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安全保障(その7)(【大前研一のニュース時評】「横田空域」基本合意も 米軍の“占領状態”変わらず…、「反論や批判を待っています」 三浦瑠麗が日本に徴兵制を提案する理由 著者は語る 『21世紀の戦争と平和』(三浦瑠麗 著)、伝わりにくい平和」をどうする――コミュニケーションから考える戦争と平和) [外交]

安全保障については、昨年4月2日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(【大前研一のニュース時評】「横田空域」基本合意も 米軍の“占領状態”変わらず…、「反論や批判を待っています」 三浦瑠麗が日本に徴兵制を提案する理由 著者は語る 『21世紀の戦争と平和』(三浦瑠麗 著)、伝わりにくい平和」をどうする――コミュニケーションから考える戦争と平和)である。たお、タイトルは「新安保法制成立後の情勢」から変更した。

先ずは、2月11日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】「横田空域」基本合意も、米軍の“占領状態”変わらず…」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190211/soc1902110001-n1.html
・『野上浩太郎官房副長官は先月30日、羽田空港の国際線の発着枠を増やす新たな飛行ルートについて、日米の交渉が基本合意に達したと発表した。これにより、羽田への飛来便は在日米軍の横田基地が航空管制を担う「横田空域」を一時的に通過できるようになり、その通過する時間帯は日本側が管制を行う。2020年の東京五輪・パラリンピックを前に運用が始まる。 この問題は、日本にとって長年の懸案だった。横田基地は東京・多摩地域の福生市など5市1町にまたがり、その管制空域は新潟から静岡まで1都8県に及ぶ。米国空軍にとって重要な空域で、日本の民間航空機は入れなかった。 羽田空港から飛び立って北に向かうロシア経由、欧州経由の旅客機、あるいはロシアのほうから戻ってくる旅客機にとって、まさに高い壁になっている。また、羽田や成田空港から西日本に向かう発着便も、1回太平洋上まで出てから大きく急旋回しなければならない。 日本の空の管制権は、敗戦で連合軍が掌握した後、日米地位協定に基づき、米軍の管理下に置かれている。今日に至るまで70年にわたって“占領状態”のままだ。 何とかしなければいけないということで、石原慎太郎氏は1999年に都知事選に立候補した際、横田基地の「管制空域返還」と「軍民共用化」を唱えた。しかし、航空自衛隊の一部司令部が移転するなど「軍軍共用化」は進んだものの、ほかは弾き飛ばされ、その後は言わなくなった。 今回、その一部が通ることができるようになった。どのくらい影響があるかというと、6万回の発着が9万9000回になるという。少なくとも50%以上増えた。横田空域を通るということで、時間も短くなった』、一部の地域で騒音が酷くなるが、発着回数が増え、時間も短くなるのであれば、やむを得ないだろう。
・『ただ、“占領状態”が若干緩んだとはいえ、向こうがコントロールしているという状態は変わらない。日本には在日米軍駐留経費の一部を負担する「思いやり予算」というものがあり、米軍も日本に重要基地を置いたほうが安上がりと考えている。 米空軍が横田なら、海軍は横須賀港だ。ハワイのホノルルに司令部を置く太平洋艦隊の指揮下にあり、西太平洋・インド洋を担当海域とする第7艦隊が前線から帰還する基地になっている。揚陸指揮艦ブルー・リッジも、第7艦隊旗艦として横須賀港を母港にしている。 一方、米国の陸軍は横浜港の瑞穂埠頭(ふとう)にある港湾施設「ノースピア」を持っている。陸軍がいなくなって、ヘッドクオーター(司令部)もなくなってしまったのだが、瑞穂埠頭はまだ返還されていない。 ここは横浜のど真ん中にある。だから、IR(カジノを含む統合型リゾート)を横浜がやりたいのであれば、瑞穂埠頭を使うのが一番いいはずだ。しっかりとした考えの政治家が出てきて、国民の意見を背景に外交力と説得力を駆使して取り返さなくてはならない重要案件だと思う』、「ノースピア」は55ヘクタールもの広大な面積があり、返還後の利用案はまだ構想段階(Wikipedia)。

次に、3月15日付け文春オンラインが掲載した国際政治学者の三浦瑠麗氏へのインタビュー「「反論や批判を待っています」 三浦瑠麗が日本に徴兵制を提案する理由 著者は語る 『21世紀の戦争と平和』(三浦瑠麗 著)」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/10987
・『国内外の政治について発言を続ける三浦瑠麗さんの、6年の歳月をかけた新著が話題だ。戦争と平和、国家のあり方を主題にした本格的な研究書だが、副題に踊る「徴兵制」の一語が刺激的だ。 「以前から、シビリアン・コントロールが強い民主国家ではかえって戦争が容易になってしまうと主張してきました。戦争のコストをリアルに計算する軍部に対して、政治家や国民は正義感やメリットだけを勘定してしまうから、安直に戦争へと突き進む危険性があるということです。先日、韓国海軍から自衛隊の哨戒機が火器レーダー照射を受けた、というニュースがありましたが、世論を見るにつけ、結構危ない局面だったと思うんです。もっとも冷静だったのは、国民でも政治家でもメディアでもなく、自衛隊でした。本当は私たち国民こそが、軍隊を適切にハンドリングしなければいけないのに、いまの日本国民だと容易にその関係が逆転する可能性があります。シビリアン・コントロールというシステムについて、もっと私たちは責任を持たなきゃいけないはずです」 三浦さんの家族には自衛隊関係者がいる。子供の頃から自衛隊が身近な存在だったことは、本書執筆の理由のひとつになった。 「自衛隊の待遇を改善しなければいけないという問題意識はずっとありました。戦後にあっては、一方に軍人への忌避感があり、それが自衛隊の尊厳を損なってきました。他方で自分とは関係ない存在だという無関心、同胞感覚の欠如がある。こういった自衛隊を部外者のように扱う態度はやめて、国民の自衛隊への理解を深めるべきでしょう。自衛隊もがんばってPRに努めていますが、正直、稚拙なのも頭が痛いところです。そもそも、官僚を養成する大学に、政軍関係を教える体制が整っていないことに日本の問題の本質が表れています。軍を知らない政治エリートなんて危なっかしくて仕方ないですよね」』、「戦争のコストをリアルに計算する軍部に対して、政治家や国民は正義感やメリットだけを勘定してしまうから、安直に戦争へと突き進む危険性がある」、というのは一面の真実ではある。ただ、「韓国海軍の火器レーダー照射」問題で「もっとも冷静だったのは・・・自衛隊でした」、といのは確かだが、戦前の日本の軍部は冷静さを失って突っ走ったことをどう評価しているのだろうか。シビリアン・コントロールについても、徴兵制を採ってない欧米主要国ではどうなのか、といった点も知りたいところだ(著書には説明があるのかも知れないが)。
・『市民が当事者意識を持つためにも徴兵制は必要  本書では軍と市民の関係が、歴史をさかのぼって詳述される。市民が軍に対する関心を失ったことで大帝国が潰えてしまう――たとえばローマ帝国の事例はまことに示唆に富む。 「市民が軍は自分たちと同じ国民だという意識を持つには、残念ながらこのままではだめです。いざ戦争を選べば自分も動員されるかもしれないという感覚がないと。そのための徴兵制というアイデアは暴論や極論に聞こえるかも知れませんが、私としては自然な解なんです。市民の当事者意識こそが、なにより平和のために大切だからです。単なる思考実験ではなく、現実的な政策提言のつもりです」 グローバル時代にあって、国家という単位にいかほどの意味があるのか。本書の後半では、様々な国が、国家のありかたを模索する様がレポートされる。 「国民国家というと、なんだか古臭く聞こえますが、リアリズムとしてはいまだ無視できません。たとえば、公共サービスの担い手として世界の富豪、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスに期待できるでしょうか。富の再配分や国土の安定の責任主体として、国家にはまだ実際的な意義があります。安定はタダではありません。そのコストをなるべく多くの国民で負担しようというわけです。でも、誰もが国家に参画せよと全体主義的なことを言いたいわけではありません。良心的兵役拒否のような仕組みは必要です。国家と郷土に対して、保守とリベラルの双方にいろんな意見があるはず。だから、この本にもどんどん反論や批判を寄せてほしい。期待して待っています」』、「市民が当事者意識を持つためにも徴兵制は必要」との主張は、やはり「暴論や極論」としか思えない。「ローマ帝国」滅亡の要因は数あると思うが、「市民が軍に対する関心を失ったこと」だけに焦点を当てたのは我田引水的だ。アメリカでも戦争を鼓舞するのは軍産複合体である。軍隊というのは、一旦、出来ると軍需業界を巻き込んで、凄い政治的なパワーを発揮するものである。ただ、シビリアン・コントロール下で戦争の痛みをどのように周知していくかは、なかなか難しい問題だと思う。

第三に、ジャーナリストの鈴木洋平氏が4月29日付けYahooニュースに寄稿した「伝わりにくい平和」をどうする――コミュニケーションから考える戦争と平和」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/feature/1317
・『「戦争のない時代」として、平成が終わろうとしている。かたや世界に目を向ければ、この30年で戦争が絶えた時期は一度としてなかった。戦争と平和。それらを情報・コミュニケーションの観点から読み解くと、何が見えてくるのか。そんな発想から、これまで戦争に活用されてきたコミュニケーションの技術を平和構築に生かそうとするアプローチがある』、興味深そうだ。
・『「情報・コミュニケーション戦」という“もう一つの戦争”  2017年7月、アフガニスタンの首都カブール。その街中で銃声が鳴り響いた。 「タクシードライバーが、警察が制止するのを無視してそのまま車を飛ばし、警官によって射殺されたんです。私がいた建物の目の前で起きたことです。あとで聞いた話によれば、ドライバーは自爆テロを企てていたそうです。もし警官が彼を射殺しなければ、大惨事になっていたかもしれない」 この事件が発生した当時、アフガニスタン人のモハメド・アリさん(29)は勤務先である少数言語を研究する機関が入っている建物にいた。機関には、米国人の研究者も何人かいたという。そのためにこの建物が狙われていたのかどうかは分からない。ただ、こうしたテロによる危険は「日常茶飯事だった」とアリさんは話す。 アフガニスタンでは、これまでにテロや戦争によって大勢の一般市民の命が失われている。その被害を生んだ攻撃は誰によるものだったのか。その情報をめぐる争いも常にある。 「例えば、米軍に比べて戦力で劣るタリバンは民家に侵入し、米軍が攻撃することを躊躇させます。民家からタリバンが攻撃を仕掛けることもあり、米軍に銃撃し返されれば、『米軍の銃撃によって多くの国民が被害を受けた』とSNSで拡散して、民衆の支持を得ようとする。そうして、その後の自分たちの攻撃を正当化しつつ、米軍がアフガニスタンに介入することに正義がないと民衆に印象づけようとしていました」 攻撃の正当性を主張していけば、その攻撃を仕掛けた側が支持を得ていくことにつながる。戦争当事者の間には、物理的な戦闘行為だけではなく、情報・コミュニケーション戦が存在している。そんな“もう一つの戦争”によって喚起された国際世論が、実際の戦局を左右するケースもある』、ベトナム戦争での米軍撤退は代表例だろう。
・『「銃弾よりも大きな力を持つ」  「戦争における情報戦は、国際的には銃弾よりも大きな力を持つようになっている」――。 そう語るのは、現在NHKグローバルメディアサービスでプロデューサーを務める高木徹さん(53)だ。高木さんは著書『ドキュメント 戦争広告代理店 〜情報操作とボスニア紛争〜』で、旧ユーゴスラビア解体に伴う紛争において情報戦が与えた影響を詳(つまび)らかにした。 1992年、多民族国家ボスニア・ヘルツェゴビナの独立を機に紛争が勃発。ボシュニャク人(ムスリム)、セルビア人、クロアチア人らの民族間で3年半以上にわたって戦闘が繰り広げられ、20万人が犠牲になったとされている。凄惨な虐殺の実態などが報じられると国際社会の批判が高まり、米国の主導で95年に和平合意が締結され、内戦は終結。ボスニアはセルビア人主体の「スルプスカ共和国」と、ボシュニャク人とクロアチア人主体の「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」の二つの体制が併存する形になった。 紛争の当初はセルビア人勢力が軍事的に圧倒していた。ところが、ボスニア政府がルーダー・フィンという情報戦略のプロフェッショナルであるPR会社を起用したことで戦況は一変する。 「(ボスニア政府の依頼を受けた)PR会社は、セルビア人がボシュニャク人を迫害していると、『民族浄化』のキャッチコピーとともに世に訴えた。そうして被害者としてのボスニアのイメージをつくりあげていったんです」 「国際社会で何をどのように問題とするか。つまり、アジェンダセッティングです。ボスニア紛争では、情報戦という“PR戦争”が国際世論の形成に大きな影響を与えた。『泣かない赤ちゃんはミルクをもらえない』ということわざがボスニアにありますが、このとき、ボスニアはまさに泣くことで国際世論を味方につけたんです」 一方的な悪役に仕立てあげられたセルビア側もPR会社との契約を画策し、情報戦による反撃を試みたという。だが、すでに国際的に定着したイメージを覆すことはできなかった。情報戦だけが戦局を決定づけたわけではないが、国際世論がボスニア側に傾いたことが、旧ユーゴスラビアへの経済制裁や国連追放、NATO(北大西洋条約機構)軍によるセルビア人勢力空爆につながっていった』、「ボスニア紛争」での『民族浄化』は、PR会社が練り上げたキャッチコピーだったとは。それを伝えたマスコミにも責任がありそうだ。
・『「情報戦の影響を抜きに、現代の戦争は語れない」と高木さんは話す。近年その動向は顕著になっているという。 IS(イスラム国)やアルカイダといった過激派のテロ組織は、自前のメディアを立ち上げ、「グローバル・ジハード」という思想を世界中に流布している。「対テロ戦争」を掲げる米国はじめ主要国も、自国が加担する戦争の正当性を主張することに余念がない。 「SNSが浸透していくにつれて、情報戦が戦争に与える影響はますます強まっています。憎悪の共感は、SNSを通じてより簡単に広がっていく。戦争におけるメッセージはこれまで以上に伝わりやすくなっているといえます」』、確かに、欧州からISに応募した多数の人間は、こうしたSNS戦略の影響を強く受けたのだろう。
・『伝わりやすい戦争と、伝わりにくい平和  そもそもなぜ、戦争において情報・コミュニケーションが活用されるのか。 数々の戦争や紛争の現場を渡り歩き、紛争処理や武装解除に当たってきた伊勢﨑賢治さん(61)は「戦争はプロパガンダによって起こるもの」と語る。 「多くの戦争が民主主義体制の下で、正当な手続きを経て選択された結果として起こっています。ヒトラーでさえ、ナチス・ドイツの素晴らしさを国民にアピールし、選挙によって民主的に選ばれた。その後の戦争も国民が支持したものです」 政権を掌握したナチス・ドイツは、大統領緊急令の連発などで反対勢力を抑え込み、言論を封鎖して権力を強化していった。その過程で人々の戦意を高揚させ、戦争への支持を得る。そうした情報・コミュニケーションは、国民を戦争へと駆り立てるプロパガンダとして活用されてきた。 「つまり、戦争はつくられるものなんです」と話す伊勢﨑さんは現在、東京外国語大学大学院 総合国際学研究科 世界言語社会専攻 Peace and Conflict Studies コース(以下 PCS)で教鞭を執る。 前出のアフガニスタン人のアリさんも、PCSに籍を置く留学生だ。アリさんのような紛争当事国出身者を主な受講対象とするPCSからは、2004年の開講以来、実務家として活躍する人材が100人以上輩出してきた。 自身も実務家である伊勢﨑さんが教えるのは、どのように紛争が起こり、国際社会はどんな関わり方をしたのか、それがどういった結果をもたらしたのかということ。平和よりも戦争や紛争に焦点を当てている。 「平和というのは、やはりアンチテーゼでしかないと思うんです。戦争を語らずして平和は語れない。たいていの戦争は平和を守るため、少なくとも、それを口実に始められることが圧倒的に多いですから」 その口実がプロパガンダであり、それによって多くの人が戦争に駆り立てられていくことを伊勢﨑さんは「戦争は“セクシー”だから」と表現する。 「大義のために戦うとか、命を懸けて戦うことは格好良いじゃないですか。暴力というのも人を惹きつけてしまう魅力がある。僕が武装解除などで関わったシエラレオネの紛争では、反政府組織が若者を動員するために、ファッション感覚で戦うことのイメージをつくりあげていました」 戦争の持つ“セクシーさ”は過去、情報・コミュニケーションのあらゆる技法を駆使して伝達され、プロパガンダの主軸を担ってきた。 では、こうしたコミュニケーションの技術を「戦争」ではなく、「平和構築」に生かすことはできないのか――。 戦争や紛争に直接携わるうち、そんな思いを抱いた伊勢﨑さんは、10年ほど前に伊藤剛さん(43)にカリキュラム開発を依頼し、コース内に「ピース・コミュニケーション」という授業を立ち上げた。伊藤さんは、平和学者や戦場ジャーナリストではない。企業や行政、NPOなどの課題をコミュニケーションデザインによって解決するクリエイターだ。 ピース・コミュニケーションのカリキュラムは、メディア構造やプロパガンダ史、そして平和教育まで、あらゆるトピックをコミュニケーションの観点からひもとく内容で構成されている。 実際の授業も担当する伊藤さんは、戦争と平和について「コミュニケーションの観点からすると、戦争は伝わりやすく、平和は伝わりにくい」と話す。 「例えば、“War(戦争)”と“Peace(平和)”を検索エンジンで画像検索してみると、戦争には絵になるものがあり、具体的なイメージが出てきます。一方の平和には絵になるものがない。つまり抽象的な概念なんです。それが何を意味するのかといえば、コミュニケーションとして伝わりにくいということです」 戦争は目に見える形として存在するからこそ、恐怖のイメージを訴求しやすい。その「伝わりやすさ」が、情報戦に活用されてきた理由でもある』、「たいていの戦争は平和を守るため、少なくとも、それを口実に始められることが圧倒的に多いですから」 その口実がプロパガンダであり、それによって多くの人が戦争に駆り立てられていくことを伊勢﨑さんは「戦争は“セクシー”だから」と表現する」、「「コミュニケーションの観点からすると、戦争は伝わりやすく、平和は伝わりにくい」、などというのはその通りなのだろう。
・『「伝わりにくい平和」をどう伝えるか  伊藤さんが続ける。 「ピース・コミュニケーションの出発点になったのは、平和構築においてコミュニケーションを生かす視点があまりに欠けていたことです。多くの人が正しいことは伝わると思っている。ただコミュニケーションの観点からいえば、正しいか否かは伝わる理由にはならないんです」 伊藤さんがつくるカリキュラムでは、実際の戦争や紛争を通じて、双方が求める「正しさ」が伝わらない理由を考え、議論することを取り入れている。 授業を受けたアフガニスタン人のアリさんは、捕鯨をめぐるNHKの番組『鯨の町に生きる』を取り上げた授業の場面を回想する。 和歌山県太地町は、伝統的な捕鯨やイルカ漁で知られる。しかし近年、捕鯨に反対する海洋環境保護団体などが激しい抗議運動を展開し、町は捕鯨をめぐる国際紛争の舞台と化している。 授業では、捕鯨反対の目線で描かれた映画『ザ・コーヴ』と、伝統としての捕鯨を行う漁師やその家族らの葛藤に迫ったNHKの番組を視聴する。真逆の立場を理解し、双方が求める平和とは何かを考えさせるのが狙いだ。 一方は、捕鯨は悪だとして何とかやめさせようとし、もう一方は、捕鯨を伝統と文化と捉えて納得してもらおうとする。授業を通じ、アリさんは自らの体験と通ずることを感じたという。 「自分たちが正義だと思っていることが、相手の視点に立ってみると違うものに映るんだと痛感したんです。でも、それがぶつかり合ってしまう。自分が体験した戦争にも当てはまるのかもしれないと思いました」 平和を伝える上では、コミュニケーションの原理を理解することが欠かせないと伊藤さんは話す。情報伝達というコミュニケーションでは、常に情報の受け手側が主導権を握っている。一方にとっての正しさは「伝わる」理由にならず、むしろ争いを助長することにもなりかねない。だから授業の根底にあるのは、「相手の前提に立つ」という視点を導入することなのだという。 「『伝えている』のに『伝わっていない』ことの代表格がまさに平和であり、その伝わらない理由を考えるためには、敵対する相手の視点から眺めてみるしかない。正しさではなく、その前提を擦り合わせることがコミュニケーションなんです」 アリさんと同じく授業を受けたファフーム・ディマさん(25)は、イスラエル国籍のアラブ人というルーツを持つ。住んでいた街が砲撃を受けるなど、「戦争」を体験しているディマさんにとって、コミュニケーションの観点から戦争を考えることは「とても実用的な考え方だと感じた」と話す。 ディマさんは、ヘブライ語とアラビア語を理解できる。二つの言語で書かれたメディアを読み比べると、同じ出来事でもトーンがかなり違うことに気付いたという。 「ユダヤ人とアラブ人は、同じ地域に住んでいてもお互いのことをほとんど知らず、メディアや周囲の人から聞いた情報しか持ち合わせていません。私が経験したイスラエル・パレスチナの紛争も、コミュニケーションが紛争を長引かせる要因になっているんです」 ディマさんはこうも言う。「授業を通じて、平和はとても主観的で、表現するのは難しいことだと学びました。クラスのみんなが思い描く平和も人によってバラバラでしたから」 「伝わりにくい平和」をどう伝えるか――。 それは、紛争当事国だけでなく、戦後74年が経ち、「戦争のない時代」として、平成が終わろうとしている日本に向けられた問いでもある、と伊藤さんは言う。 「平和を伝えるアプローチは、戦争被害者の語りに大きく依存しているのが現状です。戦争の悲惨さを伝える場所を訪れて、戦争被害者に話を聞く。そうしたコミュニケーションがこの先数十年で成立しなくなり、今後どのようにして平和を伝えていくべきかということも問われていると思います」 伊藤さんは、日本におけるピース・コミュニケーションとして、新たな平和教育のコンテンツをつくることにも取り組んでいくという。 「『戦争はダメだ』『平和は大事だ』と説く教育アプローチはあっていいし、大切なことだとも思います。戦争と平和という選択肢があれば、多くの人が平和を選ぶ。にもかかわらず、世の中から戦争はなくなっていない。だからこそ、どのように戦争が起こるのかを学ぶことも必要なんです」「これから何をどう語り継いでいくか。戦争におけるコミュニケーションからヒントを探り、どのようにして平和に活用できるかを模索していきたいと思っています」』、「戦争の悲惨さを伝える場所を訪れて、戦争被害者に話を聞く。そうしたコミュニケーションがこの先数十年で成立しなくなり、今後どのようにして平和を伝えていくべきかということも問われていると思います」、というのは重要な指摘だ。「これから何をどう語り継いでいくか。戦争におけるコミュニケーションからヒントを探り、どのようにして平和に活用できるかを模索していきたいと思っています」、などの伊藤氏や伊勢崎氏の努力に大いに期待したい。
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