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金融関連の詐欺的事件(その6)(追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~、スルガ銀 パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、10月1日に取上げた。今日は、(その6)(追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~、スルガ銀 パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?)である。

先ずは、10月10日付けNHKクローズアップ現代+「追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4190/
・『シェアハウスへの投資トラブルで表面化したスルガ銀行問題。先月、第三者委員会は、営業の暴走や審査の機能不全、ずさんな経営管理体制が不正を拡大させたと断じる報告書をまとめた。元行員や不動産業者への独自取材では、融資条件に到底満たない人々の資産や年収のデータを偽装していた生々しい実態も見えてきた。「優良銀行」とされてきたスルガ銀行が、なぜ不正融資に走ったのか、その軌跡を時代背景を交えてお伝えする』、多面的に捉えているので、全貌把握にはもってこいである。
・『投資話の裏で…驚きの不正 スルガ銀行で何が?手口の詳細  個人向けの不動産融資で、数々の不正が明らかになったスルガ銀行。取材に応じた元行員は、目先の利益を優先するあまりにルールを逸脱して、強引な融資を行っていたと語りました。 スルガ銀行の元行員(審査部門)「何が何でも、目をつむってでも(融資を)実行する形を作れという指示が出て。もしくは、そうせざるを得ないような状況になって、恐怖政治的な手法で行員を管理していくとか、組織を運営していくとか、そういった部分が全面的に出てしまっていた。」 この問題を調査した第三者委員会の報告書です。通帳のコピーや契約書などの書類を偽装していたことが明らかになりました。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者です。行員に頼まれ、通帳の預金残高を多く見せる偽装を行っていたと言います。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者「7とカンマをコピーして、こういう感じで持ってくる。これだけで残高は730万いくつ。」 不正はどう行われていたのか。舞台は、シェアハウスなどの個人向けの投資用不動産でした。大手IT企業に勤めながら不動産投資を始めた奥山一郎さん(仮名)。スルガ銀行から1億6,000万円の融資を受け、今年(2018年)4月、このシェアハウスのオーナーになりました。安定した収益が得られるという誘い文句でしたが、想定が崩れ、多額の借金返済に追われています。 シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)「資金的にけちっているので、(家具は)自分で1個ずつ入れるしかない状況。」 奥山さんのシェアハウスは、広さ4畳の部屋が15あります。しかし、そのうち9つが空室のままです。現在の家賃収入は合わせて月15万円余り。一方、銀行への返済額は64万円。毎月50万円近くの赤字が出ているのです。経費を少しでも抑えるため、週末にはみずから物件の清掃や備品管理を行っています。 シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)
「なんでこんなことをやっているのかなと思います。新築でこの入居率の状況ですので、それが今後もっと悪い状況にしかならないので、不安だらけ。」 奥山さんは、去年(2017年)3月、不動産販売会社からシェアハウスの購入を持ちかけられました。自己資金がゼロでも、全額、銀行から融資を受けられる。さらに、空室がどれだけ出ても毎月およそ90万円の家賃収入を保証。その収入があれば、銀行に返済しても手元に15万円残るという触れ込みでした。 シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)「売り込みに来た販売会社は、あやしいなと思いました。私自身がそれだけの金額を借りられるとは思えなかったので、ほんまかいなと。」 半信半疑だった奥山さんに対し、1か月後、不動産会社が連れてきたのが、スルガ銀行の行員でした。その行員は、奥山さんに次のように話したと言います。“スルガ銀行は、個人向けの融資にフォーカスしてやっているので、この物件に関しては、ちゃんと融資をすることができます。物件の入居率に関しては、今後も私たちが定期的に見ていくので大丈夫です” シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)「銀行も貸し倒れがあると困るので、物件価格とかを見た上で審査しているんだろうなと。その銀行が『満額を出しますよ』という話なので、もうこれは大丈夫なんだろうと思いました。」 ところが、スルガ銀行はこうした融資の過程で、本来守るべきルールを逸脱していました。スルガ銀行では顧客の返済能力を確かめるため、物件価格の1割、1億円の場合は1,000万円、自己資金があるか確認するルールが存在していました。 しかし、自己資金が足りない場合、不動産業者が通帳のコピーを改ざん。スルガ銀行は改ざんを指示したり、黙認したりしていました。こうした不正によってルールが骨抜きにされ、ずさんな融資が行われていたのです。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者は、不正な資料をもとにした融資が当たり前になっていたと言います。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者「銀行も、もうやり方を知っている。不正は不正だけど、不正という認識よりは、(銀行と客との)橋渡しというイメージが強いです。」 奥山さんの通帳のコピーも改ざんされていました。左が本物の記録。右が銀行が保管していた改ざんされた記録。物件価格の1割、1,600万円を超えるように2,200万円に預金残高が改ざんされていました』、不動産会社が連れてきスルガ銀行の行員に、大丈夫と言われれば、一般の人は信じてしまうのも無理はない。また、通常は自行預金であれば、オンライン端末でチェックするが、当然のことが行われてなかったようだ。
・『行員は、改ざんされたコピーを原本と違いないとして印鑑を押していました。さらに、行員が不動産業者に改ざんを具体的に依頼しているケースもありました。「エビ(=エビデンス)」とは、自己資金の確認書類。行員が通帳の残高を5,700万円に改ざんしてほしいと業者に頼んでいます。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者「ある程度、改ざんを黙認してもらったり指示してもらったり、お互い(融資の)承認を取りたいという目標に向かって、一緒に動いているような状況でした。」 スルガ銀行は、金融庁の行政処分を受けて開いた会見で、少なくとも1,546件の不正が行われていたと明らかにしました』、ここまでくると、銀行も共同正犯である。
・『なぜ投資用不動産融資で… 驚きの不正とパワハラの実態  スルガ銀行は静岡県で123年の歴史を持ち、創業以来、地域経済の発展に貢献してきました。なぜ、信用が第一の銀行が不正がまん延する組織になっていったのか・・・2000年以降、住宅ローンなどの個人向けの融資に特化していくようになります。しかし、銀行どうしの競争が次第に激化し、通常の住宅ローンでは利益を稼ぎにくくなっていきます。そこで乗り出したのが、個人向けの投資用不動産融資でした。その額は2008年度から3倍以上、4,000億円近くに急増。新規の融資額全体の8割を占めるまでになりました。 その結果、スルガ銀行は5年連続で過去最高益を更新。“地銀の優等生”とも言われるようになりました。しかし、好業績を維持してきた裏で不正が広がっていたのです。 第三者委員会は、5年ほど前から不正が一気に広がったとして、その背景に営業部門の暴走があったと指摘しています。銀行が当初設定した融資額の目標を、営業部門の幹部が増収増益を続けようと大幅に引き上げていました。ストレッチ目標と呼ばれた非現実的なノルマ。現場の営業マンは苦しむことになりました。ノルマ達成のため、上司から部下へのパワハラが横行していたことも第三者委員会の聞き取り調査から明らかになりました。 第三者委員会の聞き取りより“上司の机の前に起立し、どう喝される。机を殴る、蹴る。持っていったりん議書を破られて投げつけられる。数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやると言われた”』、まるで「ブラック企業」そのものだ。
・『過度なノルマによって稼ぎ出された収益に依存するようになっていったスルガ銀行。営業部門の暴走を止めるべき審査部門も機能しなくなっていました。 スルガ銀行の元行員(審査部門)「(営業部門は)審査部に対して完全に上から目線で、貴様ぐずぐず言っていないで、さっさと(印鑑を)押せ。ふざけたつまんねえことばかり言っているんじゃねえという感じの口調で、それで融資が実行してしまわれるということは、よく目にしました。」 経営陣も現場の問題から目を背けていました。3年前、スルガ銀行は投資用のシェアハウスを調査し、入居率が推計5割にとどまっていることを把握。しかし、その情報は適切に共有されず、融資の拡大に歯止めをかけられませんでした。今年4月、融資の取り扱いが最も多かったシェアハウス運営会社スマートデイズが破綻。そのことで、個人向けの投資用不動産を巡る不正があらわになったのです』、3年前に投資用のシェアハウスを調査し、入居率が推計5割にとどまっていることを把握していたが、「その情報は適切に共有されず、融資の拡大に歯止めをかけられませんでした」というのは同行の体質からは当然だろう。
・『スマートデイズの破綻により、当初、約束されていた家賃保証も受けられなくなった奥山さん。1億6,000万円の融資をどう返済するのか、めども立たず、追い詰められています。不動産投資を始めたのは、家族のためでした。40代になってから授かった2人の子どもたちに、少しでも財産になるものを残せたらと思ったのです。奥山さんは、投資に失敗したと初めて妻に告げたときのことを、今でも忘れることができないと言います。 シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)「恐らく、すごく心配がるか、ヒステリックになるかなと思ったんですけど、僕がかなりうろたえていたんだと思います。(妻は)力強く『まず物件を見に行こう』と。『まず物件を見に行って、回す方法を考えよう』と言ってくれました。(妻は)ずっと内職みたいなやつを見つけて、昼の時間にやっています。そういうのを思うと、申し訳ないと思っています。」 オーナーを支援 加藤博太郎弁護士「最初からオーナーをだますようなスキームが、スルガ銀行を含めて作られていたことを考えると、普通の投資被害、投資をして損をした事案とは違うと思っている。(スルガ銀行には)金利の減免を含めて、オーナーにしっかり向き合って頂いて、オーナーが破綻しなくていいように一緒に考えて頂きたい。」』、初めの部分にある「現在の家賃収入は合わせて月15万円余り。一方、銀行への返済額は64万円。毎月50万円近くの赤字が出ている」、というのでは、銀行が仮に返済猶予したとしても、焼石に水だ。返済減免が必要だろう。
・『追跡!スルガ銀行問題 驚きの不正はなぜ?  武田:スルガ銀行は今回、6か月の一部業務停止という行政処分を受けました。銀行としては5年ぶりの非常に厳しい処分です。スルガ銀行は専門の部署を設けて、オーナーたちに対応していくとしています。 鎌倉:今回、第三者委員会が指摘した不正や不適切な行為は、書類の偽装や業者からの接待など、実に多種多様な形でまん延していました。こうした不正の原因について、第三者委員会は主に3つ指摘しています。まず1つ目、営業現場の暴走です。聞き取り調査では、釣り堀に魚が10匹いないのに、10匹とってこいと言われる状況で、その結果、不正が全くない案件など全体の1%あったかどうかと答える行員もいたんです。次に、審査の機能不全です。それを象徴するのが、審査承認率99%という数字です。つまり、営業部門が挙げてきた融資のほとんどすべてが審査を通っていた状況なんです。営業部門の圧力で審査の独立性が失われ、チェック機能が働いていませんでした。 武田:そして3つ目は、ずさんな経営管理体制です。経営陣は現場の不正を見過ごし、営業現場の暴走を許しており、これが無責任だと断じています。これについて第三者委員会の委員長に直接聞きました。 武田「営業現場の暴走、止められない経営層。構図を目の当たりにしてどう感じたか?」 第三者委員会 委員長 中村直人弁護士「営業現場の本部長以下が、いい数字を作って、会長、社長、副社長に持っていって、褒めてもらいたい。悪い情報を絶対に持っていってはいけないと自制をしている。経営層は現場の悪いことについて『報告を受けない』『知らない』という形になって、現場側が暴走し始めるという構図。」 武田「同じ会社で、現場の暴走を感じることはなかったのか?」 第三者委員会 委員長 中村直人弁護士「雲の上で下界の汚いことはまったく知らずに、数字だけを享受している。我々からすると経営陣はけしからん。」』、経営陣が営業現場の実態を一切見ようともしない組織は、スルガ銀行だけでなく、最近の大企業の不祥事でも多く見られるようだ。
・『積極的な融資を背景に… 高まる不動産投資熱  鎌倉:今回の問題が起きた背景として、ここ数年の個人の不動産投資熱の高まりがあります。こちらは、国内の銀行全体の個人向けの投資用不動産への融資残高、その推移です。ここ数年、積極的に銀行は融資をしてきたことが分かります。しかし、今回の問題を受けて、金融機関は融資に慎重になり始めているんです。 武田:そこで不動産投資家たちに、どんな変化が起きているのか密着しました。  それでも冷めない投資熱 “不動産で稼ぎたい”ワケ  先月(9月)末、不動産投資をするサラリーマンや主婦たちが集まる情報交換会が開かれていました。参加していたのは20代から50代のおよそ20人・・・会を主催する主婦の杉村八千代さんです。 マンションオーナー 杉村八千代さん「今、スルガ銀行のおかげで銀行の窓口がとても狭くなりました。銀行開拓も、不動産を探すことも諦めず、負けずにがんばっていきましょう。」 銀行が個人への融資に慎重な姿勢を見せ始める中、なんとか投資を続けていきたいと思っています。杉村さんが不動産投資を始めたのは、今から3年前のことでした・・・“満室”にこだわらないと、賃貸事業として成り立たない。」 投資を始める前、杉村さんは生活のゆとりがなかったと言います。自動車部品工場に勤める夫の年収は500万円ほど。家計を支えようと清掃などのパートをしていました。老後のために資産を増やしたいと思っていましたが、預貯金だけではとても安心できなかったと言います。 マンションオーナー 杉村八千代さん「将来が豊かになるイメージが全然わかないと思う。前は定期貯金や積み立てで一生懸命増やしてきていたが、(金利)0.1%とかになってしまっているので、それで老後のために備えようというのには厳しいと思う。」 不動産投資が人気を集めていることを雑誌などで知り、自分も投資に乗り出すことを決めました。杉村さんは、2億3,500万円で3棟のマンションを購入。その全額を地元の信用金庫に融資してもらい、頭金なしで買うことができました。3棟がすべて満室になれば、毎月の家賃収入は合わせて144万円。そこからローンの返済や諸経費86万円余りを差し引くと、杉村さんの手元には毎月57万円余り残る計算です。 マンションオーナー 杉村八千代さん「大きなお金が動きますけれども、残るお金も大きいので。運用していけば通帳にどんどん貯まっていくという実感を覚えると、これでしっかり満室にしていけば(運用)できるんだなと思った。」 杉村さんの最終的な目標は、マンションを6棟に増やすこと。部屋が埋まらないリスクに備えるためには、部屋数を増やすことが必要だと考えているからです。 マンションオーナー 杉村八千代さん「走り出したら不動産業は、どこかで立ち止まるより、ずっと(不動産を)持っている限り続いていく仕事だと思う。」』、なかには、こうした成功例もあるだろうが、それとて今後、入居率が低下すれば、失敗例になりかねない筈だ。
・『スルガ銀行の問題が起きたあと、投資の計画に影響を受けた人もいます。アパートへの投資を考えていた男性です。2月、男性はある地方銀行に、およそ1億円の融資を申し込み、金利1.8%で仮審査が通りました。しかし、スルガ銀行の問題が発覚したあと、融資は取りやめになりました。別の地方銀行に融資を申し込んだところ、金利は当初よりも高い2.55%。返済額は1,600万円以上増えることになりました。返済額が増えても一定の利益は確保できると考え、投資に踏み切りました。 アパートに投資した男性「絶対(お金は)増えないから、投資を考えなければいけない。多少、痛手を負ったけれども、アウトかセーフかと言えば、なんとかセーフの方に滑り込んだかなと思っている。」 武田:超低金利の中、不動産投資に乗り出す人たちが後を絶たないという現状について、不動産投資セミナーの主催者は、こう話しています。 武蔵コーポレーション 大谷義武社長「『将来への不安』が最大の要因。『将来不安』が無ければ、ここまでの不動産投資市場は形成されていない。その不安が、ますます加速している。」』、金利が当初のものより高くなっても、投資したこの男性は、「なんとかセーフの方に滑り込んだかなと思っている」としているが、これも先行きは疑問だ。
・『追跡!スルガ銀行問題 低金利に苦しむ地銀  鎌倉:一方、金融機関も長引く低金利によって苦境に立たされています。全国の地方銀行106行のうち54行が昨年度、融資などの本業で赤字になっているんです。 武田:こうした状況の中、金融庁は、高い利益を上げてきたスルガ銀行のビジネスモデルに対して、一定の評価をしてきました。しかし、不正のまん延は見抜けなかった形で、監督の在り方も問われています。金融庁の責任をどう考えるのか、専門家に聞きました。 追跡!スルガ銀行問題 金融庁の責任は  ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次チーフエコノミスト「スルガ銀行だけではなくて、地方銀行が置かれた環境はどこも同じ。『他にもあるんじゃないか』と多くの国民、金融機関も思っている。金融行政が急いでやらないといけないのは、不正融資の問題がスルガ銀行だけの問題なのか、他の銀行、企業を含めて、類似のことが起きていないか識別、判断することがいちばん急がれるべき。」 鎌倉:金融庁は、他の銀行でも投資用不動産向け融資が適切に行われているか、実態の把握を急ぐ方針を示しています。 武田:無理な融資を続けてきたスルガ銀行。その結果、多額の負債に苦しむ投資家たちの姿。それは、かつてのバブル時代をほうふつとさせるものでした。スルガ銀行の問題から、私たちは今度こそ、教訓を得なければならない。強く思います』、不正融資はスルガ銀行だけでなく、他の地銀や、さらには西武信金にまで広がりをみせているようだ。スルガ銀行は、4~9月赤字900億円となり、 旧経営陣を提訴するようだが、赤字が今後大きくなる懸念もあり、当面、要注意だ。

次に、健康社会学者の河合 薫氏が10月2日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「スルガ銀、パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/100100183/?P=1
・『――結局、これらの不正行為などに関わった銀行員は、銀行のためでもなく、顧客や取引先等のためでもなく、自己の刹那的な営業成績のため(逆に成績が上がらない場合に上司から受ける精神的プレッシャーの回避のため)、これらを行ったものと評価される。決して、違法性があるかどうか分からなかったとか、会社の利益のためになると思ってやったなどというものではない。―― これは先月、スルガ銀行の第三者委員会が公表した「不適切融資」に関する調査報告書(以下、報告書)の192ページに記されていた文言である。 不正や問題が起きるたびに、似たような報告書が公開されてきた。が、私はこれほどまでに人間の「愚かさと野蛮さ」を克明に描いた“読み物”をみたことがない。 事実は小説より奇なり、リアルはドラマよりおぞましいとでもいうべきか。 要するに「カネ」。一時は地銀の「優等生」と称されたスルガ銀行の実態はカネだけを追いかけた組織だった。 「雲の上から下界を見ているような人たち」だった経営陣は、「上納金」さえちゃんと収めてくれればモーマンタイ(問題ない)。目的を果たすための手段は問わず、「下界」では営業担当役員が審査部門の人事に介入するなどやりたい放題。本来、ブレーキをかけるべき審査部門が全く機能しない、退廃的な「王国」ができあがっていたのである。 不正行為が疑われる件数は調査委員会が調査したもので約800件、会社が調査したもので1000件もあり、内部通告制度を利用したものはわずか1%。 「どうせもみ消される」「言うだけムダ」「下手なことをしたら報復される」「誰が通報したかバレる」との理由から、通報を断念した行員たちもいた。 担当者、支店長、執行役員のすべてが「共犯者」であるため、不正通報は裏切り行為と見なされていたのだ。 また、資産形成ローンの営業に携わったことのある行員の9割が、「営業ノルマを厳しいと感じたことがある」とし、7割が「営業成績が伸びないことを上司から叱責されたことがある」と回答。 ノルマは営業担当の麻生治雄元専務の独断で決められた非現実的なもので、その麻生氏を執行役員に引き上げたのが、岡野喜之助副社長(故人)だ。 第三者委員会は、岡野光喜氏の実弟で2016年7月に急逝した故岡野副社長こそが、営業偏重の人事や過大な営業目標、審査部門の弱体化など一連の問題の背景となる構図を作り上げた主たる責任者と断定している。 330ページに及ぶ報告書に記された経営的な問題点は、既に専門家があちこちで指摘している。よって、私は第三者委員会が明かしたリアルから「いかにして人は暴走するのか?」についてあれこれ考えてみようと思う』、「担当者、支店長、執行役員のすべてが「共犯者」であるため、不正通報は裏切り行為と見なされていたのだ」、というのでは通報制度は確かに機能しないだろう。
・『行員たちが受けたパワハラ  まずはこちらをご覧いただきたい。行員たちが実際に受けたパワハラである。(以下、報告書より抜粋)。 ノルマが出来ていないと応接室に呼び出されて「バカヤロー」と、机を蹴ったり、テーブルを叩いたり、「給料返せ」などと怒鳴られる。 「なぜできないんだ、案件を取れるまで帰ってくるな」と、首を掴まれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った。  数字が達成できないなら「ビルから飛び降りろ」と言われた。 毎日 2~3 時間立たされ、怒鳴り散らされる、椅子を蹴られる、天然パーマを怒られる、1 カ月間無視され続ける。 「死ね」「給料どろぼう」「できるまで帰ってくるな」と罵倒。 数字が(達成)できなかった場合に、ものを投げ、パソコンにパンチされ、「お前の家族皆殺しにしてやる」と言われた。 毎日、怒鳴り続けられ、昼食も2週間行かせてもらえず、夜も午後11時過ぎまで仕事させられた。 支店長席の前に1時間以上立たされ、支店長が激高し、ゴミ箱を蹴り上げたり、コップを投げつけられた。 達成率が低いと、椅子を蹴られ、机を叩かれ、恫喝されながら育った。 数字があがらないなら休日はなし、数字があがらないなら時間外請求するな、融資実績があがらないならば、会社に給与返せ、いつまで会社から定額自動送金してもらっているんだというモラルの欠片もない会社だった。 どれもこれも信じがたい愚行だが、これは報告書に記載されているごく一部に過ぎない。 営業を担当した経験のある行員7割超が「営業成績が伸びないことを上司から叱責されたことがある」と回答しているのだ。 「会議中にターゲットになる者を特定。みんなの前で罵声を浴びせる。 被害者が精神的に追い詰められ、休職や退職に至ると、営業推進を一生懸命に行った結果だと肯定し、その数や追い詰め方を自慢し競い、賞賛されるような状況にあった。 恫喝、強要でパワハラ以外の何でもないことが行われていることを知りながら、誰も止められなかった、本気で止めようとしなかった」(行員の証言) ……追い詰め方を自慢しあい、賞賛される職場。想像するだけでおそろしくなる。 これまでにも「飛び降りろ!」「死ね」という暴言を吐かれたという話は聞いたことがあったが、身体的暴力が日常的に行われていたという話は聞いたことがない。 ましてや、「精神的に追い詰めることが営業推進を一生懸命にやった結果」と肯定されるなど、ありえない。 いったい何人の行員たちが、精神を病み、体を壊したのだろう。中には人生をめちゃくちゃにされてしまった人もいたのではあるまいか』、おそらく中途退職者数はかなり多かったのだろう。
・『創業オーナー家ら多数の上位者が存在  下界のトップである麻生氏は02年に執行役員、04年に常務執行役員、専務執行役員となったが、「強大な力を誇ったとはいえ、だたの執行役員に過ぎなかった」(報告書より)。 スルガ銀行の執行役員は「雇用型」で、従業員。すなわち一労働者にすぎず、創業オーナー家の岡野兄弟を含む多数の上位者が存在していた。役員などのインタビューによると、故岡野副社長は、麻生氏を営業本部長に取り立ててはいたが、それは営業成績や営業能力に着目したもので、それ以上でもそれ以下でもなかった。 どんなに麻生氏が成績を上げようとも、故岡野副社長は取締役に取り立てる気も、ましてや自分の後継者にする気もなかったのである。 いわば「鉄砲玉」だ』、これは上位者から成る取締役会と、執行役員以下の執行側を明確に区分したコーポレート・ガバナンス上では、ある意味で「先進的」な構造である。しかし、取締役会メンバーである社長や副社長が執行側と切り離されていたのは、やはり問題だった。主要経営陣へのヒアリングもある金融庁の検査で、問題が見過ごされたばかりか、地域金融機関のモデルと推奨した金融庁の責任は重大だ。
・『――経営トップ層は、持株比率や創業家の権力を背景に全体としてのスルガ銀行は完全に支配していたが、他方、現場の営業部門は強力な営業推進力を有する者、しかも従業員クラスに任せ、その者には厳しく営業の数字を上げることを要求し、人事は数字次第となっていた。 一方で経営層自らは執行の現場に深入りせず、幾重もの情報断絶の溝を構築していた。 このような仕組みは、客観的に評価するならば、業績向上のために執行の現場は強力に営業推進する者をトップにして自由にやらせるが、それは経営層が自ら手を汚すのではなく、少々営業部門が逸脱あるいはやり過ぎることにも目をつぶる、という態勢を採ってきたといわれてもしようがない。―(報告書 P231より) とどのつまり退廃的な「王国」は、雲の上で自分に利を運ぶ人を善としたエゴイスト経営陣の産物であり、麻生氏自身もまた「創業家の威光」を後ろ盾にした、下界のエゴイスト。 倫理観や道徳心のかけらはなく、誰もが「自分を守る」ためだけに上司の奴隷となっていったのである』、こんな歪な組織構造では、経営には本来求められる持続性には欠ける筈なのだが、それに気づかなかったエゴイスト経営陣の責任は誠に重大だ。
・『報告書では営業部門が暴走したメカニズムを次のように分析している。 強力な営業推進政策→ 上位者による精神的な圧迫→逸脱行為の組織的な蔓延による規範的障害の欠如/全員共犯化→高業績者の昇進による逸脱行為の更なる促進/正当化認識→高業績による営業部門の増長と管理部門の萎縮 とりわけ私が注目したのが「逸脱行為の組織的な蔓延による規範的障害の欠如/全員共犯化」を加速させた「表彰制度」だ。 スルガ銀行では、故岡野副社長の「頑張った行員は細大漏らさず褒めてあげたい」との思いから、年々表彰項目が増えていったそうだ。 表彰制度が「悪」を正当化する装置に  報告書の別紙に表彰制度項目が並んでいるのだが、A4に5ページ分。店舗や個人を対象に、膨大な項目が並んでいる。 本来、こういった表彰制度は従業員の士気を高め、組織風土をプラスに作用させるリソースである。 しかしながら、エゴイストが権力をもった組織では「悪」を正当化する装置と化した。 表彰されたものたちは、「おかげさまで首都園トップ店となりました」「岡野会長から特別に食事に連れていってもらった。普通ではありえないこと」などと、嬉しそうに周囲に吹聴していたのである。 上からのお墨付きを得れば、悪は善と化す。 いかなる手段であれ、ノルマを達成すれば万事オッケー。パワハラと不正でノルマを達成した人が表彰され、昇進すれば、ますますパワハラは加速する。 「数字至上主義・パワハラ・表彰」の3点セットが、劣悪な組織風土の土台になっていたのだ』、銀行では表彰制度により支店を競わせるのが一般的だが、そこで無理が行われてないかをチェックするのが審査部や人事部など本部の役割だ。チェック機能なしにやったスルガ銀行は、まるで「ブレーキがなくアクセルだけのクルマ」だ。
・『……なんとも恐ろしいことだ。 度々発生しているスポーツ界におけるパワハラでは、自身のスキル向上や勝負に勝つというポジティブな経験が、パワハラを肯定的に捉える傾向を高めることが国内外の調査研究から明かされているが、それと全く同じだ。 「あのとき厳しく言ってくれたのは自分のためだった」「あのとき怒られたことで踏ん張ることができた」と、コーチや監督の恫喝や暴行を自ら肯定し、「パワハラに耐えられなかった人は弱い人」となる。 パワハラに耐える力と結果を出す力は同義ではないのに、結果を出すためにはパワハラが必要と錯覚するのだ。 しかも、人間には「承認欲求」があるため、パワハラに苦しんでいる最中でもそれを正当化させてしまう場合がある。 これまで私のインタビューに協力してくれた方の中には、上司からパワハラを受けていた人が何人もいた。そして、多くの人たちが「パワハラを受けているうちに、“自分が悪いのでは?”という気持ちに苛まれた」と心情を明かしてくれたのだ。 念のため断っておくが、「頑張った行員は細大漏らさず褒めてあげたい」というトップの思い自体は悪いものではない。 が、今回の報告書が明かした「表彰制度」の負の側面は、極めて貴重である。 そもそも「頑張った」とは何を意味するのか? 頑張りとは「数字」「カネ」に絶対的に反映されるものなのか? いかなる制度も、「ナニ」に価値を置くかでプラスにもマイナスにもなる。 故岡野副社長は、「社員教育は時間の無駄、その時間があれば営業させろ、現場で経験を積む中で教育はできる」が持論で、銀行員としての基礎知識やモラルが熟成される時間さえムダと考えていたという。 第三者委員会が故岡野副社長を、「一連の問題の背景となる構図を作り上げた主たる責任者と断定」した上で、「麻生氏は情報の断絶が生じているスルガ銀行の中で、現場に明確な形で介入しない経営陣の下、ひたすら営業に邁進した立場というべきである。したがって、「本件の構図」を作った張本人ではないし、その構図について責任があるとするのは酷であろう(それは経営トップの責任である)」と論じている。 だが、私は「創業家の威光」を背に不可能な数字目標を掲げ、自分に従わない人を切り捨て、何でもありの王国を作り上げた麻生氏には、人道的な責任が多いにあると考えている。 仮に麻生氏が暴走したのが、上からのパワハラによるものだったとしても、だ。 と同時に、麻生氏に成り下がるリスクは誰にでもあるように思う』、その通りだ。
・『絶対的権力による無力化  つまり、これは創業家という絶対的権力による無力化であり、無力化による思考停止だ。 麻生氏は、「いつか雲の上の住民になれる」と期待し、「初の営業からの取締役」を夢みていたのだろうか。 あるいは「しょせん、営業。私たちとは別」と上流階級である経営陣たちに見下される不満を部下たちにぶつけ、社外の人たちから「スルガ銀行の絶対的権力者」と祭り上げられることに酔いしれていたのか。 無論、報告書に答えは記されていない。 しかし、おそらくそういった人の心の複雑さと環境の大切さを、しみじみと何度も妄想することこそが、人を暴走させないために欠かせないことなのかもしれない』、いつもながら説得力に溢れた指摘だ。
・今後、スルガ銀行の借り手への対応、その他銀行でのアパートローンの動向を注目したい。
タグ:第三者委員会 日経ビジネスオンライン シェアハウス 河合 薫 NHKクローズアップ現代+ 金融関連の詐欺的事件 (その6)(追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~、スルガ銀 パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?) 「追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~」 ずさんな経営管理体制が不正を拡大させたと断じる報告書 「優良銀行」とされてきたスルガ銀行 通帳のコピーや契約書などの書類を偽装 不動産業者です。行員に頼まれ、通帳の預金残高を多く見せる偽装を行っていた 広さ4畳の部屋が15あります。しかし、そのうち9つが空室のままです 現在の家賃収入は合わせて月15万円余り。一方、銀行への返済額は64万円。毎月50万円近くの赤字が出ている スルガ銀行では顧客の返済能力を確かめるため、物件価格の1割、1億円の場合は1,000万円、自己資金があるか確認するルールが存在 不正によってルールが骨抜きにされ、ずさんな融資が行われていた 不動産業者「ある程度、改ざんを黙認してもらったり指示してもらったり、お互い(融資の)承認を取りたいという目標に向かって、一緒に動いているような状況でした 銀行も共同正犯 個人向けの投資用不動産融資 新規の融資額全体の8割を占めるまでになりました 営業部門の暴走 ストレッチ目標 ノルマ達成のため、上司から部下へのパワハラが横行 営業部門の暴走を止めるべき審査部門も機能しなくなっていました 3年前、スルガ銀行は投資用のシェアハウスを調査し、入居率が推計5割にとどまっていることを把握 その情報は適切に共有されず、融資の拡大に歯止めをかけられませんでした スマートデイズが破綻。そのことで、個人向けの投資用不動産を巡る不正があらわになったのです 不正の原因 第三者委員会は主に3つ指摘 1つ目、営業現場の暴走 次に、審査の機能不全 3つ目は、ずさんな経営管理体制 第三者委員会 委員長 中村直人弁護士 営業現場の本部長以下が、いい数字を作って、会長、社長、副社長に持っていって、褒めてもらいたい。悪い情報を絶対に持っていってはいけないと自制をしている 経営層は現場の悪いことについて『報告を受けない』『知らない』という形になって、現場側が暴走し始めるという構図 個人の不動産投資熱の高まり 今回の問題を受けて、金融機関は融資に慎重になり始めている 低金利に苦しむ地銀 全国の地方銀行106行のうち54行が昨年度、融資などの本業で赤字 「スルガ銀、パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?」 一時は地銀の「優等生」と称されたスルガ銀行の実態はカネだけを追いかけた組織だった 「雲の上から下界を見ているような人たち」だった経営陣は、「上納金」さえちゃんと収めてくれればモーマンタイ(問題ない) 「下界」では営業担当役員が審査部門の人事に介入するなどやりたい放題 内部通告制度を利用したものはわずか1% 担当者、支店長、執行役員のすべてが「共犯者」であるため、不正通報は裏切り行為と見なされていたのだ 故岡野副社長こそが、営業偏重の人事や過大な営業目標、審査部門の弱体化など一連の問題の背景となる構図を作り上げた主たる責任者と断定 行員たちが受けたパワハラ 創業オーナー家ら多数の上位者が存在 スルガ銀行の執行役員は「雇用型」で、従業員。すなわち一労働者にすぎず、創業オーナー家の岡野兄弟を含む多数の上位者が存在していた 「逸脱行為の組織的な蔓延による規範的障害の欠如/全員共犯化」を加速させた「表彰制度」 パワハラと不正でノルマを達成した人が表彰され、昇進すれば、ますますパワハラは加速 ブレーキがなくアクセルだけのクルマ 創業家という絶対的権力による無力化であり、無力化による思考停止だ
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