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今日から火曜日まで更新を休むので、水曜日にご期待を!

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ブラック企業(その9)(10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない、悪徳NPOの闇 社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て、なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか) [産業動向]

ブラック企業については、昨年9月29日に取上げた。1年近く経過した今日は、(その9)(10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない、悪徳NPOの闇 社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て、なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか)である。

先ずは、モチベーションファクター株式会社代表取締役の山口 博氏が1月9日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/155057
・『10社に7社が労働搾取! 日本企業のモラルは依然低いまま  政府を挙げて働き方改革が行われているにもかかわらず、過重労働、残業代未払い、労務関連制度の不整備といった、労務に関する不適切事例が後を絶たない。厚生労働省が公表している労働基準関連法令に違反した企業数は、全国で471社ある(「労働基準関連法案に係る公表事案」、2017年11月30日最終更新)。 昨年5月の公表開始時が330件なので、この半年間で減少するどころか、1.5倍に増大している。違反の公表期間が1年、改善され次第公表されなくなるので、違反の発覚が改善を上回っている状況だ。 もっともこれは氷山の一角で、最新の「労働基準監督年報」(2015年実績)によれば、労働基準監督署の臨検により違反が発覚した事業場数は全国で9万2034件、臨検事業場数の、実に69%に上る。違反内容は、労働時間に関するもの(2万7581件)、残業代など割増賃金に関するもの(1万9400件)、労働条件の明示に関するもの(1万5545件)の順に多い。 臨検すれば10社のうち7社で違反が発覚するという実態に鑑みるに、日本の経営者の意識が依然、「社員は使い捨てるもの」という労働搾取的発想から抜け出せていないと言わざるを得ない』、「臨検すれば10社のうち7社で違反が発覚」というのは、労働基準監督署が違反がありそうとして臨検している数字が分母なので、日本企業全体ではもっと低いことは言うまでもない。ややセンセーショナルを狙った書き方だ。
・『私自身、企業経営をサポートしており、経営者の本音を聞く機会が多い。「労基署が入っても初犯の場合は、企業名は公表されませんよね?」、「労基署から指摘されたら謝罪して、それから是正すればいいですよね」、「法律違反の会社に勤めるのが嫌ならば、辞めればよい」…これらの発言には、法令順守の意識を垣間見ることすらできないし、そもそも謝罪すべき相手は労基署ではなく労働者だ。社員は労働搾取して使い捨てすればいいという経営者の意識を感じ取ってしまう。 挙句の果てには、「労基署から指摘された後で未払い残業代を支払った方が、財務経理上のネガティブインパクトが少ないので得策だ」という発言まで飛び出した。つまり、労基署から指摘されない間は、残業代は払わない方が会社が儲かるというわけだ。社員からできる限り搾取をして、財務体質を良くしようという利益至上主義である。 経営方針は経営者が決めればいいことだが、何をしてもいいということには、当然ならない。労働搾取は、れっきとした法律違反である。仮に法律違反を犯していなくても、労働者と共に成長して生きていくという共生の意識がみじんも感じられないことが問題だ。短期的には労働搾取は利益増大に効果をもたらすかもしれないが、中長期的には企業に利益をもたらさないことは自明だ』、ここで紹介された実例は、ブラック企業の実例なので、経営者全般を指している訳ではないとしても、実例はあきれるほど「真っ黒」だ。
・『「入金は早く、支払いはなるべく遅く」取引先使い捨ての実態  共生意識の有無は、経営者と従業員の関係のみならず、企業とその取引先との関係においても、顕著に現れる。労働者から平然と搾取をするような企業は、取引先からも搾取をする。 こうした姿勢が一番分かりやすいのは、取引先に対する支払いの仕方だ。取引先から受領した請求書を毎月末に締めて、翌月末に支払うという支払いサイクルが一般的だが、中には翌々月末支払いという企業もある。 利益至上主義の観点からのみ考えれば、入金はできるだけ早く、支払いはできるだけ遅くすべきという考え方になる。事実、私が取引した外国企業の中には、さまざまな手続きを小出しにしながら、支払いを数ヵ月遅らせるという暴挙に出た企業もある。 暴挙に出た外国企業と同じ国にオフィスを持ち、10年以上ビジネスをしている私のパートナー企業経営者に言わせれば、この国の企業理念からすればよくあることで、1円たりともおろそかにせず、利益を捻出することこそが、企業としてあるべき姿だと考えられているらしい』、かつての高度成長期のように金融がひっ迫していた時期ならいざ知らず、異次元緩和で超低金利、借入れも容易になった環境下でも、こんな企業がいまだにあるとは驚かされた。
・『私がかつて、日本法人の人事部長を務めたグローバル企業T社では、経理をグローバルで一元管理しており、取引先への支払いは、当月末締め、翌々月末支払いのサイクルだった。グローバルでは圧倒的なブランド力を有した企業グループだったが、日本の、特に人事領域では知名度は高くなく、人材紹介会社の協力をさらに取り付けるために支払いを1ヵ月早めて翌月末支払いサイクルを提案したり、前払いしたりすることによる採用協力の強化を提案したが、私の力不足で実現できなかったことがある。 グローバル本社の説明によれば、「当社グループは極めて高いレベルの経営品質を実現しており、取引先企業の経営安定度は最高水準でなければならない。もし、翌々月末支払いサイクルでは遅くて不服だと言う取引先企業がいるのだったら、そのような財務体質が最高水準ではないと思われる取引先とは取引してはならない」…というものだった。 私は、そこに取引先使い捨ての考え方を感じた。良い取引関係を築いて、自社はもちろん、取引先の業績も改善するようなビジネスを創出するという観点はまったくなく、「優良企業でなければ取引はしない」と切って捨てるというのは、傲慢ではないだろうか』、持続可能性が強く求められる時代なのに、「グローバルでは圧倒的なブランド力を有した企業グループ」でもこんなにブラックな面があるというのは、さらに驚かされた。
・『迅速な支払いは取引先共生のメッセージ  一方、請求書を送付すると毎回、数日後には支払いをしてくれる日本企業もある。翌月末が支払い期限であり、請求書にも支払い期日として翌月末の日付を記しているにもかかわらず、だ。中小企業や零細企業で、請求書の処理数が少ないからできることだろうと思う読者もいるかもしれないが、全国200拠点を有する上場企業だ。 私は、同企業から早々の支払いを受けるたびに、同社から「共に成長しましょう」「共生しましょう」というメッセージを受け取っている気持ちになる。同社からは間違っても、「入金はできるだけ早めに、支払いはできるだけ遅めにして、当社だけの利益を追求しています」、「当社は貴社を食い物にしています」…などというメッセージは聞こえてこない。 こうした相手先企業のためには、さらに貢献したいという気持ちが自然と高まる。「取引先を大切にしましょう」、「お客さまを大事にしましょう」、「顧客第一主義」…などという標語をCMやHPで連呼しているケースよりも遥かに、その企業に大事にされていることを実感できる。 これと同じで、「社員を大切にしましょう」、「従業員を大事にしましょう」、「社員第一主義」…などと文字や言葉で表現することよりも、程度の大小はいかようであれ、利益を社員に還元する姿勢を見せること自体が、共生を実現するに違いない。言わずもがなだが、法律違反などは、もってのほかだ。 そして、社員だけではなく、取引先とも共生するモデルを創りたいと願うばかりだ。当社も取引先への支払いは、請求書を受け取ってから直ちに行うようにした。あまりに早く振り込んだので、支払いは月末日に行われるものと思い込んでいた企業から、「月末日に入金がないのですが」…という問い合わせを受けたこともある。柔軟な思考で、共生モデルを実現しなければならない』、請求書を日付管理する手間よりも、到着して内容チェックが済み次第、払っていく方が効率的なのかも知れない。いずれにしろ、筆者の指摘はもっともだ。

次に、9月11日付けダイヤモンド・オンライン「悪徳NPOの闇、社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178764
・『近年、急増する“ブラックNPO”。仕事に“やりがい”を求めたり、自己肯定感の低い若者たちが食い物にされているのだ。ボランティア精神や社会貢献意識という言葉を隠れみのにした、悪徳NPOの実態に迫った。 “やりがい”の名のもとに無償・過重労働も  若者をやりがい搾取するブラックNPOはたくさんあります NPOと聞いて、ボランティアを思い浮かべる人は多いだろう。NPOとは、「Non-Profit Organization」の頭文字を取ったものであり、「非営利組織」という意味だ。 NPOの存在意義は、社会貢献にあるといっても過言ではない。東日本大震災以降に流行した「ボランティア休暇」や「二枚目の名刺」などの言葉に代表されるように、社会貢献をしたいという人は少なくない。また、社会貢献はするべきだという風潮もある。 しかし、それを逆手に取った悪徳NPOも存在する。やりがいという名のもとに、無償で重労働を強いる。若者を使い捨て電池のごとく、目減りすれば新しいものへと交換。「インターン」といった言葉で、社会貢献を求める若者を集めて従事させるのだ』、「やりがい搾取するブラックNPO」とは確かにありそうな話だ。
・『そもそも、「非営利=お金もうけはダメ」ではない。誤解を恐れずに言えば、非営利とは「仲間内や出資者の中で利益を分配してはいけない」という意味である。売り上げから費用を除いたものが利益であるが、そもそも組織として、利益を出さなければ継続して活動などできない。つまり、NPOがお金をもうけること自体は合法なのだ。 しかし実際には、「非営利だからタダ働きしろ」と若者に強いるNPOが後を絶たない。 NPOに自ら進んで就職したがる若者はどんな動機を持っているのか、もう少し詳しく見てみよう。 「やりたいことができるならば、お金なんて関係ない。社会貢献って素晴らしいし、人のためになる仕事っていいですよね」(都内在住の大学3年生) 「地元にいても認めてもらえないし、新しい自分を見つけたい。必要とされる自分でありたい。『やりたいことがある』とか『社会貢献がしたい』といった言葉を使えば、自分の失敗人生の言い訳になるし…」(他県NPOに就職した20代女性) 今や社会貢献という言葉は、ファッションのような感覚で使われているのかもしれない。全てが許される免罪符的な役割もあるように感じる』、「『社会貢献がしたい』といった言葉を使えば、自分の失敗人生の言い訳になる」というのは、今はそう考えているのかも知れないが、やがて子供をもちカネが必要になれば、そんなことは言っていられなくなる筈だ。
・『「あなたが日本を救う」 理想論と現実の激しい落差  現代の若者は目立つことをためらい、何かにつけて空気を敏感に読み取って行動しようとする。自己肯定感が低く、自分への物足りなさと自己承認欲求との折り合い地点をNPOに求めているのだ。 「不登校支援のNPOにインターンで入ったんですが、交通費も出ない状況の中、週4日勤務でした。タダ働きだったし、今思えば最悪ですが、当時はやりがいを感じていました。『あなたの働きが日本を救うのよ』といった女性代表の言葉にだまされていたんでしょうね…」(都内出版社勤務の女性) 日本に約5万あるNPO法人だが、職員の多くは生活に窮している。もちろん、生活水準を満たすNPOもあり、たとえば世界の子どもの人身売買問題に取り組む「認定NPO法人かものはしプロジェクト」は、職員の平均年収を450万円と公表している。しかし、こうした一部のホワイトNPOが存在する一方で、業界の平均年収は300万円には程遠いといわれている。「28歳での結婚を機にNPOを辞めました。当時は月額で18万円ほど。『あなたがいなければ、この活動は継続できない』という言葉を信じて仕事をしていたんですが、さすがに生活が厳しくて営業職に転職しました」(民間学童保育NPOに勤務していた男性) だが、転職先でうまくいかずにNPOへ出戻る人もいる。 「転職先で、利益や結果ばかりを求める民間会社に嫌気がさしました。NPOで働く方が怒られることが少ないし、自分を求めてくれるので居心地がいいんですよね。もちろん、金銭や労働時間的な問題はありますけど…」(教育系NPOに勤務する男性) そもそも、NPOは経営資源が乏しいという事情がある。情熱だけで活動し、日々の活動に追われる中、資金・人材不足に陥ることはよくある話だ。気持ちや言葉で人をつなぎとめることが、結果的に新興宗教に近い空気感を生み出し、やりがい詐取(搾取?)が生まれるキッカケとなるのだ』、NPO業界の平均年収は300万円には程遠い、という低さには改めて驚いた。
・『ボランティア=無償 という認識を改めるべき  ボランティアとは、本来「自主性」を意味するものであり、イコール「無償」ではない。各分野の専門家が職業上の知識やスキルを生かして社会貢献する「プロボノ」といった活動も、れっきとしたボランティアである。 筆者の関わるNPOでは、資格取得者の実務経験を積む場としてボランティアを募集している。例えば、キャリアコンサルタントは、5年間ごとに更新が必要となるのだが、その間に実務経験を積む場があれば、自身の更新ポイントとして加算することができるのだ。結果、それは、資格更新費用の削減となり、個人におけるインセンティブとなるのである。 何かのジャンルのプロフェッショナルたちが、本業とは別にボランティア活動をしたり、自身のキャリアアップのためにボランティアの場を活用したりするケースと、何も知らない若者が、「あなたが頼りだ」「あなたが日本を救っている」などという美辞麗句に惑わされて無償での貢献を強いられたり、安月給でこき使われるケースは、本質的にまったく別だ。 社会貢献のためという美しい言い訳に終始するのではなく、NPO経営者側も努力が必要である。そして、それらを求める若者側も多様な視点でNPOを見極めなければならない。価値あるものをお互いが共有できるシステムづくりが重要であって、「ボランティアなんだから無償で当然」と開き直り、一方的な善意の搾取をしないようにすることが大切だ。 NPOの世界がこれからも発展し、もっと世の中に必要とされるためには、まだまだ改善の余地がある。筆者も含めNPOに関わる人間は、無償の愛や犠牲の精神だけでは組織が成り立たないことを肝に銘じなければならない』、その通りで、強く同意する。

第三に、9月19日付けダイヤモンド・オンライン「なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/180001
・『街を歩けば、オフィスや商業施設、工事現場など、いたるところで目にする警備員の存在。多くの人が知っているようで知らない警備ビジネスの実態を、仙台大学体育学部准教授で、著書『警備ビジネスで読み解く日本』(光文社新書)がある田中智仁氏に聞いた。 2018年7月、警察庁が公表した「平成29年における警備業の概況」によると、2017年12月末時点で日本全国の警備会社数は9548社で、警備員数は55万2405人。ここ数年、わずかではあるが増加傾向にあり、警備業界の拡大は続いているといっていいだろう。 日本の警備会社の草分け的存在である「日本警備保障」(現・セコム)が設立されたのは1962年、高度経済成長期の中盤だった。日本人の働き方が大きく変化し、自営業者と家族従業者が減少、代わりに被雇用者が増えて、サラリーマンが一般化した時代だ。当時の警備業務の実態について、田中氏はこう説明する。 「当時の主な警備業務は、オフィスビルや工場などの施設警備と巡回警備でした。しかし、守衛や宿直は専門的な警備技術を体得していない人がほとんどで、警備体制は脆弱。そこにビジネスチャンスが潜んでいたのです」(田中氏、以下同) 警備会社の存在が注目されるようになったのは、1964年の東京オリンピックで、選手村などの警備に当たったことによる。さらに翌年にはテレビドラマ『ザ・ガードマン』が大ヒットしたことで、警備業という仕事の知名度は急上昇したといわれている』、警備員数が55万人とはれっきとした一大産業だ。
・『「人や財産を守る」警備員なのに約4割が高齢者という矛盾  現在、日本の警備会社の業務は警備業法第2条で、大きく4つに分けられている。施設を守る1号警備業務、不特定多数の人や車両を誘導する2号警備業務、貴重品や危険物を運ぶ3号警備業務、依頼者の身辺を守る4号警備業務だ。 前述のように、警備業界の規模は拡大し続けているが、課題も多いという。警備業務の目的は「人の生命、身体、財産などを守る」ことだが、現状では警備員の約4割が高齢者であると田中氏は指摘する。 「なぜ高齢者が多くなるかといえば、『守衛の系譜』と『年金問題』が挙げられます。もともと施設警備を担っていた守衛は、多くが定年退職者の再雇用。高齢の人でも対応できる業務内容が想定されていたので、警備員へ置き換えられても、ほぼそのまま存続しています。また、年金だけでは生活できない高齢者が急増していますので、人手不足が深刻な警備会社がその受け皿になり、雇用せざるを得なくなっているのです」 また他の業界に比べて、労働条件が劣悪といわれており、契約内容や会社によって細かな違いはあるものの、長時間労働、昼夜逆転の生活を強いられている警備員も少なくないという。 「約9割の警備会社が中小企業で、つい5年ほど前の調査では、主に交通誘導の警備業務を行なっている警備員の約半数が社会保険未加入という実態も明らかになりました。人手が足りてないため、休暇も取りづらく、心身の健康を害する警備員も潜在的にも多いと予想されます。給与水準には徐々に改善の兆しが見えつつありますが、改善すべき点は多い」 田中氏が指摘するように、警備業界は企業規模、給与水準、健康状態の格差が大きい。この格差をいかにして解消していくかが問われていくことになる』、「主に交通誘導の警備業務を行なっている警備員の約半数が社会保険未加入」というのは酷い話だ。社会保険庁も真剣に指導・摘発すべきだ。
・『AIやロボットの進歩だけでは警備員はますます窮地に  「将来的にはAIや警備ロボットなどの技術の進歩によって、そもそも警備員の存在すら不必要になるのではないか」と思われる読者もいるかもしれない。このもっともな疑問について田中氏は以下のように答える。 「AIや警備ロボットの方が人を雇うよりもコストが安くなれば、人的警備の淘汰が進むことが予想されます。ただ、警備会社の多くは中小企業のため、コスト面からAIや警備ロボットを導入できない可能性が高い。もし一部業務で導入したとしても、それらのコストと同等になるように警備員の給料を下げることが予想され、生活に困窮する人が続出することもあり得るし、当然ながら警備の質の低下も避けられません」 田中氏によれば、現在、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、AIや警備ロボットを活用した警備方法が試行されているが、警備員の専門性を伸ばそうとする動きは見られないという。 これまで警備業界では、業務別教育を行なって警備員の専門性を向上しようと取り組んできた。ところが現在は、AIや警備ロボットにばかり熱心に取り組んでおり、警備員に対してはこれまでとは真逆の方策を取っているというわけだ。このままでは、「専門性が低くて貧しい警備員」と「高性能なAIや警備ロボット」の二極化が進むことは避けられないと田中氏は危惧する。 ちまたでは「AIに仕事を奪われる」ことが話題となっているが、警備業界はその最たる業種の1つともいえる。多くの他業種と同様、合理化が進む時代にあって、警備ビジネスも大きな転機を迎えているのかもしれない』、AIとまではいかないが、かなり以前からセコムなどの大手は機械警備に取り組んでおり、省力化につながった筈だ。不特定多数の人や車両を誘導する2号警備業務でも、交通量が少ない地方の道路では、片側通行の誘導を機械にさせている。ただ、都会の交通量が多い道路では、やはり人間に頼らざるを得ないのではなかろうか。
なお、明日から火曜日まで更新を休むので、水曜日にご期待を!
タグ:ブラック企業 ダイヤモンド・オンライン 山口 博 働き方改革 やりがい搾取 (その9)(10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない、悪徳NPOの闇 社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て、なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか) 「10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない」 過重労働、残業代未払い、労務関連制度の不整備といった、労務に関する不適切事例が後を絶たない 労働基準関連法令に違反した企業数は、全国で471社 この半年間で減少するどころか、1.5倍に増大 労働基準監督署の臨検により違反が発覚した事業場数は全国で9万2034件、臨検事業場数の、実に69%に上る 臨検すれば10社のうち7社で違反が発覚 経営者の意識が依然、「社員は使い捨てるもの」という労働搾取的発想から抜け出せていない れらの発言には、法令順守の意識を垣間見ることすらできないし、そもそも謝罪すべき相手は労基署ではなく労働者だ。社員は労働搾取して使い捨てすればいいという経営者の意識を感じ取ってしまう 「労基署から指摘された後で未払い残業代を支払った方が、財務経理上のネガティブインパクトが少ないので得策だ」 社員からできる限り搾取をして、財務体質を良くしようという利益至上主義である 労働搾取は、れっきとした法律違反 仮に法律違反を犯していなくても、労働者と共に成長して生きていくという共生の意識がみじんも感じられないことが問題だ 「入金は早く、支払いはなるべく遅く」取引先使い捨ての実態 グローバルでは圧倒的なブランド力を有した企業グループ 翌々月末支払いサイクルでは遅くて不服だと言う取引先企業がいるのだったら、そのような財務体質が最高水準ではないと思われる取引先とは取引してはならない 「優良企業でなければ取引はしない」と切って捨てるというのは、傲慢 迅速な支払いは取引先共生のメッセージ 「悪徳NPOの闇、社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て」 ブラックNPO “やりがい”の名のもとに無償・過重労働も 社会貢献をしたいという人は少なくない。また、社会貢献はするべきだという風潮もある それを逆手に取った悪徳NPOも存在する。やりがいという名のもとに、無償で重労働を強いる。若者を使い捨て電池のごとく、目減りすれば新しいものへと交換 「非営利=お金もうけはダメ」ではない NPOがお金をもうけること自体は合法 「非営利だからタダ働きしろ」と若者に強いるNPOが後を絶たない 「地元にいても認めてもらえないし、新しい自分を見つけたい。必要とされる自分でありたい。『やりたいことがある』とか『社会貢献がしたい』といった言葉を使えば、自分の失敗人生の言い訳になるし…」 全てが許される免罪符的な役割もあるように感じる 「あなたが日本を救う」 理想論と現実の激しい落差 自己肯定感が低く、自分への物足りなさと自己承認欲求との折り合い地点をNPOに求めている 日本に約5万あるNPO法人だが、職員の多くは生活に窮している 業界の平均年収は300万円には程遠いといわれている 新興宗教に近い空気感を生み出し、やりがい詐取(搾取?)が生まれるキッカケとなる ボランティア=無償 という認識を改めるべき 「なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか」 『警備ビジネスで読み解く日本』(光文社新書) 田中智仁 2017年12月末時点で日本全国の警備会社数は9548社で、警備員数は55万2405人 「人や財産を守る」警備員なのに約4割が高齢者という矛盾 警備業法第2条 施設を守る1号警備業務 不特定多数の人や車両を誘導する2号警備業務 貴重品や危険物を運ぶ3号警備業務 依頼者の身辺を守る4号警備業務 「なぜ高齢者が多くなるかといえば、『守衛の系譜』と『年金問題』が挙げられます 主に交通誘導の警備業務を行なっている警備員の約半数が社会保険未加入 AIやロボットの進歩だけでは警備員はますます窮地に かなり以前からセコムなどの大手は機械警備に取り組んで
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通商問題(その4)(米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ、米中貿易戦争 全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由、米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない) [世界情勢]

通商問題については、7月14日に取上げた。今日は、(その4)(米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ、米中貿易戦争 全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由、米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない)である。

先ずは、元・経済産業省米州課長で中部大学特任教授の細川 昌彦氏が8月28日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/062500226/082700005/?P=1
・『激しさを増している貿易戦争が、トランプ大統領の強硬姿勢と中国の手詰まり感から早期の解決も見通せないでいる。だが、注意すべきは事態がトランプ大統領主導の「貿易戦争」から議会主導の「経済冷戦」へと深刻化している点だ。 米中の関税の応酬による貿易戦争は第2幕を迎えた。8月23日に双方が160億ドル相当の輸入品に25%の追加関税を発動した。9月にはさらに米国は2000億ドル相当、中国は600億ドル相当の輸入品に追加関税を課す構えだ。 貿易戦争は激しさを増しており、トランプ大統領の強硬姿勢と中国の手詰まり感から早期の解決も見通せないでいる』、想像以上に事態は深刻なようだ。
・『8月22日、ワシントンで行われた事務レベル協議も何ら進展がないまま終わった。これは協議前から当然予想されていた結果だ。元々、この協議は中国商務次官が米国の財務次官と協議を行うという変則の形となった。中国側の発表では「米国の要請で訪米する」とのことだったが、これは中国特有のメンツを守るための発表で、実情は違う。米中双方の思惑はこうだ。 <米国側>トランプ大統領としては中間選挙まではこの対中強硬姿勢を続けている方が国内的に支持される。今、何ら譲歩に動く必要がない。しかも、米国は戦後最長の景気拡大で、余裕綽々で強気に出られる。 <中国側>習近平政権としては、対米強硬路線が招いた今日の結果に国内から批判の声も出始めており、それが政権基盤の揺らぎにつながることは避けたい。対米交渉の努力を続けている姿勢は国内の批判を抑えるためにも必要だろう。 また、貿易戦争による米国経済へのマイナス影響で米国国内から批判が出て来るのを待ちたいものの、時間がかかりそうだ。しかも、中国経済の減速は明確で、人民元安、株安が懸念される。金融緩和、インフラ投資での景気てこ入れも必要になっている。米中貿易摩擦の経済への悪影響はできれば避けたい。 このように、事態打開へ動く動機は米国にはなく、中国にある。 ただし、そこに中国のメンツという要素を考えると、取りあえず次官級で落としどころに向けての探りを入れるというのが今回の目的だ。 トランプ政権としては、この時点で本気で協議を進展させるつもりは毛頭ない。本来の交渉者である米通商代表部(USTR)はメキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)協議のヤマ場でそれどころではない。所管外でも対中強硬論者の財務次官に、人民元問題も持ち出すことを口実に、協議の相手をさせた、というのが実態だ。 「11月、APEC(アジア太平洋経済協力)、G20(20カ国・地域)の際、米中首脳会談か」といった米紙報道も、そうした一環の中国側の観測気球だろう。 中国としては落としどころへの瀬踏みをしていき、ある程度見通しが立った段階で、切り札の王岐山副主席が事態収拾に乗り出す、とのシナリオを描きたいのが本音だろう』、なるほど。
・『米議会主導の「国防権限法2019」に透ける対中警戒の高まり ただし、こうした米中双方の追加関税の応酬という貿易戦争にばかり目を奪われていてはいけない。米国議会が主導する、対中警戒を反映した動きにも注目すべきだ。 8月13日にトランプ大統領が署名した「国防権限法2019」がそれだ。 かつて私は、「米国」という主語をトランプ氏とワシントンの政策コミュニティを分けて考えるべきで、後者が“経済冷戦”へと突き進んでいることを指摘した・・・これは米国議会の超党派によるコンセンサスで、現在のワシントンの深刻な対中警戒感の高まりを反映したものだ。トランプ大統領は短期で「ディール(取引)」をするために、その手段として追加関税という「こん棒」を振りかざすが、それとは持つ意味が違う。 中国の構造的懸念を念頭に、貿易以外の分野も広く規制する。昨年12月に発表された「国家安全保障戦略」で明らかになった、現在の米国の対中観を政策に落とし込んだものだ。 議会の原案に対してトランプ政権はむしろ緩和のための調整を行って、大統領署名に至った。 メディアで特に報道されているのは、そのうちの対米投資規制の部分で、中国を念頭に置いて、対米外国投資委員会(CFIUS)による外資の対米投資を厳格化する。先端技術が海外、とりわけ中国に流出することを防ぐためだ。 このCFIUSによる対米投資の審査は、既に2年前から権限強化を議会の諮問機関から提言されている。実態的にもトランプ政権になってからこれまでに11件の対米投資が認められなかったが、そのうち9件が中国企業によるものであった。これをきちっと制度化するものだ。 そのほかこの法案には、中国の通信大手ZTEとファーウェイのサービス・機器を米国の行政機関とその取引企業が使用することを禁止する内容も入っている。 また国防分野では、国防予算の総額を過去9年間で最大規模の79兆円にする、環太平洋合同演習(リムパック)への中国の参加を認めない、台湾への武器供与の増加などの方針が示された。 ここまでは日本のメディアでも報道されているが、今後日本企業にも直接的に影響する大事な問題を見逃している。それが対中輸出管理の強化だ』、「ワシントンの政策コミュニティが“経済冷戦”へと突き進んでいる」というのはやっかいなことだ。
・『メディアが見落とす「対中輸出管理の強化」  輸出管理については、これまで国際的には多国間のレジーム(枠組み・取り決め)があった。これに参加する先進諸国は、大量破壊兵器や通常兵器に使われる可能性のあるハイテク製品の輸出については規制品目を決めて各国が審査する仕組みだ。こうしたこれまでの仕組みが中国の懸念に十分対応できていないというのだ。 キーワードが「エマージング・テクノロジー」である。「事業化されていない技術」という意味であろう。例えば、AI(人工知能)や量子コンピューターなどの技術がそうだ。こうした技術は未だ製品として事業化されていないので、現状では規制対象にはなっていない。しかし、そういう段階から規制しなければ、将来、中国に押さえられて、軍事力の高度化につながるとの警戒感から、規制対象にしようというものだ。今後、具体的にどういう技術を規制すべきか、商務省、国防省などで特定化されることになっている。 問題はこの規制が米国だけにとどまらないということだ。 当初、米国は独自にこの規制を実施する。しかし米国だけでは効果がない。そこで、本来ならば国際レジームで提案して合意すべきではあるが、それは困難で時間がかかる。そこで当面、有志国と連携して実施すべきだとしている。その有志国には当然、日本も入るのだ。 今後、日米欧の政府間で水面下での調整がなされるだろうが、日本企業にも当然影響することを頭に置いておく必要がある。 またこの法案とは別に、商務省は中国の人民解放軍系の国有企業の系列会社44社をリストアップして、ハイテク技術の輸出管理を厳しく運用しようとしている。中国の巨大企業のトップ10には、この人民解放軍系の国有企業である「11大軍工集団」が占めており、民間ビジネスを広範に展開している。米国の目が厳しくなっていることも念頭に、日本企業も軍事用途に使われることのないよう、取引には慎重に対応したい。 かつて東西冷戦の時代には「対共産圏輸出統制委員会」による輸出管理(ココム規制)があった。一部に「対中ココム」と称する人もいるが、そこまで言うのは明らかに言い過ぎであることは指摘したとおりだ・・・ただ一歩ずつそうした「冷戦」の色合いが濃くなっているのは確かである。「冷戦」とは長期にわたる持久戦の世界である。目先の動きだけを追い求めていてはいけない』、「エマージング・テクノロジー」まで対象にしようとは恐れ入った。ハイテク技術の輸出管理厳格化に日本も付き合えと強要してくるとすれば、大変だ。
・『日本が向き合うべき本質がそこにある  こうした対中警戒感は、ワシントンの政策コミュニティの間ではトランプ政権以前からあった根深い懸念であった。しかし、習近平政権が打ち出した「中国製造2025」が「軍民融合」を公然とうたって、軍事力の高度化に直結する懸念がより高まったのだ。従って、こうした動きは、追加関税のような中国と「取引」をするような短期的なものではなく、構造的なものだと言える。 トランプ大統領による関税合戦よりも、もっと根深い本質がある、米国議会主導の動きにこそ目を向けるべきだろう。日本がそれにどう向き合うかも問われている』、中国も「中国製造2025」などで浮かれ過ぎていたのは事実だ。トランプの関税合戦よりも、ワシントンの政策コミュニティの動きに注目すべきというのは、目からウロコだ。
・『個別事件に引き続き要注意  最後に、前出の7月11日のコラムにおいて、「今後、個別事件に要注意」と指摘したところ、その後、FBI(米連邦捜査局)による摘発が相次いでいる。7月中旬には元アップルの中国人エンジニアが自動運転に関する企業機密を中国に持ち出そうとした事件、8月初旬には元ゼネラル・エレクトリック(GE)の中国国籍のエンジニアが発電タービンに関する企業秘密を窃取した事件などだ。 悪い予想が的中して複雑な気持ちではあるが、ハイテクの世界では、ある意味、日常的に起こっていてもおかしくない。それを捜査当局が摘発するモードになってきていることは今後も要注意だ。 トランプ氏の言動にばかり目を奪われていてはいけない。米国議会、情報機関、捜査機関など、「オール・アメリカ」の動きが重要になってくる。それが米国だ』、さらに注目すべき対象が「オール・アメリカ」に広がった。これはやはり大変だ。

次に、みずほ総合研究所 専務執行役員調査本部長/チーフエコノミストの高田 創氏が9月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「米中貿易戦争、全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178981
・『米中貿易戦争のインパクト 中国の受ける“打撃”は米国の3~4倍  下記の図表1は、米中間の貿易が20%減少した場合の各国GDPへの影響を示すみずほ総研の試算である。それによると、米中が輸入制限をした際にGDPが最も大きな影響を受けるのは中国だ。そのマイナスの影響幅は米国が受けるGDPへの影響の3倍から4倍近い。 米中貿易戦争の構造はチキンゲームの様相を呈するが、より深刻な影響は中国に及ぶ。このため今後の対決シナリオを考えると、中国側が現実的な対応を先んじて行いやすい。 こうした試算を中国、米国双方が水面下で行いながら、両国は「次の一手」を検討する状況にあると考えられる』、中国もいまのところ、強気に出ているが、「中国の受ける“打撃”は米国の3~4倍」というのでは、確かに「現実的な対応」に転じざるを得ないのかも知れない。
・『米中間の「貿易ギャップ」中国は同額の報復はできない構造に  図表2は米中間の貿易の現状だ。これを見ると、中国から米国への輸出は米国から中国への輸出の4倍近い水準にある。図表1の試算で、米中間の貿易縮小によるGDPへのマイナスの影響が、中国は米国の3~4倍近いとした背景にあるのは、ここに示された米中間の貿易ギャップの存在だ。 米国は6月に中国製品に500億ドルの制裁措置を公表し、その後、追加制裁の対象を2000億ドルへ拡大する方針を示している。 それに対して、中国は7月6日に報復関税を発動している。ただし図表2で明らかなのは、米国の制裁に対し、中国は同じ金額で報復することが不可能なことだ。 米国から中国への輸出は1300億ドルしかないので、中国はそもそも2000億ドルの報復に同額で対応することはできないのだ』、なるほど。
・『中国の残る選択肢は輸入拡大と市場開放  中国は今年7月の対抗措置で米国の主力輸出品である農水産物に焦点を当てた報復をしているが、米中間の貿易ギャップのことを考えれば、対応策は、むしろ、米国の製品をいかに輸入するかの観点が重要になる。つまり米国の対中輸出の水準をもっと上げ、中国側が米製品に高関税賦課などの措置をとれば米国経済に影響がより大きく出るような構造にして、米国がむちゃな制裁措置がとれないようにするのだ。 中国国内でも、7月6日の対抗措置については見直しの議論が出ているとされる。 過去、中国と同様に深刻な対米貿易不均衡を抱えて、通商摩擦を経験した日本がとった対応策は、米国への直接投資で現地生産を拡大し、輸出を減少させる輸出代替だった。中国にも日本と同様の対応をする選択肢もある。しかし、今日、米国政府が中国企業の米国でのM&Aを含めた投資を抑制する立場をとっている以上、中国にとって日本がとったような直接投資での輸出代替策は現実的でない。 次の図表3は米中投資の推移だが、米国から中国への投資額は、中国から米国への投資額と2倍以上の乖離がある。米中貿易戦争をエスカレートさせず、また今後の米中通商関係を展望すれば、いかに米国の対中投資環境を拡大させるかが重要になるだろう』、ただ、これらの中国側の対応策は、中長期的なものであって、当面には役立たない。
・『米中間でとり得る3つのシナリオ、当面、中国は現実的な歩み寄りか  世界経済は引き続き拡大基調にあるが、最大のリスクは、米国を中心とした保護主義に伴う先行きの不透明感の強まりだ。その中でも最も影響が大きいのは米中貿易戦争の行方ということははっきりしている。 下記の図表4は、米中間の貿易関係の今後の展望を示したものだ。
(1)早期解決シナリオ(・中国が米国の要求を受け入れる  中国経済への影響を懸念し米国製品の輸入を拡大米国の対中直接投資も受け入れを拡大 ・米国は対中制裁を解除し、対立解消)
(2)貿易摩擦激化シナリオ(・米国は輸入制限を拡大、投資制限も 追加関税の対象を対中輸入全体に拡大、中国の対米直接投資の制限も発動 ・中国は抵抗措置を発動し、こう着状態に 米国製品600億ドルと制裁の追加対象に)
(3)全面対決シナリオ(・中国は追加関税に加え、質的対抗措置 米企業の対中投資・M&Aを制限、輸入検査の厳格化などの非関税障壁、米国製品の不買運動 人民元安誘導、米国債売却などで対抗 ・米国は制裁強化を実施、対立が長期化)
 両国の選択次第では、摩擦が激化したり、全面対決に発展したりする可能性もある。 ただし、中国側はより深刻な影響を受けるため、現実的な対応を模索しそうだ。 また、トランプ政権も11月の中間選挙前に、中国側の譲歩を引き出して「利食い」のように通商面での成果を得ようとするインセンティブもあるだろう。 筆者なりに展望すれば、上記の(1)早期解決シナリオのような、単純な早期解決にはなりにくいだろう。 ただし、中国が、水面下で、輸入拡大や対中投資受け入れなど、米国に対して歩み寄りを示唆するメッセージを送る可能性があるのではないか。米中間選挙をにらみながらの米中の動きに注目したい』、その通りなのだろう。
・『米中の通商摩擦は2020年代まで続く構造  ただし、長期的に見れば、3つのシナリオの中では、対決シナリオの構造が基本的には続くと考えられる。 中国国内では習近平主席が、2期目の任期である2022年を超えて、2020年代後半まで影響力を持つと見込まれる。また同主席が掲げる「中国製造2025」は、ハイテク分野までの覇権を中国が確保しようという戦略的なものだ。 それだけに、お互いが強力な軍事力や経済力を持っていたアテネとスパルタが長く覇権争いを続けた「トゥキディデスの罠」のように、米中の貿易戦争は、超大国の頂上決戦、覇権争いの様相になり、長期化しそうだ』、これは第一の記事とも平仄が合う。やはり、長い目でみていくべきなのだろう。

第三に、9月10日付け日経ビジネスオンラインが掲載した日経ビジネスの副編集長司会による、元日経新聞記者の鈴置 高史氏と元東京銀行員で愛知淑徳大学の真田幸光教授との座談「米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/090700192/
・『やくざの因縁と同じ  司会:米中貿易摩擦の展開をどう読みますか。「おとしどころ」は?
真田:米国は中国をいたぶり続けます。「おとしどころ」などありません。台頭する中国を抑えつけるのが目的ですから。これは貿易摩擦ではなく、覇権争いなのです。「終わり」のない戦いです。
鈴置:米国は中国に対し具体的な要求を掲げていません。中国が何をどう譲歩したら25%に引き上げた関税を元に戻すのか、明らかにしていない。やくざが因縁を付けるのと似ています。
真田:まさに仰る通りです。理屈をこねて相手を脅しているのです。もちろん、トランプ(Donald Trump)大統領は「知的財産権の問題――中国が米国の技術を盗んでいるから関税を上げた」と言っています。実際、中国の盗みはひどい。米国や日本、欧州の先端技術を平気で無断借用する。さらにそれを軍事力強化にも使う。そして無断借用どころか、堂々と自分の特許として出願する。知財の問題で米国が怒り心頭に発し、中国の技術窃盗をやめさせようとしているのは事実です。でも、中国がどう行動したら「盗むのをやめた」と認定されるのか。米国が「まだ、中国は盗みをやめない」と言えば、関税を戻さなくていいわけです。「中国をいたぶり続ける」ことに真の目的があるのです』、何たることだろう。
・『基軸通貨にはさせない トランプ政権は習近平政権を倒すまでいたぶる? 
真田:そこまでやる必要はありません。中国の国力を削いで行けばいいのです。もちろん、政権が変わることで中国の国家運営のやり方が変わるというのなら別ですが、それは期待できない。
鈴置:人民元は6月半ばから売られ、8月15日には1人民元=7・0を割るかというところまで安くなりました。人民元を暴落させるつもりでしょうか。
真田:米国がやろうと決意すればできます。基軸通貨ドルに、力のない人民元が挑んでも叩き返されます。ただ米国は人民元を暴落させる必要はありません。「少しの脅しで人民元は揺れた。そんなボラティリティの高い通貨が使えるのか。基軸通貨と言えるのか」とマーケットに思わせれば十分なのです。米国とすれば、人民元が基軸通貨に育たないよう、貶め続ければいいのです。
鈴置:暴落させなくとも、中国は外貨準備の減少に悩むことになります。人民元売りに対抗するために、外準のドルを恒常的に吐かせられるからです。2018年の上半期、中国の経常収支は赤字に陥りました。海外旅行ブームでサービス収支の赤字が急増したためです。そのうえ、米中摩擦で貿易黒字も減って来るでしょうから、この面からも外準は目減りします』、人民元安は中国側の操作との見方があったが、米国が仕掛けたとはあり得る話だ。
・『上海株は落とす 株式市場は?
真田:為替と異なり、米国は中国の株式市場には甘くないでしょう。中国企業はここで資金調達して急成長してきた。だから、上海株はさらに落としたいはずです。もちろん、米系金融機関は政府の意向を組んで早くからポジション調整していた。それを見て他の国の金融機関なども追従――売りに出た構図です。金融の戦いなのですね。
真田:中国は「一帯一路」計画とAIIB(アジアインフラ投資銀行)のセット商品化を通じ、世界の基軸通貨となるよう人民元を育ててきました。軍事力を除き、最も強力な武器は通貨です。米国は中国に通貨の覇権を握らせるつもりはありません。だから人民元を叩くのです。貿易を名分に金融戦争を仕掛け、人民元はヘナチョコ通貨だと知らしめる。するとマーケットは「中国危し」と見て、株も落ちる。こうして実体経済も悪化する。その結果、中国は米国に歯むかう軍事力を持てなくなる、というシナリオです』、「米系金融機関は政府の意向を組んで早くからポジション調整していた。それを見て他の国の金融機関なども追従」というのも、大いにありそうだ。
・『工場を取り返す  鈴置:「トランプは安全保障を理解していない」と批判する人が多い。TPP・・・は中国への投資に歯止めをかけ、軍事力拡大を抑止するのが目的。というのに、参加を取りやめたからです。 しかしトランプ大統領にすれば「TPPなんてまどろっこしい方法をとらなくても、人民元を揺さぶればもっと簡単に目的を達成できるじゃないか」と反論したいでしょうね。真田先生の指摘した「中国へのいたぶり」。トランプ大統領の参謀であるナヴァロ(Peter Navarro)国家通商会議議長の書いた『Crouching Tiger』(2015年)が予言しています。邦訳は『米中もし戦わば』です。この本のテーマは中国の台頭を抑え、米国の覇権を維持するには何をなすべきか――・・・「 取るべき方策は明らかに、中国製品への依存度を減らすことだと思われる。この方策によって中国との貿易の「リバランス」を図れば、中国経済とひいてはその軍拡は減速するだろう。 アメリカとその同盟諸国が強力な経済成長と製造基盤を取り戻し、総合国力を向上させることもできる」。一言で言えば「どんな手を使ってでも、中国に取られた工場を米国と同盟国は取り返そう。それだけが中国に覇権を奪われない道なのだ」との主張です。トランプ政権が発動した一部の中国製品に対する25%の高関税に対しては「中国製品の輸入が止まって米国の消費者や工場が困るだけ」と冷笑する向きがあります。しかし、真田先生が予想したように、この高率関税が長期化すると世界の企業が判断すれば当然、それに対応します。企業はバカではないのです』、ナヴァロ国家通商会議議長による覇権維持のための提言が下敷きになっていたとは・・・。
・『「中国生産」から足抜け対応策は?  鈴置:別段、難しい話ではありません。米国向けの製品は中国で作るのをやめ、代わりに中国以外で生産すればいいのです。中国以外で生産能力が不足するというなら、能力を増強すればいい。ロットの少ない製品は中国での生産と米国での販売をやめてしまう手もあります。中国の根本的な弱点は「中国でしか作れないもの」がないことです。日経新聞は8月末から相次ぎ、企業のそうした対応を報じています。電子版の見出しは以下です。「日本企業、高関税回避へ動く 中国生産見直し 米中摩擦への対応苦慮」(8月28日) 「米フォード、中国製小型車の輸入撤回 25%関税で」(9月1日) 「信越化学、シリコーン5割増産 米中摩擦受け分散投資」(9月3日) 米中経済戦争が長期化すると判断した企業が出始めたのです。そもそも中国の人件費の高騰で、組み立て産業の工場は中国離れが起きていました。中国での生産回避は大きな流れになる可能性があります』、確かに組み立て産業の工場は中国離れが起きていたところに、関税戦争が追い打ちをかけたのだろう。
・『「いたぶり」は米国の総意  真田:予言書というより、大統領の教科書でしょうね。ただ、「中国へのいたぶり」は、トランプ政権の特殊性というよりは米国の総意であることを見逃してはなりません。民主党議員からも本件に関しては反対の声は出ません。議会も「中国へのいたぶり」を支持しています。中国から政治献金を貰い、魂を奪われてきた議員も多いというのに。中国で稼いできたウォール街――金融界も文句を言いません。マーケットとしての中国は大事ですが、自分たちの飯のタネであるドルの優位を人民元に脅かされるとなれば話は別なのです。人民元が基軸通貨になれば中国の銀行にやられてしまいます。
鈴置:最近、米国で「中国スパイの暗躍」が話題になっています。5年前に自身の補佐官が中国のエージェントだったとFBIから指摘され、辞任させた上院議員の話が7月下旬に突然、明らかになりました』、「いたぶり」は米国の総意というのは上記記事での指摘と同じだ。
・『お前はスパイか  8月24日には米議会の米中経済安全保障問題検討委員会が有力シンクタンクや大学に中国が資金を提供し、影響力の行使を図っているとの報告書を発表しました。『China’s Overseas United Front Work』です。産経新聞の「『中国共産党が米シンクタンクに資金提供』 米議会委が報告書発表」(8月26日)が内容を報じています。中国は1949年の建国当時から100年かけて米国を打倒し世界を支配する計画を立てていた、と警告する本が2015年に米国で出版されました・・・『China 2049』というタイトルで邦訳も出ています。CIAの職員だった同氏は親中派から転向。この本では、米国の中国研究者の多くが中国共産党の思いのままに動かされていると暴露しました。日本のある安保専門家は今や、トランプの中国叩きを批判すれば「お前は中国のスパイか」と非難されかねず、米国の親中派は動きが取れなくなっていると指摘しています』、米国の親中派の苦境が手に取るようだ。
・『今、抑え込むべき敵  米国の通貨攻撃を中国がやめさせる手はあるのでしょうか。
真田:2つあります。まず、世界に向け「米国が世界の通商を破壊する」と訴えることです。G20などでもう、やっています。でも、トランプ大統領はそんな非難にへこたれる人ではありません。
鈴置:むしろ「中国が弱音を吐いている」とほくそ笑むでしょうね。それに世界には中国の横暴に反感を持ち、中国が叩かれるのを待つ空気があります。中国の意見を支持する人はあまりいないでしょうし、下手に賛同すれば「中国のスパイか」と疑われてしまいます。
真田:もう1つの手は、イラン問題で米国と協力することにより、中国への圧迫を緩めて貰う手です。トランプ政権は「中国いたぶり」以上に「イラン潰し」を重視しています。実はロシアもその手を使っています。7月16日にヘルシンキで開いた米ロ首脳会談の後、トランプ大統領がロシアに極めて甘い姿勢を打ち出し、共和党からも非難されました。私の聞いたところでは、プーチン大統領から「イランで協力することはやぶさかではない」と耳打ちされたからのようです。中国も「イランで協力する」と持ちかける手があります。トランプ大統領は中国へのいたぶりを緩める一方で、国民には「対中貿易赤字が減った」とか「雇用が戻った」などと説明するでしょう。ただ、それで「中国へのいたぶり」を本気でやめるわけではない。時により強弱はあっても、米国は圧迫を続けると思います。中国は「今ここで、抑え込んでおくべき国」なのです。日本に対してもそうでした。対日貿易赤字が増えると、「日本は米国製品を不公正な手で締め出している」「日本人は働き過ぎ。アンフェアだ」など、ありとあらゆる難癖を付けて日本の台頭を抑え込もうとしたではありませんか。米国は可能なら、中国も日本同様に「生かさず殺さず」の状態に持って行き、おいしい部分だけ吸い上げる仕組みを作っていくでしょう』、確かに米国にはこうした長期戦略があるのかも知れない。恐ろしいことだ。
・『「宇宙での戦い」が始まった  「中国へのいたぶり」が今年夏になって始まったのはなぜですか? 
鈴置:中国の金融は今、いくつもの不安を抱えています。ドルが利上げに向かい、途上国に入りこんでいた外貨が抜け出しやすくなっている。中国企業が世界同時不況の際――2008年に発行したドル建ての債券が発行後10年たって償還期を迎えている。少子高齢化で生産年齢人口の比率が減少に転じ、バブルが崩壊しやすくなっている。
真田:ご指摘通り、金融面で「攻めやすい」状況になっています。ただ私は、米国が今「中国いたぶり」に乗り出した最大の理由は「制宙権問題」だと思います。中国が宇宙の軍事利用に拍車をかけています。これに対しトランプ政権は宇宙軍の創設を掲げ全面的に対抗する構えです。中国の「宇宙軍」を抑え込むのにはやはり、中国経済を揺らすことが必須です。現在、米ロが中軸となって国際宇宙ステーションを運営しています。これにクサビを打ち込む形で中国が独自の宇宙ステーションを運営しようとしています・・・米国とすれば、軍事的な優位を一気に覆されかねない「中国の宇宙軍」は何が何でも潰す必要があるのです。マーケットはそうした米政府の意図を見抜いて中国売りに励んでいるわけです』、なるほど。
・『覇権に挑戦する国は「宙づり」に  それにしても、米中の戦いに「おとしどころ」がないとは、目からうろこのお話でした。
鈴置:我々は――日本人は対立した人同士は話し合って妥協点を見いだすもの、あるいは見いだすべきだと思い込んでいる。だから新聞記事は、何らかの解決策があるとの前提で書かれがちです。でも、話し合うフリはしても妥協など一切せず、相手を苦しい状況に宙づりにして弱らせていく、という手も世の中にはあるのですよね。
真田:覇権争いとはそういうものです。中国を野放しにしておけば、米国がやられてしまう。米国が生き残るには、中国を貶めるしかないのです』、「『覇権に挑戦する国は「宙づり」に」とは恐ろしい話だが、国際政治の冷徹な現実なのだろう。
・いずれにしても、この問題は短期的部分だけでなく、中長期的部分にも目を向ける必要がありそうだ。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 鈴置 高史 高田 創 細川 昌彦 通商問題 (その4)(米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ、米中貿易戦争 全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由、米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない) 「米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ」 事態がトランプ大統領主導の「貿易戦争」から議会主導の「経済冷戦」へと深刻化 ワシントンで行われた事務レベル協議も何ら進展がないまま終わった トランプ大統領としては中間選挙まではこの対中強硬姿勢を続けている方が国内的に支持される。今、何ら譲歩に動く必要がない。しかも、米国は戦後最長の景気拡大で、余裕綽々で強気に出られる 習近平政権としては、対米強硬路線が招いた今日の結果に国内から批判の声も出始めており、それが政権基盤の揺らぎにつながることは避けたい。対米交渉の努力を続けている姿勢は国内の批判を抑えるためにも必要だろう 米議会主導の「国防権限法2019」に透ける対中警戒の高まり ワシントンの政策コミュニティ 現在のワシントンの深刻な対中警戒感の高まり 中国の構造的懸念を念頭に、貿易以外の分野も広く規制 先端技術が海外、とりわけ中国に流出することを防ぐためだ 通信大手ZTEとファーウェイのサービス・機器を米国の行政機関とその取引企業が使用することを禁止 対中輸出管理の強化 エマージング・テクノロジー そういう段階から規制しなければ、将来、中国に押さえられて、軍事力の高度化につながるとの警戒感から、規制対象にしようというもの 中国の巨大企業のトップ10 人民解放軍系の国有企業である「11大軍工集団」 「冷戦」とは長期にわたる持久戦の世界 中国製造2025 軍民融合 米国議会、情報機関、捜査機関など、「オール・アメリカ」の動きが重要に 「米中貿易戦争、全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由」 米中貿易戦争のインパクト 中国の受ける“打撃”は米国の3~4倍 米中間の「貿易ギャップ」中国は同額の報復はできない構造に 中国の残る選択肢は輸入拡大と市場開放 米中間でとり得る3つのシナリオ 早期解決シナリオ 貿易摩擦激化シナリオ 全面対決シナリオ 米中の通商摩擦は2020年代まで続く構造 真田幸光 「米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない」 米国は中国をいたぶり続けます。「おとしどころ」などありません これは貿易摩擦ではなく、覇権争いなのです。「終わり」のない戦いです 知的財産権の問題 中国の盗みはひどい 基軸通貨にはさせない トランプ政権は習近平政権を倒すまでいたぶる 米国とすれば、人民元が基軸通貨に育たないよう、貶め続ければいいのです 中国は外貨準備の減少に悩む 上海株は落とす 人民元はヘナチョコ通貨だと知らしめる。するとマーケットは「中国危し」と見て、株も落ちる。こうして実体経済も悪化する。その結果、中国は米国に歯むかう軍事力を持てなくなる、というシナリオです 工場を取り返す ナヴァロ国家通商会議議長による覇権維持のための提言 米国向けの製品は中国で作るのをやめ、代わりに中国以外で生産すればいいのです 「いたぶり」は米国の総意 米国で「中国スパイの暗躍」が話題に お前はスパイか トランプの中国叩きを批判すれば「お前は中国のスパイか」と非難されかねず、米国の親中派は動きが取れなくなっている イラン問題で米国と協力することにより、中国への圧迫を緩めて貰う手 中国は「今ここで、抑え込んでおくべき国」なのです。日本に対してもそうでした 2008年に発行したドル建ての債券が発行後10年たって償還期を迎えている 金融面で「攻めやすい」状況に 最大の理由は「制宙権問題」 米ロが中軸となって国際宇宙ステーションを運営 これにクサビを打ち込む形で中国が独自の宇宙ステーションを運営しようとしています 覇権に挑戦する国は「宙づり」に
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リニア新幹線(その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない) [国内政治]

リニア新幹線については、2016年8月17日に取上げた。だいぶ月日のたった今日は、(その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない)である。

先ずは、8月30日付け日経ビジネスオンライン「「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081500232/082400010/
・『9兆円を投じるリニア新幹線プロジェクトがついに離陸した・・・リニア中央新幹線が走る各県に歓迎ムードが広がる中、1人、怒りが収まらない知事がいる。 「静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」静岡県知事の川勝平太は、そう東海旅客鉄道(JR東海)を批判する。 当初、川勝は「リニア推進派」だった。国土審議会の委員を務め、JR東海系の雑誌でコラムを担当したこともある。静岡を通過すると知って、いち早く南アルプスに登って視察した。 だが、計画が明らかになり、関係は暗転することになる』、なるほど。
・『リニアの線路で「座り込み」 リニアは静岡県北部の山中を11kmにわたってトンネルで貫く。大井川の水源を横切るため、毎秒2トンの水量が減少するという。水道水として62万人が利用しているが、毎年のように水不足に悩まされ、昨年も渇水で90日近く取水制限をした。 JR東海はトンネル内で出た湧き水を、導水路を掘削して大井川に戻し、減量分の6割強を回復させるという。 「全量を戻してもらう。これは県民の生死に関わること」。そう言い切る川勝は、工事の着工を認めない。 「もうルートを変えることも考えた方がいい。生態系の問題だから。水が止まったら、もう戻せません。そうなったら、おとなしい静岡の人たちがリニア新幹線の線路に座り込みますよ」 ルートを変える──。リニアを知り抜いた川勝は、それが不可能に近いと分かって発言しているに違いない。2014年に品川~名古屋間を着工したが、27年の開通に向けてルート変更する余裕はない。 時速500kmで東京~大阪間を1時間で走る。超高速ゆえに直線で走らなければ性能が発揮されない。今から障害物が見つかっても回避できない。 もちろん、カネと時間があれば、路線変更が可能かもしれない。だが、リニア計画に余裕は残されていない。すでに契約を結んだ工事に、開業1年前に完成するものもある。まだ契約していない区間も半分ほど残っている』、導水路で湧き水を大井川に戻しても、減量分の6割強を回復するだけと、意外に少ない感じもするが、そんなものなのかも知れない。水不足に悩まされる静岡県にとっては、確かに重大な問題だろう。
・『東海道新幹線も沈没する では、名古屋開通後に、工事をストップしての体力回復は可能なのか。 実は10年、国土交通省の審議会でリニア計画の意見聴取に立った経済評論家の堺屋太一は、こう言っていた。 「名古屋で乗り換えて大阪は非現実的です。東京~名古屋だけを造るのでは大赤字は確実。大阪まで一気に開通させる以外にない」と提言した。 だが、JR東海や推進派は、「あの発言は、大阪まで早くやれ、という意見だった」として、2段階に分けた工事計画の危険性を顧みようとしない。 さらに採算性を疑うのは、自ら「赤字事業」と認めた過去があるからだ。 13年、記者会見で社長(当時)の山田佳臣が、リニア計画は「絶対にペイしない」と答えた。だが、JRの経営陣は、「本人の意図と違う」と主張する。 「(リニア)単独のプロジェクトとして見たときには、5兆円のプロジェクトを回収するわけにはいかないですよと。やっぱり東海道新幹線と組み合わせて実現ができる」。副社長の宇野護はそう解説する。しかし、巨費を投じた超高速のサービスが赤字で、本当に全体の黒字化が達成できるのか。 「東海道新幹線だって客のほとんどが(リニアに)奪われるから収益が下がる。リニアがペイしなければ、両方沈没するんじゃないの」。立憲民主党でリニア問題を担当する衆院議員の初鹿明博はそう指摘する』、肝心の採算が心もとないのになぜ強行するのだろう。
・『「でっかいことはいいことだ」 では、なぜ巨費を投じて、JR東海はリニアという危険な挑戦に出るのか。「東海道新幹線のバイパス」。経営陣から現場社員までそう答える。1987年に国鉄の分割民営化で東海道新幹線を軸としたJR東海が発足、その取締役に就任した葛西敬之(現名誉会長)がリニア担当となる。以降、一貫してこの考え方でリニア計画を推し進めてきた。 当初は、64年にスタートした東海道新幹線が、半世紀近く大規模改修していないことから、リニアというバイパスを造れば、新幹線を止めて工事できると説明していた。 ところが、JR東海の小牧研究施設で、土木担当者に聞くと、「今の修繕技術で、東海道新幹線は半永久的に使い続けられる」という。経営陣も「完全な取り換えはまずない」(宇野)と認める。5年ほど前に、その結論に行き着いたという。すでに大規模修繕工事を始めており、2022年度に終了する予定だ。では、なぜリニア計画をやめないのか。 「1本の糸にぶら下がったクモじゃないけど、やっぱり2本あることの強み」(宇野)だという。災害時のライフラインとしての重要性を主張する。「地下は地震の揺れに強い」(宇野) だが、落とし穴もある。 「南アルプスをトンネルで貫通するが、そこには中央構造線断層帯や多くの活断層が走っている。ここに時速500kmの列車を走らせるべきではない」。南アルプスの地形や地層を調べ続ける大鹿村中央構造線博物館学芸員の河本和朗は、そう警鐘を鳴らす。 「そもそも、貨物列車がなくて、モノが運べないリニアは、災害時に役に立たない」。米アラバマ大学名誉教授の橋山禮治郎は、そう喝破する。 「でっかいことはいいこと、速いことはいいこと、という発想は時代遅れ」 橋山はかつて、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)で調査部長を務めた経歴を持ち、世界の巨大プロジェクトの失敗を調査研究してきた。 「リニアはコンコルドと同じ」。コンコルドはスピードばかりを追求したが、コストが高く、騒音や排気ガスをまき散らした。赤字続きで技術改良もままならず、事故を起こして廃止された。 ちなみに、リニアの開発を日本と競っていたドイツは、中国・上海でリニア鉄道を実現しながら、08年に国がリニア撤退を決めた。コストが予定額を大きく超えることが分かったからだ』、「リニアはコンコルドと同じ」とは言い得て妙だ。
・年間4200億円のコスト 翻って日本。1962年、国鉄時代からリニアの開発がスタートし、73年には全国新幹線鉄道整備法で開発すべき路線として決定される。国鉄の分割民営化後、JR東海と鉄道総合技術研究所が開発を引き継ぎ、山梨県に実験線を建設する。ところが、地方の整備新幹線が優先され、リニアは「夢」と消えようとしていた。 そこに2007年、JR東海が「自己負担で建設する」とぶち上げる。 09年、JR東海は調査報告書を国に提出する。そこには、驚愕の数字が並ぶ。リニアの維持運営費は年3080億円、設備更新費は年1210億円、合わせて年4290億円がかかっていく。 だが、日本では高コストがさして問題にされなかった。10年、国交省の交通政策審議会に中央新幹線小委員会が設置され、委員長に東京大学大学院工学系研究科教授(当時)の家田仁が任命される。そして、翌11年、3・11の2カ月後、国は整備計画を決定する。 リニアにGOサインを出した家田に聞いた。9兆円もかけて、世界をリードする交通システムになるのか。 「なるかもしれないし、ならないかもしれない。東海道新幹線だって、最初は『世界の3バカ』と言われたわけでね。戦艦大和と万里の長城と。だから、分からないですわ」 続いてバイパス論が展開されていく。 「東海道新幹線を止めますなんて言ったら暴動が起きるわな。やっぱり一刻も早くリニアを造って、負荷を減らしていかないと。バックアップだから」 収入が15%増えるというJR東海の予測や、経済効果が年8700億円という試算は実現するのか。 「ぼくはそんなもの気にしてない。どうしても計算したいというからやったけど、真に受けていない」 財投で3兆円も借りて、本当に返せるのか。大阪まで完成するのは、最短でも約20年後のことだ。 「20年なんてあっという間ですよ。明日みたいなもの」』、家田委員長の余りに無責任な発言にはあきれてものも言えない。やはり、交通政策審議会中央新幹線小委員会は建設承認が前提の形式的お墨付き機関だったようだ。
・『開発トップがダメ出し 家田が「明日」という未来は、どのような世界なのか。 炎天下の山梨県でリニア実験線に試乗した。JR大月駅からクルマで15分、JR東海の山梨実験センターから5両編成のリニアに乗り込んだ。 運転開始から時速150kmまでは車輪で走行する。そこから車体が浮き上がり、騒音が少し静かになる。そして2分半で時速500kmに達する。その時、振動や騒音は少し大きいが、新幹線の車内とさほど差はない。周囲とも会話ができる。逆に、減速していくと、時速300km台は徐行運転しているように感じる。そして、時速150kmでガタンという振動とともに「着陸」する。 わずか30分ほどの試乗だが、50年以上かけて開発を重ねてきた技術の完成度の高さは体感できる。ただ、車内は少し窮屈で、両側2席ずつの配列だが、座席の幅や前後のシート間隔も新幹線より狭い。それは、車両開発を主導した三菱重工業が、飛行機の構造を持ち込んだからだ。 鉄道車両の断面は、通常は四角になるが、リニアは卵のような円形になっている。飛行機の胴体と同じで、車内空間は窓側にかけて狭くなっていく。開発当初は座席上に荷台が設置できず、騒音で隣の人の声が聞こえなかった。 そこで、防音対策や、鉄道車両に近い形状への設計変更を重ね、新幹線に近い乗車感覚に仕上げてきた。 だが、そんな短時間の試乗で「いける」と思い込むのは危険な素人考えだとJR東日本元会長の松田昌士は言う。国鉄時代からの経験を基にこう話す。 「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」。高価なヘリウムを使い、大量の電力を消費する。トンネルを時速500kmで飛ばすと、ボルト一つ外れても大惨事になる。 「俺はリニアは乗らない。だって、地下の深いところだから、死骸も出てこねえわな」(松田) 品川~名古屋間は、路線の86%が地下を走行する。また、地上部分も騒音対策としてフードで覆われる場所が多くなると予想される。 なぜ、これほどトンネルが多いのか。それは、2つの都市を直線で結ぼうとするため、南アルプスなどの山岳地帯をことごとく貫通していくためだ。 もう一つの理由は、土地や建物の買収を回避できること。特に、都心部や名古屋地区は地下40m以深の「大深度地下」を通るため、法律によって公共利用と認められれば、補償する必要すらない。 人知れず、地下を掘り進める計画を練ってきたJR東海。だが、ここにきて、その全貌が水面上に姿を現し始めると、大きな摩擦を生み出している。リニア計画の先行きには暗雲が垂れ込める』、松田氏の「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」との発言には、苦笑してしまった。いくらリニアをやってないJE東日本とはいっても、豊富な人脈で本音の情報が入ってくるのだろう。
・『JR橋本駅(神奈川県)から徒歩10分。5階建てビルのオーナーに、ワイシャツ姿の男が尋ねてきたのは昨年のことだった。 相模原市役所のリニア事業対策課の職員だと名乗ると、こう切り出した。 「このビルの下をリニアが走ることになりまして、ちょっとお尋ねしたいのですが」。橋本駅の地下にリニアの駅ができることは近所の話題になっていた。リニアは通過する各県に1駅ずつ中間駅を造る。人が増え、地価が上がると噂された。だが、自分の敷地の下を通るとは思ってもいなかった。 だが驚くのは早かった』、地方自治体にまで担当課ができているとは、随分、早手回しのようだ。
・『役人をカネで味方にする 「このビル、どのくらい杭を打ってますかね」 オーナーは巨大地震にも耐えられるように、20m以上の杭を打った。業者から「200年もつ」と言われた。 「詳しく調査させていただきたいのですが、恐らくリニアにぶつかります。取り壊していただくことになるので、立ち退きか、低層への建て替えをお願いします」 突然のことに声が出ない。地元で育ち、50年以上ここで商売をしてきた。 「おまえ、JRと市民と、どっちの味方なんだ」 すると、こう返ってきた。「JR側の人間です」 JR東海が背後でカネを払っている。なぜ、自分たちで説明に来ないのか。市役所の職員相手では、強く出るわけにもいかない。 市民も分断された。立ち退きに反対する人もいる中で、早々に受諾する住民もいる。 「地形が悪くて売りにくい物件なのに、急上昇している駅前物件と同じような評価額を提示されたらしい」。東橋本に住む60代の女性はそうつぶやいた。 巨額のマネーで路線の住民を「買収」していく。しかも、交渉役は地元の自治体にカネを払って委託する。 そんなJR東海だが、住民説明会だけは自らが説明に立つことになる。ところが、その会場では荒れた株主総会のような罵声が飛び交う。 5月中旬、都内の区民プラザの壇上に6人の社員が登壇した。住民は1人につき質問3つまで。しかも、3問を続けて述べるよう迫られ、終わるとマイクを取り上げられる。すると、社員が「慎重に進めてまいります」「モニタリングします」などと具体性を欠く回答を続け、住民をいら立たせる。 「おい、答えになってないじゃないか」「質問に1つずつ答えないと、対話にならない」とヤジや怒号が飛び交う。 すると司会の若手社員が会場をにらみつけながら「ご静粛に」と大音量のマイクで繰り返す。最後は、「時間が過ぎている」として説明会を打ち切る。 JR東海の用地取得の手法は、業界内でも異例だという。大手ゼネコン幹部は、山梨や北信越で長く道路やトンネルの工事現場に携わった。道路会社は用地取得に当たって、職員が地域に溶け込むため、酒を酌み交わしながら長期間かけて信頼関係を築いていく。 一方、JR東海は自治体に交渉を任せ、最後は強制収用に踏み切る方針だ。 「土地収用法の対象事業なので、そういうことを考える時期が来るかもしれない」(副社長の宇野) だが、大手ゼネコン幹部はその手法に危険を感じるという。「マスコミが殺到する」。反対住民を押し切り、国民を味方に付ける理念や目的があるのか。 「もしかしたら、成田闘争を超えるかもしれない」』「JR東海は自治体に交渉を任せ、最後は強制収用に踏み切る方針」とは卑怯なやり方だ。
・『あふれる残土、ドーム50個分 山梨県南アルプス市宮沢地区。104世帯の小さな住宅地をリニアが縦断することが分かったのは4年ほど前のこと。自治会長の井上英磨は、JR東海の尊大な態度に反発し、「絶対に動かない」と突っぱねた。 「ちょうどここをリニアが走る」。井上が両手を広げて示した場所には、地神が祭られていた。地区内の立ち退き対象は7世帯だが、残った人にも騒音や日陰の問題が起きる。宮沢地区は、自治会で「住民の総意として反対」と決議し、JR東海の地区説明会の開催を拒否している。 山梨県では甲府盆地を横断するため、地上に高架を建設する区間が長い。そのため、住民との交渉は難航を極める。 山梨県中央市の内田学も、4年前に自分の畑を通過することを知った。「もっと北を走ると思ってたのよ」 そしてリニアのことを調べ始めた。技術者でもある内田は、大量の電力を使ってマイナス269度で超電導状態にすることや、その失敗によるクエンチ現象の事故を恐れた。 「これは地球に挑戦状を突きつけるようなものだ」。そして、反対する人々を募り、畑の桑を1本1000円で売って名札を付ける「立木トラスト」を始めた。JR東海は、一人ひとりに同意を取らなければならない。その数、700人。 「桑は神のように信仰されてきた。それを根こそぎ持っていけるのか」(内田) 山梨県は1990年にリニア実験線の建設が始まってから、すでに四半世紀が過ぎている。その間に、地元の人々はリニア工事が引き起こす問題を間近で見てきた。 慶応義塾大学名誉教授の川村晃生は、その歴史を追い続けてきた一人だ。 「リニア実験線では、トンネルから出た500万m3もの残土の置き場に困った。今回は5680万m3もの残土が出るが、どこに処分するのか」。東京ドーム約50個分といわれる残土を置く場所がなければ、掘り進むことができず、リニア計画は頓挫する。 実験線に近い笛吹市の2つの巨大な谷が、残土で平らになるほど埋められていた。「当時はアセスメントの概念がなかったから、こんなデタラメができた。今回は許されないだろう」 川村が注目しているのは、南アルプストンネルの掘削工事が始まっている早川町だ。この町に行くには、門前町として有名な身延町から、山沿いの一本道を走るしかない。途中で残土を積んだ巨大トラックと何度もすれ違う。 町内には、すでに河原や空き地に残土が積み上がっている。ゼネコン2社が、川沿いに残土を積み上げていた。一方は、12層にも積み上げるという。「予定より遅れたが、あと1カ月ぐらいで終わる」。作業員はそう苦笑いした。 早川町から出るリニア工事の残土は326万m3で、「半分は置き場が決まっている」(副社長の宇野)。裏を返せば、まだ半分の残土の行き場がない。 「知る限り、早川町にはもう、まとまった残土置き場がない。そうすると、一本道を通って、延々と違う町まで運んでいくことになる」(川村) なぜ、小さな早川町が、巨大工事を認めたのか。実は、昭和30年ごろ、ダム建設で町が潤った歴史がある。だが、工事の終了とともに町は寂れていった。 今回、リニアに協力したことで、念願だった北東に抜ける道路が建設される。盛り土方式で造られ、残土の処分場も兼ねる。だからだろう、JR東海が建設費の60億円超を負担する。「まるで麻薬漬け。地域の自然がJR東海にしゃぶり尽くされている」。近隣の住民はそうため息をつく』、地元には道路建設のアメを与えて、大規模な自然破壊が進まざるを得ないようだ。
・『その狡猾な手法は、沿線のあらゆる地域に見られる。 相模原市の山間地、鳥屋。串川が流れ、サルや鹿が生息する地に、リニアの車両基地が建設されると報じられたのは2013年夏のことだった。 「最初は、さして気にならなかった。だけど、翌年から説明会が始まって、これはおかしいと思い始めた」 周辺に土地を持つ栗原晟は、関連資料の閲覧に出向き、その規模に驚愕した。幅350m、長さ2kmにわたる広大な基地だが、驚くべきは、高さが最大で30m近くもあることだった。小学校の体育館に覆いかぶさるように造られる。 「まるで飛行場だ。残土処分との一石二鳥を狙ってるんじゃないか」 栗原はリニア計画に疑念を抱き、同志を集めて、引き込み線がぶつかる土地を11人で共同登記する「土地トラスト」に打って出た。そこに集まって、デッキや布製の屋根を作っている。 森カフェトラスト──。 そう名付けた共同作業は、回を追うごとに人数が増えてきた。直近では、30人近くが集まったが、大学生など若者が目立つようになった。 「木を伐採して眺望をよくし、音楽会などイベントを続けていく」(栗原) 山梨側から入ったリニアは、南アルプスを抜けて、反対側の長野県大鹿村に出てくる。この地の少なからぬ住民が、災害の再来を恐れている。三六災害。昭和36年、集中豪雨が伊那谷を襲い、土砂崩れや地滑りが多発。中でも大鹿村の大西山の大崩壊は災害史に残る惨事で、42人が亡くなった。 南アルプスは隆起が激しく、日ごろから山の崩落や土砂崩れが多発している。だから、トンネルの出口は危険を極める。すでに、リニア工事の影響で県道の土砂崩落事故も起きている。 それでも、JR東海はカネにものをいわせて計画を推し進めていく。「グランドに残土を置かせてくれれば、体育施設を造る」。JR東海からそう提案され、予算が乏しい村議会は了承してしまう。残土で5mもかさ上げした上にテニス場や体育館が建設される。「見上げるテニス場っておかしい。代々、『リニアグランド』と揶揄される」。村議会議員の河本明代は顔が曇る。 それでも村内で300万m3という残土は処分できず、運び出す道路のトンネル工事にJR東海は35億円を投じる。 ダンプが行き交う村で、温泉宿「山塩館」を経営する平瀬定雄は、客の減少に悩まされている。「ダンプの通らない道はありませんか」。宿に着くなり、そう聞いてくる客が後をたたない。 「村もJRに丸め込まれ、下請け会社と化している」。かつてはリニア絶対反対だったが、今では現実主義に転じた。 「やるなら早くやれ」。そして、関連の消費や下請け工事も、少ないながら、搾り取らなければならない。 「それこそ談合でもやらないと、こっちがすり切れていくだけだ」(平瀬) JR東海は、リニアの完成が遅れれば、収入のないまま巨額の投資を続けることになる。その焦りから、カネで解決しようとする。大井川の水量問題で静岡県だけが工事に入れない。そこでJR東海は静岡市と工事連携の合意を取り付けた。だが、その見返りに、地元住民が要望していた3.7kmのトンネルをJR東海が全額負担して建設する。その額は、140億円にも上る。 しかし、県知事や市民団体から猛烈な批判を浴びると、市長は大井川の問題についての発言だけ撤回。結局、JR東海は、巨額のカネを突っ込みながらも、着工のめどが立たない。 金銭面でも、止まって考える余裕がない。総工費9兆円で品川~新大阪を結ぶ計画だが、名古屋までに5兆5000億円が投じられる。工事のピークには年間のリニア投資額が6000億円になる見通しで、名古屋まで開通した27年、JR東海の借金は5兆円に達する。もし1年延びれば、千億円単位で総工費が膨らむ危険がある。当然、開業で得られるはずの収入も入ってこない。 名古屋開通後、そのまま大阪への工事に突き進むことは財務的に難しい。そこで8年間はキャッシュフローを借金返済に充て、3兆円まで借金を減らし、再び大阪に向けて着工する。そのため、大阪開通は45年を計画する。ただ、後に解説するが、低金利の財政投融資で3兆円を調達できたため、最大で8年間の前倒しも視野に入れている。 しかし、1つの疑問が湧く。リニアが品川~名古屋を40分で結んで、どれだけの人が利用するのか。現在、品川駅と名古屋駅で、地下深くにリニア駅の建設を進めている。 「新大阪に行く人が、途中の名古屋で乗り換えるケースは少ないだろう」。JR東海の幹部もそう認める』、ここまでくると、いまさら中止はできないと突き進むのは、太平洋戦争と同じだが、中止のハードルは極めて高そうだ。
・『談合が生まれる構図 リニア談合も後から振り返れば、JR東海とゼネコンの力関係が逆転したポイントと位置づけられるかもしれない。 14年、国からリニア工事の認可が出るころ、リニア談合と呼ばれる大手4社の会合が始まっている。当時は、東京オリンピックに向けた建設需要が予想されてはいたものの、「21世紀最大のプロジェクト」といわれるリニアを前に、「JR東海から仕事をもらう」というゼネコンの姿勢は変わりなかった。 1km200億円といわれるリニアの工事費だが、都心部のトンネルは400億~1000億円の物件もある。「リニアは公共工事よりも安い」(ゼネコン担当アナリスト)ことは業界の常識となっている。 JR東海は発注に際して、施工者の技術力を評価する独自の「競争見積方式」を使っている。まず施工法や価格をゼネコンと交渉する。そして工区への技術提案などを聞いて1社に絞り込む。だが、価格交渉が不調に終われば、他のゼネコンに価格を提示させる。JR東海の立場が強ければ、「言い値」に従わなければならない方式と言える。 だが、建設業界には「汗かきルール」が存在する。調査や設計、試算などに協力したゼネコンを優先するという暗黙のしきたりだ。「設計や技術開発などの協力をして、そのコストを工事価格に乗せなければ赤字になる。それを『高すぎる』と言って他の業者に値段を聞けば、汗をかいてない分、安くなるに決まっている」。中堅建設会社のトップはそう批判する。 大成建設が、名古屋駅のリニア工事でJR東海の想定価格の3倍近い1800億円を提示した。昨年完成した駅直結の高層ビル「JRゲートタワー」を建設した際の赤字を回収するためとみられる。JR東海は清水建設と鹿島にも入札を要請するが、大成からの情報を基に、両社はさらに高い価格を出した。 リニア談合事件では、発注者であるJR東海が高値を強要された「被害者」であるかに見られがちだ。しかし、この事件に、伝統的な談合の概念は通用しない。JR東海は民間会社なので、そもそも工事の発注方法に縛られない。ところが、独自の競争見積方式で、高水準な工事技術を求めながらも価格を抑えようとしてきた。しかも、その交渉過程が見えない』、「汗かきルール」はやむを得ない一定の合理性があるが、それならば、一連の工事をセットにして入札する方式に改めるべきだろう。
・『「リニアはやりたくない」 今後、未発注のリニア工事のコストは上昇カーブを描くのではないか。 「ゼネコン業界全体がバブル期を超える最高益をたたき出している。難工事の割に安価なリニア工事は正直、やりたくないだろう」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストの水谷敏也)。人手不足もあって、生産能力の限界で工事を回している。今後、現場作業員を中心に賃上げは必須で、そのまま工事価格に跳ね返る。 だが、JR東海は早く工事契約を進めなければならない。リニア談合で国交省や東京都が大手ゼネコン4社を指名停止にしたが、JR東海はそうした処分を下していない。ゼネコンはその足元を見透かしている。 「(発注が)止まったらJR東海が困る? そうでしょうね」(清水建設副社長の東出公一郎) 鹿島常務の勝見剛は、一般論としてこう語った。「官工事は途中でコストが変わっても、その分を払ってくれる。民間の場合は渋るし、カネがないケースもある」 JR東海は名古屋開通の期限に追い立てられている。 昨年、三菱重工がリニアの車両製造から撤退したと報じられた。車両開発をリードしてきた会社に何があったのか。取材すると思いがけない答えが返ってきた。 「いや、数年前に撤退しています。なぜ、昨年になって記事が出たのか分かりません」。撤退時期や理由を聞くと、「厳しい守秘義務契約になっていて、こちらからリニアの話は一切できない」と回答を断られた。 JR東海に聞いた。 「こちらの予算と懸け離れていた。2~3割というレベルではなくて、もう倍とか、交渉の余地がない数字でした」。JR東海のリニア開発本部長だった特別顧問の白國紀行は、そう破談の経緯を説明する。 リニアに飛行機技術を持ち込み、時速500kmを実現させた立役者の撤退劇──。 事情を知る関係者は重い口を開く。「先頭車両という困難なところだけを生産させられ、もうかる『どんがら(中間車両)』はやらせてもらえなかった」。先頭車両だけでは量産効果が出せなかったのか。そして残ったリニアL0系の生産実績があるのは、赤字の子会社、日本車輌製造だけになった。 すべてを闇の中でひた隠しにしながら、リニア計画を推し進めるJR東海。そして、膨張するコストと矛盾は、制御不能な域に達しようとしている。 だが、狡猾なJR東海は、まさかの時の「カネづる」を確保している。それは、国民を巻き込む巨大な仕掛けだった』、リニアに飛行機技術を持ち込み、時速500kmを実現させた立役者ながら撤退せざるを得なかった三菱重工も気の毒だ。「国民を巻き込む巨大な仕掛け」は次の記事だ。

次に、8月30日付け日経ビジネスオンライン「財投3兆円投入、リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081500232/082400011/
・『談合問題や企業の撤退などに揺れるリニア新幹線には、安倍首相の号令のもと財投3兆円が投入されている。葛西JR東海名誉会長という「無二の親友」への巨額融資。森友学園や加計学園への「お友だち優遇」の比ではない「第3の疑惑」を追うと、融資スキームの直前に、2人が頻繁に会合を重ねていた事実に突き当たる・・・無担保で3兆円を貸し、30年間も元本返済を猶予する。しかも、超長期なのに金利は平均0.8%という低金利を適用する──。 首相の安倍晋三が、2016年6月1日に記者の前で「新たな低利貸付制度で、リニア計画を前倒しする」と発表し、巨額の財投資金が、この瞬間に動き出した。「いや、あの融資条件は、他に聞いたことがないですね」。同じ財政投融資という融資スキームを扱っている日本政策金融公庫の幹部も首をかしげる。「そもそも、30年後から返すって、貸す方も借りる方も責任者は辞めているでしょうし、生きているかどうかも分からないですよね」』、もともと財投は廃止の方向だったが、政治的な「使い勝手の良さ」から残され、しかもこんな法外な条件まで付けるとは、安倍もやり過ぎだ。
・『責任者は誰だ 破格の融資スキームを設計した責任者を追った。まず、財投をJR東海に貸し付けている鉄道建設・運輸施設整備支援機構に聞いた。電話口で「うちは事務をしているだけで、来てもらっても何も話せません」という。それでも横浜市にある本社を訪ねると、組織の説明はするが、財投に話を向けた瞬間、「それは国交省でお答えいただいている」と繰り返すばかり。 ところが、国交省の幹線鉄道課に足を運んでも、「財投の専門家ではないし、融資スキームなど説明できない」という。そこで、財務省理財局の財投総括課に聞くと、「僕らが(融資条件を)設定しているわけではない。国交省さんじゃないですか」と堂々巡りになる。 そこで、借り方のトップ、JR東海社長の金子慎に財投について問うた。 答 いや、財投を借りたわけじゃありません。 問 え? 答 財投を活用して、鉄道・運輸機構から借りたんです。民間会社としてやるんだから、政府からお借りするのはダメです。民間の金融機関から借りるのと同じ条件で借りたいと思います、と。返せるか、返せないか、事業をよく見て、あなたが判断してくれ、と。 問 「あなた」というのは政府?機構? 答 政府だったり機構(だったり)、どっちでもいいんですが、貸すのが心配だったら貸さなきゃいい。向こうも納得して、私たちも納得して借りた。 問 しかし、政府も機構も、そうした融資判断ができる能力はないのでは。 答 それは向こうに失礼な話です。貸した方は貸した責任があるんですね。 問 通常の融資スキームとは相当違う。 答 だから、政府が本当に知恵を出されたということだと思います。 本当に、民間の金融機関と同じ融資条件なのか。知恵を絞れば、この破格の融資スキームがひねり出せるのか。 実は、安倍が財投融資をぶち上げる前、日本政策投資銀行を使って3兆円の融資を実行しようと画策していた。そこで、政投銀に聞いた。 「話があったとは聞きました。しかし、民間銀行はもちろん、うちでも1社に3兆円を貸し出すことはあり得ません。相手先が倒れたら、銀行も一緒に死んでしまう。うちも他の大手銀行も、1社2000億円がギリギリのラインです。30年返済据え置き? それはないでしょ」 これほど破格の3兆円融資は、官や民の判断能力をはるかに超えている。しかも、返済されなければ、公的処理をせざるを得ない。大きな政治判断なくして実行できない。 金子に問うた。 問 財投の決断は安倍首相がされたということですよね。 答 いや、それはよく分かりませんが、安倍総理以下、国交大臣、あるいは担当大臣、政府としてなさった。 問 最初に発言されたのは安倍首相だから、「安倍主導」で。 答 「安倍主導」って……。 問 ちゃんと返せると思っているから(貸した)。 答 はい』、やはり「安倍主導」だったようだ。
・『安倍、財投直前にJRタワー泊 下の表は、葛西が社長に就任してから、歴代首相との面会数を記録したものだ。社長就任後、最初に会った首相は、国鉄改革で手を組んだ橋本龍太郎だった。しかし、面会数はわずか2回で、年平均0.78回の計算になる。ところが、06年に第1次安倍政権が発足すると、1年で7回も面会する。その後、政権が変わると面会数は急落していくが、12年に安倍が首相に復活すると、その後45回(年平均8.00回)も面会を繰り返している。 アベノミクスの政策や効果を出すため、安倍は財界人の知恵が必要なのだろうが、葛西との関係は突出している。第2次安倍政権で、葛西に次ぐ面会数は経団連名誉会長(東レ相談役)の榊原定征の27回、3番手に富士フイルムホールディングス会長の古森重隆の21回と続く。 安倍を支える経済人の会、「四季の会」は葛西を中心に構成され、東大同期卒の古森や与謝野馨らが名を連ねる。幼少期を敗戦の焦土で育ち、高度成長期の職場を体験した世代だ。ちなみに与謝野は日本原子力発電に勤務経験があり、原発推進論者の代表格だった。 安倍の大親友である葛西は、14歳年上で「経済の師」のような存在に違いない。国鉄改革で、中曽根康弘、三塚博、橋本といった大物政治家を動かし、自らを「日本帝国の官僚」と表現した。その葛西が推し進めるリニア計画は、再び日本が世界の頂点を目指すシンボルと感じているのかもしれない。 14年、米国にリニアを輸出すべく、駐日大使のキャロライン・ケネディをリニア試乗に招いた。その時、安倍と葛西が乗り込み、挟み撃ちにするように売り込んだ。 そして、16年6月、安倍は財投3兆円計画をぶち上げる。 その直前の記録を追うと、安倍と葛西が頻繁に会合を繰り返していたことが分かる。約半年間で6回(年平均14.13回)にも上る。 16年5月27日。財投3兆円決定の数日前、安倍は伊勢志摩サミットを終え、米大統領(当時)のバラク・オバマと広島を訪問する。オバマを見送った後、安倍はJR広島駅からのぞみ60号に乗り、JR名古屋駅で降りた。そこで、葛西に出迎えられ、JR東海本社があるJRセントラルタワーズ内の名古屋マリオットアソシアホテルに宿泊する。 こうした会合で何を話したのか、安倍に質問状を送った。3兆円を投じて、国民にどういうメリットがあるのか。財投を追加投入する可能性はあるのか。 だが、原稿の締め切りまでに回答はなかった。 この3兆円融資は、まさに葛西の思い通りのシナリオだったのではないか。 1980年代、国鉄の若手エリートだった葛西は、井手正敬(後のJR西日本社長・会長)、松田昌士(後のJR東日本社長・会長)と「国鉄改革3人組」と呼ばれた。そして、巨額の赤字と借金に苦しむ国鉄を、分割民営化で再生させようと邁進した。 葛西は著書で、この解体的改革は、「東海道新幹線救出作戦」だったと振り返る。そのドル箱、東海道新幹線で売上高の7割を稼ぐJR東海が87年に発足すると取締役に就任。88年、常務に昇格し、その秋に関西経済連合会の会合で講演に立ち、こう話している。 東海道新幹線とリニアは一元的に経営されなければならない」「(リニア計画の)全額を民間資金で行うことは難しい。3分の2は民間資金で行ってもよいが、残る3分の1は国のカネが必要ではないか。つまりナショナル・プロジェクトとして推進しなくてはなりません。 今から30年前、まだ山梨のリニア実験線すら着手していない時、すでに葛西の頭には、明確に今のリニア計画が描かれていた。資金の3分の1は、国のカネを引っ張ってくることも。 リニアとJR東海の歴史は、葛西によって築かれたものだった。その当人に話を聞くべく、JR東海に申し入れた。だが、「4月に代表権を返上しており、今は金子が経営の責任者。彼の話したことがすべてだ」と断ってきた。 そこで、東京・荻窪の葛西邸を訪れた。平日午後9時、自宅前に軽自動車が止まり、中に数人の男が座っている。警備のためだった。そこで、休日の昼間に再び訪れた。リニアの取材だと告げると、間髪入れずこう返してきた。「それは僕でないと語れないな」』、葛西の安倍との面談回数が45回と、経団連名誉会長の榊原27回と比べても圧倒的に多いとは、驚きだ。しかも、葛西は30年前からリニアの資金の3分の1は、国のカネを引っ張ってくるという計画を描いていたとは、さらに驚きだ。只者ではないようだ。

第三に、上記の続きを8月17日付け日経ビジネスデジタル「名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/081401049/?ST=pc
・『 「(安倍から財投の話は)あったかもしれない」 「だが、財投を国からの支援と見るのは悪意によるねじ曲げ」時間は延長につぐ延長、止まらぬ2時間インタビュー・・・問 なぜ9兆円もかけてリニアなのか。 答 国鉄の分割民営でそれぞれに使命があり、うちは『東海道新幹線会社』ということですよね。しかし、輸送能力が限界に達している。ならば、バイパスを造るしかないと。すでに国の法律で決まっている中央新幹線(リニア)があり、東海道新幹線と旅客流動が同じなので、一元経営しなければならない』、なるほど。
・『“名古屋5.5兆円は大局的な想定”  問 新幹線が二重化しても、人口減少や会議のネット化が起きている。 答 そんなの30年前から言われているけど、そうなってないんだよ。 問 でも人口は実際に減少している。 答 世界の人口動態がどう変わるかということ。日本人だけの人口で測るべきではない。インバウンドが今増えている。日本で定住人口も増えていく可能性がありますね。 問 東海道新幹線の更新ではダメ? 答 東海道新幹線は1時間15本も走っている。17本が限界だから、あと2本ですよ。技術や設備を強化し、効率的な運用をしたが、もうこれ限界なんだよね。この次は東京~名古屋、名古屋~大阪、このバイパスがどうしてもいる。『バイパスはいらない』という議論はないですよね。 問 でも東海道新幹線が活躍していて、満足している人も多い。 答 いや、今はいいですよ。しかし、まだこれから世界やアジアの人口も増え、日本に定住したい人も増えてきますね。常に一定のアローアンス(余裕)を確保しないといけないと。その意味でリニアは新しい時代に即した効率性と高速性を持ったテクノロジーです。 問 当初、リニアは難しいと感じた? 答 難しいのはおカネ。借金が多かったでしょう。我々は国鉄の借金の相当部分を引き取った。新幹線でもうけて、借金を返す会社だった。ところが、借金を返し続け、金利負担が減ってきて、ゆとりができた。で、自分のカネでリニアを造りましょう、と。 問 借金も一時、2兆円ぐらいに減った。 答 そうですね。 問 名古屋までの建設費5.5兆円は、増えることはない? 答 基本的には変わらない。いろいろやっているうちに増えたり減ったりしますから、最終的にぴったりそうなるということじゃない。大局的な想定です』、ずいぶん楽観的だが、「大局的な想定」とは便利な言葉だ。
・『“談合は勝手に話したこと。我々はまったく関係ない”  問 想定がどうなるか。去年からのリニア談合の問題もありました。 答 我々はまったく関係ないからね。 問 でも、ゼネコン幹部はJR東海の工事が採算が厳しいから話し合ったと。 答 それは彼らが勝手に話したこと。要するに、彼らは『もっと高く契約を結んでくれ』と思ったんですよ。我々は『もっと安くできるだろう』と。こちらも技術者がいっぱいいますから、厳しい折衝になったと思うんだけど。 問 ゼネコンは技術開発を一緒にやってきて、利益が薄いときついと思った。 答 だから、新しいタイプの工事もあるし、ゼネコンの最新技術は各社ありますから。互いに情報交換し、勉強会をやったとは思うんですよ。 だが契約を結ぶのは、我々としてはこの範囲内で上げたい、できるはずだと思っている部分はあるし、向こうは10年もかかる工事だから、物価が変わるリスク要素もある。だから知恵を出し合い、契約を区切ったりする。この辺はプロの世界で、素人が口を出すことはない。そのつばぜり合いで、法律に触れたかどうかは彼らの話です。 問 でもゼネコンからすると、「発注者責任もあるんじゃないか」と。 答 発注者責任? 民間企業の工事ですから、公開競争入札にする必要はないので、『あそこにやらせる』という随契(随意契約)でいいわけです。その代わり金額については徹底的につばぜり合いをして、たたき合いますよね。今度は『1対1でやるぞ』ということにはなるかもしれません。しかし契約金額のつばぜり合いは大いにやったらいい。 問 金額のことでいうと、リニア車両の開発をした三菱重工が撤退した。倍ぐらい差があるという声もある。 答 1両12億円で造るということでこちら側が投げたのを、三菱重工は『それでは造れません』と言ったんですよね。今、東海道新幹線の車両というのは、1両3億円ぐらい。4倍の値段だから我々は十分造れるはずだと思いますよね。現に、日本車輌と日立は『それでやらせていただきます』と言っている』、談合問題では尻尾を掴むのは難しいと思っていた通りの展開だ。
・『“財投は自己資金。銀行から借りるのと同じ” 問 リニア9兆円を自分で出してやっていくはずが、2016年6月に安倍首相から「財投を入れる」という話が出ました。 答 あれは自己負担だよ。 問 財投ですから財投債が発行される。 答 財投債だけど、銀行から借りるのとまったく同じですから。 問 いや、無担保で3兆円を0.8%という金利で借りられないのでは。30年間も元本を返済しなくていいし。 答 財投で借りているというのは、財投機関から借りているのであって、財政出動しているわけじゃない。あたかも政府におカネを出してもらったかのごとく理解するのは間違っているのか、ねじくれているのかどっちかなんだよ』、民間銀行ではあり得ない好条件はやはり財投ならではなので、どうみても強弁に過ぎない。
・『“安倍さんの話、どっかであったかも”  問 でも、政府が決めるからこそ、安倍首相がまず宣言したわけですよね。やっぱり葛西さんが「財投で工事期間が短くできる」と安倍さんに言ったのでは。 答 僕は安倍さんには、直接はそういう話をしてないんですよね。 問 そうなんですか。 答 安倍さんを支持しているけど、何かしてくださいというお願いは、基本的にやらないことにしてます。 問 でも、安倍さんもあれだけ葛西さんと頻繁に会っていると、財投の発言の直前など話したくなるのでは。 答 そんな話は安倍さんから出ません。 問 その間、リニアの話は。 答 大阪までの着工をシームレスにやりたいという気持ちは、大阪にも政権にもありますよね。安倍総理や菅官房長官、杉田副長官にもある。そうすると、『方法はないのかな』なんて話がある。 ある日、『こういう案でやったらどうだ』というサウンドがあったのも事実。それは安倍さんが言われるだいぶ前ですよ。 問 安倍さんの方から「何とかならないか」みたいな話があった。 答 どっかであったかもしれませんね。何人かで集まったりするからね。 問 国からおカネを回してもらった。 答 いや、それは国から借りただけであって、そのおカネは金利を払って返すわけです。だからあれを『国から財政支援を受けた』というのは悪意によるねじ曲げとしか思えないよね。 問 財投を借りて国鉄も破綻した。また繰り返される危険はないのか。 答 100%繰り返されないんだって。僕は国鉄に入って財投をずっとやってきて、毎回『これは返せない』と思いながらきましたよね。運賃の値上げをすべきなのに切り下げて、差額を財投で借りるとか。黒字になるような工事じゃないのに財投を付けて、無理やりシナリオを作る。その答弁を僕は書きましたから。返せない、雪だるま(借金)が大きくなるだろうと思ったわけ。 今回のやつはまったくそう思ってないんだよ。僕は財投を散々やってきて、その上の経験に立って、今回のは大丈夫だと。 問 まさに国鉄時代の計画と同じようなものでは。 答 いや、違います。国鉄時代は全部赤字ですよ。 問 例えば、名古屋まで、のぞみプラス700円、新大阪までプラス1000円で需要予測をしています。今の国鉄の話とダブって見えるが。 答 リニアの運賃はまだ決まってないからね。 問 でも、それで需要予測をしている。 答 リニアがどういう運賃政策を取るかまったく決まってない。これから全部決めるわけですよね』、さすが安倍との話は、「請託」ととられないように慎重だ。
・『“神様が見たって、リニアはいける”  問 しかし、東海道新幹線の需要は相当落ちる。 答 ただし、京都や新横浜もあるよね。21世紀半ばの輸送機関が東海道新幹線と同じでは日本の将来のダイナミズムが失われます。そこはやっぱり飛躍しなくちゃいけない。 問 葛西さんは絶対、収支はいけると。 答 私がじゃなくて、神様が見ても、誰が見たっていけるんです。 問 でも、かつて山田社長が「リニアは絶対にペイしない」と言った。 答 山田、そんなこと思ってないよ。あれは質問が悪くて。彼に聞いてごらん。絶対黒字だと思っていますから。 問 リニアの設備更新と維持管理で年4200億円かかり、増収効果よりも大きいことを山田さんは言ったのでは。 答 あの時の計算だと開業時点の厳しいときでも両方合わせると、経常利益が630億円になる。でも今はそこから2000億円ぐらい増えている。だから僕は、収支の心配はいらないと思うよ。 問 心配しなくていい。 答 (心配は)いらない。それは保証してもいいけど。 問 今、6000億円近い経常利益が上がっている。JRグループの北海道や四国といった厳しい会社を救い、鉄道ネットワークを再構築する道はないのか。 答 鉄道は19世紀は陸の王者だったわけ。ところが、20世紀になって競争相手がいっぱい出てきました。今もう日本中に道路ができて、航空網もできている。そういう中で、鉄道が道路に転換していく部分が増えてくる。当然なんですよね。それを『嫌だ』という地元の人たちの意見もある。そういうのに付き合いながら、全国を1本に戻そうなんていうことにはなりませんよね。経済原則に反するから。我々は、与えられた使命、これを徹底的に果たす。 現に今、1260人をリニアの建設に充てている。米国にも(人を)出しています。フル稼働でやっています。それをやって初めて工事が予定通り進むんですから、ここのところ(他社との連携)に手を出す気はないのかなんていう愚問を、発しないでもらいたいですね。 問 しかし、リニアも他の鉄道網も、まったく違う事業ではないし、選択肢としてはあり得るのでは。 答 何が? だって、それぞれが会社の使命が決まっているんだから。(JR各社が)それぞれ定義されていまして、例えば東日本は首都圏の鉄道を強化する。 我々の12の在来線、全部赤字です、東海道本線も含めて。これを維持しながら、東海道新幹線を磨き上げていく。バイパスを造って、さらにゆとりを作っていくと。東海道新幹線のお客さんが切符を取れない。金曜日の夜なんて立っていますよ』、かつての山田社長発言に対する言い訳はよく分からないが、足元の好業績が絶対的な自信につながっているようだ。
・『“リニアができるまで生きていない”  問 リニアの完成で、葛西さんのやろうとしてきたことがほぼすべて実現する。 答 僕はリニアが完成するまで生きてないんじゃないかと……。 問 いやいや、そんなことはない。 答 僕も今年78歳ですから、完成するのが10年先で88歳でしょう。平均寿命を超えちゃうので、僕は。 問 88歳はもちろん、葛西さんは大阪開業まで生きているでしょう。 答 まあ、僕は目の前にある問題にベストを尽くすことを積み重ねてきましたので。リニアも新幹線も大事だし、海外展開も日米同盟を強化するという意味で大事だと思いますよね。いろいろやりますが、しかし、それは明日終わるかもしれないと。それでもいいやと思ってやるしかないよね』、したたかな怪物だ。だが、その圧倒的な権力で、社内外の反対論をねじ伏せた弊害が、最近のスポーツ団体の不祥事と重なって見える。
タグ:安倍晋三 リニア新幹線 日経ビジネスオンライン 日経ビジネスデジタル (その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない) 「「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末」 9兆円を投じるリニア新幹線プロジェクトがついに離陸 静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」静岡県知事の川勝平太 大井川の水源を横切るため、毎秒2トンの水量が減少 導水路を掘削して大井川に戻し、減量分の6割強を回復させる 東海道新幹線も沈没する 自ら「赤字事業」と認めた過去 社長(当時)の山田佳臣が、リニア計画は「絶対にペイしない」と答えた 「でっかいことはいいこと、速いことはいいこと、という発想は時代遅れ」 開発トップがダメ出し JR東日本元会長の松田昌士 「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」 地方自治体にまで担当課 役人をカネで味方にする あふれる残土、ドーム50個分 談合が生まれる構図 ゼネコン業界全体がバブル期を超える最高益をたたき出している。難工事の割に安価なリニア工事は正直、やりたくないだろう 財投3兆円投入、リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う」 財投3兆円が投入 無担保で3兆円を貸し、30年間も元本返済を猶予する。しかも、超長期なのに金利は平均0.8%という低金利を適用 「新たな低利貸付制度で、リニア計画を前倒しする」と発表し、巨額の財投資金が、この瞬間に動き出した 「安倍主導」 安倍、財投直前にJRタワー泊 2年に安倍が首相に復活すると、その後45回(年平均8.00回)も面会 葛西社長 経団連名誉会長(東レ相談役)の榊原定征の27回 「名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない」 “名古屋5.5兆円は大局的な想定” “談合は勝手に話したこと。我々はまったく関係ない “財投は自己資金。銀行から借りるのと同じ” “安倍さんの話、どっかであったかも” “神様が見たって、リニアはいける”
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英国EU離脱問題(その13)(英国のEU離脱を歓迎し 待ち構える中国、W杯で団結 EU離脱で分裂する英国の未来、BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も) [世界情勢]

英国EU離脱問題については、昨年6月13日に取上げたままだった。今日は、(その13)(英国のEU離脱を歓迎し 待ち構える中国、W杯で団結 EU離脱で分裂する英国の未来、BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も)である。

先ずは、フリージャーナリストの姫田 小夏氏が1月10日付けJBPressに寄稿した「英国のEU離脱を歓迎し、待ち構える中国 ブレグジットでますます深まる英中経済関係」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52033
・『1月2日、米調査会社のユーラシア・グループが「2018年の10大リスク」を公表した。その筆頭は「中国の影響力」だが、8位に「英国」がランキングしている点にも注目したい。なぜ英国がリスクかというと、ブレグジット(Brexit、英国のEU離脱)の期限が2019年3月末に迫るなか、英国が首尾よくこの離脱手続きを進められるかが問われているためだ・・・EU離脱は英国経済や社会に短期的な弊害をもたらす。一方、EU残留は長期的な苦痛をもたらす――そんな判断のもとブレグジットを選択した英国に対し、国際社会は「2018年のリスクは英国そのものだ」と悲観的な視線を向けている』、ユーラシア・グループが10大リスクの8位にランキングしたのも頷ける。
・『しかし、“ブレグジットは好機だ”とばかりに英国に急接近を図っている国もある。中国だ。  2016年6月、離脱をめぐる英国の国民投票が僅差で「離脱」という結果になったとき、中国は歓迎しなかった。中国による英国企業の買収が進む中、「中国が投資した資産価値はどうなるか」が懸念されたのだ。 だが時間の経過とともに、「英国のEU離脱は、中国にとってリスクよりチャンスが大きい」と楽観視する空気が形成されていき、英国に同調する記事も徐々に増えてきた。 例えば、中国商務部のシンクタンクに所属する研究員は、中国紙への寄稿で次のように指摘している。「EUの管理システムは官僚主義だ。そのルールは世界で最も細かくて煩わしく、事務効率は主要先進国に比べて低い。これらは英国の経済的活力をそいできた」 EUとの交渉を担当した日本の通産省OBも、「EUは各国の寄り合いなので意思決定に時間がかかるのは事実。そもそも『欧州の統合』という高邁な理念のもとに結成された組織なので、理念先行のきらいがある」と明かす。 英国はこうした大陸諸国とは異なり、よりプラグマチックに思考する。「経済的実利」を追求するという点では、むしろ中国とそりが合うといえるだろう。両国がブレグジットをきっかけに接近を図ってもおかしくはない』、なるほど。
・『英国市場へのアクセスが容易に?  話は10年以上前にさかのぼるが、2005年に繊維製品の輸入数量規制が撤廃されると、EU市場にどっと中国製品がなだれ込んだ。このとき、EUは緊急輸入制限(セーフガード)の発動を発表するが、英国は自由貿易を主張して輸入制限に反対した。中国は今なお、このときの英国の対応を評価している。 そして、英国のEU離脱に対しても、英国との貿易の障壁を低くし、英国市場にアクセスしやすくするものであると確信しているのだ。  2017年1月、浙江省義烏と英国ロンドンを結ぶ国際貨物列車が運行を開始した。鉄道によって中国と英国の市場はますます接近している。義烏から運ばれる貨物は大半が日用雑貨だと言われるが、ロンドン発の復路にはウイスキーが積まれている。 ウイスキーは英国にとって、国内産業をけん引する重要な商品である。しかし人口6500万人(2015年)の島国である英国にとって国内市場は今後の成長が見込めない。そのため輸出拡大への取り組みを避けることはできない。そこにタイミング良く打ち出されたのが中国の「一帯一路」構想だった。英国のウイスキーは今後「一帯一路」に乗って中国へ大量に運ばれるだろう。 中国メディアは「『一帯一路』はブレグジット後の英国に、市場のみならず自信も与えることになるだろう」と論じている。 中国は、英国が債務問題を抱え、生産現場が資金不足に陥っていること、大量のインフラが老朽化していることを知っている。「英国にはパートナーが必要だ。中国の投資で製造業を復活させてやろう」――中国がそう目論んでいることは想像に難くない』、中国は英国のヒンクリー・ポイントC原子力発電所を受注して、工事中である。
・『両国は「英中黄金時代」を宣言  中国の掲げる「一帯一路」と英国の「ノーザンパワーハウス(Northern Powerhouse)」(イングランド北部の経済振興策)、中国の「メイド・イン・チャイナ2025」(製造業の強化を図る政策)と英国の工業政策「The future of manufacturing」など、両国の経済政策には類似性があり、さまざまなプロジェクトの相互乗り入れが検討されている。 また、中国は「ロンドンが、中国の人民元の国際化を推進する橋頭保になる」と期待している。ブレグジットが決まった際、「ロンドンは国際金融センターとしての地位が低下し、パリやフランクフルトに取って代わられるだろう」との見方があった。しかし今では、「結局、ロンドンの地位が他所に取って代わられることはなく、影響は限定的だった」(中国の電子メディア)と捉えられている。 「一帯一路」構想で世界への影響力を強めようとしている中国にとって、ブレグジットは渡りに船だ。すでに両国は「英中黄金時代」を宣言しており、ブレグジット後の英国の運命は“中国とのタッグ”に強く支配される気配さえする。 果たして数年後、世界の10大リスクから英国の名前は消えているだろうか』、ロンドンの国際金融センターとしての地位については、中国の電子メディアの「手前みそ」に過ぎず、現実には脱出が相次いでいる。しかし、「英中黄金時代」が上手くいくかどうかは、ヒンクリー・ポイントC原発プロジェクトが順調にいくかが、当面の鍵を握っているのかも知れない。

次に、7月13日付け日経ビジネスオンライン「W杯で団結、EU離脱で分裂する英国の未来 大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストに聞く」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/071200839/
・『英国で対照的な2つの事象が同時進行した。1つはロシア・ワールドカップ(W杯)。イングランドは28年ぶりのベスト4に進出。準決勝で敗れたものの、若い選手たちが躍動し、英国は興奮の渦に包まれた。「これほど見知らぬ人と喜びを分かち合い、抱き合ったことはなかった」と話す英国人もいる。 もう1つはEU離脱(ブレグジット)の行方だ。道筋が全く見えなくなっている。7月6日、メイ英首相はブレグジットの交渉方針をまとめた。EU離脱の国民投票から2年が経ち、メイ政権にとってようやく取りまとめた離脱の方針だった。 ここからの展開が急だった。8日夜にデービスEU離脱担当相が辞任。続く9日には、強硬離脱派の顔であるジョンソン外相が辞任した。ジョンソン氏は「ブレグジットの夢は死につつある」と強烈にメイ首相を批判。政権の中枢を担う2大臣が辞任し、メイ首相の退陣を迫るとの見方も出ている。ワールドカップでイングランドの快進撃が続き、国民の団結は強まっているように見えるが、ブレグジットという「国難」に対して国の分断が深まるばかりだ』、よりにもよって、政権の中枢を担う2大臣が辞任するとは、メイ首相も気の毒だ。
・『大別すると、議論はEUとの経済関係を重視し、ソフトランディングを求める「穏健離脱派」と、EUの法律や規制と決別する「強硬離脱派」に分けられる。しかし、いずれも英国のいいとこ取りとの批判がつきまとい、正式にEUとは交渉していないため、実現性が全く見えていない。 日本企業の関係者は不安を募らせている。7月9日に開催した在英国日本国大使館の「英国のEU離脱に関する日系企業向け説明会」では、開会前に大使館前に行列ができ、ほぼ会場は満席だった。大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストにブレグジットの現状や今後の展開を聞いた・・・菅野:英国政府は、イングランド南部ソールズベリーで起きたロシアの元情報機関員への襲撃事件を契機に、ロシア政府との対決姿勢を鮮明にし、今回のW杯では、代表チームの応援に伴うロシア訪問をボイコットしているからです。当初は、英国民にも現地での応援自粛を呼びかけており、その世論に英王室も歩調を合わせ、イングランド・サッカー協会名誉会長のウィリアム王子ですら現地に赴きませんでした。 しかし、予想以上のチームの躍進により、メイ首相は自ら墓穴を掘ってしまい、イングランド代表が勝ち抜くほど、支持率が低下する状態に陥っていました。 一方、決勝戦に進んだフランスのマクロン大統領は準決勝で、スタンドでの応援に駆け付けました。フランス代表の躍進で、低迷気味の支持率も持ち直したといわれており、満面の笑みを浮かべていたのが対照的でした』、ついてない時は、悪いことが重なるものだ。
・『実は、W杯の現地応援自粛を言い出したのは、ジョンソン氏でした。そもそもジョンソン氏が英国でどのような存在なのかという点からお話しします。ジョンソン氏は英国のEU離脱(ブレグジット)の象徴的な存在です。 前ロンドン市長として人気があり、国民投票の前の演説は聴衆からスタンディングオベーションで称えられ、EU離脱の流れを作りました。外相はEUとの直接交渉を行う立場ではありませんが、ブレグジット協議への影響力は強いとみられています。 辞任の引き金になったのは、7月6日の英首相の公式別邸(チェッカーズ)での閣議です。英国とEUとの将来的な関係性についての青写真をメイ首相が明らかにし、10時間以上の閣議で強硬離脱派を抑え込みました。 閣議で決まった方針では、物の移動の自由と引換えに、離脱後も食品や製品に関してEU規制に準拠する方針が明らかにされました。ジョンソン氏は、「メイ首相の考えは英国の利益を損ない、英国が永久にEUの属国になる最悪の案だ」と批判していました。 確かにEUは食品や製品に厳しい規制があり、それに英国も合わせるとなると、離脱の意味がなくなってしまうでしょう。しかし、ジョンソン氏にも緻密なプランがあるようには見えません』、離脱方針を決めた閣議が10時間以上とはさぞかし激論が交わされたのだろう。緻密なプランなしに反対したジョンソン氏は実に無責任だ。
・『EU委員会にはブレグジットへの興味がさほどないように映ります。何人かのEU関係者と話しましたが、自分たちの共同体を出ていく人間に対して、それほど労力を割きたくないと思っているようです。ブレグジットはいわば敗戦処理です。担当者にとってもキャリアの上で減点はあっても加点はないので、モチベーションが高まらないでしょう。英国に甘い顔をするとEUの結束が緩むので、英国に厳しくすることはあっても甘くなることは考えにくい状況です・・・(ブレグジットの混迷が深まったことで、今後はどのような展開が考えられますか) いくつかのシナリオが考えられます。1つ目は、メイ首相が穏健路線を貫き、逃げ切るシナリオ。2つ目は、離脱戦略の大きな転換。3つ目は、保守党の内部分裂で、メイ首相に不信任案が提出され、党首選になるシナリオです。 このうち、3つ目のシナリオを最も警戒すべきです。詳細は以下のような展開が考えられます。 ジョンソン氏の辞任により、保守党内からメイ首相降ろしの風が強まり、不信任投票の可能性が高まります。保守党の党首選になればデービス前EU離脱担当相も立候補する可能性が高いとされています。48人の保守党議員が不信任の書簡を1922年委員会に提出すれば、党首への不信任投票が行われることとなります。 現時点で強硬離脱派議員は、メイ首相に退陣を迫らないようです。不信任案を提出するだけの人数も集まっていないことから、直ぐに党首選や総選挙になるかは分かりません。 また現時点での党首交代は、2019年3月末のブレグジットまでに意見収束は絶望的となり、無秩序な離脱にも大きく近づきます。 保守党内強硬派トップのリース・モグ議員は、チェッカーズで閣議決定したメイ首相の案が議会に掛けられたとき、支持しないとすでに造反を表明しています。EUとの合意に達せず時間切れになるか、合意に達したとしても合意内容が議会で否決されたら無秩序な離脱にも大きく近づくこととなります』、EU側がブレグジットに関心が薄いのというのは、分かるような気がする。それにしても、タイムリミットが近づいた段階での英政界の混迷は、本当に危険だ。
・『製品の値上げは避けられない  離脱の後は、金融機関がEU全域で単一免許で営業できるパスポート制を失うことになります。これに対して、金融機関はEU域内に現地法人を設立し、営業体制を整えるなど対応を進めています。 一方、製造業のサプライチェーンへの影響は大きいと言わざるを得ません。関税がかかることで、製品価格の値上げは避けられないでしょう。 チェッカーズ案では、第三国で製造され英国経由でEUに輸出される物品は、まずは英国に輸出された時点でEUの代わりに関税を徴収します。その関税をプールしておき、最終的にEUへ向かう物品にはその関税をそのままEUに渡し、英国にとどまる物品の場合は差分を企業に返金することで製造業の負担を減らす案が検討されています。ただ、煩雑な事務手続きが必要になるうえに、最終的にどこに物品がとどまるかを追跡することは難しく、抜け道がいくらでもありそうなので現実的ではありません。(次に、英国で注目される法案は何か)貿易法案と関税法案です。貿易法案は、EUの自由貿易協定を英国の協定に置き換える条項などを含む法案です。関税法案はブレグジット後の関税措置を定める法案です。 いずれも2月以降、下院での審議が中断されています。レッドサム下院院内総務は、遅くとも7月半ばには審議を再開する意向を示しています。関税同盟にとどまることを希望する穏健離脱派から多くの修正案が起案される可能性があり、法制化には難航が予想されます』、ご苦労なことだ。
・(北アイルランド問題)アイルランドは1922年まで長らく英国の植民地でした。独立戦争を経て、北アイルランドを残して、アイルランドは独立しました。 ただ、1960年~90年代には英国の統治を望むプロテスタント系と、アイルランド併合を望むカトリック系が激しく交戦する北アイルランド紛争が起こりました。1998年の停戦協定で、ようやく武装解除がなされた歴史があります。 英国がEUから抜けると通関が必要になり、アイルランドが分断されてしまいます。北アイルランドに国境を引くと停戦協定に違反し、交戦が始まってしまいますので、これは難しいということは、英国やEUが合意しています。 ではどうやって通関手続きをするのか。まずEUは北アイルランドだけをEUの単一市場や関税同盟に残すというガイドラインを示しました。これは、英国にとってはEUの北アイルランドの占領に当たるとして猛反発しました・・・国境にカメラを設置して、事前に関税を支払っていない物品に関しては後で罰金を科すという案ですが、国境すべてにカメラを設置するのは難しいでしょう。 解決策としては、フェンスを作って通関を設けるのか、英国全体が関税同盟にとどまるしかないでしょう。 移民を制限する一方で、モノは無関税で自由に移動するというのは、EUからは「いいとこ取り」と批判されており、これも難航が予想されます。 これまでも何度か触れているチェッカーズ案というのは、要するにこういうことです。EUとの間での煩わしい通関手続きを極力簡素化し、デジタル規制などでの大幅な譲歩を引き出す代わりに、厳しいEUの食品や製品の規制には従うということです。これに対して「EUの属国になる」とジョンソン氏ら強硬離脱派が反発したのです』、離脱というのは本当に難しいものだと改めて再認識した。
・『メイ首相はもともと強硬な離脱を掲げていました。しかし交渉の進展がなく、強硬路線はEU各国にまたがりサプライチェーンを構成する製造業などへの影響が大きいことから軌道修正しています。それがチェッカーズ方針であり、政権内の分断を招いたと言えます。 EUはメイ政権の迷走を静観しています。保守党が分裂し、総選挙で労働党政権になれば、英国がEUに戻ることがあるので、そうした展開を望んでいるようにみえます・・・イングランドがW杯で初優勝したのは1966年ですが、次の1970年のW杯メキシコ大会で、優勝候補のイングランドは(当時の)西ドイツに準々決勝で敗れています。しかも1970年の総選挙は、準々決勝直後に行われ、敗戦のショックが政権批判に向けられたことにより、各種世論調査で勝利確実といわれていた労働党ウィルソン政権がまさかの敗北を喫し、政権交代が実現したのです。 この話は多くの英国政治家が教訓としているため、イングランドが準決勝で敗退した今となっては、保守党も総選挙には慎重になるでしょう』、総選挙は回避したとしても、死に体になった政権で、離脱に向けての対応が時間切れになって、悲惨な結果をもたらすよりは、総選挙で民意を問う方がいいと思えるのだが・・・。

第三に、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が7月13日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も 」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/071200071/
・『英国は欧州連合(EU)離脱・・・をめぐって、3度目のオウンゴールを演じてしまった。1度目の誤りは、BREXITの国民投票の実施であり、2度目の誤りはメイ首相が総選挙前倒しを強行して少数与党に転落したことだ。そして、3度目の誤りはソフト離脱を選択したメイ首相にデービスEU離脱担当相、ジョンソン外相という強硬離脱派が反旗を翻し、退陣したことだ。 これでメイ政権の危機はさらに深まり、BREXITは一層、混迷する事態になった。このままでは、2019年3月の離脱期限までに何も決まらない「無秩序離脱」の恐れも出てきた。そうなれば、外資流出によるポンド危機など英経済は致命的な打撃を受ける。BREXITとは一体何だったのか、英国民に後悔(BREGRET)が広がるだろう』、3度目のオウンゴールとは、確かにピッタリの表現だ。
・『ソフト離脱路線に強硬派が反旗  BREXITをEUとの前線で仕切ってきたデービス担当相とジョンソン外相の退陣は、英国内にある強硬離脱かソフト離脱かの基本的対立をいまさらながら浮き彫りにした。 メイ首相が選択したのは、EUとの間で「自由貿易圏」を創設するというものだ。その代わりに、農産品や工業製品の規格や基準でEUと共通ルールを採用する。離脱に伴い関税同盟から脱退するが、北アイルランドとアイルランドの国境で煩雑な税関手続きが発生しないよう、EUと連携するとしている。 英国とEUとのサプライチェーンが分断されることを警戒してきた英経済界は、自由貿易圏の創設を中心とするソフト離脱路線の選択に胸をなでおろした。 ところが、英国(EUの間違い?)からの独立を掲げてきたデービスEU離脱担当相は、これに反発、退陣した。続いて、ジョンソン外相もソフト離脱を「英国をEUの植民地化する」とこきおろし、「EU離脱の夢はついえつつある」と批判して退陣した。 メイ首相にすれば、デービス、ジョンソンという強硬派を最前線に配して、手ごわいEUとの交渉を有利に導きたいという思いがあった。英国との経済関係が深く、英国に理解を示してきたドイツのメルケル首相でさえ「良いとこ取りは許さない」という強い態度を示していただけに、EUとの離脱交渉は一筋縄ではいかなかった。 EUのバルニエ首席交渉官との交渉で強硬姿勢を貫いてきたデービス担当相やジョンソン外相にすれば、はしごをはずされたという思いもあるかもしれない』、交渉に当たってきた両氏が「はしごをはずされた」というのは、その通りなのかも知れない。
・『EU懐疑派の系譜  もっとも、強硬離脱派の急先鋒で国民投票の勝利を導いたジョンソン外相は、もともとEU残留を主張していた。保守党内のライバル、キャメロン首相と対抗するために信念をまげてまで野に下った野心家だ。国民投票でEU離脱が決まっても、ポスト・キャメロンの首相の座争いには加わらず、今回の辞任劇もデービス辞任の後に続くなど「日和見主義者」といえる。 もともとEU離脱という英国の将来を揺るがす大きな選択をリスクの大きな国民投票に委ねたキャメロン首相に政治家としての大きな問題があった。ブリュッセルのEU官僚嫌いで有名なサッチャー首相でさえ、こんな安易な選択はしなかったはずだ。 英国にはもともと主要メディアを含めてEU懐疑論が根強かった。キャメロン首相自身も実はEU懐疑派だったといえる。国民投票で英国がEU離脱を選択するなら、それはそれでいいと考えていたふしがある。2016年6月の国民投票は実はEU懐疑派とEU離脱派の戦いでもあった。そんな危険な国民投票を実施したこと自体が1番目のオウンゴールである。 キャメロン氏のEU観は1992年の欧州通貨危機のなかで形成されたといえる。英ポンドはジョージ・ソロス氏の投機を浴びて欧州通貨制度(EMS)の為替相場メカニズム(ERM)からの離脱をよぎなくされる。キャメロン氏は担当官としてこの通貨危機に立ち会っている。ユーロ危機のさなか、ユーロ圏が危機打開に苦闘しているときにキャメロン首相は「英国はユーロに加盟していなくてよかった」と述べて、ひんしゅくを買ったこともある。独仏主導のEU運営に疎外感を味わわされていたのは事実である。 キャメロン首相の後を継いだメイ首相はもともと、消極的なEU残留派だった。内相経験から移民問題には頭を悩ませていたが、何がなんでもEU離脱をめざすという政治的立場からは程遠かった。しかし、英国首相としてBREXITをめぐる議論がソフトとハードの間で揺らぐなかで、国内の政治的立場を固めたいという思いは強かった。「BREXITはBREXITだ」と言い切っていた。 しかし、政権の足場固めのために、2017年6月にあえて総選挙を前倒しし、敗北したのは政治的センスの無さを示している。2番目のオウンゴールが、メイ政権を弱体化させたが、3番目のオウンゴールがメイ政権の危機を決定づけたといえる』、「キャメロン首相自身も実はEU懐疑派だった」というのは初耳だが、1番目のオウンゴールを説明できる。
・『「大国意識」がもたらしたもの  民主主義の先進国である英国でなぜこうも政治的失態が続くのか。指導者の政治的資質に問題があるのは事実だが、そこには抜きがたい「大国意識」が潜んでいる。 その源流をさかのぼれば、ウィンストン・チャーチル首相に突き当たる。第2次大戦後の混乱のなかで、最も早く「欧州合衆国」構想を打ち出したのはチャーチルだった。チャーチルに刺激されて欧州統合に動き出したのが「欧州統合の父」とされるフランスの実業家、ジャン・モネである。 ただし、チャーチルの「欧州合衆国」構想は英国抜きの構想だった。「欧州合衆国」との関係についてチャーチルは「“with”not“in”」と述べている。英国は「欧州合衆国」のなかには入らず共生するという姿勢である。そこにあるのは、「大英帝国」の流れを汲む「大国意識」である。チャーチルは戦後の世界を支配するのは米国・英国・旧ソ連の3大国だと考えていた。 この英国の「大国意識」は、結局「英国病」をもたらすことになる。仏独和解を軸に、欧州統合が急進展するなかで、英国は出遅れる。欧州共同体(EC)に加盟できたのは、申請から12年後である。欧州統合の列に加われず、かつての英連邦の結びつきを薄れるなかで、英国はポンド危機と経済停滞に直面する。 英国経済はサッチャー改革だけでなく、EU市場と外資に依存する経済構造が出来上がったことでようやく再生された』、いまや「大国意識」は薄らいだとはいえ、やはり残っていたのだろう。ただ、現在ではノスタルジーでしかないく、何ら前向きの政策につながるようなもの、ではなさそうだ。
・『BREXITが招く英国病  EU離脱は、それがソフト離脱であれ強硬離脱であれ、英国経済に影響を及ぼさずにはおかない。英国経済は「大欧州」として拡大するEU市場に大きく依存している。英国経済はそのEU市場に照準を合わせた外資にも大きく依存している。この徹底した外資依存は「ウィンブルドン現象」と呼ばれるほどだ。BREXITは、停滞し続けた英経済を再生させたこの経済構造を自らの手で崩壊させるようなものである。英国の歴史のなかでも特筆すべき愚策といえるだろう。 メイ政権のソフト離脱には経済への影響を最小限に食い止めたいという思いがにじんでいるが、外資はオウンゴールを繰り返す不透明な英国に投資を見合わせるだろう。それどころか英国から欧州大陸などEUへの移転を検討せざるをえなくなる。エアバスといったEUの共同事業からも英国は外される。 世界の金融センターとしてのロンドン・シティーの座も盤石ではなくなる。シティーが担ってきたユーロ・ビジネスは欧州大陸に移される。米国の金融機関はシティーからフランクフルト、パリなど欧州大陸への機能分散を急いでいる。こうした機能分散は日本の金融機関どころか英国の金融機関にも波及している。外資流出が収まらなければ、戦後の英国経済を襲ったポンド危機が再現しかねない。緩やかなポンド安なら輸出や観光には好都合だが、ポンド危機になれば話は別である。スタグフレーション(物価高と景気停滞の同時進行)に陥り、再び英国病に悩まされることになる』、「再び英国病」とは穏やかではないが、確かにあり得るシナリオだ。
・『BRETURNの動き再燃も  英国のEU離脱期限は、2019年3月29日である。英国とEU各国の議会承認手続きを考えれば、離脱のためEUとの最終合意は10月のEU首脳会議までに成立しなればならない。日程が切迫するなかでの英国政治の混迷は、BREXITをめぐる混迷を象徴している。 弱体化したメイ政権は「ゾンビ内閣」とやゆされるほど機能不全に陥っている。保守党内に倒閣の動きもあるが、代わりがいないという弱みもある。このまま弱体政権がEUとの詰めの交渉に当たれば、相当の譲歩を迫られるだろう。英国内の反発を恐れて譲歩を拒めば、時間切れで何も決まらないまま「無秩序離脱」という最悪の事態になりかねない。2020年末まではEUの単一市場や関税同盟に残すという暫定合意も宙に浮く恐れがある。離脱期限そのものを先送りする手もないわけではないが、議会手続など条件が多く、不透明感から急激な外資流出を招くだけだろう。 こうしたなかでは、英国内ではBRETURN(EUへの回帰)を求める議論が若者を中心にロンドンやスコットランドで巻き起こる可能性もある。再度の国民投票や再選挙が選択肢になる。英国は歴史的大失敗にこのまま身を任せるか、深い崖の淵で思いとどまるかの選択を迫られようとしている』、「再び英国病」との悲惨なシナリオを回避するため、「再度の国民投票や再選挙」でBRETURNしてもらいたいものだ。 
タグ:シナリオ スタグフレーション 日経ビジネスオンライン JBPRESS 英国EU離脱問題 岡部 直明 ロシア・ワールドカップ 「一帯一路」 (その13)(英国のEU離脱を歓迎し 待ち構える中国、W杯で団結 EU離脱で分裂する英国の未来、BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も) 姫田 小夏 「英国のEU離脱を歓迎し、待ち構える中国 ブレグジットでますます深まる英中経済関係」 ユーラシア・グループが「2018年の10大リスク」 8位に「英国」がランキング “ブレグジットは好機だ”とばかりに英国に急接近を図っている国もある。中国だ 「経済的実利」を追求するという点では、むしろ中国とそりが合うといえるだろう。両国がブレグジットをきっかけに接近を図ってもおかしくはない ヒンクリー・ポイントC原子力発電所を受注 両国は「英中黄金時代」を宣言 「W杯で団結、EU離脱で分裂する英国の未来 大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストに聞く」 準決勝で敗れたものの、若い選手たちが躍動し、英国は興奮の渦に包まれた もう1つはEU離脱(ブレグジット)の行方だ。道筋が全く見えなくなっている ブレグジットの交渉方針 政権の中枢を担う2大臣が辞任し、メイ首相の退陣を迫るとの見方も出ている EUとの経済関係を重視し、ソフトランディングを求める「穏健離脱派」 EUの法律や規制と決別する「強硬離脱派」 いずれも英国のいいとこ取りとの批判 正式にEUとは交渉していないため、実現性が全く見えていない ロシアの元情報機関員への襲撃事件 今回のW杯では、代表チームの応援に伴うロシア訪問をボイコット 予想以上のチームの躍進により、メイ首相は自ら墓穴を掘ってしまい、イングランド代表が勝ち抜くほど、支持率が低下する状態に ジョンソン氏は英国のEU離脱(ブレグジット)の象徴的な存在 10時間以上の閣議で強硬離脱派を抑え込みました 物の移動の自由と引換えに、離脱後も食品や製品に関してEU規制に準拠する方針 EU委員会にはブレグジットへの興味がさほどないように映ります 1つ目は、メイ首相が穏健路線を貫き、逃げ切るシナリオ 2つ目は、離脱戦略の大きな転換 3つ目は、保守党の内部分裂で、メイ首相に不信任案が提出され、党首選になるシナリオ 現時点での党首交代は、2019年3月末のブレグジットまでに意見収束は絶望的となり、無秩序な離脱にも大きく近づきます 製品の値上げは避けられない 北アイルランド問題 英国がEUから抜けると通関が必要になり、アイルランドが分断されてしまいます。北アイルランドに国境を引くと停戦協定に違反し、交戦が始まってしまいますので、これは難しいということは、英国やEUが合意しています EUは北アイルランドだけをEUの単一市場や関税同盟に残すというガイドラインを示しました。これは、英国にとってはEUの北アイルランドの占領に当たるとして猛反発 国境にカメラを設置して、事前に関税を支払っていない物品に関しては後で罰金を科すという案 移民を制限する一方で、モノは無関税で自由に移動するというのは、EUからは「いいとこ取り」と批判されており、これも難航が予想 EUはメイ政権の迷走を静観しています。保守党が分裂し、総選挙で労働党政権になれば、英国がEUに戻ることがあるので、そうした展開を望んでいるようにみえます 「BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も 」 3度目のオウンゴール 1度目の誤りは、BREXITの国民投票の実施 2度目の誤りはメイ首相が総選挙前倒しを強行して少数与党に転落 3度目の誤りはソフト離脱を選択したメイ首相にデービスEU離脱担当相、ジョンソン外相という強硬離脱派が反旗を翻し、退陣したことだ 「無秩序離脱」 外資流出によるポンド危機など英経済は致命的な打撃 英国民に後悔(BREGRET)が広がるだろう ソフト離脱路線に強硬派が反旗 デービスEU離脱担当相 ジョンソン外相 EUのバルニエ首席交渉官との交渉で強硬姿勢を貫いてきたデービス担当相やジョンソン外相にすれば、はしごをはずされたという思いもあるかもしれない EU懐疑派の系譜 キャメロン首相自身も実はEU懐疑派だった 「大国意識」がもたらしたもの 第2次大戦後の混乱のなかで、最も早く「欧州合衆国」構想を打ち出したのはチャーチルだった チャーチルの「欧州合衆国」構想は英国抜きの構想だった 「大英帝国」の流れを汲む「大国意識」である。チャーチルは戦後の世界を支配するのは米国・英国・旧ソ連の3大国だと考えていた 英国経済はサッチャー改革だけでなく、EU市場と外資に依存する経済構造が出来上がったことでようやく再生された BREXITが招く英国病 英国経済は「大欧州」として拡大するEU市場に大きく依存している。英国経済はそのEU市場に照準を合わせた外資にも大きく依存 「ウィンブルドン現象」 BREXITは、停滞し続けた英経済を再生させたこの経済構造を自らの手で崩壊させるようなものである。英国の歴史のなかでも特筆すべき愚策 ポンド危機 BRETURNの動き再燃も 若者を中心にロンドンやスコットランドで巻き起こる可能性も
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ハラスメント(その9)(小田嶋氏:わたしたちはなぜパワハラが好きなのか) [社会]

ハラスメントについては、8月9日に取上げた。今日は、(その9)(小田嶋氏:わたしたちはなぜパワハラが好きなのか)である。

コラムニストの小田嶋 隆氏が9月14日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「わたしたちはなぜパワハラが好きなのか」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/091300158/?P=1
・『スポーツの競技団体に関連したパワハラが次々と告発されている。 昨年の後半、日本相撲協会内部での暴力事件が暴露されて以来続いている動きだ。 あの時、相撲協会内部の権力争いと「かわいがり」を題材に制作された告発と嗜虐の一大電波叙事詩は、膨大な放送時間とのべ視聴者数を獲得するに至った。その結果、パワハラ告発と暴力追放を錦の御旗に押しまくる人民裁判放送企画は、半年のロングランを可能ならしめる黄金のコンテンツであるということが証明されたわけで、このことが、現在の告発万能の流れを決定づけている。恒常的に尺の稼げる話題を求め続けている放送現場のコンテンツハンターは、次なるパワハラの噂を求めて、取材……に走り回りたいところなのだが、そんな予算も当面ありゃしないので、とりあえず週刊誌を開いて翌日放送分のネタを探す。その結果、この半年ほど、アメフト、ボクシング、体操の世界を舞台としたパワハラ告発連続企画がそれぞれ2カ月ほどずつ上演され、それぞれに好評を博している次第だ。 で、ここへきて新たにウェイトリフティングと駅伝の組織の中でのパワハラがメニューに加わろうとしている。 私たちは、どうしてこれほどまでにパワハラが好きなのだろうか』、確かにパワハラ告発はいつまで続くのかと思うほどの異常事態だ。
・『スルガ銀行の不正融資関連のニュースにも、最近「パワハラ」という面から新しい光が当てられている。 もしかしたらこの事件は、この先、融資の適正さや資金の流れとは別に、組織的なパワハラを告発する案件として注目を集めることになるのかもしれない。 融資そのものはスポーツ競技ではない。しかしながら、苛烈なノルマと競争が介在している点では、過当競争に苦しむ金融機関の社員と五輪競技やプロスポーツ予備軍の選手たちが置かれている立場はそんなに遠いものではないわけで、してみると、スルガ銀行内部で繰り広げられていたとされる猛烈なパワハラは、あれはあれで昨年来話題になっている、一連の競技団体内部のパワハラと選ぶところのないものであるのかもしれない』、粉飾決算の東芝の「チェレンジ」はもっと強烈なパワハラだ。
・『今回は、うちの国のパワハラの現状について考えてみることにする。 この一年ほど、明るい時間帯のテレビは、毎日のように誰かのパワハラを告発している。 やれどこそこの誰それがほかの誰かに暴言を浴びせたとか圧力をかけたとかいった調子のおよそかわりばえのしないお話を、それこそ微に入り細を穿つ形で再現してみせているそれらの番組企画を眺めながら、私はいつも釈然としない気持ちに襲われる。 パワハラを発動した人間がテレビ画面の中で指弾されるのは、なりゆきからしてしかたのないことなのだろうとは思う。 でも、そうは言っても、この種の問題は、特定個人の罪状をあげつらって、その人物の人間性をよってたかって非難すればそれで済むというタイプのお話ではないはずだ。 たとえば、パワハラの背景にある日本人の集団性にスポットを当てるとかして分析を深めないと、この話題は先に進まない……などと思うのは、しかしどうせ素人考えというヤツなのであろう。 テレビの中の人たちにしてみれば、彼らの目的は先に進むことではない。謎を解明することでもない。彼らはたぶん、喜怒哀楽のうちのどの部分であれ視聴者の感情を揺さぶることができれば勝ちだ、というふうに考えている。まあ、置かれている場所からして当然の咲き方だ。そこのところを責めようとは思わない。好きに咲けば良い』、ただこれだけ相次ぐと、視聴者に飽きが来るのではとも思う。
・『むしろ注目しなければならないのは、作り手の側の意図よりも、受け手であるわれわれの側の心理だ。 つまり、昨年来、ほとんどまったく同じエピソードの繰り返しにしか見えない各方面のパワハラ事案が、あとからあとから発覚してはニュース原稿に仕立てあげられ、テレビ裁判にかけられた上で電波仕置人たちの処刑放送に供されているのは、この種の近代リンチコンテンツが、堅実な視聴率を稼ぐことが広く関係者の間で周知されているからだということだ。 要するに、わたくしどもこのちっぽけな島国に暮らす小市民は、威張っているオッサンを寄ってたかって十字架にかけて晒すタイプの見世物が大好きなのだ。あらためて自分の胸に手を当ててみると、実に恥ずかしい話ではあるが、実際に大好きなのだから仕方がない』、この視聴者の心理分析は見事だ。
・『ただ、なんとなくのんべんだらりと視聴してしまっている昼下がりのテレビの視聴者の一人として自己弁護すれば、昨年来引き続いているパワハラ告発企画のワイドショー独占化傾向は、必ずしもそれがわれわれの嗜虐欲求を刺激するからという理由だけで引き起こされている事態ではない。 たしかに、威張っているオヤジをみんなしてよってたかってヘコませるのは面白いし痛快でもある。 が、私たちが真っ昼間のバカなテレビに誘引されている理由はそれだけではない。 視聴者の少なくとも一部は、画面の中で延々と描写されるうちの国の閉鎖組織にありがちなどうにも陰湿かつ愚かなパワハラの様相を眺めながら、相応の反省もしている。 このことは、ぜひ大きめの声でお伝えしておきたい。 私自身、昼の時間帯の情報番組がこの約1年間(横綱日馬富士の暴行事件は去年の10月ですよ)繰り返し放送し続けていたパワハラ告発企画を、自分でも意外なほど長い時間視聴してしまったのだが、その理由は、もちろん面白かったからではない。 楽しかったからでも勉強になると思ったからでもない。 視聴実感としてはただただ不愉快だった。 にもかかわらず、ザッピング途中にふと目を留めたそれらの画面から、すぐにチャンネルを変えられなかったのは、思い当たる場面が多すぎて、こっちのアタマの中が動き出すことを止められなかったからだ。 これはとても大切なポイントだ。 テレビで放映されるある種のコンテンツは、その完成度によってではなく、その粗雑さによって、視聴者の脳内を撹拌するのだ』、なんという逆説だろう。
・『テレビの番組の中には、ときに、制作物として優れているがゆえに視聴者を没入させるタイプのコンテンツが含まれている。丹念に取材されたドキュメンタリーや、美しい画面をふんだんに提供してくれる自然番組や、脚本と演出の秀逸なドラマなどがそれに当たる。そういう番組に出会う機会は幸運だし、それらの番組がもたらしてくれる時間は真に貴重だ。 ただ、テレビが提供してくれる面白さの大きな部分は、番組としての完成度とは別のところにある。たとえば、ハプニングとしての意外性や、画面の中に偶然映り込んでいる景色の突拍子のなさが、視聴者の目を釘付けにすることは珍しくないし、ほかにも、画面の中でやりとりされている対話の稚拙さや品の無さのようなものが、こちらの関心をひきつけるケースもある。 パワハラ告発コンテンツがわれわれの興味をひいてやまないのは、そこで紹介されているひとつひとつの挿話や事例が、わたくしども日本の常民良民にとって、あまりにも思い当たるフシのある実体験だからだ』、なるほど。
・『「ああ、いるよね、こういうヒト」「オレが30代の頃に半年だけ働いたブラック企業の課長がまさにこいつとおんなじしゃべり方をするオッサンだった」「なんというのか、この恫喝の仕方、身に覚えしかないんだが」・・・「っていうか、強いチームのコーチってほとんど全員こういう感じのヒトだぞ」・・・「正直な話、オレはあの声で命令されたら、どんな命令であっても服従すると思う」と、たとえば日本ボクシング連盟の山根明会長の語り口や、日大の事件に関連して画面に召喚された一連の登場人物の立ち居振る舞いを眺めていると、人々は、いやでも自分がこれまでの人生の中で遭遇した幾人かの暴君の顔を思い出す。 誰であれ、この国の組織の中で権力が振るわれている現場に出くわした経験を持っている人間であれば、パワハラについては一家言を持っている。 その誰もが持っている一家言が、このコンテンツの人気を支えている』、さすが見事な謎解きだ。
・『パワハラについては、誰もが内心に傷と痛みとうしろめたさを伴う複雑な感情を持っている。だからこそ、他人のパワハラであっても、われわれはその現場から容易に目を離すことができないのだ。 ながらく少年野球のコーチをやっているN塚という友人が、つい半月ほど前にポツリと言っていたことだが、子供たちに野球を教える監督やコーチの中には、勘違いをする人間が少なからずいるのだそうだ。 「勘違いって、どういう意味だ?」 「自分の教えが正しいって思い込むんだよ」 「ん? 正しいと思うから教えてるんじゃないのか?」 「それが逆なんだな。子供っていうのは、どんなことを教えても、必ず言った通りにやる。びっくりするほど素直なんだよ」 「で?」 「だからそれで大人の方が勘違いするわけだよ」 「子供が従ってるんなら、指導者としては成功してるんじゃないのか?」 「いや、順序が逆なんだよ。正しいから子供たちが言いなりになるんじゃなくて、子供たちが自分の言いなりになるから、自分が正しいと思い込む。それで変な自信をつけちゃう人たちがたくさんいる」 「それがいけないのか?」 「最悪だよ」 「どう最悪なんだ?」 「うーん、うまく説明できないけど。適当なことを偉そうに教えてる指導者が現場にはヤマほどいるってことだよ」 彼の言っていることの核心の部分がどういうことなのかはともかく、子供を相手に何かを教える立場の人間が、子供たちが自分の「言いなりになる」ということに嗜癖して行く感じは、なんとなくわかる』、近所の公園で毎週末に少年野球を指導している監督やコーチたちには、頭が下がる思いだが、こうした隠れた生きがいがある人もいるとは・・・。人間はやはり複雑だ。
・『私自身は、他人の子供に何かを教えた経験は持っていないのだが、あるタイプの教えることの好きな人たちが、教える内容そのものよりも、「言うことを聞かせる技術」を磨く方向に重心を置いて行く感じは、自分自身の実感としても容易に想像できる。 スポーツの競技団体の中で、パワハラが蔓延する理由のひとつは、おそらくここのところにある。 スポーツが競技として行われる現場では、コーチと選手、監督とコーチ、団体の役員と平職員、先輩と後輩といった様々な立場の間に、上下関係というのか「命令と服従」の関係が生じる。というよりも、競技の習得や継続に伴って生じる人間関係は多かれ少なかれ上下関係を含んでいる。これは避けることができない事実でもあれば、仕方のないことでもある。 なんとなれば、競技に関連する技術や、練習方法や戦術を教える立場の人間は、それを習得する立場の選手よりも上の立場に立っている。また、そうでなければ教えるという動作は貫徹され得ないからだ。 そして、コーチングの内容を洗練することよりも子供たちを指示通りに動かすことに熱中するタイプの指導者は、やがて選手を恐怖によってコントロールするようになる。 直接に手を出すことをしなくても、たとえば怒鳴りつけるとか、罰走を命じるとか、レギュラーから外すとか、恫喝の仕方はいくらでもある。 しかも、現場レベルでは、この種の恫喝は、少なくとも短期的には一定の効果を発揮する。だからやめられない』、その通りなのだろう。
・『いつだったか、ラグビーの日本代表チームの監督をつとめたエディー・ジョーンズ氏が、何かのインタビューの中で、「日本のスポーツ指導者には、選手を服従させることを自己目的化してしまっているケースが目立つ」という意味のことを言っていたことを思い出す。 選手に服従を求めるのは、あくまでも戦術を徹底するためであったり、練習への真剣な取り組みを求めるための手段であって、服従そのものが目的ではない。従って、練習時間が終わった時や、グラウンドの外でまで服従を求めるのは本来筋違いだ。 服従は、競技内のあるいは競技時間内の設定に過ぎない。が、日本の指導者は、1年365日、1日24時間の服従を求める。そうなると選手の中に自主性と責任感が育たなくなる。そこが問題だ。と、おおよそそんな話をしていたはずだ。 ほとんど同じ内容をかつてサッカーの日本代表を率いたハンス・オフト氏が指摘している。彼は、日本人選手の長所は「コーチャブル」であることだが、欠点もまた「コーチャブル」であるところにあるというお話をしていた。 彼の言うには、代表選手になるような一流のプレイヤーは、海外では、容易に他人の話を鵜呑みにしない。こちらが戦術を授けたり練習方法を提案しても、簡単には賛同せず、逆に言い返してくるケースすらある。なので、たとえばオランダのチームで、選手たちを自分のやり方で指導するためには、それなりの議論と試行錯誤と軋轢と対立を覚悟せねばならない。その点、日本人選手は、一流選手であっても、一瞬でこちらの意図を理解し、言った通りに動いてくれる。そういう意味では非常に教えやすい。ただ、教えたことをこなしているようでいて、こっちの意図を理解していないケースもあるので、その点は油断がならない、と、そういうお話もしていた。 オフト氏の何代か後に日本代表チームを指揮したフィリップ・トルシエ氏も、よく似た指摘をしている。彼は、「時には赤信号を渡らなければいけない」という、とても彼らしい言い方で、日本人選手に不服従(というよりも、「自分のアタマで考えて判断すること」)を求めた』、こうした外国人監督の日本人選手評は、さすがに極めて的確な気がする。
・『大切なのは、他人を指導する立場の人間は、スポーツの指導者であれ、競技団体の幹部であれ、企業の管理職や大学の教員であれ、やがて他人の服従に嗜癖するようになるということだ。 ごく幼い時代から教室から排除されないための技術である「服従」を第二の天性として身につけているわれら日本人の場合、リーダーの側の他者コントロールへの嗜癖は、より容易に学習されるはずだ。 リーダーが権力的に振る舞うことを「役職が人を作る」という言い方で、積極的に評価する見方もある。 組織の中で責任ある立場を経験した若者が、やがてリーダーとしての自覚と責任を身につけていく、という感じのストーリーを想定しているのだと思う。 もちろんそういう面はある。 すべての人間が生まれつきのリーダーでない以上、多くの管理者や指導者は、経験によって指導者の資質なり能力を獲得すると考えた方が辻褄が合う。 ただ、スポーツのコーチの中に、選手を服従させることを自己目的化してしまう不心得者がいるのと同じように、企業の管理職や政治家の中にも、他人を服従させることそれ自体を目指してしまうパワハラ体質の人間が一定数含まれていることも、また事実だ。 思うに、われわれのこの島国が、こんなにちまちました社会であるにもかかわらず、これほど大量のパワハラ人種を育んでいるのは、結局のところ、わたくしども21世紀の日本人が、つまるところ「支配と服従」以外の人間関係の取り結び方をコーチングされていないからなのではあるまいか。 言い過ぎだったかもしれない。でも撤回はしない』、面白い指摘だが、やや一面的過ぎる感も拭えない。 
・『この問題は、もうしばらく考えてみることにする。 アメリカ合衆国という国について、ひとつ感心するのは、たとえば、大統領の任期を二期8年までとする原則を、建国以来頑なに守っている(※)ことだ。これは、見事な態度だと思っている(※例外は、第二次大戦中のフランクリン・ルーズベルト大統領)。 国家元首の任期を後になって改めている国は少なくない。はじめから任期を定めていない国もけっこうある。 個人的には、オバマさんにあと4年やってもらっても良かったのではなかろうかと思わないでもないのだが、やはりどんなに立派な人間であっても、必要以上に長く権力の座にとどまるべきではない。 権力の頂点に立っていればいずれその行使に嗜癖するようになる。たとえ本人に権力志向が皆無でも、長期化した権力は、システムの自動運動として自己の永遠化をセルフプログラミングするようになる。 最後に、スポーツの世界からパワハラを駆逐するための私案を提示しておく。 とりあえず「強化」という思い込みを放棄するのがてっとりばやいと思う。 そのために、東京オリンピックでメダルゼロを目指してほしい。 五輪終了時点で、メダルゼロが達成できているのであれば、パワハラはウソみたいに消えているはずだ。その地点から、あらためてメダルを目指す方法についてゼロベースで考えはじめるのが正しい方法だと思う。 それなら、炎暑の東京で開催する意義もすこしはありそうだ。 ぜひ、試してみてほしい』、ユニークな私案だが、小田島氏自身が実現可能性をハナから信じておらず、「苦しまぎれ」に出したのではという印象だ。

タグ:アメリカ合衆国 ハラスメント 日経ビジネスオンライン フィリップ・トルシエ ハンス・オフト エディー・ジョーンズ 小田嶋 隆 (その9)(小田嶋氏:わたしたちはなぜパワハラが好きなのか) 「わたしたちはなぜパワハラが好きなのか」 スポーツの競技団体に関連したパワハラが次々と告発 日本相撲協会内部での暴力事件が暴露されて以来続いている動きだ パワハラ告発と暴力追放を錦の御旗に押しまくる人民裁判放送企画は、半年のロングランを可能ならしめる黄金のコンテンツであるということが証明 現在の告発万能の流れを決定づけている の半年ほど、アメフト、ボクシング、体操の世界を舞台としたパワハラ告発連続企画がそれぞれ2カ月ほどずつ上演され、それぞれに好評を博している次第 ウェイトリフティングと駅伝 スルガ銀行の不正融資関連 組織的なパワハラ テレビの中の人たち 喜怒哀楽のうちのどの部分であれ視聴者の感情を揺さぶることができれば勝ちだ、というふうに考えている 注目しなければならないのは、作り手の側の意図よりも、受け手であるわれわれの側の心理 わたくしどもこのちっぽけな島国に暮らす小市民は、威張っているオッサンを寄ってたかって十字架にかけて晒すタイプの見世物が大好きなのだ パワハラ告発コンテンツがわれわれの興味をひいてやまないのは、そこで紹介されているひとつひとつの挿話や事例が、わたくしども日本の常民良民にとって、あまりにも思い当たるフシのある実体験だからだ パワハラについては、誰もが内心に傷と痛みとうしろめたさを伴う複雑な感情を持っている 子供たちに野球を教える監督やコーチの中には、勘違いをする人間が少なからずいる 子供たちが自分の言いなりになるから、自分が正しいと思い込む。それで変な自信をつけちゃう人たちがたくさんいる スポーツが競技として行われる現場では、コーチと選手、監督とコーチ、団体の役員と平職員、先輩と後輩といった様々な立場の間に、上下関係というのか「命令と服従」の関係が生じる。というよりも、競技の習得や継続に伴って生じる人間関係は多かれ少なかれ上下関係を含んでいる コーチングの内容を洗練することよりも子供たちを指示通りに動かすことに熱中するタイプの指導者は、やがて選手を恐怖によってコントロールするようになる 日本のスポーツ指導者には、選手を服従させることを自己目的化してしまっているケースが目立つ 日本人選手の長所は「コーチャブル」であることだが、欠点もまた「コーチャブル」であるところにある 「自分のアタマで考えて判断すること」 われわれのこの島国が、こんなにちまちました社会であるにもかかわらず、これほど大量のパワハラ人種を育んでいるのは、結局のところ、わたくしども21世紀の日本人が、つまるところ「支配と服従」以外の人間関係の取り結び方をコーチングされていないからなのではあるまいか 大統領の任期を二期8年までとする原則 スポーツの世界からパワハラを駆逐するための私案を提示しておく。 とりあえず「強化」という思い込みを放棄するのがてっとりばやいと思う
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司法の歪み(その10)(弁護士が学校を支配する…? 「スクールロイヤー」の危うさ、日本版司法取引でえん罪は増える?不適切な法科学が用いられる危険性、検察も警察も権力に無力 カネの力で悪を討つしかない) [社会]

司法の歪みについては、8月4日に取上げた。今日は、(その10)(弁護士が学校を支配する…? 「スクールロイヤー」の危うさ、日本版司法取引でえん罪は増える?不適切な法科学が用いられる危険性、検察も警察も権力に無力 カネの力で悪を討つしかない)である。

先ずは、弁護士の大前 治氏が6月7日付け現代ビジネスに寄稿した「弁護士が学校を支配する…? 「スクールロイヤー」の危うさ 彼らがいじめ問題に関わることへの不安」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55954
・『神木隆之介主演のNHKドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」(やけ弁)は、学校に常駐する弁護士(スクールロイヤー)が熱弁をふるって波風を立てる新形態の学園ドラマだった。主人公の極端な言動には賛否が分かれる。それが制作者の狙いであろう。 このスクールロイヤーの本格導入に向けて、文部科学省は2018年度予算で調査研究費約5000万円を確保した。しかし、弁護士が法律を使って一刀両断する手法は教育現場に相応しいのか。ドラマが投げかけた問題提起を重く受け止めるべきである』、なるほど。
・『「なんでも解決できる」という弁護士の傲慢  私は大阪で弁護士をしており、学校や教師から相談を受けることも数多くある。「それは体罰であり違法です。謝罪と再発防止策が必要です」という助言が、教師の姿勢を方向転換させて解決につながったケースもある。「その親のクレームに応じる義務はないですが、時間をかけて背景や真意を聴き取るべきです」という助言によって、教師が心理的な余裕をもって信頼関係を築けたケースもある。このように、弁護士による助言が教育現場によい効果をもたらすことはあり得る。 しかし、弁護士が「法律をタテにして正論を吐けば何でも解決できる」と思うのは傲慢であろう。 司法試験の科目には教育学も教育法規も含まれていない。弁護士は教育については素人である。そのことへの自覚と謙虚さが必要である。教師やスクールカウンセラーの専門知識や経験に敬意を払い、学びながら協力しあう必要がある。 これは、そう簡単なことではない。という思いとは裏腹に、大勢の弁護士を「スクールロイヤー」として学校教育に関与させる動きがある。本当に大丈夫だろうか』、弁護士がこういう謙虚な人ばかりであればよいが、傲慢で勘違いする人も多そうだ。
・『どんな弁護士でもスクールロイヤーになれるのか  文部科学省は、2018年度に5000万円の予算を組んで全国10地域でスクールロイヤー制度の調査研究を実施する。前年度予算は300万円(2地域)だったのと比べて、予算額も規模も一挙に拡大した。 制度の概要は次のとおりである。ドラマ「やけ弁」とは違って学校には常駐しない。法律事務所で日常業務をこなしながら、学校から相談や依頼があれば応じる形態である。 法律の専門家である弁護士が、その専門知識・経験に基づき、①法的側面からのいじめの予防教育、②学校における法的相談への対応、③法令に基づく対応の実施状況の検証、をおこなう(文科省平成30年度概算要求書より)。 弁護士は「法律の専門知識」を期待されている。しかし、教育学的知見の尊重や教師との連携が制度的に保障されていない点は問題である。 どんな弁護士でもよいのか、という問題もある。ドラマ「やけ弁」のスクールロイヤーは、法廷に立った経験のない新人弁護士であった。 難関大学に入学して司法試験にも合格できた弁護士は、成功体験に自信をもち、深刻な挫折を経験していないタイプも多い。 言語化できないストレスに苦しむ子どもや、学校に不満をもつ保護者の心情を理解できるだろうか。 そういえば、2011年6月にツイッターで「教育とは2万%、強制です」と発言した橋下徹・元大阪府知事も、2015年5月に教育委員(女性)への暴言の責任をとって辞職した中原徹・元大阪府教育長も、弁護士であった。 ともかく全国約4万人の弁護士は多種多様であり、考え方や人格のバラつきがある。 その中から誰をスクールロイヤーに選びだすのか。面接方法も採用基準も検討途上であるが、適切に人材を見極めることは極めて難しいはずである』、その通りだろう。
・『「弁護士の判断」が尊重されすぎる危険  弁護士から「これが法律的判断です」と言われたら、教師や保護者が反論をすることは難しくなる。 しかし、弁護士が学校で起きた出来事を正しく認識できるとは限らない。事実を誤解した弁護士が「あの教師の行為は体罰には該当しません」とお墨付きを与えてしまい、生徒や保護者に泣き寝入りをさせてしまう危険性もある。 スクールロイヤーの言動に対して、是正と監督の手段がない点も重大である。教師の問題行動に対しては、研修や懲戒処分による是正措置が存在する。もっとも重い免職処分を受ければ、教師は職を失ってしまう。 ところが、スクールロイヤーには本業の弁護士業務がある。スクールロイヤーを辞めても収入を失わない。だから、何も怖れることはなく、誰からも是正されずに辣腕を振るうことができる。 日常的に生徒と接することもなく、教育現場の実践と苦労を理解していない弁護士が「専門家」として招かれ、上から目線で「指導と助言」をする事態が目に浮かんでしまう』、良心的弁護士ならではの鋭い指摘だ。
・『弁護士が関わることで隠される事実  いじめ事案について、弁護士が関われば適切な対応ができるとは限らない。学校と生徒、どちらにとっての「適切な対応」を目指すかによって方向性や妥当性は変わってくる。 文部科学省が2017年3月に定めた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」には、次のように書かれている。「学校の設置者及び学校の基本的姿勢」より 自らの対応にたとえ不都合なことがあったとしても、全てを明らかにして自らの対応を真摯に見つめ直し、被害児童生徒・保護者に対して調査の結果について適切に説明を行うこと このガイドラインが遵守されることを願いたい。いじめを早期発見できなかった教師や、いじめられた生徒をさらに傷つける言動をとった教師の問題点なども、隠さずに説明されるべきである。 しかし、そこにスクールロイヤーが関わることによって生じる困難がある。それは、学校側から依頼を受けた弁護士という立場に由来する。 もし学校側と生徒・保護者側に信頼関係があるならば、弁護士が中立的な観点から事実経過の説明や解決案の提示をしやすい。しかし、厳しい対立状況にある場合は、弁護士が完全に中立公平な第三者でいることはできない。 なぜなら、保護者が学校を相手どって裁判を起こした場合、その弁護士は被告側の代理人として法廷に立ち、学校を守る立場に立たされる可能性がある。それを、裁判を起こされる前から予期しておかなければならない。 これは弁護士の職業的習性である。後で不利にならないよう言葉に注意しなさいと関係者に指示することも、守秘義務を遵守することも、スクールロイヤーの仕事になる。 民事裁判では、被害者側が「学校・教師による違法行為」を証明しない限り、学校側が法的責任を負うことはない。学校側が事実を証明する責任はない。それどころか、勝つか負けるかの法廷闘争の場では、被害者側の証言を「事実と異なる。信用できない」と否定することも、弁護士の職務として正当化されうる。 実際に、これまでに弁護士が学校側の代理人をつとめた裁判で、「弁護士のおかげで事実が明らかにされた」といえる事例がどれだけあるだろうか。 むしろ、弁護士が事実を隠す側に立っている(ように見える)事案も散見されるのではないか。これは、依頼者を守る職責を負う弁護士にとって当然であっても、被害者側からみれば納得できない。 このように、生徒・保護者が学校と対立する場面において、スクールロイヤーが学校側を強く支えてしまい、事実の解明に否定的影響を与えることも危惧される。 もし学校での事件や事故について調査委員会が立ち上げられる場合には、スクールロイヤーの言動も調査対象となり検証されるべきである。 学校側の一員であるスクールロイヤーは、中立性が求められる調査委員会の構成員となるべきではない』、日本では「利益相反」の観念が定着しておたず、まあまあと曖昧にされることが多いだけに、筆者の指摘は正論である。
・『「いじめは犯罪だからダメ」と教えるべきか  文部科学省が掲げるスクールロイヤーの役割には、「いじめが刑事処罰の対象となることを教育する」ことも含まれている。 「いじめは犯罪だからダメです」と教えるのは、電車内で走り回る子どもに「怒られるからやめなさい」と言うのと同じである。なぜダメなのかという実質的な理由を教えていない。 大切なのは、処罰されるぞと威嚇することではない。いじめが人の心身をどう傷つけるのか、なぜ一人ひとりが大切にされるべきかを教えるべきである。 それに、いじめ行為には暴行罪や脅迫罪などの犯罪に該当しない行為もある。「みんなで無視をする」とか「机の上に花瓶を置く」などの嫌がらせは、刑事処罰の対象には該当しない。「法に触れる犯罪だからダメ」と教えることは、法に触れなければ許容されるかのようであり適切ではない』、文科省も一体何を考えているのだろうか。お粗末だ。
・『教育の力が試されている  文部科学省は、犯罪に該当するいじめ行為を早期に警察に通報する方針を掲げている。 2013年5月の通達は、「冷やかし、からかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言う」という行為は警察へ通報するべき脅迫罪や名誉棄損罪に該当すると例示している。 すると、冷やかし行為があった場合、スクールロイヤーは「警察へ通報するべき」と判断するべきことになる。しかし、これは教育的な解決とは程遠い。教師が生徒に向き合って積み重ねてきたことが、警察への通報によって崩れてしまう。 教師や学校への正当な不満が背景にあって、問題行動が生じていることもある。問題行動の原因を除去する努力が積み重ねられていたかも知れない。そうした事情を切り捨て、ただ生徒一人を悪者にして警察へ通報することは教育の場に相応しくない。 警察に通報されると、生徒は被疑者として扱われ、犯罪捜査として取り調べがおこなわれる。刑事政策的に処遇を決定する裁判手続が進むと、学校側が生徒に対して教育的に接する機会は失われてしまう。 そんな扱いを受けた生徒にとって、学校は再び戻って来れる場所、戻りたい場所になるだろうか。 このように、スクールロイヤーによって教育的配慮のない法律判断が下される危険性は否定できない。 本稿に対しては、実際にスクールロイヤーとして真摯に奮闘している弁護士の苦労を理解していないという批判があるかも知れない。 しかし、少数かつ先進的な弁護士が関与している現状と、大勢の弁護士が関与して全国的に推進される将来状況とでは、危惧される問題とその規模は異なる。 多数の非専門家が教育に関わることによって児童生徒に否定的影響が与えられる事態は避けるべきである。 スクールロイヤー制度に対しては、教育界からも法曹界からも賛否が積極的に議論されるべきである。今後の議論に期待したい』、いじめ問題がこれだけ深刻化しているのに、文科省がこの問題を表面的にしか捉えてないのに驚かされる。スクールロイヤー制度に関する今後の議論の盛り上がりに期待したい。

次に、立命館大学教授・えん罪救済センター代表の稲葉 光行氏が9月6日付け現代ビジネスに寄稿した「日本版司法取引でえん罪は増える?不適切な法科学が用いられる危険性 制度開始から3ヵ月、3つの課題がある」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56780
・『今年6月1日に、日本版の司法取引制度・・・の運用が開始された。7月にはすでに適用事例が生まれている。 この制度は、伝統的に米国で行われている、自らの犯罪を供述することで刑の減免を受ける「自己負罪型」ではなく、共犯者などの犯行に関する情報を提供すれば、その見返りに検察官が求刑を軽減したり、起訴を見送ったりすることなどが可能となる「捜査・訴追協力型」の司法取引を認めるものである。対象は組織犯罪や経済事件に限られている・・・。 この制度に関しては、衆議院法務委員会での審議も公開され、新聞・テレビ等で多数の報道がなされ、またネット上でもさまざまな議論が行われている。そこでは、虚偽の情報によって無実の第三者が巻き込まれ、新たなえん罪が生まれる危険性を危惧するものもある。逆に、弁護人が関与し、合意書が作成され、虚偽供述への処罰規定もあることから、そうはならないという主張もある。 筆者は司法の専門家ではなく技術畑の人間であるが、いくつかのえん罪事件の調査に関わり、「えん罪救済センター」代表としてえん罪を訴える方々からの声に触れてきた。また米国や台湾のイノセンス・プロジェクトを通じて、海外の司法制度改革の情報を得てきた。その経験・知識で考えれば、現在の日本の司法制度・文化が持つ、1)えん罪防止にむけた議論の場の欠如、2)証拠よりも自白を重視する取り調べ、3)不適切な法科学が用いられる危険性、という課題に対して十分な対策が取られない限り、日本版司法取引の導入によって新たなえん罪が増える可能性は十分にあると考えている。 以下では、日本版司法取引とえん罪と可能性について、この3つの課題から、筆者なりの考えを述べてみたい』、興味深そうだ。
・『えん罪防止にむけた議論の場の欠如  米国や台湾では、DNAの再鑑定を求める権利が法律で保障されるなど、えん罪を繰り返さないための司法改革が進んでいる。その司法改革の原動力としてイノセンス・プロジェクトという活動が大きな影響力を持っている。イノセンス・プロジェクトは、DNA鑑定などの科学的証拠を元に、えん罪原因の究明、再検証やえん罪被害者の支援を無償で行う団体である。 1992年に、弁護士のB・シェックとP・ニューフェルドによってニューヨークに設立された。現在は全米の全州に同様のプロジェクトが設立されている。同プロジェクトのホームページによれば、米国では、DNA鑑定によって358人のえん罪が明らかにされた。そのうちの20人は死刑判決を受けた人、さらにDNA鑑定で155人の真犯人が見つかっている。 また、同プロジェクトのホームページでは、えん罪の原因として、動機付けられた情報提供者(つまり司法取引)、不適切な弁護、間違った法科学、虚偽自白、目撃証言などがあると紹介されている。プロジェクトの協力者B.ギャレット教授によれば、DNA検査で覆された有罪判決の15%は、司法取引による証言が原因である。 イノセンス・プロジェクトは現在、カナダ、英国、豪州、台湾などに広がっており、それらの連携組織のイノセンス・ネットワークという枠組みもある。 毎年開催される大会では、弁護士、検察官、裁判官、えん罪被害者、警察関係者などが集まり、立場を超えてえん罪防止にむけた司法のあり方について議論が行われている。 日本でも2016年4月に、筆者らが発起人となり、日本版イノセンス・プロジェクト「えん罪救済センター」が設立された。 現在、司法実務家、法科学者、法学者、心理学者、情報科学者など約30名の有志が集まり、全国から届く個別の相談について検討している。これまでに寄せられた相談は280件を超える。 残念ながら日本では、米国や台湾のように、えん罪原因の究明や司法改革について、法曹三者、えん罪被害者、警察関係者などが一同に介して議論する場が持たれる段階には至っていない。 私は学会で裁判官や検察官にお会いした際、日本でそのような場を持つ可能性について意見を伺うが、いつも「まだ難しい」という返事をいただく。 えん罪の再発防止にむけて、立場を超えてオープンに議論をする場がない日本で、えん罪原因の1つになりうる司法取引が導入されることには危惧を感じざるを得ない』、その通りだ。アメリカで「DNA検査で覆された有罪判決の15%は、司法取引による証言が原因」との指摘でその割合が高いのには驚かされた。
・『証拠よりも自白・供述を重視する取り調べ  司法取引に直接関わる事件ではないが、筆者が日本の刑事司法に疑問を持ち、えん罪救済センター設立を呼びかける契機となった事件の1つが、13人が公職選挙法違反に問われた「志布志事件」である。 筆者は、コンピュータで文書を分析する研究に取り組んでおり、同事件で膨大な取調べ調書があると聞いたことから、それらの分析を考えた。そして心理学者らとの現地調査に参加し元被疑者の方々にお会いした。 そこで伺った話は、技術屋としては驚く話ばかりであった。客観的証拠がないにもかかわらず、捜査側が被疑者に対して数ヵ月から1年に渡って、自分や他人の罪に関する虚偽の供述をするよう強制・誘導し続けた。 ある男性は連日の取調べに耐えられず自殺未遂を図った。そして救助した人に「取調べに耐えられない」と語ったが、供述調書では「悪いことをしたので死んでお詫びしようと思った」と記載された。 他の男性は、自分や他人の犯行について書かれた調書を読んで聞かされ、取調官に「自分の話と違う」と伝えたところ、「調書はそういうものだ」と言われた。客観的な証拠がなくても自白・供述を引き出そうとする取り調べに唖然とするばかりであった。 このような取り調べの特徴について、心理学者の浜田寿美男教授は、日本の取り調べが「謝罪追求型」であることに原因があるとする。 捜査官は被疑者を前にして、罪を反省させることが使命と考え、反省と自白・供述があるまで取り調べを止めない。その結果、日本の勾留期間が先進国の中で突出して長くなり、それに耐えられない被疑者は虚偽の供述をする。そして裁判では、自白や供述しかなくても有罪判決が下される場合がある。 いくつかの事件では、証拠を知っている取調官が、被疑者に証拠と合致する自白・供述を強要したという話も聞く。科学的な視点からすれば、全く本末転倒のことが行われている可能性がある。 このような日本の取り調べで、第三者に対する虚偽の供述が提供され、無実の被疑者が謝罪追求型の取り調べを受けたら、そこで新たな虚偽自白が生まれ、それが根拠となって有罪判決が出される可能性はある。 供述・自白ではなく、客観的証拠に根ざした捜査や判断をする司法文化が育たない限り、日本版司法取引が新たなえん罪を生み出す可能性を排除できないと考えている』、「志布志事件」は冤罪の代表例として有名だが、改めて読んでみると、司法当局の恐ろしさに慄然とする。「証拠よりも自白・供述を重視する取り調べ」の伝統の下での日本版司法取引の導入には問題があり過ぎる。
・『不適切な法科学が用いられる危険性  筆者は別の事件の検証に関わり、科学者であっても正しい科学的な手続きを貫くことが難しい場合があることを知った。 それは「鹿児島・強姦事件」などと呼ばれる事件である。その事件では、17歳の少女が20歳の男性に暴行されたと訴えた。 科捜研のDNA鑑定で「体液は判別不能」とされたが、男性の犯行を否定できないという判定がなされ、第1審では4年の実刑判決が下された。 控訴審での法医学者のDNA再鑑定では、科捜研と同じ手法でありながら第三者のDNAが出てきた。その結果元被告には無罪が言い渡されたが、裁判官は判決文で、証拠に対する不適切な管理や鑑定をした科捜研・検察の姿勢を強く批判した。 イノセンス・プロジェクトの協力者S.カシン教授は、人間が持つバイアスが法科学の場でも働く可能性を指摘する。彼はこれを「フォレンジック確証バイアス」と名付けた。 鑑定人が被疑者に有罪心証を持てば、それが鑑定結果に影響を与える。例えば鹿児島の事件では、少女が勇気を持って強姦被害を訴え、容疑者を特定したことで、その男性が犯人だというバイアスを捜査側・鑑定側が持った可能性が高い。 そして少女の勇気に報いることが使命と考え、結果として間違った形で法科学が使われた可能性がある。 心理的なバイアスを完全に排除するのは不可能であり、それによって何らかのミスをしてしまうことは避けられない。しかし人命や人生に関わる判断では、バイアスを可能な限り防ぐ対策が取られるべきである。 この深刻さは、無実の男性が20歳からの貴重な数年間を奪われてしまっただけでなく、法科学が間違って使われた原因が十分に究明されず、それに対する根本的な対策も取られていないことである。 フォレンジック確証バイアスに対し十分な対策が取られてない現状では、司法取引から被疑者が作り出され、間違った形で法科学が使われたら、無実の人間が有罪とされていく可能性は十分にある』、「鹿児島・強姦事件」での誤った科捜研のDNA鑑定には、どのような責任・処分が行われたのだろう。おそらく、何らお咎めなしだったのだろう。フォレンジック確証バイアスとは、確かにありそうな話だ。
・『同じ間違いを繰り返さない司法へ  本稿では、米国や台湾のイノセンス・プロジェクトの活動と、筆者が関わった2つの事件を取り上げ、日本の司法文化の課題を論じてきた。 そしてそれらの課題を抱えたままの日本の司法では、司法取引でえん罪が生まれる可能性が十分にあることを指摘した。 結局、司法取引という制度が持つ問題よりも、日本の司法文化自体が内包する課題によって、新たなえん罪が起きる可能性があると考えている。 また本稿では、バイアスなどによって起きる間違いを完全に防ぐことはできないとしても、間違いが起きたらそれを検証し、少なくとも同じ間違いをしない対策を取るという技術屋の発想を、司法に取り入れることの必要性を訴えたつもりである。それによって、えん罪・誤審・誤判を減らしていくことは可能だと考える。 筆者はよく飛行機事故のたとえを使う。飛行機事故が起きたら、その原因が徹底的に究明され、少なくとも同じ原因で事故が起きないよう対策が取られる。そのような技術屋的な発想が、日本の司法にも根付いていくことを期待している。 そして、イノセンス・プロジェクトをモデルとしたえん罪救済センターの活動が、日本の司法改革におけるそのような議論の方向性にはずみをつけるきっかけとなれば幸いである』、冤罪事件があった場合には、第三者委員会での検証を義務付けたらどうだろうか。

第三に、9月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した『特捜投資家』の著者・永瀬隼介氏と編集者・加藤晴之氏の対談「検察も警察も権力に無力。カネの力で悪を討つしかない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/179337
・「カネのない人間は一生、他人の奴隷になるしかない」──気がつけば、忖度独裁国家と化していた日本。そこには、権力に食い込んで甘い汁を吸うカネの亡者があふれている。そんなヤツらに鉄槌を下す痛快無比の投資エンターテインメント小説が誕生! その名も『特捜投資家』。そこで著者の永瀬隼介氏に同作の読みどころ、執筆秘話などを語って頂きました。話を聞くのは『特捜投資家』の編集者・・・加藤晴之氏。第3回は『特捜投資家』の読みどころと、独特のタイトルに込めた狙いを語っていただきました』、面白そうだ。
・『徹底的に取材をして小説に昇華させる(加藤晴之(以下、加藤) 僕が『特捜投資家』で永瀬さんに挑戦してほしかったのは、新しい経済小説。つまり、新しいヒーローたちが、これまでにない悪と戦う物語です。これまでにない、というのは小説の世界のことで、現実には、存在しているけれど、ジャーナリズムが追い切れていない、書いていない悪。エンターテインメントな部分はしっかりキープしつつ、ノンフィクション・ノベル的な作品でもあるという感じ。もともと週刊誌記者として事件を取材して書くのが本能のようになっている永瀬さんなら必ずできると思ったんです。いま現実に起きている問題をテーマに据えて、丁寧に取材してフィクションとして昇華させるような。 永瀬隼介(以下、永瀬) その点はしっかり意識しました。というか僕にはそれしかできないわけです。現実に起きている問題としては、権力への忖度や追従、超金融緩和によるカネ余り、アラフォー・クライシス、広がる格差問題、切り捨てられる社会的弱者、既存メディアの凋落などを作中に盛り込んでいます。 加藤 そうした問題を描くため、相当な取材をされましたよね。 永瀬 そうですね。いまってネットで何でも分かるような気がするじゃないですか。でも、ネットでは絶対に分からないことは確実にあります。実際に歩き回って人に会って話をすることで見えてくるものがある。その点も本作で伝えたかったことなので、作中でも主人公の一人である有馬浩介を取材で飛び回らせました。 加藤 舞台となった町もかなり歩かれたとか。 永瀬 すべて歩きましたよ。板橋区大山、錦糸町、小松川、越中島、六本木、南青山など。それをやると登場人物たちが動き始めるんです。 加藤 事件は足でかせぐ、ですね。 永瀬 作品の冒頭でIT長者たちのパーティのシーンが出てきますが、その描写も取材でお会いした投資ファンドの方たちの話を参考にしています。アロハを着たような若い起業家たちから、普通に数十億円のマネーの話がポンポン出てくるとか』、作品のPRの記事であるとはいえ、読んでみたくなるようなイントロだ。
・『EVははたしてバブルなのか?  永瀬 あと今回の作品では、EVつまり電気自動車を重要な素材として扱っています。EVについてもかなり取材をしたんですが、その印象でいうと、日本のメーカーは本音ではあまりEVに向かいたくない感じです。やはりガソリン車のサプライチェーンを崩したくないんでしょう。先日、深センに行ったんですが、中国はガソリン車では絶対に自動車先進国にかなわないから、国家をあげてEVに取り組んでいます。それは凄いですよ。世界的にもいまや明らかにEVシフトですし。 加藤 僕は以前『トヨトミの野望』という小説を担当したことがあります。日本の某自動車会社がモデルだろうと言われるんですが(笑)、まぁそれはよいとして、その作品でも大きなテーマなのがEVシフトです。それと自動運転。これらの取り組みに日本が出遅れたことを、メディアはあまり大きく報じてない気がする。『トヨトミの野望』のモデルになったといわれる会社などへの忖度があるのかな(笑)。 永瀬 それゆえ、世界の流れが見えにくくなっている面があるかもしれませんね。 加藤 ただ、EVの寵児とも言えるテスラが最近かなり大変な状況じゃないですか。テスラは新型EV「モデル3」を世界中に普及させるとぶち上げ、40万台も予約を取ったものの量産体制の構築にものすごく苦しんでいます。赤字続きで市場の声も厳しいなか、突如イーロン・マスクが非上場化を言い出してすぐに撤回するとか、迷走してますよね。バッテリーの性能もボトルネックです。一方で、ハイブリッド車の性能が向上しているし、マツダが高性能の次世代ガソリンエンジンを開発するといった状況もある。だから本当にEVが広がるのか、実体のないバブルなのかまだまだわからないような。 永瀬 そうですね。僕も取材するなかでバブル的な部分は感じていて、そのあたりを作品で書いたんですが、小説としてはかなり面白くなったと自負しています。 加藤 EV開発をめぐって登場するベンチャー企業や人物には、存在感がありますよね。超異次元金融緩和の日銀が株をいっぱい買うので、株高だし、円安。大企業にカネがだぶつき、そのカネが、いろんなあやしげなベンチャーに流れ込んでいる。たとえば先日、東大発のバイオベンチャーの株が大暴落しましたが、このあたりの新聞やテレビではわからない日本の裏側の実態に小説的な手法で斬り込んでいます。 永瀬 ベンチャー企業についてもいろいろ調べました。かつての暴力団・稲川会の石井会長の株買い占め事件などのように「反社」との癒着が問題になることもあるようです。いまはさすがにベンチャーの上場に当たっては審査が厳しいのですが、問題は、上場した後。上場さえすればこっちのもので、案外ザルなんだそうですね。 加藤 天下の東芝が、あんな粉飾決算していたのに司直の手が入らない国ですから(笑)。 永瀬 ベンチャー投資が年間18兆円と盛んなアメリカでも、まるで小説みたいな詐欺がありました。作中でも言及した「セラノス事件」です。血液1滴で何百種類もの疾病検査ができると謳い、シリコンバレーでユニコーン(評価額10億ドル以上で未上場の新興・ベンチャー企業)となった医療ベンチャー「セラノス」。同社の創業者であるエリザベス・ホームズは、スタンフォード大学を中退した美人起業家で、一流雑誌の表紙を飾り、テレビで特集番組が組まれ、莫大な投資を呼び込んで、世界最年少のビリオネアになりました。しかしそれもつかの間、米証券取引委員会(SEC)が、詐欺と判断して一巻の終わりでした。 加藤 リーマンショックの原因となった、金融工学を駆使したサブプライムローンを組み込んだ金融商品なんてのも、いまから考えたら詐欺みたいなもんです(笑)。 永瀬 それから、この作品にはミステリーの要素も盛り込みました。その点もぜひ楽しんでいただきたいですね。最初は単なる企業調査だったはずが、最終的には巨大な闇を暴くことになっていく。フリージャーナリストの有馬が必死に取材するうち、徐々に真相に迫っていくわけです。 加藤 いったいストーリーがどこに連れて行ってくれるのか、ワクワクしながら読ませるのはすごい。やっぱり謎解きがあるというのは小説にとって非常に魅力的ですよね』、確かに、上場後のベンチャー企業のなかには反社会的勢力の影がちらつくところもあるようだ。
・『タイトルに込めた思い  永瀬 今回の作品ではタイトルにも非常に苦労しました。 加藤 決めるまでに100本ノックのようなミーティングもやりましたね。永瀬さん、ダイヤモンド社で担当していただいている今泉さん、僕の3人それぞれ何十本も案を持ち寄って。でも、それらの案っていま見るとかなり面白いですよ(笑)。 永瀬 いや苦労しました。でも、『特捜投資家』いいタイトルでしょ。不正企業を取り締まるべき地検特捜部や警察捜査二課は、悲しいかな開店休業の状態。本作では、「その当局に替わりて不義を討つ」のが強欲な投資家なんですが、その手法は、読んでのお楽しみということで。 加藤 今年6月に大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞(旧・大宅壮一ノンフィクション賞)の授賞パーティに出席したんですが、そのとき受賞者である森功さんと清武英利さんが、奇しくも同じようなことをスピーチでおっしゃってました。森さんの受賞作は『悪だくみ──「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』、清武さんは『石つぶて──警視庁 二課刑事の残したもの』で、いずれも公権力の闇に迫った力作です。おふたりは異口同音に、一国の首相の疑惑や官僚の不正、大企業犯罪に挑むべき捜査機関が今やほとんど機能していない、と述べられていました。 永瀬 なるほど。 加藤 かつて、厚生省(現・厚労省)のトップ、厚生次官の汚職を摘発した警視庁捜査二課は、年々、汚職事件(官僚や政治家の贈収賄事件)の検挙数が激減していき、安倍政権下の2014年には年間摘発ゼロになったと』、「一国の首相の疑惑や官僚の不正、大企業犯罪に挑むべき捜査機関が今やほとんど機能していない」というのはその通りだ。
・『永瀬 東京地検特捜部も東京医大の裏口入学を追ってはいるものの、本当に追及すべきは森友・加計問題とか東芝粉飾決算のような事案でしょう。そうした重要な事件にメスを入れないのは政権への忖度を感じますよね。そもそも裏口入学の件だって、政権に弓を引いた文科省前事務次官への意趣返しと見る向きも多いですし。 加藤 モリカケ問題に加えて、安倍氏と親しい記者にレイプされたと女性が被害を訴え、刑事告訴したのに検察が不起訴にしました。海外メディアは最近、安倍政権のことを、「クローニズム(縁故主義)」と言って批判しています。 永瀬 この小説は、地検特捜や警察捜査二課といった捜査機関もメディアもメスを入れない不正に、投資家たちが立ち向かう話ですからね。『特捜投資家』というタイトルは、悪いヤツらをボコボコにできるのはもはや、カネの力しかない、という強烈な皮肉でもあります。 加藤 小説のなかでも政権とクローニーな関係にある企業の描写が出てきます。戦後、焦土から立ち上がった起業家たちは、政治家や官僚にすり寄ることはしなかった。ソニーやホンダが自らの努力と技術によって、あるいはクロネコヤマトの小倉昌男さんにいたっては、国と戦って、宅配便という新たなサービスを開拓した。政治家・官僚は自分たちの権益のため、優れた新興企業に難癖にも等しい規制を二重、三重にかけて足を引っ張ってきた勢力です。世界に羽ばたこうとする勇敢な起業家を後ろから鉄砲で撃つようなことを散々やってきた。そういうことを知っている、日々真面目に働いている人たちからすれば、政治家や役人にすり寄り甘い汁を吸っているヤツらなんて、ありえません。そういう意味では、読者の方にしっかり溜飲を下げていただける作品になりましたね。 永瀬 ありがとうございます。しかし、加藤さんも『週刊現代』や『フライデー』の編集長をされていて、世の不正を暴くスクープを数多く放っていたわけですけど、それは義憤に駆られてやってたんですか? 加藤 いやいや僕は週刊誌が売れればいいと思ってただけで(笑)。 永瀬 え? だとすれば、まさに強欲な「特捜編集長」(笑)。 加藤 ……(苦笑)。 永瀬 ともあれ、タイトルも内容も充実した面白い作品になったと自負しています。是非一人でも多くの方に読んでいただきたいと思います』、「捜査機関もメディアもメスを入れない不正に、投資家たちが立ち向かう」とは夢物語的な気もするが、私も是非読んでみたくなった。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン 永瀬隼介 現代ビジネス 司法の歪み 大前 治 (その10)(弁護士が学校を支配する…? 「スクールロイヤー」の危うさ、日本版司法取引でえん罪は増える?不適切な法科学が用いられる危険性、検察も警察も権力に無力 カネの力で悪を討つしかない) 「弁護士が学校を支配する…? 「スクールロイヤー」の危うさ 彼らがいじめ問題に関わることへの不安」 「なんでも解決できる」という弁護士の傲慢 弁護士は教育については素人である。そのことへの自覚と謙虚さが必要 どんな弁護士でもスクールロイヤーになれるのか 「弁護士の判断」が尊重されすぎる危険 弁護士が関わることで隠される事実 「いじめは犯罪だからダメ」と教えるべきか 教育の力が試されている 稲葉 光行 「日本版司法取引でえん罪は増える?不適切な法科学が用いられる危険性 制度開始から3ヵ月、3つの課題がある」 「自己負罪型」ではなく 「捜査・訴追協力型」の司法取引を認める 対象は組織犯罪や経済事件に限られている えん罪防止にむけた議論の場の欠如 DNA検査で覆された有罪判決の15%は、司法取引による証言が原因 証拠よりも自白・供述を重視する取り調べ 「志布志事件」 日本の取り調べが「謝罪追求型」であることに原因 不適切な法科学が用いられる危険性 「鹿児島・強姦事件」 控訴審での法医学者のDNA再鑑定では、科捜研と同じ手法でありながら第三者のDNAが出てきた。その結果元被告には無罪が言い渡された 「フォレンジック確証バイアス」 同じ間違いを繰り返さない司法へ 加藤晴之 対談「検察も警察も権力に無力。カネの力で悪を討つしかない」 忖度独裁国家と化していた日本。そこには、権力に食い込んで甘い汁を吸うカネの亡者があふれている EVははたしてバブルなのか? 大企業にカネがだぶつき、そのカネが、いろんなあやしげなベンチャーに流れ込んでいる 問題は、上場した後。上場さえすればこっちのもので、案外ザルなんだそうですね 医療ベンチャー「セラノス」 米証券取引委員会(SEC)が、詐欺と判断して一巻の終わり 一国の首相の疑惑や官僚の不正、大企業犯罪に挑むべき捜査機関が今やほとんど機能していない一国の首相の疑惑や官僚の不正、大企業犯罪に挑むべき捜査機関が今やほとんど機能していない 警視庁捜査二課は 安倍政権下の2014年には年間摘発ゼロになったと モリカケ問題に加えて、安倍氏と親しい記者にレイプされたと女性が被害を訴え、刑事告訴したのに検察が不起訴に 海外メディアは最近、安倍政権のことを、「クローニズム(縁故主義)」と言って批判
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自衛隊が抱える問題(防衛問題)(その8)(防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中…、超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国、「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ) [国内政治]

自衛隊が抱える問題(防衛問題)については、4月15日に取上げた。今日は、(その8)(防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中…、超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国、「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ)である。

先ずは、東京新聞論説兼編集委員の半田 滋氏が7月19日付け現代ビジネスに寄稿した「防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中… 変わりゆく「国防」と若者の心」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56590
・『独自入手した防衛省の内部資料がある。 将来の幹部自衛官を養成する防衛大学校の学生や卒業生の退職状況をまとめたもので、(1)危険を伴うイラク派遣の最中や、(2)実質的に軍隊としての活動を規定した安全保障関連法の制定時、大量に退学したり、任官後に早期退職したりしていることを示す興味深いデータである。 資料を読み解く前に、防衛大学校とは何か、知る必要があるだろう・・・入校した学生は特別国家公務員となり、全寮制で被服と食事が提供されるほか、毎月11万4300円の学生手当と、年2回で合計約37万7190円の期末手当が支給される。学費や生活費が足りずアルバイトする一般の学生が多い中、勉学環境は恵まれている。 卒業後、任官と同時に曹長となり、幹部候補生学校を経て、いきなり幹部の3尉(少尉)に任命される。その後も昇進は早く、大半の卒業生は30代で佐官(3佐以上=少佐以上)となり、早ければ40代後半で将官(将補以上=准将以上)に抜擢される。 陸海空自衛隊ごとに設置されている幹部候補生学校には、防衛大学校の卒業生とほぼ同数の一般大の卒業生も入校して幹部自衛官となるが、防衛大学校の卒業生が陸海空各幕僚長に就き始めてからは、同ポストは全て防衛大学校卒で占められ、一般大卒はひとりもいない。まさに自衛隊のエリート養成校なのだ。 そのエリート養成校に異変が起きたのは、2003年だった。この年から7年連続して、超特急の出世街道から自らの意志で外れていく学生や卒業生が続出したのである。 防衛省は防衛大学校の在校中と卒業後の早期退職状況をまとめており、入校者数(A)、退校者数(B)、卒業者数(C)、任官辞退者数(D)、早期退職者数(E、幹部候補生学校非入校者および同校入校後、8月末までの早期退校者)ごとに集計している。 重視しているのは「入校しながら、自衛隊に定着しなかった学生の人数」だ。B+D+Eの合計をF(筆者注:「退職者数」という)として入校者数のAで割り、その数値を一覧表にまとめている。 入校者数は年度によって増減しており、毎年450人から550人といったところ。うち女性が40人前後と約1割を占める。 「退職者数」は毎年100人前後で推移するが、入校者の約2割が辞めていることにまず驚かされる。 問題の03年以降をみると、前年02年の「退職者数」は99人だったのに対し、03年は139人に急増。04年はさらに増えて152人、05年は最多の163人、06年157人、07年139人、08年142人、09年126人となっている。 03年から「退職者数」が急増し、高止まりした理由は容易に推測できる。イラク戦争への自衛隊派遣が影響したのではないだろうか。 イラク戦争は「フセイン政権が大量破壊兵器を隠し持っている」とウソをついた米国が始めた。米政府から「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(陸上自衛隊を派遣せよ)」と求められた小泉純一郎政権は03年7月、自衛隊をイラクに派遣するイラク特別措置法を制定する。 陸上自衛隊600人のイラク派遣は、04年1月から06年7月まで2年半続いた。小泉首相が「非戦闘地域」への派遣を約束したにもかかわらず、04年4月から自衛隊宿営地へ向けたロケット弾攻撃が始まり、撤収するまでに13回22発のロケット弾攻撃にさらされた。仕掛け爆弾により、車両が破損する自衛隊を狙ったテロ攻撃も起きた。 陸上自衛隊が撤収した後、クウェートに残った航空自衛隊は、06年9月からC130輸送機で武装した米兵の空輸を開始。米軍と武装勢力が戦闘を続けるイラクの首都バグダット上空に到達すると、毎回のように携帯ミサイルに狙われていることを示す警報音が機内に鳴り響き、C130はその都度、アクロバット飛行のような退避行動を求められた。 この空輸活動は08年4月、名古屋高裁から「米軍の武力行使と一体化しており、憲法違反」との判決を受けている。航空自衛隊は08年12月、クウェートから撤収。翌09年8月にはイラク特措法が失効し、自衛隊がイラクへ派遣されることはなくなった。 すると、どうだろう。イラク派遣の可能性が消えた10年、「退職者数」は92人とイラク戦争が始まる前の02年の水準に戻ったのである』、給料までもらってきながら、もともと入校者数に占める「退職者数」の割合が約2割と高水準なのに驚かされる。さらに、戦争が身近になると退職者割合が上昇、遠のくと低下するとは、ずいぶんドライなものだ。
・『2014年に起きた2度目の異変 「退職者数」がもっとも多かった05年、入校者数に占める「退職者数」の割合は38・4%にのぼり、ほぼ5人に2人が自衛隊を忌避したことになる。同年、女性は入校した34人のうち19人、割合にして実に55・0%が退職しており、2人に1人も自衛隊に定着しなかった。 幹部自衛官は、己の生命を危険にさらすにとどまらず、部下に命懸けの任務を命じなければならないことがある。 イラク特措法が制定され、施行されていた期間は、まさに自己と部下の生命を危険にさらす可能性が高い時期にあたる。過酷な任務を伴うようになった「自衛隊の変化」を目の当たりにして嫌気が差し、高い「退職者数」となったのではないだろうか。 次に異変が起きるのは14年以降である。14年の「退職者数」は143人と前年13年の106人から一気に増え、15年157人、16年141人、17年131人となっている。 こちらは第二次安倍政権下での「退職者数」の高止まりである点に注目しなければならない。 「退職者数」が増え始めた14年は、歴代政権が違憲としてきた集団的自衛権行使について、一部合憲とする閣議決定があり、海外における武力行使が解禁された。15年9月には集団的自衛権行使や他国軍への後方支援拡大を含む安全保障関連法(安保法制)が制定され、16年3月から施行された。 そして16年12月には、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊350人に対し、安保法制の適用第1号として武器使用を伴う「駆け付け警護」「宿営地の共同防護」が命じられた。17年には朝鮮半島情勢をめぐり、同法制による米軍防護が開始された。 このように安倍政権下で始まった「自衛隊の軍隊化」が、「退職者数」の増加につながったと考えられないだろうか。 イラク特措法が4年で消滅する期限付きの法律だったのに対し、安保法制は恒久法である。今後、防衛省はよほどの方策を打ち出さない限り、防衛大学校で起きている「自衛隊忌避」の流れをとめるのは難しいだろう』、15年以降の「退職者数」の高止まりが今後どうなるかは注目点だ。
・『憲法に自衛隊が明記されれば…  これほど「退職者数」が多いにもかかわらず、なぜ若者は防衛大学校を目指すのだろうか。 防衛省の出先機関である自衛隊茨城地方協力本部のホームページには、茨城県出身で防衛大学校へ入った1年生10人が紹介されている。志望動機に「自衛隊への憧れ」を挙げた学生がいるほか、「東日本大震災の際、自衛隊の活動を見て感銘を受けたため」といった災害救援を動機とした学生もいる。 ただ、彼らが志望動機を「自衛隊への憧れ」と答えたとしても、踏み込んで聞かなければ、海外で生命を落とす危険性や米国のための活動について、どれほど理解して答えているのかはわからない。防衛大学校に夢を抱いて入校する若者がやがて失望し、去っていく現実がある以上、「自衛隊をめぐる政策の右傾化についていけない」という若者が多いと考えるほかない。 9月に行われる自民党総裁選で安倍晋三首相の3選が実現すれば、憲法に自衛隊を書き込む憲法改正をめぐる国民投票の実施が濃厚になる。今でも「自衛隊は合憲」と明言する安倍首相が、あえて憲法改正にこだわるのは「自衛隊という名の軍隊を認めること」(立憲民主党の枝野幸男党首)にあるのではないだろうか。 憲法への自衛隊明記について、自衛隊のトップに立つ河野克俊統合幕僚長が「ありがたい」と述べたことから「自衛隊は歓迎ムード」ととらえる向きがある。安倍首相の思惑通りに憲法改正が実現すれば、自衛隊の任務は日本防衛にとどまらず、海外での危険な活動にまで広がるのは必至だ。 さらに、自衛隊が憲法に明記されたとすれば、自衛隊は絶大な権限を持つことになる・・・堂々と軍事力は強化され、それに伴う予算の増加が始まるだろう。そうなれば、防衛大学校に入校したり、一般隊員として入隊したりする若者の質も変化するかもしれない。 災害救援やPKOといった「人助け」よりも、武力行使に関心を示す若者が自衛隊を目指すとすれば、政策が右傾化するたびに増える「退職者数」の問題は解消するだろう。 それでも人材が不足するなら、徴兵制が現実味を帯びてくる。日本が平和国家の看板を返上しなければならない日がくるのかもしれない』、憲法への自衛隊の明記で退職者数の問題が解消するとは必ずしも言えないと思うが、場合によって「徴兵制が現実味を帯びてくる」とは穏やかではない。

次に、戦争平和社会学者の 北村 淳氏が8月2日付けJBPressに寄稿した「超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53724
・『日本国防当局がアメリカからの輸入を決定していた地上配備型弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の本体価格が、防衛省が見積もっていた1セットあたり800億円から1340億円へと跳ね上がった。約1.7倍の増加である。 価格が跳ね上がるのは、秋田県と山口県に配備することになるであろうイージス・アショアに、最新のレーダーシステム「LMSSR」(Lockheed Martin Solid State Radar)を搭載するためである。さらに、それぞれのイージス・アショアを設置するための施設取得建造費や教育訓練費などを加えると、防衛省が手に入れようとしている2セットで5000億円ほどになるものと考えることができる』、恐らく当初からLMSSR導入を決めていたのに、当初の価格を低目に見せようとした小細工だとすれば、ずいぶん姑息なことをするものだ。
・『540億円で飛躍的に広がる監視範囲 1セットにつき1340億円・・・を支払い、高性能LMSSRを採用することで、確かにより広範囲を監視できるようになる。 たとえば日本政府が予定しているように山口県と秋田県の日本海沿岸地域にイージス・アショアを設置した場合、朝鮮半島全域だけでなく、ロシアの沿海州、中国の遼寧省東部、吉林省南東部、黒竜江省南部、などの監視が(理論上は)可能となる。そのため、北朝鮮の弾道ミサイルだけでなく中国の弾道ミサイルに対してもイージス・アショアで対抗することが可能となる。 北朝鮮でも中国でも、日本攻撃用弾道ミサイルは地上移動式発射装置(TEL)から発射される。動き回るTELの補足は困難だが、自衛隊がLMSSRを採用すると北朝鮮全域がLMSSRのカバー圏内にすっぽり収まってしまうため、イージス・アショアの対北朝鮮弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に高まることになる。 一方、中国人民解放軍ロケット軍が手にしている対日攻撃用弾道ミサイル東風21(DF-21)の射程圏は(搭載する弾頭によって変化するものの)1500~2200kmである。そのためLMSSR探知圏外から、日本側に発射状況を感知されることなく対日攻撃が可能だが、イージス・アショアのレーダー探知圏が600~1100km程度へと延長されれば、30秒程度でも早く対処することが可能になる。満州地方から発射された弾道ミサイルが日本列島に到達するのには10分前後であり、自衛隊が迎撃ミサイルを発射するための持ち時間は最大3~4分であるため、30秒の時間短縮は貴重である』、持ち時間は最大3~4分で30秒の時間短縮にどの程度の意味があるかは疑問もあるが、ここれはよしとしよう。
・『コストパフォーマンスは精査されているのか? こうして日本政府は、イージス・アショア2セット、そしてイージス駆逐艦も弾道ミサイル防衛用に改修したり、弾道ミサイル防衛用を新造したりして、合わせて8隻も保有することによって、北朝鮮や中国の弾道ミサイルに対抗しようとしている。  多数の自衛隊員、それに駆逐艦をはじめとする超高額防衛装備をつぎ込むことで、国防費は莫大な金額に達する。だが、国防当局自身はもとより、シビリアンコントロールの責務を担っている国会において、弾道ミサイル防衛にそれらの防衛アセットを惜しげもなく投入することのコストパフォーマンスが、果たして真剣に検討されているのであろうか?』、コストパフォーマンスを真剣に検討せよとの主張はもっともだ。
・『イージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退く米海軍 アメリカ海軍は、弾道ミサイル防衛能力を保持したイージス駆逐艦やイージス巡洋艦を日本海に展開させて、北朝鮮や中国からグアム方面や日本の米軍基地(そして日本)へ発射される弾道ミサイルを探知し、場合によっては撃破する任務を帯びている。 しかし、ちょうど1カ月前の本コラム(「日本周辺の弾道ミサイル防衛、米海軍の大きな負担に」)で紹介したように、アメリカ海軍はそうした任務がもはや「極めて大いなる負担」であると言い出した。そして、日本周辺だけでなくヨーロッパにおいても、軍艦ベースのイージス弾道ミサイル防衛を地上ベースの弾道ミサイル防衛に置き換えるべきであると主張している。 日本周辺を地上ベースの弾道ミサイル防衛システムで防衛する場合、日本列島にイージス・アショアを設置することになる。その場合、もちろん、アメリカ海軍がイージス・アショアを購入して、日本で土地を借り受けて設置して、日本周辺の弾道ミサイル防衛を行うわけではない。日本が、高価なイージス・アショアを購入して、北朝鮮や満州方面から発射され日本やグアムに飛来する弾道ミサイルに備えなければならなくなるのだ』、これでは米軍を肩代わりするだけだ。
・『アメリカにとっては「願ったり叶ったり」  このようにアメリカ側で、イージス艦による弾道ミサイル防衛を(日本が日本に設置する)イージス・アショアに切り替えるという話が持ち上がり、それに対応するように、防衛省がアメリカから調達することになっているイージス・アショアに最新鋭高性能レーダーシステムを搭載することが決定された。 日本周辺でのイージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退くアメリカにとっては、日本ができるだけ高性能なイージス・アショアを配備してくれればそれに越したことはない。 もちろん、2セットのLMSSRを装備した最強イージス・アショアの設置費用5000億円は日本国民が全額負担し、アメリカ企業(ロッキード・マーチン社)とアメリカ政府(4%の手数料収入がある)の懐が潤うことになる。日本政府の決断がアメリカにとってはまさに願ったり叶ったりということになるのは言うまでもない』、これだけ日本政府がアメリカの言いなりになっているのに、通商関係では手加減せずに責め立てられるのでは、全く筋が通らない。日米関係を抜本的に見直すべきだろう。

第三に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が9月13日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/179620
・『防衛省は8月31日、2018年度予算の概算要求を発表した。過去最大の5兆2986億円で、今年度当初予算に比べ「2.1%増」と報じられている。 だが実はこの概算要求には、沖縄の米軍のグアム等への移転など、米軍再編経費(推定約2200億円)が「事項要求」とだけ書かれ、金額は計上されていない。年末の予算編成で金額を入れることになる。 今年度当初予算は5兆1911億円にはそれが当然含まれているから、それと今回の概算要求を比べて伸び率を2.1%と言うのは非合理だ。今年度予算からも米軍再編関連経費を除いて比較すると7.2%という驚異的な伸び率になる。2015年度から今年度までの毎年度の伸び率はずっと0.8%だった』、見え透いた小細工にはあきれ果てる。
・『米国製兵器輸入が5倍増 日本の防衛産業は窮地に  特に米国の「有償軍事援助」(FMS)による新規契約が今年度より約70%増え、6917億円にもなることには愕然とせざるをえない。 2012年度は1372億円だったから、安倍政権の7年間で5倍になる。 前回の本コラム(8月9日付)「イージス・アショアが吹っかけられた『高い買い物』に終わる理由」でも書いたが、FMSは防衛省が米国防総省の「国防安全保障協力局」を通じて装備や部品などを発注する。 来年度予算の概算要求での装備購入費、艦艇建造、航空機購入費は合計約1兆2379億円だから、その56%程が米国に召し上げられると考えられる。 米国側は懸命に売り込みを策す一方、旧来の「援助してやる」姿勢は変わらず、代金は前払い。価格や納期などは米側の見積もりだから、米国は拘束されず後に高騰したり、部品の納入が何年も遅れるなど問題が続発してきた。 日本の防衛産業は各企業の事業のごく一部であることが多く、将来性が乏しいと見切って手を引く企業も続出している。日本による米国製装備の直接輸入が増大することは米国にとって一石二鳥だ。日本への武器輸出が拡大するだけでなく、日本は安全保障での米国依存をますます強め、他の面でも一層米国の意向に従わざるをえなくなるからだ。これが「同盟強化」の現実なのだ』、「米国側は懸命に売り込みを策す一方、旧来の「援助してやる」姿勢は変わらず」というほどにまで、日本は「属国」になってしまったとは腹立たしい限りだ。
・『来年度の目玉陸上イージス 防衛力の「抜本的向上」はウソ  今回、来年度の概算要求を押し上げた最大の費目は秋田、山口に配備する陸上イージス本体2基の2352億円だ。 これは初年度分で、将来の交換部品購入などの維持費、要員の米国による教育・訓練費などを含む総額は4664億円と発表されている。これには迎撃用ミサイル(1発約40億円)は含まれない。 1基当たりの定数は24発だから2基に48発だと1900億円以上になる。さらに一部の用地取得や整地・宿舎などの建設、周辺対策も入れれば、総経費は約7000億円に達しそうだ。 日本のミサイル防衛の最大の弱点はミサイル迎撃用のミサイルの弾数が極度に少ないことだ。 イージス艦の垂直発射機には90発(新型艦は96発)の各種ミサイルを入れられる。対潜水艦ミサイル、対空ミサイルを16発ずつ入れても、50発余のミサイル迎撃用ミサイルを搭載できる。だが実は8発しか積んでいない。 旧型のミサイルでも1発16億円だから多くは買えないのだ。相手が核付きと通常弾頭付きの弾道ミサイルをまぜて発射すれば、最初の8目標にしか対処できない。 地点防衛用の「PAC3」(射程20km、新型は30km)も同様だ。自走発射機には16発を積めるが4発しか弾道ミサイル迎撃用のミサイルを入れておらず、不発、故障に備えて1目標に2発ずつ発射するから、1両で2目標にしか対処できない。ミサイル防衛は形ばかり、気休めでしかない。 ミザイル防衛に関わってきた自衛隊の幹部たちに「陸上イージスに巨費を投じるよりは、弾数を増す方がまだしも合理的では」と私が言うと、ほぼ例外なく「おっしゃる通り」との反応がある。 だが、安倍政権は日本に輸入拡大を迫るトランプ政権の意向を呑み、2013年12月に決めた「防衛計画の大綱」(約10年を見通す)にも「中期防衛力整備計画」(5年間)にも入っていなかった陸上イージス配備を昨年12月に決めた。 本来自衛隊が全く望んでいなかった巨額の装備を、突然「政治主導」で押しつけるのだから、その必要性を説くには詭弁を弄さざるをえない。 8月に出た今年版の「防衛白書」の326ページの「解説」では、陸上イージス導入で「我が国を24時間・365日、切れ目なく守るための能力を抜本的に向上できる」と書いている。 323ページでは「北朝鮮はわが国のほぼ全域を射程に収めるノドン・ミサイルを数百発配備している」と脅威を強調している。 だが、仮に陸上イージスが将来、定数の24発の迎撃ミサイルを保有しても、北朝鮮が持つ弾道ミサイル数百発に対しては焼石に水だ。防衛能力の「抜本的向上」になるはずがない。明らかな誇大広告だ』、「本来自衛隊が全く望んでいなかった巨額の装備を、突然「政治主導」で押しつける」とは、よほどアメリカからの圧力が強かったのだろう。それを詭弁で説くとは、政治家の矜持も地に落ちたものだ。
・『イージス艦は近く8隻に陸上イージスは「不要」だ  また白書の「解説」は「現在のイージス艦では整備・補給で港に入るため隙間の期間が生じる。乗組員の勤務環境は極めて厳しい」として陸上イージス導入の必要を説いている。 たしかに現在、保有するイージス艦6隻のうち、ミサイル防衛用の迎撃ミサイルを搭載するのは4隻。艦艇の4分の1は定期整備にドック入りしているから、出動可能3隻のうち常に2隻を弾頭ミサイルの警戒配置に付け続けるのは無理があった。 だからこそ「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」ではイージス艦を8隻にすることを決めたのだ。 「あたご」「あしがら」の2隻は新型の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を運用するように改装され、7隻目のイージス艦「まや」は今年7月30日進水、2020年に就役予定だ。その2番艦は2021年に就役し、8隻態勢が完成する。 一方、陸上イージスの納期は当初の米側の話よりすでに2年遅れ「契約後6年」だから配備は2025年以降になる。 8隻態勢になれば出動可能の6隻のうち4隻は2交代でミサイル警戒配置に付き、日本列島全域を守れる。他の2隻はイージス艦の本来の任務である艦隊防空に向けられる、というのが海上幕僚監部、防衛省の元来の考えで、陸上イージスは不要だった。 防衛白書の解説ではイージス艦が近く8隻になりつつあることに言及せず「現在では苦しいから陸上イージスが必要」と主張するのは、いかにも作為的で、防衛省の信用を失墜させる。 一般の人々の防衛に関する知識の不足に乗じたこうしたまやかし説明が、陸上イージス配備予定地の地方自治体への回答書にも記載されている。これは公文書を尊重しない風潮の拡がりを示している』、まやかし説明を回答書に記載するような公文書を尊重しない風潮は、まさに民主主義の危機だ。
・『なぜ秋田と山口に配備なのか ハワイ、グアム防衛に理想的  「なぜ秋田と山口に配備するのか」は、陸上イージス導入に関する最大の疑問といえよう。 北朝鮮の弾道ミサイルは主としてその北部山岳地帯のトンネルに隠されているとみられ、首都圏に向けて発射されれば能登半島上空を経由する。近畿地方に向かえば隠岐島付近を通る。 弾道ミサイルに対しては、その真正面から迎撃するのが理想的だ。目標の角度が変わらないから命中率が高く、こちらに接近して来るから迎撃ミサイルのロケットの推力を無駄にせず、高い高度で撃破できるとされる。 従って、陸上イージスを導入するにしても、日本の防衛が目的なら能登半島と隠岐島に配備するのが合理的だ。 東京へ向かう弾道ミサイルを例えば秋田から迎撃することもできなくはない。レーダーが捉えた軌道から目標の未来位置を計算し、そこに迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」(射程2500km、射高1000km以上)を向かわせる。だが、斜め方向に秒速5キロ前後(射程により異なる)で飛ぶ物体に側面から当てる形になるから、正面から当てるよりは難しい、命中率が低いのは当然だ。 新型の迎撃ミサイルの射高は1000km超だから、ハワイ、グアムへ向かう北朝鮮の弾道ミサイルが加速を終え、惰力で放物線を描いて上昇中のところを迎撃することが可能だ。そのために米国にとっては真正面から迎撃できる秋田と山口は理想的な配備地点だ。 防衛省の担当幹部に「なぜ秋田、山口に固執するのか。能登半島、隠岐島の方が日本防衛に有効ではないか」と問い詰めると、結局は「種々の条件を勘案して、その2ヵ所が最適と判断した」と言うだけで、具体的には答えず、押し問答になる。 防衛省は陸上イージス導入について「誠心誠意、1つ1つ丁寧に説明する」と標榜しているが、「そこがハワイ、グアムへの軌道の下だから」と正直に答えるわけにはいかないのだろう』、ハワイ、グアム防衛のため秋田、山口に固執というのは初耳だが、こうした不都合な真実を伝えない一般のマスコミも情けない。
・『懸念される電波被害や落下事故  陸上イージスは秋田市の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場と山口県萩市の同むつみ演習場に配備する計画だ。 だが新屋演習場は秋田市の中心から西へ3km、海岸に近いが秋田商業高校とは背中合わせで、演習場の東、北、南は住宅地や公共施設に囲まれている。 迎撃ミサイルは一般的には西の海上方向に発射されるだろうが、1発目が当たらない場合、市街地がある東方の「未来位置」に向け2発目を発射することになるから、ロケットの噴射やブースター(ロケットの第1段)の落下による被害も考えられる。 その南東約12kmの秋田空港の滑走路は東西方向で、離着陸時には日本海上を飛ぶことも多いからレーダーとの電波干渉も起きそうだ。 山口県萩市のむつみ演習場は日本海岸から約10km南の丘陵地帯で、その北約1kmには同県阿武町に属する集落がある。 ミサイル防衛用レーダーは、通常は水平線上に現れる弾道ミサイルを探知するため、ほぼ水平方向に強い電波を出し続けるから、電波による健康への影響が案じられる。 防衛省は地元住民に「Sバンド(波長7.5ないし15cmのマイクロ波)は無線LANも使っていて危険はない」と説明した。だがSバンドは電子レンジにも使われ、人体にも浸透して熱を出す。 無線LANの出力は10ミリワット(1ワットの100分の1)だが、探知距離500kmのイージス艦のレーダーの最大出力は400万ワットで4億倍だ。800ワットの電子レンジの5000倍に当たる。陸上イージスのレーダーの探知距離は1000km以上だから、さらに強い電波を出す。 これを「無線LANと同じ」と言って住民を安心させるのは「ワニとトカゲは同じ爬虫類。危険はない」と説くようなものだ。 自衛隊には「レーダー電波を浴びると男性の生殖機能に障害が生じ、女の子しか生まれない」との言い伝えがあり、イージス艦は入港前にレーダーをオフにし、港内や市街地への影響を防いでいる。阿武町は設置に反対を表明しているが、その心配はもっともだ』、陸上イージスのレーダーの電磁波がこれほどまでに強力なのに、「無線LANと同じ」と強弁するとは、住民を馬鹿にし切った話だ。ここまで政府が不誠実なのであれば、一般マスコミも取上げるべきだろう。
・『人件費節約にもならない 他国では米国が全額を負担  秋田、山口では「陸上イージスが攻撃の対象にならないか」との懸念も出ている。 湾岸戦争やイラク侵攻など近年の戦争では、最初にレーダーサイトや対空ミサイル陣地を叩くのが定石となっているのは事実だ。 だが北朝鮮には日本を攻撃する航空戦力はないし、北朝鮮の弾道ミサイルの誤差(弾の半数が落ちる半径)は少なくとも1kmはあるから、通常弾頭なら200発も撃ち込まないと確実に目標を破壊できない。数少ない核弾頭をその種の目標に対して使うことも考えにくい。 ただ特殊部隊が潜入し、破壊を目指すことはありえよう。レーダーの平面アンテナ(イージス艦用で4350素子)を銃撃するだけで機能は喪失する。特殊部隊の1チーム(米陸軍なら12人)をレーダーから500m以内(小銃の射程)に入れないため、警備兵50人を4交代で配置するとして、200人は必要だろう。 イージス艦の乗組員300人のうち艦を動かす要員が約200人だから、「イージスシステムを陸上に置けば人件費が節約できる」との説も以前聞いたが、その分、警備兵が必要だから結局は帳消しになる。 イージス艦は相手の海岸から200kmほどの海上を巡航していれば、高い山頂のレーダーでも水平線の下になるから位置が分からず、巡航ミサイルで攻撃されることはない。 米国はルーマニアに陸上イージスを配備、ポーランドにも建設中で、韓国に「サード」を置いたが、その経費は全額米国が負担し、運用も米軍人が行っている。 イージス艦が8隻になれば、陸上イージスは日本防衛に不可欠ではなく、むしろハワイ、グアムの防衛に大きな効果があるから、少なくとも半額は米国が出すように求めるべきだろう。 だがひたすら「アメリカ第一」のトランプ氏に取り入ろうと努める日本政府にはそんな「畏れ多い」ことを言う度胸はなく、自国民をたぶらかしても、日本を米国の盾にしようとしているようだ』、「ルーマニアに陸上イージスを配備、ポーランドにも建設中で、韓国に「サード」を置いたが、その経費は全額米国が負担」というのも初耳だ。「陸上イージスは日本防衛に不可欠ではなく、むしろハワイ、グアムの防衛に大きな効果があるから、少なくとも半額は米国が出すように求めるべきだろう」というのは正論だ。
・いずれにしても、日本の防衛の実効性よりも、米国の顔色ばかり伺っている安倍政権の姿勢には腹が立つ。その意味では石破の方がましなのかも知れない。
タグ:ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 現代ビジネス 田岡俊次 自衛隊が抱える問題 北村 淳 (防衛問題) 半田 滋 (その8)(防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中…、超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国、「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ) 「防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中… 変わりゆく「国防」と若者の心」 「退職者数」は毎年100人前後で推移するが、入校者の約2割が辞めている 03年は139人に急増。04年はさらに増えて152人、05年は最多の163人、06年157人、07年139人、08年142人、09年126人 イラク戦争への自衛隊派遣が影響 イラク派遣の可能性が消えた10年、「退職者数」は92人とイラク戦争が始まる前の02年の水準に戻った 「退職者数」がもっとも多かった05年、入校者数に占める「退職者数」の割合は38・4%にのぼり、ほぼ5人に2人が自衛隊を忌避 14年の「退職者数」は143人と前年13年の106人から一気に増え、15年157人、16年141人、17年131人となっている。 こちらは第二次安倍政権下での「退職者数」の高止まり 憲法に自衛隊が明記されれば… 「超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国」 「イージス・アショア」の本体価格が、防衛省が見積もっていた1セットあたり800億円から1340億円へと跳ね上がった 最新のレーダーシステム「LMSSR」 540億円で飛躍的に広がる監視範囲 コストパフォーマンスは精査されているのか イージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退く米海軍 日本周辺だけでなくヨーロッパにおいても、軍艦ベースのイージス弾道ミサイル防衛を地上ベースの弾道ミサイル防衛に置き換えるべきであると主張 米軍を肩代わりするだけ アメリカにとっては「願ったり叶ったり」 「「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ」 2018年度予算の概算要求 米軍再編経費(推定約2200億円)が「事項要求」 今年度予算からも米軍再編関連経費を除いて比較すると7.2%という驚異的な伸び率になる 米国製兵器輸入が5倍増 日本の防衛産業は窮地に 日本への武器輸出が拡大するだけでなく、日本は安全保障での米国依存をますます強め、他の面でも一層米国の意向に従わざるをえなくなるからだ。これが「同盟強化」の現実なのだ 来年度の目玉陸上イージス 防衛力の「抜本的向上」はウソ イージス艦の垂直発射機には90発(新型艦は96発)の各種ミサイルを入れられる。対潜水艦ミサイル、対空ミサイルを16発ずつ入れても、50発余のミサイル迎撃用ミサイルを搭載できる。だが実は8発しか積んでいない 地点防衛用の「PAC3」 16発を積めるが4発しか弾道ミサイル迎撃用のミサイルを入れておらず、不発、故障に備えて1目標に2発ずつ発射するから、1両で2目標にしか対処できない 北朝鮮が持つ弾道ミサイル数百発に対しては焼石に水だ 防衛能力の「抜本的向上」になるはずがない。明らかな誇大広告だ 本来自衛隊が全く望んでいなかった巨額の装備を、突然「政治主導」で押しつける イージス艦は近く8隻に陸上イージスは「不要」だ まやかし説明が、陸上イージス配備予定地の地方自治体への回答書にも記載 公文書を尊重しない風潮の拡がりを示している なぜ秋田と山口に配備なのか ハワイ、グアム防衛に理想的 陸上イージスを導入するにしても、日本の防衛が目的なら能登半島と隠岐島に配備するのが合理的 懸念される電波被害や落下事故 防衛省は地元住民に「Sバンド(波長7.5ないし15cmのマイクロ波)は無線LANも使っていて危険はない」と説明 無線LANの出力は10ミリワット(1ワットの100分の1)だが、探知距離500kmのイージス艦のレーダーの最大出力は400万ワットで4億倍だ。800ワットの電子レンジの5000倍に当たる 陸上イージスのレーダーの探知距離は1000km以上だから、さらに強い電波を出す これを「無線LANと同じ」と言って住民を安心させるのは「ワニとトカゲは同じ爬虫類。危険はない」と説くようなものだ 人件費節約にもならない 他国では米国が全額を負担
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トランプ大統領(その33)(トランプ「抵抗」論説 民主主義に灯された希望か、トランプ大統領の支持率が不気味なほど安定しているのはなぜか、トランプ氏は「新しい正統」となるか?根深いアメリカ的心性と陰謀論) [世界情勢]

昨日に続いて、トランプ大統領(その33)(トランプ「抵抗」論説 民主主義に灯された希望か、トランプ大統領の支持率が不気味なほど安定しているのはなぜか、トランプ氏は「新しい正統」となるか?根深いアメリカ的心性と陰謀論)を取上げよう。特に、3番目は必読の好論文である。

先ずは、コラムニストのJohn Lloyd氏が9月12日付けロイターに寄稿した「コラム:トランプ「抵抗」論説、民主主義に灯された希望か」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/column-anti-trump-commentary-idJPKCN1LR0JP
・『ニューヨーク・タイムズ紙に匿名で寄稿した米政権幹部は、彼自身、そして同じ思いの同僚たちがいかにして「(米大統領が掲げる)政治目標の一部や、最悪な性向を懸命に阻止しようと努めている」かを書いた。そこには、民主的な習性、そして何より重要な市民の良識と責任感が、自由なジャーナリズムと連帯し、堕落した政権に打ち勝つことができるというメッセージがあった。 世界の民主主義は今、勇気を必要としている。この匿名の論説は、私の理解が正しければ、その役割を果たしている。この数カ月、民主主義の衰退、あるいは終えんとさえ嘆く本が書店にあふれている。これらの本は雄弁で説得力があり、悲観的だ。その中には・・・エドワード・ルース氏の「西側リベラリズムの撤退」などが含まれる。 ルース氏によれば、米国のリベラル派は、より自由な社会への歩みはいったん中断した後に再開すると考えている。「彼らの考えが正しかったらどんなにいいことか。そうではないかもしれない」と、同氏は書く。 私も彼らが正しいことを望んでいる。論説を寄稿した政権幹部は、私にそのようなばかげた楽観主義の根拠を与えている。というのも、強力な「抵抗勢力」の存在をあぶりだしたからだ。トランプ氏のような人物から大きな困難が浮上しても、それにあらがう大きな力があることを示した』、昨日のブログでも「抵抗勢力」のことを紹介したが、筆者も力づけられたようだ。
・『民主主義は、政府や指導者の行動、政策の中に単に存在するものではない。市民の行動や志にずっと根付いてきたもの、そして今も根付いているものだ。 重要なことに、こうした市民には公務員も含まれる。彼らは政府に仕えているが、同時に、市民を意味するラテン語の「キーウィス(civis)」に属する公民でもある。古代ローマでは、共和制を形成する中で、ローマ市民の地位を授与されることよって民主的な力を与えられた。「公務員(civil servant)」という言葉は、国家の官僚制に内在する葛藤を表している。 官僚は大統領や首相に仕えるのであって、権力者の気まぐれに仕えるのではない。公務員は奴隷ではない。これは相互的な関係を暗示しており、逆に権力者は、民主的な責任を順守することが求められる。これは公務員が奴隷である独裁国家と、民主国家の違いを示す特徴の1つである』、「公務員は奴隷ではない・・・」との指摘は、確かにその通りだ。
・『ポピュリズム的な政治が勢いを増すにつれ、公務員に内在する葛藤は高まり続け、彼らの一部は沈黙を強めていくことになるだろう。新たに台頭する政治家のスローガンは意図的に雑なものになる。彼らは右派左派問わず、既存の政策や主流派の慣行に風穴を開け、自らが国民の意思だと解釈するものに置き換えようとするからだ。そして実際、それが国民の望むものになり得る』、それがポピュリズムの恐ろしいところだ。
・『だが、ポピュリストはトランプ氏のように振る舞いがちである。ポピュリストの指導者は、自身が国民の力を唯一体現する者であり、成熟した民主国家が長年かけて確立してきた抑制と均衡のシステムを踏みつける権利があるととらえる傾向がある。 これは、世界で2番目にポピュリズムが顕著なイタリアの例で明らかだ。政権を発足させるために不安定な連立を組んだ反体制派政党「五つ星運動」と反移民を掲げる右派政党「同盟」は、選挙後しばらく経験しなければならない困難で退屈な課題に直面している。公約を国家の現実に合わせるという難業だ。イタリアの問題は、国内総生産(GDP)比132%弱にのぼる公的債務ときわめて低い成長率にある。サルビーニ副首相は9月に入り、経済官僚と相談の上、財政赤字のGDP比が欧州連合(EU)の定める上限3%を超えないようにすると表明した。同副首相は「われわれはこの国を成長させることができる。われわれを監視する者たちをいらだたせることなく、国民の気持ちを晴らすことが可能だ」と主張した。これは3月の選挙以降に政府が発信してきたメッセージに逆行する。 いずれ分かる。サルビーニ氏の発言は時間稼ぎだ。彼はEUよりも国民からの負託に答えると主張し、EUが定める債務上限を守らないかもしれない。今のところは経済官僚のほうが優勢のようである』、ポピュリストが現実の制約のなかで、どう振舞うかは見物だ。
・『政治家が非市民的な指導者に反旗を翻すこともある。英国では野党・労働党のコービン党首が反ユダヤ的と取られる発言で批判を浴びる中、党執行委員会は国際ホロコースト追悼同盟の定義をようやく受け入れた。しかし、コービン氏が「イスラエルと同国の政策、国の成り立ちに関して人種差別主義者と表現するのは反ユダヤ主義とみなされる」べきではないとする確認文書への承認を求めると、議論は紛糾した。(しかし最後に笑うのはコービン氏かもしれない。ロンドンのいくつかのバス停では6日、「イスラエルは人種差別国家」という看板が掲げられていた。)』、労働党のコービン党首がこんなに酷いとは初めて知った。
・『試練が訪れたとき、民主国家や市民社会は今も健全な動きを見せる。ポピュリストは国民の不満を訴え、そうした不満には強力な基盤がある。不満を解決するために権力を追い求める姿勢は正しい。 だが、民主主義は責任を求める。政策の良い部分だけでなく、悪い部分も説明しなくてはならない。最高権力をチェックするのに必要な機関を通じて活動しなくてはならない。(たとえ国民から支持されたとしても)単なる偏見と、正当な政策を切り離さなくてはならない。 道徳観念、市民の公僕、そして勇敢な政府高官は、われわれが奈落の底に落ちることから救ってくれる。そしてわれわれに、暗い未来から後戻りができるという希望を与えてくれる』、ポピュリストたちの優勢を前にして、やや楽観的過ぎるような印象も受ける。

次に、みずほ総合研究所調査本部 欧米調査部長の安井明彦氏が9月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「トランプ大統領の支持率が不気味なほど安定しているのはなぜか 超党派協力の夢を阻む「教会から疎外された人々」の正体」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/179446
・『マケイン上院議員死去で感じる「トランプ分断」の深刻さ 米国では、8月25日に亡くなったジョン・マケイン上院議員の告別式が、9月1日に首都ワシントンのワシントン大聖堂で行われた。告別式には党派を超えた多くの参列者が集まった。 マケイン議員の告別式は、そう遠くない昔の米国では、党派を超えた友情が珍しくなかったことを雄弁に示していた。告別式では、共和党のジョージ・W・ブッシュ、民主党のバラク・オバマという2人の元大統領が、相次いで弔辞を述べた。 言うまでもなく、ブッシュ元大統領は2000年大統領選挙の予備選挙、オバマ元大統領は2016年の大統領選挙で、マケイン議員と戦った間柄である。かつての政敵であり、所属政党も違う2人の政治家を、マケイン議員は同じ演台に立たせてみせた・・・民主党から無所属に転じたジョン・リーバーマン元上院議員は、2008年の大統領選挙に出馬したマケイン議員から、所属政党が違うにもかかわらず、副大統領候補に登用する構想を持ちかけられた経験談を披露した。「党派が違うのに?」とリーバーマン元議員は不審がったが、マケイン議員は「それが大事なんだ」と超党派協力の必要性を力説したという。 幸福な融和の構図を描いたかに見えるマケイン議員の告別式は、深い断絶の存在を浮き立たせる出来事でもあった。複数の元大統領が参列するなかで、現職のドナルド・トランプ大統領は、招待者リストに含まれなかった。トランプ大統領とその支持者たちは、ワシントン大聖堂とは別の「教会」に籠っていたようなものだ。厳粛ながらも温かな告別式とはかけ離れた世界が、今の米国には確かに存在している』、こうした分断は確かに深刻なようだ。
・『不気味なほど安定しているトンンプ大統領の支持率 マケイン議員が融和の象徴であるとすれば、トランプ大統領は分断の象徴である。その証拠が、不気味なまでに安定的に推移する支持率である。さまざまな騒動が起きる割には、トランプ大統領の支持率は、おおよそ30%台半ばから40%台半ばのあいだに収まっている。 実際に、トランプ大統領の支持率は、過去の大統領と比べても、極端に動きが少ない(図)。「強く支持する」と回答してきた20~30%の熱心な支持者の存在によって、支持率の底割れは避けられている。その一方で、40~50%はトランプ大統領に「強く反対する」と答え続けており、ここから支持率が上昇する余地は少ない。勢い、少数ながら熱心な支持者にかけるのが、トランプ大統領の政治手法になっている。 熱心な支持者は、何があってもトランプ大統領を信じ続けているようだ。8月後半の米国では、いつもは高視聴率をたたき出すFOXニュースの視聴率が、不自然に低い日があった。トランプ大統領の元側近たちが、裁判で有罪評決を受けたり、有罪を認める答弁を行ったりしたと報じられた日である。トランプ支持者はFOXニュースを見る傾向が強いが、大統領にとって都合が悪いニュースが多かった日には、テレビに目もくれなかったようだ。 かつてトランプ大統領は、「私が(ニューヨークの)5番街の真ん中で誰かを銃で撃ったとしても、票を失いはしないだろう」と述べたことがある。確かに熱心な支持者たちは、どこまでもトランプ大統領についていくのかもしれない。 なぜそこまでトランプ大統領を支持し続けるのか。米アトランティック誌は、熱心なトランプ支持者の集まりを、教会に代わるコミュニティとして捉え直す記事を掲載している。 アトランティック誌が描き出すトランプ大統領の政治集会は、大統領による攻撃的な言動や、陰惨な現実描写が多いにもかかわらず、そこに集まった聴衆は、極めて明るい雰囲気に包まれている。支持者の仲間意識が生み出す高揚感は、さながら教会での礼拝のようだという。 実は、これは単なる比喩ではない。トランプ支持者のコミュニティには、実際に教会の代役を果たしている側面がある。トランプ大統領の熱心な支持者は、教会から疎遠になった人たちと一致するからだ』、「トランプ支持者はFOXニュースを見る傾向が強いが、大統領にとって都合が悪いニュースが多かった日には、テレビに目もくれなかったようだ」というのには、微笑んでしまった。アトランティック誌の指摘はなかなか興味深い。
・『トランプ大統領の支持者の中核は、労働者階層の白人だと言われる。米国では統計上の制約から、社会階層を教育水準で代替して分析する場合が多いが、近年の米国では、学歴によって教会に通う頻度に大きな差が生まれている。 1970年代以降では、労働者階層と見なされる大卒未満の白人が教会に通う頻度は、大卒以上の白人の2倍以上の速度で減少しているという。現状では、大卒以上の白人では3割程度が「滅多に教会に足を運ばない」と答えている一方で、大卒未満の白人では同様の回答が約半数に達している。 どうやら労働者階層の白人は、教会に集うコミュニティに対し、疎外感を感じているようだ。労働者階層の白人にすれば、教会に集うのは教えを守って成功してきた人たちであり、もはや自分たちが仲間入りできるコミュニティではない』、労働者階層の白人が教会からも疎外されていたとは、初めて知った。
・『疎外感を覚える労働者階級が集まる「教会」のような場所 製造業の不振などを背景に、労働者階層の白人の雇用は不安定になっている。そうした暮らしの現実は、教会が唱えてきた勤勉の価値観とは合致しない。また、経済的な苦境は、離婚などの生活の破綻を招きやすい。その点でも、労働者階層の白人は、教会に居心地の悪さを感じるようになっているという。実際に、同じ労働者階層の白人においても、教会に通う頻度が低い人たちでは、離婚や家計の困窮、さらには薬物などへの依存を経験する割合が高い。 教会の側も、労働者階層の白人が多いコミュニティに力を入れるのは難しくなっている。成長の余地が少ない地域では、教会の活動を支えるだけの資金的な余裕が乏しい。労働者階層の白人が教会から離れれば、その教会の経営は難しくなる。教会の活動が縮小すれば、ますます労働者階層の白人は教会から縁遠くなる。まさに悪循環である。 トランプ大統領の支持者は、「忘れられた人々」と形容されることが多い。労働者階層の白人たちは、教会からも「忘れられた人々」になりつつあった。伝統的に教会は、単なる信仰の場ではなく、地域のコミュニティの中心としての役割を果たしてきた。心の拠り所を失った人たちに、教会に代わる居場所を提供してくれたのが、トランプ支持者のコミュニティだった』、なるほど説得力のある見方だ。
・『宗教色の後退が分断に拍車 様変わりするコミュニティの姿 かつての米国では、政治から宗教色が後退すれば、世論の分断は和らぐと考えられてきた。同性婚や妊娠中絶のような争点では、信仰の有無が対立軸と重なりがちだったからである。 ところが実際には、宗教色の後退は、従来とは異なった論点で、世論の分断を深める結果をもたらしている。教会から疎遠になった人々には、同性婚などの宗教と重なりやすい論点ではなく、人種や国籍といった世俗的な論点で、意見を先鋭化させる傾向があるからだ。実際に米国では、同じ宗教の信者でも、教会活動への参加の度合いが低下するほど、移民に対する意見が厳しくなることが確認されている。 移民に厳しいトランプ大統領の政策は、「トランプの教会」に集うコミュニティの思いを代弁しているのかもしれない。日常生活から教会の影が薄れるのと同時に、対立を諌める訓話を聞いたり、多少なりとも人種間の交流を行ったりする機会は失われた。教会から足が遠のいた人々は、宗教の教えにコミュニティの絆をみつけられなくなったからこそ、人種などの世俗的な観点で仲間意識を強めている可能性がある。 マケイン議員の葬儀を終えた米国では、11月の議会中間選挙に向けた党派間の論戦が熱を帯び始めた。熱狂的な支持者に活路を託すトランプ大統領は、ひたすら自らの教会で語り続ける。 思い返せば、今では融和の象徴とされるマケイン議員も、2008年の大統領選挙では、攻撃的な言動で知られるサラ・ペイリン元アラスカ州知事を副大統領候補に選び、今につながる分断への道筋を開いた側面がある。ワシントン大聖堂を包み込んだ党派を超えた協力への期待は、夏の終わりのはかない夢に過ぎないようだ』、分断は少なくとも中間選挙までは続きそうだ。

第三に、国際基督教大学教授・学務副学長の森本 あんり氏が9月11日付け現代ビジネスに寄稿した「トランプ氏は「新しい正統」となるか?根深いアメリカ的心性と陰謀論 「世界の救世主」と信じる集団も出現」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57368
・トランプ大統領誕生から約2年。なぜ彼はいまだに多くの支持を集めているのか? 彼は異端か、はたまた「新しい正統」なのか? 『異端の時代』(岩波新書)を上梓した森本あんり氏が「正統と異端」という視点からアメリカの現在を読み解く──』、面白そうだ。
・『高支持率を維持するトランプ大統領 世界を震撼させたトランプ大統領の登場から、もうすぐ2年になる。人びとがその登場よりもさらに不思議に思うのは、普通なら政権が吹き飛ぶほどの失策や暴言の数々にもかかわらず、彼の支持率がその後も高止まりして下がらない、という事実である。 支持率の内訳を見ると、トランプ支持者の圧倒的多数は共和党で、不支持者の圧倒的多数は民主党である。アメリカ社会は、それだけ支持政党による色分けが固定化し、分断が深刻化した、と言うことができる。 だが、それは必ずしも政党政治が従来通り機能していることを意味しない。トランプ氏と伝統的な共和党重鎮たちとの確執は、選挙前からよく話題になった。 いわゆるワシントンのエスタブリッシュメントに対する彼の反発は、国民もよく知っており、その向こう見ずな姿勢がまた人びとを引きつける魅力となっていた。 トランプ氏は、反知性主義の典型的な体現者である。 反知性主義は、こうした既存の権力への反発を主要成分としている。そのため、トランプ氏の就任前には、彼が実際に権力の頂点とも言うべき大統領職に就任してしまえば、その反発をもってゆく先がなくなり、少しは大人しくなるだろう、と予測する人もあった。 だが、その予測は当たらなかった。なぜなら、トランプ氏が反発すべき権力は、国の内外にまだまだ残っているからである』、なるほど深く説得力がある分析である。
・『「新しい正統」なのか? その一つは、国際勢力である。トランプ氏は地球温暖化や自由貿易など、いくつもの多国間協定に背を向けて、各国世論を驚かせている。 これまで世界秩序の担い手であったはずのアメリカが、なぜそのような行動に出るのか。トランプ氏の考えでは、それらが自国の主権よりも上にあるからである。 こうした国際的な条約や協定を結ぶと、アメリカは大国として膨大な負担金を払わされる上に、自国の振る舞いに枷をはめられることになる。 国際協調は、他国や世界全体に益することがあるとしても、アメリカには何もよいことをもたらさない。「アメリカ・ファースト」のトランプ氏がこうした協定を好まないのは当然である。 もう一つ残っていたのは共和党内の権力組織だが、こちらはここに来て大きな潮目の変化を迎えつつある。 トランプ氏と大統領候補指名を争ったポール・ライアン氏は今期限りでの引退を表明し、トランプ氏に批判的であったジョン・マケイン上院議員は先日逝去した。 共和党内の批判勢力は次々と姿を消し、他のリーダーたちも次を見据えてじっと息を潜めている。今秋の中間選挙の候補者を見ると、共和党の指名を獲得したのはトランプ氏が推す人びとばかりである。 つまり、かつて「異端」だったトランプ氏が、今や反対勢力を一掃して共和党の大部分を制覇した、ということである。これまでの共和党は、新しく「トランプ党」へと大きく様変わりした。 では、彼こそ今日の「正統」と言うべき存在なのだろうか。アメリカの「正統」は、今後は彼のような考え方が代表することになるのだろうか』、「今秋の中間選挙の候補者を見ると、共和党の指名を獲得したのはトランプ氏が推す人びとばかりである」というのはショッキングだ。「トランプ・チルドレン」が相当数生まれるというのは、見たくない姿だ。
・『異端は「選択」する  「異端」や「正統」は、伝統的には宗教的なカテゴリーで使われてきた言葉だが、現代世界では政治や文化、学芸やスポーツに至るまで、幅広い分野で通用する概念となっている。 もともと「異端」(heresy)という言葉は、「選択」(hairesis)という意味のギリシア語に由来する。歴史を辿ってみると、異端とされたものは、みな出発点においては正統の一部だった。 異端は、全体としてみれば健全でバランスがとれていた教義の体系から、特定の一部分を取り出し、それをことさらに強調することで成立する。つまり、異端の本領は「選択」なのである。 政治の世界でも同じことが言える。 トランプ氏が進める政策は、減税や移民、伝統的な家族観など、たしかに従来の共和党が掲げてきた政策の一部であるが、それぞれが極端に肥大化されていて、他とのバランスが顧みられていない。 権力につきもののチェック&バランスも、彼の目には不当な干渉としか映らない。一般大衆は、タガのはずれたような彼のそういう突飛な言動に喝采を送るのである』、異論を挿みようがない全く完璧な分析だ。
・『事実と虚構――説得力があるのはどちらか  選択は、それぞれの価値観や世界観に従ってなされるが、権力をもつ者の場合、その内容は常識外れであればあるほど魅力が増すようである。 そのような選択をする背景には、きっと何かわれわれの知らない特別な理由があるのだろう、と人びとが想像するようになるからである。 ツイッターで脈絡や意図の不明瞭な情報を小出しに流しておけば、あとは受け取る側が想像力を駆使して点と点を結び合わせ、大きな構図を描き出してくれる。 これが、「陰謀論」の興隆に絶好の機会を生むことになる。つまり陰謀論は、人間のもつ本来的な情報補完能力が働いた結果なのである。 全体主義を論じたハンナ・アレントによると、大衆は目の前に広がる現実をありのままには受け止めない。「事実というものは、大衆を説得する力を失ってしまった」、と彼女は書いている。 「フェイク・ニュース」だ「ファクト・チェック」だと大騒ぎしている昨今だが、それらは今のわれわれが気づくよりずっと以前に始まっていた、ということである。 では、人びとが求めているものは何か。 あれやこれやの事実など、実のところどうでもよい。彼らが求めているのは、首尾一貫した世界観である。自分の周囲で起きている不条理や矛盾に、心から納得のゆく説明を与えてくれる圧倒的な説明原理である。 もちろん、事実が誤りを明るみに出し、その説明原理が破れそうになることもある。その場合には、説明原理ではなく、事実の方を変えてしまえばよいのである』、「陰謀論は、人間のもつ本来的な情報補完能力が働いた結果なのである」、「あれやこれやの事実など、実のところどうでもよい。彼らが求めているのは、首尾一貫した世界観である。自分の周囲で起きている不条理や矛盾に、心から納得のゆく説明を与えてくれる圧倒的な説明原理である」、などの指摘の鋭さには、感服した。
・『「陰謀論」のアメリカ的伝統 歴史的に見ると、アメリカにはこうした陰謀論を育てる豊かな土壌がある。それは、アメリカの宗教史を彩るリバイバリズムと大衆伝道の伝統である。 ヒトラーも、自分が全体主義の手法を学んだのはアメリカの大衆宣伝からであった、と告白している通りである。 これは彼の自著『わが闘争』に出てくる証言だが、アメリカの宗教的伝統がナチズムのプロパガンダにも影響を与えていたことは、あまり知られていない』、「えー」と腰が抜けるほど驚かされた。
・『その後のアメリカ史にも、陰謀論は数知れず登場する。 1950年代には、「共産主義の国際的陰謀がアメリカを狙っている」とするマッカーシズムの嵐が吹き荒れた。ホフスタッターの『アメリカの反知性主義』(1963年)は、この当時を振り返って書かれたものである。 そして、その翌年に彼が執筆したのが、「アメリカ政治のパラノイド傾向」という論文である。「パラノイド傾向」すなわち偏執的な妄想に囚われることは、反知性主義と同じくらいに根深いアメリカ的心性の一部なのである。 本欄では、以前にもオバマ大統領の指輪をめぐる陰謀論を取り上げたことがある(拙稿参照)。最近では、トランプ氏こそ腐敗した政治を一掃する世界の救世主である、と信ずる集団が注目を集めている。「QAnon」という秘密結社めいた人びとである』、そんな秘密結社めいた集団まで登場しているとは、驚いた。
・『信じたいことを信じる  陰謀論と大衆宣伝に共通する要点は、「信じさせる」ことである。「信じさせる」というと、何かを無理に信じさせるようだが、そうではない。人びとはそれを自分から喜んで信ずるのである。 どんなに荒唐無稽な話であっても、この世のどんな権威が間違いを指摘しても、それが自分の身の回りの経験的な世界を総体として納得のゆくように説明してくれるなら、信ずるに足るのである。そして、ひとたび信じたなら、その説明原理はどんな反証も斥ける。 人は、信ずべきものではなく、信じたいものを信ずる。 知らぬ間に他人の口車に乗せられてしまう、ということではない。「信じる」というのは、もっと自発的で能動的な行為である。他人の言葉を聞きながら、その言葉を使って、自分が自分に信じ込ませるのである。 最初は半信半疑かもしれない。だが、その疑っている半分の自分とは別に、別の半分が「信じたい」と叫び出す。だから自分で自分を説き伏せてしまうのである。 陰謀論は、水が低いところへと流れるように、おのずと信じたい人のところへと流れてゆく。誰も、それを無理に信じさせているわけではない。無理強いされれば、「信じたふり」をすることはできる。だがそれは、ほんとうに心の底から信じることとは別である。 とりわけ、苦しい現実に何度も打ちのめされた人びとは、事実ではなく虚構を信じやすくなる。 騙す者がするのは、信じたがっている人を見つけ出すことだけである。 適切なところに少しの水をたらせば、あとは自然に世間の谷間を流れ巡って大きな奔流ができる。陰謀論の跳梁は、騙す側ではなく騙される側、その内面で働く論理に注目しない限り、理解することができない』、「苦しい現実に何度も打ちのめされた人びとは、事実ではなく虚構を信じやすくなる。 騙す者がするのは、信じたがっている人を見つけ出すことだけである」、との指摘は現状にまさにドンピシャだ。
・『正統であり異端であること  正統と異端は、イデオロギーや理念や価値の関わる世界では、しばしば暗黙裡に前提されている概念である。陰謀論もその特性からして必ずこのゲームに加わるが、そこで描かれるストーリーはやや定型的である。 つまり、世の中には本当に正しい者がいるが、その人は時代の権力者に弾圧され、闇から闇へと葬られてきた、というものである。 実は、歴史を振り返るとわかることだが、正統はいちばん正しかったから正統になったわけでもないし、いちばん強かったから正統になったわけでもない。 逆に異端は、悪の烙印を押されたから異端になったわけではなく、迫害され追放されたから異端になったわけでもない。 これらは、娯楽映画のシナリオには最適であっても、現実の世界を読み解く構図にはふさわしくない。 正統と異端の争いは、外から傍目に見ると、結局のところみな「自分こそ正統で、あいつは異端だ」と言っているだけの話に見えることもある。だが、ここはよくよく注意して見る必要である。 「正統か異端か」という区別は、「敵か味方か」という区別とは違うし、「強者か弱者か」「勝者か敗者か」という区別とも違う。正統であり異端であることには、それらとは異なった別の軸が必要なのである』、なるほど。
・『必要な「軸」はあるか  その軸がどこかにある限り、正統であることと異端であることの間には、それほど大きな違いがない。 むしろ今日の問題は、「自分こそ正統だ」という者もいなければ、「自分こそ異端だ」という者もいない、ということである。どちらにも必要なのは、その気概であり、自負であり、覚悟であり、腹構えである。 歴史に登場する異端者は、それぞれ高い志をもったまことに尊敬すべき人びとであった。 たとえば宗教改革者のルターは、当時としてはローマ教会に破門された「異端」だが、彼には「自分こそ正統だ」という確信があった。 その気概が改革の担い手としての彼の言動に責任意識を与え、それが人びとの信頼を獲得し、やがて時を経て正統となっていったのである。 これも歴史が証言することだが、先の尖った主張をする異端に較べると、正統はいかにも凡庸である。ほとんど退屈といってもよいくらいだが、それにも理由がある。 すでに触れたごとく、政治でも宗教でも、異端とは何かを選び、それを不均衡なまでに強調することで成立する。だからその輪郭は明瞭で人目に立つものとなるのである。 これに対し、特に政治においては多くの対立的な要素の調停が不可欠である。 一方が明らかに善で他方が明らかに悪であるなら、話は簡単だろう。しかし現実は、二つのすばらしい善のどちらか、あるいは二つのとんでもない悪のどちらかを選ばねばならない、ということの方がはるかに多い。 そのバランスを見つけ、双方からその中途半端で凡庸な結論を批判されながらも、どうにかして全体的な健全さを維持する――これが正統であることの要件であり、正統を自任する者に求められる覚悟である。 トランプ氏は、現代の覇者であるかもしれない。だが、はたして彼に正統を担う覚悟はあるだろうか』、これまで読んだトランプ論のなかでも出色の好論文だ。歴史や社会心理学、神学などの深い知識に基づいた分析は、極めて説得的だ。
タグ:ロイター ポピュリズム 国際協調 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 安井明彦 トランプ大統領 「五つ星運動」 John Lloyd (その33)(トランプ「抵抗」論説 民主主義に灯された希望か、トランプ大統領の支持率が不気味なほど安定しているのはなぜか、トランプ氏は「新しい正統」となるか?根深いアメリカ的心性と陰謀論) 「コラム:トランプ「抵抗」論説、民主主義に灯された希望か」 ニューヨーク・タイムズ紙に匿名で寄稿した米政権幹部 彼自身、そして同じ思いの同僚たちがいかにして「(米大統領が掲げる)政治目標の一部や、最悪な性向を懸命に阻止しようと努めている」かを書いた 強力な「抵抗勢力」の存在をあぶりだした 公務員は奴隷ではない。これは相互的な関係を暗示しており、逆に権力者は、民主的な責任を順守することが求められる 公務員が奴隷である独裁国家と、民主国家の違いを示す特徴の1つ 新たに台頭する政治家のスローガンは意図的に雑なものになる ポピュリストの指導者は、自身が国民の力を唯一体現する者であり、成熟した民主国家が長年かけて確立してきた抑制と均衡のシステムを踏みつける権利があるととらえる傾向がある イタリアの例 「同盟」 政治家が非市民的な指導者に反旗を翻すこともある 労働党のコービン党首が反ユダヤ的と取られる発言で批判 ポピュリストは国民の不満を訴え、そうした不満には強力な基盤がある 民主主義は責任を求める。政策の良い部分だけでなく、悪い部分も説明しなくてはならない。最高権力をチェックするのに必要な機関を通じて活動しなくてはならない 「トランプ大統領の支持率が不気味なほど安定しているのはなぜか 超党派協力の夢を阻む「教会から疎外された人々」の正体」 マケイン上院議員死去で感じる「トランプ分断」の深刻さ 不気味なほど安定しているトンンプ大統領の支持率 「強く支持する」と回答してきた20~30%の熱心な支持者の存在によって、支持率の底割れは避けられている 米アトランティック誌 熱心なトランプ支持者の集まりを、教会に代わるコミュニティとして捉え直す記事を掲載 労働者階層の白人 疎外感を覚える労働者階級が集まる「教会」のような場所 労働者階層の白人たちは、教会からも「忘れられた人々」になりつつあった 心の拠り所を失った人たちに、教会に代わる居場所を提供してくれたのが、トランプ支持者のコミュニティだった 宗教色の後退が分断に拍車 様変わりするコミュニティの姿 森本 あんり 「トランプ氏は「新しい正統」となるか?根深いアメリカ的心性と陰謀論 「世界の救世主」と信じる集団も出現」 『異端の時代』(岩波新書) 高支持率を維持するトランプ大統領 トランプ氏は、反知性主義の典型的な体現者 反知性主義は、こうした既存の権力への反発を主要成分としている トランプ氏が反発すべき権力は、国の内外にまだまだ残っているからである 「新しい正統」なのか? 「アメリカ・ファースト」 今秋の中間選挙の候補者を見ると、共和党の指名を獲得したのはトランプ氏が推す人びとばかりである かつて「異端」だったトランプ氏が、今や反対勢力を一掃して共和党の大部分を制覇 異端は「選択」する 異端は、全体としてみれば健全でバランスがとれていた教義の体系から、特定の一部分を取り出し、それをことさらに強調することで成立する トランプ氏が進める政策は、減税や移民、伝統的な家族観など、たしかに従来の共和党が掲げてきた政策の一部であるが、それぞれが極端に肥大化されていて、他とのバランスが顧みられていない 一般大衆は、タガのはずれたような彼のそういう突飛な言動に喝采を送るのである 事実と虚構――説得力があるのはどちらか 陰謀論は、人間のもつ本来的な情報補完能力が働いた結果なのである 人びとが求めているものは何か。 あれやこれやの事実など、実のところどうでもよい 彼らが求めているのは、首尾一貫した世界観である。自分の周囲で起きている不条理や矛盾に、心から納得のゆく説明を与えてくれる圧倒的な説明原理である 事実が誤りを明るみに出し、その説明原理が破れそうになることもある。その場合には、説明原理ではなく、事実の方を変えてしまえばよいのである 「陰謀論」のアメリカ的伝統 アメリカの宗教史を彩るリバイバリズムと大衆伝道の伝統 ヒトラーも、自分が全体主義の手法を学んだのはアメリカの大衆宣伝からであった、と告白 その後のアメリカ史にも、陰謀論は数知れず登場 マッカーシズムの嵐 アメリカ政治のパラノイド傾向 反知性主義と同じくらいに根深いアメリカ的心性の一部 トランプ氏こそ腐敗した政治を一掃する世界の救世主である、と信ずる集団が注目 「QAnon」という秘密結社めいた人びとである 人は、信ずべきものではなく、信じたいものを信ずる 陰謀論は、水が低いところへと流れるように、おのずと信じたい人のところへと流れてゆく 苦しい現実に何度も打ちのめされた人びとは、事実ではなく虚構を信じやすくなる 騙す者がするのは、信じたがっている人を見つけ出すことだけである 正統であることと異端であることの間には、それほど大きな違いがない 今日の問題は、「自分こそ正統だ」という者もいなければ、「自分こそ異端だ」という者もいない、ということである 政治でも宗教でも、異端とは何かを選び、それを不均衡なまでに強調することで成立する。だからその輪郭は明瞭で人目に立つものとなるのである 現実は、二つのすばらしい善のどちらか、あるいは二つのとんでもない悪のどちらかを選ばねばならない、ということの方がはるかに多い そのバランスを見つけ、双方からその中途半端で凡庸な結論を批判されながらも、どうにかして全体的な健全さを維持する――これが正統であることの要件であり、正統を自任する者に求められる覚悟である
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トランプ大統領(その32)(米国が「世界の暴力団」となった国際社会を日本が生き抜く道、伝説の記者が暴くトランプのヤバすぎる内実 新著でホワイトハウス奥の院の混乱を暴露、側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人、トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙) [世界情勢]

トランプ大統領については、7月26日に取上げた。今日は、(その32)(米国が「世界の暴力団」となった国際社会を日本が生き抜く道、伝説の記者が暴くトランプのヤバすぎる内実 新著でホワイトハウス奥の院の混乱を暴露、側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人、トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙)である。

先ずは、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が8月28日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「米国が「世界の暴力団」となった国際社会を日本が生き抜く道」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178350
・『「アメリカファーストの嵐」が世界中に猛威を振るっている。ドナルド・トランプ米大統領は、2017年1月の大統領就任後、「北朝鮮ミサイル危機への介入」・・・「エルサレムをイスラエルの首都と認定」・・・「イラン核合意からの離脱」・・・など、大統領選時の公約通りに「アメリカファースト(米国第一主義)」を推進してきた。 そして、中国、トルコ、イランに対して、次々と経済制裁を課した。この連載は、米国が「世界の警察官」をやめて「世界の暴力団」となったと評した・・・まさに、気に入らない国があれば、後先考えず「モグラ叩き」のように潰す「暴力団」のような振る舞いになってきたのではないだろうか』、「「世界の警察官」をやめて「世界の暴力団」となった」とは言い得て妙だ。
・『米国が「世界の暴力団」となった国際社会をどう生き抜くか トランプ大統領が就任した時、多くの識者が「大統領になれば変わる」という「願望」を持っていたと思うが、見事に裏切られた。現在、彼らは、「アメリカファースト」で米国が築いてきた国際社会の秩序が崩壊していくことを憂い、米国が「トランプ以前」に戻ってくれることを必死に祈り、右往左往しているように見える。 この連載では、「トランプ大統領が当選した日、国際政治学のすべての権威は失墜した。これからは、なにが起こってもおかしくない時代になった。権威も、しきたりも、常識も全く通用しない時代になった。自分の頭で考えていくしかない時代だ」と書いた・・・現状は、その通りになってきていると思う。 この際、常識に捉われず、新たな発想で考えてみたらどうだろうか。「トランプ以前」の「世界の警察官」だった米国にはもう戻らない。本稿は、米国が「世界の暴力団」となってしまった国際社会を、どう生き抜いていくかを考える』、答を早く見たいものだ。
・『トランプ政権の中国、トルコ、イランへの経済制裁による混乱  「貿易赤字」を「企業の損失」だと勘違いしているとしか思えないトランプ大統領は、中国に対して、ほとんど言いがかりでしかない「貿易戦争」を仕掛けた。まず6月、中国の知的財産権侵害への制裁措置との名目で、500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課す方針を発表した。 そして、実際に7月6日、340億ドル分(818品目)の追加関税を課し、7月23日、残りの160億ドル(約1.8兆円)相当の中国製品に、追加関税を上乗せした。同日、中国も、同規模の関税を米国製品にかける「報復合戦」になっている。 一方、中東においても「アメリカファースト」による混乱が広がっている。「イラン核合意」から離脱した米国は、8月7日、自動車や貴金属の取引停止という対イラン経済制裁の第一弾を再発動した。 米国は、米企業だけでなく欧州などの企業にも制裁発動を求めている。11月4日には第二弾の経済制裁として、イランとの原油取引の停止を欧州や日本に求めるという。欧州やロシア、中国は、現行の「核合意」の枠組みを維持しようとしているが、トランプ大統領の強硬姿勢で困難な情勢だ。 イランは、バラク・オバマ米政権によって進められた2015年の「核合意」後に、2ケタの経済成長を実現していた。だが、トランプ政権による制裁の再発動で通貨安に拍車がかかり、経済が急激に悪化している。 イラン国内では、イラン革命防衛隊高官が「イラン産原油の輸入停止を求める米国の呼び掛けに各国が応じるならば、ホルムズ海峡の封鎖に踏み切る」と警告するなど、「強硬派」が勢力を増している。また、イランと、イスラエル、サウジアラビアなどの対立が激化している。 さらに、米国とトルコの対立が深まっていることも、中東地域の政治・経済を混乱させている。トランプ政権は、トルコが2016年のクーデター未遂事件に関連して自宅軟禁状態にしているブランソン牧師の解放を求めてきたが、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が応じなかった。これに対してトランプ大統領は、トルコに対してアルミニウムと鉄鋼の関税率を2倍に引き上げると発表した。トルコ・リラは1ドル=7.2リラの市場最安値を記録し、年初からのリラの下落率は4割に達した。 エルドアン大統領が「金利は搾取の道具」と考えて中央銀行を支配し、利上げを認めないことが、経済危機をより深刻にしている。利上げという通貨防衛の鉄則を無視しているのだ。トルコの中央銀行は独立性を担保されておらず、政策金利を上げることができない。なんとか市場金利の利上げ誘導でしのごうとしているが、その限界は明らかだ。 さらに、エルドアン大統領が「政治主権の放棄になる」と主張し、国際通貨基金(IMF)の支援を頑なに拒否している。支援の見返りに厳しい財政緊縮を要求されるのを嫌がっているのだろうが、その代わりに、サウジアラビアとの断交で孤立しているカタールと直接投資などで関係を深め、通貨スワップ協定を結んだりしている。 結局、エルドアン大統領のいかにも付け焼刃的に見える対応によって、リラ売りは加速してしまっている。そして、その影響は世界に波及し始めている。新興国からの資金流出が加速し、アルゼンチン、インドネシアなどが利上げを実施した。 しかし、トランプ大統領はツイッターで「われわれのトルコとの関係は、現在は良くない!」と発言し、経済制裁に加えて、F15のトルコへの売却の当面禁止を発表し、さらに追加の経済制裁の可能性も示唆した。 これに対して、トルコは報復関税を導入するなど対抗措置を強化し、報復合戦が加速している。トルコはNATO加盟国だが、ロシアと接近を図るなど、安全保障上の問題に発展する懸念も広がっている』、今朝の日経新聞によれば、トルコ中央銀行は、政策金利を一気に6.25%引き上げて、24%にしたが、これに対するエルドアン大統領の反応は不明のようだ。エルドアンが「金利は搾取の道具」と考えているのは、いかにもイスラム主義者らしいが、金融制度は曲がりなりにも欧米流なのに、大統領ともあろう人物がこんな考えで中央銀行に介入していたとは困ったことだ。
・『米国が第二次大戦後の同盟体制を築く以前を振り返ってみる  このように、米国が「世界の警察官」をやめて、気に入らない国を「モグラ叩き」してしまう時代にどう行動すべきかを考えたい。それには、米国が「世界の警察官」になる前のことを振り返ってみることだ。 この連載では、ピーター・ゼイハンがまとめた、「多くの国が米国の同盟国になることで得たメリット」を紹介したことがある(第170回)。これを裏返して、「米国の同盟国になる前」がどういう状況だったか整理してみよう。 (1)フランスとドイツは、お互いに相手を警戒して武装し、何度も戦っていた。(2)スウェーデンやオランダなどの中規模の国家は、防衛に最大限の努力を割かねばならず、貿易に焦点をあてて自国の強みを活かすことなどに集中できなかった。(3)世界中の貿易路の安全が保障されないため、自ら軍隊を展開して、さまざまな土地を占領する必要があった。最古の小麦生産地であるエジプトは、過去2000年ずっと、他国の侵略を恐れ続けていた。(4)英国、フランス、スペイン、ポルトガル、オランダなどは、世界中に植民地を確保した。東南アジアは欧州の支配下に置かれ、搾取され続けた。後発のドイツは植民地が少なく、資源確保のために、ロシア(ソ連)や英仏に戦いを挑んだ。(5)日本は、朝鮮半島、台湾を植民地とし、中国東北部(満州)と東南アジアから搾取しようとした。中国は、外部の干渉を受け続けて、国の基盤を固める安全な環境を得られなかった。 要するに、米国が第二次大戦後の同盟体制を築く以前とは、それぞれの国が、領土の安全の確保、資源の確保、市場の確保のために、お互いを「敵」として警戒し合う必要があった。米国が「世界の警察官」をやめて、世界各地から撤退しつつある現在、少しずつ昔に戻りつつある感じがしないだろうか』、「感じ」はあるとはいえ、実際には、一旦、グローバル化した世界経済の枠組みを昔に戻すことなど不可能に近い、或はその過程で大混乱に陥るのではなかろうか。
・『さまざまな国が米国抜きで稼ぎ米国を「食べさせる」仕組みを作るべきだ  しかし、米国が「世界の警察官」をやめるから、その他の国々は昔に戻る、というだけでは芸がない。米国に守られ、米国市場に自由にアクセスできたことで、奇跡的な高度経済成長を達成した日本やドイツのみならず、韓国、台湾、オセアニアの諸国、北米大陸、西ヨーロッパ、そして後には共産主義の大国である中国までもが、歴史上前例のない安全と豊かさを享受しているのだ。それをただ失うだけというのでは、もったいではないか。 米国に「守ってもらい」「食べさせてもらう」ことで多くの国が生きられるということを超えた、新しい国際社会を築かねばならない。まず変えるべきは、それぞれの国が米国の方ばかりを見ていることだ。端的な例が、日本と韓国である。両国とも、米軍が国内に駐留し、東西冷戦期には、米国が共産主義と対峙するフロントラインの役割を果たした。 だが、日本も韓国も、米国と対話しようとするばかりで、お互い直接対話することには積極的ではないのではないか。米軍に依存してきた安全保障についてなら、それも理解できる。しかし、歴史認識問題のような、純粋に日韓の間の懸案事項でさえ、米国が間に入らないと、まともに話し合えないことがある。 これは、中東におけるサウジアラビア、イラン、イスラエルの関係にも当てはまるだろう。欧州は、経済に関してはEUという話し合いの枠組みがあるが、安全保障についてはNATOがありながら、実際は英国もフランスもドイツも、米国の方を向いて頼りにしている。 米国は「世界の警察官」をやめたとはいえ、軍事力においてはいまだに圧倒的な世界最強の座に君臨している。世界中の同盟国に軍隊を駐留させ続けているし、「世界の暴力団」として、気にいらない国があれば介入する意欲も満々だ。 一方、経済については、これまでのような米国市場への自由なアクセスは許さないという。「米国のモノを買え」とトランプ大統領は明確に言っている。それならば、まずは経済で、米国に輸出することばかりではなく、米国抜きで、お互いに仲良く儲けることを考えてはどうだろうか。 そして、儲けたお金を、米国に投資してあげればいい。米国内に工場を建てるのもよし。「シェールガス」「シェールオイル」に投資するのもいいだろう。米国は今後、「米国に守ってもらい、食べさせてもらう同盟国」は必要としない。しかし、米国は、「米国を食べさせてくれる同盟国」は必要とする(第150回)。米国を儲けさせ続ける国に対しては、米軍は「用心棒」を務めてくれるだろう。 日本は、TPP11、RCEP、EUとの経済連携貿易協定(EPA)など、様々な自由貿易体制の枠組みを使うべきである。また中国が主導する「一帯一路」への積極的な参加(第120回)や、TPP11への英国の参加なども仕掛けていくべきである。TPP11のうち、6ヵ国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)が英連邦加盟国だ。英国のTPP11参加は、日本と英連邦という「巨大経済圏」を結び付けることを意味する(第134回)。 日本は、さまざまな国々が「米国抜き」で互いに儲けて、米国を「食べさせる」仕組みづくりを主導すべきである』、もっともらしいが、よくよく考えると、「「米国に食べさせてもらう同盟国」、「米国を食べさせてくれる同盟国」」という概念はあと1つ明確ではない。貿易関係というものは、こうした一方的な関係ではないからだ。いつもは、説得力ある記事を書く筆者にしては、最後の部分はいささか期待外れだ。

次に、国際ジャーナリストの高橋 浩祐氏が9月7日付け東洋経済オンラインに寄稿した「伝説の記者が暴くトランプのヤバすぎる内実 新著でホワイトハウス奥の院の混乱を暴露」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/236529
・『アメリカのドナルド・トランプ大統領のことを、ジム・マティス国防長官は「小学5、6年生並みの振る舞いと理解力」の持ち主と憤慨する一方、ジョン・ケリー大統領首席補佐官は「彼は馬鹿だ」と陰口を叩く――。 1970年代のウォーターゲート事件をめぐる調査報道で、リチャード・ニクソン大統領を退陣に追い込んだワシントンポスト紙のカール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの両記者。この事件を描いたノンフィクション『All the President’s Men』(大統領の男たち)は映画化され、アカデミー賞4部門を受賞する名作となった。邦題は『大統領の陰謀』で知られる・・・そのウッドワード氏(現・ワシントンポスト紙編集局次長)が、9月11日に新著『Fear: Trump in the White House』(仮訳:恐怖─ホワイトハウスの中のトランプ)」を出版する。その本では、安全保障をめぐるトランプ大統領の無知や衝動的な性格、気に入らない部下を怒鳴り散らすワンマンぶりを暴露、さらにはホワイトハウス内での支離滅裂な政策決定過程をあらわにしている』、トランプはこの出版に怒り心頭のようだ。
・『トランプ政権の「神経衰弱」 この本の刊行に先立ち、ワシントンポスト紙は9月4日、「ボブ・ウッドワードの新著、トランプ政権の’神経衰弱’を暴く」との見出しの記事で、内容を紹介した。 これを受け、トランプ大統領やマティス国防長官、ケリー大統領首席補佐官、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は早速、一斉に「ウッドワードは民主党の工作員か?」「作り話だ」などと反論。アメリカ稀代の調査報道記者が書いた内幕本だけに、政権内でも事態を深刻に受け止めている様子をうかがわせている。 ウッドワード氏は、何百時間にも及ぶ関係者へのインタビューや会合のメモ、日記、政府文書など、自らが直接入手した一次情報の事実に基づいて書いたと自信満々だ。トランプ政権の危うさを改めて世に問うた形で、内外で波紋が広がりそうだ。 ワシントンポスト紙の記事によると、この新著のメインテーマは、「大統領個人と彼が率いる国の双方のために、大統領の衝動を抑えて惨事を防ごうと、ホワイトハウスの奥の院で繰り広げられている数々の権謀術数」についてだ。 大統領側近が大統領執務室の机から政府文書を意図的に引き抜き、大統領に見せないようにしたり、署名させたりしないようにしている。ウッドワード氏はこれを「行政クーデター」、そして、ホワイトハウスの神経衰弱(ノイローゼ)と呼んでいる。 例えば、大統領は2017年春、北米自由貿易協定(NAFTA)から撤退することに躍起になっていた。ホワイトハウスの秘書官だったロブ・ポーター氏は大統領の指示を受け、撤退通知書を作成。しかし、アメリカのNAFTA撤退は経済外交関係で危機を招きかねないことから、国家経済会議(NEC)委員長を務めていたゲイリー・コーン氏と相談のうえ、大統領の机から通知書を抜き去ったという。 また、コーン氏は、大統領が韓国との自由貿易協定を正式に離脱するために署名する予定だった公式文書を、大統領の机から抜き取った。大統領は、文書がなくなっていることに気づかなかったという』、「行政クーデター」があるというのは、僅かとはいえ安心材料ではある。
・『世界情勢をめぐる知識の欠如  世界情勢をめぐる大統領の好奇心や知識の欠如に加え、大統領が軍事・情報当局幹部の主流な見方を軽視することによって、いかにして大統領の外交安全保障チームが動揺しているかを、ウッドワード氏は新著で延々と述べているという。 例えば、大統領は2018年1月19日の国家安全保障会議(NSC)で、北朝鮮からのミサイル発射を7秒で探知できる特殊部隊を含む、在韓米軍の重要性をまったく軽視。なぜアメリカ政府が朝鮮半島で資源を費やしているかと質問したという。 これに対し、マティス国防長官は「第3次世界大戦を防ぐために、我々は行っています」と答えた。 ワシントンポスト紙によると、ウッドワード氏は、トランプ大統領が会議場所から去ると、「マティスは極めて憤慨して動揺していた。そして、側近に大統領は、小学5、6年生の振る舞いと理解力しか持ちえていないと述べた」と説明している』、トランプに限っては、意外性はなく、我々が想定していた通りの展開だ。
・『対北朝鮮政策の実情 トランプ大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を国連総会で「リトル・ロケットマン」とののしり、金委員長が大統領を「狂った老いぼれ」と言い返す。本の中では、そんな米朝の緊張が一気に高まった2017年秋の舞台裏も描かれている。2017年後半は、2人の常軌を逸した罵倒合戦が日に日にエスカレートし、日本の一部の「専門家」の間でも、アメリカによる北朝鮮への先制攻撃は避けられないと主張する人々が少なからずいた。では、実情はどうだったのか。 ウッドワード氏によると、大統領は秘書官のポーター氏に対し、事態を金正恩氏との「意志の競争(a contest of wills)」ととらえ、「これは、すべて指導者対指導者という話だ。男と男の対決だ。私と金の対決だ」と述べたという。要は、大統領も核攻撃を辞さない軍事オプションをちらつかせながらも、内実は「はったり合戦」だったことが描かれている。これは筆者が昨年春先以来、東洋経済オンラインに何度も書いた内容と一致する・・・このほか、シリアのバッシャール・アサド大統領が2017年4月に民間人への化学兵器攻撃を行うと、マティス国防長官に「奴を殺せ!」などと電話で指示。マティス氏は「直ちに取り掛かります」と述べたものの、電話を切った後に側近に「我々はそのようなことはしない。もっと慎重な姿勢で臨む」と述べたという。これで結局、通常の空爆におさまったという。 首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏と、トランプ氏の長女で大統領補佐官のイヴァンカ氏の激しい口論のシーンも描かれている。大統領首席補佐官だったラインス・プリーバス氏を介さずに、仕事を遂行するイヴァンカ氏に対し、「君はスタッフの1人だ」などとバノン氏は怒鳴り散らした。これに対し、イヴァンカ氏は「私は決してスタッフではない。長女だ!」などと反論したという。 トランプ政権の中心メンバーの間では、こうした緊張が沸点に達しており、プリーバス氏は、彼らの関係についてライバルではなく、「天敵」同士と説明したという。 「ヘビ、ネズミ、ハヤブサ、サメ、アザラシを壁のない動物園に入れたならば、事態は悪化し、血みどろになる」とプリーバス氏は述べたとされる』、あきれる内容だが、動物園の比喩はなかなか面白い。
・『電話での直接対決 トランプ大統領とウッドワード氏は2018年8月14日に電話で「直接対決」した。ワシントンポスト紙が9月4日に公開した、その録音音声も生々しい。 ウッドワード氏は、大統領に直接取材をするために、大統領顧問のケリーアン・コンウェイ氏や、ホワイトハウス広報部長だったホープ・ヒックス氏、ラジ・シャー副報道官、リンゼー・グラム上院議員ら6〜7人に接触したことを明らかにした。だが、大統領への事前の直接取材は叶わなかった。 これに対し、大統領は「ネガティブな本になるんだね」などと言いながら、事態を受け止め、雇用の回復や北大西洋条約機構(NATO)加盟国への防衛費負担増といった自らの業績を必死にアピールしている。本の中では、マティス国防長官が、安全保障を議題にしていても、大統領はすぐに移民やニュースメディアの話題に脱線するきらいがあると指摘しているが、そうした脱線傾向は、ウッドワード氏との電話の中でも十分にあらわになっている。 トランプ大統領の常軌を逸した言動や、マティス国防長官とケリー大統領首席補佐官の辞任観測はこれまでも至る場で指摘されてきたが、この本はトランプ政権の危うさを改めて世に示した格好だ。 大統領をはじめ、政権幹部は早速、「でっち上げの作り話」などと反論し、ウッドワード氏とその本の信用を貶めることに躍起になっている。しかし、ウォーターゲート事件をめぐる調査報道でも、ウッドワード氏は当初からホワイトハウスに報道を一貫して否定されていた。 ベテランの調査報道記者による著作なだけに、事実確認に抜かりはないと推測できる。本の出版を契機に、政権幹部間の相互不信が高まり、さまざまな「大統領の男たち」がさらにうごめき始めるかもしれない』、中間選挙を控えているのに、政権内で足の引っ張り合いとは、面白い展開になってきた。

第三に、グレッグ・プライス氏が9月7日付けNEWSWEEK日本版に掲載した「側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/post-10927_1.php
・『この世で信用できるのはもう自分の子供たちしかいない──ドナルド・トランプ米大統領は、匿名の政府高官の論説が9月5日の米紙ニューヨーク・タイムズに掲載されたとき、そう悟ったようだ。同高官は、トランプには「道徳観念がない」などと批判し、彼が国を滅ぼさないよう政権幹部や高官が内部から悪政を止めている、と暴露した。 以前は、トランプには信頼できるごく少数の側近がいた。だが、米紙ワシントンポストが知人の話として伝えたところでは、彼はもはや自分の子供たちしか信用できないと確信したと言う。 トランプは2016年の米大統領選で勝利に貢献した長女イバンカとその夫ジャレッド・クシュナーをホワイトハウス入りさせた』、身内しか信用できなくなったというのは、まさに末期的だ。
・『元側近は寝返り 政治経験のないイバンカとクシュナーをホワイトハウス入りさせたうえ、彼らを女性の権利や中東和平交渉、刑務所改革といった中核的な政策の責任者にしたことで、トランプはさんざん批判された。 しかもイバンカとクシュナーは、トランプ周辺への権力集中と政敵の排除を狙ってメディアに情報をリークした疑惑を持たれている。彼らと激しく対立して標的にされたよい例が、2017年8月に更迭されたスティーブン・バノン前首席戦略官だ。 トランプが部下の忠誠心を重視することは有名だが、彼は最近、最も忠実だったはずの側近に相次いで裏切られた。元顧問弁護士で汚れ役もやったマイケル・コーエンは8月21日、ニューヨーク連邦裁判所で選挙資金法違反など8つの罪について有罪を認めたうえで司法取引に応じ、トランプの不倫相手とされる元ポルノ女優ら2人に「口止め料」を「トランプの指示で」支払ったと証言した。 事実なら、トランプは当選するために選挙資金法に違反したことになる。トランプが司会を務めた人気テレビ番組「アプレンティス」に出演した黒人女性で、昨年末に更迭されたオマロサ・マニゴールド元大統領補佐官も、8月14日に暴露本を出版し、トランプの精神状態は衰えているなどと酷評した。 ワイセルバーグもトランプを裏切ったもようだ。彼はコーエンがトランプの指示で口止め料を支払ったとされる疑惑をめぐり、米検察当局の捜査協力に応じる代わりに刑事免責を受けた、と米メディアが8月24日に一斉に報じた。 トランプはニューヨークタイムズの論説に激怒し、ホワイトハウスは犯人探しや内容確認で大混乱に陥っているという。 その高官は論説で、政権内の少なからぬ政権幹部が団結して、今後もトランプに税制改革や国防費増額といった保守的な政策課題を積極的に実現させる一方、彼が民主的な制度を損なうのを阻止するためにできる限りのことをやる、と誓った。 自分たちは政権内部の「レジスタンス(抵抗勢力)の一員」だと主張。トランプの統率力には道徳的な基盤がない、と批判した。 「問題の根本は、道徳観念がないことだ。トランプの下で働く誰もが、彼には意思決定に至るための原理・原則がないと知っている」』、「政権内部の「レジスタンスの一員」」とは、第二の記事の「行政クーデター」に近いものだ。「彼が民主的な制度を損なうのを阻止するためにできる限りのことをやる」というのは、頼もしそうだが、所詮、限界はあろう。

第四に、在米作家の冷泉彰彦氏が9月8日付けNEWSWEEK日本版に寄稿した「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代| :トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2018/09/post-1028_1.php
・『11月のアメリカ中間選挙までちょうど1カ月となり、選挙戦はいよいよ本格化してきました。まず大枠で見ると、半年前の春の4月ごろと比較しますと情勢が一変していると言えます。大きな変化としては2つあります。1つは大統領側近の有罪などを契機として「弾劾(Impeachment)」という言葉が、明確に語られるようになったことです。 大統領自身までも再三にわたって「自分が弾劾されたら......」などと口にするようになり、この言葉へのタブー感は消えました。民主党の候補の多くは、公約に「大統領弾劾」を掲げるようになっています。 2つ目は選挙情勢です。春先には「共和党が絶対多数の下院をひっくり返すのは不可能」で、「問題は民主党が上院の過半数を奪い返すか」だと言われていました。ですが、現在の情勢は全く違っています。下院では、多くの選挙区で民主党が議席を奪う構えとなっている一方で、主戦場は再び上院になっているのです。 多くの世論調査データを集計している有名な政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」によれば、現時点での世論調査集計に基づく情勢分析としては、 ▼上院......民主44、共和47、拮抗9(非改選含む、過半数は51) ▼下院......民主201、共和191、拮抗43(過半数218) となっています。 下院では、司法委員会の議決を経たのちに、単純過半数すなわち218票で「弾劾発議」つまり、大統領を罷免する弾劾裁判の起訴ができてしまうわけで、これは深刻な事態です』、下院選挙結果如何では弾劾が現実味を帯びてきたとは、興味深い展開だ。
・『そんな中で、先週アリゾナとワシントンで行われた一連のジョン・マケイン議員の葬儀では、トランプ大統領の「不在」が目立ちました。ペンス副大統領、マティス国防長官、ケリー首席補佐官などが列席して存在感を見せる一方で、「招待されていない」こともあって葬儀の時間にゴルフをしていた大統領は、これで明らかに中央政界における、そして全米においても「存在感のなさ」を印象付けたように思われます。支持率も、ここへ来て40%ギリギリのところまで急落しています。 一方で、9月11日に発売予定とされるボブ・ウッドワード著のドキュメント『恐怖(FEAR)』が大変な話題になっています。ウッドワードといえば・・・ニクソンを追い詰めた伝説のジャーナリストです。 その後も、ブッシュ政権の内幕暴露本でも政界に激震を走らせた実績もある人物です。そのウッドワードの今回の本は、ホワイトハウスの周辺に徹底取材を仕掛けて、その膨大な内容から「ホワイトハウスの混乱」を暴き出しているそうです。 特に、マティス国防長官が「大統領はシリアのアサドを暗殺しようとしたが、私は反対して止めさせた」とか「大統領の思考能力は小学校6年生、いや5年生レベルだ」などと発言したとか、ケリー首席補佐官は大統領のことを「バカ」といっていたなど、生々しいことが書かれているのです。ある側近は、ホワイトハウスのことを「クレージータウン」と称しているそうで、この「クレージータウン」というのは流行語になりそうです。 トランプ政権の暴露本といえば『炎と怒り』が有名ですが、こちらは主として政権をクビになったスティーブ・バノンの「放言」がネタ元で、著者は無名のライターだったわけです。ですが、今回の『恐怖』の場合は、著者は超大物でネタ元は膨大な人数による膨大な証言の蓄積ということで、インパクトは比べ物にならないと思われます。 大統領の「コアの支持者」については、このぐらいの「攻撃」ではビクともしないのかもしれませんが、中間層であるとか、共和党支持者の中でも穏健派の人々については、ここへ来て大統領への支持は下がってきていると見ていいでしょう』、マケイン議員の葬儀では、「招待されていない」トランプ大統領が葬儀の時間にゴルフをしていた、というのは身から出たサビとはいえ、やはり寂しい思いを噛み締めていたのではなかろうか。ホワイトハウスのことを「クレージータウン」とは、よくぞ上手い表現をしたものだ。
・『では、共和党全体に動揺が見られるなかで、民主党が中道層や無党派層をまとめ切れるのかというと、そこにも不安要素があります。民主党陣営では、今回の中間選挙の候補者を選ぶ予備選を通じて「左シフト」とでも言うべき現象を起こしているからです。最新のケースとしては、9月4日に行われたマサチューセッツ(MA)州7区の民主党下院予備選です。 この「MA7区」ですが、現在はマイク・カプアーノというベテラン議員が10期連続で(区割り変更を含む)当選しています。そこに今回チャレンジャーとして登場した、アフリカ系女性のアヤナ・プレスレー候補が、59%対41%という大差で勝利しています。 プレスレー候補の政策は、バーニー・サンダース上院議員に大きく影響を受けた民主党左派で、公約には「メディケア・フォー・オール(欧州や日本タイプの国民皆保険の実現)」「トランプ大統領の即時罷免」「ICE(移民取締官制度)の廃止」といった内容を掲げています。 こうした民主党の「左シフト」には、2016年の選挙でサンダース候補を応援した30代以下の熱狂的な支持がある一方で、せっかく「トランプ離れ」を起こしている中道票を取り逃がす危険もあるわけです。ただ、こうした左派が躍進する格好で、民主党が大勝すれば、時代の歯車は大きく動くことになるのは間違いありません。中間選挙ではそこが大きな注目ポイントになります』、中道票を取り逃がす危険性の方が大きそうだが、アメリカ国内の分断がますます進んでいるようなのは、気になるところだ。
明日もトランプ大統領を取上げる予定である。
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