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トランプ大統領(その41)(トランプの「欧州嫌い」はここまで深刻だった 揺れる米欧関係 試される日本の戦略的外交、世界経済を危機に陥れる!?トランプ政権の「FRB多数派工作」、トランプ「世界戦略」の全貌がイラン制裁と米中摩擦で見えてきた、トランプ大統領は 善悪二元の「ブードゥー経済学」で間違った貿易戦争を仕掛けている) [世界情勢]

トランプ大統領については、3月10日に取上げた。今日は、(その41)(トランプの「欧州嫌い」はここまで深刻だった 揺れる米欧関係 試される日本の戦略的外交、世界経済を危機に陥れる!?トランプ政権の「FRB多数派工作」、トランプ「世界戦略」の全貌がイラン制裁と米中摩擦で見えてきた、トランプ大統領は 善悪二元の「ブードゥー経済学」で間違った貿易戦争を仕掛けている)である。

先ずは、東洋大学教授の薬師寺 克行氏が4月27日付け東洋経済オンラインに寄稿した「トランプの「欧州嫌い」はここまで深刻だった 揺れる米欧関係、試される日本の戦略的外交」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/278451
・『統一地方選を終えて、安倍首相がフランスやアメリカなど6カ国を訪問した。6月に予定されている「20カ国・地域(G20) 首脳会議」の成功に向け、主要国首脳との事前調整が主な理由とされているが、この外遊にはもう1つの隠された目的がある。それは深刻な対立に陥っている米欧関係の修復である。 トランプ大統領の登場後、米欧関係の悪化は目に余るものがあるが、その深刻さはとどまるところを知らない。政府関係者によると、4月初めにフランスで開かれたG7外相会合での議論は、「米欧がことごとく対立し、ここまでひどい状態に陥っているのかというレベルだった」という』、安倍首相の訪問は、G20ホスト国としての当然の動きだが、なんとも間の悪い時にホスト国の番が回ってきたものだ。
・『米欧は重要な問題でことごとく対立  G7外相会談は、首脳会合の成功に向けて取り上げる議題や各国の主張などをすり合わせる場である。毎年、人権から気候変動、経済、地域紛争など世界が直面している幅広い問題について意見交換し、共同コミュニケを発表する。これまでもG7の間で考え方の違いがなかったわけではないが、真正面から対立することは少なかった。その結果、毎年発表される文書の多くの部分は前年の内容を踏襲してきた。 ところが今年は様変わりだったようだ。まず、アメリカのポンペオ国務長官が欠席し、サリバン国務副長官が代理で出席した。国務長官の欠席は異例のことだが、なぜかアメリカ政府はその理由を明らかしていない。そして、外相会合の場でも、誰もポンペオ氏欠席を話題にしなかった。共同コミュニケ作成に向けた議論になると、アメリカがあれこれ難題を突き付け、殺伐とした雰囲気だったという。 もともとアメリカと欧州は、イラン核合意、アメリカによる鉄鋼・アルミニウムの輸入制限とそれに対するEUの報復関税、イスラエルが占領しているシリアのゴラン高原についてアメリカがイスラエルの主権を認めた問題、あるいは地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定からのアメリカの離脱など、多くの重要な問題で真っ向から対立している。 それを反映して、外相会合でアメリカは、「パリ協定」や、パレスチナ問題に関連する「国連安保理決議」、さらには「世界貿易機関」(WTO)や「国際法に従って」などという言葉や言い回しをコミュニケに盛り込むことにことごとく反発した。多くがこれまでのコミュニケには何の問題もなく盛り込まれていたものだ。 アメリカの自己中心的対応が吹き荒れた結果、コミュニケでは「イスラエルとパレスチナの間の紛争について意見交換を行ったが、明らかな相違がみられた」などというこれまでにない表現が盛り込まれた。また「国際法」という言葉が消えて「国際的なルール」などに置き換えられている。 世界のルールは自分が作るという自負心の強いアメリカは、伝統的に自国の主権に制約がかけられる国際法や国際的合意を嫌う。アメリカの利益を最優先し、それに合わない国際的な合意は軽視、あるいは無視することはトランプ大統領が初めてではない。とはいえ、ここまで徹底して細部にわたって欧州各国を相手に文言や表現にこだわり、自分の主張を貫いた例は過去にあまりない。それだけトランプ政権の「反欧州」の空気が強いことを表している。会議には河野外相も出席していたが、米欧間の激しい応酬の前には脇役でしかない。 第2次世界大戦後の米欧関係は自由、民主主義、市場経済などという政治経済社会の枠組みや価値観を共有し、戦後の復興と著しい経済発展を実現してきた。また東西冷戦のもとで北大西洋条約機構(NATO)という安全保障の枠組みを構築し、ソ連に向き合ってきた。その結果、歴史上、最も成功した同盟関係ともいわれてきたほど安定感のある関係だった』、「河野外相も出席していたが、米欧間の激しい応酬の前には脇役でしかない」、シュンと大人しくせざるを得ない河野外相の姿が目に浮かぶようだ。
・『過去と次元の異なる「米欧対立」  もちろん長い歴史の中には、自主独立路線を主張するフランスのドゴール大統領がNATO離脱宣言を打ち出したこともあった。アメリカのレーガン大統領が欧州に何の相談もなく戦略防衛構想(SDI)を表明し、フランスなどが強く反発したこともあった。また、NATO加盟国の国防予算が少なすぎるという不満は、アメリカから何度も突き付けられてきたが、積極的に対応した国はほとんどなかった。 しかし、米欧がどれほど対立しようとも、アメリカと英仏独など欧州の主要国は、戦後の世界秩序を創り上げ、維持・発展させてきたという自負と責任感を持っていた。ゆえに決定的な対立を回避するという知恵も併せて持っていた。 ところが今回の米欧対立はこれまでとは根本的に異なっている。トランプ大統領という特異な人物の登場がこれまでとは次元の違う米欧対立を生み出したことは否定できない。トランプ氏は、自由貿易などこれまでの繁栄をもたらした秩序の維持について一顧だにせずアメリカの利益追求にこだわり、既存の秩序を破壊しようとしている。 しかし、トランプ大統領だけが今の危機を生み出したとも言い切れない。欧州の側にも原因がある。欧州はかつて持っていた統合力や一体性を失いつつある。そうした変動に向き合う主要国トップの指導力の低下も著しい。混迷を続ける英国のEU離脱やフランスのイエロー・ベスト運動、広範囲に及ぶポピュリズムの拡散は、リーダーの不在と欧州の求心力の低下を物語っている。 トランプ大統領の強引な主張に対し、フランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相は格調高い説得力のある批判を展開してきた。しかし、演説だけでは米欧対立の危機を克服できない。つまり、欧州の側にもアメリカに向き合い、問題解決を図る力がなくなってきているのである。 この状況を歓迎しているのが言うまでもなく中国とロシアである。冷戦後のEUやNATOの拡大に激しく反発しているロシア、あるいは「一帯一路」の世界的展開で欧州に対しても経済的、政治的影響力を強めたい中国にとって、米欧対立と欧州の分裂という状況は、自分たちが欧州を侵食する好機と捉えている。すでに東欧の小国に加えイタリアまでもが一帯一路への参加を表明している。 自由と民主主義、市場経済を標榜してきた欧州に、権威主義国家を代表する中国とロシアが入り込んでくることは、世界秩序の変動の始まりを意味することにほかならない。しかし、そうした危機感はG7外相会合の様子を見る限りまだ十分に共有されているようには見えない』、「過去と次元の異なる「米欧対立」」の間に、「権威主義国家を代表する中国とロシアが入り込んでくる」、というのは複雑極まる構図だ。
・『日本初の戦略的外交が展開されている  そこで日本である。日本の欧州外交と言えば従来は英仏独とお付き合いをすることで十分だった。日本外交の中心はアメリカとの同盟関係の維持・強化であり、また中国や韓国など近隣諸国との外交だった。欧州外交はその付属物的存在だった。 しかし、日本が西側の一員として戦後秩序の恩恵に浴し、経済発展を遂げたことも事実だ。そのシステムが揺らぎ始めたのであれば、見過ごすわけにはいかない。深刻な米欧対立と欧州の分裂の危機を前にして日本政府が危機感を持つのは当然である。 安倍首相は、昨年1月にエストニア、ラトビア、リトアニア、ブルガリア、セルビアおよびルーマニアを、10月にはスペイン、フランス、ベルギーを訪問している。さらに今年1月にはオランダと英国を、そして今回、フランス、イタリア、スロバキア、ベルギーを訪問する。主要国だけでなく、歴代首相がほとんど訪問したことのない国々にまで足を運ぶのは、深刻な現実を放置できないと考えているからであろう。 これは欧州を対象とする日本の初めての戦略的外交の展開である。もちろん安倍首相が訪問したくらいで米欧関係を改善させたり、欧州崩壊の流れを食い止めることはできるはずもない。しかし、日米同盟関係にあぐらをかいていれば事が足る時代は終わりつつある。新たな時代を見据えた戦略的外交の意味は今後もますます大きくなるだろう』、「主要国だけでなく、歴代首相がほとんど訪問したことのない国々にまで足を運ぶのは、深刻な現実を放置できないと考えているからであろう」というのは、安倍首相へのゴマスリだろう。実態は、「外交の安倍」をPRし、「やってる感」を出すためではなかろうか。

次に、東短リサーチ代表取締役社長の加藤 出氏が5月16日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「世界経済を危機に陥れる!?トランプ政権の「FRB多数派工作」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/202174
・『ドナルド・トランプ米大統領が、米連邦準備制度理事会(FRB)のコントロールを狙った試みは失敗した。FRBにスティーブン・ムーア氏とハーマン・ケイン氏を理事として送り込もうとしたが、米上院の反対により頓挫したのだ。 金本位制への回帰など2人とも奇抜な金融政策を主張してきた人物だ。それもさることながら、上院共和党議員が彼らを支持することを嫌がった最大の原因は、2人の倫理的な問題にあった。 ムーア氏は女性蔑視だと批判されるコラムを書いていたり、税金の滞納や離婚した前夫人に対する金銭面でのトラブルなどを抱えたりしていた。ケイン氏も“セクシャルハラスメントの地雷”と警戒されてきた。共和党議員らは、2人のFRB理事就任に賛成する投票を行うと、来年の選挙で地元の女性有権者から激しい批判を浴びてしまうと恐れたのである。 しかし、トランプ大統領もマイク・ペンス副大統領も来年の大統領選挙を意識して、FRBに景気刺激策を行わせたがっている。米メディアによると、ホワイトハウスは早速新たにポール・ウィンフリー氏(ヘリテージ財団・経済政策統括)をFRB理事に指名する様子だという。FRBに圧力を加えるため、大統領に忠誠を示す人物を何とか送り込みたいようだ。さすがに今後は事前の“身辺調査”を入念に行うだろうが……』、共和党議員らが、2人の金融政策に対する考え方よりも、地元の女性有権者からの批判を恐れたというのは、ありそうな話だ。
・『FRB理事の二つの空席にトランプ派が座れば、FRB内はかき回されるだろう。彼らが講演を行うたびに金融市場が大きく揺さぶられる恐れもある。ただし、投票において彼らは主導権を握れない。FRB理事の総数は(議長と副議長を含め)7人だからだ。 また、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標や量的金融緩和策などの金融政策の根幹部分は米連邦公開市場委員会(FOMC)で決定されている。同委員会の投票は地区連邦銀行の総裁を含む計12人で行われる。 その点では、黒田東彦総裁や若田部昌澄副総裁など事実上の“安倍派”が多数派を占める日本銀行の現政策委員会のような構図には、FRBはなりにくいといえる。 FRBの創立は1913年だが、その根拠法である連邦準備法は米国の中央銀行が特定の勢力の支配下に落ちないように防御線を張っている。FRB理事の任期は大統領の任期(最大2期8年)よりはるかに長い14年。また、地区連銀総裁の任命に政権は関与できない。 このように、連邦準備法はFRBが時の政権の影響を過度に受けないような枠組みを定めている。金融政策は中長期的な視点で運営される方がよい、という考え方がその背景にある。 一方で、FRBの独立性とは政権内における独立だと米国では伝統的に考えられてきた。国民から選ばれた大統領とFRBが全面対決を続けることは本来であれば望ましくない。適度な距離感が求められているといえる。 その点でもし来年の大統領選挙でトランプ氏が再任されたら、FRBは非常に悩ましいことになる。議長と2人の副議長の任期が到来すれば、ホワイトハウスはトランプ派を任命するだろう(議長と副議長の任期は4年で理事より短い)。時間がたつにつれて、理事にも徐々にトランプ派が増える。 次期幹部がバランスの取れた人物であればよいのだが、そうでない場合、世界経済にとっても大きなリスク要因となり得る。米大統領選挙の行方はこの点においても注目を集めるといえるだろう』、確かに「トランプ氏が再任され」れば、大変なことになりそうだ。現在は、米国債10年物の利回りは2%と安定しているが、将来のインフレ懸念で大きく上昇することになろう。これは、日本にも波及する懸念が強いとみておくべきだろう。

第三に、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が5月21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「トランプ「世界戦略」の全貌がイラン制裁と米中摩擦で見えてきた」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/203023
・『トランプ大統領の「アメリカファースト(米国第一主義)」が猛威を振るっている。米国はイランとの対立を先鋭化させている。トランプ大統領は、イラン産原油の全面禁輸を決定し、これに対抗してイランは核兵器開発につながるウラン濃縮の拡大に踏み切る可能性を示唆した。 また、米国は中国との貿易戦争において、高官級通商協議が不調に終わったことで、中国製品2000億ドル分に課す制裁関税を10%から25%に引き上げた。また、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に事実上の輸出禁止措置を発動した。中国は即日、報復措置を表明した』、安倍首相は現在、イランを訪問し、米国との仲立ちをしようとしているが、成果は期待薄だろう。先ほど、ホルムズ海峡を通過中の日本の海運会社が運航するタンカー1隻が攻撃を受け、船を放棄して船員が脱出したとのニュースが入った。船籍はパナマなので、日の丸を掲載してなかったのかも知れない。安倍首相訪問との関連も不明だ。
・『過去最強の米国が狙う「新しい国際秩序」の構築  この連載では、米国が従来の地政学的な枠組みでは説明できない「新しい国際秩序」を着々と築いてきたことを説明してきた。米国は「世界の警察官」を続けることに関心がなくなった。だから、世界から少しずつ撤退を始めている。重要なのは、これはトランプ大統領の思い付きではなく、バラク・オバマ大統領の時代から始まった、党派を超えた国家戦略だということだ(本連載第170回)。 しかし、米国は世界の警察官をやめたといっても、弱くなったわけではない。いまだに世界最強の圧倒的な軍事力・経済力を誇っている。むしろ、「シェール革命」によって世界最大の産油国・産ガス国となった米国は、「過去最強」といっても過言ではない。 その圧倒的な力を使う米国は、まるで「世界の暴力団」のようだ(第191回)。だが、トランプ大統領は気まぐれに振る舞っているわけではない。今、米国がさまざまな国に揺さぶりをかけているのは、米国がさまざまな国々との間の「適切な距離感」を再構築する取り組みである』、「さまざまな国々との間の「適切な距離感」」を探る過程では、かなりの摩擦もあるだろう。
・『米国の圧倒的な石油支配力がベネズエラ経済を崩壊させた  2019年に入って顕著になってきたのは、米国が「シェール革命」で得た石油・ガスを支配する力を、露骨に使い始めたことだ。この連載では、トランプ大統領が就任した時から、大統領がアメリカファーストを自信満々で推し進めることができる根拠として、「シェール革命」を指摘してきた(第170回・P.4)。 要は、シェール革命によって米国自身が世界一の産油・産ガス国になった。その結果、米国が「世界の警察官」を務める大きな理由であった、世界中から石油・ガスを確保する必要性がなくなってきたのだ。その結果、米国は産油国に気を遣わなくなり、エルサレムのイスラエル首都承認など、世界を混乱させるのが明らかな行動を、平気で取るようになった(第173回)。 だが、ここにきて米国は、シェール革命で産油国に無関心になっただけでなく、それをより積極的に新しい国際秩序構築に使い始めたように思う。それがはっきりしたのが、南米の主要な産油国であり、独裁政権のベネズエラに対する米国の動きだ。 現在、ベネズエラは169万%のインフレ、5年連続マイナス経済成長、3年間で総人口の1割(300万人)以上の国民が国を脱出、5日におよぶ全国停電が起こるなど、深刻な経済危機にある。また、今年1月以降は現職のニコラス・マドゥロ大統領とフアン・グアイド暫定大統領(国会議長)の2人の大統領が並び立つという異常な状態にある。 ベネズエラの経済危機の背景には、国際石油価格の長期的な下落がある。2013年末、1バレル100ドルに迫っていた原油価格は2014年の下半期から急落し始め、 2016年には24.25ドルまで下がった。その大きな要因がシェールオイルの本格的な流通の拡大だ。ベネズエラは、原油を中心とする石油が輸出の97%を占める、典型的な「産油国の経済構造」(第147回)だ。原油価格の下落は、経済危機に直結することになった。 さらに問題となったのは、米国への輸出の比率はピーク時には5割超を占め、2018年時点でも約36%を占めている、ベネズエラの「米国依存」の経済構造だった。ベネズエラに対する米国の制裁措置は、オバマ政権期の2015年から始まっていたが、それは政府・軍の高官に対する米国への渡航禁止や英国内の資産凍結にとどまっており、本格的な経済制裁が始まったのはトランプ政権からだ。 2017年8月の金融制裁では、ベネズエラ政府や国営企業が発行する債権の取引や金融取引、金や仮想通貨の取引も含む金融取引に米国人・法人が関与することを禁止した。これで、マドゥロ政権が対外債務の借換えや外貨を獲得するのが困難になった。 また、今年1月末の石油貿易に関する制裁措置は、ベネズエラから米国への石油輸入、および米国からベネズエラへの石油輸出を事実上禁止するものである。「米国依存」のベネズエラ経済は、外貨獲得源の半分近くを失った。 マドゥロ政権は、現在国が直面する経済破綻は米国が仕掛けた「経済戦争」によるものだと繰り返し訴えている。それ以前に、「石油輸出依存」「米国依存」の経済構造の問題を放置した自業自得のようにも思えなくもないが、いずれにせよトランプ政権がシェール革命で得た圧倒的な力を使ってベネズエラを滅多打ちにして倒したことは間違いない』、マドゥロ政権にはロシアや中国が支援しているとはいっても、その支援は焼け石に水だろう。ベネズエラ軍の政権支持もいつまで続くのだろうか。
・『米国はイランも経済制裁だけで滅多打ちにしてKOできる  米国はイランに対しても、シェール革命で得た圧倒的な石油支配力を見せつけている。2015年にオバマ政権下でイランと欧米6ヵ国が締結した核合意は、イランがとりあえず10年間は核開発を止めて、IAEA(国際原子力機関)の査察をきちんと受ける代わりに、経済制裁を解除するというものだ。イランは、その義務を守ってきているが、その気になれば、秘密裏の核開発は可能なものではある。 トランプ大統領は、この核合意について「一方的かつ最悪な内容で、決して合意すべきではなかった。平穏や平和をもたらさなかった。今後ももたらすことはない」と完全否定し、2018年5月に離脱を宣言した。大統領からすれば、「シェール革命」で得た米国の石油支配力があれば、イランを滅多打ちにしてKOできるのに「どうしてこんな中途半端な合意で満足するのだ」ということだろう。 トランプ大統領は、オバマ前政権の政策を嫌い、地球温暖化対策のパリ協定、TPPなどを次々とひっくり返そうとしてきた。だが、イランとの核合意については、オバマ前大統領に対する感情的な反発というより、合理的な計算に基づいている。 イランは、原油収入が政府歳入の約45%、輸出額の約80%を占める、典型的な石油依存型の経済構造である。その状況からの脱却を目指し産業の多角化を実現するために、原子力発電が必要というのが、イランの核開発疑惑に対する言い分だった。 だが、イランの言い分が嘘でなければだが、核合意で原子力発電の開発も止まる。産業多角化は進まなくなった。その上、シェール革命による石油価格の長期低落がイラン経済を苦しめてきた。さらに、トランプ大統領が、イラン産原油の輸入を禁止する経済制裁を再発動させ、イランから石油を輸入し続けてきた中国、インド、日本、韓国、トルコに認めてきた適用除外も打ち切ることを決定した。イラン経済は壊滅的な打撃を受けることになる。 イランのハッサン・ロウハニ大統領は、米国への対抗措置として、核合意について履行の一部を停止したと表明した。だが、トランプ大統領は痛くもかゆくもないし、むしろさらに経済制裁を強化する理由になる。一報(正しくは「方」)でイランはあまり強硬になると、核合意をなんとか守ろうとしてきたフランス、ドイツ、ロシア、中国、イギリスの反発を招く懸念もある。 イランは、「ホルムズ海峡封鎖」を示唆してもいるが、それは「石油依存経済」のイランにとって、自殺行為でもある。要するに、米国に対抗する有効な手段はない。トランプ大統領は、イランへの経済制裁を強める一方で、国家安全保障担当を含む側近らに、イランとの戦争は求めていないと伝えたという。当然だろう。戦争などという「無駄な支出」をしなくても、イランを滅多打ちにしてKOできるからだ』、KOする過程では、穏健派のロウハニ大統領が失脚し、代りに強硬派が政権を握り、軍事的にも一触即発といった最悪の事態に陥るリスクもあるだろう。
・『米中が互いに25%関税発動 民間企業ファーウェイも制裁対象に  そして、米中貿易戦争である。米国は2018年7月以来段階的に、計2500憶ドルの中国製品に制裁関税を課してきた。昨年末から、米中は貿易協議を開催し、決着点を模索してきた(第201回)。閣僚級協議を続け、「合意文書」の95%は出来上がっていたというが、中国が5月に入って見直しを求めるなど突然手のひらを返した。 米国は、まだ追加関税をかけていない残りの中国製品3000億ドル(約33兆円)分に課す制裁関税を10%から25%に引き上げることを決定した。トランプ大統領は最大の切り札を出し、「関税は圧倒的な富を米国にもたらす」とツイートを連発した。これに対して中国は、約600億ドル(約6兆6000億円)相当の米国製品に課している追加関税を最大25%に引き上げる報復措置を発表した。 だが、米国は中国への攻撃の手を緩めない。米国はファーウェイへの輸出禁止措置を発動したのだ。ファーウェイは、次世代通信規格「5G」で先行し、特許の国際出願件数は世界トップを占めるなど、中国のハイテク企業の代表だが、米国がファーウェイを制裁する理由はそれだけではない。 米国は、中国共産党や中国軍とファーウェイの深い関係を疑い、ファーウェイが米国の通信ネットワークへの侵入などを通じて安保を脅かす可能性があるとの見方を強めてきた。米国は、中国がサイバー攻撃などで奪ってきた知財をもとに、米国の経済・軍事面の覇権を奪おうとしているという疑惑を持ってきたが、ファーウェイはその疑惑のど真ん中にいるとみなされてきたのだ(第201回・P.5)』、米中関係は全面的な経済戦争の様相を呈してきたようだ。
・『「米国に食わせてもらって」成長した中国が覇権に挑戦することへのトランプ大統領の怒り  米中貿易戦争は、派手な関税引き上げの報復合戦に注目が集まりがちだが、ハイテク分野で追い上げ、軍事・経済両面で覇権の座を奪おうとする中国と、それを防ごうとする米国の対立構図が本質とみられるようになっている。この連載も、そういう見方をしてきた。 だが、実は米中貿易戦争の肝は、中国製品に課す高関税そのものではないかと考えるようになった。その理由は、中国がなぜ米国の覇権を驚かすまで急激な経済成長を成し遂げたかを考えればわかる。 この連載では、トランプ大統領が登場する前の米国の国家戦略を振り返ってきた(第170回)。それはもともと第二次世界大戦後、ソ連・中国共産党などの共産主義ブロックの台頭による東西冷戦に勝利するための戦略であった。米国は世界各地に米軍を展開し、同盟国の領土をソ連の軍事的脅威から防衛し、米国自身と同盟国が安全に石油・ガスなど天然資源を確保するため、「世界の全ての海上交通路」も防衛する「世界の警察官」になった。 また、米国は同盟国に「米国市場への自由なアクセス」を許した。米国は、同盟国を自らの貿易システムに招き、工業化と経済成長を促した。その目的は、同盟国を豊かにすることで、同盟国の国内に貧困や格差による不満が爆発し、共産主義が蔓延することを防ぐことだった。この米国の国家戦略の恩恵を最も受けたのが、日本であることはいうまでもない。 ソ連が崩壊し、東西冷戦が終結した。この時点で、米国の国家戦略は変わってもおかしくなかったが、米国は唯一の覇権国家として、「世界の警察官」「米国市場への自由なアクセス」の戦略を継続した。ここで、日本に代わって最も恩恵を受けるようになったのが、「改革開放政策」に舵を切った中国だった。 2000年代に入り、中国は米国に対する輸出を拡大することで、劇的な経済成長を成し遂げた。そして、米国で儲けたカネを使って、軍事力の拡大を進め、アフリカなどに巨額の投資をして拠点を作り、米国の地政学的優位性を揺るがせ始めた(第120回)。そして、「安かろう、悪かろう」の工業品や農産物の輸出から、ハイテク技術への転換を進めて、サイバー戦争でも優位に立ち、米国から覇権を奪おうという意欲を見せ始めた。 しかし、見方を変えれば、中国は「米国に食わせてもらった」からこそ、急激に経済成長できたといえる。トランプ大統領の中国に対する怒りは、ここに本質がある。そして、軍事的な拡大や地政学的な脅威や、ハイテク企業の成長に一つひとつ対応することも大事だが、より本質的には貿易を止めて中国に米国のカネが流れないようにすることが重要だと、「ディールの達人」トランプ大統領は当然考える。 実際、報復関税合戦は、中国の一方的な敗北の様相を呈している。中国は経済が落ち込み、30年ぶりに経済成長率が6%を割り込むという予測が出てきた。一方、米国経済は好調を維持しているのだ。 当初、米中は貿易摩擦では早々に妥協して決着し、舞台はハイテク分野に移っていくとみられていた。だが、今後も米国はなんだかんだと難癖をつけながら、貿易摩擦についても報復関税合戦を続けていくかもしれない。見方を変えれば、米国がハイテク分野で中国に注文を付け続けるのは、報復関税を続けるための方便だといえるのかもしれない。それが、より中国の本質的な弱点を突くことになると、トランプ大統領は見抜いている』、「報復関税合戦は、中国の一方的な敗北の様相を呈している」というのは、米国への打撃がなぜ少ないのかは不明だ。いずれにせよ、習近平が一時は驕り高ぶり過ぎたのも事実だが、「米国がハイテク分野で中国に注文を付け続けるのは、報復関税を続けるための方便だといえるのかもしれない」、というのは困ったことだ。

第四に、作家の橘玲氏が6月4日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「トランプ大統領は、善悪二元の「ブードゥー経済学」で間違った貿易戦争を仕掛けている【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/204600
・『トランプの経済政策のスゴいところは、その理屈が最初から最後まですべて間違っていることです。それも、信じがたいような初歩的レベルで。 トランプはまず、貿易黒字を「儲け」、貿易赤字を「損」だと考えます。だからこそ、二国間貿易でアメリカに対して黒字になっている中国や日本は、「損」させていることに対してなんらかの埋め合わせをしなくてはなりません。 さらにそこから、貿易は「戦争」だという極論が出てきます。貿易赤字の国(アメリカ)は被害者で、貿易黒字の国(中国や日本)は加害者です。被害者=善は、いわれるがままにぼったくられるのではなく、加害者=悪に対して制裁を加えなくてはならないのです。こうして予言が自己実現するように、米中がお互いに高率の関税を課す「貿易戦争」が勃発しました。 トランプはFRB(米連邦準備理事会)に対して執拗に利下げを要求していますが、これも「戦争理論」で説明できます。「(FRBが利下げすれば)ゲームオーバーだ。アメリカが勝利する!」とツイッターでつぶやいたのは、高関税に苦しむ中国は財政支出を拡大させ、金利を引き下げるから、アメリカが先んじて利下げすれば「戦況」はより有利になるからだそうです。 この「戦争」に勝てば「どんな場合でも中国が合意したがる!」ことになって、これまで貿易赤字という「悪」に苦しめられてきたアメリカの善良な(トランプ支持の)ブルーワーカーたちは正当な「ゆたかさの権利」を取り戻すことができるのです。 トランプがまったく理解していないのは、貿易赤字/黒字はグローバル経済を国家単位で把握するための会計上の約束事で、損得とはなんの関係もないことです。 日本経済を地域単位で把握するために、各県別の「貿易収支」を計算することができます。静岡県の県民が愛知県からトヨタの車を購入すれば「貿易赤字」になりますが、だからといってその分だけ静岡県が貧乏になるわけでもなければ、県同士で「戦争」しているわけでもありません。愛知県のひとが車を売った利益で静岡県の物産(お茶やミカン)を購入すれば、どちらもよりゆたかになるというだけのことです。 これは国際経済学の初歩の初歩で、大学の授業では真っ先に扱うでしょうし、最近では高校の政治経済でも習うかもしれません。それにもかかわらず貿易黒字=儲け/貿易赤字=損という誤解がなくならないのは、(自称「知識人」も含め)ほとんどのひとが、交易による利益を「搾取」と同一視しているからです。なぜなら、その方がわかりやすいから。 複雑で不可解な現実をもっともかんたんに理解する方法は、集団を「善(俺たち)」と「悪(奴ら)」に分割したうえで、この世界で善と悪の戦いが起きていると考えることです。稀代のポピュリストであるトランプは、自分に投票するような有権者は、この単純な枠組みでしかものごとを理解できないと(本能的に)知っているのでしょう。だからこそ、まっとうな経済学者の批判や助言をすべて無視するのです。 この間違った貿易理論は「ブードゥー経済学」と呼ばれています。私たちが生きているのは「合理的な近代」などではなく、ブードゥー(呪術)的な世界だということがいよいよはっきりしてきました。 後記:アメリカ政府は中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)に対する輸出規制を発表しましたが、こちらは安全保障上の問題で、経済(貿易)問題とは異なります』、アメリカにはノーベル経済学賞の受賞者が最も多いのに、トランプの「ブードゥー経済学」がまかり通っているというのは、最大級の皮肉だ。
タグ:東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人 トランプ大統領 薬師寺 克行 加藤 出 「外交の安倍」 (その41)(トランプの「欧州嫌い」はここまで深刻だった 揺れる米欧関係 試される日本の戦略的外交、世界経済を危機に陥れる!?トランプ政権の「FRB多数派工作」、トランプ「世界戦略」の全貌がイラン制裁と米中摩擦で見えてきた、トランプ大統領は 善悪二元の「ブードゥー経済学」で間違った貿易戦争を仕掛けている) 「トランプの「欧州嫌い」はここまで深刻だった 揺れる米欧関係、試される日本の戦略的外交」 米欧は重要な問題でことごとく対立 過去と次元の異なる「米欧対立」 「やってる感」 「世界経済を危機に陥れる!?トランプ政権の「FRB多数派工作」」 スティーブン・ムーア氏とハーマン・ケイン氏を理事として送り込もうとしたが、米上院の反対により頓挫 共和党議員らは、2人のFRB理事就任に賛成する投票を行うと、来年の選挙で地元の女性有権者から激しい批判を浴びてしまうと恐れた 「トランプ「世界戦略」の全貌がイラン制裁と米中摩擦で見えてきた」 過去最強の米国が狙う「新しい国際秩序」の構築 米国がさまざまな国々との間の「適切な距離感」を再構築する取り組み 米国の圧倒的な石油支配力がベネズエラ経済を崩壊させた 米国はイランも経済制裁だけで滅多打ちにしてKOできる 米中が互いに25%関税発動 民間企業ファーウェイも制裁対象に 「米国に食わせてもらって」成長した中国が覇権に挑戦することへのトランプ大統領の怒り 米国がハイテク分野で中国に注文を付け続けるのは、報復関税を続けるための方便だといえるのかもしれない 「トランプ大統領は、善悪二元の「ブードゥー経済学」で間違った貿易戦争を仕掛けている【橘玲の日々刻々】」 トランプはまず、貿易黒字を「儲け」、貿易赤字を「損」だと考えます 二国間貿易でアメリカに対して黒字になっている中国や日本は、「損」させていることに対してなんらかの埋め合わせをしなくてはなりません 貿易は「戦争」だという極論 貿易赤字の国(アメリカ)は被害者で、貿易黒字の国(中国や日本)は加害者 FRB(米連邦準備理事会)に対して執拗に利下げを要求 高関税に苦しむ中国は財政支出を拡大させ、金利を引き下げるから、アメリカが先んじて利下げすれば「戦況」はより有利になるからだそうです トランプがまったく理解していないのは、貿易赤字/黒字はグローバル経済を国家単位で把握するための会計上の約束事で、損得とはなんの関係もないことです (自称「知識人」も含め)ほとんどのひとが、交易による利益を「搾取」と同一視しているから 稀代のポピュリストであるトランプは、自分に投票するような有権者は、この単純な枠組みでしかものごとを理解できないと(本能的に)知っているのでしょう 「ブードゥー経済学」 ノーベル経済学賞の受賞者
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