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トランプ大統領(その34)(トランプがぶち壊す「戦いの品格」 崩れ去る「美しい伝統的な米国的価値観」、各国首脳はトランプ大統領とどう向き合うか 国連総会演説でわかるそれぞれの苦悩、最高裁判事候補のスキャンダルと、政治のタイミング) [世界情勢]

トランプ大統領については、9月15日に取上げた。今日は、(その34)(トランプがぶち壊す「戦いの品格」 崩れ去る「美しい伝統的な米国的価値観」、各国首脳はトランプ大統領とどう向き合うか 国連総会演説でわかるそれぞれの苦悩、最高裁判事候補のスキャンダルと、政治のタイミング)である。

先ずは、ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザーの御立 尚資氏が9月27日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「トランプがぶち壊す「戦いの品格」 崩れ去る「美しい伝統的な米国的価値観」」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/213747/092000079/?P=1
・『米国在住の友人の勧めで、2018年9月1日に行われたジョン・マケイン上院議員の葬儀でのいくつかの弔辞をビデオで視聴、そして、その全文を読む機会を得た。長期にわたり、闘病生活を送っていた共和党の重鎮マケイン氏は、今年春に、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュの両元大統領に、自分の葬儀で弔辞を読むことを頼んでいたという。 ちなみに、オバマ氏は2008年の大統領選で、ブッシュ氏は2000年の共和党大統領候補予備選で、それぞれマケイン氏を破った人たちなので、もっとも強力な政敵二人に弔辞を頼んだということになる。特に、オバマ氏とは所属政党も思想信条もまったく異なるわけで、オバマ前大統領自身、依頼されたときは驚いたと述べている。 このオバマ氏の弔辞が、実に素晴らしい。非常に人間的であると同時に、マケイン氏、そしてオバマ氏自身が体現する「米国の良い部分とそのリーダーに求められる品格」を、しみじみと感じさせるものだ』、日本でも「終活」ブームだが、弔辞を読む人を指名するとはさすがだ。
・『オバマ氏とブッシュ氏に弔辞を頼んだマケイン氏  たとえば、まず自分とブッシュ元大統領に弔辞を頼むこと自体が、マケイン氏のユーモアのセンス、ちょっといたずら好きの性格、さらには過去の違いを乗り越えて共通の土俵を探し求める、という価値観を示していると述べる。そのあとで、米国の価値観とは何か、が格調高い英語で続く。(英語版は省略するのでリンク先参照) [私訳:ジョンと私は、あらゆる種類の外交問題で意見を異にしていたが、米国の果たすべき役割についての考え方は一致していた。米国は、世界になくてはならない国であり、大きな力と恵まれた地位にあることには、必ず大きな責任が伴うことを(二人とも)信じていたからだ。 米国の安全が保障されること、米国が世界に影響力を持つことは、単に我々が強大な軍事力をもつから、あるいは、豊かな富をもつからではない。他者を我々の意思に添うようにさせる能力があるからだけではない。我々が、法の支配、人権の尊重といった一群の普遍的な価値観に従い続けることで、他者を鼓舞する力を持つからこそだ。人類の一人ひとりが、神から与えられた尊厳を有するということに、我々がこだわりつづけるからこそだ。] ここでオバマ氏によって表現されているのは、米国の伝統的な価値観への揺るぎない信頼であり、また政敵同士でも、共通の価値観の上にたつことについては、相互に信頼しあっているということだ。全米にライブ中継される葬儀での弔辞であるからには、これは米国国民の多くに通じる共通感覚であるというのが大前提なのだろう』、さすが格調が高く、トランプへのあてつけもある弔辞だ。
・『一方、この葬儀に故人の遺志で招待されなかったと伝えられるトランプ大統領、そしてその支持者たちは、どう考えてもこういった価値観を共有しているとは思えない。 また、トランプ氏の言動からは、政敵と相互信頼関係に立つことが良いことだという思考は、彼の信条とまったく相いれないように見受けられる。 彼の支持者たちにとっては、「美しい伝統的な米国的価値観」は限られたエリートたちのもので、くそくらえ。自分たちの不満や苦しみを和らげてくれる可能性があるならば、そんなエスタブリッシュメントの価値観をぶちこわす言動を繰り返す、トランプ氏こそが希望の星だ、ということになる。 この極端な違いをどう受け止めるべきなのだろうか。よく言われるように、トランプのアメリカとそれ以外のアメリカ、2つの別の国が、米国の中にあるとしか思えない。 もちろん、米国の「価値観」の中には、無意識のうちに、他の文化体系や価値観を見下すような部分が含まれている。また、従来から米国の国益のためには「タテマエ」ではなく「本音」に従い、随分身勝手な行動をしてきた例も多々ある。中東で反米政権に対抗する反政府勢力に援助をつづけてきたことは、その一例だ(ちなみに、その一部は、後に反米テロリスト組織へと変貌した)。 ただ、この建前としての価値観は、欧州や日本を含め、多くの国や地域でそれなりの普遍性をもって受け止められ、民主主義と自由貿易というグローバルルールの根幹となってきた。これは米国の軍事力とも組み合わさって、世界のガバナンスシステムも形作ってきた。 最近、『武士の日本史』(高橋昌明著、岩波新書)という大変面白い本を読んだのだが、その中に、中世の典型的な合戦の様子が出てくる』、米国の「本音」に従った身勝手な行動にも触れるとは、さすがだ。
・『かえりみられなくなったいくさ始めの作法  両軍は、自軍の前に楯を並べ立て、約55メートルから109メートルの距離を隔てて対峙する。鬨の声を三度あげてから、いくさ始めの作法として音を発する鏑矢をそれぞれの陣営の騎馬武者が射て、弓矢による戦闘が始まる、のだそうだ。 これは、ある形式化されたルールの下で戦闘行為を行うという共通理解があってこそ成り立つことだろう。時を経て、戦国時代になり、銃や槍が兵器の中心になってからは、当然このような「約束事」は時代遅れなものとして、かえりみられなくなったようだ。 オバマ氏やマケイン氏、あるいはここでは触れなかったがブッシュ氏にも共通する「価値観」と政治論争上の「約束事」。これが、中世の戦の「作法」と同様、時代遅れなものとなっていくのかどうか。今はその重要な分岐点にあるのだと思う。 内向きの米国政治、あるいは世界のあちこちに広がる「アンチ既存システム」だけを訴えるポピュリズムの流れの中で、この価値観が時代遅れなものとなり、世界のガバナンスシステムが崩壊していくのを見過ごすわけにはいかない。 単に、米国的価値観の崩壊を外部から見るだけでなく、そのどの部分はどう残し、新たな価値観として何を加えるのか。特に、個人の尊厳と機会の平等という建前の裏側で、大きな経済的不平等が拡がり、中流階級が崩れ去っていったここ数十年の現実。これをデジタル産業革命の中で、どう組み立て直していくのか。これらの問いは、われわれ日本人にも突き付けられた大きな宿題ではないだろうか』、さすがに日本人にも深い問題を提起してくれた。
・『さて、マケイン上院議員が事前に弔辞を頼んだ相手が、もう一人いる。彼の娘であるメーガン・マケインさんだ。彼女の弔辞は、韻の使い方や語句の繰り返しなど、質の高い美しい英語の見本のような文章であり、またそれが故人の娘としてのあふれる思いと相まって、実に心を動かす素晴らしいものだった。 ご興味がある方は、ネット上で容易に探せるので、ぜひご覧になることをお勧めしたい(特に、最初から12分強を経過したあたりから)。少しだけ、引用してみよう。 「ジョン・マケインのアメリカはずっと偉大である」(英語版は省略するのでリンク先参照)[私訳:ジョン・マケインのアメリカは、(周囲に対して)寛大であり、友好的であり、そしてまた大胆に挑戦もする存在です。臨機応変で、自信に満ち、どっしりと構えています。自らの責任を果たし、その強さゆえに、静かに語ります。アメリカは自慢げに語ったりはしません。そんなことをする必要がないゆえに。ジョン・マケインのアメリカは、「もう一度偉大になる」必要などありません。なぜなら、アメリカはずっと偉大であるから] 最後の部分は、言うまでもなく、トランプ大統領を名指しにはしないものの、彼に対する強烈な皮肉になっている。この部分では、弔辞であるにもかかわらず、聴衆から拍手がわき、それが長く続いた』、「トランプ大統領」に対する強烈な皮肉が聴衆に受けたというのは、分断を象徴している。
・『ライバル2人に加えて、最愛の娘に自分の弔辞を頼み「私はどうすればいいの」と聞いた娘に対し、「おまえが、いかに勇気があるかを聴衆に見せてやればよいんだ」と答えたというマケイン氏。ごくごく個人的には、自分の娘にこのような弔辞を読んでもらえるということが、本当に素晴らしいと思うし、ちょっぴり羨ましい』、これは世の中のオヤジに共通する羨望だろう。

次に、東洋大学教授の薬師寺 克行氏が10月3日付け東洋経済オンラインに寄稿した「各国首脳はトランプ大統領とどう向き合うか 国連総会演説でわかるそれぞれの苦悩」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/240653
・『毎年9月下旬に開かれる国連総会で各国首脳らが行う「一般討論演説」は実に面白い。それぞれ制限時間は15分だが、しゃべることで身を立ててきた人物がそろっているため、なかなか時間どおりにはすまない。過去最長記録は約8時間だという。 多くの首脳は内政や外交で自らが成し遂げた成果を誇示するが、同時に国際情勢などについてそれぞれの問題意識を披歴する。メディアが報じるのは北朝鮮問題など注目されているテーマに触れたごく一部の首脳の発言だけだ。しかし、多くの首脳は結構、真剣に準備し、本気で自らの政治理念や哲学、思想などを語っている。その共通項を探ると、今、世界が直面している問題が意外なほど、くっきりと浮かんでくる。 そして言うまでもないことだが今年、多くの首脳が触れたのは、アメリカのドナルド・トランプ大統領の登場によって自由貿易や民主主義、国際協調などというこれまで当たり前とされてきた世界秩序が揺らぎつつあることへの不安や懸念だった』、制限時間15分のところを約8時間も演説したとは、大した心臓だ。
・『失笑の中、自国中心主義を披歴したトランプ大統領  まず、トランプ大統領の演説を紹介しよう。 冒頭、トランプ大統領はいきなり、各国の外交官らから失笑を買った。開口一番、「大統領に就任して2年もたっていないが、われわれの国の歴史の中で過去のどの政権より多くのことを成し遂げた」と発言した。続けて「アメリカは…」と言いかけたところで、会場に笑い声があふれた。それにあわてたのかトランプ氏は「本当だ。しかし、こんな反応は予期していなかった。まあいい」と取り繕った。そこで再び笑いと拍手が飛び出した。総会会場内は明らかにトランプ氏の発言を嘲笑している空気だった。 トランプ氏はそんな空気などお構いなしに、自分のペースに戻った。核開発問題で対立するイランへの批判、米国大使館をイスラエルの首都・エルサレムに移したことの正当化、WTO(世界貿易機関)や国連人権理事会や国際刑事裁判所などの国際機関を批判するなど言いたい放題だ。 そして、「アメリカは常に自国の利益のために行動する」「アメリカはアメリカによって統治されている。我々はグローバリズムというイデオロギーを拒否する。そして愛国主義を信奉する」と、世界に背を向けるような持論を滔々(とうとう)と述べた。国際協調を象徴する国連という場で、その根本の精神を正面から否定したのである。国連にとっては悪夢のような演説である』、トランプの心臓は本当に強そうだ。しかし、国連でまで自国中心主義を唱えるようでは、ついてくる国はなく、孤立を強めるだけだろう。外交というより、国内の支持者向けなのだろう。
・『こうしたトランプ大統領の主張を真っ向から批判したのがフランスのエマニュエル・マクロン大統領だった。 現在の国際情勢が危機的であるという認識を示したうえでマクロン氏は、これから先いくつかの道があるがその1つが「適者生存」の道だと指摘した。「みんながそれぞれの法律に従おうとする単独行動主義の道だ。これは論争や摩擦を広げ、全員が損をする」「適者生存という道はフラストレーションを増やし、暴力を増やすだけだ」と述べた。「適者生存」とは、環境に適した生物だけが生き残るという考えであり、マクロン氏はそれがトランプ大統領の考え方に通じるものがあるとして、間接的ではあるが批判しているのだ。 そしてマクロン氏は世界がとるべき道として、多国間主義の重要性を強調した。「平和実現のためには多国間のシステムを再構築し、現実的な手法で紛争を解決していくべきだ」「ナショナリズムの騒音がいつも破局を招くことを忘れてはならない」と、歴史観あふれる世界観を展開した。トランプ大統領という言葉は一度も登場しないが、繰り返し単独行動主義や大国主義を批判している。 だからと言ってトランプ大統領とマクロン大統領が犬猿の仲というわけではない。言うべき時には米国に対してもストレートに物を言う。歴史的にアメリカとの距離感を重視してきたフランスらしい巧妙な演説だ』、間接的にトランプ主義を批判するとはさすがマクロンだ。
・『メイ首相「メディアの独立は民主主義の基盤」  アメリカとは特別の関係と言われる英国のテリーザ・メイ首相も黙ってはいなかった。 「英国民はEU(欧州連合)を出るという投票をしたが、それは多国間主義や国際協調を否定したのではない」「こういう時のリーダーシップははっきりしている。価値を共有して、同盟国や仲間と国際的に協力していくことだ」などと述べて、やはりトランプ大統領の身勝手な自己中心的外交を間接的に批判している。 メイ首相は英国的なジョークも忘れなかった。 現在、メイ首相はEU離脱をめぐる交渉が難航し国内メディアから連日のように批判されている。そんなことを念頭に、「各国首脳の皆さん同様、私は英国のメディアが自分について書いていることを読むのは楽しくない。しかし、メディアがそういうことをする権利を私は守る。メディアの独立というのは英国の偉大な業績の一つだ。そしてそれは民主主義の基盤でもある」と述べた。 これは自らを批判するメディアをフェイクニュースと揶揄し、「メディアは国民の敵だ」と言い切ったトランプ氏への痛烈な批判以外の何物でもない。聞く側が思わずニヤリとしてしまうような表現はさすがというべきか』、素晴らしい。
・『マクロン大統領やメイ首相のトランプ大統領に対する批判はともにストレート・パンチではなく、それぞれの味がある。単純な批判ではなく、どこか物分かりの悪い頑固者に対し、人類の歴史や世界のあり方を踏まえつつ諭すようなトーンでもある。同時に国際社会の主要な担い手という自覚や責任感と、現状への強い危機感を感じさせる。 同じ米国批判でも、中国の場合は少々趣が違った。 登場したのは王毅外相で、膨大な貿易赤字を理由に制裁関税をかけるアメリカの対応を「保護主義だ」などと時間をかけて批判したのは当然だろう。 王外相は英仏の首脳同様、多国間主義の重要性についても触れた。「われわれは現在の多国間主義を維持するのか、単独行動主義に好きにさせるのか。今の国際秩序を維持すべきか、腐敗にむしばまれることを許すのか。これは人類の運命にとって極めて重要な問題だ」などと滔々と論じた。一般論としてはその通りだ。 しかし、その先に中国の手前味噌な主張が並ぶ。「中国は一度も多国間主義に対する信念が揺らいだことはない」「中国は多国間主義への関与を維持し、そのチャンピオンであり続ける」というのだ。さらに、ウィンウィンの協力関係、規則や秩序にのっとって行動する、他国の主権や独立を尊重するなどの原則が重要だと述べている。 こうなるとアメリカ同様の自国中心主義が透けて見えてくる。また、南シナ海や尖閣諸島などでの行動をみても、中国の言っていることとやっていることの乖離が大きすぎて、とても信用できるものではない。中国の場合は国連総会という場を、自己正当化のキャンペーンに利用していると見たほうがよさそうだ』、確かに中国の主張はしらじらしいが、現在の米国との関係を踏まえれば多少は理解できる。
・『昨年と様変わり、本音が透けて見えた北朝鮮  そんな中、非核化をめぐってアメリカとの駆け引きがヤマ場を迎えている北朝鮮の演説は、本音が透けて見えて面白い。 登壇者は李容浩(リ・ヨンホ)外相だった。李外相は昨年の国連総会でも演説した。この時は初登場のトランプ大統領が北朝鮮について、「ならず者の体制だ」「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」などと徹底的に批判した。 その直後だったこともあって李外相は冒頭からトランプ大統領を敬称なしで徹底的に批判した。「トランプは精神的に錯乱し、誇大妄想と自己満足にあふれた人物だ」「就任から8カ月でホワイトハウスを、お金を計算する音があふれる場所にし、国連をお金が尊敬され、血を流すことが議事日程となっているギャング団の巣にしようとしている」と、北朝鮮らしい激しい言葉を並べた。 ところが今年は大きくトーンが変わった。 一連の南北首脳会談と先の米朝首脳会談の成果を詳しく紹介したうえで、米朝関係が膠着状態にある最大の理由が、相互に信頼関係がないためだと主張した。しかし、批判の矛先をトランプ大統領には向けなかった。「アメリカの国内政治の問題だ。政治的野党は北朝鮮を信用できないと言うのが仕事だ。そして政府に非合理な単独行動的な要求を北朝鮮にさせようとしている。その結果、円滑な対話や交渉ができない」と述べて、慎重に言葉を選びながら、トランプ大統領批判を巧みに避けつつ、米国の対応を批判している。 細部に神経を使った演説の構成は、北朝鮮が何としても米朝交渉を進展させたいと考えていることが伝わってくる面白さがある』、この記事では安倍首相の演説は紹介されてないが、新聞報道では「北朝鮮の変化に最大の関心」と対話路線を打ち出したようだ。
・『トランプ大統領に、あの手この手で対抗  各国首脳の演説に共通していたのは「多国間主義」の支持であり、トランプが推し進める「単独行動主義」「自国中心主義」への危機感だった。痩せても枯れてもアメリカはまだ世界を動かす大国であり、トランプ大統領の一挙手一投足が、各国の政治、経済、安全保障に大きな影響を与える。 そしてトランプ大統領をストレートに批判しても逆に反発を買うだけで、状況は何も変わらない。かといって黙って見ているわけにはいかない。ではどうすればいいのか。あの手この手で何とか状況を変えたいと苦悩している各国首脳たちの姿が、今回の演説から浮かび上がってきた』、各国首脳たちにとっては、中間選挙などでトランプの力が弱まるのを、待つしかないのかも知れない。

第三に、在米作家の冷泉彰彦氏が9月29日付けメールマガジンJMMに掲載した「[JMM1021Sa]「最高裁判事候補のスキャンダルと、政治のタイミング」」を紹介しよう。
・『アメリカにおける連邦最高裁の判事指名というのは、指名し承認されることで、最高裁判事の構成が変わるわけですから、下手をすれば憲法判断に変化が起きることにもなりかねません。ですから、誰が指名されるかというのは、政治的に大きな問題になります。 そのインパクトゆえに、この最高裁判事指名というのは様々なドラマを生み出して来ました。例えば、1991年にブッシュ(父)が、クラレンス・トーマス判事を指名した際には、「アニタ・ヒル事件」というのが起きました。 このアニタ・ヒルというのは、現在は法律学者として活躍している女性ですが、弁護士資格を持ってトーマス判事の補佐役をしていた際に「セクシャル・ハラスメント」の被害を受けたとして、同判事に対する告発を行ったのです。 結果的に、議会の公聴会が行われましたが、セクハラに関する認識が現在とは違って貧困な中、ヒル氏の主張には十分な配慮は与えられず、最終的にトーマス判事は承認されて最高裁判事に就任し、現在に至っています』、米国の最高裁判事は終身なので、議会の承認手続きは一応慎重なようだ。
・『今回は、トランプ大統領が指名した候補のブレット・カバナー判事について、性的暴行の疑惑が明るみに出て、上院司法委員会の公聴会が行われました。この27日(木)終日かけて行われた公聴会は、「アニタ・ヒル事件」以来久々に全米の注目を浴びることになったのです。何しろ、ほぼ9時間にわたる公聴会を、ケーブル・ニュース各局は勿論、日本の地上波に当たる3大ネットワークも特番を組んで終日放映したぐらいです。 まず、今回のカバナー判事指名に至った経緯ですが、中間派とみなされていたケネディ判事が引退を表明したことから、新たな判事の指名が必要になる中で、保守派という評価のあるカバナー判事候補の指名が行われたのは、2つの大きな要因があります。 1つは、このカバナー指名というのが、元来は相性の悪い「トランプと宗教保守派」の距離を埋める存在ということです。つまり、11月6日の中間選挙の投票日に向けて、トランプと宗教保守派に強い「同盟関係」を形成する、そんな意味合いが指摘できます。 2つ目は、単に「宗教保守派を満足させる」というだけでなく、共和党の結束を固めるという意味でも、この時期に連邦最高裁判事候補として、保守派を指名するということは、政治的な効果が計算されていたのです。 そのカバナー判事に、性的暴力事件に関与していたという複数の疑惑が浮上しました。1つは、カバナー判事が俗にプレップスクールと言われる名門私立高校に在学中、当時15歳であった女性を押し倒してワイセツな行為をしようとしたというものです。 被害を訴えているのは、心理学者でパロアルト大学の教授であるクリスティン・フォードという女性です。 もう1つは、イエール大学時代のカバナー判事が、酒に酔って下半身を露出し、女性に嫌がらせをしたという生々しい内容です。雑誌『ニューヨーカー』がスクープしたもので、この他にも現時点では更に2つの疑惑が公表されています。 こうした中で、民主党の側は、このスキャンダルを最大限に政治利用する構えを取りました。まず、フォード氏の告発ですが、27日の公聴会で明らかになったのは、次のような経緯です。 まず、事件が起きたのは1982年ごろで、その後は被害経験について口外することはなかったそうです。ただ、カバナー判事とその親友の二人が、押し倒した自分に対して見せた恐ろしい笑顔は終生トラウマになっているとしていました。その後、2012年に自宅を改築する際に事件の記憶が蘇り、どうしても玄関に二重に扉を付けたくなったのだと言います。そこで夫に告白すると同時に、セラピストに事情を話して支援を求めた事実があるそうです』、30年経っても事件の記憶が蘇るとは、トラウマはやはり恐ろしいものだ。
・『その上で、今年、2018年の7月になって、カバナー判事が連邦最高裁判事の候補の一人として「ショートリスト」に載ったという報道に接し「あの人物が司法の最高権力者になるのは何としても止めなくてはならない」という思いから、自分の住むカリフォルニア州選出のダイアン・ファインスタイン上院議員の事務所に告発を行ったとしています。 告発の主旨は、候補になるのを止めるためであり、自分の匿名性は守られる約束だったが、何故か「問題の発覚は正式に候補指名がされた後になった」し、また「ワシントン・ポスト」紙にリークがされたことで匿名性は守られなかったことになります。 しかし、フォード氏は、自分は市民の義務として、この問題を告発することにしたとしています。 ということで、問題はフォード氏の当初の意志とは異なる形で、「カバナー判事が連邦最高裁判事の候補に正式に決まってから」告発がリークされて行ったというタイミングにあるわけです。 老獪なファインスタイン議員は認めていませんが、民主党としてはフォード氏が求めたように「候補のショートリスト」から外しても政治的には効果は少ないわけです。 ですから、「正式な候補となってからスキャンダルが炸裂する」ように仕組んだ、そう判断するのが妥当でしょう。 これに加えて、11月6日の中間選挙の投票日も意識されています。民主党としては、正にこの9月中旬に問題が表面化し、10月一杯引きずって、あわよくば「更に新しい材料」が出るなり、徹底的に攻勢を強めて選挙に臨むという筋書きがあると思われます』、民主党は告発者の意志を踏みにじってでも、政治的に利用したとは、これが政治の世界とはいえ、汚い手を使うものだ。
・『一方の共和党としては、「火のないところに煙は立たず」ということは多少は理解しているものの、とにかく党の結束と、宗教保守派の抱き込みということを考えると、ここはカバナー擁護で突き進むしかないということなのでしょう。 さて、そんな中、27日の金曜日には前日の「双方の証人喚問」を受けて、上院司法委員会はカバナー候補を「上院本会議へ送る」かどうかの評決を行いました。前日から、「共和党中間派から3名が造反する」とか「反対に保守州選出の民主党議員1名が造反するかもしれない」など様々な情報が飛び交う中での評決となりました。 結果的には、共和党も民主党も造反は全く出ず、「11対10」でカバナー判事の承認を可決して、上院本会議へ案件送致ということになっています。但し、これには付帯条件があり、このフォード氏の告発について、FBIが追加での捜査を行うということになっています。評決を受けて、トランプ大統領は「FBIに対して捜査を正式に命令」したそうです。 これが本稿の時点での状況です。かなり細かな話になりますが、では、この現状が持つ意味というのはどんなことなのかという評価について、個別のエピソードも含めて整理しておこうと思います。(1)声を震わせながら告発を行ったフォード氏に対して、カバナー判事の証言は終始「怒り」に満ちていました。家庭が破壊される、自分の積み上げてきたキャリアも名声も破壊される、これは理不尽だという激しい怒りの表現でした。一部には「トランプ時代を乗り切るには喧嘩に持ち込むに限る、その点でカバナーは見事にそれをやった」などという論評もありました。(2)カバナー判事自身も、共和党の議員たちも「フォード氏の証言は虚偽だ」という反論は避けていました。つまり「この女性が恐ろしい体験をしたのは事実なのだろうが、相手がカバナー判事というのは思い違いだろう」というスタンスで一貫しており、この作戦は現時点では、まんまと当たった感じです。 (3)もっとも、カバナー証言の中で「10歳の娘がですね。その女の人のために祈りましょうと言ったんですよ。10歳なりに色々考えているんですね・・・ウウウウウ」と嗚咽したというシーンは、いくら何でも「やり過ぎ」という声もあります。(4)今回の公聴会で一番のハイライトは、共和党のリンゼー・グラハム議員が「これは私が政治家人生の中で経験した最悪の茶番だ」として民主党の党利党略を激しく批判したシーンでした。故マケイン議員の盟友として「あわよくばトランプ失脚」を画策しているという見方もされるグラハム議員ですが、この絶叫で「共和党を結束させた」という評価もあります。(5)公聴会の進め方ですが、共和党の議員たちは自分たちの「1人5分」の持ち時間を、「性犯罪の捜査の大ベテラン」だという女性検事を雇って、彼女に委任するという奇手を使いました。つまり「保守的な政治家が、かわいそうな犯罪被害者を寄ってたかって攻撃する」というイメージを回避するためです。「アニタ・ヒル事件」の際の教訓に学んだためのようですが、その検事はフォード氏の「虚偽を暴く」ようなことは一切せず、瑣末な質疑で時間を潰すという高等戦術を展開していたのでした。(6)注目されたのは、アリゾナ州選出のジェフ・フレイク議員です。彼は、共和党内での最も厳しい「アンチ・トランプ」で、そのために予備選突破の見込みが薄くなった中で今回の中間選挙には出馬断念をしている政治家です。つまり中間派ということで、カバナー承認への「造反」が期待されていました。ですが、彼は「賛成」に回る一方で「FBI捜査を要求」という付帯条件を引き出すことに成功しています。そんな中で、「賛成に回る」ことを表明した直後に、議場へ向かうエレベーター内で「レイプ被害者2名」から厳しい追及を受けつつも、それを誠実に聞くというパフォーマンスを行なっていました。この一連の立ち回りで、「2020年の大統領予備選でトランプにチャレンジ」という線が十分に残ったという評価もあります。(7)一部には、カバナー氏という人物は、男尊女卑のエリート・カルチャーに染まり過ぎで、しかも酒グセが悪いので有名であり、調べればどんどんホコリが出てくるという説もあります。仮にそうだとすると、民主党としては選挙直前の10月に「カバナー引きずり下ろしのドラマ」が実現するかもしれないという期待を高めているということになります。(8)一方で、共和党側としては、とりあえず結束して選挙戦を戦う一方で、今回の「カバナー劇場」の影の主役というべき、グラハム、フレイクといった政治家たちは、心の奥底では「トランプ失脚」が国益と考えているわけで、その点では「カバナー承認失敗」となっても構わない、だからこそ「FBI捜査」という「民主党の長引かせ戦術」にも同意したのだと思います。トランプがこれに飛びついたのは、ケリー補佐官などが「罠」にハマることを恐れて、リスクを低減するように進言したからでしょう。 (9)ちなみにカバナー判事は敬虔なカトリックだそうですが、カトリックの重要組織であるイエズス会は、カバナー判事に対して「指名の辞退」を提言しているそうです。その辺に、一つの「出口」も用意されているというわけです。 いずれにしても、この「劇場」の全体は、中間選挙の投票日である11月6日を強く意識しながらの、カレンダーをにらんだ騙し合いになって来ました。バカバカしい政治ドラマといえば、それまでですが、もしかしたらこの事件を契機に歴史が転換するかもしれない以上、注視していくしかなさそうです』、今日の新聞によれば、FBI調査の結果は「疑惑事実なかった」 と共和党幹部が伝えたと報道されている。「忖度」が働いたのかも知れないが、民主党側は恐らく黙っていないだろう。今後の展開が見物だ。
タグ:東洋経済オンライン 1991年 国連総会 日経ビジネスオンライン 冷泉彰彦 トランプ大統領 JMM 薬師寺 克行 御立 尚資 (その34)(トランプがぶち壊す「戦いの品格」 崩れ去る「美しい伝統的な米国的価値観」、各国首脳はトランプ大統領とどう向き合うか 国連総会演説でわかるそれぞれの苦悩、最高裁判事候補のスキャンダルと、政治のタイミング) 「トランプがぶち壊す「戦いの品格」 崩れ去る「美しい伝統的な米国的価値観」」 ジョン・マケイン上院議員の葬儀 今年春に、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュの両元大統領に、自分の葬儀で弔辞を読むことを頼んでいた オバマ氏の弔辞が、実に素晴らしい。非常に人間的であると同時に、マケイン氏、そしてオバマ氏自身が体現する「米国の良い部分とそのリーダーに求められる品格」を、しみじみと感じさせるものだ トランプ大統領、そしてその支持者 彼の支持者たちにとっては、「美しい伝統的な米国的価値観」は限られたエリートたちのもので、くそくらえ。自分たちの不満や苦しみを和らげてくれる可能性があるならば、そんなエスタブリッシュメントの価値観をぶちこわす言動を繰り返す、トランプ氏こそが希望の星だ、ということになる 米国の「価値観」の中には、無意識のうちに、他の文化体系や価値観を見下すような部分が含まれている。また、従来から米国の国益のためには「タテマエ」ではなく「本音」に従い、随分身勝手な行動をしてきた例も多々ある この建前としての価値観は、欧州や日本を含め、多くの国や地域でそれなりの普遍性をもって受け止められ、民主主義と自由貿易というグローバルルールの根幹となってきた。これは米国の軍事力とも組み合わさって、世界のガバナンスシステムも形作ってきた 弔辞を頼んだ相手が、もう一人いる。彼の娘であるメーガン・マケインさん 「各国首脳はトランプ大統領とどう向き合うか 国連総会演説でわかるそれぞれの苦悩」 一般討論演説 制限時間は15分 過去最長記録は約8時間 失笑の中、自国中心主義を披歴したトランプ大統領 トランプ大統領の主張を真っ向から批判したのがフランスのエマニュエル・マクロン大統領 みんながそれぞれの法律に従おうとする単独行動主義の道だ。これは論争や摩擦を広げ、全員が損をする」「適者生存という道はフラストレーションを増やし、暴力を増やすだけだ 多国間主義の重要性を強調 メイ首相「メディアの独立は民主主義の基盤」 同じ米国批判でも、中国の場合は少々趣が違った 膨大な貿易赤字を理由に制裁関税をかけるアメリカの対応を「保護主義だ」などと時間をかけて批判したのは当然だろう 多国間主義の重要性 南シナ海や尖閣諸島などでの行動をみても、中国の言っていることとやっていることの乖離が大きすぎて、とても信用できるものではない 昨年と様変わり、本音が透けて見えた北朝鮮 各国首脳の演説に共通 トランプが推し進める「単独行動主義」「自国中心主義」への危機感 「[JMM1021Sa]「最高裁判事候補のスキャンダルと、政治のタイミング」」 連邦最高裁の判事指名 クラレンス・トーマス判事を指名 「アニタ・ヒル事件」 セクハラに関する認識が現在とは違って貧困な中、ヒル氏の主張には十分な配慮は与えられず、最終的にトーマス判事は承認されて最高裁判事に就任 ブレット・カバナー判事 性的暴行の疑惑 9時間にわたる公聴会 元来は相性の悪い「トランプと宗教保守派」の距離を埋める存在 クリスティン・フォード 更に2つの疑惑が公表 1982年ごろで、その後は被害経験について口外することはなかったそうです。ただ、カバナー判事とその親友の二人が、押し倒した自分に対して見せた恐ろしい笑顔は終生トラウマになっているとしていました 2012年に自宅を改築する際に事件の記憶が蘇り、どうしても玄関に二重に扉を付けたくなったのだと言います カバナー判事が連邦最高裁判事の候補の一人として「ショートリスト」に載ったという報道に接し「あの人物が司法の最高権力者になるのは何としても止めなくてはならない」という思いから、自分の住むカリフォルニア州選出のダイアン・ファインスタイン上院議員の事務所に告発を行った 問題はフォード氏の当初の意志とは異なる形で、「カバナー判事が連邦最高裁判事の候補に正式に決まってから」告発がリークされて行ったというタイミングにある 民主党としてはフォード氏が求めたように「候補のショートリスト」から外しても政治的には効果は少ないわけです。 ですから、「正式な候補となってからスキャンダルが炸裂する」ように仕組んだ、そう判断するのが妥当 結果的には、共和党も民主党も造反は全く出ず、「11対10」でカバナー判事の承認を可決して、上院本会議へ案件送致 FBIが追加での捜査を行う FBI調査の結果は「疑惑事実なかった」 と共和党幹部が伝えたと報道されている
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