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香港(その1)(香港大規模デモ 火種となった「引き渡し条例」とは何か、1国2制度てこにした台湾統一しぼむ 香港への寛容不要に、香港の混乱が中国のアキレス腱になりうる理由 国際金融センターで何が起きているのか) [世界情勢]

本日は、香港(その1)(香港大規模デモ 火種となった「引き渡し条例」とは何か、1国2制度てこにした台湾統一しぼむ 香港への寛容不要に、香港の混乱が中国のアキレス腱になりうる理由 国際金融センターで何が起きているのか)を取上げよう。

先ずは、6月10日付けロイター「香港大規模デモ、火種となった「引き渡し条例」とは何か」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/hongkong-politics-extradition-idJPKCN1TB0Q2
・『中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模デモが香港で9日行われた。主催者発表によれば103万人が参加し、2003年の「国家安全条例」案に反対した50万人規模のデモを大きく上回った。 今回の改正案が成立すれば、香港住人だけでなく、香港に住んだり渡航した外国人や中国人までもが、中国側からの要請があれば本土に引き渡されることになる。 国内外で圧力が強まる中、逃亡犯条例改正案は12日から立法会で審議が始まる予定。現立法会は体制派(親中派)が優勢で、法案は月内に可決されるとみられている。 6日には、弁護士ら数百人が異例の抗議活動に参加し反対を表明した。 大規模デモの火種となった香港の引渡し条例改正案について、以下にまとめた』、その後の激しい抗議行動を受けて、事実上の廃案となったようだが、完全撤回まではいってないようだ。ここで、「火種」をよく知っておくのは意義深い。
・『逃亡犯条例改正案とは何か  香港特別行政府が2月に提案した改正案で、現在ケースバイケースで対応している刑事容疑者の身柄引き渡し手続きを簡略化し、香港が身柄引き渡し条約を結んでいる20カ国以外にも対象を広げるという内容だ。 改正案は、香港から中国本土や台湾、マカオへの身柄引き渡しも初めて明示的に認めている。香港当局は、これによって香港を本土からの犯罪人の逃避先にしていた「抜け穴」を塞ぐことができると主張する。 外国当局から引き渡しの要請を受けた香港当局は、引き渡し手続きを開始し、法廷での審理を経た上で、最終的に引き渡しを承認することができる。容疑者は、法廷での審理結果に不服があれば上訴することもできる。しかし、一方で、引き渡し手続きに対する立法会の監督権限はなくなる』、対象を広げるついでに、「香港から中国本土や台湾、マカオへの身柄引き渡しも初めて明示的に認めている」、とは巧妙なやり方だ。
・『香港行政府は、なぜ改正案を進めているのか  昨年、香港人の若い女性が旅行先の台湾で殺害された事件をきっかけに、香港当局は法改正に乗り出した。警察は、この女性の交際相手が香港に帰国後、自白したとしているが、この男は(殺人事件では訴追されず)現在マネーロンダリング関連の罪で服役している。 一方で、台湾当局は、改正案は香港にいる台湾人をリスクにさらすものだとして強く反対しており、もし改正案が成立した場合も、殺人犯としてこの男の引き渡しを求めることは拒否するとしている。 香港が1997年、「一国二制度」の下で英国から中国に返還される以前から、いずれ本土との間に身柄引き渡しについての取り決めが必要になるとの指摘が当局者や専門家から出ていた。 香港に広範な自治を認めた同制度では、中国本土とは異なる独立した司法システムの維持も認めている。 返還後、中国本土の司法や安全保障当局者との間で非公式協議が行われたが、ほとんど進展はみられなかった。中国本土では、共産党が司法制度をコントロールしている』、きっかけとなった「香港人の若い女性が旅行先の台湾で殺害された事件」については、「台湾当局は、改正案は香港にいる台湾人をリスクにさらすものだとして強く反対しており、もし改正案が成立した場合も、殺人犯としてこの男の引き渡しを求めることは拒否」、というのでは、真の狙いは「中国本土」への引き渡しにあるのだろう。
・『改正案に対する反発の強さはどの程度か  改正案に対する懸念は最近になって急速に広がり、普段であれば香港や中国の当局と大っぴらに対立することを嫌うビジネス界や体制派にまで拡大している。 香港の裁判官も非公式に警戒感を表明しており、香港に拠点を持つ本土の弁護士でさえ、本土の司法システムでは最低限の公正さすら期待できないとして、これに同調している。香港の弁護士グループは、改正案の延期を求め、政府に詳細な要望書を提出した。 香港当局は、裁判官が引き渡し審査に際して、「番人」としての役割を果たすと強調している。だが、中国本土と香港との関係緊密化に加え、引き渡し審査内容が限定的であることから、裁判官が中国政府からの政治的圧力や批判にさらされる恐れがある、と一部の裁判官は非公式に懸念している。 学校や弁護士、そして教会グループが、人権擁護団体とともに改正案への抗議活動に参加している。 改正案を巡って立法会で乱闘騒ぎが起きたことを受け、行政府は通常の立法手続きを迂回して法案成立を急ぐことを決め、反対派を激怒させた。 人権への懸念を巡り、国外からの政治的、外交的圧力も強まっている。ポンペオ米国務長官や英独の外相が表立って発言し、欧州11カ国の総領事などが林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に面会して正式に抗議している。 「法の支配や香港の安定と安全保障、偉大な国際貿易拠点としての地位に深刻な打撃を与えるものだ」。英国の最後の香港総督を務めたクリス・パッテン氏は6日、こう述べて懸念を表明した。 一部の野党政治家は、この問題は香港の独立的地位にとって転換点となるものだとしている』、G20東京サミットで話題にしなかったのは、中国との関係改善を図る安倍政権の「温情」だろう。
・『改正案を撤回又は延期する可能性は  林鄭氏や行政府幹部はこの改正案を強力に擁護しており、台湾で起きた殺人事件を巡って行動を起こし、「抜け穴」を閉じる必要があると強調している。 また、政治的、宗教的な訴追に直面していたり、拷問を受ける恐れがある容疑者の場合、引き渡しを阻止する「安全弁」が講じられているほか、死刑に処される恐れがある容疑者も引き渡しされないと主張する。 引き渡しの対象を重い犯罪に限定し、9件の経済犯罪については明示的に除外するなど、引き渡しの要件を厳しくしたものの、行政府が改正案そのものを撤回したり、より慎重な議論を行うために延期するような兆候はない。 外交圧力に直面する中国当局者も、この問題は主権問題だとして香港特別行政府を支持する立場を明確にしている』、撤回するか否かは、抗議運動如何だが、最近は暴力的なものも出てきている。これは、運動潰しを狙った中国系の差し金である可能性も考えられよう。

次に、元駐中国大使で宮本アジア研究所代表の宮本 雄二氏が6月19日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「1国2制度てこにした台湾統一しぼむ、香港への寛容不要に」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/061700060/?P=1
・『逃亡犯条例改正をめぐり香港の混乱が続いている。6月9日、香港史上最多の100万人超が参加する反対デモが起こり、香港政府は15日、審議を延期すると発表した。だが、16日、その完全撤廃を求めて、前回を上回る200万人近くがデモに参加した(いずれも主催者発表)。香港は混迷を深めている。 歴史をたどると、物事の本質がもっとはっきり見えてくるものだ。 中国共産党は香港、台湾を取り戻さないと近代100年の“屈辱の歴史”は清算されないと考えてきた。失われた領土の回復は、中国共産党にとって著しく重大な事業なのだ』、台湾問題も絡んでそもそも論を展開するとは、さすが元駐中国大使だ。
・『矛盾と対立をはらんだ一国二制度  香港は「香港島」と、中国と陸続きの「新界」からなる。香港島は1842年のアヘン戦争後に英国領となり、その後、英国は新界を99年間租借した。その期限が1997年に訪れた。〓小平は78年に改革開放政策を決めると、台湾問題を念頭に置きながら、香港問題の解決を考え始めた。当然、香港全部の返還が大前提であり、そのためには英国と交渉する必要がある。中英の香港返還交渉は80年代に始まった。 84年12月、中英共同声明が発出された。これは国際約束であり、中国のその後の香港政策の基本的枠組みとなった。香港は高度の自治権を持つ特別行政区となり、そこで実施されていた自由や権利は保障されることとなった。しかしながら、香港は中国の一部となり、中央の直轄となった。具体的にどう統治するかは、全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)が決定する「香港基本法」で定める。 香港が中国に帰属するという建前と、香港に与えられる高度な自治との間には調整の難しい深刻な矛盾と対立が存在していた。天安門事件から1年もたたない90年4月、基本法が成立したが、この矛盾は解決されなかった。曖昧さを残したものしか作れなかったのだ。基本法を具体化するプロセスの中で、それらの矛盾が逐次表面化していく。基本法の解釈権について、「中央が管理する事務」と「中央と香港の関係」は全人代が、それ以外は、香港法院が解釈できると定めている。だが、その細部は不明であり、前例を積み重ねるしかなかった。中国と香港の関係はそのつど緊張した。それが香港の「一国二制度」の宿命だった』、「一国二制度」はやはりガラス細工のように脆かったようだ。
・『香港に寛容だったのは台湾を統一するため  それでも、基本法の実施に当たり、中国は可能な限り香港の現行制度と自由と人権に配慮してきた。自由で繁栄する香港の存在が、中国自身が経済発展するのに必要だったからだ。香港は50年代半ばから工業化を進め、80年代にはシンガポール、韓国および台湾とともに経済成長著しい「アジアの四小龍」と呼ばれた。中国は香港を最大限に活用して経済発展を図ることにした。中国の改革開放に香港は重要な役割を果たしてきたのだ。 同時に〓小平は台湾問題の解決を見据えていた。葉剣英(全人代の常務委員会委員長)は81年、台湾に対し香港以上に柔軟な一国二制度を提案した。台湾は香港よりさらに大きな自治と権限を持つことができ、軍隊まで保有できるという内容だ。83年、〓小平はその早期実現への期待を表明した。基本は、中国共産党と中国国民党による第3次国共合作だった。香港で一国二制度を成功させることは、台湾問題を解決する道でもあったのだ』、「〓小平」が「台湾に対し香港以上に柔軟な一国二制度を提案」、「第3次国共合作」まで考えていたとは、構想力の大きさに改めて驚かされる。
・『逃亡犯条例改正は共産党政府が繰り出した第4の矢  これらの理由により、北京は香港に対し比較的柔軟な姿勢を持続させた。しかし香港における政治運動は中国本土に悪影響を与える。香港の経済を自由に発展させ、それを利用しながら、同時に政治の管理を強めたいというのが北京の本音だった。 転換点となったのが2003年の50万人デモである。基本法は反逆、国家分裂、反乱扇動など国家安全を脅かす行為を禁止する法律を香港が自ら立法するよう規定している(23条)。02年、香港政府はその立法化に着手した。しかし、デモによりこれは失敗に終わった。 中国は、この動きを愛国心不足のためだと認識し、12年に「徳育・国民教育科」の導入を目指した。だが北京の意向を受けた香港政府の動きは、中高生の強い反対を呼び起こし撤回に追い込まれた。 中国は続いて14年、17年に行われる予定の香港行政長官選挙において、民主派が立候補するのを事実上不可能とする決定を下した。これに反対する香港の人たちは「雨傘運動」を繰り広げた。この運動は79日間継続したが、中国は譲歩せず、反対運動は挫折した。 そして今回の逃亡犯条例改正に反対するデモである。中国が12年以来、香港への管理を強化する流れの中で、香港が返還されて以降、最大のデモとなった。中国の経済発展と国力の増大は香港の有用性を相対的に低下させ、それが香港の中国化を促進する。それに対する反発と将来への不安が、これほど多くの香港の人たちをデモに駆り立てたのであろう。 しかし、理由はそれだけではない。香港の出来事は中国の国内情勢と不可分に結び付いている』、当局は「79日間継続した」「雨傘運動」は「挫折した」、の「二匹目のドジョウ」を狙っているのだろうが、今回はどうなるのだろう。
・『香港の経済的重要性は20年で7分の1に低下  12年11月、習近平氏が中国共産党総書記に就任した。その頃、中国の国力は増大し、世界における中国の存在感も急速に拡大していた。中国国内のナショナリズムの高まりも顕著だった。同年9月に始まった尖閣問題をめぐる日中の衝突は、中国の対外姿勢を「実力による現状変更」という新たな段階に引き上げ、自己主張の強い強硬姿勢に転換させた。 この基本姿勢の転換は、香港においては、中国の権威を誇示し管理を強化する方向に作用した。中国経済にとって香港の有用性が大きく低下した事実が、それを助長した。香港経済は、1997年には中国全体の2割弱の規模を誇っていた。それが20年後の2017年にはわずか3%弱となった。深?は経済規模で香港に追い付き、ハイテク分野でははるかに引き離した。金融市場としても上海の重要性の方がさらに高まった。中国は香港に対して、以前ほど遠慮する必要がなくなったわけだ。 香港を優遇するもう1つの理由であった台湾問題も、この20年間で大きく変質した。中国国民党の統治は終わり、その優勢も消えた。国共合作による統一は夢と消え、台湾独立派が力を強めた。一国二制度に基づき台湾問題を解決するという基本方針に変わりはないが、台湾と香港は分けて考えざるを得なくなった。台湾問題を念頭に、香港の政治に甘い姿勢を見せる必要もないと考える人たちが増えた。 国際社会との関係でも中国は自信を付けた。中国が天安門事件後の国際的孤立から脱却し、経済を驚異的な勢いで成長させたのを背景として、欧米は中国の民主化や人権にあまり口出ししなくなった。むしろ遠慮するようになったほどだ。逆に、中国の影響力と国際的発言力は増大した。昔ほど欧米を気にする必要はなくなった。 これらを背景に、香港を「より中国的に」統治すべきだという声が中国指導部の中で強まったとしても不思議ではない。とりわけ、「中国モデル」に従い中国国内の管理と統制を強めているときに、香港にだけ自由気ままを許したのでは示しがつかないだろう。2012年以来、そういう方向で香港の管理強化が意図されてきたことは恐らく間違いない。 従って、香港の人たちが「北京は香港の『中国化』を進めている」と強く感じ、それに反発し抵抗しているという見方は正しい。中国大陸への経済的な依存が高まり、中国の影響力が増す中で、香港の生きざま(Way of Life)を守りたいということだ。それは欧米のいう「民主化」とは必ずしも一致しない。英国の植民地であった時代に香港が真の民主主義を経験したことは一度もなかった』、「「中国モデル」に従い中国国内の管理と統制を強めているときに、香港にだけ自由気ままを許したのでは示しがつかない」、というのは香港にとっては、厳しい材料だ。
・『国際社会の注目が改正を延期させた  中国が台頭し、自分たちのやり方に対する自信を増大させたことが、米国を中心とする欧米社会において中国異質論を生み出し、中国を現行国際システムに対する「修正主義者」と断じさせた。米国では、今、中国をたたいておかないと米国の民主主義自体が壊されるという恐怖心が芽生えているという。これまでのように、中国はいずれ自分たちと似たような国になるのだから、中国が嫌がることはあまり言わずにいてあげようという雰囲気は欧米から消えた。自由や人権という、民主主義の核心的価値を求めるべく、再度声を上げるべきだという雰囲気になってきている。なんだか天安門事件の頃の雰囲気に似てきた。 今回、香港政府が逃亡犯条例改正の延期を決めたのは、混乱を収拾し事態を沈静化するためだろう。同時に6月28日から始まる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を強く意識した対応だ。天安門事件のときのような人権をめぐる対立の構図を、世界との関係で作りたくないのだとみられる。 米中対立の激化は、中国国内で路線の違いを表出させ、もう少しソフトな対応を求める声が強まっている。香港問題についても同じ力学が作用する。力で押さえつけ管理を強めるだけでは物事はうまくいかないと思っている人も少なくないのだ。逃亡犯条例改正問題は、中国と世界との関係がどのように収れんしていくのかという問題と切り離せない関係にあるのだ』、香港にとっては、米国など「国際社会の注目」だけが頼りの綱のようだ。

第三に、 経済ジャーナリストの岩崎 博充氏が7月9日付け東洋経済オンラインに寄稿した「香港の混乱が中国のアキレス腱になりうる理由 国際金融センターで何が起きているのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/291118
・『香港政府が進めようとした「逃亡犯条例」をめぐって、反政府デモが過激度を増している。 6月16日には人口800万人の香港で、4人に1人に当たる200万人が参加。7月1日から2日にかけては一部の若者たちが立法会(議会)に突入し、一時的に議場を占拠した。 CNNやBBCは、先進国でこのような事態が起こったことを驚きをもって伝えていた。香港政府が目指す逃亡犯条例の改正をめぐるゴタゴタは、まだ収束する気配はなさそうだ。国際金融センター、自由港区として知られる香港だが、中国に返還されて7月1日でちょうど22年。香港の統治に自信を見せていた習近平中国国家主席だが、香港は中国にとってアキレス腱になる部分も出てきた。 香港あっての中国と言われてきたが、いったい何が起きているのか――。国際金融センター・香港が直面する課題を考える』、「国際金融センター」を中心にみるというのも興味深い。
・『香港デモの背景には「米中貿易交渉」?  6月9日に103万人、6月16日には200万人という大規模な香港デモが起こったわけだが、その背景には「米中貿易交渉」の動きもあると言われている。香港政府が目指していた逃亡犯条例は、その法案が可決されてしまえば、香港に居住する人々はむろんのこと、香港で働くビジネスマンや観光で訪れた外国人に対しても、何らかの口実をつけて逮捕され、強制的に中国本土に移送されて裁判にかけられるのではないか――そんな懸念があるからだ。 まさに、香港で保障されている自由や人権が奪われてしまう可能性が出てくる。そんな逃亡犯条例に反発して自然発生的に起きたのが今回の香港デモだが、実は同時進行的に、アメリカ議会が香港政府を牽制する動きに出ていた。 共和党のルビオ上院議員、民主党のカーディン上院議員など超党派の議員が、103万人デモ直後の6月13日、これまでアメリカが香港に与えてきた貿易上の特権措置を見直す法案を提出。香港の「高度な自治」の検証を義務付ける法案「香港人権・民主主義法案」を提出したのだ。 アメリカは「アメリカ・香港政策法」に基づいて、香港に対して関税やビザ発給面で優遇してきたが、香港に高度な自治がなくなればさまざまな特権を廃止したほうがよく、そのためには、香港に十分な自治権があるかどうか、毎年検証を義務付けようという法案だ。提出された法案には、中国本土への容疑者引き渡しに関与した人物に対する資産凍結など制裁措置も盛り込んでいる。同法案は、ペロシ下院議長(民主党)も支持する姿勢を示しており、与野党の枠を乗り越えて早期に可決されるかもしれない。 この法案が出された背景には、中国がアメリカに対して発した「内政干渉するな」という脅しに反発したものとも言われているが、米中貿易交渉のタイミングを考えると、この法案が中国へのプレッシャーの1つであることは間違いない。 ちなみに、香港は大半の商品に関税がかからない自由港区だが、日中貿易交渉の一環で中国にかかっている追加関税も、香港を通せば非課税扱いになる。その香港ルートも、閉ざしてしまおうというのが今回出された法案の狙いの1つだ』、「香港人権・民主主義法案」については、初めて知った。「中国にかかっている追加関税も、香港を通せば非課税扱いになる。その香港ルートも、閉ざしてしまおうというのが今回出された法案の狙いの1つだ」、というのは中国にとっては、極めて重い意味を持ちそうだ。
・『香港は中国の「集金マシーン」?  一方、中国にとって香港は貿易面でも、そして世界中から投資資金を集めるという面でも不可欠な存在だ。 香港の株式市場に上場している企業の半数は中国本土に籍を置く企業だ。つまり、中国企業は香港市場に上場することで、資金を集めて成長してきたところがある。株式市場だけではなく、中国企業が発行する債券など有価証券の大半は、香港の金融市場で売買取引される。中国はまさに香港の金融市場の集金力に支えられて成長してきたと言っていい。 実際に、2018年の新規株式公開(IPO)調達ランキングでは、香港市場が世界第1位になっている。中国のスマートフォン大手「小米(シャオミ)」やネット出前の「美団点評」などが新規上場したことで、IPOによる調達額は366億米ドル(約4兆1000億円、大手会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツ調べ、以下同)となった。これは、2017年の2.2倍に達する金額だ。 2位はニューヨーク証券取引所(288億ドル)、3位は東京(262億ドル)となった。もっとも、2018年は中国の大手テック企業の上場が相次ぎ、動画配信大手「iQIY(愛奇芸、アイチーイ)」、音楽配信のテンセント・ミュージック・エンターテイメント・グループになどは、香港ではなくナスダックやニューヨークに上場している。 デロイト中国法人によると、2019年もIPOによる資金調達額で、香港取引所(HKEX)は世界3位以内を維持するだろうと予測している。香港でのIPO実施企業を約200社、調達額を1800億~2300億香港ドルと想定している。 もっとも、香港取引所での2019年1~3月期に実施されたIPOでは、前年同期より27社少ない37社で、調達額は16%減の204億香港ドル(2894億円)。香港取引所は、調達額では1位から後退している。米中貿易交渉やファーウェイの影響が少なからず出ていると言っていいだろう。 これを中国企業から見れば、2018年の中国企業のエクイティ・ファイナンス調達額のうち42%、IPOに限れば55%が香港市場で調達していると報道されている。香港は、まさに中国本土に世界マネーを供給してきた貴重な金融市場と言える。 一方で、香港はまた中国のマネーが逃げていく場としても注目されるようになっている。香港の不動産投資や事業への投資という形で、中国マネーが香港を通じて世界に流出する現象だ。 最近になって仮想通貨のビットコインが急騰して話題になっているが、ビットコインを通じて中国マネーが本土から流失しているという報道もある。中国ではビットコインの売買は禁止されているのだが、「OTC (店頭)市場」での信用取引は黙認されているとも言われ、その利益が香港などで事業資金に転換される』、第二の記事では、中国にとって香港の重要性は低下したとあったが、必ずしもそうでもないようだ。
・『インデックス投信に組み入れられる香港株  中国が香港を通じてかき集めているマネーは莫大な額にのぼる。香港市場で組成されるファンドの多くは、中国企業が組み入れられ、それを購入する欧米や日本の銀行や投資家は、いつのまにか中国に多額のお金を投資していることになる。 こうした現実に対して、ルビオ上院議員なども世界の株価指数に連動する投資信託などの情報開示が不十分だと指摘。実際に、日本の証券会社や銀行などが販売しているインデックス型の投信などの中には、香港を通して中国の企業に投資しているケースが多い。 とりわけ、グローバルなフィンテック関連企業などは、2018年に急速に伸びており、アクセンチュアの調査によると、フィンテックベンチャー企業への投資額は、世界全体で2017年の2倍を超える553億ドルに達し、とりわけ中国への投資額は9倍に跳ね上がっている。 2018年のフィンテック投資総額の46%を中国が占めており、いかに中国が世界からマネーを集めているかがわかる。もちろん、直接中国に入るマネーも多いが、香港を通して流入する投資額も巨大なものだ。 アメリカが中国に対して仕掛けている貿易戦争も、考えてみればすでに遅きに失しているのかもしれない。それだけ、中国は世界のマネーを集めてしまったと言わざるをえない。 問題はこれで香港に何かが起きたときに、どんな影響が出るかだ。今回の立法会への突入が象徴するように、先進国であのような暴動が起これば、警察が取り締まりを強化することは間違いない。ああした暴動は、香港政府や中国政府に動くきっかけや大義を与えてしまうため、香港の金融業界ではデモそのものを懸念していると言われる。 ひょっとすると、2047年まで約束されている「1国2制度」を繰り上げて、香港の自治権を中国政府が奪うような事態になるかもしれない。香港はイギリスから返還されるときに、当時中国のトップだった〓小平とマーガレット・サッチャー英首相が50年間の「1国2制度」に合意したわけだが、中国が自治の回復を名目に香港から「高度な自治」を奪ってしまうかもしれない。 2047年といえば、まだ遠い未来のことのように思えるが、住宅ローンなどを組む際には、すでに影響が出てきていると言われる。実際、日本から香港に進出している企業や投資家の一部には、シンガポールなどに拠点を移そうとする動きが現実になっている。 かつて、天安門事件直後に香港市民に取材したとき、5分の1程度の市民は「返還までに海外に脱出したい」と答えていたのを思い出す。近年、一度海外脱出した香港市民がまた香港に戻ってきた話をよく聞く。今回の香港デモが彼らに与えた影響は極めて大きかったようだ。 当然のことながら、欧米の銀行や証券会社、投資運用会社なども、シンガポールや東京などに拠点を移す動きが出てくる可能性もある。かといって、金融市場のルールや銀行口座のルールなどはそのまま継続する可能性が高い。香港は、預金保険なども金額こそ800万円程度と少ないが、外貨預金も保証の対象となっており、海外からの顧客にとっては日本よりも充実していると言える。 香港と言えば、「HSBC」や「シティバンク」、日系の「NWB」(注)といったポートフォリオを組んで資産運用してくれる「ポートフォリオ・アドバイザリー・サービス」を展開する銀行が有名だが、こうした金融機関も1国2制度の見直しがあった場合、どんな変化を余儀なくされるかは不透明だ。少なくとも、優位性のあるファンドの組成や世界中の債券に優先的に投資することはできなくなるかもしれない。 それだけ香港が持つ国際金融センターの機能は大きいということだ』、その通りだろう。
(注)NWB:新生銀行系のNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank。
・『シンガポールに脅かされる香港の経済自由度  実際に香港の国際金融センターとしての位置付けは極めて確固たるものがある。最新の「世界金融センター指数」を見ても、香港は世界第3位に入っている。トップ10は次のとおりだが、香港は前年に続き3位に入っている(第25回、2019年3月発表)。 1. ニューヨーク 2. ロンドン 3. 香港 4. シンガポール 5. 上海 6. 東京 7. トロント 8. チューリヒ 9. 北京 10. フランクフルト 注目すべきは、上海と北京がそれぞれトップ10に入ってきており、今や中国も国際金融センターの仲間入りしていることだ。とりわけ上海は東京より高い5位に入っている。それだけ、中国も香港に代わる国際金融センターの育成に力を注いでいるということだろう。 一方、アメリカのシンクタンクであるヘリテージ財団とウォールストリート・ジャーナルが算出している「経済自由度指数(INDEX of Economic Freedom)」を見ると、香港は25年連続でトップを維持している。しかしながら、シンガポールに肉薄されており、いつそのトップの座を奪われても不思議ではないような状態だ。トップ10は、次のようになっている(2019年版)。 ① 香港(90.2点) ? シンガポール(89.4点) ③ ニュージーランド(84.4点) ④ スイス(81.9点) ⑤ オーストラリア(80.9点) ⑥ アイルランド(80.5点) ⑦ イギリス(78.9点) ⑧ カナダ(77.7点) ⑨ アラブ首長国連邦(77.6点) ⑩ 台湾(77.3点) ちなみに、日本は30位となっている。 経済自由度指数の採点では、財政の健全性や汚職の多寡、政府支出の大小、ビジネス、労働、投資の自由度などなど10項目で採点されている。世界的にも権威のある指数であり、香港の25年連続第1位は、それだけ香港の優位性を象徴している。 一方、香港が国際金融センターとして中国本土への集金マシーンとして機能している以外の部分では、近年ややその存在感を失いつつある。金融センター以外の部分ではあまりにも中国本土が成長してしまったために、その存在意義が失われつつあるともいえる。 国際金融センターとしての地位はシンガポールに迫られており、いずれはトップの座を明け渡すことになる可能性が高い。実際に、金融機関の一部はすでにシンガポールに脱出を図っているとも言われる。 ▽戦争が起きない限り金融システムは揺るぎない(1国2制度の期限が、あと30年を切った現在、今後は「2047年問題」が香港を苦しめる可能性は高い。逃亡犯条例の改正で4人に1人がデモに参加した状況を見ても、香港人の不安や焦りは想像できる。 いずれにしても、香港の未来は今回の香港デモによって、やや不透明感を増したと言っていい。とはいえ、香港に海外口座を持っている人もいると思うが、こうした金融システムが揺らぐようなことはまずないと考えていいだろう。 金融システムの根幹が揺らぐような事態というのは、もはや「内戦」や外部との「戦争」しか考えられない。世界有数の国際金融センターにそんな事態が起これば、日本の株式市場や債券市場も無傷では済まない。 それどころか、日本が世界最大級のダメージを受ける可能性もある。香港に資産を置いておくのも、日本に置いておくのも緊急事態のダメージはそう変わらない、ということだ。 ただ、これまでもそうだったように中国は時間をかけて香港から自由を奪っていく可能性はある。シンガポールなど、自由度の高い金融機関へのシフトを長期的な視野で考えておいたほうがいいのかもしれない。 日本が悩まされている「キャピタル・フライト(資本流出)」は、今後香港や中国が経験することになるかもしれない』、「世界金融センター」のランキングについては、東京は、ロンドン、ニューヨークに次ぐ3位との統計もある。ただ、「金融システムの根幹が揺らぐような事態というのは、もはや「内戦」や外部との「戦争」しか考えられない」、との見方はいささか甘いような気がする。リーマン・ショック級の事態はもっと高い確率で起こり得る。中国での各種のバブルは崩壊寸前であることを考慮すれば、もっと深刻に考えておいた方がいいのではなかろうか。
タグ:香港 ロイター 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 岩崎 博充 宮本 雄二 (その1)(香港大規模デモ 火種となった「引き渡し条例」とは何か、1国2制度てこにした台湾統一しぼむ 香港への寛容不要に、香港の混乱が中国のアキレス腱になりうる理由 国際金融センターで何が起きているのか) 「香港大規模デモ、火種となった「引き渡し条例」とは何か」 「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模デモ 香港住人だけでなく、香港に住んだり渡航した外国人や中国人までもが、中国側からの要請があれば本土に引き渡されることになる 現在ケースバイケースで対応している刑事容疑者の身柄引き渡し手続きを簡略化し、香港が身柄引き渡し条約を結んでいる20カ国以外にも対象を広げるという内容 香港から中国本土や台湾、マカオへの身柄引き渡しも初めて明示的に認めている 引き渡し手続きに対する立法会の監督権限はなくなる 香港行政府は、なぜ改正案を進めているのか 香港人の若い女性が旅行先の台湾で殺害された事件をきっかけ 台湾当局は、改正案は香港にいる台湾人をリスクにさらすものだとして強く反対しており、もし改正案が成立した場合も、殺人犯としてこの男の引き渡しを求めることは拒否するとしている 「一国二制度」 改正案に対する反発の強さはどの程度か 改正案を撤回又は延期する可能性は 「1国2制度てこにした台湾統一しぼむ、香港への寛容不要に」 中国共産党は香港、台湾を取り戻さないと近代100年の“屈辱の歴史”は清算されないと考えてきた 矛盾と対立をはらんだ一国二制度 香港に寛容だったのは台湾を統一するため 逃亡犯条例改正は共産党政府が繰り出した第4の矢 香港の経済的重要性は20年で7分の1に低下 国際社会の注目が改正を延期させた 「香港の混乱が中国のアキレス腱になりうる理由 国際金融センターで何が起きているのか」 香港デモの背景には「米中貿易交渉」? これまでアメリカが香港に与えてきた貿易上の特権措置を見直す法案を提出。香港の「高度な自治」の検証を義務付ける法案「香港人権・民主主義法案」を提出 与野党の枠を乗り越えて早期に可決されるかもしれない 香港は大半の商品に関税がかからない自由港区だが、日中貿易交渉の一環で中国にかかっている追加関税も、香港を通せば非課税扱いになる。その香港ルートも、閉ざしてしまおうというのが今回出された法案の狙いの1つだ 香港は中国の「集金マシーン」? インデックス投信に組み入れられる香港株 シンガポールに脅かされる香港の経済自由度
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