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薬物(その1)(ピエール瀧「薬物問題」の一考察〜日本は世界から10年遅れている…いまだ根深い2つの誤解、覚せい剤の乱用文化は日本起源だった、「依存症で失ったもの」は治療で取り戻せる) [社会]

今日は、薬物(その1)(ピエール瀧「薬物問題」の一考察〜日本は世界から10年遅れている…いまだ根深い2つの誤解、覚せい剤の乱用文化は日本起源だった、「依存症で失ったもの」は治療で取り戻せる)を取上げよう。

先ずは、筑波大学教授(臨床心理学・犯罪心理学)の原田 隆之氏が3月16日付け現代ビジネスに寄稿した「ピエール瀧「薬物問題」の一考察〜日本は世界から10年遅れている…いまだ根深い2つの誤解」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63554
・『突然の逮捕劇  人気ミュージシャンで俳優のピエール瀧さんがコカイン使用の容疑で逮捕されたというニュースが駆け巡った。 ワイドショーやネットはこのニュースでもちきりで、各社が大々的に報道している。そして、その報道ぶりを見て、私は「またか」という暗澹たる気持ちになっている。 大前提として、コカインは違法薬物であり、それを使用することは犯罪である。その事実には異を唱えるつもりはないし、擁護する気持ちもない。 とはいえ、いくら有名人だからとって、この洪水のような「一億総叩き」現象は何だろうか。 かつて有名人が覚せい剤や大麻などの違法薬物使用容疑で逮捕されたときも同様だったが、家族を引っ張り出したり、ここぞとばかりに人格攻撃をしたり。かと思えばタレント仲間が、「そういえば前からおかしかった」などと「証言」をしたり。毎度のことであるがうんざりする』、私も全く同感である。こんなニュースはせいぜい1、2回流せば済むことで、連日、報道するほどのニュースとは到底、思えない。
・『メディアの対応  報道の流れを見ると、大きく2種類の方向性があるのがわかる。1つは、今述べたような攻撃的な内容と、もう1つは逮捕の影響を懸念する(あるいは面白がる)内容である。 後者に関しては、彼が関係している出演作やCMなどをリストにして、番組休止になるのか、上映差し止めになるか、などと大騒ぎしている。 NHKの大河ドラマを始め、数多くの人気作、話題作に出演している人気俳優であるから、その影響は計り知れない。また、所属バンドである電気グルーヴが、ちょうど結成30周年の記念ライブツアーの真最中であったことも大きな話題となっている。 ツアーについては、早々に中止が決まり、出演作も降板や放送中止となったものがある。NHKは、大河ドラマについては「検討中」であるとしているが、ホームページからは顔写真が削除され、オンデマンド配信は中止したという。 この足並みのそろった「素早い」対応には驚くばかりであるが、テレビのコメンテーターのなかには、「何もそこまでしなくても」という意見を述べる人々もいた。つまり、出演者と作品は分けて考えるべきであるとの意見である。 また、つい先ごろ、別の人気俳優が強制性交罪の容疑で逮捕されたばかりであるが、あのときは被害者のいる犯罪で、今回はそうではないから過剰に反応しすぎであるとの意見も見られた。 これまでもこのような過剰反応には、たびたび疑問の声が上がっている。 テレビ局がスポンサーや視聴者の反応を気にするのはわかるが、事なかれ主義を第一にして、貴重なドラマや映画、音楽を封じてしまうことについて、もっと議論をしたほうがよいのはたしかである』、「出演者と作品は分けて考えるべきであるとの意見」には、私も賛成だ。「事なかれ主義」による過剰反応には呆れ果てる。
・『メディアの攻撃  しかし、私がそれ以上に問題視しているのは、もう1つの報道姿勢のほうである。すなわち、先に「一億総叩き」と形容した容疑者への洪水のような攻撃についてである。 番組差し止めに対して多様な意見があったのとは対照的に、こちらは右を見ても左を見ても同じように攻撃的な意見ばかりで、ほとんど異論がないのが特徴だ。 主要なテレビ各局・新聞各紙は軒並み「大事件」のように報道し、なかには父親にインタビューしている局もあった。ピエール瀧さんは、51歳だそうだが、その父親を引っ張り出して、何を聞きたいというのだろうか。 また、インターネットの「J-CASTニュース」では、ライターが「ピエール瀧は芸能界を永久追放すべきだ」と主張している(少し日本語が下手なので添削すると、「ピエール瀧を芸能界から……」というのが、正しい日本語だろう)。 そして、その理由として「本人を罰するというだけでなく、汚染・中毒が若者ら一般社会に広まるのを防ぎ、犯罪組織の資金源になっていることをつぶすためだ。交通事故を起こしたのとはわけが違う」からだと述べている(この日本語も添削したくなるところが多々ある)。 法律の世界では、一人を罰することによって他の多くの人に犯罪を思いとどまらせようとすることを「一般予防」という。しかし、その効果はさほど大きいものではない。 もし、それを主張するならば、その実際の抑制効果のエビデンスと、本人に及ぼすネガティブな効果を示して、そのバランスを考えて主張すべきである。 なんの根拠もなく、ヒステリックに「永久追放すべきだ」などと主張することは、「見せしめにしろ」と言っているのと同じで、時代遅れも甚だしい野蛮な意見でしかない。 このような総叩きのなかで、1人異色のコメントをしていたのが、獨協大学の深澤真紀特任教授である。 彼女は、「今は薬物に対して厳罰主義というより治療だ」と述べ、継いで「世界中で言われていることは非犯罪化・治療していくんだということ」「日本は法律が50年以上変わってないので、治療の現場が全く変わっていく中で、『この法律でいいのか』というのは世界中で論議されているんですね」と語っていた。 この発言を聞いて、私は「おやっ、テレビのコメンテーターがこのような発言をするとは、世の中も少しずつ変わってきてるのか」と思ったのだが、どうもそうではないようだ。 夕方のネットニュースでは、「深澤氏、ピエール瀧容疑者を擁護し批判殺到」という記事がアップされていた。やはり彼女の意見は、「異端」だととらえられたようで、世の中はそう簡単には変わっていないのかもしれない。 とはいえ、ツイッターなどネット掲示板などで、どれだけ彼女が叩かれているのか調べてみたが、実際は「批判殺到」というにはほど遠い現状であった。 もちろん、批判の声はいくつかあったが、擁護する意見もあった。この状況を一番的確に表現すると、批判殺到でも擁護でもなく「スルー」、つまりほとんど関心を持たれていないというのが正しい状況であった。 そして、もう1つ明らかに言えるのは、「批判殺到」などという大げさな見出しで記事を書いたライターが、深澤氏の発言を快く思っていないということである。そのため、このようなミスリーディングな記事を書いたのであろう。 叩くだけたたいてあとは無関心、これがわが国の現状である』、深澤氏がまともなコメントをしていたのは初めて知ったが、ネット掲示板では「スルー」されたのは、ネット掲示板のレベルを示しているのだろう。
・『世界の薬物政策  それでは、世界の薬物政策がどのようになっているのか、その現状を見てみたい。 日本ではほとんど話題にもならなかったが、2016年に国連総会は、薬物問題に対する特別セッションを開いた。これは前回のセッションから実に10年ぶりのことであった。 10年前、世界は「薬物戦争」を旗印に、薬物犯罪を徹底的に取り締まり、厳罰で対処することを決めた。まさに今の日本はその延長線上にある。 しかし、その結果、薬物問題は収まりを見せるどころか、よくて横ばいという状況であり、厳罰化に伴って刑務所がパンクする国もあちこちに現れた。 さらに、その後の研究の積み重ねによって、次の2つの事実が明確になってきた。 1 薬物依存は「脳の病気」である 2 処罰には再犯抑止効果がなく、治療にこそ効果がある このような流れを受けて、2016年の国連総会は、10年前とは打って変わり、次のような決議を取りまとめるに至った。 1 薬物プログラム、対策、政策の文脈において、すべての個人の人権と尊厳の保護と尊重を促進すること 2 すべての人々、家族、社会の健康、福祉、幸福を促進し、効果的、包括的、科学的なエビデンスに基づく治療、予防、ケア、回復、リハビリテーション、社会への再統合に向けての努力をすること ここで謳われているのは、第1には薬物使用者の人権の尊重である。 薬物使用が犯罪であれば、それは法に従って処罰されることは法治国家としては当然であるが、ことさらに辱めたり、苦痛を与えたりすることなどは、決して許されるべきものではない。 また、「効果的、包括的、科学的なエビデンスに基づく」バランスの取れたアプローチを取るように求めている。 これは、それまでの処罰一辺倒だったアプローチから、予防、治療、教育、福祉などのヒューマンサービスを重視する公衆衛生的なアプローチへの大転換である』、世界の潮流に日本はまたしても「乗り遅れている」ようだ。先の深澤氏はこうした考え方を踏まえたものだったようだ。
・『一方わが国では  これが世界の潮流であり、多くの国がこうした方向に向けて、法整備やサービスの拡充などを行っている。 日本が今までのように、薬物使用者を吊し上げて社会的な制裁を加え続け、治療や福祉の拡充をせず、ただ単に刑務所に放り込むだけで社会から排除するような対処を続けるのであれば、それは国連決議違反である。 そして、それは世界的に見ると10年以上遅れた時代錯誤の対処である。 深澤氏の発言への反論として、ネット上に上がっていた声のなかには、「それは西欧諸国だけの話であって、アジアは違う」「中国では死刑になることすらあるので、日本はなまやさしいほうだ」などの意見があった。 これらは大きな誤解に基づく意見である。たしかに、薬物に対する政策転換は、ヨーロッパから始まったものであるが、今や世界中の多くの国々にも波及している。 私は今年1月にタイの薬物統制委員会を訪れたが、そこでは2016年の国連決議を受けて、薬物政策を大きく転換していることを伺った。実際、タイでは薬物使用の非刑罰化政策が進んでいる。 「薬物戦争」を宣言し、大々的な反薬物キャンペーンを張っているフィリピンですら、薬物使用だけで刑務所に入れられることはない。 薬物使用は、司法当局ではなく、保健省の管轄である。大多数は社会内で治療サービスを受け、重症者だけが保健省管轄のリハビリセンターに収容されて治療を受けている。 また、中国で死刑になることもあるのは、薬物使用ではなく薬物密輸などの罪である。 どの国も薬物使用と薬物密造・密売などは厳密に区別をしており、後者に対しては、厳しい罰が加えられる。これは西洋諸国でも同じであり、この両者を混同してはならない』、あの「フィリピンですら、薬物使用だけで刑務所に入れられることはない」のに、日本ではいまだに「薬物使用と薬物密造・密売など」が混同されているというのは、自己批判も込めて恥ずかしいことだ。
・『もう1つよくある誤解は、非犯罪化(多くは非刑罰化)と合法化を混同してしまうことである。大麻については、合法化する国がいくつかある。 しかし、ほとんどの国でなされているのは、非刑罰化である。国連条約でも違法薬物は大麻も含め、法律で規制すべきであるとされているし、その使用は犯罪であることには変わりがない。 国連決議が求めているのは、刑罰に効果がない以上、刑罰に代わって治療などの方法で対処しようと言っているにすぎない。 わが国は世界に誇れるほど薬物使用の少ない国である。ただ、その一方で、薬物使用者をヒステリックに叩くだけ叩いて、社会から抹殺しようとしている国でもある。 日本の刑務所職員が好んで用いる言葉に次のような言葉がある。これは網走刑務所前にある石碑にも刻まれた言葉である。 私の手は厳しいけれど、わたしの心は愛に満ちている 私はこの言葉をもう一度噛みしめたいと思う』、日本のマスコミの不勉強ぶりには猛省を促したい。

次に、古い記事だが、医師の立場から、2017年4月12日付けナショナル・ジオグラフィックが掲載した国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究者の松本俊彦氏へのインタビュー「覚せい剤の乱用文化は日本起源だった 国立精神・神経医療研究センター 薬物依存症 松本俊彦(3)」を紹介しよう。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/17/040500003/041100003/
・『覚せい剤をはじめ、違法な薬物の事件報道が時おり世間を騒がせる一方で、薬物依存症は治療が必要な病気でもある。それはギャンブル依存症などでも変わらない。では、依存症はどんな病気で、どんな人がなりやすく、どうやって治すのだろうか。日本における薬物依存症の治療と研究のパイオニアである松本俊彦先生の研究室に行ってみた! 松本さんが所属する国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所は、研究所とはいえ、病院も併設しており、松本さんは臨床の仕事をしつつ、治療プログラムの開発と普及を行う立場だ。 治療対象は、もちろん、流行り廃りはありつつも、覚せい剤依存が一番大きなものだという。お話を伺った2017年2月末の時点では、7割方が覚せい剤とのことだった。 ここまで乱用される覚せい剤には、どんな背景があるのだろうか』、薬物依存症の治療と研究のパイオニアへのインタビューとは興味深い。
・『「実は、覚せい剤、つまりアッパー系の元気が出るいけない薬物は、ほとんど日本独自の乱用文化だったんです。1800年代の終わりに東京帝国大学の薬学部の教授が、喘息の薬として開発したものですし、戦前ではうつ病の治療なんかにも使われていました。第二次世界大戦中には、軍需工場で夜通し働かせたり、神風特攻隊の人たちがそれをキメて突っ込んでいったり、軍需品として使われました。戦争が終わってその軍需品が放出される中で、ヒロポンっていう商品名で流通して、小説家とか新聞記者とか学生みたいな人たちの中で、寝ずに仕事できる、勉強できる薬として広がりました。それで、1951年に覚せい剤取締法ができたわけですよ」 覚せい剤、アッパー系の薬物の乱用文化は日本起源!』、歴史的にみれば、覚せい剤の乱用文化は日本起源、とは驚かされた。確かに、言われてみれば納得できる。
・『たしかに、20世紀なかばのアメリカの映画などで出てくる薬物、例えばヒッピーの若者たちが乱用していたのは大麻や麻薬や幻覚剤だった。 「欧米なんかでは、大麻、ヘロインなどの麻薬など、ダウナー系のボーッとするもののほうが人気があったんです。ところが、アメリカでは1980年代なかばから、まずはコカインが流行し、それよりももっと安くて効きが強いメタンフェタミン、覚せい剤が西海岸を中心に広がりました。日本では、法律によって規制されて、表向きは沈静化していたんですが、逆に地下に潜ってしまって、反社会的な勢力の収入源になってしまいました。1990年代のなかばぐらいから少し流通経路が変わって、注射器を使わずに炙って吸入するものがハワイから逆輸入されるようになりました。注射器のまわし打ちでHIVが広がったりしたので、それを回避する流れです。最初はヘロインをアブリで吸入する方法が発明されて、それから覚せい剤のほうも続いたと言われています。スピードとか、Sとか呼ばれるものです」 これもまた、アメリカ映画の知識だが、コカインの粉末を鼻から吸入したり、ヘロインを炙って吸ったりといったシーンは、常套的な映像表現として使われる。そんな流れの中で、覚せい剤も「アブリ」で使えるものが逆輸入されてきた、というのである』、自ら蒔いた種とはいえ、厄介なものが「逆輸入されてきた」ものだ。
・『そして、今や、覚せい剤は、日本の薬物乱用の中でもトップをひた走る。芸能人が逮捕されて報道されるケースも覚せい剤が多い。その際、ワイドショーはもちろんニュース番組までたっぷり時間を使う。個人的な印象としては、大麻などに比べて、覚せい剤の方が世の中の目が厳しい気がする。 「歴史的には逆ですね。覚せい剤取締法が制定される時期、法曹関係の偉い人や政治家の人たちのなかにも『おれも昔、受験勉強のときにヒロポン使ってたよ』とかいう人もいて、少し甘くなっていたと思います。麻薬及び向精神薬取締法で麻薬中毒者に認定されると、国の中毒者台帳に名前がリストされます。でも覚せい剤はそれがありませんから。とはいっても、1980年代の深川通り魔事件ですとか、覚せい剤乱用歴のある人たちによる凶悪事件があって、だんだん厳しくなってきました」 もっとも、この時の通り魔などは、覚せい剤依存症の典型的な例というのとは違うらしい。よく、覚せい剤を乱用すると、周囲の人が全員、自分に害意を持っているように感じる、というふうな説明がされるが、それは、むしろ、2012年から14年に流行した危険ドラッグの方が激しいそうだ。 さて、こんな歴史的な流れの中で、松本さんが薬物依存の治療の世界に飛び込んだのは、1990年代半ばだ』、「覚せい剤取締法が制定される時期、法曹関係の偉い人や政治家の人たちのなかにも『おれも昔、受験勉強のときにヒロポン使ってたよ』とかいう人もいて、少し甘くなっていた」、というのはさもありなんだ。
・『「神奈川県の精神病院にいたんですが、薬物依存の治療って人気がなかったんです。患者は嘘をつくし、すぐにまた使ってしまうし、背中にモンモン背負った人が来て怖かったり、若い人だったら全身タトゥーでピアスしてたり。若い医師は、すぐ恫喝されて、幻覚作用が問題になっていた睡眠薬の『ハルシオン出せ!』とか言われるし。それで、精神科医としての一通りのトレーニングを終えて、さあこれからどこで働くかという時に、大学医局の誰もが依存症の専門病院に行きたがらなくて、これじゃ決まらないということで、じゃんけんを提案したら、提案した私が負けてしまったっていう経緯です」 だから、松本さんにしてみると、嫌々の着任だった。それまでは、精神救急といういわば精神科版のER(救急治療室)勤務に情熱を燃やしていたのが、いきなり依存症の治療に向き合う羽目になった』、「薬物依存の治療って人気がなかった」というのは確かに理解できる。
・『「誰も薬も酒もやめないし、みんな嘘つきばっかりだし、本当に憂うつになって、嫌々診療してました。それを、見かねた患者さんが、自助グループのオープンミーティングというのに誘ってくれたのが転機でした。このやる気のない若い医者を何とかしようと思ったんだと思うんですよ(笑)。出席したのは、自助グループなので、かつて薬物依存だったけど回復した人たちがスタッフや施設長をやっているんですけど、それがよかったんです」 医師と患者の間には厳密な線引が通常あって、いくら相手が若い医師でも患者側から「これに出てみないか」などとはなかなか言えないし、医師の方も応じないだろう。でも、とある患者と松本さんの間ではそのようなやり取りがあり、松本さんはその話に乗った。この時に、松本さんが出席したミーティングは、薬物依存症者のための自助グループであるN.A.(ナルコティックス・アノニマス)のものだった。 「参加してみると、回復者として自助グループのスタッフが、自分の体験を話すんですよ。それを聞く限り、今は回復している人たちが、自分が手を焼いている患者よりもはるかにたちの悪い患者だったって分かったんです。『え、こんな悪いやつが、変わるの?』って興味深く思ったのがひとつ。あと、確かに依存症の人たちって見栄っぱりで嘘つきで、すぐに自分をでかく見せようとするんだけど、でも、それって突き詰めれば、自分にもそういうところがあるんですよね。もしかすると、人間の一番人間らしいところをグロテスクに集めた病気なんじゃないかって。実際、彼らの生きざまはジェットコースターみたいなんです。ものすごい成功をおさめたり、ものすごい転落もしている。気づいたら、グイグイと引き寄せられて、今に至るっていう感じですね」』、「嫌々診療してました。それを、見かねた患者さんが、自助グループのオープンミーティングというのに誘ってくれたのが転機」、医師が患者に助けられるとは珍しいこともあるものだ。「人間の一番人間らしいところをグロテスクに集めた病気なんじゃないかって」、といのは面白い表現だ。
・『また、ここにいたって松本さんは、個人史の中であまり思い出したくなかった中学時代のことを強く意識するようになったという。 「神奈川県の小田原で育ちました。中学生時代は、1980年ぐらいなんですけど、とてもガラが悪い時期で、不良文化がはやっていました。クラスメイトの半分くらいがシンナーやってたし、校内暴力が吹き荒れてたし、暴走族がいたし、トイレには煙草の吸い殻とシンナーを使った後の袋が転がってるような状態でした。中学3年のときはほとんど授業がなかったんじゃないかな」 今の穏やかな中学校からは想像しがたいが、20世紀には全国的に校内暴力が吹き荒れた時期があった。最悪だったのは世代的に松本さんが中学生だった頃で、日本各地で中学校の窓ガラスが割られ、夜になると盗んだバイクで走り出したり、十五歳の夜の行き場のない怒りややるせなさを爆発させるティーンエイジャーがたくさんいた。同じころ、千葉で高校生だったぼくは、自分が出たばかりの中学校や近くの別の中学校がどんどん荒れていくのをやや遠巻きに見ていた。松本さんは、まさにその時の中学生だったのだ。 「正直言うと、中学卒業して高校に行ったときには、すごくほっとしたんですよ。でもその時、心にひっかかるものもあったんです。荒れている子たちは、実は両親が不安定な状況にあったり、虐待を受けたりとか、子どもながらにも知っていて。依存症の専門病院に赴任したときには、『ああ、中学時代のあの動物園状態に戻っちゃった』と思ったんだけれど、逸脱してしまった人たちへの関心はずっとあったんです。だからこそ、薬物依存症の臨床に惹かれたし、その後、頼まれてもいないのに、少年院や少年鑑別所とかに自分から入り込んで診療したりとかし始めるんです」 依存症と向き合うことは、松本さんにとって、少年期に残してきてしまった課題を解くことでもあった。 薬物依存症からの治療、回復のためのプログラム、SMARPPがここで登場する(第4回へ)』、「依存症と向き合うことは、松本さんにとって、少年期に残してきてしまった課題を解くことでもあった」、というので、ここまでのめり込んで研究している謎が解けた気がする。

第三に、上記の続き、4月13日付け「「依存症で失ったもの」は治療で取り戻せる 国立精神・神経医療研究センター 薬物依存症 松本俊彦(4)」を紹介しよう。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/17/040500003/041100004/
・『依存症を治療する医師になったものの、松本さんは、当初「いやいや」だった。しかし、「人間の一番人間らしいところをグロテスクに集めた病気」であることに気づいた頃から、むしろ、引き寄せられていったという。やがて、日本ではじめて薬物依存症に特化した治療プログラムを開発するに至るわけだが、一筋縄ではいかなかった。 「前にいた神奈川県の専門病院に赴任した当初、私、半泣きで診療していたと思うんです。だって、治療と言ってもどうやっていいのかわからない。覚せい剤が嫌いになる薬があったらいいのにとか思いましたが、そんなものない。せいぜい薬物の恐ろしさを説教するとか、認知症の人の脳の画像を見せて、長年、覚せい剤を使うとこうなるぞと、詐欺みたいな説明までして、それでも効果が出ない。そこで、予後調査をしてみたんです。その病院で、覚せい剤依存症の人が、初診からわずか3カ月後にどのくらい通院を続けているか。3カ月で治療の効果なんて判定できないんですけど、そもそも治療を続けているかどうか。そうしたらね、3割だけなんです。7割がもう通院をやめてたんです。無理ないですよね。週に1回早起きをして、交通機関を乗り継いで、長い時間待って、金を払って、説教を受ける。これが楽しみでたまらないと思って通うやつがいたらおかしいです」 これは衝撃的な数字だ。非常に低いと言わざるをえない。治療を求めてきた人が、特に快癒したわけでもなく7割方来なくなる、とは……。』、確かに、説教だけでは「7割がもう通院をやめてたんです」というのは納得できる。
・『「実は、薬物依存の患者さんがはじめて病院に来るのって、ほとんど家族やまわりの人が、保健師さんや弁護士さんに相談したりして、本当に苦労して、説得して、はじめて専門病院の外来に来ているんです。それなのに3カ月で7割をドロップアウトさせるんじゃ、どこが専門病院なんだと思いました。逆に3カ月続いていた3割の人たちって、要するに幸運にも、その期間、使わずに済んでいる人が自慢しに来てるんですよね。褒めてもらいたくて。こっちも褒めますし。その調査でも、3カ月続いた人たちの96%は薬を使っていませんでした。これ、短期間とはいえすごくいい数字です。その一方で、途中で使ってしまった人は、情けなくて、かっこ悪くて、あるいは医者から怒られるんじゃないか、通報されるんじゃないかと思って、通院をやめちゃってるんですよ。でも、我々専門医が対応しなきゃいけないのは、わずか3カ月もやめることができずに病院にこなくなっちゃった人たちの方ですよね」 ここで、通院できた3割の人が、「褒められにくる」というのが象徴的だ。 褒められる、つまり、「ドーパミンがドバーッと出る」ような状態を薬物で得てきた人たちが、医師に褒められることを目的に通ってくる。それは、ある意味、治療の一つの形かもしれない。薬物ではなく、人間関係の中において、その回路を発動させる練習というか』、「褒める」ことがこんな症状にまでも有効だとは、人間というのは案外、単純なものなのかも知れない。
・『「結局、覚せい剤をやめられなくても、通院しつづけた方が、予後がいいというのは、海外のエヒデンスでもしっかり出始めていたんです。それで、薬物をやめられなくても通えるプログラムを作れないかと考えていて、モデルになったのが、アメリカの西海岸のマトリックス・モデルという外来治療プログラムです。ここで大事なのが、外来、ということです。それまで依存症の治療というと、みんな入院入院って言ってたんですよ。家に帰った後の断酒や断薬をするための教育入院です。糖尿病の人たちが短期間内科に入院して、食事療法とかいろんなことを勉強しますよね。あれと同じで、それ自体は治療じゃなく、本番は帰ってからなんです。なのに、日本には依存症の外来治療プログラムがなかった。だから、ぼくらとしては、通いでできるプログラムをつくりたい。そのときにマトリックス・モデルっていうのが非常にフィットしたんですね」 マトリックス・モデルというのは、コカインや覚せい剤依存症を対象にしたもので、外来であることと、グループワークを重視した認知行動療法的なアプローチを取るのを特徴とする。それらの要素は、松本さんが開発した「SMARPP(スマープ)」(のちに詳述)にも引き継がれている。 ここでは、視察に訪れた松本さんが、はじめてそのプログラムを見た時の驚きを聞いておこう。 「グループ療法で、患者さんがやってきて『先生、また今朝シャブやっちゃったよ』っていうふうに告白したんです。そしたら、担当していたセラピストがどんな対応したかっていったら、ニコニコしながら『よく来たね』ってハグしたんですよ。『やろうよ、頑張って。よく来た』って言って。これは説教してきた私とは正反対なんです。やっちゃったって言いに来たときこそ、ハグっていうのは大事なんだろうなと思いました」 罰は効かない、説教も効かない。むしろ、「やっちゃった」人には「よく言ってくれたね」とハグを。 実にアメリカらしいといえばそれまでなのだが、松本さんのSMARPPでも、ハグはともかく、「やっちゃった」と告白することはむしろ褒められる』、ここまで徹底して「褒める」とは、さすがである。
・『それでは、SMARPPとはどんなプログラムなのか。やっとそこに入っていける。SMARPPを日本語でざっくり言うと「認知行動療法による薬物依存症治療プログラム」のことだ。  「ワークブックがあって、これはもう市販されています。拘置所に差し入れられる本のベスト3に入っているんですが、大事なのはこれをグループで、読み合わせしながら、専門家と一緒に勉強していくことなんです。ワークブックは、むしろ患者さんと関わるための口実というか。市販されているものは全部で24セッションに分かれていて、それを週1回でやれば、半年間は通わなきゃいけないんですよ。その半年、逆に我々は援助の関係の中に彼らを引きとめることができるっていう」 患者さんとかかわるための「口実」であるワークブックには、もちろん大事なことが書かれていて、拘置所でこれを読んだ人も(もちろん、単純に興味があって読んだ人も)、有益な知識を得られるだろう。 ワークブックをめぐると、日付を記入する欄があり、これを読み合わせていくことが前提になっているのが分かる。第1回「なぜアルコールや薬物をやめなくてはいけないの?」、第2回「引き金と欲求」、第3回「薬物・アルコールのある生活からの回復段階 最初の1年間」というあたりからはじまって……第22回「あなたを傷つける人間関係」、第23回「強くなるより賢くなれ」、第24回(最終回)「あなたの再発・再使用のサイクルは?」に至る。 かなり突っ込んだ内容を、専門家の指導のもとグループで読み合わせていくわけで、その過程で、認知行動療法的なアプローチをとっていることになる。認知行動療法というのは、認知(ものごとに対するとらえ方)の枠組みを変えることで、気分や行動を変化させようとする治療法だ。薬剤の乱用に悩む人にとって、薬をもって制することができるのは、ごく一部の事例(アルコールの断酒剤など)だけで、こういったアプローチの方が成果をあげている。 そして、SMARPPのキモであるのは、こういったワークブックの読み合わせ、勉強会が、そのまま患者を支援の場に引き止める役割を持っていることだ。 「大事なことは、いつでもウェルカムの態勢なんです。失敗しても、来ないより来たほうがいい。孤立させずに、次もまた来たいと思えるようなプログラムにするっていうこと。お茶菓子なんかを必ず出して歓待しますし、尿検査の結果が陰性ならスタンプを押して、プログラムが1クール終わったら賞状を出したり。彼らは、家の中でいつも家族から文句ばっか言われて、周囲からさげすまれて、昔、一緒に遊び歩いた仲間も遠ざかり、今はとても孤独な生活をしてることが多いんですよ。プログラムの中で、あたたかい雰囲気に包まれて、気が楽になって、また来たいと思ってもらえればいいんです。その中で、我々と関わってる期間を延ばしていくと、多くの人たちは、この1クール終わる半年、あるいは2クール目に突入して、8カ月から9カ月くらいのところでかなり安定的な断薬状態になっているんです」。 かつて有効な治療法がないと言われていた薬物依存症だが、今、突破口が見えてきた段階だという』、なかなかよく出来たプログラムのようだ。
・『「もちろん、このプログラムだけでは油断できないんです。ですので、SMARPPのグループ療法の場には、実は回復支援グループの人も副司会者として入ってもらいます。薬剤使用から回復した人たちです。ある意味ロールモデルになって、電話番号なんかも交換して、例えば支援団体がやっているハイキングとか、ソフトボール大会とか、サーフィンしに行ったりとかね。一緒に遊んでるうちに仲よくなって、例えば夜中に薬を使いたくなって苦しくなったときに電話かけて、何とか危ないところを回避したりするんです」 ここまで来ると医療ではなく、地域のサポートだ。それらがシームレスにつながることが、治癒にとって大事になる。 「治療プログラムをきっかけに、自助グループに参加するようになると、そこで一番みんなから尊敬され、歓迎されるのは、初めてやってきた人なんですよ。今日まで、昨日まで酒や薬を使ってた人たち。その人たちがみんなから褒められて、歓迎されて、一番偉いんです。なぜかっていうと、依存症って、別名『忘れる病』なんです。すぐ忘れます。酒やめたって言った人が、3日後に飲んでるって、よくあるじゃないですか。でも、そういう当事者グループに行くと、未来の自分と過去の自分がいるんですよ。その中で、酒や薬のない生活を日々積み重ねていくことができるんです。それで、だいたい3年ぐらいたってくると、随分安定してきて、最初の1年間は、意識して酒や薬をやめてる感じだったのが、自然とやめてる感じになってくるわけです」 3年がひとつの目安、ということだ。いったんできた依存という病は「完治することはできないけれど、取り戻すことはできる」と、松本さんは患者さんたちに伝えているという』、「ここまで来ると医療ではなく、地域のサポートだ。それらがシームレスにつながることが、治癒にとって大事になる」、なるほどその通りなのだろう。
・『なんとか治療と地域のサポートをつなげるというのが、松本さんがSMARPPを開発する時の大きな目標だった。だから、医療ができることというのは、限定的で、むしろ「入口」なのだと強調する。 「よく冗談半分で言ってるんですが、『我々の役割はサイゼリヤだ』って。ほら、昔、私たち、イタリア料理ってナポリタンのことだと思ってましたけど、今ではあれはむしろ日本料理で、イタリアには別の料理があるって知ってますよね。その先鞭をつけたのがサイゼリヤだと。サイゼリヤって、安いし、それなりのイタリア料理を出します。それで、目覚めた人が、コアな専門店に行くようになる。薬物依存症も同じで、奥が深いです。日本みたいに薬物に忌避的な感情がある国で、あえて薬物を使う人たちには虐待の背景がある、といった話、前にしました。そういう深いところでの役割は、地域ごとの自助グループなど、社会資源の方にある。我々、医療側ができるのは、むしろ間口を広げることです」 依存症というのは社会性の病だ。だから、医療ができるのは、正しい入口を設定し、社会のなかでの治癒を促すこと。医療万能の時代に、医療の専門家がむしろ「間口を広げる」ことが主な役割だと自認する。依存症の医学は、そのようなあり方をしている』、薬物依存症の治療の奥深さを知らされた。それにしても、正しく「間口を広げる」松本氏のような名医に巡り合えた患者はラッキーだ。昔ながらの考え方をしている医者はもはやいない、と信じたいが、現実はどうだろうか。 
タグ:アメリカ 薬物 過剰反応 国連総会 ナショナル・ジオグラフィック 現代ビジネス 原田 隆之 (その1)(ピエール瀧「薬物問題」の一考察〜日本は世界から10年遅れている…いまだ根深い2つの誤解、覚せい剤の乱用文化は日本起源だった、「依存症で失ったもの」は治療で取り戻せる) 「ピエール瀧「薬物問題」の一考察〜日本は世界から10年遅れている…いまだ根深い2つの誤解」 その報道ぶりを見て、私は「またか」という暗澹たる気持ちになっている メディアの対応 2種類の方向性 1つは、今述べたような攻撃的な内容 1つは逮捕の影響を懸念する(あるいは面白がる)内容 メディアの攻撃 「一億総叩き」と形容した容疑者への洪水のような攻撃 法律の世界では、一人を罰することによって他の多くの人に犯罪を思いとどまらせようとすることを「一般予防」という。しかし、その効果はさほど大きいものではない 異色のコメント 獨協大学の深澤真紀特任教授 「今は薬物に対して厳罰主義というより治療だ」 「世界中で言われていることは非犯罪化・治療していくんだということ」「日本は法律が50年以上変わってないので、治療の現場が全く変わっていく中で、『この法律でいいのか』というのは世界中で論議されているんですね」 世界の薬物政策 10年前、世界は「薬物戦争」を旗印に、薬物犯罪を徹底的に取り締まり、厳罰で対処することを決めた。まさに今の日本はその延長線上にある その結果、薬物問題は収まりを見せるどころか、よくて横ばいという状況であり、厳罰化に伴って刑務所がパンクする国もあちこちに現れた 1 薬物依存は「脳の病気」である 2 処罰には再犯抑止効果がなく、治療にこそ効果がある 2016年の国連総会 1 薬物プログラム、対策、政策の文脈において、すべての個人の人権と尊厳の保護と尊重を促進すること 2 すべての人々、家族、社会の健康、福祉、幸福を促進し、効果的、包括的、科学的なエビデンスに基づく治療、予防、ケア、回復、リハビリテーション、社会への再統合に向けての努力をすること 薬物使用者の人権の尊重 それまでの処罰一辺倒だったアプローチから、予防、治療、教育、福祉などのヒューマンサービスを重視する公衆衛生的なアプローチへの大転換 一方わが国では 世界的に見ると10年以上遅れた時代錯誤の対処 フィリピンですら、薬物使用だけで刑務所に入れられることはない どの国も薬物使用と薬物密造・密売などは厳密に区別をしており、後者に対しては、厳しい罰が加えられる よくある誤解は、非犯罪化(多くは非刑罰化)と合法化を混同してしまうこと ほとんどの国でなされているのは、非刑罰化である 国連条約でも違法薬物は大麻も含め、法律で規制すべきであるとされているし、その使用は犯罪であることには変わりがない 松本俊彦 「覚せい剤の乱用文化は日本起源だった 国立精神・神経医療研究センター 薬物依存症 松本俊彦(3)」 日本における薬物依存症の治療と研究のパイオニアである松本俊彦先生の研究室に行ってみた 覚せい剤、つまりアッパー系の元気が出るいけない薬物は、ほとんど日本独自の乱用文化だったんです 1800年代の終わりに東京帝国大学の薬学部の教授が、喘息の薬として開発したものですし、戦前ではうつ病の治療なんかにも使われていました 第二次世界大戦中には、軍需工場で夜通し働かせたり、神風特攻隊の人たちがそれをキメて突っ込んでいったり、軍需品として使われました。戦争が終わってその軍需品が放出される中で、ヒロポンっていう商品名で流通して、小説家とか新聞記者とか学生みたいな人たちの中で、寝ずに仕事できる、勉強できる薬として広がりました 欧米なんかでは、大麻、ヘロインなどの麻薬など、ダウナー系のボーッとするもののほうが人気があった アメリカでは1980年代なかばから、まずはコカインが流行し、それよりももっと安くて効きが強いメタンフェタミン、覚せい剤が西海岸を中心に広がりました 覚せい剤も「アブリ」で使えるものが逆輸入されてきた 今や、覚せい剤は、日本の薬物乱用の中でもトップ 覚せい剤取締法が制定される時期、法曹関係の偉い人や政治家の人たちのなかにも『おれも昔、受験勉強のときにヒロポン使ってたよ』とかいう人もいて、少し甘くなっていたと思います 薬物依存の治療って人気がなかった 大学医局の誰もが依存症の専門病院に行きたがらなくて、これじゃ決まらないということで、じゃんけんを提案したら、提案した私が負けてしまったっていう経緯 誰も薬も酒もやめないし、みんな嘘つきばっかりだし、本当に憂うつになって、嫌々診療してました。それを、見かねた患者さんが、自助グループのオープンミーティングというのに誘ってくれたのが転機でした 参加してみると、回復者として自助グループのスタッフが、自分の体験を話すんですよ。それを聞く限り、今は回復している人たちが、自分が手を焼いている患者よりもはるかにたちの悪い患者だったって分かったんです。『え、こんな悪いやつが、変わるの?』って興味深く思ったのがひとつ 人間の一番人間らしいところをグロテスクに集めた病気なんじゃないかって 全国的に校内暴力が吹き荒れた時期 依存症の専門病院に赴任したときには、『ああ、中学時代のあの動物園状態に戻っちゃった』と思ったんだけれど、逸脱してしまった人たちへの関心はずっとあったんです 「「依存症で失ったもの」は治療で取り戻せる 国立精神・神経医療研究センター 薬物依存症 松本俊彦(4)」 初診からわずか3カ月後にどのくらい通院を続けているか 3割だけなんです。7割がもう通院をやめてた 交通機関を乗り継いで、長い時間待って、金を払って、説教を受ける ここで、通院できた3割の人が、「褒められにくる」というのが象徴的だ。 褒められる、つまり、「ドーパミンがドバーッと出る」ような状態を薬物で得てきた人たちが、医師に褒められることを目的に通ってくる。それは、ある意味、治療の一つの形かもしれない 薬物をやめられなくても通えるプログラム アメリカの西海岸のマトリックス・モデルという外来治療プログラム コカインや覚せい剤依存症を対象にしたもので、外来であることと、グループワークを重視した認知行動療法的なアプローチを取るのを特徴 、松本さんが開発した「SMARPP(スマープ)」 罰は効かない、説教も効かない。むしろ、「やっちゃった」人には「よく言ってくれたね」とハグを 認知行動療法による薬物依存症治療プログラム 全部で24セッションに分かれていて、それを週1回でやれば、半年間は通わなきゃいけない その半年、逆に我々は援助の関係の中に彼らを引きとめることができる 読み合わせていくことが前提 ワークブックの読み合わせ、勉強会が、そのまま患者を支援の場に引き止める役割を持っている プログラムの中で、あたたかい雰囲気に包まれて、気が楽になって、また来たいと思ってもらえればいいんです かつて有効な治療法がないと言われていた薬物依存症だが、今、突破口が見えてきた段階 グループ療法の場には、実は回復支援グループの人も副司会者として入ってもらいます。薬剤使用から回復した人たちです ここまで来ると医療ではなく、地域のサポートだ。それらがシームレスにつながることが、治癒にとって大事になる なんとか治療と地域のサポートをつなげる 医療の専門家がむしろ「間口を広げる」ことが主な役割だと自認する
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防衛問題(その11)(変わる防衛政策 日本は 「矛」を持つべきなのか 日本に厳しい条件を突きつける米トランプ政権、コマツが装甲車輌から引かざるを得ない理由 防衛装備庁 陸幕ともに認識は甘かった) [国内政治]

昨日に続いて、防衛問題(その11)(変わる防衛政策 日本は 「矛」を持つべきなのか 日本に厳しい条件を突きつける米トランプ政権、コマツが装甲車輌から引かざるを得ない理由 防衛装備庁 陸幕ともに認識は甘かった)を取上げよう。

先ずは、政治評論家の田原 総一朗氏が昨年12月28日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「変わる防衛政策、日本は 「矛」を持つべきなのか 日本に厳しい条件を突きつける米トランプ政権」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/122000032/122600101/
・『12月18日に防衛計画の大綱が発表され、大きな反響が出ている。 今回の中期防衛力整備計画に盛り込まれたうち、最も注目されるのは、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型護衛艦を空母化し、米国製ステルス戦闘機F-35BライトニングIIを離発着させることだ。 これまで日本は、憲法上「専守防衛」を安全保障の基本方針としてきた。つまり、敵に攻撃された時、日本は「盾」となって守り、米国が「矛」となって反撃するということだ。 そのため日本は、攻撃用の船を持たないとしてきた。また、船にヘリコプターを搭載しても、戦闘機は乗せなかったのである。 ところが今回の中期防では、F-35Bという戦闘機を投入することになった。これは明らかに攻撃を意識している。従来の専守防衛を大きく逸脱する可能性があるということだ。一部のメディアは、日本はついに専守防衛をすでに超え、大変な事態となった、と指摘している。 僕はこの問題について、自民党の中堅以上の議員ら7~8人に意見を求めた。すると、「問題あり」だという答えは一つも出なかったのである。防衛問題に関心を持つ文化人らにも話を聞いたが、はっきりと「問題がある」と答える人はごく少数だった。 「専守防衛はいいけれど、日本も米国に協力しながらも自国で国防の役割をするのは当然ではないか」という意見が勝っている。個々の防衛手段がとれるからこそ、他国からの攻撃の抑止力にもなり得るのではないか、という意見が増えているのである』、防衛問題では、安倍首相のみならず、自民党、さらには「防衛問題に関心を持つ文化人」まですっかりタカ派になり、「専守防衛」の原則は吹っ飛んでしまったようだ。
・『戦えない軍隊だったからこそ、日本は平和だった  少し前はまったく状況は違っていた。 例えば、竹下登氏が首相になった時のことだ。僕は竹下氏に、「日本には自衛隊というものがあるけれど、戦えない軍隊じゃないか。それでいいのか」と尋ねたことがある。すると竹下氏は、「だからいいんだ。戦えない軍隊だから、日本は平和なんだ」と答えた。 軍隊というものは、戦えるならば戦ってしまう。太平洋戦争が始まったきっかけも同じである。 戦争を知る世代の総理大臣は、「軍隊というものは、仮に勝てなくても、戦えるなら戦ってしまう」ことをよく分かっていた。戦えない軍隊だからいいんだ、と考えていたのである。これは竹下氏のみならず、歴代総理大臣である宮沢喜一氏、田中角栄氏、小泉純一郎氏も同様の意見を持っていた。 日本は対米従属だが、その代わりに憲法9条を盾にして、70年以上戦争に巻き込まれるのを回避してきた。だからこそ、戦後のほとんどが自民党政権だったが、歴代首相は誰も改憲を掲げなかった。 ところが冷戦が終結し、徐々に日本国内で「自立論」が広がり始めた。冷戦時では、日本の敵はソ連だった。日本が戦って勝てるわけがないから、米国に守ってもらう必要があり「対米従属論」の姿勢が支持されていた。 冷戦後、特にリベラル派は「もうその必要はなくなり、自立すべきではないか」といった意見を主張し始めたが、一方で正反対の見方も強まった。日本はこれまで米国の防衛力に依存してきたが、米軍は日本から撤退する可能性もある、という見方だ。この立場からは、日本は対米関係を今まで以上に密にしなければならないのではないか、となる。こうして「米国からまともに相手にされる国になるべきだ」との意見が出始めたのである。 こういった意見を強く主張したのは保守系の学者たちであった。さらには保守系のメディア、自民党も同様である』、「戦争を知る世代の総理大臣は、「軍隊というものは、仮に勝てなくても、戦えるなら戦ってしまう」ことをよく分かっていた」、安倍首相にはこうした自己抑制的な認識は皆無なのでろう。「米国からまともに相手にされる国」になろうとしても、アメリカ・ファーストを掲げたからには、「まともに相手に」してくれる保証は全くなくなった筈だ。
・『トランプ政権から、米国の日本に対する要求が変わった  保守系の学者や自民党の目標は、集団的自衛権の行使を容認することだった。安倍晋三首相は2015年5月にこれを実現した。さらにその後、16年の参議院総選挙で、改憲勢力は3分の2議席を獲得した。 僕はこの年の9月、安倍首相と直接会って話をした。「そろそろ憲法改正か」と話すと、こんなことを言われた。「大きな声では言えないが、実は、憲法改正をする必要がなくなった」。 なぜかと聞くと、「集団的自衛権の行使ができない時は、米国から相当な圧力があり、日米関係が危なくなるリスクがあった。ところが安全保障関連法が施行されて集団的自衛権を行使できるようになると、米国は何も言ってこなくなった。米国は、これで満足したから、憲法改正をする必要はなくなった」と話した。 オバマ政権までは、確かに安倍首相の言うように、米国は集団的自衛権の行使容認だけで納得していたようだ。 しかし、トランプ氏が大統領に就任すると、流れが大きく変わる。次から次へと高い兵器の購入を迫った。さらにトランプ氏は、「日本の防衛費はGDP比1%となっているが、2%に引き上げるべきだ」と主張してきた。 特に最近は、マティス国防長官の辞任を発表した。彼はトランプ氏の唯一の「抑止力」だった。米政権は12月19日、シリアからの米軍の完全撤退を宣言。さらには今後、アフガンからも撤退する可能性もあるという。とんでもない話である。下手をすれば、韓国からも撤退する可能性すらある。 日本に対しては、貿易や軍事に対し、強いプレッシャーをかけている。ここで日本はどうすべきか。非常に大きな問題である』、安倍首相が、集団的自衛権の行使を可能にしたことで、「実は、憲法改正をする必要がなくなった」と認識しているとは、道理で最近、余り改憲を叫ばなくなった筈だ。
・『日米貿易交渉は、極めて厳しいものになるだろう  もう一つ、大きな問題がある。 19年1月以降に行われる日米貿易交渉において、米政府が対日要求事項22項目を正式に公表した。日本政府はこれに対し、「これは物品貿易協定(TAG)である。サービスなどを含む自由貿易協定(FTA)ではない」と強調している。 TAGとは、モノの貿易に限るという意味であるが、米国が公表した項目を見る限り、情報通信、知的財産、金融サービスも含まれている。これは明らかにTAGではなくFTAである。 交渉は日本にとって相当厳しいものになるのではないかと思われる。19年には大きな問題になるだろう』、安倍首相がいくら「トランプのお気に入り」とはいえ、手加減せずに攻め込んでこられるだろう。その時には安倍首相はどんな顔をするのだろう。

次に、軍事ジャーナリストの清谷 信一氏が3月4日付け東洋経済オンラインに寄稿した「コマツが装甲車輌から引かざるを得ない理由 防衛装備庁、陸幕ともに認識は甘かった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/268241
・『世界2位の建機メーカーで、自衛隊向けに砲弾や装甲車輌を生産してきたコマツが、装甲車輌の開発、生産から事実上撤退する。新規開発は行わないが、既存の装甲車輌の保守だけは一定期間行う旨をコマツ広報担当者は説明している。複数の防衛産業関係者、陸上自衛隊(陸自)将官OBらによると、天下りの将官も1名を除いて全員解雇したという』、「天下りの将官も1名を除いて全員解雇」とはずいぶん早手回しのようだ。
・『コマツが撤退に至った理由  筆者は2014年に本サイトの記事「コマツが防衛事業から撤退すべき5つの理由」で、コマツの特機(防衛)部門の問題点を指摘していた。 コマツは防衛省の7番目に大きな装備サプライヤーであり、平成30(2018)年で280億円である。だがコマツの売り上げは約2.5兆円、防衛部門の売り上げはその1.1パーセントに過ぎない。かつてはその3分の2が榴弾や戦車砲弾などの弾薬であり、装甲車の売り上げは3分の1程度であったが、近年は装甲車輌の売り上げが落ち込んでいた。 軽装甲機動車は近年の排ガス規制によって改良が必要となり、防衛省はコマツに対して改良を発注し、平成28年の2016年度予算では改良型6輌が3億円で要求された。単価はそれまでの約3000万~3500万円から5000万円へと、約1.5倍に高騰した。このため財務省が難色を示して政府予算に計上されなかった。そもそもこの手の小型4輪装甲車の国際相場は1000万円程度である。コマツ、防衛装備庁、陸幕の認識が甘すぎたとしか言いようがない。 その後、エンジンをカミンズ社のエンジンに換装するなどしてコスト削減を図るなどの案も検討されたが、採用されなかった。またコマツは自社ベンチャーで軽装甲機動車6輪型も開発していたが、これまた陸自には採用されなかった。 さらに現用の陸自の96式装甲車の後継となるべき8輪装甲車、「装輪装甲車(改)」の調達も頓挫した。これは三菱重工業との競作となり、コマツが試作を受注したものだった。だが防衛省は昨年7月27日、「装輪装甲車(改)」の開発事業の中止を発表した。コマツが、同省の求める耐弾性能を満たす車輌を造れなかったためとされている。だが関係者によると機動力などを含めてかなり問題があったようだ。コマツの開発関係者OBは、「コマツは独自技術の開発よりも外国からの技術導入に頼ったことによる技術力の低下が一因」と分析する。 「装輪装甲車(改)」および軽装甲機動車の改良型の不採用が重なり、今後コマツは装甲車輌の生産ラインの維持ができなくなった。なお陸自は軽装甲機動車と高機動車を統合した後継車種の調達を計画している。これにコマツは応じる気はなく、三菱重工や自動車メーカーなどが興味を示している。 今後、コマツが唯一生産を続けるのはNBC偵察車のみである。NBC偵察車はこれまで20輌ほどが調達されたが、これも実は防弾性能に問題があり、また高額である。調達されるのは最大でも30輌程度、実際には20輌も調達されないだろう。これまで平均年に2~3輌が調達されており、このペースであればこれまでの規模のラインは当然維持できず、工芸レベル、町工場レベルの生産となる。これではこれまでの生産ラインを維持できない。 コマツの装甲車の開発能力は高くない。それはひとりコマツのみならず、防衛省、陸上自衛隊の側の当事者意識および能力の欠如が原因である。 例えば軽装甲機動車の防弾能力は紛争地でゲリラなどが多用するライフルで使用される、7.62×39ミリカラシニコフ弾に耐えられればよいとされており、より強力な7.62×51ミリNATO弾および7.62×54ミリロシアン弾には耐えられない。 これはNATO規格のレベル1の防御力すら満たしていないことを意味する。しかも被弾時に装甲内面が剥離して乗員を傷つけるのを防ぐスポールライナーは経費がかかると省略された。当初左右のドアのガラスも防弾ガラスではなく、車内の騒音もひどい。しかも不整地走行能力が低く、軍用装甲車のレベルにない。技術のレベルとしては1970年代の装甲車である。 率直に言って、トルコやUAE(アラブ首長国連邦)など途上国の装甲車よりも技術的に相当遅れている。 そもそも4人乗りの小型装甲車をAPC(主力兵員輸送車)としているような軍隊は世界にはない。8人の分隊が2つに分かれる上に、固有の無線機も機銃も装備していないので分隊長が分隊をまともに把握・指揮できない。下車戦闘の場合は乗員も全員が下車戦闘するので、車輌の機動および、火力支援が得られない。陸幕は発注側としてまともな運用構想も要求仕様も書けなかった。発注の能力が低ければメーカーの能力も相応に低くなるのが当然だろう』、兵員輸送車などは世界各地で頻繁に開催される武器展示会に出品され、防衛省の武官・文官とも出張して見学し、最近の戦闘技術も研究している筈なのに、「陸幕は発注側としてまともな運用構想も要求仕様も書けなかった」、とは開いた口が塞がらない。メーカーの能力は、高く武器輸出も検討されていると一般には報道されてきたのに、実態は途上国よりも劣っているとは、情けない限りだ。守るべき国産技術などないのであれば、高くつく国産での調達から、輸入に切り替えるべきだろう。
・『弾薬は発注数が半減する  弾薬ビジネスも安泰ではない。先に発表された来年度からの防衛大綱は現大綱を引き継ぎ、「戦車及び火砲の現状(平成30年度末定数)の規模はそれぞれ約600両、約500両/門であるが、将来の規模はそれぞれ約300両、約300両/門とする」としている。 つまり、コマツの弾薬は将来的に単純計算で売り上げが半減することが予想される。またコマツは榴弾砲などの精密誘導砲弾の研究を行っていたが、これを中止した。 現在、陸上自衛隊は榴弾砲、迫撃砲に精密誘導砲弾を導入していないが、将来これらを導入することになるだろう。人民解放軍や途上国ですら導入しているからだ。そうなれば当然、精密誘導砲弾は輸入品になる。しかもこれらは通常砲弾の数倍の値段なので、国内の通常弾薬の調達予算はさらに減ることになり、当然コマツの弾薬ビジネスの売り上げは減少するだろう。そうなれば弾薬の製造ラインの維持は極めて困難だ。 近年、財務省は国内の弾薬メーカーの数が多すぎることによる調達コストの高さを批判しており、弾薬メーカーの再編を提案している。これらのことからコマツは近い将来、防衛産業から完全に撤退する可能性が高いと筆者は考えている』、ミサイルが中心の戦闘で、精密誘導砲弾の意味がどれほどあるのは疑問だが、いまだにこれを導入していないとは驚かされた。東富士演習場での大演習とは、旧式兵器のオンパレードだったとは、招待されて見学する各国武官たちも苦笑いしていることだろう。
タグ:竹下登 東洋経済オンライン 軽装甲機動車 日経ビジネスオンライン 防衛問題 防衛計画の大綱 田原 総一朗 自由貿易協定(FTA) NBC偵察車 清谷 信一 アメリカ・ファースト (その11)(変わる防衛政策 日本は 「矛」を持つべきなのか 日本に厳しい条件を突きつける米トランプ政権、コマツが装甲車輌から引かざるを得ない理由 防衛装備庁 陸幕ともに認識は甘かった) 「変わる防衛政策、日本は 「矛」を持つべきなのか 日本に厳しい条件を突きつける米トランプ政権」 最も注目されるのは、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型護衛艦を空母化し、米国製ステルス戦闘機F-35BライトニングIIを離発着させることだ 「専守防衛」を安全保障の基本方針 敵に攻撃された時、日本は「盾」となって守り、米国が「矛」となって反撃するということだ 攻撃用の船を持たないとしてきた 従来の専守防衛を大きく逸脱 「専守防衛はいいけれど、日本も米国に協力しながらも自国で国防の役割をするのは当然ではないか」という意見が勝っている 戦えない軍隊だったからこそ、日本は平和だった 戦争を知る世代の総理大臣は、「軍隊というものは、仮に勝てなくても、戦えるなら戦ってしまう」ことをよく分かっていた 米軍は日本から撤退する可能性もある 「米国からまともに相手にされる国になるべきだ」 トランプ政権から、米国の日本に対する要求が変わった 集団的自衛権を行使できるようになると、米国は何も言ってこなくなった。米国は、これで満足したから、憲法改正をする必要はなくなった 日米貿易交渉は、極めて厳しいものになるだろう 物品貿易協定(TAG) 「コマツが装甲車輌から引かざるを得ない理由 防衛装備庁、陸幕ともに認識は甘かった」 コマツが、装甲車輌の開発、生産から事実上撤退 天下りの将官も1名を除いて全員解雇 コマツが撤退に至った理由 排ガス規制によって改良が必要 単価はそれまでの約3000万~3500万円から5000万円へと、約1.5倍に高騰 この手の小型4輪装甲車の国際相場は1000万円程度 財務省が難色を示して政府予算に計上されなかった 軽装甲機動車6輪型 開発事業の中止を発表した。コマツが、同省の求める耐弾性能を満たす車輌を造れなかったため コマツは独自技術の開発よりも外国からの技術導入に頼ったことによる技術力の低下が一因 防弾性能に問題があり、また高額 軍用装甲車のレベルにない。技術のレベルとしては1970年代の装甲車 4人乗りの小型装甲車をAPC(主力兵員輸送車)としているような軍隊は世界にはない 陸幕は発注側としてまともな運用構想も要求仕様も書けなかった。発注の能力が低ければメーカーの能力も相応に低くなるのが当然だろう 弾薬は発注数が半減する 陸上自衛隊は榴弾砲、迫撃砲に精密誘導砲弾を導入していないが、将来これらを導入することに 人民解放軍や途上国ですら導入
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防衛問題(その10)(陸自水陸機動団は“島嶼奪還”部隊ではない 米海兵隊との“共同訓練”を巡る何重もの誤解、なぜ日本は アメリカによる「核ミサイル配備」を拒否できないのか 理由は岸が結んだ「密約」にあった、「いずも空母化」は自衛隊の要望ではなく実は「自民党主導」だった ついに「政治主導」の防衛政策が前面へ) [国内政治]

防衛問題については、昨年10月26日に取上げた。今日は、(その10)(陸自水陸機動団は“島嶼奪還”部隊ではない 米海兵隊との“共同訓練”を巡る何重もの誤解、なぜ日本は アメリカによる「核ミサイル配備」を拒否できないのか 理由は岸が結んだ「密約」にあった、「いずも空母化」は自衛隊の要望ではなく実は「自民党主導」だった ついに「政治主導」の防衛政策が前面へ)である。

先ずは、戦争平和社会学者の北村 淳氏が昨年10月18日付けJBPressに寄稿した「陸自水陸機動団は“島嶼奪還”部隊ではない 米海兵隊との“共同訓練”を巡る何重もの誤解」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54408
・『陸上自衛隊水陸機動団は10月2日から11日にかけて、フィリピンで開催された米比共同訓練「カマンダグ」における人道支援・災害救援(HA/DR)活動のための水陸両用作戦訓練に参加した。(筆者注:カマンダグに参加していた水陸機動団隊員2名が10月2日に現地で交通事故に巻き込まれ、うち前原傑2等陸曹 [1等陸曹に特別昇任] は6日に死亡した。謹んで哀悼の意を表します。) また、その後の10月14日、鹿児島県の種子島で、陸自水陸機動団(陸自第1ヘリコプター団、海自輸送艦「おおすみ」も参加)はアメリカ海兵隊(海兵隊員10名が参加)とともに“島嶼奪還”のための“共同訓練”を実施した』、10月に2回も共同訓練とは熱が入っているようだ。
・『米比の水陸両用作戦共同訓練「カマンダグ2」  アメリカ軍とフィリピン軍による共同訓練である「カマンダグ」(海の戦士たちの連携)は2017年にスタートした。2016年まで長年にわたって実施されてきた米比共同水陸両用上陸作戦訓練(PHIBLEX)に代わる米比水陸両用作戦共同訓練である。 2回目となる本年の「カマンダグ2」には、アメリカ海兵隊(第3海兵旅団、第31海兵遠征隊から抽出した部隊)、フィリピン海兵隊、フィリピン空軍、佐世保を母港としているアメリカ海軍ドック型揚陸艦「アッシュランド」(満載1万6883トン、海兵隊員400名と36輛のAAV7、あるいは4隻のLCAC、などを積載可能)、フィリピン海軍「ダバオ・デル・スル」(満載1万1583トン、海兵隊員500名と2隻の汎用揚陸艇などを積載可能)、それに陸上自衛隊の水陸機動団が参加した。 アメリカ海兵隊、フィリピン海兵隊、陸自水陸機動団それぞれの部隊は洋上の揚陸艦から「AAV7」(水陸両用兵員輸送軽装甲車)で海岸に上陸し、反対にAAV7で揚陸艦に帰還する訓練が実施された。このようなAAV7による上陸訓練の他に、日米共同訓練では上陸部隊による大規模災害を想定したHA/DR活動訓練が行われた。また、米比共同訓練としては、上陸訓練やHA/DR訓練に加えて実弾を用いての対テロ掃討訓練も実施された。 自衛隊は、揚陸艦から海岸線に到達する道具の1つであるAAV7を手にしたものの、AAV7や上陸部隊を積載して作戦目的地沖合まで運搬する揚陸艦をいまだ手にしていない。だからこそ、アメリカ海軍揚陸艦に海兵隊とともに乗り込み、揚陸艦からAAV7を発艦させたり揚陸艦に帰還したりする訓練は、自衛隊にとってこの上もなく貴重な機会である。陸自水陸機動団は、海上自衛隊が揚陸艦を装備するまでの期間、アメリカ海軍揚陸艦をはじめとする各国の揚陸艦に乗り込んで少しでも多くの経験を積みノウハウを身につけなければ、せっかく手に入れたAAV7が宝の持ち腐れとなってしまうであろう』、「AAV7を手にしたものの・・・作戦目的地沖合まで運搬する揚陸艦をいまだ手にしていない」、のであれば「宝の持ち腐れ」だ。
・『誤解されている水陸機動団  フィリピンでの水陸両用訓練と違い、種子島での水陸両用訓練では、自衛隊が揚陸艦を保有していないこともあり、海上自衛隊輸送艦「おおすみ」からCRRC(戦闘強襲偵察用舟艇)と呼ばれるゴムボートに水陸機動団隊員たちが乗り込んで海岸に上陸したり、陸自輸送ヘリコプターから水陸機動団隊員とアメリカ海兵隊員たちが作戦目標地点に降下して、敵が占拠している飛行場を取り戻すという、いわゆる“島嶼奪還”作戦の訓練が行われた。 日本での水陸機動団の訓練は「島嶼防衛」を標榜せざるを得ない事情がある。そもそも水陸機動団を発足させる時点で、尖閣諸島をはじめとする南西諸島方面への中国の軍事的脅威から日本の島嶼を防衛することを表看板に掲げているからだ。 それだけではない。日本ではメディアや政府そして防衛当局自身の水陸両用作戦に対する認識の浅さから、「水陸両用作戦」を「上陸作戦」と混同し、「島嶼防衛」を「島嶼奪還」と混同してしまう傾向が極めて強い。 そのため、水陸両用作戦を表芸とする水陸機動団は、あたかも「島嶼防衛」の中核部隊、「島嶼奪還」作戦に投入される部隊、「上陸作戦」のためのエリート部隊とみなされてしまいがちである。それだからこそ、水陸機動団の訓練は必ずといってよいほど“島嶼奪還”訓練という報道がされている有様だ』、これは「認識の浅さ」からではなく、世論対策上、都合がいいからなのではなかろうか。
・『これで「日米共同訓練」?  さらにおかしなことには、陸上自衛隊220名にアメリカ海兵隊10名が加わって実施された種子島での“島嶼奪還訓練”を、日米同盟の強化状況を中国側に誇示する効果を狙った“日米共同訓練”とみなすような報道がなされている。だが、それは認識が甘いと言わざるを得ない。 数百名単位のアメリカ海兵隊員とフィリピン海兵隊員それに米比双方の航空機や米海軍揚陸艦「アッシュランド」とフィリピン海軍揚陸艦「ダバオ・デル・スル」が参加しての「カマンダグ」は名実ともに米比共同訓練といえる。しかし、わずか10名のアメリカ海兵隊員が参加しただけの訓練を“日米共同訓練”と称することには大きな疑問符が付く。 ようやく水陸両用作戦に特化した水陸機動団が発足した日本と違い、かねてより中国海軍は海兵隊組織(中国海軍陸戦隊)の構築に努力を傾注してきた。そして、アメリカ海兵隊のドクトリンはもとより、現代の水陸両用作戦に関する知見もかなり蓄積していると考えられている。そんな中国海軍陸戦隊や中国海軍にとって、わずか10名しかアメリカ海兵隊員が参加していない“日米共同訓練”をもってして日米連携の強化を謳っても、威圧にはほど遠いことはもとより「米海兵隊の虎の威を借る」効果すら生じない』、これでは、中国海軍の物笑いの種にしかならないだろう。そこまでして、“日米共同訓練”を装ったというのは、自衛隊側の自己満足以外の何物でもないだろう。
・『“展示訓練”用の強襲上陸作戦  何よりも問題なのは、水陸機動団による水陸両用作戦の訓練に「島嶼奪還」というタイトルを付す風潮である。 現代の水陸両用作戦環境では、水陸機動団が島嶼防衛作戦に何らかの形で投入される余地はないわけではないが、AAV7やCRRCそれにヘリコプターやオスプレイで敵が占領した島嶼に着上陸(すなわち強襲上陸)して敵占領部隊を排除し島嶼を取り戻す島嶼奪還作戦は、水陸両用作戦を「派手に宣伝する」ための展示訓練だけのシナリオといっても過言ではない。 それにもかかわらず、水陸両用作戦の訓練を“島嶼奪還”訓練と繰り返し宣伝しているようでは、日本国防当局の水陸両用作戦に対する理解のなさ、というよりは日本国防当局には“まとも”な島嶼防衛戦略が欠落していることを中国軍当局や国際社会に向かってさらけ出しているのと同じである。 日本国防当局そして日本のメディアは、「水陸両用作戦」と「上陸作戦」の混同、「島嶼防衛」と「島嶼奪還」の混同を排除する努力をすべきであろう・・・』、』、これは前述のように、日本国防当局は理解しているが、国内世論向けにあえて「混同」しているだけなのではなかろうか。ただ、中国に馬鹿にされるとしたら、本当に「馬鹿な話」だ。

次に、書籍情報社代表の矢部 宏治氏が11月2日付け現代ビジネスに寄稿した「なぜ日本は、アメリカによる「核ミサイル配備」を拒否できないのか 理由は岸が結んだ「密約」にあった」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58278
・『 「終戦宣言」へと向かう朝鮮半島。一方、中距離核ミサイル(INF)の全廃条約破棄を宣言したアメリカ。一見、矛盾するように見えるこの動きは、実は同じコインのウラとオモテなのだと、ノンフィクション作家の矢部宏治氏は指摘する。このままでは、朝鮮半島から米軍が撤退する代わりに、日本に米軍の核ミサイルが配備されてしまう可能性が非常に高いというのだ。 10万部を突破したベストセラー『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』で、アメリカとの異常な従属関係の本質を解き明かした矢部氏が、最新作『知ってはいけない2——日本の主権はこうして失われた』(11月14日発売予定)で新たに描き出したのは、世界中の国のなかでなぜ日本だけが、そうした異常なアメリカの軍事支配から抜け出せないのかという戦後日本〝最後の謎〟だった――』、謎解きが楽しみだ。
・『主権の回復へ向かう韓国と、状況が悪化する日本  1年前には誰も予想できなかったことだが、今年の3月、突然朝鮮半島で劇的な南北の緊張緩和が始まり、6月には歴史的な米朝首脳会談も行われた。平和条約締結へのタイムテーブルはまだわからないが、「終戦宣言」そのものは、いつ出されてもおかしくない状況となっている。 一方、先月〔10月〕の20日、アメリカのトランプ大統領は、約30年間続いたロシアとの中距離核ミサイル(INF)全廃条約の破棄を表明した。 私のような日米の軍事上のウラの取り決めばかりを見ている人間からすれば、一見、矛盾するように見える、この2つの動きの意味するところは明らかだ。 つまり、スピードはどうあれ、すでに制空権を失い、反米軍基地運動も強力な韓国から、やがて米軍は撤退していく。その過程で、日本にとって「対米従属の最後のお友達」だった韓国の国家主権も、しだいに回復していくことになるだろう。 しかしその一方、日本の状況は悪化する。同じく制空権を失った、すべての自衛隊基地と米軍基地のあいだで共同使用が進み、そこにやがて対中国・ロシア用の中距離核ミサイルが配備されることになる。そして米軍の主要部隊はグアムその他へ撤退するが、「共同基地」に配備された核ミサイルの発射ボタンは米軍が握り続けるのだ……。 たんなる悪夢だと思われるだろうか。そうではない。すでに何十年も前から、「全自衛隊基地の米軍共同使用」と「日本の陸上基地への核ミサイルの配備」は、アメリカの軍産複合体が具体的な目標としてきた現実なのだ。日本国民の抵抗が弱ければ、必ず実現するだろう。 なぜ韓国にできる国家主権の回復が、日本にだけはできないのか。最新刊『知ってはいけない2——日本の主権はこうして失われた』を書く過程でわかったことだが、その最大の原因は、現在の安倍首相の祖父である岸首相が「安保改定」で結んだ「3つの密約」にあったのである』、鍵を握る岸密約とは何なのだろう。
・『岸が結んだ密約中の密約「討議の記録」  みなさんは「討議の記録」という密約文書について、聞いたことがあるだろうか。 これは安保改定時に岸政権がアメリカ政府と結んだ、「密約中の密約」といっていいほど重要な超極秘文書(藤山外務大臣がサインした)なのだが、おそらく普通の人はほとんどその名前さえ知らないだろう。 戦後日本における圧倒的な米軍従属体制(いわゆる「安保村」)のなかで、この密約文書は50年ものあいだその存在を隠蔽され続け、いまからわずか8年前(2010年)になってようやく「文書の存在」そのものは公認されたものの、その後も外務省から「こんな文書に効力はない」と、その法的有効性を否定され続けているからだ。 現在も、日本のほとんどの有識者たち(大学教授、官僚、メディア関係者)が、この外務省の説明を疑わずに信じている。その意味で、やはり「戦後日本(=安保村)」における社会科学の知的レベルは、世界一低いと言っていいだろう。 いかなる形態の文書であれ、外務大臣がサインした文書に法的拘束力があることなど、日本以外の国では高校生でも知っている事実だからである(「条約法に関するウィーン条約」第2条・7条・11条他を参照)』、「外務大臣がサインした」にも拘らず、外務省が「その法的有効性を否定」してきたというのは驚くべき二枚舌だ。野党は一体、何をしていたのだろう。
・『「討議の記録」に書かれた驚くべき内容  ここでその「討議の記録」という密約文書の驚くべき内容を、ごく簡潔に紹介しておこう。 1960年1月6日、安保改定の調印(同19日)から約2週間前、岸政権の藤山外務大臣とアメリカのマッカーサー駐日大使(有名なマッカーサー元帥の甥)によってサインされたその文書には、次の4つの密約条項が明記されていた(以下、著者による要約。〔 〕内は補足説明部分)。 A〔日本の国土の軍事利用について①〕:「核兵器の地上配備」以外の、兵器に関する米軍の軍事行動については、日本政府との事前協議は不要とする B〔他国への軍事攻撃について①〕:日本国内から直接開始されるケース以外の、米軍による他国への軍事攻撃については、日本政府との事前協議は不要とする〔=沖縄(当時)や韓国の米軍基地を経由してから攻撃すれば、問題はない〕 C〔日本の国土の軍事利用について②〕:Aの「核兵器の地上配備」以外で、旧安保条約時代に日本国内で認められていた米軍の軍事行動については、基本的に以前と変わらず認められるものとする D〔他国への軍事攻撃について②〕:米軍の日本国外への移動については、日本政府との事前協議は不要とする〔=一度国外に出たあと、米軍がどんな軍事行動をとろうと日本政府は関知しない〕 いかがだろうか。この4つの密約条項を読んで、「ふざけるな!」と腹の底から強い怒りがわいてくると同時に、「ああ、そうだったのか」と、これまで不思議に思っていたさまざまな出来事の意味が、すっきり腑に落ちた人も多いのではないだろうか。 つまりこれらの密約をまとめると、米軍は日本国内において「事前協議なしでの核兵器の地上配備」以外は、ほぼ何をやってもいいし(上記AとCによる)、事実上、日本の基地から自由に他国を攻撃してもいい(上記BとDによる)ということになるからだ。 さらに、岸首相自身が晩年の回顧録(*)で明らかにしているように、たとえ将来、これまで一度も行われたことのない日米間の「事前協議」が形式上行われたとしても、そこでアメリカ側が日本の陸上基地への核ミサイルの配備を提案したら、日本政府がそれを拒否するケースは最初から想定されていないのである。 (詳しくはあとで述べる『知ってはいけない2――日本の主権はこうして失われた』の第3章・p.137本文と注を読んでいただきたいが、ほぼ間違いなく「緊急時には事前通告により核ミサイルの地上配備を認める」という「沖縄核密約」と同じ密約が、本土についても口頭で結ばれているものと思われる)(*)「条文でどうなっていようと、本当に危急存亡の際、事前に協議して熟慮の結果、拒否権を発動するに決めてノーと言ったからといって、それが日本の安全に効果があるかどうかは議論するまでもないだろう」(『岸信介回顧録―保守合同と安保改定』広済堂出版 )』、何と国辱的な密約なのだろう。これでは独立国とは名ばかりだ。
・『岸が犯した〝最大の罪〟  なぜそのような馬鹿げた状態が、これまで半世紀近くも続いてきてしまったのか。 それには理由がある。安保改定で岸が犯した最大の罪は、この軍事主権を放棄したとんでもない内容の取り決めを、「国民に知らせず結んだ」ことだけでなく、それを「結んだあと、破って捨てた」ということなのだ。 つまり、この「討議の記録」については、すべて民間から登用した「親友」の藤山にだけ責任を負わせ、自分は知らぬ存ぜぬを決め込んで、次の政権(池田政権)にも引き継がなかったのである。 岸が満州時代に述べた有名な「政治哲学」として、「政治資金は、濾過器(ろかき)を通ったきれいなものを受け取らなければいけない」「問題が起きたときには、その濾過器が事件となるので、受け取った政治家はきれいな水を飲んでいるのだから、掛かり合いにならない」という言葉があるが、要するに安保改定において岸は、親友だった「藤山という政治的濾過器」を使って密約の問題を処理したわけだ』、日本の公文書管理の「いい加減さ」がこんな重要文書でまで行われ、後任の首相まで知らないなどというのは、日本はもはや「国」の形を成していないようだ。
・『改ざんされていた外務省の最重要文書  この岸の信じられない行動が原因で、その後、日本の外務省は大混乱に陥り、対米交渉能力を完全に喪失していくことになる。その過程で起こった象徴的な出来事が、今回私が本を書く過程で発見した「外務省における公文書改ざん」事件である。 上の図版を見てほしい。これは外務省が問題の「討議の記録」について、「こんな密約に法的根拠はない」と主張する最大の根拠としてきた極秘文書(「核兵器の持ち込みに関する事前協議の件」)である(*)。 ところがこの「安全保障課y(のちに北米局安全保障課長となる山下新太郎氏)」という記述者名が書かれた4枚の「極秘報告書」の後半(「1」「2」と各パートの冒頭に番号が打たれた「2」の部分)が、突然まったく別人の筆跡になっているのだ。 すでに正式な筆跡鑑定もしたが、「前半(1・2枚め)」と「後半(3・4枚め)」の文字を実際に比べてみれば、それが別人の手によるものであることは、どなたにでもすぐにおわかりいただけるだろう。 なぜ外務省がこんなことをしたかというと、日本国民に対して絶対に明らかにできない「米軍艦船による核兵器の持ち込み」を、「そんなことは絶対に行われていない」と強弁するための隠蔽工作だった。 そしてそうした外務省の論理的な矛盾は、1974年に頂点に達する。というのもこの年、佐藤首相が「非核三原則」でノーベル平和賞を受賞する一方、なんとその前年には、核攻撃用の爆撃機を多数搭載した航空母艦ミッドウェイの「横須賀・母港化」(=これは小規模の核攻撃基地を国内に設置したに等しい行為だ)が実現していたからである。 以後、このあまりに巨大な矛盾をアメリカ側から絶対に公表されたくない外務省が、対米交渉能力を完全に喪失していったのは、極めて当然だったと言えるだろう。 そのため外務省は、2ページめのマンガの3コマめにあるように、「討議の記録」を約半世紀に渡って金庫にしまいこみ、その存在を否定しつづけるしかなかった。 しかしその一方でアメリカは、もともと同じマンガの4コマめにあるように、「討議の記録」の内容を2つに分割した「基地権密約文書」〔=日本の国土の軍事利用についての密約〕と「朝鮮戦争・自由出撃密約文書」〔=他国への軍事攻撃についての密約〕という、2つの密約文書を、「討議の記録」と同じ日に藤山にサインさせ、前者は日米合同委員会、後者は日米安保協議委員会という、安保条約にもとづく密室の協議機関の議事録にそれぞれ編入していた。 その結果、日本人は誰一人その正確な意味を知らない、とんでもない内容の取り決めであるにもかかわらず、「討議の記録」のほとんどすべての内容が、新安保条約・第6条にもとづく正式な日米合意として日米の協議機関に受け継がれ、安保改定で回復したはずの日本の国家主権は、再び激しく奪いとられていくことになったのである。(*)外務省「いわゆる「密約」問題に関する調査結果報告対象文書(35点)の「1.1960年1月の安保条約改定時の核持込みに関する「密約」問題関連」P.84-87参照/ https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mitsuyaku/pdfs/t_1960kaku.pdf』、こんな重大なことが、日本ではいまだに知られていないというのも、野党やマスコミのだらしなさも一因なのだろう。
・『親米路線がもたらす〝大きな危険〟  みなさんもよくご存じのとおり、岸は獄中のA級戦犯容疑者の身から、わずか8年で日本の首相となる過程で、早くからCIAの協力を得ていた政治家だった。そうした異常な環境が、彼の密約についての同じくあまりに異常な行動に関し、どのような影響を及ぼしていたのか。それを短く説明することは、とてもできない。 そこで版元の講談社の許可を得て、その背景を説明した『知ってはいけない2』の第3章を、特設サイトで全文公開することにする(「ウェブ立ち読み」のPDFをご覧ください)。 その本当の経緯を多くの人が正確に理解することが、今後の日本社会の進路と選択を考える上で、非常に重要な意味を持つと思うからだ。 岸を過剰に評価したり、逆にたんなる売国奴として切り捨てることは、おそらくどちらも間違いである。彼が確立した親米路線のなかで、その後日本は大きな経済的繁栄を遂げることになった。 しかしその過程で岸がアメリカ政府やCIAとのあいだで結んだ、国民の知らないあまりに異常な合意が、いま「戦後日本」という国に大きな危険をもたらしている。 なぜなら自国の軍事主権を、完全に他国の手に委ねることは、ほとんど自殺行為に近い暴挙だからだ。少し想像してほしい。 今年の2月までの米朝の軍事的対立期に、もし米軍が日本の基地から北朝鮮を攻撃したら、私たちの未来にどんな悲劇が待ち受けていただろう。もしも、米軍が核兵器の地上配備を行っていたら、私たちはどれほど深刻な危険にさらされていただろう。 軍事主権の放棄とは、戦争を「始める権利」の放棄であると同時に、戦争を「しない権利」の放棄でもある。国家にとってそれほど危険な状態はないのだ。 「朝鮮戦争の終戦」という世界史レベルの変化が起こりつつあるいま、私たち日本人には、かつて自国の首相が結んだ「誤った密約」の存在に真正面から向き合い、「ポスト戦後日本」の行方を正しく選択する大きな歴史的使命が与えられているのである』、幸か不幸か米朝会談はもの別れになり、「朝鮮戦争の終戦」は先に延びたとはいえ、やがてそうした事態になるのは時間の問題だ。いよいよ戦後史の闇がクローズアップにされる日も遠くないだろう。

第三に、東京新聞論説兼編集委員・獨協大学非常勤講師の半田 滋氏が12月19日付け現代ビジネスに寄稿した「「いずも空母化」は自衛隊の要望ではなく実は「自民党主導」だった ついに「政治主導」の防衛政策が前面へ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59052
・『12月18日に閣議決定され、来年度改定される日本防衛の指針「防衛計画の大綱(大綱)」に盛り込まれた「空母保有」が、自衛隊の要望ではなく、自民党案をそっくり取り込んだ「政治主導」の防衛政策だったことが筆者の取材でわかった。 今回、警戒感を示す公明党を押し切り、自民党案が丸ごと大綱に反映されたのは、安倍晋三政権下で「国家安全保障会議」が新設されたことが大きい。大綱原案の策定者が防衛省から国家安全保障会議に移り、主役が防衛官僚・自衛隊制服組から「首相官邸」に代わって、政治主導が前面に出てきたのだ。 空母保有は、海上自衛隊にとって創設以来の夢とはいえ、近年の海上自衛隊は慢性的な予算不足に悩み、護衛艦「いずも」型の空母化に巨額の予算を回す余力はなかった。政治主導で決まった突然の空母保有に、自衛隊は戸惑っているのが実情だ。改修したはいいが、「空母としての使い方はこれから考える」という本末転倒の事態となりかねない』、「防衛計画の大綱」まで防衛省ではなく、政治主導で決まったとは驚きだ。
・『自民党国防部会の有力議員による証言  「防衛計画の大綱」は、概ね10年間の日本の安全保障政策を規定するが、現大綱は2014年度から適用されたものなので、半分の5年間しか持たなかったことになる。 今回、大綱を改定するのは、安倍政権下において制定された、集団的自衛権の行使や戦闘地域での米軍支援などを可能にした安全保障関連法を、大綱に反映させる必要があるためだ。 昨年12月に導入を閣議決定したミサイル防衛システム「イージス・アショア」の装備化、F35戦闘機の追加購入なども次期大綱に明記され、米国製武器の大量購入にお墨付きを与えた。軍事的および経済的な対米支援が打ち出され、その意味ではトランプ米大統領の意向に沿った内容となっている。 中でも、次期大綱の一番の目玉は「空母保有」だろう。 これまで政府は「憲法上、他国に脅威を与えるような攻撃的兵器の保有は許されない」とし、その例として「大陸間弾道弾(ミサイル)、長距離爆撃機、攻撃型空母」を挙げ、これらの保有を禁じてきた。 だが、次期大綱では「短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機を含む戦闘機体系の構築」としてF35B戦闘機の導入を打ち出し、「現有の艦艇からのSTOVL機の運用を可能とするよう、必要な措置を講ずる」として、護衛艦「いずも」型の空母化に踏み切った。 現在、「いずも」が搭載するヘリコプターを戦闘機に積み替えれば、「いずも」はたちまち「攻撃型空母」に変身することになる。 「攻撃型空母」について、岩屋毅防衛相は記者会見で「攻撃に要するさまざまな種類の航空機を常時載せた形で運用される。他国の壊滅的な破壊を可能とするような能力を持ったもの」と説明。さらに「他に母基地がある航空機を時々の任務に応じて搭載するというのは、決して『攻撃型空母』には当たらない」と述べた。 だが、ちょっと待ってほしい。横須賀基地の米空母「ロナルド・レーガン」の戦闘機や電子戦機は、ふだん山口県の岩国基地に置かれ、年2回程度の出航時にのみ空母に搭載される。すると、「ロナルド・レーガン」は「攻撃型空母」ではないのだろうか。 政府部内では「いずも」の空母化をめぐり、「中国が軍事力強化を進める中、沖縄本島より南の離島に自衛隊の航空基地がない。この空白を埋めるため」との理由づけや、「災害派遣に有効」といった耳を疑うような説明がされている。 こうして様々な使い方があることを強調すればするほど、使い方ひとつで「いずも」が「攻撃型空母」になり得ることを証明しているようにみえてくる。 自民党国防部会の有力議員に話を聞いた。空母保有の「言い出しっぺは誰か」との筆者の問いに、この議員は自民党内のある政治家の名を挙げた。 匿名が条件のため、この政治家名を明らかにすることはできないが、この議員は「自民党国防部会で5月にまとめた大綱提言に『空母保有』を書き込んだ。その内容が、今回の大綱に取り込まれて閣議決定された」とも明かし、空母保有が自民党による「政治提言」であることを強調した。海上自衛隊の要望ではなかったのだ』、岩屋毅防衛相の説明では、「「ロナルド・レーガン」は「攻撃型空母」ではない」ことになってしまうのに、これを見逃した記者クラブや野党は情けない限りだ。
・『「空母」を「護衛艦」に言い換え  ここで、改めて大綱策定の手順をみてみよう。 これまでに5回閣議決定された大綱は、いずれも防衛省もしくは防衛庁で原案を策定してきた。しかし、安倍内閣で2013年12月、首相、官房長官、外務相、防衛相の四大臣会合を中心とする国家安全保障会議が設置され、今回の大綱はこの国家安全保障会議と、その事務方にあたる国家安全保障局が策定している。 国家安全保障局には防衛省からの出向者も含まれる。しかし、これまで大綱策定の中心だった防衛官僚や自衛隊制服組は、意見を述べるだけの傍流に追いやられた。 一方で、自民党国防部会は毎回、大綱改定に合わせて提言をまとめてきたが、防衛省が策定する大綱原案にはほとんど反映されることなく、無視されてきた。 例えば、13年12月に閣議決定された現大綱に合わせて同年6月にまとめた自民党提言には「憲法改正と『国防軍』の設置」「国家安全保障基本法の制定」「国防の基本方針の見直し」などが勇ましく打ち出されたが、現大綱には反映されていない。 もし、安倍首相が政権基盤を固め切らない13年時点で「憲法改正と『国防軍』の設置」を大綱に取り込んだとすれば、国会で野党から追及され、防衛省はもちろん安倍首相自身も火ダルマになったことだろう。 だが、首相就任から6年近くが経過し、この間、強硬策を押し通して「安倍一強」と党内外で恐れられるようになった今回は違う。 先の議員は「自民党提言がほとんど大綱に反映された」といい、「自分でもちょっと驚いている」と率直に話した。 安全保障の専門家集団である防衛省が後景に退き、安倍首相の威光をバックにした首相官邸が前面に立って、政治主導を確立させた――。 その意味ではまさに「シビリアン・コントロールの実現」といえるが、残念ながら「シビリアン・コントロール=専守防衛の維持」にはつながりそうもない。それは次期大綱に空母のほか、長射程のスタンド・オフ・ミサイルなど「敵基地攻撃」を可能とする攻撃的な兵器体系の整備が盛り込まれたことから、明らかだ。 大綱提言をまとめるより前の今年3月、自民党国防部会は大綱提言の「骨子」をまとめた。この骨子には「多用途防衛型空母」という呼び名で空母保有が明記されていた。 前出の議員は「『多用途防衛型空母』は世論の動向を探る観測気球だった。『空母』と書いてあるのに、野党もマスコミも拍子抜けするほど無反応だった。これはいけると思った」と明かす。 最終的に、大綱提言では「多用途運用母艦」として「空母」の部分を「母艦」とぼかしたうえ、さらに公明党との与党間協議を経て「多用途運用護衛艦」と、ますます「空母」の印象を弱める呼び名に落ち着いた。 「空母」を「護衛艦」と呼び換えるのは、「敗走」を「転進」と呼び、「全滅」を「玉砕」と言い換えて物事の本質をごまかした旧日本軍と同じではないのか。日本の安全保障政策が内外からの信用を失いかねない、ゆゆしき事態ではないだろうか』、シビリアン・コントロールは情報公開が大前提だ。重大な嘘をつきまくるようでは、天皇の統帥権を隠れ蓑に軍部が好き勝手にやった戦前と何ら変わらない。
・『海自幹部「何も言わない」  何より、当事者であるはずの海上自衛隊が沈黙するのは、予算不足から「いずも」の改修費をひねり出すのが困難なためだ。 現大綱の別表で、護衛艦は54隻とされているが、現有は47隻にすぎない。いつまで経っても54隻に届かないので、18年度防衛費からは護衛艦と掃海艇の機能を併せ持った小型の護衛艦を毎年2隻ずつ建造する一方、30年で退役となる護衛艦の寿命を40年に延ばす「艦齢延伸」も毎年数隻ずつ行っている。 来年度防衛費の概算要求では、航空機、ヘリコプターともたった1機の調達費も計上できなかった。ある海上自衛隊幹部は「ミサイルなど武器類の値上がりと人件費の高騰で、やりくりが難しくなっている」と話し、空母保有については「何も言わない」と口をつぐんだ。 海上自衛隊は1990年代に輸送艦「おおすみ」を建造する際、空母のように甲板が平らな全通甲板とし、艦橋を右舷に寄せて操縦性などを確保した。次には全通甲板を持つヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」を建造。さらに「ひゅうが」型の甲板を51メートル延長して、全長248メートルの広大な全通甲板を持つ「いずも」を建造した。空母型艦艇の完成である。 海上自衛隊の元将官は「護衛艦は30年以上使う。政治の意思がどう変化しても、その変化にこたえられる艦艇でなければならない」という。空母保有にゴーサインが出る「その日に備えてきたのは事実だ」というのだ。 では、どのような場面で海上自衛隊は空母を使うのだろうか。 空母は攻撃には絶大な威力を発揮するものの、自分で自分を守れないほど、相手からの攻撃に対しては弱い。護衛艦や潜水艦による護衛が必要となり、日本防衛の場面ではかえって足手まといになる可能性がある。「空母化すれば抑止力になる」という主張は、より強力な軍事力を持つ相手からすれば噴飯ものだろう。 むしろ空母が役に立つのは、海外において米軍のF35Bのプラットホームとして活用し、日米一体化のシンボルとすることにある――それが政府与党の本当の意図なのではないだろうか。 いずれにしても、活用法はこれからの検討課題である。その意味では「いずも」の空母化は「空母運用の必要性があるから改造する」という当たり前の道筋とは真逆の、「空母化ありき」なのだ。 これをなし崩しのうちに決めたのは自衛隊の制服組でも防衛省の背広組でもなく、限られた数の政治家である。日本はおそろしい国になろうとしている』、これでは、前述のように「戦前」並みの体制回帰だ。「おそろしい国」になりつつあるのに、マスコミも野党も見過ごしているのは残念でならない。
タグ:種子島 シビリアン・コントロール 防衛問題 事前協議 JBPRESS 防衛計画の大綱 現代ビジネス 北村 淳 半田 滋 矢部 宏治 知ってはいけない――隠された日本支配の構造 (その10)(陸自水陸機動団は“島嶼奪還”部隊ではない 米海兵隊との“共同訓練”を巡る何重もの誤解、なぜ日本は アメリカによる「核ミサイル配備」を拒否できないのか 理由は岸が結んだ「密約」にあった、「いずも空母化」は自衛隊の要望ではなく実は「自民党主導」だった ついに「政治主導」の防衛政策が前面へ) 「陸自水陸機動団は“島嶼奪還”部隊ではない 米海兵隊との“共同訓練”を巡る何重もの誤解」 陸上自衛隊水陸機動団 米比共同訓練「カマンダグ」 水陸両用作戦訓練に参加 アメリカ海兵隊(海兵隊員10名が参加)とともに“島嶼奪還”のための“共同訓練”を実施 自衛隊は AAV7や上陸部隊を積載して作戦目的地沖合まで運搬する揚陸艦をいまだ手にしていない 誤解されている水陸機動団 日本での水陸機動団の訓練は「島嶼防衛」を標榜せざるを得ない事情 水陸機動団を発足させる時点で、尖閣諸島をはじめとする南西諸島方面への中国の軍事的脅威から日本の島嶼を防衛することを表看板に掲げているからだ これで「日米共同訓練」? わずか10名のアメリカ海兵隊員が参加しただけの訓練を“日米共同訓練”と称することには大きな疑問符が付く “展示訓練”用の強襲上陸作戦 島嶼奪還作戦は、水陸両用作戦を「派手に宣伝する」ための展示訓練だけのシナリオ 「なぜ日本は、アメリカによる「核ミサイル配備」を拒否できないのか 理由は岸が結んだ「密約」にあった」 「終戦宣言」へと向かう朝鮮半島 朝鮮半島から米軍が撤退する代わりに、日本に米軍の核ミサイルが配備されてしまう可能性が非常に高い 知ってはいけない2——日本の主権はこうして失われた 世界中の国のなかでなぜ日本だけが、そうした異常なアメリカの軍事支配から抜け出せないのかという戦後日本〝最後の謎〟 主権の回復へ向かう韓国と、状況が悪化する日本 すべての自衛隊基地と米軍基地のあいだで共同使用が進み、そこにやがて対中国・ロシア用の中距離核ミサイルが配備 「共同基地」に配備された核ミサイルの発射ボタンは米軍が握り続ける 全自衛隊基地の米軍共同使用 日本の陸上基地への核ミサイルの配備 アメリカの軍産複合体が具体的な目標としてきた現実 岸首相が「安保改定」で結んだ「3つの密約」 「討議の記録」 藤山外務大臣がサイン 外務省から「こんな文書に効力はない」と、その法的有効性を否定され続けている A〔日本の国土の軍事利用について①〕:「核兵器の地上配備」以外の、兵器に関する米軍の軍事行動については、日本政府との事前協議は不要とする B〔他国への軍事攻撃について①〕:日本国内から直接開始されるケース以外の、米軍による他国への軍事攻撃については、日本政府との事前協議は不要とする〔=沖縄(当時)や韓国の米軍基地を経由してから攻撃すれば、問題はない〕 C〔日本の国土の軍事利用について②〕:Aの「核兵器の地上配備」以外で、旧安保条約時代に日本国内で認められていた米軍の軍事行動については、基本的に以前と変わらず認められるものとする D〔他国への軍事攻撃について②〕:米軍の日本国外への移動については、日本政府との事前協議は不要とする〔=一度国外に出たあと、米軍がどんな軍事行動をとろうと日本政府は関知しない アメリカ側が日本の陸上基地への核ミサイルの配備を提案したら、日本政府がそれを拒否するケースは最初から想定されていない 岸が犯した〝最大の罪〟 「結んだあと、破って捨てた」 すべて民間から登用した「親友」の藤山にだけ責任を負わせ、自分は知らぬ存ぜぬを決め込んで、次の政権(池田政権)にも引き継がなかった 改ざんされていた外務省の最重要文書 日本の外務省は大混乱に陥り、対米交渉能力を完全に喪失していく 「核兵器の持ち込みに関する事前協議の件」 「極秘報告書」の後半 が、突然まったく別人の筆跡になっている 佐藤首相が「非核三原則」でノーベル平和賞を受賞 核攻撃用の爆撃機を多数搭載した航空母艦ミッドウェイの「横須賀・母港化」 親米路線がもたらす〝大きな危険〟 岸は獄中のA級戦犯容疑者の身から、わずか8年で日本の首相となる過程で、早くからCIAの協力を得ていた政治家 自国の軍事主権を、完全に他国の手に委ねることは、ほとんど自殺行為に近い暴挙 「「いずも空母化」は自衛隊の要望ではなく実は「自民党主導」だった ついに「政治主導」の防衛政策が前面へ」 大綱原案の策定者が防衛省から国家安全保障会議に移り、主役が防衛官僚・自衛隊制服組から「首相官邸」に代わって、政治主導が前面に出てきた 政治主導で決まった突然の空母保有に、自衛隊は戸惑っているのが実情 米国製武器の大量購入にお墨付きを与えた トランプ米大統領の意向に沿った内容 一番の目玉は「空母保有」 護衛艦「いずも」型の空母化 岩屋毅防衛相 「攻撃型空母」 「攻撃に要するさまざまな種類の航空機を常時載せた形で運用される。他国の壊滅的な破壊を可能とするような能力を持ったもの」と説明 「他に母基地がある航空機を時々の任務に応じて搭載するというのは、決して『攻撃型空母』には当たらない」 「ロナルド・レーガン」は「攻撃型空母」ではないのだろうか 「空母」を「護衛艦」に言い換え 「空母」を「護衛艦」と呼び換えるのは、「敗走」を「転進」と呼び、「全滅」を「玉砕」と言い換えて物事の本質をごまかした旧日本軍と同じ 海自幹部「何も言わない」 空母は攻撃には絶大な威力を発揮するものの、自分で自分を守れないほど、相手からの攻撃に対しては弱い。護衛艦や潜水艦による護衛が必要となり、日本防衛の場面ではかえって足手まといになる可能性 「空母化すれば抑止力になる」という主張は、より強力な軍事力を持つ相手からすれば噴飯もの 活用法はこれからの検討課題 「空母化ありき」 なし崩しのうちに決めたのは自衛隊の制服組でも防衛省の背広組でもなく、限られた数の政治家である。日本はおそろしい国になろうとしている
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日産ゴーン不正問題(その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”) [企業経営]

日産ゴーン不正問題については、2月25日に取上げた。ゴーン氏保釈を踏まえた今日は、(その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”)である。

先ずは、3月11日付けJBPressが転載した新潮社フォーサイトへの経済ジャーナリストの大西康之氏による寄稿「ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡」を紹介しよう。これは、傑作で、必読である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55709
・『日本は再び「ゴーン・ショック」に襲われる。1度目は20年前、フランス・ルノーから日産自動車に乗り込んだカルロス・ゴーン前会長が、ゴーン改革で「系列」に代表される日本企業の古い商慣習を粉砕した。次に破壊されるのは、世界から批判を浴びている日本の「人質司法」だ。ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡である』、2度も「ゴーン・ショック」を引き起こした「ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡である」とは言い得て妙だ。
・『世界に晒された日本の刑事司法  3月6日、逮捕から108日目に保釈されたゴーン被告は、作業服に帽子とマスクという奇妙な姿で東京拘置所から出てきた。だが、メガネの奥の目は鋭さを失っていない。「無罪請負人」の弘中惇一郎弁護士という味方を得て、大反撃を始めるつもりだろう。 「新戦略による初勝利」仏紙『フィガロ』はゴーン被告の保釈を電子版の速報でこう伝えた。監視カメラ設置など、保釈後の証拠隠滅が疑われないような措置を提案したことを「より攻撃的な司法戦略」と評価した。仏紙『ル・モンド』は、日本の裁判所が自白を拒む被告の保釈請求をほとんど認めないとした上で、今回の保釈を「日本の司法制度では異例の決定」と伝えた。 弁護士の立ち会いなしに容疑者を長期間拘留する日本の検察のスタイルは、ゴーン被告の逮捕によって海外にその実態が伝わり、「人質司法」と批判されてきた。 勾留理由開示手続きを巡ってゴーン被告が法廷に現れた時には、『AFP通信』が手錠と腰縄を付けてスリッパ姿で入廷したゴーン被告の様子を事細かに描写し、「7週間に及ぶ東京拘置所での生活が活力を奪った」と批判した。 カルロス・ゴーンという世界的に著名な経営者を逮捕したことにより、前近代的な日本の刑事司法が世界に晒された。裁判所は、こうした海外からの批判を当然、気にしていたはずである』、「人質司法」は「日本の後進性を映し出す鏡」で、日本人として恥ずかしい限りだ。
・『「国連」を持ち出された途端、腰砕けに  そこをうまく突いたのが、ゴーン被告の家族だった。家族は3月4日、ゴーン被告の長期勾留が人権侵害に当たるとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行ったことを発表した。 発表後に記者会見した家族側の弁護士フランソワ・ジムレ氏は、「懲罰的な環境で尊厳を侵害する不当な勾留が続いている。今回の事件は日本の勾留制度を白日の下にさらすことになる」とまくし立てた。 その直後、新たにゴーン被告の弁護を引き受けた弘中惇一郎氏らの弁護団が3度目の保釈請求をすると、裁判所はあっさりこれを受け入れた。検察は「証拠隠滅の恐れがある」と準抗告したが、裁判所に棄却された。ゴーン被告の家族を動かしたのが弘中氏だとしたら、大した策士ぶりである。いずれにせよ日本の裁判所は、「国連」を持ち出された途端、腰砕けになった。 「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」幕末の江戸で流行った誰もが知る狂歌で、カフェインの強い上等なお茶である上喜撰は蒸気船にかけて黒船を意味する。四杯はペリーの黒船が4隻だったことを意味し、たった4隻の黒船で徳川300年の泰平が破られ右往左往する幕府を揶揄した歌だ。日本は「黒船」が来ないと変わらない』、ゴーン被告の家族が「国連人権高等弁務官事務所で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行った」とは初耳だが、上手い高等戦術だ。
・『日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来  刑事司法制度の前近代性については、例えば1988年のリクルート事件でゴーン被告と同じ東京拘置所に113日間拘留され、拘禁反応鬱状態になった経験を持つリクルート元会長の江副浩正は、共著『取り調べの「全面可視化」をめざして』(中央公論新社)の中でこう語っている。「てきぱきと働く受刑者の姿を見ながら『羨ましい』と思った」 東京拘置所には刑務所もあるが、「自由に身動きできず、空さえ見えない拘置所での暮らしは刑務所より厳しい」と受刑者の多くは語っている。 しかし有罪率99.9%とも言われる日本では、長期勾留された人間がその非人道性を訴えても、「所詮は罪人の泣き言」と無視されてきた。 言うまでもないが、被告は罪人ではなく、その人権は配慮されるべきである。外国人でしかも超有名人であるゴーン被告の声は、日本を越えて海外に届き、その声が海外メディアで増幅されて日本に跳ね返ってきた。海の向こうから批判されると、日本の権力者たちは途端に狼狽し始めた。それが「異例の保釈」につながったと見るべきだろう。日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来したのである』、近代法の基本原則に「推定無罪」があり、誰でも有罪宣告を受けるまでは無罪と推定されるにも拘らず、日本だけは逮捕されたたけで、罪人扱いを受けるというのは、日本の後進性の典型例だ。
・『黒船ゴーンで鉄鋼業界に激震  ゴーン被告が「黒船」の役割を果たすのは今回が初めてではない。冒頭で触れたとおり、20年前の1999年、筆頭株主になったルノーからCOO(最高執行責任者)として日産自動車に送り込まれた時もゴーン被告は黒船だった。 「コストカッター」と呼ばれたゴーン被告は、着任早々、鉄鋼資材の購入先を「選別、集約する」と言い出した。泰平の眠りを貪っていた日本の鉄鋼業界に激震が走る。 当時、日産の月間の鋼板使用量は8~9万トンで、トヨタ自動車に次ぐ大口ユーザーだったが、そのシェアは新日本製鉄(現新日鐵住金)が28%、川崎製鉄が26%、NKKが25%で、残りを住友金属工業、神戸製鋼所が分け合っていた。共存共栄を旨とする高炉5社は入札で競うわけでもなく、シェアは「不変」とされた。コスト競争力ではNKKが一段劣っていたのだが、日産は同じ芙蓉グループのNKKを「系列」とみなし優遇していた。 ゴーン被告はこうした日本的、馴れ合いの商慣習を一顧だにせず、日本以外の国と同様に競争入札を実施した。その結果、新日鉄のシェアが60%に倍増、川鉄は30%に増え、NKKが3分の1の10%に激減した。鉄鋼業界ではこれを「日産事件」と呼ぶ。 「変わらない」と思い込んでいたシェアの大変動に、NKKの経営陣は言い知れぬ危機感を感じた。その予感はあたり、日産事件をきっかけにトヨタ自動車など他の自動車メーカーも鉄鋼メーカーの選別を始めたのだ。流れは自動車、鉄鋼業界にとどまらず、電機メーカーなども素材、部品メーカーを選別し始めた』、筆者の大西氏は、元日経ビジネス記者で企業もので鋭い記事を書いてきただけに、「日産事件」まで引き合いに出すとはさすがである。
・『「系列」は見事に解体された  「単独では生き残れない」と悟ったNKKは「格下」と見ていた川鉄との合併に踏み切る。JFEグループ(現JFE ホールディングス)の誕生である。合併比率は川鉄1に対しNKK0.75。新日鉄に次ぐナンバーツーを自任してきたNKKにとっては屈辱的な条件だったが、背に腹はかえられなかった。 玉突きで新日鉄が住友金属と経営統合して新日鐵住金が誕生し、鉄鋼業界は3社体制に再編された。 ゴーン被告は日産系列の部品メーカーの持ち株を売却し、世界中から安くて良い部品を調達した。他の自動車メーカーもこれに倣い、日本の自動車産業の高コスト体質の原因だった「系列」は見事に解体された。 ゴーン被告による改革は調達だけではなかった。稼働率の低い工場を閉鎖し、余剰人員を削減し、縦割り組織と上意下達のメカニズムを壊して社内の意思疎通を良くした。これらの改革を一気呵成に進めたことで、日産の業績はV字回復し、ゴーン被告の経営は「ゴーン・マジック」、ゴーン被告自身は「カリスマ」と呼ばれるようになった』、「系列」の解体は、やはり外国人経営者でなければ、手をつけられなかっただろう。
・『なぜ日産は「神様」に祭り上げたのか  だがゴーン被告を知る、ある大企業の元会長はこう指摘する。 「ゴーンさんは普通の経営者だし、ゴーンさんがやったのも当たり前の改革。だが当時の日本人経営者にはそれができなかった。文明人が未開の地で日蝕を言い当てて、原住民に神様と崇められたのと同じ。日本の経営のレベルが低かったため、普通の経営者が神様になってしまった」 ゴーン被告を最初に「神様」に祭り上げたのは日産の役員・社員だ。倒産寸前だった会社が、あっという間に優良企業に生まれ変わったのである。ゴーン氏が普通の経営者なら、会社を傾けた自分たちが怠慢で無能だったことになる。自分たちの非を隠すために、ゴーン被告を「不可能を可能にした神様」に祭り上げた』、「神様」誕生についての、極めて説得力溢れた鋭い指摘だ。
・『その尻馬に乗ったのがメディアである。工場を閉め人員を削減して固定費を減らし、不稼働資産を減損処理してしまえば、バランスシートが軽くなり、期間利益が跳ね上がるのは常識である。しかし勉強不足と読者の関心を引きたい下心が相まって「カリスマ・ゴーン」と書きたてた。 残念なのは、前近代的な日本の企業社会に改革の先鞭をつけたゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったことである。「経営者として当たり前のことをやったまで」と謙虚にしていれば、逮捕はなかっただろう。 しかし驕ったゴーン被告が逮捕されたことで、今度は未開な日本の刑事司法にスポットライトが当たった。1度目のゴーン・ショックで激震が走った鉄鋼業界と同じように、日本の司法も大いに揺さぶられることになる。本人にその意思はないだろうが、結果的にゴーン被告は2度目の「黒船」として、再び日本を救うのかもしれない』、「残念なのは・・・ゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったこと」、というのはその通りで、人間の脆さを物語っている。「未開な日本の刑事司法」を変革する大きな一撃になってもらいたいものだ。

次に、司法ジャーナリストの村山 治氏が3月14日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/196834
・『役員報酬の虚偽記載や会社資金を不正流用したとする特別背任の罪に問われ、東京拘置所で勾留されていた前日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が3月6日、保釈された。 昨年11月19日の逮捕以来、勾留は108日に及んだ。 東京地検特捜部が摘発した事件の否認被告が、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの前に保釈を認められるのは極めて異例だ。 法曹関係者が驚く「異例の判断」の背景に何があったのか』、真相を是非、知りたいところだ。
・『予想外の「変装」姿 保釈を巡るさまざまなせめぎ合い  カリスマ経営者と呼ばれた男は、青い帽子にマスクと眼鏡、作業服といういで立ちで東京拘置所の玄関に現れ、詰めかけた報道陣に対応することなく去った。 ゴーン氏は、勾留理由開示公判や弁護士などを通じ、繰り返し「自分は無実」と訴えていた。 マスコミはじめ多くの関係者は、保釈されたゴーン氏は、カメラの前で堂々と「無実」の根拠を明らかにし、また、捜査の問題点を指摘する、と予想していた。 それだけにこの奇策は「何か、人前に出られない事情でもあるのか」との臆測を呼ぶことにもなった。 3月8日、ゴーン氏の弁護人の1人、高野隆弁護士は自らのブログで「『変装劇』はすべて私が計画した。(略)膨大な数のカメラがバイクやハイヤーやヘリコプターに乗って彼を追いかけたでしょう。彼の小さな住居は全世界に知れ渡ります。(略)頭に閃いたのが昨日(ママ)の方法でした」と明かした。 何のことはない。「メディアスクラム」対策だったわけだが、保釈の2日後にはゴーン氏の新たな住居にはマスコミが詰めかけた』、ゴーン氏にとっては、マスコミへの対応は万全の準備をしてからと考えていたのだろうから、マスコミを一旦は遠ざけたのは、成功だったとも言えるだろう。
・『公判前整理手続きが始まる前では初めて  カリスマ経営者の保釈をめぐり、裁判所と検察、弁護団の間で激しい「攻防」があった。 ゴーン氏は、2010~17年度の日産の役員報酬を約91億円過少に有価証券報告書に記載したとして金融証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)で、また、私的な損失を日産に付け替えて損害を与えたなどとして会社法違反(特別背任)で起訴された。 ゴーン氏の弁護人だった元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士は、起訴後の1月11日と18日の2度にわたって東京地裁に保釈を請求したが、却下された。 1回目の請求では、保釈後にフランスなどに住む条件を提示したとされ、2回目は、住居を日本国内に変更したとされるが、地裁は、いずれも証拠隠滅の恐れがあると判断したようだ。 その後、辞任した大鶴氏に代わって、新たに弁護人になったのが、「無罪請負人」といわれる弘中惇一郎弁護士と、米国流の刑事手続きに通じた高野弁護士だ。 弘中氏らは、同月28日、3回目の保釈を請求。「インターネット接続不可」や「携帯電話のメール禁止」「住居の出入り口に監視カメラ設置」「パソコン作業は弁護人の事務所で」など厳しい行動制限をゴーン氏に課す保釈条件を地裁に提案。 地裁はこれを受け入れ、「罪証隠滅の恐れがある」との検察側の反対意見を退けた。 保釈条件にはさらに、「事件関係者との接触禁止」「住居は東京都内に制限」「海外渡航禁止、パスポートは弁護人が保管」も加えられ、ゴーン氏は、金商法違反に対して2億円、特別背任に対して8億円の計10億円の保釈保証金を納めて、拘置所を出た。 特捜部が摘発した事件で容疑を否認している被告人の保釈は、争点や証拠を絞る公判前整理手続きで検察側、弁護側双方の主張が出そろうまで認められないのが通例だった。 だがゴーン氏の保釈時点では、整理手続きの日程は決まっておらず、検察を含む多くの法曹関係者が、地裁による異例の保釈判断に驚いた』、筆者はどうしても、主な取材源である検察「寄り」になってしまうようだ。
・『検察は反発「証拠隠滅を防げない」  しかし、常識的にみて、この条件で「罪証隠滅」を防げるのかは疑問だ。 住居の入口に監視カメラを付けても、住居の外で関係者と接触すればわからない。他人の携帯を使えば通信もチェックできないからだ。 検察のスポークスマンである久木元伸東京地検次席検事は8日の会見で、東京地裁の保釈決定を、「証拠隠滅を防ぐ実効性はない」と批判。 別の検察幹部は「裁判所は、ゴーン氏側が証拠隠滅しても構わない、と思っているのではないか」と憤った。 検察にとって予想外の事態になる「伏線」はあった。 特捜部は、ゴーン氏の8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け、昨年12月10日に後半部分の容疑で再逮捕したが、東京地裁は、同月20日、検察が求めたゴーン氏らに対する勾留延長請求を却下した。 ゴーン氏らは容疑を否認していたが、地裁は、2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」とし、捜査内容に踏み込んで、勾留延長しなくても捜査は尽くせた、と認定した。 その後、特捜部はゴーン氏側の保釈請求手続きが始まる直前の翌21日、会社法違反(特別背任)容疑でゴーン氏を逮捕。身柄を引き続き確保したが、検察幹部らは、裁判所が勾留判断で従来のスタンスを変えつつあるのではないか、と警戒していた』、特捜部は「8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け」たようだが、余りに見え見えの小細工で、「地裁は、2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」」としたのは当然だ。
・『海外からの「人質司法」批判 地裁の判断に影響の見方  「異例の保釈」の背景に何があったのか。 今回のゴーン氏の事件では、ゴーン氏の勾留が長くなるなかで、罪を自白しないと保釈が認められないという「人質司法」の問題が、海外メディアの報道をもとに大きくクローズアップされることになった。 それが、今回の裁判所の保釈判断に影響したとの指摘もある。 司法制度は国によって違う。勾留や保釈などの刑事手続きの是非についても、日本の制度・ルールのもとで適正に行われているかどうかで判断すべきで、「外圧」によって判断を変えるのは、司法のあるべき姿ではない。 当の裁判所も海外の論調に影響されたとは絶対、認めないだろう。 もっとも、「人質司法」が日本の刑事司法の暗部である、との認識は、かなり前から弁護士会や学会の共通認識だった。 裁判所と検察は、戦後の治安をともにささえてきたという「戦友意識」があり、裁判所側は、「容疑を持たれた被疑者、被告人には、すべからく、証拠隠滅する動機があり、保釈すれば罪証隠滅される恐れがある」との検察側の主張を受け入れがちだった。 高野弁護士は1月18日のブログで、この問題にも触れている。 それによると、最高裁事務総局が『会内限り』という限定付きで日弁連に秘密裏に提供した統計資料では、保釈された人(1万801人)のうち9割以上(9832人)は罪を自白した人で、罪を否認した人(5275人)について見ると、全公判期間を通じて保釈されるのは21.6%であり、公判前に釈放されるのは7.4%に過ぎない。 こうした声の高まりが、裁判所を動かした可能性はある』、「日本の制度・ルールのもとで適正に行われているかどうかで判断すべき」は建前論に過ぎず、現在その「制度・ルール」のあり方が国内からも問われていると捉えるべきだ。
・『裁判員裁判が「改善」のきっかけに  一方で裁判所でも、司法制度改革で国民が司法参加する裁判員裁判制度が2004年に導入されてから「人質司法」の改善に向けた具体的な動きが始まっていた。 大阪地裁判事だった松本芳希裁判官(京都大学大学院法学研究科教授)が06年6月、「保釈基準が厳格化しすぎている」などとして、罪証隠滅の恐れについて、個別具体的に判断すべきと指摘する論文を発表。 その考え方が次第に裁判官の間に浸透し、14年には最高裁が証拠隠滅の恐れについて「具体的な検討」を促す決定を出すに至った。 3月6日の朝日新聞朝刊は「最高裁によると、保釈を請求して判決までに認められた割合は、2000年は47%だったが、17年は66%に上昇した」と伝えた。 ただ、特捜事件だけは例外で、勾留が長期化する例がままあった。 松本論文発表以後でも、大阪地検特捜部が摘発した2009年の郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省元局長の村木厚子さんは164日、17年の森友学園事件で同特捜部が詐欺罪などで起訴した籠池泰典前理事長夫妻は299日に及んだ。 18年に東京地検特捜部が摘発したゼネコン大手4社によるリニア談合事件では、罪を認めない2社の幹部は291日にわたって勾留された』、罪状を否認する被告には、こんなに長く勾留されるというのは、やはり罪状を認めろとの陰湿な圧力で、人権問題だろう。
・『ゴーン氏に対する保釈決定は、特捜事件に対しても例外を認めないとする裁判所のスタンスを示したといえる。 ただ、ゴーン氏に対する裁判所の勾留と保釈の判断には、見過ごせない「ぶれ」もみられた。 東京地裁は、ゴーン氏が1月11日に起訴された後、ゴーン氏に対する接見禁止を解除した。 接見禁止は、共犯者との口裏合わせなどの罪証隠滅工作を防ぐために弁護士や特定の外交官以外との面会を禁止するものだ。それを解除したということは、起訴で捜査は一段落し、罪証隠滅の恐れがなくなったので誰と会ってもいい、と判断したということだ。 接見禁止を解除したのだから、11日に大鶴弁護士から出された保釈請求に対しても、許可するのが筋だったが、地裁は、3月7日までゴーン氏を勾留し続けた。 地裁の接見禁止解除と保釈請求却下の判断は明確に矛盾する。純粋に法律と事実だけで判断したのなら、こういう矛盾は起きない。地裁が勾留を続けた理由は何なのか、説明してほしいところだ。 この接見禁止解除と勾留継続の判断矛盾を裁判官は認識し、そのアンバランスをいずれ解消したいと考えていたはずだ。 裁判所にとって、弘中弁護士らが新たに提示した「ゴーン氏に厳しい行動制限を課す」保釈条件は、渡りに舟だったのではないか。 いずれにしろ、ゴーン氏に対する保釈判断は、前例として今後の裁判所の判断を縛ることになる。 検察は、特捜事件を含め、今後、被疑者、被告人の早期保釈を前提とした捜査への転換を迫られる可能性がある』、やはり筆者の検察への遠慮が目立つ。「転換」すべきだろう。
・『検察の「次の一手」注目される余罪捜査  そうした中で、検察の次の動きとして注目されるのが、特捜部のゴーン氏に対する余罪捜査だ。 3月6日の朝日新聞朝刊は「前会長がオマーンの日産販売代理店オーナーから3000万ドル(現在のレートで約34億円)を借り入れ、数年後に中東の日産子会社からその代理店に計約3500万ドル(同約39億円)が送金された」と伝えた。 「特捜部は、中東各国に捜査共助を要請。関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを進めている」と報じている。 3月中にも、中東の関係国からの捜査共助に対する回答が寄せられるとの情報もある。その証拠に対する評価次第で、捜査の次の展開が決まりそうだ。 毎日新聞(3月9日朝刊)は、8日に地裁では開かれたゴーン氏の特別背任事件に関する裁判所、検察、弁護側の三者協議の後、取材に応じた弘中弁護士が、(協議で)検察側は前会長を追起訴する可能性について、「ないとは言えない」と語ったことを伝えている。 ゴーン氏は12日の日産取締役会への出席許可を地裁に求めたが、地裁は検察の反対意見を入れて許可しなかった。 今後、始まる公判前整理手続きは最低でも数ヵ月はかかるとみられ、実際に公判が始まるのは、早くて年内となりそうだ。 その間も、検察と弁護団、地裁の間では、さまざまな駆け引きが続く』、中東案件で追起訴する場合には、再びゴーン氏を拘留するのだろうか。当面、目が離せないようだ。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が3月12日付け同氏のブログに掲載した「日産、株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/03/12/%E6%97%A5%E7%94%A3%E3%80%81%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E3%81%8C%E9%81%B8%E4%BB%BB%E3%81%97%E3%81%9F%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E3%81%AE%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E4%BC%9A%E5%87%BA%E5%B8%AD%E3%81%AB%E3%80%8C/
・『保釈が許可され、108日ぶりに身柄拘束を解かれたゴーン氏は、裁判所の許可があれば日産の取締役会に出席できるとされたことから、取締役会への出席を裁判所が許可するかどうかが注目された・・・。 3月11日の昼のNHKニュースでは、ゴーン氏が12日の日産取締役会出席の許可を裁判所に求めていることについて、「日産側は出席に反対する意向を検察に伝えている」と報じていた。 しかし、取締役は株主に選任されているのであり、その取締役の出席に、会社(執行部側)は反対できる立場ではない、そのような、会社法的にあり得ない「日産のゴーン氏取締役会出席への反対」を、そのまま報じるNHKに疑問を感じていたところ、同日夕方、東京地裁がゴーン氏の取締役会出席を許可しない決定をしたと報じられた。 朝日新聞ネット記事では、被告弁護人の弘中惇一郎弁護士は11日夕、記者団に対し、「日産から強い反対があった」ことを明らかにした。 弘中弁護士によると、日産側から取締役会の開催の案内を受けたため、ゴーン被告が取締役としての責任を果たすために出席を希望し、証拠隠滅の恐れを排除するため、地裁には「弁護士も同席して出席したい」旨を申し入れた。 一方、日産側は顧問弁護士を通じ、ゴーン被告の出席について「強硬に反対」する意見書を出したという。主な反対理由については、1)現在の日産としては今後のことを決めるのにゴーン被告は出席してもらう必要がない、2)ゴーン被告の出席により、他の取締役が影響を受け、罪証隠滅の恐れがある、3)ゴーン被告が出席すると議論がしにくい――というもの としている。 しかし、日産が上記のような意見を提出したというのは、どう考えても理解できない。 1)の「ゴーン氏出席の必要がない」、3)の「ゴーン被告が出席すると議論がしにくい」というのは、日産の執行部として言えることではない。株主に選任された取締役の出席の必要性は、会社執行部が否定できることではない。会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない。 2)は「他の取締役が影響を受ける」ということだが、日産の取締役の中でゴーン氏が接触を禁止されている関係者は西川廣人社長だけのはずだ。その西川氏が、「ゴーン氏の取締役会出席によって影響を受け、罪証隠滅の恐れがある」という趣旨であろう。 裁判所は、株主に選任された取締役の、取締役会への出席について「必要性」を否定できる立場ではない。しかし、会社が「出席の必要がない」と意見を述べた場合、それは会社として許されることではないが、会社法上の判断を行う立場ではない刑事裁判所としては、その意見を尊重することになる』、「会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない」というのはその通りで、この点を鋭く指摘したのは、私が知る限り郷原氏だけだ。
・『最大の問題は、ゴーン氏の取締役会出席が、関係者の西川氏の公判証言にどう影響するかだ。もし、日産の意見書で、「西川氏は、取締役会でゴーン氏と顔を合わせただけで、心理的圧迫を受け、公判証言ができないと言っている」と述べているのであれば、裁判所としても、公判審理に影響があると判断せざるを得ないであろう。 しかし、ゴーン氏には弁護士が同席し、証拠隠滅の恐れを排除するというのだから、もちろん、ゴーン氏が刑事事件に関する発言などするわけもない。それなのに、「取締役会で顔を合わせるだけで圧迫を受けて公判証言に影響する」と言っているとすれば、西川氏は、今後、ゴーン氏の刑事公判で、ゴーン氏の目の前で証言できるのだろうか。そのような情けないことを言う人間が社長を務めていて、日産という会社は本当に大丈夫なのだろうか。 西川氏は、ゴーン氏逮捕直後の会見で、社内調査の結果、重大な不正が明らかになったゴーン氏に対して「強い憤り」を覚えると述べていた。その時点で西川氏が言っていた「不正」のうち、唯一、検察が起訴事実とした「有価証券報告書虚偽記載」については、西川氏自身が、代表取締役CEOとして有価証券報告書の作成・提出義務を負う立場なのに、西川氏は、逮捕も起訴もされていない・・・。そういう西川氏にとって、ゴーン氏が取締役会に出てきたら「合わせる顔がない」というのはわかる。しかし、そのような「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか。 西川氏は、また、ゴーン氏逮捕直後の会見で、「社内調査によって、カルロスゴーン本人の主導による重大な不正行為が明らかになった。会社として、これらは断じて容認できないことを確認のうえ、解任の提案を決断した。」と述べていたが、その不正の事実を、ゴーン氏本人が出席する取締役会に報告して解職の議案を出すのではなく、検察に情報提供して逮捕してもらってから、本人がいない臨時取締役会で解職を決議したのである。 日産は、ゴーン氏が保釈され、取締役会への出席の意向を示すや、出席に反対する意見書を提出するという、株式会社として「異常な対応」を行い、ゴーン氏の取締役会出席を回避した。しかし、それによって、日産自動車は、会社法上の規律もガバナンスも機能しておらず、もはや株式会社としての「体を成していない」ことを図らずも露呈したことになる。 今日は、日産取締役会の後、日産・ルノー・三菱自動車の共同記者会見が行われるとのことだ。しかし、この取締役会をめぐる動きは、西川社長の下では日産という会社が立ちいかなくなることを示しているように思える』、「「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか」、との指摘は説得力がある。日産・西川社長は会社法を改めて勉強するきだろう。
タグ:郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 弘中惇一郎弁護士 「推定無罪」 同氏のブログ 新潮社フォーサイト 大西康之 日産ゴーン不正問題 村山 治 (その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”) 「ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡」 日本は再び「ゴーン・ショック」に襲われる 1度目 ゴーン改革で「系列」に代表される日本企業の古い商慣習を粉砕した 次に破壊されるのは、世界から批判を浴びている日本の「人質司法」だ 世界に晒された日本の刑事司法 「人質司法」は「日本の後進性を映し出す鏡」 「国連」を持ち出された途端、腰砕けに 家族は3月4日、ゴーン被告の長期勾留が人権侵害に当たるとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行った 日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来 有罪率99.9%とも言われる日本では、長期勾留された人間がその非人道性を訴えても、「所詮は罪人の泣き言」と無視されてきた 被告は罪人ではなく、その人権は配慮されるべき 日本だけは逮捕されたたけで、罪人扱いを受ける 黒船ゴーンで鉄鋼業界に激震 コスト競争力ではNKKが一段劣っていたのだが、日産は同じ芙蓉グループのNKKを「系列」とみなし優遇 ゴーン被告はこうした日本的、馴れ合いの商慣習を一顧だにせず、日本以外の国と同様に競争入札を実施 日産事件をきっかけにトヨタ自動車など他の自動車メーカーも鉄鋼メーカーの選別を始めたのだ。流れは自動車、鉄鋼業界にとどまらず、電機メーカーなども素材、部品メーカーを選別し始めた 「系列」は見事に解体された 鉄鋼業界は3社体制に再編 「ゴーン・マジック」 「カリスマ」 なぜ日産は「神様」に祭り上げたのか ゴーン氏が普通の経営者なら、会社を傾けた自分たちが怠慢で無能だったことになる。自分たちの非を隠すために、ゴーン被告を「不可能を可能にした神様」に祭り上げた その尻馬に乗ったのがメディア 「カリスマ・ゴーン」 残念なのは、前近代的な日本の企業社会に改革の先鞭をつけたゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったことである 「ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由」 勾留は108日 東京地検特捜部が摘発した事件の否認被告が、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの前に保釈を認められるのは極めて異例 予想外の「変装」姿 保釈を巡るさまざまなせめぎ合い 「メディアスクラム」対策 公判前整理手続きが始まる前では初めて 高野弁護士 厳しい行動制限をゴーン氏に課す保釈条件を地裁に提案 地裁はこれを受け入れ、「罪証隠滅の恐れがある」との検察側の反対意見を退けた 検察は反発「証拠隠滅を防げない」 8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け、昨年12月10日に後半部分の容疑で再逮捕 東京地裁は、同月20日、検察が求めたゴーン氏らに対する勾留延長請求を却下 2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」 海外からの「人質司法」批判 地裁の判断に影響の見方 「人質司法」が日本の刑事司法の暗部である、との認識は、かなり前から弁護士会や学会の共通認識 裁判員裁判が「改善」のきっかけに 大阪地裁判事だった松本芳希裁判官(京都大学大学院法学研究科教授) 罪証隠滅の恐れについて、個別具体的に判断すべきと指摘する論文を発表 検察の「次の一手」注目される余罪捜査 特捜部は、中東各国に捜査共助を要請。関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを進めている 「日産、株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”」 日産側 ゴーン被告の出席について「強硬に反対」する意見書 主な反対理由については、1)現在の日産としては今後のことを決めるのにゴーン被告は出席してもらう必要がない 2)ゴーン被告の出席により、他の取締役が影響を受け、罪証隠滅の恐れがある 3)ゴーン被告が出席すると議論がしにくい 会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない 、会社が「出席の必要がない」と意見を述べた場合、それは会社として許されることではないが、会社法上の判断を行う立場ではない刑事裁判所としては、その意見を尊重することになる 最大の問題は、ゴーン氏の取締役会出席が、関係者の西川氏の公判証言にどう影響するか 西川氏は、今後、ゴーン氏の刑事公判で、ゴーン氏の目の前で証言できるのだろうか。そのような情けないことを言う人間が社長を務めていて、日産という会社は本当に大丈夫なのだろうか 「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか 日産自動車は、会社法上の規律もガバナンスも機能しておらず、もはや株式会社としての「体を成していない」ことを図らずも露呈
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医薬品(製薬業)(日本の医薬産業はなぜ米国に勝てないのか メディシノバ・岩城裕一社長兼CEOに聞く、医者に製薬会社が払うお金の知られざる真実 支払いの実態を徹底的にデータ化してみた、製薬業界でいま 「希望退職ドミノ」のなぜ 協和発酵キリンに続き エーザイ 鳥居薬品も) [産業動向]

今日は、医薬品(製薬業)(日本の医薬産業はなぜ米国に勝てないのか メディシノバ・岩城裕一社長兼CEOに聞く、医者に製薬会社が払うお金の知られざる真実 支払いの実態を徹底的にデータ化してみた、製薬業界でいま 「希望退職ドミノ」のなぜ 協和発酵キリンに続き エーザイ 鳥居薬品も)を取上げよう。

先ずは、昨年10月11日付け東洋経済オンラインが掲載した「日本の医薬産業はなぜ米国に勝てないのか メディシノバ・岩城裕一社長兼CEOに聞く」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは岩城氏の回答)。
https://toyokeizai.net/articles/-/239190
・『メディシノバ・インクはアメリカのカリフォルニア州に本社を置く創薬ベンチャー。日本のジャスダック、アメリカのナスダック双方に上場する一方、有効な治療法や医薬品開発が進んでいない難病などで一定以上の市場規模が見込める分野にターゲットをあて、医薬品開発を進めてきた。 同社ではここにきて、難病である「進行性多発性硬化症」や、今年3月になくなった英国の物理学博士、スティーブン・ホーキング博士もかかった「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の治療薬が実用化に向けて開発が進んでいる。同社を率いる岩城裕一社長兼CEO(最高経営責任者)はアメリカ永住も決意し、自ら創薬にも積極的にかかわる。日米の創薬環境の違いや新薬候補の開発動向について話を聞いた』、日米の創薬環境の違いを解説開発した企業に対する支援制度が厚いためです。たとえばアメリカでは、国内における患者数が20万人するのはもってこいの人物だ。
・『企業への新薬開発アドバイスが発端、自ら創業へ  Q:まずは改めて創業(2000年)の経緯についてお聞かせください。 A:「私はもともと大学卒業後に心臓血管外科医になりましたが、臨床以外の時間を移植免疫に関する研究に費やすようになり、アメリカに留学しました。以来、免疫抑制分野で多くの成果を挙げてきました。創業に至ったのは南カリフォルニア大学で臨床・研究を続けていた1998年、田辺製薬から新薬開発についてのアドバイスを求められたことが発端です。 結局、「意見するだけでは無責任」ということになり、専門の会社をつくって対応することにしたのです。もともと田辺とは「10億円ずつを2年間にわたって資金を拠出する」という約束を交わしていたので、才能のある人物を社長に据え、研究者も採用しました。 ところが、田辺の方針が変わり「申し訳ないが2年目のお金が出せない」と言われた。ここで考えられる選択肢は(1)会社を閉めること(2)第3者への身売り(3)自分で事業を継続する、の3つでしたが、(1)(2)は無責任だと思ったので、(3)を選択。ベンチャーキャピタルなどから資金を募って開発を進めてきたというわけです』、外科医出身で、アドバイスから自ら創業せざるを得なかったというのは、面白い経歴だ。
・『Q:メディシノバは、2005年2月に大証ヘラクレス(当時、現・東証ジャスダック)、2006年にはアメリカのナスダックに上場を果たしました。日米での新薬開発についての環境はどの程度違うのでしょうか。 A:本当に大きく違います。ひと言では言い尽くせませんが、ぜひ読者の皆さんにも知っていただきたいので、できるだけわかりやすく説明しましょう。 「典型的なのが、オーファンドラッグ(希少疾病医薬品)に対するスタンスの違いです。日本では、オーファンドラッグは、患者数が少なく治療法も確立していない疾病に対する医薬品ということもあり、採算の観点から敬遠されがちです。一方のアメリカはまったく違います』、アメリカにはどんな仕組みがあるのだろう。
・『難病に挑むオーファンドラッグこそ企業価値を生む  世界の医薬品業界の現状を見てください。アメリカではオーファンドラッグを手がけている企業こそ、売上高や株式の時価総額を伸ばしています。 たとえば、バイオベンチャーとして著名なアメリカのバイオジェン社の売上高に占めるオーファンドラッグの比率は約半分。また同じくバイオベンチャーから出発したセルジーン社のそれは8割にも達しています。オーファンドラッグとして開発され、認められた効能が、別の分野でも効能が確認されることで、医薬の価値が上がっていく好循環を生み出しているのです。ちなみに、日本の武田薬品工業が先日約7兆円をはたいて買収したシャイアー社(本社アイルランド)も、オーファンドラッグから出発しています。 ここまで対応が違うのは、特にアメリカは治療法がない病気を治す薬を開発した企業に対する支援制度が厚いためです。たとえばアメリカでは、国内における患者数が20万人未満の希少疾病について、安全で効果的と考えられる医薬品についてオーファンドラッグの指定を受けることができます。 もしこの指定を受けると、医薬品が将来FDA(米国食品医薬品局)から承認を受けた場合、7年間の排他的先発販売権が与えられ、税制面の優遇措置も受けられます。さらに疾患が命を脅かす恐れがある場合などには「ファストトラック(優先承認審査制度)」もあり、より迅速な開発が進められる状況が整っています。 キリスト教的な観点から「難病で苦しんでいる人を助けたい」「それをビジネスにしたい」など、幅広い観点からも新薬開発が進む状況にあるのがアメリカです』、「アメリカは治療法がない病気を治す薬を開発した企業に対する支援制度が厚い」というのはさすがだ。
・『Q:そんな中、今メディシノバでは、新薬の「MN―166」(開発コード)が進行性多発硬化症やALS治療薬として注目を集めています。 A:まずは、進行性多発性硬化症からお話をしましょう。多発性硬化症とは脳やせき髄、視神経に病巣ができることで、脳から全身への指令が適切に伝わらなくなる疾患で、歩行や視覚、知力などさまざまな身体機能の障害が出る。今のところ原因はわかっていません。発症した後は寛解(症状が治まる)と再発を繰り返すのですが、症状が徐々に進行していくのが進行型(2次進行型)で、寛解を経ずに始めから体の機能障害が進む1次進行型もあります。 メディシノバでは元々は日本の製薬メーカーと抗炎症薬として開発をしてきました。つまり「中枢神経増殖因子」として注目されていたのですが、欧米の企業から「多発性硬化症治療薬の候補になるのでは?」と興味を持ってもらったのです。 実は、この病気は日本では患者数が1万人程度と少ないのですが、欧州、米国には各40万人の患者がいます。特に30~40歳代の女性に多いのです。また、日本では「再発寛解型で有望視されたが、海外の治験では進行型に効果があることがわかりました。すでに「脳の萎縮が縮小した」との素晴らしい報告も寄せられています。 学会の雑誌にも掲載され、NIH(米国立衛生研究所)やニューロネクスト(新しい治療法を支援する公的機関)といった公の機関からも高い評価を受けています。すでに、今年4月に公開されたアメリカ神経学会のデータ発表では「フェーズ2b治験」で統計学的な優位性が認められたとおり、「フェーズ2」は完了しました』、「抗炎症薬として開発をしてきました」が、「欧米の企業から「多発性硬化症治療薬の候補になるのでは?」と興味を持ってもらったのです」と薬の用途は、ひょんなところから広がることを再認識させられた。
・『Q:ALS領域でも注目を集めていますね。 A:ALS(筋萎縮性側索硬化症)についても説明しましょう。ALSとは、脳や脊椎の神経細胞にダメージを及ぼす進行性の神経変異疾患です。このダメージにより、特定の筋肉への指令が届かなくなり、筋力が萎縮し弱まっていきます。 病状は徐々に悪化し、全身の運動麻痺に至り、人工呼吸器などの補助が必要になります。診断されてからの生存期間は3~5年程度ともされています。今年3月に亡くなった英国の物理学者、スティーブン・ホーキング博士も長期間この病気を患っていたことはあまりにも有名です。 このALSでは現在、既存薬である『リルゾール』との併用で臨床試験を行っています。患者さんが既存薬の投与を止めるわけにもいかないので、併用という手法になっている面もありますが、良好な安全性、効果が認められています。将来的には単独での治験も行っていきたいと考えています』、ホーキング博士は奇跡的に長生きできたが、この薬が出来ていれば、さらに長生きできたのかも知れない。
・『「MN―166」の販売時期はどうなるのか?  Q:具体的にMN―166の上市(販売開始)の時期については? A:ALS領域でもやはりフェーズ2(臨床試験の第2段階)が終了した。フェーズ3(臨床最終試験)については、FDAと協議中です。 安全性はこれまでも認められてきており、ここからあまり時間は多くかからないと考えています。一方、進行性多発性硬化症領域では、あらかじめ決められている臨床試験などのルールにより、もう少し多くの時間が必要になります。 (9月25日付のプレスリリースではFDAからポジティブなフィードバックを受領したと発表。それによると、次の治験1回で十分で有り、それ以上追加の治験は必要ない可能性があるとされるほか、現時点では安全性に問題は認められないなどと評価されている。また上市申請に対してFDAはサポートを行う用意があるとされている )。 とにかく「一刻も早く患者さんに届けたい」と、私はいつも模索しています。今後を考えると開発パートナーの企業などがいたほうが、治験が一段と速やかに進むとは思いますが、単独でも今ある資金で行うことができています。 いずれにせよ、どんな形でも、MN―166で1つ認められれば、次の道(領域の拡大)が開けると思います。こういうたとえが適当かどうかはわかりませんが、競馬にたとえれば、最終コーナーをまわり、ホームストレッチ(最後の直線)に入ってきたところです。ゴールがどういう景色か、わかるところまで来たと考えています。 Q:新薬開発に関しては、日米の制度面や当局の意識の差だけでなく、その他にもさまざまな違いがありそうです。 A:やはり、医薬へのスタンスがまったく違います。たとえば、アメリカでは患者がFDAに相談することができるなど、薬のニーズを現場の最前線からとらえられる体制になっています。他の業界もそうですが、アメリカではFDAの職員が製薬企業の出身だったりして、現場感覚がとても優れています。 またさきほども少し申し上げましたが、有望な新薬には公的な支援があります。実は、当社もさきほどのMN―166(ALSでオーファンドラッグ指定を受けている)では、13のプロジェクトで公的資金を獲得しています。「ALS領域で効果があるはずだ」と思っても資金が足りないとき、このように資金の出し手がいることは本当に心強い限りです。 一方、こうした環境が日本でも実現されたらと願いますが、そう簡単ではありません。よく言われるように、たとえ海外で臨床試験が進んだ医薬開発品でも、日本の当局に相談すると「最初の段階から(治験を)やってください」と言われてがっかりすることが大半です。一方で、「海外ですでに発売された薬なら、日本国内でもそのまま承認できる」といいます。 これでは、いつまでたっても日本で画期的な創薬ができる環境が整いません。最近は規制緩和が行われつつありますが、トップは積極的でも現場レベルでは必ずしもそうではありません。このままでは日本の製薬業界の将来が大変心配です。当局、企業だけではありません。大学も似たようなものです。 もし日本の大学の薬学部に入学しても、前臨床と臨床試験といった創薬の過程はほとんど勉強しません。製薬企業に入ってもCRO(臨床試験支援企業)に丸投げのケースもある。「この国の医薬産業の未来は本当に大丈夫か」と言いたくもなります』、日本では、当局、製薬企業、大学いずれもが大きな問題を抱えているというのは、困ったことだ。
・『日本は短期値上がり目的が主体、投資家層が薄い  Q:マーケットの環境もかなり違います。 A:2005年に続き、2006年にはナスダック上場も果たしましたが、これは日本では公募増資での資金調達が事実上困難だと思ったからです。 日本では企業が公募増資をすると、どうしても希薄化に嫌気されて、株価が下落するケースが大半です。これは他の上場バイオベンチャー企業も当時から苦労していることです。 一方、アメリカではこれまでに4回、公募による資金調達を実施できました。そもそもアメリカではバイオベンチャーに対する投資姿勢が確立されているだけでなく、キャップ(時価総額)に応じた資金の出し手もしっかり存在しています。 日本ではバイオベンチャーの投資を行うのは短期値上がり目的の個人投資家ばかりで、残念ながら、投資家層が薄いと感じています。「日本でIPO(新規上場)したい」という外国企業もあるとは思いますが、今のままなら、彼らは(市場が成熟している)上海市場や香港市場を選択するのではないでしょうか』、日本ではさらに「投資家層が薄い」という問題まで抱えているのでは、解決は残念ながら容易ではなさそうだ。

次に、医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏が2月1日付け東洋経済オンラインに寄稿した「医者に製薬会社が払うお金の知られざる真実 支払いの実態を徹底的にデータ化してみた」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/263058
・『1月15日、「マネーデータベース『製薬企業と医師』」が公開となった。これはワセダクロニクルと、私が主宰する医療ガバナンス研究所が共同で立ち上げたものだ。2019年1月23日現在、アクセスは90万件を超える。 このデータベースを使えば、2016年度に医師(医者)個人が、どのような製薬会社から、どのような名目で、どれだけの資金を受け取っていたかがわかる。 例えば、2016年当時に日本内科学会理事長を務めていた門脇孝(かどわき たかし)/東京大学糖尿病・代謝内科教授(当時)の場合、86回の講演会謝金などの名目で15社から総額1163万6265円を受け取っていた。会社別で最も多かったのは武田薬品工業で255万7076円だった』、こんなデータベースが出来て公開されていたとは初めて知った。ちなみにリンクは下記である。
http://db.wasedachronicle.org/about/
・『異常に低い日本の製薬市場の成長率  このデータベースを公開するに先立ち、われわれはいくつかの調査研究を行い、その結果をトップページに掲載した。 「全製薬会社別 支払額ランキング」だ。多い順に挙げていこう。 第一三共20億1500万円 中外製薬11億8282万円 田辺三菱製薬11億7100万円 武田薬品11億6160万円 大塚製薬11億4541万円 とくにトップ3は国内での売り上げ比率が高い。2016年度の連結売上高に占める国内の医療用医薬品の割合は、第一三共60%、中外製薬77%、田辺三菱製薬74%だ。 高齢化が進む先進国で、製薬業は成長が期待できる有望分野だ。その例外が日本である。日本の製薬市場の成長率は約2%。アメリカの7.3%はもちろん、先進国平均の6.2%を大きく下回る。 政府の薬価抑制は、今後も続く。日本の製薬会社が生き残るには、高い成長率の期待できるアメリカ、あるいは中国を含めた新興国に進出せざるをえない。そのためには新薬を独力で開発するか、外部から調達する必要に迫られる。武田薬品がアイルランドの製薬会社シャイアーを約6兆円で買収したのは、このような背景があるからだ。 ちなみに、2016年度、武田薬品の連結売上に占める日本の割合は29%で、アメリカ30%より少ない。欧州は16%、アジアは6%だ。今回の買収で、「武田はもはや日本の企業ではない」(日系製薬会社社員)というのが製薬業界の共通した見解だ。 海外で売れる新薬がない製薬会社は日本の市場を取り合うしかない。降圧剤であれ、糖尿病治療薬であれ、各社、同じような薬を売っている。売り上げに効くのは医師に対する営業だ。 製薬会社が売り上げを増やすためには、医師に金品を提供することは有効な策の1つだ。これはわが国だけの現象ではない。2016年8月にカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者たちは、20ドル以下の弁当でも、製薬会社から受け取った医師は、その製薬会社が販売する医薬品を処方する傾向があったという研究成果を報告している。 製薬会社から医師への利益供与で、弁当は最も些細なものの1つだ。やはり、いちばん効くのは金だ。 製薬会社から、大学や病院ではなく、医師個人に金を渡す方法は3つある。まず、講演料やコンサルタント料として支払う方法、2つめが、自社の記事広告に出演などの形でメディアを介して支払う方法、そして、NPOや財団など第三者機関への寄付金だ。今回、私たちが作成したデータベースで、明らかになったのは講演料やコンサルタント料として支払った金だけで、氷山の一角である。知人の製薬会社社員は「講演料と同等か、あるいはそれ以上の金をほかの方法で支払っています」という。 このように、われわれの調査には限界がある。メディアやNPOなどを迂回させる方法は、金の流れを隠蔽させる意図があるものもあり悪質なケースの可能性が高い。ただ、それでも、今回の調査からは、さまざまなことが分かってきた』、「講演料やコンサルタント料として支払った金」だけでも公開された意義は大きい。
・『では、製薬会社は、どのような医師に金を支払っているのだろうか。 今回、データベースを公開するにあたり、「主要20学会別 理事平均受領額ランキング」も提示した。多い順に挙げてみよう。 日本内科学会605万6879円 日本泌尿器科学会499万9549円 日本皮膚科学会457万8681円 日本眼科学会251万2485円 日本精神神経学会198万6443円 一方、製薬会社からの金が少ないランキングも見てみよう。 日本形成外科学会38万7741円 日本プライマリ・ケア連合学会41万2058円 日本臨床検査学会57万4266円 日本麻酔科学会61万9422円 日本病理学会62万4098円 日本救急医学会63万4990円 製薬会社と密接な学会ほど利益提供が多い トップの日本内科学会と最下位の日本形成外科学会では15.6倍の差がある。新薬を使う機会が多いか少ないかで、製薬会社との付き合いは学会によって随分と違う。 製薬会社との距離が近い学会は、製薬会社の影響を避けられない。例えば、学会は各種診療ガイドラインを作成する。その作成者に、これだけの金が流れている。 2012年に社会問題となったノバルティスファーマの降圧剤論文不正事件(ディオバン事件)では、日本高血圧学会の理事に同社から巨額の金が流れていたことが分かっている。彼らの中には論文データを改ざんし、ノバルティス社が販売するディオバンの使用を促していた大学教授もいる。情報開示が進んでいたとしたら、ここまで「暴走」できただろうか。 日本専門医機構の理事長は寺本民生・帝京大学特任教授。専門は高血圧や高脂血症だ。2009~2013年まで日本内科学会理事長も務めた。学会の大物でもある。2016年度、15社から76件の講演などを引き受け、総額1096万6524円を受け取っていた。日本専門医機構と製薬会社の「親密」な関係がわかる。このような分析も、今回のデータベースができて可能となった。 厚労省は、この問題を重視している。医薬品の承認に関わる審議会の規定では、「審議品目の申請者等又は競合企業からの寄付金・契約金等の金額」について、500万円を超える年度がある場合には、「当該品目の審議又は議決中、審議会場から退室」、50万円を超え500万円以下の場合には、「分科会等への出席し意見を述べることができる。審議品目についての議決には加わらない」と規定されている。至極、妥当な基準だ。 もし、この基準を日本内科学会に応用すれば、学会の理事たちは、多くの診療ガイドラインの議決に参加できないことになる』、厚労省はせっかく作った「基準」を厳格運用すべきだろう。
・『2016年当時、日本内科学会理事長を務めていた前出の門脇孝氏の場合、武田薬品、MSD、ノボノルディスクファーマ、アストラゼネカ、日本ベーリンガーインゲルハイム、アステラス製薬、田辺三菱、日本イーライリリー、小野薬品の9社から50万円以上の金を受け取っていた。 彼の専門は糖尿病だ。わが国で糖尿病治療薬を販売するのは約30社。このうち15社から金を受け取り、そのうち9社の金額は50万円以上と大きい。門脇氏の判断に、このような金が影響したかはわからない。ただ、少なくともこうした金の受け取りの情報は開示されるべきだ。そして、誰もが解析できるようにデータベースが整備されなければならない。これこそ、われわれが、データベースを作成し、公開した理由だ。 医師と製薬会社の関係についての情報開示は世界中で議論が進んでいる。わが国だけで問題となっている訳ではない。 嚆矢(こうし)は2010年にアメリカで制定されたサンシャイン法だ。アメリカ連邦政府が所管し、公的保険であるメディケア、メディケイドが管理するホームページにアクセスすれば、医師の名前を入力するだけで、製薬会社から受け取った金の総額、関連企業の株の所持といった情報を簡単に確認できる。データの二次利用も簡便で、その解析により、多くの学術論文が発表されている』、やはりアメリカの情報公開は進んでいるようだ。日本も早急にキャッチアップすべきだろう。
・『日本の製薬会社は情報公開を制限している  ところが、日本の状況は違う。ディオバン事件を受けて、日本製薬工業連合会は2013年から医師への支払いについて公開するようになった。しかしながら、それは形だけだった。というのも、一般人が利用できないように策を弄したからだ。 例えば、第一三共の場合、提供する医師名・施設名・金額の情報は「画像」情報で、テキストとして処理できない。これでは解析できない。 われわれは、このような「画像」をOCRで読み取り、1つずつ間違いがないか確認した。この作業には、のべ3000時間を要し、主にアルバイトの人件費として約400万円を費やした。 また、データを閲覧するに際しては、「本ウェブサイトに記載された内容を無断で転載・転用すること」を禁じており、違反が認められた場合には「情報提供の制限・その他の措置をとらせていただく場合があります」と警告していた。これは透明性向上の主旨に反する。この記述を知ったアメリカの医師は「アメリカではありえない。なんのための公開かわからない」とコメントした。 この状況に、われわれは問題意識を抱いた。だからこそ、データベースを作成し、公開した。まだ不十分な点もあるが、研究に資するデータベースになったと考えている。 このデータベースは無料で、誰でも利用できる。論文発表や記事作成に際して、誰の許可をとる必要もない。論文・記事を書いてもらって結構だ。 本来、このデータベースは日本製薬工業協会が音頭をとって、製薬会社自らが立ち上げるべきものだろう。ぜひ、2017年度分から始めてもらいたい。ただ、現在、そのような動きは聞こえてこない。その場合、われわれは次もやるつもりだ。蟷螂の斧かもしれないが、少しでも情報開示を進め、わが国の医療のレベルが向上することを願っている』、日本の製薬会社が公開したのは、「「画像」情報で、テキストとして処理できない」とは、何と小賢しい手段を弄したものだ。一刻も早く本来の趣旨に則った情報公開が進んでほしいものだ。

第三に、3月4日付け東洋経済オンライン「製薬業界でいま、「希望退職ドミノ」のなぜ 協和発酵キリンに続き、エーザイ、鳥居薬品も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/267825
・『製薬業界で社員リストラの動きが激しくなっている。今年2月、医薬品メーカー準大手の協和発酵キリンと中堅の鳥居薬品がそれぞれ希望退職の募集を発表した。 協和発酵キリンは全社員4000人の約4割、1600人を対象に希望退職を募る。募集期間は3月11日~3月28日で、対象は45歳以上かつ勤続5年以上の社員。募集人数の枠は設けない。 鳥居薬品は、製造・物流部門を除く全社員を対象に希望退職を募集する。コーポレート・営業部門は勤続2年以上、製造・物流を除く技術部門は50歳以上かつ勤続2年以上が対象で、4月15日~5月31日まで募集する。退社は9月末の予定だ』、製薬業界は規制に守られ「左うちわ」と思っていたら、真逆のようだ。
・『鳥居薬品は社員3人のうち1人を削減方針  鳥居薬品は、定年退職後の再雇用社員や契約社員などでも「契約再調整等を実施する」としている。要するに、シニア社員や契約社員も含めてリストラを実施するということだ。 鳥居薬品は、募集人数の枠を設けないと説明している。しかし、「事実上の募集枠」は存在する。正社員約1080人、非正規社員を含めて鳥居薬品の全社員数は約1200人。2月6日に開催した2018年12月期決算会見で、同社は新しい中期経営計画(2019年度~2021年度)の概要を発表し、その中で「社員800人体制がその前提である」と明言したのだ。つまり、400人の「首切り」が経営の前提条件であることを強く示唆している。 3人のうち1人が職場を去らないといけない苦境に、鳥居薬品はなぜ置かれているのか。それは、米ギリアド・サイエンシズの抗HIV薬の国内独占販売権を2019年初めに召し上げられたためだ。売上高にして214億円相当。2018年度の同社全体の売上高の約3分の1が一気に消滅してしまうわけで、2019年度の営業損益は前期の49億円の黒字から32億円の赤字に沈む見込みだ。 1つの薬の研究に着手してから、開発・発売にこぎ着けるまで、優に10年以上かかるのが製薬ビジネスだ。取り上げられた売上高210億円をすぐに埋められるわけでもない。鳥居薬品は新しい中計が終わる2022年度に買収や新規導入品の獲得費用などを除く営業損益を黒字化する目標を掲げているが、大前提にあるのは大規模な人員リストラの実行だ。 新中計では、人員リストラ以外にも支店・組織の再編や統合、特許が切れて後発薬が参入し、収益が厳しくなっている先発薬(長期収載品)の売却、親会社であるJTへの研究機能の移転統合、他社からの開発品の導入などさまざまなコスト削減と収益改善策を掲げている。 コーポレート・営業部門では年齢に関係になく、わずか勤続2年の社員まで希望退職の対象になっているのも、同社の逼迫した事情を示している。裏を返すと、こうした努力をしても、2021年度までの営業黒字化は容易ではないということだ。 柱となるフランチャイズ(製品群)が丸ごと消えてなくなる鳥居薬品はレアケースだが、むしろいま製薬業界でトレンドとなりつつあるのは、経営環境的には良好とみえる大手メーカーで希望退職を募る、協和発酵キリンやエーザイのようなケースだ』、「大手メーカーで希望退職を募る」というのには驚かされた。
・『エーザイ、大正製薬も希望退職を募集  製薬大手のエーザイは2018年10月に45歳以上かつ勤続5年以上の本社社員を対象に希望退職を募集すると発表。12月までに約300人の応募があった。今回は100人の応募人数枠に対して3倍となり、会社の見込みを大きく上回ったが、2019年度、2020年度も希望退職を募るという。 2018年5月にはOTC医薬品(一般用医薬品)販売最大手の大正製薬ホールディングスが希望退職を募集した。ふたを開けてみれば大正製薬本体と販売子会社・大正富山医薬品の募集対象者の実に3割にあたる948人が応じ、製薬業界に大きな衝撃を与えた。 3社とも足元の業績は堅調で、いまここで希望退職を募る必然性があるとは見えない。ではなぜ、あえて希望退職募集に踏み切るのか。 これを解くヒントは、各社トップの発言に隠れている。 協和発酵キリンの宮本昌志社長は「グローバル製薬企業として変革しなければならない時期にある。社員一人ひとりも変革に挑む必要がある」と発言している。2018年度で32%の海外売上比率を、2020年度には50%に拡大するのが中期目標だ。そのためには一層のグローバル化に舵を切る必要があるが、そうした変革の流れに合わない社員とはたもとを分かつことも辞さないということだろう。 「社員に新しい機会を追求してもらおうと思った」。エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOはこう話したうえで、デジタル時代に製薬会社でも必要になる、データサイエンティストのような人材を積極的に採用する意向を明らかにしている。つまり、社員数の削減というよりは、企業変革のために必要な人材の「質的転換」だ。両社のようにはっきり言わないまでも、業績堅調な製薬メーカーがあえてこの時期に希望退職に踏み切るのは似たような事情があるからだろう。 さらに製薬各社がリストラを急ぐ背景には、各社が置かれた固有の厳しい事情がある』、「企業変革のために必要な人材の「質的転換」」を迫られているとは、業界環境の厳しさを再認識した。
・『メガファーマ化の波に乗り遅れる日本勢  1つは日本市場が中長期的に縮小する可能性がある点。厚生労働省は薬価制度を抜本改革し、2018年度から実施に移している。少子高齢化や技術進歩に伴う医薬品の高額化などを主因とする医療財政の逼迫を背景に、薬価を削るのがそのポイントだ。製薬各社にしてみれば、国から「苦い劇薬」を無理矢理飲まされたというのが実態だ。 アメリカの調査機関IQVIAの調査では、2018年の日本の医薬品市場規模は1.7%減と2年連続で減少した。2023年までの中期見通しでも、アメリカやEUなど先進市場で日本が唯一のマイナス成長になるという見通しを発表している。また、外資系メーカーも同様だが、創薬手法の高度化・変革の波が押し寄せていることも、日本の製薬企業には大きな課題になっている。 発売にこぎ着けるまでの薬の成功確率が2万5000~3万分の1となり、薬1つの開発費用は2800億円に拡大しているといわれる製薬業界。開発対象の疾患はアルツハイマー病といった希少疾患やがんなど、ますます難しいものになり、標的となる薬のタネも枯渇しているという声もある。1990年代には、日本企業が得意な低分子化合物から高分子バイオ抗体などに創薬手法のトレンドが大きく変化した。当時と同じ状況がいま生まれつつある。 当時、欧米各社は合併を繰り返し、メガファーマ(巨大製薬企業)化したが、日本の製薬各社はそうした動きに大きく後れをとった。創薬技術が変化し、低分子化合物と高分子(抗体)の両方の研究を同時に遂行するために巨額の資金が必要になるのに、日本企業がその資金を賄い切れなかったのも、メガファーマに大きく後れをとった一因だ。 国内首位の武田薬品工業が欧州製薬大手シャイアーを6兆円超で買収したのも、日本の製薬企業の過去の反省を踏まえた動きといえる。エーザイもアメリカのバイオジェンやメルクと重点疾患分野での共同開発・商業化の過去にない大型提携を打ち出し、グローバル競争という荒波に漕ぎだそうとしている。 武田ではシャイアー買収に先立ち、希望退職という言い方ではないが、すでに大幅に人員を削減している。典型例が旧湘南研究所(現・湘南ヘルスイノベーションパーク)だ。最盛期に1200人いた社員は2017年3月末には1000人に、2018年3月末には522人へ急減した。研究機能の一部を外部へ売却、社内部門を独立化させて本体から切り離し、研究開発に携わる社員を中心に本体の社員数を大幅にスリム化している。 第一三共も同じような手法を採った。大阪の高槻工場(子会社)を化学メーカーで医薬品事業育成を進める太陽ホールディングスに今年10月に売却する。工場の社員約340人は、原則として太陽ホールディングスに転籍する見通しだ』、「メガファーマ化の波に乗り遅れる日本勢」というのは、それまでの無策のツケだろう。
・『外資系も日本拠点の人員を削減  日本市場縮小の影響は外資系製薬大手とて免れない。2018年にはベーリンガーインゲルハイム、ノボ・ノルディクス、サノフィなどで日本拠点の人員削減の動きが明らかになった。 現在、大手・準大手にとどまる人員削減の動きは、今後は中堅以下の新薬、後発薬メーカーに広がるのは必至だろう。薬価制度の抜本改革で、長期収載品の薬価を後発薬並みに引き下げる新ルールが導入された。長期収載品への収益依存度が高い中堅以下の新薬メーカーにはボディブローとして効いてくる。 後発薬メーカーも安閑としていられない。2020年9月までに数量ベースで80%に引き上げる後発薬普及目標の期限まで残り1年半に迫り、成長鈍化は避けられない。2020年9月以降は後発薬の価格が下がり、市場が縮小に転じて、近い将来、後発薬メーカーの再編も避けて通れないだろう。 業績は安定し、とくに大手の給与水準も高く、倒産の恐れもほぼないといわれた製薬会社の姿はすでに過去のものになった。製薬会社にも本格的な寒風が吹き始めようとしている』、医療費削減のための薬価切り下げは、今後も続く以上、「本格的な寒風」は不可避のようだ。
タグ:医薬品 東洋経済オンライン 上 昌広 製薬業 (日本の医薬産業はなぜ米国に勝てないのか メディシノバ・岩城裕一社長兼CEOに聞く、医者に製薬会社が払うお金の知られざる真実 支払いの実態を徹底的にデータ化してみた、製薬業界でいま 「希望退職ドミノ」のなぜ 協和発酵キリンに続き エーザイ 鳥居薬品も) 「日本の医薬産業はなぜ米国に勝てないのか メディシノバ・岩城裕一社長兼CEOに聞く」 企業への新薬開発アドバイスが発端、自ら創業へ 難病に挑むオーファンドラッグこそ企業価値を生む 「MN―166」の販売時期はどうなるのか? 日本は短期値上がり目的が主体、投資家層が薄い 「医者に製薬会社が払うお金の知られざる真実 支払いの実態を徹底的にデータ化してみた」 マネーデータベース『製薬企業と医師』」 異常に低い日本の製薬市場の成長率 今回、私たちが作成したデータベースで、明らかになったのは講演料やコンサルタント料として支払った金だけで、氷山の一角 アメリカで制定されたサンシャイン法 日本の製薬会社は情報公開を制限している 「製薬業界でいま、「希望退職ドミノ」のなぜ 協和発酵キリンに続き、エーザイ、鳥居薬品も」 鳥居薬品は社員3人のうち1人を削減方針 エーザイ、大正製薬も希望退職を募集 メガファーマ化の波に乗り遅れる日本勢 外資系も日本拠点の人員を削減 製薬会社にも本格的な寒風が吹き始めようとしている
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日本のスポーツ界(その24)(野球はいつから球児にとって「苦しいだけのスポーツ」になったのか 筒香嘉智が「勝利至上主義」を問う、宮川選手への反省文要求で露呈した 体操協会の根深いパワハラ体質、「日大危険タックル事件」 第三者委と警察はなぜ正反対の結論になったのか) [社会]

日本のスポーツ界については、1月30日に取上げた。今日は、(その24)(野球はいつから球児にとって「苦しいだけのスポーツ」になったのか 筒香嘉智が「勝利至上主義」を問う、宮川選手への反省文要求で露呈した 体操協会の根深いパワハラ体質、「日大危険タックル事件」 第三者委と警察はなぜ正反対の結論になったのか)である。

先ずは、2月24日付け現代ビジネスが掲載したプロ野球選手の筒香 嘉智氏へのインタビュー「野球はいつから球児にとって「苦しいだけのスポーツ」になったのか 筒香嘉智が「勝利至上主義」を問う」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは筒香氏の回答)。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59895
・『暴言を受ける子どもたち  Q:著書の『空に向かってかっ飛ばせ!』は、過剰なまでの「勝利至上主義」が蔓延する少年野球界に疑問を投げかける一冊です。この問題に、球界屈指のスラッガーである筒香さんが声を上げたことの意味は大きいと思います。 A:僕がずっと感じていたのは、理不尽な指導からひとりでも多くの子供たちを守りたい、ということでした。 スポーツ界における体罰やパワハラがこれだけ問題視されている現状でも、勝つことが最優先される少年野球の現場では、いまだに失敗をすれば怒鳴られたり、暴言を受ける子供たちがいると聞きます。怒られると、子供たちは委縮してしまいます。 「またエラーして怒鳴られるのか」「打てなくて叩かれるのか」……。一度そんなふうに思ってしまえば、よいプレーはなかなか生まれません。 もちろん、これまでの指導にもいいところはあったのでしょうが、変えるべき部分もたくさんある。どこを変えるべきか、僕の考えを多くの方々に知っていただきたいという願いがありました』、プロ野球選手が声を上げた意味は大きい。
・『Q:'15年12月にドミニカのウインターリーグに参加されたこともきっかけになったそうですね。 A:現地の少年野球の練習を見に行くと、子供たちが目を輝かせながら野球をやっているんです。バッターは思い切りバットを振るし、ピッチャーは少しでも速いボールを投げようとする。ミスをしても怒られないから、失敗を続けながら新しいチャレンジをしているのです。 そういうドミニカの子供たちの様子を見て、果たして日本の野球少年たちは、こんなに楽しそうに野球をやれているのだろうか、と考えるようになりました。 Q:勝つことを優先するあまり、送りバントを多用させ、エースが肘を壊すまで投げさせる。本書では、日本の少年野球で当たり前に行われている行為に対して、強い懸念を示しています。 A:小さい頃から無理に投げ続けたせいで、肘や肩を痛めて手術する子供はかなりの数にのぼるはずです。 なかには「良い先生がいるんだからケガをしても治してくれる。だから、思い切りやれ」と指導するチームもあると聞いています。子供たちの将来を考えたらケガをさせないのがベストのはずなのに、これでは本末転倒です。 その点、アメリカではメジャーリーグ機構が年齢別に「このくらいまでなら投げさせても大丈夫」という球数のガイドラインをはっきりと提示している。日本の少年野球界も早く追いつかなければいけません』、その通りだろう。
・『Q:中学時代に所属していた名門少年野球チーム、堺ビッグボーイズの先進的な取り組みも紹介されています。 A:かつては、ビッグボーイズも他の多くのチームと同じようにスパルタ式の指導をしていました。でも、指導者として世界大会の舞台にも立ったチーム代表の瀬野竜之介さんが大改革に乗り出し、練習時間や内容を抜本的に見直したのです。 肉体が完成されていない小中学生の場合、過剰な運動で疲労が蓄積されるとダメージが大きい。子供たちの体力や個性に合わせて練習をカスタマイズするビッグボーイズの取り組みは、これからの日本の少年野球のモデルケースになるのではと感じています』、日本にも「少年野球のモデルケースになる」チームがあるとは頼もしい。
・『野球は本来、たのしいもの  僕自身の経験からしても共感する部分が非常に多いので、2年前からはビッグボーイズの小学生部門である「チーム・アグレシーボ」の野球体験会に参加させてもらっています。今年は1月の半ばに練習の体験会をやりました。約80人の幼児や小学生が保護者と参加してくれました。この輪がどんどん大きくなってほしいと願っています。 Q:本書には、筒香さんが野球をはじめてから、一流のバッターになるまでの歩みも書かれており、自伝としても読みごたえがあります。自らの経験について詳細に書かれた理由はなんですか。 A:最初は、僕自身のことを語ろうと思ったわけではありませんでした。でも、小学2年生からいままでずっと野球を続けてきた経験を通して感じたことを率直に伝えれば、読者の方に今の日本の少年野球の問題をより掘り下げて考えていただくことができるのではないかと思うようになりました。 Q:'15年のキャンプでバッティングに悩んでいた時、松井秀喜さんからアドバイスを受けるシーンは非常に印象的です。 A:僕は、逆方向に強い打球が打てるようになりたいと思いながら、周りからは「遠くに飛ばしたいなら前で打て」とずっと言われ続けてきました。 でも、キャンプの視察に来ていた松井さんにご相談すると、「誰になんと言われようとも、逆方向に意識を持って打つことは間違っていない。自分の思っていることをやり続けるべきだよ」と言っていただけた。 あの瞬間、自分の中の迷いが消えました。いまでは、逆方向にきっちりと打つ意識を持って練習に取り組んでいます。おかげで、変化球に対しても、泳がずに打てるようになりました。 あれは、試合中にとっさにやろうと思ってもできるものではありません。「意識的」に練習を積み重ねていくからこそ、いざ試合になった時に「無意識」に反応することができます。 指導者に言われるままにやるのではなく、自分の頭で考えて練習を積み重ねる。これは、本書のテーマにも通じることだと感じています。 野球は本来楽しいものです。苦しいものではありません。子供たちが心から野球を楽しめる環境を作るために、自分にできることを続けていきたい。そう思っています』、「子供たちが心から野球を楽しめる環境」づくりに大いに励んでもらいたいものだ。

次に、作家・スポーツライターの小林信也氏が3月13日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「宮川選手への反省文要求で露呈した、体操協会の根深いパワハラ体質」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/196702
・『被害者・宮川選手に反省文、高須院長は「この処分がパワハラ」  「日本体操協会が宮川紗江選手に反省文の提出を求めた」というニュースを聞いて、暗澹とした気持ちに襲われた。パワハラを訴えた選手に、そのような仕打ちをする組織の根本的な勘違い体質に呆然とする。これを受けて、宮川選手の所属先である高須クリニックの高須克哉院長は、「僕はこの処分がパワハラだと思います」とツイッターで発言した。まったくそのとおりだと思う。 報道では併せて、テレビ番組などで塚原夫妻や協会に対して厳しいコメントを述べた池谷幸雄さんにも「厳重注意の上、誓約書の提出を求めることを決めた」と伝えられた。 いずれも3月9日に開かれた日本体操協会理事会の決定だという。 第三者委員会が昨年12月に報告書をまとめ、「塚原夫妻によるパワーハラスメントは認定されなかった」と結論づけたことを受けての動きだが、宮川選手と池谷さんを一方的に罰し、今後の言動や行動を規制するような決定に違和感を覚えた人々が少なからずいたのではないだろうか。 日本体操協会のホームページを確認すると、処分を受けたのは宮川選手や池谷さんだけでなく、塚原光男副会長、塚原千恵子強化本部長にもそれぞれ「謝罪」を求め、宮川選手の告発直後に「18歳の少女がうそをつくとは思えない」と語った具志堅幸司副会長にも「公正に欠く発言があった」として厳重注意(顛末書と謝罪文提出)の処分を決めたという。 問題のあった当事者のすべてを罰し、問題発言のすべてを断罪する。このような処分が下されたら、「もう自由な発言はできない」「メディアには素直に言えない」と感じるのが普通だろう。つまり、日本体操協会は、協会に所属する選手や指導者、関係者たちの発言や心理までも支配する方向で動いているのだ』、この日本体操協会には、あきれて口が塞がらない。
・『“レジェンド”の名誉を過剰に守る結論を導いた、調査の恣意性  第三者委員会の報告を聞いたとき、およそ公正な調査とは思えなかった。私の取材した実情と、調査委員会の報告はかけ離れていた。第三者委員会のそれはある方向からのみの調査であって、私個人が取材した程度の視点さえ欠落していた。それゆえ、恣意的な結論ではないかとの疑念がぬぐえなかった。それでも、その時点で大きな声を上げなかったのは、「スポーツ界のレジェンドを必要以上に汚すことの是非」を考えたからだ。 報告書は、功労者であり、ヒーローであった塚原光男氏と千恵子氏の名誉を守る内容だった。同時に、塚原光男氏は、名誉が保たれれば夫人ともども任期を待たず、公職から退くことを明言していた。つまり、断罪されなくても自ら「居座らない」ことを約束した。それであるなら、過剰にレジェンドに泥を塗る必要はないではないか。そのような思いが、メディアの中にも働いていたように思う。 ところが、今回の体操協会の決定は、そのようなバランス感覚をも冒涜し、逸脱するものだ。3ヵ月経って、ほとぼりが冷めたころ、あの第三者委員会の報告を絶対的な事実のように根拠づけて、各方面をバッサリとやったのだから。 競技に取り組むために、なぜ個人の感想や気持ちまで支配される必要があるのか? 協会とは、発想の自由を奪い、ひとつの考えに統一し規制するために存在する組織なのか?』、「過剰にレジェンドに泥を塗る必要はないではないか。そのような思いが、メディアの中にも働いていた」、というのは自己批判も込めた指摘だろうが、メディアも取材先との関係維持を優先して批判しないでいるというのは嘆かわしい。
・『「オリンピックが最高の舞台」だからこそ逃れられない選手たち  もしこれがプロレスなら、さっさと離脱し、新団体を立ち上げることもできる。しかし、大半の競技はそれができない。なぜなら、「国内を統括する競技団体はひとつ」と決められ、分裂や分立したら「国の助成が受けられなくなる」上に、「オリンピックに参加できなくなる」という、IOC(国際オリンピック委員会)の基本姿勢もあるからだ。 オリンピックがスポーツの最高の舞台とされているため、スポーツ界は結局、オリンピックに支配されている。数年前、日本のプロ・バスケットが分裂していることを国際連盟が問題視し、そのままでは国際大会への参加を認めないと警告されて大騒ぎになった。 Jリーグで実績のある川淵三郎氏に「救世主」の役割を求め、現在のBリーグに統一された。つい先日、男子バスケットボール日本代表はアジア予選でワールドカップ本大会出場を決め、東京五輪出場に大きく前進した成果も、国内組織の統一がなければ叶わなかったからで、統一は美談とされている。 だが、一方で私は、「なぜ、オリンピックに出るために支配を受けねばならないのか?」、その論点が一切ないことに不満を覚えている。BJリーグには独自の発想と挑戦があった。そのことを「オリンピックに出るため」に、否定されるのはスポーツの真の発展を妨げることにならないのか? 残念ながら、盲目的にオリンピック支配を受け容れるいまの日本のスポーツ界には、こうした視点や議論さえ一切ない。 最近、多くの場面で「エンパワーメント」という言葉を耳にする。元々は女性の社会進出を支援する分野で使われ始めたようだが、国際女性デー(3月8日)に関連したシンポジウムで、ジェンダー開発政策専門家の大崎麻子氏(プラン・インターナショナル・ジャパン理事)はエンパワーメントの意味を、「人生の選択肢を広げる」「自分で決める力をつける」と、明快に説明していた。 「自分で決める力をつける」のが本来の教育や人材育成の根本にあるべきなのに、スポーツ界はなぜ、「自分で考えない体制」を目指し、「組織で決めた方針以外は議論も遮断する」、前時代的な体質を維持し続けるのか。そして、社会から非難を受けるのではなく、「国の支持を受ける」という、おかしな力学で動いているのか? 大崎氏は、「リーダーシップ」についてもこう話してくれた。「『君臨する』『人の上に立つ』といった狭義のリーダーシップではなく、『よりよい環境や社会を創る』。そのために『変革を起こす』人材こそがいま求められるリーダーの資質です。国際社会が『持続可能な開発目標(SDGs)』を目指す時代のリーダーシップは、『誰一人取り残さない』『社会を変革する』『みんなでやる』ことが重要です」 スポーツ界から一歩外に出れば、世の中は大きく変わり、一人ひとりを大事にする社会へと変貌する努力が全世界的に重ねられている。それなのに、スポーツは平気で逆行している』、上位下達で育ってきた日本のスポーツ界の指導者たちには、変革は難しそうだ。
・『相撲協会、高野連にもはびこる旧態依然としたスポーツ界の支配体質  スポーツ界は、旧態依然の支配体質を維持しようと頑なになっている。 改革を提唱した「平成の大横綱」をいびり出した格好の日本相撲協会にもその体質を感じる。 『春季大会での「1試合100球」の球数制限導入』を決めた新潟県高野連の決定に横槍を入れ、「再考」を求めた日本高野連にも同じ懸念を感じる。 選手の健康や体調を最優先するのでなく、自分たちの面子を優先し、都道府県の高野連を傘下に収め、上意下達を再認識させる日本高野連の困った感覚もさることながら、「新潟県に追従する都道府県はないのか?」とのメディアの質問に「ひとつもない」と答えた、その質疑応答にも、深い闇を感じる。 他の都道府県高野連は、新潟県高野連ほど切実に選手の健康を案じていないのか? 日本高野連が怖くて行動できないのではないか? だとしたら、その体質自体を猛省し、危険だと感じるのが、心ある「教育者」の当たり前ではないか? そのような感性は日本高野連にはないという証明だ。 このように、日本のスポーツ組織は、根本的な病理を抱えている。 日本体操協会の問題に話を戻そう。 体操を愛し、体操を「もっとうまくなりたい!」「もっと多くの人に楽しさを伝えたい」と情熱を持つ愛好者の集まりが本来、日本体操協会ではないか? だとしたら、理事会で話し合う方向性はまったく違うように思う。 「色々あったけれど、猛省し、みんなで意見を出し合い、自由な発想をぶつけ合う組織に変えていきましょう」そのような前向きな方向性が基本ではないのか? そういう感覚がないことが致命的だ。このような組織なら、日本体操協会も、日本高野連も、根本的な組織改革と人事刷新をしなければ、社会に責任を果たせないと私は感じる』、説得力のある主張で、大賛成だ。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が2月9日付け同氏のブログに掲載した「「日大危険タックル事件」、第三者委と警察はなぜ正反対の結論になったのか」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/02/07/%E6%97%A5%E5%A4%A7%E3%80%8C%E5%8D%B1%E9%99%BA%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%80%8D%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%80%81%E7%AC%AC%E4%B8%89%E8%80%85%E5%A7%94%E3%81%A8%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E3%81%AF%E3%81%AA/
・『2018年5月6日に行われたアメリカンフットボール(以下、「アメフト」)の試合で、日本大学の選手が、関西学院大学の選手に、反則行為にあたる危険なタックルをして負傷させた問題。警視庁は、タックルをした男子選手を傷害の疑いで書類送検し、内田正人・前監督と井上奨・元コーチについては、試合映像の解析や関係者への聴取結果などから選手への指示は認められなかったと判断し、容疑はないとする捜査結果の書類を送付したと報じられている』、警視庁の判断の根拠も含めた真相が知りたいところだ。
・『警視庁の捜査結果と第三者委員会の調査結果  2月5日午前の朝日ネット記事は、「捜査関係者による」として、以下のように報じている。 警視庁は試合映像を入手し、詳細に分析。結果的に関東学生アメフト連盟などの認定との食い違いが約10カ所見つかったという。 「内田氏が悪質タックルを見ていたのに選手を交代させなかった」と指摘される根拠については、内田氏の視線はボールを追っており、悪質タックルを見ていなかったことを確認。コーチ陣がインカム(ヘッドホン)を通じて反則があったことを伝えたのに内田氏が交代させなかったとも指摘されたが、内田氏はそもそもインカムを着けていなかった、としている。 タックル直後、井上氏の「やりましたね」との発言に内田氏が「おお」と応じたとされる場面も、両氏が視線を合わせていないことなどから、警視庁は内田氏が反則を事前に了解していた事実はないと判断した。 日大ではこれまでも日常的に使ってきたが、今回のような悪質な反則行為をする選手はいなかったという。井上氏は記者会見で「潰せ」と言ったことは認めたうえで「けがをさせろという意図はなかった」と述べていた。 さらに、2月6日の朝日朝刊では、警視庁での発表を受けて  警視庁は関係者計195人への聞き取りをした。捜査1課によれば、関東学生アメフト連盟(関東学連)と日大の第三者委員会の調査は、日大の部員らへの聞き取りなどから両氏の指示があったと認定していたが、この調査に応じた部員の多くが警視庁の調べに「報道を見て(タックルした)選手のためになんとかしなくてはいけない、選手の話に沿うように証言しなくては、と思った」などと説明。指示を直接聞いた人は確認されなかったとしている。と報じている』、第三者委員会の調査「に応じた部員の多くが警視庁の調べに「報道を見て(タックルした)選手のためになんとかしなくてはいけない、選手の話に沿うように証言しなくては、と思った」、というのには驚かされた。第三者委員会の調査の厳格性を疑わせるものだ
・『関東学生アメフト連盟は、昨年5月29日、日大アメフト部の問題に関する調査結果を公表し、5月31日に、日大は、元広島高検検事長の勝丸充啓弁護士を委員長、委員の弁護士7名のうち4名が元検察官という元検察官中心の第三者委員会(正式名称「日本大学アメリカンフットボール部における反則行為に関する第三者委員会」、以下「第三者委」)を設置し、6月29日に中間報告書、7月30日に最終報告書が公表された。 第三者委では、関係者等に対するヒアリング(延べ約100名)、関係資料の分析、検証(画像解析の外部委託も含む)、関係場所の往査、日大アメフト部部員に対するアンケート調査、他大学アメフト部監督等に対する意見照会などの調査を行った結果として、以下のような事実認定を行っている(中間報告書12頁) A選手の説明は全般的に信用できるものと判断し、これを事実認定の基本に据え、他の信用できる関係証拠も総合考慮し、本件一連の反則行為が内田氏や井上氏の指示に基づくものであったこと及び当該指示が相手選手に対する傷害の意図を含むものであったとの認定に至った。他方、これに反する内田氏及び井上氏の説明は、不自然かつ不合理で、信用できる関係証拠とも矛盾することなどから、信用することができない。 そして、第三者委は、このような事実認定を前提に、以下のように述べて、内田・井上両氏を「断罪」している。 A選手の行為自体、決して許されるものではないが、それを指示しておきながら、これを否定して不自然・不合理な弁解を重ねるばかりか、A選手との認識のかい離であるとかA選手の勘違いであるなどと責任回避の態度に終始する内田氏、井上氏にはアメフト指導者としての資質が決定的に欠けているといわざるを得ない。 今回の警視庁の捜査結果では、第三者委で、内田・井上両氏が「反則の指示」をしたと認定し、「断罪」した根拠の大半が否定され、「傷害を負わせる意図はなかった」という正反対の結論となった。なぜ、第三者委の調査と警察の捜査とで正反対の事実認定となったのか』、大いに興味をそそられるポイントだ。
・『前記朝日記事に書かれた警察の捜査結果との比較で第三者委報告書の調査結果を見ると、問題は次の3点に集約できる。 第1に、「危険タックル」を行ったA選手の「反則タックルを指示された」との供述の信用性を全面的に肯定したこと、第2に、内田・井上両氏の供述の信用性を否定したこと、そして、第3に、選手への指示に関して、「相手方に怪我をさせることの認識」がどの程度であれば違法なのかという問題である』、なるほど。
・『A選手の供述の信用性の肯定  第三者委は、以下のように述べて、「内田・井上両氏から精神的重圧を受ける中でルールを逸脱した危険なタックルの指示を受け、それを実行した」とのA選手の供述の信用性を全面的に肯定している(中間報告書12頁)。 A選手の説明は、本件反則行為に及んだ経緯・状況等について、全体として、他の選手等の関係者の説明等の関係証拠ともよく符合し、内容においても合理的かつ自然で、疑問を差し挟むところは見られない。また、A選手が、自己に不利な内容も含めて詳細な説明をしていること、自ら犯した反則行為の重大性を認識して深く反省し、負傷させたB選手を始め関係者へ強い謝罪の意を表するとともに、自己の責任を自覚し今後アメフトのプレーを断念するとの決意を固めるなど、その姿勢に保身の意識は感じられないこと、自ら公開の場に姿を現し記者会見を行ったことはそのような姿勢の表れと評価できることなどから、A選手の説明には基本的に高度の信用性が認められる。 A選手は、動画がネットで拡散し、その後、テレビ等で繰り返し映し出されている「ルールを逸脱した危険タックル」を行った当事者であり、それによって被害者の関学選手が傷害を負ったことについての直接の責任を負う。それが監督・コーチの指示によるものだったという点については、A選手がパワハラ的環境で追い詰められた精神状態にあったとすると、本人としては、記憶しているとおりに供述していても、監督・コーチの発言内容についての受け止め方が、相手方の真意と異なる可能性もある。 報告書は、「自ら公開の場に姿を現し記者会見を行ったことはそのような姿勢の表れと評価できる」と述べているが、記者会見の中で、自己の「危険タックル」についての反省謝罪の部分についてはそう言えるとしても、監督・コーチの指示によるものだったことについては、自ら記者会見を行ったこと自体が供述の信用性を肯定する理由にはなるわけではない』、郷原氏の冷静な判断はさすがだ。
・『内田・井上両氏の供述の信用性の否定  第2の点、すなわち、内田・井上両氏の弁解の信用性に関して第三者委が重視したのが、「内田氏が本件危険タックルを当該時点で認識しながら、あえてA選手のプレー続行を容認していた事実」の有無であり、それを肯定し、「A選手による危険タックルは内田氏の想定外の行動ではなく、あらかじめ了解していたものと強く推認できる」という結論を導いた。 この点についての内田氏の認識の根拠としたのが 内田氏は、その直後、井上氏から、「Aがやりましたね。」と報告を受け、「おお。」と言ってこれに応じている。という事実だった。しかし、この事実は、警察の捜査で、「この場面で両氏が視線を合わせていない」という理由で否定された。ただし、「視線を合わせていない」だけで、会話があったことを否定する根拠になるのかは、若干疑問だ。 また、内田氏が本件危険タックルを自身の目で見ていたかどうかについて、第三者委は、 客観的に検証することは困難であったが、日大チームは本件危険タックルにより15ヤードの罰退を科されているのであって、仮に本件危険タックルを見ていなかったというのなら何が起こったのかを周囲の関係者に尋ねるのが通常と思われるところ、内田氏が当時誰かに確認したような事実は一切見当たらない。だとすれば、内田氏は、当時本件危険タックルを自身の目で見ていたか、少なくともその視界に捉えていたものと認めるのが相当であろう。としていた。 しかし、警察の捜査結果では、内田氏の視線はボールを追っており、悪質タックルを見ておらず、インカムをつけていなかったために他のコーチからの報告も聞いていなかったとされている。第三者委が指摘している「大音量でアナウンスされていた」かどうか、それによって内田氏が反則の内容を認識していたかどうかの説明はない。内田氏が15ヤード罰退の理由を何によるものだと考えていたのかも、不明だ。 このように、警察の捜査結果で、内田・井上両氏の供述の信用性についての疑問がすべて解消されたわけではない。 警察の捜査結果が、消極のほうに傾いたのは、両氏の供述の信用性以外の理由だったと考えることもできる』、謎解きの腕はなかなかのものだ。
・『スポーツ中の行為への傷害罪のハードルの高さ  第3の問題は、スポーツの中での相手選手に怪我をさせる行為を傷害罪に問うことのハードルの高さである。 スポーツの中での選手の行為を傷害等の刑法犯に問われたケースというのはほとんどない。アメフトは、格闘技に近い、選手の体が激しくぶつかり合うスポーツであり、プレーによる負傷の可能性があることを予め了解した上で試合が行われる。もちろん、危険なプレーを禁止するルールがあり、そのルールの範囲内でプレーを行わなければならない。しかし、反則を犯して相手に怪我をさせたとしても、それがただちに傷害罪に当たるわけではない。実際の試合では、反則が行われることも、それによって選手が負傷することは、「想定の範囲内」であり、選手はそれを前提に自分の身を守るしかないことを承知の上で出場しているのである。 今回のA選手の「危険タックル」は、単なるルール違反からは逸脱したものであり、それを、意図的に行ったとすれば、実行した本人には傷害罪が成立する可能性が高い。そのような危険タックルを行うことについて、内田監督と井上コーチが、実際にA選手が行ったような「単なるルール違反」ではない「アメフトのプレーから逸脱した危険タックル」を行わせて、相手方選手に怪我をさせることを意図し、それを指示したのであれば「傷害の共謀」があったということになる。 しかし、選手を指導する立場にある監督・コーチが、「危険タックルで相手選手に怪我をさせることを指示する」というのは、「関学アメフト部に対して特別の動機」があれば別だが、通常は考えにくい。基本的に、内田・井上両氏が傷害罪で起訴される可能性は限りなく低いと考えるのが、刑事実務からの常識的な判断であろう。警察の説明は、内田・井上両氏の供述の信用性に関する説明が大部分だが、実質的な理由は、むしろ「アメフトのプレーから逸脱した危険タックル」を行わせて、相手方選手に怪我をさせる意図の立証の困難性にあったのではないか。 そのような見通しは、元検察官中心の第三者委側でも十分に認識できたはずだ。それにもかかわらず、第三者委の報告書が、内田・井上両氏の傷害罪の認定につながるような証拠評価を行ったことの背景には、第三者委設置当時、この「危険タックル問題」での内田・井上両氏について「有罪バイアス」が働いていたことが影響しているように思える』、「元検察官中心の第三者委側でも」「有罪バイアス」が働いたとは、人間の心理の揺らぎ易さを物語っているのだろう。
・『第三者委員会への「有罪バイアス」  アメフトの試合中に、パスを投げ終えて無防備だった関学大選手に背後からタックルするという「危険極まりない異常な反則プレー」の動画が、試合直後からネットで拡散されたことで一気に批判が炎上し、しかも、反則を受けた側(選手の父親や関学大)が、危険タックルを行った日大選手ではなく、日大アメフト部や監督・コーチを批判したことから、日大アメフト部に対する批判が高まった。しかも、その後、反則プレーを行ったA選手が顔を出して謝罪の記者会見を行ったことの「潔さ」が評価される一方、会見で反則指示を全否定した内田・井上氏側の「往生際の悪さ」が対照的にとらえられたことで、批判は、内田・井上氏側に集中することになった。さらに、記者会見での日大の広報担当者と集まった記者との間で口論のようなやり取りがあったことなど、日大側の危機対応の拙さもあって、大学への反発が高まり、日大アメフト部と日大への社会的批判は最高潮に達した。こうした中で、反則指示の有無に関して、両氏に有利な意見・結論が出しづらい状況であった。 しかも、第三者委設置後の6月11日には、ヒアリングに応じた被害選手の父親が、担当の弁護士の発言を自身のフェイスブックで公表して第三者委の弁護士の中立性に疑問を呈したこと、日本大学教職員組合が「大学側の意向に沿った調査報告書等を出したら、弁護士としてプロフェッションとしての見識が問われることになる」などの意見を発表したことが報じられた。 このような「有罪バイアス」の高まりの中で、第三者委としては、内田・井上両氏が傷害の意図で危険タックルの反則を指示したことを明確に認定し、両氏を厳しく断罪せざるを得ない状況に追い込まれていったとみることができる。 今回、警察が、告訴事件を検察庁に送付した段階での捜査結果の公表という異例の措置に踏み切ったのも、有罪視一辺倒の世の中の見方を否定するために、相応の根拠を示す必要があると考えたからであろう』、第三者委が置かれた当時の状況は、確かに「有罪バイアス」が働き易かったようだ。
・『今後の展開  今回、警視庁は被害者から告訴されている内田・井上両氏の傷害被疑事件を、A選手とともに検察庁に送付したので、処分は、検察官の判断に委ねられることになる。第2の点に関しては、前記の通り、公表された警察の捜査結果だけではまだ釈然としない点もあるが、捜査した警察が消極判断を示している以上、内田・井上両氏を検察官が起訴することはないと考えてよいであろう。 問題は、今回の捜査結果の公表によって、今後どのような社会的影響が生じるかである。 理事を解任され、懲戒解雇された内田氏は、日大を提訴しており、今回の捜査結果は、訴訟に大きな影響を与える。その上、今後、内田氏を「断罪」したマスコミが名誉棄損で訴えられる可能性もある。問題となる報道の大半は、第三者委の報告書が出る前に行われている。この場合、第三者委の報告書は、マスコミ側の報道内容の真実相当性を裏付けるはずだったが、警察の捜査結果がそれに対する「有力な反証」となる。 また、日大にとっては、「内田・井上両氏が、傷害の意図で反則タックルを指示し、A選手が実行した」との事実を前提に、第三者委員会から提言された原因分析・再発防止策を、今後の対応において、そのまま維持するのかどうかも問題になる。 第三者委報告書が両氏を厳しく「断罪」した記述が名誉棄損だとして、それを公表した日大と第三者委側が内田・井上両氏から訴えられることもあり得ないわけではない。 重大な組織の不祥事で信頼が失墜した場合に、信頼回復のための「切り札」とされる「第三者委員会」だが、事案の中身によっては、調査の在り方や報告書の内容について非常に困難な問題が生じ得ることを示していると言えよう』、「日大と第三者委側が内田・井上両氏から訴えられることもあり得ないわけではない」、「第三者委員会」とは本当に難しいもののようだ。
タグ:アメフト 小林信也 エンパワーメント 郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン 今後の展開 日本体操協会 筒香 嘉智 同氏のブログ 日本のスポーツ界 (その24)(野球はいつから球児にとって「苦しいだけのスポーツ」になったのか 筒香嘉智が「勝利至上主義」を問う、宮川選手への反省文要求で露呈した 体操協会の根深いパワハラ体質、「日大危険タックル事件」 第三者委と警察はなぜ正反対の結論になったのか) 「野球はいつから球児にとって「苦しいだけのスポーツ」になったのか 筒香嘉智が「勝利至上主義」を問う」 暴言を受ける子どもたち 『空に向かってかっ飛ばせ!』 過剰なまでの「勝利至上主義」が蔓延する少年野球界に疑問を投げかける一冊 怒られると、子供たちは委縮 「またエラーして怒鳴られるのか」「打てなくて叩かれるのか」… 一度そんなふうに思ってしまえば、よいプレーはなかなか生まれません 小さい頃から無理に投げ続けたせいで、肘や肩を痛めて手術する子供はかなりの数にのぼるはずです アメリカではメジャーリーグ機構が年齢別に「このくらいまでなら投げさせても大丈夫」という球数のガイドラインをはっきりと提示 堺ビッグボーイズの先進的な取り組み 少年野球のモデルケースになる 子供たちの体力や個性に合わせて練習をカスタマイズする 野球は本来、たのしいもの 指導者に言われるままにやるのではなく、自分の頭で考えて練習を積み重ねる 「宮川選手への反省文要求で露呈した、体操協会の根深いパワハラ体質」 宮川紗江選手に反省文の提出を求めた 「僕はこの処分がパワハラだと思います」 宮川選手と池谷さんを一方的に罰し、今後の言動や行動を規制するような決定に違和感を覚えた人々が少なからずいたのではないだろうか 問題のあった当事者のすべてを罰し、問題発言のすべてを断罪 「もう自由な発言はできない」「メディアには素直に言えない」と感じるのが普通だろう 協会に所属する選手や指導者、関係者たちの発言や心理までも支配する方向で動いている “レジェンド”の名誉を過剰に守る結論を導いた、調査の恣意性 報告書は、功労者であり、ヒーローであった塚原光男氏と千恵子氏の名誉を守る内容 夫人ともども任期を待たず、公職から退くことを明言 断罪されなくても自ら「居座らない」ことを約束した。それであるなら、過剰にレジェンドに泥を塗る必要はないではないか メディアの中にも働いていた 3ヵ月経って、ほとぼりが冷めたころ、あの第三者委員会の報告を絶対的な事実のように根拠づけて、各方面をバッサリとやった 「オリンピックが最高の舞台」だからこそ逃れられない選手たち 「人生の選択肢を広げる」「自分で決める力をつける」 スポーツ界はなぜ、「自分で考えない体制」を目指し、「組織で決めた方針以外は議論も遮断する」、前時代的な体質を維持し続けるのか 相撲協会、高野連にもはびこる旧態依然としたスポーツ界の支配体質 日本体操協会も、日本高野連も、根本的な組織改革と人事刷新をしなければ、社会に責任を果たせないと私は感じる 「「日大危険タックル事件」、第三者委と警察はなぜ正反対の結論になったのか」 危険なタックルをして負傷させた問題 警視庁は、タックルをした男子選手を傷害の疑いで書類送検し、内田正人・前監督と井上奨・元コーチについては、試合映像の解析や関係者への聴取結果などから選手への指示は認められなかったと判断し、容疑はないとする捜査結果の書類を送付 警視庁の捜査結果と第三者委員会の調査結果 第三者委は、このような事実認定を前提に、以下のように述べて、内田・井上両氏を「断罪」している。 A選手の行為自体、決して許されるものではないが、それを指示しておきながら、これを否定して不自然・不合理な弁解を重ねるばかりか、A選手との認識のかい離であるとかA選手の勘違いであるなどと責任回避の態度に終始する内田氏、井上氏にはアメフト指導者としての資質が決定的に欠けているといわざるを得ない 今回の警視庁の捜査結果では、第三者委で、内田・井上両氏が「反則の指示」をしたと認定し、「断罪」した根拠の大半が否定され、「傷害を負わせる意図はなかった」という正反対の結論 第1に、「危険タックル」を行ったA選手の「反則タックルを指示された」との供述の信用性を全面的に肯定 第2に、内田・井上両氏の供述の信用性を否定したこと 、第3に、選手への指示に関して、「相手方に怪我をさせることの認識」がどの程度であれば違法なのかという問題 A選手の供述の信用性の肯定 内田・井上両氏の供述の信用性の否定 警察の捜査結果で、内田・井上両氏の供述の信用性についての疑問がすべて解消されたわけではない 消極のほうに傾いたのは、両氏の供述の信用性以外の理由だった スポーツ中の行為への傷害罪のハードルの高さ 第三者委設置当時、この「危険タックル問題」での内田・井上両氏について「有罪バイアス」が働いていたことが影響 第三者委員会への「有罪バイアス」 日大アメフト部と日大への社会的批判は最高潮に達した 被害選手の父親が、担当の弁護士の発言を自身のフェイスブックで公表して第三者委の弁護士の中立性に疑問を呈した 日本大学教職員組合が「大学側の意向に沿った調査報告書等を出したら、弁護士としてプロフェッションとしての見識が問われることになる」などの意見を発表 「有罪バイアス」の高まり 懲戒解雇された内田氏は、日大を提訴しており、今回の捜査結果は、訴訟に大きな影響 第三者委報告書が両氏を厳しく「断罪」した記述が名誉棄損だとして、それを公表した日大と第三者委側が内田・井上両氏から訴えられることもあり得ないわけではない 「第三者委員会」だが、事案の中身によっては、調査の在り方や報告書の内容について非常に困難な問題が生じ得ることを示している
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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クールジャパン戦略(その8)(「日本スゴイ論」が破滅への道である理由、クールジャパン機構の「おサムい裁判」の行方~苦しい言い分を連発…そして国費が溶けていく、TVが伝える「日本はスゴイ」の嘘 日本は推進クールジャパン 世界の評価は礼賛とは限らない) [国内政治]

クールジャパン戦略については、昨年10月24日に取上げた。今日は、(その8)(「日本スゴイ論」が破滅への道である理由、クールジャパン機構の「おサムい裁判」の行方~苦しい言い分を連発…そして国費が溶けていく、TVが伝える「日本はスゴイ」の嘘 日本は推進クールジャパン 世界の評価は礼賛とは限らない)である。

先ずは、ビジネス戦略コンサルタント・MPS Consulting代表の鈴木博毅氏が1月23日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「日本スゴイ論」が破滅への道である理由」を紹介しよう(文中の注は省略)。
https://diamond.jp/articles/-/190260
・『ちまたでよく目にする「日本はすごい」という論調。もちろん、自国を愛することに何ら問題はないが、不都合な事実には目をつぶり、ひたすら自国の素晴らしさに酔うことは多くの危険性をはらんでいる。日本しか知らないことは、本当は日本をまったく知らないことでもあるのだ。 太平洋戦争に突入した前後に、「日本は神の国」「日本スゴイ論」が洪水のようにプロパガンダとして流された。私たちが、そうした空気に支配されず、冷静に「ムラの外」を知るにはどうすればいいのだろうか? 40年読み継がれる日本人論の決定版、山本七平氏の『「空気」の研究』をわかりやすく読み解く新刊『「超」入門 空気の研究』から、内容の一部を特別公開する』、「太平洋戦争に突入した前後に、「日本は神の国」「日本スゴイ論」が洪水のようにプロパガンダとして流された」とは、恥ずかしながら知らなかった。「空気」の研究」から読み解くとは興味深そうだ。
・『日本が大きく動いた3つの時代  山本七平氏の『「空気」の研究』では、日本社会全体が空気で大きく動いた時代を3つ挙げています。 [1]明治維新後(文明開化の絶対化) [2]太平洋戦争時(戦争遂行の絶対化) [3]敗戦後の経済復興期(戦争放棄・経済成長の絶対化) 3つの大転換点を見ると、一つの推測ができます。真実が「内にあるか、外にあるか」どちらに設定されるかで、悲劇か飛躍かの分岐点が生まれることです。 明治維新後には、文明開化(西欧文明の導入)が非常に強い絶対善となりました。福澤諭吉やその他、海外に出て西洋の実際を冷静に分析した先達の著作や意見も、広く日本社会に受け入れられました。 その結果、日本人のアイデンティティ(自我)を保持したまま、西洋のプラスの側面を全面的に吸収することで日本社会は近代化に成功したのです。 敗戦後の経済成長も同じく、日本社会、日本人が「外に真実がある」と考えながら空気に従っていたことが勝因だと考えられるのです。 一方で、太平洋戦争に突入した前後には、「日本は神の国」「日本スゴイ論」が洪水のようにプロパガンダとして流されました。氾濫させた情報の基本的な視点は「日本は世界一」「日本は他国に優越している」です。 真実が内にあるとして空気が醸成されると、その空気を強化する方向でしか情報が流せなくなります。閉じられたムラと世界の現実が加速度的に乖離を深めていき、国家の完全な破綻という悲惨な敗戦を1945年に迎えることになりました』、現在は海外情報も溢れているとはいえ、日本のマスコミが「日本スゴイ論」のお先棒を担いでいるだけに、不都合な情報は伝えられない懸念もあろう。
・『日本しか知らないことは、日本をまったく知らないことである  ビル・エモットは『日はまた沈む』『日はまた昇る』など、日本でもベストセラーとなった著作を持つイギリスの日本研究家です。また、ピーター・タスカも、著名なマーケットアナリストにして、日本研究の書籍をいくつも出している人物です。 二人が対談した『日本の選択』という書籍には、真実が自分の内側にだけあると信じると、自分と現実の両方を見失っていく構造が、示唆的な形で指摘されています。 日本しか知らないということは、日本をまったく知らないということである。おおかたのジャパン・ウォッチャーの問題点は、日本を理解することに時間をかけすぎて、ほかの国をないがしろにするという点にある。その結果、より深い時間的空間的な理解によってあきらかになるはずの世界的な共通性を欠落させ、日本の特殊性と例外性ばかりを強調することになる。 日本以外を知らないと、比較検討で日本を相対化できず、結果としてさまざまな出来事や事実を、客観性を持って正しく把握することができないのです。 日本という言葉を他の言葉に変えてみると、興味深い気付きを与えてくれます』、ジャパン・ウォッチャーには確かにそうした傾向がある気もするが、彼らの母国のことは知り抜いている筈なので、比較検討できるのではないか、との疑問もある。
・『「自社しか知らないということは、自社をまったく知らないことである」「社内しか知らないということは、社内をまったく知らないことである」「国内市場しか知らないということは、国内市場をまったく知らないことである」 比較検討しなければ、日本の生産性のレベルも、貧富のレベルも当然わかりません。世界各国と比較する、海外を知りその共通点や相違点を知ろうとすることが、結果として日本を相対的に知ることになり、正確に日本を理解することになるのです。 幕末から明治維新にかけての日本、そして戦後経済復興期の日本の共通点。二つの時代、日本は外に目を向けて自己を正しく把握することができたのです』、これに関しては、その通りだろう。
・『日本では「ムラの外」を知ることが優位性をもたらす  日本社会のムラ、閉鎖された劇場化、情報統制、本当のことを大衆に教えない支配者など。これまで述べてきたことを逆に見ると、次のことが言えます。 日本ではムラの外を知ることが、権力や富、支配力の源泉となる。 これは歴史上の人物、過去150年間の起業家たちを見ても明らかでしょう。日本の外に通じて、世界で起こっている変化とのギャップを利用できる者が、起業に成功し、ビジネスを発展させ、国民を操る支配力を得てきたのです。 この理由は主に二つ考えることができます。 一つは、日本が島国で情報統制を行うことが容易であったこと、ならびに歴史を通じて、文化・技術輸入国としての作法を身に付けていたこと。 遣唐使・遣隋使などは、支配層からすれば、最新の情報や技術を独占的に獲得し、それを閉じられた劇場である日本の中で行使できることを意味しました。 二つ目は、日本が比較的大きな島国であり、大陸と適度な距離があり、文化的な進化とマーケットや独自の文化圏として存在するだけの規模を持っていたことです。 箱庭のように閉鎖されていても、独自の文化圏を生み出すだけの規模がなければ、内外差を利用した支配、利益などのうまみがありません。日本には必要な人口があり、情報統制で支配する妙味があったのです。 この点から、日本人が外に目を向けて、世界に真実があると考えた時代が、過去150年間での2回の飛躍を支えた理由もわかります。内外差が極めて大きくなり、そのギャップがさまざまなひらめきにつながったからです。 土佐藩の坂本龍馬は、藩の方針に反する自らの信念のために脱藩しています。龍馬はその後、明治維新の立役者の一人となりますが、ムラの前提に拘束される日本社会では、自分の信念や善悪、倫理基準を貫くとき、脱藩が必要なのです。 ムラから飛び出す日本人は、一定の割合で歴史や社会に大きな足跡を残します。彼らは、その時代の多数派が試さないことに挑戦する気概と能力があるからです。 ムラの外に出ること、虚構の外側を知ることは飛躍や成功の大きな足掛かりとなる。日本の外に目を向けて、直接情報を海外から取得する。 内外差が大きくなるほど、ムラの外に出た者、虚構の劇場の外を知る者が有利になる。日本の歴史からも、私たちは再び世界に目を向ける時代を迎えているのです』、「日本では「ムラの外」を知ることが優位性をもたらす」というのは、いまだに学会などでも海外事情の解説が大手を振っていることからも、その通りだ。ただ、もう海外から学ぶものはない、とムラのなかに籠ろうとする人々が増えていることも事実だ。こうした内向きを助長している「日本スゴイ論」も困ったものだ。

次に、2月2日付け現代ビジネス「クールジャパン機構の「おサムい裁判」の行方~苦しい言い分を連発…そして国費が溶けていく」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59609
・『よくもここまで…  「税金の壮大な無駄遣い」と言われて久しいニッポンの官民ファンド。「問題児」は昨年暮れに空中分解した産業革新投資機構だけではなかった。安倍政権の肝いりで発足したクールジャパン機構も、そのメッキが剥がれ、本性があらわれている。 実は、とあるパートナーの民間事業者と泥沼の訴訟が繰り広げられているのだ。 クールジャパン機構を相手に民事訴訟を起こしたのは、長崎県の民間企業グループ「グリーンティーワールドホールディングス」。米国で「日本茶カフェ」を展開しようと、機構との共同出資で合弁会社を設立した相手である。そんな日本茶カフェ事業のパートナーが、機構に関係解消や損害賠償を求めて昨年9月、訴訟を起こしている。 まずは、クールジャパン機構が昨年末、東京地方裁判所に提出した一通の準備書面をご一読いただきたい。そこにはこんなくだりがつづられている。<M氏は被告(=クールジャパン機構)が設立されることを聞きつけ、事業への投資を再三希望した。しかし、事業の計画は具体性に乏しく、実現可能性に疑義があり、(略)被告の担当者は投資要請に何度も難色を示し、2014年6月頃には明確に投資を断った。M氏は色よい反応を受けられず、一度は謝絶されたにもかかわらず被告からの投資に強く執着し、(略)結果として(M氏の)友人の尽力のおかげで事業計画は格段に向上し、2015年3月、支援決定を行った> <1999年、M氏はロサンゼルスにて緑茶カフェを開店したが、経営不振により、遅くとも2007年までには閉店した(略)カフェ事業では失敗した経験しかなかった> クールジャパン機構がそう非難するM氏とは、民間企業グループの代表者であり、共同で挑戦する米国での日本茶カフェ事業の中核を担った人物でもある。 いくら訴訟で争っているとはいえ、まがりなりにも4年前には仲良く手を組んだ相手であり、自ら国費を投じた事業。よくもここまで非難できるものだ、とあきれてしまう。準備書面に記した批判がそのままブーメランのように、自身に返ってくることには気づかないのだろうか――』、訴訟相手を悪し様に非難するのは定石とはいえ、ここまでいうと、「自身に返ってくる」のは確実だろう。
・『失敗続き  機構の主張に対し、民間企業グループ側は証拠を突きつけて反論しているが、その中身を紹介する前に、まずはクールジャパン機構という組織の成り立ちを見ておこう。 クールジャパン機構はその本名(=海外需要開拓支援機構)にあるとおり、日本の商品や文化を海外に売り込んで発信する「支援」を目的として2013年11月に設立された。 しかしながら、その評判はすこぶる悪い。 六本木ヒルズに瀟洒なオフィスを構え、昨年春までに29案件に計620億円を投じてきたのだが、ここ数年は毎年数十億円単位の赤字を垂れ流し、赤字額は5年間で累計100億円近くに及ぶ。 会計検査院からは昨年4月、見込まれる回収額や保有株の評価額を投資額が大幅に上回る状態にあり、実質的に44億円の含み損を抱えているとの指摘も受けた。安倍政権が官民ファンドの再編を迫られるなか、別ファンドに吸収させて取りつぶすのは既定路線と目される。 めだつのは、投資して得た株式を手放す「撤退」事例である。三越伊勢丹ホールディングスと組んでマレーシアにつくったショッピング施設や、シンガポールにつくった日本食のフードコートは軌道に乗せることができず、民間事業者だけで「柔軟かつ機動的に対応できるようにするため」に撤退すると発表された。バンダイナムコホールディングスと組んだ日本アニメの動画配信事業は、機構の撤退後に事業そのものが頓挫した。 国費を消失させてもなお詳しい説明はされないが、当初の見込みがただ甘かっただけでなく、「柔軟性」や「機動性」が劣っているために、崇高な目的を果たせなかったのは共通しているように映る。 おまけに昨年は、経済産業省からの出向者を含む男性役員3人からセクハラやパワハラを受けたとして、元派遣社員の女性に損害賠償請求訴訟を起こされたことでも話題を集めた。 役員らは「セクハラ行為などはなかった」と主張しているが、訴状によれば、女性は歓迎会の帰り道に肩に手を回されたり手を握られたりしたほか、別の日には他の女性とともにカラオケ店に呼び出され、「役員との映画鑑賞」「監査役とのワインディナー」といったクジを引かされたとしている。 事実なら、気持ち悪いことこの上ないが、女性が問題視して社外ホットラインに通報しても、機構は「専門家にも相談し、かつ一般的に世の中で起きている事案と比較した結果、セクハラとは認定できない」などと告げてきたという』、会計検査院は「実質的に44億円の含み損」と指摘しているが、本当はもっと大きいのだろう。しかも、セクハラ騒動まで起こしているとは、もはや公的組織の形をなしていないようだ。
・『そして新たな訴訟が  そんな機構にもう一つ降ってわいたのが、日本茶カフェ事業をめぐる冒頭の訴訟だ。 昨年9月に機構を提訴したグリーンティーワールドホールディングスは、日本茶を輸出するマエタクや地方銀行十八銀行など長崎県とその周辺の11企業・団体が出資する会社。訴訟は、機構が一方的に運営会社を清算しようとして損害が出ているとして、出資契約の無効確認(=縁切り)と約4千万円の損害賠償を求めるものだ。 同社と機構は2015年4月、約210万ドルずつ出資して運営会社をつくり、今も米ロサンゼルスでカフェ1店舗を営んでいる。しかし、赤字経営が続き、当初の目標だった「10年間で米国に50店舗の展開」は絶望視される。 原告側は「機構から不相応に大きな組織や新ブランドの設立などを要求されて費用負担が膨らんだうえに、ただちに黒字転換させる事業計画を出せと難題を突きつけられ、それができないと清算を迫られた」と説明。長崎の企業グループとしては単独で事業を続けたいが、機構はすんなり別れてくれず、強引に清算を迫られていると主張している。 これに対して機構は、「M氏の経営失敗により多額の損失が発生している」「私的経営による残余金の枯渇の懸念が高い」などと、原告代表者M氏への攻撃を全面展開。清算を申し立てた理由は「M氏による経営失敗と背信的行為の数々、株主・投資家の無視・軽視にあった」と唱え、「無為に国費による投資が散逸する状況に何もしないで悠長に待つことはできない」とまで述べている』、これだけでは、どちらの言い分が正しいのかは分からない。
・『国費が……  真っ向から対立する主張は、どちらかに大ウソが紛れているのは間違いない。 事業失敗の責任がどちらにどれくらいあるかはまだ推し量れないが、ただ、少なくとも「M氏が機構の投資をしつこく求めてきた」という冒頭の機構の主張は、原告側から提出された新証拠によって崩れそうだ。 証拠とは、M氏が機構幹部たちから受け取ったメールである。<投資チームには前向きに検討するよう、指示してあります。会長、私とも、基本的には投資案件としてGOサイン、それを前提に詳細をつめるよう本日の会議でも伝えてあります> そう書かれたメールをM氏が受け取ったのは2014年6月10日。差出人はクールジャパン機構の太田信之社長(当時)である。機構がまさしく「投資を明確に断った」と主張した同じ月のことで、その主張には矛盾を感じずにはいられない。 長崎県にあるお茶の老舗に生まれたM氏は、1980年代に単身渡米して日本茶の小売店や抹茶アイスクリームの製造販売を手がけ、日本茶の普及に尽力してきた人物である。8年続いた緑茶カフェもその一環で、閉店理由を「経営不振」と決めつけた機構の主張も原告側は否定している(そもそも8年続いたなら、機構が共同出資した日本茶カフェよりマシだとも言える)。 M氏に機構の投資話を持ちかけたのは、機構の取締役で、投資を判断する海外需要開拓委員会の委員のK氏だったというのが、原告側の主張だ。実際、K氏がロスを訪ね、M氏のアポを取り付けるメールも証拠提出された』、機構がこんな見え見えの嘘をついていたとは公的組織にあるまじき行為だ。
・『そのK氏から15年1月にM氏が受け取ったメールには、こんな一文も記されている。時期は合弁事業の契約直前だ。<いよいよ条件や契約面のテクニカルな詰めだと思います。多くの案件が、一見して『こんな不平等条約は嫌だ』と反発するものですが、冷静に考えていただくと大した意味はない、というか国のファンドとしてのアリバイ作りのような位置づけですので、calm down かつ大所高所の発想でご対応いただければ、と思います> じつは機構との契約には、機構にとって一方的に有利な条件が含まれている。M氏がうかつにも”不平等条約”を受け入れたのは、「国のアリバイづくりで大した意味がない」というK氏の説得があったからだ、という。 不平等条約の一つが、原告側に契約違反があったときに、機構は株式を出資時の価格か評価価格の高い方の130%もの値段で買い取らせられる権利を持つ、とするものだ。原告側に同じ権利は与えられていない。 機構は長崎の企業グループとの対立が先鋭化した17年以降、この条件を持ち出し、機構の保有株を出資時の130%の値段で買い取らせる権利を主張しつつ、清算するよう迫った。赤字続きの事業をなんとか自前で続けたい民間事業者に突きつける要求にしては、あまりに酷ではないだろうか。 パートナーと円満に別れる調整能力を欠き、裁判所の調停も成立させられず、泥沼化する争いは米国の法廷にも持ち込まれた。 国際弁護士も使って多額の訴訟費用をつぎ込むなどして「無為に国費を散逸させている」のが、民間事業者の「支援」を看板に掲げるクールジャパン機構のおサムい惨状である』、「機構は株式を出資時の価格か評価価格の高い方の130%もの値段で買い取らせられる権利を持つ」というのは、損失回避のための条項だろう。民間から見れば「不平等条約」で、「「国のアリバイづくりで大した意味がない」というK氏の説得があった」にせよ、M氏はこれを受け入れたのは自らの落ち度だ。米国の法廷はどんな判断を下すのだろう。しかし、機構も「国際弁護士も使って多額の訴訟費用をつぎ込むなどして「無為に国費を散逸させている」のも酷い話だ。

第三に、3月10日付け日刊ゲンダイ「TVが伝える「日本はスゴイ」の嘘 日本は推進クールジャパン 世界の評価は礼賛とは限らない」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geinox/248896
・『日本が誇るアニメや漫画、ゲームなどの「クールジャパン」。世界中の子供が「アルプスの少女ハイジ」を知っていて、「キャプテン翼」を見てサッカーを始めた子供が今やワールドカップの各国代表選手になっている。そんな話を聞けば、同じ日本人としてうれしくも楽しい感じがしてくる。 先日も、バルセロナのメッシとスアレスが「ドラゴンボール」の帽子をかぶっていたことが話題になった。メッシがアニメファンと聞けば、やはり誇らしい気持ちにもなってくる。日本政府も「クールジャパン」を推進し、昨年度は444億円の予算を付けている。 日本礼賛のテレビ番組についても、アニメや漫画は「洗浄便器」に次ぐ定番ネタ。「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京系)は放送250回超を数える人気番組だが、最近の放送でも初音ミク(バーチャルアイドル)のコスプレをする19歳のロシア人女性に密着。生まれつき病弱だったロシア人女性が、病室で初音ミクの歌声を聴いて病に打ち勝ったというエピソードを紹介していた。 ただし、世界中の人がクールジャパンに理解を示しているというわけではない。むしろ、ドラゴンボールなどで頻繁に出てくる暴力シーンは規制の対象だ。 電通が日本を代表するキャラクターの認知度を20~59歳の中間所得層以上を対象に調べたところ、「ポケットモンスター」は全体の65%が知っていると答えたが、「ドラゴンボールZ」は北米と欧州で5割に満たなかった。日本国内では97%の認知度(日本リサーチセンター調べ)がある「ドラえもん」にいたっては、残念ながら北米の人には1割程度しか知られていない』、「「ドラゴンボールZ」は北米と欧州で5割に満たなかった」、というのは私にはまずまずとも思える。
・『「世界でバカにされる日本人」(ワニブックスPLUS新書)の谷本真由美氏は著書の中でこう言っている。「日本のテレビや新聞、雑誌などで騒いでいる『クールジャパン』は、実際のところ外国の人にとっては気味が悪かったりします。その最たる例は、見方によっては未成年者を性的な対象として扱う文化がひどく蔓延していることです」 先月、国連が発表した児童ポルノ規制ガイドラインに漫画やアニメが含まれていた。もちろん、一部の過激な表現に限られるが、世の中には一定数、アニメをこころよく思っていない人がいることも分かる。日本のコンビニでは成人向け雑誌の撤去が進んでいるが、世界スタンダードではいずれ「週刊少年ジャンプ」のような漫画誌もコンビニに置けなくなるかもしれない』、「未成年者を性的な対象として扱う文化がひどく蔓延している」というのはその通りだと思う。『クールジャパン』で売り込むアニメも厳選する必要があるのだろう。
タグ:ビル・エモット 日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 失敗続き 鈴木博毅 谷本真由美 ピーター・タスカ クールジャパン戦略 (その8)(「日本スゴイ論」が破滅への道である理由、クールジャパン機構の「おサムい裁判」の行方~苦しい言い分を連発…そして国費が溶けていく、TVが伝える「日本はスゴイ」の嘘 日本は推進クールジャパン 世界の評価は礼賛とは限らない) 「「日本スゴイ論」が破滅への道である理由」 太平洋戦争に突入した前後に、「日本は神の国」「日本スゴイ論」が洪水のようにプロパガンダとして流された 山本七平氏 『「空気」の研究』をわかりやすく読み解く新刊『「超」入門 空気の研究』 日本が大きく動いた3つの時代 [1]明治維新後(文明開化の絶対化) [2]太平洋戦争時(戦争遂行の絶対化) [3]敗戦後の経済復興期(戦争放棄・経済成長の絶対化) 真実が「内にあるか、外にあるか」どちらに設定されるかで、悲劇か飛躍かの分岐点が生まれる 太平洋戦争に突入した前後 真実が内にあるとして空気が醸成されると、その空気を強化する方向でしか情報が流せなくなります。閉じられたムラと世界の現実が加速度的に乖離を深めていき、国家の完全な破綻という悲惨な敗戦を1945年に迎えることになりました 日本しか知らないことは、日本をまったく知らないことである 二人が対談した『日本の選択』 ジャパン・ウォッチャーの問題点は、日本を理解することに時間をかけすぎて、ほかの国をないがしろにするという点にある 自社しか知らないということは、自社をまったく知らないことである 社内しか知らないということは、社内をまったく知らないことである 日本では「ムラの外」を知ることが優位性をもたらす 「クールジャパン機構の「おサムい裁判」の行方~苦しい言い分を連発…そして国費が溶けていく」 ールジャパン機構 とあるパートナーの民間事業者と泥沼の訴訟 グリーンティーワールドホールディングス 米国で「日本茶カフェ」を展開しようと、機構との共同出資で合弁会社を設立した相手 準備書面に記した批判がそのままブーメランのように、自身に返ってくることには気づかないのだろうか 29案件に計620億円を投じてきた 赤字額は5年間で累計100億円近く 会計検査院からは昨年4月、見込まれる回収額や保有株の評価額を投資額が大幅に上回る状態にあり、実質的に44億円の含み損を抱えているとの指摘 経済産業省からの出向者を含む男性役員3人からセクハラやパワハラを受けたとして、元派遣社員の女性に損害賠償請求訴訟を起こされた M氏が機構幹部たちから受け取ったメール 投資チームには前向きに検討するよう、指示してあります。会長、私とも、基本的には投資案件としてGOサイン、それを前提に詳細をつめるよう本日の会議でも伝えてあります 不平等条約の一つが、原告側に契約違反があったときに、機構は株式を出資時の価格か評価価格の高い方の130%もの値段で買い取らせられる権利を持つ、とするものだ 泥沼化する争いは米国の法廷にも持ち込まれた 国際弁護士も使って多額の訴訟費用をつぎ込むなどして「無為に国費を散逸させている」 「TVが伝える「日本はスゴイ」の嘘 日本は推進クールジャパン 世界の評価は礼賛とは限らない」 「世界でバカにされる日本人」 『クールジャパン』は、実際のところ外国の人にとっては気味が悪かったりします。その最たる例は、見方によっては未成年者を性的な対象として扱う文化がひどく蔓延していることです
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民主主義(その5)(世界に逆行…東京新宿のデモ規制は「民主主義崩壊」の表れ、小田嶋 隆氏:代案なしで文句言ったっていいじゃん) [政治]

民主主義については、昨年7月5日に取上げた。久しぶりの今日は、(その5)(世界に逆行…東京新宿のデモ規制は「民主主義崩壊」の表れ、小田嶋 隆氏:代案なしで文句言ったっていいじゃん)である。

先ずは、元外交官で外交評論家の孫崎享氏が昨年7月7日付け日刊ゲンダイに寄稿した「世界に逆行…東京新宿のデモ規制は「民主主義崩壊」の表れ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/232811
・『デモは特定政策に対して国民が自らの立場を表明する貴重な手段であり、世界的に見ると、デモで政治を変えようとする動きが顕著である。 米国フロリダ州の高校で17人が死亡した銃乱射事件では、銃規制の強化を求めるデモが全米で繰り広げられた。韓国では2016年11月12日、30年ぶりに100万人以上が参加したキャンドル集会(ろうそくデモ)が開かれ、これを機に朴槿恵政権は退陣に追い込まれ、文在寅大統領が誕生。今も高い支持率を維持している。ロシアでも、プーチン大統領の4期目就任式を前に、全土でデモが展開された。 今や「独裁国家」を除き、世界各地の首都でデモが展開されるのは当たり前だ。ところが日本ではそうではない。 東京・新宿区は、街頭デモの出発地として使用を認める区立公園を、これまでの4カ所から1カ所に限ることを決めた。区内で行われたデモは昨年度77件あり、うち、60件は今後は使えなくなる3つの公園から出発している。ヘイト行為対策と説明しているが、77件中、ヘイト行為は13件。デモを規制しようとする意図は明らかだ。 日本各地で行われているデモは今の安倍政権の政策に反対、抗議する目的がほとんどだ。新宿区長が「民主主義を破壊したい」という理念を持っているとは思いたくない。しかし、区長がデモ規制に動けば、政権サイドから「よくやった」と称賛されるのかもしれない』、ヘイト行為対策に名を借りて街頭デモの出発地への規制をした「新宿区長」は悪質だ。しかも、7月31日付けBLOGOSによれば、公園使用基準の見直しなので、区議会には諮っていないようだ。東京弁護士会などは「違憲の疑いがある」としているようだ。
https://blogos.com/article/314879/
・『民主主義が崩壊する理由のひとつとして、指導者に対する媚びへつらいがある。森友・加計疑惑で明らかになったのは、霞が関官僚が「国民のために何をなすべきか」でなく「安倍首相が喜ぶか否か」を行動基準にして「忖度」していた疑いだったが、それが地方政治にも蔓延し始めたようだ。 歴史を見ると、「独裁国家」ほど「民主国家」や「人民国家」を標榜するケースが多い。自民党は2005年に「立党50年宣言」を行った。そこでは「わが党は民主主義のもとに」と掲げられていたが、実は政策が「自由」や「民主主義」とかけ離れているからこそ、あえて「自民党」と名乗っているのではないか。 日本は戦後、民主主義国家の道を歩んできたが、今、あらゆるところで、逆行する動きが表面化している』、「民主主義が崩壊する理由のひとつとして、指導者に対する媚びへつらいがある」というのは言い得て妙だ。

次に、全く毛色が違う「代案」について、コラムニストの小田嶋 隆氏が3月8日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「代案なしで文句言ったっていいじゃん」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00010/?P=1
・『大学の入学試験もおおむねカタがついたようで、都心のオフィス街の周辺には、例によって微妙な真空状態が訪れている。 この時期は、毎年そうなのだが、知り合いへの連絡にちょっと気を使わねばならない。 というのも、相手が身内に受験生をかかえている場合、結果を尋ねたものなのかどうか考え込んでしまうからだ。 真正面から問い質すのも無作法な気がするし、かといって、まるで気づいていないふりをするのもそれはそれで白々しい。 相手から話題を切り出してくれれば一番良いのだが、それ以前に、先方は、こちらが連絡をしたことを尋問であるというふうに受け止めているかもしれない。 だとしたら、こんな時期にあえて電話をかけたこと自体が、ぶしつけな振る舞いであった可能性もある。 てなわけで、その種の微妙な案件をかかえた相手には、よほど差し迫った用件がない限り、連絡を避けることになる。 で、月日がたつ。 例年だと、大型連休が明けた頃になってようやく結果が判明する。 そして、おお、それはなによりだったじゃないか、と、結果がどうであれ、そういう感じのどっちつかずのやりとりをすることになる。 実にもって、社会生活というのは度し難いものだ』、確かに入試結果は春先の知人への電話で気をつけねばならない厄介事だ。
・『今回は、時事問題には触れない。 連載の原点に返って、言葉の問題を取り上げてみることにする。 つい昨日、ツイッターのタイムラインで、ある新聞記事がちょっと話題になった。 元記事を読みに行ってみると、なるほど、不用意な言葉が使われている。 今回は、軽く炎上した新聞記事の中で使われていた、粗雑な用語について書くことにする。 件の記事は、3月6日付の毎日新聞に掲載された、トランプ大統領関連の解説文だ。 「狭まるトランプ包囲網 議会の疑惑追及本格化」という見出しで書かれた記事本文には、米下院司法委員会で、トランプ大統領による司法妨害、汚職、職権乱用の疑惑を調査する動きが本格化したことに加えて、いわゆるロシア疑惑をめぐる調査対象が広がりつつあることが書かれている。あわせて、先月、下院の監視・政府改革委員会が、トランプ大統領の顧問弁護士だったコーエン被告の公聴会を実施したことなども紹介されている。 なお、図版要素として「トランプ政権 疑惑追及の構図」と題した写真と解説図も付け加えられており、全体として、充実した解説記事になっている。 この記事の奇妙なところは、末尾を《ただ、1院を支配しながら政策の代案を示さずに政権追及に終始すれば、世論の批判の矛先が民主党に向かう可能性もある。 トランプ氏は民主党の動きについて「大統領ハラスメントだ」とツイート。不満を募らせている。》という文で締めくくっている点だ。 この部分が、いかにも「取って付けた」ようで浮いているということでもある。 あるいは、冒頭から続く記事本文のトーンが、トランプ大統領に対してあまりに辛辣な内容であることを気にして、バランスを取りに行った結果が、あの結末のパラグラフだったということだろうか。 でなければ、両論併記を旨とする新聞記者の本能として、あまりにも民主党側の主張に沿った内容ばかりを書き並べた埋め合わせに、結末部分で共和党側の言い分として「議会の多数を政争に利用するのはいかがなものか」という意見を紹介しておいた、ということなのかもしれない』、解説図も付け加えた解説記事としては力作なのに、結末部分でミソをつけたとはお粗末だ。
・『いずれにしても、ここで 「代案」という言葉が出てくるのはいかにも唐突だ。 なぜというに、大統領の疑惑を追及するのに、代案もへったくれもないからだ。 疑惑追及は、提案ではない。 とすれば、代案は必要ないし、不可能でもある。 この件に関しては、追及をするのか、追及を断念するのかの二者択一しかない。 疑惑追及の代わりに代案として米中貿易交渉の議論を深めるとか、ロシア疑惑を俎上にあげる代わりに国境の壁について討議するというのは、話のスジとしてバカげてもいれば、新聞記事として間抜けに過ぎる。 こういう記事を一読してあらためて思うのは、もしかして、文章を書く専門家であるはずの新聞記者にしてからが、脊髄反射で言葉を並べているのではなかろうかということだ。 どうして、「代案」などという、場違いな言葉が突然出てきたのかを考えると、「とりあえず、野党が政争の具として疑惑追及を騒ぎ立てている時には、与党側からの反論として『代案』という言葉を提示しておくのがセオリーだ」という思い込みが、記者のアタマの中にあらかじめ転がっていたと考えざるを得ない』、「疑惑追及は、提案ではない」にも拘らず、「文章を書く専門家であるはずの新聞記者にしてからが、脊髄反射で言葉を並べているのではなかろうかということだ」、というのは手厳しい批判だ。
・『記事を読んで、3月6日の昼前に私はこんなツイートを書き込んだ。《「オレの駐車場に勝手にクルマ停めるなよ」「代案出せよ」「代案?」「駐車がNGなら、代わりに何を停めるべきなのかについて冷静な見解を出せってことだよ」「あんた何言ってる?」「代案も出さずに身勝手な苦情持ち込むなと言ってる。民主政治の大原則だぞ」「どこの民主政治だよ」》 実際、この「代案」(最近は「対案」という言葉が使われることも多いが、意味するところは変わらない)なる言葉とそれを含んだ言い回しは、与党の政治家が、野党側からの批判を封じる際の鉄板の決まり文句として、この10年ほどしきりに使われてきた捨て台詞でもある。 ただ、用語には敏感であってしかるべき新聞記者が、「代案」のような副作用の大きい未整理なクリシェ(注)を、安易に使うのは、いかにもまずい』、(注)とは、乱用の結果、意図された力・目新しさが失われた句(常套句、決まり文句)・表現・概念(Wikipedia)。「代案」は「与党の政治家が、野党側からの批判を封じる際の鉄板の決まり文句として、この10年ほどしきりに使われてきた捨て台詞でもある」、というのは的確な指摘だ。
・『勉強不足の三回生議員やネット上に盤踞する自称「普通の日本人」が、自分のブログの中で連呼するのならともかく、新聞記者が全国紙の朝刊の紙面上で、こんなたわけたお題目を結語に持って来て良いはずがないではないか。 そもそも、この「代案」という言葉を含むフレーズが万能の野党打擲棒として振り回されてきた背景には、それに先立つ長い与野党固定の停滞した時代の国会審議がある。 私が子供だった時代、「万年野党」「無責任政党」「なんでも反対党」などと呼ばれていた社会党をはじめとする昭和の時代の野党に対しては、 「反対のための反対」を叫ぶだけの「オリジナルの政見も法案も持っていない形式上のカウンター政党」であるという主旨の批判が常についてまわっていた。 事実、戦争が終わってからこっちの半世紀近く、ほとんどまったく政権を奪回する可能性にすら近づくことのなかった万年野党は、与党の持ち出す法案に、脊髄反射的な「反対」の意思を表明しているだけの機械仕掛けの人形のように見えていたものだった』、思い返せばその通りだろう。
・『「おひるごはん何にする?」「やだ」「やだ、じゃわからないでしょ?」「やだ」「じゃあ、おそばにする?」「やだ」「じゃあ、何を食べる?」「やだ」と、昭和の野党は、この種の頑是ない幼児と同一視されていたわけだ。 「反対だけじゃわからないでしょ? 自分が何をしたいのかを言わないと議論にならないでしょ?」と。 こんな説教が有効だと思われていたということは、それほどまでに舐められていたということでもある。 もっとも、当時の野党にしたところで、機械的に反対を叫んでいただけではない。 修正案や代案をまるで出さなかったわけでもない。 野党側からの政権批判の決まり文句が「腐敗」や「独裁」であった時代の、政権側からの野党に向けた反撃のフレーズが「なんでも反対」であったと、言ってみればそれだけの話でもある。 21世紀に入って、とにもかくにも政権交代と与野党逆転が与野党双方にとって実現可能な近未来であることが判明してみると、野党批判にも、もう少し工夫した言い方が採用されることになる。 それが「代案を出せ」だったりする。 その心は「単なる反対や拒否の表明は責任ある政党が選ぶべき態度じゃないぞ」てなところにあるわけだが、基本的な議論の構造は、実のところ、昭和の時代のやりとりから、そんなに様変わりしてはいない。 つまり背景にあるのは、「なにかを提案するためには、それなりの準備と情報と頭脳と労力が必要だ。一方、誰かの提案に反対するためには反対の二文字を叫ぶだけで足りる。これはいかにも非対称じゃないか」という、昔ながらの理屈だ。 この理屈は、いまもって、有効ではある。 代案の提示抜きでの反対が無責任であるような場面は、当然あるわけだし、反対のための論陣を張るにしても 「だっていやだから」だけでは足りないケースだって少なくない』、これは筆の滑り過ぎだ。「だっていやだから」として反対したケースなどはあったのだろうか。一応、反対する以上、その理由を明確にしていたと記憶する。
・『ただ、それもこれもケースバイケースだ。 どういう法案が出されていて、それについてどんな議論が展開されているのかによって、代案が不可欠な場合もあれば、不要な場合もある。 たとえば、「埼玉県立防衛軍創設」といったあたりのたわけた法案についての態度は 「否決」「反対」「ばかにするな」だけで充分。代案は不要だ。 「憲法改正」にも代案は要らない。 「改正は不要だ」ということと、その理由を説明すれば足りる。 「われわれが改正案を提出しているのだから、この改正案に反対する君たちも、君たちなりの改正案を提案しないと対等な議論にならない」という理屈は、一見、まともな議論に聞こえるが実のところ杜撰な詭弁に過ぎない』、「「憲法改正」にも代案は要らない」というのはその通りだが、最近は立憲民主党のなかにも「憲法改正」での代案を出そうとする動きがあるのには、あきれて物も言えない。
・『「ねえ犬を飼うのはどうかしら?」「反対」「代案は?」「代案?」「ほら、猫とか、ハムスターとか、犬でないとしたらほかに何を飼うのかについてあなたの考えを言わないときちんとした反対にならないでしょ?」「いや、反対は反対だよ。何も飼わない」「じゃあ、出てって」「なんだそれ」「あたしもあんたを飼わないことに決めた」 つまりだ。「改正する」への当面の代案は「改正しない」以外にない。 「どういうふうに改正するのか」という話は、改正することが決まった後に検討べき課題であって、つまり、当初の段階では「代案」は必要ないということだ。 別の例をあげるなら、「文楽への補助金を廃止する」という提案については 「文楽への補助金を継続してほしい」旨を訴えれば代案としては完璧だ。 というよりも、有効な代案はこれ以外に存在しない。 「代わりに何への補助金を廃止するのか」「補助金の財源をどうやって確保するのか」という話は、また別の議論で、これについては別の場所で議論せねばならない』、説得力ある指摘だ。特に犬を飼うことへの「代案」の話は傑作である。
・『話を元に戻すと、毎日新聞が記事にしたトランプ大統領の疑惑追及に際して、疑惑追及を推進している民主党の側が代案を提示する必要はまったくないし、そもそもそんなことは不可能でもある。 最後に、日本の野党の話をする。 民進党(旧)が、「平成29年通常国会(193国会)における民進党の法案への態度」という文書を公開している。 これを見ると、193国会内で成立した法案の数は66件で、民進党はそのうちの52件に賛成している。約8割の法案に賛成していることになる。 また、民進党が反対した法案は14本となっているが、その内でも8本に対しては対案・別案・修正案を提出しており、単に反対だけという意思表示をしたのは6本に過ぎない。 「野党は反対のための反対しかしていない」「野党は代案を出さない」という決めつけ自体が、かなりの部分で思い込みだということだ』、民進党が「約8割の法案に賛成している」というのには、自分の「思い込み」のお粗末さを再認識させられた。
・『実際には、国会中継のネタとして、与野党の論戦が白熱しがちな、対立的な法案の審議が選ばれているから、常に反対する野党と強行採決を敢行する与党の絵面ばかりを目にすることになっているだけで、実際には、粛々と採決が進んでいる委員会もあれば、野党の提出した修正案に沿って議論が進んでいる場面もある。 個人的に、意味不明な提案に対しては、とりあえず反対の意思を表明するつもりでいる。 意味もわからずに賛成することがもたらすリスクよりは、意味がわからないからという理由で反対することのリスクのほうが小さいだろうと考えるからだ。 どっちみちわからないにしても、だ』、「意味もわからずに賛成することがもたらすリスクよりは、意味がわからないからという理由で反対することのリスクのほうが小さいだろう」、とは賢明な判断だ。「対案」の意味を改めて考えさせられた一文だった。
タグ:民主主義 毎日新聞 日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン 孫崎享 BLOGOS 小田嶋 隆 (その5)(世界に逆行…東京新宿のデモ規制は「民主主義崩壊」の表れ、小田嶋 隆氏:代案なしで文句言ったっていいじゃん) 「世界に逆行…東京新宿のデモ規制は「民主主義崩壊」の表れ」 デモは特定政策に対して国民が自らの立場を表明する貴重な手段 今や「独裁国家」を除き、世界各地の首都でデモが展開されるのは当たり前だ。ところが日本ではそうではない 新宿区は、街頭デモの出発地として使用を認める区立公園を、これまでの4カ所から1カ所に限ることを決めた ヘイト行為対策と説明しているが、77件中、ヘイト行為は13件。デモを規制しようとする意図は明らかだ デモは今の安倍政権の政策に反対、抗議する目的がほとんどだ 民主主義が崩壊する理由のひとつとして、指導者に対する媚びへつらいがある 新宿区長 公園使用基準の見直しなので、区議会には諮っていないようだ 違憲の疑いがある 「独裁国家」ほど「民主国家」や「人民国家」を標榜するケースが多い トランプ大統領関連の解説文 「狭まるトランプ包囲網 議会の疑惑追及本格化」 この記事の奇妙なところは、末尾を《ただ、1院を支配しながら政策の代案を示さずに政権追及に終始すれば、世論の批判の矛先が民主党に向かう可能性もある。 トランプ氏は民主党の動きについて「大統領ハラスメントだ」とツイート。不満を募らせている。》という文で締めくくっている点だ バランスを取りに行った 両論併記を旨とする新聞記者の本能 疑惑追及は、提案ではない 代案は必要ないし、不可能でもある 野党が政争の具として疑惑追及を騒ぎ立てている時には、与党側からの反論として『代案』という言葉を提示しておくのがセオリーだ」という思い込み 「代案」 なる言葉とそれを含んだ言い回しは、与党の政治家が、野党側からの批判を封じる際の鉄板の決まり文句として、この10年ほどしきりに使われてきた捨て台詞でもある 長い与野党固定の停滞した時代の国会審議 昭和の時代の野党に対しては、 「反対のための反対」を叫ぶだけ 野党側からの政権批判の決まり文句が「腐敗」や「独裁」であった時代の、政権側からの野党に向けた反撃のフレーズが「なんでも反対」であった 21世紀に入って 野党批判にも、もう少し工夫した言い方が採用されることになる。 それが「代案を出せ」だったりする 代案が不可欠な場合もあれば、不要な場合もある 「憲法改正」にも代案は要らない 民進党(旧) 平成29年通常国会(193国会)における民進党の法案への態度 193国会内で成立した法案の数は66件で、民進党はそのうちの52件に賛成している。約8割の法案に賛成 反対した法案は14本となっているが、その内でも8本に対しては対案・別案・修正案を提出 意味もわからずに賛成することがもたらすリスクよりは、意味がわからないからという理由で反対することのリスクのほうが小さいだろうと考える
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トランプ大統領(その40)(米国のINF条約離脱とドイツの核武装をめぐる議論 欧州と米国を割く亀裂の象徴、トランプの「非常事態宣言」は憂慮すべき問題だ 社会の2極化の中 肥大化する大統領権限) [世界情勢]

トランプ大統領については、1月14日に取上げた。モラー特別検察官によるロシア疑惑報告書の提出を待っていたのだが、先延ばしが続き、提出されても司法長官が公表するかも不透明になったため、取り敢えずこれは公表後に取上げるとして、今日は、(その40)(米国のINF条約離脱とドイツの核武装をめぐる議論 欧州と米国を割く亀裂の象徴、トランプの「非常事態宣言」は憂慮すべき問題だ 社会の2極化の中 肥大化する大統領権限)である。

先ずは、在独ジャーナリストの熊谷 徹氏が2月12日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「米国のINF条約離脱とドイツの核武装をめぐる議論 欧州と米国を割く亀裂の象徴」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/020800012/?P=1
・『米国が2月1日に中距離核戦力廃棄条約(INF条約)からの離脱をロシアに通告した。この発表は、80年代に作られた欧州の安全保障に関する枠組みが崩され、東西間の緊張が高まりつつあることの表れだ。欧州の地政学的リスクの高まりは、ドイツの核武装に関する議論が2018年夏以来、起きていることにも表れている』、この問題は難しい割には、新聞報道があっさりしているため分かり難かったので、格好の記事だ。
・『中距離核はロシアに脅迫手段を与える  米ソが1987年に調印したINF条約は、射程500~5500kmの地上発射型の核弾頭付きミサイルの保有を禁じている。米国はすでに2014年、つまりオバマ政権の時代に「ロシアは射程2500kmの地上発射型巡航ミサイル・9M729(西側のコードネームはSSC-8)の実験を行った」と発表し、INF条約違反の可能性を指摘していた。国防総省は「ロシアは2018年に9M729ミサイルを、ウラル山脈に近いエカテリンブルクや南部のヴォルゴグラード近郊に配備した」と主張する。 これに対しロシア側は「9M729ミサイルの射程は480kmであり、INF条約には違反していない」と反論している。さらにロシア国防省は「米国がルーマニアに設置した迎撃ミサイルの発射施設『イージス・アショア』はソフトウエアや配線を変更すれば、トマホーク型巡航ミサイル(射程2500km)を発射できる。これはINF条約に違反する」と主張している。 通常は米国に対して批判的なドイツやフランスなど西欧諸国も、今回は珍しくトランプ政権の判断を支持している。北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国の政府は、米国の諜報機関が入手した情報を基に「ロシア側が条約に違反した」と判断している模様だ。 NATOは、ロシアが2014年にクリミア半島を強制併合し、ウクライナ内戦に介入し始めて以来、同国が対外戦略を変更し、攻撃的な性格を大幅に強めたと見ている。特に脅威にさらされているのが、冷戦時代にソ連に編入されていたバルト3国だ。これらの国々では、ロシアが国境付近で大規模な軍事演習を繰り返していることから、不安感を強めている。このためNATOは、バルト3国に小規模の戦闘部隊を配備している。バルト3国への脅威については、2017年7月に「迫るロシアの脅威、バルト3国の悲劇再来を防げ」で詳細にご報告した。 中距離核ミサイルの配備はロシアにどのような利点を与えるのか。仮にロシアがバルト3国に侵攻した場合、NATOはポーランド経由で増援部隊を送ることになる。この時、ロシアはNATO加盟国に対し「バルト3国に増援部隊を送ったら、中距離核ミサイルでベルリンやパリを攻撃する」と脅迫することができる。ドイツやフランスは「バルト3国のために、首都への核攻撃を許容するべきか否か」という苦渋の判断を迫られることになる。つまり中距離核ミサイルは、NATOの動きを封じる重要な抑止力なのだ』、NATOにとっての中距離核ミサイルの意味の重大さは理解できたが、それを米国が持ち出した意味は何なのだろう。
・『INF条約の政治的重要性  1980年代後半の米国にとって、INF条約は政治的に極めて重要な意味を持っていた。1985年にソ連共産党の書記長に就任したミヒャエル・ゴルバチョフ氏は、西側に対して軍縮と緊張緩和のシグナルを送り続けていた。米国のレーガン政権は、ゴルバチョフ書記長の核軍縮のシグナルがジェスチャーではなく、実体を伴ったものであるかどうかを試すために、INF条約に調印したのだ。 つまりこの条約をめぐる交渉は、ソ連が真剣に軍縮を望んでいるかどうかを探るための試金石だった。米国と西欧諸国は、ロシアが条約に調印しただけではなく、中距離核ミサイルSS―20の廃棄に踏み切ったため、ゴルバチョフの緊張緩和への意志が本物であることを理解した』、なるほど。
・『抜け穴が多かったINF条約  一方、欧米の軍事関係者の間からは、「調印から32年が経過して、INF条約の軍事的な意義は低下している。この条約に固執すると、軍事バランスの現実を見誤る」という意見が出ている。確かに、この条約には1980年代の米ソ間の雪解けの象徴という歴史的な意味があったが、核軍縮の実体面では抜け穴が多かった。 最大の抜け穴は、INF条約が潜水艦や航空機から発射される巡航ミサイルを対象としていないことだ。つまり地上発射式のミサイルは禁止しているのに、空や海から発射される中距離核ミサイルは禁止していない。 たとえばロシア軍は2015年のシリア内戦で、カスピ海の艦艇から発射した巡航ミサイルによって、1600km離れた目標を破壊した経験を持っている。米国も中東紛争でにおいて、時々、艦艇からトマホーク型巡航ミサイルをイラクやシリアの目標に向けて発射している。これも地上発射型ではないので、INF条約は禁止していない。 艦船や航空機が搭載する巡航ミサイルは、地上発射型の巡航ミサイルに比べて、機動性が高い。特に潜水艦が搭載する巡航ミサイルは、敵に発見されにくいという利点がある。 さらにロシアは、INF条約の対象外のミサイルの配備を着々と進めている。たとえばロシア軍は2018年1月、バルト海に面したカリーニングラードに地対地弾道ミサイル「イスカンデル(SS―26)」を配備した。核弾頭も搭載できるものだ。このミサイルはベルリンに到達する能力を備えるが、射程が500km未満なのでINF条約の適用外となっている。INF条約があるにもかかわらず、この種のミサイルによって西欧への脅威は増加しているのだから、INF条約に固執する意味はないというのが、米国の立場だ。 もう一つ米国にとって不都合な点は、中国がINF条約の締結国ではないことだ。1980年代後半には、中国の脅威がアジアにおいて今日ほど高まるとは想定していなかった。中国が地上発射型の中距離核ミサイルを配備できるのに、米国が手を縛られているのは不利とトランプ政権は判断したのだろう。 キール大学安全保障研究所のヨアヒム・クラウゼ所長はドイツの保守系有力紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)に寄稿し「1987年とは異なり、現在、プーチン大統領は、ゴルバチョフ氏が進めた政策を後戻りさせようとしている。こうした時代に、INF条約が欧州の安全を守っていると信じるのは、幻想だ」と述べている』、巡航ミサイルは条約締結当時にはなかった兵器だし、中国が入ってないなど確かに抜け穴が多いようだ。
・『東西冷戦の再来  抜け穴の多い条約とはいえ、米国がINF条約を離脱することが示す政治的なシグナルは大きい。1980年代にレーガン大統領(当時)は、「欧州では限定的な核戦争があり得る」と発言して西ドイツ市民に強い衝撃を与えたが、INF条約が消滅すれば、欧州の時計の針がその時代に戻ることを示す。 さらに2021年には、米ロが2011年に調印した新戦略兵器削減条約(通称・新START)の期限が切れる。米国がINF条約を離脱することで、ロシアが新STARTの延長を拒否する可能性が生じる。この場合、米ロは1960年代以来初めて、核兵器の廃棄や削減に関する条約を全く持たない状態となる。東西冷戦の再来という言葉は決して大袈裟ではない』、抜け穴が多いからといって、米国が先鞭を切って離脱することで、「米ロは1960年代以来初めて、核兵器の廃棄や削減に関する条約を全く持たない状態となる」というのは、深刻な事態だ。アメリカ・ファーストもいい加減にしてもらいたい。
・『ドイツの政治学者が核武装を提案  ドイツのハイコ・マース外務大臣は2月1日「ロシアがINF条約を守らないため、米国はこの条約から離脱する方針だ。INF条約の消滅は、欧州の安全を低下させる。我々は軍備拡大ではなく、より包括的な軍縮のための枠組みについて議論するべきだ」と語った。 マース氏が軍拡に反対する発言を行ったのは、欧州に核の傘を提供してきた米国でNATOに批判的なトランプ政権が誕生し、欧米間の連帯に亀裂が広がりつつある中、ドイツの核武装に関する議論が起きているからだ。 特に注目されたのは、ドイツの政治学者クリスティアン・ハッケ教授が2018年7月にドイツの月刊誌「キケロ」と保守系日刊紙「ヴェルト」に掲載した論文だ。ハッケ氏は「トランプ大統領はEUやNATOを批判する一方で、北朝鮮、ロシアなどの強権的指導者たちに接近するという、歴代の米国大統領には全く見られなかった異常な態度を示している」と述べ、米国の対外政策が根本的に変わったと指摘。 しかも教授は「トランプが将来、大統領の座から降りれば、全て元通りになると考えるのは甘すぎる」と警告する。米国は17年間に及ぶ対テロ戦争に疲弊しているので、将来別の人物が大統領になっても、欧州の防衛へのコミットメントを減らすと言うのだ。 「米国が欧州に提供する核抑止力が大幅に低下している」と考えるハッケ教授は、「ドイツは自国と欧州の安全保障を強化するために、独自に核兵器を持つことを検討するべきだ」と提案している。 ハッケ氏によると欧州では現在、ドイツが英国とフランスと核兵器を共同保有する可能性についても密かに議論が行われている。つまりドイツが英仏の核戦力の維持、研究開発のために資金を供与し、ロシアの脅威に対する抑止力にするという考え方だ。 だがハッケ氏はフランスのシャルル・ドゴール元大統領の「核兵器を国家間で共有するのは難しい」という言葉を引用して、英仏との核兵器の共同保有は現実的でないと主張している。確かにドイツにロシアの脅威が迫った時に、フランスがドイツを守るために核兵器を使うという保証はない。フランスがロシアの核による報復を受ける可能性があるからだ。 ハッケ教授は、「ドイツでは核武装についての論議はタブーとなっており、大半の政治家は『見ざる、言わざる、聞かざる』を決め込んでいる。だが米国の核の傘が消滅する可能性が強まりつつある中、ドイツは将来起こり得る危機に備えて、新たな軍事ドクトリンを持たなくてはならない」と主張している』、ドイツで部分的とはいえ、核武装論が出てきたとは驚かされた。
・『トランプ政権に強く失望  ハッケ教授は、米国と欧州の安全保障問題を専門としており、ハンブルクのドイツ連邦軍大学とボン大学で教鞭を取った経験を持つ。ドイツには冷戦時代から、NATOを柱とする防衛体制こそが欧州の安定の要だと考えて、米国との関係を重視する政治学者が多い。大西洋主義者(アトランチスト)と呼ばれる彼らは、いわばドイツの国際政治学界のメインストリームだ。ハッケ氏もその1人である。 彼の論文には、トランプ大統領がアトランチストたちの知る米国像を破壊しつつあることへの、強い絶望と怒りが表われている。ハッケ氏は他のインタビューでも「トランプ氏は出来るだけ早く大統領の座から降りなくてはならない」と発言している』、「彼の論文には、トランプ大統領がアトランチストたちの知る米国像を破壊しつつあることへの、強い絶望と怒りが表われている」、とトランプも罪作りなことをしたものだ。
・『ハッケ氏の核武装論について、政治学者の間からも反論が出ている。たとえばドイツ安全保障アカデミーのルドルフ・アーダム元会長は「キケロ」に投稿し、「ドイツが核兵器を保有したら、周辺国から激しい突き上げを食うだろう。ドイツが核拡散防止条約(NPT)から脱退したら、核兵器を持とうとする国が増えるに違いない。その意味でドイツの核武装は愚かで危険な選択だ」と述べてハッケ教授の主張に反駁した。アーダム氏は、ドイツが核兵器を持つことが、欧州での軍拡競争というパンドラの箱を開けることになると危惧しているのだ』、まだドイツの政治学者には健全な良識派もいるようだ。
・『ドイツに根強い反核思想  確かにハッケ氏の主張は、現実性に欠ける。たとえば東西ドイツ統一をめぐって米英仏ソの旧連合国が1990年にドイツと結んだ基本条約「2プラス4条約」は、東西ドイツが核兵器、生物兵器、化学兵器を保有することを禁じている。したがってドイツが核兵器を持つには、旧連合国と2プラス4条約の変更について交渉しなくてはならない。 さらにドイツは2011年に原子力法を改正して、2022年末までに原子力発電所を全廃すると決定している。核兵器を保有するためには、脱原子力政策を変更しなくてはならない。脱原子力については、右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を除く全ての政党が賛成しており、大多数の国民が支持している。ドイツではチェルノブイリ原発事故、福島事故によって、市民の原子力への不信感が増幅された。 1980年代にソ連が中距離核ミサイルSS-20、米国がパーシングIIを配備した時、当時の西ドイツで激しい反核運動が燃え上がった。現在ドイツでは環境政党・緑の党の支持率が20%に達し、社会民主党(15%)を上回っている。緑の党が1980年に結党された最大の動機は、欧州での核軍縮と脱原子力だった。つまりこの国の原子力に対する反感の根底には、核戦争への不安もある。 この国の市民を相手に、ドイツの核武装を提案する政党が議会で過半数を取ることができるとは思えない。シビリアン・コントロール(文民統制)を重視するドイツは、軍を連邦議会の強力な監視の下に置いている。現在の議会が、欧州における核軍備競争の引き金になりかねないドイツの核武装を承認するとは考えにくい。 AfDのように脱原子力政策の見直しを要求する過激な政党が過半数を取る事態は、今のところ想像しにくい。またドイツの核武装はロシアに敵対する行為だ。プーチン政権に好意的な党員を多く抱えるAfDの中で、ドイツの核武装に反対する勢力が現れるだろう』、ドイツの核武装には、旧連合国と2プラス4条約や国民の強い反核意識などの障害があるので、当面は非現実的と知って一安心した。
・『核武装論は欧米間の亀裂を浮き彫り  このようにハッケ教授の意見は、少なくとも今日のドイツでは少数派である。議論は政治学者やジャーナリストの間に留まっており、メルケル政権の高官たちも全く論評していない。 ただしこれまでタブーだったドイツの核武装論が論壇に浮上した事実は、ドイツの知識人の間で米国に対する不信感がいかに高まっているかをはっきり示している。NATOは一発の砲弾も撃つことなく、ソ連に勝った。その軍事同盟の主軸である米国が、欧州の安全保障体制の要を自ら揺るがしたことは、多くの欧州人たちが持っていた座標軸を急激に変えつつあるのだ。米国と欧州の離反は世界にとって危険な兆候である。ハッケ論文に価値があるとしたら、NATOが漂流する危険性を改めて世界に示したことだ。 メルケル首相自身、「我々は他者に頼らず、自分の運命を自分でコントロールしなくてはならない」と言ったことがある。もはや安全保障について、米国に頼ることはできないという意味を含んでいる。核武装という極端な道に走らなくても、EU諸国が自分の手で安全保障体制を構築しなくてはならないことは、事実である。EUの28の加盟国が、武器や弾薬の調達、新兵器の開発までバラバラに行っている現状を考えると、「欧州軍」の創設は夢のまた夢である。 欧州人たちが体験しつつある苦悩は、我々日本人にとっても対岸の火事ではない。我々はアジアでの安全保障についても過去の常識は通用しないことを強く認識するべきだ・・・』、「NATOが漂流する危険性」とは困ったことだ。トランプも、アメリカ・ファーストだけでなく、政策の波及効果も考えてもらいたいものだ。「EU諸国が自分の手で安全保障体制を構築」するのを見守りたい。

次に、米州住友商事会社ワシントン事務所 シニアアナリストの渡辺 亮司氏が2月25日付け東洋経済オンラインに寄稿した「トランプの「非常事態宣言」は憂慮すべき問題だ 社会の2極化の中、肥大化する大統領権限」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/267529
・『「大統領は国王のように振る舞ってはならない」。2019年2月18日、ニューメキシコ州のヘクター・バルデラス司法長官(民主党)は、トランプ大統領の非常事態宣言を権力の乱用であると批判した。ニューメキシコ州を含め民主党の司法長官のいる16州が同宣言に対し集団提訴を行っている(メリーランド州以外は州知事も民主党)。 ねじれ議会で政治がこう着状態に陥っていたオバマ前政権下でも、さまざまな政策が大統領令で実行されていたことから、当時、共和党はオバマ大統領を「オバマ王」と揶揄していた。そのときの状況にやや似ている。今日、同様にねじれ議会に直面しているトランプ大統領は選挙公約の「壁建設」を実現するために、非常事態宣言で追加費用の捻出を試みた。 建国の父が築いた3権分立において、非常事態宣言は、これまでも大統領による権力乱用の抜け穴となってきた。行政権が拡大しすぎることについて批判しているのは、専門家に限らない。社会の2極化が進む中、同宣言をトランプ大統領があからさまに政治利用したことで、2020年大統領選に向けて大統領の権力に対する懸念はますます議論の的になるだろう』、大統領の「伝家の宝刀」非常事態宣言についての貴重な解説だ。
・『「大統領」は君主制への批判から生まれた  アメリカ大統領の住居兼事務所であるホワイトハウスは「庶民の家(People’s House)」とも呼ばれる。地元連邦議員やホワイトハウス職員を通じて事前に予約すれば、外国人も含め誰でもセキュリティチェックを経た後にホワイトハウスを訪問することが可能だ。夕方になれば大統領や大統領の家族、ホワイトハウス職員が寛ぐ部屋などを、見学者は日中に歩き回ることができ、大統領を身近に感じられる。建国当初から、ホワイトハウスは国王が統治する宮殿ではなく、国民の所有物であり、国民が認める期間のみの大統領の仮住まいとして位置づけられているのだ。 君主制に反対したアメリカ建国の父は、3権分立制度を確立し、立法府、行政府、司法府に権限を分割し、均衡と抑制でお互いをけん制し合う仕組みを導入した。つまり、本来、大統領職は絶対的な権限を保持する役職として位置づけられていない。 大統領(President)の語源は、「前に着席している」という意味の“Praesidere”であり、“決定者(Decider)”ではない。1780年代、建国の父は憲法執筆の際、行政府の長の肩書きについて「国王(King)」とは呼ばないことは明確であったが、どのように呼ぶべきか悩んだという。目を引くものの、過度な権力を保持するものではないという意味の肩書きとして最終的に考え付いたのが「President」だったという』、「君主制に反対したアメリカ建国の父は、3権分立制度を確立し、立法府、行政府、司法府に権限を分割し、均衡と抑制でお互いをけん制し合う仕組みを導入した」とは、まさに民主主義の原点だ。大統領の語源は、ラテン語で「議長をするもの」、「統轄するもの」などで、確かに“決定者”ではないようだ。
・『2019年2月15日、トランプ大統領はメキシコとの国境の壁建設費用を計約80億ドル(議会承認の約13億8000万ドル含む)確保するため、非常事態を宣言した。民主党議員、一部の共和党議員、そして比較的リベラルな左寄りの米メディア各社などは相次いでトランプ大統領の行為を批判した。 非常事態宣言は国家非常事態法(NEA)で規定されている。大統領は同宣言を行うと、通常は議会が保有する権限や予算を利用することが可能となる。ニューヨーク大学法科大学院ブレナン司法研究所の調査によると、非常事態宣言によって大統領は法律に記載の123項目にものぼる新たな権限を得られるのだという。 アメリカが民主主義国家として始動した独立宣言からちょうど200年後の1976年、NEAは制定された。ウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン元大統領(任期:1969~74年)が辞任した後であった。そもそもNEAはニクソン元大統領の非常事態宣言の利用について懸念を示した議会が、制定に動いたもので、本来は大統領権限を制限する意図があった。 だが、同法では大統領が非常事態宣言を行うこと自体には厳しい制限を設けなかった。その結果、NEA制定後も歴代大統領は不明瞭な大統領権限を利用し、さまざまな場面で議会承認を経ずに政策を実行してきた経緯がある。こうした中、議会も合意が難しい国内政策や責任を負いたくない外交政策などで、大統領に権限を事実上委譲してきた。ねじれ議会でトランプ大統領は今後ますます、外交や通商政策でその権限を行使するに違いない』、NEAは「本来は大統領権限を制限する意図があった」のに、「大統領が非常事態宣言を行うこと自体には厳しい制限を設けなかった」ために濫用気味になったとは、皮肉なものだ。
・『3権分立を蝕むアメリカ社会の2極化  アメリカ政治では予算権限は議会にある。「金力(Power of the Purse:財布の力)」と呼ばれる予算権限は3権分立において議会が保有する最重要任務だ。予算は議員が作成する法案に基づき議会が審議し、上下両院で可決後に大統領が署名して成立する。大統領は予算教書で方針を示す法律制定の勧告権はあるものの、法案を提出することはできず、予算教書は議会にとってあくまでも参考情報にすぎない。 議会が超党派で合意し、2月15日の大統領署名で成立に至った2019会計年度歳出法では、大統領がメキシコとの国境に「テキサス州の指定地域で約55マイルの杭のフェンス」を導入する約13億8000万ドルの予算のみ認めた。つまり、トランプ大統領が当初計画していたコンクリートの壁を議会は実質的に認めなかった。 トランプ大統領が非常事態宣言によって、議会が認めなかった障壁を独自に建設することは、議会の予算権限をないがしろにする行為と捉えられている。議会が配賦した軍隊向け予算が壁建設費に転用されることについて、タミー・ダックワース上院議員(民主党)は「大統領は軍隊から盗んでいる」と批判した。 2月22日、ホアキン・カストロ下院議員(民主党)をはじめ220人を超える下院議員が連名で非常事態宣言の不承認決議案を提出した。今後、下院に続き、上院でも過半数の支持を得て不承認が決議されると見込まれる。民主党が過半数を占める下院だけでなく、上院でも一部の共和党議員から大統領の権力乱用との不満が噴出しているからだ。2月15日、マイク・リー上院議員(共和党)は、「この機会に(議会は大統領に与えた)権力を取り戻し始めるべき」との声明を発表した。 だが、不承認決議に対し、大統領が拒否権を発動することは確実だ。その後、上下両院で大統領の拒否権を覆す試みがみられるかもしれないが、覆すために必要となる3分の2には達しないことが予想される。 上院では47人の民主党議員に加え、20人の共和党議員の協力が必要となるが、現時点、共和党議員で非常事態宣言に反対を表明しているのは8人にすぎない。さらに下院(欠員3人のため現在432人)では235人の民主党議員に加え、53人の共和党議員の協力が必要となるが、2016年大統領選の目玉公約であった壁建設に関わる非常事態宣言で、共和党内から大統領に反旗を翻す議員は、これほど多くはいないと思われる』、大統領の拒否権を覆すには、上下両院で3分の2が必要とは、確かに壁は高いようだ。
・『議会が拒否権無効で合意できず、司法判断へ  3権分立における議会の予算権限を保持するためには大統領の拒否権無効に合意するのが、議員にとって当然の行為と思われる。建国の父も、各府がそれぞれの権力を維持するために均衡と抑制を働かせることを、想定していた。 だが、多くの共和党議員が拒否権無効に賛成票を投じないのには、今日の社会の2極化が影響している。仮に現職議員が賛成票を投じた場合、落選リスクを高める自殺行為となりかねない。次回選挙の予備選で同じ共和党内から、もっとトランプ大統領寄りの対抗馬が登場することが予想されるからだ。つまり、各議員が自らの再選のためにはアメリカ憲法の根幹にある3権分立の精神に背くインセンティブが働くといった矛盾に直面している。 既にトランプ大統領の非常事態宣言に対し、各方面から訴訟が起きている。非常事態宣言を行う根拠となる緊急性に欠ける点や予算の利用方法などが追及されている。トランプ大統領自らが記者会見で「(非常事態宣言は)しなくてもよかった」と認めた。メキシコ国境を超える不法移民の人数は過去約40年の最低レベルまで下がっている。 そもそも非常事態を宣言するのにためらい、時間を要していたことからも緊急性に欠けることは明らかだ。大統領は議会が壁建設費用を捻出するのを待っていたというが、本来、議会を待つ時間がない場合に大統領は非常事態を宣言するものだ。 だが、前述のようにNEAは非常事態を宣言する絶対的な決定権を大統領に付与しているうえ、同法には「非常事態」の定義、そしてそれを満たす要件の記載がない。したがって、大統領が非常事態と決定すれば、裁判所はそれを尊重する傾向がある。今回のように明らかに緊急性に欠ける状況であったとしても、裁判所は大統領の判断に任せる可能性が大いにある。 2018年6月、イスラム教徒が国民の多数を占める国々からの人の入国を禁止するトランプ大統領の命令について、安全保障を理由に最高裁は合法との判決を下した。同様に、非常事態宣言についても司法判断は拡大解釈する可能性があって、どちらに転ぶか不透明だ』、NEAに「「非常事態」の定義、そしてそれを満たす要件の記載がない」以上、「裁判所は大統領の判断に任せる可能性が大いにある」というのはやむを得ないだろう。
・『大統領の権力拡大を考え直す機運も  「(トランプ大統領は)原因ではなく、症状だ」。オバマ前大統領は今日の政治環境について2018年9月、このように語った。トランプ大統領の非常事態宣言は、大統領権限が拡大しているアメリカ政治の問題を浮き彫りにしたとも言える。非常事態とは考えられない状況で、大統領が拡大解釈をして同宣言を行うことは、これまでも、特に外交政策の分野では、頻繁にあった。 ハーバード大学法科大学院のジャック・ゴールドスミス教授はその例として、次の2つを挙げる。キューバ空軍機が公海上空で米国の反カストロ派「救出に向かう兄弟たち」の飛行機を撃墜した事件をめぐって、1996年にクリントン大統領の行った非常事態宣言。そして、東アフリカのブルンジの政情不安をめぐる2015年のオバマ大統領の非常事態宣言だ。 前述のブレナン司法研究所によると1976年のNEA制定以降、7人の大統領が非常事態を計59件ほど宣言している(カーター:2件、レーガン:6件、ブッシュ<父>:5件、クリントン:17件、ブッシュ〈子〉:13件、オバマ:12件、トランプ:4件)。うち32件は現在も有効となっている。最も古い非常事態宣言は1979年のジミー・カーター大統領によるイラン人質事件をめぐるイラン制裁だ。だが、現在も有効な非常事態32件の中には、今や非常事態とはいえない案件もある』、「7人の大統領が非常事態を計59件ほど宣言している」、「うち32件は現在も有効となっている」、などには驚かされた。
・『以上のように歴代大統領も政治的に非常事態宣言を利用してきたものの、今回のトランプ大統領のように自らの政治基盤を満足させるためにあからさまに利用した前例はない。また、政治環境も最悪のタイミングであった。壁建設費をめぐる意見対立で米国史上最長の政府閉鎖を終えたばかりで、議会が認めなかったのに、非常事態宣言を利用するといったことは物議を醸している。 アメリカ社会の2極化が進む中、議会で法案を可決することはますます難しくなってきている。予備選で大統領候補は右寄りあるいは左寄りの選挙公約を余儀なくされる可能性が高い。政権発足後にそれを忠実に守ろうとするために、議会で真正面から政策の合意形成が難しければ、今後も非常事態宣言で安易に政策実行を試みることは大いにありうる。 つまり共和党にとって明日は我が身となる可能性がある。将来、民主党大統領が政治的理由で銃規制、気候変動、妊娠中絶、医療政策、移民政策などで非常事態を宣言するかもしれない。トランプ大統領はパンドラの箱を開けたかもしれないのである。壁建設は引き続き2020年大統領選の争点となる。今回の非常事態宣言をきっかけに、ニクソン政権後と同様に大統領の権力拡大にメスを入れる機運が高まる可能性もあろう』、「今回のトランプ大統領のように自らの政治基盤を満足させるためにあからさまに利用した前例はない」とはいっても、トランプ大統領に首根っこを抑えられた共和党議員たちが、「大統領の権力拡大にメスを入れる」とは考え難いとみるべきではなかろうか。
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