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日銀の異次元緩和政策(その27)(日銀次期総裁に「超リフレ派」急浮上、日銀総裁に就任すれば、全力でデフレ脱却実現する=本田・駐スイス大使、「黒田発言」の変化に見る日銀金融政策“微調整”の可能性) [経済政策]

日銀の異次元緩和政策については、9月25日に取上げたが、今日は、(その27)(日銀次期総裁に「超リフレ派」急浮上、日銀総裁に就任すれば、全力でデフレ脱却実現する=本田・駐スイス大使、「黒田発言」の変化に見る日銀金融政策“微調整”の可能性) である。

先ずは、10月26日付けダイヤモンド・オンライン「日銀次期総裁に「超リフレ派」急浮上、出口戦略最悪のシナリオ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・衆院選で大勝した安倍晋三首相の続投は、来年3月に任期が切れる黒田東彦日銀総裁の後継人事に影響を及ぼすのが確実。現実味を増すのが、首相への「アベノミクス」の指南役ともいわれる本田悦朗・駐スイス大使の総裁就任の可能性だ。これに対し黒田総裁の「再任」を求める声もあり、「異次元緩和」の「出口」はますます混沌としてきた。特集「砂上の楼閣 日本銀行」最終回は、「ポスト黒田」の総裁人事と金融政策の行方を考える。
▽日銀や財務省幹部が囁く「本田大使就任は最悪のシナリオ」
・「ここだけの話だが、今度だけは自民党の議席が減って、総理の発言力が弱くなるのを期待している」 解散総選挙が確実になっていた9月下旬、都内であった経済人らが集まる席で、日銀幹部が打ち明けた。 「選挙結果は次期総裁選出に影響が出るので、重大な関心を持っている。一番、(日銀に)来られて困るのは」と、この幹部が挙げたのが本田悦朗・駐スイス大使の名前だった。
・「総理は呼びたがっていると聞くが、自民党が勝って安倍続投で、本田大使が来るとなれば、最悪のシナリオだ」 同じような声は、財務省からも聞こえてくる。 「本人はやる気満々らしい。だが本田さんだけは、勘弁してほしい」
・異次元緩和が始まって4年半あまり。「2%物価目標」の達成時期は6回も先送りされてきた一方で、さまざまな「副作用」が目立ち始めた。 行き場を失った緩和マネーが、一部の不動産市場などに流れ込んで、「バブル」の様相。一方で、日銀による国債や上場投資信託(ETF)の大量購入で、「売り」がなくなった債券などの市場は機能しなくなった。
・「日銀による事実上の財政ファイナンス」で赤字財政をやりくりできてきた財務省も、財政再建が遠のくばかりの状況に危機感の方が強くなった。 こうした状況を受け、日銀内や、日銀と財務省の事務方の間では、水面化で超金融緩和を修正する「出口戦略」が検討されている。
・「いま以上のリフレ策はとりたくない。新総裁になるのを契機に、出口論議をやれる流れにしたい」(日銀幹部) だがそんな思惑もしぼんでしまった観がある。
▽アベノミクスの指南役で安倍首相に引き立てられる
・本田氏が、安倍首相の経済政策の「指南役」として注目されたのは、民主党政権で自民党が野に下っていたころだ。 リーマンショックや東日本大震災が重なって経済停滞が続く中で、自民党は「民主党政権には成長戦略がない」との民主党批判を強めていた。 その時に、財務省を退官し静岡県立大教授をしていた本田氏が、安倍氏に、超金融緩和による「円高是正」やインフレ目標導入などによる「デフレ退治」をアドバイスしたとされる。
・2012年11月の総選挙で、安倍自民党は、大胆な金融緩和、「インフレ目標」を公約に掲げて選挙で大勝。本田氏は、第二次安倍内閣の発足とともに、内閣官房参与になった。 政権発足後、ほどなくしての翌年1月、官邸で開かれた金融専門家会合。 政府側からは、安倍首相、麻生太郎財務相、甘利明経産相、菅義偉官房長官の4閣僚が出席。 民間からは、中原伸之・元日銀政策審議委員、浜田宏一・エール大教授、その後、日銀副総裁になる岩田規久男・学習院大教授ら、リフレ派を中心に6人が集まった。
・この席で、専門家側から、「2%物価目標」や日銀と財務省がそれぞれ役割分担をしてマクロ政策に取り組むことなどを掲げた「4提案」が、示される。 これが「デフレ脱却」に政府と日銀が連携して取り組むことを約束した「アコード」(政府と日銀との政策協定)の原型になった。 この時も、本田氏は政権側の一人として出席。「アコード」の文面作りに関与したとされる。
・「なぜだかはよくはわからないが、総理が本田氏のことをかなり信用していることは確かだ」。首相に近い経済人の一人は話す。 最近でも、リフレ派の官邸への影響力が根強いことを改めて印象付けたのが、7月に任期切れになった二人の日銀審議委員の後任選びだった。
・黒田総裁の緩和路線に慎重姿勢を続けていた2人の委員の後任に、財務省と日銀は、2人の推薦候補の名前を官邸に上げていた。 そのうち、鈴木人司・元三菱東京UFJ銀行副頭取は推薦通りに内定。だがもう一人の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士上席主任研究員は、「名前も聞かなかったし、まったくの(人選の)蚊帳の外だった」(財務省幹部)という。 積極的な金融緩和に加えて財政拡大を主張する片岡氏の起用には、リフレ派の助言があったとされ、「出口の議論が時期尚早だ、という官邸からのサイン」とも受け止められた。
・さらに総選挙前には、財政健全化計画の目標達成時期の「先送り」もばたばたと決まった。 こうした流れの中での安倍首相続投だ。首相は3期9年の長期政権を狙っているといわれ、“ポスト黒田”の総裁人事についても、「これまでの黒田路線をしっかりと進める」人物を挙げる。 そんな「首相の意中の人物」として本命視されるのが本田氏というわけだ。
▽総裁としての力量や手腕はまったくの未知数
・とはいえ、この4年半あまりを見れば、本田氏の「指南」がうまくいったとは言い難い。 ましてや日銀総裁としての力量や手腕となるとまったく未知数だ。 「物価目標は先送りされてきたとはいえ、いずれ次の総裁の5年の任期中には、いまのような金融緩和は不要になるはず。利上げに向かう局面で、リフレ一辺倒の主張をしてきた人物が、金融政策の舵取りをどうしようとするのか、まったく見えない」。市場関係者の一人は言う。
・「いざなぎ景気」を超える景気拡大が続き、バブル期並みの地価に加え、雇用も逼迫している状況だ。日銀が利上げに動こうとすれば、金利が急騰、国債や株式市場が思わぬ混乱に陥りかねない。さまざまな対話を通じて市場の思惑などを抑えながらの金利正常化への軟着陸を、経験もない総裁にうまくできるのか、というわけだ。
・一方で逆のシナリオもあり得る。「すでに米国の景気拡大局面は長く続いており、将来、調整局面があり得る。米FRBが利下げに早めに動こうとした時に、為替市場でまた円高に進みかねない。日本は、ゼロ金利・マイナス金利から出られないまま、さらに金融緩和を探らざるを得なくなる」(市場関係者) だが、すでに巨額の国債を購入、長期金利操作など、かなりの異例なことをやり、打つ手が少なくなっているのが実情だ。「ヘリコプターマネー」のような過激な政策に踏み込み、ますます泥沼化するリスクもある。
・同じリフレ派のなかにも「本田総裁」に難色を示す声は少なからずある。 「『出口』論をやるのは早いが、異次元緩和だけの一本足打法が限界にきているのは確か。今後の5年間の経済を考えた新たな戦略、枠組みが必要だ」。中原伸之・元日銀政策審議員は言う。 「グローバル競争や人口減少で日本経済は実質1%程度の成長を目指すのが精いっぱいだし、物価も上がらない。GDPを次の5年間で、620兆円程度まで増やすぐらいを目標に政策の枠組みを考えるべきだ」(中原元審議委員)
・中原氏が提言するのは、建設国債発行による年間10兆円程度のインフラ投資や日銀保有国債の一部の無利子永久国債への切り替え。「2%目標」は降ろさないまでも、新総裁の任期の最後の年、つまり5年先ぐらいに実現する目標にするという。 つまり量的緩和策を続けるが、需要創出は財政出動にシフトするというもの。建設国債を増発すれば、日銀も「玉不足」が懸念されている国債購入を続けられるし、日銀保有の国債を無利子にすれば、財政の負担が減り財政出動をしやすくなるというわけだ。
・こうした枠組みの変更には、官邸だけでなく、与党や財務省との折衝も必要になってくる。中原氏は「新総裁は、大きな枠組みの転換を構想し、やれるのかどうか」「安倍首相が3期目の任期いっぱいやったとしても、次の日銀総裁はさらに2年近く、任期が残っている。唯一のサポート役の首相がいなくなった時に、誰が本田総裁を支えるのか」といった懸念も示す。
・本田・駐スイス大使は、財務省出身とはいえ、在外公館や国際機関での勤務が長く、退官時は大臣官房の審議官だった。これまで日銀総裁になった財務省OBがいずれも次官や財務官経験者だったのに比べると、日銀という大組織を切り盛りし、さらには与党や霞が関、経済界との人脈を駆使し、政策を進める力量、経験に物足りなさがあるということなのだろうか。
▽「本田さんよりはまし」と浮上する黒田総裁再任説
・こうした中で、「本田総裁」の可能性が囁かれるほど、逆に「黒田総裁再任説」が浮上することにもなっている。 誰が総裁になっても、難しい舵取りを迫られる状況で、「これまでの議論や政策の流れがわかっている黒田総裁の続投が無難」と、市場関係者は言う。 首相や菅官房長官らの信認が厚いうえに、日銀内からも、就任直後のアレルギー反応のようなものは表向き少なくなった。
・「安定感はあるし、国会答弁や記者会見も安心できる。出口戦略もまったくノーという感じではない」 ある財務省OBも、「本田さんよりは、黒田総裁再任の方がましだ。続投要請を受けたら、首相に、異次元緩和の路線修正を言って、それを条件に続投するというのが一番いいのだが」と、本音をもらす。
・一方で、ポスト黒田で名前が上がる日銀OBの一人は、「いまの状況では、後任を引き受けても、尻拭いが大変なだけ。ここまで金融政策を無茶苦茶にしたのだから、そこは責任をもって正常化してほしい」と語る。 黒田総裁が再任された場合、副総裁人事はどうなるのか。これまでのように「財務省出身、日銀出身、学者」の組み合わせできた総裁、副総裁2人の「トロイカ体制」が続くとすれば、副総裁は雨宮正佳・日銀理事が昇格し、学者では元副財務官でもある伊藤隆俊・コロンビア大教授といった組み合わせが予想されている。
・一方で、黒田氏が今年10月には73歳になり、再任となれば5年後は78歳と高齢になることや、いずれ日銀として異次元緩和の路線を修正しようとした時に、これまでの発言や路線とどう整合性をとっていくのか、という問題もある。 2%目標までは至らなくても、物価に一定のめどがついた段階で、任期途中で交代するという見方や、再任がない場合は、黒田路線を支えてきた中曾宏副総裁の昇格という見方までさまざまだ。
・ただいずれにしても、「安倍首相の考え一つだ」とある財務省幹部は言う。 「今回の選挙結果で、『安倍一強』がさらに強まる感じがする。予算編成なども、今年は、首相と麻生大臣で握ったら、それで決まり。誰も変えられない。総裁人事も、結局は総理の胸一つだ」 「本田総裁」という大胆な策で、「アベノミクス」の再活性化を図るのか、「黒田総裁再任」で、成長重視の旗を降ろさないまま、異次元緩和の現実的な修正で軟着陸を目指すのか。 はたまた「第三の選択」をするのか。 トランプ訪日や来年度予算編成を終えた年明けころには、「決断」をすると見られている。
http://diamond.jp/articles/-/147058

次に、11月9日付けロイター「日銀総裁に就任すれば、全力でデフレ脱却実現する=本田・駐スイス大使」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・安倍晋三首相の経済アドバイザーとして知られる本田悦朗・駐スイス大使は8日、ロイターとのインタビューに応じ、次期日銀総裁に指名され就任が決まれば、2%の物価目標実現によるデフレ脱却を全力で実現すると述べ、ポストに強い意欲を示した。また、消費増税までに強じんな日本経済の実現が必要であり、拡張的な財政政策が必要であるとの見解を示した。
▽目標未達の黒田総裁、続投望ましくない
・本田氏は、2014年4月の消費増税によってアベノミクスの効果が相殺されたとして、金融緩和と拡張的な財政支出を同時に展開しなければデフレになじんだ人々の物価観を転換することはできないと強調。 黒田東彦総裁の大胆な金融緩和を評価しつつも「(就任して)5年目なのに物価は(生鮮・エネルギーを除く)コアコアで0.2%しか上昇していない(9月消費者物価指数)。これをどう評価するかだ」と指摘し、デフレ脱却には「人心一新が必要」と強調した。
・仮に本田氏が総裁に選ばれた場合、副総裁に適任な人物としては、1)日銀出身者、2)学識経験者──を挙げた。 「デフレ脱却後の(金融緩和からの)出口では、金融機関の規制に詳しい副総裁が必要で、結果的に日銀出身者になるのではないか」とした。加えて「現在の岩田規久男副総裁のように政策の理論的支柱も必要」と説明した。
・今後の金融政策運営を巡っては「政策の持続性を確保する意味で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)は望ましいが、急激な円高などショック時には、現在年間50兆円ペースに落ちている国債買い入れを80兆円に戻すか、100兆円程度まで増額すればよい」とした。
▽理想は増税凍結望ましい
・本田氏は、税収拡大ペースと比較して歳出拡大が緩やかであるとし現状の財政運営を「緊縮的」と表現。企業部門の貯蓄超過が解消されることを目指し、必要であれば補正予算・当初予算の編成を通じ、財政を「より拡張的」にすべきと論じた。 2019年に予定されている消費税率の引き上げについては「理想的には凍結が望ましい」としつつ、自民党が衆院選で「引き上げを公約とした事実は重い」と指摘。
・現実的には「増税に耐えうる強じんな日本経済を作るしかない」と述べた。消費増税分は「全額社会保障に充当して欲しい」とも付け加えた。 デフレ脱却を確実にするため「2013年に策定した政府・日銀の共同声明を書き改め、名目600兆円のGDP(国内総生産)を共通目標に掲げるのが望ましい」と指摘した。
https://jp.reuters.com/article/boj-governor-idJPKBN1D823C

第三に、東短リサーチ代表取締役社長の加藤 出氏が11月23日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「黒田発言」の変化に見る日銀金融政策“微調整”の可能性」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・全品280円(税抜)を28年以上維持してきた焼き鳥チェーン「鳥貴族」が、10月に298円へ値上げした。人件費や原材料費の上昇が理由だ。 8月下旬の値上げ発表時に同社の株価は急騰したが、マスメディアに大きく取り上げられたことが、販売上はマイナス効果になってしまったようだ。10月は前年同期比で来客数が7%減、既存店の売上高は3.8%減となり、株価も下落を見せた。
・10月は週末の天候が悪かったこともあり、値上げの印象が薄らげば先行きある程度は客足が戻ってくるのではないかと推測される。とはいえ、日本の消費者は値上げに極めて敏感に反応することをこの事例はあらためて示した。
・一方で米国の場合、飲食店の値上げは日常茶飯事だ。米ニューヨークで2001年から今年にかけての16年間において、「マグノリア・ベーカリー」のマフィンは1.25ドルから3.00ドルへ140%上昇。「カッツ・デリカテッセン」のパストラミ・サンドは8.95ドルから19.95ドルへ123%上昇した。それでも両店は人気を維持している。28年以上も価格を据え置き、今回6.4%値上げしただけの鳥貴族が消費者に驚かれてしまう日本とは、状況が随分と異なる。
・ただし、米国でも今後は外食の値上げペースが鈍化する可能性がある。景気拡大局面の割に労働者の賃上げが遅い状況が続くと、レストランの値上げについていけない人が増えてくるからだ。 その予兆はすでに現れていて、先日訪れた米サンフランシスコでは、飲食店に来て食べる人が中所得層で減ってきているとの話が聞かれた。インターネットのケータリングサービスを使って料理を取り寄せ、スーパーで買ったワインで友人たちとホームパーティーをすれば、はるかに安く済ますことができる。
・先進国において多くの労働者の賃金上昇ペースが遅くなっている現象には、グローバリゼーションによる低賃金国の労働者との競争に加え、経済のデジタル化も影響している。製造業中心の経済では、工場における現場の「カイゼン」で生産性が向上した場合、収益増加の果実は現場の労働者にも配分された。しかし、デジタル化が進んだ経済では、収益向上の果実は一部の開発者に集中しやすい。
・その傾向が日本でも先行き強まる可能性があるとすると、インフレ率が安定的に2%以上になるのは困難といえる。だが、10月の衆議院選挙で与党が圧勝した結果、安倍政権はアベノミクスが国民に支持されたと受け止めている。そのため、来年4月に任期が終わる日本銀行の黒田東彦総裁は続投の可能性が高そうだ。たとえ別人物が新総裁になっても、2%のインフレ目標を掲げて出口政策には向かわない姿勢を続けるだろう。
・問題なのは、5年程度の中期金利はマイナス、10年金利でもゼロ%ちょっと、という今の金利水準を日銀が長く継続すると、地域金融機関の経営を深刻に悪化させ、彼らの資金仲介機能を低下させる点だ。それは金融緩和効果をかえって後退させてしまう。 実は、黒田総裁は以前と違い、最近の2回の講演(名古屋とスイス・チューリヒで開催)の中で、そのリスクにはっきりと言及した。来年も米欧の中央銀行が金融政策正常化を進めて円安がじわりと進むならば、出口政策ではないが、金利水準を若干持ち上げるファインチューニング(臨機応変な調整)を日銀が決断する可能性が、来春以降高まってくると推測する。
http://diamond.jp/articles/-/150146

第一の記事で、黒田総裁の後任候補として、本田悦朗・駐スイス大使は日銀、財務省とも、 『本田さんだけは、勘弁してほしい』、と忌避しているようだ。 『「物価目標は先送りされてきたとはいえ、いずれ次の総裁の5年の任期中には、いまのような金融緩和は不要になるはず。利上げに向かう局面で、リフレ一辺倒の主張をしてきた人物が、金融政策の舵取りをどうしようとするのか、まったく見えない」』、と市場関係者が言うのももっともだ。さらに、『リフレ派のなかにも「本田総裁」に難色を示す声は少なからずある』、というのでは、『「本田さんよりはまし」と浮上する黒田総裁再任説』、というのも理解できる。
第二の記事で、渦中の本田悦朗・駐スイス大使自身が、『日銀総裁に就任すれば、全力でデフレ脱却実現する』、とインタビューで語っているのには、心底驚いた。というのも、日銀総裁は国会承認人事で、国会承認前にここまであけすけに抱負を語る、というのはこれまでは考えられないことだったからだ。彼を日銀総裁にするという国会審議が仮に行われるのであれば、野党には追求してほしいところだ。
第三の記事で、 『10月の衆議院選挙で与党が圧勝した結果、安倍政権はアベノミクスが国民に支持されたと受け止めている。そのため、来年4月に任期が終わる日本銀行の黒田東彦総裁は続投の可能性が高そうだ。たとえ別人物が新総裁になっても、2%のインフレ目標を掲げて出口政策には向かわない姿勢を続けるだろう』、『来年も米欧の中央銀行が金融政策正常化を進めて円安がじわりと進むならば、出口政策ではないが、金利水準を若干持ち上げるファインチューニング(臨機応変な調整)を日銀が決断する可能性が、来春以降高まってくると推測』、などの指摘は説得的である。ただ、出口政策が当面先送りされるとすると、日本経済にとってのリスクも、その分高まると覚悟する必要がありそうだ。
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電気自動車(EV)(その2)(トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由、EVシフトで明暗分かれる 自動車部品メーカーの末路、トヨタ連合がEVで反撃 基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず、EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する) [科学技術]

電気自動車(EV)については、9月20日に取上げたが、今日は、(その2)(トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由、EVシフトで明暗分かれる 自動車部品メーカーの末路、トヨタ連合がEVで反撃 基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず、EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する) である。

先ずは、10月31日付けダイヤモンド・オンライン「トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・11月5日まで東京・有明の東京ビッグサイトで開かれている東京モーターショーでは、各社が電気自動車(EV)シフトを打ち出している。その一方で、ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)などを含めた全方位体制を貫く姿勢を示したメーカーもある。トヨタ自動車とホンダだ。
・流線形で漆黒のボディは、まるで黒豹のようだ。その姿をカメラに収めようと、周りを何重にも囲む来場客がシャッターを切る。スポットライトとカメラのフラッシュを浴び、その車は恍惚としているようにさえ見えた。 東京モーターショーの一般公開で初の日曜日を迎えた10月29日。トヨタが世界初公開したコンセプトカー「GR HV SPORTS concept」の周囲には多くの人だかりがあった。GRとは、トヨタが世界ラリー選手権などに参戦するモータースポーツ活動「GAZOO(ガズー)レーシング」の頭文字から名付けられたスポーツカーブランドだ。
・電気自動車(EV)シフトが加速するこの時代、他の自動車メーカーならEVタイプのスポーツカーを展示しそうなものだが、GR HV SPORTS conceptは「スポーツカーと環境技術を融合した新たなクルマの楽しさを提案する」狙いの下に開発されたハイブリッド車(HV)だ。
・その隣に展示されているのは、これまた漆黒のボディの新型「センチュリー」だ。センチュリーといえば、皇室や政治家、財界トップ御用達として知られるトヨタの最高級車。2018年半ばの発売を前に、20年ぶりにフルモデルチェンジされた3代目となる。このセンチュリーもまたHVだ。
・トヨタが「究極のエコカー」と位置付け、莫大な開発資金を注ぐ燃料電池車(FCV)のバスも展示されている。この燃料電池バスは、燃料となる水素を車載の高圧タンクから燃料電池に供給し、そこで空気中の酸素と化学反応させて作った電気でモーターを駆動させ走行する。世界初の量産FCV「MIRAI」向けに開発したものと同じシステムで、外部への電力供給能力を備えているため、災害などの停電時に避難所や家電の電源としての利用も可能だ。
・すでに今年、トヨタは東京都交通局へ2台の燃料電池バスを納車しており、今年3月から東京駅丸の内南口~東京ビッグサイト間を運行。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、100台以上導入予定といい、トヨタの開発担当者は「東京都だけでなく、多くの自治体から引き合いがある」と話す。
・一方、トヨタは今回、EVコンセプトカーも出展している。それが「TOYOTA Concept-愛i」だ。今年1月に米国ラスベガスで初公開した4輪モデルに加え、今回のモーターショーで小型モビリティ「Concept-愛i RIDE」と、セグウェイ風の3輪電動スクーター「Concept-愛i WALK」を新たに追加した。
・実は、このシリーズの開発を進めているのは、EV開発部隊として昨年12月にトヨタが発足させたEV事業企画室だ。だが、開発の主眼を置いているのはEV技術そのものというよりも、人工知能(AI)技術にある。 車がドライバーの表情や動作、疲労度や覚醒状態などを分析し、感情や好みを理解する。状況次第で自動運転モードに切り替わったり、話し掛けたりする。コンセプトは「人を理解し、共に成長するパートナー」を目指すことにある。
・こうしたトヨタの出展車両から見える戦略は、決してEVに傾斜することはなく、HVやFCVなどにウイングを広げ、市場がどう振れても対応できる全方位体制を築き上げることだ。EVの領域はあくまで近距離コミューターなどで、HVとプラグインハイブリッド車(PHV)が乗用車、FCVは路線バスや宅配トラックに棲み分ける。その方針にブレがないことを、東京モーターショーで改めて示した形だ。
・こうした全方位戦略を貫く自動車メーカーは何もトヨタだけではない。 ホンダも今回、EVコンセプトカー「Honda Urban EV Concept」を日本初披露し、このモデルをベースとしたEVの市販化を2019年に欧州で、2020年には日本で開始する方針を明らかにした。ホンダは2030年までに販売総数の3分の2を電動化することをすでに発表しており、EVの発売はその戦略の一貫だ。
・だが、ホンダもHVを90年代から市販化し、累計販売台数は200万台を超える。八郷隆弘社長が「電動化の中心はあくまでHVとPHV」と明言している通り、EVが収益の主力になるとは考えていない。事実、モーターショーでは「CR-V」や「ステップワゴン」などHVのラインナップ拡充のPRも怠っていない。
・トヨタとホンダに共通するのは、他社の追随を許さないHVの高い技術を持つがゆえに、その先行者利益を長く享受したい思惑だ。ゆえにEVへの本気度は相対的に低くなる。 今、自動車産業は100年に一度の大変革の時代を迎える。欧州や中国は一気にEVへシフトし、HV技術で先行するトヨタやホンダの追撃にかかる。全方位戦略はその攻勢に耐えられるのか。勝負の趨勢はそう遠くない未来に見えてくる。
http://diamond.jp/articles/-/147800

次に、11月2日付けダイヤモンド・オンライン「EVシフトで明暗分かれる、自動車部品メーカーの末路」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・電動化、自動運転、コネクテッド。11月5日まで東京・有明の東京ビッグサイトで開かれている東京モーターショーの見どころの一つは、この3分野への各社の対応だ。これらに強みを持つ自動車部品メーカーの存在感は今、急速に高まりつつある。モーターショーでも、業界の垣根を超えてしのぎを削る開発競争の一端が垣間見える。
・「得意とする電子・電動化技術を生かし、これから大きな成長分野となる電動化や自動運転の波に対応する事業を力強く推進していく」 日立オートモーティブシステムズの関秀明社長は東京モーターショーでそう話し、電動化システムの3大基幹部品であるモーター、インバーター、リチウムイオンバッテリーなどの事業拡大に注力する方針を示した。 日立オートモーティブシステムズは、総合電機メーカーである日立製作所の100%子会社で、車の中身を支えるメカトロニクス技術やソフト制御技術に強みを持つ。今年7月にはホンダと電動車両用モーターの開発、製造、販売を行う合弁会社を設立し、電動化シフトへの足場固めを進めている。
・車の自動運転に欠かせない基幹部品の開発にも注力する。今回の東京モーターショーでは、車が走行中に障害物をリアルタイムで検知する、世界最小クラスの遠距離レーダーを展示。これまで困難だった遠距離のミリ波を効率よく送受信できるようにし、車の前方200メートル、左右18度の検知性能を確保したという。2020年の製品化を目指す。
・三菱電機も電動化や自動運転、コネクテッドなどの事業強化を鮮明にする。これら三菱電機の最新技術を搭載したコンセプトカーが「EMIRAI4」だ。1999年の「OMNI1」から数えて14台目のコンセプトモデルとなるEMIRAI4は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)上に車が進むべき道路や車線をAR(拡張現実)で表示する機能や、ドライバーの顔の向きや視線から脇見・居眠りを検知し自動運転から手動への切り替えを支援する機能などが盛り込まれ、まさに未来のモビリティを体現する。
・今回の東京モーターショーに出展する各メーカーのトップが口をそろえるのは「自動車産業がこれまでにない大きな変革期にある」という認識だ。従来型のエンジン車がEVに置き換われば、約4割の部品が不要になるとされる。特にエンジン周りに関わる部品メーカーには「生き残りをかけた戦いがこれから始まる」との危機感が強い。
・一方で電動化技術や半導体、人工知能(AI)などの強みを持つメーカーにとっては商圏を拡大するチャンスだ。国内外の電機メーカーやIT企業などは一気呵成に攻勢を強める。 日本の製造品出荷額は2000年代以降、電機機械が韓国や台湾の台頭で衰退したこともあり自動車部品産業への依存度が大幅に増加した。素材を含めた就業人口は130万人に上り、日本の製造業は自動車部品産業の“一本足打法”というのが現状だ。その大黒柱が倒壊するような事態となれば、日本経済への打撃は計り知れない。
・100年に一度の大変革期に自動車産業は果敢に立ち向かうことができるのか。生き残りをかけた新時代の覇権争いが始まろうとしている。
http://diamond.jp/articles/-/147929

第三に、11月9日付けロイター「トヨタ連合がEVで反撃、基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず」を紹介しよう(▽は小見出し、社名のあとの証券コードは省略)。
・電気自動車(EV)で出遅れるトヨタ自動車を中心とした企業連合が、ようやく「反撃」の動きに出始めた。EV基盤技術の標準化だ。部品のモジュール化が一段と進むEVは、日本のものづくり技術の優位性が失われるリスクも高まる「両刃の剣」でもある。相次ぐベンチャーなどの参入も自動車業界の勢力図を変える可能性を秘める。世界的なEVへのうねりの先にどのような未来像があるのか。各社の手探りが続きそうだ。
▽グループで開発・コスト削減
・「未来の車を決してコモディティ(汎用品)にしたくない」――。トヨタの豊田章男社長が抱いた思いはマツダとの提携、そして10月にデンソーも加わりEVの基盤技術開発会社設立へとまず結実した。 複数企業が、軽自動車からトラックまで幅広く展開できる同じプラットフォーム(車台)、駆動モーター、電池などを開発・共有すればコストを下げられる。その上で、個性を出しにくいEVで「いかにブランドの味を出すかが挑戦だ」と豊田社長は話す。
・永田理・トヨタ副社長は7日の決算会見で、この新会社で「みなで力を合わせ、コストダウンを図りながら、よりよい電動化戦略を進めたい。いろいろな会社の参画を期待したい」と呼びかけた。傘下の日野自動車やダイハツ工業はもとより、今のところ出資先のスバル、提携協議中のスズキが参画に前向きだ。
・「チーム・ジャパン」としてやれることを考えないと欧米・中国勢などと対抗するのは難しいと、スズキの鈴木俊宏社長も2日の決算会見で指摘。好業績をけん引したインドでEV化が「一気に進めば、足元をすくわれるのではと非常に心配」と危惧する。
・独フォルクスワーゲンは、すでに欧米で投入しているEV「e―ゴルフ」の受注を10月から始めた。同社の日本でのEV販売は初めて。2020年に専用車台「MEB」ベースのEVを発売予定で、25年にはグループで新車の4分の1に相当する300万台のEV販売を目指し、同年までにEV50車種を投入する計画だ。
・EVで先行してきた日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の連合も20年までにEV専用車台を開発し、モーターと電池も共有。22年までに3社で計12車種のEVを投入する方針。
▽技術の優位性維持「楽観できない」
・日産の新型EV「リーフ」開発責任者の磯部博樹氏は、ガソリン車よりも静かなEVでは「人は細かい振動、モーターや風の音などがもっと気になり出す」と話す。ガソリン車以上に求められるEVの静粛性や振動抑制などに、日本車大手が長年磨いてきたすり合わせの技術こそ「今後も生きる」と強調する。 米テスラ(TSLA.O)、掃除機で知られる英ダイソンが20年までに開発を目指すなど、EVではベンチャーや異業種からの参入も相次ぐ。
・トヨタ系部品会社の幹部は「車は人の命を運ぶ。ベンチャーなどがいきなり安全な車を作るのは難しい」と冷ややかだ。しかし、何年か経って経験を積めば、新規参入組に技術も追いつかれる恐れがあり、自社のものづくりの力が優位であり続けるかは「楽観できない」という。 EVは一般的な自家用車から富裕層向け、移動弱者用など各社用途が異なり、必ずしも同じ土俵で直接戦うわけではない。
・だが、車の保有から利用への動きが強まるなど消費者の価値観は多様化している。日本車が売りにする高品質だけでは勝てなくなるかもしれず、シェアリングサービスが拡充すれば、保有需要を侵食する可能性がある。
▽ベンチャーは水平分業
・政策の後押しでEVの普及が進むインドや中国の市場をにらみ、ベンチャーは動き始めている。  慶応義塾大学の清水浩名誉教授は、インドで100万円以下で買えるEVの普及を目指し、同国で多く利用されるタクシーを開発中だ。清水氏は早くからEV開発に従事し、04年にEV「エリーカ」を開発したことで知られる。
・同氏は、インドのタクシーは軽自動車ベースのマルチ・スズキ「800」が多く、年間20万台の市場規模があるが、まだ足りないとみている。 開発中の車は床を低く、車内や荷室を広くし、航続距離は350キロ超と1日の平均走行距離(約150キロ)に十分な性能にする。
・NPO法人インドセンターのヴィバウ・カント・ウパデアーエ代表は「マルチ・スズキもそうだったが、普及させるには政治の力」が必要として、清水氏の活動を全面支援する。3年後には現地で生産を始め、タクシーから自家用車への展開も見込む。「来年にはEV会社がインドで5社ほど生まれるだろう」といい、車台や部品を他社に提供することも検討している。
・ベンチャーのGLM(京都市)も「水平分業型ビジネスモデルによる新しいものづくり」(小間裕康社長)を進める。 トヨタ出身の技術者らを採用し、EVのスポーツ車を15年から量産。19年には4000万円の高級EVを日本や欧州、中国、中東などで売り、販売1000台を目指す。7月には香港の投資会社傘下入りを発表し、資金力もつけた。
・部品最大手の独ボッシュなど多くの企業が、すでにGLMと組む。同社は中国企業などにEVの車台やモーター、電池をセット販売することも事業の柱にする。GLMと清水氏の会社は米アップルなどと同様で自社工場を持たない。
・トヨタなどの日本車大手がEVでも勝つためには何をすべきか――。 世界の車大手に計測機器などを提供する堀場製作所の堀場厚会長は、ガソリン車などで長年培った技術、「付加価値の高いノウハウ」を磨き続けることだと指摘。デジタル家電で日本勢の衰退を招いた敗因の1つは、技術者の「敵陣流出」だったことにも触れ、すぐには収益にならない研究開発でも技術者を逃がさず「長く育てる」ことだと強調する。
・欧米の車メーカーや新規参入企業などはこれまでの「車を作って売る」だけでなく、車台や部品、サービスの提供など新たな収益源も得ようとしている。 コンサルティング会社ローランド・ベルガーの貝瀬斉パートナーは、日本車大手は戦場の広がりを念頭に置いて「どこでどういう価値を提供し、利益を上げるのか」をしっかり考えることが重要、と話している。
https://jp.reuters.com/article/toyota-ev-idJPKBN1D80EI

第四に、ITジャーナリスト・ライターの中尾真二氏が11月27日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・このところ自動車業界が騒がしい。タカタ、神戸製鋼、三菱自動車、日産、スバルのスキャンダルを見るに、自動車業界の劣化が止まらない、と言われても反論できない状態だ。自動車業界を中心とする製造業は、日本の産業の根幹を支える。この状況に暗澹たる気持ちになる。 別に憂国の士を気取るつもりはないが、このままでは本当に日本の産業はダメになりかねないと思っている。
・これにはメディアの責任が大きい。テレビなどでは「日本人すごい!」という切り口で、日本の文化や産業の良さをことさらに強調している。日本人の自己満足を満たすように作るメディアの「自己満足バイアス」は、衰退の裏返しではないのか。
▽EVよりハイブリッドがいい、と安心しきっている場合か
・どのような点で危機感不足を感じるのか。国内自動車産業に根付くマスコミやジャーナリストの危機感不足である。筆者も足元はこのメディア業界に属しているため、その空気感は肌で感じる。 記事などで目立つ論調は、ざっくり言えば「EVは普及しないのでハイブリッドで十分」という意見だ。 正直なところ、界隈で取材を重ねる筆者も近い考えを持った時期もあった。
・しかし、日本や欧州においてEV(EVはFCV含むZero Emission Vehicle)の普及には時間がかかるものの、この流れは止められないことは誰もが認めるはずだ。グローバルでは中国のNEV法が施行される2019年がひとつのターニングポイントになるだろう。結果、筆者の意見としては「慌てる必要はないが、静観している場合ではない」というものだ。
・この現状で自動車業界の関係者やアナリストには、日本の自動車業界を良くも悪くも信頼しきっている論調が強い。 曰く、「EVはトータルでエコではない(Well to Wheel:油田から車輪まで。ちなみにWell to WheelでCO2排出量はEVの方が内燃機関よりも低いと言われている)」「製造から廃棄までの排出CO2を考慮せよ」「モーター、バッテリー技術はコモディティ化しているので日本メーカーが本気を出せばすぐに追いつける」「走行距離、充電時間、コストなどからEVは市場のメインストリームにはならない」といった声だ。
・このような論調にあえて警鐘を鳴らしたい。そこには理由がある。 というのは、この状況が出版や家電といった衰退産業における、かつての論調に通じるものを感じるからだ。
▽自動車も、出版や家電と同じ道を歩むのか
・状況変化に対して楽観視した結果、「ゆでガエル」になった日本の産業をいくつか知っている。念のため、ゆでガエルとは、水から火にかけられたカエルは徐々に温められるため茹でられていることを知らず、気がつくころには茹で上がっているという状態だ。
・出版業界がわかりやすい。筆者はエンジニアを経て紙の時代から出版業界に入り、技術系の書籍や雑誌に20年以上携わってきた。出版業界もいまや構造不況業種といってよい。あちこちで制度疲労を起こしている。出版業界は、独占禁止法の例外規定による価格維持制度と、取次という特殊なサプライチェーンの成功事例から脱却しきれず、デジタル対応を始めとする事業転換のタイミングを逃した。従来型の流通を軸とした既得権の範囲にとどまるビジネスが多く、投資機会も逸している。結果として衰退は現在進行系である。
・取材先としてウォッチしてきた家電や電子機器業界も然り。独自技術と品質へのこだわり(自体は悪くはないのだが)が、結果的に変革を阻害し、後発国に出し抜かれた。往年の日本ブランドがいくつも中国資本となり、残っている企業はほぼ国内市場でしかプレゼンスを発揮できていないのは周知である。 どちらの業界も既存ビジネスの成功体験から抜け出せず、環境変化を否定的かつ楽観的にとらえ、「まだいける」という判断ミスと、機会損失を生んだ。これらの蓄積が構造不況につながり、産業衰退を引き起こしたと言っては言い過ぎだろうか。
・筆者には、前述のような自動車業界におけるメディアの楽観的かつ現状肯定的な論調が、かつての出版業界や家電・電子機器業界の声と、どうしてもかぶって聞こえてしまう。
▽業界が思っているほど参入障壁は高くない
・ならば、ゆでられたカエル側の視点で、なにか教訓はあぶりだせないだろうか。 クルマづくりは無数の部品と多数のコンポーネントの組み合わせだ。単に組み立てるだけでなく完成品としてのバランスと協調は、モーターやバッテリーを調達できる程度では、難しいという意見がある。つまり、大手自動車メーカーにだけクルマ作りの素地があるという見解だ。
・これに対しての反論はテスラの例がいちばんわかりやすい。テスラは生産体制や品質にトラブルは見られるものの、着実に課題に対応している。 自動車業界が思っているほど、すでに自動車という製品は特殊なものではないのかもしれない。日本ではGLM、クロアチアのリマック・アウトモビリといったEVメーカーの例もある。スーパーカーばかりではない。小型モビリティのEVメーカーは国内外に無数に存在する。その中には大手メーカーをスピンオフしたエンジニアがかかわっていることもある。
・確かにメルセデスやトヨタのようなクルマは作れないかもしれないが、大手完成車メーカーもすべて独自技術で成立しているわけではない。関連する無数のサプライヤーやパートナーの分散したノウハウは無視できないものだ。 したがって現在、世界の主要メーカー以外はクルマが作れない、というのは驕り以外のなにものでもない。
・日本の家電メーカーは、この驕りによって韓国や中国のメーカーに負けた。いまでも日本製品のブランドは残っているが、グローバルのコンシューマ向け市場はサムスン、LGに押さえられ、通信機器やPCでは、HUAWEI、レノボ、ASUSに勝てないでいる。日本市場だけ見ていると実感がわかないかもしれないが、海外では「日本製品は品質が高い」という神話だけが生き残っており、市場では日本製品はほとんど見かけない。品質だけでは勝てないグローバル市場の現実だ。
▽EVは当面普及しないという楽観はガラパゴス携帯の失敗と同じ
・EVは当面実用化されない、という論調は最近は収まりつつあるが、充電スポットの整備や充電時間を考えて、EVの普及は相当な時間がかかるため、じっくり腰を据えてかかればいいという意見は根強い。これは総論としては間違っていない。たとえば、明日から世界中の内燃機関自動車の製造をストップしたとして、街中のクルマがEVに置き換わるには十年単位の年月が必要だ。
・しかし、現実にZEV規制(新車生産のゼロエミッションビークル比率)が始まれば、状況は変わってくるだろう。もちろんそれでも市場や産業界が追従せず、普及しない可能性もある。現在の基準で判断するのは危険だ。
・これと本質的に似た状況で、結果失敗をしたのが通信事業者と携帯電話メーカー。いわゆるガラパゴスと言われた現象だ。 ガラパゴスについて改めて説明するまでもないと思う。 グローバルで進む通信事業の分社化、オープン化を否定し、独自の機能品質にこだわったガラケーエコシステムとその崩壊に至る一連である。NTTなど通信キャリアの解体(分社化)ができないため、メーカーは端末ビジネスを放棄せざるを得ず、キャリアはARPUビジネス(ユーザー当たりの利益)から抜け出すことができず、直営店舗でさえあやしげな抱き合わせ契約と、高価な端末の分割払いでユーザーの囲い込みに腐心している。しかも売れている端末は海外製品ばかりだ。
・思えばかつて、通信事業者や端末メーカーも「スマートフォンは時期尚早」「端末と回線を切り離すと品質が維持できない」「iPhoneや中国製品に脅威となる新技術はない」などと豪語していた。どれも当時の市場環境からすると間違いではなかった。しかし気がつけばこの有様だ。日本は、世界有数の通信インフラと関連要素技術を持ちながら、国際競争力を発揮できないどころか、国内でも凡庸な商用環境しか提供できていない。
▽スマホやITではなく日本経済はクルマが売れてナンボ
・自動車業界に話を戻す。 内燃機関を捨ててすべてをEVにしろとまでは言わない(独自路線を行くなら、それもひとつの戦略ではある)。 「事が動いてからで間に合う」といった認識が最も危険なのだ。 「焦らないでいい」と「なにもしないほうがいい」ということは決してイコールではない。 結果としてなにもしなかったり、既存のビジネスにもたれたままだと、国内自動車産業は、ここまで述べたようないくつかの「ゆでガエル」産業と似たような末路を辿ってしまうかもしれない。
・バッテリーやモーターについて、先端を行く技術を持っているにもかかわらず、後ろ向きにも見えるガソリン車にこだわるのはなぜだろうか。FCVを800万円で市販できるなら、なぜもっと現実的なEVの市場投入に躊躇するのか(大手メーカーが考えていないわけはないだろうが)。世界で戦う自動車メーカーを複数擁する日本の自動車業界であればこそ、もっと強く先進性を押し出すべきだろう。ガソリンもEVも両方やればいい。現にダイムラーもBMWもGMもそうしている。
・すでに通信機器、PC、スマートフォン、ソフトウェア、Webサービスといった領域で、日本企業はグローバル市場で総崩れ状態である。自動車産業もそうなってしまったらと考えると、いたたまれない。 スマートフォンが売れても喜ぶのは海外メーカーばかりかもしれない。政府や自治体の公募でNECや富士通が巨大プロジェクトを落札しても購入されるPCはすべて中国資本になろうとしている。
・日本のソフトウェア産業は、特殊なSIゼネコン構造により海外でのプレゼンスはほぼゼロだ。ソフトウェアサービスやインターネットビジネスにおいては、Google、Amazon、Facebookといったプラットフォームに依存せざるをえない。
・あえて極論すれば、国内で新興IT業界がいくら儲かっても日本全体の景気は良くならない。せいぜい、イロモノIT社長が六本木ヒルズで女子アナ合コンを開くくらいの経済効果しか期待できない。シャンパングラスタワー効果は、リアルにシャンパングラスタワーをやれということではない。
・日本の基幹産業である自動車および製造業は、日本経済そのものに与えるインパクトが大きい。10万円のスマホが10台売れるより、クルマ1台売れたほうが多くの国内産業を救えるかもしれない。クルマの所有が進まないのであれば、クルマの利用が世界トップレベルの市場づくりを目指すなど、強い打ち出しがあってもいい。EVや自動運転、次世代モビリティによって、業界の再編やプレーヤーの交代といった痛みも伴うだろう。が、それを避けるようでは、成長はない。
http://diamond.jp/articles/-/150451

第一の記事で、 『トヨタとホンダに共通するのは、他社の追随を許さないHVの高い技術を持つがゆえに、その先行者利益を長く享受したい思惑だ。ゆえにEVへの本気度は相対的に低くなる。 今、自動車産業は100年に一度の大変革の時代を迎える。欧州や中国は一気にEVへシフトし、HV技術で先行するトヨタやホンダの追撃にかかる。全方位戦略はその攻勢に耐えられるのか。勝負の趨勢はそう遠くない未来に見えてくる』、というのはトヨタとホンダにかなり遠慮した表現だが、本音では疑問符を投げかけているようにも思える。
第二の記事では、 『EVシフトで明暗分かれる』、としながら、機械部品など「暗」の業界が何を考えているのかの説明がないのは、やや物足りない印象だ。
第三の記事で、 『車の保有から利用への動きが強まるなど消費者の価値観は多様化している。日本車が売りにする高品質だけでは勝てなくなるかもしれず、シェアリングサービスが拡充すれば、保有需要を侵食する可能性がある』、というのは、確かにその通りだろう。 『堀場厚会長は、ガソリン車などで長年培った技術、「付加価値の高いノウハウ」を磨き続けることだと指摘。デジタル家電で日本勢の衰退を招いた敗因の1つは、技術者の「敵陣流出」だったことにも触れ、すぐには収益にならない研究開発でも技術者を逃がさず「長く育てる」ことだと強調する』、というのはややキレイ事過ぎる印象を受けた。
第四の記事で、『これにはメディアの責任が大きい。テレビなどでは「日本人すごい!」という切り口で、日本の文化や産業の良さをことさらに強調している。日本人の自己満足を満たすように作るメディアの「自己満足バイアス」は、衰退の裏返しではないのか』、『自動車業界におけるメディアの楽観的かつ現状肯定的な論調が、かつての出版業界や家電・電子機器業界の声と、どうしてもかぶって聞こえてしまう』、『業界が思っているほど参入障壁は高くない』、『EVは当面普及しないという楽観はガラパゴス携帯の失敗と同じ』、などの指摘は同感だ。筆者の経験の裏付けられた強い危機感が伝わってきて、参考になる記事だ。
タグ:トヨタ 三菱電機 ロイター 電気自動車 出版業界 ダイヤモンド・オンライン 中尾真二 日立オートモーティブシステムズ (EV) (その2)(トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由、EVシフトで明暗分かれる 自動車部品メーカーの末路、トヨタ連合がEVで反撃 基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず、EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する) 「トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由」 ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)などを含めた全方位体制を貫く姿勢を示したメーカーもある。トヨタ自動車とホンダ EVコンセプトカーも出展 「TOYOTA Concept-愛i」 EV事業企画室 開発の主眼を置いているのはEV技術そのものというよりも、人工知能(AI)技術にある 決してEVに傾斜することはなく、HVやFCVなどにウイングを広げ、市場がどう振れても対応できる全方位体制を築き上げることだ トヨタとホンダに共通するのは、他社の追随を許さないHVの高い技術を持つがゆえに、その先行者利益を長く享受したい思惑だ。ゆえにEVへの本気度は相対的に低くなる 「EVシフトで明暗分かれる、自動車部品メーカーの末路」 従来型のエンジン車がEVに置き換われば、約4割の部品が不要になるとされる 日本の製造業は自動車部品産業の“一本足打法”というのが現状だ。その大黒柱が倒壊するような事態となれば、日本経済への打撃は計り知れない 「トヨタ連合がEVで反撃、基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず」 部品のモジュール化が一段と進むEVは、日本のものづくり技術の優位性が失われるリスクも高まる「両刃の剣」でもある グループで開発・コスト削減 日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の連合も20年までにEV専用車台を開発し、モーターと電池も共有。22年までに3社で計12車種のEVを投入する方針 技術の優位性維持「楽観できない」 何年か経って経験を積めば、新規参入組に技術も追いつかれる恐れがあり、自社のものづくりの力が優位であり続けるかは「楽観できない」という 車の保有から利用への動きが強まるなど消費者の価値観は多様化している。日本車が売りにする高品質だけでは勝てなくなるかもしれず、シェアリングサービスが拡充すれば、保有需要を侵食する可能性がある ベンチャーは水平分業 「EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する」 これにはメディアの責任が大きい。テレビなどでは「日本人すごい!」という切り口で、日本の文化や産業の良さをことさらに強調している。日本人の自己満足を満たすように作るメディアの「自己満足バイアス」は、衰退の裏返しではないのか この現状で自動車業界の関係者やアナリストには、日本の自動車業界を良くも悪くも信頼しきっている論調が強い この状況が出版や家電といった衰退産業における、かつての論調に通じるものを感じるからだ 状況変化に対して楽観視した結果、「ゆでガエル」になった日本の産業をいくつか知っている 家電や電子機器業界も然り 独自技術と品質へのこだわり(自体は悪くはないのだが)が、結果的に変革を阻害し、後発国に出し抜かれた どちらの業界も既存ビジネスの成功体験から抜け出せず、環境変化を否定的かつ楽観的にとらえ、「まだいける」という判断ミスと、機会損失を生んだ。これらの蓄積が構造不況につながり、産業衰退を引き起こしたと言っては言い過ぎだろうか 業界が思っているほど参入障壁は高くない テスラの例 海外では「日本製品は品質が高い」という神話だけが生き残っており、市場では日本製品はほとんど見かけない。品質だけでは勝てないグローバル市場の現実だ EVは当面普及しないという楽観はガラパゴス携帯の失敗と同じ
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受動喫煙問題(その2)(小田嶋氏:この禁煙条例は炎上して灰となるべし)  [国内政治]

受動喫煙問題については、「受動喫煙対策法案問題」として6月8日に取上げた。今日は、タイトルを修正して、(その2)(小田嶋氏:この禁煙条例は炎上して灰となるべし) である。

コラムニストの小田嶋隆氏が9月15日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「この禁煙条例は炎上して灰となるべし」を紹介しよう。
・東京都議会の最大会派である都民ファーストの会と公明党が、子供のいる自宅やマイカーでの喫煙を禁止する条例の制定に向けて、関係団体からヒアリングをはじめたのだそうだ(こちら)。 この条例案とは別に、小池百合子東京都知事は、9月8日の定例会見で、飲食店など建物のなかを“原則禁煙”とする罰則付きの条例を制定する方針を明らかにしている(こちら)。
・タバコをめぐる議論は必ず荒れる。 なので、私は、ふだん、タバコ関連の話題には触れないことにしている。 個人的に思うところがないわけでもないのだが、炎上覚悟で押し通したいと思うほど明確な自説を持っているというのでもない。であるからして、この議論に関しては、いずれ落ち着くところに落ち着くのだろうと思って静観している。なんというのか、この種の問題については、あえて自分からは関与せずに、世論の収束するところに従おうと考えている次第だ。
・ただ、「子供のいる家での禁煙」を努力義務とした「子供を受動喫煙から守る条例」には、第一感で懸念を抱いている。 ということもあるのだが、それ以上に、個人の家庭内に手を突っ込もうとする政治家の意図に不穏なものを感じるからだ。 子供が、受動喫煙に晒されるのはよろしくないことだ。 この点について、おそらく議論の余地はない。
・ただ、家庭という私的な空間は、そこで暮らす人間が、自己の責任と意思によって自由に運営して良いことになっているはずの空間だ。 有害であれ、無作法であれ、自分の部屋の中では、人は思うままにふるまう権利を持っている。全裸で過ごそうが、ウイスキーのビール割りを丼飯にぶっかけて食べようが、よしんばその種の愚かな暮らし方が本人の寿命を縮めることになるのであれ、私室での過ごし方を他人にあれこれ指図される謂れはない。
・「子供の受動喫煙防止」という目的に異論は無いが、子供を盾にする議論の組み立て方は好みに合わない。都民ファーストの会が導入を検討している「私室での喫煙の禁止」を含む条例は、なにより、市民の私的空間での私的行為への権力の介入を許しているという点で、看過できない。 もうひとつ、室内禁煙条例は、単なる受動喫煙の問題とは別に、小池都政が、オリンピックを口実にマイノリティから権益を取り上げようとしている問題の端緒と考えることができる。
・とすると、これも軽視して良い動きではない。 室内禁煙をめぐる記事が報じられた9月11日の夜、私は、 《小池都知事が打ち出している室内禁煙条例の背景にある戦略は、つまるところ「特定の問題について賛否が分かれている状況では、両派の分断を煽っておいて少数派を迫害する施策を打つことが得票につながる」という判断なのだと思っています。》 《「世論を二つの陣営に分断して、数の多い側に立つ」みたいな感じの統治技法の流行は、小泉改革や大阪維新のアジテーションの成功を受けてのものなのでしょう。都民は簡単にはひっかからないと思っていましたが、どうやら私の読み間違いでした。》 《仮にあるリーダーが「副流煙を嫌う多数派の市民」vs「少数派の喫煙者」という構図を作って多数派に付くことで支持を得ることに成功したら、次に狙うのは「税負担を嫌う多数派の市民」vs「福祉や社会保障の対象となるマイノリティ」ぐらいな対立軸の構築だったりするのではなかろうか。》 《韓国人学校への都有地貸し出し撤回と室内禁煙の条例化は、「少数者への迫害」という点で同質の施策だ。いずれにせよ「都民ファースト」は、「非ファーストの」「セカンダリーな」「二級市民」を想定している。というよりも、二級市民迫害があってはじめて成立する政治運動なのかもしれない。》 という一連の言葉を、ツイッター上に投稿した。
・この時点で私が抱いていた憂慮の念は、現在でも大筋において変わっていない。 つまり、喫煙の問題は、副流煙にさらされる人々の健康や不快感情の問題である以上に、「マイノリティをどのように遇するか」というより致命的な危険をはらんだ問題だということだ。
・私自身は、2002年にタバコをやめている。 禁煙するまでの30年間ほどは、毎日50本~60本のタバコを煙に変換するヘビースモーカーだった。 なのに、なぜなのか、禁煙は、私にとって、いざ決意して臨んでみるとわりとすんなり達成できてしまった課題で、実際のところ、離脱症状に苦しんだのは、3週間ほどに過ぎなかった。 もっとも喫煙の代償行為なのか、ジャンクフードやら炭酸飲料やらに嗜癖しているきらいはあって、おかげで体重が10キロ以上増えているという事情はある。
・いずれにせよ、禁煙してすでに15年が経過していることは事実で、その点からして、私個人は、室内での喫煙を禁じる条例が施行されたのだとしても、特に困ることはない。 出先や訪問先で、他人の吐く煙に悩まされないで済むことを考えれば、むしろ、ありがたいと言っても良い。 勝手なことを言うようだが、タバコをやめてみると、他人の吐き出す煙には、いやな思いをすることが多いからだ。
・私が、ケムリに迷惑しながらも、それでもなお家庭内での喫煙を禁じる条例案に賛成しないのは、それが、大阪維新の会の台頭あたりから目立ち始めている「多数派万能思想」ないしは「多数決絶対主義」の勘違いした民主主義を体現する、マイノリティ迫害の都政における最初の一歩に見えるからだ。
・「多数派の人間の意にかなうというのは、すなわち民主的ということじゃないか?」 といった調子の橋下徹ライクな理屈を掲げて、あえて単純に考えようとする人もいることだろう。 しかし、「多数派」「少数派」という二区分法が、いつもわれわれの味方をしてくれるとは限らない。多数派であることが常に正しさを担保するわけでもない。
・あたりまえの話だが、どんな人間であっても、ある局面では少数派に分類されることになる。しかも、これはなかなか気づきにくいことなのだが、われわれは、自分が何かを大切に思っている場面では、ほぼ必ず少数派として分類されているものなのである。 レアな食べ物を偏愛していたり、昭和初期のゾッキ本やカストリ雑誌を蒐集していなくても、人は少数派になることができる。 どんなに一般的に見える分野であっても「趣味」に関わっている時点で、その人間は、世間から見て少数派になるということを忘れてはならない。
・たとえばの話、釣りをする人間としない人間を比べてみれば、釣りをしない人間の方が圧倒的に多い。 であるから、仮に、釣りは自然からの収奪だぐらいな理屈をつけて、素人の釣りを全面禁止するか否かを問う国民投票みたいなものが企画されたら、釣りの存続は危うい。というのも、多数派の人間は、釣りという娯楽がこの世界から消えてなくなっても、ほとんどまったく痛痒を感じない人々であるからだ。
・同じことは、登山を愛好する人間と登山を好まない人間、美術を愛好する人間と美術に特段の関心を抱かない人間の間にも言えることで、両者の人数を単純に比較してみれば必ずや後者が前者を上回ることになっている。
・とすると、「趣味」という言葉をここであえて定義しなおしてみれば、趣味とは「多数派の人間がさしたる重要性を認めていない事物や動作に対して、それがなくては生きている甲斐がないと思い込んでいる少数者が抱いている錯覚ないしは信仰」のことなのであって、してみると、趣味に関わっている時、その人間は間違いなく少数派として、世間の空気から遊離しているのである。
・別の側面から見ると、趣味について、多数決でその存否を決めることができるのだとしたら、生き残ることのできる趣味はほとんどないということだ。 しかも、ここが大切なところなのだが、世間の多数派に対して、自分が少数派の一員として対峙している時ほど、その人間は、その自分を少数派たらしめている対象に深い愛情を抱いている。ということはつまり、この事態を逆方向から観察すると、何かに対して深い愛情を抱いている人間は、世間から見れば異端者だということでもある。
・なんということだ。 愛情は、われわれに孤独をもたらすのだ。 日常的に美術館に通う人間は、全人口のうちの5%(←オダジマによる試算:根拠はありません)程度にすぎない。ふだん美術館に顔を出さないタイプの人間は、何かの拍子に美術館を訪れることになったとしても、たいして感動しない。というよりも、かなりの確率で退屈する。
・一方、野球場に通う人間も、ならして数えればたぶん一般市民のうちの5%程度だ(これも根拠はありません)。そして、ふだん野球を見ない人間を野球場に連れていっても、たいして感動しない。大多数は退屈する。 ということは、いずれの場合でも、多数派にとって美術館や野球場は不要だということになる。
・それでは、一般の市民にとって美術館も野球場も要らないということなのだろうか。 そう考えるのはやめたほうが良い。 5%の市民にとってかけがえのない価値を感じさせる施設は、残りの95%の市民にとって無駄に感じらるのだとしても、なるべくなら、存続させないといけない。それは、大学でも、保育園でも、生活保護費でも、外国人学校でも同じことで、すべてのマイノリティーが、各々にとって不可欠なものを保障されているのでなければ、社会の健康さは維持できないと、そういうふうに考えるべきなのだ。
・大阪維新の会がやってのけたことのうちで、私が特に賛成できずにいるのは、少数派にとっての娯楽である文楽や、少数者が利用する図書館を「無駄だ」と断じて補助金をカットしにかかるタイプの施策だった。 これは、一見、行政のスリム化に寄与しているように見える施策だったし、多数派の声に耳を傾けた結果であるようにも見えた。が、実のところ、文楽などどうでも良いと考えている関心の薄い人たちの声を拾い上げて、文楽にかけがえのない価値を見出していた人たちの切実な要望を切り捨てた選択だった。
・そしてこれは、あらゆる分野で起こり得る残酷な仕打ちだ。というのも、どんな分野についてであれ、単純に多数決をとったら、その対象に愛情を抱いていない人間の声が多数を占めるにきまっているからだ。 営利第一を掲げる企業経営の理念からすれば、少数者のための利便やサービスは商売として成立しないのだろうし、そこは「選択と集中」なりで「効率化」して、斉一化したパターンに準拠させた方が得策なのであろう。
・しかし、個々の人間の個別の生きがいや喜びや生存条件は、千差万別であるがゆえに、簡単には効率化できないことになっている。 むしろ、ここのところの原則は、生物進化学が教える「ダイバーシティ」(種の多様性)の確保に重心を置かなければならない。 要するに、行政のサービスは、画一化による効率の追求よりも、ダイバーシティの確保による全滅の回避を選んだ方が長い目で見て得策だということだ。
・さて、タバコに関する議論は、美術館や野球や文楽や図書館をめぐるお話と少し違っている。 なぜかといえば、強く偏愛している人々がいるところまでは同じなのだとして、その彼らの偏愛が、別の人々に強く嫌悪されているところだ。 それゆえ、ここから先の議論は必ず荒れる。
・ただ、多少他人に迷惑をかけるものであっても、それを必要としている人々がいる以上は、適切なゾーニングをほどこした上で、なるべく存続するようにとりはからう必要がある。それが、政治の役割だ。 200年とか300年先の未来について言うなら、喫煙という習慣を残さねばならない必然性はない。むしろ根絶させた方が良いのかもしれない。
・ただ、現実にいま居る喫煙者が無事に火葬場に送り届けられるまでの間は、なんとか彼らのために喫煙場所を残しておいてあげないといけない。 現実問題として、多くの非喫煙者が、その内心でなんとなく願っているのは、すべての喫煙者が、一服ごとに、恥ずかしさと情けなさと自己嫌悪を感じながらケムリを吸い、うしろめたさと罪の意識と良心の呵責に我が身を引き裂かれながらケムリを吐き出すことだったりするわけなのだが、この設定にはやはり無理がある。
・この期に及んでいまだにタバコをやめていない頑固な人間である喫煙者は、そういうタマではない。 彼らは、一息ごとに、誇らしくも晴れがましい気持ちでケムリを吸い、一点の曇りもない勝利感ならびに満足感とともにケムリを吐き出している。うっかりすると自分たちの吐き出している副流煙は「カネで買ったケムリ」なのだから、おまえらが吸うつもりなら料金を払いやがれぐらいなことは考えている。そいういう人々だ。
・ということは、彼らとわれわれの間に、話し合いの余地や共通の理解のための足場は、ほとんどありゃしない。 せめて、申し訳なさそうなふりをしてくれると、こっちとしても気にしていないふりぐらいのことはできると思うのだが、お互いそんな芝居をするのも窮屈ではある。とすれば、現実的には、適当にいがみ合っている現状が、実はもっとも穏当な線なのかもしれない。
・ともあれ、都民ファーストの会はなんだかやたらとキナくさい。 なので、件の条例案は、ケムリを上げるだけでなく、炎上して灰になってくれるとありがたいと思っている。 と、最後は適当にケムに巻いて終わることにする。ドロン。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/091400110/?P=1

小田嶋氏が、 『都民ファーストの会が導入を検討している「私室での喫煙の禁止」を含む条例は、なにより、市民の私的空間での私的行為への権力の介入を許しているという点で、看過できない。もうひとつ、室内禁煙条例は、単なる受動喫煙の問題とは別に、小池都政が、オリンピックを口実にマイノリティから権益を取り上げようとしている問題の端緒と考えることができる』、『喫煙の問題は、副流煙にさらされる人々の健康や不快感情の問題である以上に、「マイノリティをどのように遇するか」というより致命的な危険をはらんだ問題だということだ』、などと指摘するのは正論だ。 『大阪維新の会の台頭あたりから目立ち始めている「多数派万能思想」ないしは「多数決絶対主義」の勘違いした民主主義を体現する、マイノリティ迫害の都政における最初の一歩に見えるからだ』、との「多数派万能思想」は、国政のレベルでも安倍内閣が濫用している。なお、受動喫煙対策の都条例は10月5日に自民党を除く賛成多数で可決、成立した。子のいる部屋禁煙は「努力義務」で、罰則はないようだ。
タグ:小田嶋隆 日経ビジネスオンライン 受動喫煙対策法案問題 受動喫煙問題 (その2)(小田嶋氏:この禁煙条例は炎上して灰となるべし) 「この禁煙条例は炎上して灰となるべし」 都民ファーストの会と公明党 タバコをめぐる議論は必ず荒れる 個人の家庭内に手を突っ込もうとする政治家の意図に不穏なものを感じるからだ 「子供の受動喫煙防止」という目的に異論は無いが、子供を盾にする議論の組み立て方は好みに合わない。都民ファーストの会が導入を検討している「私室での喫煙の禁止」を含む条例は、なにより、市民の私的空間での私的行為への権力の介入を許しているという点で、看過できない もうひとつ、室内禁煙条例は、単なる受動喫煙の問題とは別に、小池都政が、オリンピックを口実にマイノリティから権益を取り上げようとしている問題の端緒と考えることができる 仮にあるリーダーが「副流煙を嫌う多数派の市民」vs「少数派の喫煙者」という構図を作って多数派に付くことで支持を得ることに成功したら、次に狙うのは「税負担を嫌う多数派の市民」vs「福祉や社会保障の対象となるマイノリティ」ぐらいな対立軸の構築だったりするのではなかろうか。 喫煙の問題は、副流煙にさらされる人々の健康や不快感情の問題である以上に、「マイノリティをどのように遇するか」というより致命的な危険をはらんだ問題だということだ それでもなお家庭内での喫煙を禁じる条例案に賛成しないのは、それが、大阪維新の会の台頭あたりから目立ち始めている「多数派万能思想」ないしは「多数決絶対主義」の勘違いした民主主義を体現する、マイノリティ迫害の都政における最初の一歩に見えるからだ 大阪維新の会がやってのけたことのうちで、私が特に賛成できずにいるのは、少数派にとっての娯楽である文楽や、少数者が利用する図書館を「無駄だ」と断じて補助金をカットしにかかるタイプの施策だった 個々の人間の個別の生きがいや喜びや生存条件は、千差万別であるがゆえに、簡単には効率化できないことになっている。 むしろ、ここのところの原則は、生物進化学が教える「ダイバーシティ」(種の多様性)の確保に重心を置かなければならない
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北朝鮮問題(その13)(核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌(上)、(下)、北の核ミサイルが東京都心に着弾すれば最悪180万人死亡) [世界情勢]

昨日に続いて、北朝鮮問題(その13)(核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌(上)、(下)、北の核ミサイルが東京都心に着弾すれば最悪180万人死亡) を取上げよう。

先ずは、11月21日付けダイヤモンド・オンライン「元海将が明かす、核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌(上)」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは伊藤氏の回答、+は回答内の段落)。
・トランプ大統領のアジア歴訪で注目された対北朝鮮問題での習近平・中国国家主席との会談は、進捗がないまま終わった。今後、米国は軍事介入に踏み切るのか、次に打つ手は何なのか。駐米武官や防衛省情報本部情報官などを歴任し、米国の国防関係者らとパイプを持つ伊藤俊幸・元海将(金沢工業大学教授)に聞いた。(聞き手/ダイヤモンドオンライン特任編集委員 西井泰之)
▽米国にとっての北朝鮮問題は対中国戦略の一つに過ぎない
Q:米中首脳会談では、企業間での“巨額商談”が結ばれるなど、成果が演出された一方で、北朝鮮問題では大きな進捗は見られませんでした。
A:もともと今回のアジア歴訪は、中国と安定的な関係を作るため、先の共産党大会で権限を一手に掌握した習氏と、どういうやりとりをするかに主眼が置かれていたと思います。 米国の国益を考えても、またアジアにおいて今最も重要なことは適切な対中国戦略を構築することです。米国と並ぶ世界の二大強国になりつつあり、南シナ海への海洋進出など軍事的にも存在感を強める中国を封じ込めるために、日韓やアセアン諸国と連携を強化するかも含めて、対中国問題が、大統領の頭の中の中心にあったことは確実です。
+日本に事前に来て日米連携を誇示したのも対中国をにらんでのことでしょう。北朝鮮問題は、安倍首相がトランプ大統領に話をして関心を持たせた面がありますが、米国にとっては、数ある対中国戦略の中の一つと位置付けられていることを押さえておく必要があります。
+中国側もそのことはわかっていますから、成果が見えやすい「ディール(取引)」でトランプ大統領に花を持たせ、一方で、対北朝鮮への圧力強化や、突っ込まれたくない南シナ海での中国軍基地建設問題の議論を巧みにかわしたということだと思います。
▽中国に対抗するための軍拡が目的 北朝鮮問題はそのための“カード”
Q:日本と米国でも北朝鮮問題では温度差があるということですか。
A:駐在武官時代、多くの米国人と付き合った経験から言えば、米国人には皮膚感覚として北朝鮮という国への興味はほとんどありません。地球の裏側のこととしてとらえている感じで、トランプ大統領も極東のことは基本的には何も知らなかったと思います。 実際、2月初めの安倍首相との首脳会談時に北朝鮮がミサイルを発射、また金正男氏が暗殺されたにもかかわらず、同月末に行われた初の一般教書演説では、トランプ大統領は北朝鮮について何も言及しませんでした。
+ただその後トランプ大統領も、北朝鮮のミサイルが米国本土を狙う、といった露骨な挑戦をし続けたため応戦するようになりましたが、北朝鮮問題は対中国政策を考慮する上でのカードの一枚と考えている、ということだと思います。
Q:それはどういうことですか。
A:一つは北朝鮮問題に対応する、という理由で軍拡を進めることができるからでしょう。軍事力整備は最低でも5年から10年かけて完成するものです。したがって早い段階から構想や計画を明確にして、国民や議会の説得、支持を得た上でないと予算がつきません。その意味では米国まで届くかもしれない北朝鮮の核とミサイルの脅威はわかりやすい理由の一つになります。
+本丸は、軍拡を続ける中国に対抗することですが、中国との外交・経済上のデメリットを考えるとそれは大きな声で言えない。それで北朝鮮を代わりに使いたい人たちが出てくるわけです。これは日本も同じだと思います。
+軍事技術的に見ても、核付ミサイルが完成レベルにあるのは、南(韓国)を攻撃するまでのものだと思います。2013年3月の3回目の核実験で、1トン~1.5トンまで核弾頭小型化に成功したと見積もられますが、その重さの弾頭をミサイルで運べるのは300kmがせいぜいです。1万km以上離れた米本土まで運ぶには、その半分以下まで小型軽量化することが必要です。
+米軍の情報サイドは、当面は核ミサイルが米本土には飛んで来ない、と見積もっているでしょうが、中国に対抗するため軍事力整備を進めるのに、北朝鮮問題は使えるのです。
Q:トランプ大統領の頭の中には対北への軍事力行使の考えはどこまであるのでしょうか。
A:軍事については素人でしょうから、何をやろうとするかわかりません。北のミサイルが北海道上空を通過した時にも、「どうして日本は撃ち落とさないのか?」と発言したと報じられました。ミサイルが飛んだのは成層圏(宇宙空間)であって、日本の領空ではありません。ただ、軍事素人の大統領の考えがそのまま戦略や政策にならいないようにしているのが、いまの大統領補佐官、国防長官及び国務長官です。
▽トランプの暴走を止めるバランス取るスリーゼネラルとワンボーイスカウト
+最近も国防省の元高官と話す機会がありましたが、政権内では、「スリー ジェネラルズ(three Generals)&ワン ボーイスカウト(One Boy Scout)」といって、元海兵隊大将のマティス国防長官とケリー大統領補佐官そして現役陸軍中将のマクマスター大統領補佐官(安全保障担当)らの「3人の将軍(Generals)」と、ボーイスカウトにいたことのあるティラーソン国務長官の4人が常に連絡を取り合って、過激になりがちな大統領の言動を抑えてバランスをとっている、と言っていました。
+4人が知らない間に大統領がツイッターで過激なことを書く、ということがしばしばあるようですが、その時も4人でフォローし、波風を最小限に抑えていると言っていました。 マティス長官の古今東西の戦史についての博識ぶりは有名ですし、マクマスター補佐官には、ベトナム戦争の失敗を分析した著書もあります。軍事素人の大統領を軍事の専門家がいわば、教育している最中ということでしょうか。
+ティラーソン長官がトランプ大統領を「能なし」と言ったなど二人が「不仲」という話も、国務省などの高官の政治任用が遅れている、といわれているのも一定の理由があるようです。 それはポストの削減です。そもそも国務省高官ポストは、国防省の3倍以上あるそうです。減税政策を進めようとするトランプ政権においてティラーソン長官は、国務省の高官ポストそのものを大幅に削減しようとしている、と聞きました。そして当然それに不満を抱く国務省役人サイドから「長官更迭」を狙って、色々な話を流しているというのです。
・そういう話を聞いても、大統領と「3人の将軍とボーイスカウト」との関係はそんなにぶれていない気がします。ティラーソン長官が「北との交渉を打診」と発言した矢先に、大統領が「交渉は無駄だ」と言ったのも、二人で役割分担し、押したり引いたりして、北を交渉に乗せるための手段の一つ、と見ることができます。
▽軍事カードのベースになる核戦争前提の「5015作戦」
Q:仮に軍事介入ということになれば、どういうシナリオが考えられていますか。
A:すでに北の2013年の3回目の核実験を機に、2015年に「韓国に対する核戦争」を前提にした「5015作戦」が作られました。 本来、こうした作戦計画は極秘ですが、韓国では報道で多数リークされますから、韓国の報道をまとめると次のようなことになるのだと思います。
+通常兵器での戦争を前提にした従来の作戦は、北が攻撃してきたら、当初は韓国側が後退を余儀なくされるが、その後米韓の地上部隊を中心にして押し戻すシナリオでした。ところが北が核ミサイルを撃つとなれば、それだけで韓国は壊滅的状況になりますから、悠長なことはいっていられません。
+「5015作戦」の考え方は先制攻撃です。北の南に対する核ミサイル攻撃の「兆候」を「探知」したら、まず「攪乱」するのです。核兵器を韓国に撃ち込むことは、さすがにトップである金正恩氏の命令がないとできません。 ですからトップが命令を出すために必要な現場からの情報や、トップが現場に下ろす情報のコミュニケーションラインをサイバー攻撃などで攪乱するのです。実はこれはイラク戦争でも米国はやっています。
+「斬首作戦」は、トップを暗殺することだと思われていますが、それは誤解です。コミュニケーションラインを攪乱し、頭(トップ)と胴体(ミサイル部隊などの実行部隊)を切り離すことです。核ミサイルは持っているけれど撃っていいのかよくわからない状態にして、その間に、先制攻撃で北のミサイル基地や司令部などを「破壊」する。
+これが「5015作戦」の一番の肝だと言われています。その副次作戦として特殊部隊による頭(金正恩)の拿捕、殺害があるのです。 「兆候探知」→「攪乱」→「破壊」と、鎖のようにつながっていく一連の作戦は、「キルチェーン(kill chain)」と言われています。韓国は「5015作戦」に対応する対北用の軍事体制を「3軸系」と呼称していますが、キルチェーンが第一軸で、そのために衛星購入などの予算要求が出されています。
+第二軸が、イージス艦などによるミサイル防衛システム、第三軸が、「玄武2号」「玄武4号」などの北朝鮮攻撃用ミサイルによる大量報復戦略です。韓国は核を持っていませんが、このミサイルに1トン爆弾を搭載して、平壌に撃ち込むと言っています。北の1トン~1.5トン級の核弾頭を意識して、同じぐらいの破壊力を持つ通常爆弾の弾頭を搭載し、北が撃ったら、直ちに撃ち返すぞ、というわけです。
+文在寅・韓国大統領は対北融和路線だと言われていますが、それを目指すとしても、一方では「5015作戦」に応じた軍事力整備も着々と進めているのです。>>(下)に続く
http://diamond.jp/articles/-/150271

次に、上記の続きとして、11月21日付けダイヤモンド・オンライン「元海将が明かす、核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌(下)」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは伊藤氏の回答、+は回答内の段落)。
▽第二次朝鮮戦争では日本は「第三者」だが、それではすまない
Q:仮に米韓軍が「5015作戦」に踏み切った時には、日本はどういう役割を担うのですか。
A:仮に朝鮮半島で戦争になったら、米韓連合軍は一塊の軍隊(Combined force)として動きますが、日本は、日米同盟(米軍は日本防衛)との関係上、「第三者」と位置づけられます。 日米韓の軍事連携強化がいわれますが、それは情報共有などをいうことであって、第二次朝鮮戦争となれば、実際の戦争では、米韓連合軍に国連軍が加わる形で、北朝鮮軍と戦闘が行われます。
+第二次朝鮮戦争が起きた場合を想定して、自衛隊が米軍の後方支援をできるように、ということで、1999年に「周辺事態法」が作られました。 しかし国連軍が加われば米軍以外の他国軍も在日米軍基地(国連軍基地を兼任)に来援することになりますから、今回の安保法制で、「重要影響事態法」と名前を変えて、米国以外の軍隊にも後方支援できるようにしたのです。
+つまり、第二次朝鮮戦争が生起すると、まず日本政府は「重要影響事態」と認定し、米軍や国連軍に対して後方支援や後方地域支援という形で関与することになります。 戦争勃発後、当然、北朝鮮は後方支援基地である在日米軍基地を叩くため、日本にミサイル攻撃する可能性が出てきます。 そうなった場合、多数の米国のイージス艦がミサイル防衛のため日本海に配備され、当然海上自衛隊のイージス艦も出動することになります。
+この状態は、日本にとっては、まだミサイルは飛んで来ていない「平時」ですが、日本防衛のために出動した米艦を北が攻撃しようとしたら、日本は同盟を結んでいる「仲間」を守る必要があります。  そこで安保法制で「存立危機事態(他国軍隊を守るために武力行使可能)」という新たな事態認定を作ったのです。
+つまり、第二次朝鮮戦争が生起したら、日本政府は最初に「重要影響事態」を認定し、引き続き「存立危機事態」を認定することにより、後方支援だけではなく、米軍を含む国連軍を守るため自衛隊は武力行使が可能となります。 そしていよいよミサイルが飛んできたとなれば、日本「有事」ですから、「武力攻撃事態」が認定され、日本は自国を守るため「敵を排除する武力行使」が可能となる、という流れになるのです。
▽ミサイルが飛んで来るのは先制攻撃後 中枢部がやられる可能性は少ない
Q:北のミサイル攻撃から日本を守れるのですか。
A:現状のミサイル迎撃システムは、まずイージス艦搭載の「SM3」ミサイルが飛行中の敵弾道ミサイルを宇中空間で撃ち落とす。そして撃ち漏らした場合、地上に配備した「PAC3」ミサイルが待ち構えて迎撃する二段構えです。
+日本にミサイルが飛んで来るといっても、米国が「5015作戦」で、北の核施設やミサイル基地など約700ヵ所を一斉攻撃した後、生き残った車載型ミサイル発射装置(Transporter Erector Launcher;TEL)から日本に発射されることになりますが、飛んでくるミサイルの数を考えれば、約15隻は配備される日米のイージス艦により、迎撃は可能だと思います。
+同時に「緊急対処事態」と認定され、国民保護法により各自治体や警察、消防が国民を守るための行動をとることになります。 また「武力攻撃事態」と認定されれば、「PAC3」も首都圏や原発などの重要施設への重点配備に変更し、日本の中枢部を防護し被害極小化を図ることになります。
+ただ日本の場合は、憲法上自衛のための「必要最小限度」の武力行使しかできませんので、米軍と一緒になって北を攻撃することはしませんし、兵器体系からも他国の領土を攻撃できません。ただ日本に対して危害をなすものは全て排除するということです。
Q:今後の展開をどう予想しますか。
A:「5015作戦」は今でも大統領が命令すればいつでも実施できる状況です。 米韓合同演習が、2015年夏以降、年2回ずつ既に5回行われています。部隊だけでなく、司令部要員が、敵の戦力動向や展開状況に応じて作戦を修正し現場部隊を指揮する「指揮所演習」も行っています。 この作戦にGOをかけるには、米大統領による「自衛権」の発動か、国連の「武力制裁」決議が必要です。現時点では、どちらの条件も整っていません。
+また特に米国共和党政権は、元来「国益」でしか戦争はしません。米国軍人の基本的な考え方も同じです。 私は、トランプ大統領にとって朝鮮半島は、中東と異なり、軍事介入するほどの国益があると考えていないのではないか、と見ています。 ですから経済制裁を強化し、北を孤立させて締めあげる戦略になるのだと思います。
+これまで国連の「経済制裁決議」が何度もされてきましたが、抜け穴があり、制裁しているように見えてほとんど何もしていない国があった、といっても過言ではありません。 11月にようやく中国やロシアも賛成して原油取引を制限するなど、実効が期待できそうな「経済制裁」をすることになりました。その効果が出るのは12月以降です。
+だからいまは北の反応も含めて状況を見てみようというスタンスだと思います。制裁の効果が本当に出るかどうかのキーは、中国がきちんとやるかどうかですから、今回の米中首脳会談でもトランプ大統領は、習主席にこの点を確認したのでしょう。
▽「4つのNO」を“餌”にして北朝鮮を話し合いの場に
Q:しかし制裁決議の「厳格な実行」では合意しましたが、北への圧力強化を求めた米国に対し、中国は「対話と協議」を基本にするということで平行線でした。
A:私が注目しているのは、ティラーソン国務長官がいう「4つのNO」です。 その4つというのは、(1)米国は北の政権交代は求めないし、(2)北の体制崩壊も求めない。また(3)軍事境界線を軍隊は超えない、つまり先制攻撃はしない、そして(4)朝鮮半島の統一を急がない、というものです。
+これは北の核全面放棄を促すいわゆる「飴玉」です。つまり北が核放棄をするのなら、この4つを約束するから、交渉に乗って来い、ということです。 「4つのNO」は、4月の最初の日中首脳会談の時に、中国が、米国と北朝鮮を仲介するにあたって、「手ぶらじゃ、北は乗ってこないから」というので、米国に求めた条件だったと思います。
+習主席は今度の首脳会談でも改めて「4つのNO」が変わっていないことを確認したのだと思います。 中国としてはトランプ大統領に軍事行動のGOの号令をかけられたら困る。北が崩壊すれば、中国は、米国の影響下の韓国と直接、国境を接することになり緩衝地帯を失います。しかし制裁をやり過ぎたり、中国が北との貿易を完全に絶つだけでも北は崩壊する可能性がある。
+だからふわふわとした形で軟着陸させたいというのが本音でしょう。 つまり「4つのNO」を前提に、北を話し合いの場に載せるしかないと思っているのだと思います。
▽中国と北朝鮮は関係最悪 「6者協議」の再開が落としどころ?
Q:となると、今後は中国が対北朝鮮説得により力を入れるということですか。
A:問題は中朝関係が良好とはいえず、中国側に金正恩氏とのパイプがなくなっていたことです。  特に北朝鮮側には中国への不信感が強いのです。「4つのNO」の中に、わざわざ「北の政権交代を求めない」というのが一つの項目として入っているのは、中国が過去に、政権交代、つまり金正恩氏を降ろそうという考えを持っていたと、米国も認識していることの証左です。
+金正恩氏が、ナンバー2で中国との窓口だった張成沢・国防委員会副委員長を粛清したのも、張氏が中国と連携して金正恩を排除しようとしたから、ともいわれています。 金正恩氏は中国が自分を抹殺するのではないか、との疑いを抱いていますから、絶対に中国に行かないわけです。中国が行うことは、まず金正恩氏を説得するための人的パイプ作りをすることなのでしょう。
Q:米中で握っても北のミサイル開発は止められないということですか。
A:11月17日、中国対外連絡部のトップ、宋部長は先月の共産党大会の結果を説明するため、習近平国家主席の特使として平壌を訪問し、金正恩朝鮮労働党委員長の信頼がとりわけ厚いとされる側近の崔龍海(チェ・リョンへ)副委員長と会談しました。 トランプ大統領の訪中を受け、ついに中国が北朝鮮との人的パイプ再構築を始めたと見ることもできます。また、ロシアが北朝鮮と急接近していますから、中国はこのあたりも視野に入っているのでしょう。
+結局は、かつての「6者(米韓日中露と北朝鮮の)協議」のような枠組みで、交渉再開といったことが落とし所にならざるを得ないのかもしれませんが、トランプ大統領は、少なくともそこまで持っていくのに、北に圧力をかけられるのはやはり中国しかない、ということを伝えたのだと思います。 ただ北も簡単には中国の言うことを聞かないこともわかっていますから、米中首脳会談ではそれほど厳しくやりあうことはなかったのでしょう。
http://diamond.jp/articles/-/150371

第三に、軍事ジャーナリスト くろい・ぶんたろう氏が11月24日付けZAKZAKに寄稿した「北の核ミサイルが東京都心に着弾すれば最悪180万人死亡」を紹介しよう(▽は小見出し、■は段落)。
・北朝鮮の核ミサイルが使われた時、東京はどうなるのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏がシミュレーションする。 * * * 10月4日、アメリカの有力な北朝鮮専門研究機関「38ノース」が衝撃的なレポートを発表した。「ソウルと東京に核攻撃があったら~朝鮮半島有事の人的被害」というもので、北朝鮮が核攻撃を実行した場合の被害シミュレーションだ。
・それによると、北朝鮮が保有する核ミサイルは20~25発で、核弾頭の威力はTNT火薬換算で15~250kt(キロトン)と推定される。仮に250ktの核ミサイル1発が東京中心部に着弾すれば、死者は約70万人、負傷者は約247万人に達すると推計。最悪の想定では、複数のミサイルが着弾した場合、180万人もの死者が出るという。
・実際に核ミサイルが東京に落ちた場合、どのような光景が出現するのだろうか。 過去、広島と長崎の被害についてはさまざまな研究がなされてきた。それらの中から、1951年に日米合同調査団が報告した広島(核爆弾は16kt)の調査結果をもとに、仮に国会議事堂上空で核爆弾が爆発した場合の被害を想定した。
 ■爆風・衝撃波:爆弾が気化して急速に火球が膨張すると秒速数百メートルの衝撃波が発生し、爆心地に近ければ人間はもちろん、車ごと吹き飛ばされ、列車は脱線する。屋内にいて衝撃波に吹き飛ばされなくても、ビルの外壁、ガラスが大破するため、それらが人体を襲う。
 ■火災:広島では熱戦で可燃物が発火し、広範囲で火災が発生した。2キロメートル以内は大規模火災が発生する。
 ■地下:広島では爆心地から500メートルの地点にいた人がたまたま地下にいたため、助かった。Jアラートが鳴った場合、近くに地下街、地下鉄があれば退避するのがよい。
 ■首相官邸:現在、分厚いコンクリートに覆われた建物は少ない。首都中枢では外壁が厚い建造物は国会議事堂くらいだろう。首相官邸の地上部分はガラス張りの外観通り脆弱で、霞ヶ関の省庁も同様。壊滅的被害を受ける。
 ■交通網:広島とは比較にならないほど自動車が増えた現代の東京は可燃物だらけ。首都高はじめ、主要幹線道路は炎上する自動車で麻痺する。爆心地から1.0キロメートル以内の高速道路橋梁の多くは崩壊する。
 ■放射線:爆発時に爆風や熱風を直接受けなくても、致死量の放射線を浴びると死に至る。広島では爆心地から1~1.5キロメートルの範囲で推定被曝線量が1500~2000ミリシーベルトだった(現在、一般の人は1年間の被曝線量が1ミリシーベルト以下に法律で定められている)。被爆1週間後には白血球が減少し、多くの人が3~6週間後に死亡した。
 ■病院:爆心地周辺の病院は壊滅する。被爆者たちの救護は郊外の病院に頼らざるを得ない。
 ■死の灰:爆発からしばらくすると、上空に舞った放射性物質が地上に降下してくる。いわゆる「死の灰」だ。これらに曝露されると、長期に亘って癌や白血病など「原爆症」に苦しめられる。風向きによるが、仮に南西の風が吹いていれば、遠く茨城県、栃木県にまで及ぶ可能性がある。
・当時の広島と現在の東京では人口密度も、建造物の強度や密度も異なるため、実際に生じる被害とは異なる部分があるだろうが、どちらも平地が多く、被害の広がりは似たイメージになるだろう。 また、現代都市における被害予測も行われている。2014年に発表された外務省委託研究「核兵器使用の多方面における影響に関する調査研究」報告では、20ktの核爆弾が爆発した場合を想定。爆心地から1キロメートル以内で高速道路の多くが崩壊または大被害となり、ライフラインも壊滅するとし、5キロメートル以内で建造物の窓ガラスや外壁が大破するという。放射線による人体の被害はさらに広範囲に及ぶ。
・それだけではない。北朝鮮が主張するように、彼らが水爆の技術を手にしており、もし水爆が使用されれば日本が被る被害は桁違いになる【※】。これが、リアルな脅威なのである。
【※核実験を繰り返す北朝鮮は、このままいけば将来、水素爆弾を完成させるだろう。その場合、威力は広島に投下された原子爆弾とは比べものにならない。ソ連が開発した史上最大の水爆「ツァーリ・ボンバ」はTNT火薬換算で約50メガトンと言われる。爆心地から半径6.6キロメートル以内は致死性の放射線を浴び、半径16.8キロメートル以内はすべて建物が破壊され、半径75キロメートルまでが重度の火傷を負う。窓ガラスが粉砕されるのは半径111キロメートルにも及ぶ】
●くろい・ぶんたろう/1963年、福島県生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、軍事ジャーナリストとして活躍。『イスラム国「世界同時テロ」』(ベスト新書)、『北朝鮮に備える軍事学』(講談社+α新書)など著書多数。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/171124/soc1711240009-n1.html

第一の記事で、 『米国人には皮膚感覚として北朝鮮という国への興味はほとんどありません・・・ただその後トランプ大統領も、北朝鮮のミサイルが米国本土を狙う、といった露骨な挑戦をし続けたため応戦するようになりましたが、北朝鮮問題は対中国政策を考慮する上でのカードの一枚と考えている、ということだと思います』、というのは初耳だが、そんなところなのかも知れない。『北朝鮮問題に対応する、という理由で軍拡を進めることができるからでしょう(本当は中国に対抗するため)。軍事力整備は最低でも5年から10年かけて完成するものです。したがって早い段階から構想や計画を明確にして、国民や議会の説得、支持を得た上でないと予算がつきません。その意味では米国まで届くかもしれない北朝鮮の核とミサイルの脅威はわかりやすい理由の一つになります』、と北朝鮮は軍拡のダシに使われているようだ。 『トランプの暴走を止めるバランス取るスリーゼネラルとワンボーイスカウト』、というのは頼もしい限りだ。 『「5015作戦」の考え方は先制攻撃です。北の南に対する核ミサイル攻撃の「兆候」を「探知」したら、まず「攪乱」するのです。核兵器を韓国に撃ち込むことは、さすがにトップである金正恩氏の命令がないとできません。ですからトップが命令を出すために必要な現場からの情報や、トップが現場に下ろす情報のコミュニケーションラインをサイバー攻撃などで攪乱するのです』、『斬首作戦」は、トップを暗殺することだと思われていますが、それは誤解です。コミュニケーションラインを攪乱し、頭(トップ)と胴体(ミサイル部隊などの実行部隊)を切り離すことです。核ミサイルは持っているけれど撃っていいのかよくわからない状態にして、その間に、先制攻撃で北のミサイル基地や司令部などを「破壊」する。 これが「5015作戦」の一番の肝だと言われています。その副次作戦として特殊部隊による頭(金正恩)の拿捕、殺害があるのです』、「斬首作戦」についての誤解が解けた。
第二の記事で、新安保法制での、「重要影響事態」、「存立危機事態」、「武力攻撃事態」などの意味が具体的に理解できた。ただ、『飛んでくるミサイルの数を考えれば、約15隻は配備される日米のイージス艦により、迎撃は可能だと思います』、との見方は楽観的過ぎる印象を受けた。 『私は、トランプ大統領にとって朝鮮半島は、中東と異なり、軍事介入するほどの国益があると考えていないのではないか、と見ています。 ですから経済制裁を強化し、北を孤立させて締めあげる戦略になるのだと思います・・・いまは北の反応も含めて状況を見てみようというスタンスだと思います。制裁の効果が本当に出るかどうかのキーは、中国がきちんとやるかどうかですから、今回の米中首脳会談でもトランプ大統領は、習主席にこの点を確認したのでしょう・・・中国と北朝鮮は関係最悪 「6者協議」の再開が落としどころ?』、との見方は妥当なところだろう。
第三の記事で、『北朝鮮が核攻撃を実行した場合の被害シミュレーション』、は原爆を想定したものだが、『もし水爆が使用されれば日本が被る被害は桁違いになる』、ということであれば、そうした悲惨な事態は何が何でも阻止するべきだろう。
タグ:北朝鮮問題 ZAKZAK ダイヤモンド・オンライン (その13)(核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌(上)、(下)、北の核ミサイルが東京都心に着弾すれば最悪180万人死亡) 「元海将が明かす、核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌(上)」 伊藤俊幸・元海将 北朝鮮問題は、安倍首相がトランプ大統領に話をして関心を持たせた面がありますが、米国にとっては、数ある対中国戦略の中の一つと位置付けられていることを押さえておく必要があります 米国人には皮膚感覚として北朝鮮という国への興味はほとんどありません。地球の裏側のこととしてとらえている感じで、トランプ大統領も極東のことは基本的には何も知らなかったと思います トランプ大統領も、北朝鮮のミサイルが米国本土を狙う、といった露骨な挑戦をし続けたため応戦するようになりましたが、北朝鮮問題は対中国政策を考慮する上でのカードの一枚と考えている、ということだと思います 一つは北朝鮮問題に対応する、という理由で軍拡を進めることができるからでしょう 本丸は、軍拡を続ける中国に対抗すること トランプの暴走を止めるバランス取るスリーゼネラルとワンボーイスカウト ティラーソン長官は、国務省の高官ポストそのものを大幅に削減しようとしている、と聞きました。そして当然それに不満を抱く国務省役人サイドから「長官更迭」を狙って、色々な話を流しているというのです 2015年に「韓国に対する核戦争」を前提にした「5015作戦」が作られました 「5015作戦」の考え方は先制攻撃です。北の南に対する核ミサイル攻撃の「兆候」を「探知」したら、まず「攪乱」するのです トップが命令を出すために必要な現場からの情報や、トップが現場に下ろす情報のコミュニケーションラインをサイバー攻撃などで攪乱するのです 斬首作戦」は、トップを暗殺することだと思われていますが、それは誤解です。コミュニケーションラインを攪乱し、頭(トップ)と胴体(ミサイル部隊などの実行部隊)を切り離すことです。核ミサイルは持っているけれど撃っていいのかよくわからない状態にして、その間に、先制攻撃で北のミサイル基地や司令部などを「破壊」する これが「5015作戦」の一番の肝だと言われています。その副次作戦として特殊部隊による頭(金正恩)の拿捕、殺害があるのです 「元海将が明かす、核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌(下)」 日本は、日米同盟(米軍は日本防衛)との関係上、「第三者」と位置づけられます 第二次朝鮮戦争が生起すると、まず日本政府は「重要影響事態」と認定 「存立危機事態 最初に「重要影響事態」を認定 「存立危機事態」を認定 「武力攻撃事態」が認定 飛んでくるミサイルの数を考えれば、約15隻は配備される日米のイージス艦により、迎撃は可能だと思います 「緊急対処事態」と認定 「5015作戦」は今でも大統領が命令すればいつでも実施できる状況 大統領による「自衛権」の発動か、国連の「武力制裁」決議が必要です。現時点では、どちらの条件も整っていません トランプ大統領にとって朝鮮半島は、中東と異なり、軍事介入するほどの国益があると考えていないのではないか、と見ています。 ですから経済制裁を強化し、北を孤立させて締めあげる戦略になるのだと思います 4つのNO」を“餌”にして北朝鮮を話し合いの場に 中国と北朝鮮は関係最悪 「6者協議」の再開が落としどころ? くろい・ぶんたろう 「北の核ミサイルが東京都心に着弾すれば最悪180万人死亡」 「38ノース」が衝撃的なレポートを発表 「ソウルと東京に核攻撃があったら~朝鮮半島有事の人的被害」 仮に250ktの核ミサイル1発が東京中心部に着弾すれば、死者は約70万人、負傷者は約247万人に達すると推計。最悪の想定では、複数のミサイルが着弾した場合、180万人もの死者が出るという もし水爆が使用されれば日本が被る被害は桁違いになる
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北朝鮮問題(その12)(北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か、北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告、北朝鮮の自制はなぜか 孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ) [世界情勢]

北朝鮮問題については、9月21日に取上げた。今日は、(その12)(北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か、北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告、北朝鮮の自制はなぜか 孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ) である。

先ずは、経済ライター、Beacon Reports発行人のリチャード・ソロモン氏が11月4日付け東洋経済オンラインに寄稿した「北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・イスラエルの歴史学者・執筆家のユヴァル・ノア・ハラリ氏は、ほとんどのテロリストは陶器店を破壊しようとして飛び回る無力なハエのようなものだと話す。 「ハエは力が弱すぎてティーカップ1つをも押し傾けることができない。よってハエは見つけた雄牛の耳に入りその中でブーンと音を立てる。そうすると雄牛は恐怖と怒りで暴れ出し陶器店を破壊する」と例える。
▽北朝鮮が米国を攻撃する可能性
・テロリストはドラマチックな手法で挑発してくるため、狙われた側が過剰反応し、自分たちはテロリストよりもっと強く恐ろしいのだと威嚇してくるのだ。このハラリ氏の類比論は、ドナルド・トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩委員長の好戦的な発言に過剰反応することで、意図せず引き起こされる可能性のあるダメージに対する辛辣な警告である。
・北朝鮮は近いうちにサンフランシスコを破壊する能力のミサイルを開発する可能性がある。しかし、正恩氏が実際に米国を「狙う」ことはあるのだろうか。米国は過去70年以上もの間、比較にならないほど強い破壊力を持つ核兵器で攻撃を抑止してきた。 「旧ソビエトは数千もの核兵器を保有し、米国本土を繰り返し破壊する能力を持ち合わせていた。そのソビエトを思いとどまらせてきた米国が今なぜ北朝鮮を恐れないといけないのか?」と外交政策アドバイザー、ブラッド・グロッサーマン氏は問いかける。
・同氏は、米国の有力シンクタンク、CSISパシフィック・フォーラム事務局長を務めるほか、多摩大学ルール形成戦略研究所の客員教授でもある。同氏の見立てでは、正恩氏は、核兵器を米国や、その同盟国に対して最後の砦としてしか使わないはずだ。
・正恩氏は、北朝鮮が作り出すほんの少しの富でも軍事政権を支えられるよう多くの国民を貧困に陥れてきた――彼の父、祖父もそうした。正恩氏の究極の希望は、米国を朝鮮半島から退かせ、そこに韓国・北朝鮮の統一国家をつくり自分がその合法的な支配者に納まりたいというところではないか。 それを実現するために、国際社会ではナンバーワンではなく、「ナンバーツーの敵」となってきた。ナンバーワンになってしまえば、首をはねられてしまうからだ。「正恩氏はまったくもって理論的な人物で、彼にとって好ましくない境遇をうまく切り抜けてきた」と、グロッサーマン氏は話す。
▽「レッドライン問題」にするのは危険だ
・一方、トランプ大統領も世間からの注目を好み、人を嘲笑し、何かを得るためには相手をいじめにかかる性質を持っている。正恩氏同様、予測不能なことをして、人を驚かせるタイプだ。今のトランプ大統領は、国民が共有するところの国益としての理念、価値観、軍事以外の説得方法(つまりソフトパワー)を独断で抑えつけ独り歩きしている。
・トランプ大統領による、利益を得る者がいれば利益を失う者がいるという「ゼロサム」の攻撃的なリーダーシップ、多国間協調の軽視、過去に締結された協定からの脱退という行為は、同盟国を不安にさせている。 「トランプ大統領は、米国第一主義という公約を守るために本当に韓国や日本を犠牲にしてサンフランシスコを守るのではないか」と同盟国は考えているかもしれない。政策立案者たちがこのような疑問を持ち始めるということだけで、米国の友好的な地域の覇権、地域の安定の将来に暗い影が見え始めているということを意味する。
・グロッサーマン氏は北朝鮮問題を 「レッドライン問題」にしてしまうことは間違いだと指摘する。日本と韓国は、何年もの間、北朝鮮に威嚇され続けてきた。米国本土攻撃の危機感を理由に「今行動あるのみ」と米国が息巻くのは、同盟国に米国との同盟関係を懸念する材料を与えるだけだという。「もし何かがわれわれを歯車から切り離し力を弱めてゆくとすれば、それはまさに同盟国との脆弱な関係だ」と同氏は話す。
・一方、正恩氏がおとなしくし続けることは考えがたい。おそらく同氏は核弾頭を表面的に利用しながら西の同盟国の絆を弱めようとするだろう。 たとえば韓国船を沈下させるなどというような小さめの挑発から始め、後に第3、第4の手段として海中核爆発を実行するなどして衝突緊張をしだいにエスカレートさせていくことも考えられる。そして米国はそのつど韓国、日本、そして自国のうち誰の利益を守るかの選択を迫られるのである。
・北朝鮮に悩まされ続けてきた韓国政府は、軍事境界線から35マイル南に位置し、北の莫大に備蓄された従来兵器の射程距離に入っている。何百万人もの韓国人が攻撃対象のリスクとともに生活しているのだ。韓国政府は、北からの報復・先制攻撃を恐れ、米国は北朝鮮の挑発に対する態度を日本政府よりもトーンダウンすべきだと米国政府に要求してきてもおかしくない。 そこでトランプ大統領は、韓国政府と日本政府のどちらを守るかの二者択一を迫られるのである(もっともトランプ大統領が、日本と韓国の利益に少しでも関心があれば、の話だが)。
▽核不拡散条約が直面する新たな課題
・グロッサーマン氏は、トランプ大統領が自分で気づかずに正恩氏の仕事をしてしまうこともありうると指摘する。トランプ大統領のドラマチックな言動が、不安定なのは正恩氏ではなくトランプ大統領だ、ということを世界に示してしまうからだ。
・「トランプ大統領が悪者に見える発言をするように仕掛け、日韓政府に不信感を抱かせる。さらに、中国にとっての道理が通らないパートナーになってもらい、米国が築いてきた世界における義務遂行能力、パワー、立場を弱めてもらう」(グロッサーマン氏)
・かつては、米国の持つ「核の傘」がアジア太平洋地域の国々を守ってきたが、これからは各国が自国を、核兵器の脅威から守る努力をしなければならない日がくるかもしれない。核拡散防止条約が、真の狂人が爆弾を手にしたらどうするのか、という新たな課題に直面する日も遠くなさそうだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/196250

次に、11月10日付け東洋経済オンラインが「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部の記事を転載した「北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・地上侵攻は北朝鮮の核兵器を破壊するためのもの。もし北が先に核のボタンを押せば、攻撃されるのは在日米軍と在韓米軍だ。 アメリカが北朝鮮を地上侵攻したら、どれほどの犠牲が出るか。「流血の大惨事になる」と、専門家は警告する。 当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
・米軍の最高機関である米統合参謀本部は10月下旬、北朝鮮が開発する核兵器や関連施設を「完全に破壊する」ためには、地上侵攻しかないという見解を示した。北朝鮮の金正恩政権の内部情報がほとんどなく、核兵器や通常兵器の保管場所もほとんど把握できていないため、標的ありきの空爆では完全に破壊することができないのだ。
・地上戦が避けられないとしたら、それは具体的にどんな戦争になるのか。専門家に聞いた。 米軍が地上侵攻に踏み切るとしたら、それは多面的な軍事作戦の一部になるだろうと、英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)ワシントン所長のマーク・フィッツパトリックは本誌に語った。 地上侵攻の主力は韓国軍で、米軍の特殊部隊は諜報活動や後方支援を担うだろう。「地上侵攻の要は、北朝鮮の核兵器や関連施設を掌握することだ。問題は、それらの位置を特定できるかどうかだ」とフィッツパトリックは言う。
▽朝鮮戦争では数百万人が犠牲に
・だが地上侵攻に先駆けて、まずは米空軍のF22ステルス戦闘機やB2ステルス戦略爆撃機などが、すでに場所がわかっている北朝鮮の核関連施設や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射台を攻撃する。その後、米軍と韓国軍の特殊部隊がパラシュートで北朝鮮に降下し、核兵器の保管場所を特定して無力化する。この作戦は戦いの「かなり早い段階で」実施されるはずだと、米政府で対北朝鮮政策を担当したこともあるフィッツパトリックは言う。
・「米韓両軍は対立が戦争にエスカレートする前に核兵器を掌握しようとするだろう。北朝鮮の核攻撃だけは阻止しなければならない」 北朝鮮との戦争では「非常に短期間で相当数の死者が出る」とフィッツパトリックは警告する。実際、朝鮮戦争では約3万3000人の米軍兵士を含め数百万人が犠牲になった。たとえ核兵器が使われなくても、北朝鮮と韓国の死者は戦闘開始後あっという間に100万人以上に達すると、フィッツパトリックはみている。
・「北朝鮮は恐らく、戦闘開始後のできるだけ早い段階で核攻撃を行おうとすうるだろう。攻撃対象はたぶん在日米軍か在韓米軍、もしくはその両方だ」 ただしアメリカが北朝鮮の金正恩政権を相手にわざと戦争を始めるとは思わないと、フィッツパトリックは言う。「米朝戦争が勃発するとしたら、最もありそうなのは、米政府の声明や行動を北朝鮮が誤解した時だ」
▽望ましい軍事的選択肢など1つもない
・韓国には約2万4000人、日本には約4万人の米軍兵士が駐留している。一方、北朝鮮軍の兵士は約120万人で、1万1000人規模の砲兵部隊と60発程度の核兵器を保有すると見られている。技術力も含めた軍事力ではアメリカが北朝鮮を圧倒しており、負けるのは北朝鮮だろう。だがアメリカが北朝鮮と戦争を始めれば、数百万人の市民が犠牲になる、という見方が大勢だ。
・米軍の軍事作戦に対して北朝鮮が核攻撃で報復すれば、10万人の在韓・在日アメリカ人を含めて数百万人の市民の命が危険になる。そうなる前に、北朝鮮の核兵器をアメリカが完全に破壊できる保証はどこにもない。
・米議会調査局が10月下旬に発表した報告書は、米朝戦争が起きた場合、通常兵器しか使用しない場合でも、最初の数日で最大30万人が死亡すると推計した。米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が10月に発表した別の報告書は、もし北朝鮮が韓国の首都ソウルと東京を核攻撃した場合、両都市で死者が最大210万人に上ると推計した。 北朝鮮に対する望ましい軍事的選択肢など1つもないと、多くの人が感じるのは当然だ。
http://toyokeizai.net/articles/-/196890

第三に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が11月16日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「北朝鮮の自制はなぜか、孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・北朝鮮は9月15日の「火星12」の発射後2ヵ月間、弾道ミサイル発射を行っていない。従来、北朝鮮は米軍・韓国軍の共同演習を威嚇と見て、それに対抗しミサイルを発射、また国連の制裁決議に屈しない姿勢を示すためにもそうした行動を取ってきた。だが、トランプ大統領の11月5日からの日本、韓国、中国などの歴訪や日本海での日米、米韓海軍共同演習に対し、報道では口を極めた反発を示しつつ、軍事力の誇示を控えている。それはなぜかを考えてみた。
▽「核戦力の建設達成」は「中断」の弁明  米国の軍事圧力に一定の効果か
・唐突だったのは、朝鮮の「労働新聞」が10月28日号の論評で「核戦力の建設は既に最終完成の目標が全て達成された段階にある」と報じたことだ。 その1ヵ月以上前の9月15日には、北海道上空を経て北太平洋に落下した「火星12」の発射実験を視察した金正恩国務委員長が、「(開発は)終着点にほぼ達しているので全力を尽くして終えなければならない」と語った、と北朝鮮で報じられた。 わずか1ヵ月そこそこで、何がどう変わったのか。10月28日に突然「核戦力建設の目標は全て達成された」と発表したのは、ミサイル実験を今後行わない、しばらく中断することの内外に向けての弁明ではないか、と考えられる。
・北朝鮮の核・ミサイル開発は、1990年に当時のソ連が韓国を承認して国交を樹立、92年に中国もそれに続き、両国が北朝鮮に武器輸出を停止したため本格化した。 ソ連、中国に見放された北朝鮮は孤立し、経済は衰弱、兵器の更新もほとんどできない状況にある。圧倒的に通常戦力で優勢な米軍・韓国軍に対して北朝鮮が抑止力を持とうとすれば、その最終目標は米国本土を確実に狙えるICBM(大陸間弾道ミサイル)と核弾頭の保有だったはずだ。
・9月15日に金正恩委員長が「終着点にほぼ近付いた」と言ったのは、そうした悲願ともいえるICBMの完成が近いことを示した、と考えられる。だが課題は残っていた。 7月28日に発射した「火星14」は米国とロシアの間のICBMの飛行時間を上回る、47分間も飛び、理論上は、米本土ほぼ全域に到達する力を持つ。
・だが大気圏突入時の弾頭の姿勢制御や、その際に空気が圧縮されて生じる約7000度の高熱に耐え得るか、などの課題が残り、少なくとも完成までにはあと数回の発射実験が必要、と考えられていた。 その後、北朝鮮は8月8日の人民戦略軍の声明などで、グアム島周辺の海上に向け「火星12」を4発発射する計画を公表、島根県などの上空を通るその軌道まで通告していた。ところがそれは実施せず、8月29日に北海道南部上空を経て北大平洋に向け「火星12」1発を発射しただけだった。
・グアム周辺への威嚇発射をやめたのは、米国がそれに怒って軍事的圧力を強化し、武力衝突に発展すれば北朝鮮の敗北は必至だったからだろう。 米軍に攻撃されて、残った核ミサイルを急いで韓国、日本に撃ち込んだとしても、「刺し違い」となるだけで、北朝鮮は滅亡するから、米国に対し余りに露骨な威嚇は避けたものと考えられる。
・さらにその後、9月3日に北朝鮮は初の水爆実験を行い、9月15日に「火星12」を再び北太平洋に発射した。だが、それ以降2ヵ月ミサイル発射を行わず、10月28日に「核戦力建設の目標を達成した」と発表した。  これは米国の軍事的圧力が北朝鮮に核廃棄を強いるほどの効果はなくても、ある程度自制をさせる役には立つことを示した、と考える。
▽中国が石油禁輸の制裁で対北説得のカードを握る
・それ以上に重要なのは経済制裁、特に石油禁輸に対する中国の姿勢だろう。 9月3日に北朝鮮が行った水爆実験に対し、翌4日に開かれた国連安保理緊急会合では米国のN・ヘイリー大使が「24年間も北朝鮮と対話してきたのは無駄だった。もうたくさん」と舌鋒鋭く徹底的な制裁を求め、6日に米国は全面的な石油禁輸を行う制裁案を提出した。 だが、北朝鮮の石油輸入元の約9割を占める中国はそれに難色を示し、拒否権を発動しかねない状況だった。このため米国は中国と協議し、全面禁輸ではなく輸出量の上限を定める修正案を11日に提出。それが全会一致で決議された。
・実はこの米国案は骨抜きだった。北朝鮮への原油輸出を「年間400万バレル(63.6万キロリットル)以下」、石油精製品(ガソリン、軽油、重油など)は「200万バレル(31.8万キロリットル)以下」に制限することとしたが、OECD(経済協力開発機構)の付属機関である「国際エネルギー機関」の統計では、2014年の北朝鮮の石油輸入は原油が53.2万キロリットル、石油精製品が31.8万キロリットルだったから、安保理が定めた原油輸出の上限は2014年の北朝鮮の輸入量より10万キロリットルも多い。
・石油精製品の上限は2014年の輸入量と同じだった。米政府はメディアに「北朝鮮の石油精製品の輸入量は450万バレル(71.5万キロリットル)で、その55%の削減となる」と説明したが、2014年から16年までの間に輸入量が2倍以上に増えたとは信じ難く、トランプ流の成果の宣伝では、と疑われる。
・事実上、従来通りの北朝鮮への石油輸出を認めさせた中国は、その一存で北朝鮮への輸出量を左右できるから、それを北朝鮮説得のカギとすることができる立場となった。 「全面的石油禁輸になるところを助けてやったのだから、アメリカを刺激するような行動はやめろ。またやったら石油を止める」と中国に言われれば、北朝鮮も従わざるを得ない。そこで「核戦力建設の目標は全て達成された」としてミサイル発射を控えることになった、と考えれば、北朝鮮の突然の姿勢変化の説明がつく。
▽米中首脳会談でも習近平主席が主導権持つ
・トランプ大統領の11月8日の訪中を、習近平主席は最大級の厚遇で迎えたが、安倍首相の低姿勢のおもてなしと異なり、復活した「中華帝国」の威光をにこやかに示す風格が感じられた。 北朝鮮に対する圧力に関して両首脳は共同記者会見で、「国連安全保障理事会が採択したすべての制裁決議を今後も厳格に履行していくことで一致した」と述べた。
・制裁決議は常任理事国である中国が賛成して決まったのだからこれは当然だ。米国が当初、唱えた全面的石油禁輸案に中国が反対し、事実上、従来通りの輸出量を上限とするよう修正させたのだから、トランプ大統領がその決議の「厳格な履行」に同意したのは「その範囲内での石油輸出には文句は言わない」と再確認したことになる。
・またトランプ大統領は「北朝鮮の核保有は認めず、経済圧力をかけ続ける」とも述べた。安倍首相との会談で合意した「最大限の圧力」ではなく「経済的圧力」としたことは「軍事的圧力」は除外する意味となる。 習主席は「(米中)双方は対話と交渉による問題解決に努める」と共同会見で述べたが、これはトランプ大統領が「対話は無駄」とするこれまでの硬直姿勢を習主席との会談で緩めたことを意味する。
・トランプ大統領は、習主席との会談後、あらゆる手段による「最大限の圧力」や「対話は無駄」との日頃の主張をせず、「経済的圧力」を語り、習主席が求める「対話と交渉による解決」に反対する姿勢を示さなかった。トランプ大統領の場当たり的発言は定評があり、あまり当てにはならない、とはいえ、中国は北朝鮮と米国の双方をたしなめ、チキンゲームを続けて衝突することがないよう減速させることに、ある程度は成功したかに見える。
▽制裁で北の核放棄は期待できない 威嚇は武力衝突に発展する可能性が高い
・安保理が決めた経済制裁には、北朝鮮の核・ミサイル開発の速度を遅らせる効果はあっても、核廃棄をさせる効果があるか否かは疑わしい。 前回10月19日の本コラムで書いたように、韓国政府は北朝鮮の核・ミサイル開発費用は 「昨年200億円以上」と推計していることを日本外務省に伝えている。 これは日本が購入中のF35Aステルス戦闘機(1機146億円)の1.4機分でしかなく、北朝鮮のGDPの0.6%に過ぎない。この程度の額であれば、経済制裁によって「資金源を断って核・ミサイルを廃棄させる」効果はまずないといえよう。
・また、経済制裁で生活が苦しくなった国民が政府に対し蜂起した例もこれまでなく、むしろ制裁に反発し団結強化に向かいがちだ。経済制裁はせいぜいがミサイル発射や核実験を若干慎ませ、開発を遅らせる程度の効果しかあるまい。
・いずれ米国は「経済的圧力」に効果がなければ、「軍事的圧力」に力点を移すしかない。威嚇は相手がそれに屈しなければ一層エスカレートし、武力紛争に発展しがちだ。 米国はトランプ大統領の東アジア歴訪に合わせて、空母「R・レーガン」「T・ルーズヴェルト」「ニミッツ」3隻とイージス・ミサイルシステムを搭載した巡洋艦、駆逐艦11隻を北西太平洋に集結させ、最大154発の「トマホーク」巡航ミサイルを搭載する原子力潜水艦「ミシガン」も朝鮮半島水域に派遣している。
・11月11日から14日の米韓合同海洋演習には韓国海軍の7隻も参加、日米の共同訓練には海上自衛隊のヘリ空母「いせ」と護衛艦「いなずま」「まきなみ」やP‐3C哨戒機などが参加した。グアムのB1B爆撃機と航空自衛隊、韓国空軍との共同訓練も行われ、米空軍は嘉手納にF35Aを12機増派、岩国の海兵隊のF35Bの16機と合わせステルス戦闘機は28機になる。
・これらの計画は、今回のトランプ・習近平会談以前に決まったもので、この会談後にトランプ大統領が「経済的圧力の強化、継続」を表明したのとは完全には合致せず、もし北朝鮮がミサイル発射を控え続ければ、米空母は再び横須賀を母港とする「R・レーガン」だけに戻る可能性が高い。
・だが一方で、北朝鮮がミサイル発射や核実験を再開すれば、米軍は威嚇を強化せざるをえない。北朝鮮の領海付近で艦艇、航空機が活動し、米軍がこれまで他国上空でしばしば行ったように、領空上空に入って偵察活動をすれば、相手は対艦、対空ミサイルを発射するなどで対抗し、誰も望んでいない戦争の戦端が開かれる結果になりかねない。
▽日本にもミサイルが発射される 日本人の命を守るのは習近平?
・米統合参謀本部は11月初頭、米国議員の質問に答えた書簡で「北朝鮮の核兵器の位置を特定し、完全に破壊する唯一の方法は地上部隊の侵攻であり、地下深くの施設を無効化する間に北朝鮮が核兵器で反撃する危険がある」と述べ、外交的解決を求めている。
・もし米・韓軍が北朝鮮を攻撃すれば、滅亡が迫った北朝鮮は自暴自棄となり、急いで残った核ミサイルを韓国や日本に発射する公算は高いのだ。 仮に東京の都心上空で北朝鮮の水爆(推定威力は爆薬16万トン相当)が爆発すれば、半径4キロ以内では初期放射線と爆風、熱の相乗効果でほぼ全員が死傷し、6〜7キロメートル以内でもヤケドを負うことになる。
・勤務時間内なら、都心の4キロメートル圏内に400万人は居るだろう。日本の政治、行政、経済、情報の中枢は壊滅し、救援も遅れて悲惨な状況になる。米国防長官J・マティス海兵大将(退役)が「第2次大戦後最悪の惨事となる」として、外交的解決を求めるのは当然だ。
・習主席が「対話による北朝鮮核問題の解決」の必要性をトランプ大統領に説いたのは、米軍の首脳部やR・ティラーソン国務長官、与党共和党の主流など、現実派と軌を一にしている。 世界の国家指導者はほぼこぞって対話を求めている。一方、トランプ大統領は奇矯、浅慮の言動で世界から孤立、第一の同盟国である英国でも、「エリザベス女王が謁見をされるべきか否か」が論じられ、いまだに公式訪問ができないほどの不評だ。
・国内でも省庁幹部の任用がなお進まず、大統領令は裁判で次々に否定され、側近のロシアとの癒着の捜査が進み、共和党の重鎮とも罵倒の応酬をするありさま。彼の失態報道には「ウソだ。ウソだ」と耳をふさぐ、有権者全体の30数%のトランプ信者だけが頼りだ。
・ところが安倍首相だけはこの「四面楚歌」のトランプ大統領との密接さをアピールしようと、ひたすら歓待に努め、「対話は無駄」と言うトランプ大統領に歩調を合わせて、「最大限の圧力をかける」ことで完全に一致したのだ。 米国の現実派と同調し、対話の必要性をトランプ大統領に説いた習主席とは対称的だ。
・「戦争になれば大参事となる。核戦争を避けるには外交と対話が必要」とする米軍上層部の現状認識は私がこの数ヵ月間、本コラムで述べてきたことと「完全に一致する」。 「日本人の命を守る」ことに貢献するのは安倍・トランプ両首脳ではなく、習主席および慎重な米国の将軍達か、と慨嘆せざるをえない。
http://diamond.jp/articles/-/149090

第一の記事で、 『「旧ソビエトは数千もの核兵器を保有し、米国本土を繰り返し破壊する能力を持ち合わせていた。そのソビエトを思いとどまらせてきた米国が今なぜ北朝鮮を恐れないといけないのか?」と外交政策アドバイザー、ブラッド・グロッサーマン氏は問いかける』、 『米国本土攻撃の危機感を理由に「今行動あるのみ」と米国が息巻くのは、同盟国に米国との同盟関係を懸念する材料を与えるだけだ』、 『トランプ大統領が自分で気づかずに正恩氏の仕事をしてしまうこともありうると指摘する。トランプ大統領のドラマチックな言動が、不安定なのは正恩氏ではなくトランプ大統領だ、ということを世界に示してしまうからだ』、などの指摘は極めて説得的だ。
第二の記事で、 『たとえ核兵器が使われなくても、北朝鮮と韓国の死者は戦闘開始後あっという間に100万人以上に達すると、フィッツパトリックはみている』、 『米議会調査局が10月下旬に発表した報告書は、米朝戦争が起きた場合、通常兵器しか使用しない場合でも、最初の数日で最大30万人が死亡すると推計した』、 『米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が10月に発表した別の報告書は、もし北朝鮮が韓国の首都ソウルと東京を核攻撃した場合、両都市で死者が最大210万人に上ると推計した。 北朝鮮に対する望ましい軍事的選択肢など1つもないと、多くの人が感じるのは当然だ』、いずれにしても、軍事衝突による犠牲者数は膨大のようだ。
第三の記事で、安保理事会で、『米国は中国と協議し、全面禁輸ではなく輸出量の上限を定める修正案を11日に提出。それが全会一致で決議された。 実はこの米国案は骨抜きだった』、 『中国が石油禁輸の制裁で対北説得のカードを握る』、 『米中首脳会談でも習近平主席が主導権持つ』、などトランプは習近平主席に完全に支配されたかのようだ。  『仮に東京の都心上空で北朝鮮の水爆(推定威力は爆薬16万トン相当)が爆発すれば、半径4キロ以内では初期放射線と爆風、熱の相乗効果でほぼ全員が死傷し、6〜7キロメートル以内でもヤケドを負うことになる。 勤務時間内なら、都心の4キロメートル圏内に400万人は居るだろう』、にも拘らず、 『安倍首相だけはこの「四面楚歌」のトランプ大統領との密接さをアピールしようと、ひたすら歓待に努め、「対話は無駄」と言うトランプ大統領に歩調を合わせて、「最大限の圧力をかける」ことで完全に一致したのだ。 米国の現実派と同調し、対話の必要性をトランプ大統領に説いた習主席とは対称的だ』、 『「日本人の命を守る」ことに貢献するのは安倍・トランプ両首脳ではなく、習主席および慎重な米国の将軍達か、と慨嘆せざるをえない』、口だけ勇ましい安部首相は、総選挙でも北朝鮮問題を自民党支持につなげたようだが、日本にとっての危険性を直視しないマスコミも困ったものだ。
タグ:東洋経済オンライン ニューズウィーク日本版 北朝鮮問題 ダイヤモンド・オンライン 田岡俊次 (その12)(北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か、北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告、北朝鮮の自制はなぜか 孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ) リチャード・ソロモン 「北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か」 米国は過去70年以上もの間、比較にならないほど強い破壊力を持つ核兵器で攻撃を抑止してきた。 「旧ソビエトは数千もの核兵器を保有し、米国本土を繰り返し破壊する能力を持ち合わせていた。そのソビエトを思いとどまらせてきた米国が今なぜ北朝鮮を恐れないといけないのか?」と外交政策アドバイザー、ブラッド・グロッサーマン氏は問いかける 正恩氏はまったくもって理論的な人物で、彼にとって好ましくない境遇をうまく切り抜けてきた ・トランプ大統領による、利益を得る者がいれば利益を失う者がいるという「ゼロサム」の攻撃的なリーダーシップ、多国間協調の軽視、過去に締結された協定からの脱退という行為は、同盟国を不安にさせている トランプ大統領は、米国第一主義という公約を守るために本当に韓国や日本を犠牲にしてサンフランシスコを守るのではないか」と同盟国は考えているかもしれない トランプ大統領が自分で気づかずに正恩氏の仕事をしてしまうこともありうると指摘する。トランプ大統領のドラマチックな言動が、不安定なのは正恩氏ではなくトランプ大統領だ、ということを世界に示してしまうからだ 「北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告」 米統合参謀本部 北朝鮮が開発する核兵器や関連施設を「完全に破壊する」ためには、地上侵攻しかないという見解を示した 英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)ワシントン所長のマーク・フィッツパトリック 地上侵攻の主力は韓国軍で、米軍の特殊部隊は諜報活動や後方支援を担うだろう。「地上侵攻の要は、北朝鮮の核兵器や関連施設を掌握することだ。問題は、それらの位置を特定できるかどうかだ たとえ核兵器が使われなくても、北朝鮮と韓国の死者は戦闘開始後あっという間に100万人以上に達する 北朝鮮が核攻撃で報復すれば、10万人の在韓・在日アメリカ人を含めて数百万人の市民の命が危険になる ・米議会調査局が10月下旬に発表した報告書 米朝戦争が起きた場合、通常兵器しか使用しない場合でも、最初の数日で最大30万人が死亡すると推計した 米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が10月に発表した別の報告書 北朝鮮が韓国の首都ソウルと東京を核攻撃した場合、両都市で死者が最大210万人に上ると推計 北朝鮮に対する望ましい軍事的選択肢など1つもないと、多くの人が感じるのは当然だ 「北朝鮮の自制はなぜか、孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ」 米国の軍事的圧力が北朝鮮に核廃棄を強いるほどの効果はなくても、ある程度自制をさせる役には立つことを示した、と考える 国連安保理緊急会合 米国は全面的な石油禁輸を行う制裁案を提出 中国はそれに難色を示し、拒否権を発動しかねない状況だった。このため米国は中国と協議し、全面禁輸ではなく輸出量の上限を定める修正案を11日に提出。それが全会一致で決議された 実はこの米国案は骨抜きだった 中国が石油禁輸の制裁で対北説得のカードを握る 米中首脳会談でも習近平主席が主導権持つ 威嚇は相手がそれに屈しなければ一層エスカレートし、武力紛争に発展しがちだ。 米軍がこれまで他国上空でしばしば行ったように、領空上空に入って偵察活動をすれば、相手は対艦、対空ミサイルを発射するなどで対抗し、誰も望んでいない戦争の戦端が開かれる結果になりかねない。 米・韓軍が北朝鮮を攻撃すれば、滅亡が迫った北朝鮮は自暴自棄となり、急いで残った核ミサイルを韓国や日本に発射する公算は高いのだ 仮に東京の都心上空で北朝鮮の水爆(推定威力は爆薬16万トン相当)が爆発すれば、半径4キロ以内では初期放射線と爆風、熱の相乗効果でほぼ全員が死傷し、6〜7キロメートル以内でもヤケドを負うことになる 勤務時間内なら、都心の4キロメートル圏内に400万人は居るだろう 習主席が「対話による北朝鮮核問題の解決」の必要性をトランプ大統領に説いたのは、米軍の首脳部やR・ティラーソン国務長官、与党共和党の主流など、現実派と軌を一にしている 世界の国家指導者はほぼこぞって対話を求めている 安倍首相だけはこの「四面楚歌」のトランプ大統領との密接さをアピールしようと、ひたすら歓待に努め、「対話は無駄」と言うトランプ大統領に歩調を合わせて、「最大限の圧力をかける」ことで完全に一致したのだ 米国の現実派と同調し、対話の必要性をトランプ大統領に説いた習主席とは対称的だ
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ロシア(その1)(ロシアの銀行危機 ついに中小から大手へ波及 救済に走るロシア中銀だが 経営者のモラルハザードを引き起こす危険性、ロシアの農業が大復活 一気に進んだ効率化 経営を刷新し生まれ変わったソホーズとコルホーズ、迫るロシアの脅威、バルト3国の悲劇再来を防げ) [世界情勢]

今日は、ロシア(その1)(ロシアの銀行危機 ついに中小から大手へ波及 救済に走るロシア中銀だが 経営者のモラルハザードを引き起こす危険性、ロシアの農業が大復活 一気に進んだ効率化 経営を刷新し生まれ変わったソホーズとコルホーズ、迫るロシアの脅威、バルト3国の悲劇再来を防げ) を取上げよう。

先ずは、ロシア・ファンドのジェネラル・パートナーの大坪 祐介氏が9月7日付けJBPressに寄稿した「ロシアの銀行危機、ついに中小から大手へ波及 救済に走るロシア中銀だが、経営者のモラルハザードを引き起こす危険性も」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ロシア経済の底打ちが明確化している。8月11日に発表された2017年第2四半期の実質GDP(国内総生産)速報値は前年同期比+2.5%と3四半期連続のプラスとなった(2016年4Q +0.3%→ 2017年1Q +0.5%)。 ロシア中銀はじめ多くの民間金融機関・国際機関は2017年通年の実質GDP成長率見通しを1%台半ばに据え置いているが、最も強気の経済発展省は9月初に+2.1%(想定油価格=49ドル/バーレル)に引き上げている。
▽中央銀行が経営介入
・こうしたなか、8月29日、ロシア中銀は資産規模で国内第8位の大手民間銀行アトクリティエ(Otkrityie)に対し、中央銀行の特別措置を適用することを発表した。 特別措置とは新たに設立された銀行救済ファンドが同行の株式の75%を取得、中央銀行が自ら同行の経営に介入するというものである。 ロシア中銀がロシア国内の「銀行洗浄作戦」を展開して業績不振の小規模泡沫銀行のライセンスを積極的に取り消していることは以前の拙稿(2017年2月22日「春爛漫のロシア株式市場、銀行は冬真っ只中」)でも触れた。
・しかし、この夏はやや状況が異なる。7月には資産規模で27位のバンクユグラがライセンスを取り消された。 同行はリーマンショック以降、業界内でも最も高い預金金利で積極的に預金勧誘を行う銀行として有名であったが、そうしたハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルがあだとなって中銀から業務停止を命じられることとなった。
・それに先立つ3月にはロシアの有力地方であるタタールスタン共和国のタトフォンドバンクのライセンスも取り消されている。同行は資産規模で42位であり、泡沫銀行とは言えない規模である。
・しかし今回中銀の特別措置の対象となったアトクリティエ銀行はこれらの銀行と比べて格が違う。 同行はロシア最大の民間銀行であり資産規模で4位(2017年6月末)、中銀が定める「ロシアの金融システム上重要な銀行」とされる10行のうちの1行である。 したがって、ライセンス取消し→業務停止→DIC(預金保険公社)への移管→預金者への預金払い戻しという、これまでの典型的な破綻プロセスではなくロシア中銀による「ベイル・アウト」(外部資金による救済)というロシアでは初めての破綻措置が取られた。
・そもそもアトクリティエ銀行とはどのような銀行であったか。銀行の設立は登記上1992年12月となっているが、90年代そして2008年夏のリーマンショック前まではほとんど無名の銀行であった。 その名前が有名になったのは2012年に当時の有力銀行であったノモスバンクの株式を買収したところから始まる。翌2013年には同行の株式の過半数を取得して吸収合併している。
・アトクリティエ銀行はその株主に大手石油会社ルクオイルの社長、副社長、大手政府系銀行のVTBなどを擁している。 かつ設立者であり最大株主であるベリャエフ氏は政府関係者との強いつながりを誇示しており、同行は地方銀行を次々と買収、顧客には政府系企業を中心にその業務を急速に拡大した。
▽ロスネフチの外貨資金繰りを支援
・2014年12月には経営破綻した大手商業銀行トラストの救済行となり、ロシア中銀から多額の資金援助を受けた。 そして、同時期にはクリミア危機に伴う欧米の対ロシア経済制裁で対外債務の返済に困窮したロシア最大の石油会社(政府系である)ロスネフチの外貨資金繰りを支援したとされる。 詳細は2017年1月3日付のフィナンシャル・タイムズ(FT)紙記事“Inside the private bank backed by the state”を参照)。
・本件は同時期のルーブル急落の一因になったとされる一件であるが、真相はいまだに明らかにされていない。 ベリャエフ氏は2008年のリーマンショックを契機にロシア銀行界にのし上がってきたいわば「遅れてきたオリガルヒ」であり、自らを「リスク・テイカー」と称していた。その積極的な業務展開にはロシア金融業界でも懸念を示す先も多かった。
・特に、昨年12月にアトクリティエ・グループがロシア最大の保険会社ロスゴスストラフを統合する計画を発表してからはその懸念が一層深まった。 国内大手銀行の経営破綻なども影響して、アトクリティエ銀行からは6月、7月だけで4350億ルーブルの個人預金が流出、これは同行の負債の約2割に相当する。 さらにロシア中銀によれば7月3日から8月24日までに3890億ルーブルの法人預金、1390億ルーブルの個人預金が流出した。
・ロシア中銀は同行に対して無担保ローンを供給することで事態の先延ばしを図ったが、ここまで大量の資金流出が起きては手の施しようもなかった。今後、同行の救済には2500億~4000億ルーブルの資金投入が必要とロシア中銀は見積もっている。もちろんロシア金融市場始まって以来の最大の銀行救済となる。
▽今回の救済劇のインプリケーション
・こうした史上最大のアトクリティエ銀行救済劇にもかかわらず、ロシアの金融市場は平穏を保っている。  1つはこの救済劇があらかじめ予想されていたものであったからであるが、その予想の根拠は来年の大統領選挙を前に国民(=預金者)負担を伴うような破綻措置をロシア中銀は行うことはないという銀行業界内の暗黙の了解である。
・筆者は今回のロシア中銀の措置は国内銀行システムを不安定化させないためには無理からぬものがあると一定の理解を示している。しかし、2つの点で問題を投げかけたと感じている。 1つはロシアの銀行経営者にモラルハザードを生じさせた点である。今回の一件で当局は規模の大きな銀行を破綻させない、あるいは銀行と政府との強い結びつきは破綻を回避させると多くの銀行経営者が再認識したに違いない。 とすると、アトクリティエ銀行と同様な無謀な経営拡大戦略を選択する銀行が現れても不思議ではない。
・もう1つはロシア銀行業界における特異性、すなわち政府系銀行のプレゼンス過大を一段と加速する危険性である。 実際、アトクリティエ銀行から流出した資金の多くは安全性を求めてズベルバンクやVTBといった政府系銀行に流入したと言われている。現在でもこれら政府系銀行の国内預金・貸出シェア合計は過半数を優に超えている。 すると残された民間銀行が生き残りのためにリスク・テイクを迫られ、第2のアトクリティエ銀行が登場する可能性も否定できない。
・国内のマクロ経済運営では巧みな手腕を示したロシア中銀であるが、銀行行政でも同じような成果を見せられるのか、その手綱さばきが注目される。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50997

次に、同じ大坪 祐介氏が11月20日付けJBPressに寄稿した「ロシアの農業が大復活、一気に進んだ効率化 経営を刷新し生まれ変わったソホーズとコルホーズ」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・秋と言えば収穫の秋、ロシアでも「黄金の秋」と呼ばれる収穫の時期である。ここ数年、ロシアでは農業に関する景気の良い話を耳にすることが多くなった。 それは何よりも農業地帯の天候が安定していること、また対露経済制裁への対抗措置としてロシア政府が欧米諸国からの農産物輸入を禁止したため、野菜・果実の輸入代替が急速に進んでいることなどが背景にある。
・10月8日にウラジーミル・プーチン大統領が大統領府の公式HPに次のようなコメントを発表している。 「今日の農業および農産加工業はわが国の経済において最も急速な発展を遂げているセクターである」 「これは政府による農業振興策が効果的であったことを示している。特に大規模農業会社のみならず、小規模農家においても生産増加を見たことは喜ばしい」
・また、10月24日にはロシアからの農産物輸出について次のように述べた。 「2016年のロシアの農産物輸出は前年比+4.9%、171億ドルであり、わが国の武器輸出153億ドルを上回っている」 「2017年1-8月の農産物輸出は前年比+19.6%、119億ドルと資源・エネルギー以外では最大の輸出品目であり、経済成長のカギを握っている」
・筆者は農業の専門家ではないので、ロシアの農業事情を詳細に分析する力量は持ち合わせていない。代わりに筆者がこの秋に目にした断片風景をいくつかご紹介したい。そこからロシア農業の最近の事情を垣間見ることができるかもしれない。
 1.「黄金の秋」農業展示会で見たもの
+筆者は10月4-7日にモスクワ市内で開催された「黄金の秋」に参加した。同展示会はロシア農業省が主催するロシア最大の農業展示会である。 会場はVDNKh(ヴェデンハー=国民経済達成博覧会)というソ連時代に建設された歴史的な会場である。 今回の展示会に使われたパビリオンは2つ。1つはロシア全国の州・共和国および農業関係の大企業が展示ブースを構え、地元産品や自社商品を展示していた。 こちらはよくある地方物産展の雰囲気であり、筆者もロシア南部・スタブロポリ州のブースの一部に小さなテーブルを借りて日本のベンチャー、メビオール社のトマト栽培技術を紹介した。
+圧巻だったのは会場中央に陣取ったロシアの大手化学肥料会社ウラルカリのブースである。 肥料の現物を展示しても華に欠けると思ったのか、ブース内の壁を色とりどりのバラの生花で埋め尽くすという豪華かつ大胆な演出を行っていた。農業生産拡大に併せて肥料会社の業績も好調ということなのであろう。
・しかし、さらに圧巻だったのはもう1つのパビリオンである。筆者は最終日になってそこに足を踏み入れて驚いた。 ロシア全国から集められた乳牛、肉牛、羊、ヤギ、豚、馬、ラクダまで、おそらく100頭以上はいたのではないだろうか。さらに2階には鶏、アヒル、七面鳥、ウサギ、ミンク、キツネなど、食用、毛皮用のあらゆる家畜が集められていたのである。 ロシアの国産牛肉の品質が最近急速に改善していることは当コーナーの菅原氏のリポートでも詳しく報じられているところだが、その牛たちを間近に見るとなるほどと頷けるものがあった。
+筆者の1990年代ロシアの記憶では郊外の牧草地に放たれた牛は肋骨が浮き出た、素人目に見ても全くおいしそうではない牛ばかりであったが、ここに展示された牛たちは各種品評会でメダルを獲得したものも多く、見るからにうまそうな牛たちである。
+ 実際の牧場で飼われている牛のすべてがこれほど丹念に手入れされているとは思えないが、それでもロシアの畜産農家が自分たちの家畜の商品価値を意識するようになったことは大きな進歩であろう。 ロシア産の牛肉がヨーロッパやアジア市場に「ブランド牛」として輸出されるようになるのも時間の問題かもしれない。
 2.スタブロポリ州で見たもの
+スタブロポリ州はモスクワから南に飛行機で2時間余、コーカサス山脈の北に位置する農業州である。ここではロシア最大のトマト栽培企業であるエコカルチャー社が大規模な温室栽培を行っている。 筆者が当地を訪れるのは今年の夏に続いて2回目である。7月に訪問した際は緑濃き草原と山々が連なる快適な土地であったが、初冬の今回は終日深い霧に包まれたなんとも気の滅入る土地に様変わりしていた。
+しかし、温室の中は別世界である。気温は半袖でも作業できる適温(20~25度)に保たれ、高い天井からは数え切れないほどの黄色い人工照明がトマトを照らしている。 こうした環境の中でロシアの厳しい冬の間でも規則正しくトマトが成育し出荷されていくのである。これは農業というよりも工場に近い。 実際、温室の中で作業しているロシア人と話してみると、彼らは自分たちの仕事はトマトを育てることではなく、温室内の環境を制御することと考えているように感じた。
+ところで、本節の冒頭で「大規模な」温室栽培と書いたが、読者の方々はどれくらいの面積を想像されたのであろうか。 霧に包まれたこの温室は50ヘクタールである。東京ディズニーランドのテーマパークエリア面積が同社のHPによると51ヘクタールである。日本ではおそらく存在しない規模の温室農園である。
+しかし、これで驚いてはいけない。今回、筆者は同社が現在建設中の新ファームを訪問したのだが、こちらは最終的には100ヘクタールの規模になるという。 建設現場の周囲には作業員が寝泊りする宿舎が立ち並び、建設中の温室の中では大型ミキサー車が頻繁に行き来している。これはファームというよりも工場建設である。
 3.モスクワで見たもの
+さて、最後にモスクワのレストランの光景をお伝えしよう。ここ数年、モスクワのレストランではロシア産品を積極的にアピールする動きが顕著である。肉、魚、野菜といった食材はもちろんワインやクラフトビールなど選択肢はますます拡大している。 これはロシア人の愛国心にアピールしようという意図がないわけではなかろうが、現実的には欧米諸国からの食品禁輸、あるいはルーブル切り下げによる輸入価格の上昇に対応せざるを得ないというのが実情であろう。
+しかし、こうしたレストランのメニューをよく見ると、産地のみならず生産者の名前まで記されている。 「xx州xx村のxxxさんが育てたポテト」「yy共和国yy村yyyさんが仕留めた鹿肉」といった具合である。 なお、こうしたレストランの値段は決して安くはない。となると愛国心云々と言うよりは、純粋に「安全(=作り手がはっきりしている)でおいしいものを食べたい」との意識がロシア人の間で強まっていると考えるほうが自然であろう。
+最後の発見は帰りのアエロフロートの機内である。配られた機内食のメニューを見て驚いた。これまでエコノミークラスではビールは飲み物のメニューにはなかったのだが、最近はメニューに加わっている。 しかもロシア産の「ジグリ」ビールである。ワインも以前はスペイン産であったと記憶するが、現在は赤白ともにANAPAバレー産である。米カリフォルニアのNAPAではない。ロシア黒海沿岸のANAPAである。
+そして機内食の食材にも国産品が取り入れられている。前菜のサラダに入っているオイル漬けドライトマトのは筆者の投資先のIT会社の社長の実家で作られたものである。 彼の実家はロシア南部で露地栽培のトマトを栽培している。問題は余剰となったトマトをどう処理するかということで、数年前に西側からドライトマト用のオーブンを購入、ドライトマトの製造・販売を始めた。 ここで面白いのは、エンジニアであるIT会社の社長はそのオーブンを分解・解析して、はるかに熱効率の良いオーブンを設計、試作機を完成させてしまった。 現在はその新型オーブンを稼働させることでアエロフロートのみならずモスクワ市内のオーガニック食品スーパー、宅配グルメピザチェーンなどにも納入しているという。
 4.農業分野の日露経済協力へのインプリケーション
+こうした断片的な光景から結論めいたことを申し上げるのは憚られるが、筆者がロシアの農業に対して感じていることをお伝えしたい。 ロシアの農業を担う主体は農業会社(大企業)、自家菜園、小規模農家の3つに分類される。2016年の農業生産における比率はそれぞれ52.8%、34.7%、12.5%である。
+まず、農業会社であるが、ソ連時代の国営農場(ソホーズ)を前身とするものが多く、そのいくつかは国内外の株式市場に上場している。こうした農業会社は資本市場から資金調達することが可能で、積極的に農地買収や事業拡大を図っている。 本稿のスタブロポリ州のトマト会社も農業会社に分類される。経営形態としては日本よりも進んでおり、この分野で日本の農業との協力関係を模索するのは難しいように感じる。
+次に自家菜園である。これはダーチャと呼ばれ1990年代の経済混乱期には多くのロシア国民の命綱となったことは事実である。しかし、その比率は2000年(51.6%)をピークに低下傾向にある。 特にモスクワやサンクトペテルブルグのような都市部においては、野菜はスーパーマーケットで買うものとの意識が定着しつつあり、自家菜園がかつてのような食糧供給の主体となる可能性は低いように思える。 ただ趣味としての野菜栽培はロシア人の間で根強い人気があることも事実である。
+最後に小規模農家である。これはソ連時代の集団農場(コルホーズ)の発展形態、あるいは外国人がロシアで農業を始めるケースもある。筆者が個人的に注目しているのはこの主体である。 と言うのもモスクワの国産品レストランに野菜・果実、畜産製品等を供給しているのはこうした小規模農家だからである。
+これら経営者は先進的な農業経営思想の持主であり、その多くはインターネットやSNSを有効に活用することで従来の販売チャンネル以外での売り上げを拡大している。 こうした小規模農家に対しては日本の農業の経験、すなわち量よりも質を重視する農業、が活用される余地があると考えている。
+日露間での農業分野の協力には日露の農業経営の「規模のギャップ」と「メンタリティの違い」を十分に理解する必要があろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51645

第三に、ジャーナリストの熊谷 徹氏が7月26日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「迫るロシアの脅威、バルト3国の悲劇再来を防げ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ロシア軍は今年9月、バルト3国周辺で10万人の将兵を動員した大規模な軍事演習を実施する。ロシアによるクリミア併合以来、バルト3国の首脳や市民の間では、プーチン政権に対する不安が高まっている。こうした中、ドイツなど西側諸国は、バルト3国に初めて戦闘部隊を派遣し、ロシアに対する抑止力の強化を目指している。
▽バルト3国で目立つNATOの将兵たちの姿
・7月13日午前8時頃、筆者はラトビアの首都リガのホテルで、朝食をとっていた。この時、多くの観光客に混ざって、米軍の第1騎兵師団の兵士が食事をしているのに気付いた。彼の迷彩服の腕には、馬の頭をあしらった師団マークが縫い付けられている。太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争などに参加した、米軍で最も有名な師団の一つだ。
・リトアニアの首都ビリニュスのホテルでは、米国の第81空挺師団「オールアメリカン」の兵士を見た。アルファベットのAを2つ並べた師団マークが、誇らしげに腕に縫い付けられている。第二次世界大戦ではノルマンディー上陸作戦に参加した、エリート部隊である。 ビリニュスのホテルにはドイツ連邦軍の野戦憲兵、エストニアの首都タリンではカナダ軍の兵士たちも泊まっていた。日本人の目には、迷彩服姿の兵士たちが市民たちとともにビュッフェ形式の朝食を取っているのは、異様な光景だ。1990年代のボスニア内戦直後に、サラエボのホリデイ・インホテルのエレベーターの中で、自動小銃を持った迷彩服姿の兵士たちと出くわしたことを思い出した。
・筆者が見たのは、北大西洋条約機構(NATO)がロシアからの脅威に対抗するため、今年1月にバルト3国とポーランドに派遣した戦闘部隊に所属する兵士たちである。高速道路を車で走っている時も、緑色と黒色の迷彩が施されたジープやトラックの車列とときおりすれ違う。
▽欧米とロシアが対峙する「最前線」
・エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国は、欧米諸国とロシアとの間の軍事的な緊張が、世界でいま最も高まっている地域だ。これら3カ国は、1990年にソ連から独立した後、2004年にNATOとEUに加盟した。人口約130万人の小国エストニア、人口約190万人のラトビアは、ロシアと国境を接している。また人口約280万人のリトアニアは、カリーニングラード周辺にあるロシアの飛び地、およびロシアの友好国べラルーシに隣接している。
・カリーニングラードは、ロシア領の最西端に位置し、同国にとって最も重要な軍事拠点の一つである。かつてこの町は、ナチスドイツ領の東プロシアにあり、ケーニヒスベルクと呼ばれた。連合国が1945年に行ったポツダム会談で、ケーニヒスベルク周辺の地域は、ソ連領の飛び地とすることが決まった。ソ連にとって、バルト海に面し、冬にも凍らないカリーニングラードの港は、大きな魅力だった。
・ポーランドとバルト3国がNATOに加盟した今、ロシアにとってカリーニングラードは、NATOの領土に楔のように食い込んだ「橋頭保」として、重要な役割を持つことになった。 ロシア軍は、カリーニングラード周辺に約22万5000人もの兵力を集結させている。地上部隊は、約800両の戦車、約1200両の装甲兵員輸送車、約350門の火砲を保有する。つまりバルト3国とポーランドは、約10個師団のロシア軍部隊と隣り合っているわけだ。これらの数字は、2014年に西側軍事筋が推定したものなので、現在はさらに増えている可能性がある。
・またロシアは、カリーニングラード周辺にSA400型対空ミサイルを配置したほか、核弾頭を装備できる短距離ミサイル「イスカンダル」も配備している。さらにカリーニングラードに近いバルティスク港は、ロシア海軍のバルチック艦隊の母港である。 1989年まで続いた冷戦の時代には、NATO軍とワルシャワ条約機構軍は、東西ドイツ国境で向かい合っていた。今日では、バルト3国とポーランド北東部の地域が、冷戦時のドイツに相当する「最前線」なのだ。
▽カリーニングラードの脅威
・バルト3国は、いずれも小国であり、独力で国土を守ることは難しい。予備役を除いた各国の正規軍の兵力は、リトアニアが1万7000人、ラトビア4600人、エストニア6400人にすぎない。 特に欧米諸国を懸念させているのが、バルト3国とポーランドを結ぶ地域が、きわめて細くなっているという地理的条件だ。 カリーニングラード周辺のロシアの飛び地の東端と、ロシアの友好国ベラルーシの西端との間の距離は、わずか100キロメートル。ロシア軍がカリーニングラードから戦車部隊をベラルーシまで走らせれば、数時間でバルト3国をポーランドから切り離すことが可能になる。
・NATOは、この100キロメートルの地峡部を「スバルキ・ギャップ」と呼ぶ。スバルキは、この地峡部のすぐ南にある村の名前だ。NATOは、「ロシアがバルト3国の占領を試みるとしたら、まずスバルキ・ギャップを占領して、欧米諸国がポーランドからバルト3国に地上兵力を増派するのを妨害しようとする」と予想している。スバルキ・ギャップは、NATOのバルト3国防衛の上で最大のアキレス腱である。
・今年6月中旬に、NATOは「ボトニア」という架空の国がスバルキ・ギャップを占領したというシナリオの下に、軍事演習を行った。ボトニアがロシアを想定していることは、言うまでもない。この演習では、米国、英国、ポーランドの混成部隊がヘリコプターでスバルキ・ギャップに送り込まれ、ボトニア軍を攻撃。その後、南方から米軍の戦車部隊が進入して、スバルキ・ギャップを制圧した。
・演習はNATO軍の勝利に終わったが、現実は厳しい。筆者は今回バルト3国を訪れて、この地域に山がほとんどなく、平原が多いために、戦車部隊による「電撃戦」を展開するのに適していることに気が付いた。ロシア軍の戦車部隊は、いったん国境線を突破したら、平原や、交通量が少ない高速道路を利用して、あっという間にビリニュス、リガ、タリンなどの主要都市に到達してしまうだろう。米シンクタンクのランド研究所は、2016年に発表した報告書の中で、「ロシア軍は攻撃開始から36時間以内にバルト3国の首都を占領できる」と予測している。
・このように、軍事的、地理的な条件はバルト3国にとって極めて不利だ。NATOが今年初めにこの地域に戦闘部隊を駐留させたのは、このためである。第二次世界大戦後ソ連に併合されていた地域に、NATOが戦闘部隊を常駐させるのは、初めてのことだ。
▽小兵力でも戦略的に重要な抑止力
・もちろん、バルト3国に駐留しているNATOの戦闘部隊は、大兵力ではない。その数はリトアニアとラトビアにそれぞれ1200人、エストニアに800人にすぎない。わずか3200人の小兵力では、ロシア軍の総攻撃の前に、ひとたまりもなく打ち破られてしまうだろう。
・バルト3国は抑止力を高めるために、米軍の常駐も希望したが、米軍は拒否。ポーランドに戦車や装甲戦闘車を含む4000人規模の戦闘部隊を配置するに留め、軍事演習などに参加することにより、「出張ベース」でバルト3国を支援する。
・しかし重要なのは、兵士の数ではない。ロシアは万一バルト3国を攻撃した場合、これらの国だけではなく、米国を盟主とする軍事同盟NATOと直接戦うことになる。このことは、ロシアに対する重要な抑止力となる。かつてのソ連すら、NATOと銃火を直接交えたことは、一度もなかった。その意味で、NATO軍がバルト3国に常駐することは、これらの小国にとって「保険」となる。戦術的には弱小兵力でも、戦略的には極めて大きな意味を持つ。
▽ロシアの地政学的行動に変化
・もう一つ、欧米諸国がバルト3国に戦闘部隊を派遣した理由は、21世紀に入ってからロシアの軍事的、地政学的な行動に明確な変化が見られるからだ。ロシアは、2008年の南オセチア紛争で一時隣国グルジアに侵攻した。 さらにロシア大統領のプーチンは2014年2月末に、戦闘部隊をクリミア半島に派遣し、軍事施設や交通の要衝を制圧。3月にはクリミア半島を併合した。その後ロシア系住民の比率が多いウクライナ東部で、分離派とウクライナ政府軍との間に内戦が勃発。ロシア政府は分離派に兵器を供与するなどして、内戦に介入している。ウクライナ東部ではロシア軍の兵士も捕虜になっており、同国がウクライナ内戦に関与していることは確実だ。
・ロシアがクリミアを併合して以降、バルト3国の住民の間では、東隣の大国に対する不安が高まっている。ソ連はこれらの国を占領していた約半世紀の間に、多くのロシア人を移住させた。このため、エストニアとラトビアの住民の25%はロシア系である。プーチンは、ロシア系住民の比率が高い地域を、自国の勢力圏と見なす傾向がある。ロシアの目には、NATOが旧ソ連圏の国に戦闘部隊を常駐させることは、挑発行為と映るだろう。あるラトビア人は言った。「ロシアとバルト3国の間で緊張が高まるような事態は、考えたくない。筆者の友人や親戚にはロシア系住民がたくさんいる。彼らも同じ人間だ」。
・だが極端な民族主義は、しばしば庶民の運命を狂わせる。筆者が1990年代に訪れたボスニアでも、ユーゴスラビアの一部だった時代には、セルビア系住民、クロアチア系住民、イスラム教徒が仲良く共存していた。だがボスニア内戦では、セルビア大統領(当時)のミロシェビッチの民族主義に煽られて異なる民族が殺し合い、社会に深刻な亀裂を生んでしまった。その傷は、今なお完全には癒えていない。様々な民族が同居するバルト3国には、バルカン半島を連想させる部分がある。
・NATOは、ロシアがクリミア併合のような暴挙をバルト3国で行う誘惑にかられないように、これらの国に戦闘部隊を常駐させたわけだ。
▽ロシアが予定する秋季大演習への不安
・NATO幹部らは、ロシアが今年9月中旬にこの地域で予定している秋季大演習に神経をとがらせている。「ザパト2017」(ロシア語で西方の意味)と名付けられた演習には、カリーニングラードとロシア軍西部軍管区から、約10万人の将兵が参加する。 ロシア側は公式には、「ベラルーシに侵攻したNATO軍を撃退する」というシナリオを想定している。だがNATOは、ロシアの真の目的は、スバルキ・ギャップを占領するための予行演習ではないかと見ている。
・リトアニア大統領のダリア・グリボウスカイテは、今年2月にラトビア、エストニアの大統領らと会談した後、記者団に対し「リスクは明らかに高まりつつある。我々は、攻撃的な大兵力を動員するザパト2017が国境近くで行われることを強く懸念している。これらの部隊は、西側との戦争を想定している」と述べ、強い危機感を表明した。さらにグリボウスカイテは、「NATOに対して、ザパト2017の期間中に、バルト3国に駐留する兵力を増強したり、不測の事態に備える緊急対応プランを作ったりすることを要求するつもりだ」と語っている。  バルト3国がこの演習に神経をとがらせているのは、演習時にロシア軍部隊が国境を侵犯する可能性があるからだ。ロシアは2014年2月、ウクライナ国境近くで大規模な軍事演習を行った直後に、クリミア半島を占拠・併合した経緯がある。
・リトアニアの国防大臣ライムンダス・カロブリスも、ロイター通信に対して「秋季大演習によって、我が国の国境付近に大兵力が集結することは、リスクが高まることを意味する。我々はNATOと協議して、ロシアのいかなる挑発行為にも適切に対応できる態勢を整えるつもりだ」と語っている。 カロブリスは、「ロシアが欧州の地政学的なバランスを崩し、支配力を回復したいと思っていることは、明らかだ。これは、バルト3国そして東欧諸国にとって、すでにリスクを意味する」とも述べた。
・NATOが今年7月に対空ミサイル「パトリオット」をリトアニアに初めて配備したのも、西側諸国とバルト3国の警戒心の表れである。 もちろん、「NATOが常駐しているのだから、ロシアによる侵攻はあり得ない」という意見もある。ソ連崩壊後にロシアからドイツに帰化したあるユダヤ人は、「さすがのプーチンもNATOと正面から事を構える気はないだろう」と語る。
・EUにおいて各国の地方自治体を代表する地域委員会(COR)で委員長を務めるマルック・マルックラ(フィンランド人)も、「ロシアが、24時間以内にバルト3国を攻撃できる態勢を整えたという噂が流れているが、私はロシアがバルト3国を侵略するとは思えない。我々フィンランド人は、100年間にわたり、ロシアの隣人として独立を守ってきた」と語っている。
・しかし、ロシアが国際法を無視してクリミア半島を併合した「実績」がある以上、欧州諸国が「最悪の事態はあり得ない」と断定して、備えを怠れば、不注意のそしりを免れないだろう。地政学的情勢に関して、「世界のタガが外れた」としばしば形容される今日、我々はあらゆる事態を想定しておく必要がある。
▽独ソに翻弄されたバルト3国
・バルト3国の歴史は、大国に挟まれた小国がしばしば味わう苦難の道程だった。彼らの運命はドイツとロシアによって弄ばれ、多くの人命が失われた。バルト3国とポーランドは、列強の版図拡張によって、欧州の地図の上から何度も消されるという辛酸をなめてきた。
・18世紀以来ロシア帝国に占領されていたバルト3国は、ロシア革命によって帝政が崩壊したのを機に、1918年に独立した。だが1939年にヒトラーとスターリンは、独ソ不可侵条約を締結。条約の秘密議定書は、ナチスドイツがポーランドの西半分を占領し、ソ連がバルト3国とポーランドの東半分を領土に編入することを取り決めていた。ヒトラーとスターリンという2人の独裁者は、東欧諸国の政府と国民が知らぬまに、これらの地域を勝手に分割したのだ。
・ナチスドイツがポーランドに侵攻した翌年の1940年に、ソ連はバルト3国に攻め込み、強制併合した。バルト3国の閣僚や知識階層は次々に逮捕され、家畜を運搬する貨物列車に押し込まれて、シベリアの労働収容所(ラーゲリ)に移送された。彼らの大半は、酷寒のシベリアで凍死したり、病死したりした。
・1941年6月にヒトラーが独ソ不可侵条約を破って「バルバロッサ作戦」を発動し、ソ連侵攻を開始した時、バルト3国の多くの市民は初めのうち、「共産主義政権からの解放者」としてドイツ軍を歓迎した。だがナチスドイツも、恐怖政治を行うテロ国家であることに変わりはなかった。 ナチスの特務部隊(アインザッツ・グルッペ)は、バルト3国の主要都市にゲットーを設置してユダヤ人を押し込めた。ナチスは、リガやビリニュス郊外の森などで、約22万人のユダヤ人を殺害した。これは、バルト3国に住んでいたユダヤ人の約85%に相当する。当時ナチスは毒ガスによる絶滅収容所を開発していなかった。つまりアインザッツ・グルッペは、20万人を超える市民を銃によって処刑したのだ。女性や子供を含む非戦闘員の大量処刑は酸鼻を極め、精神的ストレスのために発狂するドイツ兵士もいた。
・バルト3国は、1944年にソ連軍によってナチス支配から解放されたものの、再びソ連の領土として強制併合された。共産主義支配は、その後およそ半世紀にわたり続いた。この期間にも、多くの市民が秘密警察によって恣意的に逮捕されて、処刑されたりシベリアに追放されたりした。
・リガ市内には、ソ連の秘密警察NKWD(人民内務委員会)とKGB(国家保安委員会)が使用した建物が残っている。アールヌーボーの装飾に覆われた美しい建物の中で、市民に対する尋問、拷問、処刑が行われた。多くのラトビア人が、扉から中に入ったが最後、生きて帰ることはなかった。薄暗い建物に足を踏み入れると、バルト3国の市民たちがロシアに対してなぜ強い猜疑心を抱くのかが、よく理解できる。投獄と殺戮の歴史は、人々の心にまだ深く刻み込まれている。
▽「バルト3国を二度と見捨てない」
・あるラトビア人は、「1990年にソ連から独立した時、我々は欧州に帰還したのだ。これは我々ラトビア人の長年の願いだった」と筆者に語った。 今年NATOが旧ソ連領土に初めて戦闘部隊を常駐させるという、ある意味でリスクの大きい賭けに踏み切った背景には、18世紀以来ロシアやドイツによって苦しめられてきた小国が、再びロシアの軛(くびき)の下に置かれることを許さないという、西欧諸国の固い決意がある。
・特にドイツ政府は、ナチスがバルト3国で暴虐の限りを尽くしたことに対する反省から、これらの国々の防衛について積極的だ。たとえばドイツ連邦軍は、リトアニアに駐留するフランス、ベルギー、クロアチア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェーの混成大隊1200人を指揮する役割を担っている。ドイツは70年前に、この地で重い犯罪をおかした。そのことに対する責任感から今、ドイツ連邦軍はリトアニアで混成大隊を率いるという重い任務を引き受けたのだ。
・ドイツの国防大臣ウルズラ・フォン・デア・ライエンは今年2月7日、リトアニアに駐留するNATOの混成大隊を訪問した。ドイツ連邦軍が指揮する部隊だ。彼女はこの時に、バルト3国防衛に向けて固い決意を表明してした。 「我々はリトアニアの未来を守ると約束する。リトアニアは二度と孤立無援になることはない。リトアニアの人々は、世界最強の軍事同盟によって守られている。ドイツ、ベルギー、フランスなどの兵士たちは、リトアニア人たちとともに国境を守る。リトアニアの自由と独立が、犯罪的なパワーポリティクスの餌食になることを、二度と許してはならない」 
・フォン・デア・ライエンは、「我々ドイツ人は、リトアニアの混成大隊の指揮官役を務めることを、誇りに思う。冷戦の時代、西ドイツはNATOによってソ連の脅威から守られていた。今度は、我々がNATOに貢献してお返しをする番だ。20世紀の欧州の歴史は、自由と安全は自動的に与えられるものではなく、努力して勝ち取らなくてはならないことを我々に教えている」と付け加えた。
・バルト3国の市民たちは、彼女の言葉を胸に刻み込んでいる。トランプが大統領に就任して以来、米国によるNATOへの関与は、冷戦時代に比べて大きく揺らいでいる。盟主・米国の指導力に陰りが生じつつある今、NATOは、これらの国々を悲劇の再来から本当に守ることができるのだろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/072500031/?P=1

第一の記事で、 『今回中銀の特別措置の対象となったアトクリティエ銀行はこれらの銀行と比べて格が違う。 同行はロシア最大の民間銀行であり資産規模で4位(2017年6月末)、中銀が定める「ロシアの金融システム上重要な銀行」とされる10行のうちの1行である』、 『今後、同行の救済には2500億~4000億ルーブルの資金投入が必要とロシア中銀は見積もっている。もちろんロシア金融市場始まって以来の最大の銀行救済となる』、 『ベリャエフ氏は2008年のリーマンショックを契機にロシア銀行界にのし上がってきたいわば「遅れてきたオリガルヒ」であり、自らを「リスク・テイカー」と称していた』、などからみる限り、同行の破綻は時間の問題であったのだろう。 『アトクリティエ銀行から流出した資金の多くは安全性を求めて・・・政府系銀行に流入したと言われている。現在でもこれら政府系銀行の国内預金・貸出シェア合計は過半数を優に超えている。 すると残された民間銀行が生き残りのためにリスク・テイクを迫られ、第2のアトクリティエ銀行が登場する可能性も否定できない』、ということは、ロシアの経済自由化は、いよいよ曲がり角を迎えているのかも知れない。
第二の記事で、『ソホーズとコルホーズ』、は昔懐かしい名前だが、 『経営を刷新し生まれ変わった』、とは大したものだ。 『対露経済制裁への対抗措置としてロシア政府が欧米諸国からの農産物輸入を禁止したため、野菜・果実の輸入代替が急速に進んでいること』、とはまさに「ケガの功名」といえよう。いずれにしても、現在では日本の農業のはるか先を行っていることは確かなようだ。
第三の記事で、 『軍事的、地理的な条件はバルト3国にとって極めて不利だ。NATOが今年初めにこの地域に戦闘部隊を駐留させたのは、このためである。第二次世界大戦後ソ連に併合されていた地域に、NATOが戦闘部隊を常駐させるのは、初めてのことだ』、ということであれば、ロシアもおいそれとチョッカイは出せないだろう。 『ドイツは70年前に、この地で重い犯罪をおかした。そのことに対する責任感から今、ドイツ連邦軍はリトアニアで混成大隊を率いるという重い任務を引き受けたのだ』、ドイツはやはり責任感旺盛のようだ。
タグ:ロシア 日経ビジネスオンライン JBPRESS (その1)(ロシアの銀行危機 ついに中小から大手へ波及 救済に走るロシア中銀だが 経営者のモラルハザードを引き起こす危険性、ロシアの農業が大復活 一気に進んだ効率化 経営を刷新し生まれ変わったソホーズとコルホーズ、迫るロシアの脅威、バルト3国の悲劇再来を防げ) 大坪 祐介 「ロシアの銀行危機、ついに中小から大手へ波及 救済に走るロシア中銀だが、経営者のモラルハザードを引き起こす危険性も」 ロシア中銀 ロシア中銀は資産規模で国内第8位の大手民間銀行アトクリティエ(Otkrityie)に対し、中央銀行の特別措置を適用 国内の「銀行洗浄作戦」を展開して業績不振の小規模泡沫銀行のライセンスを積極的に取り消している アトクリティエ銀行はこれらの銀行と比べて格が違う。 同行はロシア最大の民間銀行であり資産規模で4位(2017年6月末)、中銀が定める「ロシアの金融システム上重要な銀行」とされる10行のうちの1行である ベイル・アウト ロスネフチの外貨資金繰りを支援 ベリャエフ氏は2008年のリーマンショックを契機にロシア銀行界にのし上がってきたいわば「遅れてきたオリガルヒ」であり、自らを「リスク・テイカー」と称していた その積極的な業務展開にはロシア金融業界でも懸念を示す先も多かった 今後、同行の救済には2500億~4000億ルーブルの資金投入が必要とロシア中銀は見積もっている。 ロシアの銀行経営者にモラルハザードを生じさせた点 政府系銀行のプレゼンス過大を一段と加速する危険性 現在でもこれら政府系銀行の国内預金・貸出シェア合計は過半数を優に超えている。 すると残された民間銀行が生き残りのためにリスク・テイクを迫られ、第2のアトクリティエ銀行が登場する可能性も否定できない 「ロシアの農業が大復活、一気に進んだ効率化 経営を刷新し生まれ変わったソホーズとコルホーズ」 対露経済制裁への対抗措置としてロシア政府が欧米諸国からの農産物輸入を禁止したため、野菜・果実の輸入代替が急速に進んでいることなどが背景 温室の中は別世界である。気温は半袖でも作業できる適温(20~25度)に保たれ、高い天井からは数え切れないほどの黄色い人工照明がトマトを照らしている。 こうした環境の中でロシアの厳しい冬の間でも規則正しくトマトが成育し出荷されていくのである 霧に包まれたこの温室は50ヘクタール 現在建設中の新ファームを訪問したのだが、こちらは最終的には100ヘクタールの規模になるという レストランのメニューをよく見ると、産地のみならず生産者の名前まで記されている 農業会社は資本市場から資金調達することが可能で、積極的に農地買収や事業拡大を図っている 経営形態としては日本よりも進んでおり、この分野で日本の農業との協力関係を模索するのは難しいように感じる 小規模農家 経営者は先進的な農業経営思想の持主であり、その多くはインターネットやSNSを有効に活用することで従来の販売チャンネル以外での売り上げを拡大している 日本の農業の経験、すなわち量よりも質を重視する農業、が活用される余地があると考えている 熊谷 徹 「迫るロシアの脅威、バルト3国の悲劇再来を防げ」 ・ロシア軍は今年9月、バルト3国周辺で10万人の将兵を動員した大規模な軍事演習を実施 今日では、バルト3国とポーランド北東部の地域が、冷戦時のドイツに相当する「最前線」なのだ カリーニングラード周辺のロシアの飛び地の東端と、ロシアの友好国ベラルーシの西端との間の距離は、わずか100キロメートル。ロシア軍がカリーニングラードから戦車部隊をベラルーシまで走らせれば、数時間でバルト3国をポーランドから切り離すことが可能になる スバルキ・ギャップ 軍事的、地理的な条件はバルト3国にとって極めて不利だ。NATOが今年初めにこの地域に戦闘部隊を駐留させたのは、このためである。第二次世界大戦後ソ連に併合されていた地域に、NATOが戦闘部隊を常駐させるのは、初めてのことだ 独ソに翻弄されたバルト3国 ドイツは70年前に、この地で重い犯罪をおかした。そのことに対する責任感から今、ドイツ連邦軍はリトアニアで混成大隊を率いるという重い任務を引き受けたのだ トランプが大統領に就任して以来、米国によるNATOへの関与は、冷戦時代に比べて大きく揺らいでいる
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ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略(その7)(日本人の「外国人観光客への偏見」が酷すぎる、HISが「変なホテル」を都市部にも出店、100店構想へ布石、外国人が心底惜しがる「日本の新幹線」事情 技術は世界一 ではサービスは?) [経済政策]

ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略については、8月11日に取上げた。今日は、(その7)(日本人の「外国人観光客への偏見」が酷すぎる、HISが「変なホテル」を都市部にも出店、100店構想へ布石、外国人が心底惜しがる「日本の新幹線」事情 技術は世界一 ではサービスは?) である。

先ずは、ミセス・パンプキンが8月23日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本人の「外国人観光客への偏見」が酷すぎる 「お・も・て・な・し」は五輪の年だけなのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・人生相談室で人気のミセス・パンプキンの番外編コラムをお届けします。今回はインバウンド観光客に対する偏見をなくそう、という提案です。
・まもなく秋の観光シーズンがやってきます。多くの訪日外国人(インバウンド観光客)で、観光地はどこも混雑することでしょう。ところで私の狭い生活範囲でも、海外からの観光客に対する失礼な言動を目にすることが多く、心が痛みます。特にアジア系の観光客に対して私たちはもっと、「おもてなしの心」で接するべきだと提案したいと思います。
▽観光客は迷惑な人たち?
・2020年には年間4000万人を迎え入れるという目標に向けて、政府はいろいろ努力し研究しているようですが、同時に一部の日本人にみられる、海外からの観光客は迷惑な人たちという偏見を払拭する努力も、今一度必要ではないかと感じます。 たとえば私は東京で、何人かのタクシーの運転手さんに「インバウンドで忙しいでしょう?」と聞いてみました。「とんでもない、彼らはタクシーに乗らずチャーターバスでの移動だから、交通渋滞になり迷惑」とか、「ワンメーターしか乗らないのにカード支払いだから時間がかかり、私は外国人とみれば乗せない」「マナーも悪いしね」などと、たちどころに憎々しげに言う応えが返ってきます。
・また別の日ですが、皇居の二重橋をバックに記念写真を撮ろうとしていたアジア系の若い2人が、お堀を囲む芝生の手前の柵のさらに道路側の、ブロックにして2~3段の高さの石の上に乗った時のことです。警察官が「乗らないで!」と大声で言ったものの、日本語は通じません。次の瞬間その警官は「乗るなと言っているのがわからないのかー!」と指差しながら怒鳴り、やっと通じた2人は慌てて降りた、という場面に居合わせました。
・函館でも、こんな経験をしました。インバウンド観光客がいなければ、この地域の観光業は壊滅していたのではないかと思うほど、観光地や交通機関はどこも、アジア系観光客でいっぱいという印象でした。 そこの朝市の食堂での出来事です。相席だった一人旅の中国人女子学生に、まず店員はマニュアルどおり、「ワサビは大丈夫ですか?」と聞きました。私に対する聞き方に比べても、随分ぞんざいなのが気になりました。学生は「はい、大好きです」と答えたのに、出てきた海鮮どんぶりに、ワサビがついていなかったのです。学生が片言の日本語で「ワサビをください」と催促しますと、中年の女性店員は謝りもせず、小皿に入れたワサビを放り投げるように置きました。
・「忙しい店だから、余裕がないようね。ごめんね」と、思わず私がその観光客に謝りました。彼女はひと言、「大丈夫です」と言ってくれましたが、私ならその無礼に怒って、食べずに帰る場面でした。偶然相席にされた私に対する態度と随分違ったので、明らかにこれは、彼女の国の人に対する思い上がった態度であると断言できます。
▽日本にとって「お荷物」なのか
・私はこれは、ステレオタイプ化した外国人観光客に関する報道の仕方にも責任があると思います。民泊を利用するインバウンドに関する記事には、「ゴミの分別ルールを守らない」「周囲の迷惑構わず騒ぐ」と付記されることが多く、直接インバウンド観光客と接したことのない人にまで、まるで彼らが、日本にとってお荷物でしかないような、結果的に印象操作になっているのを感じます。
・「爆買い」報道でも、何かにつけて上から目線だと感じましたが、考えすぎでしょうか。かつては日本人も、パリのブランド街で爆買いした時代がありましたし、「日本を売ってニューヨークを買おう」とあるニュースキャスターが冗談を言ったほど、ニューヨークのあらゆるものを日本人が買い漁った時代もありました。ある国の人が、より先進国で爆買いをするのは、何も今の中国の人に限ったことではありません。
・ほんの3名に聞いただけですが、東京のタクシーの運転手さんが、一度もインバウンド観光客を乗せたことがないのに、「マナーが悪いから乗せない」と言ってはばからないのは、ステレオタイプ化した報道による影響の一例ではないでしょうか。
・許認可を受けたうえで、小さな民泊を経営している友人がいます。9割が中国人ゲストだそうです。開業してみて一番驚いたことは報道とのギャップで、世界観も中国人感も変わったと言います。皆さん礼儀正しく、これから多くのインバウンドを迎える日本人として、学ぶところが本当に多いと、語っています。 たとえば資源ゴミと空き缶などのゴミはオーナーが後で分別するつもりで同じゴミ箱を指定すると、「自分たちも本国で分別していますよ」と言って、皆さんきちんと生ゴミと3種類に分別されるそうです。その後もゴミ出しを守らない国民性だとは、感じたことがないということです。
・お土産をくださるゲストも多く、8種類もの中国料理を作ってオーナーをもてなした家族や(干しエビや干し貝柱など、小さなダシ類を日本のスーパーで探すのが大変だったらしい)、ある女性グループはオーナーを招いて中国の少数民族の踊りをいくつも披露してくれたとか。
・この友人は、「インバウンド報道では、“安い民泊を利用、爆買い・ゴミや騒音に関するマナーの悪さ”などが強調されるが、そのような報道に違和感がある」と言います。ホテルにはない、アットホームな親戚宅を訪れる感覚を求めてやって来るゲストも多く、ホストとしての心得を、逆に教えられることが多い毎日なのだそうです。 またこの国の人たちに、60~70代の親世代と同行する家族旅行が多いことにも、この友は感心しています。多くの日本人が忘れかけている、家族の絆を思い起こさせてくれる瞬間が多いのだそうです。
▽「お・も・て・な・し」は、誇大広告?
・筆者が小学生だった頃、住んでいる市に市民憲章ができました。5章しかなかった中の1章が、「私たち市民は、旅行者を温かく迎えましょう」というものでした。当時はほとんどが欧米系ですが、先生からは「通りすがりの外国人観光者に対してでも、目をそらすのは失礼です。ニコッと会釈するだけであいさつになるのですよ」と教えられました。
・あれから60年。私たちの中のどれだけの人が、東南アジア系の観光客に、ニコッと微笑むだけのあいさつをしているでしょうか。またはそのタイミングがなくとも、「ようこそ日本へ。良い旅でありますように」という気持ちを抱いているでしょうか。間違った情報で「マナーが悪いインバウンド」と心中に抱くだけで、インバウンド観光客の方たちが受け取る日本の印象も、随分違うはずです。
・私は海外旅行では、随分な親切を受けています。フランスの田舎の祭りでは、屋台の中に招き入れられてビールをごちそうになり、周囲の屋台仲間まで集めて一期一会の乾杯をしてくれました。ロンドン郊外では方向を尋ねただけなのに、30分も一緒に歩いて案内してくれた人がいました。アジア系だからと言って不愉快な目にあったことはなく、「遠い国からわが国へようこそ」という心を感じ、その国がさらに好きになったものです。
・旅先で受ける親切は、旅を何倍も楽しく豊かな思い出に変えてくれます。そんな経験から、せっかく日本に関心を持ってやってきた旅を、上から目線や偏見で、日本人が台無しにしてどうするのだと怒りを覚えるのです。
・幸い2017年上半期のインバウンド観光客は1375万人と過去最高記録を更新。爆買いが収まったとはいえ4~6月期の消費額も、順調に最高記録を更新しているそうです。日本の旅に満足している人が多く、日本ファンが増えていることの証明でもあると思います。
・私が目撃したインバウンド観光客に対する心無い人たちは極少数だということになりますが、数が問題ではないはずです。実際、観光客側にマナー違反をする人はいますが、それはどこの国にもいることですし、文化の違いも考慮する必要があります。十把ひとからげに偏見を持つのは問題です。
・東京五輪の招致時に世界に向けて発信したお国自慢の「おもてなしの心」を、観光業の人もそうでない人も、日本側のマナーとして、今一度再確認する必要を感じます。海外からのお客さんを迎える側の、民度が問われているのだと思います。
http://toyokeizai.net/articles/-/185483

次に、10月17日付けダイヤモンド・オンライン「HISが「変なホテル」を都市部にも出店、100店構想へ布石 H.I.S.ホテルホールディングス社長(エイチ・アイ・エス副会長)平林朗 特別インタビュー」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは平林氏の回答、+は回答内の段落)。
・旅行会社のエイチ・アイ・エス(H.I.S.)が展開する「変なホテル」はロボットが接客する省力化ホテルとしてハウステンボスや舞浜などに出店してきたが、東京・大阪などの主要都市にも進出するという。勝算はあるのか。H.I.S.でホテル事業を統括する平林朗・H.I.S.ホテルホールディングス社長を直撃した。
Q:「変なホテル」は現在、ハウステンボス、舞浜、ラグーナテンボスと3店ありますが、18年度末までに東京、大阪など10店舗を出店し、都市型ホテルにも乗り出します。その狙いはどこにありますか。
A:12月の西葛西を皮切りに、銀座(新富町)、浜松町、浅草橋、赤坂、羽田と東京で6店、博多、大阪で2店舗、それに京都と18年度までに10店の開業を計画しています。メインターゲットは観光客です。東京などにはビジネスホテルはたくさんありますが、観光客がカップルで、あるいはファミリーで泊まれる3つ星ホテルがない。そこにチャンスがあるとみています。
+ビジネスホテルが12平方メートルぐらいの広さのシングルルームがメインなのに対して、変なホテルでは20平方メートル程度のツインルームをメインにしています。ソファーベッドを利用してトリプルルームにすることもでき、客室単価は1室1万4000円ぐらいです。部屋を広くすれば、客室数が減るのですが、H.I.S.は旅行会社ですから、変なホテルを組み込んだ旅行商品を作るなど、集客の方法もある。タイ発東京行きの旅行商品を作り、タイで売ることもできるし、オンライン販売もできます。
+出張規定で1泊1万円までという企業は少なくないのですが、都内ではその範囲で探すのはたいへんです。女性の場合、とれなかったからカプセルホテルに泊まるというわけにもいかないでしょう。同性が2人で泊まり、宿泊費を7000円で抑えるという使われ方もあるのではないか。
Q:変なホテルは恐竜のロボットで有名ですが、都内にも来るのですか。
A:西葛西は東京ディズニーリゾートに行く客が多いので、恐竜のロボットが接客しますが、銀座などの都内のホテルでは人型ロボットが対応します。現在、開発中です。
Q:変なホテルの客室はどんなコンセプトですか。
A:観光客をターゲットにしているので、客室は寝に帰ってくるだけではなくくつろいでもらいたいと考えています。そのため、マットレスは東洋紡の新素材で、新幹線の座席に使われているものを応用したものにしています。 ビジネスホテルではユニットバスが一般的ですが、変なホテルではバスとトイレは別々です。洗い場もあり、小さいお子さんの体を洗ってあげることができるようになっています。
+ユニークなところでは、クローゼットに服をかけておくだけでしわのばしをしたり、においをとるとされる「LGスタイラー」を全室に導入しています。テレビは50インチの4Kテレビ(LG製)を入れており、最新技術も導入しています。 訪日外国人を意識し、ハンディジャパン社と提携。室内のスマホは国際電話も国内電話もインターネットも無料のうえ、ホテルの外でも無料で使えます。
Q:客室の付帯設備に力を入れる一方、ロボットで省力化も図っています。どれくらいコスト削減ができるのですか。
A:法律の関係もあり、無人化はできませんが、受付けやチェックイン、チェックアウトはロボットが行っています。床掃除や窓ふきもロボットです。100室規模のホテルでも、社員2人、アルバイト5人の7人で運営しています。人件費は普通のホテルの3分の1ぐらいでしょう。一般に人手不足が問題になっていますが、人材についてはH.I.S.グループのリソースを使うことができますし、マニュアル化ができているので店長経験者でなくてもマネジャー業務ができるようになっています。
Q:18年度までに10店、開業する計画ですが、投資額や収益性はどのように見通していますか。
A:都内のホテルは賃貸物件ですが、福岡や大阪、京都は土地取得から自社で行っています。ひとつのホテルを建てるのに投資額は20億円~30億円。償却を入れても、稼働率の高さと固定費が抑えられていることから、単年度黒字が達成できるとみています。ホテルの売上高営業利益率も40%ぐらいいくのではないか。
+ホテルでコストがかかるのが人件費と光熱費です。ハウステンボスのあいているスペースを開放し、メーカーや大学などがロボットの研究や発電の研究を行っており、コストはまだまだ下げられます。
Q:H.I.S.グループでホテル100軒構想がありますが、達成はいつ頃ですか。
A:現在、国内外で40軒、約5300室(開業予定の変なホテル10軒を含む)を運営しています。100軒になるのは3年から5年後をめどに考えています。今年3月に台湾のホテルチェーンを買収し、16軒増えましたが、買収案件によっては前倒しできます。
+将来的には、チェックイン・ロボットなどのシステムをセットに、FC(フランチャイズ)化を進めることができれば、国内外で変なホテル1000軒達成も視野に入ってくるでしょう。
http://diamond.jp/articles/-/145955

第三に、小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏が11月24日付け東洋経済オンラインに寄稿した「外国人が心底惜しがる「日本の新幹線」事情 技術は世界一、ではサービスは?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・安倍晋三首相肝いりの「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」委員や「日本政府観光局」特別顧問としても活躍しており、著書『世界一訪れたい日本のつくりかた』を上梓したデービッド・アトキンソン氏に、日本の「新幹線」が抱える問題について寄稿してもらった。
▽いちばん大切な路線にWi-Fiがない意味
・先日、JR東日本とJR西日本が2018年の夏ごろまでに、新幹線の車内で訪日外国人向けのフリーWi-Fiを整備して、順次サービスを開始していくと報道されました。 これまでは2020年までに整備するという話でしたから、このようにスピード感をもって観光対応がなされていくのは、非常に喜ばしいことだと思っています。
・しかし、残念なことが1つあります。それはJR東海の対応です。 「東京、京都、大阪」は「ゴールデンルート」と呼ばれ、訪日外国人観光客に最も人気のある、極めて重要なエリアです。実はこれらを結ぶ東海道新幹線をもつJR東海では、フリーWi-Fiが整備されていないのです。
・日本の新幹線には、安全面や運行面において世界屈指の技術が用いられていることは言うまでもありません。では、なぜその強いこだわりを、「ユーザーの快適さ」を高めることに用いられないのでしょうか。 私には、JR東海という企業が「つくり手がいいと思うものをつくって消費者へ提供する」という、プロダクトアウトの発想が強すぎるからとしか思えません。要するに、自分たちが誇りに思っているスピードや正確性などという基礎的な技術は高度に磨き上げていますが、新幹線のユーザーの快適さなどは軽視しているのです。
・世界一の新幹線をつくれる会社が、フリーWi-Fiの整備くらい、できないはずがありません。要は優先順位が低いだけです。 訪日外国人観光客のためにフリーWi-Fiを整備しないだけで、ずいぶん厳しい批判だと思う方もいるかもしれませんが、これは消費者軽視どころの話ではありません。実は、日本を代表する高速鉄道が「国策」にブレーキをかけているという、極めて深刻な問題でもあるのです。
・日本政府は観光戦略を実施しています。これまでの記事で繰り返しご説明してきましたように、人口減少で労働力人口が半減していく日本において、移民政策に頼らずに地方経済を活性化させていくという意味で、「観光」は極めて重要です。官民が一丸となって取り組んでいかなければいけない戦略です。
・皆さんも覚えがあるでしょうが、いまや異国の地での観光に「ネット」は欠かすことができません。ネットで観光スポットやレストランを検索して、ネットで移動経路を確認して、記念写真はその場でネットに上げて、祖国の家族や友人とシェアをします。 ですから日本政府としても地方自治体としても、ネットでの観光情報の発信、そしてフリーWi-Fiの整備に力を入れてきました。観光庁が実施した調査では「フリーWi-Fiが少ないこと」が「もっとも困ったこと」の一つとして挙がっていたからです。政府や自治体は当然、多くの訪日外国人が利用する新幹線にも、そのような整備をお願いしてきました。
・外国人観光客にとって、新幹線での移動時間は、行き先にどのような観光名所があるのか、どういうお店があるのか、どういう土産物屋があるのかという情報収集をするには最適だからです。しかし、フリーWi-Fiが整備されていないので、外国人観光客は新幹線の移動時間を情報収集に充てることができないのです。  私もかねて整備すべきだと訴えてきましたが、JR東海はこれらの要請に応えずにきています。
▽「検索してもらえない」のは大きな機会損失
・2016年にJR東日本とNTTデータが共同で行った調査によると、広域移動をした約253万人の訪日外国人観光客のうち、中国人観光客の46%、アメリカ人観光客の38%が新幹線を利用していることが明らかになっています。昨年、訪日外国人観光客は2400万人を突破しています。
・つまり、膨大な数の訪日外国人観光客に対して、さまざまな情報を発信する機会があるにもかかわらず、それができていないという状況なのです。 そのあたりについてどう思っているのか。JR東海は「いまはスマホ対応をしているからWi-Fiはいらないでしょう」「そこまでネットが見たいならルーターを使えばいい」とでも考えているのでしょうか。
・しかし、海外でローミングしてネット接続をすると思いのほか高額になりますし、パソコンやタブレットを持ってきている外国人旅行者も多くいます。レンタルのルーターなどを持っている人もいますが、トンネルなどではまったくつながりませんし、それ以外の区間もつながりにくいです。 観光客は、新幹線に乗っている間はゆっくり見られるので、スクリーンが小さいスマートフォンよりは大きなスクリーンで見たいはずです。おカネと労力を投入したネット情報発信を1人でも多くの外国人観光客に届けるには、フリーWi-Fiの整備のほうが望ましいことは明らかです。せっかく大金を使ってつくったコンテンツを見るための手段が整備されないと、そのコンテンツが無駄になってしまいます。
・このようにWi-Fi不要という結論になるのは、消費者軽視としか思えません。 JR東海にそのような傾向が強いのは、もう1つの問題点からもうかがえます。 実は海外からやってくる観光客には「Japan Rail Pass」という制度があります。JRグループ6社が共同して提供している乗り放題のパスなのですが、東海道・山陽・九州新幹線の「のぞみ」号と「みずほ」号は利用できません。新幹線のなかで最も速く、先端技術の詰まった「のぞみ」をカバーしていないパスは、外国人観光客からすれば、魅力に欠けるものだということは言うまでもありません。
・また、先日、海外から新幹線を予約することがようやくできるようになりましたが、Japan Rail Passは対象外となっています。外国人観光客の相当な割合がJapan Rail Passを使うので、Japan Rail Passを対象外にすると、そのシステムを作る理由がなくなります。  細かいことを言えば、国内鉄道会社の予約システムはいまだに、発券後1回しか予約を変更できません。変更対応はたしかに手間がかかると思いますが、利用者からすれば不便なことこのうえありません。
・「新幹線の技術を世界に売り込みたい」と言う割には、世界が常識とする基礎的なサービスができていない。これでは、新幹線という「物」の評価は高くても、多くの外国人は「日本の新幹線は、途上国でもできることができていない」と受け止めます。「新幹線」の価値を著しく毀損していることは言うまでもありません。
▽日本人向けの発想からの脱却を
・なぜこのような「もったいない」ことになってしまうのかというと、これまで長く、新幹線は日本人の乗客向けのサービスだったからです。出張族など日本人が使い、日本人が満足すればいいということで、発想が止まってしまっているのです。
・ただ、このような考え方は先見性がないと言わざるをえません。これから新幹線の主要なユーザーだった出張族は激減していきます。長期的な視点をもてば、世界に技術を売り込むためにも、1人でも多くの外国人観光客に新幹線を体験してもらう環境を整備することで、世界に対して評価を上げていくべきなのです。
・現在、JR東海の新幹線は事実上、独占禁止法の対象外と言えるほど競争にさらされていない環境にあります。リニアができたあかつきには、「2本目」のルートができるわけですから、サービスの改善を促進するため、分社化を含めた競争を促す政策を考えるべきだと思います。 独占禁止法とはそもそも何のためにあるかといえば、企業が独占することによって、価格が不当に高く、サービスが悪くなってしまうことを防ぐことが目的です。
・JR東海の新幹線は、提供しているサービスの質と比べて価格設定が極めて高い印象です。これは「競争がないこと」の反映のように思えてなりません。最高速度やかかる時間などは確かにずば抜けているものがありますが、ユーザー目線にたてば、「何キロ出た、何分速く大阪に着く」ということと同じくらい、移動の間の快適さ、利便性が重要なのは言うまでもありません。
・このような基本的な整備を行っていないだけでも問題ですが、さらに国や自治体が必死に地方を盛り上げようとしている観光政策にも協力しない。これを「消費者軽視」と言わずしてなんと言いましょう。 ほかにもJR東海の強すぎる「プロダクトアウト」は、さまざまなところに散見されます。 象徴的なものが「ハンマー」です。
▽新幹線には窓ガラスを割る「ハンマー」がない
・海外の高速鉄道では万が一事故があったときに備えて、強化窓ガラスを割るためのハンマーの設置が義務づけられている国が多くあります。日本の技術を使った台湾の新幹線にもハンマーが整備されている、という報道があります。 しかし、日本の新幹線にはハンマーが設置されていません。地震や自然災害がこれだけ多い国で、万が一事故が発生して、横転したり、火事になったりした場合、乗客は窓を割ってでも脱出しなくてはいけませんが、そのためのハンマーがないのです。
・なぜないのかというと、設置義務がないなかで「新幹線は事故を起こさないから必要ない」といわれています。または、その高い技術力を示すために意図的に設置していないのだと言う人もいます。 確かに、これまで新幹線では、悪意をもった乗客が起こしたようなものを除いて、大きな事故がなかったというのは紛れもない事実です。
・しかし、世の中には絶対ということはありません。新幹線の技術者や運転士も神様ではありませんので、何かが起こるかもしれません。そのような万が一に備えて、ハンマーを設置することにいったいなんの問題があるでしょうか。 日本の新幹線の強化ガラスはハンマーくらいで割れないから無駄だという人もいますが、ハンマーがあったことで命が救われるような状況がないとは限りません。そのような最悪の事態が起きてしまったら、台湾の新幹線では設置してあるハンマーを、なぜ日本では設置しなかったのかと大きな問題になるでしょう。
・日本の新幹線は事故など起こさないという傲慢ともいうべき自信と、乗客の命を天秤にかければ、どちらが重いのかは言うまでもありません。その当たり前のことが、JR東海には欠けているような気がしてなりません。 JR東海などがもつ新幹線の技術は、日本という国の「宝」です。
・ただ、この「宝」はその新幹線を使う人々の幸せや安全があってこそ初めて光輝きます。日本には世界に誇れるすばらしい技術が多くありますが、強すぎる「プロダクトアウト」の発想と、経営者の傲慢によって台なしにされるという残念なケースが少なくありません。 JR東海が1日でも早く目を覚まし、自分たちがやりたいことだけではなくて、「くだらない」「めんどくさい」と思わずに、ユーザーのニーズを吸い上げて、それに応えることを心から願っています。それは決して外国人観光客のためだけではなく、回り回って日本人のためになるのです。
http://toyokeizai.net/articles/-/198178

第一の記事で、 『日本にとって「お荷物」なのか・・・私はこれは、ステレオタイプ化した外国人観光客に関する報道の仕方にも責任があると思います。民泊を利用するインバウンドに関する記事には、「ゴミの分別ルールを守らない」「周囲の迷惑構わず騒ぐ」と付記されることが多く、直接インバウンド観光客と接したことのない人にまで、まるで彼らが、日本にとってお荷物でしかないような、結果的に印象操作になっているのを感じます』、 『せっかく日本に関心を持ってやってきた旅を、上から目線や偏見で、日本人が台無しにしてどうするのだと怒りを覚えるのです』、 『東京五輪の招致時に世界に向けて発信したお国自慢の「おもてなしの心」を、観光業の人もそうでない人も、日本側のマナーとして、今一度再確認する必要を感じます』、などの指摘はその通りだ。
第二の記事で、 『HISが「変なホテル」を都市部にも出店、100店構想へ布石』、はなかなか面白い試みだ。ただ、 『100室規模のホテルでも、社員2人、アルバイト5人の7人で運営』、ということらしいが、何かトラブルが発生した場合、大丈夫なのかが気になるところだ。
第三の記事で、政府や自治体が 『フリーWi-Fiの整備に力を入れてきました』、にも拘らず、JR東海だけがこれを入れる予定がないとは、驚いた。 『ほかにもJR東海の強すぎる「プロダクトアウト」は、さまざまなところに散見されます』、とは困ったことだ。 『新幹線には窓ガラスを割る「ハンマー」がない』、というのも、 『ハンマーくらいで割れないから無駄だ』、は別にして、安全神話が原因だとすれば、原発と同じ誤りを犯そうとしているのかも知れない。万が一に備えた安全対策は、その気になれば簡単に出来るのに、神話に乗ってそれを軽視するようなことは避けるべきだろう。
タグ:東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン デービッド・アトキンソン ミセス・パンプキン ビジット・ジャパン (インバウンド)戦略 JAPAN RAIL PASS (その7)(日本人の「外国人観光客への偏見」が酷すぎる、HISが「変なホテル」を都市部にも出店、100店構想へ布石、外国人が心底惜しがる「日本の新幹線」事情 技術は世界一 ではサービスは?) 「日本人の「外国人観光客への偏見」が酷すぎる 「お・も・て・な・し」は五輪の年だけなのか」 海外からの観光客に対する失礼な言動を目にすることが多く、心が痛みます 日本にとって「お荷物」なのか ステレオタイプ化した外国人観光客に関する報道の仕方にも責任があると思います 直接インバウンド観光客と接したことのない人にまで、まるで彼らが、日本にとってお荷物でしかないような、結果的に印象操作になっているのを感じます 「爆買い」報道でも、何かにつけて上から目線 、「インバウンド報道では、“安い民泊を利用、爆買い・ゴミや騒音に関するマナーの悪さ”などが強調されるが、そのような報道に違和感がある」と言います 旅先で受ける親切は、旅を何倍も楽しく豊かな思い出に変えてくれます せっかく日本に関心を持ってやってきた旅を、上から目線や偏見で、日本人が台無しにしてどうするのだと怒りを覚えるのです 東京五輪の招致時に世界に向けて発信したお国自慢の「おもてなしの心」を、観光業の人もそうでない人も、日本側のマナーとして、今一度再確認する必要を感じます 「HISが「変なホテル」を都市部にも出店、100店構想へ布石 H.I.S.ホテルホールディングス社長(エイチ・アイ・エス副会長)平林朗 特別インタビュー」 「変なホテル」 現在、ハウステンボス、舞浜、ラグーナテンボスと3店 メインターゲットは観光客 東京で6店、博多、大阪で2店舗、それに京都と18年度までに10店の開業を計画 観光客がカップルで、あるいはファミリーで泊まれる3つ星ホテルがない。そこにチャンス 客室は寝に帰ってくるだけではなくくつろいでもらいたいと考えています バスとトイレは別々です 。室内のスマホは国際電話も国内電話もインターネットも無料のうえ、ホテルの外でも無料で使えます 100室規模のホテルでも、社員2人、アルバイト5人の7人で運営 小西美術工藝社社長 「外国人が心底惜しがる「日本の新幹線」事情 技術は世界一、ではサービスは?」 JR東日本とJR西日本が2018年の夏ごろまでに、新幹線の車内で訪日外国人向けのフリーWi-Fiを整備して、順次サービスを開始 JR東海では、フリーWi-Fiが整備されていないのです JR東海という企業が「つくり手がいいと思うものをつくって消費者へ提供する」という、プロダクトアウトの発想が強すぎるからとしか思えません 日本政府としても地方自治体としても、ネットでの観光情報の発信、そしてフリーWi-Fiの整備に力を入れてきました 検索してもらえない」のは大きな機会損失 せっかく大金を使ってつくったコンテンツを見るための手段が整備されないと、そのコンテンツが無駄になってしまいます Wi-Fi不要という結論になるのは、消費者軽視としか思えません 「のぞみ」号と「みずほ」号は利用できません これまで長く、新幹線は日本人の乗客向けのサービスだったからです 長期的な視点をもてば、世界に技術を売り込むためにも、1人でも多くの外国人観光客に新幹線を体験してもらう環境を整備することで、世界に対して評価を上げていくべきなのです 新幹線には窓ガラスを割る「ハンマー」がない ハンマーがあったことで命が救われるような状況がないとは限りません。そのような最悪の事態が起きてしまったら、台湾の新幹線では設置してあるハンマーを、なぜ日本では設置しなかったのかと大きな問題になるでしょう。
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自動車(無資格検査)(日産自動車不正検査問題-やはり内部告発が端緒だった・・、日産「無資格検査」を誘発した時代遅れの国交省の認証制度 問題の本質は、実はここにあるのでは、日産の検査不正に国交省が激怒する本当の理由) [企業経営]

今日は、自動車(無資格検査)(日産自動車不正検査問題-やはり内部告発が端緒だった・・、日産「無資格検査」を誘発した時代遅れの国交省の認証制度 問題の本質は、実はここにあるのでは、日産の検査不正に国交省が激怒する本当の理由) を取上げよう。

先ずは、山口利昭法律事務所が10月22日付けビジネス法務の部屋に掲載した「日産自動車不正検査問題-やはり内部告発が端緒だった・・・」を紹介しよう。
・日曜日ですが、備忘録を兼ねて短めのエントリーをひとつ。FNNニュースですでにご承知の方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の日産自動車さんの不正検査(無資格者による最終検査)問題について国交省の抜き打ち検査が行われたのは、その数か月前に国交省に内部告発(社内からの情報提供)がなされていたことによるものだそうです。日産自動車の件では、初めて内部告発の存在が明らかになりました。つまり、従業員の方の内部告発がなければ、日産さんは今も平穏無事に(?)無資格者による最終審査を継続しており、新型リーフによる新たな事業戦略がマスコミで華やかに取り上げられていたことになります。
・日産さんは当初、「本件について内部通報や告発があったものではない」と発表していました。ただ、私の前回のエントリーの最後のところで述べたとおり、実際には内部告発で発覚したということで、しかも監督官庁がマスコミに漏らした・・・ということなので、日産さんと監督官庁との信頼関係はかなり破たんしていることがわかります。再発防止策を実施したと監督官庁に報告していながら、実はその後も無資格検査が続いていたことが判明したので、日産さんとしては国交省のメンツをつぶしてしまったことになります(これは有事対応としては最悪のパターンです)。
・ここからはまた私の推測ですが、従業員の方がいきなり内部告発に至ったとは思えません。定石通り、最初は社内へ内部通報をしたり、上司に問題提起をしておられたものと推測いたします。仮に社内通報が行われていたとなりますと、今度は「不正隠し」(もしくは情報の根詰まり)のほうが無資格検査よりも大きな不祥事として世間から批判を受けることになり、沈静化には長い時間を要することになります。これで「安全性には問題はない、といった意識から、そんなに悪いことではないと現場社員は考えていた」といった安易な企業風土論で片づけることができない不祥事であることが認識できました。
・土曜日(10月21日)は、私の事務所で神戸製鋼事件に関する某新聞社の取材を受けました。ここ1週間の間に数名の方から取材を受けましたが、「監査はなぜ機能しなかったのか」といった視点から取材を受けるのは初めてでした。日産さんの件、神戸製鋼さんの件、そして商工中金さんの件、いずれにおいても「監査はなぜ機能しなかったのか」といった視点で原因を究明することは当然であり、ようやくマスコミもそこに関心を向けるようになったと感じました。神戸製鋼さんの品質データ偽装問題については、今のところ自主調査によって発見し、これを自主的に公表したとされていますが、こちらも本当に会社の発表どおりなのか、やはり第三者への情報提供があったのではないか・・・と疑問を抱くところです。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2017/10/post-ea72.html

次に、ジャーナリストの井上 久男氏が10月23日付け現代ビジネスに寄稿した「日産「無資格検査」を誘発した、時代遅れの国交省の認証制度 問題の本質は、実はここにあるのでは」:を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「国内向け」だけが出荷停止の理由
・日産自動車の西川廣人社長が10月19日に記者会見し、9月に無資格者が車両の最終検査をしていたことが発覚した後も無資格検査が継続して行われていたとして、お詫びした。日産は2週間近く「国内出荷」を停止する。
・19日の記者会見などによると、子会社の日産車体湘南工場では発覚後も無資格者の検査が続き、国内最大の日産九州工場、栃木工場、追浜工場では、国交省に届けていた場所とは違う場所に検査行程を移して最終検査をしていたという。九州、栃木、追浜の3工場については、不祥事発覚後の初期の調査では、違う場所に移していたことに気付かず、後の社内調査で判明したため、19日に公表した。
・道路車両運送法に基づいて国道交通省が定めた「通達」を日産は無視し、それが発覚した後もその通達を破っていたことになる。現行のルールでは日産の行為は到底許されるものではない。 ただ、日産の肩を持つわけではないが、こうした不祥事がなぜ起こるのか、という本質的な問題を筆者は考えたいと思う。
・日産の出荷停止が「国内向け」であることに気付いている方はいるだろうか。不祥事が発覚した工場では輸出用の自動車も一緒に生産して、一緒に検査しているのに、無資格者が検査していても、輸出はOKなのである。その理由は単純。海外では有資格者による最終検査を求めていないからである。 そして、「通達」で定められた有資格者による検査については、有資格者に、どのような技能が求められるかは明確に定義されていない。資格は国などの公的機関が認めたものでもないし、高度なテクニックを有しているわけでもない。「能力をもった人を会社が指名する」といった程度である。
・だから極論すれば、自動車の運転免許の切り替えの際に、無事故無違反の「ゴールド免許」の人が短時間の安全啓蒙映画を見て更新が済むイメージで、「資格」を与えようと思えば、短時間適当にビデオでも見せて勉強させ、「講習済」のお墨付きを企業が与えれば、それで「有資格者」になってしまうのである。 そんなにお金がかかるわけでもないのに、日産はなぜ、こんな簡単なことをやっていなかったのか不思議でならない。
・日産にはコストカットのイメージが強烈に付いているので、経費削減で手抜きしたのではないかと見る読者もいるだろうが、世界の消費者に最終製品として送り出すクルマで、品質管理で手を抜いて不具合を起こせば、訴訟ラッシュでどんなしっぺ返しが来るかくらいは、グローバルで商売している日産ならよく分かっているはずだ。
・それなのに、日産では無資格者が検査を続けたのはなぜか。答えは単純である。無資格者が検査しても、有資格者が検査しても、実態的には何も変わらないからである。 筆者は20年以上、自動車産業を取材、観察してきて、多くの自動車工場に訪れている。自動車工場の写真撮影はアングルなど制限があるが、この最終検査工程だけは、何の制約もなく写真OKのことが多い。「儀式」の工程であり、何のノウハウもないといっても過言ではない場所だからだ。
▽「品質」とは何か?という問い
・そもそも日本の自動車メーカーは「自工程完結」などと言って、品質は一つの工程内で完結させ、下流工程に不良品を流して迷惑をかけないとの発想があり、それを徹底している。この最終検査の段階で、もし不具合が発生したら、工場全体の品質管理が問われるほどの深刻な大問題になる。だから、最終検査で不具合が見つかることは、ほぼゼロに近い。
・企業で不祥事が起こる要因の一つに、法規やルールが実態に即していないため、ついついそれを破ってしまうケースがある。日産の今回の不祥事は、これに該当する。ただし、これは「ルール違反」なので、絶対に許されることではない。無免許でも運転がうまくて事故を起こさないから、運転してもいいでしょ、といった屁理屈と同じ類になってしまうからだ。
・今回のような日産の不祥事を起こさないようにするためには、「ルール」を変える必要があるのではないかと筆者は感じる。日本の自動車産業に関わっている人の中には、そう感じている方もいるのではないか。ただ、この局面でそれを言うと、「ルール破り」をさも肯定するかのように聞こえてしまうので、それは口が裂けても言えないだろう。
・率直に言うが、こうした最終検査のことも含めて国土交通省が主管の「型式認証制度」は一部が時代遅れになりつつある。各自動車メーカーの工場の最終検査で、統計学などを駆使して不具合がどれくらい出ているのか、あるいは出る確率があるのかを確認し、問題がないのであれば、有資格者による検査制度は廃止にすればいいし、逆に問題があるのならば、有資格者を厳密に定義していくことが求められる。
・海外では有資格者による最終検査が求められていないということは、廃止にしても大勢に影響はおそらく影響はないだろう。 この日産の不祥事をきっかけに、「品質」について国家レベルで考えていくべき局面にあるのではないだろうか。その際に考慮すべきテーマは、過剰品質対応とハイテク対応である。過剰品質対応については、型式認証制度の中でそうした点がないか、産官学で洗い直すべきだろう。
・実はハイテク対応については、深刻な問題も含んでいる。日本がドイツに比べて自動運転の市場導入で出遅れている要因の一つは、日本の型式認証制度にある。ドイツでは、「新車開発の際にバーチャルシミュレーションで実験したデータを国が認めているが、日本では認められていない」(ドイツ系企業幹部)という。
・ある自動車メーカーの技術者によると、現在の高速道路における自動追尾程度の「レベル2」の自動運転でも600万シーンを想定した開発が必要だという。「シーン」とは映画の場面と同じ意味で、運転の場面を機械(クルマ)に覚え込ませ対応できるようにしているそうだ。 これが自動運転のレベルがさらに進めば、億単位のシーンを覚え込ませることになるが、バーチャルな試験でないと、とても対応できない。しかし、日本の認証制度ではバーチャルな試験データを認めていない。
・また、つながるクルマ(コネクテッドカー)の時代を迎えて、クルマがハッキングされるリスクも高まっている。サイバーセキュリティーを意識した型式認証も今後は求められるのではないだろうか。実際、米国では昨年ルールが変更されて、米国企業と取引がある企業に対しては、同等のセキュリティー対策をすることが求められている。
・これにかこつけ、ソフトウエアなど米国製品を大量に買わせる、安全保障と通商を絡めた巧妙な手口とみる向きもあるが、世界の動きは間違いなくサイバーセキュリティーの強化に向かっているのだから、それに合わせていく姿勢が求められる。
▽もう一度「TQM」を考えよう
・自動車の型式認証制度だけではなく、日本の産業界は広い視野で「品質」について考えていくべき局面にもある。国土交通省が担当とか、経済産業省が担当だとか縄張りを争っている場合ではない。 特に日本企業では、TQM(トータルクオリティマネジメント)活動を推進する力が衰え始めている。この指摘は、「デミング賞」を主宰する日本科学技術連盟の中からも聞こえてくる。同連盟のトップにはかつては経団連会長経験者がポストに就くこともあったが、今はかつてほどの力を持っていない。
・TQM活動が衰えている要因の一つは、大学でそれを研究する人が減ったからである。かつては経営工学の分野で研究している学者も多かったが、大学の学部再編などによって研究する母体が小さくなって、学問的体系も崩れたという。
・特に時代に合わせた新しいTQMが必要になっている。これまでは、工場の出荷口までの「製造品質」を意識した活動だったが、これからは市場が求めている品質への対応の基軸を置くべきだろう。 グローバル化で市場が拡大したが、地域や国によって同じ製品でも使われ方は違う。使われ方で品質がどのように劣化していくのを意識した対応が求められるということだ。端的に言えば、日本企業は「壊れない」という単一的な価値を押し付けてきた面は否定できない。
・果たして「壊れない」という発想だけでいいのか。たとえば、食品などでは「ハラル認証」といったイスラム文化圏向けの認証があるように、多様な価値観に対応した品質作りも求められている。 要は世界のお客が求める「価値」とは何かを意識した「価値品質」という概念も重要になっているのだ。そして、グローバルな市場に対応していく力が求められている今、品質は工場などの「現場」だけで造り込むものではなく、「経営」が造っていくとの考えが益々重要になっている。日産の不祥事を通じて改めて感じたことだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53265

第三に、ジャーナリストの井元康一郎氏が11月22日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日産の検査不正に国交省が激怒する本当の理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・日産自動車は11月17日、国土交通省に無資格者による検査問題について調査報告書を提出した。その日の夕方に記者会見を開いたが、その様子は決してほめられる内容ではなかった。いまだに国土交通省側は怒り心頭の様子だ。なぜ、国交省は日産を許せないのか、どうして日産のシンボルである名経営者のカルロス・ゴーン氏は表に出てこないのか。
▽歯切れの悪さが目立った西川社長の会見
・「あなたたちにとって、ゴーンさんに傷一つつけないのがそんなに大事なことなのか」――。 思わずそう言いたくなる会見だった。 工場から出荷される車が国の保安基準に適合しているかどうかをチェックする完成検査で“不正”をしていたことが発覚した日産自動車。生産の停滞により、中間決算で営業利益を当初見通しから400億円減の下方修正を行うなど、ビジネスに少なからず影響が出ている。
・その混乱になるべく早く区切りをつけたい日産は11月17日、国土交通省に調査報告書を提出。同日夕方、西川廣人社長が記者会見を行い、事のあらましと今後の展望について説明した。 その説明自体は原因究明、再発防止策から人員増強まで網羅された懇切丁寧なものだった。それがしっかり行われれば、少なくとも完成検査について今後、突っ込まれるような事態が起きる可能性は低いであろう。また、完成検査だけでなく、さまざまな分野において法令違反がないかどうか再点検していくと表明。これらの説明は完璧に近いものがあった。
・にもかかわらず、会見は終始、歯切れの悪さのほうが目立った。 最大の理由は、過去にさかのぼっての経営責任、ありていに言えば日産がルノー傘下に入り、カルロス・ゴーン氏が経営の指揮を執ってきた時代の“清算”をどうするかということについて、何ら言及がなかったことであろう。
・記者からは幾度も「経営責任をどう考えるのか」という質問が飛んだ。それに対して西川社長は、 「過去にあまりとらわれず、今を良くしていくことが現経営陣の一番の責務。これからの仕事ぶりで評価してほしい」 経営陣は状況のすべてを聞かされていたわけではない。現場のニーズを掌握し、それを的確に経営陣に伝えるべき現場のリーダーの資質にばらつきがあった」 といった説明に終始した。
▽役員報酬の金額や割合も明示されず  ゴーン氏を含む他の役員についても触れず
・言っていることは正しい。 起こってしまったことはなかったことにはできないし、別に完成検査の不備で死傷・物損事故が起きたわけではなく、背負う十字架があるわけでもない。顧客にリコールの面倒をかけるというのは痛いことではあるが、今後、こういうことがないようにすれば取り返しがつく話である。
・そうなのだから、ここは素直に「我々経営陣がしっかりしていなかったのが悪かった」と、これからが大事と言う前に責任を認めればよかったのである。 ところが、西川社長のモノ言いは、まるで自分たちの責任をまったく認めようとせず、都合が悪くなると“結果的に”と、まるで仕方がなかったことのように言う、霞が関の官僚の態度を彷彿とさせるものだった。
・西川社長は10月から今年度末までをめどに、昨年実績で約4億円という役員報酬の一部を自主返上していることを明らかにした。 ところが、その額はいくらなのか、割合さえも明らかにされなかった。また、いまだ日産の要職にあるゴーン氏を含む他の役員についてはどうなのかと聞かれても、「今は社長の私が自主返上するということで、ゴーン含め誰がどのくらい返上するかといったことについてはこの場で申し上げることは差し控えたい」 と繰り返すばかり。
・最も良くなかったのは、“豪腕経営で鳴らしたゴーン氏の拡大路線がこの事態を招いたのではないか”、“何でゴーン氏がこの場にいないのか”といった類の質問への応対だった。 「現場から細かいところまで報告されておらず、ゴーンが検査員不足を知っていたわけではないので、責任があるという指摘は当たらない」 「人手不足はうちだけでなく、団塊世代が大量離職する一方で若年労働者は少なくなるという状況が生んだ業界全体のこと。ゴーンの拡大路線のせいではなく、所要人員を満たせなかった我々の責任」 「執行責任は私(西川社長)にあるので、私が説明させていただくのは妥当」 などと回答していた。
▽日産とスバルの会見イメージの違いは トップとしての度量
・社内の風通しを良くできなかったのはゴーン氏の責任という側面もあるだろう。また、「人員不足はうちだけではない」というのは、「不正がなかった」としている他のメーカーにも失礼な物言いだ。他のことについては、責任は回避しながらも筋が通っていたのだが、ゴーン氏を擁護する発言だけは、筋が通っているとは到底言い難いものだった。
・情けないのはゴーン氏だ。 不祥事があったからといって別に辞任しなければならないわけではないし、倒産寸前だった日産をこれだけの成長路線に引き戻したという功績はすでに確固たるものになっている。現CEO(最高経営責任者)は西川社長だが、日産の顔役といえば今も圧倒的にゴーン氏なのである。 そんな人物が過去の至らなかったことを反省し、改めて将来のビジョンを語れば、日産のブランドイメージ回復に大いに寄与したことだろう。年間10億円ももらっておきながら、自分が批判の矢面に立つのがそんなに嫌なのかと、誰でも呆れるところだろう。
・完成検査問題が取り沙汰されたのは日産とスバルの2社。 検査体制に問題があることを自覚していたかどうかの違いはあるが、未熟な人物に検査をさせていたのではなく、検査員の養成を過剰なほどのプロフェッショナリズム精神で行っていたことが問題の引き金になったという点は両社共通。また、説明の内容もほとんど同一だ。
・その日産とスバルの記者会見のイメージに大差が出たのは、“社の問題は自分に責任がある”というトップとしての度量をどのくらい示せたか、というところが大きかったのが率直な印象だった。 「ゴーン氏が出てきて、素直に謝ってしまえばよかったのに……」と思うのは、イメージの問題だけではない。
・旧建設省ではトンネル崩落や耐震偽装、旧運輸省では燃費偽装、完成検査不備とロクな話が出ていない国交省の官僚たちは今、メンツを保とうとムキになっているという話がある。 「泣くこと地頭には勝てぬ」という諺があるが、ゴーン氏が出てくれば“彼らの顔を立ててやる”という効果は絶大だったろう。
▽完成検査について批判の矛先が国交省に向くのは避けたい
・国交省も、本当に商品がちゃんとできているかどうかも覚束なかった自動車産業の黎明期に作った完成検査制度を、技術の進化をまったく無視して半世紀以上も放置していたとして、批判の矛先が自分たちに向くのは避けたいところなのだろう。 これは車検制度の根幹に関わる問題でもあるからだ。
・一応、改善のポーズは取るようだ。完成検査の制度自体はなくさないが、現代の実情に合うような方法を検討するタスクフォースを立ち上げるという発表を11月21日に行った。 だが、有識者の陣容を見てみると、弁護士、学者、ISOのプロフェッショナルで、完成検査と品質検査双方の知見を持つ生産のプロは入っていない。“今のシステムをなるべく維持したい”という本音が見え隠れする。
・国交省に詳しいある事情通は、国交省関係者から断続的に日産に関するネガティブ情報がリークされているという。これは昨年、三菱自動車が燃費偽装で糾弾されたときと似た手法だ。 三菱自は燃費偽装の業務改善の中でさらに偽装をしていたと国交省が発表し、轟々たる避難を浴びた。 しかし、2度目の偽装は実は国交省が一旦そのやり方でOKと言っておきながら、途中で手のひらを返した結果起こった、というより作られてしまった偽装だったという話が、当時いろいろなところでささやかれていた。糾弾される相手が何も言えないときの常套手段という観すらある。
・もしネチネチとした嫌がらせを波状的にやられるようものなら、損をするのは日産側である。リスク回避を考えるなら、ゴーン氏が出てきて謝罪するのが日産にとって一番良かったのではないか。「負けるが勝ち」である。
▽ゴーン氏は経営者として肝心な「求心力」を失いかねない
・このまま問題が収束すれば、ゴーン氏は自分の体面を傷つけず乗り切ることになるが、あえて日本流に言うならば、少なからず“男を下げた”格好だ。今まで言っていた格好いいことは何だったのかと思った関係者も多いことだろう。 確かに、企業経営において、“潔さ”は少しも美徳ではない。徳川家康やチェーザレ・ボルジアのように、機を見るに敏で、攻め時と見れば手段を選ばず仕掛けるのは経営者として“必須の才覚”と言える。
・それでも、経営者にはもう一つの必須ともいえるファクターがある。 それは「求心力」だ。 求心力は、決して強権だけでは生まれない。トップが求心力を保つ上で絶対にやってはいけないことは、皆が注目するような大舞台で自分の保身のために下に詰め腹を切らせることだ。 「ルノー=日産=三菱自」というアライアンスの関係を考えれば、今回の件でゴーン氏の強固な権力基盤が急に失われることはないだろう。
・だが、肝心な求心力は徐々に弱まる可能性がある。その時には、西川社長以下、日産の現経営陣が真に経営者として振る舞わなければならない。果たして、それができるかどうか――。 少なくとも今回の会見では、その気配は感じられなかった。 もっとも、今回の件で西川社長が経営者として取り返しのつかない失態を演じたというわけではない。会見で当人が述べたように、大事なのはこれからである。日産を率いる経営者としてどれだけ大きくなれるのか、要注目である。
http://diamond.jp/articles/-/150439

第一の記事で、 『今回の日産自動車さんの不正検査問題について国交省の抜き打ち検査が行われたのは、その数か月前に国交省に内部告発(社内からの情報提供)がなされていたことによるものだそうです』、というのは初耳だが、ありそうな話ではある。 『仮に社内通報が行われていたとなりますと、今度は「不正隠し」(もしくは情報の根詰まり)のほうが無資格検査よりも大きな不祥事として世間から批判を受けることになり、沈静化には長い時間を要することになります。これで「安全性には問題はない、といった意識から、そんなに悪いことではないと現場社員は考えていた」といった安易な企業風土論で片づけることができない不祥事であることが認識できました』、との指摘は深刻だ。
第二の記事で、 『企業で不祥事が起こる要因の一つに、法規やルールが実態に即していないため、ついついそれを破ってしまうケースがある。日産の今回の不祥事は、これに該当する。ただし、これは「ルール違反」なので、絶対に許されることではない』、との指摘については、経営陣がこの問題を認識していれば、強い政治力で改善を働きかけることが出来た筈だが、恐らく自動車会社の経営陣にはこんな「些末な問題」は認識してなかったのであれば、経営陣の自己責任だといえる。 『「型式認証制度」は一部が時代遅れになりつつある・・・・この日産の不祥事をきっかけに、「品質」について国家レベルで考えていくべき局面にあるのではないだろうか。その際に考慮すべきテーマは、過剰品質対応とハイテク対応である。過剰品質対応については、型式認証制度の中でそうした点がないか、産官学で洗い直すべきだろう』、との指摘はその通りだ。ただ、 『TQM活動が衰えている要因の一つは、大学でそれを研究する人が減ったからである』、との指摘には違和感を持った。大学の研究者が減った背景には、企業のTQMニーズの減少があるのではないだろうか。とすれば、これは今さらどうにかなる問題ではない、のではなかろうか。
第三の記事で、 『歯切れの悪さが目立った西川社長の会見』、 『日産とスバルの会見イメージの違いは トップとしての度量』、との指摘はその通りだ。 国交省が、『完成検査について批判の矛先が国交省に向くのは避けたい』、ようだ。しかも、三菱自の燃費偽装問題のうち、 『2度目の偽装は実は国交省が一旦そのやり方でOKと言っておきながら、途中で手のひらを返した結果起こった、というより作られてしまった偽装だった』、という汚いリークをしてでも、国交省を守るというのでは、今後、出てくるニュースもよほど眼光紙背に徹して、真偽を見極める必要がありそうだ。やれやれ・・・。
タグ:自動車 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 井元康一郎 山口利昭 ビジネス法務の部屋 無資格検査 (日産自動車不正検査問題-やはり内部告発が端緒だった・・、日産「無資格検査」を誘発した時代遅れの国交省の認証制度 問題の本質は、実はここにあるのでは、日産の検査不正に国交省が激怒する本当の理由) 「日産自動車不正検査問題-やはり内部告発が端緒だった・・・」 国交省の抜き打ち検査が行われたのは、その数か月前に国交省に内部告発(社内からの情報提供)がなされていたことによるものだそうです 監督官庁がマスコミに漏らした・・・ということなので、日産さんと監督官庁との信頼関係はかなり破たんしていることがわかりま 仮に社内通報が行われていたとなりますと、今度は「不正隠し」(もしくは情報の根詰まり)のほうが無資格検査よりも大きな不祥事として世間から批判を受けることになり、沈静化には長い時間を要することになります。これで「安全性には問題はない、といった意識から、そんなに悪いことではないと現場社員は考えていた」といった安易な企業風土論で片づけることができない不祥事であることが認識できました 井上 久男 「日産「無資格検査」を誘発した、時代遅れの国交省の認証制度 問題の本質は、実はここにあるのでは」 道路車両運送法に基づいて国道交通省が定めた「通達」を日産は無視し、それが発覚した後もその通達を破っていたことになる 、「通達」で定められた有資格者による検査については、有資格者に、どのような技能が求められるかは明確に定義されていない 、「資格」を与えようと思えば、短時間適当にビデオでも見せて勉強させ、「講習済」のお墨付きを企業が与えれば、それで「有資格者」になってしまうのである 「自工程完結」などと言って、品質は一つの工程内で完結させ、下流工程に不良品を流して迷惑をかけないとの発想があり、それを徹底 最終検査で不具合が見つかることは、ほぼゼロに近い 企業で不祥事が起こる要因の一つに、法規やルールが実態に即していないため、ついついそれを破ってしまうケースがある。日産の今回の不祥事は、これに該当する ただし、これは「ルール違反」なので、絶対に許されることではない 、「ルール」を変える必要があるのではないかと筆者は感じる 国土交通省が主管の「型式認証制度」は一部が時代遅れになりつつある この日産の不祥事をきっかけに、「品質」について国家レベルで考えていくべき局面にあるのではないだろうか。その際に考慮すべきテーマは、過剰品質対応とハイテク対応である 日本がドイツに比べて自動運転の市場導入で出遅れている要因の一つは、日本の型式認証制度にある 日本企業では、TQM(トータルクオリティマネジメント)活動を推進する力が衰え始めている TQM活動が衰えている要因の一つは、大学でそれを研究する人が減ったからである 「日産の検査不正に国交省が激怒する本当の理由」 歯切れの悪さが目立った西川社長の会見 歯切れの悪さのほうが目立った。 最大の理由は、過去にさかのぼっての経営責任、ありていに言えば日産がルノー傘下に入り、カルロス・ゴーン氏が経営の指揮を執ってきた時代の“清算”をどうするかということについて、何ら言及がなかったことであろう 役員報酬の金額や割合も明示されず  ゴーン氏を含む他の役員についても触れず 日産とスバルの会見イメージの違いは トップとしての度量 情けないのはゴーン氏だ そんな人物が過去の至らなかったことを反省し、改めて将来のビジョンを語れば、日産のブランドイメージ回復に大いに寄与したことだろう。年間10億円ももらっておきながら、自分が批判の矢面に立つのがそんなに嫌なのかと、誰でも呆れるところだろう 完成検査について批判の矛先が国交省に向くのは避けたい 三菱自は燃費偽装の業務改善の中でさらに偽装をしていたと国交省が発表し、轟々たる避難を浴びた。 しかし、2度目の偽装は実は国交省が一旦そのやり方でOKと言っておきながら、途中で手のひらを返した結果起こった、というより作られてしまった偽装だったという話が ゴーン氏は経営者として肝心な「求心力」を失いかねない
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医療問題(その10)(前立腺関連:急激に前立腺がんの患者が増えたのはなぜ?、70歳で前立腺がん発覚!治療する?しない?、前立腺肥大の治療は勃起障害や男性型脱毛症にも影響が) [社会]

医療問題については、10月23日に取上げたが、今日は、(その10)(前立腺関連:急激に前立腺がんの患者が増えたのはなぜ?、70歳で前立腺がん発覚!治療する?しない?、前立腺肥大の治療は勃起障害や男性型脱毛症にも影響が) である。

先ずは、医師兼マンガ家の近藤 慎太郎氏が11月1日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「急激に前立腺がんの患者が増えたのはなぜ? PSA検診で前立腺がんが発覚したあなたに送る」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・肺がん、胃がんに続き、今回は前立腺と前立腺がんについて解説します。 「その話は興味がある!」という人も多いのではないでしょうか。脳や心臓、肺、肝臓、腎臓……人体に不要な臓器は一つとしてありませんが、中でも前立腺は、男性のアイデンティティーに密接に関わるので、とりわけ高い関心を持たれます。
・また近年、前立腺がんの患者数は、尋常ではない勢いで増加をしています。男性読者にとっては決して他人事ではないはずです。この先1~2年の間に、大腸がんを抜くことは確実と考えられています。 そんな前立腺がんですから、皆さんの周囲にも罹患した人がいるはずです。そして前立腺がんの発覚は、もしかすると次のような経緯だったのではないでしょうか。 「PSA検診を受けて、早期の前立腺がんが見つかり、幸い手術で完治した」
・ここでまず、「PSA」について説明します。PSAとは、「腫瘍マーカー」の1種です。体内にがんができると、がん自体か、もしくは体ががんに反応して特定の物質を作り出すことがあります。これを腫瘍マーカーと言います。 採血をして腫瘍マーカーが上昇していれば、体内のどこかにがんがある可能性が高まります。採血だけでがんの有無をチェックできるのであれば、体の負担も少なく、費用も抑えられるので、こんなに素晴らしいことはありません。
・しかし残念ながら、早期がんの段階で確実に上昇する腫瘍マーカーはほとんどありません。大抵は上昇するとしても進行がんになってからなので、早期のがんの発見目的ではあまり使えません。しかし、ほぼ唯一の例外が前立腺がんに対するPSAなのです。 PSAは、早期の前立腺がんでも上昇することが多いため、検診の項目としても使用することができるのです。
・そのため「PSA検診を受けて早期の前立腺がんが見つかり、手術で完治した」のであれば、「早期発見・早期治療」の理念を代表する素晴らしい経緯だと言うことができます。 しかし、実はここには多くの人が簡単にはまってしまう、とても分かりにくい落とし穴があるのです。
▽前立腺がんを疑われたらどうすればいい?
・一見、何の文句もないような経緯なのに、一つひとつ丁寧に検討していくと、決して手放しで称賛することができない事情があるのです。 そもそも、1ページ目のグラフを見ても分かるように、前立腺がんの患者数は急激に増加しています。これはあまりにも不自然です。日本の男性は、この十数年間のうちに「今までなかった何らかのリスク」にさらされて、急激に前立腺がんにかかるようになってしまったのでしょうか。 もちろん、そんなことはありません。こういった急激な変化の背景には大体、何らかの事情が潜んでいます。
・では、順を追って詳しく解説していきましょう。 ↓の図を見ると分かるように、前立腺は陰茎の根本にあって栗の実ぐらいの大きさです。 男性にしかない臓器で、精液の一部を作っています。肺や大腸など、大きな臓器にがんができるのはイメージしやすいのですが、こんな小さな臓器にがんができて、さらには患者数が急増していると言われると何だか不思議な気がします。
・前立腺がんのリスク因子としては、食生活の欧米化(動物性脂肪の摂取と、緑黄色野菜と大豆製品の摂取が少なくなったこと )、肥満、加齢、遺伝的要因などが挙げられます。 加齢と遺伝はおおむね、どのがんにも当てはまることなのですが、前立腺がんの場合は特に遺伝の影響が強いようで、近親者が罹患している場合には注意が必要です。
・以前は早期の前立腺がんを見つける手軽で有効な手立てはありませんでした。しかしPSAが登場してから状況が一変しました。早期の前立腺がんがバンバンと見つかるようになったのです。 では、PSA検診で前立腺がんが疑われたらどうすればいいのでしょうか。マンガで詳しく解説します。
▽治療すべきか否かは、状況による
・誤解のないように強調しておきますが、PSA検診が全く無効というわけではありません。PSA検診で早期がんが見つかって、治療によって死亡を避けられた人も、中にはいます。 ただ大事なことは、前立腺がんが見つかったからと言って、一律にすべて治療が必要になるというわけではない、ということです。特に非常に高齢の人の場合、何も治療せずに経過観察することも容認されるでしょう。
・次回に詳しく解説しますが、治療には様々な合併症がつきものです。治療の必要性と合併症のリスクを天秤にかけて、発見された前立腺がんが、寿命に影響するのかどうかを慎重に見極める必要があるのです。  また、たとえPSA検診が悪性度の低いラテントがんをたくさん見つけてしまうのだとしても、前立腺がんは放っておいていいということにもなりません。
・PSA検診に何らかの問題があるのであれば、医療者にとっての次なる重要な課題は「悪性度の高い一部の前立腺がんだけを見つける検査方法を確立すること」なのです。 繰り返しますが、前立腺がんは男性が患うがんの中でも特に多いものになろうとしています。日本の医療財政が破綻する前に何らかの道筋がつくことを願ってやみません。 前立腺がんが発覚したらどうするか。次回は治療方法と治療による合併症などについて説明したいと思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/091200163/103100007/?P=1 

次に、上記の続きを 11月8日付け「70歳で前立腺がん発覚!治療する?しない? 治療法は多岐に渡り、患者が自分で選ぶのもひと苦労」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・前回(『急激に前立腺がんの患者が増えるのはなぜ?』)は、前立腺がんとそれを見つけるためのPSA検診について解説しました。 前立腺がんは検診も治療もなかなか奥が深いので、今回はもう少し掘り下げながら解説します。
・PSA検診は、前立腺がんを見つけるためには非常に有用な方法です。けれど、がんがゆっくりと育っている間に寿命を迎えてしまうような「ラテントがん」を多数見つけている可能性があります。 実際に、ほかの原因で亡くなった人を病理解剖したところ、その60~70%に、寿命に影響しなかった前立腺がんがあったと報告されています。それだけ、前立腺がんには悪性度が低めのものが多いということです。
・さらに早期の前立腺がんを「手術するグループ」と「治療せずに経過観察するグループ」にランダムに分けて20年間経過を追ったところ、両グループで前立腺がんの死亡率には、統計学的な差がなかったという、かなり衝撃的な報告が臨床医学の世界で、最高峰の雑誌から発表されました。
・日本人全体にかかる医療費は年々増加し続けていて、その財源をどう確保するかが深刻な社会問題になっています。頻繁な受診や検査、重複処方など、適正化すべき過剰医療は世の中に散見されます。 それらと同列とまでは言いませんが、仮に寿命に影響しないようながんをたくさん見つけて治療している側面があるのだとすれば、当然、その必要性については再評価する余地があるはずです。 しかし、これは一筋縄ではいかない難しい問題です。
▽70歳で前立腺がんが見つかったら?
・いくら悪性度が低めと言ってもがんはがん。がんであると指摘された本人にしてみれば、「せっかく見つかったのなら治してすっきりさせたい」と思うのが心情ではないでしょうか。 例えば70歳の男性に前立腺がんが見つかった場合、担当医から「おそらく20年後でも問題ないから様子を見ましょう」と言われたらどう感じるでしょうか。「もしかすると、90歳でも元気でいるかもしれない…。それならむしろ、まだ若くて体力のあるうちに治療しておこう!」と思っても、全くおかしくありません。
・早期がんを簡便に見つけるPSA検診があって、それに対する治療法があり、それらはきちんと保険適用になっています。これだけお膳立てが揃っている現状で、「それなら私は経過観察で結構です」と言い切れる人は少数派でしょう。
・医師の立場から考えても、「20年間大丈夫です!」と保証するわけにはいかないので、すべてを納得したうえで、患者さんが治療を希望するのであれば、断る理由はどこにもありません。 医療の現場に限って言えば、ラテントがんを治療しても、どこからも苦情は出ないのです。この問題を現場の自助努力でなんとかしようとしても非常に難しいはずです。
▽前立腺がん、治療の選択肢は多岐に渡る
・さらに言えば、実はこうした問題は、前立腺がんに限ったことではありません。本連載でも既に解説しましたが、肺がんのCT検診も、悪性度の低いがんを見つけている可能性が指摘されているのです。 ほかに厚生労働省が認める検診対象のがん(胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん)にも、前立腺がんほどの頻度ではないにせよ、本質的に同様の可能性が潜んでいます。
・この先も、画像検査を含めた医療の技術が進歩するほど、小さくて、良性と悪性の境目(グレーゾーン)の病変が見つかりやすくなるのは、間違いありません。その取り扱いをどうするのか。すべて治療するのか、経過観察して慎重に様子を見るのか、医療経済も含めたマクロな視点から議論する必要があるのです。
・こうした状況を踏まえたうえで、話を前立腺がんに戻しましょう。 前立腺がんが見つかって、治療を選択したとします。実はここから先も事情はそう単純ではありません。というのも、治療の選択肢が、非常に多岐にわたっているためです。
・早期~中期の前立腺がんであれば、「外科的手術」「放射線療法」「ホルモン療法」が、進行癌であれば「抗がん剤治療」が選択肢として上がります。しかも外科手術では「一般的な手術」と最近話題の「ロボット手術」(後ほど解説します)に、放射線療法は外から放射線を当てる「外照射」と小線源を体内に埋め込む「組織内照射」の選択肢があります。 さらに、エビデンス(科学的な証拠)はまだ乏しいですが、「高密度焦点超音波療法(HIFU)」「凍結療法」「粒子線治療(陽子線、重粒子線)」といった選択肢もある。
・一体、なぜこんなに複雑な状況になっているかというと、やはり悪性度が低いという前立腺がんの特徴が色濃く影響しているのです。 そもそも早期がんであれば、20年間無治療で経過観察しても死亡率に差がつきにくいのです。ならば、治療法Aと治療法Bのどちらがいいかを比べてみようと思っても、当然、死亡率に差が出ることはありません。結局、どの治療方法が、どの程度良いということがはっきりせず、差別化できないため、様々な治療法が乱立しているのです。
・今後も、「どの患者に、どの方法をどう組み合わせるか」というベストミックスを決めるのは至難の業でしょう。 そしてもう一つ、重要な問題が残っています。それは治療による合併症がどうなのかということです。
▽治療によっては排尿障害や勃起障害も!
・上の図を見ると分かる通り、前立腺は尿道をぐるりと囲んでおり、肛門や陰茎とも近接しています。治療によって周辺の臓器に影響が及び、排尿障害や排便障害、勃起障害など、各人のQOL(Quality of life=生活の質)に直結する合併症が起こる可能性もあるのです。  ここからマンガで解説します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/091200163/103100008/?P=1

第三に、上記の続きを11月15日付け「前立腺肥大、薬の選び方次第では射精障害に? 前立腺肥大の治療は勃起障害や男性型脱毛症にも影響が」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・この連載では過去2回ほど、男性のがんの中でも患者数が非常に多い前立腺がんについて解説してきました。この前立腺がんには負けず劣らずの身近な病気なのが、前立腺肥大でしょう。 どれぐらい身近かというと、40歳代で2%、50歳代で2%、60歳代で6%、70歳代で12%の人が、前立腺肥大を持っていると推測されています。年齢を重ねると徐々に患者数が増えることから分かるように、前立腺肥大は年齢とともに進行していく病気です。
・上の図の通り、前立腺は尿道をグルリと取り囲んでいます。前立腺が肥大すると、尿道が圧迫されて尿の出が悪くなってしまいます。 「最近、尿のキレがいまいち」「就寝中にトイレに行きたくて起きてしまう」――。こんな症状がある場合は、前立腺肥大の可能性があります。
・前立腺肥大は、原則的に命に関わる病気ではありません。病状が本当に進行して尿がほとんど出なくなってしまえば、重い尿路感染症や腎不全を引き起こす可能性もありますが、通常はそこまで放置することはないはずです(ただし高齢で、意思の疎通が困難な人は尿量に留意が必要です)。
・また「前立腺肥大」と「前立腺がん」は、いかにも関係があるように見えますが、原則的に別の疾患で、前立腺肥大が前立腺がんのリスクを上げるわけもありません。むしろ、エビデンス(科学的な証拠)はないものの、前立腺肥大がある人には前立腺がんが少ないという印象を持っている泌尿器科医が多いようです。
・ただし症状が似ているので、どうせ前立腺肥大だろうと思っていたら前立腺がんだったというケースは十分にあり得ます。排尿に不安がある場合は、安易に自分で判断せず、医療機関を受診することが大切です。  純粋な前立腺肥大で死亡することはまずありませんが、排尿障害があったり、そのために睡眠が十分に取れなかったりすれば、QOL(Quality of life=生活の質)が著しく低下してしまいます。自分が罹患する可能性が高い病気だからこそ、やはりうまく遠ざける工夫が必要なのです。
▽性行為と前立腺肥大の関係は?
・何が前立腺肥大を引き起こす原因なのかは、まだはっきりと分かっていません。ただ、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症といった「メタボリックシンドローム」に合併しやすいことが分かっています。 また男性ホルモンであるテストステロンは、前立腺肥大のリスク因子になります。テストステロンは、少なすぎるとED(勃起障害)や筋力低下、メタボリックシンドローム、うつ病などのリスクが上昇し、多すぎると前立腺肥大、AGA(男性型脱毛症)のリスクが上昇するという、なかなか一筋縄ではいかないホルモン。 ちなみに性行為が前立腺肥大のリスクになったり、悪化させたりすることは証明されていないのでご安心ください。
・こうしたリスク因子がある一方で、野菜や穀物、大豆などに多く含まれるイソフラボン、β-カロ テン、ビタミンC、ルテインなどは前立腺肥大を抑えるとも言われています。ノコギリヤシもいいという説がありますが、それについては有効であるという報告と、無効であるという報告が同じくらいあって、現段階では判定は保留されています。
▽ED治療薬としても使われる前立腺大の治療薬
・では前立腺肥大があるかどうかは、どんな検査でチェックするのでしょうか。 前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAは前立腺肥大でも上昇します。前立腺がんだと上がり続け、前立腺肥大だと高止まりするイメージです。病状を知るには良い判断材料になりますが、たとえばAGA(男性型脱毛症)の治療中の場合などは、薬剤の影響で、PSAが本来よりも低く測定されてしまうことがあるので注意が必要です。
・前立腺が肥大していないか、形がデコボコしておかしくないかを調べるには、超音波検査(エコー)が有用です。CT、MRIも有用ですが、エコーの方がより簡便で安価に施行できます。 エコーは膀胱に尿が貯留した状態で行った方が観察しやすいので、検査前にトイレに行かないようにしてください。
・前立腺肥大の治療方法は、前立腺がんと同様、もしくはそれ以上に多岐にわたっています。 特に手術療法は何と15種類以上の選択肢があり、フローチャートのような形で最適解を示すのは、はなはだ困難です。前立腺がんの治療と同じように、「これがベスト!」という決め手に欠けることが、乱立を招いている可能性もあります。 原則的には個々のケースに合わせて治療法を選択すべきですが、実際には治療を行う医療施設がどの機器を使うのか、またどの治療法が得意なのかによって決まるでしょう。
▽前立腺肥大の治療薬がEDにも影響?
・通常は、早期の前立腺肥大であれば薬物療法が選択されます。第一選択薬としてまず処方されることが多い「α1遮断薬」、効果が不十分な時に追加される「PDE5阻害薬」や「5α還元酵素阻害薬」、最近は処方頻度が減っていますが「抗アンドロゲン薬」などもあります。
・この中で、PDE5阻害薬はもともとED(勃起障害)の治療薬として開発されたもの。前立腺肥大にも効果があることが分かったため、ほぼ同成分ながら別名で販売されています(PDE5阻害薬に付いては、次回に解説します)。
・また、5α還元酵素阻害薬もなかなか興味深い薬です。 簡単に言うと、この薬はテストステロンの作用を抑える効果を持っています。テストステロンは前立腺肥大やAGA(男性型脱毛症)のリスクを上げると前述しましたが、この薬がそれを抑えることによって、前立腺肥大の治療だけでなく、発毛効果まで期待できるのです。実際に、こちらの薬も別名でAGA治療薬として販売されています。 ただし良いことばかりではなく、テストステロンを抑える反作用として、乳房が大きくなったり、乳首の腫れや痛みが出たりするケースが報告されています。
▽治療薬によっては射精障害も!?
・現状ではEDやAGAの治療は保険適用外なので、「先生、前立腺肥大ってことにして保険で薬を出してくれませんか?」という人もまれにいますが、もちろんそんなことはできません。厚生労働省もそんな可能性は重々承知しており、これらの薬を保険適用で出す時には、本当に前立腺肥大かしっかりとした診断した根拠を提出することが求められます。
・そして重要な注意点です。PDE5阻害薬を除いて、どの薬を選択した場合でも、多かれ少なかれ性機能に影響が出てきます。下の表を参照してください。 このうち「射精障害」というのは、精液が陰茎の外ではなく、膀胱の方に逆に出てしまうことです。健康上の影響はありませんが、気になる場合は薬を変更して対処します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/091200163/103100009/?P=1

第一の記事で、 『近年、前立腺がんの患者数は、尋常ではない勢いで増加をしています。男性読者にとっては決して他人事ではないはずです。この先1~2年の間に、大腸がんを抜くことは確実と考えられています』、 『PSAが登場してから状況が一変しました。早期の前立腺がんがバンバンと見つかるようになったのです』、などの指摘はなるほどと納得させられる。
第二の記事で、 『前立腺がんには悪性度が低めのものが多いということです。 さらに早期の前立腺がんを「手術するグループ」と「治療せずに経過観察するグループ」にランダムに分けて20年間経過を追ったところ、両グループで前立腺がんの死亡率には、統計学的な差がなかったという、かなり衝撃的な報告が臨床医学の世界で、最高峰の雑誌から発表されました』、 『70歳で前立腺がんが見つかったら?』、などの指摘にはついては、確かに 『一筋縄ではいかない難しい問題』、のようだ。
第三の記事で、 『現状ではEDやAGAの治療は保険適用外なので、「先生、前立腺肥大ってことにして保険で薬を出してくれませんか?」という人もまれにいますが、もちろんそんなことはできません。厚生労働省もそんな可能性は重々承知しており、これらの薬を保険適用で出す時には、本当に前立腺肥大かしっかりとした診断した根拠を提出することが求められます』、というので、前立腺肥大でもないのに、EDやAGAを保険適用で治療する抜け道は、ちゃんと塞がれているようなので、一安心である。いつもは、頼りないことが多い厚生労働省もこの点ではきちんと対応したようだ。
タグ:医療問題 PSA 日経ビジネスオンライン (その10)(前立腺関連:急激に前立腺がんの患者が増えたのはなぜ?、70歳で前立腺がん発覚!治療する?しない?、前立腺肥大の治療は勃起障害や男性型脱毛症にも影響が) 近藤 慎太郎 「急激に前立腺がんの患者が増えたのはなぜ? PSA検診で前立腺がんが発覚したあなたに送る」 前立腺がんの患者数は、尋常ではない勢いで増加をしています この先1~2年の間に、大腸がんを抜くことは確実と考えられています PSAは、早期の前立腺がんでも上昇することが多いため、検診の項目としても使用することができるのです PSAが登場してから状況が一変しました。早期の前立腺がんがバンバンと見つかるようになったのです 治療すべきか否かは、状況による 治療には様々な合併症がつきものです PSA検診が悪性度の低いラテントがんをたくさん見つけてしまう 「70歳で前立腺がん発覚!治療する?しない? 治療法は多岐に渡り、患者が自分で選ぶのもひと苦労」 がんがゆっくりと育っている間に寿命を迎えてしまうような「ラテントがん」を多数見つけている可能性があります ほかの原因で亡くなった人を病理解剖したところ、その60~70%に、寿命に影響しなかった前立腺がんがあったと報告されています 前立腺がんには悪性度が低めのものが多いということです 早期の前立腺がんを「手術するグループ」と「治療せずに経過観察するグループ」にランダムに分けて20年間経過を追ったところ、両グループで前立腺がんの死亡率には、統計学的な差がなかったという、かなり衝撃的な報告が臨床医学の世界で、最高峰の雑誌から発表されました 仮に寿命に影響しないようながんをたくさん見つけて治療している側面があるのだとすれば、当然、その必要性については再評価する余地があるはずです 一筋縄ではいかない難しい問題です 70歳で前立腺がんが見つかったら? 早期がんを簡便に見つけるPSA検診があって、それに対する治療法があり、それらはきちんと保険適用になっています。これだけお膳立てが揃っている現状で、「それなら私は経過観察で結構です」と言い切れる人は少数派でしょう 医師の立場から考えても、「20年間大丈夫です!」と保証するわけにはいかないので、すべてを納得したうえで、患者さんが治療を希望するのであれば、断る理由はどこにもありません 前立腺がん、治療の選択肢は多岐に渡る 治療によっては排尿障害や勃起障害も 「前立腺肥大、薬の選び方次第では射精障害に? 前立腺肥大の治療は勃起障害や男性型脱毛症にも影響が」 「前立腺肥大」と「前立腺がん」は、いかにも関係があるように見えますが、原則的に別の疾患で、前立腺肥大が前立腺がんのリスクを上げるわけもありません エビデンス(科学的な証拠)はないものの、前立腺肥大がある人には前立腺がんが少ないという印象を持っている泌尿器科医が多いようです ED治療薬としても使われる前立腺大の治療薬 現状ではEDやAGAの治療は保険適用外なので、「先生、前立腺肥大ってことにして保険で薬を出してくれませんか?」という人もまれにいますが、もちろんそんなことはできません。厚生労働省もそんな可能性は重々承知しており、これらの薬を保険適用で出す時には、本当に前立腺肥大かしっかりとした診断した根拠を提出することが求められます
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加計学園問題(その12)(「絶対的権力者」安倍総理は なぜ極めて危ういと断言できるのか 加計学園問題をもう一度考える、小田嶋氏;モリカケ問題が沈静化しない理由) [国内政治]

加計学園問題については、9月27日に取上げたが、今日は、(その12)(「絶対的権力者」安倍総理は なぜ極めて危ういと断言できるのか 加計学園問題をもう一度考える、小田嶋氏;モリカケ問題が沈静化しない理由) である。

先ずは、首都大学東京准教授(社会学)の山下 祐介氏が11月7日付け現代ビジネスに寄稿した「「絶対的権力者」安倍総理は、なぜ極めて危ういと断言できるのか 加計学園問題をもう一度考える」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「「拝啓 安倍晋三殿」からはじまった論考「安倍総理、あなたの読みは正しい…だからこそ警告したいことがある」は大きな反響を呼びました。今回は、いまだ真相が解明されない「加計学園問題」を考えます。
▽総理が潔白であるほど、大変な事件
・森友・加計問題では、あなたに対し「嘘つき」とか「不誠実だ」という声が大きく上がりました。 7月の臨時国会であなたがふれた、「今年の1月20日にはじめて加計孝太郎氏が特区に獣医学部新設の計画を申請していたのを知った」という話は、ちょっと国民に理解させるには難しい話です。
・それでも私は安倍さんを信じましょう。 また奥様の昭恵さんについては、東日本大震災の被災地をしっかりまわって、多くの人から信頼されているのは知っていますし、こうした奥様の活動は、私が知る限り安易な考えではできないことだと思いますから、夫婦お二人ともに、人間として不信を抱く者ではありません。たいへん尊敬しております。
・でも、やはり問題は問題であり、それどころかこれはかなり深刻な問題だということを、ご自身でしっかりと受け止めなくてはなりません。 何が起きたのかをはっきりさせなくては、今後の国の運営に非常に大きな害悪を及ぼす、重大な案件です。安易な気持ちで見逃してはなりません。これはふつうの事件ではありません。
・というのも、それは総理、あなたが「自分は何も知らない」「何の問題もない」と言い切られ、さらに私がその言葉を信用するからこそ、そうなのです。 このことを取り違えないようにお願いいたします。あなたが疑わしいから問題なのではない。あなたが潔白であるなら、そうであるほど問題なのです。
・国家の首相が知らないところで非常に強引と思われる意思決定が行われた。少なくともその決定に対し、省の事務次官にいた人が「行政が歪められた」と発言した事件です。ただ事ではありません。 あなたの知っているところで、あなたや誰かが動かして、そういうことが起きたのなら、問題はそれほど大きくないのです。そのプロセスを止めればよいだけですから。 あるいはあなたは知らないにしても、周りの人や現場が忖度して勝手に動き、こういうことが起きたのだと、そういうことであれば、その忖度をあなたが叱りつけ、やめさせればよいだけです。コントロール可能な事件ならば、それほど怖れることはありません。
・問題はやはり、あなたやあなたのまわりの方々が否定しているのにもかかわらず、事業の現場である肝心の文科省から、政府の関与を示す文書が次々と出て来たことです。 現役官僚が、「これを進めてはいけない」と思わせるような何かがそこにはあったということです。こういうことは官僚の立場上、ふつうは出てきません。
・よほど「おかしい」「これではなすべき仕事ができない」と思わせるようなプロセスが進んでいたと思わなくてはなりません。 その際――よいですか、この国の官僚はきわめて優秀で公正です。まさかと思いますが、そのトップにいるあなたが、彼らを信頼していないというのではないでしょうね。 あなたのこれまでの発言にはどうもそういう意味がこめられているようで、私はたいへん気になっています。あなたは行政のトップなのですから、官僚たちを信頼し、うまく彼らを使いこなさなくてはならない。 そういう立場なのだということを、きちんとわきまえなくてはなりません。まして彼らを「敵」と見なすなど、あってはならないことです。
▽官僚と政治の間で何が起きたのか
・官僚が優秀だというのは、まずはこういうことです。 行政官僚はもちろん、意志決定する者ではありませんので、ある意味では政治のマシーンです。ですから政治的な決定がなされれば、それに従って動かなくてはなりません。 しかしまた、こういう面もあるわけです。 政治的決定と言ってもそれは決定するだけで、実際に動かすのは官僚です。現場は官僚で動きます。彼らなくしては、政治は政策として実現することはできません。
・そしてその人々が優秀だというのは、政治を実現する機構としてまずは優秀だということです。あなたの演説も答弁も、彼らのおかげで形になっているのではありませんか。 そしてその際にもう一つ、彼らは公正でもあります。彼らは法を遵守します。 またそこには、過去からの積み重ねの中で各省ごとに獲得しているあるべき行政のあり方についての規範があり、個別にはそれを逸脱する人がいたとしても、全体としておかしな政策が動かないよう自制・自浄が働くようになっています。
・これは政治の過程とは別に、行政過程としてサーモスタットのように機能しており、ですのでこの国は非常に複雑にできているのに、かなりの部分を政治が放っておいても、おかしなことは起きずに自動的に制御されるのです。
・さらに私は次のことを強調したい。彼らは単なるマシーンではありません。集団であり、組織です。彼らには彼らの秩序があり、なすべきことへの責任や倫理がしっかりと構築されています。 そしてそれは、彼らがただ政治的決定を実現し、また法を遵守するということだけでなく、きちんと国民の側に立って、政策として何が必要で、何をしてはいけないかを判断する能力を、明治維新以来の長い省庁の歴史の中で行政文化としてもっているということなのです。
・ですから官僚は、政治家の政策実現装置であるだけでなく、公正かつ(杓子定規ではなく、各法がもつ精神に従って)適正に法を守り、それによって国民の暮らしをしっかりと守る、そういう国家の安定装置でもあるわけです。彼らは法を守ります。 そして憲法に基づけば、主権は国民にありますから、何よりも国民を守ります。それゆえ、法を逸脱し、国民の権利を損ねるような政治的決定が行われれば、それを軌道修正する側に立ち、場合によっては政治に抵抗することもあるわけです。そういう適正化装置なのです。
・その官僚から、「政策が歪められた」という発言がでたというのは相当なことです。これは大事件であるとあなたは正しく受け止めなくてはなりません。 今回の事件に対してはしかし、この正しく動いている装置を、問題の矛先が総理自身に向けられたことから、「むしろこの官僚機構にこそ問題があるのだ」と、だから「ぶっ壊してしまえ」と、そういう方向であなたのまわりの方々は処理してきました。 いやあなた自身もですね。悪いのは官僚の方なのだと。ゆがんだ行政を私が正すのだと。
・しかしこの事件で出ていた情報は、私にはあなたに分がないように思えます。でも私はあなたを信じましょう。あなたは潔白だということを前提にした上で、でもやはり次のことは問題になるのです。
▽問題を曖昧にし、事態はさらに悪化
・世の中は、すべてクリーンに清潔に動くものではありません。まして多額の公金が関わる事業には様々な怪しい作動が生じえます。 しかも、みながそこで清廉潔白であったとしても、それぞれには立場があり、考え方のズレや誤解などが重なると、本来あるべきではない形で政策や事業が進むということも、現実にふつうにおきうることです。
・まして今回問題になったこの事業は、岩盤規制を取り除くという特区事業です。規制はもちろん理由があってしかれているのですから、それを取り外す際に異論や反論が噴出するのは当然です。出ない方がおかしいと言うべきでしょう。 そしてそれは、規制を外すことで不当に利益を得る人々が現れる可能性があるからであり、またいったん規制を外してしまえばもう一度規制をかけることは非常に難しくなるからです。規制の解除は慎重に判断していかねばなりません。
・そこであるべき政治の姿とは、官僚たちの話をきちんと聞きながら、ていねいに現場を歩き、情報を集め総合し、国民の利益となる適切な解を導き出すことでした。その場合、ことによっては規制の存続も解になりえます。 それに反して、あなたやあなたのまわりの方々は特区実現のための規制解除という解を先に決め、そこに強引に持ち込もうとしたように見えます。だから異論が出てきたのではないですか。
・そうでなければ、一体なぜこれほどまでこの問題がこじれたのか、わかりません。あなたには行政のトップとしてその真相を解明し、公表する責務があるわけです。 ともかく現段階において、今回の事件は、出てきている情報に全く整合性がありません。誰かが嘘をついているとしか考えられない状況です。
・あなたやあなたを守る側の方の主張と、例えば元官僚の方の発言とのズレはあまりに大きく、このままでは何が起きてこういう事件になったのか、全く説明がつきません。この事態をあなたは早く解消せねばなりません。 というのもこのままでは、事件の真相がわからないまま、あなたへの疑いは強く深く残されることになるからです。
・他方であなたは権力者ですから、あなたが事件をこれ以上解明せず、事実上なかったことにすれば、今度は告発をした真面目な官僚たちの側が、その公正性を否定されることになります。 加計問題がこのまま終わることとは、官僚たちがやっている日々の仕事の正しさを否定し、むしろ彼らに、国民の側に立って権力に逆らえば自分自身の立場も危うくなるぞと、そういう脅しをかけることに他なりません。
・こうした前例を作れば、行政は正しい形では動いていきませんよ。それどころか今後、本当に不正な事件がこの国の内部に起きても、おかしな忖度が働いてそれを積極的に覆い隠し、内部告発などは二度と出なくなると思います。
・そうすれば、あなた自身にも何が起きているのか分からなようなおかしな事件が、次々とつづいていくことになるはずです。 いやすでに、おかしなことがこのところたくさんつづきましたね。 この問題には最低でもしっかりとした調査のメスを入れなければ、この先さらに何が生じるか、空恐ろしいものがあると言えます。この問題を適切に処理できるかどうか、あなたには非常に重い責任があるのです。
・あなたは潔白です。それは信用したいと思います。でも、あなたに問題がないとして、それですむ話ではないのです。むしろ事態はますます複雑で、奇怪で、そして危険だといえます。 いま私は調査のメスを入れるよう言いましたが、これはちょっとした調査で簡単に解明されるものではないかもしれません。この事件が今後、裁判で争われるようになったとしても、真相の解明は簡単ではないように思います。
・何が起きてこうなったのか、非常にこじれた事件です。ともかくまずは解明の手がかりをえるまで、特区というやり方を一旦停止しておくのが賢明でしょう。
・とはいえ、こうした状況の中で、一つだけ、あなたに確実にできることがあります。 それは加計孝太郎さんのことです。あなたには問題はない。それは確かなのでしょう。でもあなたのお友達の加計孝太郎さんには、やはり問題があるといわざるをえません。それを正すことです。
▽「李下に冠を正さず」と、あなたが友人に言わなくてはいけない
・あなたはこの事件を説明する際に、「李下に冠を正さず」という言葉を使われました。 「李下に冠を正さず」とは、「李(スモモ)の木の下で冠を直そうと手を挙げると、実を盗むのかと疑われるので、冠を直してはいけない」という意味です。 あなたは「私はそんなことはしていない」とおっしゃいます。私もそれは認めましょう。でも、加計さんはまさに、李下で冠を正してしまったのです。やはりそれが問題の原点なのです。
・だからあなたは、加計さんにこう言わなければならない。 「友人なら、なぜ私がトップにいる特区事業に手を挙げるのだ。君が手を挙げるから、おかしなことが起きてしまった。君は手を引かなくてはならない」と。 すでに文科省の大学設置審が11月10日に認可する見通しとの報道もでましたが、今からでも遅くはありません。 加計さんに友人として「李下に冠を正さず」ときっぱりとおっしゃってください。加計さんには、今回の獣医学部新設の事業から自ら手を引くことを強く要請しなくてはなりません。
・そこには多額の負債や人としての信頼の喪失を覚悟せねばなりませんが、友人であるあなたのためです。間違いなく「わかった」といってくれるはずです。 そしてそうしなくては、森友学園の籠池氏にだけ冷たくあしらうあなたの態度は、非常に不公正に見えるのです。「李下に冠を正さず」は、そういうことをしてはいけないという教えですが、二人はそれをやってしまった。
・それを見てまわりが「実を盗もうとしているのではないか」と大騒ぎになったわけですが、結果として一方は盗人(あなたの言葉では「詐欺を働く人物」)になり、他方は咎められることなく本当にスモモがとれた。 その時にまだ、あなたが、あなたから遠い籠池氏をかばって、親友である加計氏の方に厳しく対応したのなら、話はここまでこじれないのです。 二人への対応が全く違いましたね。籠池氏は国会の証人喚問に応じたことで、結果として罪に問われる羽目になりました。それに対し、加計氏はあなたが国会の追求から頑なに守ったことで、疑いにこたえることもなく、今スモモは彼の手に落ちようとしています。
・もしそうなれば、スモモの木(あなたのことです)に本当に近い人は、疑われてもスモモの木が守ってくれる。スモモの木の親友は、李下で冠を正しても誰にも文句はつけられない、そういう前例を作ることになるのです。 このままでは今後、あなたが知らないところで、「あの人は総理のお友達ではないか。どれくらいのお友達なんだろう」と余計な勘ぐりが働き、そしてあなたのお友達だと分かれば、そのお友達にスモモをとらせなくてはならないのではないかと、そういう動きがはっきりとでてくることになりすよ。
・しかもそこにもし本当に不正があったとしても、もはや今回のように表には出てこず、また内部告発も封じられつつあるのですから、この先本当に何が起きるかまったく分からない状況だと言ってよいと思います。 今回はまだ不正はなかったのかもしれない。しかし不正はなくとも、こうした妙な勘ぐりの連鎖の結果が今回の事件の真相なのではないですか。 すべては「李下に冠を正した」ことが、ことの発端なのです。本当にスモモに近いところにいる人は、その冠を正しただけで、すでに問題なのです。
▽「絶対的権力は絶対的に腐敗する」
・なぜこんなにおかしな事件が相次いでしまったのでしょう。 基本的にはあなたの油断だと思います。それはあなたも認めるところでしょう。が、それ以前に、あなたに権力が過剰に集まりすぎたことから起きたことです。このことに正面から向き合っていただきたい。
・「絶対的権力は絶対的に腐敗する」という言葉があります。あなたはもはや「絶対的権力」者です。今回の選挙で勝利したことで、あなたはこれで大丈夫と思っているのかもしれません。 しかし絶対的権力とは、実はきわめて危ういものなのです。強すぎる権力は、必ず砂上の楼閣です。この一連の事件と、それをもみ消すための選挙で勝利したことによって、その楼閣はさらに高く積み上がってしまった。 でもいつ崩れるかわからない、非常にもろい楼閣です。もうこれ以上積み上がらないよう、はやくこの権力集中を解かなくてはいけません。
・あなたの心身はおそらく今、相当きついのではないかと推察します。だからこのところ野党の質問時間を減らしてあげようと、まわりでそういう忖度が働いているようですね。 でもあなたの不調は、けっして森友・加計問題のせいではありませんよ。こうした問題をもたらすもととなったあなたの権力、その過剰な権力こそが原因です。 不調は、この権力がもたらしうる恐ろしい結果を、あなた自身がどこかで気付いているからにほかなりません。
・ともかく、はやく手を打たなくてはなりません。何かとんでもないことが起きる前に。表には見えないだけで、あなたの政権下ですでに政治・行政の腐敗がかなり根深く進んだようです。 でも今ならまだ崩壊という状況にはありません。十分間に合います。はやくあなたに、あなたやこの国がおかれている本当の現実に気付いていただきたいのです。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53404

次に、コラムニストの小田嶋 隆氏が11月17日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「モリカケ問題が沈静化しない理由」を紹介しよう(+は段落)。
・岡山理科大学獣医学部の新設が、認可されることになった。 10月14日、林芳正文部科学大臣が、閣議のあとの記者会見で、学校法人「加計学園」の獣医学部について、文部科学省の大学設置審議会の答申を踏まえ、来年4月の開学を、正式に認可したことを明らかにしている(こちら)。
・5月のはじめに、朝日新聞が「総理のご意向」などと記された文書の存在を報じて以来、およそ半年間くすぶり続けてきた問題に、一応の決着がついたカタチだ。 「一応の決着」という書き方をしたのは、手続き上は決着したように見えても、この結果に納得していない人たちがたくさんいるだろうと思ったからだ。
・というよりも、納得していない側の陣営が大騒ぎしている中で、それでもなお一方的な形で手続き上の決着を急いだ政府の姿勢に驚いているからこそ、今回、私はこの話題を蒸し返すことを決意したわけで、加計学園問題は、これから先、認可の適正さの問題という当初の設定を超えて、政府が国会軽視の態度を強めたきっかけの事件として、さらには、紛糾した問題への対応の強引さからうかがえる政権の強権体質を示唆する問題として振り返られることになるのだろうと考えている。
・加計学園は、解明されることによってではなく、むしろ解明に向けた説明を拒んだ人々の狭量さを明らかにすることによって、現政権の問題点を浮かび上がらせている。その意味で、大変に稀有な事件だ。 そもそも、森友・加計学園問題と呼ばれている一連の疑惑が与野党間の対決的な争点となったきっかけは、安倍晋三総理が、2月17日の衆議院予算委員会の答弁で 「私や妻が関係していたということになれば、まさにこれは、もう私は総理大臣も、そりゃもう、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」 と断言した時点にさかのぼる。
・安倍首相が、なにゆえにこんな大上段に振りかぶった宣言をカマしたのかは、いまとなっては謎だ。 首相が、この問題をナメてかかって、それゆえに軽率な断言を振り回したのか、でなければ逆に、危機感を抱いていたからこそ過大な言葉で自らの関与を否定しにかかったのか、いずれが真相に近いのかは、ご本人以外にはわからない。ともあれ、「総理大臣も国会議員も辞める」というこの時の大言壮語は、その後のご自身の行動を制限する結果を招いた。すなわち、首相は、この件に関して、少しでもご自身ないしは昭恵夫人の関与をうかがわせるいきさつについては、徹頭徹尾全面否定せざるを得ない立場に追い込まれたわけで、この時点で、首相にとって妥協の余地は事実上消滅した。つまり、小さな痛みを我慢しつつより大きな合意を得るという政治の常道を選択する道が閉ざされた形だ。
・で、本来は首相夫人を巻き込んだよくある公私混同の問題、ないしは、文科省の認可行政にまつわるこれまたよくある不透明な行政上の瑕疵に過ぎなかったこののお話は、首相の進退を問う疑惑に格上げされることになった。
・逆に言えば、総理が、2月の段階で、昭恵夫人による学園への寄付の真意(あるいは寄付の有無)や、学園の設立への関与について、それなりの事情説明なり陳謝なりをしていれば、コトは総理周辺のちょっとした「脇の甘さ」の問題として決着していたかもしれないのだし、国有地が不当に安い価格で払い下げられていた問題にしても、関係した官僚や政治家がしかるべき情報を開示したうえで当時の事情を説明していれば、事件全体は、何人かの役人のクビと引き換えに決着する小規模な利益誘導案件で終結していた可能性が高い。いずれにせよ、倒閣や首相更迭に値する話ではなかった。
・後から浮上してきた加計学園をめぐる不祥事についても同様だ。 報道の核心は、「総理のご意向」文書(が存在したのだと仮定して)の適法性や、当該の獣医学部認可や規制緩和特区の選定への総理の関与の有無を追及する声から、次第に、政府が関連文書を隠蔽し国会答弁を拒否している姿勢への攻撃にその重心をシフトしていった。
・これは、見ようによっては、「たいした疑惑が隠れているわけでもない、ごく一般的な不祥事をことさらに大きく取り上げて、倒閣の材料にすることを狙っている反日マスゴミによる策動」に見えるのかもしれない。 実際に、一部のネット論客はそう見ているし、メディア内でそれなりの仕事をしている人たちの中にも、モリ・カケ問題を「一部メディアによる偏向報道」と断じている向きは少なくない。
・私の見るに,マスメディアがこの件を執拗に追っているのは、必ずしも倒閣を目的としているからではない。 といって、彼らが事件を針小棒大に報じようとしているとも思わない。 倒閣を熱望している記者がいないとは言わないし、全体として現政権に良い感情を持っていない報道機関だってあるのだろうとは思っている。でも、だからといって、彼らが倒閣のために記事を書いていると断ずるのは軽率だろう。
・メディアの人間がこの話題に固執しているのは、ごく単純な話、事件にかかわる情報があまりにも不自然に隠蔽されていることに対する、取材者として極めて自然なリアクション、だと思う。 資料が廃棄され、関係者が取材を拒み、疑惑の当事者である学園長が参考人招致を拒絶するのみならず世間から姿をくらまし、もう一方の当事者であった当時の文科省次官が情報をリークすればしたで、その元次官について世にも不自然な下半身不祥事が全国紙に暴露され、そうしている間にも認可前の新設学部の建設工事は停滞することなく進められ、最先端の獣医学に寄与するという建前にもかかわらず大学院設置へのロードマップは明示されず、四国地方に獣医師が不足しているという開学理由を裏切るようにして韓国での留学生募集が始められていることが明るみに出てきているからこそ、事件の取材に携わる記者たちは、意地になって記事を書き続けて、次につなげようとしてきたのだと思う。
・いわゆる加計学園疑惑報道(=疑惑そのものではなく報道)を攻撃する言葉として最も典型的に繰り返されているのは 「なんのエビデンスも無いじゃないか」 というセリフだったりする。 まあ、疑惑なのだから、エビデンスは、解明されてからでないと出てこないと言えばそうも言えるわけだが、一方に、確たる証拠のない事案について断定的な書き方をしているメディアの姿勢に疑念を抱く人々がいることはよくわかる。
・とはいえ、実際のところ、学園周辺ならびに政府が、報道側の質問に対してほとんどまったく何の回答も提示していないどころか、周辺情報すら積極的に消しにかかっていることが目に見えているからこそ、「答えがない」ということを繰り返し報道せざるを得なくなっているのが実態ではあるわけで、つまりこの問題は、エビデンスの有無以前に、政府ならびに学園の隠蔽ぶりのあまりといえばあまりに異様な強烈さそのものが報道の核心になっている、はなはだ珍しいケースだと考えるべきなのではなかろうか。
・岡山理科大学獣医学部が認可されるに至った事情を取材すれば、とてもではないが 「何の問題もない」 とはいえないはずだ。 百歩譲って 「多少の問題はあるだろうけど、たいした問題ではない」 「たしかに問題はあるけど、ほかの大学のほかの学部の認可だって似たようなものだよ」 ということが仮に言えるのだとしても、その種の相対化は、学園側が説明を拒む理由にはならない。政府が国会答弁を嫌って臨時国会を冒頭解散したり、衆議院を解散したり、新たに始まることになっている解散後の国会の質問時間の割り振りを変更する理由にはなおのことならない。あたりまえの話だ。
・つまり、何がおかしいのかというと、何かがおかしいと多くの人々が感じていることがらについてまったく説明が為されていない点がおかしいわけで、このおかしさは、この問題が浮上した当初の疑問のおかしさよりも巨大な疑惑に成長している。だからこそ、本来は文部科学行政上の些細な不祥事であったこの話題は、政権担当者のリーダーとしての資質を疑わしめる試金石に変貌している。
・「説明してください」 「文書がありません」  「えっ? どうして」 「廃棄しました」  「認可の過程を教えてください」 「議事録がありません」  「どうしてですか?」 「個別の議事録は作成していません」  「学園長を参考人招致したい」 「招致の必要を認めません」
・これでは、まるでらちがあかない。 仮に疑惑のエビデンスがつかめていなくても、こんな事態に直面したら「これほどまでに強烈に隠蔽をはかっている以上、その先には必ずや何かが隠れているはずだ」と類推するのが、取材者の当然の構えというものだ。
・追及の過程で明らかになったことがいくつかある。 もちろん学部認可問題の真相ではない。 むしろ、真相がまったく明らかにならないことによって明らかになったことがあるというお話だ。 なんというのか、加計学園問題の真相それ自体よりも、もっと深刻でずっと致命的なことが次々に明るみに出ていることが、この問題の特別なところで、経緯を振り返ってみるに、政府は、この本質的にはわりとどうでも良い首相ご自身の公私混同案件を隠蔽するために、結果として、およそ空恐ろしい掟破りの反則を次々と犯してきたということだ。
・この問題の核心は、つまるところ、インチキな質草を持ち込んだことをごまかすために質屋の老婆を斧でたたき殺した青年の例と同じく、すでに当初のきっかけとしての事件(質草の虚偽性)とは別のステージに移行している。 念のために列挙しておけば、森友・加計問題が浮上させた問題点は、以下の通り。
 +国会軽視:質問のはぐらかし、証人喚問、参考人招致の拒否、度重なる強行採決と審議拒否、臨時国会開催要求に対する3カ月に及ぶ放置、臨時国会冒頭での首相の演説を経ない解散、再開国会での野党質問時間の短縮要求
 +行政への不当介入:行政文書の廃棄、国家戦略特区ワーキンググループの議事録と議事録要旨の食い違い(議事録要旨改ざんの疑い)、国会答弁で野党側の質問に対して説明を拒んだ官僚の異例の出世などなど
 +公私混同:首相の信奉者であった森友学園理事長と、首相の友人である加計学園グループのリーダーの扱いの違い(国会の証人喚問に応じて事件について証言した籠池泰典氏がほどなく逮捕され、しかも勾留以来、3カ月以上にわたって保釈されないところか接見禁止の状態が続いているのに比べて、首相の腹心の友とされる加計孝太郎氏は、メディアの取材すら一切寄せ付けない環境で守られている)
・最後に、個人的な見解を明らかにしておく。 私は、モリ・カケ問題は、東アジアの政治家にありがちな身内への甘さが招いた不祥事だというふうに理解している。 規模や悪質さに違いはあるものの、基本的な構造は朴槿恵前韓国大統領が退陣に追い込まれた事件とそんなに変わらない、と考えてもいる。
・とはいえ、モリ・カケ問題は、隣国の前大統領の公私混同の酷さとくらべれば、ずっと些細な話ではある。  であるから、今回の一連の出来事を通じて安倍首相の身内への甘さが露呈したことが、政治家としての致命的な失点であるというふうにはあまり考えていない。
・身内に甘い顔をする傾向は、なにも安倍首相に限った問題ではない。 これまでにも、多くの政治家が、それぞれの時代に応じて似たような問題を追及され、陳謝し、けじめをつけ、次の選挙までの間しばらく謹慎したりしつつ、この種の問題に向き合ってきた。 そもそも、身内を大事にすることは、「オヤジ」「センセイ」と呼ばれることの多いうちの国の政治家にとっては、失点である一方で、「義理堅さ」と「頼りになる」実力を物語る、大切な資質でもあった。
・古いタイプの政治家の支持者たちの中には、親しい知り合いや地元に利益誘導をすることこそが政治力だと考えている人たちがたくさんいる。その意味では、安倍さんが親しい友人や近い理想を抱く人間に便宜をはかったことは、許しがたい公私混同である一方で、彼が頼りになる政治家であることを示唆する話でもある。
・何を言いたいのか説明する。 うちの国では、多くの政治家は、結局のところ、身内に便宜をはかっている。 で、運悪くバレた人間だけがその所業を裁かれることになっている。 安倍首相ご自身は、だから、昔から多くの権力者が当然のようにやってきている利益誘導が「バレ」たことを、「運が悪かった」ぐらいに考えているのかもしれない。じっさい、バレずに済んでいる人たちもいるのだろうし、バレた人間だけが裁かれるのは、不当といえば不当でもある。
・が、スピード違反の取締を見ても明らかな通り、バレた人間だけが裁かれるというのは、法律が実際に運用される姿としては、ごく当たり前の姿で、そこに文句を言っても仕方がない。 私がむしろ懸念しているのは、安倍首相ならびに政府が、自らの過ちを認めないために行政を歪め、事実を隠蔽し、現実に直面しないために国会を歪めていることだ。
・これは、絶対に容認することができない。 問題は、ミスを犯したことではなくて、ミスを認めず改めないばかりか、ミスを指摘する人間を攻撃していることだ。 これはなかなか深刻なことだ。
・「あれ? シンちゃん、いま何かポケットに入れなかった?」 「入れてないよ」  「入れたじゃないか。オレは見てたぞ」  「入れてないよ」  「じゃあ、ポケット見せてよ」 「いやだ」   「いいじゃないか。なんにも入れてないんなら、別に見せてもかまわないだろ?」 「絶対にいやだ」  と、ここまでのところは、普通の子供のいさかいに過ぎない。むしろほほえましい話かもしれない。
・が、ここでシンちゃんがポケットを覗き込もうとした子供を階段から突き落としてしまったら、このお話は別のタイプのホラーストーリーになる。 シンちゃんがポケットに入れたのは、離れて暮らしているママの写真で、シンちゃんはそれを見られるのが恥ずかしかっただけなのかもしれない。 ただ、もはや問題は、ポケットに何がはいっていたのかではない。 解決はとてもむずかしくなっている。 ともあれ、階段をころげ落ちたお友だちが無事であることを祈ろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/111600119/

第一の記事で、 『あなたが疑わしいから問題なのではない。あなたが潔白であるなら、そうであるほど問題なのです。 国家の首相が知らないところで非常に強引と思われる意思決定が行われた。少なくともその決定に対し、省の事務次官にいた人が「行政が歪められた」と発言した事件です。ただ事ではありません』、 官僚は、政治家の政策実現装置であるだけでなく、公正かつ(杓子定規ではなく、各法がもつ精神に従って)適正に法を守り、それによって国民の暮らしをしっかりと守る、そういう国家の安定装置でもあるわけです・・・それゆえ、法を逸脱し、国民の権利を損ねるような政治的決定が行われれば、それを軌道修正する側に立ち、場合によっては政治に抵抗することもあるわけです。そういう適正化装置なのです。 その官僚から、「政策が歪められた」という発言がでたというのは相当なことです。これは大事件であるとあなたは正しく受け止めなくてはなりません』、 『なぜこんなにおかしな事件が相次いでしまったのでしょう。 基本的にはあなたの油断だと思います。それはあなたも認めるところでしょう。が、それ以前に、あなたに権力が過剰に集まりすぎたことから起きたことです。このことに正面から向き合っていただきたい』、などの指摘は言い方こそソウトだが、ズバリ安部の痛いところを突いている。
小田嶋氏の記事で、大学設置審議会の答申や林大臣の認可が総選挙後に出てきたことは、安部政権の隠蔽を象徴している。 『メディアの人間がこの話題に固執しているのは、ごく単純な話、事件にかかわる情報があまりにも不自然に隠蔽されていることに対する、取材者として極めて自然なリアクション、だと思う』、 『学園周辺ならびに政府が、報道側の質問に対してほとんどまったく何の回答も提示していないどころか、周辺情報すら積極的に消しにかかっていることが目に見えているからこそ、「答えがない」ということを繰り返し報道せざるを得なくなっているのが実態ではあるわけで、つまりこの問題は、エビデンスの有無以前に、政府ならびに学園の隠蔽ぶりのあまりといえばあまりに異様な強烈さそのものが報道の核心になっている・・・政府が国会答弁を嫌って臨時国会を冒頭解散したり、衆議院を解散したり、新たに始まることになっている解散後の国会の質問時間の割り振りを変更する理由にはなおのことならない』、 『私がむしろ懸念しているのは、安倍首相ならびに政府が、自らの過ちを認めないために行政を歪め、事実を隠蔽し、現実に直面しないために国会を歪めていることだ』、などの指摘も本質を突いて痛快だ。
タグ:公私混同 日経ビジネスオンライン 国会軽視 現代ビジネス 加計学園問題 小田嶋 隆 (その12)(「絶対的権力者」安倍総理は なぜ極めて危ういと断言できるのか 加計学園問題をもう一度考える、小田嶋氏;モリカケ問題が沈静化しない理由) 山下 祐介 「「絶対的権力者」安倍総理は、なぜ極めて危ういと断言できるのか 加計学園問題をもう一度考える」 森友・加計問題 国家の首相が知らないところで非常に強引と思われる意思決定が行われた。少なくともその決定に対し、省の事務次官にいた人が「行政が歪められた」と発言した事件です。ただ事ではありません 問題はやはり、あなたやあなたのまわりの方々が否定しているのにもかかわらず、事業の現場である肝心の文科省から、政府の関与を示す文書が次々と出て来たことです。 現役官僚が、「これを進めてはいけない」と思わせるような何かがそこにはあったということです。こういうことは官僚の立場上、ふつうは出てきません 官僚は、政治家の政策実現装置であるだけでなく、公正かつ(杓子定規ではなく、各法がもつ精神に従って)適正に法を守り、それによって国民の暮らしをしっかりと守る、そういう国家の安定装置でもあるわけです。彼らは法を守ります 法を逸脱し、国民の権利を損ねるような政治的決定が行われれば、それを軌道修正する側に立ち、場合によっては政治に抵抗することもあるわけです。そういう適正化装置なのです その官僚から、「政策が歪められた」という発言がでたというのは相当なことです あなたやあなたのまわりの方々は特区実現のための規制解除という解を先に決め、そこに強引に持ち込もうとしたように見えます。だから異論が出てきたのではないですか 加計さんには、今回の獣医学部新設の事業から自ら手を引くことを強く要請しなくてはなりません 絶対的権力は絶対的に腐敗する」 ・なぜこんなにおかしな事件が相次いでしまったのでしょう。 基本的にはあなたの油断だと思います。それはあなたも認めるところでしょう。が、それ以前に、あなたに権力が過剰に集まりすぎたことから起きたことです。このことに正面から向き合っていただきたい 「モリカケ問題が沈静化しない理由」 岡山理科大学獣医学部 林芳正文部科学大臣 来年4月の開学を、正式に認可 解明に向けた説明を拒んだ人々の狭量さを明らかにすることによって、現政権の問題点を浮かび上がらせている 私や妻が関係していたということになれば、まさにこれは、もう私は総理大臣も、そりゃもう、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい 小さな痛みを我慢しつつより大きな合意を得るという政治の常道を選択する道が閉ざされた形だ 報道の核心は、「総理のご意向」文書(が存在したのだと仮定して)の適法性や、当該の獣医学部認可や規制緩和特区の選定への総理の関与の有無を追及する声から、次第に、政府が関連文書を隠蔽し国会答弁を拒否している姿勢への攻撃にその重心をシフトしていった ・メディアの人間がこの話題に固執しているのは、ごく単純な話、事件にかかわる情報があまりにも不自然に隠蔽されていることに対する、取材者として極めて自然なリアクション、だと思う 資料が廃棄され、関係者が取材を拒み、疑惑の当事者である学園長が参考人招致を拒絶するのみならず世間から姿をくらまし、もう一方の当事者であった当時の文科省次官が情報をリークすればしたで、その元次官について世にも不自然な下半身不祥事が全国紙に暴露され、そうしている間にも認可前の新設学部の建設工事は停滞することなく進められ、最先端の獣医学に寄与するという建前にもかかわらず大学院設置へのロードマップは明示されず、四国地方に獣医師が不足しているという開学理由を裏切るようにして韓国での留学生募集が始められていることが明 学園周辺ならびに政府が、報道側の質問に対してほとんどまったく何の回答も提示していないどころか、周辺情報すら積極的に消しにかかっていることが目に見えているからこそ、「答えがない」ということを繰り返し報道せざるを得なくなっているのが実態ではあるわけで、つまりこの問題は、エビデンスの有無以前に、政府ならびに学園の隠蔽ぶりのあまりといえばあまりに異様な強烈さそのものが報道の核心になっている、はなはだ珍しいケース 何かがおかしいと多くの人々が感じていることがらについてまったく説明が為されていない点がおかしいわけで、このおかしさは、この問題が浮上した当初の疑問のおかしさよりも巨大な疑惑に成長している 行政への不当介入 うちの国では、多くの政治家は、結局のところ、身内に便宜をはかっている。 で、運悪くバレた人間だけがその所業を裁かれることになっている 安倍首相ご自身は、だから、昔から多くの権力者が当然のようにやってきている利益誘導が「バレ」たことを、「運が悪かった」ぐらいに考えているのかもしれない。じっさい、バレずに済んでいる人たちもいるのだろうし、バレた人間だけが裁かれるのは、不当といえば不当でもある 私がむしろ懸念しているのは、安倍首相ならびに政府が、自らの過ちを認めないために行政を歪め、事実を隠蔽し、現実に直面しないために国会を歪めていることだ
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