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資本市場(その2)(子会社上場が密かに増加、上場企業のインサイダー取引が急増、にわかに人気の資金調達スキーム“新型MSCB”とは、2500兆円超え!?世界で急拡大“ESG投資”とは) [金融]

資本市場については、昨年10月15日に取上げた。今日は、(その2)(子会社上場が密かに増加、上場企業のインサイダー取引が急増、にわかに人気の資金調達スキーム“新型MSCB”とは、2500兆円超え!?世界で急拡大“ESG投資”とは) である。

先ずは、8月23日付けダイヤモンド・オンライン「子会社上場が密かに増加、問題視に抗う“親子”のホンネ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「子会社の上場が増えている実感はありますね」──。IPO(新規株式公開)の実務に精通した、ある関係者は打ち明ける。実際、今秋から年度末にかけて、上場企業傘下の子会社3社が、IPOの準備を進めているという。 今年度もすでに、複数の子会社がIPOを果たした。東京証券取引所によれば、「親子上場」している子会社数は減少傾向にあるとはいえ、いまだ300社超に上る。
・「子会社上場」については、親会社からの独立性や、親会社と子会社の少数株主に対する利益相反などガバナンス(企業統治)上の問題が指摘され、その是非をめぐって議論が繰り広げられてきた。ところが、日本株が高値圏にあり資金調達環境も悪くない今、ひそかにブームの様相を呈しているのだ。
・ガバナンス強化がうたわれる昨今、親子上場に批判的な海外投資家などから厳しい視線を浴びかねないが、それでも子会社上場がじわりと増えているのはなぜか。
・冒頭の関係者によれば、子会社上場は、それぞれの関係主体にとってメリットが大きいという。 まず親会社からすれば、子会社株の一部を市場に放出することで、キャッシュ(現金)を確保できる。次に、IPOの主幹事を務める証券会社としては、親会社との関係構築により、別の案件につなげられる可能性も出てくる。  実務的にも、新興ベンチャーと比べ、上場に関する親会社の経験や人材を生かせる上、大企業グループであれば財務面の不安も比較的小さい。いわば“労少なくして功多し”という構図なのだ。
▽古くて新しい子会社問題
・とはいえ、ガバナンス上の問題は付きまとう。東証の新規上場ガイドブックには「本来、上場会社のガバナンス上、特定の親会社等が大きな影響力を持つのは望ましいものではない」とある。 特に「中核的子会社」の上場はIPO利得の“二重取り”となりかねないため、東証は上場審査で慎重な姿勢を崩さない。ただし、「投資機会の提供」といった面も加味し、子会社の上場自体を禁じてはいない。
・建前は「子会社としての成長」などとうたい上場することが多いが、最近の実態は海外企業の買収に失敗した親会社がキャッシュを求めたり、過去に投資した子会社を「売り時」とみて利益回収を図ったりするような例も見られる。 共に企業グループの「選択と集中」戦略の一環として、子会社上場が俎上に載っているといえる。
・事業戦略かガバナンスか──。旧民主党政権時代には親子上場が批判され、廃止の法制化が検討されたことすらある。その逆風が去ったとみて、再びかつてのスキームが息を吹き返したのか。ガバナンス上の疑念が解消されたわけではないだけに、今後もこの“古くて新しい問題”の行方を注視しておくべきだろう。
http://diamond.jp/articles/-/139490

次に、9月22日付け東洋経済オンライン「上場企業のインサイダー取引が急増している 背景に公開買い付けや第三者割当増資の増加」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・有価証券の取引に関する課徴金勧告と刑事告発の総件数は前年度に比べて3割も増加。不公正取引に対する勧告件数に至っては過去最多を更新――。証券取引等監視委員会が公表した2016年度の活動状況からは、個人投資家を「貯蓄から投資へ」から遠ざけかねない、証券取引の"不都合な真実"が浮き彫りとなった。
▽インサイダー取引が増加
・証券監視委によると、2016年度の勧告・告発の総件数は63件と、前年度の49件から大幅に増加した。総件数を大きく引き上げたのは、不公正取引に関する課徴金勧告だ。2015年度は35件だったものが、2016年度は51件と急増。2009年度の43件を抜き、過去最多を更新した。 51件のうち、インサイダー取引に関するものが43件だった。こちらも2009年度の38件を抜いて、過去最多の件数となった。構成要件としては、業務提携に関するものが33.3%、公開買い付けなどに関するものが22.2%と続いた。
▽ROE重視で業務提携による資本異動が活発に
・その背景にあると証券監視委が見ているのは、ROE(自己資本利益率)重視の企業経営が広がる中、そうした流れを悪用する動きが拡大しているという事情だ。 ROEとは、株主が出資した自己資本をどれだけ効率的に利用し、利益を上げることができたかを示す指標。2000年代に入って外国人投資家をはじめとする株主の発言力が増す中で、ROEを重視する姿勢を打ち出す企業が増加してきた。
・さらに、2014年8月には経済産業省が「伊藤レポート」を公表。「グローバルな投資家との対話では8%を上回るROEを最低ラインとし、より高い水準を目指すべき」との提案がなされた。また、2015年3月に金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を取りまとめ、上場企業に対して収益力や資本効率の改善などを求めた結果、4割以上の上場企業がROEの向上を経営指標に掲げるようになった。
・ROEを高めるには、分子である純利益を増加させるか、分母である自己資本を減らす必要がある。地道に売り上げを増やしたり、各種費用の削減を積み重ねたりして、純利益を増やすという方法が王道だが、成熟産業ではそれも簡単ではない。その場合、業務提携や株式公開買い付けで事業分野を拡大したり、自己株を買い付け、消却することで自己資本を減らしたりするほうが手っ取り早い。
・ただ、業務提携や公開買い付けを行おうとすると、複雑な手続きを経る必要があるため、関与する人数がどうしても多くなってしまう。また、提携や買い付けの合意から公表までの期間も長くなりがちだ。その分、インサイダー情報を悪用して利益を上げようとする関係者は多くなる傾向がある。
・特に公開買い付けや第三者割当増資の場合、買い付け(割当)価格にはプレミアムが乗せられるのが一般的。その後は買い付け(割当)価格にサヤ寄せする形で株価が上昇することが多い。つまり、不公正な取引をすることにインセンティブが働きやすい。
▽悪用事例は今後も増加?
・たとえば、今年2月に証券監視委が勧告したモルフォ(東証マザーズ上場)に関する事案は、従業員持ち株会がインサイダー取引に関与した初のケースで、違反行為者は10人に上った。同社は2015年12月に自動車部品大手のデンソーと資本業務提携を結ぶと公表したが、事前にその情報を知っていた役員1人と社員2人がモルフォ株を買い付けた。さらに、別の6人の社員が提携の事実を知りながら、持ち株会への拠出金の増額や新規入会を行った。
・上場企業の従業員が個別の投資判断には基づかず、一定の計画に沿って継続的に自社株を購入する場合は、インサイダー取引の規制からは除外される。ただ、今回のケースは「個別の投資判断に基づかず」という要件を欠いていたため、適用除外の対象とはならなかった。
・かねてROE重視の経営に関しては、将来の成長に必要なはずの費用まで削減したり、自社株買いを実施するために転換社債を発行したりする企業が増えているなどの弊害が指摘されてきた。むろん、インサイダー取引については悪用する側に非があるわけだが、足元の悪用事例の増加は官民挙げてのROE重視の姿勢がもたらした副産物と見ることもできそうだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/189420

第三に、10月4日付けダイヤモンド・オンライン「にわかに人気の資金調達スキーム“新型MSCB”とは」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・“新型MSCB”。野村證券のホールセール(法人営業)の一角でこう称される、新株予約権を用いた資金調達がにわかに人気を集めている。 本誌の調べによると、今年は東証1部上場の繊維機械大手、島精機製作所や、外食チェーングループのヴィア・ホールディングスなど5社がこのスキームでの資金調達を実施した。
・既に昨年の発行数を上回っている。各社の開示資料は20~30ページに及び、一般人には複雑怪奇な文字列にも映る長大なものだ。
・そもそも新株予約権とは、あらかじめ定められた条件で企業へ株式の発行や提供を求め、それを購入できる権利を指す。今回のスキームは、まず新株予約権そのものを引き受けた野村が、市場動向を見ながら段階的に権利を行使。そして行使した分の金額が発行会社に入る際、野村が一定期間行使しなければ、発行会社が強制的に指定数の新株予約権を行使させる条項や、逆に行使させない停止期間に関する条項が付いている。
・またこの際、野村は市場価格より1割ほど安い水準で新株予約権を行使できる。関係者によると、野村は新株予約権の行使で手にした発行会社の株を機関投資家に向けて手放し、その投資家との関係強化などにも生かしている。
▽「投資家目線」重視の中で
・発行会社の目線に立つと、一般的に新株予約権が行使されてその会社の株式数が増えた場合、株式需給が悪化する「希薄化」が起きてしまう。だが今回のスキームでは、行使価格の下限が決められ、発行される株式数の上限も定まっており、一気に売り出す場合に比べて株価への悪影響を分散できることになる。一方で株価が下がり、行使価格が低い水準となれば、必要額を調達できない恐れもある。
・MSCBといえば、悪名高い資金調達の代表格として知られるスキーム。株式に転換できる条項が付いた新株予約権付き社債のことで、発行会社の株安が進むと転換価格も引き下がるため、割当先の会社が空売りで株価を下げ、その上でMSCBを株に転換するといった負のスパイラルで株価下落に拍車が掛かるケースもあったとされる。既存株主の利益毀損が問題となり、規制もあって次第に下火となった。
・今回のスキーム、関係者内でも大まかにMSCBの一部と分類する向きはあるが、そもそも社債でもなく、「実態は別物の商品」(企業ファイナンスに詳しい弁護士)との評がある。
・このような複雑なスキームが編み出された背景には、企業統治指針の導入などで「投資家目線」の経営姿勢の強まりを挙げる見方がある。市場での資金調達に際し、株価への悪影響を抑えたいニーズが高まる中、売り出し案件をめぐる証券界の主幹事争いでは、熟慮を重ねた案を示さなければ勝ち残れない熾烈な競争時代が到来しているようにも映る。
http://diamond.jp/articles/-/144503

第四に、9月27日のNHKクローズアップ現代+「2500兆円超え!?世界で急拡大“ESG投資”とは」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落、──は進行役)。
・世界各国で広がる環境破壊や、労働者を酷使する人権問題。これらを防ごうと急拡大しているのが「ESG投資」だ。「環境・社会・ガバナンス」に力を入れる企業への投資が急増する一方で、「十分に配慮していない」と見なされた企業からは資金が引き揚げられ、厳しい対応を迫られるという。3年後の東京五輪を前に、世界の投資家がいま、日本企業への監視を強化。2500兆円を超えた「ESG投資」の最前線を追う。
▽糾弾されるグローバル企業 世界で急拡大“ESG投資”とは
・“ファッションに労働者が殺される”。 今、世界各地でグローバル企業が抗議の声にさらされています。問われているのは、労働者の人権問題。そして、地球規模の環境破壊です。こうした企業の在り方を一変させる動きが、巨額の資金を運用する投資家たちの中から出ています。 機関投資家 「言うことを聞かない企業は株を売り飛ばす。」 
・新たなうねりとなっているESG投資。環境や人権問題などに積極的に取り組む企業に投資する一方、そうではない企業からは資金を引きあげようというのです。運用額は、世界で2,500兆円を超える、この投資。その波は日本にも。
・航空会社 「今までの常識とか、考え方っていうのが変わってきて。」 繊維メーカー「世界がこの3〜4年で変わったな。」 日本の年金基金も1兆円の投資を始めるなど、動きが加速しています。地球の持続可能性と結び付いたESG投資。その実態を追いました。
・田中(キャスター) :ESG投資とは、英語で、環境、社会、そして企業統治の頭文字を並べた言葉です。  企業の業績だけではなく、環境や人権などの問題に、どれだけ取り組んでいるかを考慮する投資です。きっかけは、国連が2006年に機関投資家に責任のある投資を呼びかけたことです。運用額はこの5年間で2倍に急増。日本円でおよそ2,500兆円。世界の投資の4分の1を占めるまでに膨らんでいます。
+急成長を遂げた背景にあるのは、グローバル企業が直面する新たなリスクです。90年代後半から、ナイキやアップルといったグローバル企業が労働者の人権問題や環境問題などで、NGOなどから責任を問われたり、不買運動に発展したりするケースが相次ぎましたが、そこに今、投資という新たな要素が加わって、企業に大きな圧力となっているんです。
── 世界で急速に進むESG投資の流れ。その最前線を取材しました。
▽グローバル企業に圧力が… 世界で急拡大“ESG投資”
・ロンドンにある大手資産運用会社です。 50兆円を超える資産をESG投資に充てています。ここでは3年前から、経営者や専門家などと接触し、人権に関する企業の取り組みを詳細に調べてきました。その結果、グローバル企業98社のランキングを公表。ESG投資の新たな指標として注目されています。日本の大手アパレルメーカーや流通グループも調査の対象となりましたが、ランキングが低く、改善を求められています。この会社では、改善を求めた企業が、その後十分に対応しなかったと判断した場合、投資資金を引きあげるなど、厳しい措置を取るとしています。
・アビバ・インベスターズ 最高投資責任者 スティーブ・ウェイグッド氏 「人権問題を放っておくのは危険です。不祥事などが起こり、業績が悪化する事例も数多くありました。ランクが低い企業が1年たっても改善しない場合は、恥をかくことになるでしょう。」
▽世界で急拡大“ESG投資” 日本にもうねりが…
・世界的なうねりに企業は、どう対応すればいいのか。日本で開かれるESG投資のセミナーには、多くの企業関係者が押し寄せています。
・セミナー講師 「ここに投資家とあります。彼らがものすごい勢いで、いま働きかけています。企業を見る目っていうのは、単なる売上高、そういうものの規模の経済だけではない。社会に対して、どのような負の影響を皆さんの会社が、どこで及ぼしているのかというのを見ていかなきゃいけない。」
・多くの企業がESG、つまり人権や環境問題、そして企業のガバナンスに対する取り組みを行っているか、投資家から突きつけられるようになったといいます。
・大手繊維メーカー「『あなたの会社の人権に取り組む方針を見せろ』とか、『サプライチェーンをちゃんと見ていくときの方針を見せろ』とか、そういう要望をいただくので、世界がこの3〜4年で変わったなという感じがします。」
▽世界に広がるサプライチェーン 責任問われる日本企業
・大手化学メーカーの花王も、人権に配慮した対応を迫られています。世界各国から原料を調達していますが、その取引先の実態すべてを把握できるかが課題となっています。 このメーカーの主力商品はせっけんや洗剤。ところが、これらに含まれている原料の1つが、国際的な人権団体から注目されるようになりました。東南アジアから調達されるパーム油です。
・去年(2016年)11月、人権団体が公開したビデオです。あるパーム油の生産現場で、労働者を酷使したり、子どもを働かせたりするなど、さまざまな人権問題が明らかになりました。 「8歳から12歳の子どもまで働かされています。」
・こうした生産現場とつながりのある大手企業の名前も公表され、抗議のメールや電話が殺到しました。このケースでは、日本企業の関与は指摘されませんでしたが、同じようなパーム油の調達先を抱える花王では、強い危機感が広がりました。
・花王株式会社 執行役員 田中秀輝さん「私どもが買っているパーム油というのは、プランテーション(農園)だけじゃなくて、そういった小規模農家からも結構来ている。ここのトレーサビリティ(追跡可能性)というのは、実はとれていないんですよね。ブラックな会社から買っているとか、そういった会社の評判を落とすようなことは、サプライチェーン上でも、なんとか正していかなきゃいけない。」
・パーム油は、数多くの取引先を経由して調達されています。花王は、上位の3段階まで把握していますが、末端の小規模農家は合わせて120万軒を超え、実態を調査することは困難だといいます。 花王では、海外の生産地を直接訪れ、実態調査に乗り出しています。農園を経営する会社を1つ1つ訪ね、末端の小規模農家の労働状況を調べてほしいと協力を呼びかけています。
・花王株式会社 執行役員 田中秀輝さん「自分たちの社員の人権だけではなくて、取引先の人権も見なくてはいけない。」  花王の取引先 担当者 「我々も正しく行動していることを証明していきたい。」
・花王は、パーム油をすべての農園まで追跡できるようにする方針ですが、手間やコストもかかるなど、実現は容易ではないといいます。
・花王株式会社 執行役員 田中秀輝さん「私ども自身も2020年ていうのを1つのターゲットにしますから、もうあと何年もないですし、さらに、ちょっとギアの速度を上げてかなきゃいけないなと思っています。」
・グローバル化した取引先をすべて把握するため、新たなシステムを導入した会社もあります。大手航空会社の全日空です。  取り組んでいるのが機内食です。食材の仕入れ先が世界各地に広がり、末端の生産者の状況まで把握することが急務になっています。担当者が協力を求めたのが、アメリカのベンチャー企業。開発したブルーナンバーと呼ばれる新たなシステムが注目されています 
・このシステムでは、ネット上の地図にすべての取引先の所在地を示し、クリックすると業者のプロフィールや生産する食材などについて情報が表示されます。さらに、人権や環境に配慮していることを示す認証を取得しているかどうかも確認することができます。
・ブルーナンバー財団CEO プバン・セルヴァナサン氏 「取引先の人権状況について、社内でも情報を簡単に共有できる。」
・ANAホールディングス コーポレートブランド・CSR推進部部長 宮田千夏子さん「なかなか全体像が見えるってないです。難しいと思うんですけど、つながっていくということが見えるのがすばらしい。」
・取引先の情報は、企業が自ら集め、開発者が1つ1つ入力しなくてはなりません。しかし、調達の実態をすべて可視化することで、企業として高い評価を得られると期待しています。
・ANAホールディングス コーポレートブランド・CSR推進部部長 宮田千夏子さん「今までの常識とか、考え方っていうのが変わってきて、今までの工場の開示をするということ、多分ありえなかったと思うんですけれども、それは企業が反対にリスクの観点からするように変わってきているっていうこと自体、そういう流れを、まさにつかむことができたのも、この場だったのかなと思っています。」
▽2,500兆円超え!? 世界で急拡大“ESG投資”とは
・ゲスト 新浪剛史さん(サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長) ゲスト ジョセフ・クラフトさん(経済アナリスト)
・田中:国内のESG投資の状況は海外と比較して、どうなっているんでしょうか。 アメリカでは全体の21.6%。欧州では52.6%と、半分を占めます。一方、日本では、ESG投資は全体のわずか3.4%に過ぎません。しかし、持続可能性を求める流れは、ESG投資だけではありません。2015年に国連総会で採択された、SDGs持続可能な開発目標でも企業の役割が重視されていて、サスティナビリティ革命ともいわれる、大きなうねりとなっているんです。
── サントリーホールディングス社長の新浪剛史さん。 環境や人権に配慮した企業の在り方を、国際会議の場でも提案された経験があるということだが、こうした取り組みが企業に求められている現状を、どう感じる?
・新浪さん:約10年前にリーマンショックというのが起こりまして、この時に社会から批判されたのが、何といっても株主が一番大切なんじゃないか、そういうものの考え方は企業にとって本当にいいのかと、ゆえにリーマンショックが起こったんじゃないかと、こういうようなことを問われたんです。そして、そこで出てきたのは、企業は社会と共生しなきゃいけないんだと、そういうことが多く議論されるようになり、私自身はそれ自身が、企業の目指すものであり、マルチステークホルダー、社会と企業が一緒に歩むこと、これが大変重要な社会になってきた。また、それを企業が乗り越えられないと、企業も競争に勝ち抜けないと、こういう時代になったんだなと、こう感じています。
── 新浪さんご自身も国際会議の場で、ひしひしと感じるということだが?
・新浪さん:この夏にジュネーブで、ワールドエコノミックフォーラム、ダボスの中から会長、社長が集まって、今後の持続的可能な社会をどう作っていくかと、この議論をやったんですが、とりわけ欧州のグローバル企業が議論のリードをしまして、私たち、これを見ながら、真のグローバル企業になっていくには、このSDGsを中心に企業運営をしなきゃいけない、強く痛感して帰ってまいりました。
── 海外の投資家に日本企業についてのアドバイスを提供している、経済アナリストのクラフトさん。  ESG投資に、メリットを感じる投資家が増えているのには、どういった背景がある?
・クラフトさん:理由は3つ挙げられるかと思います。まず第1に、リターンが向上したこと。この5年間で、従来の投資ファンドとほぼ同じのリターン、もしくは場合によっては、上回るリターンの調査があります。2つ目は、情報開示がより投資をしやすくなったと。3つ目、海外の場合は非常に大きいんですけれども、このミレニアル世代。 (2000年以降に成人を迎えた世代ですね。) ミレニアル世代の86%、このESG投資に非常に興味を持ち、この10年間で約30兆ドルという多額の資産が、ミレニアル世代に相続されるということから、非常に今、金融機関はこのミレニアル世代に注目していると。
── 一方、日本でこういった投資が進んでこなかった背景はなに?
・クラフトさん:ここも3つ挙げられるんですが、1つは意識ですね。意識がまだ欧米と比べて低かった。しかし、だんだん上がってきている。そのために、まだニッチビジネスとして、金融機関もあまり取り上げなかったということで、最後にやっぱりマクロの視点でいうと、デフレですね。やっぱりこの20年間、日本のリスク資産の価値が上がらなかった、投資にあまり興味がなかったということで、非常に欧米に比べて遅かったんだろうと思います。
── ただ、これは大きな企業にとっては負担だと思います。 例えば価格が消費者に転嫁されないかとか、国際競争力がこれで保ているのかという懸念もあるかと思うが、どう感じている?
・新浪さん:おっしゃる通りですね。短期的にはなかなか大きなチャレンジではあるんですが、企業は競争力として、いわゆるコストが上がらないようにする。もしくは付加価値をつける、イノベーションで乗り切ると、これが大変重要な要素でありまして。そして、それが消費者に理解をしていただく、まさに今、ミレニアル、こういう方々は、私たちがそういうことをやる、乗り越えることに評価をしていただく、これも付加価値であります。こういった意味で競争戦略でありますので、私たちがそれを勝ち抜く。それとともに、こういう社会にとっていいことを一緒に皆でやっていこうという、社員のモチベーションアップにもつながる。そういった意味では、企業としては絶対取り組まなきゃいけない、こういう課題であるわけです。
・田中:さて、日本企業のこの持続可能性に対する取り組みに、世界の注目が集まるイベントが3年後に迫っています。そう、東京オリンピック・パラリンピックです。IOCは2014年に開かれた総会で、会場の建設や競技運営など、すべての側面に持続可能性を導入することを採択しました。世界のNGOなどによる厳しいチェックが、すでに始まっています。
▽“2020”を前に 日本を注視するNGO
・今、国際的なNGOが日本で定期的に調査している場所があります。新国立競技場の工事現場です。 調査の結果、森林の破壊が指摘されているマレーシア産の木材が使われていることが明らかになりました。
・国際NGO 「マレーシアのサラワク州で生産されている合板であることを証明するマークが一部ありまして。」 
・今月(9月)、都内で開かれた国際会議に海外の専門家が集結。日本企業などと会合を開き、対応を迫りました。
・国際建設林業労働組合連盟 アポリナ・トレンティノ氏 「残念ながら、木材の調達先に重大な問題があることが発覚しました。」
・工事の責任者は、マレーシアからの木材であることを認めた上で、国際的な認証を満たしていると主張。しかし、海外の専門家たちは、環境破壊や人権問題とつながっている可能性があると反論しました。
・人権ビジネス研究所 チーフ・エグゼクティブ ジョン・モリソン氏 「木材を供給するマレーシアの末端の業者では、深刻な人権問題が確認されています。調査をもっと徹底してください、今すぐに。」
▽五輪施設の資材 “人権問題”はあるのか?
・日本に輸入されるマレーシア産の木材はすべて合法とされていますが、実態はどうなのか。現場を訪ねました。東部のサラワク州では、森林伐採や土地開発が急速に進み、自然な熱帯雨林の7割が破壊されたと見られています。この地域に暮らしてきた先住民は住んでいた森を奪われ、今も生活が脅かされています。
・イバン族 スリ・アラク・ムンタイさん「こんにちは。」 農家を営む先住民のスリさんです。 今なお続く森林伐採を阻止するため訴訟を起こしていましたが、4年前、伐採業者に刀で襲われ、重傷を負いました。サラワク州では、森林伐採に絡み、先住民が暴力を受けたり、殺害されたりするケースが相次いでいるといいます。
・イバン族 スリ・アラク・ムンタイさん「私たちの土地は、すべて業者に奪われてしまいました。土地がなければ、私たちは生きていけません。」
▽“2020”に向けて 人権問題に対応する日本企業
・法的にクリアしていても、実態として問題があれば対応すべきではないか。日本企業にも動きが出ています。大手商社の双日です。木材を調達する部署では、2年前に特別チームを作り、取引先に人権問題がないか、独自に調査してきました。 取引先は、世界各国に1,500社。しかし、中には十分な回答を得られないケースもあります。
・「15社中14社、回収評価。1社は前にもご報告したんですけれども、回答拒否でした。」 実態が不透明な業者は全体の2割に上りますが、2020年までにゼロにしたいと考えています。
・双日株式会社 代表取締役 社長 藤本昌義さん「世界から商社が調達してくるものについて安心なのか、これは本当にちゃんと管理されたものなのか、そういうものに配慮されたものなのかということがですね、非常に重要になってくる。環境も人権も、そういうものもちゃんとクリアした木材を100%入れていくっていうのが、うちの責任だと思っています。」
▽東京五輪・パラリンピック 日本企業の“持続可能性”は
── 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、企業にも大きなプレッシャーがかかっているようだが、日本の木材以外の分野に、どんな責任が問われる?
・クラフトさん:当然、コンクリート、鉄、食料品、そうした資源の調達はもちろんなんですけれども、近年、注目を浴びているのは労働ですよね。過剰労働、長時間労働は非常に問題になっているので、こういったところも非常に気をつけないといけません。
── 公的年金の積立金を運用しているGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人は、今後、このESG投資を積極的に進めると表明していて、1兆円の資金の運用を開始している。 企業にとっては、やはりチャンスなのか?
・新浪さん:これは、私たちがESG投資に合った社会に貢献をし、そして、企業も成長していくという、こういった行動パターンに大きく変える、トリガーになっていくと、私はそう思います。そしてまた、運用機関も多くの運用機関の皆さんが、ESG投資を増やしていくんじゃないかと、そういう意味のトリガーにもなっていきますから、私たち企業は、絶対的にESG投資に目を向けていかなくてはいけない。今まで、どちらかというと、ニッチ投資といわれたESG投資がメインになってきた。このGPIFというのは、世界一の公的年金機関でありますから、そこが動くというのは、企業も一緒に動く、株主が動き、そして企業も動く、大きなインパクトとなっていくと、私は思います。
── 一方で、リターンも出していかなければいけないという状況になってくるが?
・新浪さん:さすがに私たちも、そこはイノベーションをもって、長期的にリターンを出す。短期的なリターンではなくて、中長期にものを考えて、そして社員のモチベーションも上げながら、リターンを上げる。こういったことを必ずやってかなきゃいけない、そういうプレッシャーになるというふうに思います。
── このESGに代表される持続可能な社会への取り組みを企業が進めていくために、また、そういった投資を増やしていくために、今後どんなことが必要?
・新浪さん:トップの強いコミットメントです。長期にわたって、社会と向き合って、社会と共に企業が成長していく、このコミットメントは、イコール企業の理念であるわけです。企業の理念をしっかりと貫いてやっていくのは、何といっても企業のトップなわけです。このトップがぶれずに、自分の企業を社会に貢献し、そして社員と共にやっていくんだという、旗を振っていく、これがトップの役割であります。これが、私たちにとって、最終的にはリターンを上げていく。これを信じて一番最初に走っていくのがトップである、こういうことであります。
・クラフトさん:私は、コーポレートガバナンス。新浪社長と同じなんですけども、基本的に調査でコーポレートガバナンス、企業統治がしっかりしている企業は、業績もいい、リターンもいい、投資家から見れば、非常に魅力的であると、だから重要です。もう1つ言うと、日本で今、求められている投資家層ですよね。アメリカでは株式投資、一般家計の6割近くが株式投資であります。日本では1割未満、これではやっぱり、そういったESG投資はなかなか伸びないので、もっとリスク投資を積極的に増やしていくというのが重要ですね。
─ 日本の投資マインドも変わっていく必要があるということですね。 この持続可能な世界。こういう理想をどう実現していくのか、巨額の資金が動くESG投資は、その強力な推進力になる可能性があります。そして、私たちにとっても、投資を通じて、グローバル企業が責任ある行動を取るように促す、これは1つのツールになりうるのではないかと感じました。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4039/index.html

第一の記事で、 『旧民主党政権時代には親子上場が批判され、廃止の法制化が検討されたことすらある。その逆風が去ったとみて、再びかつてのスキームが息を吹き返したのか』、子会社上場を図ろうとする企業だけでなく、本来、「待った」をかけるべき証券取引所まで悪乗りしているとは、モラルも地に落ちたものだ。
第二の記事では、 『ROE重視で業務提携による資本異動が活発に』、なったのに悪乗りして、インサイダー事件が増加しているというのも、ふざけた話だ。証券監視委の監視強化を期待したい。
第三の記事は、見出しを読んだ時には、あの悪名高いMSCBが復活したのかと思ったが、良く読むと、 『そもそも社債でもなく、「実態は別物の商品」』、ということのようだ。ただ、株価への悪影響を慎重に考慮する必要がありそうだ。
第四の記事のESG投資については、一般論として広がってきたのは知っていたが、それへの対応がここまで大変な努力を要するということが、番組で初めて具体的に理解できた。たしか、バングラデシュで欧米の有名アパレルブランドからの下請け工場が、2012年に火事で100名以上の工員が焼死、2013年には工場ビル崩壊で1000名以上が圧死と相次いだ事故が、1つの引き金になったと記憶している。それにしても、パーム油、機内食、合板など多くの原材料をサプライチェーンを遡って調べていくのは、必要なこととはいえ、大変だろうと同情したくなる。 『国際的なNGOが日本で定期的に調査している場所があります。新国立競技場の工事現場です』、らしいが、足元の基礎工事で大手ゼネコンの若手社員の過労死まで出しているようでは、この先思いやられる。
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