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北朝鮮問題(その18)(南北首脳会談と 内向きなアメリカ、韓国と北朝鮮が国連制裁無視も厭わず経済協力を急ぐ理由、米朝首脳会談 「情報機関が調整役」の危うさ) [世界情勢]

北朝鮮問題については、3月23日に取上げた。今日は、(その18)(南北首脳会談と 内向きなアメリカ、韓国と北朝鮮が国連制裁無視も厭わず経済協力を急ぐ理由、米朝首脳会談 「情報機関が調整役」の危うさ)である。

先ずは、在米作家の冷泉彰彦氏が4月28日付けメールマガジンJMMに掲載した「[JMM999Sa]「南北首脳会談と、内向きなアメリカ」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・日本では大きく報じられていた2018年4月27日の板門店における南北首脳会談ですが、アメリカのメディアの扱いは限定的でした。例えば、その瞬間におけるCNNの扱いについて言えば、韓国タイムの午前9時半というのは、アメリカ東部時間では木曜日の午後8時半で、人気キャスター「アンダーソン・クーパー」がMCをするニュース番組の真っ最中でした。
・ですから、番組としてはぶち抜きで韓国からの中継なり、会談への事前予想や論評など特番的な扱いになると思っていたのです。ですが、この日のメインは「朝のFOXニュースへの電話出演」の際に、トランプ大統領がロシア疑惑や顧問弁護士の不適切な行動に関して「狼狽気味のトークが暴走」していたという話題でした。 例えば、大統領が「(疑惑の中心である)コーエン弁護士は、バカバカしいストーミー・ダニエルズ事件(大統領の不倫相手とされるポルノ女優)では確かに俺の代理人だ」と放言している部分や、普段は大統領支持の立場でのトークを行なっているFOXニュースのキャスター達が「大統領、あなたは何百万もやることがあるんですから、ここはこの辺で」と一方的にインタビューを打ち切ったシーンを、鬼の首でも取ったように何度も繰り返していたのです。
・どう考えても、南北会談の意義を多角的に検証する方が大切と思うのですが、あくまでも「トランプのトーク暴走」というのがこの日のメインテーマで、軍事境界線での握手というのは、その番組の中では「飛び込みのブレーキング・ニュース」として挿入されるに留まったのです。
・翌朝、例えば3大ネットワークの一つであるNBCの『トゥデイ』では、さすがにトップニュースの扱いでしたが、内容は通り一遍のものでした。というのも、すぐに2番目に「伝説のニュースキャスター、トム・ブロコウへのセクハラ摘発」というNBCとしてはビッグなニュースが控えていたからです。また、同じセクハラ問題である俳優のビル・コスビーが禁錮30年相当(正確な量刑は未定)の罪で有罪になったニュースも大きく取り上げられていました。
・新聞はどうかといえば、NYタイムスはトップ扱いで、「軍事境界線をまたぐ金正恩の後ろ姿」という意味深長な写真が大きく掲げられていましたが、記事の内容はいたって常識的なもので、「文大統領は米朝のネゴシエーター」であるとか「ポンペオ極秘訪朝での密約に焦点」というようなトーンで全体を整理したものでした。
・ちなみに、この会談記事の本文と同じ面には、北朝鮮を観光で訪問中に拘束され、脳にダメージを与えられて釈放後すぐに死亡した当時大学生のオットー・ワームビア氏の両親が、北朝鮮を相手に訴訟を提起したというニュースが添えられていました。 訴訟といっても、米連邦地裁への提訴ですから外交課題にするにしても相手が応じる可能性は少ないわけで、南北首脳会談を評価する記事との「バランス」を取るために掲載したのだと思います。わざわざ「両親の弁護人は、ペンス副大統領の代理人」だと説明して、「これはリベラル側の人権イシューではなく、保守サイドでの強硬派アプローチの文脈」だという断りを入れているような処理がされていました。
・一方で、同じNYの地方紙でもタブロイド判の『NYポスト』では、一面トップは「ビル・コスビー有罪」で、「有罪(ギルティ)」という文字が3つも大きくレイアウトされたセンセーショナルなもの。また、電子版のトップは、NBCテレビのセクハラ問題でした。 アメリカの報道でも「歴史的」という表現はされているのですが、それにしても、この扱いの小ささはどう考えたらいいのでしょうか? その背景にあるのは、一言で言えばアメリカにおける「内向き志向」ということだと思います。
・1つ、これは朝鮮半島情勢一般に関して言えることですが、「遠くて実感が湧かない」という問題があるわけです。アメリカには韓国系アメリカ人は多いですし、社会の中での存在感はあります。また自動車やスマホなど韓国製品が溢れていますし、K-POPはかなり流行しています。ですが、それでも韓国というのは遠い国であり、南北朝鮮の問題というのは更に遠いという実感があるのです。内向きな時代という中で、その距離感は余計に遠く感じられるとも言えます。
・2つ目は、朝鮮戦争の当事国という記憶が相当に薄れているということがあります。 勿論マッカーサーの無謀な北伐については、歴史の教科書に出てきますし、その際に起きた海兵隊の悲惨な撤退戦の物語は海兵隊のアイデンティティの中に埋め込まれているのも事実です。例えば、「朝鮮戦争帰還兵記念」と銘打った高速道や学校などは全米にあります。そうなのですが、65年という歴史はあまりに長く、従って「朝鮮半島の南北対立」に関して米国が当事者という意識はせいぜいが「歴史上の知識」になっています。
・3つ目に、トランプ大統領のアプローチが極めて孤立主義的であり、正に「アメリカ・ファースト」そのものだということがあります。つまり、相手がどうなろうと、そこには関与しない、とにかく米本土に届く核ミサイルだけは許さないという考え方です。そこから導き出されるのは、今回の南北会談は「メインイベント」である「米朝首脳会談への過程」に過ぎないという見方になるわけです。
・4つ目に、国内政治に絡む話ではないということがあります。例えば、シリアへの対応などを巡っては、それこそ民主党にしても、共和党の本流(穏健派にせよ、軍事タカ派にせよ)にしても、トランプ政権の対応に対しては、様々な観点から批判が飛び交うわけです。そこには、彼らが過去に取ってきたシリア並びに中東政策の流れもありますが、トランプが「アサド政権+プーチン」とフレンドリーだと言う姿勢を隠さず、またこのグループとの「癒着」が証明される可能性への期待感もある中で、トランプ政権との論争が国内的な政局における力くらべになるわけです。
・ですが、北朝鮮問題はそうではありません。クリントンも、ブッシュも、オバマも上手くいかなかった中で、トランプに対しては「お手並み拝見」と言う突き放した態度が、世論の中にも政界の中にもあるわけです。また、この問題でのポジションは国内政局の文脈とはなかなか重なりません。
・5つ目に、トランプに政治的に対立している民主党の陣営が、こちらもまた「内向き志向」に陥っていると言う問題があります。例えば、民主党の牙城とも言うべきニューヨーク市の政局ということでは、まず左派のデブラシオ市政はトランプ政権と厳しく対立してきただけでなく、2016年の大統領選ではサンダース派に近かったわけです。 その一方で、ニューヨーク州全体の行政責任のあるアンドリュー・クオモ知事は、同じ民主党でもヒラリー支持派であり、中道寄りでした。ですが、ここへ来て、今年、2018年11月に予定されている知事選にTVドラマシリーズ「セックス・アンド・シティ」のミランダ役で著名な女優のシンシア・ニクソン氏が立候補を表明。つまり民主党の左派として現職知事に反旗を翻した格好です。
・シンシア氏(往年のニクソン大統領と同姓なのを嫌って、もっぱらシンシアというファーストネームを売り込んでいるようです)は、今のところ世論調査で逆転するところまでは行っていないようですが、猛追しているばかりか政治資金も集めており、現職のクオモ氏は動揺するかのように、どんどん政策が左シフト中です。
・例えば、トランプの意を受けて不法移民「狩り」を続けているICE(税関移民局)に対して、人権の見地から訴訟を提起するとか、シンシア陣営の追及をかわすように、急にNY地下鉄のインフラ整備に動いたり、かなり狼狽しているようです。クオモ氏は、大統領選への出馬も取り沙汰されていましたが、そっちへ転身を図るタイミングはそろそろ逸しており、ここで現職の意地を見せないと政治生命が怪しいという状況となりました。
・一方で、私の住むニュージャージーでは、トランプの盟友だった共和党のクリスティ知事が退任した後釜には、民主党のフィル・マーフィー知事が州政を奪還しており、早速、男女賃金の公平を実現する法制や、より厳しい銃規制などリベラルな政策を実行に移しています。
・いずれにしても、民主党としてはトランプの排外政策、保守政策について特に国内の問題に関して、対抗するので精一杯であり、また、そのように対抗することに極めて情熱を傾けていることもあって、軍事外交面での全体パッケージを提案するような状況にはないのです。 そんなわけで、要するに朝鮮半島情勢に関する「ビジョン」を描けるような状況にはありません。そこには、極端なまでの世論の関心の薄さがあり、その背景にあるのは、アメリカは右も左も極めて「内向き志向」、ということがあるように思われます。
・では、今後の展開ですが、このアメリカの「内向き志向」ということを前提に考える必要があると思います。具体的には2点考えられます。 まず1番目として、トランプ政権としては「何とかして非核化を実現し、自分たちの功績としたい」と考えていると思います。その「非核化」ということですが、それは即時核廃棄とか、即時NPT(核不拡散条約)復帰でIAEA(国際原子力機関)の査察受け入れということでは「ない」と考えられます。「内向き」のアメリカとしては、「自分のところにミサイルが飛んでこなければいい」のですから、何もそんなに本質的な解決を焦ることはないのです。
・具体的には、巷間囁かれているように、1年から2年をかけて核放棄の方法を模索しつつ、その間は核実験やICBM飛翔実験は「やらない」という程度の「甘い」結論になる可能性が濃厚だと思います。それでも「内向きのアメリカ」からは評価され、トランプ政権の功績になるからです。
・そこには時間軸の問題があります。アメリカの政治日程からすれば、中間選挙が2018年11月で、大統領選が2020年11月です。非核化への「猶予」が1年から2年という形で切られる場合、今秋の中間選挙の時点では、その猶予の期限は「ずっと先」ですから、大統領としては交渉にさえ合意できれば、胸を張って「合意に導いた自分の功績」を訴えることができるというわけです。
・2つ目に、北朝鮮が開かれた社会になって行くとか、断続的に報じられて来た人権侵害が改善するといった方向性は「ほとんど出てこない」可能性が強いと思われます。 内向きのアメリカとしては、こうした問題への関心は薄くなっているのです。前述のワームビア氏の事件などは、本来であればアメリカのリベラルが反応すべき問題ですが、それが弱いというのは、共和党政権下のポリティクスの影響とは言え、なんとも頼りない話です。
・今回の南北共同宣言の中で、注目すべきは2000年代までの「雪解け」では試みられていた、経済交流、とりわけ人的交流を伴う経済特区などの話題がゼロだったことです。そうではなくて、板門店の扱いとか、定期的な会談といった「管理できる範囲のセレモニー的」な内容が主であったというのは、北側に体制変更への警戒心があり、南にはその警戒心へのやや過剰な理解があり、という力関係で出て来たと思われますが、それを後押ししたのは、アメリカの内向き志向ということになります。
・いずれにしても、今回の南北会談はセレモニー的には成功でしたが、合意内容を見てみれば、「米朝会談へのつなぎ」としては、最小限のものに留まりました。そこには、中長期的な朝鮮半島のビジョンもなければ、北朝鮮における人道危機への問題意識も外されているわけです。そうした流れの背景にあるのは、勿論、体制維持にこだわる北朝鮮、それをアッサリと認めてしまう韓国の左派政権があるわけですが、それに「内向きなアメリカ世論」と「アメリカ第一」のトランプ政権が組み合わさって、現状のような流れを構成していると見ることができます。
・一番怖いのは、この「当面は現状維持」という均衡策が「大きなビジョンによって描かれた」ものではなく、期間限定の刹那的な政治力学の危うい均衡によって成立しているという点だと思います。

次に、龍谷大学社会学部教授の李 相哲氏が5月2日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「韓国と北朝鮮が国連制裁無視も厭わず経済協力を急ぐ理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米朝首脳会談を前に行われた4月27日の南北首脳会談で浮き彫りになったのは、経済協力拡大を重視する南北の姿勢だ。「朝鮮半島の完全非核化」の目標が打ち出されたものの、具体策は示されなかった。文在寅大統領と金正恩・北朝鮮労働党委員長が優先したのは「11年前の約束」の履行だ。
▽南北「板門店宣言」の真意は経済協力の“約束”履行
・首脳会談後に発表された板門店宣言は、「関係改善と自主統一の取り組み」「軍事的緊張の緩和」「恒久的な平和体制構築のための協力」と、大きく3つの柱に分け、計13項目で合意をうたっている。世界が注目したのは、核問題に関する表現だった。金委員長が本気で北朝鮮の核を放棄する意志はあるのかを確認したかったからだ。
・だが宣言文では、「非核化」に関する内容は、13項目の最後の項目で「目標」として掲げられただけ。「関係改善」の内容で具体策が列挙されたのとは好対照だった。 もともと会談自体が南北の首脳による話し合いであり、「非核化」の交渉は米朝会談がメインだから、当然のことかもしれないが、それでも宣言文を丹念に読むと、「韓半島の非核化」はさておいて、とにかく「わが民族同士」でできることを優先するという姿勢がはっきり出たものだった。
・なかでも、「関係改善」では驚くべき内容も含まれている。「『10・4宣言』で合意された事業を積極的に推進していき、一時的に東海線と京義線鉄道と道路を連結して現代化して活用するための実践的対策をとっていくことにした」という部分だ。 「10・4宣言」とは、2007年10月、退任を数ヵ月後に控えた盧武鉉大統領が平壌を訪問、金正日総書記と会った11年前の前回の南北首脳会談で発表された合意文書だ。
・「南北関係発展と平和繁栄のための宣言」と呼ばれる合意文書の趣旨は、「民族経済の均衡ある発展と共同繁栄のために経済協力事業を拡大、発展させる」と、さまざまな分野での協力事業が列挙されたが、ほとんどが実行されずにきた。 当時、文大統領は、廬大統領の秘書官として平壌訪問に同行していた。金正恩委員長が27日の首脳会談の冒頭のあいさつで、「いくら良い約束や宣言があってもそれを守らなければ意味がない」と言ったのは、文大統領に過去の約束履行を促したものとも受け止められる。
・つまり今回の首脳会談は、北朝鮮側は金正日氏ではなく息子の金正恩氏が、韓国は盧武鉉氏ではなく、廬氏の意思を受け継いだ文在寅氏が臨んだが、双方にとっては「11年前の約束」を確認、履行を誓うことが第一だったようだ。
▽反故にされた「10・4宣言」 保守政権が「圧力重視」に転換
・その「約束」というのは、韓国が北朝鮮経済を底上げするため莫大な投資をすることだ。 10・4宣言では(1)韓国は北朝鮮の基盤施設拡充と資源開発に投資をおこなう代わりに、北朝鮮は「民族内部協力事業」という特殊性を考慮して、韓国企業に特恵と優先権を付与すること、(2)北朝鮮海州地域と周辺海域の西海に「平和協力特別地帯」を設置し、共同漁業区域、平和水域を設定、港湾施設の使用、ソウルにつながる漢江の下流地域の共同利用、(3)開城工業団地第2段階事業に着手、(4)開城から中朝国境地域に位置する新義州を結ぶ鉄道、高速道路の改補修事業などの事業を共同で推し進めることに合意。他にも農業、保険医療、環境保護など様々な分野で協力事業を拡大していくことがうたわれた。
・これら事業を進めていくには数十兆ウォンの資金を必要とする。だが実現しなかったのは、資金の問題ではなく政治的な理由からだった。 盧武鉉政権にとって代わった保守政権の李明博政権は、対北朝鮮政策として「非核・開放・3000構想」を打ち出した。北朝鮮が非核化に応じ、開放に踏み切れば北朝鮮の住民の所得を3000ドルに引き上げるという構想だ。 金大中・元大統領の「太陽政策」を引き継ぎ、対北融和政策を進めた盧政権と違い、対北政策の基調を「圧迫に重きを置いた説得プログラム」に舵を切った。
・これに対して、金正日委員長は対南への挑発で対応した。 李政権が発足して半年も経っていない2008年7月、北朝鮮はリゾート観光地、金剛山を観光に訪れた韓国国籍の女性を銃撃して死亡させた。女性は朝、海岸を散策している最中に被弾したが、北朝鮮は軍事境界地域を侵犯したと主張した。 この事件が解決されていなかった2009年4月にはミサイル発射実験をおこない、5月には2度目の核実験を実施。さらに2010年3月には、韓国海軍の哨戒艦、「天安艦」を撃沈し、乗組員の若い兵士四十数人が犠牲になった。
・一連の挑発に対し、李大統領は2010年5月、独自の対北朝鮮制裁措置を発表した。 北朝鮮籍船舶の韓国海域での運行を禁止したのをはじめ、南北交易の全面中断と対北朝鮮新規投資の禁止、対北朝鮮支援事業、人的交流も停止した(「5・24措置」)。
・この措置が実施されてから8年が経つが、これまで南北の間ではこれら事件をどう処理するかについては話し合いすらされてこなかった。だが、「板門店宣言」の内容を見る限り、この制裁措置は有名無実化したようだ。)
▽経済制裁が「尻抜け」になる恐れ 金正恩氏の本気度は米朝会談でわかる
・宣言が発表された後、韓国では早くも経済協力事業についての議論が始まっている。 宣言文に記された釜山と北朝鮮最北端の羅津先方港を経てロシアにつなぐ東海線と、韓国全羅南道木浦市から中朝国境の都市、新義州につらなる京義線鉄道建設にいくら必要かという試算がすでに出ている。京義線鉄道と高速道路だけでも日本円でおおよそ1兆円は必要になるという計算もある。そして、北朝鮮の度重なる挑発を受けて閉鎖された開城工業団地を再開する話も出ている。
・開城工業団地が閉鎖される前には、工業団地の韓国企業の工場で働く北朝鮮の労働者への賃金などで、韓国側から1億米ドルの現金が北朝鮮に渡っていた。 工業団地が再開されれば、再び巨額の現金が北朝鮮に渡ることになる。このことは、北朝鮮に対する国連による制裁決議を破ることになる
・それを避けるために韓国では、開城工業団地での共同事業は再開するが、北朝鮮が得る現金は韓国内の銀行口座に置いておき、北朝鮮はその預金をもとに必要な民生用品などを韓国で調達し、北に運ぶというやり方で、制裁をくぐり抜けることが検討されているという情報もある。
・もともと北朝鮮が従来の強硬路線から一転して平和攻勢をかけてきたのも、米国との非核化交渉で決裂した場合に予想される米国の軍事攻撃を回避するのと、経済制裁の打撃を少なくし、経済を立て直したいという思惑からだ。 ブルームバーグの報道によれば、北朝鮮の外貨は今年の秋で底をつく可能性もある。外貨の枯渇や制裁による影響が本格化しないうちに手だてを講じておく必要があった。
・そこで経済立て直しの突破口を開くために韓国に近づいたと思われる。こうした金委員長の戦略に文大統領が乗ったように見えるのだ。 文大統領が金委員長の狙いや思惑を知りつつも、それに応じていたとすれば、今回の南北首脳会談は、朝鮮半島の非核化で、東アジアの安定を実現することを期待した世界を欺くための会談として、歴史に残ってしまうだろう。逆に、文大統領が、その「真意」をつかめないまま金委員長に手を差し伸べたとすれば、危険だ。
・いずれにせよ、首脳会談の「真相」が明らかになるのは、そう遠くなさそうだ。米朝首脳会談で、北朝鮮の「非核化」の意思が本気なのか、そうでないのか、金委員長の微笑が作られたものなのか、真の姿なのかがわかるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/169003

第三に、元朝日新聞論説委員で東洋大学教授の薬師寺 克行氏が5月3日付け東洋経済オンラインに寄稿した「米朝首脳会談、「情報機関が調整役」の危うさ 国務省とCIAの立場が逆転する異例の事態に」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の首脳会談実現に向けた関係国の動きが活発になっているが、登場するプレーヤーを見ると通常の外交とはまったく異なっていることに注意が必要だ。
・米朝首脳会談をめぐる中心的役割を米国はCIA(中央情報局)、北朝鮮は朝鮮労働党統一戦線部、韓国も国家情報院と、いずれも普段は敵対国の軍事情報などの収集や分析を任務とする情報機関が担っている。一般的に首脳会談は事前に国務省や外交部といった外交部門の幹部が繰り返し協議し、首脳会談で話し合うテーマを絞り込み、一致点を見出す作業を行う。ところが今回、外交部門の幹部はほとんど姿を見せておらず、「外交官抜きの外交交渉」が繰り広げられているのである。
・中心となるテーマが核兵器やミサイルの廃棄問題という機密性や専門性の高い軍事・安全保障問題であるため、まだ外交官の出る幕ではないのかもしれない。しかし、スパイ組織が外交をするとなると、どうしても危なっかしさがつきまとう。
・今年に入ってからの北朝鮮をめぐる動きを振り返ると、平昌五輪以降、韓国と北朝鮮の接近で中心となって動いたのは、韓国は国家情報院の徐薫(ソ・フン)院長、相手方の北朝鮮が朝鮮労働党副委員長で統一戦線部の金英哲(キム・ヨンチョル)部長だ。二人は板門店での南北首脳会談にも同席していた。
▽かかわるべき外交の専門組織がはずされた
・国家情報院はかつて朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代に国内の反政府勢力の弾圧なども担ったKCIA(韓国中央情報部)の流れをくむ組織だ。大統領直属の組織で、安全保障に関係する内外の情報収集や犯罪捜査とともに、北朝鮮問題も担当している韓国の情報機関である。
・院長の徐薫氏はこの組織に長く勤める北朝鮮問題の専門家で、2000年と2007年の南北首脳会談にもかかわった経験がある。昨年の大統領選では文在寅(ムン・ジェイン)候補の陣営に属して外交や安全保障政策を担当し、政権発足とともに院長に就任した。
・今回、徐氏は南北首脳会談実現に向けて韓国の特使団の一人として北朝鮮を訪問し、金正恩委員長と会ってトランプ大統領との会談に応じるという発言を引き出した。その後、米国と日本を訪問しトランプ大統領や安倍晋三首相に金正恩氏の発言を伝えたのも徐氏である。南北首脳会談終了後にも訪日して会談内容を安倍首相に伝えるなど活発に動いている。
・一方、北朝鮮で徐氏のカウンターパートとなっているのが金英哲・統一戦線部長だ。統一戦線部も北朝鮮の代表的な情報機関で、公然と宣伝活動を行うことでも知られている。また南北関係も担当している。そのトップの金英哲氏は軍の情報組織である偵察総局長というポストも経験している人物だ。
・もともと韓国と北朝鮮にとって南北関係は一般的な外交関係ではない。そのため韓国では統一部が、北朝鮮は祖国平和統一委員会という外交セクションとは別の組織が主に担当している。したがって一連の過程で南北共に外交部が表に出てくることはほとんどなかった。しかし、そこに米国や日本がかかわってくることになると話は別で、本来は情報機関ではなく外交部が動くのが筋であろう。しかし、今回、そうした気配はまったくない。
・そればかりか、米国も中心となって動いているのがやはり情報機関のCIA(中央情報局)のトップであるマイク・ポンペオ長官(4月26日、国務長官に就任)である。中央情報局は言うまでもなく世界でもっとも有名な情報機関であり、その活動は世界中で展開され、しばしば反米的政権の転覆にもかかわっている組織だ。  そのトップのポンペオ長官がトランプ大統領の信任を得て、米朝首脳会談に向けた調整を任されているのだ。ポンペオ氏は3月末に極秘に北朝鮮を訪問し、金正恩委員長と会談した。その後、北朝鮮側と接触をしているのはCIA幹部らが中心だという。相手はもちろん金英哲氏を中心とする統一戦線部であろう。
・活発に動くCIAとは対照的に国務省はティラーソン長官が3月14日に突然、解任されてしまった。ティラーソン氏が長官に就任して1年余りたつが、北朝鮮問題担当者をはじめ国務省幹部の多くが空席のままで、機能不全状態が続いていた。トランプ大統領はティラーソン氏や国務省に北朝鮮問題で何も期待していなかったのである。
・結局、米国、韓国、北朝鮮いずれの国も、水面下の接触や協議などは外交部門ではなく、情報機関が担っていることになる。これだけ大きな外交問題を当事国がいずれも外交の専門組織抜きで進めるというのは極めて珍しいことだ。
▽情報機関は政策を主張しないという不文律がある
・情報機関というのは一般的な政府機関とは性格を異にしており、敵対国を中心に安全保障や軍事情報など相手が秘匿する情報をスパイや盗聴などさまざまな手段を使って集めて分析し、大統領ら政策決定者に報告することが任務の組織だ。組織の実態も活動内容などもベールに包まれた部分が多い不透明感の強い組織で、政策決定過程の透明性などが重視される民主主義国家においては異端児のような組織だが、米国だけでなく主要国はいずれもこの種の組織を持っている。
・そして、情報機関の上げてくる情報と時の政権が決定する政策との間には明確な境界線が敷かれている。情報機関は客観的な情報を提供するが、それに基づき政策を主張してはならないことが不文律となっているのだ。もしも情報機関が政策内容に積極的に関与するなど政治的な目的や意図を持つと、情報の客観性が疑われることになり、為政者が判断を誤りかねないというのがその理由だ。
・韓国で徐薫・国家情報院長が南北首脳会談に向けて積極的姿勢を見せた時、韓国の主要新聞の一つである中央日報は「徐氏が南北首脳会談のための水面下での接触を始めるのであれば、国家情報院の北朝鮮情報がわい曲されうる点を懸念せざるをえない。北朝鮮の核の脅威が深刻になっている時に、情報組織のトップが北朝鮮との交渉に集中すれば、国家情報院は院長の好みに合った北朝鮮情報に偏った報告をしかねない」と批判している。これは極めて妥当な分析と言える。
・米国ではこれまでCIAなどの情報機関は国務省よりは格が下で、外交政策決定過程に関係する単なる一部門とみなされてきた。しかし、海外での活動を展開するCIAは、各国に派遣されている大使の支配下に入ることを嫌い独自の活動を進めてきた。その結果、国務省とCIAは仲が悪いことでも知られていた。
・それが今回は立場が完全に逆転してしまったのである。1990年代初めに北朝鮮が核開発を公言して以来、北朝鮮の核・ミサイル問題は国務省が中心となって対応してきた。そして、北朝鮮に核施設の廃棄などを受け入れさせるとともに、見返りとして米国などがエネルギー支援などしてきた。結果的に国務省は北朝鮮の瀬戸際政策に繰り返しだまされてしまうという失敗の連続となった。
・こうした経緯もあって、今回はトランプ大統領のお気に入りでもあるCIAのポンペオ氏が前面に出てきているのだろう。また、会談の中心テーマが北朝鮮の核兵器やミサイルの廃棄であることから、軍事技術的な専門的知識と詳細な情報が不可欠である。その点からも現段階ではさまざまな情報を集積しているCIAの方が北朝鮮にとっては手ごわい交渉相手となっている面もある。
▽外交には交渉技術や国際法の熟知が必要
・しかし、問題がないわけではない。外交交渉には全面的勝利はない。相手から妥協や譲歩を引き出すためには、こちら側も譲るものがなければならない。そうした駆け引きの末に合意にたどり着くためには交渉技術が不可欠である。また、北朝鮮の核開発は核拡散防止条約(NPT)違反であり、国連安保理、あるいは国際原子力機関(IAEA)の査察なども絡んでくる。交渉ではこうした国際法の世界を熟知している必要もある。さらに何らかの合意文書を作るということになると、国際法にのっとった文言作成をしなければならない。
・そもそも、相手が隠している情報を入手し、相手を徹底的に不利な立場に陥れることを目的とする情報組織と、利害が対立する国との緊張関係を緩和し戦争を回避するための合意を形成することが目的である外交組織は、その手法も目指す方向もかなり異なっている。
・二人の首脳がそろって情報組織に頼って首脳会談の準備を進めている現段階は、まだ外交の出る幕ではないのかもしれない。しかし、会談の結果、核兵器やミサイルの全面的な廃棄という大きな方向性が打ち出されるようなことにでもなれば、それから先は情報組織での対応には限界が出てくるだろう。
https://toyokeizai.net/articles/-/219278

第一の記事で、 『アメリカの報道でも「歴史的」という表現はされているのですが、それにしても、この扱いの小ささはどう考えたらいいのでしょうか? その背景にあるのは、一言で言えばアメリカにおける「内向き志向」ということだと思います。 トランプに政治的に対立している民主党の陣営が、こちらもまた「内向き志向」に陥っていると言う問題があります』、「内向き志向」が北朝鮮問題にまで強い影響を及ぼしているのは要注意だ。 『「非核化」ということですが、それは即時核廃棄とか、即時NPT(核不拡散条約)復帰でIAEA(国際原子力機関)の査察受け入れということでは「ない」と考えられます。「内向き」のアメリカとしては、「自分のところにミサイルが飛んでこなければいい」のですから、何もそんなに本質的な解決を焦ることはないのです・・・1年から2年をかけて核放棄の方法を模索しつつ、その間は核実験やICBM飛翔実験は「やらない」という程度の「甘い」結論になる可能性が濃厚だと思います。それでも「内向きのアメリカ」からは評価され、トランプ政権の功績になるからです』、というのでは、日本にとってはさほどの安心材料にはなりそうもなさそうだ。  『今回の南北会談はセレモニー的には成功でしたが、合意内容を見てみれば、「米朝会談へのつなぎ」としては、最小限のものに留まりました。そこには、中長期的な朝鮮半島のビジョンもなければ、北朝鮮における人道危機への問題意識も外されているわけです。そうした流れの背景にあるのは、勿論、体制維持にこだわる北朝鮮、それをアッサリと認めてしまう韓国の左派政権があるわけですが、それに「内向きなアメリカ世論」と「アメリカ第一」のトランプ政権が組み合わさって、現状のような流れを構成していると見ることができます』、との指摘もさすがに的確だ。
第二の記事で、 『今回の首脳会談は・・・双方にとっては「11年前の約束」(「10・4宣言」)を確認、履行を誓うことが第一だったようだ』、 『北朝鮮の外貨は今年の秋で底をつく可能性もある。外貨の枯渇や制裁による影響が本格化しないうちに手だてを講じておく必要があった北朝鮮の外貨は今年の秋で底をつく可能性もある。外貨の枯渇や制裁による影響が本格化しないうちに手だてを講じておく必要があった』、などの指摘はなるほどと納得した。それにしても、会談でそんな弱味をおきびにも出さない金正恩は、さすが役者だ。
第三の記事で、 『もともと韓国と北朝鮮にとって南北関係は一般的な外交関係ではない。そのため韓国では統一部が、北朝鮮は祖国平和統一委員会という外交セクションとは別の組織が主に担当している。したがって一連の過程で南北共に外交部が表に出てくることはほとんどなかった。しかし、そこに米国や日本がかかわってくることになると話は別で、本来は情報機関ではなく外交部が動くのが筋であろう。しかし、今回、そうした気配はまったくない』、 『情報機関は客観的な情報を提供するが、それに基づき政策を主張してはならないことが不文律となっているのだ。もしも情報機関が政策内容に積極的に関与するなど政治的な目的や意図を持つと、情報の客観性が疑われることになり、為政者が判断を誤りかねないというのがその理由だ』、 『そもそも、相手が隠している情報を入手し、相手を徹底的に不利な立場に陥れることを目的とする情報組織と、利害が対立する国との緊張関係を緩和し戦争を回避するための合意を形成することが目的である外交組織は、その手法も目指す方向もかなり異なっている。 二人の首脳がそろって情報組織に頼って首脳会談の準備を進めている現段階は、まだ外交の出る幕ではないのかもしれない。しかし、会談の結果、核兵器やミサイルの全面的な廃棄という大きな方向性が打ち出されるようなことにでもなれば、それから先は情報組織での対応には限界が出てくるだろう』、などの指摘は的確である。これから双方の情報機関の「お手並み拝見」である。
タグ:東洋経済オンライン 北朝鮮問題 冷泉彰彦 ダイヤモンド・オンライン 薬師寺 克行 (その18)(南北首脳会談と 内向きなアメリカ、韓国と北朝鮮が国連制裁無視も厭わず経済協力を急ぐ理由、米朝首脳会談 「情報機関が調整役」の危うさ) 「[JMM999Sa]「南北首脳会談と、内向きなアメリカ」from911/USAレポート」 アメリカにおける「内向き志向」 李 相哲 「韓国と北朝鮮が国連制裁無視も厭わず経済協力を急ぐ理由」 南北「板門店宣言」の真意は経済協力の“約束”履行 10・4宣言 「米朝首脳会談、「情報機関が調整役」の危うさ 国務省とCIAの立場が逆転する異例の事態に」 かかわるべき外交の専門組織がはずされた 米国、韓国、北朝鮮いずれの国も、水面下の接触や協議などは外交部門ではなく、情報機関が担っていることになる。これだけ大きな外交問題を当事国がいずれも外交の専門組織抜きで進めるというのは極めて珍しいことだ 情報機関は客観的な情報を提供するが、それに基づき政策を主張してはならないことが不文律となっているのだ。もしも情報機関が政策内容に積極的に関与するなど政治的な目的や意図を持つと、情報の客観性が疑われることになり、為政者が判断を誤りかねないというのがその理由だ 外交には交渉技術や国際法の熟知が必要
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