおり、財務省という組織の風土やカルチャーに根差している。それは、長い間に蓄積されたものであり、組織そのもののあり方に関係する。とすると、それはコンプライアンスだけの問題ではない。報告書は、「常に国民の皆様の視点に立って時代にふさわしい仕事のやり方や働き方ができ、高い価値を社会に提供できる組織へと自らを変革」と記述する。 また、財務省の使命、すなわち「納税者としての国民の視点に立ち、効率的かつ透明性の高い行政を行い、国の財務を総合的に管理運営することにより、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を実現するとともに、世界経済の安定的発展に貢献すること」も引用したい。本来、これこそが、目指すべき目標である。コンプライアンスや内部統制が充実すれば、組織の使命が達成され、高い価値を社会に提供できるようになるのだろうか』、確かに「財務省の使命」を達成することが、「目指すべき目標である」というのはその通りだ。
・『不祥事の根本的な問題は専門性が疎かになっていること  筆者は、財務省の組織としての最大の問題は、過度に政治化し、専門性が疎かになっていることだと考えている。それは、一連の不祥事の根源的な問題だ。 財務省は霞が関の中でも、予算編成や税制改正などを通じて、政治家とのつながりが強い役所であり、政治家との調整が重要である。人事面においても、政治家と調整できる能力が評価され、専門性に基づく経済や財政の分析は二の次である。これに対しては、本来は政治家が担うべき仕事を役人がやらざるを得ないからだという反論もあるだろうが、他国の財務省とは大きく異なっている。 筆者は、国際会議などで諸外国の財務省の担当者と会う機会があるが、彼らの多くは経済学の博士号を有している。日本の財務省に、経済学の博士号を有するチーフエコノミストはいるだろうか。また、法曹や会計士の資格を有する職員も財務省には必要だが、今の財務省に何人いるだろうか。報告書でも、「経済分析能力の強化をはじめ業務横断的な専門能力を強化する」といった記述はあるが、コンプライアンスなどと比べると、課題としての重要性は低く扱われている。 政治的な調整が不要だと言っているのではない。若手から幹部に至るまで、調整ばかりに駆けずり回っていることが問題である。それでも、財政規律が維持され、効果的な資源配分や公平かつ効率的な税制が達成できているのであれば、調整の仕事は評価すべきであろう。しかし、現実は、そうとは言えない』、確かに海外の財務省と比べると、専門能力の軽視は著しい。公共部門に限らず、民間企業も含め、最近は「「出来ない」とは答えるな、どうやったら「出来るか」を考えよ」といった処世訓がまかり通っているが、専門家が「出来ない・やるべきでない」と答え難くする圧力になることは確かだ。
・『たとえば、消費税の軽減税率や教育の無償化などは、高所得者をより優遇するものであるにもかかわらず、費用対効果の分析も乏しく、導入が決まってしまった。もちろん、民主主義のプロセスから言えば、最終的には、政策は内閣が判断すべきことになるが、財務省が証拠やデータに基づいてどこまで問題を提起し、議論を喚起しただろうか。 年末に発表される政府予算案の資料では、いわゆる埋蔵金(特別会計の積立金)を一般会計の歳入に繰り入れると、一般会計の財政赤字が減り、財政が健全化していると説明する。しかし、そのようなわけがない。諸外国のように、予算案策定時に、一般会計と特別会計を統合した貸借対照表を作れば、積立金の取り崩しにより財政が悪化することがわかるが、財務省はそのような資料は作成しない』、安倍政権を「忖度」して、不都合な事実を隠す体質は大いに問題にすべきだ。
・『人を入省年次別に順番に処遇 多くの管理職が1年で交代する  専門性低下の背景として、事務次官をはじめとする管理職が、ほぼ毎年人事異動することが挙げられる。平成に入ってから財務事務次官は24人いるが、2年以上務めた次官はたった3人である(事務次官の問題については、ダイヤモンド・オンライン2018年5月10日「財務省騒動で考える、省庁の『事務次官』は本当に必要か」を参照)。局長や課長も、秘書課長などごく一部を除いて、1年で異動する。 これは、幹部人事が役所に入った年次による順番となっているからである。たとえば、各局の総務課長は、ほぼ同期が同じ時期に就き、毎年、1年ずつ若返る。さらに、昔と比べて天下りが難しくなったので、同じポストに同期で交代して就くことも多い。こうした年次主義では専門性が身に付かず、キャリアが発展しないため、霞が関でも、最近は若くて優秀な職員ほど早期に辞めて、民間企業などに転職する。 要するに、人事は適材適所というより、人を入省年次別に順番に処遇する面が強いのだ。同期入省の中では、それなりに厳しい競争はあるものの、同期の中で選抜された後は順番である。 後輩が自分の上司になることは、民間企業では当たり前でも役所では例外である。佐川宣寿元理財局長は、森友学園問題で文書改ざんを指示したとされているが、彼は、そもそも理財局で働いた経験がなく、国有財産の仕事を知らなかったはずである。だから文書を改ざんしたとは言えないが、国有財産の仕事を熟知していたら、対応も違ったのではないか。 財務省でも、主計局・主税局・国際局は、その局で課長などを務めずに局長になることはほとんどないが、関税局・理財局・財務総合政策研究所、そして国税庁は違う。課長の経験がない人が落下傘のように、突然局長や国税庁長官となること多いのだ。これも専門性が疎かになっている事例である。 あるポストを1年しか務めないということがわかっていれば、何もリスクをとらず、前例を踏襲することが最も合理的な行動である。リスクを取って挑戦して失敗すれば、出世の道が閉ざされるからだ。サラリーマン社会であればよく見られる現象ではあるが、上司に対しては「忖度」、部下に対しては「パワハラ」という行動も、そうしたことが背景にある。報告書は、「幹部職員のリーダーシップに基づく推進と省を挙げた取組」を行うとしているが、1年で異動する幹部職員がどうやってリーダーシップなど発揮できるのか』、せめて3年程度を標準にすべきだろう。
・『役所にはそもそも「内部統制」の概念がない  報告書でも内部統制の問題が指摘されている。しかしそもそも、近年企業で導入されているような内部統制の考え方は役所にはない。政府の財務会計を規定する会計法には、内部牽制として契約担当者と支払担当者を区別する仕組みなどはあるが、驚くべきことに、内部統制や内部監査という言葉は法律に規定されていない。内部監査は財務大臣通知などの運用で行われているに過ぎない。 内部統制とは、簡単に言えば組織がその目的を効率的・効果的に達成する、あるいは業務の適正を確保するための体制を構築することであり、特に重要な点は、不正などのリスクを事前に分析し、それを減じるために適切な措置をとることである。また、具体的な手段の1つが内部監査である。報告書は中間報告とはいえ、内部統制の基本的な方向やリスク分析については書かれていない。 報告書は、一連の不祥事を受けてコンプライアンスの重要性を強調するが、それにはコストがかかること忘れてはならない。企業でも、粉飾会計の事件が続き、コンプライアンスを含めコーポレート・ガバナンスの強化が求められているが、幹部が不正に関わるとそれを事前に防ぐことは難しく、また防ごうとすると監視するためのコストが膨大になる。 コンプライアンスの強化で想定されるのは、上司が保身のために部下に過剰なコンプライアンスを求め、コストが増大することである。コンプライアンスだからと言って、残業時間が長くなることが良いことか。英国では、財務省が省庁の内部統制についてのガイドラインを出しているが、過剰なコストにならないように警告している。 また、「コンプライアンス」というと、新しい概念のように聞こえるが、従来の言葉で言えば、手続重視である。過去数十年に渡り、日本においても、成果志向の行政に向けた取り組みが行われてきたが、手続重視で懸念されるのは、時計の針が逆戻りすることである。職員は、手続きだけを守り、成果を改善することやリスクをとって新しいことに挑戦することは控えるだろう』、「手続重視」と「成果志向」は矛盾する部分もあるだろうが、基本的には両立を目指すべきだろう。
・『財務省再生のための2つの解決策 管理職は最低3年務めるべき  これまで問題を整理してきたが、これらを解決するためにはどうすればよいか。360度評価や内部通報制度など報告書に書かれていることに異論はないが、それで真の意味での組織改革になるかと問われれば、「否」である。以下では、特に必要な解決策について、人事管理と内部統制の2つの面に焦点を絞って考える。 人事については、第1に、管理職は原則として3年務めるようにするべきである。最初の1年で仕事や課題を勉強し、2年目で改善・改革案を実行し、3年目でその成果を評価するのだ。つまり、上司への忖度ではなく、3年でどのような成果を挙げたかを検証して、次の人事につなげる。もちろん、ポストによる業務の難しさの相違などは、考慮すべきである。 第2に、室長や課長クラスは、一部の省でも導入されているように、省内公募も導入すべきである。公募を導入するためには、まずポストごとに職務を定義し、それを遂行するために必要な能力を定義しなければならない。手を挙げた者を公平に評価することも求められる。そうすれば、上司を忖度したり、おべっかを使って出世したりすることは難しくなる。 また、公募しても任命されない場合は、その理由を説明する必要も出てくる。さらに、積極的に財務省以外からの登用も進めるべきであり、この点では、外部からの採用が増えている金融庁が参考になる。企業に限らず、役所でも「多様性」が人事のカギとなっている。 こうした人事管理にはコストがかかる。従来の人事評価は、比較という意味では、総合職でいえば、20人程度の同期の中でしか行われなかったので、人事コストは低かった、しかし、それでは、年次別の硬直的な人事を変えることはできない。 昨今、民間でも働き方改革の一環として、仕事内容や勤務地などを限定する「ジョブ型雇用」の必要性が指摘されているが、役所も同じである。ジョブ型雇用は、専門性を高めるための仕組みでもある。財務省に限らず、役所では、ゼネラリストを育てることに偏り過ぎている。まずは、プロフェショナルを育成し、その中からゼネラリストとして次官などを選抜するべきだ。公務員がプロフェッショナルとなれば、その専門性が市場で評価され、天下る必要もなくなるだろう』、「ジョブ型雇用」については、官民とも各職務別にジョブを如何に定義していくかは難問だろう。
・『長時間労働を常態化させる霞が関の「残業」の原因とは  内部統制と言うと、「統制」という言葉のイメージから身構えてしまいがちだが、実はそのようなものではない。長時間労働や働き方を見直すためには、まずは現在の業務内容やプロセスを分析し、どこに無駄があるか、どのプロセスを省力化できるか、どこに不正や間違いを犯すリスクがあるかを考える必要がある。電子決済などICTの活用も必要となるが、とかく役所は現在の仕事をそのままにしてICTを導入するので、システムの構築や運営に膨大なお金をかける一方で、仕事は効率化しない。 コンプライアンスというならば、内部通報だけではなく、内部監査委員会を設置し、そこには外部の専門家(社外取締役として)も加える。不正防止の要は、「視られている」という意識である。具体的には、局ごとに組織目的の達成を妨げるリスクの分析も求められる。 そもそも中央省庁には、内部管理や内部監査が法令に規定されていないことが問題である。財務省は、財務・会計の制度官庁として、会計法を改正して、内部統制や内部監査を規定しなければならない。ただし、これらの作業には、労働や時間などのコストがかかるので、他の業務を省力化する必要がある。) 霞が関の残業の元凶と言われるのは、国会対策、法令審査、予算編成の3つである。 最初の2つは財務省だけの問題ではないが、予算編成は財務省自身の問題である。毎年、予算編成は夏から12月まで続くが、半年も来年度の予算要求作業に費やしている国は、先進国ではあまりない。要求作業にエネルギーを使い過ぎているから、事後評価が疎かになり、予算や事業が効率化しないのだ。諸外国では、予算は中期財政フレームで3~4年の大枠を決めているので、毎年細かい査定などは行わない。毎年の予算編成は、政治的に重要な事項など、戦略的な問題に注力している』、決算を軽視しているので、「事後評価が疎かになり、予算や事業が効率化しないのだ」というのはそも通りだ。
・『現状はOBにとって耐え難い思い 財務省は霞が関の先頭を走れるか  筆者は財務省で働いた元公務員である。一連の不祥事は他人事ではなく、後輩たちが苦労しているのを見るのは耐え難い思いである。不祥事続きで、「財務省など解体すればよい」といった乱暴な意見もあるが、それでは問題は解決しない。今回の報告書は中間報告であり、今後その具体化が検討される。それを期待したいが、報告書は使命達成のための組織改革と言いつつ、検討の対象範囲が狭く、問題分析も十分とは言えない。 財務省の組織を守ることが目的ではない。財務省設置法は、「財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保を図ることを任務とする」と規定する。こうした任務を達成する上で、今の財務省に何が欠けているか、何がいったい一番大きな問題なのかを議論し、それを解決する処方箋が求められている。 財務省の問題に焦点を当てて議論してきたが、問題は大なり小なり霞が関全般に共通する。財務省には、霞が関の先頭に立って自己改革し、そのパフォーマンスを上げることにより、国民からの信頼を取り戻せるかが問われている』、中間報告は極めて不十分なようだが、筆者らの批判も踏まえて、最終報告書では大いにブラッシュ・アップしてほしいものだ。

次に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が2月14日付け同氏のブログに掲載した「”市職員の政治的中立性”を蔑ろにする菅今治市長の責任」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/02/14/%e5%b8%82%e8%81%b7%e5%93%a1%e3%81%ae%e6%94%bf%e6%b2%bb%e7%9a%84%e4%b8%ad%e7%ab%8b%e6%80%a7%e3%82%92%e8%94%91%e3%82%8d%e3%81%ab%e3%81%99%e3%82%8b%e8%8f%85%e4%bb%8a%e6%b2%bb%e5%b8%82/
・『今週木曜日発売の週刊文春(2019年2月21日号)の記事【加計誘致の今治市が大臣就任祝賀会で地方公務員法違反の疑い】 に、「本来公務員は政治的中立性が求められ、職務として祝賀会の事務を担った市職員は、政治的行為を制限した地方公務員法に違反する」「命令に逆らえず政治的活動に従事したとすれば、市長のパワハラにも当たる」との私コメントが掲載されている。 同記事で問題にされている市長は、加計学園問題に関して批判を受けてきた菅良二今治市長だったということで、今治市での加計学園の獣医学部設置問題を厳しく批判してきた私が、その批判の延長上で、今治市長を批判しているように思った人も多いかもしれない。 しかし、この大臣祝賀会を開催した「市長」が「今治市長」であることは、文春記者の取材を受けてコメントした時点では知らされていなかった。私は、事案の内容を聞き、地方公務員法に違反する行為を市役所職員に職務として行わせた市長の責任についてコメントしたものだ』、記者の取材は、ごく一部の事実だけを示して、それに対する「コメント」を求めるケースが多いので、大いにあり得る話だ。
・『「あっせん利得処罰法違反」についての週刊誌コメント  週刊文春からは、これまでにも法律の解釈・適用の問題についてコメントを求められることが多かったが、私としては、不正確なコメントをすると、自分の法律・コンプライアンスの専門家としての信用にも関わるので、慎重に検討し、必要に応じて文献・資料等も調査した上でコメントするようにしている。 私のコメントが大きな意味をもったのは、2016年2月の、甘利明氏(当時、経済財政担当大臣)のURの用地買収問題に関する「口利き・金銭授受疑惑」について週刊文春からコメントを求められ、「あっせん利得処罰法違反に該当する疑いがある」と指摘したことだった。この時は、あっせん利得処罰法の条文解釈のみならず、立法経緯や、甘利氏の政治家としての「影響力」に関わる政治経歴等も調べ、自信をもって「あっせん利得処罰法違反の疑い」を指摘した。この問題については、その後国会でも、衆議院予算委員会公聴会で公述人として、特殊法人のコンプライアンスについて意見を述べたが、その際にも、あっせん利得処罰法の適用に関して法律見解を述べた(【独法URのコンプライアンスの視点から見た甘利問題】)。 しかし、週刊文春に限らず、週刊誌からコメントを求められても、「法律違反の疑いがあるとは言えない」と述べ、コメントが掲載されなかったことも多い。最近では、週刊文春から、片山さつき大臣の問題について、「口利き疑惑があっせん利得処罰法違反に当たるのではないか」とコメントを求められたが、「権限に基づく影響力」に基づいて「口利き」をした事案とは考えられないので「あっせん利得処罰法違反の疑いはない」と答え、私のコメントは掲載されなかった。 今回は、先週土曜日に週刊文春の記者から電話があり、「現職市長が発起人となって国務大臣の就任祝賀パーティーを主催し、会費1万円で飲食を提供するパーティーを開き、その事務局事務を市職員が行った。パーティー収入の中から、10万円が国務大臣に『就任祝い金』として渡された」という事案について、法律に違反するかどうかの見解を求めてきた』、「法律違反の疑いがあるとは言えない」とのコメントであれば、「掲載されなかったことも多い」のはやむを得ないだろう。
・『「政治資金パーティー」への該当性  まず考えたのは、政治資金パーティーに関する政治資金規正法の規定に違反する可能性であった。もし、この祝賀パーティーが政治資金パーティーに該当するとすれば、政治資金規正法22条の9で、「地方自治体の職員が、その地位を利用して、政治資金パーティーに対価を支払つて参加することを求め、若しくは政治資金パーティーの対価の支払を受け、若しくは自己以外の者がするこれらの行為に関与すること」が禁止されており、この「地方自治体の職員」には、特別職・一般職であっても該当するので、市長の地位を利用して市役所職員に開催の事務を行わせたことは違法となる。 しかし、「政治資金パーティー」については、政治資金規正法8条の2で「対価を徴収して行われる催物で、当該催物の対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額を当該催物を開催した者又はその者以外の者の政治活動に関し支出することとされているもの」と定義されており、この「市長」が主催したパーティーについては、収入のうち10万円が国務大臣に対して「就任祝い金」として渡った事実があっても、収入から経費を差し引いた残額が、「政治活動に関し支出することとされている」と言えるか否かは微妙である。この祝賀会が政治資金パーティーに該当し、市長の行為が地位利用による政治資金パーティーへの参加を求める行為として「政治資金規正法違反の疑い」を指摘することは難しいと判断した。 ただ、政治資金規正法上の「政治資金パーティー」に該当するというためには、パーティーの目的や開催の経緯・会の収支・差額の使途などを、もう少し詳しく調べる必要があり、該当することを前提に政治資金収支報告書への記載義務や罰則適用を議論することはできない、ということであり、大臣就任祝賀として、大臣たる政治家を支持する「政治資金パーティー」に近いものであることに変わりはない』、なるほど。
・『市職員の祝賀会への関与と地方公務員法の「政治的行為の制限」  政治資金パーティーに形式上該当しないとした場合に、次に問題となるのは、国務大臣就任祝賀パーティーを市長が主催し、その事務や会費の募集に市職員が関わることと、地方公務員法の「政治的行為の制限」との関係だ。 「特別職地方公務員」に当たる市長には、政治的行為の制限はないが、「一般職地方公務員」である市職員には政治的中立性が求められる。その市職員が職務として政治家の大臣就任祝賀会の事務を行い、会費の募集に関わり、その会費収入の一部が、大臣たる政治家にわたったということは、常識的に考えても、地方公務員の政治的中立に関するコンプラインス違反だと言える。 市民にとっては、政治的に中立な立場で市の業務に従事しているはずの市職員が、特定の政治家を支持するパーティーの開催のために動員され、会費集めをさせられていること自体が許しがたい行為であることは明らかだ』、「「特別職地方公務員」に当たる市長には、政治的行為の制限はないが、「一般職地方公務員」である市職員には政治的中立性が求められる」、というのはよく理解できた。
・『地方公務員法36条2項は「政治的行為の制限」について  職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。 と規定しており、この「次に掲げる政治的行為」の「三」が「寄附金その他の金品の募集に関与すること」とされている。 国務大臣の就任祝賀パーティーを行うことは、内閣の一員として任命された国務大臣を支持することを通して、「特定の内閣」を支持する目的と解することができるし、パーティーの会費の募集に関与することは、政治資金パーティー券の募集と同様に、「金品の募集」に当たると考えられる。 週刊文春の記事によれば、パーティーの〈お問合せ先〉は、「今治市総務調整課」、領収書には参加費1万円を領収した事務取扱者として、課長名の判子が押されている。とのことであり、パーティーの事務局を市の総務調整課職員が全面的に担い、会費の徴収まで行ったということになる』、今治市のやり方は、組織的で悪質だ。
・『祝賀会開催に関する市長の市職員への命令は「パワハラ的」  もっとも、特別職たる市長には、この「政治的行為の制限」は適用されないし、市職員が、上記の規定に反した場合も、罰則がなく、懲戒処分の対象になるだけなので、市長が市職員にそれをやらせたとしても、それ自体が、犯罪の共謀になるわけではない。 しかし、逆に言えば、このような「政治的行為の制限」に反する市職員の行為は、罰則の対象とはならないので、違反が認められた場合も、市当局として採り得る措置は、当該市職員に対して懲戒処分を行うことしかない。しかし、その「懲戒権者」は、市のトップである「市長」なのである。市長が主催した政治的活動としてのパーティーに、市長から指示されて事務を行ったり、会費を集めたりした市職員が、市長によって懲戒処分される、というのは全く本末転倒の話である。地方公務員法は、そもそも、「政治的行為の制限」に違反する行為が、首長の指示や命令によって行われることを予定していないのである。 それだけに、この問題は深刻である。市職員は、政治的中立を求められていることは十分に認識しているはずであり、本来、市長から、政治家の就任祝賀会の事務を行うよう命令を受けても、それを拒否するのが当然である。しかし、市職員にとっては、市長は市役所の組織のトップである。その命令に逆らえるはずがない。このような状況に追い込まれ、政治的活動に従事させられた市職員にとって、市長の命令はパワハラと評価することもできる』、なるほど、説得的だ。
・『菅市長の責任の重大性  週刊文春の記事によって、就任祝賀パーティーの発起人となった市長が、「菅良二今治市長」であることを知った(就任を祝賀されたのが国家公安委員会委員長である「山本内閣府特命担当大臣」であることは、コメントの確認をする際に知った。)。 記事によれば、菅市長は、「政治活動ではなく、大臣の祝賀会」と説明し、市側も「祝賀会は政治活動ではなく、儀礼的なもの」と回答しているようだが、大臣就任を祝うということ自体が、「大臣たる政治家への支持」という性格を持つのであり、「祝賀会」であることも、「儀礼的」であることも、政治活動であることを否定する根拠にはならない。 過去の同様の事例として、2013年11月に、自民党の武田良太衆院議員の防衛副大臣就任祝賀会を、田川市郡の全市町村の首長や地元県議らが発起人となって1人5千円の会費制で立食パーティー形式で開くに際して、自治体の首長らが呼びかけ、田川市職員が区長会などに参加を要請していたことが、公務員の政治的中立性が損なわれるなどとして、批判されたケースがある。 この事例では、市職員は、祝賀会への参加を要請しただけで、会費の徴収等の事務局事務を行ったとはされていないが、それでも「政治的中立性」に反することが問題となっている。 前記のとおり、今回の山本大臣の就任祝賀会は、今治市長が発起人となり、市職員が事務局を務め会費の徴収まで行ったのであり、地方公務員法が禁止する「政治的活動」の性格が一層顕著だということだ。 自治体職員の懲戒権者である首長自らが、公務員の政治的中立性に関するコンプライアンス違反を命令し、本来、納税者たる市民のために、政治的に中立的立場で職務を行うべき市職員が、「特定の政治家の政治活動の成果を祝うパーティー」を全面的にサポートすることは、到底許されることではない。 菅市長は違法行為の責任を直接問われるものではないが、政治的責任は極めて重大である』、「菅市長は違法行為の責任を直接問われるものではないが、政治的責任は極めて重大である」、との判断は説得的だ。

第三に、4月13日付け日刊ゲンダイ「元駐イラン大使が強制わいせつで刑事告訴 公邸でセクハラ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/251873
・『元駐イラン大使の駒野欽一氏(72)が同大使を務めていた時に、テヘランの大使公邸で部下の女性職員にセクハラ行為を行っていたことが分かった。13日の毎日新聞が報じた。 同紙は、昨年8月に外務省人事課が作成した内部文書を入手。 それによると、駒野氏は、大使離任前日の2012年10月14日、女性にキスをするなどのセクハラ行為をし、その後も女性にメールを送り続けるなどしていた。翌年2月、同省官房長は駒野氏に対し「女性に一切コンタクトしないでほしい」などと注意したという。一方、女性はセクハラ行為で「急性ストレス反応」との診断を受け、一時休職。先月、強制わいせつ容疑で駒野氏を警視庁に刑事告訴した。告訴状で女性は「胸を触られスカートの下から手を入れられ、太ももをなでられた」などと、内部文書に記された行為より、はるかに悪質な被害を主張している』、よく考えてみれば、7年前の事件が今頃になって発覚した理由、セクハラ行為が「離任前日」になった理由、被害女性が「刑事告訴した」のが先月と大幅に遅れた理由、外務省として駒野氏への注意以外に処分はなかったのか、など疑問山積だ。お粗末極まる事件だが、警視庁はどうするのだろう。
タグ:日刊ゲンダイ 公務員制度 郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン 田中秀明 同氏のブログ (その3)(財務省は生まれ変われるか?再生プロジェクトの中身を元財務官僚が検証、”市職員の政治的中立性”を蔑ろにする菅今治市長の責任、元駐イラン大使が強制わいせつで刑事告訴 公邸でセクハラ) 「財務省は生まれ変われるか?再生プロジェクトの中身を元財務官僚が検証」 自己改革案をまとめた中間報告書として、「財務省再生プロジェクト進捗報告」を発表 360度評価と内部通報制度は改革の柱となるか アンケート調査及びヒアリングで抽出された問題 コンプライアンスだけでは不十分 専門性の低下こそ問題の根元 不祥事の根本的な問題は専門性が疎かになっていること 人を入省年次別に順番に処遇 多くの管理職が1年で交代する 役所にはそもそも「内部統制」の概念がない 財務省再生のための2つの解決策 管理職は最低3年務めるべき 長時間労働を常態化させる霞が関の「残業」の原因とは 現状はOBにとって耐え難い思い 財務省は霞が関の先頭を走れるか 「”市職員の政治的中立性”を蔑ろにする菅今治市長の責任」 菅良二今治市長 「あっせん利得処罰法違反」についての週刊誌コメント 甘利明氏 URの用地買収問題に関する「口利き・金銭授受疑惑」 「政治資金パーティー」への該当性 市職員の祝賀会への関与と地方公務員法の「政治的行為の制限」 「特別職地方公務員」に当たる市長には、政治的行為の制限はないが、「一般職地方公務員」である市職員には政治的中立性が求められる 地方公務員法36条2項は「政治的行為の制限」について 祝賀会開催に関する市長の市職員への命令は「パワハラ的」 菅市長の責任の重大性 菅市長は違法行為の責任を直接問われるものではないが、政治的責任は極めて重大である 「元駐イラン大使が強制わいせつで刑事告訴 公邸でセクハラ」 元駐イラン大使の駒野欽一氏 大使離任前日の2012年10月14日、女性にキスをするなどのセクハラ行為をし、その後も女性にメールを送り続けるなどしていた 同省官房長は駒野氏に対し「女性に一切コンタクトしないでほしい」などと注意 女性はセクハラ行為で「急性ストレス反応」との診断を受け、一時休職。先月、強制わいせつ容疑で駒野氏を警視庁に刑事告訴 7年前の事件が今頃になって発覚した理由 セクハラ行為が「離任前日」になった理由 被害女性が「刑事告訴した」のが先月と大幅に遅れた理由 外務省として駒野氏への注意以外に処分はなかったのか 疑問山積
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