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EC(電子商取引)(その3)(アマゾン:「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか、日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』) [産業動向]

EC(電子商取引)については、昨年3月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(アマゾン:「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか、日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』)である。

先ずは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が昨年10月23日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/182900
・『破産法申請した米小売り大手シアーズの経営破綻  10月15日、米小売り大手のシアーズ・ホールディングスが米連邦破産法11条(通称チャプターイレブン、日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。 著名経営学者のドラッカーが「全米で最も成功した企業の一つ」と称賛するほど、同社は19世紀後半から20世紀中盤に米小売業界の王者であった。そのシアーズが破綻に追い込まれた。 驚きとともに時代の変遷を感じざるを得ない。 同社は“シアーズ・ローバック”の商標で知られていた。シアーズ・ローバックは、19世紀後半から20世紀の中盤にかけて、経営改革=イノベーションによって成功を手にした。新しい市場を自ら開拓し、その需要を取り込むために新しい商品や組織、生産プロセスの整備を行った。重要だったことは、当時の同社は環境の変化に適応し、必要な改革を進めたことだ。 ところが、1980年代以降、シアーズは経済環境の変化に適応することができなかった。特に大きかったのが、IT先端技術の普及だ。消費者は同社の店舗で買い物を行うよりも、アマゾンのEC(電子商取引)プラットフォームでの消費を選んだ。その方が便利だからだ。 それに加え、経営者の問題も見逃せない。特にファンド出身の経営トップには、変化を感じる“センス(感覚)”が欠如していた。かつて栄華を極めたシアーズの経営破綻は、イノベーションの重要性と経営者に求められる根源的な資質を考える格好のケーススタディの一つと言ってもよいかもしれない』、「ファンド出身の経営トップには、変化を感じる“センス(感覚)”が欠如していた」というのは確かに致命的だが、現在ではファンドもその業界のプロを経営者に送り込むファンドもあるようだ。
・『かつて“イノベーション”で成長を遂げたシアーズ  1886年に創業したシアーズは、当時急速に発展しつつあった鉄道や郵便という新しい要素を用いることで、物流ネットワークが浸透していなかった農村の需要を開拓した。これは、既存の要素と新しい要素を結合し、新商品や新しい販売チャネルなどを生み出すという“イノベーション”の好例だ。 19世紀、米国の農村では自給自足を主に日々の生活が営まれていた。都市部では個人商店などが日常の生活を支えつつあったが、農村はそうした経済圏から孤立していた。シアーズはそこに目をつけた。同社は、市場経済が浸透していない農村に対してカタログを用いた通信販売ビジネスを行い、未開拓の需要を取り込むことを思いついた。 また、シアーズは顧客満足を高めることに徹底的にこだわった。「手にしてみたらイメージと違う」といった不満に対応するために、同社は条件を問わずに返金するとコミットした。それは農村の人々からの信頼を獲得するために欠かせない要素だった。 カタログには衣類から農作業の道具、農村で簡単に手に入らない楽器までが掲載された。その結果、当時の米国農村地帯の生活環境は激変した。シアーズは米国の農村に、気に入った商品を買い、使う楽しみを提供した。シアーズのカタログは農村に住む人々にとって生活に欠かせないバイブルと同等に位置づけられたのである。 20世紀初頭、米国では基本的なインフラ整備が進んだ。それに伴い経済は成長し、中間層の厚みが増した。T型フォードの普及によって、農村から都市への移動も容易になった。農村は孤立した存在ではなくなった。都市の人口は増加した。この環境変化を受けて、シアーズは更なるイノベーションを進めた。 それが、通販から小売業へのビジネスモデルの転換だった。小売業では、店舗ごとのマネジメントが重要だ。そのため、第2次世界大戦前からシアーズは店長および売り場主任の育成を体系的に進めた。これが同社の成長を支えるとともに、米国の流通業界に大きな影響を与えた。シアーズは米国の物流・小売業界の革命児だったのである』、「通販」の確立、さらに「小売業へのビジネスモデルの転換」と、確かに「米国の物流・小売業界の革命児」だったようだ。
・『社会のIT化という環境変化 アマゾンの台頭  1980年代以降、シアーズの成長には陰りが見え始めた。ライバルであるウォルマートが“エブリデーロープライス”を掲げ、安売り戦略を強化してシェアを伸ばしたことはその一因だ。2000年代に入ると、ネットワークテクノロジーを駆使してアマゾンがECを世界に浸透させた。 19世紀終盤から20世紀中盤にかけて米国の物流業と小売業を牽引したシアーズは、21世紀型の物流革命を目指すアマゾンの取り組みに対応できなかった。それは、シアーズがIT化という環境の変化に適応できなかったことを意味する。同社は店舗事業の強化にこだわり、2000年代にはカタログ通販事業が閉鎖された。当時の同社には、ITネットワークと自社の強みであるカタログ通販を融合させる発想がなかった。 この意思決定はシアーズのアイデンティティー喪失につながったといってよい。多くの消費者がシアーズに求めたのは、自宅でカタログに掲載されている商品を使うシーンを思い描き、イメージした暮らしを実現することだった。カタログ通販の停止によって、シアーズは顧客のロイヤルティ(信頼、愛着)を失ったともいえる。その結果、同社は特徴のない小売企業になった。 これに対して、アマゾンは独自の物流網を整備して消費者の支持を獲得してきた。ネット上で商品を注文し支払いを完了することはできる。その上で商品を手にして実際に使うためには、効率的な物流ネットワークが必要だ。スマートフォンなどのデバイスを駆使し、アマゾンはネット空間と消費の現場を円滑につなげることを目指している。この快適さ、便利さこそがアマゾンユーザーの増加を支えている。この結果、消費の場が店舗からネット空間に移行し、米玩具大手のトイザラスは経営破綻に陥った。 一方、ホームデポのように店舗での消費体験を演出することで成長を維持する小売企業もある。要は、アマゾンにはない消費体験を創造できるか否かが企業の存続を分ける。それが経営者の腕の見せ所だ。シアーズが行き詰まったのは、経営者に自社の強みを十分に生かし、ネットワークテクノロジーという新しい要素と既存ビジネスを結合させる発想がなかったためと考えられる』、素人目には、ECと相性が良さそうな「カタログ通販」を捨てたのは、IT技術がなかったとはいえ、もったいなく、戦略上の失敗だったような気がする。
・『本当の小売業を知らないファンド出身経営者  2005年、シアーズはエドワード・ランパート現会長が率いる投資ファンド傘下に入った。これは、シアーズの凋落を加速させた要因と考えられる。 金融ビジネスと、顧客との関係性を重視する小売業の発想は根本的に異なる。金融業の発想では、安く買って高く売ることが重要だ。そのためには、競争力のない事業などを売却し、得られたキャッシュフローを用いて他の事業を強化することが求められる。同時に、リストラが進むと企業の強み、特徴が失われる。それが続くと、企業そのものが消滅してしまう。ファンドの傘下に入った小売業やメーカーが経営に行き詰まるのはそのためだ。 一方、小売業における顧客との関係構築には、終わりがない。それは永続的に続く。この点が決定的に違う。 ランパート氏の経営の下、シアーズの店舗では雨漏りやエレベーターの故障が放置されていたという。これは小売企業としてありえない。同社は、顧客に買い物をする喜びを提供するスピリットを失い、顧客の気持ちがわからない企業になってしまった。2016年に入りランパート氏はIT先端技術の導入の重要性に言及し、翌年には自社の家電製品をアマゾン経由で販売し始めたが、これは遅すぎた。 ファンド出身の経営者は、シアーズのビジネスモデル、その強みを全く理解していなかった。IT先端技術の実用化を受けて、経済の変化のスピードが加速化していることを認識する感覚=センスも鈍かった。これは、経営者として致命的だ。 企業の存続に必要な要素は、環境の変化に適応する能力だ。正しいもの、強いものが生き残るわけではない。変化に適応できたものが生き残る。そのためには、新しい取り組み=イノベーションが欠かせない。 例えば、シアーズの商品に愛着を持つシニア世代にアマゾンのダッシュボタンを提供することは、顧客との関係性維持につながった可能性がある。それはIT機器を操作する際に感じるストレス軽減にもなる。そうした新しい取り組みが検討されてもよかった。 アマゾンの成長はシアーズの競争力を低下させた一因ではある。だが、それがすべてではない。シアーズのトップに、変化を感じるセンスが鈍かったことは見逃せない。それが、経営環境の変化に対応する能力を奪ってしまったのかもしれない』、ランパート氏だけでなく、出身ファンドも知恵を絞った筈だが、「経済の変化のスピードが加速化していることを認識する感覚=センスも鈍かった」というのは致命的で、気付いた時には既に「とき遅し」だったのだろう。

次に、富士通出身でデジタルシフトウェーブ代表取締役社長の鈴木 康弘氏が12月24日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/189281
・『レビュー  2017年9月、アメリカの玩具販売大手「トイザらス」が経営破綻に陥った。「アマゾン・エフェクト」を象徴するできごとである。 アマゾン・エフェクトとはなにか。これは、ネット通販「アマゾン・ドット・コム」が進出する業界で、その影響を受け、業績や株価の低迷に悩む企業が増えている現象を指す。影響は百貨店やスーパー、衣料品といった物販、さらにはコンテンツ産業など幅広い業態におよぶ。そして、多くの企業がトイザらスのように追い詰められている。 また、2017年8月、アメリカを代表する高級食品スーパー「ホールフーズ」をアマゾンが買収した。商品調達も管理も高度なオペレーションが求められる、リアルな生鮮食料品の店舗にアマゾンが進出したと、大きな話題となった。そればかりではない。競争が激化する懸念から、競合の食品スーパー各社の株価が軒並み下落した。こうして業界の秩序が崩れていく事態は、「アマゾン・ショック」とも呼ばれる。 こうしたできごとを、日本企業の多くは「流通業界の嵐」などと、対岸の火事のように眺めていないだろうか。アマゾン・エフェクトの背後には、デジタルがもたらすビジネスの本質的変化がある。本書『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』の著者は、この「デジタルシフト」の脅威に気づかないまま、20世紀のビジネスモデルを引きずる日本企業に警鐘を鳴らす。日本でいち早くアマゾン・エフェクトに対峙した著者の危機感は強い。デジタルシフト危機への対処法にぜひ耳を傾けたい』、興味深そうだ。
・『本書の要点  (1)多くの業種の既存の秩序を崩す「アマゾン・エフェクト」。その背後では、「デジタルシフト」という本質的な変化が起きている。 (2)デジタルシフトは、「時間」「距離」「量」「方向」といった制約から顧客を解放する。それをビジネスのチャンスにするために、日本企業はIT人材の育成を急がなければならない。 (3)今後のビジネスのアプローチは、ネットやリアルの垣根を超えて、すべてを顧客中心に組み立てる「カスタマーファースト思考」に移っていく。その先頭を切っているのがアマゾンである』、なるほど。
・『要約本文 ◆アマゾン・ショック ◇日本に押し寄せる4つのショック  いま日本に4つのショックが押し寄せているという。 1つ目は、アマゾン・ショックである。書籍や音楽ソフトに限らず、ファッションや生鮮品宅配サービスにおいても、アマゾンの進出は、業界の既存の秩序を揺り動かし、地殻変動を引き起こす。 2つ目は、クラウド・ショックである。以前であれば、開発・導入に1億円、メンテナンスに月々百万円をかけていたシステムが、いまではクラウトサービスを使えば、月額の使用料数百円ですんでしまう。このクラウドの分野で圧倒的なシェアを誇るのは、やはりアマゾンである。 3つ目は、AI(人工知能)/IoT(Internet of Things)ショックである。すべてのものがインターネットでつながるIoTによって、膨大なデータが蓄積され、それをAIが解析する。アマゾンはデータを制することにより、差別化を図ったサービスを顧客に提供し、ネットとリアルの両面から覇権を握ろうとしている。 4つ目は、IT人材の育成が急務となっている現状、すなわち教育ショックである。今後は、各企業が自前でシステムを開発できることが、スピード・コストの両方の視点からも必要となる。いかに社内にIT人材を確保できるかが競争力を左右する。しかし、そのことに気づいて、社内の人材教育を強化している日本企業は少ない。 いま日本に押し寄せている4つのショックのいずれを見ても、その背後にはアマゾンの姿がある』、確かに「4つのショック」のいずれにおいても、アマゾンの存在感は圧倒的だ。
・『◇ネットとリアルの融合  ネットとリアル(実際の店舗)のシームレスな融合を意味する「オムニチャネル」。この概念は、アメリカの大手百貨店メイシーズが2011年に使用したのが始まりである。オムニとは「すべて」を意味する。そしてオムニチャネルとは、ネットとリアル、すべての顧客接点を連動させて顧客にアプローチする方法である。 著者はかつて、セブン&アイ・ホールディングスからオムニチャネルを立ち上げた経験がある(2015年11月)。そのときに強烈に意識したのがアマゾンの存在であった。著者の陣営は、リアルの店舗からネットに世界を広げた。一方、当時のアマゾンは、ネットからリアルの世界への進出をたくらんでいた。 ここで著者は大きな壁にぶちあたった。リアルからネットに発想を移すことがいかに難しいかという壁である。日本の流通関係者のなかには、アメリカでのアマゾンの躍進についてこうした考えがあった。「国土が広く、もともと通販文化があったから、アマゾンはうまくいく」「日本は国土が小さいから大丈夫」。そして、店舗で買えるのと同じものが、時間や場所に関わりなくネットで注文できれば、利用者にとっての利便性が増したと考える。それ以上発想が広がらないことが、後に大きな制約となった』、確かにセブン&アイの「オムニチャネル」は、「大きな壁にぶちあたった」ためか、鳴かず飛ばずだったようだ。
・『◇アマゾン・ブックスの風景  では、アマゾンによるリアルな店舗はどのようなものか。アメリカで展開している書店販売のリアル店舗、「アマゾン・ブックス」を見てみよう。店舗を視察した著者によると、その特長は商品を絞り込み、圧倒的に在庫が少ないことにある。 それを可能にしているのが「フルフィルメントセンター」と呼ばれる巨大な物流拠点だ。この拠点は、ネットで販売する商品のために膨大な在庫を保管している。店舗のバックヤードが倉庫も兼ねているような既存の書店と比べて、ストックできる品数は桁違いに多い。リアル店舗のアマゾン・ブックスには、そのなかから売れ筋や目を引く商品を選んで並べるというわけだ。 日本の書店に一般的な、本の背表紙を表に向けて並べる「背差し」は一冊もない。すべての本が、表紙を正面に向ける「面陳列」「面展示」である。そのため、一冊一冊の魅力がストレートに伝わってくる。 そこではネット上で見つけた本を実際に確かめて購入することもできれば(ウェブルーミング)、店頭で気に入った本を自宅に届けてもらうように、その場の端末で手配することもできる(ショールーミング)。読みたい本が店頭になければ、アマゾンストアで検索して注文すればいい』、家電量販店は、顧客が来店して商品を見て、店員から説明を受けても、注文はアマゾンでやるというのも、典型的な「ショールーミング」で、小売店泣かせだ。
・『【必読ポイント!】◆デジタルシフト◇アマゾン・エフェクトの本質とはなにか  アマゾンが引き起こしている変化の本質はなにだろうか。それは、アナログからデジタルへの移行、「デジタルシフト」である。つまり、人々は「時間」「距離」「量」「方向」の制約から解放される。 ネット上では24時間いつでも、世界中のどこでも買い物ができる。売り手は数量にしばられることなく、いくらでも商品の情報を掲載できる。売り手と買い手は、インタラクティブにコミュニケーションをとれる。 歴史を振り返れば、人類は制約から解放される世界を自らつくりだしてきた。この観点に立つと、デジタルシフトは必然の流れといえるだろう』、その通りだろう。
。『◇クラウドという衝撃  2000年代半ばより、デジタルシフトに拍車をかけているのが「クラウド」である。クラウドとは、インターネットを経由し、さまざまなITのリソースをオンデマンドで利用できるサービスである。たとえば、コンピューティング、データベース、ストレージ、アプリケーションなどだ。 昔は水を手に入れるために、各家庭が庭に井戸を掘っていた。これに対して、いまではコンピュータ・ネットワークに蛇口をつければ水が出るようになった。クラウドはこうした状況にたとえられる。しかも圧倒的に安価にサービスを利用できる。 その結果、井戸を掘ること、つまりITインフラの構築と保守という力仕事は、人に任せればよくなった。そして、クラウドを活用したビジネスアイデアで勝負する時代が到来したのだ』、日本企業は自社保有にこだわり、「クラウド」活用で遅れを取った筈だ。
・『◇カスタマーファースト思考  こうしたITがもたらすビジネスの変化を、著者は3つの思考の変遷として説明する。 「レガシーファースト思考」:アナログで行ってきた業務のレガシー(旧来の遺産・遺物)をそのまま引き継ぎつつ、効率化を図るためにITを活用する。20世紀的なコンピュータの使い方である。 「ネットファースト思考」:インターネットというインフラを中心に置き、そこでユーザーの利便性や満足度を高めるサービスを提供する。ネット通販やSNSがこれに当たる。 「カスタマーファースト思考」:顧客を中心に置き、ネットもリアルも、すべてのインフラを駆使して、最高のカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を提供する。今後はITの位置づけを、カスタマーファースト思考に大きく転換する必要がある。そして、その先頭を走っているのがアマゾンだ。 社会のデジタルシフトが進み、デジタルの力で個々人の購買行動のデータを収集できるようになった。その満足度を測定することで、アマゾンはカスタマーファースト戦略を加速させている』、日本企業は「レガシーファースト思考」に囚われているところが多いようだ。
・『◇「棚発想」から「事典発想」へ  流通業に限らず、多くの業態では、ネットとリアル、Eコマースとリアル店舗がシームレスに融合されるオムニチャネルの形態に行きつくだろう。その際、品ぞろえについては、「棚発想」から「事典発想」へと転換が求められる。 これまでリアル店舗では、売り場に商品分類ごとの棚があった。売り場面積にしばられ、取引先に依存した自分の経験ベースの品ぞろえが一般的だった。しかしオムニチャネルになると、マーケット全体を俯瞰することが重要となる。そして、まるで百科事典を編集するような発想で商品カテゴリーを分類し、顧客のニーズに合わせて商品を並べていくことが可能になる』、「事典発想」は制約が少なくなるとはいえ、優れた発想力が求められそうだ。
・『◆日本企業の現状◇まだまだ厚いレガシーの壁  残念ながら、こうしたデジタルシフトの本質を理解している日本の経営者は少ない。IT予算の使い道に関する2013年の調査によると、アメリカ企業は、「ITによる製品/サービス開発強化」がいちばん多かった。次に「ITを活用したビジネスモデル変革」「新たな技術/製品/サービス利用」「ITによる顧客行動/市場分析強化」が続く。それに対して日本企業は、「ITによる業務効率化/コスト削減」が突出している。 アメリカ企業は、ITにより新しい価値を生み出そうという「攻めのIT投資」を推進している。しかし日本企業の多くは、「守りのIT投資」にばかり目が向いており、レガシーファースト思考のままだといえる』、「日本企業は、「ITによる業務効率化/コスト削減」が突出している」というのは、時代に乗り遅れたことが丸出しで、恥ずかしい限りだ。
・『◇日本企業におけるIT戦略の欠如  アメリカでは、IT技術者の75%がウォルマートなどの一般企業に属している。日本は正反対で、75%がIT企業に属しており、一般企業に所属しているのは25%に過ぎない。日本企業では、システム開発はアウトソーシングが当たり前である。 ITを効率化の手段と考えれば、外注が妥当といえよう。しかし、自らのビジネスモデルを変え、ネットとリアルをつないで新しい価値を顧客に提供するというカスタマーファースト思考で考えればどうか。積極的に自社内でシステムを開発し、運営できる体制の構築が重要だと気づくはずだ。 しかし、日本企業では経営者がデジタルの力について理解していない。そのため明確なIT戦略が示せず、デジタルの活用が仕事の効率化に留まっている。これが多くの日本企業の現状だ』、「アメリカでは、IT技術者の75%がウォルマートなどの一般企業に属している。日本は正反対で、75%がIT企業に属しており」、「日本企業では経営者がデジタルの力について理解していない。そのため明確なIT戦略が示せず、デジタルの活用が仕事の効率化に留まっている。これが多くの日本企業の現状だ」というのでは、日本企業が追い着くのは、当面、困難だろう。
・『◇デジタルのHOWを体感する  こうした現状をどうすれば変えられるのか。核心は教育にあると著者は考えている。アメリカでは、高校卒業までにコンピュータ・サイエンスへの子どもたちの興味や関心を喚起する目的で、毎年「コンピュータ・サイエンス教育週間」を設けている。ITのスキルを培うことが、個人の将来のみならず国の未来にとっても重要だと認識しているためだ。 ポイントは、デジタルのような新しい技術の場合、HOW(どのように)を知らないと、WHAT(何を)と、なぜそれをするのかというWHY(なぜ)の発想が難しいという点である。すべてのビジネスパースンがプログラマーになる必要はない。しかし、デジタルのHOWを体感的に理解することが、新しい時代のビジネスモデルを創造するためには欠かせないといえる』、日本では来年から小学校でプログラミング教育が必修となるようだが、こんな形式的なことよりも、アメリカの「コンピュータ・サイエンス教育週間」の方がはるかに効果的だろう。文科省や政治家が如何に何も解っていないかを如実に示しているようだ。
・『一読のすすめ  日本企業の経営者の大半は、アナログベースでキャリアを築いてきた世代だろう。それゆえデジタルの役割について、頭ではわかっていても感覚的に理解できていない、つまり肚落ちしていないという面があるだろう。本書はそうした方にとって、とっつきやすい「デジタルシフトを見据えたビジネス」の入門書といえるのではないか。本書を通じて、アマゾン・エフェクトの波にさらされている日本企業の現状・課題をいま一度俯瞰し、次なる一歩を考えていただきたい。最後の「著者情報」は省略』、この記事を読んできた限りでは、問題点を把握はしっかりして信頼に足るようだ。時間が出来たら、読んでみたい。
タグ:EC セブン&アイ 電子商取引 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 (その3)(アマゾン:「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか、日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』) 「「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか」 破産法申請した米小売り大手シアーズの経営破綻 ドラッカーが「全米で最も成功した企業の一つ」と称賛するほど、同社は19世紀後半から20世紀中盤に米小売業界の王者 “シアーズ・ローバック”の商標 19世紀後半から20世紀の中盤にかけて、経営改革=イノベーションによって成功を手にした 当時の同社は環境の変化に適応し、必要な改革を進めた 1980年代以降、シアーズは経済環境の変化に適応することができなかった かつて“イノベーション”で成長を遂げたシアーズ ファンド出身の経営トップには、変化を感じる“センス(感覚)”が欠如していた 市場経済が浸透していない農村に対してカタログを用いた通信販売ビジネスを行い、未開拓の需要を取り込むことを思いついた 「手にしてみたらイメージと違う」といった不満に対応するために、同社は条件を問わずに返金するとコミット シアーズのカタログは農村に住む人々にとって生活に欠かせないバイブルと同等に位置づけられた 通販から小売業へのビジネスモデルの転換 店舗ごとのマネジメントが重要だ。そのため、第2次世界大戦前からシアーズは店長および売り場主任の育成を体系的に進めた 社会のIT化という環境変化 アマゾンの台頭 シアーズがIT化という環境の変化に適応できなかった 舗事業の強化にこだわり、2000年代にはカタログ通販事業が閉鎖 米玩具大手のトイザラスは経営破綻に陥った 本当の小売業を知らないファンド出身経営者 金融業の発想では、安く買って高く売ることが重要だ。そのためには、競争力のない事業などを売却し、得られたキャッシュフローを用いて他の事業を強化することが求められる。同時に、リストラが進むと企業の強み、特徴が失われる。それが続くと、企業そのものが消滅してしまう。ファンドの傘下に入った小売業やメーカーが経営に行き詰まるのはそのためだ ファンド出身の経営者は、シアーズのビジネスモデル、その強みを全く理解していなかった シアーズのトップに、変化を感じるセンスが鈍かった 鈴木 康弘 「日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』」 「アマゾン・エフェクト」 影響は百貨店やスーパー、衣料品といった物販、さらにはコンテンツ産業など幅広い業態におよぶ 多くの企業がトイザらスのように追い詰められている 業界の秩序が崩れていく事態は、「アマゾン・ショック」 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』 日本企業に警鐘 「アマゾン・エフェクト」。その背後では、「デジタルシフト」という本質的な変化が起きている デジタルシフトは、「時間」「距離」「量」「方向」といった制約から顧客を解放 今後のビジネスのアプローチは、ネットやリアルの垣根を超えて、すべてを顧客中心に組み立てる「カスタマーファースト思考」に移っていく 日本に押し寄せる4つのショック 1つ目は、アマゾン・ショック 2つ目は、クラウド・ショック 3つ目は、AI(人工知能)/IoT(Internet of Things)ショック 4つ目は、IT人材の育成が急務となっている現状、すなわち教育ショック ネットとリアルの融合 「オムニチャネル」 リアルからネットに発想を移すことがいかに難しいかという壁である。 アマゾン・ブックスの風景 ネット上で見つけた本を実際に確かめて購入することもできれば(ウェブルーミング) 店頭で気に入った本を自宅に届けてもらうように、その場の端末で手配することもできる(ショールーミング) アマゾン・エフェクトの本質とはなにか アナログからデジタルへの移行、「デジタルシフト」 クラウドという衝撃 カスタマーファースト思考 「レガシーファースト思考」 「ネットファースト思考」 「カスタマーファースト思考」 「棚発想」から「事典発想」へ まだまだ厚いレガシーの壁 IT予算の使い道に関する2013年の調査によると、アメリカ企業は、「ITによる製品/サービス開発強化」がいちばん多かった 日本企業は、「ITによる業務効率化/コスト削減」が突出 日本企業におけるIT戦略の欠如 メリカでは、IT技術者の75%がウォルマートなどの一般企業に属している 日本は正反対で、75%がIT企業に属しており、一般企業に所属しているのは25%に過ぎない 日本企業では経営者がデジタルの力について理解していない そのため明確なIT戦略が示せず、デジタルの活用が仕事の効率化に留まっている デジタルのHOWを体感する アメリカでは、高校卒業までにコンピュータ・サイエンスへの子どもたちの興味や関心を喚起する目的で、毎年「コンピュータ・サイエンス教育週間」を設けている
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決済(その4)(飲食・小売りが悲鳴 メルカリも参戦しQR決済乱立の本末転倒、キャッシュレス後進国の日本 変革迫る中国人客、便利なキャッシュレス時代に感じる「気味の悪さ」の正体、キャッシュレス決済の“落とし穴” 電子マネー残高2年で消滅も!? 「眠ったICカード」に要注意) [金融]

決済については、2月15日に取上げた。今日は、(その4)(飲食・小売りが悲鳴 メルカリも参戦しQR決済乱立の本末転倒、キャッシュレス後進国の日本 変革迫る中国人客、便利なキャッシュレス時代に感じる「気味の悪さ」の正体、キャッシュレス決済の“落とし穴” 電子マネー残高2年で消滅も!? 「眠ったICカード」に要注意)である。なおタイトルから「システム」を外した。

先ずは、3月4日付けダイヤモンド・オンライン「飲食・小売りが悲鳴、メルカリも参戦しQR決済乱立の本末転倒」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/195679
・『乱立するQR決済市場にプレーヤーがまた一人加わった。 フリーマーケットアプリのメルカリは、モバイル決済サービス「メルペイ」の提供を始める。メルカリでの物品の販売によって得た収益をそのまま店舗での決済に利用できるようにすることで、入金や新規登録の手間を省くなど他社と差別化。1200万人に上るメルカリの巨大な顧客基盤を生かし、後発からのロケットスタートをもくろむ。 モバイル決済では、楽天の「楽天ペイ」やヤフーとソフトバンクが手掛ける「ペイペイ」、LINEの「LINEペイ」など、あまたのサービスがしのぎを削っている。経済産業省がキャッシュレス決済の比率を2025年に40%まで高める目標を打ち出すなど、国や世論の後押しもあって、各社が商機をにらんでいる。 だが、市場活況の陰で、実際にサービスを利用する現場では混乱も起きている。 「モバイルなどキャッシュレス決済手段の乱立で、対応端末は増える一方。店舗のオペレーションも複雑化するばかりだ」と、ある外食企業の関係者は嘆く。 飲食店や小売店では、キャッシュレス決済が導入されると、会計時間の短縮やレジ締め作業の簡素化が可能になるので、大きな省力化になると期待が高まっていた。 だが、現状では生き残るサービスが定まらないので、多くの決済手段を導入する必要がある。すると店頭での端末処理にかえって手間がかかってしまうという、本末転倒の事態に陥っている』、政府が消費増税対策として、クレジットカードやスマホ決済での中小企業製品にネット通販でも5%を還元、総財源として1.5兆円、を打ち出したことが、決済を巡る競争を激化させている。
・『導入自体が目的化  決済仕様の乱立は、業界全体の普及を阻むボトルネックの一つだ。もちろん、決済サービス各社にも危機感があり、規格の統一に向けた動きが加速してはいる。 キャッシュレス推進協議会では、QRコード規格の標準化を目指し、18年度中にガイドラインの公表を計画する。また、ジェーシービーは自社開発した統一規格の「スマートコード」を提供し、メルペイとの提携を発表した。 一方で、モバイル決済の課題はより根本的なところにもある。 「国内ではキャッシュレス化自体が目的になってしまい、省力化や合理化という本来の狙いがおろそかになっている」と、モバイルオーダー決済サービスを展開するShowcase Gigの新田剛史代表は指摘する。 モバイル決済は本来、事前注文と決済をひも付けることで生まれる接客の省人化や、顧客情報に基づいた販売促進などの活用への効果が大きい。だが、足元では各決済事業者の広告合戦といった“パワーゲーム”の様相を呈しており、本来の視点は軽視されがちだ。 キャッシュレスを真に根付かせるためには、単なる決済手段にとどまらない“その先”を見据える必要がある』、「導入自体が目的化」、「省力化や合理化という本来の狙いがおろそかになっている」というのは本末転倒だ。

次に、3月5日付けダイヤモンド・オンラインが米紙WSJ記事を転載した「キャッシュレス後進国の日本、変革迫る中国人客」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/195906
・『いつもはテクノロジー先進国として中国のモデルとなっている日本だが、キャッシュレス決済は中国から学んでいる。 日本では昔ながらの現金決済が主流だ。しかし旅先でもスマートフォンでの支払いを望む中国人観光客が押し寄せ、変化が起き始めている。日本のインターネット企業は電子決済の普及を加速させようと、アリババグループのアント・フィナンシャル・サービス・グループやテンセントホールディングスなど、中国の電子決済システムで圧倒的なシェアを握る企業との提携を進めている。 このように、拡大を続ける中国の経済力はあからさまな圧力を使わず、先例を見せることで日本に影響を及ぼしている。一方で、アップルペイやアマゾンペイなど米国企業が提供する決済サービスは日本には深く浸透していない。 東京で学ぶ中国人学生の林暉揚さん(24)は「中国ではなんでも電子決済できる。だから、日本に来た(ばかりの頃は)なぜ現金を使わなければならないのかと文句を言ったことがある」と話す。「今は店が中国人観光者の気を引きたいから(アント・フィナンシャルの)アリペイ(のような決済サービス)を提供している」 日本の年間家計支出額は3兆ドル(約335兆円)近くに上る。決済でわずかでもシェアを確保できれば大きな利益が期待できる。安倍晋三首相はカードかスマートフォンで支払う消費者に最大で購入額の5%を還元する計画を示しており、電子決済ビジネスへの新規参入が進んでいる。 決済会社や電子マネー企業は日本が中国のように現金決済から一気にスマホ決済に移行することを期待している。入手可能な最新のデータである2016年の政府の推計によると、日本では消費者による支払いのうち、クレジットカードやデビットカードによる支払はおよそ5件に1件にとどまった。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の調査によると、米国ではほぼ半数がカード払いだ。日本でクレジットカードの利用率が低いのは消費者がプライバシーの侵害を懸念していることに加え、企業が手数料を払いたがらないからだ。 決済で最大の課題は好循環――店がある決済手段を採用するのは消費者が利用しているからで、消費者は店がその決済手段を受け付けることを知っているから利用する――を生み出すことだ。 そこで出番となるのが中国人観光客だ。2018年には800万人を超える中国人が日本を訪問した。その多くが持つスマホには支付宝(アリペイ)やテンセントの微信支付(ウィーチャットペイ)など、銀行口座とつながった決済アプリが入っている。日本での消費額が140億ドルに上る中国人観光客は日本国内のユーザーの一部として小売業者によるスマホ決済の受け入れを後押ししている』、「中国人観光客」が「小売業者によるスマホ決済の受け入れを後押ししている」というのは皮肉なことだ。
・『日米消費者の決済手段の比較  日本のインターネット企業はヤフー・ジャパンやメッセージアプリのラインなどなじみのある国内のインターネットブランドと関連する決済アプリを導入することで国内消費者による利用を促したい考えだ。 ラインとテンセントの提携では、店側はQRコードを読み取る専用端末を導入するか読み取り用のアプリを利用すれば、ラインペイのユーザーとウィーチャットペイを利用する中国人客のどちらにも対応できる。 日本の決済アプリ「ペイペイ」とアリペイも同様に提携、店は両方のアプリを受け付けることが可能になった。ペイペイはヤフー・ジャパンとソフトバンクグループが日本の消費者向けに導入したアプリで、最近ではローソンと契約、約1万5000店舗に導入される予定だ。 アリペイとウィーチャットペイは米国で現地の決済処理会社と組んでおり、日本でも同様の手法を採用した。アリペイは2017年、ファーストデータと提携、クレジットカード処理の共通のプラットフォームを利用する米国企業は簡単に決済手段としてアリペイを追加できるようになった。ドラッグストアチェーン大手のウォルグリーンズは米国内の7000以上の店舗でアリペイを受け付ける方針を発表した。 日本の消費者のプライバシー懸念はスマホ決済にも及んでおり、キャッシュレス決済の普及までには障害が残っている。国内第3位の銀行を傘下に持つみずほフィナンシャルグループがアリペイや同じく中国の銀聯(ユニオンペイ)と決済アプリで提携する計画を発表した際には、ユーザーのプライバシーが中国政府に漏れることはないと保証することを余儀なくされた。 みずほフィナンシャルグループの山田大介専務執行役員は先月の記者会見で「情報が日本から出ていくのではないかとか、日本の情報が中国に行ってしまうのではないかとか、いろいろなところから意見があった」が、そうしたことは不可能で、心配する必要はないと述べた。 課題は他にもある。消費者にはさまざまな決済手段の中から利用する手段を選んでもらう必要があり、小売業者に対してはスタッフの研修と機器に投資するよう説得しなければならない。 安倍政権は日本が中国に後れを取っていることを認識しており、脱税対策も兼ねて、キャッシュレス決済比率を現在の2倍の40%まで増やすという目標を掲げている。 政府は消費税を8%から10%に引き上げる今年10月1日から、中小小売業者でスマホやクレジットカードなど現金以外で代金を支払った場合、購入額の最大5%を還元する方針だ。消費増税による景気後退のリスクを減らすことが目的で9カ月間実施する。実施には25億ドル超の費用がかかる。 UBSのアナリスト、居林通氏はキャッシュレス決済について、政府が補助金を出す唯一の決済であると指摘、 政府による還元が日本がキャッシュレス決済に向かうターニングポイントになると話した』、政府による「5%を還元」策は、消費増税対策に名を借りたキャッシュレス決済推進策だが、私はいささかや過ぎではないかと思う。

第三に、4月13日付けダイヤモンド・オンライン「便利なキャッシュレス時代に感じる「気味の悪さ」の正体~『キャッシュレス覇権戦争』(岩田 昭男 著)を読む」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/199724
・『視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします』、興味深そうだ。
・『キャッシュレス化でリアル店舗での買い物も丸裸に  何か商品を買おうと思った時に、まずはネットで検索するのが習慣になっている人が、最近は多いのではないだろうか。 かく言う私もそうだ。先日も、ある商品を買ってみようと思い立ち、グーグルの検索窓に商品名を打ち込んだ。そして、その商品を扱っている複数のネットショップを閲覧し、価格を比較した。結局、その時は購入には至らなかった。 ところが、しばらくしてフェイスブックを眺めていたら、私のタイムラインに、その商品や関連商品に関する広告がひんぱんに表示されるようになった。 きっと多くの人が、同じような経験をしているはずだ。 私の場合、表示された広告は楽天市場が出広したものだった。確かに閲覧したサイトの中に楽天市場もあった。だが、楽天グループのサイトに広告が表示されるのは、まだわかる。だが、私が見ているのはフェイスブックのタイムラインだ。つまりこれは、少なくとも閲覧履歴という個人情報が、楽天とフェイスブックの2企業間で共有されていることを意味している。 私自身は、こうした広告を「便利」と感じる方だ。インターネットによる生活の利便性向上の1つだと思うからだ。しかし、個人情報が、自分の関知しないところで勝手に共有されている事実に気味の悪さを感じる人もいるに違いない。 例えば、これがリアルな生活の場面にまで広がったらどうだろう。デパートなどの実店舗で、ネットで検索や閲覧をせずに購入した商品の広告が、SNSの画面にタイミングよく表示されたら、さすがの私でもうす気味悪いと感じるかもしれない。日常の行動がすべて監視されているような気がするからだ。 いま日本政府は、経済成長のエンジンの1つとして「キャッシュレス化」の方針を掲げている。実は、このキャッシュレス化が、上記の「監視されているかのような気味の悪さ」を現実にしそうなのだ。 リアル店舗で現金を使う分には、店員に話したり、会員登録などをしたりしない限り、名前や住所、連絡先、これまでの購入履歴といった個人情報が「売る側」に渡ることは、ほとんどない。しかし、キャッシュレス決済の場合、金融口座やクレジットカードに登録してある個人情報がオンラインで決済業者や店舗に流れる。 つまりキャッシュレス化が進めば進むほど、多くの人の日常的な購買行動がネットに流れ、データ化される。果たして、これを「便利」の一言で片付けてよいものだろうか。 本書『キャッシュレス覇権戦争』は、日本で進行中のキャッシュレス化の現状を整理した上で、それが私たちの生活に及ぼす影響や、新たに生じる課題について論じている。 著者は、『Suicaが世界を制覇する』(朝日新書)などの著書がある消費生活ジャーナリストの岩田昭男氏。流通、情報通信、金融分野を中心に活動し、現在はNPO法人「消費生活とカード教育を考える会」理事長も務める。特にクレジットカードについては30年にわたり取材を続けている第一人者だ』、「個人情報が、自分の関知しないところで勝手に共有されている事実に気味の悪さを感じる人もいるに違いない」、私は「気味の悪さを感じる」ほうだ。
・『火ぶたが切られた8兆円市場をめぐる熾烈な争い  キャッシュレス化は中国や韓国、北欧などで先行しており、日本は後れを取っている。特に中国では、ネット通販大手アリババの「アリペイ」や、メッセンジャーアプリで成功したテンセントの「ウィーチャットペイ」などの普及が著しい。 これらはQRコードを顧客がスマホで読み取るだけで決済が可能。機器を導入する必要がないため、店舗側の導入が一気に広がった。 よって、こうした気軽なスマホ決済がキャッシュレス化の導線になるのは間違いなく、ここにきて日本でも同様の新しい決済サービスが、雨後のたけのこのように多業種から次々と登場している。 例えば、携帯事業者系ではdocomoの「d払い」やauの「au PAY」、ソフトバンクとヤフー共同出資による「PayPay(ペイペイ)」、ITサービス系では「LINE Pay」「楽天ペイ」「Amazon Pay」、コンビニ系では現時点で「ローソンスマホレジ」がスタートしている。 また、メルカリの「メルペイ」、モバイル決済ベンチャーによる「Origami Pay」など、ベンチャー企業も参入。いささか多すぎるほどのスマホ決済サービスが、ユーザー獲得にしのぎを削る。 日本能率協会総合研究所の予測によれば、国内のQRコード決済市場は2023年に8兆円規模にも達する。この「8兆円市場」でシェアを獲得しようと、決済事業者同士の熾烈な「覇権戦争」が繰り広げられているのだ。 その競争の激しさを象徴する出来事の1つに、昨年末の、いわゆる「PayPay(ペイペイ)祭り」がある。 これは、2018年12月4日にスタートしたQRコードを使った決済サービス「ペイペイ」を運営するPayPay株式会社が仕掛けた「『100億円あげちゃう』キャンペーン」をめぐる騒動である。 このキャンペーン期間中は、1人5万円を上限に、支払額の20%相当が利用者に還元されるほか、何度かに1回は全額がキャッシュバックされた。還元される総額は100億円。何とも大胆な大盤振る舞いだが、8兆円市場を考えれば、100億円など取るに足らないと、PayPayは考えたのだろう。 周知の通り、このキャンペーンには短期間に顧客が殺到。あっという間に100億円を使いきり、最長4ヵ月間を予定していたキャンペーンは、たった10日で終了してしまった。 今後は、他社も多様なキャンペーンでシェア獲得を狙うはずだ。プレイヤーが出そろえば、覇権戦争はさらに激しくなる』、「『100億円あげちゃう』キャンペーン」は、あれだけ大騒ぎになったので、広告効果を考えれば、安いものかも知れない。
・『自分で個人情報をコントロールできる仕組みの構想も  岩田氏は、キャッシュレス社会が「データ監視社会」につながると指摘する。キャッシュレス決済が普及することで、「誰が・いつ・どこで・何を・いくらで・どれだけ買ったか」といった情報が、私たちの知らないうちに勝手に収集・分析される社会になるというのだ。 では、「勝手に」データを収集されない方法はあるのだろうか。 その点に関して岩田氏は、2018年5月18日にEU(欧州連合)が施行した法律「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」を紹介している。 GDPRは、EU28ヵ国にノルウェーなど3ヵ国を加えたEEA(欧州経済領域)でビジネスを展開する企業に適用される。EEA31ヵ国に所在するすべての個人データを圏外に持ち出すことが原則禁止されるのだが、重要なポイントは、各個人が自らの個人情報をコントロールする「データポータビリティ権」が保証されることだ。 実は日本でも同様の取り組みが進められているのをご存じだろうか。本書でも紹介されている「情報銀行」の構想だ。 政府主導で進行中のこの構想は、情報銀行が個人の購買履歴、家計収支、健康情報といった多様なデータを個人から預かり、一元管理するものだ。そうした情報がほしい企業には、データの所有者である個人の意向を確かめた上で、情報銀行が提供する。 さらに情報銀行にデータを預ける個人は、それをどの企業に、どういう個人情報を提供するか、細かく指定できるようになるという。つまり、「サイトの閲覧履歴を楽天には提供してもいいが、フェイスブックには渡さないでほしい」といった、個人情報提供をコントロールすることが可能になる。 このようにネットの利便性を享受しながらも、必要なプライバシーを守るためのルールづくりは、確実に進められているようだ。 だが、利便性と個人情報保護の両立は、完全なトレードオフではないものの、なかなか一筋縄にはいかない。 「Duck Duck Go」という検索エンジンがある。これは「あなたを追跡しない検索エンジン」が売りで、利用者の個人情報の保存や収集を一切行わない。 ところが使ってみると、個人情報を活用しないサービスが、いかに不便かを思い知らされることになる。 例えばDuck Duck Goでは、検索結果の表示順に過去の検索履歴やユーザーの指向などが勘案されない。そのため、自分にとって無駄な情報が上位に来ることがあるので、役立つ情報にたどり着くのに、余計な手間と時間がかかる。 シンプルな表示に最初はすがすがしさを感じるのだが、だんだん不便さがつのり、正直イライラしてくる。 これからのインターネットを利用したイノベーションに、個人情報の収集と流通に関する検討が欠かせなくなるのは間違いないだろう。利便性とプライバシーのバランスをどうとっていくかを慎重に考慮せざるを得ない。 本書では、キャッシュレス化による利便性と、個人情報保護に関する課題の両面からの議論が、わかりやすく整理されている。企業と個人の双方が個人情報を上手にコントロールしながら、より便利な社会を築くために何が必要か、本書を参考に、しっかりと考えてみたい』、「情報銀行」は果たして定着するのだろうか、しばらく様子を見る必要がある。「「Duck Duck Go」という検索エンジンがある。これは「あなたを追跡しない検索エンジン」が売りで、利用者の個人情報の保存や収集を一切行わない。 ところが使ってみると、個人情報を活用しないサービスが、いかに不便かを思い知らされることになる」、「利便性とプライバシーのバランス」は難しい課題のようだ。

第四に、4月29日付けZAKZAK「キャッシュレス決済の“落とし穴” 電子マネー残高2年で消滅も!? 「眠ったICカード」に要注意」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/eco/news/190429/eco1904290003-n1.html
・『急速に普及するキャッシュレス決済だが、思わぬ落とし穴がある。交通系ICカードやバーコード決済などにお金をチャージしたまま一定期間利用せずに放置すると、権利が失効し、残高が「0」になるケースがあるというのだ。こうした対応の中身は、別表のように、サービスを提供する会社によって大きく異なる。あなたの電子マネーは大丈夫? バーコード決済の新興勢力で、100億円の「バラマキキャンペーン」を2度にわたり実施している「PayPay(ペイペイ)」。その利用規約をみると、失効までの期間が「2年」と書かれている。ペイペイ広報室は、「現在は最後に残高の増減があった日から2年となっているが、5月中旬に5年へと延長する予定だ」と話した。 同社広報室によると、銀行口座からペイペイにいったんチャージされると換金はできず、失効すると残高は返金されない。失効した残高は同社の雑収入になるという。 一般に現金を電子マネーにチャージするのは「前払式支払手段」と呼ばれ、事業者は資金決済法に基づいて約款や利用規約などを設けている。事業者によって違いはあるが、カードを最後に利用した日から一定期間の取り扱いがないと、電子マネーを有する権利が失効する。 前出のペイペイ広報室は、「前払式支払手段は商品券と似た意味合いで、商品券と同じように有効期限がある」と説明した。 スマホ決済でペイペイと競合する「LINE Pay(ラインペイ)」も失効までの期間は5年。同社広報は「サービスの建て付け上(預貯金と異なり)一生お預かりすることができかねる」と回答した。同社の場合、216円の手数料が掛かるが、換金は可能だという』、ペイペイやラインペイなどは前払式支払手段で、「カードを最後に利用した日から一定期間の取り扱いがないと、電子マネーを有する権利が失効する」、ペイペイは換金不可能というのは初めて知った。
・『いち早く定着している交通系電子マネーはどうか。JR東日本が発行する「Suica(スイカ)」は、最後の利用から失効までの期間が10年だ。同社はその理由を「お客さまの利用履歴などの情報が入っているため、10年以上たつとその情報が入った磁気をうまく読み取れなくなる恐れがある。安定的にサービスをご提供するため、期間を設けている」と回答した。 ただ、残高が失効しても、みどりの窓口や改札窓口に持参すれば古いカードに残されたお金を新しいカードへと移すことができるという。 JR西日本の「ICOCA(イコカ)」も、約款に10年が失効の期限とあるが、同社広報部によると、それ以降でも問題なく利用可能だという。 鉄道27事業者、バス76事業者が導入している「PASMO(パスモ)」も失効までの期間が10年だ。規約には、失効した場合「当社が特に認めた場合を除き、デポジット及びPASMOに記録されている一切の金銭的価値等の返却を請求することはできない」と記載されている。 失効した残高はどうなるのか。今期のパスモ広報幹事を務める京成電鉄は、「企業会計規則に基づいて適切に処理している」との回答だった。 なぜ各社のサービスによってここまでも差が生まれてしまうのか。資金決済法には有効期限に関する記載はなく、事業者が電子マネーの価値を担保し続ける必要はないのだという。 電子マネーの失効の期限に関しては、国民生活センターにもトラブルが報告されている。記念の交通系カードを大切に保管しておいた20代男性は、いざ使おうとしたところ有効期限が過ぎており、4000円のチャージ金額が戻ってこなかった。 50代女性の場合、娘からもらった交通系カードを利用しようとしたところ、期限が過ぎており、数千円が戻ってこなかったという。 同センターはホームページで、「購入する電子マネーに有効期限があるかどうかよく確認し、有効期限がある場合はいつまで利用できるのか必ず確認しましょう」と注意喚起している。 一方で流通系の「nanaco(ナナコ)」、「WAON(ワオン)」さらには、ネット系の「楽天Edy(エディ)」では約款や利用規約に残高の失効期間を設けていない。 新規で電子マネーを購入する場合や、家でICカードが眠っている場合などは注意したい』、交通系電子マネーでは、SuicaやICOCAは、「最後の利用から失効までの期間が10年」だが、その後も「残されたお金を新しいカードへと移すことができる」。他方、失効後は、返還請求できないのも初めて知った。同じ交通系電子マネーといっても、発行体によって扱いが違うようだ。いずれにしても、「失効」には気を付ける必要がありそうだ。
タグ:suica 決済 QRコード PASMO ICOCA ZAKZAK スマホ ダイヤモンド・オンライン メルカリ 消費増税対策 ペイペイ ラインペイ 米紙WSJ (その4)(飲食・小売りが悲鳴 メルカリも参戦しQR決済乱立の本末転倒、キャッシュレス後進国の日本 変革迫る中国人客、便利なキャッシュレス時代に感じる「気味の悪さ」の正体、キャッシュレス決済の“落とし穴” 電子マネー残高2年で消滅も!? 「眠ったICカード」に要注意) 「飲食・小売りが悲鳴、メルカリも参戦しQR決済乱立の本末転倒」 「メルペイ」 「楽天ペイ」 「ペイペイ」 「LINEペイ」 経済産業省がキャッシュレス決済の比率を2025年に40%まで高める目標 実際にサービスを利用する現場では混乱も キャッシュレス決済手段の乱立で、対応端末は増える一方。店舗のオペレーションも複雑化するばかりだ 多くの決済手段を導入する必要がある。すると店頭での端末処理にかえって手間がかかってしまうという、本末転倒の事態に陥っている クレジットカードやスマホ決済での中小企業製品にネット通販でも5%を還元 国内ではキャッシュレス化自体が目的になってしまい、省力化や合理化という本来の狙いがおろそかになっている 「キャッシュレス後進国の日本、変革迫る中国人客」 キャッシュレス決済は中国から学んでいる 中国の電子決済システムで圧倒的なシェアを握る企業との提携 米国企業が提供する決済サービスは日本には深く浸透していない 今は店が中国人観光者の気を引きたいから(アント・フィナンシャルの)アリペイ(のような決済サービス)を提供している 中国人観光客は日本国内のユーザーの一部として小売業者によるスマホ決済の受け入れを後押ししている 日米消費者の決済手段の比較 「便利なキャッシュレス時代に感じる「気味の悪さ」の正体~『キャッシュレス覇権戦争』(岩田 昭男 著)を読む」 キャッシュレス化でリアル店舗での買い物も丸裸に 閲覧履歴という個人情報が、楽天とフェイスブックの2企業間で共有されている 個人情報が、自分の関知しないところで勝手に共有されている事実に気味の悪さを感じる人もいるに違いない 『キャッシュレス覇権戦争』 岩田昭男氏 火ぶたが切られた8兆円市場をめぐる熾烈な争い 国内のQRコード決済市場は2023年に8兆円規模にも達する 昨年末の、いわゆる「PayPay(ペイペイ)祭り」 『100億円あげちゃう』キャンペーン 還元される総額は100億円 最長4ヵ月間を予定していたキャンペーンは、たった10日で終了 自分で個人情報をコントロールできる仕組みの構想も GDPR 「情報銀行」 「Duck Duck Go」という検索エンジンがある。これは「あなたを追跡しない検索エンジン」が売りで、利用者の個人情報の保存や収集を一切行わない ところが使ってみると、個人情報を活用しないサービスが、いかに不便かを思い知らされることになる 利便性とプライバシーのバランスをどうとっていくかを慎重に考慮せざるを得ない。 「キャッシュレス決済の“落とし穴” 電子マネー残高2年で消滅も!? 「眠ったICカード」に要注意」 失効までの期間が「2年」 5月中旬に5年へと延長する予定だ いったんチャージされると換金はできず、失効すると残高は返金されない 失効までの期間は5年 換金は可能 交通系電子マネー 最後の利用から失効までの期間が10年 残高が失効しても、みどりの窓口や改札窓口に持参すれば古いカードに残されたお金を新しいカードへと移すことができるという。 失効した場合「当社が特に認めた場合を除き、デポジット及びPASMOに記録されている一切の金銭的価値等の返却を請求することはできない」
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メディア(その14)(小田嶋氏:「迷惑をかけた」の半分以上は) [メディア]

メディアについては、3月1日に取上げた。今日は、(その14)(小田嶋氏:「迷惑をかけた」の半分以上は)である。

コラムニストの小田嶋 隆氏が3月15日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「迷惑をかけた」の半分以上は」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00011/?P=1
・『ミュージシャンで俳優のピエール瀧さんがコカインを使用したとして逮捕された。 逮捕されたということは、ここから先は、「ピエール瀧こと瀧正則容疑者(51)=東京都世田谷区」といったあたりの主語を使って原稿を書き進めるべきなのだろうか。 なんということだ。 最初の、主語の選び方の時点で気持が萎えはじめている。 個人的に、平成の30年間は、この種の事件に関連する原稿を書くに当たって、メディア横断的な横並び圧力が強まり続けてきた30年だったと感じている。特に、犯罪に関わった人間を扱う際の主語や敬称の使用法がやたらと面倒くさくなった。 なんというのか、 「主語の運用において、礼法に則った書き方を採用していない書き手は信用に値しません」 みたいな、七面倒臭いマナーが、業界標準として定着してしまった感じを抱いている。 「ハンコを押す時には、相手の名前に向かって軽く頭を下げる角度で押印するのがビジネスマナーの基本です」 みたいな、どこのマナー講師が発明したのかよくわからない原則が、いつの間にかオフィスの定番マナーになりおおせているのと同じく、記事の書き方に関しても、この半世紀の間に、不可解な決まりごとが増えているということだ』、言われてみれば、確かにその通りで、読み手からみても、同調圧力の強さには不気味さを感じる。
・『私がライターとして雑誌に文章を書き始めた1980年代当時は、タレント、政治家、一般人、容疑者、肉親、友人、被告、受刑者などなど、どんな立場のどんな人物についてであれ、あらかじめ定型的な表記法が定められていたりはしなかった。私自身、その時々の気分次第で、犯人と名指しされている人間を「さん」付けで呼ぶケースもあれば、政治家を呼び捨てにした主語で原稿を書くこともあった。それで誰に文句を言われたこともない。 というよりも名乗る時の主語が、「私」だったり「おいら」だったりするのが、本人の勝手であるのと同様の理路において、文章の中に登場する人物のうちの誰に「さん」を付けて、誰を呼び捨てにするのかは、書き手の裁量に委ねられていた。別の言い方をするのなら、敬語敬称の運用法も含めて、すべては個人の「文体」とみなされていたということでもある。 それが、ある時期から新聞記事の中で 「○○容疑者」「○○被告」「○○受刑者」という書き方が作法として定着し、さらに 「○○司会者」「○○メンバー」といった、一見ニュートラルに見える肩書無効化のための呼称までもが発明されるに及んで、文章の中に登場する人物への呼びかけ方は、独自の意味を獲得するに至った。 つまり、 「誰をさん付けで呼び、誰を呼び捨てにするのかによって、書き手のスタンスや立場が計測されるようになった」ということだ。 これは、著しく窮屈なことでもあれば、一面理不尽なことでもある。 というのも、書き手から見た文章中の登場人物への距離なり感情なりを示す手がかりである「呼びかけ方」は、必ずしも世間におけるその人物の序列や評価と一致しているわけではないからだ。ついでに申せば、犯罪者への共感であれ、国民的英雄への反感であれ、ひとつの完結した文章の中で表現されることは、本来、書き手の自由意志に委ねられている。 早い話、どれほどトチ狂った言動を繰り返しているのだとしても、私にとってルー・リード(注)先生はルー・リード先生だし、世間がどんなに尊敬しているのだとしても、大嫌いな○○を「さん」付けで呼ぶのはまっぴらごめんだということだ』、その通りだ。(注)ルー・リード:アメリカのロックなどのミュージシャン。
・『今回、私が、本題に入る前に、敬称の有無や種類のような表現の細部にこだわってみせているのは、ピエール瀧氏について、私がどんな感情なり見解を書くことになるのかは、私が自分の原稿の中で彼をどんな名前で呼ぶのかということとに深く関連していることを、強く自覚しているからだ。 「ピエール瀧容疑者」という主語を使ってしまったが最後、その後の部分で私がどんなに真摯な共感を表明したのだとしても、それらは言葉どおりには響かない。 「ピエール瀧容疑者よ。私はあなたの自在なトークが大好きでした」と、こんな書き方で、いったい何が伝わるというのだろうか。 新聞や雑誌のような媒体が、特定の人物について呼称なり表記の統一を要求したがるようになったのは、おそらく単に、メディアとしての統一性を確保したいからに過ぎない。彼らとて、犯罪の容疑者である人物に対して、共感を抱いたり好意を持つことを一律に禁じようとしているわけではないはずだ。 しかし、表記の統一がもたらす効果について言うなら、それはまた別だ。 ある人物について呼称を統一することは、その人物への感情の向けられ方を定型化せずにはおかない。 書き手の立場からすれば、「容疑者」と表記した人物については、その呼称にふさわしい書き方でしか描写できなくなってしまう。 これは、なんでもないことのようだが、実は、とんでもないことだ。 なんとなれば、「容疑者」なり「受刑者」なりという呼称は、一個の人間から人間性を剥奪するスティグマ(烙印)として機能するはずだからだ』、「呼称」の意味を改めて深く考えさせられた。
・『事件が発覚した一昨日の深夜以来、テレビの情報番組は、ひたすらにピエール瀧氏が犯した犯罪の深刻さを強調し続けている。 テレビの画面を見ていて私が感じるのは、彼が犯したとされる 「罪」のかなりの部分が、メディアによってアンプリファイ(増幅)された 「騒動」だということだ。 瀧氏が、報道されている通りに、違法な薬物を使用していたのであれば、そのこと自体は、無論のこと犯罪だ。 その点については、ご本人も認めている。 しかしながら、午前中から夕方にかけての時間枠の長い情報番組が、何度も何度も繰り返し繰り返し同じ映像を使い回ししながら、しきりに強調し続けているのは、瀧氏のかかわった仕事が、次々と配信停止になり、あるいは発売中止や公演停止に追い込まれ、店頭から回収され、一緒に働いていた仲間の努力が水泡に帰し、貧しい劇団員たちの収入が途絶え、損害が発生し、関係者が事態収拾に走り回り、事務所の人間が頭を下げ、相棒が涙を流し、ファンが落胆し、テレビ司会者が「裏切られた」と訴えている経緯や展開だったりするわけなのだが、それもこれも、結局のところ「メディアの主導によって引き起こされている事件の余波」によるものだ。 もちろん、最も根本的な部分の原因は、瀧氏の不適切な行動にある。 このことははっきりしている。 しかし、火種を大きくし、見出しの級数を拡大し、関係者に対応を問い合わせしまくり、肉親に直撃取材を試み、ファンにコメントを求めているのは、テレビ局のスタッフでありスポーツ新聞の記者たちだ。 そもそも、映画会社が配信を断念し、ゲーム制作会社が販売を延期し、放送局が収録済みの番組のネット配信を引き上げるに至った理由は、消費者による問い合わせや抗議の声が拡大し、現場のスタッフが縮み上がったからなのだが、その問い合わせや抗議のネタ元となった騒動の拡大を煽ったのは、ほかならぬテレビの情報番組だったりしている。 ということは、10億円以上と言われている賠償額をより大きくすることでニュースバリューの引き上げにかかっているのは、実は彼らメディアの人間たちであり、結局のところ、われわれが真っ昼間のテレビの画面上で見せられているのは、進行中のメディアによるマッチポンプだということだ。 「世間をお騒がせして申し訳ない」という、不祥事に関連した有名人が謝罪する時に吐き出す定型句が、はからずも示唆しているのは、 「騒いでる世間って、要するにあんたたちメディアのことだよね」ということだったりする。 つまり、「迷惑をかけた」と、タレントさんが謝罪する時の具体的な「迷惑」のうちの半分以上は、メディアが自作しているということだ。なにしろ彼らは、騒動が鎮火しそうになる度に新たな燃料を投下して、コンテンツの延命化を図っている。 というのも、彼らにとっては、誰かの迷惑のタネを生産し続けることが自分たちの商売の前提だからだ』、「われわれが真っ昼間のテレビの画面上で見せられているのは、進行中のメディアによるマッチポンプだ」とは言い得て妙だ。「彼らにとっては、誰かの迷惑のタネを生産し続けることが自分たちの商売の前提だからだ」、メディアもずいぶん罪作りなことをしているようだ。
・『さらに言えば、メディアは、自分たちが騒ぎを起こしている理由すら自作している。 この理屈はちょっとわかりにくいかもしれない。 説明すれば以下のようなことだ。 彼らは、薬物事犯が極めて反社会的かつ破廉恥な犯罪であり、その罪を犯した人間を断罪し追及することこそが自分たちメディアの使命であるという意味の宣伝を繰り返している。 で、彼らは、違法薬物が人間の精神を蝕む悪魔の粉であり、反社会的組織の資金源でもある旨を、深い事情を知らない視聴者に向けて啓蒙することが自分たちに与えられた神聖な役割であることをアピールしている。 要するに、テレビの関係者としては、自分たちが、この種の薬物事犯の報道を大きく扱う理由は、VTRの尺を稼ぐためでもなければ、視聴者の注意を惹くためでもなく、ただただ「社会のため」だということを強調しているわけだ。 でも、本当のところ、彼らは、騒ぎが起こったから報道しているのではない。 どちらかといえば、メディアが寄ってたかって報道していることで騒ぎが発生していると言った方が実態に近い。 しかも彼らは、瀧氏の関わった作品が次々とお蔵入りになっているプロセスを粛々と伝えているそのニュースの背景映像として、瀧氏のコンサート映像を流し続けている。 瀧氏が映りこんでいる映像の販売や配信については、不謹慎だからという理由で自粛させておいて、自分たちは瀧氏の映像を間断なく再生し続けているわけだ。 無論、彼らには彼らの理屈があって、薬物犯罪の容疑者を断罪する文脈の中で、その容疑者が過去に関わった映像を流すことは何ら問題ないとか、そういう話になるのだろう。 違法薬物の使用なり所持が発覚すると、その瞬間から苛烈な吊し上げ報道が展開され、あらゆる関連作品が自粛の波に飲み込まれることは、誰であれ制作物に関わっている21世紀の人間であれば、ある程度あらかじめ承知していることだ。 そういう意味で、メディアによるリンチ報道は、未体験の人間を薬物の誘惑から遠ざける役割を果たしていると思う。 私自身、「幻覚」だとか「多幸感」だとかみたいな言葉を繰り返し聞かされているうちに、試してみたいと思う瞬間が無いわけでもないのだが、のりピーや瀧さんの扱われ方の残酷さを見ていると、とてもではないが、いまさらハイエナのエサに手を出す気持にはなれない。 違法薬物への入り口を塞ぐ意味で貢献しているのだとしても、薬物からの出口というのか、依存症に陥った人間を更生に導く意味では、現状のメディア・スクラムは、逆効果しかもたらしていない。 ひそかに薬物を使っている人間にとっては、薬物摂取の習慣をなんとしてでも隠蔽する理由になるだろうし、現実問題として、内心で薬物依存からの脱却を願っていたとしても、断薬への道を歩み始める手前の段階に 「人間やめますか」のハードルが課されている現況はどうにもキツすぎる』、「メディアによるリンチ報道は、未体験の人間を薬物の誘惑から遠ざける役割を果たしている」、しかし、「依存症に陥った人間を更生に導く意味では、現状のメディア・スクラムは、逆効果しかもたらしていない」というのはかなり深い分析だ。
・『最後に、断酒中のアルコール依存症患者としての立場からの言葉を残しておきたい。 断酒には(あるいは断薬にも)ある頑強な逆説がかかわっている。 この逆説は、とても説明しにくい。 他人に説明しにくいくらいだから、本人にとっても極めてわかりにくいのだが、なんとか説明してみる。 以下、ややこしい話になると思うが、なんとかついてきてほしい。 アルコール依存者の自助組織であるAA( Alcoholics Anonymous =直訳は「匿名のアルコール依存症者たち」)では、伝統的にアルコール依存からの回復の手順として「12ステップのプログラム」と呼ばれるものが伝えられている。 ウィキペディアの項目が比較的よく整理されているので、興味のある向きは参照してみてほしい。 これは、薬物やギャンブルなどの依存症にも適用されている有用な手法なのだが、当事者にとって(特にわれわれのような一神教の信仰を持っていない日本人にとって)最初の2つのステップが難物だ。しかも、この最初の関門を突破しないとその先の回復のステップを進むことができない仕様になっている。 念のために列挙してみると、以下のような文言だ。 1.私たちはアルコールに対して無力(powerless)であることを自覚した(admitted)-自分自身の生活がコントロール不能(unmanageable)である。 2.偉大なパワー(Power greater)が、私たちを正気に戻してくれると考えるようになった。 1で言っていることはつまり「自力では酒をやめられないこと」を認めることではじめて、「酒をやめるためのスタートライン」に立つことができるということだ。 全体としては「自分の無力さを自覚することではじめて再出発できる」というお話なのだが、この理屈には「自己放棄による再出発」というかなりあからさまなダブル・バインド(注)が介在している。それがどうしても腑に落ちない。だって、再出発する当の本人が自分自身を信用しないでどうする? と、どうしてもそう思えてしまうからだ。 ジョンレノンの「HOW」という歌の最初の一行は、 " How can I go forward when I don't know which way I'm facing?" と歌いはじめられている。私はこのフレーズを思い出したものだった。 「自分がどの道を歩いているのかもわからないで、どうして前に進むことができるだろう?」 その通りだ。自分を信じない人間が、どうやって自分をいましめることができるんだ? で、その答えが、2番めの、「大いなる力」というわけなのだが、これが、モロにキリスト教の「神」っぽくて、普通に育った日本人の私には、やはり受け入れがたい。 率直に言えば「うそつけ」「だまされてたまるもんか」とそう思えるわけだ。実のところ、私はいまでもちょっとそう思っている。 ただ、この二つのステップの絶妙なところは、「自分の(アルコールに対する)無力さ」という依存症の本態を、これ以上ないシンプルな言葉で言い当てているところだ。 多くのアルコール依存者が断酒に失敗するのは、 「自力で」「気力で」「強い意志の力で」アルコールなり薬物なりへの欲望をねじふせようとするところにある。 これをやると、遅かれ早かれいずれ忍耐が決壊するポイントに到達する。 我慢には、限界がある。 限界までは我慢できるけれど、限界が来たら、我慢はやぶれる。当たり前の話なのだが、この当たり前のところがなかなか理解できない』、なるほど。
(注)ダブル・バインド:ある人が、メッセージとメタメッセージ(メッセージは伝えるべき本来の意味を超えて別の意味を伝えるようになっていること)が矛盾するコミュニケーション状況におかれること(Wikipedia)。
・『薬物使用者を断罪する報道を見ていると、いずれも、依存症患者を 「我慢の足りない人」「自己制御のできていない人間」「自分に甘えている人」というふうに規定するドグマから一歩も外に出ていない。 違法の薬物に手を出して、それをどうしてもやめることができずに、いずれ発覚したらすべてを失うことをよく理解しているのに、それでもやっぱり常習的に使用することを断念できずにいたのは、意志が弱いとか見通しが甘いとか、そういう話ではない。 病気だったということだ。 病気だということの意味は、自力では治せないということでもあれば、自分を責めても仕方がないということでもあれば、治療法については他人の力を借りなければならないということでもある。 依存症患者が陥りがちなループから逃れることがまず最初の課題だということでもある。 そのループとは、 +自分は誰よりも酒(あるいはクスリ)を理解している。 +自分ほど自分を理解している人間はいない。 +自分は自分をコントロールできている。 +酒(クスリ)は、時に自分を失わせるが、その酒(クスリ)を自分は自分の意思で制御している。 +ということは自分は酒(クスリ)を通して自分をコントロールできている。 みたいな奇妙な理屈なのだが、これは、酒(あるいはクスリ)とセットになると無敵の自己弁護になる。 この境地から外に出ることが、つまり、自分の無力さを自覚することになるわけだ。 わかりにくい話をしてしまった』、さすが、アルコール依存症に苦しんだ小田嶋氏だけある。
・『ピエール瀧さんとは3度ほど同席させてもらったことがある。その都度、心底から愉快な時間を過ごすことができたと思っている。とても感謝している。 私の知る限り、どの芸人さんやタレントさんと比べても、あんなに爆発的に面白い人はほかにいない。 無論、個々の芸人さんたちとて、本筋の芸を演じる時には、見事な面白さを発揮してくれる。そのことはよくわかっている。 でも、瀧さんは、私がこれまでの人生でナマで話した人の中で、誰よりも素の会話の面白い人だった。これは自分の中では動かない事実だ。 その面白さがクスリの作用だったとは私は考えていない。 クスリや酒は、気分を動せても、アタマの中身そのものを変えることはできない。 そのアタマの中身の素晴らしさをもう一度取り戻すためにも、ぜひ断薬してほしいと思っている』、私はピエール瀧のことは殆ど知らないが、小田嶋氏がここまで褒めるのであれば、それなりの人物なのだろう。再起を期待したい。
タグ:メディア 日経ビジネスオンライン 小田嶋 隆 (その14)(小田嶋氏:「迷惑をかけた」の半分以上は) 「「迷惑をかけた」の半分以上は」 ピエール瀧さんがコカインを使用したとして逮捕 平成の30年間は、この種の事件に関連する原稿を書くに当たって、メディア横断的な横並び圧力が強まり続けてきた30年だったと感じている 主語の運用において、礼法に則った書き方を採用していない書き手は信用に値しません」 みたいな、七面倒臭いマナーが、業界標準として定着してしまった感じ 誰をさん付けで呼び、誰を呼び捨てにするのかによって、書き手のスタンスや立場が計測されるようになった 書き手から見た文章中の登場人物への距離なり感情なりを示す手がかりである「呼びかけ方」は、必ずしも世間におけるその人物の序列や評価と一致しているわけではない 「ピエール瀧容疑者」という主語を使ってしまったが最後、その後の部分で私がどんなに真摯な共感を表明したのだとしても、それらは言葉どおりには響かない 新聞や雑誌のような媒体が、特定の人物について呼称なり表記の統一を要求したがるようになったのは、おそらく単に、メディアとしての統一性を確保したいからに過ぎない ある人物について呼称を統一することは、その人物への感情の向けられ方を定型化せずにはおかない 彼が犯したとされる 「罪」のかなりの部分が、メディアによってアンプリファイ(増幅)された 「騒動」 「メディアの主導によって引き起こされている事件の余波」 結局のところ、われわれが真っ昼間のテレビの画面上で見せられているのは、進行中のメディアによるマッチポンプだということだ メディアは、自分たちが騒ぎを起こしている理由すら自作している 物事犯が極めて反社会的かつ破廉恥な犯罪であり、その罪を犯した人間を断罪し追及することこそが自分たちメディアの使命であるという意味の宣伝を繰り返している メディアが寄ってたかって報道していることで騒ぎが発生していると言った方が実態に近い メディアによるリンチ報道は、未体験の人間を薬物の誘惑から遠ざける役割を果たしていると思う 依存症に陥った人間を更生に導く意味では、現状のメディア・スクラムは、逆効果しかもたらしていない 断酒中のアルコール依存症患者としての立場 アルコール依存者の自助組織であるAA( Alcoholics Anonymous 伝統的にアルコール依存からの回復の手順として「12ステップのプログラム」 1.私たちはアルコールに対して無力(powerless)であることを自覚した(admitted)-自分自身の生活がコントロール不能(unmanageable)である 2.偉大なパワー(Power greater)が、私たちを正気に戻してくれると考えるようになった 常習的に使用することを断念できずにいたのは、意志が弱いとか見通しが甘いとか、そういう話ではない。 病気だったということだ
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ネットビジネス(その6)(“ぐるなび離れ”が飲食店で進む グルメメディア頼みで陥る負のスパイラル、グーグルマップ異変の裏にデジタル地図「1強時代終了」の構図、「ネットフリックスは必需品」米国の若者の心理 日本とはちょっと違う 海外ネット事情) [産業動向]

ネットビジネスについては、昨年9月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(“ぐるなび離れ”が飲食店で進む グルメメディア頼みで陥る負のスパイラル、グーグルマップ異変の裏にデジタル地図「1強時代終了」の構図、「ネットフリックスは必需品」米国の若者の心理 日本とはちょっと違う 海外ネット事情)である。

先ずは、昨年11月13日付けダイヤモンド・オンライン「“ぐるなび離れ”が飲食店で進む、グルメメディア頼みで陥る負のスパイラル」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/185209
・『週刊ダイヤモンド2018年11月17日号は「お得×旨い×テック 外食新格付け」です。今、外食産業はITやテクノロジーの浸透で環境が激変しています。そんな中で生き残る外食チェーンはどこか、取材を通して探りました。そんな業界の最先端事情が満載の本特集から、飲食店と「食べログ」や「ぐるなび」などのグルメメディアの関係についてのレポートを、ダイヤモンド・オンラインで特別公開します。 「ぐるなびへの広告費用をかなり減らした。だって、効果がないんだもの」。ある飲食店経営者は冷めた表情で言い放った。 業績で堅調な食べログとは対照的に、ぐるなびは今期、2期連続の減収減益を見込むなど振るわない。その要因として指摘されているのが、送客力というメディアパワーが落ちたことによる、飲食店からの“切り捨て”だ。 消費者の情報取得ルートが多様化する中で、飲食店側も販売促進の手段を多様化させてきている。 フェイスブックやインスタグラムといったSNSが浸透し、飲食店が自ら販促を仕掛けるルートが生まれた。オウンドメディアと呼ばれる自前のサイトの強化も進む。 「予約者の情報は、基本的にグルメサイトのものであり、オウンドメディアを強化しない限り、例えば予約者にメールマガジンを送るといった販促も難しい」と顧客管理システムを提供するTableCheckの谷口優代表。ブランド力を高めてリピーターを増やしていくためには、オウンド化の実行が必然ともいえるのだ。 従来はある程度成果が不透明でもグルメメディアに“お任せ”していたものが、人件費など種々のコストの高騰もあり、そうした意識を持つ飲食店では一斉にグルメメディアの費用対効果をシビアに見直し始めている。 宿泊業で自社サイト予約のベストレート(最低価格)保証が主流となっているように、グルメサイトによらない販促はますます加速していくだろう』、「グルメサイト」から「オウンドメディア」への流れがあり、前者のなかでは、「ぐるなび」が「食べログ」に食われているようだ。ただ、私の実感からすると、「食べログ」は信頼性に欠けるような気がしている。
・『販促費捻出のため食材・人件費削減 常連客つかぬ必然  そもそも、グルメメディアを頼った集客は、従来致命的な問題点を抱える。販促のターゲットがリピーターではなく、新規客に偏っていることだ。 本来、店舗はリピーターを重視しファンをつくりたい。だが、グルメメディアにとっては、自社メディアを経由しないリピーターが増えれば、送客手数料が減り費用対効果が見直されるなど収益が減る。 つまり、飲食店とグルメメディアの利害関係は根本的に相いれないものだ。それでも店舗側は新規送客という“麻薬”から抜け出せずにきた。 例えば、ぐるなびでは、通常の基本料金(正会員で月5万円~)に加えて、表示順位を上げるためのオプションや、特集(「忘年会」や「ビールがうまい」などといったテーマ別の紹介ページ)に掲載するための費用などが掛かる。上位に表示させるためには当然、多くのカネが要る。 激戦区の東京・新宿などでは、「新宿 居酒屋」といった具合に検索して上位に表示されるのは、「月額で50万円は支払っているような店舗がほとんど」(関係者)だという。表示順位が下がれば(一般に3ページ目以降の表示順は集客効果が薄いといわれる)客足が止まるのだから、莫大な販促費を掛けざるを得ない。 こうしてグルメメディアが新規客、つまり“いちげんさん”を集めることで何が起きるか。 新規客を常連に変えるために、店側は味や雰囲気といった魅力で引き付けなくてはいけない。しかし、「少ない利益の中で販促費を掛けようと思ったら、人件費や食材費を削るしかなくなる。つまり、サービスも味も悪い店になっていく」と別の飲食店経営者。「新規を集めたところで、そんなお店にもう一度来ようなんてならない…」とため息をつく。 グルメサイトを絶てば新規送客が減るので、サイトへの費用を掛けざるを得ない。でも、集まった客を常連客にできない。だから、また新規客を集めるために費用を掛ける。そんな負のスパイラルに陥るのだ』、「飲食店とグルメメディアの利害関係は根本的に相いれないものだ」、「グルメメディアが新規客、つまり“いちげんさん”を集めることで何が起きるか。 新規客を常連に変えるために、店側は味や雰囲気といった魅力で引き付けなくてはいけない。しかし、「少ない利益の中で販促費を掛けようと思ったら、人件費や食材費を削るしかなくなる。つまり、サービスも味も悪い店になっていく」、「グルメサイトを絶てば新規送客が減るので、サイトへの費用を掛けざるを得ない。でも、集まった客を常連客にできない。だから、また新規客を集めるために費用を掛ける。そんな負のスパイラルに陥るのだ」、とは確かに難しいバランスの問題だ。
・『飲食店が生き残るにはどうしたらいいのか。 まずリピーターを増やせるような魅力的な店をつ
くる。つまり、業態の力を上げることだ。その上で、グルメサイトの言いなりにならない独自の販促を積極的に仕掛け、費用対効果を見極めながら、グルメメディアを使いこなす。 そのときに必要なのは、ITなどのテクノロジーにリテラシーを持ち、販促手段や店舗における生産性向上の取り組みにおいてこれを味方につけることだ。 変化を厭う飲食店は少なくない。しかし、あらゆる産業が“テック”による構造変化に直面しており、飲食だけが例外であるはずはない。変えようとする意思と実行力が外食産業の経営者、幹部に求められている』、その通りなのだろうが、実際には難しいのに、単に修辞上で逃げた印象も受ける。

次に、4月9日付けダイヤモンド・オンライン「グーグルマップ異変の裏にデジタル地図「1強時代終了」の構図」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/199084
・『「駐車場が道路になった」「自宅がいつの間にか美容院になっていた」「バス停が消えた」――。3月末に起こった“グーグルマップ”ショック。騒動の裏にはデジタル事業の覇権争いを左右する位置情報データをめぐる各陣営のつばぜり合いが垣間見える。 グーグルマップの下から「ZENRIN」の文字が消えた3月25日。グーグルへのデータ提供契約が終了し、同時にグーグルマップのさまざまな不具合が騒ぎとなる中、ゼンリンの株価は一時、前日比で500円も下落しストップ安となった。 マップといえば、2012年のアップルマップ騒動が記憶に新しい。同社が地図をグーグルマップから独自開発のものに切り替えた途端、実在しない地名が表示されるなどの不具合が相次ぎ、世界的な騒ぎとなったのだ。 そもそも、デジタル地図とはどのように作られるのだろうか。 自治体や国などの公的機関が測量したデータを基に、人手を使ってより細部の情報を調べるのが地図調製企業だ。日本でデジタル地図データを扱うのは、最大手のゼンリン、パイオニア子会社のインクリメントP、昭文社、トヨタグループのトヨタマップマスターの4社がメイン。世界でも大手はオランダのテレアトラス、米国のナブテック(現ヒアー)しかない業界だ。グーグルなどのプラットフォーマーは、これまでこうした地図調製企業から地図データを買って使用してきた。 しかし、こうしたビジネスモデルは変わりつつある。その典型が、08年にグーグル社内で秘密裏に始まった「グラウンド・トゥルースプロジェクト」だ。 真の地理情報、という意味のこのプロジェクトは、グーグルが世界で撮りためたグーグルストリートビューやグーグルアースなどの画像データから地図を自動生成するもの。さらに、ユーザーが経路検索を行ったデータから地図を自動生成することも可能になった。今回、日常的に通り抜ける道として利用されてしまっているコンビニエンスストアの駐車場が“道”と認識されたのは、まさにこのためだ。 グラウンド・トゥルースプロジェクトの成果は09年から世界のグーグルマップで順次採用されているが、複雑な地図データが求められる日本がほぼ最後となった形だ。今回、道路網の作成は自動化されたものの、地図に必要な施設名称などの地点データは「引き続きゼンリンと、今回新たにインクリメントPのものが採用されたようだ」(地図市場に詳しい青山学院大学の古橋大地教授)。とはいえ、グーグルは「ローカルガイド」など、地点施設の情報をユーザーに投稿させるサービスを持っている。地点データも自社で賄うことができるようになるのは時間の問題だ。 グーグルが今、地図の内製化を進めているのは、地図調製企業に数十億ドルの規模に及ぶ利用料を払わずとも、自社が蓄積した情報で、地図を自動生成することが技術的に可能になったからだ。 不具合の修正や地図情報の更新も、ユーザーからの通報を自動で反映するシステムで迅速に行われる。現に、新グーグルマップの不具合はかなりのスピードで修正されており、アップルマップ騒動に比べるとはるかに速く収束に向かっている。 内製化された地図データは今後、位置情報と連動するサービスにおける武器として活用できる』、「施設名称などの地点データは「引き続きゼンリンと、今回新たにインクリメントPのものが採用」されたが、「地点データも自社で賄うことができるようになるのは時間の問題」のようだ。グーグルは「ストリートビュー」や「グーグルアース」などに膨大な投資をしてきただけに、全てを自前で済ませたいのだろう。
・『グーグルと袂分かちライバル陣営に参加 したたかなゼンリン  一方、対抗馬も頭角を現している。米マイクロソフトやフェイスブック、日立製作所やトヨタ自動車、ソフトバンクグループなどの日本企業、それにエアビーアンドビー、ウーバー、テスラなどの米テック企業――これらの企業がある共通項でつながりつつある。 オープンストリートマップ(OSM)。ユーザーが地図作りを行う世界的なプロジェクトで、いわば“地図のウィキペディア”だ。04年から英国で始まったものだが、このデータを利用する企業数はすでに数百社に上る。 地図をベースにした位置情報やナビゲーションなどのサービスは、今後の自動運転やMaaS(移動サービス)の根幹であり、戦略上これをグーグルに握られたくない企業が急増しているのだ。 このOSMを基盤に地図サービスを提供する企業として、急速に力を付けているのが、米マップボックスだ。テスラのナビゲーションシステムを担当し、17年にはソフトバンクグループが約180億円を出資。さらに、ソフトバンクグループがトヨタ自動車と共同で立ち上げる次世代MaaSにもその技術が使われるとみられている。 実は、一見グーグルから“切られた”ゼンリンは、ほぼ同じタイミングでマップボックスと提携した。ゼンリンは、トヨタ自動車などが出資するダイナミックマップ基盤にも参加し、米ゼネラル・モーターズ系地図企業の買収にも動いている。 盤石に見えたグーグルマップ1強という“地図”は、実は流動的だ。その覇権を握る勝者は、いまだ見えない』、確かに「地図をベースにした位置情報やナビゲーションなどのサービスは、今後のは、自動運転やMaaSの根幹であり、戦略上これをグーグルに握られたくない企業が急増している」、という意味では、グーグルVSその他の覇権争いは大いに注目される。

第三に、サイバーエージェント次世代生活研究所・所長の原田 曜平氏が5月9日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「ネットフリックスは必需品」米国の若者の心理 日本とはちょっと違う、海外ネット事情」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/277993
・『1981~1996年の間に生まれた、ミレニアル世代と呼ばれる若者たち。人口が多く、デジタルネイティブといった特徴を持つ彼らはいったい今、どんなことを考えているのか? そこで今回、コロンビア大学の学生を中心としたミレニアル世代の若者たちと座談会を行い、アメリカの若者の変わりゆく価値観や実態について議論を行った。 彼らはアメリカのトップクラスに位置する大学の学生らであり、かつ、ニューヨークという超リベラルな土地に住んでいる。つまり、ある意味で偏った層の若者たちだ。しかし同時に、彼らがアメリカの未来の知識階層になり、影響力を持っていくだろうことも事実だ。 前回記事に続く今回記事では、彼らの価値観やライフスタイルについて探っていく』、興味深そうだ。
・『世界の若者が均質化し始めているワケ  原田:僕はここ10年近くグローバルで、とくにこの数年、アメリカやヨーロッパで若者に対する調査を行って来たけど、年々本当にグローバルなマーケティング調査がしやすい時代になってきていると実感しています。 以前は「今、どんなドラマがはやっているの?」なんてところから現地の若者に聞いて、そのドラマの内容の詳細を事細かに聞かないといけなかった。でも、ここ数年は、「今、Netflix(ネットフリックス)で何見てるの?」と聞いて、「ああ、あれね」なんていうやり取りで済んでしまうようになった。 このように、今、世界の若者の間で Netflixユーザーが増え、国が違えど同じコンテンツを見るようになってきています。また、ほかにも主にスマホのアプリやSNSを中心に、世界の若者が画一的な行動をとるようになり、結果、世界の若者が均質化し始めています。 だから、少なくとも対象が若者である場合、グローバルでマーケティングが大変しやすくなってきているわけですが、反面、世界の若者の間で多様性が減ってしまっているとも言えます。 さて、皆さんはやっぱりNetflix を見ていますか? 一同:もちろん!100%の若者が見ているよ! テイラー:120%よ! 原田:日本でも若者のテレビ離れと言われて久しく経ちます。僕の実感では、とくに今の高校生あたりから本当に深刻になってきていると感じています。数年前まではなんだかんだ言って、高校生までは時計代わりに朝にテレビをつけたり、テレビを見る生活が染みついていた。 時間が自由になる大学生あたりになると、家にいないようになったりしてテレビからいったん離れるんだけど、社会人になると朝早く起きる規則正しい生活になるからテレビ生活に戻る、というサイクルが根付いていました。 が、本当に今の高校生あたりからは、時計代わりにさえテレビをつけない子も増えてきているし、新大学生の都会での一人暮らしでテレビを買わないという子も増えてきた。彼ら世代は小さい頃からスマホへの依存が強く、暇な時間はYouTubeやYouTuberや、SNSやアベマTVの恋愛リアリティーショーを見ている子が非常に多くなっています。 過去のメディアの歴史を見ても、若いときになじまなかったメディアは、その後、中高年になった後にその人になじむようになることは本当に難しい。アメリカ人にはきっと理解できないほど、日本は高齢化が進んでいるので、テレビで人口の少ない若者をターゲットにしたコンテンツが大変作り難くなっており、だから若者がよりテレビを見なくなり……という負のスパイラルに完全に陥ってきていると思います。 本当は視聴率を昔ほどとれなくても、若者はそのメディアの未来の中心顧客だと捉え、若者向け番組を意思を持って作っていくべきだと思うんだけども。 そしてこれは、テレビに限らず、超高齢化マーケットだらけの多くの日本企業に同じく当てはまる大きな問題なんです。どの業界も、高齢社会に引きずられて若者を見捨てると、彼らが中高年になったときに振り向いてもらえなくなります。ビールが苦いと、苦手なままで20代を過ごした若者が、30代になってから急にビールを飲み始める確率は高くありません。 話を戻しますが、ちなみに日本でもとくにここ数カ月、Netflixユーザーはかなり増えてきているようです。でも、一説によると中年男性が中心で増加していると聞いたけれど。やっぱり、アメリカの若者の間でNetflixはすごいんだ?』、かつては音楽や映画を通じて均質化したが、現在ではネットを通じて均質化の度合いを深めているのかも知れない。
・『国境を越えて番組が見られているNetflix人気  一同:Netflix の「ストレンジャー・シングス」や「ブラック・ミラー」は多くの若者が見ていると思います。「テラスハウス」を見ている人も結構多いですよ。 原田:日本のフジテレビ制作のコンテンツであるテラスハウスも、アメリカの若者が見ているんだ?テラハメンバーがよく海外を歩いていると、街で声をかけられるというエピソードを番組の中で話しているけど、実際の話なんだね。 こんまりさんもNetflixによってアメリカで大ブレイクしているし、日本企業はグローバルなマーケティング活動において、もっとNetflixを有効活用すべきかもしれないね。Amazon Prime(アマゾンプライム)やHulu(フールー)はどうですか? イラーナ:Huluは広告が入っているから嫌です。 エレン:Amazon Primeは会員になっているけど、あくまでアマゾンの買い物用に会員になったのであって映画は見ません。 一同:皆、Netflixの使い方に慣れちゃっているから、ほかのモノはあまり……。 原田:なるほど、Netflix一極集中に向かっているのかもしれないね。じゃあ、話題をSNSに変えよう。日本のニュースでよくアメリカの若者の間でフェイスブック離れが進んでいるというものを目にしますが、実際はどうなんですか? アダム:個人情報の流出で、かなりフェイスブック離れが加速化したように思います。僕はフェイスブックをSNS機能に使うというより、ニュースを見る場にしています。 キャリス:私はもう投稿はしなくなっていて、イベント情報の詳細や、学生グループの情報を得るためだけに使っています。 通訳:学生たちの中には、政治に関する個人的な見解や政治に関するニュースや記事をあげている人もいて、それがタイムラインにたくさん挙がってくるのが嫌だという話も学生たちからよく聞きます。 原田:まあ、学生たちがSNS上で政治談義をしている点は日本も見習ったほうがいいですけどね。日本の学生たちはツイッターにネタを載せるか、インスタに映え写真を載せることに躍起になっていて、SNS上での政治談義などほぼありませんから。 エレン:おばあちゃんがフェイスブックを使っているから、そのやり取りにだけ使っています。自発的に投稿することはありませんね。 アラン:周りの同世代を見ていると、メッセンジャー機能だけ使っている人がいちばん多いように思います。 ヨータム:僕は友達の情報を収集する場として使っていて、自分で投稿することはありません』、「個人情報の流出で、かなりフェイスブック離れが加速化」、「メッセンジャー機能だけ使っている人がいちばん多い」、「学生たちがSNS上で政治談義をしている」などは参考になった。
・『日本の若者にはフェイスブックは「冠婚葬祭メディア」  原田:日本でもフェイスブックは若者の間で「冠婚葬祭メディア」なんて言われ方をすることもあるようで、要は、おじさんたちが熱心に書き込みを行っている中、若者たちは登録はするものの、人生の大きな転機があるときにだけ書き込みをするようになっている、ということらしいです。アメリカの若者の間では、ニュースを見る場とメッセンジャー機能に集約され始めているのは面白い違いかもしれませんね。 では、日本の若者の間では加工アプリとして使われることもあるSnapchat(スナップチャット)はどうだろう? アンナ:暇つぶしで、ごくたまにいじるくらいかな。 エレン:私たち世代より若い世代がやっているイメージだわ。 キャリス:3、4年前は大学生も使っていましたが、今はもっと若い子たちが使うようになっているイメージです。 原田:Snapchat(以下、スナチャ)は世界でちょっと伸び悩んでいたんだけど、4月23日の同社の発表によると1日当たりのアクティブユーザー数が世界で1億9000万人に増加したようだね。君たちの話を聞くと、アメリカではより若年化し始めたのかもしれないね。 ちなみに、ストーリーという「消える画像・動画」は、日本の若者はインスタグラムで熱心に使うようになっているけど、もともとはスナチャにあった機能をインスタが真似たんだよね。日本はスナチャが普及する前にインスタにこの機能が搭載されてしまったから、インスタのこの機能が若者の間で浸透した。 一応グローバルなメディアになったと言われているTikTok(ティックトック)はどうだろう?日本と中国ではやっていることは間違いないのだけど。 一同:(笑)。 キャリス:1回だけ使ったことがあるけど、それから1回も使ってないわ。 アンナ:聞いたこともないわ。 ヨータム:最近、ネット広告でよくこのアプリの広告を見るようになったけど、周りの友達で使っている人を見たことがないし、ほとんどの人が知らないのでは?ひょっとしたら、私たちよりもっと若い10代くらいの間ではやっている可能性はあるけど……』、「日本の若者にはフェイスブックは「冠婚葬祭メディア」」には笑いを禁じ得なかった。
・『今後、日本の就活でも利用すべきSNSとは  原田:熱心に使っている若者が多いのは、主に日本と中国だけなのかなあ。先日、上海に行って若者たちにインタビューしてきたら、上海の子たちは結構、積極的に使っていました。じゃあ、日本ではあまり普及していないと言われる、海外ではインターンや企業の採用などに使われているSNSのLinkedin(リンクトイン)は? キャリス:最近消したわ。アーティストなどフリーランスの人に興味があるので、私にとっては何のコネクションにもなりませんでした。あと、学内の学生で私が知らない人から就職活動についてアプローチがあり、面倒だったこともやめた理由としては大きいです。 原田:日本の大学生も、この数年で本当にインターンシップをやるようになってきているし、先日、経団連が新卒一括採用をやめると宣言したので、学生たちは大学にいる間、ずっと就活をすることになっていくと思うので、そろそろこうした類いのSNSが普及し始めてもいいタイミングにはなってきているんですけどね。 では、ツイッターはどうかな?ツイッターは日本ではうまくいっているけど、本国アメリカではあまりうまくいっていない、というニュースを日本でしばしば見かけます。僕が数年前にニューヨークとロサンゼルスで行った若者調査では、ツイッターをやっている子がかなり少なかったことを覚えているけど、今はどうなんだろう? エレン:私は毎日投稿しているわ。以前、仕事の情報収集にも使っていたわ。でも、周りのほかの同世代はやっていない。 ヨータム:何年も前に数週間試したことがあるけど、すぐにやめました。 アンナ:人間、そんなに言いたいことってないわ。だから、やる理由がない。 原田:確かに普通の人間には、そんなに発信したいことってないかもしれないね(笑)。それに英語だとつぶやける言葉数も限られるしね。漢字のある日本のほうが、そもそもメディアとして親和性が高いのかもしれないね。俳句の国だし、短文にもともと慣れているのかもしれない。 日本の高校生にインタビューすると、インスタグラムでストーリー機能ができてから、それがツイッターのつぶやきに似ている機能だから、ツイッター離れが進んできている、なんて話も聞いたりするようにはなりましたが。 でも、日本のテレビはトランプ大統領がツイッターで何かをつぶやくと、すぐにそれをあたかもアメリカで大きな影響を与えているように報じるのだけど、それは日本でツイッターの影響力が大きいからかもしれない。 アメリカ社会では全体的に、少なくとも若者たちについてはツイッターの影響力は減ってきているから、ことさらにトランプ大統領のツイッターでの発言を大きく報じるのは、客観的な報道とは言えない可能性もあるかもしれないね』、ツイッターについて、「人間、そんなに言いたいことってないわ。だから、やる理由がない」、「英語だとつぶやける言葉数も限られるしね。漢字のある日本のほうが、そもそもメディアとして親和性が高いのかもしれないね。俳句の国だし、短文にもともと慣れているのかもしれない」、「ことさらにトランプ大統領のツイッターでの発言を大きく報じるのは、客観的な報道とは言えない可能性もあるかもしれないね」、などの見方には納得させられた。
・『報道ニュースを若者にどう届けていくべきか  ところで、先ほど、フェイスブックでニュースを読む、という人がいたけど、ほかの人はニュースはどこから得ているの? アンナ:iPhoneのニュースアプリで見ているわ。(注:iPhoneのニュースアプリで数百という新聞や雑誌、インターネットニュースメディアの記事を読むことができる。好きなメディアやテーマを登録しておけばそのニュースがニュースフィードにどんどん上がってくる) エレン:ツイッターとニューヨークタイムスでニュースを読みます。 538という政治的なサイトを見ている若者も中にはいます。 原田:日本の若者もそうだけど、アメリカの若者もあまりニュースは見ていなさそうだね。報道ニュースを若者たちにどう届けていくかというテーマは、世界中のメディアにとって、本当に大きな問題になってきていますね』、日本のネットでの”炎上”や”祭り”などの傾向が、アメリカでどうなっているかも知りたいところだ。続編で出てくればいいいのだが・・・。
タグ:ネットビジネス グーグルアース 東洋経済オンライン グーグルストリートビュー ツイッター ダイヤモンド・オンライン (その6)(“ぐるなび離れ”が飲食店で進む グルメメディア頼みで陥る負のスパイラル、グーグルマップ異変の裏にデジタル地図「1強時代終了」の構図、「ネットフリックスは必需品」米国の若者の心理 日本とはちょっと違う 海外ネット事情) “ぐるなび離れ”が飲食店で進む、グルメメディア頼みで陥る負のスパイラル」 業績で堅調な食べログとは対照的に、ぐるなびは今期、2期連続の減収減益を見込むなど振るわない 送客力というメディアパワーが落ちたことによる、飲食店からの“切り捨て”だ 飲食店が自ら販促を仕掛けるルートが生まれた。オウンドメディアと呼ばれる自前のサイトの強化も進む ブランド力を高めてリピーターを増やしていくためには、オウンド化の実行が必然 グルメメディアを頼った集客は、従来致命的な問題点を抱える。販促のターゲットがリピーターではなく、新規客に偏っていることだ 本来、店舗はリピーターを重視しファンをつくりたい。だが、グルメメディアにとっては、自社メディアを経由しないリピーターが増えれば、送客手数料が減り費用対効果が見直されるなど収益が減る 飲食店とグルメメディアの利害関係は根本的に相いれないものだ 表示順位を上げるためのオプション グルメサイトを絶てば新規送客が減るので、サイトへの費用を掛けざるを得ない。でも、集まった客を常連客にできない。だから、また新規客を集めるために費用を掛ける。そんな負のスパイラルに陥るのだ 飲食店が生き残るにはどうしたらいいのか 「グーグルマップ異変の裏にデジタル地図「1強時代終了」の構図」 グラウンド・トゥルースプロジェクト 施設名称などの地点データは「引き続きゼンリンと、今回新たにインクリメントPのものが採用されたようだ 地点データも自社で賄うことができるようになるのは時間の問題だ 内製化された地図データは今後、位置情報と連動するサービスにおける武器として活用できる グーグルと袂分かちライバル陣営に参加 したたかなゼンリン オープンストリートマップ(OSM) ユーザーが地図作りを行う世界的なプロジェクト 地図をベースにした位置情報やナビゲーションなどのサービスは、今後の自動運転やMaaS(移動サービス)の根幹であり、戦略上これをグーグルに握られたくない企業が急増しているのだ 盤石に見えたグーグルマップ1強という“地図”は、実は流動的だ。その覇権を握る勝者は、いまだ見えない 原田 曜平 「「ネットフリックスは必需品」米国の若者の心理 日本とはちょっと違う、海外ネット事情」 コロンビア大学の学生を中心としたミレニアル世代の若者たちと座談会 世界の若者が均質化し始めているワケ 世界の若者の間で Netflixユーザーが増え、国が違えど同じコンテンツを見るようになってきています。また、ほかにも主にスマホのアプリやSNSを中心に、世界の若者が画一的な行動をとるようになり、結果、世界の若者が均質化し始めています 日本は高齢化が進んでいるので、テレビで人口の少ない若者をターゲットにしたコンテンツが大変作り難くなっており、だから若者がよりテレビを見なくなり……という負のスパイラルに完全に陥ってきていると思います 国境を越えて番組が見られているNetflix人気 皆、Netflixの使い方に慣れちゃっているから、ほかのモノはあまり…… 個人情報の流出で、かなりフェイスブック離れが加速化 学生たちがSNS上で政治談義 メッセンジャー機能だけ使っている人がいちばん多い 日本の若者にはフェイスブックは「冠婚葬祭メディア」 人間、そんなに言いたいことってないわ。だから、やる理由がない 英語だとつぶやける言葉数も限られるしね。漢字のある日本のほうが、そもそもメディアとして親和性が高いのかもしれないね。俳句の国だし、短文にもともと慣れているのかもしれない ことさらにトランプ大統領のツイッターでの発言を大きく報じるのは、客観的な報道とは言えない可能性もあるかもしれないね 報道ニュースを若者にどう届けていくべきか
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安倍内閣の問題閣僚等(その9)(忖度道路めぐり安倍首相の直接指示を証明する新事実が! 面会した議員が「総理から早期建設を とのお言葉」、相次ぐ大臣辞任 筑波大教授が解説する失言メカニズムとは・・・筑波大学人間系心理学域の原田隆之教授、内部文書を入手! 副大臣が東レ社長に「借入金取り立て」疑惑の背景 大臣・副大臣の更迭が続く中で…) [国内政治]

安倍内閣の問題閣僚等については、4月7日に取上げた。今日は、(その9)(忖度道路めぐり安倍首相の直接指示を証明する新事実が! 面会した議員が「総理から早期建設を とのお言葉」、相次ぐ大臣辞任 筑波大教授が解説する失言メカニズムとは・・・筑波大学人間系心理学域の原田隆之教授、内部文書を入手! 副大臣が東レ社長に「借入金取り立て」疑惑の背景 大臣・副大臣の更迭が続く中で…)である。

先ずは、4月12日付けLITERA「忖度道路めぐり安倍首相の直接指示を証明する新事実が! 面会した議員が「総理から早期建設を、とのお言葉」」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2019/04/post-4656.html
・『「私が忖度した」と安倍首相と麻生太郎財務相の地元への利益誘導を認めた塚田一郎国交副大臣につづき、「復興以上に大事なのは議員」と発言した桜田義孝五輪相と、安倍政権の「辞任ドミノ」が起きている。 あまりにも当たり前すぎるだろう。桜田五輪相については大臣就任以前から「(慰安婦は)職業としての娼婦、ビジネスだ」などと堂々発言した人物であり、大臣としての資質などまるでゼロのネトウヨ議員でしかない。それを総裁選で安倍首相のバックアップに回った二階派への論功行賞人事で大臣に抜擢したのだ。安倍首相は「さまざまな批判があることも真摯に受け止めなければならない」などと耳タコフレーズを口にしているが、反省などまったくしていないのは明らかだ。きっといつものごとく、適当にいなしておけば、そのうち話題が消え去ってしまうだろうとタカをくくっているのだろう。 しかし、もうひとつの問題、「安倍案件」として浮上した忖度道路問題に関しては、そのまま収束なんていうことは絶対にありえない。ここにきて、安倍首相自身が直接指示していた、という証言者までが出てきたからだ。 それは、吉田博美・自民党参院幹事長が塚田国交副大臣に対して「塚田、わかってる? これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」「俺が何で来たかわかるか」と迫って忖度を引き出した際、その場に同席していた福岡県選出の大家敏志・参院議員だ。 大家議員は昨年10月25日、やはり吉田自民参院幹事長とともに安倍首相と首相官邸で面会。いま「忖度道路」と呼ばれている「下関北九州道路」について陳情をおこなったことを自身のFacebookおよびブログに、こう記述していた。〈山口県下関市のご出身である安倍総理からは「早期建設に向けた活動をしっかりと取り組むように」とお言葉を頂きました。〉 この安倍首相の発言は、当時の西日本新聞朝刊にも記載されており、本サイトはそのことをいち早く指摘していたが、当事者である大家議員が自分のメディアで当時、そのことを開陳していたのだ。 これは、安倍首相が陳情どころか「直接指示」していたという事実が確定的になったということだろう。 しかも、大家議員は昨年12月9日にも、重大発言をしていることが判明した。北九州市でおこなわれた講演のなかで「総理と副総理の地元なので、2人がやるとぐちゃぐちゃ言われるから、参議院の吉田博美幹事長を引っ張り出した」と明言していたのだ。実際、この発言の約10日後の12月20日に大家・吉田両氏は塚田国交副大臣と面会していたわけで、これは、表立って動けない安倍・麻生の名代として吉田氏が圧力をかけていたことを認める発言と言っていいだろう。 いや、安倍首相の指示は、今回、これらの事実が明らかになる以前からはっきりしている。4日の参院決算委員会で指摘されたように、安倍首相は下関や北九州にゆかりのある自民・公明党の国会議員有志によって結成された「関門会」のメンバーとして、2016年3月31日付けの石井啓一国交相に「下関北九州道路の早期実現に向けての要望書」を提出しているのだ。要望書の提出者欄にしっかりと〈安倍晋三〉と名前が記載されていた。 さらに、この要望書には〈去る二月二十四日、安倍総理を囲み懇談会を開催させていただいたところ、その際、「第二関門橋」の早期建設促進の件が話題となり、「関門会」の総意として要請活動を行うこととなった〉と、安倍首相を囲んだ会で、要請活動が決まったことが明記されていたのだ』、ここまで安倍首相の明確な指示が明らかになった割に、騒ぎは尻すぼみなのは解せない。
・『直接指示の証拠がこれだけ出揃っても、本格追及できないマスコミ(こんなあからさまな「総理案件」の要望書が提出されて、石井国交相が無視したとは考えられるはずがない。 事実、塚田国交副大臣の発言どおり、実際に国直轄の調査計画に引き上げられ、先月29日には今年度から調査費は国が全額負担することが公表され、4000万円を計上。そして、国直轄で調査をおこなう道路の候補は全国で108路線もありながら、今年度に事業として予算を認められたのは下関北九州道路のみだったことも、池田豊人・国交省道路局長の答弁によってあきらかになっている。 そこに加えて、今回の大家議員のブログやFacebookと発言である。もはや言い逃れできるような状況ではないはずだが、安倍首相は相変わらず「知らぬ存ぜぬ」をつらぬき、きょうおこなわれた参院本会議でも、「そもそも内閣総理大臣は要望や陳情をおこなう立場にはなく、また、石井国土交通大臣も『総理から指示があったとはまったく思っていない』と答弁しており、私が国交省の判断に影響を与えるようなことはなかったと承知しております。そのため私の指示で新たな調査をおこなうことは考えておりません」と強弁している。 身内の「石井国交相が指示はなかったと言っている」などと言ってもなんの証拠にもならないのに、たったそれだけで「新たな調査はしない」と決定してしまう──。森友・加計問題をはじめとする「忖度」案件と同様、こうして疑惑の目を潰してしまおうとしているのだ。 しかも、信じられないのが、これだけの証拠がそろいながら、まだ本格追及の姿勢を見せないマスコミだ。いったいどこまで、この政権の腐敗と不正を放置するつもりなのか。これでは、不正をやりたい放題の独裁国家と変わりがないだろう』、マスコミの安倍首相への忖度には目に余る。野党の追及もどうなっているのだろう。

次に、4月28日付け日刊ゲンダイ「相次ぐ大臣辞任 筑波大教授が解説する失言メカニズムとは・・・筑波大学人間系心理学域の原田隆之教授」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/252895
・『白血病になった競泳選手に「がっかりだ」と言い放ち、その舌の根も乾かぬうちに仲間の議員を「復興以上に大事」と持ち上げた桜田前五輪大臣しかり、「私が忖度した」と発言した塚田前国交副大臣しかり。閣僚の失言が相次いでいる。よくもまあ、マズイことをぺらっと口にするものだ。脳と心の専門家に失言のメカニズムを聞いた。 「私たちが他人を傷つけるような言動を慎むのは、言ってはいけないと思う“理性的な関所”と、言ったら叱られるんじゃないかと不安になる“感情的な関所”の2つのチェック機能が脳の中で働いているから。失言を繰り返す人は、何らかの理由でそれらが正常に働いていない可能性があります」 こう言うのは、筑波大学人間系心理学域の原田隆之教授。「サイコパスの真実」(ちくま新書)の著書があるなど、犯罪者の心理にも詳しい』、「私たちが他人を傷つけるような言動を慎むのは」、「“理性的な関所”と」、「“感情的な関所”の2つのチェック機能が脳の中で働いているから」というのは、なるほどと納得させられた。
・『「理性的な関所は専門用語で〈認知的共感性〉といいます。これは相手の気持ちを頭で理解できる能力のこと。相手の考えをおもんぱかって先回りする“忖度”も実は同じタイプの共感性です。一方、感情的な関所は〈情緒的共感性〉といい、相手の気持ちを頭で理解するだけでなく、相手の立場に立って同じように感じられる能力です。ドラマを見て涙するのは、これによります。大事なのはそれぞれのバランス。認知的共感性ばかり優れていても、忖度だけ上手で国民の気持ちに寄り添えない官僚のような人間になってしまいます」 認知的共感性は、脳の前頭前野と呼ばれる部分がつかさどる。親のしつけや教育、仲間との交流などを通して学習を重ねるという。 情緒的共感性をつかさどるのは、前頭前野の下部にある眼窩部と、大脳辺縁系に位置する扁桃体。いずれも良心や感情に関連していて、「親や教師から強く叱責されると動悸が高まり、不安や恐怖を感じます。それを繰り返すことで、心のブレーキを身に付けるのです」と原田教授。 どちらの共感性も、しつけや教育、経験などで後天的に鍛えることができるが、失言大臣たちはよほど放埓な環境で育ったのか。あるいは叱られても意に介さない鉄のメンタルの持ち主か。 「脳自体に先天的な異常があっても、2つの共感性は正常に働きません。特に情感をつかさどる部位に異常があると、頭ではわかっているのに同じことを繰り返してしまいます。犯罪者によく見られるケースです」』、「認知的共感性」、「情緒的共感性」とも本来、政治家には必須の能力の筈だが、例外もあるようだ。
・『安倍首相は回りくどい言い回しで…  脳の機能は正常でも、極度に緊張したり、逆にリラックスしすぎたりしても、うまく働かなくなるし、とっさの時や疲れている時、アルコールが入っている時も失言のリスクは高まるそうだ。 「絶対に失言しないためには、冷静な時に原稿を書いて、誰かにチェックしてもらい、それを読むのが一番、確実です。あるいは一言ずつかみしめてしゃべること。安倍首相はよく『~でありますから』と回りくどい言い方をしますが、恐らくその間に自分の発言をチェックしているのでしょう」 安倍首相は一枚上手というわけだが、純文学を読むのも共感性を鍛えるのに役立つという。国会議員は、毎日の読書を義務づけたらどうか』、「安倍首相はよく『~でありますから』と回りくどい言い方をしますが、恐らくその間に自分の発言をチェックしているのでしょう」、というのも納得である。今後は、そう思って我慢して聞くことにしよう。

第三に、ジャーナリストの時任 兼作氏が5月17日付け現代ビジネスに寄稿した「内部文書を入手! 副大臣が東レ社長に「借入金取り立て」疑惑の背景 大臣・副大臣の更迭が続く中で…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64560
・『「日覺社長への電話」までの経緯  安倍晋三首相のおひざ元で、ある疑惑が浮上している――。 先月、内閣府副大臣兼環境副大臣の秋元司議員に「弁護士法違反」の疑いがあることを週刊文春が報じた(2019年4月25日号)。 「どうやら経団連会長も輩出した名門企業・東レが、間接的とはいえ、正規に貸金業の登録をしていない業者と取り引きした件に絡んで、秋元氏が業者側の要請を受けて貸金の『取り立て』をしたようなんです」 さる政府筋はそう明かした。いったい何事なのか。 事の発端は、2016年7月に遡るという。東レがバングラディシュで受注した水処理装置の販売が、同国内で発生したイスラム過激派によるテロ事件を機に、治安が悪化したことなどの影響で頓挫してしまったのである。 だが、すでに装置は製造段階に入っていた。そのため処理に窮した東レは販売代理店3社に装置を引き取ってもらった上、さらにその後の引き受け先も探した。これが2017年6月のことだ。 引き受け先として白羽の矢が立てられたのは、中国や東南アジア向け事業のコンサルを行うO社だった。東レ水処理事業部の営業部長であったF氏は、 「うちの関連会社が在庫として抱えている水処理装置を買い取ってくれないか。資金調達ではうちが連帯保証するし、転売にも全面的に協力する。売れ残ったものは、高値で引き取る」 と好条件でかき口説いた。 そこで応諾したO社だったが、蓋を開けてみると、東レの連帯保証があろうとも資金調達は容易でなかった。それでも、最終的に数社から資金を借り受け、東レ側の要求を満たした。 だが、問題がすぐに発生した。関係者が語る。 「慌てて資金調達に走ったO社は足元を見られたんでしょう。昨年4月に飛び込み営業をかけてきたL社から2億4000万円の融資を受けたのですが、このL社、本業は広告や経営コンサル。つまりは、貸金業者ではないのです。 しかも、融資は2ヵ月という短期で、高金利。月利8%にもおよぶ法外なものでした。そのため、O社は金利の支払いにも苦慮してしまい、借入期間を延長。8月に完済するまでに7000万円もの金利を払わされてしまったのです」 この最中、秋元議員が登場したのだ、という。現在、貸金業法違反の容疑でこの融資について捜査を開始した警視庁の捜査幹部が語る。 「8月の完済日直前に秋元議員が東レの日覺(昭廣)社長に電話を入れていた。L社の実質的なオーナーが知人を介して秋元議員に依頼したからだが、議員は日覺社長に対して『O社が返せないなら、連帯保証人となっている東レが資金を返済するべきではないか』との旨を口にしたという」』、前経団連会長会社が受注した水処理装置のキャンセルを表面化させないためとはいえ、「コンサルを行うO社」に泣きを入れて好条件で引き取ってもらい、資金はヤミ金融で手当てしたとはみっともない。しかも、以下のように返済でトラブったということは、O社による装置の売却も上手くいかなかったのだろう。
・『内部文書に書かれていたこと  この電話の件はすぐにF氏にも伝えられ、F氏はO社に至急返済するよう迫った。その結果、O社はほかから借り入れた資金をL社への返済に充てることにし、翌日に振り込みを行ったという。 「しかし、L社から秋元議員への報告がなかったのか、議員はその1週間ほど後に再度、社長宛に返済要請の電話を入れている。まあ、よほど強力な依頼だったのだろう」 と、捜査幹部は付言した。 秋元議員は、こうした一連の疑惑を報じた週刊文春の取材に対して、電話を入れたことも、L社のことについても「知らない」と繰り返している。完全否定したわけである。また週刊文春発売当日には、事務所を通じて「そうした(=ヤミ金融の借金を取り立てた)事実は全くない」とのコメントも出した。 だがその際、「知らない」との前言を撤回するような説明も自身のFacebook上で行っていた。 「知人から相談があり、東レに債務の連帯保証をしているか確認するため電話したところ、社長から『そのような事実はない』と回答があった」「借金の支払いを求めたという記事は、事実に反する」との見解を示したのだ。「知らない」という発言と食い違っている。 しかも、この「修正版」の見解も腑に落ちない。それというのも、こんな書面があるからだ。《秋元 司様 前略 平素は大変お世話になり誠にありがとうございます。 扨て、弊社が平成30年4月18日付けにて株式会社L社〈書面では実名。以下同〉様より2億4千万円をお借入した案件では、平成30年8月6日(その後8月10日に繰り戻し〈原文のママ〉振込み)までに借入金全額のご返済は完了致しております。(中略) 東レ株式会社 水処理システム事業部 営業部長 F》 この書面は、差出人のO社が、返済を迫る金主たちに事情説明のために渡した資料の一部で、同社が控えとして保有していたものだ。 書面には、はれ物に触るかのように、「金利について今後、L社らに疑義を唱えることや提訴するような動きは一切しない」と確約する記述まで盛り込まれていた。 もし秋元議員が支払いを求めていないと言うなら、なぜこんな書面が存在するのだろうか。(リンク先には書面のコピー(上記よりやや詳しい)』、議員にとっては口利きはメシの種だろうが、やっていいことと、悪いことの区別もつかないのでは、議員失格だ。
・『警察も関心を示している  弁護士資格のない者が借金の返済などを当事者に代わって求める行為は、俗に「非弁行為」と言われ、違法とされる。弁護士法72条の規定に基づくもので、条文ではこう記されている。《弁護士でない者は報酬を得る目的で法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない》 要するに、もし秋元議員がL社から報酬に相当するものを得て、債務返済という法律事務を代理したとすれば、違法になるということだ。 貸金業法違反事件の捜査を続ける警視庁は、この点にも注目しているという。 「そもそも、L社と秋元議員がいかなる関係なのかも気になる。L社への資金提供者には株価操作事件での逮捕歴があるし、また実質的なオーナーにも、経済事件への関与を指摘する声が多い。そうした企業と国会議員がなぜつながるのか。 ひょっとすると、相手の素性を知らずに交際を始め、気づいた時には関係を断てない状況に陥っていたのかもしれない。こうした交際は政治家にとって弱みになる。今回の件も、その弱みの延長線上にあった可能性がある」 前出の捜査幹部は、そう語り、今後の捜査の広がりをにおわせた。 それにしても、秋元議員の言う「知人」とは、どんな人物なのか。また、「取り立て」はあったのか否か。改めて秋元議員に尋ねると、下記のような回答があった。「(知人について)メディア関係者であり、個人的な知り合いです。(「取り立て」について)既に返済が終わっていた件であり、ご質問、ご指摘のような会話はした覚えはありません」 4月はじめには、道路整備をめぐって安倍首相や麻生太郎副総理を「忖度した」と発言した塚田一郎国交副大臣、さらに不適切発言を繰り返した桜田義孝五輪担当相を次々と更迭した安倍官邸だが、この問題については沈黙を守っている。このままで済むとは考えにくいのだが……』、秋元議員の行為は明確な弁護士法違反だろうが、東レも絡んでいるだけに、司法当局がまたも忖度するとすれば、問題だ。野党も追及して欲しいものだ。
タグ:安倍内閣 日刊ゲンダイ 現代ビジネス litera 問題閣僚等 時任 兼作 (その9)(忖度道路めぐり安倍首相の直接指示を証明する新事実が! 面会した議員が「総理から早期建設を とのお言葉」、相次ぐ大臣辞任 筑波大教授が解説する失言メカニズムとは・・・筑波大学人間系心理学域の原田隆之教授、内部文書を入手! 副大臣が東レ社長に「借入金取り立て」疑惑の背景 大臣・副大臣の更迭が続く中で…) 「忖度道路めぐり安倍首相の直接指示を証明する新事実が! 面会した議員が「総理から早期建設を、とのお言葉」」 安倍政権の「辞任ドミノ」 忖度道路問題 安倍首相自身が直接指示していた、という証言者までが出てきた 吉田博美・自民党参院幹事長が塚田国交副大臣に対して「塚田、わかってる? これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」「俺が何で来たかわかるか」と迫って忖度を引き出した際、その場に同席していた福岡県選出の大家敏志・参院議員だ 安倍総理からは「早期建設に向けた活動をしっかりと取り組むように」とお言葉を頂きました 安倍首相が陳情どころか「直接指示」していたという事実が確定的になった 総理と副総理の地元なので、2人がやるとぐちゃぐちゃ言われるから、参議院の吉田博美幹事長を引っ張り出した 「関門会」のメンバー 「下関北九州道路の早期実現に向けての要望書」を提出 要望書の提出者欄にしっかりと〈安倍晋三〉と名前が記載 実際に国直轄の調査計画に引き上げられ、先月29日には今年度から調査費は国が全額負担することが公表され、4000万円を計上 国直轄で調査をおこなう道路の候補は全国で108路線もありながら、今年度に事業として予算を認められたのは下関北九州道路のみだった これだけの証拠がそろいながら、まだ本格追及の姿勢を見せないマスコミだ 「相次ぐ大臣辞任 筑波大教授が解説する失言メカニズムとは・・・筑波大学人間系心理学域の原田隆之教授」 私たちが他人を傷つけるような言動を慎むのは、言ってはいけないと思う“理性的な関所”と、言ったら叱られるんじゃないかと不安になる“感情的な関所”の2つのチェック機能が脳の中で働いているから 失言を繰り返す人は、何らかの理由でそれらが正常に働いていない可能性があります 理性的な関所は専門用語で〈認知的共感性〉 感情的な関所は〈情緒的共感性〉 安倍首相はよく『~でありますから』と回りくどい言い方をしますが、恐らくその間に自分の発言をチェックしているのでしょう 「内部文書を入手! 副大臣が東レ社長に「借入金取り立て」疑惑の背景 大臣・副大臣の更迭が続く中で…」 内閣府副大臣兼環境副大臣の秋元司議員に「弁護士法違反」の疑い 東レが、間接的とはいえ、正規に貸金業の登録をしていない業者と取り引きした件に絡んで、秋元氏が業者側の要請を受けて貸金の『取り立て』をした 東レがバングラディシュで受注した水処理装置の販売が、同国内で発生したイスラム過激派によるテロ事件を機に、治安が悪化したことなどの影響で頓挫 引き受け先として白羽の矢が立てられたのは、中国や東南アジア向け事業のコンサルを行うO社だった 東レ水処理事業部の営業部長 資金調達ではうちが連帯保証するし、転売にも全面的に協力する。売れ残ったものは、高値で引き取る 飛び込み営業をかけてきたL社から2億4000万円の融資を受けたのですが、このL社、本業は広告や経営コンサル。つまりは、貸金業者ではないのです。 しかも、融資は2ヵ月という短期で、高金利。月利8%にもおよぶ法外なものでした。そのため、O社は金利の支払いにも苦慮してしまい、借入期間を延長。8月に完済するまでに7000万円もの金利を払わされてしまったのです L社の実質的なオーナーが知人を介して秋元議員に依頼したからだが、議員は日覺社長に対して『O社が返せないなら、連帯保証人となっている東レが資金を返済するべきではないか』との旨を口にしたという 内部文書に書かれていたこと 秋元議員は、こうした一連の疑惑を報じた週刊文春の取材に対して、電話を入れたことも、L社のことについても「知らない」と繰り返している。完全否定 警察も関心を示している 弁護士資格のない者が借金の返済などを当事者に代わって求める行為は、俗に「非弁行為」と言われ、違法とされる。弁護士法72条の規定 L社への資金提供者には株価操作事件での逮捕歴があるし、また実質的なオーナーにも、経済事件への関与を指摘する声が多い
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働き方改革(その20)(同期の上司から受けたいじめと 無言で抗う役職定年社員、新入社員は短期間で劣化する 日本人の「仕事への熱意」は世界最低レベル、「長時間労働がない」ドイツと日本の致命的な差 「仕事は原則8時間以下」が彼らのモットーだ) [経済政策]

働き方改革については、1月5日に取上げた。今日は、(その20)(同期の上司から受けたいじめと 無言で抗う役職定年社員、新入社員は短期間で劣化する 日本人の「仕事への熱意」は世界最低レベル、「長時間労働がない」ドイツと日本の致命的な差 「仕事は原則8時間以下」が彼らのモットーだ)である。

先ずは、健康社会学者(PhD)の河合 薫氏が3月12日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「同期の上司から受けたいじめと、無言で抗う役職定年社員」を紹介しよう』。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00013/?P=1
・『「相手にしてもらえないのが、こんなにも辛いことなのかと。自分がいつまで持つのか、自信がなくなってしまいました」役職定年になった会社員は、うつむいたままこう話した。 男性の会社では55歳になると、大まかには次の3つのキャリアプランから選択を強いられるという。 (1)役職を外れ、同じ職場に残る (2)人材派遣会社を1年間利用し、転職を検討する (3)関連会社に転籍する 彼は「会社に貢献したい」との思いから、同じ職場に残ることを選択した。ところが、そこで待っていたのは「集団いじめ」だったのである。 というわけで今回は「役職定年のリアル」を取り上げる。まずは男性の「今」をお聞きください。「青臭いこと言うようですが、私は会社に恩義を感じているんです。いろいろな現場を経験させてもらったし、上司にも恵まれました。なので、自分の経験を生かして後輩のサポーターになれればと考えていたんですが、周りは私を歓迎していませんでした。 ある程度、予想はしていましたが、『自分が前向きにやれば問題ない』と考えていたんです。 ところが、与えられるのは1人で切り盛りする仕事ばかりで、周りとの接触は一切なし。終わらなければ家に持ち帰らなくてはなりません。仕事の内容もあまり意味のあるようなものではなく、データを打ち込むだけの仕事だったり、関連会社との会合をセッティングする仕事だったり。 それで『若手を1人つけてほしい』と上にお願いしました。でも、無視されました。本当に無視です。無言で『あんた何言ってんだ?』というような蔑んだ目で見返されただけでした。 しかも、そういう上司の態度を若手も見てるでしょ。すると同じように無視するようになる。そこに「私」がいるのに、まるでいないように扱われる。今まで一緒にやってきた同僚や部下が、役職がなくなった途端、まるで小学生の“いじめ”のように無視するんです」』、大いにあり得そうな話だが、「『若手を1人つけてほしい』と上にお願いしました」、と要求した本人にも問題がありそうだ。
・『「あれは彼らのせめても抵抗だったんじゃないか」  彼はこう続けた。 「私は役職定年者が、役職から離れられず、偉そうに口を出したり、年下上司をあからさまに批判したりするのを見て、『ああはなりたくない』ってずっと思っていました。でも、今、自分が役職定年になり、あれは彼らのせめても抵抗だったんじゃないかと思うようになった。自分の居場所を確保するために抗っていたんじゃないかって。 シニア社員は、モチベーションが低いってよく言いますよね? でも、それはモチベーションを保てないような扱いを受けるからなんじゃないでしょうか。 私も『腐りたくはない』という思いと、相手にしてもらえないことへの屈辱感が、日々交錯してます。周りとの接点を意図的に断絶させられる苦痛は、想像以上です。自分がいつまで持つのか、自信がない。何よりもショックだったのは……最初に無視した“上”が、同期ってことなんです」 ……ふむ。 ここまで読んで、「この男性の性格に問題があるのでは?」だの、「役職定年する前の態度に問題があったのでは?」だの、「仕事があるだけいいじゃん」だの、男性側にも大きな原因があるのでは……と考えた人もいるかもしれない。 だが、そうやって「個人の問題」としたままでいいのか? というのが今回の私の問いかけである。 確かに、男性からの一方的な意見しか聞いていないので、ひょっとしたら「鶏と卵」のようなもので、男性に何がしかの問題があった可能性はある。 それでもやはり、「みなで無視」とは大人のすることか、と解せない。仮に「無視」が少々大げさな表現だったとしても、彼が「周りに軽んじられている」「モチベーションを保てない」と感じていたことは間違いないし、私が知る限り、同様に感じているシニア社員は決して少なくない。 そもそも会社という組織は「人」の集合体であり、さまざまな「感情」がうごめく場所だ。どんなにやる気があっても、自分に向けられる「感情」次第で、やる気がなえることは往々にしてある。 ただでさえ、役職定年者は「自分も、『働かない、お荷物社員』と思われているんじゃないか」という、ステレオタイプ脅威(Stereotype Threat)のプレッシャーを受けるだけに、他人の“まなざし”に過敏になる。 ステレオタイプ脅威は、「自分と関連した集団や属性が、世間からネガティブなステレオタイプを持たれているときに、個人が直面するプレッシャー」と定義され、その脅威にさらされた人は、不安を感じ、やる気が失せ、パフォーマンスが低下しがちだ。 例えば、「女性は数学が不得意」というステレオタイプが存在した場合、その“世間のまなざし”を意識した女性は、本当に数字が不得意になったり、「老人は物忘れがひどい」というステレオタイプは、本当に老人の記憶力を低下させる。「ウチの部下は使えない」と上司が、あっちこっちで言い続けていると、ホントに部下は使えなくなってしまうのだ』、相談者は既に「役職定年者」のケースを見て知っている筈の割には、自分がそれらと違うのかどうかを認識しているのだろうか、いささか頼りない印象を受ける。「ステレオタイプ脅威、・・・脅威にさらされた人は、不安を感じ、やる気が失せ、パフォーマンスが低下しがちだ」、初耳だが、納得できる話だ。
・『「下」だけではなく、「横」も「上」も“加害者”  人間とは自分を自分だけで定義できない。他人のまなざしに拘束され、自分を規定する。 であるからして、私はこれまで何度も、役職定年の是非について問い、「役職定年=働かないおじさん=無駄な人」と批判する若い社員の考え方に警鐘を鳴らす一方で、「心の定年」を勝手に迎えて会社にしがみつく働かないオジさんの“ケツを叩く”コラムを何本も書いた(「現実、企業は50歳以上を“使う”しかないのだ」「「50代社員は無駄」若手にそう思わせる会社の罪」ほか)。 ただ、今回の紹介したエピソードの“主犯”は、若手でも本人でもない。同期。自分と同年代で「自分の気持ち」を一番わかってくれてもいいはずの同期が、普通だったら「パワハラ」になりかねない行為を平然と繰り返し、それが若手に伝染し、「役職定年の孤立」を生じさせた。 「下」だけではなく、「横」も「上」も“加害者”……。役職定年者にとっては、あまりに過酷な環境と言わざるを得ない。 で、今回、私が彼のインタビューを取り上げた理由は、もう1つある。 最近、役職定年になったいわゆる“シニアスタッフ”と接する機会がとても増えたのだが、彼らに対する経営幹部たちの態度に、何とも言葉にし難いトゲトゲしさを感じていたのである。 例えば、講演会。以前は、お世話をしてくれるのは、課長よりちょっと下くらいの40歳前後の社員が中心だった。ところが最近は、年配のいわゆるシニアスタッフが控え室に案内してくれるパターンが増えた。 控え室に入るとほどなくして、経営幹部の方たちが挨拶に来る。大抵、2、3名。社長さんの時もあれば、部長さんの時もある。でもって、そういうお偉い方たちとお話をする時間は、私にとって会社の空気を察するとても貴重な時間だ。ご本人たちが考える以上に「その人の人間性と、周囲との関係性」が露呈する“人間ウォッチング”の場が、控え室といっても過言ではない。 例えば、お世話役のスタッフが一目置かれる存在だったり、幹部との関係性が近かったりする場合、控え室全体の空気がいい。「輪」ができるというかなんというか。誰1人として、そこにいる「人」が疎外されることのない「包まれた空気」を感じとることができる。 逆に、会社の人間関係が悪いと、幹部が入ってきた途端、空気が凍る。それまで笑顔で接していたお世話係の顔がこわばり、異様な緊張感が漂うようになる』、その通りだろう。
・『「やむにやまれず追い出し部屋を作った」  もちろんこれは私の“肌メーター”による、極めて主観的なものでしかない。 しかしながら、自分で言うのもなんだが、肌メーターの感度はかなり優秀。そのときの空気感はまんま講演会会場の空気であり、講演会後の懇親会にまで続き、そこで聞こえる“声”に「ああ、やっぱりそうなんだぁ〜」と納得することがほとんどなのだ。 で、話を控え室に戻すと……、シニアスタッフがアテンドしてくれた場合、経営幹部が入ってきてもシニアスタッフの態度が変わることはない。しかしながら、肌メーターが「極寒」を感じる会社の場合、幹部の方たちの視界にシニアスタッフが全く入っていない。 そうなのだ。そこに「いる」のに、まるで「いない」かのように振る舞う幹部が確実に存在し、とりわけ、同年代の、「あなただってやがて同じ立場になるかもしれないのよ!」と言いたくなるような人たちの冷淡な態度に、ちょっとばかり驚かれされるのである どこの会社でも、「女性活躍」とセットで「シニア活用」が掲げられているが、会社組織全体の意識改革を促すような取り組みなしにシニア活用問題は解決しないのではないか。「シニア社員のモチベーションをいかにして上げるか」という議論の大前提は、彼らは“やる気がない”というもの。だが、その前提そのものが間違っているとしか思えないのである。 例えば、終身雇用や年功序列が一般的ではない欧米では、基本的に年齢を基準にした処遇は行わない。管理職として生きる人材は、年齢に関係なく、限られたポストをめぐり厳しい競争に耐えねばならず、処遇に満足できなければ転職するかの二者択一を迫られることもある。その代わり、役職定年はない。 以前、グローバル展開を図るある日本企業が、グローバル基準に合わせ役職定年を廃止した。だが、人材の新陳代謝の阻害と人件費の高騰という二重の問題が重くのしかかり、「やむにやまれず追い出し部屋を作った」と、上級幹部社員が明かしてくれたことがあった。 なんとも皮肉な話ではあるが、このエピソードから分かるのは、そもそもの問題は「役職定年」という制度そのものではないってこと。言葉を変えれば、企業が「人」をどう育てるか? どう評価するか? どう処遇するか? という大きな視点での検討が必要なのだ』、正論で、その通りだ。
・『ごく一部を除き、誰もがそうなる  役職定年はそもそも、低成長期における中高年社員の増加を背景に、人件費コントロールの目的で広がった側面が大きい。極論すれば、役職定年となった社員は「やめてもらっても構わない」という考え方だ。当然、役職定年社員の活用という視点はもともと希薄なのだ。 一方、シニア活用がうまくいっている企業の方に話を聞くと、「定年まで働き続ける人を増やす」策を講じているケースが多い。つまり、「やめてもらう」が前提ではなく、「定年まで勤め上げてもらう=会社を去るまで貴重な戦力」を前提にさまざまな制度を導入し、社員教育を行い、役職定年になった社員の役割を明確にし、雇用の安定と福利厚生の整備を徹底しているのだ。「社員の経験は会社の宝物。長年企業を支えてきた土台を引き継ぐことが企業の成長には欠かせない」という経営哲学の下、長い年月をかけてひとつひとつ問題を解決しつつ、「誰もが年齢に縛られずに働き、パフォーマンスを発揮できる仕組み」の試行を積み重ねている。 例えば大和ハウス工業は、2003年にいち早く60歳定年後の「嘱託再雇用制度」を導入。その後、11年にはモチベーションの向上を目的に定年後も部門長処遇が可能になる「理事制度」を採用した。驚くべきなのは、60歳定年後に再雇用を希望する人が以前は50%だったのが、12年には70%にまで増加しているという事実である。13年には「65歳定年制」、15年には、定年以降も働き続けられる「アクティブ・エイジング制度」をスタート。60歳で役職定年になり、65歳で定年を迎えるが、その後も1年更新の嘱託社員として勤務することができる。嘱託社員は原則週休3日となるが、ボーナスも支給され、寮や社宅も利用可能だ。 もちろんある企業での成功事例が、他の企業でもそのまま使えるわけではないかもしれない。「50歳以上って、個人差がすごいあるでしょ」といったシニア雇用に関する難問も、すべてが解決できるわけではないだろう。 しかしながら、人手が足りない、役職定年社員は使えない、と嘆く前に、目の前にいる社員を、「会社に貢献したい」と考えている社員を、フルに生かす仕組みや組織風土を作る手間を惜しまないことが必要なんじゃないだろうか。 「まずは呼び名から!」と、「シニアスタッフじゃなく、シニアプロ」「シニアスタッフじゃなく、エルダースタッフ」「シニアスタッフじゃなく、メンタープロ」などとネーミングに工夫を凝らす例も増えつつあるようだが、ラインから外れた社員が「敗者」とならないような複線的なキャリアプランであったり、意欲が向上するようなちょっとした成果報酬であったり、それ以外にもできることはいろいろとあるはずだ。 「課長になれるのは7人に1人」と言われる時代。早い時期にラインを外れた社員、役職定年を迎えた社員――彼らは少数派ではないし、決して“敗者”ではない。ごく一部を除き、誰もがそうなる。そして、目を凝らせば、そこには貴重な経験やスキルが多く埋まっている。人手の確保がますます難しくなるこれからの時代、彼らがいなければ、会社組織は回らない。 そのことを胸に留めれば、もっと優しい気持ちで、相手を大切に感じられるのでは。きれいごとかもしれないけど、互いに尊重し合う組織風土なくして、未来はないと思う』、原則的にはその通りだが、役職定年者の経験やスキルの活用は、既存の指揮命令系統との関係など現実には難題が山積している。

次に、4月8日付けAERAdot.「新入社員は短期間で劣化する 日本人の「仕事への熱意」は世界最低レベル」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2019040500080.html?page=1
・『新しい年度がスタートし、新入社員の初々しい姿が街にあふれるこの季節、桜の花色に誘われるように初心を思い出し、新たな目標を立てた人も多いだろう。 だが、その志が続く人は少ないようだ。これまで、日本人は「勤勉」で「仕事熱心」だと世界中から思われてきた。いや、日本人自身もそう思ってきたはずだ。ところが、近年の調査では、そのようなイメージをくつがえすような結果が次々と出ている。 米国の調査会社ギャラップによると、日本人で「仕事に主体的に取り組む人」は全体のわずか6%。世界139カ国中で132位で、仕事への熱意は世界最低レベルだ。やる気のない社員は71%にのぼり、周囲に不平不満をまき散らしている社員も23%いた』、これは初耳で、驚くべき結果だ。
・『元号が「平成」に変わる前年の1988年、日本では栄養ドリンク「リゲイン」が発売されて「24時間、戦えますか」のフレーズが一世風靡した。仕事に全人生をかける会社員は、もはや遠い昔の話だ。 もちろん、モーレツサラリーマンに代表される昭和的価値観だけが人生なわけではない。IT技術が発達した21世紀の社会で、朝から晩まで会社で働き詰めるなど、時代遅れでしかない。得たい情報があれば手軽に入手でき、会いたい人がいればSNSで気軽につながることもできる。同僚や上司と“ノミニケーション”をしながら仕事の極意を教えてもらわなくても、学ぶ機会はあふれている。だが、今の日本人が情報化社会を十分に活用できているかというと、心もとない。 リクルートワークス研究所が全国の15歳以上の約5万人を対象に実施した調査によると、2017年の1年間で仕事に関わる自己学習をした人は、全回答者のうち33.1%しかいなかった。設問でたずねた「自己学習」とは、「本を読む」「詳しい人に話を聞く」といった手軽なものも含まれていたが、3分の2の人が「何もしていない」ことになる。同研究所の萩原牧子主任研究員は、こう話す。 「年齢別では、20代前半の約4割が自己学習をしていますが、年齢を重ねるとともに徐々に下がり、40代で約3割になります。学ばない理由について『転職や独立を予定していない』(17.2%)や『仕事や育児で忙しい』(15.0%)を大きく引き離して、51.2%の人が『あてはまるものはない』と回答しています。日本人の多くは、そもそも聞かれても特段の理由はないくらい、学ばないことを普通だと感じているのかもしれません」 ちなみに、学ぶ習慣について2回の退職経験がある人と比べると、一度も退職経験がない人は確率として4%低く、退職経験が3回以上ある人は4.3%高かった。日本企業の終身雇用と年功序列の雇用形態は、社員の学ぶ意欲を削いでいる可能性もある。 調査結果に異論もあるだろう。真っ先に思い浮かぶのが、「日本人は仕事が忙しすぎて、学ぶ時間が作れない」というものだ。残念ながら、これも事実ではない。同調査では、週労働時間が35時間未満の人が最も勉強しておらず(25.1%)、45~60時間未満の人が最も勉強している(34.6%)。さすがに、週60時間以上の「過労死ライン」を超えると割合が下がるが、それでも30.6%が何らかの学びをしている』、「週労働時間が35時間未満の人が最も勉強しておらず」というのは、ヒマだと問題意識も低いためなのだろうか。
・『希望を持って企業に入社した新入社員にとっては、これらはショックな結果かもしれない。就職や転職は人生の大きな転機だが、同僚や先輩たちのほとんどはスキルアップに興味がない。日々の仕事をただこなしているだけ。それが今の日本人サラリーマンの“平均的な姿”なのだ。 人口減少、少子高齢化、国際社会における地位低下……。日本は今、社会的にも経済的にも安定しているように見えて、近い将来、確実に大きな変化が訪れる。そのなかで、学ぶ習慣がなければ激しく変化する時代に追いつくことは容易ではない。 では、学ばない日本人は、どうすれば学ぶようになるのか。電通若者研究部プランナーで『仕事と人生がうまく回り出す アンテナ力』(三笠書房)の著書がある吉田将英氏は、こう話す。「多くの会社では人口構成がいびつで、上司の人数が多い。商品開発も高齢者向けが多く、若者の感性は尊重されにくい。そんな時代だからこそ、会社にこだわらなくてもいい。SNS時代だからいろんな人とつながることができるし、会社以外の組織で活動することも学びにつながるはずです。それが最終的に、意外な形で会社の仕事に良い影響を与えることもあります」  日本人が学ばなくなったのは個人の責任だけではない。厚生労働省の調査によると、社員一人あたりの教育訓練費は月額1112円(16年)で、1991年の1670円と比べると33%も減少している。企業が提供する学びの機会も減少している今、やはり自ら学習する姿勢が不可欠だ。前出の萩原氏は言う。 「『学び』と聞くと、多くの人が学生時代の試験対策や受験勉強など『負荷がかかるもの』を想像してしまう。しかし、情報化社会が進めば、詰め込み型の暗記学習の価値は低下していきます。一方、変化が激しい社会において、求められている学び行動は、答えがないもの、日常で感じた疑問に向き合う行動です。ふと感じた『なぜ』を解き明かす過程は本来はもっとワクワクする、楽しいもの。私たちは、『学び』の概念を改める必要があります」 前出の吉田氏も、こう話す。「たとえAI(人工知能)による効率化が進んで残業時間が減っても、学ばない人は学ばない。そもそも仕事に対する動機づけをあげるのは会社や上司の仕事ではありません。自分の好奇心を守り、育てること。身近なところに学ぶための“ラッキー”が転がっているので、まずはそれを知ることがスタートラインになるのではないでしょうか」 ギリシャ時代の哲学者アリストテレスは、自著『形而上学』の冒頭で「人は、生まれながらにして知ることを欲している」と書いた。かくいう記者も、日常に忙殺されて学ぶことから遠ざかり気味だ。あらためて新入社員が職場にやってくるこの季節に、学ぶこと、学び続けることの大切さを再認識したい。自戒を込めて』、「同僚や先輩たちのほとんどはスキルアップに興味がない。日々の仕事をただこなしているだけ。それが今の日本人サラリーマンの“平均的な姿”なのだ」というのは危機的だ。人事考課の項目に自己研鑽がある企業もあると思うが、こうした細かなことの積み重ねが重要なのではなかろうか。

第三に、在独ジャーナリストの熊谷 徹氏が5月8日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「長時間労働がない」ドイツと日本の致命的な差 「仕事は原則8時間以下」が彼らのモットーだ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/273436
・『日本よりも労働時間が圧倒的に短いドイツ。にもかかわらず、名目GDP(2017年度)は世界4位にいます。ドイツ人にとって、「長時間労働がありえない理由」を在独ジャーナリストの熊谷徹氏が解説します。 日本とドイツはどちらも物づくりに強い経済大国だ。しかしその働き方には天と地ほどの違いがある。 まず、ドイツ人の労働時間は日本に比べて圧倒的に短い。OECDによると、ドイツの労働者1人あたりの2017年の年間労働時間は、1356時間で、日本(1710時間)よりも約21%短い。彼らが働く時間は、日本人よりも毎年354時間短いことになる。EU平均と比べても、約17%短い。ドイツ人の労働時間は、OECD加盟国の中で最も短い』、確かに年間労働時間の格差は顕著だ。
・『勤労者を守る「厳しい法律」  なぜドイツの労働時間は大幅に短いのだろうか。1つの理由は、法律だ。ドイツ政府は、勤労者の健康を守るために、労働時間についての法律による縛りを日本よりもはるかに厳しくしている。 ドイツの労働時間法によると、1日の労働時間は原則として8時間を超えてはならない。1日あたりの労働時間は10時間まで延長できるが、ほかの日の労働時間を短くすることによって、6カ月間の平均労働時間を、1日あたり8時間以下にしなくてはならない。 1日につき10時間を超える労働は、禁止されている。この上限については例外はありえず、「繁忙期だから」とか、「客からの注文が急に増えたから」という言い訳は通用しない。 経営者は、業務が増えそうだと思ったら、社員1人あたりの1日の労働時間が10時間を超えないように、社員の数を増やさなければならない。 さらに、監督官庁による労働時間の監視が日本よりも厳しい。事業所監督局という役所が時折抜き打ちで、企業の社員の労働時間の記録を検査する。その結果、企業が社員を組織的に毎日10時間を超えて働かせていることが判明した場合、事業所監督局は、企業に対して最高1万5000ユーロ(約195万円)の罰金を科すことができる。社員が労働条件の改善を要求しても経営者が対応しない場合には、社員が事業所監督局に通報することもある。 事業所監督局は、とくに悪質なケースについて、経営者を検察庁に刑事告発することもある。例えば企業経営者が一度長時間労働について摘発された後も、同じ違反を何度も繰り返したり、社員の健康や安全に危険を及ぼすような長時間労働を強制したりした場合である。 裁判所から有罪判決を受けた場合、企業経営者は最長1年間の禁錮刑に処せられる可能性がある。長時間労働を社員に強いるブラック企業の経営者には、罰金ばかりでなく刑務所も待っているのだ。つまり、労働時間の規制を守らない経営者は、「前科者」になるリスクを抱えている。 企業の中には、罰金を科された場合、長時間労働をさせていた部長、課長など管理職にポケットマネーで罰金を払わせることがある。さらに長時間労働を部下に強いていた管理職の社内の勤務評定は非常に悪くなる。このため、ドイツの管理職たちは繁忙期でも社員たちに対し口を酸っぱくして、1日10時間を超えて働かないように命じるのだ』、「ドイツの労働時間法」や「監督官庁による労働時間の監視」は大いに学ぶべきだ。日本は経営側に余りに優し過ぎる。
・『10時間を超える労働には警告  会社によっては、1日の労働時間が10時間近くなると、社員のPC画面に「このまま勤務を続けると労働時間が10時間を超えます。10時間を超える労働は法律違反です。ただちに退社してください」という警告が出るケースもある。 また、管理職のPCの画面に、部下の1日の労働時間が10時間を超えると警告が出るようにしている企業もある。このようにしてドイツの管理職たちは、売上高や収益を増やすだけではなく、部下たちの労働時間の管理にも心を砕かなくてはならないのだ。 日本の働き方改革は残業時間に上限を設けるものだが、ドイツでは1日あたりの労働時間に上限を設けている。これは大きな違いである。 ドイツの企業では、自宅のPCから企業のサーバーにログインして働く「ホーム・オフィス」制度も急速に広がっている。とくに金融サービス業界では、書類の大半が電子化されているので、自宅からの労働が可能になる。会議には電話で参加する。自宅で働いた時間は、会社に自分で申告する。 幼い子どもを抱える社員の間では、ホーム・オフィスは好評である。「毎週金曜日は、ホーム・オフィス」と決めている社員も少なくない。1990年代までドイツでは、社員に対して「午前9時から午後3時までは、オフィスにいる義務」を課す企業が多かったが、最近では「オフィスにいなくても、成果が上がればよい」と考えるのが当たり前になっている。 ドイツ政府と産業界が一体となって進めている製造業のデジタル化プロジェクト「インダストリー4.0」が普及すれば、銀行や保険会社だけではなくメーカーでも自宅からの作業が可能になる』、「10時間を超える労働には警告」にはここまでやるのか、と驚かされた。「ホーム・オフィス」制度も大いに見習うべきだろう。
・『有給休暇は「30日」が基本  もう1つ、日独の働き方の大きな違いは、有給休暇である。1963年、つまり今から半世紀以上前に施行された「連邦休暇法」によって、企業経営者は社員に毎年最低24日間の有給休暇を与えなくてはならない。 だが実際には、ドイツの大半の企業が社員に毎年30日間の有給休暇を与えている(有給休暇の日数が33日の企業もある)。これに加えて、残業時間を1年間に10日間まで代休によって振り替えることを許している企業も多い。つまり、多くの企業では約40日間の有給休暇が与えられていることになる。 さらに土日と祝日も合わせると、ドイツ人のサラリーマンは毎年約150日休んでいることになる。1年のうち41%は働かないのに会社が回っており、ドイツが世界第4位の経済大国としての地位を保っていられるのは、驚きである。 OECDが2016年12月に発表した統計は、各国の法律で定められた最低有給休暇の日数、法定ではないが大半の企業が認めている有給休暇の日数と、祝日の数を比較している。ドイツの大半の企業が認めている有給休暇(30日)と祝日(9~13日間=州によって異なる)を足すと、39~43日間となり世界で最も多い。日本では法律が定める最低有給休暇(10日)と祝日(16日)を足すと、26日間であり、ドイツに大きく水をあけられている。 日本の特徴は、法律が定める有給休暇の最低日数が10日と非常に少ないことだ。これはドイツ(24日)の半分以下である。しかも、ドイツでは大半の企業が、法定最低日数(24日)ではなく、30日という気前のいい日数の有給休暇を与えている。 日本では、継続勤務年数によって有給休暇の日数が増えていく。例えば、半年働くと10日間の有給休暇が与えられ、3年半以上働いた人の有給休暇日数は14日、勤続年数が6年半を超えると、20日間の有給休暇を取れる。 これに対し、ドイツの大半の企業では、6カ月間の試用期間を無事にパスすれば、最初から30日間の有給休暇が与えられる。この面でも、日本のサラリーマンはドイツの勤労者に比べて不利な立場に置かれている。 さらに、日独の大きな違いを浮き彫りにするのが、有給休暇の取得率である。旅行会社エクスペディア・ジャパンが2018年12月に発表した調査結果によると、同年の日本の有給休暇取得率は50%。これは、同社が調査した19カ国の中で最低である』、日本の有給休暇については、「法律が定める有給休暇の最低日数が10日と非常に少ない」だけでなく、「取得率は50%」と「9カ国の中で最低」(私が考えていたより高いとはいえ)というのは、やはり問題だ。
・『「有給取得率100%」が常識  ドイツは、エクスペディアの統計に含まれていない。しかし、私がこの国に29年住んでさまざまな企業を観察した結果から言うと、ドイツ企業では管理職を除く平社員は、30日間の有給休暇を100%消化するのが常識だ。 有給休暇をすべて取らないと、上司から「なぜ全部消化しないのだ」と問いただされる会社もある。管理職は、組合から「なぜあなたの課には、有給休暇を100%消化しない社員がいるのか。あなたの人事管理のやり方が悪いので、休みを取りにくくなっているのではないか」と追及されるかもしれない。したがって、管理職は上司や組合から白い目で見られたくないので、部下に対して、有給休暇を100%取ることを事実上義務付けている。 つまり、ドイツの平社員は、30日間の有給休暇を完全に消化しなくてはならない。日本人のわれわれの目から見ると、「休暇を取らなくてはならない」というのは、なんと幸せなことだろうか。しかも毎年30日、つまり6週間である。 さらに、エクスペディアの調査によると日本では、「有給休暇を取る際に罪悪感を感じる」と答えた人の比率が58%と非常に高かった。フランスでは、この比率はわずか25%だ』、日本では有給休暇を病気に備えてとっておく傾向が強いが、ドイツやフランスでは病欠でも不利にならない制度的手当てがあるのかも知れない。いずれにしても、日本のサラリーマンは、低いと言われている生産性を上げて、有給休暇をもっと取れるようにメリハリのある働き方が求められているのだろう。
タグ:東洋経済オンライン ギャラップ 日経ビジネスオンライン 役職定年 河合 薫 働き方改革 熊谷 徹 AERAdot. リクルートワークス研究所 (その20)(同期の上司から受けたいじめと 無言で抗う役職定年社員、新入社員は短期間で劣化する 日本人の「仕事への熱意」は世界最低レベル、「長時間労働がない」ドイツと日本の致命的な差 「仕事は原則8時間以下」が彼らのモットーだ) 「同期の上司から受けたいじめと、無言で抗う役職定年社員」 今まで一緒にやってきた同僚や部下が、役職がなくなった途端、まるで小学生の“いじめ”のように無視するんです ステレオタイプ脅威 その脅威にさらされた人は、不安を感じ、やる気が失せ、パフォーマンスが低下しがち 「下」だけではなく、「横」も「上」も“加害者” 「やむにやまれず追い出し部屋を作った」 「女性活躍」とセットで「シニア活用」が掲げられているが、会社組織全体の意識改革を促すような取り組みなしにシニア活用問題は解決しないのではないか そもそもの問題は「役職定年」という制度そのものではないってこと。言葉を変えれば、企業が「人」をどう育てるか? どう評価するか? どう処遇するか? という大きな視点での検討が必要なのだ 互いに尊重し合う組織風土なくして、未来はないと思う 「新入社員は短期間で劣化する 日本人の「仕事への熱意」は世界最低レベル」 日本人で「仕事に主体的に取り組む人」は全体のわずか6%。世界139カ国中で132位で、仕事への熱意は世界最低レベルだ 全国の15歳以上の約5万人を対象に実施した調査によると、2017年の1年間で仕事に関わる自己学習をした人は、全回答者のうち33.1%しかいなかった 週労働時間が35時間未満の人が最も勉強しておらず(25.1%)、45~60時間未満の人が最も勉強している(34.6%) 同僚や先輩たちのほとんどはスキルアップに興味がない。日々の仕事をただこなしているだけ。それが今の日本人サラリーマンの“平均的な姿” 社員一人あたりの教育訓練費は月額1112円(16年)で、1991年の1670円と比べると33%も減少 「「長時間労働がない」ドイツと日本の致命的な差 「仕事は原則8時間以下」が彼らのモットーだ」 ドイツの労働者1人あたりの2017年の年間労働時間は、1356時間で、日本(1710時間)よりも約21%短い。彼らが働く時間は、日本人よりも毎年354時間短いことになる。EU平均と比べても、約17%短い ドイツ人の労働時間は、OECD加盟国の中で最も短い ドイツ政府は、勤労者の健康を守るために、労働時間についての法律による縛りを日本よりもはるかに厳しくしている 日につき10時間を超える労働は、禁止 監督官庁による労働時間の監視が日本よりも厳しい 10時間を超える労働には警告 「ホーム・オフィス」制度も急速に広がっている 有給休暇は「30日」が基本 連邦休暇法 毎年最低24日間の有給休暇を与えなくてはならない 実際には、ドイツの大半の企業が社員に毎年30日間の有給休暇を与えている 土日と祝日も合わせると、ドイツ人のサラリーマンは毎年約150日休んでいることにな ドイツの大半の企業が認めている有給休暇(30日)と祝日(9~13日間=州によって異なる)を足すと、39~43日間となり世界で最も多い 日本では法律が定める最低有給休暇(10日)と祝日(16日)を足すと、26日間 ドイツの大半の企業では、6カ月間の試用期間を無事にパスすれば、最初から30日間の有給休暇が与えられる 日本の有給休暇取得率は50% 9カ国の中で最低 「有給取得率100%」が常識 日本では、「有給休暇を取る際に罪悪感を感じる」と答えた人の比率が58%と非常に高かった フランスでは、この比率はわずか25%
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ソフトバンクの経営(その10)(ソフトバンク・ビジョン・ファンド 出資のサウジなどが不満、ソフトバンク いまごろヤフーを連結子会社化するワケ、顧客離れに苦しむ米スプリント ソフトバンクに暗雲、ソフトバンク 「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、2月17日に取上げた。今日は、(その10)(ソフトバンク・ビジョン・ファンド 出資のサウジなどが不満、ソフトバンク いまごろヤフーを連結子会社化するワケ、顧客離れに苦しむ米スプリント ソフトバンクに暗雲、ソフトバンク 「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情)である。

先ずは、2月20日付けダイヤモンド・オンラインが米紙WSJ記事を転載した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド、出資のサウジなどが不満」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/194594
・『ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が率いる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」。10兆円規模のこのハイテク投資ファンドに対して、二大出資者であるサウジアラビアとアブダビの政府系ファンドが、ビジョン・ファンドの運用を担うソフトバンクへの不満を募らせている。火種となっているのは投資先の評価額の高さや、投資判断に対する孫正義社長の影響力の大きさだ。 サウジのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)とアブダビのムバダラ・インベストメントは、ビジョンファンドの資本のうち約3分の2を拠出している。両ファンドを満足させられなければ、孫氏が追加資金を確保したり、新ファンドを立ち上げたりすることは難しくなる。 複数の関係者によると、PIFとムバダラは非公式の場で、ビジョン・ファンドが一部投資先に支払った金額についての不満をあらわにした。また関係者の1人は、まずソフトバンクが投資してからその株式をより高い金額でビジョン・ファンドに移管するという手法について、PIFが懸念していると話した。 一部の投資家はPIFに対し、孫氏がファンド幹部の投資判断を却下することがあり、ファンドの意思決定のプロセスが混沌(こんとん)としていることから、土壇場で判断が覆ることも多いと不満を漏らした』、「約3分の2を拠出している」両ファンドが不満というのは穏やかならざる事態だ。
・『2017年半ばの立ち上げ以来、ビジョン・ファンドが明らかにした投資などは総額約600億ドル(6兆6600億円)に上る。投資先には配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズや、共有オフィス賃貸の米ウィーワークも名を連ねる。関係者によると、全体の4分の3程度の出資先は決定済みで、ファンド幹部はさらに数十億ドルの調達を検討している。 ビジョン・ファンド、PIF、ムバダラはいずれも関係は良好だとし、PIFとムバダラはビジョン・ファンドの戦略、ガバナンスへの支持を表明している。 複数の関係者によると、両者の緊張の一因は、過去の出資や出資待ち案件の評価額の高さにある。ウィーワークのほか、顔認識技術を開発する香港のセンスタイムなどがやり玉に挙げられている。 ソフトバンクはウィーワークに最大160億ドル出資予定だったが、PIFやムバダラの反対を受け、1月には20億ドルに減らすことを決めた。 ビジョン・ファンドへの投資家は、ソフトバンクがまず自ら投資して、後にビジョン・ファンドに株式を移管するという手法にも不満を抱いている。 PIFとムバダラに近いある人物は、ソフトバンクが両ファンドを犠牲にして、テクノロジー企業の高い評価額に乗じて利益を得ている可能性があることに対し、懸念を表明した。届け出によれば、ソフトバンクがビジョン・ファンドに移管・売却したか、あるいは今後売却予定の株式の価値は少なくとも263億ドルに上る。これら株式の取得に費やしたのは合計249億ドルほどだ』、「ソフトバンクがまず自ら投資して、後にビジョン・ファンドに株式を移管するという手法」は結果的には利益相反行為に相当するが、大いにあり得ることだ。ただ、「今後売却予定の株式の価値は少なくとも263億ドル」、「これら株式の取得に費やしたのは合計249億ドル」ということであれば、移管による益出しの余地は小さくなったようだ。
・『移管済みまたは移管予定の株式には、中国の配車サービス大手の滴滴出行(ディディチューシン)株も含まれる。ソフトバンクは滴滴出行を59億ドルで取得し、ビジョン・ファンドに68億ドルで売却することで合意している。また昨年、インドの宿泊予約サイト運営会社OYO(オヨ)の株を移管した際には、2015年の取得額1億ドルの2倍の額を手にした。 問題になっているのは、ソフトバンクが投資にかかった手数料を上乗せしていることではなく、市場価値が上がっているときに株式を移管することが多いため、ビジョン・ファンドが損失を被る可能性があるという点だ。 時にはソフトバンクが自ら投資先の資金調達ラウンドを主導して、評価額の引き上げを招いたこともある。関係者の話では、最近の資金調達でOYOの評価額は50億ドル近くに達したが、これはソフトバンクが初出資した2015年当時の13倍にあたる。 ソフトバンクは今月、投資家向け説明会で、ビジョン・ファンドの投資は2018年末時点で第三者による評価を受けたとしたほか、評価額は主要投資家が選定した独立コンサルタントによる確認作業や監査など、いくつもの段階をへて決まると述べた。 評価額に対する懸念は、投資プロセス、特に孫氏の権限についての懸念と強く結びついている。複数の関係者によると、孫氏は最近、協力先の反対を振り切って、中国で中古車のネット売買プラットフォームを運営する車好多集団への投資を決めた。投資額は最大15億ドルだという。車好多は最近、あるライバル企業から不正行為を指摘されていた。 車好多は不正行為を否定している。孫氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、ソフトバンクは独自のデューデリジェンス(資産査定)を行い、競合の訴えは事実無根だったことが判明したと述べた。 関係者によれば、この投資額に基づく車好多全体の評価額は85億ドルとなる。同社と競合する中国企業で、米ナスダック市場に上場するユウシン(Uxin)の時価総額は11億8000万ドル、香港上場のイーシン(Yixin)・グループの時価総額は17億5000万ドルだ』、車好多の「評価額は85億ドル」というのは、ユウシンやイーシンに比べ法外に高過ぎるような気もするが、「投資額は最大15億ドル」であれば、大したことはない、といえるのかも知れない。

次に、5月9日付け日経ビジネスオンライン「ソフトバンク、いまごろヤフーを連結子会社化するワケ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/050800325/
・『ソフトバンクグループの国内通信子会社ソフトバンクは2019年5月8日、兄弟会社であるネット大手のヤフーを第三者割当増資を通じて連結子会社化すると発表した。6月までに4565億円を投じてヤフーが新規発行する15億1147万8050株を取得する。 両社はもともとサービスの連携を強めて相互送客を図ってきた。例えばヤフーが17年2月から始めた「ポイント10倍キャンペーン」。ヤフーショッピングの利用で与えられるポイントは、通常100円の買い物につき1ポイント。それに対して、ソフトバンクのスマホ利用者には10倍の10ポイントをつけた。これもあって17年4~9月期のヤフーショッピングの取扱高は前年比39%増の1407億円と大きく伸びた。 こうした取り組みを加速させるのがヤフー子会社化の主な目的だ。ソフトバンクの宮内謙社長は同日開催した決算会見で「非通信の分野をより強化するため」とヤフー子会社化の狙いを説明。背景にはソフトバンクが主戦場としてきた国内通信市場は成熟が進んでいることがある。ポータルサイトで高いシェアを持ちEC(電子商取引)でも幅広いユーザーを持つヤフーとの連携強化で成長を維持したい考えだ』、ソフトバンクにとっては、予想される業績伸び悩みをヤフーでなんとかカバーしたいのだろうか。
・『一方で、ヤフーの経営がこれまでもソフトバンクグループの意向に左右されてきた面がある。2009年にソフトバンクがデータセンター子会社を約450億円でヤフーに売却。14年に勃発したヤフーによるイー・アクセス買収中止騒動も記憶に新しい。当時、ヤフーは国内携帯電話4位だったイー・アクセスをソフトバンクから買収すると発表。ヤフーの検索サービスなどを手軽に利用できるスマホの開発などの成長戦略を打ち出したが、この買収でソフトバンクに約4500億円を支払うことが判明した。ヤフーの株主が「親会社の資金繰りを助けるためか」と反発する中、計画は発表から2カ月で白紙に戻った。こうした経緯はありながらも、兄弟関係から親子関係に変わるソフトバンクとヤフー。資金の融通にとどまらず、通信とネットを融合させた魅力的なサービスの創出など真の相乗効果につなげられるか』、「兄弟関係から親子関係に変わる」ことが「魅力的なサービスの創出」にどうつながるのか、具体的に指摘して欲しかった。

第三に、5月10日付けロイター「アングル:顧客離れに苦しむ米スプリント、ソフトバンクに暗雲」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/sprint-softbank-analysis-idJPKCN1SG04M
・『米携帯電話会社スプリントの業績が失速したことで、8割超を出資するソフトバンクグループの米通信事業に暗雲が立ち込めている。 ソフトバンクGはスプリントをTモバイルUSと合併させて非子会社化する計画だが、規制当局の承認が得られず、4月29日の合併手続き完了期限を3カ月延長した。孫正義社長は9日の会見で「事業は苦しいながらも一応、順調に行っている」と語ったが、不透明感は増すばかりだ。スプリントの2019年1─3月期の純損益は、21億7400万ドルの赤字に転落した。前年同期は6900万ドルの黒字だった。20億ドル(2220億円)の減損損失を計上したことに加え、携帯電話契約数が予想以上に減少したことが足を引っ張ったが、市場では値引きをしても顧客を引きとめられない状況に存続を危ぶむ声が広がっている。 ニュー・ストリート・リサーチのアナリスト、ジョナサン・チャップリン氏は「スプリントは現在の資本構造では単体で存続しないだろう」との見方を示した。 ソフトバンクは起死回生策として、スプリントをTモバイルUSと合併させる計画を1年前に打ち出したが、合併を審査する米規制当局の動きは鈍い。寡占化により競争が後退することを懸念しているためだ。 孫社長は「Tモバイルにとっても、スプリントにとっても、アメリカの消費者にとっても、国家戦略として第5世代(5G)ネットワークを強化する観点からも、合併が実行されるのがベストだと信じている」と合併に理解を求めた。 だが、審査する米司法省は現在の形での合併に難色を示しており、合併を実現するには「身を切る新たな計画」が必要だ。 スプリントとTモバイルUSは4月、米連邦通信委員会(FCC)に対して、合併しなければデータ需要に対応し続ける能力がなくなり、値上げをせざるを得なくなると窮状を訴えた。これにより、もはや単独では生き残れないという厳しい現実が、世間に知れ渡った。 窮状を訴えれば訴えるほど、不安から契約をためらう消費者が出てくることは容易に想像できる。しかし、そこまでしてでも承認アピールをしなければならないところに、同社が置かれている厳しい状況が垣間見える。 ソフトバンクグループが9日発表した2019年3月期の営業利益は、前年比1.8倍の2兆3539億円だった。ビジョンファンドとデルタファンドからの利益は1兆2566億円(前期は3029億円)となり、利益の過半を稼ぎ出した。 ただ、その大半は未実現の評価益(含み益)であり、2000年代初期に起こったインターネットバブルの崩壊と同じようなことが起きれば、逆回転しかねない。 利払いなど6000億円を超える財務費用が重くのしかかる中で、4兆円超の負債を抱えるスプリントの連結外しに失敗すれば、信用力にネガティブな影響が出るのは必至だ。 野村証券・アナリストの増野大作氏は、8日付のリポートで「ソフトバンクグループのスプリントに対する回収可能額は連結簿価とほぼ同じ水準にとなり、今後の米国携帯電話市場の動向やスプリントの収益状況に従来以上に注意を払う必要がある」と警鐘を鳴らしている』、孫社長はトランプ大統領には当選直後に面談しており、認可は簡単にいくと思わせたが、「審査する米司法省は現在の形での合併に難色を示しており」、と難航しているようだ。孫社長には次の一手があるのだろうか。

第四に、5月16日付けダイヤモンド・オンラインがWSJ記事を転載した「ソフトバンク、「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/202501
・『15兆円を超える負債を抱え、信用格付けがジャンク(投資不適格)級のソフトバンクグループ(SBG)は、これ以上借り入れの余地があるように見えないかもしれない。だが銀行関係者は依然、世界最大のテクノロジー投資家である同社への融資機会を狙っていると話す。 理由の1つは、SBGとの関係がもたらす巨額の手数料だ。融資に伴う利息のみならず、孫正義会長兼社長が次々と手掛ける取引により、投資銀行業務の手数料が発生するからだ。 もう1つの理由はここ数年の戦略転換にある。極めつけは昨年行った組織改正により、銀行も信用格付け機関も、同社を携帯電話事業者ではなく、投資持株会社とみなすことが可能になったことだ。SBGは今も米通信大手スプリントおよび日本の通信事業者ソフトバンクの親会社ではあるが、金融機関は今や、孫氏がかねて主張している通り、仮にスプリントが債務の支払いに困っても、SBGが肩代わりする必要はないとの見方に傾きつつある。 孫氏は先週、親会社のSBGは独立採算の子会社に対する債務保証をしておらず、むしろ「代理弁済をしてはならない」と語った。「SBGの株主からすると、弁済義務がないのに代理して払うのは株主価値を毀損(きそん)することになる」 スプリントは最近、米規制当局に対して「持続可能な競争の道筋を描けない」と述べた上で、同業のTモバイルUSとの合併を当局に阻止されれば、連邦破産法11条の適用申請を検討せざるを得なくなるというアナリストの見解を引用した』、スプリントが「合併を当局に阻止されれば、連邦破産法11条の適用申請を検討せざるを得なくなるというアナリストの見解を引用」とはいえ、自ら破綻の淵にあることを事実上認めた瀬戸際作戦に打って出たのはよほどのことだ。これによりスプリントの新規顧客獲得は一段と困難にならざるを得ない筈だ。
・『数年前までSBGは日本の通信事業部門を100%所有し、アナリストや信用格付け担当者は(特に日本では)同社を主に通信企業とみなしていた。同社の負債総額15兆7000億円のうち、通信事業の負債が大部分を占めており、クレジットアナリストは法的な義務はどうあれ、SBGが通信事業の債務返済を免れるのは難しいと考えていた。 その後SBGは2017年、サウジアラビアの政府系ファンドの出資を受けて、10兆円規模の投資ファンド「ビジョン・ファンド」を立ち上げ、米配車大手ウーバー・テクノロジーズなど世界中の有望な新興企業に資金を投じ始めた。18年12月には日本の通信子会社を株式上場した。 上場後、信用格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスやS&Pグローバル・レーティングは、いずれもSBGを投資会社という分類に変更。その後S&Pは同社の格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。ムーディーズは継続的に投資収益を生むなら、格上げを検討する可能性があると述べた。SBGの社債格付けは両社とも投資不適格としている。 SBGに対する融資は、最終的に中国電子商取引大手アリババグループの株式といった価値ある資産が担保する形となる。一方、ビジョン・ファンドの借入金はウーバーやシェアオフィス運営大手ウィーワークのような企業への出資が担保している。SBGは、保有資産には2450億ドルの価値があるとしている。 ビジョン・ファンドの資産の不都合な点は、その多くがキャッシュフローを生んでいないことだ。ウーバーのような創業年数の浅い企業はまだ赤字を出し続けている。 「株主価値はすぐには債務返済につながらない」。東京の銀行関係者はこう話す。銀行は手元資金の多さや土地などの実物資産をより好ましく思うということだ。それでもこの人物によると、現在の債券投資家は、SBGは償還期限が来れば保有株式を裏付けに新たな債券を発行し、償還資金を確保できると確信している。 もう1つの問題は、SBGやビジョン・ファンドの保有株式の価値が変動するという点だ。SBGは先週、ビジョン・ファンドのウーバーへの16.3%の出資を巡り、38億ドルの評価益を計上した。ウーバー株は10日に上場してから18%下落し、SBGが同社株を取得した18年1月時点の株価に近づいている。 こうした現実をつきつけられてSBG株も急落した。14日には5.4%下落し、3カ月ぶり安値で取引を終えた。10日からの3営業日の値下がり率は13%を超えている。 だがビジョン・ファンドは、がん検査の開発を手掛ける米ガーダント・ヘルスや、インドの宿泊予約サイト運営会社OYO(オヨ)への出資では利益が出ているとしている。こうした利益は未実現利益であっても債券投資家への心理的効果があったと、野村証券のチーフ・クレジット・ストラテジスト、魚本敏宏氏は指摘する。ソフトバンクの5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッド――ソフトバンクの債務不履行(デフォルト)に対する保証コスト――は約180ベーシスポイント(bp)まで縮小し、年初から100bp以上低下している』、昨年12月ソフトバンクを上場させたのは、「SBGを投資会社という分類に変更」させる狙いだったようだ。ウーバー株が「SBGが同社株を取得した18年1月時点の株価に近づいている」というのでは、「38億ドルの評価益を計上」は次期には評価損要因になる。それでも、CDSスプレッドが低下したのは、米格付会社が「SBGを投資会社という分類に変更」した効果が債券投資家には利いたようだ。
・『孫氏は9日、10兆円規模のビジョン・ファンド第2号を立ち上げる考えだと述べた。実現すれば、新たに巨大な投資基盤が生まれ、銀行にとっては手数料の増加を意味する。 リフィニティブのデータによると、SBGが昨年支払った投資銀行手数料は8億9400万ドルと世界1位で、2位の独製薬・化学大手バイエルの2倍以上だった。アストリス・アドバイザリー・ジャパンのチーフ・インベストメント・アドバイザー、デービッド・ギブソン氏は「誰も取り残されたくないと思っている」と話す。 SBGは10日、ビジョン・ファンドがみずほフィナンシャルグループやゴールドマン・サックス・グループを中心とする10行から4年・31億ドルの信用枠を確保したとアナリストに説明した。 事情に詳しい関係者によると、ビジョン・ファンドは昨年、パートナーから資金提供を受けるのを待つ間も投資ペースを維持するため、ゴールドマン・サックスやドイツ銀行、野村ホールディングスなどから約70億ドルの融資を受けた。SBGが昨年12月に携帯電話子会社を上場し、235億ドルを調達した際には、この3社を主幹事に起用した。3社はコメントを控えた。 ある東京の銀行関係者によると、SBGは100を超える銀行と取引している。その多くは財務状況を疑っているような印象を与えてチャンスを逃してしまうことを恐れているという。 「リスク分析はもはや関係ない」とこの人物は話す。各銀行の融資判断は他の銀行の動きをどのように予想するかで決まる「ゲーム理論のようなものだ」という。 SBGは日本の個人投資家からも積極的に資金を募っている。4月には個人向け社債を5000億円発行した。日本国内で発行される同種の社債では異例の規模だ。9日には1対2の株式分割を実施すると発表。個人投資家による取得を容易にする動きとみられる』、ビジョン・ファンドについては、大口出資者に不満があるとのことだったのに、「第2号を立ち上げる」というのは、大口出資者が了解したのか、或は、大手銀行に投資銀行手数料のアメを与えるためなのだろうか。いずれにしろ、「各銀行の融資判断は他の銀行の動きをどのように予想するかで決まる「ゲーム理論のようなものだ」」というのでは、銀行も巻き込んでかなりバブリーな様相を呈してきたようだ。SBGに関する不都合な情報(第2の記事を除く)がロイターやWSJなど海外メディアからしか流れてこず、国内系は沈黙したままというのも困ったことだ。  
タグ:ロイター スプリント WSJ 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 利益相反行為 ソフトバンクの経営 (その10)(ソフトバンク・ビジョン・ファンド 出資のサウジなどが不満、ソフトバンク いまごろヤフーを連結子会社化するワケ、顧客離れに苦しむ米スプリント ソフトバンクに暗雲、ソフトバンク 「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情) 米紙WSJ ソフトバンク・ビジョン・ファンド、出資のサウジなどが不満」 火種となっているのは投資先の評価額の高さや、投資判断に対する孫正義社長の影響力の大きさだ ビジョンファンドの資本のうち約3分の2を拠出 ソフトバンクがまず自ら投資して、後にビジョン・ファンドに株式を移管するという手法にも不満 市場価値が上がっているときに株式を移管することが多いため、ビジョン・ファンドが損失を被る可能性がある 時にはソフトバンクが自ら投資先の資金調達ラウンドを主導して、評価額の引き上げを招いたこともある 第三者による評価 評価額は主要投資家が選定した独立コンサルタントによる確認作業や監査など、いくつもの段階をへて決まると述べた 車好多全体の評価額は85億ドル ユウシン(Uxin)の時価総額は11億8000万ドル、香港上場のイーシン(Yixin)・グループの時価総額は17億5000万ドル 「ソフトバンク、いまごろヤフーを連結子会社化するワケ」 兄弟会社であるネット大手のヤフーを第三者割当増資を通じて連結子会社化 両社はもともとサービスの連携を強めて相互送客 ポータルサイトで高いシェアを持ちEC(電子商取引)でも幅広いユーザーを持つヤフーとの連携強化で成長を維持したい考え ヤフーの経営がこれまでもソフトバンクグループの意向に左右されてきた面 ソフトバンクがデータセンター子会社を約450億円でヤフーに売却 4年に勃発したヤフーによるイー・アクセス買収中止騒動 「アングル:顧客離れに苦しむ米スプリント、ソフトバンクに暗雲」 スプリントの2019年1─3月期の純損益は、21億7400万ドルの赤字に転落 合併を審査する米規制当局の動きは鈍い。寡占化により競争が後退することを懸念しているためだ スプリントの連結外しに失敗すれば、信用力にネガティブな影響が出るのは必至 トランプ大統領には当選直後に面談 「ソフトバンク、「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情」 信用格付けがジャンク(投資不適格)級のソフトバンクグループ 同業のTモバイルUSとの合併を当局に阻止されれば、連邦破産法11条の適用申請を検討せざるを得なくなるというアナリストの見解を引用した 信用格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスやS&Pグローバル・レーティングは、いずれもSBGを投資会社という分類に変更 CDS)のスプレッド――ソフトバンクの債務不履行(デフォルト)に対する保証コスト――は約180ベーシスポイント(bp)まで縮小し、年初から100bp以上低下 0兆円規模のビジョン・ファンド第2号を立ち上げる考え 「リスク分析はもはや関係ない」とこの人物は話す。各銀行の融資判断は他の銀行の動きをどのように予想するかで決まる「ゲーム理論のようなものだ」
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米中経済戦争(その7)(トランプ 対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判、米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国 エスカレート必至の貿易戦争の行方、米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”) [世界情勢]

米中経済戦争については、昨年12月24日に取上げた。今日は、(その7)(トランプ 対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判、米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国 エスカレート必至の貿易戦争の行方、米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”)である。なお、タイトルから「対立」をカットした。

先ずは、5月10日付けNewsweek日本版「トランプ、対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/25-18.php
・『米政府は10日、中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げた。 新たな関税は米東部時間10日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)以降の輸出品に適用される。 対象となるのは5700品目以上。 米税関・国境取締局(CBP)によると、米東部時間10日午前0時01分までに中国を出発した貨物は10%の関税を適用する。 こうした猶予期間は、昨年の過去3回の関税引き上げには適用されていなかった。ただ、これまでの制裁関税は少なくとも3週間前に実施が通知されていた。今回は表明から約5日間での発動となった。 関税引き上げの対象分野で最も規模が大きいのは、インターネットモデム、ルーターなどのデータ伝送機器で約200億ドル。次にプリント基板(PCB)の約120億ドルが続く。 家具、照明、自動車部品、掃除機、建築資材なども対象になる』、小休止状態にあった米中経済戦争が再び再燃したようだ。
・『全米民生技術協会(CTA)のゲーリー・シャピロ最高経営責任者(CEO)は、関税を支払うのは、トランプ大統領が主張する中国ではなく米国の消費者と企業だと指摘。「われわれの業界は米国で1800万人以上の雇用を支えているが、関税引き上げは壊滅的だ」とし、「米国のテクノロジー部門では、昨年10月以降、すでに発動されている関税で毎月約10億ドルのコストが発生している。これは追加のコストを吸収できない小規模事業者、スタートアップ企業には死活問題になり得る」と述べた。 エコノミストや業界コンサルタントによると、米国の消費者が関税引き上げの影響を感じるには3─4カ月かかる可能性がある。小売り業者は輸入コストの増加を受けて、値上げを迫られるとみられている』、関税引上げは、中国の輸出企業のみならず、米国企業や消費者にとっても大きな痛手になる筈だが、その効果が現れるまでには「3─4カ月かかる可能性」とかなりのタイムラグがあるようだ。

次に、ジャーナリストの福島 香織氏が5月16日付けJBPressに寄稿した「米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国、エスカレート必至の貿易戦争の行方」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56398
・『米中貿易戦争はやはり激化せざるをえない、ということが今さらながらに分かった。双方とも合意を求めるつもりはないのかもしれない。 劉鶴副首相率いる中国側の交渉チームは5月にワシントンに赴いたが、物別れに終わり、米国は追加関税、そして中国も報復関税を発表。協議後の記者会見で劉鶴は異様に語気強く中国の立場を主張した。だが、交渉は継続するという。 4月ごろまでは、5月の11回目のハイレベル協議で米中間の貿易問題は一応の妥結に至り、6月の米中首脳会談で合意文書を発表、とりあえず米中貿易戦争はいったん収束というシナリオが流れていた。それが5月にはいって「ちゃぶ台返し」になったのは、サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道が正しければ、習近平の決断らしい。習近平はこの決断のすべての「責任」を引き受ける覚悟という。 では習近平はなぜそこまで覚悟を決めて、態度を急に反転させたのだろうか』、習近平による「ちゃぶ台返し」の背景を知りたいとことだ。
・『改めて宣戦布告した習近平  第11回目の米中通商協議ハイレベル協議に劉鶴が出発する直前の5月5日、トランプはツイッターで「米国は2000億ドル分の中国製輸入品に対して今週金曜(10日)から、関税を現行の10%から25%に引き上げる」と宣言。さらに「現在無関税の3250億ドル分の輸入品についても間もなく、25%の関税をかける」と発信した。この発言に、一時、予定されていた劉鶴チームの訪米がキャンセルされるのではないか、という憶測も流れた。結局、劉鶴らは9~10日の日程で訪米したのだが、ほとんど話し合いもせず、トランプとも会わず、物別れのまま帰国の途についた。 サウスチャイナ・モーニング・ポストなどは、トランプがこうした態度に出たのは、中国側の譲歩が足りないことに忍耐が切れたからであり、譲歩を拒んだのは習近平自身にすべて責任があると報じた。匿名の消息筋の話として「交渉チーム(劉鶴ら)は、次のハイレベル協議で、(妥結のために)習近平により多くの譲歩をするよう承諾を求めたが、習近平はこうした提案を拒否した」「責任は全部私(習近平)が負う」とまで言ったという。この習近平の断固とした姿勢を受けて、中国側交渉チームは、ワシントンに提案するつもりだった「最後の妥結案」を直前になって強硬なものに変更した。これにトランプのみならず、穏健派のムニューシンまで激怒し、今回の関税引きにつながった、という話だ。ならば、習近平に貿易戦争を終結させる意志はないということだろうか。 ではなぜ、劉鶴をあえてワシントンに送ったのか。 ホワイトハウスの発表によれば、トランプは習近平から「美しい手紙」を受け取ったそうだ。その中には習近平の「対話継続」の要望がしたためられていたという。手紙には、依然、協議が妥結することを望むとあり、「我々はともに努力し、これらのことを完成させましょう」とあったそうである。 トランプはこれに対し、次のように発言している。 「中国側は、交渉を最初からやり直したい、といい、すでに妥結に至っていた“知財権窃盗”の問題など多くの内容について撤回を要求してきた。こんなことはあり得ない」「中国側が交渉のテーブルに戻りたいなら、何ができるのか見せてもらおう」「関税引き上げは我々の非常にいい代替案だ」 これに対する中国側の立場だが、劉鶴がワシントンを離れる前の記者会見でこんな発言をしている。新華社の報道をそのまま引用しよう。「重大な原則の問題において中国側は決して譲歩しない」「目下、双方は多くの面で重要な共通認識に至っているが、中国側の3つの核心的な関心事は必ず解決されなければならない。1つ目は、全ての追加関税の撤廃だ。関税は双方の貿易紛争の起点であり、協議が合意に達するためには、追加関税を全て撤廃しなければならない。 2つ目は、貿易調達のデータが実際の状況に合致しなければならないことで、双方はアルゼンチンで既に貿易調達の数字について共通認識を形成しており、恣意的に変更すべきではない。 3つ目は協議文書のバランスを改善させること。どの国にも自らの尊厳があり、協議文書のバランスを必ず図らなければならない。今なお議論すべき肝心な問題がいくつか存在する。昨年(2018年)以降、双方の交渉が何度か繰り返され、多少の曲折があったが、これはいずれも正常なものだった。双方の交渉が進行する過程で、恣意的に“後退した”と非難するのは無責任だ」「中国国内市場の需要は巨大で、供給側構造改革の推進が製品と企業の競争力の全面的な向上をもたらし、財政と金融政策の余地はまだ十分あり、中国経済の見通しは非常に楽観的だ。大国が発展する過程で曲折が生じるのは良いことで、われわれの能力を検証することができる」 このような自信に満ちた強気の発言は、劉鶴にしては珍しく、明らかに“習近平節”だ。 つまり、習近平は、米国との貿易戦争、受け立とうじゃないか、と改めて宣戦布告した、といえる。これは、3月の全人代までの空気感と全く違う。3月までは米中対立をこれ以上エスカレートさせるのは得策ではない、という共通認識があったと思われる。だが、習近平の全人代での不満そうな様子をみれば、習近平自身は納得していなかっただろう。貿易戦争における中国側の妥協方針は李克強主導だとみられている。 劉鶴をワシントンにとりあえず派遣したのは、中国としては米国との話し合いを継続させる姿勢はとりあえず見せて、協議が妥結にこぎつけなかったのは米国側の無体な要求のせい、ということを対外的にアピールするためだったのだろう』、習近平が「改めて宣戦布告した」背景には、何があるのだろう。
・『「台湾のため」に米国には屈しない  では貿易戦争妥結寸前、という段階で習近平が「俺が責任をもつ」といってちゃぶ台返しを行ったその背景に何があるのか。李克強派が習近平の強気に押し切られたとしたら、その要因は何か。 1つは台湾総統選との関係性だ。米中新冷戦構造という枠組みにおいて、米中の“戦争”は貿易戦争以外にいくつかある。華為(ファーウェイ)問題を中心とする“通信覇権戦争”、それと関連しての「一帯一路」「中国製造2025」戦略の阻止、そして最も中国が神経をとがらせているのが“台湾問題”だ。 台湾統一は足元が不安定な習近平政権にとって個人独裁政権を確立させるための最強カード。その実現が、郭台銘の国民党からの出馬表明によって視野に入ってきた。もちろん国民党内では抵抗感が強く、実際に郭台銘が総統候補となるかはまだわからないが、仮に総統候補になれば、勝つ可能性が強く、そうなれば、中台統一はもはや時間の問題だ。郭台銘は「中華民国」を代表して中国と和平協議を行う姿勢を打ち出している。だが、その「中華民国」とは、今の中国共産党が支配する地域を含むフィクションの国。双方が「中国は1つ」の原則に基づき、統一に向けた協議を行えば、フィクションの国が現実の国に飲み込まれるのは当然だろう。そもそも郭台銘に国家意識はない。大中華主義のビジネスマンであり、しかも共産党との関係も深い。彼は共産党と自分の利益のために台湾を売り渡す可能性がある。つまり今、台湾問題に関して、中国はかなり楽観的なシナリオを持ち始めている。 貿易戦争で中国側が全面的妥協を検討していたのは、そのバーターとして米国に台湾との関係を変えないでもらおうという狙いがあったからだ。だが中国に平和統一に向けたシナリオが具体的に見え出した今、米国にはそんなバーターに応じる余裕はない。台湾旅行法、国防授権法2019、アジア再保証イニシアチブ法に続き、台湾への武官赴任を認める「2019年台湾保障法」を議会で可決した。となると、中国にすれば、台湾のために貿易交渉で米国に屈辱的な妥協にこれ以上甘んじる必要性はない。妥協しても米国は台湾に関しては接近をやめないのだから』、台湾問題、しかも鴻海創業者の「郭台銘の国民党からの出馬表明」、までが絡んでいるとは初めて知り、驚かされた。シャープや鴻海にしてみれば、米中関係悪化で経営をしっかり舵取りしてもらわなければならない時期に、郭台銘が経営をおっぽり出して、政治に熱を上げるというのは最悪の事態だろう。願わくば、「総統候補」になれずに経営に復帰してほしいといったところだろう。
・『「バイデン大統領」を待ち望む中国  もう1つの可能性は、劉鶴の発言からも見て取れるように、貿易戦争が関税引き上げ合戦になった場合、「中国経済の見通しの方が楽観的」と考えて、突っ張れば米国の方が折れてくるとの自信を持っている可能性だ。 中国経済に関していえば、第1四半期の数字は予想していたよりも良かった。私は、これは李克強主導の市場開放サインや減税策に海外投資家が好感したせいだと思っているので、李克強の対米融和路線を反転させれば、また中国経済は失速すると思うのだが、どうだろう。 さらに、もう1つの背景として、大統領選挙の民主党候補にジョー・バイデンがなりそうだ、ということもあるかもしれない。バイデンは中国が長らく時間をかけて利権づけにしたパンダハガー(「パンダを抱く人」=親中派)政治家であり、実際彼は「中国は我々のランチを食べ尽くすことができるのか?」と語り、中国脅威論に与しない姿勢を示している。来年の秋にバイデンが大統領になるなら、習近平は妥協の必要がない。中国は今しばらく忍耐すればいいだけだ。むしろ、トランプを挑発して、その対中姿勢を不合理なほど過激なものにさせた方が、企業や一般家庭の受ける経済上のマイナス影響が大きくなり、トランプの支持率が落ちるかもしれない。次の大統領選で民主党政権への転換の可能性はより大きくなるかもしれない。 トランプがファーウェイ問題や一帯一路対策で、企業や周辺国に“踏み絵を踏ます”かのような圧力をかけるやり方は、一部では不満を引き起こしている。アンチ中国派のマレーシアのマハティール首相ですら、米中貿易戦争でどちらかを選べ、と迫られたら、「富裕な中国を選ぶ」(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、3月8日付)と答えている。強硬な姿勢をとっているのはトランプの方だ、というふうに国際世論を誘導しようと中国側も懸命に動いている』、親中派をパンダハガーと呼ぶというのは、初めて知ったが、上手い表現だ。仮にバイデンが大統領になるのであれば、それを待つというのも手ではあるが、その可能性が低いとすればリスクが余りに大きいだろう。もっとも、「国際世論を誘導」する作戦は上手くいっているようだ。
・『2人の政治家の命運はいかに?  さて、私はこういった背景に加えて、若干の党内の権力闘争の要素も感じてしまうのだ。 というのも、サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道ぶりが、いかにも今回の貿易戦争の決裂は全部習近平の一存で決まった、とわざわざその責任に言及しているからだ。サウスチャイナ・モーニング・ポストは香港で発行されている日刊英字新聞である。アリババに買収されて以来、中国寄りの報道になっているが、厳密に言えば、曽慶紅や江沢民に近い。米中通商協議が決裂し、そのツケがマイナス影響として国内の経済、社会の表層に表れた場合は、習近平退陣世論を引き起こそう、などという曽慶紅ら、長老らの狙いを含んだ報道じゃないか、という気がしてしまった。 いずれにしろ、習近平が「責任は全部、俺がかぶるから」と言って、交渉のちゃぶ台返しを行ったのだとしたら、今後の中国の経済の悪化次第では、習近平責任論は出てくるだろう。あるいは、その前にトランプに対する米国内の風当たりが強くなるのか。 つまり貿易戦争の勝敗は、トランプと習近平のそれぞれの政治家としての命運もかかっている。その勝敗の行方を決める次のステージが大阪で行われるG20の場だとしたら、ホストの日本もなかなか責任重大だ』、習近平もかなりのリスクを取っているようだ。G20が見物だ。

第三に、元・経済産業省米州課長で中部大学特任教授の細川昌彦氏が5月17日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00007/?P=1
・『米中摩擦の“主旋律”と“通奏低音”が一挙に音量を増してクライマックスの展開になってきた。米国の対中戦略については、トランプ米大統領による報復関税合戦の“主旋律”と米国議会、政権幹部、情報機関など“オール・アメリカ”による冷戦モードの“通奏低音”に分けて見るべきだが、いよいよ両者が合体・共鳴してきた。 トランプ大統領による派手な報復関税合戦は表面的には非常に目立ち、耳目を集めている。これが私の言う“主旋律”だ。直前まで合意寸前と見られていた米中貿易交渉が一転、暗礁に乗り上げた。米国は2000億ドル分の中国製品に課す第3弾の制裁関税を10%から25%に引き上げ、さらに第4弾として制裁関税の対象を中国からの全輸入品に広げることを表明した。合意に向けて楽観論が市場を含めてまん延していただけに、衝撃を与えている。 今後、仮に急転直下合意があったとしても、それは“小休止”にすぎず、2020年の大統領選挙までは一山も二山も“主旋律”の見せ場を作って支持者にアピールするだろう。 他方、5月15日、米国は中国の通信大手、華為技術(ファーウェイ)に対する事実上の禁輸措置を発表した。米国の対中戦略の“通奏低音”とは、トランプ政権以前から高まる対中警戒感を背景とした根深い問題を指すが、今回の措置はその象徴的な動きで、「切り札」だ。 これは拙稿「米国は中国ファーウェイのサプライチェーン途絶に動く」(2019年2月5日)で予想した通りの展開だ。ファーウェイに対して、これまでの政府機関だけでなく、民間企業にも「買わない」「使わない」という規制を広げた。さらに、「買わない」「使わない」から「売らない」「作らせない」の段階にいよいよ突入したのだ。まさにトップギアに入った。 本丸ファーウェイに対してサプライチェーン(供給網)を封じる強力な手段で迫るものだ。グローバルなサプライチェーンを分断する影響も出てくるだろう。詳しくは前述の拙稿を参照されたい。 私がこの展開を予想した今年2月の段階で、既に米国政権はこの「切り札」の準備を進めていた。あとはカードを切るベストのタイミングを見計らっていたのだ。それが対中貿易交渉が暗礁に乗り上げた今だ。 1年前、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に対して同様の措置を発動した際には、ZTEは経営危機に陥り、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席がトランプ大統領に制裁解除を頼み込んだ経緯がある。その効果を確信したトランプ大統領が習近平主席との交渉の「切り札」を切ったのだ。同時に、関税交渉と違って、米国議会が大きく関わり、トランプ大統領も安易な妥協はできないことには注意を要する。 さらに”通奏低音”はファーウェイ問題にとどまらない。この後には、中国への技術流出を阻止すべく、新型の対中COCOM(ココム=対共産圏輸出統制委員会)とも言うべき新技術の輸出管理を今年中にも導入すべく準備が進められている。着々と通奏低音は演奏する楽器の厚みを増しているのだ。 表面的な関税合戦ばかりに目を奪われず、こうした本質的な動きも進行していることを忘れてはならない』、「派手な報復関税合戦」が「“主旋律”」で、ファーウェイ問題などが「“通奏低音”」とは上手い表現だ。それらが「一挙に音量を増してクライマックスの展開になってきた」、「着々と通奏低音は演奏する楽器の厚みを増している」、などというのはその通りだろう。「新技術の輸出管理を今年中にも導入すべく準備が進められている」、というのもやっかいな問題だ。
・『日本企業も他人事ではない  ファーウェイ問題の日本企業との関わりは極めて重要なので、ここで再度警鐘を鳴らしたい。 現状でも日本の部材メーカーのファーウェイへの売り上げは年間7000億円程度にも上る。さらに、今後成長すると見込んでファーウェイへの売り込みを強化しようとしている日本企業も多い。 米国にとって意味ある規制にするためには、部材の供給能力のある日本による対中国の輸出管理の運用に関心が向いて当然だ。米国が「懸念顧客リスト」に載せて原則輸出不許可の運用をすると、日本政府による輸出管理の運用は独自の判断ではあるが、それを“参考にする”のが通例である。 しかしどのように“参考にする”のかは明確ではない。あくまで“機微度”に応じたケース・バイ・ケースの判断だが、日本企業も白黒がはっきりしない難しい判断を迫られることになる。要するに日本企業の経営者にとって、不慣れな「リスク・マネジメント」が重要になるのだ。 他方、ファーウェイも早くから米国政府の動きを察知して、危機感を持って米国以外からの部材の調達先の確保に奔走していた。日本の部材メーカーにとっても重要顧客であるだけに難しい対応を迫られることになる。少なくとも「『漁夫の利』を得ようとした」と米国から見られることのないよう、慎重さが必要になっている。 また日本で生産された製品の中に、米国から調達した部品が25%以上含まれていると、米国の規制対象になる(再輸出規制)ことも日本企業にとっては要注意だ。不注意で米国の規制違反になることがあってはならない』、「日本の部材メーカーのファーウェイへの売り上げは年間7000億円程度にも上る」というのでは一大事だ。
・『米中ともに「合意はしたいが、妥協はできない」関税合戦  次に“主旋律”である米中の関税合戦を見てみよう。 トランプ大統領も中国の習近平主席も「合意はしたいが、妥協はできない」のだ。その背景については、既にさまざま論じられているが、米中の駆け引きを見る上での基本的視点は、大きく2点ある。 米中双方における国内の「政治力学」と「経済状況」だ。 まず、米国の政治力学と経済状況はどうか。 トランプ大統領の頭の中は2020年の大統領再選が支配しており、判断のモノサシは分かりやすい。米国における通商問題のカギを握るのは米国議会だ。その議会は今や共和党、民主党問わず、対中強硬一色である(例外は、民主党の大統領候補の有力な一人であるバイデン元副大統領で、対中融和で知られ、対中強硬論に与しない姿勢を示している)。ここで安易に妥協すれば、批判の的になり、大統領選挙キャンペーンに大きなマイナスだ。 それをうまく活用しているのが、対中交渉の責任者であるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表だ。一時2月ごろは、中国の知的財産権など構造問題にこだわる交渉姿勢を、早く合意したいトランプ大統領から批判されて、不仲説までささやかれた。しかし米国議会での公聴会などであえて議会の強硬圧力を受けることで、トランプ大統領の風圧をしのいできた。まさに長年ワシントンで生き延びてきた「ワシントン・サバイバー」の真骨頂だ。 これはかつて米朝協議において、ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官が諜報機関の情報を駆使して、安易な妥協は国内で批判を受けることをトランプ大統領に悟らせ、踏みとどまらせたことと軌を一にする。 トランプ大統領の前では無力な政権幹部は、米国議会や諜報機関といったワシントンの政策コミュニティーと連携することによって、何とかトランプ大統領の暴走を最小限にしているのだ。 米国政権内のパワーバランスも大きく変化した。中国が一旦合意したことを撤回して、約束を反故(ほご)にしたことが今回、トランプ大統領が強硬姿勢に転じたきっかけである。だが、このことが「中国は信頼できない」と主張してきた対中強硬派の論客、ナバロ大統領補佐官の信任を高めることになった。今や、穏健派のムニューシン財務長官の影は薄く、ナバロ補佐官、ライトハイザーUSTR代表といった対中強硬派が政権内を支配している』、「トランプ大統領の前では無力な政権幹部は、米国議会や諜報機関といったワシントンの政策コミュニティーと連携することによって、何とかトランプ大統領の暴走を最小限にしているのだ」という指摘は説得力がある。トランプはどうも相対交渉では、相手に引きずられ、甘くなりかちなのを、彼らが軌道修正しているようだ。
・『強気の背景は米国経済の好調さ  米国の好調な経済もトランプ大統領を強気にさせている要因だ。トランプ大統領の関心事は選挙戦に大きく影響する株価の動向である。 昨年11月、12月の株価の乱高下は米中の関税合戦による株価急落の懸念をもたらした。その後、米中協議が順調な進展を見て、マーケットは合意を織り込んでいた。大統領選に向けて重視する株価に激震を走らせる追加関税の引き上げはないだろうと、中国側も高をくくっていた節がある。 今回、5月5日のトランプ大統領のツイッターで追加関税を課すことが突然明らかにされ、激震が走ったが、一時下がった株価も半分戻すなど、マーケットのパニックはなさそうだ。トランプ大統領もこの株価の動きに大いに自信を持ったようだ。 実体経済も失業率は3.6%という1969年以来の低失業率で、インフレ率も低い。多少、関税引き上げで物価が上がっても許容範囲と見たようだ。 むしろ関税合戦が経済の足を引っ張るようだと、米連邦準備理事会(FRB)に利下げをさせる、いい口実になると考えた。これは来年の大統領再選に向けて、経済の好環境を作ることにもなる。早速5月14日、トランプ大統領はツイッターで、中国が経済を下支えするために利下げすると予想して、FRBに同じ措置をとるよう要求した。 FRBも協力させられれば、米国経済の体力は中国を圧倒して、余裕を持った戦いができるとの見立てだ』、こんな法外な要求にFRBが従うようであれば、市場は将来のインフレ懸念から長期金利はむしろ上昇する可能性もある。
・『中国党内権力は常在戦場  他方、中国はどうか。 中国の国内政治は常在戦場だ。常に政権の基盤を揺るがす隙を狙っている。 焦点は米国が重視している、国有企業への巨額補助金や知的財産権問題という中国の構造問題だ。共産党保守派の長老たちから見れば、国内の構造問題に米国が一方的に手を突っ込んでくるのは内政干渉と受け止める。アヘン戦争終結時の南京条約も思い起こさせる屈辱として、批判噴出したのだ。しかも国有企業による補助金は根深い利権、既得権を揺さぶりかねない。 今回、中国の交渉者である劉鶴副首相が一旦合意した150ページあった合意文書案は北京に持ち帰った際に、激しく批判され、習主席も認めなかったという。その結果、中国の本質的な構造問題に関する部分が大きく削除されて、105ページになって返されたとの報道もある。 今回の「ちゃぶ台返し」の方針は習主席の決断で、すべての「責任」を引き受ける覚悟だと、一部の報道で流れている。事の真偽は定かではないが、こうした報道が流されること自体、共産党内の揺さぶりの要素も垣間見ることができる。 下手をすれば、劉鶴副首相という、エリートの経済学者の顧問を抜てきして対米交渉の責任者に据えた習主席の責任にも及びかねない。 今年10月1日に建国70周年の一大イベントを控え、習主席にとって内政、外交を安定させることは最重要課題だ。弱腰外交の批判が共産党内だけでなく、世論にまで及び、ナショナリズムがコントロール困難になることのないよう細心の報道統制をしている。 こうした政治状況では習主席も首脳会談で譲歩しづらい。 ここで注目すべきは王岐山副主席の動向だ。 昨年3月の全人代(全国人民代表大会)人事で王岐山が副主席になった時には、今後の対米外交のカギを握ると見られて、注目されていた。しかし、その後の存在感は全くない。彼の人事を巡る権力闘争もあって、さまざまな臆測が飛び交っている。この難局に至っても王副主席が動かないかは注目点だ。 中国の経済状況も微妙だ。 今年初めの頃は景気の減速が深刻な時期であったが、そのため習主席は劉副首相に対米交渉を早期にまとめるよう指示をし、妥協カードを繰り出した。ところが4月にはこの夏にも景気が底を打つとの見方も広がり、やや余裕ができたため、対米交渉も強気に転じたのだ。 ところが5月15日発表の経済統計では、小売りも生産も投資も振るわず、景気の先行き懸念は再び広がっている。特に追加関税が中国の雇用に打撃を与える恐れもあって、今後、大幅な景気対策を打ち出して、必死にしのごうとするだろう。 「妥協はできないが、合意はしたい」。習主席が大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議の場で、どういうカードを切ってくるか。ボールは中国側にある。 こうした米中双方の「政治力学」と「経済状況」は、現時点での“スクリーン・ショット”にすぎない。これまでの半年でも変化したように、今後も時間の経過とともに大きく変化するものだ。それに応じて、米中のドラマがどう展開していくかに注目すべきだろう。 そしてこれはあくまでも米中関係の表面的な部分で、これだけに振り回されてはいけない。米中が奏でる“通奏低音”の部分も含めて、米中関係の全体像の中で相対化して見ることも必要だ』、さすが元経済産業省米州課長として対米交渉の最前線に立った筆者だけあって、読みは広範で深く、大いに参考になった。やはり大阪でのG20が当面の注目点のようだ。
タグ:日経ビジネスオンライン JBPRESS Newsweek日本版 福島 香織 細川昌彦 米中経済戦争 (その7)(トランプ 対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判、米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国 エスカレート必至の貿易戦争の行方、米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”) 「トランプ、対中関税を25%に 経済界は「支払うのは米国の国民と企業」と批判」 中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げた 関税を支払うのは、トランプ大統領が主張する中国ではなく米国の消費者と企業だと指摘 米国のテクノロジー部門では、昨年10月以降、すでに発動されている関税で毎月約10億ドルのコストが発生 追加のコストを吸収できない小規模事業者、スタートアップ企業には死活問題になり得る 米国の消費者が関税引き上げの影響を感じるには3─4カ月かかる可能性 「米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ 改めて宣戦布告した中国、エスカレート必至の貿易戦争の行方」 4月ごろまでは とりあえず米中貿易戦争はいったん収束というシナリオが流れていた 5月にはいって「ちゃぶ台返し」になったのは 習近平の決断 改めて宣戦布告した習近平 習近平の断固とした姿勢を受けて、中国側交渉チームは、ワシントンに提案するつもりだった「最後の妥結案」を直前になって強硬なものに変更した 中国側の3つの核心的な関心事は必ず解決されなければならない 1つ目は、全ての追加関税の撤廃だ 2つ目は、貿易調達のデータが実際の状況に合致しなければならないこと 3つ目は協議文書のバランスを改善させること 習近平は、米国との貿易戦争、受け立とうじゃないか、と改めて宣戦布告した 「台湾のため」に米国には屈しない 台湾総統選との関係性 台湾統一 郭台銘の国民党からの出馬表明によって視野に入ってきた 郭台銘に国家意識はない。大中華主義のビジネスマンであり、しかも共産党との関係も深い 台湾旅行法、国防授権法2019、アジア再保証イニシアチブ法に続き、台湾への武官赴任を認める「2019年台湾保障法」を議会で可決 台湾のために貿易交渉で米国に屈辱的な妥協にこれ以上甘んじる必要性はない 「バイデン大統領」を待ち望む中国 バイデンは中国が長らく時間をかけて利権づけにしたパンダハガー 来年の秋にバイデンが大統領になるなら、習近平は妥協の必要がない 強硬な姿勢をとっているのはトランプの方だ、というふうに国際世論を誘導しようと中国側も懸命に動いている 2人の政治家の命運はいかに? 今後の中国の経済の悪化次第では、習近平責任論は出てくるだろう。あるいは、その前にトランプに対する米国内の風当たりが強くなるのか 貿易戦争の勝敗は、トランプと習近平のそれぞれの政治家としての命運もかかっている 次のステージが大阪で行われるG20の場 「米国が「報復関税&ファーウェイ」で中国を“総攻撃”」 米中摩擦の“主旋律”と“通奏低音”が一挙に音量を増してクライマックスの展開になってきた 派手な報復関税合戦 “主旋律” 今後、仮に急転直下合意があったとしても、それは“小休止”にすぎず、2020年の大統領選挙までは一山も二山も“主旋律”の見せ場を作って支持者にアピールするだろう ファーウェイ)に対する事実上の禁輸措置 “通奏低音” トランプ政権以前から高まる対中警戒感を背景とした根深い問題 「買わない」「使わない」から「売らない」「作らせない」の段階にいよいよ突入した 今年2月の段階で、既に米国政権はこの「切り札」の準備を進めていた あとはカードを切るベストのタイミングを見計らっていたのだ。それが対中貿易交渉が暗礁に乗り上げた今だ ZTE)に対して同様の措置を発動した際には、ZTEは経営危機 習近平(シー・ジンピン)国家主席がトランプ大統領に制裁解除を頼み込んだ経緯 米国議会が大きく関わり、トランプ大統領も安易な妥協はできないことには注意を要する 新型の対中COCOM(ココム=対共産圏輸出統制委員会)とも言うべき新技術の輸出管理を今年中にも導入すべく準備 日本企業も他人事ではない 日本の部材メーカーのファーウェイへの売り上げは年間7000億円程度にも上る 日本で生産された製品の中に、米国から調達した部品が25%以上含まれていると、米国の規制対象になる(再輸出規制)ことも日本企業にとっては要注意 米中ともに「合意はしたいが、妥協はできない」関税合戦 米国の政治力学と経済状況 議会は今や共和党、民主党問わず、対中強硬一色 それをうまく活用しているのが、対中交渉の責任者であるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表 かつて米朝協議において、ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官が諜報機関の情報を駆使して、安易な妥協は国内で批判を受けることをトランプ大統領に悟らせ、踏みとどまらせたことと軌を一にする トランプ大統領の前では無力な政権幹部は、米国議会や諜報機関といったワシントンの政策コミュニティーと連携することによって、何とかトランプ大統領の暴走を最小限にしているのだ 米国政権内のパワーバランスも大きく変化 ナバロ補佐官、ライトハイザーUSTR代表といった対中強硬派が政権内を支配 強気の背景は米国経済の好調さ 一時下がった株価も半分戻す 関税合戦が経済の足を引っ張るようだと、米連邦準備理事会(FRB)に利下げをさせる、いい口実になると考えた トランプ大統領はツイッターで、中国が経済を下支えするために利下げすると予想して、FRBに同じ措置をとるよう要求 中国党内権力は常在戦場 国有企業への巨額補助金や知的財産権問題という中国の構造問題だ。共産党保守派の長老たちから見れば、国内の構造問題に米国が一方的に手を突っ込んでくるのは内政干渉と受け止める アヘン戦争終結時の南京条約も思い起こさせる屈辱として、批判噴出 回の「ちゃぶ台返し」の方針は習主席の決断で、すべての「責任」を引き受ける覚悟 今年10月1日に建国70周年の一大イベントを控え、習主席にとって内政、外交を安定させることは最重要課題だ 弱腰外交の批判が共産党内だけでなく、世論にまで及び、ナショナリズムがコントロール困難になることのないよう細心の報道統制 習主席も首脳会談で譲歩しづらい 注目すべきは王岐山副主席の動向 習主席が大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議の場で、どういうカードを切ってくるか 米中が奏でる“通奏低音”の部分も含めて、米中関係の全体像の中で相対化して見ることも必要だ
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年金制度(その2)(年金の検証、またも安倍内閣の鬼門になるか 今こそ給付減 負担増の心地よくない政策を、半減案も浮上、「専業主婦の年金問題」の核心 適用拡大と公的年金等控除縮小で解決に、政府の思うツボ 70歳繰り下げ支給で「受給額1.5倍」はウソ) [国内政治]

年金制度については、2017年2月21日に取上げた。2年以上経った今日は、(その2)(年金の検証、またも安倍内閣の鬼門になるか 今こそ給付減 負担増の心地よくない政策を、半減案も浮上、「専業主婦の年金問題」の核心 適用拡大と公的年金等控除縮小で解決に、政府の思うツボ 70歳繰り下げ支給で「受給額1.5倍」はウソ)である。

先ずは、慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏が1月7日付け東洋経済オンラインに寄稿した「年金の検証、またも安倍内閣の鬼門になるか 今こそ給付減、負担増の心地よくない政策を」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/258460
・『2019年は、公的年金の財政検証が5年に1度行われる年にあたる。第1次安倍晋三内閣では、年金記録問題に翻弄され、2007年の参議院選挙での与党敗北の遠因の1つになった。それだけに、安倍内閣として年金問題は、避けて通りたいイシューかもしれない。しかし、年金の財政検証は、5年に1度行わなければならないものだから、逃げることはできない。 年金の財政検証は、わが国の公的年金のおおむね100年間にわたる収支見通しを作成し、年金財政の健全性を検証するものである。要するに、わが国の公的年金が「100年安心」かどうかを検証することである。 今夏には、参議院選挙がある。財政検証を参議院選挙の後にすれば、年金は選挙時の争点にならずに済ませられるかもしれない。ところが、過去の財政検証は、夏までには結果を公表していたのだ。今の仕組みが定着して最初の財政検証は、2009年2月23日に結果を公表。5年前の2014年の財政検証の結果は、2014年6月3日に公表されている。今年の参議院選挙が予定されている7月よりも前である。もし、現政権が、都合が悪いとして検証結果の公表を参議院選挙の後にすれば、国民や野党から「安倍政権は年金問題から逃げている」と批判の声が上がるだろうし、わざわざ公表を遅らせれば、「年金の財政検証は、政権にとって不都合なほどよくない結果になっている」と疑心暗鬼が広がるかもしれない』、今回も財政検証の議論には入ったようだ。
・『「100年安心」を示せれば安心できるが・・・  相当な納得がいく理由でもない限り、今年の財政検証の結果は、参議院選挙の前に出さないと、むしろ政権与党にとって評判を悪くすることになろう。 では、逆にみて、年金の財政検証の結果は国民を安心させられる内容となって、参議院選挙の前に堂々と公表して、与党が選挙を有利に進めるという可能性はあるだろうか。どうやら、さまざまな客観的情報を合わせると、参議院選挙の前に堂々と公表して政権与党が有利になるような財政検証の結果は、出せなさそうな状況である。 それはなぜか。その根拠を一つ一つ示していこう。 まず、国民を安心させられる検証結果とは、どのようなものか。年金の財政検証の結果、俗にいう「100年安心」であることが示せれば、確かに安心させられる。「100年安心」という言葉に当てはまる状況とは、専門的に考えれば、将来にわたって安定して所得代替率が50%を維持できるような給付が出せて、かつ100年後でも年金積立金は枯渇しない状況といえよう。所得代替率とは、受給開始時の年金額がその時点の現役世代の所得に対してどの程度の割合かを示すもので、わが国での計算では夫が40年間平均賃金で働き、妻が無収入の専業主婦である夫婦が2人で受け取る年金額を前提としている(この定義の是非については不問とする)。 所得代替率が50%を割るか割らないかは、時の政権の評判を左右する。現行の法律では、所得代替率が50%を割るという財政検証の結果が出れば、制度改正を行うことを念頭に給付と負担のあり方を見直さなければならないとされているからである。 50%を割るという結果が出ると、まず今の年金の仕組みのままだと「100年安心」でないことが判明してしまう。かつ、時の政権はそれをどう制度改正することによって「100年安心」を取り戻すのかを示せないと、国民の年金不信や政権の年金政策批判を助長する。もしそんな結果を発表した直後に、選挙など行おうものなら、与党は勝てないかもしれない。 実は、2009年の財政検証では、そんな思惑が見え隠れしていた。時は、麻生太郎政権。2007年の参議院選挙以降、衆参ねじれ状態となっていた。当時の衆議院議員の任期満了が2009年9月10日に迫る中、5年に1度の年金の財政検証を行わなければならなかった。 結局、麻生内閣は、どんな対応をしたか。結論から言うと、検証での経済前提を楽観的なものにしたうえで、所得代替率が50%を維持できるような給付が出せて、かつ100年後でも年金積立金は枯渇しないから、問題なし。以上、終了。というような形で、財政検証の話題に注目が集まらないように公表したのだ。 もちろん、衆参ねじれ状態だったから、制度改正するために必要な法律の改正をしたくとも国会で成立しないし、ましてや今の年金の仕組みのままだと「100年安心」でないことが判明してしまうような検証結果を出そうものなら、麻生内閣は野党から年金問題で猛攻撃を受けることが容易に想像できた』、麻生政権は巧みに逃げたようだ。
・『政権転落前の楽観的すぎたシナリオ  そんな背景もあって、結局2009年2月に公表された財政検証の結果は、50%を割るような結果など出せるはずもなく、メインシナリオである「基本ケース」で、将来的な所得代替率は50.1%となるという結果を公表して終わった。みごとにぎりぎり50%を割らないといわんばかりの値だった。その結果を導出した経済前提では、当時リーマン・ショックに端を発した世界金融危機の痛手から立ち直っていない状況の中で、世界経済が早期に回復するという見通しの下に、公的年金積立金の中長期的な予想運用利回りを、2004年の推計で想定した3.2%から4.1%に上方修正するなど、専門家から楽観的と評される前提を置いた。 その後、年金の財政検証に基づいた制度改正に着手することなく、民主党に政権交代した。 時は流れて、第2次安倍内閣になって迎えた2014年。5年に1度財政検証をして、必要に応じて制度改正を行うべきところを、2009年に事実上「1回休み」していたから、制度改正していない10年分のツケが2014年の財政検証の結果に表れた。2004年に導入されたマクロ経済スライドの仕組みも、1度も発動されずに2014年を迎えていた。 2012年12月の衆議院選挙、2013年7月の参議院選挙を経て、衆参両院ともに安定多数を握る与党に支えられた安倍内閣の下、当面、国政選挙がない状況で、2014年の財政検証を行うことになった。さすがに、何も取り繕う必要がないと思われた。厚生労働省の審議会でも、入念な準備をして財政検証に臨んだ。 しかし、本連載の拙稿「年金は、本当に『100年安心』なのか」に記したとおり、2014年でも、財政検証の結果を導出する経済前提を楽観的にせざるをえなかった。その様相を大まかに一言でいえば、「アベノミクス」で経済成長率を高めようとしているさなか、それを否定するような経済前提を検証で用いるのは都合が悪い、という感じである。アベノミクスの成果で高まると期待される経済成長率のトレンドが日本経済で今後も続くような経済前提にして、アベノミクスを間接的に肯定するよう「忖度」した結果、専門家から前提が楽観的と評されたともいえる。 この楽観的な経済前提をメインシナリオとして、2014年の財政検証は、将来的に所得代替率が50.6~51.0%で安定しつつ、100年後でも年金積立金は枯渇しないことが確認される結果となった。 ただ、厚生労働省の官僚の良心というべきか、保守的な経済前提での検証結果も同時に公表した。保守的な経済前提の下では、2050年代に年金積立金が枯渇して、完全賦課方式の年金になり、所得代替率が35~37%になるという結果を示した。 ここで注意したいのは、年金積立金が枯渇しても、年金財政が破綻するわけではないということだ。積立金を取り崩して給付を増やすということができず、その年に得た年金保険料収入を、直ちにその年の年金給付に充てるという完全賦課方式年金に、姿を変えるだけである。ただ、年金積立金を取り崩して給付するということができない分、給付水準は下がる。しかも、所得代替率が50%を下回るという結果が、2014年には示されているのだ。目立たないように公表していたが、厚生労働省が隠したわけではない。ただ、これはメインシナリオではないから、給付と負担のあり方を見直して所定の措置を講じるということにまでは至らなかった。 それから5年たった今年。2019年の財政検証では、楽観的な経済前提を置いて、所得代替率が50%を維持できるような給付が出せて、かつ100年後でも年金積立金は枯渇しないという結果を公表しても、それでお茶を濁せはしない。過去2回の検証の経験を知っているだけに、楽観的な経済前提で「100年安心」といわれても、問題の先送りをしていると批判されるだけである』、安倍政権になった2014年も、楽観的シナリオで逃げ切ったが、今回は楽観的シナリオでお化粧をする余地がいよいよ狭まってきている筈だ。同時に公表された「保守的な経済前提での検証結果」の方はそれほど議論にはならなかったというのは不可解だ。
・『マクロ経済スライドの発動は過去1回のみ  2014年の財政検証の後、年金財政をめぐり、どんな出来事があったかを確認しておこう。2018年6月に公表された社会保障審議会年金数理部会「公的年金財政状況報告(平成28年度)」によると、2014~2016年の3年間で、物価上昇率も名目賃金上昇率も、2014年検証の想定より大きく下回ったが、実質賃金上昇率は楽観的な経済前提と保守的な経済前提の中間だった。その結果、年金給付は想定よりあまり増えず、年金財政の改善要因となった。ただし、マクロ経済スライドは、2015年の1度しか発動されなかったため、その分、給付は抑制できず、年金財政の悪化要因となった。 これらを上回って最大の影響を与えたのは、年金積立金の運用益である。名目運用利回りが想定より大きく上回った結果、年金積立金が想定より増えた。確かに、第2次安倍内閣以降の株価上昇が追い風となった。 ただ、年金給付の財源は、その年の保険料収入と税財源で9割程度が賄われており、年金積立金から得られる財源は1割程度である。だから、年金積立金の運用益ばかりに依存していては、年金給付水準を維持できない。物価や賃金の動向をより的確に見通しながら、年金財政を持続可能にしていかなければならない。 さらにいえば、我々の老後の安心を担保するには、年金財政を物価や賃金などの景気頼みで維持するわけにはいかない。必要な制度改正を行って、年金の給付と負担のバランスをいかにうまく調整するかが重要である。年金財政の持続可能性を制度的に担保できれば、多少景況が悪化しようが、年金財政に重大な支障をきたすことはなく、年金不信を払拭できる。 年金財政の持続可能性を制度的に担保するための制度改正とは、(相対的に)過剰に給付している高齢者には給付を適切に抑制することや、年金保険料や税財源を負担できる人には適度に負担してもらうことが含まれている。受益と負担の世代間格差を是正するためには避けて通れない。給付減や負担増という聞き心地のよくない方策を、政治家は国民にしっかりと説得しないといけない。 具体策としては、本連載の拙稿「働く人が減れば生産性は向上、賃金も上がる」で詳述したように、保守的な経済前提の下でも年金積立金が2050年代に枯渇することを避けるために、賃金上昇率が低い年でもマクロ経済スライドが毎年発動(フル発動)されるようにして、給付を抑制することなどがある。 具体的な改革策の必要性を覆い隠すような財政検証の結果を示しても、国民のためにならない。2019年の財政検証こそ、年金不信を払拭するものにしなければならない』、その通りだが、現実には今回も楽観的シナリオで逃げ切る懸念もあり、注視すべきだろう。

次に、この続きである5月13日付け東洋経済オンライン「半減案も浮上、「専業主婦の年金問題」の核心 適用拡大と公的年金等控除縮小で解決に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/280883
・『元号が令和に変わる頃、専業主婦の年金給付半減案がネットをにぎわした。今の仕組みでは、夫が会社員や公務員である専業主婦は、年金保険料を払わずに基礎年金を受け取ることができる。専業主婦が老後に受け取る年金給付を半減する案が、今年行われる年金改革の議論の選択肢にあるかのように報じられた。 これに触発され、ネット上では「働いている女性は年金保険料を払っているのに、年金保険料を払わずに年金給付が受け取れるのは不公平だ」「専業主婦も無給で大事な家事をしている」「そもそも年金問題を働く女性と専業主婦の対立をあおる形で議論するのはおかしい」といった声が出た』、こんな筋違いの論議がクローズアップされた背景には、財政検証から目を逸らせるためではと疑いたくなる。
・『専業主婦の年金は今に始まった問題ではない  ただ、「専業主婦の年金給付半減案」なる案は議論の俎上に載ってもいないだけに、乱暴なだけでなく、非生産的な話題だったと言わざるをえない。 専業主婦の年金問題は、今に始まったものではない。今の年金制度では、会社員や公務員である被保険者の無業の配偶者は、年金保険料を払わずに基礎年金を受け取ることができる。その立場を「第3号被保険者」という。冒頭の報道は第3号被保険者の年金の話であり、それは専業主婦(女性)だけではなく、専業主夫(男性)にも当てはまるから、女性を差別した話ではない。 ちなみに、会社員や公務員で所得があって自ら年金保険料を払って厚生年金に加入している被保険者を「第2号被保険者」、農家や自営業者、非正規雇用者など厚生年金に加入していない(代わりに国民年金に加入している)被保険者を「第1号被保険者」という。 無業の配偶者でも、第1号被保険者の配偶者(例えば、自営業者や非正規雇用者の配偶者)は第3号被保険者にはなれず、収入が少なくても自分の分の年金保険料を払わなければならない。つまり、第3号被保険者は第2号被保険者の無業の配偶者に限られている。以下では、第3号被保険者は女性が多いことから「専業主婦」と呼ぶこととする。 わが国の公的年金制度においては、1986年から専業主婦にも年金受給権を与えることになった。これは、専業主婦が若いときに自分の収入がないことから年金保険料を払わなかったために、老後に夫に先立たれた後、自分の年金給付がないことで生活が成り立たないようなことにならないよう配慮したものだった。 実は、専業主婦に年金受給権を与えている国は、そう多くない。とくに、基礎年金の受給権を100%与えている主要国は日本ぐらいである。スウェーデンやフランス、ドイツは、そもそも無業の専業主婦は保険料の支払い義務もないが年金も受給できない。アメリカでは、専業主婦本人は保険料を払わなくてよいが、夫の年金額の50%しか受給できない。 カナダは、基礎年金に相当する年金の財源がすべて税で賄われているため、年金保険料の支払いという概念はなく、10年以上居住する国民なら誰でも年金が受給できる。 したがって、「年金保険料を払っていないのに年金給付を受けられる」という専業主婦の年金問題は、主要国の中では日本ならではの問題といえる。確かに、働く女性からすれば、年金保険料を払っていないのに年金給付を受けられるのは不公平だという意見は出てこよう』、ただ、働く女性が受取る年金額に比べれば、専業主婦の年金額は少ないのではなかろうか。
・『専業主婦の年金問題、解決策は何か  では、専業主婦の年金問題をどう解決すればよいか。諸外国のように、専業主婦には年金受給権を与えない、というのも1つの考え方かもしれない。しかし、1986年以降に専業主婦の年金受給権を認めたわが国において、今さら取りえない選択肢である。 仮に専業主婦の年金受給権を認めないことにすれば、専業主婦だった期間のある人が、老後に配偶者を失うと、年金給付が大きく減ることになり、老後の所得保障がままならなくなる。老後の所得が少なすぎると、生活保護に頼らざるをえず、その給付財源はすべて税で賄われる。 専業主婦の年金受給権を認めず、保険料を払わなくてよい代わりに年金も出さないとしても、老後の生活を生活保護給付で賄うとなれば、本人以外の人が払った税で財源を賄うことになる。それでは、問題の解決になっていない。 専業主婦の保険料を収入のある夫に払ってもらえばよい、という考え方もあろう。それは、比較的所得の高い夫ならよいが、低所得の夫なら保険料負担に耐えられない。保険料負担に耐えられないほど低所得なら、保険料の減免措置を講じればよいかもしれないが、減免措置を与えれば、それは今の仕組み(専業主婦は保険料を払わない)とほとんど同じになる。 カナダのように、保険料でなく税で年金給付の財源をすべて賄えば、誰が保険料を払ったかは不問となるから、第3号被保険者問題は解消する。その代わり、年金給付の財源を税で賄うだけの増税が必要になる。 結局、政府の今の方針は、厚生年金の適用拡大を通じて第3号被保険者問題を解消することにしている。決して、専業主婦の年金給付を半減するという話ではない。 無業の専業主婦といっても収入が皆無という人は少ない。かつては年収130万円未満なら第3号被保険者になったが、今は適用拡大が行われ、大企業に勤める人は年収106万円未満でないと第3号被保険者にならない。 現在はそれを中小企業にも拡大しようとしていて、106万円以上収入を得ていれば、第2号被保険者になって少しでも年金保険料を払ってもらい、基礎年金だけでなく所得比例年金も受け取れるように誘導している。基礎年金しか受け取れない第3号被保険者と比べると、年金給付額は増えることになる。 つまり、第3号被保険者だった人でも、少しでも所得を得ていれば第2号被保険者になって年金保険料を払ってもらい、その代わり年金給付も多くもらえるようにする。これが、問題の解決策として目下取り組んでいることである』、「政府の今の方針は、厚生年金の適用拡大を通じて第3号被保険者問題を解消することにしている」というのは現実的な解決策だ。にも拘わらず、「専業主婦の年金給付半減案」なるピント外れの議論が出てきたのは、厚労省が争点隠しのため、マスコミを誘導した可能性があるのではなかろうか。
・『夫が高所得の主婦をどうするか  とはいえ、夫が高所得を得ている無業の専業主婦もいて、わざわざ所得を少しでも稼ごうという動機がない人もいるかもしれない。そうした専業主婦は、名実ともに「無業」の専業主婦として、引き続き第3号被保険者として残り続けるかもしれない。その場合、厚生年金の適用拡大というやり方では問題を解決できない。 しかし別の手がある。それは、高所得高齢者に対する公的年金等控除の縮小である。所得税制において、年金受給額はそっくりそのまま税金がかかるわけではない。年金受給額から概算で設けられた公的年金等控除が差し引かれたのちに、所得税と住民税が課される。公的年金等控除が多いほど、課税対象となる所得は少なくなり、所得税・住民税の負担は軽くなる。 公的年金等控除は、年間1000万円までは年金給付額が増えるほど控除額が多くなる仕組み(2020年以降)だ。今なお手厚く設けられており、その分、所得税負担が軽くなっている。そこで、高所得高齢者に限定して、給付が増えても公的年金等控除が増えない形で控除を縮小するとどうだろう。 現役時代に高所得を得ている夫は、所得比例で払う厚生年金保険料を多く払っている分、厚生年金の給付も多く受け取れる。加えて、その妻が第3号被保険者なら、保険料を払わずに基礎年金が受けられる。そこで、厚生年金を多くもらう夫により多く所得税を払ってもらうことで、妻が保険料を払わなかった分の負担を、形を変えて負ってもらうことができる。 第3号被保険者問題は、こうした合わせ技で働く女性と専業主婦との間の無用な対立を避けつつ、解消する方向に導くことができるだろう』、妥当な見方だ。本物の財政検証はいつ出てくるのだろう。

第三に、5月8日付け日刊ゲンダイ「政府の思うツボ 70歳繰り下げ支給で「受給額1.5倍」はウソ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/253342
・『おいおい、ちょっと待て。そう思った人もいるだろう。厚生年金の加入は70歳未満だが、安倍政権は、その加入期間を延長しようとしている。支給開始年齢も75歳まで段階的に引き上げる考えだ。政権は否定するが、大手メディアの報道が相次ぐことからみて、間違いないだろう。政府は加入期間を延ばし、受給年齢を繰り下げたら、受給額が増えるとアピールする。数学的には当たり前だが、繰り下げ受給は本当に得なのか――。 一般に年金は、65歳から受給する。サラリーマンなら、国民年金をベースとした老齢基礎年金と厚生年金部分の老齢厚生年金で、これらの支給を65歳より早めるのが繰り上げ、65歳より遅らせるのが繰り下げだ。 高齢者雇用安定法で希望すれば65歳まで働くことができ、社員の定年や再雇用での退職時期を遅らせる企業も相次ぐ。65歳を越えても働くのがこれからの流れで、十分な収入が見込める人は繰り下げを考えるだろう。十分でなくても、受給額を少しでも増やしたいと思って繰り下げる人もいるはずだ。 では、繰り下げで増える金額は、どの程度か。65歳を基準に受給を1カ月遅らせるごとに、年金額が0・7%上乗せされ、1年で8・4%。現状の加入上限の70歳まで繰り下げると、42%増。65歳との比較で、ほぼ1・5倍だ。 たとえば、昨年度の老齢基礎年金で考えると、満額は77万9300円。それを70歳まで繰り下げると、110万6606円にハネ上がる。月額6万円チョイだったのが、10万円近くに。健康で長生きに自信がある人なら、「はい、喜んで」と繰り下げを考えるかもしれない。それだと、政府の思うツボだ』、「70歳繰り下げ支給」も論点を増やすことに加え、年金払込額の増加、支給額の先送りで、年金財政が大丈夫との「お化粧」の手段を増やす作戦なのかも知れない。
・『独協大経済学部教授の森永卓郎氏が言う。「年金の繰り下げで話題になる割増額は、額面価格です。税金や社会保険料を差し引くと、手取り額は減る。受給額が増えるほど、税金は高くなるため、繰り下げ受給で額面金額が上がった人ほど、税額アップの影響を受けやすいのです」 65歳以上には、「公的年金等控除」として120万円が控除される。70歳まで繰り下げたら、基礎年金と厚生年金を合わせると、控除の枠からあふれる可能性が高い。そのため、実際の手取り額は、額面の9割、場合によっては8割に落ちることもある。 その点に着目すると、ヒントが見えてくる。たとえば夫がサラリーマンで、妻がパートなどの主婦の場合、夫の老齢厚生年金を65歳で丸ごと受給し、妻の老齢基礎年金を繰り下げるプラン。基礎年金の繰り下げなら、控除の枠からはみ出るリスクは少ない』、「割増額は・・・税金や社会保険料を差し引くと、手取り額は減る」というのでは、確かにおいそれと繰り下げを選択する人はそれほどいないかも知れない。
・『特別支給のもらい損ねを防ぐ  もうひとつ、現在60歳前後の人は、老齢厚生年金の特別支給を受けられるオイシイ世代(1961年4月1日以前生まれ=58歳以上)。厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことに伴う時限措置で、定額部分と報酬比例部分からなる厚生年金のうち報酬比例部分についてのみ、60から65歳まで受給できる仕組みだが……。 「特別支給の老齢厚生年金は、65歳から受給できる“本来の老齢厚生年金”とは別物。ところが、その通知ハガキを見た人は、『65歳より早く受給すると、本来の年金を繰り上げることになり、特別支給をもらうと、年金が目減りするのではないか』と誤解して、請求しない人がいるのです。特別支給分は、本来の老齢厚生年金の繰り上げとは全く関係がありません。両者を混同して、特別支給分をもらわないことを繰り下げと勘違いすると、損です」 特別支給の老齢厚生年金は、“働きながらもらえる年金”といわれる。しかし、働き過ぎると、目減りする。 「65歳までは、年金額と給料の合計が28万円を超えると、超えた分の半額が減額されるのです。たとえば、仕事の月給が20万円で特別支給分が10万円だと、超過分2万円の半額の1万円が減額され、特別支給は9万円になります」 特別支給分を受給できている人も、多くは働いていて、それなりの減額を受け入れているはず。繰り下げもダメで、働き過ぎも損となると……。実は、雇用延長しない方がいいのだ』、雇用延長には生きがいがより持てるようになる一方で、現在の仕組みでは、「雇用延長しない方がいい」ようだ。雇用延長に合わせて仕組みも変えてゆく必要があるのだろう。なお、最後の「退職金 大企業は中小の2倍」の部分は省略。いずれにしろ、本番の財政検証はどうなるのか注目したい。
タグ:東洋経済オンライン 年金制度 日刊ゲンダイ 土居 丈朗 (その2)(年金の検証、またも安倍内閣の鬼門になるか 今こそ給付減 負担増の心地よくない政策を、半減案も浮上、「専業主婦の年金問題」の核心 適用拡大と公的年金等控除縮小で解決に、政府の思うツボ 70歳繰り下げ支給で「受給額1.5倍」はウソ) 「年金の検証、またも安倍内閣の鬼門になるか 今こそ給付減、負担増の心地よくない政策を」 2019年は、公的年金の財政検証が5年に1度行われる年 公的年金のおおむね100年間にわたる収支見通しを作成し、年金財政の健全性を検証 「100年安心」 参議院選挙が予定されている7月 政権与党が有利になるような財政検証の結果は、出せなさそうな状況である 所得代替率が50%を維持 所得代替率が50%を割るという財政検証の結果が出れば、制度改正を行うことを念頭に給付と負担のあり方を見直さなければならない 2009年の財政検証 麻生太郎政権 経済前提を楽観的なものにしたうえで、所得代替率が50%を維持できるような給付が出せて、かつ100年後でも年金積立金は枯渇しないから、問題なし 政権転落前の楽観的すぎたシナリオ 世界経済が早期に回復 中長期的な予想運用利回りを、2004年の推計で想定した3.2%から4.1%に上方修正 2014年の財政検証 楽観的な経済前提をメインシナリオとして、2014年の財政検証は、将来的に所得代替率が50.6~51.0%で安定しつつ、100年後でも年金積立金は枯渇しないことが確認される結果 2050年代に年金積立金が枯渇して、完全賦課方式の年金になり、所得代替率が35~37%になるという結果 マクロ経済スライドの発動は過去1回のみ 年金財政の持続可能性を制度的に担保するための制度改正とは、(相対的に)過剰に給付している高齢者には給付を適切に抑制することや、年金保険料や税財源を負担できる人には適度に負担してもらうことが含まれている 2019年の財政検証こそ、年金不信を払拭するものにしなければならない 「半減案も浮上、「専業主婦の年金問題」の核心 適用拡大と公的年金等控除縮小で解決に」 専業主婦が老後に受け取る年金給付を半減する案が、今年行われる年金改革の議論の選択肢にあるかのように報じられた 専業主婦の年金は今に始まった問題ではない 「第3号被保険者」 「年金保険料を払っていないのに年金給付を受けられる」という専業主婦の年金問題は、主要国の中では日本ならではの問題といえる 専業主婦の年金問題、解決策は何か 専業主婦の保険料を収入のある夫に払ってもらえばよい、という考え方 政府の今の方針は、厚生年金の適用拡大を通じて第3号被保険者問題を解消することにしている 夫が高所得の主婦をどうするか 高所得高齢者に対する公的年金等控除の縮小 「政府の思うツボ 70歳繰り下げ支給で「受給額1.5倍」はウソ」 現状の加入上限の70歳まで繰り下げると、42%増 65歳との比較で、ほぼ1・5倍 割増額は、額面価格です。税金や社会保険料を差し引くと、手取り額は減る 特別支給のもらい損ねを防ぐ
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人工知能(AI)(その8)(「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由、「中国発AI」で、通訳も速記も もう必要ない ファーウェイやBATを超える ものすごい企業、AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか、養老孟司氏:AIと日本人) [技術革新]

人工知能(AI)については、昨年12月20日に取上げた。今日は、(その8)(「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由、「中国発AI」で、通訳も速記も もう必要ない ファーウェイやBATを超える ものすごい企業、AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか、養老孟司氏:AIと日本人)である。

先ずは、4月8日付け東洋経済オンライン「「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/275351
・『95.4%――。これは野村総合研究所が2015年に発表した、「日本におけるコンピューター化と仕事の未来」というイギリス・オックスフォード大学との共同研究における、「タクシー運転手」の今後10~20年後の「機械による代替可能性」である。同研究では、職業がAI(人工知能)やロボティクスなどの機械によってどれだけ代替されるかを検証した。 本当に95.4%という高確率でタクシー運転手という職業が機械に代替されるのか。確かに、自動運転が実用化されたら、無人タクシーは普及する可能性が高い。すでにタクシー大手の大和自動車交通は、昨年から公道や住宅地で自動運転の実証実験を開始。「限定区域内での自動運転タクシーの実現は近い」と同社の前島忻治社長は語る。 ただ、「安全・安心を今以上に担保するために、しばらくは乗務員が同乗することになる」と、前島社長は釘を刺す。公道ではどんな危険が待ち受けているかわからない。しばらくは非常時のトラブル対応が乗務員の仕事になるという。さらに、高齢者が多く利用する過疎地では、「(乗客との)コミュニケーション力が必要になる。運転スキルより、心理学や接客の心得がある人材が必要になる」(前島社長)。 加えて無人化が実現すると、タクシー会社には車内や周囲の状況を、カメラを通じて監視する仕事が生まれると予想される。その場合、一定数の運転手は、そうした新たな職業にシフトする可能性がある。それも考慮すると、タクシー運転手という職業の95.4%が機械に代替されるという予測は、現実とはギャップがあることがわかる』、確かに「AI(人工知能)やロボティクスなどの機械によってどれだけ代替されるか」というのは難しい問題のようだ。
・『「AIに仕事を奪われる」説が横行  『週刊東洋経済』は4月8日発売号で「AI時代に食える仕事食えない仕事」を特集。そこでは多くの人にとって身近な18職種の自動化の影響を、取材に基づき検証している。 野村総研の予測値は、専門家が設定した特定の職業における自動化の傾向をAIに学習させ、他の職業に当てはめることで導き出した。これは2013年、英オックスフォード大のカール・B・フレイ博士とマイケル・A・オズボーン准教授が発表した「雇用の未来」という研究論文と同様の手法を用いている。 同論文では、「アメリカでは10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが高い」と発表。その反響は大きく、当時「47%」という数値と併せ、「AIに仕事を奪われる」といったセンセーショナルな報道が繰り返され、「AIによる職業消滅論」の関連書籍の発刊も相次いだ。 ただその後、専門家の間では同リポートの問題点を指摘する声が次々と上がった。経済産業研究所の岩本晃一上席研究員は、「47%という数値は特殊な前提での予測。雇用の未来の研究では、その後に研究結果を発表した独ZEW研究所のメラニー・アーンツ氏らの貢献のほうが大きい」と指摘する。 アーンツ氏らの研究結果の特徴は、オズボーン氏らのリポートが考慮していなかった「タスクベース」の変化を踏まえたもの。本来、仕事はさまざまな業務(タスク)の積み重ねである。いくら自動化が進んでも、実際には職業そのものが機械に置き換わるわけではない。その一部のタスクが置き換わっていくのだ。 OECD(経済協力開発機構)は、アーンツ氏らのそうした現実を踏まえた研究結果を基に2016年にリポートを発表。そこでは、自動化の可能性が7割を超える職業はOECD21カ国平均で「9%」という予測値が掲載された』、どんな方法論でやるか如何で、試算の数字は大きく異なるようだ。
・『「未来の仕事のデータは存在しない」  しかし、アーンツ氏らの研究結果にも加味されていない要素がある。その1つは「現実社会では新しい仕事が生まれる」ことである。前述のタクシー運転手の「カメラを通じて監視する仕事」がこれに当たる。 野村総研リポートを担当した上田恵陶奈上級コンサルタントも、「未来の仕事のデータは存在しないため、調査においては、現状の仕事が未来永劫変わらないとの前提を置いた。しかし、時代とともに仕事は変わる。定量的予測にはどうしても限界がある」と話す。それでも調査を実施した狙いについて、「将来の労働力不足を踏まえ、自動化による仕事の代替の可能性を検証しようとした」(上田氏)と振り返る。 では実際、職業の自動化による影響はどのように表れるのか――。現実社会を見据えると、上記の①「職業はタスクベースで変化する」、②「新しい仕事が生まれる」という要素以外にも、これまでの定量予測には含まれていない3つの要素がある。それは③「技術進化&コストの影響」、④「人材需給の影響」、そして⑤「社会制度や慣習の影響」である。 これまでの「AIによる職業消滅論」の多くでは、AIやロボット技術が、想定されるかぎり進化することを前提に、職業への影響を予測している。しかし、技術進化は一足飛びには進みにくい。その実現のスピードに加え、コストとの見合いで導入するメリットがあるかが、普及のカギを握る。それが③「技術進化&コストの影響」である。 ④「人材需給の影響」はどうか。今でも現実社会で、デジタル化やそれにAI技術を組み合わせた自動化は普及し始めている。だが、その中心はサービス業や建設業をはじめとする人材不足が深刻な業界。いくら自動化の技術開発が進んでも、余剰人員を抱える業界や企業ほど「まずは人にやってもらう」という動機が働きやすい。よほど低コスト化が進まない限り、自動化が進みにくい分野があるのが現実だ。 最後に⑤「社会制度や慣習の影響」も現実社会では避けて通れない。役所や金融機関のサービス、企業間契約などでは、人と対面し、捺印した書類で手続きするといったアナログなルール、慣習が多く残る。デジタル化に一気に舵を切ろうにも、デジタルデバイド(情報格差)の影響を危惧する声などが上がり、一足飛びに進めにくい分野がある』、確かに現実にはこうした定性的要素を考慮する必要がありそうだ。
・『身の回りの環境変化への想像が不可欠  専門家の間では、「こうした現実をすべて踏まえた定量的予測は不可能」というのが常識。現実社会は複雑だからこそ、ある特定の条件下に絞った形で、定量予測が行われてきた経緯がある。 すでに単純な定型業務におけるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入など、人の仕事の機械への代替は進んでいる。そうした変化によって雇用に影響が及ぶ人も広がるだろう。デジタル失業が発生しない、というわけではない。 ただ実際に起こるのは、職業そのものの消滅というより、タスクベースでの増減という変化が大半だろう。変化の様相は職業によって異なる。だからこそ職業の未来は個別に、かつタスクベースで、さらに社会変化も含めて見通すことが重要になる。 現実にどんな事態が発生するのか――。各個人が身の回りの環境変化に想像をめぐらせることが不可欠といえる』、「こうした現実をすべて踏まえた定量的予測は不可能」なので、「各個人が身の回りの環境変化に想像をめぐらせることが不可欠」という結論では、「なあーんだ」と言いたくもなるが、これが正直な見方なのだろう。

次に、5月2日付け東洋経済オンライン「「中国発AI」で、通訳も速記も、もう必要ない ファーウェイやBATを超える、ものすごい企業」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/278801
・『会議で議事録を取る必要はなし。外国企業との商談も通訳いらず――。 そんな夢のような世界を、中国屈指の音声認識AI(人工知能)企業である、アイフライテックがすでに実現している。 同社が開発した「智能会議系統(スマート会議システム)」は、会議中の発言をAIで認識し、自動で文字に変換してスクリーンに映し出す。音声認識の正確性は中国語で97%、英語で95%と、プロの速記者をも上回る高さだ。声紋を分析して話者を識別できるのはもちろんのこと、中国語と英語だけでなく日本語や韓国語にも対応し、リアルタイムでスクリーンに対訳を表示する機能を併せ持つ。中国語では、会議の要点を短くまとめた要約すら、自動で作成可能だという。 人間のような声を人工的に生み出す音声合成の技術も発達している。その名も「AIカスタマーサービスロボット」。中国火鍋チェーン大手で日本にも店舗を持つ、海底撈(ハイディラオ)などの外食企業で活用されている。予約を取るため店舗に電話してきた客と、まるで人間同然のスムーズさでやりとりができる。研究部門のトップを務める李世鵬・アイフライテック副社長は、「電話の相手が人間かロボットかを判別するのは難しい(くらいの自然さ)」と豪語する』、アイフライテックの「スマート会議システム」や「AIカスタマーサービスロボット」は、確かに凄い性能のようだ。
・『アマゾンやグーグルに次ぐ、中国トップの破壊力  元々アイフライテックは1999年設立の学生ベンチャーだった。 そのミッションは「コンピュータに聞き、話し、理解し、考えさせる」「AIでよりよい世界をつくる」ことである。音声認識と音声合成技術の高さを武器に、AI大国を目指す中国政府からの支援も受けながら急成長し、2008年に上場。2017年版の『MITテクノロジーレビュー』によると、革新的な技術と効果的なビジネスモデルを組み合わせた「スマート・カンパニー50」で、アメリカのアマゾンや、グーグルの親会社アルファベットに次ぐ、世界第6位に選ばれた。中国勢としては巨大IT企業であるBAT(バイドゥ、アリババグループ、テンセント)を抑えてトップだ。 今や1万人以上の従業員を抱えており、時価総額も1兆円を超える大企業となった。4月19日に発表された2018年度の業績は、売上高約1300億円(前期比45%増)、純利益約90億円(同24%増)ときわめて好調だ。 こうした最先端の企業を含め、『会社四季報 業界地図』(東洋経済新報社)では、自動車・商社・ITなど166業界を網羅。主要な業界プレーヤーやその関係性を図解している。トップページを飾るのはAI業界で、中国企業ではBATの3社を掲載中だ。今後はアイフライテックのような新興企業にも注目していく。 そのアイフライテックが手がけるのは、企業向けサービスだけではない。今年1月、アメリカのラスベガスで開かれた世界最大の電子機器見本市CESで発表した「AIノート」は、有望な製品の1つだ。 A5サイズで厚さは7.5mm、重さは360gと軽く、アマゾンの電子書籍リーダー「Kindle(キンドル)」を彷彿とさせる。電子書籍を読む機能もあるが、それだけではない。スマート会議システムと同様、音声を自動かつほぼ同時に文字変換し、画面上に表示できるのだ。まるでノートが速記者の代わりをしてくれるようである』、アイフライテックは、「スマート・カンパニー50」で「世界第6位」、「中国勢」トップになるだけの実力を備えているようだ。
・『専門分野のデータが次々と蓄積される  中国AIの動きには、日本の電子機器メーカーも後押しする。ワコムが供給する付属のデジタルペンで通常のノートのようにメモを取ると、自動変換されたテキストの該当部分が網掛けでハイライトされる。記録した内容は簡単にキーワード検索でき、どのメモに何を記録したか、思い出しながら探す手間を省くことが可能。持ち運びもしやすいため、活用シーンは会議だけでなく、学校の授業や取材など多様だ。中国語と英語の同時翻訳機能もリリース予定である。 「将来、オフィスで働く人は、AIノートさえ持てばよいことになる」(李副社長)。価格は約8万円で、現在は中国でのみ展開しているが、販売台数はすでに30万台を突破。海外版の発売も検討中だという。 AIノートに先駆けて市販化されたアイフライテックのポータブル音声翻訳機は、日本のアマゾンのサイトでも約6.5万円で販売されている。50種類もの言語を認識、中国語に同時吹き替えできるだけでなく、逆に中国語を外国語に吹き替えすることも可能で、英語・日本語・韓国語・ロシア語はオフラインでも中国語から変換できる。レストランのメニューや駅の標識などの文字情報を、”画像認識”して翻訳する機能も備えるという。同社は今後、医療や金融、ITなど産業翻訳の分野で蓄積したビッグデータを武器に、専門用語の翻訳機能を強化し続ける方針だ。 人間の目、耳、そして脳までも置き換えるAIの進化。産業界で浸透するアイフライテックなど中国企業の躍進を見る限り、通訳、速記者の仕事がAIに奪われる日は、近い。(リンク先には米国勢、中国勢の図あり)』、英語版や日本語版などが出てくれば、市場を席捲し、通訳、速記者の仕事は明らかに代替されるだろう。日本企業が部品供給だけに留まっているのは、残念だ。

第三に、5月15日付け日経ビジネスオンラインが掲載した山本龍彦=慶応義塾大学法科大学院教授へのインタビュー「AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/051400009/?P=1
・『あらゆる分野でAI(人工知能)の活用が広がっている。特にFinTech(金融と技術の融合)分野では、与信領域で活用が進みつつある。中国では個人の与信を点数化して表示するスコアリングサービスが広がっており、日本でもこうした動きが少しずつ広がりつつある。だが、そこに落とし穴はないのだろうか。AIから受ける恩恵の側面だけに光を当てていないだろうか。憲法学を専門とする慶應義塾大学法科大学院の山本龍彦教授に聞いた』、法的側面からの見解は貴重だ。
・『憲法はプライバシーの権利を保障している。一方、AI(人工知能)やビッグデータの世界では情報を集めることが重要になる。プライバシーの考え方とデータがけん引する社会の間には、そもそも一定の矛盾が存在している。大学院の修士課程で研究していた「遺伝情報の保護」を例に取ろう。 遺伝情報は生まれつきのものだ。疾病は本来、遺伝情報と環境要因が影響しあって発現するものだが、遺伝情報から読み取れるリスクだけでその後の人生が決定されるような風潮がある。 遺伝情報の解析とAIは確率的な予測をするという点で非常に相性がいいが、遺伝情報は本人の努力によって変えられるものではない。AIの予測精度を高めるためにこうした情報を広く集め始めると、「生まれによる差別」が間違った形で復活する可能性も出てきてしまう。 例えば、FinTech業界で起きている変化を見てみよう。中国のアリババグループが運営する「芝麻信用」は個人の信用をスコア付けする仕組みだ。スコアの高い人は恩恵を受け、スコアの低い人は制限を受ける。 本来、FinTechが「Financial Inclusion(金融包摂)」を目的として生まれたものであれば、このスコアリングの仕組みは貨幣ではない価値がけん引するという点で、従来はチャンスを与えられなかった人に恩恵をもたらす側面がある。伝統的な信用情報を持ち得ていない人でも、「線」でその人の行動を捉えることによって包摂されていくためだ』、「プライバシーの考え方とデータがけん引する社会の間には、そもそも一定の矛盾が存在している」というのは、鋭い指摘だ。
・『オーウェルからカフカの世界へ  だが、問題もある。一つは監視という問題だ。「線」で捉えるというのは、極端に言えば「ずっと見ている」ということを意味する。従来は社会的な評価の対象にならなかった領域、例えば私的な領域が評価対象になる可能性もある。 極めてプライベートな空間である自宅でごろごろ寝ている行為ですら、センシング技術や手に持ったスマートフォンで把握される恐れがある。そうなると、リラックスできる安息地がこの世界から無くなってしまうかもしれない。 スコアの高い人も低い人も、常に緊張にさらされる問題もある。仮に公的な機関がスコアを管理すると、多くの人が現状の政権を批判するような活動を控えるようになるだろう。行動に萎縮が生まれ、「自由」の意味が変わってしまう。 法治国家は事前に罰せられるルールを明確化している。予測可能性が立つことで自由が生まれる。これが法による支配のメリットでもある。 ところがアルゴリズムの世界では事前に不利益を予知しにくい。そのため予測可能性が立たず、自身のどのような行動がマイナス要因になるのかが分からず、萎縮効果が生まれる。こうした支配状況はアルゴリズムとデモクラシーを掛け合わせた「algocracy(アルゴクラシー)」とも呼ばれる。 アルゴリズムによって規律される社会では、ブラックボックスが生まれてしまう。個人にとっての自由の意味が変わり、社会的に見れば民主主義にも影響を与えることになる』、「アルゴクラシー」とは恐ろしいような話だ。
・『さらに私が「バーチャルスラム」と呼ぶ問題が出てくる。スコアが社会的なインフラと結びつくと、スコアの低い人が排除される社会になる。社会生活で不利益を被ることになり、差別を受け始めるのだ。なぜスコアが低くなったのかが分かれば改善の余地もあるが、ブラックボックスであれば手の施しようがない。 英国のSF作家、ジョージ・オーウェルは小説『1984』で監視社会の暴走を描いた。一方、チェコの作家、フランツ・カフカは小説『審判』で、理由も分からず逮捕され、理由も述べられないまま裁判にかけられ処刑される主人公の不条理を描いた。 D.ソロブという情報法学者は、データ社会がブラックボックスを放置したまま発展を続けていくと、「オーウェルの世界」から「カフカの世界」へと移行すると指摘する。不条理な没落によってスコアが低い人が二度とはい上がれず、権力主体が誰なのかは分からない。こうした人たちがバーチャル空間のなかで吹きだまりを作り、バーチャルスラムを形成してしまう。 政府や民間企業は当然、こうした問題を把握している。例えば内閣府がまとめている「人間中心のAI社会原則(案)」では、「公平性、説明責任及び透明性の原則」を掲げている。EU(欧州連合)のGDPR(一般データ保護規則)でも「Automated individual decision ­making(個人に関する自動化された意思決定)」を行う場合の説明義務に触れている。 民間でも「Explainable AI(説明可能なAI)」に取り組み始めた企業が出ている。ロジックを残し、説明可能にしておくことで、AIをホワイトボックス化する取り組みだ』、「AIをホワイトボックス化する取り組み」は大いに推進してほしいところだ。
・『「主義」や「憲法」による差異  共産主義は基本的な考え方として私有財産制度を否定している。これに対し、資本主義は財を囲い込む。データを財として見れば分かりやすいが、共産主義国家は財を私有せずに皆で共有するのに対し、資本主義国家は横串にさせない。このように国家としての「主義」の違いは、データの取り扱いという点に深く影響を及ぼす。 憲法文化も大きな差異を生む。「自由(liberty)」をベースにプライバシーを考える米国では「表現の自由」が強い。マーケティングにおいても、データ収集・プロファイリング・データの販売は表現の自由として憲法上、保護されている。そのためにGAFAのような巨大企業が育っていく。 一方、「尊厳(dignity)」をベースにプライバシーを考えるEUは、人をツール化(道具化)することに対して否定的だ。そのため、スコアリングやターゲティングといった人をモノとして見る行為を良しとせず、国民のデータベースを作ることにも抵抗感がある。 だが、米国では選挙コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカによる米Facebookのデータ不正収集事件で潮目が変わりつつある。米GoogleやFacebookと異なり、広告収入に依存しない米Microsoftや米Appleが盛んにプライバシーの尊重をうたい始めていることからも、その変化は見て取れる。誇りに思っていた表現の自由がデータの乱用によって侵されたという事態に国民が憤りを感じているためだ。 では、どのような対処が望ましいのだろうか。 一つは、スコアなどの情報を金融の世界だけにとどめておくことだ。利用範囲を限定し、社会生活のインフラと結び付けないようにすれば、差別を生まない環境を作れる。もう一つはスコアを多元化しておくことだ。複数の事業者が手掛ける形にすれば一元化を避けられ、国民に選択肢を与えることができる。 政府が厳しい規制をかける段階にはまだ来ていない。民間企業が今後どのような動きを見せるのかは分からない。自由な活動を政府が規制するタイミングではないだろう』、米国でも「米Microsoftや米Appleが盛んにプライバシーの尊重をうたい始めている」というのは好ましい変化だ。「スコアなどの情報を金融の世界だけにとどめておく」、「スコアを多元化しておく」という提言には大賛成である。

第四に、解剖学者の養老孟司氏が文芸春秋3月号に寄稿した「AIと日本人~AIが人間を情報化する新たな「脳化社会」を生き抜く処方箋とは」のポイントを紹介しよう。
・『チンパンジーとの違い  人間とは「意識=理性」によって「同じ」という概念を獲得した生き物。「等価交換」が出来るようになったり、言葉やお金、民主主義を生み出した』、「「同じ」という概念を獲得した」ことは、確かに大きな進歩をもたらしたようだ。
・『本人がノイズに  現代は脳の時代で「脳化社会」と定義。あらゆる人工物は、脳機能の表出。30年間のデジタル化により、社会の「脳化」はますます鮮明に。世界が究極的な理性主義になっている。「理性」を突き詰めたのがコンピュータ、その先にあるAI。現代社会における「本人」は「ノイズ」でしかない(例えば本人確認では書類の方が大事)。「相模原障害者施設の19人殺し」の背景には、帰納的に使えるか否かのイチかゼロかの発想で、全てのものには意味がなければならないという心理がある。さらにその意味が「自分にわかる筈だ」という暗黙の了解もある。後段が問題で、「私にはそういうものの存在意義がわからないから、意味がないと勝手に決めてしまっている』、「現代社会における「本人」は「ノイズ」でしかない」というのは面白い比喩だ。「相模原障害者施設の19人殺し」の背景の分析も興味深い。
・『人間の悪いクセ  アメリカで人間の能力を上げるヒューマン・エンハンスメントを真面目に考えている。この問題が孕む優生思想の危険性』、「ヒューマン・エンハンスメント」が「優生思想の危険性」を孕んでいるというのも、言われてみればその通りなのだろう。
・『「わかる」ことの落とし穴  東大などの国公立大学に進学する生徒は読解力があるが、その帰結として、空気を読み「忖度する」官僚のような負の側面。世の中には理屈のないもの、感覚的なものが存在するのだから、子供たちの”差異”を大切にする感覚を日常生活において持ち続けることが、非常に大事。テクロノジーやAIの発展を止めることは出来ない。戦前の軍隊と同じように、一度、お金と労力を投資してシステム化してしまうと、慣性が大きくなってしまい、後戻り出来ないからです。だからこそ、世界には「同一性」と「差異」が併存。それが、AIが生み出す新たな脳化社会への処方箋になるかもしれません』、「子供たちの”差異”を大切にする感覚を日常生活において持ち続けることが、非常に大事」というのは、その通りだ。そうすることで、企業でも、性別や人種の違いに限らず、年齢、性格、学歴、価値観などの多様性を受け入れ、広く人材を活用することで生産性を高めようとするダイバーシティを広く認めることにもつながっていくだろう。  
タグ:養老孟司 人工知能 東洋経済オンライン AI ジョージ・オーウェル 日経ビジネスオンライン RPA FinTech (その8)(「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由、「中国発AI」で、通訳も速記も もう必要ない ファーウェイやBATを超える ものすごい企業、AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか、養老孟司氏:AIと日本人) 「「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由」 「タクシー運転手」の今後10~20年後の「機械による代替可能性」 95.4% 「AIに仕事を奪われる」説が横行 カール・B・フレイ博士とマイケル・A・オズボーン准教授が発表した「雇用の未来」という研究論文と同様の手法 「アメリカでは10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが高い」 専門家の間では同リポートの問題点を指摘する声が次々と上がった 独ZEW研究所のメラニー・アーンツ氏らの貢献 「タスクベース」の変化 OECD(経済協力開発機構)は、アーンツ氏らのそうした現実を踏まえた研究結果を基に2016年にリポートを発表。そこでは、自動化の可能性が7割を超える職業はOECD21カ国平均で「9%」という予測値が掲載 「未来の仕事のデータは存在しない」 時代とともに仕事は変わる。定量的予測にはどうしても限界がある」 ①「職業はタスクベースで変化する」 ②「新しい仕事が生まれる」 ③「技術進化&コストの影響」 ④「人材需給の影響」 ⑤「社会制度や慣習の影響」 身の回りの環境変化への想像が不可欠 「こうした現実をすべて踏まえた定量的予測は不可能」 人の仕事の機械への代替は進んでいる 各個人が身の回りの環境変化に想像をめぐらせることが不可欠といえる 「「中国発AI」で、通訳も速記も、もう必要ない ファーウェイやBATを超える、ものすごい企業」 アイフライテック スマート会議システム 会議中の発言をAIで認識し、自動で文字に変換してスクリーンに映し出す。音声認識の正確性は中国語で97%、英語で95%と、プロの速記者をも上回る高さだ 中国語では、会議の要点を短くまとめた要約すら、自動で作成可能 AIカスタマーサービスロボット アマゾンやグーグルに次ぐ、中国トップの破壊力 スマート・カンパニー50 世界第6位に選ばれた。中国勢としては巨大IT企業であるBAT(バイドゥ、アリババグループ、テンセント)を抑えてトップ AIノート 電子書籍を読む機能もあるが、それだけではない。スマート会議システムと同様、音声を自動かつほぼ同時に文字変換し、画面上に表示できる 専門分野のデータが次々と蓄積される 山本龍彦=慶応義塾大学法科大学院教授 「AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか」 プライバシーの考え方とデータがけん引する社会の間には、そもそも一定の矛盾が存在 伝情報は本人の努力によって変えられるものではない。AIの予測精度を高めるためにこうした情報を広く集め始めると、「生まれによる差別」が間違った形で復活する可能性も出てきてしまう Financial Inclusion オーウェルからカフカの世界へ 一つは監視という問題 私的な領域が評価対象になる可能性も リラックスできる安息地がこの世界から無くなってしまうかもしれない 公的な機関がスコアを管理すると、多くの人が現状の政権を批判するような活動を控えるようになるだろう 法治国家は事前に罰せられるルールを明確化している。予測可能性が立つことで自由が生まれる。これが法による支配のメリットでもある アルゴリズムの世界では事前に不利益を予知しにくい。そのため予測可能性が立たず、自身のどのような行動がマイナス要因になるのかが分からず、萎縮効果が生まれる algocracy(アルゴクラシー) アルゴリズムによって規律される社会では、ブラックボックスが生まれてしまう。個人にとっての自由の意味が変わり、社会的に見れば民主主義にも影響を与えることになる 私が「バーチャルスラム」と呼ぶ問題が出てくる スコアが社会的なインフラと結びつくと、スコアの低い人が排除される社会になる。社会生活で不利益を被ることになり、差別を受け始めるのだ 『1984』で監視社会の暴走を描いた フランツ・カフカは小説『審判』で、理由も分からず逮捕され、理由も述べられないまま裁判にかけられ処刑される主人公の不条理を描いた D.ソロブという情報法学者は、データ社会がブラックボックスを放置したまま発展を続けていくと、「オーウェルの世界」から「カフカの世界」へと移行すると指摘 不条理な没落によってスコアが低い人が二度とはい上がれず、権力主体が誰なのかは分からない。こうした人たちがバーチャル空間のなかで吹きだまりを作り、バーチャルスラムを形成してしまう ロジックを残し、説明可能にしておくことで、AIをホワイトボックス化する取り組みだ 「主義」や「憲法」による差異 「自由(liberty)」をベースにプライバシーを考える米国では「表現の自由」が強い 「尊厳(dignity)」をベースにプライバシーを考えるEUは、人をツール化(道具化)することに対して否定的 米国では選挙コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカによる米Facebookのデータ不正収集事件で潮目が変わりつつある Microsoftや米Appleが盛んにプライバシーの尊重をうたい始めている スコアなどの情報を金融の世界だけにとどめておくこと もう一つはスコアを多元化しておくこと 文芸春秋3月号 「AIと日本人~AIが人間を情報化する新たな「脳化社会」を生き抜く処方箋とは」 チンパンジーとの違い 「同じ」という概念を獲得 「等価交換」が出来るようになったり、言葉やお金、民主主義を生み出した 本人がノイズに 本人確認では書類の方が大事 「相模原障害者施設の19人殺し」の背景 「私にはそういうものの存在意義がわからないから、意味がないと勝手に決めてしまっている アメリカで人間の能力を上げるヒューマン・エンハンスメントを真面目に考えている。この問題が孕む優生思想の危険性 「わかる」ことの落とし穴 世の中には理屈のないもの、感覚的なものが存在する 子供たちの”差異”を大切にする感覚を日常生活において持ち続けることが、非常に大事 世界には「同一性」と「差異」が併存。それが、AIが生み出す新たな脳化社会への処方箋になるかもしれません
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