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企業不祥事(神戸製鋼などの部材不正)(その5)(「品質問題」はどんなメーカーでも起こりうる  現場力に詳しいローランドベルガー・遠藤氏が語る根本原因、「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ 企業統治に詳しい久保利英明弁護士に聞く、神戸製鋼を蝕んだ根深い「カビ型不正」 コンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士に聞く) [企業経営]

昨日に続いて、企業不祥事(神戸製鋼などの部材不正)(その5)(「品質問題」はどんなメーカーでも起こりうる  現場力に詳しいローランドベルガー・遠藤氏が語る根本原因、「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ 企業統治に詳しい久保利英明弁護士に聞く、神戸製鋼を蝕んだ根深い「カビ型不正」 コンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士に聞く)を取上げよう。

先ずは、昨年12月13日付け東洋経済オンライン「「品質問題」はどんなメーカーでも起こりうる ローランドベルガー・遠藤氏が語る根本原因」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは遠藤氏の回答、+は回答内の段落)。
・神戸製鋼所、日産自動車、東レ、三菱マテリアル――。日本を代表する名門企業で品質にかかわる不祥事が相次いでいる。日本企業の強みだった品質が低下したのか、日本のものづくりはどうなってしまうのか。  『現場力を鍛える』『見える化』(いずれも東洋経済新報社刊)などの著者で、現場力の実践的研究を行う遠藤功ローランド・ベルガー日本法人会長に、今回の一連の品質問題について聞いた。
Q:品質問題の連鎖が続いています。
A:今後もまだ出てくるのではないか。今回の品質問題には、個別企業だけではなく、日本のものづくりが抱える構造的な問題が背景にあると考えている。
・私の考える構造問題には主に3つの要素がある。まず1つ目が「世界最高品質追求の圧力」だ。日本企業は世界最高の品質を追求して、海外企業との差別化を図ってきた。完成車メーカーからの厳しい要求によって、素材・部品メーカーが鍛えられてきたともいえる。顧客の要求はどんどん高まるが、とにかくそれに応えなければいけない。特に中国・韓国メーカーが追い上げてくる中で、より品質を求めるプレッシャーが強くなった。
▽日本企業が直面する「現場力の劣化」
+では、その厳しい要求水準に応えるはずの生産現場はどうか。ここに構造問題の2つ目、「現場力の劣化」がある。日本の現場では、つねにギリギリの人数で回しており、非正規の従業員も多い。世代交代があるため技能継承も簡単ではない。
+今回は品質保証に携わる人たちがデータの改ざんに手を染めていた例があった。以前なら現場には「品質の番人」とか「品質の鬼」と言われるような人がいて、「こんなもの絶対に出さん」と、不適合品を絶対に現場から出さなかった。そういう人が少なくなり、不適合品が現場で止まらなくなってしまった。失われた20年の中で、設備投資の抑制が続き、現場の意識やマインドも劣化してしまった。
+3つ目が、経営陣の問題だ。ここ5年で「攻めのガバナンス」という言葉が出てきたが、ガバナンスが内部統制や法令順守よりも、利益の追求にウエートを置くようになってしまった。いわば「コーポレートガバナンスのバランスの劣化」だ。 経営陣は一言も品質を犠牲にしていいとは言っていないが、利益重視の姿勢が生産現場への暗黙のプレッシャーとなった。経営陣が戦略策定やIR(投資家向け広報)などに忙しく、現場にあまり行かなくなり、現場との距離が広がった面もある。
+そこに個別企業の要因が重なったのだろう。神戸製鋼や日産はより利益重視のプレッシャーが強かった可能性がある。名門意識からくるおごりや緩みもあったかもしれない。一部の企業には、経営戦略そのものに無理があったのではと思う部分もある。
+構造問題であるかぎり、今回のような品質問題はどんな製造業でも起こりうる。品質第一の原点に回帰して、根本からやり直さなければならない。私は今回の一連の問題を深刻に受け止めている。
▽経営陣はもっと謙虚に受け止めるべき
Q:法令違反はなく、安全性には問題はないから、「本来公表しなくてもいい問題」と発言する経営トップもいました。
A:法令違反うんぬんではなく、顧客との約束を果たせていない段階ですでに問題だ。ましてや顧客の要望を満たすように、品質データを改ざんしていいはずがない。海外企業との取引なら、全数チェックを要求されてもおかしくない。経営陣はもっと謙虚に受け止めるべきだ。
+品質は「基本品質」と「機能品質」に分けられる。基本品質とは製品として本来備えるべき品質で、最低限守らなければならないもの。そして、機能品質は差別化のために、顧客から個々に要求されるものだ。日本メーカーは主に機能品質を競い、成長してきた。 一連の発言を聞いていると、もともと要求の厳しい機能品質で約束を守れなかっただけ、という甘えを感じる。言い換えれば、自分たちは世界最高品質を目指しているのだから、これぐらいは許されるという一種のおごりだ。
+確かに日本メーカーは、基本品質については相当高いレベルを維持している。ただその分、価格は高い。顧客の側から見れば、日本メーカーの信頼性におカネを払っていた側面がある。日本企業なら変なことはないだろうというプレミアム。改ざんが行われていたとなれば、その根底が崩れてしまう。  
Q:今回の品質問題では「特別採用(特採=トクサイ)」という商習慣がクローズアップされました。
A: 特採は昔からあり、海外メーカーとの取引にもある。特に契約には明記されない。  特採が広がったのは、顧客にもメリットがあるからだ。もともと顧客の品質要求は厳しく、すべてがその水準を満たさなくていい面もある。100点でなくてはならない素材や部品もあるが、そうでないものは「98点でいいからすぐ、安く出して」などという条件で出荷してもらう。
+背景には歩留まりの問題がある。本当に高品質な素材・部品の場合、100を作って歩留まりが70~80というケースはザラにある。つまり、20~30は捨てている。難しい製品の歩留まりを上げるのは本当に難しいもの。それでも生産現場はなんとか踏みとどまっている。顧客もそれは理解しているので、特採制度を使って対応し、少しずつでも歩留まりの向上につなげてもらう。
+ただ、それは顧客の了解が大前提だ。顧客に無断で要求品質を満たさない製品を出していいわけではない。ある企業の生産担当役員は「うちでも(問題になった企業と)同じようなことはあるが、ぎりぎりで踏みとどまっている」と言っていた。そうした中だからこそ、技術的なブレークスルーが生まれているともいえる。
▽「過剰品質」は悪くない
Q:今回の問題は「過剰品質のワナ」にも見えます。
A:確かに過剰品質という面はあるかもしれない。しかしそれに挑戦してきたからこそ、日本の製造業は成長できた。今後も中国や韓国メーカーが作れないものを作る。おそらくその戦略は間違っていない。 これまでは企業の垣根を超えて、オールジャパンで世界最高品質を追求してきた。そこをもう一度担保しないと、日本のもの作りの根底が崩れてしまう。顧客との再交渉をきめ細かく行うなど、一部で契約内容を見直しつつ、あらためて品質第一に回帰しなければならない。
Q:今後はどんな対応が必要でしょうか。
A:悪者探しのようなモグラたたきをしても意味がない。個社だけに矮小化せずに、日本のものづくり全体の問題として認識し、業界の垣根を越えて取り組むべきだ。 日本のものづくりが今後どうやって飯を食うのか、大局的に議論する必要がある。これまで国内の設備投資は抑制され、製造業の空洞化が進んできた。しかしある程度国内でものを作らないと、人が育たないし、技術も進歩しない。
+企業は内部留保として貯め込むばかりでなく、現場への投資を積極化する局面に差しかかっている。そして経営者自らが、主体的に生産現場の立て直しに取り組むことが求められるだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/200621

次に、1月10日付け日経ビジネスオンライン「「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ 企業統治に詳しい久保利英明弁護士に聞く」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・日本の製造業は「堕落」した――。  コーポレートガバナンス(企業統治)に精通する久保利英明弁護士は、日産自動車や神戸製鋼所などで相次いだ一連の品質問題を、一刀両断する。ゼンショーホールディングスの労働環境問題など、多くの事案で第三者委員会を率いた企業統治の専門家は、資本主義のいろはの「い」が崩れたと警告する。
――神戸製鋼所や三菱マテリアル子会社など、日本を代表する大手メーカーが品質関連の不正を繰り返していました。ただし安全性には問題がなかったとみられ、今のところ、重大な事故などにつながってはいません。
久保利英明弁護士(以下、久保利):表面上はそうかもしれませんが、僕はかなり深刻な問題だと思いますよ。頭を下げることすらしない某自動車メーカーの社長さんの姿を見ていると、こんな人たちに日本の製造業を任せて大丈夫なのかと、強い危機感を覚えます。 かつて、不二家が「消費期限切れの牛乳原料」を使ったことが原因で経営危機に陥ったことがあります。世間から大きくバッシングされ、今では山崎製パンの子会社になっています。
+皆さんはこのとき、何が問題になったか覚えていますか。製造したクッキーやケーキで食中毒を出したわけではありません。社内規定から「1日」過ぎた牛乳を使った可能性がある、との疑惑が浮上したのがきっかけです。 この問題が発覚したら、大手コンビニやスーパーは不二家の製品を一斉に撤去しました。「社内ルールすら守れない企業の商品は販売できない」というのがその理由です。 過剰反応だと言う人もいるかもしれませんが、僕はまっとうな経済社会の姿だと思います。ルールや契約は守られるべきなのです。
▽最終消費者を見ていない不祥事企業
――多くの人の口に入る食品と、機械などに加工される素材や部品では、扱いが違うという意見もあります。
久保利:BtoBの商品で、取引先が納得しているなら問題ないって言うんでしょう。これも大きな間違いですよ。素材だって部品だって最後の段階では、必ずBtoCのビジネスになるんです。誰が飛行機に乗り、誰が自動車を買うのですか。神戸製鋼や三菱マテリアルが受け取るお金は、究極的には誰が支払っているのですか。多くの一般消費者でしょう。
+ところが、問題を起こした企業にはこうした意識が欠けている。取引先の了解を得ることを最優先にして、視線がその先に向いていないのです。だから動きが極めて遅い。 神戸製鋼がデータ改ざんを把握したのは2017年の8月頃とされていますが、公表したのは10月になってから。食品メーカーだったら、問題を起こした商品を3日で回収しなかったらボコボコにされますよ。BtoBの製造業だから許されると考えるのは甘い考えでしょう。
――一連のデータ改ざんで浮き彫りとなったのが、トクサイ(特別採用)と呼ばれる日本独自の商慣習でした。要求に満たない品質の製品を、取引先の許可を得たうえで納入する仕組みです。
久保利:これにも非常にがっかりさせられましたね。納期を守るために、契約と異なる品質の製品を出荷していたんでしょう。まともな製造業なら、絶対に品質を犠牲にしないはず。相手が認めたとしても、自らの矜恃が許さない。
+しかも一部ではトクサイという慣習を悪用し、相手の承諾を得ないまま不適格な製品を納入したケースすらあります。「過剰品質」と言われるほど安全面を考慮しているので、多少なら許容されるだろうと考えているのでしょうが、それは何の言い訳にもなりません。製造業としての「堕落」だと言うべきです。
――トクサイは一部のメーカーに限らず、日本の製造業ではよく使われる取引手法です。
久保利:ある企業で、トクサイの有無や社内稟議のプロセスを調べたそうです。すると幸いなことに、ここ数年間ではやっていないことが分かりました。ただし、それ以前は不明です。記録が存在しないため遡れないというのです。
+担当者はこう話したそうです。「トクサイは相手が認めなければ実現しない。製品として使われて長い時間が経っているし、事故らしい事故も起きていないから、大丈夫じゃないですか」。
久保利:その企業では、トクサイについて取引先と交渉するのは営業部門に任されていたそうです。品質保証部門はダメ出しをするだけなので、絡むことはほとんどない。営業担当が泣きついて、相手が認めれば「規格外」の製品も受け入れてもらえるようになる、と。
▽「悪法」だと文句を言うのが社長の仕事
――商慣習が現実を反映していないという側面もありそうです。一部の契約書には今も、「欠陥無きこと」「混入無きこと」といった文言が書かれていると指摘する人もいます。納入するメーカーも購入する側も“建前”だと認識しつつ、取引を続けている実態があります。
久保利:それでも契約は契約です。いくら購入する側が強いからといって、(納入するメーカー側が)書かれていることを守らずに後から何とかしようというのは、詐欺に近い。数十年にわたって契約を見直してこなかったのなら、相応の責任を覚悟しないといけません。売り手と買い手が決めたルールを守るのは、資本主義社会のいろはの「い」ですよね。
+以前から続く契約が実態と乖離しているなら、メーカー側はその理由を真剣に考えないといけません。実態から乖離しているのは、自らの技術力が衰えたからではないですか。昔のように一級品が作れなくなったのに、実態を見ていないだけではないですか。
――日産自動車やSUBARU(スバル)は新車の「完成検査」を無資格の従業員がやっていました。長い間、ルールから逸脱した状態が続いていたことになります。
久保利:時代遅れの検査をしても意味がないと考えていたのでしょうね。(生産ラインの各工程で)しっかりと品質を担保していれば、完成車の検査なんて不要だと。 確かにそうかもしれません。しかし本当にそう思うなら、(監督官庁である)国土交通省に意見を表明するのが筋でしょう。代官が絶対的な力を持つ江戸時代ではないんです。悪法だと考えるなら、国会でも規制改革会議でもいいから、とにかく意見を表明すべきです。社長はそれをするのが仕事です。
+もしかしたら、一見すると余計に見える完成検査のプロセスが、日本製品を「超一流」たらしめていたのかもしれませんよ。国交省はそのプロセスが大事だと思っていたわけですし、トヨタ自動車などはルール通りにやっていました。 自分の都合で勝手に解釈するという点で、トクサイと(日産やスバルの)完成検査問題は根底でつながっています。真面目な「モノ作り」ができなくなったから、プライドや矜恃が徐々に薄らいでいき、今の事態を招いていると考えるべきなのでしょう。
▽人間は「悪さ」をする存在
――日本のモノ作りの品質は劣化している、と。
久保利:その通りでしょう。製造業を率いる多くの人が、今なお日本製品の品質は世界一だと考えていること自体、私には信じられません。 私は50年間かけて、170の国と地域を歩いてきました。各国の最高級ホテルにはかつて、ソニーやパナソニックのテレビが置かれていました。今はみんな、韓国のサムスン電子やLGですよね。
+価格競争に負けたからではないでしょう。最高級ホテルは値段で選びませんから。世界の金持ちは、日本製品を「超一級品」だと思っていないということですよ。この傾向は10年以上変わりません。 日本の現場が生みだしている製造物が昔と比べて「たいしたことない」ことは、多くの人が感じているはずです。この事実を直視しないと次に進めません。
――現場の従業員こそが、日本の製造業の強みだと言われてきました。この根幹も揺らいでいるのでしょうか。
久保利:大きな境目を迎えているような気がしますね。昨今の問題から見えてくるのは、人間は「悪さ」をするということです。一方で、コンピューターは嘘をつかない。機械が出した数字を人間がさわれないようにして提示しないと、信頼されない時代になっているのかもしれません。
+欧米企業のホワイトカラーは基本的に、ブルーカラーを信用していません。一方で日本は、人間が信頼できるという前提で現場を考えてきた。この前提が崩れたとき、最も苦しむのは日本の製造業なのかもしれません。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122800192/122800002/

第三に、1月11日付け日経ビジネスオンライン「神戸製鋼を蝕んだ根深い「カビ型不正」 コンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士に聞く」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・昨年秋に神戸製鋼所での品質データ改ざん問題が発覚して以降、三菱マテリアル子会社など日本を代表するメーカーで同様の問題が相次ぎ判明した。全容解明は途上だが、コンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士は問題の性格を「カビ型不正」と指摘する。日本の製造業の構造問題について聞いた。
――神戸製鋼所を筆頭に複数の名門企業で品質データ偽装が判明し、日本の製造業のブランドイメージは大きく傷つきました。
郷原信郎弁護士(以下、郷原):一連の問題を「製品の品質」に結び付けると、本質を見誤ります。神戸製鋼などは調査を続けているので断定的なことは言えませんが、多くのメーカーは安全性に問題がある商品を顧客に納入していたわけではないと思います。
+日本のメーカーは相当な「安全率」を見込んで製品を設計し、顧客側もそれを期待していた。強度などで多少ばらつきがあっても、実際に使う上で支障が無いなら顧客も文句を言わず受け入れる。だからこそ「特別採用(トクサイ)」という商慣習が認められていたのでしょう。  一方で、長年取引を続けているうちに、数字に対する感覚がいい加減になっていた可能性もある。製品の品質自体に関わる問題というよりむしろ、契約の仕様や商慣習などが問われているのだと思います。ちゃんと調べれば、これから相当な数の問題が明らかになるでしょう。
――不正に手を染めたのは、一部の企業だけではないと。
郷原:契約が実態と乖離していたというレベルなら、多くの企業で起きていただろうと思います。相手に伝えても「正直に言ってくれてありがとう」で済む程度の潜在的な問題は、素材メーカーや部品メーカーを調べれば相当な数があるでしょう。
+ただし、現代では数字の改ざんは社会的に許容されません。トラブルが起きていないからといって、放置できる問題ではないのです。不祥事企業をバッシングするだけでなく、日本の製造業全体が構造的に抱える問題だと捉えて、対策を考える必要があると思います。
▽経営トップは現場の「カビ」を把握できない
――構造的な問題とは。
郷原:今回判明した問題の多くは長年にわたって企業組織の末端に潜んでいた、偽装や改ざん、隠蔽、捏造といった「形式上」の不正です。経営トップが実態を把握していれば、即座にやめさせていたはずです。  ところが経営層が現場の状況を把握できないために、問題を明るみに出せなかった。手を染めている現場の人々は、自分たちの手で過去からのやり方を是正できません。そしていつしか、不正が企業に染みついてしまう。私はこれを「カビ型不正」と呼んでいます。
――不正には様々あると思いますが、「カビ型」はどういう特徴があるのでしょうか。
郷原:違いを鮮明にするために、東芝の粉飾決算と比較してみましょう。東芝のケースでは不正の震源地は経営トップでした。権力闘争を続けていた上層部が、自分に都合の悪い数字を隠そうとして利益を水増ししたわけです。こうした問題を解決するには、経営トップの交代が効果的です。原因をつまんで捨てれば退治できるという意味で、私は粉飾決算を「ムシ型不正」と呼んでいます。
+一方、カビ型不正の典型例が談合です。特定の個人が原因ではなく、組織風土や歴史的経緯など構造的な背景を抱えていることが多い。担当者がAさんからBさんに変わっても、同じように不正が引き継がれていきます。個人の意志とは関係ないところで、不正が続く仕組みになっているからです。
+ムシとは違い、カビの原因は複雑です。汚れや湿気といった根本原因を除去しない限り、根絶することはできません。目に見えているカビを取り除いても、また新たなカビが生えてきます。一連の品質データ偽装も、そういう性格を持っていると思います。
――品質データ偽装がカビだとすると、どういう環境が不正の「温床」になっているのでしょうか。
郷原:30年前や40年前の日本の製造業では、今ほど厳密に数値データが求められていなかったはずです。実績のある工場で一定の原料を用い、きちんとした工程を経た製品なら基本的には信頼できるという認識が、メーカーと顧客の両方にありました。
+ところが技術の進歩にともない、客観性が求められるようになってきました。ハイテク製品だけでなく、昔と同じような使われ方をする素材や部品についても数字が重視される。こうした変化は急激に起きるのではなく、徐々に進行していったと思われます。
+こうした状況で、検査の数字が契約と多少ずれてしまったらどうするか。かつては腕利きの職人が「大丈夫だ、私が保証する」と言って、納入していたのではないでしょうか。すると、これが前例となってしまいます。  契約と数字が乖離した製品を納入するのは、一種の不正です。本当ならやめないといけない。だけど、昔からそういう慣習が続いているし、最近もやってしまった。改めるには、その理由を説明する必要も出てきます。
▽一度でも隠蔽すると悪循環に
――先輩や上司の顔を潰してしまうので、今さら波風は立てられない。
郷原:企業組織の中で、先輩のしてきたことを否定するのは相当な勇気が要りますからね。違和感を感じていたとしても、今まで通りに続けるしかなくなります。課長や工場長といった人たちが、個人の意志で問題を解消するのは極めて難しい。 続けるだけならまだいいのです。問題は「監査」が入ったときにどうするか。先輩に責任を押し付けることはできないし、内部通報窓口に相談するわけにもいかない。そうしたときに「隠蔽」が始まるのです。
+一度隠蔽すると、隠蔽した事実をさらに覆い隠す必要に迫られて悪循環に陥っていく。製品の安全性などには問題が無くても、過去の隠蔽工作を隠すためにデータを偽装するといった不正がどんどん膨れあがっていきます。カビ型不正の恐ろしさは、こういうところにあるのです。
――放置しておくと、カビの増殖は止められません。
郷原:そういう行為をやめるには、どこかで問題点を全部さらけ出す必要があります。経団連は2017年12月、会員企業に対して品質管理に関する不正などの自主調査を求めました。世耕弘成経済産業相も「顧客対応などとは別に速やかに社会に公表する」ことを要請しました。
+ところが今回のようなケースでは、拙速な情報公開が世間の混乱を招く可能性があります。素材や部品といったBtoB製品では、「顧客」が大きく関わってくるからです。 東レ子会社が製造していたタイヤ部材では、彼らが数値の改ざんを把握したとしても、すぐに世間に公表できません。安全性について最終責任を負っているのは顧客であるタイヤメーカー。タイヤメーカーと調整する前に素材メーカーが発表してしまうと、世間は混乱するだけです。
▽一気にあぶり出すことが大事
――その場合、企業はどのような行動を取るのでしょうか。
郷原:一番安全なのは、偽装や改ざんなどの不正を「把握しない」ことになってしまいます。把握してしまったら、顧客への説明や公表など大変なことになりかねません。実態を正直に報告しなくなる現場が増えることは容易に想像できます。そして、カビはさらに根深くなっていく。
――どうすればカビを根絶できるのでしょうか。
郷原:まずは、企業から切り離された第三者による「問題発掘型アンケート」が有効です。全従業員に対して匿名でアンケートを実施して、具体的な問題点を自由に記述してもらうのです。 一定の期限内に申告すれば、社内処分は免除するという方法も有効です。法令違反は無視できませんが、軽微な問題だったら免責するという姿勢を明確にすれば、申し出る人も現れるでしょう。
+そうすることで、どの事業部でどんな問題が発生しているのか、経営トップが把握できるようになります。調査を進めれば、汚れや湿気といったカビの根本原因が見えてくるかもしれません。 品質に関する不正が五月雨式に発覚するような状況は、日本の企業社会にとってマイナスです。企業組織の末端には様々な問題が潜んでいるという前提に立ち、この機会に一気にあぶり出して解消することが重要だと思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122800192/122800003/?P=1

第一の記事で、 『「現場力の劣化」がある。日本の現場では、つねにギリギリの人数で回しており、非正規の従業員も多い。世代交代があるため技能継承も簡単ではない』、 『経営陣の問題だ。ここ5年で「攻めのガバナンス」という言葉が出てきたが、ガバナンスが内部統制や法令順守よりも、利益の追求にウエートを置くようになってしまった。いわば「コーポレートガバナンスのバランスの劣化」だ』、 『「構造問題であるかぎり、今回のような品質問題はどんな製造業でも起こりうる』、 『経営陣はもっと謙虚に受け止めるべき』、などの指摘は、その通りだ。
第二の記事で、 『安全性には問題がなかった』、ことは言い訳にはならず、不二家のケースでみられたように、 『ルールや契約は守られるべきなのです』、という指摘にはさすが説得力がある。 『「悪法」だと文句を言うのが社長の仕事』、 『日本は、人間が信頼できるという前提で現場を考えてきた。この前提が崩れたとき、最も苦しむのは日本の製造業なのかもしれません』、などはまさにその通りだ。
第三の記事で、 『製品の品質自体に関わる問題というよりむしろ、契約の仕様や商慣習などが問われているのだと思います』、 『今回判明した問題の多くは長年にわたって企業組織の末端に潜んでいた、偽装や改ざん、隠蔽、捏造といった「形式上」の不正です。経営トップが実態を把握していれば、即座にやめさせていたはずです。 ところが経営層が現場の状況を把握できないために、問題を明るみに出せなかった。手を染めている現場の人々は、自分たちの手で過去からのやり方を是正できません。そしていつしか、不正が企業に染みついてしまう。私はこれを「カビ型不正」と呼んでいます』、 『不祥事企業をバッシングするだけでなく、日本の製造業全体が構造的に抱える問題だと捉えて、対策を考える必要があると思います』、 『一度でも隠蔽すると悪循環に』、などの指摘はさすが郷原氏だけあって的確だ。 『今回のようなケースでは、拙速な情報公開が世間の混乱を招く可能性があります。素材や部品といったBtoB製品では、「顧客」が大きく関わってくるからです。 東レ子会社が製造していたタイヤ部材では、彼らが数値の改ざんを把握したとしても、すぐに世間に公表できません。安全性について最終責任を負っているのは顧客であるタイヤメーカー。タイヤメーカーと調整する前に素材メーカーが発表してしまうと、世間は混乱するだけです』、 『企業組織の末端には様々な問題が潜んでいるという前提に立ち、この機会に一気にあぶり出して解消することが重要だと思います』、などの指摘も、現実を踏まえているだけに、説得力がある。
タグ:見える化 東洋経済オンライン 東レ 日産自動車 神戸製鋼所 三菱マテリアル 企業不祥事 日経ビジネスオンライン 郷原信郎 現場力を鍛える (神戸製鋼などの部材不正) (その5)(「品質問題」はどんなメーカーでも起こりうる  現場力に詳しいローランドベルガー・遠藤氏が語る根本原因、「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ 企業統治に詳しい久保利英明弁護士に聞く、神戸製鋼を蝕んだ根深い「カビ型不正」 コンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士に聞く) 「「品質問題」はどんなメーカーでも起こりうる ローランドベルガー・遠藤氏が語る根本原因」 名門企業で品質にかかわる不祥事が相次いでいる 、現場力の実践的研究 遠藤功ローランド・ベルガー日本法人会長 今回の品質問題には、個別企業だけではなく、日本のものづくりが抱える構造的な問題が背景にあると考えている 世界最高品質追求の圧力 現場力の劣化 経営陣の問題 ガバナンスが内部統制や法令順守よりも、利益の追求にウエートを置くようになってしまった。いわば「コーポレートガバナンスのバランスの劣化」だ 経営陣はもっと謙虚に受け止めるべき 法令違反うんぬんではなく、顧客との約束を果たせていない段階ですでに問題 品質は「基本品質」と「機能品質」に分けられる 特別採用(特採=トクサイ 過剰品質」は悪くない 日本のものづくりが今後どうやって飯を食うのか、大局的に議論する必要がある 「「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ 企業統治に詳しい久保利英明弁護士に聞く」 日本の製造業は「堕落」した 不二家が「消費期限切れの牛乳原料」を使ったことが原因で経営危機に陥ったことがあります ルールや契約は守られるべきなのです 最終消費者を見ていない不祥事企業 悪法」だと文句を言うのが社長の仕事 人間は「悪さ」をする存在 日本は、人間が信頼できるという前提で現場を考えてきた。この前提が崩れたとき、最も苦しむのは日本の製造業なのかもしれません。 「神戸製鋼を蝕んだ根深い「カビ型不正」 コンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士に聞く」 製品の品質自体に関わる問題というよりむしろ、契約の仕様や商慣習などが問われているのだと思います 契約が実態と乖離していたというレベルなら、多くの企業で起きていただろうと思います 経営トップは現場の「カビ」を把握できない 今回判明した問題の多くは長年にわたって企業組織の末端に潜んでいた、偽装や改ざん、隠蔽、捏造といった「形式上」の不正です。経営トップが実態を把握していれば、即座にやめさせていたはずです。  ところが経営層が現場の状況を把握できないために、問題を明るみに出せなかった。手を染めている現場の人々は、自分たちの手で過去からのやり方を是正できません。そしていつしか、不正が企業に染みついてしまう。私はこれを「カビ型不正」と呼んでいます ムシとは違い、カビの原因は複雑です。汚れや湿気といった根本原因を除去しない限り、根絶することはできません。目に見えているカビを取り除いても、また新たなカビが生えてきます。一連の品質データ偽装も、そういう性格を持っていると思います 技術の進歩にともない、客観性が求められるようになってきました 一度でも隠蔽すると悪循環に 一度隠蔽すると、隠蔽した事実をさらに覆い隠す必要に迫られて悪循環に陥っていく。製品の安全性などには問題が無くても、過去の隠蔽工作を隠すためにデータを偽装するといった不正がどんどん膨れあがっていきます。カビ型不正の恐ろしさは、こういうところにあるのです 今回のようなケースでは、拙速な情報公開が世間の混乱を招く可能性があります。素材や部品といったBtoB製品では、「顧客」が大きく関わってくるからです。 東レ子会社が製造していたタイヤ部材では、彼らが数値の改ざんを把握したとしても、すぐに世間に公表できません。安全性について最終責任を負っているのは顧客であるタイヤメーカー。タイヤメーカーと調整する前に素材メーカーが発表してしまうと、世間は混乱するだけです 一気にあぶり出すことが大事 企業組織の末端には様々な問題が潜んでいるという前提に立ち、この機会に一気にあぶり出して解消することが重要だと思います
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