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欧州難民問題(その5)EU・トルコ間の難民合意、オランダでは”移民の味方”の民族政党も出現、ドイツの難民の「欲求不満」 [世界情勢]

欧州難民問題については、3月5日に取上げたままだったが、今日は、(その5)EU・トルコ間の難民合意、オランダでは”移民の味方”の民族政党も出現、ドイツの難民の「欲求不満」 である。

先ずは、在独のジャーナリストの熊谷徹氏が5月27日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「風前の灯!EU・トルコ間の難民合意 エルドアンの「独裁化」で、窮地に追い込まれるメルケル」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ドイツの首相、メルケルが、難民問題をめぐって窮地に追い込まれている。彼女にとって最後の頼みの綱であるトルコとの間で、不協和音が高まっているからだ。現在のままでは、欧州に流入するシリア難民の数を減らすためのトルコとの合意が、破綻する可能性もある。合意が暗礁に乗り上げて、難民の欧州への渡航をトルコが許した場合、欧州に到着する難民の数が再び急増することは確実だ。
▽焦点はトルコの対テロ法
・EU(欧州連合)とトルコの間で最大の対立点となっているのが、同国の対テロ法だ。この法律は1991年から施行されているが、少数民族クルド人のテロ組織や、過激組織「イスラム国(IS)」による無差別テロが昨年から多発していることから、トルコ政府は対テロ法の適用範囲を大幅に拡大している。 たとえばこの法律は「テロリストを利する宣伝行為(プロパガンダ)」を刑事罰の対象としている。今年初めに、約1000人の科学者や教師がクルド人居住地域での戦闘を停止するよう求める抗議行動を行った。このキャンペーンに参加した多くの知識人たちが「テロリストのための宣伝行為」を行ったとして、起訴された。つまりこの法律は、テロ行為幇助の範囲を幅広く解釈しているので、市民が平和や人権の尊重を要求するだけでも、テロリストを助けたとして摘発される危険がある。
・EUは、「対テロ法は、トルコ政府の方針に反対する国会議員やジャーナリスト、知識人を刑事訴追するために悪用されている」として、同国に対してこの法律を改正するよう求めている。言論の自由や人権を尊重するEUの精神に反するものだからだ。
▽難民合意に暗雲
・だがEUそしてメルケルは、トルコに首根っこを押さえられている。EU圏に流入する難民の数が多くなるか少なくなるかは、トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアンのさじ加減一つにかかっているからだ。  EUとトルコ政府は今年4月、難民送還について合意した。この合意によると、トルコは同国を通ってEU圏内に不法入国した難民を全て受け入れる。そのかわり、トルコにすでに滞在しているシリア難民約200万人のうち、約7万人をEUに合法的に移住させる。
・またトルコは、EUがそれまで約束していた難民対策費用30億ユーロ(約3600億円)を60億ユーロ(約7200億円)に倍増するよう要求した。さらにエルドアンは、トルコがEUに加盟するための交渉を加速するとともに、トルコ人がEUに渡航する際に必要となるビザの取得義務を今年6月までに撤廃するよう求めていた。
・EU議会は、「トルコが対テロ法を大幅に改正しない限り、トルコ人がビザなしでEUに渡航するのを認めない」と5月初めに宣言。トルコ政府は、「EUは難民合意が成立してから、新しい条件を持ち出してきた。これはフェアなやり方ではない」と激怒している。EUとトルコのどちらかが譲歩しない限り、難民合意は破綻するだろう。
・確かに、エルドアンの最近の態度には、強硬さが目立つ。5月20日にはトルコ議会が憲法を改正し、138人の議員の不逮捕特権を剥奪した。この議員たちに対して、トルコの検察庁が腐敗や不法なプロパガンダ容疑で捜査を行っている。不逮捕特権を失った138人のうち、50人はクルド人の利益を代表する政党に属している。このことから、エルドアンがクルド人への敵意を一段と強めていることが伺われる。
・野党議員たちからは、「エルドアン大統領による独裁体制への道を開くものだ」と強い抗議の声が上がった。ドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)のライナー・ヘルマン記者も、「このままでは、トルコは民主主義国ではなくなる。クルド人が議会から締め出された場合、彼らは武装闘争に走るかもしれない。トルコ議会は、パンドラの箱を開いた。同国では対立と抗争が深刻化するだろう」と警鐘を鳴らしている。 穏健派として知られたアフメト・ダウトオールが、5月8日にトルコの首相から退いたことも、EUにとって悪い兆候である。彼が退陣した理由は、対クルド政策などをめぐって、エルドアンと衝突したことだった。
▽メルケルが抱く不快感
・メルケルは、難民問題に関する国連の会議に出席するため、5月22日にトルコを訪問し、ジャーナリストや人権団体、弁護士らと会い、同国での人権をめぐる状況について話し合った。メルケルがエルドアンと会談する前に人権団体と会ったことは、エルドアン政権に対する彼女の強い不快感を示している。  メルケルは5月23日にエルドアンと会談した後、記者団に対して「トルコの議員の約4分の1について不逮捕特権が剥奪されたことについて、深く憂慮していることを、大統領にはっきり伝えた」と述べた。さらにメルケルは、「トルコはビザなし渡航のための条件をすべては満たしていない。7月1日からビザなし渡航を許可することは、難しいだろう」という見方を明らかにした。
・メルケルが率いる大連立政権の一翼を担うキリスト教社会同盟(CSU)のホルスト・ゼーホーファー党首は、「物事には限界というものがある。トルコは法治国家の名にふさわしくない行いを続けている。こうした事態について、深く憂慮するという言葉だけでは不十分だ。EUは、難民で合意したことを理由にトルコによって脅迫されてはならない。メルケル首相はそのことをエルドアン大統領にはっきり言うべきだ」と批判した。
・エルドアンは、ドイツとEUに対して怒りを露わにした。彼は国連の難民会議の席上で「EUはトルコが他の条件も満たすべきだと主張する。いったいどの条件を満たせというのか? 我が国が、EUに対してひざまずいて物乞いをすることはない。我々が求めているのは、公正さだけだ。我々は交渉を続ける。だが万一、難民合意をめぐる交渉が決裂したら、残念だがどうしようもない」と述べた。彼は、EUが反テロ法の改正に固執し、無条件のビザなし渡航を認めない場合には、難民合意を反故にする可能性をちらつかせたのだ。つまりメルケルは、エルドアンとの会談で彼を説得することに失敗した。
▽激減した難民数
・メルケルの立場は微妙だ。ドイツには昨年、約110万人の難民が到着した。しかし今年に入ってからは激減している。バルカン半島のセルビアやマケドニア、スロベニア、ハンガリーなどが国境を封鎖したほか、違法にギリシャに渡った難民をトルコが送還しているからだ。 ドイツ連邦内務省によると、昨年4月にドイツに到着して政府に登録された難民数は2万7178人だったが、今年4月に到着した難民は、これより42%も少ない1万5941人だった。ドイツ政府は、このままの状態が続けば、ドイツに今年1年間に到着する難民数は20万~30万人にとどまると予想している。
・だがその前提は、エルドアンがEUとの合意を守って、「難民の水門」を閉めておくことだ。彼が堰を開いて、国内にいる250万人の難民を欧州へ向けて出国させた場合、バルカン半島そして西欧諸国は大きな混乱に陥る。ドイツには、昨年11月の1ヶ月だけで約29万人の難民が流れ込んだ。多くのドイツ市民の間には、当時の不安感が現在も色濃く残っている。
・公共放送ZDFが今年5月中旬に行った世論調査によると、回答者の59%が「EUとトルコの間の難民合意は破綻する」という悲観的な見方を打ち出した。他の世論調査でも、回答者の半分以上が難民問題でトルコに依存することに反対している。 英国やフランス、東欧諸国をはじめとして、大半のEU加盟国は多数の難民の受け入れを拒否しており、メルケルは孤立無援の状態にある。彼女にとって、唯一の難民対策はトルコが難民を引き取ってくれることなのだ。
▽エルドアンの「難民カード」
・しかしエルドアンは、メルケルの弱みを最大限に利用しようとしている。彼は、ドイツなどEU諸国がクルド人抑圧を批判しても、馬耳東風をきめこむ。「治安優先」を旗印として、クルド人など政府を批判する勢力への締め付けを強化するに違いない。さらに彼は、EUへのビザなし渡航やEU加盟交渉の加速、難民対策費の増額などを強硬に求め続けるだろう。難民合意とビザなし渡航をめぐる交渉では、エルドアンの方が圧倒的に有利な立場にある。
・エルドアンにとって、トルコに滞在しているシリア難民は、メルケルとEUから譲歩を引き出すための重要な切り札だ。彼は、欧州に大量の難民が再び流入した場合、右派ポピュリスト政党への支持率が急増し、伝統的な政党が選挙で苦境に追い込まれることを熟知している。
・メルケルは、トルコ政府がジャーナリストや野党への抑圧を強めるほど、EU正式加盟への道が遠のくことを、エルドアンに理解させなくてはならない。ただし、権力を一身に集中させつつあるエルドアンが、メルケルの説得に耳を貸すかどうかは、未知数だ。
・多くのドイツ人は、「トルコが独裁国家のような体質を強めつつある」と考えている。しかも、ドイツはそのような国を難民対策の頼みの綱とせざるを得なくなっている。メルケルは難民数の制限とトルコ政府の穏健化というジレンマをどのように解決するのだろうか。現在続いている難民危機の小康状態は、まるで薄氷のように脆い。エルドアンの判断一つで、昨年の9月から11月にかけて起きたような混乱が、欧州に再来する可能性がある。トルコは当分の間、EU政局の鍵を握ることになるだろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/052600016/?P=1

次に、6月16日付け日経ビジネスオンラインがThe Economist誌の記事を転載した「「中道左派にはもう頼れない」欧州移民の悲哀 “移民の味方”である民族政党は国家分断の源?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・オランダの中でもハーグ市ほどオランダらしい都市はない。政庁所在地であるビネンホフ地区にはグリム童話から抜け出てきたかのような古風なゴシック建築がそびえ立つ。 そこから1マイルほど西に向かうとボザール様式の平和宮が建っている。ここは国際司法裁判所の本部だ。また、北側に位置するガラス張りの財務省は、財政規律を教条的に重んじる人々の総本山である。
・一方、東に向かって1マイルほど歩くと(自転車でもいいのだが)、伝統的なオランダの風景とは異なるものが見えてくる。ガーナ人が経営する理髪店。トルコ風ティーハウスの数々。女性たちは頭からスカーフをかぶっている。ジュラバ(モロッコの民族衣装)を着た男性たちは夕べの祈りを捧げるため、道路に面したモスクへと足早に入っていく。 モスクの向かいにあるのは「アミンのモロッコ風肉店」。その日の午後、中近東のサンドイッチ「シュワルマ」がぎっしり並ぶ冷蔵カウンターの後ろでは、オーナーの息子で31歳のジャマールがコンピュータの設定に取り組んでいた。
・彼のような人物こそ、この国の伝統的なアイデンティティと新たな移民コミュニティの間に存在する断絶の橋渡し役となり得る存在だ。ジャマールは2歳のときに家族とオランダに渡ってきた。エラスムス大学で経営学の学位を修得し、これまでに複数の中小企業でデータ解析の仕事に携わった経験を持つ。だが昨年になって企業世界に見切りをつけ、父親の精肉店に戻った。 「オランダ社会では人種による選別が至る所で行われている」と彼は言う。最後に勤めた企業では、白人の同僚が欧州出身でない求職者を拒絶する理由をあれこれ並べ立てるのを見て落胆したという。
▽ムスリムや少数派民族を“代表”する民族政党が台頭
・移民という経歴を持つオランダ人の大半がそうであるように、ジャマールも過去の選挙では中道左派の労働党に票を投じてきた。だが今は新しくできた「デンク」への乗り換えを検討している。デンクは「考える」という意味。この政党は、ムスリムや少数派民族に対して自らを売り込んでいる。 ムスリムや移民の多くは10年もの間、反ムスリム主義・反移民主義を掲げる政治家、ヘルト・ウィルダース(極右の自由党に所属。支持率では現在首位にある)からの執拗なまでの侮辱を受け続けてきた。彼らは今、労働党などの主流政党は自分たちを守ってくれないと感じている。
・デンクが来年の総選挙で数議席以上を獲得することはないだろう。だが、この政党は極めて重大な疑問を投げかけている。すなわち「外国人排斥の機運が高まったとき、欧州の少数派民族はこれまで投票してきた中道左派政党(幅広い政策を掲げる)を頼ることができるのか」「少数派民族は自らの手で政党を立ち上げるべきか」「そうすることは国の分裂を進めるだけなのか」といった問いである。
▽中道左派離れが始まった
・欧州全体において、ムスリムや非白人は中道左派に投票する傾向がある。オーストリアでは少数派民族の68%が最近の総選挙で社会民主党に票を投じた(白人は32%)。フランスで行われたある調査では、2012年の大統領選挙でムスリムの93%が社会党所属のフランソワ・オランド氏に投票したことがわかった。
・だが少数派民族の人たちは往々にして、中道左派政党は自分たちからの支持を当然視し、それに見合う見返りを与えてくれないと感じている。2012年にオランド氏に投票するため投票所に足を運んだムスリムたちは、2014年の市会議員選挙では家から出なかった(彼らの多くは社会党政権が同性婚を合法化したと非難した)。フランスに限ったことではなく、中道左派政党が移民やテロリズムに対して厳しく臨もうとするとき、少数派民族は裏切られたと感じる。
▽移民を軽視する政府高官
・新党のデンクはそんな中に誕生した。2014年、オランダのローデワイク・アッシャー副首相(労働党)はトルコ系オランダ人の市民団体への監視強化を認めた。イスラム過激主義を扇動しないよう見張るためだ。 その直後、オランダのメディアは「トルコ系市民の若者の87%が過激派イスラム国(IS)に共感している」とする世論調査の結果を発表した。だが後の調査でこの結果はひどい代物であることが判明した。インタビューを受けた人たちは質問を理解していなかったのだ。だがアッシャー副首相はこの調査結果を無効とするのではなく、これが「厄介なもの」であると発言した。
・これに対し、労働党を支持していたトルコ系オランダ人の多くが激怒した。政党のトップたちは自らの支持母体についてまったく理解していないようだった。アムステルダム議会のムニーレ・マニサ議員は「この調査が意味をなさないことは誰の目にも明らかだ」と指摘する。マニサ議員はこの問題を解決すべく、アッシャー副首相に会い、何よりも先にこの結果が無効であることを示した調査を認めさせようと考えた。 だが2人の野心的なトルコ系国会議員、トゥナハン・クズ氏とセルチュク・オズトゥルク氏がこの機に乗じて労働党を離れ、新党を設立した。
▽既存の政治に失望する移民は投票に行かない
・デンクはオランダにおける他の2大マイノリティグループであるモロッコ系オランダ人、アフロカリビアン系オランダ人から候補者を募っている。この4月には元高級官僚で現在はオランダの主要モロッコ系市民社会グループを率いるファリド・アザルカン氏を引き入れた。
・そして5月には南米スリナム生まれのテレビ番組司会者、シルバーナ・シモンス氏が参加した。同氏は、オランダにおける子どもの祝日である聖ニコラス祭で、顔を黒く塗ったキャラクター「ズワルト・ピート」がクッキーを配る風習が人種差別的だとして反対運動を行ってきた人物だ。シモンス氏は教育と言語の「非植民地化」を訴えた。これに対してオランダ国内の伝統主義者たちは交流サイトのフェイスブックで人種差別的な罵詈雑言を浴びせかけ、結果的にデンクが注目を集めるという一幕があった。
・デンクは、労働党などの政党が国内の少数派民族を見下していることが、彼らが疎外感を強める原因となっていると非難する。「彼らは自分が認めてもらえているとは感じていない。また、安全性を感じることもできない」とアザルカン氏は言う。
・アムステルダムの市会議員選挙を対象に長年行われている調査によると、1990年代半ばから2006年(ウィルダース氏の自由党が誕生した年)までトルコ系市民による投票率は約50%だった。それが2014年の選挙では34%に低下した。モロッコ系市民に関して言えば、2006年には37%だった投票率が2014年にはわずか24%となった。 アムステル大学の准教授でこの調査の共同代表を務めるフロリス・ベルメウレン氏は「彼らは労働党が自分たちの声を反映していないと感じてはいるものの、他に向かう先がない」と指摘している。
▽政党は何のために存在するのか
・だが、「少数派民族以外の代表とはならない」というデンクのアプローチはオランダ社会が抱える分断を広げてしまう危険性をはらむ。「デンクに所属する議員の発言は”自分たちと相手の対立“という議論であふれている」――。労働党所属のモロッコ系議員、アハメッド・マルコウチ氏はこう指摘する。 最近、オスマン帝国政府によるアルメニア人虐殺を認定する決議案についてオランダ国会が審議した際、デンクは異例の行動に出た。誰が賛成票(もしくは反対票)を投じたのか分かる形で投票するよう要求したのだ。これには、この発議に投票する他党のトルコ系議員の映像を政治キャンペーンの材料として使い、支持層にアピールする狙いがあった。
・もしも政党が民族を代表するものであるのなら、こうした政治の分断は避けられないものなのかもしれない。前出のジャマールが最終的にはデンクへの投票をためらうであろう理由は、おそらくそこにあるのではないか。ジャマールはこう問いかける――「問題は、デンクが移民の利益のみを代表する政党のつもりでいるのか、という点だ」「政党とは人々をまとめることが仕事のはずだ」と。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/061500086/?P=1

第三に、在独ジャーナリストの川口マーン恵美氏が6月17日付け現代ビジネスに寄稿した「ドイツの難民たちは「欲求不満」で一触即発! 多発する婦女暴行、放火に爆破事件まで……人道と国益は両立できるのか」を紹介しよう(▽は小見出し9.
▽難民絡みの暴力沙汰が激増
・今年の4月にドイツ連邦刑事局が発表したところによれば、1月から3月までのあいだに、難民、および難民の宿舎に危害を加える犯罪が268件も発生したという。毎日3件ずつ起きている計算だ。 内訳は、暴行が53件、放火が29件、器物破壊が103件、扇動が69件、そして爆薬取扱法違反が2件。爆破も1件ある。 ちなみに2015年の類似の事件は1029件。一昨年は199件だったので、急激に増加していることがわかる。多くは右翼の手によるものと言われるが、放火や爆破などを除いて、ほとんどが不起訴だ。また、どの程度、国民の間に隠れたシンパがいるのかも不明。
・こういう反発が起こるのは、やはり難民の数が増えすぎているということがある。去年1年で110万人がドイツで難民申請をしたことはすでによく知られているが、それ以前から、多かれ少なかれ難民は毎年コンスタントに入っていた。合計すると、たいそうな数になるはずだ。 ドイツに住んでいれば難民の増加は肌で実感できる。中央駅や、街の緑地公園などには、常に手持ち無沙汰で物見をしている難民らしき人たちの集団が見られるし、とにかく警備がすごい。
・難民に混じってテロリストが入ったことも明らかになっており、大量の難民が自由に行動しているドイツでは、テロリストも勝手に動き回っている可能性が高い。テロリストが他のEU国に移動したりすると、重大な責任問題である。自ずと警備も厳重になる。 警備は警官だけでは間に合わないので、民間の警備会社の警備員が大量に投入されている。警備員の多くは屈強な体躯にスキンヘッドで眼光鋭く、なかには両腕一面の刺青を見せつけるようにのしのし歩いている人たちもおり、これはこれで結構怖い。 ドイツの都会の風景は、本当に様変わりした。
▽メディアの報道姿勢にも変化が
・さて、難民に関しては、最近になって他の問題も報道され始めた。一つは難民が容疑者となっている犯罪、そして、もう一つは難民同士の抗争だ。 ドイツではながらく、難民に不利になるような報道は避けられていた。そのタブーが破られたのが、去年の大晦日、ケルン中央駅前広場での、難民による集団婦女暴行事件(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/47293)だった。
・以来、大手メディアも、必要以上に難民をかばうことはやめたらしい。そんなわけで、難民宿舎での内部抗争という面倒な話が、しばしば伝えられるようになっている。 難民の宿舎で、誰と誰が争っているかというと、これがまた複雑だ。 まず、イスラム教徒とキリスト教徒という永遠の対立構図が一つ。もちろん、犠牲になるのは圧倒的に数の少ないキリスト教徒ということになる。
・先日のニュースで驚いたのは、難民の援助に携わっている教会関係者が、「我々の布教の結果、2人のイスラム教徒がキリスト教に改宗した」と自慢げに語っていたことだ。ところが、改宗した男性たちは同宿のイスラム教徒に脅され、違う宿舎に移らなければならなくなったという。 そのため、教会関係者は、イスラム教徒を非難していたのだが、私の考えでは、難民宿舎でわざわざ布教をする方が悪い。火に油を注ぐようなものではないか。
・また、民族の対立もある。現在ドイツにいるのは、シリアやアフガニスタンからの難民が大多数だが、そのなかに、バルカン半島の旧ユーゴスラビアからの経済難民がたくさん混じり込んでいる。旧ユーゴは、まさに民族対立のメッカのようなところだ。 去年の秋には、ヘッセン州の宿舎で、コソボのアルバニア人とパキスタン人の大規模な闘争が起き、400人もの難民が暴れ、警官、難民ともに負傷者が出た。そこまで大規模ではなくても、小競り合いやシマ争いのような暴力沙汰は、どこの宿舎でも日常茶飯事だという。今年4月には、難民が、待遇が悪いと怒って、自ら自分たちの宿舎に放火するという事件も2件起こった。
・前述のように、警察のパトロールはもう限界に達しており、収容所の治安維持は民間の警備会社が請け負っているが、警備する側と、される側のあいだでも、やはり宗教の違いなどで諍いが起きる(警備員には外国系が多い)。 これでは警備が追いつかないとして、難民を宗教別に分けているところもあるという。こういう共存の難しい人たちがドイツに定着するとなると、前途は険しい。
▽宗教対立に加えて婦女暴行も多発
・5月21日、今度は北ドイツの難民宿舎で、チェチェン共和国のイスラム教徒と、イラクのヤズィーディー教徒とのあいだに大掛かりな暴行事件が起こった。抗争の火種はすでに以前から存在し、小競り合いに次ぐ小競り合い、報復に次ぐ報復という形でエスカレートし、ついにその晩、5人が重傷を負うという事件にまで発展した。
・ヤズィーディー教というのは、キリスト教、ゾロアスター教、イスラム教の混ざり合ったようなクルド民族固有の宗教だそうだ。掟が厳しく、他宗教との婚姻を認めていない。その数、20~80万人。 なぜ、こんなに幅があるのかというと、2500~3000万人いるクルド族のなかの、どれくらいの人数がヤズィーディー教徒であるかがさっぱりわからないからだそうだ。
・いずれにしても、イスラム原理主義者にしてみれば、ヤズィーディー教は完全なる邪教なので、信者は殺すしかない。2年前の夏ごろ、IS勢力に追われ、灼熱の砂漠を徒歩で逃げていくイラク人の映像が大きく報道されたが、彼らがヤズィーディー教のクルド族だ。 ドイツにもヤズィーディー教徒は10万人いると言われ(多くは70年から90年代にかけて入った)、ときどき、ISに対する抗議デモ、およびドイツ政府の援助を求める活動をしている。
・この北ドイツでの暴行事件の後、当該の自治体は、この二つの宗教グループの宿舎を分けることを決めたという。ただ、宿舎を分けても、街で行き合わせたら、また同じことが起こる可能性は高い。近隣の住民にしてみれば、ひどい迷惑である。
・そのほかに多発しているのが婦女暴行だ。 難民は圧倒的に若い男性が多いし、仕事のない人がほとんどだ。語学コースや成人教室なども、なかなか整備が追いつかない。要するに、皆、することがない。だからといって街に出ても、買い物するお金がないか、買ったものを並べる場所がないかのどちらかで、皆、道行くドイツ人を見ては、いろいろな意味で欲求不満になっている。 つまり、婦女暴行に関しても、あっちの宿舎でもこっちの宿舎でも、表沙汰にはならないが、一触即発のような状況になっているらしい。せっかく安全なところに来たというのに、難民の女性たちは再び危険に遭遇している。
▽人道と国益は両立できるか
・去年までのドイツ政府は、難民はドイツにとってのチャンスであると声高に主張していたが、最近は、難民をいかに統合するかがドイツの課題であるというようになった。 戦後の経済成長期のドイツには、多くの外国人労働者が入ったが、ドイツはその外国人を労働力として見なしたのみで、ドイツ社会に受け入れる努力をしなかった。その結果、ドイツ内に平行社会、それどころか、ドイツに対する敵対勢力のようなものができてしまった。今度はそれを未然に防ごうというわけだ。
・ドイツはすでに何度も移民法を改訂しているが、今、新しい難民統合法の制定も予定している。中身は、簡単に言えば、「ドイツに溶け込む努力をしない人は、帰ってもらう」ということだ。 少なくとも100時間の語学や基本的人権や民主主義についての講義を受けることが義務となるし、また、3年間は政府の指定した地域に住まなければならないとか、正式な滞在許可は5年間滞在した後でないと発行されないとか、難民もうかうかしてはいられなくなる。
・また、北アフリカのモロッコ、アルジェリア、チュニジアを「安全な国」に指定して、そこから来た人たちは早急に祖国送還するということも計画されているが、これは緑の党の反対が強く、今のところどうなるか不明。ただ、たしかに犯罪者には、この三国の出身者が抜群に多い。
・なお政府は、難民を時給1ユーロ(一般の最低賃金は8.5ユーロ)で雇用できるようにするつもりで、今年末には35万の難民が労働市場に組み込まれると豪語している。ただ野党や、難民を応援する組織などからは、これは人種差別的だという非難の声が上がっている。時給1ユーロというのは、子供のお手伝いのお駄賃よりも安い。
・そうこうするうちに、6月7日、デュッセルドルフで、難民宿舎として使っていた見本市会場の巨大な建物が全焼した。放火の犯人たちはその宿舎の住人で、やはりモロッコなど北アフリカ出身の男たちだ。この宿舎では暴力沙汰が絶えず、今年になってから警察が駆けつけた事件がすでに89件も起こっていたという。
・ドイツは常に人道的であることを主張している国であるため、これからの課題は、いかに人道と国益のバランスを図るかということだ。現在、バルカンルートが閉鎖されているため、ドイツに入ってくる難民の数は、極端に減っているが、難民についての議論はまだまだ続く。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48932

トルコのエルドアン大統領が、「難民カード」をフルに利用して、ドイツやEUを手玉に取っているのは、ある意味で当然ではあるが、それにしても「法治国家」とはいえないような専制的手法は、やはりEU加盟を希望する国としてはふさわしくないように思う。
オランダで、ムスリムや少数派民族が、これまで支持してきた中道左派の労働党が、自分たちを守ってくれないと、新たな民族政党に流れつつあるらしい。メディアのトルコ系市民への世論調査は、「お粗末」というほかないが、これに対し『アッシャー副首相はこの調査結果を無効とするのではなく、これが「厄介なもの」であると発言』 した背景がこの記事ではよくわからなかった。
川口マーン恵美氏が指摘するドイツの難民の「欲求不満」はありうる話だ。難民同士の抗争というのも、これまで属性で分けずに一緒くたにしていたのであれば、当然予測される事態だ。「新しい難民統合法の制定も予定」は、当然のことだ。「北アフリカのモロッコ、アルジェリア、チュニジアを「安全な国」に指定して、そこから来た人たちは早急に祖国送還するということも計画」に対し、緑の党が反対しているとのことだが、これら3か国からの難民は経済難民に過ぎない筈なので、彼らは如何なる理由で反対しているのだろう? それにしても、「難民が待遇が悪いと怒って、自ら自分たちの宿舎に放火するという事件」や、デュッセルドルフの難民宿舎の放火事件、などはとんでもない「勘違い」で、困ったものだ。難民受け入れ時に、語学だけでなく、「勘違い」しないような教育も必要なのかも知れない。 
いずれにしろ、欧州にとって、難民問題は英国のEU離脱問題と並んで大きな難問で、したたかなヨーロッパ人の知恵が試されているといえるのではなかろうか。
タグ:オランダ デュッセルドルフ メルケル 日経ビジネスオンライン The Economist 現代ビジネス 熊谷徹 川口マーン恵美 欧州難民問題 (その5)EU・トルコ間の難民合意、オランダでは”移民の味方”の民族政党も出現、ドイツの難民の「欲求不満」 風前の灯!EU・トルコ間の難民合意 エルドアンの「独裁化」で、窮地に追い込まれるメルケル 最後の頼みの綱であるトルコとの間で、不協和音が高まっているからだ シリア難民の数を減らすためのトルコとの合意が、破綻する可能性もある トルコの対テロ法 適用範囲を大幅に拡大 市民が平和や人権の尊重を要求するだけでも、テロリストを助けたとして摘発される危険 トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアン 難民対策費用30億ユーロ(約3600億円)を60億ユーロ(約7200億円)に倍増するよう要求 トルコがEUに加盟するための交渉を加速 ビザの取得義務を今年6月までに撤廃するよう求めていた EU議会は、「トルコが対テロ法を大幅に改正しない限り、トルコ人がビザなしでEUに渡航するのを認めない」と5月初めに宣言 トルコ議会が憲法を改正し、138人の議員の不逮捕特権を剥奪 クルド人の利益を代表する政 エルドアン大統領による独裁体制への道を開くものだ」と強い抗議の声 穏健派として知られたアフメト・ダウトオールが、5月8日にトルコの首相から退いたことも、EUにとって悪い兆候 メルケルが抱く不快感 激減した難民数 エルドアンの「難民カード」 難民危機の小康状態は、まるで薄氷のように脆い 「「中道左派にはもう頼れない」欧州移民の悲哀 “移民の味方”である民族政党は国家分断の源?」 ハーグ市 ムスリムや少数派民族を“代表”する民族政党が台頭 過去の選挙では中道左派の労働党に票を投じてきた 今は新しくできた「デンク」への乗り換えを検討 労働党などの主流政党は自分たちを守ってくれないと感じている 中道左派離れが始まった 少数派民族の人たちは往々にして、中道左派政党は自分たちからの支持を当然視し、それに見合う見返りを与えてくれないと感じている 移民を軽視する政府高官 ローデワイク・アッシャー副首相(労働党)はトルコ系オランダ人の市民団体への監視強化を認めた オランダのメディア トルコ系市民の若者の87%が過激派イスラム国(IS)に共感している」とする世論調査の結果を発表 後の調査でこの結果はひどい代物であることが判明 インタビューを受けた人たちは質問を理解していなかったのだ アッシャー副首相はこの調査結果を無効とするのではなく、これが「厄介なもの」であると発言 トルコ系オランダ人の多くが激怒 既存の政治に失望する移民は投票に行かない 政党は何のために存在するのか 政党とは人々をまとめることが仕事のはずだ ドイツの難民たちは「欲求不満」で一触即発! 多発する婦女暴行、放火に爆破事件まで……人道と国益は両立できるのか 難民絡みの暴力沙汰が激増 多くは右翼の手によるものと言われるが、放火や爆破などを除いて、ほとんどが不起訴 メディアの報道姿勢にも変化 難民が容疑者となっている犯罪 難民同士の抗争 ドイツではながらく、難民に不利になるような報道は避けられていた。そのタブーが破られたのが、去年の大晦日、ケルン中央駅前広場での、難民による集団婦女暴行事件 イスラム教徒とキリスト教徒という永遠の対立構図が一つ 民族の対立もある 収容所の治安維持は民間の警備会社が請け負っている 宗教対立に加えて婦女暴行も多発 北ドイツの難民宿舎 チェチェン共和国のイスラム教徒と、イラクのヤズィーディー教徒とのあいだに大掛かりな暴行事件 婦女暴行に関しても、あっちの宿舎でもこっちの宿舎でも、表沙汰にはならないが、一触即発のような状況になっているらしい 人道と国益は両立できるか 新しい難民統合法の制定も予定 ドイツに溶け込む努力をしない人は、帰ってもらう 北アフリカのモロッコ、アルジェリア、チュニジアを「安全な国」に指定して、そこから来た人たちは早急に祖国送還するということも計画 緑の党の反対が強く、今のところどうなるか不明 難民宿舎として使っていた見本市会場の巨大な建物が全焼した。放火の犯人たちはその宿舎の住人で、やはりモロッコなど北アフリカ出身の男たちだ
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