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医療問題(その16)(海を渡って日本に治療を受けに来る 「タダ乗り患者」が増殖中 この国の医療費が食い物にされている? 、医者は「がん、奇跡の⽣還」を信じるか? 医者が考える2つの可能性、「知れば怖くない認知症、本人は幸せなことも」 高齢者の診察を重ね 人生に達観した、世界が注目する最先端がん医療が日本では「怪しい治療」扱いの理由) [社会]

医療問題については、5月23日に取上げた。今日は、(その16)(海を渡って日本に治療を受けに来る 「タダ乗り患者」が増殖中 この国の医療費が食い物にされている? 、医者は「がん、奇跡の⽣還」を信じるか? 医者が考える2つの可能性、「知れば怖くない認知症、本人は幸せなことも」 高齢者の診察を重ね 人生に達観した、世界が注目する最先端がん医療が日本では「怪しい治療」扱いの理由)である。

先ずは、5月20日付け現代ビジネス「海を渡って日本に治療を受けに来る 「タダ乗り患者」が増殖中 この国の医療費が食い物にされている?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55674
・『「留学ビザ」で国保に加入 「最近、日本語がまったく話せない70代の患者が、日本に住んでいるという息子と一緒に来院し、脳動脈瘤の手術をしました。 本来なら100万~200万円の治療費がかかりますが、健康保険証を持っていたので、高額療養費制度を使って自己負担は8万円ほど。 日常会話もできないので、日本で暮らしているとはとても考えられませんでした。どうやって保険証を入手したのかわかりませんが、病院としては保険証さえあれば、根掘り葉掘り確認することはありません」 こう明かすのは都内の総合病院で働く看護師。 いま日本の医療保険制度を揺るがしかねない事態が起きている。ビザを使ってやってきた外国人が日本の公的保険制度を使い、日本人と同じ「3割負担」で高額治療を受けるケースが続出している、というのだ』、とんでもない話だ。
・『厚生労働省が発表する最新のデータによると、日本の年間医療費は9年連続で最高を記録し、42兆円('15年度)を突破した。 とくに75歳以上の後期高齢者の医療費は全体の35%を占め、その額はおよそ15兆円にのぼる。「団塊の世代」が75歳以上となる'25年には、全体の医療費が年間54兆円に達する見込みだ。 4月25日、増え続ける医療費を抑制するため、財務省は75歳以上の高齢者(現役並み所得者以下の人)が病院の窓口で支払う自己負担額を1割から2割に引き上げる案を示した。 日本の医療費は危機的状況にある。その要因が高齢者医療費の高騰であることは論を俟たないが、冒頭のように日本で暮らしているわけでもない外国人によって崩壊寸前の医療費が「タダ乗り」されているとなると、見過ごすわけにはいかない。 法務省によれば、日本の在留外国人の総数は247万人('17年6月時点)。 東京23区内でもっとも外国人が多い新宿区を例にとれば、国民健康保険の加入者数は10万3782人で、そのうち外国人は2万5326人('15年度)。多い地域では、国保を利用している4人に1人が外国人、というわけだ。もちろん、まっとうな利用ならなにも咎めることはない。だが、実態をつぶさに見ていくと、問題が浮かび上がってくる。 そもそも医療目的(医療滞在ビザ)で日本を訪れた外国人は、国保に入ることができない。 たとえば、昨今の「爆買い」に続き、特に中国の富裕層の間では、日本でクオリティの高い高額な健康診断を受ける「医療ツーリズム」が人気となっているが、こうしたツアー参加者が日本で治療を受ける場合は全額自腹(自由診療)で治療費を支払う必要がある。保険料を負担していないのだから当然であるが、相応のおカネを払って日本の医療を受けるなら、何の問題もない。 深刻なのは、医療目的を隠して来日し、国保に加入して不当に安く治療する「招かれざる客」たちだ。 なぜ彼らは国保に入ることができるのか。 一つは「留学ビザ」を利用して入国する方法だ。 日本では3ヵ月以上の在留資格を持つ外国人は、国保に加入する義務がある(かつては1年間の在留が条件だったが、'12年に3ヵ月に短縮された)。つまり医療目的ではなく、留学目的で来日すれば合法的に医療保険が使えるのである。 多くの在留外国人が治療に訪れる国立国際医療研究センター病院の堀成美氏が語る。 「うちの病院で調査をしたところ、明らかに観光で日本に来ているはずなのに保険証を持っているなど、不整合なケースが少なくとも年間140件ほどありました。 国保の場合、住民登録をして保険料を支払えば、国籍は関係なく、だれでも健康保険証をもらえます。そうすると保険証をもらったその日から保険が使えるわけです。 来日してすぐの留学生が保険証を持って病院を訪れ、しかも高額な医療を受けるケースがありますが、普通に考えれば、深刻な病気を抱えている人は留学してきません。 来日してすぐに、もともと患っていた病気の高額な治療を求めて受診するケースでは、治療目的なのかと考える事例もあります」』、恐らく高齢者によるこんな見え見えの「留学目的」で、健康保険証を渡すとは、窓口係員には拒否する権限がないのだろうか。
・『さきほど「医療ツーリズム」の話に触れたが、日本の病院を訪れる中国人の間で、とりわけ需要が高いのがC型肝炎の治療である。特効薬のハーボニーは465万円(3ヵ月の投与)かかるが、国保に加入し、医療費助成制度を活用すれば月額2万円が上限となる。 肺がんなどの治療に使われる高額抗がん剤のオプジーボは、点滴静脈注射100mgで28万円。患者の状態にもよるが、1年間でおよそ1300万円の医療費がかかる計算になる。 仮に100人が国保を利用し、オプジーボを使えば1300万円×100人=13億円の医療費が使われることになる。ところが、国保に入っていさえすれば高額療養費制度が使えるので、実質負担は月5万円程度(年間60万円)。たとえ70歳や80歳の「ニセ留学生」でも保険証さえあれば、日本人と同じ値段で医療サービスを受けられるのだ。 だが現実問題として医療目的の偽装留学かどうかを見抜くのは難しい。外国人の入国管理を専門に取り扱う平島秀剛行政書士が言う。 「申請書類が揃っていれば年齢に関係なく、留学ビザを取ることができます。実際、高齢でも本当に日本語を学びたいという人もいますからね。厳しくやり過ぎると、外国人を不当に排除しているととられかねない」』、これは行政書士が自らの商売を考えての発言なのではなかろうか。確かに高齢でも日本語を学びたいという人もいるのかも知れないが、そんな奇特な人は例外的な筈だ。
・『「お人好し」な制度 また、留学ビザのほかに「経営・管理ビザ」で入国する方法もある。これは日本で事業を行う際に発行されるビザで、3ヵ月以上在留すれば国保に入ることができる。 この経営・管理ビザを取得するには、資本金500万円以上の会社を設立しなければならない。ただし、この500万円を一時的に借りて「見せガネ」として用意すれば、ビザ申請のためのペーパーカンパニーを立ち上げてくれるブローカーが存在する。さらにそういったブローカーとグルになって手引きする日本の行政書士もいるという。 日本の医療の信頼性を求めて、自由診療をいとわない中国人の富裕層が、こぞって日本に押し寄せていることは前述した。しかし、じつはそんな富裕層のなかにも、治療費を安く抑えようと、日本の保険証を取得する中国人は少なくないという。 医療ツーリズムを積極的に受け入れている医療法人の元理事が内情を語る。 「私がいた病院にやってくる中国人富裕層は、医療ツーリズムなどで高額な健康診断を受けたのち、いざ病気が見つかると、会社を設立し、経営・管理ビザをとって日本で治療するのです。彼らにとって医療ツーリズムは日本の病院の『下見』なんです。 知人ががんになった場合、書類上は日本にある自分の会社の社員にして、就労ビザを取得させる方法もあります。この手を使えば、だれでも日本の保険に入ることができる」 残念ながら、こうしたタダ乗りも日本では「合法」なのだ』、なんと巧みな裏技なのだろう。医療ツーリズムと浮かれている段階ではなさそうだ。ブローカーがいるにせよ、経営・管理ビザの交付時のチェックを厳しくする他ないだろう。
・『治療が終わればすぐ帰国 留学ビザや経営・管理ビザだけでなく、外国人が日本の公的医療保険を簡単に利用できる方法がある。本国にいる親族を「扶養」にすればいいのだ。 日本の企業に就職すれば、国籍関係なく社保に入ることが義務付けられている・・・外国人であっても家族を扶養扱いにすることができる。 たとえば子供が日本企業で働いていた場合、本国の両親や祖父母を扶養とすると、この両親や祖父母は日本の保険証がもらえる。日本に住んでもいないのに健康保険証を所有することができるのだ。 もし親族ががんになったとすれば、「特定活動ビザ」などを利用し、日本に呼び寄せ、日本の病院で高額な手術や抗がん剤治療を受けさせる。もちろん保険が利くので自己負担は1~3割で、高額療養費制度も使える。治療が終わればとっとと帰国しても、問題はない。 さらに本国に戻ってから治療を継続した場合、かかった医療費を日本の国民健康保険が一部負担してくれる「海外療養費支給制度」まである。 ほかにも日本の国保や社保に加入していれば、子供が生まれた際、役所に申請すれば「出生育児一時金」として42万円が受け取れる。これは海外で出産した場合も問題ない。 たとえば夫が日本に出稼ぎに来て、社保に加入すれば、本国に住む妻が子供を出産した際には42万円がもらえる。妻は日本で保険料を払っていないにもかかわらずだ。 前出の国立国際医療研究センターの堀氏は「在留期間が短く、十分な保険料を納めていない外国人が日本の保険制度を乱用すれば、国民皆保険の信頼が失われる」と危惧する。 「一部の外国人が保険制度のうま味だけを奪い取っていけば、真面目に保険料を納めてきた人には不公平感が生まれます。『フェアじゃない』と思うのが当然です。 『そんないいかげんな制度なら俺は払わない』という人が増えてきたら、それこそが制度の破綻につながってしまう」 身分や活動目的を偽って国保を利用しようとする外国人について厚労省は、「入国後1年以内の外国人が国民健康保険を使って高額な医療を受けようとした場合、『偽装滞在』の疑いがあれば入国管理局に報告するよう各自治体、医療機関に通達を出した」というが、そんな悠長なことを言っている時間はない。 外国人用の保険を作るなど、もう一度制度を見直さないと、日本の医療制度が先に崩壊するだろう』、ここまで事態が深刻な状況では、窓口担当者任せではなく、確かに制度の抜本的見直しが急務だ。

次に、総合南東北病院外科を休職して京都大学大学院で勉強中の中山祐次郎氏が6月28日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「医者は「がん、奇跡の⽣還」を信じるか? 特別編7回 医者が考える2つの可能性」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000038/062700039/
・『「余命3カ月のがんが治った! 奇跡の食事法」 本屋さんに行くと、健康本コーナーが必ずあります。そしてそこには、こういった扇情的なタイトルの健康本が所狭しと並んでいます。インターネットを検索しても、「これでがんが完治した!」「抗がん剤はがんを増やす」のようなページが出てきます。テレビでも、「がんから奇跡の生還」なんて番組がありますね。 がんからの奇跡の生還。こういったものを、現場の医者はどう見ているのでしょうか。 私はがんの専門ですから、数多くのがん患者さんにお会いしてきました。その中には、まれですが医者にも信じられないような良い経過をたどった方もいます。 医者がそういう患者さんに会った時、考えることは2つ。 チャンピオンケース 誤診・・・本記事はあくまで医者である私がどう感じているか、そして「奇跡的に治る」頻度はどのくらいかを示しているものです』、興味深く読み進もう。
・『たまたまうまくいったのでは? 1. チャンピオンケース これは医者同士でよく使う言葉です。「たくさんいる患者さんの中で極めて珍しく、すごく治療がうまくいった人」という意味です。多くの患者さんの中で「チャンピオンのように」素晴らしい結果だったので、チャンピオンケースと呼ぶのでしょう。ちょっと抵抗を感じる呼び方ですが。 学会で、治療が素晴らしくうまくいった患者さんの事例を発表すると、「いや先生、それはチャンピオンケースですから」などと突っ込まれることがあるのです。その突っ込みには、「その方は治療がたまたまうまくいったけど、だからといってすべての患者に当てはまるわけじゃないですよね」くらいの意味が込められているのでしょう。 うーん。果たしてそうなのでしょうか。 現在の病気の治療法は、実に多くの先人の犠牲によって開発されてきました。無数の屍の上に成り立っているといっても過言ではありません。 治療法の多くは、実に慎重に開発されています』、チャンピオンケースなる言葉は初耳だが、極めて例外的に上手くいったケースのようだ。
・『「効果がある」と言うのは大変 たとえば、あなたが大腸がんになってしまったとします。そして、私が開発した「中山茶」を飲めば、大腸がんが治るという広告を見たとしましょう。私は密かに自分の担当患者さんに中山茶を飲んでもらっていて、なんとそのうちの1人は「進行がん」が完治した。その結果をもって、「中山茶を飲めばがんが治ります!」と売り出したとしましょう。果たして、中山茶に効能はあるのでしょうか? 残念ながら、この宣伝は明らかな間違いです。 中山茶を飲んだ9999人のがんは治らずに、たった1人だけが治っていたとしたら、あなたはどう思うでしょうか? それでも中山茶は大腸がんに効くから飲んでみようかな、と思えるでしょうか。 恐らくほとんどの方はノーでしょう。「10000人に1人しか治らないんじゃ、怪しい」と思うでしょう。がんの治療薬としてその効果を証明するには、実は10年以上の時間がかかります。 まず成分を調べて、中山茶の中の「何が」がん細胞に作用しているかを突き止めます。そして動物実験をし、効果を確かめます。次に、患者さんで小規模な研究をし、安全だと分かってから、1000人規模の大きな研究に移ります。 ここで、これまでの治療と比べて良いと分かって初めて「この薬を大腸がんの患者さんに使いましょう」となるのです。こうした長い手続きを経て、やっと薬の効果が証明されるのです。さらに、治療薬となって世に出てからも、「ひどい副作用はないか」などと厳しい調査をされます。 冒頭のような、うまくいった患者さんは、何人の中の1人だったのでしょうか。それを考えると、残念ながら「ただのチャンピオンケースだったんだ」という風にしか思えないのです』、なるほど納得できた。
・『がんが自然に消えた報告はあるが 2. 誤診 もう一つは、「本当にがん、あったの?」という疑問です。こちらはシンプルです。もともと誤診されていて、がんではなかったという可能性もあるのですね。 ちなみに、医学論文などでもがんが自然に消えたという報告はわずかですがあります。この論文「自然消失した十二指腸癌肝転移の1例」では、十二指腸がんというがんが自然に消えたと報告していますが、2012年の時点でそれより過去に同じような報告はないとしています。また、海外の論文によると、特別治療をしていないのにがんが自然に消えるのは、がん患者さん6万人から 10万人に1人程度といわれており、非常にまれです。 ですので、これは非常に言いづらい話ですが、奇跡はまず起きません。奇跡とは、ごく稀にしか起きないから奇跡なのです。ほとんどの方は、これまでの膨大な人数の患者さんから得られたデータとほぼ矛盾ない経過をたどっていきます。医者としては、「そのごくまれなケースを研究し、奇跡を科学で解明せよ」という気がすることもありますが、それよりは残りの大多数の人々全体の治療成績がちょっとでも良くならないか、そちらを研究したいと私を含む多くの専門家は考えています』、「奇跡とは、ごく稀にしか起きないから奇跡なのです」というのはその通りなのだろうが、患者にとってはワラをも掴むような気持で、奇跡にすがろうとするのかも知れない。

第三に、精神科医の和田 秀樹氏が7月10日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「知れば怖くない認知症、本人は幸せなことも」 高齢者の診察を重ね、人生に達観した」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/070600032/
・『認知症予防の本や雑誌の企画を見かけないことはほとんどないし、また認知症になったら安楽死させてくれというような本がベストセラーになっている。 認知症は怖い病気、認知症になるのだけは避けたいと思う人がそれだけ多いということだろう。 私の本業は老年精神医学といって、高齢者を専門とする精神科の診断や治療を行う仕事に従事している。 この仕事を経験する中で、高齢者に意外にうつ病が多いことや、薬物治療などが有効であることなどを知るのだが、認知症については、ある種の老化現象で、早い遅いの違いはあるが、基本的には認知症になる前に亡くならない限り、誰でもなりえる病気だという風に考えるようになった。 今回は、将来のサバイバルのために、誰もが認知症になりえることも含め、高齢になったらどんなことが起こるのかを知り、その可能な対策について考えてみたい』、興味深そうだ。
・『認知症になることを前提で物事を考える 少なくとも、厚生労働省などの行政機関は、高齢者の増加に伴って認知症が増えることは避けられないものとして、対策を進めている。 そして、地域住民の様々なサンプル調査や、住民調査が行われ、年齢別にどのくらいの人が認知症に当てはまるのかも明らかにされ始めてきた。 データによってばらつきはあるが、85歳を過ぎると、テスト上、あるいは診断基準上は、4割程度の人が認知症になるとされている。多いデータでは、55.5%という結果もある。 これが90歳以上ということになると、5割から7割が認知症に相当するとされている。要するに長生きすればするほど、ほとんどの人が認知症に当てはまるようになるのだ。 私はかつて、浴風会病院(東京・杉並)という日本最初の老人専門の総合病院に勤務していたことがある。 この病院は、老人ホームを併設していて、身寄りがないお年寄りの患者さんが少なくない。昔からの伝統で、亡くなる患者さんの半数くらいの方を解剖するのだが(年間100人くらいになる)、85歳を過ぎて脳にアルツハイマー型の変化のない人はいなかった。 脳の病理学の立場で見ると、85歳を過ぎると誰でも軽い重いの差はあるが、アルツハイマー病だということだ。 こう考えると、認知症も普通の老化と同じく、つまり年をとってしわがない人や、髪が薄くならない人がいないように、誰にでも起こる脳の老化であり、それにまつわる衰えと考えることができる。 ということで、私は認知症は避けることができない病だと考えている』、「避けることができない」とはいささかショッキングだが、確かにそうなのだろう。
・『認知症にならない方がラッキー 要するに、長生きする以上、認知症に陥ることを前提で考えないといけないし、むしろそうならないほうがラッキーとしか言いようがないのだ。 だとすると、ひたすら恐れたり、いかがわしいとしか思えないような(たまにあてになるものもあるが)認知症予防の対策をあれこれするより、認知症になったらどうなるか、どのような対策を取ればいいかを事前に知っておく必要がある。 私も長年、老年精神医学の仕事をしているが、高齢者は年金から、高年者でなくても40歳以上の人は給料から、介護保険料が天引きされているのに、いざ認知症や要介護になるまで、その使い方を知らないという人が実に多い。 最近は、昼間高齢者を預かり運動や学習などのアクティビティーを提供してくれるデイサービス(通所介護)だけでなく、高齢者が宿泊できるショートステイというサービスが利用しやすくなった。公的介護保険制度で要介護2以上の認定を受ければ、月のうち約20日以上のショートステイを保険適用できることもある(空きがあればという条件がつくが)。要するに制度をうまく使えば、近親者が要介護になったとしても仕事を辞めずに在宅介護がしやすくなっている。 また、認知症の本当の症状や特徴を知らないことが、この病気に対する恐れを増幅しているとも言える。 認知症になると支離滅裂なことを言い、徘徊したり、失禁したりで、周囲に迷惑をかけるとか、恥を晒して生きていくことになると思っている人は多い。しかしながら、認知症がある種の老化現象であることから、現実には、だんだんおとなしくなる人が多いため、病状の進行が初期や中期のほとんどの人はそれほど迷惑をかけない。末期になると確かに何もできなくなるから人の世話が必要となるが、その頃には子供の顔もわからなくなるので、誰に世話をされても本人にとっては同じことになる。施設に預けても意外に適応もいい。 この手のことを知っているだけでも認知症に対する恐怖感は多少は和らぐのではないだろうか?』、「病状の進行が初期や中期のほとんどの人はそれほど迷惑をかけない」というので、多少は安心した。
・『困難を避けることはある程度可能 ただ一方で認知症は軽度のものから重症のものまであり、進行性の病気であることも確かだ。 軽い人であれば記憶障害程度で、ほとんど知能は低下しない。重ければ人の顔もわからなくなるし、最終的には普通にしゃべることも困難になる。 そして、私が浴風会病院で学んだのは、人間の知能は、意外に脳の変性や萎縮と正比例の関係になっていないということだ。 同じくらい脳が縮んでいたり、解剖してみて変化が著しいことが分かったりしても、さほど認知症の症状を呈さない人もいれば、ひどい認知症のようになってしまう人もいる。 その差は何かというと、頭を使っているかどうかというのが私の仮説である。 確かに米国のレーガン元大統領や英国のサッチャー元首相が認知症になったように、頭を使っていても、認知症になる人はなるのだが、私の見立てでは、彼や彼女が大統領や首相のように頭を使う職業についていなければ、もっと早く発症しただろうし、もっと速く進行していたということだ。 少なくとも認知症になってからは頭を使っているほうが進行のスピードが遅いのは確かなことだ』、頭を使う方がいいというのは慰めになる。
・『農作業を続ける人は進行が遅い 実は、現在の介護保険制度が始まる前に、前述の浴風会病院のほか、数年間、茨城県鹿嶋市の病院に認知症の対応のために非常勤で勤務していたことがある。 そこで痛感したのは、浴風会の患者さんの認知症の進行が速いのに、鹿嶋市の患者さんはゆっくりだということだ。 介護保険が始まる前で、認知症へのバイアスが強く、杉並区という高級住宅地の多い地域にある浴風会の患者さんは認知症になると家族から家に閉じ込められることが多かった。現在の介護保険制度が始まる前だから、デイサービスを利用する人もほとんどいなくて、一日何もしない状態になる。そうすると進行が速いようだった。 一方、鹿嶋市の認知症患者は、外でぶらぶらしていても、近所の人が連れて帰ってきてくれる。農業や漁業に従事している人ならば、その仕事をお手伝い程度でも続けることも多い。続けていいかと聞かれた場合、私は基本的に大丈夫と答えてきた。すると、進行が遅いのだ。 現在の介護保険制度が始まってからのデイサービスにしても、あるいは、認知症の進行を遅らせるとされている薬にしても、基本的にはこのモデルに基づくものだ。認知症の高齢者にアクティビティーをさせたり、会話をしたりすることで進行を遅らせ、脳の伝達物質を増やすことで、働いていない頭を働かせているということだろう。 問題は、日本のホワイトカラー、とくに管理職経験者が年を取り、認知症になった場合、デイサービスなどを嫌がることが多いことだ。 だったら、代わりに頭を使う趣味、たとえば将棋とか麻雀、声を出す詩吟などをしてくれればいいのだが、意外に趣味をもっていない人が多い。麻雀にしても定年後相手がいないという人が多いのだ。 認知症になることを前提に考えた場合、ずっと続けられ、楽しめる(楽しくないと認知症の人は意欲が落ちているのでやらないことが多い)趣味を早めに探しておくことが賢明だ』、私もデイサービスなど御免だと考えている口で、趣味もないのは要注意らしい。
・『高齢になった時のことを考えて生きる もう一つ忘れてはならないのは、認知症になって、記憶や判断力などはもちろん落ちていくのだが、その人が人生経験で得た能力を生かせたり、絵画の才能などの能力が残っていたりすると、認知症になる前以上の能力を発揮することが多いということだ。 要するに認知症になれば何もできなくなるわけではない。 日本における認知症研究の第一人者で長谷川式簡易知能評価スケールの開発者である長谷川和夫氏が、昨年自らの認知症を告白しているが、記憶力は衰えるが、以前の自分との連続性は実感していると語っている。実際、認知症になったからといって、自分の知能や性格がすべて失われるわけでなく、そのほとんどが残っているところから徐々に能力が衰えていく。要するに十分な残存機能も少なくとも中期くらいまでは残っている。 だからこそ、介護者もダメになった部分にだけ気を取られるのでなく、今でも使える機能にもっと目を向けるべきだろう。ちなみに長谷川氏は、これまでの経験と自分の今の症状や感じることなどを照らし合わせて、認知症についての理解を深めるための講演を続けていきたいと明言している。 私が見るところ、認知症は本人にとっては、以前よりも主観的な幸せにつながる部分もある。 嫌なことを忘れるとか、以前ならうじうじと気にしていたことを気にしなくなるなどだ。これはかつて赤瀬川原平氏が『老人力』という著書の中で、老人になったら身につく力として言及した能力そのものである』、「以前よりも主観的な幸せにつながる部分もある」というのも救いだ。
・『家族は苦労するも本人はニコニコ 実際、認知症になったら安楽死させてほしいというような声とは裏腹に、私のもとを訪れる認知症患者は、家族からは苦労話は聞かされるものの、本人はニコニコして幸せそうなことが多い。 長谷川氏は、認知症を発症したことについて、「年を取ったんだから仕方ない」と悠然と答えているそうだ。長年、老年精神医学に取り組んできたことで、認知症についてよく理解していることが、これからも自分が役に立つことをやろうという豊かな生き方につながっているように思えてならない。 というのも、私自身、老年精神医学に長年従事することで、人生観がかなり変わった口であるし、この職を与えられたことを、大げさなようだが、神様に感謝しているくらいだからだ。 前述のように認知症になることをさほど恐れなくなっているし、年を取ったら人の世話になることも、あるいは施設に入ることも、基本的には仕方ないことと開き直っている。これまで払った税金や保険料を多少は返してもらう権利があると考えている。 それ以上に人生観が変わった。 多少、出世したところで、その地位がいつまでも続くものでないし、その地位を人に嫌われる形で得た場合に、年をとってから寂しい人生を送ることがわかった。 例えば、上に媚びて出世したというような場合に、晩年には上の人は先に死んでしまうし、そういう人は下の人が見舞いに来ない。 ところが、若い人をかわいがってきた人は、年をとって病気になった際に、見舞いが絶えないなどということは珍しくない。 財産を残せば安心かというと、たとえば、認知症になった際に、かえって息子たちの財産争いがひどくなったり、子どもに知らない間に財産の名義を書き換えらたれたりするなどというケースも何件も見ている。実際、それが無効だとして裁判を起こすために精神鑑定書を書いたことも何回かある。 出世や名声にあくせくしなくなったし、お金は使えるうちに使ったほうがいいと思って、ワインを買い込み、自己資金を投じて映画を撮ったりするのはその影響かもしれない。 恐らく、こういうことは私のような職業に就いていないと知りえないことが多いのだろう。この経験から私が知り、感じたことをまとめた『自分が高齢になるということ』(新講社)という本を出した。これからのサバイバルのヒントにしてもらえると幸いである』、『自分が高齢になるということ』は是非読んでヒントをもらいたい。

第四に、ノンフィクションライターの窪田順生氏が7月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「世界が注目する最先端がん医療が日本では「怪しい治療」扱いの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/174608
・『近未来のがん治療は腫瘍ができる前に対処!?・・・”がんの超早期発見”は適切な治療を受けることで、かなりの確率で発症を防ぐことができる・・・実現のカギは、「リキッドバイオプシー」と「ネオアンチゲン療法」だ。 リキッドバイオプシーとは、わずか7cc程度の血液を採取して遺伝子を解析。その結果をAIが「がん遺伝子情報データベース」と照らし合わせ、異常か否かを判断するという最新検査で、既に米国では一部のがんで承認を受けている。 今年2月に米ジョンズ・ホプキンス大学が発表したデータでは、卵巣がん、肝臓がんのステージI、ステージIIという、手術で治療できる段階のがんはほぼ100%の確率で検出し、胃がん、膵臓がん、食道がん、大腸がんに関しては、やや感度は落ちるものの、60~70%の割合で検出できたという』、卵巣がん、肝臓がん以外では、検出率はまだまだのようだ。
・『高い精度で再発予見も 最新の免疫療法も有望 また、注目すべきは、その「再発予見」の効果である。 がんの切除手術後に、リキッドバイオプシーで切除されたがんで見つかったものと同じ「がん遺伝子」が検出された患者は、2年以内に100%の確率で再発しており、その逆に検出されなかった患者の再発率は10%程度にとどまっているというのだ。現在、がん治療で最も有効なのが早期発見であることは言うまでもない。早く見つかればそれだけ生存率は上がる。リキッドバイオプシーで「超早期発見」が当たり前になれば、より多くの命を救うことができるというわけだ。 一方、ネオアンチゲン療法とは、人間の身体のなかに生来ある、「がんを攻撃する特別なリンパ球」を人為的に増殖させて、がん細胞を破裂させていくという最新の免疫療法である。「なんだかインチキ臭いな」などと思うなかれ。日本のがん医療現場ではほとんど聞くことはないが、昨年7月には世界的な学術誌「ネイチャー」にその効果の高さを報告する論文も発表されており、やはり米国では、有名研究機関が競い合うように臨床試験を行っている。 これらが日本でも実用化という運びになれば、冒頭で紹介したようなことも決して夢物語ではなくなるのだ。 なんて話を聞くと、「そんなにすごい新技術ならば、日本国内でも盛んに臨床研究などが行われているはず。そういうニュースをあまり耳にしないということは、まだ安全性や信頼性に問題があるのでは」といぶかしむ方もいるかもしれない。 しかし、その原因は、これら最新医療技術の方にあるのではなく、日本の医療界が持つ、イノベーションを阻む「独特の壁」にある、と断言する人がいる』、どんな壁なのだろう。
・『「ノーベル賞に最も近い日本人」が日本に戻ってきた 「日本はせっかく基礎研究では素晴らしい実績があるのに、省庁間の縦割り行政の壁があるため、その成果を新薬や治療の開発に結びつけることができません。この閉塞感に加えて、研究者たちも研究費をもらうのに四苦八苦して論文を書くことがゴールとなってしまっていることも問題。研究を患者へ還元させようというカルチャーがない。私はシカゴ大で若い研究者たちの面接をしましたが、日本国内の研究者と比べものにならないほど、問題意識や行動力を持っていました」 日本のがん医療をこうバッサリと切り捨てたのは、ゲノム(全遺伝情報)を解析し、がんの治療に生かす「がんゲノム医療」の世界的権威であり、その実績から「ノーベル賞に最も近い日本人」と評されてきた中村祐輔氏(65)だ。 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長、国立がんセンター研究所所長、理化学研究所医科学研究センター長などを歴任し、2012年に米シカゴ大医学部に研究拠点を移した時は「頭脳流出」と騒がれ、英国の科学雑誌「ネイチャー」などは「Genmics ace quits japan」(ゲノム研究のエース、日本に見切りをつける)と報じたほどだった。 そんな「世界のナカムラ」が6年ぶりに日本に戻ってきた。7月1日付で、東京・有明にある公益財団法人がん研究会「がんプレシジョン医療研究センター」の所長に就任したのである。そこで狙うは、先ほどのリキッドバイオプシーとネオアンチゲン療法の実用化だ。 「私がやらなくてはいけないことなのかというのは悩みました。若い研究者が出てきてやってくれればいいのですが、残念ながらいつまで待っても、日本の医療には変わる気配がない。また、リキッドバイオプシーは技術的な課題を抱えており、ゲノムをわかっていない人間がやるのは問題も多い。たまに一流科学雑誌などでも、我々から見て、おかしなデータが掲載されています。ゲノムをちゃんと理解した人間が解析しなくては、まるで占いのような話になってしまう」(中村氏)』、日本の問題が薄っすらと分かってきた。それにしても、流出した権威が戻ってきたとは結構なことだ。
・『見切りをつけたはずの日本に戻ってきた理由は「がん患者の叫び」 そのため、今年2月には、自身が設立に関わった創薬ベンチャー、オンコセラピー・サイエンスの子会社、「キャンサー・プレシジョン・メディシン」のラボを川崎市にオープン。ここでは中村氏の愛弟子たちが、リキッドバイオプシーやネオアンチゲン療法に不可欠な、がん遺伝子の大規模解析などをおこなっている。 いくら待っても変わらないのならば、自らが変えていくしかない。そう決断した中村氏の背中を押したのは、日本の有名がん拠点病院から「残念ながらもう治療法はありません」と宣告された「がん難民」たちの悲痛な叫びだ。 「シカゴにいる間もメールなどで、多くのがん患者やその家族の方からの相談を受けましたが、気の毒になるほど救いがない。原因は国の拠点病院。標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している自覚がありません。こういう人たちが医療界のど真ん中にいることが、日本のがん患者にとって最大の不幸です」(中村氏)』、『確かに、日本のがん医療では、外科治療(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つが「標準治療」と定められている。そのため、これらの治療が効かない患者が免疫療法などを希望すると、主治医から「そういう怪しい治療をお望みなら、もううちの病院には来ないでください」と三行半をつきつけられる。そんなバカなと思うかもしれないが、そういう「がん難民」に、筆者は何人もお会いした。 このような中村氏の主張を聞くと、「そういう問題はあるが、日本の医師だって、がん患者のためになることだと信じて一生懸命頑張っているんだ。いくら実績のある研究者だからって、それを全否定するのはいかがなものか」と感じる人もいらっしゃるかもしれない。 だが、中村氏のこれまでの歩みをふりかえれば、なぜ彼が「日本の医師」たちにこのような厳しい苦言を繰り返すのかが分かっていただけるのではないだろうか』、国の拠点病院が標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している実態がようやく理解できた。免疫療法すら「そういう怪しい治療をお望みなら、もううちの病院には来ないでください」と三行半をつきつけられる、というのには驚かされた。
・『中村氏が憤る日本の医師は「勉強不足」 実は、今でこそ「世界的なゲノム研究者」として知られる中村氏だが、最初から研究の道にいたわけではない。若かりし頃は、がん患者をひとりでも救うべく奮闘していたひとりの外科医だった。 大阪大学医学部卒業後、救急医療、小豆島の町立病院などさまざまな医療現場を渡り歩いた「中村医師」は、「がん」というものに対する己の無力さに打ちのめされていた。切除してもすぐ再発。抗がん剤も効果がない。「お腹の塊をどうにかして」と泣き叫ぶ患者を前に、中村氏は涙をこらえることしかできなかったのだ。 どうすればこの人たちを救えるのか。思い悩むなかで、同じがん・同じ進行度合いでも、抗がん剤が効く患者と、まったく効かない患者がいるということ着目し、この「個人差」は「遺伝子の差」が関係しているのではないかという結論に至った。そこで海外の医学雑誌で知った、遺伝性大腸がんの研究をおこなう米・ユタ大学のレイ・ホワイト教授のもとへ手紙を書き、遺伝子研究に参加した。まだ「ゲノム」などという言葉は、日本の医療界だけでなく、米国の研究者にもそれほど知られていなかった時代のことだ。 研究の世界に飛び込んだ中村氏は、「がん」と「遺伝子」の謎を解き明かすためがむしゃらに研究に没頭。そこで発見した多くのDNAマーカーは、世界中の遺伝子研究者から「ホワイト・ナカムラマーカー」と呼ばれ、遺伝性疾患やがん研究に大きな貢献を果たした。 がん患者を救いたい。その一心だけで「医師」から未知の世界に乗り込んで、徒手空拳でゲノム研究の道を切り拓いてきた中村氏にとって、「日本の医師」は生ぬるくてしょうがない。ましてや、「標準治療」というガイドラインから外れた患者に、ああだこうだと屁理屈をこねて、何も手を差し伸べようとしないような医師は、「職務怠慢」以外の何物でもないのだ。 「一言で言えば、勉強不足。たとえば、世界のがん医療で常識となっている免疫療法に対して、『エビデンスがない』などと主張している医師がまだ大勢いる。海外の論文に目を通していないか、科学の基本的な素養がないとしか考えられません」(中村氏)』、日本の医学界に手厳しいが妥当な批判なのだろう。
・『医療界のみならず医療行政も新たな取り組みの壁に なぜもっと患者のために必死にならない。なぜ救うためにあらゆる可能性を模索しない。そんな憤りが、中村氏の歯に衣着せぬ「日本の医療」批判につながっている。 もちろん、自身で「いつ後ろから矢が飛んでくるかわからない」と言うように、医療界だけではなく、医療行政のなかでも、中村氏を快く思わない者も多くいる。 たとえば民主党政権下、「医療イノベーション推進室」の室長と内閣官房参与に任命された時にも、かなりの「逆風」が吹いた。 自民党との違いを鮮明に出したかった仙谷由人官房長官(当時)から声をかけられ、日本の医療制度にメスを入れることの必要性を唱えていた中村氏も「医療の壁」を壊すと決意表明をしたが、予算権限すら与えられず、霞が関官僚からの猛反撃を食らう。その時の悔しさを、当時の新聞でこう述べている。 「気がつくと、各省庁が財務省と個別に予算交渉をして、政策を進めていた。自分は、室長という名の単なるお飾りなのだと思い知らされた」(読売新聞2012年1月28日) ほどなく中村氏は辞表を提出。シカゴ大からの誘いを受けて日本から去った。壊してやると意気込んだ「日本独特の医療の壁」に、逆に返り討ちにされてしまったのだ。 だが、このような目に遭っても、中村氏は日本の医療への苦言をやめることはない。彼をここまで駆り立てているのはなんだろうか。 前出のオンコセラピー・サイエンスを、中村氏が立ち上げたきっかけは1999年に最愛の母を亡くしたことだった。 命を奪ったのは、皮肉なことに当時、中村氏が心血を注いで研究していた「大腸がん」。抗がん剤が効かず日増しに弱っていく母は病床で「お前の顔に泥を塗るようで申し訳ない」と何度も頭を下げた。「がん」に打ち勝つため研究に没頭してきたのに、目の前にいる母に何もしてやれない。外科医時代と私は何も変わっていないではないか――。亡くなる前日、母は中村氏の手をとって、こんな言葉を繰り返したという。 「日本のために、いい薬をつくりなさい」 中村氏がリキッドバイオプシーとネオアンチゲンワクチン療法の実用化に成功するのかどうかはわからない。「異端児」ゆえの「逆風」は今も吹き続けているからだ。ただ、ひとつだけはっきりと言えることがある。何度挫折をしても中村氏はきっとまた立ち上がる。母に誓った「がんに打ち勝つ新薬」をつくるその日まで』、「異端児」中村氏の活躍を心から期待したい。
タグ:デイサービス 医療問題 誤診 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 和田 秀樹 現代ビジネス 中村祐輔 リキッドバイオプシー (その16)(海を渡って日本に治療を受けに来る 「タダ乗り患者」が増殖中 この国の医療費が食い物にされている? 、医者は「がん、奇跡の⽣還」を信じるか? 医者が考える2つの可能性、「知れば怖くない認知症、本人は幸せなことも」 高齢者の診察を重ね 人生に達観した、世界が注目する最先端がん医療が日本では「怪しい治療」扱いの理由) 「海を渡って日本に治療を受けに来る 「タダ乗り患者」が増殖中 この国の医療費が食い物にされている?」 「留学ビザ」で国保に加入 「医療ツーリズム」 C型肝炎の治療 特効薬のハーボニーは465万円(3ヵ月の投与)かかるが、国保に加入し、医療費助成制度を活用すれば月額2万円が上限 肺がんなどの治療に使われる高額抗がん剤のオプジーボは、点滴静脈注射100mgで28万円。患者の状態にもよるが、1年間でおよそ1300万円の医療費がかかる計算に 国保に入っていさえすれば高額療養費制度が使えるので、実質負担は月5万円程度(年間60万円)。たとえ70歳や80歳の「ニセ留学生」でも保険証さえあれば、日本人と同じ値段で医療サービスを受けられるのだ 「お人好し」な制度 「経営・管理ビザ」で入国する方法もある 資本金500万円以上の会社を設立 500万円を一時的に借りて「見せガネ」として用意すれば、ビザ申請のためのペーパーカンパニーを立ち上げてくれるブローカーが存在 中国人富裕層は、医療ツーリズムなどで高額な健康診断を受けたのち、いざ病気が見つかると、会社を設立し、経営・管理ビザをとって日本で治療するのです。彼らにとって医療ツーリズムは日本の病院の『下見』なんです 治療が終わればすぐ帰国 外国人が日本の公的医療保険を簡単に利用できる方法がある。本国にいる親族を「扶養」にすればいいのだ 外国人用の保険を作るなど、もう一度制度を見直さないと、日本の医療制度が先に崩壊するだろう 中山祐次郎 「医者は「がん、奇跡の⽣還」を信じるか? 特別編7回 医者が考える2つの可能性」 がんからの奇跡の生還 考えることは2つ。 チャンピオンケース 誤診 チャンピオンケース たくさんいる患者さんの中で極めて珍しく、すごく治療がうまくいった人 現在の病気の治療法は、実に多くの先人の犠牲によって開発されてきました。無数の屍の上に成り立っているといっても過言ではありません 「効果がある」と言うのは大変 がんの治療薬としてその効果を証明するには、実は10年以上の時間がかかります もともと誤診されていて、がんではなかったという可能性もある 特別治療をしていないのにがんが自然に消えるのは、がん患者さん6万人から 10万人に1人程度といわれており、非常にまれです 奇跡とは、ごく稀にしか起きないから奇跡なのです 「「知れば怖くない認知症、本人は幸せなことも」 認知症になることを前提で物事を考える 85歳を過ぎると、テスト上、あるいは診断基準上は、4割程度の人が認知症になるとされている 90歳以上ということになると、5割から7割が認知症に相当するとされている 要するに長生きすればするほど、ほとんどの人が認知症に当てはまるようになるのだ 脳の病理学の立場で見ると、85歳を過ぎると誰でも軽い重いの差はあるが、アルツハイマー病だということだ 認知症も普通の老化と同じく、つまり年をとってしわがない人や、髪が薄くならない人がいないように、誰にでも起こる脳の老化であり、それにまつわる衰えと考えることができる 認知症は避けることができない病だと考えている 認知症にならない方がラッキー 制度をうまく使えば、近親者が要介護になったとしても仕事を辞めずに在宅介護がしやすくなっている 認知症がある種の老化現象であることから、現実には、だんだんおとなしくなる人が多いため、病状の進行が初期や中期のほとんどの人はそれほど迷惑をかけない 困難を避けることはある程度可能 軽い人であれば記憶障害程度で、ほとんど知能は低下しない さほど認知症の症状を呈さない人もいれば、ひどい認知症のようになってしまう人もいる。 その差は何かというと、頭を使っているかどうかというのが私の仮説 農作業を続ける人は進行が遅い 認知症の高齢者にアクティビティーをさせたり、会話をしたりすることで進行を遅らせ、脳の伝達物質を増やすことで、働いていない頭を働かせているということだろう 問題は、日本のホワイトカラー、とくに管理職経験者が年を取り、認知症になった場合、デイサービスなどを嫌がることが多いことだ 代わりに頭を使う趣味、たとえば将棋とか麻雀、声を出す詩吟などをしてくれればいいのだが、意外に趣味をもっていない人が多い 高齢になった時のことを考えて生きる 認知症は本人にとっては、以前よりも主観的な幸せにつながる部分もある。 嫌なことを忘れるとか、以前ならうじうじと気にしていたことを気にしなくなるなどだ 家族は苦労するも本人はニコニコ 「世界が注目する最先端がん医療が日本では「怪しい治療」扱いの理由」 ネオアンチゲン療法 高い精度で再発予見も 最新の免疫療法も有望 日本の医療界が持つ、イノベーションを阻む「独特の壁」にある、と断言する人がいる 「ノーベル賞に最も近い日本人」が日本に戻ってきた 日本はせっかく基礎研究では素晴らしい実績があるのに、省庁間の縦割り行政の壁があるため、その成果を新薬や治療の開発に結びつけることができません。この閉塞感に加えて、研究者たちも研究費をもらうのに四苦八苦して論文を書くことがゴールとなってしまっていることも問題。研究を患者へ還元させようというカルチャーがない 2012年に米シカゴ大医学部に研究拠点を移した時は「頭脳流出」と騒がれ 「世界のナカムラ」が6年ぶりに日本に戻ってきた 公益財団法人がん研究会「がんプレシジョン医療研究センター」の所長に就任 見切りをつけたはずの日本に戻ってきた理由は「がん患者の叫び」 国の拠点病院。標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している自覚がありません。こういう人たちが医療界のど真ん中にいることが、日本のがん患者にとって最大の不幸です 日本のがん医療では、外科治療(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つが「標準治療」と定められている。そのため、これらの治療が効かない患者が免疫療法などを希望すると、主治医から「そういう怪しい治療をお望みなら、もううちの病院には来ないでください」と三行半をつきつけられる 中村氏が憤る日本の医師は「勉強不足」 医療界のみならず医療行政も新たな取り組みの壁に 民主党政権下、「医療イノベーション推進室」の室長と内閣官房参与に任命 「気がつくと、各省庁が財務省と個別に予算交渉をして、政策を進めていた。自分は、室長という名の単なるお飾りなのだと思い知らされた」
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災害(その4)(『危機感』は伝わったのか~豪雨のダム大量放流、空白の66時間に「秘密会合」が発覚 被災者から批判高まる、西日本豪雨 不十分な想定で被害拡大か 水害や地震に備え二次被害まで思い巡らそう、「首都水没」著者が提言…行政の指示より前に自主避難を) [社会]

昨日に続いて、災害(その4)(『危機感』は伝わったのか~豪雨のダム大量放流、空白の66時間に「秘密会合」が発覚 被災者から批判高まる、西日本豪雨、不十分な想定で被害拡大か 水害や地震に備え二次被害まで思い巡らそう、「首都水没」著者が提言…行政の指示より前に自主避難を)を取上げよう。

先ずは、7月13日付けNHK時論公論「『危機感』は伝わったのか~豪雨のダム大量放流」を紹介しよう。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/301682.html
・『西日本豪雨災害から1週間がたちましたが、従来の豪雨対策の見直しを迫るような被害が次々と明らかになっています。ダムについても8ヶ所で満杯に近づき大量の放流が行われるという異例の事態になりました。このうち愛媛県西予市のダムでは下流で大規模な氾濫が起こり5人が亡くなりました。ダムの放流は適切だったのか、避難の呼びかけで住民に“危機感”が伝わったのか。情報伝達のあり方を考えます』、確かに人災的色彩もある事件をいち早く検証する意義は大きい。
・『【ダム放流と氾濫】 7日朝、西予市野村町を流れる肱川・・・水位が急激に上昇して堤防を超え、市街地の広範囲が浸水。2階の屋根まで達したところもありました。多くの住民が家の2階などに取り残され、5人が亡くなりました・・・氾濫の原因は大量の雨が降ったことですが、氾濫は満杯になったダムの放流によって始まりました。 今回の雨でダムに流れ込んだ水の量・・・7日の未明から急激に増え始めて午前6時には毎秒1000立方メートルを超えました。 一方、ダムからの放流量は毎秒400立方メートルが続いていましたが、ダムが満杯に近づいたため午前6時20分から大量の放流が始まりました。流れ込んだ量と同じ量が放流され、放流量はいっきに増加し最大で毎秒1800立方メートル近くに達しました。 野村町で氾濫が始まったのはこの大量放流が始まった直後で、住民たちは「浸水はどんどん深くなり、逃げる間もなく、あっという間に2階に達した」と証言しています。 ダムの放流は適切だったのでしょうか。 町で取材をすると多くの住民が「ダムの放流は仕方がないが、いっきに放流するのではなく少しずつ放流量を増やせば、避難の時間を稼げたのではないか」と話していました。大量の水がいっきに押し寄せ、比較的短時間で引いていった実体験からの疑問です。 大雨の時、どの時点でどのくらいの量を放流するかは事前に厳格な基準が決められて、基準には地元自治体の意見も反映されています。ダムを管理する国土交通省は、今回はその基準通りに放流が行われていて対応に問題がなかったと説明しています。 ただ今回の豪雨ではあわせて8つのダムで同様の放流が行われる異例の事態になりました。気象現象が激甚化するなかで、被害を少しでも軽減するために基準や運用はどうあるべきなのかあらためて検証する必要があると思います』、昔に決めた基準や運用は確かに見直すべきだろう。
・『【ダムと市の情報共有は】 次にダムと市の連携はどうだったのでしょうか。 今回、野村ダム管理所長と西予市野村支所長の間の「ホットライン」が機能しました。「ホットライン」というのはダムや気象台など防災機関のトップと市町村長などが日頃から顔の見える関係をつくり、災害時は携帯電話などで緊密に連絡を取りあって防災対応にあたるものです。最近相次いだ豪雨災害の教訓から各機関が今、力を入れています。 災害が起こる2日前、気象庁は緊急の記者会見を開き、集中豪雨としては異例の早いタイミングで厳重な警戒を呼びかけました。 この段階で、ダム管理所長は野村支所長の携帯電話に連絡をし「最悪の事態を想定して対応してほしい」と危機感を伝えました。 そして当日の7日、午前2時半に「放流予定は6時50分で氾濫の恐れが大きいこと」を伝えました。3時37分に支所長が問い合わせたところ「流入量が予想より多く、放流を30分前倒しする」という回答があり、市側に衝撃が走りました。こうしたやりとりがあって市は午前5時10分に、最も強く避難を促す「避難指示」を発表しました。過去の災害で課題になってきた防災機関と市の情報共有はできていたと考えられます』、なるほど。
・『【住民への伝達に見えた課題】 市から住民への情報提供、危機感の共有はできていたのでしょうか。 市はダムとの緊密な情報交換を受けて避難指示を出しましたが、放流まで1時間10分しかありませんでした。「もっと早く避難の呼びかけをできなかったのか」と疑問を持つ住民もいます。市側は避難所の開設や消防団の召集に時間が必要だったなどと説明していますが、最初に「氾濫の恐れが大きい」と伝えられた午前2時半の段階で住民に情報を伝え、避難準備情報や避難勧告を出すという選択肢もありました。今後のダム防災を考えるうえでも検証が求められる点です』、確かに時間がかかる避難所の開設や消防団の召集をする前に、まずは情報を伝えるべきだったろう。
・『もうひとつ、住民への呼びかけの仕方にも大きな課題が見えてきました。 放流の連絡を受けた市の野村支所では幹部が集まり、住民にどういう表現で危機感を伝えるか、緊迫した議論が行われました。 住民に避難してもらうためには「ダムが決壊しそうだ」など大げさでも危機感が伝わる表現が必要だという意見もありました。これには「パニック状態になる」「お年寄りがあわてて逃げようとして怪我をする」という反論が出て激論になりました。 結局、「氾濫する恐れのある水位に達しましたので避難指示を発令しました。直ちに避難を開始してください」という「型どおり」の表現に落ち着きました。 この呼びかけを防災行政無線の街頭スピーカーと各家庭にある個別受信機で流しましたが、呼びかけ続けるのではなく30分おきに3回流しただけでした。「聞こえなかった」「気がつかなかった」とう人も少なくありませんでした。 またダム管理所もスピーカーと広報車であらかじめ録音しておいた音声を流しましたが、「水位が急激に上昇する恐れがあります」というだけで「氾濫」や「浸水」のことばはありませんでした。普段も小規模な放流のたびに似たような音声が流されていて、住民のひとりは「『またいつもの放送が始まった』くらいにしか受け止めなかった。『今回は特別です』とはっきり言ってほしかった」と話していました。 放流量から氾濫が起こるのは確実でダム側も市側も強い危機感を持っていました。にもかかわらず放送では、その “危機感”が十分に伝わりませんでした。 一方で多くの住民が「今回は今までと違う」と危機感を感じとったのは、「消防団員が玄関の扉をドンドンと叩いて避難を促されたときだった」と証言しています。消防団員120人が850世帯ある川沿いの地域をまわって一軒一軒避難を呼びかけ、お年寄りなどは車に乗せて避難させました。団員たちは放流が始まるぎりぎりまで避難の呼びかけを続けました。住民5人が亡くなりましたが、消防団の活動で多くの住民の命が守られました。 避難の呼びかけ方は東日本大震災以降の大きな課題です。震災のとき茨城県大洗町(まち)では、沖合いの津波を目撃した町長が、普通の呼びかけでは危機感が伝わらないと考え、とっさの判断で法律にはない「避難命令」という言葉を使い、「避難せよ」と繰り返し放送しました。大洗町では4メートルの津波が押し寄せましたが津波による犠牲者は出ませんでした。今回の災害を受けて、あらためて、どうすれば危機感を伝えることができるのか考える必要があります』、我が家の近所の防災行政無線の街頭スピーカーは、音が割れてよく聞こえないのに、受け手のことは無視して一方的に流している。この西予市野村町ではパニックを恐れて型通りの放送だったので、多くの住民が危機感を感じとったのは、「消防団員が玄関の扉をドンドンと叩いて避難を促されたときだった」というのは大いに考えさせられる。
・『避難の呼びかけ方は東日本大震災以降の大きな課題です。震災のとき茨城県大洗町(まち)では、沖合いの津波を目撃した町長が、普通の呼びかけでは危機感が伝わらないと考え、とっさの判断で法律にはない「避難命令」という言葉を使い、「避難せよ」と繰り返し放送しました。大洗町では4メートルの津波が押し寄せましたが津波による犠牲者は出ませんでした。今回の災害を受けて、あらためて、どうすれば危機感を伝えることができるのか考える必要があります』、その通りだ。

次に、7月27日付け日刊ゲンダイ「空白の66時間に「秘密会合」が発覚 被災者から批判高まる」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/234204/1
・『「空白の66時間」の一部が明らかになった。 西日本豪雨により188万人に避難勧告が出され、すでに多数の死者が出ていた6日の晩。安倍首相が総裁選の地盤固めのために、無派閥議員と「極秘会合」を開いていたことが発覚し、「被災者より総裁選か」と批判が噴出し始めている。24日放送の日本テレビ系のニュース番組「news every.」が「極秘会談」をスクープした。 7月6日の首相動静は、安倍首相が午後8時まで公邸で規制改革推進会議のメンバーと会食したという内容で終わっている。しかし番組では、首相のいる公邸に無派閥議員を乗せた車が入っていく様子を捉えていた。さらに別カメラは、菅官房長官の車からある人物が公邸に入る様子を写している・・・菅長官が安倍首相と無派閥議員の間を取り持って、総裁選への協力を要請していた可能性がある。「news every.」は「無派閥議員の“とりこみ”」と報じている。 しかし、安倍首相は前日の5日に「赤坂自民亭」と称する酒宴で酒盛りし、批判されたばかりだ。その次の日に、また総裁選のために動いていたとしたら、被災者が怒るのも当然だ。 さすがに、ツイッター上では「いくらなんでも酷い」「アベらしいといえばアベらしい、自分のことしか頭にない」「西日本豪雨災害で犠牲者が増えていってるなか、安倍総理は総裁選にむけて、自身の3選のために黙々と動いていたのです。こんな安倍総理に3選を望みますか?」といった投稿が殺到している。 いったい6日夜、何をやっていたのか、安倍自民党は明らかにすべきだ』、5日の酒盛りを批判されたのに、6日も総裁選のための酒盛りとは、開いた口が塞がらない。安倍総理は「被災者に寄り添う」と繰り返し述べているが、全くの空約束だったことがハッキリした。

第三に、精神科医の和田 秀樹氏が7月20日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「西日本豪雨、不十分な想定で被害拡大か 水害や地震に備え二次被害まで思い巡らそう」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/071800034/?P=1
・『西日本豪雨の死者が200人を超え、今なお行方不明者の救助活動が続く。膨大な数の避難者が不自由な生活を送る中で、心身のストレスは大変大きなものとなっていることだろう。私も心の治療を専門とする医師として、また西日本の出身者として非常に心を痛める事態となった。 将来の災害を少しでも減らすためにも、西日本豪雨を踏まえて私なりにサバイバル術を考えた。今回はそれを紹介させていただきたい』、なるほど。
・『災害が起こることを前提で物事を考える 西日本豪雨をきっかけに、豪雨を想定した避難訓練を実施している自治体が少ないという事実が注目されるようになった。地震を想定した訓練に取り組む自治体が多いのとは対照的だ。また過去数十年間に建物の耐震性が飛躍的に向上したのと比べると、水害を防ぐ技術はあまり進歩していないように思える・・・豪雨被害に遭う前提で日ごろから避難訓練を実施し、水害に強い土木や建築技術の研究に一層力を入れるべきだろう。  西日本豪雨では水道が水害に弱いことも露呈した。私も知らなかったが、上下水の施設の多くは河川の近くにある。このため豪雨によって浸水しやすく、断水の原因となる。実際に西日本の各地で「水害下での水不足」というパラドックスが起きている。河川が氾濫するという前提に立って水道施設を整備していれば、このようなことにはならなかっただろう。 自然災害全般について言えることだが、直接的な被害より、その後に想定される二次的な被害の方が大きいことは珍しくない。例えば都市直下の大地震では、地震による揺れや建物の崩壊による死傷者よりも、火事で死傷する人の方が多いと予想される。ところが、以前は火災が発生しにくい「オール電化」の普及が進んでいたのに、東日本大震災後の節電ムードからその流れが止まっている印象だ。また電信柱などが意外に倒れやすいようだが、消防の妨げになる。なのに、電線の地中化がほかの先進国の大都市と比べて日本は遅れているという現状はなかなか改善しない。 災害が起こる前提で物事を考える場合、直接的な災害に対する備えだけでなく、二次被害への備えも忘れてはならない』、その通りだ。
・『1つの対策に頼らない また意外に1つの災害対策で事足れりと考えてしまう人が多い。東日本大震災から何年か経って、福島県いわき市で被害が大きかった海岸地域を訪ねたことがある。新たに造られた10メートルを超える防潮堤が続き、津波対策は万全のように見えた。 しかし、防潮堤の内側の道をクルマで走っていて気になることがあった。内陸の高台に向かう道がほとんど見当たらないのだ。津波警報を受けて数少ない逃げ道にクルマが集中しかねない。渋滞にひっかかっているうちに、堤防を乗り越えてきた津波に飲み込まれてしまうという事態は現実に東日本大震災の際に起きている。立派な防潮堤だけ造って、内陸への逃げ道を十分に造らないという発想に危険を感じるのは私だけではないだろう。 つい最近、最高級マンションのデベロッパーの方と偶然、話をする機会があった。世界の大都市の超高級マンションには核シェルターが標準で装備されているのに、日本の超高級マンションにはそれがないという話だった。 最新鋭のミサイル防衛システムを導入しても、あるいは米国と軍事同盟を結んでいても、確実にミサイル攻撃を阻止できるわけでない。にもかかわらず、核シェルターを用意しないというのはなぜなのか。実際、日本の核シェルターの普及率は先進国で最低レベルだという。 自然災害でも戦争でも、1つの対策だけで備えが完璧にはならないはずだ。1つのことだけに莫大な費用をかけるより、いくつもの対策を用意しておくほうが安全性は高まるのではないだろうか』、「立派な防潮堤だけ造って、内陸への逃げ道を十分に造らないという発想に危険を感じる」というのは同感だ。
・『従来の発想にとらわれない そんな折、ラジオを聞いていたら人気ブロガーの「ちきりん」さんが興味深いことを言っていた。 被災地に避難所を用意するより、被害がほとんどなく、生活物資も充実している場所に避難所を作るほうが現実的だという話だった。水も出ない、物資も足りない被災地に援助物資を運びながら、並行して救出活動やライフラインの復旧に取り組むのではなく、まず人は被災地から離れた場所に避難させる。そのうえで被災地では行方不明者の捜索や復旧に専念した方が合理的という彼女の主張は納得できるものだ。 実際、事前避難では被害が起こらなさそうな地域に避難するのが原則になっている。もちろん、自分の生活拠点から離れるストレスで心身に問題が出る人が増えるようなことがあれば、カウンセラーを派遣するなどして心のケアに取り組む必要がある。あるいは被災地にとどまるという従来の避難方法に戻す必要性が出てくるかもしれない。とはいえまずは、離れた安全な土地に避難するという方法を試してみる価値はあると思う』、確かに合理的な考えだが、カウンセラーの派遣程度で済むような問題ではないのではないか、とも思う。
・『西日本豪雨ではIT(情報技術)の活用の遅れも痛感した。 これもラジオで知った話だが、大雨などに関する警報が出た時点ですでに水浸しになっている家屋がかなりあったという。スマートフォンがこれだけ普及しているのだから、現地の人が察知した危険を投稿できるシステムぐらい用意できるはずだ。 米国を中心に世界に普及している「Waze」というカーナビアプリがある(日本にも上陸しているのだが、イマイチ普及していない印象だ)。これのいいところは、事故や工事があったり、予想外の渋滞が発生したりした際に、スマホからいつでも投稿ができ、その情報がカーナビに反映される点だ。いいか悪いかは別として、交通取り締まりの実施もリアルタイムでわかるし、近所でいちばん安いガソリンスタンドもわかるという優れものだ。 要するにスマホの利用者は情報の受け手であり、送り手にもなれるという発想の転換が活用されている。これは、災害情報をよりリアルタイムにできるということを示唆している。 ITの進歩を少しでも、災害対策に利用しないと、地球温暖化のせいかどうかはわからないが、豪雨災害が増えている現在、同じ悲劇を繰り返すことになるのではないか心配である』、「Waze」がそんなに便利とは知らなかった。試してみたい

第四に、8月27日付け日刊ゲンダイ「「首都水没」著者が提言…行政の指示より前に自主避難を」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/236028/1
・『もし東京で河川の氾濫が起きれば、東京23区は4割のエリアが水没。首都機能は完全に麻痺する。「首都水没」(文春新書)の著者で、都庁職員として都市防災を手掛けた専門家、リバーフロント研究所・技術参与の土屋信行氏が水害の危険性を緊急提言する。荒川の堤防が決壊したそのとき、北千住駅の浸水予想は実に7.25メートルに達するという。 荒川氾濫で62兆円の損失を想定・・・荒川の河川敷で行われた「足立の花火」を見物・・・そこでふと思ったのは、「こんな大きな川が氾濫するものだろうか?」という疑問です。なにしろ、北千住側の高さ10メートルの堤防から対岸の小菅側の10メートルの堤防まで優に400メートルの距離がある。とてもあふれるようには思えませんでした。 河川安全の基準の範囲内で雨が降ってくれればいいのですが、自然の雨はそうはなってくれません。想定外のことが起こるから、それに対し準備しなくてはいけないのです。台風の月別の発生頻度は9月をピークに10月、11月初旬に突出し、一般的には北上してくるものでしたが、近年は太平洋側地域で海水温27度以上のゾーンが広がっています。より日本に近いエリアで台風が発生しやすく、発生した台風にエネルギーを供給しながら勢力を高めてしまう。日本はすでに亜熱帯化しており、「過去に起きていないことが起きている」と考えるべきです。実際、西日本豪雨では、積乱雲が連なって猛烈な雨を降らせる「線状降水帯」が多発しました。東京にこれが起こらないとは言えません』、幸い東京がまだ本格的な豪雨に襲われてないが、確かに覚悟しておくべきだろう。
・『内閣府想定では、72時間雨量が550ミリを超えると荒川が氾濫します(西日本豪雨の72時間雨量は最大1319ミリ)。その場合、土木学会は約62兆円の被害を想定しています。 大きな金額と感じるでしょうが、これには地下の被害が算入されていません。日本人の性と言っていいですが、公共交通機関で働く人は最後まで人員を輸送しようと頑張ります。勤勉な鉄道マンの性ですが、あふれた水は地下鉄構内になだれ込み、直結した百貨店や地下街を水没させます。地下からの脱出がどれくらいかかるのかシミュレーションはありません。健康な人は逃げられるでしょうが、車椅子の人やお年寄りもいる。堤防の決壊から3時間で大手町駅、約4時間で東京駅、約7時間で銀座駅まで浸水する。机上の訓練ではダメで、実際にやってみないといけません。2012年10月29日の夜、ハリケーン「サンディ」がニューヨークを直撃しました(死者43人=編集注)。このとき、ニューヨーク都市交通公社(MTA)は、前日の夕方までにすべての地下鉄とバスの運行を中止しました。そのため、地下鉄内での人的被害はゼロでした。 NYが参考にしたのが、台湾・台北市を襲った01年9月の台風16号だった・・・地下鉄が約12キロにわたって水没し、完全復旧までに3カ月を要しました。台湾がすごいのは、これを全世界に公開したこと。台湾を参考にしたニューヨークはハリケーンの前日に地下車両や機器類を移動させ、被害を最小限にとどめました。東京では、地下鉄の運行を止める権限は、東京メトロの管理者にあります。ただ、地下鉄を止めることによる経済被害は計り知れず、果たして重大な決定を企業判断で下せるものか。事前に取り決めがあった方がいいと思います』、東京の地下鉄を止めた場合の損失を考えると、運行管理責任者の手に余る問題で、関係者間の事前の取り決めは是非とも必要だろう。
・『現在の人は、危機感が薄いようにも感じます・・・私が生まれたのは埼玉県の栗橋町(現・久喜市)。まさに利根川右岸堤防が決壊した場所でした。父は当時内務省に勤めていて、河川改修を担当していました・・・昔の人は「あすは我が身」という意識が高かったのですね。 私がまだ幼い頃、お月さまが出ていない日の夜中、母親に「起きろ!」と叩き起こされたものです。東西南北も分からないような真っ暗闇の中、玄関まで感覚で歩いていき、父と母、姉、自分の靴の位置がわかるようにしつけられた。母親の施す避難訓練でした。現在、避難情報は自治体のおのおのの長が発しますが、これが判断の乱れる要因です。行政に言われる前に自主避難する。それも明るいうちに行うのが大事です』、いくら利根川のほとりに住み、父親が河川改修担当だったとはいえ、母親が避難訓練までしたのには、驚かされた。「行政に言われる前に自主避難する」ということは大事だろう。
・『台風に高潮が加わると江東区で最大水深10メートル カスリーン台風規模の台風が来て荒川が決壊すれば、墨田、江東、足立、葛飾、江戸川の江東5区で、人口255万人のうち最大178万人が避難しなくてはいけません。スーパー堤防の建設で防ぐこともできそうですが、民主党政権時の事業仕分けで廃止されました。さすがに総額100兆円と聞くと、今の貧乏な日本では手が出ません。 スーパー堤防は国交省が1980年代に整備を始め、首都圏、近畿圏の6河川で873キロ造る計画でしたが、現在はとくに氾濫危険の高い120キロに計画が縮小されています。私の試算では、これなら全体で7兆円、関東だけなら5兆円の予算で済みます。日本人は何かあると、復旧・復興ばかりに目がいきますが、本来は事前の防災や減災対策の方が重要。もし荒川が決壊すれば、62兆円の被害が出るのです。しかも、日本の中枢である首都機能が麻痺すれば、経済・政治に混乱が起こるし、もっと大事なのは世界の信用を失うことです。海外の人は自分たちの首都さえ守れないのか……と思うでしょう。一方、ハリケーン上陸の前日に公共交通機関を止めたニューヨークは、住民や観光客の安全を必ず守ると世界に宣言したようなものです。 意外に軽視されていますが、高潮被害も怖い。高潮とは台風など発達した低気圧により、海面が吸い上げられて異常に高くなる現象ですが、海水が流入する墨田区や江東区などの一部では、最大水深10メートルにもなる。水泳の高飛び込み競技のプールですら基準が水深5メートル程度ですから、かなりの深さになります。 明治期以降、東京は地盤沈下に合わせて堤防の高さを変えてきました。しかし、東京都の今年3月の予測では、墨田、葛飾、江戸川の3区で9割以上が浸水し、千代田、新宿、港なども含め17区に浸水が想定されます。浸水の想定区域は約212平方キロ、この区域内の昼間人口は約395万人、水深は最大約10メートルに達します。水深10メートルというのは、10メートルの津波が襲ってくるのと一緒。西日本豪雨などの雨と違って、海の水は無尽蔵に流入してきます。また満潮は1日2回ですから、そのたびに入ってくるのです。過去になかったから安全だろうと思ってはいけません』、高潮の場合「海の水は無尽蔵に流入してきます。また満潮は1日2回ですから、そのたびに入ってくるのです」というように豪雨とは違った災害で、確かに要警戒だ。
タグ:災害 日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン サバイバル術 和田 秀樹 東日本大震災 土屋信行 NHK時論公論 (その4)(『危機感』は伝わったのか~豪雨のダム大量放流、空白の66時間に「秘密会合」が発覚 被災者から批判高まる、西日本豪雨 不十分な想定で被害拡大か 水害や地震に備え二次被害まで思い巡らそう、「首都水没」著者が提言…行政の指示より前に自主避難を) 「『危機感』は伝わったのか~豪雨のダム大量放流」 愛媛県西予市のダムでは下流で大規模な氾濫が起こり5人が亡くなりました ダム放流と氾濫 大雨の時、どの時点でどのくらいの量を放流するかは事前に厳格な基準が決められて、基準には地元自治体の意見も反映されています 国土交通省は、今回はその基準通りに放流が行われていて対応に問題がなかったと説明 8つのダムで同様の放流 基準や運用はどうあるべきなのかあらためて検証する必要 ダムと市の情報共有は 防災機関と市の情報共有はできていた 住民への伝達に見えた課題 市側は避難所の開設や消防団の召集に時間が必要だったなどと説明していますが、最初に「氾濫の恐れが大きい」と伝えられた午前2時半の段階で住民に情報を伝え、避難準備情報や避難勧告を出すという選択肢もありました 住民への呼びかけの仕方にも大きな課題 「型どおり」の表現に落ち着きました ダム管理所もスピーカーと広報車であらかじめ録音しておいた音声を流しましたが、「水位が急激に上昇する恐れがあります」というだけで「氾濫」や「浸水」のことばはありませんでした。普段も小規模な放流のたびに似たような音声が流されていて、住民のひとりは「『またいつもの放送が始まった』くらいにしか受け止めなかった ダム側も市側も強い危機感を持っていました。にもかかわらず放送では、その “危機感”が十分に伝わりませんでした 多くの住民が「今回は今までと違う」と危機感を感じとったのは、「消防団員が玄関の扉をドンドンと叩いて避難を促されたときだった」と証言 茨城県大洗町 沖合いの津波を目撃した町長が、普通の呼びかけでは危機感が伝わらないと考え、とっさの判断で法律にはない「避難命令」という言葉を使い、「避難せよ」と繰り返し放送しました。 津波による犠牲者は出ませんでした 「空白の66時間に「秘密会合」が発覚 被災者から批判高まる」 6日の晩。安倍首相が総裁選の地盤固めのために、無派閥議員と「極秘会合」を開いていたことが発覚し、「被災者より総裁選か」と批判が噴出し始めている 日本テレビ系のニュース番組「news every.」が「極秘会談」をスクープ 「無派閥議員の“とりこみ”」 安倍首相は前日の5日に「赤坂自民亭」と称する酒宴で酒盛りし、批判されたばかりだ 「西日本豪雨、不十分な想定で被害拡大か 水害や地震に備え二次被害まで思い巡らそう」 災害が起こることを前提で物事を考える 西日本の各地で「水害下での水不足」というパラドックスが起きている 直接的な被害より、その後に想定される二次的な被害の方が大きいことは珍しくない 1つの対策に頼らない 立派な防潮堤だけ造って、内陸への逃げ道を十分に造らないという発想に危険を感じる 世界の大都市の超高級マンションには核シェルターが標準で装備 日本の核シェルターの普及率は先進国で最低レベル 1つのことだけに莫大な費用をかけるより、いくつもの対策を用意しておくほうが安全性は高まるのではないだろうか 米国を中心に世界に普及している「Waze」というカーナビアプリ 事故や工事があったり、予想外の渋滞が発生したりした際に、スマホからいつでも投稿ができ、その情報がカーナビに反映される点だ スマホの利用者は情報の受け手であり、送り手にもなれるという発想の転換が活用 災害情報をよりリアルタイムにできるということを示唆 「「首都水没」著者が提言…行政の指示より前に自主避難を」 「首都水没」(文春新書)の著者 西日本豪雨では、積乱雲が連なって猛烈な雨を降らせる「線状降水帯」が多発 東京にこれが起こらないとは言えません 72時間雨量が550ミリを超えると荒川が氾濫 土木学会は約62兆円の被害を想定 地下の被害が算入されていません 堤防の決壊から3時間で大手町駅、約4時間で東京駅、約7時間で銀座駅まで浸水する ハリケーン「サンディ」がニューヨークを直撃 ニューヨーク都市交通公社(MTA)は、前日の夕方までにすべての地下鉄とバスの運行を中止しました。そのため、地下鉄内での人的被害はゼロでした NYが参考にしたのが、台湾・台北市を襲った01年9月の台風16号 東京では、地下鉄の運行を止める権限は、東京メトロの管理者にあります 地下鉄を止めることによる経済被害は計り知れず、果たして重大な決定を企業判断で下せるものか。事前に取り決めがあった方がいいと思います 昔の人は「あすは我が身」という意識が高かった 私がまだ幼い頃、お月さまが出ていない日の夜中、母親に「起きろ!」と叩き起こされたものです 真っ暗闇の中、玄関まで感覚で歩いていき、父と母、姉、自分の靴の位置がわかるようにしつけられた。母親の施す避難訓練でした 行政に言われる前に自主避難する 台風に高潮が加わると江東区で最大水深10メートル カスリーン台風規模の台風が来て荒川が決壊すれば、墨田、江東、足立、葛飾、江戸川の江東5区で、人口255万人のうち最大178万人が避難しなくてはいけません 高潮被害も怖い 、海の水は無尽蔵に流入してきます。また満潮は1日2回ですから、そのたびに入ってくるのです
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災害(その3)(いつ噴火しても…111の活火山が“原発大国”の日本を襲う、大川小の真実「検証方法変えないと解明は困難」 7年経った今も 悲劇の真相はうやむやに、「水害が地震より怖い」地下鉄 浸水対策はどこまで進んでいるか) [社会]

災害については、昨年12月2日に取上げた。今日は、(その3)(いつ噴火しても…111の活火山が“原発大国”の日本を襲う、大川小の真実「検証方法変えないと解明は困難」 7年経った今も 悲劇の真相はうやむやに、「水害が地震より怖い」地下鉄 浸水対策はどこまで進んでいるか)である。

先ずは、1月28日付け日刊ゲンダイ「いつ噴火しても…111の活火山が“原発大国”の日本を襲う」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/222090/1
・『本白根山の約3000年ぶりの噴火で、日本列島に111ある活火山がいつ噴火してもおかしくないことが分かった。不安になるのは、もし噴火が原発を襲ったらどうなるのか――ということだ・・・原子力規制庁は「特に距離で線引きをしているわけではありませんが、原発の立地に当たっては、160キロ以内の活火山を抽出し、『火山影響評価』をしています」(原子力規制部地震・津波審査部門)と説明する。 たしかに、敦賀、大飯、美浜、高浜と、原発が集中し、原発銀座と呼ばれる若狭湾の周辺に活火山はまったくない。しかし、「評価」で問題ないとされれば、火山から160キロ以内でも立地OK。北海道の泊原発とニセコ火山は約30キロ、九州の川内原発と霧島山は約60キロしか離れていない。真横ではないが、火山の近くに原発は立地しているのである。日刊ゲンダイは原発近くの火山をピックアップ。実に37にも上る(別表)』、火山が近い原発の多さには、驚かされた。
・『立命館大環太平洋文明研究センター教授の高橋学氏(災害リスクマネジメント)が言う。「隣接しているわけではないので、火山の噴火が原発を直撃することはないでしょう。しかし、噴火で大量に発生した火山灰が原発を襲うと、電気系統や通信システムがやられてしまいます。制御が不能になると、メルトダウンが起き、炉心が損壊し、放射能漏れの恐れもあります。福島原発を津波が襲い、電源喪失したのと同じです」』、電気系統や通信システムだけでなく、沸騰した冷却水を冷やすための空気の取入れも火山灰でフィルターが詰まり、冷却不能になり、このルートでもメルトダウンが起きることになる。
・『2011年の東日本大震災以降、関東から北海道にかけての火山は活動が活発になっている。今後、巨大噴火も予想される。火山性微動や膨張が見られる有珠山、八甲田山、十和田は要注意だ。ちょうど泊、大間、東通原発や再処理工場がある六ケ所村に近い場所だ。 西日本では直下型地震が噴火を誘発する恐れがある。四国の伊方原発、九州の川内原発は活断層のほぼ上にある。活断層がずれると直下型の地震が起こる。近くの阿蘇山や霧島山を刺激すれば、噴火を誘発。火山灰が原発に降りかかる不安がある。 タチがわるいのが、火山灰の拡散だ。 「火山灰に漏れた放射性物質が付着し、風に乗って飛び回るのです。ですから、原発の近隣だけが危険なのではありません。日本列島だけでなく、周辺国にも放射性物質が拡散することになります。例えば、中国と北朝鮮の国境にある白頭山は946年に噴火し、1000キロ以上離れた北海道や東北に5センチ程度の火山灰を降らせています」(高橋学氏) 火山大国に原発はあってはならない』、本当に火山と原発は取り合わせが悪いようだ。

次に、時事通信出身のジャーナリストの池上 正樹氏が3月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「大川小の真実「検証方法変えないと解明は困難」 7年経った今も、悲劇の真相はうやむやに」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20150302/278140/031100003/?P=1
・『東日本大震災から7年。筆者は震災以降、被災地では主に、学校管理下で児童74人、教職員10人が津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の惨事を取材してきた。 新北上川を遡上してきた“川津波”と海岸から押し寄せた津波がぶつかるように小学校を襲ったのは、地震発生から約50分後の午後3時37分頃のこと。校長は不在だった。 学校現場からの生存者は、わずかに児童4人と教員1人のみ。いまなお、行方不明のままの子どもたちもいる。 子どもたちが待機していた校庭のすぐ裏手には、小走りなら1~2分で逃げられる山があった。その山には、かつて子どもたちがシイタケを栽培していたり、授業で使われたりしたことのある平坦な場所もあった。 あの日、学校にいた子どもたちは1メートルも山に登ることなく、なぜ津波に巻き込まれたのか。児童の遺族たちは、唯一生き残ったA教諭から、我が子の最後の様子を聞きたい、何があったのかを知りたいと、ずっと望んできた。しかし、真相の核心を握るA教諭が保護者の前で自ら説明したのは、震災1カ月後の第1回保護者説明会のときのみで、質問も遮られた。以来、7年経った今も、その真相は、うやむやなままだ』、うやむやになっている説明を早く知りたいものだ。
・『2014年3月から続いている児童の遺族が市と県を相手に損害賠償を求めている裁判も、1審の判決では、学校側の過失を一部認めたものの、現在の控訴審に至るまで、唯一学校側の職員として生き残ったA教諭の証人尋問は見送られてきた。今年4月26日には控訴審の判決も下されるが、真相の核心は見えてこない。 大川小に関わったのは、偶然のいきさつだった。震災直後から石巻市に入っていた筆者は、大川小の惨事の噂を聞き、4月初頭に被災校舎を訪ねた・・・最初に出会ったのは、教員側の遺族のほうだった。「本当の事実を知りたい」と母親は当時、明かしていたが、「同じ遺族でも、針のむしろのようだ」との理由で、情報収集に動けない苦しみをそのとき嘆いていた。 その後、紹介されたのが、児童のほうの遺族だ。 「子どもたちは、見えない魔物に殺された。怒りをぶつけても、黒い影のように、何も反応がないんです」そう訴える母親の言葉に突き動かされた』、なるほど。
・『児童の遺族たちが、当初から学校や教育委員会に望んでいたのは、「なぜ子どもたちは長時間、校庭に待機させられた末、裏手の山ではなく、堤防に向かってしまったのか?」という、親であれば至極当然の権利である「真実を知りたい」という思いだけだった。 ところが、市教委の対応は、2011年6月に開いた保護者説明会を最後にわずか2回で打ち切ろうとしたり、唯一の目撃者であるA教諭を「休職扱い」にしたりして、遺族とやりとりすることを拒み続けるなど、誠実さに欠けるものだった。 また、震災直後に一生懸命証言してくれた子どもたちの聴き取り記録の原本も、市教委によって破棄されていたことが、後に河北新報のスクープによって明らかになった。 子どもたちが校庭で訴えたとされる「山へ逃げよう」などの証言は、公文書上ではなかったことにされ、子どもたちの避難開始時刻などの保護者に対する説明内容も変遷。周囲の大人も含め、当事者が様々なしがらみの中で言葉を封じ込められ、口を閉ざさざるを得ない事態が、ますます真実から遠ざかる要因にもなっている』、「聴き取り記録の原本も市教委によって破棄」というからには、余程、市教委にとって不都合な証言があったのだろう。「山へ逃げよう」などの証言がなかったことにされたのも同じだ。それにしても、市教委の責任回避のための隠蔽工作は目に余る。
・『市教委によって市議会に提出され、文科省主導で防災コンサルに“丸投げ”された形の第3者による大川小学校事故検証委員会は、2013年2月の第1回委員会以降、遺族の知りたい真実に迫ることもないまま、迷走を続けた。 この検証委員会の性質を語るうえで、とくに印象深いのは、2013年7月の委員会後の記者会見で、マイクを握った津波工学が専門の委員が顔を真っ赤にし、こう記者にまくし立てたことだ。 「あなたはPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったことございますか? あなたはこれから人の人格を殺すかもしれないんですよ。そういう時にあなたは責任を取れますか?」 委員は、自身がPTSDになった体験を挙げ、威圧的な語り口調で記者の質問を封じ込めようとしていた。 その時の質問というのは、真相の核心に迫る目撃者から聴き取りをすることよりも、周辺住民らの聴き取りを優先させている合理的理由について、調査を担当している心理学の専門家に尋ねたものに過ぎなかった。検証の過程で自身のPTSD体験を刺激してしまい、個人の感情に支配されるのであれば、第3者委員会の委員としての適格性を疑わざるを得ないといえる』、津波工学専門の委員の威圧的発言には驚かされたが、第3者委員会を事実上組織した防災コンサルは、市教委から鼻薬をかがされ、そうした都合のいい人物を選んだのだろう。
・『この委員は休憩時間、テレビなどのメディアに出て、唯一当時の状況を証言し続けてきた生存児童の父親の只野英昭さんの元に来て、「子どもにメディアの前で話をさせるのは、PTSDになるからよくない」などと、貴重な生存児童の口を封じ込めようとした。 長年、ひきこもり当事者たちを取材してきた筆者は日々、トラウマを抱えた当事者たちと接しているが、言葉を封じられ、秘密にしておくこと自体が様々な症状を引き起こし、時間とともに見えなくなり、語れなくなる事例をたくさん見てきた。だから、周囲は、本人が語りたいタイミングで安心して発信できる場を日頃から配慮してあげることも大事だ。 そもそも、精神医療は専門外の津波工学の専門家がPTSDを持ち出し、暴言で言論を封殺する滑稽さを誰も注意できない検証委員会とは何なのか。いったい何が目的で設置された委員会だったのかを考えさせられた』、この委員は貴重な生存児童の口を専門外のPTSDを持ち出し封じ込めようとした、というのも全く驚くべきことだ。
・『結果的に、2014年2月に出された検証報告書は、目新しい事実を何1つ解明できないまま終わり、5700万円もの公金だけが検証委員会の「経費」として消えていった』、『「遺族からは、避難行動の遅れた原因を検証してほしいとお願いしていたにもかかわらず、出てきた報告は、避難行動を決定するのが遅れたのが事故の原因という結論と、一般論でもわかる24の提言でした。1年かけ、膨大な税金を注ぎ込んで、いったい何をやっていたのでしょうか」 半年後に仙台市で開かれた「親の知る権利を求めるシンポジウム・・・」で、児童遺族の1人は、そう検証委員会のあり方に疑問を投げかけた。検証委員会に毎回通い続けて感じたのは、恣意的な材料を集めることによって、裏山へ登れなかった理由を必死に探しているようにしか見えなかった。 この検証の“失敗”が引き金になって、23人の児童の遺族19家族が、真実の解明を求めて裁判を起こさざるを得なくなる。 2016年10月に行われた1審の仙台地裁の判決では、「市の広報車が高台への避難を呼びかけていることや、ラジオで津波予想を聞いた段階では、教員らは津波が学校に襲来することを予見し、認識した」などと、学校側の過失を一部認め、約14億2600万円あまりの損害賠償を命じた』、地裁の判断は、学校側の過失の度合いはともかくまずまず当然だろう。
・『被告の市と県は、教職員らが津波を具体的に予見することは困難だったとして控訴・・・判決の棄却を求めた。原告側も、一審判決では、学校や校長、市教育委員会といった学校関係者が、義務教育下の学校防災として平時の備えにどのように対応していたかどうかの組織的過失に触れていない、などとして控訴した。 控訴審では、仙台高裁が「事前防災」を中心に両者に証拠提出を求め、学校関係者が子どもたちの命を守るための事前の備えを十分に行っていたかが争点になった。 原告側は、学校関係者がどのような事前の備えを行ってきたかのみならず、大川小学区内で、市防災計画とハザードマップに矛盾が存在していたことなども指摘。市側の防災体制の問題点についても広げて言及した。 証人尋問では、同校の危機管理マニュアルの2010年の改定時に、「『地震(津波)』『情報収集に津波関係も』『津波の有無を確認し、第二次避難場所に移動する』の文言が入ったのは、津波が来ることを予見したからではないのか?』と問われた柏葉元校長が、「津波は大川小に来ないのだから、津波という言葉を入れてもいいだろうと思った」などと語った。 当時の市教委の学校教育課長に対する尋問では、大川小が津波ハザードマップから外れているものの、「通学路である学区内は津波浸水区域にあり、津波に関係ある学校だったのではないか?」と証人尋問で質問され、何も答えられない場面もあった。 結審後、被告側の市の代理人は、「津波が来たとしても800メートル手前で止まる予想だったが、結果的に押し寄せてきた。高台に逃げるようなマニュアルにしておけば助かった可能性は、結果としてはあったかもしれないが、そもそも津波が来ない前提なのに、そこまでする義務があったのか」とコメントした』、控訴審での事実調べは被告の市と県にとって不利になっているようだが、判決はどうなるのだろうか。
・『「証言してくれた子どもたちが口封じされ苦しんでいる」 生存児童の1人で、当時小学5年だった只野哲也さん(18歳)は、7年経って、「中学も高校も終われば、あっという間だなあ」と振り返る。「街は建物が建って当たり前の生活に戻って来てるけど、心に傷の残ってる人や、人前で話せない人、不登校が多いんです。被災地でも温度差がある。津波を経験していない人たちは、他人事なんでしょうね。俺だって、震災前はテレビの中の出来事だと思っていた。いつ自分の身にこういうことが起こるか、わからないのに…」  哲也さんは・・・自らも逃げる途中に津波にのまれながら、学校の裏山に登って生還した。 そんな哲也さんには、これまでも節目ごとに話を聞いてきたが、発言内容が年々大人になっていくのがわかる。 「もし、つらいのであれば、友だちとか、知り合いとか、家族に、少しでも震災のときのことを話すことによって、気持ちが軽くなる部分もあるのかなって。自分の思いを親身に聞いてくれる人に、話をするだけでも、変わるんじゃないかなと思うんです」 遺族を中心にした伝承の会が、1月に開いた勉強会では、児童の遺族から、こんな声も聞かれた。 「当初、生き残った子どもたちが、聞き取り調査で話してくれたことは、すべて破棄されてしまって、報告書には載っていない。一生懸命証言してくれた子どもたちが口封じされ苦しんでいる。誰が、何のために、何を隠ぺいしようとしているのか?」』、市教委の隠蔽体質には改めて怒りを感じる。
・『大川小の検証が「不十分だと言われるのはその通りだ」 被災地では、行政を母体にした「3.11メモリアルネットワーク」が結成され、3月9日には、石巻市内で「第1回伝承シンポジウム」が開かれた・・・パネラーとして招かれた「山の暮らし再生機構」理事長の山口壽道氏は、こんな発言をした。「事実を公開すると、行政批判になるので、墓の中に持って行くしかない。事実をどう落としていくかの仕組みがないと、関連死が起こる」 行政批判になるような事実や傷つく人がいる事実は、落としどころがなければ死人が出るから公開するなという趣旨の発言だ。再検証を求める当事者と、元検証委員会委員長の問題なのに、部外者による上から目線の牽制以外のなにものでもない。当事者の直面している不条理を丁寧に理解しようとすることも、そうした議論もせず、事実を明かさないでよい伝承とは、いったい何なのか。 今、まさに、そういう大きな渦にのみこまれようとしている。それが、大川小事故を巡る、震災から7年目の現実だった』、「行政批判になるような事実や傷つく人がいる事実は、落としどころがなければ死人が出るから公開するな」とはここまであからさまに本音を言うのが、パネラーだったとは、行政サイドの念押しなのだろうか。

第三に、鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏が7月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「水害が地震より怖い」地下鉄、浸水対策はどこまで進んでいるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/174483
・『地下鉄にとって恐ろしいのは地震よりも水害 西日本を中心に襲った記録的豪雨によって、広島県、岡山県、愛媛県を中心に130人を超える死者(10日時点)が出るなど大きな被害が発生し、現在も懸命の捜索活動、復旧作業が進められている。気象庁によると全国14府県の93の観測地点で、8日までの72時間に降った雨量が観測史上最多を記録したという。 こうした豪雨は、鉄道インフラへの影響も甚大だ・・・都市部で発生した場合、懸念されるのが地下インフラ、とりわけ地下鉄や地下街への被害である。水はどんな小さな隙間であっても入り込み、低い方へと流れていく。地下空間は地震には強いが、水は天敵のようなものだ。実際に2000年以降、河川の氾濫などによる地下鉄への大規模な浸水はいくつも発生している。 たとえば2000年9月の東海豪雨では、排水設備の処理能力を超えた雨水が名古屋市営地下鉄に浸水し、2日間運転を見合わせた。2003年7月の福岡水害では、御笠川の氾濫により地下鉄や地下街に浸水が発生。地下鉄入口の階段から流れ込む濁流の映像を覚えている人も多いだろう。2004年10月には台風22号の影響で東京都の古川が氾濫し、地下鉄麻布十番駅のホームに水が流れ込んだ。2013年の台風18号では、京都の安祥寺川が氾濫して京都市営地下鉄御陵駅が浸水、復旧まで4日間を要している。 国交省は、想定しうる最大規模の豪雨によって東京や大阪でも大規模な浸水が発生し、地下鉄などが水没する可能性があるとして被害想定をまとめている。 国交省近畿地方整備局が今年3月に公表した想定はこうだ。枚方上流域に、1時間当たり360ミリという「1000年に一度」の豪雨が発生し、淀川と大川の分流点付近で堤防が決壊。1時間後には天神橋筋六丁目駅が浸水し、2時間後には同駅から谷町線と堺筋線のトンネルを伝って浸水が拡大、御堂筋線でも中津駅から浸水が始まる。3時間後には御堂筋線の浸水が梅田地下街に到達し、18時間後には大阪メトロやJR東西線、京阪電鉄中之島線などで地下トンネルが水没する深刻な被害が発生するという』、地下鉄への影響は確かに恐ろしい。
・『地下トンネルが導水管となって水害は拡大していく 首都圏においても、2009年1月に中央防災会議の専門調査会がとりまとめた「荒川堤防決壊時における地下鉄等の浸水被害想定」が発表されている。想定では、3日間に550ミリ以上の降雨によって荒川の岩淵水門付近で堤防が決壊し、東京都北区、荒川区、台東区、中央区など隅田川周辺に大規模な浸水が発生。堤防の決壊から10分後には地下鉄南北線赤羽岩淵駅、4時間後には千代田線町屋駅、6時間後には日比谷線入谷駅で浸水が始まり、地下トンネルを伝って都心に水が流れ込み、最大で17路線97駅、延長約147kmの線路が水没する可能性があるとしている。 丸ノ内や大手町付近では地表に到達するよりも6時間ほど早く、トンネル経由で洪水が到達する。霞ケ関や赤坂、六本木では地表に洪水は到達しないが、駅と線路は水没するなど、トンネルが導水管となり被害が拡大する危険があると指摘されている。 これは決して過大な想定ではない。実際に海外では大規模な水害によって地下鉄が水没し、都市機能に大きな影響を与えたケースが報告されている。 たとえば2001年9月に台風16号が直撃した台湾・台北市では、台風がもたらした「200年に一度」の大雨によって地下鉄(MRT)が約12kmにわたって水没、完全復旧までに3ヵ月を要する被害が発生した。 また2012年10月にはアメリカ東海岸を襲った史上最大級のハリケーン「サンディ」がもたらした高潮によって、ニューヨーク市地下鉄のトンネルに海水が流入した。事前に運行を停止し、避難を完了させていたため人的被害がなかったのが幸いだが、ほぼ全線が復旧するまで9日間を要した。 水害は地震や火山噴火などとは異なり、降水量や水位の変化から事前に危険度を予測することができるため、気象情報を活用し早期に避難誘導をすることで職員、乗客ともに人的被害を防ぐことが可能である。 前述のように、地上は洪水被害がなくても、地下トンネルを経由して流れ込んだ水により、想定外の地域に被害が発生することもあり得る。利用者に対する周知の徹底と、近隣施設や関係機関との連携強化、避難訓練の実施など、防災体制の構築が進んでいる』、人的被害は防げても、地下鉄網が水没、復旧に相当の日数がかかれば、都市機能のマヒが不可避になるだろう。
・『「200年に一度」の豪雨対策に巨費を投じることの難しさ また長期の運転停止を避け、都市機能を守るための取り組みも始まっている。 たとえば東京メトロは中央防災会議の被害想定を受けて、駅の出入口、トンネルの坑口、通気口など、地上とつながる無数の穴を封鎖して水の流入を防ぐための防水ゲートの設置や強化を進めている。これらの設備が完成すれば、地下トンネルの浸水は相当程度防ぐことができると期待されている。 大阪メトロでも南海トラフ地震による津波対策として、2014年から30駅の浸水対策工事を進めており、洪水、高潮に対しても効果が見込まれている。 しかしそれでも完全な対策は困難なのが実情だ。鉄道事業者が単独で対策を進めても、他鉄道会社との乗換駅、駅通路と接続した地下街や民間のビル、工事現場など、水の通り道は無数にあり、これら全ての開口部をふさぐことは、物理的にも費用的にも難しいからである。仮に建築基準などを改め、全ての事業者・管理者に防水対策を義務付けたとしても、対策完了までには長い年月がかかるだろう。200年に一度、1000年に一度というような発生確率の洪水に対して、どれだけの費用をかけて対策していくのかについても、社会的なコンセンサスが得られているとは言い難いのが実情だ。 今回の水害で被害を受けた人の中には、自分が住んでいるところで洪水が起こるとは考えていなかった、避難しようと思ったら既に水が来ていて逃げられなかったという人も多かった。まずは日本中どこであっても水害が発生し、思わぬ形で被害が拡大する可能性があるということを認識することが、自分の身を守り、都市機能を守る第一歩となる』、「200年に一度」の豪雨対策に巨費を投じることは確かに難しそうだが、最近のように「200年に一度」の豪雨が頻発し、「10年に一度」といったように頻度が高まっていることを考慮すれば、もっと真剣に考慮すべきではなかろうか。
タグ:災害 日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン (その3)(いつ噴火しても…111の活火山が“原発大国”の日本を襲う、大川小の真実「検証方法変えないと解明は困難」 7年経った今も 悲劇の真相はうやむやに、「水害が地震より怖い」地下鉄 浸水対策はどこまで進んでいるか) 「いつ噴火しても…111の活火山が“原発大国”の日本を襲う」 原発の立地に当たっては、160キロ以内の活火山を抽出し、『火山影響評価』をしています 「評価」で問題ないとされれば、火山から160キロ以内でも立地OK 北海道の泊原発とニセコ火山は約30キロ、九州の川内原発と霧島山は約60キロしか離れていない 原発近くの火山をピックアップ。実に37にも上る 火山灰が原発を襲うと、電気系統や通信システムがやられてしまいます。制御が不能になると、メルトダウンが起き、炉心が損壊し、放射能漏れの恐れもあります 冷却水を冷やすための空気の取入れも火山灰でフィルターが詰まり、冷却不能になり 火山大国に原発はあってはならない 池上 正樹 「大川小の真実「検証方法変えないと解明は困難」 7年経った今も、悲劇の真相はうやむやに」 学校管理下で児童74人、教職員10人が津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の惨事 生存者は、わずかに児童4人と教員1人のみ 校庭のすぐ裏手には、小走りなら1~2分で逃げられる山があった 現在の控訴審に至るまで、唯一学校側の職員として生き残ったA教諭の証人尋問は見送られてきた 唯一の目撃者であるA教諭を「休職扱い」にしたりして、遺族とやりとりすることを拒み続ける 子どもたちが校庭で訴えたとされる「山へ逃げよう」などの証言は、公文書上ではなかったことにされ 「聴き取り記録の原本も市教委によって破棄」 防災コンサルに“丸投げ”された形の第3者による大川小学校事故検証委員会 た津波工学が専門の委員 「あなたはPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったことございますか? あなたはこれから人の人格を殺すかもしれないんですよ。そういう時にあなたは責任を取れますか?」 委員は、自身がPTSDになった体験を挙げ、威圧的な語り口調で記者の質問を封じ込めようとしていた 「子どもにメディアの前で話をさせるのは、PTSDになるからよくない」などと、貴重な生存児童の口を封じ込めようとした 暴言で言論を封殺する滑稽さを誰も注意できない検証委員会とは何なのか。いったい何が目的で設置された委員会だったのかを考えさせられた 検証報告書は、目新しい事実を何1つ解明できないまま終わり、5700万円もの公金だけが検証委員会の「経費」として消えていった 1審の仙台地裁の判決 学校側の過失を一部認め、約14億2600万円あまりの損害賠償を命じた 控訴審では、仙台高裁が「事前防災」を中心に両者に証拠提出を求め、学校関係者が子どもたちの命を守るための事前の備えを十分に行っていたかが争点 証言してくれた子どもたちが口封じされ苦しんでいる 「事実を公開すると、行政批判になるので、墓の中に持って行くしかない。事実をどう落としていくかの仕組みがないと、関連死が起こる」 行政批判になるような事実や傷つく人がいる事実は、落としどころがなければ死人が出るから公開するなという趣旨の発言 枝久保達也 「「水害が地震より怖い」地下鉄、浸水対策はどこまで進んでいるか」 地下鉄にとって恐ろしいのは地震よりも水害 実際に2000年以降、河川の氾濫などによる地下鉄への大規模な浸水はいくつも発生している 地下トンネルが導水管となって水害は拡大していく 「荒川堤防決壊時における地下鉄等の浸水被害想定」 「200年に一度」の豪雨対策に巨費を投じることの難しさ 他鉄道会社との乗換駅、駅通路と接続した地下街や民間のビル、工事現場など、水の通り道は無数にあり、これら全ての開口部をふさぐことは、物理的にも費用的にも難しい
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中国国内政治(その6)(中国で大規模な退役軍人デモ 膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援 武力鎮圧事件に発展、習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている、習近平思想」で統制強まる中国 現場で見た3つの深刻実例) [世界情勢]

中国国内政治については、3月21日に取上げた。今日は、(その6)(中国で大規模な退役軍人デモ 膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援 武力鎮圧事件に発展、習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている、習近平思想」で統制強まる中国 現場で見た3つの深刻実例)である。

先ずは、元産経新聞北京支局員でジャーナリストの福島 香織氏が6月27日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「中国で大規模な退役軍人デモ、膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援、武力鎮圧事件に発展」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/062600162/
・『習近平政権の最大の矛盾は軍部周辺で起きているのかもしれない。習近平政権最初の5年の任期で難しい軍制改革に手を付け、大規模リストラと軍部の利権剥奪、汚職摘発を名目にした粛清を続けている・・・解放軍内外の矛盾と不満はかなり膨らんでいるようである。 そういうものが、目に見える形で表れた一つが、昨今頻発している退役軍人デモである。6月下旬にもかなり大規模な退役軍人デモが起き、しかも解放軍下部組織の武装警察や軍が出動して鎮圧するという、軍内身内同士の流血事件に発展した。習近平政権二期目始まって以来の最大規模の退役軍人デモであり、ひょっとすると最大危機への導火線となるやもしれない』、大規模な退役軍人デモが流血事件に発展したとは初耳だが、驚いた。
・『このデモが起きたのは江蘇省鎮江。6月19日から24日にかけて 、全国22省から微信(中国ネットSNS)で呼び掛けられた退役軍人たちが続々と鎮江市の政府庁舎に集まり続けた。ネットに上げられた映像を見る限り1万人規模にはなっていた。香港紙の中には5~6万人が集結という報道もある。彼らは迷彩服姿で市内を行進するなどした。 当初は抗議活動を容認するかたちで、1万人の武装警察が治安維持のための厳戒警備にあたっていたが、鎮江市政府周辺で、一人の退役軍人と警備の武装警察が衝突、退役軍人側が頭から血を流して倒れ、怒ったデモ隊が非道を訴え、一部で暴徒化したようだ。退役軍人を殴ったのは、武装警察の制服ではなかったという説もれば、私服の武警であったという説もある。 相手は退役しているとはいえ軍人である。農民、市民の抗議活動とは迫力が違う。現地当局は最終的に武装警察および軍の出動を依頼、23日午前3時40分ごろには、2万人の武装警察および解放軍が退役軍人デモ鎮圧のために出動した、という話も出ている』、流血は偶発的なようだが、重大な事件であることは確かだ。
・『この結果、かなり暴力的な鎮圧が行われたようで、ネットには漆黒の闇の中で、「殴られた!」と叫び声をあげながら武装警察と群衆が衝突している様子が動画に挙げられている。ネットで散見する動画や写真をみれば、血まみれの退役軍人たちは一人や二人ではなかった。武装警察側の武器は主に盾やこん棒であったようだ。死者が三人以上出ている、という話もあるが、確認は取れていない。また、この鎮圧騒動で負傷した退役軍人が入院した病院では、大勢の退役軍人が“見舞い”に押し寄せ、病院前で退役軍人と7両の軍警車両が一時対峙する場面もあったとか。 また、当局は市庁舎近くの中学校に退役軍⼈を拘束、収容。その数は2000⼈以上とか。⾷事しに外に出ることも禁じられ、トイレに⾏くのすら⼆⼈が監視につくなどの厳しい監視をうけている、という。 当局は一切の報道禁止をメディアに通達し、ネット上でも動画や写真などの投稿削除が行われているが、なぜか微信だけは、完全に封鎖されていない。25日には「装甲車が投入された」という写真付きSNSの投稿や、鎮江市の外で二個師団が待機している、といった噂もながれた。こうした情報の真偽を確かめるすべは今のところないが、事件に関する情報は今なお断続的に発信され続けている』、微信だけは完全に封鎖されていない、というのも不思議だ。
・『微信では、どこそこから退役軍人グループが応援に向かった、その応援グループが地元警察に連行された、誰それとの連絡がとれない、といった情報が次々と更新されており、今回のデモが、かなり組織的かつ全国的規模で入念に計画されたものではないかという気がしてくる。しかも中央ハイレベルから、このデモを事前に防ごうという動きがない。ご存じのように、中国ではすでに顔認識機能のついたAI監視カメラが駅や高速道路など要所要所に設置されており、大量の退役軍人が一斉に鎮江に向かおうとすれば、事前に察知されて当然なのだ。 微信が遮断されていないこととも考え併せると、党内部や軍内部のハイレベルが一枚かんでいる可能性は否定できない。あるいは治安維持部門があえて上層部に報告しない、といった現場のサボタージュがあったのかもしれない。江蘇省上層部すら、誰も現場に出てきていないので、これが退役軍人有志らの自発的アクションなのか、軍部が関与しているのか、背後に糸を引く大物がいるのかどうかも、目下は判断に悩むのだ。 だが、武器を携帯した武装警官・兵士が武力鎮圧を行ったことは事実らしく、ネット上では「軍人版天安門事件」などという声もある・・・一般市民は退役軍人側の味方が多く、退役軍人に対してはタクシー運転手がただで現場に運ぶなどの応援も行われたようだ。微信上では、一般庶民からの退役軍人の身の安全を心配したり、がんばれと応援したりする声も多く上がっている。 私は26日に鎮江を訪れた。すでに退役軍人も武装警察の姿はなく、市庁舎も病院も中学校も平穏な様子であったが、複数のタクシー運転手によれば、23日に武装警察、特別警察、軍が出動してデモの鎮圧にあたったことは事実のようだ。あるタクシー運転手によれば「23日の夜は、街頭が消されて真っ暗の中、退役軍人たちが次々と拘束されていた。多くが中越戦争で戦った英雄なのに、ひどい仕打ちだ」と退役軍人側に強い同情を寄せていた』、確かに「党内部や軍内部のハイレベルが一枚かんでいる可能性は否定できない」、というのはあり得る話だ。
・『ところで退役軍人の境遇とは、そんなにひどいのだろうか。ちょうど、この事件を報じた香港蘋果日報が退役軍人の現状についてまとめていたので、引用する。 2011年に施行された退役兵士安置条例によれば、12年以上の兵役者には軍が就職口を手配してくれるが、12年未満の兵役者及び義務兵は自力で就職先を探さねばならず、自主就業手当と呼ばれる一時退役年金が支払われるのみだ。しかし、これは1年の兵役につきわずか4500元が基準で、10年服役してやっと4万5000元が得られるということになる。 兵役経験者はよい就職口が用意される、というのはほんの一部の話であり、ほとんどの兵士は青春期の10年を軍に捧げてのち、退役後に一般社会に適応するのは現代中国ではなかなか簡単ではない。しかも習近平による軍制改革で、この数年は一気に30万人以上の退役兵士が新たに社会にあふれるわけだ』、急増する退役軍人の多くの処遇が恵まれてないのであれば、デモもいたしかたないのであろう。
・『中国には現在5700万人の退役軍人がいる。今年3月の全人代後に習近平主導で行われた国務院機構改革の一環として退役軍人事務部が新設されたのは、こうした退役軍人の社会復帰を援助し、その人権を守り、その不満を解消するのが目的だった。だが退役軍人の登録を開始しただけで、なんら具体的な対策は打ち出されず、今回のデモについても、公式コメントすら出していない。 退役軍人事務部の設置は習近平の肝入りであり、一般の傾向としては、こうした退役軍人問題の責任は習近平の手中にある、という形で、今回の事件の矛先は習近平政権批判に向かいつつある。趙紫陽の元秘書、鮑彤は「警察力によって、(退役軍人の)正当な権利を粉砕すれば、(習近平)新時代の社会矛盾が消滅したり緩和したりするとでもいうのか? これが(習近平のスローガンである)治国理政の新理念新方向なのか?」と習近平政権批判につなげている』、反習近平派にとっては、格好の攻撃材料だろう。
・『この事件の背景はまだ謎である。だが、香港の民主化雑誌「北京の春」の編集長・陳維健がやはりツイッターで興味深いコメントをしていた。 「今回のデモの現場の鎮江は江沢民の故郷の揚州のすぐ隣の地方都市だ。デモと江沢民が関係あるかはわからないが、鎮江政府は(軍による鎮圧という)軽率な対応をしてはならなかった。…退役軍人問題は習近平自身の手中にあり、官僚たちは自分に責任の火の粉がかかるのを恐れて、行動したがらない。この問題を解決するには必要予算があまりにも大きく、鎮圧するにはリスクが高すぎる」 習近平の宿敵ともいえる江沢民が何らかの形でかかわっているのか? また、一部SNS上では、国家安全部二局(国際情報局)がこの事件の背景を調査するために現地入りしたというまことしやかな噂も流れている。中国当局は海外の情報機関の工作を疑っているのか? すべてがネット上のSNS発情報というもので、何が事実で、何がデマなのかはまだわからない。だが、退役軍人デモが頻発していることは事実である。日本では2016年10月に北京で行われた数千人規模の退役軍人デモが大きく報道されたが、それ以前もあったし、それ以降も増え続けている。2017年も相当規模のものが少なくとも4件はあった』、相当規模の退役軍人デモはこれまでからあったというのであれば、今回のを殊更、重大視する必要はない可能性もある。
・『習近平政権としては退役軍人デモには、他のデモとは違う「話し合い姿勢」を見せており、今回のような武力鎮圧事件に発展したことは意外感がある。習近平の判断というよりは、偶発的な事件をきっかけにした鎮江市の対応の誤りが引き起こした騒動と言えるが、今後の中央の対応次第では、本当に1989年の再来の可能性だって否定できまい。 習近平政権は今世紀半ばまでに、戦争に勝利でき党に従う一流の近代軍隊を作るという強軍化の夢を掲げて軍制改革に踏み出した。だが、退役軍人への権利や尊厳が守れない状況で、誰が命をかけて党に忠誠を尽くそうというのか。このままでは、強軍化の夢どころか、体制の根底を揺るがしかねないのである』、軍隊の近代化には軍人のリストラは避けられないとはいえ、習近平政権にとっては大きな爆弾のようだ。

次に、国際コラムニストの加藤嘉一氏が7月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/174805
・『「解放軍内の粛清は史上最大級だろう。軍位の売買、それに伴う金銭のやり取りはもちろんのこと、これまでは許されていた軍としての営利活動や企業運営、そして灰色収入の獲得も固く禁じられている。正常な接待ができないから軍内でまともなコミュニケーションが取れない。茅台酒すら安心して飲めない」 最近、定年を前にして自ら解放軍少将の地位を捨てた元空軍幹部が筆者にこう言った。「私はようやく自由になった」と笑顔を見せるこの人物、辞職後は約30年間の“軍内生活”で積み上げてきた人脈や経験を生かしながら「一人の中国人民として」(同元幹部)コンサルティング業務に従事している。 2012年秋、共産党の第18回大会を通じて習近平が総書記に就任して以来、党指導部の解放軍への“対策”には2つの特徴と傾向が明確に、かつ日を追うごとに見受けられるようになってきた。 一つは“反腐敗闘争”である。共産党の指導部・最高指導者にとって、軍部をいかにして掌握し、支配下に入れるかという問題は最重要課題であり、共産党一党支配体制が続く限り永遠の課題だと言えるが、習近平は“反腐敗闘争”を通じて軍内を粛清しつつ、軍部に対する掌握力と支配力を徹底的に強化しようとしてきた。 18回大会以来“落馬”した少将・上級大佐(中国語で“大校”)以上の解放軍幹部は90名以上に及んでいる。そこには徐才厚、郭伯雄両中央軍事委員会副主席・上将も含まれる。また、18回大会から昨年10 月に行われた19回大会直前までの約5年間で、腐敗が原因で処分を受けた軍人は1万3000人以上に上るとされる・・・習近平が総書記就任後指導思想として掲げた『中国夢』の作者、劉明福中国人民解放軍上級大佐・国防大学教授は、筆者との共著『日本夢 ジャパンドリーム:アメリカと中国の狭間でとるべき日本の戦略』(晶文社)のなかで、軍隊の腐敗とそれに対する習近平の対策について次のように述べている。「改革開放から30年以上の月日が経ちましたが、軍事エリートの危機は驚くほどに深刻であると私は断言します。病状は主に三つあります。一つは“平和病”、彼らは闘うための思想に欠けています。二つに“腐敗病”、二人の中央軍事委員会副主席が腐敗を誘発・リードし、カネの力で将軍を生ませてきました。軍隊における“人身売買”という現象は極めて深刻です。三つに“凡庸病”、部下を引き連れ闘う能力に欠けているにもかかわらず、コネを作り、賄賂や腐敗で自らを昇進させる能力だけには長けている。一連の腐敗分子・投機分子らが軍隊のなかで好き勝手やっている。こんな状況が許されるわけがないでしょう。このような危機的状況を前に、習近平主席は全党・全軍反腐敗を徹底し、戦い方を知っていて、戦う意志のある優秀な軍事人材を重用するシステムを構築しようとしています。軍隊は人民に信頼される組織でなければならない。我が人民解放軍は“構造病”をガバナンスし始め、軍事大革命を推進しようとしているのが現状です」』、人民解放軍の腐敗がこれほどまでに酷いとは、驚きだが、習近平としてはリスクを承知でメスを入れたのだろう。
・『中国にとって、共産党が解放軍を相当程度に掌握していること、若干センセーショナルに換言すれば、軍部が“暴走”しないという状況は中国の政治・経済社会の基本的安定に資すると言える(もちろん、そのためには軍部を支配する立場にある政党が暴走しないことが前提条件となる)・・・ここから本稿で筆者が検証したい本題へと入っていくが、最近、筆者から見て“軍部の暴走”を招きかねないリスクを内包する事態が発生している。それは冒頭に出てきた元空軍幹部の感想や動向を裏付けるものであるとも言える。 6月11日、党中央弁公庁、国務院弁公庁、中央軍事委員会弁公庁の連名で『軍隊が全面的に有償サービス業務を停止することを深く推進するための指導意見』を発表した。これは習近平政権成立以来もくろまれ、取り組まれてきた軍隊・軍事改革の一環であり、『意見』の発行をもって、解放軍は今年度末までにすべての営利を目的とした企業運営やサービス提供を停止することが正式に義務付けられることになった。 これは“反腐敗闘争”と同様、軍隊に対する“粛清”プロセスだと解釈できる・・・『意見』発行の背後には共産党の解放軍への掌握と支配をめぐる意図や動機が如実に反映されるわけであるが、そこには軍隊の腐敗を防止すること、軍隊への社会的信用を回復させること、国有資産の流出を防止すること、そして習近平が主張するように軍隊が本来の任務である「戦争に勝つこと」を確固たるものにするための業務に集中することなどが含まれる。 筆者自身、今回の措置には社会の安定や合理的分業という意味で、ポジティブなインパクトが見いだせると考えている・・・軍隊が社会的特権を乱用して、不当なビジネスを行ったり、莫大な利潤を獲得するといった状況は早くから中国社会における“公然の秘密”となっており、民の軍に対する不満や抵抗感は長い間蔓延してきたと言える』、悪名高い軍のビジネスにまで手を入れたのは、確かに画期的だ。
・『軍が“暴走”するシナリオは大いに想定できる ビジネスでなくとも、有料施設の利用時に「軍人無料」だったり、公共施設の利用時に「軍人優先」という場面や状況は中国社会に普遍的に存在しており、そもそも中国の一般大衆の間には「軍人は特権的地位を利用して好き勝手、やりたい放題に振る舞う悪者」という類の認識が広まっていた事実は否めない。 習近平政権が“群衆路線”を随所で強調し、農民や労働者を中心に“社会の弱者”に寄り添う政策を大々的に打ち出すことで共産党の正統性を強固なものにしようとしてきた経緯を顧みれば、今回の『意見』は想定内であるし、当然の帰結とも言えるだろう。 一方で、潜在的な不安要素も見いだせる。 それは、端的に言えば、解放軍の共産党に対する不満や抵抗が爆発し、その過程であるいは結果的に軍隊が何らかの形で“暴走”するという事態であり、リスクである。 上記のように、習近平政権成立以来、共産党による絶対的領導下にある解放軍は、過去のどの時代よりも国ではなく党の軍という地位に甘んじている。そのような現状に対して、解放軍の関係者は政策、地位、待遇といったあらゆる角度から不満を蓄積させてきている。“反腐敗闘争”によって一切の賄賂や腐敗、そして贅沢が禁止されてきた。今回の『意見』を通じて、軍隊内部で生き延びるため、私益・私欲を肥やすためのビジネスも禁止された。一切のグレーゾーンを排した、党(の方針)への絶対服従を命じられているのである。行動として服従したとしても、内心穏やかでないどころか、不満を募らせている軍人はゴマンといるであろう。 実際に、冒頭の元空軍幹部を含め、気心の知れた軍人は酒の席で、筆者に対し習近平への不満や不服を爆発させている。 そういう感情が“臨界点”に達した時、若干極端な表現になるかもしれないが、軍人が党・政府・国に対してクーデターを彷彿とさせるような行動を起こす、何らかの引き金が原因で公共の場で、一般民衆に対して発砲する、台湾や他国に対して軍事的行動を起こすといった形で“暴走”するシナリオは大いに想定できる。今回の『意見』はそういうシナリオに現実味を持たせ、リスクを増長させる動きであると筆者は認識・解釈している』、軍の暴走が少なくとも「他国に対して軍事的行動」には、つながらないよう願うばかりだ。

第三に、同じ加藤嘉一氏が8月28日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「習近平思想」で統制強まる中国、現場で見た3つの深刻実例」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178351
・『宣伝工作の重視と徹底は、2012年秋から2013年春にかけての発足以来、習近平政権・体制を象徴する要素であり続けてきた。共産党一党支配、マルクス主義、中国の特色ある社会主義といったイデオロギーの正統性が徹底的にプロパガンダされ、一方で世論や言論への統制は日増しに強化され、それに伴い言論・報道・出版・研究・教育・結社・集会といった分野における自由は侵蝕されてきた。「党政軍民学、東南西北中、党が一切を領導するのだ」昨秋の第19回党大会にて党規約に盛り込まれた一文である。“文化大革命”時代を彷彿とさせるこの掛け声の下、習近平率いる共産党指導部は全国各地、全民族、官民を問わず、すべての中国人が、共産党が宣伝する思想やイデオロギーに従い、それに沿って行動することを呼びかけ、それに従わない人間・組織には容赦ない処罰を与える方針をあらわにしている・・・上からの統制や抑圧に晒されている“現場”は枚挙に暇がない。筆者の周りで起こっている3つの実例を挙げることで、現状の深刻さを具体的に掘り起こしていきたい』、なるほど。
・『現在、中国共産党指導部を最も困惑させている案件のひとつが米中貿易戦争であり、習近平陣営は対米関係の現状や行方を、共産党の安定や権威をも脅かす可能性のあるリスクだと見ているというのが筆者の見立てである。「“特朗普”(筆者:中国語で“トランプ”を指す)の三文字を使ってはいけないという指令を中央宣伝部から受けた。中米貿易戦争が悪化しているなかで、それでもトランプ大統領本人を刺激するべきではないとのことであるが、この三文字に触れずにどうやって報道しろというのか。全く理解できない」 8月下旬、中国中央電視台(CCTV)で米中貿易戦争の取材や報道に直接関わる外報記者が筆者にこう漏らした。この記者によれば、7月末、米国と欧州が貿易協議で合意に至った際にも、宣伝部から報道規制を命じる指示が来たとのこと。同記者はため息をつきながら次のように続けた。「中国が米国との貿易協議で決裂してしまった状況下で、米欧協議がまとまったことを正面から報じるのは具合が悪いと言われた。ニュースそのものは報じたが、上からは“米欧間にもさまざまな問題があり、前途多難”という論調で報じるように指示された。現場で取材する身としては全く不自由・不愉快であるし、正直何もできないという絶望感に苛まれる日々である」 この記者の上司は同局の報道方針の策定などにも関わる幹部候補であるが、もうすぐワンランク上のポジションへの昇格が見込まれる状況であるにもかかわらず、「上に行けば毎日無味乾燥な会議や報告書の作成、そして“習近平思想”の学習にほぼ全ての時間や労力を取られてしまう。前向きな企画や取材など、できる状況ではない」ようで、「昇格を放棄、退社することも考えている」という。 筆者は日頃から中国のメディア関係者とやり取りをする機会があるが、官製メディアだけでなく、例えばテンセントが運営する「騰迅網」や香港フェニックスグループが運営する「鳳凰網」といった“市場化メディア”ですら、中央宣伝部や中央インターネット安全・情報化委員会弁公室といった“お上”からの厳格な指令と監視の下で運営されており、「特にヘッドラインに関しては、もはやお上が直接決定して、私たちがそれを垂れ流すだけという状況に陥っている。そのほとんどは習近平本人の動向に関するニュースである」(鳳凰網デスク)とのことである』、「昇格を放棄、退社することも考えている」幹部候補がいるというのには、中国にも骨のあるジャーナリストがいるものだ驚いた。
・『外国人にまで「習思想」を宣伝 積極的に参加しなければ罰金も 今年6月末のある日の夕方、筆者は北京首都国際空港ターミナル3にいた・・・受付の位置に習近平のガバナンスに関する談話をまとめた著書の英語版を宣伝する英文ポスターが掲げられ、大量のチラシが積まれていた。国際便のほとんどはターミナル3発着であり、多くの外国人客が利用することからこのような措置が取られていたものと察したが、なんとも言えない違和感を覚えた・・・筆者が観察する限り、実際に北京や上海といった大都市だけでなく、内陸部の都市や地方の農村などを含め、街のいたるところに習近平の写真や言葉(筆者は習近平の銅像は目にしたことがない)、“習近平思想”を宣伝する紅断幕などが掲げられている・・・一種の“恐怖政治”を感じながら、なりふり構わず習近平を宣伝しなければ自らの“政治生命”にヒビが入ってしまうと怯えている、あるいはそんな現状を前に“習近平”を利用して上に媚を売り、体制内における昇格を目論んでいる関係者がゴマンといるのであろう』、外国人にまで「習思想」を宣伝するとは、ゴマスリもいいところだ。
・『そんな現状を象徴するのが3つ目のエピソードである。 私の手元に【2018年度北京市社会科学基金項目課題指南】という一部の資料がある。北京を拠点とする大学やシンクタンク研究者への助成金申請を促すプロジェクトである。習近平思想、改革開放40周年、冬季五輪、首都都市ガバナンス、北京市全体的都市計画など計7つのパート、226の研究課題が示されているが、うち33に「習近平」の3文字が含まれている。「習近平総書記新時代観研究」、「習近平総書記国家安全観研究」、「習近平総書記体育思想研究」といったものである。本プロジェクトの運営に関わるスタッフによれば、「“習近平”の三文字が入っている研究課題は人気がある」とのこと。同資料によれば、申請者に課された条件として、「社会主義制度と中国共産党領導を擁護する」ことが義務付けられている。 “習近平研究”をめぐるインフラ建設も整ってきている。2017年12月、党中央は「習近平新時代中国特色社会主義思想研究中心(院)」の設立を10の機関に批准した。中央党校、教育部、国防大学、中国社会科学院、北京市、上海市、広東省、北京大学、清華大学、中国人民大学である。その後、全国各地の政府機関、大学、シンクタンク、メディアなどから“習近平思想”研究の拠点となる研究中心・研究院の設立を渇望し、申請するブームが起こっている。 筆者が想像するに、これらの研究機関によって研究・発表される“習近平思想”に大した差は見いだせないだろう。すべての研究や論文はそれを肯定するものであろうし、結論ありきになることは疑いない。結局は、本稿が論じてきたように、習近平への権力集中、そして個人崇拝が蔓延る現状に着目し、それを利用することで富や名声を得ようという御用学者が量産される局面は目に見えている。 そのような状況に嫌気が差し、最近になって中国社会科学院を退職した若手研究者(政治学専攻)はその理由を次のように語った。「学者として胸を張れる仕事など何一つしていないし、できない状況だった。自分の頭で考えることも自分の考えを述べることもはばかられた。まともな国際交流や学術研究も許されなかった。“習近平思想”、“一帯一路”、すべての研究は上が決めた枠組みや方針を裏付け、正当化するための作業に過ぎない。あそこでは学者としてのアイデンティティを保てない。だから辞めたのだ」』、社会科学では「御用学者が量産」とは笑ってしまうが、もっと社会に役立つ研究に努力を振り向ければいいのに。ゴマすりだけのために、何たる壮大な無駄をしているのだろう。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 加藤嘉一 中国国内政治 福島 香織 (その6)(中国で大規模な退役軍人デモ 膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援 武力鎮圧事件に発展、習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている、習近平思想」で統制強まる中国 現場で見た3つの深刻実例) 「中国で大規模な退役軍人デモ、膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援、武力鎮圧事件に発展」 昨今頻発している退役軍人デモである。6月下旬にもかなり大規模な退役軍人デモが起き、しかも解放軍下部組織の武装警察や軍が出動して鎮圧するという、軍内身内同士の流血事件に発展した。習近平政権二期目始まって以来の最大規模の退役軍人デモであり、ひょっとすると最大危機への導火線となるやもしれない 江蘇省鎮江 映像を見る限り1万人規模にはなっていた 全国22省から微信(中国ネットSNS)で呼び掛けられた退役軍人たちが続々と鎮江市の政府庁舎に集まり続けた 一人の退役軍人と警備の武装警察が衝突、退役軍人側が頭から血を流して倒れ、怒ったデモ隊が非道を訴え、一部で暴徒化したようだ 血まみれの退役軍人たちは一人や二人ではなかった。武装警察側の武器は主に盾やこん棒であったようだ。死者が三人以上出ている、という話もあるが、確認は取れていない なぜか微信だけは、完全に封鎖されていない 党内部や軍内部のハイレベルが一枚かんでいる可能性は否定できない 軍人版天安門事件 自主就業手当と呼ばれる一時退役年金が支払われるのみだ。しかし、これは1年の兵役につきわずか4500元が基準で、10年服役してやっと4万5000元が得られるということになる 中国には現在5700万人の退役軍人 退役軍人事務部が新設 不満を解消するのが目的だった 退役軍人の登録を開始しただけで、なんら具体的な対策は打ち出されず 江沢民が何らかの形でかかわっているのか 「習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている」 解放軍内の粛清は史上最大級 軍位の売買、それに伴う金銭のやり取りはもちろんのこと、これまでは許されていた軍としての営利活動や企業運営、そして灰色収入の獲得も固く禁じられている 習近平は“反腐敗闘争”を通じて軍内を粛清しつつ、軍部に対する掌握力と支配力を徹底的に強化しようとしてきた 軍事エリートの危機は驚くほどに深刻 一つは“平和病 二つに“腐敗病”、 三つに“凡庸病”、 解放軍は今年度末までにすべての営利を目的とした企業運営やサービス提供を停止することが正式に義務付けられることになった 軍が“暴走”するシナリオは大いに想定できる 軍人が党・政府・国に対してクーデターを彷彿とさせるような行動を起こす、何らかの引き金が原因で公共の場で、一般民衆に対して発砲する、台湾や他国に対して軍事的行動を起こすといった形で“暴走”するシナリオは大いに想定できる 「「習近平思想」で統制強まる中国、現場で見た3つの深刻実例」 宣伝工作の重視と徹底 3つの実例 トランプ”を指す)の三文字を使ってはいけないという指令 外国人にまで「習思想」を宣伝 2018年度北京市社会科学基金項目課題指南 習近平思想、改革開放40周年、冬季五輪、首都都市ガバナンス、北京市全体的都市計画など計7つのパート、226の研究課題が示されているが、うち33に「習近平」の3文字が含まれている 、「“習近平”の三文字が入っている研究課題は人気がある」 “習近平研究”をめぐるインフラ建設も整ってきている 習近平への権力集中、そして個人崇拝が蔓延る現状に着目し、それを利用することで富や名声を得ようという御用学者が量産される局面は目に見えている
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「保育園落ちた」(待機児童、「保活」)問題(その6)(命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために、7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは?、保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき) [社会]

「保育園落ちた」(待機児童、「保活」)問題については、2月6日に取上げた。今日は、(その6)(命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために、7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは?、保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき)である。

先ずは、ジャーナリストの猪熊 弘子氏が7月6日付け現代ビジネスに寄稿した「命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために 」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56432
・『ジャーナリストとして「保育」の問題について長らく取材・執筆し、現在は保育学の研究者でもある猪熊弘子さんはこう言う。「日本では、一人ひとりの子どもにていねいに寄り沿い、暖かく成長を見守っている多くの素晴らしい幼稚園・保育園がある一方で、残念ながら子どもの成長にとってはあまり良いとは言えない保育を行っている園もあります。また、決して起きてほしくない悲しい重大事故や、子どもが被害者となる事件もあとを絶ちません」 猪熊さんは、現状に大きな危機感を感じ、弁護士の寺町東子さんと共著で『子どもがすくすく育つ幼稚園・保育園』を刊行した。そこで、保護者が園探しを始める夏休みの前に、わが子を守るためにぜひ知っておいてほしいことについて、短期集中連載で「危ない保育所・幼稚園」の見分け方をお伝えする』、なるほど。
・『第一回は、最も大切な「子どもの命を守る」園とは何か。 都市部には待機児童が多く、なかなか園を「選ぶ」ということはしにくい状況でしょう。そんな中でも絶対譲れないのは、子どもの生命が最優先だということです。厳しい状況の中で、子どもの生命を守るため、親は何を基準に「選ぶ」べきなのでしょうか? 生きていればさまざまな悲しみや苦しみを味わうことがありますが、中でもわが子を亡くすという体験は、この世の中で最も悲しい出来事ではないでしょうか。しかも、通わせていた幼稚園や保育施設で亡くなったとしたら……。親にとっては、自分たちが「選んだ」園で、最愛のわが子を亡くしたことで二重の苦しみになってしまいます。 内閣府(2014年までは厚生労働省)では、2004年から2017年までの保育施設での死亡事故を含む重大事故について、報告があったものを元に公表しています・・・これは「子ども・子育て支援新制度」に入っている施設についての数字であり、新制度に入っていない私立幼稚園については、文科省に報告するよう通達は出ているものの、ここには含まれていません・・・公表された資料によれば、残念なことに、日本では毎年、保育施設での事故で10数人の子どもが亡くなり、2004〜2017年までの14年間に亡くなった子どもは少なくとも198人に上ることがわかっています(表1参照)。年齢別にみると、0歳99人、1歳58人、2歳16人、3歳6人、4歳8人、5歳5人、6歳6人となり、0〜1歳の赤ちゃんが全体の8割を占めます。ついで2歳が多く、3歳以上になるとその数は少なくなります。 認可保育所と認可外保育施設とでは、圧倒的に認可外施設での事故の数が上回っています。見学に行ってもいろいろな理由を付けて保育中の様子を一切見せてくれないような施設は、「見せられない理由があるのかもしれない」と考えて、避けた方が無難でしょう』、年齢別ではやはり0歳児が多いようだ。
・『危険なのは「くう・ねる・みずあそび」の時間 場面ごとでみると、もっとも多いのは0〜1歳の赤ちゃんの「睡眠中」(午睡=お昼寝中をはじめ、夜の睡眠中も含む)です。死亡事故の約7割が、この「睡眠中」に起きています。その次に多いのが1〜2歳児の「食事中」です。「食事」にはおやつも含まれます。食べているものを喉に詰まらせて窒息することが多いのです。もうひとつ多いのがプールなどでの「水遊び中」の死亡事故で、3歳以上で多く起きています。 これらの死亡事故が相次いでいる場面について、Safe kids Japan代表で小児科医の山中龍宏先生は「くう・ねる・みずあそび」という言葉で注意喚起しています。たとえば最も事故が多い「ねる」の場面では、部屋の中を真っ暗にせず、顔の表情が見えるくらいの明るさで寝せることが重要です。もし、見学に行った園で、遮光カーテンで部屋の中を真っ暗にして午睡させているようだったら、睡眠中の死亡事故が多いことを知らないのかもしれないと疑った方が良いかもしれません。 また「くう」の場面では、子どもの口に入って喉に詰まりやすい食べ物やおもちゃなどが、提供されていないことが重要です。時間にゆとりをもたせてゆっくりと、水分をとりながら食べさせることが大切です。年末年始に、お年寄りがお餅を喉に詰まらせて亡くなる事故はよく報道されますが、同じように小さな子どもにとっても食べ物の飲み込み(嚥下)は、生命に関係することです。保護者は子どもがどのようなものを食べられるか、きちんと飲み込みができているかどうかを確認して、保育者と共有しておくことが必要です。 「みずあそび」の事故は主に3歳以上の子どもに起きていますが、これまでには満1歳の子どもが園庭にある排水溝に顔を入れてしまい、意識不明になった事例もあります。10cm以上の深さがあれば、水は容易に子どもの生命を奪うことを覚えておきたいものです。2011年には神奈川県大和市の幼稚園の水深20cmのプールで、3歳の子どもが亡くなった事故も起きています。 その事故以来、幼稚園・保育園・こども園でのプール遊びでは、必ず「監視」をする人を2人以上つけることが定められています。もし、園の人員配置がギリギリで「監視」する人を置けない場合には、プール遊びは中止することになるでしょう。川遊びなど、自然の中での水遊びにはプール遊びよりもさらに多くの危険があります。水深が浅くても、上流でゲリラ豪雨が降れば水位が急上昇する可能性もあります。 2012年7月20日、愛媛県西条市の加茂川で、幼稚園のお泊まり保育中に、5歳の男の子が急に増えた川の水に流されて亡くなった痛ましい事故も起きています。「うちは毎年ここでやっているけれど、何もなかったから」という慢心から、幼稚園教諭たちは下見もおろそかにし、お泊まり保育前日と当日の午前中の大雨の情報も得ていませんでした。また、子どもたちはライフジャケットも着けずに活動させられていました。 自然の中で「今まで何もなかった」のは、ただラッキーな偶然が続いていただけに過ぎません。そういった危険を伴う行事を行うのであれば、必ず下見や事前準備を行い、確実にライフジャケットを付けることが必要です。園でそのような行事がある場合には、どのような準備をしているのか、保護者も知っておくべきでしょう』、西条市の加茂川での事故では、「幼稚園教諭たちは下見もおろそかにし、お泊まり保育前日と当日の午前中の大雨の情報も得ていませんでした」というのは、信じられないような重大な過失だ。
・『「自由遊び」と「放置・放任」の違い 保育の中では「一斉保育」といって、子どもたちがみんなで一緒に同じ活動をする時間と、「自由保育」「自由遊び」などといって、子どもたちが自分の好きな遊びをして探求活動をしていく時間とがあります。子どもの「主体性」が大切とうたわれる時代にあっては、「自由保育が良い」と考えられることが多くなってきていますが、この「自由保育」がときには「放置」「放任」になってしまっている園もあります。 2005年8月10日、埼玉県上尾市にある市立上尾保育所で、4歳の男の子がかくれんぼの際に薄暗くて見通しの悪い廊下の隅に置いてあった本棚の下の引き戸の中に入り込み、誰にも気づかれないで熱中症による心肺停止で亡くなりました。上尾市では遺族の求めに応じて第三者による事故調査委員会を発足させ、『上尾保育所事故調査委員会報告書』を公表しました。 そこには、子どもたちが「自由保育」という名の「放置」「放任」の保育をされている中で、行くあてもなくさまよっている姿が報告されていました。 保育所では「子どもの主体性に任せる自由な保育」を標榜していました。しかし実際には「保育士に園内での人数確認や子どもの動静を把握する習慣が身についていない」「職員全員で児童全員を見ようという取り組みができていない」など、基本的なことが何もできていなかったことが指摘され、「防ぎようもなく起こった事故ではない」と結論付けられています。「自由保育」と言いながら、その実、行われていたのは「放置」「放任」であったことがわかっています。 さらに・・・保育士同士の関係性が悪く、担任と副担任が口をきかないような状態だったこと、事故があったクラスにまるで「モンスターペアレント」のような保護者がいて、保育士達が担任になりたがらなかったこと、「モンスターペアレント」のせいで保護者同士の関係性が極めて悪かったこと、同じように子どもたちの関係性が悪かったことなどについても記しています。 つまり、子どもを放置・放任していてきちんと動静を把握していなかったことのほかに、園内での大人同士の関係が悪かったことも、この事故の要因のひとつにあげられます』、「「自由保育」と言いながら、その実、行われていたのは「放置」「放任」であった」とは、恐ろしい話だ。園内での大人同士の関係が悪いというコミュニケーション不足も問題だ。
・『人間同士のつながりが、事故を防ぐ園を作る 「保育園には、ただ預けられれば良い」とばかりに、保護者同士の関わりを持とうとせず、ときには保護者同士が挨拶もしないような殺伐とした関係の園も少なくないようです。処遇や人間関係の悪さなどから保育士が次々と辞める園では、保育士同士の関係も殺伐としているかもしれません。 保育は人間が行うものなので、いくらマニュアルを作っても、機械のように完全に事故を防げるものではありません。むしろ「人間」という不安定でファジーな存在を、お互いの結びつきによって確実なものにしていくことの方が安全につながるのです。 保育の現場では、たった1人の先生が致命的なミスをおかしたので子どもが亡くなったり大きなケガをした、というようなことは少なく、多くの人のミスが重なった場合に起こることの方が大きいのです。誰かがミスをしても、他の人が気付いて食い止められるような環境を、お互いに作っておくこと。それが子どもの生命を守るために大切です。保護者もその一員として、動かなければならないのです。 冒頭で挙げたように「園の中を見せようとしない」「午睡を真っ暗な部屋で行う」「きちんと嚥下できるような食環境を作っていない」「水遊びに監視がいない」というチェックをすることは安全な園を選ぶうえでとても大切です。ただ、入った後に「自分たちが一緒に安全な園を作る」という意識も必要なのだといえるでしょう』、預け放しの親やモンスターペアレンツなども問題で、親、保育士などのコミュニケーションを日頃から良くしておく必要もありそうだ。

次に、ジャーナリストの小林 美希氏が7月5日付け現代ビジネスに寄稿した「7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは? 」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56361
・『国家戦略特別区域諮問会議で新たな保育の規制緩和について示された。 地域を限定し、保育士資格をもつ人材が確保できない場合でも保育所を作りやすくする特例を設け「地方裁量型認可以降施設(仮称)」の設置が認められるが、有資格者の配置が緩和されることへの懸念は大きい。 もともと認可保育所には、保育士の配置について子どもの年齢ごとに最低基準が設けられている。 0歳児では子ども3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児は「6対1」、3歳児は「20対1」、4~5歳児は「30対1」となる。 これは、あくまで最低基準で、戦後まもなく作られたもの。保育の質を守るため、配置基準の引き上げは長年に渡る課題となっている。 しかし、安倍晋三政権の下、待機児童対策が政策の目玉となって急ピッチで保育所が作られるなか、保育士確保が困難になり、配置基準の引き上げはタブー視されるようになった。 そればかりか、待機児童対策のためにこの特例が提案されたのだ。特区では、配置基準の6割以上が有資格者であれば認可保育所と同等の補助金が受けられることになる。5年間の時限措置とはいうものの、自治体の判断によっては延長が可能とされる。 保育現場からは「保育の質どころか園児の命の安全を守ることができるのか」と波紋を呼んでおり、保育現場を揺るがす“事件”が起こったと言っても過言ではないだろう』、安倍政権は質を落としてでも、量を確保しようとしているようだが、保育現場から安全性を危惧する声が上がっていることは、都合よく無視しているようだ。
・『この規制緩和の過程では、2018年2月9日に、大阪府と大阪市から待機児童対策についてのヒアリング(国家戦略特区「提案に関するヒアリング」)が行われたことが影響した。 「大阪府・大阪市がめざす新たな保育人材の活用について」によれば、保育士は高い専門性があり、保育士の代替とするのではなく、保育士業務を分解して高い専門性が求められるもの以外の業務を保育支援員が協働。 3分の2は保育士を配置するため、質は維持できることとし保育支援員を基準数に入れるよう要望している。 その際、保育支援員は、ゆくゆくは保育士資格を取得することを目標としつつ、保育支援員1.5人で保育士1人に換算して人員配置すると提案していた。 大阪の提案を受けて厚生労働省が対応案を出す格好となった。 特区では、配置基準の6割以上は保育士という基準に緩和しつつ、待機児童解消までの時限措置として「地方裁量型認可移行施設」(仮称)を設置。 具体的な内容として、①保育士不足で運営が困難などの緊急的な場合に限り、認可保育園からの移行も可能、②「地方裁量型認可移行施設」にも、国の運営費の基準額にならって運営費を補助、③認可化移行の計画期間は5年間とし、自治体の判断で延長も可能、④保育事業者と利用者の直接契約、⑤保育の質の確保のため、指導・監査の実施や運営状況の見える化、都道府県の協議会による人材確保の実施・公表――となる。規制緩和派が従来から主張してきた、利用者との直接契約まで盛り込まれている』、なるほど、維新の会が言う通りにして、恩を売る狙いもあったとは・・・。
・『こうした提案は、過去にもされている。 2014年9月26日、国家戦略特区ワーキンググループでは、「提案に関するヒアリング」として、保育大手のポピンズから「特区における保育士・保育所制度に関する改革提案書」が出された。 東京都が先駆けて、配置基準の6割以上が保育士であればいいとする認証保育所を2001年から実施している。 同提案書では、「認可保育施設での保育士要件の7割化」が提案されている。基準の3割は保育士以外でいいというのだ。 さらに、議事録を見るとポピンズ社の中村紀子代表取締役会長は「認可保育所より、全て保育士でない認証保育所のほうが利用者からの満足度が高い」と言及さえしていた。 ちなみにポピンズ関連では、2016年度に認可保育所「ポピンズナーサリースクール市ヶ谷」で「保育士が適正に配置されていない」、2015年度に認証保育所「ポピンズナーサリースクール一之江」で「保育料の徴収額が要綱に定める限度額を超えている」と東京都による監査で文書指摘されている。 また、東京都大田区による2016年度の指導検査でも、認可保育所「ポピンズナーサリースクール長原」は、「重要事項の掲示が未実施」」「保育士が適正に配置されていない」「献立表(補食)が未作成」「虐待への対応が不適切」「事故報告が速やかに行われていない」「経理規定に従って会計処理が行われていない」と問題を文書で指摘されている。このような事業所の提案を是としていいものだろうか。 実際、認証保育所の現場からは悲鳴があがっている』、ポピンズ社の創業者会長は大口を叩いているが、相次いで当局から業務運営の問題点を指摘されているとは初めて知った。
・『7割が新人の保育所もある これまでの筆者の取材から、認証保育所で働く保育士が無資格者と一緒に担任になると「オムツの替え方も知らない状態で、いちから教えなければならず、負担が大きい。もう認証では働けない」と認可保育所へ転職していった例もある。 現場を見れば、大阪の提案のような「チーム保育」はまだまだ絵に描いた餅に過ぎない。 さらに、保育士確保が困難とされるケースでは、確保できたとしても新卒採用で経験の浅い保育士が多い。 厚労省の調べでも、現場は経験年数が低い層の保育士が多く、2012年時点でも7年以下の保育士が半数を占めている。 ある認可保育所の園長は、「ここ数年、新卒も奪い合い。大手がごっそり持っていくので、採用が難しい。中途採用で面接に来てくれれば、保育士であれば資質がなくても雇わなければならない状態。そこから育てていくしかない。うつ病で服薬中でも採用している」と困り顔だ。 ある自治体の保育課では「新規開設する保育所には、3割は経験のある保育士でとお願いしている」という。裏返せば、7割は新人でもやむなしというわけだ。 こうした状況では、保育の質を担保することは難しく、日常的に保育士による園児への虐待も起こり始めている。 身体への暴力ならあざなどから発見されやすく問題が明るみになる可能性もあるが、保育士が暴言を吐く、子どもに冷たく当たるなどの心理的虐待は問題視されにくい。 たとえ保護者が実態を掴んで保育課に助けを求めたとしても、泣き寝入り状態だ。複数の行政関係者が証言する。「保育の内容が悪いと分かっても、役所は厳しく監査も指導もできない。やり始めれば、事業者を打ち切るようなケースが多すぎる。園児の受け皿がなくなってしまうことを恐れ、うやむやに終わらせる」』、保育士による園児への虐待、行政も見て見ぬふりとは恐ろしいことだ。
・『認可保育所を維持するだけの保育士確保が困難ではなかったとしても、株式会社や社会福祉法人が利益重視の姿勢をとれば、賃金の低い層を雇って補助金はそのまま入る仕組みを利用したほうが、利益が残る。 有資格者の保育士を雇うより、無資格者を雇ったほうが人件費はかからないからだ。補助金収入の8割が人件費という労働集約型の保育事業でコストカットを目論むのであれば、人件費に手をつけるしかない。 認可の看板を地方裁量型認可移行施設に掛け変えるうま味は大きい。特区とはいえ、このような大欠陥のある制度を国が認めたのは、失政といえよう。保育士の処遇改善が叫ばれる中で、逆行して賃金が抑制されてしまう』、ポピンズのような業者が強力に働きかける筈だ。
・『真に現場で求められていること 第一に考えなければならないのは、預けられる子どもの処遇だ。内閣府「平成29年教育・保育施設等における事故報告集計」を見ると、保育士がいないことによる弊害が伺える。 調査の対象施設数が認可保育所は2万3410ヵ所に対して認可外保育所は6923ヵ所と、認可外が少ないにもかかわらず、「死亡」は、認可保育所で2件、認可外保育所では4件と多い。経年で見ても認可外のほうが死亡件数は多い。 また、同調査で注目すべきは、認可保育所であっても負傷等の事故が多く、年間に727件もあることだ。うち、意識不明は7件、骨折が587件となっている。保育士がきちんと配置されているはずの認可でも、重大な事故が多いのが実情だ。 年齢別で死亡・負傷等を見ても、1人当たりの保育士が見る子どもの人数が各段に増える3歳以上で多くなる。0歳では4件、1歳では31件、2歳で58件だが、3歳で96件、4歳で170件、5歳で250件、6歳で120件という実態だ。 こうした現状があるなかで、安倍首相は、国家戦略特区の議長として6月14日の諮問会議で「従来の認可保育園の枠組みでは実現しなかった、自治体の創意工夫による柔軟かつ適切な保育士の配置が実現します。これまで長年実現しなかった大胆な規制改革が、国家戦略特区において、今、次々と実現しています」と評している。しかし、これは規制改革を叫び営利を求める企業の声をくみ取っているだけに過ぎない。 企業が考えているのは、いかに人件費をかけずに利益を上げるか、だ。今、この国に子どもたちの声は届いてはいない。特区のような配置基準の事実上の引き下げによって犠牲になるのは子どもたちだ。一体、誰のための規制緩和なのか――』、安倍はキレイ事を言っているだけで、まさに業者のための規制緩和だ。
・『内閣府「平成29年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」から、配置基準より多く保育士を雇っていることが分かる。 公定価格(保育所を運営する費用)の基準だけで保育士を配置すると、つまり、保育士配置基準通りで保育士を配置すると、平均利用定員92人の場合、常勤換算で12.3人となるが、実施の配置状況は、私立では常勤が13.9人、非常勤が2.2人となり、合計4人も多く保育士を配置している。 無資格の保育補助者は、常勤で0.3人、非常勤で0.6人であり、必要とされているのは保育士だということが伺える。 厚生労働省は、「財源さえ確保されれば」という前提で、配置基準の引き上げを予定している。 すでに、3歳児の職員配置「20対1」については、現場で「15対1」にしている保育所には補助金が加算され支払われている。今後、1歳児の「6対1」を「5対1」に、4~5歳児の「30対1」を「25対1」へ引き上げられる見込みだ。 実際に、各自治体ではこうした上乗せ基準を設けており、より多くの保育士の配置が重要視されている。 これこそ、今、真に現場で求められていることで、決して、保育士配置の規制緩和ではない。 保育士の体制強化がおろそかになれば、かえって保育士の負担が増して離職につながるという悪循環に陥りかねない』、「保育士の負担が増して離職につながるという悪循環」というのは大いにあり得る話だ。

第三に、東京大学大学院教授の秋田 喜代美氏が7月13日付け東洋経済オンラインに寄稿した「保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/228749
・『幼児教育の無償化政策は、幼児期の教育がその後の学校教育だけではなく、成人以降の職業や生活満足などにも影響を与えることが明らかにされて以来、国際的にもホットなトピックである・・・日本における幼児教育の無償化は、国際的に見ても、必要かつ重要な政策であるのは間違いない。しかしながら、多くの人がすでに指摘しているように、問題はその条件にある』、なるほど。
・『第1に、対象とする時間である。日本では、保育標準時間(1日11時間)までの無償を想定しているが、端的にいって長すぎる。 一方、先進的に幼児教育無償化を進めたイギリスでは、週30時間年38週の無償化となっている。フランスでも「幼児教育の時間」とされる時間以外は、保護者から保育料を徴収している。他の欧州各国でも英仏同様である。 日本と同じように保育標準時間までの無償を想定しているのは韓国だけである。 現在のように1日当たり11時間を無償化するのではなく、短時間と長時間での無償化によって、どのような効果に違いがあるかを明確にし、長時間の無償化にかかる経費を削減し、それらを質の向上に回すべきである。 小学校教育でも授業の時間数が問題とされるように、子どもにとって教育の効用を考えるときには、教育をする「意味ある時間」というのが重要な要因である』、確かに1日当たり11時間は教育をする「意味ある時間」からは長すぎる。
・『第2に、対象となる施設範囲である。 今回、幼児期のナショナルカリキュラムである「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」では、3歳以上の教育内容について整合性が図られ、ほぼ同一の内容となっている。 その内容に基づいて教育に当たれるのは、専門の資格としての幼稚園教諭や保育教諭、保育士の人のはずである。ところが、認可外などの保育施設では、この資格の基準を満たす人員やその教育を行うにふさわしい施設基準が満たされていない。 それがそのまま、時には無資格者も含めてのシフト勤務のなかで、幼児教育という名のもとに無償化される。 さらに、研修する権利があり、免許更新制度も準備されている教諭に対し、保育士には研修の権利が法律では認められていない。ようやくキャリアアップ研修制度が準備されたが、それも常勤専任の保育士で年数も園での受講人数枠も決められている』、保育士には研修の権利が法律では認められていなかった、というのは驚いた。
・『幼児教育は、教育の専門家が行うべき事柄である。 だが、それが無償化の範囲となっている対象施設や時間すべてにあてはまらない状況になっている。つまり、無償化しても幼児教育の質はこれまでと何も変わらない。これで無償化の効果があると言えるだろうか。 他国では無償化により、就園していない子どもが就園できるようになり、小学校以上の基礎部分が形成される。一方、日本ではすでに3〜5歳で多くの子どもたちが就園しているため、無償化の効果は小さいとみられる。 今回の無償化政策は、保護者の保育ニーズに応える目先の人気取り政策であり、長期的な人材育成への政策になっておらず、「恵まれない子どもたちに優れた教育を」ということにもならない状況になりかねない』、目先の人気取り政策でしかないというのは、その通りだろう。
・『第3には、無償化だけが議論され、施設を評価する仕組みがないことである。 幼児教育無償化を長時間で実施している韓国であっても、幼児教育の無償化にともなって、質向上のための教育評価制度を同時に設けている。それによって、説明責任を果たす構造を有している。これに対して日本では、その施設を評価する仕組みがない。 保育所の第三者評価制度や幼稚園の学校評価制度はあるが、いわゆる経営や監査ではなく、幼児教育の内容やプロセスの質を問うた評価制度にはなっていない。つまり、無償化の資金投入だけを続けても、質が高まる保証のないままに投入することになる。 老人福祉などの制度でも評価制度は導入されている。モニタリングなしに認可外保育所なども含めた幅広に対象範囲を広げることが、制度的にも不十分であることは目に見えている。 ▽質向上に資金を投入すべき(無償化はすでに閣議決定されている。 それでもできることがあるとしたら、保育者の研修や幼児教育の質向上のための評価制度を導入することだろう。教育無償化などに使われる予算2兆円の5%でも10%でもいいから、質向上に必要な制度のために資金を充てることである。そして、政策効果を検証する調査研究を同時に行うべきである。 少子化に向かう日本において、累積負債世界一のわが国に必要なのは、さらなる負債を増やして、現在の子どもたちが成人になったときにその重荷を背負わせることではないはずである。 今ここでより良質の幼児教育を行えるような制度を整え、それと無償化をセットにしていかなければならない。認可外施設が無償化になることの有無の議論ではなく、認可外施設の数を減らし、認可施設の数を増大していけるようにするべきである。 さらに、待機児童の解消が先か幼児教育の無償化が先か、という優先順位の議論ではなく、子どもたちの人材育成のための政策を、防衛政策に多額のお金を投じるよりも優先していくような議論が必要なのである。 民間保育所、私立幼稚園の多いわが国であるからこそ、そこでの独自の乳幼児教育の質の向上政策に向けて公的資金を賢く投入すべきなのではないだろうか』、「幼児教育の内容やプロセスの質を問う評価制度にはなっていない。つまり、無償化の資金投入だけを続けても、質が高まる保証のないままに投入することになる」とは、何たる馬鹿らしさだ。もっとも、保育園と幼稚園の所管官庁すら一本化できない役所の壁の下では、統一的な評価制度など、夢のまた夢なのかも知れない。
・『無償化はすでに閣議決定されている。 それでもできることがあるとしたら、保育者の研修や幼児教育の質向上のための評価制度を導入することだろう。教育無償化などに使われる予算2兆円の5%でも10%でもいいから、質向上に必要な制度のために資金を充てることである。そして、政策効果を検証する調査研究を同時に行うべきである。 少子化に向かう日本において、累積負債世界一のわが国に必要なのは、さらなる負債を増やして、現在の子どもたちが成人になったときにその重荷を背負わせることではないはずである。 今ここでより良質の幼児教育を行えるような制度を整え、それと無償化をセットにしていかなければならない。認可外施設が無償化になることの有無の議論ではなく、認可外施設の数を減らし、認可施設の数を増大していけるようにするべきである。 さらに、待機児童の解消が先か幼児教育の無償化が先か、という優先順位の議論ではなく、子どもたちの人材育成のための政策を、防衛政策に多額のお金を投じるよりも優先していくような議論が必要なのである。 民間保育所、私立幼稚園の多いわが国であるからこそ、そこでの独自の乳幼児教育の質の向上政策に向けて公的資金を賢く投入すべきなのではないだろうか』、説得力に富んだ主張だ。
タグ:東洋経済オンライン 現代ビジネス 「保育園落ちた」(待機児童、「保活」)問題(その6)(命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために、7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは?、保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき) 猪熊 弘子 「命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために 」 日本では毎年、保育施設での事故で10数人の子どもが亡くなり、2004〜2017年までの14年間に亡くなった子どもは少なくとも198人に上ることがわかっています 圧倒的に認可外施設での事故の数が上回っています 危険なのは「くう・ねる・みずあそび」の時間 自由遊び」と「放置・放任」の違い 人間同士のつながりが、事故を防ぐ園を作る 小林 美希 「7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは? 」 「地方裁量型認可以降施設(仮称)」の設置 安倍晋三政権の下、待機児童対策が政策の目玉となって急ピッチで保育所が作られるなか、保育士確保が困難になり、配置基準の引き上げはタブー視されるようになった 大阪府と大阪市から待機児童対策についてのヒアリング(国家戦略特区「提案に関するヒアリング」)が行われたことが影響 保育大手のポピンズから「特区における保育士・保育所制度に関する改革提案書」が出された ポピンズ関連では、2016年度に認可保育所「ポピンズナーサリースクール市ヶ谷」で「保育士が適正に配置されていない」、2015年度に認証保育所「ポピンズナーサリースクール一之江」で「保育料の徴収額が要綱に定める限度額を超えている」と東京都による監査で文書指摘されている。 また、東京都大田区による2016年度の指導検査でも、認可保育所「ポピンズナーサリースクール長原」は、「重要事項の掲示が未実施」」「保育士が適正に配置されていない」「献立表(補食)が未作成」「虐待への対応が不適切」「事故報告が速やかに行われて 7割が新人の保育所もある 秋田 喜代美 「保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき」 第1に、対象とする時間である。日本では、保育標準時間(1日11時間)までの無償を想定しているが、端的にいって長すぎる 第2に、対象となる施設範囲である 第3には、無償化だけが議論され、施設を評価する仕組みがないことである 教育無償化などに使われる予算2兆円の5%でも10%でもいいから、質向上に必要な制度のために資金を充てることである。そして、政策効果を検証する調査研究を同時に行うべきである
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日本のスポーツ界(その17)(代表監督の問題点 なぜ国際経験のない日本人から選ぶのか、代表監督の問題点 なぜ国際経験のない日本人から選ぶのか、剣道連盟で金銭授受問題 「段位」制度はもはや時代遅れ?、金足農「投手の玉砕」を賞賛する甲子園の病 いったい誰のための高校野球なのか?) [社会]

日本のスポーツ界については、8月12日に取上げた。今日は、(その17)(代表監督の問題点 なぜ国際経験のない日本人から選ぶのか、代表監督の問題点 なぜ国際経験のない日本人から選ぶのか、剣道連盟で金銭授受問題 「段位」制度はもはや時代遅れ?、金足農「投手の玉砕」を賞賛する甲子園の病 いったい誰のための高校野球なのか?)である。

先ずは、8月17日付け日刊ゲンダイ「代表監督の問題点 なぜ国際経験のない日本人から選ぶのか」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/235504
・『西野ジャパンは継続されることなく、日本サッカー協会(JFA)は既定路線だった「オールジャパン体制」として森保・五輪監督の代表監督兼任を発表した。この<日本化>に不安要素はないか? ブンデスリーガ1部クラブ元コーチの鈴木良平氏、サッカーダイジェスト元編集長の六川亨氏、ワールドサッカーグラフィック元編集長の中山淳氏の3人の論客が、森保ジャパン誕生の経緯と問題点をズバリ斬る!』、なるほど。
・W杯史上初の1次リーグ敗退に終わったドイツだが、W杯期間中にレーウ監督の留任を発表し、全面的バックアップを表明した。ドイツ復活のために指揮官は誰が適任なのか、じっくりと検証して結論を導いた」 六川「翻って日本の場合は、まずは<日本人監督を据える>という既定路線があった。代表監督を選ぶのに国籍ありきではなく、誰が日本代表を強くできるのか、何よりも<個々の名前>で選ぶのが筋ではないか」 中山「日本代表選手の多くが欧州に渡って言葉を覚え、コミュニケーションを図り、懸命にスキルを磨きながら世界と戦っている。なのに次期監督を国際経験のない日本人の中から選ぼうとし、実際に森保監督がA代表を兼任することになりました。日本人監督の“正当性を補完する”ためにオールジャパン、日本人らしいサッカー、ジャパニーズウエーといった言葉が使われ始めました」』、あのドイツが冷静に監督を留任させたというのはさすがだ。他方、日本の場合は日本人監督を据えるという既定路線があったとは、やれやれだ。何がジャパニーズウエーだ。
・『鈴木「森孝慈・元日本代表監督は1979年にドイツに向かい、名門ケルンの名将バイスバイラーの薫陶を受けた。日本代表を託するにふさわしい若手指導者を日本サッカー協会や日本体育協会(現日本スポーツ協会)が、積極的に欧州に送り出して国際経験を積ませようとしたのです。そういうやり方が、今後は必要となる」 六川「そもそもJFAの技術委員会は、機能していると言えるのか? 森保監督は現在、東京五輪世代のU―21を率いて14日スタートのアジア大会を戦うためにインドネシアに滞在中。決勝まで進むと帰国は9月に入ってから。9月7日からはA代表監督としてキリンチャレンジ杯を戦う。森保監督を補佐するコーチの適任者は誰なのか、欧州組や国内組の代表候補をスカウティングするのは誰なのか、どんなバックアップ体制がとられているのか、まったく見えてこない。ロシアW杯の決勝T進出という<熱気に浮かされる>格好で何も進んでいない」 中山「森保監督自身も不安でしょう。国際経験に乏しく、何も分からないのにアジア大会に臨み、A代表の監督として初采配となるキリンチャレンジ杯を戦い、そして来年1月にはアジアカップが控えているわけですから」』、国際経験のない森保監督の補佐体制が未定とは、お粗末極まりない。
・『鈴木「ドイツ代表にチームマネジャーという役職があり、元代表FWだったビアホフが務めている。彼がメディア対応などを担当し、レーウ監督の負担を大きく軽減している。代表候補選びにしても、かなりの人数のスカウティング担当者が全国を回り、詳細なリポートを作成している。日本サッカーのかじ取り役を森保監督に決めたJFAは、ビアホフのようなチームマネジャーを探し出し、強力にバックアップしていくべきだろう」』、その通りだろう。

次に、上記の続きを8/18日刊ゲンダイ「ベルギー戦の敗因と見えた課題 日本サッカー協会への提言」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/235616
・『中山「ロシアW杯のラウンド16で対戦したベルギーですが、大きな大会ではひ弱さを見せるところがあり、日本にもチャンスがあると予想していました。0―2とリードされたベルギーはそこから選手の2枚替え、システム変更と監督が好采配を見せ、日本は衝撃的な逆転負けを喫しました」 鈴木「決勝点はMF本田のCKを199センチの長身GKがキャッチしたところからスタートした。ハイボールにめっぽう強いGKがいるのに経験豊富な本田が、なぜ山なりのボールを蹴ったのか? 理解できない」 六川「途中出場して同点ゴールを決めたMFフェライニは、すでにピークの過ぎた選手と思っていたが、準々決勝ブラジル戦、準決勝フランス戦はスタメンで出場した」 中山「ベルギーの監督は戦術的に難があると批判されていたが、日本戦の采配がズバリ的中したことで覚醒し、それが停滞気味の選手にも伝わった。準々決勝以降は強さを見せて6勝1敗・16得点の3位は見事でした」・・・鈴木「FWルカク、MFアザール、MFデブルイネの攻撃陣は強力だったね」』、本田のミスは致命的だったのに、これを表立って批判する主要メディアがなかったのは、日本のメディアの限界なのだろう。
・『六川「日本サッカー協会(JFA)が<オールジャパン化>を推進するのなら、たとえば98年フランスW杯の最終予選、本大会でプレーして現在Jで采配を振っている磐田の名波監督、長崎の高木監督、福岡の井原監督、町田の相馬監督ら将来性のある指導者を、海外の代表チームでも強豪クラブでもJFAの提携先で1年、2年と武者修行させるとか、そういった手だてはいかが?」 鈴木「妙案だ。JFAには、アグレッシブで大胆な強化策を期待したい」』、正論である。

第三に、スポーツライターの相沢光一氏が8月21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「剣道連盟で金銭授受問題、「段位」制度はもはや時代遅れ?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/177831
・『競技団体の不祥事が続く中、今度は全日本剣道連盟(全剣連)で長年続いていた不正が発覚した。 全剣連は剣道、居合道、杖道・・・の3部門を統括しているが、不正があったのは居合道。最高位の八段および、それにつく称号である「範士」の昇段審査で金銭の授受があったという。 剣道の段位は初段から八段まであるが、段位を上げて高段者になるには一生かかる厳しい道だ。初段は一級(級は六級から一級まで)を持つ13歳以上の者が審査を受ければ大体取得できるが、二段は初段取得後1年以上修業、三段は二段取得後2年以上修業といった具合に、昇段審査を受けるには一定の修業期間が設けられている。また、段位が上がれば上がるほど昇段審査は厳しくなり、合格率も下がっていく。だから才能に恵まれた者が修業に打ち込んだとしても五段になるには10年以上、六段になるには20年近くかかるといわれる。 最高位である八段の昇段審査の受審資格を得るには七段取得後10年以上の修業が必要なうえ、合格率は約1%。この道一筋で30年から40年、修業を積んできた猛者たちが100人受けても1人合格するかどうかという狭き門なのだ。 五段以上の高段者には段位とは別に、指導力や人格を備えていることを示す「称号」を与える審査もある。称号は「錬士」、「教士」、「範士」の三種。たとえば錬士は、五段取得後10年以上修業したうえで所属連盟会長から推薦された者に受審資格が与えられるといったように、それぞれ厳しい条件がつく。だから最高位の八段と範士までたどり着けるのは、ごくわずかだ。全剣連の居合道部門の会員は約9万人いるが、範士八段は50人ほどしかいないという』、ここまで狭き門とは恐れ入った。
・『この、ごく限られた者しか挑戦できない頂点の審査において合格のための金銭授受の不正が行われていたのだ。審査員は範士八段が務めるという。居合道は形を見せるものであり、評価には主観的な要素が入る余地がある。その辺の事情に明るい関係者が仲介役となり、どうしても合格したい受審者から金銭を受け取って審査員に分配していたようだ。不正が発覚したのはひとりの受審者の告発がきっかけだが、その告発状によれば総額で650万円の要求があったそうだ』、名誉だけでなく、道場の塾生の集まりなど経済的メリットもあるのだろう。
・『今回の問題が報道された後、全剣連居合道部門の関係者は、「反省している、再発防止に努める」としながらも、「正当化するつもりはないが、茶道や華道など芸事の世界では、こうした行為はよくある」とも語ったという。 たしかに日本の伝統的な武道や芸事では、ありがちな話だ。茶道や華道に段位はないが、流派によって技能の等級を表わす「許状」があって、その取得のためには付け届けが必要だといわれる。日本舞踊もそうだ。技能が上達した証しである名取になるにも、弟子をとって指導できる師範になるにも、家元や師匠に100万円単位の大金を収めなければならない、といった話も聞く。・・・大金を払ってでも段位や許状、名跡を取得すればいいことがあるのだ。取得すれば周囲から尊敬の目で見られるし、弟子を取って指導することもできる。居合道の範士八段にしても、学校や自ら経営する道場で指導する際に箔がつくわけだ。また、昇段審査の審査員を務めることができる。審査員は最高権威者であり、この道を歩んできた者は誰もが憧れる存在だ。大変な努力をしてなったという思いがあるだろうし、中には大金を支払ってこの地位についた人もいるだろう。自分も払ったんだから、その見返りを求める意識が働くのも無理はない。そのようにして続いてきた慣習なのだ。 「他の芸事ではよくあること」という関係者は次のような感覚なのだろう。このレベルまで達する者は長年居合道にすべてを捧げ、技能抜群の達人ばかり。八段や範士の受審はその集大成であり権威を付与するものだ。そこには他の世界にはない慣習がある、と』、コンプライアンス意識が社会に浸透してきたなかで、慣習とはいえ、こんなことがいまだに横行していることに驚かされた。
・『だからといって金銭絡みの情実で合格が決まるのは許されることではない。級から始まって、初段から段位を上げていく過程の審査は厳正に行われているはずだ。その最終到達点の審査で不正が行われていれば、すべての段位審査の信用さえ失いかねないのだ。 全剣連によれば最高段位の八段は「剣道の奥義に通暁、成熟し技量円熟なる者」、範士は「剣理に通暁、成熟し、識見卓越かつ人格徳操高潔なる者」に付与するとある。こうした存在として認められるために金銭授受が必要というのは風刺でしかない。 そもそも武道の段位には、一般社会から見て首を傾げたくなることばかりだ。たとえば柔道。全日本選手権や、さらにその先の世界選手権、オリンピックに出場する選手の多くは三段から五段だ。最強の柔道家といわれる山下泰裕氏(現全日本柔道連盟会長)が1984年ロス五輪で優勝した時は五段だった。前人未到の203連勝して引退した時でも六段。過去の例では十段取得者もいるのにだ(実は柔道の段位に上限はないとされている)。また、剣道の全日本選手権優勝者も五段、六段の選手が多い(過去には七段もいた)。一番強い選手でも最高段位ではないのだ。 一度上がった段位は下がらないということもある。段位は強さだけで決まるものではなく、どれだけ修業を積んだか、奥義に達し、指導力を発揮するという要素もある。七段、八段の人は年齢的な衰えもあって強さは発揮できないが、柔道家、剣道家としてはそれ以上の存在になっているというわけだ。囲碁、将棋の場合、段位と強さは比較的一致するが、強さに技術だけでなく若さ=パワー、スピードなどが必要な柔道・剣道は、一致させることが難しいのだ。 つまり剣道、柔道の七段、八段は権威的存在といえるだろう。そこが伝統的な芸事と共通している部分であり、現代の常識との齟齬が生まれるわけだ』、なるほど。
・『しかし今は競技を見る側も、そして若い選手たちもスポーツとしてとらえている。フェアでなければ成立しないのだ。剣道、柔道は日本が誇る武道であることは確かだが、今回のような不正は世間の理解を超えている。伝統を守るだけでなく、改めるべきことは改める時期にきているのではないだろうか』、スポーツである以上、改めなければ、権威の失墜、人気の離散といった道を辿るだろう。

第四に、ライターの広尾 晃氏が8月23日付け東洋経済オンラインに寄稿した「金足農「投手の玉砕」を賞賛する甲子園の病 いったい誰のための高校野球なのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/234656
・『第100回の夏の甲子園は、例年以上の盛り上がりの中、閉幕した・・・大会の深まりとともに、超エリート私学の大阪桐蔭と、地方の公立農業校、金足農業の活躍が際立ち、両者が決勝で対戦したことで、最高潮を迎えた。 興行的には誠に喜ばしい結果になったが、今年ほど、甲子園の運営に厳しい目が注がれた大会もなかっただろう。 その契機となったのは「酷暑」だ・・・NHKの高校野球中継では、「高温注意情報」と題して無用の外出を止め、熱中症対策を呼び掛けるテロップが、炎天下で球児が野球をする中継画像の周囲を囲んだ。これはシュールな絵柄ではなかったか・・・大会期間中、多くの選手が足がつるなど熱中症の初期の症状を訴え、治療を受けた。熱中症で途中で交代したアンパイアも出た。ぎりぎりの状態での大会運営だったことは間違いないだろう』、NHK高校野球中継の画面は確かにシュールだが、夏場の開催を見直す動きはなさそうだ。
・『それ以上に問題視されるのが、投手の「酷使」だ。 もともと、日本の高校野球は、世界のアマチュア野球の潮流から見れば、異様な存在である。 アメリカでは「ピッチ・スマート」という名前で年齢ごとの投球数と登板間隔を定めている。高校生に相当する17~18歳では76球以上投げた投手は4日以上の登板間隔を開けなければならない。しかるに今年の夏の甲子園では、金足農業の吉田輝星(こうせい)は、8日の初戦から大会を通じて計881球を投げた。アメリカなど海外の指導者が聞けば、卒倒するような数字だ』、これを美談に仕立て上げるメディアも罪作りだ。
・『「甲子園至上主義」という悪弊 すでにアメリカなど海外メディアは、日本の高校野球の登板過多、投球過多には強い関心を持っている。2013年、済美の安樂智大(あんらく・ともひろ、現楽天)が、春の甲子園で決勝戦まで一人で772球を投げた時は、アメリカのジャーナリスト、ジェフ・パッサンが安樂や済美の上甲監督(当時)に取材し「甲子園至上主義」ともいうべき日本の高校野球の特殊性を世界に発信した。 日本からMLBに渡る投手に対するメディカルチェックが厳しいものになっているのも、ほとんどの投手が「甲子園の洗礼」を受けているからだ。 甲子園で多くの球数を投げた投手の将来は、明るいとはとても言えない。 12年前に「ハンカチ王子」との愛称で全国的な人気となった斎藤佑樹は今年30歳となり、進退をかけるマウンドが続いている。他の投手も一時的には全国的に注目されたが、松坂大輔を除いてプロで活躍した投手はいない。その松坂にしても、同世代屈指の投手と言われながら、200勝には遠く届かない。成功したと言い切れないのではないか。 2013年春に772球を投げた安樂も楽天で5勝10敗、防御率3.50とくすぶっている。 881球を投げた金足農業の吉田の前途も洋々とは言えないだろう。 高校生の世代で短期間に膨大な球数を投げれば、その後の野球人生に深刻な影響を与えるのは、疑問の余地がない。選手生活も短くなり、投手を続けられなくなる可能性さえある。 それが自明でありながら、日本の高校野球は毎年のように登板過多の投手を出している。そして多くの大手メディアは、これをもろ手を挙げて賞賛している。 確かに今年の金足農業のように、地方の公立農業高校が決勝まで駆け上がるのは、快事ではあろう。地方経済が縮小し、農業も高齢化が進む中、日ごろは家畜の世話をし、田畑で農作業を学ぶ高校生が大活躍すれば、地元の人々は大いに勇気づけられるだろう』、高校生投手でこれだけ多くの犠牲を出しながら、見直しの声が少数派なのは残念だ。
・『メディアの役割 しかし、それを報じる一方で、投手の酷使による健康被害について懸念を示すのが、健全なメディアではないのか。 テレビのワイドショーも連日、金足農業の活躍を取り上げた。試合に勝った日に高校で豚が9匹の子を産んだことまでにぎやかに報じたが、投球数に関する報道は極めて少なかったように思う。それどころか、ある野球評論家は決勝戦の前に「吉田君は投げ方がいいから、肩や肘に負担がかからないので大丈夫ですよ」と発言していた。これはきわめて無責任な意見だと思う。 8月20日に甲子園で行われた始球式に臨んだ桑田真澄氏は、金足農業の吉田に「僕も大阪大会で5連投した経験者として、もしも痛いところが出たらすぐに声を出してほしい」とアドバイスしたと報じられた。桑田氏は投手の酷使を懸念し、高校野球改革の必要性を訴えているが、その記事の扱いは極めて小さかった。 ネットでは、橋下徹氏をはじめ、投手の酷使、登板過多に対する懸念を表明し、甲子園の仕組みを改革すべきだという意見が数多く発表されている。しかしその多くは雑誌系メディアであり、新聞系のメディアはほとんどこれに触れていない。また論じているのは橋下氏など外部の有識者やフリーライターなどであり、大手新聞の記者で明確な意思表示をした人はほとんどいないのではないか。 まるで甲子園の投手の酷使や、球数制限について触れるのは、タブーであるかのようだ』、「吉田君は投げ方がいいから、肩や肘に負担がかからないので大丈夫ですよ」と発言していた野球評論家の無責任ぶりにはあきれるほかない。桑田真澄氏のアドバイス記事の扱いが極めて小さかったというのも、新聞系メディアのタブーのためなのだろう。
・『今年、甲子園の投手の酷使が例年以上に大きな話題になっているのには、ある新書の出版が与えた影響が大きい。『甲子園という病』(新潮新書)・・・著者の氏原英明氏は十数年にわたって高校野球に密着し、選手の技術からメンタルまできめ細かな取材を行ってきた・・・その氏原氏をして、甲子園は危機的な状況であり、トーナメント戦からリーグ戦への移行など、大胆な改革が必要だ、と書かしめたのだ。『甲子園という病』は、外部の有識者の懸念とは一線を画す切実な思いが込められた本だといえよう。 氏原氏は今大会も連日甲子園の記者席に詰めて、全試合を観戦し、選手、指導者のインタビューにも参加している。大会期間中に氏原氏に話を聞いた。「私が高校生の投手の酷使に疑問を抱いたのは、2013年春の安樂投手の772球がきっかけでした。あのときは、日本のメディアも少しは取り上げましたが、夏に安樂投手が出てきたときには、もう球数の話はしなくなりました。今大会も、済美対星稜の試合で済美の山口投手が延長13回を1人で投げきり、184球を投げました。 この試合後のインタビューで、新聞などメディア系の記者は誰も球数について監督や選手に質問しませんでした。侍ジャパンU18メンバー発表の際に連投した金足農の吉田投手が入っていることを質問したのも私だけでした。フリーランスのライターがその質問をするとその答えを記者たちがメモをとる。そんな図式です。何を恐れているのか、何に忖度しているのか、と思います」(氏原氏) 『甲子園という病』は、アマゾンのスポーツジャンルで上位にランクされるなど、多くの人に読まれている。それだけ今の高校野球報道に不満を持ち、疑問を抱いている人が多いということではないかと思う。 大げさに言えば、これは「メディアの危機」でさえある。現場の誰もが認める「投手の投球過多」という深刻な問題を、そのまま伝えることができない新聞、テレビ。何かに忖度をして口を閉ざすメディアは、果たして信頼するに足るのか』、何かに忖度をして口を閉ざす「メディアの危機」は、この問題に止まらず、政治面でも顕著になっているので、決して大げさではないと思う。
・『有力な高校の監督に話を聞くと、「私たちがいくら投手を大事に使おうと思っても、今の地方大会、高校野球の日程が変わらないのだから、どうしたって酷使せざるを得なくなっている。学校や監督の力だけでは、どうすることもできない」という意見がしばしば出てくる。このあたりが「病」といいたくなるような根の深さなのだと思う。 21日の甲子園閉会式で高野連の八田英二会長は「秋田大会からひとりでマウンドを守る吉田投手を他の選手が盛り立てる姿は目標に向かって全員が一丸となる高校野球のお手本のようなチームでした」と語った。 そこには、高校野球が直面している大きな問題に対する危機感はうかがえなかった。金足農業のように、1人の投手しか用意せず、過酷なトーナメント戦を玉砕戦法で戦う高校が今後も増えれば、高校野球への不信感はさらに高まるだろう。 いろいろなしがらみはあるだろうが、高野連、朝日新聞などのメディアは、誰のために、何のために高校野球を運営し、報道しているのかを改めて考えるべきだろう。記念すべき100回大会を、そのための起点にしてもらいたいものだ』、その通りだ。
タグ:東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン 桑田真澄氏 日本のスポーツ界 (その17)(代表監督の問題点 なぜ国際経験のない日本人から選ぶのか、代表監督の問題点 なぜ国際経験のない日本人から選ぶのか、剣道連盟で金銭授受問題 「段位」制度はもはや時代遅れ?、金足農「投手の玉砕」を賞賛する甲子園の病 いったい誰のための高校野球なのか?) 「代表監督の問題点 なぜ国際経験のない日本人から選ぶのか」 森保・五輪監督の代表監督兼任 日本の場合は、まずは<日本人監督を据える>という既定路線があった。代表監督を選ぶのに国籍ありきではなく、誰が日本代表を強くできるのか、何よりも<個々の名前>で選ぶのが筋ではないか」 日本代表選手の多くが欧州に渡って言葉を覚え、コミュニケーションを図り、懸命にスキルを磨きながら世界と戦っている。なのに次期監督を国際経験のない日本人の中から選ぼうとし、実際に森保監督がA代表を兼任することになりました。日本人監督の“正当性を補完する”ためにオールジャパン、日本人らしいサッカー、ジャパニーズウエーといった言葉が使われ始めました」 どんなバックアップ体制がとられているのか、まったく見えてこない 「ベルギー戦の敗因と見えた課題 日本サッカー協会への提言」 決勝点はMF本田のCKを199センチの長身GKがキャッチしたところからスタート 相沢光一 「剣道連盟で金銭授受問題、「段位」制度はもはや時代遅れ?」 居合道。最高位の八段および、それにつく称号である「範士」の昇段審査で金銭の授受があった 最高位である八段の昇段審査の受審資格を得るには七段取得後10年以上の修業が必要なうえ、合格率は約1% 全剣連の居合道部門の会員は約9万人いるが、範士八段は50人ほどしかいない 総額で650万円の要求 剣道、柔道の七段、八段は権威的存在 スポーツとしてとらえている。フェアでなければ成立しないのだ 広尾 晃 「金足農「投手の玉砕」を賞賛する甲子園の病 いったい誰のための高校野球なのか?」 投手の「酷使」 アメリカでは「ピッチ・スマート」という名前で年齢ごとの投球数と登板間隔を定めている。高校生に相当する17~18歳では76球以上投げた投手は4日以上の登板間隔を開けなければならない 今年の夏の甲子園では、金足農業の吉田輝星(こうせい)は、8日の初戦から大会を通じて計881球を投げた 甲子園至上主義 日本からMLBに渡る投手に対するメディカルチェックが厳しいものになっているのも、ほとんどの投手が「甲子園の洗礼」を受けているからだ 甲子園で多くの球数を投げた投手の将来は、明るいとはとても言えない 松坂大輔を除いてプロで活躍した投手はいない 高校生の世代で短期間に膨大な球数を投げれば、その後の野球人生に深刻な影響を与えるのは、疑問の余地がない。選手生活も短くなり、投手を続けられなくなる可能性さえある 金足農業の吉田に「僕も大阪大会で5連投した経験者として、もしも痛いところが出たらすぐに声を出してほしい」とアドバイス 大手新聞の記者で明確な意思表示をした人はほとんどいないのではないか。 まるで甲子園の投手の酷使や、球数制限について触れるのは、タブーであるかのようだ
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中東情勢(その13)(トルコ問題1)(トルコ・ショック 真の懸念は「欧州難民危機」再来、トルコ危機 世界金融秩序の凋落を露呈、米国とトルコ 強権大統領の経済音痴が招く危機 トランプvs.エルドアン 米国の経済学者はいずこへ) [世界情勢]

昨日に続いて、中東情勢(その13)(トルコ問題1)(トルコ・ショック 真の懸念は「欧州難民危機」再来、トルコ危機 世界金融秩序の凋落を露呈、米国とトルコ 強権大統領の経済音痴が招く危機 トランプvs.エルドアン 米国の経済学者はいずこへ)を取上げよう。

先ずは、みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏が8月14日付けロイターに寄稿した「コラム:トルコ・ショック、真の懸念は「欧州難民危機」再来=唐鎌大輔氏」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisuke-karakama-idJPKBN1KZ05W
・『トルコリラ急落を受けた混乱が新興国のみならず先進国の市場にも影響を及ぼしている・・・米連邦準備理事会(FRB)が引き締めを継続している以上、遅かれ早かれ「新興国市場からの資本流出」自体は起こるべくして起こることであり、見通しを作る上では自然な想定であると述べてきた。 つまり、「あとはきっかけ待ち」という状況にあったところ、今回のトルコリラ・ショックが起きたというのが筆者の理解だ。これを機に新興国市場からの資金流出が続く展開に構えたい』、想定通りで意外性はないようだ。
・『もともとトルコリラ安の底流には中央銀行への政策介入も辞さないエルドアン大統領の経済政策という内政要因があったが、対米関係の悪化という外交要因もあった。とりわけクーデター容疑でトルコ当局に拘束されている米国人牧師を巡って問題がこじれた結果、「鉄鋼・アルミニウムに係る追加関税率を倍に引き上げる」という米政府の決定につながり、トルコリラ急落のトリガーを引くに至っている』、なるほど。
・『トルコが現状を打開するために必要な選択肢は、1)緊急利上げに踏み切る、2)米国人牧師を解放する、3)資本規制の強化、4)国際金融(IMF)支援の要請である。 もっとも、「利下げをすればインフレ状況も落ち着く」という奇異な主張の持ち主であるエルドアン大統領は8月12日の演説で、1番目の選択肢については「自分が生きている限り、金利のわなには落ちない」と一蹴しており、その上で2番目にも応じない姿勢を明確にしている。また、4番目の選択肢についても「政治的主権を放棄しろというのか」と述べ、これも退けた。 今のところトルコは、3番目の選択肢を取っている。8月13日早朝、トルコ銀行調整監視機構は・・・投機的なリラ売りの抑制に踏み出している。 しかし、投機のリラ売りを抑制しても同国が経常赤字国であるという事実は変わらないので実需のリラ売りは残る。資本規制を強化するほど、トルコへの投資は敬遠されるはずであり、経常赤字のファイナンスは難しくなる。新興国が危機に陥る際の典型的な構図が見て取れる』、資本規制強化は対策というより、事態をますます悪化させるようだ。
・『トルコ・ショックはどれほどの震度を持つと考えるべきなのか。今回、トルコ・ショックが先進国市場にまで影響を及ぼし始めたのは、欧州系銀行がトルコに対して大きな債権を持っているのではないかという懸念を8月10日付の英紙フィナンシャル・タイムズが報じてからだった。 同報道では「欧州中銀(ECB)がスペイン、フランス、イタリアの国内銀行が抱えるトルコ向け債権の大きさを懸念している」といった趣旨の関係者のコメントが紹介されており、記事の中で各国大手銀行の名前が具体的に挙げられていたことから同日の対象銘柄株価は大きく値を下げ、これが世界的な株安につながった格好である。 しかし、国際決済銀行(BIS)の統計を見る限り、そこまで懸念すべき事態なのかは判断がつかない。確かに、トルコの国内銀行が外国銀行に対して持つ対外債務の約6割がスペイン・フランス・イタリアによって占められていることから、市場が「トルコ発、スペイン・フランス・イタリア経由、ユーロ圏行き」といった危機の波及経路を心配することも一理ある。このところのトルコリラ急落を踏まえれば、外貨で借り入れている債務の為替ヘッジが進んでおらず債務不履行に陥る部分が出てくる可能性は確かにある。 とはいえ、トルコにとって欧州が重要な債権者であるからと言って、欧州にとってトルコが同じくらい重要な債務者であるとは限らない。例えば、国際与信残高(国外向けの与信残高)を見ると、スペインは約1.8兆ドル、フランスは約3.8兆ドル、イタリアは0.9兆ドルである。ちなみに、ドイツは約2兆ドルだ。 ここで、それらユーロ圏4大国の国際与信残高合計に占めるトルコ向け与信残高の割合を計算してみると、2%にも満たないことが分かる。国別に見てもスペインの4.5%が最大であり、トルコ・ショックがそのまま欧州金融システムを揺るがすような話になるとは考えにくい』、欧州金融システムに関しては一安心のようだ。
・『だが、問題がないわけではない。というのも、欧州連合(EU)はトルコに対して大きな借りがある。2015年に勃発し「債務危機を超える危機」とも言われる欧州難民危機は今も根本的な解決には至っておらず、正確には解決のめどすら立っていない。だが、その一方で大きな混乱も招いていない。 これはなぜなのか。ひとえにEUとの合意に従ってトルコが難民をせき止めているからである。EUに流入する難民の多くは内戦激化により祖国を飛び出したシリア人であり、トルコ経由でギリシャにこぎ着けてEUに入るというバルカン半島を経るルートを利用していた。ゆえに、EUとしては何とか経由地であるトルコの協力を得て流入をせき止める必要があった。 2016年3月18日、ドイツが主導する格好でトルコとの間で成立した「EU・トルコ合意」は非常にラフに言えば、「カネをやるから難民を引き取ってくれ」という趣旨の危うい合意だが、効果はてきめんだった。少なくとも、その合意がEU(とりわけドイツ)に余裕を与えているのは紛れもない事実である』、トルコがとりあえず引き取っている難民問題は、確かに大問題だ。
・『これは裏を返せば、難民危機はトルコひいてはエルドアン政権次第ということである。ここに至るまでの大統領の言動を見る限り、今後、意図的に難民管理をずさんなものにするリスクはないとは言えまい・・・トルコの政治・経済自体が混乱を極めれば難民を管理しきれないという過失も考えられる。どちらにせよトルコがいつまでも欧州のために難民をせき止めてくれる保証はない。 率直に言って、EU域内に難民流入が再開するのは非常にまずい。そうなった場合、難民流入に不平不満を抱えるイタリアのポピュリスト政権が勢いづくだろう。ただでさえ、それを切り札として欧州委員会と交渉する雰囲気があるのだから、事態はより複雑になるはずだ。 また、10月にバイエルン州選挙を控えるメルケル独政権も難渋するだろう。難民受け入れのあり方を巡って長年の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)がメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と仲たがいを起こしたことが6月に話題になったばかりだ。ここで状況が悪化したら余計に両者の溝が埋め難くなろう。 さらに2019年5月には欧州議会選挙もある。EU懐疑的な会派をこれ以上躍進させないためにも難民を巡る状況はやはり悪化させるわけにはいかない。 金融市場ではトルコの国内金融システム混乱がユーロ圏に波及する経路が不安視されているが、現実的にはエルドアン政権が欧州難民危機ひいてはEU政治安定の生殺与奪を握っている事実の方がより大きな脅威であるように思われる』、確かにトルコ問題からは目を離せないようだ。

次に、8月15日ロイターが掲載したコラムニストのEdward Hadas氏による「コラム:トルコ危機、世界金融秩序の凋落を露呈」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/column-turkey-crisis-idJPKBN1L00MT
・『トルコの通貨危機は予想しやすかった。それよりも驚くべきは、世界の反応の弱さだ。従来の世界金融秩序が非常に惜しまれる事態だ。 大規模な経常赤字を補うため短期融資に頼り続けてきた国に、大混乱が起きることはほぼ必然といえる。それだけではない。多額の外貨建て借入金と高インフレが、混乱を拡大した。トルコ政府が、経済維持の一助となった国際金融機関の助言をはねつけたことも、混乱に拍車をかけた。 トルコのエルドアン大統領が、これまで深刻な問題を回避できたのは幸運だった。しかし現在、彼は危機に直面している。自国通貨リラは5月初め以降、対ドルで42%下落。国内で金融危機が起きるのを防ぐには、奇跡か国際支援が必要だろう』、なるほど。
・『2009年、エルドアン氏が当時首相として率いていたトルコ政府が、国際通貨基金(IMF)からの助言をもはや必要としないと発表してから、トルコは大きく様変わりした。「つえなしで前に進む」ことを選んだのだ。 トルコは長年、IMFの支援に大きく依存していた。1970年から2009年に至る大半の期間で、IMFから「スタンドバイ取り決め(SBA)」を受けてきた。トルコ政府が経済改革に取り組み続ける限り、IMFは支援を約束した。 だが今回、IMFはいまだにトルコからの電話を待っている。IMFにはリラを安定させるのに必要な知識と、恐らくそのための資金もあるが、エルドアン大統領はIMFをトルコ国民の「敵役」に選んだ。 IMFに対する反感は大統領の国家主義的で独裁主義的な意図に沿うものだが、同時に痛ましいパターンにも一致する。伝統的な権力者は、世界的な金融問題に見舞われると、身動きが取れなくなる。 自由貿易や自由な資本移動、自由市場の原則にやみくもに忠実だと広くみられていることで、IMFの名声は傷つけられた・・・専務理事を務めるクリスティーヌ・ラガルド氏の下でIMFのアプローチは軟化したものの、トルコの頑なさは、かつては存在したモラル的権威がIMFに欠けていることを示唆している』、エルドアンにしてみれば、IMFに指図されるのはもうこりごりということなのだろうが、トルコ経済はまだまだ支援を必要としている筈だ。
・『そして米国はかつて、反抗的な政府や債権者、交渉者に圧力をかける際には信頼できる圧力源だった。世界金融システムの管理人として、軍事的覇権を握る国として、また世界最大の経済国として、米国は強力なアメとムチを持っていた。 だがそれはもう過去の話だ。 トランプ米大統領は、米国市民のアンドリュー・ブランソン牧師がトルコで自宅軟禁されていることの報復として、トルコに追加関税をかけることでこの危機を悪化させた。トランプ政権は、北大西洋条約機構(NATO)同盟国であるトルコの経済的運命に、あるいは敵対的で弱体化したトルコが中東での米国の権益に与える影響に、無関心のように見える。かつては世界秩序の保証人だった米国は、ならず者になった。 一方、経済力のある欧州連合(EU)は2017年のトルコ輸出の47%を受け入れている。欧州の銀行は、トルコの財政リスクにもっともさらされており、同国の混乱を収束するのを支援する動機がある。 さらに言えば、トルコには推定350万人のシリア難民がいる。トルコが受け入れなければ、一部は欧州に向かっているかもしれない。 とはいえ、EUがトルコに支援を働きかけようとしているようには見えない。エルドアン大統領は楽な交渉相手ではないが、ブリュッセル、あるいは他のEU加盟国から支援の公的な申し出を受けていない。 従来の世界金融秩序が古くさく、大きな欠陥があることはほぼ間違いない。IMFは長いこと硬化したままだし、米国は必ずしも誠実な仲介者ではなかった。欧州の結束が十分であったことは一度もない。この3つは、世界金融システムの無謀な傾向を抑制するのにほとんど何もしなかった。それでも、失速し、エンジンが止まりかけて煙を出しているオンボロ車のように、歩くよりは好ましいものとされている。 では、次に何が起きるのか。 トルコ政府は計画があると明らかにしているが、国際債権団から相当な支援がなければ、政治能力が試される深刻なリセッション(景気後退)はほぼ不可避だろう。隣国ギリシャでは、2008年に海外からの資金調達が突然止まったことにより、6年間で国内総生産(GDP)が27%落ち込んだ。ギリシャの経常赤字は現在のトルコのそれより大きいが、トルコはインフレと資本逃避という問題も抱えており、さらにたちが悪い』、トルコ政府の計画とは一体、どんなものなのだろう。
・『トルコの問題にとって最善の解決策は、新たな指導者と刷新された機関による、より広範な世界金融秩序を確立することだろう。パキスタンや南アフリカといった、海外金融機関の善意に頼りすぎている国々にとっても、これは良いニュースとなる。 残念なことに、そうした新秩序はまだ見えてこない。中国には必要とされる富と経験、世界からの尊敬に欠けている。その上、自国の銀行セクターの制御に苦労している。 危機は、時に皆の頭脳を結集させることがある。従来の大国は恐らく、古いオンボロ車を集めて、トルコのために中途半端でそこそこの対策を見いだすことになるだろう。 たとえそうなったとしても、リラの急落は強力な警告を発している。つまり、通貨危機が今後も起きる可能性が非常に高いということだ。世界経済を導く指導者がいなければ、それは現実のものとなる』、大統領選挙が行われたばかりのトルコにとって、「新たな指導者」などは吞める筈がない。先行きが全く読めない状態が続きそうだ。

第三に、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が8月22日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「米国とトルコ、強権大統領の経済音痴が招く危機 トランプvs.エルドアン、米国の経済学者はいずこへ」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/082100075/?P=1
・『強権大統領の経済音痴が危機を増幅している。トルコショックがおさまらないのは、「金利は搾取の道具」と考えるエルドアン大統領が中央銀行を支配して利上げを認めないからである。利上げという通貨防衛の鉄則を無視するのは、経済常識の欠如を示している。 トルコショックは対外債務を抱える新興国に連鎖する。そのトルコに対して、制裁関税を課したトランプ米大統領もまた無知をさらけ出している。二国間の貿易赤字を「損失」と勘違いし、赤字解消を要求するのは、グローバル経済の相互依存を知らぬ大きな過ちである。こうした強権大統領の経済音痴は、民主主義と資本主義に複合危機をもたらし、世界経済を大きく揺さぶっている』、経済音痴の2人の大統領に振り回されるとは、いい加減にしてもらいたいところだ。
・『2016年のクーデター未遂事件以来、強権化を極めたトルコのエルドアン大統領である。強権によって、いっさいの批判を許さず締め付けを強めており、欧州連合(EU)も警戒感を高めてきた。問題は、エルドアン経済政策が独善に陥っていることだ。米欧が金融緩和からの出口戦略に動いているのに、内需刺激をやめなかった。 なにより、エルドアン大統領は金利引き上げを認めなかった。「金利は搾取の道具」と考える強権大統領がいるかぎり、市場は安心して通貨リラを売り込める。トルコショックのきっかけは、米国との対立だった。トランプ米大統領は、トルコが拘束する米国人牧師の解放を求めて、鉄鋼・アルミニウムの関税を倍増する制裁関税発動を打ち出した。 しかし、トルコショックの基本的な要因は、強権大統領の経済音痴にあることは間違いない。中央銀行は大統領の完全支配下にある。心配したメルケル独首相が「中央銀行の独立性を確保せよ」と忠告したほどだ。中央銀行は、エルドアン大統領の「金利は搾取」論を忖度して、政策金利は上げられず、なんとか市場金利の利上げ誘導でしのごうとしているが、限界は明らかだ。 巨額の対外債務を抱え負担が膨らむ民間企業の団体などは、通貨防衛のための利上げを求めるが、封じ込まれている。インフレの進行が経済を危機に陥れ国民生活を圧迫するなかで、トルコ国債は格下げされた』、いくら「強権政治」といっても、国民がいつまで耐えられるのだろうか。
・『通常、通貨危機に陥った国は、国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐが、ここでもエルドアン大統領は「政治主権の放棄になる」と自説に固執し、IMF依存を避けている・・・IMF依存を避ける代わりに、サウジアラビアとの断交で孤立しているカタールと直接投資などで関係を深め、通貨スワップ協定を結んだ。いかにも付け焼刃だ。独仏などEUからの支援も期待しているが、限界はあるだろう。 トルコショックが収まるには、エルドアン大統領自身が強権政治を改め、中央銀行の独立を認め、利上げなど経済常識を取り戻すしかない。しかし、それはいまのところ望み薄というしかない』、出口は全く見えないようだ。
・『トルコショックは、対外債務を抱える新興国に連鎖する。トルコリラと並んでアルゼンチンペソは昨年末比で4割の下落を記録した。ロシアルーブルやブラジルレアルも1割を上回る下落である・・・ドル建て債務の多い国ほど、通貨安に見舞われる。アルゼンチンは年40%の政策金利を45%にする緊急利上げに追い込まれた。下落幅が相対的に小さいインドネシアまでが利上げを余儀なくされている。 欧州にも不安が広がる。トルコ向け債権はスペイン、フランス、イタリアの銀行に多く、トルコが受け入れる直接投資残高の75%は欧州からの投資である。ユーロ危機からの回復途上でまだぜい弱な南欧経済が揺さぶられることにもなりかねない。 何よりトルコの混迷がEUの難民危機を再燃させることが懸念される。シリアからの難民がトルコ経由で、再びEUに流入する可能性が高まるからだ。難民問題の解決に政権維持をかけるメルケル独首相が、トルコショックの打開に手をさしのべようとするのはそのためだ。 トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国であり、トルコの混迷は、ただでさえきしんでいる米欧同盟に新たな波乱要因を持ち込む。トルコは中東の地域パワーであるとともに、EUに接し長く加盟交渉を続けてきた。この複雑な地域の要衝が混乱すれば、米欧だけでなく、ロシアや中国を含めてパワーバランスを崩す恐れもある』、確かにトルコは地政学的にも極めて重要な地位を占めている。EU加盟は、現在の強権的政治を続ける限り、遠のく一方だろう。
・『トルコショックの引き金を引いたのは、トランプ米大統領である。中間選挙をにらんで選挙地盤の福音派牧師の解放を最優先させているためだが、トランプ氏の経済音痴こそ世界経済を混乱させる最大の要因である。環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し、中国、EU、日本など主要国・地域を相手した関税引き上げによる貿易戦争は、2国間の貿易赤字を「損失」と考える大誤解からきている。貿易に損はない。貿易は「ゼロサム」の世界ではない。貿易の拡大は「プラスサム」「ウィンウィン」そのものである。 たしかに、米国にはこれまでにも2国間の貿易赤字を解消しようとする貿易摩擦はあった。日米間では、繊維、カラーテレビ、鉄鋼、自動車、半導体など個別摩擦の火種が絶えなかった。しかし、苦労してまとめあげたはずの通商合意は結局、何の意味ももたなかった。それが日米の苦い教訓である。その一方でグローバル経済が進展するなかで、貿易だけでなく投資や技術協力による相互依存が深まり、2国間の貿易摩擦は「過去の遺物」になっていた。 トランプ流保護主義はこの「過去の遺物」をあえて掘り返し、時計の針を数十年逆戻りさせるものである。世界がもの作りとIT(情報技術)を融合させる「第4次産業革命」のさなかにあるなかで、時代遅れの発想法である。重厚長大産業の保護を「安全保障」のための言い張るのは無理がある。 もちろん、中国に対して「知的財産権」の保護を求めるのは意味があるが、米中2国間の貿易赤字の解消のため関税引き上げをエスカレートさせるのは、誤った選択である。中国に知的財産権の保護を求めるにあたっては、世界貿易機関(WTO)のルールのもとで日米欧の主要先進国が連携することこそ重要である』、トランプは本当に罪作りな大統領だ。
・『トランプ大統領の経済音痴ぶりに、米国の経済学者がなぜ立ち上がらないのか不思議である。トランプ流保護主義の暴走には、経済団体は、自動車業界も含め反対を表明した。グローバル経済時代の先頭を行く米国にとって、保護主義は自殺行為になることが目に見えているからだ。 トランプ政権には、まともな経済学者は参加していない。有力大学のビジネススクールを出たのに、トランプ大統領は経済学者嫌いである。反知性主義のあらわれだろう。経済学者不在は、戦後の米国の歴代政権でも初めてのことである。よく共通項を指摘されるレーガン政権の「レーガノミクス」のように、「トランプノミクス」などと呼ばれることもない。 経済学者の側が政権に参加してしまえば、その後の「レピュテーション・リスク」(名声の危険)が高まると読んでいる面はある。しかし、トランプ大統領の経済音痴のために世界経済が危機に巻き込まれようとしているときに、米国の経済学者の「沈黙」は無責任である。ここで虚無主義に身を任すのは罪でさえある。 何のためにノーベル経済学賞の栄誉に浴する多くの経済学者を輩出したか、米国の経済学者たちは連帯して、トランプ大統領に、粘り強く過ちを説くべきである。歴代政権に影響力のあったサミュエルソン教授やフリードマン教授がいたら、学派を超えて間違いなく連帯していただろう』、「米国の経済学者の「沈黙」は無責任」には全く同感だ。日本の危機時には、いろいろ無責任なアドバイスをしておきながら、肝心の米国本国では沈黙したままというのは、どういう神経なのだろう。
・『強権政治が危険なのは、戦後世界の土台になってきた民主主義と資本主義の複合危機を招きかねないところにある。 強権政治に共通しているのは、批判を許さず言論の自由を葬り去ろうとしている点にある。トランプ大統領が米国の主要メディアを「国民の敵」と呼び、批判的な報道を「フェイク(偽)ニュース」と決めつけるのは、言論の自由を最優先してきた米国の建国の精神を真っ向から否定するものだ。 こうしたトランプ氏の反メディア姿勢に対して、ニューヨーク・タイムズやボストン・グローブなど全米300以上の新聞社が一斉に反対の社説を掲げた。これは米国に言論の自由が生きている証拠である。米国の民主主義の健全性を示している。その一方で、トランプ大統領のあからさまな反メディア姿勢が米国の有権者の間で一定の支持を得ているのも事実である。米国の民主主義の衰退を直視するしかない。 問題は、こうした民主主義の衰退が資本主義の危機に結びつきかねないことだ。強権政治による中央銀行への介入は危険な兆候だ。エルドアン大統領がトルコ中銀を支配下に置くだけでなく、トランプ大統領も「低金利が好きだ」と公言し、パウエル米連邦制度準備理事会(FRB)議長の利上げ路線を「気に入らない」とあからさまにけん制している。誤った経済観にもとづく中央銀行への介入は、世界経済を危機にさらすことなる。 「大統領よ、あなたは間違っている」。こう正面切って言える勇気ある人々が続々登場するのを期待したい。強権に対抗できるのは、自由な言論しかない』、全く同感である。
タグ:ロイター 中東情勢 日経ビジネスオンライン 経済音痴 岡部 直明 トランプ米大統領 (その13)(トルコ問題1)(トルコ・ショック 真の懸念は「欧州難民危機」再来、トルコ危機 世界金融秩序の凋落を露呈、米国とトルコ 強権大統領の経済音痴が招く危機 トランプvs.エルドアン 米国の経済学者はいずこへ) 唐鎌大輔 「コラム:トルコ・ショック、真の懸念は「欧州難民危機」再来=唐鎌大輔氏」 トルコリラ急落 新興国市場からの資本流出 中央銀行への政策介入も辞さないエルドアン大統領の経済政策という内政要因 対米関係の悪化という外交要因もあった クーデター容疑でトルコ当局に拘束されている米国人牧師を巡って問題がこじれた結果 「鉄鋼・アルミニウムに係る追加関税率を倍に引き上げる」という米政府の決定につながり、トルコリラ急落のトリガーを引くに至っている 必要な選択肢 緊急利上げ 米国人牧師を解放 資本規制の強化 国際金融(IMF)支援の要請 投機的なリラ売りの抑制 スペイン、フランス、イタリアの国内銀行が抱えるトルコ向け債権の大きさを懸念 トルコの国内銀行が外国銀行に対して持つ対外債務の約6割がスペイン・フランス・イタリアによって占められている ユーロ圏4大国の国際与信残高合計に占めるトルコ向け与信残高の割合を計算してみると、2%にも満たない EUとの合意に従ってトルコが難民をせき止めているからである EU・トルコ合意 効果はてきめんだった 難民危機はトルコひいてはエルドアン政権次第 トルコがいつまでも欧州のために難民をせき止めてくれる保証はない EU域内に難民流入が再開するのは非常にまずい 難民流入に不平不満を抱えるイタリアのポピュリスト政権が勢いづくだろう エルドアン政権が欧州難民危機ひいてはEU政治安定の生殺与奪を握っている事実の方がより大きな脅威であるように思われる Edward Hadas氏 「コラム:トルコ危機、世界金融秩序の凋落を露呈」 自国通貨リラは5月初め以降、対ドルで42%下落 2009年、エルドアン氏が当時首相として率いていたトルコ政府が、国際通貨基金(IMF)からの助言をもはや必要としないと発表してから、トルコは大きく様変わりした 「つえなしで前に進む」 トルコは長年、IMFの支援に大きく依存 IMFに対する反感は大統領の国家主義的で独裁主義的な意図に沿うものだが、同時に痛ましいパターンにも一致する。伝統的な権力者は、世界的な金融問題に見舞われると、身動きが取れなくなる 米国はかつて、反抗的な政府や債権者、交渉者に圧力をかける際には信頼できる圧力源だった 世界最大の経済国として、米国は強力なアメとムチを持っていた もう過去の話 米国市民のアンドリュー・ブランソン牧師がトルコで自宅軟禁されていることの報復 トルコに追加関税をかけることでこの危機を悪化させた 欧州の銀行は、トルコの財政リスクにもっともさらされており、同国の混乱を収束するのを支援する動機がある トルコには推定350万人のシリア難民 国際債権団から相当な支援がなければ、政治能力が試される深刻なリセッション(景気後退)はほぼ不可避だろう リラの急落は強力な警告を発している。つまり、通貨危機が今後も起きる可能性が非常に高いということだ。世界経済を導く指導者がいなければ、それは現実のものとなる 「米国とトルコ、強権大統領の経済音痴が招く危機 トランプvs.エルドアン、米国の経済学者はいずこへ」 強権大統領の経済音痴が危機を増幅 「金利は搾取の道具」 エルドアン大統領が中央銀行を支配して利上げを認めないから 制裁関税を課したトランプ米大統領もまた無知をさらけ出している。二国間の貿易赤字を「損失」と勘違いし、赤字解消を要求するのは、グローバル経済の相互依存を知らぬ大きな過ちである 民主主義と資本主義に複合危機をもたらし、世界経済を大きく揺さぶっている エルドアン経済政策が独善に陥っていることだ トルコショックの基本的な要因は、強権大統領の経済音痴にあることは間違いない エルドアン大統領は「政治主権の放棄になる」と自説に固執し、IMF依存を避けている トルコショックは、対外債務を抱える新興国に連鎖 北大西洋条約機構(NATO)加盟国 米欧同盟に新たな波乱要因を持ち込む この複雑な地域の要衝が混乱すれば、米欧だけでなく、ロシアや中国を含めてパワーバランスを崩す恐れもある トルコショックの引き金を引いたのは、トランプ米大統領である 貿易に損はない。貿易は「ゼロサム」の世界ではない 貿易だけでなく投資や技術協力による相互依存が深まり、2国間の貿易摩擦は「過去の遺物」になっていた 「過去の遺物」をあえて掘り返し、時計の針を数十年逆戻りさせるもの トランプ大統領の経済音痴ぶりに、米国の経済学者がなぜ立ち上がらないのか不思議 トランプ大統領の経済音痴のために世界経済が危機に巻き込まれようとしているときに、米国の経済学者の「沈黙」は無責任 強権政治が危険なのは、戦後世界の土台になってきた民主主義と資本主義の複合危機を招きかねないところにある 権政治に共通しているのは、批判を許さず言論の自由を葬り去ろうとしている
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中東情勢(その12)(イラン問題1)(「ミスター離脱」トランプが招く世界の亀裂 イラン核合意離脱の乱反射、イラン怒る!「ホルムズ海峡封鎖」匂わす思惑 犬猿の仲、アメリカとイランが舌戦開始) [世界情勢]

中東情勢については、昨年12月25日に取上げた。イラン問題やトルコ問題に火がついている今日は、(その12)(イラン問題1)(「ミスター離脱」トランプが招く世界の亀裂 イラン核合意離脱の乱反射、イラン怒る!「ホルムズ海峡封鎖」匂わす思惑 犬猿の仲、アメリカとイランが舌戦開始)である。

先ずは、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が5月11日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「「ミスター離脱」トランプが招く世界の亀裂 イラン核合意離脱の乱反射」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/051000063/?P=1
・『名付けるなら、「Mr. Withdrawal」(ミスター離脱)だろうか。環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱して保護主義に走り、パリ協定から離脱して地球環境を危機にさらしたドナルド・トランプ米大統領がこんどはイラン核合意から離脱すると表明した。「第3の離脱」は中東危機をあおり、米欧対立を深刻化させるなど、世界の亀裂を招く。経済制裁しだいで原油価格上昇により世界経済を混乱させる恐れもある。オバマ前米大統領の実績をことごとく覆すことで、中間選挙を有利に導く作戦らしいが、世界の潮流を無視する「トランプ第1主義」は危険極まりない。主要国は国際合意からの身勝手な離脱を防ぐために幅広く協調するしかない』、その通りだ。
・『トランプ米大統領のイラン核合意からの離脱に真っ先に「勇気ある指導力に感謝する」と歓迎したのは、イスラエルのネタニヤフ首相である・・・ネタニヤフ首相は、イランが核合意の裏で核開発計画を進めていると新証拠があると打ち上げて、トランプ大統領による離脱に「論拠」を与えた。イラン核合意から離脱は米・イスラエル連携で進められた。 トランプ政権はこれまでにも「イスラエル寄り」の姿勢を鮮明にしている。イスラエルの首都はエルサレムと宣言し、米大使館を移転することにした。中東和平に冷水を浴びせる結果になっている。女婿でトランプ政権に絶大な影響力をもつクシュナー上級顧問がユダヤ系米国人で、娘のイバンカ氏はユダヤ教に改宗している。経済制裁を主導するムニューシン財務長官もユダヤ系だ。こうした人脈は、トランプ政権のイスラエル傾斜と無縁とはいえないはずだ』、トランプ政権が表向きの中立姿勢をかなぐり捨てて、「イスラエル寄り」の姿勢を鮮明にしたことは、もはや中東和平にコミットする役割を放棄したに等しい。困ったことだ。
・『トランプ大統領は、イラン核合意がイランに核開発規制に期限があることや、弾道ミサイル開発を制限できないことなどを理由に「最悪の合意」と強調している。しかし「中東の非核化」をめざすなら、事実上の核保有国であるイスラエルにこそ、核廃棄を求めるべきだろう。イスラエルの核保有を容認しておきながら、イラン核合意から離脱するのは、大きな矛盾である。 危険なのは、トランプ大統領による合意離脱で、イランが核開発に逆戻りする恐れがあることだ。イランではトランプ大統領の合意離脱で中道派のロウハニ大統領が窮地に追いやられている。保守強硬派が台頭するなかでロウハニ大統領も「核合意が崩壊すれば、ウラン濃縮活動を再開する用意がある」と述べざるをえない状況だ。 これに対して、サウジアラビアのムハンマド皇太子は「イランが核武装すればサウジも追随せざるをえなくなる」と述べている。このままでは中東に核開発ドミノが起きかねない。トランプ大統領のイラン核合意からの離脱は、シリア危機などただでさえ混迷する中東に新たな火種を持ち込むことになる。 中東の混迷で、ロシアや中国の影響力が相対的に高まり、中東に「パワーの空白」が起きる可能性が強まる。欧州と連鎖するテロの温床が残る危険もある』、火薬庫で無謀な火遊びをするのも、いい加減にして欲しい。
・『イラン核合意は、国連安全保障理事国の米英仏中ロとドイツの6カ国がイランとの間で、12年間協議したうえで2015年にようやくまとめたものだ。イランが濃縮ウランの貯蔵量や遠心分離機を大幅に減らす一方で、経済制裁を解除した。 トランプ大統領による離脱表明に対して、英仏独首脳は「遺憾だ」との共同声明を公表した。マクロン仏大統領は「核不拡散の体制は危機に瀕している」と警告した。マクロン仏大統領、メルケル独首相が相次いで訪米し、トランプ大統領に合意継続を説得したばかりだけに、欧州の落胆は大きい。 その一方で、英独仏は米抜きでもイラン核合意を継続する方針だ。米国には「米以外の当事国が核合意を履行するのを妨げないように」とクギをさす一方で、イランには「引き続き核合意の義務を果たすべきだ」と念押しした。 トランプ大統領の登場で米欧関係はきしみ続けているが、イラン核合意からの離脱で亀裂は決定的になった。欧州連合(EU)首脳はトランプ大統領による鉄鋼、アルミニウムの輸入制限など保護主義路線を強く警告し、対抗措置も辞さない姿勢を取ってきた。地球温暖化防止のためのパリ協定からの離脱を真っ向から批判してきている。そのうえに、イラン核合意からの離脱である。オバマ前政権と連携し合意にこぎつけただけに、国際合意の放棄に苦り切っている。 米国と英独仏との「全面対立」は冷戦終結後初めてといっていい。ブッシュ政権によるイラク戦争では英国が参加し、仏独は不参加と欧州内で濃淡があったが、今回は英独仏が足並みをそろえている。米欧同盟は大きな転機を迎えている。それにロシア、中国も加わっているだけに、「米国の孤立」が鮮明になっている』、欧州にしてみれば、12年もかかった合意を勝手に廃棄されたのでは、怒り心頭だろう。
・『トランプ大統領は「最大の経済制裁を科す」と表明している。原油取引を制限してイラン経済を揺さぶるのが狙いだ。制裁の内容によって90日か180日の猶予期間を経て発動される。11月の中間選挙に照準を合わせているのは明らかだ。 イラン中央銀行と取引する海外の金融機関は、米国の金融機関と取引できなくなる。自国の金融機関を「適用除外」にするには、イランからの原油輸入の大幅削減が条件になる見通しだ。 米国が経済制裁を再開しても、欧州勢がそれを補う可能性もある。その一方で、米制裁に、エアバスなど欧州企業なども巻きこまれる恐れがある。経済制裁の深度によっては、イランの原油輸出に影響が出るのは避けられないだろう』、この金融機関を通じた制裁は、極めて強力だ。日欧の金融機関も米国の金融機関と取引できなくなるのを避けるために、禁輸措置に従わざるを得なくなる。
・『イラン原油は大半がアジア諸国向けだけに、アジア経済への影響は無視できない。世界第4位の産油国の原油輸出減は、原油価格上昇に跳ね返る。すでにニューヨークの原油先物市場では1バレル70ドル台に上昇している。中東情勢の緊張による原油価格上昇が世界経済の波乱要因になる恐れもある』、やれやれ。
・『日本の反応は鈍い。河野太郎外相が「核合意の維持を困難とする大きな影響が出るとすれば残念だ」とする談話を発表しただけで、安倍晋三首相からの声明は聞かれない・・・トランプ大統領との電話会談でも米朝首脳会談への情勢分析にとどまり、イラン核合意離脱については話していない。 もともと日本は、米英仏独中ロの主要6カ国とイランで進めたイラン核合意の「埒外」に置かれていた。しかし、核合意そのものは継続すべきとの立場だった。米国が経済制裁を再開すれば、原油輸入や日本企業への影響も避けられなくなる。少なくとも、トランプ大統領にイラン核合意からの離脱で、苦言を呈していいはずだ。北朝鮮をめぐってトランプ大統領と蜜月関係を維持したいのだろうが、欧州を含め国際社会の潮流にも目配りが欠かせないはずだ』、日本はイラン核合意の「埒外」だったとは初耳だが、日本外交の実力なのだろう。まして、トランプべったりとは情けない。
・『トランプ大統領はオバマ前大統領の国際合意を次々に葬り去ってきた。国際合意の「ちゃぶ台返し」は「オバマ返し」といっていい。イラン核合意からの離脱に続いて、「オバマ返し」の連鎖が始まる恐れがある。 ユネスコからの離脱に続いて、世界貿易機関(WTO)からの離脱も想定しておかなければならないだろう。中間選挙や次の米大統領選を視野に入れた「ミスター離脱」が世界をさらに揺るがす危険がある』、日本もトランプ離れをするいいチャンスなのだが・・・。

次に、5月8日付けロイター「米国の核合意破棄で想定されるイランの「報復シナリオ」」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/iran-nuclear-scenarios-idJPKBN1I9077
・『イランは、米国やその同盟国の中東における利益を脅かすことにより、報復する可能性がある。 想定されるイランによる「報復」シナリオを検証した。 ▽イラク:「イスラム国」が2014年にイラクの大半を手中に収めた時、イランは即座にイラク政府支援に動いた。以来、イランはイラクで何千人ものイスラム教シーア派民兵に武器を提供し、訓練を実施するなどして支えてきた。これら「人民動員隊(PMF)」は、重要な政治勢力となっている。 もしイラン核合意が崩壊すれば、イランが、イラクからの米国撤退を望むPMF勢力に向けて、米軍に対する口先、もしくは軍事的な攻撃を強めるよう促す可能性がある。 この場合、攻撃は特定のシーア派武装組織が直接関与しない、ロケット砲や迫撃砲、または道路脇に仕掛けられた爆弾といった方法で行われる可能性がある』、いまは小康状態にあるイラクにまで波及するリスクがあるとは、トランプは何を考えているのだろう。
・『▽シリア:イランや、同盟関係にあるレバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」などの武装組織は、2012年に勃発したシリア内戦に参加している。イランは、シリア政府を強化するため、数千人のシーア派民兵に武器を与え、訓練している。イスラエルは、イランが少なくとも8万人のシーア派戦闘員を補充したとしている。 シリアへの関与により、イラン政府がイスラエルと直接対決する状況が初めて生じ、最近ではいくつか大規模な衝突が起きている。イスラエル政府関係者は、隣国シリアにイラン政府やヒズボラが恒久的に軍事的な足場を築く事態は絶対に許さないと語る。 もし核合意が崩壊すれば、シリアのシーア派武装組織がイスラエルに攻撃を仕掛けることをイランが押しとどめる理由はほとんどなくなる。 イランと、イランの支配下にあるシリア内勢力が、クルド人勢力支援のためシリア北部と東部に駐留している約2000人の米軍部隊に圧力をかける可能性もある。 イラン最高指導者の側近は4月、シリアとその同盟によって、米軍がシリア東部から追いやられることを望むと発言』、シリアを舞台に、イランとイスラエルの直接対決とは、穏やかではない。
・『▽レバノン:・・・イランは現在、ヒズボラに対し、精密誘導ミサイル製造工場の建設や、長距離ミサイルへの精密誘導システム装着などで支援を行っている。 ヒズボラがイランの同盟先であるシーア派武装勢力の多くを束ねているシリアにおいて、イスラエル部隊はたびたびヒズボラを攻撃している。イスラエルとイランによる言葉の応酬も、最近激しさを増している。 ヒズボラとイスラエルの双方が軍事衝突に関心はないとしているが、緊張の高まりがレバノン戦争の再発を引き起こす事態は容易に起こり得る。 ヒズボラは昨年、イスラエルがシリアやレバノンに戦争を仕掛ければ、イランやイラクなどから数千人の戦闘員が集結すると警告し、シーア派武装勢力がヒズボラ救援のためレバノンに駆け付ける可能性を示唆した。 ヒズボラはまた、レバノンにおける主要政治勢力の1つとなっておおり、6日行われた議会選の非公式開票結果によれば、ヒズボラと連携する政治勢力が過半数を超える議席を確保する見通しだ。現段階では、ヒズボラは西側政府が支持するハリリ首相ら政敵とも協力する姿勢を見せている。 だがもし核合意が崩壊すれば、イランがヒズボラに政敵を孤立させるよう圧力をかける可能性があり、そうなればレバノン情勢が不安定化すると専門家は懸念する。 「ヒズボラは、実質的にレバノンの政治を支配している。もしそうした(ヒズボラが首相らを孤立させる)事態になれば、純粋な嫌がらせになるだろう」と、ベイルートにあるアメリカン大学のHilal Khashan教授は言う』、小康状態にあるレバノンでもまた火の手が上がるとは・・・。
・『▽イエメン:イランがこれまで、イエメンに対する直接の軍事介入を認めたことはない。だが米国やサウジアラビア政府の関係者は、イランはイエメンで活動する武装組織「フーシ派」にミサイルなどの武器を供与していると指摘。フーシ派は、イエメンに対する空爆の報復として、リヤドやサウジの原油関連施設に向けてミサイルを発射している。 イランとサウジは、中東地域で激しい勢力争いを繰り広げている。イラン核合意の支持派は、サウジとの対立が交戦に発展するリスクを、この合意が食い止めていると主張する。 もし合意が崩壊すれば、イランがフーシ派への支援を拡大することで、サウジやアラブ首長国連合などの湾岸同盟国から軍事的対抗措置を招く恐れがある』、イエメンにまで飛び火とは・・・、もう中東は大混乱だ。
『▽条約:核開発を巡り、イランにはいくつか選択肢がある。 イラン政府関係者は、選択肢の1つとして、核兵器の拡散防止を目的とする核拡散防止条約(NPT)から完全に脱退することも検討していると述べている。 イランの最高指導者ハメネイ師は、核兵器開発に関心はないとしている。だがもしイランがNPTから脱退すれば、世界を警戒させることは間違いない。 「そうなればイランは孤立し、破滅的な方向に向かうだろう」と、米シンクタンク大西洋評議会のAli Alfoneh上級研究員は言う。 仮にイランがNPTから脱退しなくても、核爆弾の原料製造につながるとして核合意で厳しく制限されているウラン濃縮活動を活発化する可能性をイランは示唆している。現在の核合意では、イランは濃縮度を3.6%以下にとどめなければならない。 2015年の核合意の一環で、イランは20%の濃縮ウランの生産を止め、貯蔵していた濃縮ウランの大半を手放している。 濃度20%のウランは、民生用の原子炉燃料として必要な濃度である5%を大きく上回るが、核爆弾を作るのに必要な高濃縮ウランの濃度80─90%には届かない。 イランのサレヒ原子力庁長官は最近、イランは合意前よりも高濃度のウランを生産することが可能だと発言している。 イランによる対応は、米国による合意破棄について、他の合意署名国がどういった反応を示すかにも影響されると、アナリストは話す。 その上で焦点となるポイントは、国連安保理が全会一致で承認した国際的な約束事である核合意の下で自国企業がイランとの取引を続けることにフランスやドイツがどの程度強い姿勢を見せるか。シリアで手を組むロシアがどれほど外交的に支援するか。また、巨大経済圏構想「一帯一路」にイランをつなぎとめる意欲がどれだけ中国にあるか、だ。 仮にトランプ政権が、制裁を再開し、違反者を米金融システムから締め出すと脅せば、それが「踏み絵」となるだろう。他の核合意署名国の中では、最大のイラン産原油輸入国である中国だけが、無傷でいられるだろう』、イランが核爆弾を作るのに必要な高濃縮ウランを生産し始めれば、核合意で攻撃を止めていたイスラエルが攻撃に転じる可能性もある。無傷でいられるのは中国だけとは、困ったことだ。トランプは中東のこうした大混乱をどこまで想定しているのだろう。どうみても正気の沙汰ではない。

第三に、中東ジャーナリストの池滝 和秀氏が7月25日付け東洋経済オンラインに寄稿した「イラン怒る!「ホルムズ海峡封鎖」匂わす思惑 犬猿の仲、アメリカとイランが舌戦開始」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/230681
・『窮地に立つイランが石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖する可能性を示唆し、米国とイランの間で緊張が高まっている。 イランがホルムズ海峡の封鎖を示唆したのは今回が初めてではない。過去にも交渉を有利に進めるため、海峡封鎖をちらつかせて国際社会を揺さぶってきた。イラン産の石油輸入停止を米国が各国に迫っているのに対し、合意の存続を目指す欧州や日本政府などは制裁の適用除外を米政府に求めている。イランには、海峡封鎖の可能性を示すことで、石油輸入に依存する欧州や日本を通じて米国への圧力を強め、何らかの譲歩を引き出したい思惑もありそうだ』、ホルムズ海峡の封鎖とは、脅しとしても嫌なものだ。
・『これに対して、トランプ米大統領は「二度と米国を脅すな。さもなくば、歴史上類を見ないような重大な結果を招く」と激しく反発。核問題で北朝鮮を交渉の場に引きずり出すことに成功したトランプ大統領としては、イランに対しても最大限に圧力を強め、有利な交渉を進めることをもくろんでいるはずだ。現時点では、米・イランの舌戦が激化しているだけであり、ホルムズ海峡封鎖の可能性についても冷静に受け止めるべきだろう』、トランプがいくらディール好きといっても、イラン核合意のような爆弾を対象にするとは行き過ぎだ。
・『オバマ前政権時代の合意をことごとく反故にしているトランプ大統領は5月、2015年に米英仏独ロ中の6カ国 とイランの間で結ばれた核合意から離脱した。核合意がイランの弾道ミサイル開発の制限を対象にしておらず、中東の過激派やゲリラに対する支援活動も野放しになっているとして欠陥だらけだとの立場だ。一方、欧州など核合意を擁護する諸国は、イランによる核兵器開発を少なくとも一定期間は封じることができる合意だとして存続を求めている。 米政府は、核合意を頓挫させることでイランを追い込んで交渉の場に引きずり出し、有利な条件で新たな合意を結びたい考えだ。このため、各国にイラン産の石油輸入停止などを求め、イラン企業が関与する石油や、石油化学製品の購入については、11月4日に制裁発動の猶予期間の期限切れを迎える。 欧州や日本企業の多くは、欧州連合(EU)や自国政府と米政府の交渉の行方次第では、イラン産の石油輸入継続の可能性も残されているとして様子見だが、米国の制裁を警戒して早くもイラン事業からの撤退を決めた企業も一部ある。 ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾の間にあり、最も狭い部分は幅33キロで大型タンカーが通れるのは約7キロにすぎず、水深も比較的浅い。海上輸送される世界の原油の約40%が通過し、日本が輸入する原油の85%もこの海峡経由だ。2011年にはイランのアハマディネジャド前政権が欧米の経済制裁に反発し、海峡封鎖を警告したこともある。 さかのぼれば、1980〜1988年のイラン・イラク戦争では、ホルムズ海峡から入ったペルシャ湾で、両国軍が石油輸出を妨害するために関係する船舶を攻撃し合った。2015年にはイランの精鋭部隊、革命防衛隊がホルムズ海峡で機雷施設を訓練する様子が放映されたほか、2016年にはペルシャ湾で、イラン革命防衛隊の小型艦船が米艦艇に異常接近して威嚇射撃を受けるケースが相次いだ。 このように石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡やその周辺の動向は、日本を含め、石油に依存する経済活動への影響が大きい。その海峡の封鎖を示唆することは、イランが米国の核合意離脱などで窮地に陥っていることを示すものでもある』、イランが窮地に陥っているとはその通りなのだろうが、追い込み過ぎるのもリスクがある。
・『今回注目すべきは、ホルムズ海峡の封鎖を最初にちらつかせたのが、穏健派のロウハニ大統領だったことだ。 これまでは、革命防衛隊など反米路線を推し進める保守強硬派側から提起されることが通例だったが、ロウハニ大統領は7月4日、「イランの原油輸出だけを封じ込めることができると考えるのは間違った思い込みだ。米国はイランの原油収入を途絶させることはできない」と述べ、海峡封鎖を示唆したと受け止められた。その後、最高指導者ハメネイ師や革命防衛隊などが海峡封鎖に同意する発言を繰り返し、緊張が高まった。 イランでは、国際協調路線を進める穏健派と、反米・反イスラエルの保守強硬派がせめぎ合い、保守派寄りと目されるハメネイ師が調整役になって政治が展開されている。イランが2015年に核合意に同意したことは、ハメネイ師がロウハニ大統領の国際協調路線にお墨付きを与えたことを意味した。 一方、次期最高指導者の有力候補の1人であるロウハニ大統領の融和路線が頓挫するのを願う革命防衛隊などの保守強硬派にとっては、トランプ政権による核合意からの離脱は好都合。これに対して、ロウハニ大統領は、あくまで核合意を部分的にでも存続させることを狙い、ホルムズ海峡封鎖という最悪のシナリオを示すことで、国際社会から譲歩を引き出そうとしているものとみられている。 イラン側が、政治的な駆け引きから海峡封鎖ちらつかせているものの、実際に封鎖できる可能性は極めて低く、可能になっても一時的との見方が一般だ。 というのも、ペルシャ湾を挟んだカタールには、地域最大の1万人を超す米軍兵士が駐留する米軍基地があるほか、バーレーンには、米海軍第5艦隊の司令部が置かれている。イランが封鎖に乗り出せば、圧倒的な軍事力を持つ米軍がイランの軍事基地などを直接攻撃するだろう』、このままでは保守強硬派が次期最高指導者になる懸念がある。バーレーンに米海軍第5艦隊の司令部があるというのでは、本格的封鎖は難しそうだ。
・『封鎖は、軍事力が圧倒的に異なる「非対称戦争」の中で行われる可能性がある。目下、中東ではイランがレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラなどの非正規軍を軍事的に支援。米国が供与した兵器を持ち、軍事的に圧倒するイスラエルやサウジアラビアといった親米国に、間接的なゲリラ型の戦争を挑んでいる。ヒズボラにミサイルやロケット弾を供与しているほか、イエメンのシーア派系フーシ派にはミサイル技術を移転し、サウジの大きな脅威になっている。 海軍力で米軍に圧倒的に劣るイランの革命防衛隊は、ホルムズ海峡の封鎖を試みる場合、機雷を敷設することが予想されている。また、ミサイルやロケット弾で武装した小型の高速艇が米艦艇や大型タンカーを攻撃したり、自爆型の無人航空機を突撃させたりするというシナリオが取り沙汰されてきた。 米シンクタンク、ワシントン近東政策研究所は7月20日にウェブサイトに掲載した論考で、「イランがホルムズ海峡を完全に制圧することは極めて考えにくい」「短時間にわたって海峡の封鎖に成功したとしても、米海軍の直接的な攻撃を前に(封鎖が)続くことはないだろう」としている。 だが、前述したように、イランはゲリラ型の戦闘を欧米の海軍やホルムズ海峡を航行するタンカーに挑み、石油輸送に甚大な影響が出る可能性も排除できない。有事におけるホルムズ海峡の脆弱性は以前から指摘されてきた。 このため、アラブ首長国連邦(UAE)では、アブダビ南西のハブシャン油田からオマーン湾に面するフジャイラ港を結ぶパイプラインを稼働させており、ホルムズ海峡を通らない石油輸出も一部ながら可能だ。ただ、イランがホルムズ海峡封鎖に乗り出せば、原油相場は急上昇し、日本を含めた世界の経済活動に大きな影響を与えることは確実な情勢だ』、なるほどゲリラ型の戦闘の可能性は確かにありそうだ。当分、要注意の常態が続くのだろう。
タグ:ロイター 東洋経済オンライン イラク イエメン シリア レバノン 中東情勢 日経ビジネスオンライン ホルムズ海峡を封鎖 岡部 直明 イラン核合意から離脱 (その12)(イラン問題1)(「ミスター離脱」トランプが招く世界の亀裂 イラン核合意離脱の乱反射、イラン怒る!「ホルムズ海峡封鎖」匂わす思惑 犬猿の仲、アメリカとイランが舌戦開始) 「「ミスター離脱」トランプが招く世界の亀裂 イラン核合意離脱の乱反射」 世界の潮流を無視する「トランプ第1主義」は危険極まりない 「イスラエル寄り」 トランプ大統領は、イラン核合意がイランに核開発規制に期限があることや、弾道ミサイル開発を制限できないことなどを理由に「最悪の合意」と強調 中東に核開発ドミノ イラン核合意は、国連安全保障理事国の米英仏中ロとドイツの6カ国がイランとの間で、12年間協議したうえで2015年にようやくまとめたものだ トランプ大統領の登場で米欧関係はきしみ続けているが、イラン核合意からの離脱で亀裂は決定的になった イラン中央銀行と取引する海外の金融機関は、米国の金融機関と取引できなくなる イラン原油は大半がアジア諸国向け 「オバマ返し」 「米国の核合意破棄で想定されるイランの「報復シナリオ」」 人民動員隊(PMF) イランが少なくとも8万人のシーア派戦闘員を補充 核合意が崩壊すれば、シリアのシーア派武装組織がイスラエルに攻撃を仕掛けることをイランが押しとどめる理由はほとんどなくなる イランは現在、ヒズボラに対し、精密誘導ミサイル製造工場の建設や、長距離ミサイルへの精密誘導システム装着などで支援を行っている ヒズボラは昨年、イスラエルがシリアやレバノンに戦争を仕掛ければ、イランやイラクなどから数千人の戦闘員が集結すると警告し、シーア派武装勢力がヒズボラ救援のためレバノンに駆け付ける可能性を示唆 「フーシ派」 池滝 和秀 「イラン怒る!「ホルムズ海峡封鎖」匂わす思惑 犬猿の仲、アメリカとイランが舌戦開始」 ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾の間にあり、最も狭い部分は幅33キロで大型タンカーが通れるのは約7キロにすぎず、水深も比較的浅い 2011年にはイランのアハマディネジャド前政権が欧米の経済制裁に反発し、海峡封鎖を警告したことも 1980〜1988年のイラン・イラク戦争では、ホルムズ海峡から入ったペルシャ湾で、両国軍が石油輸出を妨害するために関係する船舶を攻撃し合った 革命防衛隊など反米路線を推し進める保守強硬派側 封鎖を最初にちらつかせたのが、穏健派のロウハニ大統領 カタールには、地域最大の1万人を超す米軍兵士が駐留する米軍基地があるほか、バーレーンには、米海軍第5艦隊の司令部が置かれている ゲリラ型の戦争
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東京オリンピック(五輪)予算膨張以外(その4)(小田嶋氏:「みんなで乗り越えた猛暑五輪」の思い出) [国内政治]

昨日に続いて、東京オリンピック(五輪)予算膨張以外(その4)(小田嶋氏:「みんなで乗り越えた猛暑五輪」の思い出)を取上げよう。

コラムニストの小田嶋 隆氏が8月10日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「みんなで乗り越えた猛暑五輪」の思い出」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/080900154/
・『私自身は、梅雨が明けてからこっち、不要不急の外出を控えているので、さほど暑い思いはしていない。 なので、「暑いですね」と言われた時には、「暑いのは無駄に頑張るからですよ」と、心の中でそう答えることにしている。 心の中で言うのは、口に出してそう言うとカドが立つからだ。 頑張っている人間を揶揄してはいけない。あたりまえの話だ・・・不要不急の用事をまるごと省くと、われら凡人の人生は、たちまちのうちに色あせ、立ち行かなくなる。 というのも、われらが楽しんでいる娯楽の多くは、不要不急の活動に伴って生じるあぶくのようなものだからだ。 たとえばの話、不要不急の外出を控えて自室に閉じこもっている私の日常は、甲子園の高校野球とMLBの大谷翔平選手出場試合を代わる代わるに視聴することでかろうじて持ちこたえているテの、はかない営みに過ぎない。 もし、この時期に「不要不急だから」「野外での日中の運動は危険だから」という理由で野球が中止されたら、私は水を失ったサカナのように苦しむことになるだろう。 ということはつまり、私が不要不急の外出を自粛し、なおかつ退屈を免れるためには、高校球児の諸君が炎天下の甲子園球場で汗にまみれてくれていないとならないわけで、言い換えれば、この世界から不要不急の活動をオミットしたら、少なからぬ穀潰しが退屈のあまり不要不急の愚行に自ら身を投じるに違いないということだ』、いつもながら傑作の出だしだ。
・『当初の目論見では、「不要不急」という線で五輪不要論を展開するつもりでいたのだが、この論点はどうやら書き起こすまでもなくスジが良くない。 理由は、私自身がスポーツ観戦オタクだからだ。 つい先月まではW杯三昧のサッカー漬けで、この一週間ほどは打って変わって朝から野球まみれの日常を送っている。その、余暇時間の大半をスポーツ番組視聴に費やしているテレビ端末人間が、どの口でオリンピックを「不要不急」などと言えたものだろうか。 ただ、どうせ始まってしまったら夢中になって観戦することがわかりきっているのだとしても、そのこととは別に、わざわざ五輪を東京に呼ぶ必要がないということは、この際、明確に主張しておきたい。 世界中のどこの都市で五輪が開催されていようが、きょうび、おもだった競技はなんらかの形でテレビ中継される。とすれば、基本的に液晶観戦者である私のような半可オタクにとって、競技がどこで行われているのかは些末な問題に過ぎない。してみると、わざわざ世界中から選手団を招いて、莫大な予算を費やしてまでご近所で開催する必要はない。 このほか、東京で五輪を開催してほしくない理由をひとつひとつ列挙していけば、それだけで当欄のページは埋まるだろう。が、今回、それはしないでおく』、わざわざ五輪を東京に呼ぶ必要がない、というのには同感だ。
・『で、ちょっと角度を変えて、当稿では、五輪の地元開催を待望している人たちが、どうしてそう考えるのかについて、私なりに寄り添って考えてみることにする。 コラムニストは、呶呶烈々自説を主張するばかりではやっていけない。 時には他人の考えにあえて同調してみることで、硬直したアタマをほぐしにかからないといけない。 そうでなくても、ここのところ、様々な場面で、自分が少数派であることを思い知らされる機会が多い。 私自身としては、素直に見て、普通に考えて、あたりまえに感じているつもりでいるあれこれが、世間の側から見ると「変わって」いたり「特殊」だったり「ひねくれ」ていたりするらしいのだ。  もちろん、他人と違うからといってただちに自分が間違っていると考えて意気消沈するわけではない。私はそれほど気持ちの弱い人間ではない。 とはいえ、自分の感覚が「普遍」で、世間のほうが偏っているのだと、20代の頃にそうだったみたいに自信満々のテイで言い切れるのかというと、そうもいかない。無理だ。 で、結果として、私は、さまざまな場面で発生する行き違いを 「ああ、そうですか」の一言で処理している。 処理しているというよりは、マトモに対応することを断念していると言った方が適切だろう。 私はあきらめている。 われわれはわかりあえない。 であれば、せめて罵り合うのはやめようじゃないか、と、そのあたりに新しい線を引いている次第だ。 たとえば、特定の誰かが何かを好む理由を詳しく問い質してみると、それは、まさに私がそれらを嫌っている理由と同一だったりする。こうした発見は、私から、議論する気持ち根こそぎに奪い去って行く』、小田島氏も円熟の境地に入っているようだ。
・『五輪の開催は、8月の東京に騒がしさと混乱をもたらすはずだ。それらが2年後にやって来ることの予感がもたらすわずらわしさだけで、すでにして私は不機嫌になっている。 ところが、五輪を楽しみにしている人たちが待望しているのは、まさにその、私が嫌悪しているところの、騒がしさとせわしなさと混雑と混乱それ自体だったりするわけで、つまり、彼らと私の間には、議論をしようにも、はじめから歩み寄りの余地がありゃしないのだ。 しかも、どうやら多数派は彼らの方で、私はマイノリティーだ。ということは、この国において、正義は彼らの側にある』、なるほど。
・『思い起こせば、学校に通っていた時代から、すでに似た事情はあった。 私は、「行事」がきらいな子供だった。 「行事」というのはつまり、運動会とか学芸会だとか、あるいは遠足でも写生会でも良いのだが、そうした通常の授業とは違う、特別枠のスケジュールで挿入されるイベント一般のことだ。 なぜそれらのイベントがきらいだったのかというと、これはいま考えれば仕方がないことだったとも思えるのだが、百人以上の子供たちをひとつのイベントに集中させるためには、必ずや「同調」を求める局面が発生するからだった。 私は、その「同調」が苦手なメンバーだった。 それゆえに、校外活動や恒例の学校行事を含むカレンダーイベントのことごとくを、憂鬱な気分で過ごさねばならなかったのである。 たとえば、運動会では、本番に先立ってひと月以上前からフォークダンスの練習が通常の体育の授業をツブす形で繰り返されることになっていた。 その「練習」は、端的に申し上げて、苦行以外のナニモノでもなかった。 私が通っていた小学校では、1年生から6年生までの全校生徒が校庭をいっぱいに使って「グリーンスリーブス」という曲に合わせて一斉に踊る最後の場面が、学校の名物というのか、運動会の「見せ場」になっていて、ために教師たちは、例年通りの見事な群舞を今年もまた再現させるべく、毎度毎度、躍起になってダンスの練習を強要した。 私は、他人に合わせて決まった動作をすることが苦手で、うまく踊ることができない子供だったわけなのだが、それ以上に、意味のない練習を強いられていることが不満でならなかった。 「これって、来賓に見せるための踊りだよね?」「どうしてぼくたちが、PTAだとか来賓を喜ばせるために踊りの練習をしないといけないんだろうか」「運動会って、観客のための催しなの?」「オレらは見世物なのか?」と、胸の奥から湧き出してくる疑問と呪詛の声を飲み込みながら、大好きな体育の授業をツブされて、退屈な踊りの所作をリピートさせられるのは、私にとっては大変な苦痛だった』、いやはやこんなませた小学生がいたとは、先生たちもさぞかし大変だろう。
・『卒業式には「呼びかけ」というお約束の出し物があった。これは、私の世代の者が小中学生だった時代に全国的に蔓延していた演出手法で、要は子供たちがユニゾンでポエムみたいなものを読み上げる集団朗読劇みたいなものだ。 私が通っていた小学校では、三学期に入ると、在校生と卒業生が、それぞれに用意された原稿を読み上げるべく練習を繰り返すことが習慣化していた。 「いつもやさしく遊んでくれたおにいさんおねえさん(おにいさん、おねえさん)」「ともに汗を流したクラブ活動(くらぶかつどう)」「応援に競技にちからのはいった運動会(うんどうかい)」てな調子で、ポエムを朗読していたオダジマの気持ちを想像してみてほしい。 私は、本当に心の底からその種のイベントを呪っていた。 ところが、この世にも見え透いた集団子供朗読ポエムは、まんまと来賓を感動させた。 卒業式に列席している保護者や来賓の大人たちが、ハンカチを取り出して涙を拭う様子を眺めながら、私は、コントロールされた感動というものの安っぽさに思い至らずにはおれなかった。「つまりこの呼びかけっていうのも、来賓のための出し物なわけだよな?」「どうしてほかならぬ卒業生が観客のためにサービスをしなきゃならないんだ?」「卒業式って、誰のための儀式なんだろうか」たしかに私はひねくれた子供だったが、では、あの「呼びかけ」のポエムでうっかり涙を絞りとられていた大人こそが素直で理想的な日本人だったのだろうか。 いや、特にここで答えを求めているわけではない。先に進もう』、私の頃にはまだ「呼びかけ」はなかったが、あったとしても率直に振舞って、とても小田島氏の域には達していなかったろう。
・『基本的には楽しみだった遠足や社会見学にも、必ず「同調」の試練は含まれていた。 校外活動の間、子供たちは列を乱してはならなかったし、勝手な行動を戒められていた。 で、私はといえば、学校側の想定する枠組みからいちいちはみ出しては叱責されるタイプの典型的な「手のかかる」児童だった。 これも大人になった目で振り返ってみれば簡単な話で、教師の側から見れば、遠足にせよ工場見学にせよ、校外に引率する児童の安全を確保するためには、教室内以上に徹底した「秩序」と「同調」を求めなければならなかったわけで、その当然の設定を、当時の私が、せっかく学校の外に出られたのに、なぜ自由を束縛するのだろうかと、どうしても納得できなかっただけのことだ。 多くの同級生は、十分に遠足を楽しんでいた。 もちろん、運動会もだ。 10年ほど前のことだが、小学校時代の同級生の何人かと話をする機会があった。その時、彼らは運動会の思い出として、あろうことか、あの「グリーンスリーブス」を懐かしがっていた。 私は驚愕した。「おい、ウソだろ? あの地獄のバカ踊りの何が楽しかったんだ?」「えっ? だってずいぶん練習したじゃん」「だから、その練習がバカバカしくてつらかったっていう話じゃないか」「いや、そりゃ最初のうちはキツかったかもしれないけどさ」「なんていうのか、達成感があったぞ」「そうそう達成感な」「ウソだろ? おまえら本気か?」いや、ウソではないのだ。本気なのだ。そして、おかしいのはたぶん私の方なのだ。 ずっと昔に味わった試練や苦労を、楽しい記憶として思い出すのが普通の日本人なのだ。 それどころか、試練の真っ只中にあってさえ、いつしかそれを仲間と一緒に分かち合う娯楽として享受できるようでなければ、将来まともな社会人にはなれないのだ』、「ずっと昔に味わった試練や苦労を、楽しい記憶として思い出す」というのは、日本人だけでなく、欧米人にもそうした面がある。
・『これからやってくるであろう五輪関連のゴタゴタにしても、おそらく、多数派の国民はそんなに苦にはしないはずだ。 ボランティアの動員や、時差出勤の強要や、サマータイムの押し付けや、都内の交通渋滞や、ホテル不足といった様々な試練を、彼らは、むしろ楽しむに違いない。 そして、何年かたった後、「あん時は大変だったなあ」と、笑顔で振り返るのだ。 労役であれ負担であれ酷暑であれ不眠であれ、全員で担う試練は、うちの国では「共同体験」として美化される。 結局のところ、軍隊経験でさえ戦友の間では懐かしい思い出として反芻され得るわけで、そういう意味で、五輪は、順調に泥沼化しつつある時点で、成功の道を歩みはじめているといえるのだ。 われわれは、「これまでに経験したことのない新しいタイプのトラブル」を「みんなで心をひとつにして」「乗り切る」タイプの試練を、「夢」や「絆」といった言葉とともに神聖視している。 五輪期間中の二週間は、目新しいイベントや、集団的な統一作業が好きなタイプの人々にとっては、ワクワクする体験になるはずだ。 少なくとも、1カ月以上にわたってフォークダンスの練習を強要され、本番前の数日間は、居残りで通しのリハをやらされた経験を、600人が一斉に踊ったことで「達成感」として記憶できるタイプの人々にとっては、どんな試練であっても、結局は喜びとしてカウントされる』、「五輪は、順調に泥沼化しつつある時点で、成功の道を歩みはじめているといえるのだ」との皮肉は、まさに小田島節全開である。
・『最後にサマータイムについて。 朝日新聞が8月4、5日に実施し8月6日に発表した世論調査によれば、サマータイムの導入に53%が賛成している(反対は32%、その他・無回答が15%)。 私は、個人的には反対なのだが、なんだかんだで導入されてしまう気がしている。 理由は、サマータイム導入に反対であっても、「みんなが一緒にやる」ことそのものには、賛成する気持ちを持っている人が多数派だと思うからだ。 もう少し詳しく述べると 「自分の賛否はともかく、みんながやろうとしていることなら自分は追随するよ」くらいな気持ちでいる人間が、日本人の大半を占めているということで、その人たちはいずれにせよ「大勢」に流されることを望んでいる・・・つまり、われわれは 「みんなで一緒に失敗するのならそれはそれでそんなに悪いことじゃない」という形式でものを考えている。 ちなみに、上記の朝日新聞のアンケートの質問項目は 《2020年の東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策についてうかがいます。大会組織委員会は、気温の低い早朝を有効に使うため、日本全体で夏の間だけ時計を2時間進める「サマータイム」の導入を提案しています。あなたはこの案に賛成ですか。反対ですか。》となっている。 あからさまな誘導尋問だと思う。 理由は、回答者に対して「気温の低い早朝を有効に使うため」などと、暑さ対策としてのサマータイムの利点だけを伝えて、デメリットについての情報を与えていないからだ。 この質問だと、「まあ、この暑さだし、なんにも対策しないよりは、なんであれ、効果のありそうなことは試しても良いんじゃないかな」くらいな気分で、《賛成する》にマルをつける回答者がけっこう出るはずだ。 その意味で、悪質な設問だと思う』、朝日新聞までがこんな誘導質問のアンケートをするとは、堕ちたものだ。
・『朝日新聞の意図や思惑はともかく、こういうアンケート結果が「世論」ということになると、多くの日本人は、与えられた「世論」なり「民意」に同調するはずで、その「同調」がわれわれを新しい場所に運んで行くことになる。これは避けることができない。 よく聞く話だが、家電量販店の店員が顧客から尋ねられる質問で一番多いのが、「どの製品が一番お得か」でもなければ 「どの製品が一番高性能か」でもなくて、「どれが一番売れているのか」だということが、この間の事情を物語っている。 われわれは、リーダーに着いて行くのでもなければ、イデオロギーに誘導されるのでもなく、「みんな」という正体不明の存在に同調する形で新時代の扉を開くことになる。 さきほど、グリーンスリーブスの歌詞を検索してみてはじめて知ったのだが、あれはどうやら、自分に残酷な仕打ちをした人間に変わらぬ愛を誓う歌だったようだ。 なるほど、と思ってひとつひとつの言葉をかみしめている』、「同調」の恐ろしさは、第二次大戦でいやというほど思い知らされた筈なのに、いまだに日本人の主流の思考様式であるとは・・・。
タグ:サマータイム 日経ビジネスオンライン 東京オリンピック(五輪) 予算膨張以外 小田嶋 隆 (その4)(小田嶋氏:「みんなで乗り越えた猛暑五輪」の思い出) 「「みんなで乗り越えた猛暑五輪」の思い出」 不要不急の用事をまるごと省くと、われら凡人の人生は、たちまちのうちに色あせ、立ち行かなくなる 私が不要不急の外出を自粛し、なおかつ退屈を免れるためには、高校球児の諸君が炎天下の甲子園球場で汗にまみれてくれていないとならないわけで、言い換えれば、この世界から不要不急の活動をオミットしたら、少なからぬ穀潰しが退屈のあまり不要不急の愚行に自ら身を投じるに違いないということだ わざわざ五輪を東京に呼ぶ必要がない 基本的に液晶観戦者である私のような半可オタクにとって、競技がどこで行われているのかは些末な問題に過ぎない わざわざ世界中から選手団を招いて、莫大な予算を費やしてまでご近所で開催する必要はない われわれはわかりあえない。 であれば、せめて罵り合うのはやめようじゃないか、と、そのあたりに新しい線を引いている次第だ 私は、「行事」がきらいな子供 通常の授業とは違う、特別枠のスケジュールで挿入されるイベント一般のことだ 百人以上の子供たちをひとつのイベントに集中させるためには、必ずや「同調」を求める局面が発生するからだった 私は、その「同調」が苦手なメンバーだった 「グリーンスリーブス」 ダンスの練習を強要 「これって、来賓に見せるための踊りだよね?」「どうしてぼくたちが、PTAだとか来賓を喜ばせるために踊りの練習をしないといけないんだろうか」「運動会って、観客のための催しなの?」「オレらは見世物なのか?」と、胸の奥から湧き出してくる疑問と呪詛の声を飲み込みながら、大好きな体育の授業をツブされて、退屈な踊りの所作をリピートさせられるのは、私にとっては大変な苦痛だった 卒業式には「呼びかけ」というお約束の出し物 コントロールされた感動というものの安っぽさに思い至らずにはおれなかった 遠足や社会見学 私はといえば、学校側の想定する枠組みからいちいちはみ出しては叱責されるタイプの典型的な「手のかかる」児童だった 当時の私が、せっかく学校の外に出られたのに、なぜ自由を束縛するのだろうかと、どうしても納得できなかっただけのことだ ずっと昔に味わった試練や苦労を、楽しい記憶として思い出すのが普通の日本人なのだ 何年かたった後、「あん時は大変だったなあ」と、笑顔で振り返るのだ。 労役であれ負担であれ酷暑であれ不眠であれ、全員で担う試練は、うちの国では「共同体験」として美化される 五輪は、順調に泥沼化しつつある時点で、成功の道を歩みはじめているといえるのだ われわれは、「これまでに経験したことのない新しいタイプのトラブル」を「みんなで心をひとつにして」「乗り切る」タイプの試練を、「夢」や「絆」といった言葉とともに神聖視 朝日新聞が8月4、5日に実施し8月6日に発表した世論調査 あからさまな誘導尋問 われわれは、リーダーに着いて行くのでもなければ、イデオロギーに誘導されるのでもなく、「みんな」という正体不明の存在に同調する形で新時代の扉を開くことになる
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東京オリンピック(五輪)予算膨張以外(その3)(日本は韓国を笑えない!「五輪ファシズム」の仕掛人はマスコミだ、東京五輪 なぜ真夏に開催か 猛暑で懸念高まる、東京五輪「ブラックボランティア」中身をみたらこんなにヒドかった みなさん 気づいてますか…? ) [国内政治]

東京オリンピック(五輪)予算膨張以外については、昨年6月15日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(日本は韓国を笑えない!「五輪ファシズム」の仕掛人はマスコミだ、東京五輪 なぜ真夏に開催か 猛暑で懸念高まる、東京五輪「ブラックボランティア」中身をみたらこんなにヒドかった みなさん 気づいてますか…? )である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が1月25日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日本は韓国を笑えない!「五輪ファシズム」の仕掛人はマスコミだ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/157079
・『韓国で文在寅大統領肝いりのアイスホッケー「南北合同チーム」が物議をかもしているが、実は日本でも事情は似たり寄ったり。五輪をスポーツイベントではなく、「国威を見せつけるための政治イベント」として捉えている人が多いからだ。これは韓国や中国、旧ソ連圏などと同様に、日本人が今でも抱えている醜悪な考え方である』、出だしからの強烈なパンチだ。
・『安倍首相が平昌五輪開会式に出席する意向を固めた、という報道があった・・・多くの人が薄々勘づいていながらも目をそらし続けきた「現実」が、今回のドタバタによって、図らずも浮かび上がってきてしまったことだ。 それは、五輪が「スポーツの祭典」というのは建前的な理想論であって、その実態は脂ギッシュなおじさんたちが駆け引きを行う、コテコテの「政治の祭典」に過ぎない――という「醜悪な現実」である。 本来はアスリートという「個人」が競い合い、「国家」はそれを応援するものなのに、いつの間にやら当事者よりも、「国家」の方が前のめりになって、「五輪で友好」「五輪で景気回復」「五輪で世界中にこの国の素晴らしさを誇示するチャンス」などというスケベ心が大きくなっていく』、「実態はコテコテの「政治の祭典」に過ぎない」、「スケベ心が大きくなっていく」などというのは痛烈な批判だが、言われてみればその通りだ。
・『自民党の二階幹事長が16日の記者会見で首相開会式出席について、「大変重要な政治課題」と述べたが、この言葉からもわかるように、ほとんどの政治家は、五輪を国家の威信やメッセージを表明する政治的パフォーマンスの場だと思い込んでいる。 それの何が悪いという愛国心溢れる方もいるかもしれないが、大変マズい』、なるほど。
・『「国家」が何よりも優先されると、そのしわ寄せは必ず、本来の主役であるはずのアスリートにもたらされる。つまり、「全体の利益のため」という掛け声のもと、力のない個人が犠牲にされる「五輪ファシズム」ともいうべき現象が起きてしまうからだ。 分かりやすいのが、開催国・韓国の文在寅大統領が、アイスホッケーの女子代表チームに北朝鮮の選手を「友好枠」として最低3人起用するようにねじ込んだ「南北合同チーム」だ。代表監督を務めるカナダ人女性は、メディアのインタビューでこんな風に述べている。 「政治的な目的に自分たちのチームが使われていることはつらい。韓国の選手が3人出られなくなると聞いた時もつらかった」 4年間、必死に頑張ってきたアスリートの権利より「南北融和」。「個人、団体の選手間の競争であり、国家間の競争ではない」というオリンピック憲章などハナから存在しないような国家主義、全体主義である。 いやいや、それは韓国という国がアレだから、という人もいるかもしれないが、五輪の歴史を振り返ってみると、「全体主義」に毒されていない大会を探す方が骨が折れる。 1936年、IOCが「政治利用しないから」と説得してアメリカなど西側諸国の参加にこぎつけたベルリン五輪も結局、ヒトラーの「PRイベント」となったのは有名な話だが、このノリは戦後もみっちり続いている。冷戦時代には、アメリカとソ連が自国の優位性をメダル数で競った。国家の威信を示すために、時にはドーピングも辞さず、その悪しき伝統はロシアに受け継がれている。 また、ソ連崩壊後は、ウクライナなどの国々が開会式で、統一旗ではなく独自の旗を掲げることで、自分たちの正当性をアピールしたように、自国民のナショナリズム発揚の場にもされてきた』、確かにオリンピックには国家主義、全体主義の歴史があるようだ。
・『どんなに「スポーツに国境はない」と美辞麗句を謳ったところで、「国別対抗」という、一部の国や民族のナショナリズムを刺激する大会コンセプトを続けている以上、どうしても「五輪ファシズム」という問題が引き起こされてしまう構造なのだ。 しかも、もっと言ってしまうと、実は我々日本はお隣の韓国に負けず劣らず、「五輪ファシズム」に陥ってしまう危険性がある。 それを如実に示しているのが、日本の「五輪報道」の異常性だ。 テレビでは大会期間中、日本人選手の活躍を朝から晩まで放映して、アナウンサーは「がんばれ日本!」と絶叫する。選手の地元などでは、日の丸を振ってみんなで観戦することも多い。新聞やニュースでも、今日まで日本勢がいくつのメダルを獲得しました、という話題がトップを飾って、前回よりも多い少ないと一喜一憂する。 ごく普通のことじゃないかと思うかもしれないが、実は世界的に見ると、五輪をマスコミ総出で大騒ぎする国はかなり珍しい。たとえば、アメリカやヨーロッパでは五輪に無関心な人も多く、その競技を過去にやっていたとかの熱心なファンでなければ、徹夜でテレビにかじりつくなんて人の方が少ない・・・ひとつの大きな理由としては、「スポーツ」というものに対する基本的な考え方の違いがある。 多くの国では、その国のメジャースポーツに国民の関心が集まって、そのスポーツなら海の向こうのパフォーマンスも見てみたいとなる。だから、高い技術を持つプレーヤーは、国籍や人種を問わずリスペクトされ、国を超えてファンもできる。 こういうカルチャーの人たちに、五輪の「国別対抗運動会」という座組みは正直、ピンとこない。国によってはほとんどなじみのないスポーツも多いので、自国の「代表」といっても顔も知らないし、感情移入も難しい。もちろん、自分の国なので応援をしたい気持ちはあるだろうが、パフォーマンスの良し悪しもわからないので、徹夜して国旗を振るまでの熱意は持てないのだ』、私もアナウンサーの「がんばれ日本!」絶叫には、いささか辟易とする。日本の「五輪報道」の異常性は本当にどうかしている。視聴率が稼げるからなのだろうが、困った国民性だ。
・『これと対照的なのが、日本や一部アジア諸国、旧ソ連圏などの国々である。普段は観客席がガラガラというマイナースポーツであっても、「自国勢が強い」ということになった途端、国民の関心が急に集まり、「五輪」の期間中は「にわか熱狂ファン」が大量発生するのだ。 つまり、我々が五輪にここまで熱狂しているのは、「スポーツ」を愛しているからではなく、「日本人の活躍」を愛しているから、とも言えるのだ・・・私が問題視しているのは日本人ではなく、マスコミだ。我々の頭に「五輪=日本人同胞の活躍を見ていい気分になる愛国イベント」という常識が刷り込まれているのは、近代オリンピックが始まってから、日本のマスコミが延々と続けてきた「五輪報道」による弊害なのだ。 前述したように、ほとんどの国では、純粋に「スポーツ」であり、アスリート個人のパフォーマンスの成果だと捉える。だから、評価されるのは個人の能力であり、個人の努力だ。当然、世界の「五輪報道」では個人を讃える。 しかし、日本のマスコミは最初に大きなボタンの掛け違いをする。スポーツの評価を「個人」ではなく「日本人全体」にすり替えてしまったのだ。分かりやすいのが、1936年10月30日の「読売新聞」に出た大きな見出しだ。「諸君喜べ 日本人の心臓は強い強い、世界一 オリムピツクに勝つのも道理 統計が語る新事実」 これは当時の「国民体力考査委員会」の調査で、心臓病と癌が原因で亡くなる人の割合が欧米人と比較して少ないということを報じたものなのだが、なぜか強引にこの年開催されたベルリン五輪で、日本人選手がマラソンや水泳で金メダルを獲得したことに結び付けている』、この読売新聞記事の牽強付会ぶりには驚かされるが、日本のマスコミは「スポーツの評価を「個人」ではなく「日本人全体」にすり替えてしまった」というのは、その通りなのだろう。
・『今でも五輪代表の活躍を実況中継するアナウンサーが「見たか、競泳日本の底力!!」などと叫ぶように、高いパフォーマンスを見せた「個人」を褒め称えるのではなく、「みんなの勝利」にすり替える、という基本的なマスコミのスタンスは、戦争を挟んでもこの80年、一貫して変わっていない。 つまり、我々が五輪を純粋なスポーツイベントではなく、「日本人の活躍」に熱狂する愛国イベントとして楽しむようになってしまったのは、「個人」の業績を「日本全体」の業績にうまく拡大解釈するマスコミの報道姿勢からなる「教育」によるものなのだ。 このあたりこそ「五輪ファシズム」に陥りがちな最大の理由だが、実は残念なことに、すでにその兆候が出てきている。 東京五輪は3つの基本コンセプトに基づいているが、その中のひとつに「全員が自己ベスト」とある。アスリートはもちろんのこと、『ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の「おもてなし」で歓迎』するというのだ。 素晴らしいと思う一方で、五輪に対して特に思い入れのない人まで、「みんなのため」に死力を尽くせ、さもなくば日本人にあらず、みたいなノリにも聞こえて、一抹の不安がよぎる。 昨年、新国立競技場建設に携わっていた、若い現場監督が過労自殺をした。最近では、一度引退を決意したアスリートが妻や周囲に応援されて復帰。「どうしても五輪に出ねば」という重圧に苛まれ、ライバルに違法薬物を飲ませるという卑劣な犯罪に走った。  誰に命じられたわけではないのに、「五輪」という言葉に急き立てられ、「自己ベスト」を尽くした結果、疲弊して自分自身を見失ってしまったのだろうか。彼らもある意味、「五輪ファシズム」の犠牲者ではないのか』、東京五輪の基本コンセプトのひとつに「全員が自己ベスト」があるとは初めて知ったが、確かに全体主義の匂いがする。「五輪ファシズム」が犠牲者まで生んでいるというのは、改めて息苦しさを感じた。
・『戦後、日本最大の「政治イベント」だった1964年の東京五輪で銅メダルを取り、国民的スターになったマラソン選手の円谷幸吉氏は、続くメキシコシティ五輪では「金」を期待される中で、その重圧に苦しみ、最後は自ら命を絶った。遺書にはこう書かれていた。 「もうすっかり疲れ切ってしまって走れません」 「自己ベストを尽くせ」という声は時に、「個人」をここまで追い詰める。走るのはあくまで「個人」であり、我々は単なる傍観者にすぎないのだが、この大事な基本を忘れた論調が、今の日本には多すぎる。 ある人は「景気回復五輪」だと思っているし、「最後の建設バブル五輪」と算盤をはじく人もいる。「日本人のすごさを世界に見せつける五輪」だと勘違いしている人もいれば、そうではなく「復興五輪」にしてほしいと願う人もいる。 それぞれの人たちに、そう望むのも無理ないような理由があるのだろうが、外野の思惑が多ければ多いほど、主役であるアスリートに犠牲を強いることになる。 日本人の繁栄のための国威発揚イベントだと捉えたところから、「五輪ファシズム」の罠は始まる。我々はあまりにも多くのことを「五輪」に期待しすぎてはいないか。アスリート個人だけが評価されるべきことなのに、彼らに日本人全体の評価を背負わせてはいないか。 韓国の「南北合同チーム」の醜悪さを他山の石として、「五輪」とはいったい誰のものなのかを、改めて考えたい』、円谷幸吉氏まで犠牲者だったとは・・・。「五輪ファシズム」の罠には気をつけるべきという思いを新たにした。

次に、7月30日付けロイター「焦点:東京五輪、なぜ真夏に開催か 猛暑で懸念高まる」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/summer-olympics-tokyo-idJPKBN1KK09D
・『1964年、東京で夏季五輪が開催された時期は、比較的涼しくて湿度も低い10月だった。4年後のメキシコ五輪も同じく10月に行われた。 だが過去30年にわたり、ほとんどの夏季五輪は7、8月に開催されている。テレビ局が大会を取材する上で理想的な時期と考えているからだ。 この時期は五輪以外に世界的なスポーツイベントが少なく、テレビ局はより多くの視聴者を獲得しようと数十億ドルの放映権料を支払う。「IOC(国際オリンピック委員会)は、夏季、冬季五輪の開催時期について、米テレビ局の希望をよく分かっている」と、元CBSスポーツ社長のニール・ピルソン氏は話す・・・「夏季五輪が10月開催となると、単純にその価値が薄れる。その時期にはすでにさまざまなスポーツ大会の契約が存在するからだ」と同氏はロイターに語った。 IOCは、2020年夏季五輪の立候補都市に対し、7月15日から8月31日までの間に開催することを求め、東京は7月24日から8月9日を開催期間とした。 日程は、スケジュールが重ならないよう各スポーツ国際連盟から意見を聞いて決定されている』、1964年の東京夏季五輪はてっきり夏場だったと思い違いをしていたが、10月開催だったとは・・・。2000年大会以降はIOCの方針で、世界的なスポーツイベントが少なく、数十億ドルの放映権料が稼げる夏場になったとは・・・自分の認識不足を痛感させられた。
・『東京の立候補ファイルは、「晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」とアピールしている』、立候補時点ではここまでの猛暑は予想できなかったかも知れないが、いくらアピール用とはいえ、日本特有の蒸し暑さに一言も触れてないのは、無責任過ぎる。
・『東京五輪のマラソンコースに基づき、2016年と17年の7月後半と8月に気温や湿度などのデータを集計した国際的な研究チームは、選手や観客が熱中症になるリスクが高い状況となる可能性を警告。日陰のエリアを増やすよう、大会組織委員会に提言している。 同研究に携わり、緑地環境計画が専門の横張真・東京大学教授は、五輪史上で、東京が最悪のコンディションになりかねないと、東京大会のマラソン競技について警鐘を鳴らした。 組織委は、こうした警告を真摯(しんし)に受け止め、マラソン開始時刻の午前7時半から同7時への前倒しを発表。また、マラソンコースや他の主要道路に太陽光の赤外線を反射する遮熱性の塗装を行い、温度を下げるとしている。 組織委はまた、暑さ対策として、テントや冷風機などの設置を検討しているという。 あらゆる可能性を考慮した暑さ対策を準備していると、組織委の高谷正哲スポークスパーソンは語った。 横張教授は、10月あるいは11月が、東京五輪にとって理想的な開催時期であり、夏は暑くで湿度が高すぎると語った』、開始時間の30分前倒し、遮熱性の塗装、テントや冷風機などの設置、などで解決できる問題ではなさそうだが、決めた以上、強行するのだろう。やれやれ・・・。

第三に、8月4日付け現代ビジネスが掲載した博報堂出身の著述家、本間 龍氏へのインタビュー「東京五輪「ブラックボランティア」中身をみたらこんなにヒドかった みなさん、気づいてますか…?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56714
・『東京オリンピック・パラリンピックに向けたボランティアの募集が9月中旬から開始される。東京オリンピックでは、11万人もの無償ボランティアが動員される予定だが、この件に大きな問題があると発信し続けているのが、『ブラックボランティア』を出版した著述家の本間龍氏だ。東京オリンピック・無償ボランティアの数々の問題点を、本間氏に聞いた』、面白そうだ。
・『問題は多岐にわたるのですが、大きく二つあります。 一つが、東京オリンピックは巨大な商業イベントだ、ということです。すでに4000億円以上のスポンサー収入があったと推定されています。超巨大イベントにもかかわらず、なぜイベントを支えるスタッフは無償なのでしょうか。たとえばプロ野球やJリーグ、アーティストのライブやコンサートは有償スタッフが現場を切り盛りしていますよね。 同じボランティアといっても、災害ボランティアと五輪ボランティアは『ボランティア』という言葉でよく混同されてしまうのですが、まったく異なるものです。突発的な災害に対し、被災地で多くの手助けが必要なのは当然ですし、それが無償で行われることに対して、私も異義はありません。公共の福祉、公益に貢献していますし、利潤追求を目的としていませんよね。 一方で、五輪は商業イベントです。スポンサーのために利益をどう生み出すか、どう最大化するか、というのが目的です。これで莫大な利潤を上げているのが組織委員会であり、スポンサーを取り仕切る広告代理店…つまり電通です。公共の福祉も公益もほとんどありません』、言われてみれば、商業イベントなのに無償ボランティアとは、確かに違和感がある。
・『有償のボランティアもあります。よく知られたところでは、青年海外協力隊です。一般の給料と比べれば低いですが、外国での生活費は支給されますし、国内でも一定程度のお金が積み立てられます。 ちなみに1964年の東京オリンピックでは、通訳などは有償でした。普通のアルバイトに比べてもかなりの高額が支給されたようです。 日本では、公官庁が『公園整備』や『一人暮らしの人への料理提供』など、さまざまな無償ボランティアを展開してきました。そのため、知らない間に私たちの中に『ボランティア=タダ』という概念が刷り込まれてしまったのではないでしょうか。 ちなみにボランティアですから労働基準法の管轄外となります。労働基準法では一日の労働時間や休憩時間、交通費のルール、最低時給などが細かく定められていますが、ボラインティアはその枠内でないこともお伝えしておきたいですね」』、東京オリンピックでは通訳などは有償、「ボランティアですから労働基準法の管轄外」、などは初めて知った。
・『大手企業は『ボランティア休暇』という制度を取り入れるなどし始めていますし、それを活用する社会人もいるでしょう。ただ、彼らにとってはあくまでも有給休暇です。組織委としても、お金を払わずに働いてくれるのでラッキーというところでしょう。 本当に無償なのは学生です。そして組織委がいちばんのターゲットにしているのも、彼ら学生です。若くてそれなりに体力もありますし、時間もありますからね。各大学とは協定を結び、少しずつ募集への地ならしをし始めています。 こんなことがありました。今年6月、筑波大学と神田外国語大学が共同で『国際スポーツボランティア育成プログラム』を開催しました。2日間受講すれば『修了証』がもらえ、それがボランティア応募の際に有利に働くというふれこみなのですが、なんとこれが有償で、2日で5000円もかかるのです。無償のボランティアになるために有償の資格が必要とは、どこまで学生の善意をむしりとる気なのだ、と信じられない思いでした。 東海大学でも同様の講座が開かれましたが、こちらの講座は1日で1500円でした。この金額の差は何なのでしょうか。集めたお金はどこに行ったのでしょうか。怪しい五輪ビジネスにしか思えません。学生の皆さんは本当に気を付けてください」』、早くもボランティア向けの怪しい五輪ビジネスが始まっているとは、抜け目ないことだ。
・『(就職活動が有利になるのか?)「それはありえません。11万人以上ものボランティアがいるのですから、希少価値はまったくないでしょう。面接する側も『またオリンピックの話か…』とうんざりしてしまうのではないでしょうか」』、現実の就活では有利にならなくても、有利になると思い込まされて応募する学生も多いのではなかろうか。
・『組織委は『中高生枠』というのを設けています。たとえばテニスの試合でテニス部の子どもたちがボールボーイをする、というようなものだそうです。強制はしない、といっていますが、『家族旅行だから行けない』『受験勉強に集中したいから参加したくない』、そんなことが言えるでしょうか。日本の学校は同調圧力が強いですし、まして部活動ともなれば先生の言うことが絶対であるところがほとんどでしょう」』、確かに中高生がそんな事情で応募させられるというのは問題だ。
・’(シニア層)「募集要項・・・シニア、という文字はないのです」・・・「組織委は正直、シニアの参加を望んでいないのでしょう。熱中症が怖いからです。総務省のHPなどでも見られますが、熱中症で搬送された人の約半数が65歳以上です。また熱中症で命を落としてしまった人の8割が65歳以上です。 つまり、東京の酷暑の中でシニア層を働かせる危険性を組織委は十分認識しているのです。ですがもちろん、そんなことはおくびにも出しません。言った瞬間に、ほかの年齢層は大丈夫なのか、と批判が起こりますから」』、なるほど。
・『「広告代理店の使命は、スポンサーのための最大利益を生み出すことです。 単純に計算してみましょう。五輪期間中、一人10日働くとし、日給を1万円、10万人のボランティアに支給した場合、かかる経費は100億円です。全体の協賛費4000億円からすれば微々たる額ですが、払わなければそのまますべて利益になる、というわけです。わかりやすいですよね・・・今回、電通は、より多くの金をかき集めるため、これまでのオリンピックにあった『一業種1社』というスポンサーへの規制も取り払いました・・・それによって前回のリオ五輪からも倍以上の50社(2018年7月現在)という史上最大のスポンサー数、収入になりました。開催まであと2年ありますし、さらに増えていくでしょう」』、ボランティアが現在の条件でも十分に集まる限り、処遇改善への動きは出にくそうだ。
・『「新聞は全国紙5紙すべてがオリンピックのスポンサーになってしまっており、テレビと新聞はクロスオーナーシップという制度で結ばれていますから、当然こうした問題を深く追及できません。 無償ボランティア問題を扱うということは、これまで概観してきたように、組織委員会や電通の核心的利益にメスを入れることになります。無償だからいい、悪い、交通費を払え、という単純な話ではすまない。だから大手メディアはこの問題を避けて通り、国民になかなか真実が伝わらないのです」・・・「だれかのために役に立ちたい、助けたい思いは尊いと思います。ですが、その思いを搾取する構造があることを知った上で、参加するかしないかを決めても遅くはありません。先日刊行した『ブラックボランティア』では、問題となっている事実をひとつひとつ提示し、解説しました。まずこの事実を知り、その上で参加するかどうかを判断してもらえたらうれしく思います」』、なるほど、これでは文字通りブラックボランティアだ。電通などと結びついている大手メディアはこの問題を避けて通っているとは、いつものことながら情けない話だ。
タグ:ロイター ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 現代ビジネス 東京オリンピック(五輪)予算膨張以外(その3)(日本は韓国を笑えない!「五輪ファシズム」の仕掛人はマスコミだ、東京五輪 なぜ真夏に開催か 猛暑で懸念高まる、東京五輪「ブラックボランティア」中身をみたらこんなにヒドかった みなさん 気づいてますか…? ) 「日本は韓国を笑えない!「五輪ファシズム」の仕掛人はマスコミだ」 日本でも事情は似たり寄ったり。五輪をスポーツイベントではなく、「国威を見せつけるための政治イベント」として捉えている人が多い これは韓国や中国、旧ソ連圏などと同様に、日本人が今でも抱えている醜悪な考え方である 五輪が「スポーツの祭典」というのは建前的な理想論であって、その実態は脂ギッシュなおじさんたちが駆け引きを行う、コテコテの「政治の祭典」に過ぎない 本来はアスリートという「個人」が競い合い、「国家」はそれを応援するものなのに、いつの間にやら当事者よりも、「国家」の方が前のめりになって、「五輪で友好」「五輪で景気回復」「五輪で世界中にこの国の素晴らしさを誇示するチャンス」などというスケベ心が大きくなっていく ほとんどの政治家は、五輪を国家の威信やメッセージを表明する政治的パフォーマンスの場だと思い込んでいる 「国家」が何よりも優先されると、そのしわ寄せは必ず、本来の主役であるはずのアスリートにもたらされる。つまり、「全体の利益のため」という掛け声のもと、力のない個人が犠牲にされる「五輪ファシズム」ともいうべき現象が起きてしまうからだ 開催国・韓国の文在寅大統領が、アイスホッケーの女子代表チームに北朝鮮の選手を「友好枠」として最低3人起用するようにねじ込んだ「南北合同チーム」 「個人、団体の選手間の競争であり、国家間の競争ではない」というオリンピック憲章などハナから存在しないような国家主義、全体主義である 五輪の歴史を振り返ってみると、「全体主義」に毒されていない大会を探す方が骨が折れる IOCが「政治利用しないから」と説得してアメリカなど西側諸国の参加にこぎつけたベルリン五輪も結局、ヒトラーの「PRイベント」となったのは有名な話 冷戦時代には、アメリカとソ連が自国の優位性をメダル数で競った 国家の威信を示すために、時にはドーピングも辞さず、その悪しき伝統はロシアに受け継がれている どんなに「スポーツに国境はない」と美辞麗句を謳ったところで、「国別対抗」という、一部の国や民族のナショナリズムを刺激する大会コンセプトを続けている以上、どうしても「五輪ファシズム」という問題が引き起こされてしまう構造なのだ 実は我々日本はお隣の韓国に負けず劣らず、「五輪ファシズム」に陥ってしまう危険性がある 如実に示しているのが、日本の「五輪報道」の異常性だ テレビでは大会期間中、日本人選手の活躍を朝から晩まで放映して、アナウンサーは「がんばれ日本!」と絶叫する 世界的に見ると、五輪をマスコミ総出で大騒ぎする国はかなり珍しい 日本や一部アジア諸国、旧ソ連圏などの国々である。普段は観客席がガラガラというマイナースポーツであっても、「自国勢が強い」ということになった途端、国民の関心が急に集まり、「五輪」の期間中は「にわか熱狂ファン」が大量発生するのだ 我々が五輪にここまで熱狂しているのは、「スポーツ」を愛しているからではなく、「日本人の活躍」を愛しているから、とも言えるのだ 私が問題視しているのは日本人ではなく、マスコミだ。我々の頭に「五輪=日本人同胞の活躍を見ていい気分になる愛国イベント」という常識が刷り込まれているのは、近代オリンピックが始まってから、日本のマスコミが延々と続けてきた「五輪報道」による弊害なのだ 評価されるのは個人の能力であり、個人の努力だ。当然、世界の「五輪報道」では個人を讃える 日本のマスコミは最初に大きなボタンの掛け違いをする。スポーツの評価を「個人」ではなく「日本人全体」にすり替えてしまったのだ 1936年10月30日の「読売新聞」に出た大きな見出しだ。「諸君喜べ 日本人の心臓は強い強い、世界一 オリムピツクに勝つのも道理 統計が語る新事実」 今でも五輪代表の活躍を実況中継するアナウンサーが「見たか、競泳日本の底力!!」などと叫ぶように、高いパフォーマンスを見せた「個人」を褒め称えるのではなく、「みんなの勝利」にすり替える、という基本的なマスコミのスタンスは、戦争を挟んでもこの80年、一貫して変わっていない 東京五輪は3つの基本コンセプト ひとつに「全員が自己ベスト」とある アスリートはもちろんのこと、『ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の「おもてなし」で歓迎』するというのだ 新国立競技場建設に携わっていた、若い現場監督が過労自殺 一度引退を決意したアスリートが妻や周囲に応援されて復帰。「どうしても五輪に出ねば」という重圧に苛まれ、ライバルに違法薬物を飲ませるという卑劣な犯罪に走った マラソン選手の円谷幸吉氏は、続くメキシコシティ五輪では「金」を期待される中で、その重圧に苦しみ、最後は自ら命を絶った 「自己ベストを尽くせ」という声は時に、「個人」をここまで追い詰める ある人は「景気回復五輪」だと思っているし、「最後の建設バブル五輪」と算盤をはじく人もいる。「日本人のすごさを世界に見せつける五輪」だと勘違いしている人もいれば、そうではなく「復興五輪」にしてほしいと願う人もいる 日本人の繁栄のための国威発揚イベントだと捉えたところから、「五輪ファシズム」の罠は始まる。我々はあまりにも多くのことを「五輪」に期待しすぎてはいないか。アスリート個人だけが評価されるべきことなのに、彼らに日本人全体の評価を背負わせてはいないか 「焦点:東京五輪、なぜ真夏に開催か 猛暑で懸念高まる」 東京で夏季五輪が開催された時期は、比較的涼しくて湿度も低い10月だ 過去30年にわたり、ほとんどの夏季五輪は7、8月に開催されている。テレビ局が大会を取材する上で理想的な時期と考えているからだ この時期は五輪以外に世界的なスポーツイベントが少なく、テレビ局はより多くの視聴者を獲得しようと数十億ドルの放映権料を支払う 東京の立候補ファイルは、「晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」とアピールしている 東京五輪のマラソンコース 国際的な研究チームは、選手や観客が熱中症になるリスクが高い状況となる可能性を警告 横張真・東京大学教授は、五輪史上で、東京が最悪のコンディションになりかねないと、東京大会のマラソン競技について警鐘 本間 龍 「東京五輪「ブラックボランティア」中身をみたらこんなにヒドかった みなさん、気づいてますか…?」 ボランティアの募集が9月中旬から開始 11万人もの無償ボランティアが動員される予定 『ブラックボランティア』 一つが、東京オリンピックは巨大な商業イベントだ なぜイベントを支えるスタッフは無償なのでしょうか 、五輪は商業イベントです。スポンサーのために利益をどう生み出すか、どう最大化するか、というのが目的です。これで莫大な利潤を上げているのが組織委員会であり、スポンサーを取り仕切る広告代理店…つまり電通です。公共の福祉も公益もほとんどありません 有償のボランティアもあります。よく知られたところでは、青年海外協力隊 1964年の東京オリンピックでは、通訳などは有償 日本では、公官庁が『公園整備』や『一人暮らしの人への料理提供』など、さまざまな無償ボランティアを展開してきました。そのため、知らない間に私たちの中に『ボランティア=タダ』という概念が刷り込まれてしまったのではないでしょうか ボランティアですから労働基準法の管轄外 組織委がいちばんのターゲットにしているのも、彼ら学生です 各大学とは協定を結び、少しずつ募集への地ならしをし始めています 筑波大学と神田外国語大学が共同で『国際スポーツボランティア育成プログラム』を開催しました。2日間受講すれば『修了証』がもらえ、それがボランティア応募の際に有利に働くというふれこみなのですが、なんとこれが有償で、2日で5000円もかかるのです 東海大学でも同様の講座 怪しい五輪ビジネス 就職活動が有利になるのか?)「それはありえません。11万人以上ものボランティアがいるのですから、希少価値はまったくないでしょう 組織委は『中高生枠』というのを設けています 日本の学校は同調圧力が強いですし、まして部活動ともなれば先生の言うことが絶対であるところがほとんどでしょう 組織委は正直、シニアの参加を望んでいないのでしょう。熱中症が怖いからです 広告代理店の使命は、スポンサーのための最大利益を生み出すことです 日給を1万円、10万人のボランティアに支給した場合、かかる経費は100億円です。全体の協賛費4000億円からすれば微々たる額ですが、払わなければそのまますべて利益になる、というわけです 新聞は全国紙5紙すべてがオリンピックのスポンサーになってしまっており、テレビと新聞はクロスオーナーシップという制度で結ばれていますから、当然こうした問題を深く追及できません 無償ボランティア問題を扱うということは、これまで概観してきたように、組織委員会や電通の核心的利益にメスを入れることになります
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