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教育(その8)広島中3、進路指導による「指導死」問題2 [社会]

今日は、3月12日に取上げた悲惨な事件の後日談として、教育(その8)広島中3、進路指導による「指導死」問題2 である。

先ずは、11月3日付け産経WEST「中3自殺、誤った万引記録に基づく対応「きっかけとなった」…第三者委が報告書 広島」を紹介しよう。
・広島県府中町内の中3年の男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づいて進路指導を受けた後に自殺した問題で、有識者らでつくる第三者委員会が3日、報告書をまとめ、町教委に提出した。誤った記録に基づいて生徒の専願を認めなかった対応が、自殺の「要因の一つで、きっかけとなった」と結論づけた。
・報告書では、生徒が万引したのかどうかを学校側が速やかに事実確認せず、記録する際も口頭のみで個人名を伝達したために取り違えたと指摘。自殺した生徒が、学習状況も生活状況も問題ないと教員が認識していたにもかかわらず、万引を理由に専願を認めなかった対応を「機械的・形式的な運用」と批判した。
・また、再発防止策として、学校側には適切な情報管理の徹底などを求めた。男子生徒は、担任に万引をしているため志望校への推薦はできないと告げられ、昨年12月8日、両親を交えた三者懇談を欠席し自宅で自殺。その後、万引したのは別の生徒だったことが判明した。男子生徒の両親は代理人弁護士を通じて「われわれの思いを酌んでもらったと思う。報告書を受け町教委や個々の先生がどうしていくのか見守りたい」とのコメントを出した。
http://www.sankei.com/west/news/161103/wst1611030049-n1.html

次に、立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長の上久保誠人氏が3月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「広島中3自殺の再発防止には、進路指導という「権力」をなくすべきだ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・広島県府中町で、中学3年の男子生徒が、万引きの非行歴があるという誤った情報が記載された資料に基づいて進路指導を受けた後、自殺した。学校側は調査報告書において、誤った進路指導があったことなどを認め、生徒の自殺に関し「学校としての責任がある」と結論づけた。
・自殺した生徒が通っていた中学校の、あまりにも杜撰な資料管理、間違った生徒指導に対しては、全国に強い憤りが広がっている。また、学校での行き過ぎた指導による「指導死」が全国で相次いでいる問題にも注目が集まり始めている。
・しかし本稿では、中学校の生徒指導に対する批判そのものからは、一線を画したい。それ以上に本質的に問題なことがあると考えるからだ。それは、生徒が高校を受験できるか否かを、中学校が事実上決定してきたことである。 中学校は、生徒の求めに応じて、希望する高校への推薦状・内申書を無条件に提出すべきなのだ。その代わり、推薦状・内申書には高校側が求める生徒の生活態度・成績について、嘘偽りなくすべてを記載する。生徒に非行歴があれば、隠さずに書けばいいのである。
・中学校が、曖昧な基準を基に「いい生徒」と「悪い生徒」に分けてしまうことは問題がある。学校と生徒の間に、ある種の「権力関係」を生じさせてしまうからである。学校が「権力」を持つことで、学校の強い指導の押しつけを生徒が拒むことは難しくなる。一方で学校が持つ「権力」を利用してやろうと考える、「モンスターペアレンツ」が出現することにもなるのだ。
・生徒の入学の可否を審査するのは、あくまで高校だ。中学校は、客観的な指標に基づいて、オープンに生徒を評価するだけでいい。生徒は、その評価を受け入れた上で、自由にさまざまな進路の可能性を検討する。新たなルールを確立すべき時だと考える。
▽推薦状社会・欧米では、「推薦される人の本当の姿」を描写する
・欧米は「推薦状社会」と呼ばれている。進学も就職も「推薦状」に基づいて審査が行われている。私が学んだ英国の大学でも、推薦状は入試の重要な部分を占めていた。日本との大きな違いは、推薦状では「推薦される人の本当の姿」を描写することだ。場合によっては、「私はこの学生を推薦したくない」ということを、具体的な理由とともに、遠慮なくはっきり書くこともあるのだ。
・一方で、学生から推薦状執筆を依頼されたら、教員がそれを拒むことはほとんどない。ある学生には推薦状を書いたが、ある学生には書かなかった、という区別は基本的にしないのだ。欧米では、ハラスメントに対する厳しい基準がある。推薦状を書くか否かで教員・学生間に「権力関係」が生じることがないように、極めて慎重な対応をしているのだ。換言すれば、学生が教諭からの「圧力」を受けることなく、将来の進路選択の機会を得る権利が確保されているのである。
・これは、日本と大きな違いなのである。日本では、推薦状を書くということは、その学生の「いいところ」を書くものだというのが、常識となっている。そして、いいところを書くといっても、「この学生は学業優秀、生活態度が優良である」の一行だけで、学生についての具体的な描写は一切ない推薦状が、実は多かったりする。
・当該学生のことを実はよく知らないにもかかわらず、政治家・企業経営者など社会的地位・名誉のある人が推薦人を務めることもよくある。要は、日本社会における「推薦状」とは、推薦される人の、「人となり」を評価してもらうためのものではなく、社会的地位・名誉を持つ人の推薦を得ることで、信用してもらうためのものだといえる。そして、推薦状をもらえるかどうかを巡って、さまざまな問題が起こってくるのだ。
▽欧米の学校では、日常の成績評価でも「第三者」のチェックが入る
・欧米の学校では、日常の成績評価についても、客観的でオープンなシステムが導入されている。筆者が在籍した大学の場合、定期試験の評価の最終的な決定権を持つのは、学外の「第三者」であった。担当教員が定期試験の答案を採点するのは当然なのだが、その後に、答案は学部が選んだ「第三者」に送られる。「第三者」とは、この場合は他大学の教員である。「第三者」は、担当教員から送られてきた採点済みの答案を見る。採点が適正に行われていることを確認できたら、初めて成績評価が確定するのである。
・もちろん「第三者」は、膨大な数の答案をすべて採点し直すわけではない。おそらく、ランダムに決められた数を選んで見るか、「A+評価(特優)」と「F評価(落第)」だけを慎重に確認するかのいずれかの方法だと思われる。いずれにせよ、「第三者」のチェックが入るために、担当教員がいい加減な評価をすることができない仕組みになっている。
・更にいえば、「小保方問題」等で取りざたされた博士論文の審査についても、厳しいルールがある。筆者が所属した英国の大学では、博士号授与の最終権限を持つ「第一審査員」は、大学が依頼した外部の専門家が務め、大学が示すオープンなガイドラインに基づいて論文を審査する。学内から選ばれる「第二審査員」は、指導教官以外が務める。指導教官は、審査には加わらず、口頭試問の後、審査結果を聞かされるだけである。
・これに対して日本では、第一審査員は指導教官が務め、第二審査員も学内の教員が務める。学生を評価する方法について、日本と欧米では根本的な違いがあるといえる。欧米では「情」や「主観」が入り込まないように、オープンな評価基準と学外の専門家によるチェック機能が確立しているのである。
▽事件は外部の目が届かない「密室」で中学校の曖昧な「権限」の下に起こった
・今回の中学生自殺問題で明らかになってきている、中学校の杜撰な資料管理と間違った生徒指導は、生徒の進路選択の権利尊重を第一とし、オープンな評価基準と外部のチェック機能があれば、起き得なかったことである。
・中学校が公表した調査報告書によれば、万引き事件が起きた時、店に出向いて対応した教諭は、生徒指導担当の教諭に口頭だけで報告した。そして、生徒指導担当の教諭はパソコンに入力する際に名前を間違え、自殺した生徒の氏名を記入したという。学校は内規で「万引きの報告があった場合には、生徒、保護者、担任、学年主任、生徒指導主事の5者面談や別室指導、奉仕活動などの指導をする」と定めていたが、5者面談など内規に沿った対応はすべて行われなかった。生活指導の会議では、万引き事件について他の教諭から氏名の誤りが指摘されたが、元データが修正されることはなかった。
・また、中学校は、これまで高校入試の校長推薦を出す判断基準としてきた非行歴の調査対象を「3年時のみ」としてきたが、昨年11月になって「1~3年時」に広げていた。校長に推薦基準を決める権限があるらしいが、なぜ突如変更したのか、その理由は公表されていない。
・調査報告書には、「1~2年時を含めると決めた時点で、何を根拠資料にするか学校として検討すべきだったが、その意識はなかった。根拠資料の重大さを職員は認識していなかった」と指摘している。また、基準変更前には3年時の非行歴のみ確認すればよかったため、資料ではなく教員の記憶のみに頼って判断していた。つまり、1~2年時まで遡ることは事実上無理だったのだが、そのようなルール運用上の問題点が、基準変更に際して考慮されることはなかった。
・その上、進路指導が廊下で行われ、5~15分程度の立ち話で済まされていた。万引きの事実確認については「生徒の返事が曖昧で明確な否定もなかったから、確認がとれたと判断していた。一方、自殺した生徒は、進路をめぐる一連のやりとりについて「どうせ言っても先生は聞いてくれない」と保護者に話していたという。
・実際に万引きしていた学生が、中学校の推薦をもらって、高校に合格していたという事実も発覚した。驚かされたのは、この事実を報道陣に質問された校長が「この子はこの時の一回だけでした。その後、頑張って生活をしてきて、彼なら推薦できるだろうという判断ですので、推薦を12月22日の段階で出しました」と説明したことだ。それなら、自殺した学生の推薦を頑なに拒んだのはなぜだったのだろうか。
・これらの事実が少しずつ明るみに出る度に、中学校は厳しい批判に晒された。これらのあまりに杜撰な対応は、すべて外部からの目が届かない密室で、中学校に曖昧な「権限」が与えられてしまっていたことから起きているのである。
▽学校が曖昧な権限を持つことはモンスターペアレンツの出現にもつながる
・学校が密室の中で、曖昧な「権限」を行使できる状況は、もっと深刻な問題を引き起こしている可能性もある。それは「モンスターペアレンツ」の問題だ。 繰り返しになるが、学校が曖昧な権限を持つことによって、学校側と生徒側の間に、ある種の「権力関係」を生じることになる。それは、学校側が不当に権力行使するリスクを高めるが、それに加えて、その権力を悪用したいという親(モンスターペアレンツ)の出現を招いてしまうというリスクもあると考える。
・今回の事件は、おそらくレベルの高い高校の推薦入学を巡って起こったことのようだ。だが、推薦入学の問題は、レベルの高くない高校への進学を巡っての方が、実はより多く起こっているように思われる。 現在、事実上「義務教育」化しているといっても過言ではないほど、高校への進学率は高くなっている。誰でも高校へ行くのが当たり前という状況で、素行不良や非行歴のある学生でもどこかの高校に入学させないといけないことが、中学校にとって頭の痛い問題となる。
・中学校が、大量の高校未進学者を出すことは、社会的に許されることではないだろう。そこに付け込んで、素行不良の学生の親が「非行歴、素行不良を内申書に書くな」と学校に厳しい圧力をかけてくることになる。結局、中学校は、いじめの加害、補導歴、非行などがあっても、それを隠して内申書を書かねばならなくなる。 もし、成績や素行の評価がオープンで公正に行われ、学校が妙な「権力」を持つことがなければ、親が学校に圧力をかけても無意味になってしまう。親がモンスターペアレンツに化けることもなくなるのである。
▽オープンで公正な学生評価ルールを確立し学生の行動に「責任感」を植え付ける
・今回の問題における学校側の杜撰な資料管理、間違った進路指導は言語道断なのは言うまでもない。だが、より本質的な問題を忘れてはいけない。今回の件で学校の信用が地に堕ちた後になお、学校が生徒の進路選択に曖昧な権限を行使し続けるならば、その後起こることは、モンスターペアレンツの圧力が際限なく強くなっていくことだ。学校の現場は収拾のつかない無法地帯に陥ってしまう懸念がある。そんなことは、あってはならないことだ。
・重要なことは、オープンで公正な学生の成績評価、素行記録のルールを作ることだ。中学校は、学生側から求められればどの学校・企業に対しても推薦状・内申書を提出する。学生の進路選択の権利を侵害することはない。ただし学校は、ガラス張りで行われる成績評価・素行記録を、受け入れ先の求めに応じて包み隠さず開示するのである。
・推薦状・内申書は、海外ではコンフィデンシャル(機密事項)で、学生には通常公開されないが、日本の場合はこれまでの経緯に鑑み、公開性が高い方がいいだろう。推薦状・内申書は、提出前に親や生徒本人に見せて確認させればいい。そして、その内容については、教諭・学生・保護者の三者で議論すればいい。議論の記録はすべて残していくべきなのは言うまでもない。
・また、日常の学生指導、学生の素行記録、成績評価、進路指導の記録はすべて第三者機関がチェックする体制を確立すべきだ。その内容の変更を求める学生・保護者がいれば、その第三者機関が調停する仕組みにすればよい。 これは、学校・学生双方にいい効果をもたらすと考える。学校は、杜撰な資料管理をすることができず、曖昧な権限で、安易に学生の評価を下すことができなくなる。高い緊張感を持って教育活動に取り組まざるを得なくなるだろう。
・一方、学生側も、悪いことをしたら記録が後々までオープンに残り、消せなくなるとなると、悪いことはできなくなる。学生も、従来のように、どうせ素行不良は学校が隠蔽してくれるからと、安易な気持ちでいられなくなる。学生は、日頃から行動に責任を持たなければならなくなるのだ。学生に責任感を植え付けることこそが、教育にとって最も重要なのではないかと考える。
http://diamond.jp/articles/-/87887

産経WESTが伝える第三者委報告書は、これだけの重大な問題なのに、問題点を深く掘り下げずに、表面的な指摘に留まったようだ。これでは、「機械的・形式的な運用」が何故生じたのかは、さっぱり分からず、再発防止策も表面的なものに終わっているようだ。
上久保氏が指摘する『中学校が、『曖昧な基準を基に「いい生徒」と「悪い生徒」に分けてしまうことは問題がある。学校と生徒の間に、ある種の「権力関係」を生じさせてしまうからである。学校が「権力」を持つことで、学校の強い指導の押しつけを生徒が拒むことは難しくなる。一方で学校が持つ「権力」を利用してやろうと考える、「モンスターペアレンツ」が出現することにもなるのだ』、というのは同感である。『推薦状社会・欧米では、「推薦される人の本当の姿」を描写する』、その代わりに、『欧米の学校では、日常の成績評価でも「第三者」のチェックが入る』、といのはなかなかいい仕組みだ。『オープンな評価基準と外部のチェック機能』、というのは最善の再発防止策だとは思うが、極めて閉鎖的な日本の教育界とは完全に対極の世界である。現実には現在の仕組みが維持され、今後も不適切な進路指導が行われてしまうのだろうと考えると、いたたまれない感じが残る。
タグ:教育 自殺 ダイヤモンド・オンライン 産経west 広島県府中町 上久保誠人 (その8)広島中3、進路指導による「指導死」問題2 中3自殺、誤った万引記録に基づく対応「きっかけとなった」…第三者委が報告書 広島 誤った万引記録に基づいて進路指導 第三者委員会が3日、報告書 万引を理由に専願を認めなかった対応を「機械的・形式的な運用」と批判 広島中3自殺の再発防止には、進路指導という「権力」をなくすべきだ あまりにも杜撰な資料管理、間違った生徒指導 本質的に問題なことがあると考えるからだ。それは、生徒が高校を受験できるか否かを、中学校が事実上決定してきたことである 生徒の求めに応じて、希望する高校への推薦状・内申書を無条件に提出すべきなのだ 推薦状・内申書には高校側が求める生徒の生活態度・成績について、嘘偽りなくすべてを記載する 中学校が、曖昧な基準を基に「いい生徒」と「悪い生徒」に分けてしまうことは問題がある 学校と生徒の間に、ある種の「権力関係」を生じさせてしまうからである。学校が「権力」を持つことで、学校の強い指導の押しつけを生徒が拒むことは難しくなる 一方で学校が持つ「権力」を利用してやろうと考える、「モンスターペアレンツ」が出現することにもなるのだ 推薦状社会・欧米では、「推薦される人の本当の姿」を描写する 欧米の学校では、日常の成績評価でも「第三者」のチェックが入る 事件は外部の目が届かない「密室」で中学校の曖昧な「権限」の下に起こった 学校が曖昧な権限を持つことはモンスターペアレンツの出現にもつながる オープンで公正な学生評価ルールを確立し学生の行動に「責任感」を植え付ける
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