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米中経済戦争(その9)(人民元「破七」で金融戦争突入 捨て身の中国の勝算 米国相手に突っ張るしかない習近平 国民に「新長征」を強いる、米中経済戦争が 世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている 円高が日本経済を直撃する、ぐっちーさん「米中戦争で見落しがちな真実」 トランプと習近平はどこまで「本気」なのか) [世界情勢]

米中経済戦争については、7月4日に取上げた。今日は、(その9)(人民元「破七」で金融戦争突入 捨て身の中国の勝算 米国相手に突っ張るしかない習近平 国民に「新長征」を強いる、米中経済戦争が 世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている 円高が日本経済を直撃する、ぐっちーさん「米中戦争で見落しがちな真実」 トランプと習近平はどこまで「本気」なのか)である。

先ずは、元産経新聞北京特派員でジャーナリストの福島 香織氏が8月9日付けJBPressに寄稿した「人民元「破七」で金融戦争突入、捨て身の中国の勝算 米国相手に突っ張るしかない習近平、国民に「新長征」を強いる」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57263
・『今週、人民元が1ドル=7元のラインを突破した。米国東部時間で8月5日、月曜午前、1ドル=7.05元に急落。これは2008年5月以来の水準で、世界は米中貿易戦争が米中金融戦争に突入したと認識した。 中国語で「破七、守七」と呼ばれる1ドル7元ラインは、一種の心理ラインとされ、これを超えると、中国政府としても制御できない勢いで人民元暴落が起きかねないと言われていた。中国側は昨年(2018年)、元暴落を防ごうと外貨準備をかなり投入して元を買い支えていたことを明らかにしている。中国経済の実態からいえば、人民元はむしろ介入によってこれまで高く誘導されてきたというのが事実なのだろう。 米国側は、中国が為替介入によって元を切り下げることを警戒していた。そして、この元暴落を受けて、トランプ政権は5日、中国を25年ぶりに“中国は意図的に元を切り下げている”として為替操作国認定したのである。これがどういう意味を持つのか、今後何が起きるのか、少し考えてみたい』、興味深そうだ。
・『「破七」は自信の表れか?  中国政府はこれまで「破七」を非常に恐れており、このラインを突破させないよう必死だった。だが、8月5日、人民銀行(中央銀行)は人民元取引の目安となる基準値を6.9225に設定した。これは5月16日以来の大幅な引き下げだ。 7月末の第12回目の米中通商協議で米政府が3000億ドル分の中国製品に10%の追加輸入関税を発表し、さらにFBRが利下げに転じたことを受けて、中国も七ラインを守る(守七)努力を諦めたのかもしれない。あるいは中国経済の疲労度が「守七」を維持できなくなったのか。 だが、その後の人民銀行の記者会見での公式コメントは比較的泰然としている。「完全に合理的なバランスの水準を保ち、人民元は基本的に安定している」「米国の一国主義、貿易保護主義的措置と中国への追加関税措置の影響で、人民元は急落し7元ラインを超えた。しかし人民元は“バスケット”によって安定を維持できるので、これは市場供給と国際為替市場の波動の影響だ」・・・。 8月2日の人民元の終値は6.9416元なので、確かに基準値としてはおかしくないのだが、今までの「守七」に固執していた中国政府の態度が変わったということの意味が大きい。コメントの口調から受ける印象としても、中国が一線を越えて、米国と金融戦争に突入する覚悟が決まった、ということかもしれない。フィナンシャル・タイムズ紙は専門家のコメントを引用しながら、「破七」は中国経済の疲労を示しているのではなく、むしろ経済実力に対する自信の表れだといったニュアンスで論評していた』、FTまでが「経済実力に対する自信の表れ」と論評していたのであれば、その通りなのだろう。
・『人民元安はデメリットの方が大  では、中国の覚悟は本当に勝算あってのものなのだろうか。 たとえばおもちゃ製造の中小工場が、製造原価6元のおもちゃを7ドルで売るとする。1ドル6元の時、儲けは人民元換算すると36元。これが1ドル7元だとすれば、それが42元になる。確かに輸出品を製造する工場にとっては有利だ。 また、ある製造品が米国から関税を25%かけられていたとき、人民元が10%切り下げられれば、関税は15%にまで下がったことになる。もちろん、中国が米国から仕入れる原材料の仕入れ値が割高になるという問題もあるが、輸出国の立場でいえば、元安は中国製造業を救うことになる。 だが、中国にとって人民元安はメリットよりもデメリットの方が大きいといわれている。 まず、資金流出が一層加速する懸念がある。人民元の価値がこのままとめどなく下がってしまう可能性が出てくれば、人民元を持っている人たちは人民元を売って他の資産に変えようとするだろう。人民元売りが加速してさらに人民元が下がる。人民元が紙くず同然になってしまったら、中国経済はどうなるのか。 中国人の社会生活にはどういう影響があるのか。エネルギー、食糧など人々の生活を支えている物資の多くが外国からドル建てで輸入されている。間違いなく生活物価は高騰する。特に比較的生活レベルが高い都市の中間層の暮らしが打撃を受ける。 ドル建て社債を発行している中国企業はどうなるのだろうか。外債発行はこの数年の中国企業のトレンドだった。米中金利差で利ザヤを稼ごうという狙いもあった。中国の対外債務は公式には1.9兆ドル。そんな高い水準ではないという人もいるが、2017年初めから四半期ごとに平均700億ドルずつ増えてきた。62%が短期債務で、年初には「年内に1.2兆ドルの借り換えが必要」と言われていた。中国企業が「一帯一路」推進のために借り入れたドル建て債務の返済は、今年、来年がピークだ。つまり元高で借りた金を元安で返すとすれば、負担は増大する。大丈夫なのか。 市場原理に照らせば、元が下がると各国の投資家が中国に投資し、外資の流入が起きる。それによって景気が回復し、景気が回復すると為替も回復するはずである。だが貿易戦争が悪化し、米中対立が激化するなか、少なくとも米国の同盟国の企業はむしろ撤退モードに入っている。 「破七」を契機に中国不動産市場のバブルが崩壊する懸念も指摘されている。8月5日の不動産指数は2.36%下がり、100以上の不動産企業の株価が一斉に下落した。碧桂園、万科、融創中国、中国恒大といった企業は3~5%のレベルで株価が下がり、宝龍、龍光、富力、佳兆業、建業は軒並み5%以上、中国奥園は7.47%下落している。中国政治局会議で不動産業界を短期的に刺激する政策が出された直後に、あっと言う間に政策が挫折したわけだ。理由は不動産業界の外債がこの「破七」局面で軒並み償還期日を迎え、借り換えの必要が迫られているにもかかわらずハードルが上がってしまったからだ。 外債の借り換えが困難なうえ、中国のキャピタルフライトが加速すると、不動産市場の「銭荒(資金欠乏)」現象が起き、バブルが一気に崩壊する、というシナリオもあり得る。政府にとってバブル崩壊の何が怖いかと言うと、家計債務の7割が不動産ローンで、中国人は資産の8割前後を不動産として持っており、地方財政収入の7割前後が不動産開発のための土地譲渡によるものだということだ。不動産バブル崩壊は中国人の資産の崩壊そのもの。当然、社会に動揺が走り、秋の党中央委員会総会前に習近平政権の足元はさらに不安定化しかねない』、数年前までは人民元の国際化を旗印に穏やかな人民元上昇を図っていたのとは、様変わりの変化である。「不動産業界の外債がこの「破七」局面で軒並み償還期日を迎え、借り換えの必要が迫られている」、というのは不動産バブルの崩壊を生じかねない爆弾だ。
・『貨幣戦争を仕掛けざるを得ない党内事情  そういう状況なので、トランプ政権や欧米メディアが批判するように「破七」は中国側の意図的な為替操作、という見方もあるが、実際のところはそうせざるを得ない状況に追い込まれたのであって、必ずしも勝算がある作戦ではない気がする。 「守七」を維持できなかった理由の1つに、中国にとって最大のオフショア人民元業務センターである香港で継続している「反送中デモ」もあるだろう。これはすでに「反中デモ」に変貌しつつあり、負傷者逮捕者が増加の一途をたどっている。8月5日にはゼネストが行われ、香港の都市機能そのものが麻痺しつつある。当然、人民元の流動性にもマイナス影響を与えている。 とすると、習近平政権としては、どこを落としどころに考えているのだろうか。ロイターの報道は、中国側は人民元の防衛ラインを「7.2」あたりに設定し直すつもりではないか、といった関係者のコメントを引用していた。だが果たして本当に「7.2」でとどめられるのだろうか。 多くのメディアが、トランプの貿易戦争に対して、習近平政権が貨幣戦争を仕掛けた、というふうに理解している。だが、ニューヨーク・タイムズの香港特派員が指摘するように、共産党には外国勢力に頭を下げる歴史がなかったことが習近平への圧力になっており、国家指導者として強硬姿勢をとる以外の選択肢がなかった、というのが本当のところだろう。米国に妥協すれば「投降派」としてやり玉にあげられ、政権トップの座の維持が難しいという党内事情がありそうだ。 同時に、昨年夏までは習近平を政権の座から引きずり降ろそうとしていた勢力が、今年は比較的おとなしい。対米政策、経済政策がさらに惨憺たる状況になるまでむしろ習近平に好きなようにさせて、時が来ればその責任をすべて取らせる形で中国政治をリセットしようという魂胆なのか』、党内の反「習近平」勢力が、時が来るのを待ち構えているというのも不気味だ。
・『「新長征」を呼びかけた習近平  今年春の全人代(全国人民代表大会:日本の国会に相当)で、中国政府は米国の強い要請に応える形で外商投資法を急いで成立させ、改革開放を進めようとした。だが、5月の第11回米中通商協議直前に、95%合意しかけていた貿易交渉のテーブルを、習近平が「自分が一切の責任をとる」と言ってひっくり返した。 その後、江西省に行って「新長征」を呼びかけた段階で、習近平自身も“負け戦”を想定しているのかもしれない。 「長征」とはご存知のように、中国共産党軍が中華ソビエト共和国の中心地であった江西省瑞金を放棄し、1934年から36年にかけて延安まで1万2500キロを徒歩で敗走した歴史のことだ。この間、国際情勢の変化によって中国国民党が日本と戦争しなければ、共産党は消えていた。日本と戦うために国共合作(国民党と共産党の協力)方針が取られ、国民党が日本との戦いによって疲弊し、国共内戦で敗北したがために、今の共産党政権と中国があるわけだ。共産党の歴史にとって長征は原点だが、実際は15万人以上の共産党軍が7000人ぐらいにまで減った苛酷でみじめな敗走だった。新長征を人民に呼びかけた習近平は、再び中国人民に、苛酷でみじめな敗走を2~3年耐え忍べ、と言っているに等しい。 だが、この呼びかけに従うことができるほど、今の中国人は我慢強くないかもしれないし、習近平政権が望む国際情勢の変化(例えば「トランプは次の選挙で敗退する」とか「日米が仲間割れする」とか)も起こらないかもしれない。 負けを覚悟で、わずかな可能性に勝負をかける戦略であるとすれば、これはなかなか危うい。「交渉の末のある程度の妥協」という、至って普通のシナリオではなく、世界があっと驚くような行動に出ないとも限らないからだ。香港、台湾、半島・・・。中国が何か仕掛けそうな不安定な地域はたくさんある。 私は6月に『習近平の敗北』(ワニブックス)という本で、「9がつく年は必乱の年」という中国人のジンクスを紹介した。そこで人民元の暴落も香港の暴発の可能性も書いてきたが、自分が書いたその内容が本当に起きてくると、今さらながらちょっと怖い』、香港も空港の占拠と閉鎖で、人民解放軍による介入が現実味を帯びており、極めて不気味だ。ただ、夕方のテレビのニュースでは、空港の警備強化や、裁判所による占拠を不法とする判断などから、運行は再開され、混乱は多少落ち着きつつあるようだ。トランプ大統領も人民解放軍による介入を牽制しているようだ。なお、今日の日経夕刊は「米、対中関税555品先送り 「第4弾」、スマホなど12月」、「NY株大幅高・円急落 米中摩擦懸念和らぐ」と伝え、一触即発の状態からは落ち着きを取り戻したようだ。

次に、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問・一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏が8月9日付け現代ビジネスに寄稿した「米中経済戦争が、世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている 円高が日本経済を直撃する」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66457
・『ドナルド・トランプ米大統領が中国からの輸入に対する関税上乗せを明らかにしたことで、米中貿易戦争がエスカレートしている。この影響で、世界の金融市場に動揺が広がっている。 いまの局面で重要な点は、2つある。 第1は、制裁関税の対象として、アメリカが消費財に踏み込んだことだ。これによってアメリカ経済が被害を被ることは、当然予想される。そうしてでも中国を叩く必要があるという強い意志を、アメリカは示したことになる。 第2は、通貨戦争の様相が出てきたことだ。中国が人民元安を容認し、これを受けてアメリカが中国を為替操作国に指定した。これが世界的な通貨戦争に発展する可能性もある。そうなると、円高が進行する可能性があり、日本経済は大きな影響を受けるだろう』、「トランプ米大統領」だけでなく、米国議会でも強硬派の声が大きくなっているだけに、着地点が見えない展開だ。
・『エスカレートする米中貿易戦争  トランプ大統領は、アメリカが輸入する中国製品のうち約3000億ドル(約32兆円)に対して、9月1日から10%の関税を上乗せすると、8月1日にツイッターで明らかにした。 中国は、これに対する報復措置として、アメリカからの農産品の購入を一時停止した。 2018年に始まった米中貿易戦争によって、2015年5月初めまでの段階で、中国からの輸入500億ドルに25%、2000億ドルに10%の追加関税が課されていた。 アメリカは、今年の5月10日に、2000億ドルに対する制裁関税を10%から25%に引き上げた。これを受けて、世界の株式市場で株価が急落した。 6月末の米中首脳会談で第4弾の発動はいったん見送られたものの、中国側に譲歩の姿勢がみえないとして、今回の強硬策に打って出たのだ。 今回の引き上げがなされると、中国からの輸入のうち、2500億ドルに25%、3000億ドルに10%の追加関税がかかることになる。 なお、トランプ大統領は、3000億ドル分について、「段階的に引き上げる可能性がある。25%以上もあり得る」と述べた。 近い将来に米中が合意に至る可能性は、低下している』、「エスカレートする」スピードも速いことに驚かされる。
・『米中両国の経済に悪影響が及ぶ  今回の対象には、中国からの輸入依存度が高い消費財が多く含まれている。スマートフォンやPC(パソコン)、衣料品、玩具など、消費者への影響に配慮してこれまで避けてきた品目が中心だ。 高関税が実施されれば、消費財が値上りし、企業業績も下押しされるだろう。 国際通貨基金(IMF)は、今年4月に発表した「世界経済見通し」において、米中両国が全ての輸入に対する関税率を25%に引き上げた場合、実質GDP成長率がどの程度低下するかを、いくつかのモデルを用いて推計した(World Economic Outlook April 2019; Chapter 4 - The Drivers of Bilateral Trade and The Spillovers From Tariffs; April 3, 2019、Box4.4、p.125)。 その結論は、つぎのとおりだ。 (1)米中貿易は、短期的には25〜30%。長期的には30〜70%ほど落ち込む。 (2)これによって、実質経済成長率(年率)は、中国は0.5~1.5%ポイント、アメリカは0.3~0.6%ポイントほど落ち込む。 このように両国とも痛手を負うのだが、中国のほうが影響が大きい。これは、輸出依存度が高いからだ。 中国に生産拠点を持つ日本企業への影響も避けられない。タイやベトナムなどへの生産拠点移動などの動きが急ピッチで進むだろう』、「実質経済成長率」押し下げ効果は、中国の方がアメリカの2倍以上あるようだが、これを国内投資の引上げで相殺しようにも、既に国内投資が伸び切った状態にあるだけに、困難だろう。
・『リスクオフ志向が強まり金融市場が動揺  8月5日の株式市場で、ダウ工業株30種平均は大幅に続落し、前週末比767ドル(2.9%)安の2万5717ドルと、6月5日以来2カ月ぶりの安値になった。ダウ平均の下げ幅は今年最大で、2018年12月4日以来ほぼ8カ月ぶりの大きさだった。 6日午前の中国市場で、株価が大幅続落した。代表的株価指数である上海総合指数は一時3%超下落した。 6日の東京株式市場で日経平均株価は3日続落し、一時は前日比600円超下げた。終値は、前日比134円98銭(0.65%)安の2万0585円31銭となった。これは、7か月ぶりの安値だ。 長期金利(新発10年債利回り)は、6日にマイナス0.215%と2016年7月以来の低水準になった。 マイナス0.2%は、日本銀行の長短金利操作で誘導目標の下限として市場で意識されている水準だ。 原油価格も値下がりしている。 株安、金利下落(債券価格上昇)、円高、人民元安、原油価格下落。これらは、投資家の「リスクオフ」(危険回避)と呼ばれる行動によって引き起こされるものだ。 外見上は、2016年半ばに起こったこととよく似ている。ただし、リスクオフが高まる原因は異なる。 2016年の際には、アメリカが量的緩和政策から脱却して金融正常化を開始し、そのため、リスク資金の供給が減少して、投機の時代が終焉したということが原因であった。 それに対して現在は、貿易戦争の帰結が見えないという不確実性の高まりだ。これによって将来の見通しが立ちにくくなったので、投資のリスクが大きくなった。このため、安全と考えられる資産に投資が向かうのだ』、日本の長期金利の「マイナス」幅拡大は、地域金融機関を中心に金融機関に大きな打撃だろう。
・『貿易戦争進展に伴って元安が進んでいる  5日の中国・上海外国為替市場の人民元相場は、対ドルで続落し、1ドル=7・0352元となった。1ドル=7元を超える元安は、2008年5月以来11年ぶりだ。 これを受けて、中国人民銀行は5日朝、人民元の対ドル相場の基準値を昨年12月以来の低水準となる1ドル=6・9225元に設定した。一定の元安を容認したことになる。 これによって、追加関税の効果を打ち消し、輸出を下支えしようとする意図があるのだろう。 では、どの程度の元安になれば、関税引き上げの効果を打ち消せるのだろうか? 中国からアメリカへの財輸出は、2017年において約5000億ドル、2018年に約5400億ドルである。 ところで、上述のように、2019年5月初めまでの段階で、このうち500億ドルに25%、2000億ドルに10%の追加関税が課されている。これによって輸入額は、(500x25%+2000x10%)/5000=6.5%ほど値上がりしたことになる。 他方で元ドルレートの推移を見ると、2018年1月には1ドル=6.3元程度であったものが、貿易戦争勃発の影響で、11月には6.9元程度にまで元安になった。 そして、2019年2月には、6.7元程度になった。5月下旬には、2000億ドル分についての追加関税率が10%から25%に引き上げられたことに伴い、6.9元まで元安になった。 このように、貿易戦争の進展に伴って、元安が進んでいるのだ。 6.3元から6.9元までは9.7%程度の元安だから、これによって、関税率引き上げの効果(上述の計算では6.5%)は、打ち消されたと考えることができる。 では、今後はどうか? 第4弾の対象は上記のように3000億ドルだが、これは、2018年の中国からアメリカへの輸出の約55%になる。したがって、これに10%の追加関税がかかれば、輸出総額は5.5%増加する。 元の対ドルレートが5.5%下落すれば、その効果は打ち消されることになる。これは、1ドル=6.9元であるものが、1ドル=7.3元になることによって実現される。したがって、ここが、今後の元レートの1つの目安になるという見方がある』、これは余りに単純化した試算値で、文字通り「1つの目安」でしかない。
・『通貨戦争になると日本は直接に影響を受ける  中国通貨当局の元安容認を受けて、アメリカ財務省は5日、中国を「為替操作国」に指定した。これは、1994年以来、25年ぶりのことだ。事態は通貨戦争の様相を呈してきた。 また、トランプ大統領は、連邦準備理事会(FRB)に対して利下げ圧力をかけており、9月に追加利下げが行われるとの観測がなされている。また、ヨーロッパ中央銀行も秋に利下げを行うのではないかとの観測がある。こうなると、世界的な通貨安競争が始まる可能性もある。 この問題は、当然、日本の金融政策にも大きな影響を与える。 ただし、中国は手放しで元安を進めるわけにはいかないことに注意が必要だ。 なぜなら、元安に歯止めがかからなければ、資産を中国国内から海外に持ち出す大規模な資本流出が加速し、中国の金融市場が不安定化するからだ。 以上のような国際金融市場の動きは、日本にも影響を与えている。6日の東京市場では、円相場が一時、1ドル=105円台半ばまで上昇した。 これは、世界経済のリスクが増すと、安全な資産と見なされている円に資金が流れるためだと考えられる。 高関税にしてもファーウエイ排除にしても、日本は影響を受ける。しかし、それはあくまでも間接的な影響だ。ところが、 通貨戦争となれば、日本は 直接の影響を受ける。 企業利益にはかなり大きな影響を与える。日本企業(とくに製造業)の利益は、円安で増加し、円高で減少する傾向があるからだ。今後円高が進行すれば、利益減少が顕在化するだろう。 マーケットを通じる影響だけではない。トランプ大統領は、かねてから、「日本が円安政策をとっている」という考えを表明していた。こうした批判が、日本をターゲットとする直接的な政策(例えば、自動車の輸入規制)に発展する可能性も否定できない』、日本としては、これまで享受してきた「円安」メリットを諦め、円高への圧力を甘受すべきなのではなかろうか。

第三に、投資銀行家のぐっちーさんが8月10日付け東洋経済オンラインに寄稿した「ぐっちーさん「米中戦争で見落しがちな真実」 トランプと習近平はどこまで「本気」なのか」の3頁目までを紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/296934
・『ドナルド・トランプ大統領がまたもや「中国に関税をかけるぞ」、とツイッターで脅したことで、世界中で一時株価が急落、大騒ぎになっています(その後も乱高下を繰り返していますな)。こうなるとGDPも雇用統計も糞もない(笑)。 ぐっちーポストの「有料メルマガ」では当初から散々書いてきたテーマなので、「何をいまさら」なんですが、多くのメディアの人はそういう情報にお金を払う気は毛頭ないようで、平気で電話してくる方々がたくさんいて、よほど仲のいいメディアの人でない限り、お話はお断りしています。なぜなら、こちらのいいたいことをすべて読んだうえで質問してもらわないと、答えの一部だけを切り取られたりして誤解されてもムカつくし、そういう意味ではメディアの姿勢も問われるべきではないでしょうか。 というわけで、本来別の話題を書くつもりだったのですが、メディアの方のアクセスも多いので、こうしておけば過去の記事をちゃんと読んで取材に来てくれるだろう、ということで、東洋経済オンラインには本件について過去に書いてきたことをまとめてみます』、ぐっちーさんの見解とは興味深そうだ。
・『アメリカの「対中貿易赤字」は高水準のまま  まず、誤解を恐れずに言えば、米中貿易摩擦問題による「経済上の大問題」は、そもそもほとんど存在すらしていません。そんなもの、現実には最初から今に至るまでないに等しいのです。お互いに関税を掛けたり、輸入禁止をしてみたり、いろいろなことをやっていますが、実際にそれで何かの効果が見られましたか?これは統計をちょっと見たら明らかなんですが、どうしてそれがわからないまま、大騒ぎしているのか、全く意味不明です。 すでにアメリカが関税をかけ始め、中国が報復をして1年以上がたつんですよ。それで何かが変わったか。例えば貿易統計を見てみると、ほとんど何も変わっていないということがすぐわかります。制裁前も後もアメリカの貿易赤字は高い水準ですし、対中国の貿易赤字水準も少し減ったくらいで、ほぼ変わりません。これは大きな問題が起きていないということ以外、説明のしようがありませんよね。みなさん、一体何を見ているのでしょうか。 今回の株価下落は、トランプ大統領がさらに追加関税をかけるとツイートしたことに端を発します。しかし、これはディールの一環で最初から考えていた手を打ったにすぎません。 要するに、初めからいずれこれをやるというのは予想できることです。メルマガでは明確にそう書いてきましたし、市場関係者でこの辺を理解していない人はもうほとんどいないんじゃないでしょうか。恐らく自分で参加したことのない、メディアや学者、エコノミストだけが右往左往していて、だんだん話が大きくなっているような気がします。ある意味怖いですね。そうした人たちの分析を読んで大変だ、と思っている皆さんはもっと怖いです(笑)。メダカがクジラになってしまっている。 これも何度も書いていますが、トランプという人は本気で喧嘩する気は全くないのです。あくまでもディールの一部としてやっているだけなので、要するにプロレスでチョップを打ったり打たれたりしながら、大げさに倒れたりしている、というのが現状なのに、なんで市場が右往左往する必要があるんでしょうか。別に放っておけばいいし、安くなった株があれば買えばいいのです』、「トランプという人は本気で喧嘩する気は全くないのです。あくまでもディールの一部としてやっているだけなので、要するにプロレスでチョップを打ったり打たれたりしながら、大げさに倒れたりしている、というのが現状なのに、なんで市場が右往左往する必要があるんでしょうか」、というのは、言われてみれば、その通りなのかも知れない。先に紹介した記事はいずれも「大変」というトーンなので、真逆だ。
・『米中は本気で戦う気などない  1ドル=105円台なんて、しばらく来るとは思ってなかったレベルですから、ドルが欲しかった人は「しめしめ」でしょう(元安の余波でアジア通貨が全面安となり、逃避資金として円が買われているわけです。FRB(米連邦準備制度理事会)がどーしたこーした、と言っている人がいますが、信じられませんね)。 一方、中国の習近平主席にしても、本気で喧嘩する気は毛頭ありません。このままプロレスをやり続け、来年の大統領選挙でトランプが負けてくれればラッキーだ、というモードにすでに入っています。「国有企業への農産物の輸入停止要請」はチョップより少し強力なバックドロップという感じですが(笑)、アメリカに致命傷を与えるわけではありません(アメリカはほかに売り先がいくらでもある)。 この話の中で最もまずいのは、お互いにエスカレートしていって、貿易摩擦のレベルではなく、米中によるイデオロギー(ここでは国家の思想体系)の対立になることで、そこまで行くならこれは大変な影響があります。このレベルはディールになりません。それこそ世界経済は凍り付くでしょう。 例えばアメリカが「中国共産党の1党独裁は許さん」、と言い出したり、中国が「アメリカこそ人権侵害を繰り返している(人種問題その他)」とやりだせば、合意などしようがなくなり、まさに米中激突。ただ、先ほど書いたように、お互いにそこまでは全く望んでおらず、どこかで手を打つということになるわけです。まさにトランプのプロレスに習近平が乗って見せた、ということに過ぎません。 繰り返しますが、貿易統計上、想像を絶するような大きなことは何も起きておらず、アメリカ経済は好調、中国経済はちょっと不調ですが、習近平の独裁体制は完璧です。一体だれが自らこれを壊したいと思うでしょうか。一番危ないのは、お互い妥協できない問題であって、いま起きている問題はいくらでも「ディール」ができることですから、何がそんなに問題なのか意味が分かりません。 むしろ日韓関係こそ、韓国が全くディールする気がありませんから、日本が譲歩しない限りこれはこれで大変な問題です。ただ、別に日韓がどうなろうとも世界経済にはほとんど影響がありませんから、それはある意味どうでもいいテーマです。韓国経済は塗炭の苦しみを味わうでしょうが、文在寅政権としてはそれで、「反日でまとまって国が一体となればそれでいい」、くらいに考えているんじゃないでしょうか。実際に支持率は上がっているわけですから、マッチポンプとしては「高性能」です』、「米中は本気で戦う気などない」が、「お互いにエスカレートしていって、貿易摩擦のレベルではなく、米中によるイデオロギー(ここでは国家の思想体系)の対立になることで、そこまで行くならこれは大変な影響があります」、というのは香港への中国人民解放軍による介入があれば、一気に火を噴くだけに、大いに気になるところだ。楽観的なぐっちーさんも、この点には警戒色を示し、ヘッジしているようだ。
・『株式投資の本質とは何か  ということで、貿易摩擦の激化、というなら、その証拠を見せてもらいたい。1年たってもほとんど何も大きな影響がないわけですから、今後もありません。ワタクシに言わせれば、摩擦にもなっていません。大統領選挙までまだ時間がありますから、トランプも今妥協する気は全くない。しばらくはプロレスが続く、ということです。 その意味で、マーケットとしては短期的にはチャンスなんでしょう。 クオリティーの高いものはそうはいってもこういう「プロレス」には強く、ワタクシが1980年代から保有しているコアポートフォリオの一部である、ジョンソン&ジョンソン(ティッカーシンボルはJNJ、ニューヨーク市場)は、市場全体が5日急落した中、130.16ドルで取引を終えましたが、前日比ではわずかマイナス0.91ドルでした。1ドルすら下がっていない。正直、もっと下がってくれれば買い増したのにね。 要するにそういうことです。いつも申し上げていますが、どうせ株式投資をするならこういう株を買うべきでしょう。あとは寝ていれば良いのです。これが投資の基本ですね。 ちなみに、日本株は全てとはいいませんが、残念ですが基本的に全くお勧め致しません。理由は有料メルマガにたくさん書いていますので、大変申し訳ありませんがお金を払ってご覧ください(笑)』、ジョンソン&ジョンソンは製薬、医療機器その他のヘルスケア関連製品を扱う超優良企業で、景気に左右され難い代表的銘柄なので、市場が急落しても下げは小幅というのは当然だ。「マーケットとしては短期的にはチャンスなんでしょう」、というのはその通りなのかも知れない。
タグ:東洋経済オンライン IMF 野口 悠紀雄 JBPRESS ジョンソン&ジョンソン 現代ビジネス 福島 香織 米中経済戦争 (その9)(人民元「破七」で金融戦争突入 捨て身の中国の勝算 米国相手に突っ張るしかない習近平 国民に「新長征」を強いる、米中経済戦争が 世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている 円高が日本経済を直撃する、ぐっちーさん「米中戦争で見落しがちな真実」 トランプと習近平はどこまで「本気」なのか) 「人民元「破七」で金融戦争突入、捨て身の中国の勝算 米国相手に突っ張るしかない習近平、国民に「新長征」を強いる」 人民元が1ドル=7元のラインを突破 「破七、守七」と呼ばれる1ドル7元ラインは、一種の心理ラインとされ、これを超えると、中国政府としても制御できない勢いで人民元暴落が起きかねないと言われていた 「破七」は自信の表れか? 人民元安はデメリットの方が大 貨幣戦争を仕掛けざるを得ない党内事情 「新長征」を呼びかけた習近平 香港も空港の占拠と閉鎖で、人民解放軍による介入が現実味を帯びており、極めて不気味だ テレビのニュースでは、空港の警備強化や、裁判所による占拠を不法とする判断などから、運行は再開され、混乱は多少落ち着きつつあるようだ トランプ大統領も人民解放軍による介入を牽制 「米、対中関税555品先送り 「第4弾」、スマホなど12月」 「NY株大幅高・円急落 米中摩擦懸念和らぐ」 「米中経済戦争が、世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている 円高が日本経済を直撃する」 エスカレートする米中貿易戦争 米中両国の経済に悪影響が及ぶ 今年4月に発表した「世界経済見通し」 米中貿易は、短期的には25〜30%。長期的には30〜70%ほど落ち込む 実質経済成長率(年率)は、中国は0.5~1.5%ポイント、アメリカは0.3~0.6%ポイントほど落ち込む リスクオフ志向が強まり金融市場が動揺 貿易戦争進展に伴って元安が進んでいる 通貨戦争になると日本は直接に影響を受ける 「ぐっちーさん「米中戦争で見落しがちな真実」 トランプと習近平はどこまで「本気」なのか」 アメリカの「対中貿易赤字」は高水準のまま 米中は本気で戦う気などない お互いにエスカレートしていって、貿易摩擦のレベルではなく、米中によるイデオロギー(ここでは国家の思想体系)の対立になることで、そこまで行くならこれは大変な影響があります 株式投資の本質とは何か
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