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フィンテック [金融]

今日は、今話題の金融とIT(情報技術)が融合したフィンテックを取上げよう。

先ずは、大蔵省出身で早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏が、昨年11月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「銀行の利益が6割減、フィンテックがもたらす破壊的影響」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・フィンテックについて、日本ではバラ色の未来が訪れるような報道が多い。しかしデジタル革命は、一般に破壊的な影響力を持つ。金融業が情報産業である以上、甚大な影響を受けないはずはない。
・マッキンゼーは、9月に発表した『グローバルバンキング・アニュアルレビュー』の2015年版において、今後10年間で、フィンテックによって銀行の利益が60%減少し、売り上げが40%減少すると予測した。
・こうした大変動に対処するため、欧米の金融機関は積極的な取り組みを行なっている。日本の金融機関はどうするのか?
▽市場規模は4年で2倍以上に拡大 スマートフォンを用いた決済サービス
・フィンテックとは「ファイナンス・テクノロジー」の略である。金融とIT(情報技術)との融合による新しい技術革新を指す。
・ITの影響が、金融分野にも及んできているということだ。ただし、そうした変化は、だいぶ前から生じている。例えば、電子マネーの一種であるSuicaなどは、すでに大都市に住む日本人の日常生活に不可欠なものになっている。
・最近言われるのは、スマートフォンを用いた新しいサービスが中心である。とくに、一般の消費者などが便利に使える新しい決済サービスだ。 これらは、スマートフォンやタブレット端末をクレジットカードの決済端末にするサービスであり、「モバイル決済」と呼ばれる。アメリカを中心に大きな広がりを見せ始めている。
・アップルは昨秋、決済サービス「アップルペイ」を開始した。クレジットカードの情報がiPhone6の中に入っているので、カードを持ち歩く必要はない。 グーグルは「グーグルウォレット」と呼ばれる決済アプリをスマートフォンに標準搭載するよう、AT&Tなどの大手通信会社と提携している。 ツイッターの共同創業者兼会長のジャック・ドーシーが2009年に創業した「スクエア」は、スマートフォンに装着した簡易リーダーで手軽にカード決済ができるサービスだ。これを中小事業者などに提供している。
・日本では楽天が「楽天スマートペイ」を、ベンチャー企業が「コイニー」(Coiney)のサービスを展開している。ペイパルによる「PayPal Here」もある。
・アメリカのメタップス社によるオンラインクレジット決済サービス「SPIKE」も登場した。一定限度までは手数料ゼロという破壊的なサービスだ。 中国のメッセージサービス「微信」(ウィーチャット)を運営する中国の騰訊控股(テンセント)は、昨年の旧正月から個人間の送金サービス「微信紅包」を始めた。
・米調査会社のガートナーによると、世界のモバイル決済の市場規模は、13年の30兆円規模から、17年に70兆円規模まで拡大する。
▽貸し出しなどの分野でも新サービスが次々登場
・貸出の分野でも、新しいサービスが登場している。 ネットで不特定多数から資金を集める「クラウドファンディング」はしばらく前からある。これまで難しかった中小企業や個人事業主の資金調達を容易にする。 ソーシャルレンディング」(または、Peer-to-peer lending)は、ネット上でお金を借りたい人や企業と、貸したい人や企業を、さまざまな方法で結びつける融資仲介サービスである。銀行に代わる金融仲介になりつつある。最大手のアメリカのレンディングクラブが2014年12月に上場し、時価総額が1兆円になった。これは、横浜銀行の時価総額を超える。
・中国のネット決済市場で5割のシェアを握るアリババは、決済で得た顧客データを駆使し、小口金融に乗り出している。 以上の他、不正監視、口座管理などの新しいサービスもある。また、ビッグデータや人工知能などの技術を使った資産管理サービスなども登場している。
▽フィンテックは実は革命的変化ではない 真の革新は銀行システムを超える存在の出現
・電子マネーはすでに存在しているが、広く使われるには至っていない(Suicaなどは、日本の大都市の通勤客がほとんど電車を利用するという特殊事情があったからこそ、急速に普及した)。大きな理由は、送金コストが高いことである。それは店舗の負担になる。
・このコストを大幅に下げることができれば、大きな変化が起きる。利用者の側から見ると、あまり大きな変化が起きたようには見えないが、店舗の負担が軽減されれば、多くの店舗が採用する。その結果、利用が拡大する。
・ところで、いまフィンテックで言われている変化は、この問題の基本を解決するものではない。クレジットカード手数料は、それまでは4~5%だった。そこにスクエアが「破格の手数料」を導入したと言われた。しかし、手数料は3.25%だ。下がったことは事実だが、「大幅に」とは言えない。これでは、利益率が3%程度に届かない事業者は利用することはできない。従来のクレジットカード決済に比べて利用店舗が増えることは増えるだろうが、「革命的な変化」というわけではない。
・重要なのは、送金の基幹システムだ。それが変化しないと、コストは大きくは下がらない。とくに、海外送金においてはそうだ。
・ビットコインの基礎になっているブロックチェーンの仕組みは極めて革新的で、送金の姿を基本的に変えてしまう(本連載の第27回を参照)。それに対して、スマートフォン上のサービスは、これまでよりは便利になるということであって、連続的な変化だ。革命的な変化というわけではない。
・問題は、現在の通貨システムの枠内で、銀行やクレジットカード会社と協力して事業を行なうか、それともまったく新しいシステムを採用するかである。電子マネーをはじめとして、フィンテックの枠内で語られる多くのものは、前者である。
・本当に革新的な変化とは、銀行システムを超えるシステムが現れることだ。それには、送金システムがブロックチェーン技術を用いる分散型のものに変わる必要がある。中央集権的なシステムである限り、大きな変化はない(IoTについても、同じことが言える。これについては、本連載の第28回で述べた)。 新興国において、リープフロッグ的にそうした変化が生ずる可能性がある(「リープフロッグ」とは、ある段階を経由しないで、つぎの段階に進歩すること)。
▽破壊者としてのフィンテック 競争環境が一変、銀行の収益が激減する
・実際、新しい金融サービスは、既存の金融機関の機能の一部を代替する存在となってきている。 金融業界における競争は、従来は基本的には金融機関同士の競争だった。しかし、フィンテックが進むと、競争環境が一変するとの意見がある。
・アメリカのコンサルティング会社マッキンゼーは、今年の9月に発表した『グローバルバンキング・アニュアルレビュー』の2015年版で、フィンテックが金融機関の利益を大きく減少させるとの分析を発表した。このレポートは日本では注目されていないが、欧米では、衝撃をもって受け止められている。
・これについては、フィナンシャルタイムズの解説がある(McKinsey warns banks face wipeout in some financial services,The Financial Times September 30, 2015.)。 それによると、銀行のモーゲッジ貸付(住宅ローン)以外の消費者向け貸付(クレジットカード、自動車ローンなど)の分野で、今後10年間で利益が60%減少し、売り上げが40%減少する。 また、送金、中小企業への貸し出し、および資産管理の分野では、利益が10%から35%減少する。
・こうしたことが生じる大きな原因は、これらのサービスを提供するコストが下がることだ。そのため、IT企業は、低い価格で利用者にサービスを提供できる。こうして、利益率が最も高い部分をIT企業がとってしまうというクリームスキミング現象が起きる。
・マッキンゼーの分析によると、銀行の収益構造は、つぎのとおりだ。新規ビジネスでの昨年の利益額は1.75兆ドルで、株式収益率は22%。それに対して、残高を維持するサービスでの昨年の利益額は2.1兆ドルだが、株式収益率はわずか6%だ。IT企業は、前者のタイプのサービスを銀行から奪ってしまうのである。
・ただし、利益の大幅な減少は、まだ生じていない。マッキンゼーの推計によると、アジア諸国(とくに中国)の急成長と、アメリカでの金融危機からの回復により、全銀行部門の昨年の利益は1兆ドルに達した。金利は低下したが、コスト削減努力を行なったため、株式収益率は9.5%に維持できた。
・しかし、金融関係のITスタートアップ企業の数は1万2000にも上るので、1兆ドルの利益の配分が変わってしまうことは、十分ありうる。最も可能性が高いのは消費者に直接結びついたリテールバンキングだ。アップルやグーグルなどの大手も送金サービスに参入してくるので、この分野の利益率が低下する。
・すでに述べたように、フィンテックによるコストの変化は、あまり大きなものとは言えない。それにもかかわらず、これだけの変化が起こるのである。仮にブロックチェーン技術が広範に用いられるようになれば、金融業には革命的な変化が起きるだろう。
▽銀行は規制が強いから大丈夫? 日本の金融機関は変化に対応できるのか
・では、金融業界においてベンチャー企業が成長し、銀行に代替するようなことになるのだろうか? こうした事態になるかどうかについては、見方が分かれる。
・金融分野でのベンチャー企業の成長には限度があるとの意見もある。その理由は、銀行業では規制が強いことだ。 この見解によれば、新しい技術が登場することと、それが業界の構造を変えることは、原理的には別である。
・これまでのITでは、それが同じだった。例えば、ウェブでのショッピングが可能になり、いくつかの分野でウェブショップが従来の店舗に取って代わった。例えば、アマゾンが在来型の店舗であるボーダーズなどを打ち負かした(ボーダーズは、アメリカではバーンズ・アンド・ノーブルに次いで2番目に大きい書店チェーンだったが、2011年に経営破綻した)。
・しかし、金融の場合には、これと事情が違う。 相手である銀行が社会的に非常に強い勢力だ。また、さまざまな規制があって、自由に参入することができない。 さらに、銀行が新しい技術を自ら開発する可能性がある。ビットコインの場合もそうであって、銀行が独自のブロックチェーンを導入すれば、一般の利用者にとっては何の変化もなく、銀行の利益が増加するというだけのことになるだろう。
・マッキンゼーのレポートが言うようにITベンチャーが金融でも成長するのか、それとも銀行の支配が変わらないのか、どちらになるか、まだ分からない。ただし、金融業が大きな変革を強いられることは間違いない。
・ただし、マッキンゼーのレポートも、銀行がフィンテックに対応することは不可能ではないとしている。 事実、欧米の金融機関は、新しい動きに積極的に対応しようとしており、そのためにベンチャー企業等への出資・買収などを行なっている。
・とりわけアメリカでその動きが活発だ。リーマンショック後からフィンテック企業への出資が始まり、14年の投資額は全世界で1兆円程度に上ったと言われる。シティグループやJPモルガン・チェースはベンチャー企業の買収などを通じて、金融に関連するITビジネスを傘下に収めた。
・これに対して日本では、銀行の産業支配につながる異業種への参入は厳しく規制されている。したがって、銀行がIT企業に出資したり買収したりすることには、法制上の制約がある。このような規制は、国際競争上不利だとの声もある。日本では、フィンテック企業への出資は50億円程度にとどまると言われる。 報道によれば、そうした声を背景として、金融庁は、銀行が電子商取引やスマートフォン決済などの事業を運営できるように、17年ぶりに銀行規制を緩和する。しかし、日本では、制度的な制約が取り払われたとしても、新しい分野の開拓にはあまり強い関心を示さないのではないだろうか?
▽銀行が未発達な地域では ITは確実に金融を変える
・ところで、以上は、銀行システムが整備されている社会のことである。しかし、銀行システムが未発達な地域もある。アフリカ、東南アジア、南米などがそれだ。これらの地域では、銀行の支店網は大都市を離れればほとんど存在せず、そのため、銀行預金を持つ人の比率は非常に低い。こうした地域では、ITが金融に与える影響は、まったく違う形になる。
・拙著『仮想通貨革命』(2014年、ダイヤモンド社)で紹介したケニアのエムペサがその典型例だ。これは、アフリカのサファリコムが提供する携帯電話を用いた送金サービスだ。エムペサは、ケニアにおける送金事情を一変させた。いま、同種のサービスが、他の発展途上国に広がりつつある。
・また、ビットコインを用いた国際間送金サービスも誕生している。これについては、この連載ですでに紹介した(本連載の第18回)。  本当に革新的な変化とは銀行システムを超えるようなシステムが現れることである。そうした変化が、発展途上国においてリープフロッグ的に生ずる可能性がある。
http://diamond.jp/articles/-/81095

次に、銀行時代に決済システムを担当していた経済学博士・エコノミストの宿輪純一氏が、本年1月6日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「金融革命の起爆剤となるか フィンテックの実像と銀行経営へのインパクト」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「フィンテック(Fintech)」についての議論が喧(かまびす)しい。決済業務を銀行から奪取するとか、「ネオバンク(Neo Bank)」とまでいわれ、銀行経営を圧迫すると指摘する向きもある。フィンテックは銀行経営にどんな影響を及ぼすのだろうか。
▽フィンテックとは何か そのサービスと技術の全貌
・フィンテック(Fintech)とは、Finance(金融)とTechnology(技術)を合わせた造語である。そもそもは、金融機関向けシステムを指す言葉だったが、近年、銀行以外の金融系ベンチャー企業が、システムを駆使して行う「新金融スキーム(New Financial Scheme)」を指すことが多くなってきている。
・フィンテックの有名なスキームには、米国のショッピングウエブサイト「eBay」の決済として発展した「PayPal(ペイパル)」、中国の最大のショッピングウエブサイト淘宝網(タオバオワン)の「Alipay(アリペイ:支付宝)」、ケニアの銀行口座を持たずに決済できる「M-ペサ(エムペサ:M-Pesa)」、そして「Bitcoin(ビットコイン)」などがある。これらのほとんどは、ネットの商品購買の決済、そして送金などの決済といったオンライン決済サービスである。従来の金融サービスと比べ、手続きが簡便で、手数料が安いという特徴があるが、リスクの面ではやや不安ということである。ケニアでは慎重な日本人はM-ペサは便利であっても使わない。
・フィンテックの将来を考えるにあたり、特徴を以下に挙げてみる。
(1)現在フィンテックといわれるサービスは15年以上前からある フィンテックという言葉自体は新しい印象があるが、昨年に始まったわけではなく、意外と前から営業している。PayPal は1998年、Alipayは2005年、M-ペサは2010年、ビットコインは2009年から営業を開始している。つまり、フィンテックは継続的なイノベーションの流れの一環と考えられるのである。
(2)「個人向け」サービスが主である   「ネオバンク」ということで、銀行業務全体に影響があるように考えられ、一部には恐怖感もあるようである。しかし、まず、その特徴はネット系であり、融資にしても個人(リテール)がその対象である。ビットコインにしても、PtoP(Peer to Peer:Peerは端末のイメージ)、すなわち、個人間のダイレクト取引が主である。
(3)「決済」サービスが主である  フィンテックといわれている新金融スキームの約6割以上が、実は商品の決済、あるいは送金といった「決済」サービスである。つまり、フィンテックは個人間の決済サービスということになる。
(4)「企業通貨」を利用することが多い  フィンテックの決済サービスは自社の通貨「企業通貨(電子マネー)」を使うことが多い。
(5)「ブロックチェーン技術」を使うものもある  また、仮想通貨(ビットコイン等)も一種の企業通貨であるが、「ブロックチェーン技術(Block Chain Technology)」を活用するものもある。
・「ブロックチェーン技術」とはビットコインなどの仮想通貨を支えるコア技術である。「取引記録」をまとめた「ブロック」を、「チェーン(鎖)」のように順次繋いでいく仕組みである。ブロックチェーン技術は「取引を記録した公開取引簿の作成・維持を金融機関や取引所といった「中央集権的な機関」を用いずにネットワーク上で実現する。もちろん、取引のコストは従来と比べて約1割と予想されている。通常の銀行の決済との違いは、全ての決済の情報は、“P2Pネットワーク全体”で“共有”される。
・これは一言でいうと「銀行や決済システムはずしの決済スキーム」である。そのため、脅威として、銀行は注目しているのである。
・取引の内容は公開(共有)され、相互で確認するためデータ改ざんは困難であるが、その計算処理端末の多くが中国にあるという話も聞く。このように公開性を強みとするが、逆に銀行にとってみると問題なのである。さらに中央的な管理主体が存在しないために、マネーロンダリングを始めとした「法的な管理責任」を誰が負うのかという問題もある。
▽フィンテックは銀行の決済業務を変えるか?
・銀行業務、特に銀行が行っている決済業務とフィンテックを比較しながら考えてみよう。銀行の決済業務の考え方は、中央の勘定系基幹システムで顧客の口座をキチンと管理しながら、そこから発生する「決済フロー」を実行するというものである。
・銀行の決済業務は社会インフラとしての使命を背負い、責任を持って行っている。しかも、最近のマネーロンダリング対策等の厳しい法的規制への準拠やシステム対応のために莫大なコストを掛けている。 銀行の場合、日本での決済は、基本的には日本の通貨である「円」で行う。さらに、決済(為替・振込)は、「銀行間」のネットワークを使うが、先進国では一般的であるが中央機関である「決済システム」を使用して行う。さらに、決済の主体は、顧客(リテール)だけではなく、法人、そして銀行自身も行っている。
・では、具体的に重要なポイントを見て行こう。
(1)決済は通貨  決済通貨は銀行の場合には日本国内では日本の通貨「円」である。それに対し、フィンテック企業は自社の「企業通貨」であることが多い。外部、たとえばクレジットカードからの入金や、現金によるプリペイドカードの購入などで、企業通貨を獲得する。その企業通貨を使って、商品を購入し、送金する。「企業ポイント」も企業通貨に変換でき、決済に使用できるならば、企業通貨と変わらない。 企業通貨はその企業が倒産等でトラブルになったときに、紙くずになる可能性がないとはいえない。ちょうど企業振出し小切手のようなものであるから、注意が必要である。このリスクが日本ではあまり認識されていないようである。さらに決済をきちんと実行できるかという事務面の安全性も大事な視点である。決済は企業や個人にとって大変重要なものだからである。 企業通貨が「電子マネー」であるならば、日本では「資金決済法」に基づき、利用者保護が行われている。たとえば、電子マネーの未使用残高の2分の1以上の保全義務がある。つまり、資金の半分は保全されているわけである。
(2)個人の決済業務  先にも書いたが、結局、現在では「個人の決済(振込)」がフィンテックの主戦場になってくる。 しかし、現在の日本国内の決済は、既に優遇サービスの一環として、個人の振込(決済)は“無料”となりつつある。金融庁の「資金決済法」の検討にも参加してきたが、結局、規制緩和をして、資金移動業者のメインのターゲットは海外決済(送金)である。  日本の場合は、個人の海外決済(振込)の需要がそれほどあるとは思えない。海外のウエブサイトの買い物は一般的にクレジットカードで、手数料ゼロで行われるし、個人での決済(送金)のニーズはどれほどのケースがあるのであろうか。 先に上げた、M-ペサにしても、国内決済が主戦場であることが違う。日本では国内決済への影響は大きいとは認識できない。
(3)法人の決済業務  今後のフィンテックは海外決済が主戦場となる。銀行は伝統的な銀行間契約に基づいた銀行間のネットワークに基づき決済を行う。しかし、今回のフィンテックの決済サービスは法人を対象としないものが多い。いうなれば、法人決済の部分に参入する可能性は低く、海外法人決済への影響は少ないということになる。 しかし、銀行経由の海外決済には時間がかかる、手数料が高い、手間が面倒といった場合には、銀行の取引から抜けていく可能性も否定できず、決済の高度化は必要不可欠である。 フィンテックへの対抗として、海外の決済ネットワークSWIFT(スイフト)を中心として法人決済の分野を早期化など強化しよう動きもあるが、それはフィンテックの対応というよりもいままでの流れの延長であるに過ぎない。逆にSWIFTは主として銀行間の決済が主力であり、個人決済の分野には手が届かない。
(4)ブロックチェーン技術と銀行  ブロックチェーン技術の特徴は“ネットワーク全体”で決済情報を“共有”する。そもそも、この公開性の部分が、現在の銀行決済には合わない。いままで、決済(為替)は、そもそも顧客は銀行に依頼し、銀行間でしか決済ができない。銀行は口座の情報を管理し、法的にも確認作業も行っている。その顧客口座の決済をネットワーク全体で共有するということ自体が、口座情報も外に出すことを意味し、考えられない。 つまりブロックチェーン技術は、仮想通貨を使った銀行や決済システム外しの決済ということができる。そのため、銀行が取り込める可能性は低い。つまり、銀行の外で対応する必要があるのである。
・以上のことを検討すると、フィンテックは「決済スキーム」が主であり「個人の海外決済(送金)」が中心となる可能性が高い。また、「電子マネー」や「企業通貨」の問題、そして「ブロックチェーン技術」の問題は、銀行の業務とは哲学が違う別世界の話となっている。
▽主戦場は個人の海外決済 銀行はイノベーションの方向性を見誤るな
・このように特にフィンテックの銀行の決済業務に与える影響については、フィンテックは基本的には、法人ではなく個人(リテール)分野であり、しかも、国内分野ではなく海外決済の分野である。さらに海外の個人決済では、手数料無料でクレジットカード等が使え、個人の純粋な送金(決済)は件数・金額がそれほど多くない。したがって、フィンテックの銀行(特に決済業務)に与える影響は世間で騒がれているほど大きくないのではないか。
・しかしながら、イノベーティブな新金融スキームの動きはフォローする必要がある。新決済スキームも「子会社」による対応するのが、「イノベーションのジレンマ(従来の業務部が邪魔をする)」を回避する意味からも、大事である。決済分野で方向性は銀行ができないような「付加価値サービス」を導入することも考えるべきであろう。
・たとえば、決済スキームでも現在の銀行のシステムでは「時間」の概念に対応できないが、サブでデータを補完できれば決済が高度化する。 別世界と考えている「企業通貨」や「電子マネー」、および「ブロックチェーン技術」も現在の決済体系に“連結”し“補完”し、さらに“金融以外”のデータを付加する形で、導入することが必要であろう。またフィンテックでは、ITで決済以外のデータを活用する対応、たとえば融資スキームでは活用が期待できる。しかし「ビッグデータ」的な発想は銀行には合わない。顧客個人の取引で守秘義務があり、取引の情報の公開はできない。実際には名前を隠しても、取引パターンから会社の類推ができる可能性があり、十分な注意が必要である。
・最初に書いたように、フィンテックと呼ばれているものは、以前から行われているものが多い。まずは、煽られないことが大事である。特に、「決済」では、安全性・利便性・効率性の3点が評価の基準である。“銀行”にとっては、簡易な方法を導入し、「安全性」が緩くなることが最も注意すべき問題である。
http://diamond.jp/articles/-/84197

フィンテックについては、ここでは紹介してないが、12月15日付け週刊エコノミスト「特集 銀行の破壊者 フィンテック」、12月14日付け日経ビジネス「特集 知らぬと損するフィンテック もう銀行には頼らない」など、センセーショナルな記事が横溢している。それに比べ、今回紹介した2つはいずれも、地に足がついた記事である。
野口氏は、「日本では、制度的な制約が取り払われたとしても、新しい分野の開拓にはあまり強い関心を示さないのではないだろうか?」としているが、三菱東京UFJ銀行は、日米欧大手22行の連合でシステムの共同開発に参加、みずほ銀行もこれに合流するとのことで、それほど日本だけが取り残されることを心配する必要はないと思われる。
宿輪氏はさらに実務的観点から、「イノベーティブな新金融スキームの動きはフォローする必要がある」としながらも、「銀行(特に決済業務)に与える影響は世間で騒がれているほど大きくないのではないか」と指摘。私の直感に最も近い内容だ。ただ、貸出業務への影響は無視できないし、「ブロックチェーン技術」については、今後の応用分野の広がりを注視してゆく必要があると思う。
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