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日産ゴーン不正問題(その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題) [司法]

日産ゴーン不正問題については、4月21日に取上げた。今日は、(その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題)である。

先ずは、6月11日付け東洋経済オンライン「ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/284478
・『かつては日本航空などの、最近は東芝の不正会計分析で知られる元公認会計士の会計評論家・細野祐二氏は、現在「犯罪会計学」の研究家を自任する。本書はそのケーススタディーだが、会計とは無縁の冤罪(えんざい)事件に過半が割かれている。村木厚子・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長(後に事務次官)が逮捕された郵便不正事件だ。『会計と犯罪』を書いた会計評論家の細野祐二氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは細野氏の回答)』、検察による冤罪の被害者になった細野氏との対談とは興味深そうだ。
・『キャッツ事件で有罪に  Q:犯罪会計学とは耳慣れない言葉です。 A:オリンパス事件や東芝事件で明らかなように、企業から巨額の金をもらって行う日本の公認会計士監査は機能していない。一方で現行司法は制度疲労が激しく、経済事件に対して有効に機能していない。犯罪会計学は、機能不全に陥る会計監査と経済司法を学際的な研究対象としたものだ。 Q:会計監査とは無関係の郵便不正事件が本書の執筆動機となったそうですが、それはなぜですか。 A:私はキャッツの株価操縦事件に絡み、有価証券虚偽記載罪で2004年に逮捕・起訴された。一貫して容疑を否認し無罪を主張したが最高裁で上告棄却。懲役2年、執行猶予4年の判決が確定し公認会計士の登録を抹消された。 Q:9年前のことですね。 A:キャッツ事件で有罪判決を受けて以降、メディアは会計の分野でも私の話をまともに聴こうとはしなかった。ところが、村木さんが無罪判決を得て、冤罪だったことが判明すると、特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった。これは村木さんのおかげ。だから郵便不正事件はどうしても調べないといけないと思った』、村木さんの無罪判決で、「特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった」、メディアも「現金」なものだ。
・『Q:村木さんは著書『私は負けない』で、無罪判決は6つの幸運に恵まれたからだと書いています。 A:それを読んで私はかちんときた。村木さんは無罪を勝ち得たのだからそれでいいかもしれない。「数々の幸運に恵まれた」と書くのは奥ゆかしくもある。だが、私は有罪判決を食らっている。私は運が悪かった、では納得がいかない。村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった。 村木さんが挙げた6つの運のうち「心身の健康」「安定的経済力」「家族の信頼」「友人等のサポート」の4つは村木さんの個人的優位性であり、これは運とはいわない。「優秀な弁護団」も、村木さんの弁護を受任した弘中惇一郎弁護士の実績は公知のことで、村木さん自身が弘中弁護団を選択しているのだから、これも運ではない。 唯一、運だといえるのは、横田信之裁判長(大阪地方裁判所)という客観証拠を重視する希有な裁判官が担当となったことだ。『私は負けない』によれば、弘中弁護士は当時、「事件が起きた場所は東京で、被告人もほかの関係者も東京周辺にいる人なのだから(公判を)東京地裁に移管すべきだと主張しようと思ったが、評判のいい裁判長だったのでやめた」と語っていたそうだ。 判決文を読む限り、フロッピーディスクの改ざんや(偽の障害者団体代表が村木さんを連れて石井一国会議員を訪ね、厚労省への口利きを頼んだとする日は)石井議員がゴルフをしていて不在だったことが無罪判決の理由となっている。それでも検察官の面前で取られたいわゆる「検面調書」は豊富にあった。客観証拠を重視する横田裁判長が担当しなければ、村木さんは有罪になる可能性があった』、「村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった」ので、独自に調べたというのはさすがに凄い執念だ。
・『弘中弁護士の事務所がリーガルチェック  Q:公判廷では、公判証言よりも検面調書のほうが信憑性は高いとされるのだそうですね。 A:公判証言よりも検面調書を信じるべき状況を「特信状況」という。そして特信状況にあるかどうかを厳格に立証することは、刑事訴訟法が要求していない。「外部的な特別の事情が立証されなくても、特信状況の存在を推知せしめられれば十分である」という最高裁の判例もある。それにもかかわらず、横田裁判長は本件で「刑事訴訟法上の特信状況を客観証拠と整合する範囲に限定して認める」という画期的な判断を示した。 Q:本書は弘中弁護士の法律事務所によるリーガルチェックを受けたそうですね。 A:弘中弁護士は村木さんの事件で無罪判決を勝ち取った当人であり、私はライブドア事件の最高裁審理において会計分析をお手伝いした。それ以来のお付き合いだ。 私は司法教育を受けていない。私の司法論述が「素人の法律論」と揶揄されてはいけないと思い、弘中弁護士に査閲をお願いした。日産ゴーン事件の裁判準備で忙しいにもかかわらず、弘中事務所の査閲を受けることができたのはぜいたくであり僥倖だと思っている』、「特信状況」については、初めて知った。弘中弁護士とは付き合いがあったとはいえ、「事務所がリーガルチェック」してくれたというのは、さすがだ。
・『Q:本書のもう1つのテーマが日産ゴーン事件。人質司法への批判など物議を醸しています。 A:ゴーン元会長の容疑は有価証券報告書虚偽記載と特別背任だ。しかし、どれも犯罪事実が成立しておらず、ゴーン元会長は明らかに無実だ。元会長の役員報酬のうち支払いの蓋然性(probability)の低い報酬を有価証券報告書に記載していなかったが、それは正しい会計処理だ。 発生した費用は支払いの蓋然性が高ければ記載する。これを会計の世界では「発生主義の原則」という。会計士ならば誰でもわかっていることだ。ところがこの会計の基本原則を東京地検特捜部の検事はわかっていない』、信じられないようなお粗末極まる話だ。
・『先物の損だけ取り上げるから変な話に  Q:ゴーン元会長の特別背任容疑についてはどうですか。 A:特別背任容疑についてはサウジアラビアルートとオマーンルートの2つがある。サウジのほうは、リーマンショックの影響により通貨スワップ取引で損が発生。その損を日産に肩代わりさせようとしたというのが発端となっているが、あくまでもリスクヘッジ目的のスワップ取引だ。先物に損が発生したら直物に利益が発生している。全体としてみると損をしていない。その取引を日産に移すことは、損も利益も移すことになる。それなのに先物の損だけを取り上げるから変な話になるのである。 Q:オマーンルートは? A:損失すら発生していないので話にならない。中東日産から流れた資金は借入金として処理されているはずだ。「借金を踏み倒す」と借りた側が明言しているのでもない限り、会計上、損失を計上できない。会計取引には、金銭の貸借である資金取引と、損や利益が発生する損益取引とがある。特捜部はその区別をまったく理解せずに特別背任罪を立件している』、これもお粗末だ。優秀な特捜部であっても、ゴーン元会長をなんとしてでも有罪にしたいとの思いが先走って、肝心の会計面のチェックが抜け落ちたとしか思えない。次の記事は特捜部の内実に迫ったものである。

次に、ジャーナリストの須田 慎一郎氏の著書を6月14日付けJBPressが抜粋・再編集した「泡を食ったフランス政府、ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56661
・『東京地検特捜部は、なぜカルロス・ゴーン氏の逮捕に躍起となったのだろうか? 「時代の空気」を味方につけ、組織の復活を印象づけたいという法務・検察の思惑が見え隠れするが、本事件にはそれだけでは片づけられない複雑な背景があった。日産とルノーの背後で、ゴーン失脚のシナリオを描いた陰のプレイヤーとは? ジャーナリスト、須田慎一郎氏が、日本経済史を揺るがした大事件の裏側を明らかにする。(※)本稿は『なぜカリスマ経営者は「犯罪者」にされたのか?』(須田慎一郎著、イースト・プレス)の一部を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『ゴーン事件と東京地検特捜部  かつて1970年代から2000年代にかけて、東京地検特捜部は「日本最強の捜査機関」という称号をほしいままにしていました。また、特捜部に所属する検事たちも、そのことを強く自負していました。そして、その東京地検特捜部を抱える検察庁も、同部をみずからのアイコンとするかたちで、日本のエスタブリッシュメントのなかにおいて、まさに畏怖される存在となっていたのです。 では、東京地検特捜部の何が「日本最強」だったのでしょうか。その問いに対する答えをひとことでいってしまうなら、「巨悪」に立ち向かうという点で日本では唯一にして絶対の存在、ということになるでしょうか。  その具体例をひとつだけ挙げるとするなら、ロッキード事件捜査にからんで、かつて政治権力の頂点に君臨していた田中角栄元総理をその絶頂期に逮捕・起訴した東京地検特捜部が、その最たるケースだといえます。しかし、現在、その「日本最強の捜査機関」なる金看板は、まさに崩れ落ちそうな様相を呈しているのが実情でしょう。 だからといって、検察サイドがそれをよしとしているわけではありません。むしろ、まさにいま、現在進行形で「日本最強の捜査機関」の復活に向けて躍起になっている最中なのです。そうした一連の動きのなかに日産・ゴーン事件は位置づけられるといえるでしょう。つまり、日産・ゴーン事件は、特捜部復活をかけて挑んだ捜査なのです。したがって絶対に失敗は許されません。 カルロス・ゴーンを何がなんでも有罪に持ち込むことが、特捜部の復活にはどうしても必要不可欠だと検察サイドは考えているようです。とはいえ、ゴーンは果たして「巨悪」でしょうか。 そして仮にゴーンを有罪に持ち込んだとして、国民世論は東京地検特捜部に拍手喝采を送るでしょうか。正直いって、筆者にはどうもそうは思えないのです。いったい、「日本最強の捜査機関」は、どこに向かおうとしているのでしょうか』、手柄とされるロッキード事件捜査も、実際には「田中角栄元総理」の追い落としを図った米国側からの情報提供に支えられていたことが判明している。特捜部も威張れたものではないようだ。
・『「無罪請負人」弘中弁護士の主張  日産・ゴーン事件の本質を理解するうえできわめて重要な動きが2019年4月2日にありました。もっとも、この動きについては、ほとんどのメディアが事実上スルーしているのが実情です。それゆえに、読者のなかにもご存じない方もおられるでしょう。そうした事情を考慮に入れたうえで、ここできちんと振り返っておきます。 その日、ゴーンの弁護人で、「無罪請負人」として知られる弘中惇一郎(ひろなかじゅんいちろう)弁護士が日本外国特派員協会で記者会見を開き、ゴーンとワンセットで金融商品取引法違反の罪に問われた法人としての日産について、両者の裁判を分離するよう、東京地裁に書面で申し立てました。 併せて公判を担当する裁判官の構成も変えるよう求めたというのです。弘中によれば、この申し立ては4月2日の午前に行われたとのことでした。そもそも、この金融商品取引法違反事件に関していえば、被告は以下の三者、ゴーン、ケリー、そして法人としての日産です。 ところが、ゴーン、ケリーと日産では置かれている立場がまったく異なります。180度異なるといっていいでしょう。ゴーンとケリーはこの件に関して全面的に無罪を主張しているのに対し、日産サイドは検察とのあいだで「司法取引」に応じ、その罪を全面的に認めているからです。 弘中は前述の記者会見の席上、こう説明してみせました。 「(法人としての)日産は検察官と一体となってゴーン元会長を追及してきた。にもかかわらず、一緒の席で審理を受けるのは公正な裁判に反する」』、なるほど。
・『地検サイドの狙いは?  つまり、日産サイドは検察側のストーリーに完全に乗るかたちで捜査に協力し、調書を作成していることは間違いありません。その一方で、ゴーンとケリーはまったく逆の立場にいるわけです。利害関係が完全に対立する三者が、公判では同じ被告人席に座るのです。法廷での証言は、ゴーン、ケリーと日産では正反対のものとなるでしょう。 こうした状況を踏まえ、弘中はゴーン、ケリーと日産の刑事裁判を分離せずに併合したまま審理を進めたなら「フェアトライアル(公正な審理)」に反するとしたのです。これはきわめて重要な指摘であると同時に、検察側にとってはきわめて痛い指摘だったといっていいでしょう。 なぜなら、筆者が検察関係者から聞きおよんだところによれば、地検サイドは意識的にゴーン、ケリー、そして日産をひとつの起訴状での起訴に持ち込み、同じ裁判体(個別・具体的な訴訟事件について判断する裁判官から構成される訴訟法上の裁判所を指す)での審理となるように仕向けたからです。 そして裁判所は、そうした検察側の思惑を知ってか知らずか、分離せずに裁判を行うという判断を下したのです。さらに、そのことに関連して、5月に入ってきわめて興味深い事実が明らかになりました』、この裁判の分離については、第三の郷原氏の記事の方が詳しく、信頼性も高そうだ。
・『地検と西川社長との「司法取引」  その“事実”とは、前述の金融商品取引法違反事件に関連して、都内に住む男性が日産の西川廣人(さいかわひろと)社長を同罪で刑事告発していたことの結論が出たことを指します。 結論から先にいえば、東京地検特捜部はこれを4月26日付で不起訴にしました。そもそも事実関係をいうならば、ゴーンが起訴された報酬過少記載のうち、西川は2016年度分と2017年度分の報酬支払い文書にサインしていたのです。 だとすれば、西川もゴーンと共犯関係にあるはずだ、というのが告発者の主張です。筆者としても、そうした告発者の主張についてはもっともだと考えます。仮にこの件に関してゴーンの犯罪が問われるのであれば、少なくとも形式的には西川の共犯性は濃厚だといえるでしょう。 にもかかわらず、東京地検特捜部はそれをいっさい不問に付したのです。その一方で、西川は東京地検特捜部の捜査に全面的に協力しているのです。 このことを考えて、東京地検特捜部と西川とのあいだには事実上の「司法取引」が成立していたと見られています。果たして、こんな状況下で「フェアトライアル」が保障されているといえるでしょうか。はなはだ疑問です。いずれにしても、東京地検特捜部が法の精神を無視し、ありとあらゆる手を使ってでもゴーンを有罪にしようとしているのは明らかです』、最後の部分はその通りだろう。
・『つくられた事件、意外な登場人物  この物語の主人公は東京地検特捜部、それに対立する存在として完全無罪を主張する悪者ゴーンと、彼を守る「無罪請負人」の弘中弁護士がいます。その間に立つ日産自動車の西川社長がいて、さらにほかにも登場人物がいます。それが日本政府です。 最終的に今回の事件の背景にいたのは、経済産業省および官邸だったのではないかという観測が広がっています。 なぜ、官邸かというと、1つ目は、永田町内での次期検事総長の人事をめぐる法務・検察との対立があります。2つ目は、ルノーによる日産吸収をよしとしない経産省が弓を引かせて日産から検察にリークさせたというものです。 まず前者について考えてみましょう。検事総長はまぎれもなく法務・検察のトップで、誰がその座につくかで検察のあり方が決まります。9割方は東京高検検事長になった人物がそのまま検事総長につくという不文律があります。 いまの東京高検検事長は官邸ベッタリといわれている黒川弘務(くろかわひろむ)です。そんな黒川を次の検事総長に据えるべきではないとする動きが法務・検察のなかにはありました。みんな公平な立場で検事総長の座を待っているわけではなく、そこにたどり着くまでのルートがあり、その前の段階から出世をめぐる暗闘があるのです。 2019年1月8日付で法務・検察の一連の人事が発表されました。このとき、東京高検検事長には黒川弘務がつきました。東京高検検事長は法務・検察のトップである検事総長の一歩手前の役職です。東京高検検事長の経験者の8人中7人が検事総長になっています。法務・検察でナンバーツーの存在です。 そんな黒川検事長が次の検事総長の最右翼と見られていますが、そうはすんなりいきそうにない状況もあります。さかのぼって2018年1月9日付で名古屋高検検事長に就任していた林真琴(はやしまこと)という人物の存在があるからです。』、法務・検察内での権力争いとは、ありそうな話だ。
・『次期検事総長は、黒川か?林か?  じつは林と黒川は因縁のライバル関係にあり、おそらく次の検事総長ポストを争うでしょう。黒川は政権与党に近いと見られている人物である一方で、林は法務・検察のエースといわれています。 各省庁において課長、部長、局長を経て次のトップポストである事務次官になるべき人間だと期待がかけられ、同期トップとして出世していく。これが官僚の世界では一般的です。それにあたるのが林でしたが、なぜ、東京高検検事長に任命されなかったのでしょう じつは、黒川のほうは「郵便不正事件」の証拠であるフロッピーディスクの内容を改竄した事件、「大阪地検特捜部主任検事証拠改竄事件」の不祥事が起こった直後、2011年から法務省官房長を5年も務めています。法務省官房長は国会対応のトップという立場です。このあいだ、法務・検察が厳しい状況に置かれたときに政権与党とのパイプ役としてロビイング活動をしてきました。 そのため、政権与党との関係が非常に深いといわれているのです。黒川は共謀罪や入国管理法改正など野党の根強い反対がある一方で、法務・検察サイドからすれば使い勝手がよく強力な武器になるような法案の整備に向けて尽力しました。 一方、ライバルの林は将来の検事総長のエリートコースを歩んできました。役所のなかの期待の星であり、ある種、予定調和的に「林が将来の法務・検察を引っ張っていく」という役人らの価値観のなかから生まれてきた人間でもあります』、官邸の力がこれまで以上に強くなっていることからすれば、黒川氏の方が優位な気がする。
・『官邸と法務・検察、それぞれの思惑  役所側からすると林は将来の検事総長ですから、そのステップをきちんと踏ませたいため、林の事務次官就任を希望していました。しかし、黒川が政権与党の覚えがめでたくなり、「こういう人間が法務・検察の中枢にいれば、われわれも何かとやりやすい」という官邸サイドの強い押しもあって、事務次官というポストにつきました。 事務次官の次が東京高検検事長、そして検事総長と続くため、事務次官に黒川がつくと出世すごろくの流れが狂ってしまいます。ここにひとつ、検察と官邸との軋轢(あつれき)が生まれました。 法務・検察の主流派としては、林真琴が検事総長になるべきだという主張が根強いです。なぜなら一定の独立性を維持するためです。加えて法務・検察の人事という聖域に、政治が内閣人事局を通じて手を突っ込むのはけしからんという役人特有の考えもあります。 その点でいうと、なぜ、わざわざ政権与党を利するような日産・ゴーン事件に着手したのかが疑問です。たとえば検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方もあるでしょう。それくらい法務・検察は検事総長人事をめぐって官邸とすごい緊張関係にあるのです』、「検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方」、には驚かされた。
・『ゴーン事件の裏にちらつく経産省の影  次に経産省が弓を引かせて日産が検察にリークしたという2つ目の根拠についても考えてみましょう。 特捜部があえて日産自動車の下請になった理由について考えると、内閣総理大臣秘書官で経産省出身の今井尚哉(いまいたかや)の存在が思い浮かびます。今井は安倍総理の遠い親戚です。官邸秘書官は財務省、外務省、経産省、警察庁から来るのが不文律となっていますが、そのなかでも内閣総理大臣秘書官はまた別格とされています。 経産省は、日産自動車が完全にフランスの会社となってしまうのは、よしとしません。そこで経営統合をひっくり返すために事件をしかけた。本来ならゴーンの報酬の件で了承し、サインまでしていた西川社長も同罪に問われるはずなのですが、司法取引の対象となって、いまのところなんら罪に問われていません。 日本の大手企業は人事報酬委員会という制度があり、3割から4割が導入しているとされています。人事報酬委員会とは、経営トップが報酬や人事などについて自分で自分のことを決めるのは透明性が低いため、委員会の委員に決めてもらおうというものです。 また、監査委員会設置会社というものもあります。これは監査役が報酬や人事を検査するというものです。これらは会社のガバナンスがきちんと機能しているかどうかの評価基準にもなります。 日産自動車には人事報酬委員会がなく、監査委員会である程度チェックしたうえで最終的に代表権がついている人が決裁するかたちになっています。日産自動車においてはそれがゴーンとケリーと西川の3名になるのです。 ゴーンは自分のことを自分で決め、それを了承したことでケリーも逮捕された。しかし、西川は逮捕されなかった。なぜなら、司法取引があったから、というのがエクスキューズになっています。 今回の事件の端緒はなんだったのか。日産内のクーデター。もちろんそういう側面もあるでしょう。ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す。これなら比較的ありがちでシンプルなストーリーです。 「西川はゴーンの茶坊主で何も決められない」なんてことを話すジャーナリストもいますが、本当にそうだとしたら、そんな人物が事件の先頭に立てるのでしょうか。または日産の独立派の役員につめ寄られて反ゴーンになびいたとも考えられなくもないですが、そんなに小さな話なのでしょうか』、「ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す」、というのは確かにありそうな話だ。
・『慌てるフランス政府、冷静な日本政府  この事件の大きな背景には世界的な自動車業界の再編がありました。自動運転つき自動車や電気自動車の開発が進んでいますが、これには莫大な投資が必要になります。ものすごく技術開発費が必要ですから、ルノーも日産自動車も自社開発だけでは厳しい。 しかもフランスでは2040年にはハイブリッドを含むガソリン車を販売してはいけないという法律が成立しています。つまり、100パーセント電気自動車でなければならないのです。パーキングメーターのようなかたちをした路上のプラグイン充電器などといったインフラも整備されてきましたが、まだ一気に電気自動車化されるわけではありません。 また、規模の利益という面からいっても協力は不可欠です。「ルノー・日産・三菱アライアンス」は車の販売台数では世界第2位ですが、経営がバラバラになれば3位以下に転落してしまいます。そうなると電気自動車を、ルノー・日産・三菱アライアンス基準で統一できなくなるでしょう。 世界で戦うにはある程度のマーケットシェアが必要なため、アライアンスをつなぎ止めておかなければ将来を展望できません。ルノーは43パーセントの日産自動車の株を持っていますから、資本関係上は日産自動がルノーの連結子会社となっています。ただ、3社のアライアンスというかたちで「ルノー日産BV」という統括会社の本社をオランダに置き、その会長をゴーンが務めていました。 ここは日産自動車とルノーが折半出資しています。本来ならそうではなく、そこを持ち株会社にして、その傘下にルノーも日産自動車も入るべきでした。「ゴーンの個人的な影響力によって統括会社を持ち株会社のようにしてアライアンスを保っていましたが、ゴーンがいなくなれば果たしてどうなるでしょうか』、その後、ルノーとの関連では新な動きもあるので、ここでは触れない。
・『日本政府の不気味な冷静さ  いずれにせよ、自動車は日本経済を支える重要な産業です。そのため、アライアンスというかたちでの戦略的提携ならまだしも、ルノーにすべて吸収されるとなると話が変わってきます。日本を代表する大手企業をみすみす手放してしまえば経産省にとって大きな痛手になるでしょうし、アベノミクスを標榜する安倍政権にとっても悪影響をおよぼします。 そこで今井秘書官を中心に官邸、経産省が裏で西川を動かしたのではないかという観測が出てきたというわけです。 その証拠に、事件化したときに少なくとも日本政府はあたふたしませんでした。巨大企業に東京地検特捜部の手が入ったにもかかわらず、ある意味で冷静な対応をしていたのが不思議です。まるで事前にスケジュールがわかっていたかのようでした。 一方のフランス政府はかなりあたふたしており、まさに寝耳に水の状態でした。この差はいったいなんなのでしょうか。少なくとも捜査当局の動きは官邸や経産省サイドの耳にはある程度入っていたのではないか。逆にフランスサイドには何も入っていなかった。情報の偏差があったのでしょう。 自動車産業をめぐる日仏の綱引き。そこに官邸や経産省が介入していく余地があった。 こう考えるほうがスムーズなのです。結果として特捜部の日産・ゴーン事件の捜査は官邸の意向に沿うかたちで行われていますが、筆者は「たまたま両者の利害が一致しただけ」だと見ています。 日産自動車を国益の観点から守りたいという官邸側の思惑、そして平成最後に完全復活の道筋をつけたいという検察側の思惑が、たまたまいいタイミングで交錯したのでしょう。そんななか、この事件を通じていったい誰がいちばん得をするのか。それは結果が出てみないとわかりません』、検察側が敗訴するようなことになれば、検察側のダメージは途方もなく深刻なものになるだろうが、ルノーとの関係は既に決着済になっている可能性もあるだろう。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が5月9日付け同氏のブログに掲載した「「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく、司法取引の問題」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/05/09/%E3%80%8C%E6%97%A5%E7%94%A3%E5%85%AC%E5%88%A4%E5%88%86%E9%9B%A2%E3%81%9B%E3%81%9A%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%81%E6%B3%95%E4%BA%BA%E5%87%A6%E7%BD%B0%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA/
・『カルロス・ゴーン氏、グレッグ・ケリー氏と、法人としての日産自動車が併合起訴された金融商品取引法違反の事件について、平成最後の平日の4月26日夕刻から東京地裁で行われた裁判官・検察官・弁護人の「三者打合せ」の場で、裁判所は、公訴事実を全面的に認める日産の公判と全面否認するゴーン氏らの公判と分離せず、日産についてもゴーン氏らと共通の証拠で事実認定する方針を示した。このことによって、検察は「ゴーン氏無罪判決阻止の最後の拠り所」だった「日産の法人事件の早期有罪決着」という「策略」が打ち砕かれることになり、日産も、公訴事実を全面的に認めているのに、ゴーン氏・ケリー氏と検察との全面対立が繰り広げられる公判に巻き込まれることになった。それが、検察にとっても日産にとっても「衝撃」であること、そして、日本の刑事司法の“激変”をも予感させる出来事であることを、平成の最後の日の記事【「日産公判分離せず」が検察と日産に与えた“衝撃”~令和の時代に向けて日本の刑事司法“激変”の予兆】で述べた』、公判分離は弁護側が求めていたもので、裁判所がそれを認めなかったということは、検察に有利と思っていたが、郷原氏の見方は真逆のようだ。
・『10連休も終わり、令和時代の日本が本格的に動き出したが、今のところ、日産・ゴーン氏事件が話題に上ることはほとんどなく、改元とともに、平成最後の重大問題だったはずのこの事件が世の中の関心から遠ざかっているように思える。 しかし、ゴーン氏逮捕の背景に、日産とルノーの経営統合の問題があり、そこに経産省など日本政府も関わっていたこと、日本を代表する自動車会社の一つである日産が社会的にも極めて重要であるからこそ、今回のゴーン氏の事件が発生したことは、もはや否定し難い事実となっている。その日産が、今回の裁判所の方針決定により、ゴーン氏らとともに、法人として刑事裁判の被告席に立たされ続けることが、同社の経営や経営体制に重大な影響を生じることは避けられない。6月末に開かれる日産の定時株主総会に向けて、ルノーなどの動きにもつながる可能性もある。 それに加え、この事件の今後の展開によって、今回の事件での検察の動きの原動力ともなった「日本版司法取引」の今後に、そして、日本における法人処罰の運用にも大きな影響を与えかねない。今回の裁判所の方針決定が、どのような趣旨で、どのような理由によって行われたのか、「司法取引」と「法人処罰」の関係から解説することとしたい』、興味深そうだ。
・『裁判所の方針決定は「法人処罰」特有のものなのか  「日産公判分離せず」の方針が決まったことを伝える記事のうち、産経は 関係者によると、裁判官は「日産の法的責任は代表取締役だったゴーン、ケリー両被告の行動によるので、別々に判断するのは適切ではない。」として分離しないと決めた。 と報じ(【ゴーン被告公判、分離せず 9月撤回、年明けも】)、朝日は、下津裁判長は、「司法取引が本格的に争点になる、初めての事件。証人の証言の信用性は慎重に判断したい」と発言。「日産の法的責任は2人の被告について判断しないうちは決められない。」と述べた と報じている(【ゴーン前会長の公判、日産と分離せず審理へ 時期は未定】)。 これらの記事によると、裁判所の方針決定の理由は、(1)法人としての日産の刑事責任は、ゴーン氏ら行為者についての事実認定と切り離して判断できない (2)司法取引に関する問題が裁判の争点になるので、証人の証言の信用性について慎重な判断が必要 ということになる』、なるほど。
・『「日産公判分離せず」の判断は「法人処罰の問題」によるものではない  仮に、日産の公判が分離されなかった主たる理由が(1)で、それが「法人処罰は行為者個人の処罰に従属するもので、行為者と切り離して独立して処罰の判断をすべきではない」という趣旨だとすれば、今回の方針決定は、「法人処罰特有の問題」と見ることができるということになる。その場合は、影響は法人処罰の事例だけに限られるし、弁護側が指摘した「フェアトライアルの問題」との関係もあまり大きくないということになる。検察としては、今回の裁判所の方針決定に関して、このような理由を強調したいところであろう。 しかし、それは、確立された判例に基づく法人処罰の「理論」に反する。しかも、最近の実務の傾向は、法人を独立して処罰の対象とする傾向を強めており、それを主導してきたのは法務・検察である。「法人処罰は行為者個人の処罰に付随するので独立して処罰の対象とはならない」などと今更言えるわけがない。 日本の法人処罰は、特別法の罰則の中に設けられている「両罰規定」の、「行為者を罰するほか、法人に対しても本条の罰金刑を科する」という規定に基づいて行われる。「行為者について犯罪が成立し、その犯罪について、法人側に選任監督上の過失がある場合に法人が処罰される」というのが確立された判例であり、訴訟手続上も、「被告会社」として、公判に出廷する義務があり(通常は法人の代表者が公判に出廷する)、被告人である行為者とは独立した立場で訴訟活動を行う。被告法人の公訴事実の認否は、行為者たる被告人の認否とは別に行われ、行為者の「犯罪の成否」についても、「選任監督上の過失の存否」についても、争うことができる。 したがって、行為者たる被告人が公訴事実を全面的に否認し、被告会社の方は全面的に公訴事実を認めている場合に、被告会社の公判を行為者の公判とは切り離して、被告会社に有罪判決を出すことは十分に可能なのだ』、さすが説得力溢れる分析だ。
・『「法人処罰」に関する最近の状況変化  もっとも、法人処罰が行為者処罰とは独立したものであるという考え方は、あくまで、「法人処罰に関する刑法上の理論」であり、古くから日本で行われてきた法人処罰の実際の運用は、必ずしもそうではなかった。日本での法人処罰は、法人の役職員個人が行為者として処罰される場合に「付随的」に行われるものに過ぎず、法人に対する罰金の上限も、昔は個人の上限と同じ500万円程度だった。90年代から、独禁法等でようやく「行為者個人と法人との罰金額の上限の切り離し」が行われ、数億円への引き上げが進められていったが、それでも、外為法の10億円が最高であり、法人に対して数百億円、時には数千億円もの罰金が科されることもある米国などとは大きく異なる。しかし、そのような日本における法人処罰の実務は、最近になって大きく変わりつつある。 2015年3月に発覚した「東洋ゴムの免震装置データ改竄事件」では、同年7月、東洋ゴム子会社の法人のみを起訴し、役員ら10人は起訴猶予となり、法人に対しては、罰金1000万円の有罪判決が言い渡されて確定した。 2017年の電通違法残業事件で、東京地検は、過労自殺した新入社員の当時の上司ら3人の労働基準法違反を認定したうえで、不起訴処分(起訴猶予)とし、法人としての電通を同法違反罪で略式起訴した。電通については、代表取締役社長が被告会社代表者として出廷して裁判が開かれ、罰金刑が言い渡されて確定した。 これらの事案は、いずれも、行為者が処罰されず、法人だけが処罰された例である。 そして、2016年5月に成立した刑訴法改正で日本版司法取引が導入されたことによって、法務・検察が、法人処罰を独立のものとして取り扱う傾向を強めてきた。法務省側は、法案審議の過程で、「法人」にとって、その「役職員」の刑事事件は「他人の刑事事件」であり、法人自体も司法取引の対象となることを明確に説明してきた。 そして、2018年に改正法が施行され、日本版司法取引の初適用事案となった「三菱日立パワーシステムズ」の外国公務員贈賄事件では、同社と東京地検特捜部との間で、法人の刑事責任を免れる見返りに、不正に関与した社員への捜査に協力する司法取引(協議・合意)が成立し、社内調査によって捜査に協力した法人は処罰を免れ、役職員のみが起訴され、有罪となった。この事例では、法人が自社の事業に関して発生した犯罪について積極的に内部調査を行って事実を明らかにし、その結果に基づいて捜査当局に協力することが法人の責任を軽減するものと評価されたのであり、まさに法人の行為を独立して評価する方向の運用の典型と言える(【「日本版司法取引初適用事例」への“2つの違和感” ~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性】)。 このように、法務・検察主導で、法人処罰を行為者処罰から独立したものとして取り扱おうとする傾向は、司法取引の導入もあって、もはや不可逆的なものとなっており、徐々にではあるが日本の社会にも浸透しつつある。 そのような法人処罰の運用を前提にすれば、ゴーン氏・ケリー氏を行為者として、日産自動車が法人起訴されている今回の事件では、法人としての日産は、ゴーン氏らとは独立した立場の「被告会社」であり、被告人と同様の権利が与えられ、訴訟活動を行うことができることは明らかだ。日産が第1回公判で公訴事実を全面的に認め、ゴーン氏・ケリー氏が否認した場合には、公判を分離し、日産の公判では検察官請求証拠が「同意書証」として採用されて、早期に有罪判決が言い渡されるというのが、従来の刑事裁判実務から想定される「当然の対応」であった。ところが、裁判所は、その「当然の対応」を行わないことにした。それは、「法人処罰と行為者処罰の関係」で説明することはできないのであり、やはり、上記(2)の「司法取引」をめぐる問題が主たる理由であることは明らかだ』、豊富な判例を参照しながらの説明はさすがだ。
・『「日産公判分離せず」の方針と司法取引をめぐる問題  本件は、初適用となった上記の三菱日立パワーシステムズの事件に続いて2例目の日本版司法取引の適用事件である。日本版司法取引の導入に関する刑訴法改正案の国会審議の過程で、司法取引による供述には、自己の処罰が軽減されることを目的として、他人を引き込むための虚偽供述が行われる危険性があることが問題にされ、様々な議論が行われた。私も、国会審議の過程で、参考人意見陳述において、この問題を指摘した(平成27年7月1日衆議院法務委員会)。 本件の金商法違反の件で検察と司法取引を行ったとされているのは、ゴーン氏の秘書室長を務めていた人物であり、この秘書室長の供述について、一般的な意味の虚偽供述のおそれが問題になるのは当然だが、本件をめぐる司法取引の問題は、その秘書室長の供述だけの単純な問題ではない。 そもそも、事件の発端は、日産が社内調査の結果を検察に提供したことにあり、その後、日産は、検察と「二人三脚」のような関係で全面的に協力し、検察官立証のための証拠を共同して作り上げてきた。前記の三菱日立パワーシステムズの前例からすれば、その法人としての日産も、検察との司法取引により法人起訴を免れていてもおかしくないが、なぜか法人起訴されている(それが、日産についての有罪判決確定で、ゴーン氏らの無罪判決を阻止しようとする検察の策略である可能性については【検察の「日産併合起訴」は、ゴーン氏無罪判決阻止の“策略”か】)。 また、日産の西川社長は、「ゴーン氏の退任後の役員報酬の支払の合意」についての文書に署名しているとされている上、直近2年分については、CEO社長として有価証券報告書を作成提出したものであり、本来虚偽記載の第一的責任を負う立場にあるにもかかわらず、刑事立件すらされていない。そこには、西川氏と検察との「ヤミ司法取引」の疑いがある(【ゴーン氏「直近3年分再逮捕」なら“西川社長逮捕”は避けられない ~検察捜査「崩壊」の可能性も】)。 下津裁判長が「司法取引が本格的に争点になる」と言っているのは、上記のような、本件における日産と検察との関係全体が「司法取引」的であることを意味しているものと考えられる。日産と検察の「合作」のような形で作られた証拠によって、法人としての日産の犯罪を立証すること自体に問題がある。また、西川氏が起訴されないまま、ゴーン氏らだけが起訴されていることも重大な問題とならざるを得ない。このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう。まさに、弘中弁護士が、4月2日の記者会見で指摘した「フェアトライアルの観点」からの判断だと言える』、「このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう」、との裁判所判断の推測は誠に見事だ。
・『「最大の武器」を失った特捜検察  従来の刑事裁判では、被告人が公判で公訴事実を認めると、検察官請求の書証がすべて採用されて裁判がすぐに終わり、判決が出るというのが原則だった。最近では、裁判員裁判では、書証によらず証人尋問で事実認定が行われることが多くなり、裁判員裁判ではない事件でもそのような傾向が徐々に広がりつつあるようだ。 しかし、特捜事件では、「人質司法」に加えて、以下のような構図があったために、被告人がいくら争っても有罪判決を免れられなかった。 自白しない限り身柄拘束が続くという「人質司法」のプレッシャーによって、共犯とされた者のうち少なくとも一人が自白し、公判で公訴事実を認めれば、検察官調書どおりの事実認定で有罪判決が出される。その判決を出したのと同じ裁判官が、同じ事件について他の被告人に無罪判決を出すことは、まずない。別の裁判官であれば、無罪判決が出ることもあり得るが、その場合は、検察官が必ず控訴するし、殆どの場合、控訴審で逆転有罪判決が出され、司法判断の統一性が図られる。その結果、特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった。 今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる。 こうして、「検察の正義」の象徴であった特捜部の事件における「検察中心の刑事司法」の構造は、音を立てて崩れようとしている。それは、無理筋の事件で強引にゴーン氏・ケリー氏を逮捕したことの結果であり、この事件での勾留延長請求却下、早期保釈決定、そして、今回の「日産公判分離せず」という裁判所の判断は、本来、あるべき裁判所の姿勢が示されたに過ぎない。しかし、「検察幹部」は、未だに、今回の事件が海外から注目を集めたことで、裁判所が「外圧」に屈したという、身勝手な反発をしていると報じられている。検察幹部にとっては、今回の事態を客観的に受け止めることができないようだ。 このような「検察幹部」が、今回の「日産公判分離せず」の裁判所の方針決定を、「フェアトライアルの観点」と切り離すために、無理やり「法人処罰」の問題に関連付けようとすることも考えられなくはない。しかし、そのような受け止め方は、せっかく、司法取引導入とともに進展しつつあった日本の法人処罰の活性化の流れに水を差すことになりかねない。それによって、法務・検察が、組織を挙げて実現させた「日本版司法取引」の企業社会への浸透も阻害することになりかねない。 日産・ゴーン氏事件の今後の展開が、日本の刑事司法の在り方そのものに重大な影響を生じることは避け難い。法務・検察当局は、その事態を正面から受け止めるべきだ。「司法取引」と「法人処罰」の複雑な関係を念頭に置きつつ、今後の公判に向けての動きを注視していく必要がある』、「特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった」、「今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる」、繰り返しになるが、説得力に溢れた分析という他ない。今後の展開がますます楽しみになってきた。
タグ:東洋経済オンライン 細野祐二 郷原信郎 JBPRESS 同氏のブログ 日産ゴーン不正問題 須田 慎一郎 (その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題) 「ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く」 「犯罪会計学」の研究家 『会計と犯罪』 キャッツ事件で有罪に 村木さんが無罪判決を得て、冤罪だったことが判明すると、特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった 村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった 村木さんが挙げた6つの運のうち「心身の健康」「安定的経済力」「家族の信頼」「友人等のサポート」の4つは村木さんの個人的優位性であり、これは運とはいわない 「優秀な弁護団」も 運ではない 唯一、運だといえるのは、横田信之裁判長(大阪地方裁判所)という客観証拠を重視する希有な裁判官が担当となったこと 弘中弁護士の事務所がリーガルチェック ゴーン元会長の容疑は有価証券報告書虚偽記載と特別背任だ。しかし、どれも犯罪事実が成立しておらず、ゴーン元会長は明らかに無実だ 元会長の役員報酬のうち支払いの蓋然性(probability)の低い報酬を有価証券報告書に記載していなかったが、それは正しい会計処理だ 「発生主義の原則」 この会計の基本原則を東京地検特捜部の検事はわかっていない 先物の損だけ取り上げるから変な話に 「泡を食ったフランス政府、ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった」 『なぜカリスマ経営者は「犯罪者」にされたのか?』(須田慎一郎著、イースト・プレス) ゴーン事件と東京地検特捜部 「巨悪」に立ち向かうという点で日本では唯一にして絶対の存在、ということになる ロッキード事件捜査 「無罪請負人」弘中弁護士の主張 地検サイドの狙いは? 地検と西川社長との「司法取引」 つくられた事件、意外な登場人物 事件の背景にいたのは、経済産業省および官邸 次期検事総長は、黒川か?林か? 官邸と法務・検察、それぞれの思惑 検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方もある ゴーン事件の裏にちらつく経産省の影 ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す 慌てるフランス政府、冷静な日本政府 日本政府の不気味な冷静さ 「「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく、司法取引の問題」 裁判所の方針決定は「法人処罰」特有のものなのか 「日産公判分離せず」の判断は「法人処罰の問題」によるものではない 「法人処罰」に関する最近の状況変化 「日産公判分離せず」の方針と司法取引をめぐる問題 本件における日産と検察との関係全体が「司法取引」的であることを意味しているものと考えられる。日産と検察の「合作」のような形で作られた証拠によって、法人としての日産の犯罪を立証すること自体に問題がある。また、西川氏が起訴されないまま、ゴーン氏らだけが起訴されていることも重大な問題とならざるを得ない このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう 「最大の武器」を失った特捜検察 特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった 今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる
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