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日本のスポーツ界(その19)(塚原夫妻は悪者?体操パワハラ問題をめぐる「わかりやすさ」の危険性、パワハラだけではない 重量挙げ三宅会長“独裁体制”の異常、「貴乃花親方の言い分が正しい」と感じさせる 相撲協会“過去の行状”) [社会]

日本のスポーツ界については、9月6日に取上げた。その後も相次いで問題が発覚したことを受けた今日は、(その19)(塚原夫妻は悪者?体操パワハラ問題をめぐる「わかりやすさ」の危険性、パワハラだけではない 重量挙げ三宅会長“独裁体制”の異常、「貴乃花親方の言い分が正しい」と感じさせる 相撲協会“過去の行状”)である。

先ずは、筑波大学教授(臨床心理学、犯罪心理学)の原田 隆之氏が9月6日付け現代ビジネスに寄稿した「塚原夫妻は悪者?体操パワハラ問題をめぐる「わかりやすさ」の危険性 複雑な世界を複雑なままとらえると…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57377
・『けのわからない展開  ここしばらく日本体操協会のゴタゴタがニュースを賑わせている。 昨年あたりから、スポーツの世界では、相撲、レスリング、アメフト、ボクシングと途切れることなく、さまざまな問題が噴出し続けている。次は、あそこだろうと思わせるような競技団体はまだいくつもある。 今回の体操協会の問題がややこしいのは、暴力問題で協会から速見佑斗コーチが無期限登録抹消等の処分をされただけでなく、速見コーチの指導を受けていた宮川紗江選手が、引き続き速見コーチの指導を受けたいと主張していることである。 さらに、コーチを処分した体操協会の幹部こそがハラスメントの元凶であり、暴力の件を使って自分とコーチを引き離そうとしているなどという主張も展開した。 協会幹部を相手に「勇気ある記者会見」をした18歳の宮川選手には大きな称賛が寄せられ、一方の体操協会の塚原光男副会長と塚原光子本部長には嵐のようなバッシングが吹き荒れている』、次々に発覚する不祥事には、正直なところうんざりという気もするが、事実究明は必要だ。
・『塚原夫妻にとっては、良かれと思って暴力追放の狼煙を上げたのに、当の選手が暴力を振るったコーチを擁護したばかりか、逆に自分たちを批判したのだから、とんだ誤算というか、思いがけない展開だっただろう。 あるいは本当に宮川選手の言う通り、選手とコーチを引き離し、自らの所属クラブに引き抜こうとした企みだったのだろうか。 慌てた塚原副会長は、「宮川選手の発言は全部嘘」と、選手の会見を全否定し、それがかえって火に油を注ぐこととなった。 さらに、宮川選手との会話を録音したデータを公開し、自身の「身の潔白」を証明しようとしたが、録音も公開も無断であったことから、これもさらに批判の的となった。 ここに至って、一転「全面降伏」の姿勢を見せようとしたのか、文書で謝罪し、本人にも直接謝罪したい旨申し出たが、時すでに遅しである。対応があまりにもゴタゴタしすぎた。協会に有能な弁護士はいないのだろうか』、どの競技団体も危機管理の初歩で躓くのは、やはり体質なのだろうか。
・『ワイドショーの描く世界  しかし私は、一連の騒動を曇りガラスの向こうから見ているようであった。 最初は、騒動や人間模様が複雑でややこしいから仕方ないと思っていたが、どうやらそれだけではないことに気づいた。 それは、宮川選手の会見直前からずっと海外にいて、ワイドショーやニュース番組を見ていないからだ。 ワイドショーでは、いつも丁寧にわかりやすく、VTRやパネルで人物関係や事の子細を説明してくれる。レポーターや識者が解説もしてくれる。 われわれは、ただテレビの前に座っているだけで、丁寧な「謎解き」をしてもらえて、ややこしい騒動もクリアーに理解できる。 しかし、果たしてそれでよいのだろうか。 今回は、丁寧な案内役のワイドショーを見ることができないため、ネットニュースや新聞記事などを読みながら、断片的なニュースを自分でつなぎ合わせる作業だった。 しかし、それでもわからないことはわからないままだ。だから、先ほど書いたように、曇りガラス越しのような印象を受けているのだ。 でもこれが自然な姿なのではないだろうか。第一に、このような騒動が起きるたびに、微に入り細に入り、どうでもいいような情報、個人をバッシングする声、過去のいきさつ、将来の展望など、ワイドショーはあまりにも多くの情報を伝えすぎる。 私もワイドショーには何度か出演したことがあるが、スタッフは本当に深夜までものすごい働きぶりで、それには感嘆させられる。よその局よりも少しでも多くの情報を、少しでも新しい誰も知らない情報を発掘しようという競争で必死なのだ。 しかし、それには弊害もある。登場人物のプライバシーをこれでもかと白日の下に曝し上げ、次第に問題の本質よりも、個人叩きに躍起になることがある。一方的な正義感ばかりでげんなりしてしまうこともしばしばだ。 さらにもう1つの問題は、ワイドショーの描く世界が「わかりやすすぎる」ということである。 たしかに、込み入った問題を丁寧に説明し、解きほぐしてくれる解説はありがたい。また、複雑で具体的な現実から、問題の本質を抽象する作業は重要であり、それが知恵というものだ。 とはいえ、その一方で、わかりやすくしようとするあまり、極端な方向、シンプルすぎる方向へ話を持っていっているということはないだろうか。 情報は多いが、それは自分たちが描きたい「ストーリー」を補強するための情報であって、それ以外の情報はむしろ切って捨ててはいないだろうか。 ワイドショーの描く世界で一番顕著なのは、「憎らしい悪者」と「かわいそうな被害者」というシンプルな黒と白の構図である。今回で言えば、塚原夫妻という「悪者」がいて、かわいそうな宮川選手にハラスメントをしているというストーリーだ』、確かにワイドショーが描くシンプルな黒と白の構図は、問題をミスリードする可能性がある。
・『例えば、体操協会の具志堅幸司副会長は、「18歳の少女が嘘をつくとは思わない」と述べて、宮川選手を擁護したというが、そんなことはない。18歳だって嘘はつく。 アメリカのとある大学教授の書いた文を読んだことがあるが、そこには期末試験やレポートの締切りが近づくと、祖父や祖母が危篤になったり、亡くなったりする学生が急に増えるということが冗談交じりに書かれていた。 もちろん、宮川選手は彼女なりに、真摯に本当のことを勇気をもって述べたのだと思う。私は何も彼女が嘘を言っていると言いたいのではない。あまりにも単純に、「協会が悪で選手は白」という構図に持ち込むのは危険だということである』、その通りだ。アメリカのとある大学の例は、日本でも私も何回も経験した。さすがに筑波大では、そんな不届きな学生はいないのだろうか。
・『単純化の危険性  実際、宮川選手を擁護しすぎることの危険性は、そもそもの発端であった暴力の問題を覆い隠してしまうことにつながる。 暴力を振るわれた被害者が、いくら暴力を振るった相手を庇っても、それで暴力の問題が帳消しになるわけではない。 2人の関係性がどうであれ、またほかにもハラスメントをしている幹部がいたとしても、暴力を振るったコーチは厳しい処分を受けて当然である。 また、彼がどれだけ熱心で優秀な指導者であったとしても、暴力を振るったというだけで指導者としては失格である。 「塚原夫妻は悪」と決めつけて、その単純な構図の中で、2人だけを叩いて終わりにするのではなく、コーチの暴力問題をはじめ、協会にそのような暴力を生む土壌がなかったのか、どのようにして再発を防ぐのかを真剣に考えていかなければならないだろう。 もちろん、塚原夫妻の問題性も不問に付していいわけではない。塚原夫妻の「全面降伏」は結構だが、謝ったからと言って白紙に戻るわけではない。 自らのハラスメント体質を顧みて、ほかにも謝罪しなければいけない相手もいるだろうし、改めなければならないところもたくさんあるだろう』、まさに正論である。
・『複雑な世界の中で  それにしても、不可解なのは、暴力を振るったコーチを当初から一貫して擁護し続けている宮川選手の姿である。 単純化を避けて、複雑な世界を複雑なままとらえようとするとき、やはり彼女の複雑な心の中が気になってくる。 このような加害者擁護は、ドメスティック・バイオレンス(DV)のケースには、よく見られることだ。被害に遭った女性の多くは、加害者を庇って「普段は優しい人なので」などと言うことがある。 また、虐待を受けた子どもが「ぼくが悪い子だったから。お母さんは悪くない」などと言うこともある。 宮川選手も記者会見で、コーチについて「厳しさの中にも楽しさや優しさがたくさんあった」と述べていた。 また、暴力的な指導を受けたのは、大けがや命にかかわるような場面であり、「そのときはそれくらい怒られても仕方ないことだと理解していました」とも述べている。 両者の関係が密であったり、被害者側に「見捨てられ不安」のようなものがあったりすると、暴力を振るわれても相手をつなぎとめておきたいという心理がはたらく。 さらに、周囲から加害者が責められると、周囲の人々には自分たちのことはわからないとますます頑なになることもある。 今回のケースでも似たようなことが言えるのかもしれない。 宮川選手にとって、そもそも協会は権力を笠に着てハラスメントをする敵であったのだろう。自分を守ってくれ、すがることのできるのは、コーチしかいなかったのかもしれない。 そのコーチが追放されてしまうことを考えると、オリンピックを控えた大事なときに、この先自分はどうなってしまうのだろうという大きな不安を抱いても不思議はない。 暴力を振るったコーチは悪いが、彼女をこのように追い詰めた協会も同じくらい悪い』、さすが心理学者の面目躍如だ。
・『これは、曇りガラスを隔てた私の推測であるので、間違っているところも多分にあるかもしれない。 しかし、協会幹部をはじめ当事者たちは、複雑でわかりにくい問題をいたずらに単純化することなく、謝って終わりとするのでもなく、選手本人の心情に寄り添って、その不安や怒りなどを受け止めつつ、丁寧に問題の解決に当たってほしい。 第一線で闘う選手たちにとって、代表選考やオリンピック出場をめぐる熾烈な争いは、私には想像もできないことだ。 もしその競争が、コーチや協会の一存で決まるのであれば、その嵐のような激しい競争に揉まれているうちに、自分は木の葉のように小さい存在であると感じてしまうことがあるかもしれない。 どんなに不安が大きいことだろう。しかし、それは理不尽な協会や暴力的なコーチに身をゆだねることでは解決しない。 18歳は嘘をつかないというのは嘘であるが、18歳はとても影響されやすい年齢であるというのは本当だ。 「殴るのは愛の鞭だ」と言われると素直に信じてしまうだろうし、「俺についてくれば必ずオリンピックに行かせてやる」などと言われたら「ついて行こう」と素直に信じるだろう。 ここで彼女に1つ大人になってほしいことは、暴力を振るわれてもいい人間などこの世には1人もいないし、暴力を振るってよい理由など1つもないと知ることだ。そして、自分の尊厳を取り戻し、自分の大切さを再確認することだ。 これを教えられることこそが、本当の指導者なのではないだろうか』、大変に説得力がある主張だが、唯一気になるのは、宮川選手が処分を受けたコーチ以外の人物に指導を受けるよう説得できるかだ。カウンセリングには筆者が最適なのではなかろうか。

次に、9月16日付け日刊ゲンダイ「パワハラだけではない 重量挙げ三宅会長“独裁体制”の異常」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/237628/1
・『三宅義行会長兼女子代表監督(72)による選手へのパワハラ問題が明らかになった日本ウエイトリフティング協会。 パワハラだけではない。三宅会長による独裁体制も問題視されている。 同協会では三宅会長が女子代表監督を兼務するだけでなく、男子ナショナルチームの監督も協会の小宮山哲雄専務理事(57)が兼ねている。 各団体の組織の規模や収入、競技人口に差があるとはいえ、他団体で同様の人事はほとんど見られない。五輪競技団体のトップが代表監督を兼任するのは極めて異例のケースだ。 9月1日の常務理事会で、過去の会長のパワハラ行為を明かした協会常務理事で、公益社団法人経済同友会幹事を務める古川令治氏がこう言う。  「コンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)という言葉がありますが、まさにウエイトリフティング協会は矛盾した団体なのです。公益社団法人でありながら、会長とナショナルチームの現場を取り仕切る監督が同一人物というのは認められることではありません。男子監督にしても、予算を管理する立場であるはずの専務理事が、経費を使う側も兼ねるなんて、誰がどう考えてもおかしなことです。会長によるパワハラも含めて、協会は正常な組織からはかけ離れている。伏魔殿といってもいいのではないでしょうか」 協会内で要職を兼務すれば、五輪や世界選手権の代表選考にも影響を及ぼしかねない。協会や幹部のお気に入りの選手の選考が優先され、本来なら実力のある選手が代表から漏れる事態も考えられる。代表選考の不透明さを指摘されても仕方がない。 「国際大会への出場資格が当落線上の選手を、地方の大会に出させることもある。地方大会は審判のジャッジが甘く、記録が出やすいため、協会幹部が自分の息のかかった選手を国際大会に出場させる手段の一つです。これでは、選考基準をお気に入りの選手、特定の選手にだけ漏らして選考されるように誘導し、公平性に欠けると指摘されても文句は言えないのではないか」(競技関係者) 協会は会長人事も含めて、組織の刷新を図る必要があるのは言うまでもない』、協会の利益相反問題は、組織図を見れば一目瞭然なのに、所管のスポーツ庁はこれまで見て見ぬふりをしてきたとすれば、責任は重大だ。同庁の鈴木長官は、これまで問題を起こした団体を呼びつけて叱るだけの無責任な対応では、許されないことを自覚すべきだ。

第三に、ノンフィクションライターの窪田順生氏が9月27日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「貴乃花親方の言い分が正しい」と感じさせる、相撲協会“過去の行状”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/180641
・『もはや日本の風物詩 「パワハラ論争」がまたも勃発  またしても、「圧力を感じた」「いや、そんなつもりはありませんでした」の無限ラリーが繰り広げられるのだろうか。 25日に電撃引退(退職)を発表した貴乃花親方。引退の理由は、3月に内閣府に提出した告発状について、日本相撲協会から「事実無根」と認めるように執拗に迫られたからだと会見で明かしたところ、相撲協会側が「圧力をかけた事実はない」と否定。今や日本の風物詩ともなった、やったやらないの「パワハラ論争」が、再び勃発しそうなムードなのだ。 事実についてはこれから明らかになるのかもしれないが、個人的には貴乃花親方の言い分が正しかったとしても、特に驚くような話ではないと思っている。むしろ、相撲協会という組織の性格を考えれば、「ない」という方が不自然である』、またかとうんざりだが、今回のは貴乃花親方の引退という特大のニュースヴァリューだ。
・『レスリングの伊調馨選手とコーチが内閣府に告発状を提出した時、日本レスリング協会幹部らが事実確認をせず、脊髄反射で「事実無根」と顔を真っ赤にして主張したことからもわかるように、公益財団法人にとって告発状というのは、読むだけで100日寿命が縮まる「恐怖新聞」のような存在なのだ。 相撲協会もそれは同様で、貴乃花親方の告発状のせいで、幹部の方たちは3月から枕を高くして寝られない状況が続いている。 貴乃花親方が告発状を取り下げたのは、あくまで弟子の暴力問題があったからであって、告発した内容が間違いだったと認めたからではない。つまり、告発状はいつ爆発するかわからない「不発弾」のような存在となっていたからだ。「あいつは大量破壊兵器を持っているかも」という恐怖が、大国を戦争へ突っ走らせるように、恐怖は人間を攻撃的にする。貴乃花親方が世間に触れまわる「恐怖新聞」、もとい告発状の悪夢に悩まされ続けてきた相撲協会幹部が、恐怖から解放されるため、なりふり構わず、貴乃花親方に「告発状はデタラメでしたと言え」などと迫るというのは、実は極めて人間らしいアクションなのだ』、私自身は貴乃花親方に対しては、日馬富士暴行事件の際の振る舞いなどから、好印象を持ってない。しかし、弟子の所属問題などをネタに恫喝してくる協会のやり方には、心底腹が立つ。
・『組織によって異なる論破の際の「パワーワード」  なんてことを言うと、「立派な元力士ばかりの相撲協会が嘘をつくわけないし、相撲取材歴ウン十年の相撲ジャーナリストの皆さんも誤解だと言っている。すべて貴乃花親方の被害妄想だ」という怒りの声が山ほど寄せられそうなのだが、相撲協会が動いていたのではないかと思わせるような材料は他にもある。 それは、会見で貴乃花親方が幾度となく発したこの表現である。「告発の内容は事実無根な理由に基づいてなされたものであると認めるようにとの要請を受け続けておりました」 これを耳にした時、いかにも相撲協会らしいと確信をした。「事実無根」というのは、彼らのパワーワードだからだ』、なるほど。
・『「はい、論破」ではないが、皆さんの職場にも、いつも同じようなフレーズで相手を説き伏せようとするおじさんがいるのではないだろうか。人間というのは誰しも、「反論」をする際の“決めゼリフ”を持っているものだ。 実はこれが「法人」にも当てはまるということを、筆者は広報アドバイスの仕事をしているうちに気づいた。マスコミの報道に対して反論をする、抗議文を送るなんて時の表現や言葉のチョイスには、その組織のカルチャーがモロに反映されるのだ。 例えば、一般消費者に近く、日常的にクレームの嵐に晒されているような組織は、「正確な報道ではなくて残念です」「どうも誤解されているようなので、正しい情報を伝えさせていただきます」なんてニュアンスで、やんわりと怒りや不快感を伝える。 それに対して、利権を独占して競合もおらず、常日頃からマスコミにチヤホヤされているような組織の場合、「悪質な虚偽報道で大変遺憾である」なんて感じで、かなり頭が高くなることが多い。この後者の典型が、相撲協会である』、「言葉のチョイスには、その組織のカルチャーがモロに反映される」というのは至言だ。
・『相撲協会が連発してきた マスコミ宛抗議文に見るパターン  こういう人たちの考える「広報」は、「外部とのコミュニケーション」ではなく、「自分たちの正しさを世間に知らしめる手段」なので、勢いどうしても言葉が強くなる。そのため、まるで法廷闘争のように、“100%ノー”という打ち消しになりがちなのだ。 例えば、昨年の元横綱日馬富士の暴行を巡って、相撲協会と貴乃花親方がバトルを繰り広げていた際にもさまざまな報道がなされたが、その度に相撲協会は、マスコミ各社に抗議文を送付している。 その中で使われていた表現をざっと以下に抜き出そう。「明確な誤り」「完全に事実と異なる」「極めて悪質で、背信的」「全くの事実無根の内容」「報道の名に値しないもの」 とにかくやたらと相手の非を強調し、自分たちこそ正義だという主張をする「クセ」が強いのである。 相撲は国技であり、日本人の誇りなんだから、デタラメな放送や報道をされてヘラヘラ笑っていられるかという、相撲ファンのお叱りが飛んできそうだが、筆者は誤報であってもスルーせよなどと言いたいわけではない。 ただ、日馬富士暴行報道に関しては、相撲協会側の対応にも大きな問題があった。貴乃花親方という希代のスターと情報戦を繰り広げている中で、確たる証拠を出すこともなく、ここまで断定的かつ独善的に物事を言い切ってしまうというのは、あまりにも杜撰である。そこにはやはり、相撲協会という組織カルチャーが大きく関係しているということを申し上げたいのである』、その通りだ。
・『実際、この傾向は昨日今日始まったものではない。例えば、2007年に「週刊現代」が八百長疑惑を報じた時にも、「事実無根」の一言をゴリゴリ押して提訴。10年に発行元の講談社から賠償金を勝ち取った際には大ハシャギで、これまた「事実無根」を世にふれまわったものの、翌年にはガチンコの八百長問題が発覚して巡業停止にまで追い込まれ、今でいうところの大ブーメラン状態にもなっている。 いずれにせよ、ロクに事実関係を調査しないまま、「事実無根だと認めよ」とゴリゴリ迫る姿は、これまでの相撲協会という法人のプロファイリングにピタッとマッチするのは事実だ』、確かに八百長問題での相撲協会の対応はとんだお笑い種だった。
・『企業のクーデターでもありがちな「非公式の説得」だった可能性も  仮に「協会」として動いた痕跡がなくとも、裏で非公式に一部役員がプレッシャーをかけていた可能性も十分にありえる。 企業のクーデターや派閥争いでも、敗れた側の社員たちに、新体制への忠誠心があるのかを「査定」する”お目付役”がつくことは決して珍しい話ではない。彼らは時にファイティングポーズを崩さない者に対して、「意地を張らず、こっちのグループにつけ」と説得工作を行う。 一般の日本企業でもいまだに見られる、しょうもないパワーゲームが、企業よりも硬直して流動性のない相撲協会で起きないとする理由が見当たらない。それが、厳密に貴乃花親方が言うような「圧力」だったかどうかはさておき、「相撲協会の平和と安定」のため、「告発状を貴乃花親方に嘘でしたと認めさせる」という特命を帯びて動いた人々がいても、なんら不思議ではないのだ。 そう考えると、今回の貴乃花親方の電撃引退というのは、そんな「特命係」による「あの告発状はデタラメでしたって一言言ってくれれば、弟子のためにもなるし、一門みんな丸く収まるんだから、な、な」という説得工作の失敗かもしれないのだ。 もちろん、一部の方が指摘するように、これが全て貴乃花親方の脳内で繰り広げられている妄想であるという可能性も、現段階では否めない。 果たして、角界を揺るがす大一番の行方はどうなるのか。今後、どんな情報戦が繰り広げられ、事実が暴露されるのか、注目したい』、私も今後の成り行きが楽しみだ。
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日本の政治情勢(その27)(名門派閥に泥塗った岸田氏 「首相禅譲」の望みは不出馬で絶たれた、安倍3選でも前途多難 「参院選後に首相交代」シナリオも、総裁選後に待ち受ける安倍首相「過去最大級の難問」が見えた 乗り越えるのは至難の業かも) [国内政治]

日本の政治情勢については、9月2日に取上げた。自民党総裁選も終わった今日は、(その27)(名門派閥に泥塗った岸田氏 「首相禅譲」の望みは不出馬で絶たれた、安倍3選でも前途多難 「参院選後に首相交代」シナリオも、総裁選後に待ち受ける安倍首相「過去最大級の難問」が見えた 乗り越えるのは至難の業かも)である。

先ずは、立命館大政策科学部教授の上久保誠人氏が9月18日付けiRONNAに寄稿した「名門派閥に泥塗った岸田氏 「首相禅譲」の望みは不出馬で絶たれた」を紹介しよう。
https://ironna.jp/article/10709?p=1
・『自民党総裁選には・・・安倍首相の有力な対抗馬とみられていた岸田文雄政調会長は、結局不出馬となった。岸田氏は「今の政治課題に、安倍首相を中心にしっかりと取り組みを進めることが適切だと判断した」と不出馬の理由を語った。 当初、岸田派「宏池会」内は、若手を中心に出馬を促す「主戦論」と、ベテランを中心に今回は出馬せず、次回の総裁選で安倍首相からの禅譲を目指す「慎重論」で割れていた。そのような状況の中で、岸田氏は総裁選に出馬するかを慎重に検討してきた。 結局、自民党内に「安倍首相は余人をもって代え難し」という「空気」が広がる中、勝機が全く見えないことから、勝てない戦を避けて、安倍首相からの将来の「禅譲」に望みを託すことに決めた』、まったく男らしくない決断だ。
・『岸田氏が領袖(りょうしゅう)を務める宏池会は、吉田茂元首相の直系の弟子である池田勇人元首相によって創立されて以来、大平正芳、鈴木善幸、宮澤喜一と4人の首相を輩出し、河野洋平、谷垣禎一と野党時代の総裁も2人出している。経済政策通の池田氏と、彼を取り巻く官僚出身議員を中心につくられ、「軽武装経済至上主義」を掲げて、高度経済成長を成し遂げた。長く自民党長期政権の中核を担ってきた伝統から、「保守本流」の名門派閥とみなされてきた。 自民党が下野していたときも、野田佳彦政権(旧民主党)が実現した「税と社会保障の一体改革」の民主・自民・公明の「3党合意」を主導したのは、自民党の谷垣総裁(当時)だった。経済通がそろう宏池会で育った谷垣氏は、若手のころから財政再建の必要性を訴える「財政タカ派」のリーダー的存在であった。総裁時代には、民主党政権のマニフェスト政策の完全撤回を要求する「強硬路線」を突き進んでいたが、消費増税の必要性には理解を示していた。 谷垣氏は、野田首相と極秘会談し、消費増税について「協調路線」にシフトした。民主党と自民党は、社会保障政策の考え方が大きく異なっていたが、考えの異なる点については「社会保障制度改革国民会議」を設置して議論することを提案するなど、谷垣総裁は野田首相に「助け舟」を出したのである。 国会論戦では、かつて「自社さ連立政権」時代に一緒に税制改革に取り組んだことを例に挙げて、「あなたたちの先輩は、税制改革実現のためにもっと汗をかいていた」と、民主党を厳しく諭し、合意形成に導いた。 結局、3党による消費増税のコンセンサスが形成されることになり、民主党の分裂騒ぎがありながら、消費増税関連法案は圧倒的多数で可決された。実に国会議員の約8割が賛成する「大政翼賛会」並みの大規模な合意形成を実現した立役者が、谷垣総裁だったのだ』、もうすっかり「過去の人」になっている谷垣が3党合意の立役者だったとは、すっかり忘れていた。
・『だが、「税と社会保障の一体改革」は第2次安倍政権の登場後に頓挫した。安倍首相は最初の組閣・党役員人事で、谷垣前総裁を法相、伊吹文明元財務相を衆院議長、石原伸晃前幹事長を環境相に起用するなど、3党合意を主導した谷垣執行部の幹部を経済政策「アベノミクス」の意思決定から排除したのである。 宏池会のホープだった岸田氏を外相に起用したのも、安倍首相が岸田氏を「盟友」と信頼する一方で、財政再建派として警戒し、アベノミクスに関与させない意図があったかもしれない。 逆に、安倍首相は3党合意から外されていた麻生太郎元首相を副総理兼財務相に、甘利明氏を経済再生相に起用した。また、経済学界では少数派にすぎなかった「リフレ派」の学者や評論家たちが、首相官邸に経済ブレーンとして招聘(しょうへい)された。 安倍首相は、明らかに3党合意には冷淡だったといえる。3党合意で決まっていた消費増税は、2014年4月の5%から8%への引き上げこそ予定通り実行したが、10%への引き上げは2度も延期を決断した。 また、3党合意では、増税分で得られる14兆円の新たな財源については、財政再建に7・3兆円、社会保障関連費に2・8兆円、基礎年金の国庫負担引き上げに3・2兆円と使途が決められていた。 だが、安倍首相は19年10月に、延期されてきた消費増税を予定通り実行する代わりに、その使途を広げて「教育の無償化」に充当する意向を示した。そして、その財源は財政再建に充てる予定の財源を削って捻出するとした。これは、「財政再建を放棄して新たなバラマキをする」という宣言だといえる。安倍首相は「3党合意」を事実上ほごにしたのだ』、安倍首相が3党合意に冷淡だったのは、自分が関与してないことに加え、2014年4月の消費増税で景気が一時的に悪化した影響もあるのだろう。
・『安倍首相がアベノミクスを力強く推進し、「狂騒」といっても過言ではないほどの高い支持を得た一方で、3党合意が次第に無力化していったとき、宏池会領袖の岸田氏は何をしていたか。12年12月から17年8月まで、戦後では在職期間が歴代2位となる長期にわたって外相を務めたときはもちろんのこと、その後政調会長に転じてからも、岸田氏が明確に「アベノミクス」を批判したのを聞いたことがない。 前述の通り、岸田氏は総裁選不出馬を表明し、「今の政治課題に、安倍総理を中心にしっかりと取り組みを進める」と宣言した。「今の政治課題」に、経済財政政策や社会保障政策は当然含まれる。 かつて、宏池会が中心となって実現した「税と社会保障の一体改革」の3党合意をほごにして進められているアベノミクスに、挙党態勢で全面的に協力すべきと、岸田氏は主張したのである。 岸田氏は、本音では安倍政権下で財政再建が遅れていることについて、いろいろと思うことはあるはずだ。だが、安倍首相からの「禅譲」を期待して、それを封印し続けているのだろう。しかし、岸田氏の思いに対して、安倍首相は冷淡である。 岸田氏の総裁選不出馬表明が、安倍首相の出身派閥である細田派、そして麻生派、二階派が支持表明した後になったことは、岸田氏の迷いを示している。だが、安倍首相側から「いまさら支持するといわれても遅すぎる」と言われてしまった。総裁選後の人事で岸田派が冷遇される可能性が出てきた。 戦後政治の歴史を振り返れば、かつて宏池会会長だった前尾繁三郎元衆院議長が、1970年の佐藤栄作元首相による佐藤4選の総裁選で、「人事での厚遇」の密約を理由に不出馬を決めたが、結果的に佐藤氏に約束をほごにされ、派内の反発を買って宏池会会長の座を大平正芳元首相に譲らざるを得なかったという、「宏池会会長交代事件」があった。岸田氏も、総裁選後の人事で冷遇されれば、首相の座を禅譲してもらうどころか、派閥の領袖の座から引きずり降ろされるかもしれない』、岸田氏の「禅譲」への期待は本当に甘過ぎる。「派閥の領袖の座から引きずり降ろされる」としても当然だろう。
・『岸田氏がアベノミクスに対する批判を封印し、全面協力を決めたことは、単なる一人の政治家の個人的な判断を超えた、深刻な影響を今後の日本政治に与えかねない。 安倍首相は常々、「アベノミクス、この道しかない」と主張している。しかし、筆者はこれまで、一貫してアベノミクスを徹底的に批判してきた。アベノミクスとは、実はつぎ込むカネの量が異次元だというだけで、実は旧態依然たるバラマキ政策である。アベノミクスの円高・株高で恩恵を受けるのは、業績悪化に苦しむ斜陽産業ばかりで、新しい富を生む産業を育成できていないからだ。 政権発足から6年になろうとしているが、いまだに政権発足時の公約である「物価上昇率2%」は実現できず、経済は思うように復活していない。バラマキ政策とは「カネが切れると、またカネがいる」だけで、効果がさっぱり上がらないものだ。アベノミクスも、異次元緩和「黒田バズーカ」を放って、効き目がなければ、さらに「バズーカ2」を断行し、それでも効き目がないのでマイナス金利に踏み込んでいる。補正予算も次々と打ち出されている。まさに、「カネが切れるとまたカネがいる」の繰り返しではないか。昔ながらのバラマキ政策と何も変わらない。ただ、そのカネの量が異次元というのが、アベノミクスの本質であるということだ。 そして、なにより問題なのは、「アベノミクス」という安倍首相の名前をつけた経済政策であるため、その間違いを認められなくなっていることではないだろうか。例えば、日銀は7月31日の金融政策決定会合で、「フォワードガイダンス」と呼ばれる将来の金融政策を事前に約束する手法を新たに導入し、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」こととした。 しかし、今回の政策変更の真の目的は、「金融緩和の副作用」を和らげることだという。インフレ目標である物価上昇率2%の達成が早期に難しくなり、金融緩和の長期化が避けられないことから、金融機関の収益の低下や、国債市場での取引の低調といった副作用が生じているとの声が高まっており、これに日銀は対応せねばならなくなったのである。 今回、2%物価目標について、物価上昇率見通しを引き下げたことで、少なくとも2020年までは2%目標を達成できそうにないことが明らかになった。要するに、物価目標は事実上放棄されたということである。これは、日銀の実質的な「敗北宣言」のように思える。 ところが、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は「『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』の持続性を強化する措置を決定した」と記者会見で述べ、あたかも新たな手を打ち出したかのように見せようとした。「異次元の金融緩和」がより強化されるという印象を与えようとしているのだ。 要するに、日銀は詭弁(きべん)を弄(ろう)してでも、かたくなに「敗北」を認めようとしないのである。そして、日銀だけではない。多くの政治家や学者、評論家の口から出る、首相に恥をかかせないためのさまざまな詭弁が横行している。例えば、単に人口減で労働力が減っているだけなのに「人手不足は経済成長しているからだ」と言ったり、派遣労働者が増えているだけなのに、雇用が拡大していると強弁するなどしている。 それは、アベノミクスという「首相の名前」がついた政策であるために、その過ちを認めることは、首相に恥をかかせるからではないだろうか。これでは、神格化された独裁者を守るために、都合よく事実が曲げられる、どこかの全体主義国家の「個人崇拝」と変わらないように思える』、確かにアベノミクスのネーミングにも、批判を許さないというバイアスがかかったことは事実だろう。
・『そして、財政再建の必要性を認識し、明らかにアベノミクスに対して批判的であるはずの宏池会領袖の岸田氏が、言いたいことを封印してアベノミクスへの無批判な支持を表明した影響は大きい。安倍首相の軍門に下ったような印象を国民に強烈に与えることになり、アベノミクスに対する「批判を許さない空気」を、一挙に日本社会全体に拡散することになってしまったのではないだろうか』、岸田氏の
罪は深いといえよう。
・『だが、いくらアベノミクスへの批判が許されない「空気」が広がっても、「カネが切れたら、またカネがいる」のバラマキ政策であることは間違いないのだから、いつまでも続けられるわけがない。ましてや、その規模が異次元であれば、その被害も甚大なものとなろう。安倍政権は、何が何でも東京五輪までは経済を維持しようとするだろう。政治家や官僚、学者、評論家、メディアは、それに疑問を感じても、物申すことなくアベノミクスを礼賛し続けるのだろうか。だが、五輪後には必ずや大きな反動がやって来る。 その時、アベノミクスを支持していた人たちは、安倍首相とともに総退陣していただくしかないだろう。本来であれば、「税と社会保障の一体改革」の3党合意を推進し、財政再建に取り組むはずの宏池会が、アベノミクス後を見据えた政策スタンスを掲げるべきである。だが、派閥領袖の岸田氏自身が「アベノミクスを支える」と宣言してしまっている以上、安倍首相と心中するしかなくなってしまうだろう。 アベノミクス後の経済政策は誰が担い、どんな政策になるのだろうか。ただ、実際に起こることはそれどころではなく、日本は経済的にただの焼け野原のようになり、政策がどうだと論じる余裕などなくなるのかもしれない』、最後の部分は強く同意する。
・『さまざまな政治体制の中で、民主主義だけが持っている利点は、「学習」ができるということである。民主主義には多くの政治家や官僚、メディア、企業人、一般国民などが参加できる。選挙などのさまざまな民主主義のプロセスにおいては、多様な人々による、多様な考えが自由に示され、ぶつかり合う。時には、為政者が多くの国民の反対によって、自らの間違いに気づかされることがある。一方で、国民自身が自らの誤りに気づいて、従来の指導者を退場させて、新しい指導者を選ぶこともできる。 他方、民主主義の対極にあるのが全体主義であろう。よく、「国家の大事なことはエリートが決めればいい。民主的な選挙に委ねるのは間違い」という主張があるが、正しいとは思わない。エリートは自らの誤りになかなか気づかないものである。たとえ誤りに気付いても、素直に認めない。いや、認めようとしない。データや文書を改竄(かいざん)するなどして、それをなかったことにしてしまう。 そして、エリートに対する批判を許さず、エリートへの「個人崇拝」を国民に求めるようになる。エリートを批判する者が現れれば断罪する。しかし、そんな全体主義は長くは持たない。間違いを間違いではないように操作し続けても、いずれつじつまが合わなくなって、体制は不安定化する。 全体主義では、エリートの失敗を改めるには、政治や社会の体制そのものを転覆するしかない。それは、大変なエネルギーを必要とするし、国民の生活は崩壊してしまう。かつての共産主義国など、エリートがすべてを決める全体主義の国はほとんどが失敗したが、当然のことである』、マスコミまで御用機関化した安倍政治はまさに全体主義である。
・『何度でも強調するが、民主主義の最も良いところは、すべての国民がお互いに批判できる自由があり、間違いがあればそれを認めることができることだ。多彩な人たちの多様な考え方が認められているから、一つの考えが失敗しても、また別のアイデアが出てくる。政治や社会の体制を維持し、国民の生活を守ったまま、為政者の失敗を修正できるのである。 アベノミクスという首相の個人名がついた政策が、「批判を許さない空気」を社会に広げていくことで、戦後日本が守ってきた民主主義が崩壊しないことを祈りたい』、完全に同意したい。

次に、室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏が9月20日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「安倍3選でも前途多難、「参院選後に首相交代」シナリオも」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/180158
・『自民党総裁選は安倍候補の3選が確実視だが…  9月20日に国会議員による投開票を迎える自民党総裁選、安倍候補と石破候補の一騎打ちとなったが・・・安倍候補の3選が確実視されている。そう聞くと安倍選対は総裁選という「お祭り」を余裕で楽しんでいるのではないかと思ってしまいそうだが、実態はそうでもないようで、相当焦っているようだ。 それもそのはず、国会議員票は大多数を押さえたものの、党員票では石破候補の猛追を受け、僅差まで迫られている。特に東京では石破票が安倍票を上回るとの予測も出ていることから、安倍選対はかなりテコ入れを図ったようだ。 こうした焦りの原因は他にもある。 自他共に認める安倍総裁の側近の西村官房副長官が、神戸市議らに、総裁選では石破候補の支援を控えるように圧力をかけたことがSNSで公表され、快進撃だったはずの安倍陣営に水を差した格好になった。元経産官僚、もとえ元通産官僚で、その実務能力には定評がある一方、その軽さはつとに自民党関係者間では有名な話のようであり、要は、安倍候補にさらに気に入ってもらって自らの地位を固めるとともに出世の足がかりにしようという、一種サラリーマン的な発想の下で行われたものなのだろう。 結果的に完全に裏目に出て、今や西村副長官は安倍選対を外され、官房副長官続投の話も消えてしまったようである。 さらに、安倍候補の出身派閥の細田派(清和研)で、総裁選は安倍候補に投票する旨の誓約書に署名することが求められ、派閥所属議員らから、「そんなに信頼されていないのか」と反発が起きた。 誰がこれを発案し、実行したのかは明らかになっていないが、自らの足元が盤石なのを叩(たた)いて確認するつもりが、叩き過ぎてかえって綻(ほころ)びを作ってしまったようなもの。総裁選後にも少なからぬ影響が残るのではないか』、出身派閥で誓約書に署名させたというのは初めて知ったが、そこまで焦っていたとは改めて驚かされた。
・『石破候補の逆転勝利の可能性は低いが…  さて、石破候補、党員票を大量獲得(8割以上)すれば、逆転勝利は可能であるとされているが、そのシナリオが実現する可能性は高くはないだろう。ただし、石破候補の党員票獲得数は全405票のうちその過半数、少なくとも200を超える可能性が出てきている。なんといっても党員の間では安倍候補の評判は必ずしもいいわけではなく、安倍嫌いの党員も少なくないと聞く。 そうなると、総裁選後に石破派を閣僚等として処遇しなければならなくなる。安倍陣営としては、それはなんとしても阻止したいといところだろう。 もっとも、「処遇する」と言っても、当選4期目で農林水産相に抜擢された、石破派の斎藤健衆院議員を留任させればいいとの考えもあるようで、石破候補の党員票の獲得数を200未満に抑え込むことにそこまでこだわる必要はないようにも思われるが、実は話はそう単純ではない。 まず、内心は別として安倍支持を表明している麻生副総理は、自らが総理の職にあった際、麻生内閣で農林水産相を務めていた石破候補が「麻生降ろし」の中心勢力の1人であったことに根深い恨みを持っており、総裁選後に、負けた石破候補を叩きたくて仕方がないようである(既にその兆候があることは報道等でもご承知の通り)。党員票が200を切れば臆することなくそちらに動くこともできるが、200を超えてしまうとそうもいかなくなるようだ。 単なる政治家同士の恨みつらみのようにも見えるが、麻生副総理にとっては、今のうちに石破候補を叩いておきたい別の腹積もりがあるのかもしれない』、最近の報道では、石破は入閣しないようだが、麻生が根深い恨みを持っているとは初めて知った。なるほど。
・『安倍改憲案は“お蔵入り”の可能性も  次に、安倍候補が憲法改正に前のめりなのに対して、石破候補は、憲法改正それ自体は否定しない。真正面から向き合うとしているものの、優先順位をつけ・・・慎重な姿勢を示している。 先にも述べた通り、安倍嫌いの党員も少なからず存在するところ、憲法改正に慎重な石破候補を支持する党員票が200以上となれば、少なくとも安倍候補の提唱する、憲法9条に自衛隊を合憲化する条項を追加する改正は難しくなるだろう。 これに、時を同じくして行われている沖縄県知事選で、自民党が推す佐喜真候補が敗れるようなことになれば、いわゆる安倍改憲案は“お蔵入り”となって、憲法改正自体が事実上立ち消えとなる可能性すらある。 したがって、憲法改正を是が非でも実現し、来年辺りに国民投票をと画策しているとも伝えられる安倍陣営としては、200を超える党員票を石破候補が獲得することは何としても避けたい、ということのようなのである。 まあそうはいっても今回の総裁選、安倍候補の勝利はほぼ間違いないといわれている。そうなれば安倍政権は東京オリンピックまでやりたいことができる(主体的にやりたいこととしては、憲法改正以外に何があるのだろうかとの疑問は残るが)はずだし、オリンピックの開会式に日本の首相として出席できるはずである』、石破氏は254票を獲得し善戦したが、安倍陣営は「圧勝」と強弁している。
・『水面下で進行!?ポスト安倍に向けた動き  しかし、どうもそうはいかない、いかせないシナリオというか動きが水面下で進行しているというのである。 そのシナリオとは、ポスト安倍に向けた動きである。 麻生副総理、菅官房長官、それに二階幹事長らは、来年の参院選での自民党の敗北(議席の大幅減)を見越して、そのタイミングで安倍氏を総裁の座から引き摺り降ろして、後継に河野太郎外相を据えることを画策して動き始めているという。 元々昨年の段階で、衆院選では自民党は80議席減と読んでおり、その段階で安倍総裁が退陣して、麻生副総理が総裁に返り咲くというシナリオがあった。しかし安倍総裁にとっては幸運なことに、ご承知の通り野党分裂という敵失で微減で済み、なんとか命を長らえた・・・一方、今年で78歳を迎える麻生副総理、寄る年波に勝てないということか、今度は自らが総理になるのではなく、キングメーカーとして君臨する道を選んだようで、そこに麻生派所属で党内の評判も悪くない河野外相を安倍総裁の後継にということで話が進んでいるというのである。 そうなれば、次の総裁選にも挑んでくる可能性が高い石破候補は、今のうちに再起できないように叩いておきたい、麻生副総理による石破叩きの本当の意図はそこにあるのかもしれない』、「河野外相を安倍総裁の後継に」というのには驚かされた。麻生がキングメーカーとして君臨することになれば、ますます居丈高になりそうだ。
・『既にポスト安倍陣営と安倍陣営の情報合戦も始まっている  既にポスト安倍陣営と安倍陣営の情報合戦も始まっているようで、前者は「対安倍ネガティブキャンペーンを着々と進めている」とも言われている。先にも言及した細田派内での誓約書を巡る一件や、次々に出てくる安倍候補やその周辺の動きに関するネガティブ情報はその一環ということかもしれない。 もしそうであれば、ポスト安倍陣営は右往左往する安倍陣営を見て、腹の中で大笑いしていることだろう。 一方の安倍陣営は、東京オリンピックの年である2020年まで安倍氏が総裁をやって、その後に岸田政調会長に禅譲という話をまいているようである。 むろん、この話は来年の参院選の結果次第であるし、参院選が実施されるのは7月頃であるから、まだまだ何が起こるか分からないし、自民党を敗北に追い込むほどの風が野党、なかんずく立憲民主党に吹くとも限らない(なんといっても立憲民主党、まだまだ足腰が強いとは言い難い…)。 ただ、いずれにせよ、向こう一年は永田町の、日本の政治の1つの転換点になる可能性が高いことは間違いないだろう。副大臣や政務官の人事も含めて、10月に予定されている内閣改造人事の在り方、消費税増税を本当に行うのか否か等、要注目である』、自民党内の争いとは見物だ。

第三に、元財務官僚で嘉悦大学教授の髙橋 洋一氏が9月24日付け現代ビジネスに寄稿した「総裁選後に待ち受ける安倍首相「過去最大級の難問」が見えた 乗り越えるのは至難の業かも」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57650
・『全然「善戦」じゃないのでは…  自民党総裁選が行われ、予定通り、安倍氏553票(69%)、石破氏254票(31%)のダブルスコアの圧勝で、安倍総理が三選を果たした。 左派系新聞は、どうもこれが面白くないようだ。そこで、石破氏の善戦という見出しで抵抗を見せている。地方票で安倍氏224票(55%)、石破氏181票(45%)という状況を指して「安倍氏は55%しかとれなかった」と批判するが、前回2012年総裁選では、石破氏は地方票を55%獲得している。今回、石破氏が10県において安倍氏を上回ったというが、前回は42都道府県だった。石破氏は地方選においても、前回と比べても大きく負けている。 事前の予想では、石破氏はトリプルスコアで負けるとなっていたから、「ダブルスコアなら善戦」という検証不能な言い分もある。しかし、これも冷静に考えればおかしい・・・ただし、アンチ安倍の人は、本稿でこれから述べる「安倍三選後の難題」を知れば、少しは気がおさまるかもしれない。 難題、というのはもちろん憲法改正についての話だ』、難題とは嬉しい話だ。
・『難題、難題、また難題  安倍総理が、3年の任期中に憲法改正をやりたがっているのは明白だ。憲法改正スケジュールについては、本コラムでも何回か書いており、基本的なところは同じであるが、現時点での確認をしておこう。 昨年5月には、安倍総理は、①憲法改正を2020年から施行したい、と訴えたうえで、その内容は②憲法第9条はそのままで、新たに3項を追加し自衛隊を合憲とする、③教育の無償化を憲法に規定する、と話している。 もっとも、憲法改正の手続きは、国会が改正案を示し、最終的には国民が投票で決めることになる。まず、衆参両院の憲法審査会に、国会議員が憲法改正原案を提出するところから始まるので、まだ安倍政権はそのスタートにも立っていない。 改憲スケジュールは、憲法審査会への憲法改正原案提出、国会発議、国民投票、施行日がいつになるのかがポイントだ。 仮に憲法改正原案を提出できれば、衆参両院において、憲法審査会での可決、本会議において総議員の3分の2以上の可決があってから、憲法改正の国会発議が可能となり、その後、国民投票にかけられる。国民投票で賛成過半数を得られれば、ようやく憲法改正ができる。 国会発議の後に国民投票があるが、その期間は国民投票法で60~180日と定められている。ただし、はじめての憲法改正では180日間、というのが永田町の常識になっている。 このように憲法改正を行うには、「衆参両院の3分の2以上の可決」と「国民投票で過半数の賛成」という、普通の法律にはない高いハードルが待っている・・・さて、安倍政権は、この憲法改正のスケジュールをどう考えているのだろうか。最短でいけば、総裁選後、自民党内で憲法改正原案を揉んで、秋の臨時国会か来年の通常国会に提出し、衆参で3分の2の賛意を得て国民投票案を可決して、その半年後の年内で国民投票……というスケジュールだ。 来年には改元もあるので、「新しい時代に新しい憲法」という流れを考えているのだろう。自公は衆参ともに国会議席の3分の2を取っているので、参院選前に国民投票案を可決しやすいという環境を生かすこともできる、と思っているだろう。 しかし、公明党がどう出てくるか、が大きな問題になる。参院選前に国民投票案を可決すると、選挙で戦いづらくなるからはやめてくれ、と公明党が言い出すと、このスケジュールは崩れ、もしも来年7月の参院選で自公3分の2を維持できなければ、一気に憲法改正は遠のくことになる。 ちなみに、安倍首相は憲法改正案の提出に向け、事前に公明党とスケジュールなどを調整する意向を示したが、9月22日、公明党の山口代表は、憲法改正案の与党協議に応じない考えを示した。その上で、「自民党は、野党も含めた合意を得る道筋を描くべきだ」と指摘した。 これは、安倍政権の最短スケジュールを拒否したのにも等しい。公明党としては、少なくとも来年参院選までは憲法議論をしたくないのだろう』、確かに公明党にとっては、憲法改正するとしても参院選後でないと無理だろう。
・『消費増税なら改憲は無理  こうなると、安倍政権としても次の手を考えざるを得ない。となれば、来年の通常国会での国民投票案可決を諦め、参院選で再び勝利を目指して、その後新たな改憲スケジュールを組んでいくのか。 次の参院選で勝つためには、来年10月に予定されている消費増税をぶっ飛ばす……つまり延期しなければならないだろう。いまさら無理だろうという声が多数だろうが、それを動かすのが政治だ。 筆者がこの展開について、先週放送された朝日放送の番組「正義のミカタ」で話したら、同席していた政治評論家がイヤそうな顔をしていた。というのは、その人は、自民党宏池会に深く関わってきた記者なので「安倍政権は、今後憲法改正はできず、来年10月の消費増税で退陣することになり、その後は岸田政権が誕生する」というシナリオを望んでいるからだ。 筆者が「消費増税をぶっ飛ばすやり方がある」というと、その評論家は「増税に肯定的な麻生氏が留任するので、増税の再度の延期はありえない」といっていた。しかも、公明党山口代表が安倍政権の憲法改正に消極的なので、憲法改正も頓挫するという見通しを解説していた。 たしかに、現時点では公明党の「障壁」もあるし、消費増税も既に法律があり、増税のための準備作業に入っている。財務省内では既にシステム対応が行われているので、「来年になってからの消費増税のスキップは社会混乱を招く」と主張するはずだ。さらに、来年予算でも、消費増税を織り込んで予算を作るから、来年になると「予算執行ができなくなる」という「脅し」もしてくるだろう。 しかし、筆者には「消費増税をしながらの憲法改正」は無理だと思っている。 まず、景気の問題がある。財務省は、消費増税時に大型の財政支出をして、増税の悪影響を抑えるつもりだ。何も財政支出をしないよりはマシであるが、完全には影響を除去できないだろう。財政支出をすると、マクロ的には影響はなくなるようにみえるが、消費税で苦しむ人と財政支出の恩恵を受ける人が違うので、消費増税の悪影響は残るだろう。 唯一、悪影響をなくす方法は、消費増税と同時に導入される軽減税率について、現在は食料品と新聞だけであるのを、すべての品目に拡大することだ。つまり、来年10月には消費税率が8%から10%になるが、同時に8%へと軽減税率を適用して、実質、いまと同じ消費税率にする、ということだ』、こんな裏技を考え出すとは、さすが元財務官僚だ。通過後に徐々に軽減税率の範囲を絞っていくのだろう。
・『消費増税スキップ+衆参ダブルという奇策  さらに、財務省の政治姿勢について、これまでと変わらぬままではさすがに国民が許さないだろう、ということもある。本コラムで再三指摘してきたが、森友学園問題は、もともとは近畿財務局が競争入札を怠ったという事務チョンボから始まった問題である。 そのうえ国会での答弁を自分たちに都合のよいものにするために、「公文書改ざん」という、公務員なら決して許されないことを組織ぐるみでやった。 このけじめを付けずに消費増税を行うというのは、国民感情が許すはずない。筆者は、財務省に対するけじめなしで消費増税をしたら、憲法改正どころではなく、国民は安倍政権を転覆させるだろうと思っている。つまり、憲法改正なんて夢のまた夢、ということだ。(なお、財務省については、筆者は解体まで検討するのががふさわしいと思っている・・・以上のように、安倍政権がこのまま無策で突き進むのであれば、憲法改正はできず、消費増税がなされ、国民の反感が高まり、退陣する……という可能性はかなりあるのだ。それを望んでいる人も多いだろう。 しかし、ピンチはチャンスでもある。消費増税をひっくり返すことができれば、憲法改正の道もひらけるかもしれない。 実務を考えると、来年春に増税スキップを打ち出せば、消費増税スキップはギリギリ間に合うだろう。そうした公約で参院選に突入すればいい、と筆者は考えている。 これは、アベノミクスの課題対応にもなり、一石二鳥である。というのは、消費増税スキップはデフレ完全脱却の切り札になるからだ。 安倍政権は、これまで2度も消費増税をスキップしている。二度あることは三度あっても不思議ではない。確かに、安倍首相は来年10月の消費増税を明言しているが、来年7月の参院選の前に「君子豹変す」となっても筆者は驚かない。 消費増税スキップに加えて、財務省にけじめ(解体も含む)をつけさせて、そのうえで、参院選に衆議院解散をあてる同日選挙……これらの手段を駆使すれば、憲法改正にも道が開けるだろう』、「消費増税スキップはデフレ完全脱却の切り札になる」というのは本当だろうか。現在の脱却には程遠い状況が続くだけである。財務省にけじめをつけさせたうえで、衆参同日選挙にまで持ち込めれば、確かに憲法改正にも道が開けるだろう。ただ、財務省へのけじめは極めて高いハードルなのではなかろうか。
タグ:公明党 不出馬 谷垣氏 ダイヤモンド・オンライン 沖縄県知事選 現代ビジネス 麻生副総理 髙橋 洋一 上久保誠人 日本の政治情勢 室伏謙一 西村官房副長官 (その27)(名門派閥に泥塗った岸田氏 「首相禅譲」の望みは不出馬で絶たれた、安倍3選でも前途多難 「参院選後に首相交代」シナリオも、総裁選後に待ち受ける安倍首相「過去最大級の難問」が見えた 乗り越えるのは至難の業かも) iRONNA 「名門派閥に泥塗った岸田氏 「首相禅譲」の望みは不出馬で絶たれた」 岸田文雄政調会長 岸田派「宏池会」内 若手を中心に出馬を促す「主戦論」 ベテランを中心に今回は出馬せず、次回の総裁選で安倍首相からの禅譲を目指す「慎重論」 勝機が全く見えないことから、勝てない戦を避けて、安倍首相からの将来の「禅譲」に望みを託す 宏池会 「保守本流」の名門派閥 野田首相と極秘会談し、消費増税について「協調路線」にシフト 谷垣総裁は野田首相に「助け舟」を出した 3党による消費増税のコンセンサス 「大政翼賛会」並みの大規模な合意形成を実現した立役者が、谷垣総裁 「税と社会保障の一体改革」は第2次安倍政権の登場後に頓挫 安倍首相は、明らかに3党合意には冷淡 10%への引き上げは2度も延期を決断 増税分で得られる14兆円の新たな財源 使途が決められていた その使途を広げて「教育の無償化」に充当する意向を示した。そして、その財源は財政再建に充てる予定の財源を削って捻出 安倍首相は「3党合意」を事実上ほごにした 宏池会が中心となって実現した「税と社会保障の一体改革」の3党合意をほごにして進められているアベノミクスに、挙党態勢で全面的に協力すべきと、岸田氏は主張 岸田氏の思いに対して、安倍首相は冷淡 安倍首相側から「いまさら支持するといわれても遅すぎる」と言われてしまった かつて宏池会会長だった前尾繁三郎元衆院議長 佐藤4選の総裁選で、「人事での厚遇」の密約を理由に不出馬を決めたが、結果的に佐藤氏に約束をほごにされ、派内の反発を買って宏池会会長の座を大平正芳元首相に譲らざるを得なかったという、「宏池会会長交代事件」 岸田氏がアベノミクスに対する批判を封印し、全面協力を決めたことは、単なる一人の政治家の個人的な判断を超えた、深刻な影響を今後の日本政治に与えかねない 「アベノミクス」という安倍首相の名前をつけた経済政策であるため、その間違いを認められなくなっている 日銀だけではない。多くの政治家や学者、評論家の口から出る、首相に恥をかかせないためのさまざまな詭弁が横行している 神格化された独裁者を守るために、都合よく事実が曲げられる、どこかの全体主義国家の「個人崇拝」と変わらないように思える 岸田氏が、言いたいことを封印してアベノミクスへの無批判な支持を表明した影響は大きい アベノミクスに対する「批判を許さない空気」を、一挙に日本社会全体に拡散 五輪後には必ずや大きな反動がやって来る アベノミクスを支持していた人たちは、安倍首相とともに総退陣していただくしかないだろう アベノミクス後の経済政策 実際に起こることはそれどころではなく、日本は経済的にただの焼け野原のようになり、政策がどうだと論じる余裕などなくなるのかもしれない 民主主義だけが持っている利点は、「学習」ができる 民主主義の対極にあるのが全体主義 「国家の大事なことはエリートが決めればいい。民主的な選挙に委ねるのは間違い」 エリートは自らの誤りになかなか気づかないものである。たとえ誤りに気付いても、素直に認めない。いや、認めようとしない 全体主義は長くは持たない。間違いを間違いではないように操作し続けても、いずれつじつまが合わなくなって、体制は不安定化する アベノミクスという首相の個人名がついた政策が、「批判を許さない空気」を社会に広げていくことで、戦後日本が守ってきた民主主義が崩壊しないことを祈りたい 「安倍3選でも前途多難、「参院選後に首相交代」シナリオも」 神戸市議らに、総裁選では石破候補の支援を控えるように圧力をかけたことがSNSで公表 西村副長官は安倍選対を外され、官房副長官続投の話も消えてしまったようである 安倍候補の出身派閥の細田派(清和研)で、総裁選は安倍候補に投票する旨の誓約書に署名することが求められ 石破候補が「麻生降ろし」の中心勢力の1人であったことに根深い恨み 安倍改憲案は“お蔵入り”の可能性も 水面下で進行!?ポスト安倍に向けた動き 麻生副総理、菅官房長官、それに二階幹事長らは、来年の参院選での自民党の敗北(議席の大幅減)を見越して、そのタイミングで安倍氏を総裁の座から引き摺り降ろして、後継に河野太郎外相を据えることを画策して動き始めている キングメーカーとして君臨する道を選んだようで 河野外相を安倍総裁の後継にということで話が進んでいる 既にポスト安倍陣営と安倍陣営の情報合戦も始まっている 「総裁選後に待ち受ける安倍首相「過去最大級の難問」 難題、難題、また難題 最短でいけば、総裁選後、自民党内で憲法改正原案を揉んで、秋の臨時国会か来年の通常国会に提出し、衆参で3分の2の賛意を得て国民投票案を可決して、その半年後の年内で国民投票 改元もあるので、「新しい時代に新しい憲法」という流れ 参院選前に国民投票案を可決すると、選挙で戦いづらくなるからはやめてくれ、と公明党が言い出すと、このスケジュールは崩れ 消費増税なら改憲は無理 消費増税時に大型の財政支出 財政支出をすると、マクロ的には影響はなくなるようにみえるが、消費税で苦しむ人と財政支出の恩恵を受ける人が違うので、消費増税の悪影響は残るだろう 唯一、悪影響をなくす方法は、消費増税と同時に導入される軽減税率について、現在は食料品と新聞だけであるのを、すべての品目に拡大することだ 来年10月には消費税率が8%から10%になるが、同時に8%へと軽減税率を適用して、実質、いまと同じ消費税率にする 消費増税スキップ+衆参ダブルという奇策
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”右傾化”(その7)(翁長知事死去に対してヘイトコメントするネトウヨという存在、日本とドイツが民主主義の防波堤に? 欧州右傾化にバノンが参戦、「保守論壇」はなぜ過激化するのか?「新潮45」問題から見えたこと、神社本庁で今なにが…?強権支配を批判された「ドン」が辞意表明の怪 ) [国内政治]

”右傾化”については、7月29日に取上げた。今日は、(その7)(翁長知事死去に対してヘイトコメント)するネトウヨという存在、日本とドイツが民主主義の防波堤に? 欧州右傾化にバノンが参戦、「保守論壇」はなぜ過激化するのか?「新潮45」問題から見えたこと、神社本庁で今なにが…?強権支配を批判された「ドン」が辞意表明の怪 )である。

先ずは、作家の橘玲氏が9月3日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「翁長知事死去に対してヘイトコメントするネトウヨという存在 [橘玲の日々刻々]」を紹介しよう。
http://diamond.jp/articles/-/178932
・『沖縄の翁長雄志知事が闘病の末に亡くなりました。がんを明らかにしてから、ネットには容姿や病状についての読むに堪えないコメントが溢れ、訃報のニュースは一時、罵詈雑言で埋め尽くされました(その後、削除されたようです)。 こうしたヘイトコメントを書くのは「ネトウヨ」と呼ばれている一群のひとたちです。彼らは常日頃、「日本がいちばん素晴らしい」とか「日本人の美徳・道徳を守れ」とか主張していますが、死者を罵倒するのが美徳なら、そんな国を「美しい」と胸を張っていえるはずがありません。真っ当な保守・伝統主義者は、「こんなのといっしょにされたくない」と困惑するでしょう』、故翁長雄志知事にまでヘイトコメントするとは恐れ入った。
・『ネトウヨサイトについては、最近は「ビジネスだから」と説明されるようです。しかしこれでも話はまったく変わりません。ヘイトコメントを載せるのはアクセスが稼げるからで、それを読みたい膨大な層がいることを示しています。 自分が白人であるということ以外に「誇るもの」のないひとたちが「白人アイデンティティ主義者」です。彼らがトランプ支持の中核で、どんなスキャンダルでも支持率が40%を下回ることはありません。同様に、安倍政権の熱心な支持者のなかに、日本人であるということ以外に「誇るもの」のない「日本人アイデンティ主義者」すなわちネトウヨがいます。 彼らの特徴は、「愛国」と「反日」の善悪二元論です。「愛国者」は光と徳、「反日・売国」は闇と悪を象徴し、善が悪を討伐することで世界(日本)は救済されます。古代ギリシアの叙事詩からハリウッド映画まで、人類は延々と「善と悪の対決」という陳腐な物語を紡いできました。なぜなら、それが世界を理解するもっともかんたんな方法だから』、現在の複雑な社会を「「愛国」と「反日」の善悪二元論」で割り切って考えるとは、確かに簡単だ。しかもおおくのネトウヨは、「いいね」で付和雷同して情報を拡散するだけの「お手軽」な存在だ。
・『ネトウヨに特徴的な「在日認定」という奇妙な行為も、ここから説明できます。自分たち=日本人と意見が異なるなら「日本人でない者」にちがいありません。事実かどうかに関係なく、彼らを「在日」に分類して悪のレッテルを貼れば善悪二元論の世界観は揺らぎません。 今上天皇が朝鮮半島にゆかりのある神社を訪問したとき、ネットでは天皇を「反日左翼」とする批判が現われました。従来の右翼の常識ではとうてい考えられませんが、この奇妙奇天烈な現象も「朝鮮とかかわる者はすべて反日」なら理解できます』、彼らの天皇批判の理由がようやく理解できた。
・『ところが「沖縄」に対しては、こうした都合のいいレッテル張りが使えません。「在日」に向かっては「朝鮮半島に叩き出せ」と気勢を上げることができますが、基地に反対する沖縄のひとたちを「日本から出ていけ」と批判すると、琉球独立を認めることになってしまうからです。 こうして沖縄を批判するネトウヨは、「反日なのに日本人でなければならない」という矛盾に直面することになります。これはきわめて不愉快な状況なので、なんとかして認知的不協和を解消しなければなりません。「翁長知事は中国の傀儡」とか「反対派はみんな本土の活動家」などの陰謀論が跋扈するのはこれが理由でしょう。――都合のいいことに、探せば本土から来た市民活動家は見つかります。 ネトウヨは、「日本人」というたったひとつしかないアイデンティティが揺らぐ不安に耐えることができません。「絶対的な正義」という幻想(ウソ)にしがみついているからこそ、平然と死者を冒瀆してまったく意に介さないのです』、彼らにとっての沖縄問題の微妙さ、行動パターンも鮮やかに解明してくれた。さすがである。

次に、元外交官の 河東哲夫氏が9月8日付けNEWSWEEK日本版に寄稿した「日本とドイツが民主主義の防波堤に? 欧州右傾化にバノンが参戦」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kawato/2018/09/post-22_1.php
・『対米貿易黒字などをめぐって、トランプ米大統領が同盟国に乱暴な圧力をかけている。そんななか、ドイツが反トランプ色をますますあらわにしだした。 メルケル首相は8月15日、トルコのエルドアン大統領に電話。アメリカによる制裁で通貨リラの暴落を食らったエルドアンを励まし、9月末に訪独の招待までした。8月18日には、14年のクリミア併合以来、「信用できない」と公言して遠ざけてきたロシアのプーチン大統領と首都ベルリン近郊で会談した。 既に7月に来日したドイツのマース外相は、「政策が不透明」なトランプに言及しつつ、自由、民主主義、法の支配などを守るための日独協力を呼び掛けた』、本来なら日独協力に乗るべきだが、トランプべったりの安倍首相には無理だろう。メルケルもトランプに対抗するためとはいえ、エルドアンを励まし、プーチン会談するとは、やり過ぎだ。
・『一方、トランプの選挙参謀を務めたスティーブ・バノン元大統領首席戦略官・上級顧問は昨年8月に政権から追い出された後、古巣の右翼系メディア「ブライトバート」を根城に活動を再開。保護主義と反移民を唱える彼は7月にEU本部のあるベルギーの首都ブリュッセルに財団を設立。欧州諸国の右翼政党を支援する姿勢を明らかにした。 ドイツの右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」をもり立てて、メルケルの足を引っ張るだけではない。トランプが貿易黒字の解消を迫ると、「貿易問題は欧州委員会の管轄」の決まり文句で逃げているメルケルを見透かして、EUの足元も乱したいのだろう。 面白いことに、これら欧州の右翼諸政党にロシアがつとに接近している。首都モスクワに招待しては、資金を提供。ロシアもまたEU諸国にくさびを打ち込んで政治を攪乱し、自分の立場を良くしたいのだ』、欧州の右翼諸政党をバノンが支援するのは当然としても、ロシアまでが接近するとはロシアも地に落ちたものだ。
・『ドイツの独善的な国民性  こうなると19世紀初頭、自由・平等・博愛を名目に帝国をつくり上げたナポレオンが没落した後、ロシアとオーストリアなどが保守の神聖同盟をつくったような対立構造が生まれかねない。「民主主義と自由貿易を掲げるメルケル政権」対「米欧ロシアの右翼同盟」という価値観の対立は、新たな国際政治の軸になるだろうか。 そうはならないだろう。ドイツ自身、内部にAfDを抱えており、いつまで自由・民主主義を掲げていられるか分からない。日本に提携を呼び掛けたマースは、メルケルの保守と連立を組む社会民主党(SPD)の政治家で、これまで中国・韓国寄りだったメルケルをどこまで日本寄りに引き込めるか不明だ。現にメルケルは、ロシアやトルコという極め付きの権威主義指導者に近づいている。 メルケルにとっては、トランプに対して自国の利益と自分の政権を守ることが第一で、自由・民主主義の擁護はそのための材料にすぎない。それに、メルケルのようにトランプと正面から対立するのはうまい外交手法ではないし、日本はまだそこまで追い詰められていない。 ドイツは20世紀以来、経済力と独善的な国民性で、欧州政治の台風の目であり続けている。第二次大戦後、ドイツはNATOとEUの枠をはめられて平和勢力となり、米軍駐留を認めることで米欧間のかすがいともなってきた。 しかしトランプが言うように在独米軍が引き揚げ、米独対立が深まれば、アメリカは欧州への発言力を大きく失い、世界での指導力を大幅に弱めることになるだろう。幸い今は米独、米欧間の亀裂は、そこまで決定的なものとはなっていないが』、ここにきてメルケルは与党内の支持基盤が揺らいでいるようだが、困ったことだ。
・『ところで、バノンは昨年11月と12月に来日している。日本との顔つなぎ程度で終わったようで、右翼同士の本格的な交流は見られなかった。日本では、戦前の国粋主義を唱える右翼は盛り上がらないし、米欧ほど大きな移民問題もない。格差に対する不満は、既成政党が吸収している。 従って、日本で国家主義的右翼が台頭するのは、反米機運が強くなったときくらいのものだろう。日本でもヨーロッパと同じく右翼が国際関係に大きな影響を及ぼすところには来ていない』、バノンが日本で活動の輪を広げられなかったのは、取り敢えず一安心だ。

第三に、若者論研究者の後藤 和智氏が9月23日付け現代ビジネスに寄稿した「「保守論壇」はなぜ過激化するのか?「新潮45」問題から見えたこと 「被害者意識」でつながる論理」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57621
・『若手「保守論壇」人の事件簿  2018年、若い「保守派」の論客による問題発言が、何度か批判されました。 2018年2月には、雑誌「正論」などで売り出し中の国際政治学者である三浦瑠麗が、フジテレビ系の番組「ワイドナショー」で、北朝鮮のテロリストが日本や韓国に潜んでいると発言して、それが一般の在日コリアンなどへの差別を煽るとして非難されました。 三浦 もし、アメリカが北朝鮮に核を使ったら、アメリカは大丈夫でもわれわれは反撃されそうじゃないですか。実際に戦争が始まったら、テロリストが仮に金正恩さんが殺されても、スリーパーセルと言われて、もう指導者が死んだっていうのがわかったら、もう一切外部との連絡を断って都市で動き始める、スリーパーセルっていうのが活動すると言われているんですよ。 東野 普段眠っている、暗殺部隊みたいな? 三浦 テロリスト分子がいるわけですよ。それがソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも。今ちょっと大阪やばいって言われていて。 松本 潜んでるってことですか? 三浦 潜んでます。というのは、いざと言うときに最後のバックアップなんですよ。 三浦 そうしたら、首都攻撃するよりかは、他の大都市が狙われる可能性もあるので、東京じゃないからっていうふうに安心はできない、というのがあるので、正直われわれとしては核だろうがなんだろうが、戦争してほしくないんですよ。アメリカに』、三浦瑠麗についてはこれまで政治的立場は別として、鋭い分析をすると評価していたが、こんな噂話のようなトンデモ発言をしたとあっては、評価は180度逆転した。
・『そして2018年7月、雑誌「新潮45」8月号が、自民党の杉田水脈議員による論考「『LGBT』支援の度が過ぎる」を掲載。それが性的少数者への差別を煽るとしてこれもネット上を中心に批判が起き、当初は静観していた自民党も杉田に対して注意を行いました。 しかし、同誌2018年10月号が開き直りともとれる特集「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という特集を組み、特にその中でも小川榮太郎による論考が、痴漢の正当化としか思えない記述もあるとしてさらに強い批判を浴び、新潮社の出版社としての姿勢そのものが問われる事態となりました。 さらに新潮社の文芸編集部のツイッターアカウントは、2018年9月19日から多くの「新潮45」批判をリツイートし、さらに最上段に固定されるツイートに、新潮社の創業者である佐藤義亮の言葉「良心に背く出版は、殺されてもせぬ事」を設定するという「内部闘争」も起こっています。 三浦も小川も、雑誌「正論」が若手保守論客に対して贈る論壇賞である「正論新風賞」の受賞者であることから、元々イメージがよくなかったこの賞自体についてもさらに露骨に忌避する動きが見られ始めました。 一時期、同世代の売れ筋の国際政治学者たちに会うたびに、「『正論新風賞くれる』って言われたらどうします?」って聞いてもれなく嫌な顔されてたが、これでとにかく拒否、話きたら全速力で逃げろ、になりましたね。(池内恵氏のツイート) このように、「保守系」の論客が次々と差別的な、または差別を煽るような言説を開陳し、批判されても周囲の論客によって擁護されることが起こるようになっています。 このような傾向は、近年になって顕著に現れています。 それは、それこそ「保守論壇」によって生み出された政治家の多い安倍晋三政権や現在の自民党が、森友学園・加計学園問題、公文書をめぐる諸問題によって信頼が揺らいでいる状況とパラレルになっているように見えます。 そしてそれは、現在の「保守論壇」を支える論理の限界が露呈していることの現れといえるのです』、「現在の「保守論壇」を支える論理の限界が露呈している」というのは、やや楽観的に過ぎるのではなかろうか。
・『被害者意識でつながる「論壇」  現在の保守論壇を支えるものとして挙げられるのは、「被害者意識による連帯」と「鉄砲玉としての女性・若者の利用」です・・・「正論」や「SAPIO」、あるいは廃刊した「諸君!」など、保守系のマスコミや論壇誌は、中国や韓国、北朝鮮、日本国憲法、ジェンダーフリー教育、フェミニズム、そして朝日新聞などの左派系のマスコミなどを、日本を壊す「敵」として煽るような言論を展開してきました。 我が国の保守系の言論は、「左派的なもの」への敵愾心(てきがいしん)を煽ることにより支持を集めてきたという経緯があります。 残念ながら、私が長い間展開してきた、若者論批判、ニセ科学批判もまた、そのような左派への敵愾心を煽る言説に荷担してきたと言わなければなりません』、なるほど。
・『こうした傾向は、ネット上にもしみ出してきています。 私は今年、ツイッター上における、ニュースサイト「netgeek」に言及したツイートについて調査を行いました。 このサイトは、民主党・民進党などについて多数のデマを流していることで知られています。そしてこのサイトの主要なコンテンツは、やはり左派へのバッシングなのです。 実際、このサイトに多く言及している人たちにおいては、百田尚樹や上念司といった保守論壇人や、右派、というよりは反左派・反マスコミ系のツイッターアカウントを多数リツイートしていることが観測されました。 また私が所属している同人界隈においても同様に見られます。 例えば「コミックマーケット」の3日目の前日(2日目の当日)においては、ツイッターにおいて「弱者男性」という立場からフェミニズムを攻撃しているアルファツイッタラーと、オタク区議として有名なある大田区議のトークイベントが行われ、フェミニズムについて批判が行われます。 そのほか、表現規制問題の周辺において、論敵を「まなざし村」――元々は一部の漫画・イラスト表現における女性の描き方を問題視する社会学者の事象であったが、いまやこの言葉は逆にそこで批判された表現を受容している層が相手を攻撃する際に頻繁に使われている――と「認定」するような行為も見られ、保守論壇的な憎悪による仲間内の支配はいろいろなところで行われているのです』、左派へのバッシングだけで、保守論壇がこれだけ勢いを保っているというのは不思議だ。
・『「新潮45」についても、2016年にいまの編集長が就任してからと現在を比べて、反左派色を鮮明にしているにもかかわらず部数が落ちていることが指摘されています。 これについて、「部数が減少しているからそういう編集方針に切り替えたのだろう」と指摘する向きもありますが、私の見立てとしては逆で、むしろ部数を「減らしてでも」固定した読者をつなぎ止めておきたい、と考えているのではないでしょうか。 従って、2018年9月21日に新潮社の佐藤隆信社長名義で出された声明文の中にある、《あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現》というものについて、実際にはほとんど鑑みられていないのではないかと私は思う所存です。 なぜなら、むしろ《常識を逸脱した偏見と認識不足》であることを自覚し、なおかつそのような立ち位置を意識することで左派的な「良識」「良心」に刃向かってやるぞ、という“気概”が、「反左派」を存在意義とする保守論壇には強く存在しているからです』、「新潮45」は休刊になり、新潮社では文芸編集部などの良識派が取り敢えず勝利したようだ。
・『「鉄砲玉」としての女性論客とYouTuber  もう一つは、三浦や杉田などが、保守論壇の「鉄砲玉」として使われているという可能性です。 女性や若い世代に過激な主張をさせることにより、それに対して批判が起こっているという事象を取り上げて、「保守論壇の若手による過激な主張への批判=守旧派の主張」という、世代間闘争の構図を強化する構造が見て取れるのです。 2000年代から現在に至るまで、女性のジャーナリストやライターが、保守雑誌においてメインストリームの主張をカリカチュアライズした現代社会批判などを行うようなことはいくつか見られました。 例えば「諸君!」2004年5月号の特集「ポイ捨て 日本国憲法」において、細川珠生による「日本国憲法サン、60歳定年ですよ」という論考を掲載し、細川が問題視する現代社会の風潮を「憲法」のせいにするということが展開されていました。 そのほかにもこの手の物書きとしては、大高未貴や、近年なら元官僚の山口真由などがあげられます。 また近年ではネット上で保守系の言論を展開しているYouTuberが、保守系マスコミに登場する事例も見られます。 例えば、「週刊新潮」は2017年頃から保守系の人気YouTuberのKAZUYAの連載を始めているのがそれにあたります。 さらにもう一人あげるとすれば、「古事記アーティスト」を自称する歌手・コメンテーターの吉木誉絵でしょうか。 吉木は若い世代の論客として、「朝まで生テレビ!」「ビートたけしのTVタックル」などに出ていますが、皇族の系統であることを自称することで売ってきた竹田恒泰が主催する勉強会「竹田研究会」の出身者であることを隠していません。 吉木は自衛隊の幹部学校に期限付きではありますが「客員研究員」として呼ばれるほどの「実力者」です・・・若い世代における自民党の支持率が高いことで、左派論客において若い世代への不信が少なからずある・・・状況において、特に若い世代を保守論壇に「囲い込む」ことで若い世代に自分たちの論理が支持されているとする手法は今後も続くでしょう。 しかしその「成功」は、「左派=高齢者・守旧派」と規定する行為に支えられた、もろいものと言うほかありません』、若い世代を保守論壇に「囲い込む」とは、困ったことだ。若い世代のリベラル派に頑張ってもらいたいところだ。
・『「保守論壇」はこれからどうなるのか  2018年において、保守論壇をめぐる主要なトピックに、「ネトウヨ春の/夏のBAN祭り」があります。 これは、匿名掲示板「5ch」のカテゴリーの一つである「なんでも実況(ジュピター)」(通称:なんJ)の住人が、韓国や在日コリアンへの差別的な書き込みが多い「ハングル板」に突撃して主導権を乗っ取り、YouTubeのヘイトスピーチを含む動画を次々に通報してチャンネルを凍結させてしまおうとする「祭り」です。 実際、この「祭り」において、KAZUYAや竹田恒泰を含む多くの保守系チャンネルが閉鎖に追い込まれています。 またこの動きと同時期には、プリンター大手のセイコーエプソンが、利用者からの「有名なヘイトスピーチサイトである「保守速報」に貴社の広告が掲載されている」という指摘に対して、同社はすぐさま広告代理店を通じて同サイトへの広告の配信を停止するということもありました・・・このように、YouTubeやネット広告といった収入源になっているものを断つような、いわば「兵糧攻め」の動きが見られてきています。 もちろんYouTubeの動画の規制を決めるのはYouTubeを運営しているGoogleですし、またネット広告の停止を決めるのは、最終的には広告主の判断であることを忘れてはなりません。 これらの動きは、ヘイトスピーチに荷担することがブランドイメージへの毀損につながるという考えが浸透してきたからだと言うことができます。 しかし、左派や高年齢層への敵愾心によって「つながっている」層は、そのような動きに対して、むしろ態度をこわばらせているようにも見えます。 「『リベラル』こそが守旧派、現政権こそ真のリベラルである」という主張は、現政権を支持する文化人によってよく語られます。 これらの動きは、「本当は『リベラル』という価値観は好かれているが、『日本リベラル』はその条件を満たしていない守旧派である」という考えが支持されているから、というよりも、むしろ相手の実存を攻撃することによって、敵愾心によって仲間内のつながりと支配を強化する「あがき」と言った方が正しいでしょう。 そして現政権もまた、そのような支持者――自分は「頼りになるリベラルがいないから仕方なく支持している」と言うが、実際には左派へのマウンティング欲求を満たすために支持していると見られる――によって支えられているのです』、ヘイトスピーチへの「兵糧攻め」は好ましい動きだが、実際の効果はたかがしれているのではなかろうか。

第四に、ジャーナリストの伊藤 博敏氏が9月20日付け現代ビジネスに寄稿した「神社本庁で今なにが…?強権支配を批判された「ドン」が辞意表明の怪 田中恆清・神社本庁総長の誤算」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57592
・『神社本庁の役員会で「耐えられません」と…  「報道は全て本当でございます。田中(恆清)総長は辞意を表明されました。ただ、現時点では、まだ辞表は提出されておりません」 伊勢神宮で行われていた全国47都道府県の神社庁長会(各県にひとり神社庁長が置かれている)の懇話会で、神社本庁の総務部長は、「皆さん、ご関心があろうかと思いますが」と、前置きしてこう切り出した。 「報道」とは、機関誌の『神社新報』が「神社本庁役員会が9月11日に開催され、田中恆清総長が辞意を表明した」と、報じたもの。機関誌報道なので確認するまでもないのだが、2010年の就任以来、神道政治連盟の打田文博会長を右腕に強権支配体制を確立、3年任期の3期目に入ってからは、「神社のドン」と恐れられる存在となっていただけに、「辞意表明」は衝撃を与えた。 もっとも、神社庁長会は、9月16日から3日間の日程で行われた「平成30年度神宮大麻暦頒布始祭」という神社界にとって最も大切な祭事の最中に開かれており、田中総長はそれに欠席。それをもってしても田中氏の退任意志は明らかだった。 それにしても11日の役員会で何があったのか。 鷹司尚武統理の挨拶に始まって、田中総長が議事進行を務め、決議、協議事項や各部からの報告を終えた時、ひとりの理事が発言を求め、「元参事2人が免職等の処分の無効確認等を求めている民事訴訟に関し、和解の方針を決議したらどうだろうか」と、提案した。 これを巡って論義が紛糾するなか、訴訟に至る経緯を説明していた田中総長が、「これ以上、皆さん方からいろんな意味で暗に批判されるのは、耐えられません。私は今日で、総長を引かせていただきたいと思います」と、述べたのである』、旧来の様々な組織で問題が次々に発覚しているが、神社本庁でまで起きたとは・・・。
・『神社本庁百合丘宿舎の「安値売却」疑惑  強気で知られる田中総長が折れたのは、「本庁資産の安値売却」に疑問の声を挙げた幹部職員を解雇処分にするなどの強圧支配に、多くのメディアが反発して記事化、それが神社界に跳ね返って田中批判が止まないことへの怒りであり、疲れだろう。 私も本コラムで田中-打田体制と、そこに食い込む日大レスリング人脈について書いた・・・田中総長が批判された神社本庁百合丘宿舎の安値売却疑惑とは、15年11月、バブル期に7億5000万円で購入した神奈川県川崎市の百合丘宿舎を、随意契約でディンプルインターナショナルという不動産会社に売却する売買決裁のことを指す。 売却価格は1億8400万円だったが、中間登記省略でディンプル社の名前は登場することなく16年5月に転売され、売却価格は3億円を上回っていた。入札が前提の本庁資産売却がなぜ随意契約なのか、それまでにもディンプル社は、中野、青山などの宿舎を独占売却。なぜディンプル社なのか。 こういった疑問が生ずるのは当然だろう。だが、神社本庁はそうした疑惑を文書にして理事らに手渡した稲貴夫総合研究部長(当時)を、「情報を漏洩して疑惑を外部に広めた」として解雇処分とし、売却を担当した瀬尾芳也財政部長を、「売却に関係して事実と異なる発言をし、かつ総長らを誹謗した」として降格処分とした。 ディンプル社は、利権会社といっていい存在。皇室のビジュアル版を作ろうという話になって、96年、日本メディアミックスが設立され、各界に顔の広い福田富昭・日本レスリング協会会長を社長に据えた。 以降、福田氏の日大レスリング部後輩の高橋恒雄氏が神社本庁に関わるようになった。ディンプル社は高橋氏の会社で、発行部数5万部の『皇室』発行元の日本メディアミックスの社長も、現在は高橋氏。高橋氏は、打田氏と近く、田中-打田ラインを支える。 神社本庁が、稲、瀬尾の両氏に処分を下し、それを不服として両氏が、東京地裁に「処分無効の確認訴訟」を起こしたのは、昨年10月である。内部告発を解雇などの処分で封じ込めるという体質が批判されたのは当然ながら、以降、発生した女性宮司絡みの二つの事件も神社本庁の差別意識と統治能力不足を表面化させた』、7億5000万円で購入した宿舎を1億8400万円(転売後でも3億円強)で売却とは豪気なことだ。しかもディンプル社とは随意契約とは、どう考えても裏金が動いた臭いがする。内部告発した2名の幹部を解雇、降格処分するとは、馬鹿なことをしたものだ。裁判になれば、執行部に火の粉が降りかかるのは必至の筈だ。なお、神社本庁の不動産取引については、このブログでも7月5日に取上げた。
・『ひとつは、昨年末、国民を驚愕させた富岡八幡宮の宮司刺殺事件である。富岡八幡宮は、創設390年を誇る東京下町の神社だが、富岡家の長男・茂永氏が宮司職を継いだものの、素行の悪さで解職。10年10月から長女・長子氏が宮司代務者として仕切り、責任役員会は「長子氏を宮司に」と、何度も意見具申するものの、神社本庁は「経験不足」を理由に認めなかった。 そうするうち、宮司に自分の息子をつけたい茂永氏が、長子氏への骨肉の憎しみもあって、刺殺に及んだ。背景には、格式のある神社の宮司に女性を認めたくないという神社本庁の差別意識があるという』、女性差別が殺人事件にまで発展するとは、神社本庁の罪は深いといえよう。
・『内部に危機バネが働いた  全国八幡宮の総本宮である宇佐神宮を巡る問題もそうだ。 歴史と社格を誇る宇佐神宮だが、社家(世襲神職)の到津(いとうづ)家が、南北朝の時代から宮司を務めてきた。そこで末裔の到津克子氏が、跡を継ぐのは当然と目されていたが、「経験不足」を理由に到津氏の宮司職を認めず、あげく16年2月、田中総長は自分の子飼いの小野崇之・神社本庁前総務部長を宮司に送り込み、補佐役として石清水八幡宮(田中氏が宮司)で右腕だった大久保博範氏をナンバー2の権宮司とした。 宇佐神宮乗っ取りのような強権発動に怒った地元は、今年に入って、小野、大久保両氏の罷免を求める署名活動まで起こしている。 富岡八幡と宇佐神宮、そして神社本庁の幹部職員を解雇に追い込む意識と手法は同じである。 「女性」を理由に宮司を排除して、神社本庁支配体制を確立し、批判は許さず、周辺をイエスマンと仲間で固めて、利権も維持する。田中氏は、来年5月が3期目の任期満了だが、対立勢力を除外していった結果、場合によっては4期目もあった。 しかし、さすがに内部に危機バネが働いた。宇佐神宮で小野宮司は孤立を深め、稲・瀬尾両氏の裁判では、「和解したらどうか」と、理事が勧めるほど「本庁側の理不尽な処分」が証明されている』、ここまでくると開いた口が塞がらない。
・『「批判は我慢できない。今日で辞める」と、田中氏が思わず口走ったのは、一時的な気の迷いかも知れない。辞表をなかなか提出しない、というのはそういう意味だろう。 だが、流れは「田中辞任」で動き始めた。名誉職ではあるが、神社本庁を代表する鷹司統理は「(辞任を)真摯に受け止めたい。次の人にバトンタッチすることも大切だと思う」と述べた。 「批判」を「解雇」で封じるようなパワハラの強権支配が、長く続いていいハズはない。万全と思われた支配体制も、内部から徐々に崩壊、それを身に染みていた田中氏が、思わず辞任を漏らした、というのが正確なところかも知れない』、神社本庁は宗教法人である。こんな見るに堪えないガバナンス崩壊を所管の文科省は、いつまで見て見ぬふりを続けるのだろうか。神社本庁が安倍首相も属する日本会議を支える有力メンバーであるため、遠慮しているのだろうか。
タグ:橘玲 右傾化 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス Newsweek日本版 小川榮太郎 三浦瑠麗 伊藤 博敏 杉田水脈議員 (その7)(翁長知事死去に対してヘイトコメントするネトウヨという存在、日本とドイツが民主主義の防波堤に? 欧州右傾化にバノンが参戦、「保守論壇」はなぜ過激化するのか?「新潮45」問題から見えたこと、神社本庁で今なにが…?強権支配を批判された「ドン」が辞意表明の怪 ) 「翁長知事死去に対してヘイトコメントするネトウヨという存在 [橘玲の日々刻々]」 訃報のニュースは一時、罵詈雑言で埋め尽くされました ヘイトコメント 「ネトウヨ」 彼らは常日頃、「日本がいちばん素晴らしい」とか「日本人の美徳・道徳を守れ」とか主張していますが、死者を罵倒するのが美徳なら、そんな国を「美しい」と胸を張っていえるはずがありません 最近は「ビジネスだから」と説明 ヘイトコメントを載せるのはアクセスが稼げるからで、それを読みたい膨大な層がいることを示しています 「白人アイデンティティ主義者」 トランプ支持の中核 日本人であるということ以外に「誇るもの」のない「日本人アイデンティ主義者」すなわちネトウヨ 「愛国」と「反日」の善悪二元論 人類は延々と「善と悪の対決」という陳腐な物語を紡いできました なぜなら、それが世界を理解するもっともかんたんな方法だから ネトウヨに特徴的な「在日認定」という奇妙な行為も、ここから説明できます ネットでは天皇を「反日左翼」とする批判が現われました 「朝鮮とかかわる者はすべて反日」 「沖縄」に対しては、こうした都合のいいレッテル張りが使えません 基地に反対する沖縄のひとたちを「日本から出ていけ」と批判すると、琉球独立を認めることになってしまうからです 「翁長知事は中国の傀儡」とか「反対派はみんな本土の活動家」などの陰謀論が跋扈するのはこれが理由 河東哲夫 「日本とドイツが民主主義の防波堤に? 欧州右傾化にバノンが参戦」 ドイツが反トランプ色をますますあらわに エルドアンを励まし プーチン大統領と首都ベルリン近郊で会談 マース外相 自由、民主主義、法の支配などを守るための日独協力を呼び掛けた バノン元大統領首席戦略官・上級顧問 ブリュッセルに財団を設立 欧州諸国の右翼政党を支援する姿勢 ドイツのための選択肢(AfD) 欧州の右翼諸政党にロシアがつとに接近 ロシアもまたEU諸国にくさびを打ち込んで政治を攪乱し、自分の立場を良くしたいのだ ドイツの独善的な国民性 メルケルにとっては、トランプに対して自国の利益と自分の政権を守ることが第一で、自由・民主主義の擁護はそのための材料にすぎない ドイツは20世紀以来、経済力と独善的な国民性で、欧州政治の台風の目であり続けている バノンは昨年11月と12月に来日 右翼同士の本格的な交流は見られなかった 後藤 和智 「「保守論壇」はなぜ過激化するのか?「新潮45」問題から見えたこと 「被害者意識」でつながる論理」 若手「保守論壇」人の事件簿 雑誌「新潮45」 「『LGBT』支援の度が過ぎる」 「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という特集 「正論新風賞」 元々イメージがよくなかったこの賞自体についてもさらに露骨に忌避する動きが見られ始めました 現在の「保守論壇」を支える論理の限界が露呈していることの現れ 被害者意識でつながる「論壇」 「被害者意識による連帯」 「鉄砲玉としての女性・若者の利用」 保守系の言論は、「左派的なもの」への敵愾心(てきがいしん)を煽ることにより支持を集めてきたという経緯 「新潮45」は休刊 「保守論壇の若手による過激な主張への批判=守旧派の主張」という、世代間闘争の構図を強化する構造が見て取れる 「左派=高齢者・守旧派」と規定する行為に支えられた、もろいもの ヘイトスピーチを含む動画を次々に通報してチャンネルを凍結させてしまおうとする「祭り」です セイコーエプソンが、利用者からの「有名なヘイトスピーチサイトである「保守速報」に貴社の広告が掲載されている」という指摘に対して、同社はすぐさま広告代理店を通じて同サイトへの広告の配信を停止 「兵糧攻め」の動き 「神社本庁で今なにが…?強権支配を批判された「ドン」が辞意表明の怪 田中恆清・神社本庁総長の誤算」 田中(恆清)総長は辞意を表明 ひとりの理事が発言を求め、「元参事2人が免職等の処分の無効確認等を求めている民事訴訟に関し、和解の方針を決議したらどうだろうか」と、提案 論義が紛糾 神社本庁百合丘宿舎の「安値売却」疑惑 日大レスリング人脈 随意契約でディンプルインターナショナル 疑惑を文書にして理事らに手渡した稲貴夫総合研究部長(当時)を、「情報を漏洩して疑惑を外部に広めた」として解雇処分 売却を担当した瀬尾芳也財政部長を、「売却に関係して事実と異なる発言をし、かつ総長らを誹謗した」として降格処分 富岡八幡宮の宮司刺殺事件 責任役員会は「長子氏を宮司に」と、何度も意見具申するものの、神社本庁は「経験不足」を理由に認めなかった 宮司に自分の息子をつけたい茂永氏が、長子氏への骨肉の憎しみもあって、刺殺に及んだ 神社本庁の差別意識 宇佐神宮を巡る問題 末裔の到津克子氏が、跡を継ぐのは当然と目されていたが、「経験不足」を理由に到津氏の宮司職を認めず 田中総長は自分の子飼いの小野崇之・神社本庁前総務部長を宮司に送り込み、補佐役として石清水八幡宮(田中氏が宮司)で右腕だった大久保博範氏をナンバー2の権宮司とした 稲・瀬尾両氏の裁判では、「和解したらどうか」と、理事が勧めるほど「本庁側の理不尽な処分」が証明 「批判」を「解雇」で封じるようなパワハラの強権支配が、長く続いていいハズはない
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女性活躍(その8)(実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠、東京医大の女性差別 背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる、「現場優先で女性減点」は 正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの) [社会]

女性活躍については、6月15日に取上げた。今日は、(その8)(実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠、東京医大の女性差別 背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる、「現場優先で女性減点」は 正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの)である。

先ずは、作家の伊与原 新氏が7月29日付け現代ビジネスに寄稿した「実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠 ラボ・フェイク 第6回」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56740
・『人はなぜ、「科学らしいもの」に心ひかれてしまうのか……? 東京大学大学院で地球惑星科学を専攻、大学勤務を経て小説デビューし、「ニセ科学」の持つあやしい魅力と向き合うサスペンス『コンタミ 科学汚染』を上梓した作家・伊与原新氏。同氏が生み出した、ニセ科学に魅せられた科学者・Dr.ピガサスが今回、語るのは、巷に溢れる「脳」にまつわる「伝説」たち。「男脳」と「女脳」は実在するのか? 「人間は脳の10%しか使っていない」は本当か? ……誰もが耳にしたことがあるであろう、脳に関するさまざまな言説。そこからは、科学とフェイクのゆらぎが見えてくる──』、初めはトンデモ科学かと思ったが、読んでみると、俗説・通説の誤りを解説しており、面白い。
・『差別される「脳」、差別する「脳」  お茶の水女子大学が、「性自認が女性であるトランスジェンダー学生を受け入れる」と発表した。以前から女子大にはそうした受験希望者からの問い合わせがしばしば寄せられていたそうだが、国立大学として真っ先にこの決定を下したのは、やはり英断だと思う。 世間も概ね好意的にこれを受け止めているように見える。心と体の性別の不一致は、その人の生得的な性質の一つ。そんなとらえ方が一般的になりつつある証左だろう・・・だがこの問題は、実は諸刃の剣でもある。生まれつき心と体の性別が一致しない人々が存在するということは、脳に属性として性差があることを意味するからだ。 トランスジェンダーが先天的なものかどうか、結論が出たわけではない。ただ、人間の心には生後かなり早い段階で性差があり、性自認も芽生えているという研究結果が蓄積されつつある。体の性差は妊娠初期に、脳の性差は妊娠後半に形成され始めると主張する研究者もいる。 とくに、前視床下部間質核と分界条床核という脳部位は、それぞれ性的指向と性自認に関わっていると考えられており、どちらも男性のほうが大きい。ところが、同性愛の男性においては前視床下部間質核が、トランスジェンダー男性(性自認が女性)においては分界条床核が女性並みに小さいという報告がある。 こうした事実がジェンダー論に(ときに強引に)結びつけられるであろうことは容易に想像がつく。卑近な言い方をすれば、「男脳・女脳」問題である。 以前、『話を聞かない男、地図が読めない女』という本がベストセラーになったのをご記憶の方も多いだろう。男女の考え方、行動、能力の違いを単純に脳の性差に押しつけるこの手の言説は、女性差別を助長する方向に悪用されないとも限らない』、なるほど。
・『「脳科学」の歴史は、差別の歴史と重なっている。例えば、19世紀前半に活躍したアメリカの医師で科学者、サミュエル・モートン。彼は、コレクションしていた人間の頭蓋骨に散弾銃の鉛玉を詰めて容積を測り、その値をもとに人類を人種別に五つの階層に分けた。 階層の頂点を占めるのは、もっとも脳の容積が大きい白人。その下に東アジア人、東南アジア人、アメリカ大陸先住民と続き、最下層に黒人を押し込んだ。奴隷制度によって繁栄していた当時のアメリカにおいて、モートンの主張は広く歓迎された。「科学」の名を借りた人種差別が公然とおこなわれていたのである。 現在、「人種」という概念に意味を感じている科学者はいない。どうしてもラベルを貼りたいというのであれば、貼れるものはただ一つ。我々はみな“アフリカ人”である。ホモ・サピエンスという種をそれ以上細かく区分するような遺伝的差異は、存在しない。 最新の遺伝学によれば、「人種」という従来の固定されたイメージは、まるっきり間違っているらしい。人類は先史時代から、我々が想像する以上に流動的で、集団間で盛んに遺伝子のやり取りをしている。西ヨーロッパ人の肌が白くなったのは、たった8000年前。それを引き起こしたのが中東の人々だったというから、驚きである。 一方で、我々の脳に「私たち」と「彼ら」を積極的に区別しようとする働きが備わっていることも、また事実のようだ。 fMRI(機能的磁気共鳴画像法)によって脳の活動をリアルタイムに観察してやると、自分と同じ(と被験者が考えている)集団に属する人の顔を見たときには、そうでない人間を見た場合と比べて、好感に関連する眼窩前頭皮質がより活発になるという。 重要なのは、この現象が本人の意識とは無関係に起きているということだ。残念なことだが、科学の光をあまねく灯すだけでは、この世界から完全に差別をなくすことはできないのかもしれない』、「我々はみな“アフリカ人”である。ホモ・サピエンスという種をそれ以上細かく区分するような遺伝的差異は、存在しない」にも拘わらず、人種偏見がいまだにはびこっているのは困ったことだ。「我々の脳に「私たち」と「彼ら」を積極的に区別しようとする働きが備わっている」ことの影響なのかも知れない。
・『脳の性差は「生まれ」か「育ち」か?  話を「男脳・女脳」に戻そう。OECD(経済協力開発機構)がある報告書の中で、「神経神話(Neuromyths)」なるものを提唱している。脳にまつわる科学的根拠のない言説を列挙し、批判しているのだ。「人間は脳全体の10%しか使っていない」「人間は右脳型と左脳型に分かれる」「脳において重要なことは3歳までに決まる」など、巷でよく耳にする話ばかり。「男女の脳には違いがある」というのもそこに含まれている。 ということは、やはり「男脳・女脳」はただのニセ科学なのだろうか。確かに、まともな脳研究者がそんな言葉で何かを説明するようなことは、さすがにない。だがその一方で、彼らの多くは「構造にも働き方にも、脳には何らかの性差がある」と考えている。 つまり、その「差」をどうとらえるか、どう表現するかが、研究者によって大きく異なるのだ。主流をなす意見は、時代によっても振り子のように大きく揺れ動く。その流れをたどってみると、科学というものが様々な信条をもつ人間の営みであることが垣間見えて、興味深い。 今から100年ほど前まで、科学的事実として知られていた男女の脳の違いは、その大きさと重さだけであった。男性の脳は女性のそれより平均140gほど重い。男女の体格差を補正すれば消えてしまうその差のみをもって、男性は女性より知力に優るとされていた。 1960年代に入り、「人権」や「平等」というものの価値が高騰し始めると、脳科学もその流れに引き寄せられていく。人間の脳には生まれつき、人種差や男女差はおろか、個人差さえない。誰もが“空白の石板”として同じ脳を与えられて生まれてくる。知性も性格も、育つ環境と教育がすべて決める。そんな考えが幅をきかせ始めた。』、脳科学の「主流をなす意見は、時代によっても振り子のように大きく揺れ動く」というのは、その成果を利用する我々も心すべきだろう。
・『「男脳・女脳」の真実とは?  物事が極端なほうへ振れると、揺り戻しも大きい。それに勢いを与えたのが、1990年代から広く用いられるようになったfMRIやPET(陽電子放射断層撮影法)といった新技術だ。 生きた人間の脳をのぞき見ることができるこれらの手法は、男女の脳の“違い”を次々と見つけ出した。感情、記憶、視聴覚、顔認識処理、ナビゲーション能力、ストレス耐性。性差が見られるとされた領域は、多岐に及ぶ。 よく知られているのは、左右の脳をつなぐ脳梁という部位だろう。一般に、左脳は論理的で分析的、右脳は直感的で包括的だと信じられている。両者の連絡係である脳梁は、女性のほうが男性より太いという論文が出たのだ。 この話が市井まで下りてくると、どういうわけか、「女性はマルチタスクに、男性は一つのことに集中する仕事に長けている」ということになった。“お茶の間脳科学”ではお決まりの、曲解と飛躍である。 まだある。空間知覚に関わる頭頂皮質は、男性のほうが女性より大きい。これが、「男は女より地図が読める」という俗説を生んだ。言葉の記憶や感情に関わる海馬、言語中枢のニューロン密度は、女性のほうが大きい。このことが、「女は男より言語感覚に優れている」というテストの結果と短絡的に結びつけられた。 こうなると、差別的論調が再び盛り返してくる。女性の脳はマルチタスクだから、家事や子育てに向いている。一つの分野を極めることができるのは、結局は男性。2005年にはハーバード大学の学長が「科学の世界で大きな成功をおさめる女性が少ないのは、脳の構造による可能性がある」とスピーチし、顰蹙を買った。 その反動もあるのだろう。ここ数年はかなり冷静な議論が増えているようだ。2015年にイギリスのグループが報告した大規模な調査によれば、脳のサイズを補正すると、脳梁にも海馬にも、従来言われていたような男女差はほとんど見られないという。 構造だけでなく、脳の働き方の性差についても新しい見方が出てきている。例えば、「すべての人の脳は、男性的特徴と女性的特徴とが様々な濃淡で組み合わさった『モザイク脳』である」という説もそうだ。この見方に立てば、確かに、脳を性別による2つのタイプに明確に分けるのは難しい。 だがこの「モザイク脳」に対しては、脳の性差を研究する他の科学者たちから、「これは科学ではなく、イデオロギーだ」と反発が出ている。濃淡や組み合わせに個人差はあれ、(至極当然ながら)男性の脳は総じて男性的特徴を多く持ち、女性の脳は女性的特徴を多く持つ。脳に性差があることの否定にはならない、というわけだ。 議論はまだまだ尽きそうにない。ただ、大半の脳研究者が同意していることはある。脳においては、男女差よりも個人差のほうがはるかに大きい、ということだ。 男女の能力差が一番顕著にあらわれるのは、空間知覚だという。そのテストの成績を男女別にヒストグラムにすると、どちらも平均点付近に頂上をもつ山型の分布になる。女性の山は男性のそれよりも点数の低いほうにややずれているが、その差はほんのわずかだ。 つまり、あなたが平均点付近の男性だとすれば、女性の半数近くはあなたより空間認知能力が高い。女は地図が読めないなどと偉そうな口を叩いていると、恥をかくことになるだろう。「男脳・女脳」というのは、所詮その程度の話なのである』、「脳においては、男女差よりも個人差のほうがはるかに大きい」という説は違和感なく納得した。
・『「脳は10%しか使われていない」は本当か?  最後に、他の「神経神話」にも触れておこう。「人間は脳全体の10%しか使っていない」という話は、最近もテレビドラマやSF映画の設定として使われていたところをみると、まだまだ影響力がありそうである。 藤田一郎著『脳ブームの迷信』によれば、この言説もまた、20世紀初頭から信じられていた伝統あるニセ科学だという。かのアインシュタインが言ったという説まであるそうだから、なかなか格式も高い。 藤田氏によると、この説が広まった根拠と思われるものは、二つ。一つは、かつて「サイレントエリア」と呼ばれていた領域の存在だ。大脳皮質にあるこの領域は、過去の動物実験において、電気刺激などを与えても動物の行動に変化が見られなかった。 この事実が、「脳には働いていない部分がある」と誤解された可能性があるという。現在この領域は「連合野」として知られ、高度な精神活動に関わっていると考えられている。 もう一つは、グリア細胞だ。脳内には神経細胞の他にグリア細胞というものがあり、その量比は1対10。グリア細胞は情報のやり取りにこそ関与していないが、神経細胞の働きを支える重要な機能を担っている。 脳は、体全体が使うエネルギーの実に20%を消費している。それだけのエネルギーを投じて維持している器官の90%が使われていないというのは非常に考えにくい、と藤田氏は指摘する。説得力のある話である。 では、「右脳型・左脳型」はどうか。巷では「ウノウ・サノウ」と読まれているが、脳研究者は「ミギノウ・ヒダリノウ」と呼ぶそうだ。この一事だけでも、この言説の俗っぽさがよくわかる。 左右の大脳半球の性質に違いがあるのは科学的事実だ。先ほども述べたように、(やや乱暴な)通説としては、左脳は論理的で分析的、右脳は直感的で包括的な働きをするということになっている。 だが当然ながら、すべての人の脳は、左右の半球で信号をやり取りしながら働いている。個人の脳において、どちらの半球が優勢かを判定する根拠や基準はない。論理的(直感的)な人を「左脳(右脳)型人間」などと呼ぶのは勝手だが、それは脳科学とは何の関係もない』、脳にまつわるニセ科学に我々も随分、惑わされてきたものだ。それをクリアに解明したこの記事は、大いに参考になった。

次に、精神科医の和田 秀樹氏が9月7日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「東京医大の女性差別、背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/090500036/?P=1
・『東京医大の不正合格問題が思わぬ波紋を呼んでいる。私立大学支援事業の対象校の選定で便宜を図ってもらった見返りに、文部科学省の事務次官候補とも言われるキャリア官僚の子弟を医学部に不正な形で合格させていた。それをきっかけにした調査で、女性の受験生を一律に減点していたことまで発覚し、世間を驚かせた。 医学界の裏側に精通する医師であっても、女性の一律減点について知っていた人はほとんどいなかったはずだ。今回は東京医大の不正合格問題が示唆する、日本人のサバイバルにかかわる大問題を私なりに考えてみたい』、興味深そうだ。
・『女子一律減点に理解示す医師  意外なことに医師の間で女子受験生の一律減点に関して、「仕方ない」という声が強い。医師向けの人材紹介会社「エムステージ」が男女の医師を対象に実施した緊急アンケートによれば、「東京医大の入試において女子を一律減点していることについて」という問いに「理解できる」と回答した人は18.4%、「ある程度理解できる」とした人は46.6%に上り、合計65%が一定程度の理解を示した。私も一律減点が発覚してから2人の女医とお話しする機会があったのだが、2人とも仕方がないという言いぶりだった。 女医の西川史子さんはテレビ番組で「(入試の成績順に)上から取っていったら、(男性より優秀な)女性ばかりになってしまう。体重が重い股関節脱臼の患者を女性医師が背負えるかと言ったら無理だ」「外科になってくれるような男手が必要とされている」と、医学界の実情を説明した。 医師は体力が求められる仕事なので、男性医師を優遇して当然だ。これが日本の医学界の「常識」だとすれば、本末転倒だと私は考える。女医は体力的に劣るという事情は万国共通だ。それにもかかわらず欧米では女医は十分な戦力になっているのである。 経済協力開発機構(OECD)の調査によると2015年時点で、OECD諸国の女医比率は平均46.5%だ。女医の比率は旧社会主義国で高い傾向にあり、最も高いラトビアは4分の3近くに達する。欧州諸国は軒並み4割を超えており、女医が比較的少ないとされる米国でも34.6%だ。それに対して日本は20.3%で、韓国の22.3%にも抜かれて最下位である。 米国では女医が仕事しやすいように保育施設を設けている病院も多く、体力面の弱さをカバーするシステムもある。 私が米国の精神病院に留学中に驚いたのは、患者さんが暴れたときだ。日本だと医師と看護師が総出で患者さんを抑えにかかるのだが、米国では屈強な「セキュリティ」と呼ばれるガードマンが代わりに抑え込んでくれる。医療スタッフが直接制圧するとその後、患者との関係性が悪くなるというのが理由だったが、体力に劣る女医や女性看護師も安心できる職場環境だと感心したことがある。 西川氏が言うように、重たい患者を背負うのは女医には無理だとしても、医師が力仕事を担わなくても済む分業体制が、米国の病院では確立していた。 女医が体力的に戦力にならないのなら、女子受験生を差別するのではなく、女医を戦力にするシステムを構築するべきであろう。女性の労働力を十分に生かせないようであれば、日本で医師不足は一層深刻になる。まさに日本人全体のサバイバルの問題と言える』、女医比率が欧米のみならず、韓国より低いのはやはり問題だ。
・『長時間労働の解消が急務  さらに日本の場合、医師の労働時間が長く、体力的にきついことが、病院が女医を敬遠する要因になっているようだ。長時間労働は医師不足が原因である。 8月26日付の日本経済新聞朝刊によると厚生労働省は医師に限定した残業規制を2024年度に導入する。一般の労働者に19年4月から順次適用する年720時間よりも上限を緩くする。一般労働者と同じ規制では医師不足で現場が混乱しかねないというのがその理由だ。医師が不足しているのなら、医師の供給を増やせばいいだけのはずだが、安倍政権は医学部の新設を制限している岩盤規制に切り込もうとしない。獣医学部に関する規制は安倍首相の鶴の一声で崩れたのとは対象的だ。 残業を長い時間続けると体力や集中力が落ちる。医療ミスや、おざなりな診察を誘発するなど、患者のサバイバルに直結する問題である。ついでに言うと、現場の多くの医師が勉強をする時間が取れないことも、海外の最新の治療法がなかなか日本に導入されない遠因になっているはずだ。 医師の供給量を国家が過度に管理する日本の特殊な政策にメスを入れれば、女医にとって働きにくい悪質な労働環境は改善され、医者不足も解消に向かうと思えてならない』、医師不足は事実だとしても、単なる数の問題だけでなく、偏在の問題、さらには医師と看護師などのスタッフとの役割分担の問題、など多面的に検討すべきだ。数は足りているとの見方もある。もっとも、女性医師が働き易い環境を整えるべきとの主張には賛成だ。

第三に、みずほ証券チーフ・マーケットエコノミストの上野 泰也氏が9月18日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「現場優先で女性減点」は、正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/091300157/?P=1
・『東京医科大学を舞台とする「裏口入学」・文部科学省幹部の汚職(受託収賄)事件は、8月に入り、女性合格者を減らすため得点を一律減点していたという驚くべき事実の、読売新聞によるスクープ報道につながった。しかも、他の大学の医学部においても、男女で合格率の差が大きいケースが目立つ。 女性が苦手とすることが多い数学の配点を高くしたり、面接を重視したりすることで男女比を調整する(女性合格者を減らす)というテクニックが用いられることもあるという・・・医学部合格を目指して必死に勉強してきた女性受験者には、憤懣やるかたない話だろう。ところが、上記のスキャンダルに関して、世の中の盛り上がり方は今一つである。その最大の理由は、実際に医療業務に従事している女性医師の側から「女性合格者を大学が減らそうとするのは現場の状況からすればやむを得ない話だ」というような、あきらめに近い感想が少なからず聞こえてくる(しかもそれが報道されている)からだろう。実際、筆者が知人(医学部4年女子)にたずねてみたところ、そうした反応だったため、拍子抜けしてしまった』、なるほど。
・『物分りのよい女性医師たち  女性の医師を応援するWEBサイトが8月上旬に行ったアンケート(回答した医師103人のほとんどが女性)では、東京医科大の不正入試についての回答「理解できる」「ある程度理解できる」の合計が65%に達し、「理解できない」「あまり理解できない」の35%を大きく上回った(AERA 8月27日号)。 私大医学部の入試には同時に、その大学の大学病院の採用試験という意味合いもあるとされている。医師国家試験に無事合格できれば、医学部卒業生の多くはその大学の医局に入り、大学病院や系列・提携先の病院などに勤務先が決められる。勤務実態が特にきついとされているのが外科である。外科の男女比を見ると、女性の比率が目立って低い。 05年頃に東京医科大の系列病院に1年半ほど勤務した女性外科医は、午前7:30~午後10:00の勤務が週6日、入院患者を受け持つ期間は休日も出勤していたという。非常にきつい職場であり、結婚・出産を機に仕事と育児の両「現立をあきらめて、医師を辞める女性が少なくない。 同大学幹部によれば、「学内には、以前から女性が増えると外科が潰れるとの声があった」。「どの大学も同じはずだ」「感情論では国民の役に立てない」「女子の合格者が増えれば、医局で戦力になる人員が減り、必ず現場にしわ寄せが来る」といった幹部のコメントも、合わせて報じられている(8月30日 読売)。「現場にしわ寄せ」という言葉を聞くと、日本の中堅以上の現役サラリーマンなら誰しも、どことなく尻込みしてしまう面があるのではないか。筆者も例外ではない。有給休暇を完全取得したいと思っていても、同僚・部下にしわ寄せがいって迷惑をかけてしまうから、使い残しが毎年生じるという、よくあるパターンにも通じるものがある。 さらに言えば、医療というのは人間一人ひとりの健康状態さらには生命そのものにも直接関わってくる非常に特殊な業務分野であるだけに、他の職場と異なる面があってもある程度まではやむを得ないのではないかという心理が、その良し悪しは別にして、どうしても働きやすい』、確かに「現場にしわ寄せ」は、思考停止させてしまうマジックワードだ。
・『医療施設に従事する医師の女性比率は韓国を下回る  したがって、女性当事者の側から「これはどう考えてもおかしい」「状況を変えなければ」といった意志が明確に表明されなければ、改革の機運は盛り上がりにくい。 しかし、気付いている人があまりいないのかもしれないが、不思議なことも1つある。 厚生労働省が17年12月14日に公表した「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、16年12月31日現在で医療施設に従事している医師の総数は30万4759人で、うち女性は6万4305人(21.1%)<図1>。この女性比率は経済協力開発機構(OECD)諸国の中で韓国を下回る、最も低い水準である。 一方、外科や内科のような救急医療や入院患者のケアが基本的にないと考えられる歯科医師のうち医療施設に従事している人の総数は10万1551人で、うち女性は2万3391人(23.0%)。比率は医師とほとんど変わらないのである。本当に「現場の事情」だけが理由で医師に占める女性の割合が抑制されているのだろうか。歯科医師には歯科医師に特有の事情があるのかもしれないが、いささかの疑念が生じてしまう。 なお、勤務時間が基本的に守られ、資格さえ有していればパートタイマーでの勤務もやりやすいと考えられる薬剤師の場合、薬局・医療施設に従事している総数は23万186人で、うち女性は15万1754人(65.9%)である』、歯科医師でも女性比率が低いというのは、確かに謎だ。
・『結局、医療現場における女性比率の低さについて、どう考えるべきなのだろうか。すでに述べた「現場重視論」と、その対極に位置している「理想論」の2つがあるように思われる。 「理想論」の代表と言える論説が、評論家・哲学者である東浩紀氏がAERA 8月27日号のeyes欄に寄稿した「医大入試の女性差別 現場の論理は万能なのか」である。以下がその主張の根幹部分。性別・世代を問わず、傾聴に値する内容である。 「差別はなくなると信じたいが、楽観的になれないのは、今回マスコミでもネットでも大学擁護論がかなりの数、現れたからである。(中略)擁護者には女性も含まれている。おそらくは、これはこれでリアルな『現場感覚』なのだろう。その感覚があるかぎり、見えない差別は続くことになる」「ここには日本社会の抱える困難が典型的に現れている。男女平等はいいけどさ、実際はそれじゃ回らないんだよという『現場の論理』は、この国ではきわめて強力だ」「現場を理念に優先させる。それではあらゆる改革は挫折するほかない。けれどもほんとうは、理念は現場を変えるためにこそある。必要なのは現場万能主義からの卒業だ。これは男女平等の話に限らない」』、「必要なのは現場万能主義からの卒業だ。これは男女平等の話に限らない」との東浩紀氏の主張は、さすがに深く、説得力がある。
・『とにかく前に進むしかない  結婚や出産から30代が岐路になって女性医師が離職することが多い医療現場。そうした風潮を変えようとする試みもある。 日本経済新聞が9月3日朝刊に掲載した「女医、私は辞めない 補い合って両立」は、「現場重視論」のカベを打ち破って「理想論」に近づこうとする試みが東京女子医科大学病院で行われていることを大きく取り上げた。短時間勤務制度のほか、院内には保育所もある。救急救命センターは20人の常勤医師のうち8人が女性で、短時間勤務の制度を使ってお互いをカバーできるようにしているのだという。 人々の意識の面を含め、改革を進めていくには相当の時間が必要になりそうな状況だが、「やればできるはずだ」と信じながら地道に前に進もうとするのが、今回取り上げた問題への正しい対処法・解決策ではないか』、確かに「理想論」に近づける努力が必要との主張には、全面的に同意する。
・なお、9月25日付け朝日新聞は「東京医大、初の女性学長承認 不祥事受け、立て直しへ」と報じた。専門は病態生理学とのことで、医師の最前線でこそないが、抜本的な見直しに着手してくれることを期待したい。
タグ:朝日新聞 東浩紀 日経ビジネスオンライン 和田 秀樹 グリア細胞 現代ビジネス 女性活躍 伊与原 新 上野 泰也 (その8)(実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠、東京医大の女性差別 背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる、「現場優先で女性減点」は 正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの) 「実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠 ラボ・フェイク 第6回」 『コンタミ 科学汚染』 差別される「脳」、差別する「脳」 生まれつき心と体の性別が一致しない人々が存在するということは、脳に属性として性差があることを意味 人間の心には生後かなり早い段階で性差があり、性自認も芽生えているという研究結果が蓄積されつつある 「男脳・女脳」問題 男女の考え方、行動、能力の違いを単純に脳の性差に押しつけるこの手の言説は、女性差別を助長する方向に悪用されないとも限らない 「脳科学」の歴史は、差別の歴史と重なっている 我々はみな“アフリカ人”である。ホモ・サピエンスという種をそれ以上細かく区分するような遺伝的差異は、存在しない 最新の遺伝学によれば、「人種」という従来の固定されたイメージは、まるっきり間違っているらしい 我々の脳に「私たち」と「彼ら」を積極的に区別しようとする働きが備わっていることも、また事実のようだ 脳の性差は「生まれ」か「育ち」か? 脳科学の「主流をなす意見は、時代によっても振り子のように大きく揺れ動く 「男脳・女脳」の真実とは? お茶の間脳科学 「男は女より地図が読める」という俗説 「女は男より言語感覚に優れている」 脳のサイズを補正すると、脳梁にも海馬にも、従来言われていたような男女差はほとんど見られないという 脳においては、男女差よりも個人差のほうがはるかに大きい 「脳は10%しか使われていない」は本当か? 「サイレントエリア」 過去の動物実験において、電気刺激などを与えても動物の行動に変化が見られなかった 現在この領域は「連合野」として知られ、高度な精神活動に関わっていると考えられている 神経細胞の働きを支える重要な機能を担っている 「右脳型・左脳型」 すべての人の脳は、左右の半球で信号をやり取りしながら働いている。個人の脳において、どちらの半球が優勢かを判定する根拠や基準はない 「東京医大の女性差別、背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる」 女性の受験生を一律に減点 女子一律減点に理解示す医師 医師は体力が求められる仕事なので、男性医師を優遇して当然だ。これが日本の医学界の「常識」だとすれば、本末転倒 欧米では女医は十分な戦力になっている OECD諸国の女医比率は平均46.5% 米国でも34.6% 日本は20.3% 韓国の22.3%にも抜かれて最下位 米国では女医が仕事しやすいように保育施設を設けている病院も多く、体力面の弱さをカバーするシステムもある 日本の場合、医師の労働時間が長く、体力的にきついことが、病院が女医を敬遠する要因になっているようだ 長時間労働は医師不足が原因 安倍政権は医学部の新設を制限している岩盤規制に切り込もうとしない 「「現場優先で女性減点」は、正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの」 物分りのよい女性医師たち 東京医科大の不正入試についての回答「理解できる」「ある程度理解できる」の合計が65% 「学内には、以前から女性が増えると外科が潰れるとの声があった」 「現場にしわ寄せ」 歯科医師でも女性比率が低い 「現場重視論」 「理想論」 「医大入試の女性差別 現場の論理は万能なのか」 必要なのは現場万能主義からの卒業だ。これは男女平等の話に限らない とにかく前に進むしかない 「やればできるはずだ」と信じながら地道に前に進もうとするのが、今回取り上げた問題への正しい対処法・解決策ではないか 東京医大、初の女性学長承認 不祥事受け、立て直しへ
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アベノミクス(その29)(「アホノミクス」が今以上に長引けば日本経済は“窒息死”する、アベノミクスがあと3年続けば日本の産業衰退が一気に露呈する、安倍3選で現実味を増す “日本版リーマン・ショック”の到来) [経済政策]

アベノミクスについては、2月23日に取上げた。安倍3選を受けた今日は、(その29)(「アホノミクス」が今以上に長引けば日本経済は“窒息死”する、アベノミクスがあと3年続けば日本の産業衰退が一気に露呈する、安倍3選で現実味を増す “日本版リーマン・ショック”の到来)である。

先ずは、元三菱総研エコノミストで同志社大学教授の浜 矩子氏が9月14日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「アホノミクス」が今以上に長引けば日本経済は“窒息死”する」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/179754
・『自民党総裁選が始まったが、多くの人が「安倍三選」になってしまうと、みている。何ともはや、情けないことだ。何でこういうことになるのか。そうなってしまうと、その次に起こることは何か。 安倍政権が自らの経済政策を言うところの「アベノミクス」を、筆者が「アホノミクス」と命名し替えて久しい。なぜアホノミクスなのか。端的に言えば、安倍政権の経済政策がよこしまな政治的下心に基づいているからだ。 彼らは「強い御国」を作る自らの政治的野望を達成するために経済政策を手段化して来た。だが不純な動機で経済を弄べば、必ず経済活動の調子は狂う。結果的に強くしたかった経済を弱くしてしまう。こうして下心のある経済政策は不可避的に墓穴を掘る。だが彼らにはそれがわからない。 ここにアホノミクスのアホたる最大のゆえんがある。 お陰様で、アホノミクスもかなり普及してきた・・・安倍首相を親玉とする「チームアホノミクス」への支持がしぶとく一定水準を維持し続けるのはなぜか』、面白そうだ。
・『敵をはっきりさせる「偽預言者効果」で支持率を維持  その要因には、2つの側面があると、筆者は考える。 側面その一が「偽預言者効果」だ。そして側面その二が「振り込め詐欺効果」である。 偽預言者とは、どのような存在か。偽預言者と真の預言者の違いはどこにあるのか。これまた、要点が2つある。第一に、偽預言者は、人々が聞きたいこと、人々にとって耳心地のいいことを言ってくれる。そして第二に、偽預言者は敵が誰であるかをたちどころに教えてくれる。 真の預言者が鳴らす警鐘は、人々にとって耳が痛い音を発する。あまり聞きたくない音色だ。だが、その音色は人々を救いへと導く。だが、偽預言者が発する甘い音色は、人々を破滅へといざなうものだ。 偽預言者はいう。「悪いのはヤツらだ」。それを教えてもらうと、人々は安心する。安心して悪いヤツらの撃退に乗り出して行く。偽預言者は対立をあおる。それに対して、真の預言者は和解を説く。許しを説く。敵に対しても慈愛を示せという。それは難しいことだ。だがその難しさを誰もが克服すれば、真の和平が実現する。 チームアホノミクスの大将である安倍首相は、名偽預言者だ。「強い日本を取り戻す」と声高に宣言する。「あの時の日本人にできたことが、今の日本人にできないわけがない」と人々を鼓舞する。 彼が言う「あの時」とは戦後の高度成長期と明治日本の建国の時だ。 「働き方改革」を前面に押し出し、「生産性革命」を起こすといい、「人づくり革命」も敢行するのだという。人とAIが効率的に絡み合う「ソサエティ5.0」なるものに日本の未来があるのだという。 こうしたえたいの知れないキラキラ言葉群が、甘言への免疫力が弱い若者たちを引き寄せる。厳しい経営環境の中で閉塞感にさいなまれる中小零細企業者たちを惑わせる。 2017年7月の東京都議選の折、街頭演説に立ったチームアホノミクスの大将は、彼に対して「帰れコール」を浴びせた聴衆について「こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかない」と叫んだ。 これぞ、偽預言者の犯人名指し・敵指差し行動にほかならない。敵を指し示すことで、人々が自分の側に寄って一致団結するように仕向ける。それが偽預言者のやり方だ。 世の中が複雑怪奇で、人々が獏たる不安や焦点が判然としない恐怖心を抱いている時、この「敵指差し戦術」が効力を発揮する。 以上がチームアホノミクスの支持基盤を構成する「偽預言者効果」だ』、「偽預言者効果」とは興味深いネーミングだ。ただ、「偽預言者は、人々が聞きたいこと、人々にとって耳心地のいいことを言ってくれる」というポピュリズム的傾向はその通りだが、「敵」をたくさん作るトランプとは違って、安倍の場合は反政府勢力や北朝鮮ということなのだろうか。
・『危機感をあおる「振り込め詐欺効果」グローバル化とともに各国で出現  もう一つの「振り込め詐欺効果」も、結局は偽預言者の技の一つだと考えてもいいだろう。「あなたは今、こんな状況に陥っていますよ。」「このままでは大変なことになりますよ。」「今すぐ、我が陣営にお入りいただかないと手遅れですよー」。こんな調子で危機感をあおり、自分の側に人々をおびき寄せて行くのである。 2017年10月の“にわか総選挙”に際して、チームアホノミクスの大将は、「国難突破」というスローガンを持ち出した。あの旗印にも、彼らの振り込め詐欺的な強迫観念醸成作戦がとてもよくにじみ出ていたと思う。 「偽預言者効果」と「振り込め詐欺効果」は、決して、チームアホノミクスだけに固有のものではない。グローバル社会のあちこちに出現している大衆扇動型の政治家たちは、皆、大なり小なりこれらのツールを武器として、人々を国家主義と排外主義の方向へとおびき寄せて行こうとしている。そうした今日的時代特性が、日本においては安倍政権という姿を取って出現しているということだ』、確かに「国難突破」には強い違和感を感じた。「グローバル社会のあちこちに出現している大衆扇動型の政治家たち」が、「偽預言者効果」と「振り込め詐欺効果」を武器に、「人々を国家主義と排外主義の方向へとおびき寄せて行こうとしている」というのは、本当に嘆かわしい現象だ。
・『その意味で、チームアホノミクスとの闘いは、まともな経済社会を守るためのグローバルな闘争の一環だと考えておく必要がある。 さて、以上のような特性を持つ安倍政権が、今後もなお存続して行くということになれば、それがもたらすものは何か。 それは、日本経済の窒息死だ。筆者はそう考える』、「日本経済の窒息死」とは穏やかでない。
・『「稼ぐ力」強化で追い詰められるモノづくりの現場  かつて、安倍首相は「アベノミクスと自分の外交安全保障政策は表裏一体だ」と表明したことがある。2015年、まだオバマ政権だった米国を訪れた時のことだ。「笹川平和財団アメリカ」で行った講演の中でそう言っている。つまり、彼は経済運営を外交安全保障上の目標達成のための手段だと考えている。政治が、その外交安全保障上の野望達成のために経済を“従属”させる。そのことを是としているのである。 講演で「表裏一体」論について質問されると、彼は日本経済をデフレから脱却させることができて、日本のGDPを大きくすることができれば、それに伴って国防費が増やせると言った。その意味で、強い経済の再生は外交安全保障政策の立て直しのために不可欠と、主張した。 つまり彼がデフレ脱却を目指すのは、人々により良き暮らしをもたらしたいからではない。軍備増強のためにデフレ脱却を目指すのだと言っている。 このような発想に基づいて経済政策を行えば、経済活動は必ずバランスを崩して失調して行く。 現実に、カネの世界をみれば、国債市場と株式市場が、今の日本ではまるで正常に機能していない。安倍首相「ご指名」の黒田日銀が、根拠も希薄な「2%物価目標」の旗を掲げて、国債や株式を買いまくる異常な手法でカネをばらまいているからだ。 いずれの市場においても、日本銀行の存在感があまりにも巨大化している。市場では今や、日銀が許容する範囲でしか相場が動かない。これは、もはや単なる呼吸困難の域を突き抜けている。既にして窒息死状態だ。 モノづくりの世界も、チームアホノミクスが発した「稼ぐ力を取り戻せ」という指令に追い立てられて、実に息苦しい状況に陥っている。「攻めのガバナンス」などという定義矛盾的な言葉に尻をたたかれて、ひたすら高収益を追求しまくることを強要されている。 追い詰められた彼らが、検査データの改ざんなど、不正な手口をついつい強化してしまう。そういうやり方で、「稼ぐ力」が強化されたかのごとき風情を取り繕ってしまう。そんなことになってしまっているのではないか。今後、ますます、そのような方向に突き進んでいってしまうのではないか』、「「稼ぐ力」強化で追い詰められるモノづくりの現場」というのはその通りだ。
・『「働かせ方改革」で人間でなく「歯車」化する働き手  そして、ヒトの世界については、もはや、多言を要しない。チームアホノミクスがつくった「働き方改革」という造語がどんどん独り歩きして行く。 この造語が本当に意味するところは、「働かせ方超効率化のためのたくらみ」である。 その一環を構成している「高度プロフェッショナル制度」の本名は「タダ働き青天井化のための仕組み」にほかならない。同じく「働き方改革」の中に組み込まれた同一労働同一賃金や長時間労働の是正も、チームアホノミクスにとっては、「労働生産性向上」のための施策に過ぎない。 安倍政権による「働き方改革」の下で、人々はどのような世界に追い込まれて行くことになるのか。 それを知ることは簡単だ。かのチャールズ・チャップリンが世に送り出した映画「モダン・タイムス」を観ればいい。 これは1936年の作品だ。モダンな時代にふさわしい「働き方」を強いられる労働者たちは、次第に機械の一部と化していく。あくなき生産性向上が追求される中で、彼らは機械の歯車に巻き込まれて身動きが取れなくなっていく。 モダンな仕立てに働き方を改革されることは、人間が人間ではなくなることにつながって行く。そのことを痛烈な風刺をもって示してくれたのがチャップリン先生だ。 天国で今の日本をみている彼は、さだめし、愕然としていることだろう。こんなモダン・タイムスが日本に来てしまっているとは。なんたる悲惨。何たる愚かさ。そのように嘆き、胸を大いに痛めてくれているだろう』、「モダン・タイムス」との比喩は言い得て妙だ。
・『「時代錯誤の愚かな政策」で日本経済は”呼吸困難”に  かくして、カネの市場も、モノづくりワールドも、そしてヒトの世界も、どんどん胸苦しく、呼吸困難な状態に追い込まれていく。これが、アホノミクスがもたらしつつある経済的帰結だ。 これからもなおこの政策構図が保持されていくのだとすれば、日本において経済活動はいずれ機能停止に至る。 最後に注意しておくべきことが一つある。それは、「アベノミクスの副作用」あるいは「アベノミクスの弊害」という表現に関する点だ。アホノミクス批判として、これらの表現は少し気になる。気になるというよりは、甘いと言った方がいいだろう。 「副作用がまずい」という時、そこには、暗に「本作用は良い」という前提が含まれている。だが、アホノミクスはそれ自体の作用に問題がある。 副作用として息苦しさが発生しているわけではない。アホノミクスに弊害が伴っているわけではない。アホノミクスそのものが弊害なのである。 アホノミクスという「時代錯誤の愚かな政策」そのものが、日本経済を呼吸困難に追い込んでいるのである。このままでは、我々はアホノミクスに殺される』、手厳しいが、的を得た批判だ。

次に、立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授の金子 勝氏が9月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「アベノミクスがあと3年続けば日本の産業衰退が一気に露呈する」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/179874
・『いま景気はどうにかもっている。だが、それをアベノミクスのおかげとするのは早計だろう。「デフレ脱却」を掲げたアベノミクスが想定するプロセスは効いていないからだ。 2018年6月の消費者物価上昇率は、生鮮食品を除くコア指数で0.8%だが、さらにエネルギーを除くコアコア指数は0.2%にすぎない。「2%物価目標」にはほ ど遠いうえ、消費者物価上昇率を押し上げているのは、トランプ大統領のイラン制裁の伴う石油などエネルギー価格の上昇が原因であり、日銀の金融緩和の効果ではない。 たしかに、ジャブジャブの異次元金融緩和で倒産件数は減っている。だが、それによって新しい産業が生まれているわけではない。 有効求人倍率の上昇は生産年齢人口(15~64歳)の減少の影響が大きい。「働き方改革」でも裁量労働制や高度プロフェッショナル制度に関する恣意的データが作られたように、自らに都合良い数字を並べ立てているだけで、実質賃金の低下と労働時間強化は改善される見込みはない』、安倍首相はアベノミクスの成果を誇っているが、実態は金子氏が指摘する通りだ。
・『アベノミクスによる「見せかけの好景気」は破綻する  結局のところ、アベノミクスのもとの「好況」は、円安誘導や赤字財政のファイナンス、日銀の株買いに支えられた「見せかけの景気」にすぎないのだ。 そのことは実体経済でも同じだ。 製造業では、中国のハイテク化とともに中国への素材部品や半導体製造装置などの輸出が伸びていることで、景気はどうにかもっている。しかし、これは当初のインフレターゲット派の想定するプロセスと違って、従来からの円安誘導による既存産業の輸出にすぎない。 しかも、米中貿易戦争の悪影響が懸念され、いずれ中国自身が自前で生産するようになるだろう。 自民党総裁選では、経済や雇用指標の「改善」などを背景に、安倍首相の「3選」が有力視されている。しかしアベノミクスがあと3年続くと、どうなるのか。 異次元緩和にとって金利上昇がアキレス腱である。そして、すでに米国が利上げに転じている中で海外から金利上昇圧力がかかってきて、限界が露呈し始めている。 2016年10月に公表された財務省の試算によれば、金利が1%上昇すると、国債の価値が67兆円毀損する。日銀も24兆円の損失を被る。日銀も年金基金も金融機関も潜在的に膨大な損失を抱えて動きがとれなくなる。 さらに2017年1月の財務省の試算によれば、金利が1%上昇すると、国債利払い費を含む国債費は3.6兆円増え、金利が2%上昇すると7.3兆円増加する。長期的に考えれば、国の借金は1000兆円を超えるので、単純計算で考えても、金利1%の増加でさらに国債費は膨らみ、財政危機をもたらす。 つまり、金利の上昇は財政金融を麻痺させ、ひいては日本経済を著しい混乱に陥れるのである。 だからこそ、異常な低金利を維持するために、日銀は永遠に国債を買う量的金融緩和をやめるにやめられず 、出口戦略を放り投げて続けざるを得ないのだ。簡潔に言えば、アベノミクスとは戦時経済と同じ“出口のないネズミ講”なのである』、「“出口のないネズミ講”」とは的確で痛烈な比喩だ。
・『つまりあと3年は、安倍首相に「政治任用」された黒田日銀総裁が緩和政策を続けるのかもしれないが、それは将来の大きな危機をもたらす「マグマ」をため続けるようなものであり、米FRBが利上げ政策をとっている以上、日銀だけが緩和政策を続けようとしても、金利上昇を抑えられるかはわからない。 こう考えると、アベノミクスとは、成功した途端に破綻する「詐欺」ということになる。 仮に消費者物価が上昇した場合、それは金利の上昇をもたらす。実質金利(利子率―物価上昇率)がマイナスだと、銀行経営は成り立たなくなっていくからだ。 つまり、異次元緩和のアベノミクスは永遠にデフレ脱却をせず、不況でないともたない政策であり、現状をただもたせるだけの政策なのである』、アベノミクスが抱えるリスクをズバリ指摘しており、全面的に同意する。
・『金利は上昇する 日銀の金利抑制も限界に  実際、政策の限界はすでに表面化し始めている。 銀行は超低金利が長く続くなかで収益が悪化、経営体力を弱めている一方で、海外の金利上昇圧力を受けて、日本国債離れが進んでいる。国債市場は2018年に入って、7回も国債の取引が成立しない事態が生じている。 こうした「副作用」を和らげるために、日銀は7月末の政策決定会合で長期金利(10年債の利回り)の上昇(0.1%から0.2%)を容認する金融緩和の一部修正を行った。ところが、さっそく金利上昇を見越して投機筋によって乱高下する事態となった。 長期金利が0.11%になった状況で、日銀が0.1%の指し値オペ(指定金利で無制限に国債を買い入れ)を行うやいなや、日銀の国債貸しを利用して、投機筋が「空売り」を仕掛けたのである。 投機筋 は日銀から1兆円の国債を借り、それを空売りして濡れ手で粟の儲けを得たのだ。 株式市場でも日銀が株式を買い支える「官製相場」になっており、株価が下がると日銀が買いに入るのを見越して、投機筋が同じように空売りで儲けている。中央銀行が株高・低金利を維持するために、投機筋の空売りの機会を提供するという異常な事態が生じているのである』、国債・株式市場の分析はさすがだ。
・『先端産業が育たず 産業構造の転換も遅れる  異次元緩和は財政放蕩のツケ払いを先送りするだけでなく、競争力のなくなった「ゾンビ企業」を救済し続けることで、新しい産業構造への転換をますます遅らせていく。 やがてつぎの金融危機が訪れた時に、異次元金融緩和はもう効かなくなるだろう。そして問題が発現した時、日本の産業衰退が深刻化していることが一気に露呈する。 その時、「失われた20年」が「失われた50年」になってしまうことに気づかされる。 すでに、スーパーコンピューター・半導体・液晶・液晶テレビ・太陽光電池・携帯音楽プレーヤー・スマホ・カーナビなど、かつて世界有数のシェアを誇っていた日本製品は見る影もなくなっている。1990年代まで若者が持っていたものはソニーかパナソニックだったが、いまやアップルかサムスンだ。話題のスマートスピーカーではグーグルかアマゾンで、日本メーカーはどこにもいない。 日本が先端産業で後れをとることになったもともとの起源は、1986年と91年の日米半導体協定までさかのぼる。 86年協定は「ダンピング防止」を名目にアメリカへの日本製半導体の輸出が抑えられた。半導体産業は規模の利益が大きいうえに、製造プロセスに学習効果(成熟効果)が大きいため価格下落が速い。 その循環が止められてしまうと、徐々に半導体産業は競争力を失った。価格が「高値」で安定する結果、製造プロセスや技術開発の努力を怠ってしまったからだ。 さらに、91年協定では追い打ちをかけるように、外国製半導体の割合を2割まで高めるという輸入目標を強いられた。1990年に世界のIC市場の半分のシェアをとっていた日本メーカーは2017年にはシェアを7%まで落とした。企業で、トップ10に残るのは東芝だけだ。 その東芝も安倍政権の原発輸出政策のあおりを受けて危うい。安倍政権下で、日本の半導体産業は消滅の危機に陥っている。 「産業のコメ」に当たる半導体産業の衰退とともに、90年代後半にはスカラー型に転換したスーパーコンピューターでも遅れることになった。やがて、クラウドコンピューティングに対応したソフトやコンテンツを作る力も衰弱していった。 こうして日米構造協議以降、アメリカの圧力を受け、日本は先端産業である情報通信産業で、決定的に取り残されることになったのだ。 ところが、アメリカの要求に譲歩すれば、日本の産業利害が守れるという思考停止が今も政府(とくに経産省)を支配している。特に安倍政権になってから、より一層強まっていると言ってよい。 政府は先端産業について本格的な政策をとることがなくなり、「市場原理主義」のもと、ただ「規制緩和」を掲げるだけの、「不作為の責任逃れ」に終始する姿勢が強まった。 価格を通じた市場メカニズムが一定の調整機能を持つことは確かだが、市場メカニズムに任せれば、新しい産業が生まれるなどという根拠のないイデオロギー的な言説がふりまかれた。 実際、安倍政権のもとでの「構造改革特区」や「国家戦略特区」が画期的な新しい産業を生み出したという話は聞いたことがない。それどころか、「規制緩和」を利益政治の道具としてきた。その行き着いた先が加計学園問題だったのである。 この間、米国やドイツを中心に「AIによる第4次産業革命」が官民一体で取り組まれる中で、日本はIT革命に乗り遅れて国際競争力を失った』、「日本の産業利害が守れるという思考停止が今も政府(とくに経産省)を支配している」というのは、本当に嘆かわしいことだ。国際競争力喪失は確かに目に余る惨状だ。
・『自動車もEV転換で出遅れ「第4次産業革命」で主導権取れない恐れ  こうした中で政府が唯一といっていい産業政策として力を入れたのが原発輸出だが、皮肉にも、このことが重電機産業の経営を苦しくすることになっている。 米ウェスティングハウスを買収し、大けがを負った東芝がその典型だが、日立も現在、イギリスへの原発輸出で 動きがとれなくなっている。安全基準の強化による建設費の高騰で、3兆円の建設資金を調達するめどがたたない中、原発建設の中核企業の米建設大手ベクテルが撤退を決めた。 もはや事業の継続は困難だが、撤退を決めると、日立は最大2700億円の損失が生じるため、やめるにやめられない状況だ。 同様に、三菱重工が取り組むトルコの原発建設も当初2兆円だった建設費が2倍以上に膨らんだため、伊藤忠が撤退を決めた。この他にもベトナム、リトアニア、台湾など、原発という「不良債権」がどんどん積み上がっている。安倍首相が力を入れた「原発セールス外交」はことごとく失敗に帰している。 産業を見渡せば、最後に残った自動車産業も電気自動車(EV)転換が遅れ、将来的に不安が抱かれる状況だ。政府も今頃になって「AIによる第4次産業革命」を言い始めたが、大手自動車会社の自動運転はアメリカで開発されている。 もし2020年代後半に電気自動車シフトが一気に早まった場合、貿易黒字の8割近くを占める自動車輸出が失われれば、日本経済は屋台骨が揺らぐことになる。 世界がしのぎを削るIoTの「戦場」ともいえる、小規模な再生可能エネルギーを調節する送配電のためのグリッドシステムや省エネのための建物管理などの分野は、原発推進のために決定的に遅れ始めている。 第5次エネルギー基本計画で、政府は2030年度の電源構成に占める再生可能エネルギーの比率を「22~24%」にする目標を掲げるが、2017年度時点で15.6%だから、13年間かけて7%ほど、年換算では0.5%前後しか増やす気がないのだ。 太陽光発電だけを見ても、世界では設備容量が2012年の100GWから2017年位は 402GWと4倍に急増しているが、日本の基本計画では2030年の電源構成比を7%とし、2017年の5.7%から、今後 13年間で1.3%しか増やさないつもりなのだ。この調子では、日本はエネルギーでガラパゴス化してしまうだろう。 アメリカにはマイクロソフト、グーグル、アマゾンをはじめ、並みいるIT企業が存在するが、日本のIT企業の衰退は著しい。どのように、それを根本的に立て直すかという戦略抜きに、「AIによる第4次産業革命」と口先で言っても、「一億総活躍社会」や「働き方改革」と同じようにかけ声だけに終わるだろう』、「電源構成に占める再生可能エネルギーの比率を、13年間かけて7%ほど、年換算では0.5%前後しか増やす気がない」というのは初めて知って驚いた。原発の比率を高めにするための小細工なのだろう。
・『所得再分配だけでは不十分 「利権化」した規制緩和  アベノミクスの主要政策である異次元金融緩和は、ゾンビ化した古い産業や企業を生き残らせるために機能している。そして古い産業構造を維持するためにむちゃな財政金融政策を続ければ、未来の世代に回されるツケはますます膨らむだけだろう。 ただ、所得の再分配を前面に掲げるだけの野党、とくに左派やリベラル派も同じ穴のむじなになりかねないことを自覚すべきだ。 これだけ格差と貧困が広がれば、再分配政策の重視は当然の主張であり、必要な政策転換のひとつである。だがそれだけでは不十分なのだ。 ある程度、潜在成長力があった20世紀的枠組みの下では、マクロ経済政策で微調整すれば経済成長の持続可能性が高まるという考え方でよかった。しかし、産業構造の大転換が起きている中で、既存産業の成長力が衰え、これだけ財政赤字を急速に累積させてもGDP成長率は停滞したままである。 今やICT、IoTとエネルギー転換によって産業構造が大きく転換しようとしている。こういう時代状況の下では、所得再分配政策に組み替えただけでは日本経済は持続可能になり得ない。 再分配政策重視でやればいいという発想は、しばしば左派やリベラル派のモデルとなってきた北欧福祉国家に対する誤解から来ている。 バブルが崩壊した1990年代以降、北欧諸国は国家戦略を立てて先端産業に対するイノベーション研究開発投資や起業支援や教育投資に力を注いできた。スウェーデンやフィンランドのIT産業、デンマークの風力発電など自然エネルギー産業、そしていまはノルウェーの電気自動車の躍進などが典型だ。 経済成長か再分配かの二者択一ではなく、目指すべきは雇用を創り出す経済成長と所得再分配の適切な組み合わせによる政策体系なのである。 もちろん、経済成長を重視するといっても、規制緩和政策で市場任せでは新しい先端産業への転換は実現できない。前述したように、それは不作為の責任放棄であり、ましてや安倍政権では、構造改革特区や国家戦略特区のような規制緩和政策は利益誘導政治の巣窟と化している』、「目指すべきは雇用を創り出す経済成長と所得再分配の適切な組み合わせによる政策体系」というのは大賛成だ。
・『産業戦略がカギを握る時代錯誤の「縁故資本主義」  現代では、新しい産業構造の転換には国家戦略が非常に重要な意味を持つ。 今のイノベーションの特徴は、プラットフォームとなるスタンダード(標準)が大きく変わると、市場が一変する点にある。レコードからCDへのデジタル転換をはじめ、ウォークマンからiPod・iPhoneへ、固定電話から携帯電話そしてスマートフォンへ、原発・火力から再生可能エネルギーへ、内燃エンジン車から電気自動車へといった具合である。 こうしたスタンダードの大転換で、政府の果たすべき役割は、かつての国有企業か私企業か、政府か市場かといった古い二分法に基づくものではない。 新産業のためのインフラ整備、研究開発投資を含む初期投資の赤字をカバーする諸制度、OS(オペレーティングシステム)の選択と制度やルールの標準化、それによる関連産業の誘発、知的産業化と創造性を重視した教育の充実などの分野で、国家の産業戦略が重要になってくる。 そしてイノベーションは速度が命なので、研究開発のためには企業横断的・研究機関横断的なオープンプラットフォームづくり、そして若手研究者・技術者の育成と活躍の場の提供が重要になってくる。 一方でこうした激しい技術転換が起きる時には、政府が常に正しい判断をする保証はない。情報公開と決定プロセスの徹底的な透明性、公正なルール、若手研究者・技術者の育成と予算の配分が不可欠になる。 ところが、安倍政権ではここでも全く逆の方向に向かっている。「縁故資本主義」が横行しているからだ。 リニア新幹線建設では、安倍首相の友人である葛西敬之JR東海名誉会長 が関与し、財政投融資資金が注入されているほか、受注をめぐってゼネコン談合も起きた。原発輸出では、同じく首相の友人である中西宏明日立会長が進めるイギリスでの原発事業の資金調達に政府保証がつけられた。 ニューライフサイエンスでは、首相の“腹心の友”加計孝太郎氏が理事長をする加計学園問題が起き、スパコンではペジーコンピューティングで助成金詐欺が起きている。東京オリンピック向け施設の建設では大手ゼネコンが潤うだけだろう』、安倍政権の「縁故資本主義」批判はその通りだ。
・『政府が新たな役割を担いながら世界が産業構造の転換を進めている時代に、日本だけは、太平洋戦争の際、当時すでに空母と戦闘機の時代になっているのに、「世界一」だと言って戦艦大和の建造に走り、不沈艦だと言い張っていたようなものだ。 限界が見えてきたアベノミクスがいよいよ機能不全に陥った時、先端産業で敗北した日本の産業の悲惨な状況が一気に露呈していくことになるだろう。安倍政権は限界まで金融緩和を続けていくだけで、日本の未来のことは何も考えていないのだ』、陰鬱な予言だが、安倍政権の継続を選択してしまった以上、日本国民はいまから覚悟すべきだ。

第三に、元三菱総研研究理事でエコノミストの高橋乗宣氏が9月21日付け日刊ゲンダイに寄稿した「安倍3選で現実味を増す “日本版リーマン・ショック”の到来」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/237904/1
・『リーマン・ショックから10年。世界経済を崩壊の淵まで追い込んだ金融危機が、今度は日本発で起こりそうな予感がする。日銀が“黒田バズーカ”を放ってから、5年以上。ゼロからマイナスに踏み込んだ異次元レベルの低金利政策に、日本の市中銀行はのたうち回っている。 超低金利のおかげで、「利ざや」がちっとも稼げず、日本の銀行の収益率は今や1%を下回っている。とりわけ苦境に立たされているのが、地銀だ。全国の地銀106行の2018年3月期決算では、本業の儲けを示す実質業務純益が前期比5・1%減。個別で見れば、マイナス幅が2桁に上る地銀も少なくない。 長崎県の親和銀行(佐世保市)を傘下に持つ、ふくおかFGと、長崎県最大手の十八銀行の経営統合が公正取引委員会に承認されたのも、金融庁の焦りがあればこそだ。 統合後の融資シェアは同県内の約7割に達する。公取委は寡占化の弊害を懸念したが、地銀の収益低下に危機感を抱く金融庁は統合を後押し。その結果、独禁法抵触への疑義を挟んだ公取委よりも、金融庁の地銀の存続危機への懸念が勝った。 今年4月には金融庁の有識者会議が、長崎県を含む23県では将来、地銀1行でも存続が難しくなるとの分析結果を公表した。今後は地銀同士のみならず、地方の信金や信組を巻き込んだ統合・合併が加速するのは間違いない。それだけ地方の金融機関の経営は追い込まれ、生き残るため、四苦八苦しているのだ』、もともと銀行は普通預金や当座預金といった流動性預金の運用益が、コンピュータシステムや店舗網を支える原資となっていたが、異次元緩和でこの運用益が吹き飛んだため、苦境に陥っている。その意味では、現在の経済政策の最大の被害者である。
・『超低金利政策を続けても、黒田総裁のもくろみ通りに景気は上向かず、物価もてんで上昇しない。異次元緩和の黒田バズーカは、その名の通り金融システムの破壊効果しか生んでいない。 聞き捨てならないのは、日本記者クラブ主催の総裁選討論会における安倍首相の発言だ。「デフレ脱却」や「2%の物価目標」を掲げたのは「日銀と協力をし」た結果である旨を言ってのけ、物価目標の未達については、黒田日銀に「しっかりと対応していただきたい」と注文をつけた。 金融システムの軸心である中央銀行は、時の政治権力と一線を画す存在でなければいけない。安倍首相の発言は「中央銀行の中立性」という基本をわきまえていない。 スルガ銀は氷山の一角で、あちこちの地銀でも存続をかけ、不正融資が横行していても、おかしくない。それらが一気に噴出すれば日本版リーマン・ショックの到来だ。 不正に走らなければ、生き残れない状況に地銀を追い込んだ責任はまず黒田総裁にあり、結局は安倍首相に行き着く。その点を石破元幹事長には総裁選で追及して欲しかった。安倍3選で日本経済はとてつもない事態を迎えることになるだろう』、確かに「スルガ銀は氷山の一角」に過ぎず、他行でも同様なことが、「一気に噴出すれば日本版リーマン・ショックの到来だ」というのは、大いにあり得ることだ。 安倍首相も3選で浮かれている時ではない筈だ。
タグ:高橋乗宣 日刊ゲンダイ 東京都議選 ダイヤモンド・オンライン 浜 矩子 アベノミクス 金子 勝 「働き方改革」 (その29)(「アホノミクス」が今以上に長引けば日本経済は“窒息死”する、アベノミクスがあと3年続けば日本の産業衰退が一気に露呈する、安倍3選で現実味を増す “日本版リーマン・ショック”の到来) 「「アホノミクス」が今以上に長引けば日本経済は“窒息死”する」 安倍政権の経済政策がよこしまな政治的下心に基づいている 「強い御国」を作る自らの政治的野望を達成するために経済政策を手段化して来た。だが不純な動機で経済を弄べば、必ず経済活動の調子は狂う 結果的に強くしたかった経済を弱くしてしまう 下心のある経済政策は不可避的に墓穴を掘る 敵をはっきりさせる「偽預言者効果」で支持率を維持 側面その一が「偽預言者効果」だ。そして側面その二が「振り込め詐欺効果」 第一に、偽預言者は、人々が聞きたいこと、人々にとって耳心地のいいことを言ってくれる 第二に、偽預言者は敵が誰であるかをたちどころに教えてくれる 偽預言者が発する甘い音色は、人々を破滅へといざなうものだ 偽預言者はいう。「悪いのはヤツらだ」。それを教えてもらうと、人々は安心する。安心して悪いヤツらの撃退に乗り出して行く。偽預言者は対立をあおる 安倍首相は、名偽預言者だ。「強い日本を取り戻す」と声高に宣言する。「あの時の日本人にできたことが、今の日本人にできないわけがない」と人々を鼓舞する 戦後の高度成長期と明治日本の建国の時 「人づくり革命」 えたいの知れないキラキラ言葉群が、甘言への免疫力が弱い若者たちを引き寄せる。厳しい経営環境の中で閉塞感にさいなまれる中小零細企業者たちを惑わせる 彼に対して「帰れコール」を浴びせた聴衆について「こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかない」と叫んだ。 これぞ、偽預言者の犯人名指し・敵指差し行動にほかならない 危機感をあおる「振り込め詐欺効果」グローバル化とともに各国で出現 「国難突破」 グローバル社会のあちこちに出現している大衆扇動型の政治家たちは、皆、大なり小なりこれらのツールを武器として、人々を国家主義と排外主義の方向へとおびき寄せて行こうとしている 「稼ぐ力」強化で追い詰められるモノづくりの現場 強い経済の再生は外交安全保障政策の立て直しのために不可欠と、主張 このような発想に基づいて経済政策を行えば、経済活動は必ずバランスを崩して失調して行く 国債市場と株式市場が、今の日本ではまるで正常に機能していない 日本銀行の存在感があまりにも巨大化 モノづくりの世界も、チームアホノミクスが発した「稼ぐ力を取り戻せ」という指令に追い立てられて、実に息苦しい状況に陥っている 追い詰められた彼らが、検査データの改ざんなど、不正な手口をついつい強化してしまう 「働かせ方改革」で人間でなく「歯車」化する働き手 「モダン・タイムス」 「時代錯誤の愚かな政策」で日本経済は”呼吸困難”に 「アベノミクスがあと3年続けば日本の産業衰退が一気に露呈する」 「デフレ脱却」を掲げたアベノミクスが想定するプロセスは効いていない 有効求人倍率の上昇は生産年齢人口(15~64歳)の減少の影響が大 アベノミクスによる「見せかけの好景気」は破綻する 円安誘導や赤字財政のファイナンス、日銀の株買いに支えられた「見せかけの景気」にすぎない 米中貿易戦争の悪影響が懸念 異次元緩和にとって金利上昇がアキレス腱 海外から金利上昇圧力 金利が1%上昇すると、国債の価値が67兆円毀損する。日銀も24兆円の損失を被る 金利が1%上昇すると、国債利払い費を含む国債費は3.6兆円増え、金利が2%上昇すると7.3兆円増加する 金利の上昇は財政金融を麻痺させ、ひいては日本経済を著しい混乱に陥れる 異常な低金利を維持するために、日銀は永遠に国債を買う量的金融緩和をやめるにやめられず 、出口戦略を放り投げて続けざるを得ないのだ アベノミクスとは戦時経済と同じ“出口のないネズミ講”なのである アベノミクスとは、成功した途端に破綻する「詐欺」 異次元緩和のアベノミクスは永遠にデフレ脱却をせず、不況でないともたない政策であり、現状をただもたせるだけの政策なのである 金利は上昇する 日銀の金利抑制も限界に 長期金利が0.11%になった状況で、日銀が0.1%の指し値オペ(指定金利で無制限に国債を買い入れ)を行うやいなや、日銀の国債貸しを利用して、投機筋が「空売り」を仕掛けたのである 株式市場でも日銀が株式を買い支える「官製相場」に 中央銀行が株高・低金利を維持するために、投機筋の空売りの機会を提供するという異常な事態 先端産業が育たず 産業構造の転換も遅れる かつて世界有数のシェアを誇っていた日本製品は見る影もなくなっている 日本が先端産業で後れをとることになったもともとの起源は、1986年と91年の日米半導体協定までさかのぼる アメリカの要求に譲歩すれば、日本の産業利害が守れるという思考停止が今も政府(とくに経産省)を支配している。特に安倍政権になってから、より一層強まっている 「市場原理主義」 「不作為の責任逃れ」に終始する姿勢が強まった 「構造改革特区」や「国家戦略特区」が画期的な新しい産業を生み出したという話は聞いたことがない 「規制緩和」を利益政治の道具としてきた。その行き着いた先が加計学園問題 自動車もEV転換で出遅れ「第4次産業革命」で主導権取れない恐れ 安倍首相が力を入れた「原発セールス外交」はことごとく失敗に帰している 電源構成に占める再生可能エネルギーの比率 年換算では0.5%前後しか増やす気がないのだ 所得再分配だけでは不十分 「利権化」した規制緩和 1990年代以降、北欧諸国は国家戦略を立てて先端産業に対するイノベーション研究開発投資や起業支援や教育投資に力を注いできた 目指すべきは雇用を創り出す経済成長と所得再分配の適切な組み合わせによる政策体系 産業戦略がカギを握る時代錯誤の「縁故資本主義」 リニア新幹線建設では、安倍首相の友人である葛西敬之JR東海名誉会長 が関与し、財政投融資資金が注入 受注をめぐってゼネコン談合 原発輸出では、同じく首相の友人である中西宏明日立会長が進めるイギリスでの原発事業の資金調達に政府保証がつけられた ニューライフサイエンスでは、首相の“腹心の友”加計孝太郎氏が理事長をする加計学園問題 スパコンではペジーコンピューティングで助成金詐欺 限界が見えてきたアベノミクスがいよいよ機能不全に陥った時、先端産業で敗北した日本の産業の悲惨な状況が一気に露呈していくことになるだろう 「安倍3選で現実味を増す “日本版リーマン・ショック”の到来」 超低金利のおかげで、「利ざや」がちっとも稼げず、日本の銀行の収益率は今や1%を下回っている 金融庁の有識者会議が、長崎県を含む23県では将来、地銀1行でも存続が難しくなるとの分析結果を公表 異次元緩和の黒田バズーカは、その名の通り金融システムの破壊効果しか生んでいない 安倍首相の発言は「中央銀行の中立性」という基本をわきまえていない スルガ銀は氷山の一角で、あちこちの地銀でも存続をかけ、不正融資が横行していても、おかしくない。それらが一気に噴出すれば日本版リーマン・ショックの到来だ 安倍3選で日本経済はとてつもない事態を迎えることになるだろう
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驕る国会議員の暴走(その5)(小田嶋氏:「新潮45」はなぜ炎上への道を爆走したのか、原田 隆之氏(犯罪心理学):「新潮45」はなぜ杉田水脈を擁護するのか?差別と偏見に満ちた心理) [国内政治]

今日まで更新を休むと予告したが、今日は、驕る国会議員の暴走(その5)(小田嶋氏:「新潮45」はなぜ炎上への道を爆走したのか、原田 隆之氏(犯罪心理学):「新潮45」はなぜ杉田水脈を擁護するのか?差別と偏見に満ちた心理)を取上げよう。なお、このテーマは8月13日に取上げた。

先ずは、コラムニストの小田嶋 隆氏が9月21日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「新潮45」はなぜ炎上への道を爆走したのか」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/092000159/?P=1
・『「新潮45」の特集記事がまたしても炎上している・・・以下、炎上に至った事情を簡単にまとめておく。  今回の騒動の前段として「新潮45」8月号に、自民党の杉田水脈衆議院議員が寄稿した記事(「生産性のない」LGBTへの優遇が行き過ぎであることや、LGBTへの税金の投入を控えるべきであることなどを訴えた小論、タイトルは「『LGBT』支援の度が過ぎる」)が各方面から批判を浴びた件がある。これについては、7月の時点で小欄でも記事を書いているので参照してほしい(こちら)。 「新潮45」今月発売号(10月号)が、「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という「特別企画」を組んで計6本、総ページ数にして37ページ分の擁護記事を掲載した。 この特集記事に各方面から批判が集まった。  新潮社の出版部文芸の公式ツイッターアカウントが、「新潮45」発売日である9月18日の直後から、同編集部への苦言や、杉田論文批判への反論記事への批判を次々とリツイートしはじめる(こちら)。 新潮社の公式アカウントの行動に、岩波書店、河出書房新社などのツイッターアカウントが連帯の意図を表明し、さらに波紋が広がる(こちら)。 現時点で私が把握しているのは、こんなところだ』、新潮社も公式アカウントはまともなようだが、統一した行動を採らないのは、いかにも雑誌社らしい。
・『私の個人的な立場を説明しておく。基本的な感想は、7月27日更新の記事に書いた内容とそんなに変わっていない。杉田論文が「論外」で、「お話にならない」という見方に変更はない。前回の記事中で私がとりあえずの結論として提示した「杉田論文が陋劣かつ凶悪であることはもちろんだが、それ以上に自分を絶望的な気持ちにさせているのは、杉田議員が論文の中で展開してみせたのと同じ『生産性』を至上とする市場的な人間観を抱いている日本人が、決して少数派ではないように見えることだ」という認識も基本的には変わっていない。大切なのはこの点だ』、なるほど。
・『問題は杉田論文が陋劣で邪悪で低レベルなことではない。主たる問題点は、杉田論文が大変に人気のあるご意見であるというところにある。つまり、真の脅威は、杉田論文ではなくて、論文の背景にある巨大な勢力だということだ。 おそらく、「新潮45」の編集部には、「杉田議員の論文に共感した」「あの記事には間違いなんかない」「周囲の雑音にひるまずに今後も思うところをまっすぐに主張してほしい」といったような電話やメールがそれなりのボリュームで寄せられたはずだ。 だからこそ、編集長は、批判への反論特集などという無謀極まりないガソリン散布企画を発案するに至った……と、おそらく、事情は、そういうことだ。 実際、ネット内をちょっと巡回してみれば、杉田論文の正しさを訴える言説はいまだに衰えていない。 それほど、彼女の主張には根強い人気がある。 というよりも、杉田水脈氏があの論文の中で開陳していた世界観ならびに人間観は、現代の日本人のマジョリティーの意見でこそないものの、一方の声を代表する典型的な見解ではあるわけで、つまるところ、われわれはそういう国の国民なのである』、「ガソリン散布企画を発案するに至った」事情の解明はさすがだ。
・『杉田論文のどの部分がどんなふうに間違っていて、どのように有害であるのかについては、7月の記事でもある程度書いたし、私以外のたくさんの優れた論客が様々な場所で、完全に論破し去っていることでもあるので、ここでは、あえて蒸し返さない。 杉田論文への批判に再反論してみせた小川榮太郎氏の記事をはじめとする「新潮45」10月号の特集企画の中の記事群が、どれほどちゃんちゃらおかしくて馬鹿げているのかについても、あえてくだくだしく論じようとは思っていない。 理由は、それらが「反論が論敵の利益になる」ほどに、馬鹿げた議論だからだ。 以下、「反論が論敵の利益になる」事情について解説する。「反論さえもが論敵の利益になる」議論の例として、たとえば、「ホロコーストは存在しなかった」という定番のデマがある。この種の、立論の根本のところが完全な虚偽で出来上がっている話題では、発信力のある人間が論争に巻き込まれること自体がホロコースト否認論者の利益になる。というのも、論争をしているということがそのまま「ホロコーストの存在には議論の余地がある」ことの宣伝として利用され得るからだ。 なんというのか、本来議論の余地などひとっかけらもありゃしない問題について論争してしまっている時点で、「そこに議論の余地がある」ことを認めていることになるのである。この罠にハマってはならない。 ホロコースト否認論者や、関東大震災後の朝鮮人虐殺の存在を否定する人々は、機会をとらえてはフォロワーの多いアカウントに議論をふっかけてくる。この種の煽りに乗せられるのは、愚かなリアクションだ。 彼らにしてみれば、相手を論争に引っ張り込むことができさえすれば、たとえ完膚なきまでにやりこめられる結果になろうとも、一定の利益を享受できる。なぜというに、論争を眺めている見物人の中には、あっさりやりこめられている側に共感するタイプの人間もいれば、容赦なく他人を論破する論者に反発を感じるアカウントもそれなりには含まれているもので、そういう人々を幾人かでも味方に引き入れることができれば、はじめから論争が起こらないよりはずっとマシだからだ』、「反論が論敵の利益になる」とはさすが深い読みだ。
・『ともかく、そんなわけなので、杉田論文を擁護している程度の低い論客を相手に議論をすることは、なるべくなら避けたいのだが、それでも、小川榮太郎氏の記事には、一言だけ反応しておく。理由は、単純な話、腹が立つからだ。いくらなんでも、ここまで低劣だと、読んでしまった人間の感情として黙って通り過ぎるわけにはいかないということだ。全編を通じて、性別や染色体や性指向などなど、高校の生物の授業以前の事実誤認がちりばめられていることもさることながら、この人はなによりもまず「性的指向」と「性的嗜好」というLGBTを語る上での、最も基礎的な概念について、きちんとした区別がついていない。 あるいは、LGBTの人々をあえて「変態性欲」のレッテルのもとに統合するべくこの2つの概念を混同してみせているのかもしれない。 いずれにせよ、あまりにもレベルが低い。特に以下の引用部分はとてつもなくひどい。《---略--- LGBTの生き難さは後ろめたさ以上のものだというのなら、SMAGの人達もまた生きづらかろう。SMAGとは何か。サドとマゾとお尻フェチ(Ass fetish)と痴漢(groper)を指す。私の造語だ。ふざけるなというヤツがいたら許さない。LGBTも私のような伝統保守主義者から言わせれば充分ふざけた概念だからです。満員電車に乗った時に女の匂いを嗅いだら手が自動的に動いてしまう、そういう痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう。再犯を重ねるのはそれが制御不可能な脳由来の症状だという事を意味する。彼らの触る権利を社会は保証すべきではないのか。触られる女のショックを思えというのか。それならLGBT様が論壇の大通りを歩いている風景は私には死ぬほどのショックだ。精神的苦痛の巨額の賠償金を払ってから口を利いてくれと言っておく。---略---》・・・この部分は、説明抜きで、そのまま引用してみせるだけで、そのひどさが伝わるパラグラフだと思う。性的指向と、性的嗜好の区別がついておらず、さらには性的嗜好と変態性欲を意図的に同一視し、おまけに、LGBTと痴漢を同じカテゴリーの概念として扱い、かててくわえて、性的にマイノリティであることを意図的な犯罪者と同一視している。 さらに言えば、女性が痴漢に触られた時に感じる被害感情を、小川氏がLGBTが論壇の大通りを歩いている風景を見る時に感じる「死ぬほどのショック」とやらと同列に並べている。 あまりにもひどすぎて論評の言葉が見つからない。こういうものは、ひどさを伝えるためには、ただ、虚心に読んでもらうのが一番良い。だから、これ以上は何も言わない』、小川榮太郎は、民主党政権下で、「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」を結成、安倍を総理に復帰させる戦略を大局から細目へと立案した20ページほどの戦略プランを立て、下村博文を通じて安倍に渡ったと話している(Wikipedia)、ほどの右派的言論人である。それにしても、お粗末な論理だ。
・『ツイッター上で話題の焦点は、すでに記事の内容のひどさを離れて、「新潮45」編集部の掲載責任の如何に移っている。 たしかに、記事の凶悪さと醜悪さは、もはや誰が指摘するまでもない水準にある。とすれば、むしろ、こういう記事を載せてしまった編集部の責任を問う動きは当然の反応として出てくるはずだ。 ただ、私は、今回の騒動の焦点は、編集部が差別的な記事を載せたことそのものとは、少し違う場所にあるのではないかという気がしている。 「新潮45」の8月号に杉田論文が掲載された時、さるTV番組にコメンテーターとして出演していた同誌の元編集長でもある女性が、論文の掲載について意見を求められて、おおよそ以下のようなコメントを残している。「杉田議員の発言はとんでもないと思うが、議員の発言を批判することと雑誌を問題視するのは別問題で、筋違いだと思う」「雑誌というのはもともと雑多な意見を載せて、議論の場を提供する役割を担っているものだ」 私は、この名物女性編集者の見解を、必ずしも全面的には支持しない。ただ、この人の言っていることが、多くの雑誌関係者がそう思っているに違いない現場の本音であることは理解する。 雑誌は、そもそも雑なものだ。掲載したテキストについていちいち責任を問われたのでは、編集者はやっていられない。そういう部分はたしかにある。 事実、杉田論文はひどい文章だった。今回の擁護の記事群も輪をかけてひどい。 ただ、単に「ひどい」とか「差別的」だという話をするなら、ひどい記事は、これまでにもたくさんあった。その気になって探せば、他誌の中にも差別的な記事はゴロゴロ転がっている。 一例を挙げれば、「新潮45」よりもはるかに発行部数の多い「週刊新潮」で連載中の「変見自在」という1ページコラム(筆者は高山正之氏)は、毎度毎度杉田論文並みに乱暴だし、時には小川榮太郎記事も真っ青な差別的文言を撒き散らしている。 2年ほど前だったか、同コラム内に「帝王切開で産まれた子は人格的におかしくなるという説がある」という話から始まるとんでもない記事が載ったのを覚えている。この時は、さすがに同じ雑誌内で別のコラムを連載している川上未映子さんが、真正面から批判記事を書いていた。ただ、この時は、川上さんが誌上で取り上げて、幾人かのツイッターユーザーがそれを話題にした程度で、たいした炎上にはならなかった。 ことほどさように、差別的な文章が、必ず炎上しているわけではないことを思えば、今回の杉田論文が特別に炎上したことを、雑誌の関係者が素直に受け止めきれずにいることには、ある程度仕方がない部分がある』、なるほど。
・『では、どうして杉田論文はあれほど大きく炎上したのだろうか。また、それを擁護した小川榮太郎記事は、さらに大きく炎上しているのだろうか。以下、私の考えを述べる。杉田論文はなるほど差別的だった。ただ、誤解を恐れずに言えば、あの程度の差別的テキストは、そこいらへんの雑誌を丹念にめくってあるけば、そんなに珍しくない頻度で遭遇する程度のものでもある。 その、標準的に差別的な原稿が炎上したのは、まず第一に、書き手が国会議員だったからだ。実際、同じ差別的言辞でも、そこいらへんの頑固親父ライターが署名連載コラムの中で書き飛ばすのと、国会議員が月刊誌に寄稿するのでは発信する情報の意味あいが違う。 しかし、それだけでもない。ここから先が、杉田案件の肝だ。結論を述べる。私は、杉田論文があれほどに燃えたのは、あれが「総理案件」だったからだと考えている。つまり、あの論文を書いたのが、安倍晋三首相のお気に入りの女性議員で、一本釣り同様の経緯で地方ブロックの比例第一に配せられた特別扱いの議員だったことこそが、見逃してはいけない背景だということだ。 杉田議員は、様々な場所で総理の内心を代弁する役割を担ってきた議員だった。だからこそ、あれを読んだ勘の鋭い読み手は、行間に見え隠れする総理の顔に、慄然とせずにおれなかったのである。「もしかして、安倍さんって、こんなことを考えてるわけなのか?」と直感的にそう感じた人々が、ある意味過剰反応した、ということだ。 経緯を振りかえってみるに、あの論文がさんざん批判されて問題視された直後、自民党内の反応は、何かを恐れているみたいに異様に鈍重だった。二階幹事長が「この程度の発言で、大げさな」とすぐに擁護したのも、杉田議員が首相のお気に入りであることを踏まえた反応だと思うし、永田町の自民党本部前まで抗議に訪れたLGBTの団体の抗議声明を手渡そうとした時に、なぜなのか、担当の事務員が文書の受け取りを拒絶したことも、いまになって考えてみれば、当件が、ただの抗議事案ではなくて、「総理案件」だったからだと考えると辻褄が合う(こちら)』、杉田議員が「安倍晋三首相のお気に入りの女性議員で、一本釣り同様の経緯で地方ブロックの比例第一に配せられた特別扱いの議員だった」というのは初めて知ったが、筋が通る話だ。
・『その後、多方面からの苦情や抗議がさらに殺到したが、党の執行部は杉田議員を一向に処分しようとしなかった。つい2日ほど前、安倍首相は、石破茂氏とともに出演したテレビ番組の中で、自らの言葉で杉田議員を擁護する姿勢を明確にしている。首相は、番組の司会者の「(杉田氏は)謝罪も撤回もしてませんよね? そして党としても処分していない」という問いかけに対して、こう答えている。《私の夫婦も残念ながら子宝に恵まれていません。だからと言って「生産性がない」というと大変辛い思いに、私も妻もなります。政治家というのは、自分の言葉によって人がどのように傷ついていくかということについては、十分に考えながら発言をしていくべきなんだろうと思います。私たち(は同じ)自民党ですから「あなた、お前、もうやめろ」というわけではなく、まだ若いですから、そういうことをしっかり注意しながら仕事していってもらいたいと、先輩としてはそういう風に申し上げていきたいと思います。》(こちら) 首相は、「自分たち夫婦も大変に辛い思いをしている」と、被害者のポジションに立ってみせつつも、最終的には杉田議員の不注意な発言をかばっている。 理由は、彼女が「まだ若いですから」ということにしているが、杉田水脈議員は現在51歳である。比較的年齢層の高い議員が多いと言われる自民党の中でも、特段に若手というわけではないと思う。それでも、「若い」からと、安倍さんがなんとか杉田議員を擁護したのは、つまるところ、彼女が、自分自身の内心を代弁する存在だから切るに切れないのではないか。 「新潮45」の編集長が、世間からの圧倒的な逆風をものともせずに真正面からの反論企画掲載に打って出た理由も、結局のところ、杉田論文が「総理案件」であることにある程度気づいていたからで、要するに、編集長氏は、この反論企画が必ずや首相に気に入られることを知っていたはずなのだ。特集の執筆陣も同様だ。小川榮太郎氏は、肩書こそ文芸評論家ということになっているが、ググるなりウィキペディアを閲覧すればわかる通り、そもそも安倍首相の関連書籍が仕事の大半を占める書き手だ。 ということはつまり、このお話ははじめから最後まで総理案件で、反発している人たちが騒いでいる理由も、単に差別的だからという理由でもなければ、掲載責任や出版人としての良心がというお話でもなくて、この薄気味の悪い生産性差別物語の背後に、一貫して総理のご意向が見え隠れしていたからなのだ、と考えられる。 私自身、差別的なライターが差別的な文章を書いた程度のことで、いちいち驚いたりはしない。700人からいる議員の中に、明らかな差別思想を抱いているらしい人間が幾人か混じっていることにも、いまさら驚かない。ただ、もし仮に、総理大臣の職にある人間が、杉田論文を問題視しない考えの持ち主であったのだと考えると、やはり平静ではいられない。 とはいっても、やや長めのため息を吐き出す程度のことだ。息を吐いた後は、大きく息を吸う。私は大丈夫だ。目は泳いでいない』、「この薄気味の悪い生産性差別物語の背後に、一貫して総理のご意向が見え隠れしていた」というのは、その通りなのだろう。最後の部分は、微笑んでしまった。

次に、心理学の観点から、筑波大学教授(犯罪心理学)の原田 隆之氏が9月21日付け現代ビジネスに寄稿した「「新潮45」はなぜ杉田水脈を擁護するのか?差別と偏見に満ちた心理 議論によって正すのは難しいが…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57600
・『杉田水脈議員の「『LGBT支援』の度が過ぎる」という記事を掲載した雑誌「新潮45」が、激しいバッシングに対抗すべく、今度は杉田擁護の特集を組んだ。 当の雑誌が発売になるや、ネット上ではさまざまな批判があふれ、私のところにも早速「読みました?」というメールやSNSのメッセージがいくつも寄せられた・・・新幹線の車内で目を通してみた。一言でいうと、論評にも値しないような、くだらない記事の寄せ集めだった。 聞いたこともないような評論家や、存在するのかどうかも怪しいような匿名の「LGBT当事者」などが、好き勝手殴り書きをしたかのようなお粗末な内容であった。 「新潮45」は、何をそんなに必死になって杉田議員を擁護するのか。いろいろ憶測できることはある。たとえば、最近の日中、日韓、果ては日朝までもが雪解けムードのなか、自民党のコアな支持層である右派の人々が政権に対する不満を募らせているところ、そのガス抜きとして、あるいは鉄砲玉のような存在として、杉田議員の存在はそれなりに重宝なのだろう。 いささかキワモノではあるが、「一部」の世界ではそれなりの支持を集めていたと聞く。 しかし、そういう存在としての杉田を擁護したいという目的があったにせよ、集まったのはスカスカで中身がないばかりか、さらに批判や嫌悪を呼び起こすような論文(?)ばかりで、果たしてこれで目的が達せられるのか、逆効果じゃないかと思えるほどだ。 また、炎上商法が目的だったとすれば、相当タチが悪い。目的のためには手段を選ばずというのを言論機関がやってよいものなのか。 とはいえ、この程度の筆者、この程度の記事しか集まらなかったところに、本は売れたとしても、その負け戦は如実に表れている。 一方、新潮社の文芸部が、「良心に背く出版は、殺されてもせぬ事」という創立者の言を引きながら、各方面からの批判的ツイートをリツイートしていることには心を動かされた。  そもそも、醜悪なヘイトスピーチとも取れる偏見に満ちた文章を垂れ流すのは、言論の自殺行為だ。それに対する内部からの批判は、真っ当な自浄行為である。 私は、杉田議員の発言には「現代ビジネス」上で批判をしながらも、その発言を封殺するような行き過ぎたバッシングには警鐘を鳴らした・・・しかし、当の杉田議員は、騒動の後、まったくといっていいほど表舞台には現れず、何の発言もしていない。言いたいことだけを一方的に放言しそのあとはほとぼりが冷めるまで引きこもっているというのは、国会議員として無責任な態度であるし、姑息である。そしてこの再びの騒動で、彼女の無責任な引きこもりは、ますます長くなるだろう』、新潮45が炎上商法を狙ったとは、大いにあり得る話だ。
・『偏見に満ちた特集記事  中身のない文章の寄せ集めとは言ったが、どの記事にも「偏見」があふれていることだけは確かである。 たとえば、「新しい歴史教科書をつくる会」の藤田信勝副会長は、杉田の用いた「生産性」という言葉に批判が集まっていることを取り上げ、杉田氏は「子どもを持たない、もてない人間は『生産性』がない」などとはどこにも書いていない。杉田氏は「子供を持たない、もてない人間」一般のことなど論じていない。と述べている(物書きならば、漢字表記くらい統一してほしいものだ)。そして、そのすぐ後に、LGBTの人たちについて、「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と位置づけられる、というだけのことだ。と書いている。もう何が何だか支離滅裂だ。「杉田は生産性がないなど言っていない」と述べながら、そのすぐ後に「杉田は生産性がないと言った」という引用をしているのだから、わけがわからない。それに、もちろん誰も杉田は、「子どもを持たない人一般」のこと論じているなどとは思っていないし、子どものない人々一般を貶めたといって批判されているのではない。「LGBTには生産性がない」と言ったことが批判されているのだ。このピンボケぶりには呆れるほかない。さらに、「『生産性』という言葉は、マルクスも上野千鶴子も使っている。デモ隊は上野の事務所にも回らなければならなかったはずだ」などという幼稚な議論に至っては、子どもの喧嘩かと思うほどの論理の粗雑さだ。 しかし、これでもまだましなほうで、ネット上でも恰好の「ネタ」にされているのは、小川榮太郎という人(文藝評論家と書いてある)の記事だ。そこでは、「テレビで性的嗜好をカミングアウトする云々という話を見る度に苦り切」ると述べながら、その本人が「私の性的嗜好も曝け出せば、おぞましく変態性に溢れ、倒錯的かつ異常な興奮に血走り、それどころか犯罪的であるかもしれない」などと、聞きたくもない「カミングアウト」をしている始末である。まず、彼の記事は基本的な無知にあふれており、たとえば「性には生物学的にXXの雌かXYの雄しかない」(XXYやXYYもある)、「(トランスジェンダーについて)こんなものは医学的、科学的概念でもなく、ましてや国家や政治が反応すべき主題などではない」(れっきとした医学的、科学的概念である)、「ましてレズ、ゲイに至っては!全くの性的嗜好ではないか」(この人の変態趣味とは違って、これらは嗜好ではなく「指向」、生物学的な方向性であり、生き方の問題でもある)、など数え上げればきりがない。 素人がいい加減な知識を基に書くからこうなるのであって、一言でいえば、醜悪な偏見の寄せ集めである。 また、ウケを狙ったつもりなのかどういうつもりか、次のようなことも書いている。LGBTの生き難さは後ろめたさ以上のものなのだというなら、SMAGの人達もまた生きづらかろう。SMAGとは何か。サドとマゾとお尻フェチ(Ass fetish)と痴漢(groper)を指す。私の造語だ。満員電車に乗ったときに女の匂いを嗅いだら手が自動的に動いてしまう、そういう痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう。(中略)彼らの触る権利を社会は保障すべきでないのか。 面白くもなんともない。レトリックにもなっていない。ただただ不快でしかない。性的指向や同一性の問題と性犯罪を同列に扱って、揶揄するところに、彼の深刻な偏見があからさまになっている。 あまり、長々と引用しても馬鹿らしいので、これくらいにするが、一事が万事この調子である』、確かにこんなお粗末な文章が月刊誌に堂々と掲載されたことに、驚かされる。
・『偏見の心理  それにしても、人はなぜこうも差別的で、平気で人を傷つけたり、貶めたりできるのだろうか。これらの醜悪な記事を読んで、心理学者としての私の興味関心はそこに至る。 その名も『偏見の心理』という心理学の古典的名著を著した心理学者、オルポートは、「偏見とは、基本的にパーソナリティの問題である」と述べている。また、ナチスになびいた人々のパーソナリティを研究したアドルノは、「権威主義的パーソナリティ」がその根本にあったと分析した。権威主義的パーソナリティとは、伝統主義、権威主義、弱者への攻撃性、強者への服従を特徴とするパーソナリティである。マイノリティを貶め、体制におもねる人々の姿は、まさに権威主義的パーソナリティそのものである。 最近の理論では、ダキットによる「偏見の二重プロセスモデル」がある。これは、パーソナリティだけでなく、社会的態度というものを介して偏見が作り上げられるプロセスを説く。そこで焦点が当てられる社会的態度には、「集団的優越感」「集団的凝集性」「集団的安心感」といったものがある。日常的な言葉に置き換えると、マジョリティ集団に属している自分に優越感を抱き、その集団にすがることで安心感を得ているため、マイノリティや革新的な人々は、自分の安心・安全を脅かす者ととらえ、偏見を抱くだけでなく、攻撃的になる。これが偏見のプロセスである。しかしその実、「集団」にしか自分の拠りどころのない彼らは、「個」としての自律性がなく、個人的なアイデンティティが未熟である。たとえば、「私は日本人である」「私は男である」「私は普通である」などというアイデンティティは、いずれも集合的なアイデンティティである。このように、ある集団に属していることでしか自分を定義できない者は、その集合的アイデンティティに優越感を抱くことでしか自分に自信を持てない。 したがって、ことさらにその集合的アイデンティティを強調する。そして、その集団に属さない人々、上の例だと外国人や女性、「普通でない人」などを貶めたり、攻撃したりする。ただ、個人では何もできないし、何も自分を定義するものがない』、さすが心理学者らしい。「集団的優越感」「集団的凝集性」などは、日本人に起こり易く、特にネット右翼の中国や韓国に対する態度にも当てはまりそうだ。
・『最新のデータからわかること  さらに新しい研究として、シブリーとダキットは、現代パーソナリティ理論のなかで最も支持を集めている「ビッグファイブ・モデル」を用いて、膨大なデータをもとに偏見の心理を分析している。ビッグファイブ・モデルとは、人間のパーソナリティを5つの次元の組み合わせで説明しようとするもので、その5次元とは「神経症傾向」「外向性」「開放性」「誠実性」「協調性」である。 神経症傾向:ストレスに過敏で、不安や緊張が高い。神経質。外向性:興味関心が外の人や物に向けられている。積極性、社交性、陽気さ。開放性:新しい経験にオープンで、新しいものを取り入れる。好奇心、想像力。誠実性:真面目で計画的。責任感がある。勤勉、自己規律的。協調性:利己的でなく、他者のことを思いやれる傾向。やさしさ、共感性。 偏見を抱きやすい人は、開放性と誠実性が低く、神経症傾向が高いという傾向が共通していたという。つまり、因習的で、新しいもの、奇抜なものに対して不寛容で、それは神経質で不安定な彼らの不安や緊張をかきたてるからだ。また、他者に対しても不寛容で、想像力や共感性を欠いている。これは、膨大な研究データをもとにした「一般的傾向」であり、個別に誰がどうだということではない。マイノリティに対する不寛容や攻撃傾向を示す人のすべてがそうだというわけでもない。しかし、このような理解をすれば、たとえば小川が「LGBT様が論壇の大通りを歩いている風景は私には死ぬほどショックだ、精神的苦痛の巨額の賠償金を払ってから口を利いてくれと言っておく」などと平気で放言できるのも、わかる気がする(心理学的にわかるというだけで、同意しているわけではないので、念のため)。 自分の精神的苦痛を声高に言う一方で、そこには相手の精神的苦痛などを思いやる共感性のかけらも見られない。また、「(同性婚について)これは全く論外であり、私は頭ごなしに全面否定しておく。結婚は古来、男女間のものだ」などというところは、共感性の欠如だけでなく、因習的で開放性の欠如が如実に表れている』、心理学でここまで社会風潮が見事に分析できるとは、興味深い。
・『偏見に対処するには  いずれにしろ、オルポートが正しいのであれば、このような物言いや傾向は、パーソナリティに根差すものであり、パーソナリティとは安定的な心理や行動の傾向であるから、それを変えることは困難だ。 オルポートはまた、偏見は事実に基づくものではなく、感情的な要素が大きいため、議論によって正すことは難しいとも述べている。 何とも暗澹たる気持ちにさせられるが、シブリーとダキットの論文では、このようなパーソナリティや社会的態度の「原因」となる要因を探究することの重要性が説かれている。そして、それは心理学の重要な使命の1つだろう。 今の心理学は、偏見と闘うにはまだ無力であるかもしれないが、偏見という問題が、深刻な社会病理の1つとして重要な研究テーマであることは間違いない。しかし、なぜ私はそんな無力な心理学などやっているのか言えば、心理学では醜い人間の心理を探究するだけでなく、それと闘う気高い人々の心理に触れる喜びや感動もあるからだ。私の専門は犯罪心理学であるため、多くの残虐な犯罪や憎むべき犯罪者ともかかわってきた。しかし、その反面、過去の過ちを悔い改め、更生しようとする人々の強さや美しさに打たれることも多い。また、それを真剣に支える人々の献身的なサポートにも心を動かされる。 今回のケースでいえば、まさに新潮社出版部文芸(文芸書編集部)の人たちの勇気と行動に、光を見た気がする。そして、記事に対する多くの批判の声や反対の動きを見て、勇気づけられ、われわれの社会の健全さにも気づかされた。安心してはいけないが、暗澹となって悲観するのはまだ早いと思う』、偏見は議論によって正すことは難しいとのオルポートの考え方は、確かに暗澹たる気持ちにさせられる。
・なお、新潮社は先ほど新潮45休刊を発表、「部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことは否めません。その結果、「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」(9月21日の社長声明)を掲載」したと謝罪したようだ。雑誌社の良心がまだ失われてないことを意味するとすれば喜ばしいことだ。
https://www.shinchosha.co.jp/news/20180925.html
タグ:新潮社 日経ビジネスオンライン 現代ビジネス 小田嶋 隆 原田 隆之 驕る国会議員の暴走 (その5)(小田嶋氏:「新潮45」はなぜ炎上への道を爆走したのか、原田 隆之氏(犯罪心理学):「新潮45」はなぜ杉田水脈を擁護するのか?差別と偏見に満ちた心理) 「「新潮45」はなぜ炎上への道を爆走したのか」 杉田水脈衆議院議員 『LGBT』支援の度が過ぎる」 「新潮45」今月発売号(10月号) 「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という「特別企画」 新潮社の出版部文芸の公式ツイッターアカウント 同編集部への苦言や、杉田論文批判への反論記事への批判を次々とリツイート 岩波書店、河出書房新社などのツイッターアカウントが連帯の意図を表明し、さらに波紋が広がる 私の個人的な立場 杉田論文が「論外」で、「お話にならない」という見方に変更はない 自分を絶望的な気持ちにさせているのは、杉田議員が論文の中で展開してみせたのと同じ『生産性』を至上とする市場的な人間観を抱いている日本人が、決して少数派ではないように見えることだ 真の脅威は、杉田論文ではなくて、論文の背景にある巨大な勢力だということだ 編集部には、「杉田議員の論文に共感した」「あの記事には間違いなんかない」「周囲の雑音にひるまずに今後も思うところをまっすぐに主張してほしい」といったような電話やメールがそれなりのボリュームで寄せられたはずだ 編集長は、批判への反論特集などという無謀極まりないガソリン散布企画を発案するに至った… 杉田水脈氏があの論文の中で開陳していた世界観ならびに人間観は、現代の日本人のマジョリティーの意見でこそないものの、一方の声を代表する典型的な見解ではあるわけで、つまるところ、われわれはそういう国の国民なのである 小川榮太郎氏の記事をはじめとする「新潮45」10月号の特集企画の中の記事群 ちゃんちゃらおかしくて馬鹿げているのか 「反論が論敵の利益になる」ほどに、馬鹿げた議論 「ホロコーストは存在しなかった」という定番のデマ 発信力のある人間が論争に巻き込まれること自体がホロコースト否認論者の利益になる。というのも、論争をしているということがそのまま「ホロコーストの存在には議論の余地がある」ことの宣伝として利用され得るから 関東大震災後の朝鮮人虐殺の存在を否定する人々 小川榮太郎氏の記事には、一言だけ反応 性別や染色体や性指向などなど、高校の生物の授業以前の事実誤認がちりばめられていることもさることながら この人はなによりもまず「性的指向」と「性的嗜好」というLGBTを語る上での、最も基礎的な概念について、きちんとした区別がついていない 痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう。再犯を重ねるのはそれが制御不可能な脳由来の症状だという事を意味する。彼らの触る権利を社会は保証すべきではないのか LGBTと痴漢を同じカテゴリーの概念として扱い、かててくわえて、性的にマイノリティであることを意図的な犯罪者と同一視している ツイッター上で話題の焦点は 「新潮45」編集部の掲載責任の如何に移っている 雑誌は、そもそも雑なものだ。掲載したテキストについていちいち責任を問われたのでは、編集者はやっていられない 単に「ひどい」とか「差別的」だという話をするなら、ひどい記事は、これまでにもたくさんあった 標準的に差別的な原稿が炎上したのは、まず第一に、書き手が国会議員だったからだ 杉田論文があれほどに燃えたのは、あれが「総理案件」だったからだと考えている 安倍晋三首相のお気に入りの女性議員で、一本釣り同様の経緯で地方ブロックの比例第一に配せられた特別扱いの議員だったことこそが、見逃してはいけない背景だ 杉田議員は、様々な場所で総理の内心を代弁する役割を担ってきた議員 あれを読んだ勘の鋭い読み手は、行間に見え隠れする総理の顔に、慄然とせずにおれなかったのである 二階幹事長が「この程度の発言で、大げさな」とすぐに擁護 首相は、「自分たち夫婦も大変に辛い思いをしている」と、被害者のポジションに立ってみせつつも、最終的には杉田議員の不注意な発言をかばっている 「新潮45」の編集長が、世間からの圧倒的な逆風をものともせずに真正面からの反論企画掲載に打って出た理由も、結局のところ、杉田論文が「総理案件」であることにある程度気づいていたからで、要するに、編集長氏は、この反論企画が必ずや首相に気に入られることを知っていたはずなのだ この薄気味の悪い生産性差別物語の背後に、一貫して総理のご意向が見え隠れしていたからなのだ 総理大臣の職にある人間が、杉田論文を問題視しない考えの持ち主であったのだと考えると、やはり平静ではいられない 「「新潮45」はなぜ杉田水脈を擁護するのか?差別と偏見に満ちた心理 議論によって正すのは難しいが…」 最近の日中、日韓、果ては日朝までもが雪解けムードのなか、自民党のコアな支持層である右派の人々が政権に対する不満を募らせているところ、そのガス抜きとして、あるいは鉄砲玉のような存在として、杉田議員の存在はそれなりに重宝なのだろう 炎上商法が目的だったとすれば、相当タチが悪い 新潮社の文芸部 「良心に背く出版は、殺されてもせぬ事」という創立者の言 各方面からの批判的ツイートをリツイートしていることには心を動かされた 醜悪なヘイトスピーチとも取れる偏見に満ちた文章を垂れ流すのは、言論の自殺行為 偏見に満ちた特集記事 偏見の心理 オルポートは、「偏見とは、基本的にパーソナリティの問題である」 ナチスになびいた人々のパーソナリティを研究したアドルノは、「権威主義的パーソナリティ」がその根本にあったと分析 ダキットによる「偏見の二重プロセスモデル」 パーソナリティだけでなく、社会的態度というものを介して偏見が作り上げられるプロセスを説 焦点が当てられる社会的態度には、「集団的優越感」「集団的凝集性」「集団的安心感」といったものがある 「集団」にしか自分の拠りどころのない彼らは、「個」としての自律性がなく、個人的なアイデンティティが未熟である シブリーとダキット ビッグファイブ・モデル 「神経症傾向」「外向性」「開放性」「誠実性」「協調性」 偏見を抱きやすい人は、開放性と誠実性が低く、神経症傾向が高いという傾向が共通 因習的で、新しいもの、奇抜なものに対して不寛容で、それは神経質で不安定な彼らの不安や緊張をかきたてるからだ。また、他者に対しても不寛容で、想像力や共感性を欠いている 偏見に対処するには オルポートはまた、偏見は事実に基づくものではなく、感情的な要素が大きいため、議論によって正すことは難しいとも述べている なぜ私はそんな無力な心理学などやっているのか言えば、心理学では醜い人間の心理を探究するだけでなく、それと闘う気高い人々の心理に触れる喜びや感動もあるからだ 新潮社出版部文芸(文芸書編集部)の人たちの勇気と行動に、光を見た気がする 新潮45休刊を発表 「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」 を掲載
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今日から火曜日まで更新を休むので、水曜日にご期待を!

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ブラック企業(その9)(10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない、悪徳NPOの闇 社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て、なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか) [産業動向]

ブラック企業については、昨年9月29日に取上げた。1年近く経過した今日は、(その9)(10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない、悪徳NPOの闇 社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て、なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか)である。

先ずは、モチベーションファクター株式会社代表取締役の山口 博氏が1月9日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/155057
・『10社に7社が労働搾取! 日本企業のモラルは依然低いまま  政府を挙げて働き方改革が行われているにもかかわらず、過重労働、残業代未払い、労務関連制度の不整備といった、労務に関する不適切事例が後を絶たない。厚生労働省が公表している労働基準関連法令に違反した企業数は、全国で471社ある(「労働基準関連法案に係る公表事案」、2017年11月30日最終更新)。 昨年5月の公表開始時が330件なので、この半年間で減少するどころか、1.5倍に増大している。違反の公表期間が1年、改善され次第公表されなくなるので、違反の発覚が改善を上回っている状況だ。 もっともこれは氷山の一角で、最新の「労働基準監督年報」(2015年実績)によれば、労働基準監督署の臨検により違反が発覚した事業場数は全国で9万2034件、臨検事業場数の、実に69%に上る。違反内容は、労働時間に関するもの(2万7581件)、残業代など割増賃金に関するもの(1万9400件)、労働条件の明示に関するもの(1万5545件)の順に多い。 臨検すれば10社のうち7社で違反が発覚するという実態に鑑みるに、日本の経営者の意識が依然、「社員は使い捨てるもの」という労働搾取的発想から抜け出せていないと言わざるを得ない』、「臨検すれば10社のうち7社で違反が発覚」というのは、労働基準監督署が違反がありそうとして臨検している数字が分母なので、日本企業全体ではもっと低いことは言うまでもない。ややセンセーショナルを狙った書き方だ。
・『私自身、企業経営をサポートしており、経営者の本音を聞く機会が多い。「労基署が入っても初犯の場合は、企業名は公表されませんよね?」、「労基署から指摘されたら謝罪して、それから是正すればいいですよね」、「法律違反の会社に勤めるのが嫌ならば、辞めればよい」…これらの発言には、法令順守の意識を垣間見ることすらできないし、そもそも謝罪すべき相手は労基署ではなく労働者だ。社員は労働搾取して使い捨てすればいいという経営者の意識を感じ取ってしまう。 挙句の果てには、「労基署から指摘された後で未払い残業代を支払った方が、財務経理上のネガティブインパクトが少ないので得策だ」という発言まで飛び出した。つまり、労基署から指摘されない間は、残業代は払わない方が会社が儲かるというわけだ。社員からできる限り搾取をして、財務体質を良くしようという利益至上主義である。 経営方針は経営者が決めればいいことだが、何をしてもいいということには、当然ならない。労働搾取は、れっきとした法律違反である。仮に法律違反を犯していなくても、労働者と共に成長して生きていくという共生の意識がみじんも感じられないことが問題だ。短期的には労働搾取は利益増大に効果をもたらすかもしれないが、中長期的には企業に利益をもたらさないことは自明だ』、ここで紹介された実例は、ブラック企業の実例なので、経営者全般を指している訳ではないとしても、実例はあきれるほど「真っ黒」だ。
・『「入金は早く、支払いはなるべく遅く」取引先使い捨ての実態  共生意識の有無は、経営者と従業員の関係のみならず、企業とその取引先との関係においても、顕著に現れる。労働者から平然と搾取をするような企業は、取引先からも搾取をする。 こうした姿勢が一番分かりやすいのは、取引先に対する支払いの仕方だ。取引先から受領した請求書を毎月末に締めて、翌月末に支払うという支払いサイクルが一般的だが、中には翌々月末支払いという企業もある。 利益至上主義の観点からのみ考えれば、入金はできるだけ早く、支払いはできるだけ遅くすべきという考え方になる。事実、私が取引した外国企業の中には、さまざまな手続きを小出しにしながら、支払いを数ヵ月遅らせるという暴挙に出た企業もある。 暴挙に出た外国企業と同じ国にオフィスを持ち、10年以上ビジネスをしている私のパートナー企業経営者に言わせれば、この国の企業理念からすればよくあることで、1円たりともおろそかにせず、利益を捻出することこそが、企業としてあるべき姿だと考えられているらしい』、かつての高度成長期のように金融がひっ迫していた時期ならいざ知らず、異次元緩和で超低金利、借入れも容易になった環境下でも、こんな企業がいまだにあるとは驚かされた。
・『私がかつて、日本法人の人事部長を務めたグローバル企業T社では、経理をグローバルで一元管理しており、取引先への支払いは、当月末締め、翌々月末支払いのサイクルだった。グローバルでは圧倒的なブランド力を有した企業グループだったが、日本の、特に人事領域では知名度は高くなく、人材紹介会社の協力をさらに取り付けるために支払いを1ヵ月早めて翌月末支払いサイクルを提案したり、前払いしたりすることによる採用協力の強化を提案したが、私の力不足で実現できなかったことがある。 グローバル本社の説明によれば、「当社グループは極めて高いレベルの経営品質を実現しており、取引先企業の経営安定度は最高水準でなければならない。もし、翌々月末支払いサイクルでは遅くて不服だと言う取引先企業がいるのだったら、そのような財務体質が最高水準ではないと思われる取引先とは取引してはならない」…というものだった。 私は、そこに取引先使い捨ての考え方を感じた。良い取引関係を築いて、自社はもちろん、取引先の業績も改善するようなビジネスを創出するという観点はまったくなく、「優良企業でなければ取引はしない」と切って捨てるというのは、傲慢ではないだろうか』、持続可能性が強く求められる時代なのに、「グローバルでは圧倒的なブランド力を有した企業グループ」でもこんなにブラックな面があるというのは、さらに驚かされた。
・『迅速な支払いは取引先共生のメッセージ  一方、請求書を送付すると毎回、数日後には支払いをしてくれる日本企業もある。翌月末が支払い期限であり、請求書にも支払い期日として翌月末の日付を記しているにもかかわらず、だ。中小企業や零細企業で、請求書の処理数が少ないからできることだろうと思う読者もいるかもしれないが、全国200拠点を有する上場企業だ。 私は、同企業から早々の支払いを受けるたびに、同社から「共に成長しましょう」「共生しましょう」というメッセージを受け取っている気持ちになる。同社からは間違っても、「入金はできるだけ早めに、支払いはできるだけ遅めにして、当社だけの利益を追求しています」、「当社は貴社を食い物にしています」…などというメッセージは聞こえてこない。 こうした相手先企業のためには、さらに貢献したいという気持ちが自然と高まる。「取引先を大切にしましょう」、「お客さまを大事にしましょう」、「顧客第一主義」…などという標語をCMやHPで連呼しているケースよりも遥かに、その企業に大事にされていることを実感できる。 これと同じで、「社員を大切にしましょう」、「従業員を大事にしましょう」、「社員第一主義」…などと文字や言葉で表現することよりも、程度の大小はいかようであれ、利益を社員に還元する姿勢を見せること自体が、共生を実現するに違いない。言わずもがなだが、法律違反などは、もってのほかだ。 そして、社員だけではなく、取引先とも共生するモデルを創りたいと願うばかりだ。当社も取引先への支払いは、請求書を受け取ってから直ちに行うようにした。あまりに早く振り込んだので、支払いは月末日に行われるものと思い込んでいた企業から、「月末日に入金がないのですが」…という問い合わせを受けたこともある。柔軟な思考で、共生モデルを実現しなければならない』、請求書を日付管理する手間よりも、到着して内容チェックが済み次第、払っていく方が効率的なのかも知れない。いずれにしろ、筆者の指摘はもっともだ。

次に、9月11日付けダイヤモンド・オンライン「悪徳NPOの闇、社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178764
・『近年、急増する“ブラックNPO”。仕事に“やりがい”を求めたり、自己肯定感の低い若者たちが食い物にされているのだ。ボランティア精神や社会貢献意識という言葉を隠れみのにした、悪徳NPOの実態に迫った。 “やりがい”の名のもとに無償・過重労働も  若者をやりがい搾取するブラックNPOはたくさんあります NPOと聞いて、ボランティアを思い浮かべる人は多いだろう。NPOとは、「Non-Profit Organization」の頭文字を取ったものであり、「非営利組織」という意味だ。 NPOの存在意義は、社会貢献にあるといっても過言ではない。東日本大震災以降に流行した「ボランティア休暇」や「二枚目の名刺」などの言葉に代表されるように、社会貢献をしたいという人は少なくない。また、社会貢献はするべきだという風潮もある。 しかし、それを逆手に取った悪徳NPOも存在する。やりがいという名のもとに、無償で重労働を強いる。若者を使い捨て電池のごとく、目減りすれば新しいものへと交換。「インターン」といった言葉で、社会貢献を求める若者を集めて従事させるのだ』、「やりがい搾取するブラックNPO」とは確かにありそうな話だ。
・『そもそも、「非営利=お金もうけはダメ」ではない。誤解を恐れずに言えば、非営利とは「仲間内や出資者の中で利益を分配してはいけない」という意味である。売り上げから費用を除いたものが利益であるが、そもそも組織として、利益を出さなければ継続して活動などできない。つまり、NPOがお金をもうけること自体は合法なのだ。 しかし実際には、「非営利だからタダ働きしろ」と若者に強いるNPOが後を絶たない。 NPOに自ら進んで就職したがる若者はどんな動機を持っているのか、もう少し詳しく見てみよう。 「やりたいことができるならば、お金なんて関係ない。社会貢献って素晴らしいし、人のためになる仕事っていいですよね」(都内在住の大学3年生) 「地元にいても認めてもらえないし、新しい自分を見つけたい。必要とされる自分でありたい。『やりたいことがある』とか『社会貢献がしたい』といった言葉を使えば、自分の失敗人生の言い訳になるし…」(他県NPOに就職した20代女性) 今や社会貢献という言葉は、ファッションのような感覚で使われているのかもしれない。全てが許される免罪符的な役割もあるように感じる』、「『社会貢献がしたい』といった言葉を使えば、自分の失敗人生の言い訳になる」というのは、今はそう考えているのかも知れないが、やがて子供をもちカネが必要になれば、そんなことは言っていられなくなる筈だ。
・『「あなたが日本を救う」 理想論と現実の激しい落差  現代の若者は目立つことをためらい、何かにつけて空気を敏感に読み取って行動しようとする。自己肯定感が低く、自分への物足りなさと自己承認欲求との折り合い地点をNPOに求めているのだ。 「不登校支援のNPOにインターンで入ったんですが、交通費も出ない状況の中、週4日勤務でした。タダ働きだったし、今思えば最悪ですが、当時はやりがいを感じていました。『あなたの働きが日本を救うのよ』といった女性代表の言葉にだまされていたんでしょうね…」(都内出版社勤務の女性) 日本に約5万あるNPO法人だが、職員の多くは生活に窮している。もちろん、生活水準を満たすNPOもあり、たとえば世界の子どもの人身売買問題に取り組む「認定NPO法人かものはしプロジェクト」は、職員の平均年収を450万円と公表している。しかし、こうした一部のホワイトNPOが存在する一方で、業界の平均年収は300万円には程遠いといわれている。「28歳での結婚を機にNPOを辞めました。当時は月額で18万円ほど。『あなたがいなければ、この活動は継続できない』という言葉を信じて仕事をしていたんですが、さすがに生活が厳しくて営業職に転職しました」(民間学童保育NPOに勤務していた男性) だが、転職先でうまくいかずにNPOへ出戻る人もいる。 「転職先で、利益や結果ばかりを求める民間会社に嫌気がさしました。NPOで働く方が怒られることが少ないし、自分を求めてくれるので居心地がいいんですよね。もちろん、金銭や労働時間的な問題はありますけど…」(教育系NPOに勤務する男性) そもそも、NPOは経営資源が乏しいという事情がある。情熱だけで活動し、日々の活動に追われる中、資金・人材不足に陥ることはよくある話だ。気持ちや言葉で人をつなぎとめることが、結果的に新興宗教に近い空気感を生み出し、やりがい詐取(搾取?)が生まれるキッカケとなるのだ』、NPO業界の平均年収は300万円には程遠い、という低さには改めて驚いた。
・『ボランティア=無償 という認識を改めるべき  ボランティアとは、本来「自主性」を意味するものであり、イコール「無償」ではない。各分野の専門家が職業上の知識やスキルを生かして社会貢献する「プロボノ」といった活動も、れっきとしたボランティアである。 筆者の関わるNPOでは、資格取得者の実務経験を積む場としてボランティアを募集している。例えば、キャリアコンサルタントは、5年間ごとに更新が必要となるのだが、その間に実務経験を積む場があれば、自身の更新ポイントとして加算することができるのだ。結果、それは、資格更新費用の削減となり、個人におけるインセンティブとなるのである。 何かのジャンルのプロフェッショナルたちが、本業とは別にボランティア活動をしたり、自身のキャリアアップのためにボランティアの場を活用したりするケースと、何も知らない若者が、「あなたが頼りだ」「あなたが日本を救っている」などという美辞麗句に惑わされて無償での貢献を強いられたり、安月給でこき使われるケースは、本質的にまったく別だ。 社会貢献のためという美しい言い訳に終始するのではなく、NPO経営者側も努力が必要である。そして、それらを求める若者側も多様な視点でNPOを見極めなければならない。価値あるものをお互いが共有できるシステムづくりが重要であって、「ボランティアなんだから無償で当然」と開き直り、一方的な善意の搾取をしないようにすることが大切だ。 NPOの世界がこれからも発展し、もっと世の中に必要とされるためには、まだまだ改善の余地がある。筆者も含めNPOに関わる人間は、無償の愛や犠牲の精神だけでは組織が成り立たないことを肝に銘じなければならない』、その通りで、強く同意する。

第三に、9月19日付けダイヤモンド・オンライン「なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/180001
・『街を歩けば、オフィスや商業施設、工事現場など、いたるところで目にする警備員の存在。多くの人が知っているようで知らない警備ビジネスの実態を、仙台大学体育学部准教授で、著書『警備ビジネスで読み解く日本』(光文社新書)がある田中智仁氏に聞いた。 2018年7月、警察庁が公表した「平成29年における警備業の概況」によると、2017年12月末時点で日本全国の警備会社数は9548社で、警備員数は55万2405人。ここ数年、わずかではあるが増加傾向にあり、警備業界の拡大は続いているといっていいだろう。 日本の警備会社の草分け的存在である「日本警備保障」(現・セコム)が設立されたのは1962年、高度経済成長期の中盤だった。日本人の働き方が大きく変化し、自営業者と家族従業者が減少、代わりに被雇用者が増えて、サラリーマンが一般化した時代だ。当時の警備業務の実態について、田中氏はこう説明する。 「当時の主な警備業務は、オフィスビルや工場などの施設警備と巡回警備でした。しかし、守衛や宿直は専門的な警備技術を体得していない人がほとんどで、警備体制は脆弱。そこにビジネスチャンスが潜んでいたのです」(田中氏、以下同) 警備会社の存在が注目されるようになったのは、1964年の東京オリンピックで、選手村などの警備に当たったことによる。さらに翌年にはテレビドラマ『ザ・ガードマン』が大ヒットしたことで、警備業という仕事の知名度は急上昇したといわれている』、警備員数が55万人とはれっきとした一大産業だ。
・『「人や財産を守る」警備員なのに約4割が高齢者という矛盾  現在、日本の警備会社の業務は警備業法第2条で、大きく4つに分けられている。施設を守る1号警備業務、不特定多数の人や車両を誘導する2号警備業務、貴重品や危険物を運ぶ3号警備業務、依頼者の身辺を守る4号警備業務だ。 前述のように、警備業界の規模は拡大し続けているが、課題も多いという。警備業務の目的は「人の生命、身体、財産などを守る」ことだが、現状では警備員の約4割が高齢者であると田中氏は指摘する。 「なぜ高齢者が多くなるかといえば、『守衛の系譜』と『年金問題』が挙げられます。もともと施設警備を担っていた守衛は、多くが定年退職者の再雇用。高齢の人でも対応できる業務内容が想定されていたので、警備員へ置き換えられても、ほぼそのまま存続しています。また、年金だけでは生活できない高齢者が急増していますので、人手不足が深刻な警備会社がその受け皿になり、雇用せざるを得なくなっているのです」 また他の業界に比べて、労働条件が劣悪といわれており、契約内容や会社によって細かな違いはあるものの、長時間労働、昼夜逆転の生活を強いられている警備員も少なくないという。 「約9割の警備会社が中小企業で、つい5年ほど前の調査では、主に交通誘導の警備業務を行なっている警備員の約半数が社会保険未加入という実態も明らかになりました。人手が足りてないため、休暇も取りづらく、心身の健康を害する警備員も潜在的にも多いと予想されます。給与水準には徐々に改善の兆しが見えつつありますが、改善すべき点は多い」 田中氏が指摘するように、警備業界は企業規模、給与水準、健康状態の格差が大きい。この格差をいかにして解消していくかが問われていくことになる』、「主に交通誘導の警備業務を行なっている警備員の約半数が社会保険未加入」というのは酷い話だ。社会保険庁も真剣に指導・摘発すべきだ。
・『AIやロボットの進歩だけでは警備員はますます窮地に  「将来的にはAIや警備ロボットなどの技術の進歩によって、そもそも警備員の存在すら不必要になるのではないか」と思われる読者もいるかもしれない。このもっともな疑問について田中氏は以下のように答える。 「AIや警備ロボットの方が人を雇うよりもコストが安くなれば、人的警備の淘汰が進むことが予想されます。ただ、警備会社の多くは中小企業のため、コスト面からAIや警備ロボットを導入できない可能性が高い。もし一部業務で導入したとしても、それらのコストと同等になるように警備員の給料を下げることが予想され、生活に困窮する人が続出することもあり得るし、当然ながら警備の質の低下も避けられません」 田中氏によれば、現在、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、AIや警備ロボットを活用した警備方法が試行されているが、警備員の専門性を伸ばそうとする動きは見られないという。 これまで警備業界では、業務別教育を行なって警備員の専門性を向上しようと取り組んできた。ところが現在は、AIや警備ロボットにばかり熱心に取り組んでおり、警備員に対してはこれまでとは真逆の方策を取っているというわけだ。このままでは、「専門性が低くて貧しい警備員」と「高性能なAIや警備ロボット」の二極化が進むことは避けられないと田中氏は危惧する。 ちまたでは「AIに仕事を奪われる」ことが話題となっているが、警備業界はその最たる業種の1つともいえる。多くの他業種と同様、合理化が進む時代にあって、警備ビジネスも大きな転機を迎えているのかもしれない』、AIとまではいかないが、かなり以前からセコムなどの大手は機械警備に取り組んでおり、省力化につながった筈だ。不特定多数の人や車両を誘導する2号警備業務でも、交通量が少ない地方の道路では、片側通行の誘導を機械にさせている。ただ、都会の交通量が多い道路では、やはり人間に頼らざるを得ないのではなかろうか。
なお、明日から火曜日まで更新を休むので、水曜日にご期待を!
タグ:ブラック企業 ダイヤモンド・オンライン 山口 博 働き方改革 やりがい搾取 (その9)(10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない、悪徳NPOの闇 社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て、なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか) 「10社中7社が労働搾取!ブラック企業は減っていない」 過重労働、残業代未払い、労務関連制度の不整備といった、労務に関する不適切事例が後を絶たない 労働基準関連法令に違反した企業数は、全国で471社 この半年間で減少するどころか、1.5倍に増大 労働基準監督署の臨検により違反が発覚した事業場数は全国で9万2034件、臨検事業場数の、実に69%に上る 臨検すれば10社のうち7社で違反が発覚 経営者の意識が依然、「社員は使い捨てるもの」という労働搾取的発想から抜け出せていない れらの発言には、法令順守の意識を垣間見ることすらできないし、そもそも謝罪すべき相手は労基署ではなく労働者だ。社員は労働搾取して使い捨てすればいいという経営者の意識を感じ取ってしまう 「労基署から指摘された後で未払い残業代を支払った方が、財務経理上のネガティブインパクトが少ないので得策だ」 社員からできる限り搾取をして、財務体質を良くしようという利益至上主義である 労働搾取は、れっきとした法律違反 仮に法律違反を犯していなくても、労働者と共に成長して生きていくという共生の意識がみじんも感じられないことが問題だ 「入金は早く、支払いはなるべく遅く」取引先使い捨ての実態 グローバルでは圧倒的なブランド力を有した企業グループ 翌々月末支払いサイクルでは遅くて不服だと言う取引先企業がいるのだったら、そのような財務体質が最高水準ではないと思われる取引先とは取引してはならない 「優良企業でなければ取引はしない」と切って捨てるというのは、傲慢 迅速な支払いは取引先共生のメッセージ 「悪徳NPOの闇、社会貢献の美名で若者を月給18万で酷使しポイ捨て」 ブラックNPO “やりがい”の名のもとに無償・過重労働も 社会貢献をしたいという人は少なくない。また、社会貢献はするべきだという風潮もある それを逆手に取った悪徳NPOも存在する。やりがいという名のもとに、無償で重労働を強いる。若者を使い捨て電池のごとく、目減りすれば新しいものへと交換 「非営利=お金もうけはダメ」ではない NPOがお金をもうけること自体は合法 「非営利だからタダ働きしろ」と若者に強いるNPOが後を絶たない 「地元にいても認めてもらえないし、新しい自分を見つけたい。必要とされる自分でありたい。『やりたいことがある』とか『社会貢献がしたい』といった言葉を使えば、自分の失敗人生の言い訳になるし…」 全てが許される免罪符的な役割もあるように感じる 「あなたが日本を救う」 理想論と現実の激しい落差 自己肯定感が低く、自分への物足りなさと自己承認欲求との折り合い地点をNPOに求めている 日本に約5万あるNPO法人だが、職員の多くは生活に窮している 業界の平均年収は300万円には程遠いといわれている 新興宗教に近い空気感を生み出し、やりがい詐取(搾取?)が生まれるキッカケとなる ボランティア=無償 という認識を改めるべき 「なぜ警備ビジネス業界は拡大が続くのにブラック企業だらけなのか」 『警備ビジネスで読み解く日本』(光文社新書) 田中智仁 2017年12月末時点で日本全国の警備会社数は9548社で、警備員数は55万2405人 「人や財産を守る」警備員なのに約4割が高齢者という矛盾 警備業法第2条 施設を守る1号警備業務 不特定多数の人や車両を誘導する2号警備業務 貴重品や危険物を運ぶ3号警備業務 依頼者の身辺を守る4号警備業務 「なぜ高齢者が多くなるかといえば、『守衛の系譜』と『年金問題』が挙げられます 主に交通誘導の警備業務を行なっている警備員の約半数が社会保険未加入 AIやロボットの進歩だけでは警備員はますます窮地に かなり以前からセコムなどの大手は機械警備に取り組んで
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通商問題(その4)(米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ、米中貿易戦争 全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由、米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない) [世界情勢]

通商問題については、7月14日に取上げた。今日は、(その4)(米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ、米中貿易戦争 全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由、米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない)である。

先ずは、元・経済産業省米州課長で中部大学特任教授の細川 昌彦氏が8月28日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/062500226/082700005/?P=1
・『激しさを増している貿易戦争が、トランプ大統領の強硬姿勢と中国の手詰まり感から早期の解決も見通せないでいる。だが、注意すべきは事態がトランプ大統領主導の「貿易戦争」から議会主導の「経済冷戦」へと深刻化している点だ。 米中の関税の応酬による貿易戦争は第2幕を迎えた。8月23日に双方が160億ドル相当の輸入品に25%の追加関税を発動した。9月にはさらに米国は2000億ドル相当、中国は600億ドル相当の輸入品に追加関税を課す構えだ。 貿易戦争は激しさを増しており、トランプ大統領の強硬姿勢と中国の手詰まり感から早期の解決も見通せないでいる』、想像以上に事態は深刻なようだ。
・『8月22日、ワシントンで行われた事務レベル協議も何ら進展がないまま終わった。これは協議前から当然予想されていた結果だ。元々、この協議は中国商務次官が米国の財務次官と協議を行うという変則の形となった。中国側の発表では「米国の要請で訪米する」とのことだったが、これは中国特有のメンツを守るための発表で、実情は違う。米中双方の思惑はこうだ。 <米国側>トランプ大統領としては中間選挙まではこの対中強硬姿勢を続けている方が国内的に支持される。今、何ら譲歩に動く必要がない。しかも、米国は戦後最長の景気拡大で、余裕綽々で強気に出られる。 <中国側>習近平政権としては、対米強硬路線が招いた今日の結果に国内から批判の声も出始めており、それが政権基盤の揺らぎにつながることは避けたい。対米交渉の努力を続けている姿勢は国内の批判を抑えるためにも必要だろう。 また、貿易戦争による米国経済へのマイナス影響で米国国内から批判が出て来るのを待ちたいものの、時間がかかりそうだ。しかも、中国経済の減速は明確で、人民元安、株安が懸念される。金融緩和、インフラ投資での景気てこ入れも必要になっている。米中貿易摩擦の経済への悪影響はできれば避けたい。 このように、事態打開へ動く動機は米国にはなく、中国にある。 ただし、そこに中国のメンツという要素を考えると、取りあえず次官級で落としどころに向けての探りを入れるというのが今回の目的だ。 トランプ政権としては、この時点で本気で協議を進展させるつもりは毛頭ない。本来の交渉者である米通商代表部(USTR)はメキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)協議のヤマ場でそれどころではない。所管外でも対中強硬論者の財務次官に、人民元問題も持ち出すことを口実に、協議の相手をさせた、というのが実態だ。 「11月、APEC(アジア太平洋経済協力)、G20(20カ国・地域)の際、米中首脳会談か」といった米紙報道も、そうした一環の中国側の観測気球だろう。 中国としては落としどころへの瀬踏みをしていき、ある程度見通しが立った段階で、切り札の王岐山副主席が事態収拾に乗り出す、とのシナリオを描きたいのが本音だろう』、なるほど。
・『米議会主導の「国防権限法2019」に透ける対中警戒の高まり ただし、こうした米中双方の追加関税の応酬という貿易戦争にばかり目を奪われていてはいけない。米国議会が主導する、対中警戒を反映した動きにも注目すべきだ。 8月13日にトランプ大統領が署名した「国防権限法2019」がそれだ。 かつて私は、「米国」という主語をトランプ氏とワシントンの政策コミュニティを分けて考えるべきで、後者が“経済冷戦”へと突き進んでいることを指摘した・・・これは米国議会の超党派によるコンセンサスで、現在のワシントンの深刻な対中警戒感の高まりを反映したものだ。トランプ大統領は短期で「ディール(取引)」をするために、その手段として追加関税という「こん棒」を振りかざすが、それとは持つ意味が違う。 中国の構造的懸念を念頭に、貿易以外の分野も広く規制する。昨年12月に発表された「国家安全保障戦略」で明らかになった、現在の米国の対中観を政策に落とし込んだものだ。 議会の原案に対してトランプ政権はむしろ緩和のための調整を行って、大統領署名に至った。 メディアで特に報道されているのは、そのうちの対米投資規制の部分で、中国を念頭に置いて、対米外国投資委員会(CFIUS)による外資の対米投資を厳格化する。先端技術が海外、とりわけ中国に流出することを防ぐためだ。 このCFIUSによる対米投資の審査は、既に2年前から権限強化を議会の諮問機関から提言されている。実態的にもトランプ政権になってからこれまでに11件の対米投資が認められなかったが、そのうち9件が中国企業によるものであった。これをきちっと制度化するものだ。 そのほかこの法案には、中国の通信大手ZTEとファーウェイのサービス・機器を米国の行政機関とその取引企業が使用することを禁止する内容も入っている。 また国防分野では、国防予算の総額を過去9年間で最大規模の79兆円にする、環太平洋合同演習(リムパック)への中国の参加を認めない、台湾への武器供与の増加などの方針が示された。 ここまでは日本のメディアでも報道されているが、今後日本企業にも直接的に影響する大事な問題を見逃している。それが対中輸出管理の強化だ』、「ワシントンの政策コミュニティが“経済冷戦”へと突き進んでいる」というのはやっかいなことだ。
・『メディアが見落とす「対中輸出管理の強化」  輸出管理については、これまで国際的には多国間のレジーム(枠組み・取り決め)があった。これに参加する先進諸国は、大量破壊兵器や通常兵器に使われる可能性のあるハイテク製品の輸出については規制品目を決めて各国が審査する仕組みだ。こうしたこれまでの仕組みが中国の懸念に十分対応できていないというのだ。 キーワードが「エマージング・テクノロジー」である。「事業化されていない技術」という意味であろう。例えば、AI(人工知能)や量子コンピューターなどの技術がそうだ。こうした技術は未だ製品として事業化されていないので、現状では規制対象にはなっていない。しかし、そういう段階から規制しなければ、将来、中国に押さえられて、軍事力の高度化につながるとの警戒感から、規制対象にしようというものだ。今後、具体的にどういう技術を規制すべきか、商務省、国防省などで特定化されることになっている。 問題はこの規制が米国だけにとどまらないということだ。 当初、米国は独自にこの規制を実施する。しかし米国だけでは効果がない。そこで、本来ならば国際レジームで提案して合意すべきではあるが、それは困難で時間がかかる。そこで当面、有志国と連携して実施すべきだとしている。その有志国には当然、日本も入るのだ。 今後、日米欧の政府間で水面下での調整がなされるだろうが、日本企業にも当然影響することを頭に置いておく必要がある。 またこの法案とは別に、商務省は中国の人民解放軍系の国有企業の系列会社44社をリストアップして、ハイテク技術の輸出管理を厳しく運用しようとしている。中国の巨大企業のトップ10には、この人民解放軍系の国有企業である「11大軍工集団」が占めており、民間ビジネスを広範に展開している。米国の目が厳しくなっていることも念頭に、日本企業も軍事用途に使われることのないよう、取引には慎重に対応したい。 かつて東西冷戦の時代には「対共産圏輸出統制委員会」による輸出管理(ココム規制)があった。一部に「対中ココム」と称する人もいるが、そこまで言うのは明らかに言い過ぎであることは指摘したとおりだ・・・ただ一歩ずつそうした「冷戦」の色合いが濃くなっているのは確かである。「冷戦」とは長期にわたる持久戦の世界である。目先の動きだけを追い求めていてはいけない』、「エマージング・テクノロジー」まで対象にしようとは恐れ入った。ハイテク技術の輸出管理厳格化に日本も付き合えと強要してくるとすれば、大変だ。
・『日本が向き合うべき本質がそこにある  こうした対中警戒感は、ワシントンの政策コミュニティの間ではトランプ政権以前からあった根深い懸念であった。しかし、習近平政権が打ち出した「中国製造2025」が「軍民融合」を公然とうたって、軍事力の高度化に直結する懸念がより高まったのだ。従って、こうした動きは、追加関税のような中国と「取引」をするような短期的なものではなく、構造的なものだと言える。 トランプ大統領による関税合戦よりも、もっと根深い本質がある、米国議会主導の動きにこそ目を向けるべきだろう。日本がそれにどう向き合うかも問われている』、中国も「中国製造2025」などで浮かれ過ぎていたのは事実だ。トランプの関税合戦よりも、ワシントンの政策コミュニティの動きに注目すべきというのは、目からウロコだ。
・『個別事件に引き続き要注意  最後に、前出の7月11日のコラムにおいて、「今後、個別事件に要注意」と指摘したところ、その後、FBI(米連邦捜査局)による摘発が相次いでいる。7月中旬には元アップルの中国人エンジニアが自動運転に関する企業機密を中国に持ち出そうとした事件、8月初旬には元ゼネラル・エレクトリック(GE)の中国国籍のエンジニアが発電タービンに関する企業秘密を窃取した事件などだ。 悪い予想が的中して複雑な気持ちではあるが、ハイテクの世界では、ある意味、日常的に起こっていてもおかしくない。それを捜査当局が摘発するモードになってきていることは今後も要注意だ。 トランプ氏の言動にばかり目を奪われていてはいけない。米国議会、情報機関、捜査機関など、「オール・アメリカ」の動きが重要になってくる。それが米国だ』、さらに注目すべき対象が「オール・アメリカ」に広がった。これはやはり大変だ。

次に、みずほ総合研究所 専務執行役員調査本部長/チーフエコノミストの高田 創氏が9月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「米中貿易戦争、全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178981
・『米中貿易戦争のインパクト 中国の受ける“打撃”は米国の3~4倍  下記の図表1は、米中間の貿易が20%減少した場合の各国GDPへの影響を示すみずほ総研の試算である。それによると、米中が輸入制限をした際にGDPが最も大きな影響を受けるのは中国だ。そのマイナスの影響幅は米国が受けるGDPへの影響の3倍から4倍近い。 米中貿易戦争の構造はチキンゲームの様相を呈するが、より深刻な影響は中国に及ぶ。このため今後の対決シナリオを考えると、中国側が現実的な対応を先んじて行いやすい。 こうした試算を中国、米国双方が水面下で行いながら、両国は「次の一手」を検討する状況にあると考えられる』、中国もいまのところ、強気に出ているが、「中国の受ける“打撃”は米国の3~4倍」というのでは、確かに「現実的な対応」に転じざるを得ないのかも知れない。
・『米中間の「貿易ギャップ」中国は同額の報復はできない構造に  図表2は米中間の貿易の現状だ。これを見ると、中国から米国への輸出は米国から中国への輸出の4倍近い水準にある。図表1の試算で、米中間の貿易縮小によるGDPへのマイナスの影響が、中国は米国の3~4倍近いとした背景にあるのは、ここに示された米中間の貿易ギャップの存在だ。 米国は6月に中国製品に500億ドルの制裁措置を公表し、その後、追加制裁の対象を2000億ドルへ拡大する方針を示している。 それに対して、中国は7月6日に報復関税を発動している。ただし図表2で明らかなのは、米国の制裁に対し、中国は同じ金額で報復することが不可能なことだ。 米国から中国への輸出は1300億ドルしかないので、中国はそもそも2000億ドルの報復に同額で対応することはできないのだ』、なるほど。
・『中国の残る選択肢は輸入拡大と市場開放  中国は今年7月の対抗措置で米国の主力輸出品である農水産物に焦点を当てた報復をしているが、米中間の貿易ギャップのことを考えれば、対応策は、むしろ、米国の製品をいかに輸入するかの観点が重要になる。つまり米国の対中輸出の水準をもっと上げ、中国側が米製品に高関税賦課などの措置をとれば米国経済に影響がより大きく出るような構造にして、米国がむちゃな制裁措置がとれないようにするのだ。 中国国内でも、7月6日の対抗措置については見直しの議論が出ているとされる。 過去、中国と同様に深刻な対米貿易不均衡を抱えて、通商摩擦を経験した日本がとった対応策は、米国への直接投資で現地生産を拡大し、輸出を減少させる輸出代替だった。中国にも日本と同様の対応をする選択肢もある。しかし、今日、米国政府が中国企業の米国でのM&Aを含めた投資を抑制する立場をとっている以上、中国にとって日本がとったような直接投資での輸出代替策は現実的でない。 次の図表3は米中投資の推移だが、米国から中国への投資額は、中国から米国への投資額と2倍以上の乖離がある。米中貿易戦争をエスカレートさせず、また今後の米中通商関係を展望すれば、いかに米国の対中投資環境を拡大させるかが重要になるだろう』、ただ、これらの中国側の対応策は、中長期的なものであって、当面には役立たない。
・『米中間でとり得る3つのシナリオ、当面、中国は現実的な歩み寄りか  世界経済は引き続き拡大基調にあるが、最大のリスクは、米国を中心とした保護主義に伴う先行きの不透明感の強まりだ。その中でも最も影響が大きいのは米中貿易戦争の行方ということははっきりしている。 下記の図表4は、米中間の貿易関係の今後の展望を示したものだ。
(1)早期解決シナリオ(・中国が米国の要求を受け入れる  中国経済への影響を懸念し米国製品の輸入を拡大米国の対中直接投資も受け入れを拡大 ・米国は対中制裁を解除し、対立解消)
(2)貿易摩擦激化シナリオ(・米国は輸入制限を拡大、投資制限も 追加関税の対象を対中輸入全体に拡大、中国の対米直接投資の制限も発動 ・中国は抵抗措置を発動し、こう着状態に 米国製品600億ドルと制裁の追加対象に)
(3)全面対決シナリオ(・中国は追加関税に加え、質的対抗措置 米企業の対中投資・M&Aを制限、輸入検査の厳格化などの非関税障壁、米国製品の不買運動 人民元安誘導、米国債売却などで対抗 ・米国は制裁強化を実施、対立が長期化)
 両国の選択次第では、摩擦が激化したり、全面対決に発展したりする可能性もある。 ただし、中国側はより深刻な影響を受けるため、現実的な対応を模索しそうだ。 また、トランプ政権も11月の中間選挙前に、中国側の譲歩を引き出して「利食い」のように通商面での成果を得ようとするインセンティブもあるだろう。 筆者なりに展望すれば、上記の(1)早期解決シナリオのような、単純な早期解決にはなりにくいだろう。 ただし、中国が、水面下で、輸入拡大や対中投資受け入れなど、米国に対して歩み寄りを示唆するメッセージを送る可能性があるのではないか。米中間選挙をにらみながらの米中の動きに注目したい』、その通りなのだろう。
・『米中の通商摩擦は2020年代まで続く構造  ただし、長期的に見れば、3つのシナリオの中では、対決シナリオの構造が基本的には続くと考えられる。 中国国内では習近平主席が、2期目の任期である2022年を超えて、2020年代後半まで影響力を持つと見込まれる。また同主席が掲げる「中国製造2025」は、ハイテク分野までの覇権を中国が確保しようという戦略的なものだ。 それだけに、お互いが強力な軍事力や経済力を持っていたアテネとスパルタが長く覇権争いを続けた「トゥキディデスの罠」のように、米中の貿易戦争は、超大国の頂上決戦、覇権争いの様相になり、長期化しそうだ』、これは第一の記事とも平仄が合う。やはり、長い目でみていくべきなのだろう。

第三に、9月10日付け日経ビジネスオンラインが掲載した日経ビジネスの副編集長司会による、元日経新聞記者の鈴置 高史氏と元東京銀行員で愛知淑徳大学の真田幸光教授との座談「米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/090700192/
・『やくざの因縁と同じ  司会:米中貿易摩擦の展開をどう読みますか。「おとしどころ」は?
真田:米国は中国をいたぶり続けます。「おとしどころ」などありません。台頭する中国を抑えつけるのが目的ですから。これは貿易摩擦ではなく、覇権争いなのです。「終わり」のない戦いです。
鈴置:米国は中国に対し具体的な要求を掲げていません。中国が何をどう譲歩したら25%に引き上げた関税を元に戻すのか、明らかにしていない。やくざが因縁を付けるのと似ています。
真田:まさに仰る通りです。理屈をこねて相手を脅しているのです。もちろん、トランプ(Donald Trump)大統領は「知的財産権の問題――中国が米国の技術を盗んでいるから関税を上げた」と言っています。実際、中国の盗みはひどい。米国や日本、欧州の先端技術を平気で無断借用する。さらにそれを軍事力強化にも使う。そして無断借用どころか、堂々と自分の特許として出願する。知財の問題で米国が怒り心頭に発し、中国の技術窃盗をやめさせようとしているのは事実です。でも、中国がどう行動したら「盗むのをやめた」と認定されるのか。米国が「まだ、中国は盗みをやめない」と言えば、関税を戻さなくていいわけです。「中国をいたぶり続ける」ことに真の目的があるのです』、何たることだろう。
・『基軸通貨にはさせない トランプ政権は習近平政権を倒すまでいたぶる? 
真田:そこまでやる必要はありません。中国の国力を削いで行けばいいのです。もちろん、政権が変わることで中国の国家運営のやり方が変わるというのなら別ですが、それは期待できない。
鈴置:人民元は6月半ばから売られ、8月15日には1人民元=7・0を割るかというところまで安くなりました。人民元を暴落させるつもりでしょうか。
真田:米国がやろうと決意すればできます。基軸通貨ドルに、力のない人民元が挑んでも叩き返されます。ただ米国は人民元を暴落させる必要はありません。「少しの脅しで人民元は揺れた。そんなボラティリティの高い通貨が使えるのか。基軸通貨と言えるのか」とマーケットに思わせれば十分なのです。米国とすれば、人民元が基軸通貨に育たないよう、貶め続ければいいのです。
鈴置:暴落させなくとも、中国は外貨準備の減少に悩むことになります。人民元売りに対抗するために、外準のドルを恒常的に吐かせられるからです。2018年の上半期、中国の経常収支は赤字に陥りました。海外旅行ブームでサービス収支の赤字が急増したためです。そのうえ、米中摩擦で貿易黒字も減って来るでしょうから、この面からも外準は目減りします』、人民元安は中国側の操作との見方があったが、米国が仕掛けたとはあり得る話だ。
・『上海株は落とす 株式市場は?
真田:為替と異なり、米国は中国の株式市場には甘くないでしょう。中国企業はここで資金調達して急成長してきた。だから、上海株はさらに落としたいはずです。もちろん、米系金融機関は政府の意向を組んで早くからポジション調整していた。それを見て他の国の金融機関なども追従――売りに出た構図です。金融の戦いなのですね。
真田:中国は「一帯一路」計画とAIIB(アジアインフラ投資銀行)のセット商品化を通じ、世界の基軸通貨となるよう人民元を育ててきました。軍事力を除き、最も強力な武器は通貨です。米国は中国に通貨の覇権を握らせるつもりはありません。だから人民元を叩くのです。貿易を名分に金融戦争を仕掛け、人民元はヘナチョコ通貨だと知らしめる。するとマーケットは「中国危し」と見て、株も落ちる。こうして実体経済も悪化する。その結果、中国は米国に歯むかう軍事力を持てなくなる、というシナリオです』、「米系金融機関は政府の意向を組んで早くからポジション調整していた。それを見て他の国の金融機関なども追従」というのも、大いにありそうだ。
・『工場を取り返す  鈴置:「トランプは安全保障を理解していない」と批判する人が多い。TPP・・・は中国への投資に歯止めをかけ、軍事力拡大を抑止するのが目的。というのに、参加を取りやめたからです。 しかしトランプ大統領にすれば「TPPなんてまどろっこしい方法をとらなくても、人民元を揺さぶればもっと簡単に目的を達成できるじゃないか」と反論したいでしょうね。真田先生の指摘した「中国へのいたぶり」。トランプ大統領の参謀であるナヴァロ(Peter Navarro)国家通商会議議長の書いた『Crouching Tiger』(2015年)が予言しています。邦訳は『米中もし戦わば』です。この本のテーマは中国の台頭を抑え、米国の覇権を維持するには何をなすべきか――・・・「 取るべき方策は明らかに、中国製品への依存度を減らすことだと思われる。この方策によって中国との貿易の「リバランス」を図れば、中国経済とひいてはその軍拡は減速するだろう。 アメリカとその同盟諸国が強力な経済成長と製造基盤を取り戻し、総合国力を向上させることもできる」。一言で言えば「どんな手を使ってでも、中国に取られた工場を米国と同盟国は取り返そう。それだけが中国に覇権を奪われない道なのだ」との主張です。トランプ政権が発動した一部の中国製品に対する25%の高関税に対しては「中国製品の輸入が止まって米国の消費者や工場が困るだけ」と冷笑する向きがあります。しかし、真田先生が予想したように、この高率関税が長期化すると世界の企業が判断すれば当然、それに対応します。企業はバカではないのです』、ナヴァロ国家通商会議議長による覇権維持のための提言が下敷きになっていたとは・・・。
・『「中国生産」から足抜け対応策は?  鈴置:別段、難しい話ではありません。米国向けの製品は中国で作るのをやめ、代わりに中国以外で生産すればいいのです。中国以外で生産能力が不足するというなら、能力を増強すればいい。ロットの少ない製品は中国での生産と米国での販売をやめてしまう手もあります。中国の根本的な弱点は「中国でしか作れないもの」がないことです。日経新聞は8月末から相次ぎ、企業のそうした対応を報じています。電子版の見出しは以下です。「日本企業、高関税回避へ動く 中国生産見直し 米中摩擦への対応苦慮」(8月28日) 「米フォード、中国製小型車の輸入撤回 25%関税で」(9月1日) 「信越化学、シリコーン5割増産 米中摩擦受け分散投資」(9月3日) 米中経済戦争が長期化すると判断した企業が出始めたのです。そもそも中国の人件費の高騰で、組み立て産業の工場は中国離れが起きていました。中国での生産回避は大きな流れになる可能性があります』、確かに組み立て産業の工場は中国離れが起きていたところに、関税戦争が追い打ちをかけたのだろう。
・『「いたぶり」は米国の総意  真田:予言書というより、大統領の教科書でしょうね。ただ、「中国へのいたぶり」は、トランプ政権の特殊性というよりは米国の総意であることを見逃してはなりません。民主党議員からも本件に関しては反対の声は出ません。議会も「中国へのいたぶり」を支持しています。中国から政治献金を貰い、魂を奪われてきた議員も多いというのに。中国で稼いできたウォール街――金融界も文句を言いません。マーケットとしての中国は大事ですが、自分たちの飯のタネであるドルの優位を人民元に脅かされるとなれば話は別なのです。人民元が基軸通貨になれば中国の銀行にやられてしまいます。
鈴置:最近、米国で「中国スパイの暗躍」が話題になっています。5年前に自身の補佐官が中国のエージェントだったとFBIから指摘され、辞任させた上院議員の話が7月下旬に突然、明らかになりました』、「いたぶり」は米国の総意というのは上記記事での指摘と同じだ。
・『お前はスパイか  8月24日には米議会の米中経済安全保障問題検討委員会が有力シンクタンクや大学に中国が資金を提供し、影響力の行使を図っているとの報告書を発表しました。『China’s Overseas United Front Work』です。産経新聞の「『中国共産党が米シンクタンクに資金提供』 米議会委が報告書発表」(8月26日)が内容を報じています。中国は1949年の建国当時から100年かけて米国を打倒し世界を支配する計画を立てていた、と警告する本が2015年に米国で出版されました・・・『China 2049』というタイトルで邦訳も出ています。CIAの職員だった同氏は親中派から転向。この本では、米国の中国研究者の多くが中国共産党の思いのままに動かされていると暴露しました。日本のある安保専門家は今や、トランプの中国叩きを批判すれば「お前は中国のスパイか」と非難されかねず、米国の親中派は動きが取れなくなっていると指摘しています』、米国の親中派の苦境が手に取るようだ。
・『今、抑え込むべき敵  米国の通貨攻撃を中国がやめさせる手はあるのでしょうか。
真田:2つあります。まず、世界に向け「米国が世界の通商を破壊する」と訴えることです。G20などでもう、やっています。でも、トランプ大統領はそんな非難にへこたれる人ではありません。
鈴置:むしろ「中国が弱音を吐いている」とほくそ笑むでしょうね。それに世界には中国の横暴に反感を持ち、中国が叩かれるのを待つ空気があります。中国の意見を支持する人はあまりいないでしょうし、下手に賛同すれば「中国のスパイか」と疑われてしまいます。
真田:もう1つの手は、イラン問題で米国と協力することにより、中国への圧迫を緩めて貰う手です。トランプ政権は「中国いたぶり」以上に「イラン潰し」を重視しています。実はロシアもその手を使っています。7月16日にヘルシンキで開いた米ロ首脳会談の後、トランプ大統領がロシアに極めて甘い姿勢を打ち出し、共和党からも非難されました。私の聞いたところでは、プーチン大統領から「イランで協力することはやぶさかではない」と耳打ちされたからのようです。中国も「イランで協力する」と持ちかける手があります。トランプ大統領は中国へのいたぶりを緩める一方で、国民には「対中貿易赤字が減った」とか「雇用が戻った」などと説明するでしょう。ただ、それで「中国へのいたぶり」を本気でやめるわけではない。時により強弱はあっても、米国は圧迫を続けると思います。中国は「今ここで、抑え込んでおくべき国」なのです。日本に対してもそうでした。対日貿易赤字が増えると、「日本は米国製品を不公正な手で締め出している」「日本人は働き過ぎ。アンフェアだ」など、ありとあらゆる難癖を付けて日本の台頭を抑え込もうとしたではありませんか。米国は可能なら、中国も日本同様に「生かさず殺さず」の状態に持って行き、おいしい部分だけ吸い上げる仕組みを作っていくでしょう』、確かに米国にはこうした長期戦略があるのかも知れない。恐ろしいことだ。
・『「宇宙での戦い」が始まった  「中国へのいたぶり」が今年夏になって始まったのはなぜですか? 
鈴置:中国の金融は今、いくつもの不安を抱えています。ドルが利上げに向かい、途上国に入りこんでいた外貨が抜け出しやすくなっている。中国企業が世界同時不況の際――2008年に発行したドル建ての債券が発行後10年たって償還期を迎えている。少子高齢化で生産年齢人口の比率が減少に転じ、バブルが崩壊しやすくなっている。
真田:ご指摘通り、金融面で「攻めやすい」状況になっています。ただ私は、米国が今「中国いたぶり」に乗り出した最大の理由は「制宙権問題」だと思います。中国が宇宙の軍事利用に拍車をかけています。これに対しトランプ政権は宇宙軍の創設を掲げ全面的に対抗する構えです。中国の「宇宙軍」を抑え込むのにはやはり、中国経済を揺らすことが必須です。現在、米ロが中軸となって国際宇宙ステーションを運営しています。これにクサビを打ち込む形で中国が独自の宇宙ステーションを運営しようとしています・・・米国とすれば、軍事的な優位を一気に覆されかねない「中国の宇宙軍」は何が何でも潰す必要があるのです。マーケットはそうした米政府の意図を見抜いて中国売りに励んでいるわけです』、なるほど。
・『覇権に挑戦する国は「宙づり」に  それにしても、米中の戦いに「おとしどころ」がないとは、目からうろこのお話でした。
鈴置:我々は――日本人は対立した人同士は話し合って妥協点を見いだすもの、あるいは見いだすべきだと思い込んでいる。だから新聞記事は、何らかの解決策があるとの前提で書かれがちです。でも、話し合うフリはしても妥協など一切せず、相手を苦しい状況に宙づりにして弱らせていく、という手も世の中にはあるのですよね。
真田:覇権争いとはそういうものです。中国を野放しにしておけば、米国がやられてしまう。米国が生き残るには、中国を貶めるしかないのです』、「『覇権に挑戦する国は「宙づり」に」とは恐ろしい話だが、国際政治の冷徹な現実なのだろう。
・いずれにしても、この問題は短期的部分だけでなく、中長期的部分にも目を向ける必要がありそうだ。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 鈴置 高史 高田 創 細川 昌彦 通商問題 (その4)(米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ、米中貿易戦争 全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由、米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない) 「米中は「貿易戦争」から「経済冷戦」へ 主導権はトランプ大統領から議会へ」 事態がトランプ大統領主導の「貿易戦争」から議会主導の「経済冷戦」へと深刻化 ワシントンで行われた事務レベル協議も何ら進展がないまま終わった トランプ大統領としては中間選挙まではこの対中強硬姿勢を続けている方が国内的に支持される。今、何ら譲歩に動く必要がない。しかも、米国は戦後最長の景気拡大で、余裕綽々で強気に出られる 習近平政権としては、対米強硬路線が招いた今日の結果に国内から批判の声も出始めており、それが政権基盤の揺らぎにつながることは避けたい。対米交渉の努力を続けている姿勢は国内の批判を抑えるためにも必要だろう 米議会主導の「国防権限法2019」に透ける対中警戒の高まり ワシントンの政策コミュニティ 現在のワシントンの深刻な対中警戒感の高まり 中国の構造的懸念を念頭に、貿易以外の分野も広く規制 先端技術が海外、とりわけ中国に流出することを防ぐためだ 通信大手ZTEとファーウェイのサービス・機器を米国の行政機関とその取引企業が使用することを禁止 対中輸出管理の強化 エマージング・テクノロジー そういう段階から規制しなければ、将来、中国に押さえられて、軍事力の高度化につながるとの警戒感から、規制対象にしようというもの 中国の巨大企業のトップ10 人民解放軍系の国有企業である「11大軍工集団」 「冷戦」とは長期にわたる持久戦の世界 中国製造2025 軍民融合 米国議会、情報機関、捜査機関など、「オール・アメリカ」の動きが重要に 「米中貿易戦争、全面対決なら中国が圧倒的に不利な理由」 米中貿易戦争のインパクト 中国の受ける“打撃”は米国の3~4倍 米中間の「貿易ギャップ」中国は同額の報復はできない構造に 中国の残る選択肢は輸入拡大と市場開放 米中間でとり得る3つのシナリオ 早期解決シナリオ 貿易摩擦激化シナリオ 全面対決シナリオ 米中の通商摩擦は2020年代まで続く構造 真田幸光 「米国は中国をいたぶり続ける 覇権争いに「おとしどころ」などない」 米国は中国をいたぶり続けます。「おとしどころ」などありません これは貿易摩擦ではなく、覇権争いなのです。「終わり」のない戦いです 知的財産権の問題 中国の盗みはひどい 基軸通貨にはさせない トランプ政権は習近平政権を倒すまでいたぶる 米国とすれば、人民元が基軸通貨に育たないよう、貶め続ければいいのです 中国は外貨準備の減少に悩む 上海株は落とす 人民元はヘナチョコ通貨だと知らしめる。するとマーケットは「中国危し」と見て、株も落ちる。こうして実体経済も悪化する。その結果、中国は米国に歯むかう軍事力を持てなくなる、というシナリオです 工場を取り返す ナヴァロ国家通商会議議長による覇権維持のための提言 米国向けの製品は中国で作るのをやめ、代わりに中国以外で生産すればいいのです 「いたぶり」は米国の総意 米国で「中国スパイの暗躍」が話題に お前はスパイか トランプの中国叩きを批判すれば「お前は中国のスパイか」と非難されかねず、米国の親中派は動きが取れなくなっている イラン問題で米国と協力することにより、中国への圧迫を緩めて貰う手 中国は「今ここで、抑え込んでおくべき国」なのです。日本に対してもそうでした 2008年に発行したドル建ての債券が発行後10年たって償還期を迎えている 金融面で「攻めやすい」状況に 最大の理由は「制宙権問題」 米ロが中軸となって国際宇宙ステーションを運営 これにクサビを打ち込む形で中国が独自の宇宙ステーションを運営しようとしています 覇権に挑戦する国は「宙づり」に
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リニア新幹線(その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない) [国内政治]

リニア新幹線については、2016年8月17日に取上げた。だいぶ月日のたった今日は、(その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない)である。

先ずは、8月30日付け日経ビジネスオンライン「「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081500232/082400010/
・『9兆円を投じるリニア新幹線プロジェクトがついに離陸した・・・リニア中央新幹線が走る各県に歓迎ムードが広がる中、1人、怒りが収まらない知事がいる。 「静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」静岡県知事の川勝平太は、そう東海旅客鉄道(JR東海)を批判する。 当初、川勝は「リニア推進派」だった。国土審議会の委員を務め、JR東海系の雑誌でコラムを担当したこともある。静岡を通過すると知って、いち早く南アルプスに登って視察した。 だが、計画が明らかになり、関係は暗転することになる』、なるほど。
・『リニアの線路で「座り込み」 リニアは静岡県北部の山中を11kmにわたってトンネルで貫く。大井川の水源を横切るため、毎秒2トンの水量が減少するという。水道水として62万人が利用しているが、毎年のように水不足に悩まされ、昨年も渇水で90日近く取水制限をした。 JR東海はトンネル内で出た湧き水を、導水路を掘削して大井川に戻し、減量分の6割強を回復させるという。 「全量を戻してもらう。これは県民の生死に関わること」。そう言い切る川勝は、工事の着工を認めない。 「もうルートを変えることも考えた方がいい。生態系の問題だから。水が止まったら、もう戻せません。そうなったら、おとなしい静岡の人たちがリニア新幹線の線路に座り込みますよ」 ルートを変える──。リニアを知り抜いた川勝は、それが不可能に近いと分かって発言しているに違いない。2014年に品川~名古屋間を着工したが、27年の開通に向けてルート変更する余裕はない。 時速500kmで東京~大阪間を1時間で走る。超高速ゆえに直線で走らなければ性能が発揮されない。今から障害物が見つかっても回避できない。 もちろん、カネと時間があれば、路線変更が可能かもしれない。だが、リニア計画に余裕は残されていない。すでに契約を結んだ工事に、開業1年前に完成するものもある。まだ契約していない区間も半分ほど残っている』、導水路で湧き水を大井川に戻しても、減量分の6割強を回復するだけと、意外に少ない感じもするが、そんなものなのかも知れない。水不足に悩まされる静岡県にとっては、確かに重大な問題だろう。
・『東海道新幹線も沈没する では、名古屋開通後に、工事をストップしての体力回復は可能なのか。 実は10年、国土交通省の審議会でリニア計画の意見聴取に立った経済評論家の堺屋太一は、こう言っていた。 「名古屋で乗り換えて大阪は非現実的です。東京~名古屋だけを造るのでは大赤字は確実。大阪まで一気に開通させる以外にない」と提言した。 だが、JR東海や推進派は、「あの発言は、大阪まで早くやれ、という意見だった」として、2段階に分けた工事計画の危険性を顧みようとしない。 さらに採算性を疑うのは、自ら「赤字事業」と認めた過去があるからだ。 13年、記者会見で社長(当時)の山田佳臣が、リニア計画は「絶対にペイしない」と答えた。だが、JRの経営陣は、「本人の意図と違う」と主張する。 「(リニア)単独のプロジェクトとして見たときには、5兆円のプロジェクトを回収するわけにはいかないですよと。やっぱり東海道新幹線と組み合わせて実現ができる」。副社長の宇野護はそう解説する。しかし、巨費を投じた超高速のサービスが赤字で、本当に全体の黒字化が達成できるのか。 「東海道新幹線だって客のほとんどが(リニアに)奪われるから収益が下がる。リニアがペイしなければ、両方沈没するんじゃないの」。立憲民主党でリニア問題を担当する衆院議員の初鹿明博はそう指摘する』、肝心の採算が心もとないのになぜ強行するのだろう。
・『「でっかいことはいいことだ」 では、なぜ巨費を投じて、JR東海はリニアという危険な挑戦に出るのか。「東海道新幹線のバイパス」。経営陣から現場社員までそう答える。1987年に国鉄の分割民営化で東海道新幹線を軸としたJR東海が発足、その取締役に就任した葛西敬之(現名誉会長)がリニア担当となる。以降、一貫してこの考え方でリニア計画を推し進めてきた。 当初は、64年にスタートした東海道新幹線が、半世紀近く大規模改修していないことから、リニアというバイパスを造れば、新幹線を止めて工事できると説明していた。 ところが、JR東海の小牧研究施設で、土木担当者に聞くと、「今の修繕技術で、東海道新幹線は半永久的に使い続けられる」という。経営陣も「完全な取り換えはまずない」(宇野)と認める。5年ほど前に、その結論に行き着いたという。すでに大規模修繕工事を始めており、2022年度に終了する予定だ。では、なぜリニア計画をやめないのか。 「1本の糸にぶら下がったクモじゃないけど、やっぱり2本あることの強み」(宇野)だという。災害時のライフラインとしての重要性を主張する。「地下は地震の揺れに強い」(宇野) だが、落とし穴もある。 「南アルプスをトンネルで貫通するが、そこには中央構造線断層帯や多くの活断層が走っている。ここに時速500kmの列車を走らせるべきではない」。南アルプスの地形や地層を調べ続ける大鹿村中央構造線博物館学芸員の河本和朗は、そう警鐘を鳴らす。 「そもそも、貨物列車がなくて、モノが運べないリニアは、災害時に役に立たない」。米アラバマ大学名誉教授の橋山禮治郎は、そう喝破する。 「でっかいことはいいこと、速いことはいいこと、という発想は時代遅れ」 橋山はかつて、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)で調査部長を務めた経歴を持ち、世界の巨大プロジェクトの失敗を調査研究してきた。 「リニアはコンコルドと同じ」。コンコルドはスピードばかりを追求したが、コストが高く、騒音や排気ガスをまき散らした。赤字続きで技術改良もままならず、事故を起こして廃止された。 ちなみに、リニアの開発を日本と競っていたドイツは、中国・上海でリニア鉄道を実現しながら、08年に国がリニア撤退を決めた。コストが予定額を大きく超えることが分かったからだ』、「リニアはコンコルドと同じ」とは言い得て妙だ。
・年間4200億円のコスト 翻って日本。1962年、国鉄時代からリニアの開発がスタートし、73年には全国新幹線鉄道整備法で開発すべき路線として決定される。国鉄の分割民営化後、JR東海と鉄道総合技術研究所が開発を引き継ぎ、山梨県に実験線を建設する。ところが、地方の整備新幹線が優先され、リニアは「夢」と消えようとしていた。 そこに2007年、JR東海が「自己負担で建設する」とぶち上げる。 09年、JR東海は調査報告書を国に提出する。そこには、驚愕の数字が並ぶ。リニアの維持運営費は年3080億円、設備更新費は年1210億円、合わせて年4290億円がかかっていく。 だが、日本では高コストがさして問題にされなかった。10年、国交省の交通政策審議会に中央新幹線小委員会が設置され、委員長に東京大学大学院工学系研究科教授(当時)の家田仁が任命される。そして、翌11年、3・11の2カ月後、国は整備計画を決定する。 リニアにGOサインを出した家田に聞いた。9兆円もかけて、世界をリードする交通システムになるのか。 「なるかもしれないし、ならないかもしれない。東海道新幹線だって、最初は『世界の3バカ』と言われたわけでね。戦艦大和と万里の長城と。だから、分からないですわ」 続いてバイパス論が展開されていく。 「東海道新幹線を止めますなんて言ったら暴動が起きるわな。やっぱり一刻も早くリニアを造って、負荷を減らしていかないと。バックアップだから」 収入が15%増えるというJR東海の予測や、経済効果が年8700億円という試算は実現するのか。 「ぼくはそんなもの気にしてない。どうしても計算したいというからやったけど、真に受けていない」 財投で3兆円も借りて、本当に返せるのか。大阪まで完成するのは、最短でも約20年後のことだ。 「20年なんてあっという間ですよ。明日みたいなもの」』、家田委員長の余りに無責任な発言にはあきれてものも言えない。やはり、交通政策審議会中央新幹線小委員会は建設承認が前提の形式的お墨付き機関だったようだ。
・『開発トップがダメ出し 家田が「明日」という未来は、どのような世界なのか。 炎天下の山梨県でリニア実験線に試乗した。JR大月駅からクルマで15分、JR東海の山梨実験センターから5両編成のリニアに乗り込んだ。 運転開始から時速150kmまでは車輪で走行する。そこから車体が浮き上がり、騒音が少し静かになる。そして2分半で時速500kmに達する。その時、振動や騒音は少し大きいが、新幹線の車内とさほど差はない。周囲とも会話ができる。逆に、減速していくと、時速300km台は徐行運転しているように感じる。そして、時速150kmでガタンという振動とともに「着陸」する。 わずか30分ほどの試乗だが、50年以上かけて開発を重ねてきた技術の完成度の高さは体感できる。ただ、車内は少し窮屈で、両側2席ずつの配列だが、座席の幅や前後のシート間隔も新幹線より狭い。それは、車両開発を主導した三菱重工業が、飛行機の構造を持ち込んだからだ。 鉄道車両の断面は、通常は四角になるが、リニアは卵のような円形になっている。飛行機の胴体と同じで、車内空間は窓側にかけて狭くなっていく。開発当初は座席上に荷台が設置できず、騒音で隣の人の声が聞こえなかった。 そこで、防音対策や、鉄道車両に近い形状への設計変更を重ね、新幹線に近い乗車感覚に仕上げてきた。 だが、そんな短時間の試乗で「いける」と思い込むのは危険な素人考えだとJR東日本元会長の松田昌士は言う。国鉄時代からの経験を基にこう話す。 「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」。高価なヘリウムを使い、大量の電力を消費する。トンネルを時速500kmで飛ばすと、ボルト一つ外れても大惨事になる。 「俺はリニアは乗らない。だって、地下の深いところだから、死骸も出てこねえわな」(松田) 品川~名古屋間は、路線の86%が地下を走行する。また、地上部分も騒音対策としてフードで覆われる場所が多くなると予想される。 なぜ、これほどトンネルが多いのか。それは、2つの都市を直線で結ぼうとするため、南アルプスなどの山岳地帯をことごとく貫通していくためだ。 もう一つの理由は、土地や建物の買収を回避できること。特に、都心部や名古屋地区は地下40m以深の「大深度地下」を通るため、法律によって公共利用と認められれば、補償する必要すらない。 人知れず、地下を掘り進める計画を練ってきたJR東海。だが、ここにきて、その全貌が水面上に姿を現し始めると、大きな摩擦を生み出している。リニア計画の先行きには暗雲が垂れ込める』、松田氏の「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」との発言には、苦笑してしまった。いくらリニアをやってないJE東日本とはいっても、豊富な人脈で本音の情報が入ってくるのだろう。
・『JR橋本駅(神奈川県)から徒歩10分。5階建てビルのオーナーに、ワイシャツ姿の男が尋ねてきたのは昨年のことだった。 相模原市役所のリニア事業対策課の職員だと名乗ると、こう切り出した。 「このビルの下をリニアが走ることになりまして、ちょっとお尋ねしたいのですが」。橋本駅の地下にリニアの駅ができることは近所の話題になっていた。リニアは通過する各県に1駅ずつ中間駅を造る。人が増え、地価が上がると噂された。だが、自分の敷地の下を通るとは思ってもいなかった。 だが驚くのは早かった』、地方自治体にまで担当課ができているとは、随分、早手回しのようだ。
・『役人をカネで味方にする 「このビル、どのくらい杭を打ってますかね」 オーナーは巨大地震にも耐えられるように、20m以上の杭を打った。業者から「200年もつ」と言われた。 「詳しく調査させていただきたいのですが、恐らくリニアにぶつかります。取り壊していただくことになるので、立ち退きか、低層への建て替えをお願いします」 突然のことに声が出ない。地元で育ち、50年以上ここで商売をしてきた。 「おまえ、JRと市民と、どっちの味方なんだ」 すると、こう返ってきた。「JR側の人間です」 JR東海が背後でカネを払っている。なぜ、自分たちで説明に来ないのか。市役所の職員相手では、強く出るわけにもいかない。 市民も分断された。立ち退きに反対する人もいる中で、早々に受諾する住民もいる。 「地形が悪くて売りにくい物件なのに、急上昇している駅前物件と同じような評価額を提示されたらしい」。東橋本に住む60代の女性はそうつぶやいた。 巨額のマネーで路線の住民を「買収」していく。しかも、交渉役は地元の自治体にカネを払って委託する。 そんなJR東海だが、住民説明会だけは自らが説明に立つことになる。ところが、その会場では荒れた株主総会のような罵声が飛び交う。 5月中旬、都内の区民プラザの壇上に6人の社員が登壇した。住民は1人につき質問3つまで。しかも、3問を続けて述べるよう迫られ、終わるとマイクを取り上げられる。すると、社員が「慎重に進めてまいります」「モニタリングします」などと具体性を欠く回答を続け、住民をいら立たせる。 「おい、答えになってないじゃないか」「質問に1つずつ答えないと、対話にならない」とヤジや怒号が飛び交う。 すると司会の若手社員が会場をにらみつけながら「ご静粛に」と大音量のマイクで繰り返す。最後は、「時間が過ぎている」として説明会を打ち切る。 JR東海の用地取得の手法は、業界内でも異例だという。大手ゼネコン幹部は、山梨や北信越で長く道路やトンネルの工事現場に携わった。道路会社は用地取得に当たって、職員が地域に溶け込むため、酒を酌み交わしながら長期間かけて信頼関係を築いていく。 一方、JR東海は自治体に交渉を任せ、最後は強制収用に踏み切る方針だ。 「土地収用法の対象事業なので、そういうことを考える時期が来るかもしれない」(副社長の宇野) だが、大手ゼネコン幹部はその手法に危険を感じるという。「マスコミが殺到する」。反対住民を押し切り、国民を味方に付ける理念や目的があるのか。 「もしかしたら、成田闘争を超えるかもしれない」』「JR東海は自治体に交渉を任せ、最後は強制収用に踏み切る方針」とは卑怯なやり方だ。
・『あふれる残土、ドーム50個分 山梨県南アルプス市宮沢地区。104世帯の小さな住宅地をリニアが縦断することが分かったのは4年ほど前のこと。自治会長の井上英磨は、JR東海の尊大な態度に反発し、「絶対に動かない」と突っぱねた。 「ちょうどここをリニアが走る」。井上が両手を広げて示した場所には、地神が祭られていた。地区内の立ち退き対象は7世帯だが、残った人にも騒音や日陰の問題が起きる。宮沢地区は、自治会で「住民の総意として反対」と決議し、JR東海の地区説明会の開催を拒否している。 山梨県では甲府盆地を横断するため、地上に高架を建設する区間が長い。そのため、住民との交渉は難航を極める。 山梨県中央市の内田学も、4年前に自分の畑を通過することを知った。「もっと北を走ると思ってたのよ」 そしてリニアのことを調べ始めた。技術者でもある内田は、大量の電力を使ってマイナス269度で超電導状態にすることや、その失敗によるクエンチ現象の事故を恐れた。 「これは地球に挑戦状を突きつけるようなものだ」。そして、反対する人々を募り、畑の桑を1本1000円で売って名札を付ける「立木トラスト」を始めた。JR東海は、一人ひとりに同意を取らなければならない。その数、700人。 「桑は神のように信仰されてきた。それを根こそぎ持っていけるのか」(内田) 山梨県は1990年にリニア実験線の建設が始まってから、すでに四半世紀が過ぎている。その間に、地元の人々はリニア工事が引き起こす問題を間近で見てきた。 慶応義塾大学名誉教授の川村晃生は、その歴史を追い続けてきた一人だ。 「リニア実験線では、トンネルから出た500万m3もの残土の置き場に困った。今回は5680万m3もの残土が出るが、どこに処分するのか」。東京ドーム約50個分といわれる残土を置く場所がなければ、掘り進むことができず、リニア計画は頓挫する。 実験線に近い笛吹市の2つの巨大な谷が、残土で平らになるほど埋められていた。「当時はアセスメントの概念がなかったから、こんなデタラメができた。今回は許されないだろう」 川村が注目しているのは、南アルプストンネルの掘削工事が始まっている早川町だ。この町に行くには、門前町として有名な身延町から、山沿いの一本道を走るしかない。途中で残土を積んだ巨大トラックと何度もすれ違う。 町内には、すでに河原や空き地に残土が積み上がっている。ゼネコン2社が、川沿いに残土を積み上げていた。一方は、12層にも積み上げるという。「予定より遅れたが、あと1カ月ぐらいで終わる」。作業員はそう苦笑いした。 早川町から出るリニア工事の残土は326万m3で、「半分は置き場が決まっている」(副社長の宇野)。裏を返せば、まだ半分の残土の行き場がない。 「知る限り、早川町にはもう、まとまった残土置き場がない。そうすると、一本道を通って、延々と違う町まで運んでいくことになる」(川村) なぜ、小さな早川町が、巨大工事を認めたのか。実は、昭和30年ごろ、ダム建設で町が潤った歴史がある。だが、工事の終了とともに町は寂れていった。 今回、リニアに協力したことで、念願だった北東に抜ける道路が建設される。盛り土方式で造られ、残土の処分場も兼ねる。だからだろう、JR東海が建設費の60億円超を負担する。「まるで麻薬漬け。地域の自然がJR東海にしゃぶり尽くされている」。近隣の住民はそうため息をつく』、地元には道路建設のアメを与えて、大規模な自然破壊が進まざるを得ないようだ。
・『その狡猾な手法は、沿線のあらゆる地域に見られる。 相模原市の山間地、鳥屋。串川が流れ、サルや鹿が生息する地に、リニアの車両基地が建設されると報じられたのは2013年夏のことだった。 「最初は、さして気にならなかった。だけど、翌年から説明会が始まって、これはおかしいと思い始めた」 周辺に土地を持つ栗原晟は、関連資料の閲覧に出向き、その規模に驚愕した。幅350m、長さ2kmにわたる広大な基地だが、驚くべきは、高さが最大で30m近くもあることだった。小学校の体育館に覆いかぶさるように造られる。 「まるで飛行場だ。残土処分との一石二鳥を狙ってるんじゃないか」 栗原はリニア計画に疑念を抱き、同志を集めて、引き込み線がぶつかる土地を11人で共同登記する「土地トラスト」に打って出た。そこに集まって、デッキや布製の屋根を作っている。 森カフェトラスト──。 そう名付けた共同作業は、回を追うごとに人数が増えてきた。直近では、30人近くが集まったが、大学生など若者が目立つようになった。 「木を伐採して眺望をよくし、音楽会などイベントを続けていく」(栗原) 山梨側から入ったリニアは、南アルプスを抜けて、反対側の長野県大鹿村に出てくる。この地の少なからぬ住民が、災害の再来を恐れている。三六災害。昭和36年、集中豪雨が伊那谷を襲い、土砂崩れや地滑りが多発。中でも大鹿村の大西山の大崩壊は災害史に残る惨事で、42人が亡くなった。 南アルプスは隆起が激しく、日ごろから山の崩落や土砂崩れが多発している。だから、トンネルの出口は危険を極める。すでに、リニア工事の影響で県道の土砂崩落事故も起きている。 それでも、JR東海はカネにものをいわせて計画を推し進めていく。「グランドに残土を置かせてくれれば、体育施設を造る」。JR東海からそう提案され、予算が乏しい村議会は了承してしまう。残土で5mもかさ上げした上にテニス場や体育館が建設される。「見上げるテニス場っておかしい。代々、『リニアグランド』と揶揄される」。村議会議員の河本明代は顔が曇る。 それでも村内で300万m3という残土は処分できず、運び出す道路のトンネル工事にJR東海は35億円を投じる。 ダンプが行き交う村で、温泉宿「山塩館」を経営する平瀬定雄は、客の減少に悩まされている。「ダンプの通らない道はありませんか」。宿に着くなり、そう聞いてくる客が後をたたない。 「村もJRに丸め込まれ、下請け会社と化している」。かつてはリニア絶対反対だったが、今では現実主義に転じた。 「やるなら早くやれ」。そして、関連の消費や下請け工事も、少ないながら、搾り取らなければならない。 「それこそ談合でもやらないと、こっちがすり切れていくだけだ」(平瀬) JR東海は、リニアの完成が遅れれば、収入のないまま巨額の投資を続けることになる。その焦りから、カネで解決しようとする。大井川の水量問題で静岡県だけが工事に入れない。そこでJR東海は静岡市と工事連携の合意を取り付けた。だが、その見返りに、地元住民が要望していた3.7kmのトンネルをJR東海が全額負担して建設する。その額は、140億円にも上る。 しかし、県知事や市民団体から猛烈な批判を浴びると、市長は大井川の問題についての発言だけ撤回。結局、JR東海は、巨額のカネを突っ込みながらも、着工のめどが立たない。 金銭面でも、止まって考える余裕がない。総工費9兆円で品川~新大阪を結ぶ計画だが、名古屋までに5兆5000億円が投じられる。工事のピークには年間のリニア投資額が6000億円になる見通しで、名古屋まで開通した27年、JR東海の借金は5兆円に達する。もし1年延びれば、千億円単位で総工費が膨らむ危険がある。当然、開業で得られるはずの収入も入ってこない。 名古屋開通後、そのまま大阪への工事に突き進むことは財務的に難しい。そこで8年間はキャッシュフローを借金返済に充て、3兆円まで借金を減らし、再び大阪に向けて着工する。そのため、大阪開通は45年を計画する。ただ、後に解説するが、低金利の財政投融資で3兆円を調達できたため、最大で8年間の前倒しも視野に入れている。 しかし、1つの疑問が湧く。リニアが品川~名古屋を40分で結んで、どれだけの人が利用するのか。現在、品川駅と名古屋駅で、地下深くにリニア駅の建設を進めている。 「新大阪に行く人が、途中の名古屋で乗り換えるケースは少ないだろう」。JR東海の幹部もそう認める』、ここまでくると、いまさら中止はできないと突き進むのは、太平洋戦争と同じだが、中止のハードルは極めて高そうだ。
・『談合が生まれる構図 リニア談合も後から振り返れば、JR東海とゼネコンの力関係が逆転したポイントと位置づけられるかもしれない。 14年、国からリニア工事の認可が出るころ、リニア談合と呼ばれる大手4社の会合が始まっている。当時は、東京オリンピックに向けた建設需要が予想されてはいたものの、「21世紀最大のプロジェクト」といわれるリニアを前に、「JR東海から仕事をもらう」というゼネコンの姿勢は変わりなかった。 1km200億円といわれるリニアの工事費だが、都心部のトンネルは400億~1000億円の物件もある。「リニアは公共工事よりも安い」(ゼネコン担当アナリスト)ことは業界の常識となっている。 JR東海は発注に際して、施工者の技術力を評価する独自の「競争見積方式」を使っている。まず施工法や価格をゼネコンと交渉する。そして工区への技術提案などを聞いて1社に絞り込む。だが、価格交渉が不調に終われば、他のゼネコンに価格を提示させる。JR東海の立場が強ければ、「言い値」に従わなければならない方式と言える。 だが、建設業界には「汗かきルール」が存在する。調査や設計、試算などに協力したゼネコンを優先するという暗黙のしきたりだ。「設計や技術開発などの協力をして、そのコストを工事価格に乗せなければ赤字になる。それを『高すぎる』と言って他の業者に値段を聞けば、汗をかいてない分、安くなるに決まっている」。中堅建設会社のトップはそう批判する。 大成建設が、名古屋駅のリニア工事でJR東海の想定価格の3倍近い1800億円を提示した。昨年完成した駅直結の高層ビル「JRゲートタワー」を建設した際の赤字を回収するためとみられる。JR東海は清水建設と鹿島にも入札を要請するが、大成からの情報を基に、両社はさらに高い価格を出した。 リニア談合事件では、発注者であるJR東海が高値を強要された「被害者」であるかに見られがちだ。しかし、この事件に、伝統的な談合の概念は通用しない。JR東海は民間会社なので、そもそも工事の発注方法に縛られない。ところが、独自の競争見積方式で、高水準な工事技術を求めながらも価格を抑えようとしてきた。しかも、その交渉過程が見えない』、「汗かきルール」はやむを得ない一定の合理性があるが、それならば、一連の工事をセットにして入札する方式に改めるべきだろう。
・『「リニアはやりたくない」 今後、未発注のリニア工事のコストは上昇カーブを描くのではないか。 「ゼネコン業界全体がバブル期を超える最高益をたたき出している。難工事の割に安価なリニア工事は正直、やりたくないだろう」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストの水谷敏也)。人手不足もあって、生産能力の限界で工事を回している。今後、現場作業員を中心に賃上げは必須で、そのまま工事価格に跳ね返る。 だが、JR東海は早く工事契約を進めなければならない。リニア談合で国交省や東京都が大手ゼネコン4社を指名停止にしたが、JR東海はそうした処分を下していない。ゼネコンはその足元を見透かしている。 「(発注が)止まったらJR東海が困る? そうでしょうね」(清水建設副社長の東出公一郎) 鹿島常務の勝見剛は、一般論としてこう語った。「官工事は途中でコストが変わっても、その分を払ってくれる。民間の場合は渋るし、カネがないケースもある」 JR東海は名古屋開通の期限に追い立てられている。 昨年、三菱重工がリニアの車両製造から撤退したと報じられた。車両開発をリードしてきた会社に何があったのか。取材すると思いがけない答えが返ってきた。 「いや、数年前に撤退しています。なぜ、昨年になって記事が出たのか分かりません」。撤退時期や理由を聞くと、「厳しい守秘義務契約になっていて、こちらからリニアの話は一切できない」と回答を断られた。 JR東海に聞いた。 「こちらの予算と懸け離れていた。2~3割というレベルではなくて、もう倍とか、交渉の余地がない数字でした」。JR東海のリニア開発本部長だった特別顧問の白國紀行は、そう破談の経緯を説明する。 リニアに飛行機技術を持ち込み、時速500kmを実現させた立役者の撤退劇──。 事情を知る関係者は重い口を開く。「先頭車両という困難なところだけを生産させられ、もうかる『どんがら(中間車両)』はやらせてもらえなかった」。先頭車両だけでは量産効果が出せなかったのか。そして残ったリニアL0系の生産実績があるのは、赤字の子会社、日本車輌製造だけになった。 すべてを闇の中でひた隠しにしながら、リニア計画を推し進めるJR東海。そして、膨張するコストと矛盾は、制御不能な域に達しようとしている。 だが、狡猾なJR東海は、まさかの時の「カネづる」を確保している。それは、国民を巻き込む巨大な仕掛けだった』、リニアに飛行機技術を持ち込み、時速500kmを実現させた立役者ながら撤退せざるを得なかった三菱重工も気の毒だ。「国民を巻き込む巨大な仕掛け」は次の記事だ。

次に、8月30日付け日経ビジネスオンライン「財投3兆円投入、リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081500232/082400011/
・『談合問題や企業の撤退などに揺れるリニア新幹線には、安倍首相の号令のもと財投3兆円が投入されている。葛西JR東海名誉会長という「無二の親友」への巨額融資。森友学園や加計学園への「お友だち優遇」の比ではない「第3の疑惑」を追うと、融資スキームの直前に、2人が頻繁に会合を重ねていた事実に突き当たる・・・無担保で3兆円を貸し、30年間も元本返済を猶予する。しかも、超長期なのに金利は平均0.8%という低金利を適用する──。 首相の安倍晋三が、2016年6月1日に記者の前で「新たな低利貸付制度で、リニア計画を前倒しする」と発表し、巨額の財投資金が、この瞬間に動き出した。「いや、あの融資条件は、他に聞いたことがないですね」。同じ財政投融資という融資スキームを扱っている日本政策金融公庫の幹部も首をかしげる。「そもそも、30年後から返すって、貸す方も借りる方も責任者は辞めているでしょうし、生きているかどうかも分からないですよね」』、もともと財投は廃止の方向だったが、政治的な「使い勝手の良さ」から残され、しかもこんな法外な条件まで付けるとは、安倍もやり過ぎだ。
・『責任者は誰だ 破格の融資スキームを設計した責任者を追った。まず、財投をJR東海に貸し付けている鉄道建設・運輸施設整備支援機構に聞いた。電話口で「うちは事務をしているだけで、来てもらっても何も話せません」という。それでも横浜市にある本社を訪ねると、組織の説明はするが、財投に話を向けた瞬間、「それは国交省でお答えいただいている」と繰り返すばかり。 ところが、国交省の幹線鉄道課に足を運んでも、「財投の専門家ではないし、融資スキームなど説明できない」という。そこで、財務省理財局の財投総括課に聞くと、「僕らが(融資条件を)設定しているわけではない。国交省さんじゃないですか」と堂々巡りになる。 そこで、借り方のトップ、JR東海社長の金子慎に財投について問うた。 答 いや、財投を借りたわけじゃありません。 問 え? 答 財投を活用して、鉄道・運輸機構から借りたんです。民間会社としてやるんだから、政府からお借りするのはダメです。民間の金融機関から借りるのと同じ条件で借りたいと思います、と。返せるか、返せないか、事業をよく見て、あなたが判断してくれ、と。 問 「あなた」というのは政府?機構? 答 政府だったり機構(だったり)、どっちでもいいんですが、貸すのが心配だったら貸さなきゃいい。向こうも納得して、私たちも納得して借りた。 問 しかし、政府も機構も、そうした融資判断ができる能力はないのでは。 答 それは向こうに失礼な話です。貸した方は貸した責任があるんですね。 問 通常の融資スキームとは相当違う。 答 だから、政府が本当に知恵を出されたということだと思います。 本当に、民間の金融機関と同じ融資条件なのか。知恵を絞れば、この破格の融資スキームがひねり出せるのか。 実は、安倍が財投融資をぶち上げる前、日本政策投資銀行を使って3兆円の融資を実行しようと画策していた。そこで、政投銀に聞いた。 「話があったとは聞きました。しかし、民間銀行はもちろん、うちでも1社に3兆円を貸し出すことはあり得ません。相手先が倒れたら、銀行も一緒に死んでしまう。うちも他の大手銀行も、1社2000億円がギリギリのラインです。30年返済据え置き? それはないでしょ」 これほど破格の3兆円融資は、官や民の判断能力をはるかに超えている。しかも、返済されなければ、公的処理をせざるを得ない。大きな政治判断なくして実行できない。 金子に問うた。 問 財投の決断は安倍首相がされたということですよね。 答 いや、それはよく分かりませんが、安倍総理以下、国交大臣、あるいは担当大臣、政府としてなさった。 問 最初に発言されたのは安倍首相だから、「安倍主導」で。 答 「安倍主導」って……。 問 ちゃんと返せると思っているから(貸した)。 答 はい』、やはり「安倍主導」だったようだ。
・『安倍、財投直前にJRタワー泊 下の表は、葛西が社長に就任してから、歴代首相との面会数を記録したものだ。社長就任後、最初に会った首相は、国鉄改革で手を組んだ橋本龍太郎だった。しかし、面会数はわずか2回で、年平均0.78回の計算になる。ところが、06年に第1次安倍政権が発足すると、1年で7回も面会する。その後、政権が変わると面会数は急落していくが、12年に安倍が首相に復活すると、その後45回(年平均8.00回)も面会を繰り返している。 アベノミクスの政策や効果を出すため、安倍は財界人の知恵が必要なのだろうが、葛西との関係は突出している。第2次安倍政権で、葛西に次ぐ面会数は経団連名誉会長(東レ相談役)の榊原定征の27回、3番手に富士フイルムホールディングス会長の古森重隆の21回と続く。 安倍を支える経済人の会、「四季の会」は葛西を中心に構成され、東大同期卒の古森や与謝野馨らが名を連ねる。幼少期を敗戦の焦土で育ち、高度成長期の職場を体験した世代だ。ちなみに与謝野は日本原子力発電に勤務経験があり、原発推進論者の代表格だった。 安倍の大親友である葛西は、14歳年上で「経済の師」のような存在に違いない。国鉄改革で、中曽根康弘、三塚博、橋本といった大物政治家を動かし、自らを「日本帝国の官僚」と表現した。その葛西が推し進めるリニア計画は、再び日本が世界の頂点を目指すシンボルと感じているのかもしれない。 14年、米国にリニアを輸出すべく、駐日大使のキャロライン・ケネディをリニア試乗に招いた。その時、安倍と葛西が乗り込み、挟み撃ちにするように売り込んだ。 そして、16年6月、安倍は財投3兆円計画をぶち上げる。 その直前の記録を追うと、安倍と葛西が頻繁に会合を繰り返していたことが分かる。約半年間で6回(年平均14.13回)にも上る。 16年5月27日。財投3兆円決定の数日前、安倍は伊勢志摩サミットを終え、米大統領(当時)のバラク・オバマと広島を訪問する。オバマを見送った後、安倍はJR広島駅からのぞみ60号に乗り、JR名古屋駅で降りた。そこで、葛西に出迎えられ、JR東海本社があるJRセントラルタワーズ内の名古屋マリオットアソシアホテルに宿泊する。 こうした会合で何を話したのか、安倍に質問状を送った。3兆円を投じて、国民にどういうメリットがあるのか。財投を追加投入する可能性はあるのか。 だが、原稿の締め切りまでに回答はなかった。 この3兆円融資は、まさに葛西の思い通りのシナリオだったのではないか。 1980年代、国鉄の若手エリートだった葛西は、井手正敬(後のJR西日本社長・会長)、松田昌士(後のJR東日本社長・会長)と「国鉄改革3人組」と呼ばれた。そして、巨額の赤字と借金に苦しむ国鉄を、分割民営化で再生させようと邁進した。 葛西は著書で、この解体的改革は、「東海道新幹線救出作戦」だったと振り返る。そのドル箱、東海道新幹線で売上高の7割を稼ぐJR東海が87年に発足すると取締役に就任。88年、常務に昇格し、その秋に関西経済連合会の会合で講演に立ち、こう話している。 東海道新幹線とリニアは一元的に経営されなければならない」「(リニア計画の)全額を民間資金で行うことは難しい。3分の2は民間資金で行ってもよいが、残る3分の1は国のカネが必要ではないか。つまりナショナル・プロジェクトとして推進しなくてはなりません。 今から30年前、まだ山梨のリニア実験線すら着手していない時、すでに葛西の頭には、明確に今のリニア計画が描かれていた。資金の3分の1は、国のカネを引っ張ってくることも。 リニアとJR東海の歴史は、葛西によって築かれたものだった。その当人に話を聞くべく、JR東海に申し入れた。だが、「4月に代表権を返上しており、今は金子が経営の責任者。彼の話したことがすべてだ」と断ってきた。 そこで、東京・荻窪の葛西邸を訪れた。平日午後9時、自宅前に軽自動車が止まり、中に数人の男が座っている。警備のためだった。そこで、休日の昼間に再び訪れた。リニアの取材だと告げると、間髪入れずこう返してきた。「それは僕でないと語れないな」』、葛西の安倍との面談回数が45回と、経団連名誉会長の榊原27回と比べても圧倒的に多いとは、驚きだ。しかも、葛西は30年前からリニアの資金の3分の1は、国のカネを引っ張ってくるという計画を描いていたとは、さらに驚きだ。只者ではないようだ。

第三に、上記の続きを8月17日付け日経ビジネスデジタル「名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/081401049/?ST=pc
・『 「(安倍から財投の話は)あったかもしれない」 「だが、財投を国からの支援と見るのは悪意によるねじ曲げ」時間は延長につぐ延長、止まらぬ2時間インタビュー・・・問 なぜ9兆円もかけてリニアなのか。 答 国鉄の分割民営でそれぞれに使命があり、うちは『東海道新幹線会社』ということですよね。しかし、輸送能力が限界に達している。ならば、バイパスを造るしかないと。すでに国の法律で決まっている中央新幹線(リニア)があり、東海道新幹線と旅客流動が同じなので、一元経営しなければならない』、なるほど。
・『“名古屋5.5兆円は大局的な想定”  問 新幹線が二重化しても、人口減少や会議のネット化が起きている。 答 そんなの30年前から言われているけど、そうなってないんだよ。 問 でも人口は実際に減少している。 答 世界の人口動態がどう変わるかということ。日本人だけの人口で測るべきではない。インバウンドが今増えている。日本で定住人口も増えていく可能性がありますね。 問 東海道新幹線の更新ではダメ? 答 東海道新幹線は1時間15本も走っている。17本が限界だから、あと2本ですよ。技術や設備を強化し、効率的な運用をしたが、もうこれ限界なんだよね。この次は東京~名古屋、名古屋~大阪、このバイパスがどうしてもいる。『バイパスはいらない』という議論はないですよね。 問 でも東海道新幹線が活躍していて、満足している人も多い。 答 いや、今はいいですよ。しかし、まだこれから世界やアジアの人口も増え、日本に定住したい人も増えてきますね。常に一定のアローアンス(余裕)を確保しないといけないと。その意味でリニアは新しい時代に即した効率性と高速性を持ったテクノロジーです。 問 当初、リニアは難しいと感じた? 答 難しいのはおカネ。借金が多かったでしょう。我々は国鉄の借金の相当部分を引き取った。新幹線でもうけて、借金を返す会社だった。ところが、借金を返し続け、金利負担が減ってきて、ゆとりができた。で、自分のカネでリニアを造りましょう、と。 問 借金も一時、2兆円ぐらいに減った。 答 そうですね。 問 名古屋までの建設費5.5兆円は、増えることはない? 答 基本的には変わらない。いろいろやっているうちに増えたり減ったりしますから、最終的にぴったりそうなるということじゃない。大局的な想定です』、ずいぶん楽観的だが、「大局的な想定」とは便利な言葉だ。
・『“談合は勝手に話したこと。我々はまったく関係ない”  問 想定がどうなるか。去年からのリニア談合の問題もありました。 答 我々はまったく関係ないからね。 問 でも、ゼネコン幹部はJR東海の工事が採算が厳しいから話し合ったと。 答 それは彼らが勝手に話したこと。要するに、彼らは『もっと高く契約を結んでくれ』と思ったんですよ。我々は『もっと安くできるだろう』と。こちらも技術者がいっぱいいますから、厳しい折衝になったと思うんだけど。 問 ゼネコンは技術開発を一緒にやってきて、利益が薄いときついと思った。 答 だから、新しいタイプの工事もあるし、ゼネコンの最新技術は各社ありますから。互いに情報交換し、勉強会をやったとは思うんですよ。 だが契約を結ぶのは、我々としてはこの範囲内で上げたい、できるはずだと思っている部分はあるし、向こうは10年もかかる工事だから、物価が変わるリスク要素もある。だから知恵を出し合い、契約を区切ったりする。この辺はプロの世界で、素人が口を出すことはない。そのつばぜり合いで、法律に触れたかどうかは彼らの話です。 問 でもゼネコンからすると、「発注者責任もあるんじゃないか」と。 答 発注者責任? 民間企業の工事ですから、公開競争入札にする必要はないので、『あそこにやらせる』という随契(随意契約)でいいわけです。その代わり金額については徹底的につばぜり合いをして、たたき合いますよね。今度は『1対1でやるぞ』ということにはなるかもしれません。しかし契約金額のつばぜり合いは大いにやったらいい。 問 金額のことでいうと、リニア車両の開発をした三菱重工が撤退した。倍ぐらい差があるという声もある。 答 1両12億円で造るということでこちら側が投げたのを、三菱重工は『それでは造れません』と言ったんですよね。今、東海道新幹線の車両というのは、1両3億円ぐらい。4倍の値段だから我々は十分造れるはずだと思いますよね。現に、日本車輌と日立は『それでやらせていただきます』と言っている』、談合問題では尻尾を掴むのは難しいと思っていた通りの展開だ。
・『“財投は自己資金。銀行から借りるのと同じ” 問 リニア9兆円を自分で出してやっていくはずが、2016年6月に安倍首相から「財投を入れる」という話が出ました。 答 あれは自己負担だよ。 問 財投ですから財投債が発行される。 答 財投債だけど、銀行から借りるのとまったく同じですから。 問 いや、無担保で3兆円を0.8%という金利で借りられないのでは。30年間も元本を返済しなくていいし。 答 財投で借りているというのは、財投機関から借りているのであって、財政出動しているわけじゃない。あたかも政府におカネを出してもらったかのごとく理解するのは間違っているのか、ねじくれているのかどっちかなんだよ』、民間銀行ではあり得ない好条件はやはり財投ならではなので、どうみても強弁に過ぎない。
・『“安倍さんの話、どっかであったかも”  問 でも、政府が決めるからこそ、安倍首相がまず宣言したわけですよね。やっぱり葛西さんが「財投で工事期間が短くできる」と安倍さんに言ったのでは。 答 僕は安倍さんには、直接はそういう話をしてないんですよね。 問 そうなんですか。 答 安倍さんを支持しているけど、何かしてくださいというお願いは、基本的にやらないことにしてます。 問 でも、安倍さんもあれだけ葛西さんと頻繁に会っていると、財投の発言の直前など話したくなるのでは。 答 そんな話は安倍さんから出ません。 問 その間、リニアの話は。 答 大阪までの着工をシームレスにやりたいという気持ちは、大阪にも政権にもありますよね。安倍総理や菅官房長官、杉田副長官にもある。そうすると、『方法はないのかな』なんて話がある。 ある日、『こういう案でやったらどうだ』というサウンドがあったのも事実。それは安倍さんが言われるだいぶ前ですよ。 問 安倍さんの方から「何とかならないか」みたいな話があった。 答 どっかであったかもしれませんね。何人かで集まったりするからね。 問 国からおカネを回してもらった。 答 いや、それは国から借りただけであって、そのおカネは金利を払って返すわけです。だからあれを『国から財政支援を受けた』というのは悪意によるねじ曲げとしか思えないよね。 問 財投を借りて国鉄も破綻した。また繰り返される危険はないのか。 答 100%繰り返されないんだって。僕は国鉄に入って財投をずっとやってきて、毎回『これは返せない』と思いながらきましたよね。運賃の値上げをすべきなのに切り下げて、差額を財投で借りるとか。黒字になるような工事じゃないのに財投を付けて、無理やりシナリオを作る。その答弁を僕は書きましたから。返せない、雪だるま(借金)が大きくなるだろうと思ったわけ。 今回のやつはまったくそう思ってないんだよ。僕は財投を散々やってきて、その上の経験に立って、今回のは大丈夫だと。 問 まさに国鉄時代の計画と同じようなものでは。 答 いや、違います。国鉄時代は全部赤字ですよ。 問 例えば、名古屋まで、のぞみプラス700円、新大阪までプラス1000円で需要予測をしています。今の国鉄の話とダブって見えるが。 答 リニアの運賃はまだ決まってないからね。 問 でも、それで需要予測をしている。 答 リニアがどういう運賃政策を取るかまったく決まってない。これから全部決めるわけですよね』、さすが安倍との話は、「請託」ととられないように慎重だ。
・『“神様が見たって、リニアはいける”  問 しかし、東海道新幹線の需要は相当落ちる。 答 ただし、京都や新横浜もあるよね。21世紀半ばの輸送機関が東海道新幹線と同じでは日本の将来のダイナミズムが失われます。そこはやっぱり飛躍しなくちゃいけない。 問 葛西さんは絶対、収支はいけると。 答 私がじゃなくて、神様が見ても、誰が見たっていけるんです。 問 でも、かつて山田社長が「リニアは絶対にペイしない」と言った。 答 山田、そんなこと思ってないよ。あれは質問が悪くて。彼に聞いてごらん。絶対黒字だと思っていますから。 問 リニアの設備更新と維持管理で年4200億円かかり、増収効果よりも大きいことを山田さんは言ったのでは。 答 あの時の計算だと開業時点の厳しいときでも両方合わせると、経常利益が630億円になる。でも今はそこから2000億円ぐらい増えている。だから僕は、収支の心配はいらないと思うよ。 問 心配しなくていい。 答 (心配は)いらない。それは保証してもいいけど。 問 今、6000億円近い経常利益が上がっている。JRグループの北海道や四国といった厳しい会社を救い、鉄道ネットワークを再構築する道はないのか。 答 鉄道は19世紀は陸の王者だったわけ。ところが、20世紀になって競争相手がいっぱい出てきました。今もう日本中に道路ができて、航空網もできている。そういう中で、鉄道が道路に転換していく部分が増えてくる。当然なんですよね。それを『嫌だ』という地元の人たちの意見もある。そういうのに付き合いながら、全国を1本に戻そうなんていうことにはなりませんよね。経済原則に反するから。我々は、与えられた使命、これを徹底的に果たす。 現に今、1260人をリニアの建設に充てている。米国にも(人を)出しています。フル稼働でやっています。それをやって初めて工事が予定通り進むんですから、ここのところ(他社との連携)に手を出す気はないのかなんていう愚問を、発しないでもらいたいですね。 問 しかし、リニアも他の鉄道網も、まったく違う事業ではないし、選択肢としてはあり得るのでは。 答 何が? だって、それぞれが会社の使命が決まっているんだから。(JR各社が)それぞれ定義されていまして、例えば東日本は首都圏の鉄道を強化する。 我々の12の在来線、全部赤字です、東海道本線も含めて。これを維持しながら、東海道新幹線を磨き上げていく。バイパスを造って、さらにゆとりを作っていくと。東海道新幹線のお客さんが切符を取れない。金曜日の夜なんて立っていますよ』、かつての山田社長発言に対する言い訳はよく分からないが、足元の好業績が絶対的な自信につながっているようだ。
・『“リニアができるまで生きていない”  問 リニアの完成で、葛西さんのやろうとしてきたことがほぼすべて実現する。 答 僕はリニアが完成するまで生きてないんじゃないかと……。 問 いやいや、そんなことはない。 答 僕も今年78歳ですから、完成するのが10年先で88歳でしょう。平均寿命を超えちゃうので、僕は。 問 88歳はもちろん、葛西さんは大阪開業まで生きているでしょう。 答 まあ、僕は目の前にある問題にベストを尽くすことを積み重ねてきましたので。リニアも新幹線も大事だし、海外展開も日米同盟を強化するという意味で大事だと思いますよね。いろいろやりますが、しかし、それは明日終わるかもしれないと。それでもいいやと思ってやるしかないよね』、したたかな怪物だ。だが、その圧倒的な権力で、社内外の反対論をねじ伏せた弊害が、最近のスポーツ団体の不祥事と重なって見える。
タグ:安倍晋三 リニア新幹線 日経ビジネスオンライン 日経ビジネスデジタル (その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない) 「「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末」 9兆円を投じるリニア新幹線プロジェクトがついに離陸 静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」静岡県知事の川勝平太 大井川の水源を横切るため、毎秒2トンの水量が減少 導水路を掘削して大井川に戻し、減量分の6割強を回復させる 東海道新幹線も沈没する 自ら「赤字事業」と認めた過去 社長(当時)の山田佳臣が、リニア計画は「絶対にペイしない」と答えた 「でっかいことはいいこと、速いことはいいこと、という発想は時代遅れ」 開発トップがダメ出し JR東日本元会長の松田昌士 「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」 地方自治体にまで担当課 役人をカネで味方にする あふれる残土、ドーム50個分 談合が生まれる構図 ゼネコン業界全体がバブル期を超える最高益をたたき出している。難工事の割に安価なリニア工事は正直、やりたくないだろう 財投3兆円投入、リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う」 財投3兆円が投入 無担保で3兆円を貸し、30年間も元本返済を猶予する。しかも、超長期なのに金利は平均0.8%という低金利を適用 「新たな低利貸付制度で、リニア計画を前倒しする」と発表し、巨額の財投資金が、この瞬間に動き出した 「安倍主導」 安倍、財投直前にJRタワー泊 2年に安倍が首相に復活すると、その後45回(年平均8.00回)も面会 葛西社長 経団連名誉会長(東レ相談役)の榊原定征の27回 「名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない」 “名古屋5.5兆円は大局的な想定” “談合は勝手に話したこと。我々はまったく関係ない “財投は自己資金。銀行から借りるのと同じ” “安倍さんの話、どっかであったかも” “神様が見たって、リニアはいける”
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