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ブラック企業 [企業経営]

今日は、ブラック企業 を取上げよう。個別には、ワタミを昨年10月4日に取上げたが、今日はより幅広く検討したい。

先ずは、昨年10月28日付けダイヤモンド・オンライン「ワタミとユニクロ「ブラック企業」批判後の明暗を分けたものは何か?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・収益の柱である介護事業の売却を発表したことで株価が急落したワタミ。気の早い一部メディアや市場関係者は、「Xデー」も近いことを匂わせ始めた。苦境の原因の1つである「ブラック企業」問題は、ワタミにどう影響したのだろうか?
▽ブラック企業批判が ワタミ暗転のきっかけに
・2期連続の巨額最終赤字を計上し、2年前に320億円だった純資産が今年3月期には102億円まで目減りしたワタミ。破綻を匂わす報道も出るようになった。ここまで厳しい見方をされる背景には、会社低迷の「戦犯」である主力の居酒屋事業に復活の兆しがまったく見えず、迷走が続いていることも大きい。
・桑原豊・ワタミ前社長が、有名食品メーカーなどとコラボするなど「こだわりのメニュー」を前面に押し出した「高付加価値・高単価路線」を推進すると高らかに宣言したのは2014年頭のことだった。 が、同年7月社長に就任した清水邦晃社長は早々にこの方針を覆し、値上げ以前の低価格帯へ戻すという「緊急対策」を打ち出す。高いながらも素材にこだわったメニューで、たしかに客単価は上がったが、客数が大幅なマイナスとなったからだ。
・この「先祖返り」が意味することは大きい。そもそもワタミは、「居酒屋=中年サラリーマンの憩いの場」だった1990年代に、「夕飯もとれる若者向け低価格居酒屋」というコンセプトを掲げて急成長し、外食産業の風雲児としてもてはやされた。あれから20年以上が経過しても結局はそこから脱却できない、ということをはからずも証明してしまったからだ。
・では、ここまでの「迷走」を招いた原因はなにかというと、さまざまな見方があるが、「ブラック企業としての烙印が重くのしかかっていることが一因」という声も多い。「和民はブラック」というイメージが定着したことで、客の足を遠ざけているというのだ。
・一般的に、「ブラック企業」イメージと売上高などの因果関係を示す客観的データは存在しないが、たしかにワタミに関しては興味深い数字がある。 ワタミのブラックイメージが生まれたきっかけは2008年、入社3ヵ月の女性社員が自殺をしたことだが、この時点ではまだ、ネットや一部メディアが報じる「疑惑」だった。それが全国的に注目されるようになるのは12年2月、神奈川労働者災害補償保険審査官が「長時間労働による精神障害が原因」として労災認定をしたことが大きい。公的機関から「お墨付き」を得たことで「事実」として一気に報道件数がはねあがったのである。
・では、この年にワタミはどうだったか。外食産業総合調査研究センター調査によれば、12年の居酒屋・ビアホール業界の平均売上高は前年比1.5%減だったが、ワタミは3.8%減と業界水準を下回る落ち込みだった。しかも、特に落ち込みが激しいのは、「和民」(4.4%減)「わたみん家」(4.2%減)。《「和民」の女性社員・入社2か月後自殺神奈川労働局過労原因と労災認定》(NHKニュース2012年2月21日)などの情報のシャワーが、客足を遠ざけたというのは容易に想像できる。
▽同じブラックでもユニクロは過去最高益 ワタミは何を間違えたのか
・ただ、ここでひとつの疑問が浮かぶだろう。ブラック企業イメージがじわじわとボディブローのように経営にもダメージを与えたというのなら、なぜワタミだけなのか、ということだ。
・世に「ブラック企業」と名指しで批判をされる企業は他にもあるが、彼らはそこまで深刻な事態まで追い込まれていない。たとえば、同じく「ブラック企業」と呼ばれるファーストリテイリングは15年8月期、国内事業の売上高・営業利益ともに過去最高益を叩き出している。一時はバイトが大量に辞めて店舗閉鎖に追い込まれた「すき家」のゼンショーも深夜営業の再開を進めるなどして、売上高は増えている。
・これらの企業とワタミの命運を分けたものは一体なんなのか。業種が異なる、ビジネスモデルが異なる、などさまざまな視点はあると思うが、ここではブラック企業イメージに対するカウンターとして、どのような情報発信を展開したかという「企業広報」の視点で考えてみたい。
・実態としてブラック企業であるか否かはさておき、そのような指摘をされた企業は通常、ダーティイメージを打ち消すための施策を打たなくてはいけない。特に小売業や外食など、企業イメージが売上に直結する場合はなおさらだ。では、ワタミがそのような努力を行ってきたのか、というと首を傾げざるを得ない。
・ほとんどなにもしていない、もしくは逆効果のようなことばかりをしているからだ。それを説明するため、ほぼ同じ時期から「ブラック企業」として名指しで批判を浴びてきたユニクロと比較してみよう。
・先ほど述べたように、ワタミへの風当たりが強くなったのは12年からだが、それが「バッシング」に発展したのは13年夏だ。会長を辞めた渡辺美樹氏が参院選で自民党から出馬したことが大きい。共産党の吉良佳子参議院議員が、「ワタミはブラック企業」というネガティブキャンペーンを展開して「ワタミキラー」なんて呼ばれたことからもわかるように、「一企業の醜聞」から、政治的バイアスがくわえられた「社会問題」へとステージがあがったのだ。
・では、ここで当の渡辺氏はどう対応しているか。 「我々はブラックではない。ブラック企業の基準もあいまいだ。(批判には)事実を積み上げて説明したい」(2013年8月3日日刊スポーツ) 要するに、いわれのない誹謗中傷を受けているという強気のスタンスを打ち出したのだ。この後しばらくして登場したインタビューでも、「評判を悪くしたい人がいる」「プロパガンダ」などと一貫として「被害者」という立場を貫いている。
▽「問題がある」と認めたユニクロ 後手に回ったワタミの対策
・しかし、この3ヵ月ほど前、やはり「ブラック企業」の誹りを受けていたファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、渡辺氏とまったく異なる対応をしている。「朝日新聞」のインタビューでこのように語っているのだ。  「大半が途中で辞めた人などの一部の意見だ。作業量は多いが、サービス残業をしないよう、労働時間を短くするように社員には言っている。ただ問題がなかったわけではなかった。グローバル化に急いで対応しようとして、要求水準が高くなったことは確か。店長を育てるにしても急ぎすぎた反省はある」(2013年4月23日 朝日新聞)
・全面的に同意はしないながらも「問題」の存在を認め、「反省」という言葉も用いている。イケイケの渡辺氏と比べると、どこか弱気にも見えてしまう殊勝な態度なのだ。このような両者の違いは、時間が経過していくとより顕著になっていく。
・年が明けた14年1月、ワタミは外部の有識者委員会から「所定労働時間を超える長時間労働が存在する」と指摘を受けた。「被害者」というストーリーが揺らぎ始めたわけだが、そこへさらに不信感を強めてしまったのが、この指摘をうけて3月にワタミ側が発表した「国内店舗の約1割にあたる60店の閉鎖」だ。
・店が減るので、1店舗あたりの平均社員数が1.66人から1.83人に増える。中途採用もすれば、2.0人まであげることができるのでこれで労働環境が改善されますよ、というのが桑原前社長の説明だったが、正直、一般人にはあまりにインパクトの小さい数字でピンとこなかった。
・ワタミの社内会議や居酒屋業界では、「平均社員数を2人に?そりゃすごい決断だ!」と驚きをもって迎えられる話なのかもしれないが、「社員が自殺するほど追い込まれるブラック企業」と批判される企業が出した対策としては、やや拍子抜けである。事実、このニュースは主に経済系メディアが報じ、一般のテレビや新聞はベタ記事扱いだった。
▽“改悛”を強く打ち出して メディアを味方につけた柳内会長
・そんなワタミの「ブラック対策」が報じられた1週間後、全国紙やテレビを賑わしたユニクロの発表があった。覚えている方も多いだろう。「非正規社員1万6000人を正社員化」というやつだ。こちらは数字のインパクトもあって、さまざまなメディアで大きく取り上げられたのだが、ここでも柳井会長は「反省」を前面に押し出す。
・たとえば、「日本経済新聞」(2014年4月12日)は、《「部下は部品ではない」「部下の人生を預かる」――。これまでの失敗を自分に言い聞かせる発言が相次いだ》なんて調子で、柳井会長の“改悛”を強く印象づける報道をしている。
・実は渡辺氏もブラック企業疑惑が出てから、ことあるごとに「社員は家族だ」というようなメッセージを訴えているのだが、メディアではだいたいスルーされている。汚名を着せられた者は、柳井氏のように、とにもかくにも“改悛”の姿勢を見せぬ限り、その主張すら取り上げてもらえない、というのは日本のメディアの特徴のひとつだ。
・さて、こうして奇しくも同時期に「ブラック企業」イメージを打ち消す「対策」を公表した2社だが、その後のトップの発言はとても同じ問題に取り組んでいるとは思えぬほどかけ離れたものとなっている。
・「1店舗あたり平均社員2人」を打ち出した3ヵ月後、ワタミの桑原前社長は、「東洋経済」のインタビューで「ブラックだなんて全然思っていない」「労使関係は存在しない」という発言をした。この背景には、14年7月の株主総会で、創業者である渡辺氏が改めて「ブラック企業との風評が広まり、居酒屋の客足だけでなく介護や食事宅配サービスの売上にも影響した」と、「被害者」アピールをしたことがある。
・根拠のない噂のために苦しんでます、というわけだ。外部の有識者委員会からも指摘があったという事実は、もはやどこかへ飛んでいき、とにかく「口が裂けてもブラックを認めない」の境地に達しているのだ。
・そんなワタミと対照的に“改悛”路線を突き進むのがユニクロだ。14年の年末、学生向けの講演会を終えた後の取材で、柳井会長は「疑惑」を暗に認めるような思い切った発言をしている。 「昔の我々の会社には、ブラック企業のような部分もあったと思う。それはなくなってきた」 「世界中の社員には、何人かブラック企業のようなことをやっている人はいるかも知れないが、会社としては容認していない」(朝日新聞2014年12月20日)
▽「ブラック企業」批判に対しては いち早く反省した方が有利
・断っておくが、ユニクロの対応が良くて、ワタミがダメだという話ではない。異物混入でマクドナルドのカサノバ社長がなかなか謝罪会見をしなかったことからもわかるように、世界のグローバル企業のなかでは、「トップが非を認める」ことを極力避けるのが鉄則だ。
・少しでも口を滑らせると、株価がガクンと下がるので、事実として確定していない「疑惑」に関しては、徹底的に批判をするのもトップの役目なのだ。そういう意味では、ワタミの対応が「スタンダード」であり、柳井会長の方が「異常」ともいえる。
・ただ、「ブラック企業」という批判に関しては、スタンダードな対応は通用しないということがワタミによって明らかになった。今年1月、就任前の清水社長は、日本経済新聞の取材に対して、「世間のブラック企業との批判を真正面から受け止める必要がある」と、ユニクロの柳井会長の後を追いかけるような姿勢をみせはじめた。 ユニクロはトップがいち早く「反省」と「改悛」を見せた。ワタミは2年間ほど「事実ではない」とつっぱねたが、いよいよ耐えきれなくて「反省」を見せはじめた。この2社の差を乱暴に言ってしまうと、最初に非を認めたか、追いつめられて非を認めたのか、という違いだろう。
・では、なぜワタミはユニクロのような対応をとれず、経営にダメージを与えるほど被害を拡大させてしまったのか。企業文化などもあるが、個人的には、創業者が政治の世界に入ってしまったことが大きいと考える。
・ユニクロは創業者の柳井会長が「反省」をしてさまざまな対策を打った。それが実際に効果を出しているか否かは別として、「生みの親が問題解決のために動いている」ということは世に伝わる。これがブランドイメージの毀損を防いだ部分も否めない。
・しかし、ワタミの場合、渡辺氏は指摘を否定するのみで、「反省」も口にしなければ対策を打つこともない。すでに会長職を退いているので、柳井会長と立場が違うということもあるが、このような立ち振る舞いになってしまうのは、実は渡辺氏が「政治家」であることが大きい。
▽渡辺氏は政治家になったことで「反省」できなくなった
・ご存じのように、政治家は謝ったら終わりだ。秘書がやったので知らない、不適切な会計だがすでに修正した、などなど、責任を問われても「遺憾に思う」なんて、まるで他人事のような発言に終始するのは、政治家が自らの非を認めて頭を下げるということが、すなわち政治生命の終わりに直結するからだ。 
・もし渡辺氏が柳井会長のように「ブラック企業のような部分もあった」なんて頭を下げようものなら、まず共産党やら民主党が騒ぎ出す。渡辺氏を公認候補にした責任を取れとかなんとか。事態が大きくなれば、国のブラック企業対策にも大きな影響を及ぼす。
・つまり、「公人」になってしまった渡辺氏は、もはや本人の意思とは関係なく、そうおいそれと非を認めることができない立場になってしまったのだ。 もしユニクロのように、生みの親が改悛して非を認めることが、「ブラック企業」のイメージを払拭するとしたら、3代目社長の清水氏がどんなに頭を垂れても改悛の姿勢をみせようとも、ワタミのイメージがよくなるとは思えない。渡辺氏の参議院議員としての任期は19年まで。果たして、そこまでワタミはもちこたえることができるのか――。
・ワタミの滑落は、渡辺氏が金バッジをつけた時から、もはや避けられない運命だったのかもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/80684

次に、本年2月9日TV東京の「ガイアの夜明け 密着! 会社と闘う者たち~”長時間労働”をなくすために」のポイントを紹介しよう。
・厚労省に15年4月、過重労働撲滅特別対策班(過特)が東京、大阪で発足、捜査権や逮捕権も持つ。新宿労働基準監督局には電話・メール・来庁相談が1日90-100件、賃金未払い、長時間労働も多い。監督局で扱えない大手企業を過特が扱う。15年7月、ABCマートを「違法残業」で書類送検。
・ドン・キホーテでは、内偵で違法残業を?む。既に各地の監督局からは月120時間超の長時間労働で41件の是正勧告。過特が全国から60名の応援を得て、本社、主要店舗4カ店に一斉に強制捜査。段ボール箱25個分の書類を押収。社長ら経営陣への事情聴取も数か月。社長は人員大幅増で違法状態解消と主張。社長・専務は違法状態を認識していなかったので、法人も摘発。
・ワタミは遺族と和解、1.3億円支払と、労働条件改善を約束。ゼンショーHDでは、ワンオペが問題化、1200カ店で深夜営業中止。
・アリさんマークの引越社は若手社員が告発。入社3年で支店長になれば年収1千万円以上と言われ、月300時間は働いたが、月手取は僅か27万円。採用時には、細かな条件などが書かれた文書に署名させられたが、回収され手元に残らず。営業では関東でトップになったが、過労で事故を起こしたところ、事故賠償の弁済金で会社からの借金が膨らむ。運送業界のプレカリアート・ユニオンには同社の元従業員40人以上が訴えていたが、現役は彼だけ。15年3月に団体交渉申入れ、1ヶ月後に文書で回答。15年6月に営業からシュレッダー係に左遷、2度の遅刻が異動の口実。その後、会社の書類、借用書を週刊誌などに漏洩したとして、懲戒解雇され、社内には写真付きで掲示。裁判所に地位保全の申立て。1ヶ月後、会社から復職の通知来たが、シュレッダー係のまま。会社の前で労組が抗議、会社幹部を中止を要求。東京都労働委員会で和解交渉9回、決裂。今後は司法の場に

第三に、2月18日付け東洋経済オンライン「日本人の平等幻想が「ブラック企業」の温床だ 日本型雇用システムの「いいとこ取り」が蔓延」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「365日24時間死ぬまで働け」――。大手飲食チェーン、ワタミグループの理念集に記載されていたこの言葉は、「ブラック企業」を象徴するものとして、あまりにも有名だ。同社は後に撤回したが、文字だけ見ればまるで働く人を奴隷とするような表現といえる。まさに、コンプライアンス意識が欠如した経営者が若者を搾取する構図であり、現在の「格差」の象徴のように思うかもしれない。
・しかし、実はそうではない。「ブラック企業」というモンスターがエサにしているのは、日本人の「平等」意識だ。「ブラック」「格差」という単語は、「平等」の対極に感じるだろうが、実は密接に絡んでいるのだ。いったいどういうことか。
▽個別企業の問題を指摘するだけでは解決しない
・「ブラック企業」という言葉は、2000年代後半に、IT企業で働く若者たちの間で、自分の会社の過酷な労働状況を自虐する形で用いられた、ネット・スラングだった。現在でも明確な定義はなく、イメージだけが独り歩きしている傾向がある。長時間労働や過酷なノルマ、パワーハラスメントなどが横行し、違法労働が蔓延している企業を指すことが多く、傾向としては、外食や小売り、介護、ITなど、労働集約型のサービス業に多く見られる。
・春に向けて就職活動の準備も本格化する中で、自分が関心を持つ会社が、いわゆる「ブラック企業」なのかどうかは、大学生にとっても大きな関心事だろう。メディアも、個別の企業の問題については大きく報道する傾向がある。しかし、大阪経済大学の伊藤大一准教授は、「ブラック企業の出現は、日本型雇用システムのもつ『影』の部分を最も『黒く』染め上げた問題。個別企業の労働条件の過酷さを告発し、批判するのみでは、解消することが難しい」と語る。
・前提として、日本の雇用システムは世界の中でも非常に特殊な形であることを、まず認識する必要がある。日本では、入社前には職務の内容や勤務地などが本人には知らされなかったり、入社後もいつ別の職務を命じられるか分からないということが少なくない。また、法定勤務時間内、いわゆる「9時~5時」で必ず帰れるなどということはあり得ず、残業が必要と言われれば受け入れることが当然視されている。全て、労働者は会社の命令に従うことが「常識」だ。
・一方、欧米の一般的な雇用契約は、そうではない。「保険商品の販売業務」「繊維加工機械の操作」といった具体的な職務(ジョブ)が先に存在し、求められるスキルや、職責が特定されている。職務の具体的中身や評価方法も一定になる傾向があるため、業務内容が無限定とはならない(成果で評価されるホワイトカラー層はこの限りではない)。自分の仕事の範囲を越えて他人の仕事を行うことは、職域を侵すことになるので御法度だ。  日本でも、いわゆる非正規雇用の場合は、このジョブ型の考え方が当てはまる。決められた時間で決められた職務をこなす、工場労働や派遣業務をイメージすると分かりやすい。これに対して、正規雇用(いわゆる正社員)の場合はそうではない。意外に思うかもしれないが、正社員(一般職は除く)として入社した人は、少数精鋭として採用された経営幹部候補という建前になっており、職務の対象は原則として無限定だ。
▽会社の労働者に対する命令は、ほとんど制限なし
・職務が無限定ということは、欧米の一般的な雇用形態と異なり、自分の仕事と他人の仕事の区別がなく、どのような業務もこなすということを意味する。自分の仕事が早く終わった場合は率先して他の人の仕事を手伝ったり、本来自分がやる業務以外のことも、上司から頼まれれば取り組むなどといったことは、働いたことがある人なら誰しも経験があるだろう。
・また、職務内容だけでなく、労働時間に対しても、会社には強い権限が与えられている。労使協定さえ結べば残業時間の上限はほぼない。労働者が残業を断れば、解雇も有効になることを判例も認めている。少数精鋭で採用されている以上、業務が増えた場合はその人員の範囲中で対応することが前提になっているのだ。
・結果として、「どのような仕事を」「どのくらい」命じられるのか、ほとんど制限がないというのが日本の企業で働くことの特徴となった。労働者は、配置転換による新規業務に対して素早く適応する能力と、プライベートを犠牲にしてでも会社に尽くす生活態度までもが求められることになり、その全てが会社からの評価対象となる。こうした仕組みは、異常なまでの長時間労働や、その結果としてのうつ病や過労死を生み出し、既に1970年代頃から日本型雇用システムの「影」として、問題視されていたものだ。
・ただ、少数精鋭かつ職務が特定されていないということは、労働者側に対しても有利に働く面もある。これが、ブラック企業が消し去ってしまった日本型雇用システムの「光」の部分である。 少数精鋭で、かつ会社が自由に労働者の職務を決めることができるため、現在従事している職務がなくなったとしても、社内の別の仕事に配置転換することで、労働者の長期安定雇用を成り立たせることができる。また、長期安定雇用があるからこそ、勤続年数、つまり年功に応じた賃金の上昇も実現でき、先を見通した人生設計が可能になっていた。
・つまり、残業や配置転換などについては、会社からの強い拘束を甘受するが、その対価はきちんと存在し、バランスが取れていた。業種や会社の規模によって濃淡はあるが、具体的には、持続可能な業務と安定した雇用、家族を養うだけの生活を維持することが可能な報酬が、労働者への見返りとして認識されていたといえるだろう。司法も、企業の強力な業務命令権を認める一方、判例で解雇権濫用法理を確立することで、正社員の地位を保護してきた(現在は条文化されている)。
・高度経済成長期を背景として、こうした不文律ともいえるようなルールが確立していく中で、社会は次のような考えを抱くようになった。企業は、一度正社員として雇った以上、その人の面倒をきちんと見て能力開発を行い、長期安定雇用を前提として、家族を持つ「普通の」生活は保証してくれる。その代わり、働く側は「社会人として生きていくことは甘くない」ということを受け入れ、プライベートを犠牲にしても仕事に粉骨砕身することは、大人として当然である、と。
・しかし、ブラック企業は、この日本型雇用システムに対する社会の信頼を逆手に取っている。伝統的な日本型雇用システムを運用する企業からブラック企業が引き継いだのは、「従業員の組織への貢献は無限定」という意識だけ。彼らは、日本型雇用システムの最大のメリットである「広範な指揮命令権」のみを享受する。一方で、見返りとして本来あったはずの長期安定雇用と、労働時間に見合った報酬については、「経営者目線がなければ、労働者も生き残れない」「仕事の報酬は、お客様の笑顔だ」といったもっともらしい理由をつけ、まるで存在しないかのようにふるまう。
▽安定雇用なき、長時間労働・低賃金を目指す
・彼らは労働者全員を長期安定雇用をするつもりなど最初からない。それにもかかわらず、長時間の時間拘束は大前提。その上で、10万円台前半まで基本給を下げた上で数十時間分の固定残業代制度を導入したり、少額の手当を出すことによって、表面上は「普通の額」の給与であることを偽装する。さらに労務管理を意図的に放置して正確な勤務時間を不明にしたりすることもザラだ。こうした脱法とも言えるテクニックを駆使して、実質的な時給を最低賃金を下回る水準にまで吹き飛ばしている。
・労働問題を扱うNPO法人、POSSE代表の今野晴貴氏は「労働集約型サービス業は現実にはジョブ型に近く、職務自体は限定的だ。正社員だからといって、全員が経営幹部候補になることはあり得ない。それにもかかわらず、職務の遂行方法、業務量、成果の評価方法については無限定のまま」と指摘する。これでは、完全にご都合主義のいいとこ取りとなってしまう。こうして、日本型雇用システムの「影」だけが残ることになり、言葉通りの「真っ黒な」ブラック企業が完成するのだ。
・こうしたブラック企業を根底から撲滅するには、どのような処方箋があるのだろうか。今野氏は意外にも、日本に「階層」があることを明確にすることを提案する。「ワークライフバランスを重視し、使い潰されることのない『普通の人』の働き方と、自分の能力を最大限生かして大きなリターンを目指す『エリート・経営者』の働き方が、異なることを明らかすべき」というのだ。
・日本社会にも現実には『階層』が存在するが、覆い隠されてしまっているのが実情。これでは、立場に応じた政治的な利害調整が機能せず、真の民主主義は実現できない。『階層』の存在を真正面から認め、それぞれの立場の利害を積極的に調整することが、結果として格差を縮小することにもつながる」(今野氏)
・正直、日本で「階層」の存在を認めることは、これまでタブーだったといえる。平等意識が殊更に強い日本では、すぐに受け入れられるものではないかもしれないし、反発を覚える人もいるだろう。しかし、ブラック企業はそうした「誰もが努力すれば人並み以上の生活が送れる」という幻想を利用して、労働者を追いつめていることは確かだ。伊藤准教授も、次のように語る。 「『休日はゆっくり休みたい』『残業代が欲しい』といったことは、労働者にとってあまりにも当然の要求のはず。これが経営者にとって『甘え』として認識されるのは、使用者と労働者の垣根が曖昧になっており、本来保護されるべき『労働者』概念が弱体化しているからだ」
・使用者の指揮命令に基づいて時間を売る労働者と、会社の所有権である株式を所有し、報酬以外にも株式配当での莫大なリターンを取る可能性があるオーナー経営者とでは、根本的に立場が違う。こうした利害の違いを明らかにし、対立軸を明確にすることは、本来あるべき姿のはずだ。経営者はこのことを自覚して労働者を保護するべきだし、労働者も同じ立場で連帯して、自分たちの権利をはっきり主張するべきなのである。
▽「階層」の無自覚は、自己責任論を蔓延させる
・現実に存在する「階層」を自覚しない考え方は、深く日本人の無意識に沈み込んでいる。「一億総中流」という言葉に代表されるような平等意識は、表面的には耳障りがよいため、ウケもよい。しかし、これには罠もある。あらゆる立場の人に対して過度の「自己責任論」を押しつけることにつながり、結局多くの人の首を絞める結果を招いているのではないだろうか。
・「ブラック企業に文句を言ってる暇があるなら、辞めて自分で起業すればいい」といった発言が、社会的・経済的に成功している著名人から散見されるのが、いい例だ。誰しもがビジネスを成功させる能力を持っているわけではないし、現実にリスクを取ることができない人もいる。労働によってしか生計を立てられない人の方が、世の中では圧倒的多数だ。
・日本における「階層」に対する無自覚は、エリートとして本来ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige「高貴なる者の義務」)を持つべき人間が、「普通の人」の立場を想像する力を持てない要因になっているような気がしてならない。それはまさに、労働者を駒としか考えずに使い潰す、ブラック企業のオーナーや経営者にも、そのまま当てはまることだ。
・今野氏の指摘通り、「階層」の存在を認めることは、格差を許容することとイコールではなく、むしろ是正する力となり得る。能力のある人の足を引っ張らずに最大限支援する一方で、標準的な幸せを望む「普通の人たち」の労働環境は、社会としてきちんと保護する。そうした意識変化を起こすことが、ブラック企業の不条理な暴走を止める足がかりとなり、ひいては「日本社会全体のブラック化」を止める道を開くのではないだろうか。
http://toyokeizai.net/articles/-/105353

第一の記事のワタミとユニクロの比較は、なるほどと納得させられる部分が多いが、最後の「政治家が自らの非を認めて頭を下げるということが、すなわち政治生命の終わりに直結」、との部分は首を傾げざるを得ない。政治家といえども、いさぎよく謝れば許されるのが普通なのではなかろうか。
第二のTV東京の「ガイアの夜明け」には、日経傘下のTV局がよくぞここまで取上げたと、正直、驚かされた。アリさんマークの引越社の悪どいやり方には、番組を見ていて本当に腹が立った。
厚労省の過重労働撲滅特別対策班(過特)には、今後も期待したい。
第三の記事が、「日本人の平等幻想が「ブラック企業」の温床」、「日本型雇用システムの「いいとこ取り」が蔓延」、などの鋭い指摘には全面的に同意する。ただ、覆い隠された「階層」を明らかにせよ、との主張には、やや問題もある気がする。というのも、日本的経営の強みは、経営幹部などのエリートの働きによってよりも、一般従業員の強い参画意識、業務改善への工夫によりもたらされた面も大きいと考えられ、「階層」を明らかすることが、後者に及ぼす悪影響も考慮する必要があると思われるからだ。ただ、いつまでも「平等」幻想にすがっていられるものでもないことも事実。或いは、既に「平等」幻想など破壊されてしまったと考えるべきなのだろうか。私には未だにスッキリした答が見いだせない。
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