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環境問題(その4)(3メガ融資先 パーム油生産大手で人権侵害 インドネシアで実態判明 ESG方針の試金石に、欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情 なぜ選挙戦を左右するほどになったのか、いつの間にか周回遅れ 日本の環境意識はどこへ?、旅行大手HISも参入 「パーム油発電」の危うさ CO2排出は火力並み FIT制度揺るがす) [世界情勢]

環境問題については、昨年6月5日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その4)(3メガ融資先 パーム油生産大手で人権侵害 インドネシアで実態判明 ESG方針の試金石に、欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情 なぜ選挙戦を左右するほどになったのか、いつの間にか周回遅れ 日本の環境意識はどこへ?、旅行大手HISも参入 「パーム油発電」の危うさ CO2排出は火力並み FIT制度揺るがす)である。

先ずは、昨年12月11日付け東洋経済オンライン「3メガ融資先、パーム油生産大手で人権侵害 インドネシアで実態判明、ESG方針の試金石に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/253341
・『日本のメガバンク3社から多額の融資を受けているインドネシア食品大手傘下のパーム(アブラヤシ)油生産企業で、数多くの人権侵害が起きている事実が判明。融資継続の是非が問われる事態になっている。 問題が指摘されているのは、インドネシア最大手の食品会社インドフードだ。 マレーシアに本拠を置く国際的なパーム油生産に関する認証団体のRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)の紛争パネルは11月2日に報告書を発表。約2年にわたる検証の結果として、インドフードのグループ企業が所有する北スマトラの農園や搾油工場において、賃金の未払いなど数多くの不正行為が行われていたと指摘した。インドフードのグループ企業であるロンドン・スマトラ・インドネシア社に是正を求めるとともに、RSPOの事務局に認証を停止するように指示した』、「メガバンク」はどうするのだろう。
・『多岐にわたる違法行為  RSPOの通告文書によれば、違法行為の内容は、インドネシアの労働法違反に該当する超過労働や賃金の未払い、退職金の不払い、労働組合への差別的扱い、女性労働者への差別的処遇など多岐にわたっている。RSPOの紛争パネルは「違反行為が蔓延していることに対して、適切な処分を下すべきである」と結論づけている。 こうした中、RSPOによる認証取り消し方針を踏まえて、日本のメガバンク3社の対応に注目が集まっている。国際環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表の川上豊幸氏は「メガバンクのESG(環境・社会・ガバナンス)に基づく投融資ルールが機能するか否かの試金石になる」と指摘する。 RANは2016年10月、インドネシアの労働者権利擁護団体などとともに、インドフードのパーム農園で違法労働が蔓延しているとして、RSPOに苦情処理手続きを申し立てた。今回、違法行為が認定されたことを踏まえ、RANとともに申し立て手続きをしたインドネシアのアブラヤシ農園労働者権利擁護団体OPPUKのヘルウィン・ナスティオン事務局長(アブラヤシ農園労組SERBUNDO会長)は「日本のメガバンクは自社の投融資方針に基づき、きちんとモニタリングをしてほしい。そのうえで、融資を継続するか否か再検討してほしい」と東洋経済の取材に答えている。)インドフードの開示資料によれば、メガバンク3社は9月末現在、インドフードグループに700億円近い融資残高がある。しかもメガバンク3社は5月から6月にかけて、環境や人権問題への配慮を明記した新たな投融資方針を定め、ESGに配慮した事業運営に取り組むことを明らかにしている。それゆえ、事態を静観できなくなっている。 三菱UFJフィナンシャル・グループは5月15日付で「MUFG環境方針」「MUFG人権方針」および「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」を制定。7月1日から適用を開始している。MUFG人権方針によれば、「お客様に対しても、人権を尊重し、侵害しないことを求めていきます」と明記。「提供する商品やサービスが、人権侵害の発生と直接的に結び付いている場合は、適切な対応を取るようにお客様に働きかける」と記している。 三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友銀行は「事業融資方針の制定およびクレジットポリシーの改定について」と題したニュースリリースを6月18日に公表。石炭火力発電や森林伐採と並び、パーム油農園開発への対応を明記したうえで、「違法伐採や児童労働などの人権侵害が行われている可能性の高い融資を禁止します」と明言している』、ESGとは、環境(Environment)、社会的責任(Social)、企業統治(Governance)を指し、機関投資家などが投資する際の判断基準にもなっている。各行は上述のようにさらに細分化した方針を打ち出しているようだ。
・『3メガは個別取引の回答を留保  一方、6月13日に「責任ある投融資等の管理態勢強化について」と題した方針を発表したのがみずほフィナンシャルグループ。法令やルールに違反する取引先について、「公共性や社会的正義、人道上の観点から取引を行わない」と明記。「パームオイル、木材」分野を挙げたうえで、「それらの人権侵害や環境破壊への加担を避けるため、持続可能なパーム油の国際認証・現地認証や先住民や地域社会とのトラブルの有無等に十分に注意を払い、取引判断を行います」と述べている。 問題はこうした方針がきちんと機能しているかどうかだ。東洋経済は3メガバンクに質問状を送付。今回のRSPOによる違法行為認定に関しての見解や融資方針見直しの有無、インドフードおよびグループ企業への融資に際して、これまでどのような注意を払ってきたのかについて尋ねた。 だが、3社とも「個別取引にかかわる質問については回答を控える」などと回答した。そのうえで、みずほは一般論として、「『特定セクターに対する取り組み方針』に基づいた判断を行うとともに、エクエーター(赤道)原則(大規模プロジェクト向け融資における環境・社会への配慮基準)への取り組み等を通じて、環境・社会影響を考慮してリスク管理を行っている」と説明。三菱UFJは「(MUFG人権方針などについては)ビジネス環境の変化に応じて定期的に見直しを行い、個別セクター追加や既存ポリシーの高度化を図る方向で進めていく。パームオイルについても検討対象になると考えている」と答えている。 三井住友は「パーム油に関しては、今年度に事業別融資方針を制定し、融資採り上げに際して、一定の基準を満たした国際認証の取得状況などを確認し、融資判断を行っている。また、“人権侵害につながるようなリスクを最小化するため”お客様との対話に努めている」などとしている。) メガバンクと並んで注目されるのが、公的年金を管理・運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)の動向だ。インドフードの株式は外国株の代表的な株価指数「MSCI ACWI」に組み込まれており、GPIFも同社株式を保有している。 だが、人権侵害を理由に同社株式に関しての投資方針を見直すことは簡単ではないという。GPIFによれば、「個別銘柄への投資判断をすべて外部の運用会社に委託することが法令で定められていること」などを理由に、「特定の企業を投資対象から除外することを指示できない」としている。 そのうえで一般論として、「2017年6月に定めたスチュワードシップ活動原則に基づき、運用会社が重要なESG課題であると考えるテーマについて、投資先企業と積極的にエンゲージメント(建設的な対話)することをGPIFからお願いするとともに、その取り組みを運用会社の評価項目に位置づけている」と回答している』、なるほど。
・『取引中止に動くペプシコ、不二製油  インドフードへのスタンスや働きかけの有無について明らかにしないメガバンクと対照的なのが、インドフードグループからパーム油を調達している欧米や日本の大手食品会社の動向だ。これらの企業は、取引に関する情報開示で先行するとともに、取引見直しの方針も明示している。 世界最大手食品会社のネスレは「9月をもって、商業的な理由によりインドフードとの合弁事業を打ち切ることで合意した」と発表。アメリカのペプシコも、インドフードとの食品合弁会社がインドフードのグループ企業からのパーム油の調達を2017年1月に中止していることを明らかにしている。 ペプシコはホームページ上で、インドフードのグループ企業での労働問題についてNGOがRSPOに苦情申し立てをしていることや、同社と問題の解決に向けて協議を続けてきたこと、RSPOによる認証取り消し方針を踏まえて、インドフードグループに対応を求めていることについても詳しく説明している。 日本企業で注目されるのが、不二製油グループ本社の動きだ。パーム油取り扱いで国内首位の同社は、「責任あるパーム油調達方針」を2016年3月に策定。その中で「先住民、地域住民および労働者(契約労働者、臨時労働者、移民労働者を含む)の搾取ゼロ」を公約。サプライヤーに対しても「児童労働や強制労働または奴隷労働を禁止すること」「すべての適用法令に従って(最低賃金、超過勤務、最大労働時間、福祉手当、休暇に関係する法令を含む)労働者に対して補償を提供すること」などの基準の順守を義務づけるとしている。そのうえで、2020年までに搾油工場までの完全なトレーサビリティの達成を目指す方針を策定し、調達先に法令順守の徹底を促している。 2018年5月には新たに「グリーバンスメカニズム」(苦情処理メカニズム)を策定。消費者やNGOなどからも苦情を受け付けるとともに、苦情処理の進捗状況をホームページ上で公表している。インドフードとグループ企業については、9月30日以降、取引を停止するとの方針が示されている。 その理由について、「NGOや顧客などのステークホルダーから環境や労働問題に関しての懸念が伝えられていたことから、調査やエンゲージメント(建設的な対話活動)を実施したうえで、責任あるパーム油調達方針に基づいて判断した」(山田瑶・CSR・リスクマネジメントグループCSRチームアシスタントマネージャー)という。 このように、金融機関と食品会社とでは、取引先企業への働きかけのレベルにおいて大きく異なる。金融機関もESG方針を定めた以上、問題を起こした企業にどのような対応をしているかの説明が求められるようになっている』、環境金融研究機構の本年6月19日付けニュースによれば、大手米銀のシティ・グループはインドフードグループへの資金提供を停止したようだが、メガバンクはいまだに継続しているようだ。もっともらしい方針には、明らかに反している筈だが、継続するなら説明責任を果たすべきだろう。このままでは、物笑いの種になるだけだ。

次に、みずほ総合研究所 欧米調査部長の安井 明彦氏が6月14日付け東洋経済オンラインに寄稿した「欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情 なぜ選挙戦を左右するほどになったのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/286755
・『保護主義やポピュリズムで騒がしい米欧の政治情勢だが、ともすれば見過ごしがちなのが地球温暖化をはじめとする環境問題への関心の高まりである。 ヨーロッパでは欧州議会選挙で環境系の政党が躍進し、来年に大統領選挙を控えるアメリカでは、民主党の指名候補を決める予備選挙で、環境問題が大きな争点になっている。異常気象の頻発による地球温暖化への関心の高まりはもとより、格差の是正などを含めた左派の主張を結集させる論点として、環境問題の存在感が高まっていることは見逃せない』、ヨーロッパだけでなく、アメリカでも「環境問題の存在感が高まっている」とは頼もしい。
・『バイデン前副大統領の「宣言」  「大統領就任初日には、われわれを正しい方向に導くために、オバマ―バイデン政権時代の提案をはるかに超え、前例のない新たな一連の大統領令に署名する」 この何とも勇ましい宣言は、アメリカの大統領選挙で民主党の予備選挙に出馬しているバイデン前副大統領が、6月4日に発表した環境問題に関する公約の一文だ。 民主党の候補者争いで支持率のトップを走るバイデン氏だが、本格的な公約を発表したのは環境問題が初めてである。自らが副大統領を務めたオバマ政権の取り組みを上回り、「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」とうたうなど、極めて意欲的な内容が盛り込まれた。 数ある政策のなかで、まずバイデン氏が環境問題での公約発表を選んだのは、民主党の予備選挙において、この問題が熱い注目を集めている証しである。世界の関心は米中貿易摩擦などに集まりがちだが、2020年の大統領選挙に向けた予備選挙の現場では、環境問題が見逃せない争点に育ちつつある。 環境問題の存在感が高まっているのは、アメリカだけではない。ヨーロッパにおいても、5月23~26日に投票が行われた欧州議会議員選挙において、緑の党などの環境系政党が大きく議席を増やした。イギリスのガーディアン紙が「静かな革命がヨーロッパを席巻した」と報じたように、欧州議会では4番目の会派となる議席数を獲得、国別でもフランスでは第3政党、ドイツでは第2政党となるなど、予想外の躍進を果たしている。 アメリカとヨーロッパで同時に進行する環境問題への関心の高まりは、世論調査にも明らかだ。ピュー・リサーチセンターの調査によれば、アメリカで「気候変動(温暖化)は自国にとって深刻な脅威である」と答える割合は、2013年の40%から2018年には60%近くにまで上昇している。ヨーロッパの主要国でも、フランスで同様の回答が50%台から80%台にまで大幅に上昇したのを筆頭に、イギリスで約20%ポイント、ドイツでも約15%ポイントの上昇を記録している(図1)』、確かに「世論調査」でも如実に表れているようだ。
・『興味深いのは、アメリカとヨーロッパ主要国の双方において、環境問題が左右の政治勢力を分かつ争点になっている点だ。ピュー・リサーチセンターの調査によれば、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスのいずれの国においても、気候変動を自国の深刻な脅威と指摘する割合は、右派の支持者ほど低く、左派の支持者では高い傾向がある(図2)。 とくに左右の違いが大きいのは、アメリカである。2018年の世論調査では、民主党支持者の9割近くが、気候変動を自国の深刻な脅威と指摘している。その一方で、同様の回答を行う共和党支持者の割合は、3割程度にとどまっている』、確かにアメリカでは左右の違いが大きいようだ。
・『アメリカではほぼ民主党に限られた「現象」  アメリカにおける地球温暖化問題への関心の高まりは、ほぼ民主党支持者に限られた現象だ。2013年からの世論調査の変化をさかのぼると、気候変動を自国に対する深刻な脅威と回答する共和党支持者の割合は、20%台での微増にとどまっている。一方で、民主党支持者による同様の回答は、60%弱から80%を上回るまでに増加している。あまり共和党支持者の意見が変わらない一方で、民主党支持者の意見だけが大きく変わり、その結果として党派対立が厳しくなる構図は、民主党の支持者が寛容になり、共和党支持者との意見の相違が広がった移民問題と似通っている(『日本人が知らない欧米のきわどい「移民問題」』)。 党派的な立場による意見の分裂からは、既存の政治に不満を抱える有権者のうち、左寄りの主張を持つ人々を惹きつける政策として、環境問題の魅力が高まっている様子がうかがえる。 左派の政策といっても、富裕層増税や大企業批判だけでは、どうしても新味に欠ける。その一方で、各地での異常気象の頻発により、地球温暖化の影響が実感され始めている。政府による対応が求められるなど、「大きな政府」との親和性が高いこともあり、左派勢力にとっては環境問題のもつ吸引力が際立ちやすい環境である。 とくにアメリカでは、グリーン・ニューディールの名の下で、環境問題を中心に据えて、左派的な政策を結集させていく試みが進んでいる。 グリーン・ニューディールは、2018年11月に投開票が行われたアメリカ議会中間選挙で、史上最年少の女性下院議員となったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏が公約に掲げ、一躍有名になった構想である。アメリカ有力紙の記事件数をみると、中間選挙直後から件数が急増している。2019年に入ると、かねて民主党支持者に関心の高かったメディケア・フォー・オール(国家主導の国民皆保険制)を上回る月があるほどだ(図3)』、オカシオコルテス氏に対してはトランプ大統領が激しく攻撃しているようだ。
・『グリーン・ニューディール構想の特徴は、大胆な地球温暖化対策であるだけではなく、温暖化対策の強化を突破口にして社会・経済システムの広範な改革を実現しようとする点にある。具体的には、まず温暖化対策の強化により、新たな技術の開発や、関連産業による雇用の増加が目指される。 次に、創出された新たな雇用に関しては、労働者の権利保護や職業訓練の充実など、格差の是正を意識した取り組みが盛り込まれている。さらには、国家を総動員した政策が目指す理想像として、政府が働きたい国民すべてに雇用を保証する仕組み(『米民主党がブチ上げた「雇用保証」とは何か』)や、メディケア・フォー・オールといった大掛かりな改革を、グリーン・ニューディールの延長線上に位置づける向きもある』、民主党がますます左旋回すると、次期大統領選挙には不利だろう。
・『対中政策とも連動している  バイデン氏の公約発表は、民主党の予備選挙における環境問題の吸引力の強さを表している。 左傾化が指摘される民主党において、環境政策以外の分野では、バイデン氏は中道寄りの立場を鮮明に打ち出してきたからだ。大胆に斬新な政策を打ち出すというよりも、「オバマ時代への回帰」を印象づけるのがバイデン氏の戦略であり、サンダース上院議員やウォーレン上院議員など、左寄りの性格が強い候補者と一線を画すセールス・ポイントである。 例えば医療の分野では、バイデン氏はメディケア・フォー・オールへの支持を明確にしておらず、オバマケアの漸進的な発展を主張するにとどまってきた。 ところが、環境問題は勝手が違った。実はバイデン氏にとって環境問題は、「オバマ時代への回帰だけでは物足りない」とする批判の象徴的な存在になりかねなかった。同氏のアドバイザーが、化石エネルギーの選択肢を残すなど、中道寄りの提案を模索しているとの報道が流れ、サンダース氏などから厳しい批判を受けていたからだ。 そうした批判の高まりからほどなく、バイデン氏は今回の公約の発表に踏み切った。医療の分野では左傾化圧力を受け流してきたバイデン氏も、環境問題が争点に浮上するや否や、直ちに「オバマ時代超え」を宣言した格好である。 バイデン氏の公約では、医療保険制度までをも含む社会・経済システムの改革を求めているわけではない。しかし、グリーン・ニューディールの考え方については、「非常に重要な枠組みである」と評価している。また、単なる温暖化対策にとどまらず、新技術・新産業の発展と、それによる雇用の創出を目指している点などでは、ほかの候補者と共通した広がりがある。 興味深いのは、対中政策との関連である。バイデン氏は、中国を名指ししたうえで、温暖化対策への取り組みが不十分な国からの輸入に対し、課徴金や輸入制限を行うよう提案している。また、産業政策や一帯一路構想を通じ、国内外で石炭エネルギーを補助していると批判し、国際的な連携によって対中圧力を強める方針も明らかにしている』、対中政策はトランプと同じく強硬なようだ。
・『これまでバイデン氏は、「中国とは競争にならない」と発言したと伝えられるなど、対中政策の手ぬるさが批判されてきた。今回の公約からは、環境政策を手掛かりに、対中政策で反転攻勢に出ようとするバイデン氏の思惑がうかがえる。 もちろん、民主党の予備選挙で盛り上がったからといって、アメリカの環境政策が大きく変わるとは限らない。環境政策は、党派によって大きく主張が分かれる論点である。たとえ2020年の大統領選挙で民主党の大統領が誕生したとしても、議会で共和党の賛同が得られない限り、グリーン・ニューディールを推進するような法律を成立させることは難しい』、環境政策には議会の壁が高そうなのは残念だ。
・『トランプ氏は「社会主義」と批判  また、それ以前の問題として、大統領選挙の段階において環境政策を軸とした論法が、民主党の命取りとなる可能性がある。その実現に巨額な財源が必要であるだけでなく、左派的な政策を結集させる論点になっている以上、「大きな政府」に対する反感を呼び起こしやすいのは間違いない。実際にトランプ大統領は、グリーン・ニューディールを「社会主義」と批判している。 しかし、共和党も油断は禁物である。安全保障や健全財政など、伝統的に共和党が重視してきた政策分野と、環境問題の結びつきが強まっているからだ。地球温暖化問題は、基地の立地や航路の変更を強いられる点などから、安全保障上のリスクとして位置づけられていると同時に、災害対策費用の増加につながる点で、財政上のリスクとしても意識され始めている。 それだけではない。アメリカとヨーロッパに共通した特徴として、環境問題への関心の高まりは、若い世代に牽引されている。アメリカでは、全体としては環境問題への関心が低い共和党支持者ですら、1980年代以降に生まれたミレニアル世代は、支持者の主力であるベビー・ブーマー世代(1946~1964年生まれ)よりも、「現在の温暖化対策は不十分」と考える割合が高い。 環境問題への関心の高まりは、左派にとっては、既存の政治に対する批判を取り込み、若い世代を惹きつける格好の機会になりえる一方で、右派にとっては、世代交代に取り残されないために、足掛かりを模索しなければならない試練となる。 かねてアメリカでは、共和党の支持者に占める高齢者の比率が着実に高まっている。次世代の関心事項を取り込めるかどうかは、目先の選挙への影響を超えた意味合いを持つ。共和党としても、「大きな政府」に頼らない切り口で、右派なりの環境政策を語る知恵が求められている』、「右派なりの環境政策を語る知恵」、とはいっても実際には難しそうだ。

第三に、作家の冷泉彰氏が7月7日付けメールマガジンJMMに投稿した「[JMM1061Sa]「いつの間にか周回遅れ、日本の環境意識はどこへ?」from911/USA」を紹介しよう。
・『大阪G20が無事に終了しましたが、日本での関心としては米中の通商交渉、そしてG20直後に起きた米朝の首脳会談の方に集中したという印象です。その結果として、G20自体への関心の薄さが際立っています。G20そのものに関しても、空前の警備体制ばかりが話題になる中で、何が話し合われ、何が決まったのかという「内容」については、余り報道されていないようです。 今回のG20で出された「首脳宣言」についていえば、まず全体のテーマである「SDGs(持続可能な開発)」という概念すら改めて報じられることがなく、その結果として、個々の実行計画についての報道も極めて少なかったようです。若者と女性の雇用におけるエンパワーメントであるとか、グローバル金融と情報セキュリティ問題など喫緊の課題が多かったのに、折角のG20を社会としての取り組みの契機にできないというのは、残念としか言いようがありません』、日本政府の広報担当者がこれらの点をきちんとPRしなかったためだろう。
・『中でも問題なのが、環境問題です。今回のG20において環境問題というのは、大きな目玉でした。首脳宣言においても、34.「地球環境問題と課題」「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)及び「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)の重要な作業に留意しつつ,また,近年の異常気候や災害に照らして,我々は,気候変動,資源効率,大気汚染,土地汚染,淡水汚染,海洋プラスチックごみを含む海洋汚染,生物多様性の損失,持続可能な消費と生産,都市環境の質その他の環境問題を含む複雑で差し迫ったグローバルな課題に対処し,また,持続可能な成長を促進しながら,最良の入手可能な科学を用いて,エネルギー転換を促進し主導する緊急の必要性を認識する。 産業界が公的部門と相乗効果を持って重要な役割を果たす形で,環境と成長の好循環が技術革新を通じて行われるパラダイム・シフトが必要とされている。この目的のため,我々は,好循環を加速化させ,強じんで,包摂的で,持続可能な将来への転換を主導する重要性を強調する。我々は,具体的で実際的な行動をとり,世界中から国際的な最良の慣行と知識を集め,公的及び民間の資金,技術及び投資を動員し,ビジネス環境を改善する重要性を強調する。という具体的な提言がされています。 こうしたメッセージが、日本国内で十分に報じられているとは思えません。中でも特に気になるのは「気候変動」の問題です。この間も、鹿児島県では記録的な豪雨に見舞われました。この季節は、多くの死者を出した2018年の西日本豪雨の被災がちょうど1年前、2017年の北九州豪雨の被災が2年前で、それぞれに復興が十分ではない一方で、災害の記憶は生々しいものがあります。 また、台風の被害も深刻化しており、2018年9月の台風21号では大阪を中心に西日本では大きな被害が出ました。また台風被害ということでは、2016年8月末に起きた台風10号では、東北の太平洋岸から北海道の十勝地方など、以前には台風被害の余り報告されていない地域で甚大な被害が出ています。 一連の異常な気象災害に関しては、勿論大きな話題にはなっています。ですが、全く原因の異なる地震と結びつけて「日本列島は自然災害の厳しい地域なので、一層の防災・減災対策により国土を強靭化する」といった議論は出たり入ったりしますが、異常な気象現象の主因が地球規模での温暖化であり、その原因は二酸化炭素の排出増だという議論は余り見られません。 一方で、プラスチックごみの問題は、細粒化したプラスチックが深刻な海洋汚染を生じているわけです。この問題については、今回のG20で大きく取り上げられたことを契機に、日本でもようやく認知が進みましたが、やはり認識は十分ではありません。 1997年12月にCOP3が京都で行われ、いわゆる京都議定書が採択された際には、大きな話題になりましたが、それから22年を経過した現在、日本における環境論議は冷却してしまっています。 その後、2015年12月のパリCOP21では「パリ協定」が締結され、日本は2030年までに、2013年比で、温室効果ガス排出量を26%削減するという目標設定で合意しています。実は、その達成は簡単ではなく、炭酸ガスの取引などを使って相当な努力をしないといけないのですが、その議論も十分ではありません。 例えば、現在行われている参院選においても、環境論議は停滞しています。驚いたのは、左派新党の「れいわ新選組」の環境政策です。「原発即時禁止・被曝させない」というスローガンに続いた具体的な政策の中では「エネルギーの主力は火力」と大きくうたっています。そこには、パリ協定の削減目標への言及はなく、温暖化や気候変動への問題意識も全くないのです。 立憲民主党の場合は、さすがに民主党時代にCOPなどへ参画した流れから、「パリ協定の1.5℃目標に向け、2050年CO2排出ゼロをめざし、気候変動対策を進めます。」という文言は政策として掲げられています。そうなのですが、「エネルギー・環境ビジョン」の冒頭には、この問題ではなく「原発再稼働を認めず、原発ゼロ基本法案の早期成立を目指します。」というスローガンが掲げられています。 政権与党の自民党の場合はさすがに総花的で「徹底した省エネ、再エネの最大限の導入、火力発電の高効率化、原発依存度の可能な限りの低減などの方針を堅持しつつ、安定供給と低コスト化を両立するための技術革新を図ることで2030年エネルギーミックスの確実な実現を目指します。また、2050年に向けたエネルギー転換・脱炭素化を目指し、あらゆる選択肢を追求します。」という記述が見られますが、公約中の大きなボリュームを占める防災・減災に関する部分では、気候変動への言及はありません』、確かに与野党とも「エネルギー転換・脱炭素化」や「気候変動」には腰が引けている。
・『つまり、折角高いお金をかけて誘致して、猛烈な警備体制でトラブルなくG20を実施することができたのに、SDGsや環境に関するメッセージは、少なくとも日本の政界や有権者には届いていないわけです。 また、日本は自然を大切にする文化を基盤にしながら、高度成長期の公害問題を、環境技術と省エネ技術で克服した、いわば環境問題の優等生であったはずです。にも関わらず、一体どうして、このような状況に立ち至っているのでしょうか? 1つには、2011年に発生した福島第一原発事故の影響が余りにも大きかったということがあります。冷静に考えてみれば、この原発事故で直接高線量に被曝することで健康被害を受けた人というのは、極めて限定的です。ですが、社会に与えた不安感や、原子核物理の原理を知っている人と知らない人のデバイド、そして賛否両論の激しい応酬や、結果的に深刻化している風評被害などは、現在でもその多くが克服されていません。 その結果として、いつまでもこの問題が政治的関心の吸引力を持つこととなり、「即時原発廃止」であるとか「再稼働禁止」といった極端な議論が多くの支持を集めてしまっています。その延長で、左派政党の主張として「エネルギーの主力は火力」というスローガンが掲げられるという驚くべき事態となっているわけです。 2点目としては、人口縮小、経済の縮小という問題があります。パリ協定の目標値との関連でいえば、日本の場合は「排出ガスの総量」では何とか目標のカーブに沿った削減ができています。ですが、人口一人当たりの排出ガスということでは、まだまだ世界の中ではトップクラスの高水準となっています。ですから、非常に単純化していえば、人口減少と経済の縮小によって国全体としては、削減ができているという構造となっています。 ということは、SDGs(持続可能な開発)という思想から見れば、一人一人のライフスタイルは環境負荷という面では決して持続可能ではない一方で、雇用や報酬ということで言えば、女性や若者へのエンパワーメントという点で、問題を抱えているということにもなります。 つまり、環境と産業構造、再分配といった社会の構造的な問題把握や、改善への方向性といった論議が非常に欠けているわけです。別の角度から言うのであれば、環境問題が「衣食足りて礼節を知る」と言う言葉の「礼節」の部分であるのならば、その「衣食」が足りなくなってくることで、関心が薄れている、そのような危険性も感じます。 3つ目は、自然災害、特に気候変動の問題です。欧米では、ここ数年の異常気象が温暖化の問題と関係付けられて、深刻な議論が進められています。例えば、アメリカでの環境論議を牽引している格好の、アレクサンドリア・オカシオコルテス議員が、「グリーン・ニュー・ディール」を主唱し始めた一つの契機は、彼女の両親の故郷であるプエルト・リコにおける2017年9月の「ハリケーン・マリア」被災であると言われています。 欧州でも毎年のように、異常な降雨や高温といった現象が起きていますし、北米の場合、2018年から19年にかけて西部では異常な降雪と雪解け水による洪水、更には豪雨被害など以前には考えられなかったような被害が出ています。欧州における、こうした異常気象は、温暖化、そして排出ガス問題と結びつけての議論がされています。 一方で、日本の場合も前述のように異常な気候変動が毎年大きな被害をもたらしているわけですが、この問題を温暖化理論と結びつけ、世界的な二酸化炭素削減問題として議論するという流れは、余り出てきていません。少なくとも、今回の参院選における与野党の議論ではほとんどゼロとなっています。 私が恐れているのは、その日本の感覚がアメリカの保守主義における自然観に似通ってきているという点です。 アメリカの保守主義の立場は、温暖化理論を認めません。何故ならば、雷雨、竜巻、雹(ひょう)、暴風雪といった大平原特有の激しい気象災害は、「神の下した試練」であり、これに対して人間は「同じく神の恵み」である石油や石炭などの資源を使って自分たちの開拓した農園や鉱工業を守っていくのは当然という考え方があるからです。 つまり神に選ばれた存在である人間は、人為の限りを尽くして神の試練である自然と戦って良いのであって、その人為が気候変動の原因だなどという神に対して僭越な認識は信じないのです。 日本の場合は、手つかずの自然というのが尊敬と崇拝の対象となるわけです。そうなると、いかに台風の被害や豪雨被害が前代未聞であっても、それはあくまで「母なる自然」の下した人間への試練であるわけで、その試練に対しては生存を守るために人為で戦うのが正当であり、「母なる自然」そのものを排出ガス削減で変更できるという感覚は薄いのかもしれません。 そうなると、手つかずの自然を崇拝する日本の文化が、人為への自制という発想のないアメリカの化石燃料に依存した保守カルチャーと、まるで似たような発想法になってきているとも言えます。 つまり、これだけ豪雨や台風での被害が激化していても、その対策として「排出ガス削減」への問題意識が生まれないというのは、「原発への直感的な忌避が優先する」とか「人口と経済の縮小により環境という礼節への関心が薄れた」という問題とは、全く別の問題として「自然の怒りを謙虚に受け止める」的なカルチャーが「悪さ」をしているのではないか、そのようにも思われるのです』、「手つかずの自然を崇拝する日本の文化が、人為への自制という発想のないアメリカの化石燃料に依存した保守カルチャーと、まるで似たような発想法になってきているとも言えます」、というのにはやや無理もあるが、面白い指摘だ。
・『そんな中、かつて97年のCOP3京都会議の頃には、「途上国へも過去の先進国同様の排出権を」と主張して、全体目標に対して激しく反発していた中国が、現在では、自家用車の全面EV(電気自動車)化へのメドをつけ、原発を含むエネルギー多様化への道のりにも目算をつける中で、排出ガス問題での優等生を狙っているという状況となりました。 また、前述のようにアメリカでは、AOCことオカシオコルテス議員の主唱する「グリーン・ニュー・ディール」政策が民主党の大統領候補たちが政策パッケージとして採用し始めています。先週行われた第一回の民主党TV討論で、バイデン候補を追い詰めて人気が急上昇中のカマラ・ハリス候補(上院議員、カリフォルニア州選出)もその一人です。 このような状況が続きますと、やがて日本の環境政策は国際社会から孤立してゆく危険性を感じます。少なくとも、参院選における各党の主張を見る限り、そうした不安感は払拭できません。 そんな中で、環境省では事務次官に官房長であった鎌形浩史氏が就任したという報道に接しました。私事にわたりますが、鎌形氏とは遥か昔にお互いに塀を隔てた隣の高校に在籍する中で、ある時期大変に親しい交友を結んだ記憶があります。鎌形氏の恩師であった木戸一夫という先生の門下で共に学んだこともありますし、何よりも鎌形氏の鋭利でありながら温かみのある独特の知性には刺激を受けたのを覚えています。 鎌形氏とは、その後は親交が途切れ、環境官僚になっていることも知りませんでした。ですが、今回次官就任の報に接して、難局の中ではありますが個人的なエールを送りたいと思います』、「やがて日本の環境政策は国際社会から孤立してゆく危険性を感じます」、その通りなのかも知れない。冷泉氏のかつての親友の鎌形浩史氏が環境省事務次官に就任したようなので、鎌形氏の活躍にせいぜい期待したい。

第四に、8月21日付け東洋経済オンライン「旅行大手HISも参入、「パーム油発電」の危うさ CO2排出は火力並み、FIT制度揺るがす」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/298320
・『熱帯雨林などのエコツアーに熱心で、「地球環境の保全」を標榜している大手旅行会社エイチ・アイ・エス(以下、HIS)が、環境保護団体からの厳しい批判にさらされている。 FoE JAPANなど国内外の環境保護団体は7月30日、HISが子会社を通じて宮城県角田(かくだ)市で計画を進めているパーム油を燃料としたバイオマス発電事業からの撤退を求める署名約14万8000筆を同社宛てに送付した。 同日の記者会見でFoE JAPANの満田夏花事務局長は、「パーム油発電は熱帯雨林を破壊し、地球の気候や生物多様性に悪影響を与える。HISは事業をやめるべきだ」と訴えた』、「「地球環境の保全」を標榜」しながら、問題が多い「バイオマス発電事業」を進めるとは、HISはどうなっているのだろう。
・『調達先が確定していない?  西アフリカ原産のアブラヤシの実から精製したパーム油は、単位面積当たりの収量が菜種油や大豆油などと比べて多いことなどから現在、植物油脂の中で最も多く生産されている。マーガリンやスナック菓子などの食用のみならず、化粧品などの原料としても幅広く用いられている。インドネシアやマレーシアを中心として全世界での年間の生産規模は7000万トンに達し、そのうち約75万トンが日本に輸入されている。 HISはそのパーム油を、発電用燃料として用いようとしている。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に基づき、発電した電力を高値で売れることに目をつけた。 現在、角田市内では、HIS子会社による発電所建設工事が2020年3月の完成に向けて急ピッチで進められている。7月初めに現地を訪れると、大型トラックなどの工事車両がひっきりなしに出入りしていた。だが、表向きの工事の順調さとは裏腹に、不透明感が強まっている。 6月の角田市議会での日下七郎市議の質問に対して、大友喜助・角田市長から注目すべき発言があった。「(HISに確認したところ)認証パーム油の調達先などについては確定しておらず、現在調整中だ」(大友市長)。 HISが取材に応じないため詳細は明らかでないが、パーム油調達の見通しが立たないまま、建設工事が先行している可能性が高い。 HISの子会社は3月に国際的なパーム油の認証団体「RSPO」(持続可能なパーム油のための円卓会議)の正会員になり、RSPOの認証を受けたパーム油調達を進めようとしている。経済産業省が設備稼働の条件として、RSPO認証の取得などを通じた、環境破壊を伴わない「持続可能性」の確認を義務付けているためだ。 HISの子会社が計画している発電所の出力は4万1000キロワット。そこから計算すると、燃料として調達が必要なパーム油の量は年間約7万~8万トン程度と見られる。HISはそれに見合うRSPO認証油を確保しなければ発電所を稼働させることはできない。しかし、そのハードルはきわめて高いと見られている。 RSPOなどの第三者認証を取得したパーム油の大半は現在、欧米に輸出されており、日本に入ってきている量は少量と見られる。それもほとんどが燃料以外の利用だ。パーム油発電を行うにあたって経産省は、非認証油と混ざらない形で厳しく分別管理された認証油の使用を発電事業者に求めている。 このハードルをクリアし、発電所を動かすことはできなければ、HISの場合、約90億円とも見られている設備投資が無駄になるおそれがある。計画に反対する立場から2月にHISの澤田秀雄社長と面談した東北大学の長谷川公一教授(環境社会学)は、「澤田氏自身、パーム油発電の実情についてあまりご存じでなかった。確たる展望があって事業を進めているのか、疑問を感じた」と語る』、澤田氏は誰かの上手い売り込みにじっくり検討することなく、すぐ乗ってしまったのかも知れないが、お粗末極まる。
・『火力発電所3基分に匹敵する認定  HISに限らず、パーム油発電に目を付けた発電事業者は少なくない。経済産業省によれば、2018年12月末時点でのパーム油発電所のFIT認定容量は、約180万キロワット。大手電力会社が運営する大型の火力発電所3基分に相当する規模だ。 それらすべての計画が実現した場合、経産省の試算では、パーム油の年間使用量は最大で360万トンに達する。現時点で稼働済みの発電所での使用量である約18万トンの20倍に相当する規模だ。食用や化粧品などの主たる用途での使用量(約60万トン)をもはるかに上回る。 もしも、180万キロワットもの発電所建設計画が現実になった場合、いったい何が起こるのか。国際価格の高騰をもたらし、食品産業の原料調達に支障を来す可能性があると経産省自身が危惧している。パーム油生産のために新たに熱帯雨林が切り開かれ、環境破壊が一段と深刻になるおそれもある。 パーム油発電のFIT認定量の急増に直面した経産省は、実際の建設を抑制すべく、ガイドラインを策定して買い取り対象となる電力に使用されるパーム油を「RSPO認証またはそれと同等」に限定した。これにより、事業開始に一定の歯止めがかかっていることは確かだ。 もっとも、「使用するパーム油がRSPO認証を取得していれば、森林破壊につながらないのかと言えば、そうとも言えない」(地球・人間環境フォーラムの飯沼佐代子氏)。RSPO自体、監査の実効性確保など課題が指摘されているうえ、パーム油の需要が増えれば、さらなるアブラヤシ農園の開発が加速する可能性が高いためだ』、「パーム油の年間使用量は最大で360万トンに達する。現時点で稼働済みの発電所での使用量である約18万トンの20倍に相当する規模だ。食用や化粧品などの主たる用途での使用量(約60万トン)をもはるかに上回る」、いくら「買い取り対象となる電力に使用されるパーム油を「RSPO認証またはそれと同等」に限定」したところで、到底実現不可能な膨大な数字だ。経産省はもっと本格的に抑えるべきだろう。
・『また、パーム油生産が一大産業になっているマレーシアやインドネシアの政府は、自らの主導で構築した認証制度をRSPOと同等と見なすように日本政府に強く働きかけている。環境負荷が大きいことから、EU(欧州連合)がパーム油の燃料利用を抑制すべく規制強化を進めている中で、インドネシアやマレーシア政府は代わりとなる新たな市場として日本に大きな期待を寄せている。 パーム油発電の業界団体も「(両政府肝いりの認証制度が)RSPO認証と同等と認められることにより、安定的に事業を運営していけることを期待している」(池田力・バイオマス発電協会常務理事)という。 だが、そうした国家主導の認証制度については、認証取得のハードルが低いうえに、メタンなど温室効果ガスの大量排出につながる泥炭地の開発を禁止していないことなど、「抜け穴の多さ」も指摘されている。仮に認証の基準が緩められると、乱開発した農園からの生産物であっても基準に適合することになり、大量に輸入される道が開かれる。現在、様子を見ているFIT認定を受けたパーム油発電所の建設が一斉に始まる可能性も高い』、「マレーシアやインドネシアの政府は、自らの主導で構築した認証制度をRSPOと同等と見なすように日本政府に強く働きかけている」、こんあのは認めるべきではない。
・『温室効果ガスの排出は火力発電所並み  パーム油などのバイオマス燃料は一般に「カーボンニュートラル(炭素中立)」と称されている。植物は大気中の二酸化炭素を吸収・固定するため、仮に発電などに使用しても「入り」と「出」が同じで、温室効果ガスの増大を伴わないという理屈だ。しかし、実際はそうとも言い切れない。 経産省が設置したバイオマス燃料の持続可能性の確認を検討するための専門家会合に提出された資料によれば、パーム油発電(アブラヤシの栽培から、加工、輸送、燃焼に至るライフサイクルベース)で発生する二酸化炭素などの温室効果ガスの量は、LNG(液化天然ガス)コンバインドサイクル火力発電並みと試算されている。 パーム油の製造過程や運搬に重油などの化石燃料が多く使われるためだ。また、製造工程で発生するメタンガスの処理が不適切な場合、温室効果ガスの排出量は通常のLNG火力のそれを上回る。そればかりでなく、アブラヤシの栽培時に泥炭地の開発を伴う場合には、土地利用の変化がない場合と比べて、温室効果ガスの排出量は139倍にもなると試算されている。 「温室効果ガス排出量の多さ1つを取っても、パーム油発電には重大な問題がある」と、バイオマス利用に詳しい泊みゆき・バイオマス産業社会ネットワーク理事長は指摘する。 そもそもFIT制度は、再エネの利用を通じて温室効果ガスを削減することを目的としている。FIT制度は、電気料金に上乗せして徴収される、私たち電力ユーザーの多額の負担金によって支えられている。 「パーム油を含めたバイオマスの利用については、化石燃料を燃やして発電した場合よりも環境負荷が少ないと言えるのか、定量的なチェックが必要だ」。相川高信・自然エネルギー財団上級研究員はこう指摘する。 8月22日、経産省は有識者による会合を開催し、パーム油利用などバイオマス発電の持続可能性を担保するためのルール案を提示する。議論は大詰めを迎えている』、「アブラヤシの栽培時に泥炭地の開発を伴う場合には、土地利用の変化がない場合と比べて、温室効果ガスの排出量は139倍にもなると試算」、こんなのをFIT制度に乗せようとするのは、制度本来の趣旨を逸脱した「悪乗り」だ。「持続可能性を担保するためのルール案」を厳格にすべきなのは、言うまでもない。
タグ:環境問題 東洋経済オンライン グリーン・ニューディール 安井 明彦 JMM 「れいわ新選組」 (その4)(3メガ融資先 パーム油生産大手で人権侵害 インドネシアで実態判明 ESG方針の試金石に、欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情 なぜ選挙戦を左右するほどになったのか、いつの間にか周回遅れ 日本の環境意識はどこへ?、旅行大手HISも参入 「パーム油発電」の危うさ CO2排出は火力並み FIT制度揺るがす) 「3メガ融資先、パーム油生産大手で人権侵害 インドネシアで実態判明、ESG方針の試金石に」 インドネシア最大手の食品会社インドフード 国際的なパーム油生産に関する認証団体のRSPO 紛争パネルは11月2日に報告書を発表。約2年にわたる検証の結果として、インドフードのグループ企業が所有する北スマトラの農園や搾油工場において、賃金の未払いなど数多くの不正行為が行われていたと指摘した。インドフードのグループ企業であるロンドン・スマトラ・インドネシア社に是正を求めるとともに、RSPOの事務局に認証を停止するように指示した 多岐にわたる違法行為 3メガは個別取引の回答を留保 取引中止に動くペプシコ、不二製油 シティ・グループはインドフードグループへの資金提供を停止 「欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情 なぜ選挙戦を左右するほどになったのか」 バイデン前副大統領の「宣言」 アメリカとヨーロッパ主要国の双方において、環境問題が左右の政治勢力を分かつ争点になっている アメリカではほぼ民主党に限られた「現象」 オカシオコルテス 対中政策とも連動している トランプ氏は「社会主義」と批判 冷泉彰 「[JMM1061Sa]「いつの間にか周回遅れ、日本の環境意識はどこへ?」from911/USA」 今回のG20において環境問題というのは、大きな目玉 異常な気象現象の主因が地球規模での温暖化であり、その原因は二酸化炭素の排出増だという議論は余り見られません 「パリ協定」 2013年比で、温室効果ガス排出量を26%削減するという目標設定で合意しています。実は、その達成は簡単ではなく、炭酸ガスの取引などを使って相当な努力をしないといけないのですが、その議論も十分ではありません 「エネルギーの主力は火力」 アメリカの保守主義 アメリカの保守主義の立場は、温暖化理論を認めません 大平原特有の激しい気象災害は、「神の下した試練」であり、これに対して人間は「同じく神の恵み」である石油や石炭などの資源を使って自分たちの開拓した農園や鉱工業を守っていくのは当然という考え方がある 日本の場合は、手つかずの自然というのが尊敬と崇拝の対象となるわけです。そうなると、いかに台風の被害や豪雨被害が前代未聞であっても、それはあくまで「母なる自然」の下した人間への試練であるわけで、その試練に対しては生存を守るために人為で戦うのが正当であり、「母なる自然」そのものを排出ガス削減で変更できるという感覚は薄いのかもしれません 「旅行大手HISも参入、「パーム油発電」の危うさ CO2排出は火力並み、FIT制度揺るがす」 HISが子会社を通じて宮城県角田(かくだ)市で計画を進めているパーム油を燃料としたバイオマス発電事業からの撤退を求める署名約14万8000筆を同社宛てに送付し パーム油調達の見通しが立たないまま、建設工事が先行している可能性が高い 燃料として調達が必要なパーム油の量は年間約7万~8万トン程度と見られる。HISはそれに見合うRSPO認証油を確保しなければ発電所を稼働させることはできない。しかし、そのハードルはきわめて高いと見られている 澤田秀雄社長と面談した東北大学の長谷川公一教授(環境社会学)は、「澤田氏自身、パーム油発電の実情についてあまりご存じでなかった。確たる展望があって事業を進めているのか、疑問を感じた」と語る 火力発電所3基分に匹敵する認定 2018年12月末時点でのパーム油発電所のFIT認定容量は、約180万キロワット。大手電力会社が運営する大型の火力発電所3基分に相当する規模 パーム油の年間使用量は最大で360万トンに達する。現時点で稼働済みの発電所での使用量である約18万トンの20倍に相当する規模だ。食用や化粧品などの主たる用途での使用量(約60万トン)をもはるかに上回る マレーシアやインドネシアの政府は、自らの主導で構築した認証制度をRSPOと同等と見なすように日本政府に強く働きかけている 温室効果ガスの排出は火力発電所並み
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健康(その8)(「根拠のない健康情報」はなぜ拡散されやすいか デマに加担しないためのリテラシーが必要だ、ニセ科学「ホメオパシー」の実践が危険な理由 毒物の「ヒ素」でさえ薬にしてしまう謎理論、毎日心地よく暮らす人の脳は危険な状態にある そのままだと人生が詰んでしまう) [生活]

健康については、4月28日に取上げた。今日は、(その8)(「根拠のない健康情報」はなぜ拡散されやすいか デマに加担しないためのリテラシーが必要だ、ニセ科学「ホメオパシー」の実践が危険な理由 毒物の「ヒ素」でさえ薬にしてしまう謎理論、毎日心地よく暮らす人の脳は危険な状態にある そのままだと人生が詰んでしまう)である。

先ずは、5月10日付け東洋経済オンライン「「根拠のない健康情報」はなぜ拡散されやすいか デマに加担しないためのリテラシーが必要だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/279071
・『健康に関する情報はいまやウェブでも数多く読めるようになりました。しかし、効果や科学的根拠の不確かな情報がSNSを通じて広まってしまったこともあります。誤った情報の拡散に加担しないためにも、真偽を見極めるリテラシーが必要です。 医学部を卒業し、NHKチーフ・ディレクターとして医療、福祉、健康分野で番組を制作してきた市川衛氏の著書『教養としての健康情報』から一部抜粋し、再構成してお届けします。 【2019年5月16日17時40分追記】初出時から記事の署名を変更しました。 最近では、医療や健康の情報に接する最大のきっかけは、ツイッターやフェイスブックなどSNSという人も少なくないのではないでしょうか。 ネット上の医療・健康記事にはとても有用なものがある一方で、時に科学的な根拠が存在しない、いわゆる「デマ」が拡散されることもあります』、興味深そうだ。
・『事実よりも「感情」を揺さぶるコンテンツが拡散  2016年には、DeNAが運営する医療情報サイト「WELQ」に科学的な根拠に基づかない医療・健康情報が掲載され、大きな問題になりました。 なぜ、根拠に基づかない情報が拡散されるのか。背景にあるのは、根拠云々より「感情」を揺さぶるコンテンツが拡散されやすいという現実です。 2016年、米ウィスコンシン医科大学のメガ・シャルマ医師らはフェイスブックなどSNSを通じて、どのような医療・健康記事や動画が拡散されやすいかを調査しました。対象としたのは「ジカ熱」に関する記事や動画です。 ジカ熱は蚊や性行為によって広がるウイルスを原因とした感染症で、2015年から2016年にかけて流行し、妊娠中の女性が感染すると出生異常の原因になるとして、北米や南米を中心に大きな話題になりました。 シャルマ医師らがフェイスブック上に投稿されているジカ熱に関する記事や動画を調べたところ、多くアクセス・拡散されている200の記事のうち、8割以上は適切な情報源(アメリカ疾病管理予防センターなど)を基に、正確な情報を伝えていました。 一方で12%は、誤解を生む情報を伝えていました。例えば「ジカ熱は発展途上国の人口削減のために利用されている」とか、「大企業による陰謀」というようなものです。 この結果を見ると、フェイスブックにおける医療・健康情報の正確性はおおむね保たれているように思えます』、「WELQ」の問題は記憶に新しいところだ。
・『ところが「どの情報が拡散されたか」を調べると、驚くべき実態が見えてきました。12%の「誤解を生む」情報のほうが、はるかに多く拡散されていたのです。 200の記事のうちで最も拡散されていたのは「ジカウイルスの恐怖が不正なでっち上げである10の理由」という動画でした。ジカ熱は大企業によるでっち上げであると主張するこの動画は、フェイスブック上で53万回以上再生され、19万6000人によってシェアされていました。 「正確」とされたコンテンツで最も拡散されたのは、WHO(世界保健機関)によるプレスリリースでしたが、アクセス数は4万3000程度にとどまり、シェアは1000程度、先ほどの動画の200分の1にすぎなかったといいます。 この結果について、シャルマ医師はCBSのインタビューに次のように述べています。 「フェイスブック上の医療健康情報は規制されておらず、疑似科学的な陰謀論は人気があり、したがって正確な情報よりも多くの人に届く傾向があります。 この傾向は、パンデミック(世界的な流行)の際に有害になると考えられます。なぜなら感染を広げる原因となる行動やパニックを生み出す可能性があるからです。ジカ熱だけでなく、エボラ出血熱や新型インフルエンザ、鳥や豚インフルエンザでも同様です」』、「12%の「誤解を生む」情報のほうが、はるかに多く拡散されていた」、「疑似科学的な陰謀論は人気があり、したがって正確な情報よりも多くの人に届く傾向があります」、というのは困ったことだ。
・『「善意」からのシェアが狙われる  2016年に行われた、アメリカ大統領選では、クリントン候補を誹謗中傷するようなフェイクニュースがSNSを通じて拡散され、選挙の結果に一定の影響を与えたのではないかと指摘されています。 BuzzFeed Newsによる報道で、人口200万人ほどのヨーロッパの小国・マケドニアの若者たちが、これらフェイクニュースを量産していたことが判明し、大きな話題になりました。若者たちの動機は政治的なものではなく、「そのほうが儲かるから」だったとされています。 感情的・煽情的であればあるほど拡散され、よりアクセスが増える。その結果として広告収入を得ることができる。ある意味で「合理的」ともいえる考え方によって、フェイクニュースが量産され、SNSの手を経て拡散されたのです。 感情的で、煽情的なものほど「気になる」ということ自体は人間の性であり、致し方ない面もあると思います。でも、せめて命や幸福に直結する医療や健康の情報では、丁寧で正確なものがもっと日の目を見るようにならなければと思います。 日々、スマホやPCで目にする医療・健康情報の中で気になったものを、つながりのある人に「よかれ」と思ってシェアなど拡散されるケースもあると思います。 しかしその善意を狙い、「シェアさせる」ことを目的に製造される情報があなたのタイムラインにも登場しているかもしれません』、「感情的・煽情的であればあるほど拡散され、よりアクセスが増える。その結果として広告収入を得ることができる。ある意味で「合理的」ともいえる考え方によって、フェイクニュースが量産され、SNSの手を経て拡散された」、というのは「致し方ない面もあると思います。でも、せめて命や幸福に直結する医療や健康の情報では、丁寧で正確なものがもっと日の目を見るようにならなければと思います」、というのは同感である。
・『この項では、実際にSNS上で「拡散」された誤解を生む情報の事例をご紹介していきます。もし、ご自分のSNSのタイムライン上にこうした情報が現れたら、どうやって「見極め」ればよいのか、考えながら読み進めてみてください。 2017年、ツイッター上で1つの投稿が話題になりました。 あるユーザーが「温泉評論家さんから聞いた話」を投稿したところ、広く拡散。投稿に付いたリツイートと「いいね!」の数はそれぞれ5万件以上に上りました。 「毎年、温泉で1万5000人が亡くなる」は本当か  内容を要約すると、次のようなものです。 ・毎年風呂で亡くなる人は約2万人。5000人は自宅で、後の1万5000人は温泉などで亡くなっている ・防ぐには「旅館に着いたらお茶とお菓子をとる」「朝風呂の前には水分補給する」 本当だとしたら、とても重要な情報です。投稿した方も、誰かの役に立ちたいという思いからつぶやかれたのだろうと思います。ただ、もし情報が間違っていた場合、誤解が広がってしまう可能性もあります。そこで実際のデータを調べてみました。 まず調べたのは、厚生労働省の「人口動態統計」です。 1年間に亡くなった人の死因ごとにデータを公表しています。2016年の「不慮の溺死及び溺水」の数を確認すると、7705人となっています。川や海などでおぼれた人も含めての数ですので、入浴中のケースはもっと少なくなると考えられます。 溺死が交通事故(5278人)の死者数より多いというのは意外ですが、2万人と比べるとずいぶん少ないですね。ただこの数字には、入浴中に突然心臓発作を起こして、死因が「心臓病」となった場合などは含まれないのだそうです。 そこで、こうした入浴中の病気も含んだ死亡者数のデータがないか調べたところ、2014年に厚生労働省研究班による報告書が出されていることがわかりました。 報告書によると、病気なども含めた入浴中の死亡者数は、年間で1万9000人以上と推計されるとのことです。 ただし事故の8割以上は「自宅」で起きていました。さらに温泉地では、たとえ入浴中に異変があって救急車で搬送されても、心肺停止にまでは至らず救命される割合が多いとするデータがあることもわかりました。 考えてみれば、温泉地や銭湯など公衆浴場では、自分のほかにも入浴客がいるケースがほとんどです。異変が起きたとしても早く発見される可能性が高く、自宅より安全といえるかもしれません。つまりツイッターで拡散した「毎年、温泉で1万5000人が亡くなっている」という情報は誤りでした』、自宅での入浴中の死亡は、恐らく冬場のヒートショック(住環境における急激な温度変化によって血圧が乱高下したり脈拍が変動する現象)のためだろう。温泉ではあり得ない筈だろう。
・『よかれと思って誤った情報の拡散に加担すると、場合によっては誰かの営業活動の妨害となり、意図しないトラブルにもつながりかねません。 デマかどうかを見極める一番のポイントは、その情報やデータの根拠を示しているかどうかです。「●●の関係者に聞いた」というように、その部分をぼかしているような投稿は、シェアボタンを押す前に一呼吸おいて、その内容が本当に適切か少し調べてみることがおすすめです。 結論 温泉は自宅よりむしろ安全 よかれと思ってデマを拡散すると、トラブルにつながる可能性も』、「シェアボタン」(「いいね」など)を気軽に押す風潮も困ったことだ。いい加減なデマ情報拡散に手を貸しているということを認識すべきだろう。
・『「ありそう」な出来事こそ要注意  SNSで回ってきた医療・健康情報、要注意なものを見分けるポイントをまとめると、次の3つとなります。 1根拠となった発言者やデータがあいまい 2ドラマやマンガなどでありそうな「いかにもなシチュエーション」を描いている 3感情的な表現を使っている そう聞くと、なんだ、当たり前じゃないか?と思われたかもしれません。 でもここまでご紹介してきたように、実際に大きく拡散された投稿は、これらの特徴を満たしています。「感情的」で「ありそう」なものに注意を引きつけられ、誰かに知らせたくなってしまうことそのものは、人間である以上仕方のないことといえるかもしれません。 しかし心ならずもデマの拡散に手を貸してしまったら、知り合いに役に立たない行動を勧めてしまうリスクもあります。 SNSのタイムラインに回ってくる医療・健康系の情報。シェアのボタンを押す前に、前掲の3つの項目を思い出してみてください。そして当てはまりそうなら、1回深呼吸して、シェアするかどうかを一瞬だけでも考え直してみる。そうするだけで、デマの拡散に手を貸すリスクを減らすことができます』、「デマの拡散に手を貸してしま」うことは恥ずかしいとの認識を持って、冷静に対処してほしいところだ。

次に、内科医の名取 宏氏が7月16日付け東洋経済オンラインに寄稿した「ニセ科学「ホメオパシー」の実践が危険な理由 毒物の「ヒ素」でさえ薬にしてしまう謎理論」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/282404
・『今年2月、参議院議員の山本太郎氏が、日本母親連盟を批判する際に取り上げたことでも注目を集めた民間療法「ホメオパシー」。ヨーロッパ発祥の民間療法の実践が危険な理由とは?同療法に詳しい内科医の名取宏(なとり ひろむ)氏が解説する。 みなさんは「ホメオパシー」という言葉を聞いたことがありますか?ヨーロッパ発祥の民間療法の一種なのですが、日本では主に妊婦さんや出産後のお母さん方のあいだでホメオパシーが使われています。助産師から勧められたり 、母親同士のネットワークで広まったりしているようです。 みなさんも子育て中に「自然療法のホメオパシーを始めたんだけど、子どもの免疫力が上がって副作用もなくて、薬にも頼らなくてすむし本当にいいよ。やってみない?」と声をかけられることがあるかもしれません。ホメオパシーの利用者は、子どもに対しては化学物質を避け、できるだけ安全で安心なものを使いたいと考えている人に多いようです』、「ヨーロッパ発祥」とは初めて知った。
・『「ヒ素」が薬になる独自理論  ホメオパシーには、毒物を薄めると毒を打ち消す薬になり、しかも薄めれば薄めるほど効果が強くなるという独特の考え方があります。ヒ素が毒物であることは、みなさんご存じですね。そのヒ素を水やアルコールといった液体に溶かし、10倍や100倍に薄めて振り混ぜることを何十回も繰り返し、最終的にその液体を砂糖玉に染み込ませたものが、ヒ素の毒に効くという理屈です。 この砂糖玉を「レメディ」と言います。レメディは錠剤に似ていて、いかにも薬という形をしていますが、薬効成分は含まれていません。物質としてのヒ素は何度も繰り返し薄められているため、ヒ素のレメディには残っていません。 元の成分は含まれていないため、安全だというわけです。元の成分が残っていないのになぜ効果を発揮するのかというと、ヒ素の情報が水に記憶されているのだそうです。水の記憶は「バイタルフォース」や「波動」といった一見科学的に思える用語で説明されることもあります。 でも、効果だけあって副作用はないようなよいものであれば、病院でも使われているはずではないでしょうか。日本でホメオパシーを利用している医師は、きわめて少数です』、単なる「砂糖玉」を「レメディ」として有難がるのは、冷静に考えれば滑稽だ。
・『「ホメオパス」と呼ばれるホメオパシーの「専門家」がいるにはいますが、民間のホメオパシーの団体が独自に認定した資格にすぎず、国家資格ではありません。「水の記憶」や「波動」にも科学的根拠はありません。 ホメオパシーの理論で言えば、ヒ素のレメディはヒ素中毒に効くはずですが、実際にはヒ素中毒に対してではなく、不安や焦燥感に使われています。ヒ素中毒が、不安や焦燥感といった精神症状を引き起こすからでしょう。よく言えば柔軟で、悪く言えばいい加減です。 ヒ素だけでなく、ほかにもじつに多種類のレメディがあります。アロエ、ベラドンナ、毒グモ、ヒゼンダニ、犬の乳、亜鉛、硫黄、水銀など。変わったものでは、ベルリンの壁のレメディや般若心経のレメディがあります』、ここまで「多種類のレメディがあります」というのは驚きだ。
・『民間療法というより「加持祈祷」のたぐい  般若心経のレメディがいったい何に効くというのでしょうか。ホメオパシーの理論によると、般若心経のレメディは般若心経によって生じる症状に効くことになりますが、あるホメオパス(ホメオパシー治療を行う者)のブログによれば、成仏していない霊の憑依(ひょうい)や生霊に使うのだそうです。 もはや民間療法というより加持祈?の類ですね。生霊に効かすつもりなら、生霊を何度も繰り返し薄めたレメディを使わなければならないはずですが、さすがに材料の生霊が手に入らなかったのでしょう。 また、レメディは結構お高いです。例えば、小ビンに入った般若心経のレメディはネットショッピングのサイトで税込2052円で売られていました。ホメオパシーでは症状に合わせてレメディを選んで使うので、多種類のレメディを準備しなければなりません。 よく使う種類のレメディがセットになったものは1万円以上の値段がついています。ホメオパスに相談すると、これまたお金がかかります。保険はききませんので全額自費です。 値段が高くても、効けばまだいいでしょう。でも、これらのレメディに効果はありません。薬に効果があるかどうかは、その薬と似たニセの薬と比べてみることで証明できますが、臨床試験でレメディに似せたニセの薬と比較したところ、差がないことがはっきりわかっています(※1Shang A et al. Are the clinical effects of homoeopathy placebo effects? Comparative study of placebo-controlled trials of homoeopathy and allopathy., Lancet. 2005 Aug 27-Sep 2; 366 (9487): 726?32.)。 レメディには薬効成分は残っていませんから当然です』、。
・『レメディに特別な効果がなくても、効いたように誤解することはあります。例えば、不安に効くとされるヒ素のレメディを飲んで、不安がやわらぐこともあるでしょう。レメディに特別な効果がなくても、単になんだか薬っぽいものを飲んだことが安心感をもたらすのです。あるいはレメディを使ったあとに風邪が治ったとして、単に自然治癒しただけなのにレメディが効いたと誤認することもあります。 つまり、ホメオパシーは、いわばおまじないのようなもの。転んで膝を擦りむいた子どもに、「いたいのいたいの、とんでけー」と言ってあげると泣き止むのと同じです。薬効成分が含まれていないレメディには副作用はありません。おまじないとしてはよくできています。ホメオパシーがヨーロッパにおいて伝統的な民間療法として残ってきたのも、こうした理由があるのでしょう。おまじないですから、ベルリンの壁でも般若心経でもなんでもありなのです。 おまじないとしてだけ使用されていれば、ホメオパシーの問題点は高価であることくらいでした。しかし、残念なことに、おまじない以上の効果が信じられているせいで、子どもに実害が生じています』、プラセボ(偽薬)効果、そのものだ。
・『「ワクチンが毒」という謎理論  インターネットでは、さまざまなホメオパシーの体験談が語られています。例えば、中耳炎の子どもに対して母親がホメオパシーによる治療を続け、2週間以上も高熱が続いたケースでは、祖父母から「孫を殺す気か」と言われて総合病院を受診し入院となりました。 ホメオパシーは単なるおまじないだとわかっていれば、数日も熱が続けば病院を受診するでしょうに。この事例は、子どもに必要かつ適切な医療を受けさせていないので、児童虐待の一種である医療ネグレクトとみなされます。 ホメオパシーは「ワクチンは毒だ」という主張と結びついていることもあります。ホメオパシー団体の言い分によると、「ワクチンの成分を薄めたレメディによって病気が治った。よって、ワクチンは病気の原因に違いない」ということのようです(※2日本ホメオパシー医学協会の予防接種に対する見解)。 しかし、先に述べたとおり、レメディによって本当に病気が治ることは証明されていません。レメディを使ったことによる安心感や、レメディが効くに違いないという思い込みから、病気が治ったと誤認しただけだと私は思います。実際には、ワクチンはさまざまな病気を防ぎます(※3Facts for Parents: Diseases & the Vaccines that Prevent Them)。 レメディそのものは、ただの砂糖玉なので安全で無害ですが、「ワクチンは毒だ」という考えは有害です』、最後の部分はその通りだ。
・『ホメオパシーの有害な考えが引き起こした死亡事例もあります。赤ちゃんは出血を予防するビタミンKが不足しがちなため、本来は生後すぐにビタミンKのシロップが与えられます。 しかし、ホメオパシー団体の指導者は、「ビタミン剤の実物の投与があまりよくないと思うので、私はレメディーにして使っています」「ホメオパシーにもビタミンKのレメディーはありますから、それを使っていただきたい」などと言っていました(※4由井寅子 『ホメオパシー的妊娠と出産』 ホメオパシー出版)。 2009年、ビタミンK欠乏症による出血で生後2カ月の赤ちゃんが亡くなるという事件がありました。その赤ちゃんは、ホメオパシー団体に所属している助産師によって、本物のビタミンKではなく、ビタミンKのレメディを与えられていたのです。ビタミンKのレメディはただの砂糖玉ですから、ビタミンKの代わりにはなりません』、この事件は新聞で読んだ記憶がある。
・『医療関係者でさえ信じていた  ホメオパシーの指導者たちも、助産師もホメオパシーがおまじないであることをわかっていなかったのです。この事件は民事訴訟になり、助産師側が和解金を払うことで和解が成立しました。でも、いくらお金をもらっても、赤ちゃんの命は戻りません。 この事件を受け、日本学術会議は「ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題」「医療関係者がホメオパシーを治療に使用することは認められません」という会長談話を発表しました(※5「ホメオパシー」についての会長談話)。 しかし、残念ながら、医療従事者であるはずの助産師の中には、ホメオパシーを使用している人もいます。 日本助産師会は「助産師がホメオパシーを医療に代わるものとして使用したり、勧めたりすることのないよう、継続的な指導や研修を実施し、会員への周知徹底」を図っています。もしみなさんが、助産師からホメオパシーを勧められたとしたら、その助産師は日本助産師会の指導に反しているものと思ってください』、日本学術会議や日本助産師会の声明は当然だ。
・『ホメオパシーを使用していた助産師は、自然な出産にこだわりがあったようです。ホメオパシーが受け入れられる背景に「自然は安全で、薬や注射は不自然で危険」という思い込みがあると思います。中耳炎が治らないのになかなか病院を受診しなかったり、ワクチンを否定したりするケースも、そうした考えが背景にあります。 自然が本当に安全なのか、よく考えてみましょう。医学が発展するまでは、たくさんの子どもたちが死んでいました。死亡統計がとられるようになった明治時代には、1年間における乳児死亡率は1000人あたり約150人でした』、「「自然は安全で、薬や注射は不自然で危険」という思い込み」、はもはや宗教がかっているようだ。
・『ホメオパシーが危険なシンプルな理由  現在の日本の乳児死亡率は1年間において1000人あたり約2人。 つまり、1歳になるまでに1000人の赤ちゃんのうち2人くらいが亡くなるということです。これは歴史的に見ても、現代において他国と比較しても大変少ない数です。 明治時代の日本では、現代の日本と比べて、約75倍もの赤ちゃんが亡くなっていました。江戸時代には、子どもの半数が成人するまでに死んだといいます。その死因の多くが天然痘(てんねんとう)や麻疹といった感染症でした。天然痘も麻疹も、今ではワクチンで予防できる病気です。 本来の「自然」は、多産多死です。現在の日本の社会では子どもが亡くなることが珍しくなったためか、自然が本来安全ではなかったことが忘れられています。 「自然は安全」という誤解に基づいて適切な医療を遠ざけるからこそ、ホメオパシーは危険なのです』、説得力溢れた主張だ。死亡事件まで引き起こしても、いまだに「ホメオパシー」信者がいるとすれば、驚きだ。

第三に、8月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した脳科学者の茂木 健一郎氏による「毎日心地よく暮らす人の脳は危険な状態にある そのままだと人生が詰んでしまう」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/29513
・『「毎日、心地よく暮らすことが理想だ」という人がいる。だが、脳科学者の茂木健一郎氏は「そうやってルーティンを繰り返し、決まった脳の回路ばかりを使っていると、脳だけでなく人生も固まってしまう」と指摘する――。 ※本稿は、茂木健一郎『ど忘れをチャンスに変える思い出す力』(河出書房新社)の一部を再編集したものです』、面白そうだ。
・『長期記憶とIQの高さは関係ない  記憶には、「長期記憶」と「短期記憶」の二種類があります。 前者は、海馬を使って形成される記憶で、文字どおり、何カ月、何年という長い間、頭の中に保存されている記憶です。後者は、主に前頭葉が司るもので、数秒から数分というほんの短い間だけ保存されている記憶です。 ここでみなさんに質問です。いわゆる「頭のよさ(IQ)」と言われるものは、長期記憶と短期記憶のどちらに関係していると思いますか。こうたずねると、多くの人が前者、長期記憶と答えるのですが、そうではありません。 どれくらい多くの長期記憶を貯えられているかには、IQと関係していないことがわかっています。確かに、IQが高い人は、頭の中にたくさんの知識を貯えていることがあります。だからと言って、たくさんの知識があっても、IQが高くなるわけではないのです』、「たくさんの知識があっても、IQが高くなるわけではない」、というのは意外だ。
・『「思い出す」ができないと記憶を使いこなせない  いわゆる「頭のよさ」に関係するのは、短期記憶だと言われています。短期記憶とは、前頭葉という脳の司令室にある、スクリーンのようなところに、今この瞬間にどれだけのことが同時に映し出されているか、だと考えることができます。11桁の電話番号を聞いて、メモする間だけ覚えていて、メモし終わったら忘れてしまうというのがそれにあたります。 「頭のいい人」というのは、話をするとき、それまでの自分が話してきた内容を、前頭葉のスクリーンに映し出して、はっきりと見渡すことができていて、そのうえで次に何を言うかを決められるために、筋の通った面白い話になります。前頭葉のスクリーンにほんの少ししか映し出されていなければ、前の話と今の話のつながりが見えない、支離滅裂な話になってしまうことでしょう。 長期記憶として、側頭連合野を中心とする大脳皮質にいくらたくさんの記憶を貯えることができていても、折に触れて前頭葉に引き出して、現実世界に参照する訓練をしていないと、記憶という宝をうまく使いこなすことはできません。「思い出す」つまり、記憶を引き出してきて現在の状況に照らして、編集するから、その宝を活かすことができます。思い出すことがどうして大事かを、脳の仕組みから理解していただけたでしょうか』、確かに「思い出す」ことは、「記憶という宝をうまく使いこなす」「大事」なことのようだ。
・『「脳が危険な状態」かを5項目でチェック  自分が培った記憶を必要なときに思い出せるかどうかをチェックするリストがあれば、自分の脳の状態を判定できます。それを判定する材料として、「こういう状態になっていたら危ない」というチェックリストを用意しました。あなた自身、いくつか当てはまるものがあるでしょうか。 1.毎日つつがなく暮らしている感じがする 意外に思うかもしれませんが、心地よく暮らしている感じがするときは、あなたは自分の人生を自分で導いているとは言えません。「最近、人生に力を入れる必要がなくなった。スムーズにものごとが運ぶようになって、心地いいな。平和だな」という凪(なぎ)の状態は、ルーティンを繰り返し、決まった脳の回路ばかりを使っていて、人生が固まってしまっているということです。 2.忙しすぎる 忙しくしていればいいのかというと、それも1と同じく危険です。忙しいのは、仕事であれ、家庭であれ、忙しい原因となっている、単一の回路ばかりを使っていることが多いからです。 3.最近不安になったり、ドキドキしたりしたことがない 不安になったり、ドキドキしたりしたことがないということは、新しいものに挑戦していない、新しい状況に遭遇していないということです。これも一つの危険な兆候になります。自分で自分の人生を導く、自分の欲求に従うのは、正解がないことですから、もともと不安に感じるものなのです。 4.他人の望みに「何でもいいよ」と言っている 「どこに行きたい?」「何食べたい?」と聞かれて、「何でもいい」「どこでもいい」と答えてしまっていたら、これも、自分の脳の欲求に気づけなくなっている証拠です。「こういうレストランがあるけれど、どう?」という提案に対して、「別にいいよ」と吞み込むだけになっているなら、自分の欲求を抑えてしまっているか、自分から望むことがなくなってしまっているのかもしれません。 5.同じものごとを繰り返す 大好きな音楽、大好きな映画、大好きな本に繰り返し戻っていくのは、もちろんよいことです。大抵「古典」と呼ばれる作品は、何度観ても聴いても、新しい発見があって、学びがあるものです。ただ、そのようにすでに自分が好きだとわかっているものの中だけで、生活を営むようになっているとしたら、実は、好奇心を失ってしまっているか、自分の欲望が見えなくなってしまっているのかもしれません。 これら5つのうち、当てはまるものが多ければ多いほど、「思い出す」機能が弱っていると言えるかもしれません。 ではもしあなたの脳の思い出す機能が弱っているとしたら、どうすればいいのでしょうか。その方法を次にお話ししていきます』、私の場合、1、3、5が該当した。「「思い出す」機能が弱っている」のであれば大変だ。次の処方箋を見ずには落ち着かない。
・『「何もしていないとき」に働く脳部位がある  思い出す方法には、実は、二種類あります。無意識的にやる方法と、意識的にやる方法です。 前者は、デフォルト・モード・ネットワークの働き。後者は、脳の司令塔である前頭葉が命令を出して、意識的に記憶を引っ張り出すようにすることです。 デフォルト・モード・ネットワークは、何かに集中しているときよりも、何もしていないとき、リラックスしているときに、よく働く脳部位です(海馬もこのネットワークの一部と考えることができます)。 多くの人は、脳は集中しているときによく働いていると思っているようですが、それは、間違いです。何もやっていないときでないと、働かない脳部位があり、それがデフォルト・モード・ネットワークなのです』、私の場合はデフォルト・モード・ネットワークが働いているらしい。
・『ぼーっとすると「記憶の整理」が始まる  休んでいるときに、脳は勝手にさまざまなことを思い出して、体験と体験とを結びつけ、記憶の整理をします。日中集中して仕事をしたり、たくさんの人に会ったりしているからこそ、脳は体験の整理をする時間が必要になります。何かに集中してばかりいたら、情報が入ってくるばかりで、脳が整理の時間を取ることができません。 ぼーっとしているのは「無駄」な時間にみえますが、大事な整理をしている時間なのです。何もしないでいると、脳はようやく記憶を整理し始めます。 デフォルト・モード・ネットワークが一番働くのは、眠っているときやシャワーを浴びているとき、散歩をしているときなどです。そうしたリラックスをしているときにこのネットワークが働いて、記憶と記憶を結びつけたり整理したりすることで、いいアイデアが浮かぶとか、ずっと忘れていたことを不意に思い出すことがあります。1日の中で5分でも10分でもぼーっとする時間を持ちたいものです』、「ぼーっとする」ことの重要性を再認識させられた。
・『前頭葉に記憶を引き出すとメンテナンスができる  もう一つの意識的に思い出す記憶の整理術を説明しましょう。はっきりと意識するということは、前頭葉に記憶が引き出されるということです。 前頭葉は脳の司令塔ですから、そこに記憶が引き出されることで、「この記憶をどうしようか」「どういう意味があったのか」と改めて脳のさまざまな領域に問い合わせができるようになります。現実世界にも照らし合わせて、広範な記憶のメンテナンスをしてくれます。 意識して思い出す仕組みは、前頭葉の短期記憶の回路に、主に側頭連合野から記憶を引き出すことです。今の自分の前頭葉のスクリーンの中に、昔の記憶を映し出して、これからの役に立てることなのです』、なるほど。
・『「ど忘れ」こそが脳を鍛えるチャンス  意識的に思い出す場面とは、実は忘れてしまったときです。「あれ、何だっけな?」とものの名前や誰かと会う約束などをど忘れしてしまうことが誰にでもよくありますが、そのときは実は脳を鍛えるチャンスでもあります。思い出そうとしても思い出せないことはよくあって、そういう状態はイライラするので、思い出そうとすること自体をやめてしまう人がいますが、とてももったいないことです。 思い出そうとするだけで効果があるので、実際には思い出せなくてもかまいません。思い出そうとする癖をつけることは、記憶を整理する一連の回路を鍛えることになるので、結果として物忘れを防止することになります。また最高の脳のアンチエイジングです。 思い出すだけで脳が鍛えられる。これこそ、新しい脳の活用法です』、「思い出そうとしても思い出せないことはよくあって、そういう状態はイライラするので、思い出そうとすること自体をやめてしまう人がいますが、とてももったいないことです」、私はこの傾向が強まっていたが、もっと頑張って「思い出そうとする癖をつける」べきなのだろう。「結果として物忘れを防止することになります。また最高の脳のアンチエイジングです」、というのは大いにためになる話だった。
タグ:健康 東洋経済オンライン 茂木 健一郎 PRESIDENT ONLINE 市川衛 (その8)(「根拠のない健康情報」はなぜ拡散されやすいか デマに加担しないためのリテラシーが必要だ、ニセ科学「ホメオパシー」の実践が危険な理由 毒物の「ヒ素」でさえ薬にしてしまう謎理論、毎日心地よく暮らす人の脳は危険な状態にある そのままだと人生が詰んでしまう) 「「根拠のない健康情報」はなぜ拡散されやすいか デマに加担しないためのリテラシーが必要だ」 『教養としての健康情報』 事実よりも「感情」を揺さぶるコンテンツが拡散 12%の「誤解を生む」情報のほうが、はるかに多く拡散されていた 「善意」からのシェアが狙われる 「ありそう」な出来事こそ要注意 「デマの拡散に手を貸してしま」 名取 宏 「ニセ科学「ホメオパシー」の実践が危険な理由 毒物の「ヒ素」でさえ薬にしてしまう謎理論」 「ヒ素」が薬になる独自理論 毒物を薄めると毒を打ち消す薬になり、しかも薄めれば薄めるほど効果が強くなるという独特の考え方 砂糖玉を「レメディ」 多種類のレメディがあります。アロエ、ベラドンナ、毒グモ、ヒゼンダニ、犬の乳、亜鉛、硫黄、水銀など。変わったものでは、ベルリンの壁のレメディや般若心経のレメディがあります 民間療法というより「加持祈祷」のたぐい プラセボ(偽薬)効果 「ワクチンが毒」という謎理論 ホメオパシーの有害な考えが引き起こした死亡事例も ビタミンK欠乏症による出血で生後2カ月の赤ちゃんが亡くなるという事件 ホメオパシー団体に所属している助産師によって、本物のビタミンKではなく、ビタミンKのレメディを与えられていた 医療関係者でさえ信じていた 「自然は安全で、薬や注射は不自然で危険」という思い込み ホメオパシーが危険なシンプルな理由 本来の「自然」は、多産多死です。現在の日本の社会では子どもが亡くなることが珍しくなったためか、自然が本来安全ではなかったことが忘れられています 「毎日心地よく暮らす人の脳は危険な状態にある そのままだと人生が詰んでしまう」 長期記憶とIQの高さは関係ない 「思い出す」ができないと記憶を使いこなせない 「脳が危険な状態」かを5項目でチェック 1.毎日つつがなく暮らしている感じがする 2.忙しすぎる 3.最近不安になったり、ドキドキしたりしたことがない 4.他人の望みに「何でもいいよ」と言っている 5.同じものごとを繰り返す 「何もしていないとき」に働く脳部位がある 思い出す方法には、実は、二種類あります。無意識的にやる方法と、意識的にやる方法 前者は、デフォルト・モード・ネットワークの働き。後者は、脳の司令塔である前頭葉が命令を出して、意識的に記憶を引っ張り出すようにすることです ぼーっとすると「記憶の整理」が始まる 前頭葉に記憶を引き出すとメンテナンスができる 「ど忘れ」こそが脳を鍛えるチャンス 思い出そうとしても思い出せないことはよくあって、そういう状態はイライラするので、思い出そうとすること自体をやめてしまう人がいますが、とてももったいないことです 思い出そうとする癖をつけることは、記憶を整理する一連の回路を鍛えることになるので、結果として物忘れを防止することになります。また最高の脳のアンチエイジングです
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小売業(コンビニ)(その4)(24時間営業問題ほか)(「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由、コンビニ最強から一転 セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった、セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」 深夜閉店でもオーナーは増益) [産業動向]

小売業(コンビニ)については、5月15日に取上げた。今日は、(その4)(24時間営業問題ほか)(「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由、コンビニ最強から一転 セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった、セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」 深夜閉店でもオーナーは増益)である。

先ずは、流通ジャーナリストの森山真二氏が6月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/205871
・『コンビニの大量閉鎖時代は迫っているのか――。コンビニ大手3社の今期の新規出店数が近年にない低水準。「ついに飽和を迎えたか」との指摘も増えている。コンビニを追い込んだのは同じ看板同士が競合するカニバリ(自社競合)などがその要因に上がる。しかし、コンビニ包囲網を築いているのはそれだけではなさそうだ』、どういうことなのだろうか。
・『再び指摘され始めた「コンビニ飽和論」  「(ここ数年は)出店数を追い過ぎた」と話すのはほかならぬ、コンビニ最大手セブン-イレブン・ジャパンの親会社セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長だ。 井阪社長によれば今期は「意志ある踊り場」。新規出店を抑え出店方法を見直す。地区ごとに商圏を見極め、新店は初年度から高い日販を獲得できるように基準を設定していくという。 コンビニはかつて「飽和」といわれた時があった。2000年代初め頃だ。従来のたばこと缶コーヒー、高カロリー弁当という「男の店」のイメージから脱皮できず、女性客が取り込めずにいた。既存店の前年割れが続き、「コンビニ飽和論」が台頭した。 それをセブン-イレブンがシニアや女性客が購入しやすいように商品を開発して品ぞろえを変革、女性客の比率を高めていくことで打破。しかも、入れたてのコーヒーなどを提供することで、缶コーヒーとたばこのイメージを払拭した。 コンビニの父、セブン&アイの鈴木敏文最高顧問は「コンビニは変化に対応していけば飽和なんてことにならない」が口癖だったが、まさに変化に対応してコンビニは変身、現在のセブン-イレブンの位置を築き上げた。 しかし、今回ばかりはそうともいっていられない状況だ』、「二匹目のドジョウ」を見つけるのは難しいようだ。
・『セブン-イレブンはここ数年、毎年のように1000~1500店と大量出店してきたが、2020年2月期の新規出店数は前期の1389店より500店以上少ない850店、これに対し閉店数が750店あり純増数は100店にとどまる。 ファミリーマートやローソンも同じようだ。 ファミマの新規出店数が500店あるが、閉鎖が400店で純増数は100店だ。ローソンに至っては純増ゼロという。 新規出店することで成長しているイメージを作り出し、加盟店を確保してきたコンビニ大手としては大きな方針の転換だ。かつて新浪剛史ローソン元社長が「無理な出店を続ければ大きな閉店がある」と言ったことが思い起こされる』、大手でも軒並み年間純増100店とは時代も変わったものだ。
・『ドラッグストアや自社店舗のほかミニスーパーとの競合  コンビニをこうした状況にまで追い込んだのは巷間いわれているように、ドラッグストアなどとの競争や自社競合があるのは確か。自社競合もすでに、都市部では道路を挟んで向かい側に同じ看板のコンビニがあるということが珍しくない。 セブン&アイの井阪社長はそうした状況を考慮してか今期、出店地区の状況を精査して新店で高い日販を獲得するという。 しかし、コンビニに適した立地が少なくなっていることも事実であろう。あるとしても、日販(1店あたりの1日の売上高)が見込めないような立地だ。 コンビニは小商圏の王者としての位置を脅かされている。 というのも最近、総菜や弁当、コンビニ機能を取り込んでいるドラッグストアばかりではなく、コンビニのシェアをジワジワと侵食している業態があるからだ。 それは生鮮食品や総菜などをそろえた「ミニスーパー」だ。「ミニスーパーっていったって、そんなに店舗がないでしょ」という声も聞こえてきそうだし、まだ市場は黎明期といった様相だ。 だが、大手食品スーパーが相次いで出店し始めており、今後コンビニのライバルとして急浮上しそうなのだ。 ミニスーパーといえばイオンが始めた「まいばすけっと」が勢力を拡大しており、現在東京、神奈川などに700店を展開。今後2000店をメドに店舗数を引き上げる方針だ』、新業態による攻勢は、確かに厳しさを増しそうだ。
・『マルエツの「マルエツプチ」もジワジワと店舗数を増やしている。「まいばすけっと」が目指す2000店といえばコンビニの下位チェーンに匹敵し、侮れない存在となる。 しかも新顔のミニスーパーも出てきた。「ミニエル」「ポシェット」「フレッシュ&クイック」と聞きなれない店名だが、実は最近、続々出現したミニスーパーである。 「ミニエル」はアマゾンの「アマゾンプライム」で生鮮食品などを宅配することになったライフコーポレーションが展開するミニスーパーで、「ポシェット」は関西地盤の近商ストアが出店。また「フレッシュ&クイック」は東京、埼玉などで展開する東武ストアがオープンした。 立ち上がり始めたミニスーパー市場で衝撃的なのは、セブン-イレブンを展開するセブン&アイが「コンフォートマート」という都市型のミニスーパーを8月上旬に東京都品川区にオープンするということだ』、セブン&アイまでが都市型のミニスーパー設置に乗り出したとは、形振り構っていられないのだろう。
・『コンビニでもスーパーでもない新しいフードショップ  コンフォートマートは「コンビニでもない、スーパーでもない新しいフードショップ」をうたっており、店内調理の総菜を量り売りしたり、レジはほとんどがセルフレジ。デジタル化も志向するようだ。 コンフォートマートを運営するセブン&アイの子会社、フォーキャストの社長にはセブン-イレブンの執行役員を務めた有坂順一氏が就任、セブン-イレブン流の店作りが行われる可能性もある。 新顔の多くのミニスーパーが、店内調理で出来立ての総菜や焼き立てパンなどを導入した、もしくは導入する見通しとなっている』、消費者にとっては選択肢が増えるのは有難いが、増え過ぎると混乱を招く懸念もある。
・『大阪市にオープンしたライフコーポレーションの「ミニエル」はオフィス街にある。昼時に行ってみたが、会社員が弁当やパンなどを購入していく姿が目立った。当面、総菜の販売比率を40%にまで引き上げるのが目標という。 ミニスーパー市場は生まれたばかりといってよく、今後大きく発展するかどうかは未知数。「店内調理など重装備で、コンビニのようにシステム化された効率的な運営ができるのか」(あるメーカー)という指摘もある。 しかし店内調理に取り組んだり、出来立ての総菜や品ぞろえの豊富さを売りにしており、これにコンビニ機能を取り込んでくるようだと、コンビニチェーンにとって侮れない存在になることは間違いない。 小商圏で王者だったコンビニの競争相手として、ドラッグストアがシェアを侵食しているのは確かだが、新たな敵がもう1つ出現した形だ。 コンビニに飽き足らなくなっている層が、ミニスーパーを台所代わりに活用していくことも考えられる。これまで近くて便利がキャッチフレーズだったが、それはコンビニだけではなくなりそうなのである』、お互い大いに切磋琢磨してほしいものだ。
・『コンビニは再び「変革」を迫られている  セブン&アイの「コンフォートマート」のように、「スーパーとコンビニの隙間を埋める」という業態が今後、増えていきそうな勢いなのである。そして、コンビニからシェアを食って拡大するということになるのは間違いない。 ドラッグストアに侵食され、ミニスーパーに侵食されるコンビニは、これまでの大量出店ではなく、井阪セブン&アイ社長がいうように「既存店に力を入れる」ことが重要になるし、2000年代の初頭のように、もう一度、変革を迫られているといっていい。 果たして長時間営業の問題なども絡み今後、コンビニの閉鎖時代はやってくるのか。注目されそうである』、「既存店に力を入れる」といっても、これまでから力を入れていた筈なので、新業態との競争激化も踏まえると、なかなか難しそうだ。

次に、人間経済科学研究所・執行パートナーで国際投資アナリストの大原 浩氏が7月13日付け現代ビジネスに寄稿した「コンビニ最強から一転、セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65819
・『「7Pay」問題は人災である  「7Pay」の不正使用および、問題発覚後の責任者達の対応の不手際が取りざたされている。 特にセキュリティ分野を中心とした「7Pay」の欠陥は、突っ込みどころが満載だ。しかし、電子決済分野については筆者が執行パートナーを務める、人間経済科学研究所代表パートナーの有地浩が日本有数の専門家であるので、「7Pay」そのものについては、研究レポート「7pay騒動から学ぶべきはIDの大切さだ」などを参照いただきたい。 筆者は、この問題は、いわゆる「大企業病」に侵され、長期的展望を欠いたセブン&アイ・グループの経営陣によって引き起こされた「人災」だとみている。 「7Pay」の社長が「2段階認証」を知らずに記者会見でしどろもどろになり醜態をさらした。もちろんこの社長の資質には疑問符がつくが、そのような人物を「7Pay」の社長に就任させたセブン-イレブン、セブン&アイ経営陣の責任は重大だ。 しかし、それ以上に大きな問題が、セブン&アイ・グループの「劣化」である』、7Payの問題はこのブログの8月24日に取上げた。「セブン&アイ・グループの「劣化」」を具体的にみてみよう。
・『鈴木敏文のセブン-イレブンがグループを牽引してきた  セブン&アイ・グループのルーツは、イトーヨーカ堂にある。その名の通り、発祥は創業者伊藤雅俊の母親・伊藤ゆきの弟にあたる吉川敏雄が、現在の東京都台東区浅草に1920年に開業した「羊華堂洋品店」にある。 しかし、現在に至るまで、近年のセブン&アイ・グループの業績を牽引してきたのは間違いなくコンビニエンス・ストアのセブン-イレブンである。 セブン-イレブンそのものは1927年に米国で創業された。 日本での展開は、イトーヨーカ堂取締役の鈴木敏文氏が1973年に、周囲の反対を押し切り、セブン-イレブンを展開する米サウスランド社との厳しい交渉の末提携したのが始まりだ。株式会社ヨークセブン(のちの株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を設立し、自らは専務取締役に就任した。 翌1974年に東京都江東区に第1号店「豊洲店」を開業したのが加盟店オーナーの山本憲司氏であり、その後40年間で店舗数2万の巨大企業に成功させたのは「実質的創業者」の鈴木氏の功績である。 もちろん、イトーヨーカ堂のグループとして支援を受けてきたし、鈴木氏も元々はイトーヨーカ堂の社員ではあったが、1991年には、経営不振に陥っていたフランチャイザーである米国サウスランド社を買収し子会社化している。 また、2005年にセブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デニーズジャパンの3社で株式移転により持株会社・セブン&アイ・ホールディングス設立したが、これも当時の収益の状況を考えればセブン-イレブンによる他2社の救済という色彩がつよい。 つまり、鈴木氏が育て上げたセブン-イレブンの高い収益力が、周辺を潤してきたのである』、筆者の鈴木氏への思い入れはかなり強そうだ。
・『鈴木敏文切り離しの後遺症  鈴木氏が、セブン-イレブンを高収益会社に育てあげることができた背景には、ピーター・F・ドラッカーが述べるところの「マーケティングとイノベーション」を忠実に実践してきたことがある。 「マーケティング」は、米国でも日本でも「営業」や「アンケート調査」などと同義語になってしまったが、本来の意味(ドラッカーの意味するところ)は顧客ニーズを汲みとることである。 例えば、セブン-イレブンの商品力の強さは定評があり、コンビニ弁当では「セブン-イレブンが一番おいしい」とか「スイーツはやっぱり、セブン-イレブンだね」という評判をよく聞くし、筆者もそう思う。 また、ローソンなどの他社が有名俳優を使ったイメージ広告を行ったのに対し、セブン-イレブンは販売する商品の内容の訴求に徹した。顧客が求めているのは店の看板ではなく店頭に並ぶ商品であるからだ。 さらに、全都道府県制覇を早期に成し遂げたローソンに対して、セブン-イレブンは効率性にすぐれたドミナント戦略をしっかりと守り、最近やっと沖縄に進出を始めたほどだ。 これも、「全国制覇」などというものは、本部の自己満足に過ぎず、加盟店が求めるのは正確で効率の良い配送仕入れなどの物流体制だからだ。 「イノベーション」においても、他の小売り企業に先駆けて野村総研と二人三脚でPOSの開発・活用を先進的に行ったのは有名だし、比較的最近の2013年にもセブンカフェという画期的システムを導入している。 もちろん、セブン銀行(2001年に株式会社アイワイバンク銀行として設立)というATM専業銀行である画期的金融機関を成功させた手腕も忘れてはならない』、私が鈴木氏を評価していたのは、現場主義を標榜する経営者が多いなかで、データに基づいて仮説を立て、これを実験的に検証することを通じて経営変革を図ったことだ。ただ、それが限界に達していたことも事実なのだろう。
・『目先の利益の追求が悲惨な結果を招きつつある  つまずきは、2005年の3社統合に始まると思う。筆者は、この時、高収益会社のセブン-イレブンを親会社の都合で吸収合併し、株式を希薄化するという行為に憤りを感じた。これは、セブン-イレブンの株式を購入していた一般投資家に対する裏切り行為であるし、セブン-イレブンを手塩にかけて育てた鈴木氏の本意とも思えなかったからだ。 極めつけは、2016年の鈴木氏の「退任」である。 事の発端は、2016年2月15日に鈴木氏がセブン-イレブン・ジャパン社長の井阪隆一氏に対して退任を内示したことにある。いったん本人は了承したものの、その後、態度を変えたので、鈴木氏は3月に取締役候補の指名・報酬委員会を設置し、ここで社長交代を提案した。 しかし、当時のセブン-イレブンの業績が好調であったことから、同委員会委員を務めていた社外取締役の伊藤邦雄一橋大学特任教授及び米村敏朗元警視総監が反対する。 そのため、取締役会にかけたが、投票結果は賛成7票、反対6票、白票2票。結局、賛成が総数15票の過半に届かなかったため否決された 同日記者会見を開いた鈴木氏は引退を表明。「反対票が社内から出るようなら、票数に関係なく、もはや信任されていない」旨を述べた。賛成票の方が多かったのに潔く切腹するというまさに「武士の鏡」である。 社外取締役が「害多くして益なし」であることは、7月8日の週刊現代、井上久男氏による当サイト記事「『社外取締役』が、企業とこの国をダメにする」等でも述べられているが、本ケースでは創業家の視野の狭さも災いした。 前記記者会会見で、創業家の伊藤雅俊名誉会長との確執も示唆されたのだ。 7月2日に、クライスラーの元会長リー・アイアコッカ氏が亡くなり大きく報道されたが、彼が1978年に業績好調なフォード社を解任されたのは、創業家のヘンリー・フォード2世(創業者の孫)との確執が原因であった。 アイアコッカ氏がフォード自動車の花形として活躍することに、創業家の3代目のプライドを持つフォード2世が嫉妬したのは間違いないだろう。 しかしアイアコッカ氏は、フォード自動車を解任された後、つぶれかけであったクライスラーを見事に復活させ一矢を報いたのである。 鈴木氏の場合は、武士としての「二君に仕えず」の精神や、年齢から言って、ライバル会社に移らなかっただけでも幸いだ。 伊藤雅俊氏は、創業家ではあるが高齢であり、鈴木敏文氏のように「次世代」のビジョンを持たず、セブン-イレブンは自分が死ぬまで頑張ってくれればいいと思ったであろうことが、大惨事を招くことになる』、社外取締役や伊藤雅俊氏を説得できなかったのは、鈴木氏の判断に無理があった可能性もある。
・『セブン&アイはガタガタになっている?  鈴木氏から無能の烙印を押され退任を迫られた井阪隆一氏が続投していることが、セブン-イレブンの最大の問題だが、一般的にも概ね4年で交代する雇われ社長は、自分の任期の業績を最大化するために、費用が先行する将来を見据えた大型投資は避ける傾向にある。 例えば、鈴木氏が行った大胆なPOSの導入も、莫大な費用がかかるにもかかわらず成果が現れるのはかなり先のことであり、4年単位でものを考えるような雇われ社長には到底できない決断であった。 ドラッカーは、「新規事業」と「既存の収益事業」は完全に分離すべきだと述べているが、それは既存の収益事業から見れば、「将来収益を生むであろう」新規事業は単なる金食い虫にしか過ぎないからである。 鈴木氏は、その両者を融合させて大成功させる傑出した能力を持っていたが、凡庸な井坂氏にそのような手腕があるはずもなく、「オムニチャンネル」をはじめとする鈴木氏の心血を注いだ「イノベーション」に関する情熱をじゃけんに扱い現在の状況を招いた』、「オムニチャンネル」が「じゃけんに扱」われたのは、「オムニチャンネル」そのものにも問題があったためだろう。
・『サラリーマン社長に野武士は扱えない  セブン&アイのもう1つの大きな問題は「マネジメント」である。マネジメントの手法については7月11日の当サイトの拙稿「人工知能時代に生き残るのは、意外と『こんな上司』だった」の内容を参照していただきたいが、特に加盟店との関係において、一方的に問題を指摘するようなやり方は厳禁である。 そもそも、本部なるものは言ってみれば単なる「処理機械」であって、現場で売り上げを稼ぐ加盟店より偉いわけではない。ドラッカーに言わせれば企業(本部)は、例え営業部であってもコストセンターなのである。売り上げを与えてくれるプロフィットセンターとは、「顧客」だけなのだ。 コンビニチェーンにおいて、本部から見て売り上げを与えてくれる顧客は加盟店に他ならない。1号店から加盟店とともに辛苦を共にしてきた鈴木氏は、骨の髄までそのことが分かっている。 だから、加盟店の日販の数字を上げ彼らを豊にするために「イノベーション」を継続し、弁当・スイーツ類の試食でも鬼のようにダメ出しをして、品質を維持してきたのだ。 しかし、それも3年前の鈴木氏の退任で終わった。 今や、社長以下本部が自己保身に走る人間ばかりで、現場の士気も大いに低下しているであろう。 24時間営業の問題も、経緯を見ると、対応があまりにもずさんだ。筆者もコンビニにおける24時間営業の重要性は認識しておりやめるべきでは無いと思うが、加盟店の経営者も人間である。 保身に走る社長のもと、保身に走る担当者からの「私はちゃんと指導しましたから」と上司に言い訳をするための杓子定規な話が、疲労困憊している加盟店経営者を激怒させたことは想像に難くない。今回の問題は、加盟店が「野武士」の意地を見せたというわけである。 そもそも、24時間営業の問題はすべてのコンビニ共通なのに、セブン-イレブンがことさら取り上げられる状況になったのが、問題の根の深さを示している。 鈴木氏であれば、自ら加盟店を訪問し、膝を突き合わせて話をしながら、打開策を探るくらいのことはしたかもしれない』、最後の部分は鈴木氏ファンの筆者の空想に過ぎない。
・『収益性低下→先行投資もできなくなる  フランチャイズビジネスは、本来濡れ手に粟のビジネスである。 収益事業があるうちに、次の展開をつけなければならない。下り坂になってからではもう遅いが、残念ながらすでに下り坂に入っているのかもしれない。 「今さえ良ければ」というビジョンの無い人々が考えていた「今」が終わりつつあるのではないだろうか?』、「社長以下本部が自己保身に走る人間ばかりで、現場の士気も大いに低下しているであろう」、というのでは、「下り坂」を下りる一方だ。流れを変えるには、強力なリーダシップが必要なようだ。

第三に、8月29日付けダイヤモンド・オンライン「セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」、深夜閉店でもオーナーは増益」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/213239
・『深夜閉店を実施しても、オーナーの利益が必ずしも減るわけではない――。コンビニエンスストア業界2位のファミリーマートが深夜閉店の実験結果を公表し、業界を揺さぶっている。加盟店の約半数が時短営業を検討しているというアンケート結果もファミマは公表。「深夜閉店はオーナーの利益が減る」「時短営業を希望する加盟店は少数派」としてきた、業界王者セブンーイレブン・ジャパンの主張が覆されたことで、セブンの混乱に拍車をかけそうだ』、セブンの「主張が覆された」というのは興味深い。
・『減収でも減益になるとは限らないと結論 ファミマの半分の加盟店は「時短を検討」  コンビニを深夜閉店すると、店舗の売り上げは減少傾向になるが、加盟店オーナーの利益は前年を上回ったケースもあった――。 これは、コンビニエンスストア業界2位のファミリーマートが8月23日、都内で開いた加盟店オーナー向け説明会で明らかにした時短営業実験の結果である。 ファミマが希望する加盟店を募り、時短営業の実験をしたのは6~7月。毎日深夜に閉店する実験に参加したのは駅前、オフィス街、住宅地各1店、ロードサイド2店の計5店だった。 まず、店舗の売り上げは総じて減少傾向だった。とりわけ、住宅地の店は、閉店時間を午後11時~翌午前7時と他の実験店より長くしたこともあり、売り上げが大幅に減った。さらに本部から深夜営業の奨励金も支払われなくなった。 ところが、深夜の従業員が不要になったことで、加盟店が負担していた人件費が減った。オーナーの利益は、6月は前年を下回ったが、7月は増益となったのだ。 他の実験店も同様に、売り上げが下がり、深夜営業の奨励金がなくなる一方で、人件費の削減効果もあるため、オーナーの収益という視点でみると駅前店は2カ月とも増益。オフィス街の店は6月のみ増益、ロードサイドでは2店のうち1店が7月だけ増益だった。 実験結果を分析したコンサルティングファーム大手のKPMGは、この5店の実験について、売り上げは減少傾向だったものの「総収入(店舗の売り上げ)の増減と、営業利益(オーナー利益)の増減に一律の傾向はみられなかった」と結論付けた。 この他に、10店舗で毎週日曜日のみ深夜閉店する実験も並行して実施したが、こちらは売り上げ、オーナー利益ともに一律の傾向はみられなかったとしている。 ファミマはこの実験結果を、全国7会場で約800人のオーナーに説明した。8月23日の都内の説明会は報道機関に公開され、澤田貴司社長や加藤利夫副社長、KPMGの担当者らが出席し、「閉店時間中の冷蔵庫や照明の作動状況は」「深夜に働いていた従業員の雇用はどうしていたのか」といった、加盟店側からの20を超える具体的な質問に答えた。 結果を受け、ファミマは10~12月にかけて深夜閉店の実験を再度実施する計画だ。募集するオーナーは700人と規模を拡大。毎日と週1日の2パターンで深夜閉店の効果を検証する。 加えて、ファミマは6月に全国1万4848の加盟店向けに時短営業に関するアンケートを実施し、その結果を7月下旬に公表した(回答率は98.1%)。 その結果、時短営業を「検討したい」との回答が7039店、うち5193店が「週1日」ではなく「毎日」の時短を検討すると回答した。 時短を「検討しない」と答えた7106店のうち、その理由を「24時間営業に支障なし」と回答したのは1587店に過ぎず、「売り上げに対する影響がある」(3314店)、「店舗開閉作業に負荷がかかる」(1443店)といった理由があった。こうした課題が解消されれば、時短を検討するという潜在的な需要も考えられる。 これらの結果を踏まえれば、ファミマの加盟店の少なくとも約半数が時短営業を検討していること。そして、サンプルはわずかながらも、深夜閉店によって売り上げが減少しても、オーナーの利益が減少するとは必ずしも言えないということは明らかだ。 今回のファミマが公にした実験結果は、「深夜閉店をすればオーナーの利益は減る」としてきた業界最大手のセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の主張を揺るがす“爆弾”になる』、「時短営業の実験をしたのは」「5店」と少ないようだが、全店舗が対象の「時短営業に関するアンケート」で、「加盟店の少なくとも約半数が時短営業を検討」というのはインパクトが大きい。
・『「オーナーの収益確保」を理由に時短を否定 問われるセブンの“言い訳”の根拠  SEJの主張の根拠は、3月に都内の直営店で始めた深夜閉店の実験だ。ところがこの時は、深夜の閉店中にも関わらず、3人の従業員が作業を継続。「閉店中にどれだけ人件費をかけるのか」と、加盟店オーナーの顰蹙を買った。今回のファミマの実験では、閉店中の1店舗のオーナーや社員を除くアルバイト従業員の配置人数は、多い店でも平均で0.9人。0人の店も多かった。 セブン&アイ・ホールディングス(HD)の井阪隆一社長やSEJの永松文彦社長らは記者会見などの場で、「オーナーの収益を守らないといけない」と繰り返し、深夜閉店のメリットを躍起になって否定してきた。だが、店舗ごとの事情はあるとはいえ、ファミマの実験結果はこうした主張を覆した格好だ。 また永松社長は、ダイヤモンド編集部を始めとするメディアのインタビューの場で、「時短営業を求める加盟店は少数派だ」と再三にわたって強調。「実験をしている店、希望している店は全体の1%のレベル」と語ったこともあった。 ▽セブンの時短希望オーナーは“少数派”なのか 前社長の存在が“時短潰し”を後押し!?(だが、本編集部が以前にも指摘した通り、時短営業を希望する加盟店は、SEJの主張よりも水面下でははるかに多いとみられる。なぜなら、「経営指導員」(OFC)と呼ばれる加盟店の窓口になる本部社員や、その上司である各地区の責任者らが、加盟店の時短営業の希望を軒並み阻止してきたからだ。深夜の閉店中にも従業員を残すことを要求したり、特定の商品の納入を止めることをちらつかせたりして、時短実験への参加を断念させる”時短潰し”が横行しているのだ。 セブン-イレブンのある現役オーナーは、「地区の責任者が、嫌がらせのように2時間も3時間も店舗に居座って説得してきた」と怒りと共に振り返る。このオーナーは、約3カ月にわたる交渉の末に深夜の無人閉店実験にこぎつけたることができたが、「時短営業をしたいが、本部の圧力が怖くてできないと、他のオーナーから相談を受ける」と打ち明ける。 あるSEJの関係者は「前SEJ社長の古屋一樹氏を、代表権がないとはいえ会長に残したことで、社内に誤ったメッセージを放ってしまった」と嘆く。「人手不足はわれわれの加盟店にとって問題だという認識はない」などと昨年末に言い放ち、守旧派で知られた古屋氏は、24時間営業問題をめぐる加盟店の"反乱"を抑えられず、4月に引責辞任した。しかしその後も会長職にとどまったことで、一部の社員を"時短潰し"に走らせる理由になったとの見立てである。 全国2万店超のSEJの加盟店のうち、時短を希望し実験に参加している加盟店は、永松社長の語った「1%のレベル」である百数十店にとどまる。7000店超が時短を「検討する」としたファミマのアンケート結果とあまりに大きくずれている。 ちなみにSEJも、深夜閉店などの意向を加盟店に尋ねるアンケートを7月中旬に実施している。あるセブンのオーナーは、「自由記述欄があり、質問内容も充実した、しっかりしたものだった」と振り返る。ところが、このアンケート結果は未だに公開されていない』、「古屋氏は、24時間営業問題をめぐる加盟店の"反乱"を抑えられず、4月に引責辞任した。しかしその後も会長職にとどまったことで、一部の社員を"時短潰し"に走らせる理由になった」、とは酷い話だ。「深夜閉店などの意向を加盟店に尋ねるアンケート」、が未公表なのは、よほどSEJにとって不都合な結果が出たのだろうか。
・『ローソンは深夜営業の自動化実験をスタート 混乱続く王者セブンは方向性が見えない  そんな中、今年2月に自主的な深夜閉店を始めた大阪府東大阪市のセブンオーナーの松本実敏さんは、今度は日曜日を定休日とする考えを本部に表明した。松本さんは自身のツイッターで、日曜日の休業に踏み切った場合は加盟店契約を解除すると記された、本部からのものだとする文書の画像を掲載。「従業員不足は、(松本さんの)従業員さんに対する指導・教育が時代の変化にあっていない」「(松本さんが従業員に対し)研修中の給与未払い、レジの違算の補填など明らかな労働基準法違反行為を行った」と本部側は文書で指摘してきたという。 松本さんは本編集部の取材に対し、これらは労働基準監督署と相談の上で実施したことで、改善を求められたケースはそれに応じて来たと回答した。 8月27日にはSEJ幹部が松本さんの元を訪れて協議。幹部が加盟店の待遇改善に取り組む意向を示唆したことで、次の日曜日である9月1日の休業は“保留“した。松本さんは「加盟店全体への具体的な改善策やその公表期限は示されなかった。あくまでも保留だ」と話した。一般的に人手不足の深刻化と人件費の高騰を考えれば、24時間営業だけでなく年中無休の可否も十分に今後の課題となり得る。 また業界3位のローソンも横浜市内の加盟店の店舗で、深夜の間は、入店から会計までを客が“セルフ”で行う実験を8月23日から始めた。バックルームでは従業員1人がカメラで店内を監視し接客などは行わないが、今後無人化の可否も検討する。 コンビニ加盟店をめぐる苦境や問題の構造は各社で共通しているが、ファミマ、ローソンは少なくとも、なるべく客観的に状況を把握し、解決策を探ろうとする明確な姿勢は見て取れる。だが、王者セブンから漏れ伝わるのは、方向性を失った混乱の様子ばかりだ』、セブンが「混乱」を脱するのはいつになることやら・・・。経営混乱が業績にも影響が出てくるとすれば、大変だ。
タグ:セブン-イレブン ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 小売業(コンビニ) 森山真二 (その4)(24時間営業問題ほか)(「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由、コンビニ最強から一転 セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった、セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」 深夜閉店でもオーナーは増益) 「「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由」 再び指摘され始めた「コンビニ飽和論」 鈴木敏文最高顧問は「コンビニは変化に対応していけば飽和なんてことにならない」が口癖 純増数は100店 ファミリーマートやローソンも同じようだ ドラッグストアや自社店舗のほかミニスーパーとの競合 コンビニでもスーパーでもない新しいフードショップ セブン&アイが「コンフォートマート」という都市型のミニスーパー コンビニは再び「変革」を迫られている 大原 浩 「コンビニ最強から一転、セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった」 「7Pay」問題は人災である 鈴木敏文のセブン-イレブンがグループを牽引してきた 鈴木敏文切り離しの後遺症 目先の利益の追求が悲惨な結果を招きつつある セブン&アイはガタガタになっている? サラリーマン社長に野武士は扱えない 収益性低下→先行投資もできなくなる 「セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」、深夜閉店でもオーナーは増益」 ファミリーマートが深夜閉店の実験結果を公表 深夜閉店を実施しても、オーナーの利益が必ずしも減るわけではない―― 加盟店の約半数が時短営業を検討しているというアンケート結果もファミマは公表 セブンーイレブン・ジャパンの主張が覆された 減収でも減益になるとは限らないと結論 ファミマの半分の加盟店は「時短を検討」 「オーナーの収益確保」を理由に時短を否定 問われるセブンの“言い訳”の根拠 ローソンは深夜営業の自動化実験をスタート 混乱続く王者セブンは方向性が見えない
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日韓関係(その5)(燃え上がる日韓対立 安倍の「圧力外交」は初心者レベル、GSOMIA破棄 日米韓“疑似”同盟を打ち壊す韓国、韓国が仕掛ける「国際世論戦」で現代日本の誇りを守る方法) [外交]

日韓関係については、7月15日に取上げた。今日は、(その5)(燃え上がる日韓対立 安倍の「圧力外交」は初心者レベル、GSOMIA破棄 日米韓“疑似”同盟を打ち壊す韓国、韓国が仕掛ける「国際世論戦」で現代日本の誇りを守る方法)である。

先ずは、東京在住ジャーナリストのウィリアム・スポサト氏が8月8日付けNewsweek日本版に寄稿した「燃え上がる日韓対立、安倍の「圧力外交」は初心者レベル」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/08/post-12729_1.php
・『<米FP特約=戦後、地政学的な「お人好し」と言われてきた経済第一の日本の外交方針を、安倍は貿易を政治の武器にするトランプ流に変えたようだ。ただし、まだまだ未熟なために問題を悪化させている> 激しさを増す日韓の経済対立は、不安定な世界経済にとって厄介な問題というだけでなく、日本が外交のやり方を変えつつあることも示唆している。日本は戦後、地政学的な「お人好し」と見られてきた。論争が起こると、経済とビジネス上の利益を最優先し、政治的には譲歩を促すことで解決を図ってきた。だが安倍晋三首相は、それを変えようとしているようにみえる。ただし、新しい方法にはまだまだ不慣れのようだ。 <参考記事>輸出規制への「期待」に垣間見る日韓関係の「現住所」 今回の日韓対立の発端は、日本政府が下した、少なくとも表向きはテクニカルな2つの判断だった。日本政府は7月4日、3種類の半導体材料について、韓国への輸出審査を厳格化する措置を取った。これらの材料は、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国の半導体大手が主に日本から調達してきた。 韓国はこれに対して、電子製品のサプライチェーンに混乱をもたらす恐れがあると抗議。だが日本政府はさらに8月2日、韓国をいわゆる「ホワイト国」のリストから除外することを閣議決定した。ホワイト国とは、大量破壊兵器などに転用されるおそれのある戦略物資について適切な管理を行っていると見なされ、手続き上優遇されている27カ国を指す。 <参考記事>韓国・文在寅大統領は日本との関係には無関心?』、「日本は戦後、地政学的な「お人好し」と見られてきた。論争が起こると、経済とビジネス上の利益を最優先し、政治的には譲歩を促すことで解決を図ってきた。だが安倍晋三首相は、それを変えようとしているようにみえる。ただし、新しい方法にはまだまだ不慣れのようだ」、というのは手厳しい批判だ。
・『韓国はWTOに提訴も  韓国はこれらの戦略物資について、第三国への横流しを防ぐための適切な対策を取っていないと、日本政府は繰り返し主張してきた。複数のメディアが実際に北朝鮮に流れた可能性を報じているが、情報筋は中東に流れた可能性を指摘している。日本政府はまた、この問題について少なくとも数カ月前から韓国側に対話を申し入れてきたものの、そのたびに拒絶されたと怒りを込めて主張した。 韓国政府はこれを否定し、日本政府のやり方を強く非難。この問題を、対北朝鮮制裁の監督を行っている国連に持ち込む計画のほか、WTO(世界貿易機関)の規範にも背いているとして、WTOへの提訴の準備を進めると強調している。市民レベルでも、日本製品の不買運動や日本旅行のキャンセルなどの日本ボイコット運動が広がっている。 <参考記事>日本政府、韓国をホワイト国から除外 文在寅「今後の展開はすべて日本の責任」 一連の問題の背景には、第2次世界大戦中に日本企業が韓国人を強制的に動員して重労働に従事させたといういわゆる徴用工問題で、韓国に圧力をかけたい日本側の思惑がある。事の発端は2018年10月、韓国大法院(最高裁)が、日本企業に元徴用工への損害賠償支払いを命じたこと。日韓が1965年の国交正常化に際して日韓請求権協定を結び、韓国に5億ドルの経済支援を行ったことで、この問題は既に解決済み、というのが日本側の認識だった。 日本政府に近い筋によれば、安倍は徴用工問題に苛立ちを募らせており、韓国に譲歩を迫るための武器を探していた。そして、しばらく前から問題視されていた対韓輸出の問題に目をつけると、経済産業省の管轄だったこの問題を、大きな力を持つ首相官邸が引き継いだ。その結果は、芳しくない。 安倍の行動は、貿易を政治の武器に使うドナルド・トランプ米大統領のやり方と様々な意味で似ていると言われる。7月の一連の政府発表が、声明とその出し直しと戦略変更のミックスである点、まさにトランプ流だ。 こうした類の発表を行う際には、少なくとも自らの主張を裏づける証拠や、メディアや外交関係者への背景説明、それに最も重要なこととして、何が起こっているのかについての明確で一貫性のある説明が必要だ。一貫性を保つため、情報はすべて一つのオフィスを通して発表し、コメントは一人の代表者が行うべきだ。最後に、予想外の展開(その筆頭が日本製品の不買運動だろう)に備える緊急対応策も用意しておく必要がある。 だが今回の日本政府の対応はこの基本を押さえておらず、政府当局者たちは矛盾した声明や曖昧な発言を繰り返した』、その通りだ。日本のマスコミが、安倍政権に「忖度」して、批判を控えているのは残念だ。
・『徴用工判決の報復と認めた安倍  日本政府の基本的な主張は、きわめて実務的なものだ。日本側としては、どの輸出国にも認められている権利として、サプライヤに「今後は個別の出荷ごとに政府の承認が必要になる」と通告しているのだと説明ができる。既に(アメリカと並ぶ)最大の貿易相手国である中国に対しても同じシステムを導入しているが、明らかな悪影響はみられないことも説明できたはずだ。中国も、メモリーチップの生産が盛んな台湾も、日本のホワイト国リストには含まれていない。 かなりの反発を想定して、備えもしておくべきだった。サムスン電子の売上高は、韓国のGDPの約15%を占めている。主要事業に脅威が迫れば、どんな政府だって抵抗するはずだ。だが韓国政府の反応に直面して、日本政府は揺らいだ。世耕弘成経済産業相は、輸出管理は国の安全保障のためだと技術的な側面を強調しているが、政権幹部は彼が否定している徴用工訴訟への報復疑惑を裏付けるような発言をしている。 菅義偉内閣官房長官は、輸出管理は「国の安全保障上の理由」だとしながらも、韓国が「20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)までに、徴用工問題について満足する解決策を示さなかったことで、信頼関係が著しく損なわれた」という考えをちらつかせた。 政府が安全保障上の理由を前面に出し始めた直後に、安倍は再び歴史問題を持ち出した。元徴用工訴訟の最高裁判決への対応で「韓国は国と国との約束を守らないことが明確になった。貿易管理において、守れないと思うのは当然ではないか」と報道番組で語ったのだ。 安倍と菅が、経済に及ぼすダメージの規模を予想していたかどうかは分からない。韓国で180以上の店舗を展開する日本のアパレル大手ユニクロは、韓国市民の不買運動の直撃を受け、デパートなどの売り場で売り上げが30%近く減少した。韓国では外国産ビールのなかで日本産ビールがダントツの人気を誇っていたが、スーパーやコンビニの棚から日本の銘柄が姿を消し、アサヒなど日本のビール大手は痛手を受けている。韓国の旅行会社によると、ここ数週間に日本を訪れる韓国人旅行者は半減したという。昨年日本を訪れた韓国人旅行者は750万人。今やインバウンド客は日本の景気底上げに大きく貢献しているが、なかでも韓国人客は最大のお得意さまだった』、確かに、安倍政権内の説明の不整合さは目に余る。これでは、国際的にも「モノ笑いの種」を提供してしまったようだ。
・『「韓国は大げさに騒ぎすぎ」  日本は昨年、対韓輸出で200億ドル前後の黒字を計上した。これは対米輸出に次いで2番目に大きい貿易黒字だ。だが文大統領は8月2日にテレビで生中継された緊急国務会議で、「2度と日本に負けない」と宣言。日本と経済戦争に突入したとの認識を明確に示した。 一方で、日韓双方とも経済的な打撃は最小限で済むとの見方もある。韓国企業に引き続き購買意欲があればだが、日本政府の措置で輸入できなくなる物品はほとんどないと、米金融大手ゴールドマン・サックスは指摘する。また、貿易が活発なわりに、日本企業の韓国への直接投資は少なく、日本企業の中長期的なリスクは限定的だ。日本銀行の2018会計年度の統計によると、日本企業の韓国向け投資は、グローバルな対外投資の2.3%を占めるにすぎず、対米投資のおよそ10分の1にすぎない。 日本の財界は日韓の摩擦について沈黙しており、潜在的なコストにもかかわらず、安倍政権の取った措置を概ね支持しているようだ。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は、経済界は日韓関係の早期の「正常化」を望んでいると、述べている。ある財界人は個人的な見解として、日本が先に強硬姿勢を取ったわけではないと語った。「韓国は大げさに騒ぎ立て、世界経済に与える影響について不正確な発言をしている」 中長期的には、日本企業にとっての懸念材料は、サムスンはじめ韓国企業が調達先を日本からより「信頼できる」ソースに切り替えるかどうか、だ。韓国政府は8月5日、日本への輸入依存を減らすため、研究開発に640億ドルを投じると発表した。だが研究開発には膨大な時間と資金がかかるため、韓国企業は日本の措置により実際にどれだけ輸出が制限されるかを冷静に見極めて、「脱日本」を進めるかどうかを決めるだろうと、専門家はみる。 不買運動や日本離れなど数々のリスクがあるにもかかわらず、安倍は譲歩する構えを見せていない。韓国の南官杓(ナム・グァンピョ)駐日大使を外務省に呼びつけた日本の河野太郎外相は、元徴用工問題で日韓が共同で財団を設立するという解決案を説明する南をさえぎり、日本政府は既にこの案を拒否したのに、「知らないフリをして、改めて提案するのは、極めて無礼だ」と、テレビカメラの前で叱りつけた。 河野の叱責のせいで、強硬に出たのは日本政府だという印象が強まった。南大使は文大統領の側近で、新たに就任した韓国大使として6月に朝日新聞の取材を受け、関係冷え込みを避けるために最善を尽くすのは外交官の務めであり、日韓関係の改善に尽力したいと穏やかに語った人物だ』、穏健な「南大使」にまで「テレビカメラの前で叱りつけた」河野外相も、外相失格だ。今日の朝日新聞によれば、立憲民主党・枝野幸男代表は、「河野外相の対応は韓国を追い込んだ。責任は大きい。これ、外務大臣、代えるしかないですね。この日韓関係を何とかするには。外交ですから、相手の顔も一定程度、立てないとできないのに、あまりにも顔に泥を塗るようなことばかりを河野さんはやり過ぎですね。筋が通っていることの主張は厳しくやるべきですよ。ですが、何も相手のプライドを傷つけるようなやり方でやるのは、明らかに外務大臣の外交の失敗でもあります」と手厳しく批判したようだ。
・『アメリカの仲裁は形だけ  皮肉にも、こじれた関係を立て直す仲介役として期待を託されたのがトランプ政権だ。だが、日韓両国を相次いで訪問したジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は持ち前の強硬姿勢を引っ込め、この問題には口出しを渋った。マイク・ポンペオ米国務長官も、ASEAN地域フォーラム出席のために訪問したタイの首都バンコクで日米韓外相会談を行なったものの、形ばかりの仲介にとどまり、河野と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の歩み寄りはかなわなかった。 次の展開として、韓国が日本と2016年に締結した「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を破棄すれば、日本は北朝鮮がミサイルを発射しても韓国の情報は直接受け取れなくなるだけでなく、日韓の連携を前提としたアメリカのアジア太平洋戦略も深刻な痛手を被るだろう。それでも今のところアメリカは、日韓双方に「反省」を促すにとどまり、踏み込んだ仲裁を避けている。 参院選で控えめな目標ラインを大幅に上回る議席を確保し、ホッとしたばかりの安倍だが、外交では厄介な状況に直面している。北朝鮮の核問題をめぐる交渉では事実上「蚊帳の外」に置かれ、北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)とは、拉致問題の解決など面会の条件をすべて白紙にして会談を目指すも相手にされず、米政府からは、ホルムズ海峡などの航行の安全確保のための「有志連合」参加と、日米貿易交渉の早期妥結に向け、やいのやいのと圧力をかけられている。 おまけに、中国とロシアが狙い澄ましたように手を組み、日米韓同盟に揺さぶりをかけている。中ロは日本海と東シナ海で合同演習を実施。韓国が実効支配し、日本が領有権を主張する竹島の領空をロシア軍機が侵犯した。次は、日本が支配し、中国が領有権を主張している東シナ海の尖閣諸島でも挑発行動を取りかねないと警戒する声もある。強気の外交には危うさがつきものだ。お人好し外交は実は得策であり、ビジネスに政治を持ち込むのは邪道だったと、安倍は後悔することになるかもしれない』、やはりトランプの真似には無理があったようだ。GSOMIAはその後、破棄されたが、これについては、次の記事を参考にされたい。

次に、元自衛艦隊司令官(海将)香田洋二氏が8月26日付け日経ビジネスオンラインのインタビュー応じた「GSOMIA破棄、日米韓“疑似”同盟を打ち壊す韓国」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/082300090/?P=1
・『GSOMIAは日韓の軍事関係における唯一の協定だ。海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた香田洋二氏は、韓国がこれを破棄したことで「日米韓の『疑似』3国同盟が大打撃を受ける」と指摘する。朝鮮半島有事における米国の行動を非効率にしかねない。韓国は、8月14日に防衛戦略を改定し、F-35Bを搭載する軽空母を国内建造する意向などを明らかにした。香田氏は「これにも警戒を要す」という。 Q:韓国が8月22日、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めました。この重要性と今後の影響についてうかがいます。まず、GSOMIAとはどのような協定なのか教えてください。 香田:お互いから得た情報を第三国・第三者に流さない、という取り決めです。細かい部分では、手渡し方法とか保管方法も定めています。例えば二重封筒に入れて保管するとか。これによって日韓両国が安心して情報を共有することができます。締結前よりも機密度の高い軍事情報をやりとりできるようになりました。 Q:日韓が情報を「直接」やりとりできるようになるという説明もありますね。 香田:そういう面もあります。従来は、米国がハブになってサニタイズをして情報を伝達していました。サニタイズとは、米国が韓国から得た情報を、韓国発と分からないようにして、もしくは一般情報として日本に伝えることをいいます。もしくは、サニタイズを経て、日本発の情報を韓国に伝える。 しかし、日本が得たい情報と米国が得たい情報は異なります。GSOMIAがあると、日本が必要とする情報を韓国から直接得られるようになります。 以前に北朝鮮が“人工衛星”を真南に打ち上げたことがありました。日本は当時、発射後しばらく追尾することができませんでした。一方、韓国は発射後しばらくの情報は捕捉していたものの、それ以降の情報は得られなかった。両国間では、それぞれの情報を交換するのかどうかすら決まっていませんでした。GSOMIAの下で、北朝鮮が発射する弾道ミサイルの軌道情報を交換することを決めておけば、両国がこの飛翔体の軌道の全体像を把握することができます。 2016年11月にGSOMIAを締結して以降、日韓で29回の情報交換がなされ、その多くが北朝鮮の弾道ミサイルに関するものでした。ただし、交換する情報の対象は弾道ミサイルに限るものではありません。北朝鮮が弾道ミサイルを発射する頻度を上げたため、これに関する情報交換が多くなりましたが、その時々の環境に応じて、交換・共有する情報の対象は異なります』、確かに、「米国がハブになってサニタイズをして情報を伝達」よりは、直接の情報交換の方が早いし、ニーズに合った情報交換が可能だろう。
・『日本の情報収集能力は自由主義諸国では米国に次ぐ  Q:韓国紙の報道によると、韓国内には「日本が提供する情報の有用性は低い」との見方があるようです。一方で、香田さんは破棄によって韓国が被るダメージの方が大きいとおっしゃっています。 香田:私は韓国が被るダメージの方が大きいと考えています。再び、ミサイル防衛システムを例に話をしましょう。韓国は自前のミサイル防衛システムを持っていません。イージス艦を運用していますが、これは弾道ミサイルを探知するための高性能レーダーは装備しているものの、迎撃用の対空ミサイルは装備していません。 注目されているTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)は在韓米軍が自らを守るためのもので、韓国軍が運用するものではない。 これに対して日本は、海上にはイージス艦を展開、地上にはパトリオットミサイルを配備して自前のシステムを構築しています。これは、米国を除けば、考え得る限りで最高の装備です。 Q:海上自衛隊はイージス艦を2020年度には8隻体制に拡充します。地上配備型のイージスシステムであるイージス・アショアについても、配備することを2017年12月に決定しました 香田:そうですね。つまり、ミサイル防衛システムを自前で行っていない韓国が、自前で運用している日本から、すぐにも使える形の情報を得られるわけです。これは大きいのではないでしょうか。 韓国が日本から得られる情報はミサイル防衛関連にとどまりません。情報収集のための体制は日本がずっと優れています。西側では、米国に次ぐものと言えるでしょう。日本は衛星を7つ運用しているの対し韓国はゼロ。P-1やP-3Cといった洋上哨戒機は日本が73機、韓国が18機。早期警戒管制機(AWACS)は日本が18機、韓国は4機です。日本の方が、「一日の長」ならぬ5日くらいの長があると言うことができる。 一方、北朝鮮に関する情報については、韓国が優れています。両国は地理的に近いですし、同じ民族で同じ言語を話すわけですから。 Q:日韓がGSOMIAを締結した2016年11月以前の状態に戻るだけ、という評価が一部にあります。 香田:私はそうは思いません。北朝鮮の状況が大きく変わっているからです。北朝鮮が弾道ミサイル発射の頻度を上げ、本気で暴れ出したのは2017年からです。 2015年までの弾道ミサイルの発射が15回で約32発なのに対して、2016年は1年間だけで15回で23発。さらに2017年は14回で17発でした。しかもICBM(大陸間弾道ミサイル)級のミサイルが増えています。米軍が北朝鮮を軍事攻撃する可能性が非常に強く懸念されました』、「日本の方が、「一日の長」ならぬ5日くらいの長があると言うことができる。 一方、北朝鮮に関する情報については、韓国が優れています」、というのでは、韓国軍にとっては、ダメージが大きいのではなかろうか。
・『韓国は同盟国として失格  Q:以上のお話しを踏まえて、韓国によるGSOMIA破棄の決定を香田さんはどう評価しますか。 香田:韓国はついにルビコン川を渡った、と理解しています。これは日本との情報の交換・共有を超えた意味を持つからです。 GSOMIAには3つの側面があります。第1は、これまでお話しした機密情報を交換・共有する実利的な側面。第2は、日米韓3国による疑似同盟の象徴としての側面。第3は、同盟関係にない日韓の軍と軍が交流するためのお墨付きとしての側面です。 第1の側面についてはこれまでにお話ししました。第2の側面について、朝鮮半島有事を考えてみましょう。韓国が単独で自国を防衛することはできません。米軍が重要な役割を果たすことになります。そして、米軍が力を発揮するためには、在日米軍基地およびそれを支えるインフラが欠かせません。水道水がそのまま飲める。基地の周囲で購入した糧食をそのまま兵士に提供できる。そんな環境は世界を見渡しても多くはありません。 このようなことは、威勢の良い安保論議では見過ごされがちですが、実際に兵士が命をかけて戦う戦闘を勝ち抜くための死活的要素としてのロジスティクスの意義なのです。つまり、米韓同盟は、日米同盟があってこそ機能する同盟なのです。 日米同盟と米韓同盟には本質的な違いがあります。日米同盟は米軍が世界展開するための基盤を成しており、単独でも存在し得ます。米国から見れば“黒字”の同盟と言えるでしょう。これに対して米韓同盟は北朝鮮に備えるという単目的の同盟で、米国から見れば軍事アセットの持ち出し、即ち“赤字”です。そして、日米同盟がないと機能しない。ここはドナルド・トランプ米大統領にも正確に理解してほしいところですが…… よって、日米韓は疑似的な3国同盟の関係にあるのです。このようなフレームワークの中で日韓関係が悪化し、日本が背を向けたらどうなるでしょうか。米国は米韓同盟によって韓国防衛の責任を負っているので、軍事作戦を展開しなければなりません。しかし、基地やインフラの使用に支障が生じれば、それが非常に非効率でやりづらいものになります。日本の協力が欠かせないのですが、日韓の間に軍事協力をする条約は存在しません。軍事面で唯一存在する協定がGSOMIA。したがって、これは日米韓の疑似同盟を保証する象徴的な存在なのです。 米国を苦境に追いやるような措置を文在寅(ムン・ジェイン)大統領は認めてしまいました。韓国の国益を考えたら、全閣僚が反対しても、GSOMIAを維持すべきでした。それなのに、文大統領は、米韓同盟よりも日韓問題の方に重きを置いたのです。 さらに言えば、米国よりも北朝鮮を選びました。 Q:北朝鮮の宣伝ウェブサイトが、GSOMIAを破棄するよう韓国に求める論評を掲載していました。その一方で、米国は「関係の正常化に向けて日韓が動き出してくれることを期待している」とさんざん求めていました。 香田:そうした中で韓国は、米国ではなく北朝鮮を選択したわけです。米国から見たら、同盟国として「失格」です。これが今後、どのような影響をもたらすのか注視する必要があります。 Q:マイク・ポンペオ米国務長官が「失望した」と述べました。同盟国に対するこうした批判は異例のこと、とされています。 香田:東アジア有事の際に、米国は意に反して非効率な対応を迫られるかもしれないわけです。なので、米国は日韓関係の正常化を日韓のために求めているのではありません。彼らの国益がかかっているのです。 「日本は米国の従属国である」とか「自衛隊は米軍のためにある」とか言われることがあります。なぜ、そのように見えることをしているのか。これは国益を考え、米軍の機能を100%発揮できる状態をつくり、日本の安全を守るためにしていることです。これこそが安全保障上の最大の国益と我が国は考えています。韓国も同じ発想で考えるべきです』、GSOMIAの破棄は、単に軍事情報の交換が出来なくなるだけでなく、「日米韓3国による疑似同盟の象徴としての側面」、「同盟関係にない日韓の軍と軍が交流するためのお墨付きとしての側面」にも大きな影響を与える広がりを持ったもののようだ。
・『日本なしに韓国は守れない  Q:韓国の防衛において、日本が非常に大きな役割を果たしているわけですね。 香田:その通りです。これまでお話ししたように日米韓は疑似的な軍事同盟の下で動いています。しかし、米国を中心とするアジアの安全保障体制は自転車の車輪におけるハブ&スポークに例えられます。米国がハブ。そこから伸びるスポークの先に日本がある。他のスポークの先に韓国やオーストラリア、フィリピンがいるわけです。このスポークに対して、GSOMIAは竹ひごくらいの存在でしかない。それでも存在するのとしないのとでは大違いです。 Q:先ほど、朝鮮半島有事の例をお話しいただきました。朝鮮戦争が勃発した時、ハリー・トルーマン米大統領(当時)は軍事介入を決め、在日米軍の出動を命じました。日本はまだ占領下にあったため、日本にある基地およびインフラを米軍や国連軍は日本人の意向に大きな意を払うことなく利用することができました。 しかし、今、朝鮮半島有事が起きても、同じようにはできません。在日米軍基地を使用するには日米間で事前協議が必要になるなど、日本の協力が不可欠となります。その日韓の軍事協力を保証する唯一の協定が破棄されたことになるわけですね。加えて、日本人の対韓感情が悪化している状況では日本の民間からの協力も得られません。 香田:そういうことです。我が国では、朝鮮戦争といえば戦後の荒廃した経済へのカンフル剤となった特需のことばかりが話題になりますが、朝鮮戦争を休戦にもっていけたのは、日本の基地とインフラ、そして工業力があったからです。 Q:第3の側面、自衛隊と韓国軍の交流についてはいかがですか。 香田:これまで両者の間でさまざまな交流が行われてきましたが、これが細っていくでしょうね。 Q:さっそく、その動きが始まりました。陸軍と自衛隊の幹部候補生が互いの国を訪問する交流の中止を韓国が申し入れたことが8月24日に報道されました。今年は韓国側が日本を訪問する番でした。 香田:そうですね。GSOMIAの破棄は、日韓関係においてUターンできない状況を作ることになったかもしれません。GSOMIAを維持し時間を稼いでいれば、いずれ貿易管理の問題を解決したり、歴史問題で合意をみたりする可能性があります。しかし、韓国はこの“土台”を蹴飛ばしてしまった。交渉の“ドア”を閉めてしまったのです』、「韓国はこの“土台”を蹴飛ばしてしまった。交渉の“ドア”を閉めてしまった」、というのは残念だ。
・『韓国は“冷戦クラブ”の準会員  香田:韓国によるGSOMIAの破棄が与える影響は、日米韓の関係にとどまらず、さらに広く影響を及ぼします。1つには、“冷戦クラブ”における韓国のプレゼンスが下がることでしょう。 Q:冷戦クラブですか。 香田:ええ。日本と米国、西欧諸国は共に冷戦を戦い、目に見えない冷戦クラブのメンバーとして強い仲間意識を持っています。しかし、韓国はこのメンバーに入れていません。軍関係の国際会議に出席すると実感できます。韓国は、国際社会において「冷戦を戦った」とはみなされていないのです。 米韓同盟と日韓GSOMIAがあるので、かろうじて準会員として遇されるようになりました。GSOMIAを破棄したことで、再び元の立場に戻ることになると思います。 Q:日本の自衛隊は冷戦時代、国外で活動することが難しい状況にありました。一方の韓国軍は冷戦下で行われた米ソの代理戦争であるベトナム戦争に参加しています。それなのに、世界は日本の担った役割を重視しているのですね。 香田:冷戦時代、旧ソ連という"大きな熊"の利き腕である右手と右足はNATO(北大西洋条約機構)を押さえていました。そして、左手と左足は日米同盟が押さえていた。この間、韓国はソ連に対峙していたわけではありません。北朝鮮は強い牙を持った猛獣ですが、これとの戦いは戦史において冷戦には入らないのです。韓国はこの点に気づいてないかもしれません』、“冷戦クラブ”とは初耳だが、「韓国はソ連に対峙していたわけではありません」ので、正式のメンバーではないというのも納得した。
・『米ロの核戦略にも影響が及ぶ  Q:日米韓疑似同盟の劣化は、対中国、対ロシア、対北朝鮮でどのような影響が出てくるでしょう。 香田:ロシアは今、極東で戦略核の増強を進めています。超大国
として唯一、米国と張り合えるこの分野で、米国と対等の存在になろうとしている。そのため、カムチャツカ半島東岸のペトロパブロフスク基地に第2撃*用の戦略原子力潜水艦の配備を進めています。これを防護するため、北方領土と千島列島にミサイルの配備を進めているのです。ロシアとしては、“聖域”であるオホーツク海に米国の潜水艦や対潜部隊を入れるわけにはいきません。 *:核兵器を使った戦争において、相手国からの先制攻撃によって第1撃用の核戦力を失った場合、第2撃用の核戦力で報復を図る Q:ロシアは2016年、国後島に地対艦ミサイル「バル」を配備すると決定しています。 香田:そうですね。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が日本との北方領土交渉において強硬な態度を取る理由の1つはここにあります。日本がイネイブラー*になっては困るのです。つまり、日本が北方領土を取り戻すために“善意”でとる行動が、米国を利することになっては困る。 *:「イネイブリング」とは、良かれと思ってやったことが、かえって問題を悪化させること こうした環境において、日本と韓国との関係が悪化し、それによって米国が難渋することになれば、ロシアにとっては願ってもないことです。将棋でいえば、桂馬もしくは銀を取るくらいの価値があるでしょう。飛車や角とまでは言いませんが。 カムチャツカ半島と千島列島を挟んで米ロがにらみ合いになった場合、米国は当然、中国の動向を気に掛けます。本来なら韓国が第1列島線*の中で、黄海における情報を収集し、米国や日本に提供・共有することになります。韓国が背を向けたら、米軍は自らの部隊の一部を割いて情報収集に当たらなければなりません。日韓関係がうまく機能しないと、疑似3国同盟の総合的な監視能力が低下してしまうのです。そうなれば、米軍はその力を100%発揮することができなくなります。 *:中国が考える防衛ラインの1つ。東シナ海から台湾を経て南シナ海にかかる Q:対北朝鮮ではどうでしょう。 香田:北朝鮮にとっては棚からぼた餅といったところでしょう。 北朝鮮は2017年11月以降、弾道ミサイルの発射を控えて“ニュークリアー・ホリデー”(核の休日)の状態にありました。しかし、その間に、朝鮮半島での地上戦を想定した中短距離の通常兵器の開発を着々と進めてきています。 7月以降に発射を続けている兵器は3つのタイプがあると分析しています。いずれも韓国をターゲットにした機動攻撃能力です。第1は、米陸軍が配備する「ATACMS(エイタクムス)」に似たもの。これは韓国の北半分を射程に収めます。第2はロシア製短距離ミサイル「イスカンデル」をコピーしたとみられるもの。これは韓国全土に加えて済州島までカバーできる。第3の多連装ロケットはソウルや、在韓米軍の司令部や駐屯地を面で撃砕する機能を持ちます。いずれも、韓国軍キラー、在韓米軍キラーの役割を担うものです。 北朝鮮がこのように韓国を攻撃する能力を高めているにもかかわらず、米国は韓国に対して不信感を抱かざるを得ない。日韓の絆は弱くなる。韓国の文大統領は北朝鮮に秋波を送り続けている。北朝鮮にとっては願ったりかなったりの状況です。 中国にとっても同様のことが言えます』、日韓の離反で、漁夫の利を得るのが、ロシア、中国、北朝鮮とはやれやれ・・・。
・『日米韓によるミサイル防衛の一体化は期待薄  Q:日本としては、GSOMIAを情報共有の基盤として、韓国と日本のミサイル防衛システムを将来的に連動させる考えがあったのでしょうか。 海上自衛隊は現在建造中の新しいイージス艦に「CEC」を搭載する決定をしました。イージス仕様のレーダーや対空ミサイルをネットワーク化し、相互に情報をやり取りできるようにするソフトです。北朝鮮が発射した弾道ミサイルをイージス艦が自らのレーダーで捉えていなくても、同じくCECを装備する別のレーダーが追尾していれば、その情報を基に迎撃ミサイルを発射できるようになります。 CECの装備と相互接続を進めれば、理屈上は、韓国のイージス艦が搭載するレーダーが得たブースト段階*の情報を基に、日本のイージス艦が迎撃ミサイルを発射できるようになる。迎撃の精度を高められる可能性があります。 *:発射した直後で、速度が遅い段階 香田:それは実行するのは容易ではありません。集団的自衛権の行使に当たる可能性があるからです。米国との間であれば、法的な理由付けがなんとか可能かもしれませんが、韓国は同盟国ではありません。大きな政治判断が必要になります。それに、米国が韓国にCECを提供するかどうかも分かりません』、「日米韓によるミサイル防衛の一体化は期待薄」、当然予想される問題だ。
・『韓国が構想する「空母」を敵に回してはならない  Q:韓国が8月14日に「2020~24年国防中期計画」を発表しました。日本の防衛大綱や中期防衛力整備計画に相当するものです。この中で、F-35B*を搭載する「軽空母」を建造すべく、研究に入る方針を明示しました(関連記事「中国の空母『遼寧』に対抗する意図の艦船は論外」)。3000トン級潜水艦の建造・配備も記述されています。 香田さんが指摘されたように文大統領は北朝鮮に秋波を送り、8月15日に行われた光復節の演説では「2045年までに統一を果たす」考えを示しました。北朝鮮が敵でなくなるのであれば、こうした装備の拡充は何のためなのでしょう。 *:短い滑走で離陸し垂直着陸できる特徴(STOVL)を持つ 香田:空母は、使い道がないのではないでしょうか。韓国軍は地理的に沿岸を主たる活動地域にする内海海軍です。日本のように、海上交通路を確保するための航空優勢を維持する機能はあまり必要ありません。 韓国は防衛戦略がないまま兵力の整備を進める傾向があります。現在運用している迎撃ミサイルを搭載しないイージス艦は何のためにあるのでしょう。潜水艦も20隻程度を整備する計画です。しかし、黄海は浅すぎて潜水艦は使えません。太平洋への口は日本列島にふさがれています。軽空母も潜水艦も、意地悪く見れば、日本以外に使い道がありません。 経済的にある程度の余裕があるので、入手できる装備の中で最も豪華なものを導入しようとしているように見えます。また、海上自衛隊を目標にしている、後れを取りたくない、という心情も見え隠れします。例えば、日本が輸送艦「おおすみ」を建造すると、韓国は「独島(ドクト)」を開発して後追いしました。 韓国がいま本当に取り組むべきは、自前のミサイル防衛システムの構築や、北朝鮮の小型潜水艦の侵入防止策、対機雷掃海部隊の育成などではないでしょうか。 Q:韓国が整備を進める空母や潜水艦が日本の脅威になる可能性はあるでしょうか。GSOMIAの破棄、北朝鮮への秋波などを考えると…… 香田:すべての可能性を考えておく必要があります。日本は外交の力で、韓国を“中間線”よりこちら側に引き留めておかなければなりません。これは政治と外交が果たすべき最大の責任です。貿易管理の問題で正論を振りかざし、強く出るだけではうまくいかないかもしれません。韓国軍はけっこう強いですから、敵に回したら怖いのです』、「軽空母も潜水艦も、意地悪く見れば、日本以外に使い道がありません」、「韓国軍はけっこう強いですから、敵に回したら怖いのです」、などというのは不気味だ。
・『米国が疑う、韓国の情報管理  Q:米国が韓国にF-35Bを売却しない、と判断する可能性があるでしょうか。先ほど話題にしたように、米国は強い不満をあらわにしています。 香田:あり得るかもしれません。米国は時期を見て、韓国の情報保全状況を精査すると思います。北朝鮮が発射した「ATACMS(エイタクムス)」が、漏洩した情報を基に開発されたとしたら、その出どころは韓国である公算が最も高いですから。 日本が韓国に対する輸出管理の厳格化を図ったのも、米国がもたらした基礎情報が元にあったと思われます。米国による精査の“前哨戦”と見ることができるかもしれません。韓国が7月10日に150件を超える不正輸出を公表したのは、米国に察知されたのを知り、先手を打った可能性があります。 Q:米国における対韓感情が悪化し、米韓同盟の劣化につながる可能性を指摘する専門家がいます。 香田:米国が韓国と同盟国の縁を切るというのは考えづらいでしょう。ここでは、米国とトルコの関係が参考になります。ロシアから地対空ミサイル「S400」を導入したトルコに対して米国は怒りをあらわにしました。一時は、米国がトルコをNATOから追い出すのでは、と思えるほどでした。しかし実現には至っていません。ただし、トランプ大統領が7月、「F-35の売却を棚上げする」と発言して対抗措置(制裁)を取っています。 トランプ大統領は、NATOとも同調してアメとムチ両方を使いトルコのS400導入を阻止しようとしましたが、失敗しました。しかし、既にロシアとの関係緊密化を進めるトルコをこれ以上追い詰めてNATOからの離脱、またはNATOからの除名という事態に陥れば、プーチン大統領の最大の狙いであるNATO分断への道を開くことになります。それゆえ、トランプ大統領もNATOも、時間をかけてでもトルコをNATOに残留させる道を探っているのです。 もちろん、トルコと韓国で一対一の比較はできません。しかし、米韓同盟の劣化あるいは解消は、プーチン大統領のみならず、中国の習近平主席や北朝鮮の金正恩委員長が狙うところを、こちらのオウンゴールで実現してあげることになります。彼らは弄することなく目的を達成できる。この観点から、米国、そしてトランプ大統領は自らの思いに蓋をしてでも、韓国をつなぎとめようとする公算が高いと考えます』、トランプにとって、トルコや韓国など、悩みの種は尽きないようだ。

第三に、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が8月27日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「韓国が仕掛ける「国際世論戦」で現代日本の誇りを守る方法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212900
・『百家争鳴の日韓問題について「国際世論戦」に焦点を当てる  日韓関係の悪化が止まらない。従軍慰安婦問題(本連載第123回)、韓国海軍レーザー照射問題、元徴用工問題、日本にほる対韓半導体部品の輸出管理の「包括管理」から「個別管理」への変更と韓国を「ホワイト国」から除外する決定(第215回)、そしてそれに対する韓国の報復と続き、遂に韓国・文在寅政権は、日韓で防衛秘密を共有する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。 今後、安倍政権はどう行動すべきか、韓国はさらにどう対抗してくるのか、百家争鳴となっている。その中で本稿は、いわゆる「国際世論戦」と呼ばれるものに焦点を当てたい。 日本は歴史的に「国際世論戦」に弱いとされている。古くは満州国建国を巡って日本は中国に敗れて孤立し、最終的に国際連盟を脱退する事態に至った。今年4月にも、世界貿易機関(WTO)を舞台に韓国と「東日本産水産物の禁輸措置の解除」を巡って争い、日本は敗れている(第215回・P.4)。 今回も、韓国はすでに「国際世論戦」を仕掛けているといわれている。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が「トランプ化する日本外交」と論評するなど、「日本の輸出規制は元徴用工問題に対する経済制裁である」という韓国の主張が国際的に広がりつつある。ただし、筆者は今回に関しては、韓国の国際世論戦の巧みさを、あまり警戒する必要はないと考えている』、日本の「国際世論戦」の弱さは、実に腹立たしい。安倍政権も自分の言いなりになる日本のマスコミ相手には威張っていても、海外メディア相手では形なしのようだ。
・『韓国のロビイングには定評ありだが「日本はWTO違反」の反応は?  今回の日韓の「国際世論戦」の争点は大きく2つに整理される。1つは、「日本の韓国に対する半導体部品の輸出管理の見直しは、WTO違反か否か」である。もう1つは、「従軍慰安婦問題」「元徴用工問題」の、いわゆる「歴史認識」を巡るものである。 1つ目については、韓国は非常に熱心に、「日本はWTO違反」であるという主張の正当性を世界各国に訴えているという。韓国のロビイングのうまさは定評があるところだ。だが、今回に関しては、韓国の動きが成功しているという状況証拠はない。韓国の主張は感情的で、実態に即していないからだ(細川昌彦「誤解だらけの韓国に対する輸出規制発動」日経ビジネスオンライン)。また、韓国のロビーを受けた各国は、「日韓の争いに巻き込まれたくない」「二国間で解決してほしい」というのが本音である。 実際、WTOに提訴しても、決着までに数年間かかるという。一方、日本は既に、国内の素材メーカーから申請が出ていた半導体の基板に塗る感光材の「レジスト」を、厳格な審査の上に「軍事転用のおそれがない」として、輸出を許可し始めている。今後、このような輸出の実績が積み重なっていけば、感情的になっている韓国の世論も沈静化するだろう。「WTO違反ではない」という日本の主張も、次第に各国や世界のメディアに理解されていくようになる』、「韓国のロビイングのうまさは定評がある」とはいっても、これはさして問題なさそうだ。
・『より深刻な2つ目の論点「歴史認識をめぐる国際世論戦」  それより深刻にみえるのは、2つ目の「歴史認識をめぐる国際世論戦」だ。しかし、この連載では、ある英国人の学者のコメントを紹介したことがある。 「日本、中国、韓国はなぜ1回戦争したくらいで、これほど険悪な関係なのか。英国や他の国で催されるレセプションやパーティーで、日中韓の大使が非難合戦を繰り広げているらしいじゃないか。会を主催する国に対して失礼極まりないことだ。英国とフランスは、百年戦争も経験したし、何度も戦った。ドイツ、スペインとも戦った。勝った時もあれば、負けたこともある。欧州の大国も小国もいろんな国同士が戦争をした。それぞれの国が、さまざまな感情を持っているが、それを乗り越えるために努力している。日中韓の振る舞いは、未熟な子どもの喧嘩のようにしか見えない」(第94回) 要するに、どんな国でも歴史をたどれば「スネに傷がある」ものだ。それにこだわっていても仕方がないではないか。ましてや、関係のない他国を舞台に喧嘩をするなど愚の骨頂だというのだ。 英国で7年間生活したことがあり、しかも「人権意識」が高い学者・学生が世界中から集まっていた大学に身を置いた筆者の実感だが、個人的には日本の過去の振る舞いを理由に、現在の日本を批判する人に会ったことがない。 確かに従軍慰安婦問題は、今でも世界のメディアで「性奴隷」と表現されている(例えば、"Shinzo Abe to attend Winter Olympics despite ‘comfort women’ row", The Financial Times, 2018年1月24日付)。ただし、それは、あくまで「過去の戦争における負の歴史」という扱いでもある。戦争が繰り返された欧州であれば、どこの国にでもある「過去」だということだ。「現在の日本」まで特別に責められているわけではない。 言い換えれば、世界が関心を持っているのは「現代の女性の人権」である。従軍慰安婦問題に様々な反論を試みることで現在の日本が疑われているのは、いまだに女性の人権に対する意識が低いのではないかということだ。 例えば、安倍晋三首相がかつてよく言っていた「強制はなかった」「狭義の強制、広義の強制」という主張などは、海外からはよく理解できない。そういう細かな主張をすればするほど、「日本は、いまだに女性の人権に対する意識が低いんだな」という誤解を広げてしまうだけなのだ(第123回)』、確かに、(欧州の)「それぞれの国が、さまざまな感情を持っているが、それを乗り越えるために努力している。日中韓の振る舞いは、未熟な子どもの喧嘩のようにしか見えない」、との「ある英国人の学者のコメント」は大いに考えさせられる。
・『韓国による慰安婦像の設置は過剰に反応しても日本に得るものなし  また、韓国が熱心に行っている世界中での慰安婦像の設置についても、過剰に反応しても日本が得るものはない。なぜなら、慰安婦像を受け入れる国の人は「過去の日本」の振る舞いを責めようとしているのではない。「女性の人権を守るための像」だと理解するから、設置を認めているのだ。 例えば、米サンフランシスコ市が慰安婦像の寄贈受け入れを決めた時、大阪市の吉村洋文市長(当時)は、これに抗議するために、サンフランシスコと大阪市の姉妹都市関係の解消を通知する書簡を送った。これに対して、ロンドン・ブリード・サンフランシスコ市長は、解消決定を「残念」とし、大阪市との人的交流を維持する考えを示した。 その上で、ブリード市長は慰安婦像について「奴隷化や性目的の人身売買に耐えることを強いられてきた、そして現在も強いられている全ての女性が直面する苦闘の象徴」「彼女たち犠牲者は尊敬に値するし、この記念碑はわれわれが絶対に忘れてはいけない出来事と教訓の全てを再認識させる」と声明を出している。 ブリード市長は明らかに、慰安婦像の意義を日本の過去の振る舞いよりも、より一般的な問題である、現在も存在する性奴隷・人身売買など女性の人権侵害を根絶するためのものと理解している。そして、仮に過去に不幸な出来事があったとしても、現在の日本を批判してはいない。今後も日本との交流を続けたいとしているのだ。 おそらく、吉村市長の怒りはブリード市長にはまったく伝わっていなかっただろう。女性の人権を守るのは政治家として当然のことなのに、いったい何を一方的に怒っているのか、さっぱり分からないと思っていたのではないか。ましてや、突然の姉妹都市解消の通知には「60年という姉妹都市の歴史を断ち切るほどの問題なのか?」と、ただあぜんとしていたと思う。 結局、吉村市長は、世界中から「人権意識の低いポピュリスト」だという「誤解」を受けるだけとなってしまった。吉村市長は大阪の待機児童問題を解決するなど高い実行力を示しており、将来的に「東の(小泉)進次郎、西の吉村」と並び称される政治家になると筆者は期待している。それだけに、非常に心配だ(第208回)。 日本は確かにかつて戦争を起こした「ならず者国家」としての負の歴史を背負っている。(第166回・P.4)。一方で、日本は戦後70年間、平和国家として行動し、負の歴史を償おうとしてきた。そのことは世界中に認められている。英公共放送「BBC」の調査で示されたように、「世界にいい影響を与える国」と高評価してくれる人々が、世界中に増えてきているのだ(“Sharp Drop in World Views of US, UK: Global Poll,” BBC World, 2017年7月4日付)。 その意味で、たとえ「ならず者」と呼ぶ人がいても目くじら立てることなく謙虚に受け止め、「いい影響を与える国」と言ってくれる国が1つでも増えるよう、誠意のある行動を続けていけばいいのではないだろうか』、これまでサンフランシスコ市などが慰安婦像を受け入れているのは、韓国系のロビーイングのためと思っていたが、「ブリード市長は明らかに、慰安婦像の意義を日本の過去の振る舞いよりも、より一般的な問題である、現在も存在する性奴隷・人身売買など女性の人権侵害を根絶するためのものと理解している。そして、仮に過去に不幸な出来事があったとしても、現在の日本を批判してはいない」、というので理由がより深く理解できた。「大阪市の吉村洋文市長(当時)は、これに抗議するために、サンフランシスコと大阪市の姉妹都市関係の解消を通知する書簡を送った」、「抗議する」理由を明確に述べずに、結論だけの書簡だったので、理解が得られなかったのは当然で、国際的常識を持ち合わせずに、国内パフォーマンスだけを狙う田舎政治家のやることだ。
・『「安倍平和宣言・人権マニフェスト」を世界に発信してはどうか  それでは具体的に、日本がこれからどう行動すべきかを考える。この連載では、従軍慰安婦問題や元徴用工問題について安倍首相が直接、韓国民に会って話をすることを提言してきた(第215回・P.6)。 安倍首相は、元慰安婦・元徴用工の方々に謝罪する必要はない。日本政府の立場の「細かな説明」も必要ない。しかし、両国の間に「不幸な歴史」があったこと、少なくとも「侵略された」韓国側が、より民族・国家としての誇りを深く傷つけられていることを率直に認めるほうがいいと考える。そして、その不幸な歴史に「心が痛みます」というメッセージを発し、世界中のメディアに発信する。その時に、従軍慰安婦問題・元徴用工問題は確かに終わる。 今回は、これをもっと発展させた提案をしたい。安倍首相は、「安倍平和宣言」とでも呼ぶべきメッセージを全世界に向けて発信するのだ。そして、「日本は戦争をしない。戦時における女性の人権侵害という不幸な歴史を二度と繰り返さない」と宣言する。)続いて、現代の日本は「人権を世界で最も守る国になる」とアピールし、「安倍人権マニフェスト」を発表する。現在、日本は人権問題について世界から批判を受けている状況にある。それらを、安倍首相が「自らの任期中に一挙に解決する」という決意を示すのだ。それは例えば、以下のさまざまな問題の解決である。 (1)数々の企業の上級・中級幹部における女性の割合が、わずか12.5%であること(ちなみに、マレーシア 22.2%、ドイツ 29.0%、フランス 31.7%、シンガポール 33.9%、英国 35.4%、スウェーデン 39.7%、米国 43.4%である。https://data.worldbank.org/indicator/SL.EMP.SMGT.FE.ZS) (2)「下院議員または一院制議会における女性議員の比率、193カ国のランキング」で、日本が165位であることの改善(Women in Politics: 2019) (3)国際連合女子差別撤廃委員会から「差別的な規定」と3度にわたって勧告を受けている夫婦同姓をあらためて、「選択的夫婦別姓」の導入 (4)「女性差別撤廃条約」の徹底的な順守を宣言 (5)国連の自由権規約委員会や子どもの権利委員会から法改正の勧告を繰り返し受けている婚外子の相続分差別の撤廃(第144回) (6)外国人技能実習生の人権侵害問題の解決などによる、多様性のある日本社会の実現(第197回) (7)同性結婚などLGBTの権利を保障する) そして、「安倍平和基金」を設立する。「安倍平和基金」は、アフリカや中東、アジアなど世界中の全ての人権侵害問題を援助の対象とし、元従軍慰安婦や元徴用工への援助は当然これに含まれることになる。金額は、従軍慰安婦問題解決の基金10億円の10倍の規模である「100億円」とする。日本政府および趣旨に賛同する企業が資金を拠出する』、「「安倍平和宣言」とでも呼ぶべきメッセージを全世界に向けて発信」、とは検討に値するアイデアだ。「日本政府の立場の「細かな説明」も必要ない」、日本側はすぐ強制性の有無などテクニカルな説明に走りがちだが、国際的にみれば、それは二義的問題に過ぎず、確かに不要である。
・『慰安婦像に代わる「平和の人間像」を世界中に設置  さらに、「平和の人間像」を日本がつくり、世界中に設置する。 「平和の人間像」のイメージ。顔は「ムクゲ」で花言葉は「信念」「新しい美」。右脚に引きちぎられた「赤に白斑の薔薇」の鎖。花言葉は「戦争」「戦い」。筆者の友人が作成。無断転載禁止 現在の慰安婦像は「女性の人権を守るための像」ではある。しかし、その対象は「過去、戦時に人権侵害を受けた韓国人女性」を事例として限定したものだ。それでは、対象が狭いのではないだろうか。 「平和の人間像」は、世界中の男女・LGBTを問わず全ての人に対する人権侵害問題を完全解決することを宣言する像とする。そして、全ての人々を対象とするのにふさわしい、抽象的な造形とする。 「平和の人間像」の第一体目は、ぜひソウル市の「青瓦台」の前に設置させてもらおう。像の除幕式では、文大統領と安倍首相ががっちりと握手をして、両国が世界の人権侵害の歴史の終焉と、現在の人権問題の完全解決を高らかに宣言する。 文大統領と、それを支持する韓国の左派は嫌がるだろう。だが、嫌がれば韓国は「人権意識の低い国」となり、慰安婦像の設置は「単なる反日のための行動」であったと、世界中から批判を浴びることになる。 要するに、「国際世論戦」において、従軍慰安婦問題や元徴用工問題の細かな事実関係を争っても、あまり意味がない。韓国など一部の国を除けば、海外の人たちは、日本の過去についての事実関係などどうでもよく、関心があるのは、現在の「人権問題」なのだ。 日本が「大日本帝国」の誇りを守ろうとすればするほど、いまだに人権意識の低いと「現在の日本」の評価が下がることになる。本当に守るべきことは、「現代の日本」の誇りだと考えるべきである』、「平和の人間像」では慰安婦像に代り得るとも思えない。慰安婦像を駆逐するためとして、韓国からは猛反発を受けるだろう。筆者は通常は参考になる分析をするが、この粗削り過ぎるアイデアを提案するとは、筆者らしからぬ思い込みで、賛成できない。
タグ:日韓関係 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン Newsweek日本版 香田洋二 上久保誠人 (その5)(燃え上がる日韓対立 安倍の「圧力外交」は初心者レベル、GSOMIA破棄 日米韓“疑似”同盟を打ち壊す韓国、韓国が仕掛ける「国際世論戦」で現代日本の誇りを守る方法) ウィリアム・スポサト 「燃え上がる日韓対立、安倍の「圧力外交」は初心者レベル」 日本は戦後、地政学的な「お人好し」と見られてきた。論争が起こると、経済とビジネス上の利益を最優先し、政治的には譲歩を促すことで解決を図ってきた。だが安倍晋三首相は、それを変えようとしているようにみえる。ただし、新しい方法にはまだまだ不慣れのようだ 最も重要なこととして、何が起こっているのかについての明確で一貫性のある説明が必要だ。一貫性を保つため、情報はすべて一つのオフィスを通して発表し、コメントは一人の代表者が行うべきだ 徴用工判決の報復と認めた安倍 アメリカの仲裁は形だけ 「GSOMIA破棄、日米韓“疑似”同盟を打ち壊す韓国」 日本の情報収集能力は自由主義諸国では米国に次ぐ 一日の長」ならぬ5日くらいの長があると言うことができる。 一方、北朝鮮に関する情報については、韓国が優れています 韓国は同盟国として失格 日本なしに韓国は守れない 韓国は“冷戦クラブ”の準会員 米ロの核戦略にも影響が及ぶ 日米韓によるミサイル防衛の一体化は期待薄 韓国が構想する「空母」を敵に回してはならない 米国が疑う、韓国の情報管理 「韓国が仕掛ける「国際世論戦」で現代日本の誇りを守る方法」 1つは、「日本の韓国に対する半導体部品の輸出管理の見直しは、WTO違反か否か」 もう1つは、「従軍慰安婦問題」「元徴用工問題」の、いわゆる「歴史認識」を巡るもの より深刻な2つ目の論点「歴史認識をめぐる国際世論戦」 韓国による慰安婦像の設置は過剰に反応しても日本に得るものなし 「安倍平和宣言・人権マニフェスト」を世界に発信してはどうか 慰安婦像に代わる「平和の人間像」を世界中に設置
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金融業界(その5)(「反社会的勢力」に肩入れして墓穴を掘った西武信 金融庁長官賞賛の「信金の雄」が「第二のスルガ銀行」になるまで、“野村證券情報伝達”が「法令違反」ではないのに 許されないとされる理由、負の遺産を整理 メガバンク3行の人員削減が過去最大規模に、新生銀行と筆頭株主 「20年越しの決別」に金融庁が慌てる理由) [金融]

金融業界については、昨年11月25日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その5)(「反社会的勢力」に肩入れして墓穴を掘った西武信 金融庁長官賞賛の「信金の雄」が「第二のスルガ銀行」になるまで、“野村證券情報伝達”が「法令違反」ではないのに 許されないとされる理由、負の遺産を整理 メガバンク3行の人員削減が過去最大規模に、新生銀行と筆頭株主 「20年越しの決別」に金融庁が慌てる理由)である。

先ずは、6月3日付けニコニコニュースがJBPress記事を転載した「「反社会的勢力」に肩入れして墓穴を掘った西武信 金融庁長官賞賛の「信金の雄」が「第二のスルガ銀行」になるまで」を紹介しよう。
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5406379
・『「信金の雄」と呼ばれた西武信用金庫で、理事長の落合寛司氏が辞任に追い込まれた。5月24日、金融庁から業務改善命令処分を受けての引責辞任。当局が最も問題視したのは、落合氏以下複数の経営陣が開けてしまった「パンドラの箱」の存在だった』、たしかアパートローンの不正融資が問題化したスルガ銀行も金融庁長官賞賛の第二地銀だった。検査を通じて実態を把握できる筈の金融庁の目は、2件とも節穴だったようだ。
・『発覚したチャイニーズドラゴン“関係者”と取引  西武信金は1969年に発足。昨年9月末時点の預金量2兆416億円は、全国261信金中14位の大手だ。2010年6月に落合氏が理事長に就任して以降、業容を拡大している。また、前金融庁長官の森信親氏も落合氏の手腕を高く評価していた。その結果、落合氏は金融庁金融審議会専門委員、経済財政諮問会議の政策コメンテーター委員会委員などの要職を務めるまでになった。 順風満帆かと思えた西武信金の風向きが変わったのは昨年4月のこと。「かぼちゃの馬車」を運営する投資用不動産会社スマートデイズが破綻し、スルガ銀行の融資姿勢が問題視されると、同様に多額の不動産向け融資を実行する西武信金にも疑念が向けられ、ついには“第二のスルガ銀行”と呼ばれるようになっていった。 金融庁が昨秋に実施した立ち入り検査では、スルガ銀行ほどの悪質な不動産融資は見つからなかったが、代わりに発覚したのが落合前理事長を始めとした幹部たちの「黒い交際」。それが「チャイニーズドラゴン」との関係だったのだ。 チャイニーズドラゴンとは、中国残留孤児の2世や3世で構成され、警視庁からは関東連合とともに準暴力団と認定されている反社会的勢力だ。 西武信金がチャイニーズドラゴンと関わりを持ったのは、東京郊外の立川市だった。立川市は西武信金とライバル関係にある多摩信金のお膝元で、西武信金は前線基地として立川南口支店を出店している。 立川南口支店の支店長は、今回、落合前理事長とともに辞任した牛山淳一常勤理事だった。その牛山氏は「敵地」立川市で奮戦していたものの、マイナス金利政策の影響で業績は思うように伸びなかった。そんな時、知り合ったのが、預金をしてくれた上に金も借りてくれるスナックのママ。が、彼女こそチャイニーズドラゴン幹部の妻だったのだ』、地元の「多摩信金」はママの正体を把握、近づかなかったのだろうが、地元情報に疎い西武信金が引っかかるという話しは、よくあることだ。
・『内部からの注意喚起もあったのだが・・・  立川市など多摩地区は、チャイニーズドラゴンが跋扈していることで知られている。ママの夫もその一人で、傷害容疑で逮捕された前科がある。だがそんなこととはつゆ知らず、牛山氏は、スナックや居酒屋を手広く経営していたママから、客を紹介されて取引を拡げていった。 ママが経営するスナックの1つは立川南口支店から徒歩数分の距離にある。店内の内装は小奇麗でテーブルが10ほど。料金は、1時間1万円にも満たず、都心のクラブやキャバクラに比べれば格安といえよう。 この店に通っていたのは支店長の牛山氏だけではなかった。今回、ともに辞任した川島弘之専務理事、そして落合理事長まで足を運んでいたのだ。西武信金とこのママは、それくらい密接な関係を結んでいた。 もちろん金融庁もその事実を把握している。立ち入り検査を行った際に提出させた、役員が使った交際費の領収書の中に、この店のものが含まれていたからだ。高給取りの信金幹部が、身銭を切らずに飲食代を信金の経費で落としていたというわけだ。金融庁がママの店で誰と会っていたのか追及すると、牛山、川島の両氏は「合併を模索していた金融機関が相手なので言えない」と答え、検査官から一笑に付されたという。 一方、西武信金内部では、この関係に警鐘を鳴らす者もいた。上場企業の監査役に該当する監事が、ママの夫が逮捕歴のあるチャイニーズドラゴンの幹部との情報を聞きつけて、落合氏に取引停止を進言していたのだ。同じころ、西武信金は地元警察に身分照会をしたものの、対象者としていたのは、チャイニーズドラゴンの幹部である夫ではなく、ママの方。そのため、警察は「反社ではない」と打ち返したという。 これで警察から「非・反社」のお墨付きを得たと勘違いした落合氏は、せっかく忠告した監事を怒鳴りつけ、取引を継続。その結果、ママ本人やその紹介者10人前後で融資総額は合計で40億円近くに膨れ上がったという。 このママたちへの融資について、牛山氏は金融庁に「彼女たちからは、毎月きちんと返済されている」と、資金回収に自信を見せたというが、反社勢力との取引撲滅を目指す金融庁が、そんな言い分を聞き入れるはずもない。投資用不動産融資の問題点と併せて、業務改善命令を突き付けられることになった。 業務改善命令と経営陣の一新。これで西武信金は再生できるのだろうか』、監事がせっかく忠告したにも拘らず、「地元警察に身分照会」したのは、「夫ではなく、ママの方」とは何たるお粗末さだろう。或は、この段階では、正体は把握していたので、問題ない「ママの方」で「照会」したのかも知れない。
・『融資は継続  落合氏の後を継いで理事長に就任した高橋一朗理事長は、記者会見で警察への身分照会を行った結果、「暴力団員としての属性がない」との回答を得たから、暴排条例に該当しないと判断したと明かした。 さらにこの記者会見で、融資の継続と回収に関して質問された高橋理事長は「個別の案件は回答を控える」と回答を濁したが、現時点でも融資は継続されていると見られる。会見時に公表されたニュースリリースには、「現在も当該者の関連者に対する融資残高はあります(債務者名義1人、1社で合計326百万円)」と記載されている。これが件のママに対する融資と言うことだろう。その他に、彼女から紹介された人物を含めれば融資先が10人前後になるというのは前述の通りだ。 実は一連の融資の借り手は飲食店経営者が多く、十分な担保価値のある不動産を保有している人物は少ないのでは、と見られている。とすれば、突然回収に回るわけにもいかず、返済が滞っても担保で補填するわけにもいかない。回収にはどうにも暗雲が立ち込めているように見えるのだ。 落合氏から蓋の開いたパンドラの箱を引き継いだ高橋氏。箱の中身は、回収困難で不良債権化の恐れがある40億円近いカネ、ということになるのだった』、金融庁検査で破綻懸念債権にでも分類されれば、大事だが、最近の金融庁検査は甘くなっているようなので、時間をかけて回収ということになるのだろう。

次に、元東京地検特捜部検事で、 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士の郷原信郎氏が6月10日付けYahooニュースに掲載した「“野村證券情報伝達”が「法令違反」ではないのに、許されないとされる理由」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20190610-00129575/
・『東京証券取引所(以下「東証」)が設置した「市場構造の在り方等に関する懇談会」(以下「懇談会」)の委員を務める野村総合研究所(以下、「野村総研」)の研究員が、野村證券のリサーチ部門に所属するストラテジストに、東証で議論されている市場区分の見直しについての内容を伝達し、ストラテジストが、従来から市場区分の見直しの議論に関心を示していた野村證券の営業社員等に、「現時点の東証の意向は、上位市場の指定基準及び退出基準を500億円ではなく250億円としたい模様」と伝え、営業社員が、その情報を顧客3社に提供した問題について、野村證券は、5月24日、外部弁護士からなる「特別調査チーム」の報告書を公表した』、「チーム」はどのように処理したのだろう。
・『「特別チーム」調査報告書における「コード・オブ・コンダクト」に関する指摘  この報告書の中に出てくる「コード・オブ・コンダクト」という言葉が、この行為とコンプライアンスとの関係を理解するキーワードだ。 報告書は、研究員は、東証と明文の守秘義務契約を締結していないとしても、懇談会の委員委嘱契約 の内容として一定の守秘義務を負っているものと考えられる ストラテジストによる 2 回にわたるメール発信は、日本証券業協会のルールに基づき厳格な審査が必要なアナリスト・レポートには該当せず、社内の広告審査の対象からも外れており、両者に係る管理態勢の枠外に置かれていた。とし、当該行為が、具体的な法令に違反する行為ではないことを前提にした上で、ストラテジストによる2 回のメール発信は、NRI 研究員の東証に対する守秘義務を全く考慮しない行為である。また、ストラテジストは、懇談会委員であるNRI 研究員がもたらす制度改正に関 する未公表情報を含む情報を伝達したものであり、マーケット・プレイヤーとしての基本的なコード・オブ・コンダクト(以下「コンダクト」)が欠如している としている。 つまり、研究員からストラテジストへの情報伝達が、明文の守秘義務契約違反ではなくても、「実質的な守秘義務」に反しており、ストラテジストが野村證券社員らに伝達し、顧客に情報を提供した行為は、法令には違反していなくても、「コンダクト」に反するということだ』、妥当な判断だ。
・『「LIBOR不正操作事件」とコンダクト・リスク  この「コンダクト」という言葉は、2012年の「LIBOR不正操作事件」で、注目されるようになった。LIBORは、銀行同士でお金を融通する際の金利で、世界の様々な金利の指標となるもので、英国銀行協会が主要銀行から申告させた数字を基に算出することになっている。一部の有力金融機関が意識的に虚偽の金利を申告したため、その“LIBOR”金利が、恣意的に操作されていたという問題だ。 この問題は、具体的な法令に違反するものではないが、「顧客の正当かつ合理的な期待に応えることを金融機関がまず第一に自らの責務として捉え、顧客対応、金融機関間のやり取り、市場における活動をもって、責務を示すこと」(英国Financial Conduct Authority(FCA))という、金融機関に期待される『コンダクト』に反する行為の典型だと言える。 この事件以降、このような行為によって社会的批判を受けるリスクを、「コンダクト・リスク」として、特に金融系の企業にとってのコンプライアンスの重要な問題として意識されるようになった。 今回の野村證券の問題も、法令や規則に違反するものではなく、明示的な契約違反でもない。つまり「法令遵守」の問題ではない。しかし、「東証の市場区分の見直しについての上位市場の指定基準及び退出基準」というのは、その見直しの対象となり得る上場企業の株価に重大な影響を与える事実である。それを議論する東証の懇談会に委員として参加している野村證券の子会社の野村総研の研究員が、委員であるがゆえに知り得た指定基準及び退出基準に関する情報を、親会社である野村證券の営業に利用することは、「投資家間の情報の公平」に反し、証券市場の公正を損なうものであることは明らかだ。それは、金融商品取引法等で、具体的に禁止されていなくても、証券関係者が行ってはならない行為である。 このような行為が、具体的な法令に違反していなくても、「コンダクト」に反するとされることの背景には、証券市場や金融商品の取引の「公正」を確保することに対する「社会的要請」がある。それは、投資判断に重要な影響を与える情報を不正に活用したという点で「インサイダー取引の禁止」の背後にある「社会的要請」と共通するものだ。 このように、具体的な法令規則に違反しない行為のコンプライアンス上の問題を理解するためには、それがどのような「社会的要請」に反するのか、という観点から考えてみる必要がある』、郷原氏の持論である「コンプライアンスとは、法令順守と狭く考えるべきでなく、「社会的要請」に合致すること」、というのに合った考え方だ。
・『日本におけるインサイダー取引禁止規定導入の特殊性  金融商品取引法は、「重要事実を知って公表前に株式を売買する行為」を、インサイダー取引として禁止している。それは、一部の投資家のみが内部情報に基づいて金融商品の取引を行うことが、「投資家間の情報の公平」を損ない、「金融市場の公正」を損なうからだ。 昔から証券市場を通じての企業資金の調達(直接金融)が中心だった米国では、インサイダー取引の禁止が、証券市場において徹底されてきた。米国では、広く国民全体が証券市場に参加するためには、投資家間の情報の公平性を維持することが不可欠だという考え方が、社会的に重視されてきたからである。 一方、戦後長らく金融機関を通じた間接金融が中心だった日本では、証券市場は、不確実な情報と思惑が入り乱れる中で投機的な売買が横行する「博打の場」のようなものだった。儲けるために人よりも早く内部情報を得て売買するのは当然のことで、「早耳筋」などという証券用語にも象徴されるように、インサイダー取引はごく当たり前の行為だった。 法律上、インサイダー取引が明確に禁止されたのは、バブル経済の最中の1986年。実際に処罰・制裁の対象にされるようになったのは、90年代半ば頃からである。金融ビッグバン以降、日本における企業金融が、間接金融から直接金融に大きくシフトしたことがその背景にある。 このように、その国の経済の中での証券市場の位置づけや、投資家間の情報の平等というルールの重要性などによって、インサイダー取引の禁止の必要性は異なってくるが、日本の証券市場は、上記のように、米国の証券市場とは異なる歴史をたどってきた。 現在では、日本の経済社会においても、国民の経済生活においても、インサイダー取引の禁止の背後にある「情報の平等」の要請は、一層重要なものとなっているが、上記のような歴史的経緯もあって、インサイダー取引の禁止の理由や、その背後にある「取引の公正」の考え方が十分に理解されているかと言えば、そうではない。単なる「法令遵守」の問題ととらえられやすい』、確かに「日本の証券市場」では、「インサイダー取引の禁止の理由や、その背後にある「取引の公正」の考え方が十分に理解されているかと言えば、そうではない」、というのは残念なことだ。
・『日本の「インサイダー取引禁止の規定」の特徴  日本のインサイダー取引禁止規定は、構成要件の明確性という観点から、主観的要件によらず形式的に構成要件が定められ、罰則導入当初は、法定刑も交通違反程度に設定された。その結果、本来は処罰の必要がないような行為にまで広く禁止の網がかぶせられていた。 もともとの趣旨からは、内部情報を知ったために株式売買をすることにした場合が対象とされるべきだが、日本の規定では、情報を知ったことと株式売買との因果関係が要件とされていないため、以前から予定していた株式売買であっても、たまたま売買する前に内部情報を知ってしまうとインサイダー取引に該当してしまう。業務上必要な場合も含め、極めて広い範囲の売買が禁止の対象とされていた。 この点については、その後、2015年9月の内閣府令の改正で、未公表の重要事実を知る前に締結・決定された契約・計画が存在し、株式等の売買の具体的な内容(期日および期日における売買の総額または数)があらかじめ特定されている、または定められた計算式等で機械的に決定され、その契約・計画に従って売買等が執行される場合には、契約・計画の締結・策定後に未公表の重要事実を知った場合には、インサイダー取引規制は適用されないとする適用除外規定が設けられた。 しかし、形式犯的性格が強かったという経緯から、日本では、インサイダー取引の禁止規定に関して、「市場の公正」「取引の公正」を害するという実質的な観点より、形式的な「法令遵守」に反するかどうかという形式的な観点が重視される傾向がある』、法令の歴史的経緯が現在でも解釈に影響を与えているのは、残念だ。
・『職業倫理に反する「情報不正活用行為」に対する考え方  企業から未公表の情報の提供を受け、その業務に活用する職業の従事者が、提供された情報を私的に流用して取引を行うことは、その組織や職業自体への信頼を失わせ、職業の存立基盤にも重大な影響を与えかねない行為だが、そのような「職業倫理に反する情報不正使用行為」が、常に金商法のインサイダー取引の規定に違反するかと言えば、必ずしもそうではない。 たとえば、報道関係者が、特定の会社の批判キャンペーン報道をする前にその会社の株を空売りしたとしても、会社関係者から重要事実に当たる情報を「受領」したものでなければインサイダー取引には該当しない。また、証券市場のシステムが大混乱し市場全体が暴落することを事前に知った証券取引所の内部者が持ち株を売ったとしても、個別の会社に関する情報に基づく売買ではないので、インサイダー取引には該当しない。日銀の金融政策に関わる幹部が、非公表の金融政策に関する決定の内容を知って、投資信託等の売買を行ったとしても、同様にインサイダー取引には該当しない。 これらの行為は、重大な職業倫理違反ではあるが、金融商品取引法などの法令に違反する行為ではない。 2007年頃、NHKや新日本監査法人など「未公表の情報の提供を受け、それを活用して社会に価値をもたらす組織」において、その情報を私的に利用して個人的利益を上げようとする行為が相次いで表面化したことがあった。 かかる問題に対して組織として行うべきことは「法令遵守の徹底」や「何が法令に違反するのかを教え込む教育」ではなく、「未公開の情報を提供されて行う業務について、情報の取扱いについての社会的要請をどのように受け止め、どのように要請に応えていくのか」に関して、方針や組織の在り方を全面的に見直すことだ』、その通りだろう。
・『証券会社における「情報活用行為」とコンダクトとの関係  今回の野村證券の情報伝達問題は、証券会社という金融商品の取引を業とする組織が、インサイダー取引の禁止の背景にある「投資家間の情報の公平」という社会的要請にどのように応えていくべきかという問題である。 監査法人、報道機関等の組織は、その業務の性格からして、そもそも「業務上入手した情報を活用して投資を行うこと」自体が許されないのであり、職業倫理としての禁止の徹底も容易だが、証券会社と情報活用との関係は、それとは若干異なる。かつては、営業活動自体が、基本的に「顧客に有利な情報を提供すること」つまり、「情報の差別化」を付加価値としているように思われてきた証券会社では、「法令遵守の範囲内であれば、情報の優位性を営業でアピールすることは許される」という認識を有する営業マンが多かった。そういう意識が根強く残っている組織において、「情報の公平性」に反する行為が「取引の公正」を損なう行為だという認識を定着させ、組織内で徹底していくことは決して容易ではない。 今回の情報伝達問題は、「情報の公平性」に関する「コンダクト」の問題で、証券会社に対して当局の厳しい対応が行われた初めての事例だ。金融業界のコンプライアンスが、「法令遵守」を超えたレベルへの進化を求められていることを表すものと言えよう』、「金融業界のコンプライアンスが、「法令遵守」を超えたレベルへの進化」、を期待したい。

第三に、6月13日付け日刊ゲンダイ「負の遺産を整理 メガバンク3行の人員削減が過去最大規模に」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/255953
・『メガバンクが過去最大の業務・人員削減を進めている。日銀の低金利政策による利ザヤの縮小、IT化、顧客対応ロボット(ペッパー)の代替、そして人口減少などで既存の銀行員の居場所がなくなってきているのだ。 2019年3月期の3メガバンクの決算は、本業の儲けを示す業務利益が三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は、前年比11.8%減の8726億円。三井住友FGは同1%減の7266億円、みずほFGは同83.2%減の965億円だった。 業績の落ち込みが突出したみずほFGは、すでに26年末までに全従業員の3割にあたる1万9000人の削減を発表。21年末までに8000人の削減が予定されている。新規採用も18年の1365人から、20年には550人に抑えられる。そして、「希望した社員には副業や兼業を認める人事制度を改定し、今期中に募集のスタートができる方向で検討しています」(同社広報室)。 三菱UFJFGは、銀行本部に所属する約6000人の社員を半数の約3000人まで縮小。主に営業部門への配置転換を予定している。 「英国のEU離脱に絡んで、ロンドンの欧州統括拠点では、約500人の管理職全員に7月末まで希望退職の募集を開始しています」(同行幹部社員) 三井住友FGは、17年度から3カ年の新中期経営計画に、業務削減量を1000人上積みし、5000人分に拡大した。 「AI化やRPAの導入で事務負担は減りますが、それらを管理する人材は必要です。定年退職による自然減と新規採用の抑制、さらに過剰な人員は営業部門を含めたグループ会社への配置で業務削減分の対応は十分可能です。それにしても、みずほの副業・兼業解禁は驚きです」(同社幹部社員) 同グループの太田純社長がメディアの取材にこう述べている。 「全てのビジネスモデルを根本的に見直さないといけない」とし、「貸金だけでなく、デジタル技術を活用した新規事業の展開、付加価値の提供が銀行の存在価値」。 岡山商科大学の長田貴仁教授が言う。「伝統的な銀行は支店やATMの数が多い上、多くの社員を持つという3つの負の遺産を抱えています。楽天銀行、ソニー銀行、セブン銀行など他業種から参入した銀行が高収益を上げているのはこうした負の遺産を持たないためです。配置転換、自然減というのは銀行の人員削減の常套句ですが、営業部門への配置転換は、2850人の早期退職者を出した富士通のように、不本意な部署への配置でも残るか退職するか、会社への忠誠心を問う選択といえます」 負の遺産を切ろうとする銀行に、生き残りのための革命が起きている』、みずほが、「希望した社員には副業や兼業を認める人事制度を改定」、というのは人員削減が多く、形振り構っていられないということかも知れない。「三菱UFJFGは・・・英国のEU離脱に絡んで、ロンドンの欧州統括拠点では、約500人の管理職全員に7月末まで希望退職の募集を開始しています」、ここでの管理職は派遣行員を除いた現地行員と思われるが、「英国のEU離脱」の影響が予想通り出ているようだ。「営業部門への配置転換は・・・不本意な部署への配置でも残るか退職するか、会社への忠誠心を問う選択といえます」、いまさら「会社への忠誠心」でもないように思える。

第四に、8月26日付けダイヤモンド・オンライン「新生銀行と筆頭株主、「20年越しの決別」に金融庁が慌てる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212789
・『新生銀行の筆頭株主である米投資ファンドが、保有株式の売却に動いた。公的資金の返済を実現する上で、今度は監督官庁の金融庁が試される局面に入りそうだ』、もう新生銀行から「むしり取れる」ことはないと諦めたのだろうか。
・『物言う株主と20年越しの決別  筆頭株主であり、社外取締役でもあるクリストファー・フラワーズ氏と“決別”する――。8月8日、新生銀行が発表した内容は、金融関係者の耳目を集めた。 この動きについて、「全く何とも思っていない」(新生銀幹部)と無関心をうたう声も内部から聞こえてくる一方で、経営判断に実質的に携わっていたフラワーズ氏の離脱は、役員人事を含む新生銀の動向を大きく左右し得る要素だ。 そもそもフラワーズ氏と新生銀の関係は、同行の発足当時の2000年頃までさかのぼる。新生銀のルーツである旧日本長期信用銀行(長銀)が、経営破綻して一時国有化された直後、フラワーズ氏は売却先となる米投資会社側の交渉の取りまとめ役として参画した人物だ。その後、社外取締役に就任するかたちで経営への関与を強めた。 07年には、フラワーズ氏を代表とする投資ファンドが新生銀の筆頭株主になる。関連の投資ファンドの保有分を含めると、フラワーズ氏は足元でも発行株式の20%超を保有する存在。「主要株主委員会の場でいろいろと文句をつける」(金融庁関係者)という“物言う株主”の役割を果たしてきた。 そして、新生銀誕生から約20年が経過した今、フラワーズ氏が保有する株式の大半を含む約4500万株を、今月内に売り出すことに至った。筆頭株主でなくなった後、フラワーズ氏は新生銀の社外取締役を退任する意向だ。 フラワーズ氏は近年、保有する新生銀の株式を手放す意向を示していたとされる。売り先としていくつかの投資ファンドとの交渉に入っていたが、有力候補だった「台湾の大手銀行との交渉が破談になった」(新生銀関係者)。これを機に、今回の売り出しに至ったようだ。 ただ、20日に決定した売却価格が1株1387円だった一方、ある市場関係者は「フラワーズ氏の出口戦略として1株3000円ぐらいが妥当だったはずだ」と分析する。 異次元金融緩和がもたらした今の低金利環境では、これ以上の株価上昇は見込めない――。フラワーズ氏の“安売り”は、新生銀に対して三下り半を突きつけたように映る』、フラワーズ氏は米投資銀行ゴールドマンサックス出身で、旧長期信用銀行破綻後から再生を主導、悪名高い「瑕疵担保条項」を付けたことで、不良債権8500億円を預金保険機構に引き取らせた。2004の上場と2005の売り出しで、ファンド全体で売却益5300億円(出資額は1010億円)を稼いでいる。
・『繰り上げ筆頭株主化に焦る金融庁  「私たちも大変な立場になるだろう」――。銀行の監督官庁である金融庁のある幹部は、今回のフラワーズ氏の離脱を受けて危機感を募らせた。 なぜか。フラワーズ氏の関連ファンドが筆頭株主から外れた後は、預金保険機構などで約18%の株式を保有する政府が筆頭株主に繰り上がるからだ。 新生銀は、国から注入された公的資金を返済できていない唯一の大手銀行だ。注入された公的資金は普通株式に転換されていて、完済には株価が1株7400円まで上昇することが必須だ。とはいえ、現状の株価を見ると、返済を早期に実現することは厳しいといわざるを得ない。 新生銀はATMの手数料無料化や消費者ローンなど、先進的なリテール(個人向け)事業の取り組みに注力してきた。こうしたノウハウを持ち、さらには都内での顧客基盤を持つ新生銀に対して、主要株主のフラワーズ氏が抜けたこのタイミングで、地方銀行や他の金融機関が資本面を含めた提携に関心を寄せる可能性は残されている。 今後は、こうしたビジネスモデルの在り方やパートナー探し、そして経営体制の良し悪しという経営課題に関して、筆頭株主が政府のままであれば、金融庁が「正面から問われる」(前出の金融庁幹部)ことになるというわけだ。 フラワーズ氏と決別したとはいえ、新生銀にとっては、もう一つの大きな“足かせ”である公的資金の返済が残されている。 そのためにも、「今の金融界において、存在意義のある金融機関としてのビジネスを展開できるかどうかが重要だ」(別の金融庁幹部)といえる』、「日の株価は1430円と預金保険機構の簿価7400円とは絶望的な開きがある。「先進的なリテール事業の取り組みに注力」、とはいっても、貸金業や消費者ローンでは余り儲けられなくなったようだ。やはり、破綻で優良企業が逃げ出したあとの銀行再建は、容易ではなさそうだ。
タグ:立川市 yahooニュース 金融業界 日刊ゲンダイ 郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン JBPRESS ニコニコニュース (その5)(「反社会的勢力」に肩入れして墓穴を掘った西武信 金融庁長官賞賛の「信金の雄」が「第二のスルガ銀行」になるまで、“野村證券情報伝達”が「法令違反」ではないのに 許されないとされる理由、負の遺産を整理 メガバンク3行の人員削減が過去最大規模に、新生銀行と筆頭株主 「20年越しの決別」に金融庁が慌てる理由) 「「反社会的勢力」に肩入れして墓穴を掘った西武信 金融庁長官賞賛の「信金の雄」が「第二のスルガ銀行」になるまで」 「信金の雄」と呼ばれた西武信用金庫 発覚したチャイニーズドラゴン“関係者”と取引 “第二のスルガ銀行”と呼ばれるように 代わりに発覚したのが落合前理事長を始めとした幹部たちの「黒い交際」。それが「チャイニーズドラゴン」との関係 チャイニーズドラゴンとは、中国残留孤児の2世や3世で構成され、警視庁からは関東連合とともに準暴力団と認定されている反社会的勢力だ ライバル関係にある多摩信金のお膝元 スナックのママ。が、彼女こそチャイニーズドラゴン幹部の妻 この店に通っていたのは支店長の牛山氏だけではなかった。今回、ともに辞任した川島弘之専務理事、そして落合理事長まで足を運んでいたのだ。西武信金とこのママは、それくらい密接な関係を結んでいた る監事が、ママの夫が逮捕歴のあるチャイニーズドラゴンの幹部との情報を聞きつけて、落合氏に取引停止を進言 地元警察に身分照会をしたものの、対象者としていたのは、チャイニーズドラゴンの幹部である夫ではなく、ママの方。そのため、警察は「反社ではない」と打ち返したという 融資は継続 「“野村證券情報伝達”が「法令違反」ではないのに、許されないとされる理由」 「市場構造の在り方等に関する懇談会」 「特別チーム」調査報告書における「コード・オブ・コンダクト」に関する指摘 「LIBOR不正操作事件」とコンダクト・リスク 日本におけるインサイダー取引禁止規定導入の特殊性 職業倫理に反する「情報不正活用行為」に対する考え方 証券会社における「情報活用行為」とコンダクトとの関係 「負の遺産を整理 メガバンク3行の人員削減が過去最大規模に」 「新生銀行と筆頭株主、「20年越しの決別」に金融庁が慌てる理由」 物言う株主と20年越しの決別 クリストファー・フラワーズ氏 足元でも発行株式の20%超を保有する存在 “物言う株主”の役割 有する株式の大半を含む約4500万株を、今月内に売り出す 繰り上げ筆頭株主化に焦る金融庁 預金保険機構などで約18%の株式を保有する政府が筆頭株主に繰り上がる 瑕疵担保条項 ファンド全体で売却益5300億円(出資額は1010億円)を稼いでいる
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クールジャパン戦略(その9)(ブラックホール会見でNHK記者が「日本の貢献は?」質問し世界が失笑!科学に“日本スゴイ”持ち込む愚、クールジャパン機構 :見えない黒字化への道筋 新体制の下 国内外企業にハイペースで投資、この1年で何が変わった? 昨年就任した北川CEOと加藤COOを直撃した)  [国内政治]

クールジャパン戦略については、3月12日に取上げた。今日は、(その9)(ブラックホール会見でNHK記者が「日本の貢献は?」質問し世界が失笑!科学に“日本スゴイ”持ち込む愚、クールジャパン機構:見えない黒字化への道筋 新体制の下 国内外企業にハイペースで投資、この1年で何が変わった? 昨年就任した北川CEOと加藤COOを直撃した)である。

先ずは、4月18日付けLITERA「ブラックホール会見でNHK記者が「日本の貢献は?」質問し世界が失笑!科学に“日本スゴイ”持ち込む愚」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2019/04/post-4666.html
・『世界13か国、200人以上の研究者からなる国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」が人類史上初めてブラックホールの撮影に成功した。 このプロジェクトには日本の研究者たちも参加しているのだが、国境を越えて構成されたチームが成し遂げた偉業を、日本のメディアはまたもや「日本スゴイ」の文脈で消費。それが世界の嘲笑を買うという、なんともお恥ずかしい展開となっている。 事が起きたのは、アメリカ政府の国立科学財団の会見だった。会見のなかで記者からブラックホール撮影に関する科学的な質問が飛ぶなか、NHKの記者はパネラーに対してこんな質問を投げたのだ。 「私は国際共同研究に関して質問があります。今回の成果が突出した共同研究であることは理解しております。それぞれの国、特に日本がどんな貢献をしたのかについてお聞かせください」 NHK記者の質問の最後の言葉「especially Japan」の言葉が場内に響いた瞬間、場内のあちこちから他国の記者の笑い声が漏れた。 それに対し会見出席者は、「日本は多くの国々と同様に非常に重要な役割を果たしました」「それぞれの国、それぞれの地域、それぞれのグループ、それぞれの研究所が専門知識をもち寄り、それぞれの仕事を果たしました」と半笑いで答え、日本の記者の愚問は一蹴されたかたちとなっている。 このNHK記者の1人前には高校生の女性が「今回のことは、科学界の国境を越えた協力による大きな功績だと思いますが、今後こうした共同作業は科学界においてひとつのモデルとなるでしょうか。なるとすれば、どういう課題があり、私たちには何ができるでしょうか」といった質問をして、パネラーから「That’s a great question」との言葉をもらっていただけに、余計に日本メディアのお粗末さが強調されていた。 この恥ずかしい一幕はニュースにもなっている。たとえば、「Japan Today」は4月12日に「NHK reporter laughed at for asking black hole team for more on Japan’s contributions(NHKの記者はブラックホール研究チームに対して日本の貢献について質問をしたことで物笑いの種になった)」と見出しをつけたニュースを配信。そのなかでは、「NHK記者の質問にある『とにかく、日本はどうですか?』という側面は、国際舞台で日本のアスリートの業績を自慢するのを愛する日本メディアのやり方を思い起こさせる」と皮肉られている。 人類史上初となる画期的な業績すらも「お国自慢」として消費しようとしてしまう日本のメディアのどうしようもなさは今日に始まったことではないが、こうして国際的に嘲笑の的になることで、いかにそれがおかしいことなのかが改めて浮き彫りになった』、直前の「高校生の女性」の質問が、「パネラーから「That’s a great question」との言葉をもらっていた」だけに、「NHKの記者」はよくぞ恥ずかしげもなく、国威発揚丸出しの質問をしたものだ。最近は安倍政権の御用機関化が著しいが、海外駐在記者にまで影響が及んでいるとは、恐ろしく、かつ恥ずかしいことだ。
・『「科学研究」と「おらが村の自慢」は何の関係もないし、むしろ結びつけてはいけないというのは国際的な常識だ。科学の発展は人類全体の共有の財産であり、どこか特定の国や政府だけのものではないからだ。 しかし、日本のメディアはそのことがまったくわかっていない。たとえば、こんなこともあった。 2012年にノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授は記者会見で「日本、日の丸の支援がなければ、こんなに素晴らしい賞を受賞できなかった。まさに日本が受賞した賞」と発言した。この発言は日本国内では特に問題とならなかったが、これに対してノーベル賞委員会は激怒。「あんな発言は絶対にしてはいけない」と異例の警告を発した(共同通信ロンドン支局取材班・編『ノーベル賞の舞台裏』筑摩書房)』、山中伸弥教授までが「日本よいしょ」発言をして、注意されるとは、日本全体がクールジャパンに毒されて正常な判断力を失ってしまったとすれば、恐ろしいことだ。
・『ノーベル賞受賞の益川敏英教授は国家による科学の軍事利用に警鐘  しかも科学技術の研究とナショナリズムを結びつけることは大きな危険性を孕んでいる。その技術は人を殺す道具にもなるからだ。 2008年にノーベル物理学賞を受賞した京都大学名誉教授の益川敏英氏は『科学者は戦争で何をしたか』(集英社新書)のなかでこのように綴っている。 〈ノーベル物理学賞や化学賞は、将来的に人類の発展に著しく貢献するであろうと評価された科学技術、そしてその開発に寄与した科学者に与えられるものですが、一方でその技術が戦争で使われる大量破壊兵器の開発に利用されてきたのも事実です。(中略)ノーベル賞を授与された研究は、人類の発展のためにも殺人兵器にも使用可能という諸刃の技術と言ってもいいでしょう〉 益川氏は、ノーベル賞受賞記念の講演でも自身の戦争体験にふれ、さらに「安全保障関連法に反対する学者の会」にも参加し、安倍政権の暴走に警鐘を鳴らしてきた人物だ。 そんな益川氏がここで科学技術の「危険性」を強調するのは、安倍政権が学術研究を軍事産業に利用しようとする動きを進めているからだ。 安倍政権は2015年から「安全保障技術研究推進制度」という制度を始めている。これは、防衛装備庁が設定したテーマに基づいて大学や企業などから研究を公募、採択されれば研究費が支給されるというもので、同年は3億円を予算として計上。この予算は激増を続けていて、17年度予算では110億にまで増えた。 これに対し、京都大学や名古屋大学などは「軍事研究は行わない」という方針を明確にする一方、日本学術会議が183の国公私立大学や研究機関を対象に行ったアンケート(2018年4月3日付朝日新聞記事より)によれば、そのうち30カ所が「安全保障技術研究推進制度」への「応募を認めたことがある」と回答したという』、益川氏が正常な判断力を保持され続けているのは喜ばしいことだ。防衛装備庁による「安全保障技術研究推進制度」へ、30の「国公私立大学や研究機関」は応募したとは、カネの魅力には抗し難いということのようだ。
・『メディアが「日本スゴイ、日本スゴイ」と煽る裏で進行する厳しい現実  厳しい経営を余儀なくされて背に腹を変えられない大学や研究者の頬を札束で叩き、カネで釣ろうとする施策は着実に成果を残しつつある。 「Japan Today」をはじめ、海外で皮肉られた「とにかく、日本はどうですか?」「日本スゴイ」ばかり煽る傾向は、あらゆる物事に対して「国家への貢献」を求める風潮と裏表の関係にある。そしてそれは、なんら前向きな影響をおよぼさない。 「日本スゴイ、日本スゴイ」と自己暗示をかけるばかりで、外ではなにが起きているかをメディアが伝えず、受け手も見ようとしなくなった結果、家電メーカーは凋落。液晶テレビやスマートフォンなどの分野で日本企業のプレゼンスはほとんどなくなってしまった。 それは科学技術の分野だけでなく文化・芸術でもそうだ。K-POPが世界中で確かな地位を占めつつあるなか(4月5日付ビルボードチャートでBLACKPINKはシングル・アルバムともに総合チャートに入り、次週のチャートではBTSの新作が首位をとる可能性が非常に高いと言われている)、ハリウッド映画のプロモーションで世界中をまわるスターが韓国までは来ても日本には来ないでそのまま帰っていく光景ももはや見慣れたものとなった。 「日本スゴイ、日本スゴイ」と殻の中に閉じこもっていい気持ちになっているのは勝手だが、それによってもたらされるのは「凋落」だけだということに、いい加減気づくべきだろう』、「「日本スゴイ、日本スゴイ」と自己暗示をかけるばかりで、外ではなにが起きているかをメディアが伝えず、受け手も見ようとしなくなった結果、家電メーカーは凋落。液晶テレビやスマートフォンなどの分野で日本企業のプレゼンスはほとんどなくなってしまった」、との批判は説得力があり、その通りだろう。

次に、8月22日付け東洋経済オンライン「クールジャパン機構、見えない黒字化への道筋 新体制の下、国内外企業にハイペースで投資」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/297595
・『官民ファンドの1つであるクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)が、ここにきて矢継ぎ早に投資を加速させている。 「寄付を寄せてくれた世界中のアニメファンに感謝を伝えたい」 8月にクールジャパン機構が投資を決めたアメリカの日本製アニメ配信・販売会社「Sentai」のジョン・レッドフォードCEOは、こう言って犠牲者に哀悼の意を表した。 機構が投資を決める直前の7月、京都アニメーションの放火事件が発生し、35人が死亡した。レッドフォード氏はニッチ市場向け日本製アニメのライセンス事業を手がけるSentaiを2008年に設立。京アニを支援するクラウドファンディングサイトを立ち上げて寄付を呼びかけていた』、「ここにきて矢継ぎ早に投資を加速させている」、というが大丈夫なのだろうか。
・『「過去の反省を現在に生かしている」  2013年に設立されたクールジャパン機構の経営陣が一新されてから、ちょうど1年が経過した。 三菱商事出身でサンケイビル社長の飯島一暢会長、イッセイミヤケ社長や松屋常務執行役員などを務めた太田伸之社長に代わり、2018年6月に社長に就任したのがソニー・ミュージックエンタテインメント出身の北川直樹氏だ。北川氏を支えるCOO兼CIOには、投資ファンドのペルミラ・アドバイザーズ社長を務めていた加藤有治氏が就いた。 この2人が引っ張る形で、昨年10月以降、Sentaiを含む国内外の企業9社への投資を決定するなど、ハイペースで投資を実行している。 北川社長は「(旧経営陣が)5年間、何もないところから、相当苦労して案件を立ち上げた。その反省も含めて、現在に生かしている」と振り返る。 旧体制との違いは、「キャッシュフロー投資重視」「現地パートナー重視」「グローバルシナジー追求」など5つの投資ルールを掲げ、投資領域としてメディア・コンテンツ、ファッション・ライフスタイル、食・サービス、インバウンドの4分野を掲げたことだ。 加藤氏は「政策性という観点からは以前とまったく同じものを追求しているが、(収益性の観点では)事業基盤がすでに確立したもの、しかも海外で確立しているものを比較的重視している」と話す』、「事業基盤がすでに確立したもの、しかも海外で確立しているものを比較的重視している」、というのであれば、リスクは比較的小さそうだ。
・『「決別」を印象づけた動画コンテンツ企業への出資  中でも旧体制との“決別”を印象づけたのが、新体制として第1号案件となる、アメリカの動画コンテンツ制作・配信企業「Tastemade」(テイストメイド)への投資だ。ゴールドマン・サックスやアマゾンなど、著名な大手投資家を割当先とする3500万ドルの増資の一角に食い込むという「幸運」も重なった。 クールジャパン機構は約14億円を投じるが、その後三井物産がテイストメイドへの追加出資を決めるなど、クールジャパン機構が理想とする“呼び水効果”も発揮している。 新体制以降の9件の投資内訳は、メディアが5件に対し、インバウンドの投資はまだ0件。国内企業が4件、海外企業5件と海外企業への投資が目立ち、後述するEMW社のように、マジョリティ(過半数)出資の案件も登場した。 ビジネスを一から立ち上げる「ラフアンドピースマザー」と人工糸開発を行うベンチャー企業「Spiber」を除き、事業基盤が固まってキャッシュフローが出ている、手堅い企業への投資が増えている印象だ。 今年6月と7月には、日本酒関連のビジネスに立て続けに投資した。 「ワインと日本酒は消費者のプロファイルがよく似ている。クールジャパン機構とは共通のビジョンを持っており、お互いの強みを持ち寄って販売プラットフォームを強化していく」 中国・香港のワイン卸売「EMW」のエドワード・デュヴァル氏は、クールジャパン機構から約22億円の出資(実際の出資先はEMW社の持株会社であるTrio社)を受け入れた理由についてそう語った』、「EMW」への出資をテコに、日本酒販売への無理な圧力をかけるなどということは無しにしてほしいものだ。
・『アメリカのミレニアル世代に日本酒を売り込む  2003年設立の同社は上海や北京などの主要都市に6拠点を展開。機構としては、同社の販売ネットワークを生かし、2018年現在で220億円程度にとどまっている日本酒の輸出を大きく伸ばしていくことを狙っている。 7月に11億円の投資を決めたアメリカの「Winc」への出資も、現地における日本酒ブランドの確立を狙ったものだ。 日本酒輸出のうち、アメリカ向けは約3割。同社が販売するワインのメインターゲットは、1ボトル当たり15~20ドルを支払うジェネレーションXないしはミレニアル世代で、そうした人たちに高品質な日本酒を売り込んでいくという。 同社のジェフ・マクファーレン氏は「今年末か来年初めに複数商品を用意し、3~4年かけて500万ドルの売り上げを目指していく」と期待する。 加藤氏ら企業投資の「プロ」が参画し、投資手法は洗練されてきたものの、クールジャパン機構を取り巻く周囲の視線は厳しい。 「今後新たな産投(産業投資)出資を行う場合には、産業投資と産投機関との間で、あらかじめ出資時に、明確な出資条件を定めることが必要である」 財務省の財政制度等審議会は今年6月、官民ファンドの運営資金の原資を供給している産業投資特別会計に関連し、こんな提言を行った』、財政制度等審議会から注文が付いたのは当然だ。
・『「収益性に課題が生じたファンド」  クールジャパン機構や農林漁業成長産業化支援機構(通称A-FIVE)などの4つの官民ファンドは、「収益性に課題が生じたファンド」と位置付けられ、今年4月には収支計画を提出。今後も今年秋と2020年度、2021年度にそれぞれ計画と実績が検証されることになっている。 財務省理財局の山本大輔・財政投融資企画官は「官民ファンドの解散・清算時に出資元本と資本コスト以上を回収するというゴールが危ういようであれば、改善計画をつくってもらうことになる。解散までゴールを達成できるかどうかわからないのでは困るので、今後も定期的、かつ継続的に早め早めの手を打っていくことが求められる」と語る。 投資ファンドはそのビジネスの性格上、最初に赤字が膨らみ、徐々に利益に転じていく「Jカーブ」と呼ばれる収益曲線を描く。たしかにクールジャパン機構は設立してまだ6年弱で、収益化の途上にあるとも言える。しかし問題は、2033年に解散する機構の清算時に、本当に黒字で閉じることができるのか、その道筋が今のところ見えていないことだ。 官民ファンドは安倍政権が発足した2013年から2015年にかけて、相次いで設立された比較的新しい政策ツールだ。政策的必要性が高く、民間だけでは十分に資金が供給されない分野への資金供給はこれまで、日本政策投資銀行や国際協力銀行などの政府系金融機関が担っていたが、2019年3月末現在で5兆6968億円の産業投資残高のうち、官民ファンドは13%を占めるまで存在感を増している。 しかし、日本政策投資銀行など向けの出資は融資業務のリスクバッファーとして使われるのに対し、官民ファンド向け資金は投資の直接の原資となるなど、リスクが大きい。それなのに、新しい政策ツールということもあって、監視の目が十分行き届いていないという問題があった』、所管官庁や官民ファンドにとっては、「政策実現のための便利な入れ物」となっていたのは確かだ。
・『これまでの収支決算は179億円の繰越損失  クールジャパン機構がこうした外部の厳しい目を払拭するには、何よりも収益をあげるしかないだろう。 棒グラフが投資額、折れ線グラフが累積損益を表す。クールジャパン機構の見通しでは、2033年度までに累積損益が黒字になるとしている(クールジャパン機構の資料から引用) 機構は2013年の設立以降、合計38件の投資を行い、業績不振が批判されたマレーシアの商業施設など、3件のイグジット(投資回収)を果たした。その2019年3月末時点での収支決算は179億円の繰越損失だ。 この繰越損失は、約100億円の経費、約80億円の減損損失と引き当て処理からなる。これまで実現した3件のエグジットの収支は「トントン」で、肝心の投資に伴う利益を実現できていない。 カギを握るのは、主に旧体制下で進めた26件(29件投資し、3件は売却)のゆくえだが、エグジットのイメージはまだ見えない。 例えば、110億円を上限に出資するという中国・寧波での大規模商業施設「ジャパンモール事業」(2014年9月決定、110億円を上限に出資)は当初予定を延期し、2019年秋に開業予定という。機構の北川社長は「少なからずの額を投資しているものの、われわれが直接インボルブして(関わって)いないということが、初期案件での1つの形だった」と話す。 今年4月に公表された、クールジャパン機構の2033年度までの投資計画によると、単年度赤字は2023年度まで続き、累積損益が黒字化するのは2031年度。2028年度まで毎年181億円を投資する計画だ。 これだけの投資をこなすには投資に精通した人材を増やしていく必要がある。民間の投資ファンドと比べて決して待遇面で厚遇と言えない機構にどれだけ有為な人材を集められるか』、「ジャパンモール事業」など旧体制下で進めた案件でも、徹底的に見直すべきだろう。
・『「政策性」と「収益性」の二兎を追う難しさ  最大の問題は、クールジャパン政策の推進という「政策性」と、機構解散時に純資産がゼロを上回らなければならないという「収益性」の二兎を追う難しさだ。 クールジャパン機構を所管する経済産業省クールジャパン政策課の三牧純一郎課長は「機構ができる以前のクールジャパン政策は、補助金をつけてPRやプロモーションを行う情報発信系イベントが中心だった。ビジネス的な観点は強くなかったが、機構ができてビジネスにつなげるようになった。その差は大きい」と振り返る。 もちろん、何でも「クールジャパン」に仕立て上げればいいというものではないが、本当に政策性が重要なら、補助金という形式で、投じた公金が返ってくることを期待せずに、政策性をひたすら追求すればいい。しかし、官民ファンドでは収益性という「タガ」がわざわざはめられている。 それは、ビジネスとしてゴーイングコンサーンでないと、安定的に政策性を追求できないからだ。これまでの機構はその収益性さえクリアできなかったため、従来の補助金行政との違いを示せなかった。 なぜ公的資金を元手に日本企業ではなく、海外企業に出資して、日本酒や日本製アニメを売ってもらうのか。従来の公的資金の使い方と何が違うのか。まだ十分に理解されているとは言えない「官民ファンド」という新しい政策ツールの意義とリスクを、しっかりと説明していくことが求められている』、説明責任はしっかり果たして欲しいところだ。なお、クールジャパン機構については、このブログの6月28日「機構資本主義」、8月16日「闇営業」でも取上げているので、参考にされたい。

第三に、上記の続き、8月23日付け東洋経済オンライン「クールジャパン機構、この1年で何が変わった? 昨年就任した北川CEOと加藤COOを直撃した」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://toyokeizai.net/articles/-/297340
・『官民ファンドの1つである、クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)が厳しい批判にさらされている。 2013年に設立された同機構は、中国での大規模商業施設事業や日本のアニメやドラマの海外放送事業など、これまでに合計38件の投資を行い、うち3件をすでに売却した。2019年3月末現在で179億円の累積損失を抱え、財務省の財政制度等審議会が今年6月にまとめたリポートでは、「投資実績の低調等により、累積損失が生じている状況にある」と指摘された。 だが、昨年6月に就任したソニー・ミュージックエンタテインメント出身の北川直樹社長CEOと、投資ファンドのペルミラ・アドバイザーズ出身でCOO兼CIOを務める加藤有治氏によって、投資手法や投資先の選定、投資後の企業価値向上の方法が変化していることも事実だ。 クールジャパン政策を推し進めていくうえで、クールジャパン機構の果たす役割は何か。また、官民ファンドとしての運営上の課題は何か。2人に聞いた』、トップ2人へのインタビューとは興味深い。
・『「5つの投資方針」をはっきりさせた  Q:社長、COOにそれぞれ就任されて1年が経過しました。「旧体制」と何がいちばん違うのでしょうか。 北川:日本の魅力を世界に届けるための「5つの投資方針」をはっきりと決めて、スタートさせた。ただ、1つ言えるのは、(前会長の)飯島(一暢)さんや(前社長の)太田(伸之)さんらは、何もないところから相当苦労して5年間、案件をやってきた。その大変さの中にヒントはいっぱいある。僕らなりに、事業の精選のされ方など、反省も含めて現在に生かしている。 Q:新体制下でこれまで9件の投資を決定しました。その中に2人が理想とする投資案件はあったのでしょうか。 北川:カテゴリーは似ているかもしれないが、9件すべてタイプが違う。インバウンドがこれだけ取り上げられるようになったように、来年、再来年とやっていくうちに「クールジャパン」のあり方やポジションも変わっていくだろう。そういう状況の変化にどう対応していくかが重要だ。 Q:9件の中身をみると、吉本興業とNTTと組んで出資した国産プラットフォーム事業「ラフアンドピースマザー」と慶応義塾大発ベンチャーの「スパイバー」を除き、ビジネス基盤の固まった、キャッシュフローの出ている企業への、手堅い投資が目立つ印象です。 加藤:政策性という観点からいうと、従来とまったく同じものを追求しているが、(新体制では)より事業基盤が確立したものに投資している。しかも、海外で基盤が確立しているものという点を重視している。 9件の内訳は、グリーンフィールドが1件、グロースが6件、マジョリティー出資案件が2件。投資手法の多様化も図るし、分野もバランスをとっていく。グリーンフィールドはこういう政策をやりたいということに対して、テーラーメイドで作れるという利点はあるが、立ち上げのリスクがある。ただ、よいバランスの投資ができているのかな、と思う。 Q:今年4月に示された投資計画によると、今後10年間で毎年181億円ずつ、合計1800億円超の投資を計画しています。相当な投資件数と金額になると思いますが、今の機構の人材で十分なのでしょうか。また、投資対象は十分存在しますか。 北川:これから直面するのはそこだと思う。この11月で7期目となるが、このチームとなって投資件数は結構増えた。このペースでいくと、以前は想定していなかったことを想定し始めないといけない。 エグジットはこれから増えてくる。大きく人を増やすものでもなく、2人増えるだけでも助かる、という世界。加藤COOを中心に、チームを新たに編成し直すなど対応をしている。 加藤:ご指摘の通り、もしこのペースで投資を続けるなら、人員は増やさざるをえないかもしれない。一方、ファンドのサイズを上げることで投資効率を上げる方法もある。 ただ、政策性の観点からいうと、大きければいいというものでない。サイズ、政策性、収益性のバランスをうまくとりながら、効率よくチームを編成し、手厚くやるべきところは手厚く、案件サイズも工夫していく。 投資先も、簡単に見つかるということではないが、われわれのスタッフが正しい戦略に基づいて正しい努力をすれば、十分なパイプラインは積み上がる。投資対象に挙げている4分野の裾野は広く、投資対象はたくさんあるが、いい投資対象がたくさんあるかというと、そうでもない』、「(新体制では)より事業基盤が確立したものに投資している。しかも、海外で基盤が確立しているものという点を重視している」、というのは手堅いやり方だ。現在はベンチャーファンドも乱立気味で、資金はあり余っているようなので、「毎年181億円ずつ」に拘らず、弾力的に投資すべきだろう。
・『エグジットには2年以上、長い期間がかかる  Q:エグジット(投資案件の売却)に至った案件は今のところ3件で、共同投資先への売却や投資先による買い戻しが中心です。今後エグジットが本格化すると思われますが、IPOなど具体的なイメージがあるのでしょうか。 加藤:一般論でいうと、ファンドなので(IPOなどのエグジットを)当然積極的に検討する。検討を進めるにあたって、まず政策的な目的を一定程度達成できているか。それが第一義なので、満足する結果を生んでいるのなら、次のオーナーへ引き渡していく。 とはいえ、現実には投資して2年間やって、すぐエグジットするかというと、2年では満足いく政策目的を達成できないケースがほとんどだと思う。技術的にはそれよりも長い期間でエグジットしていくことになる。 Q:例えば、今年6月から7月にかけて、日本酒関連の投資が2件ありました。これらのビジネスがどういう状態になると、おっしゃるような「政策目的」が達成されたことになるのでしょうか。 加藤:案件ごとに政策KPI(重要業績評価指標)が決まっており、目標の70%を達成すると、一定程度達成できているということになる。そのハードルを越えてきたところでIPOなり、戦略的な買い手にバトンタッチしていくことになる。 Q:KPIの詳細は未公表のようですが、そのKPIの達成度は、最初の目標をいくらに設定するか次第で達成度が左右されるのではないですか。最初の目標の設定は適切なのでしょうか。 北川:正直に申し上げて(目標は)結構高い。僕らは高めの目標を先方(投資先)にプレゼンし、先方がこれくらいでどうですか、というケースが多い。新しいマーケットをお互いに開拓しようとしているので、多い少ないという議論はあると思う。先方の事情もあり、マーケットをまったく無視してやるわけにはいかない。 Q:例えば、日本酒の高い政策目標はどこから出てくるものですか。 北川:彼らが扱っているのはワインやシャンパンで、向こう(中国やアメリカ)のマーケットで日本酒の需要があるかが1つの目安になる。 加藤:付け加えると、量だけではなく質も大事。われわれの発想として、なるべくたくさん輸出してビジネスにしたいという話をするが、現場でやっている人たちの意見でいくと、いきなり何でもいいからたくさん売れ、というのは得なのか、となる。 今回の日本酒の案件では、日本のお酒というもののストーリーをきちんと語ってブランドを作ろうと。日本ブランドはいいものだ。クオリティーの背景にストーリーがあって、これなら高い金を払って買ってもいいよね、というのにふさわしいものを売ろうと。質、量両面を考えながらKPIを設定している』、「日本のお酒というもののストーリーをきちんと語ってブランドを作ろう」、というのはもっともだが、数多い日本酒の「ストーリーをきちんと」描き分けて、ブランドを作るというのは、なま易しくはないだろう。
・『政策性と収益性の両立は簡単ではない  Q:日本酒の輸出を伸ばしたり、日本酒のブランドをつくっていくという目的を達成する手段としては、補助金を出すなり、マーケティングするなどの方法もあると思います。機構のように企業に出資するやり方は、目的達成の手段として適切なのでしょうか。 北川:機構は今(2013年の設立から)6年目で、これは1つのトライアルだと思う。当然、補助金というやり方もある。効果的だと思うし、今いろんなやり方の中で、どれがいちばんいいのか。われわれがまさに証明していくことだと思っている。 正直言って、政策性と収益性、この2つをやっていくのはそんなに簡単なことではない。それは重々認識している。財政投融資の観点からは、政策性も収益性もちゃんとやってくれと。さらに、計画を立てて、投資を現実にやっていくことがすごく重要だ。 加藤:われわれとしては、バリュークリエーションチームを作り、企業投資の世界で確立されたバリュークリエーション手法をしっかり導入している。投資先の30数社全部に担当を貼り付けるわけにいかないが、例えば、マジョリティー(株式の過半数)をとっている先や(ビジネスをゼロから立ち上げる)グリーンフィールド案件、案件サイズの大きい先など、ハンズオンが必要な先にチームをきちんとつけている。 われわれは産業投資のお金を使って株主になっている。投資自体で価値は生まれないので、産業投資のお金にしっかり働いてもらうために、継続的に投資先の会社と協力し合い、株主としての役割をしっかり果たしていく。 Q:政策性と収益性の「二兎」を追うのは結構しんどいと思います。いっそのこと、目標をどちらか1つに絞ってはどうでしょうか。 北川:当事者として(二兎を追うことに)僕は違和感がない。会社というのはいつも2つを追っている。人を減らして売り上げを倍にしろとか。僕もそうやってきたので、目標が1つだけだなんてとんでもない。 Q:機構に課せられた収益性といっても、民間ファンドのように20%とか30%とかのリターンを求められているわけではない。投資元本が返ってくればいい、という建て付けです。 加藤:難易度は高いと思う。民間は、利益に向かって全力疾走でいい。しかし、クールジャパン機構は目標が2つある。全力疾走でなく、バランスでやるというところが難しい。振り切っていいならバンと押せばいいが、てんびんにかけてやらないと。 チームとよく話しているのは、政策目的と収益がトレードオフでなくなる瞬間もたまにある、ということだ。例えば、中国の日本酒案件は、KPI設定がすごく簡単にいった。 経営陣は次の成長の柱は日本酒だと言った。しかも日本酒は彼らのインフラにそのまま乗っかる。ストーリーも歴史もあって、ワインと同じようなカテゴリーで成長の柱にできる。こういうケースを見つけると、仕事のやりがいをすごく感じる』、ワインと日本酒では違いもありそうだが、プロがそう信じているのであれば、そうなのだろう。
・『吉本案件に変更はない  Q:既存の投資先の進捗状況を聞かせてください。最大110億円を投じる中国・寧波のジャパンモールの開業時期は、延期されて今年秋になる予定です。 北川:ブランド戦略がきちんとできて、成功させたいという阪急さんの思いがあるので、そのへんが見えるまで(開業時期が)なかなか決まってこなかったという事情があると思う。僕らは(相応の出資金)額を出しているが、中国のパートナーやテナントの問題はどうしてもH2Oリテイリングにある程度頼らざるをえない。 Q:沖縄の吉本興業との共同投資案件に世間の批判が集まっています。 北川:(社外取締役でつくり、投資案件を審議する)海外需要開拓委員会の議論も通過してきている案件だ。政策性と収益性をみて、反社かどうかも当然チェックしてスタートしている。 (吉本案件は)何度も聞かれるが、かなり厳しいチェックを(ほかの案件と)同じようにやっている。「(吉本案件を)どうするんですか」と聞かれても、別に何か決定自体が誤っていたわけではないし、「(投資方針の変更などは)ないですよ」と申し上げている。 Q:投資ファンドのビジネスモデル上、費用が先行する「Jカーブ」を描くのは理解できます。問題は、クールジャパン機構の存続期間である2033年までに本当にカーブが持ち上がっていくのか。相当未来の話なので、よくわからない。 北川:累損を単純に見ている人もいるので、そうではないんだと。懸念をもたれているポイントは違いますよ、というのをぜひご理解いただきたい。 加藤:いま(投資先の)ポートフォリオが30社を超えてきており、バリュークリエーションや投資先との連携の努力をきっちりやっていく。そして、これまで通りにパイプラインをしっかり積み上げ、政策的にも、経済的にもいいエントリーをする。 もう1つ、やはりミッションを忘れないということが重要だ。われわれのミッションは海外事業開拓支援。そのミッションのために適切な投資とは何なのか。それをつねに問い続けていく』、吉本案件は「海外需要開拓委員会の議論も通過してきている案件」として突っ張っているようだが、吉本興業自体が「闇営業」問題で揺れているだけに、環境の変化に柔軟に対応してゆくべきだろう。 
タグ:東洋経済オンライン litera クールジャパン戦略(その9)(ブラックホール会見でNHK記者が「日本の貢献は?」質問し世界が失笑!科学に“日本スゴイ”持ち込む愚、クールジャパン機構 :見えない黒字化への道筋 新体制の下 国内外企業にハイペースで投資、この1年で何が変わった? 昨年就任した北川CEOと加藤COOを直撃した) 「ブラックホール会見でNHK記者が「日本の貢献は?」質問し世界が失笑!科学に“日本スゴイ”持ち込む愚」 国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」が人類史上初めてブラックホールの撮影に成功 アメリカ政府の国立科学財団の会見 NHKの記者はパネラーに対してこんな質問を投げたのだ。 「私は国際共同研究に関して質問があります。今回の成果が突出した共同研究であることは理解しております。それぞれの国、特に日本がどんな貢献をしたのかについてお聞かせください」 場内のあちこちから他国の記者の笑い声が漏れた NHK記者の1人前には高校生の女性が「今回のことは、科学界の国境を越えた協力による大きな功績だと思いますが、今後こうした共同作業は科学界においてひとつのモデルとなるでしょうか。なるとすれば、どういう課題があり、私たちには何ができるでしょうか」といった質問をして、パネラーから「That’s a great question」との言葉をもらっていた Japan Today NHKの記者はブラックホール研究チームに対して日本の貢献について質問をしたことで物笑いの種になった 「科学研究」と「おらが村の自慢」は何の関係もないし、むしろ結びつけてはいけないというのは国際的な常識だ 山中伸弥教授は記者会見で「日本、日の丸の支援がなければ、こんなに素晴らしい賞を受賞できなかった。まさに日本が受賞した賞」と発言 ノーベル賞委員会は激怒。「あんな発言は絶対にしてはいけない」と異例の警告を発した ノーベル賞受賞の益川敏英教授は国家による科学の軍事利用に警鐘 安倍政権は2015年から「安全保障技術研究推進制度」という制度を始めている 京都大学や名古屋大学などは「軍事研究は行わない」という方針を明確にする一方、日本学術会議が183の国公私立大学や研究機関を対象に行ったアンケート(2018年4月3日付朝日新聞記事より)によれば、そのうち30カ所が「安全保障技術研究推進制度」への「応募を認めたことがある」と回答 メディアが「日本スゴイ、日本スゴイ」と煽る裏で進行する厳しい現実 「日本スゴイ、日本スゴイ」と自己暗示をかけるばかりで、外ではなにが起きているかをメディアが伝えず、受け手も見ようとしなくなった結果、家電メーカーは凋落。液晶テレビやスマートフォンなどの分野で日本企業のプレゼンスはほとんどなくなってしまった 「クールジャパン機構、見えない黒字化への道筋 新体制の下、国内外企業にハイペースで投資」 「過去の反省を現在に生かしている」 クールジャパン機構の経営陣が一新されてから、ちょうど1年が経過 旧体制との違いは、「キャッシュフロー投資重視」「現地パートナー重視」「グローバルシナジー追求」など5つの投資ルールを掲げ、投資領域としてメディア・コンテンツ、ファッション・ライフスタイル、食・サービス、インバウンドの4分野を掲げたことだ 「決別」を印象づけた動画コンテンツ企業への出資 アメリカのミレニアル世代に日本酒を売り込む 「収益性に課題が生じたファンド」 4つの官民ファンドは、「収益性に課題が生じたファンド」と位置付けられ、今年4月には収支計画を提出。今後も今年秋と2020年度、2021年度にそれぞれ計画と実績が検証される これまでの収支決算は179億円の繰越損失 「政策性」と「収益性」の二兎を追う難しさ 「クールジャパン機構、この1年で何が変わった? 昨年就任した北川CEOと加藤COOを直撃した」 「5つの投資方針」をはっきりさせた エグジットには2年以上、長い期間がかかる 政策性と収益性の両立は簡単ではない 吉本案件に変更はない
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外食産業(中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由、スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない、いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由) [産業動向]

今日は、外食産業(中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由、スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない、いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由)を取上げよう。

先ずは、2月1日付けダイヤモンド・オンラインが東方新報記事を転載した「中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/192631
・『中華料理の世界が今、新たな変化を見せている。ここ数年、中国で創業した飲食チェーンが、次々と日本市場に参入しているのだ。中国語と日本語の2ヵ国語で新聞を発行している『東方新報』が2つのチェーンを取材、中華料理の最前線を追った』、興味深そうだ。
・『中国で創業したチェーンが相次いで日本に進出  一昔前、海外に散らばった中国人の職業は、「三把刀(3本の刀)」といわれていた。これは、ハサミを使う裁縫、やはりハサミを使う散髪、そして包丁を使う料理だ。 そのうち、料理人が手掛ける中華料理は日本で100年以上の歴史があり、広東省や福建省、台湾出身の華僑が日本に持ち込んだといわれている。 彼らは、日本で弟子を募って育て、弟子たちは自立して自分たちの店を持つようになる。そしていつしか日本では、中華料理がいつでもどこでも食べられるようになった。 そんな中華料理の世界が今、新たな変化を見せている。ここ数年、中国で創業した飲食チェーンが、次々と日本市場に参入しているのだ。その結果、日本の中華料理は「モデルチェンジ」と「アップグレード」の新時代に突入している』、世界中、どこへ行っても中華料理の店はあり、かつて海外出張し際には重宝させてもらった。「中国で創業した飲食チェーンが、次々と日本市場に参入している」、というのは楽しみだ。
・『「現地化」と「消費体験」進める火鍋チェーン店が日本市場に参入  そのうち、海火鍋チェーン店「海底撈(ハイディラオ)」は1994年に創業して以降、大発展を遂げた。船に例えるなら、「飲食業界の巨大空母」といっていいだろう。2017年末現在、世界100都市に300店舗以上の直営店を構え、スタッフは5万人以上、年間のテーブル利用回数はのべ1億席にも及ぶ。 12年に初の海外店舗としてシンガポールにオープン、その後、米国、オーストラリア、韓国、日本と立て続けに20店舗をオープンさせた。 『東方新報』の取材に応じた海底撈の張航社長は、「消費者からの評価と支持を得て、日本に進出以来、各店の回転率は1日平均4回転、18年9月現在、各店の来店者数ものべ30万人以上となりました」と話す。 強さの秘密は、「現地化」と「消費体験」だ。 火鍋のもと(スープ)など、一部食材は中国の本部から送るというが、それ以外のものは全て現地、つまり日本で買いつけているという。 「日本に『郷に入っては郷に従え』という言葉があるでしょ。日本で出店する上で、できる限り日本人の好みに合わせようと考えてメニューを開発して提供しました。そのため、材料は日本で調達しています。そうすることで、1人でも多くの日本の消費者を魅了させていきたいと考えてきました」(張社長) ショーやイベントも海底撈の特徴だ。日本の店舗では、「麺打ちパフォーマンス」を始め、一瞬でお面が変わる中国の伝統芸能「変面」のショーといったイベントを開催している。 そうしたパフォーマンスにしても、「単に行うだけでなく、複数の料理人で競わせたり、来店客も参加できるようにしたりして、来店客の“消費体験”を高めていくことにしている」というのだ』、なるほど。
・『一方で、いい業績を残すためには、いい管理体制なくしては語れない。張社長によると、国内外含めた全店舗を直営にし、法務や財務、店舗拡大戦略といった管理部門の全てを本部で統括する体制を取っているという。 後継者育成にもこだわりがある。 「各国で1号店を出すときには、必ず中国人の店長を抜てきする。だが、2号店、3号店と店舗を拡大させる場合には、新しい店舗を出店できるようになるまで師匠が弟子の面倒を見る『師弟制度』を取っている」(張社長) 料理人や接客スタッフなどの選考については、「現地の状況を踏まえた上で、現地スタッフを雇うか、それとも中国人スタッフを派遣するかを考える」と話す。しかし、各地域の店舗のほとんどが現地スタッフで運営され、具体的な業務ポジションは各店舗の運営状況によって決められているようだ。 このように現地化した海底撈は、日本に根づき始めているが、最近では口コミサイトやインフルエンサーによって火がつき、さらに人気を博している』、「各地域の店舗のほとんどが現地スタッフで運営され、具体的な業務ポジションは各店舗の運営状況によって決められている」、という現地化はさすがだ。
・『ミシュラン1つ星レストランが本場の味で香港グルメの風を吹かす  「われわれのターゲットは、本場の味を好むお客さま」 そう語るのは、国内外で中華料理レストランを展開するレストランチェーン「WDI」の清水謙社長だ。18年4月、香港でミシュラン1つ星に輝くレストラン「添好運(ティム・ホー・ワン)」を、東京の日比谷にオープンさせた。 現在、添好運はすでにシンガポール、フィリピン、タイ、インドネシア、マレーシア、オーストラリアなどにも店舗を構え、日本も含めた多くの国に“香港グルメの風”を吹かせている。 清水社長によると、添好運との出会いは8~9年前。海外出張時に、飛行機の機内雑誌に載っていた記事を読んだのがきっかけだったという。当時、創業者である麦桂培シェフは、4年連続でミシュラン3つ星を獲得していたレストランから独立し、添好運をオープンさせたばかりのころだった。 「その記事を見て『添好運』に興味を持ち、実際に香港のお店に行きました。予想通り料理はとてもおいしかった。そこで、2人のシェフに尋ねたのです。『添好運を海外に出店させる気持ちはないか』と。しかし、彼らの答えは、『すでに、あるシンガポール企業と提携し、アジア圏における経営権を渡してしまった』だったんです」(清水社長)。 壁にぶち当たった清水社長は、一度日本に戻り、作戦を練ってから再び香港へ向かった。そして改めて麦シェフに、「どうあっても添好運を海外展開させたい」と、強い気持ちをぶつけたという。 そのかいあって清水社長は、米国とヨーロッパにおける経営権を得ることができた。 「2年前にニューヨーク店を開店させ、その後、アジアで経営権を持っていたシンガポール企業と交渉、彼らの許可によって日本の経営権を得たことで、ようやく日本で開店することができたのです」(清水社長) メニューを決める上で、清水社長はもともとのメニューの中から日本人が好みそうなものを選択するが、味つけの調整はしない。本場の味を楽しんでほしいと考えているからだ。 こうして出店した添好運が、なぜオープンからわずか数ヵ月で行列の絶えない爆発的な人気店となったのか。この質問に対し清水社長は言う。 「100人の日本人がいて、おそらく60人くらいが日本風味の食べ物を好むだろう。残りの40人は海外旅行経験などあって、外国の食べ物を好む人たちだ。もちろん、60人の中にも海外経験者はいると思うが、ただ『日本は最も安心な国』だと考えている人たちだ」。 そしてこう続ける。「日本は島国だからそんな人たちが過半となっているが、私たち添好運がターゲットとしているのは60人の方ではなく、40人の方なのです。60人の方には苦手という人もいるかもしれないが、彼らは私たちの顧客ではないからそれでいいんです。たとえ40人と少なくても、熱烈なファンになってくれれば、リピーターとしてまた店に来てくれるわけですから」』、清水社長の「日本の経営権」取得の粘りや、ターゲットを「本場の味」に絞ったやり方は大したものだ。
・『中国国内でも大変化 地域の料理を集約した系統料理へ  このように、日本における中華料理も変化しているが、本場、中国国内に目を向けても、ここ10~20年の間で大きな変化が起きていた。 以前の料理人は、東北出身の料理人であれば東北料理を、山東出身の料理人なら山東料理を、といった感じで、それぞれの地域の料理を作ってさえいればよかった。しかし、経済発展に伴って料理人たちの流動化も進んだ結果、中華料理は各地の料理を融合させた「系統料理」(北京料理、四川料理など中国八大料理)として発展した。 そうした流れが加速、結果的に料理人の出身地がどこであっても、料理人は中国各地の料理はもちろん、系統料理が作れるようになった。そうした料理人たちが来日したことで、日本に系統料理が“輸入”され、日本においても中華料理は新たな発展を遂げたのだ。 日本における中華料理も今後、こうした系統料理が中心となっていくことだろう』、「系統料理」とは初耳だが、新な発展とは今後が楽しみだ。

次に、経済評論家、百年コンサルティング代表の鈴木 貴博氏が6月15日付け東洋経済オンラインに寄稿した「スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/286377
・『相次ぐフードチェーン店の大量閉店、各社の事情  アメリカから黒船のごとく上陸して一時は日本でも熱狂的な支持を得たフードチェーン店の大量閉店が相次いでいます。最近ではバーガーキングが5~6月で23店舗を閉店することになりました。サンドイッチチェーン世界最大手のサブウェイも過去5年間で200店規模のお店を閉めています。一昔前にはあれほどの長蛇の列ができていたクリスピークリームドーナツも店舗戦略を改めて、新宿駅にあった1号店はすでに2017年で閉店しています。 3つのチェーンの閉店理由は、おのおのの特別な事情が背景にあります。しかし、一段掘り下げると、実は深層レベルではアメリカの有力チェーン店が克服しなければならない共通の問題が存在していたことが見えてきます。日本市場にはどのような落とし穴が潜んでいるのでしょうか。各社の事情を見ながら、有力チェーンの参入を妨げる魔物の正体を探っていきましょう』、「有力チェーンの参入を妨げる魔物の正体」、とは興味深い。
・『バーガーキングは国内99店舗のうちの6月末までに計23店舗を閉店します。もっともバーガーキングを運営するビーケージャパンは、今回の閉店をスクラップアンドビルド戦略の一環と説明しています。今後の成長が望めない店舗を閉店する一方で、今年の下半期までに20店舗の新店舗を開店する計画。それはそうなのかもしれませんが、過去、バーガーキングは何度も苦境を迎えていて、閉店と再チャレンジを繰り返してきています。 バーガーキングは1993年、「アメリカでマクドナルドに急接近する第2位のハンバーガーチェーンだ」という話題とともに西武グループの招きで日本に上陸しました。バブル崩壊後に西武グループの流通ビジネスが整理を行うことになり、バーガーキングの日本での経営権はJTが引き継ぐのですが、結局は業績不振で2001年に日本から撤退します。 2006年にロッテリアが企業支援ファンドのリヴァンプと組んで日本再上陸を試みます。この再上陸でもかなり力を入れて展開を試みたのですが期待したようには業績は伸びず、2010年に韓国のロッテリアに経営権を1400ウォン(約100円)で譲渡します。その後ライバルのマクドナルドが不祥事で業績を下げる中でも事業拡大は見込めず、2017年に香港の投資会社アフィニティ・エクイティ・パートナーズへと経営権が移ります。 今回は経営権が新しくなった中でのスクラップアンドビルドなので計画通り新店舗への投資は実施されると思われますが、バーガーキングがアメリカ本社の思うほど日本で業績を伸ばせていないという状況はこれまで一貫しています。 バーガーキングが苦しんでいる理由はマクドナルドが低価格戦略で成功している市場で、消費者から見てそれほど大きな違いのないバーガーキングがプチプレミアムと呼ばれるやや高めの価格を維持しようとしていることに問題があるといわれています。この点について一段深く掘ると、もう少し複雑な事情が見えてくるのですが、まずは他のチェーンの事情も見てみましょう』、バーガーキングの日本側スポンサーの目まぐるしい変遷は、驚くべきものだ。ただ、「23店舗を閉店・・・今年の下半期までに20店舗の新店舗を開店」、というのはまだ「スクラップアンドビルド」の段階のようだ。
・『バーガーキングと比較するとサブウェイの大量閉店はより深刻です。つい先月も首都圏で20店舗を運営していた大手フランチャイズ運営企業が破産宣告を受けるなど、フランチャイズ側も儲からない。一方で日本法人も赤字が続き、投資をする体力が落ちてきています。ピークといわれた2010年代中盤から見ると200店舗規模での店舗閉鎖が起きています』、本当に深刻なようだ。
・『3社の乗り越えられていない課題とは?  かつてサブウェイは「その場で作る健康的なサンドイッチチェーン」として日本でも急速に店舗数を増やしました。ちなみにサブウェイは世界的には店舗数がマクドナルドを上回る世界最大のチェーン店で、世界で約4万4000店を展開しています。日本では1992年の上陸以降、「野菜のサブウェイ」のスローガンを打ち出し店舗数は急拡大。健康に気遣う女性を中心に業績を伸ばしました。 しかしその売り上げの大半がランチタイムに集中するという弱点があって、かつ、手作りである分オーダーから製品提供まで時間がかかるといった事情もあり、ほかにも健康を標榜する競合が台頭する中で、サブウェイからゆっくりと顧客離れが進んでいきました。価格帯としてはバーガーキング同様にプチプレミアム価格だったことで、ランチタイムの女性需要以外の新需要が開拓できなかったことがマイナスに働いたといわれています。 クリスピークリームドーナツはバーガーキングと同時期に同じロッテリアとリヴァンプが手を組んで日本に上陸しました。1個160円の軽くて甘いオリジナルグレーズドというドーナツが大人気となり、1号店となった新宿サザンテラス店には2時間待ちの長蛇の列ができ、大きな話題を呼びました。このオープン時の熱狂が後の反動減につながったといわれています。全国64店舗まで拡大したあたりをピークとして、店舗数も縮小を始めます。こうして2015年以降、全国で20店舗が閉店されていきます。 2016年にはあれだけ人気だった新宿の1号店も閉店が決まりました。クリスピークリームドーナツはこの一連の大量閉店を戦略転換だと言っています。行列のできる店から、長く愛される店へと転身を図る中で大型店を閉鎖する一方、小型で居心地のいいお店を増やしていく。新宿エリアでは新しい新宿のランドマークになった東宝のゴジラビルの直下にそのような新店舗が開店しています。 さて3つのチェーンの閉店の事情はこのようにそれぞれ違います。しかし事情は違ってもそれぞれにある共通点があるということが今回の記事のポイントです。 アメリカで大成功して、そのコンセプトで日本に上陸して、日本でも当初は歓迎される。しかしプチプレミアム価格帯であることが途中でマイナスに働くようになり、やがて需要が減少していく。起きてきた事象を見てみると、よく似たことが3つのチェーンとも起きています。そしてその後ろには、ある魔物が存在している。ここが3社の乗り越えられていない課題です。 アメリカから上陸した他の有力チェーンでは、この3社のような罠に陥らずに成功している飲食チェーンも存在しています。いちばん目立つのはスターバックスコーヒーでプチプレミアム戦略が功を奏して高収益チェーンの象徴といわれるほど展開がうまくいっています。では大量閉店の3社は何が違ったのでしょうか? 実は3社のチェーンはどれも、アメリカで成功したコンセプトが日本市場に文化として受け入れられていない。ここが共通の深層要因であり、乗り越えられていない魔物の正体です。 バーガーキングがなぜアメリカで成功したのか。その理由はマクドナルドとよく似たメニューをそろえながら、調理の際に網焼きにすることで余計な脂を落として調理したことです。ハンバーガーというジャンクフードを調理のプロセスで少しだけ健康によい食べ物に変えたという点が、そもそものバーガーキングの成功コンセプトです。 アメリカではこのことがCMで強調されていて、全米の父母が「ハンバーガーを食べに行きたい」という子どもを連れて行く店として、マクドナルドよりもバーガーキングを選択した。それがバーガーキングのそもそもの成長の原動力でした』、バーガーキングが「ジャンクフードを調理のプロセスで少しだけ健康によい食べ物に変えた」、というのは私も知らなかった。
・『スターバックスがなぜ日本であれだけ成功したのか  ところが日本のバーガーキングは最初の上陸から20年以上が経つのに、この特徴を日本市場できちんと伝えていません。結果、子どもの顧客は少ないまま。そしてジャンクフードが好きな顧客はマクドナルドに流れ、健康的なハンバーガーが好きな顧客はフレッシュネスバーガーに流れるという形で顧客を奪われ、市場の中でなぜ存在しているのか消費者にもよくわからない。中途半端な存在になっているのです。 サブウェイはそもそもアメリカでは「サンドイッチを夕食としても食べる文化がある」という前提で成長した企業です。細長いパンを真ん中で半分に切ったサイズがランチ用、パン一本分のサイズがディナー用というのが本来望ましい食べ方です。しかしこのコンセプトが日本市場に根付いていない。日本ではあいかわらずサンドイッチは昼食で食べるメニューのままです。 結果売れるのはランチの女性向け需要だけ。その日本市場特有のニーズに20年間フォーカスしすぎて、文化を変えられていない。それ以外の時間帯の需要が創造できていない。しかも男性にとっては量がちょっと物足りない。男性を捨て、夕食を捨てればアメリカの4分の1の業績になるのは当然です。 厳しく言えば、サブウェイは日本の文化を変える投資を27年間怠ってきた結果、本来の強さが刺さらない市場で戦い続けるという苦しい状況を自らが招いてしまっているのです。 クリスピークリームドーナツはアメリカではとても甘くてふわっとしていて「いくつも食べたいドーナツ」を提供し、それを「1ダースを標準サイズとして家に持ち帰る」というコンセプトで伸びた会社です。当初は日本でもこのコンセプトは受けましたが、現在では甘さを抑えたドーナツを開発し、小さな店舗で少ない顧客を相手にビジネスを行っている。これが悪いとは言いませんが、アメリカでウケた成功コンセプトが日本市場向けに変質しているという点では課題は他の2社と共通しています。 スターバックスコーヒーがなぜ日本であれだけ成功したのか。それはアメリカで成功したコンセプトからぶれていないからです。 そもそもアメリカで成功したコンセプト自体もそれまでのアメリカ市場の文化を変えたところから始まっています。イタリアで栄えている、そしてアメリカにはなかったエスプレッソコーヒーの香りと味を愉しむコーヒーショップをシアトル発で展開したい。そうやってアメリカの文化を変えることで成功し、日本でもそれまでの日本の喫茶店文化を変えることでスターバックスは大成功を収めてきました。 アメリカであれだけ成功しているチェーンであるということは、そのコンセプトにはそれだけの強みが存在していることを意味しています。それはどのチェーンにとっても共通点です。しかしこれらの3社はそのコンセプトに投資して、日本の文化を変えていくことに力を入れてこなかった。そのようなチェーンが今、大量閉店を招いているように私には見えるのです』、スターバックスコーヒーが「アメリカにはなかったエスプレッソコーヒーの香りと味を愉しむコーヒーショップをシアトル発で展開したい。そうやってアメリカの文化を変えることで成功」、確かに、文化を変えるほどの強みがないと、定着は難しいようだ。

第三に、8月19日付けダイヤモンド・オンライン「いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/211256
・『・・・今年に入り業績に黄信号 出店拡大による弊害が原因  破竹の勢いで成長してきた「いきなり!ステーキ」が、ついにつまずいた。 運営するペッパーフードサービスは6月、2019年12月期の営業利益を従来予想の55億円から20億円へと大幅に下方修正することを発表。通年の出店計画も210店から115店に減らすなど、成長に急ブレーキがかかった。 いきなり!ステーキといえば、“手軽に食べられる厚切り肉”という売りが消費者の胃袋をつかみ、ここ数年注目を集めてきた。高原価率の商品を提供する一方、客席の回転率を高めることで利益を生み出すという特徴的なビジネスモデルを持つ。 そんないきなり!がなぜ苦境に立たされているのか。 最大の原因は、同店の特徴であった急成長そのものが裏目に出ていることだ。 いきなり!は、1号店を開店して以来わずか6年弱で約500店舗まで拡大。昨年は1年間で200店も出店し、外食業界では常識外れのスピード出店を続けてきた。 だが、その急展開に中身が追い付かなかった。 弊害の一つが自社競合だ。特に、ここ最近力を入れてきた郊外エリアでは店舗の商圏を狭く見積もるなど想定が甘く、自社の店舗同士で客を奪い合う結果となった。 さらに、人材育成にもほころびが生じた。清掃や接客といった店舗サービスの質が悪化したことで、消費者の離反を招いたのだ。 実は、こうしたニュースの動きも、PLと決算数値を使って読み解くことが可能だ。 まず、19年の業績予想を見ると、企業規模を表す売上高自体は右肩上がりに成長しており、一見好調そう。ところが、肝心のもうけの大きさを表す営業利益率は急落しているのだ その要因は、新店以外で集計される「既存店売上高」が落ち込んでしまっているせいだ。 そもそも、営業利益は、売上高から原材料費(売上原価に含まれる)や、人件費・店舗の賃料(販管費に含まれる)といった費用を引いたものであるが、人件費や賃料は固定費と呼ばれ、売り上げが悪くても必ずかかってしまうもの。 つまり、売上高が下がれば相対的に固定費の負担は重くなり、営業利益は必然的に悪化するというわけだ。店舗数が増えたことで決算書上の売上高がいくら増えても、既存店の業績が悪化してしまえば本末転倒なのである。 この新店効果を除いた既存店売上高の動向は、出退店のサイクルが比較的速い外食業界では、企業の実力を反映する数値として決算書の数字と同じぐらい注視される。決算説明資料などに必ず前年比の推移が掲載されているので、分析するときは要チェックだ。 さらに、この間の店舗増加数を追ってみると、18年4月以来、既存店売上高前年比100%割れが続いているが、その直前から月に10店舗を超える出店を続けており、出店拡大と既存店の落ち込みがリンクしていることも分かる。 出店攻勢が既存店の業績に悪影響を与え、PLの利益水準を落とす。これが、同社の不調の構図だ。 「この人手不足の時代に、大量出店すること自体大きなリスクとなっている」と、ある外食アナリストが指摘するように、いきなり!の不調はある意味必然の結果だ』、記事は国内中心だが、海外はもっと悲惨だ。6月15日付け日経新聞によれば、「いきなり!の親会社のペッパーフードサービスは、米ナスダック取引所に上場廃止を申請した。米国内11店舗のうち7店舗を閉鎖、一部店舗は業態転換。2018.12期決算では米国事業不振で25億円の損失を計上」とのことだ。ステーキの本場に殴り込みをかけると意気込んでいたが、とんだ返り討ちに会ったものだ。
・『実は、全く同じ状況にあるのが、焼き鳥チェーンの鳥貴族だ。 「298円均一」でおなじみの同社も、ここ数年メディアへの露出の効果などで注目を浴びてきた。 だが、こうした露出の効果による一時的な客数の増加を「実力」と読み誤った結果、新規出店を加速。既存店の近隣などに出店したものの、いきなり!と同じく自社競合を招く結果となり、既存店の売り上げを痛めた。 さらに、鳥貴族の場合、17年10月に行った280円均一からの値上げもダブルパンチとなった。元々、競合と比べてお得さで人気を博してきた同社だけに、値上げによって価格に敏感な消費者から敬遠されたのが痛手となった。 現在は、新規出店を一時停止。店舗網の再構成やブランド強化などで既存店の回復に努めている。 成長を目指し店舗の拡大を狙うのはもっともなことだが、両社に共通するように、そのスピード感と既存店の維持とのバランスを保つことが、外食企業にとっては生命線となるのだ。 ところで、同じく近年メディアへの露出などで話題を集め、順調に拡大している居酒屋チェーンの串カツ田中はどうだろう。同社は、長期目標として「全国1000店体制」を掲げるが、店舗増加数は安定しており、既存店売上高も平均的に増加している。 昨年6月に導入した全席禁煙化の反動が影を落とすなど別の不安材料はあるが、少なくとも、こうした安定的な出店ペースを維持することが、「1000店」を達成するための一つの鍵となることは間違いない』、「既存店の近隣などに出店」するというのは、恐らく商材の配送、ドミナント戦略などを考慮してのことなのだろうが、反面で「既存店」の苦戦は当然、予想されたことだ。ますます深刻化する人手不足のなかで、外食企業の生き残り戦略が注目される。
タグ:外食産業 クリスピークリームドーナツ 東洋経済オンライン 日経新聞 ダイヤモンド・オンライン 串カツ田中 鈴木 貴博 (中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由、スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない、いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由) 東方新報 「中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由」 中国で創業したチェーンが相次いで日本に進出 一昔前、海外に散らばった中国人の職業は、「三把刀(3本の刀)」といわれていた 中国で創業した飲食チェーンが、次々と日本市場に参入 日本の中華料理は「モデルチェンジ」と「アップグレード」の新時代に突入 「現地化」と「消費体験」進める火鍋チェーン店が日本市場に参入 海底撈 2年に初の海外店舗としてシンガポールにオープン、その後、米国、オーストラリア、韓国、日本と立て続けに20店舗をオープン 強さの秘密は、「現地化」と「消費体験」 ショーやイベントも海底撈の特徴 各国で1号店を出すときには、必ず中国人の店長 2号店、3号店と店舗を拡大させる場合には、新しい店舗を出店できるようになるまで師匠が弟子の面倒を見る『師弟制度』を取っている 各地域の店舗のほとんどが現地スタッフで運営され、具体的な業務ポジションは各店舗の運営状況によって決められている ミシュラン1つ星レストランが本場の味で香港グルメの風を吹かす レストランチェーン「WDI」 米国とヨーロッパにおける経営権を得ることができた 中国国内でも大変化 地域の料理を集約した系統料理へ 「スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない」 バーガーキングは国内99店舗のうちの6月末までに計23店舗を閉店 スクラップアンドビルド戦略の一環 今年の下半期までに20店舗の新店舗を開店 バーガーキングは何度も苦境を迎えていて、閉店と再チャレンジを繰り返してきています マクドナルドが低価格戦略で成功している市場で、消費者から見てそれほど大きな違いのないバーガーキングがプチプレミアムと呼ばれるやや高めの価格を維持しようとしていることに問題 サブウェイの大量閉店はより深刻 3社の乗り越えられていない課題とは? アメリカで大成功して、そのコンセプトで日本に上陸して、日本でも当初は歓迎される。しかしプチプレミアム価格帯であることが途中でマイナスに働くようになり、やがて需要が減少していく ある魔物が存在 アメリカで成功したコンセプトが日本市場に文化として受け入れられていない。ここが共通の深層要因であり、乗り越えられていない魔物の正体 スターバックスがなぜ日本であれだけ成功したのか アメリカにはなかったエスプレッソコーヒーの香りと味を愉しむコーヒーショップをシアトル発で展開したい。そうやってアメリカの文化を変えることで成功し、日本でもそれまでの日本の喫茶店文化を変えることでスターバックスは大成功を収めてきました 「いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由」 成長に急ブレーキ 1号店を開店して以来わずか6年弱で約500店舗まで拡大 弊害の一つが自社競合 店舗の商圏を狭く見積もるなど想定が甘く、自社の店舗同士で客を奪い合う結果 人材育成にもほころび 親会社のペッパーフードサービスは、米ナスダック取引所に上場廃止を申請 米国内11店舗のうち7店舗を閉鎖 2018.12期決算では米国事業不振で25億円の損失を計上 全く同じ状況にあるのが、焼き鳥チェーンの鳥貴族だ 値上げによって価格に敏感な消費者から敬遠されたのが痛手 スピード感と既存店の維持とのバランスを保つことが、外食企業にとっては生命線
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7pay不正利用(7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」、「7pay」不正問題には 日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ、セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴、7pay大失敗に見る セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂) [企業経営]

今日は、7pay不正利用(7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」、「7pay」不正問題には 日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ、セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴、7pay大失敗に見る セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂)を取上げよう。

先ずは、7月5日付けダイヤモンド・オンライン「7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/207950
・『コンビニ業界の王者・セブン-イレブンを擁するセブン&アイ・HDが満を持して7月1日にスタートさせた独自のキャッシュレスサービス「7Pay」。だが、同月2日に不正利用が発覚し、4日の謝罪会見では幹部の“ITオンチ”ぶりと当事者意識のなさが露呈。消費者の信頼を失墜させている』、お粗末極まる対応には、呆れ果てた。
・『たった4日で900人、5500万円の被害  サービス開始から4日で謝罪会見――。コンビニエンスストア業界の圧倒的な王者であるセブン&アイ・ホールディングス(HD)の子会社が、全国のセブン-イレブンの店舗で7月1日に始めたキャッシュレス決済サービス「7Pay」で、不正利用が発覚。4日に運営会社である7Payの小林強社長らが都内で記者会見して謝罪した。 何者かが利用者のアカウントに不正にアクセスし、利用者が登録していたクレジットカードやデビットカードからお金をチャージ。セブン-イレブンの店舗で、タバコなど単価が高く換金性のある商品を購入していたケースがあったという。 同社によると、4日午前6時現在で約900人、約5500万円の被害があったとみられる。 ただ会見では、不正アクセスは中国など海外の複数の国からあったとは説明されたものの、原因は「調査中」の一点張り。詳細は明らかにされなかった。 7payのセキュリティのずさんさについて、被害者やセキュリティの専門家などがインターネット上で検証作業を進めている。7Payを使うために必要な「7iD」のパスワードを忘れて新たに登録し直す際に、登録したメールアドレス以外のアドレスにパスワードを知らせるメールが送ることができてしまうことや、本人確認のために、SMS(ショートメッセージサービス)に数字などのコードを送って入力させる「二段階認証」と呼ばれる仕組みを採用していなかったことなどが指摘されている』、典型的な謝罪会見の割には、危機管理が全く出来ていない後世に語り継がれるようなお粗末な会見だった。
・『「二段階認証?」と聞き返した7Pay運営会社トップ  こうした7payのセキュリティについて、当然記者会見で注目が集まった。ところが、「どうして二段階認証を採用しなかったのか」という報道陣の質問に対して、7Payの小林強社長が「二段階認証?」と聞き返し、さらには「二段階云々」と発言。運営会社トップがキャッシュレス決済の安全の基本を知らないという”ITオンチ”ぶりを露呈する事態となった。同様に不正利用があったソフトバンクとヤフーが展開する「PayPay」が、二段階認証を採用していても不正を防げなかった先行事例の教訓を学んでいないように見える。 さらに、同席したセブン&アイ・HD執行役員の清水健・デジタル戦略部シニアオフィサーは、不正利用について謝罪したものの、「(サービス開始前に)セキュリティー審査をしたが、脆弱性は確認されなかった」と繰り返すなど、当事者意識がまるで感じられない姿勢を見せた。 そもそもリアルのコンビニ店舗では“業界最強”を誇るセブンだが、インターネット戦略では迷走を繰り返してきた経緯がある。 2015年にスタートしたインターネットショッピングサイト「オムニセブン」は、アマゾンや楽天などすでにECの巨人が市場に浸透した後の進出となり、品揃えの不十分さもあって拡大しなかった。 そこで戦略を切り替え、コンビニ店舗で使えるスマートフォンアプリ「セブンアプリ」を18年6月にリリース。利用者に割引クーポンを送るなどのメリットを付与し、ダウンロード数は1000万を超えた。 だが、同年に小売店の店頭を席巻したのは、前出のPayPayや、LINEの「LINE Pay」などIT大手のキャッシュレス決済サービスだった。業界2位のファミリーマートやローソンは、いち早くこれらのサービスを店頭で使える態勢を整えた。 だがセブンは、これらの利用開始がようやく今月と出遅れたうえに、ようやく独自開発の7Payのスタートにこぎつけたが、いきなり大きくつまずいたわけだ』、「小林強社長が「二段階認証?」と聞き返した」、のもさることながら、「清水健・デジタル戦略部シニアオフィサーは・・・「(サービス開始前に)セキュリティー審査をしたが、脆弱性は確認されなかった」、との言い訳には絶句した。審査のいい加減さを自ら暴露しただけだ。
・『コンビニ創業の成功体験に自信 IT人材が払底  セブンの今回の失態は、長くこだわってきた「自前主義」が、専門外のITの世界で通用しなかったことが大きい。 なぜ、セブンはそこまで自前主義にこだわるのか。総合スーパーのイトーヨーカ堂などを擁するグループ内で圧倒的な力を持つのは、国内コンビニを展開するセブン-イレブン・ジャパンだ。日本独自のコンビニというビジネスモデルを創り上げたのが彼らであることは間違いない。 ところが最近は、人手不足や過剰出店に苦しむフランチャイズ加盟店との間で、営業時間や粗利の分配比率をめぐって対立し、経済産業省や公正取引委員会が是正に乗り出すほどの社会問題となっている。 にもかかわらず自ら抜本的な見直しに踏み込めないのは、自前主義によって、国内コンビニ業界で王者の座を築いた成功体験への、自信とこだわりが強すぎるからだと指摘されている。 コンビニ業界2位のファミリーマートも、7Payと同時に独自のキャッシュレス決済サービス「ファミペイ」をスタートさせた。ただし、こちらは貯まったポイントをNTTドコモの「dポイント」や、楽天ポイントと連携させるなど、セブンとは異なる「オープン主義」を掲げる。 さらにファミマでは、キャッシュレス事業を進めるにあたっても、購買情報などビッグデータの活用を重視する親会社の伊藤忠商事が人材を送り込むなどして深く関与している。ローソンも独自決済サービスこそ始めていないが、決済関連部門に親会社である三菱商事の人員が入っている。 その一方で、セブン&アイ・HDで重要なのはリアル店舗のコンビニ。商品開発、出店、オーナー対応といったコンビニ運営に関わる部署が花形で、前述のオムニセブンなどネット関係の部署は一段低く見られている。ITや決済関連の専門知識を持つ社員の数はそもそも少なく、人材が払底している。 記者会見で失態を曝した7Payの小林社長は、かつてセブン&アイ・HD取締役として「オムニチャネル推進室長」を務めたものの、鈴木敏文名誉顧問が追いやられたクーデターよりも前の15年5月に取締役を退任。グループ内の出世の“本流”から外れた人物と目されていた。 それに加えて、7Payには他の事業会社で問題を起こしたり、成果を上げられなかった社員が送り込まれたりするケースがある。こうした環境では社員のモチベーションも保てず、独自のキャッシュレス決済サービスを導入するのに十分な体制だったか疑問符がつく。 後発組にもかかわらず、利用者の「安心・安全」を守れなかった7pay。キャッシュレス決済そのものへの信頼を失墜させた責任はあまりに重い』、IT部門は社内データの分析が中心で、外部のネットワークの接続では全くノウハウがなかったのだろう。今朝の日経新聞によれば、営業時間短縮を訴えた加盟店が、日曜休業を申請、本部は今回も契約解除で脅しているようだ。セブン-イレブンは、組織としてまともに機能しなくなったようだ。

次に、経済評論家の加谷 珪一氏が7月9日付け現代ビジネスに寄稿した「「7pay」不正問題には、日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65747
・・・『満を持して投入したサービスが4日でダウン  セブン&アイ・ホールディングス傘下の決済サービス会社セブン・ペイは2019年7月4日、都内で記者会見を開き、同社のスマートホンフォン(スマホ)決済サービス「7pay(セブンペイ)」のアカウントが、第三者による不正アクセスを受けたと発表した。 7payは、スマホを利用したQRコード決済のサービスのひとつで、7月1日に事業をスタートしたばかりである。スマホにダウンロードしたアプリにクレジットカードなどからお金をチャージし、アプリが表示するバーコードを店員がスキャンすることで決済が完了する。 QRコード決済のサービスは、操作が簡便であることから、中国などを中心に爆発的に普及しており、国内でもソフトバンクグループのPayPayが100億円還元キャンペーンを実施するなどシェア争いが激化している。 7payは、QRコード決済としては後発だが、セブン-イレブンという巨大な店舗網を背景としたサービスであり、競合各社にとっては警戒すべき相手だったに違いない。だが、同社のサービスはわずか4日でハッキングされ、大半のサービスを停止せざるを得ない状況に追い込まれた。 セブン-イレブンの知名度が高いだけに社会に与えたインパクトも大きく、下手をするとQRコード決済そのものに冷や水を浴びせかねない状況だ。 これに加えて今回のトラブルでは、会見に臨んだ同社トップが、セキュリティについてほとんど知識を持っていないことが明らかになるなど、ずさんな経営体制も露呈している。 今回の不正アクセスの被害者は現時点で約900人、金額は約5500万円とされているが、今回の不正アクセスの原因はどこにあったのだろうか』、原因を解明してもらいたいところだ。
・『「2段階認証って何?」の衝撃  不正アクセスの詳細について会社側は完全に情報を開示していないので、現時点で明らかになっている情報をベースに考察すると、2段階認証と呼ばれる本人確認の仕組みを採用していなかったことと、パスワードを変更する際、登録したメールアドレス以外のアドレスでも手続きができるようになっていたことの2つが大きいと考えられる。 同社以外のQRコード決済サービスでは、本人確認に2段階認証の仕組みを導入している。最初に登録したスマホとは異なるスマホでログインするといった操作を行う場合、携帯電話のSMS(ショートメッセージサービス)にパスワードが送られ、それを入力しない限り次の操作に移ることができない。携帯電話そのものを盗まれない限り、簡単に第三者がアカウントを乗っ取ることはできない仕組みだ。 ところが7payでは、この仕組みが導入されていなかったことから、パスワードが破られてしまうと、第三者がアカウントを乗っ取ることができてしまう。 会見では、記者から「なぜ2段階認証の仕組みを採用しなかったのか」という質問が出たものの、同社トップが「2段階認証?…」と言葉に詰まる状況となり、逆に記者から2段階認証の仕組みを説明され、はじめてその概念を理解するという出来事があった。 これに加えて同社のサービスでは、パスワード失念などリセットが必要となった場合、あらかじめ登録しているメール・アドレスとは別のアドレスに手続きメールを送ることができる仕組みになっていた。同社は、セブン-イレブンやイトーヨーカドー、ネットショッピングのオムニ7などにおいて、多くの既存会員を擁している。各サービスに共通するIDも発効しているので、既存会員は当然、7payも使うことができる。 既存会員の中にはキャリアメール(NTTドコモなど通信会社が提供するメール)でID登録をした人も多く、格安SIMなどへの乗り換えによってキャリアメールが使えなくなっている可能性があることから、別のアドレスも使える仕様にしたという。 若年層でキャリアメールを使っている人はあまり見かけないが、セブンの場合、中高年以上の利用者も多く、キャリアメールでの登録が多かった可能性は高いだろう。だが、パスワードの変更手続きを登録メール以外でもできるような設定にしてしまえば、アカウント乗っ取りが多発するのは自明の理であり、これは明らかにサービスの設計ミスいってよい』、利便性を重視するの余り、セキュリティを疎かにするというのはお粗末過ぎる。
・『経営トップは技術に詳しい人であるべきか?  同社トップが2段階認証を知らなかったことについてはネットを中心に驚きの声が上がっている。2段階認証の仕組みは、セキュリティ分野における初歩の初歩の概念なので、いくら技術の専門家ではないとはいえ、決済サービスのトップがこれを知らなかったというのは、大きな問題といってよいだろう。 だが、技術に詳しい人をトップに据えればそれで問題が解決するのかというと話はそう単純ではない。これはトップが技術に詳しいかどうかということではなく、日本企業が抱えている深刻な経営問題と捉えた方がよい。 一般論として経営トップに立つ人は、自身が経営する企業の製品やサービスについて詳しく知っておく必要がある。だが、技術が細分化されていたり、経営領域が拡大すれば、当然、自身ではカバーできない部分も出てくる。 技術に詳しい人が必ずしも経営者としての適正(正しくは「適性」)を備えているとは限らないので、トップの人選にあたってもっとも重視されるべきなのは、やはり経営者としての能力であることは言うまでもない。 仮に技術に詳しくなくても、優秀な経営者であれば、自身が詳細な知識を持っていないことをすぐに認識するので、詳しい人間をスタッフとして近くに置くか、責任者として登用する形で、知識不足をカバーする体制が構築されるはずである。諸外国のIT企業トップの中にも、ITに詳しくないという人はそれなりにいるが、問題なく経営できている。 だが、人材の流動性が乏しく、年功序列を基本とする日本企業の場合、経営者としての適正(同上)がない人がトップに立つケースはザラにある。仮にトップにそれなりの見識があっても、年次の関係で自由に部下を配置できない、社内に専門的な人材がいないといった理由から、十分なサポート体制を構築できないことも多い。今回のケースがどちらに相当するのかはまだ分からないが、日本企業に顕著な問題である可能性は高いだろう』、確かにセブン-イレブンに止まらず、「日本企業に顕著な問題」なのかも知れない。
・『最終的にはすべてマネジメントの問題  今回のシステムを開発した企業名は明らかにされていないが、既存システムとの連携などを考えると、同社がこれまでシステム開発を依頼してきた複数の大手システム会社である可能性が高い。システム会社の技術力劣化を指摘する声もあるようだが、さすがに2段階認証の不採用や、登録メール以外でもパスワード変更ができる仕組みについて、その脆弱性を理解していなかったはずはない。 現場からは「この仕組みではセキュリティ上危険だ」という指摘が上がっていた可能性が高く、一方、営業サイドの人間からは、利用者の利便性を最優先する声が出たことも想像に難くない。利便性とセキュリティをめぐって論争になるのは悪いことではなく、最適なサービスにするための重要なステップともいえる。 むしろ、経営陣が保身ばかり考え、トラブルを避けたいという意向が強すぎると、某銀行のネットサービスのように、利用者にとって不便極まりないものが出来上がることにもなりかねない。 利便性とセキュリティとの間で対立が起こった時、最終的な決断を下すのは経営者の責務であり、このような場面でこそ経営者としての能力が問われることになる。結果的にこうした脆弱なシステムを作り上げてしまったのは、まさにセブン&アイ・ホールディングスのマネジメントの問題であると筆者は考えている』、その通りだ。

第三に、8月5日付けダイヤモンド・オンライン「セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/210786
・『不正利用問題に揺れたセブンペイが、9月末でのサービス終了を発表した。発覚直後の会見では、セキュリティー対策への認識の甘さが露呈したが、これを対岸の火事だと安心してはいられない。あらゆる業種・業態で、デジタル活用にはリスクがつきまとう。かつて東京地方裁判所・東京高等裁判所でIT専門の調停委員を務め、企業におけるデジタル活用やシステム開発の問題に詳しい、経済産業省CIO補佐官の細川義洋氏に“素人”でも気を付けなければならないIT開発の要点を聞いた』、ぴったりの専門家の言い分も参考になりそうだ。
・『セブンペイの開発ベンダーは訴えられたら負ける?  Q:セブンペイの不正利用問題では、同社のセキュリティーへの認識の甘さや対応の遅さなどが浮き彫りになりましたが、この件に関して率直なご意見をお聞かせください。 A:ダイヤモンド・オンラインの読者の方は多くがユーザー企業(事業会社)の立場かもしれません。ただ、今回の件を実際の開発を行うベンダーの視点からお話しすると、もしもセブンペイとベンダーが裁判になったら、ベンダーが負ける可能性が高いと思っています。 Q:なぜでしょうか。 A:平成21年に通販会社のウェブサイトからクレジットカード情報が盗まれるという事件があり、ユーザー企業はシステムを開発したベンダーと裁判になりました。このときの判決は、基本的な責任はベンダー側にあるというものでした。ユーザーの希望通りに開発したのに、何が悪かったのか。 システム開発においては、たとえユーザーから要望がなかったとしても、その専門家たるベンダーがシステムの危険性に気付いて、自分の判断でできるところは修正し、またはユーザー企業に必要な作業を提案したり、追加の見積もりを出したりする責任があります。これを一般に、ITベンダーの「専門家責任」といいます』、「ITベンダーの「専門家責任」」とは初耳だが、合理的な考え方だ。
・『先述の通販会社のウェブサイトは、閲覧者がデータベースを不正に操作できてしまう危険な構造になっていました。しかし、こうした構造を避けてセキュリティー対策を施しておくことは、当時のIT業界ではすでに常識でした。経済産業省やIPA(情報処理推進機構)から注意喚起も出ていましたし、同様の脆弱性が問題となって起きた事件もありました。専門家であるITベンダーは当然そうした常識を知っていたはずですから、ユーザーから要望や注意がなくても、改善策を自発的にやるか、提案をしなければならない。それを怠ったということで、本件はベンダー側の責任になりました。 Q:セブンペイでは、二段階認証を採用していなかった点が問題視されていました。 A:今の時代であれば当然、二段階認証を導入しておかなければいけません。たとえセブンペイ側から要望がなかったとしても、最低限、ベンダーは提案すべきです。実際の提案・開発段階でどのような事情があったのかはわかりませんが、今までのセキュリティーがらみの判決を鑑みると、訴訟になれば「ベンダーが悪い」となる可能性は大いにありますね』、なるほど。
・『“プロにお任せ”はNG! セブンペイに提案を受け入れる姿勢はあったか  逆に、ユーザー企業はこうした提案を引き出さなくてはなりません。つまり、引き出せなかったベンダーとの関係性に問題があるということ。ベンダーも人間です。お金が足りないからそこまでやりきれない、お客さんから要望がないからこれくらいでいいだろう、スケジュールに余裕がないから後回しにしよう…と考えたくもなります。 先ほど、ベンダーには専門家責任があると言いましたが、ベンダーがプロだからといって「任せておけばいい」というわけではありません。むしろ、ユーザー企業がベンダーに積極的に疑問をぶつけて、会話をリードしていかなければならないのです』、(ベンダーの提案を)「引き出せなかったベンダーとの関係性に問題がある」、というのは、驕り高ぶったセブン&アイでは、大いにありそうだ。
・『Q:ユーザー企業として、ベンダーと具体的にどのような対話をしていくべきなのでしょうか。 A:ベンダーに提案を依頼する前に、ユーザー企業内で「どんな心配事があるのか」を考えておくべきです。 まず、どこでどんな情報が発生して、どのようなやりとりを経て、最終的にどうなるのか、という情報の流れを図面にします。データフローとよばれるものです。この図ができたら、今度は自分が悪者になったつもりで、「どこが狙いやすいか」とか「どうやったらなりすませるか」を考えてみる。できればそれなりの技術的な知見を持った人も含めて、複数人でデータフローのあら探しをするのです。 Q:あら探しはユーザー企業内だけでやるべきなのですか。 A:「その情報がどれだけ大切なのか」を一番よくわかっているのが、ユーザー企業です。そのため、技術的な課題はさておき、まずはユーザー企業だけで好き勝手に妄想してみることが必要なのです。 その後、ベンダーに提案を依頼する前の段階でいろいろな心配事をベンダーにぶつけます。できれば、複数のベンダーと話をするのがいい。そこで、セキュリティーを含めてあらゆる心配事をさらに深掘りしていくのです。 また、実際の開発が始まってからは、「提案だけならいつでも受け取る」姿勢が重要です。例えば、開発中にセキュリティーの問題が見つかった場合。ベンダーから「追加の開発が必要だ」と言われたときに、「契約も結んだし、今さら何を言っている。そんなことできるわけない」と、聞く耳持たずではいけません。 やはり、ベンダーは日々ITの現場にいて、知見も蓄積されています。提案するのにも、理由があるはず。最終的にやるかどうかはユーザー企業内で判断すればいいですが、ユーザー企業はベンダーからの追加提案、追加見積もり、スケジュール変更などを「聞く姿勢」をしっかり示しておくべきです。そうすれば、おのずと必要な情報は引き出せてくると思います。 今回、セブンペイがベンダーとどのような関係を築いていたかは臆測の域を出ません。とはいえ、やはり二段階認証の話が開発中ずっと出なかったとは考えられない。ユーザー企業に必要なのは、専門的な知識よりも、謙虚で柔軟な姿勢なのだろうと思います』、「ユーザー企業に必要なのは、専門的な知識よりも、謙虚で柔軟な姿勢」、というのは、セブン&アイに最も欠けていたのだろう。
・『プロジェクトがもめて頓挫するのは同床異夢の組織である  Q:業種業態問わず、さまざまな企業でITプロジェクトが進んでいます。IT開発経験の少ない企業がつまずきやすいポイントは、どんなところでしょうか。 A:一番問題が起きるのは、要件定義(注:導入するシステムにどんな機能を持たせるのか、機能の範囲や性能などを決めておくこと)ですね。開発経験が少ない企業だと、この「要件定義をしなければいけないもの」に抜け漏れが出てしまうことがあります。 また、「この機能は必要かどうか」とか「いつまでに必要なのか」といった意思決定がスムーズにできないことも多いです。システム担当者がやりたいことと、実際にシステムを使うエンドユーザー部門の意見が食い違ってしまう。それをまとめられる人がいないので、上層部に判断を委ねることになり、余計に時間がかかる…ということが起こります。 Q:システム利用者が多くの部門に及ぶと、利害関係が生じてプロジェクトが進まないという話はよく聞きます A:プロジェクト成功に向けてうまく動けていない組織は、「このシステムができたら会社がもうかる」「うちの部署がこう変わる」といった「デジタル化したときの夢」を共有できていません。同床異夢だから、実現すべき姿にズレが生じてしまうのです』、一般論としては分かるが、セブン&アイに当てはまるのかはまだ情報不足だ。
・『開発途中で、「うちの部署にこんなデメリットがあるなんて知らなかった!」というクレームが入るのはよくある話。開発に入る前に、関係者を集めて具体的な業務とメリット・デメリットをみんなで語り合い、模造紙やホワイトボードにまとめるなどして、イメージをビジュアル的に共有することがプロジェクトの第一歩です。この段階で、プロジェクトによって「損をする部門」があるのであれば、会社全体の利益と照らし合わせたうえで、事前に対策を考えておくべきです。 多くの人が関わるプロジェクトにおいて、現場のリーダーには、熱意とイメージ力、そして議論をファシリテートする力が必要です。そして、そのリーダーにきちんと権限が与えられていること。現場に決定権がなければ、結局上層部にお伺いを立てなければならず、滞りが出てしまいます』、これも、セブン&アイに当てはまるのかはまだ情報不足だ。
・『ITを「本業」だと考えない企業にデジタル・トランスフォーメーションはできない  Q:著書『システムを「外注」するときに読む本』の出版から2年がたちました。企業を取り巻く環境も随分変わったと思いますが、最近気になる問題はありますか。 A:昨今のプロジェクトでは、AWS(アマゾン)やAzure(マイクロソフト)などのクラウドサービスを活用することが多くあります。クラウドサービスはそれぞれサービス内容が異なるので、できることとできないことに違いがあるのですが、これを正しく理解できていない。そのため、できると思っていたことが、いざ開発してみると実現できないということがあるのです。 しかも、クラウドサービス事業者はサービスを提供するだけで、それ以外の部分には責任を持ちません。ベンダーも自社の製品ではないため、必要な知識や検討事項に抜け漏れが出ることもあります。こうしたトラブルは今後増えていくでしょう。 対策として、ユーザー企業はクラウドサービス事業者が開催する研修に参加するなど、積極的に情報を収集すべきです。複数のクラウドサービスのサービス内容、セキュリティー、契約内容の比較検討をユーザー企業自身でやったほうがいい。うまくいかなくて、最終的に困るのは自分たちなのですから。 忙しい業務の合間を縫って勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、私は、ITに関する知識の習得は「本業」として考えるべきだと思います。デジタル・トランスフォーメーションでは、IT中心に仕事をしていくことになります。「ITはうちの専門分野ではない」「ITはスタッフ部門の仕事」という認識は改めなければなりません』、これはセブン&アイに当てはまりそうだ。
・『Q:「本業」として考えるには、具体的にどういう点を改善すべきですか。 A:例えば、ユーザー企業において、「IT部門で長年経験を積んだ人が出世しない」とか「ITの研修にお金がかけられない」というのはよくある話です。ITは動いて当たり前。動かないと非難されるけど、動いても褒められない。多くの企業で、システム部門の立場はそんなところでしょう。しかし、これではデジタル・トランスフォーメーションは成功しません。ITの成功を、本業と同様に評価する姿勢が必要です。 今は、部門横断的なデジタル活用をめざして、システム部門以外もITプロジェクトに参加するケースがあります。例えば、営業担当がITプロジェクトに週2回携わるとなったときに、「自分の営業成績が下がって困る」状況ではだめ。ITプロジェクトで出した成果も、その活動の割合に応じて人事考課できちんと加味してあげるべきです。 まずは、こうした人事の視点からITに関わることを評価する。これが関係者のやる気につながります。要件定義とか、セキュリティー対策とか、細かいことはプロジェクトメンバーのモチベーションあってのことです』、専門家だけあって、一般論が多いが、セブン&アイでのシステム部門の軽視は、セブンペイの社長に如実に表れているようだ。

第四に、8月20日付けダイヤモンド・オンライン「7pay大失敗に見る、セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212109
・『コンビニエンスストア業界の王者が鳴り物入りで始めたキャッシュレス決済サービス「セブンペイ」は、3カ月でお蔵入りに。後手に回る対応や社内の混乱から、「セブン帝国」の強みである結束力に亀裂が生じていることが伝わってくる。 「記者会見の動画中継を見ていて、思わずズッコケた」──。セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、「セブンペイ」の中止を発表した8月1日のそれだ。たった3カ月でサービス終了という失態に、ある関係者は言葉を失った。 セブン独自のスマートフォンによるキャッシュレス決済サービスは、7月1日の開始直後にアカウントの乗っ取りによる不正利用が発覚。「2段階認証」がなされていないなど、セキュリティー上の不備が次々と指摘され、9月末での中止を余儀なくされた。 HD傘下の運営会社であるセブン・ペイの奥田裕康取締役営業部長は、「開発段階では2段階認証を想定していたが、使用感を考慮して“入り口”の敷居を低くした」と見通しの甘さを釈明した。 経済産業省や民間企業などで構成する一般社団法人キャッシュレス推進協議会のガイドラインでは、2段階認証を求めている。そして、協議会の理事には、セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の古屋一樹会長が就任している他、会員企業にはSEJやセブン・ペイも名を連ねる。前出の関係者は、「協議会の会合には各社の担当者が出席していた。一体何を聞いていたのか」とあきれ顔だ。 不正利用の原因については、グループナンバー2の後藤克弘HD副社長をトップとした、「セキュリティ対策プロジェクト」が調査を続けている。だが、調査報告書は「セキュリティー上の理由」によって外部に公表しない方針だ。過去に個人情報の漏えいを起こしたベネッセHDや日本テレビ放送網は、同様の報告書を公表しているにもかかわらず、である。 セブンペイ終了後も、同じIDとパスワードを用いたインターネット通販サイト「オムニセブン」や、クーポンがたまる「セブンアプリ」はサービスを続ける。セブン側は、IDとパスワードを初期化したことなどから、「セブンペイ以外のサービスはセキュリティー上の問題はない」と主張。これらのサービスに登録された個人情報の「明確な漏洩の痕跡は認められない」との見解を示した。 しかし、国際大学GLOCOM客員研究員の楠正憲氏は、「調査報告書がセキュリティーを理由に公表できないということは、まだ欠陥が残った状態だと思われても仕方がない」と指摘。個人情報についても、「従来使われていたIDが攻撃対象となっており、オムニセブンから相応の流出が起きているのではないか」との見方を示す』、「開発段階では2段階認証を想定していたが、使用感を考慮して“入り口”の敷居を低くした」との奥田裕康取締役営業部長の発言は、セブンペイ社長が2段階認証を知らなかったことから、疑わしい。センブン&アイも参加している「キャッシュレス推進協議会のガイドラインでは、2段階認証を求めている」にも拘らず、セブンペイ社長は知らなかったというのは、お粗末過ぎる。
・『社内ノウハウ得られず欠陥だらけで実用化 コンビニ事業も逆風に  なぜ、ここまで欠陥だらけのセブンペイが実用化されたのか。 運営会社のセブン・ペイには、ファミリーマートのキャッシュレス決済サービス「ファミペイ」が始まる7月に間に合わせなければという焦りがあった。加えて、決済関連のノウハウを有するセブン銀行や電子マネー「nanaco」の担当部署から、十分な協力が得られなかった。さらに、システム構築を請け負ったITベンダーが複数社にまたがっており、責任を持って全体最適の実現を目指す体制でなかったことも影響した。 セブンでは、グループの屋台骨である国内コンビニ事業において今年2月、本部と加盟店との対立が表面化。24時間営業や粗利の分配を巡る不公平さが強い批判を浴び、経産省や公正取引委員会が是正に乗り出している。 こちらを取り仕切るSEJの関係者に言わせれば、セブンペイ問題は、「あれは、HDがやったこと」と、ひとごとの姿勢だ。 セブンペイの火の粉を払おうとするSEJ内部では、24時間営業を巡る社内の足の引っ張り合いが目下の関心事だ。永松文彦社長は、希望する加盟店に時短営業を認めるとアナウンス。それにもかかわらず、時短営業を阻止しようと加盟店に圧力をかける本部社員の動きを上層部が抑え切れない。 このように、結束力が武器だったはずのグループ内は、そこかしこで反目、分裂の様相を呈しており、収拾がつかない。鈴木敏文HD名誉顧問の会長時代は、良くも悪くも持ち前の“徹底力”でグループをけん引していた。だが井阪隆一HD社長の体制となってからは、グループや加盟店に従来たまっていた不満や不均衡が一気に噴き出しているように見える。 不振の百貨店や総合スーパー事業のリストラも焦眉の急だが、「腹をくくって改革を進められる人物が、今のセブン経営陣にはいない。その後継となり得る人材も見当たらない」(ある小売り大手幹部)。 国内コンビニ事業で盤石のシェアを築き、グループ売上高12兆円と「セブン帝国」と呼ばれる巨大企業に成長したセブン&アイ・HD。噴出する諸問題への後手に回る対応は、グループの強固な結束力の崩壊の予兆を感じさせる』、前述のように、今日、新に「日曜休業」問題までが噴出、本部は今回も契約解除で脅しているようだ。あちこちで噴出している「グループの強固な結束力の崩壊の予兆」に対して、如何に対応してゆくか、リーダシップが問われているようだ。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 加谷 珪一 7pay不正利用 (7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」、「7pay」不正問題には 日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ、セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴、7pay大失敗に見る セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂) 7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」」 たった4日で900人、5500万円の被害 「二段階認証?」と聞き返した7Pay運営会社トップ セブンは、これらの利用開始がようやく今月と出遅れたうえに、ようやく独自開発の7Payのスタートにこぎつけたが、いきなり大きくつまずいた コンビニ創業の成功体験に自信 IT人材が払底 後発組にもかかわらず、利用者の「安心・安全」を守れなかった7pay。キャッシュレス決済そのものへの信頼を失墜させた責任はあまりに重い 日曜休業を申請 「「7pay」不正問題には、日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ」 「2段階認証って何?」の衝撃 経営トップは技術に詳しい人であるべきか? 日本企業が抱えている深刻な経営問題 トップの人選にあたってもっとも重視されるべきなのは、やはり経営者としての能力であることは言うまでもない。 仮に技術に詳しくなくても、優秀な経営者であれば、自身が詳細な知識を持っていないことをすぐに認識するので、詳しい人間をスタッフとして近くに置くか、責任者として登用する形で、知識不足をカバーする体制が構築されるはずである。諸外国のIT企業トップの中にも、ITに詳しくないという人はそれなりにいるが、問題なく経営できている 日本企業に顕著な問題である可能性 最終的にはすべてマネジメントの問題 「セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴」 経済産業省CIO補佐官の細川義洋氏 “素人”でも気を付けなければならないIT開発の要点 セブンペイの開発ベンダーは訴えられたら負ける? ITベンダーの「専門家責任」 “プロにお任せ”はNG! ベンダーの提案を)「引き出せなかったベンダーとの関係性に問題がある プロジェクトがもめて頓挫するのは同床異夢の組織である ITを「本業」だと考えない企業にデジタル・トランスフォーメーションはできない 「ITはうちの専門分野ではない」「ITはスタッフ部門の仕事」という認識は改めなければなりません 「7pay大失敗に見る、セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂」 キャッシュレス推進協議会のガイドラインでは、2段階認証を求めている 協議会の理事には、セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の古屋一樹会長が就任している他、会員企業にはSEJやセブン・ペイも名を連ねる 調査報告書がセキュリティーを理由に公表できないということは、まだ欠陥が残った状態だと思われても仕方がない 社内ノウハウ得られず欠陥だらけで実用化 コンビニ事業も逆風に 噴出する諸問題への後手に回る対応は、グループの強固な結束力の崩壊の予兆を感じさせる
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人生論(その3)(『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談:(前編)オダジマ 入院までの顛末をかく語りき、(中編)五十路は「ラストシーン」に向かい合うお年ごろ、(後編)五十路にして悟る。「嗚呼 人間至る所猿山あり」) [人生]

人生論については、1月3日に取上げた。今日は、(その3)(『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談:(前編)オダジマ 入院までの顛末をかく語りき、(中編)五十路は「ラストシーン」に向かい合うお年ごろ、(後編)五十路にして悟る。「嗚呼 人間至る所猿山あり」)である。

先ずは、7月30日付け日経ビジネスオンラインが掲載したコラムニストの小田嶋 隆氏、電通出身のクリエイティブ・ディレクターの岡康道氏との対談「オダジマ、入院までの顛末をかく語りき『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談(前編)」を紹介しよう(なお、Qは進行役のジャーナリストの清野由美氏)
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00077/072300001/?P=1
・『いつも御贔屓にありがとうございます。編集Yでございます。 2018年、「日経ビジネスオンライン」から「日経ビジネス電子版」への移行にともない、11年の長きにわたって続いた連載対談「人生の諸問題」は、惜しまれつつ幕を閉じました。 が、しかし。 このたび、みなさまからの熱いご要望に応え、めでたく単行本化とあいなりました。前3冊は講談社様にお世話になりましたが、7年のブランクを経て、今回は晴れて弊社からの刊行です。 私を含めまして、人生には、特に五十路、50代を迎えますと、「こんなはずじゃなかった」的な問題、たとえば「思わぬ入院」に「あいつの出世」などなど、人生の諸問題に遭遇し、煩悶し、どうにも眠れない……という夜がございます。 そんなときに、前向きになれとおしりをたたいてくれる本もよございますが、開いたところからぱらぱらっと読んで、「ばかなことを言ってるな、はっはっは」と、気持ちよく眠れる。手前味噌ではありますが、本書はそのような貴重な本じゃないかな、そうなるといいな、と思います。 ということで、刊行記念の特別対談「人生の諸問題 令和リターンズ」をしばらくの間お届けします。ごゆるりとお楽しみくださいませ。進行役はいつものとおり、清野由美さんです。 小田嶋:今回の、この単行本『人生の諸問題 五十路越え』は、装丁のカラーが、ちょっとこう、還暦の赤い色を意識しているみたいで。 Q:トリスバーのような、若干レトロな味わいです。 岡:でも、このタイトルだと、僕たちが53~54歳のように思われない? 本当は3年前に還暦を越えたんだけど。 小田嶋:まあ、そうは言っても、これは主に俺たちが50代のときに、しゃべっているから』、「人生の諸問題に遭遇し、煩悶し、どうにも眠れない……という夜がございます。 そんなときに、前向きになれとおしりをたたいてくれる本もよございますが、開いたところからぱらぱらっと読んで、「ばかなことを言ってるな、はっはっは」と、気持ちよく眠れる。手前味噌ではありますが、本書はそのような貴重な本じゃないかな」、というのは面白い企画だ。
・『お尻をひっぱたかない生き方指南本(?!)  岡:そうね。自分で振り返ってみると、内容はいいよ、これはなかなか。 小田嶋:なかなかね。 岡:でも、売れるとは思えない。 Q:しょっぱなから、何を弱気なこと、言っているんですか。 小田嶋:いや、でも、最近は曽野綾子さんとか、伊集院静さんとか、年を取った時の生き方本みたいなものが、新しい売れ筋ジャンルとして書店のコーナーに現出しているので。ほら、樹木希林さんとか。 岡:希林さんは、亡くなってしまったじゃないか。 小田嶋:希林さんはお亡くなりになって、もともと引っ張りだこだったところ、需要がさらに高まったけれど、年を取って、何がめでたいと言ってみたり、男の流儀と言ってみたりと、私らの尻をひっぱたく本が結構出ていますよね。それらが売れるということは、俺らの、この本の、まるで尻をひっぱたかない価値を分かってくれる人というのは、かなり珍しいというか。 Q:そこは、なかなか珍しいし、難しいです、はい。 岡:難しいよね。これが養老孟司さんぐらい有名な学者とかだったら、何を言ってもアリになっちゃうんだけどね』、「養老孟司さんぐらい有名な学者とかだったら、何を言ってもアリになっちゃうんだけどね」、というのは確かにその通りなのだろう。
・『「いい酒を家飲みしたような読後感」  小田嶋:養老孟司さんのポジションだと、確かにいいよね。 岡:だって養老孟司さんのいる場所は、僕たちが攻めている場所とわりと似ているよ。 Q:タバコは体にいい、などという岡康道学説の関連ですか? 岡:そう。ただ僕たちは、攻めているのか、たたずんでいるのか分からないんだけど。 小田嶋:我々はまだ養老先生の、あの確固たる位置がないから、たばこを吸うと長生きするよ、禁煙は害だよ、なんて言えない。 岡:正直、言えない、言えない。ただ、この間、ある作家の人が、既刊本(『人生2割がちょうどいい』『ガラパゴスでいいじゃない』『いつだって僕たちは途上にいる』いずれも講談社刊)を、どこかで絶賛してくれていたよ。「いい酒を家で飲んだ後のような読後感」って。だから今回は、ウシオ先生のところにも1冊送るとするか。 Q:ウシオ先生は『人生2割がちょうどいい』に登場される、お二人の高校時代の恩師ですね。 小田嶋:そうだね、ウシオ先生には送ってもいいかもしれない。 Q:テストで零点を取り続けていた、やさぐれ高校生の小田嶋さんを、見捨てずにいてくださった先生は、今、おいくつぐらいですか。 小田嶋:長嶋茂雄と一緒で、当時で38~39歳。だから、今は83歳ぐらいですね。 岡:東大を出て小石川高校で教鞭を執っておられたんだけど、今から思うと、当時はすごく若かったんだね。数年前に高校を卒業して初めてのクラス会があった時に、18歳から40年ぶりぐらいに、ウシオ先生とは再会したんだよね。 小田嶋:その時に先生は「片耳の聞こえが悪いんだ」と言っておられたんですよ。あの先生は60歳を過ぎたくらいの時に、地下鉄駅で自分の靴ひもを踏んで、階段から転げ落ちたという過去を持っている。 岡:そんな大変な目に遭っていたのか。 小田嶋:だから、「きみたち、靴はひものないものを履きたまえ」というのが先生の助言で。 岡:そのあたりが洒脱なんだよ、ウシオ先生は。 小田嶋:ただ、問題は靴ひもが、なぜほどけたか、ということで。ウシオ先生いわく、自分がこうなって利益を得る人間は妻しかいない。ゆえに妻のことを少し疑っている、と(笑)。 Q:うーん、その手があったか。いいトリックを聞きましたね。 岡:それだと、土曜ワイド劇場。 小田嶋:まあ、だから前に戻って、養老孟司先生だったら、何をおっしゃっても、それを押し通す力がすでにあるということですよ。 岡:だって、ずっと解剖をやっていた先生でしょ。それはまねできないですよ。 小田嶋:解剖と昆虫はやっておくものだよね。周囲を見ていると、昆虫人脈というのは、なかなか、あれはあれで、ばかにならないな、と最近思うようになって。  Q:岡さんは昆虫はいかがですか。 岡:昆虫? 全然だめ。 小田嶋:ところが昆虫をやっている同士は虫の話で分かり合えて、こいつはいいやつだみたいに、一挙に人間関係の壁を取ることができる。そういう趣味って、ほかにあんまりないのよ。 岡:それって、野球とかサッカーとかの話じゃだめなのかな。 小田嶋:サッカーが好きだとか、音楽が好き、車とか鉄道が好きだとかいうのは、張り合っちゃって、あんまり打ち解けないでしょう。 岡:野球好きだと、「ほう、そう言うおまえは昭和47年の夏の甲子園を見たのか?」みたいな話になるな。 小田嶋:ただ、野球好きの不思議なところは、たとえば阪神ファンとカープファンは、試合で当たれば敵同士なんだけど、酒場で一緒になって、「あ、野球が好きなんですか」という展開になると、同じ野球好きとして全然話が通じ合うというところですよ。 岡:「巨人ファンです」と言われると、ちょっと壁ができちゃうんだけど、それ以外のファンって、広島にしても、横浜にしても、だらしなく負けていくチームがたくさんあるから、ファン同士が人間のある種の弱さのドラマに自分の弱さを投影して、意気投合できる。 小田嶋:野球ファンって敵チームのことをすごくよく知っているでしょう。「マエケンがいなくなって大変だよね」とかいう話をされると、「そうそう、そこはですね」ということで、話はいくらでもあるわけで。 岡:ダルの離脱に至っては、みんなが被害者になっちゃうから連帯が生じる(笑)。 小田嶋:ところがサッカーファンは、そこのところが案外かたくなで、ほかのチームのファンとは簡単に打ち解けないところが、ちょっとある。 岡:プロ野球はサッカーに比べて試合数が多いから、というところは一つあるんじゃないか。僕たち野球ファンは、勝ったり負けたりすることが日常化しているわけですよ。 小田嶋:あ、それは一つあるね。野球ファンは、試合の結果を1週間も引きずらないんだね。 岡:試合は毎日あるから、「あのゲームは忘れない」と思いながら、すぐ忘れて次に懸けてしまう。 小田嶋:どんどん話が流れるから、そこがいいんだね。なるほど、なるほど』、「サッカーが好きだとか、音楽が好き、車とか鉄道が好きだとかいうのは、張り合っちゃって、あんまり打ち解けないでしょう」、言われてみれば、その通りなのかも知れない。
・『オダジマ、“一丁目”を覗く  Q:と、雑談の流れはとめどがありませんが、さて、小田嶋さん。今回は「地獄の一丁目」に行ってきた話をぜひ。小田嶋さんが入院されたということで、みんなが心配をしていました。 小田嶋: そうですね。実はまだちゃんと一丁目から帰ってきているわけでもないんです。 Q:ことの発端はどういうことだったのですか。 小田嶋:そもそも、ある日、唐突に視野が狭くなったんです。 Q:ちょっと、それ、めっちゃ怖いじゃないですか。 小田嶋:ちょっと嫌だったけど、俺は深刻視していなかった。それで、「何か左上半分、3分の1が見えないぞ」というのをツイートして、そうしたら早速、「私はどこそこで医師をやっています」といった方たちから、「自分の身内だったら今すぐ救急車を呼びます」といった返信がだーっと届いて』、小田嶋氏ほどのツイッターには思わぬ効用があるようだ。
・『始まりは脳梗塞だった  岡:つまり、それは脳梗塞ですよ、と。 Q:典型的な症状なんですか。 小田嶋:わりとよくあることみたいですよ。 Q:気を付けましょう、みなさん! 岡:それって、「あれ、今、内角球が打てなかったな」とか、そんなこと? Q:だから、野球の試合に出る暇なんてないんです!! 小田嶋:内角、外角どちらの球も打てないだろうけど、視野を追っかけると、自分が注目しているところの少し左上ぐらいが見えない感じになるんですよ。要するに視野が欠落しているという。自分の手を差し出してみると、もちろん欠落部分は何も見えない。要するに、神経のすぐそばのところの脳細胞が壊れて、信号の伝達が阻害されていたわけです。 岡:それは回復するものなのか。 小田嶋:入院して1カ月後に視野検査というやつをやったら、ある程度回復したんだけど、少しは残っていました。もしかしたら、ずっと残るかもしれないけど、日常生活には影響のない程度の視野欠落だから、まあ問題はないというか。 Q:それでいったん退院されて、一同がほっとしていたところに、再入院の知らせが入ってきました。 小田嶋:最初は脳梗塞だったわけですが、さかのぼって言えば、なぜ脳梗塞になったのか、という因果があって。 Q:確かにそうですね。 岡:ここで僕が解説をしますと、小田嶋の場合は血小板が壊れちゃっていて、不必要なところで固まったり、大事なところで固まらなかったりという、厄介な症状が隠れていたわけです。 Q:あ、財前教授(※)の再来だ。※この意味は、単行本『人生の諸問題 五十路越え』215ページでどうぞ。小田嶋さんが自転車で転んで膝を骨折、入院の憂き目に遭っていたころのお話です。 小田嶋:要するに血液の疾患があって、血管の中に小さい血栓が山ほどできる、と。それができるおかげで、血液の中の凝固物質が浪費されちゃう。そこで浪費されているから、何か切れたとか、内出血があったときに血が止まらなくなって、それが危ないよ、というのが一つ。もう一つは、小さい血栓ができると、細い血管がそれで詰まる場合があるよ、と。それが脳だったり、腎臓だったりすると、脳のあたりは血管の一番集まっている部位だから、梗塞ができる場合があって危ないですよ、ということですね。 岡:そこから先は順序として、取りあえず全身を検査しよう、ということになるよね。 小田嶋:そうそう、それでずっと検査していたの。そうしたら、大腸も大丈夫、胃も大丈夫、じゃあ血液かな、というので、今も検査が続いている、ということです(注:鼎談収録は7月初旬)。 岡:小田嶋の場合、不思議なのは、自覚症状が何もないところなの。 小田嶋:去年の10月から、何となく体重が減ってきたぞという以外には、特に何もない』、「最初は脳梗塞だったわけですが、さかのぼって言えば、なぜ脳梗塞になったのか、という因果があって・・・小田嶋の場合は血小板が壊れちゃっていて、不必要なところで固まったり、大事なところで固まらなかったりという、厄介な症状が隠れていたわけです・・・不思議なのは、自覚症状が何もないところなの』、というのは、恐ろしいことだ。
・『今ならマージャンに勝てる!  Q:その場合、疲れやすいということはないんですか。 小田嶋:全然ないよね。 岡:だから、病気なのかな、それって。 小田嶋:今後は悪くなるのを待って、疾患名を確定しましょう、といった中ぶらりんの状態になっているんです。 岡:早く治してほしいんだよ。この状態だと、マージャンに誘いにくいじゃないか。 小田嶋:今、マージャンをやったら、たぶん強いと思うんだよね。 Q:何か妙な自信が。 岡:だって、自転車事故で膝をやった時の、小田嶋のあの異常な強さというのはね、あれは何かの磁場が狂ったようでしたよ。 Q:この辺も、お分かりになりづらいという読者の方がいらしたら、単行本でぜひ。入院すると雑念が薄くなって、脳が整うのでしょうかね。 岡:いや、小田嶋側の問題ではなくて、この状態だと、何となく小田嶋からは上がりにくいというのが、僕たちの方に出てくるんだよ。 Q:そちらでしたか。 岡:できることなら、ほかのやつから上がりたい。そういう気持ちをほかの3人が持っていたら、小田嶋はもう無敵ですよ。 小田嶋:ただ、再入院となった時は、結構あせったね。 Q:それはいったん奈落の底ですよね。 小田嶋:俺に限って、と、やっぱりちょっと思った。(次回に続きます)』、「今後は悪くなるのを待って、疾患名を確定しましょう、といった中ぶらりんの状態になっているんです」、には驚かされた。医学もまだまだのようだ。

次に、この続きを、8月6日付け日経ビジネスオンライン「五十路は「ラストシーン」に向かい合うお年ごろ 『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談(中編)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00077/072400006/?P=1
・『Q:前編は、小田嶋さんがのぞいてきた「地獄の一丁目」のお話をうかがいました。 小田嶋:まあ、別にまだ一丁目から帰ってきたわけじゃないんだけどね。 岡:でも、小田嶋は別に変わらなかった。深刻になってもいなかった。むしろ面白がっているような感触もあった。 小田嶋:だって、表面的にはどこも痛くないから、結局、あんまり深刻に考えようがないのよ。 岡:何しろ自覚症状がないんだもんね。 小田嶋:最初の脳梗塞では、入院当日と翌日に、言語療法士および運動療法士といったリハビリスタッフの方たちが来て、俺はテストを受けたの。「100から7を引いてください、そこからまた7を引いてください」って。 Q:ひー、そんなの、できないっ。 岡:今からできないと言って、どうするの。僕もできないけど。 小田嶋:リハビリテストの定番なんだけど、「自動車」と「おでん」と「大根」とか3つの単語を初めに覚えてください、と。で、「覚えましたね」と言われた後に、「100から7を引いてください」「また7を引いてください」が来て、それで40いくつまで行ったぐらいの時に、「さっきの3つの単語は何でしたか?」と聞かれるの。まあ、子供の時にやった知能テストみたいなものですね。 岡:嫌だな、それは。 小田嶋:鳥とネズミと何とかが4ついて、仲間外れはどれですか? みたいなものとか、パズルになっていて、はまらないのはどれですか? みたいなやつ。いい大人にこれをやらせるのか、と、ちょっと屈辱を感じつつやって、自分ではそこそこできたつもりでいたんだけど、後で聞いたら当日のスコアは結構やばかったみたいで。 Q:そこらへんも、自覚症状はなかったんですね。 小田嶋:自分じゃ全然自覚がなかったけど、入院当日、翌日、最終日で比べると、当初の数字はやばかったらしいの。 Q:うーむ。 編集Y:介護関連の連載をやっていますと、よくコメント欄に「自分は認知症になったら、人に迷惑をかけたくないから自死する」ということを書き込む方がいるんですが……。 Q:わっ、唐突に何を?』、「リハビリテスト」、「いい大人にこれをやらせるのか、と、ちょっと屈辱を感じつつやって」、というのは健康ではあっても高齢化している自分にも出来る自信がない。
・『編集Y:最近、このお話を日本でも指折りの認知症の研究者の方にお聞きしたら「そもそも、症状の進行を自分で把握できる方はめったにいません。実際にはまず無理でしょう」とおっしゃっていました。 小田嶋:そうそう。自分がどれくらいやばいかというのは、なかなか自分では分からないんだよ。 編集Y:その先生によると、「どこからが認知症なのか」という区分も実は曖昧で、「研究者として、今の自分自身を見れば、ああ、俺はゆっくりと認知症になりつつあるな、と考えることもできる」のだそうです。 小田嶋:うーむ。 Q:健康と病気の区分も実はあやふやなものかもしれません。 編集Y:そのグレーゾーンが年とともに広がってくる、ってことでしょうかね。 岡:僕は時々、病院に小田嶋を訪ねて、経過を見ていたんだけど、同世代、しかも昔から知っているやつが入院しているとなると、結構自分の方が調子悪くなるんだよね。 Q:ああ、それは分かる気がします。身につまされるお話ですね』、「「どこからが認知症なのか」という区分も実は曖昧で、「研究者として、今の自分自身を見れば、ああ、俺はゆっくりと認知症になりつつあるな、と考えることもできる」のだそうです・・・健康と病気の区分も実はあやふやなものかもしれません」、確かにその通りなのかも知れない。
・『「そういう夢」を持って生きねば  岡:小田嶋の病室を訪ねる度に、俺も調子が悪いな……というふうに、だんだん気分がうつってきて。そういうことを感じたのと、あと、全体として思ったのは、もう60歳を過ぎたら、誰でも死はそれほど遠くのものではないな、ということ。 小田嶋:俺は死ぬなんてことはあんまり考えなかったけど、これが厄介な病気だった場合に、仕事を休まなきゃいけないとすると、ちょっと入院費も大変だなとか、入院費が大変なのは何とかなるとして、仮にいかんことになった時に、もしかするとこの出版界の常識としては、かえって需要が高まるという変な話になろうか、ということはちょっと意識したよね。 Q:うーん、そこに行きましたか。 岡:そんなことを意識して、どうするの。 小田嶋:だから樹木希林さんなんかのベストセラーも、まさにそういうタイミングで、その辺のことは、この先ちょっと考えなきゃいけないな、とは思いましたね。 Q:小田嶋隆、遺産をなす、みたいなことですか。 小田嶋:そうそう、ゴッホじゃないけど、あの人も生きているうちはあんまり大したことはなかった。でも、死んだら急に「ゴッホ、いたよね」みたいなことになり、俺にしても、そういうことに夢を持っていかなきゃいけない、というのがあった。 Q:いやいやいや、これ、今、すごい話になっちゃいましたね。人生の諸問題がついに終活に及んできました。岡さんの方は大丈夫ですか。 岡:僕は昨年の秋に不整脈が起きました』、「死んだら急に「ゴッホ、いたよね」みたいなことになり、俺にしても、そういうことに夢を持っていかなきゃいけない、というのがあった」、コラムニストのように作品を残している人ならではの捉え方のようだ。
・『五十路はどんどん病気に詳しくなる  Q:それはそれで大変でしたね。 岡:車で出かけていた時だったので、このままでは運転が危ないな、というか、これが狭心症の前ぶれだったらやばいぞ、と思って、病院に直行しましたけどね。 小田嶋:その場合はどうなるの? いきなり倒れるとか、変なことが起きるのか。 岡:僕の場合は幸い狭心症じゃなくて、ただの不整脈だったんだけど。不整脈は心臓が規則的に脈打たないということだから、倒れはしないんだけど、しゃがみたいぐらいの感じにはなる。その時は、病院で薬を飲んで、じっとしていたら収まったんだけど、ともかくそういう持病があるということが分かったね。 小田嶋:不整脈というのは、やばい方面と大丈夫な方面とに分かれているんですか。 岡:不整脈は、言ってみれば、ただの電気的な乱れだから、それ自体では人は死なないんだって。ただ不整脈っていうくらいだから、脈が一瞬、不整になって止まる感じがするんだよ。心臓の鼓動がずれるというか、それが、とても気持ち悪いの。 小田嶋:それで血栓ができてしまうということにはならないのかい? 岡:血栓とは別なんだよ。といっても、血栓だって、この年になったら、すでにあるかもしれない。ただし通常では、血栓は多少あっても、別にどうってことはないといいます。よくないのは、不整脈で一瞬止まった心臓は、次に脈打つ時には、遅れを取り戻すために、何倍かの強さで打つ。その時に費やされる何倍かのエネルギーが、普通では飛ぶはずのない血栓を飛ばしちゃって、それが脳とか心臓とかに行っちゃうことがあるという。 Q:それは不安ですね。 岡:不整脈は起きない方がもちろんいいんですよ。ただ、起きても、不整脈では死なない。死なないけれども、リスクが高まる。それは血栓が飛ぶリスクである、と、こういう整理ができる。 Q:そうやって、みんな、どんどん病気に詳しくなっていきますね。 小田嶋:それは薬で何とかなるものなの? 岡:不整脈に薬はないんだけど、万一、狭心症になった場合用に、舌下に置くニトログリセリンは渡されている。まあ、病気ではないけれど、「あなたはいつ不整脈が起きるか、もはや分からないよ」という状態は、結構苦しいんだよね。実際、ちゃんと脈が打たなくなると、メンタルで慌てちゃう。これはもう俺の持病なんだ、という精神的な設定をきちんと行って、普段から薬を携行するようにはしている。 Q:そういうこともあり、小田嶋さんのご入院に際して、いつにない感情移入があったんですね。 岡:それはあったかもしれないですね』、「五十路はどんどん病気に詳しくなる」、確かに友人たちと飲む際の話題も病気のことが多くなった。
・『欠落こそが、才能だ  Q:で、不整脈についても、いつものように、ご自分の症状を周りに広く告知されて。 岡:そんなこと、していませんよ。するわけがないじゃないですか。 小田嶋:おまえは昔、自分の左脳には、あるべきはずの太い血管がないんだよ、という話を、ぐいぐいとしていなかった? それで、何か交通事故とかに遭って、意識不明になった時に、医者が「あ、左脳の血管がない」と驚いて、バイパス手術を施されてしまう恐れがあるから、その時は俺たちが止めるように、とか何とか、みんなにがーがーと言い置いていたよね。*この連載のスタート時の、懐かしいエピソードです。詳細は『人生2割がちょうどいい』(講談社)36ページでどうぞ。 岡:よく覚えているね。 Q:それを聞いて、小田嶋さんが「価値とは欠如である」というようなサルトルの言葉を引用されていました。 小田嶋:岡の左脳に血管がない、ということは、それは俺としては、すごく腑に落ちる話だった。左脳って論理をつかさどる方でしょ。だから。 岡:失礼な。細い血管はいっぱいあるぞ。ただ、メインの太い血管がない、というだけで。 小田嶋:そこで太いメインの血管に代わって、細い血管が独自の不思議な伝達発信ネットワークを張り巡らせちゃっている、というところが、いかにも岡の脳なんだよ。 Q:オンリーワンの才能の原点は、脳の異常にあった、と。 岡:そういうことを小田嶋には言われたくない、というのはあるんだけれど、でも、もう60歳過ぎたら、それぞれにいろいろ何かあるんじゃないの。調べれば、ぽろぽろ出てくるよ、みんな。 小田嶋:それはありますよ。 Q:私は先日、人生で初めて寝起きにベッドから落ち、気を失って、自分の運動能力の衰えに恐怖を感じました。 小田嶋:うーん。清野さんもいい年になってきましたね。 Q:はい、五十路の最終コーナーです。 岡:えー、ということは、僕たち、いったい何年、こうやって話しているの? Q:干支一回り分です。この対談の初回は2007年でした。 岡:ということは、みんな、それぞれが死に近づいていることだけは確かなんだよ。 小田嶋:嫌なことだけど、それは真実ですね。 岡:唯一の真実。それで今回、小田嶋の入院にあたり、僕が小田嶋から学んだことがある』、「左脳には、あるべきはずの太い血管がないんだ」、「太いメインの血管に代わって、細い血管が独自の不思議な伝達発信ネットワークを張り巡らせちゃっている」、こんなケースもあるというのは、驚かされた。
・『軽~く処さないと、やっていられない  Q:何でしょう? 岡:「なるほど、あのぐらい軽く処さないと、やっていけないな」というスタンスでした。 Q:確かに今回、小田嶋さんは他人に対するように、自分に対して客観的でしたね。 岡:自分の死に対する恐れは軽く処理する。そのぐらいがちょうどいいな、と。 Q:人生2割がちょうどよく、さらに死は軽く処すのがちょうどいい、と。 岡:そう、軽ーく、ね。だって、重く行ったらどうしようもない。そっちを突き詰めると、最終的に、だったら自分で死のうか、というところに行ってしまう。 小田嶋:実際、60歳になるともう、共通の知り合いがそれで何人か死んでいるし。 岡:だから、俺は逆に考えよう、と。 小田嶋:そのあたりは、無意識に刷り込んじゃった方がいいよね。 岡:その意味で、小田嶋が入院してくれたおかげで、いいことを知ったぞ、という思いがあった。親が死んだ時は、当然よく分からなかったけれど、同世代なら――特に小田嶋なら考えていることは、おおよそ分かるでしょう。 小田嶋:まあ、こういう機会がないと、処し方なんて分からないね。 編集Y:ここで編集者として一言コメントを差し挟ませていただくと、お見舞いにうかがって、何を話していいのやらどぎまぎする私に小田嶋さんは「病状によっては、まとまった時間が手に入るわけだから、仮によろしくない事態になっても、その過程できちんと1冊分を書く時間ができるね」と、おっしゃいました。私はそのプロフェッショナルな言葉にいたく感動しました。 Q:じゃあ、小田嶋さんのサバイバー日記は、日経BPさんということで、よろしくね。 編集Y:光栄です。 小田嶋:いや、そんな軽く処理されても困るんですけど。 岡:まあ小田嶋は、ここで笑って会話ができるぐらい客観的だった、ということです。 Q:「日経ビジネス電子版」の週刊連載もほとんど落とさずに続けられました。 編集Y:はい、クオリティーもまったくいつも通りに。ありがとうございます。 小田嶋:入院中に執筆環境が整うというのは、前に竹橋で足を折って、12週間入院した時に実感していたことですよ。今回はPET検査、エコー、MRI、CT、内視鏡って、検査のオンパレードで多忙だったわけですけど、文章でも書いていないと気持ちが紛れなくて、だからちょうどよかった。 Q:コラムニストになるべくして生まれてきた「ナチュラル・ボーン・コラムニスト・オダジマ」ですね。(次回に続きます)』、「ナチュラル・ボーン・コラムニスト・オダジマ」とは言い得て妙だ。

第三に、上記の続きを、8月20日付け日経ビジネスオンライン「五十路にして悟る。「嗚呼、人間至る所猿山あり」『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談(後編)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00077/072400007/?P=1
・『岡:ところで小田嶋は入院の検査の時に、多幸感を味わうことはできた? Q:は? 小田嶋:何、それ? 岡:僕、人間ドックで大腸の内視鏡検査を定期的に受けているんだけど、あの検査の時は麻酔ですごく幸せになるの。僕の場合、体が大きいから1人前だと全然効かなくて、めちゃくちゃ苦しい。だから2人分にしてもらって苦痛をやわらげるんだけど、そうなると今度はめちゃくちゃな幸せが襲ってくるの。だいたいみんな、検査の時は寝ちゃうと言うんだけど、寝たらもったいないから、必死で起きているわけ。それで、もうちょっと増やしてもらってもいいな、なんて思っていたりしたんだけど、それ以上増やすと心停止するかもしれませんよ、ということで。 小田嶋:それって、いわゆるマイケル・ジャクソンの「あれ」じゃないのか。 岡:そうね。確かにあれだね。マイケル・ジャクソンはお金持ちだったから、医師を雇ってどんどん買えた。買える人は、そうやって、どんどん打っちゃって、死に至っちゃう。だから、やばい。 小田嶋:完全にプロポフォール(マイケルさんの死因とされた強力な麻酔薬)じゃ……。 Q:その薬名で検索すると、「胃カメラ」で投与されるそれに依存して、不正に内視鏡検査を受け続け、逮捕された韓国の男の話が出てきます。2年で548回も内視鏡検査を受けていたそうです』、「プロポフォール」欲しさに、「2年で548回も内視鏡検査を受けていた」、信じられないような話だが、マイケル・ジャクソンも常用したのだから、余程、快感が味わえるのだろう。
・『「幸せはケミカルで手に入る」という恐ろしい真理  岡:僕も一時は、病院を転々とすれば、各回でこの幸せが味わえるんじゃないか、とも考えた。日本は法令によって、そういうことは厳格にできないようになっているんだけど、これを知って、小田嶋がアルコール依存症だったことも、少しは理解できる気持ちになった。 小田嶋:ただ、アルコールとタバコは、そっちの報酬系じゃないんだよ。体に取り入れることで、素晴らしく気分がよくなるわけじゃなくて、むしろ取らないことで気分が下がるという。 Q:やっぱり、小田嶋さんが言うと説得力がありますね。 小田嶋:ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンをモデルにした「ラブ&マーシー」という映画があって、彼が精神を病んだ時の話なんだけど、その時にかかった医者が精神科医で、そいつに薬で骨抜きにされた揚げ句に、財産を持っていかれの、出すレコードからスケジュールから全部管理されので、結局10年近く支配されていたのね。ある時、事務の女の子が、ウィルソンの身辺があまりにおかしいことに気付いて、その彼女の助けで医者を訴えて、ようやく世間に復帰できた、という話なんだよ。そう考えると医者って怖いよね。何でもできるんだもの。 岡:怖い。そんなに欲しいんだったら、うふふ……とか言われて量を3倍にされたらやばかった。 小田嶋:たとえ百害があっても、今、死ぬんじゃなくて、10年やっていたら死にますよ、ということだったら、やっちゃいますよ、人間は。 Q:ああ、ここでまた妙な説得力を出さないでください。 岡:まあ、僕の場合大腸カメラは2年に1度だし、胃カメラは1年に1度なんだけど、胃カメラの時の量は少ないから、どうってことはない。で、僕たちは、今回の本について、役に立つことを言わなきゃいけないんですよね。 Q:言ってくださるとありがたいんですけど、後編のこのタイミングで、唐突に思い出されても遅いですし、すでにずいぶん前から諦めていますので、別にいいですよ。 岡:あのですね、サラリーマンにとって一番つらいのは、50代なんですよ』、「アルコールとタバコは、そっち(プロポフォールなど)の報酬系じゃないんだよ。体に取り入れることで、素晴らしく気分がよくなるわけじゃなくて、むしろ取らないことで気分が下がるという」、さすがアル中で苦しんだだけあって、脳のメカニズムの違いまで説明するとは、さすがだ。
・『Q:あ、それは『人生の諸問題 五十路越え』で、すでに十分語っておられますので……。 岡:会社の中で、訳の分からないゲーム、ルールが分からない最終ゲームが始まって、なんだかよく分からないぞ、と、まごまごしているうちに勝ち負けが決まっていって……(と、進行役の清野の仕切りを意に介さないで話を続ける岡康道であった。50代がなぜ辛いのか、詳しくは単行本でお読みください)。 Q:……(仕切りをあきらめて)はい、あらためてお話を引き取りますと、ここにいるみんなが、男性女性を問わず、その苦しさを実感しています。 岡:ただ、僕や小田嶋みたいに会社を途中で辞めてフリーランスになった人間は、そういうのがない。だから五十路についてかくも深く気楽に話し合うことができたのは、フリーランスを選んだ者の特権じゃないだろうか。 小田嶋:サラリーマンをやっていたら、話し合えないよね。その時期に、一番分かり合える人間と、一番遠ざからなきゃいけなかったりするし。そこが面倒くさいところだよね』、「五十路についてかくも深く気楽に話し合うことができたのは、フリーランスを選んだ者の特権じゃないだろうか」、というのはその通りだろう。
・『うまくいったあいつ、いかなかった自分  岡:だって一番仲良かったあいつが執行役員になって、俺が子会社に出向になった、ということが五十路のサラリーマンには起きるじゃないか。 編集Y:(手を振り挙げて)はい、はい、この場で唯一の五十路サラリーマンから。仲良しのあいつが国立大の教授に転職して、俺が副編集長からシニア・エディターという肩書になる、みたいなのもありますよ。 Q:それって、元・日経BPのプロデューサーで、「諸問題」チームの一員でもあったヤナセ教授のことですね。 編集Y:そうなんですよ。 小田嶋:シニア・エディターって何? 編集Y:直訳すると、年寄編集者です。「年寄って大相撲かよ。何で彼が教授で、オレが年寄編集者なんだ」って思いが……。 Q:編集Yさん、気持ちは分かるけど、カッコ悪いわね。 編集Y:ううう。 岡:で、自分の中でも、それから社内でも、なぜなぜなぜ、っていう話が渦巻くわけじゃない。それが人事異動という形で1年とか半年にいっぺんぐらい起きるわけじゃない。それに比べると僕たちフリーランスの人生は、そういう波乱はないわけだから。 小田嶋:日本経済が上向きのころだったら、そのあたりは処理できたんだよ。中島みゆきが主題歌を歌っていたNHKのあれ、何という番組だったっけ? 岡:「プロジェクトX」のこと?。 小田嶋:そうそう「プロジェクトX」。 Q:ちょっと一瞬、脳梗塞で入院時の小田嶋さんの記憶レベル(※こちら)になっちゃいましたね。 小田嶋:あの番組は、今見ると全部ブラック企業の話なんだけど。 岡:僕は喜んで見ていたけど、確かにそうだな。 小田嶋:冷静に見ると、みんないきいきとブラック残業にいそしんでいました、というひどい話ばかりなんだけど、あれをすごくハッピーな物語として処理できていたのは、経済が右肩上がりの中の話だったからですよ。同じことを、現在の縮みゆく社会の中でやったら、ありえないでしょう、ということになる。 岡:実際、世の中の動きとして、ありえない、という方向性になっているしね。 小田嶋:今の50代の人たちがキツいというのも、この先、日本は成長が見込めない時代になるよ、ということがでかいよね。)岡:この先に年金がちゃんと待っているよ、とか、でかい退職金が来るよ、とかいうことはなくなっている。 小田嶋:その代わり、「この先、俺はどうなっちゃうんだろう」という思いは、あふれるほど出てきている。 Q:これはキツいですよね。 小田嶋:ここから、要するに俺たちの還暦以降の身の処し方という問題にもつながっていくんだけど、これが入院をしてみると、周りはだいたい定年後のじいさんが主流なんだよね。 Q:小田嶋さん、岡さんのちょっと先輩の人たちですね。 小田嶋:入院時のじいさんたちと、ばあさんたちの身の処し方の違いというのは、すごい明らかで、じいさんたちのだめさ加減というのが病院では際立っているんだよ。だいたい看護師さん相手にいばって、迷惑をかけている感が、じいさんはとても強いのね。 Q:病院に行くと、無用に偉そうで横柄なおやじに遭遇しますよね。 小田嶋:あんた、別に会社じゃ偉かったのかもしれないけど、ここに来たらただの病人のじいさんでしょう、ということが、おやじたちは本当に分かっていないですよ。 岡:うん、分かっていない。 小田嶋:それこそ、タメ口のナースさんとか、上から目線で「だめでしょう、小田嶋さん」とか言ってくるナースさんとかがいるわけだけど、そういうコミュニケーションに対応できない』、「「プロジェクトX」・・・冷静に見ると、みんないきいきとブラック残業にいそしんでいました、というひどい話ばかりなんだけど、あれをすごくハッピーな物語として処理できていたのは、経済が右肩上がりの中の話だったからですよ。同じことを、現在の縮みゆく社会の中でやったら、ありえないでしょう、ということになる」、確かに時代の変化で価値観も大きく変わるようだ。「あんた、別に会社じゃ偉かったのかもしれないけど、ここに来たらただの病人のじいさんでしょう、ということが、おやじたちは本当に分かっていないですよ」、といのは確かにありふれた光景だ。
・『上下関係が決まらないと話せない?!  岡:そういうのは、僕、嫌だな、タメ口なんて。 Q:岡さんは、「なんだ、きみは(怒)」って、あっち側にいく恐れがありますね。 岡:何よ、それ。 小田嶋:おっさんやじいさんたちは、そういう人間関係の初動段階で、すぐに怒っちゃう。だけど、おばあさんたちは全然、フレンドリーなんですね。ナースさんに対しても、おばあさん同士でも、すごく仲良しなんです。しょっちゅう井戸端で集まって、いろいろな話をして、入院生活をエンジョイしているんですよ。 一方、じいさんたちはお互い没交渉で、じいさん同士で口をきくなんてことはない。俺だってじいさんと話をするなんて嫌だから、全然口をきかない。ということで、男はフレンドリーになりようがないのよ。つまるところ、男は上下関係が決まらないと、付き合いができないんですよ。 Q:どっちが上かということですね。 小田嶋:女性はフラットな人間関係で、多少年が違っても、「あら、こんにちは」とか言って、いきなり話し始めてフレンドリーにできるんですよね。 編集Y:どうですか、女性側から見て。 Q:内心は違いますよ。 岡:内心はね。でもママ友というのがあるでしょう。あれはどういうことなの。 Q:仮面をつけて付き合う……とか。 岡:そういうことなの。 小田嶋:でもママ友というのも不思議なもので、男性の上下関係に当たるものが、自分の子供の成績だったり、自分のだんなの稼ぎだったり、あるいは自分の子供が行っている学校のグレードだったり、そういうもので結構自在なんですよ』、「男は上下関係が決まらないと、付き合いができないんですよ・・・女性はフラットな人間関係で、多少年が違っても、「あら、こんにちは」とか言って、いきなり話し始めてフレンドリーにできるんですよね』、確かに男は付き合いでは、本当に不器用だ。
・『男も女も、人間に「猿山」あり  編集Y:男性は会社しか「猿山」がないのに、女性にはいっぱい猿山があって、自在に出し入れができるみたいな感じなんですかね。 小田嶋:男の方がわりと座標軸がシンプルなんですよ。だから、会社の中の評価軸があやふやになってくる50代はキツい。 岡:だって、ママ友はいても、パパ友なんて聞かないでしょう。 編集Y:いえ、私、パパ友いますよ。息子同士が中学校の親友で、そのお父さんと仲良くなりました。 小田嶋:ありゃ。 編集Y:で、一緒にゴジラ映画とか見に行ってます。 小田嶋:ああ、それは「パパ友」ではなく、いわゆる「オタ友」というやつですね。 編集Y:あ、そっちだったのか、俺。 Q:猿のオスも、猿山の序列から離れると、ひとりぽつねんとしていますよね。ヒトのオスも、入院で社会的な鎧がなくなると、より猿山の原点に返っていくのでしょうか。 小田嶋:人のオスはグルーミング(毛づくろい)とかとも無縁だよね。そもそも俺自身、グルーミングのような、マッサージのような、ああいうの、ダメなの。 岡:僕もオイルマッサージとか、鍼とか、だめ。 小田嶋:病気に効く、ということで受けてみたとしても、途中で気持ち悪くなって。俺、だいたい肩って凝らないから。 岡:マッサージの人に言わせると、「岡さん、背中も肩も、ぱんぱんに張ってますよ」ってことなんだけど、僕も自覚がない。だから関係ないよ、いいんだよ、ということにしている。 小田嶋:俺、人生で1度だけ肩が凝ったことがあるのは、高校の時に陸上部の大会で400メートルを走った時。そうか、これが「凝り」というものなのか、というのがあった。 岡:おまえ、陸上で400メートルなんて練習、していたっけ? 小田嶋:いや、走ったことがないのに大会に出たの。 岡:何だよ、それは。 小田嶋:先輩に「どうやって走ったらいいですか?」と聞いたら、「とにかく最初から思い切り行って、最後に力尽きるようにしろ。それがおまえの一番いいタイムだ」ということで、「本当かな?」とは思ったんだけど、そのまま200メートルまで思いっ切り、すごくいいタイムで走ったはずだったんだよ。で、後半、あと200メートルを行けるか、と思っていたら。 岡:行けないよ、それは』、「猿のオスも、猿山の序列から離れると、ひとりぽつねんとしていますよね。ヒトのオスも、入院で社会的な鎧がなくなると、より猿山の原点に返っていくのでしょうか」、なるほど、その通りなのだろう。
・『小田嶋:そう、全速力なんかでぶっちぎれるわけがないでしょう。300メートルを過ぎた時に、目の前が暗くなって、足が上がらないぞと思いながら、なんか泳ぐようになっていって。 Q:陸で溺れてしまった、と。 岡:陸上部の走りじゃないよね、それ。 小田嶋:途中で完全に電池切れして、ゴール後、2分ぐらいは全然起き上がれなくなっていた。やっとのことで起き上がって、こんなのするんじゃなかった、と後悔しながら家に帰ったら、全身が張っていた。肩がものすごく重くて、そうか、これを肩凝りと言うのだな、と。 Q:いや、それ、肩凝りかな? 岡:全身筋肉痛だよ、正しくは。 Q:はい、それだと思います。 小田嶋:そうなのか。 岡:凝ってはいるんだろうけど、凝りというより、もはや筋肉痛だよ。だから肩凝りって、それが凝われていたとしても、小田嶋や俺のように自覚できないというやつがいるの。で、自覚していないんだから、いいんじゃないか、ということになる。 小田嶋:その意味で、自覚しない方がいいということがあるよね。 Q:そういう処し方もあるんですね。 小田嶋:それで俺なんかは30年ぐらい、人間ドックとか区の検診とか、何の検査もしないで来ましたからね。 Q:それを聞くと、考え込んでしまいますが……。 岡:その分、今、一気にものすごい量の検査を受けて、取り戻しているわけだよ、小田嶋の場合は』、最後の岡氏の指摘には、思わず微笑んでしまった。
・『対人スキルが必要な仕事ってそんなに多いか?  Q:反面教師としてうかがっておきます。ところで小田嶋さんは、入院中のメンタル面は大丈夫ですか。 小田嶋:それは基本、普段の俺の生活と変わらないから、精神的なダメージはあんまり感じていないです。 岡:屋内に引きこもっているという点で、小田嶋の場合は入院も普段も変わらない。それが小田嶋の強みです。 小田嶋:対人関係のしがらみをあんまり持っていない、というところが、逆にいいんだと思う。今の21世紀って、普通の人たちの7割か8割は第3次産業の従事者になっちゃうでしょう。我々が子供のころは、まだ農林水産業の従事者が50%に近い時代があって、それと第2次産業を混ぜると、対人関係のスキルが必要になる職業って、そんなになかったんだよね。だから俺みたいなやり方は、別に特殊でも何でもない。 Q:なるほど。 小田嶋:人類の長い歴史を考えると、「人間の相手をしていた人間」って、そんなにたくさんはいなかったんですよ。作物の相手をしたり、椅子を作っていたりと、自然や事物の相手をしていた方が、人類史の中ではずっと長いわけですから。 岡:農作物の相手をするために必要な資質は、今のようなインターネット時代の人間関係の中では、実は邪魔になるんじゃないかな。だとしたら、ひどい錯誤だよね。 小田嶋:「コミュ力」ってヘンな言葉が言われ出したのが、たぶん20年ぐらい前でしょう。その前まで、たとえば理系のやつの就職なんて、面接もなかった時代ですよ。院卒じゃなくて学部卒でも、いわゆる理系の研究者が集まるタイプの職場に入ると、そこには他人と口もきけないようなやつが半分ぐらいいたわけですよ。 Q:あくまでも小田嶋さん個人の感想です』、「人類の長い歴史を考えると、「人間の相手をしていた人間」って、そんなにたくさんはいなかったんですよ。作物の相手をしたり、椅子を作っていたりと、自然や事物の相手をしていた方が、人類史の中ではずっと長いわけですから」、「「コミュ力」ってヘンな言葉が言われ出したのが、たぶん20年ぐらい前でしょう。その前まで、たとえば理系のやつの就職なんて、面接もなかった時代ですよ」、確かに時代の変遷で、人間に求められ能力はずいぶん変化したようだ。
・『岡:昔、京都大学に伝説のクオーターバックがいたの。その人は京大に3番で入って2番で出た、みたいな優秀な学生で、高校時代は陸上でも目立っていた。極めて論理的で能力が高い、素晴らしい選手だったんだけど、問題はハドル(=アメフトの試合中、グラウンドで行われる作戦会議)の時に、彼が何を言っているのか分からない、ということで(笑)。 小田嶋:医者の世界においても、ちゃんと説明ができない医者って、そこそこいるよね(笑)。最近の医者は、インフォームドコンセントの浸透で、ちゃんと説明するようにはなっていますけど、やっぱり聞いていると、文脈を飛ばして話していることが多いから、いちいち「今のご説明は、何を踏まえてのことなのでしょうか」と、こちらが手順を踏んでおかないといけない。 岡:僕たち文系は、分かっていなくても説明できちゃうんだけどね。 Q:そこは大きな問題です。 小田嶋:ほら、大学の先生とかでも、まったく対人関係はできないけど研究はできた、という人が昔は普通にいたでしょう。 Q:太平洋戦争の時に、日本が戦争をしていることを知らないで研究に没頭していた、という学者の話を聞いたことがあります。 小田嶋:研究職のうちの半分ぐらいは、今だったら病名が付く感じの人がいたわけだけど、きょうびの研究者は、実は研究をしながら、ちゃんと文部科学省と話ができて、なおかついろいろな会議でちゃんと調整ができて、金を引っ張ることもできて、と他にもいろいろな能力が求められるわけだよ。 Q:はい、それで、そろそろ〆に持っていきたいのですが。 岡:うん、だから、困った時代になったもんだよね。でも一方で、こんなふうに地道に続けてきた連載が本にまとまって、読んでいただけるという喜びも五十路を超えるとあったりする。 小田嶋:意識の高いハウツーの類は一切ないけれど、「あるある」話はきっと多いよね。 岡:この本、小石川高校の同級生は買うと思うんだよ。あいつらは暇になっているでしょう。 編集Y:弊社からのお願いです。同窓会で激しく売り込んでください』、「大学の先生とかでも、まったく対人関係はできないけど研究はできた、という人が昔は普通にいたでしょう」、「きょうびの研究者は、実は研究をしながら、ちゃんと文部科学省と話ができて、なおかついろいろな会議でちゃんと調整ができて、金を引っ張ることもできて、と他にもいろいろな能力が求められるわけだよ」、「大学の先生」に求められる要件もずいぶん変わったようだ。
・『五十路を越えて「敗者復活」  岡:でも、俺と小田嶋が一緒にこの前の同窓会に出た時、スピーチの時に、負け組……じゃないな。何だっけ。 小田嶋:何とか組と言われたんだよね。 岡:起死回生組……じゃないや、何と言ったっけな(笑)。 小田嶋:リベンジじゃないし。 岡:リベンジじゃない、何かそういうやじが飛んでいたよね。 小田嶋:敗者復活。 岡:そう、「敗者復活組」と言われているんだよ。でも、言っておくけど、俺は負けた覚えはないぞ。 小田嶋:まあ雌伏はしていたけどね。 Q:雌伏というのは、なかなか便利な言い回しですね。 小田嶋:雌伏をした後、この連載や日経ビジネスのおかげで、いろいろ書けるようになりました、ということは少しは考えなきゃいかんと思っています。 編集Y:私にしても、出世はできなかったけど、こんなリッチな連載や面白い本に関われて、五十路も悪くない気がしてきました。 小田嶋:だから、五十路の諸問題で悩まれている方は、書店でこの本を手に取って、ぜひそのままレジに直行されることをおススメしておきたいですね。 Q:最後に小田嶋さん、かなり無理やりな〆を、ありがとうございます』、「雌伏」というのは確かに便利な言葉だ。
・『小田嶋隆×岡康道×清野由美のゆるっと鼎談 「人生の諸問題」、ついに弊社から初の書籍化です! 「最近も、『よっ、若手』って言われたんだけど、俺、もう60なんだよね……」「人間ってさ、50歳を越えたらもう、『半分うつ』だと思った方がいいんだよ」 「令和」の時代に、「昭和」生まれのおじさんたちがなんとなく抱える「置き去り」感。キャリアを重ね、成功も失敗もしてきた自分の大切な人生が、「実はたいしたことがなかった」と思えたり、「将来になにか支えが欲しい」と、痛切に思う。 でも、焦ってはいけません。  不安の正体は何なのか、それを知ることが先決です。  それには、気心の知れた友人と対話することが一番。 「ア・ピース・オブ・警句」連載中の人気コラムニスト、小田嶋隆。電通を飛び出して広告クリエイティブ企画会社「TUGBOAT(タグボート)」を作ったクリエイティブディレクター、岡康道。二人は高校の同級生です。 同じ時代を過ごし、人生にとって最も苦しい「五十路」を越えてきた人生の達人二人と、切れ者女子ジャーナリスト、清野由美による愛のツッコミ。三人の会話は、懐かしのテレビ番組や音楽、学生時代のおバカな思い出などを切り口に、いつの間にか人生の諸問題の深淵に迫ります。絵本『築地市場』で第63回産経児童出版文化賞大賞を受賞した、モリナガ・ヨウ氏のイラストも楽しい。 眠れない夜に。 めんどうな本を読みたくない時に。 なんとなく人寂しさを感じた時に。 この本をどこからでも開いてください。自分も4人目の参加者としてクスクス笑ううちに「五十代をしなやかに乗り越えて、六十代を迎える」コツが、問わず語りに見えてきます。 あなたと越えたい、五十路越え。 五十路真っ最中の担当編集Yが自信を持ってお送りいたします』、これだけPRされると、やはり読みたくなるものだ。
タグ:人生論 日経ビジネスオンライン 岡康道 大腸の内視鏡検査 プロポフォール 小田嶋 隆 (その3)(『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談:(前編)オダジマ 入院までの顛末をかく語りき、(中編)五十路は「ラストシーン」に向かい合うお年ごろ、(後編)五十路にして悟る。「嗚呼 人間至る所猿山あり」) 「オダジマ、入院までの顛末をかく語りき『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談(前編)」 連載対談「人生の諸問題」 単行本化とあいなりました 人生の諸問題に遭遇し、煩悶し、どうにも眠れない……という夜がございます。 そんなときに、前向きになれとおしりをたたいてくれる本もよございますが、開いたところからぱらぱらっと読んで、「ばかなことを言ってるな、はっはっは」と、気持ちよく眠れる。手前味噌ではありますが、本書はそのような貴重な本じゃないかな、そうなるといいな お尻をひっぱたかない生き方指南本(?!) 「いい酒を家飲みしたような読後感」 養老孟司さんぐらい有名な学者とかだったら、何を言ってもアリになっちゃうんだけどね サッカーが好きだとか、音楽が好き、車とか鉄道が好きだとかいうのは、張り合っちゃって、あんまり打ち解けないでしょう オダジマ、“一丁目”を覗く 始まりは脳梗塞だった なぜ脳梗塞になったのか、という因果 小田嶋の場合は血小板が壊れちゃっていて、不必要なところで固まったり、大事なところで固まらなかったりという、厄介な症状が隠れていたわけです 不思議なのは、自覚症状が何もないところなの 今後は悪くなるのを待って、疾患名を確定しましょう、といった中ぶらりんの状態になっているんです 「五十路は「ラストシーン」に向かい合うお年ごろ 『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談(中編)」 リハビリテスト いい大人にこれをやらせるのか、と、ちょっと屈辱を感じつつやって 「どこからが認知症なのか」という区分も実は曖昧で、「研究者として、今の自分自身を見れば、ああ、俺はゆっくりと認知症になりつつあるな、と考えることもできる」のだそうです 「そういう夢」を持って生きねば 五十路はどんどん病気に詳しくなる 欠落こそが、才能だ 軽~く処さないと、やっていられない 「五十路にして悟る。「嗚呼、人間至る所猿山あり」『人生の諸問題 五十路越え』刊行記念鼎談(後編)」 麻酔ですごく幸せになるの 逮捕された韓国の男の話が出てきます。2年で548回も内視鏡検査を受けていたそうです 「幸せはケミカルで手に入る」という恐ろしい真理 五十路についてかくも深く気楽に話し合うことができたのは、フリーランスを選んだ者の特権じゃないだろうか うまくいったあいつ、いかなかった自分 「プロジェクトX」 冷静に見ると、みんないきいきとブラック残業にいそしんでいました、というひどい話ばかりなんだけど、あれをすごくハッピーな物語として処理できていたのは、経済が右肩上がりの中の話だったからですよ 上下関係が決まらないと話せない? 男はフレンドリーになりようがないのよ。つまるところ、男は上下関係が決まらないと、付き合いができないんですよ 女性はフラットな人間関係で、多少年が違っても、「あら、こんにちは」とか言って、いきなり話し始めてフレンドリーにできるんですよね 対人スキルが必要な仕事ってそんなに多いか? 人類の長い歴史を考えると、「人間の相手をしていた人間」って、そんなにたくさんはいなかったんですよ。作物の相手をしたり、椅子を作っていたりと、自然や事物の相手をしていた方が、人類史の中ではずっと長いわけですから 「コミュ力」ってヘンな言葉が言われ出したのが、たぶん20年ぐらい前でしょう。 大学の先生とかでも、まったく対人関係はできないけど研究はできた、という人が昔は普通にいたでしょう 五十路を越えて「敗者復活」 小田嶋隆×岡康道×清野由美のゆるっと鼎談 「人生の諸問題」
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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