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商社(デサントVS伊藤忠)(デサントを巡る買収劇 「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み 全責任を負う伊藤忠、なぜデサント社員は伊藤忠に反発したのか "資本の論理"だけならブランドに傷) [企業経営]

今日は、商社(デサントVS伊藤忠)(デサントを巡る買収劇 「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み 全責任を負う伊藤忠、なぜデサント社員は伊藤忠に反発したのか "資本の論理"だけならブランドに傷)を取上げよう。

先ずは、3月28日付け東洋経済オンライン「デサントを巡る買収劇、「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み、全責任を負う伊藤忠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/273502
・『大企業同士がお互いの対話を欠いたままで自社の言い分を世間に主張しあう、前代未聞の「劇場型TOB(株式公開買い付け)」は、あっけない幕切れを迎えた。 スポーツウェア大手のデサントは3月25日、石本雅敏社長が6月開催予定の株主総会をもって退任し、代わって伊藤忠商事の繊維カンパニーでトップを務めていた小関秀一氏が新社長に就任すると発表した。伊藤忠の岡藤正広会長の最側近として知られる人物だ。一方のデサントでは、石本氏以外も生え抜きの取締役は総退陣する。 デサント出身の取締役として残るのは金勲道氏と小川典利大氏。いずれも中途入社組である。金氏は2000年に韓国デサントに入社し、デサントの韓国事業を大きく成長させた功労者だ。もう一人の小川氏はアディダスジャパン副社長などを経て2016年にデサントに入社した。経営手腕への評価は高く、石本氏退任後の社長候補としても名が挙がった』、まさに「劇場型TOB」だ。
・『鮮明になった“伊藤忠色”  6月からの新体制では現在10人の取締役を6人に減らし、デサント出身2人、伊藤忠出身2人、社外2人とする。人数の印象以上に強まるのが“伊藤忠色”だ。伊藤忠からは小関氏のほか、同社執行役員で監査部長を務めていた土橋晃氏が取締役となる。土橋氏はCFO(最高財務責任者)に就任する予定だ。社外取締役には佐山展生・スカイマーク会長、高岡浩三・ネスレ社長を据えた。いずれも伊藤忠とゆかりのある著名経営者だ。 取締役以外のキーパーソンにも要注目だ。デサントの専務執行役員として伊藤忠から派遣される久保洋三氏である。現在は伊藤忠商事の常務執行役員で食料カンパニープレジデントを務めるが、本籍は繊維部門。伊藤忠が完全子会社化したジーンズ大手のエドウィンで会長を務めた経験もある。食料部門出身の伊藤忠元役員は「彼は岡藤会長に見込まれてエドウィンの再建に当たった。現場を見る目が確かで、繊維出身ながら食料ビジネスでも存在感を発揮してきた」と、久保氏の力量に太鼓判を押す。 実は久保氏は、十数年前には伊藤忠でデサントとの窓口役を務めていた。まだ両社の関係が円満な時期で、デサント社内にも知己は多い。そのため、久保氏は新体制で営業面の統括役になることが確実視されている。エース級の人材を投入して社長に加え営業トップとCFOを押さえたことで、今後は伊藤忠がデサントの経営一切を仕切ることになるだろう。 伊藤忠がデサントへの敵対的TOBに踏み切ったのは今年1月末のことだ。買い付け期限は3月14日までで、デサントの直近株価に約50%ものプレミアムをつけてデサント株の最大40%を買い付けることとした。当時の伊藤忠の出資比率は30.44%で、これが33.4%を超えることで株主総会における特別決議での拒否権を、すなわち事実上の経営支配権を持つことになる。 2月7日にデサントはこのTOBへの反対意見を表明。「劇場型」の構図がいよいよ鮮明になったが、実は両社はその直後から水面下の話し合いを始めた。伊藤忠の代表は小関氏。デサント側は石本氏自身が2月中旬に4回にわたって面談に臨んだ。交渉のポイントは新体制での取締役数で、伊藤忠は「デサントから2人、伊藤忠2人、社外2人」を主張。デサントは「デサント1人、社外4人」を求めた。 伊藤忠の影響力縮小にこだわるデサントに、いったんは伊藤忠が譲歩し、取締役会を「デサントから2人、伊藤忠1人、社外2人」とする案がまとまった。2月27日にデサントが取締役会を開いて和解案を議決し、翌28日に公表する段取りまで決まっていたが、合意の直後に石本氏が翻意。これを受けて伊藤忠は2月22日に交渉打ち切りを決め、その後は「資本の論理」でデサントの現経営陣を排除する方針を貫徹した。 石本氏は早くから自らの退任は覚悟していたようだが、土俵際に追い詰められて、なお絶望的な戦いを挑んだ真意は不明だ。それほどまでに、同氏とデサント社員の伊藤忠への反感が強かったということだろうか。この段階で、伊藤忠からさらに譲歩を引き出せるだけの材料があったとは思えない』、佐山展生氏は投資ファンドのインテグラル株式会社代表取締役でもある。「「デサントから2人、伊藤忠1人、社外2人」とする案を「合意の直後に石本氏が翻意」したほど「伊藤忠への反感が強かった」のだろうか。
・『デサントの未来に責任を負う伊藤忠  TOBの直接的なきっかけは、昨年6月に決算報告のため伊藤忠本社を石本氏が訪れた際、伊藤忠の岡藤会長との話し合いが決裂したことだ。デサントは1984年と1998年に2回、経営危機に陥ったが伊藤忠の支援で再生した経緯がある。1994年以降は社長も伊藤忠から派遣されてきた。だが、デサントによれば、2011年ごろから伊藤忠は自社との取引拡大を強要するようになった。 それに不満を高めたデサント生え抜きによるクーデターによって、2013年に就任したのが創業家の3代目である石本氏だ。石本氏は就任早々に「取引強要」の経緯をまとめた報告書を伊藤忠側に渡して改善を迫った。しかし、伊藤忠側が動かなかったことでデサント側には伊藤忠への根深い不信が生まれた。石本氏たちにとって、今回のTOBを通じて伊藤忠に対する不満を世の中に発信できたことは1つの成果ではあるだろう。 伊藤忠がかつての取引強要問題を自ら検証するかは疑問だが、もう同じことはできない。さらに同社はデサントの未来に対して大きな責任を背負うことになる。伊藤忠は現在のデサントの収益構造が韓国事業に依存していると指摘し、国内の立て直しや中国事業を拡大する必要性を強調してきた。今後は2020年の東京五輪や2022年の北京五輪といったスポーツイベントを控える中でデサントがどのように成長するのかを示す必要がある。 伊藤忠は今回のTOBに200億円を投じ、かつ経営に全面的にコミットする。伊藤忠によるTOBにはデサントの労組やOB会まで反対の意向を表明しており、社員からの信頼獲得が何よりの課題だ。それには伊藤忠のグローバルな調達網や資金力を活かして、デサントを大きく成長させるビジョンを描き出すことが欠かせない。それができなければ、劇場型TOBはシナリオがないまま経営者同士が感情的対立をつのらせた「激情型」でしかなかったことになる。こんなに不毛なことはない』、「取引強要」とはかってならありそうな話だったが、現在では公正取引委員会が独禁法の優越的地位の濫用の監視を強めているので、デサント側の反発の要因は他にあるのではなかろうか。

次に、元銀行員で法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏が4月3日付けPRESIDENT Onlineに寄稿した「なぜデサント社員は伊藤忠に反発したのか "資本の論理"だけならブランドに傷」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/28228  (2頁目以降は会員登録(無料)が必要)
・『50%上乗せのプレミアム価格で株式を買い集め  3月14日、伊藤忠商事がデサントに対して実施した株式の公開買い付け(TOB、Take-Over Bid)が終了した。TOBへの応募は約1512万株に達し、買い付け予定数の上限(721万株)を大きく上回った。わが国の主要企業間で、今回のような“敵対的TOB”が成立したのは実質的には初めてとみてよいだろう。 これまで伊藤忠は、筆頭株主としてデサントに経営の改善を求めてきた。一方、デサントとしては自社の考えを貫きたかった。伊藤忠は協議を重ねても進展は見込めないと判断し、デサントへの敵対的TOBに踏み切った。 TOBが成立した主な理由は2つある。ひとつは、伊藤忠がTOB価格に50%ものプレミアム(上乗せの価格)をつけたことだ。そしてもうひとつは、伊藤忠のストラテジー(戦略)は、株主にとってそれなりの説得力があったことである。株式買い取り価格と、企業戦略経済の観点から海外投資家を中心にTOBに応募した株主は多かった。 ただこの結果が伊藤忠にとって成功かどうかは、まだわからない。敵対的TOBでは、企業の内部にさまざまな違和感を残すおそれがある。デサントでは、経営陣をはじめ組織が大きく入れ替わる。この状況で伊藤忠が取り組むべきことは、従業員の不安を解消して組織をひとつにまとめることだ。組織の構成員すべてがベクトルを合わせ、その上で経営陣が持続性あるビジネスモデルを構築することが、TOB後には重要となる』、その通りだろう。
・『伊藤忠は「中国事業の拡大」に自信を持っていた  伊藤忠がデサントに敵対的TOBを仕掛けた背景には、両社の戦略の違いがある。 伊藤忠は、デサントの中国ビジネスへの取り組みを加速させ、グローバルブランドを育成したい。具体的には、伊藤忠はデサントに対して、中国において早期に1000店を出す成長戦略に取り組むべきと求めてきた。伊藤忠は中国事業に自信を持っている。加えて、アパレル事業は伊藤忠の岡藤正広会長が強くコミットしてきたビジネスセグメントでもある。 中国は所得水準の上昇とともに世界有数の消費市場として存在感を発揮している。今後の経済動向への不安はあるものの、伊藤忠は中国市場においてデサントのシェアを高めたかった。この考えに基づき、伊藤忠は自社のアドバイスを聞き入れることを強く求めてきた。 一方、デサントは30%を保有する筆頭株主である伊藤忠との資本関係を維持しつつ、独自の戦略に取り組みたかった』、「中国ビジネスへの取り組み」で温度差があったというのは理解できる。「伊藤忠は中国事業に自信を持っている」のは、伊藤忠が中国最大のコングロマリットCITICグループと戦略的業務・資本提携関係にあることが背景にあるのだろう。
・『「水沢ダウン」のヒットで、デサント側にも自信があった  デサントは、国内を中心に高付加価値のブランドを自前で育てることにコミットしてきた。企業が競争力のあるブランドを育成するには、それなりの時間がかかる。その上で同社は、海外での成長戦略に取り組むことを目指してきた。 創業家出身の石本雅敏社長は、「水沢ダウン」のヒットなどを受けて、自らの考えに相応の自信があったはずだ。また、デサントは中国市場の開拓にも取り組んできた。その背景には、売り上げの50%を占める韓国事業への依存度を低下させ、収益源を分散させる狙いがあった。 石本氏には、短期間での中国事業へのコミットメントを求める伊藤忠の考えはリスクが高いと映ったはずだ。中国経済の先行きは不透明だ。加えて、短期間でグローバルブランドを目指せば、従来の製品よりも品質が低下するなどしてブランド価値が損なわれるとの危惧もあっただろう』、「石本氏には、短期間での中国事業へのコミットメントを求める伊藤忠の考えはリスクが高いと映ったはずだ」、と慎重姿勢をとったのは分からないでもないが、「50%を占める韓国事業への依存度を低下させ」ることも急務だった筈だ。さらに、後付けではあるが、最近の日韓関係悪化で日本製品不買運動が起きたら、ひとたまりもないだろう。
・『ついに「資本の論理」が「日本の企業風土」に勝った  両社は協議を重ねてきたが、折り合いはつかず、話がこじれてしまった。そのため、伊藤忠は敵対的TOBに踏み切った。これは「資本の論理」が「わが国の企業風土」に勝ったことを意味する。わが国における企業経営の常識が大きく変わりつつあると考える。 長年、わが国の企業は、融和を重視した経営を行ってきた。企業は波風を立てることを避けてきたともいえる。 企業の経営者と株主の利害が対立した場合、話し合いによる利害の調整が優先されることが多かった。背景には、多様な利害関係者(株主、地域社会、顧客など)の納得感や安心感が得られていない状況の中で経営の主導権を確保できたとしても、企業が多様なステークホルダーと長期の良好な関係を築くことは難しいとの考えがあった。 一方、伊藤忠は経済合理性(期待収益率の高いマーケットに進出し、シェアを押さえること)に強くこだわった。世界経済の中で相対的に高い成長率を維持し、人口が多い中国にビジネスチャンスがあることへの異論は少ないだろう。この考えの是非を問うべく、伊藤忠はデサントへの敵対的TOBに踏み切った』、「ついに「資本の論理」が「日本の企業風土」に勝った」、というのは確かに画期的だ。
・『海外投資家は「50%」という株価プレミアムを評価  ここで重要のはTOB価格の水準だ。伊藤忠はTOBの価格を2800円に設定した。これは、1月30日のデサント終値に対して50%も高い。50%という株価プレミアム(基準日の株価に対する上乗せ価格)は、わが国の株式市場の70%超の売買を占める海外投資家を中心に、多くの株主の賛同を得た。伊藤忠の主張は、株主に対して、デサントの戦略を上回る成長への期待を与えた。 その結果、伊藤忠は敵対的TOBを成立させた。これは、「わが国の企業風土」よりも、価格や経済合理性に基づく「資本の論理」に軍配が上がったことに他ならない。 現時点で、伊藤忠の拡張主義的な戦略の正否はわからない。中国経済の動向など、新生デサントの将来に影響を与える要因は多い。伊藤忠が取り組むべきことは組織全体を落ち着かせ、ひとつにまとめることだ』、TOB時の「株価プレミアム」は、通常30%程度とされているので、確かに高目だ。
・『なぜ1000人超のデサント従業員が反対したのか  企業が実力を発揮するには、組織構成員の視点がひとつの方向に集中していなければならない。「ヘッドカウント×集中力」が企業の実力だ。その上で、伊藤忠は長期的に付加価値を創出できるビジネスモデルを構築しなければならない。これは一朝一夕にできることではない。 TOBは、禍根を残す。なぜなら、TOBは組織を根本から変えてしまうからだ。その不安があったから、1000人を超えるデサントの従業員もTOBに反対した。伊藤忠主導の下でデサントの取締役10人のうち9人が退任する。デサント内では、伊藤忠が経営を主導することへの反発感、組織が変わることへの不安がかなり強くなっているだろう。 TOBが成立し、デサントの組織は不安定化している。その中で伊藤忠は短期間での成果実現にこだわるべきではないだろう。強引に自社の主張を突き通そうとすれば、さらにデサント内部に動揺が広がる。それは、デサントの経営の持続性を低下させる。状況によっては、伊藤忠にもリスクが波及しかねない』、その通りだろう。
・『TOB後の判断を誤ると、組織の統率が取れなくなるおそれ  今回のTOB成立はわが国企業全体にとって大きな意味がある。大手企業が仕掛けた敵対的TOBの成立を受け、わが国企業の経営風土は、融和重視から、資本の論理に基づいたものに変化していくだろう。 今後、筆頭株主と経営陣の議論が行き詰まった場合、国内主要企業間での敵対的TOBが増える可能性がある。ただし、TOBの成立が企業の成長を保証するわけではない。TOB成立後の判断を誤ると、組織の統率が取れなくなるおそれがある。 そのリスクを抑えるために、企業は、組織をまとめ、持続性あるビジネスモデルを確立しなければならない。伊藤忠によるデサントへのTOB成立を契機に、組織力の引き上げを通して、長期の視点で成果の実現にこだわる企業が増えることを期待したい』、「わが国企業の経営風土は、融和重視から、資本の論理に基づいたものに変化していくだろう」、「長期の視点で成果の実現にこだわる企業が増えることを期待したい」、その通りだ。伊藤忠のお手並み拝見といきたい。
タグ:東洋経済オンライン デサント PRESIDENT ONLINE 真壁 昭夫 「デサントを巡る買収劇、「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み、全責任を負う伊藤忠」 鮮明になった“伊藤忠色” 約50%ものプレミアム デサントの未来に責任を負う伊藤忠 デサントは1984年と1998年に2回、経営危機に陥ったが伊藤忠の支援で再生した経緯 伊藤忠によるTOBにはデサントの労組やOB会まで反対の意向を表明 商社(デサントVS伊藤忠)(デサントを巡る買収劇 「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み 全責任を負う伊藤忠、なぜデサント社員は伊藤忠に反発したのか "資本の論理"だけならブランドに傷) 前代未聞の「劇場型TOB(株式公開買い付け)」は、あっけない幕切れ 石本雅敏社長が6月開催予定の株主総会をもって退任 伊藤忠商事の繊維カンパニーでトップを務めていた小関秀一氏が新社長に就任 デサントでは、石本氏以外も生え抜きの取締役は総退陣 デサント出身の取締役として残るのは金勲道氏と小川典利大氏。いずれも中途入社組である。金氏は2000年に韓国デサントに入社し、デサントの韓国事業を大きく成長させた功労者だ。もう一人の小川氏はアディダスジャパン副社長などを経て2016年にデサントに入社 いったんは伊藤忠が譲歩し、取締役会を「デサントから2人、伊藤忠1人、社外2人」とする案がまとまった 合意の直後に石本氏が翻意。これを受けて伊藤忠は2月22日に交渉打ち切りを決め、その後は「資本の論理」でデサントの現経営陣を排除する方針を貫徹 伊藤忠は自社との取引拡大を強要するように 社員からの信頼獲得が何よりの課題 「なぜデサント社員は伊藤忠に反発したのか "資本の論理"だけならブランドに傷」 敵対的TOBでは、企業の内部にさまざまな違和感を残すおそれがある 伊藤忠が取り組むべきことは、従業員の不安を解消して組織をひとつにまとめること 伊藤忠は「中国事業の拡大」に自信を持っていた 中国において早期に1000店を出す成長戦略に取り組むべきと求めてきた 「水沢ダウン」のヒットで、デサント側にも自信があった 売り上げの50%を占める韓国事業への依存度を低下させ ついに「資本の論理」が「日本の企業風土」に勝った 伊藤忠は経済合理性(期待収益率の高いマーケットに進出し、シェアを押さえること)に強くこだわった 海外投資家は「50%」という株価プレミアムを評価 なぜ1000人超のデサント従業員が反対したのか 伊藤忠は短期間での成果実現にこだわるべきではないだろう TOB後の判断を誤ると、組織の統率が取れなくなるおそれ TOB成立を契機に、組織力の引き上げを通して、長期の視点で成果の実現にこだわる企業が増えることを期待したい
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武田薬品巨額買収(その2)(巨額買収決議の武田 次の焦点は「アリナミン」 大衆薬業界が熱視線、武田薬品の「大バクチ」7兆円巨額買収が日本社会に問いかけること リスクは大きいがこのままではジリ貧だ、労基法違反の武田薬品 遠いメガファーマの道 急速なグローバル化の陰で社内にきしみ) [企業経営]

武田薬品巨額買収については、昨年5月15日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(巨額買収決議の武田 次の焦点は「アリナミン」 大衆薬業界が熱視線、武田薬品の「大バクチ」7兆円巨額買収が日本社会に問いかけること リスクは大きいがこのままではジリ貧だ、労基法違反の武田薬品 遠いメガファーマの道 急速なグローバル化の陰で社内にきしみ)である。なお、タイトルからこれまの「日本企業の海外M&Aブーム(そのX)」を外した。

先ずは、昨年12月6日付け日経ビジネスオンライン「巨額買収決議の武田、次の焦点は「アリナミン」 大衆薬業界が熱視線」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/110879/120500907/?P=1
・『武田薬品工業は12月5日、臨時株主総会を開き、アイルランドの製薬大手シャイアーの買収を決議した。買収額は7兆円弱となる見通し。財務基盤の悪化を防ぐため、武田薬品は事業売却を進める方針。そこで次の焦点として浮上するのが、栄養ドリンク剤「アリナミン」の売却だ。 武田薬品工業は12月5日に開いた臨時株主総会で、アイルランド製薬大手シャイアーの買収を決議した。買収額は約7兆円で日本企業による過去最大のM&A(買収・合併)となる。3兆円は借り入れや社債で賄う計画だが、残りの4兆円を新株発行で対応する。新株発行の是非について、今回の総会で3分の2以上の賛成を得る必要があった。財務の悪化などを懸念する創業家やOBら一部株主が反対していたが、機関投資家などの支持を得て承認された。 買収手続きは2019年1月8日に完了する見通し。武田薬品は売上高が世界上位10位圏内に入るメガファーマ(巨大製薬会社)として新たな成長軌道に乗せる構えだが、市場関係者や業界関係者は、武田薬品が今後、資産売却にどこまで踏み切るかに関心を示す。 資産売却について、クレディ・スイス証券の酒井文義氏は「合計金額は1兆円規模になる」とみる。武田薬品は新株発行後も年180円程度の株主配当金を維持するとしており、その原資を確保するには資産売却は避けられない。手元資金に余裕が出れば、シャイアーの抱える有利子負債の削減も前倒しで進めるとみられる。5日の臨時株主総会でも、クリストフ・ウェバー社長が「非中核事業の売却を進める」と表明した。 ウェバー社長は具体的にどの事業を売却するか明らかにしていないが、市場関係者や業界関係者が「目玉」とみるのが、栄養ドリンク剤「アリナミン」に代表される大衆薬事業だ。「売りに出されれば3000億から5000億円程度になるはず。多くの企業が手を上げるだろう」と国内の大衆薬メーカー関係者は話す』、自らの時価総額を超えるような超大型買収をした以上、資金調達で事実上の「銀行管理」の状態にあるなかでは、「非中核事業の売却を進める」との社長表明は当然のことだ。
・『「テレビCMがなくなると寂しい」  アリナミンは1954年に、ビタミンB1欠乏症である脚気の治療薬として発売され、栄養ドリンク剤や錠剤に加え、注射薬としても提供している。当初はほとんどが医療用医薬品だったが、栄養ドリンク剤が医薬部外品に移行したことで、大衆薬としての認知度が高まった。 武田は潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」や、多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」など医療用医薬品を収益の柱に据えており、相対的に大衆薬の比重は下がっている。「非中核事業」と目されるのも、このためだ。 もっとも、アリナミン事業は株主からの支持も高い。5日の臨時株主総会に参加した個人株主は「アリナミンは数少ない一般向け商品。もし事業が売却されてテレビCMがなくなると寂しい気持ちもする」と話した。ウェバー社長は総会で「収益性の高い会社を目指す」と改めて強調したが、医療用医薬品の研究開発費は大きく失敗するリスクも大きい。安定収益が見込める大衆薬事業を切り離す可能性はあるのか。注目が集まりそうだ』、アリナミンの「テレビCMがなくなると寂しい」との声や、「安定収益が見込める大衆薬事業を切り離す」ことによる経営不不安定化のリスクは、確かにあっても、悪化した財務内容の立て直しが急務なようだ。

次に、経済評論家の加谷 珪一氏が12月12日付け現代ビジネスに寄稿した「武田薬品の「大バクチ」7兆円巨額買収が日本社会に問いかけること リスクは大きいがこのままではジリ貧だ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58934
・『国内製薬最大手の武田が、総額7兆円という日本企業としては最大規模のM&A(合併・買収)を決断した。同社はガラパゴスの典型といわれる日本の製薬業界で唯一、グローバルに戦えるポテンシャルを持つとされてきたが、思い切った買収ができず、このままでは本格的なグローバル化を実現できない状況となりつつあった。 今回の決断は、武田にとって世界に飛躍する最後のチャンスだったが、同時に国内トップという居心地のよい環境に後戻りすることもできなくなった。同社は従来の立場を捨て、グローバル市場における挑戦者にシフトしたことになる』、「国内トップという」ぬるま湯を出て、寒風吹きすさぶ「グローバル市場における挑戦者にシフトした」とは、遅きに失したきらいはあるとはいえ、大したものだ。
・『医薬品メーカーに残された3つの道  武田薬品工業は2018年12月5日、臨時株主総会を開催し、アイルランド製薬大手シャイアーの買収について株主の承認を得た。買収金額は何と7兆円近くになる見込みで、武田自身の時価総額をはるかに上回る巨額買収が実現する。国内企業のM&Aとしては過去最高金額である。 今回の買収提案については、自身よりも時価総額が大きい企業を買収するというリスクの高いスキームであったことから、創業家など一部の株主が反対を表明していた。 武田はオーナー企業ではあるが、創業家は数%の持ち分しかなく、創業家出身の経営者だった武田國男氏は2003年にトップを退任しており、事業には直接タッチしていない。過半数の株主は機関投資家という状況なので、総会では大きな混乱もなく買収提案が可決された。だが、今回の決断が創業以来の「大きな賭け」であることは間違いない。 武田がこれだけリスクの大きい買収を決断した背景となっているのは、このままではグローバル市場に取り残されてしまうという危機感である。 同社は国内トップの製薬会社だが、グローバル市場では中小企業に過ぎない。武田の2018年3月の売上高は約1兆8000億円。これに対してロシュやノバルティス、ファイザーといったトップグループの企業は軒並み5兆円規模の売上高がある。 製薬業界は新薬の開発に巨額投資を行う必要があり、企業体力が小さい企業は圧倒的に不利になる。一方で、ジェネリック医薬品の普及によって、製品のコモディティ化も急速に進んでいる。 グローバル市場においては、圧倒的な規模を持つ巨大製薬メーカー(いわゆるメガファーマ)になるか、ジェネリックのメーカーになるか、もしくは特定分野にフォーカスしたニッチ・メーカーになるのかという3つの選択肢しかない。 今回の買収で武田の売上高は4兆円に近づき、何とかメガファーマの一角を占めることが可能となる』、武田を踏み切らせた強い「危機感」はその通りだろう。
・『花形職種MRのリストラが相次ぐ  これまで世界の製薬業界では、大手各社がメガファーマを目指して巨額買収合戦を繰り広げてきたが、このゲームはほぼ終盤戦に差し掛かっている。つまり武田にとっては、今のタイミングを逃してしまうと、買う会社がなくなってしまい、メガファーマになるという道は諦めなければならない。 一方、武田は国内トップのメーカーなので、国内市場に特化するという選択肢もあるが、そうもいかないのが現実だ。 国内の製薬業界では、花形職種ともいわれてきたMR(医薬情報担当者)の早期退職が相次いでいる。MRというのはいわゆる営業職のことで、かつては予算をふんだんに使って医師を接待するなど、製薬業界を象徴する仕事だった。最近は従来型の接待営業から、専門医療情報を医師に提供するという知的なスタイルにシフトしているが、会社の稼ぎ頭であることに変わりはなかった。 各社が稼ぎ頭であるMRをリストラしているのは、価格の安いジェネリック医薬品が急速に普及してきたからである。かつてジェネリック医薬品は、臨床での実績が少ないことから使用をためらう医師も多かったが、医療費抑制の流れから最近では一般的に使われるようになってきた。 高齢化によって医療費そのものは増えているが、ジェネリックが普及すれば、新薬のメーカーにとっては逆風となる。日本の財政は今後、さらに厳しい状況となるのは確実であり、医療費抑制の動きも顕著となるだろう。長期的には人口減少で患者そのものが減ってしまうことを考えると、国内市場がメインの企業は、規模を縮小する以外に生き残る方法がなくなってしまう』、「ジェネリック医薬品」の普及は確かに急速だ。「MRのリストラが相次ぐ」のも当然だろう。
・『リスクは大きいけれど…  国内の製薬業界は典型的なガラパゴスとされ、再編が続くグローバルな流れとは無縁の状況が長く続いてきた。しかし、国内トップの武田だけはグローバルで戦えるポテンシャルを持っていると認識されており、経営陣が決断すれば、グローバル企業に脱皮できる可能性があった。 今回の買収がその最後のチャンスだったわけだが、このスキームに対しては「価格が高すぎる」との声が上がっている。武田自身の時価総額が3兆円台であるにもかかわらず、2倍の規模の会社を買収するのだから無理もない。 だがM&Aというのは売り手と買い手が揃ってはじめて成立するものであり、買い手の都合がよい時にベストな売り手が出てくるとは限らない。場合によっては割高であることが分かっていても、決断せざるを得ない時もある。 価格面以外にも懸念材料を挙げればキリがない。 もっとも大きいのは、武田がグローバルに打って出るための相手としてシャイアーがふさわしいのかという問題である。武田は規模こそ小さいものの「がん」「消化器」「中枢神経」といったメジャーな領域をカバーする総合メーカーであり、最終的にはメガファーマとしてのシェア拡大を狙っていると考えられる。 ところがシャイアーは、血友病や免疫疾患など希少疾患を得意とするメーカーであり、どちらかというとニッチ戦略に近い。武田から買収提案が出された前後に、がん治療薬の事業をフランスの製薬会社に売却していることからも、その傾向を伺い知ることができる。 両社の事業領域に重複は少なく、統合によるコスト削減効果もそれほど大きくない(会社側は1600億円と説明している)。シャイアーはニッチであるがゆえに高収益となっており、2017年12月期の決算では、4300億円の営業キャッシュフローを確保したが、この高収益が今後も継続する保証はない』、「統合によるコスト削減効果もそれほど大きくない」、「シャイアー・・・の高収益が今後も継続する保証はない」、などから、今後の「買収後の成長戦略」がカギになるのだろう。
・『武田の決断が日本社会に突きつけること  最終的に武田はシャイアーの創薬基盤をフル活用し、大きな利益を生み出す新薬を開発していく以外に、高額買収を正当化する手段はないだろう。 本来であれば、武田は10年前にこうした決断をしておくべきだったが、現実はそう簡単ではなかったと考えられる。 武田國男氏の後を継いでトップに就任した長谷川閑史氏は同社のグローバル化を推し進め、グラクソ・スミスクラインの部門責任者だったクリストフ・ウェバー氏をトップに招聘するなど着々と布石を打ってきた。それでも、大型買収を実施できるまでの体制を構築するには時間がかかったものと思われる。 今回の買収で武田の財務状況は一気に悪化するので、もはや後戻りはできない。だが国内トップという居心地のよい環境を自ら捨て去り、グローバル市場のチャレンジャーになるという姿勢は評価してよいだろう。 巨額買収を決断した同社の一連の経緯は、今の日本社会を象徴しているといってよい。 1990年代まで日本の大手メーカー各社は世界トップ企業と肩を並べる水準だったが、失われた30年によって、多くが国内では大手のままでもグローバル市場では中小企業に転落してしまった。国内市場だけで活動していれば、すぐに会社が消滅することはないだろうが、人口減少と日本の相対的なポジションの低下で、さらなる規模の縮小と低収益化を余儀なくされる。 一方、このタイミングでグローバル市場に出て行くにはタイミングが遅く、決断にはかなりのリスクが伴う。だが5年後にはこうしたチャンスすら消滅しているかもしれない。 国内市場だけでやっていけばよいという意見もあるが、鎖国でもしない限り、グローバル市場の影響を受けてしまうので、日本経済単独で豊かな社会を築くことは現実的に難しい。成長を諦め、貧しさを甘んじて受け入れるのか、リスクを取って豊かさを目指すのか、平成という失われた30年が終わろうとしている今、武田の決断は日本社会に対する最後の問いかけといってよいだろう』、説得力に富んだ分析だ。これだけ大きな決断は、やはり外国人社長でないと出来なかったのだろうか。残された国内の製薬大手がどうするのかも注目される。

第三に、6月23日付け東洋経済オンライン「労基法違反の武田薬品、遠いメガファーマの道 急速なグローバル化の陰で社内にきしみ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/288079
・『6兆円強の大金を投じて欧州製薬大手のシャイアーを買収し、売上高3兆円を超える世界9位のメガファーマに躍り出た武田薬品工業の足もとで、お粗末な労働基準法違反が発覚した。 2018年9月から今年5月までの9カ月間で、労働基準監督署から合計5件の労働基準法違反(是正勧告4件、指導1件)を指摘されていたのだ。 具体的には、東京・日本橋のグローバル本社において、労使間で結ぶ三六(サブロク)協定で定めた時間外労働の上限(月70時間)を超過したケースが2件あった(昨年11月と今年4月)。さらに、昨年9月には同じグローバル本社で、就業前後の時間外に勤務の実態がありながら賃金不払いとなっていた案件も1件発生し、東京の中央労働基準監督署から是正勧告を受けている』、信じられないような「お粗末さ」だ。
・『労基法違反を繰り返したのに「ホワイト企業」  労基署の是正勧告を受けると、期日までに指摘された違反内容を改善したうえで、防止策などを記した是正報告書を提出することが義務づけられる。是正勧告は行政指導の一種で、罰金などの処分はない。ただ、改善がみられなかったり、違反を繰り返した場合などは、まれではあるが、検察庁に送検されるケースもある重い処分だ。 さらに問題なのは、とくに優良な健康経営を実践している企業に経済産業省がお墨付きを与える「健康経営優良法人」の認定を武田が受けていたことだ。 武田は、2019年2月に認定された2019年の大規模法人部門(ホワイト500)に選ばれた。これは大企業なら「取ってないとおかしい」というほどポピュラーな存在で、製薬関連企業で33社が取得している。大塚製薬や第一三共、エーザイ、塩野義製薬などが2018年にも認定されているが、武田は2019年からと遅かった。 しかし、労基法違反が発覚し、ホワイト500の認定を自主返上せざるをえなくなった。「労基法などの同一条項で複数回違反しないこと」という認定基準に抵触したからだ。武田の説明によると、4月末に2度目の是正勧告を受けたことを受けて5月のゴールデンウイーク明けに経産省に報告し、経産省との協議のうえ、6月5日に自主返上の手続きを開始したという。 従業員に子育てがしやすい労働環境などが整った企業を厚生労働省が認定する「プラチナくるみん」も取得済みだったが、ホワイト500と同様、こちらも自主返上の手続に入っている。 労基法違反が明るみに出たのは、法令違反事案の存在を認めた社内資料を基にした内部告発があったためだ。 経産省への内部告発は、会社が認めた前述の5件以外にも違法行為があると示唆したうえで、ホワイト500に申請する際に会社は「重大な労働基準関係法令の同一条項に複数回違反しているにもかかわらず、虚偽の内容で申請し、認定を受けました」と指摘している』、「内部告発」は経産省だけでなく、肝心の労基署にも行われたのだろう。経産省の「ホワイト500」、厚生労働省の「プラチナくるみん」、それぞれ別の目的があるとはいえ、こんなくだらない賞を作る省庁も問題だ。
・『武田は内部告発のいう「虚偽」を完全否定 しかし、武田は「人事が社内調査を行ったうえで、ほかに重大な法令違反の隠ぺいや虚偽申請などの事実はないことを確認した」と内部告発を完全否定する。昨年11月の経産省への申請時点で労基署からの是正勧告はあったが、「同一条項で複数回違反」ではなかったため申請したという。その後、今年4月に2回目の是正勧告を受けたため、規程に従って認定の自主返上手続に入ったと説明する。 もし告発どおりだと、ホワイト500の申請は虚偽となり、自主返上では済まずに認定が剥奪され、最大4年間申請もできないペナルティーも課される。経産省は現時点では虚偽申請だと考えておらず、会社が言う通りの自主返上の手続きに入っているという立場だ。 それにしても、先進的なグローバル経営を標榜する企業の足もとで、なぜこのような事態が起きているのだろうか。 武田の広報担当者は「昔の武田では(労基法違反は)あったが、ここしばらくは減ってきていた」という。近年は違反をしないように社員にも厳しく指導がいくようになったことが違反減少につながった、というのが武田関係者の解説だ。武田の内部事情に通じた複数の業界関係者からも同じような声が聞かれる。 是正勧告を受けた社員やその上司らに聞き取りをした結果、武田の人事部門は「上司と部下のコミュニケーションの問題が主因」と判断しているようだ。上司は部下の仕事ぶりをみて、過重だと思えば、部下と話し合って上限を超えないように解決策を出す必要がある。一方、部下は早めの相談が求められるが、今回は両者間のコミュニケーションに問題があったというのだ。 ただ、この説明にはやや無理がある。複数の武田OBは、昨年春以降のシャイアーとの買収に絡むタフな交渉が社員の仕事量を増加させたのではないかと指摘する。労基法違反5件のうち3件がグローバル本社で起きていることも、その疑いを強める』、「経産省は現時点では虚偽申請だと考えておらず、会社が言う通りの自主返上の手続きに入っているという立場だ」、というのは経産省らしいが、国民の立場からは情けない姿勢だ。「シャイアーとの買収に絡むタフな交渉が社員の仕事量を増加させたのではないか」、というのは大いにありそうなことだ。
・『フレックスタイム制や「中抜け勤務」も柔軟に  2018年8月には生産性を向上させるために、これまで以上に働き方の柔軟性を増す制度を導入した。1日の標準勤務時間のうち最低でも2分の1以上は働かないといけなかったという設定をなくし、半日休暇を取得した場合でも残り半日にフレックスタイム制を利用できるようにした。 勤務時間中に病院や銀行に行くなどのプライベートな用事のために、勤務を短時間中断する働き方(中抜け勤務)も、上司の了解を得れば可能になった。在宅勤務に限らず、一定要件を満たせば、自宅以外でも勤務できるテレワーク制度も取り入れた。 ただこれは、従業員には使い勝手のよい制度だが、労働時間を管理する立場からいうと逆に難しい面を伴うものだ。 そこに武田をグローバル企業として脱皮させる、シャイアー買収という過去にない大型案件が重なった。グローバル本社に集う広報や経理、財務、法務、事業開発などの部門は、イギリスに株式を上場し、事業の本拠を置くシャイアーとの折衝が重なる。関係者が「季節労働」と口をそろえるように、時期ごとに訪れる仕事量の多い山がさらに高くなったうえに、柔軟な働き方導入により、労働管理やコミュニケーションの高度化が要求されるようになった。 5月24日にはグローバルHR日本人事室名の「【至急・緊急】時間管理におけるコンプライアンス順守の再徹底」、6月7日には「時間管理におけるコンプライアンス順守徹底に向けた私たちのコミットメント」と題した文書が日本国内の全従業員に送付された。 ともに法令順守の徹底を訴える内容で、「法令違反に抵触する事案が複数の事業場で再三発生しています。(中略)きわめて深刻な状況です」などと危機感をあらわにしている。 とくに後者は、国内部署のトップ18人が宣誓・署名する形をとっている。CFO(最高財務責任者)のコスタ・サルウコス、日本ビジネス部門トップの岩﨑真人の各氏ら、武田の最高執行機関であるタケダ・エグゼクティブチーム(TET)メンバー数名を含む上位管理職が名を連ねている』、こんな文書は「出した」というだけで、時間管理をどのように推進していくのかという具体策がないままでは、意味のない単なる精神論だ。
・『主要部門トップの連名で危機感を共有?  国内主要部門のトップが連名で従業員に法令順守などを訴えるのは武田では初めてのこと。危機感の醸成と共有が狙いだろうが、内部告発は「これはあくまでも労働基準監督署に向けたポーズであり、(中略)労基法違反について真剣に受け止めている、と見せかけるために送信されたメールである」と手厳しく批判している。 そして、最大の疑問はトップのクリストフ・ウェバー社長のこの件への肉声が武田の社内外に伝わってこないことだ。一連の問題について、トップがどのように考え、どのように解決していくかを聞きたいところだが、今のところウェバー氏は音なしの構えだ。 6月27日の株主総会では、議決権行使助言機関のISSが、ROE(自己資本比率)が低いことを理由にウエバー社長の取締役選任への反対推奨を突きつけている。 武田OB株主や創業家の一部からなる有志団体「武田薬品の将来を考える会」も、昨年のシャイアー合併反対に続き、今年の株主総会でも損失発生時に経営陣に役員報酬の返還などを請求できる「クローバック条項の定款への採用」「全取締役の個別報酬も開示」を株主提案している。 株主総会でウェバー社長はどんな説明をするのだろうか』、「一連の問題について、トップがどのように考え、どのように解決していくか」、といった純粋な国内労務問題については、ウェバー社長が関心を持つとは思えない。株主提案は否決されて終わりだろう。 
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LIXIL問題(その2)(LIXIL 潮田氏 vs 瀬戸氏 確執の源流、LIXIL問題 助言会社と海外投資家 かみ合わぬ争点) [企業経営]

LIXIL問題については、4月22日に取上げた。今月25日の株主総会を控えた今日は、(その2)(LIXIL 潮田氏 vs 瀬戸氏 確執の源流、LIXIL問題 助言会社と海外投資家 かみ合わぬ争点)である。

先ずは、6月17日付け日経ビジネスオンライン「LIXIL 潮田氏 vs 瀬戸氏 確執の源流」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00133/?P=1
・『LIXILグループの前CEO・瀬戸欣哉氏の「辞めさせ方」を巡って大騒動が巻き起こっている。昨秋、創業家2代目・潮田洋一郎氏が主導して瀬戸氏を解任。その経緯が問題視された。両氏の確執の源流はどこにあり、社内で何が起きていたのか。 「LIXILになってから、いいことがない。常にゴタゴタばかりだ」 5月31日、東京湾を望む大型ホテル「グランドニッコー東京 台場」の宴会場は緊張感に包まれた。住設・建材大手LIXILグループの代理店が一堂に会する年次大会。集まったのはトイレなど水回り製品を扱う代理店オーナーだ。 代理店会の会長が約200人の参加者を代表し、コーポレートガバナンス(企業統治)を巡る同社の混乱に不満をぶちまけた。原因は、潮田洋一郎会長兼CEO(最高経営責任者)と、潮田氏が昨秋CEOから解任した瀬戸欣哉氏の対立。怒りの言葉を浴びた山梨広一社長兼COO(最高執行責任者)は、厳しい表情でわびていたという。 その前週の23日、石川県金沢市の「ホテル日航金沢」ではサッシなど建材を扱う代理店の年次大会があった。そこでも微妙な空気が流れていた。 営業方針を説明したのは副社長の大坪一彦氏と、国内建材事業の責任者である吉田聡氏。大坪氏が強調した「シェア拡大」は潮田氏が瀬戸路線を否定するように掲げたものだ。一方、吉田氏が語ったのは利益重視の付加価値路線。瀬戸氏の経営方針の延長にある。 ある関係者は、「古くからのサッシの代理店にとって、吉田さんはある意味、裏切り者でしょう。これまでこの会社には、潮田体制にモノ申す人がほとんどいなかったから」と話す。 LIXILは、サッシなどを手掛ける旧トステムやトイレなどを扱う旧INAXなど住設5社が統合して2011年に誕生した会社が前身だ。旧INAX創業家の伊奈一族が経営への関与を薄める一方、旧トステム創業家2代目の潮田氏は絶大な権力を持ち続けてきた。その潮田氏が16年に“プロ経営者”として招聘したのが瀬戸氏だった。 潮田氏vs瀬戸氏。なぜ、LIXILのトップ人事を巡る対立が、得意先も巻き込んだ大騒動に発展したのか。確執の源流が、瀬戸氏の「辞めさせ方」だ』、代理店の年次大会で、「代理店会の会長が約200人の参加者を代表し、コーポレートガバナンス(企業統治)を巡る同社の混乱に不満をぶちまけた」というのは確かに異常事態だ。
・『突然の「解任」の通告  昨年10月27日、イタリアに滞在中だった瀬戸氏に、一本の電話がかかってきた。「これまで話してきた通り、自分がやりたいので辞めてほしい」 声の主は潮田氏。突然の「解任」の通告に瀬戸氏は「上半期の業績は悪かったが10月から業績は回復している。今辞めるのはあまりにも無責任だ」などと反論した。だが、潮田氏は「指名委員会の総意」だとして、最後は瀬戸氏が押し切られる形になった。 潮田氏が言う「指名委員会の総意」なるものは“作り物”だった。 前日の10月26日に緊急招集された指名委員会。自身もメンバーの一人である潮田氏は、10月19日の会食で「潮田さんがCEOを務めるなら私はいつでも身を引く」という瀬戸氏の発言があったなどと説明。指名委員会は瀬戸氏のCEO解任と潮田氏自身のCEO就任、並びに当時、社外取締役で指名委員会委員長だった米マッキンゼー・アンド・カンパニー出身の山梨広一氏のCOO(最高執行責任者)就任を決めた。 本来なら、瀬戸氏の辞意を指名委員会として確認してしかるべきだが、そうした事実は見られない。潮田氏が瀬戸氏から聞いた「潮田氏がCEOを務めるなら身を引く」という発言が独り歩きし、最終的に10月31日の取締役会で瀬戸氏はCEOを解任されてしまう。 瀬戸氏はこの発言について、「雇われの身である“プロ経営者”としての信条」として周囲に語っていた事実は認める。だが、中期経営計画をスタートしてから半年しかたっておらず、業績を根拠にした議論も、瀬戸氏本人への辞意の確認も徹底されないまま、指名委員会は瀬戸氏解任を決めてしまった。その経緯がガバナンスの観点で極めて問題だと確信するにつれて、瀬戸氏は疑念と反発を強めていく。 その頃、機関投資家たちも動き出していた。12月、会社側は機関投資家向けの説明会を開催したが、納得しない海外の機関投資家が相次いで説明責任を果たすように要求。2019年1月には世界最大級の投資家である米ブラックロックが、突然のトップ交代や、指名委員でもあった潮田氏、山梨氏がそれぞれCEO、COOに就任したことの利益相反の可能性などについて説明を求める書簡を送り付けた。 LIXILの実質的な最大株主からの突き上げに、会社側に緊張が走った。さらに追い打ちをかけたのが、英マラソン・アセット・マネジメントら英米機関投資家4社の投資家連合の動きだ。 3月20日、英マラソンらは潮田氏、山梨氏の取締役からの解任を議案とする臨時株主総会の招集請求を会社側に送付。共同提案者には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)から年金資産の運用を受託している米タイヨウ・パシフィック・パートナーズの名前もあった。普段は表に出て会社と対決することがない穏健な長期投資家たちからも「ノー」を突き付けられた。 瀬戸氏が退任してからLIXILの株価は年末までに2割以上下落し、ガバナンスを巡る問題が企業価値を大きく毀損したことを問題視した。「この状態を放置しては資金の出し手に説明がつかない」(マラソンの高野雅永氏)との危機感が、彼らを突き動かした。 ただ、請求するにもLIXIL株の3%以上の所有が必要だ。機関投資家4社が集まっても、足りない。どうするか。 マラソンの高野氏は愛知県常滑市に足を運んだ。旧トステムと並ぶもう一つの前身企業、旧INAXの創業の地である。面談の相手はLIXILの現任取締役で、旧INAX創業家の伊奈啓一郎氏。投資家連合が当てにしたのは、伊奈一族と伊奈家が株式を寄贈した常滑市が保有するLIXIL株だった。 伊奈氏は、同じく旧INAX出身で元社長の川本隆一氏と共に、瀬戸氏解任を決めた取締役会では反対票を投じていた。その後も、今回の瀬戸氏解任の経緯について異議を唱えてきたが、「常に多数決で負けてきた」という思いがある。投資家連合からの誘いに乗った』、緊急の指名委員会が潮田氏の一方的な説明だけで、海外出張中の「瀬戸氏の辞意」を確認せずに、その場で解任したというのは、余りに不自然で、潮田氏の言いなりだ。「瀬戸氏が退任してからLIXILの株価は年末までに2割以上下落し、ガバナンスを巡る問題が企業価値を大きく毀損した」とあっては、機関投資家4社が「旧INAX創業家の伊奈啓一郎氏」を巻き込んで、「潮田氏、山梨氏の取締役からの解任を議案とする臨時株主総会の招集請求」したのは、当然だろう。
・『会社側が解任請求を「無効化」  臨時総会を突き付けられた会社側は対応を迫られる。総会の会場は5月下旬に押さえた。だがこのまま臨時総会を開くわけにはいかない。投資家対策のアドバイザーを中心に票読みを進めると、投資家連合に分があったからだ。 4月18日、会社側は潮田氏が5月20日に取締役を辞任することを発表した。自ら辞することで、臨時総会で解任されることを回避した──。投資家連合や瀬戸氏らにはそう見えた。 その頃、「潮田さんは辞める理由を探していた」とあるLIXIL幹部が明かす。潮田氏からすれば、理由もなく辞めてはガバナンス不全を自ら認めることになる。それだけは避けたかったはずだ。 LIXILは潮田氏の辞任を発表したのと同じ日、業績の大幅下方修正を発表した。11年に買収したイタリアの建材子会社ペルマスティリーザの巨額損失が原因で、19年3月期、LIXILは522億円の最終赤字に沈んだ。 「私の記憶の限り最大の赤字。一義的な責任はCEOだった瀬戸さんにある。ただ、任命したのは当時、指名委員会のメンバーで取締役会議長だった私。瀬戸さんを招いたのは取締役を続けてきた38年間で最大の失敗だった」 潮田氏は自らの辞任の理由を任命責任だと説明した。潮田氏だけでなく、山梨氏も6月の定時株主総会で取締役を退任すると表明。臨時総会を開催する意義を失った投資家連合は5月9日、招集請求を取り下げるしかなかった。 株主からの解任請求をかわした潮田氏と山梨氏。だが、社内にも瀬戸氏解任に対する不満がくすぶっていた。 4月下旬。2カ月後の定時株主総会に諮る取締役候補を決める指名委員会宛に意見書が届いた。瀬戸氏解任後の潮田・山梨体制を痛烈に批判する内容だ。 「潮田さんのビジョンは(中略)全てのステークホルダーにとっても有害」「山梨さんは常に潮田さんの考えに沿って仕事を執行」「山梨さんと仕事をする時に感じることは、決断をしてくれない、立場を常に変える、不誠実で不透明な経営姿勢」「山梨さんもしくは潮田さんの影響を受けた人間が経営することになれば、LIXIL Groupは遠からず経営不全で立ち行かなくなります」 意見書を出したのは、上級執行役ら14人で構成される「ビジネスボード」のメンバーのうち10人。現場を取り仕切る幹部の多くが、潮田・山梨体制に不満を鬱積させていた。それは瀬戸氏が4月5日に定時総会向けに株主提案した、瀬戸氏自身を含む8人の次期取締役候補を暗に支持する内容ともいえた』、臨時総会の「票読みを進めると、投資家連合に分があった」ので、潮田氏と山梨氏が辞任で「解任請求をかわした」だけでなく、イタリアの建材子会社の巨額損失で522億円の最終赤字と業績下方修正し、潮田氏は自らの辞任の理由を任命責任だと説明するとは、本当に巧みだ。「上級執行役ら14人で構成される「ビジネスボード」のメンバーのうち10人」が「潮田・山梨体制を痛烈に批判する」意見書を出したというのは、通常の組織ではあり得ないような勇気ある行動だ。負ければクビになることを覚悟の上なのだろう。
・『会社側「けんか両成敗」を主張  この時の指名委員会の委員長は英経営者協会会長などを歴任した社外取締役のバーバラ・ジャッジ氏。瀬戸氏解任を決めた当時の指名委員の一人だが、瀬戸氏を支持する上級執行役や機関投資家らは瀬戸氏の株主提案を取り入れるのではといちるの望みをかけていた。ジャッジ氏自身、「定時総会後も取締役として残る意欲が満々だった」と複数の関係者は証言する。 だが、5月13日、会社側が発表した取締役候補の中にジャッジ氏の名前はなかった。ジャッジ氏は記者会見に出席する予定だったが、代わりに現れた取締役の菊地義信氏は、「委員長はジャッジだが、日本語での微妙なニュアンスもあるので私から」と説明した。 菊地氏は潮田氏と山梨氏がCEOとCOOに就き、指名委員から外れたのを機に、委員会のメンバーに入った一人。旧トステム創業者の潮田健次郎氏の時代から潮田氏を支えてきた人物だ。 前日の指名委員会では激論が交わされたようだ。ジャッジ氏と菊地氏が候補者案で対立したとの見方もある。主導権争いに敗れたのか、関係者によるとジャッジ氏は指名委員会名での発表文書について、「これは私ではなく菊地氏が作った」と発言していたという。 候補者リストからはジャッジ氏のみならず、全ての現任取締役が外れていた。菊地氏は「取締役を一新することが経営の健全化につながる」と強調したが、あるLIXIL幹部は「指名委員会の議論はどこかで『けんか両成敗』の考えが優勢になったのだろう」と推測する。 こちらは現任取締役を外した。そちらも現任取締役は外れるべきだ──。瀬戸氏自身のほか伊奈氏、川本氏の現任取締役が候補に名を連ねる瀬戸氏側の提案を強烈にけん制した形だ。 もっとも、会社側の取締役候補選びには急ごしらえ感が否めない。 発表された候補は8人。その中に、瀬戸氏側候補である前最高裁判所判事の鬼丸かおる氏と、元あずさ監査法人副理事長の鈴木輝夫氏の名前があった。8人一括の選任を目指す瀬戸氏らは、これを「分断工作」と捉えた。 実は発表前日の夜、瀬戸氏に会社側から、鬼丸氏と鈴木氏を候補にするから伝えてほしいというメールが届いている。「事前に承諾もなく連絡先も知らないとはあまりにも不誠実」。鬼丸氏と鈴木氏は猛抗議するも会社側は無視、最終的に「会社提案・株主提案」として招集通知に記載してしまう。 さらに、発表後にコニカミノルタ取締役会議長の松崎正年氏、元米国務省のカート・キャンベル氏をバラバラと候補に追加している。「分断工作」の次は「多数派工作」か。会社側の取締役選定の経緯について、ジャッジ氏は「今期で取締役を退任するので取材には応じられない」と口を閉ざす』、「指名委員会の委員長は英経営者協会会長などを歴任した社外取締役のバーバラ・ジャッジ氏」とは権威付けのための大物だが、「激論が交わされた」とはいえ、結局は丸め込まれてしまったようだ。「「今期で取締役を退任するので取材には応じられない」と口を閉ざす」のはやむを得ないだろう。
・『「会長案件だ。文句あるか」  機関投資家や上級執行役はなぜ潮田氏への反発を強めるのか。それは、潮田氏がLIXIL株の約3%しか保有していないのに、会社のオーナーであるかのごとく振る舞い、合理的な経営判断を妨げてきたとみているからだ。 その象徴が、潮田氏が検討していたMBO(経営陣が参加する買収)とシンガポールへの本社移転だ。西村あさひ法律事務所が作成した瀬戸氏解任の経緯に関する調査報告書には、開示文書ではカットされた部分に、この案を巡り両氏が対立した様子が記されている。 潮田氏によるシンガポールへの本社移転構想は、社内の幹部や金融機関のM&A(合併・買収)担当者らにとっては、半ば公然の秘密だった。日本の将来に懐疑的な潮田氏はシンガポールに移住しており、本社移転を「潮田氏の相続税対策ではないか」と周囲は見ていた。売上高の約7割を国内に依存する同社にとって、移転構想は合理性に乏しく国内の取引先などの反発も必至だ。 それでも潮田氏は本気だったようだ。昨年8月、他の取締役メンバーとともにシンガポール証券取引所などを訪問している。関係者の一人は、「取締役とCEOから退いても、潮田さんは諦めないだろう。シンガポール系や中国系なども含め、買収資金を出そうというファンドはいくらでもいる」と話す。 潮田氏が自ら辞任する理由として挙げた業績悪化の主因、ペルマをはじめとする多くのM&Aも、潮田氏が主導したものだ。ある関係者は「砂糖に群がるアリのごとく内外の投資銀行が手数料目当てで潮田会長に様々な案件を持ち込んでいた。投資を正当化する資料作りに憤慨する社員もいたが、やがて罪悪感は薄れ、『これは会長案件だ。文句あるのか』『俺の仕事は買収することだ。止められるなら止めてみろ』とまで言う者もいた」という。 「とにかく買うことが目的となり、買収後にバッドニュースが出ても積極的に社内で共有されることはなく、現地の放漫経営を許してきた」(LIXIL幹部)。ペルマの巨額損失はその結果だ。 瀬戸氏はこうした状況に社長就任当初から警鐘を鳴らし、16年5月ごろからペルマ売却について取締役会メンバーに非公式に打診し始めている。だが、潮田氏と旧トステム出身の取締役は瀬戸氏の提案に反発。最終的には社外取締役が売却プロセスの開始に理解を示し、中国企業への売却という形で瀬戸氏の考えは実行されることになった。 瀬戸氏の不運は18年10月中旬、米当局がペルマの中国企業への売却を承認しなかったことだ。瀬戸氏解任が10月31日。11月27日にペルマの売却断念が発表された。そもそも潮田氏はペルマを中核事業として育てたいという考えを当初から示しており、辞任会見でも「宝石を石ころにした」と瀬戸氏を批判し、その執着ぶりを露呈している』、事業のベースは日本にあるのに、「潮田氏の相続税対策」で本社のシンガポール移転のためのMBOを検討するとは、公私混同も極まれりだ。瀬戸氏がペルマ売却に向け動いたというのは、最終的に米当局による売却の不承認とはなったが、正しい方向だったのだろう。潮田氏が「宝石を石ころにした」と瀬戸氏を批判したとは、飛んでもない言いがかりだ。
・『形だけのガバナンス先進企業  瀬戸氏は当初、ガバナンスに潮田氏が大きな影響力を及ぼしていることを容認していた節がある。かつて、「創業家かどうかは関係なく、取締役の役割は経営者を交代させること。潮田さんの姿勢は、まさにそれだ」と語っていた。 ただし、それは正しい意思決定のプロセスが機能することが前提だった。LIXILは、社外取締役が半数以上を占める指名委員会が、取締役候補やCEOの後継計画を決める「指名委員会等設置会社」である。経営の「監督」と「執行」が明確に分かれ、株式会社の形態の中で最もガバナンスが利く体制とされる。だが、LIXILの実態は違った。 旧トステム出身のある幹部は、「(創業者の潮田)健次郎さんの思いを忠実に、早く実行する社員が評価されてきた。洋一郎さんは健次郎さんほど事業へのこだわりはないが、その社風は今も残り続けている」と打ち明ける。 会社側と瀬戸氏側の取締役候補はともに、「潮田氏の影響力を排除する」と強調している。会社側は社外取締役から暫定CEOを選ぶと表明し、瀬戸氏は自らのCEO復帰に意欲を示す。 6月4日、瀬戸氏ら株主提案者は東京地方裁判所に6月25日の定時総会の決議などをチェックする総会検査役の選任を申し立てた。定時総会は事実上の「政権選択の場」。LIXILの今後のガバナンスの行方を決定づけるものになる』、定時総会の行方は大いに注目される。
・『制約条件作る「忖度」を排除する:前CEO 瀬戸 欣哉氏  なぜ私が今回、個人としてここまで会社と戦っているのか。それはこれまで、LIXILグループで働く皆さんに、「Do The Right Thing(正しいことをしよう)」と言ってきたのに、今回の問題を見過ごしたら、言ってきたことがウソになるからだ。 経営は、全ての選択肢の中から一番いいものを選んで初めて、それなりの結果が出る。日本的な忖度の問題は、選択肢を限定する制約条件を作ってしまうことだ。特に、経営の一線から離れた昔の実力者が権力を握っている場合は、今の現場を知らないから良い結果を出せる蓋然性が少ない。 失敗しても自分で立て直せるのならいいが、取り巻きの人間が忖度して「うまくいっています」と報告する状況では、軌道修正が遅れる。実際、ペルマスティリーザの場合もそうだった。 会社側の取締役候補は全員新任で、その中の社外取締役から暫定CEOを選ぶという。兼職が多い方もいて、本気でLIXILの経営に時間を割けるのだろうか。大事な会社を実験台にされてはたまらない』、もっともな主張だ。
・『指名委員会、運用間違えば暴走:コニカミノルタ取締役会議長 松崎 正年氏  LIXILグループが採用している「指名委員会等設置会社」という体制は、どんな力のある人でも社外取締役にチェックされるというメリットがある。ただし、どんな人を社外取締役に選ぶかが重要で、数をそろえたり、多様性に配慮したりするだけでは機能しない。逆に、運用を間違えれば、権限が大きいだけに指名委員会は暴走する。それが最大のデメリットで、今回の件(瀬戸氏解任の経緯)はそれを示している。 会社にとって一番大切なことは、持続的な成長をすることだ。そのためにはトップがチェックされる仕組みが欠かせない。人によっては軌道を外す場合があり、そんな時に「殿、ちょっとお待ちください」と止めるのが社外取締役の役割だ。今回のLIXILのように創業家が影響力を発揮しようとしても、ちゃんとした社外取締役がいればここまでの騒動にならなかったはずである。 社外取締役は、常に「職業的懐疑心」を持たなければならない。LIXILの場合、創業家の影響は明らかに注意が必要で、それを排除するのが私の役目だ』、指名委員会がまともに運営されるか否かを注視していきたい。

次に、6月14日付け日経ビジネスオンライン「LIXIL問題、助言会社と海外投資家、かみ合わぬ争点」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/061400023/?P=1
・『議決権行使助言会社大手の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)と米グラスルイスの2社が、ガバナンス問題で混乱が続いているLIXILグループの定時株主総会における議決権行使の推奨を投資家向けに示した。取締役選任議案について、いずれも、昨秋CEO(最高経営責任者)から解任され、会社側と対立する瀬戸欣哉氏に対して厳しい内容になっている。瀬戸氏らは自らを含む8人の取締役候補を株主提案しているが、ISSとグラスルイスは瀬戸氏自身の取締役再任に「反対」を推奨した。 一方、瀬戸氏を支持する海外機関投資家からは、助言会社とは逆に会社提案の取締役候補に「反対」を表明する声が相次いでいる。会社側に反対を表明しているのは、潮田洋一郎会長兼CEOと山梨広一社長兼COO(最高執行責任者)の取締役解任を目指して臨時株主総会の招集請求をした英ポーラー・キャピタル・ホールディングスと英マラソン・アセット・マネジメントのほか、オーストラリアのプラチナム・アセット・マネジメント。アクティビスト(物言う株主)ではない長期投資家が株主総会前に議決権行使の立場を表明することは極めて異例だ。 助言会社と瀬戸氏支持を表明した機関投資家の論点は食い違いがあり、6月25日に迫る定時株主総会を前に混迷度合いを深めている。 定時総会には、瀬戸氏が自身を含む取締役候補8人を株主提案した。このうち、鬼丸かおる氏、鈴木輝夫氏の2人は会社側の候補者にもなっている。これにより、会社側の独自候補8人(第1号議案)、会社側と瀬戸氏側の共通候補2人(第2号議案)、瀬戸氏側の独自候補6人(第3号議案)が、株主からの信任を競い合う構図になっている。 ISSは、候補者一人ひとりについて「賛成」「反対」を判断。会社側6人、共通候補2人、瀬戸氏側2人に賛成を推奨し、瀬戸氏について反対を推奨した。共通候補の鬼丸氏、鈴木氏は会社側の候補になることを承諾しておらず、実質的に会社側6人に対し、瀬戸氏側4人となり、仮にこのメンバーで取締役会が構成されると、会社側が過半数を握ることになる。 ISSは、社外取締役候補についてはLIXILと取引がある金融機関の出身者や関係者に反対を推奨したほか、CEOなど経営の経験を重視。企業経営の経験者が多い会社側が有利となった。瀬戸氏側がLIXILと2015年から多額のコンサルティング契約があったとして独立性の問題点を指摘した米国務省出身のカート・キャンベル氏については、「唯一の外国人で企業の経営の知見を生かせる」として賛成を推奨した』、海外機関投資家は瀬戸氏側支持しているのに、彼らにアドバイスする「議決権行使助言会社大手」2社が概ね会社側支持と、見方が大きく食い違ったのは珍しい。
・『ISS:瀬戸氏、取締役はノーだがCEOはあり 他方、社内取締役候補については、瀬戸氏のほか、LIXILの前身会社の1つである旧INAX出身で現取締役の川本隆一氏、旧トステム出身で国内の建材事業責任者の吉田聡氏の3人に反対を推奨した。川本氏、吉田氏を反対したのは、取締役にならなくても知見は生かせるというのがその理由だ。 瀬戸氏については、「解任プロセスには明らかに不備があった」と認めつつ、「株価の下落は瀬戸氏が辞任したことに対する市場のネガティブな反応」などと瀬戸氏の経営手腕に一定の評価をしている。ところが、「瀬戸氏の能力が解任の正当な理由であるという見解を完全に排除することはできない」として、最終的には反対を推奨した。ただ、新たな取締役会がもう一度、瀬戸氏の能力が解任の理由として正当だったかを精査し、正当でなかったならば再びCEOに任命することも検討に値するという見方も示している。 ISSは、取締役会の構成としては、社外取締役8人、社内取締役2人が適当だとした。社内取締役は、会社側からは唯一の社内候補であるLIXILグループ副社長で中核子会社LIXIL社長兼COOの大坪一彦氏、瀬戸氏側からは現任取締役でLIXILの前身会社の1社である旧INAX創業家の伊奈啓一郎氏を推薦した』、「瀬戸氏」への姿勢は分かり難い。
・『グラスルイス:社外取締役は多いほどいい  もう1つの助言会社であるグラスルイスは、基本的に会社側の提案に賛成、瀬戸氏側の提案に反対、という判断を示した。その根拠は、瀬戸氏側の株主提案は当初、機関投資家連合による潮田氏と山梨氏の解任請求を補完することが目的で、潮田氏が既に取締役から辞任し、山梨氏も定時総会をもって退任することになった今、その役割を終えているというものだ。 また、会社提案を支持する基本的な背景として、「社外取締役の構成比率は高い方が良い」とするグラスルイスの考えがある。レポートにも、「圧倒的多数を社外取締役が占める取締役会の構成は、先進国でベストプラクティスとして広く受け入れられており、日本政府のコーポレートガバナンス改革の方向性とも合致している」と記述。9割を社外取締役が占める会社提案を「日本では比較的先進的で、長期的に株主に有益」と評価した。 他方、瀬戸氏については、業績や株価を分析したうえで、「瀬戸氏を含む現在のリーダーシップチームには、利益目標の未達や株主価値を損ねた責任がある」とした。さらに、会社側の候補者が経営の監督を強調している中、瀬戸氏側の候補者には現任の社内取締役が複数含まれていることから、従来の固定観念に基づいて経営するのではないかとの懸念を示した。 ISSもグラスルイスも、助言会社として信じる「良いガバナンス」としての基準を重視して判断している。社外取締役候補者の独立性を精査して一人ひとり判断したり、社外取締役の比率を重視したりしているのは、その表れだろう。会社側はISSの判断について、「大勢としては当社取締役会及び指名委員会の考え方が支持された」とコメントを発表している。 会社側関係者によると、ISSとグラスルイスが会社側に有利な判断を示したことで、安堵感が漂っているという。また、ある国内機関投資家は「ISSとグラスルイスの判断を見て安心した。これで会社提案に賛成してもたたかれないですむ」と話す。 だが、こうした助言会社の姿勢に、瀬戸氏は次のような疑問を呈する。 「ISSは、CEOとしての私の能力を分析して一定の評価をしているように読めるのに、結論では取締役に推奨しないとなっている。判断を避けているという印象を受ける」「グラスルイスについては、会社提案は独立性が高いと言いながら、会社側の現任の社内取締役が助言役として残ることを示唆している。それこそ、私たちが懸念している潮田氏や山梨氏の影響力が残る事態だ」「会社側は暫定CEOを選ぶとしているが、それは問題の先送り。表面的なガバナンスの形にこだわり、経営の実効性に配慮してもらえなかったのは残念」』、「ある国内機関投資家は「ISSとグラスルイスの判断を見て安心した。これで会社提案に賛成してもたたかれないですむ」と話す」、やはり国内機関投資家にとっては、「会社提案に賛成」するいい口実を与えたようだ。
・『海外投資家、瀬戸氏側支持を表明  こうした助言会社の判断は、LIXILのガバナンス不全を問題視してきた海外機関投資家の論点ともかみ合っていない。 会社側候補(第1号議案)に反対をした、LIXILの約4.42%の議決権を保有するプラチナムのポートフォリオ・マネジャーのクレイ・スモリンスキー氏は、次のように判断基準を説明する。 「会社側の候補者は、瀬戸氏解任に賛成した取締役たちに選ばれており、公平性に疑問がある。瀬戸氏解任のプロセスに問題があったことは、外部の弁護士に依頼した調査・検証結果の報告書でも明らかになっているのに、会社側の候補者を選んだ取締役たちは何も行動を起こさなかった」「会社側の候補者は、潮田氏、山梨氏が取締役に残っているとき、しかも、それぞれCEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)であるときに選ばれている。選定過程で、両氏の影響力があった可能性を否定できない」「会社側に瀬戸氏解任の経緯を詳細に説明するように求める書簡を送ったのに返事がなかった。投資家とのコミュニケーションを軽視している」「株主提案の方が経営方針が具体的。瀬戸氏は工具のネット販売MonotaRO(モノタロウ)の創業経験やLIXILの事業に対する深い理解があり、事業計画もしっかりしている」「会社側は暫定CEOの下でCEOを選ぶと言っているが、『選ぶ』ということを表明しただけで具体性に欠ける。会社側は潮田氏の影響力を排除すると言うが、であればなぜ、瀬戸氏に任せようとせず、瀬戸氏らの株主提案を排除するのか。『喧嘩両成敗』という発想も的外れだ。瀬戸氏側はガバナンスにおける不適切な行動を見過ごすまいと、正しい行動を起こした」「上級執行役ら『ビジネスボード』のメンバー14人中10人が、瀬戸氏と業務の執行を続けたいと連名で訴えた書簡は極めて重く、彼らの意見を重視した」 臨時総会を請求したマラソンは6月14日、声明を発表。その中で「(臨時総会の請求を取り下げた)後の会社側の対応や言動は株主の不信感を増幅するものでした。(中略)むしろ会社側からは株主に対して敵対的な言動が繰り返されました」「今回の会社提案(第1号議案)の取締役候補は、(中略)マラソンを含めて指名委員と面談した株主が望んだものとはほど遠い」「前CEOの瀬戸氏による経営が市場の評価を得ていたことは、突然のCEO交代後の株価下落を見ても明らか」と、怒りをあらわにしている。ポーラー・キャピタルも、同様の声明を11日に発表している』、「海外投資家、瀬戸氏側支持」の声明は、もっともだ。
・『両陣営で取締役会を構成したら混乱は長期化  助言会社が、自ら信じる「ガバナンスの形式」から会社側と瀬戸氏側の候補者の賛否を判断しているのに対し、これらの機関投資家は、会社側の次期取締役候補の選定プロセスや瀬戸氏側候補に対する敵対的な姿勢なども含め、株主に対する不誠実な対応を問題視している。 会社側が瀬戸氏側の候補者を排除しようと対決姿勢を示している以上、両陣営からの候補者がが取締役会を一緒に構成したら混乱を招くのは必至だ。関係者の中には、瀬戸氏側が負けたら、瀬戸氏を支持してきた機関投資家が株を売却して株価がさらに下がり、アクティビストにつけ入られるのではないかと懸念する声も聞かれる。 助言会社の判断が出たことで、多くの機関投資家会社が会社側か、瀬戸氏側か、どちらを支持するのか最終判断をするとみられる。株主総会は6月25日。いよいよ、大詰めを迎える』、「議決権行使助言会社大手」が概ね会社側を支持し、国内の機関投資家などに影響を及ぼすとみられるだけに、瀬戸氏側は苦戦する可能性もある。どういう結果になるかはともかく、注目点ではある。
タグ:日経ビジネスオンライン LIXIL問題 (その2)(LIXIL 潮田氏 vs 瀬戸氏 確執の源流、LIXIL問題 助言会社と海外投資家 かみ合わぬ争点) 「LIXIL 潮田氏 vs 瀬戸氏 確執の源流」 前CEO・瀬戸欣哉氏の「辞めさせ方」を巡って大騒動 建材を扱う代理店の年次大会 代理店が一堂に会する年次大会 同社の混乱に不満をぶちまけた 突然の「解任」の通告 本来なら、瀬戸氏の辞意を指名委員会として確認してしかるべきだが、そうした事実は見られない 瀬戸氏が退任してからLIXILの株価は年末までに2割以上下落 伊奈氏は、同じく旧INAX出身で元社長の川本隆一氏と共に、瀬戸氏解任を決めた取締役会では反対票を投じていた。その後も、今回の瀬戸氏解任の経緯について異議を唱えてきたが、「常に多数決で負けてきた」という思いがある。投資家連合からの誘いに乗った 会社側が解任請求を「無効化」 会社側「けんか両成敗」を主張 指名委員会の委員長は英経営者協会会長などを歴任した社外取締役のバーバラ・ジャッジ氏 指名委員会では激論が交わされたようだ 「会長案件だ。文句あるか」 潮田氏が検討していたMBO シンガポールへの本社移転 「潮田氏の相続税対策ではないか」と周囲は見ていた 売上高の約7割を国内に依存 移転構想は合理性に乏しく国内の取引先などの反発も必至 買うことが目的となり、買収後にバッドニュースが出ても積極的に社内で共有されることはなく、現地の放漫経営を許してきた ペルマの巨額損失はその結果だ 瀬戸氏の不運は18年10月中旬、米当局がペルマの中国企業への売却を承認しなかったことだ 「宝石を石ころにした」と瀬戸氏を批判 形だけのガバナンス先進企業 制約条件作る「忖度」を排除する:前CEO 瀬戸 欣哉氏 指名委員会、運用間違えば暴走:コニカミノルタ取締役会議長 松崎 正年氏 「LIXIL問題、助言会社と海外投資家、かみ合わぬ争点」 議決権行使助言会社大手 会社側と対立する瀬戸欣哉氏に対して厳しい内容 ISS:瀬戸氏、取締役はノーだがCEOはあり グラスルイス:社外取締役は多いほどいい 海外投資家、瀬戸氏側支持を表明 両陣営で取締役会を構成したら混乱は長期化
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M&A(コクヨVSぺんてる)(コクヨが突如ぺんてる筆頭株主に 文具業界で勃発した経営権問題、ぺんてる株取得は「御法度」と異論噴出 関与する政投銀の姿勢にも疑問) [企業経営]

昨日に続いてM&A(コクヨVSぺんてる)(コクヨが突如ぺんてる筆頭株主に 文具業界で勃発した経営権問題、ぺんてる株取得は「御法度」と異論噴出 関与する政投銀の姿勢にも疑問)を取上げよう。

先ずは、5月28日付けダイヤモンド・オンライン「コクヨが突如ぺんてる筆頭株主に、文具業界で勃発した経営権問題」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/203810
・『親子喧嘩をきっかけに経営不振に陥った大塚家具や、筆頭株主・伊藤忠商事と対立し、創業家社長が退任に追い込まれたデサント――。このところ続いている経営権を巡るゴタゴタが、消費者になじみ深い文具業界でも勃発した。コクヨと、同社が間接出資した未公開企業ぺんてるとの間で、すれ違いが起きている。 今回の騒動の発端は、2012年5月のぺんてる創業家・堀江圭馬氏の社長解任劇までさかのぼる。当時42歳の堀江氏は取締役会で62歳を過ぎた役員4人の退任を求めたのだが、逆に業績不振を理由として堀江氏の緊急解任動議が可決されてしまったのだ。 返り討ちにあった理由を関係者は「会議への遅刻や無断欠席、海外で豪遊を繰り返すなど過去10年の放漫経営のせい。自業自得だった」と振り返る。 創業家である堀江氏とその家族は同社株を37.45%も保有していた。その後トップへの復帰を目指し大株主として何年も活動を続けたが、支持が得られず果たせなかった。創業者の別の一族も十数%を持っていたが、堀江氏はそれすらまとめることができなかったのだ。 返り咲きをあきらめた堀江氏が18年初頭に売却を持ちかけたのが、未公開株を中心に投資を行うマーキュリアインベストメントだ。日本政策投資銀行が出資する東証1部上場の投資会社で、傘下のファンドがぺんてる株約37%を取得した。金額は70億円弱とみられる』、「創業家・堀江圭馬氏の社長解任劇」は、「過去10年の放漫経営のせい」ということであれば、無理からぬところもあるようだ。それを7年の雌伏を経て、ファンドの力を借りるとは恐れ入った。
・『全く寝耳に水の話  ただし、この株式には譲渡制限が付いていた。マーキュリアが売却する際は、ぺんてる取締役会の承認を得る必要があるのだ。 今回のコクヨのぺんてるへの間接出資が騒動となっているのは、このことを押さえなければ理解できない。 10日午後4時、コクヨは、ぺんてるに間接出資したと発表した。ぺんてるの事実上の筆頭株主となったコクヨは「両社の企業価値向上に向け具体的な取り組みを進めていきたい」と意欲を示す。 だが、ぺんてる側は「今後については一切未確定。創業来の独立性を堅持する方針にいささかの変更もない」(13日のリリース)とすげない態度だ。 というのも、ぺんてる側にしてみれば「まったく寝耳に水の話で事前に知らされていなかった。当社が社外取締役も受け入れているマーキュリアから通告があったのは、情報開示のわずか1時間前。コクヨからは午後4時だった」(ぺんてる関係者)という事情があるからだ。 コクヨによるぺんてる株式取得のスキームは少し複雑だ。先ほどから「間接出資」と表現しているのはそのためだ。 今回、コクヨは直接株式を引き受けていない。株式を保有するのは、マーキュリアが運営する投資ファンドで、そのファンドの有限責任持ち分全てを101億円で取得したのだ。つまり、ファンドをかますことで間接的に保有している』、ぺんてる株には「譲渡制限が付いていた」のに、コクヨが「ファンドをかますことで間接的に保有」したという裏技には、釈然としなものが残る。
・『本当は同業のプラスに持ってほしかった  先ほど、この創業家のいわく付きの株式は譲渡制限があると述べた。しかし、この奇策を用いることで、マーキュリアは直接ぺんてる株を譲渡したわけではなく、法的には問題ないという。 ただ、金融業界では「実質的には譲渡制限の潜脱に当たる恐れがある」(大手証券)とか、「今回のような形で出資先に無断で売却するのは、信義則上、未公開株に投資するファンドが絶対やってはいけないこと。これからの投資に影響が出てもおかしくない」(ファンド関係者)といった声も出ている。 こうした批判に対し、マーキュリアの小山潔人・取締役CIO(兼ぺんてる社外取締役)は 「ぺんてるの経営陣から別の事業会社に株式を売ってほしいとの希望があったが、なぜその事業会社が良いのか合理的な説明が一切なかった。当社としては、ぺんてるの事業を改善することが一番大切だと考え、コクヨがぺんてるの企業価値を上げ、ともにグローバルマーケットで戦っていけるベストパートナーであるとの判断のもと、今回の取引を行った」と説明する。 マーキュリアは別の事業会社を明かさなかったが、本編集部の取材で「ぺんてるが本当は株式を持ってほしかったのは同業大手のプラス」(文具業界幹部)であることが判明した。 ぺんてるは「堀江氏に近いマーキュリアに対し警戒感を持っており、マーキュリアと距離のあるプラスに接近しようとしていた」(業界関係者)というのだ。実際、最近も堀江氏はマーキュリアに出入りしているという情報を業界関係者はつかんでいる』、マーキュリアの小山潔人・取締役CIOが、ぺんてる社外取締役を兼務していたのも驚きだ。社外取締役になったのは、創業家の持株がマーキュリアに移ったためと推察されるが、ぺんてる経営陣は、こんな「獅子身中の虫」を抱えることによく同意したものだ。
・『焦点は和田社長の判断  せっかく経営力がないとされる創業家の前社長を追い出して、その株式には譲渡制限も付いているのに、株は自ら関知しない間に望まぬ相手に実質的にわたり、さらには前社長の影までちらつく――。ぺんてる側の不満は膨らんでいる。 実は、5月17日にコクヨの黒田英邦社長とぺんてるの和田優社長のトップ会談がセッティングされていたが、ぺんてる側がキャンセルしている。「情報が外部に漏れていることが分かり、会談の実施でコクヨとの協業が既成事実化するのを恐れた」(関係者)のが原因とみられる。コクヨ側は「話し合いにはもう入っている。まったく話し合いができない状況ではない」(福井正浩執行役員)と主張するが、ぺんてる側は「憶測を呼ぶため、この件は一切ノーコメントだ」としている。 売上高では7倍以上とコクヨの方が大きいが、文具関連の海外比率はコクヨの2割に対し、ぺんてるは6割となっている。コクヨでステーショナリー(文房具)事業本部長を務める福井執行役員は「120以上の国と地域に幅広く展開しているぺんてるは素晴らしい会社。国内の営業基盤では当社も強く、両社が組めば補完関係が発揮できる」とメリットを強調する。 コクヨが望んでいるように業務提携の段階に進めばシナジーは期待できそうだ。だが、株式市場とは縁遠く、資本の論理に振り回されることに慣れていないぺんてるの経営姿勢は固まっていない。和田社長がどう判断するかで、文具業界の構図が大きく動きそうだ』、では、次の主に資本市場からの記事を見てみよう。

次に、5月29日付けダイヤモンド・オンライン「ぺんてる株取得は「御法度」と異論噴出、関与する政投銀の姿勢にも疑問」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/203895
・『筆記具大手のぺんてるの株式を文具最大手コクヨが間接的に取得したことで、ファンド業界が騒然としている。というのも、ファンドを介したその取得方法が“御法度”に近いためだ。しかもそのファンドに、政府系金融機関である政策投資銀行が資金を出していることも波紋を広げている』、「ファンド業界が騒然としている」というのは当然だろう。
・『ぺんてる株の取得方法にファンド業界から異論噴出  「違法ではないかもしれないが、信義に反するし、プロとしてやるべきことではない。ブーイングが出てもおかしくない反則すれすれのプレーで、彼らは業界で二度と仕事ができなくなるのではないか」 外資系大手のプライベートエクイティ(PE)ファンドの幹部は、このように語った上で次のように続ける。 「しかも事が重大なのは、このファンドに政府系金融機関である政策投資銀行(DBJ)の資金が入っていること。政府に近いファンドがやったというのは、大きな問題に発展する可能性もあり、由々しき事態だ」 この幹部がこのように指摘するのは、5月10日に文具最大手のコクヨが、「間接的に」筆記具大手ぺんてるの株式37.45%を取得したことだ。これを受けて、経済紙は「業界再編」との見出しで大きく報じた。 しかしPEファンド業界では、今回のディールは業界再編よりも、法規制の盲点を突いた“寝技行為”なのではないかということの方が話題となっているのだ』、ファンドに「政策投資銀行の資金が入っている」というのも驚きだ。
・『譲渡制限がついていたため投資組合をまるごと売却の荒技  一体、何が問題なのか。そこで、今回のディールを簡単に振り返っておこう。 コクヨは、「当社は2019年5月10日に、株式会社マーキュリアインベストメントが 管理・運営するPI投資事業有限責任組合の有限責任組合員としての持分すべてを取得することを取締役会で決議いたしました」としている。 これに対し売却する側のマーキュリアは、「株式会社マーキュリアインベストメントが管理・運営し、ぺんてる 株式会社へ出資する PI投資事業有限責任組合にコクヨ株式会社が参画(本組合持分の取得をいいます。)することをお知らせ致します」としている(いずれもプレスリリースより)。 つまり、マーキュリアはぺんてる株を保有する「投資組合」を売却、コクヨからすると、「投資組合」そのものを取得することで、同組合が保有するぺんてる株を「間接的」にコントロールすることになったわけだ。 これを受けて5月中旬、コクヨの黒田章裕会長は、関西経済同友会代表幹事を退任するにあたって、今回のぺんてる株の間接保有について、「(息子の)英邦社長がいい買い物をした」と称賛する趣旨の発言をしている。 だが、なぜこのような複雑なスキームを採ったのか。その鍵は、ぺんてるが未上場会社であり、同社の定款に「株式譲渡に関しては、取締役会の承認を得なければならない」と記されていることにある。 つまり、ぺんてる株は「譲渡制限」がついた株式だった。 ぺんてる株は、ファンド(投資組合)が直接保有しているわけではなく、その下にぶら下がるいくつかの“子ファンド”が保有している。しかし、この株は譲渡制限がついており、取締役会の承認がなければ売買できない。 そこでコクヨは、投資組合を“まるごと”買うことでその点をクリア。ぺんてるの取締役会の承認を得ることなく株式を取得し、筆頭株主となれたわけだ。 コクヨ側が「間接的」と言っているのも、冒頭のPEファンド幹部が「反則すれすれの寝技」と言うのも、そうした理由からだ。 これに対しマーキュリア関係者は、「ぺんてるとコクヨとは補完的な関係でシナジーがある。だからマーキュリアとしては今後もこのアライアンスに関わっていくため、売りっぱなしではなくゼネラルパートナーとして残る。ただ、ぺんてる株に譲渡制限がついていたため、仕方がなくこうしたスキームを採らざるを得なかった」と主張する』、こんな脱泡スレスレの行為をファンドがやったということは、せっかく定着しかけてきたPEファンドに対する企業側の警戒心を高めるだけだ。しかも「政策投資銀行の資金が入っている」というのは、何をか言わんやである。
・『中長期的なファンドが変心「高い売却益が目的か」の声も  そもそも、図らずも今回、“主役”の1人になったマーキュリアのようなPEファンドは、わずか数パーセントの株式しか取得していないのに、株主提案という形で増配などを求める「物言う株主」とは異なる。 発行済み株式の過半数を握らないとしても、筆頭株主となって経営を主導、3~5年といった比較的長いスパンで経営改革を断行し、企業価値を向上させて別の株主に譲渡・売却するのが通常だ。 事実、マーキュリアも、2007年にライフネット生命に投資、5年後の12年に上場という形でエグジット(売却)している。食品やサプリメント、化粧品などの製造販売を手掛けるSonokoについても、13年に投資して3年後の16年に売却するなど、中長期的な視野を持ったファンドだと見られていた。 「業界では、DBJ出身者が設立したファンドで、DBJの金も入っているだけに、短期的な収益を追わない中長期的なファンドだという認識だった」(PEファンド関係者) にもかかわらず、今回は大きく違った。 マーキュリアがぺんてる株を取得したのは18年3月22日。それからわずか13ヵ月後の今年5月10日に実質的に売却しており、これまでの投資パターンとは、まったく異なるのは一目瞭然だ。 もちろん、マーキュリアもファンドであることには違いなく、リターンを求めるのは当然のこと。ただ、今回のように寝技的な手法まで使って、短期間で売り抜けようとする姿を捉えて、「高い売却益の獲得に目がくらんだのか」といった見方がもっぱらだ。 このあたりについては、ダイヤモンド・オンラインの既報「コクヨが突如ぺんてる筆頭株主に、文具業界で勃発した経営権問題」を参照いただくとして、業界で問題視されているのは、マーキュリアにDBJの資金が入っており、間接的にDBJも利益を受けているのではないかという点だ』、「マーキュリアがぺんてる株を取得したのは18年3月22日」ということであれば、マーキュリアから社外取締役を迎えたのも理解できる。ぺんてる経営陣にしてみれば、「中長期的なファンド」なる評判を信じ切っていたのだろう。まさかの裏切り行為だ。
・『政府系金融機関の政策投資銀行にも疑問の声が  事実、DBJは、2018年3月にマーキュリアと協働して組成した前述の投資組合を通じて、ぺんてるに資本参加。さらに一連のぺんてる株の取得や、投資組合の売却にも関与している。 「政府系金融機関のDBJが、こんな“禁じ手”をやっていいのか」と投資ファンドの幹部は述べるが、DBJはどう考えているのか。 DBJは本編集部の取材に対し、「マーキュリアはDBJ出身者が設立し、資金を出しているのも確かだが、独立した上場企業であり、私どもの方から個別の取引についてコメントすることはない」としている。 だが、本当にそうだろうか。 前出の投資ファンドの幹部は、「マーキュリアをおもんぱかり、売却益を出すことが目的だったのでは」と見る。 コクヨのリリースを見ると、ぺんてる株を保有する投資組合には101億円支払っていることが示されている。関係者によればマーキュリアの購入価格は2000円程度であったとされているが、それを約3000円で売却したことになる。 となるとDBJは、今回の投資組合の売却によって、50%の利益を確保したことになる計算だ。 DBJは、決して赤字を垂れ流しているわけではない。むしろ、しっかりと黒字を確保しており、今回のディール規模で利益を確保しなければならないほど、差し迫った状況にはまったくない』、DBJは政府系金融機関として、中立性が求められる以上、今回のような「敵対的買収」には手を出すべきでなかった。
・『業績悪化のマーキュリア救済措置との見方も浮上  だが、マーキュリアは、17年度に約22億円だった利益が、翌18年度には21億円となり、初めての減益となった。 今月に入って公表された1月期決算で示された19年度見通しは、減益ペースがさらに加速し、15億円にまで利益が縮小すると予想している。つまり、マーキュリア側には、早い時期に利益を確保しなければならない“事情”があり、「親密なDBJによる救済的な措置だったのではないか」(投資ファンド幹部)と見る向きも少なくない。 DBJは昨年のぺんてる株式取得時に、投資目的について「本件は、今後中間層や就学・就職人口の増加による成長が期待されるアジア等において、ぺんてる海外事業のさらなる推進等を支援するものであり、ぺんてるおよびわが国企業の国際競争力強化に資すると期待されることから、(中略)サポートを行うものです」と強調していた。 しかし、ぺんてるによれば、マーキュリアがぺんてるの株主になって以降、いくつかの海外拠点の視察には出かけているが、それ以外、特に目立つような海外事業に関する提案はなされていないという。 一連のぺんてる株の売買は、法的にはセーフかもしれない。しかし、マーキュリアに加えて、政府系金融機関であるDBJの姿勢には疑問を持たざるを得ない』、「業績悪化のマーキュリア救済措置との見方も」あるとはいえ、こんな脱法的行為が許されるべきではない。コンプライアンスとは、弁護士の郷原信郎氏によれば、法律の規定になければ、何をしてもいいというものではなく、法の精神や社会通念も守るというように、本来は広義に捉えるべきものだ。ぺんてる側がどのような対抗策に出てくるか、大いに注目される。
タグ:ぺんてる コクヨ コンプライアンス M&A 郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン コクヨVSぺんてる (コクヨが突如ぺんてる筆頭株主に 文具業界で勃発した経営権問題、ぺんてる株取得は「御法度」と異論噴出 関与する政投銀の姿勢にも疑問) 「コクヨが突如ぺんてる筆頭株主に、文具業界で勃発した経営権問題」 発端は、2012年5月のぺんてる創業家・堀江圭馬氏の社長解任劇までさかのぼる 堀江氏は取締役会で62歳を過ぎた役員4人の退任を求めたのだが、逆に業績不振を理由として堀江氏の緊急解任動議が可決 「会議への遅刻や無断欠席、海外で豪遊を繰り返すなど過去10年の放漫経営のせい。自業自得だった」 創業家である堀江氏とその家族は同社株を37.45%も保有 マーキュリアインベストメント 日本政策投資銀行が出資 株式には譲渡制限が マーキュリアが売却する際は、ぺんてる取締役会の承認を得る必要 コクヨは、ぺんてるに間接出資したと発表 ぺんてる側にしてみれば「まったく寝耳に水の話で事前に知らされていなかった。 株式を保有するのは、マーキュリアが運営する投資ファンド ファンドをかますことで間接的に保有 金融業界では「実質的には譲渡制限の潜脱に当たる恐れがある」 「今回のような形で出資先に無断で売却するのは、信義則上、未公開株に投資するファンドが絶対やってはいけないこと。これからの投資に影響が出てもおかしくない」 マーキュリアの小山潔人・取締役CIO(兼ぺんてる社外取締役) 焦点は和田社長の判断 「ぺんてる株取得は「御法度」と異論噴出、関与する政投銀の姿勢にも疑問」 ぺんてる株の取得方法にファンド業界から異論噴出 違法ではないかもしれないが、信義に反するし、プロとしてやるべきことではない 反則すれすれのプレーで、彼らは業界で二度と仕事ができなくなるのではないか しかも事が重大なのは、このファンドに政府系金融機関である政策投資銀行(DBJ)の資金が入っていること 譲渡制限がついていたため投資組合をまるごと売却の荒技 ぺんてる株は、ファンド(投資組合)が直接保有しているわけではなく、その下にぶら下がるいくつかの“子ファンド”が保有 コクヨは、投資組合を“まるごと”買うことでその点をクリア 中長期的なファンドが変心「高い売却益が目的か」の声も 筆頭株主となって経営を主導、3~5年といった比較的長いスパンで経営改革を断行し、企業価値を向上させて別の株主に譲渡・売却するのが通常だ わずか13ヵ月後の今年5月10日に実質的に売却 政府系金融機関の政策投資銀行にも疑問の声が DBJは政府系金融機関として、中立性が求められる以上、今回のような「敵対的買収」には手を出すべきでなかった 業績悪化のマーキュリア救済措置との見方も浮上 法律の規定になければ、何をしてもいいというものではなく、法の精神や社会通念も守るというように、本来は広義に捉えるべきもの
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M&A(ライザップ)(瀬戸社長「M&A 手段が目的になっていた」 大幅下方修正のRIZAPグループ・瀬戸健氏に聞く、ライザップを追い込んだ、CD「新星堂」の不振 経営不振が経営不振を呼び込む負の連鎖構造) [企業経営]

今日は、M&A(ライザップ)(瀬戸社長「M&A 手段が目的になっていた」 大幅下方修正のRIZAPグループ・瀬戸健氏に聞く、ライザップを追い込んだ、CD「新星堂」の不振 経営不振が経営不振を呼び込む負の連鎖構造)を取上げよう。

先ずは、昨年11月16日付け日経ビジネスオンラインが掲載したライザップ瀬戸社長へのインタビュー「瀬戸社長「M&A、手段が目的になっていた」 大幅下方修正のRIZAPグループ・瀬戸健氏に聞く」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/110879/111500902/?P=1
・『急成長していたRIZAPグループが突然、159億円の最終利益を見込んでいた2019年3月期予想を70億円の赤字に大幅下方修正した。プロ経営者として知られる前カルビー会長兼CEO(最高経営責任者)、松本晃氏をCOO(最高執行責任者)に招いたが、社内では古参の経営幹部と意見が対立していた。何が起きているのか。宣言した構造改革をどう進め、再生するのか。瀬戸健社長に聞いた。 Q:6月まで増益としていた今期予想を第二四半期決算で突然、最終赤字に大幅下方修正しました。なぜ大きく変わったのですか。 瀬戸健氏(以下、瀬戸):例えば業績が大きく悪化した子会社のワンダーコーポレーションは今年3月に買収した際にはもっとうまくいくと思っていました。ところが、始めて見ると計画通りにはいかなくなってきました。(第二四半期では)毎週のように売上高が落ち、利益も計画通りにはいかないと分かりました。 実はワンダーコーポレーションが販売するCDは、このまま持っていても売れる見込みがないとして最後は1枚1円で評価し直しました。それでワンダーだけで商品評価損など計39億円の構造改革費用を計上しましたが、決算発表の当日まで同社の幹部は「そこまでしなくても」と“反対”したほどです。 そのほか、非上場の理美容品販売、ジャパンゲートウェイも多額の宣伝費をかけたけども売れ行きは伸びず、これも修正せざるを得ないとなりました。そんな判断の積み上げです』、いくら新興企業とはいえ、2019年3月期最終利益の予想を159億円の黒字から、70億円の赤字に下方修正したのには驚かされた。一体、何があったのだろう。
・『「事業再生」より「落ち込み」スピードの方が速かった  Q:大幅な下方修正はいつ判断したのですか。 瀬戸:業績が計画ほどのびないようだと見えても、自分としては最初は前期並みの営業利益136億円は維持できると思っていました。それが途中で50億円になり、ゼロになり、最後は赤字に踏み込まなければならないとなりました。その意味では段々に判断したということです。 Q:ワンダーコーポレーションがCD販売の不振などで業績が低迷したように、市場としてそもそも縮小する分野の企業をいくつも買収しています。業績悪化は元々、避けがたかったのではないですか。 瀬戸:我々は買収した後に既存の事業を立て直したり、既にグループ化した企業の事業で再生したものをそこに移したりするといった形で再建を図ってきました。その再生のスピードよりも既存事業の落ち込みの方が速かった。この大幅な下方修正はそうしたことの結果です。本当に申し訳ないと思っています。 Q:それら企業の中には買収価格が会社の正味資産である純資産(総資産から負債を差し引いたもの)を下回るところがかなりありました。会計上その差額は「負ののれん」として利益計上できます。その比率は前期の営業利益の54%を占めるほどです。それを狙ったのではないですか。 瀬戸:そうではありません。私が当社を創業したころ、食べ続けるとダイエット効果があるという豆乳おからクッキーを開発し、大ヒットしました。一時は売上高が100億円を超えるほどになりましたが、類似品が出てきたことなどでその後2年ほどの間に10億円まで落ちるという経験をしています。さらにその後、美顔器を開発している企業を買収したところ、それが当たってなんとか一息つきました。 売上高や利益はそれくらい変動する。だからそれらを見る損益計算書(P/L)だけを意識していてはだめだと思ったのです。純資産を含む貸借対照表(B/S)を重視し始めたのはそれからです。負ののれんというより純資産を活用し、その不振企業を再生して、RIZAPグループとして成長しようと考えたのです』、これまではボロ企業を簿価より安く買収して、「負ののれん」として購入時に一括して利益計上できるという錬金術を利用して利益を膨らませていたことになる。「前期の営業利益の54%を占めるほど」というのは非常に大きい。
・『「松本さんは中長期の視点」  Q:買収を繰り返し、グループ企業は85社にも上っています。人材面から見てもスピード感をもって再生するのは難しかったのではないですか。 瀬戸:それは否定できません。株主の期待もあります。2021年3月期に売上高3000億円、営業利益350億円を掲げた「コミット2020」などを公表していますが、そうした成長目標に向けた手段が目的のようになってしまったのかもしれません。 だからM&A(合併・買収)はいったん止めて、構造改革を優先することにしました。 Q:カルビーの前会長兼CEOで、瀬戸さん自身が6月に招聘した松本晃氏は構造改革を先行するよう主張したが、なかなかその通りにならなかったと聞きます。 瀬戸:松本さんは中長期的な視点から何をすべきかを言われた。一方で私は今期についてもどうするかを考えなくてはいけない。長期も短期も両方大切です。両方考えないといけないのですが、なかなかすぐにはいかなかった面はあるかもしれません。先ほどお話ししたように私自身、これまでの段階で「まだ大丈夫では」と思ったこともあります。 (役員の間で松本氏の方針に反対もあったが)私は別に対立とは思いません。いい議論だったと思います。10月に松本さんはCOOを外れましたが、これはマネジメント全般より、構造改革に集中して貰うためです』、「買収を繰り返し、グループ企業は85社にも上っています」というのは、「再生」などは真剣に考えてなかった証拠だ。だからこそ、招聘した松本氏を遠ざけることになったのだろう。
・『買収企業を再生して「シナジー」を効かせる  Q:松本さんはまだ現職にとどまって改革を続けるのですか。 瀬戸:そうです。今回も大きな力になったと思います。ガバナンス(企業統治)についても意見を貰いました。1人の役員が何社も担当するようなことをしても集中できない、当事者意識が希薄になるといったことを言われましたが、その通りでした。 (今は社外活動もあり、松本氏はRIZAPに毎日来ているわけではないが)当社で働いている時間ではなく、どんなインプットをして貰い、アウトプットを我々とともに出すかが全てです。そうしていきたい。 Q:14日の記者会見では、買収した企業の売却も含め、フィットネス事業を中心とした本業に集中すると表明しました。しかし、フリーペーパーや和装品、戸建て住宅など、買収した企業の中にはどのように本業とシナジー(相互作用)を効かせていくのか見えにくいものもあります。 瀬戸:まずグループ企業個々の力を引き上げることだと思います。事業を強くして、その中からよりいいものを選び出してRIZAP本体とのシナジーを効かせていく。そんなイメージでしょうか。 フランスの有名アパレルブランド会社は、不振企業を含め多数のアパレル会社を買収し、再生して力が本当に上がったところをそのブランドと並べて売るといいます。それと似たような考え方です。 Q:構造改革が一段落した後、負ののれんのある企業を主として買収する従来のM&Aはやめるのですか。 瀬戸:必ずしもそういうわけではありません。その時々の状況で判断していくつもりです』「、買収企業を再生して「シナジー」を効かせる」のが可能な子会社はそれほどあるのだろうか、再生させる人材も大丈夫なのだろうか。最近は「結果にコミットする」との有名なテレビCMも少なくなったような気がするが、本業のボディメイクの方が順調なようだが、錬金術が限界を迎えた割には、瀬戸社長は依然強気なようだ。

次に、12月8日付け東洋経済オンライン「ライザップを追い込んだ、CD「新星堂」の不振 経営不振が経営不振を呼び込む負の連鎖構造」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/253950
・『株価は4割も下落、もはや往時の勢いは見られない――。 11月14日、RIZAPグループは2019年3月期の業績見通しを下方修正、営業利益を230億円の黒字から、33億円の赤字に、一気に引き下げた。 会社側の説明によれば従来の見通しに対して、①新規M&Aの凍結で103億円、②構造改革関連費用等を含む非経常的損失が83億円、③買収企業の経営再建遅れ分が71億――などが下振れの要因になっているという。 ②の「主犯」となったのが、RIZAPグループが2018年3月に買収したワンダーコーポレーションだ。わずか半年で39億円の損失を垂れ流す結果となった。 なお、IFRS(国際会計基準)を採用しているRIZAPグループでは、構造改革費用は営業経費に計上されるが、日本基準のワンダーコーポレーションでは特損処理される。ワンダーコーポレーションは同日、39億円の特損計上に伴う純損益の下方修正を発表した』、本日の株価は247円と、ピークの1500円の1/6と低迷するのも当然だろう。
・『ワンダーは5期連続で最終赤字  ワンダーコーポレーションは、ゲームや音楽・映像ソフト、書籍、文具など物販の「ワンダーGOO(グー)」、中古ブランド品などの買い取り販売の「REX(レックス)」、音楽・映像ソフト販売の「新星堂」の3つの業態のほか、TSUTAYAのフランチャイズ事業も手がけ、全国に300以上の店舗がある。 ワンダーコーポレーションはもともと、北関東を中心に展開しているスーパー・カスミの家電製品部門を分離独立させる形で1988年3月に設立された。その後、パソコンやゲームソフト、音楽ソフト、書籍などに取扱品を拡大、2004年10月に旧制度下で店頭公開した。 その後は4年ほど右肩上がりの成長を続け、リーマンショック直前の2008年2月期に20億円の営業利益を計上した。だが、翌期以降は反転。2016年2月期、2017年2月期は2期連続で営業赤字に沈んだ。 低水準の営業損益に加え、それが理由となって店舗の減損計上も余儀なくされる。その結果が4期連続(今期も含めれば5期)の最終赤字だ。再建に手を焼いたカスミは売却先を模索。結果、2018年3月にRIZAPグループが傘下に収めた格好だ。 RIZAPの減量ジムは売上高が年間300億円に満たないのに対し、ワンダーコーポレーションは同700億円を超える。グループの主力企業といってもいい。 その業績低迷最大の原因と言えるのが、2013年2月に買収した新星堂である。 ワンダーコーポレーションが業態別にセグメント開示を始めたのは2011年2月期から。物販のGOOの売上高は612億円あったが、翌期以降減収に転じ、直近の2018年2月期は380億円にまで減っている。 そこでワンダーコーポレーションは、2012年4月以降、M&Aによる外部成長路線に舵を切った。TSUTAYAのFC事業を手がけるサンレジャーを買収し、TSUTAYA事業に参入すると、翌2013年2月には経営不振にあえぎ、債務超過に転落していた老舗レコードショップチェーンの新星堂を買収した』、「ワンダーコーポレーション」もRIZAP同様に、M&Aで外部成長する、しかもどうやら売上高を膨らますことにも狙いがあったようだ。
・『獅子身中の虫となった新星堂  売上高は600億円台から800億円台にハネ上がったものの、これ以降、新星堂は「獅子身中の虫」さながらのやっかいな存在になっていく。TSUTAYAはそれなりに貢献しているが、新星堂は買収以来、一度も決算短信に記載のセグメント利益が黒字化したことがないのだ。 業界団体の統計によれば、CDなどの音楽ソフトの生産金額は1998年の6074億円、DVDなど映像ソフトの販売は2004年の3753億円をピークに、2017年に音楽ソフトは2320億円、映像ソフトは1876億円まで縮小している。 ワンダーコーポレーションは衰退の一途をたどる業界に身を置く企業の再生に挑んだことになる。だが結果は厳しかった。 買収当時155カ所あった店舗は現在では103カ所に減少。さらに自社に新星堂を吸収合併することで、本部経費の削減を進めた。買収から5年以上が経過しながら、セグメント損益は1度も黒字化に至っていない。 GOOの売上高の減少が続いている理由は何か。年によってゲームや音楽、映像ソフトにヒットが出たり出なかったりといった個別要因が積み重なりながら、全体として漸減トレンドが続いてきた。 得意としてきたゲーム、音楽・映像ソフトや漫画本がデジタルに置き代わり、ネット通販も普及していく中で、「リアル店舗でしか提供できないサービスを実現できていない」(ワンダーコーポレーション)ことが原因だ。 こうしたGOOの収益力低下に新星堂の赤字が加わったことが、ここ数年の業績低迷の根本原因と言っていい。 一部誤解を生んでいるが、ワンダーは棚卸し評価損の計上基準を今回変更したわけではない。1年間売れなければ50%、2年間売れなければ1%に切り下げる基準で、毎月評価を見直している。 構造改革費用の資金使途にも一部誤解がある。GOOの店舗は、500坪以上の大型店の中に、音楽・映像ソフト、ゲーム、書籍、文具などの売り場を設ける複合店。TSUTAYAやREXを入れている店もある』、確かに「新星堂は「獅子身中の虫」さながらのやっかいな存在に」なったようだ。
・『構造改革費用の中身は  市場が縮小する音楽・映像ソフトの売り場は圧縮し、空いたスペースにスターバックスなどのカフェやファミリーマートといったコンビニ、ベーカリーショップ、スポーツジムや英会話教室など、集客力があるテナントを誘致する施策を進めている。 既存の売り場を縮小すれば、そこで使用していた什器備品は除却、商品は廃棄の対象になる。音楽・映像ソフトは再販売価格維持制度に守られているので返品は可能だが、全商品が無条件で返品できるわけではない。 返品可能な量は年間の仕入れ額にスライドするので、近年のように仕入れを絞り込んでいると、返品できずに廃棄対象になる商品も少なからず出てくる。 簿価は切り下げていても、廃棄にはコストがかかるため、将来、既存の売り場を縮小する際に発生するであろう除却損、商品廃棄損を試算し、積み上げた額が39億円。この中には、さらに加速化する新星堂の不採算店のスクラップで発生する除却損、商品廃棄損も含まれている。 従って、「テナントの入れ替えが発生する都度、そこにかかるコストが引当金から取り崩されるので、テナントへの転換に伴う損失は基本的に発生しない」(ワンダーコーポレーション)。見方を変えれば、テナントの転換が発生しない限り、今回計上した引当金の取り崩しも発生しない。 つまり、在庫評価損を計上するわけではないので、今期の在庫商品が来期以降売れても売上総利益率を劇的に引き上げるということもない。 ワンダーコーポレーションを悩ませる新星堂だが、今や同社ごと飲み込んだRIZAPグループをも悩ませる。新星堂をRIZAPは再生させることができるのか。茨の道が続くことは間違いない』、RIZAPは「東証1部市場への鞍替え」を目指しているようだが、こんな有様では先送りせざるを得ないだろう。「負ののれん」を狙ったM&A戦略の「落とし穴」からの脱出は容易ではなさそうだ。
明日は、M&A(コクヨVSぺんてる)を取上げる予定である。
タグ:東洋経済オンライン M&A 日経ビジネスオンライン ライザップ (瀬戸社長「M&A 手段が目的になっていた」 大幅下方修正のRIZAPグループ・瀬戸健氏に聞く、ライザップを追い込んだ、CD「新星堂」の不振 経営不振が経営不振を呼び込む負の連鎖構造) 「瀬戸社長「M&A、手段が目的になっていた」 大幅下方修正のRIZAPグループ・瀬戸健氏に聞く」 59億円の最終利益を見込んでいた2019年3月期予想を70億円の赤字に大幅下方修正 ワンダーだけで商品評価損など計39億円の構造改革費用を計上 「事業再生」より「落ち込み」スピードの方が速かった 会計上その差額は「負ののれん」として利益計上できます。その比率は前期の営業利益の54%を占めるほどです M&A(合併・買収)はいったん止めて、構造改革を優先 買収を繰り返し、グループ企業は85社 買収企業を再生して「シナジー」を効かせる 「結果にコミットする」との有名なテレビCM 「ライザップを追い込んだ、CD「新星堂」の不振 経営不振が経営不振を呼び込む負の連鎖構造」 本日の株価は247円と、ピークの1500円の1/6と低迷 ワンダーは5期連続で最終赤字 RIZAPの減量ジムは売上高が年間300億円に満たないのに対し、ワンダーコーポレーションは同700億円を超える 獅子身中の虫となった新星堂 「東証1部市場への鞍替え」
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ソフトバンクの経営(その10)(ソフトバンク・ビジョン・ファンド 出資のサウジなどが不満、ソフトバンク いまごろヤフーを連結子会社化するワケ、顧客離れに苦しむ米スプリント ソフトバンクに暗雲、ソフトバンク 「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、2月17日に取上げた。今日は、(その10)(ソフトバンク・ビジョン・ファンド 出資のサウジなどが不満、ソフトバンク いまごろヤフーを連結子会社化するワケ、顧客離れに苦しむ米スプリント ソフトバンクに暗雲、ソフトバンク 「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情)である。

先ずは、2月20日付けダイヤモンド・オンラインが米紙WSJ記事を転載した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド、出資のサウジなどが不満」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/194594
・『ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が率いる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」。10兆円規模のこのハイテク投資ファンドに対して、二大出資者であるサウジアラビアとアブダビの政府系ファンドが、ビジョン・ファンドの運用を担うソフトバンクへの不満を募らせている。火種となっているのは投資先の評価額の高さや、投資判断に対する孫正義社長の影響力の大きさだ。 サウジのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)とアブダビのムバダラ・インベストメントは、ビジョンファンドの資本のうち約3分の2を拠出している。両ファンドを満足させられなければ、孫氏が追加資金を確保したり、新ファンドを立ち上げたりすることは難しくなる。 複数の関係者によると、PIFとムバダラは非公式の場で、ビジョン・ファンドが一部投資先に支払った金額についての不満をあらわにした。また関係者の1人は、まずソフトバンクが投資してからその株式をより高い金額でビジョン・ファンドに移管するという手法について、PIFが懸念していると話した。 一部の投資家はPIFに対し、孫氏がファンド幹部の投資判断を却下することがあり、ファンドの意思決定のプロセスが混沌(こんとん)としていることから、土壇場で判断が覆ることも多いと不満を漏らした』、「約3分の2を拠出している」両ファンドが不満というのは穏やかならざる事態だ。
・『2017年半ばの立ち上げ以来、ビジョン・ファンドが明らかにした投資などは総額約600億ドル(6兆6600億円)に上る。投資先には配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズや、共有オフィス賃貸の米ウィーワークも名を連ねる。関係者によると、全体の4分の3程度の出資先は決定済みで、ファンド幹部はさらに数十億ドルの調達を検討している。 ビジョン・ファンド、PIF、ムバダラはいずれも関係は良好だとし、PIFとムバダラはビジョン・ファンドの戦略、ガバナンスへの支持を表明している。 複数の関係者によると、両者の緊張の一因は、過去の出資や出資待ち案件の評価額の高さにある。ウィーワークのほか、顔認識技術を開発する香港のセンスタイムなどがやり玉に挙げられている。 ソフトバンクはウィーワークに最大160億ドル出資予定だったが、PIFやムバダラの反対を受け、1月には20億ドルに減らすことを決めた。 ビジョン・ファンドへの投資家は、ソフトバンクがまず自ら投資して、後にビジョン・ファンドに株式を移管するという手法にも不満を抱いている。 PIFとムバダラに近いある人物は、ソフトバンクが両ファンドを犠牲にして、テクノロジー企業の高い評価額に乗じて利益を得ている可能性があることに対し、懸念を表明した。届け出によれば、ソフトバンクがビジョン・ファンドに移管・売却したか、あるいは今後売却予定の株式の価値は少なくとも263億ドルに上る。これら株式の取得に費やしたのは合計249億ドルほどだ』、「ソフトバンクがまず自ら投資して、後にビジョン・ファンドに株式を移管するという手法」は結果的には利益相反行為に相当するが、大いにあり得ることだ。ただ、「今後売却予定の株式の価値は少なくとも263億ドル」、「これら株式の取得に費やしたのは合計249億ドル」ということであれば、移管による益出しの余地は小さくなったようだ。
・『移管済みまたは移管予定の株式には、中国の配車サービス大手の滴滴出行(ディディチューシン)株も含まれる。ソフトバンクは滴滴出行を59億ドルで取得し、ビジョン・ファンドに68億ドルで売却することで合意している。また昨年、インドの宿泊予約サイト運営会社OYO(オヨ)の株を移管した際には、2015年の取得額1億ドルの2倍の額を手にした。 問題になっているのは、ソフトバンクが投資にかかった手数料を上乗せしていることではなく、市場価値が上がっているときに株式を移管することが多いため、ビジョン・ファンドが損失を被る可能性があるという点だ。 時にはソフトバンクが自ら投資先の資金調達ラウンドを主導して、評価額の引き上げを招いたこともある。関係者の話では、最近の資金調達でOYOの評価額は50億ドル近くに達したが、これはソフトバンクが初出資した2015年当時の13倍にあたる。 ソフトバンクは今月、投資家向け説明会で、ビジョン・ファンドの投資は2018年末時点で第三者による評価を受けたとしたほか、評価額は主要投資家が選定した独立コンサルタントによる確認作業や監査など、いくつもの段階をへて決まると述べた。 評価額に対する懸念は、投資プロセス、特に孫氏の権限についての懸念と強く結びついている。複数の関係者によると、孫氏は最近、協力先の反対を振り切って、中国で中古車のネット売買プラットフォームを運営する車好多集団への投資を決めた。投資額は最大15億ドルだという。車好多は最近、あるライバル企業から不正行為を指摘されていた。 車好多は不正行為を否定している。孫氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、ソフトバンクは独自のデューデリジェンス(資産査定)を行い、競合の訴えは事実無根だったことが判明したと述べた。 関係者によれば、この投資額に基づく車好多全体の評価額は85億ドルとなる。同社と競合する中国企業で、米ナスダック市場に上場するユウシン(Uxin)の時価総額は11億8000万ドル、香港上場のイーシン(Yixin)・グループの時価総額は17億5000万ドルだ』、車好多の「評価額は85億ドル」というのは、ユウシンやイーシンに比べ法外に高過ぎるような気もするが、「投資額は最大15億ドル」であれば、大したことはない、といえるのかも知れない。

次に、5月9日付け日経ビジネスオンライン「ソフトバンク、いまごろヤフーを連結子会社化するワケ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/050800325/
・『ソフトバンクグループの国内通信子会社ソフトバンクは2019年5月8日、兄弟会社であるネット大手のヤフーを第三者割当増資を通じて連結子会社化すると発表した。6月までに4565億円を投じてヤフーが新規発行する15億1147万8050株を取得する。 両社はもともとサービスの連携を強めて相互送客を図ってきた。例えばヤフーが17年2月から始めた「ポイント10倍キャンペーン」。ヤフーショッピングの利用で与えられるポイントは、通常100円の買い物につき1ポイント。それに対して、ソフトバンクのスマホ利用者には10倍の10ポイントをつけた。これもあって17年4~9月期のヤフーショッピングの取扱高は前年比39%増の1407億円と大きく伸びた。 こうした取り組みを加速させるのがヤフー子会社化の主な目的だ。ソフトバンクの宮内謙社長は同日開催した決算会見で「非通信の分野をより強化するため」とヤフー子会社化の狙いを説明。背景にはソフトバンクが主戦場としてきた国内通信市場は成熟が進んでいることがある。ポータルサイトで高いシェアを持ちEC(電子商取引)でも幅広いユーザーを持つヤフーとの連携強化で成長を維持したい考えだ』、ソフトバンクにとっては、予想される業績伸び悩みをヤフーでなんとかカバーしたいのだろうか。
・『一方で、ヤフーの経営がこれまでもソフトバンクグループの意向に左右されてきた面がある。2009年にソフトバンクがデータセンター子会社を約450億円でヤフーに売却。14年に勃発したヤフーによるイー・アクセス買収中止騒動も記憶に新しい。当時、ヤフーは国内携帯電話4位だったイー・アクセスをソフトバンクから買収すると発表。ヤフーの検索サービスなどを手軽に利用できるスマホの開発などの成長戦略を打ち出したが、この買収でソフトバンクに約4500億円を支払うことが判明した。ヤフーの株主が「親会社の資金繰りを助けるためか」と反発する中、計画は発表から2カ月で白紙に戻った。こうした経緯はありながらも、兄弟関係から親子関係に変わるソフトバンクとヤフー。資金の融通にとどまらず、通信とネットを融合させた魅力的なサービスの創出など真の相乗効果につなげられるか』、「兄弟関係から親子関係に変わる」ことが「魅力的なサービスの創出」にどうつながるのか、具体的に指摘して欲しかった。

第三に、5月10日付けロイター「アングル:顧客離れに苦しむ米スプリント、ソフトバンクに暗雲」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/sprint-softbank-analysis-idJPKCN1SG04M
・『米携帯電話会社スプリントの業績が失速したことで、8割超を出資するソフトバンクグループの米通信事業に暗雲が立ち込めている。 ソフトバンクGはスプリントをTモバイルUSと合併させて非子会社化する計画だが、規制当局の承認が得られず、4月29日の合併手続き完了期限を3カ月延長した。孫正義社長は9日の会見で「事業は苦しいながらも一応、順調に行っている」と語ったが、不透明感は増すばかりだ。スプリントの2019年1─3月期の純損益は、21億7400万ドルの赤字に転落した。前年同期は6900万ドルの黒字だった。20億ドル(2220億円)の減損損失を計上したことに加え、携帯電話契約数が予想以上に減少したことが足を引っ張ったが、市場では値引きをしても顧客を引きとめられない状況に存続を危ぶむ声が広がっている。 ニュー・ストリート・リサーチのアナリスト、ジョナサン・チャップリン氏は「スプリントは現在の資本構造では単体で存続しないだろう」との見方を示した。 ソフトバンクは起死回生策として、スプリントをTモバイルUSと合併させる計画を1年前に打ち出したが、合併を審査する米規制当局の動きは鈍い。寡占化により競争が後退することを懸念しているためだ。 孫社長は「Tモバイルにとっても、スプリントにとっても、アメリカの消費者にとっても、国家戦略として第5世代(5G)ネットワークを強化する観点からも、合併が実行されるのがベストだと信じている」と合併に理解を求めた。 だが、審査する米司法省は現在の形での合併に難色を示しており、合併を実現するには「身を切る新たな計画」が必要だ。 スプリントとTモバイルUSは4月、米連邦通信委員会(FCC)に対して、合併しなければデータ需要に対応し続ける能力がなくなり、値上げをせざるを得なくなると窮状を訴えた。これにより、もはや単独では生き残れないという厳しい現実が、世間に知れ渡った。 窮状を訴えれば訴えるほど、不安から契約をためらう消費者が出てくることは容易に想像できる。しかし、そこまでしてでも承認アピールをしなければならないところに、同社が置かれている厳しい状況が垣間見える。 ソフトバンクグループが9日発表した2019年3月期の営業利益は、前年比1.8倍の2兆3539億円だった。ビジョンファンドとデルタファンドからの利益は1兆2566億円(前期は3029億円)となり、利益の過半を稼ぎ出した。 ただ、その大半は未実現の評価益(含み益)であり、2000年代初期に起こったインターネットバブルの崩壊と同じようなことが起きれば、逆回転しかねない。 利払いなど6000億円を超える財務費用が重くのしかかる中で、4兆円超の負債を抱えるスプリントの連結外しに失敗すれば、信用力にネガティブな影響が出るのは必至だ。 野村証券・アナリストの増野大作氏は、8日付のリポートで「ソフトバンクグループのスプリントに対する回収可能額は連結簿価とほぼ同じ水準にとなり、今後の米国携帯電話市場の動向やスプリントの収益状況に従来以上に注意を払う必要がある」と警鐘を鳴らしている』、孫社長はトランプ大統領には当選直後に面談しており、認可は簡単にいくと思わせたが、「審査する米司法省は現在の形での合併に難色を示しており」、と難航しているようだ。孫社長には次の一手があるのだろうか。

第四に、5月16日付けダイヤモンド・オンラインがWSJ記事を転載した「ソフトバンク、「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/202501
・『15兆円を超える負債を抱え、信用格付けがジャンク(投資不適格)級のソフトバンクグループ(SBG)は、これ以上借り入れの余地があるように見えないかもしれない。だが銀行関係者は依然、世界最大のテクノロジー投資家である同社への融資機会を狙っていると話す。 理由の1つは、SBGとの関係がもたらす巨額の手数料だ。融資に伴う利息のみならず、孫正義会長兼社長が次々と手掛ける取引により、投資銀行業務の手数料が発生するからだ。 もう1つの理由はここ数年の戦略転換にある。極めつけは昨年行った組織改正により、銀行も信用格付け機関も、同社を携帯電話事業者ではなく、投資持株会社とみなすことが可能になったことだ。SBGは今も米通信大手スプリントおよび日本の通信事業者ソフトバンクの親会社ではあるが、金融機関は今や、孫氏がかねて主張している通り、仮にスプリントが債務の支払いに困っても、SBGが肩代わりする必要はないとの見方に傾きつつある。 孫氏は先週、親会社のSBGは独立採算の子会社に対する債務保証をしておらず、むしろ「代理弁済をしてはならない」と語った。「SBGの株主からすると、弁済義務がないのに代理して払うのは株主価値を毀損(きそん)することになる」 スプリントは最近、米規制当局に対して「持続可能な競争の道筋を描けない」と述べた上で、同業のTモバイルUSとの合併を当局に阻止されれば、連邦破産法11条の適用申請を検討せざるを得なくなるというアナリストの見解を引用した』、スプリントが「合併を当局に阻止されれば、連邦破産法11条の適用申請を検討せざるを得なくなるというアナリストの見解を引用」とはいえ、自ら破綻の淵にあることを事実上認めた瀬戸際作戦に打って出たのはよほどのことだ。これによりスプリントの新規顧客獲得は一段と困難にならざるを得ない筈だ。
・『数年前までSBGは日本の通信事業部門を100%所有し、アナリストや信用格付け担当者は(特に日本では)同社を主に通信企業とみなしていた。同社の負債総額15兆7000億円のうち、通信事業の負債が大部分を占めており、クレジットアナリストは法的な義務はどうあれ、SBGが通信事業の債務返済を免れるのは難しいと考えていた。 その後SBGは2017年、サウジアラビアの政府系ファンドの出資を受けて、10兆円規模の投資ファンド「ビジョン・ファンド」を立ち上げ、米配車大手ウーバー・テクノロジーズなど世界中の有望な新興企業に資金を投じ始めた。18年12月には日本の通信子会社を株式上場した。 上場後、信用格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスやS&Pグローバル・レーティングは、いずれもSBGを投資会社という分類に変更。その後S&Pは同社の格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。ムーディーズは継続的に投資収益を生むなら、格上げを検討する可能性があると述べた。SBGの社債格付けは両社とも投資不適格としている。 SBGに対する融資は、最終的に中国電子商取引大手アリババグループの株式といった価値ある資産が担保する形となる。一方、ビジョン・ファンドの借入金はウーバーやシェアオフィス運営大手ウィーワークのような企業への出資が担保している。SBGは、保有資産には2450億ドルの価値があるとしている。 ビジョン・ファンドの資産の不都合な点は、その多くがキャッシュフローを生んでいないことだ。ウーバーのような創業年数の浅い企業はまだ赤字を出し続けている。 「株主価値はすぐには債務返済につながらない」。東京の銀行関係者はこう話す。銀行は手元資金の多さや土地などの実物資産をより好ましく思うということだ。それでもこの人物によると、現在の債券投資家は、SBGは償還期限が来れば保有株式を裏付けに新たな債券を発行し、償還資金を確保できると確信している。 もう1つの問題は、SBGやビジョン・ファンドの保有株式の価値が変動するという点だ。SBGは先週、ビジョン・ファンドのウーバーへの16.3%の出資を巡り、38億ドルの評価益を計上した。ウーバー株は10日に上場してから18%下落し、SBGが同社株を取得した18年1月時点の株価に近づいている。 こうした現実をつきつけられてSBG株も急落した。14日には5.4%下落し、3カ月ぶり安値で取引を終えた。10日からの3営業日の値下がり率は13%を超えている。 だがビジョン・ファンドは、がん検査の開発を手掛ける米ガーダント・ヘルスや、インドの宿泊予約サイト運営会社OYO(オヨ)への出資では利益が出ているとしている。こうした利益は未実現利益であっても債券投資家への心理的効果があったと、野村証券のチーフ・クレジット・ストラテジスト、魚本敏宏氏は指摘する。ソフトバンクの5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッド――ソフトバンクの債務不履行(デフォルト)に対する保証コスト――は約180ベーシスポイント(bp)まで縮小し、年初から100bp以上低下している』、昨年12月ソフトバンクを上場させたのは、「SBGを投資会社という分類に変更」させる狙いだったようだ。ウーバー株が「SBGが同社株を取得した18年1月時点の株価に近づいている」というのでは、「38億ドルの評価益を計上」は次期には評価損要因になる。それでも、CDSスプレッドが低下したのは、米格付会社が「SBGを投資会社という分類に変更」した効果が債券投資家には利いたようだ。
・『孫氏は9日、10兆円規模のビジョン・ファンド第2号を立ち上げる考えだと述べた。実現すれば、新たに巨大な投資基盤が生まれ、銀行にとっては手数料の増加を意味する。 リフィニティブのデータによると、SBGが昨年支払った投資銀行手数料は8億9400万ドルと世界1位で、2位の独製薬・化学大手バイエルの2倍以上だった。アストリス・アドバイザリー・ジャパンのチーフ・インベストメント・アドバイザー、デービッド・ギブソン氏は「誰も取り残されたくないと思っている」と話す。 SBGは10日、ビジョン・ファンドがみずほフィナンシャルグループやゴールドマン・サックス・グループを中心とする10行から4年・31億ドルの信用枠を確保したとアナリストに説明した。 事情に詳しい関係者によると、ビジョン・ファンドは昨年、パートナーから資金提供を受けるのを待つ間も投資ペースを維持するため、ゴールドマン・サックスやドイツ銀行、野村ホールディングスなどから約70億ドルの融資を受けた。SBGが昨年12月に携帯電話子会社を上場し、235億ドルを調達した際には、この3社を主幹事に起用した。3社はコメントを控えた。 ある東京の銀行関係者によると、SBGは100を超える銀行と取引している。その多くは財務状況を疑っているような印象を与えてチャンスを逃してしまうことを恐れているという。 「リスク分析はもはや関係ない」とこの人物は話す。各銀行の融資判断は他の銀行の動きをどのように予想するかで決まる「ゲーム理論のようなものだ」という。 SBGは日本の個人投資家からも積極的に資金を募っている。4月には個人向け社債を5000億円発行した。日本国内で発行される同種の社債では異例の規模だ。9日には1対2の株式分割を実施すると発表。個人投資家による取得を容易にする動きとみられる』、ビジョン・ファンドについては、大口出資者に不満があるとのことだったのに、「第2号を立ち上げる」というのは、大口出資者が了解したのか、或は、大手銀行に投資銀行手数料のアメを与えるためなのだろうか。いずれにしろ、「各銀行の融資判断は他の銀行の動きをどのように予想するかで決まる「ゲーム理論のようなものだ」」というのでは、銀行も巻き込んでかなりバブリーな様相を呈してきたようだ。SBGに関する不都合な情報(第2の記事を除く)がロイターやWSJなど海外メディアからしか流れてこず、国内系は沈黙したままというのも困ったことだ。  
タグ:ロイター スプリント WSJ 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 利益相反行為 ソフトバンクの経営 (その10)(ソフトバンク・ビジョン・ファンド 出資のサウジなどが不満、ソフトバンク いまごろヤフーを連結子会社化するワケ、顧客離れに苦しむ米スプリント ソフトバンクに暗雲、ソフトバンク 「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情) 米紙WSJ ソフトバンク・ビジョン・ファンド、出資のサウジなどが不満」 火種となっているのは投資先の評価額の高さや、投資判断に対する孫正義社長の影響力の大きさだ ビジョンファンドの資本のうち約3分の2を拠出 ソフトバンクがまず自ら投資して、後にビジョン・ファンドに株式を移管するという手法にも不満 市場価値が上がっているときに株式を移管することが多いため、ビジョン・ファンドが損失を被る可能性がある 時にはソフトバンクが自ら投資先の資金調達ラウンドを主導して、評価額の引き上げを招いたこともある 第三者による評価 評価額は主要投資家が選定した独立コンサルタントによる確認作業や監査など、いくつもの段階をへて決まると述べた 車好多全体の評価額は85億ドル ユウシン(Uxin)の時価総額は11億8000万ドル、香港上場のイーシン(Yixin)・グループの時価総額は17億5000万ドル 「ソフトバンク、いまごろヤフーを連結子会社化するワケ」 兄弟会社であるネット大手のヤフーを第三者割当増資を通じて連結子会社化 両社はもともとサービスの連携を強めて相互送客 ポータルサイトで高いシェアを持ちEC(電子商取引)でも幅広いユーザーを持つヤフーとの連携強化で成長を維持したい考え ヤフーの経営がこれまでもソフトバンクグループの意向に左右されてきた面 ソフトバンクがデータセンター子会社を約450億円でヤフーに売却 4年に勃発したヤフーによるイー・アクセス買収中止騒動 「アングル:顧客離れに苦しむ米スプリント、ソフトバンクに暗雲」 スプリントの2019年1─3月期の純損益は、21億7400万ドルの赤字に転落 合併を審査する米規制当局の動きは鈍い。寡占化により競争が後退することを懸念しているためだ スプリントの連結外しに失敗すれば、信用力にネガティブな影響が出るのは必至 トランプ大統領には当選直後に面談 「ソフトバンク、「ジャンク級」でも貸したい銀行の事情」 信用格付けがジャンク(投資不適格)級のソフトバンクグループ 同業のTモバイルUSとの合併を当局に阻止されれば、連邦破産法11条の適用申請を検討せざるを得なくなるというアナリストの見解を引用した 信用格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスやS&Pグローバル・レーティングは、いずれもSBGを投資会社という分類に変更 CDS)のスプレッド――ソフトバンクの債務不履行(デフォルト)に対する保証コスト――は約180ベーシスポイント(bp)まで縮小し、年初から100bp以上低下 0兆円規模のビジョン・ファンド第2号を立ち上げる考え 「リスク分析はもはや関係ない」とこの人物は話す。各銀行の融資判断は他の銀行の動きをどのように予想するかで決まる「ゲーム理論のようなものだ」
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商社(デサントVS伊藤忠)(デサントを巡る買収劇 「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み 全責任を負う伊藤忠、デサント<上>独立目指すも失敗 伊藤忠商事に城を明け渡す、デサント<下>“恫喝テープ”まで飛び出した伊藤忠との戦い) [企業経営]

今日は、商社(デサントVS伊藤忠)(デサントを巡る買収劇 「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み 全責任を負う伊藤忠、デサント<上>独立目指すも失敗 伊藤忠商事に城を明け渡す、デサント<下>“恫喝テープ”まで飛び出した伊藤忠との戦い)を取上げよう。

先ずは、3月28日付け東洋経済オンライン「デサントを巡る買収劇、「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み、全責任を負う伊藤忠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/273502
・『大企業同士がお互いの対話を欠いたままで自社の言い分を世間に主張しあう、前代未聞の「劇場型TOB(株式公開買い付け)」は、あっけない幕切れを迎えた。 スポーツウェア大手のデサントは3月25日、石本雅敏社長が6月開催予定の株主総会をもって退任し、代わって伊藤忠商事の繊維カンパニーでトップを務めていた小関秀一氏が新社長に就任すると発表した。伊藤忠の岡藤正広会長の最側近として知られる人物だ。一方のデサントでは、石本氏以外も生え抜きの取締役は総退陣する。 デサント出身の取締役として残るのは金勲道氏と小川典利大氏。いずれも中途入社組である。金氏は2000年に韓国デサントに入社し、デサントの韓国事業を大きく成長させた功労者だ。もう一人の小川氏はアディダスジャパン副社長などを経て2016年にデサントに入社した。経営手腕への評価は高く、石本氏退任後の社長候補としても名が挙がった』、「デサントでは、石本氏以外も生え抜きの取締役は総退陣」とは、TOB合戦の結果とはいえ思い切った人事だ。
・『鮮明になった“伊藤忠色”  6月からの新体制では現在10人の取締役を6人に減らし、デサント出身2人、伊藤忠出身2人、社外2人とする。人数の印象以上に強まるのが“伊藤忠色”だ。伊藤忠からは小関氏のほか、同社執行役員で監査部長を務めていた土橋晃氏が取締役となる。土橋氏はCFO(最高財務責任者)に就任する予定だ。社外取締役には佐山展生・スカイマーク会長、高岡浩三・ネスレ社長を据えた。いずれも伊藤忠とゆかりのある著名経営者だ。 取締役以外のキーパーソンにも要注目だ。デサントの専務執行役員として伊藤忠から派遣される久保洋三氏である。現在は伊藤忠商事の常務執行役員で食料カンパニープレジデントを務めるが、本籍は繊維部門。伊藤忠が完全子会社化したジーンズ大手のエドウィンで会長を務めた経験もある。食料部門出身の伊藤忠元役員は「彼は岡藤会長に見込まれてエドウィンの再建に当たった。現場を見る目が確かで、繊維出身ながら食料ビジネスでも存在感を発揮してきた」と、久保氏の力量に太鼓判を押す。 実は久保氏は、十数年前には伊藤忠でデサントとの窓口役を務めていた。まだ両社の関係が円満な時期で、デサント社内にも知己は多い。そのため、久保氏は新体制で営業面の統括役になることが確実視されている。エース級の人材を投入して社長に加え営業トップとCFOを押さえたことで、今後は伊藤忠がデサントの経営一切を仕切ることになるだろう』、確かに伊藤忠は、「エース級の人材を投入」したことから、本腰が入っているようだ。
・『伊藤忠がデサントへの敵対的TOBに踏み切ったのは今年1月末のことだ。買い付け期限は3月14日までで、デサントの直近株価に約50%ものプレミアムをつけてデサント株の最大40%を買い付けることとした。当時の伊藤忠の出資比率は30.44%で、これが33.4%を超えることで株主総会における特別決議での拒否権を、すなわち事実上の経営支配権を持つことになる。2月7日にデサントはこのTOBへの反対意見を表明。「劇場型」の構図がいよいよ鮮明になったが、実は両社はその直後から水面下の話し合いを始めた。伊藤忠の代表は小関氏。デサント側は石本氏自身が2月中旬に4回にわたって面談に臨んだ。交渉のポイントは新体制での取締役数で、伊藤忠は「デサントから2人、伊藤忠2人、社外2人」を主張。デサントは「デサント1人、社外4人」を求めた。 伊藤忠の影響力縮小にこだわるデサントに、いったんは伊藤忠が譲歩し、取締役会を「デサントから2人、伊藤忠1人、社外2人」とする案がまとまった。2月27日にデサントが取締役会を開いて和解案を議決し、翌28日に公表する段取りまで決まっていたが、合意の直後に石本氏が翻意。これを受けて伊藤忠は2月22日に交渉打ち切りを決め、その後は「資本の論理」でデサントの現経営陣を排除する方針を貫徹した。 石本氏は早くから自らの退任は覚悟していたようだが、土俵際に追い詰められて、なお絶望的な戦いを挑んだ真意は不明だ。それほどまでに、同氏とデサント社員の伊藤忠への反感が強かったということだろうか。この段階で、伊藤忠からさらに譲歩を引き出せるだけの材料があったとは思えない』、一旦は両社で和解案で合意したのに、「合意の直後に石本氏が翻意」というのでは、伊藤忠は異例の敵対的TOBに踏み切ったのも理解できる。
・『デサントの未来に責任を負う伊藤忠  TOBの直接的なきっかけは、昨年6月に決算報告のため伊藤忠本社を石本氏が訪れた際、伊藤忠の岡藤会長との話し合いが決裂したことだ。デサントは1984年と1998年に2回、経営危機に陥ったが伊藤忠の支援で再生した経緯がある。1994年以降は社長も伊藤忠から派遣されてきた。だが、デサントによれば、2011年ごろから伊藤忠は自社との取引拡大を強要するようになった。 それに不満を高めたデサント生え抜きによるクーデターによって、2013年に就任したのが創業家の3代目である石本氏だ。石本氏は就任早々に「取引強要」の経緯をまとめた報告書を伊藤忠側に渡して改善を迫った。しかし、伊藤忠側が動かなかったことでデサント側には伊藤忠への根深い不信が生まれた。石本氏たちにとって、今回のTOBを通じて伊藤忠に対する不満を世の中に発信できたことは1つの成果ではあるだろう。 伊藤忠がかつての取引強要問題を自ら検証するかは疑問だが、もう同じことはできない。さらに同社はデサントの未来に対して大きな責任を背負うことになる。伊藤忠は現在のデサントの収益構造が韓国事業に依存していると指摘し、国内の立て直しや中国事業を拡大する必要性を強調してきた。今後は2020年の東京五輪や2022年の北京五輪といったスポーツイベントを控える中でデサントがどのように成長するのかを示す必要がある。 伊藤忠は今回のTOBに200億円を投じ、かつ経営に全面的にコミットする。伊藤忠によるTOBにはデサントの労組やOB会まで反対の意向を表明しており、社員からの信頼獲得が何よりの課題だ。それには伊藤忠のグローバルな調達網や資金力を活かして、デサントを大きく成長させるビジョンを描き出すことが欠かせない。それができなければ、劇場型TOBはシナリオがないまま経営者同士が感情的対立をつのらせた「激情型」でしかなかったことになる。こんなに不毛なことはない』、「伊藤忠によるTOBにはデサントの労組やOB会まで反対の意向を表明」、ということであれば、確かに「社員からの信頼獲得が何よりの課題」のようだ。伊藤忠は2015年に中国中信集団(CITIC)へ6000億円を投じ10%出資し資本・業務提携をした。昨秋には、先方の株価下落で1400億円を減損処理したが、これまでの提携の成果は乏しいといわれるだけに、デサントの中国ビジネス拡大を狙っているのだろう。

次に、ジャーナリストの有森隆氏が5月8日付け日刊ゲンダイに寄稿した「デサント<上>独立目指すも失敗 伊藤忠商事に城を明け渡す」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/253340
・『「売り手よし 買い手よし で、未来よし!」 4月1日付の全国紙に伊藤忠商事の全面広告が載った。伊藤忠の創業者の伊藤忠兵衛が信奉していたのが近江商人の経営哲学である「三方よし」(売り手よし 買い手よし 世間よし)。 今年の伊藤忠の合言葉は「未来よし!」。 デサントにとって、「売り手よし」となるのか。「伊藤忠が優越的な地位を誇示しているだけではないのか」(デサントの幹部社員)との冷ややかな反応が返ってきた。 経営方針をめぐり対立していたスポーツ用品大手デサントと伊藤忠のガチンコ勝負は、伊藤忠の「圧勝」で終わった。 デサントは3月25日、創業家の石本雅敏社長(56)が退任し、後任に筆頭株主の伊藤忠の小関秀一専務執行役員(63)が就任する人事を発表した。10人いた取締役を6人に減らした上で、デサント側2、伊藤忠側2、独立した社外取締役2の構成とする伊藤忠の案を丸のみするかたちで、デサントは全面降伏した。 デサント株式の約30%を保有していた伊藤忠は、デサントに経営方針の是正を再三求めたが、石本社長が受け入れなかったため、1月31日から3月14日までTOB(株式公開買い付け)を実施した。デサントの経営陣や労働組合、OB会は反対を表明したが、伊藤忠は敵対的TOBに突き進み、持ち株比率を40%に引き上げることに成功した。買い付けに要した資金は200億円』、今回のTOB合戦の裏面をもっと知りたいところだ。
・『6月の定時株主総会とその後の取締役会を経て新しい経営陣(ボード)が正式に発足する。伊藤忠の鈴木善久社長は4月26日、経営への関与を強めたデサントについて「うまくスタートできた」と述べた。 伊藤忠からの独立を目指した創業家の石本社長は、資本の理論の前に白旗を掲げ、デサント城は、あえなく落城した。 2018年夏に表面化した対立で、デサントは半年余り時間を空費した。デサント社内に大きな爪痕が残る。 「伊藤忠から数々の批判を受けて、現場のモチベーションは下がっている」(前出の幹部社員) 当初は蜜月だった両社が激しく敵対し、日本では異例な敵対的TOBにまで発展したのはなぜか? デサントの会社の沿革を簡潔に記す。1935年、石本社長の祖父、他家男氏が大阪で石本商店を創業。戦後、野球用のグラブ、ミットの製造販売を始め、のちにスポーツウエアに進出した。日本初のニット製の野球用ユニホームを作り、多くのプロ野球の球団で採用された。 61年、ブランド名のデサントに商号を変更。社名はフランス語の「Descente=滑降」に由来する。ロゴの「3本の下向きの矢」は、スキーの基本滑降である「直滑降、斜滑降、横滑り」を表している。 伊藤忠との関係は古い。64年、デサントは伊藤忠と組んでワンポイントロゴを入れるきっかけとなったゴルフウエア「マンシングウェア」の共同販売を始めた。デサントは、これを皮切りに「アディダス」などスポーツブランドの日本での総代理店となる。 その後、デサントは2度の経営危機に直面する。84年のマンシングウェアの過剰在庫。98年には売上高の4割を占めていた独アディダスのライセンスの解消だ。 デサントの創業家2代目の石本恵一氏の要請を受け、伊藤忠が2度とも支援し、経営を立て直した。 94年から飯田洋三氏、田尻邦夫氏、中西悦朗氏と3人続けて伊藤忠出身者が社長の椅子に座った。この間、伊藤忠はデサント株式の25・0%を取得。持ち分法適用会社に組み入れた。 両社で海外のブランドの商標権を取得したり、伊藤忠がデサントの海外展開を物流面で支援したりするなど、“蜜月関係”は続いているようにみえた。ところが、デサントの業績が回復するにつれて両社の亀裂があらわになる』、この続きの<下>を見てみよう。

第三に、上記の続き、5月9日付け「デサント<下>“恫喝テープ”まで飛び出した伊藤忠との戦い」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/253407
・『2013年2月26日、デサントは創業家の石本雅敏常務の社長昇格を発表した。 雅敏氏は慶応義塾大学商学部卒。電通勤務などを経て1996年にデサントに入社。創業家出身の社長は19年ぶりのことで、話題性は十分だった。 しかし、A4判の資料2枚のみで開示され、記者会見はなし。伊藤忠商事出身の中西悦朗社長の処遇は「退任」とのみ書かれていた。 今回の騒動で、あの時の交代劇の真相が明らかになる。デサントによると、11年ごろから伊藤忠は自社との取引を150億円に拡大するよう強要した。それにデサントの生え抜きの役員たちは不満を募らせていった。 伊藤忠とのパイプ役だった創業家2代目の石本恵一氏が死去して2カ月半後の13年2月、クーデターが決行された。 伊藤忠から派遣された取締役に事前の連絡のないまま、中西社長の退任と石本常務の社長就任を取締役会で決議した。デサント版の「二・二六事件」だ。 デサントと伊藤忠の不仲ぶりが、産業界に知れ渡った』、2013年のクーデターで石本雅敏社長が登場したとは、溝が深まってから最終的に決着するまで、かなりの年月が経っていたようだ。
・『トップに就いた石本社長は伊藤忠から距離を置き、対立を招いていった。自社商品がファッションブランドとしても注目されていた韓国に直営店網を広げ、韓国事業を経営の柱に据えた。 石本氏が社長就任する直前の13年3月期と18年3月期を比較すると、売上高は1・5倍の1411億円、営業利益は1・8倍の95億円。上乗せ分の大半は韓国事業で、全体の売り上げの5割超を占めた。一方、百貨店などに商品を卸していた国内事業は低迷した。 伊藤忠の岡藤正広会長兼CEOは、1つの人気ブランドに頼って失敗した2度の教訓が経営に生かされていないと考えていた。韓国への過度の依存は同じ轍を踏むことになる。 20年の夏季・東京、22年の冬季・北京とアジアで五輪が続くことから、中国事業の拡大など戦略の転換を強く迫った。 18年、両社の不信を決定的にする“事件”が起きた。6月25日、決算報告に訪れたデサントの石本社長を伊藤忠の岡藤氏が面罵するテープが流出。「週刊文春」(18年11月1日号)は〈伊藤忠のドン岡藤会長の“恫喝テープ”デサント社長に「商売なくなるで」〉と報じた。〈「ここまでナメられたら、やってられへん。俺のことをバカにしとるのか」。任侠映画さながらのセリフが飛び交ったのは一流総合商社の応接室だった。カリスマ経営者と、全く反論できないメーカー社長。約40分間の“恫喝テープ”にはどんな会話が残されていたのか〉と伝えた』、石本氏もいくら若いとはいえ、「全く反論できない」上に、「ここまでナメられたら、やってられへん。俺のことをバカにしとるのか」と啖呵を切るだけとは情けない。
・『石本氏のかたくなな姿勢に、伊藤忠は実力行使を決断。デサントへの出資比率は25%だったが、7月4日以降、デサント株を順次、買い増し、資本の論理でデサントを抑え込む。 すると8月末、デサントはワコールホールディングスと包括業務提携を結んだ。取締役会に緊急動議を提出して機関決定したもので、伊藤忠出身の取締役に事前の根回しはなかった。 伊藤忠は19年1月31日、デサント株のTOBを発表した。買い取り価格は前日の終値の株価に5割のプレミアムをつけた。出資比率を経営の重要事項への拒否権を持てる4割に引き上げる計画だ。伊藤忠に対抗してくれるホワイトナイトをデサントが見つけるのは事実上、困難。これで勝負がついた』、デサントにさんざんソデにされた伊藤忠としては、「5割のプレミアム」で並々ならぬ決意を示したのだろう。。
・『伊藤忠の「デサントの企業価値を高める」戦いが始まるのはこれからだ。200億円を投じてデサントを実質的に手に入れたが、これを上回るリターンを得られなければ、伊藤忠の株主は納得しない。 伊藤忠は22年の北京冬季五輪を見据え、デサントの中国事業を強化する青写真を描く。中国事業のパートナーはスポーツ用品大手、安踏体育用品(ANTA)。丁世忠会長兼CEOは親族を含めてデサント株を7%弱保有。伊藤忠のデサント改革を支持した。 伊藤忠とデサントの対立の爪痕は大きくて深い。国内従業員の9割がTOB反対に署名した事実は重い。社内融和を進めることが急務だ。伊藤忠から送り込まれた小関秀一新社長は“岡藤王国”と呼ばれる繊維の出身。中国通として知られるが、上場企業のトップの器であるかどうかが試されることになる』、デサント社内が落ち着きを取り戻すか、中国事業が強化できるか、などが当面の注目点だろう。
タグ:商社 東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ デサントVS伊藤忠 (デサントを巡る買収劇 「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み 全責任を負う伊藤忠、デサント<上>独立目指すも失敗 伊藤忠商事に城を明け渡す、デサント<下>“恫喝テープ”まで飛び出した伊藤忠との戦い) 「デサントを巡る買収劇、「最終決着」の舞台裏 会長最側近を送り込み、全責任を負う伊藤忠」 前代未聞の「劇場型TOB 石本雅敏社長が6月開催予定の株主総会をもって退任し、代わって伊藤忠商事の繊維カンパニーでトップを務めていた小関秀一氏が新社長に就任 石本氏以外も生え抜きの取締役は総退陣 鮮明になった“伊藤忠色” 専務執行役員として伊藤忠から派遣される久保洋三氏 久保氏は、十数年前には伊藤忠でデサントとの窓口役を務めていた エース級の人材を投入 約50%ものプレミアム 33.4%を超えることで株主総会における特別決議での拒否権を、すなわち事実上の経営支配権を持つことに デサントはこのTOBへの反対意見を表明 その直後から水面下の話し合いを始めた 2月27日にデサントが取締役会を開いて和解案を議決し、翌28日に公表する段取りまで決まっていたが、合意の直後に石本氏が翻意 その後は「資本の論理」でデサントの現経営陣を排除する方針を貫徹 デサントの未来に責任を負う伊藤忠 昨年6月に決算報告のため伊藤忠本社を石本氏が訪れた際、伊藤忠の岡藤会長との話し合いが決裂 デサントは1984年と1998年に2回、経営危機に陥ったが伊藤忠の支援で再生した経緯 デサント生え抜きによるクーデターによって、2013年に就任したのが創業家の3代目である石本氏だ 「取引強要」 伊藤忠は現在のデサントの収益構造が韓国事業に依存していると指摘し、国内の立て直しや中国事業を拡大する必要性を強調 伊藤忠は今回のTOBに200億円を投じ、かつ経営に全面的にコミットする 伊藤忠によるTOBにはデサントの労組やOB会まで反対の意向を表明 有森隆 「デサント<上>独立目指すも失敗 伊藤忠商事に城を明け渡す」 10人いた取締役を6人に減らした上で、デサント側2、伊藤忠側2、独立した社外取締役2の構成とする伊藤忠の案を丸のみするかたちで、デサントは全面降伏 伊藤忠から数々の批判を受けて、現場のモチベーションは下がっている デサントは2度の経営危機に直面する。84年のマンシングウェアの過剰在庫。98年には売上高の4割を占めていた独アディダスのライセンスの解消だ。 デサントの創業家2代目の石本恵一氏の要請を受け、伊藤忠が2度とも支援し、経営を立て直した デサントの業績が回復するにつれて両社の亀裂があらわになる 「デサント<下>“恫喝テープ”まで飛び出した伊藤忠との戦い」 11年ごろから伊藤忠は自社との取引を150億円に拡大するよう強要 それにデサントの生え抜きの役員たちは不満 クーデターが決行 上乗せ分の大半は韓国事業で、全体の売り上げの5割超を占めた 決算報告に訪れたデサントの石本社長を伊藤忠の岡藤氏が面罵するテープが流出 「ここまでナメられたら、やってられへん。俺のことをバカにしとるのか」 全く反論できないメーカー社長 石本氏のかたくなな姿勢に、伊藤忠は実力行使を決断 ワコールホールディングスと包括業務提携 伊藤忠出身の取締役に事前の根回しはなかった 北京冬季五輪を見据え、デサントの中国事業を強化する青写真
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不正会計(東芝以外)(その2)(今や日本は“粉飾大国” 民間企業もデタラメ会計処理が急増、粉飾した方が「得」に? 久保利弁護士が嘆く不正の真因、他人事と笑えぬ大和ハウスの中国巨額流用事件、部長「懲戒解雇」でも残る東レの「粉飾決算」疑惑 10億円前後の売上の実態は「在庫飛ばし」か?) [企業経営]

不正会計(東芝以外)については、2016年4月18日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(今や日本は“粉飾大国” 民間企業もデタラメ会計処理が急増、粉飾した方が「得」に? 久保利弁護士が嘆く不正の真因、他人事と笑えぬ大和ハウスの中国巨額流用事件、部長「懲戒解雇」でも残る東レの「粉飾決算」疑惑 10億円前後の売上の実態は「在庫飛ばし」か?)である。

先ずは、1月27日付け日刊ゲンダイ「今や日本は“粉飾大国” 民間企業もデタラメ会計処理が急増」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/246319
・『厚労省「毎月勤労統計」の不正調査やアベノミクスの賃金偽装が発覚し、統計への信頼が揺らいでいる。そんな中、24日、東京商工リサーチが衝撃的な調査結果を発表をした。コンプライアンスやガバナンスが叫ばれるご時世、上場企業の「不適切会計の開示」が急増しているのだ。数字のチョロマカシは国だけでなく、民間企業にも蔓延している』、「不適切会計」と穏やかな表現をしているが、実態は「粉飾」だ。
・『9年間で2倍超  東京商工リサーチは、2008年から不適切会計の開示企業を調査している。08年は25社だったが、16年は過去最多の57社と9年間で2・2倍に増え、昨年は2番目に多い54社と高水準だった。 「15年の東芝の不適切会計問題以降、開示資料の信頼性確保や企業のガバナンス強化を求める声は強まっています。一方で、海外展開など営業ネットワークが拡大する中、グループ会社へのガバナンスが行き届かないのが実情です。難しい会計処理に対応できる人手が確保できないのも要因です」(東京商工リサーチ情報本部・松岡政敏課長) 昨年、不適切会計を公表した東証1部上場企業は26社(別表)。単なる「誤り」もあるが、「着服」や「粉飾」など不正が横行している。しかも、一部のワルの仕業ではなく、組織的な不正が長年続くことも珍しくない。 昨年7月に発覚したヤマトHD子会社の法人向け引っ越し代金の過大請求は、昨年までの過去5年間で約31億円、123支店にも上った。中には、支店長の関与もあったという。 業務用冷蔵庫大手のホシザキは、昨年10月に架空の工事発注が発覚。17年1月~18年9月にかけて、過酷なノルマを達成するために、168人いる営業担当者らの4割に当たる70人もが不正に手を染めていた』、ヤマトやホシザキでは大規模な組織的不正で、悪質だ。
・『ヤマトもホシザキもマトモな誰かが止めなかったのか――。経済評論家の斎藤満氏が言う。「粉飾も、『バレなければいい』との意識を、普通の人が持っているということです。財務省、厚労省の文書やデータの改ざんなど国が率先して粉飾し、まったく責任を取らないわけです。知らないうちに、国民は不正を受け入れるようになってしまっている。“お上”がやっているじゃないかという意識です。平気でウソをつく国で、会社や国民だけが“公明正大”なんてことにはなりません」 1991年に崩壊したソ連は長年、政府が経済成長率や国民所得の統計を改ざんし、「経済はうまくいっている」と喧伝したが、企業や組織の報告でもデタラメやウソが蔓延していたという。毎勤の不正調査をこのままアヤフヤで終わらせたら、日本も粉飾大国まっしぐら。待っているのは崩壊だ』、「“お上”がやっているじゃないか」という意識を払拭するためにも、「財務省、厚労省の文書やデータの改ざん」にきっちり「けじめ」をつけるべきだろう。

次に、2月25日付け日経ビジネスオンライン「粉飾した方が「得」に? 久保利弁護士が嘆く不正の真因」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00017/022100001/?P=1
・『日本企業の不正会計はなぜ、無くならないのか。コーポレートガバナンス(企業統治)に精通する久保利英明弁護士は、経営者が「数字を甘く見ている」ことが原因だと指摘する。 Q:東芝など、粉飾決算をきっかけに経営が傾く大企業が相次いでいます。不正は会計の数字だけでなく、企業倫理をも腐らせてしまいます。にもかかわらず、一部の日本企業は不正会計をやめようとはしない。なぜでしょうか。 久保利英明弁護士(以下、久保利):基本的にバレないからでしょう。周囲がみんな不正しているのに、自分だけやらないのは損だと思っているのかもしれません。 古い体質の日本企業は、有価証券報告書の虚偽記載を軽く考えすぎです。粉飾決算と言われると気にするけれども、虚偽記載と表現されると(実質的な危険を伴わない)「形式犯」と見なしてしまう。不正会計の結果として数字が多少上下しても、会社の実態が変わらなければ問題ない、というわけです。 厚生労働省の統計不正でも同じですが、日本人は数字の話になると「矮小」で「些末」なことだと考えがちです。言語ではなく数字によって真実を表現するのが決算の目的です。会計数値のごまかしはマーケットに対する詐欺なのに、そういう認識ではなくなるのです。不正に手を染める経営者は数字を甘く見ている。「なめている」と言ってもいいでしょう』、「日本人は数字の話になると「矮小」で「些末」なことだと考えがち」というのは困ったクセだ。
・『Q:経営者が不正に手を染める動機は何でしょうか。 久保利:自分が立派な経営者だと、周囲に思われたいからでしょうね。経営の実態としては問題ないのに、たまたま数字が悪かった場合、四半期決算などで厳しい評価が下されます。それに耐えられないと経営者が考えると「お化粧」が始まります。 過去の優れた経営者を守りたいという動機もあるでしょう。「中興の祖」などと呼ばれるような経営者に傷をつけるぐらいなら、数字を多少いじった方がいいと考えてしまう。人間は文句を言いますが、数字は文句を言いませんからね。在任中だけ上手くやれればいいと、経営者が考え始めたらアウトです』、かつては、決算数字は財務部門が社長と相談して作るもので、財務部門の腕の見せ処だったが、いまや許されなくなっているのに、惰性で操作しているとすれば問題だ。
・『Q:東芝の不正会計では「チャレンジ」を命じた経営者は摘発されていません。処分が甘いことも背景にありそうです。 久保利:その通りですね。オリンパスのように東京地検特捜部が登場すると大変ですが、証券取引等監視委員会レベルなら大したことにはならないと、経営者がたかをくくっているのでしょう。 日本の検察は無罪を「格好悪いこと」と捉えがちで、(不正会計を)事件化しようとしません。しかしそれは検事の怠慢です。どんどん立件して、どこからが有罪なのかの線引きを作らなければ、みんな萎縮してしまいます。無罪になってもいいから、裁判所の判例を積み重ねて行くことが大事です。 検察が尻込みしているため、今の日本では不正会計をやった方が「得」になっています。嘘をついて粉飾しても上場廃止になることはほとんどない。会社が苦しいときに数字をごまかし、3年ぐらいは隠し通す。その後、ほとぼりが冷めた後に有価証券報告書を訂正すれば許されてしまう。その結果「ハコ企業」とも揶揄される、とんでもない上場企業が生き残っているのです』、「検察が尻込みしているため、今の日本では不正会計をやった方が「得」になっています」、検察の猛省を促したい。
・『「性悪説」で制度設計すれば不正は減る  Q:不正会計は洋の東西を問わないのでしょうか。 久保利:2001年に米エンロンで不正が発覚するまでは似たような状況でしたが、それ以降、米国では大きな不正会計はほとんど起きていません。翌年、SOX法(サーベンス・オクスレイ法)が制定されたことが、経営者の考え方を大きく変えたからです。 SOX法の狙いは、人間が関与することによって変えられる「あいまいさ」をなくすこと。根底にあるのは「性悪説」です。企業のCEO(最高経営責任者)は、チャンスがあれば不正に手を染めるという前提で、制度が設計されています。 利益相反や癒着につながる余地を会計士から奪い、社外取締役も厳格に選んでいきます。人間の弱さを見つめて、正しい行動を取るように縛っていくことが、不正会計を防ぐのに必要だという考え方です』、日本でも日本版SOX法が出来たが、実効性は乏しいようだ。
・『Q:手足を縛られることに対する不満の声もありそうです。 久保利:企業経営者はうれしくないでしょうが、不正を指示されることから解放される従業員は喜び、株主もうれしいでしょう。悪党に転じる可能性があるCEOを野放しにしない、できない組織にすれば、みんながハッピーになるはずです。 厳格かつ平等なルールの中でどうやって勝つかが経営者に問われます。会計はフェアであるべきです。独裁者のようにルールをねじ曲げてしまったら、同業との比較などできません。どの会社が優れているのか、投資家は判断できないでしょう。 ルールの統一と厳正化は世界的な潮流です。決して止めることはできません。その中で日本だけが独自ルールにこだわっていると、世界水準から取り残されています。 昔はアジア諸国で1番だったかもしれませんが、今の日本企業のガバナンスは遅れていると思います。ルーズにぬるま湯に浸っている間に、多くの国に追い抜かれてしまった。昔と変わらず不正会計が後を絶たないのは、日本が旧態依然の状態で足踏みしていることの証明です。 Q:企業は何をすべきでしょうか。 久保利:一番大事なのは、頭のCEOをきちんとすること。当局やメディアがいくら旗を振っても、CEOが嫌だといったら不正を防ぐための制度は導入されません。 本来なら、指名委員会などの制度を整え、社外取締役が後継者育成や選任に関与すべきです。会計士や弁護士などの専門家が経営の中枢に入ってチェックする仕組みも必要でしょう。日本の財界は規制強化から逃げ回らず、きちんと世界の水準と向き合うべきです』、説得力ある主張で、その通りだ。

第三に、3月25日付け日経ビジネスオンライン「他人事と笑えぬ大和ハウスの中国巨額流用事件」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/032000032/?P=1
・『大和ハウス工業は13日、中国の合弁会社である大連大和中盛房地産(遼寧省大連市)で、合弁相手から派遣された取締役2人と出納担当者1人に資金が不正流用された疑いがあると発表した。会社から外部への不審な送金が確認され、預金残高と帳簿の差異は現時点で14億1500万元(約234億円)に上るという。 同社は3人を中国捜査当局に業務上横領などの疑いで刑事告訴する手続きに入った。取締役2人は合弁先の大連中盛集団有限公司の元董事長とその息子で、出納担当者は元董事長のめいだった。合弁企業の業務執行は合弁先からの派遣者にほぼ依存していたことから、発覚が遅れたようだ。 いったい大連中盛集団とはどのような企業なのか。設立は1983年。高付加価値住宅やホテル、リゾートなどを開発して成長し、総資産は100億元(1650億円)を超えるという。合弁企業は2005年に設立されたが「最初から業績が好調だったため、信頼しきっていた」と大和ハウスの関係者は語る。同社内でも中国は成功事例とされており、ある時点までは信頼できるパートナーだったようだ』、「預金残高と帳簿の差異は現時点で14億1500万元(約234億円)」とはかなり巨額だ。いくら任せていたとはいえ、連結対象企業であれば、数字は本社でもチェックしている筈なので、突然の発表には違和感がある。
・『中国における合弁の実態に詳しい西村あさひ法律事務所 上海事務所代表の野村高志弁護士は「100%子会社であればコンプライアンスやガバナンスが効かせやすい。だが、合弁企業は歴史が長いところほど中国企業への遠慮や関係性の中で後回しにされる傾向がある。その分、不正が潜んでいるリスクが大きい」と指摘する。大和ハウスは、このリスクが最悪の形で顕在化した事例といえそうだ。 同社は今後、第三者委員会を設置する。全容解明はその調査結果を待つ必要があるが、ここまで巨額の横領が見過ごされた経緯には、不審な点も多い。 大和ハウスは「会計監査人による監査を通じて会社の運営状況を確認しておりました」と説明しているが、この点には疑問が残る。外部への送金は2015年から約5000万元(約8億2500万円)ずつ20回以上に分けて行われたという。入出金作業は出納担当者が一手に担っていたとのことだが、中国の会計監査では銀行口座と突合するため、このような原始的な手法が発覚しないとは考えにくい。少なくとも数年間にわたって会計監査が機能していなかった可能性がある』、「数年間にわたって会計監査が機能していなかった」とすれば、大和ハウスの責任も重大だ。
・『相次いで発覚している中国での会計不正  当初は折半出資だったが、現在は大和ハウスが83.65%、大連中盛が16.35%の株式を持つ形に変化している。大和ハウスは「増資の際に先方には資金がないと言われ、当社だけが資本金を積み増していった」と出資比率が偏っていった経緯を説明する。大和ハウスのみが資金を拠出し、経営リスクを抱え込んでいたことになる。それにもかかわらず、体制見直しを求めなかったのはなぜか。それだけ合弁先への信頼度や依存度が高かったということなのだろうが、一般的な感覚では理解し難い。 今月、日本企業の中国子会社や合弁会社での不正が相次いで発覚した。リズム時計は14日、広東省東莞市にある連結子会社の不適切な会計処理で今期業績に約2億9000万円の損失が生じ、社長が引責辞任すると発表。帝国電機製作所は15日、中国の子会社などが架空取引や従業員の賞与などをめぐり不適切な会計処理を行っていたとして、会長の引責辞任や取締役の報酬返上などの処分を発表した。ここ数年だけでも日本郵船やLIXILグループといった大手が不正会計問題に直面し、中には経営破綻に追い込まれたケースもあった。 日本企業の多くは中国拠点の人材の現地化を進めている。現地法人のトップや要職に現地採用の人材を置く一方で、駐在する日本人を減らすケースも多い。現地の市場やビジネス環境に合わせ、現地化を進めることそのものは間違いではない。ただ、日本の本社の目がより届きにくくなる恐れはある。 また、中国では政府や国有企業における反腐敗運動や、経済関連のルールの見直しなどビジネスの透明化を目指す動きが加速している。不正発覚が相次いでいる背景にはこうした事情が関係していそうだ。 「機会」「動機」「正当化」の三要素がそろった時に、人は不正行為に踏み出すという。中国など海外拠点では独特のルールや本社との地理的な距離、言語の問題なども相まって不正行為に走る条件がそろいやすい。だからこそ、不正は必ず発覚すると思わせる体制を作って「魔が差す」ことを抑止するガバナンスが重要になる』、現地化は当然としても、本社のチェックやコントロールが利いてないようであれば、こうした現地での不正行為は不可避だ。「「魔が差す」ことを抑止するガバナンスが重要」というのはその通りだ。

第四に、4月24日付けJBPressが 新潮社フォーサイトの記事を転載した「部長「懲戒解雇」でも残る東レの「粉飾決算」疑惑 10億円前後の売上の実態は「在庫飛ばし」か?」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56189
・『東証一部上場企業「東レ」は、売上高2兆5000億円(2019年3月期見込)に迫る、日本を代表する繊維などを中心とした世界的素材メーカーである。前経団連会長の榊原定征氏が社長、会長を務めていたことでも知られる(現在は特別顧問)。 榊原氏の後を受けて2010年に就任した現社長の日覺昭廣(にっかくあきひろ)氏は、CEO(最高経営責任者)とCOO(最高執行責任者)を兼ねて権力を集中させ、前任の榊原氏を超えて今年6月ですでに丸9年、なおも続投すると見られ、異例の長期政権となっている。 その同社および日覺社長に対し、今年2月、ある訴訟が東京地方裁判所に提起された。その第1回口頭弁論が、4月15日に行われたばかりである。 訴状や関係者の証言などからは、同社のコーポレート・ガバナンスがまったく機能していないばかりか、場合によっては「粉飾決算」の疑いすら浮上する問題が浮き彫りになってくる』、前経団連会長の「東レ」で一体、何があったのだろう。
・『「社長公印」と「印鑑証明書」を2回発行  2月28日に提訴された当該訴訟は、都内に本社を置くクラウドファンディング会社「C社」が原告となり、3億5000万円の「債務存在確認」を東レに求めたものである。 具体的な経緯はこうだ。 東京・港区に本社を置く「オリエントコミュニケーション」(以下「オリ社」)なる会社が、東レの「水処理機器」100台を購入する資金として、2017年9月、C社から3億5000万円の融資を受けた。返済は半年後の2018年3月に一括という契約だった。 オリ社とC社はこれ以前には何の取引もなく、そもそもこの融資案件は東レ側からの依頼だった。 そもそもこのオリ社、大手民間信用調査会社によると、資本金1000万円の「経営コンサルタント」で、従業員は1名。利益もほとんど計上されておらず、いわば代表者の個人会社である。少なくとも、世界規模の東レが有力製品を100台規模で販売する正規の取引相手とは到底考えられない。 当然C社は、取引実績も信用力もないオリ社に単独で融資をするリスクを考慮したようで、東レがC社に連帯して債務保証を約するならば、しかも東レ社長の正式な公印がある契約という条件を付ける。 そして実際、融資の「申込書」には、この金銭消費貸借契約にかかわる一切の権限を、自社の「水処理システム事業部長」(以下「F部長」)に委任するという日覺社長名の「委任状」が添えられ、もちろん代表取締役社長としての印鑑が押印され、さらにその印が公的なものであることを証明する東京法務局発行の「印鑑証明書」も添えられていた。そして融資は実行された。 ただ、オリ社が期日に返済できなかったため、期限を9カ月延長して2018年12月とする「変更合意書」を取り交わしている。その際にも、東レはC社に対して同様の社長印の「委任状」と「印鑑証明書」を改めて発行している』、従業員1名の「オリ社」が「東レの「水処理機器」100台を購入」というのも不自然で、いわくがありそうだ。
・『強硬な姿勢で門前払いに  しかし、変更した期日になってもまた返済がなかったため、C社は当然ながら、連帯して保証している債務の返済を東レに求める交渉を行うが、契約当事者である東レの「F部長」とは連絡が取れなくなる。 ばかりか、東レ本社を訪問して用向きを伝えても、法務担当者に「直接の連絡はまかりならぬ、電話も同様。話はすべて指定の弁護士事務所に申し入れろ」という強硬な姿勢で門前払いにされてしまう。 やむなく指定の弁護士事務所に連絡し、連帯した債務保証にかかわる「社長印付き委任状」「印鑑証明書」原本を含めた証拠資料を直接提示し、保証の実行を求めた。 ところが弁護士事務所側は、最終的に年が明けた本年1月30日、「本件連帯保証にかかるものを含めいかなる債務も負担するものではない」と回答し、そもそもオリ社の債務を連帯して保証した事実すら完全に否定した。ことやむなきに至り、C社は提訴した、という次第である。 ちなみに、現時点では第一義的債務者であるオリ社が完全に経営破綻しておらず、3億5000万円の債務が完全に回収不能になっているわけではないため、C社としては東レに連帯保証の履行を求める前段階として、まずは連帯の債務が存在することを確認する訴訟を提起したわけだ』、東レともあろう企業が、何故こんなお粗末な信じ難い対応を取るのだろう。
・『「社長の直轄案件」?  この不可解な取引について筆者は1月早々から取材を始め、同月16日に、東レ広報室に質問書を出し、事実確認を求めた。 その後、東レ側と幾度かのやり取りをしていくうち、東レは2月12日、報道各社向けに「プレス・リリース」を発表した(全文はこちら)。 概要は、「当社元従業員が第三者との取引に関連し不正行為(有印私文書偽造、同行使罪等)を行っていたことが発覚」「当社の買戻義務や連帯保証義務を定めた書類を無断で作成」「この元従業員は2018年11月22日付で懲戒解雇処分」「その後も、当社従業員であるかのようにふるまい、不正行為を継続していることを確認」「警察にも刑事告訴すべく相談」などとなっている。 この懲戒解雇された「元従業員」こそ、「F部長」である。つまり東レは、C社がオリ社に融資した際に手交した日覺社長の代表印がある「委任状」と「印鑑証明書」は「偽造」されたものであり、F部長が独断で行った犯罪行為であるから厳正に処分した、よって東レはむしろ被害者であるから債務の保証も法的に無効である、という主張をしているのである。 経緯を知る関係者はこう言う。 「そもそも最初にC社がこの融資契約を結ぶにあたっては、F部長がまぎれもなく東レの幹部であるか確認する意味から、C社代表者らは東レの本社でF部長と打ち合わせをしている。その際には彼の部下も同席し、名刺も受け取っている。その際F部長らは、この水処理事業は日覺社長の肝入り案件であり、社長はこの分野で世界ナンバーワンになりたいのだと社内に大号令を発している、とさかんに強調していた。そしてF部長は、自分は日覺社長がまだ社長になる前、名古屋支社責任者だった頃の部下だったので覚えがめでたく、だから日覺社長の直轄案件であるこの事業については、自分は直接社長と話ができるので『委任状』も『社長印』ももらえるのだ、と説明した」 そして事実、社長印は押印され、印鑑証明書も真正のものが発行されている』、これでは法的には東レの立場は極めて弱い筈なのに、何故突っ張るのだろう。
・『不良在庫を関係会社に「飛ばした」のか  しかし、東レ側はこれを「偽造」と主張する。 言うまでもなく、企業にとって代表者の公印および印鑑証明書は最重要書類であり、然るべき担当部署が厳重に管理する。F部長がC社に手交した公印と印鑑証明書はまぎれもない真正なものであり、いわゆる地面師など詐欺集団が行う「偽造物」ではない。にもかかわらず東レが「偽造」と主張する根拠は不明である。 仮に東レが主張するように、連帯債務保証が会社承認のものではなくF部長の独断行為であるのなら、厳重に管理しているはずの最重要書類を社員が簡単に、しかも複数回も持ち出せるとは、企業としてのガバナンスがまったく機能していないという問題が浮上することになる。 もちろん、この融資の目的となっている水処理機器は、実際に存在する。ただし、東レからオリ社への販売はペーパー上のもので、実際には、東レが発注したメーカーの倉庫に保管されたままという。 「この融資の対象となっているのは、そのうちの100台。F部長の説明では、この機器は当初、バングラデシュで販売する予定だったところ、現地でのテロ事件などの影響で頓挫してしまい、売り先のない在庫として抱えている状態になってしまった。それを一時的にオリ社に販売した形にし、その間に新たな売り先を見つけてくる算段だったようだ。F部長自身も、上司や担当役員である専務から『この在庫をどうするんだ!』と責められていると嘆いていた」(同) このF部長の説明が真実だとすると、東レとしては不良在庫を関係会社に「飛ばした」ということになる。しかも、その「飛ばし」行為に債務保証をしている。コンプライアンス上、重大な疑義が生じることになる』、オリ社への販売は、「新たな売り先を見つけてくる」までの「一時的」なつもりだったというので、オリ社の介在が漸く理解できた。
・『社内コンプライアンス部門も調査  実際、東レ社内でこのF部長の取引に対し、すでに昨年10月時点で社内の法務・コンプライアンス部門が調査に動いている。 東レには同じ水処理機器がほかにも50台、在庫として残っており、それもオリ社に販売する形で、C社とほぼ同じ形式で、ほかに複数の金融会社から融資を受けさせていた。ただし、それらの金融会社の中に違法に法外な金利をつけている会社があり、さらに反社会的勢力と関係があるとされる会社もあって、それらが東レに保証の履行を迫って社内で問題になっていたという。それらの金融会社に関係する人物が言う。 「オリ社に融資をした金融会社はC社以外に数社あるようです。それぞれ2億から4億円ほどの融資ですが、中には年利100%を超える、いわゆる闇金のようなところもある。しかも、それぞれ東レの連帯債務保証が付いているばかりか、買い戻し特約までつけているものもあった。そうした貸金業法に違反する違法金利をつけていた先の1社が東レに債務保証を実行させるべく、強圧的に東レに迫った。国会議員を使ったという話もある。それで東レ社内でも問題となり、コンプライアンス部門が動いたようです」 これらの金融会社関係先などから、件の「社長公印」や「印鑑証明書」などが金融業界関係者の間に出回り、さらに怪しげな反社会的勢力の関係者まで蠢いていた。 実際、法務部長、法務・コンプライアンス部門長である専任理事などがオリ社を訪れ、取引の経緯を聞き取り、買い戻しの話をしている事実もある。 では、東レが強弁するように、本当にF部長の独断の「詐欺」行為なのか。 しかし、C社はもちろん、他の金融会社との取引も含め、F部長もオリ社の代表者も融資金を横領したなどの事実は確認されていない。つまり、これらの取引で個人的に私腹を肥やした形跡が確認されていないのだ』、「東レには同じ水処理機器がほかにも50台、在庫として残っており、それもオリ社に販売する形で、C社とほぼ同じ形式で、ほかに複数の金融会社から融資を受けさせていた」、「金融会社の中に違法に法外な金利をつけている会社があり、さらに反社会的勢力と関係があるとされる会社も」、なにやら飛んでもない広がりを見せてきたようだ。
・『3カ月も懲戒解雇の事実を「秘匿」  一方で、東レ側にはさらに重大な疑惑が浮上する。 C社を含めたこれら水処理機器150台の売り上げは、各社の契約を総合すると10億円前後になると見られる。それらはすでに前期決算で計上されているはずだが、先に指摘した通り、実態は「在庫飛ばし」の疑いが強いと言わざるを得ない。だからこそ、社内の法務部門も動いた。となると、決算は「粉飾」だったのではないかという疑惑だ。 さらに、F部長の懲戒解雇の日付は、前述の通り昨年の11月22日付である。しかし、C社はF部長と連絡が取れなくなったことを不審に思い、12月に入ってからも何度も東レ本社に問い合わせたが、その度に「Fは出張中です」としか応じなかった、との関係者の証言もある。 実際、東レは筆者の取材を受けた後、2月12日になって初めて懲戒解雇の事実を公表した。C社を含め金融会社関係者らも、この時点までまったく知らされていない。つまり3カ月近くも、社内でさえ部長という幹部社員の懲戒解雇事案を伏せ続けていた。なぜこの時点まで事実を「秘匿」していたのか。 加えて、リリースでは「警察にも刑事告訴すべく相談」としているが、リリースを発表したあと東レ側に確認したところ、相談はしているがまだ警察は告訴を受理していないと説明していた。 今回、改めてこれらの疑惑を東レに質問したが、 「告訴状は提出しておりますが、受理の状況含め、捜査に関わることであり、お答えすることは差し控え」「個々の取引に関する事項については回答を差し控え」との回答しかなかった。 当該訴訟は冒頭に記した通り、まだ第1回目の口頭弁論が開かれたばかり。今後、互いの具体的主張が展開されるはずで、東レ側の対応が注目される』、それにしても、東レは何故、C社からの「債務存在確認」の求めを、水面下で認めずに、訴訟にまで発展させてしまったのだろう。マスコミはこれまでのところ抑えてあるとはいえ、裁判の進展如何では抑えられなくなる可能性もある。いずれにしろ、信じられないような不祥事で、今後の展開が大いに注目される。
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LIXIL問題(LIXIL創業家が2代続けて「プロ経営者」更迭 発表で株価は下落、スクープ LIXILがMBO検討 日本脱出も、「潮田はノー」 リクシルに投資家が解任要求 臨時株主総会でガバナンスをただせるか、LIXIL潮田氏 自ら辞任も広がる「院政」懸念) [企業経営]

今日は、経営迷走で大混乱に陥っている LIXIL問題(LIXIL創業家が2代続けて「プロ経営者」更迭 発表で株価は下落、スクープ LIXILがMBO検討 日本脱出も、「潮田はノー」 リクシルに投資家が解任要求 臨時株主総会でガバナンスをただせるか、LIXIL潮田氏 自ら辞任も広がる「院政」懸念)を取上げよう。

先ずは、昨年11月12日付けダイヤモンド・オンライン「LIXIL創業家が2代続けて「プロ経営者」更迭、発表で株価は下落」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/185033
・『近年のLIXILグループの動向を一口で言うと、「どこか中途半端でやり方が拙い」となるだろう。 11月1日から、創業家2代目の潮田洋一郎取締役会議長(64歳。写真)が、約7年ぶりに持ち株会社の代表取締役会長兼CEOに復帰したことで、新体制に移行した。2016年6月より“LIXILの顔”だった前任の瀬戸欣哉社長兼CEO(58歳)は、表舞台からの退場を余儀なくされる。 19年4月1日には、米経営コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー出身で、16年6月からLIXILグループに関与してきた山梨広一社外取締役(64歳)が、経営の監督役から執行役へと転じて後任の社長に就任する。事業会社のLIXILでは、旧トーヨーサッシ(現LIXIL)出身の大坪一彦副社長(60歳)が社長兼COOに昇格した。 今回の社長交代劇で、潮田オーナーは、米GE(ゼネラル・エレクトリック)出身の藤森義明氏(後にLIXILグループ社長兼CEO。現日本オラクル会長)に続き、住友商事出身でMonotaROなど複数のベンチャーを立ち上げたIT起業家の瀬戸氏まで、三顧の礼で迎えた“プロ経営者”を2代続けて更迭した。 藤森氏は、米国や日本のGEで実績を積んできた経営手法の数々をLIXILグループに持ち込み、海外M&Aを駆使したグローバル化の推進によって一気呵成に会社全体を変革することを目指した。 だが、中期経営計画の目標を一度も達成できず、中国の孫会社で勃発した粉飾決算騒動で約660億円もの巨額損失を出して、辞めざるを得なくなる。藤森氏がスカウトした外部人材は、その多くが結果的に社を去ることになった。 後を受けた瀬戸氏は、それまでの海外への拡大路線を大幅に修正し、不採算事業の整理に乗り出す。また、旧来のトステムやINAXなどの製品ブランドを復活させ、「愛社精神」の醸成に取り組んでもいた。連結売上高約1.7兆円、社員数8万人以上に変貌した巨大組織の束ね直しに努めていた』、創業家2代目の潮田洋一郎取締役会議長が、「三顧の礼で迎えた“プロ経営者”を2代続けて更迭」とは、心底驚かされた。冒頭の「どこか中途半端でやり方が拙い」というのは余りに遠慮した表現だ。
・『気に入らないからクビ?  新体制の発足に先立ち、10月31日に開かれた会見では、瀬戸氏が「正直に言って残念」と無念さをにじませた一方で、潮田オーナーは「再び、積極経営に転じたい」としれっと述べていた。絶対的な権力を持つ潮田オーナーと並べば、瀬戸氏も雇われ社長にすぎない。だが、2人のプロ経営者を生かせなかった原因は、中途半端に経営を任せた潮田オーナーにある。 社長交代の発表を受けて株価は下がった。社内からは「信頼関係ができていなかったのではないか」との批判の声も漏れてくる。図らずも企業統治不全を露呈した格好だが、近年は海外から指令を出していた2代目に、経営の当事者であるという自覚はあるのか。はなはだ疑問だ』、このあとの記事で真相が明らかになる。

次に、1月21日付け日経ビジネスオンライン「スクープ LIXILがMBO検討、日本脱出も」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00006/011800009/?P=1
・『LIXILグループに激震が走っている。プロ経営者の瀬戸欣哉社長からCEO(最高経営責任者)の座を取り戻した創業一族の潮田洋一郎会長が、MBO(経営陣が参加する買収)で日本の株式市場から退出し、さらにシンガポールに本社も移そうとしていることが明らかになった。年間売上高が2兆円に迫る巨大企業の日本脱出計画は、本当にこのまま進むのだろうか。 極めて異例のシナリオだが、潮田氏はどうやら本気だ。業界トップの大企業が東京証券取引所での上場を廃止し、本社をシンガポールに移転するという過去に例がない大転換を進めようとしている。潮田氏はシンガポール取引所(SGX)への新規上場も目論んでいる。 関係者によると、LIXILグループは昨年、MBO・本社移転・シンガポール上場という一連の計画を検討することを取締役の間で情報共有、すでに検討のためのアドバイザーも雇った。つまり、この計画は潮田氏が独断で進めている話とはもはや言えない。一連の計画に反対していた瀬戸氏をCEOから降ろしたことからも、潮田氏の本気度がうかがえよう。瀬戸氏を退任させるのは、この驚きの計画を前に進める布石だった。 なぜ日本の株式市場から退出したいのだろうか。根底には市場から評価されていないという不満があるだろう。株価は冴えない。トステムやINAXなど多くの企業の統合で日本最大の住宅資材・住設機器メーカーとなったLIXILだが、潮田氏は「株価はコングロマリットディスカウントに陥っている」と不満を示していた。潮田氏の見立てでは、どの機関投資家も業種を絞った専門的視点に立つようになったため、その分野以外の事業を適切に判断してもらえなくなったという』、「株価は冴えない」理由を、コングロマリットディスカウントに求めているようだが、ガバナンスの問題にある筈で、さらに本音は法人税・所得税が低いシンガポールに本社を移そうというのだろう。退任する瀬戸氏以外は賛成したというのも驚きだ。
・『こうした不満を解消するため、潮田氏は当初、会社分割による2社上場を考えたようだ。今のLIXILグループを事業ごとに2つに分割し、1つを国内で、1つを海外で上場させようと検討していたとされる。事実上のLIXIL解体だ。だがバックオフィス部門など、LIXILグループとしてすでに1つに統合されていた部分をもう一度切り分ける事務作業は非常に煩雑で、予想以上に手間取ることがわかった。そこで検討されるようになったセカンドプランが、今の案だ。 この案をもう少し整理してみよう。東証1部に上場しているLIXILをMBOにより上場廃止にする。その後、本社をシンガポールに移し、SGXに新規上場する、というのが大きな筋書きだ。LIXILの時価総額は足元で約4500億円。潮田氏がMBOをするにはプレミアム(上乗せ幅)を考慮すると最低でも5000億円以上が必要になりそうだ。 だが、このハードルは高くないのかもしれない。MBOに必要な資金をつなぎ融資でいったん調達し、その後すぐにSGXで株式を売り出して回収したお金でつなぎ融資を返す、という芸当も可能だからだ。 ただSGXに上場する新会社がどんな評価を受けるのかは読みにくい。シンガポールならコングロマリットディスカウントが起きないという保証もない。本来の企業価値は変わらないはずだが、持ち株会社なのか、事業会社なのか、どのような形で上場させるかによっても評価が変わる可能性はある。 シンガポールに本社を移転すれば、日本よりも法人税率が低いため、節税効果が得られることが想定される。潮田氏自身が現在、居を構えて生活の拠点にしているのもシンガポールだ。 地域別売上高(2018年3月期実績)をみると、圧倒的に多い日本の次がアジア、そして北米、欧州と続く。LIXILは現時点ではアジア企業であり、欧米市場への上場は考えにくいのだろう。そうなると主要な市場は香港かシンガポールかという選択肢しかない。香港市場の規制の問題などを考えると、やはりシンガポールというのは自然な選択だと考えられる』、記者は遠慮して批判めいたことを書けないのかも知れないが、売上高構成比では日本が76%と圧倒的なのにも拘らず、脱出するとは不自然過ぎ、「節税」目的が全面に出て、不届き極まる話だ。

第三に、3月24日付け東洋経済オンライン「「潮田はノー」、リクシルに投資家が解任要求 臨時株主総会でガバナンスをただせるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/272703
・『LIXILグループ(以下リクシル)の不透明なガバナンスに対し、機関投資家がついにしびれを切らした。イギリスのマラソン・アセット・マネジメントやポーラー・キャピタル・ホールディングスなど機関投資家4社は3月20日、共同で「リクシルに対し、臨時株主総会の招集請求を行った」と発表した。 同社では2018年10月31日、社外から招聘した代表執行役の瀬⼾欣哉・社長兼CEOが突然辞任。後任には創業家の潮⽥洋⼀郎氏が会長兼CEOに復帰し、社外取締役の山梨広一氏がCOOに就任した。 その理由について潮田氏は、当時の会見で持ち株会社の必要性など瀬戸氏との「認識の違いが最後まで埋まらなかった」と説明したが、メディアや機関投資家は納得をせず、いらだちを募らせていた。 こうした状況を受けてリクシルは2月25日、外部の弁護士に依頼して行った報告書の要旨を公表。潮田氏が指名委員会に対して瀬戸氏が辞任する意向があるように説明したこと、瀬戸氏に対しては指名委員会の総意なので辞任するように促した事実を認定している(ただし、人事に関する取締役会の決議は有効とした)。 不十分な説明を続けるリクシルに対して、機関投資家4社はついに潮田氏と山梨氏の解任に動き出した。しかも、この動きに社内取締役の伊奈啓⼀郎氏も賛同して共同提案者に名を連ねている。目的は何か。臨時株主総会招集を主導するマラソンの高野雅永・東京事務所日本調査担当、ポーラー・キャピタル・パートナーズの小松雅彦・調査部長に聞いた(Qは聞き手の質問)』、機関投資家が乗り出したというのは、ガバナンスが余りに酷く、ついにしびれを切らしたという異例中の異例のことだ。
・『見たこともないようなガバナンス  Q:これまでの経緯は? 高野氏:リクシルのCEOが瀬戸氏から潮田氏に交代する中で、いつくかガバナンスの問題があった。指名委員会のメンバーである潮田氏が自分自身を執行役に指名した。山梨氏は指名委員の委員長。これは見たこともないし聞いたこともないような違反だ。 (昨年の)12月17日に潮田氏と山梨氏から機関投資家向けの説明があった。CEO交代の理由として、潮田氏は「瀬戸氏のCEOとしての力量があまりにもひどかった。会社のバリューを大きく毀損するので解任に至った。(指名委員がCEOになることは)ガバナンスに問題あると思ったが、緊急性から踏み込んだ」と説明した。 本当かなと思うところがあり、取締役会と指名委員会の議事録の開示を要求したが断られた。そこで2人以外の社内外の取締役に質問状を送ったが、「1月の取締役会で返事をするかどうかを検討する」と返事があった後は、なしのつぶてだった。 その後、2月25日に外部弁護士による経緯や手続きの検証結果が出た。内容は18ページあるものをリクシルが個人情報と会社の機密を除いて8ページに縮めたものだ。この内容が事実だとすると、潮田氏が二枚舌で、誤解、ミスリードした形だ。 3月7日の機関投資家向け説明会でも、社外取締役の川口勉氏は、瀬戸氏の経営手法に疑問があったと繰り返した。だが、報告書に(深刻な意見対立があったと記載はあるが)それについては書かれていない。 本当に瀬戸氏の経営手腕に問題があるのならば、非常に重要なことなので、会社の公的なところで話しあってもらわないと困る。そうでなければ飲み屋で言うのと同じだ。 そもそもCEO交代の経緯を聞いているのに、機密情報や個人情報が18ページ中10ページもあるのか疑問がある。説明会では「本当に公平な第3者を入れて、黒塗りにするなりして全文を公開してくれ」「株主の代表である社外取締役がちゃんと対応して欲しい」と要望があがったが、川口氏は「承りました」と言った後、何もない。 (解任に至る)事実関係もひどいが、その後のコミュニケーションでも株主をないがしろにしている。今回、瀬戸氏と潮田氏のどちらがよいCEOなのか、という次元を問題にしているのではない。(潮田氏が)ガバナンスそのものに対して、株主の信頼を裏切ったという点だ。 形式上、リクシルには指名委員会がある。だが、みんな感じているようにその中身は本当に機能しているのか。(リクシル株を)3%程度しか持っていないであろう創業家の潮田氏が(リクシルの経営を)私物化してしまった。 これを突き付けられた以上、株主としては潮田氏と山梨氏に経営を託せない。また、われわれには顧客から資産を預かって運用しているという受託者責任もある。株を売って損切りするのではなく、株主責任と受託責任を果たすために臨時株主総会を招集した。これが背景だ』、「指名委員会のメンバーである潮田氏が自分自身を執行役に指名した。山梨氏は指名委員の委員長。これは見たこともないし聞いたこともないような違反だ」、その通りだ。
・『「最後の手段として解任を要求する」  小松氏:確かに瀬戸氏の改革は短期的にはコストが先行して業績はよくないが、長期的には当時の執行部の戦略がうまくいき、株価は上がるとみていた。ところが突然、不可解なCEO交代が起きて、リカバリー策も中期経営計画も宙に浮いた状態になった。 私は20年以上アナリストをやっているが、中間決算の説明会で突然CEOの交代を発表、しかも中期経営計画の最初の半年での交代というのは記憶がない。 これ自体はいきなり起こった「事故」のようなもの。だがその後、事情を説明をして欲しいと、社外取締役に書簡を送ったが回答はなく、面談への回答もない。3月の(社外取締役の)川口氏の説明会が会社の回答かもしれないが、その説明も十分でなかった。 コーポレート・ガバナンス・コードには「CEO選任は会社の最重要の戦略的意思決定。十分に時間をかけて審議する」と書いてあるが、報告書を読めば、とてもそんなことが行われた形跡はないとはっきりした。 われわれは潮田氏(の戦略)がよくて投資したわけでない。株を売るのではなく、リクシルのバナンスの機能不全を正すこと。正しい状況に持って行くこと、それが受託者責任と思って立ち上がった。 会社側がコミュニケーションを取ろうとしてない以上、最後の手段として信頼の置けない2人の取締役を解任を要求する。残った人たちが自浄作用を発揮し、しっかりした後継を決めることを期待したい。 Q:臨時株主総会の招集を機関投資家が、しかも連名で行うのは極めて珍しい。 高野氏:今回はマラソン主導でやったと理解して欲しい。連名になった理由は、臨時株主総会開催の基準(6カ月以上、3%以上を保有する株主に招集権限がある)を1社では満たしていなかったことにある。 私が説明会に出たり、報道で名前が出たことで(賛同する機関投資家の議決権が)少しずつ積み重なっていった。また社内取締役会の伊奈啓⼀郎氏など、われわれの「ガバナンスをより正しい方向性に向かわせたい」という考えに共鳴してくれる方が出てきた。時間はかかったが、なんとか臨時株主総会の招集請求を出せる状況になった。 Q:通常は社内取締役を牽制するのは社外取締役の役割だ。 高野氏:これまでも社外取締役の対応をお願いしてきたが、アクションはない。せいぜいが、3月の説明会に出てきて、言い訳のような説明をしていただけ。残念だった。 本来ならば株主の立場を代表するはずなのにどこを見ているのか。われわれの提案を受けて、社外取締役の本来あるべき姿、果たすべきことを考えてもらいたい。 Q:今回、リクシルに求めたのは潮田氏と山梨氏の解任だけか。自社が推薦する取締役の選任などは求めないのか? 高野氏:求めたのは2人の解任だけだ。株主にできるのは取締役の解任だけであり、CEOやCOO(など執行役)の選任は会社が決めることだ。3月20日付で臨時株主総会招集請求書を投函した。すみやかに招集するように要求している』、機関投資家はかつては、会社側提案に賛成するだけに「睡眠株主」と揶揄されたが、「受託者責任」を自覚して、立ち上がったというのは頼もしい。
・『委任状争奪戦はやらない  Q:プロキシーファイト(委任状争奪戦)などはやらないのか? 高野氏:今回は瀬戸氏と潮田氏、どちらのCEOが優れているかという、優劣を問うのではない。ガバナンスを問うという議案だ。リクシル株主の7割は機関投資家で、投票結果は公表される。票取り合戦をやるよりも、株主にもちゃんと考えてもらいたい。 Q:これまで株主が臨時株主総会を招集するのは、経営権を取る目的が多かった印象だ。今回はリクシルのガバナンスを問うためだけに、手間とお金をかけて臨時株主総会を開く。この会社にそこまでの価値があるのか? 高野氏:(臨時株主総会の開催を要求した)4者のコンセンサスではないが、私はこうした行動を通じて、ガバナンスが正しい方向に向かうことで、日本株もよい方向に向かうと思っている。会社は誰のものか、(利益やキャッシュの)分配を株主、役職員、成長投資のどこに向けるのか考えてもらえる良い機会になるはずだ。 小松氏:スチュワードシップコード、コーポレート・ガバナンス・コードが導入されて約4年。対話をしていけば、こういうことにならないケースもある。ガバナンスの不備が是正されていけば、外国人投資家の日本に対する見方もポジティブに変わるのではないのか。 Q:瀬戸氏の執行役への復帰はありえるか? 高野氏:繰り返しになるが、株主が(執行役の)CEO、COOを任命するのはスジが違う。それは取締役、指名委員会がちゃんと株主の声を聞いて判断するべきことだ』、正論でその通りだ。

第四に、4月19日付け日経ビジネスオンライン「LIXIL潮田氏、自ら辞任も広がる「院政」懸念」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/041800276/?P=1
・『「私の記憶の限り最大の最終赤字。一義的な責任はCEO(最高経営責任者)だった瀬戸さんにある。ただ、任命したのは、当時、指名委員会のメンバーで取締役会議長だった私の責任。瀬戸さんを招いたのは、取締役を続けてきた38年間で最大の失敗だった」 LIXILグループの潮田洋一郎会長兼CEO(最高経営責任者)は4月18日、緊急記者会見でそう語り、5月20日に取締役から辞任すると表明した。同日、LIXILは2019年3月期の通期業績が530億円の最終赤字に転落すると発表。イタリアの建材子会社ペルマスティリーザが500億円を超える損失を計上するためで、潮田氏はその責任は昨年10月末にCEOから退任した瀬戸欣哉氏にあると強調した。そして、自らは瀬戸氏を任命した責任をとって辞任するという。 記者会見で潮田氏は、瀬戸氏の経営手腕をこき下ろした。 「今回の大きな赤字は前任者(瀬戸氏)の3年間の経営がもたらしたもの」「ペルマの立て直し策を瀬戸さんは講じてこなかった」「取締役会でせめて詳しい報告をしてくれるものと信じていたが、説明はなかった」「瀬戸さんはこの産業はもうからないと言うが、同業は2ケタの利益を上げている」「宝石と呼ばれた会社を石ころにしてしまった。経営の策がなかった」「(瀬戸氏は)定時株主総会で自らCEOへの復帰を目指して、株主提案をする。しかし、この赤字を招いた責任をどう思うのか、いぶかしく感じる」 これに対し、瀬戸氏は緊急で一部メディアを集めた記者会見を実施。真っ向から反論した。 「今回の損失の90%以上は、私が(LIXILに)来る前の2015年以前に無理して取ったプロジェクトがうまくいかなくなった結果」「私が来て1年目で売却の交渉が始まって、限界はあったがかなりコントロールして損害を減らした」「プロジェクトビジネスは今回のようにアルミの高騰などがあると、大きな損失を出しやすいのが問題点」「取締役会にも、(長い時間をかけて議論する)取締役討議会にも、直接、潮田さんにも何度も説明している。記憶にないというのはあり得ない」』、潮田氏と瀬戸氏の言い分は真っ向から対立しているが、潮田氏の言い分には無理も多いようだ。
・『臨時総会の“無効化”が狙い?  昨秋の瀬戸氏の解任を巡っては、英米の機関投資家などの大株主や瀬戸氏自身はこれまで、潮田氏が会社を事実上、牛耳ってきたガバナンスに問題があると主張してきた。潮田氏は、LIXILの前身会社の1社である旧トステムの創業家だが、保有しているLIXIL株は3%程度。瀬戸氏の解任を巡るプロセスでは、潮田氏はほかの指名委員に対して誤解を与える言動をしたほか、潮田氏以外の取締役による潮田氏への忖度があった。 英米の大手機関投資家らはこれらを問題視し、潮田氏、山梨広一社長兼COO(最高執行責任者)の取締役解任を議案とする臨時株主総会の招集請求を突き付けている。他の大手機関投資家からも解任要求に賛同する声が出始めている。これまで会社側は、臨時総会を5月中下旬をめどに開催するとしていた。 だが、潮田氏は、「ガバナンスについては、(瀬戸氏の退任プロセスに関する調査・検証結果の)報告書にあるように、手続きについては問題ないという弁護士のお墨付きがある」と断言。ペルマの巨額損失は瀬戸氏の経営手腕に問題があったと位置づけ、潮田体制におけるガバナンスに問題があるという指摘に対し、反撃に出た。 ある投資家は、「臨時総会での票読みが劣勢となり、プランBに打って出たのではないか」と見る。つまり、自ら取締役を辞任することで、機関投資家が臨時総会を開催する意味をなくしてしまおうというわけだ。潮田氏はそのような見方に対し「臨時総会の回避が目的ではない」と否定する。 ただし、今回、潮田氏とともに、山梨氏も「執行に専念したい」という理由から、6月下旬の定時株主総会で取締役を退任することを表明。両氏は機関投資家らに対して、招集請求の取り下げなどを求める意向を示している。 潮田氏が5月20日に退任すると、その後に臨時総会を開いても解任議案は山梨氏に対してしか成立しない。しかも、臨時総会を開いたとしても、山梨氏が退任する定時総会まで1カ月程度しかない。招集請求をした大株主らは、それでも臨時総会を開くのかどうか、判断を迫られることになった』、潮田氏の「プランB」は捨て身の高等戦術のようだ。
・『瀬戸氏「山梨氏がCEOに就くなら、潮田氏の傀儡(かいらい)だ」  潮田氏と山梨氏が取締役から退任しても、潮田氏が「院政」を敷く可能性もある。6月の定時総会後、潮田氏は会長、CEOからも退任し、「アドバイザーをやってくれと言われれば考える」が、経営からは身を引くと言う。一方、山梨氏は定時総会以降も、取締役を兼務しない形で執行役として経営をリードすることに意欲を見せている。 瀬戸氏は、「次期取締役が山梨さんをCEOに選ぶのであれば、それは潮田さんの傀儡(かいらい)だ。LIXILは潮田さんの影響力から離れるべき。私がCEOをやらせてもらうことで、その機会にしたい」と強調する。 瀬戸氏は同日、定時総会に向けて、自身を含む次期取締役候補8人の株主提案を、会社側に正式に送付した。4月5日に瀬戸氏が株主提案の意向を表明してからこれまでに、指名委員会のメンバーは瀬戸氏が提案した取締役候補と面談している。だが、瀬戸氏が提示した候補者を採用するかどうかについて、瀬戸氏側に返答はまだない。 次の焦点は、会社側がどのような取締役候補を示すかどうかだ。招集請求をした機関投資家の1社は、「非取締役として山梨さんがCEOに就任するというのは筋が悪い。ガバナンス不全で解任しようとしている人をCEOに選ぶような取締役の顔ぶれなら、全く信用できない」と話す』、「瀬戸氏は同日、定時総会に向けて、自身を含む次期取締役候補8人の株主提案を、会社側に正式に送付した」とは、ますます面白い展開になってきた。「非取締役として山梨さんがCEOに就任するというのは筋が悪い。ガバナンス不全で解任しようとしている人をCEOに選ぶような取締役の顔ぶれなら、全く信用できない」との機関投資家の反応は正論だ。さて、会社側はどのように出るのだろうか。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 臨時総会の“無効化”が狙い? 臨時総会での票読みが劣勢となり、プランBに打って出た 自ら取締役を辞任することで、機関投資家が臨時総会を開催する意味をなくしてしまおう 山梨氏も「執行に専念したい」という理由から、6月下旬の定時株主総会で取締役を退任することを表明 山梨氏がCEOに就くなら、潮田氏の傀儡 非取締役として山梨さんがCEOに就任するというのは筋が悪い。ガバナンス不全で解任しようとしている人をCEOに選ぶような取締役の顔ぶれなら、全く信用できない LIXIL問題 (LIXIL創業家が2代続けて「プロ経営者」更迭 発表で株価は下落、スクープ LIXILがMBO検討 日本脱出も、「潮田はノー」 リクシルに投資家が解任要求 臨時株主総会でガバナンスをただせるか、LIXIL潮田氏 自ら辞任も広がる「院政」懸念) 「LIXIL創業家が2代続けて「プロ経営者」更迭、発表で株価は下落」 「スクープ LIXILがMBO検討、日本脱出も」 東証1部に上場しているLIXILをMBOにより上場廃止にする。その後、本社をシンガポールに移し、SGXに新規上場する 「「潮田はノー」、リクシルに投資家が解任要求 臨時株主総会でガバナンスをただせるか」 「LIXIL潮田氏、自ら辞任も広がる「院政」懸念」
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事業再生(東洋エンジ 150億円の増資で苦境を脱せるか インテグラルが実質大株主 三井物産は静観、「私的整理」に追い込まれた曙ブレーキ工業って どんな会社?、どん底 JR貨物を再生に導いた「運命の2日間」 海運、空運のプロは経営再建請負人だった) [企業経営]

今日は、事業再生(東洋エンジ 150億円の増資で苦境を脱せるか インテグラルが実質大株主 三井物産は静観、「私的整理」に追い込まれた曙ブレーキ工業って どんな会社?、どん底 JR貨物を再生に導いた「運命の2日間」 海運、空運のプロは経営再建請負人だった)を取上げよう。

先ずは、昨年11月30日付け東洋経済オンライン「東洋エンジ、150億円の増資で苦境を脱せるか インテグラルが実質大株主、三井物産は静観」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/252483
・『「三井物産との関係は全く変わらない」。会見で、プラントエンジニアリング大手の東洋エンジニアリングの芳澤雅之専務はそう強調した。 11月28日、東洋エンジは第三者割当増資を実施し、優先株を発行することで、約150億円を調達すると発表した。2019年2月12日に臨時株主総会を行い、優先株の発行と減資を行う決議する予定だ。 優先株を引き受けるのは筆頭株主(22.7%)の三井物産ではなく、投資ファンド・インテグラルらだ。 インテグラルは2015年1月に破綻した航空会社スカイマークへの支援でも知られている。調達した資金は東洋エンジの事業構造の変革などに活用し、再生計画を加速させる』、筆頭株主の三井物産が優先株を引き受けなかった背景は不明だが、ずいぶんドライになったものだ。
・『米国のプロジェクトで相次ぐ誤算  東洋エンジは米国の化学プラントプロジェクトでつまずき、前2018年3月期は268億円の最終赤字に転落した。2016年から建設を始めた同プロジェクトでは工事初期から地盤の問題で杭打ちが難航。2017年に現地を襲ったハリケーンの影響で工事が遅れた。 今年4月からは施工体制を大幅に見直し、新たに地元建設業者2社を加えた。東洋エンジの現場管理要員も増強し、進捗管理を徹底した。「動員力のある地場業者をサブコントラクターに起用したことが功を奏した」(芳澤専務)。約585億円にのぼる追加コストを出した北米案件は、ようやく出口が見えてきた』、プラントエンジニアリングでは想定外の出来事が相次ぐのはつきものだが、施工体制見直しが遅れたのは、致命的だ。
・『一方、再生計画を進める上で避けては通れないのが資本増強の問題だ。東洋エンジの自己資本比率は9月末時点で10.8%にまで落ちた。顧客からの信用が低下し、新たなプロジェクト受注に支障が出る可能性が高かったため、今回の増資で自己資本比率を約17%まで回復させ、再生計画を着実に進める狙いだ。 意外だったのが2006年の増資以降、筆頭株主として協力体制を強化してきた三井物産が増資に応じなかった点にある。芳澤専務は、当初から資金面での支援を相談していたものの「(三井物産は)難しいという判断」だったという。ここ10年にわたって東洋エンジの業績が「赤字を出したり、配当できなかったり三井物産に貢献できていない」(同)と説明する。 一方のインテグラルは増資を引き受けた理由を問われ、「(多額の損失を出した米国案件は)一過性のもの。東洋エンジは必要な資金があれば伸びる会社だ」(同社の山本礼二郎パートナー)と自信をみせた。 すでに東洋エンジの全プロジェクトを点検し、既存のプロジェクトで一過性の損失が出る可能性は少ないとみているという。山本氏は東洋エンジの社外取締役に就任する予定だ。 インテグラルは優先株を1株740円で引き受ける。ここ半年の終値平均の830円に対し、約11%のディスカウントだ。優先株には株主総会での議決権や優先配当がないが、取得請求を同1株に対して普通株1株に設定した。 つまりインテグラルが保有する取得請求権を発動すれば、全株式を普通株式に転換し、三井物産を上回る約34%握る筆頭株主に浮上する計算になる。 山本氏は「上場会社として三井グループの一員として頑張ってもらう」と繰り返した。経営陣の交代の必要性についても否定し、現経営陣と企業価値向上に取り組む考えだ。一般的に投資ファンドは、出資して数年後には売却して利益を確定させる必要がある。こうしたエグジット(出口戦略)について「全く確定していない」(同)と明言を避けた』、2010年以降の同社業績は低迷が続いており、問題はアメリカ案件といった一過性のものではなさそうだ。これでは、三井物産が支援に消極的になったのも頷ける。ただ、インテグラルにはどんな勝算があるのだろうか。
・『強みを伸ばせるのか  同業の日揮と千代田化工建設が大型のLNG(液化天然ガス)プラント案件の受注を積み上げるのに対し、大型LNG技術を持たない東洋エンジは受注を伸ばすことが難しい。 そこで東洋エンジは得意とする肥料プラントやバイオマス発電所の受注を重ねつつ、既存プロジェクトの管理を徹底する考えだ。 また、主力である設計・調達・建設(EPC)は受注が見込み通りにいかなかったり、工事のコストが超過してしまったりするリスクがある。そこでIoTを活用したプラントの保守運転(O&M)サービスを開発するなどして、EPC一本槍から脱却する。 大規模な増資にもかかわらず、11月29日の株価の終値は852円(前日比0.83%プラス)とやや上げた。今期は3期ぶりに営業黒字に回復する見通しの東洋エンジ。増資を再建への糧にできるか否かに注目が集まっている』、「大型LNG技術を持たない」とは初めて知ったが、「肥料プラントやバイオマス発電所の受注」では余り多くを期待できまい。「EPC一本槍から脱却」というにも時間がかかりそうだ。インテグラルはどのようなエグジットを描いているのだろうか。今後の再生の行方が注目される。

次に、2月4日付けM&A Online「「私的整理」に追い込まれた曙ブレーキ工業って、どんな会社?」を紹介しよう。
https://maonline.jp/articles/whats_akebono_brake_industry_company190201
・『事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)による私的整理を決めた曙ブレーキ工業。自動車部品大手で、大型M&Aによる事業拡大でも知られる。同社の設立は1929年1月、日本でようやく自動車が走り始めた時代だ。創業者の納三治(おさめ・さんじ)氏が個人営業の「曙石綿工業所」を立ち上げ、耐熱繊維などを多重織りしたブレーキ摩擦材の生産を始めた』、曙ブレーキ工業の私的整理には驚かされた。一体、何があったのだろう。
・『国策でブレーキ大手となった曙ブレーキ工業  納氏が郷里である岡山県裳掛村の港から対岸の小豆島を望む夜明けの美しさから、社名に「曙」を採用したという。1957年4月に従来の摩擦材に金属部品を組み合わせたブレーキシューアッセンブリーの生産を始め、素材メーカーからブレーキ機構そのものを扱う総合ブレーキメーカーへ転換した。 1958年11月には高い品質要求で知られる日本国有鉄道(現・JR各社)から特急列車「こだま」(新幹線ではなく、在来線の旧こだま)や「あさかぜ」向けのブレーキ部品の受注に成功し、一躍ブレーキ部品業界の寵児になる。 1960年3月、通商産業省(現・経済産業省)の主導により、自動車メーカー9社と部品メーカー7社から出資を受けた同社が、米ブレーキ大手のベンディックスから1社単独で特許を受ける方針が決まった。同5月には社名を現在の「曙ブレーキ工業」に変更。1961年4月にベンディックスとの技術提携が正式に決まり、国産車向けブレーキ生産の拠点となる。いわば「国策」で、成長のチャンスをつかんだ。 1985年8月に、当時世界最大の自動車メーカーだった米ゼネラル・モーターズ(GM)との折半出資の合弁ブレーキメーカーAmbrake社を米ケンタッキー州エリザベスタウンに設立。初の海外進出を果たす。日本車メーカーの米国市場依存が強まるのと併せて、曙ブレーキ工業も対米投資に力を入れた。 2008年から2012年まで日本自動車部品工業会会長を務めた同社の信元久隆(のぶもと・ひさたか)会長兼社長は、実父で先代社長の掲げた「総合ブレーキメーカー」の看板を下ろし、ブレーキ用摩擦材に経営資源を集中して品質の高さを追及する「ブレーキ専業メーカー」へ転進。「世界シェア30%」を目標に摩擦材事業を強化した。 信元会長兼社長はリーマン・ショック直後の2009年9月に、独ブレーキ大手のボッシュから北米ブレーキ事業の譲渡を受ける。ボッシュの顧客であるフォード・モーターを取り込むことでシェア拡大を狙ったのだ』、「国策でブレーキ大手となった」とは初めて知った。「ボッシュから北米ブレーキ事業の譲渡を受ける」、までは順調だったようだ。
・『ボッシュからの事業買収でつまずく  この買収が裏目に出た。ボッシュから譲り受けたブレーキ事業の採算性は低く、北米に大きく依存する曙ブレーキ工業の足を引っ張った。さらにリーマン・ショックの影響で米国の自動車生産が低迷。あわてて生産能力を縮小するも、皮肉なことに米国の自動車販売が景気回復を受けて急増し、ブレーキ生産が間に合わない状況に。 度重なる残業や休日出勤による人件費増や、納期遅れ回避のための航空輸送による輸送費高騰などで生産コストは上昇。繁忙にもかかわらず、利益が出ないという異常事態に陥った。 過剰な増産により品質も劣化し、2015年6月にはGMに納入したブレーキ製品で不具合があったと発表。GMが約1万5000台のリコール(回収・無償修理)を届け出た。こうした生産の混乱が、連結売上高の28%を占めるGMからの失注を招き、1000億円を超える有利子負債返済のめどがつかなくなった。 帝国データバンクによると、曙ブレーキ工業の取引先は一次下請が282社、二次下請が2500社で合計2782社にのぼる。非正規社員を除く従業員数だけでも取引先の16万5119人が影響を受ける可能性があるという。 主力製品のブレーキパッドは、世界シェア約21%、国内シェア約46%と存在感が大きく、GMのほかトヨタ自動車や日産自動車ほか多数の自動車メーカーと取引がある。 そのため私的整理とはいえ、2017年6月に民事再生法の適用を申請したエアバック大手のタカタ同様、買収または経営支援を受けて事業継続する可能性が高い。 タカタは中国・寧波均勝電子の子会社で自動車用安全部品を手がける米キー・セイフティー・システムズ(現・ジョイソン・セイフティ・システムズ)に買収された。曙ブレーキ工業も中国をはじめとする外国資本に買収されるのか、それとも国内自動車メーカーの経営支援によって日系自動車部品メーカーとして生き残るのだろうか。少なくとも現時点で、曙ブレーキ工業支援に手を挙げている国内企業はいない』、海外投資の失敗の典型例のようだが、経産省としては、何とかして国内企業に支援させたいところだろうが、さてどうなるのだろう。

第三に、3月18日付け東洋経済オンラインが掲載したJR貨物の真貝康一社長へのインタビュー「どん底、JR貨物を再生に導いた「運命の2日間」 海運、空運のプロは経営再建請負人だった」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは真貝社長の回答)。
https://toyokeizai.net/articles/-/271327
・『JR貨物が元気だ。本業にもかかわらず長年赤字が続いていた鉄道ロジスティクス事業が2016年度に黒字化を果たし、連結経常利益を100億円台に乗せた。 2018年度は6月の大阪北部地震、7月の豪雨、9月の台風24号と度重なる自然災害に悩まされた。しかし、その後急ピッチで輸送量が回復し、2018年4月~2019年2月の輸送実績は前年同期比92.2%という水準まで持ち直した。山陽線の一部区間で工事や徐行運転が行われていることもあり、今も一部の列車が運休している。もしこれらが動いていれば、2月単月については「前年とほぼ変わらぬ水準」(真貝康一社長)という。 昨今のトラック運転手不足や環境問題の高まりなどJR貨物を取り巻く状況は明らかに追い風だ。しかし、その追い風を捉えて見事に浮上することができたのは、2013年に同社会長に就任した石田忠正氏(現相談役)の経営手腕によるところが大きい。 石田氏は日本郵船副社長、日本貨物航空社長を歴任。2011年にはまったく畑違いのがん研究会有明病院の理事長補佐に就任し、病院経営を黒字化させた実績もある。海運業と陸運業のプロはどのような経営手法でJR貨物の鉄道事業を黒字化に導いたのか。石田氏に聞いた』、再生請負人の手法とは興味深そうだ。
・『「意識改革」にはこう取り組んだ  Q:JR貨物に来て、まず改善しなくてはいけないと思ったことは? A:外部の人間がいきなりやってきて「こんな問題がある」「解決するためにはここを直さないといけない」と言ってもうまくいかない。もちろん表面上は変わるだろうが不十分。たとえ私が100点満点の提案をしても、人から言われてやるのでは意味がない。社員一人ひとりが「これは私の仕事だ」という気づきを得て、本気で取り組むという意識改革が必要だ。 一人だけが気づいても、回りにも同じ考えの人がたくさんいないと、組織としての行動にはならない。どの企業にも目に見えない不文律があって、社員自らを縛っている。それを解き放してあげないと「変わらなきゃ」という行動は起きない。これはどこの組織でも同じ。病院でもそうだった。JR貨物が国鉄の体質を引きずっているのは承知していたので、意識改革を本格的にやらないと経営改革はできないと強く意識していた。 その意味で、JR貨物に来て最初にやったことは2日間の役員合宿。社長以下、役員全員、部長、支社長も集まった。私は「ああしろ、こうしろ」とはいっさい言わなかった。「自由闊達」「役職は無関係」「何を言ってもよい」といったルールだけ決め、参加者の間でガンガン議論を行い、JR貨物の現状と問題点を洗い出し、解決策を考えてもらった。 JR貨物をどういう会社にしたいのか、そのためには何をすべきかを1つの表にまとめたら、ちゃんと形になって、全員が「できる」と思った。翌週の経営会議からガラリと変わりましたよ。また、各支社長は支社ごとに合宿をやって、現場長たちも職場で部下たちと議論をした。こうなると本物だ』、「社員一人ひとりが「これは私の仕事だ」という気づきを得て、本気で取り組むという意識改革が必要だ」、「どの企業にも目に見えない不文律があって、社員自らを縛っている。それを解き放してあげないと「変わらなきゃ」という行動は起きない」、などはさすが再生請負人の面目躍如だ。
・『減らしていた営業マンを増員  Q:JR貨物が変わったのは、2日間の合宿だったということですね。では、鉄道黒字化に向け、どんな行動をしたのですか? A:例を一つあげると、今までは赤字を減らすために営業部の人員を減らしてきたが、そうすると売り上げがさらに減るという悪循環になる。そこで、最初にやったのが営業マンを増やすこと。今まではお客様(荷主)への営業はトラック会社(通運事業者)に丸投げして、自分たちではほとんどしていなかった。これを改めて、自らお客様の所に営業をしに行くようにした』、きっと昔の国鉄時代の名残で日通に「丸投げして」いたのだろう。
・『Q:集荷して配達する両端の部分はトラックですが、間に鉄道を入れてくださいと荷主にお願いするのですか? A:そう。われわれが新たな顧客を見つけてくると、両端の通運業者も喜んでくれる。ただし、単にコンテナを積めばいいというものでもない。列車の収支は「往復」で見る。片道のコンテナの稼働率が100%でも、逆方向がカラだったら稼働率は50%にしかならない。その空コンテナにも運転士の費用、電力費、線路使用料などのコストがかかるので、稼働率50%では食べていけない。 だから、今は「ラウンド収支」をどうやって改善できるかを考えるようにしている。空コンテナの回送率は、毎年ものすごい勢いで下がっていますよ。 提案営業も積極的に行うようになり、2017年1月にはアサヒビールとキリンビールが組んで関西の工場から北陸エリアへ鉄道コンテナによる共同輸送を開始した。従来は名古屋の工場からトラックでビールを運んでいたが、鉄道に切り替えた。 われわれにとっては鉄道貨物の利用率が低い下り路線(関西→北陸方面)の有効活用にもなる。現在はサントリー、サッポロも加わり、4社の共同輸送をそのほかの路線で行っている。とにかく提案営業を続けることで、お客様に直接提案できる会社に変わった。 黒字になったことによって、新しい投資に資金を回せるようになった。また、社員の意識改革の結果として黒字化できたわけだから、意識改革の根源である人事制度を4月から全面的に変える。今以上に働きやすくやりがいがある職場になる。 Q:日本の物流の主役はトラック輸送ですが、トラック輸送から鉄道コンテナ輸送に切り替えると、荷主にとってコストは安くなるのですか? A:長距離輸送なら鉄道コンテナ輸送のコストは安い。鉄道輸送の強みは大量輸送。1本の貨物列車で大型の10トントラック65台分を一度に運べる。CO2排出量もトラックの11分の1で環境にもやさしい。しかも鉄道輸送は運行頻度も多い。定時運行率も94%と非常に高く、運行頻度も船と比べると高い』、「今は「ラウンド収支」をどうやって改善できるかを考えるようにしている」とはさすが物流のプロだ。「お客様に直接提案できる会社に変わった」とは見事なものだ。
・『トラック運転手不足が追い風に  Q:鉄道貨物のメリットがそれほどたくさんあるなら、もっと使われてもよいのでは? A:われわれの営業努力が足りなかった。でも現在はトラックの運転手不足という問題があるので、長距離輸送の部分を鉄道に置き換えられないかという要請をトラック会社からいただいている。 Q:首都圏では貨物列車は深夜に出発することが多いですが、首都圏を昼間にあまり走れないことはネックになりませんか。 A:そういう部分はある。ただ、どのメーカーでも昼間作って夕方から夜にかけて出荷することが多い。夜中に鉄道で運んで朝到着するのでムダがない。宅配便などで昼間に運ぶ需要もあるが、圧倒的に多いのは夜間の需要だ。 Q:欧米では物流に占める鉄道貨物の比率が10~30%ありますが、日本は5%程度にすぎません。営業が頑張れば、日本の鉄道貨物の比率は欧米並みになりますか。 A:いやいや。われわれにそこまでの輸送能力はありませんよ。 Q:でも、引き合いは多いのですよね? A:需要が欧米並みに増える可能性はある。イギリスさえもサウザンプトン港では鉄道輸送の比率は二十数%ある。あの小さい国ですら、鉄道輸送の比率は高い。 Q:需要がぐんぐん増えれば、車両を増やして対応するとか…… A:もちろんそうなるのだが、問題が1つある。昼間は旅客列車がたくさん走っているので、貨物列車をいくらでも増やせるというわけにはいかない。もちろん路線によってはもっと増やせる余地があるし、土日はかなり余裕がある。でも東海道線などすでに過密状態の路線もあるので、現在の5%という比率をすぐに10%、20%に高めることは残念ながら難しい』、「昼間は旅客列車がたくさん走っている」というのは、確かに大きな制約だろう。
・『Q:鉄道貨物以外の事業では、東京貨物ターミナル駅に大型の物流倉庫「東京レールゲート」を建設していますね。 A:2棟から構成され、2020年、2022年に完成予定。東京ベイエリアで最大級の物流拠点になる。すでに鴻池運輸と賃貸借予約契約を結んでおり、メーカー、小売業、倉庫業者など引き合いは多い。 これと同じようなものを札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡にも展開する。東京レールゲートのすぐそばに東京湾も羽田空港もある。今はレールの上だけだが、今後は船と結んでシー・アンド・レール、飛行機とも結んでレール・アンド・エアといった陸海空の総合物流業に展開していきたい』、「陸海空の総合物流業」とは確かに将来性がありそうだ。
・『「目標の明確化」で業績を伸ばす  Q:日本郵船や日本貨物航空時代の経験についても教えてください。 日本郵船では、アジア代表としてシンガポールに駐在していた時、二十数カ国に及ぶアジア各国の現地法人社長とすべて交渉した。それをまとめるとアジア全体の目標値が決まる。現地法人の社長は自分の国に帰って、部長や課長と相談して部門ごとの利益目標を決めていく。課長は課員一人ひとりの目標を決めていく。アジア全体の目標が一人ひとりの目標に落ちていくのです。外国人の社員は目標を明確化すると、競い合うように頑張って成果を出してくれる。 その後ロンドンに転勤して、今度はヨーロッパを統括したが、欧州の人たちはアジアの人たちよりもドライ。「頑張って働くからきちんとペイをくれ」ということで、ものすごく働いてくれて、業績も伸びた。本社に戻って、今度は全社の収支管理を北米、南米、オセアニアなど世界6極に移管した。世界中が一つになって頑張ってくれた。 日本貨物航空でも同じように各極に分けて収支管理をやったが、アジアとヨーロッパを結ぶ便のように日本発着ではない国際線もある。そうなると日本からあれこれ言ってもどうにもならず、現地同士で頑張るしかない。でも、その結果、現地同士の絆はものすごく強くなった。また、当時は古い機材ばかりだったので燃費が悪かった。新しい機材に切り替えることで投資効果が出てきた。こうしたことを通じて万年赤字から黒字に転換できた。 Q:病院経営でも収支を改善しました。 A:私が勤務した病院には日本トップレベルの医師や研究者が500人もいた。看護士やそのほかの職員も献身的に働く。患者さんは列を成していた。 Q:それなのに赤字。これもマネジメントの問題ですね。どのように黒字化したのですか。 A:私は、医療はずぶの素人だから「ああしろ、こうしろ」とは言わなかった。やったことは先生方や看護士さんたちに収支を見せたことだけ。でも、みんなおそらく初めて見たのだと思う。収支を見て目の色が変わった。先生方、看護士さん、事務職、みんなを集めて合宿した。そうするとみんないろいろなことを言い出した。先生方も気づくことがたくさんあった。それが改善活動に変わり、収支が改善された。先生や看護士さんの給料は上がり、最新の医療機器もどんどん導入した』、医療関係者は私の目には、各自の蛸壺に籠っているように見えるが、それが「収支を見て目の色が変わった」とは驚かされた。
・『官民協力で鉄道インフラ強化を  Q:日本郵船、日本貨物航空、がん研、どの経験もJR貨物につながる話ですね。ところで、石田さんをJR貨物に招いたのは誰ですか? A:それはちょっと言えませんが、国の要請です。 Q:国側も社員自らに気づいてもらうような経営改革を期待していたのですか? A:どうでしょうね。私は今お話ししたようなことはご存じないと思う。 Q:では、海運や空運での経験をJR貨物で活かしてほしいという前提だった? A:そういうことです。でも、私が「ああしろ、こうしろ」と言っても意味がない。社員自身に気づいてもらうから価値がある。 Q:最後に、JR貨物が抱えている課題について教えてください。 A:JR貨物は鉄道輸送の業績が改善し、不動産事業も堂々たるものだから、100億円を超える経常利益をこれから出していけると思うが、1つだけ前提条件がある。それは、鉄道輸送はレールというインフラがあってこそということだ。昨年の豪雨で山陽線が長期にわたって止まってしまった。レールがないとわれわれは働きようがない。 道路や空港、河川は何かあると国や自治体がすぐに直してくれるし、トラブルを未然に防ぐような整備もしてくれる。それと同じように鉄道のインフラ整備も必要だ。問題が起きそうな危険箇所はわかっているのだから、優先順位を付けてできるところからぜひ整備をお願いしたい。われわれも努力をするからぜひ官民協力で。3~5年続ければ日本のインフラ基盤が本当に強化される』、省エネ、省人化に寄与する貨物鉄道のインフラ基盤は、リニアや高速道路よりはるかに優先順位が高いと思う。ただ、政治の後押しは強くはなさそうだ。まずは、マスコミを通じて世論を盛り上げてゆく必要がありそうだ。
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