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ギリシャ問題(その2) [世界経済]

ギリシャ問題については一昨日、取上げたが、今日はギリシャ国会が財政改革法案を採決し、支援条件の1つがクリアされたことで、その2として取上げよう。

まずは、最近の動きを簡単に振り返っておこう。6月下旬に支援策が一旦まとまりかけながら、最後の土壇場になってギリシャのチプラス首相が財政再建策の是非を国民投票にかけると言い出し、ユーロ圏首脳をあきれさせた。投票結果は財政再建策に反対が多数となった。チプラス首相はこの結果をもとに再び交渉に臨んだが、EU側は支援には財政再建策が必要との立場を崩さず、かえってより厳しい条件が付けられた。

13日の合意に至った緊迫した舞台裏を14日付けJBPress(FT)「ギリシャがユーロから離脱しかけた瞬間 マラソン会議の舞台裏、「この部屋から出すわけにはいかない」」のポイントで見てみよう。
・ギリシャがユーロ圏離脱の瞬間に最も近づいたのは7月13日の午前6時前後。ギリシャのチプラス首相とドイツのメルケル首相は過酷な話し合いを14時間続けた末に、行き詰まったと考えた
・もう妥協の余地はなく、交渉を続ける理由も見当たらなかった。グレグジット(ギリシャがユーロ圏離脱)だけが唯一の現実的な選択肢。2人が部屋のドアに向かって歩き始めた時、動いたのはトゥスク欧州理事会議長(ポーランドの前首相)。ユーロ圏の歴史に残る分裂の引き金が、疲労と苛立ちによって引かれるのを阻止しようと、「悪いが、この部屋から出すわけにはいかないんだ」
・最後までもめたギリシャ民営化基金。差し押さえたギリシャの国有資産を裏付けに設立する民営化ファンドの規模と目的。メルケル氏は、500億ユーロの資産を売却して債務の返済原資にしたいと考えていた。一方のチプラス氏は、ギリシャの国民所得の3分の1近い価値のある資産の支配権を差し出せというのは国家に対する侮辱だと見なした。そこで、同氏はファンドの規模をもっと小さくする、そして売却代金はギリシャに再投資されるようにするという代案
・いろいろな仕組みを1ダース近く、1時間以上かけて検討した結果、ようやく妥協点を見いだすことができた
・この前々日に当たる土曜日にはユーロ圏財務相会合。9時間近くを議論しながら成果が得られなかったことから、財務相の半数以上は、残された選択肢の中ではギリシャのユーロ圏離脱こそが最も害が少ないかもしれない、という厳しい結論
・議論が最高潮に達したのは、一時的なグリグジットという案を提唱したドイツのショイブレ財務相が、ECBのドラギ総裁に怒った時。「私は馬鹿じゃない」と声を荒げたショイブレ財務相(ショイブレ氏はある時点で、自分の能力が過小評価されていると感じ、ECB総裁に向かって「(私は)馬鹿じゃないぞ」と声を荒げた
・これを聞いたユーログループ(ユーロ圏財務相会合)のデイセルブルム議長は限界を超えたと判断し、会議を翌朝まで休会とした。土曜日には完全な合意に至らなかったため、ユーログループは日曜日、ユーロ圏の首脳会議にバトンを手渡した
・首脳たちの徹夜の会議の始まりだ。時間が経ち、日曜から月曜へと日付が変わるにつれてグリグジットの可能性が高まっていくように思え、概ね不毛な交渉が6カ月続く間に生まれた、睡眠不足の政治家や外交官たちの間の亀裂がますます大きくなったという
・オランド大統領は民営化基金に関する妥協をまとめるためにメルケル氏とチプラス氏をトゥスク氏のオフィスに招き入れた。最後には成功したものの、この交渉は、長年欧州プロジェクトの核となってきた仏独関係を緊張させたように見えた。「ドイツには、グレグジットを求めるかなり強い圧力があった。私はその解決策を拒んだ」(オランド氏)。特に民営化基金については、オランド氏はチプラス氏に後ろ盾を与え、これは「主権」の問題だと語った。「ギリシャに屈辱を与える以上にひどいことはなかった。ギリシャが求めていたのは施しではなく、ユーロ圏からの連帯だ」
・オランド氏はまた、ギリシャによる一時的なユーロ圏離脱――ショイブレ氏がユーログループの提案に盛り込ませた物議を醸す構想――の可能性を最終文書から削除するよう主張
・一番苦しんだのが誰かということについては、意見が一致。「彼らは中でチプラスを磔にした」(サミットに参加したあるユーロ圏政府高官)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44302

次に、ドイツの置かれた立場をよりユーロの根本的な仕組みから専門的に説明するものとして、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏が、16日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ドイツのギリシャ切り捨てを許さない巨額貸付の重荷」のポイントを紹介しよう。これはEUを通じた通常の支援とは別の仕組みである。
・ユーロには、中央銀行であるECBを通じたターゲット2(TARGET2)と呼ばれる決済システムがある
・ユーロ危機で膨れ上がった赤字国の債務と黒字国の債権
・ターゲット2を通じて、ドイツ連邦銀行が、ECBに対して、巨額の貸出を、言わば「自動的に」行なってしまっている。しかも、そうした貸出が行なわれたこと自体が、一般のドイツ国民に必ずしも正確に理解されていたわけではない。「気がついたら、とんでもない貸出をすでに行なっていた」というような状態
・仮にギリシャがユーロを離脱し、ギリシャ中央銀行が債務不履行に陥り、返済不能になると、ドイツなど黒字国には巨額の損失が発生するのではないかとの懸念がドイツ国内で浮上
・「いまになってギリシャを離脱させたくとも簡単にはできない」という状況になってしまっている。ギリシャはドイツのこのような弱みを知っているから、交渉も強腰になる
・ターゲット2バランスとは、ユーロ参加国中央銀行のECBに対する債権・債務なので、ギリシャ中央銀行が債務不履行しても、損失を被るのはECB
・ECBが被る損失はECBへの出資比率に応じて各国が負担。約27%の出資比率のドイツ連邦銀行は、巨額の損失を被ることになる
・政治同盟なしの通貨同盟が抱える基本的な問題。ユーロの基本的矛盾が いま再び露呈
http://diamond.jp/articles/-/75035

ユーロ圏首脳のタフな交渉ぶるには改めて驚かされた。
今回支援策の欧州安定メカニズム(ESM)を通じた資金援助には、ドイツやフィンランドなど6カ国で国会の事前承認が必要になるため、支援再開にはさらに時間がかかりそうで、6月末以降続いているギリシャ銀行休業はまだ続きそうだ。他方、今日付けの日経新聞は、「IMF報告書「大幅な債務減免必要」」と題して、財政を持続可能にするため、30年間の返済猶予や元本削減など、EUの想定を超える大きな債務減免が必要と強調とたと伝えた。合意された支援策には債務減免は含まれてないだけに、チプラス氏がまた勢いづく懸念もありそうだ。
明日は金曜日で更新を休むので、土曜日にご期待を!
タグ:野口悠紀雄 国民投票 決済システム ギリシャ問題 JBPRESS ユーロ圏財務相会合 ギリシャ国会 オランド大統領 財政改革法案を採決 財政再建策の是非 かえってより厳しい条件 ギリシャがユーロから離脱しかけた瞬間 マラソン会議の舞台裏、「この部屋から出すわけにはいかない」 ユーロ圏離脱の瞬間に最も近づいたのは7月13日の午前6時前後 過酷な話し合いを14時間続けた末に、行き詰まった 2人が部屋のドアに向かって歩き始めた時 動いたのはトゥスク欧州理事会議長(ポーランドの前首相) 悪いが、この部屋から出すわけにはいかないんだ ギリシャ民営化基金 差し押さえたギリシャの国有資産を裏付けに設立する民営化ファンド 国家に対する侮辱 9時間近くを議論しながら成果が得られなかった 一時的なグリグジットという案を提唱 ドイツのショイブレ財務相 ECB総裁に向かって「(私は)馬鹿じゃないぞ」と声を荒げた ドイツには、グレグジットを求めるかなり強い圧力があった。私はその解決策を拒んだ ギリシャによる一時的なユーロ圏離脱 の可能性を最終文書から削除 彼らは中でチプラスを磔にした ドイツのギリシャ切り捨てを許さない巨額貸付の重荷 ターゲット2 ユーロ危機で膨れ上がった赤字国の債務と黒字国の債権 ドイツ連邦銀行が、ECBに対して、巨額の貸出を、言わば「自動的に」行なってしまっている 一般のドイツ国民に必ずしも正確に理解されていたわけではない ギリシャ中央銀行が債務不履行に陥り、返済不能になると、ドイツなど黒字国には巨額の損失が発生 いまになってギリシャを離脱させたくとも簡単にはできない ギリシャはドイツのこのような弱みを知っているから、交渉も強腰 ECBが被る損失 ECBへの出資比率に応じて各国が負担 6カ国で国会の事前承認が必要 ESM)を通じた資金援助 IMF報告書「大幅な債務減免必要」
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