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知的財産(権利を守りたい漫画家でさえ反対する「ダウンロード違法化」の最適解、小田嶋氏:JASRACは何と戦っているのだろうか) [文化]

今日まで更新を休む予定だったが、今日から可能になったので、知的財産(権利を守りたい漫画家でさえ反対する「ダウンロード違法化」の最適解、小田嶋氏:JASRACは何と戦っているのだろうか)を取上げよう。

先ずは、経産省出身で慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸 博幸氏が3月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「権利を守りたい漫画家でさえ反対する「ダウンロード違法化」の最適解」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/196956
・『ダウンロード違法化の範囲を拡充 著作権法改正法案はなぜ見送られたか  文科省がダウンロード違法化の範囲を拡充する著作権法改正法案を今国会に提出しようとしましたが、世論の強い反発が収まらずに自民党で法案が了承されず、国会提出は見送られることとなりました。 違法コンテンツに対する規制強化は当然ですが、同時にそれに対する懸念の声もよくわかります。ダウンロード違法化について両者が満足できる最適解は、存在するのでしょうか。 今回の著作権法改正法案には、違法コンテンツ対策として2つの柱があります。1つの柱は違法コンテンツが置かれているウェブサイトのURLをまとめ、ユーザをそれら海賊版サイトに誘導する“リーチサイト”や“リーチアプリ”に対する規制の導入です。 具体的には、リーチサイトの運営者やリーチアプリの提供者には刑事罰(非親告罪)を科し、またリーチサイトやリーチアプリにリンク情報などを提供した者に対しては、権利者の民事措置(差止請求、損害賠償請求)を可能にするとともに、刑事罰(親告罪)も科しています。 著作権者に無断でアップロードされた違法コンテンツは、リーチサイトにリンクが貼られることで62倍も多く視聴されてしまう(電気通信大調査)という現実を踏まえると、リーチサイトやリーチアプリへの規制の導入は当然の措置です。実際、この点については識者や世論の反発もほとんどありません。 これに対して、違法コンテンツ対策のもう1つの柱であるダウンロード違法化については、弁護士や漫画家といった方々から強い懸念と反対の声が上がり、結果として法案の国会提出が見送られることになりました。そこで、このダウンロード違法化についてすべての人が満足する最適解が存在するかを考えてみたいと思います』、なかなか興味深そうだ。
・『どこまでが違法なのか 文科省は悪影響に配慮も  その前に、おそらく多くの方が今回のダウンロード違法化の詳しい内容をご存じないと思いますので、説明しておきましょう。 ダウンロード違法化とは、ネット上に違法にアップロードされたものだと知りながら違法コンテンツをダウンロードすることを、それが私的使用目的であっても違法とし、特に正規版が有償で提供されているもののダウンロードを継続的に、または反復して行う場合には、刑事罰(親告罪)の対象とするものです。 音楽と映像については、すでにこのダウンロード違法化が行われているのですが、ネット上では漫画や雑誌など幅広い分野で違法ダウンロードの被害が生じていることから、今回の法改正では、音楽・映像に限らず違法にアップロードされたすべての著作物をダウンロード違法化の対象としようとしています。 ただ、ネットが情報収集の最大のツールとして活用され、かつネット上のコンテンツが違法にアップロードされたかどうかを見極めるのが困難である現実を考えると、無闇になんでも違法とすべきではありません。 そこで、違法にアップロードされたコンテンツだと知らずに(適法か違法かの判断がつかずに)ダウンロードした場合は違法とならないし、またネット上で適法に引用されたものと思ってダウンロードしたけれど実際は違法な引用だった場合など、適法・違法の評価を誤った場合も違法とならない旨が明確化されました。 また、そもそも当たり前の話ですが、違法にアップロードされたコンテンツであっても、ダウンロードせずに視聴するだけなら違法となりません。  加えて、刑事罰についても、それを科されるのは継続的にまたは反復して行われるという常習性がある場合に限られ、かつ二次創作者が原作者の許諾なくアップロードした二次創作物のダウンロードは対象外とされています。 このように、ある意味、ダウンロード違法化の具体策を検討した審議会での有識者の反対意見なども踏まえ、文科省はダウンロード違法化の対象を著作物全般に拡大する悪影響にかなり配慮した、と言うこともできます』、「ダウンロード違法化の対象」はかなり限定されたようだが、それでも問題があるようだ。
・『不利益を被っているはずの漫画家でさえ反対するのはなぜか  それでも、今回の著作権法改正に対しては、弁護士や有識者、さらには違法ダウンロードにより不利益を被っているはずの漫画家の組織である日本漫画家協会も、強い反対を表明しました。 反対の主要なポイントは、ネット上の情報収集ではスクリーンショットなどが当たり前に行われている中でネット利用の萎縮につながる、漫画などの研究や創作を阻害する、といった点になるかと思います。すべての文化がそうですが、特に漫画は模倣を通じて発展してきた部分もあることを考えると、漫画家の方々が反対するのもある意味で納得できます。 ただ、だからといってダウンロード違法化の範囲を音楽と映像以外に拡充しないという選択肢もないと思います。クリエイターが全知全能を振り絞ってつくり上げた作品がネット上で違法に享受され、クリエイターが正当な報酬を得られないようでは、クリエイターは生活のために別の仕事をせざるを得なくなるので、文化の衰退につながりかねないからです。 それでは、どうすればいいのでしょうか。現実的な制度設計が可能かどうかを度外視して考えると、やはりダウンロード違法化の対象をすべての著作物に拡大することを基本とした上で、ネット利用などの萎縮を招かないよう、その例外措置も拡充すべきではないでしょうか。 たとえば、スクリーンショットは基本的にダウンロード違法化の例外としてもよいのではないかと思います。レコードやCDの音楽をカセットテープに複製するのは、著作権違反ではありません。これは、カセットにダビングするのは基本的に自分で楽しむためという私的利用が目的であることに加え、カセットというアナログ媒体に複製したら音質が劣化するという面もあるからです。 いくらデジタルのネット上でも、スマホの画面を撮影するスクリーンショットだと画質が多少は劣化することと考えれば、スクリーンショットはカセットへのダビングと同列に扱える部分もあるのではないでしょうか。 また、ダウンロード違法化の刑事罰が親告罪であることを考えると、ダウンロード違法化の対象となることを望まないコンテンツのジャンルごとの業界団体なり個別の作者なりがいる場合に、刑事罰を親告する権利を明示的に放棄する、または繰り返し複製するなど悪質性が高い場合のみに親告するといった条件を宣言しやすくする仕組みを、導入する手もあるのではないでしょうか』、「すべての文化がそうですが、特に漫画は模倣を通じて発展してきた部分もあることを考えると、漫画家の方々が反対するのもある意味で納得できます」、ただ「ダウンロード違法化の対象をすべての著作物に拡大することを基本とした上で、ネット利用などの萎縮を招かないよう、その例外措置も拡充すべきではないでしょうか」、との筆者の考え方も理解できる。
・『ダウンロード違法化の最適解はあり得るか  過去に“creative commons”など、同様に著作権を自ら放棄する取り組みもありましたが、それらを参考にダウンロード違法化に反対するクリエイターなどが、自らの作品をその対象外であると宣言しやすくするのです。 個人的には、このように柔軟な対応を考えることで、基本的には違法なコンテンツのダウンロードはダメ、でもその例外を制度的に多く担保することでネット利用の萎縮などの悪影響を最小限に抑えるようにする、というアプローチでしか、最適解は見出せないのではと思います。 著作権法改正法案の国会提出が先送りになったことで、文科省はダウンロード違法化の制度設計を再検討することになると思います。このような柔軟な対応をどう検討していくのか、見守っていきましょう』、その通りだろう。

次に、コラムニストの小田嶋 隆氏が7月12日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「JASRACは何と戦っているのだろうか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00030/?P=1
・『音楽著作権をめぐる問題は、当欄でもこれまでに何回か取り上げている。 この問題は、私が「テクニカルライター」という肩書きで、IT(当時はまだ「IT」という言葉は発明されていませんでしたが)まわりの原稿を書いていた1980年代から90年代にかけて、いくつかの媒体で記事化している。 当時から私の立場はわりと一貫している。 この20年ほど、私は、日本音楽著作権協会(=JASRAC。以下「ジャスラック」と表記します)が著作権使用料を要求する対象が拡大の一途をたどってきたことに、その都度 「行き過ぎじゃないか?」「その要求は無理筋だと思うが」と、違和感ないしは疑義を表明してきた。 もちろん、ジャスラックから回答なり反応なりが返ってきたことはない。 私が一方的にいいがかりをつけてきただけの話だ。 一時期は、「ジャスラック」という単語を自分の原稿の中に書く時に、必ず「シャイロック、じゃなかったジャスラック」というふうに、わざと一度言い間違えてから言い直すメソッドを採用していた。 ネタとしては「ベニスの商人」(シェイクスピア作)の中に出てくる、強欲な金貸しであるシャイロックとジャスラックの混同を狙ったセコいやり口なのだが、しばらくの間はそれなりに有効だったと思っている。 余談だが、つい先日、安倍晋三首相が、参院選の選挙の応援演説の中で、「民主党の、あ、すいません、民主党じゃなくて立憲民主党ですね。どんどん政党が変わるから分からなくなってしまいました。その立憲民主党の枝野さんは党首討論で…… ―略―」と、立憲民主党の枝野幸男氏について言及する際に、「民主党の」と言い間違えたあとに、あらためて訂正する内容の演説を繰り返しているというニュース が流れてきた。 ハフポストがまとめたところによると、首相の「言い間違い演説」は、6日午後の滋賀県草津市での街頭演説で確認されてから後、翌7日は、千葉県内と東京都内で行った計6カ所すべての街頭演説で同じように反復されたのだそうだ。 意外なところに「シャイロック、じゃなかった、ジャスラック」手法の追随者を発見したカタチだ。 もちろん私は、安倍首相のスピーチライターに「故意の言い間違いによるダブルイメージ拡散手法」に関しての著作権使用料を請求するようなことはしない。なんとなれば、文化とは先人の優れた業績を踏まえたところから出発する何かで、その意味からして、自分の仕事が誰かに模倣されたと感じた時、怒りよりは、むしろ晴れがましさを感じるのが本当の人間だと考えるからだ。 話を元に戻す。 ジャスラックは、この30年ほどの間に、著作権使用料の請求先を、演奏家、歌手、レコードCDの制作者、放送、雑誌、新聞、書籍のような商業的なマスの媒体から、有線放送、飲食店の店内音楽、さらにはダンス教室、商店街のBGMに至るまでの、およそありとあらゆる個人に拡大してきている。加えて、彼らは、音楽がファイル化して流通するようになって以来、音楽ファイルが記録され得る媒体(つまり「想定し得るあらゆるすべての媒体」ということになる)に、音楽が乗せられることを想定して、CD-RやDVD-Rのような記憶媒体、ハードディスク、果てはスマホやパソコン本体にあらかじめ補償金を徴収するシステムの確立を画策していると言われる。 いささか古いソースだが、リンク先の記事 にこのあたりのいきさつが詳しく紹介されている』、「首相の「言い間違い演説」、確かに私にも鼻についた。
・『さて、このたび、われらがシャイロック、じゃなかったジャスラックは、音楽教室に職員を潜入させることで教室内での音楽の扱われ方を調査する手段を採用した。 リンク先の記事によれば 《―略― JASRAC側が東京地裁へ提出した陳述書によると、職員は2017年5月に東京・銀座のヤマハの教室を見学。その後、入会の手続きを取った。職業は「主婦」と伝え、翌月から19年2月まで、バイオリンの上級者向けコースで月に数回のレッスンを受け、成果を披露する発表会にも参加した。 ―略―》ということになっている。 びっくり仰天だ。 いったいいつの時代のゲシュタポのやりざまだろうか。 でなければ、ずっと昔にある漫画で読んだ「柳生の草」(←ググってください)の現代版とでも考えたものなのだろうか。 私は、民主的だと言われているわが国の戦後社会の中で60年以上生きてきた人間だが、これほどまでにあからさまなスパイ活動を堂々と敢行して恥じない組織が、自分たちの主張に耳を傾けてもらえると信じている姿を、いまはじめて見た気がしている。 思うに、ジャスラックが潜入職員を立ててまで立証せんとしていたのは、 1.ヤマハの音楽教室では、「音楽」がまるでコンサート会場でそうされているように、生徒によって「鑑賞」され、「享受」され、金銭を媒介する手段として「流通している」 ということなのだろう。 というのも、ジャスラックとヤマハの間で争われている訴訟では、現在、教室内で演奏される音楽が、演奏技術を伝えるためのものなのか、それとも「鑑賞目的」なのかという点と、もう一つは、教室に通っている生徒が、営利目的で演奏を聴かせる対象としての「公衆」に当たるのかであるからだ。 ちなみにヤマハとジャスラックが争っている訴訟の争点については、以下の記事 が詳しい。興味のある向きは熟読して内容を吟味してほしい。 さて、潜入職員は、レッスンでの演奏の様子について、「とても豪華に聞こえ、まるで演奏会の会場にいるような雰囲気を体感しました」と主張している。 演奏を聴いていた生徒たちについては、「全身を耳にして講師の説明や模範演奏を聞いています」という言い方で描写している。 つまり彼ら(ジャスラックとその潜入職員たちのことだが)は、レッスン時に試奏されている音楽が、「事実上コンサートの音楽として」流通しており、生徒たちも、「有料入場者たる聴衆に近い聴き方で」その音楽に向き合っているということを主張しているわけだ。 なぜというに、彼らの側の理屈からすれば、作曲者の存在が明示的に共有されている特定の楽曲が、金銭の授受を伴う音楽として流通しているのだとすると、そこには当然、著作権使用料が発生するはずだという理屈になるからだ』、JASRACが音楽教室に「潜入職員」でスパイさせていたというのは、私もそこまでやるのかと、驚かされた。彼らの主張もいささか手前勝手な印象を受けた。
・『さてしかし、音楽教室の側の立場からすれば、講師が全力を尽くして最高の演奏を披露しようとするのは、教育者として当然の姿勢だ。 というよりも、どんな分野であれ、他人に何かを教える人間が、全身全霊でその任に力を尽くすのは、「教育」という行為の大前提だ。 同様の理路から、生徒が「全身を耳にして模範演奏を聞く」態度も、同じく、音楽を学ぼうとする人間としての最も基本的な態度だ。 というよりも、そもそも教える側がぞんざいな演奏をしていたり、学ぼうとする側が、いいかげんな態度で聞いていたのでは演奏技術はもとより、「音楽」のエッセンスそのものが伝わらない。 野球でもフィギュアスケートでも、コーチは全力の模範演技を見せて、生徒に競技の真髄を伝えようとする。 「鑑賞」のうえ拍手をしてもらいたいからではない。八分の力で投げるピッチングフォームや、3回転から2回転にグレードダウンした模範演技では、伝えようとするところの最も大切なスキルやテクニックが伝わらないからでもあれば、100パーセントの集中をもって競技に臨まない態度は、故障につながりかねないからだ。 山岳警備隊のトレーニングがザイルの代わりにビニール紐を代用として敢行できるはずもなければ、料亭の板前が発泡スチロールを切り刻むことで包丁さばきを学ぶわけにもいかない。音楽を学び伝えるためには、本物の音楽を、本気の集中力でやりとりしなければならない。あたりまえの話ではないか。 おそらく、ジャスラックは、「教育目的で音楽が演奏されている」場所に、著作権使用料が発生していない現状が不満で訴訟を起こしたのだろう。 彼らにしてみれば、「教育目的、レッスン目的であれ、一定数の聴衆が音楽を聴き、その人々に向けて、楽曲が演奏されている事実は変わらない。だとすれば、教育という隠れ蓑の裏で、やりとりされている闇流通の音楽に対してもわれわれは支払いを要求する」 てなところなのだろう。 しかし、そもそも、生徒たちは、レッスン用の楽曲を演奏するために、楽譜を購入している。その楽譜の出版にあたっては、すでに著作権使用料が支払われている。さらに生徒たちは、必要に応じてプロの演奏家が録音した楽曲のファイルなりCDなりを買っている。これらの音源についても当然のことながら著作権使用料がのせられている。 その上、教室内で鳴っている講師の演奏についても、別途レッスン料の中からジャスラックに金銭を徴収されねばならないというのだろうか。 理屈の話をすれば、もっと細かい話だってできる。 もっとも、ジャスラックの側からも、別の論点からの違った細かい話が出てくるだろうとは思う。 ただ、今回の報道で私がなによりも衝撃を受けたのは、音楽教室に潜入捜査員を送り込んで訴訟のための資料を収集しようとしたジャスラックの、その取り組み方の異様さに対してだ』、「生徒たちは、レッスン用の楽曲を演奏するために、楽譜を購入・・・すでに著作権使用料が支払われている。さらに生徒たちは、必要に応じてプロの演奏家が録音した楽曲のファイルなりCDなりを買っている・・・著作権使用料がのせられている。その上、教室内で鳴っている講師の演奏についても、別途レッスン料の中からジャスラックに金銭を徴収されねばならないというのだろうか」、JASRACの主張は余りに一方的だ。
・『ジャスラックは、何と戦っているのだろうか。 彼らは、自分たちが音楽そのものを敵にまわしはじめていることに、気づいていないのだろうか。 ヤマハは、日本にはじめて西洋の音楽が入ってきた時代から、一貫して、楽器を作り、楽譜を出版し、音楽教室を展開し、音楽ホールを設計し、レコードやCDを制作し、コンサートを企画し、新人の音楽家を発掘してきた企業だ。 もちろん、彼らとて営利企業である限りにおいて、音楽をカネに変える活動をしてきていると言えばそうも言えるだろう。しかし、総体として、ヤマハが音楽の普及と発展のために力を尽くしてきた企業であることについて、異論を唱える日本人はほとんどいないはずだ。 引き比べて、ジャスラックは音楽の普及や音楽家の育成にほんの少しでも貢献してきたのだろうか。 私は疑問に思っている。 彼らは、音楽家の権利を守ると言っている。 しかし、音楽家の中にも、自分たちの権利を守ってくれている団体であるのかどうかについて疑問を持っている人々がたくさんいる。 この話はまた別の議論になるので、ここでは深く追究しない。 ただ、私は、今回、 私の目から見て、ジャスラックのような組織が、ヤマハのような企業を相手に、音楽の「正義」を主張している姿は、なにかの皮肉であるようにしか見えない。 訴訟で争われている事例では、音楽講師と生徒が「美女と野獣」という楽曲を交互に演奏したことになっている。 で、その演奏と鑑賞の相互作用の中に音楽著作権を不当に侵害する行為が含まれていたのかどうかが争われているわけなのだが、仮に「美女と野獣」という個別の楽曲に含まれる作曲者の意図や工夫が、音楽講師の卓越した演奏を通じて、生徒に伝えられていたのだとして、「音楽を学ぶ」という文脈から見れば、教える者から教わる者に伝えられているのは、単独の著作者による個別の楽曲の細部ではなくて、「音楽そのもの」とでも言うべき技法なり演奏術なりの真髄であるはずだ。 私自身、子供の頃にピアノ教室に通って、バイエルだのブルグミュラーだのの楽譜をただただ機械的に再現するためのレッスンに苦しんだ記憶を持っている。 ただ、その苦しいレッスンの抑圧的な記憶はともかく、私の身体の中には、わずかながら「音楽そのもの」が伝えられている。それは、特定の作曲家の個別の作品とは別のものだ。その、もっと普遍的な「音楽なるもの」を伝え、再現し、楽しむために、われわれは、楽器を発明し、楽譜を書き、レコードを回し、ストリーミング配信のための環境を整えている。そこにおける主役はあくまでも「音楽そのもの」であって、「特定の楽曲に含有されている誰かの権利」みたいなみみっちいものではない。 音楽は、そうやって人から人に伝えられていくものだ。 カネや著作権は、そうした音楽の流れの周辺に発生するノイズにすぎない。 ジャスラックは、人が人に音楽を教えている現場にスパイを送り込んだ。このことは、同時に、人が人から何かを学び取ろうとしている場所に、悪意の観察者を紛れ込ませたということでもある。 これはとても罪深いことだ』、「ジャスラックのような組織が、ヤマハのような企業を相手に、音楽の「正義」を主張している姿は、なにかの皮肉であるようにしか見えない」、「人が人から何かを学び取ろうとしている場所に、悪意の観察者を紛れ込ませたということでもある。 これはとても罪深いことだ」、などというのは同感だ。「私自身、子供の頃にピアノ教室に通って、バイエルだのブルグミュラーだのの楽譜をただただ機械的に再現するためのレッスンに苦しんだ記憶を持っている」、との告白の意外さに驚かされたが、この問題へのコメントにも深みが出た気がする。
・『そのスパイ行為を通じて、彼らがどんな情報を収集しようとしていたのかということとは別に、身分を偽った訴訟相手の手先による情報収集というそのやりざまのあまりといえばあまりな醜さが、音楽そのものを根本的な次元で台無しにしてしまっている。 音楽から何かを取り出すために、音楽そのものを殺してしまっては元も子もないと思うのだが、ジャスラックはまさにそれをやろうとしている。私にはそのようにしか見えない。 たとえばの話、おたまじゃくしをつかまえたいと思った子供がいたのだとして、私は、あの可憐な生き物を自分の手の中の小さな池で泳がせてみたいと考える童心を、責めようとは思わない。 でも、その子供が、おたまじゃくしをつかまえるために、春の小川にガソリンを流し込んで火をつけたのだとしたら、私は、その子供の行為を決して容認しないだろう。 問題は意図ではない。どんな崇高な意図(音楽を守りたい)に基づいているのだとしても、それを実現するための手段が破壊的であったら、何の意味もない。 野の花を摘むための手段がブルドーザーだったら押し花も恋文も無効になる。当然だ。 シャイロックは、生きている人間から心臓だけを取り出すことができると考えた男だった。 ジャスラックは、空気の中を流れている音楽から著作権だけを取り出すことができると考えているのだろうか。 抽象的な話になってしまった。結論は無い。各自考えてください。 私の子供時代のピアノの先生は、今年の3月に90歳で亡くなった。 レッスン自体にはあまり良い思い出はないのだが、私の中に根付いたいくばくかのものをもたらしてくれた先生の貢献にはいまでも感謝している。ご冥福をお祈りしたい』、「ジャスラックは、空気の中を流れている音楽から著作権だけを取り出すことができると考えているのだろうか」、というのは最大限の嫌味だ。JASRACのHPでは事業目的は、「音楽の著作物の著作権を保護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に寄与すること」とあるが、著作権保護に偏り過ぎて、最終目的の「音楽文化の普及発展に寄与」が疎かになっているのだろう。
タグ:知的財産 音楽著作権 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 岸 博幸 小田嶋 隆 (権利を守りたい漫画家でさえ反対する「ダウンロード違法化」の最適解、小田嶋氏:JASRACは何と戦っているのだろうか) 「権利を守りたい漫画家でさえ反対する「ダウンロード違法化」の最適解」 著作権法改正法案を今国会に提出しようとしましたが、世論の強い反発が収まらずに自民党で法案が了承されず、国会提出は見送られることとなりました 違法コンテンツ対策として2つの柱 1つの柱は違法コンテンツが置かれているウェブサイトのURLをまとめ、ユーザをそれら海賊版サイトに誘導する“リーチサイト”や“リーチアプリ”に対する規制の導入です この点については識者や世論の反発もほとんどありません もう1つの柱であるダウンロード違法化については、弁護士や漫画家といった方々から強い懸念と反対の声が上がり、結果として法案の国会提出が見送られる 今回の法改正では、音楽・映像に限らず違法にアップロードされたすべての著作物をダウンロード違法化の対象としようとしています 不利益を被っているはずの漫画家でさえ反対するのはなぜか すべての文化がそうですが、特に漫画は模倣を通じて発展してきた部分もあることを考えると、漫画家の方々が反対するのもある意味で納得できます やはりダウンロード違法化の対象をすべての著作物に拡大することを基本とした上で、ネット利用などの萎縮を招かないよう、その例外措置も拡充すべきではないでしょうか ダウンロード違法化の最適解はあり得るか 「JASRACは何と戦っているのだろうか」 著作権使用料を要求する対象が拡大の一途 「シャイロック、じゃなかったジャスラック」 安倍晋三首相が 立憲民主党の枝野幸男氏について言及する際に、「民主党の」と言い間違えたあとに、あらためて訂正する内容の演説を繰り返しているというニュース 「言い間違い演説」 音楽教室に職員を潜入させることで教室内での音楽の扱われ方を調査する手段を採用 これほどまでにあからさまなスパイ活動を堂々と敢行して恥じない組織が、自分たちの主張に耳を傾けてもらえると信じている姿を、いまはじめて見た気がしている 立証せんとしていたのは、 1.ヤマハの音楽教室では、「音楽」がまるでコンサート会場でそうされているように、生徒によって「鑑賞」され、「享受」され、金銭を媒介する手段として「流通している」 ということなのだろう 訴訟では、現在、教室内で演奏される音楽が、演奏技術を伝えるためのものなのか、それとも「鑑賞目的」なのかという点 もう一つは、教室に通っている生徒が、営利目的で演奏を聴かせる対象としての「公衆」に当たるのかであるからだ 生徒たちは、レッスン用の楽曲を演奏するために、楽譜を購入している。その楽譜の出版にあたっては、すでに著作権使用料が支払われている 生徒たちは、必要に応じてプロの演奏家が録音した楽曲のファイルなりCDなりを買っている。これらの音源についても当然のことながら著作権使用料がのせられている その上、教室内で鳴っている講師の演奏についても、別途レッスン料の中からジャスラックに金銭を徴収されねばならないというのだろうか 彼らは、自分たちが音楽そのものを敵にまわしはじめていることに、気づいていないのだろうか ヤマハが音楽の普及と発展のために力を尽くしてきた企業であることについて、異論を唱える日本人はほとんどいないはずだ。 引き比べて、ジャスラックは音楽の普及や音楽家の育成にほんの少しでも貢献してきたのだろうか。 私は疑問に思っている ジャスラックのような組織が、ヤマハのような企業を相手に、音楽の「正義」を主張している姿は、なにかの皮肉であるようにしか見えない 私自身、子供の頃にピアノ教室に通って、バイエルだのブルグミュラーだのの楽譜をただただ機械的に再現するためのレッスンに苦しんだ記憶を持っている スパイ行為を通じて、彼らがどんな情報を収集しようとしていたのかということとは別に、身分を偽った訴訟相手の手先による情報収集というそのやりざまのあまりといえばあまりな醜さが、音楽そのものを根本的な次元で台無しにしてしまっている ジャスラックは、空気の中を流れている音楽から著作権だけを取り出すことができると考えているのだろうか 著作権保護に偏り過ぎて、最終目的の「音楽文化の普及発展に寄与」が疎かになっている
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今日から31日まで更新を休むので、1日にご期待を!

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暗号通貨(仮想通貨)(その13)(仮想通貨「採掘」で大誤算 GMOとDMMが急転換 GMOは350億円の特損 上場以来最大の赤字へ、金融庁は仮想通貨規制をどこまで強化するのか 「ICO」での資金調達も金商法の対象になる?、仮想通貨上昇 拭えぬ疑念 ビットコイン1万ドル回復「相場つり上げ」の声も、金融庁メンツ丸つぶれ ビットポイント仮想通貨流出の「間の悪さ」) [金融]

昨日のリブラに続いて、もともとの暗号通貨(仮想通貨)(その13)(仮想通貨「採掘」で大誤算 GMOとDMMが急転換 GMOは350億円の特損 上場以来最大の赤字へ、金融庁は仮想通貨規制をどこまで強化するのか 「ICO」での資金調達も金商法の対象になる?、仮想通貨上昇 拭えぬ疑念 ビットコイン1万ドル回復「相場つり上げ」の声も、金融庁メンツ丸つぶれ ビットポイント仮想通貨流出の「間の悪さ」)を取上げよう。なお、こぼブログで前回取上げたのは、昨年7月7日なので、1年ぶりとなる。

先ずは、昨年12月30日付け東洋経済オンライン「仮想通貨「採掘」で大誤算、GMOとDMMが急転換 GMOは350億円の特損、上場以来最大の赤字へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/258049
・『「ブロックチェーンと仮想通貨は、インターネットに匹敵する発明だ」――。GMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長は記者会見や取材の場でそう繰り返し語り、ここ1年ほどそれら領域での事業開発を推進してきた。だが同社は今、仮想通貨関連事業が発端となり、”泥沼”にはまっている。 GMOは12月25日、「仮想通貨マイニング(採掘)事業の再構築に伴う特別損失の計上に関するお知らせ」と題したニュースリリースを発表した。仮想通貨の自社マイニング事業で減損損失など115億円、マイニングマシンの開発・製造・販売事業で債務譲渡損など240億円が発生し、2018年12月期の第4四半期にこれらを特別損失として処理するという内容だ。 同社は今期の業績予想を公開していないが、『会社四季報・新春号』(小社刊、12月14日発売)では同社の純利益を106億円と予想している。ここに今回の特別損失計355億円がのしかかれば、2005年の上場以来最大の最終赤字となる可能性が高い』、「月謝」はずいぶん高いものとなったようだ。
・『演算能力を競うマイニング  マイニングとは、仮想通貨に関する取引データの集合体=ブロックが適正かどうかをマイナー(採掘者)が計算・判断し、承認する作業を競う仕組みだ。承認作業が行われ新たなブロックが生成されると、それを実現したマイナー向けに”報酬”として一定額の仮想通貨が発行される。一連の作業が金を掘り当てるのに似ていることから、マイニングという言葉が当てられている。 ブロックの生成は早い者勝ちだ。コンピュータによる高度な演算能力が必要であり、「マイニングファーム」と呼ばれる巨大なデータセンターを構築・運営する資本力が求められる。仮想通貨の代表格であるビットコインのマイニングでは、ビットメイン社をはじめとする中国勢のシェアが高い。一方の日本勢も、ビットコイン価格が急騰し始めた2017年後半以降、市場の成長性を見込んでIT大手が続々参入した。 その筆頭が、「仮想通貨領域で世界ナンバーワンを目指す」(熊谷社長)と打ち出すGMOだ。北欧に大規模なデータセンターを構え、昨年12月からビットコイン、ビットコインキャッシュのマイニング事業を本格的に開始。マシンの稼働数を徐々に引き上げていった。これに加え、国内では唯一、マイニングに欠かせない半導体とマシンの開発・製造・販売にも乗り出した。回路の線幅を7nm(ナノメートル)まで微細化したマイニング用半導体を世界で初めて量産化するなど、かなりの力の入れようだった。 だが、この攻勢が裏目に出る。ビットコイン価格は昨年12月に最高値をつけた後、多少の上下はあるものの、右肩下がりとなった。直近の価格はピーク時の2割程度まで下落している。一方、マイニングを行う計算能力の総計「ハッシュレート(HR)」は全世界的に上昇し、競争が激化。つまり、ビットコインそのものの価格低下と掘り当てられる確率低下というダブルパンチで、事業環境は参入当初の見込みから大幅に悪化していったのだ。 これを受けGMOは今回、需要が縮小するマシンの独自開発・販売からの撤退を決定。半導体製造に際しては協力企業に最新鋭の専用ラインを設けるなど、投資が膨らんでいたため、撤退にあたって250億円という手痛い特損を伴った。自社マイニングも継続はするものの、事業構造を全面的に見直す。北欧より安価に電力調達を行える地域への移転を検討し、収益性の底上げを目指す。なお、仮想通貨交換所など同社グループ内で手掛けるマイニング以外の仮想通貨事業は今後も続ける方針だ』、マイニングでは中国勢が、電気代の安い山奥などに大規模な工場を建て、マイニング専用のサーバーを置いている様子がテレビで紹介された。GMOは「北欧より安価に電力調達を行える地域への移転を検討」、というのは中国なのだろうか。
・『DMMは金沢の大規模ファームから撤退  仮想通貨をめぐる事業環境変化のあおりを食うのは、GMOばかりではない。今年2月から金沢で大規模マイニングファームの運用を始めたDMM.comも、同事業から撤退することが東洋経済の取材でわかった。9月にはすでに撤退の意思決定をしたという。マシンの売却などの撤退作業は2019年前半にかけて行っていく。やはり「収益性の悪化が主要因」(会社側)という。 DMMは2017年9月に仮想通貨事業部を発足。10月からはビットコイン、イーサリアム、ライトコインなど、複数の仮想通貨のマイニング事業を始めたが、大規模なマイニングファームの運営は前出の金沢が初めてだった。当初の予定では、段階的に稼働を引き上げ、4月には約500平方メートルのフロアで1000台のマシンが動く様子をショールームとして一般公開する予定だった。 非日常的なマイニングの現場を利用者に生で体感してもらいたい――。そんな考えからファームの一部を一般公開したDMMだったが、これは6月には早々に中止した。セキュリティ確保が難しいと判断したためだ。海外では仮想通貨マイニングマシンの窃盗事件が後を絶たないうえ、DMM自身の金沢のファームでも「アポなしでユーチューバーがやってくるなど、不法侵入に近い事態も発生した」(会社側)という。 DMMは仮想通貨関連の別事業でも見直しを迫られた。同社傘下のネクストカレンシー社は12月25日、リリースに向け準備を進めていた仮想通貨取引アプリ「cointap(コインタップ)」の公開取りやめを発表。仮想通貨価格の下落やコインチェック事件を受け、同アプリがターゲットに定めていた初心者層の取り込みが難しくなったとの判断がある。 2018年初には熱狂の渦にあった仮想通貨市場だが、わずか1年で環境は激変した。一方で、仮想通貨の基盤でもあるブロックチェーンの研究開発や活用に関しては、攻勢を強める企業が増え続けている。新たな技術ゆえのビジネスの難しさは、2019年にも表出するかもしれない』、現在では仮想通貨の相場は多少、持ち直したようだが、どうなるのだろうか。

次に、マーケットアナリストの田代 昌之氏が3月13日付け東洋経済オンラインに寄稿した「金融庁は仮想通貨規制をどこまで強化するのか 「ICO」での資金調達も金商法の対象になる?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/270408
・『仮想通貨相場が低迷している。ビットコインは2018年以降、右肩下がりとなり、足元では40万円前後でもみ合い相場の様相。2017年末に付けた最高値と比べ5分の1の低水準だ。国内はもとより世界的に仮想通貨(暗号資産)への関心が低下し、投機対象として積極的に売買する投資家も減少しつつある。 その一方、国内では仮想通貨に対する規制が徐々に強まっている。金融庁は2017年の改正資金決済法で仮想通貨を資金決済手段と位置づけ、交換業者に登録制を導入した。これは世界各国に先駆けた動きだったが、ここにきて仮想通貨技術を使った資金調達「ICO」(イニシャル・コイン・オファリング)に対する規制も検討しているのだ』、健全な投資家を引き寄せるためには、規制は不可欠だ。
・『ICOはいまだ「無法地帯」、詐欺まがいの案件も  ICOに対する規制が定まれば仮想通貨への関心が再度高まっていく、とは限らない。しかし、無法地帯だったICOに一定のルールが構築されることは決してネガティブな話ではないだろう。 金融庁は有職者会議「仮想通貨交換業等に関する研究会」を設置し、仮想通貨の流出リスクや証拠金取引などへの対応策に加え、投機性を有するICOへの規制について検討してきた。 ICOでは、「トークン」と呼ばれるデジタル権利証を発行して投資家から資金を調達する。ただ、ICOには審査や業績開示といった厳しい規制がなく、事業計画がずさんで詐欺まがいの案件も目立つと指摘されている。トークンは仮想通貨交換所で取引できることから、投機性を帯びるようにもなっている。 「仮想通貨交換業等に関する研究会」は2018年3月に設置され、合計11回の議論を重ねている。何が話し合われたのか、論点を具体的に見ていこう。 2018年11月12日の「第9回仮想通貨交換業等に関する研究会」では、従来の証券市場では不公正取引と見なされるような仮想通貨取引や、ICOに絡んだ詐欺事案なども報告された。現行の資金決済法の枠組みでは対応できない点を考慮すれば、「金融商品取引法(金商法)での規制が必要」としている。 それに続く11月26日の第10回研究会では、「ずさんな事業計画と詐欺的な事案が多く、既存の規制では利用者保護が不十分」「他の利害関係者(株主、債権者等)の権利との関係も含め、トークンの権利内容に曖昧な点が多い」などと、さらなる問題点が指摘された。「投資性を有するICOの特質と、それに伴い必要と考えられる規制の内容を整理する必要がある」と突っ込んだ。 そして第11回研究会の後、12月21日に同研究会はA4・33ページから成る報告書をまとめた。仮想通貨交換業者に対し、顧客の仮想通貨相当額以上の純資産額および弁済原資を保持することを義務付ける、財務書類の開示も義務付ける、などとした。さらに「ICOへの対応」については10ページ以上を割き、下記のような規制に向けたポイントを挙げている。 ICOへの対応(仮想通貨交換業等に関する研究会の報告書概要から)◆投資性を有するICOへの対応(●仮想通貨による出資を募る行為が規制対象となることを明確化 ●ICOトークンの流通性の高さや投資家のリスク等を踏まえて、以下のような仕組みを整備 +50名以上に勧誘する場合、発行者に公衆縦覧型の発行・継続開示を義務付け +仲介業者を証券会社と同様の業規制の対象とし、発行者の事業・財務状況の審査を義務付け +有価証券と同様の不公正取引規制を適用(インサイダー取引規制は、今後の事例の蓄積等を踏まえて検討) +非上場株式と同様に一般投資家への勧誘を制限 ◆その他のICOへの対応(●ICOトークンを取り扱う仮想通貨交換業者に、事業の実現可能性等に関する情報提供を義務付け) ICOをめぐっては中国や韓国が禁止するなど、規制から踏み込んで一律禁止する動きもある。ひるがえって日本(研究会の報告書概要)は、ICOの有用性に配慮し、リスクに応じた投資家保護の規制を施して存続は認める、という方針に見える。 ICOのうち投資性を有すると認められるものに関しては、法定通貨のみならず仮想通貨で購入可能なものについても、金商法の規制の枠組みに当てはめる方針と見られる。報告書では、「情報提供(開示)の仕組み」「第三者による事業・財務状況のスクリーニングの仕組み」「公正な取引を実現するための仕組み」「トークンの流通の範囲に差を設ける仕組み」の4点が規制対象として挙げられている。 それぞれの内容を確認すると、「情報提供(開示)の仕組み」については第一項有価証券と同レベルの開示が必要とされており、「第三者による事業・財務状況のスクリーニングの仕組み」については第一種金融商品取引業者と同レベルの義務負担が生じるとある。一方、「公正な取引を実現するための仕組み」では原則的に有価証券に対する規制と同様としているが、インサイダー規制については要検討とされ、詳細の詰めはこれからといったところだ』、ICOへの規制案は過度な規制色に走らず、妥当なところだろう。
・『アメリカではICOから「STO」への流れに  このようにICOに対しては金商法上の規制の中でも高度なものが課される可能性が高い。アメリカでは2018年3月、アメリカ証券取引委員会(SEC)がほぼすべてのICOトークンは有価証券であるとの見解を表明している。既存のICOも規制する方針だ。アメリカと同様に、日本ではICOのうち投資性を有すると認められるものは「プロ向け」の商品となり、参加者が限られる一方、ライセンス取得の困難さを踏まえると参入障壁は高いものとなるだろう。 現状、ICOはホワイトペーパーのみ作成すれば、トークンに資産の裏付けがなくても発行することができる。実は、ここに最大の問題があると私は見ている。どう解決するか。ブロックチェーン技術を応用した新たな資金調達手段として「STO」(セキュリティ・トークン・オファリング)が活用される可能性があると考える。ICOからSTOへの転換だ。これはすでにアメリカで潮流になりつつある。 STOは、その名に「セキュリティ」が含まれるように「証券」に分類される。株などの有価証券を裏付けとして発行されるトークンのことで、利益分配や議決権等を投資家に配当する仕組みをすべてトークンに置き換えたものである。 証券に該当するため、既存の金融商品関連の法律に沿った格好となることから、投資勧誘と販売にあたっては監督官庁の管理のもと行われることとなる。2018年8月、AnyPay株式会社のグループ会社であるAnyPay Pte.Ltd.(本社:シンガポール)が、収益分散型トークン発行システムをリリースすると発表した。しかし、国内ではSTOに関する確定した規制枠組みが存在せず、STOによる資金調達が行われた事実も観測されていない(2019年1月28日時点)』、ICOへの規制案が固まらないうちから、新なSTOが出現するとは、やれやれ・・・。
・『STO市場のメインプレーヤーになるのは誰か?  アメリカでは2018年以降、SECなどによって有価証券であると指摘を受けたICOがSTOの枠組みに沿った格好で修正している例も多数報告されている。STOは、アメリカ市場で知名度が徐々に増している。 ただし、STOはICOに比しても参入障壁が高い。ICOのように、資本力に乏しいベンチャーなどがメインプレーヤーになるとは考えにくい。金融商品関連の法律に通じ、一定のコンプライアンスを備え、かつ有価証券に慣れている既存の金融業界、つまり証券関連のプロフェッショナルである証券業界がメインプレーヤーになる可能性もある。既存ビジネスで閉塞感が強まり、株価も冴えない証券業界(特に国内)において、今後、STOに絡む動きが活発化するか注目したい。 もっとも、日本円との連動を想定して開発を進めているメガバンクのステーブルコインの先にSTOがあるとすれば、注目すべき業界は証券業界だけではなくなってくる。変動率(ボラティリティー)が抑えられたステーブルコインをベースにSTOを展開するというシナリオは、調達資金がブレるリスクを抑えられるからだ。今後、メガバンクの動向も注視すべきだろう』、「ステーブルコインをベースにSTOを展開するというシナリオ」は大いにあり得る可能性があり、注目点だ。

第三に、6月25日付け日経新聞「仮想通貨上昇、拭えぬ疑念 ビットコイン1万ドル回復「相場つり上げ」の声も」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46519960U9A620C1EE9000/
・『代表的な仮想通貨(暗号資産)ビットコインの価格が心理的節目の1万ドル(約107万円)を回復した。短期的な値動きに反応して個人マネーが再び流入している。ヘッジファンドなど機関投資家の間で運用資産の一部に仮想通貨を組み入れる動きもある。ただ現在の価格上昇は投機色が強く、一部の市場参加者による価格操作の疑念も残っている。 情報サイトのコインデスクによると、ビットコイン価格は2018年3月以来、約1年3カ月ぶりの高値をつけた。年初来では約3倍の水準だ。世界の景気動向が不透明になるなかで、マネーの一部が株式などのリスク資産から仮想通貨に向かっている。 ビットコイン価格の推移を振り返ると、17年は右肩上がりで2万ドルまで急騰したバブル、18年はそのバブルが崩壊した年だった。19年は一転、価格の戻り基調が鮮明になっている。年初に3700ドル近辺だった価格は22日に1万ドルを突破し、24日午後時点で1万800ドル前後で推移している。 価格上昇の底流にあるのが機関投資家マネーの存在感の拡大だ。米クリプト・ファンド・リサーチによると、仮想通貨関連のファンドの資産総額は4月時点で143億ドル(約1兆5357億円)と、ビットコイン価格が約1万3000ドルで推移していた18年1月(68億ドル)の約2倍に膨らんでいる。 18年の1年間では新たに239本の関連ファンドが立ち上がり、19年にも145本が設定される見込みという。国際通貨研究所の志波和幸主任研究員は「株や債券など伝統的な資産とは独立した値動きをする仮想通貨をポートフォリオに組み込むヘッジファンドが増えている」と指摘する。 米仮想通貨運用会社のモルガン・クリーク・デジタルは2月、仮想通貨やブロックチェーンに投資するファンド向けに約43億円を調達した。出資しているのは公的年金や大学基金などとみられている』、確かにヘッジファンドにとっては、格好の投資対象なのだろう。「出資しているのは公的年金や大学基金など」、これらの保守的な投資家にも認められたというのは驚きだ。
・『こうしたマネーの流入を背景に、「今回の上昇は従来とは違う」と主張する市場関係者もいる。「ビットコインはデジタルの金」が持論で、仮想通貨に投資を続けるタイラー・ウィンクルボス氏は「次の節目は1万5000ドルになるだろう」と指摘する。 機関投資家の需要増は先物の動きからも見てとれる。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は21日、ビットコイン先物の未決済の建玉が4日連続で最高になったと発表した。先物はビットコインの価格変動リスクをヘッジするために使われており、機関投資家マネーの流入を裏付ける。市場の一部では「香港のデモの影響で中国マネーがビットコインに流れ込んだ」との見方もある。 仮想通貨は相次いだ不正流出事故などで投資家の信頼を失いつつあったが、技術的な裏付けとなるブロックチェーン(分散型台帳)への関心は衰えていない。企業の仮想通貨利用を巡っては米JPモルガン・チェースが2月に独自のデジタル通貨「JPMコイン」を開発するなど、既存の金融大手による参入も続く。 米フェイスブックは世界の利用者27億人を対象にした「リブラ(Libra)」構想で、低コストで送金できるインフラを目指す。ただ各国の金融当局はリブラの動向を注視しており、普及までの道筋は不透明だ。 一方、最近のビットコイン価格の急騰には疑惑の目も向けられている。仮想通貨「テザー」に絡む価格操作だ。 テザーは1ドル=1テザーの固定レートをうたう価格の安定した「ステーブルコイン」のひとつだ。発行元のテザー社がテザーを大量に発行し、これを受け取った仮想通貨交換会社のビットフィネックスが「テザー売り・ビットコイン買い」を仕掛けることでビットコイン価格が上昇しているとの見方が出ている。テザー社とビットフィネックスの経営陣は同じとみられている。 仮想通貨に詳しい京大大学院の岩下直行教授によると、最近はビットコインの取引金額が増えるに従って、テザーの取引金額も増大する傾向が顕著だという。 岩下氏をはじめ専門家の間では「テザーの発行増による相場のつり上げが行われている」との見方が強い。こうした価格操作への疑惑は17年の急騰時にもささやかれていた。 ビットコインなどの仮想通貨にはもともと、市場参加者の目線がそろう「適正価格」がない。価格操作の疑念がくすぶり続けること自体、市場の未成熟ぶりを示している』、「テザーの発行増による相場のつり上げが行われている」との疑念は、すぐに解明してほしいものだ。

第四に、7月12日付け日経ビジネスオンライン「金融庁メンツ丸つぶれ、ビットポイント仮想通貨流出の「間の悪さ」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/071200537/
・『日本で4度目となる仮想通貨流出事故が発生してしまった。 リミックスポイントの子会社であるビットポイントジャパンは7月12日、同社が運営する仮想通貨交換所「BITPoint」から約35億円分の仮想通貨が流出したと発表した。 同社が異変に気づいたのは7月11日22時過ぎ。仮想通貨「リップル」の送金でエラーを検知し、情報システム部門などで調査をしたところ22時39分にリップルの不正流出を確認したという。日をまたいだ7月12日の2時にリップル以外の仮想通貨の流出も確認され、10時30分に仮想通貨の売買・交換を含むすべてのサービスを停止させるに至った。 流出した約35億円分の仮想通貨は、約25億円が顧客からの預かり分、約10億円がビットポイントジャパンの保有分。仮想通貨の保管方法にはオンライン上で保管する「ホットウォレット」、オフライン環境下で保管する「コールドウォレット」の2つがあるが、流出したのはいずれもホットウォレットで保管していた仮想通貨となる。 ビットポイントジャパンによれば、同社がホットウォレットで保管していたのは「ビットコイン」「ビットコインキャッシュ」「イーサリアム」「ライトコイン」「リップル」の5銘柄という。 仮想通貨については国内仮想通貨交換業者が相次いで流出事故を起こしたことから、ルールの目的化や制度整備を目的に資金決済法と金融商品取引法の改正が5月31日に国会で成立。改正法には仮想通貨をコールドウォレット等で管理することの義務化が盛り込まれていた。改正法は2020年6月までに施行されることとなっており、その狭間を狙われた可能性が高い。 京都大学公共政策大学院の岩下直行教授は今回の流出事故について、「改正法の施行前だが、ビットポイントがその精神を尊重して、顧客の資産保護のために同種同量の暗号資産をコールドウォレットに保有していたかどうかが今後の焦点になるだろう」と語った』、ビットポイントジャパンは、「コールドウォレットに保有」すると、売買などの都度「ホットウォレット」に移し替える必要があり、その手間を嫌ったのかも知れない。
・『繰り返し潰される金融庁の「メンツ」  「金融庁のメンツがまた潰されることになった」。仮想通貨交換業の幹部は今回の事件を受け、こう漏らした。というのも、金融庁はビットポイントジャパンに対する業務改善命令の報告義務を6月28日に解除したばかりだったからだ。 金融庁は2018年6月22日にビットポイントジャパンに対する行政処分を発表。その後、同社に対して業務改善計画の提出を求め、約1年間にわたって進捗や実施状況を継続的に報告させてきた。 「(業務改善命令の解除は)個別に詳細設計を確認するわけではなく、内部統制体制を確認することで解除するかどうかを決める」(仮想通貨業界関係者)。そのため、業務改善命令の解除をもって金融庁がシステムリスクに対して太鼓判を押したことにはならない。だが、「それでもタイミングがあまりにも悪い」(仮想通貨交換業幹部)。 仮想通貨業界は2018年1月に発生したコインチェックによる仮想通貨流出事件をきっかけに、段階的に規制が強化されてきた。金融庁は仮想通貨交換業者に立ち入り検査を実施し、業務改善命令や業務停止命令を相次いで発出。同年9月にはテックビューロが運営する仮想通貨取引所「Zaif」が仮想通貨を流出させ、規制強化を目的とした法改正の動きが加速した。 法改正も無事成立し、ようやくこれからというタイミングで起きた今回の流出事故。仮想通貨業界は一様に肩を落としている』、確かに最悪のタイミングだが、ハッカーたちは、同社を狙い目とみて「業務改善命令の解除」を待っていたのだろう。やはり手間を惜しまず、「コールドウォレットに保有」を原則にするしかなさそうだ。
タグ:ヘッジファンド 東洋経済オンライン 日経新聞 報告書 GMOインターネット フェイスブック 日経ビジネスオンライン 暗号通貨 コインチェック (仮想通貨) (その13)(仮想通貨「採掘」で大誤算 GMOとDMMが急転換 GMOは350億円の特損 上場以来最大の赤字へ、金融庁は仮想通貨規制をどこまで強化するのか 「ICO」での資金調達も金商法の対象になる?、仮想通貨上昇 拭えぬ疑念 ビットコイン1万ドル回復「相場つり上げ」の声も、金融庁メンツ丸つぶれ ビットポイント仮想通貨流出の「間の悪さ」) 「仮想通貨「採掘」で大誤算、GMOとDMMが急転換 GMOは350億円の特損、上場以来最大の赤字へ」 「仮想通貨マイニング(採掘)事業の再構築に伴う特別損失の計上に関するお知らせ」 仮想通貨の自社マイニング事業で減損損失など115億円、マイニングマシンの開発・製造・販売事業で債務譲渡損など240億円が発生 演算能力を競うマイニング 「マイニングファーム」と呼ばれる巨大なデータセンターを構築・運営する資本力が求められる 中国勢のシェアが高い 北欧に大規模なデータセンターを構え、昨年12月からビットコイン、ビットコインキャッシュのマイニング事業を本格的に開始 ビットコイン価格 直近の価格はピーク時の2割程度まで下落 マイニングを行う計算能力の総計「ハッシュレート(HR)」は全世界的に上昇し、競争が激化 事業環境は参入当初の見込みから大幅に悪化 DMMは金沢の大規模ファームから撤退 田代 昌之 「金融庁は仮想通貨規制をどこまで強化するのか 「ICO」での資金調達も金商法の対象になる?」 仮想通貨相場が低迷 最高値と比べ5分の1の低水準 国内では仮想通貨に対する規制が徐々に強まっている 改正資金決済法で仮想通貨を資金決済手段と位置づけ、交換業者に登録制を導入 「ICO」(イニシャル・コイン・オファリング)に対する規制も検討 ICOはいまだ「無法地帯」、詐欺まがいの案件も 「仮想通貨交換業等に関する研究会」 顧客の仮想通貨相当額以上の純資産額および弁済原資を保持することを義務付ける 財務書類の開示も義務付ける ICOへの対応 投資性を有するICOへの対応 その他のICOへの対応 アメリカではICOから「STO」への流れに STO」(セキュリティ・トークン・オファリング STO市場のメインプレーヤーになるのは誰か? ステーブルコインをベースにSTOを展開するというシナリオは、調達資金がブレるリスクを抑えられるからだ。今後、メガバンクの動向も注視すべき 「仮想通貨上昇、拭えぬ疑念 ビットコイン1万ドル回復「相場つり上げ」の声も」 ビットコイン価格は2018年3月以来、約1年3カ月ぶりの高値をつけた。年初来では約3倍の水準だ 機関投資家マネーの存在感の拡大 仮想通貨関連のファンドの資産総額は4月時点で143億ドル(約1兆5357億円)と、ビットコイン価格が約1万3000ドルで推移していた18年1月(68億ドル)の約2倍に膨らんでいる 出資しているのは公的年金や大学基金など リブラ(Libra) 仮想通貨「テザー」に絡む価格操作 1ドル=1テザーの固定レートをうたう価格の安定した「ステーブルコイン」のひとつ ビットフィネックスが「テザー売り・ビットコイン買い」を仕掛けることでビットコイン価格が上昇しているとの見方 専門家の間では「テザーの発行増による相場のつり上げが行われている」との見方が強い 「金融庁メンツ丸つぶれ、ビットポイント仮想通貨流出の「間の悪さ」」 日本で4度目となる仮想通貨流出事故が発生 ビットポイントジャパン 35億円分の仮想通貨が流出 約25億円が顧客からの預かり分、約10億円がビットポイントジャパンの保有分 「ホットウォレット」 改正法には仮想通貨をコールドウォレット等で管理することの義務化が盛り込まれていた 繰り返し潰される金融庁の「メンツ」 業務改善命令の報告義務を6月28日に解除したばかり Zaif」が仮想通貨を流出
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リブラ(フェイスブックの暗号資産)(フェイスブックが仮想通貨計画 プライバシー・規制懸念相次ぐ、フェイスブック帝国が仮想通貨参入で描く野心、アングル:フェイスブックの仮想通貨「リブラ」に規制当局の壁、フェイスブック「リブラ」こそが正義!利用者目線の金融世直しに期待) [金融]

今日は、リブラ(フェイスブックの暗号資産)(フェイスブックが仮想通貨計画 プライバシー・規制懸念相次ぐ、フェイスブック帝国が仮想通貨参入で描く野心、アングル:フェイスブックの仮想通貨「リブラ」に規制当局の壁、フェイスブック「リブラ」こそが正義!利用者目線の金融世直しに期待)を取上げよう。

先ずは、6月19日付けロイター「フェイスブックが仮想通貨計画、プライバシー・規制懸念相次ぐ」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/facebook-crypto-idJPKCN1TJ1WT
・『米フェイスブックは18日、仮想通貨(暗号資産)を使ったサービスを来年開始する計画を明らかにした。ソーシャルネットワーキングから電子商取引や国際決済の分野に進出する新たな動きとなる。 仮想通貨の名前は「リブラ」。世界中の消費者や企業間の取引をバックアップするほか、銀行口座を持たない消費者が金融サービスが受けられるようにしたい考えだ。 子会社「Calibra」を立ち上げ、同通貨の貯蓄、送金、支払いを行う電子財布を提供。サービスはアプリのほか、フェイスブックのメッセンジャーやワッツアップ内でも利用できるようにする。 フェイスブックによると、子会社は金融機関で行われる認証、詐欺防止プロセスを活用、通貨利用希望者の法令順守審査を行う。 子会社は、同意を得るか、必要とされる「限定的な場合」にのみ、フェイスブックや外部組織と顧客情報を共有するという。法執行手続きや治安上の問題などのケースが考えられる』、金融界やIT業界はこの話題で持ち切りのようだ。
・『大手各社がパートナーに  マーケティング資料や幹部らとのインタビューによると、フェイスブックは新デジタル通貨を管理する「リブラ協会」のパートナー28社と連携し、2020年上期に運用を開始する見通し。 パートナーには、マスターカードやビザ、ペイパル・ホールディングス、ウーバー・テクノロジーズなどが名を連ねる。運用開始時までに連携先を100社に拡大する意向だ。マスターカード幹部は、設立メンバーに金融機関は含まれていないが、複数行と加盟に関する話し合いをしていると説明した。 加盟には1000万ドル以上の出資が必要で、各社は重要決定に際し投票権を持つ。リブラ協会は、向こう数カ月中に私募で資金を調達する計画だ』、フェイスブック本体から切り離すため「リブラ協会」の形を取ったのだろう。その「パートナー」も錚々たる企業のようだ。
・『プライバシー・規制上の懸念  プロジェクトを巡り、消費者のプライバシーを巡る不安や規制上の障壁が難題として立ちはだかる可能性もある。 フランスのルメール経済・財務相はラジオインタビューで「フェイスブックはこうした取引手段で多数のデータを収集できるようになる。デジタル大手規制が必要という確信が強まりそうだ」と語った。主要7カ国(G7)の中央銀行トップらに対し、来月半ばまでに報告書作成を要請したことも明らかにした。 米議会上院銀行委員会のマーク・ワーナー議員(民主党)は、フェイスブックが交流サイトにおけるその規模を利用して、モバイル決済などの市場支配を達成しかねないと懸念を表明した。 欧州議会のマーカス・ファーバー議員(ドイツ)は声明で「フェイスブックが20億人の利用者を仮想通貨リスクにさらす場合、仮想通貨の適切な規制枠組みを巡り欧州委員会が作業に着手する根拠になる」と述べた。 イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁は、欧州中央銀行(ECB)の会合で、フェイスブックの仮想通貨計画で想定される利便性に先入観を抱かない考えを示したが、実現すれば厳しい規制に直面する可能性も指摘した。 カーニー氏は「現代の世界で機能するものはすべて直ちにシステミックな性質を帯び、最高水準の規制対象にする必要が出てくる」と述べた。各規制当局が、資金洗浄やテロリスト資金調達対策の手順などを検証する必要性を唱えた。 ペイパル幹部はプロジェクトについて「非常に初期の段階」にとどまっていると強調。マスターカード幹部も運用開始までにすべきことは多いと指摘、規制上の障害があまりにも大きくなれば「運用を始めない可能性もある」と語った。 フェイスブック幹部らによると、仮想通貨計画を巡り米国などの規制当局とコンタクトしている。 米規制関係筋は、通貨の仕組みや既存規制制度の枠内におさまるのかが依然不透明と指摘した。 スイスの連邦金融市場監督機構(FINMA)は、リブラプロジェクトの立ち上げ担当者らと連絡を取っていると説明。規制上の認可手続きを進めているかなどについてはコメントしなかった。英金融規制当局はコメントを控えた』、7月19日付け日経新聞は「G7議長「リブラ 最高水準の規制を」と伝えるなど、規制当局の姿勢は極めて慎重なようだ。

次に、6月29日付けNewsweek日本版「フェイスブック帝国が仮想通貨参入で描く野心」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2019/06/post-12422_1.php
・『メール感覚で決済できるステーブルコイン「リブラ」――強力な資源を武器にフェイスブックが金融サービス参入へ  フェイスブックが仮想通貨「リブラ」の詳細を発表した。サービス開始は20年の予定。スポティファイやeベイ、マスターカード、ペイパルなど既に約30の企業が参画を表明し、個人間の送金や、商品やサービスの購入に使うことができる。 リブラのブロックチェーンの構築と運営は、スイスに本拠を置く非営利団体「リブラ協会」が行う。フェイスブックとは別の独立した組織で、さまざまな業界の企業が参加している。 フェイスブックの今回の発表は、仮想通貨への参入だけでなく、金融サービス企業になるという宣言でもある。 多くの仮想通貨と違って、リブラは投機資産ではなく決済手段として設計される。ビットコインやイーサリアムなど主要な仮想通貨は、日常の決済に使うことは難しい。理由の1つは、仮想通貨の価格が市場の需要によって決まり、乱高下することも珍しくないからだ。 それに対し、リブラは基本的に国が発行する法定通貨など従来の金融資産を担保とする「ステーブルコイン」であり、価格を安定させる。テザーなど米ドルに連動していると主張する仮想通貨もあるが、実際に巨額の「保証金」を保有していることが証明されていないとして、疑問視されている。一方でフェイスブックは、より実績のある企業で莫大な資源を持つ。 フェイスブックのメッセージアプリであるメッセンジャーやワッツアップにリブラ用のデジタルウォレットが組み込まれ、メッセージを送るように、瞬時に送金したり、米ドルなどの法定通貨に交換したりできる。手数料は、ほぼかからないとみられている(例えばビットコインは法定通貨への換金に数日かかり、5月のレートで1回当たり2.50ドルの手数料が要る)。 利用者は登録の際に各国政府が発行したIDが必要で、銀行口座やデビットカードを使ってリブラを購入する。オンラインや個人間の売買のほか、サブスクリプション(定額利用)の支払いにも対応する計画で、信用枠の設定や口座の開設、融資などの仕組みも視野に入れている』、ビットコインなどの一般の仮想通貨と違って、価値が主要通貨にリンクしている「ステーブルコイン」というのは、利用者にとっては魅力的だろう。「融資などの仕組みも視野」というのも興味深い。
・『世界一危険な独占企業  ただし、安定していて利用しやすい仮想通貨は、仮想通貨本来の魅力に欠ける。 仮想通貨の基本は非中央集権型のネットワークだが、リブラのブロックチェーンはリブラ協会が管理する(ドラッグの売買など違法な目的で使われることを防ぐためでもある)。また、利用の際に身分証明が必要なことは、非中央集権型の通貨の利点である匿名性を排除する。 さらに、ブロックチェーンは基本的に、コンピューターをネットワークに接続して「ノード」になれば、誰でも取引の承認や追跡ができる。しかし、リブラのネットワークのノードになるためには、1000万ドル以上を出資してリブラ協会に加盟しなければならない。 フェイスブックが世界中で使える通貨を開発することに対し、巨大化した同社の分割が議論されているなか、その独占を強固なものにするという懸念もある。 「フェイスブックは世界で最も危険で無責任な独占企業だ。フェイスブックが世界的な通貨を設計して運営することを信頼するなど、正気の沙汰ではない」と、「フリーダム・フロム・フェイスブック」運動の共同設立者サラ・ミラーは声明で述べている。「米連邦取引委員会は、ブラックホールと化したこの企業が私たちの金融情報と通貨システムをのみ込む前に、分割させるべきだ」』、フェイスブックへの風当たりは世界的に強まっているだけに、規制当局は慎重にならざるを得ないだろう。

第三に、7月1日付けロイター「アングル:フェイスブックの仮想通貨「リブラ」に規制当局の壁」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/facebook-libra-regulator-idJPKCN1TW1KS
・『米フェイスブックは先に導入計画を発表した暗号資産(仮想通貨)「リブラ」について、1年以内に世界で正式通貨として認知されるようになると期待している。しかし各国の規制当局はリブラに対して、かつてない厳しい態度で臨む見通しだ。 ロイターはこの10日間に金融規制や金融技術、決済、仮想通貨など各分野の専門家十数人に取材したが、当局のソフトな対応を予想する声はほとんど聞かれなかった。 リブラ導入計画は発表直後に、フェイスブックの巨大化やプライバシー保護の甘さを懸念する米議員や各国規制当局から反発を浴びた。 20カ国・地域の銀行監督当局で構成する金融安定理事会(FSB)のクォールズ議長は先に、暗号資産の小売り販売決済における広範な利用には規制当局による世界規模の監視が不可欠との認識を示した。 反トラスト推進団体「オープン・マーケッツ・インスティテュート」のエグゼクティブディレクター、バリー・リン氏は「規制の観点からすれば全くの厄災だ。(フェイスブックは)世界中の規制当局から集中砲火を浴びている企業であり、事態は悪化するだけだ」と述べた。 リブラの構想には顧客の預金受け入れや国債への投資、準備における従来通貨の保有、国境をまたぐサービスの提供、新通貨の取引などが含まれ、世界中の中央銀行や金融規制当局、違法取り締まり当局と関わる必要がある。 フェイスブックの子会社カリブラの広報担当者によると、同社は米国で金融取引の事業免許を申請し、米財務省の金融犯罪取り締まりネットワーク(FinCEN)に登録した。カリブラはフェイスブックがリブラの取引を扱うために設立した子会社。 事情に詳しい関係者によると、カリブラはニューヨーク州金融サービス局から同州で仮想通貨事業を行う免許も申請した。英金融行動監視局(FCA)、イングランド銀行(英中銀)、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)もフェイスブックから接触があったことを明らかにした』、フェイスブックが「巨大化やプライバシー保護の甘さを懸念する米議員や各国規制当局から反発を浴びた」、というのは当然で、自業自得だろう。
・『フェイスブックはジュネーブに主要な提携先と協力して新通貨を管理して準備を保有する組織も作った。 フェイスブックは2020年上半期に制度全体を立ち上げ、いずれはローンなど幅広い金融サービスを提供する計画だ。 ベンチャーキャピタル会社アンセミスのショーン・パーク最高投資責任者(CIO)は「フェイスブックがどこででもフリーパスを手に入れることはない。同社は世界的な業務展開を目指しており、世界中のさまざまな規制当局から、文字通り数百、あるいは数千単位の事業免許を手に入れる必要があるだろう」と述べた。 中銀や市場監視当局、消費者保護当局、資金洗浄や脱税などを防止する機関に加えて、決済ネットワークを構築すれば国際決済銀行(BIS)などが設けた「金融市場インフラのための原則」も順守しなければならない。また、個人情報保護や反トラスト当局への対応も必要だが、フェイスブックは既にこうした分野で当局と対立を繰り広げている。 米商品先物取引委員会(CFTC)の元幹部でコンサルタント会社を経営するジェフ・バンドマン氏は「新たな規制当局(と対峙する)という観点だけでみても、状況はまったく変わる」と話した。 24億人のユーザーを抱えるフェイスブックは金融サービスへの進出で得られるかもしれない見返りを考えて、あえて困難に挑もうとしているようだ。 しかし利益が上がり始めるまでに膨大なコストを負担することになるかもしれない。社内に法令順守の枠組みを整え、違法取引を監視するスタッフを置く必要があるだろう。例えば送金サービス大手ウエスタン・ユニオン(WU.N)の広報担当者によると、同社が法令順守のために投じた費用はこの5年間で10億ドルに上るという』、規制対応には膨大なコストが必要なようだ。

第四に、積極論の立場から、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が7月24日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「フェイスブック「リブラ」こそが正義!利用者目線の金融世直しに期待」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/209594
・『「リブラこそが正義!」ではないか  「金融ビジネスにあって、リブラこそが正義だ!」と一回言ってみよう。 ユーザーにとって、割合に安定した価値のやりとりを、国境を越えて安価かつ簡単に行うことができるのだとすると大変便利だ。「消費者の経済厚生の増大」を社会の経済的価値判断の基準とするなら、米フェイスブックがサービス開始を目指す独自のデジタル通貨「リブラ」の方向性はビジネスとして正義だと考えるべきだろう。 もちろん、現実問題として、フェイスブックが信頼に足るのかという問題はある。俗に「GAFA」と称される巨大IT企業の中でも、これまでのところ、個人情報の漏えい問題があったり、会員の個人データを実質的に売るようなビジネスを行っている疑いを持たれたり、フェイスブックは相対的に「行儀が悪い」と思われがちな、信頼というイメージから遠い企業であった。これは、目下の同社に「徳」が欠けているとでもいうしかない経営上の力不足だが、改心は可能だ。今後、同社が適切にリブラを運営し、それが顧客にとって便利ならそれでいいではないか』、「行儀が悪い」フェイスブックも、「改心は可能だ」というのは楽観的に過ぎるような気がする。
・『規制当局の警戒は「半分怪しい」  そのように筆者が思うのは、各国の中央銀行や金融監督当局がリブラに対してあまりに警戒的であることを「半分怪しい」と思うからだ。 国際的な広がりと多くの会員を持つフェイスブックが、通貨のような支払い手段をビジネス化することの影響は大きいかもしれない。何らかの状況にあって、金融システムやひいては経済に対して混乱が及ぶ可能性について、各国の中央銀行や金融監督当局が心配するのは正しいことだ。この点は認めよう。 しかし彼らは、既存の主に銀行システムが顧客に不便を強いて(銀行の支店の窓口に行くと「実感」できるはずだ)、たかだか送金や外国為替のような単純なサービスに対して、高い手数料を取っていることをどう考えているのだろうか。 彼らに、監督傘下の既存の金融ビジネスの利益を守りたいという動機はないのか。今のところ、既存の民間金融機関は、リブラについて奇妙なくらい静かだ。せいぜい「マネーロンダリングに利用される可能性が懸念される」というくらいの、さまつなことしか言わない』、「規制当局の警戒は「半分怪しい」、というのは確かにその通りだろう。
・『リブラの「黒通貨」扱いはバランスを欠く  もちろん、マネーロンダリングは大きな問題だが、マネロンの温床ともいうべき高額紙幣の流通を放置しておいて、ブロックチェーンに取引の記録が全て残るはずのリブラを「黒通貨」扱いするのは、バランスを欠いているのではないか。 各国の金融規制当局がリブラに対して警戒的に振る舞うことの少なくとも一部の背景には、既存の金融ビジネスの利益の代弁があるのではないか。 なお、各国の当局者の中でも米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長のリブラに対する厳しい姿勢が特に目立つ。「リブラ協会」はスイスに置かれるらしいが、フェイスブックは米国の企業なので応援しても良さそうなものだ。しかし、仮にリブラが世界的に普及すると、国際的な決済にあって米国のマネーセンター・バンクがスルーされるようになる可能性があるし、ひいては米ドルの基軸通貨としての特権的な地位が弱体化する可能性があるということだろうか。 もちろん、そうなることがいいのか悪いのかは、最終的に世界の消費者の経済厚生で判断すべき問題だ。繰り返すが、消費者にとって便利で安いことこそ経済の正義なのだ。 将来の世界の人々にとって、米ドルよりもリブラの方が便利で、同時に十分信頼できる支払いと価値の保蔵の手段になる可能性はゼロではない。その状態を邪魔するのではなくて、実現するために何が必要かを考える方が前向きだし、夢がある』、「消費者にとって便利で安いことこそ経済の正義」、と主張するが、「取引が安全に行われること」も重要な要素の筈だ。第三の記事で、規制対応にはコストがかかることも明らかだ。
・『興味深いのはリブラに金利が付かないこと  そもそも、リブラは通貨なのか。当初は「仮想通貨」と呼ばれていたが最近呼称が変わった「暗号資産」なのか。正式な呼び方や課税の問題(それぞれ重要な場合もある)は、今のところ各国の政府と議会が決める問題となる。 現状では、技術的には暗号資産だが、経済的な実体は通貨に近いものになるのではないかという印象だ。 現在発表されている構想では、リブラが発行される際に、リブラ協会が先進国通貨建ての安全資産(銀行預金や短期国債など)を持つことになっている。どのような通貨とリブラが交換されるかにもよるが、複数の通貨のバスケットに価値が連動する国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)をブロックチェーン化して決済に利用できるようにしたものだと考えるのが実体に近いように思われる。イメージは「スマートフォンにチャージできるSDR」か。なかなか魅力的ではないか。 少々興味深いポイントは、リブラ協会はリブラに金利を付さないとしていることだ。預け入れられたハードカレンシー(決済通貨)建て資産が生む金利はリブラの運営コストに充てられて、余剰があれば協会員に分配されることになるようだ。 現在のような超低金利の状況下では大きな問題にならないかもしれないが、将来金利が上昇してきた場合には、既存の各国通貨建ての資産に対する保有動機が相対的に高まるはずであり、既存通貨の金利変動に伴って、リブラと既存通貨建ての資産との間で資金移動が起こるはず。金利を通じて各国通貨とリブラとの間で調節が行われると考えることもできるが、将来の金利環境によっては、リブラにも付利するようにした方がリブラの価値を安定させやすいはずだ。仮に将来そうなると、リブラの金利調節は中央銀行の金融政策のような意味を持つ可能性が出てくる。 また、リブラの利用者同士で、リブラ建ての資金の貸し借りが発生する可能性があり、この際にはどのような金利が形成されるのだろうか。後述のようにフェイスブック自身がリブラ建ての融資に乗り出すのは「やり過ぎ」だと考えるが、民間でリブラ建ての融資が起こるかどうか、この場合の信用創造の効果がどうなるかは興味深い問題だ』、「スマートフォンにチャージできるSDR」とは言い得て妙だ。ただ、「リブラにも付利するようにした方がリブラの価値を安定させやすいはずだ。仮に将来そうなると、リブラの金利調節は中央銀行の金融政策のような意味を持つ可能性が出てくる」、というのは間違いだ。リブラには、それを構成している各国通貨の金利の合成値になっている筈であり、「リブラの金利調節」は必要ないからだ。
・『フェイスブックにデータ利用をどこまで許すか  さて、長期的に考えると既存の金融機関からみたリブラの最大の脅威は、決済に付随する取引のデータを奪われることだろう。 今まで預金口座の決済を通じて持っていた企業や個人の経済行動に関するデータが、リブラ決済が増えると銀行の手元には存在しなくなる。キャッシュレス決済の普及にもいえることだが、銀行は、せいぜい決済業者と個人や決済業者同士の帳尻を処理するだけの情報貧者に陥る可能性がある。 情報を誰が持つかという争いについては、既に勝負の帰趨は明らかなのではないだろうか。個別にIT企業化できる銀行が一部にあるかもしれないが、コストや規制、経営者の能力などを考えると、既存の銀行の側には競争力がありそうにない。 もっとも、あのフェイスブックにリブラから得る情報をどこまで利用することを許すのかは、社会的に難しく、同時に興味深い問題だ。 今のところ同社は、リブラの利用者に関して厳密な本人確認を行わないつもりのようだが、この方針には少々疑問がある。個人データの利用に関して信用が乏しい同社なので、利用者の個人を特定しないことを訴えるつもりなのかもしれないが、たぶん方針を転換する方がいい。社会的なインフラである既存の通貨を信用の根拠となる資産として利用する以上、社会の側が要請するルールに合わせるべきだろう。 金融取引は実名であるべきだし、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も特に匿名を趣旨とするもの以外は、実名で本人が確認できることを原則とする方がいいと筆者は考えている。フェイスブックの規模で全ての会員に実名を要求するのは難しいかもしれないが、リブラは実名化推進のきっかけにできるのではないか』、「実名化推進」自体については私も賛成だ。
・『特権的な地位と過大な手数料収入に安住し過ぎた  大多数のユーザーにとってリブラの利用が手軽であることはいいことだが、マネーロンダリング対策はもちろん必要だし、誰が誰にいくらの「お金=価値」をやり取りしているのかについては、正確に把握するべきだろう。リブラの利用者には、厳しい本人確認を行うべきだ。ただし、フェイスブックが持つ実名にリンクしたデータの利用に関してはルールと監督の仕組みをはっきりさせるべきだ。 実名にリンクした決済データを、フェイスブックがビジネスに利用することについてどの程度認めるのかは難しい問題だ。仮に、金融商品や物品の販売に自由に利用できるとすると、あまりにも強力なビジネス主体ができそうだ。 また、フェイスブック自身が会員個人の取引データを使ったローン事業に乗り出すのはいささか「やり過ぎ」に思える。通貨の運営とローンの事業との間には利益相反がある。 現状では、個人のリブラの取引データを陰で通販業者に売るようなビジネスを行うのは汚な過ぎる。将来、フェイスブックがリブラを通じて持ったデータを活用することを全面的に禁ずるところまでは必要ないと思うが、データの取引に透明性を担保する何らかの仕組みが必要だろう。 他方、送金や外国為替のようなサービスは大いに安くていい。消費者のためになるのだから、既存の金融機関と激しく競争するといい。 リブラは金融ビジネスの世直しにはいい刺激になるのではないだろうか。リブラの可能性について考えると、既存の金融ビジネスが本来やるべきだった(もう過去形で問題なかろう)ことが多数浮かび上がってくる。彼らは、特権的な地位と、過大な手数料収入に安住し過ぎていた。 リブラを検討するに当たっては、金融規制や既存のビジネスとの関係だけでなく、もっと利用者の利益の視点に立つべきではないだろうか』、「フェイスブック自身が会員個人の取引データを使ったローン事業に乗り出すのはいささか「やり過ぎ」に思える。通貨の運営とローンの事業との間には利益相反がある」、というのはその通りだ。「送金や外国為替のようなサービスは大いに安くていい。消費者のためになるのだから、既存の金融機関と激しく競争するといい」というのは、「安全性を確保できる限り」という条件付きで賛成だ。ただ、いずれにしろ、規制当局の姿勢はもっと厳しいので、山崎氏の主張は理想論に近いのだろう。 
タグ:ロイター リブラ ダイヤモンド・オンライン Newsweek日本版 山崎 元 フェイスブックの暗号資産 (フェイスブックが仮想通貨計画 プライバシー・規制懸念相次ぐ、フェイスブック帝国が仮想通貨参入で描く野心、アングル:フェイスブックの仮想通貨「リブラ」に規制当局の壁、フェイスブック「リブラ」こそが正義!利用者目線の金融世直しに期待) 「フェイスブックが仮想通貨計画、プライバシー・規制懸念相次ぐ」 来年開始する計画 子会社「Calibra」 同通貨の貯蓄、送金、支払いを行う電子財布を提供。サービスはアプリのほか、フェイスブックのメッセンジャーやワッツアップ内でも利用できるように 子会社は金融機関で行われる認証、詐欺防止プロセスを活用、通貨利用希望者の法令順守審査を行う 大手各社がパートナーに パートナー28社 パートナーには、マスターカードやビザ、ペイパル・ホールディングス、ウーバー・テクノロジーズなどが名を連ねる 運用開始時までに連携先を100社に拡大する意向 加盟には1000万ドル以上の出資が必要 重要決定に際し投票権 プライバシー・規制上の懸念 「フェイスブック帝国が仮想通貨参入で描く野心」 リブラは基本的に国が発行する法定通貨など従来の金融資産を担保とする「ステーブルコイン」であり、価格を安定させる 利用者は登録の際に各国政府が発行したIDが必要で、銀行口座やデビットカードを使ってリブラを購入 世界一危険な独占企業 フェイスブックが世界中で使える通貨を開発することに対し、巨大化した同社の分割が議論されているなか、その独占を強固なものにするという懸念も 「アングル:フェイスブックの仮想通貨「リブラ」に規制当局の壁」 発表直後に、フェイスブックの巨大化やプライバシー保護の甘さを懸念する米議員や各国規制当局から反発を浴びた リブラの構想には顧客の預金受け入れや国債への投資、準備における従来通貨の保有、国境をまたぐサービスの提供、新通貨の取引などが含まれ、世界中の中央銀行や金融規制当局、違法取り締まり当局と関わる必要がある 国際決済銀行(BIS)などが設けた「金融市場インフラのための原則」も順守しなければならない 人情報保護や反トラスト当局への対応も必要だが、フェイスブックは既にこうした分野で当局と対立を繰り広げている 利益が上がり始めるまでに膨大なコストを負担することになるかもしれない ウエスタン・ユニオン 同社が法令順守のために投じた費用はこの5年間で10億ドル 「フェイスブック「リブラ」こそが正義!利用者目線の金融世直しに期待」 「リブラこそが正義!」ではないか 規制当局の警戒は「半分怪しい」 彼らに、監督傘下の既存の金融ビジネスの利益を守りたいという動機はないのか リブラの「黒通貨」扱いはバランスを欠く 興味深いのはリブラに金利が付かないこと フェイスブックにデータ利用をどこまで許すか 特権的な地位と過大な手数料収入に安住し過ぎた
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「闇営業」(その2)(「吉本・芸人・テレビ局 君ら『全員アウト』やで」元経済ヤクザ語る、小田嶋氏:「闇営業」の本筋はそこじゃない) [社会]

昨日に続いて、「闇営業」(その2)(「吉本・芸人・テレビ局 君ら『全員アウト』やで」元経済ヤクザ語る、小田嶋氏:「闇営業」の本筋はそこじゃない)を取上げよう。

先ずは、7月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元経済ヤクザの猫組長へのインタビュー「「吉本・芸人・テレビ局、君ら『全員アウト』やで」元経済ヤクザ語る」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/209804?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor&utm_content=free
・『吉本興業の所属芸人が、振り込め詐欺集団のパーティーに出て金銭を受け取った、いわゆる闇営業問題。「パワハラ経営者vs同情すべき芸人とその仲間たち」という構図のもとに、衆目の中で進行する劇場型不祥事だ。 しかし事態の展開に違和感を覚える向きも多いだろう。発端は宮迫博之氏、田村亮氏ら芸人が、反社会的勢力から金銭を受領したことだ。素性を事前に知っていようといまいと、結果として犯罪集団から大金を得る副業をしたなら、普通の会社員であれば懲戒解雇にもなりかねない。吉本は芸人を社員として雇用してはいないが、社会的責任を負う大企業として、関係者の不正行為に厳正に対処する義務がある。それが涙混じりの感情論にすり替わっているとは、議論の逸脱も甚だしい。 この脱線ぶりに対し、「芸人も吉本もテレビ局も、関係者は全員アウトや」と喝破するのは猫組長氏。山口組系二次団体で長く幹部をつとめ、反社の世界を熟知している。アウトサイダーの問題を見る角度は、意外なほどに「超真っ当」だった』、「吉本は芸人を社員として雇用してはいないが、社会的責任を負う大企業として、関係者の不正行為に厳正に対処する義務がある。それが涙混じりの感情論にすり替わっているとは、議論の逸脱も甚だしい」、正論で、今後の議論が興味深そうだ。
・反社の宴席、芸人への謝礼は 若手なら20万円が相場だった  吉本の岡本昭彦社長は22日の会見で、宮迫氏の契約解除など芸人への処分を撤回しましたよね。あれは非常にまずい。まず多くの芸人が、「結局のところ、何でもありや」と勘違いする。「変なところからお金をもらっても、契約解除にはならんのや」と増長する。ガバナンスも何もあったもんじゃない。 それから今回の事態は、反社がじっと見ていることを忘れてはいけない。当事者の詐欺集団だけじゃないですよ。芸人やタレントと付き合いのある奴らはみんな、「こういうふうに劇場型にすれば、世論を誘導できるのか。企業を思う通りに動かせるのか」と学習しています。芸能と関係がなくても、世論を誘導すれば金儲けに繋がることは多いしね。吉本の経営は、絶対に毅然とした態度をとらなあかんのです。 岡本社長は反社との関係について、「すべての取引先をチェックしている」と言ったけれど、吉本と暴力団の長い付き合いを振り返れば、どの口が言うとんねん、って話です。 過去にも吉本の大物芸人である島田紳助氏や中田カウス氏の暴力団との交際が問題になったことを、覚えているでしょう? 僕は山口組系の一員として関西で活動していたわけですが、あちらでは吉本の芸人っていうのは宴席があるごとに呼ぶ身近な存在でした。若手だったら10万~20万円、ちょっと名の通った芸人だったら50万円ぐらいを足代などの名目で渡します。もちろん取っ払い(その場で現金で手渡しするお金)です。芸人にしたら、1~2時間いるだけで結構な額がもらえるから、ホイホイ来ました。 そういう時はね、こっちがどういう人間かを事前に伝えておきます。「こういう人たちの宴会だから、ゆめゆめ失礼のないように」って。だって宴会に来てから「ヤクザだなんて知らなかった」とゴネて帰られたり、後から警察にタレこまれたりしたら困るでしょう? そもそも長い付き合いの芸人も多いし、こっちの身分を分からんと来ている人なんかいませんでしたよ。だいたい、そんな短時間でいいお金がもらえること自体、普通の人の集まりじゃないって分かるでしょうに。 ただ、僕らの世界では写真なんか簡単に撮らせません。ヤクザの宴席に芸人が出ていることが社会にバレたら、呼んだ方も出た方もお互い迷惑がかかるから。本当に親密な間柄での記念撮影を少しやるぐらいで、それが外部に流出するのも、内輪の抗争などそれなりの背景があってです。今回みたいに、あっちこっちから写真や動画が出てくること自体、ほとんどガバナンスの効いていない、得体の知れない集団だった証左です』、「「こういうふうに劇場型にすれば、世論を誘導できるのか。企業を思う通りに動かせるのか」と学習しています・・・吉本の経営は、絶対に毅然とした態度をとらなあかんのです」、「岡本社長は反社との関係について、「すべての取引先をチェックしている」と言ったけれど、吉本と暴力団の長い付き合いを振り返れば、どの口が言うとんねん、って話です」、などというのは、さすが元ヤクザならではの深い見方だ。
・『首相も担ぐ吉本は「政治銘柄」 国際問題に発展しうる  そういう半グレみたいな集団でも、反社は反社。そして今回の関係者は、反社の問題をあまりに軽視し過ぎている。僕は反社として締め付けられてきた立場として、国内外の社会がどれだけ厳しいか身にしみて感じてきました。 国内においてはここ10年、暴力団排除条例(暴排条例)が全都道府県にでき、あらゆるビジネスや付き合いが封じられてきました。この流れの中で、芸人やタレントとも昔ほど深く付き合わなくなりました。宴会を開こうにも店も借りにくいようなご時世で、ヤクザにとっては派手な宴会を開いて目立つこと自体がリスク。いかに目立たないかが非常に大事になっているんです。 そして国際的には、AML/CFT(マネーローンダリング・テロ資金供与対策)ほどシビアなものはありません。IMF(国際通貨基金)などあらゆる国際機関は、テロ組織やマフィア、ヤクザだけでなく、振り込め詐欺みたいな犯罪行為に絡む金融取引を、極めて強い意思のもとに排除しています。日本はそういう国際機関から、「対策が手ぬるい」と度々言われてきた国なんです。 吉本は教育事業など行政案件に進出しているでしょう。あまつさえ、安倍晋三首相を新喜劇の舞台に立たせて、政府との関係が深い。そういう影響力の大きい企業が、反社リスクを抱えているわけです。今回の吉本の問題も、国際問題に発展するリスクがあると思いませんか。 そしてもっと深刻なのは、これほどのグレーさを露呈した吉本とテレビ局との関係が、相変わらず密接なままという点です。テレビ局は吉本にとって株主であり、芸人を番組に出してくれる顧客でもある。一方でテレビ局は上場企業で、何よりも総務省の許認可を受けて事業を行う公器であり、社会的責任は極めて大きい。一般企業の感覚なら今回の問題を受けて、「吉本の芸人である以上、反社リスクが存在する。この恐れが拭えない限り、吉本の芸人は使えない。吉本との資本関係も見直す余地がある」と判断するのが普通。さもなくば他の取引先と自社の株主が許さない。 にもかかわらずテレビ局は現時点でも、吉本の芸人を番組に起用し続けているばかりか、闇営業問題を取り上げた番組でコメントまでさせている。芸人やキャスターが反社の問題に切り込むことはなく、「パワハラ体質の吉本と芸人との間の感情的な内輪もめ」に議論を終始させています。これは恣意的なストーリー作りとちゃうのん、と僕は思う。 テレビ局にとって、吉本は安価な芸人の供給源であり、これを抜きにしては日々の番組が成り立たない。完全に吉本に依存しているわけです。同じようにテレビ局が依存する対象としてジャニーズ事務所があります。先日、ジャニー喜多川氏が亡くなった際にはほとんど報道統制が敷かれたような状態で、過去の色んなスキャンダルは一切触れられない異様さだった。でもジャニーズにまだ救いがあるのは、あの会社は反社に対してはびっくりするぐらい潔癖ということ。非常に守りが堅く、僕らがアプローチしても一切受け入れなかった。ここは吉本と根本的に違う。吉本と密接なテレビ局各社は少なくとも、問題に対してどういう姿勢で臨むのか公式見解を示すべきだが、そういう動きは今のところ皆無』、「今回の吉本の問題も、国際問題に発展するリスクがある」、というのは、マネロンなどを監視する国際的組織が、今年、日本に査察に来る予定。もともと日本は、「「対策が手ぬるい」と度々言われてきた国」だけに、政府までが吉本支援の姿勢を示したことで、大きく問題視されるリスクがあろう。さすが、経済ヤクザだけあって、指摘も専門的だ。
・『テレビ局は株主の責任果たせ さもなくば共犯者の誹り受ける  結局今回の問題では誰も、「やるべきこと」をやっていない。宮迫氏ら芸人は問題が発覚した時点で、「お金をもらいました」と正直に吉本に報告するべきだった。そうすれば謝罪会見が開かれ、番組を降板して謹慎するぐらいで済んだんじゃないの。 吉本の経営陣は、芸人との間で業務内容を明文化する契約を結び、その中で反社との取り引きを禁ずる条項を盛り込まなければならない。それがない限り、反社チェックなんて不可能でしょう。芸人と反社の関係を見て見ぬ振りしているようなもんですよ。 そしてテレビ局は、株主として吉本の行動をきちんと監視し、議決権行使などの形で是正を求めるべき。「明確な対策を講じない限り、おたくの芸人・タレントは起用しません」と通告し、さもなくば資本提携を解消すると言うべき。銀行や一般企業など、吉本の他の株主は早晩そういう行動を取るでしょうね。そういう中で、テレビ局だけが厳正に対処せず、番組でも芸人を起用し続けたなら、それはもう彼らも問題の共犯者としてアウトやね』、「テレビ局は、株主として吉本の行動をきちんと監視し、議決権行使などの形で是正を求めるべき」、という厳しい指摘はその通りだ。一般のジャーナリストとは違った視点が、大いに参考になった。

次に、コラムニストの小田嶋 隆氏が6月28日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「闇営業」の本筋はそこじゃない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00028/
・『「闇営業」という言葉は、いつ頃からメディアで使われるようになったのだろうか。 この耳慣れない言葉は、誰によって発明され、どんな分野で市民権を得て、いかなるタイミングで新聞の紙面で使われるまでに成長したのだろうか。 職業柄、この種の新語には敏感なつもりでいるのだが、不覚なことに、私はこの言葉を、つい3日ほど前までまったく知らなかった。 この関係のニュースを知ったのは、ツイッターのタイムライン上に、スポニチの記事へのリンクが張られたからだ。 ところが、吉本興業所属の芸人などによる「闇営業」の顛末を伝える記事へのリンクは、その日のうちに、突如として削除される。 ニュースに反応していたアカウントのツイートは、当然、リンク切れになる。 かくして、この種のなりゆきにセンシティブなニュースウオッチャーたちが騒ぎはじめる。「なんだ?」「どういうことだ?」「どうしていきなり削除してるんだ?」「圧力か?」 ほどなく、SNS上のざわざわした空気を察知して、ハフポストが、この間の経緯を取材した記事をアップする。こういうところはさすがにネットメディアならではの機敏さだ。 さて、吉本興業は、当初、ハフポストの取材に対して、スポニチの記事が「誤報」だという趣旨の回答を提供した。 であるから、ハフポストも、第一報の段階では、その吉本興業のコメントに沿った(つまり、スポニチが誤報を配信して削除したというストーリー)内容で記事を配信している。 しかし、ほどなく、ハフポストの記事は、見出しの末尾に 【UPDATE】という但し書きを付けた改訂版に差し替えられる。 私は、失笑せずにおれなかった。というのもこの【UPDATE】なる英語は、翻訳すれば【ごめん。さっきまでの記事は誤報だった。こっちが正解。ごめんごめん】ということになるからだ。まあ、こんなふうに悪びれもせずにさらりと訂正記事を出せてしまうところが、ネットメディアのある種のたくましさなのだろう。立派だとは思わないが、リアルな態度だとは思う。 もっとも、ハフポストの「誤報」は、彼らの文責によるものではない。吉本興業による「フェイク情報」をそのまま流してしまったカタチだ。してみると、この【UPDATE】案件の主たる説明責任は、あくまでも吉本興業に帰されなければならない。 けれども、吉本興業は謝罪をしない。釈明しようとした形跡すら皆無だ。 ハフポストの【UPDATE】版の記事には《吉本興業は当初、誤報として否定していたが、その後公式に発表した。》とだけ書いてある。 「ん? それだけか?」 というのが、普通のメディアリテラシーを備えたまっとうな読者の反応だと思う。 だって、ヒトサマの書いた記事を「誤報」と決めつけておきながら、一言のあいさつもないというのは、社会的影響力の大きい企業としてありえない態度ではないか』、吉本興業はエンターテイメント業界の雄として、メディア業界にも属していながら、こうした尊大な姿勢には首を傾げざるを得ない。
・『さて、ハフポストの取材に答え直して間もなく、吉本興業は、自身のホームページ上で所属タレントの謹慎処分を伝えるプレスリリースを掲載している。 ところが、その告知のプレスリリースを、これまたなんの前触れもなくいきなり削除した後、数時間後に再アップするというドタバタを演じている。 しかも、そのみっともないドタバタについても、毛ほども説明していない。 なんだろうこれは。 いったいいかなる愚かな背景が、この業界をあげての混乱を演出せしめているのであろうか。 本来、私は、芸能界の出来事には興味を持っていないのだが、では軽視しているのかというと、最近はそんなこともない。告白すれば、私は、最近になってようやく、芸能界で起こる事件の重要さに気づいた次第で、それゆえ、長らく、エンターテインメントの世界で起こる出来事をバカにしてきたことを反省している。 芸能界は、われわれの鏡だ。 エンターテインメントの世界で観察される人間関係の封建性と業界体質の旧弊さは、そのまま私たちが暮らしているリアルな社会の封建性と閉鎖性を反映している。こんな当たり前のことに、いまさらのように私が気づいたのは、島田紳助氏の引退に前後したすったもんだや、能年玲奈さんの芸名をめぐる一連の騒動や、SMAP解散に至る顛末について原稿を書くべく、ここ数年、各方面の記事や書籍を収集し、それらの資料をいやいやながら読み続けてきたからだ。 仕事じゃなかったら、とてもではないが、あんな膨大でしかも質の低い文章の山は読みこなせない』、「エンターテインメントの世界で観察される人間関係の封建性と業界体質の旧弊さは、そのまま私たちが暮らしているリアルな社会の封建性と閉鎖性を反映している」、との鋭い指摘はその通りなのかも知れない。
・『仕事のありがたさは、実に、こういうところにある。 つまり、仕事として関わりを持つからこそ、本来ならまるでハナもひっかけないような愚劣な分野に関して、およそひと通りの知識や感触を得ることが可能になるということだ。 今回の事件も、詳細を追えば追うほど、徹頭徹尾、実にくだらないなりゆきなのだが、そういうふうに愚劣で低劣で陋劣であるからこそ、この種の逸脱事案は、われらパンピー(注)にとって重要な教訓を含んでいたりもするわけで、つまり、この事件の登場人物たちは、誰も彼も、一から十まで、実にどうしようもない日本のチンピラなのである。 さて、冒頭の疑問に戻る。 「闇営業」とは何だろうか。 この言葉を知らなかった私が最初に文字面から類推したのは、 「つまり、アレか? 闇世界の人間のための芸能活動ってことか?」ということだった。 これは実にありそうな話だ。 そもそも、はるか昔の戦前の日本にさかのぼれば、歌にせよ舞踏にせよ語り芸でせよ、不特定多数の観客を相手に娯楽を提供する芸能の仕事は、地域や業界ごとの縄張りを管理する任侠の人間や旅芸人を差配するタカマチの人々やその関係者たちと切っても切れない、渡世人の生業(なりわい)だった。 それが悪いと言っているのではない。 起源をたどっていけば、芸能と暴力団は同じ根っこから発展した別の枝だという意味のことを私は言っている。 是非を言っているのではない。私は、成り立ちの話をしている』、「起源をたどっていけば、芸能と暴力団は同じ根っこから発展した別の枝だ」、言われてみれば、その通りなのかも知れない。
(注)パンビーとは、一般人のこと。1970年代の流行語で、現在はあまり使われない(Wikipedia)
・『だから、芸能界で「闇営業」という言葉が使われた場合、それは、ある種の先祖返りの中で、暴力団の仲介を得た芸能活動が展開され得るという、ごく自然な推理を述べたまでのことだ。 実際、裏世界の人間は芸能を好む。 芸能界で暮らしている人々の中にも、任侠の世界への親近感を隠さない人々が少なからず含まれている。 とすれば、「闇営業」は、「ヤの字の人々からのお呼ばれ」のことなのだろうなと考えるのは決して無理な連想ではない。 ところがどっこい、「闇営業」は、単に「事務所を通さない仕事」であるらしい。 なんという膝カックン案件であろうか。 私が知っている範囲では、昔から同じ意味で使われていた言葉に「取っ払い」というのがある。 20年ほど前までは、吉本興業所属の芸人の中にも、この「取っ払い」をネタに客を笑わせている連中がいた。 というよりも、つい最近まで、「ヨシモトの搾取構造」「うちの事務所はごっつうカネに汚いでぇ」というのは、ヨシモトの芸人の定番のぶっちゃけネタだった。 「あんたホンマおもろいなあ。ギャラ出したいくらいや」「ほな、そこんとこはとっぱらいでお願いしますわ」「あほか。マネージャーそこにおるやないか」という感じのやりとりを、私が高校生だった頃、誰だったかが演じていた記憶がある。 誰だったかは忘れた。たぶん、もうこの世の人ではないのかもしれない。 その「取っ払い」が「闇営業」と呼ばれるようになったのだな。なるほどね』、「高校生だった頃、誰だったかが演じていた記憶がある」、という小田嶋氏の記憶力には驚かされた。
・『それにしても、いったいどこまで世知辛い話なのだろうか。 ともあれ、その芸人用語で言うところの「取っ払い」は、メディアの人間(あるいは事務所側の人間)の立場から描写すると「闇営業」という用語として21世紀の現代に蘇ったわけだ。 言わんとするところはわかる。 事務所を通して、正式な税務処理やマネジメント料を発生させることなく、中間マージンを排したカタチで、顧客から直接に現金を受け取ることは、会社員のモラルとしても、所得税を支払う国民の納税感覚からしても「闇」の仕事と考えられる。だから「闇営業」と呼ぶ。その意味ではスジが通っている。 しかしながら、今回のカラテカ入江や宮迫某らの関わった案件を「闇営業事件」という見出しで矮小化してしまうことには、やはり、抵抗を感じる。 少なくとも、ジャーナリズムに関わる人間が、こういう安易な見出しを打つべきではないと思う。 というのも、今回の事件において「闇営業」は、ほんのささいなサブストーリーに過ぎないからだ。 本筋は、あくまでも詐欺犯罪グループとの関わりにある。 だから、あえて見出しをつけるなら、「詐欺忘年会ウェイウェイ事件」「オレオレ詐欺営業インシデント」「犯罪ピンハネ事案」あたりでなければならない』、「「闇営業事件」という見出しで矮小化してしまうことには、やはり、抵抗を感じる」、との本質を突いた指摘はさすがだ。
・『今回の事件を通じて入江や宮迫が犯した過ちを数え上げれば 1.詐欺グループの忘年会に招かれて参加したこと 2.その忘年会で報酬を受け取ったこと 3.吉本興業のマネジメントを通さずにギャランティを受け取ったこと 4.収入を税務署に申告しなかったこと の4点になると思うのだが、スポーツ新聞各紙が見出しに採用しているのは、ここで言う3の「吉本を通さずに営業活動をした」「闇営業」の部分だけだ。 普通に考えて、最悪なのは、1番の「詐欺犯罪グループとの交友と関与」であるはずだ。 報道されているところによれば、忘年会(主催者の誕生会も兼ねていたと言われる)を主催したのは、単に反社会的な団体に属しているというだけでなく、実際に犯罪に手を染めて、その大掛かりな詐欺犯罪を通じて莫大な利益を得ていた人間たちだと言われている。 暴対法が施行されて以来、芸能人は、指定暴力団の関係者と食事を同席しただけでも、業界から追放されかねない流れになっている。 その流れからしたら、現役の犯罪者たちが、その犯罪の看板を隠そうともせずに開催したアゲアゲのパーティーに同席したのみならず、報酬まで受け取っていたわけだから、これは完全にアウトだ。経緯を考えれば謹慎で済むような話ですらない。一発レッドの永久追放案件だろう。 社会的影響力の大きい著名人や芸能人は、犯罪集団に利用されやすい。 そのことを思えば、宮迫某らの最大の罪は、そもそも犯罪集団と関わりを持ったことそれ自体である』、説得力溢れた指摘だ。
・『もちろん脱税もけしからぬことだし、事務所を通さないで仕事を取ったこともほめられたことではない。 ところが、芸能メディアは「事務所を通さなかったこと」こそが最大の汚点だったかのような見出しでこの事件を総括しようとしている。 どこまで目玉が曇っているのだろうか。 事務所を通すとか通さないとかのお話は、芸能界という結界の中だけでモノを言っている、インサイダーの掟に過ぎない。 であるからして、事務所を通さなかったことは、事務所内で内々に処理すれば足りる、「社員の副業禁止違反」だとか「出張旅費の過剰申告」だとかとそんなに変わらない、会社員の逸脱に過ぎない。 引き比べて、犯罪組織や犯罪者との交友や取引は、明白な犯罪であり、明らかな反社会的行為だ。 にもかかわらず、芸能記者は、「事務所の内規」や「社員の心構え」や「芸能界の掟」にばかり着目する。 結局、彼ら自身がジャーナリズムとは無縁の、業界内の廊下鳶に過ぎないことを自ら証明したカタチだ。 能年玲奈さんが事務所を辞めて個人事務所を設立したときも、日本の芸能界ならびに芸能マスコミは、たったひとつの例外もなく「業界の掟」「芸能界の仁義」を守る方向で足並みを揃えて見せた。 つまり、彼らは、憲法で保障されている基本的人権や、各種の法律がそれを許している移籍や営業の自由よりも、「昔ながらのしきたり」や「みんなが守っている不文律」や「いわずもがなの合意事項」を遵守する立場を選択したのである。 結局、わが国の芸能マスコミは、御用記者を飼育する役割を果たすばかりで、芸能人の人権を守ることはもちろん、ファンに正しい情報をもたらすことすらできずにいる。 当然、芸能記者と呼ばれる人々も、大手芸能事務所や影響力のあるプロダクションの鼻息をうかがって、提灯持ちの記事を書く日常活動以外では、色恋沙汰のスキャンダルに尾ひれをつけて放流する程度のことしかしていない。 だからこそ彼らは、能年玲奈さんがほかならぬ自分の本名を名乗ることすらできずにいる信じがたい現状を「業界の慣習」の一言で容認してしまえるわけだし、元SMAPの面々があんな不自然なカタチで謝罪芝居を演じさせられたあの場面に関しても、一切ツッコミを入れることができなかった。 今回の事件でもまったく同じだ。 吉本興業のツルの一声であっさりと一度配信した記事を削除したことだけでも、メディアとしてあるまじき恥さらしだと思うのだが、その削除と再アップについて、いまに至るもしかるべき説明していない。 この一点をもってしても、わが国の芸能メディアが、日本のエンターテインメント業界を正常化するための監視装置として機能していないことは明らかではないか。 吉本興業も吉本興業で、まがりなりにも言論機関が自社の文責で配信した記事を、「誤報」であると決めつけておきながら、その件に関して謝罪はおろか、釈明さえしていない。 どうしてこんな無茶が通るのかというと、結局、吉本興業が、ずっと昔からメディア業界において隠然たる(むしろ「顕然たる」と言うべきかもしれない)影響力を発揮しているコワモテの企業だからだ。 「ヨシモトに睨まれたらこの業界ではやっていけない」と、関係者の多くが恐れおののいて、常にその顔色をうかがう存在だからこそ、吉本興業は、手前勝手なプレスリリースを出したり引っ込めたりしつつ、その矛盾点を誰にも指摘さえされずにいることができている』、「事務所を通すとか通さないとかのお話は、芸能界という結界の中だけでモノを言っている、インサイダーの掟に過ぎない・・・引き比べて、犯罪組織や犯罪者との交友や取引は、明白な犯罪であり、明らかな反社会的行為だ。 にもかかわらず、芸能記者は、「事務所の内規」や「社員の心構え」や「芸能界の掟」にばかり着目する。 結局、彼ら自身がジャーナリズムとは無縁の、業界内の廊下鳶に過ぎないことを自ら証明したカタチだ・・・わが国の芸能メディアが、日本のエンターテインメント業界を正常化するための監視装置として機能していないことは明らかではないか」、との芸能記者批判は痛快だ。「どうしてこんな無茶が通るのかというと、結局、吉本興業が、ずっと昔からメディア業界において隠然たる(むしろ「顕然たる」と言うべきかもしれない)影響力を発揮しているコワモテの企業だからだ」、との吉本批判も正論だ。
・『聞けば、吉本興業はNTTと組んで、教育コンテンツを発信するプラットフォーム事業「Laugh & Peace_Mother(ラフアンドピースマザー)powered by NTT Group」を開始する旨を発表したのだそうで、その事業には、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)が最大100億円まで出資することになっている。 カネと人気と影響力があるだけでなく、官邸との間に太いパイプを持ち、なおかつ万博の顔になることがすでに決まっているコワモテの企業に対して、この先、うちの国のメディアで働く記者たちは、どこまでビビらずに取材を敢行して、どれだけ核心に迫る原稿を書くことができるのだろうか。 私は楽観していない。 芸能マスコミが瀕死であることはすでにわかっている。 してみると、非芸能マスコミの記者さんたちが、まるで別のタイプだとは考えにくい。 詐欺グループの忘年会に出席して 「君の声が力になる 君の笑顔が力になる」という歌を歌った宮迫氏ほどではないにしても、どうせ提灯を持つことになるのではなかろうか。 あるいは、くずの自覚を持っている分だけ、宮迫氏の方がまだマシなのかもしれない』、「万博の顔になることがすでに決まっている」、というのは初めて知った。確かに、こんな強大で「コワモテの」吉本興業に、メディアが立ち向かうのは至難の業だろう。「瀕死」の「芸能マスコミ」だけでなく、「非芸能マスコミの記者さんたちが、まるで別のタイプだとは考えにくい」、というのも残念ながらその通りなのだろう。誰が問題解決に踏み出すのか、大いに注目される。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 猫組長 小田嶋 隆 「闇営業」 (その2)(「吉本・芸人・テレビ局 君ら『全員アウト』やで」元経済ヤクザ語る、小田嶋氏:「闇営業」の本筋はそこじゃない) 「「吉本・芸人・テレビ局、君ら『全員アウト』やで」元経済ヤクザ語る」 「パワハラ経営者vs同情すべき芸人とその仲間たち」という構図のもとに、衆目の中で進行する劇場型不祥事だ 吉本は芸人を社員として雇用してはいないが、社会的責任を負う大企業として、関係者の不正行為に厳正に対処する義務がある。それが涙混じりの感情論にすり替わっているとは、議論の逸脱も甚だしい 反社の宴席、芸人への謝礼は 若手なら20万円が相場だった 取っ払い 「こういうふうに劇場型にすれば、世論を誘導できるのか。企業を思う通りに動かせるのか」と学習しています 吉本の経営は、絶対に毅然とした態度をとらなあかんのです 岡本社長は反社との関係について、「すべての取引先をチェックしている」と言ったけれど、吉本と暴力団の長い付き合いを振り返れば、どの口が言うとんねん、って話です 首相も担ぐ吉本は「政治銘柄」 国際問題に発展しうる AML/CFT(マネーローンダリング・テロ資金供与対策) 日本はそういう国際機関から、「対策が手ぬるい」と度々言われてきた国 教育事業など行政案件に進出 安倍晋三首相を新喜劇の舞台に立たせて、政府との関係が深い 国際問題に発展するリスクがある もっと深刻なのは、これほどのグレーさを露呈した吉本とテレビ局との関係が、相変わらず密接なままという点 テレビ局は吉本にとって株主であり、芸人を番組に出してくれる顧客でもある テレビ局は上場企業で、何よりも総務省の許認可を受けて事業を行う公器であり、社会的責任は極めて大 芸人やキャスターが反社の問題に切り込むことはなく、「パワハラ体質の吉本と芸人との間の感情的な内輪もめ」に議論を終始させています テレビ局は株主の責任果たせ さもなくば共犯者の誹り受ける 「「闇営業」の本筋はそこじゃない」 ヒトサマの書いた記事を「誤報」と決めつけておきながら、一言のあいさつもないというのは、社会的影響力の大きい企業としてありえない態度 エンターテインメントの世界で観察される人間関係の封建性と業界体質の旧弊さは、そのまま私たちが暮らしているリアルな社会の封建性と閉鎖性を反映している この事件の登場人物たちは、誰も彼も、一から十まで、実にどうしようもない日本のチンピラなのである 起源をたどっていけば、芸能と暴力団は同じ根っこから発展した別の枝だ 「闇営業」は、単に「事務所を通さない仕事」であるらしい 「取っ払い」 今回のカラテカ入江や宮迫某らの関わった案件を「闇営業事件」という見出しで矮小化してしまうことには、やはり、抵抗を感じる 本筋は、あくまでも詐欺犯罪グループとの関わりにある 入江や宮迫が犯した過ち 1.詐欺グループの忘年会に招かれて参加したこと 2.その忘年会で報酬を受け取ったこと 3.吉本興業のマネジメントを通さずにギャランティを受け取ったこと 4.収入を税務署に申告しなかったこと 新聞各紙が見出しに採用しているのは、ここで言う3の「吉本を通さずに営業活動をした」「闇営業」の部分だけ 最悪なのは、1番の「詐欺犯罪グループとの交友と関与」であるはず 現役の犯罪者たちが、その犯罪の看板を隠そうともせずに開催したアゲアゲのパーティーに同席したのみならず、報酬まで受け取っていたわけだから、これは完全にアウトだ。経緯を考えれば謹慎で済むような話ですらない。一発レッドの永久追放案件だろう 事務所を通すとか通さないとかのお話は、芸能界という結界の中だけでモノを言っている、インサイダーの掟に過ぎない 犯罪組織や犯罪者との交友や取引は、明白な犯罪であり、明らかな反社会的行為だ 芸能記者は、「事務所の内規」や「社員の心構え」や「芸能界の掟」にばかり着目する 結局、彼ら自身がジャーナリズムとは無縁の、業界内の廊下鳶に過ぎない 吉本興業が、ずっと昔からメディア業界において隠然たる(むしろ「顕然たる」と言うべきかもしれない)影響力を発揮しているコワモテの企業だからだ NTTと組んで、教育コンテンツを発信するプラットフォーム事業「Laugh & Peace_Mother(ラフアンドピースマザー)powered by NTT Group」を開始 クールジャパン機構)が最大100億円まで出資 万博の顔になることがすでに決まっている
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「闇営業」(吉本興業と安倍政権は蜜月 官民ファンド100億円出資の行方、吉本興業トップ会見は「0点」 不祥事対応のプロ弁護士が酷評、「吉本興行と芸人の取引」は下請法違反~テレビ局 政府はコンプラ違反企業と取引を継続するのか) [社会]

今日は、話題になっている「闇営業」(吉本興業と安倍政権は蜜月 官民ファンド100億円出資の行方、吉本興業トップ会見は「0点」 不祥事対応のプロ弁護士が酷評、「吉本興行と芸人の取引」は下請法違反~テレビ局 政府はコンプラ違反企業と取引を継続するのか)を取上げよう。

先ずは、6月26日付け日刊ゲンダイ「吉本興業と安倍政権は蜜月 官民ファンド100億円出資の行方」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/256962
・『スポーツ紙やワイドショー番組が一斉に報じている吉本興業のお笑い芸人をめぐる「闇営業」問題。吉本は反社会的勢力の会合に出席した芸人11人の謹慎処分を発表。早期幕引きを図っているが、問題の長期化は避けられない。 「相手が詐欺グループとは知らなかった」。処分された芸人らは主催者の素性について認識していなかった、と口をそろえている。だが、この問題を週刊誌「フライデー」は〈(詐欺グループだという)真相が伝わっていた可能性が高い〉と報道。仮に相手が反社と知りながら報酬を受け取っていれば、組織的犯罪処罰法に抵触する恐れがあるほか、「闇営業」で得た多額の報酬を確定申告の際に申告していなかったとすれば、脱税に問われる可能性もある。 吉本芸人と反社の関係といえば、2011年に反社との密接交際を理由に芸能界引退に追い込まれた島田紳助が記憶に新しい。「お笑い」よりも「カネ」に目がくらんだ吉本芸人は紳助の引退問題から何も学んでいなかったワケだが、そんな悪しき慣習が残る吉本を“側面支援”しているのが安倍政権だ』、興味深そうだ。
・『官民ファンドが100億円出資  安倍首相は4月、大阪市中央区にある吉本のお笑い劇場「なんばグランド花月」の舞台に現役首相として初登壇。今月6日には吉本芸人と官邸で面会するなど、「蜜月ぶり」をアピールしている。 第2次安倍政権発足後の13年に設立された官民ファンド「クールジャパン機構」(東京)も吉本と近しい。政府が約586億円出資する機構は14年と18年の2回、計22億円を吉本が関わる事業へ出資。今年4月にも吉本などが参画した新会社が手掛ける「教育コンテンツ等を国内外に発信する国産プラットフォーム事業」へ最大100億円も出資するという。 新会社は教育関連アプリの配信や沖縄でアトラクション施設設置を進める予定というが、多額の血税を投じる受け入れ先として果たして適当といえるのか。 機構に認識を問うと、「コメントを申し上げることはございません」(広報戦略部)と回答。赤字垂れ流しの他の官民ファンドと同様、巨額の税金を使っているという意識が皆無らしい。一方、吉本は「ご指摘、ありがとうございます。弊社からの回答はオフィシャルホームページをご確認ください」(プロモーション本部)とのことだった。 このまま進めて大丈夫なのか』、クールジャパン機構については、このブログの昨年4月24日で取上げたように、2017年3月末で投資先14件、投資額310億円のうち、6件が損失44億円を抱えている。安倍政権にとっては、投資の期間は10-20年と長いのでたかをくくっているのだろうが、「打ち出の小槌」のような乱暴な使い方をしている。吉本興行が縁もゆかりもなさそうな「教育コンテンツ等を国内外に発信する国産プラットフォーム事業」へ最大100億円も出資」とは、恐れ入った。今回の騒動で流産になればいいのだが・・・。

次に、7月23日付けダイヤモンド・オンライン「吉本興業トップ会見は「0点」、不祥事対応のプロ弁護士が酷評」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは郷原氏の回答)。
https://diamond.jp/articles/-/209528
・『「長時間頑張った」以外に評価点のないダメダメ会見  経営トップが涙を流す長時間の会見は、冷笑しか招かなかった。吉本興業が22日、所属芸人が反社会勢力のパーティーなどで活動していた問題について記者会見を開いた。岡本昭彦社長は、先に独自に謝罪会見を開いた宮迫博之氏(雨上がり決死隊)と田村亮氏(ロンドンブーツ1号2号)らに対し、契約解除などの処分を撤回する方針を示すとともに、自身と持ち株会社・吉本興業ホールディングスの大崎洋会長を1年間50%減俸処分にすると発表した。だがこの会見を、不祥事対応の第一人者である郷原信郎弁護士は酷評している。笑い殿堂企業は、なぜ「笑うに笑えない」事態に陥ってしまったのか。  Q:不祥事対応のプロとして、吉本興業・岡本社長の会見をどう感じたか。 A:これが業界を代表する企業のトップ会見かと思うと、まったくひどい内容だ。点数をつけるとしたら10点。しかもこの10点は「あれだけの長時間にわたり、社長が壇上でなんとか頑張った」ことに対する評価でしかない。説明した内容に対しては0点だ。 Q:内容のどこがまずかったか。 A:根本的な問題について意識がまったくないところだ。今回の問題は反社会的勢力との取引が端緒だが、ここまで社会的に大きな広がりを持ったのは、芸能関連の企業の多くが抱える根本的問題が噴出したからだ。 吉本に限らず、芸能事務所と芸人・タレントとの契約関係の多くは非常にあいまい。そして事務所側の意向ひとつですべてが決まる。平時は利害が一致しているために家族的に「なあなあ」で済まされているが、ひとたび対外的な問題が起こると途端に、事務所と問題を起こした芸人・タレントの間で利益相反の構図ができる。 今回であれば、すでに著名な芸人である宮迫博之氏(雨上がり決死隊)と田村亮氏(ロンドンブーツ1号2号)にとっては、この不祥事を社会に対してどのように説明するかが職業生命を左右することだった。彼らに対しては、自立した個人事業者としてその立場を尊重しなければならないが、吉本はそうしなかった。実績と能力がある有名芸人の価値を尊重せず、強引に事態を沈静化しようとしたから、問題が爆発したのだ。 一方、まだそれほど著名ではない芸人については、「闇営業」をしてでも自分でなんとか食っていかなければならない状況がある。一般的な理解として、芸能事務所とタレントは実態としては「使用従属関係」(主に、使用者の指揮監督下で労務を提供し、その労務に対して報酬が与えられる関係)にある。吉本には数千人の芸人がいるが、その大半は安くこき使われているだけだという実態は、吉本の大崎洋会長(編注:崎の文字は正式には“たつさき”)が直近のメディアインタビューで露呈させている。売れない芸人との実際の契約がどうであれ、雇用者として保護する必要が法的に発生しているのに、それがなされていないのだ。 こういった根本的な問題を組織として抱えているにもかかわらず、会見では感情的な表現に終始し、従来どおり「家族」であることを訴えて事態の収束を図ろうとした。それが今回の会見の問題だ』、社長記者会見は私もテレビで観たが、確かにかつでは上場して企業とは思えないようなお粗末な出来だった。「今回の問題は反社会的勢力との取引が端緒だが、ここまで社会的に大きな広がりを持ったのは、芸能関連の企業の多くが抱える根本的問題が噴出したからだ」、との郷原氏の指摘は適格だ。
・『芸人との関係があいまいでは反社チェックも徹底できない  Q:「クビにする」など、宮迫・田村氏が圧力と受け取った言葉を「冗談だった」と説明した。 A:今回のように深刻な局面で、相手の生殺与奪を握っている立場として、こんなことが冗談で言えるはずがない。説明として、世の中にはまったく通じない。ほかに言いようがなかったのだろうが、冷笑しか誘わない発言だ。 Q:吉本では過去にも、反社会的勢力との繋がりによる不祥事が起こっている。なぜ頻発するのか。防止するにはどうしたらいいのか。 A:チェックをしているというが、実際にはチェックしきれない状態なのだろう。普通の企業の視点でいえば、この10年で反社会的勢力とのあらゆる契約関係を断つことが要求されるようになった。吉本も自社が直接契約する相手に対してはチェックしていたようだ。だが、芸人の取引先や交際関係については、芸人と会社の間の契約関係があいまいなのだから、完全にチェックしきれるわけがない。 芸人の立場・権利を守るという観点だけでなく、反社問題の対策としても、芸人との契約関係を明確にする必要があるのだ。 A:岡本社長ら経営陣はどう責任を負うべきか。 A:経営として負うべき責任は、報酬の返上でも、進退を決めることでもない。これまで、なあなあで当然、阿吽の呼吸のもとにあいまいにしてきた芸人との契約関係を、きちんと見直すと宣言することが、今回は必要不可欠だった。 吉本は10年ほど前に上場廃止したが、非上場企業になれば何をしてもよい、などということはまったくない。芸能業界に対して大きな影響力があるばかりか、その舞台に首相が登壇するほどの企業である。そういった企業には当然ながら経営の公正性、透明性が要求されるのだが、そういう意識が吉本の経営陣には根本的に欠けているのではないか』、正論で、その通りだ。

第三に、上記でも登場した元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が7月23日付け同氏のブログに掲載した「「吉本興行と芸人の取引」は下請法違反~テレビ局、政府はコンプラ違反企業と取引を継続するのか」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/07/23/%e3%80%8c%e5%90%89%e6%9c%ac%e8%88%88%e6%a5%ad%e3%81%a8%e8%8a%b8%e4%ba%ba%e3%81%ae%e5%8f%96%e5%bc%95%e3%80%8d%e3%81%af%e4%b8%8b%e8%ab%8b%e6%b3%95%e9%81%95%e5%8f%8d%ef%bd%9e%e3%83%86%e3%83%ac%e3%83%93/
・『振り込め詐欺グループの宴会に参加して金を受け取ったとして謹慎処分を受けた、宮迫博之氏と田村亮氏の2人の記者会見を受けて、吉本興業ホールディングス(以下、「吉本」)の岡本昭彦社長が、7月22日に記者会見を行ったが、言っていることが意味不明で、宮迫氏らへの発言について不合理極まりない言い訳に終始し、一度行った契約解除を撤回する理由も不明なままであり、社長・会長の責任については50%の報酬減額で済ますというのも、全く納得のいくものではない。 岡本社長は、この問題を、宮迫氏らとの「コミュニケーション不足」や、彼らの心情への「配慮不足」の問題のように扱い、「芸人ファースト」「ファミリー」などという言葉ばかりを使い、精神論的な問題にとどめ、吉本という会社と芸人・タレントの関係に関する根本的な問題に対する言及は全くなかった』、記者会見するからには、通常は顧問弁護士や会社上層部、さらにはPR会社などと念入りにスリ合わせをする筈だが、それをせずに臨んだようだ。なんとかなると高を括っていたとすれば、思い上がりも甚だしい。
・『口頭での「契約」の是非  最大の問題は、吉本興業は、芸人・タレントと契約書を交わしておらず、大崎洋会長は、「芸人、アーティスト、タレントとの契約は専属実演家契約。それを吉本の場合は口頭でやっている。民法上も、口頭で成立します。」と言い切っており、今後も契約書を交わさないことを明言していることである(【吉本興業の「理屈」は、まっとうな世の中には通用しない】)。 しかし、芸人等の出演契約というのは、小売店での現物売買、「料金表」に基づく業務発注などとは異なり、「契約書」を作成し、契約内容、対価を明確にしておくべき必要がある契約の典型だ。 しかも、企業にとって、そのような契約を口頭で行って、契約書も交わさないというやり方には、法律上問題がある。 それは、独占禁止法が禁止する「優越的地位の濫用」について、親事業者の下請事業者に対する行為を規制する下請代金支払遅延防止法(以下、「下請法」)との関係である』、法令違反の疑いがあるとは新たな指摘だ。
・『下請法との関係  吉本の芸人・タレントは、個人事業主である。下請法により、一定規模の親事業者が個人事業主に役務提供委託する際には、下請法3条に定める書面(いわゆる3条書面)を発行する義務がある。吉本のような芸能事務所が主催するイベントへの出演を個人事業者のタレントに委託する場合には、「自ら用いる役務の委託」に該当するため下請法3条書面を交付する義務が発生しない。 しかし、吉本が、テレビ局等から仕事を請け負い、そこに所属芸人を出演させる場合には、吉本が個人事業者の芸人に役務提供委託をしたことになる可能性があり、この場合、下請け法3条の書面を発行する義務がある。下請法上、親事業者は発注に際して、発注の内容・代金の額・支払期日などを記載した書面を下請事業者に直ちに交付する義務があり(同法第3条)、この義務に反した場合には、親事業者の代表者等に50万円以下の罰金を科する罰則の適用がある(同法第10条)。吉本では、芸人・タレントをテレビ等に出演させる際に、契約書を全く作成しないということなのであるから、下請法3条の発注書面交付義務違反となる可能性がある。 下請法が、このような下請事業者への書面交付を義務づけているのは、発注書面がないと、親事業者から、後で「そんな発注はしていない」、「代金はそんなに出す約束をしていない」、「支払いは3か月後だ」などと言われても下請事業者は反論しにくくなってしまうからである。そこで、下請事業者に不当な不利益が発生することを防止するために書面の交付が義務付けられている。 吉本の芸人は、契約書を交わすこともなく、契約条件も、対価も明示されないまま「口頭での契約」で出演の仕事を行っているのであり、著しく不利な立場に置かれていると言える。 この点に関して、公正取引委員会が、2018年2月に公表した「人材と競争政策に関する検討会報告書」では、以下のように書かれている。 発注者が役務提供者に対して業務の発注を全て口頭で行うこと,又は発注時に具体的な取引条件を明らかにしないことは,発注内容や取引条件等が明確でないままに役務提供者が業務を遂行することになり,前記第6の6等の行為を誘発する原因とも考えられる(この行為は,下請法 が適用される場合には下請法違反となる。) ※「第6の6の行為」⇒「代金の支払遅延,代金の減額要請及び成果物の受領拒否 ・ 著しく低い対価での取引要請・成果物に係る権利等の一方的取扱い・発注者との取引とは別の取引により役務提供者が得ている収益の譲渡の義務付け」 つまり、当該取引に下請法の適用がある場合には、発注者が業務の発注を全て口頭で行い、発注書面を交付しない行為が違法であることは明白である』、なるほど説得力がある。
・『「下請法3条違反」に対する刑事罰適用の可能性  もっとも、下請法3条違反で罰則が実際に適用された例は、これまではなく、すべて当局の「指導」により是正が図られている。しかし、それは、ほとんどが、発注書面自体は作成交付されているものの、その記載内容に不備があるという軽微な違反だからである。書面を全く交付していないというのは、下請法の適用対象の大企業では、ほとんど例がない。しかも、吉本興業は、露骨な下請法違反を行っておきながら、経営トップである大崎会長が、悪びれることもなく、「今後も契約書は交わさない」と公言しているのである。このような違反に対しては、当局の「指導」では、実効性がないと判断され、刑事罰の適用が検討されることになるだろう。 違反の事実は、会長・社長の発言などからも明白だが、吉本所属の芸人・タレントから、公取委に申告、情報提供が行われれば、公取委が調査に乗り出すことは不可避となるだろう。この場合、「親事業者が,下請事業者が親事業者の下請法違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として,その下請事業者に対して取引数量を減じたり,取引を停止したり,その他不利益な取扱いをしてはならない」(4条1項7号)という規定があるので、吉本側が、それを理由に、契約解除等の措置をとると、それ自体が下請法違反となる』、吉本以外の芸能事務所ではどうなっているのか、知りたいところだ。
・『「吉本下請法違反」がテレビ局に与える影響  このように、吉本の下請法3条違反は、弁解の余地がないように思え、しかも、その事実関係は、外部的にも明白である。社会的責任を負う企業としては、「反社会的勢力」と関わりを持つことが許されないのと同様に、このようなコンプライアンス違反を行っていることを認識した上で取引を継続することは許されない。 吉本が、配下のすべての芸人・タレントと契約条件を明示した契約書を交わすなど、違法行為、コンプライアンス違反を是正する措置をとらない限り、吉本と契約をしているテレビ局、そして、吉本が4月21日に発表した教育事業への進出に総額100億円もの補助金の出資を予定している政府も、吉本との取引は停止せざるを得ないということになる。 もちろん、安倍首相も、吉本の番組に出演したりして、浮かれている場合ではないことは言うまでもない』、「吉本と契約をしているテレビ局」は吉本の株主でもあり、その責任も認識してほしいものだ。なお、夕方のテレビで、菅官房長官が「(吉本興業は)クールジャパンの担い手として説明していく必要がある」と言明したが、まだ撤回までは考えてないようだ。安倍首相があれほど、吉本興行に入れ込んでいたので、手の平返しまでは出来ないのだろうか。
タグ:公正取引委員会 田村亮 上場廃止 宮迫博之 安倍首相 日刊ゲンダイ 郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン クールジャパン機構 同氏のブログ 岡本昭彦社長 「闇営業」 (吉本興業と安倍政権は蜜月 官民ファンド100億円出資の行方、吉本興業トップ会見は「0点」 不祥事対応のプロ弁護士が酷評、「吉本興行と芸人の取引」は下請法違反~テレビ局 政府はコンプラ違反企業と取引を継続するのか) 「吉本興業と安倍政権は蜜月 官民ファンド100億円出資の行方」 「フライデー」は〈(詐欺グループだという)真相が伝わっていた可能性が高い〉と報道。仮に相手が反社と知りながら報酬を受け取っていれば、組織的犯罪処罰法に抵触する恐れがあるほか、「闇営業」で得た多額の報酬を確定申告の際に申告していなかったとすれば、脱税に問われる可能性もある 2011年に反社との密接交際を理由に芸能界引退に追い込まれた島田紳助 吉本のお笑い劇場「なんばグランド花月」の舞台に現役首相として初登壇 今月6日には吉本芸人と官邸で面会 「蜜月ぶり」をアピール 「クールジャパン機構」 計22億円を吉本が関わる事業へ出資 「教育コンテンツ等を国内外に発信する国産プラットフォーム事業」へ最大100億円も出資 2017年3月末で投資先14件、投資額310億円のうち、6件が損失44億円を抱えている 「吉本興業トップ会見は「0点」、不祥事対応のプロ弁護士が酷評」 契約解除などの処分を撤回 郷原信郎弁護士は酷評 笑い殿堂企業は、なぜ「笑うに笑えない」事態に陥ってしまった 今回の問題は反社会的勢力との取引が端緒だが、ここまで社会的に大きな広がりを持ったのは、芸能関連の企業の多くが抱える根本的問題が噴出したからだ。 吉本に限らず、芸能事務所と芸人・タレントとの契約関係の多くは非常にあいまい。そして事務所側の意向ひとつですべてが決まる 平時は利害が一致しているために家族的に「なあなあ」で済まされている ひとたび対外的な問題が起こると途端に、事務所と問題を起こした芸人・タレントの間で利益相反の構図ができる すでに著名な芸人である宮迫博之氏(雨上がり決死隊)と田村亮氏(ロンドンブーツ1号2号)にとっては、この不祥事を社会に対してどのように説明するかが職業生命を左右すること 彼らに対しては、自立した個人事業者としてその立場を尊重しなければならないが、吉本はそうしなかった まだそれほど著名ではない芸人については、「闇営業」をしてでも自分でなんとか食っていかなければならない状況 芸能事務所とタレントは実態としては「使用従属関係」(主に、使用者の指揮監督下で労務を提供し、その労務に対して報酬が与えられる関係)にある 雇用者として保護する必要が法的に発生しているのに、それがなされていないのだ こういった根本的な問題を組織として抱えているにもかかわらず、会見では感情的な表現に終始し、従来どおり「家族」であることを訴えて事態の収束を図ろうとした 芸人との関係があいまいでは反社チェックも徹底できない 吉本では過去にも、反社会的勢力との繋がりによる不祥事が起こっている あいまいにしてきた芸人との契約関係を、きちんと見直すと宣言することが、今回は必要不可欠だった 舞台に首相が登壇するほどの企業 当然ながら経営の公正性、透明性が要求される 「「吉本興行と芸人の取引」は下請法違反~テレビ局、政府はコンプラ違反企業と取引を継続するのか」 岡本社長は、この問題を、宮迫氏らとの「コミュニケーション不足」や、彼らの心情への「配慮不足」の問題のように扱い、「芸人ファースト」「ファミリー」などという言葉ばかりを使い、精神論的な問題にとどめ、吉本という会社と芸人・タレントの関係に関する根本的な問題に対する言及は全くなかった 口頭での「契約」の是非 下請法との関係 一定規模の親事業者が個人事業主に役務提供委託する際には、下請法3条に定める書面(いわゆる3条書面)を発行する義務がある この義務に反した場合には、親事業者の代表者等に50万円以下の罰金を科する罰則の適用 「人材と競争政策に関する検討会報告書」 当該取引に下請法の適用がある場合には、発注者が業務の発注を全て口頭で行い、発注書面を交付しない行為が違法であることは明白である 「下請法3条違反」に対する刑事罰適用の可能性 「吉本下請法違反」がテレビ局に与える影響 吉本が、配下のすべての芸人・タレントと契約条件を明示した契約書を交わすなど、違法行為、コンプライアンス違反を是正する措置をとらない限り、吉本と契約をしているテレビ局、そして、吉本が4月21日に発表した教育事業への進出に総額100億円もの補助金の出資を予定している政府も、吉本との取引は停止せざるを得ないということになる
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経済学(世界随一の経済学者が すべてを投げ捨てても守りたかったもの 宇沢弘文の孤独と怒り、なぜ米国の一流経済学者が日本に二流のアドバイスをするのか) [経済政策]

今日は、経済学(世界随一の経済学者が すべてを投げ捨てても守りたかったもの 宇沢弘文の孤独と怒り、なぜ米国の一流経済学者が日本に二流のアドバイスをするのか)を取上げよう。

先ずは、日経新聞社出身のジャーナリスト、佐々木 実氏が3月29日付け現代ビジネスに寄稿した「世界随一の経済学者が、すべてを投げ捨てても守りたかったもの 宇沢弘文の孤独と怒り」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/60245
・『日本人唯一の世界的経済学者、宇沢弘文(宇沢弘文(1928−2014)とはじめて会ったのは、わたしの前作『市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(講談社)の取材をしているときでした。 竹中平蔵という経済学者の人生の歩みを追った評伝だったのですが、竹中は若いころ、宇沢が指導する研究機関に在籍していたことがあったのです。 もっとも、竹中について宇沢に取材するという行為が本末転倒であることぐらい、自覚はしていました。世界的に評価されている経済学者に、学問的業績などほとんどない経済学者の話を聞くわけですから、話がアベコベだ。 竹中の話は早々に切り上げ、わたしはこの碩学にぜひとも聞きたかったことを息せき切ってたずねていました。経済学という学問、経済学者という職業的専門家に対する疑問についてです。 日常生活から国際政治まで、いまほど資本主義に起因する問題が山積みになっている時代はない。それなのに、なぜ職業的専門家たちは「声なし」なのか。それどころか、社会を誤った方向に先導しているようにすらみえるのはいったいどういうことか。 いまでも不思議におもうのですが、わたしの理解が一知半解であることぐらいすぐにわかったはずなのに、宇沢は至極真剣な面持ちでわたしの話を聞いていました。ある質問をした際、絶句して黙り込んでしまった宇沢の姿をいまも鮮明におぼえています。 宇沢は経済学という学問の「奥の院」にいた、日本人としては唯一の人物でした。スタンフォード大学、シカゴ大学を拠点に活躍し、アメリカの経済学界で一、二を争う理論家となりました。世界の名だたる経済学者たちと親交を結び、学界の指導者のひとりとなっていたのです。 ところが、不惑を迎える年に突然、栄光ある地位を放り投げ、日本に帰国してしまいます。そればかりか、しばらくすると猛然と経済学を批判しはじめ、周囲を戸惑わせるようになるのです』、宇沢弘文は一時はノーベル経済学賞に最も近い日本人とも言われたが、「猛然と経済学を批判しはじめ、周囲を戸惑わせるようになる」というのでは、ノーベル経済学賞など馬鹿にしていたのだろう。
・『グローバリゼーションの荒波に対抗して  宇沢が闘っていた相手は、いわば、現在のグローバリゼーションを推進した経済学者たちです。 論敵の名をひとりだけ挙げるなら、シカゴ大学の同僚だったミルトン・フリードマンでしょう。『Capitalism and Freedom(資本主義と自由)』『Free to Choose(選択の自由)』という、世界中で熱狂的な読者を獲得した市場原理主義の啓蒙書を著した経済学者です。 フリードマンは「シカゴ学派」を率い、新自由主義思想を世界に布教することに成功しました。フリードマン信者(“Friedmanite”)にアメリカのロナルド・レーガン大統領、イギリスのマーガレット・サッチャー首相という大物がいたからです。 「自由」の概念でさえ、資本主義との関係のなかで論じなければ意味をもたない。それがグローバリゼーションという時代です。高度に発展した資本主義の社会では、思想闘争の中心に経済学者がいる。 問題は、経済学という学問内の闘争はわれわれシロウトには容易にはわからないということです。 ところで、フリードマンは好敵手として親しく交わった宇沢が日本に帰国してからというもの、フリードマン信奉者の日本人に依頼して、宇沢が日本語で著した論文や記事を英語に訳させ、丹念にチェックしていました。自分にとって脅威となりうる経済学者とみなしていたのです。 思想闘争では「敗者」とならざるをえなかった宇沢は、「自由」をめぐる論戦の世界的な動向と深く関わりつつ、新たな経済理論の構築に悪戦苦闘しました。 しかし残念ながら、彼が何とどのように闘っていたのか、経済学という専門知の壁にさえぎられ、当時もいまも、ほとんどの人には理解がおよびません。宇沢の闘いの全貌を描いた作品がこのたび上梓した『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』なのです。 思い返せば、初対面の場面から、わたしは術中にはまっていました。宇沢亡きあと浩子夫人から教えられたのですが、宇沢独特の教授法はアメリカ滞在時代、「Socratic Method(ソクラテス式問答法)」と呼ばれ、教え子たちのあいだで有名だったそうです。 対話を重ねるたび、わたしも自分が何を知らないのかはっきり認識するようになりました。自分の思考がいかに薄っぺらなものであるか、いやというほど思い知らされました。宇沢はまるで魔術のような対話術をもっていたのです。 落とし穴もそこにありました。魔術のような問答法をもつ経済学者に、術中にはまっているシロウトがインタビューするのですから、当然といえば当然です。 わたしは宇沢に誘われ、宇沢がセンター長をつとめる同志社大学の社会的共通資本研究センターに参加するようになりました。 とはいっても、わたしは研究者ではありません。はじめから、なんとかして宇沢弘文に本格的インタビューを試みるチャンスはないものかとうかがっていました』、フリードマンが宇沢帰国後に、「宇沢が日本語で著した論文や記事を英語に訳させ、丹念にチェックしていました」、やはり強いライバル意識があったのだろう。
・『宇沢の怒りと孤立  研究センターの研究の一環としてインタビューを企画したとき、意外にもあっさり本人の承諾を得ることができました。 なぜ意外だったかというと、わたしが持ち合わせている知識では、難解な数理経済学者であり厳密な理論経済学者である宇沢の真髄に迫るインタビューなど困難であることはあきらかだったからです。 宇沢邸での聞き取りは幼少期の思い出からスタートしましたが、わたしの頭のなかは、経済学に関するインタビューをどうするかという問題で一杯でした。宇沢の思想を理解するには、宇沢の難解な経済理論を深く読み解かなければならないからです。 思案のすえ、経済学者を同伴することを思いつき、提案してみたのです。口にこそ出しませんでしたが、具体的な候補者まで考えていました。 ところが、そのときでした、宇沢が激怒したのは。怒るというより、はげしく動揺し取り乱したといったほうが適切かもしれません。宇沢は、感情の昂りをおさえきれず吃りながらまくしたてると、「そんなことなら、もうこの話はなかったことにしよう!」と言い放ちました。わたしは皆目わけがわからず、押し黙っているしかありませんでした。頭のなかは真っ白でした。 「ごめん、ごめん……ちょっと呑もうか?」 興奮から醒めて我に返った宇沢がいい、キッチンに立ってビールを2本もってもどってきましたが、怒りのわけを理解できないわたしは呆然としたままでした。 この出来事は、それまで回を重ね順調に進んでいたインタビューが滞る原因ともなってしまいました。 情けないことに、怒りの意味を理解できたのは、宇沢が世を去ったときでした。 追悼文で称揚されている宇沢が、宇沢自身が語っていた宇沢とは別人であるようにしかおもえなかった。宇沢の薫陶を受けたと前置きしながら、的外れとしかおもえない宇沢論を展開している人もいたのです。 もちろん、批判したいのではありません。宇沢の孤立はそこまで深刻なものだったのか。あのときの怒り、動揺した姿を思い出しながら、私自身が確認したまでです。 宇沢は、資本主義が惹き起こす現実の問題をとらえるための理論を構築しようと苦闘する過程で、新たな思想を産み出しました。 しかし、経済学者として知名度があるにもかかわらず(「それゆえに」かもしれません)、彼の思想が広く知られることはありませんでした。 当初わたしを買いかぶっていた宇沢は、わたしというメディアを通して、自分の思想を伝えることができるかもしれないと考えていた時期がたしかにありました。 生前の期待に応えることはできませんでしたが、遺志を継ぐつもりで、『資本主義と闘った男』を著しました。 宇沢弘文は故人となりましたが、彼の思想はいま誕生したばかりです。ひとりでも多くの方に本書を手に取っていただき、新たな思想に触れてもらいたい。宇沢弘文が身命を賭して表現しようとしたLiberalismに。』、自著を売りたいためか、宇沢思想の本質については殆ど説明がないのは残念だ。Wikipediaでみると、宇沢は、大気や水道、教育、報道など地域文化を維持するため一つとして欠かせない社会的共通資本であると説き、市場原理に委ねてはいけないと主張したようだ。ただ、これが主流派とどのような論争になったかについては、もっとネット検索して調べる必要がありそうだ。

次に、元財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏が7月8日付けNewsweek日本版に寄稿した「なぜ米国の一流経済学者が日本に二流のアドバイスをするのか」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2019/07/post-35_1.php
・『<早朝のソウルを散歩し、行きかう人々の姿を観察していた筆者は、韓国経済への素晴らしい処方箋を思いつく。しかし、それはとんでもない間違いだった。アメリカの一流学者も日本に同じことをやっている> 授業で韓国に来ている。 ソウルは36度と暑さが厳しいので早朝街を歩くことにした。 するとちょうどよい遊歩道が川沿いにあるのを見つけた。地元の人々が大勢ウォーキングをしていた。 すぐに私はあることに気がついた。 まず、走っている人がいない。全員歩いているのである。 これはちょっと不思議だった。日本ではランニングが流行しすぎるほどしすぎているのに。日本と韓国は近くて似ていると思っていたが、そうでもないのか。 さらに不思議だったのでは、歩いている人たちの多くが不気味な手袋をつけていることである。肌色でそれにペイズリー柄など様々な模様がプリントしてある。刺青かと思ってびっくりした。 そして、よく見ると、その変な手袋をしているのはみんな老人しかも女性なのである。日焼け防止かと思うと顔は無防備だし、その頬もしわしわだが健康そうに焼けている。 ふと見回すと、歩いているのは全員老人なのである。朝のウォーキングをしているのは全員老人で、若者はどこにもいないのである。 ここに韓国社会と日本社会の違いを見た。日本よりも深刻な高齢化と格差社会の問題が存在しているのである。 中国でもそうだが、韓国で豊かなのは若者だ。中年の起業成功者、若いエリート社員、そして起業家である。高齢で裕福なのは財閥で成功した一部に過ぎない』、なるほど。
・『貧しい高齢者と豊かな若者?  ソウルの街は、豊かな若者であふれている。日本よりも価格が高いスタバで惜しげもなく注文し、勉強し、スマホをしている。ブランド物の持ち物にあふれ、化粧とサプリに入念である。若い層が豊かだとエネルギーがある。新しいモノ、サービス、企業を生み出す力につながる。そういう若い成功者に憧れ、若者が勉強し起業し成功し豊かな生活を謳歌している。 一方で、昔ながらの老人たちはカネのかからない川沿いの遊歩道でのウォーキングに励む。走る気力はないが、健康ではいたい。そんな老人たちを省みず(家庭内では世代間の様々な問題があるのだが)、豊かな若者はジムで汗を流す。 やはり日本は格差を広げてはいけない。老人が年金をもらいすぎ、氷河期世代の若者が若くなくなり貧しくなっていくというのはなんとしても抑えなければいけない。そして、韓国は経済成長、GDP、グローバル企業とK-POPなどを目指す前に、貧しい高齢者と豊かな若者の、貧富の格差をなんとかしなければいけない。授業でそういうアドバイスもしてみようか。 ここまで考えて、結構歩きすぎたことに気づき、ホテルに戻ることにした。もうすでに結構暑くなってきた。汗もかいている。時間もいつのまにか8時近い。 急いで同じ道を引き返していると、行きと帰りでは同じ道でも印象が違うとはよく言うが、別世界を目の当たりにした。 私のほうへ向かって、つまり私とは逆向きに、多くの若者がiPhone(いやSamsungかもしれない)とイヤホンで音楽を聴きながら、ジョギングをしているのである。 私は呆然とした。 私の1時間半の散歩中の思索による政策提言はすべて無駄だったのである。 無駄であるどころか、大間違いである可能性があったのである。 日曜日の朝、若者たちは土曜日の夜遊びに行かなくてはならず(そういう強迫観念がソウルの若者にはあるらしい)、誰も日曜日の朝は早起きできないのである。8時を過ぎてようやく少しずつ若者が出てきたのであり、時間を追うごとに河川敷の遊歩道は年齢層がどんどん低下してきたのである。 老人だけを私が見たのは、たまたまそういう時間帯だったというだけだったのである。 お前はただの阿呆か、と言われるだろう。 もちろん、阿呆である。 しかし、阿呆なりに学んだのは、これで米国一流経済学者が日本にリフレ政策やMMT、果ては消費税引き上げ延期、財政出動をまじめな顔でえらそうに提案する理由がわかったのである』、小幡氏が自分の思索の誤りを、米国一流経済学者による日本への提案と結び付けたのはさすがだ。
・『アメリカでは間違わない理由  彼らは、お気楽に無邪気に思い付きをしゃべっているだけなのである。しかも、米国経済学者は世界一であるという(正しい面もあるのだが)優越感から、ヴォランティア精神で、親切にアドバイスしているつもりなのである。 そして、そのアドバイスが間違っているのは、日本のごく一部を観察して、自分の価値観に都合よく結びつけて、いいことを思いついたことにうれしくなり、提案しているのである。 そんなことを自国の米国経済に提案しないじゃないか、無責任じゃないか、よその国で実験しやがって、と思うだろうが、彼らは米国でも実験することはやぶさかではないのだが、米国では一応社会、経済の全体像を知っていて、観察機会も多いからデータが多い、ケースも多いので、誤った提案は誤っていることに気づくのである。 自分のよく知らないことに対しては、いわば観光客気分で、親切に無邪気に、サンプル1、ケース1で、いいことを思いつき、気軽に言ってみるのである。 私はもちろんそんな一流経済学者ではないから、無邪気な政策提案を万が一したとしても誰も聞かないので、幸運なのである。 このエッセイで吠えて、読者に間違っていると指摘されるぐらいが関の山なのである』、「自分のよく知らないことに対しては、いわば観光客気分で、親切に無邪気に・・・いいことを思いつき、気軽に言ってみるのであ」、との指摘はその通りだろう。彼らの無責任な発言を、もっともらしく紹介する日経新聞に読ませてやりたい。
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安全保障(その7)(【大前研一のニュース時評】「横田空域」基本合意も 米軍の“占領状態”変わらず…、「反論や批判を待っています」 三浦瑠麗が日本に徴兵制を提案する理由 著者は語る 『21世紀の戦争と平和』(三浦瑠麗 著)、伝わりにくい平和」をどうする――コミュニケーションから考える戦争と平和) [外交]

安全保障については、昨年4月2日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(【大前研一のニュース時評】「横田空域」基本合意も 米軍の“占領状態”変わらず…、「反論や批判を待っています」 三浦瑠麗が日本に徴兵制を提案する理由 著者は語る 『21世紀の戦争と平和』(三浦瑠麗 著)、伝わりにくい平和」をどうする――コミュニケーションから考える戦争と平和)である。たお、タイトルは「新安保法制成立後の情勢」から変更した。

先ずは、2月11日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】「横田空域」基本合意も、米軍の“占領状態”変わらず…」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190211/soc1902110001-n1.html
・『野上浩太郎官房副長官は先月30日、羽田空港の国際線の発着枠を増やす新たな飛行ルートについて、日米の交渉が基本合意に達したと発表した。これにより、羽田への飛来便は在日米軍の横田基地が航空管制を担う「横田空域」を一時的に通過できるようになり、その通過する時間帯は日本側が管制を行う。2020年の東京五輪・パラリンピックを前に運用が始まる。 この問題は、日本にとって長年の懸案だった。横田基地は東京・多摩地域の福生市など5市1町にまたがり、その管制空域は新潟から静岡まで1都8県に及ぶ。米国空軍にとって重要な空域で、日本の民間航空機は入れなかった。 羽田空港から飛び立って北に向かうロシア経由、欧州経由の旅客機、あるいはロシアのほうから戻ってくる旅客機にとって、まさに高い壁になっている。また、羽田や成田空港から西日本に向かう発着便も、1回太平洋上まで出てから大きく急旋回しなければならない。 日本の空の管制権は、敗戦で連合軍が掌握した後、日米地位協定に基づき、米軍の管理下に置かれている。今日に至るまで70年にわたって“占領状態”のままだ。 何とかしなければいけないということで、石原慎太郎氏は1999年に都知事選に立候補した際、横田基地の「管制空域返還」と「軍民共用化」を唱えた。しかし、航空自衛隊の一部司令部が移転するなど「軍軍共用化」は進んだものの、ほかは弾き飛ばされ、その後は言わなくなった。 今回、その一部が通ることができるようになった。どのくらい影響があるかというと、6万回の発着が9万9000回になるという。少なくとも50%以上増えた。横田空域を通るということで、時間も短くなった』、一部の地域で騒音が酷くなるが、発着回数が増え、時間も短くなるのであれば、やむを得ないだろう。
・『ただ、“占領状態”が若干緩んだとはいえ、向こうがコントロールしているという状態は変わらない。日本には在日米軍駐留経費の一部を負担する「思いやり予算」というものがあり、米軍も日本に重要基地を置いたほうが安上がりと考えている。 米空軍が横田なら、海軍は横須賀港だ。ハワイのホノルルに司令部を置く太平洋艦隊の指揮下にあり、西太平洋・インド洋を担当海域とする第7艦隊が前線から帰還する基地になっている。揚陸指揮艦ブルー・リッジも、第7艦隊旗艦として横須賀港を母港にしている。 一方、米国の陸軍は横浜港の瑞穂埠頭(ふとう)にある港湾施設「ノースピア」を持っている。陸軍がいなくなって、ヘッドクオーター(司令部)もなくなってしまったのだが、瑞穂埠頭はまだ返還されていない。 ここは横浜のど真ん中にある。だから、IR(カジノを含む統合型リゾート)を横浜がやりたいのであれば、瑞穂埠頭を使うのが一番いいはずだ。しっかりとした考えの政治家が出てきて、国民の意見を背景に外交力と説得力を駆使して取り返さなくてはならない重要案件だと思う』、「ノースピア」は55ヘクタールもの広大な面積があり、返還後の利用案はまだ構想段階(Wikipedia)。

次に、3月15日付け文春オンラインが掲載した国際政治学者の三浦瑠麗氏へのインタビュー「「反論や批判を待っています」 三浦瑠麗が日本に徴兵制を提案する理由 著者は語る 『21世紀の戦争と平和』(三浦瑠麗 著)」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/10987
・『国内外の政治について発言を続ける三浦瑠麗さんの、6年の歳月をかけた新著が話題だ。戦争と平和、国家のあり方を主題にした本格的な研究書だが、副題に踊る「徴兵制」の一語が刺激的だ。 「以前から、シビリアン・コントロールが強い民主国家ではかえって戦争が容易になってしまうと主張してきました。戦争のコストをリアルに計算する軍部に対して、政治家や国民は正義感やメリットだけを勘定してしまうから、安直に戦争へと突き進む危険性があるということです。先日、韓国海軍から自衛隊の哨戒機が火器レーダー照射を受けた、というニュースがありましたが、世論を見るにつけ、結構危ない局面だったと思うんです。もっとも冷静だったのは、国民でも政治家でもメディアでもなく、自衛隊でした。本当は私たち国民こそが、軍隊を適切にハンドリングしなければいけないのに、いまの日本国民だと容易にその関係が逆転する可能性があります。シビリアン・コントロールというシステムについて、もっと私たちは責任を持たなきゃいけないはずです」 三浦さんの家族には自衛隊関係者がいる。子供の頃から自衛隊が身近な存在だったことは、本書執筆の理由のひとつになった。 「自衛隊の待遇を改善しなければいけないという問題意識はずっとありました。戦後にあっては、一方に軍人への忌避感があり、それが自衛隊の尊厳を損なってきました。他方で自分とは関係ない存在だという無関心、同胞感覚の欠如がある。こういった自衛隊を部外者のように扱う態度はやめて、国民の自衛隊への理解を深めるべきでしょう。自衛隊もがんばってPRに努めていますが、正直、稚拙なのも頭が痛いところです。そもそも、官僚を養成する大学に、政軍関係を教える体制が整っていないことに日本の問題の本質が表れています。軍を知らない政治エリートなんて危なっかしくて仕方ないですよね」』、「戦争のコストをリアルに計算する軍部に対して、政治家や国民は正義感やメリットだけを勘定してしまうから、安直に戦争へと突き進む危険性がある」、というのは一面の真実ではある。ただ、「韓国海軍の火器レーダー照射」問題で「もっとも冷静だったのは・・・自衛隊でした」、といのは確かだが、戦前の日本の軍部は冷静さを失って突っ走ったことをどう評価しているのだろうか。シビリアン・コントロールについても、徴兵制を採ってない欧米主要国ではどうなのか、といった点も知りたいところだ(著書には説明があるのかも知れないが)。
・『市民が当事者意識を持つためにも徴兵制は必要  本書では軍と市民の関係が、歴史をさかのぼって詳述される。市民が軍に対する関心を失ったことで大帝国が潰えてしまう――たとえばローマ帝国の事例はまことに示唆に富む。 「市民が軍は自分たちと同じ国民だという意識を持つには、残念ながらこのままではだめです。いざ戦争を選べば自分も動員されるかもしれないという感覚がないと。そのための徴兵制というアイデアは暴論や極論に聞こえるかも知れませんが、私としては自然な解なんです。市民の当事者意識こそが、なにより平和のために大切だからです。単なる思考実験ではなく、現実的な政策提言のつもりです」 グローバル時代にあって、国家という単位にいかほどの意味があるのか。本書の後半では、様々な国が、国家のありかたを模索する様がレポートされる。 「国民国家というと、なんだか古臭く聞こえますが、リアリズムとしてはいまだ無視できません。たとえば、公共サービスの担い手として世界の富豪、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスに期待できるでしょうか。富の再配分や国土の安定の責任主体として、国家にはまだ実際的な意義があります。安定はタダではありません。そのコストをなるべく多くの国民で負担しようというわけです。でも、誰もが国家に参画せよと全体主義的なことを言いたいわけではありません。良心的兵役拒否のような仕組みは必要です。国家と郷土に対して、保守とリベラルの双方にいろんな意見があるはず。だから、この本にもどんどん反論や批判を寄せてほしい。期待して待っています」』、「市民が当事者意識を持つためにも徴兵制は必要」との主張は、やはり「暴論や極論」としか思えない。「ローマ帝国」滅亡の要因は数あると思うが、「市民が軍に対する関心を失ったこと」だけに焦点を当てたのは我田引水的だ。アメリカでも戦争を鼓舞するのは軍産複合体である。軍隊というのは、一旦、出来ると軍需業界を巻き込んで、凄い政治的なパワーを発揮するものである。ただ、シビリアン・コントロール下で戦争の痛みをどのように周知していくかは、なかなか難しい問題だと思う。

第三に、ジャーナリストの鈴木洋平氏が4月29日付けYahooニュースに寄稿した「伝わりにくい平和」をどうする――コミュニケーションから考える戦争と平和」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/feature/1317
・『「戦争のない時代」として、平成が終わろうとしている。かたや世界に目を向ければ、この30年で戦争が絶えた時期は一度としてなかった。戦争と平和。それらを情報・コミュニケーションの観点から読み解くと、何が見えてくるのか。そんな発想から、これまで戦争に活用されてきたコミュニケーションの技術を平和構築に生かそうとするアプローチがある』、興味深そうだ。
・『「情報・コミュニケーション戦」という“もう一つの戦争”  2017年7月、アフガニスタンの首都カブール。その街中で銃声が鳴り響いた。 「タクシードライバーが、警察が制止するのを無視してそのまま車を飛ばし、警官によって射殺されたんです。私がいた建物の目の前で起きたことです。あとで聞いた話によれば、ドライバーは自爆テロを企てていたそうです。もし警官が彼を射殺しなければ、大惨事になっていたかもしれない」 この事件が発生した当時、アフガニスタン人のモハメド・アリさん(29)は勤務先である少数言語を研究する機関が入っている建物にいた。機関には、米国人の研究者も何人かいたという。そのためにこの建物が狙われていたのかどうかは分からない。ただ、こうしたテロによる危険は「日常茶飯事だった」とアリさんは話す。 アフガニスタンでは、これまでにテロや戦争によって大勢の一般市民の命が失われている。その被害を生んだ攻撃は誰によるものだったのか。その情報をめぐる争いも常にある。 「例えば、米軍に比べて戦力で劣るタリバンは民家に侵入し、米軍が攻撃することを躊躇させます。民家からタリバンが攻撃を仕掛けることもあり、米軍に銃撃し返されれば、『米軍の銃撃によって多くの国民が被害を受けた』とSNSで拡散して、民衆の支持を得ようとする。そうして、その後の自分たちの攻撃を正当化しつつ、米軍がアフガニスタンに介入することに正義がないと民衆に印象づけようとしていました」 攻撃の正当性を主張していけば、その攻撃を仕掛けた側が支持を得ていくことにつながる。戦争当事者の間には、物理的な戦闘行為だけではなく、情報・コミュニケーション戦が存在している。そんな“もう一つの戦争”によって喚起された国際世論が、実際の戦局を左右するケースもある』、ベトナム戦争での米軍撤退は代表例だろう。
・『「銃弾よりも大きな力を持つ」  「戦争における情報戦は、国際的には銃弾よりも大きな力を持つようになっている」――。 そう語るのは、現在NHKグローバルメディアサービスでプロデューサーを務める高木徹さん(53)だ。高木さんは著書『ドキュメント 戦争広告代理店 〜情報操作とボスニア紛争〜』で、旧ユーゴスラビア解体に伴う紛争において情報戦が与えた影響を詳(つまび)らかにした。 1992年、多民族国家ボスニア・ヘルツェゴビナの独立を機に紛争が勃発。ボシュニャク人(ムスリム)、セルビア人、クロアチア人らの民族間で3年半以上にわたって戦闘が繰り広げられ、20万人が犠牲になったとされている。凄惨な虐殺の実態などが報じられると国際社会の批判が高まり、米国の主導で95年に和平合意が締結され、内戦は終結。ボスニアはセルビア人主体の「スルプスカ共和国」と、ボシュニャク人とクロアチア人主体の「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」の二つの体制が併存する形になった。 紛争の当初はセルビア人勢力が軍事的に圧倒していた。ところが、ボスニア政府がルーダー・フィンという情報戦略のプロフェッショナルであるPR会社を起用したことで戦況は一変する。 「(ボスニア政府の依頼を受けた)PR会社は、セルビア人がボシュニャク人を迫害していると、『民族浄化』のキャッチコピーとともに世に訴えた。そうして被害者としてのボスニアのイメージをつくりあげていったんです」 「国際社会で何をどのように問題とするか。つまり、アジェンダセッティングです。ボスニア紛争では、情報戦という“PR戦争”が国際世論の形成に大きな影響を与えた。『泣かない赤ちゃんはミルクをもらえない』ということわざがボスニアにありますが、このとき、ボスニアはまさに泣くことで国際世論を味方につけたんです」 一方的な悪役に仕立てあげられたセルビア側もPR会社との契約を画策し、情報戦による反撃を試みたという。だが、すでに国際的に定着したイメージを覆すことはできなかった。情報戦だけが戦局を決定づけたわけではないが、国際世論がボスニア側に傾いたことが、旧ユーゴスラビアへの経済制裁や国連追放、NATO(北大西洋条約機構)軍によるセルビア人勢力空爆につながっていった』、「ボスニア紛争」での『民族浄化』は、PR会社が練り上げたキャッチコピーだったとは。それを伝えたマスコミにも責任がありそうだ。
・『「情報戦の影響を抜きに、現代の戦争は語れない」と高木さんは話す。近年その動向は顕著になっているという。 IS(イスラム国)やアルカイダといった過激派のテロ組織は、自前のメディアを立ち上げ、「グローバル・ジハード」という思想を世界中に流布している。「対テロ戦争」を掲げる米国はじめ主要国も、自国が加担する戦争の正当性を主張することに余念がない。 「SNSが浸透していくにつれて、情報戦が戦争に与える影響はますます強まっています。憎悪の共感は、SNSを通じてより簡単に広がっていく。戦争におけるメッセージはこれまで以上に伝わりやすくなっているといえます」』、確かに、欧州からISに応募した多数の人間は、こうしたSNS戦略の影響を強く受けたのだろう。
・『伝わりやすい戦争と、伝わりにくい平和  そもそもなぜ、戦争において情報・コミュニケーションが活用されるのか。 数々の戦争や紛争の現場を渡り歩き、紛争処理や武装解除に当たってきた伊勢﨑賢治さん(61)は「戦争はプロパガンダによって起こるもの」と語る。 「多くの戦争が民主主義体制の下で、正当な手続きを経て選択された結果として起こっています。ヒトラーでさえ、ナチス・ドイツの素晴らしさを国民にアピールし、選挙によって民主的に選ばれた。その後の戦争も国民が支持したものです」 政権を掌握したナチス・ドイツは、大統領緊急令の連発などで反対勢力を抑え込み、言論を封鎖して権力を強化していった。その過程で人々の戦意を高揚させ、戦争への支持を得る。そうした情報・コミュニケーションは、国民を戦争へと駆り立てるプロパガンダとして活用されてきた。 「つまり、戦争はつくられるものなんです」と話す伊勢﨑さんは現在、東京外国語大学大学院 総合国際学研究科 世界言語社会専攻 Peace and Conflict Studies コース(以下 PCS)で教鞭を執る。 前出のアフガニスタン人のアリさんも、PCSに籍を置く留学生だ。アリさんのような紛争当事国出身者を主な受講対象とするPCSからは、2004年の開講以来、実務家として活躍する人材が100人以上輩出してきた。 自身も実務家である伊勢﨑さんが教えるのは、どのように紛争が起こり、国際社会はどんな関わり方をしたのか、それがどういった結果をもたらしたのかということ。平和よりも戦争や紛争に焦点を当てている。 「平和というのは、やはりアンチテーゼでしかないと思うんです。戦争を語らずして平和は語れない。たいていの戦争は平和を守るため、少なくとも、それを口実に始められることが圧倒的に多いですから」 その口実がプロパガンダであり、それによって多くの人が戦争に駆り立てられていくことを伊勢﨑さんは「戦争は“セクシー”だから」と表現する。 「大義のために戦うとか、命を懸けて戦うことは格好良いじゃないですか。暴力というのも人を惹きつけてしまう魅力がある。僕が武装解除などで関わったシエラレオネの紛争では、反政府組織が若者を動員するために、ファッション感覚で戦うことのイメージをつくりあげていました」 戦争の持つ“セクシーさ”は過去、情報・コミュニケーションのあらゆる技法を駆使して伝達され、プロパガンダの主軸を担ってきた。 では、こうしたコミュニケーションの技術を「戦争」ではなく、「平和構築」に生かすことはできないのか――。 戦争や紛争に直接携わるうち、そんな思いを抱いた伊勢﨑さんは、10年ほど前に伊藤剛さん(43)にカリキュラム開発を依頼し、コース内に「ピース・コミュニケーション」という授業を立ち上げた。伊藤さんは、平和学者や戦場ジャーナリストではない。企業や行政、NPOなどの課題をコミュニケーションデザインによって解決するクリエイターだ。 ピース・コミュニケーションのカリキュラムは、メディア構造やプロパガンダ史、そして平和教育まで、あらゆるトピックをコミュニケーションの観点からひもとく内容で構成されている。 実際の授業も担当する伊藤さんは、戦争と平和について「コミュニケーションの観点からすると、戦争は伝わりやすく、平和は伝わりにくい」と話す。 「例えば、“War(戦争)”と“Peace(平和)”を検索エンジンで画像検索してみると、戦争には絵になるものがあり、具体的なイメージが出てきます。一方の平和には絵になるものがない。つまり抽象的な概念なんです。それが何を意味するのかといえば、コミュニケーションとして伝わりにくいということです」 戦争は目に見える形として存在するからこそ、恐怖のイメージを訴求しやすい。その「伝わりやすさ」が、情報戦に活用されてきた理由でもある』、「たいていの戦争は平和を守るため、少なくとも、それを口実に始められることが圧倒的に多いですから」 その口実がプロパガンダであり、それによって多くの人が戦争に駆り立てられていくことを伊勢﨑さんは「戦争は“セクシー”だから」と表現する」、「「コミュニケーションの観点からすると、戦争は伝わりやすく、平和は伝わりにくい」、などというのはその通りなのだろう。
・『「伝わりにくい平和」をどう伝えるか  伊藤さんが続ける。 「ピース・コミュニケーションの出発点になったのは、平和構築においてコミュニケーションを生かす視点があまりに欠けていたことです。多くの人が正しいことは伝わると思っている。ただコミュニケーションの観点からいえば、正しいか否かは伝わる理由にはならないんです」 伊藤さんがつくるカリキュラムでは、実際の戦争や紛争を通じて、双方が求める「正しさ」が伝わらない理由を考え、議論することを取り入れている。 授業を受けたアフガニスタン人のアリさんは、捕鯨をめぐるNHKの番組『鯨の町に生きる』を取り上げた授業の場面を回想する。 和歌山県太地町は、伝統的な捕鯨やイルカ漁で知られる。しかし近年、捕鯨に反対する海洋環境保護団体などが激しい抗議運動を展開し、町は捕鯨をめぐる国際紛争の舞台と化している。 授業では、捕鯨反対の目線で描かれた映画『ザ・コーヴ』と、伝統としての捕鯨を行う漁師やその家族らの葛藤に迫ったNHKの番組を視聴する。真逆の立場を理解し、双方が求める平和とは何かを考えさせるのが狙いだ。 一方は、捕鯨は悪だとして何とかやめさせようとし、もう一方は、捕鯨を伝統と文化と捉えて納得してもらおうとする。授業を通じ、アリさんは自らの体験と通ずることを感じたという。 「自分たちが正義だと思っていることが、相手の視点に立ってみると違うものに映るんだと痛感したんです。でも、それがぶつかり合ってしまう。自分が体験した戦争にも当てはまるのかもしれないと思いました」 平和を伝える上では、コミュニケーションの原理を理解することが欠かせないと伊藤さんは話す。情報伝達というコミュニケーションでは、常に情報の受け手側が主導権を握っている。一方にとっての正しさは「伝わる」理由にならず、むしろ争いを助長することにもなりかねない。だから授業の根底にあるのは、「相手の前提に立つ」という視点を導入することなのだという。 「『伝えている』のに『伝わっていない』ことの代表格がまさに平和であり、その伝わらない理由を考えるためには、敵対する相手の視点から眺めてみるしかない。正しさではなく、その前提を擦り合わせることがコミュニケーションなんです」 アリさんと同じく授業を受けたファフーム・ディマさん(25)は、イスラエル国籍のアラブ人というルーツを持つ。住んでいた街が砲撃を受けるなど、「戦争」を体験しているディマさんにとって、コミュニケーションの観点から戦争を考えることは「とても実用的な考え方だと感じた」と話す。 ディマさんは、ヘブライ語とアラビア語を理解できる。二つの言語で書かれたメディアを読み比べると、同じ出来事でもトーンがかなり違うことに気付いたという。 「ユダヤ人とアラブ人は、同じ地域に住んでいてもお互いのことをほとんど知らず、メディアや周囲の人から聞いた情報しか持ち合わせていません。私が経験したイスラエル・パレスチナの紛争も、コミュニケーションが紛争を長引かせる要因になっているんです」 ディマさんはこうも言う。「授業を通じて、平和はとても主観的で、表現するのは難しいことだと学びました。クラスのみんなが思い描く平和も人によってバラバラでしたから」 「伝わりにくい平和」をどう伝えるか――。 それは、紛争当事国だけでなく、戦後74年が経ち、「戦争のない時代」として、平成が終わろうとしている日本に向けられた問いでもある、と伊藤さんは言う。 「平和を伝えるアプローチは、戦争被害者の語りに大きく依存しているのが現状です。戦争の悲惨さを伝える場所を訪れて、戦争被害者に話を聞く。そうしたコミュニケーションがこの先数十年で成立しなくなり、今後どのようにして平和を伝えていくべきかということも問われていると思います」 伊藤さんは、日本におけるピース・コミュニケーションとして、新たな平和教育のコンテンツをつくることにも取り組んでいくという。 「『戦争はダメだ』『平和は大事だ』と説く教育アプローチはあっていいし、大切なことだとも思います。戦争と平和という選択肢があれば、多くの人が平和を選ぶ。にもかかわらず、世の中から戦争はなくなっていない。だからこそ、どのように戦争が起こるのかを学ぶことも必要なんです」「これから何をどう語り継いでいくか。戦争におけるコミュニケーションからヒントを探り、どのようにして平和に活用できるかを模索していきたいと思っています」』、「戦争の悲惨さを伝える場所を訪れて、戦争被害者に話を聞く。そうしたコミュニケーションがこの先数十年で成立しなくなり、今後どのようにして平和を伝えていくべきかということも問われていると思います」、というのは重要な指摘だ。「これから何をどう語り継いでいくか。戦争におけるコミュニケーションからヒントを探り、どのようにして平和に活用できるかを模索していきたいと思っています」、などの伊藤氏や伊勢崎氏の努力に大いに期待したい。
タグ:安全保障 yahooニュース ZAKZAK 軍産複合体 高木徹 鈴木洋平 三浦瑠麗 文春オンライン (その7)(【大前研一のニュース時評】「横田空域」基本合意も 米軍の“占領状態”変わらず…、「反論や批判を待っています」 三浦瑠麗が日本に徴兵制を提案する理由 著者は語る 『21世紀の戦争と平和』(三浦瑠麗 著)、伝わりにくい平和」をどうする――コミュニケーションから考える戦争と平和) 「【大前研一のニュース時評】「横田空域」基本合意も、米軍の“占領状態”変わらず…」 羽田空港の国際線の発着枠を増やす新たな飛行ルートについて、日米の交渉が基本合意 「横田空域」 6万回の発着が9万9000回になるという。少なくとも50%以上増えた。横田空域を通るということで、時間も短くなった 向こうがコントロールしているという状態は変わらない 米国の陸軍は横浜港の瑞穂埠頭(ふとう)にある港湾施設「ノースピア」を持っている。陸軍がいなくなって、ヘッドクオーター(司令部)もなくなってしまったのだが、瑞穂埠頭はまだ返還されていない 「「反論や批判を待っています」 三浦瑠麗が日本に徴兵制を提案する理由 著者は語る 『21世紀の戦争と平和』(三浦瑠麗 著)」 戦争のコストをリアルに計算する軍部に対して、政治家や国民は正義感やメリットだけを勘定してしまうから、安直に戦争へと突き進む危険性がある 韓国海軍から自衛隊の哨戒機が火器レーダー照射を受けた もっとも冷静だったのは、国民でも政治家でもメディアでもなく、自衛隊 シビリアン・コントロールというシステムについて、もっと私たちは責任を持たなきゃいけないはずです 戦前の日本の軍部 市民が当事者意識を持つためにも徴兵制は必要 市民が軍に対する関心を失ったことで大帝国が潰えてしまう――たとえばローマ帝国の事例 「伝わりにくい平和」をどうする――コミュニケーションから考える戦争と平和」 「情報・コミュニケーション戦」という“もう一つの戦争” “もう一つの戦争”によって喚起された国際世論が、実際の戦局を左右するケースもある 「銃弾よりも大きな力を持つ」 『ドキュメント 戦争広告代理店 〜情報操作とボスニア紛争〜』 ボスニア政府がルーダー・フィンという情報戦略のプロフェッショナルであるPR会社を起用したことで戦況は一変 『民族浄化』のキャッチコピーとともに世に訴えた。そうして被害者としてのボスニアのイメージをつくりあげていったんです ボスニア紛争では、情報戦という“PR戦争”が国際世論の形成に大きな影響を与えた IS(イスラム国)やアルカイダといった過激派のテロ組織は、自前のメディアを立ち上げ、「グローバル・ジハード」という思想を世界中に流布 憎悪の共感は、SNSを通じてより簡単に広がっていく 伝わりやすい戦争と、伝わりにくい平和 多くの戦争が民主主義体制の下で、正当な手続きを経て選択された結果として起こっています。ヒトラーでさえ、ナチス・ドイツの素晴らしさを国民にアピールし、選挙によって民主的に選ばれた。その後の戦争も国民が支持したものです 情報・コミュニケーションは、国民を戦争へと駆り立てるプロパガンダとして活用 伊勢﨑 たいていの戦争は平和を守るため、少なくとも、それを口実に始められることが圧倒的に多い その口実がプロパガンダであり、それによって多くの人が戦争に駆り立てられていくことを伊勢﨑さんは「戦争は“セクシー”だから」と表現する 大義のために戦うとか、命を懸けて戦うことは格好良いじゃないですか。暴力というのも人を惹きつけてしまう魅力がある 「ピース・コミュニケーション」という授業 コミュニケーションの観点からすると、戦争は伝わりやすく、平和は伝わりにくい 「伝わりにくい平和」をどう伝えるか 伊藤さんがつくるカリキュラムでは、実際の戦争や紛争を通じて、双方が求める「正しさ」が伝わらない理由を考え、議論することを取り入れている 情報伝達というコミュニケーションでは、常に情報の受け手側が主導権を握っている。一方にとっての正しさは「伝わる」理由にならず、むしろ争いを助長することにもなりかねない。だから授業の根底にあるのは、「相手の前提に立つ」という視点を導入すること 戦争の悲惨さを伝える場所を訪れて、戦争被害者に話を聞く。そうしたコミュニケーションがこの先数十年で成立しなくなり、今後どのようにして平和を伝えていくべきかということも問われていると思います
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相次ぐ警察の重大ミス(その6)(警察官「無能が出世することはない」独自の掟 彼らの世界に「理由なき昇進」はあり得ない【平成の事件】警官「シャブ抜き」で事件隠蔽 主犯は本部長 神奈川県警不祥事対応で異例人事、京都で相次いだ警察官の重大不祥事 大阪に次ぎ「2つの府警」の堕落) [社会]

相次ぐ警察の重大ミスについては、昨年10月8日に取り上げた。久しぶりの今日は、(その6)(警察官「無能が出世することはない」独自の掟 彼らの世界に「理由なき昇進」はあり得ない【平成の事件】警官「シャブ抜き」で事件隠蔽 主犯は本部長 神奈川県警不祥事対応で異例人事、京都で相次いだ警察官の重大不祥事 大阪に次ぎ「2つの府警」の堕落)である。

先ずは、第62代警視庁捜査第一課長の久保 正行氏が5月28日付け東洋経済オンラインに寄稿した「警察官「無能が出世することはない」独自の掟 彼らの世界に「理由なき昇進」はあり得ない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/280209
・『市民の日常生活を守る「警察官」。彼らの世界では、一般企業と違い、「能力のない人間」が出世することはまずありえない。「警察官の出世事情」について、新書『警察官という生き方』著者であり、第62代警視庁捜査第一課長として数々の事件を解決してきた久保正行氏が解説する。 警察官になるためには、まず各都道府県警察本部の採用試験を受けなければなりません。1次試験は筆記で、通ると2次試験は体力検査と面接を受けることになります。 高卒と短大卒、大卒で試験の種類が違い、初任給も異なります。警視庁の場合、高卒の初任給は21万円程度で、大卒の初任給は25万円程度となっています。ただし、入庁後は、勤続年数と階級に応じて給料が上がりますので、必ずしも大卒のほうが給与の面で有利というわけではありません。 警察本部の採用試験に受かったら、高卒の場合は10カ月、大卒の場合は6カ月の間、全寮制である警察学校の初任科で基礎を学び、卒業後、各警察署に配置されることになります。ちなみにこの期間も、給与は支払われます』、この他に、いわゆるキャリアのための国家公務員総合職試験がある。
・『「交番業務」が警察官を鍛える  いくつかの研修を経たのち、ほとんどの警察官はまず交番勤務を経験します。交番の警察官は、地域で事件が発生したら真っ先に駆けつけ、さまざまな種類の犯罪と向き合い、対応を覚えていくことになるので、警察官の業務のエッセンスが凝縮されているわけです。 その後は、警察署内の部署に配置されることもあれば、警察署で経験を積み、本部へと異動になることもあるでしょう。努力と実績次第で、いくつもの警察官としての道が開けていきます。 自分の能力を生かすというところでは、警察官の中には剣道や柔道などの武道に秀でた者が多く、有段者も数多くいます。実際に、警察官になると現行犯を取り押さえたり、攻撃的な人に対処したりする機会がありますから、こうした心得があると大きな武器になります。そうした目的で、警察学校ではランニングなどの基礎体力づくりだけでなく、剣道や柔道の訓練も課されます。 警察には、一般企業のサラリーマンではまず関わらない特殊な場所もあります。 例えば「留置場」は、逮捕した被疑者を一時的に勾留する場所で、その間に取り調べなどを行います。一般的には、「留置人が足を伸ばして寝られる広さ」×「人数分」ほどのスペースがあり、鉄格子が張られていて、食事窓がついています。留置人は番号で呼ばれます。「俺のときは名前で呼ばれた」と言う方がいたら、かなり古い時代ですね。留置場は警察署などに設置されています。 警察は自前で「道場」も持っていて、警察学校はもちろんのこと、各警察署や警察本部にもあります。ここには朝、昼、夜の顔があります。朝は警察官が、自主的に通常7時ごろから柔剣道の自主練習を行います。 「自分の身体を守れない者は、他人を救護できない」「今日より若い日はない」という心構えで練習をします。昼は、小中学生に向けた少年柔剣道の練習です。この練習には指定された警察官も指導者として参加します。夜は、捜査本部員の寝どころとなることがあります。 「霊安室」は、あまりなじみがないでしょうが、ここでは数々の悲劇的ドラマがあります。多いのが、事件・事故に巻き込まれた方や行方不明者にまつわるものです。朝、元気な姿で出勤したご主人と、夕方には霊安室の棺の中で会う、ということが現実にあるのです。お子さんが一緒の場合、警察官といえども深い悲しみを負います。涙をこらえて検視を終え、棺をそのままに帰宅することもあります』、着任間もないような「交番の警察官」は、道を聞いても、ロクに答えられないのは、やむを得ない面があるにせよ、利用者にとっては困ることだ。また、「ランニングなどの基礎体力づくり」とあるが、現実には犯人に逃げられてしまう失態も数多い。英国人女性殺害事件でも、かなり多数で逮捕しようとしたが、取り逃がしたのも記憶に新しい。基礎体力づくりでは消防署員の方がはるかに訓練が行き届いている。
・『徹底した「階級組織」  警察は階級に基づいて組織されています。その意味では、上下関係がはっきりしています。堅苦しいかもしれませんが、巨大な組織を束ねて治安の維持に取り組むには、規律が必要なことは確かです。 階級は警察官の日常にも深く浸透します。例えば、警察官のあいさつは敬礼です。基本的には、下位の者がまず敬礼し、次いで上位の者が答礼します。社会や組織の中でのコミュニケーション不足が叫ばれて久しい昨今ですが、その点、警察官は迷うことなく敬礼でコミュニケーションを取ることができます。何か声をかけ合うわけではありませんが、まず一方が敬意を示し、もう一方がそれに応えるわけです。 階級はキャリアを除いて誰もが巡査からスタートし、昇任試験をパスすることで上にいくことができます。また、階級と連動して役職も上がっていきます。役職は、民間企業と同じで、主任、係長、課長、部長などと上がっていきます。上の役職になるほど、多くの部下を抱えることになります。つまり、出世が昇任試験という形で制度化されているわけです。 ですから、「理由はよくわからないが、なぜかあいつは昇進した」とか、「誰よりも頑張ったはずなのに、昇進できなかった」ということが、警察では起こりにくいのです。こうした面では、警察より公平な組織はないと思います。 では、階級について詳しく見ていきましょう。警察には9つの階級があります。下から、巡査、巡査部長、警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、警視総監です。警部までは昇任試験で上がることができ、それ以上になると、実務経験などをもとに選考されることになります。なお、警視庁に入庁する警察官は地方公務員ですが、警視正になると自動的に国家公務員の身分になります。また、警視監および警視総監は、キャリアの警察官のみがなることのできる階級になっています。 順を追って見ていきましょう。巡査はいわゆる「ヒラ」ですが、巡査部長になると、警察署では主任の役職がつき、部下も持つことになります。警部補になると警察署では係長の役職がつき、現場の責任者として、部下を指導していきます』、ただ、下の記事にあるように、上の地位にある者の不祥事が、発覚し難いというマイナス面もあるようだ。
・『「警部」のハードルは高い  警察はピラミッド型の組織ですから、警察官のほとんどは、巡査、巡査部長、警部補によって占められています。実際、警部補までは努力でなることができますが、警部になろうとすると、高いハードルが待ち受けています。全国の警察官の約90パーセントが警部補までの階級であるのに対し、警部は全警察官のうち、7パーセント程度しかなれないのです。ですから、この関門を突破するには、法学と実務を真剣に勉強し、さらに仕事で実績を上げなければなりません。 ハードルを乗り越え、警部になると、警察署では課長、警察本部では課長補佐、警視庁では係長などになり、本格的に部下を統率する立場になっていきます。加えて、警部になって初めて、裁判所に逮捕状を請求できるようになります。 警視になると、警察署では署長や副署長などを任される立場になり、本部でも課長や管理官として、組織をとりまとめ、捜査を指揮するようになります。警視正になると、本部の参事官や方面本部長など、さらに大きな組織を束ねるようになるのです。 階級が上がれば役職が上がるだけでなく、部下も多くなり、発言力が高まって、給料も上がります。階級に特殊な名称を使うので、複雑に見えますが、実はとてもシンプルなシステムなのです。たとえ学校で勉強ができなくても、警察に入ればみなゼロからのスタートです。これは警察官の大きな魅力のひとつだと私は思います。 それは男性に限った話ではありません。女性も同様です。女性警察官の数は増え続けており、現在は2万5000人近くいます。警視庁や各県警では警察官の10パーセントが女性になるように採用枠を拡大していて、管理職における女性比率も増しています。キャリアのうえでの性差はありませんが、女性が被害者になりやすい性犯罪や、子どもや老人に関わる犯罪に対しては、とくに女性警察官の活躍が目立ちます。 私は、多くの優秀な女性の警察官と仕事をしてきましたし、実際に今、女性が統率する捜査チームも増えています。ノンキャリアで警察署長になった女性警察官もいます。私が経験した捜査第一課長も、歴代ずっと男性が務めてきましたが、ここ最近の女性の活躍ぶりを見ると、女性の一課長が誕生する日もそう遠くはないでしょう。 もちろん、上にいくことだけが警察官の魅力ではありません。ずっと現場にとどまり、部下を持たずのびのびとやりたい、という人は、昇任試験を辞退すればいいわけです。その自由もまた認められています。どのようなキャリアを歩むかは、それぞれの「生き方」に委ねられているのです。 警視庁の警察官は地方公務員ですから、基本的には数年ごとに異動を繰り返します。例えば、私は警視庁本部の捜査第一課にいるときに昇任し、所轄の警察署で経験を積みました。また、上の階級になると、さまざまな役職が回ってくることも多く、私は王子警察署の副署長になったあと、半年で本部に戻り、鑑識課の理事官というポストに就いたこともあります』、なるほど。
・『現場にいる警察官ほど出世しづらい  ちなみに、より早く上にいくのは、総務部や警務部の警察官です。 とくに企画課や人事課には、若くして昇任した警察官が配属されることが多く、基本的にデスクワークで、試験勉強の時間も確保しやすいため、昇任が早いのです。 現場に出て捜査を行う警察官は、仕事の合間をぬって昇任試験に向けた勉強をする必要があります。私の場合は、休日は図書館に行って勉強をし、平日は家に帰っても布団に入らず、玄関先で寝ていました。しばらく横になっていると寒くて目覚めるので、そこから試験勉強を始められるというわけです。業務とは別に勉強するのは大変ですが、そこを突破すれば誰でも昇任することができます。 ただし、いちばん上の階級や役職までいけるかどうかは、30代で決まります。具体的には、32~33歳で警部になっていないと、いちばん上までは行けません』、早目に決まってしまうということは、昇進を諦めて意欲を失ってしまう人間も多いということになる。

次に、4月23日付けYahooニュースが神奈川新聞記事を転載した「【平成の事件】警官「シャブ抜き」で事件隠蔽、主犯は本部長 神奈川県警不祥事対応で異例人事」を紹介しよう。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190423-00010001-kanag-soci&p=1
・『一連の神奈川県警不祥事の中でも、覚醒剤隠蔽事件は突出した事案だった。主犯はキャリアの本部長。本来は職員の不正に目を光らせる監察などの計数十人が関与し、警官の覚醒剤使用を握りつぶしていた。県警は、警察としての存在自体が問われる事態への対処が迫られたが、前段で発覚した別の不祥事対応の引責でトップが辞任を表明、ナンバー2も更迭の流れとなり、機能不全に陥っていた。警察組織の危機に直面した警察庁は、異例の人事を断行。重大行事を控える北陸の地から急遽、一人の警察官僚を呼び寄せた』、「主犯はキャリアの本部長」とは、前代未聞の不祥事だ。
・『神奈川県警を再建せよ、突然の辞令  1999年10月5日。富山県警本部長の金高雅仁に、警察庁官房長の石川重明から電話が入った。用件は神奈川県警への異動内示で、ポストは人事や監察などを統括するナンバー2の警務部長。「大変な事態になっているので、処理を頼む」。相次いで発覚した不祥事への対応を誤り、本部長の辞任と警務部長の更迭が決まっていた神奈川県警の混乱収拾と再建を託されたのだった。 警視庁捜査2課長時代の96年には厚生省の事務次官を逮捕した汚職事件を手掛け、98年から富山に赴任。翌年には国体の開催を控えており、しばらくは富山にいるものと思っていた。しかも、通常は遅くとも発令1週間ほど前にある内示が、この時は2日前。急な異動であいさつもままならず、出張中だった県知事の中沖豊とも面会できなかった。出張先に電話をして異動を伝えた金高に、中沖は「何なんですか、その人事は」と驚きを口にした。 7日、警察庁での辞令交付後、金高は長官室に呼ばれる。二人きりになった場で長官の関口祐弘は「『覚醒剤の事案』が事件になるのであれば、相手が誰であろうと事実に即してきちんと処理するように。しっかりと処理をしないと、神奈川県警は大変なことになる。まずは、これがメインの仕事だ」。半月前に報道で発覚した警官の覚醒剤使用疑惑を巡る不祥事対応への指示だった。 2年10カ月前、96年12月13日未明。幻覚状態となった警備部外事課の警部補が交際相手の女と県警本部に現れ、覚醒剤を使用したと同僚に供述。腕には注射痕もあった。が、事件化はされず、警部補は不倫を理由に諭旨免職となっていた。この問題は全く表面化せず闇に葬られていたが、99年9月に発覚した県警不祥事の報道が過熱する中、覚醒剤使用疑惑として同月下旬に浮上。 報道を受けて当時の記録を確認した監察官室長の大木宏之は「自信を持って申し上げるに至らない、いくつかの疑問が出てきた。しっくりいかない部分、不明瞭な点がある」。当時の処分や捜査が適正であったかを調査するための特別チームを編成し、実態解明に乗り出す方針を示していた』、警察組織は閉鎖的だけに、不祥事のもみ消しはお手のものだろう。
・『「シャブ抜き」の証拠が現存  辞令交付の時点では、神奈川県警も警察庁も「組織的な隠蔽(いんぺい)事案」との認識はあったものの、事件の構図は判然としていなかった。神奈川県警に赴任した金高に、大木は「一番の問題は、誰の命令で動いたかということです」。前任の警務部長の中林英二は「科捜研に、ある程度記録が残っている。その記録を見てくれ」と引き継いだ。 神奈川県警科学捜査研究所。県警本部から数百メートル離れた横浜・中華街の一角にあり、DNA型鑑定、ポリグラフ、火災原因究明、さらには薬物の分析などを担う。その科捜研に、不自然な尿検査のデータが現存していた。覚醒剤の検出を示す陽性反応が出ている「氏名不詳」の検査結果。警部補を横浜市内のホテルに軟禁して連日尿検査を繰り返すなど「シャブ抜き」をし、陰性反応に転じた段階で形ばかりの「正式な捜査」を行った隠蔽工作の証拠の一部だった。 調査チームの報告などから、着任1週間程度で当時の本部長・渡辺泉郎の指示が発端だということが見えた金高は、警察大学校長を最後に99年2月に退官し、民間企業の顧問に転じていた渡辺の職場に出向いて面会。本当に渡辺の指示があったのか確認するためで、この疑惑を巡って捜査当局が渡辺と初めて接触した局面だった。やりとりの後、金高は「これから徹底的に調査をしますので、事実を言ってください」と告げ、別れた。 県警に戻った金高は調査チームの幹部に、渡辺との会話の内容や反応を伝達。もみ消しに関与した全員からの聴取が終了した10月下旬、捜査への移行を本部長の村上徳光に具申し、了解を得た。 11月4日、県警は96年に諭旨免職になった元外事課警部補と交際相手の女を覚醒剤使用の疑いで逮捕。14日には、警部補の覚醒剤使用事件を握りつぶした犯人隠避の疑いで、渡辺をはじめ、当時の警務部長、生活安全部長、監察官室長、担当監察官ら9人を書類送検した。担当監察官ら4人は、警部補の自供に基づいて発見した覚醒剤とみられる粉末などを廃棄したとして、証拠隠滅の容疑でも書類送検された。渡辺ら5人は起訴され、全員が有罪となった』、「警部補を横浜市内のホテルに軟禁して連日尿検査を繰り返すなど「シャブ抜き」をし、陰性反応に転じた段階で形ばかりの「正式な捜査」を行った隠蔽工作の証拠の一部だった」、とはここまで徹底した「隠蔽工作」をするものかと呆れてしまった。
・『本部長の命令とは  有罪となった当時の幹部らは公判などで、事件をもみ消す渡辺の方針が不本意であったと口々に語ったが、当時は誰一人、いさめることはなかった。「40年間の勤務で、上司の命令・指示に服従する習性が身についており、正しい判断ができない状態になっていた」「組織の一員として逆らえなかった。勇気と決断がなかった。部下の人事や(自身の)部門の組織への影響を危惧した」などと悔やんだ。 金高は捜査の過程で、神奈川県警で事件に関与した主要な人物に会った。直接相対し、当時や現在の心境などを尋ねた。「皆さん、やってしまったことは大変なことなので後悔していたが、上からの命令だったので、非常に複雑な胸中だったと感じた。自分が動かなければ、こんなことにはならなかった、自分は組織の中で本当はどうすべきだったのかなどと、非常に複雑な思いを持っていた」 未曽有の組織犯罪摘発から20年。県警不祥事への対応に奔走した後、警察組織の中枢を歩み、警察庁長官も務めた金高は今、あの事件をどう振り返るのか。 「1人の一言で数十人が動く完全な組織犯罪だった。それだけ本部長の判断、命令は重い。絶対に正しくなくてはならないと痛切に感じたが、本部長を支える部長クラスが何で声を上げないのかと思った。でも、本部長の命令というのは、重いんですよ。本部長命令には、命懸けの命令もある。そういう人は、絶対に違法なことを命じてはいかんのです」』、金高氏はその後、「警察庁長官も務めた」とはエリート中のエリートだったのだろう。彼も認めるように、やはり「本部長の命令」は重いようだ。ただ、そうであれば、有効な再発防止策など期待すべくもないようだ。

第三に、事件ジャーナリストの戸田一法氏が7月10日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「京都で相次いだ警察官の重大不祥事、大阪に次ぎ「2つの府警」の堕落」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/208234
・『京都府警で重大な不祥事が相次いで発覚し、揺れに揺れている。5日、山科署の巡査長が特殊詐欺被害の緊急通報を悪用して、高齢男性から約1100万円を詐取したとして詐欺罪で起訴され、本部長が記者会見で謝罪する事態に発展した。また同日、警察学校初任科生の巡査が自宅に大麻を隠し持っていたとして、大麻取締法尾違反(所持)の疑いで逮捕された。巡査は柔道の世界ジュニア選手権優勝者で、柔道の指導教官として将来を嘱望されていた。一方で昨年8月、大阪府警富田林署から容疑者が逃走し、本部長が謝罪した事件をご記憶と思う。一般の方はご存じないと思うが、実は警察本部長の謝罪というのは極めて異例のことだ。2つの「府警」にとって夏は受難の季節なのだろうか』、「柔道の世界ジュニア選手権優勝者で、柔道の指導教官として将来を嘱望されていた」「巡査が自宅に大麻を隠し持っていた」が「逮捕された」、とは情けない限りだ。薬物の魅力の恐ろしさを垣間見た気がする。
・『警察本部長の謝罪の重み  最近は警察官の不祥事が珍しくなくなり、ニュースで報じられても驚かなくなってしまったが、通常は警察署であれば副署長、本部であれば監察官(警察内部の不祥事などを調査する部署・役職)が「再発防止に努める」「指導、教養を徹底したい」などのコメントを出すぐらいだ。 かなり深刻・重大な事案で全国ニュースになるレベルの不祥事であったとしても、通常は警務部長(警察本部のナンバー2)が記者会見で釈明するのが普通で、本部長が記者会見を開いて謝罪するというのは、実は年に1度あるかないかだ。 昨年4月、滋賀県彦根市の交番で19歳の巡査が上司の巡査部長を射殺し逃走した事件でも、巡査逮捕の記者会見では警務部長が謝罪しただけだった。数日後の定例記者会見では、鎌田徹郎本部長が「極めて遺憾」と謝罪したものの、県警は徹底して撮影を認めなかった。 2017年5月に特殊詐欺事件の証拠品として保管していた現金8572万円が、広島県警広島中央署会計課の金庫から盗まれたのが発覚し、そして、関与したとみられる男性警部補が死亡した後の今年4月の記者会見では、石田勝彦本部長が「県民と社会のみなさまに深くおわび申し上げる」と謝罪したが、質疑応答に立ち会わず退席していた。 警察本部長がカメラの前で謝罪するというのは、実はそれほどまでに重いのだ。2つの府警は、それが立て続けに起きた。万引きや盗撮などといった不祥事とは、レベルが違うのだ』、「滋賀県彦根市の・・・事件でも・・・鎌田徹郎本部長が「極めて遺憾」と謝罪したものの、県警は徹底して撮影を認めなかった」、謝罪にも撮影を認めるか否かの違いがあるとは芸が細かい。
・『ダブルパンチ  山科署巡査長の詐欺事件は6月15日、京都府警捜査2課が高橋龍嗣被告(38)=詐欺罪で起訴、懲戒免職=を逮捕した。起訴状によると、伏見署の交番に勤務していた昨年11月、京都市伏見区の無職男性(78)に「現金を預かる」と偽って現金をだまし取ったというものだ。 11月8日、男性が寄付のため金融機関を訪れ、高額の引き出しをしようとしていたことから金融機関側が特殊詐欺を疑い通報。駆け付けた高橋被告が理由などを聞き、さらに「自宅にも500万円ある」などと資産状況を把握。「銀行に預けた方がいい」などと言って詐取したとされる。 さらに14日には、男性の希望通りに現金を払い出すよう金融機関に依頼して、金融機関から引き出した現金と自宅にあった現金の計約1100万円を詐取した、という手口だ。 高橋被告は男性に「犯罪に関する可能性があるため、預かって捜査する」と説明したが、口座や資産が犯罪に利用されていると説明して高齢者をだますのは、特殊詐欺の常とう手段。現金を詐取した後は、男性に「体調はどうですか」などと定期的に気遣うような連絡をしていたという。 男性は生活保護費を受給していたが、少しずつ貯金し、資産がたまってきたため市役所に相談。受給の打ち切りが決まっていた。高橋被告は「お金を持っていたら生活保護は受けられないですよね。お金を預かって調べる」などと言って、不正受給の疑いを示唆して男性を脅していたとみられる。 高橋被告は当初、府警の聴取に「借りただけでだましていない」「投資に使った」などと容疑を否認していたが、後に「最初からだますつもりだった」と全面的に認めていた。詐取した現金は投資や借金返済、生活費でほぼ全額を使い果たしていた。 この事件で高橋被告が起訴された5日、植田秀人本部長は記者会見で「官民を挙げて特殊詐欺対策を進める中、このような事案が発生したことは言語道断であり、極めて遺憾。被害者の男性、府民の皆様に深くお詫び申し上げます」と謝罪した。 そう、問題は「官民を挙げて特殊詐欺対策を進める中…」だったのだ。 高額の引き出しや振り込みをする利用者への金融機関の声掛けは、特殊詐欺被害防止の最大の抑止策。警察庁によると、18年の特殊詐欺被害は約364億円とされるが、金融機関職員の声掛けなどで約143億円の被害が阻止できたとされる。 金融機関にとっては高額であっても、預金の引き出しは顧客の自由であり「何かございましたか?」などと声掛けをするのは、本来は「余計なお世話」だ。しかし、これだけの社会問題になり、警察の働き掛けもあって協力するという流れになったのだ。 全国紙社会部デスクによると、府警幹部は「今まで時間をかけて金融機関側に理解していただいて協力を得てきたのに、警察官がそのノウハウを利用して詐欺をやったのでは、申し開きができない」と頭を抱えているという。 植田本部長がカメラの前で謝罪したのは、実は「被害者や府民」ではなく、全国の警察官と金融機関に対してだったというのが本当のところだろう。 一方、警察学校初任科生の巡査、梅北亘容疑者(23)が逮捕された事件は、警察の情報収集能力そのものが疑われるだけに、内部のショックは大きい。 というのは、逮捕に至った経緯が警察学校内で同期の腕時計を盗んだとして窃盗容疑で実家を家宅捜索したところ、乾燥大麻が見つかったという事件だからだ。逮捕容疑は大阪府守口市の実家に乾燥大麻を所持していたというもので、吸引用とみられるパイプも見つかった。 梅北容疑者は今年4月の採用で、高校時代の14年、柔道の世界ジュニア選手権55キロ級で優勝していた。一般の警察官と違って交番などに配置されるのではなく、術科(柔道、剣道、逮捕術、けん銃射撃,白バイ乗務)を専門とする術科特別訓練(特練)の指定警察官(特練員)として期待されていた。 平たくいえば、容疑の段階ではあるが、将来の幹部候補が実は泥棒で、違法薬物使用者だったということを警察がキャッチできていなかったということだ。 前述の全国紙デスクによると、窃盗、薬物のいずれも常習的な手口らしい。大麻は「自分で吸うために実家に置いていた」と容疑を認めているという。 人事・採用担当の警務部からすれば、窃盗を専門とする捜査3課、違法薬物対策の組織犯罪対策3課は、いったい何をしていたのだと怒り心頭だろう。 そういう意味で京都府警はいま、大変なことになっているらしい』、大混乱の「京都府警」には、現在、京都アニメーション放火殺人事件という重大な事案を抱え、捜査に支障が出ないよう期待したい。
・『富田林署、樋田被告は今  冒頭で紹介した大阪府警富田林署から逃走した樋田淳也被告(31)や同署の近況なども、ここでお伝えしておこう。 その後、府警の検証や樋田被告に対する捜査は続いた。 樋田被告が逃走した約1週間後の昨年8月21日夜、枚方署の20代の男性巡査長が酒に酔って「似た男を見た」と110番していたことが発覚。周辺で似た人物は確認できず、巡査長は「組織に迷惑を掛けた」として依願退職した。 樋田被告が逃走時の留置担当者は、禁止されているスマートフォンを持ち込み、アダルト動画やプロ野球ニュースなどを閲覧していたことが判明した。府警は担当者を懲戒処分にしたが、理由は「スマホを持ち込んだことが理由。閲覧した内容は関係ない」と説明していた。 いずれもトホホなオマケ付きで、留置担当者含め署長ら7人が懲戒処分を受けた。富田林署では、樋田被告が壊した留置場の接見室アクリル板が今年4月までに修理され、現在は容疑者の収容が再開されている。 樋田被告は強制性交や放火、窃盗など計43件の容疑で逮捕・送検され、21件の罪で起訴された。もちろん、逃走した「加重逃走罪」も含まれる。 大阪府内で盗んだ自転車で中国・四国を転々としていた樋田被告。初公判の期日は決まっていないが、全国紙デスクによると、さすがに起訴内容を否認する元気はないだろうとのことだ』、「富田林署」逃走事件については、このブログでは昨年10月8日に取上げたが、本当にお粗末極まる事件だった。「留置担当者含め署長ら7人が懲戒処分」とあるが、その後の捜査も大阪府に限定したという問題は、もっと上層部にも問題があった筈だが、これらの責任は例によってうやむやのようだ。
タグ:東洋経済オンライン yahooニュース ダブルパンチ 神奈川新聞 ダイヤモンド・オンライン 相次ぐ警察の重大ミス 戸田一法 (その6)(警察官「無能が出世することはない」独自の掟 彼らの世界に「理由なき昇進」はあり得ない【平成の事件】警官「シャブ抜き」で事件隠蔽 主犯は本部長 神奈川県警不祥事対応で異例人事、京都で相次いだ警察官の重大不祥事 大阪に次ぎ「2つの府警」の堕落) 久保 正行 「警察官「無能が出世することはない」独自の掟 彼らの世界に「理由なき昇進」はあり得ない」 警察官の出世事情 『警察官という生き方』 警察本部の採用試験に受かったら、高卒の場合は10カ月、大卒の場合は6カ月の間、全寮制である警察学校の初任科で基礎を学び、卒業後、各警察署に配置されることになります 「交番業務」が警察官を鍛える ランニングなどの基礎体力づくり 現実には犯人に逃げられてしまう失態も数多い 徹底した「階級組織」 「警部」のハードルは高い 全国の警察官の約90パーセントが警部補までの階級 警部は全警察官のうち、7パーセント程度 警視庁や各県警では警察官の10パーセントが女性になるように採用枠を拡大 現場にいる警察官ほど出世しづらい 32~33歳で警部になっていないと、いちばん上までは行けません 「【平成の事件】警官「シャブ抜き」で事件隠蔽、主犯は本部長 神奈川県警不祥事対応で異例人事」 一連の神奈川県警不祥事の中でも、覚醒剤隠蔽事件は突出した事案 主犯はキャリアの本部長 神奈川県警を再建せよ、突然の辞令 「シャブ抜き」の証拠が現存 警部補を横浜市内のホテルに軟禁して連日尿検査を繰り返すなど「シャブ抜き」をし、陰性反応に転じた段階で形ばかりの「正式な捜査」を行った隠蔽工作の証拠の一部だった 本部長の命令とは 「京都で相次いだ警察官の重大不祥事、大阪に次ぎ「2つの府警」の堕落」 京都府警で重大な不祥事が相次いで発覚 山科署の巡査長が特殊詐欺被害の緊急通報を悪用して、高齢男性から約1100万円を詐取したとして詐欺罪で起訴 警察学校初任科生の巡査が自宅に大麻を隠し持っていたとして、大麻取締法尾違反(所持)の疑いで逮捕された。巡査は柔道の世界ジュニア選手権優勝者で、柔道の指導教官として将来を嘱望されていた 警察本部長の謝罪の重み 鎌田徹郎本部長が「極めて遺憾」と謝罪したものの、県警は徹底して撮影を認めなかった 官民を挙げて特殊詐欺対策を進める中、このような事案が発生したことは言語道断であり、極めて遺憾 窃盗、薬物のいずれも常習的な手口 人事・採用担当の警務部からすれば、窃盗を専門とする捜査3課、違法薬物対策の組織犯罪対策3課は、いったい何をしていたのだと怒り心頭だろう 富田林署、樋田被告は今 留置担当者含め署長ら7人が懲戒処分を受けた
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ハラスメント(その11)(カネカ 育休明け転勤命令でSNS大炎上 老舗企業の人材軽視が経営危機に直結する、キレる中高年に従業員が潰される!増えるカスハラ問題、「靖国神社」を揺るがすセクハラ動画 幹部職員が部下にお触り 被害者は複数人) [社会]

ハラスメントについては、1月15日に取上げた。今日は、(その11)(カネカ 育休明け転勤命令でSNS大炎上 老舗企業の人材軽視が経営危機に直結する、キレる中高年に従業員が潰される!増えるカスハラ問題、「靖国神社」を揺るがすセクハラ動画 幹部職員が部下にお触り 被害者は複数人)である。

先ずは、元証券会社社員で証券アナリストの栫井駿介氏が6月11日付けMONEY VOICEに寄稿した「カネカ、育休明け転勤命令でSNS大炎上。老舗企業の人材軽視が経営危機に直結する=栫井駿介」を紹介しよう。
・『カネカが炎上しています。きっかけはツイッターの投稿で、育休を取った男性社員が復帰直後に転勤を言い渡され、やむを得ず退職したというもの。問題を受けて株価は下落していますが、同社は買いなのでしょうか』、大企業にあるまじきお粗末な対応のようだ。
・『パタニティハラスメントで大炎上  ・・・父親の育児参加やワーク・ライフ・バランスが叫ばれるなかで、「パタニティハラスメント」として注目されています。 信じられない。 夫、育休明け2日目で上司に呼ばれ、来月付で関西転勤と。先週社宅から建てたばかりの新居に引越したばかり、上の息子はやっと入った保育園の慣らし保育2週目で、下の子は来月入園決まっていて、同時に私は都内の正社員の仕事に復帰予定。何もかもあり得ない。 — パピ_育休5月復帰 @papico2016) April 23, 2019』、奥さんの訴えは悲痛だ。
・『法的には問題なくても、それってどうなの?  詳細な経緯は、以下の通りと推察されます。 40代夫婦に2人目の子供が誕生 新居購入、夫は育休取得 保育園が決まり、夫は職場復帰、妻も職場復帰予定 夫職場復帰直後に関西への転勤が通告される 延期を申し出るが受け入れられず、退職を決意 退職日を5月末に強制され、有給休暇消化を認められず 夫、退職して無職に これに対し、カネカは「法的には問題ない」の一点張りです。それがかえって人々の感情を逆なでし、いっそう火に油を注ぐ事態となっています。 確かに、法的には問題はないかもしれません。社員を転勤させることは会社の権利ですし、社員もそれを承知で働いています。サラリーマンというのはそういうものでしょう。(ただし、有給休暇の消化が認められなかった点は、本当だとしたらアウトです。) 何より問題になっているのは、育児休暇を取ってこれから子育てが大変な時に、状況を過酷にする転勤を強制したことです。まして、新居を購入し、子供の保育園が決まったばかりのタイミングです。 夫は直接調整を申し出ていることから、会社は知らなかったでは済まされません。この事件の経緯を見るほど、カネカが社員とその家族を大切にしない会社ではないかという疑念が湧いてきます。 妻の立場になると、家や子供のことが一段落してようやく職場復帰だという時に、夫が単身赴任するか、家族で引っ越すかの選択を迫られているわけです。Twitterで怒りを吐露したくなるのも当然と言えます』、「新居を購入し、子供の保育園が決まったばかりのタイミング」で転勤辞令とは、余りに冷酷な仕打ちだ。カネカとしては、男性社員が「育休」を取ったことの見せしめにしたのかも知れない。
・『育休直後に退職した私が思うこと  私としてもこの事件は他人事ではありません。なぜなら、私自身も育児休暇からの復帰直後に退職した身だからです。 もっとも、決して嫌がらせを受けたわけではありません。円満退社でしたし、有給休暇もすべて消化させてもらいました。人事や同僚も優しく送り出してくれて、かえって退職するのが惜しく感じられたほどです。 ただ、退職を決意したのは、家族を考えてのことでした。育児休暇から復帰すると、特に割り当てられた案件もなく、会社ではぼーっと過ごしていました。上司はそれを見かねたのでしょう。人手不足だった案件に私を投入しようとしたのです。 しかし、その案件を受けると忙しくなり、帰宅時間も遅くなることが目に見えていました。家で待っている妻と子供のことを考えると「それは嫌だ」と思ったのです。 半年後くらいを目処に起業しようと考えていたのですが、その予定を大きく前倒しし、話を受けてすぐに退職を決意しました。 もしその案件を受けていたらと考えると恐ろしくなります。生まれたばかりの子供の顔を見ることもできずに、不満を募らせた妻とも不仲になっていたかもしれません。 上司も悪気があったわけではなく、私のこれからのキャリアのことを考えてくれたのだと思います。まだまだモーレツ社員の世代ですから、忙しい仕事を与えるのはむしろ親切心だったとも考えられます。 この考えのギャップが、カネカのような問題を引き起こしているのだと思います。表向きではワーク・ライフ・バランスを推進すると言っておきながら、上役はそれを「常識」として理解することができません。 一方で、若い人の価値観は確実に変化していて、管理職世代のモーレツ社員が持つ「常識」は通用しなくなっています。カネカ固有の問題ではなく、歴史のある会社ほど起きやすい価値観の対立と捉えることができるのです』、筆者も「育休直後に退職」した経験があるとは、この問題を解説するには適任のようだ。
・『昭和 vs 平成・令和。歴史ある企業ほど起こる世代間対立  カネカは化学製品の会社です。プラスチック製品の素材を企業に供給しています。あなたが使っている身の回りのものも、カネカが供給した材料を使用しているかもしれません。 1949年に鐘淵紡績(カネボウ)から分離し、設立されました。その後、昭和の高度経済成長の大量生産に不可欠な存在としてぐんぐん成長し、現在は従業員1万人を抱える大企業となっています。 これまで大きな企業再編もなく、独立独歩の経営を貫いていました。有価証券報告書にある取締役の経歴を見ると、会長以下11人中9人がキャリアのスタートが「当社入社」となる、いわゆるプロパー社員です。 多くの伝統的な日本企業について言えることですが、このような会社は終身雇用を前提とした旧態依然の体質を保存しています。すなわち、高度経済成長の成功体験をいまだに引きずる経営者が、そのままの感覚で経営を行っているのです。 当然その考えは、同じように会社の中にいる管理職にも引き継がれます。その旧来の企業戦士としての価値観と、近年のプライベート重視の価値観が対立し、冒頭のような軋轢が起きてしまったというわけです。 いわば、昭和 vs 平成・令和の世代間対立と言っても良いでしょう』、伝統的大企業ではありそうなことだ。
・『経営力は見劣り。カネカの強みを活かすために必要なこと  問題を受けて、カネカの株価は下落しています。同社は買いなのでしょうか。改めて業績を見てみましょう。 売上高は順調に伸び、直近の2019年3月期には最高を更新しています。しかし、利益は、2006年3月期からいまだに最高を更新できていません。 カネカのような化学メーカーにとって、ここ数年は追い風が吹いていました。景気は上向きで、なおかつ製品の原料となる原油価格が低下していたため、利益を出しやすい環境にあったのです。大手化学メーカーは、この数年連続で最高益を更新しています。 そのような環境の中で最高益を更新できていないのはなぜでしょうか。それは、プロパー社員が大半を占める内向的な会社であるがゆえに、不採算事業からの撤退が遅れているからだと考えます。 各社の営業利益率を比較してみると、カネカが見劣りしていることがわかります。利益率の差は、会社の経営力の差と見て良いでしょう。 不採算事業を多く抱えるということは、会社の資源が分散されてしまっているということです。そうなると、成長分野に機動的にお金や人材を投入することが難しくなり、また思わぬところから巨額損失が生まれることも珍しくありません。攻めにとっても守りにとっても良いことはないのです。 カネカの強みは研究開発にあります。様々な製品を開発しているからこそ知見は豊富で、毎年多くの研究開発費を投入しています。ここから新たなヒット商品を生み出していくことが成長戦略の柱となります。 しかし、研究開発の肝はなんと言っても人材です。いつまでも昔ながらの価値観を引きずったままでは、優秀な人材ほど離れていってしまうでしょう。不採算事業をいつまでも続けることも、不必要に人材を縛り付けることになります。 長期投資家の立場から見ると、今のカネカには決して投資する気にはなれません。社会的に問題があるだけでなく、経営の方向性から長期的な成長性が見込みにくいからです。 いいものは持っている会社です。今回の事件を機に、大きく変わることを期待しています・・・』、その通りだ。

次に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が6月25日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「キレる中高年に従業員が潰される!増えるカスハラ問題」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00029/?P=1
・『「カスハラ」問題が深刻化している。 カスハラとは、カスタマーハラスメント。明確な定義はないが、「顧客や取引先からの自己中心的で理不尽かつ悪質なクレームや要求」のことで、先週ILO(国際労働機関)の定時総会で採択された「ハラスメント禁止条約」でも対象になっている。 で、いつもどおり“遅ればせながら”ではあるが、厚労省もガイドラインの作成に乗り出す方針だそうだ。 そんな中、民間の調査で「カスハラが最近3年間で増えた」と感じる人が6割近くいて、約7割がカスハラを経験していることがわかった。 「カスハラの対応で、どんな影響があるか?」との問いには(複数回答)、「ストレスが増加」93.1%、「仕事の意欲が低下」82.1%、「体調不良」73.2% 、「退職」59.6%「休職」54.2"など、カスハラに対応した人に過剰な負担がかかることも明らかになっている。 「せっかく大卒を積極的に採用して1年間コストをかけて育成しても、お客に潰されるんです。職業差別がひどくなってませんかね」  つい先日タクシーに乗ったときも、運転手の方がこう嘆いていた。 どう考えても「このコースしかないでしょ」というときでさえ、「ご希望のコースはございますか?」だの、「●●通りから△△に入る道でよろしいですか?」と聞いたり、「お話してもいいですか?」と断ってから雑談を始めたりするるのも、運転手さんによればすべてカスハラ対策だという』、「カスハラ対策」の余り馬鹿丁寧な応対を迫られるというのは、真の必要性に基づくというより、コンサルタントなどによるマニュアル主義のためなのではなかろうか。
・『若い社員が早々に辞める一因にも  というわけで今回は、「カスハラ」についてアレコレ考えてみようと思う。 「私も40年くらい運転手やってますけど、“普通のお客さん”に怒られるようになるなんて想像したこともなかったですよ。つい先日もね、『さっき確かめた金額と違う!』って怒りだしちゃって。 こちらの都合で指定の場所を過ぎたときは、メーターを止めます。ほら、交差点とかで止められなかったり、危なかったりするときがあるでしょ。でも、その時は私が止まろうとしたら『もっと先まで行け!』って言われたんです。参りますよね。 ホントね、大人しそうに見える人が突然怒りだすから、怖いですよ。 まぁ、私くらいになれば、言われてもなんとか対処したり、あまりにひどいことを言われたら車止めて『会社に電話しますので』とか言ったりできるけど、若い人はそんなことはできない。 だから、メンタルやられて辞めちゃうんです。会社はタクシー業界のイメージをよくしようと賃金上げたり、福利厚生充実させたり、いろいろやってるのに。お客さんに潰されちゃうんだもん。やってられないよね」 「え? どんなこと言われるのかって? まぁ、いろいろありますよ。 ‥‥そうね、ほとんどは言葉の暴力だけど、あれは結構、あとからこたえるんですよね。トラウマっていうのかな。アホだの、ボケだの、すごい怒鳴り方されて。今の若い子たちはそんなに怒られた経験がないし、年上と話すのも下手。1回でもやられるとお客さんとコミュニケーション取れなくなって、完全に悪循環ですわ。 特にね、理不尽なこと言うのは年配の男性に多いんです。命令口調でね。自分の運転手だと勘違いするんですかね。殴られたら、警察呼べばいいけど、言葉の暴力じゃあ通報もできませんから。いやな世の中になってしまいましたね」 ‥‥せっかく育てた社員が辞めてしまうほど怒鳴り散らすとは。事態は想像以上に深刻である。しかも、年配の男性。ふむ、確かに。 コンビニでアルバイトをしている学生が、意味不明の横暴な態度を取るのは、決まってダーク系のスーツをきちんと着たビジネスマンとぼやいていたことがあった。社会的に強い立場にいる人たちの特権意識が高まっている傾向は確かにあるのだと思う。 だが、女性であれ、おばさんであれ、若者であれ、カスハラ加害者はいるし、今回は「どんな人が加害者になりやすい」ということがテーマではないので、「あくまでもこういう話を私が聞いた」というレベルにとどめておいていただきたい』、「アホだの、ボケだの、すごい怒鳴り方されて。今の若い子たちはそんなに怒られた経験がないし、年上と話すのも下手。1回でもやられるとお客さんとコミュニケーション取れなくなって、完全に悪循環ですわ」、「理不尽なこと言うのは年配の男性に多いんです。命令口調でね。自分の運転手だと勘違いするんですかね」、「せっかく育てた社員が辞めてしまう」、などは確かにカスハラの典型だ。
・『カスハラは心に深く長く傷を残す  昨今のカスハラはエスカレートの一途をたどっていて、暴言や恫喝だけではなく、土下座を強要したり、SNSで広めるぞと脅しをかけたり、数時間にもわたりクレームを言い続けたり、賠償金を求めるケースも存在する。 カスハラは介護の現場でも横行している。「介護職員への暴行、杖(つえ)を股に当てるセクハラも」に書いたとおり、利用者の家族からの迷惑行為も「カスハラ」である(以下、抜粋)。 +“挨拶ができていない”、“太っているナースは来るな”など、訪問する度に暴言をはく +“おまえなんかクビにしてやる!”と激高。杖を振り回してたたこうとした +料金請求時“カネカネばっかり言いやがって”“ボランティアって気持ちがないのか”と言われた。 カスハラを受けた人が「10年以上前のことだが、思い出すだけで涙が出る」「言われるだけで何もできなかった」と告白しているように、心が引き裂かれるほどの深い傷を負うことになる。 被害者の心情を慮れば「ガイドラインを作成する」などと悠長なことを言っている場合じゃない。早急になんらかの防止策に乗り出して欲しい。というか、これこそ「働き方改革」だと思うのだが・・・。 いずれにせよ、運転手さんが“普通のお客さん”と表現したように、ひと昔前であれば、堅気の人はやらないようなクレームを、ごくごく普通の人が「お客様」の立場を利用して、従業員を追い詰めているというのだから困ったものである。 が、これは裏を返せば、なんらかのスイッチが入った途端、誰もが「カスハラ加害者」になる可能性があるとも言える。人のふり見てわがふり直せ、ではないけど、自分や家族が加害者にならないよう気をつけねばならない。 そもそも、この数年社会にまん延している「カネさえ払えば何をやっても許される」「客の要求を満足させるのは当然」という歪んだ“お客様”意識はどこから生まれたのか。 個人的には大きく2つの要因が引き金になっていると考えている。 まず、1つ目は「お客様第一主義」という理念の下、モノを作ることに専念してきたメーカーまでもが、「モノ」の付加価値を高めるために顧客サービスを強化し、競争に打ち勝とうとしたことである。 その結果、本来であれば顧客サービスとは無縁の職業についた従業員にまで、顧客サービスが課せられ、それが従業員の資質の問題として処理されるようになった』、「「ガイドラインを作成する」などと悠長なことを言っている場合じゃない」、確かにガイドラインなど待たずに、各事業者がマニュアルなどで対応すべき問題だろう。「お客様第一主義」の究極が「お客様は神様です」だ。三波春夫の言葉らしいが、歌手にとってはそうかも知れないが、一般のサービス現場にまで広げるべきではない。
・『顧客の声とカスハラを明確に区別する企業は少ない  例えば、システムエンジニア(SE)だ。 数年前に行ったヒアリングでは(河合らの研究グループ)、多くのSEさんたちが顧客のところに出向いて要求を聞きながら作業を進める“サービス”を課せられていた。もともと「人と接するのが苦手だから、プログラマーの道を選んだ」という人が少なくないにもかかわらず、だ。 システムの不具合の原因が顧客の側にある場合でも、途方もない要求を突きつけられる。「顧客が不機嫌というだけで、怒鳴られたり罵倒されたりした」と語る人たちもいた。 企業側からすれば、現場で社員が耳にする「お客様のクレーム」は商品改善の大切な声かもしれない。だが、「大切な声」と「カスハラ」を明確に区別する企業は少ない。 ただただ「お客様を満足させよう!」を合言葉に、ときにゲキを飛ばし、従業員たちに丸投げする。銃も防護服も身につけずに、丸裸で従業員は“危険なサバンナ”に放り出されているのだ。 実際、冒頭で紹介した調査では、顧客対応マニュアルを作成している会社は31.4%だった。そのうち、カスハラに対応していないマニュアルが約4割で、全体の半数以上は「作成予定もない」という。 で、ここからが2つ目の要因になるのだが、そもそもサービスとは“感情”を提供することであり、サービスを提供する労働は「感情労働(emotional labor)」と呼ばれ、それなりのスキルなくしてできるものではない。 つまり、本来であれば従業員のサービスの教育や感情コントロールの訓練を行ったり、感情労働分の賃金を上乗せしたりするなど、お客様を満足させるためのコストが必要不可欠。付加価値を高めるためのサービスは、タダじゃないのだ。そんな認識もないままに、対人サービスを当たり前としていることが問題なのだ。 2012年にスカイマークが、[スカイマーク・サービスコンセプト]という冊子を座席のシートポケットに入れ、顧客からのクレームで回収するという事態に至ったことがあった』、「顧客対応マニュアルを作成している会社は31.4%だった。そのうち、カスハラに対応していないマニュアルが約4割」、というのは驚くべき少なさだ。これでは、「銃も防護服も身につけずに、丸裸で従業員は“危険なサバンナ”に放り出されているのだ」、との批判ももっともだ。
・『「感情労働」を切り分けてみせたスカイマーク  +荷物の収容はしない +従来の航空会社の客室乗務員のような丁寧な言葉使いを当社客室乗務員に義務付けていない +安全管理のために時には厳しい口調で注意をすることもある +メイクやヘアスタイルやネイルアート等に関しては「自由」 +服装については会社支給のポロシャツまたはウインドブレーカーの着用だけで、それ以外は「自由」 +客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており接客は補助的なもの +幼児の泣き声等に関する苦情は一切受け付けません +地上係員の説明と異なる内容をお願いする際は、客室乗務員の指示に従うこと +機内での苦情は一切受け付けません +ご理解いただけないお客様には定時運航順守のため退出いただきます +ご不満のあるお客様は「スカイマークお客様相談センター」あるいは「消費生活センター」等に連絡されますようお願いいたします 私はこの問題が発覚し、大バッシングが起きた時に、スカイマークを褒めた。「オ~、よくぞここまで言い切った!」と。このサービスコンセプトこそが搭乗料金の値下げにつながっているというロジックが成立するからである。 [スカイマーク・サービスコンセプト]は、「我が社の飛行機に乗っているのは、客室乗務員ではなく、保安員です。ですから、他の航空会社さんとは違うのです」というお客さんへのメッセージであると同時に、「我が社はあなたたちに、乗客を感情的に満足させることを求めていない。あなたたちは、安全に乗客を届ける仕事に専念してください」という社員へのメッセージでもある。 誤解のないように言っておくが、社会人の当たり前の振る舞いとして、お客さんに感謝したり、仕事をスムーズに進めるためにお客さんとコミュニケーションを取ったり、自分がお客さんを喜ばせたくてサービスすることと、「何が何でもお客さんを満足させる!」ことは別。 お客様を「大切」に思って丁重に接することと、感情を売り払ってまでお客様を満足させることは、決して同じではないのである。 「感情労働」は働く人の資質でも自主性に任せる問題でもない。「企業がコストを払う労働」である。「顧客を満足させるのは、タダじゃない」という当たり前を、一体どれだけの企業が理解しているのだろうか。 企業は本当に「サービス」が最後の切り札なのか?を、きちんと考えた方がいい。 その上で「『お客様を満足させる』ために我が社が従業員に求めるものは何か?」をとことん突き詰めてほしい。“顧客を満足させる”ことに疲弊しきって、しまいには金属疲労のように心がポキリと折れることがないように働く人を守ってほしい。 これ以上、お客さんのモンスター化が進行しないためにも』、説得力溢れた主張で、その通りだ。[スカイマーク・サービスコンセプト]の回収騒ぎは私も覚えているが、スカイマーク側からきちんとした説明はなかったように記憶する。スカイマークといえば、社長がミニスカートの制服を復活させようとして話題になった他、エアバスの過大発注で民事再生法を申請、ANAの支援で再生した。「スカイマーク・サービスコンセプト]はまだ内部的には生きているのだろうか。

第三に、7月26日付けデイリー新潮「「靖国神社」を揺るがすセクハラ動画 幹部職員が部下にお触り、被害者は複数人」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/07181700/?all=1&page=1
・『先月末に創建150年を迎えた折も折、靖国神社を舞台にした数々のセクハラが明らかになった。加害者は幹部職員、被害に遭った女性は複数人に及ぶ。 靖国神社といえば、国のために命を捧げた246万余の御霊が眠る日本でも指折りの“聖域”である。週刊新潮が入手した動画に収められているのは、中年男性が女性の身体を執拗に触る場面の数々だ。 「セクハラしているのは、55歳で妻子持ちの祭儀課長です。祭儀課長とは、靖国神社にとって最重要とも言うべき春秋の例大祭の現場責任者で、246万余の御霊のデータベースを管理する責任者でもある。英霊を慰めるための祝詞(のりと)に関わる立場でもあり、靖国神社における祭祀の中心人物のひとりと言えます」 そんな幹部職員のハレンチな所業は、いかなるものか。デイリー新潮で配信中の動画をご覧いただきたいが、その一部をご紹介すると――。 場所は「祭儀課長行きつけの店」(靖国神社事情通)であるカラオケスナック。今年の春、神社職員たちで行われた歓送迎会の場だった。うす暗い店内で石川さゆりの『天城越え』が流れる中、セクハラ幹部は、ソファーに腰かけ、隣の女性の肩を抱く。そのまま二の腕を揉み、掴み、マイクを渡し、無理に歌わせようとする。〈♪あなたと越えたい~〉 曲がクライマックスに差し掛かる段階で、幹部の手は、女性の二の腕から胸の方へと下がっていく……。女性は幹部の腕に包まれながら〈♪天城越え~〉を歌わされている。 このほかにも女性の手を執拗に撫で、自身の股間付近に引き寄せる様や、腰、お尻付近に手をやる映像も収められている。先述のとおり、これらの被害者はすべて別の女性だ。 昨年は“陛下は靖国を潰そうとしている”発言が流出し、宮司が退任に追い込まれる事態ともなった靖国神社。今回のセクハラについて質すも、「当神社では判りかねます」と当事者意識の欠片もない回答が返ってくる。当のセクハラ幹部はダンマリで、神社に逃げ込んでしまった。7月18日発売の週刊新潮で本件を詳しく報じる。(2頁目に動画あり)』、これだけ明らかなセクハラ事件を引き起こしているのに、「当神社では判りかねます」とのコメントにはただ呆れるばかりだ。宮司退任といい、靖国神社は、ネジが外れてしまったようだ。神社本庁については、このブログの2017年7月5日の”右傾化”(その4)でも問題を抱えている様子を取上げたが、安倍政権を裏から支える日本会議主要メンバーであるだけに、注目される。この他にも、2017年12月には、富岡八幡宮で宮司が弟に惨殺される事件も発生した。神社は一体、どうなってしまったのだろう。
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