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高齢化社会(その6)(75歳以上「後期高齢者」のコストは削減可能だ、橘玲が語る「残酷すぎる“お金の真実”」、認知症になり介護を受ける前にやるべきことは?) [社会]

高齢化社会については、昨年10月24日に取上げた。今日は、(その6)(75歳以上「後期高齢者」のコストは削減可能だ、橘玲が語る「残酷すぎる“お金の真実”」、認知症になり介護を受ける前にやるべきことは?)である。

先ずは、慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏が2月5日付け東洋経済オンラインに寄稿した「75歳以上「後期高齢者」のコストは削減可能だ 社会保障費は人口変動を踏まえて決めるべし」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・1月23日に開催された経済財政諮問会議で、内閣府が「中長期の経済財政に関する試算」(以下、「中長期試算」)の更新版を公表した。これは2018年度予算案が決まったことを受け、わが国の経済財政の今後について、一定の仮定を置いて試算するもので、毎年1~2月と7~8月に2度公表している。
・今年の「中長期試算」が示す値の焦点は、今夏にも取りまとめる予定の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(以下、「骨太方針2018」)で定めることとなっている、基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の達成時期とそれを実現する具体策だ。特に、消費税率を10%超に上げないことを前提とした財政健全化を検討するなら、歳出の効率化、無駄な支出の削減を積極的に進めていくしかない。
・第2次安倍内閣以降でも、歳出改革には取り組んできた。2015年6月に閣議決定された「骨太方針2015」の中では、「経済・財政再生計画」として、2018年度予算までの財政運営について定めた。2016~2018年度を集中改革期間と位置付け、第2次安倍内閣以降の当初3年間で、国の一般歳出の総額の実質的な増加が1.6兆円程度となっていること、うち社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5兆円程度)となっていることを踏まえて、その基調を2018年度まで継続させていくこととした。これらの金額(一般歳出で1.6兆円、社会保障関係費で1.5兆円)は、「歳出改革の目安」と呼ばれた。
▽「3年間で1.5兆円増」の目安は守るが…
・「歳出改革の目安」は、2020年度の国と地方の基礎的財政収支黒字化という、財政健全化目標の達成を目指すために設けられた。特に、社会保障関係費の実質的な増加を「3年間で1.5兆円」とすることが、2016~2018年度の予算編成で主要な攻防となっていた。この「3年間で1.5兆円」は、「自然増を年5000億円に抑える」とも解釈されていた。
・そして、昨年末に閣議決定された2018年度予算政府案では、その歳出改革の目安を達成することができた。与党内ではいろいろな意見が出されたものの、最終的には安倍内閣として”目安を守る”ことで、規律を維持したのである。
・ただし、歳出改革の目安は達成したものの、2016年6月に消費税率の10%への引き上げを2019年10月へ延期すると決めたことと、2017年9月に2019年10月の消費増税時に使途を変更し歳出を拡大すると安倍晋三首相が表明したことによって、2020年度の基礎的財政収支黒字化は達成が困難となってしまった。
・これを受けての今夏の「骨太方針2018」である。本連載の拙稿「『年収850万円超の人は増税』がなぜ妥当か」で詳述したように、12月8日に「新しい経済政策パッケージ」として、基礎的財政収支黒字化を目指すという目標自体はしっかり堅持すること、そしてその達成時期と実現するための具体策を「骨太方針2018」に盛り込むことについて、閣議決定がなされた。だから、安倍内閣として基礎的財政収支黒字化を財政健全化目標とするのをやめることはできないし、それを実現するための議論を怠るわけにはいかないのだ。
・では具体策の内容をどうするか。もちろん、これからの半年弱で、2020年代にまたがる社会保障をはじめとする諸改革の仔細を事細かく決めることは難しい。そうなると、消費税率を10%超とはしないなら、前掲した「歳出改革の目安」のように、どの程度に歳出を抑制できれば財政健全化目標が順調に達成できるかについて、メドをつけなければならない。
・その歳出抑制の要は、やはり社会保障費にならざるを得ない。政策的経費である一般歳出の半分以上を社会保障費が占めており、社会保障費で何もできなければ、歳出抑制は実効性を失うからだ。 ならば、2016~2018年度に「3年間で1.5兆円」という目安を達成できたのだから、今後も「3年間で1.5兆円」、つまり「自然増を年5000億円に抑える」という目安で、社会保障関係費を抑制しようという話になるのだろうか。
・「自然増を年5000億円に抑える」のは、かなり困難だという見方がある。というのは、団塊世代が2022年度から順に75歳以上の”後期高齢者”となり、社会保障費がますます増えると予想されているからだ。2025年度に団塊世代は全員75歳以上となる。75歳以上人口の増加率は、2022~2024年度にかけて、年率約4%と近年にない高い水準となる。
▽75歳以上の医療費は64歳以下の5倍!
・75歳以上となると、1人当たりの医療費も介護費も、それより若い年齢層より格段に多く必要となってくる。年間の1人当たり医療費(2014年度)は、64歳以下で平均約18万円なのに対し、75歳以上は平均約91万円と約5倍。年間の1人当たり介護費(2014年度)は、介護サービスが受けられる65歳以上74歳以下で平均約5.5万円なのに対して、75歳以上は平均約53.2万円と約10倍だ。このように、75歳以上人口が増えると、社会保障費が増大することが予想される。
・2022年度からは、団塊世代が順に75歳以上となる時期と、財政健全化を図る時期とが重なる。これでは社会保障費を抑制できないのではないか。そんな時期に「自然増を年5000億円に抑える」という目安を社会保障費で置くのは乱暴だ。そんな見方がある。
・が、確かに2022~2024年度はその通りだが、直前の2020~2021年度は、むしろかつてないほど、高齢者人口の増加率が小さくなる時期でもあるのだ。全体の人口が減る中、高齢者がほぼ増えないなら、社会保障費はほぼ増えない。2020年度と2021年度は、医療や介護の単価(診療報酬や介護報酬の単価)が同じならば、高齢者人口もほぼ同じだから、逆に「自然増を年5000億円」も必要としない、可能性が高い。
・何せ、2016~2018年度で「3年間で1.5兆円」を達成したが、そのときでさえ、75歳以上人口の増加率は年平均3.31%と、それなりに高い増加率だったのである。また65歳以上人口の増加率も、低下傾向だったとはいえ、年平均で約1.7%だった。それだけ高齢者人口が増えて、それに伴い社会保障費も増えて不思議ではないのに、「3年間で1.5兆円」としても、医療や介護の体制を根底から崩壊させるようなことを起こさずに乗り切ってきたのだ。
・これには、介護や医療で人材不足なのに、処遇改善ができなかったのは、「予算をケチったからだ」との見方もあるが、国民が増税に応じるならまだしも、そうでない以上、給付と負担のバランスを何とか取りながらうまく維持してきた、といってよい。
・確かに、2022~2024年度に「3年間で1.5兆円」という社会保障費の抑制の目安を立てるのは、医療や介護で無理を強いることになりかねないが、65歳以上人口や75歳以上人口の増加率がかなり下がり、高齢者人口の増加率が一服する2020~2021年度には、高齢者人口が増えない分、社会保障費も増えないという実態をしっかりと反映した、予算編成が必要である。2020~2021年度には、社会保障費をこれまで以上に抑制しても、高齢者人口が増えない分、抑制が可能になる時期なのである。
▽65歳以上は2020年代に実はほとんど増えず
・おまけに、65歳以上人口は2000年代に年率約3%で増えていたが、2020年代には小数第1位を四捨五入すれば0%になる。つまり、ほとんど増えないといってよい。65歳以上人口がほとんど増えないということは、医療や介護ではなく、65歳から基礎年金を受け取るという前提に立てば、年金の給付費が(物価や賃金に連動する分を除き)ほとんど増えないということだ。これも社会保障費の自然増が少なくて済む要因になる。
・今夏の「骨太方針2018」に盛り込まれる財政健全化目標を達成するため、具体的かつ実効性の高い計画として、社会保障分野では、こうした人口変動の”機微”をしっかり踏まえたものにしてもらわなければならない。
http://toyokeizai.net/articles/-/207174

次に、会社員出身の作家、橘 玲氏が2月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「橘玲が語る「残酷すぎる“お金の真実”」 「老後資金は、定年退職後も使ってはいけない」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)の著者として知られる覆面ベストセラー作家の橘玲さんは、お金をテーマにした著書が多い。最近では『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)や『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)といった著書を上梓。こうした著書を通して世に問う鋭い指摘は、いつも世間で反響を呼ぶ。 ビジネスパーソンはお金とどう向き合うべきか。かつての自身の会社員生活や、1年間のうち数カ月を過ごす海外各国で起きている世界的なトレンドも踏まえて、自説を披露する。
▽「定年後は退職金と年金で悠々自適」は過去の話
・世の中には、老後を見据えた退職時の必要貯蓄残高にまつわる俗説が多く出回っています。誰もが関心を持つのでしょうが、一番大事な視点が欠けています。 そもそもなぜ、仕事を「60歳で卒業」しなければならないのでしょうか。「老後資金は60歳までに貯めないといけない」などというルールはありません。世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本では、「定年退職まで頑張って働き、退職金と年金を元手にして夫婦で悠々自適の老後を送る」という人生設計は確実に過去のものに。いつまでもそんな夢にしがみついていると、「老後破産」の運命が待っているだけです。
・私が厳しいことをお伝えするのは、相応の根拠があるからです。今、世界では大きなパラダイムシフトが起きていて、生き方・働き方の劇的な転換を迫られていますが、この状況を本当に理解しているビジネスパーソンは少ない。
・「大変化」の原因の1つは、先進国で進む長寿化。日本はもちろん、欧米でも100歳まで生きることが珍しくなくなりました。すると当然、仕事を辞めた後の「長すぎる老後」が問題になります。60歳で退職すると、老後は40年間も残されているわけですから。現役時代に働いて貯めたお金で、残りの40年間、夫婦が安心して暮らしていくことが可能かどうかは、少し考えれば誰でも分かるはずです。
・「人生100年時代」が突きつける現実に、欧米はもう気づき始めています。米国では1990年代まで、どのライフプランニング本にも「マイホームを買い、地方なら50万ドル、都市部なら100万ドル貯めてアーリーリタイアメントしよう」と書いてありました。しかし今では、早期リタイアを勧める本はありません。
▽一生働かないと“差別”される
・世界が「生涯現役」に向かっていくのは、高齢化とは別の視点からも説明できます。欧米のリベラルな社会では、「人はそれぞれ自分だけの可能性を持って生まれてきた」という前提に立ち、「自分の可能性を100%生かして働ける社会が理想」と見なされるようになりました。ジェンダーギャップ(男女の社会的性差)が問題になるのも、「女性として生まれたことで自分の可能性をあきらめなくてはならないのは理不尽だ」と思うようになったからです。
・スウェーデンやデンマークはあらゆる指標で「世界で最も幸福な国」とされていますが、「社会に何らかの貢献をしている市民だけが社会から恩恵を受けられる」という発想が徹底された国でもあります。「社会への貢献」で最も分かりやすいのが「働いて税金を納めること」で、裏返せば「働かないと“差別”される社会」でもあります。80歳になって「さすがに現役を引退」となっても、「今後は福祉施設でボランティアしたい」と説明しないと皆が納得しない雰囲気ですから。
・「自由と自己責任」という北欧発の価値観は、近隣の欧州諸国や米国にじわじわと浸透しています。趣味嗜好や考え方が多様な「豊かな社会」では、これ以外に誰もが納得できる最大公約数的な社会通念はないからでしょう。日本は例によって世界のトレンドから半周以上遅れていますが、今後、欧米に倣う形で価値観が変化していくのは間違いありません。
▽国に「家1軒分」を納税する現実
・今後、「生涯現役」が当たり前の社会がやってくるのですが、その必然性をお金の面からも説明しておきます。「老後資金には最低でも3000万円必要。豊かな暮らしを望むなら5000万円、1億円が目標」と言われますが、普通の会社員が家を買い、子供を育てながら、60歳までにそんな金額を貯められるはずはありません。
・私もかつては会社勤めをしていて、その後、独立して個人事業主になって分かったことがあります。税負担を合法的に大きく軽減できる自営業者や中小企業のオーナー社長と違って、税と社会保障費を給与から天引きされる会社員が老後資金を効率的に貯めるのはものすごく難しい。大卒会社員の生涯収入は一般に3億円から4億円とされていますが、税・社会保障費の実質負担率は2割にも上り、国にトータルで6000万円から8000万円も納めているのですから。
・株式や不動産に投資して資金を増やす方法があるものの、こうした投資は「若いうちから長期でコツコツ増やしていく」のが鉄則。始める時期が遅くなるほど、元金を減らすリスクを取らざるを得なくなります。 かといって年金制度には頼れません。現在の社会保障制度を、団塊世代が後期高齢者になる2025年以降も維持できると考える専門家はいない。65歳の支給開始年齢基準が大きく引き上げられるか、受給額がかなり減額されるか、あるいは「インフレ税」によって国の借金がチャラになるか。「何らかの調整はある」と覚悟しておくべきです。60歳の時点で手元にある金融資産は、「国家破産」による経済的混乱やケガ・病気など不測の事態に備えた“保険”と考えておくべきでしょう。
・貯金(金融資本)を保険と割り切るなら、肝心の老後資金は、働いてお金を稼ぐ力(人的資本)を60歳以降も労働市場に投資して獲得するしかありません。老後の暮らしを支える富の源泉を金融資本に頼るのではなく、「いかに長く働いて、老後を短くするか」という発想に切り替えるのです。
・当たり前の話ですが、生涯で得る収入は長く働くほど増え、同時に老後が短くなります。これで、「長すぎる老後」問題はシンプルかつ確実に解決します。
▽「稼げる自分になる」は難しいが、「長く働く」はできる
・世帯(家庭)の人的資本を最大化するには、配偶者にも働いてもらうのが最も経済合理的な選択肢です。配偶者が現在働いていない場合、年収100万円、200万円の家計所得増は容易に達成できます。大したことない金額だと思うかもしれませんが、10年間働けば1000万円、2000万円です。「生涯共働き」を超える最強の人生設計はありません。
・ところが、日本の会社では子供を育てながら働くのが難しいため、働く女性10人のうち5人は専業主婦になってせっかくの人的資本を放棄している。『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)を書いたのは、この状況があまりにももったいないと思ったからです。
・人的資本を最大化する戦略には、「長く働く」「世帯内の働き手を増やす」のほかに、「もっと稼げる自分になる」というアプローチもあります。これが自己啓発で、自分に投資して500万円、600万円レベルの年収が1000万円、2000万円になれば素晴らしい。その努力を否定しませんが、「頑張れば誰でも成功できる」わけではないのも確か。
・一方、「長く働く」と「世帯内の働き手を増やす」は、誰でもできて確実に収入を増やせる戦略です。余剰資金を年100万円でも株式などで積み立てれば複利で増えていくから、30年後、40年後にはさらに大きな違いが生じます。
▽クビになる年齢を教えてくれる「定年退職」
・「80歳まで現役」という考えにシフトできれば、定年退職以外の選択肢が広がります。例えば40歳のビジネスパーソンなら「3年後に辞めて起業する」「副業をいくつか試してみる」といった未来が開かれるわけです。考えてみれば、終身雇用における定年退職は、「超長期雇用下での“強制解雇”制度」。会社が生涯の面倒を見てくれるわけではない。ならば、対策は早く立てるに越したことはありません。
・こうした話をすると、「私はどうすればいいですか」と聞かれるのですが、一人ひとり置かれた状況や価値観が違っているから、誰にでも当てはまる万能のアドバイスはありません。酷な言い方かもしれませんが、それぞれが自分で見つけるしかないのです。
・ただ、長く働くためには心と体の健康寿命を伸ばすことが大前提です。うつ病は日本の「風土病」とも言われていますが、その原因は人間関係によることが多い。買い物や食べ物、着る物など何でも自由に選べる現代社会において、人間関係だけは選ぶことが難しい。会社の嫌な上司は典型でしょう。これは米国も同じで、組織に属さず、人間関係を選択できるフリーエージェント化が急速に進んでいます。「好きな人とだけつき合う」贅沢はできなくても、「嫌いな人とは無理につき合う必要はない」というスタンスでいられれば、人生の幸福度は大きく上がります。
・今後はますます専門的な知識に高い価値が認められ、知識社会化が進む。だからニッチな領域で構わないので、自分の好きなこと、得意なことにフォーカスして専門性を磨くことが重要です。生涯現役社会では、「仕事は苦役」のマインドではやっていけません。好きなことならばどれだけ頑張っても苦にならないし、人的資本のすべてを投資できる。ただし、一つの会社の中でしか評価されない知識やスキルの習得はムダ。「今の会社を離れても価値を持つ専門性」の習得が重要です。
▽「何も特技がない」とあきらめることはない
・クラシック音楽が趣味だった知人は上司と折り合いが悪くなって50代で退職し、小さな音楽ホールに雑用係として就職しました。そして、わずか数年で都内の大きな音楽ホールのプログラムを組むポジションに就いています。音楽の専門性に加えて、会社勤めの間に培った組織のマネジメント力が評価されたのです。
・「何も特技がない」とあきらめることはありません。「人生100年」だと考えれば何歳からでも遅くはないのですから、マネタイズできる「自分探し」をポジティブに始めてみてください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/090600161/020900025/?P=1

第三に、精神科医の和田 秀樹氏が1月31日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「認知症になり介護を受ける前にやるべきことは? 老人ホーム・後見人の選定、夫婦問題に盲点が…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・何回か触れたことがあると思うが、私の本業は高齢者向けの精神科医である。 認知症については、現在の医学では治療ができないので、どちらかというと問題行動などの治療(もちろんできるものとできないものがあるが)を行い、介護について、家族の相談なども受けている。
・ただし、本来は家族の相談には医療保険が適用されない。そこで、川崎の病院では20年近く、患者を持つ家族を集めて対策について話し合う「家族会」(医者が定期的に参加する家族会はまだほとんどない)をやっているし、青山の山王メディカルセンターでは、どちらかというと富裕層対象に、保険外で介護相談などを行っている。レーガンやサッチャーが認知症になったことでも分かるように、どんなに社会的地位の高い人でもなる病気だが、それ故の悩みもあるからだ。
・認知症を防ぐ医学が可能なのか、可能であったとしてそれがいつくらいに実用化されるのかは不明だが、私の見るところ、今の50代は将来自分がボケることは覚悟しておいたほうがいい。テストの結果だけでの判断であるが、85歳まで生きると約半数が認知症になってしまうからだ。
・そこであまり嬉しくないことかもしれないが、私の経験から、自分がボケたり、寝たきりになったときのサバイバル術で知っておいてほしいことを書かせていただく。
▽入るホームなどを事前に調査
・57歳の私くらいの世代、あるいは親の介護で苦労した60代の人に話を聞くと、子どもに負担をかけたくないという人がかなり多い。子どもに残す財産が多少減っても有料老人ホームに入るとか、夫婦で介護をするが限界が来たら特別養護老人ホームやグループホームに入るということを考えているのだ。
・この発想はきわめて健全なものだと私は考える。せっかくキャリア形成がうまくいき、管理職なり、なんらかのリーダー的な役割を担っている50代くらいの女性が親の介護のために離職する(これは介護離職といわれる)のはあまりにもったいない。子どもを教育した親の立場から見ると、自分の教育がうまくいったのに、自分のためにそれを捨てさせることになり、それは忸怩(じくじ)たる思いだろう。
・最近は終活ブームで、生前に墓を買う人も増えたし、自分の葬儀の希望やプランニングなどをかなり早い時期に決めておく人もいる。また、将来の延命を望むかどうかを、中高年のうちから意思表示をすることも珍しくなくなった。
・介護については、漠然とホームに入るという人はいるのだが、親のためならともかく、自分の将来のために老人ホームがどんなところであるか、どこがいいのか、どのくらいの金がかかるのかを具体的に知るために見学などに行く人は非常に少ない印象を受ける。
・お金の問題がある場合、地方に行けば安くて良質なサービスを提供してくれるところも珍しくない。私の患者さんでも1000人では利かないくらいの数の人が最終的に施設介護を選んだ。20年以上にわたって、とある有料老人ホームのコンサルタント医をしているが、日本の場合はホームの質がピンからキリまであるし、例えば介護者の文化がホームによって違う。経営者の理念が大きいのだろうが、リーダーの優秀なナースや介護士が醸成していった文化が引き継がれることも多い。要するに入居金や月々の支払いが高ければ、建物や食事はその分いいかもしれないが、介護自体については高ければいいとは限らない。だから見学をマメにやっておいたほうがいいのだ。
・介護保険で受けられるサービスや、どのように申請するのかも知っておいたほうがいい。40歳以上は給料から介護保険料が天引きされているのに、親が要介護になってから慌てることが多いが、事前の知識は多いに越したことはない。日本の福祉サービスはそんなに悪くないが、みんなが使うと財政が破綻すると考えているのか、行政の側からサービス内容を公示することはない(パンフレットはあるが)。知らないと損なのが公的な介護サービスなのだ。
▽認知症になる前に後見人を決めておく
・さて、自分がボケた場合、ホームに入ることを事前に決めていても、その意思がボケた人の意思ということで認められないことがある。 有料老人ホームの多くが償却制や家賃の前払いの形を取っていて、入居時に一括して払ったお金が5年とか10年で返って来なくなる。そのために子どもの相続財産が減るので、かなりの資産家であっても、この手の高級有料老人ホームに子どもが入れたがらないことが現実に起きているし、私の患者さんでも何人か経験している。
・親と同居している子どもは、施設のほうが親もいろいろなサービスを受けられるし、在宅介護では自分が潰れてしまうという自覚もあってホーム入居を検討するのだが、そのきょうだいが反対するケースも珍しくない。
・親が認知症などになって意思能力が減弱したり、なくなったりした際に、子どもやその妻が親の意思を代行したり、補助したりできる制度に「成年後見制度」というものがある。親の認知症が進んで、自分の配偶者も高齢というような場合に、医師がその親の意思能力がないという鑑定書や診断書を出して、子どもを後見人として裁判所が選定すれば、後見人である子供は親の財産を代わりに管理できる。また、親が行きたくないと言っても(元気なころはホームに入ると言っていた人でも認知症になると家に執着することがある)老人ホームに入居させることができる。
・問題は、特に財産のある家では、後見人が決まらないということだ。 診断書上は後見(意思能力が事実上ない)レベルということで、裁判所が成年後見の対象と認めても、誰を後見人にするかでもめ事が起こる。後見人が親の財産を自由にできる(もちろん私的に使ってはいけないのだが)ということで反対するきょうだいが出てくるからだ。もちろん、第三者である弁護士にお金を払って後見人になってもらうこともできるのだが、それだってきょうだい間のコンセンサスがないと不可能だ。裁判で争って後見人を選ぶということもあるのだが、その間に親の認知症は進み、介護している家族は疲弊する。
・こういう事態を避けるために「任意後見」という制度がある。 本人がしっかりしているうちに、自分がボケたり寝たきりになったときに、誰に財産の管理や介護についての判断をしてもらうかなどを前もって契約しておく制度だ。任意後見人が自動的に成年後見人になれるわけではないが、この契約の範囲のことは自分が選んだ任意後見人が引き受けることになる。将来のもめ事を避けるためにも知っておいて、あるいは使っておいて損のない制度と言える。
▽介護や認知症に対する偏見をとる
・今回は、親のためというより、自分の将来のために介護の備えをしようというテーマだが、そのために必要なものに、認知症や介護の偏見を除去することがある。 多くの人が「ボケだけはなりたくない」「ボケて死にたくない」と言うが、私はそれほど認知症を悲惨な病気と考えていない。
・一つには、認知症というと徘徊したり、便をこねたり、元の人格が変わって異常な言動を行う人間になるというイメージがあるが、基本的には一種の脳の老化現象だということがある。実際、私が「浴風会」という高齢者専門の総合病院に勤めていた際に、毎年100人ほどの死後の剖検の検討会で見た限り、85歳を過ぎて脳にアルツハイマー型の変化が全くない人は誰もいない。要は程度問題ということだ。
・基本的には老化現象だとすると、原則的にはおとなしくなる病気なのだ。おそらくは異常行動型の認知症は全体の1割くらいで、逆に引きこもり型のほうが9割くらいのようだ。実際、日本中に400万人も認知症の人がいるとされるのだから、みんなが徘徊するのなら街中は徘徊認知症患者だらけになるが、そう見かけるものではない。要するに人が考えるほどカッコの悪い病気ではないのだ。
・そのほか、嫌なことが忘れられるとか、多幸的になる人も多く、周りはともかく、主観的には幸せになる人は珍しくない。 むしろ、歳をとってうつ病になるほうが、厭世的になったり、自分が生きているのが邪魔という罪悪感に苦しめられたり、気分が鬱々として主観的には不幸と言える。歳をとったら、元気がなくなったり、食欲が衰えるのが当たり前と思われて、未治療のために見過ごされていることが多い。
・私も、昭和一桁世代の元ホワイトカラーや大卒、元管理職以上など、もともと知的レベルの高かった認知症患者を診ることが多かったが、彼らの病状の進行が意外に速い。 それは頭や体を使わないからだ。仕事以外に趣味がないから、一日をぼーっと過ごすことになりがちだ。会社をやめたら麻雀仲間も離れてしまう。ところが、老化現象である以上、頭であれ、体であれ、使わないと老化の進行が速まってしまう。
・そういった場合はデイサービスに行ってくれるといいのだが、こういう人はプライドが高く(認知症はかなり進むまでこの手のプライドは保たれる)参加しようとしない。実際には介護予防のために知的レベルが高い人用のプログラムが用意されていたり、麻雀をやるようなデイサービスも少なくないのだが、知識がないから偏見が強いのだ。 親の介護の際などに、いろいろと見聞して、この手の偏見は拭い去っておきたい。
▽要介護状態になる前に夫婦間のコンセンサスを
・さて、この原稿を書いている際に、小室哲哉さんが、妻の介護中に看護士と不倫をしたという疑惑が報じられ、引退声明を発表するに至った。
・私がとやかく言える立場にないが、私の高齢者専門の精神科医の経験から言えることは、介護を続けるうえで、心の支えになってくれる人が必要だということだ。そういう人を持たないで、自分で抱え込んでいたり、自分で思い詰めていくうちに、介護うつになったり、最悪、自殺や心中、介護殺人にまでつながってしまう。共倒れを避けるためにも、人に、特に精神的に頼ることには大きな意味がある。
・厄介なのは、前述のような理由で、きょうだいですらあてにできないことは珍しくないことだ。 介護保険が始まって今年で18年になるが、介護保険の始まる10年以上前から高齢者の臨床に携わっていた立場から言わせてもらうと、この間にケアマネジャーさんも訪問看護師さんもあるいはヘルパーさんもずいぶん経験を積まれて、こちらから見ても教えを乞いたいくらいの優秀な人、介護の実際が分かっている人がかなりの数まで増えてきている。
・実際、介護者の多くは、この手の介護関係者に相談したり、心理的なサポートを受けて、つらい介護を乗り切っている。 ただ、この手の頼りになるスタッフのほとんどが女性であるという問題がある。ケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパーなどは時代が変わっても、女性が圧倒的に多いという事実はそう変わらない。高齢の介護者の場合、恋愛関係になるということは、私の知る限りではそう多くないが、心が通じ合う関係になるケースは少なくない。
・介護を受ける側が認知症の場合、夫が不貞をしているという嫉妬妄想に発展することもある。 子どもの妊娠中に不倫をするというのは言語道断だが、共同作業の成果である子作りと違って、介護を受けるようになるのは、通常は配偶者の責任ではない。そして多くの場合は、その後の性生活はなくなってしまう(日本は元々セックスレスが多いからそう問題にならないのかもしれないが)。
・そういう場合に、別のパートナーを持つことがそこまで非難されるべきなのだろうか? ポーリン・ボスという心理学者は、配偶者が認知症になった場合、体は失われていないが、ある意味、別人になってしまうということで失われる、つまり、「あいまいな喪失」体験であると論じている(拙訳を参照されたい) もちろん、こういうことこそ夫婦間でコンセンサスを得る必要がある。
・認知症や要介護になる前に、その後も介護は要らないからホームに入れてくれとか、介護はお願いするが、別のパートナーは作ってくれてもいいとか、そういうコンセンサスを作る必要をこの事件では痛感させられた(小室さんがそれに当てはまるのかは分からないが)。 夫婦間の合意がなければもちろん「不倫」だが、合意があった場合は、外からとやかく言われる問題でないことだけは確かだろう。
・長寿が当たり前になった以上、備えられる限りのことは備えるに越したことがないというのが、長年の高齢者臨床の体験からきた老婆心である。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/013000023/?P=1

第一の記事で、 『団塊世代が2022年度から順に75歳以上の”後期高齢者”となり、社会保障費がますます増えると予想されているからだ。2025年度に団塊世代は全員75歳以上となる。75歳以上人口の増加率は、2022~2024年度にかけて、年率約4%と近年にない高い水準となる・・・75歳以上の医療費は64歳以下の5倍!』、というのは大変そうに思えるが、より細かく見ると、 『65歳以上人口や75歳以上人口の増加率がかなり下がり、高齢者人口の増加率が一服する2020~2021年度には、高齢者人口が増えない分、社会保障費も増えないという実態をしっかりと反映した、予算編成が必要である・・・65歳以上人口は2000年代に年率約3%で増えていたが、2020年代には小数第1位を四捨五入すれば0%になる。つまり、ほとんど増えないといってよい。65歳以上人口がほとんど増えないということは、医療や介護ではなく、65歳から基礎年金を受け取るという前提に立てば、年金の給付費が(物価や賃金に連動する分を除き)ほとんど増えないということだ』、ということであれば、高齢者人口の増加率が一服する2020~2021年度に、財政のヒモが緩むことのないよう監視していく必要がありそうだ。
第二の記事で、 『「稼げる自分になる」は難しいが、「長く働く」はできる』、というのは、日本ではごく一部の例外的な高齢者を除けば、働く口が閉ざされており、長く働こうとしても出来ないのが現状なのではなかろうか。この記事を10年前に読んでいたら、大いに参考になったかも知れない。いまさら言われたとことで・・・、というのが率直な感想だ。
第三の記事で、 『介護自体については高ければいいとは限らない。だから見学をマメにやっておいたほうがいいのだ』、というのは大いに教えられた。 『認知症というと・・・85歳を過ぎて脳にアルツハイマー型の変化が全くない人は誰もいない。要は程度問題ということだ。 基本的には老化現象だとすると、原則的にはおとなしくなる病気なのだ。おそらくは異常行動型の認知症は全体の1割くらいで、逆に引きこもり型のほうが9割くらいのようだ・・・嫌なことが忘れられるとか、多幸的になる人も多く、周りはともかく、主観的には幸せになる人は珍しくない』、というのは、徘徊したり、暴力的な認知症になるのを恐れていた私には、多少安心できる話だ。 『介護予防のために知的レベルが高い人用のプログラムが用意されていたり、麻雀をやるようなデイサービスも少なくない』、というのも安心材料だ。ただ、安心ばかりしてないで、準備も忘れないようにしたい。
タグ:東洋経済オンライン 高齢化社会 経済財政諮問会議 日経ビジネスオンライン 後見人 橘 玲 和田 秀樹 土居 丈朗 (その6)(75歳以上「後期高齢者」のコストは削減可能だ、橘玲が語る「残酷すぎる“お金の真実”」、認知症になり介護を受ける前にやるべきことは?) 「75歳以上「後期高齢者」のコストは削減可能だ 社会保障費は人口変動を踏まえて決めるべし」 中長期の経済財政に関する試算 骨太方針2018 「3年間で1.5兆円増」の目安 75歳以上の医療費は64歳以下の5倍! 直前の2020~2021年度は、むしろかつてないほど、高齢者人口の増加率が小さくなる時期でもあるのだ 「橘玲が語る「残酷すぎる“お金の真実”」 「老後資金は、定年退職後も使ってはいけない」」 「定年後は退職金と年金で悠々自適」は過去の話 「稼げる自分になる」は難しいが、「長く働く」はできる 「認知症になり介護を受ける前にやるべきことは? 老人ホーム・後見人の選定、夫婦問題に盲点が…」 介護や認知症に対する偏見をとる 85歳を過ぎて脳にアルツハイマー型の変化が全くない人は誰もいない 要は程度問題 基本的には老化現象だとすると、原則的にはおとなしくなる病気なのだ。おそらくは異常行動型の認知症は全体の1割くらいで、逆に引きこもり型のほうが9割くらいのようだ 嫌なことが忘れられるとか、多幸的になる人も多く、周りはともかく、主観的には幸せになる人は珍しくない 要介護状態になる前に夫婦間のコンセンサスを
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