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日本の政治情勢(その31)(安倍首相、「祝賀てんこ盛り」で政権浮揚の思惑 夏の参院選は改選過半数の63議席超えも、自民党の「外交青書」批判 何が時代錯誤か 「憂さ晴らし」の場と化す自民党内部の議論、過渡期の日本 アメリカから見た安倍政権とその後) [国内政治]

日本の政治情勢については、4月12日に取上げた。今日は、(その31)(安倍首相、「祝賀てんこ盛り」で政権浮揚の思惑 夏の参院選は改選過半数の63議席超えも、自民党の「外交青書」批判 何が時代錯誤か 「憂さ晴らし」の場と化す自民党内部の議論、過渡期の日本 アメリカから見た安倍政権とその後)である。

先ずは、政治ジャーナリストの泉 宏氏が4月26日付け東洋経済オンラインに寄稿した「安倍首相、「祝賀てんこ盛り」で政権浮揚の思惑 夏の参院選は改選過半数の63議席超えも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/278695
・『令和新時代スタートまで1週間を切る中、統一地方選を終えて欧米での首脳外交にいそしむ安倍晋三首相の表情には余裕と自信がにじんでいる。 統一地方選の焦点となった大阪ダブル(府知事・市長)選と衆院2補選での手痛い敗北も「地域の特殊事情」と見切り、全体では自民党が堅調だったことから夏の参院選に手ごたえを感じているからだ。新元号決定や新紙幣の発表、10連休真っただ中の歴史的な皇位継承行事も、首相サイドが巧妙に設定した政権浮揚戦略の一環とみられている。列島全体での“令和フィーバー”も思惑通りといえそうだ』、「首相サイドが巧妙に設定した政権浮揚戦略」は確かに見事に効を奏しているようだ。
・『自民党の補欠選挙連勝はストップした  参院選の行方を占う統一地方選は、前半戦(4月7日)の焦点である大阪府知事・市長選で大阪維新の会が圧勝。さらに、後半戦(4月21日)の衆院大阪12区、同沖縄3区の両補欠選挙でも、それぞれ維新、野党系候補が勝利し、第2次安倍政権発足前から続いてきた自民党の衆参補選連勝もストップした。 こうした選挙結果について、多くのメデイアは「政権に打撃」「参院選に暗雲」などと書き立て、安倍首相は22日午前、「残念な結果になった。いま一度、身を引き締めなければならない」と殊勝な表情で語った。菅義偉官房長官は同日昼の政府・与党協議会で「首相から指示もあったので、緊張感を持ってやっていく」と述べ、選挙戦の司令塔だった二階俊博自民党幹事長も記者会見で「選挙結果を反省材料に次なる戦いに挑み、勝利で屈辱を晴らしたい」と態勢立て直しへの決意を表明した。 ただ、安倍首相は22日昼前には昭恵夫人を伴って新しい政府専用機でフランスに向けて飛び立った。搭乗時は黒いワンピース姿だった昭恵夫人はフランス到着時には明るいクリーム色のスーツに着替え、首相も空港に出迎えた要人たちと満面の笑みで握手するなど心機一転ぶりが際立った。 統一地方選の最中には塚田一郎国土交通副大臣、桜田義孝五輪担当相が相次いで辞任に追い込まれ、首相の任命責任も厳しく問われた。にもかかわらず、新元号決定以来の内閣支持率は上昇傾向が続いている。安倍首相や政府与党幹部が「危機は一過性」(自民幹部)と余裕を見せるのは、夏までの「巧妙な政治日程づくり」(自民長老)が背景にあるとみられる。 そもそも、歴史的な皇位継承行事を軸とする10連休を設定したのは安倍政権だ。4月30日の天皇退位、翌5月1日の新天皇即位と、令和への改元で国民の間に令和フィーバーを巻き起こし、それまでの政権不祥事などを一気に過去のものしようとの思惑は「今のところ図に当たっている」(自民幹部)のは間違いない。自民幹部も3月下旬に「もし、統一地方選が政権にとって厳しい結果になっても、祝賀ムードで内閣支持率も上がり、後半国会での与野党攻防も主導権を握れる」と自信を示していた。 皇位継承行事以降も、5月25日には新天皇が迎える初の国賓としてアメリカのトランプ大統領が来日する。4日間の滞在中、新天皇との会見や日米首脳会談、さらには大相撲観戦、安倍首相との3度目のゴルフ対決と盛りだくさんの外交行事が予定されている。 6月28、29日には、日本初開催となる主要20カ国・地域(G20)首脳会議を大阪で開かれる。G20にはトランプ大統領ら主要7カ国(G7)首脳に加え、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領も参加予定で、首相は首脳会議の前後に日米、日中、日ロという重要な首脳外交をこなして内外に安倍外交をアピールするとみられる』、トランプ来日でも、難題の貿易問題は参院選後の8月に先送りしたのも、敵ながら「あっぱれ」という他ない。
・『かすむ与野党攻防、薄れる野党の存在感  こうした政治・外交日程は、昨年から首相の意を受けて政府部内で組み立てられたもので、自民党総裁3選後の最大の関門となる参院選に向けて、政権として弾みをつける狙いは明らかだ。令和新時代の祝賀ムードと華やかな首脳外交で盛り上げれば、終盤国会での与野党攻防はかすみ、野党の存在感も薄れるのは確実だ。 その一方で、衆院補選などを除けば統一選全体では自民党が優勢だったことで、政府与党幹部の間でも「これまでの亥年選挙の恐怖は薄れている」(自民選対)のが現状だ。統一選の結果を参院選に当てはめた一部メディアの試算では、自民党は改選過半数の63議席を超える可能性も指摘されており、首相サイドでも「12年前のような参院選惨敗はありえない」(細田派幹部)との安堵感が広がる。 巧妙な日程設定のポイントとなった4月1日の新元号発表も、党内保守派の反発を押さえて首相が決断したとされる。首相サイドの期待通り、「令和」が発表されたとたん、列島は大騒ぎとなり、内閣支持率も上昇した。さらに、令和の額を掲げた菅義偉官房長官は「ポスト安倍の最有力候補」との声も上がるなど一躍、時の人となった。 さらに、首相の盟友の麻生太郎副総理兼財務相が4月9日に発表した新紙幣発行とデザインのお披露目も国民的話題となった。5年後に1万円、5千円、千円の3種類のお札(日本銀行券)と500円硬貨を発行する計画で、紙幣の一新は2004年以来20年ぶりとなる。首相と麻生氏が極秘で進めてきたとされ、麻生氏は「たまたま新元号決定などと重なった」と説明したが、与党内でも「祝賀ムードをさらに盛り上げる材料になった」(閣僚経験者)との声が相次いだ。 10日午後に国立劇場で開催された「天皇陛下即位30年奉祝感謝の集い」も祝賀ムード盛り上げに一役買った。超党派議員連盟と民間有志の共催となっているが、主導したのは首相に近い自民党の保守派議員とされる。映画監督の北野武さんら各界のスターが招かれる一方、野党各党幹部も参加し、「政権浮揚の企画の添え物にされた格好」(立憲民主幹部)だ。首相は祝辞で「国民に常に寄り添ってこられた両陛下のお姿を胸に刻みながら、誇りある日本の輝かしい未来をつくり上げていく」と令和時代も引き続き政権を担う意欲を強調したが、野党からは「祝賀ムードに便乗して、祝賀のてんこ盛りみたいな雰囲気を醸し出そうとしている」(国民民主党の玉木雄一郎代表)など疑問の声が相次いだ。 さらに、その週末の13日午前には、毎年恒例の首相主催「桜を見る会」が新宿御苑で開催された。平成最後となる同会には多数の有名芸能人ら約1万8200人が出席。満開となった八重桜の下であいさつした首相は「平成を名残惜しむか八重桜」「新しき御代ことほぎて八重桜」の2句を得意満面で披露したうえで、新元号の典拠となった「万葉集」の「梅花の歌」にも言及し、「皆さん一人ひとりがそれぞれの花を咲き誇らせることができる、そういう時代を一緒につくっていこう」と参加者に呼びかけた』、「同日選挙」狙いで、衆院の「解散風」を吹かせるという脅しで、野党を震え上がらせているるのも、巧みだ。
・『「やってる感」満載だが「やりすぎ」批判も  ただ、こうした新元号決定以来の一連の行事設定については、政界でも「政権が得意とする『やってる感』満載だが内容は空疎」(首相経験者)との指摘がある。5月下旬以降の外交日程も含めて「なりふり構わない参院選前の政権浮揚戦略は異様」(自民長老)への批判も少なくない。与党内にも「余りやりすぎると国民の反感を買い、参院選での失速にもつながりかねない」(公明幹部)との懸念が広がる。 首相は23日、最初の訪問国のフランスでマクロン大統領と会談した後、イタリア入りし、24日には日伊首脳会談を行うなど精力的に安倍外交を展開している。ただ、今回の欧米歴訪の最大の焦点は日米貿易摩擦がテーマとなる27日の日米首脳会談だ。首相はトランプ大統領との親密な関係を利用して自動車関税などのアメリカ側の要求を跳ね返したい考えだ。 ただ、アメリカ側の厳しい要求に屈するようだと、「巧妙に組み立てた政治外交日程が最後で台無しになる」(自民幹部)との不安も残る。カナダ訪問を経て天皇退位前日の29日の帰国時に、首相が晴れやかな表情で「空飛ぶ官邸」と呼ばれる新専用機から降り立つことができるか、なお予断を許さない』、「政権が得意とする『やってる感』満載だが内容は空疎」とは言い得て妙だ。日米首脳会談では前述のように、「日米貿易摩擦」を巧みに先送りしたことで、『やってる感』をさらに増したようだ。

次に、東洋大学教授の薬師寺 克行氏が5月22日付け東洋経済オンラインに寄稿した「自民党の「外交青書」批判、何が時代錯誤か 「憂さ晴らし」の場と化す自民党内部の議論」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/282463
・『外務省が毎年、発行している書籍に『外交青書』がある。 過去1年間の首脳会談や国際会議などの成果をはじめとする日本外交の記録とともに、国際情勢についての分析も書かれている。同じような書籍を他の官庁では「白書」として発行しているが、外務省だけは1957年の創刊号の表紙が青色だったため「青書」と呼んでいる。世間にはあまりなじみのないものだが、日ごろマスコミにほとんど登場することのない国についても紹介があり、結構便利である。 この『外交青書』が珍しく自民党内で批判にさらされている。「青書」は毎年、発行前に自民党の政務調査会や総務会での了承が慣例となっている。今年も5月初め、自民党の外交部会で2019年版の要旨を説明したが、出席議員から批判が出たのだ』、確かに珍しいことだ。
・『「北方領土は日本に帰属する」を削除  問題になったのは北方領土問題についての記述だった。2018年版には「北方領土問題は日露間の最大の懸案であり、北方四島は日本に帰属するというのが日本の立場」と書かれていた。2019年版では、この部分から「北方四島は日本に帰属する」が削除された。 そこで出席議員から「ロシアから文句を言われ、自発的に日本の基本原則を捨てた」「基本原則は忘れてはいけない」などという批判が相次いだのである。 説明役の外務省幹部は「安倍晋三首相や河野太郎外相の国会答弁などを踏まえて、この書きぶりにした」と応じたが、議員らは納得しなかったようで、後日、岸田文雄政調会長が党の総務会で「今回の対応は納得しうるものではない」「他国に間違った受け止め方をされるおそれもある」などと批判し、外交部会で引き続き議論するよう指示したという。 日ロ間で平和条約に関する交渉が行われる中、確かに北方領土問題に関する安倍首相や河野外相の言動は大きく変わった。かつて日本政府は北方領土について「ソ連が不法に占拠した」「わが国固有の領土である」など強い調子で表現するとともに、旧ソ連やロシアの対応を批判してきた。しかし、日ロ間で平和条約交渉が始まると、安倍首相らのトーンが穏やかなものに変わった。交渉当事者としては自然な対応だろう。 そして、過去1年間の外交を記録するという『外交青書』の趣旨から言えば、首相や外相の発言に沿った内容を記録するのは当然なことでもある。しかし、威勢のいい自民党議員からすると、それが物足りないのである。ロシア側が「日露間の領土問題はない」などと過去の主張を蒸し返しているだけに、日本政府も負けずに強い姿勢で臨めと言いたいのだろう。 過去の『外交青書』を見ると、北方領土問題に関する記述は日ソ(日ロ)関係や国際情勢の変化に合わせて頻繁に変わっている。冷戦時代、日ソ間で首脳会談や外相会談などの人的交流はほとんど行われておらず、書簡のやり取りなどが中心だった』、「自民党の外交部会の出席議員」だけでなく、岸田文雄政調会長までもが、安倍首相ではなく、外務省官僚に矛先を向けるとは、情けない話だ。
・『交渉の進展とともに、記述は抽象的に  1961年の「青書」には、日米安保条約改定を批判するフルシチョフ首相と池田勇人首相との間で数回にわたってやり取りされた書簡の全文が載っており、専門家にとってもなかなか読み応えがある内容となっている。「外交」が成り立っていないため、逆に「青書」で書簡まで公表できた。 ゴルバチョフ書記長(のちに大統領)が登場した冷戦末期あたりから、海部、細川、橋本、小渕、森、小泉首相らと日ロ間の首脳会談が実現し、協議の内容も外交交渉らしくなってきた。それに合わせて「青書」には会談内容の記録などが書かれてきたが、交渉が進めば進むほど公表できる部分が減ってきたことを反映して、記述は抽象的で簡素なものになっていった。それと同時に、強硬論を含めた日本の主張や立場を、いちいち念を押して記述することもなかった。 日本の立場については、2000年代初めのころは、「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結」することと、「日露関係の完全な正常化」「日露間でのさまざまな分野における協力と関係強化」が併記されていた。2005年以降は「日本固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、これにより日露関係を完全に正常化するという一貫した方針を維持」という表現となった。そして、第2次安倍政権以降は2018年版まで、「北方領土問題は日露間の最大の懸案であり、北方四島は日本に帰属するというのが日本の立場」という表現が続いていた。 こうした経緯を見ると、2019年版で「北方四島は日本に帰属する」という部分を削除するというのは確かに大きな変化である。しかし、現在進行中の日ロ間の交渉はまさにこの部分が最大の焦点であり、ラブロフ外相らロシア側が繰り返し日本の主張を批判しているのもこの部分である。 ほかにも2018年版の「四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した基本方針の下、ロシアとの間で精力的に交渉を行っている」という部分は、2019年版の要約版では「領土問題を解決して平和条約を締結すべく、ロシアとの交渉に粘り強く取り組んでいる」と変更されている。 「四島の帰属の問題」という表現を「領土問題」に変えたのも、「北方四島は日本に帰属する」という表現の削除と同じで、ロシア側の反発を買うことを避けるための配慮であることは間違いない』、ただ、「四島」を外すのはともかく、「ロシア側の反発」を理由に「青書」の記載まで変えるというのは違和感を感じる。
・『自民党部会は議員の不満のはけ口に  ただ、北方領土問題に対するロシア側の強硬な姿勢に変化はなく、日ロ交渉が順調に進んでいるとはとてもいえない状況にある。「青書」の表現を穏便なものに変えたからといって、ロシア側の対応が柔軟になることはまったく期待できないだろう。 外務省の幹部は筆者に対し、「ラブロフ外相らロシア政府は、記者会見などの場で日本政府批判や強硬論を繰り返している。しかし、肝心なのはロシアとの交渉で結果を出すことである。外野席の雑音はできるだけ耳に入れないようにしている」と語ってくれたことがある。 私が疑問に思うのは岸田政調会長をはじめとする自民党議員の対応である。政府の重要政策を説明する場でもある自民党の部会には首相や閣僚は出席しない。説明役はもっぱら各省の局長ら幹部だ。部会は議員らが政府の説明に対して、批判したり注文をつける場になっているのだが、しばしば不満のはけ口になっているのだ。 とくに最近の外交部会の荒れようは目を覆いたくなるものがある。日ロ関係だけではない。関係悪化に歯止めのかからない日韓関係についても出席議員から、外務省幹部らに「弱腰外交だ」「どこの国の官僚だ」「韓国とは国交を断絶すべきだ」などという罵詈(ばり)雑言に近い言葉が繰り返し浴びせられている。 日ロや日韓関係をはじめ主要外交政策決定の責任者は外相であり首相である。官僚は「政治主導」の名の下、その指示に従って政策をつくり上げていく。政策に不満があるのなら官僚いじめで満足するのではなく、同じ政治家である首相や外相を相手に議論することが筋であろう。 また追求する場も、非公開の党の部会や総務会ではなく、国会の本会議や予算委員会、外務委員会など公開の場で堂々とやればいい。ところが自民党議員は、審議促進などを理由に国会ではできるだけ質問をしない。その代わりに部会などで官僚にクレームをつける』、「政策に不満があるのなら官僚いじめで満足するのではなく、同じ政治家である首相や外相を相手に議論することが筋」、というのはその通りだ。
・『「族議員」から「官邸主導」へ  この構図は「自社55年体制」時代から半世紀以上にわたってまったく変わっていない。今と異なり、官僚が実質的に政策決定の主導権を握っていた時代には、特定分野に力を持つ「族議員」が各省幹部と協議し、特定団体の要求を押し込むなど不透明な政策決定が行われていた。 時代が変わり族議員という言葉も聞かれなくなり、逆に「安倍一強」「官邸主導」といわれている。主要政策決定過程において官僚機構の力が衰退し、自民党政調の影響力が抑え込まれ、首相や閣僚の力が圧倒的に強くなっている。 にもかかわらず自民党は相変わらず部会を開き、官僚を党の会議に呼びつけて、罵詈雑言を浴びせて憂さを晴らしている。自民党の党内議論が不活発になっているといわれて久しいが、こんなことを続けていたのでは、国会議員の政策力は向上しないであろう』、「官邸主導」のなかで、国会議員の声を如何に吸収していくか、自民党も真剣に考え直すべきなのだろう。

第三に、在米作家の冷泉彰彦氏が4月27日付けのメールマガジンJMMに掲載した「過渡期の日本、アメリカから見た安倍政権とその後」を紹介しよう。
・『2010年代も末となり、2020年代が接近してきた中で、安倍政権は日本の現代史においては珍しいほどの長期政権化してきました。その現状と、その後について考える前に、政権の性格について一つの指摘をしておきたいと思います。 意外に思われる方も多いかもしれませんが、海外、特にアメリカから見れば安倍政権というのは、まぶしいほどの中道左派政権に見えます。トランプが「アメリカ・ファースト」と叫び、英国では破壊衝動のような「BREXIT」への国民投票結果で政府が迷走、欧州大陸では移民排斥の動きが出てきた、そんな2010年代末の現在、安倍政権の日本では、 1)移民受け入れ拡大を決定し実施。 2)ロシアとの領土外交で敵視を弱めた。 3)北朝鮮への敵視もやや弱めつつある。 4)中国との関係を良好に維持し、更に緊密にしようとしている。 5)結果オーライではなかったが、朴政権との日韓合意に踏み込んだ。 6)トランプ政権に対する国益防衛を行いつつ、G6諸国とも関係は良好。 7)経済では緊縮どころか、強い緩和政策と公共投資を継続。 8)減税ではなく増税に舵を取りつつ、財政規律も一応考えている。 9)譲位や元号の事前発表などに反対する右派を抑え込んだ。 というような政策が進められています。そのどれを取っても、中道から中道左派政策であり、2019年の世界では、特に主要国の間では全く実現不可能な内容です(9番目はさておき)。どうして不可能かというと、ネットを含めて世論が感情論に動かされる時代にあって、こうした中道左派的、あるいは国際協調的な政策は世論に押し潰されがちであるからです』、「海外、特にアメリカから見れば安倍政権というのは、まぶしいほどの中道左派政権に見えます」、というのは全く意外だったが、よくよく考えるとそうなのかも知れない。
・『では、どうして安倍政権はそのような政策を推進することが可能なのでしょうか? 2つ理由があると思います。 1つは、安倍総理自身は「保守派」だというイメージが定着しているという問題です。イデオロギー的には保守派であり、知識人ではなく庶民であり、エリートではなく若い時は学業に苦労した人物だということで、保守派の世論から支持を受けています。その安倍政権が実行する政策ですから、保守派からは大きな反対を受けないわけです。 2つ目は、そのイデオロギーの中身です。アメリカのイデオロギー論争といえば、例えば保守派の主張というのは「同性婚や妊娠中絶を違憲にしよう」とか「全国で連射ライフルの携行誇示権をよこせ」、「健康は自己責任だから皆保険制度は潰せ」「不法移民は家族バラバラにして追放せよ」といった、メッセージ性だけでなく、実現すると大変な問題を引き起こす具体的な主張が多いわけです。 つまり、国内に暮らす別のグループの人々の生活や安全を壊すような、つまり左右対立で国内を引き裂くような「危険な」主張が論点です。従って、こうした保守派の主張に対しては、リベラルの側の防戦も切実なものとなります。 ですが、日本の場合はほとんどが「歴史認識」という分野にイデオロギー論争が封じ込まれています。勿論、排外という姿勢もありますが、これも移民への嫌悪というよりも核にあるのは歴史に絡む印象論です。とにかくイデオロギー論争といっても「歴史」の問題で対立を通じた自己表現や自己顕示をしていれば済む、これは保守派だけでなく、左派にも言えることです。 エネルギーの問題も論争の焦点になりますが、これは同じ意見が左右に広がりを持っているために、左右対立の激化要因としては限定的です。 勿論、歴史に関する議論が関係する中で、安倍政権にしても日韓関係だけは、日韓合意がうまくいかなかったなど、結果は出ていないわけですが、それ以外の問題、例えば移民や国際協調外交、あるいは金融緩和政策などで保守派が足を引っ張ることは極めて限られているようです』、確かに「アメリカのイデオロギー論争」に比べれば、「日本の場合はほとんどが「歴史認識」という分野にイデオロギー論争が封じ込まれています」、というのは大筋ではその通りだが、日本でも安全保障の問題には「イデオロギー論争」がまだ強く残っているのではなかろうか。
・『この2つのメカニズムが「2010年代の世界においては奇跡」というべき中道左派政策を実現させているのだと思います。 ちなみに、日本の場合は、野党の方はどうかというと、 1)既得権益を敵視して小さな政府を志向する。 2)強い円を志向して金融緩和に反対。 3)増税にも反対。 ということで、イメージはハト派かもしれませんが、政策的には都市型富裕層の利害代表としてタカ派政策を掲げていると言えます。日本の文脈では左でも、世界的な標準からは極右と言ってもいいでしょう。 ということで、日本では「左右対立がねじれて」いるという全体像がある中で、安倍政権は「イメージは保守」「やっていることは堂々たる中道左派」という矛盾を抱えているわけです。 この矛盾は危険なものなのでしょうか? 政治というのは現実論だという前提でいえば、「安定を実現しているから危険ではない」という指摘ができます』、「日本では「左右対立がねじれて」いるという全体像がある中で、安倍政権は「イメージは保守」「やっていることは堂々たる中道左派」という矛盾を抱えているわけです」との指摘は、意外性があるが、その通りなのかも知れない。
・『一方で、永続性や他の政治家による再現性があるのかというと、それは違うと思います。次に政権を担う政治家は、安倍総理のような芸当はできずに、保守派世論に翻弄されて最善手から外れていくのではないかという不安感がどうしても拭えません。 特に、国際協調派のような言動を続けている人物に限って、反対方向へ国家を引きずる危険性をどうしても感じてしまうのです。 ここへ来て、大阪の首長選や、衆院補選2選挙区など、与党の敗北が続いています。 これに対して「長期政権への飽き」ということが言われています。この点に関しては、「飽きた」とか「長すぎて本人はともかく周囲に腐敗がありそうだ」という感覚で政権をスイッチするというのは、ダイレクトな政権交代ではなくても、自民党内での総裁の辞任と交代を促すという意味では、過去に何度も繰り返されて来ました。 これに加えて、現在の日本の世相に流れているのは、「その次の時代」への不安感という深層心理かもしれません。それが屈折した心情として「長期政権への飽き」という形で析出して来ているのかもしれません。 だとしたら、安倍政権は「怖いからダブル選」とか「怖いから税率据え置き」というような「ブレ」た行動を行って、世論の不安感を煽るのは危険であるように思います。もっと堂々とした姿勢で「参院シングル選挙+税率は10%に予定通り」という姿勢で臨む方がはるかに結果としての「当面の政局」は安定するのではないでしょうか』、なるほど、そうなのかも知れない。
・『そうではあるのですが、やがて政権には終焉の時がやって来ます。それは時間の問題であり、人材ということでも政策ということでも「次」を考えておかねばならない、 そんな時期に来ていると思います。 残念ながら、安倍政権の最大の弱点は、吉田学校や佐藤学校のように、次世代を鍛えるというメカニズムを持たなかったということです。同時に、現在の野党には政策も人材も、代替となる用意はありません。ですから、日本の「次」については、有権者が先にどんどん考えて行くことが必要になっているのだと思います。 その「次の時代」ということですが、次のような論点が必要ではないかと思います。 1)安倍政権ができなかったのは「第3の矢」です。規制緩和により、人材を流動化し、国際労働市場へアクセスすることで、最先端の人材と技術を呼び返して、高付加価値経済の流出に歯止めをかける政策が必要です。 2)国内にリスクマネーがなく、かといって国外からリスクマネーを引っ張るノウハウが足りないことが、経済の衰退に拍車をかけています。国境を超えた資本取引における自由度を更に拡大することで、この問題の解決を探る必要はあると思います。 3)移民流入に伴い、受け皿となる移民の人権保護、受け入れ側の日本人コミュニティの変革などが遅れています。移民政策が時期尚早だなどと反対するのではなく、打つべき手を示してスピード感を見せることが大事ではないでしょうか。 4)移民問題については、なし崩し的に進めれば日本は多言語国家となり、そのコストが移民の効果を相殺してしまいます。一つの中間案として、英語の公用語化を進めて、英語話者の移民を優先して入れるという工夫も一考に値するように思います。 5)地方に関しては、多様性とか先進性、生産性ということでは、東京でも十分に遅れているのに、それより遅れているようでは救われません。反対に、日本全体や東京の遅れに先行して、改革を行う地方が出てくること、それが大切だと思います。改革というのは、GDP、特に一人あたりのGDPをプラスに転じるということです。 6)環境政策に関しては、世論が排出ガスの問題よりも、原子力の平和利用に対する恐怖感に心を奪われている中で、全く進展が見られなくなりました。これを何とか、平常に戻して国際社会と地球全体の問題を協議できる政権が必要です。 7)日米関係ということでは、遅くとも2024年には相当に左派の政権がホワイトハウスに登場する可能性があります。こちらとの協調ということも、視野に入れつつ政策ならびに人材を考え始めないといけないと思います。 人口減や国際競争力低下など、構造的な問題を抱える日本は過渡期に来ています。 現状の安倍政権は、国内での引き裂かれたイメージの一方で、国外からは落ち着いた中道左派政権に見えます。その政局は当面安定させるべきですが、中期的にはその「次」を考えることで、過渡期の日本を考える時期に来ていると思います』、論点のうち違和感があるのは以下の通り。1)の「人材を流動化」には、日本の圧倒的に弱い労組を前提にすると、時期尚早だと思う。「2)国内にリスクマネーがなく、かといって国外からリスクマネーを引っ張るノウハウが足りないことが、経済の衰退に拍車」、はリスクマネーの問題ではなく、経営者が余りにリスク回避型になっていることが問題だと思う。3)移民問題では、移民に頼るべきではなく、女性や高齢者の活用、AIやIOTなどによる省力化投資が基本だと思う。4)は必要ない。6)「世論が排出ガスの問題よりも、原子力の平和利用に対する恐怖感に心を奪われて」というのは、原発事故の原因・責任を明確化しないままで、原発推進に切り替えるのには反対だ。5)、7)はその通りだろう。いずれにしても、アメリカの視点からみた安倍政権への評価には、意外性があって、大いに考えさせられた。
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