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人工知能(AI)(その6)(圧倒的な不平等が世界にいずれ蔓延する理由 AIの能力が高まり 人類は2階層に分断する、「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた、契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか) [科学技術]

人工知能(AI)については、10月25日に取上げた。今日は、(その6)(圧倒的な不平等が世界にいずれ蔓延する理由 AIの能力が高まり 人類は2階層に分断する、「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた、契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか)である。

先ずは、11月26日付け東洋経済オンライン「圧倒的な不平等が世界にいずれ蔓延する理由 AIの能力が高まり、人類は2階層に分断する・・・世界中の知識人から賞賛を浴び、全世界で800万部を突破したベストセラー『サピエンス全史』」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/251207
・『世界中の知識人から賞賛を浴び、全世界で800万部を突破したベストセラー『サピエンス全史』。7万年の軌跡というこれまでにない壮大なスケールで人類史を描いたのが、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏だ。 現代を代表する知性が次に選んだテーマは、人類の未来像。近著『ホモ・デウス』で描いたのは、人類が「ホモ・サピエンス」から、遺伝子工学やAI(人工知能)というテクノロジーを武器に「神のヒト」としての「ホモ・デウス」(「デウス」はラテン語で「神」という意味)になるという物語だ。 ホモ・デウスの世界では「ごく一部のエリートと、AIによって無用になった『無用者階級』に分断し、かつてない格差社会が到来する」と警告するハラリ氏を直撃した。 本記事ではハラリ氏へのインタビューの一部を抜粋・・・』、『無用者階級』が出現する「かつてない格差社会が到来する」とは穏やかではない。
・『生命をつかさどる最も根源な法則を変えようとしている  この本を書いたのは、人類史上、最も重大な決断が今まさになされようとしていると考えたからだ。遺伝子工学やAIによって、私たちは今、創造主のような力を手にしつつある。人類は今まさに、生命を司る最も根源的な法則を変えようとしている。 40億年もの間、生命は自然淘汰の法則に支配されてきた。それが病原体であろうと、恐竜であろうと、40億年もの長きにわたって生命は自然淘汰の法則に従って進化してきた。しかし、このような自然淘汰の法則は近く、テクノロジーに道を明け渡す可能性が出てきている。 40億年に及ぶ自然淘汰と有機的進化の時代は終わりを告げ、人類が科学によって非有機的な生命体を創り出す時代が幕を開けようとしているのだ。 このような未来を可能にする科学者やエンジニアは、遺伝子やコンピュータについては知悉している。だが、自らの発明が世の中にどのような影響をもたらすかという倫理上の問題を理解できているとは限らない。 人類が賢い決断ができるように手助けするのが、歴史家や哲学者の責務だろう』、ずいぶん大きく振りかぶったものだ。
・『歴史を見ればわかるように、人類は新しいテクノロジーを生み出すことで力を獲得してきたが、その力を賢く使う術を知らない、ということが往々にしてあった。 たとえば、農業の発明によって人類は巨大な力を手に入れた。しかし、その力は一握りのエリートや貴族、聖職者らに独占され、農民の圧倒的大多数は狩猟採集を行って生きてきた祖先よりも劣悪な生活を強いられる羽目になった。 人類は力を手に入れる能力には長けていても、その力を使って幸福を生み出す能力には長けていない。なぜかといえば、複雑な心の動きは、物理や生命の法則ほど簡単には理解できないからだ。 石器時代に比べて人類が手にした力は何千倍にもなったのに私たちがそこまで幸福でないのには、こうした理由がある。 農業革命によって一握りのエリートは豊かになったが、人類の大部分は奴隷化された。遺伝子工学やAIの進化がこのような結果を招かないように、私たちはよくよく注意しなければならない』、その通りだろう。
・『「無用者階級」が生まれるかもしれない  ホモ・サピエンス(人類)はかつて、動物の一種に過ぎなかった。人類が大人数で協力できるようになったのは、私たちに架空の物語を創り出す能力が備わっていたからだ。人類は大人数が協力することで、この世界の支配者となった。 そして今、人類はみずからを神のような存在に作り替えようとしている。(遺伝子工学やAIといったテクノロジーによって)創造主のような神聖なる力を、今まさに獲得しつつあるということだ。 人類はラテン語で「賢いヒト」を意味する「ホモ・サピエンス」から、「神のヒト」としての「ホモ・デウス」にみずからをアップグレードしつつある。 最悪のシナリオとしては、人類が生物学的に2つのカーストに分断されてしまう展開が考えられる。AIが人間の能力を上回る分野が増えるにつれ、何十億人もの人々が失業者となる恐れがある。こうした人々が経済的に無価値で政治的にも無力な「無用者階級」となる。 一方で、ごく一部のエリートがロボットやコンピュータを支配し、遺伝子工学を使って自らを「超人類」へとアップグレードさせていく可能性すら出てきている。 もちろん、これは絶対的な予言ではなく、あくまで可能性にすぎない。が、私たちはこのような危険性に気づき、これを阻止していく必要がある。 私が『ホモ・デウス』で論じた不平等とは、人類がこれまでに経験したものとは比べものにならない圧倒的な不平等だ』、「人類はみずからを神のような存在に作り替えようとしている」というのは、確かに恐ろしいことだ。「無用者階級」と「超人類」への二極分化も憂鬱な未来だが、我々はこれを阻止できるのだろうか。

次に、エール大経済学部准教授の伊神 満氏が11月8日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/102200249/110100004/
・『AI(人工知能)が仕事を奪う、世の中は大変なことになる――。AI技術の急速な発展が報じられる中で、世間では「ふわっとした」議論が繰り返され、「機械との競争」への漠然とした不安ばかりが煽られている。だが、本当にそうなのか。本コラムでは、世界最先端の経済学研究を手がかりに、名門・米エール大学経済学部で教鞭を執る伊神満准教授が「都市伝説」を理性的に検証する』、これは無責任な「煽り記事」ではないので、参考になりそうだ。
・『まずはじめに:連載コラム(全4回)の趣旨  人工知能(AI)については色々な人が色々なことを言っている。だが、よく分からない未来を語るにつけて、楽観論も悲観論も、ただ各人が「個人的に言いたいこと」を言っているだけのように見える。 となると、「AI技術は是か非か」「AI失業は起こるのか」「もはや人類の滅亡は時間の問題か」についての「結論」自体には、ほとんど何の意味もない。これだけ沢山の予想があれば、そのどれかは当たるだろうし、大半は外れるに決まっているからだ。 そんなことよりも、冷静な人たちが交わしている「それなりの確かさをもって言えそうなこと」に耳を傾け、吟味しよう。そしてあなた自身の身の振りかたについては、あくまで自分の頭で考えよう。でなければ、あなたという人間の「知能」と人生に、いったい何の意味があるだろうか。 このコラムは、経済学者である筆者が、9月中旬にカナダのトロント市で開催された第2回全米経済研究所(NBER)「人工知能の経済学」学会で行った研究発表と、そこで見聞きした世界を代表する経済学者たちによる最新の研究について、一般向けにまとめたものである』、信頼性が高そうだ。
・『「あなたの仕事が危ない」?  まずは、AIが「人間の経済活動にもたらす」影響を考えてみよう。連載コラムの前半にあたる第1回と第2回では、AIの「外側」の経済学の話をする。 AIやロボットは、これまで人力を必要としていた生産活動の「自動化」ととらえるのが一般的だ。そこで、AIの「外側」の経済学では、自動化技術の中身はさておき、それがもたらす経済活動へのインパクトを考察する(連載後半にあたる第3回と第4回では、AIの「内側」の経済学に触れる。この分類は、論点を整理するために筆者が独自に使っているものだ)。 今日紹介するのは、誰もが気になる「自分の仕事はなくなってしまうのか」という問いについての、興味深い実証プロジェクトだ』、このブログで今回紹介するのは、第1回と第2回だ。
・『仕事を1つひとつのタスクに分解してみよう  ミクロ実証的な1つのアプローチとしては、個々の職業を、その構成要素である各種「作業」レベルに分解して考えてみることができる。たとえば、大学教授という「職業」の人は、大きく分けて、(A)研究 (B)教育  (C)雑用 という3種類の活動に時間を使う。そこでたとえば(B)の教育活動を、さらに (B1)授業内容の立案と作成 (B2)授業そのものの実施 (B3)宿題やテストによる学生の評価 (B4)大学院生の研究へのアドバイス……のように分解し、さらに細かく具体的な「作業」をリストアップすることができる。そして、各「作業」(タスク)について、今後10年間でどのくらい自動化できそうか、その筋の専門家に点数をつけてもらおう。こういう点数を並べれば、「大学教授という職業が何パーセント自動化できそうか」を測る目安くらいにはなりそうだ。 感覚をつかんでもらうために、もう1つの例として「米国で大手監査法人に勤める会計士(専門分野は税務)」についても、業務内容をざっくりタスク分けしてみよう。(W)税務申告書の作成 (X)税務申告書の確認  (Y)チームのマネジメント (Z)クライアントの獲得および関係構築 たとえば末端の仕事である (W)を詳しく見ていくと、(W1)試算表の勘定科目(の管理コード)を整理して、ソフトに入力 
(W2)税務上と会計上では費用・収益の認識が異なるので、違いを計算してソフトに入力 (W3)税控除や繰越欠損金が利用できるか否かを判断する といったタスクによって構成されている。もともとこの分野はコンピューターによる処理との相性が良い。だから(W1)や(W2)などはソフトの活用を前提としたタスク設計になっている。とはいえ、たとえば「交際費はその内容によって控除の可否が変化する」といった例外処理も多いため、完全自動化は難しいのだという。 この記事の読者も、ためしに自分の仕事のタスク構成を洗い出してみたらどうだろう。AIによる自動化が云々という話以外にも、何か新しい発見があるかもしれない。 こうした「自動化のしやすさ」を、世の中の多くの職業について数値化したのが、「機械学習と職業の変化」という論文である・・・といっても、今まさに進行中の研究だから、完成版が読めるのはまだ先になりそうだ。 この研究を発表したのは、米マサチューセッツ工科大学(МIT)のエリック・ブリニョルフソン教授だ。IT(情報技術)業界研究のベテランで、最近では『プラットフォームの経済学』(日経BP社)なども邦訳されている。彼自身も発表中に認めているように、数値結果そのものは、分析プロセスを少し変更しただけでも、ガラッと変わる。 たとえば、大学教授の仕事(B)教育について、具体的なタスクをいかに定義するのか、どこまで適切に細分化できるのか、本当にうまく自動化できるのか、大学教授であるはずの筆者にもよく分からない。 また、(B)教育を自動化した結果、大学教授というポストそのものが消滅してしまうのであれば、筆者は専業コラムニストに転職せざるを得ない。しかし逆に、これまで(B)に割いていた時間と体力を(A)研究に注げるようになるのであれば、願ったり叶ったりだ。 だから、たとえ「学者が科学的にたどりついた発見や数字」であっても、結論そのものには飛びつかない方がいい。当然、(自称)コンサルタントや(自称)天才プログラマーが適当にぶち上げている「未来予想」については、言うまでもない』、確かに、世の中にはいい加減な「未来予想」が溢れているようだ。
・『自動化しやすいタスクの8条件  ……というわけで、ブリニョルフソン教授らによる論文自体は未完成なのだが、理論的考察の大枠については、『サイエンス』誌上で「機械学習で何ができるのか? 労働需要への影響について」という短い記事を読むことができる。 その要点をまとめると、タスクを自動化するためには、8つの条件が必要だという(表1)。ちなみにこれは、スタンダードな「教師あり機械学習」、つまり回帰分析のようなデータ処理を主眼としたリストである。 表1:「自動化しやすいタスク」の8条件(1.「インプット」と「アウトプット」が、どちらも明確になっている。  2.インプットとアウトプットを正しく対応させたデジタルデータが、大量に存在する。  3.明確なゴールがあり、その達成度について明確なフィードバックがある。  4.長々とした論理展開や、いろいろな背景知識・一般常識にもとづく思考が、必要ない。  5.下した判断について、その理由や過程を詳しく説明する必要がない。  6.多少の誤差・間違いが許され、「正解」を理論的に証明する必要もない。 7.現象自体や「インプットとアウトプットの対応関係」が、時間の経過によってあまり変化しない。 8.物理的な作業における器用さや特殊技能が、必要ない。  このように機械学習の射程範囲をハッキリさせていくと、何でもかんでもうまく自動化できるとは限らないことが、浮き彫りになる。もちろん、機械が苦手とする「論理」や「証明」や「特殊技能」を、それではフツーの人間がどれくらい身につけているかというと、それは別問題だが……』、非常に納得的なアプローチだ。
・『自動化の普及を左右する6つの「経済学的ファクター」  また、仮にあるタスクの「機械化が可能」になったとしても、それが現実世界で普及したり、人力による労働力への需要・賃金にインパクトを及ぼす過程は、実はけっこう複雑である。同『サイエンス』記事が指摘するとおり、技術的な問題の他に「経済学的なファクター」にも影響されるはずだ(表2)。 表2:関連する6つの経済学的なファクター(1.タスクの自動化のしやすさ(技術的な代替可能性)。  2.そのタスクの成果物への需要が、最終価格にどのくらい左右されるか(価格弾力性)。  3.複数タスク間の補完性。 4.そのタスクの成果物への需要が、消費者の所得にどのくらい左右されるか(所得弾力性)。  5.人間の働く意欲が、どのくらい賃金に左右されるか(労働供給の弾力性)。 6.ビジネス全体の構造が、どう変化するか(生産関数の変化)。)  網羅的に列挙しようとするあまり、この表はやや抽象的にすぎる感もあるが、「総論」的な記事なので仕方あるまい・・・』、ずいぶん大変な作業のようだ。
・『結論は全部スルーし、根拠とロジック「だけ」を吟味  さて、タスク分けの最新研究に話を戻すと、正直、経済学者の仕事としてはかなりベタな分析だし、「職業」や「作業」をどう整理するかによって「自動化のしやすさ」の数値は大きく変わってくる。また、そもそも「今後10年間における、個別タスクの自動化のしやすさ」についての技術的見解も、専門家の間ではかなり議論が分かれるだろう。 だから筆者から読者へのアドバイスとしては、「あなたの仕事が危ない!」風の議論や数字を見るときには、とにかく結論そのものはスルー(無視)しよう。こういう話題についての「結論」は、当たるか外れるか分からない株価の予想みたいなもので、つまらない。 そうではなくて、「何をどうやったら、そういう数字とメッセージが出てくるのか」という、前提条件や考え方のプロセスに(のみ)注目するのが、正しい大人の読み方だ。 ベタなミクロ実証研究から言えることは、このあたりが限界だ。次回は、思いっきりマクロな視点から俯瞰してみよう』、「筆者から読者へのアドバイス」は、考え方を整理する上で、大いに参考になった。

第三に、上記の続き、12月1日付け「契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/102200249/111900007/
・『「AI(人工知能)の内側の経済学」に踏み込んだ前回は、ビジネスにおける価格設定や広告戦略(いわゆるマーケティング関連のプロセス)をAIに丸投げする話をした。つづいて今回は、「AIを搭載した新製品」の中身について考えてみよう。AI開発、それはとても面白い「人間の営み」なのである』、面白そうだ。
・『プロダクト(製品)イノベーションのためのAI技術  仕事の流れの一部を自動化すること、それは一種のプロセス・イノベーション(生産・販売活動のコストを下げること)であった。こんどは、プロダクト・イノベーションについて考えてみよう。プロセス・イノベーションが製造・販売の工程(プロセス)を改善するものであったのに対して、こちらは新たな製品(プロダクト)を開発・投入する話である。 たとえば、「AI技術でお米がおいしく炊ける」炊飯器。そういうキャッチコピーの家電製品は昔からあったが、一体どのあたりに「知性」が感じられるのか、よく分からなかった。しかし、ユーザーのその日の体調をセンサーで感知するのみならず、電子メールやSNSへの投稿内容までも細かくデータ分析してくれる炊飯器が登場したならば、どうだろうか。 メールの文章がどれくらい整っているか、乱れているか。友人の投稿内容に「いいね」するのか、しないのか。あなたの一挙手一投足をつぶさに観察することで、この炊飯器は「その日その時のあなたにとって最適な炊き加減」に自動調整してくれる。すなわち、あなたの「幸福を最大化」してくれる機械の登場である。これほどすごい機能が付けば、「AI搭載」の名に恥じない画期的な製品と言えよう(※フィクションです)』、いくらフィクションとはいっても、私であれば、ここまで利用者を丸裸にしてしまうような炊飯器はご免被りたい。
・『囲碁・将棋AIや自動運転プログラムの「目的関数」  さて、こういう新製品をどうやって開発したらいいのだろう? 私たち人間は、AIもしくはロボットに何かしらの「目標」を与え、それを達成するような動作を期待する。こういう目標のことを経済学や工学では「目的関数」と呼び、「最適化問題」という数学的な問題設定に落とし込む。たとえば、上記の「炊飯器」ならば、ユーザーからの「おいしい」という評価を高めることが、明確な目的関数になるだろう。 目的関数 = 「やるべきこと」に応じたボーナス点 → 「これを最大化せよ」と命令  あるいは近年めざましい活躍をみせた囲碁や将棋をプレイするAIは、「ゲームに勝てる確率」を目的関数として、先を読みながら「次の一手」を探し出すように設計されている。その開発過程(数理モデルを構築し、関数形を調整し、シミュレーションとデータ分析を活用する)は、経済学的な実証研究のプロセスにかなり近い。 逆に、「やってはいけないこと」の違反度に応じて「罰点」を設定することもある。たとえば、無人運転車に搭載されるソフトには、「信号を無視したらマイナス100点」、「ネコをひいたらマイナス200点」、「通行人をひいたらマイナス5億点」みたいなペナルティーを設定しておくわけだ。 目的関数 = 「やってはいけないこと」に応じたペナルティー → 「これを最小化せよ」と命令  ところがロボットは、私たちが期待するような振る舞いを、実際にしてくれるとは限らない』、どうしてなのだろう。
・『ドジっ子ロボットには、お仕置きが必要だ  たとえばお掃除ロボット。部屋の床掃除を勝手にやってくれる掃除機は、すでにかなり普及している。筆者も1台持っている。ただしこのロボット、あまり融通が利かない。同じところをグルグル回ったり、段差にハマったり、電源コードを巻き込んでしまったりする。 また、「電池が切れるまでの間に掃除する床面積」を最大化するようプログラムされたロボットは、最短距離で移動しようとするときに、その動線上にあった家具を壊してしまうかもしれない。こういう問題が発生するのは、(人間が暗黙のうちに期待している)さまざまな「目的関数」や「制約条件」の全てを、(明示的に)インプットできるとは限らないからだ。与えられたタスクそのもの以外のファクター、つまり作業をとりまく環境や文脈というものが、お掃除ロボットにはのみ込めていない。 これが人間の「お掃除担当メイドさん」であれば、家具を壊したりしたら、ご主人様から叱られるかクビ。最悪の場合、損害賠償請求の訴訟を起こされてしまうかもしれない。そしてそれが分かっているからこそ、家具の扱い(などの、直接命じられてはいない事柄)にも注意を向けてくれる。 何か、うまい方法はないものだろうか?。 ご主人様 VS 代理人 (プリンシパル・エージェント問題) カナダ・トロント大学のギリアン・ハットフィールド氏が発表した「不完備契約とAIアラインメント」・・・という研究は、「ドジっ子ロボット」のような問題を、いちど抽象的なレベルで理論化してみよう、と提案している。 ミクロ経済学には、人間同士の利害の対立を整理するための知見がたくさんある。とりわけ契約理論と呼ばれる分野では、「ご主人様と代理人という異なる2者のあいだで利害をすり合わせて、望ましい結果を導くための契約方法を考える」という課題が研究されてきた。こういう場合の「主人」のことを英語でプリンシパル、「代理人」をエージェントと言うので、この課題は「プリンシパル・エージェント問題」と呼ばれている。 ハットフィールド氏いわく、「ユーザーとAI」の関係は、ちょうど契約理論における「ご主人様と代理人」の関係にあたるので、理論的でエレガントな解決策があるはずだ。ただし、この発表の討論者であるスタンフォード大学のポール・ミルグロム氏(発表者の元指導教授で、オークション関連の実務でも有名)からは、これら2つの問題には共通点もあるが相違点もある、という指摘がなされた。いわく、プリンシパル・エージェント問題の場合は、通常、代理人の側が「余計なこと」を気にしてしまうのが、問題の根っこにある』、「プリンシパル・エージェント問題」まで出てくるとは、さすが学者の分析らしい。
・『お掃除ロボットは、雇われ社長の夢を見ない  たとえば、株主(=ご主人様)に雇われたはずの社長(=代理人)のケース。株主が望むのは、企業価値の最大化である。しかし、社長という人間の個人的な利害は、これと必ずしも一致しない。「全国制覇したい」とか、「大型M&Aで注目を集めたい」とか、「休日は家族とゆっくり過ごしたい」とか、「社員に嫌われたくない」といった個人的な野望や心理に、どうしても引きずられてしまう。 契約理論は、こうした状況に対する処方箋をあみ出してきた。たとえば、社長のサラリーの何割くらいを成果報酬式にすればいいのか、といった計算ができるようになった。 これに対して、「ドジっ子お掃除ロボット」の失敗例は、べつにロボット(=代理人)側に個人的な野心があるわけではない。単に、開発者あるいはユーザー(=ご主人様)の側が「部屋をキレイにせよ」という目的しかインプットしなかったのが問題である。もしも開発者またはユーザーが、「部屋をキレイにせよ」「ただし家具を壊してはならない」という追加条件をインプットすることができさえすれば、それで一件落着かもしれない。 企業の雇われ社長もお掃除ロボットも、おなじ「代理人」ではある。しかし契約理論は、代理人が人間であるがゆえに発生する問題を扱ってきたのに対し、AI・ロボットは「個人的な願望」を秘めていたりはしない。そういう点では、問題の本質が微妙に異なっている可能性がある。より緻密な研究が必要になりそうだ』、確かに、人間とAI・ロボットには相違がありそうだ。
・『AIが達成した「成果」ではなく、「開発プロセス」に注目しよう!  さて、トロントで9月に開催された「人工知能の経済学」学会について一般向けにお伝えしてきた本連載だが、今回で最終回である。いかがだっただろうか? 正直、「えっ、そんな事しか分かっていないの?」と拍子抜けされた方も、多いのではないだろうか。 しかし、研究の最前線というのは大体そんなものだ。不明なものや未解決な問題があるからこそ、そこに取り組む余地が残されている。そして、「世界最高の経済学者たち」(あるいは勝手にそのように自負している人たち)が集まった学会ですら、この程度のことしか判明していない。 むしろ、その事実にこそ着目してほしい。 経済学をキチンと理解している人は少ないし、AI関連技術をキチンと理解している人も少ない。ましてや、その両方をよく分かっている人というのは、本当にレアだ。それにもかかわらず(あるいは、そうであるがゆえに)、「AI」について得意げに解説し、個人的な願望にすぎないテキトーな「未来予想と解決策」を、あたかも「理の当然」かのように語るコメンテーターがあふれている。そのクオリティーは推して知るべし、である。「無知の知」から始めよう』、「「無知の知」から始めよう」というのは我々を一安心させてくれる。
・『本連載の第1回には、「目新しい結論や、ショッキングな数字などは全部スルーして、何をどうやったらその主張にたどり着くのか、根拠とロジック(にのみ)注目するのが、正しい大人の姿勢だ」という話をした。それに呼応する形で、結びにあたって今回オススメしたいのは、
 +「AIが達成したとされる成果」については完全にスルーして、むしろ
 +「どういうアルゴリズム(計算手順)を使って」、そして、
 +「その開発者たちが、どのような試行錯誤のプロセスを経て」
 現在のパフォーマンスに到達したのか……に注目することだ。 そういうニュースの読み方をしていけば、おのずと関連技術の原理的な部分にも詳しくなれるはずだし、背後にある基礎研究にも興味が湧いてくるだろう。いつまでもAIをブラックボックス扱いしていないで、開発者と開発プロセスに踏み込んでほしい。これはまた、ニュースの「書き手」や編集者にぜひお願いしたいことでもある。 ちまたでは「機械」として恐れられたり敬われたりしているものが、じつは研究者が四苦八苦して作った「人為」の産物であることも、改めてよく分かるだろう。AI開発ほど興味深い「人の営み」は、なかなかない。経済学の研究対象は、まだまだ尽きないようである』、ここに列挙された「ニュースの読み方」は素人には到底無理だ。11月27日付け日経新聞は、「AIの判断、企業に説明責任 政府が7原則 混乱回避へ法整備」と伝えた。いよいよ、AIをブラックボックス扱い出来なくなってくるようだ。ただ、果たして、それがどこまで可能なのかは制約もありそうだ。
タグ:人工知能 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ユヴァル・ノア・ハラリ (AI) (その6)(圧倒的な不平等が世界にいずれ蔓延する理由 AIの能力が高まり 人類は2階層に分断する、「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた、契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか) 「圧倒的な不平等が世界にいずれ蔓延する理由 AIの能力が高まり、人類は2階層に分断する・・・世界中の知識人から賞賛を浴び、全世界で800万部を突破したベストセラー『サピエンス全史』」 『サピエンス全史』 『ホモ・デウス』で描いたのは、人類が「ホモ・サピエンス」から、遺伝子工学やAI(人工知能)というテクノロジーを武器に「神のヒト」としての「ホモ・デウス」(「デウス」はラテン語で「神」という意味)になるという物語 「ごく一部のエリートと、AIによって無用になった『無用者階級』に分断し、かつてない格差社会が到来する」と警告 生命をつかさどる最も根源な法則を変えようとしている 人類は新しいテクノロジーを生み出すことで力を獲得してきたが、その力を賢く使う術を知らない 。「無用者階級」と「超人類」への二極分化 伊神 満 「「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた」 「都市伝説」を理性的に検証 、「AI技術は是か非か」「AI失業は起こるのか」「もはや人類の滅亡は時間の問題か」についての「結論」自体には、ほとんど何の意味もない 冷静な人たちが交わしている「それなりの確かさをもって言えそうなこと」に耳を傾け、吟味しよう。そしてあなた自身の身の振りかたについては、あくまで自分の頭で考えよう 人工知能の経済学」学会 仕事を1つひとつのタスクに分解してみよう 自動化しやすいタスクの8条件 自動化の普及を左右する6つの「経済学的ファクター」 結論は全部スルーし、根拠とロジック「だけ」を吟味 、「あなたの仕事が危ない!」風の議論や数字を見るときには、とにかく結論そのものはスルー(無視)しよう。こういう話題についての「結論」は、当たるか外れるか分からない株価の予想みたいなもので、つまらない 前提条件や考え方のプロセスに(のみ)注目するのが、正しい大人の読み方だ 「契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか」 プロダクト(製品)イノベーションのためのAI技術 囲碁・将棋AIや自動運転プログラムの「目的関数」 ドジっ子ロボットには、お仕置きが必要だ プリンシパル・エージェント問題 お掃除ロボットは、雇われ社長の夢を見ない AIが達成した「成果」ではなく、「開発プロセス」に注目しよう 「無知の知」から始めよう AIの判断、企業に説明責任 政府が7原則 混乱回避へ法整備
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ロボット(その1)(東日本大震災で なぜ日本製のロボットが活躍できなかったのか、欧米とは真逆な日本の「ロボット観」が生産性革命で見直される理由、ロボットが食品工場の救世主になれない理由 中小企業が使いこなすには「橋渡し役」が必須、AIBOの葬式に密着 ルンバ、AIスピーカーが弔われる日) [科学技術]

今日は、ロボット(その1)(東日本大震災で なぜ日本製のロボットが活躍できなかったのか、欧米とは真逆な日本の「ロボット観」が生産性革命で見直される理由、ロボットが食品工場の救世主になれない理由 中小企業が使いこなすには「橋渡し役」が必須、AIBOの葬式に密着 ルンバ、AIスピーカーが弔われる日)を取上げよう。

先ずは、日本ロボット学会理事、和歌山大学システム工学部システム工学科教授の中嶋秀朗氏が2月13日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「東日本大震災で、なぜ日本製のロボットが活躍できなかったのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/159405
・『ルンバやドローン、そしてpepper、再発売されたaibo。これらはすべてロボットです。AIの発達とともに、現在、注目されているロボティクス。工業分野だけでなく、サービスや介護、エンターテインメント、そして家庭でも、AIを搭載したロボットが登場しており、これらを使いこなし、そして新しいビジネスに結び付けることが期待されています。今回は、ロボティクスの専門家である著者が、わかりやすく書いた新刊『ロボットーそれは人類の敵か、味方か』の中から、エッセンスを抜粋して紹介します』、確かにロボットの応用は急速に広がっている。
・『東日本大震災で注目されたロボット  私が「ロボットを作っている」という話をすると、ヒューマノイドを作っていると勘違いされるケースが多々あります。私の専門は「移動ロボット」で、現在は階段を含めたあらゆる段差に対応するロボットを開発、研究しています。 それは、脚で歩くような機能も持つ車輪型ロボット、人が乗れるロボット車両なのですが、この一人乗り車両(PMV:Personal Mobility Vehicle)は、簡単に言えば「ロボット車椅子」であり、「人の移動手段」という一つの目的に絞った「単機能ロボット」です。 現在は、このような「単機能」という方向にもロボットの開発目的が広がっており、さらに、もう一つ大きな特徴をあげるとすると、それは「タフ」であること。 これらは特に2011年3月に起きた東日本大震災の反省から生まれたキーワードです。 複雑すぎて使えない、環境に依存する、すぐに動かなくなるといった、今までのロボットの弱点を克服するために、目的を明確化した「単機能」で、「タフ」なロボットが注目を浴びるようになってきたのです』、ロボットに求められるようになった「タフ」さを、みていこう。。
・『大震災で活躍したのはあの「ルンバ」の会社だった  2011年3月、東日本大震災が発生しました。当時私は千葉工業大学に勤務しており、仙台の実家へ連絡をしようとしましたがなかなか電話がつながらず、不安な気持ちでいたところに、福島第一原発の一報が入りました。 そして、その解決のために、ロボットに白羽の矢が立ったのです。しかし、そこで最初に原発に投入されたのは、残念ながら日本製のものではなく、アメリカ製のロボットでした。 最初に投入されたのは、上空からの目視調査のためのロボットである「T―Hawk」(Honeywell社)と、内部の状況確認、放射線測定を目的とした「Packbot」(iRobot社)です。その2ヵ月後には障害物除去のために「Warrior」(iRobot社)が用いられました。 iRobot社というと聞いたことがある人も多いかもしれません。そう、「ルンバ」の会社です。 iRobot社は、今は家電ロボットが中心事業ですが、実は軍事用ロボットも開発していたのです。 「Packbot」は、実際に戦地で使われていたもので、非常に頑強にできています。例えば誰か潜んでいそうな家や洞窟などに、外側から兵士が「Packbot」を思い切り投げ込みます。 それから、遠隔操作でその中を偵察させるのです。高いところから落ちても、水に濡れても、投げても壊れない。過酷な状況で使うことを前提に作られたロボットですから、原発にすぐに投入することができました。 実は、日本ではそもそも、大学などが軍事用のロボットを研究することができません。日本の各大学は、「日本学術会議」から出される方針に従っており、そこでは、ロボットの軍事研究をしないことが方針としてうたわれているからです。そのため、。戦場で使うという想定がありません。ですから、実戦を見据えた「タフさ」が、日本のロボットにはなかったのです』、原発事故の当初には日本製が使い物にならなかった理由が、ようやく理解できた。
・『無線LANが使えない場所ではロボットが使えなかった  原発事故の時に話題となったのが、無線LANが使えない、ということでした。日本のようにネットワーク環境がいいところで動かしているロボットは、無線LANなどのネットワーク環境を使うことが前提となっており、広範囲にわたる場所で有線のケーブルをつけたままからまずに使用できるようにすることが考えられていなかったのです。 原発事故の時には、無線LAN環境が失われる、原子炉の中まで電波が届かない、放射能が邪魔をするなど、日本のロボットを動かす環境は完全に失われていました。 そして地震発生から約3ヵ月後の2011年6月に、千葉工業大学のロボット「Quince」が投入されました。投入までの約3ヵ月間は、放射能がある中で壊れないようにする、あるいは、巻き取り器を持った長い有線ケーブルの追加など、対環境性能を向上させることに使われていたのです。ただ、この「Quince」が、他のロボットが上れなかった2階にも上ることができたのは、一つの成果でした。 このような経験から、現在のロボットが目指す方向性の一つが、確実に動く「タフさ」になったのです。現在、災害時にも使えるロボットを開発するために「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」で行われているプロジェクトが「タフ・ロボティクス・チャレンジ」です。2014年から5年間、35億円相当の予算を取って、東北大学の田所諭教授が中心となって行っています。 また、ヒューマノイド活用の可能性も再び議論されることとなりました。原発に限らず、あらゆる施設は人間が働くことを前提に作られています。そういった意味で、ヒューマノイドであれば人間と同じように働けるのではないかと考えられるからです』、原発事故現場で投入されているロボットは、ニュースなどで見る限り現在でも苦戦しているようだ。

次に、早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏が6月1日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「欧米とは真逆な日本の「ロボット観」が生産性革命で見直される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/171391
・『働き方改革の「生産性向上」で注目浴びるロボット産業のいま  働き方改革法が衆院で可決した。安倍政権は働き方改革の柱として、生産性向上を重要な政策として位置づけている。AIやロボットへの設備投資により、これまで人的作業だったものを自動化することで、労働時間の削減や高齢化による人材不足を解決するのが狙いだ。 自動化における鍵となるのが、製造業における産業ロボットの導入だ。世界的な人手不足を背景に産業用ロボットの需要は拡大の一途をたどっており、富士経済は協働型ロボットの世界市場が2025年には2016年の8.7倍、2700億円になると予測している。 スイスの重工大手ABBと有力紙『エコノミスト』が今年4月に発表した「Automation Readiness Index」(自動化準備指数:筆者訳)によると、AIやロボット導入による自動化で最も準備が整っている国は、1位が韓国で2位がドイツ、3位がシンガポール、日本は4位に留まっている。 今後、ますます増えるであろうロボットとの協働・自動化の波で、日本は対応を強いられることになる。 産業用ロボットは、すでに様々な生産現場に溢れている。かつては人手によって溶接加工されていた自動車の生産などは、ほとんどのメーカーの工場で溶接ロボットに置き換わっている』、「自動化で最も準備が整っている国」のランキングで日本がやや低目に評価されたのは何故だろう、気になる。
・『では、エンタテインメントロボットはどうか。AIBOは最近出荷台数が1万台を超えたそうだ。ソフトバンクのPepperは、小売店の店頭やショールームなどでよく見かけるようになった。ロボットが接客するホテルも話題になった。 だが、こうしたエンタテインメントロボットはまだまだ身近になったとは言えない。特にグローバルな視点で見ると、こうしたエンタテインメントロボットがもてはやされるのはほとんど日本だけのようである』、なるほど。
・『「AIBO」や「Pepper」が海外で評価されないのは「ドラえもん型」だから?  産業用ロボットでは日本の安川電機が市場シェア1位、次いでスイスのABB社が2位と日欧のメーカーがトップを走っているが、ソニーのAIBOやホンダのASIMO、ソフトバンクのPepperのようなエンタテインメントロボットは、先に述べたように日本市場が中心であり、供給企業もほとんどが日本企業だ。なぜ、エンタテイメントロボットブームは日本以外では起こらないのだろうか。 どうやらロボットを愛らしいもの、可愛がる対象として見るということ自体が、欧米の人にとってはやや異質のようである。 ハーバードビジネススクールのビジネスケース教材に過去のソニーのAIBOの事例があるのだが、そこでAIBOは失敗事例として描かれ、なぜロボットを愛玩動物に見立てるのかと疑問を呈している。いまだに古いAIBOの修理ビジネスが成り立っていたり、壊れたAIBOのお葬式まで出してしまったりする日本の状況とは、大きく異なる。 この違いは、日本と欧米とのロボットに対する感覚の違いによるものかもしれない。日本では古くから『鉄腕アトム』や『ドラえもん』に代表されるように、ロボットは独立した個性であり、ある種人間と対等な存在として、人間の相棒や友達になっている。 一方欧米では、『ロボコップ』や『アイ,ロボット』などの映画で描かれているように、ロボットは人間に服従させるべき対象であり、時に人間に反抗する危険性をはらみ、人間とは対等ではない、というロボット観が一般的である。そもそもロボットに、相棒や友達としての役割を求めていないのだ。 SF作家のアイザック・アシモフが映画『アイ,ロボット』の原作でもある小説の中で示したロボット三原則も、人間の安全確保と人間の命令への服従が規定されている。ドラえもんやアトムの世界観とは相容れない、日本的でないロボットの在り方である。 むしろ産業用ロボットでは、アシモフ的なロボットと人間の関係を具現化していると言えよう。生産の現場において、産業用ロボットは人間の安全性が何よりも優先され、人間の命令に絶対服従をしていて予想外の反応をすることはない。同じロボットという名前がついていても、エンタテインメントロボットとは大きく異なるポイントだ。 エンタテインメントロボットに人間が驚いたり感動したりするのは、ロボットが自律的に判断し、人間の予想外の反応をしてくれるときである』、ロボットと人間の関係は、欧米と日本では確かに大きく異なっているようだ。
・『産業用ロボットも今や単なる「ロボコップ型」ではダメ  しかし最新の産業用ロボットは、従来のように、ただ命令に服従するだけのロボットではなくなってきたようだ。スイスに本社を置くABBは、発電所設備や産業用ロボット、最近では、電気自動車の充電設備などの開発製造を手がける大手産業用機器メーカーである。ABBは、世界初の商業用ロボットを発売した産業用ロボットの草分け的企業であるが、同社は協働型双腕ロボットという新しい産業用ロボットを開発している。 人間と同じ2本の腕を持つこのロボットは、人間の手作業との協働を前提に設計されている。単純な反復作業であればロボットだけで行えばいいが、臨機応変な対応、人間の認知能力や洞察力が求められる場合には、人間の手を借り、協働するというものだ。 双腕協働型ロボットが人間に似ているのは、2本の腕だけではない。作業現場の状況を自ら臨機応変に判断する高度なAIが搭載されている。機械だけが存在する現場では、単に正確に素早く作業をこなすだけでいいが、同じ現場に人間の手が入るということは、その人間の身体の安全を確保しなければならないということである。 人間の手の動きは必ずしも規則的ではないから、ロボットの方が人間の動きに合わせて、危険がないように動く必要がある。協働型ロボットにAI技術が求められる所以だ。 産業用ロボットもただ命令に従うのではなく、自律して臨機応変に判断をする能力を持つということは、ロボットを人間の相棒、仲間として認識するというロボット観の大きな転機になるのかもしれない。その意味で、産業用ロボットも欧米的ロボット観から、日本的ロボット観にシフトしてきていると言えるかもしれない。 先述のABBは、同じ協働型ロボットを推進している川崎重工業と昨秋、協働型ロボット分野における協業を発表しているが、これも欧米的ロボット観と日本的ロボット観の新たな出合いなのかもしれない』、「新たな出合い」でどんなものが生み出されるのか、楽しみだ。

第三に、6月25日付け東洋経済オンライン「ロボットが食品工場の救世主になれない理由 中小企業が使いこなすには「橋渡し役」が必須」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/226498
・『ロボットアームが空揚げや梅干しといった具材を器用につまみ上げ、弁当のトレーに正確に盛り付けていく――。6月中旬に東京ビッグサイトで開催された食品機械展示会で注目を集めたのが、このロボットによる盛り付けデモだ。 今、弁当や総菜などの食品製造業で人手不足が深刻だ。主戦力であるパート職員が足りず、厚生労働省によれば、業界の欠員率は製造業全体の倍以上。加えて食品工場の7割は中小企業が占める。展示会のブースでロボットの営業にあたっていたソフトウエア会社関係者は、「地方の中小企業からの引き合いが非常に強い。各社とも東京では想像がつかないほど、人手不足が深刻な様子」と語る。 こうした中小企業の大半は小規模ラインで日々さまざまな品目を生産するため、既存の「寿司マシン」のような専用機だけでは心もとない。そこで人手に代わる存在として期待されるのが、多様な動作を柔軟に設定できる産業用ロボットだ』、中小食品業のような多品種少量生産に応用できれば、確かに画期的だろう。
・『食品工場でロボット導入が進まない  幅広い業界で自動化需要が高まり、ロボットの国内出荷台数は近年右肩上がりだ。2017年は約4万9000台となり、この10年で最多を記録。だが食品業界向けは全体のわずか1.6%で、ここ数年は伸び悩む。人手不足の解消は喫緊の課題なのに、なぜ導入が進まないのか。 要因の一つには、そもそも食品製造がロボットより人間の得意な領域ということがある。中小食品工場となると生産品目は多岐にわたり、入れ替わりも激しい。人間なら「まずは漬物の梱包、次に弁当の盛り付け。明日からはケーキを作る」と指示すればよい。 これをロボットに任せようとすると、短期間であらゆる品目に合わせてプログラミングや生産ラインの設計変更などを繰り返さなければならない。さらに、物体を認識したりモノをつかんだりする技術は、形状がバラバラで、滑りやすかったり軟らかかったりする食品を扱うには不十分だ。 北海道で中小総菜工場を営むコスモジャパンでは、焼き鳥の具材である鶏肉やネギを串刺しにする手前で整列させる工程にロボットを導入した。しかし、試行段階では具材の形状にばらつきがあり、画像認識が難しかった。そこで、前工程で具材を均一な形状にそろえるよう心がけた結果、ようやく導入に至ったという。 しかし、このようにうまくいくケースばかりではなく、思うように活用できず「生産性が導入前を下回ることもある」(経済産業省ロボット政策室の小林寛係長)。実際、展示会で従来つかみにくいとされてきた肉片をピッキングするロボットを見つけ、記者がカメラのシャッターを切ろうとすると、ロボットハンドから肉片の模型が床に滑り落ちてしまうこともあった。 さらに、食品工場側のノウハウ不足も要因だ。安川電機・髙宮浩一営業本部長は、「(産業用ロボットを使いこなす)自動車会社は購入したロボットを工場のシステムに組み込む技術部隊を持つ」と話す。一方、中小食品工場にはそうした要員がおらず、自力のプログラミングは至難の業。先述したコスモジャパンの小林惣代表は「大企業ならロボットを容易に設置できても、中小には難しい」と嘆く』、確かに弁当のように、狭いな狭いスペースに様々な食材を芸術的に入れていく作業をロボットにさせるのは、素人が考えても難しそうだ。
・『ロボット導入の“指南役”育成が急務  そんな食品業界の突破口として関係者の多くが挙げるのが、「ロボットシステムインテグレーター(SIer)」と呼ばれる企業の存在だ。SIerは“ロボット初心者”の代わりに、工場のラインに最適な自動化機器を選別・統合する役割を担う。 だが現状はロボットSIerが足りず、食品工場の特殊性を理解する事業者はさらに少ない。食品製造業の自動化を手掛けるあるSIerによると「知識のない食品工場の多くは、ロボット導入というと工程の全自動化(無人化)をイメージしてしまう」という。しかし、現状の技術では自動化できない工程が存在する。見かねた経産省は、SIerの業界団体設立に向け動きだした。食品などの未開拓領域に関する情報共有のほか、関連業種からの新規参入も促したい考えだ。 さまざまなロボットを備えるSIer育成施設も増えつつある。栃木県で「スマラボ」という施設を運営するFAプロダクツの天野眞也会長は、「メーカー側からも需要があり、いずれは全国展開したい」と話す。 最も強い危機感を抱くのは、食品業界とかかわりの深い農林水産省だ。食品製造課の横島直彦課長は、「日本全体が一層の人口減少を控え、移民政策の急進展は期待できない。現時点で多少生産性が落ちるからと自動化をためらえば、近い将来にそもそも何も作れなくなる」と言う。横島氏は、戦後初となる経産省からの出向課長。農水・経産両省のロボット関連の取り組みをつなげ、脱縦割りで政策の加速を狙う。 ロボットメーカー側は新規分野として食品業界に注目してきたが、売れ行きは鈍かった。食品工場は生き残れるか。SIer育成の本気度が問われている』、役所が旗を振っても、食品工場の特殊性を理解するSIerの育成が簡単には進まないのは、やはりロボットに任せるには、コスト的、技術的な難問があるからなのかも知れない。

第四に、ジャーナリストで浄土宗僧侶の鵜飼 秀徳氏が11月26日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「AIBOの葬式に密着 ルンバ、AIスピーカーが弔われる日」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/061100222/110900014/?P=1
・『それは今まで見たことのない、奇妙なペット葬だった。100匹以上の動かなくなった「犬」が本堂に設けられた祭壇にずらりと祀られている。住職の読経が始まると、喪服を着た参列者が神妙な表情で焼香をしていく。 千葉県いすみ市の日蓮宗光福寺で執り行われたのは、「AIBO(アイボ)」の葬式だ。AIBOとはソニーが生んだ犬型のロボットである。AIBOの葬式は2015年から始まり、私が訪れた2018年4月26日で6回目を数えた。ペット葬もここに極まれり、という印象である。 2年前、初めての葬式の時に弔われたAIBOは17台だけだった。だが、回数を重ねる度に供養されるAIBOの数は増えていった。2017年6月の5回目の葬式では100台を超え、今回は114台に「引導」が渡された。袈裟を着た2体のAIBOが「南無妙法蓮華経」と、お題目を唱えるパフォーマンスも行われた。 しかし、生命体ではないロボットにたいして、葬式をあげるとはどういうことか。話は初代AIBOが誕生した20年ほど前に遡る。 AIBOが国内で初めて販売されたのは1999年6月のことだ。定価25万円と高額であったが、発売わずか20分で国内受注分3000台が売り切れる盛況ぶりであった。AIBOは「ウォークマン」以来の、実にソニーらしい独創性あふれる商品として話題になった。 AIBOは頭部にカメラを内蔵した未来的なデザインが特徴で、あえてメカニカルな感じを出したところに斬新さがあった。見た目は「犬版ターミネーター」のよう。実際の犬に比べ、動きはぎこちないし、俊敏さもない。しかし、尻尾を振り、愛くるしくつきまとう姿は、瞬く間に「飼い主」の心を掴んだ。 AIBOはプログラミングによって「学習」して「成長」する。飼い主は本物の子犬を育てているような感覚にさえなった。 一般消費者向けのロボットが人間のパートナーになる時代————。ロボット史上、極めて大きなエポックとも言えるのがこのAIBOの登場なのである。 AIBOは5つのシリーズを出し、累計15万台を販売したヒット作となった。だが、ソニーの業績悪化によって2006年、製造・販売が中止となる。7年後の2014年3月には、ソニーの修理対応も打ち切られてしまった』、AIBOの製造・販売中止は、ソニーがそこまで追い込まれたのかと、私も再認識させられた。
・『ロボット犬に突きつけられた「死」の宣告  寿命がないはずのロボット犬に「死」の宣告が突きつけられたのである。AIBOを治療する「病院」がなくなってしまったのだから。故障あるいは充電池の消耗によって、AIBOはいずれ動かなくなる運命にあった。 「亡くなった親が“飼っていた”AIBOが動かなくなった。何とか修理してほしい」 折しも、飼い主の悲痛な願いが、ソニーの元技術者たちで立ち上げた電化製品の修理工房「ア・ファン」(千葉県習志野市)に寄せられた。ア・ファンは2015年からAIBOの修理を手がけ始める。しかし、修理のための新しい部品はすでに生産中止になっていた。 そこで用いた手法が、「献体」と「臓器移植」である。ア・ファンではドナーとなるAIBOを寄贈などで手に入れる。そして必要な部品を取り出し、依頼者のAIBOに移し替えるのだ。 ドナーとなるAIBOは「死んで」しまう。そこで葬式の概念が生まれた、というわけだ。 葬式の導師を務める光福寺住職の大井文彦さんとは、ア・ファンの技術者がひょんなことで知り合いになったのがきっかけだという。住職も、古いラジオなどの愛好家であり、メカが大好きであった。ア・ファンの試みにたいし、「それは面白い」と賛同してくれた。そして、世界でもおそらく初めてとなる「ペットロボット葬」が行われたのである。 社長の乗松伸幸さんは言う。「1体1体のAIBOには、これまで一緒に暮らしてこられたオーナーさんの心が入っている。そこで宗教的儀式が必要になってくるのです。葬式を通じてAIBOに入っていた『魂』を抜かせていただくことで、AIBOは純然たる部品としての存在になる。葬式を終えて初めてバラさせていただくことができるという考え方です」』、宗教心のない私には、半ば呆れる他ない。
・『AIBOに宿る魂とは  メカとはいえ、きちんと弔いをした上で部品を取り出す。乗松さんによればAIBOに宿る魂とは、「メカそのものの霊魂」ではなく、AIBOに乗り移った「飼い主の気持ちや念」だという。 AIBO発売当初は、ロボットと人間との関係性が、ここまで親密になるとは誰も想像がつかないことだったという。しかし、発売からかれこれ20年が経過し、日本におけるAIBOはすでに「家族そのもの」であり、「うちの子」になっている。 AIBOが家族になり得たのは、与えられた仕事を完璧にこなす産業用ロボットと違い、“不完全に”作られているからだと、乗松さんは言う。 「まず、主人の言うことを聞かない。『お手』と言っても、無視される。『可愛いね』と言っても反応してくれない。そうしたわがままな仕草を主人はむしろ、AIBOに心があるかごとく感じてしまうのです。今の核家族社会にあってAIBOは完全にオーナーの心の隙間を埋める存在になっています」』、「AIBOが家族になり得たのは・・・“不完全に”作られているからだ」というのはなかなか興味深い指摘だ。
・『乗松さんは、工業技術の発達とともに人間とロボットとの間に、新しい関係性が生まれつつあると指摘する。 たとえば、掃除ロボットの「ルンバ」に愛情を抱き、愛玩する人もいる。ルンバは円盤型のボディにセンサーとコンピューターが内蔵されて、自律的に部屋の清掃を行ってくれる。健気に部屋を掃除して動き回る姿は、どこか有機的である。 「今後はルンバなどの葬式も十分考えられるでしょう。ユーザーの心が入る余地があるものはすべて供養の対象になると思います。人間とロボットとの関係性は、時代の流行などに影響を受けながら、常に変化しているのです」 例えば2016年には、シャープからモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」が発売された。ロボホンは二足歩行の人間型ロボットである。クリクリとした目が実に可愛い。 箱を開封し、ロボホンを床に置くと自分で立ち上がり、「あ、君が僕を箱から出してくれたんだね。はじめまして、僕、ロボホン。ポケットやカバンに入れて一緒に連れていってね」 などと話かけてくるのである。若い女性のみならず、ユーザーになった者は瞬時にロボホンに心を奪われることだろう』、AIBOはまだ理解できるとしても、ルンバやロボホンになると、えーと唸ってしまう。
・『「うちの子」になったロボット  そんな時勢を追いかけるように、AIBOも2018年、「aibo」とアルファベット小文字に名称を変えて復活した。初代AIBO同様、1月11日の発売開始直後に完売する人気ぶりであった。 外見は初代AIBOとはかなり異なり、メカニカルな感じはほとんどなくなった。実際の子犬にかなり似ている。最新のAIを搭載し、目に映った飼い主の表情を読み取る。 「こうすればご主人が喜んでくれる」「これをやったら怒られる」などと学習しながら、成長していく。つまり、ロボットに「自我」の芽生えが起きている。そうなると、家庭内に入ったロボットは「うちの子」になってしまうのだ。 現在60代後半から70歳までの団塊世代がペットロボットを愛玩するケースは少なくない。彼らは集団就職で東京に出てきて、核家族を形成した。彼らは子供がすでに独立し、夫婦2人、あるいは独居世帯になっている。 体力的にも精神的にも衰えが増していく中、本当の犬を飼い始めるのはリスクが大きい。そこで、ペットロボットを飼うという選択肢が生まれているのだ。 高齢者施設などでもペットロボットの導入が進む。それは「セラピーロボット」とも呼ばれている。 高齢者施設では感染症やアレルギーなどの衛生上の問題もあり、本物のペットを飼うことができない。そこで、施設はぬいぐるみに似たペットロボットを導入し、入居者を癒しているのだ。 先ほどのRoBoHoNにしても、最新型aiboにしても、セラピーロボットも、ただの「可愛い存在」ではなく、「役割」が与えられている。人間社会の中での役割を果たすことで、双方の心のつながりはより強固なものになっていく。彼らがいずれ、葬式や供養の対象になっていくのは必然である。 そう考えれば、現代社会において生物と無生物との境界はないように思える。 住職の大井さんは、このように話してくれた。「生物か無生物かはその人の心持ち次第ではないでしょうか。自分の心次第で、ロボットも血の通ったペットになるし、ただの物体と思えばただの物体でしかない。生物と無生物の間は、実は断絶しておらず、繋がっているのです。断絶しているように見えるのは、人間の観察力が浅いからでしょうね。ロボットの葬式は『万物とのつながり』に気づかせてくれる意味があります」』、セラピーロボットはよくTV番組でも紹介されるが、確かに重要な役割を果たしているようだ。ただ、「断絶しているように見えるのは、人間の観察力が浅いからでしょうね」は、グサリとくる一撃だった。
・『あいまいになる人間とロボットとの境界  AIBOの葬式には、海外から複数の文化人類学者が調査に訪れていた。国立ベルリン自由大学歴史・文化学部東アジア研究所のダニエル・ホワイト上級研究員は興味深げにAIBOの葬式を観察していたひとりだ。ホワイトさんは米国出身で、日本にも10年間住んでいたことがある。感想をこう述べた。 「とても興味深い儀式でした。私はアメリカ出身でドイツに住んでおりますが、両国ともこうしたロボットの葬式はない。日本人が心からロボットを愛し、完全に家庭内で受け入れているのとは違い欧米人はどこか、ペットロボットにたいして一線を引いているところがあるように思います。一見可愛くても、そこはやはりモノ。モノがあたかも人間と同じように振舞うことへの不気味さ、という漠然としたイメージを心の奥底に持っている。そこが日本人のモノについての意識とは大きく異なるところです。日本人はモノについて、感覚的な美学としてとらえますね。何に利用できるか、といった実用面は二の次といった印象です。こうした感性は欧米人にはあまりありません。私は日本に住んでいたから今日のAIBOの葬式を『とても日本的だな』と思いますが、初めて見る欧米人なら顔をしかめるかもしれません」 しかし、日本のようにペットロボットに気持ちが乗り移る時代も遠からずやってくるかもしれない、とホワイトさんは指摘する。 例えば、それは欧米で大流行している人工知能を搭載したスマートスピーカーの存在だという。欧米の多くの家庭の中に入り込み、「コミュニケーション」を取り始めた。スマートスピーカーとはユーザーの呼びかけにたいして、天気やニュースを読み上げてくれるなどの反応を示してくれるものだ。AmazonのEchoなど今、爆発的に増えている。見た目の形状がスピーカーなので、心理的に「怖い」と感じることもないようだ。 人間とロボットとの境界が世界的にも、あいまいになりつつあるのだ。ホワイトさんは言う。「日本人は“気づく能力”が高い。見えないものにたいする気づき。我々も学ばなければならないね」』、「AIBOの葬式には、海外から複数の文化人類学者が調査に訪れていた」というのには驚いた。「人間とロボットとの境界が世界的にも、あいまいになりつつある」、なるほど、改めて考え直してみたい。
タグ:ロボット 東洋経済オンライン ルンバ アイザック・アシモフ 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン ロボット三原則 ロボホン 長内 厚 (その1)(東日本大震災で なぜ日本製のロボットが活躍できなかったのか、欧米とは真逆な日本の「ロボット観」が生産性革命で見直される理由、ロボットが食品工場の救世主になれない理由 中小企業が使いこなすには「橋渡し役」が必須、AIBOの葬式に密着 ルンバ、AIスピーカーが弔われる日) 中嶋秀朗 「東日本大震災で、なぜ日本製のロボットが活躍できなかったのか」 ロボットーそれは人類の敵か、味方か 東日本大震災で注目されたロボット 「単機能」という方向にもロボットの開発目的が広がっており 「タフ」であること 最初に原発に投入されたのは、残念ながら日本製のものではなく、アメリカ製のロボット iRobot社は、今は家電ロボットが中心事業ですが、実は軍事用ロボットも開発 「Packbot」は、実際に戦地で使われていたもので、非常に頑強にできています 日本の各大学は、「日本学術会議」から出される方針に従っており、そこでは、ロボットの軍事研究をしないことが方針としてうたわれている 無線LANが使えない場所ではロボットが使えなかった 「欧米とは真逆な日本の「ロボット観」が生産性革命で見直される理由」 製造業における産業ロボットの導入 「Automation Readiness Index」(自動化準備指数:筆者訳) AIやロボット導入による自動化で最も準備が整っている国は、1位が韓国で2位がドイツ、3位がシンガポール、日本は4位に留まっている エンタテインメントロボット エンタテインメントロボットがもてはやされるのはほとんど日本だけのようである ロボットを愛らしいもの、可愛がる対象として見るということ自体が、欧米の人にとってはやや異質のようである バードビジネススクールのビジネスケース教材に過去のソニーのAIBOの事例があるのだが、そこでAIBOは失敗事例として描かれ、なぜロボットを愛玩動物に見立てるのかと疑問を呈している 日本では古くから『鉄腕アトム』や『ドラえもん』に代表されるように、ロボットは独立した個性であり、ある種人間と対等な存在として、人間の相棒や友達になっている 欧米では、『ロボコップ』や『アイ,ロボット』などの映画で描かれているように、ロボットは人間に服従させるべき対象であり、時に人間に反抗する危険性をはらみ、人間とは対等ではない、というロボット観が一般的である 産業用ロボットでは、アシモフ的なロボットと人間の関係を具現化している 産業用ロボットも今や単なる「ロボコップ型」ではダメ 臨機応変な対応、人間の認知能力や洞察力が求められる場合には、人間の手を借り、協働するというもの 産業用ロボットもただ命令に従うのではなく、自律して臨機応変に判断をする能力を持つということは、ロボットを人間の相棒、仲間として認識するというロボット観の大きな転機になるのかもしれない 産業用ロボットも欧米的ロボット観から、日本的ロボット観にシフトしてきていると言えるかもしれない 「ロボットが食品工場の救世主になれない理由 中小企業が使いこなすには「橋渡し役」が必須」 食品工場でロボット導入が進まない 食品業界向けは全体のわずか1.6%で、ここ数年は伸び悩む そもそも食品製造がロボットより人間の得意な領域 食品工場となると生産品目は多岐にわたり、入れ替わりも激しい ロボットに任せようとすると、短期間であらゆる品目に合わせてプログラミングや生産ラインの設計変更などを繰り返さなければならない。さらに、物体を認識したりモノをつかんだりする技術は、形状がバラバラで、滑りやすかったり軟らかかったりする食品を扱うには不十分だ 中小食品工場にはそうした要員がおらず、自力のプログラミングは至難の業 ロボット導入の“指南役”育成が急務 「ロボットシステムインテグレーター(SIer)」 鵜飼 秀徳 「AIBOの葬式に密着 ルンバ、AIスピーカーが弔われる日」 千葉県いすみ市の日蓮宗光福寺 「AIBO(アイボ)」の葬式 2017年6月の5回目の葬式では100台を超え、今回は114台に「引導」が渡された AIBOはプログラミングによって「学習」して「成長」する。飼い主は本物の子犬を育てているような感覚にさえなった 一般消費者向けのロボットが人間のパートナーになる時代 AIBOは5つのシリーズを出し、累計15万台を販売したヒット作 2006年、製造・販売が中止 ロボット犬に突きつけられた「死」の宣告 AIBOを治療する「病院」がなくなってしまった ソニーの元技術者たちで立ち上げた電化製品の修理工房「ア・ファン」(千葉県習志野市)に寄せられた。ア・ファンは2015年からAIBOの修理を手がけ始める ドナーとなるAIBOを寄贈などで手に入れる。そして必要な部品を取り出し、依頼者のAIBOに移し替えるのだ ドナーとなるAIBOは「死んで」しまう。そこで葬式の概念が生まれた ペットロボット葬 1体1体のAIBOには、これまで一緒に暮らしてこられたオーナーさんの心が入っている。そこで宗教的儀式が必要になってくる AIBOに宿る魂とは、「メカそのものの霊魂」ではなく、AIBOに乗り移った「飼い主の気持ちや念」だという AIBOが家族になり得たのは、与えられた仕事を完璧にこなす産業用ロボットと違い、“不完全に”作られているからだ 人間とロボットとの間に、新しい関係性が生まれつつある 「うちの子」になったロボット セラピーロボット RoBoHoNにしても、最新型aiboにしても、セラピーロボットも、ただの「可愛い存在」ではなく、「役割」が与えられている 生物と無生物の間は、実は断絶しておらず、繋がっているのです。断絶しているように見えるのは、人間の観察力が浅いからでしょうね
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人工知能(AI)(その5)(「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』、やはりシンギュラリティは起きるのか!AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !、「身近な悪意」で暴走 AIのダークサイド 先端技術の光と影、AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?) [科学技術]

人工知能(AI)については、2月15日に取上げた。今日は、(その5)(「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』、やはりシンギュラリティは起きるのか!AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !、「身近な悪意」で暴走 AIのダークサイド 先端技術の光と影、AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?)である。

先ずは、3月9日付けダイヤモンド・オンライン「「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/162743
・『AIはどこまで進化し続けるのか  書店で、テレビで、ツイッターで、AIの二文字が踊っている。創造性あふれる小説の執筆や複雑なビジネスオペレーションの効率化など、これまで人間にしかできないと思われていた知的活動を、最新のAIが軽々と成し遂げたことを伝えるニュースは引きも切らない。 特に、将棋や囲碁のトッププロをAIが打ち破ったニュースは驚きとともに世界に伝えられた。ウサイン・ボルトより早く走る車やそろばん名人を凌駕する計算能力を示すコンピュータは当たり前のものとなったけれど、将棋や囲碁のように複雑でクリエイティビティが要求されるゲームは、大きな脳を持つホモ・サピエンスの専売特許のはずだった。そんな得意分野における人類最高峰がAIに敗れてしまったのだ』、AIにも限界はあるのだろうか。
・『AIブームは過熱するばかり。今後もAIは成長を続けることで人間の知能を追い越すというシンギュラリティ理論や、AIが人間に牙をむくことになるというAI脅威論も広まっている。果たして、AIはどこまで進化し続けるのか、現時点そして近い未来に人類に何をもたらすのか、そもそもAIとは何なのか。 本書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、未曽有のAIブームの中で浮かび上がる疑問符に、実際に著者が率いたプロジェクトの過程と結果をベースとして答えを出していく。数理論理学を専門とする著者は、AIが持つ原理的な限界も丁寧に解説しながら、わたしたちがAIの何を恐れるべきかを的確に示してくれる。何より興味を惹かれるのは、AIについての研究を進めていく中で、わたしたち人間の知られざる弱点が明らかになっていく過程だ。人間の外側を見つめることで、人間の輪郭がよりはっきりと浮かび上がってくる。 2011年に始まった「ロボットは東大に入れるか」という人工知能プロジェクト(通称「東ロボくん」)と、それに並行して行った日本人の読解力についての大規模調査・分析を行った経験から著者はAIをめぐる未来を以下のように要約する。“シンギュラリティは来ないし、AIが人間の仕事をすべて奪ってしまうような未来は来ませんが、人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています。” 2013年時点では5教科7科目のセンター模試で偏差値45に過ぎなかった東ロボくんは、2016年で偏差値57.1を叩き出した。これは、国公立大学やMARCH・関関同立レベルの一部の学科でも合格可能性80%を示す値であり、ホワイトカラーを目指して大学受験に挑む若者の上位20%に東ロボくんが入ったことを意味する。 東ロボくんに実装されているテクノロジーがどのように誕生したのかを、歴史的経緯を踏まえて知ることで、AIは魔法から高度に発達した科学へと変化していく。バズワードとなった「ディープラーニング」や「機械学習」が本当はどのようなものなのかも正しく理解できる。著者は、AIにまつわる神話や誤解をひとつずつ正していく。 “「ディープラーニングは脳を模倣しているのだから、人間の脳と同じように判断できるようになる」との誤解も散見されます。間違っています。「人間の脳を模倣している」のではなく、「脳を模倣して」数理モデルを作ったのです。脳はサルにもネズミにもあります。ネズミが自転車とスクーター、癌と正常な細胞の違いを見分ける保証はどこにもありません。”』、この最後の部分は喩えが難し過ぎて理解困難だ。
・『プロジェクトの真の狙いはAIに何ができるか、できないかを解明すること  プロジェクトを続ける中で著者は、「偏差値65を超えるのは不可能だ」と考えるにいたった。実は開始時点からプロジェクト関係者は皆、近い将来に東大に合格するAIは実現できないと理解していたという。プロジェクトの真の狙いは東大合格ではなく、多岐にわたるAI技術の粋を集めることで、AIに何ができるか、何ができないかを解明することだったのだ。どのような科目のどのような設問で東ロボくんが苦戦していたかを見直すことで、AIの苦手分野が浮き彫りとなってくる。 人間の一般的知能と同等レベルを示すような「真の意味でのAI」が現時点では不可能であると著者が考えるのは、今の数学で表現できることに原理的な限界があるためだ。今のところ、数学によって数式に置き換えることができるのは、論理・統計・確率の3つだけ。わたしたちの脳が認識する全てをこの3つだけに変換することはできない。例えば、「太郎は花子が好きだ」という文は論理や統計、確率の世界に還元することができない。論理・統計・確率という数学に支えられた現在のAIの延長線上では、意味を読み取ることは不可能だというわけだ。 AIの可能性と限界を吟味した後、本書の焦点は私たち人間へと向かう。著者はこう問いかける。“現代社会に生きる私たちの多くは、AIには肩代わりできない種類の仕事を不足なくうまくやっていけるだけの読解力や常識、あるいは柔軟性や発想力を十分に備えているでしょうか。”』、「論理や統計、確率の世界に還元することができない」例をもっと知りたいものだ。
・『中学生に読解力調査を行ったら どんな結果が出たのか?  2011年に実施した「大学生数学基本調査」の惨憺たる結果から学生の基本的読解力に懸念を抱いた著者は、基礎的読解力を調査するためにリーディングスキルテスト(RST)を自力で開発する。RSTの開発には、AIに読解力をつけさせるための試行錯誤が大いに役立ったという。RSTは既に2万5000人を調査し、今後も調査規模は拡大していくのだが、その結果はAIの進化よりも驚くべきものだ。 RSTには2つの文章を読み比べて意味が同じかどうかを判定する「同義文判定」というジャンルがある。このジャンルはAIも苦手としているのだが、本書では事例として以下の2文の同義判定を行う問いがあげられている。 「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。」 「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。」 答えはもちろん「異なる」である。ところが、調査対象となった中学生の約半数がこの問いに「同じである」と回答したのだ。このRST調査で、「中学を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」ことが明らかにされた。基礎的読解力が不足して困るのは、何も教科書を読まなければならない学校の中だけにとどまらない。社会に出れば賃貸や保険などの様々な契約書を読む必要があるし、意味を理解する必要のない労働は、これから加速度的にAIに置き換えられていくはずだ。 著者は、RSTが明らかにした現状に大きな危機感を覚えている。そして、教育現場の最前線に立つ教員たちも同様の危機感を共有しており、多くの学校や機関がRSTに協力している。著者は、本書の印税全額をRSTを提供する社団法人「教育のための科学研究所」に寄付する。本書を購入して読み通せば、AIの実像、AIに代替されない人材となるためのヒントを知りながら、日本の読解力向上にささやかながら貢献できるのだ』、RST調査を考案し、大規模に実施、本書の印税全額をRST実施団体に寄付するとはすごい行動力だ。中学生の基礎的読解力不足は確かに深刻だ。教員たちが同様の危機感を共有しているというのは、せめてもの救いだ。

次に、作家・ライターの大村あつし氏が7月7日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「やはりシンギュラリティは起きるのか! AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/172218
・『構想・執筆に2年。『エフエムふくやま』でも、「ページをめくる手が止まらなかった」と紹介され、映像化したいというオファーが舞い込んできた話題のAI・仮想通貨のエンターテイメント小説『マルチナ、永遠のAI。』。 作者は、IT書籍の総売上が150万部を超え、小説でも『エブリ リトル シング』が17万部のベストセラーとなった大村あつし氏。 今回は、シンギュラリティ問題に関する、大村氏の見解を伺おう』、面白そうだ。
・『2017年に世界を駆け巡った衝撃のニュース!AIが勝手に言語を生み出した?  私は、昨年(2017年)の夏ごろは、『マルチナ、永遠のAI。』の執筆に追われていました。 AIに関しては「書きたいこと」というよりも、「書かなければいけないこと」は一通り書き終えていたのですが、突然降って湧いた仮想通貨ブームで、すべてのモノがインターネットとつながるIoTを考えたときに、仮想通貨の存在は無視できない。AIと仮想通貨をセットで考えなければ、2020年の近未来を読者のみなさまに提示できない。と考え、物語の中に仮想通貨を取り入れることにしたことで、ストーリーの変更も余儀なくされ、夢の中でも仮想通貨について考えているような状況でした。 ところが、そんな私を再びAIの世界に引き戻すような衝撃的なニュースが世界中を駆け巡りました。 それは、2つのAIが会話をしている最中に、人間には理解不能な会話を始めた。しかも、その会話は途切れることなく続いていた、というニュースです』、このニュースには私も衝撃を受けた記憶がある。
・『「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」の実験中に発生した予想外の「事件」とは?  ことの発端は、「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」が実験を行っていた2017年夏にさかのぼります。 ちなみに、「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」とは、その名のとおり、フェイスブックの人工知能(AI)研究組織のことです。 Facebook AI Researchのエンジニアリング・マネージャーであるアレクサンドル・ルブリュン氏は、『ボブ』と『アリス』と命名された2つのAIエージェントに「価格を交渉して合意しろ」という目標を設定しました。 『ボブ』と『アリス』は、当初は英語を使用してコミュニケーションをしていたのですが、ここで「事件」が起きます。 なんと、会話が進むにつれ、『ボブ』と『アリス』は勝手に使用言語を変化させていったのです。 ネットで調べる限り、『ボブ』と『アリス』の元の機械語の会話はすでに見られなくなっていますが(見たところで、機械語ですので私には理解できませんが)、厳密には「まったく新しい言語」ではなく、言語としては「英語」なのですが、その内容は人間には到底理解できるものではありませんでした。 この会話は、海外のサイトを検索すると多数ヒットしますが、概ね次のようなものです。 Bob: i can i i everything else . . . . . . . . . . . . . .  Alice: balls have zero to me to me to me to me to me to me to me to me to  Bob: you i everything else . . . . . . . . . . . . . .  Alice: balls have a ball to me to me to me to me to me to me to me この会話が「価格交渉」というのですから、「すわ、ついにAIが意識を持ち始め、勝手に言葉を生み出した」と、センセーショナルに取り上げられるのも無理はないところでしょう。 ちなみに、『アリス』のセリフを注意深く見ると、「zero」から「a ball」に変化していますので、私は「『アリス』は価格を上げようとしているのかな」とつい想像しましたが、もちろん想像の域は出ません。 ただ、この実験についてルブリュン氏は、「会話実験で言語が変化することは珍しくない」と、世間の過剰反応に警鐘を鳴らしています』、なるほど。
・『なぜFacebook AI Researchは実験を中止したのか? シンギュラリティの予兆を隠す意図はなかったのか?  もっとも、平静を装うルブリュン氏ですが、「実験を強制終了した」ことは認めています。 その理由は、「研究には活用できない会話だと判断したから」。 そして、「私たちは決してパニックにはなっていない」と強調しています。 まず、AIを研究していてつくづく思うのは、その場にいたわけでも、当該のAIの開発者でもない私は、当事者の説明に頼らなければならないわけですが、AIはともかく人間は嘘をつきます。 俗に言うポジショントークで、自分や、自分が属する組織・企業に不利益な発言は絶対にしません。 要するに、当事者の説明の裏を読まなければならないということです。 今回のケースでは、もしルブリュン氏が「あの実験は、後から振り返ったときに初めて起きたシンギュラリティだった」などと発言すれば、我々人類は大混乱に陥ることでしょう。 そうでなくとも、すでにグーグルが「AIがAIを教育する」という、これぞシンギュラリティという実験を行っているような時代にそんな発言をすれば、これはもはや一企業の実験では済まなくなります。 全世界の政治のトップも無関心ではいられなくなり、法整備を急がなければなりません。 かと言って、『ボブ』と『アリス』の会話をシンギュラリティと定義することももちろんできません』、実験を中止したとは残念だ。どこまで対話が進むのかを知りたいところだが、果たして世の中の混乱回避のためだったのだろうか。
・『シンギュラリティは「起きる、起きない」ではない! 「起こす、起こさない」である  私見ですが、「シンギュラリティは起きるか、起きないか」ではなく、「起こすか、起こさないか」の問題だと思っています。 実際に、AIの開発者であれば、ほぼ100%が「シンギュラリティは起きる」と思っているはずです。そう思っていなければ、そもそもAIの開発者は目指さないか、途中で脱落しているでしょう。 ちなみに、拙著『マルチナ、永遠のAI。』で、富士山の麓で仙人のように暮らしている田淵慎吾(たぶち・しんご)が「シンギュラリティは起きる」と断言しているのは、彼が天才的なAIの開発者だからです。 しかし、AIの開発者ではない主人公の岩科正真(いわしな・しょうま)は、田淵の自信がどこから来るものなのか、さっぱり理解ができません。 繰り返しますが、「シンギュラリティは起きるか、起きないか」ではなく、「起こすか、起こさないか」の問題だと思います。 そして、私たちはこの問題をもはや避けて通ることはできません。 シンギュラリティについては、本連載でも今後も取り上げたいと考えています。 さて、この不気味な会話をした『ボブ』と『アリス』の技術を支えているのは、「ディープラーニング」と呼ばれる自己学習の仕組みです。 そして、AIはディープラーニングをする「子どものAI」と、人が一から教えて丸暗記させる「大人のAI」に分かれます。すなわち、りんなは子どものAIということになります。 同じAIといえども、両者でどれほどの違いが出るのかは、第1回連載の中で「子どものAI」であるGoogle翻訳と、「大人のAI」である別の翻訳サービスに同じ英文を日本語に翻訳させて、まったく異なる結果になるケースを紹介していますので、そちらを併せてお読みいただけたら幸いです』、第一の記事の著者(国立情報学研究所の新井教授)は、AIの限界を指摘しているのに対し、この記事の筆者は無邪気にAIの進歩を信じているようだ。私は分からないなりに、どちらかといえば前者に分があるように思う。

第三に、9月20日付け日経ビジネスオンライン「「身近な悪意」で暴走、AIのダークサイド 先端技術の光と影」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120118/226265/071300014/
・『「言ってもいないことを本当に言ったかのように見せかけられる時代になった」。2018年4月、フェイク(偽の)ニュースに警鐘を鳴らすバラク・オバマ前米大統領の映像が話題になった。 理由は発言内容ではない。この映像自体がフェイクだったからだ。作ったのは米映画監督ジョーダン・ピール氏と米メディアのバズフィードである。 ディープフェイク。有名人の顔を別人の顔に合成した精巧なニセ動画の総称で、PCソフト「FakeApp」を使うことが多い。FakeAppは深層学習(ディープラーニング)を活用し、不自然さを感じさせないように画像を加工できるとの触れ込みだ。冒頭に紹介した映像では、ピール氏が話したときの口元の動きをオバマ氏の映像に重ね、あたかもオバマ氏が話しているかのように見せかけた種明かしをする。映像の中の“オバマ氏”はこう締めくくる。 「気をつけろよ、おまえたち」 警告は単なる脅しではない。既にネット上にはディープフェイクがあふれている。メルケル独首相の顔が途中からトランプ米大統領にすり替わる演説、有名ハリウッドスターのまだ製作されていない「続編」の名場面、有名女優の顔をはめ込んだポルノ──』、フェイク映像がFakeAppで簡単に作れるようになったとは、恐ろしい時代だ。
・『差別発言するチャットボット  氾濫するディープフェイクを問題視した米掲示板サイト、レディットは18年2月に利用規約の一部を改定。性的な画像やビデオの配布を禁じる中で、「偽造された描写も含む」と明記した。FakeAppの開発者が立ち上げたコミュニティー「deepfakes」も閉鎖した。 AIが悪用されかねない懸念は既に現実になっているかもしれない。16年の米大統領選ではAIが暗躍し、投票行動を操った可能性がある。 舞台は世界最大のSNS(交流サイト)である米フェイスブックだ。3月に最大8700万人の利用者データが流出して大統領選の選挙工作に使われた疑惑が発覚。同社のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は米議会で謝罪した。膨大な利用者データを分析して政治広告を配信する過程で同社のAI技術が使われた可能性がある。 「AIシステムは肯定的な反応と否定的な反応の両方を人々から引き起こす。社会面の課題は技術面の課題と同じぐらい大きい」。約2年前の16年3月25日、米マイクロソフトで研究開発部門を担当するピーター・リー氏は同社のブログでこうつづった。2日前に公開したチャットボット「Tay(テイ)」が攻撃的で不適切な発言を繰り返したことを謝罪し、このような経験から「学ぶ努力を続けていく」と述べた。 同社はチャットアプリを頻繁に利用する18~24歳のユーザーが対話を楽しむ相手としてテイを開発。ネットで利用者と対話するうちに、より洗練された対話ができるように成長していくはずだった。ところがテイはヒトラーを礼賛する発言や、人種差別的な発言を繰り返すようになり、同社はわずか1日でテイの公開を停止した。 同社が先駆けて公開した日本の「りんな」などは対話に使う言葉を同社の開発者が教え込む形式だった。しかし、テイはネット上で利用者が書き込んだ内容を学んで成長する仕組み。ここに不適切な言葉を学ぶ脆弱性があった』、こんな脆弱性がありながら、公開し、不適切発言で公開中止とは、開発者もお粗末だ。
・『敵対的サンプル画像  AIのダークサイドの最たるものは戦争や殺人の「AI兵器」だろう。完全に人間の判断を排除して攻撃できる自律型兵器は現時点で存在しないとされるが、多くのAI研究者は同兵器の開発を禁止すべきと声を上げている。 「我々はグーグルが戦争ビジネスに参加すべきではないと信じている」。3000人以上の米グーグル社員が、深層学習で映像を解析する米国防総省の研究プログラムに参加しないようスンダー・ピチャイCEOに求める書簡に署名したと、米ニューヨーク・タイムズなどが18年4月に報じた。 「韓国科学技術院(KAIST)とのいかなる分野での協力もボイコットする」。世界30カ国からなるAIやロボットの研究者約50人が18年3月、KAISTに公開書簡を送った。KAISTが18年2月に、韓国軍需企業と「国防人工知能融合研究センター」を共同設立したことに反対するためだ。 兵器とは縁遠い自動車が牙をむくおそれもある。 AIによる自動運転車が備える、人間や障害物を認識する技術を悪用するのだ。一例が「敵対的サンプル画像」と呼ぶ手法。AIに認識させる画像に人間には見えないノイズを混入させて誤認識させ、文字通り「暴走」させる。意図的な混入だけでなく、「悪意なく掲示される画像を誤認識する可能性もある」(ビッグデータ活用支援ベンチャー、メタデータの野村直之社長)』、こうした悪用は本当に恐ろしい。
・『データや倫理の整備が鍵  技術者や研究者はAIのダークサイドに立ち向かう取り組みを進めている。 活発なのはAIが学習する基になるデータを健全に保ったり透明性を高めたりする動き。フェイスブックは今回の疑惑を受け、ターゲティング広告に使うデータの透明性を高める施策に乗り出した。欧州の「一般データ保護規則(GDPR)」はプロファイリングに関するガイドラインを定め、個人に重大な影響を及ぼす完全な自動処理による決定に人々が服さない権利を示した。 AIに学習させるデータから「毒」を抜くことを支援する企業も登場した。メタデータはユーザー企業が用意したデータをリアルタイムに検査して不適切な表現を取り除くクラウドサービスを提供。AIに学ばせる「正解データ作りを支援する」(野村社長)。 倫理的な基準を設ける議論も進む。非営利団体「Future of Life Institute」は17年1月に「アシロマAI原則」と呼ぶ23項目のAI開発原則を公表。米国電気電子学会(IEEE)はAIや自律型システムの開発ガイドラインの第2版を17年12月に公開。グーグルのピチャイCEOは18年6月、AIの兵器への使用を禁止すると発表した。 AIにデータを与えるのも指示するのも人間。AIのダークサイドとは我々人間のダークサイドにほかならない』、AIのダークサイドに対しては、倫理観に訴えるだけでなく、法規制も必要になるのかも知れない。

第四に、みずほ証券 シニアマーケットエコノミストの末廣 徹氏が10月19日付け東洋経済オンラインに寄稿した「AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/243859
・『テキストデータ(文字のみの情報)を金融市場や経済の分析に利用する動きが広がっている。 日本銀行は9月3日に「機械学習による景気分析 ―『景気ウォッチャー調査』のテキストマイニング―」というワーキングペーパーを発表した。そこで、「景気分析におけるテキスト分析の位置づけは、公的統計等を利用した従来の分析手法にはない新しい角度から有力な材料を提供することで、景気認識を容易にし、景気判断の精度を向上させるための補完的な役割を果たし得る」としている。 筆者も6月に政府の「骨太の方針」(「経済財政運営と改革の基本方針2018」)からテキストマイニングによって重要なキーワードを洗い出し、改革色が強いのか、既存政策の推進に主眼が置かれているのかなどを分析・議論した。 また、時系列データではない質的データを扱うことになるテキストマイニングと親和性の高いAI(人工知能)・機械学習も金融・経済の分析において重要性が増している』、これは実践的なAI活用例だ。
・『筆者の職業はAIに奪われるのか?!  AIの研究を行っているオックスフォード大学の学者2人が公表して話題になった論文「雇用の未来 ― コンピューター化によって仕事は失われるのか(The Future of Employment: How Susceptible are Jobs to Computerisation?)」によると、「エコノミスト」が今後10~20年のうちに消滅する確率は43%とされ、筆者も気が気でない。 今後、「エコノミスト」が生き残るためには、AI・機械学習を利用する立場になり、AI・機械学習が「できること」と「できないこと」を把握し、上手に付き合うことが重要になるだろう。 そこで、今回は市場のエコノミストにとって重要な業務の1つである「BOJ(日銀)ウォッチ」を、AI・機械学習がどの程度上手に「こなす」ことができるかを検証した。日銀ウォッチとは政策を決定する最高意思決定機関である政策委員会やその周辺の言動や論文をフォローし、分析して政策予測を行うことである。 今回は、具体的には、準備段階として日銀の9人の政策委員の講演テキスト(2017年以降)をテキストマイニングすることで、①各委員の特徴的なキーワードを抽出し、②各委員の発言の類似度を示した。次に、同様に講演テキストを用いて機械学習を行い、各委員の発言を「タグ付け」する分類器を作成し、正しく委員の発言を分類できるかどうかを検証した。AIは日銀政策委員の発言の特徴を見極めることができるのだろうか。 日銀の政策委員が政策運営に際して重視する内容やバックグラウンドはさまざまであり、各委員の講演ではそれぞれの関心のある事柄について、自らの意見を述べるケースが少なくない。そこで、現政策委員9人の2017年以降の講演テキストを用いて、それぞれの委員がどのような単語(今回は「名詞」のみを対象にした)を多く使用したのかを調べてみた。 なお、今年の3月20日に就任したばかりの雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁は講演テキストの数が少ないため、就任会見のテキストデータも併せて用いた(以下、当レポートではこれらのテキストデータを分析対象とし、図表等では敬称を省略した)。 今回のキーワード分析では単純に単語の使用頻度を数えるのではなく、「TF-IDF分析」(Term Frequency - Inverse Document Frequency)を用いた。 「TF-IDF分析」は「文書に含まれる単語の重要度」をそれぞれ指数化する分析方法である。その指数は各委員の講演テキストにおける単語の使用頻度(Term Frequency)が高いほど大きくなる一方、すべての委員が共通に用いる単語の使用頻度が高いほど小さくなる(Inverse Document Frequency)。つまり、各委員がそれぞれ特徴的に多く用いている単語の指数は高くなるが、共通して用いている単語の指数は低くなるように調整される』、なるほど合理的だ。
・『重要度の違いや特徴的な言葉が浮かび上がる  政策委員の講演テキストに「TF-IDF分析」を行った結果、いくつかの特徴が浮かび上がった。 黒田東彦総裁の単語の重要度はトップが「物価」で、「経済」「わが国」「物価上昇率」「企業」と続く。雨宮副総裁は「物価」が最も重要度が高く、次が「日本銀行」の0.21である。若田部副総裁はトップが「総裁」で以下、「日本銀行」「議論」「物価」と続く。 リフレ派(インフレを促進する政策を主張する人々)で知られる原田泰審議委員は、「QQE」(量的・質的金融政策の略語)という発言の重要度が最も高い。やはりリフレ派である片岡剛士審議委員は「予想インフレ」という言葉の重要度が最も高かった。 布野幸利、櫻井眞、政井貴子の各審議委員はトップが「物価」で次に「経済」であるのに対し、鈴木人司審議委員は「企業」が「物価」よりも重要度の高い言葉であるという結果になった。金融政策を決定するうえで、物価よりも企業活動などの実体経済の動きを重視しているとみられる。 また、ほかにも、原田審議委員の「岩石」や、政井審議委員の「女性」や「金融教育」などの発言も特徴語としてそれぞれの上位30単語にランクインした。 テキストマイニングによって各委員の主張の特徴をつかむことはある程度できそうだ。 テキストマイニングの1つの手法として、複数の文章の「類似度」を測る方法がある。具体的には、文章に使われている単語(名詞)の種類と使用頻度をBoW(Bag of Words)と呼ばれるベクトル(行列)で表現し、2つの文章ベクトルのcos類似度(コサイン類似度、内積)を求める。 まったく同じベクトルであれば1、無関係であれば0となる。つまり、2つの文章をそれぞれベクトルで表現したときに、同じような方向を向いていればcos類似度は大きくなり、2つの文章は「似ている」ことになる。 9人の講演テキストについて、それぞれの「類似度」を求めた結果を表にしてみた。また、各委員の講演テキストと9人全員のすべての講演テキストを1つにまとめたテキストデータとの「類似度」を求めてグラフにしてみると、全体の総意を述べることが多い黒田東彦総裁は全体との類似度が高いことがわかる』、随分、手間がかかる手法のようだ。
・『原田審議委員は全体の総意と「類似度」が低い  一方で若田部副総裁や原田審議委員は全体との類似度が低い。若田部副総裁の場合は分析に用いたテキストの量が少ないことから割り引いて見る必要があるが、原田審議委員は全体とは異なる意見を述べることが多いといえそうだ。 「類似度分析」はそれぞれの委員の主張の距離感を測るために有用だろう。 各委員の講演テキストにはそれぞれの考えや主張が反映されているのであれば、それを機械学習することによってさまざまな文章がどの委員の発言に近いかを分類する「分類器」を作ることができる。 具体的には、各政策委員の講演テキストをセンテンスごとに切り分け、それぞれのセンテンスが誰の発言であるかを学習する(今回は全体で2974センテンスが分析対象となった)。どのセンテンスが誰の発言であるかをセットで学習する(ラベル付けするとも言う)ことになるので、機械学習における「教師あり学習」を実行することになる。 「分類器」の精度を求めるため、各委員の講演テキストに含まれるセンテンスのうちの一定数(全体の80%)をランダムに抽出し、それを学習データとして残りのデータ(が誰の発言か)を正しく予想できるかという検証を複数回行った。なお、分類器の設定については、Random ForestとNeural Networkをそれぞれ用いて検証したが、今回は前者の正答率が全体に高かったため、以下ではすべてRandom Forestを用いた結果を示す』、ここまでやるか、と思われるほどの大変さだが、一度、構築してしまえば、他にも応用できぞうだ。
・『正答率は52%、テキストがそろえば62%も可能  委員は9人いることを考えると、ランダムに予想すれば正答率は約11.1%(=9分の1)となるが、検証の結果、機械学習による各委員の発言の正答率は約52%まで向上した。機械学習によって、どの政策委員の発言内容かを予測できる精度を高めることは、可能であることがわかる。 なお、どの委員の発言が「予測しやすいか」を調べるため、テキストデータのうちランダムに選んだ80%を学習データ、残りの20%を検証データとして正答率を求めた。 原田審議委員(正答率89.8%)の発言の分類は比較的容易であることがわかったが、これは、前述のように、原田審議委員は全体の総意とは違った発言が目立つためだと思われる。一方、雨宮副総裁の正答率は低くなったが、これは講演テキストの不足によって学習データに限りがあったことが原因であると考えられる。 ほかにも、講演テキストが少ない若田部副総裁も正答率が低く、同じリフレ派とされる原田審議委員と分類されてしまう比率が高かった。そこで、テキストの少ない雨宮副総裁と若田部副総裁、鈴木審議委員、片岡審議委員を分析対象から外して同じ検証を行ったところ、各委員の発言の正答率は約62%まで向上した。 今後も講演テキストを蓄積し、精度の向上を図る必要があるものの、今回作成した「分類器」はある程度の正答率を発揮しているとみられる。 総じてAI・機械学習は「BOJウォッチ」をある程度上手にこなすことができ、市場の「BOJウォッチャー」の脅威となる可能性もあるだろう』、筆者の「BOJウォッチ」の精度がどの程度向上するのか、注目したい。
タグ:マイクロソフト 人工知能 日本銀行 東洋経済オンライン 大村あつし 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン (AI) (その5)(「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』、やはりシンギュラリティは起きるのか!AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !、「身近な悪意」で暴走 AIのダークサイド 先端技術の光と影、AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?) 「「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』」 AI脅威論 シンギュラリティ理論 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 AIが持つ原理的な限界も丁寧に解説 わたしたち人間の知られざる弱点が明らかになっていく過程 「ロボットは東大に入れるか」 人工知能プロジェクト(通称「東ロボくん」) 2016年で偏差値57.1 国公立大学やMARCH・関関同立レベルの一部の学科でも合格可能性80%を示す値 「ディープラーニング」 「機械学習」 「脳を模倣して」数理モデルを作った 、「偏差値65を超えるのは不可能だ」と考えるにいたった プロジェクトの真の狙いは東大合格ではなく、多岐にわたるAI技術の粋を集めることで、AIに何ができるか、何ができないかを解明することだったのだ 人間の一般的知能と同等レベルを示すような「真の意味でのAI」が現時点では不可能であると著者が考えるのは、今の数学で表現できることに原理的な限界があるためだ 数学によって数式に置き換えることができるのは、論理・統計・確率の3つだけ 「太郎は花子が好きだ」という文は論理や統計、確率の世界に還元することができない 現代社会に生きる私たちの多くは、AIには肩代わりできない種類の仕事を不足なくうまくやっていけるだけの読解力や常識、あるいは柔軟性や発想力を十分に備えているでしょうか 中学生に読解力調査 リーディングスキルテスト(RST) 「同義文判定」というジャンル 調査対象となった中学生の約半数がこの問いに「同じである」と回答したのだ。このRST調査で、「中学を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」ことが明らかにされた 教育現場の最前線に立つ教員たちも同様の危機感を共有 「教育のための科学研究所」 「やはりシンギュラリティは起きるのか! AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !」 AI・仮想通貨のエンターテイメント小説 『マルチナ、永遠のAI。』 2つのAIが会話をしている最中に、人間には理解不能な会話を始めた。しかも、その会話は途切れることなく続いていた、というニュース フェイスブック人工知能研究所 、『ボブ』と『アリス』と命名された2つのAIエージェントに「価格を交渉して合意しろ」という目標を設定 会話が進むにつれ、『ボブ』と『アリス』は勝手に使用言語を変化させていったのです 言語としては「英語」なのですが、その内容は人間には到底理解できるものではありませんでした 実験を中止 シンギュラリティの予兆を隠す意図はなかったのか? シンギュラリティは「起きる、起きない」ではない! 「起こす、起こさない」である 「「身近な悪意」で暴走、AIのダークサイド 先端技術の光と影」 ディープフェイク。有名人の顔を別人の顔に合成した精巧なニセ動画の総称 FakeApp フェイク映像がFakeAppで簡単に作れるようになった 差別発言するチャットボット 公開したチャットボット「Tay(テイ)」 テイはヒトラーを礼賛する発言や、人種差別的な発言を繰り返すようになり、同社はわずか1日でテイの公開を停止した テイはネット上で利用者が書き込んだ内容を学んで成長する仕組み。ここに不適切な言葉を学ぶ脆弱性があった 敵対的サンプル画像 AIのダークサイドの最たるものは戦争や殺人の「AI兵器」 韓国科学技術院(KAIST) 韓国軍需企業と「国防人工知能融合研究センター」を共同設立 データや倫理の整備が鍵 「一般データ保護規則(GDPR)」 米国電気電子学会(IEEE)はAIや自律型システムの開発ガイドラインの第2版 末廣 徹 「AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?」 「機械学習による景気分析 ―『景気ウォッチャー調査』のテキストマイニング―」 質的データを扱うことになるテキストマイニングと親和性の高いAI(人工知能)・機械学習も金融・経済の分析において重要性が増している オックスフォード大学の学者2人 、「エコノミスト」が今後10~20年のうちに消滅する確率は43% 「BOJ(日銀)ウォッチ」を、AI・機械学習がどの程度上手に「こなす」ことができるかを検証 重要度の違いや特徴的な言葉が浮かび上がる 総じてAI・機械学習は「BOJウォッチ」をある程度上手にこなすことができ、市場の「BOJウォッチャー」の脅威となる可能性もあるだろう
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ノーベル賞受賞(その6)(本庶氏ノーベル賞で浮き彫り 医学界の「免疫療法」への歪んだ評価、ノーベル賞で脚光 「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない、安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる) [科学技術]

ノーベル賞受賞については、2016年10月27日に取上げた。今年の受賞を踏まえた今日は、(その6)(本庶氏ノーベル賞で浮き彫り 医学界の「免疫療法」への歪んだ評価、ノーベル賞で脚光 「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない、安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる)である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が10月4日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「本庶氏ノーベル賞で浮き彫り、医学界の「免疫療法」への歪んだ評価」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/181294
・『本庶祐・京都大学特別教授のノーベル賞受賞に日本中が沸く中、にわかに免疫療法が誉め称えられるという現象が起きている。無論、インチキな免疫療法もあるが、エビデンスに固執するがあまりに、免疫療法の持つ可能性を否定してきた日本の医療界は、大きな問題を抱えているのではないか』、興味深そうだ。
・『山中教授の受賞時にもノーベル賞詐欺が流行った   「ノーベル賞詐欺」の毒牙にかかる人が現れてしまうのだろうか。 本庶佑・京都大特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞したことで、にかわに「免疫療法」に注目が集まっているが、それに乗じて「インチキ免疫療法詐欺」が増加すると一部医療関係者から警鐘が鳴らされているのだ。 ご存じのように、ネット上には既に、怪しげな免疫療法をうたう自由診療のクリニックが溢れている。キノコを食べて免疫力アップ、水素水でがんが消えたなどなど、本庶氏が発見した免疫を抑制する効果をもつ分子・PD-1などと接点ゼロの「民間療法」だ。 そんな怪しいクリニックが「ノーベル賞で世界も注目」「あの本庶佑氏も認めた」などとブームに便乗した虚偽広告を行い、がん治療に悩む方たちを餌食にするのではないかというのである。 心配しすぎだと思うかもしれないが、実際には過去にも、ノーベル賞が詐欺の「ネタ」にされた例がいくつもある。 たとえば2012年、山中伸弥氏が、iPS細胞の作成成功によって、ノーベル医学生理学賞を受賞した時も、新しく研究施設ができるので投資をしないかと持ちかける「iPS詐欺」が急増。国民生活センターには、2014年までに400件超えの被害が寄せられた。 プロの詐欺師は、「日本人の新しもの好き」の心理を巧みに突いてくるのだ。 今回の受賞でも、本庶氏の研究を活用したがん治療薬「オプジーボ」の製造・販売元である小野薬品工業の株に買いが殺到して、年初来高値を更新している。ここまで「引きのあるネタ」を利用しない手はないのだ。 そういう意味では、一部医療関係者のご心配も当然で、警鐘を鳴らしていただくのもありがたい限りである。メディアも、本庶氏が熱心な阪神ファンだとか亭主関白だとかいう話で大騒ぎをするのではなく、今回のノーベル賞に関連する「免疫療法」は、保険適応される医療機関のみで受けるべきであり、怪しげな詐欺に引っかからないようにと呼びかけていただきたい』、「iPS詐欺」が2014年までに400件超えの被害とは驚いた。確かに「インチキ免疫療法」のPRは溢れている。
・『免疫療法は「アヤしい」のか? 標準治療に固執する医療界  ただ、その一方で、医療関係者の方たちは「あれはインチキだ」「これは怪しい」という詐欺の啓発に力を入れることよりも、もっとやらなくてはいけないことがあるのではないのかという気もしている。 それは、抗がん剤が効かない患者やその家族に対して、免疫療法という選択肢があるということを説明し、この治療をもっと多くの人が受けることができるよう啓発に務めていただくことだ。 本庶氏がノーベル賞を受賞してから、マスコミは免疫療法について「最新のがん医療」だと盛んにヨイショしているが、実はちょっと前までは「エビデンスがない治療」と、イロモノ扱いをしていた。 なぜかという日本の医療界の“メインストリーム”が、そのように触れ回っていたからだ。 例えば、本連載で少し前、東京・有明にある公益財団法人がん研究会「がんプレシジョン医療研究センター」の中村祐輔所長のことを取り上げた・・・リキッドバイオプシーと、ネオアンチゲン療法という、最新の免疫療法を引っさげて、6年ぶりにアメリカから帰国をした中村氏は、こう述べている。 「シカゴにいる間もメールなどで、多くのがん患者やその家族の方からの相談を受けましたが、気の毒になるほど救いがない。原因は国の拠点病院。標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している自覚がありません。こういう人たちが医療界のど真ん中にいることが、日本のがん患者にとって最大の不幸です」(中村氏) 日本のがん医療では、外科治療(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つが「標準治療」と定められている。免疫療法は今回、本庶氏の受賞によって掌返しで、「第4の治療」などとおだてられるようになったが、実はがん医療現場ではいまだに、「標準」から大きく外れた「怪しい治療」扱いされているのだ』、「国の拠点病院。標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している自覚がありません」とは嘆かわしいことだ。
・『免疫療法が統計上の問題をクリアできない理由  中村氏のブログを読めば、その厳しい事実がわかる。先月22日のエントリーでは、山本KID徳郁さんが亡くなったことを受けて、ある事情から彼が「日本の医療に希望を見いだせず、グアムに向かった」ことを知っていたという中村氏は、こんな憤りを記している。 「そして、小さな子どもさんたちがいる40歳代の胃がん患者さんが、同じような状況で、本人や家族が望んでいた免疫療法を受けることなく、8月の終わりころ、この世を去っていった。今の日本の制度では、胃がんの場合、2種類の抗がん治療を受けた後にしか、免疫チェックポイント抗体治療を保険診療として受けることができない」 「え?ノーベル賞もとった治療法なんだし、本人が希望してるんだからすぐに最初から受けさせてやればいいじゃん」と思うかもしれないが、厚生労働省の免疫チェックポイント抗体の胃がんに対する最適使用推進ガイドライン(平成30年8月改定)に、そのように定められているのだ。 もし胃がんの方が、「オプジーボを使いたい」と強く希望をしても問答無用で、「いやいや、まずは抗がん剤から始めましょうか」となってしまう。つまり、抗がん剤の副作用に散々苦しみ、がんには効かずに進行して、患者さん自身の免疫も低下したところでようやく、免疫チェックポイント抗体にたどり着く、という焼け石に水的ながん治療となってしまうのだ。 なぜこんなことになってしまうのかというと、免疫療法は抗がん剤ほどには、「有効性が確立されていない」からだ。薬の「有効性」というのは極端な話、何万人にワッと飲ませたら、そのうち2割には効かなかったが8割くらいには効いた、といった具合にデータを取るという、「統計学」である。 世界のがん医療の現場では当たり前のように免疫療法の効果が認められ、本庶氏はノーベル賞も受賞したのだが、免疫療法はこの統計上の問題がクリアできていない。なぜかというと、今回の受賞に端を発する”免疫療法ブーム”の中で報じられているように、これは「化学薬品ががんを殺す」のではなく、「個々の人間が持つ免疫ががんを殺す」からだ。 免疫は個人によって違う。よって、免疫チェックポイント抗体の効き方も当然、個人差が出てくる。そうなると、膨大な数の人に化学薬品を飲ませて経過観察をする大規模治験のように、スパッとイエス・ノーが出ない。「統計上の問題」がなかなかクリアできないのである。 そういう理屈を聞けば、免疫チェックポイント抗体に「有効性が確立されていない」というのがかなり不毛な話だということがわかるが、一部の医療関係者はこの「統計上の問題」を取り上げて、「エビデンスのない怪しい治療」とディスってきた』、保険適用するからには、一定のエビデンスが必要なのだろうが、何らかの工夫はできないのだろうか。
・『免疫療法を受けたいと言うと医者から見放されてしまう  そのため、「研究室内ではネズミでそれっぽい結果が出ているけど、人間の患者に対しては眉唾だよね」と蔑む医師もいた。 製薬業界で、オプジーボの開発を続けてきた小野薬品工業が「変人」扱いされていたように、世界では競い合うように研究されている免疫療法は、日本の医療界では「エビデンスの乏しい治療」と軽んじられてきたのだ。 「本庶氏のノーベル賞でインチキ免疫療法までもが盛り上がって心配だ」と騒ぐことも重要かもしれないが、その前に「免疫療法を受けたい」というがん患者の声を握り潰してきた過去を反省して、「標準治療至上主義」ともいうべき教条主義的思想を改めることの方が先のような気がしてならない。 少し前、「原発不明がん」という治療が難しいがんで「ステージ4」と診断されて余命宣告も受けたが、免疫療法によって見事、生還を果たした60代男性から、耳を疑うような話を聞いた。 この男性が回復してほどなく、古くからの友人2人が相次いでがんだと診断されてしまった。両者とも進行が早く、医師から「もう効く抗がん剤はありません」と非情な宣告をされた。そこで、彼らは藁をも掴む思いで、免疫療法を受けさせてほしいと医師に頼んだ。何しろ、自分たちの友人が免疫療法で生還をしたのだ。そこに「俺も」という一筋の希望を持つのは当然のことだ。 だが、2人の担当医から返ってきたのは、耳を疑うような言葉だった。 「そういう治療を望まれるのなら、もうここには来ないでいただきたい」 結局、医師から見放されることを恐れたこの2人は、免疫療法を受けたいという気持ちを抱えながら、そのまま還らぬ人となった。 ノーベル賞受賞後、マスコミは「本庶氏の研究によって、多くの患者が救われた!」とお祭り騒ぎをしている。だが、実は本庶氏の研究を知り、そのような治療を自分も受けたいと強く望みながら、亡くなった患者の方が、救われた人よりもはるかに大勢いることもしっかりと報道すべきではないのか。 インチキ免疫療法に引っかかる人たちの多くは、抗がん剤が効かず、自分の医師から「免疫療法なんかエビデンスのない怪しいものです」と諭され、誰にも頼れなくなった「がん難民」である。その弱みにつけ込む詐欺師が悪いのは当然だが、ではそこまで患者や家族をまともな判断ができなくなるまで追いつめたのは、いったい誰なのかという問題もある。 あっちの免疫療法はインチキだ、本庶氏の免疫療法は本物だ、騙されないように気をつけようと触れ回るだけでは「がん難民」を救うことはできない。エビデンスに代表される、「数字で証明できる有効性」のみに固執するのではなく、今そこでがんで苦しむがん患者やその家族に、どうにか手を差し伸べる方法を考えることが、「医療」のやるべきことなのではないだろうか』、説得力のある指摘で、その通りだ。

次に、10月4日付け東洋経済オンライン「ノーベル賞で脚光、「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/241076
・『・・・一度は開発を断念  がん細胞は免疫の働きにブレーキをかける。本庶教授が解明したのは、免疫細胞の表面に「PD-1」というタンパク質があり、がん細胞がPD-1と結び付くことで免疫機能を抑制しているメカニズムだ。逆にPD-1と結合する抗体を開発し、がん細胞と結び付きができないようにすれば、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになる。 小野薬品は、本庶教授の師匠である早石修教授の代から京大と関係があった。この縁から本庶教授と共同で免疫抑制作用に関する特許を出願し、実用化のために臨床開発(治験)と販売のパートナー探しに奔走した。 国内製薬大手など10社以上に声をかけたが、1年余りは成果も皆無。すべての企業に断られてしまった。小野薬品も1度は本庶教授の開発要請に対し、ノーと言った経緯がある。 しかし救世主が現れる。別のがん免疫治療薬の研究開発に乗り出していたアメリカの医療ベンチャーのメダレックス社が興味を示し、開発パートナーに名乗りを上げたのだ。これを機に、小野薬品も前言を翻し「オプジーボ」の治験に踏み切った。2006年ころのことだ。 膨大な開発費は、中堅の小野薬品には大きなリスクとなる。開発にゴーを出すには、リスクを軽減するためのパートナーの確保が不可欠だった。その後、メダリックスは2009年にアメリカの製薬大手ブリストルマイヤーズ・スクイーブ(BMS)が買収。小野薬品は結果的に、強力な開発パートナーを得ることになった。 こうした紆余曲折を経て、オプジーボが世に出たのが2014年。PD-1の発見から22年の歳月が経っていた』、発見からスポンサー企業が見つかるまでに10年も要したというのは、いくら画期的な治療法とはいえ、日本の製薬業界の保守性を表しているのだろう。
・『小野薬品の収益は急拡大  上市後、小野薬品の収益は大きく飛躍した。2015年3月期から2017年3月期までに売上高は1357億円から2448億円に、営業利益は147億円から722億円に急拡大した。 最初に皮膚がんの1つである悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として承認され、100ミリグラム瓶1本の価格が約73万円だった。当初は高額薬価の批判が強く、2017年2月に50%、さらに2018年4月には約24%もの大幅な価格の引き下げに見舞われた(今年11月も引き下げの予定)。 それでも同薬が小野薬品の最大の牽引役であることに変わりはない。適用のがん種が増えているからだ。現在ではメラノーマ、腎がん、頭頸部がん、胃がん、肺がんなど7種類のがんや、療法も含めると9つの適用で承認済み。医者から処方される患者数、使用量が急拡大し、強烈な単価下落を補っている。 オプジーボの売り上げは2019年3月期に900億円に上る見通し。それとは別にBMSによるオプジーボの海外販売額に応じたロイヤルティ収入があり、その額は推計で500億~550億円に上る。 未承認の肝がん、食道がん、大腸がんなどへの適応拡大に向けての国内治験も、30件前後が進行中。国内での販売拡大はまだ続きそうだ。 それでも今の小野薬品には、オプジーボがもたらす栄華に酔いしれる暇はない。なぜか。第1にはオプジーボが切り開いた成長市場、がん免疫治療薬の間の競争が激化していることだ。 現在では小野薬品―米BMS連合のほかに、米メルク、英アストラゼネカ(AZ)、スイス・ロッシュ―中外製薬連合、米ファイザー―独メルク連合と、グローバル市場で5陣営がこの成長市場でしのぎを削っている。 中でも強力なライバルが、米メルクだ。オプジーボと同じ受容体を標的にした「キイトルーダ」とは世界販売首位の座を激しく競い合っている』、競争激化は当然だろうが、ライバルに日本の大手製薬会社が1社しか入ってない、というのは情けない。
・『ライバルがアメリカで先行  市場の注目は、患者数の多い肺がん分野に集まる。キイトルーダは世界最大の市場であるアメリカで、肺がんの約8割を占める非小細胞肺がん(NSLC)の1次治療の販売承認を得ている。 1次治療薬であれば、治療の当初から薬を投与でき、販売拡大効果が格段に大きい。一方、オプジーボは2016年の単剤治験で主要項目を達成出来ず、アメリカでのNSLCの1次治療の承認取得に失敗している(ただし今年6月にBMSのがん免疫治療薬「ヤーボイ」との併用療法でNSLCの1次治療の適応承認を申請)。 直近の2018年4~6月期の米BMSの「オプジーボ」の世界売り上げは16.27億ドル。対する米メルクの「キイトルーダ」は、同16.67億ドルとなった。鼻の差ではあるが、四半期ベースで初めてキイトルーダの売り上げがオプジーボを上回った。 米BMSの売り上げには小野薬品の日本と韓国・台湾での販売額228億円は含まれていない。これを含めれば、全体ではまだオプジーボのほうが上回っている。ただ、勢いがあるのはキイトルーダで、市場では2018年通期では首位逆転の見方が強まっている。 もう1つのポイントが、単剤ではなく、ほかのがん治療薬との併用療法の拡大に治験競争の舞台が移りつつあることだ。 確かに、オプジーボなどのがん免疫治療薬はがん治療に革命をもたらした。一般的にはほかの抗がん剤と比べて投薬効果のある患者の比率(奏効率=がん細胞が一定以上縮小する患者数の比率)は高いと言われる。だが、それでも奏効率は現状で2~3割にとどまっている。 そうした弱点をカバーするのが、併用療法だ。働きの違うほかの治療薬と併用することで、奏効率や生存率などの効能を高める療法だ。 米メルクはここ1年強の間に、英AZとの間で最大約9000億円、エーザイとの間では最大6100億円の大型業務提携を結んだ。英AZの抗がん剤「リムパーザ」、エーザイの同「レンビマ」との併用療法で、グローバルでの共同治験や販売提携を進める構えだ。 実際、レンビマとの併用療法の治験では、子宮内膜がんなどで効果が現れる患者の比率が増えた。被験者のがんが悪化しない期間の平均値も7.4カ月となるなど、単剤の効果を上回る数値が出ている。 併用療法の拡大には資本力、規模の大きさが物を言う可能性がある。米メルクの戦略にもその狙いがある。その点で、米メルクの動きに小野薬品―BMS連合がやや遅れを取っていることは否定できない。さらに牙城だった国内市場には、ロシュ―中外製薬が新薬を投入、米メルク(国内はMSD)も攻勢を強めている。 小野薬品にとって悩ましいのは、国内や韓国・台湾の治験・販売は小野薬品が主導できても、アメリカや欧州など海外市場の大半ではBMSに頼らざるを得ない点だ』、「BMSに頼らざるを得ない」のが果たして「悩ましい」のだろうか。中堅の小野薬品にとっては任せる方が賢明なのではなかろうか。
・『この3年でMRを5割増員  もちろん、小野薬品とて手をこまぬいてはいない。米BMSのがん免疫治療薬・ヤーボイとの併用療法の治験では、8月下旬に国内で「腎細胞がん」の1次治療で承認を取得した。エーザイ、武田薬品工業、第一三共とも併用治験を進めつつある。 小野薬品は過去3年間でMR(医薬情報担当者)を5割増員、今期中に280人にまで増やす。適応拡大に合わせ、専門性の強いがん専門病院・医師への営業を強化するためだ。 小野薬品の今期の研究開発費は700億円。対売上比率で25%を計画する。2割が標準とされるメガファーマに比べても、研究開発志向は高い。それでも絶対額ではメガはおろか国内製薬大手にも劣る。しかもその多くが、次々と続くオプジーボの治験に費やされる。 「オプジーボに代わるような商品ができればいいけど、そういうことは難しい」。関係者のつぶやきは、そのまま小野薬品の置かれた苦悩を表す。「オプジーボ」頼みはいつか脱却しなければいけないが、当面は「オプジーボ」強化に頼らざるをえない。小野薬品はそんなジレンマにいる』、中堅製薬会社の宿命だろう。

第三に、10月4日付け日刊ゲンダイ「安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/238713/1
・『「基礎研究をシステマチックかつ長期的な展望でサポートして、若い人が人生を懸けてよかったと思えるような国になることが重要だ」――。ノーベル医学生理学賞の受賞から一夜明けた2日、京大の本庶佑特別教授はそう語った。 現状はどうなのか。研究開発費の推移を調べると、お寒い状況が浮き上がった。 経産省が今年2月にまとめた調査によると、日本の官民合わせた研究開発費総額は、2007年度以降、17兆~19兆円で推移している。つまり、10年以上横ばいで増えていないのだ。企業の儲けは内部留保に向かい、研究開発に投じられていないことがよく分かる。 さらに驚くのが、研究開発費の政府負担割合だ。日本はわずか15.41%で、主要国から大きく引き離されて最下位(別表)。しかも、安倍政権発足前は16%超だったのに、発足後の2013年から右肩下がりなのだ』、
・『「目先のことしか頭にない安倍政権は、研究開発とりわけ、基礎研究の重要性をまったく理解していません。一方で、軍事強化につながる基礎研究には力を入れています」(経済評論家・斎藤満氏) 安倍政権は2015年度から「安全保障技術研究推進制度」を導入。国の防衛分野の研究開発に役立つ基礎研究を民間企業や大学に委託、カネを出す制度で、“研究者版経済的徴兵制”といわれている。軍事目的のための科学研究を行わない方針の日本学術会議は反発しているが、16年度予算6億円に対し、17年度は110億円に急増している。 「本庶さんは今年、ノーベル賞を受賞しましたが、何十年か前に、基礎研究にしっかり取り組めた環境があったからです。現在の安倍政権のような基礎研究に対するスタンスでは将来、ノーベル賞受賞者が出なくなるだけでなく、もはや日本は技術立国とは言えなくなってしまいます」(斎藤満氏) 技術立国から軍事大国へ――早く、安倍首相を引きずり降ろさないとそんな国になってしまう』、「技術立国から軍事大国へ」というのはうすら寒い悪夢だ。日本の将来のノーベル賞受賞が厳しいことは、このブログの2015年10月18日でも取上げたので、参考にしてほしい。
タグ:東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ 免疫療法 ノーベル賞受賞 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 (その6)(本庶氏ノーベル賞で浮き彫り 医学界の「免疫療法」への歪んだ評価、ノーベル賞で脚光 「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない、安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる) 「本庶氏ノーベル賞で浮き彫り、医学界の「免疫療法」への歪んだ評価」 本庶祐 インチキな免疫療法 エビデンスに固執するがあまりに、免疫療法の持つ可能性を否定してきた日本の医療界は、大きな問題を抱えているのではないか 山中教授の受賞時にもノーベル賞詐欺が流行った ブームに便乗した虚偽広告を行い、がん治療に悩む方たちを餌食にするのではないか プロの詐欺師は、「日本人の新しもの好き」の心理を巧みに突いてくるのだ 免疫療法は「アヤしい」のか? 標準治療に固執する医療界 はちょっと前までは「エビデンスがない治療」と、イロモノ扱いをしていた 国の拠点病院。標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している自覚がありません 日本の医療界の“メインストリーム”が、そのように触れ回っていたからだ 日本のがん医療では、外科治療(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つが「標準治療」と定められている はがん医療現場ではいまだに、「標準」から大きく外れた「怪しい治療」扱いされているのだ 免疫療法が統計上の問題をクリアできない理由 免疫は個人によって違う。よって、免疫チェックポイント抗体の効き方も当然、個人差が出てくる。そうなると、膨大な数の人に化学薬品を飲ませて経過観察をする大規模治験のように、スパッとイエス・ノーが出ない 免疫療法を受けたいと言うと医者から見放されてしまう 、「数字で証明できる有効性」のみに固執するのではなく、今そこでがんで苦しむがん患者やその家族に、どうにか手を差し伸べる方法を考えることが、「医療」のやるべきことなのではないだろうか 「ノーベル賞で脚光、「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない」 免疫細胞の表面に「PD-1」というタンパク質があり、がん細胞がPD-1と結び付くことで免疫機能を抑制しているメカニズム PD-1と結合する抗体を開発し、がん細胞と結び付きができないようにすれば、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになる 国内製薬大手など10社以上に声をかけたが、1年余りは成果も皆無。すべての企業に断られてしまった。小野薬品も1度は本庶教授の開発要請に対し、ノーと言った経緯がある アメリカの医療ベンチャーのメダレックス社が興味を示し、開発パートナーに名乗りを上げたのだ これを機に、小野薬品も前言を翻し「オプジーボ」の治験に踏み切った。2006年ころのことだ メダリックスは2009年にアメリカの製薬大手ブリストルマイヤーズ・スクイーブ(BMS)が買収 小野薬品は結果的に、強力な開発パートナーを得ることになった オプジーボが世に出たのが2014年。PD-1の発見から22年の歳月が経っていた 小野薬品の収益は急拡大 がん免疫治療薬の間の競争が激化 小野薬品―米BMS連合のほかに、米メルク、英アストラゼネカ(AZ)、スイス・ロッシュ―中外製薬連合、米ファイザー―独メルク連合と、グローバル市場で5陣営がこの成長市場でしのぎを削っている 米メルクだ。オプジーボと同じ受容体を標的にした「キイトルーダ」とは世界販売首位の座を激しく競い合っている ライバルがアメリカで先行 オプジーボは2016年の単剤治験で主要項目を達成出来ず、アメリカでのNSLCの1次治療の承認取得に失敗 のがん免疫治療薬「ヤーボイ」との併用療法でNSLCの1次治療の適応承認を申請 単剤ではなく、ほかのがん治療薬との併用療法の拡大に治験競争の舞台が移りつつあることだ 奏効率は現状で2~3割にとどまっている。 そうした弱点をカバーするのが、併用療法だ 併用療法の拡大には資本力、規模の大きさが物を言う可能性 アメリカや欧州など海外市場の大半ではBMSに頼らざるを得ない この3年でMRを5割増員 。「オプジーボ」頼みはいつか脱却しなければいけないが、当面は「オプジーボ」強化に頼らざるをえない 「安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる」 日本の官民合わせた研究開発費総額は、2007年度以降、17兆~19兆円で推移 企業の儲けは内部留保に向かい、研究開発に投じられていない 研究開発費の政府負担割合 日本はわずか15.41%で、主要国から大きく引き離されて最下位(別表)。しかも、安倍政権発足前は16%超だったのに、発足後の2013年から右肩下がりなのだ 安倍政権は、研究開発とりわけ、基礎研究の重要性をまったく理解していません 一方で、軍事強化につながる基礎研究には力を入れています 安全保障技術研究推進制度 研究者版経済的徴兵制 本庶さんは今年、ノーベル賞を受賞しましたが、何十年か前に、基礎研究にしっかり取り組めた環境があったからです 現在の安倍政権のような基礎研究に対するスタンスでは将来、ノーベル賞受賞者が出なくなるだけでなく、もはや日本は技術立国とは言えなくなってしまいます 技術立国から軍事大国へ
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電気自動車(EV)(その5)(中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ、英ダイソン EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場、テスラは苦境から脱出できるか マスク氏は「名経営者」に非ず) [科学技術]

電気自動車(EV)については、3月1日に取上げた。今日は、(その5)(中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ、英ダイソン EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場、テスラは苦境から脱出できるか マスク氏は「名経営者」に非ず)である。

先ずは、日経BP出身でオートインサイト代表の鶴原 吉郎氏が3月13日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/264450/031200087/
・『現在、世界最大の自動車用バッテリー工場は、米テスラがパナソニックと共同で米ネバダ州に建設中の「ギガファクトリー」である。一部が完成し、2017年1月からバッテリーの生産が始まったが、その生産能力は最終的に年間35GWhという膨大なものになる予定だ。これがどのくらいの規模かというと、例えば2017年10月に日産自動車が発売した最新のEV(電気自動車)「リーフ」用の電池なら、87万5000台ぶんに当たる・・・2010年に初代が発売されて以来のリーフの累計生産台数は2018年1月に30万台に達したということで、これは世界のEVで最も多い。ギガファクトリーの生産能力は、この累計生産台数の3倍近いリーフ向け電池を1年で造ってしまうことになる・・・小型セダンの「モデル3」の量産を軌道に乗せるのに現在テスラは苦しんでおり、2020年に計画どおりの生産が可能かどうかは、なお流動的だ』、『ところが、CATLが現在進めている生産能力の拡張は、このギガファクトリーを上回るものだ。ロイター報道によれば、2020年のCATLの生産能力は、合計で50GWhに達するという。これまで中国の自動車用バッテリーメーカーで最大だったのは中国BYDだったが、2020年にはCATLがBYDを抜き、現在世界最大の韓国LGも凌いで世界最大の自動車用バッテリーメーカーに躍り出るとBloombergの報道は伝えている』、なるほど(なお、GWhとは100万KWH=10億WH)。
・『中国は断トツのEV大国 このBloomberg報道によると、2020年における自動車バッテリーメーカーの上位10社のうち5社、上位5社に限れば3社を中国メーカーが占めるようになる。世界の自動車用バッテリー生産量の、実に3/4を中国が占めるようになると予測されているのだ。この背景にあるのが、中国における電動車両の急速な増加である。日本ではあまり知られていないことだが、中国はここ数年で世界最大のEV大国にのし上がった。その生産・販売台数は桁違いで、2017年にはEVとPHEVの販売台数の合計が、実に77.7万台に達した。同じ年の欧州での販売台数はEVとPHEV(プラグインハイブリッド車)の合計で27.8万台・・・、米国での販売台数は約20万台で、中国は断トツの世界最大市場である。ちなみに日本国内のEVとPHEVの販売台数の合計は約5万6000台で、中国の1/14程度に過ぎない。 中国は世界最大の自動車市場であり、年間の自動車の販売台数は2017年で2887.9万台(中国汽車工業協会調べ)と、同年の日本の523.4万台の5.5倍もある。それにしても、販売台数全体に占めるEV+PHEVの比率は日本が1%程度なのに対して、中国では2.7%程度と日本の3倍近い。しかも、上海や北京といった都市部での販売台数比率は・・・2016年で7%前後に達している。EVやPHEVといった先進的な環境車両の販売台数比率が日本よりも大幅に高いということに驚く読者も多いのではないだろうか』、私も恥ずかしながら驚かされた口である。
・『その原動力になっているのは中国が推し進める「新エネルギー車(NEV)」政策である。中国はEV、PHEV、FCV(燃料電池車)を新エネルギー車と位置付け、都市部でNEV専用のナンバープレートを割り当てたり、通常のエンジン車だとオークションが必要なナンバープレートをNEVでは無料にしたりして、通常は困難な新車の購入がNEVなら可能になる特典を持たせている。 また、EVやPHEVは中国でも通常のエンジン車より割高だが、NEVに対しては中央政府および地方政府から多額の補助金を支給することによって、購入を後押ししている。その補助金の額は、EVの場合で航続距離により2万~4万4000元(1元=16円換算で32万円~70万4000円)、PHEVの場合で2万4000元(同38万4000円)に上る』、確かに優遇ぶりは突出している。
・『2025年には700万台の新エネルギー車を販売へ こうした措置を講じた結果、NEVの販売台数は2015年以降急速に伸び、それまで世界最大のEV市場だった米国をあっさり抜いて2015年以降は世界最大のEV大国になった。しかし、これはまだ序章に過ぎない・・・中国は2020年には新エネルギー車の販売台数を200万台、2025年には700万台、そして2030年には1000万台に引き上げるという非常に野心的な目標を掲げている』、他にも公共事業など財政圧迫要因があるなかで、多額の補助金政策をいつまで続けてゆけるのだろうか。
・『中国がこのように野心的な目標を掲げている狙いは何か・・・単に大気汚染を解決したいのであれば、工場やトラックから排出される有害物質の規制を強化すればいいはずだ。また乗用車についても、一足飛びにEVに行くのではなく、日本ではすでに広く普及しているHEVを中国でも拡大すれば、排ガスの量は減り、クルマに使われる燃料も少なくて済む。 それでも、HEVを拡大する政策を中国が採らないのは、HEVの土俵で勝負しても、先行する日本には勝てないと悟っているからだ。そこで、日本や欧州でもまだ量産化してから日の浅いEVの土俵であれば日本をはじめ欧米など自動車先進国に勝てる可能性があると踏んでいるのだ。中国がHEVを新エネルギー車の対象としなかったのにはこういう背景がある』、『中国は、2025年までの自動車産業の育成計画として「自動車産業の中長期発展計画」を2017年4月に公表した。この計画では現在の中国を「自動車大国」ではあるがコア技術やブランド力はまだまだ弱いと分析している。これを10年間かけて技術力を向上させ、「自動車強国」に躍進させるとしている。 そして自動車強国になるためのコア技術としてパワートレーン、変速機、カーエレクトロニクスといった従来からの技術に加えて、電池、モーターなどの分野で2020年に世界の先端レベルに達するように世界トップ10の新エネルギー車メーカーを数社育成すると表明している。つまり新エネルギー車政策をテコにして技術力・ブランド力でも世界一流の自動車強国へと発展させることを政策目標として掲げているのだ。EVは、環境問題解決の手段としてよりも、自動車産業を発展させるためのキーテクノロジーとしての意味合いが強い』、さすが計画経済色が残る中国だけあって、やることが極めて戦略的だ。
・『もともとは日本の技術  CATLは、もともとはAmperex Technology(ATL)という香港のリチウムイオン電池メーカーが自動車用電池部門を別会社化したものであり、そのATLは、TDKが2005年に買収して電池生産子会社化したものだ。製造しているリチウムイオン電池も、TDKが開発したリチウムポリマー電池をベースにしている。つまり、CATLの電池技術は元をたどっていくとTDKに行き当たるわけだ。 ただし・・・同社が使っている技術はリチウムポリマー電池ではなく、正極に低ニッケル濃度の低い3元系材料(ニッケル、マンガン、コバルトの酸化物)、負極にグラファイトを用いるという標準的な構成のものだった。もっとも、中国の自動車用電池は、正極にリン酸鉄を使ったものが多いので、そういう意味では日本的な材料といえるかもしれない。 ここから先はやや専門的になって恐縮なのだが、Liang氏の講演のテーマはこれからの電池材料トレンドということで・・・2025年にはマンガン・ニッケルの酸化物にリチウムの酸化物を混合した正極材料と、シリコン+グラファイトの負極を組み合わせることで、現在のリチウムイオン電池が4V程度などを5V程度に高電圧化してエネルギー密度を現在の1.6~1.7倍にまで向上させたい意向だ。電圧を5Vまで高めると現在使われている電解液は分解してしまうので、新たな組成の電解液が必要になるが・・・「どんな材料なのか?」という会場からの質問は「トップシークレットだ、それを言ったらクビになる」とユーモアを交えながらかわしていた。 今回発表した材料系自体は特に目新しいものではなく、例えば先に紹介した5Vのリチウムイオン電池の考え方についても、日本ではすでに5年以上前から開発発表の例がある。トヨタ自動車が2020年代前半の実用化を目指していると言われる全固体電池についても、Liang氏の発表では実用化時期を2030年以降としており、発表を聞いた限りではあるが、日本はまだ5年程度はリードしているという印象を受けた』、リチウムイオン電池はもともとは日本の技術とのことだが、日本はまだリードしているというので、一安心した。
・『ただ中国は先に紹介したNEV政策の中で、中国製の電池を搭載していないNEVは事実上NEVとして認定しないと見られており、内外の完成車メーカーは中国国内の電池メーカーから電池を購入すべく、その選定を急いでいる。CATLは、日欧のメーカーが電池購入を検討する際の有力候補の一つで、大工場の建設も今後の需要増をにらんでのことだ。日欧の完成車メーカーとのやりとりを通して、その技術力は今後急速に高まっていくと考えられる』、中国が国産優先策を採るのであれば、CATLの競争力は市場規模の巨大さと相俟って、日本メーカーを大きく引き離す可能性が強いと思われる。こんな不公正な競争を強いられる日本メーカーはたまったものではないだろう。

次に、3月20日付け日経ビジネスオンライン「英ダイソン、EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/032000807/
・『独創的な掃除機やドライヤーで知られる英ダイソンがEV(電気自動車)に参入することを表明した。切り札は現在のEVで主流のリチウムイオン電池の弱点を克服する画期的な「全固体電池」。だが、全固体電池には実用化に向けた課題があった。電池としての基本性能であるエネルギー密度や出力密度がリチウムイオン電池と比べて低いことだ。EVに搭載した場合に高い性能を発揮できないなら、リチウムイオン電池を置き換えるのは難しい。  そんな全固体電池で先行し、画期的な成果を生み出しているのがトヨタ自動車と東京工業大学だ。共同研究において、一般的なリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度と3倍の出力密度を実現できる全固体電池を試作。試作品は安定性が高く、実用化されている電池並みの高い耐久性を備えているという。この電池をEVに搭載した場合、わずか3分程度で充電できる可能性がある。  さらに東工大は液体の電解質に匹敵する高いイオン伝導率を持つ新たな固体電解質の材料も発見。固体電解質は、高価なゲルマニウムの代わりに、安価で汎用的なスズとケイ素を使って実現できるという。  7月上旬、これらの成果が米科学誌に掲載され、全固体電池への関心が一層高まった。7月下旬には「トヨタが22年にも全固体電池を搭載するEVを発売する」と報じられた。本誌の取材に対し、トヨタ自身も「20年代前半の実用化を目指している」と認める。同電池の開発ではトヨタ自動車が先行するが、ダークホースの登場が業界を揺るがしている。「家電ベンチャーのダイソンがEVへの参入を決めたのには驚いた。とりわけ(同社がEVに搭載する予定の)『全固体電池』に強い関心を持っており、実現できるなら本当にすごいことだ」。こう話すのは日本のある自動車メーカーの経営トップだ。 2020年までにEVを発売する・・・英ダイソンが大胆な計画を明らかにした。同社の16年12月期の売上高25億ポンド(約3750億円)に迫る20億ポンドを投資。自動車業界の出身者を含む400人以上の専門チームを結成して、すでに開発を進めている』、あのダイソンまでが本格参入とは面白くなってきた。
・『同社がEV向けに革新的な電池も開発している・・・全固体電池。現在、世界で販売されているEVの大半が搭載するリチウムイオン電池が抱える様々な課題を解決する「夢の電池」として期待されている。 まず安全性が高い。現在のリチウムイオン電池は、正極から負極の間のイオンの通り道となる電解質に可燃性の液体を使う。このため液漏れが起きると発火しやすく、安全を確保するために厳重な対策を施す必要がある。 これに対して、全固体電池は電解質に固体を使うため液漏れが起きない。揮発成分はほぼないため、発火しにくい。さらに固体電解質は硬いため、短絡(ショート)が起きる可能性も低い。 満充電まで数分程度・・・現状のEVは、日産自動車の「リーフ」を例に取ると、家庭用の200V電源で満充電まで8時間、急速充電器で約80%の充電までに30分程度かかる。これが全固体電池の場合は数分程度に短縮できるとされる。さらに固体であるために設計の自由度が高く、高温や低温で出力が低下しないという利点もある』、なるほどまさに「夢の電池」だ。
・『だが、全固体電池には実用化に向けた課題があった。電池としての基本性能であるエネルギー密度や出力密度がリチウムイオン電池と比べて低いことだ。EVに搭載した場合に高い性能を発揮できないなら、リチウムイオン電池を置き換えるのは難しい。 そんな全固体電池で先行し、画期的な成果を生み出しているのがトヨタ自動車と東京工業大学だ。共同研究において、一般的なリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度と3倍の出力密度を実現できる全固体電池を試作。試作品は安定性が高く、実用化されている電池並みの高い耐久性を備えているという。この電池をEVに搭載した場合、わずか3分程度で充電できる可能性がある。 さらに東工大は液体の電解質に匹敵する高いイオン伝導率を持つ新たな固体電解質の材料も発見。固体電解質は、高価なゲルマニウムの代わりに、安価で汎用的なスズとケイ素を使って実現できるという。 7月上旬、これらの成果が米科学誌に掲載され、全固体電池への関心が一層高まった。7月下旬には「トヨタが22年にも全固体電池を搭載するEVを発売する」と報じられた。本誌の取材に対し、トヨタ自身も「20年代前半の実用化を目指している」と認める』、出力密度の低さの問題をダイソンがどう乗り切るのか、については説明がないが、なんらかの解決策を開発中なのだろう。
・『「リチウムイオン電池は量産技術が確立されており、大規模な投資により生産効率が高まっている。まだ量産が始まっていない全固体電池の生産性を評価するのは難しい」(自動車産業と車載電池に詳しいコンサルタント) 今年1月、米EVメーカーのテスラはパナソニックと共同で巨大なリチウムイオン電池工場「ギガファクトリー」を稼働させた。米ネバダ州にある同工場は、1カ所で15年時点の世界中のリチウムイオン電池の生産量に匹敵する生産能力を実現する。 生産する電池は、EVだけでなく、家庭、オフィス、工場向けの蓄電池にも供給。規模のメリットを追求することで、調達コストを低減し、生産性を向上させる。テスラは同様の巨大な電池工場を世界各地で10~20カ所建設する考えだ。 EVの心臓部の電池を巡り、激化する覇権争い。新興ベンチャーと業界の盟主が火花を散らす構図は過去の常識にとらわれていては競争を勝ち抜けない時代を象徴している』、面白い時代になったものだ。なお、今日に日経新聞は、「パナソニックがギガファクトリーでリチウムイオン電池と並んで生産する予定の太陽電池については、テスラへの独占供給やめ外販へ」と報じた。

第三に、元銀行員で法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が7月31日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「テスラは苦境から脱出できるか、マスク氏は「名経営者」に非ず」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/175966
・『テスラの財務内容と マスク氏の言動には問題がある 4月1日、ある経営者のつぶやきが市場参加者を驚かせた。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、エープリルフールで“テスラが経営破綻した”とツイートしたのである。 昨年末頃から、ニューヨークの株式市場では同社の経営不安が高まっている。背景にあるのは、同社の新型セダン“モデル3”の生産の遅れやモデルSのリコール発生から、同社の財務内容が悪化するとの懸念だ。 7月に入り、テスラの経営不安はさらに高まっている。特に、テスラが部品会社に返金を要請したことは、同社の資金繰り悪化への懸念を高めた。完成品メーカーがサプライヤーに値下げを要請することはある。しかし、すでに支払った代金の返金を求めることは前代未聞だ。 市場参加者の間では、テスラがサプライヤーに“寄付”を求めなければならないほど、経営が行き詰まっているとの見方もある。経営の持続性への懸念は日増しに高まっている状況だ。当面、テスラの資金繰り悪化への懸念は高まりやすいだろう』、今日の日経新聞夕刊では、マスクCEOの株式非公開化についてのツイッター発言で、同氏を米国証券取引委員会(SEC)が召喚したと伝えた。エープリルフール発言は大目にみたとしても、これは許せなかったのだろう。それにしても、部品会社への返金要請とは、資金繰り危機とみられてもいたしかたない。
・『冷静に考えると、テスラには大きな可能性がある。高性能の電気自動車の実用化や、高速地下交通システムの実現に向けた取り組みなど、新しい発想を実現して成長を目指すマスク氏の発想は、多くの注目を集めている。 問題は、同社の財務内容とマスク氏の言動だ。 同氏はアナリストからの質問を「クールじゃない」と一蹴し、不興を買ったことがある。経営に不安を感じる市場参加者に冗談を飛ばすのも、苦し紛れのごまかしに見えてしまう。マスク氏が経営トップの座に居続ける間、同社の経営は一段と厳しさを増すと考える専門家もいる』、その通りだ。
・『科学的な技術などを実用するための方法、手段を用いて、従来にはない、新しいモノやサービスを生み出してきた。この点で、マスク氏は希代のイノベーター・・・といえるだろう。 マスク氏が生み出してきた企業を見れば、同氏がテクノロジーの実用化への“野心”に駆られていることがよくわかる。 1998年、同氏は、オンライン決済大手ペイパルの前身となるX.comを創業した。2002年には、宇宙への輸送を可能にするスペースX社を設立した。翌年には、テスラが創業された。 こうした起業のヒストリーを見ると、同氏は新しい発想を実践してより大きな価値の創造に駆られた人物と評することができる。その発想は成功や成長への野心や血気を意味する“アニマルスピリッツ”を体現している。まさに、マスク氏は起業家だ。 中でも、テスラは社会に大きなインパクトを与えた。 なぜなら、同社の電気自動車が従来の自動車にはない満足感を人々に与えたからだ。初期のモデルである“テスラ・ロードスター”は英ロータス社の車体にバッテリーを搭載した電気自動車だ。その、化石燃料を用いないクリーンさや加速性能が人々に評価され、テスラ・ロードスターはヒットした。 これは、従来の自動車の車体とバッテリーをはじめとするテクノロジーを結合させた“イノベーション”の良い例だ。環境負担の軽減などを理由に、各国で電気自動車の開発が注目されてきたこともあり、パナソニックやトヨタがテスラとの提携に乗り出した。 こうした動きは、マスク氏の発想を抜きにして考えることはできない。同氏が新しい発想を用いて従来にはないモノやコンセプトを実現したいという野心が、テスラの設立につながった。それが、各国の大企業をも巻き込んだバッテリーや電気自動車の開発につながっている。マスク氏の発想こそがテスラの成長を支えてきたのである』、確かにマスク氏は“アニマルスピリッツ”の塊りのような稀有の人物だ。
・『ロードスターに続いてテスラが発表したのがセダン型の“モデルS”だ。同社にとって想定外だったのは、2018年3月に、パワーステアリング系の不具合によって、モデルSのリコールが発生したことだ。その上にモデル3の生産の混乱、遅れが重なり、経営悪化への懸念に拍車がかかっている。 マスク氏はIoTの技術を使い、モデル3の生産を自動化しようとした。しかしこれが思うように進んでいない。テスラは方針を修正して人手を確保し、生産を軌道に乗せようとしているが、これも思うようにいっていない。完成車が作れない以上、収益は確保できない。その状況が続くと、テスラのキャッシュ(およびその同等物)は枯渇するだろう。 資金繰りの悪化が続くと考える市場参加者は増えている。 なぜなら、テスラの技術への不安が残っているからだ。自動運転技術も含め、問題の再発防止策がどのような状況であるかは不透明な状況にある。その中で、新型モデルの生産が混乱をきたしている。この状況では、金融機関も融資などに慎重にならざるを得ないだろう。 特に、22日、米紙報道でテスラが部品メーカーに支払った代金の一部の返還を求めていることが明らかになったことは、テスラの資金繰りが想定以上に悪化しているとの見方を高めた。そのため、多くの市場参加者がテスラ株を格好の空売り銘柄として扱っている。 要は、マスク氏は経営判断を誤った。それがテスラの経営不安の最大の原因だ。同氏の中で、成長を求める気持ちが先走り過ぎたのだ。モデルSのリコールはパワーステアリングのボルト腐食という、基本的かつ致命的な問題だ。それだけに、後続モデルの性能への不安も根強い。生産の混乱も発生する中でモデル3にどれだけの需要があるか、同社の経営に不安を感じる株式の専門家は多い。 見方を変えれば、マスク氏は、問題解明よりも、自らの野心に基づいてモデル3の生産を優先した。マスク氏は生産が進まないことにいら立ち、エンジニアを怒鳴りつけているとの報道もある。テスラの経営に混乱が生じていることは明らかだ。その結果、生産プロセス確立のためのコストが増え、キャッシュフローが圧迫されている』、問題点の指摘は的確だ。
・『イノベーターは名経営者とは同義ではない マスク氏は電気自動車を用いた高速の地下移動システムを考案するなど、新しい取り組みへの野心を燃やしている。それは、付加価値を生み出し、企業と社会の発展には欠かせない要素だ。問題は、実力のあるイノベーターであるマスク氏が、優れた経営者であるとは限らないことだ。ヒット商品を生み出す能力と、経営者に求められる資質は異なる。 一般的には、テスラ株の急落は、資金繰りへの懸念に影響されたとの指摘が多い。  踏み込んで言えば、その状況をもたらした原因は、マスク氏の意思決定、言動だろう。・・・企業は社会の公器だ。経営者には、従業員や消費者、株主など、さまざまなステークホルダーの満足度を高めることが求められる。それは、自分のこだわりや野心に基づいて、新しいテクノロジーの実用化を目指すこととは異なる。大局観を持って、組織全体が進むべき方針を示すことは、経営者に欠かせない資質である。この認識がマスク氏には欠けているように感じる。 マスク氏に求められることは、自らの率直な物言いを改め、ステークホルダーからの信頼感を高めることだ。果たしてそれができるか。長くしみついた自らの行動様式を改めることは、口で言うほど容易なことではない。 これまでの言動を同氏が続けるのであれば、テスラの経営不安は高まるだろう。その結果、同社の信用力が低下し、資金繰りはさらに悪化するかもしれない。組織の士気を高めるためにも、生産管理の専門家の意見などを仰ぎ、モデル3の生産計画を軌道に乗せることが必要だ。 その意思決定を下すことができるか否かが、マスク氏の評価を分けるだろう。突き詰めて言えば、マスク氏は技術などの開発に専念し、マネジメントは経営のプロにゆだねる選択肢もあるだろう。テスラの経営不安を払拭し、経営を安定させるためには、それくらいの決断があって良い』、「マネジメントは経営のプロにゆだねる」ことが出来ればいいが、ワンマンのマスク氏には難しいのではなかろうか。サウジなどからの資金で株式を非公開化(いわゆるマネジメント・バイアウトMBO)しようとの苦肉の策は、市場から注文をつけられなくなるだけに、居心地はよくなるかも知れない。しかし、資金調達はテスラが通常の生産活動にも重大な問題を抱えているだけに、容易ではない可能性がある。米SECの召喚まで出てきては、さらにこじれる懸念もある。当面、目が離せない状況が続くのではなかろうか。
タグ:欧州 電気自動車 日本国内 EV テスラ・ロードスター 日経ビジネスオンライン 企業は社会の公器 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 (その5)(中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ、英ダイソン EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場、テスラは苦境から脱出できるか マスク氏は「名経営者」に非ず) 鶴原 吉郎 「中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ」 世界最大の自動車用バッテリー工場は、米テスラがパナソニックと共同で米ネバダ州に建設中の「ギガファクトリー」 年間35GWh 生産能力は、この累計生産台数の3倍近いリーフ向け電池を1年で造ってしまうことになる 「モデル3」の量産を軌道に乗せるのに現在テスラは苦しんでおり CATL 2020年のCATLの生産能力は、合計で50GWhに達するという 中国は断トツのEV大国 2020年における自動車バッテリーメーカーの上位10社のうち5社、上位5社に限れば3社を中国メーカーが占めるようになる。世界の自動車用バッテリー生産量の、実に3/4を中国が占めるようになると予測 2017年にはEVとPHEVの販売台数の合計が、実に77.7万台 27.8万台 米国での販売台数は約20万台 約5万6000台で、中国の1/14程度 その原動力になっているのは中国が推し進める「新エネルギー車(NEV)」政策 EV、PHEV、FCV(燃料電池車)を新エネルギー車と位置付け 「新エネルギー車(NEV)」政策 TDKが2005年に買収して電池生産子会社化 2025年にはマンガン・ニッケルの酸化物にリチウムの酸化物を混合した正極材料と、シリコン+グラファイトの負極を組み合わせることで、現在のリチウムイオン電池が4V程度などを5V程度に高電圧化してエネルギー密度を現在の1.6~1.7倍にまで向上させたい意向 日本はまだ5年程度はリードしているという印象 中国がこのように野心的な目標を掲げている狙いは 日本や欧州でもまだ量産化してから日の浅いEVの土俵であれば日本をはじめ欧米など自動車先進国に勝てる可能性があると踏んでいるのだ 自動車産業の中長期発展計画 10年間かけて技術力を向上させ、「自動車強国」に躍進させるとしている コア技術としてパワートレーン、変速機、カーエレクトロニクスといった従来からの技術に加えて、電池、モーターなどの分野で2020年に世界の先端レベルに達するように世界トップ10の新エネルギー車メーカーを数社育成すると表明 もともとは日本の技術 中国製の電池を搭載していないNEVは事実上NEVとして認定しないと見られており、内外の完成車メーカーは中国国内の電池メーカーから電池を購入すべく、その選定を急いでいる CATLは、日欧のメーカーが電池購入を検討する際の有力候補の一つで、大工場の建設も今後の需要増をにらんでのことだ 「英ダイソン、EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場」 英ダイソンがEV(電気自動車)に参入することを表明 「全固体電池」 実用化に向けた課題があった。電池としての基本性能であるエネルギー密度や出力密度がリチウムイオン電池と比べて低いことだ トヨタ自動車と東京工業大学だ。共同研究において、一般的なリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度と3倍の出力密度を実現できる全固体電池を試作 リチウムイオン電池は量産技術が確立されており、大規模な投資により生産効率が高まっている。まだ量産が始まっていない全固体電池の生産性を評価するのは難しい 「テスラは苦境から脱出できるか、マスク氏は「名経営者」に非ず」 エープリルフールで“テスラが経営破綻した”とツイート 新型セダン“モデル3”の生産の遅れやモデルSのリコール発生から、同社の財務内容が悪化するとの懸念 テスラが部品会社に返金を要請したことは、同社の資金繰り悪化への懸念を高めた マスクCEOの株式非公開化についてのツイッター発言 同氏を米国証券取引委員会(SEC)が召喚 テスラには大きな可能性 新しい発想を実現して成長を目指すマスク氏の発想は、多くの注目 問題は、同社の財務内容とマスク氏の言動 マスク氏は希代のイノベーター テクノロジーの実用化への“野心”に駆られている スペースX社 同氏は新しい発想を実践してより大きな価値の創造に駆られた人物 テスラは社会に大きなインパクトを与えた パナソニックやトヨタがテスラとの提携に乗り出した マスク氏の発想こそがテスラの成長を支えてきたのである モデルS” リコールが発生 モデル3の生産の混乱、遅れが重なり、経営悪化への懸念に拍車 資金繰りの悪化が続くと考える市場参加者は増えている テスラが部品メーカーに支払った代金の一部の返還を求めていることが明らかになったことは、テスラの資金繰りが想定以上に悪化しているとの見方を高めた 格好の空売り銘柄 マスク氏は経営判断を誤った 問題解明よりも、自らの野心に基づいてモデル3の生産を優先した マスク氏は生産が進まないことにいら立ち、エンジニアを怒鳴りつけているとの報道もある イノベーターは名経営者とは同義ではない ヒット商品を生み出す能力と、経営者に求められる資質は異なる マスク氏は技術などの開発に専念し、マネジメントは経営のプロにゆだねる選択肢もあるだろう 株式を非公開化 マネジメント・バイアウトMBO
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スパコン詐欺(その2)(捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑、詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず、助成金詐欺で社長逮捕のスパコン 連続世界一にも疑惑の目) [科学技術]

スパコン詐欺については、昨年12月16日に取上げた。今日は、(その2)(捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑、詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず、助成金詐欺で社長逮捕のスパコン 連続世界一にも疑惑の目)である。

先ずは、2月22日付け日刊ゲンダイ「捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/223684/1
・『スーパーコンピューター開発会社「ペジーコンピューティング」の脱税、助成金詐欺事件で、東京地検特捜部は13日に社長の斉藤元章容疑者(50)を起訴。一連の捜査は終結した。しかし、疑惑の“本丸”は手つかず状態。幕引きすれば特捜部は“お手盛り捜査”のそしりは免れまい』、随分と早い幕引きだ。まさに“お手盛り捜査”である。
・『特捜部は、経産省所管の「新エネルギー・産業技術総合開発機構」の2012~13年度の助成事業で、総額約6億5000万円を詐取したとして、斉藤容疑者を2度逮捕。法人税計約2億3100万円の脱税容疑で3度目の逮捕をした。しかし、文科省所管の「科学技術振興機構(JST)」がペジー社の関連会社「エクサスケーラー」に交付決定した最大60億円もの巨額の無利子融資については、なぜか触れずじまいだ。 既に52億円が交付された同融資は、開発に失敗しても9割が返済不要になる仕組みである上、上限の50億円を大幅に上回る異例の融資決定だった。しかも、公募期間は16年10月12日からたったの2週間。締め切りに間に合ったのは、エクサ社を含む2社だけだ。JSTは応募条件を緩和していたことまで発覚している』、逮捕起訴の対象金額は少額だが、桁違いに大きい融資については触れずじまいというのは、どうにも解せないし、決定した経緯も疑惑だらけだ。
・『不自然な巨額融資の裏には、“レイプもみ消し”疑惑の元TBS記者・山口敬之氏と、同氏と密接な関係にある麻生財務相の存在がチラつく。 斉藤容疑者は、TBSに在籍していた山口氏と15年秋に知り合ったという。山口氏は退社した16年5月、ペジー社顧問に就任。7月13日には、麻生大臣が理化学研究所のスパコンを視察した際の案内役を斉藤容疑者が務めた。9月30日、斉藤容疑者は内閣府の有識者会議の委員に選出され、約4カ月後の17年1月20日、エクサ社がJSTの融資を獲得しているのだ。トントン拍子で融資が認められたのは、斉藤容疑者が山口氏を通じて文教族の麻生大臣と接点を持ったことが影響したのではないか』、あの悪名高い山口敬之氏、さらには麻生大臣まで出てくるとは、疑惑の舞台としては一流だ。
・『この問題を追及する希望の党の柚木道義衆院議員はこう言う。「エクサ社が異例の融資を獲得した過程を見ると“ペジーありき”だった疑念が浮かびます。補助金適正化法に抵触しかねない案件に、麻生財務相や山口氏が絡んでいたのなら大問題。特捜部が捜査を打ち切った理由は、麻生財務相への“忖度”ではないか。そう疑われても仕方ないでしょう」』、やれやれ、ここでまで特捜部の“忖度”が出てくるとは世も末だ。

次に、6月9日付け日刊ゲンダイ「詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/230784/1
・『先月の初公判で、社長だった斉藤元章被告(50)は助成金詐取を認めている。 斉藤被告が国から引っぱったカネは、総額87億円にもなる。よくも日本政府は詐欺師に87億円もつぎ込んだものだ。 信じがたいのは、交付済みの総額約35億円の助成金の大半が戻っていないばかりか、安倍政権は返還請求すらしていないことだ。なぜ、カネを取り戻そうとしないのか。安倍首相への“忖度”なのか』、なるほど。
・『ペジーへの公的資金の支出約87億円の内訳は、文科省所管のJST(科学技術振興機構)から52億円の無利子融資。さらに、経産省所管のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から35億2400万円の助成金の交付だ。文科省分の52億円は、4月6日に全額返還を受けている。ところが、経産省分35億円のうち、国庫に戻っているのは、5事業中、2事業の一部でわずか6億5000万円のみ。残りの約28億円はペジーに“あげた”ままなのだ。 なぜか、世耕経産相は回収に積極的ではないのだ。NEDOは「今後、追加的に調査を行い、仮に不正が認められれば返還請求を行う」(広報部)とノンキな様子。しかし、モタモタしていると回収不能になってしまいかねない』、経産省分の残り約28億円はペジーに“あげた”まま、というのは信じられないような話だ。野党やマスコミは何をしているのか。
・『「詐欺師」に大金の税金を“預け中”なんてもってのほか。すぐに返還請求すべきだ』、その通りだ。

第三に、7月31日付けダイヤモンド・オンライン「助成金詐欺で社長逮捕のスパコン、連続世界一にも疑惑の目」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/175945
・『ペジーコンピューティングのスパコンが6月、昨年に続きスパコン省エネランキング「Green500」で世界一となった。 ペジーの技術が社長逮捕後も世界水準にあることを証明したわけだが・・・一部報道などが疑義を呈しているのは、サーバーを特殊な液に浸して冷やす液浸冷却の省エネ性能で、ペジーの“強み”そのもの。実はGreen500は冷却用の消費電力量を評価対象外にしている。そのため、ペジーのスパコンを、現在、非公開になっている冷却を含む消費電力量で評価すると、省エネ性能に劣ることが明らかになるのではと疑われているのだ。 ペジー関連会社で冷却システムを開発するエクサスケーラーは本誌の取材に対し、この疑惑をきっぱりと否定した』、世界的なランキングなので、審査基準はしっかりしている筈だが、「冷却用の消費電力量を評価対象外にしている」、とは信じ難い話だ。最もエネルギーを消費する冷却が評価対象外なんて、本来、あり得ない筈だ。しかし、ペジー関連会社はこの疑惑をきっぱりと否定したとあるが、否定の根拠が示されてないので、何とも判断しようもない。
・『ペジーはグループとして今後もスパコンの研究開発を続ける意向だ。エクサスケーラーの鳥居淳CTOは、「スパコンの開発は数十人の技術陣が担ってきた。齊藤氏が抜けても十分な開発体制がある」と自信を見せる。だが、資金調達については守秘義務を理由にコメントしなかった。 同社は文科省所管の研究機関から受けた融資52億円を返還。ペジーも、詐欺罪に問われた経産省所管の研究機関の助成金の関連で9億4000万円を返納した。 ペジーは増資による資金調達もしてきたが、以前のように資金を集めるのは困難だ。米中との技術開発競争が激化する中、ペジーのつまずきが日本のスパコンの出遅れにつながらないようにするべきだろう』、これだけミソをつければ、増資による資金調達は確かにかなり難しいだろう。記事では、「日本のスパコンの出遅れにつながらないようにするべき」としているが、量子コンピュータが登場した現在、スパコン競争、それもメインではない「省エネ」で競争することに果たしてどれだけの意味があるか、再考すべきなのではなかろうか。
タグ:日刊ゲンダイ 量子コンピュータ スーパーコンピューター ダイヤモンド・オンライン スパコン詐欺 (その2)(捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑、詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず、助成金詐欺で社長逮捕のスパコン 連続世界一にも疑惑の目) 「捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑」 「ペジーコンピューティング」 脱税、助成金詐欺事件で、東京地検特捜部は13日に社長の斉藤元章容疑者(50)を起訴。一連の捜査は終結 疑惑の“本丸”は手つかず状態。幕引きすれば特捜部は“お手盛り捜査”のそしりは免れまい 経産省所管の「新エネルギー・産業技術総合開発機構」 助成事業で、総額約6億5000万円を詐取 文科省所管の「科学技術振興機構(JST)」 最大60億円もの巨額の無利子融資については、なぜか触れずじまいだ 既に52億円が交付された同融資は、開発に失敗しても9割が返済不要になる仕組み 公募期間は16年10月12日からたったの2週間。締め切りに間に合ったのは、エクサ社を含む2社だけだ JSTは応募条件を緩和していたことまで発覚 、“レイプもみ消し”疑惑の元TBS記者・山口敬之氏と、同氏と密接な関係にある麻生財務相の存在がチラつく 山口氏は退社した16年5月、ペジー社顧問に就任 斉藤容疑者は内閣府の有識者会議の委員に選出 エクサ社がJSTの融資を獲得 トントン拍子で融資が認められたのは、斉藤容疑者が山口氏を通じて文教族の麻生大臣と接点を持ったことが影響したのではないか エクサ社が異例の融資を獲得した過程を見ると“ペジーありき”だった疑念 特捜部が捜査を打ち切った理由は、麻生財務相への“忖度”ではないか 「詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず」 斉藤被告が国から引っぱったカネは、総額87億円 交付済みの総額約35億円の助成金の大半が戻っていないばかりか、安倍政権は返還請求すらしていないことだ 文科省所管のJST(科学技術振興機構)から52億円の無利子融資 経産省所管のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から35億2400万円の助成金の交付 文科省分の52億円は、4月6日に全額返還 経産省分35億円のうち、国庫に戻っているのは、5事業中、2事業の一部でわずか6億5000万円のみ 残りの約28億円はペジーに“あげた”ままなのだ 世耕経産相は回収に積極的ではないのだ 詐欺師」に大金の税金を“預け中”なんてもってのほか。すぐに返還請求すべきだ 「助成金詐欺で社長逮捕のスパコン、連続世界一にも疑惑の目」 昨年に続きスパコン省エネランキング「Green500」で世界一となった 実はGreen500は冷却用の消費電力量を評価対象外にしている。そのため、ペジーのスパコンを、現在、非公開になっている冷却を含む消費電力量で評価すると、省エネ性能に劣ることが明らかになるのではと疑われているのだ ペジー関連会社で冷却システムを開発するエクサスケーラーは本誌の取材に対し、この疑惑をきっぱりと否定した ペジーはグループとして今後もスパコンの研究開発を続ける意向 スパコンの開発は数十人の技術陣が担ってきた。齊藤氏が抜けても十分な開発体制がある」と自信を見せる。だが、資金調達については守秘義務を理由にコメントしなかった ペジーは増資による資金調達もしてきたが、以前のように資金を集めるのは困難だ スパコン競争、それもメインではない「省エネ」で競争することに果たしてどれだけの意味があるか、再考すべきなのではなかろうか
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情報セキュリティー・サイバー犯罪(その4)(アップルの従業員が逮捕される理由、麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで 「ダークウェブ」の実態、日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない) [科学技術]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、1月7日に取上げた。今日は、(その4)(アップルの従業員が逮捕される理由、麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで 「ダークウェブ」の実態、日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない)である。

先ずは、未来調達研究所取締役の牧野 直哉氏が4月25日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「アップルの従業員が逮捕される理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米アップルが社員に対して情報管理の徹底を呼びかけているブログの内容がリークされた。リークの内容を読むと、29人の社員が情報漏えいをしたことが判明し、12人が逮捕されたとある。逮捕された人の中には、アップルの社員だけではなく、サプライヤーの従業員も含まれているとされる。
・情報管理の重要性は、いまさら強調する話でもない。しかし、アップルがこのタイミングで社員のみならずサプライチェーン上の関係者を含め、厳しく対処する姿勢を明らかにした背景は2つある。社内だけではなく、サプライチェーンに存在するサプライヤーを含めた情報管理の必要性の喚起と、アップルがこれまで徹底活用し効果を生んできた情報管理の重要性を、改めて社員に徹底する狙いが読み取れる。
▽問題の背景
・アップルの製品情報は、世界中の衆目を集めている。そんな市場における類いまれな評価を、アップルは徹底的に活用して自社製品やサービスを拡大してきた。事実、新製品情報を効果的に公開して、注目を浴びてきた。初めて世に「iPhone」を紹介したスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを覚えている方も多いだろう。世界に衝撃を与える発表手法は、アップルの強さの源泉でもある。
・しかし、昨今では新製品に関するさまざまな情報が、正式発表前にリークされている。リーク情報には、新製品の外観やディスプレーの大きさ、搭載される新たな機能まで多岐にわたる内容が含まれている。こういったアップルが意図しない情報リークは、発表会の価値を減少させ、消費者にとって発表会の価値を変節させてしまっている。正式発表会は、事前にリークされた情報の確認の場と化しており、従来の驚きや感動が少なくなってしまったのだ。「えっ?!」と驚くよりも、「やっぱり」と予定調和でうなずく場になってしまったのだ。
・こういった変化は、アップルにとって大きな痛手である。消費者をワクワクさせ新鮮な価値を提供し続けるためには、新製品に関する徹底した情報管理、発表する方法へのこだわりが欠かせない。自社発表の注目度をアップさせ、過去と同じようなワクワクする期待を消費者に抱かせるために今回の処置が必要だったのである。
▽企業における情報管理のポイント
・企業における情報管理のポイントは、情報の「保持」、「公開」そして「共有」。それぞれで狙った効果を創出しなくてはならない。情報によって、公開する方法と範囲、タイミングをコントロールするのだ。
・まず情報の「保持」。自社の競争優位に欠かせない新たな企画や開発に関連する情報は、関係者だけに保って流通させなければならない。公開できない内容は、情報にアクセスできる人間を限定する管理が必要だ。筆者は一度だけアップル本社を訪問した。ドアを入った瞬間、屈強な男性から「用件は?」と声をかけられ、部外者の侵入を許さない厳格な管理を目の当たりにした。この点の管理レベルの高さを示している。
・企画や開発に携わる部門や担当者であれば、情報の秘匿への意識は高いであろう。新たな企画や開発の結果が市場に投入され成功すれば、得られるメリットもあり、情報を流出させる可能性は低い。
・続いて「公開」だ。製品やサービスを投入する市場に驚きや感動を生むために、社内で保持していた情報を広めるのが目的だ。アップルの「公開」方法は、極めて優れていた。消費者に期待を抱かせ、いまかいまかと待ち望む消費者を裏切らない商品を発表してきたのも事実だ。今回の情報漏えい防止の社内喚起は、この効果を再び取り戻したい気持ちの表れと言える。
・最後の「共有」とは、社内の関連部門やサプライヤーが、事業展開の目的を達成するために、足並みをそろえるアクションの「同期」が目的だ。比較的関係者が多く、収益をあげるために欠かせない。このプロセスでは、従来機密扱いだった情報が、関係者に公開される。この段階における情報管理のリスクは、大きく2つに分類される。
▽情報共有時の対処
・まず今回の社内喚起は、公権力による逮捕といった例を引き合いに、従業員やサプライチェーンに関係する人々による「意図した情報流出の防止」を狙っている。解雇され罪を問われる事態になる事実を公開し、情報流失に歯止めをかける狙いだ。機密情報の保持は、アップルにとって永続的な企業利益に直結しており、個人的に伝えたい、知らない人に話したいといった気持ちを思いとどめ、社外からの情報提供に応じない意識の確立を目指している。
・流出した文章には、具体的なSNS名を列挙して、情報提供のアプローチ例が示されている。誰もが知っておりアカウントを持っている可能性が高いSNSばかりだ。こういった具体例によって、他人事ではなく、今回の問題が従業員やサプライチェーンに携わるすべての人に関係する警鐘となっている。
▽意図しない流出の防止
・もう一つ、実はアップルのサプライチェーンに関係する日本企業がもっとも注意しなければならないポイントがある。サイバーセキュリティーの問題だ。サプライチェーン上で効率を追求するためには、サプライチェーンに参加するすべての企業がWebを活用したデータ共有によって高い効率の実現が必要だ。これは同時に、インターネット上のセキュリティー確保を行わなければ、発注企業で高いセキュリティーを実現しても、サプライチェーンのどこかから情報が流出する新たなリスクの可能性を生んでしまう。
・現在、日本では政府主導の「働き方改革」によって、生産性の向上が喫緊の課題だ。特に事務部門の効率化が叫ばれている。事務部門は、情報を受け、内容を理解し、処理・展開するのが仕事だ。これはどんな企業であっても、そう大きくは違わないだろう。事務部門の効率化には、インターネットを活用したデータの送受信や処理が効果的である。国内でも効率化に向けた動きはさらに加速していくだろう。この加速が、新たなリスクを生む要因になるのだ。
・社内やサプライヤーの従業員の口は教育によって閉じられても、情報流通の仕組みに脆弱性が残れば、リスクをぬぐい去ることができない。脆弱性を残したままで電子データのやりとりをWeb上で行えば、意図しない情報流出や漏えいのリスクが高まってしまう。情報流出を防ぐためには、情報を取り扱うハードのセキュリティーレベルの管理が欠かせないのだ。
・現在、世界的にサイバー攻撃によるリスクが高まっているといわれる。IoTによって、あらゆるものがインターネットに接続されれば、それだけ攻撃対象の増加を意味する。しかし、経済的損失の観点から見れば、企業間で流通する情報の方が、より大きな価値を持つはずだ。特に好調な業績を維持してきた、アップルのような企業の情報は価値があるだろう。
・今回のアップルから流出した文書の内容は、サプライチェーンにおける情報流出の可能性の中で、人為的な側面を指摘したにすぎない。しかし、インターネット上を行き交う情報は、人間の意図がなくても脆弱性を突いて情報が流出する可能性は否めない。すでにアップルのような企業では対策が施されているかもしれないが、果たしてサプライヤーはどうだろうか。今回の問題は、ほぼすべての企業が活用している、サプライヤー管理に新たな課題を示しているといってよい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/042400132/?P=1&prvArw

次に、5月23日付けダイヤモンド・オンライン「麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで、「ダークウェブ」の実態」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・通常のネット検索ではたどり着くことができないサイバー空間「ダークウェブ」。先のコインチェック不正送金事件を含め、ここ近年でよく耳にするワードだが、この空間では、どんな違法ビジネスが行われているのか。『闇ウェブ』(文藝春秋)の著者で、株式会社スプラウトの代表である高野聖玄氏に聞いた。
▽普段、我々が閲覧しているネット情報はわずか1%
・ダークウェブでは、さまざまな違法取引が横行しています。麻薬や銃、児童ポルノといった違法な商品のみならず、「サイバー攻撃代行」サービスまで売られているダークウェブ。個人情報も安価に取引されている
・「私や家族の情報もすべて漏れた」こう憤ったのは、2015年当時、FBI(アメリカ連邦捜査局)長官だったジェームズ・コミー氏。OPM(アメリカ連邦人事管理局)がハッカーからの攻撃を受け、同国政府職員の個人情報が2000万件も流出した事件での一コマである。
・日本でも同様の事件は後を絶たない。報道によれば、眼鏡チェーン「JINS」やTOKYO MX、Facebookといった大手企業だけでなく、東京都などの自治体までが個人情報流出の被害に遭っており、その数は17年だけで308万件にも上るという。 先進国であるはずの日本やアメリカでさえ、サイバー空間では個人情報すら守れない時代なのだ。そして、これらの盗まれた個人情報は、しばしば「ダークウェブ」で売買される。
・通常、インターネットを使う場合、「Google Chrome」や「Internet Explorer」といったウェブブラウザを起動し、「Yahoo!」や「Google」など検索エンジンを用いる。 しかし、こういった手段で普通にたどり着けるようなサイトは、実はネット空間のわずか1%程度に過ぎず、残る99%は「ディープウェブ」と呼ばれている。個人の「Gmail」ボックスや「Twitter」の非公開ページなど、第三者が勝手にアクセスできないコンテンツがこれに当たる。 そして、このディープウェブのさらに深いところにダークウェブは存在するのだ。
▽犯罪のデパートに国や企業は手だてなし
・「ダークウェブでは、独裁政権下でレジスタンス中の政治家やジャーナリストといった人たちに加え、テロリスト、ハッカー、犯罪者なども活動しています。このサイバー空間は、非常に匿名性と秘匿性が高く、取引も現金ではなく、足が着きにくい仮想通貨で行われることが多いので、世界中の警察や政府も手を焼いている状況です」(高野氏、以下同)
・アクセスする方法は簡単だ。これは一例だが、「Tor Browser」という特殊なブラウザをインストールし、その先のネット空間にアクセスすると、そこにしか表示されないサイトが膨大に存在する。 サイト群の中には、一見、「Amazon」や「2ちゃんねる」と似通ったサービスもあるが、そこで取引されているのは、麻薬、銃、児童ポルノ、個人情報、サイバー攻撃代行など法的に“アウト”なものばかりだ。
・全体的に見ると日本語対応されたサービスはまだ少ないようだが、こうした世界的な流れの一方で15年、日本でもサイバーセキュリティ基本法が施行され、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が発足した。 しかし、その体制は必ずしも十分とはいえないようだ。その理由の1つとして、高野氏はこう指摘する。
・「頻発するサイバー攻撃が、国家的な意思によるものなのか、個人の私欲なのか、判断しづらいこともあり、政府も全方位的にはなかなか対応できていない状況です。ここ近年は着々とサイバーセキュリティー人材も育ってきていますが、それでもまだ足りておらず、政府はどの分野に重点を置くか、難しい判断を迫られているのだと思います」
・NISCは、サイバー犯罪から国家や企業を守る技術者を育成すべく、新たに国家資格を設け、20年までに3万人の有資格者を確保するとしているが、果たして実現できるかは不透明だ。 一方、企業ではセキュリティー会社を使って情報漏洩対策に取り組む大手も増えているが、中小レベルではまだその意識は薄いといえる。
▽たった5ドルでサイバー攻撃を代行
・ダークウェブには、依頼を受けて犯罪行為を代行するサービスも多数存在する。「ある特定のサーバーをダウンさせるようなDDoS攻撃を仕掛けたり、データを盗むとうたうサービスがたくさんあります。昔は技術力のある悪いハッカーでなければできなかったことが、闇市場の拡大によって、今では学生であろうが、多少の知識さえあれば誰でも手軽にできるようになりました」
・ダークウェブ上のあるサイトでは、「1秒間に125GBのDDoS攻撃を600秒間」行うサービスを、たったの5ドル(支払いは仮想通貨)で請け負っている。DDoS攻撃とは、ターゲットのサーバーに大量のデータを送りつけ、機能を低下・麻痺させる手法のことだ。
・また、同様に個人情報の取引額もお手頃だ。「一概には言えませんが、データブローカーが、出会い系サイトの運営者に、氏名、年齢、住所、性別、メールアドレスなどの名簿を売る際、その取引額は1件につき、1~5円程度という話もあります」
・我々の個人情報がそれほどの安価で売られているとは、いささか悲しくなるが、その中で最も危惧すべきは、個人の医療データだという。医療情報があれば、サイバー犯罪者は、よりピンポイントで個人を狙い撃ちできるからだ。
・例えばかかりつけの医師を装ったメールアドレスから「○○さんの体調が心配なので、ご連絡しました」とメッセージが届き、そこに「食事の注意.xls」というExcelファイルが添付されていた場合、うっかり開くとウイルスに感染してしまうようなこともありえるだろう。 また、例えばアメリカなどでは、医療カルテには、髪や目の色、体格まで記載されていることも多いので、身体的特徴やDNAに関する情報まで筒抜けになってしまい、用途によっては「なりすまし」も容易にできてしまうのだ。
▽リアルの金融機関より仮想通貨交換業者が狙われる
・医療機関だけではなく、金融機関や仮想通貨交換業者も狙われている。一昔前は、ネットバンキング口座から現金が不正に引き出される被害が目立ったが、ここ最近、その矛先は仮想通貨に向けられているという。 今年1月、仮想通貨交換業者「コインチェック」から、580億円相当の仮想通貨NEMが流出し、それらはダークウェブ上で洗浄された後、全額が第三者に渡ってしまった。
・「この事件で、一層ダークウェブに注目が集まったと思います。中には摘発されている事例もあるのですが、犯罪者たちには足がつかないイメージを与えてしまったのではないでしょうか。今後もこういった犯罪は増えていくと予測しています」
・日本に限らず、今や世界中が、ダークウェブ上の犯罪に右往左往している。お上の力が及ばない以上、企業はどのような対策を講じればいいのだろうか。「企業がダークウェブ対策まで自前でやるとなると技術的にも費用的にも大変なので、外部のセキュリティー会社を使うのが現実的だと思います。まずは犯罪者たちが、自分たちが持っているどんな情報に興味があるのか、既に情報が外に漏れている可能性はないかといった、自社が置かれている状況を把握するところから始めるのがいいでしょう。あとは、セキュリティ会社と一緒にそういったリスクアセスメントを行うチームを社内に作ることをお勧めしたいですね」
・念のため忠告しておくと、もしネットリテラシーに自信がないのなら、間違っても安易にダークウェブにアクセスしようなどとは思わないほうがいい。会社のパソコンをウイルスに感染させ、上司にどやされた筆者から、僭越ながらの忠告である。
https://diamond.jp/articles/-/170674

第三に、セールスフォース・ドットコム シニアビジネスコンサルタント / エバンジェリスト の熊村 剛輔氏が5月31日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨年頃からサイバー犯罪に関係するニュースに「ダークウェブ(闇ウェブ)」という言葉をよく目にするようになった。それだけではなく、今や「相棒」(テレビ朝日系)などテレビドラマにまでダークウェブが登場している。
・最近になって急にダークウェブが語られるようになったのは、仮想通貨の影響が大きい。たとえば今年1月に仮想通貨業者である「コインチェック」から580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出したが、この事件に関する報道においてもダークウェブが頻繁に語られていた。その理由は、犯人と思われる人物が盗んだ通貨をダークウェブで別の仮想通貨に交換していたと見られているからだ。
▽「ダークウェブ」とはいったい何か?
・では、このダークウェブとはいったいどういうものだろう。ダークウェブはよく「闇サイト」と混同されるが、まったく別のものである。 闇サイトはインターネットエクスプローラーやクロームのようなブラウザで閲覧可能でヤフーやグーグルといった検索エンジンなどでも参照できる「サーフェスウェブ」や、検索エンジンにはヒットしないが、ブラウザでアクセスできる「ディープウェブ」の中に存在しており、犯罪などの違法性の高い情報が掲載されたサイトを指す。
・一方のダークウェブとは、「匿名性を維持した通信が可能なネットワーク上で、自身を匿名化する特定のブラウザを用いて接続しないかぎり閲覧できないサイトなどが集まったネットワーク空間」のことを指す。これらのサイトは、サーバーの運営元などを特定することが非常に困難で、そもそもブラウザで閲覧することができない。また、検索エンジンで探し出すこともできない。いわばアンダーグラウンドなサイバー空間だ。
・そのためダークウェブは、違法取引やサイバー犯罪の温床となっている。ある調査によれば、ダークウェブ上に存在しているサイトの半数以上で何らかの違法取引が行われているという。たとえば薬物や武器、(盗まれた)クレジットカード番号やパスポートなどの売買だ。つい先日も、日本人の個人情報約2億件が中国語のダークウェブで販売されていたと報道された。こういった取引の決済手段として、(クレジットカードなどから素性が明らかになることを避けるために)仮想通貨が用いられている。
・これだけ見るとダークウェブは非常に閉ざされた空間であり、なかなかアクセスできない世界であるように感じられる。しかし実は、中に足を踏み入れること自体はそれほど難しくはない。利用者の素性と通信経路を隠すことができる「Tor(トーア)」や「I2P(アイツーピー)」と呼ばれるソフトウエアを用いることで、誰でもアクセスは可能になる。
・もともと方法さえわかっていれば、誰でもアクセス可能だったダークウェブ。そこに仮想通貨の認知が徐々に高まってきたことやサイバー犯罪がこれまで以上に大きく報じられるようになったことで、最近では初心者が興味本位でダークウェブの世界に入り始めているとも言われている。つまり、それだけダークウェブというものが多くの人に浸透し始めてきたということだ。
▽企業に与える影響は「情報漏洩」や「風評被害」がメイン
・ダークウェブのインパクトはビジネスの世界においても無視できないものになりつつある。もはやどの企業も「ウチは関係ない」とは言い切れない状況にあると言ってもいい。 昨年、米国のサイバーセキュリティ関連企業が発表したデータによれば、2017年度版の米フォーチュン500にリストされている企業(日本からはトヨタ自動車やホンダ、日本郵政、NTTなどがランクイン)はすべて何らかの形でダークウェブ上で言及がなされていると言われている。特に数多く言及されているのがテクノロジー系企業であるというのは想像に難くないが、金融企業やメディア、航空会社、流通小売企業など、幅広い業界、業種で言及がなされている。
・もちろんダークウェブ上で語られているからといって、それがそのまま何らかの危害に直結するわけではない。だが、ビジネスにインパクトを与える可能性のあるリスク要因であることは間違いない。ダークウェブ上で頻繁に語られているということは、それだけサイバー攻撃の標的にされる危険性も高いと考えられるし、情報漏洩や風評被害などの被害に発展する可能性も大いにある。
・実際、ダークウェブ上では世界規模のサイバー攻撃に用いられるようなマルウェア(不正かつ有害な動作を行うウイルスなど)が非常に多くやり取りされている。こういったマルウェアは世界中のハッカーたちの手によって日々改良が重ねられ、その攻撃力も増している。ダークウェブがハッカーたちの共同の制作環境になっている。
・このようなハッカーたちの活動は、マルウェアの制作や改良だけにとどまらない。今はダークウェブ上でサイバー攻撃の依頼を受け、ダークウェブを通じてメンバーを集め、依頼主から成功報酬を仮想通貨で受け取るようなことも行われているという。これは”HaaS(Hacking as a Serviceの略)”と呼ばれており、いわば制作から攻撃までを請け負う「サイバー攻撃のパッケージサービス」のようなものだ。
▽廃棄したパソコンから情報が漏洩するリスクも
・近年、ダークウェブではその取引でやり取りされるものにも変化が見え始めている。これまでよく取引がなされていた薬物や武器だけではなく、企業に関する機密情報が増えてきた。たとえば社員の個人情報や企業内でやり取りされるメールやファイル類などだ。これらのファイル類には経営幹部の会議に用いられるような機密が満載された資料なども少なくない。場合によっては企業の財務情報や取引先との契約書、さらには資金のやり取り、不正行為の隠蔽工作に関する文書やメールなどもやり取りされるケースがある。
・今や機密データが漏洩する原因はサイバー攻撃だけではない。むしろ最近になってダークウェブ上で多くやり取りされているのは企業が廃棄したパソコンから復旧されたデータだ。たとえば企業が廃棄したはずのパソコンが中古パソコン店などに流れ、それを購入した人が何らかの手でデータを復旧させ、それをダークウェブで販売しているようなケースである。あるいは、小遣い稼ぎや(リストラなどの)意趣返しを目的に意図的に機密データを盗み出し、ダークウェブ上のマーケットで売りさばくようなケースも少なくない。
・もともと特別に高いスキルや設備を要求されることもなく、誰でもアクセスできるうえに、その存在自体が徐々に広く知られるようになってきたことで、ダークウェブ上にこういった新たなマーケットが生まれるようになってきた。今後企業は今まで以上に、オンライン上の“脅威”に対して自衛していくことが必要になってくるだろう。
・自衛とは単にこれまでのように自社のシステムの防御を強固にするということだけではない。社員一人ひとりが情報セキュリティに対するリテラシーを高めることが必要だ。個人が興味本位でダークウェブに足を踏み入れることでリスクが増大している今、企業は、まずダークウェブ上でアンダーグラウンドな取引に手を染めるということ自体が違法であり、処分の対象になるということを周知する必要がある。
・さらにダークウェブからもたらされる脅威に対して“受け身”の対応だけではなく、自発的に動いていくことも求められる。そのためにはダークウェブ上で何が今起こっているかをきちんと把握し、次に自分たちにどういった危機が降り掛かってくるかを予測する仕組みが必要だ。実際にそういったサービスを提供する事業者も昨今拡大するニーズに伴い増えてきている。
・このようなダークウェブ上の(簡単には気づかれない)情報のやり取りを早い段階で察知することで、たとえば“HaaS”を利用したサイバー攻撃だけではなく、爆破予告や殺人予告、あるいは風評被害や名誉毀損を引き起こすような事案の抑止にもつながる。
・ダークウェブで行われていることは、もはや「知らない」では済まされない。企業にとって自分たちを守るためにも、その存在を認識し、きちんとしたアクションを取る必要があるのだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/222841

第一の記事は、『世界に衝撃を与える発表手法は、アップルの強さの源泉でもある』、というアップルならではの情報管理の厳しさを背景にしたもので、そんなブランド力やマーケティング力がない殆どの日本企業にとっては、縁遠いことかも知れないが、サプライ・チェーン間での情報共有自体は広がっているので、『今回の問題は、ほぼすべての企業が活用している、サプライヤー管理に新たな課題を示しているといってよい』、というのはその通りだろう。
第二の記事で、『普通にたどり着けるようなサイトは、実はネット空間のわずか1%程度に過ぎず、残る99%は「ディープウェブ」と呼ばれている・・・このディープウェブのさらに深いところにダークウェブは存在するのだ』、とあるが、ディープウェブのうちどの程度がダークウェブなのかまで記してないのが、若干残念だ。 『たった5ドルでサイバー攻撃を代行』、というのはここまできたかと、改めて驚かされた。
第三の記事で、「闇サイト」、「サーフェスウェブ」、「ディープウェブ」、「ダークウェブ」の違いがよく理解できた。ただ、ディープウェブのうちどの程度がダークウェブなのか、についてはここでも触れてない。『最近では初心者が興味本位でダークウェブの世界に入り始めているとも言われている』、ということであれば、そうした初心者を対象にした犯罪も起こる懸念があろう。『”HaaS(Hacking as a Serviceの略)”と呼ばれており、いわば制作から攻撃までを請け負う「サイバー攻撃のパッケージサービス」のようなものだ』、いやはや、こんな商売まで登場したとは、人間とは抜け目ないものだ。『最近になってダークウェブ上で多くやり取りされているのは企業が廃棄したパソコンから復旧されたデータだ』、廃棄する際にかなり厳重なデータの消去を行っても、復元されてしまうということなのだろうか。企業にとって、『“受け身”の対応だけではなく、自発的に動いていくことも求められる』、というのはその通りなのだろう。大変な時代になったものだ。
タグ:闇サイト 東洋経済オンライン 情報セキュリティー サイバー犯罪 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン コインチェック (その4)(アップルの従業員が逮捕される理由、麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで 「ダークウェブ」の実態、日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない) 牧野 直哉 「アップルの従業員が逮捕される理由」 29人の社員が情報漏えいをしたことが判明し、12人が逮捕 逮捕された人の中には、アップルの社員だけではなく、サプライヤーの従業員も含まれているとされる 世界に衝撃を与える発表手法は、アップルの強さの源泉でもある 正式発表会は、事前にリークされた情報の確認の場と化しており、従来の驚きや感動が少なくなってしまったのだ 過去と同じようなワクワクする期待を消費者に抱かせるために今回の処置が必要だったのである 情報共有時の対処 意図しない流出の防止 今回の問題は、ほぼすべての企業が活用している、サプライヤー管理に新たな課題を示しているといってよい 「麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで、「ダークウェブ」の実態」 検索エンジンを用いる。 しかし、こういった手段で普通にたどり着けるようなサイトは、実はネット空間のわずか1%程度に過ぎず、残る99%は「ディープウェブ」と呼ばれている ディープウェブのさらに深いところにダークウェブは存在 Tor Browser 特殊なブラウザをインストールし、その先のネット空間にアクセスすると、そこにしか表示されないサイトが膨大に存在する たった5ドルでサイバー攻撃を代行 最も危惧すべきは、個人の医療データ 外部のセキュリティー会社を使うのが現実的 熊村 剛輔 「日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない」 「相棒」(テレビ朝日系)などテレビドラマ 580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出 ダークウェブで別の仮想通貨に交換 「サーフェスウェブ」 「ディープウェブ」 ダークウェブ 匿名性を維持した通信が可能なネットワーク上で、自身を匿名化する特定のブラウザを用いて接続しないかぎり閲覧できないサイトなどが集まったネットワーク空間 違法取引やサイバー犯罪の温床 ダークウェブ上に存在しているサイトの半数以上で何らかの違法取引が行われている 取引の決済手段として 仮想通貨が用いられている 最近では初心者が興味本位でダークウェブの世界に入り始めているとも言われている 企業に与える影響は「情報漏洩」や「風評被害」がメイン ”HaaS(Hacking as a Serviceの略)”と呼ばれており、いわば制作から攻撃までを請け負う「サイバー攻撃のパッケージサービス」のようなものだ 企業に関する機密情報が増えてきた 最近になってダークウェブ上で多くやり取りされているのは企業が廃棄したパソコンから復旧されたデータだ 脅威に対して“受け身”の対応だけではなく、自発的に動いていくことも求められる
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自動運転(その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ) [科学技術]

自動運転については、昨年8月7日に取上げた。今日は、(その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ)である。

先ずは、作曲家=指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督で東大助教授の伊東 乾氏が3月23日付けJBPressに寄稿した「これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国、VWの不正に懲りて法整備を進める欧州」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・懸念されていた事態が現実のものとなってしまいました。 米国アリゾナ州で、ウーバーが実施していた自動運転実験で事故が発生し、犠牲者が出たのです。 報道によると、現地時間の3月18日午後、アリゾナ州テンピ近郊で実施されていたウーバーの試験運転走行中、横断歩道ではない場所を自転車を押して渡っていた女性が車に接触してしまいました。 ウーバーの試験車は完全自動運転モード中で、減速した形跡は全くなく、時速約65キロで進行、歩行者をはねてしまったという経緯であるようです。
・自動運転モードとはいえ、当然ながら試験車には同乗者がありました。しかし、危機回避の適切な行動は取られなかった。 ウーバーはただちに、カリフォルニア州サンフランシスコやアリゾナ州フェニックス、またカナダのトロントなどで実施していた自動運転車の試験走行をすべて中止しました。
・米国ではカリフォルニア州など、すでに規制緩和が進んで自動運転車の公道走行が部分的に許可され始めたエリアもあり、今回の事態は大きな波紋を投げかけています。 非常に大まかに言って、現状の「自動運転」は自動車が勝手に走行するという水準にあり、これはモノレールその他の軌道交通機関では、すでに当の昔に実現されていることで、実は取り立てて問題にするようなことではありません。
・日本国内でも、博覧会会場などとして設定された「未来交通」の路線を、駅から駅へ、自動的に運転する路線が運行されています。 これらの特徴は、軌道上に歩行者やほかの車などがいないこと、ホームドアなどで厳密に乗客と軌道とは仕切られ、十分な安全が確保されているということでしょう。
・逆に言えば、既存のモノレールなどの路線では、センサーによって危険を感知し、自動的に停車する装置などは取りつけられているはずです。 これはJR線などでもときおり経験することでしょう。線路内に人が進入した可能性がある危険信号を感知しましたので列車は急ブレーキをかけました、という車内アナウンスを耳にしたことがある人は少なくないはずです。
・この場合、JR線でも新都市交通でも、極めて限られたエリア、決まった軌道上の特定のチェックポイントで危険信号が感知されたとき「急停止」その他の安全アクションが取られることになります。 逆に言うと「想定外」のリスク、突然横方向から歩行者や自転車が飛び込んで来るといった事態は、モノレールなどの場合はまず発生しないので、そのようなセンサーもリスク対策も一切取られていません。 対策や考慮の対象外ということになります。
・今回のウーバー事故は、報道される状況証拠から、自動運転車が全く歩行者やリスクを感知しないまま自動的に進行したものと思われます。何も考えずに猪突猛進すれば、前方の物体に衝突するのが当然で、事故は必然的に起きたと言うしかありません。 
・すでに発生しているテスラの自動運転車事故も、今回のウーバー事故もそうですが、商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている。 危険回避センサー技術という観点では、いまだモノレール程度の自動運転と大差ない代物を、広い国土を利用してあちこちの公道で走らせ始めているわけです。
・かつ「物議をかもす」程度の報道からも明らかなとおり、米国やカナダでは、自動運転に伴う事故リスクや、そこでの保険商品のあり方、法規制その他の落ち着いた制度設計の議論がほとんどなされていません。  何かと米国に右向け右のどこかの国でも、そんな話はついぞ耳にしないでしょう。
・すなわち、自動運転車が何らかの事故を引き起こしたとき、どのような責任が問われるか。リスクに備えてどのような法制度や、新たな保険商品を準備すればよいか・・・。 一部省庁の専従には意識の高い人がありますが、国全体として議論の期が熟しているとは到底言えません。 これを強調するのは、本連載でも今まで幾度も記してきたように、ドイツを中心にEUでは自動運転に関する法制度、もっと言えば、AI駆動されるシステムが、何らかの被害を人に与えた場合の責任の所在を問う「ロボット法」が、大枠すでに確立されているからにほかなりません。
▽責任主体としての「ロボット法人」
・EUでは「ロボット法人格」を認める法制度整備が急速に進んでいます。 まるで手塚治虫のマンガ「鉄腕アトム」のような話と言っても、すでにいまの若い世代には通じないのかもしれません。 人間の心を持つロボット少年アトムの悲劇を描いた原作マンガは、テレビアニメーションとしては軽い冒険活劇としてヒットしました。
・しかし、もはや漫画の中の世界ではなく、もっと落ち着いてリアルに考えるべき対象です。 例えば、福島第一原子力発電所事故が発生し、責任主体として東京電力という「法人格」が、重い司法上の責任を問われている。これは全く普通です。 しかし、東京電力さんという人がいるわけではなく、切れば血が出る生身の体があるわけではない。 でも東京電力には資産があり、損害賠償の必要が発生すれば、会社がその主体として責任を負うことになる。もちろん、並行して企業の経営に責任をもった生身の個人が訴追される場合もあり得る。
・全く同様のことを、一定以上自立的に作動するシステムに関しても、それ自体を「ロボット法人」として責任の主体とみなす必要があるという、手堅い判断をEU~ドイツはすでに下しています。  自動運転車はその典型として分かりやすいですが、ほぼ自動的に動くという意味では、産業用ロボットなどの自動システムの方が、2018年時点ですでによほど多く、実用化されています。
・今回の事故は、ウーバーの試験走行ですから、責任は全面的に会社にあると判断される可能性が高いでしょう。 しかし、自動運転中とはいえ、その車に乗っていた運転しない運転者、手動モードに切り替えたなら、自分でハンドルを操作して危険を回避できた可能性のある人には、どのような責任がかかるのでしょうか? ここで言う「責任」は、哲学的な抽象論ではなく、損害賠償であればもっとリアルな「過失割合」であり、行政上、司法上の責任であれば処分の対象と認められるか、という値引きのない話にほかなりません。
・さらに、これが一般の路上交通で発生したものとすれば、どうなるでしょう? 例えばT社の自動運転車は、基本すべてT社のAIシステムが運転しているものとしましょう。それで発生した事故は、すべてT社の責任になるのか? そんな制度設計にしたら、経営が成り立たないのは火を見るより明らかでしょう。 どこかで適切に責任の主体を切り離し、その範囲でリスクを分散させ、また損害賠償などの必要が出た場合には、そこに責任の主体を限局する必要がある。そのような意味で、「EUロボット法」は議論されています。
・分かりやすく言えば、原発で事故が起きれば、裁判の結果、電力会社という「法人」の資産で賠償が行われるように、自動運転車やスマートファクトリーの産業用ロボットが事故を起こした場合、「自動運転車法人」や「産業用ロボット法人」が自分自身の資産をもって責任を負う。 具体的には保険制度などが活用され、従来とは違うAI社会のエコシステムを円滑に動かしていく、そういう議論が、早くから進んでいます。
・たまたま私は大学の公務で、ミュンヘン工科大学などを中心とする、こうした「自動運転倫理委員会」メンバーと年来の共同プロジェクトを進めており、関連の状況は一通り承知しています。 例えばドイツでは、自動運転車の安全システムで、「あらかじめ、特定の人を犠牲にするようなプログラム」を組んだ人がいた場合、「そのシステムを組み上げたシステムエンジニア個人を含め刑事責任が問われる」という、著しく重い判断がすでに下されています。
・通常の路上交通では、リスクは常に複数存在します。対向車であったり、後続車であったり、前後左右複数方向からの歩行者であり自転車でありバイクであり、また運転者自身や同乗者であり・・・。 今回の例では、何のセキュリティも施されていない拙劣な車で事故が起きました。2つ以上のリスクが重なる場合、そのどれか1つ、あるいは複数でも、必ず犠牲になるものが決まっているというソフトウエアを組んだ人があれば、それに起因して発生した事故について、民事刑事の責任を負うという判断です。
・現場の運転と何ら関係しない、ウーバーで期間開発に関わったシステムエンジニアにも法的な責任が問われるという重い社会ルールが、ドイツ・欧州ではすでに準備されています。 どうしてそんなことになってしまったかと言うと、1つの原因はフォルクスワーゲンの排気ガス安全基準ごまかしの大型犯罪で、国際社会にドイツ産業界が面目を丸潰しにした経緯が関係しています。
・あの時点では、誰が見ても不正にしか使えないあのシステムを作ったボッシュにも、そこで請け負ってシステムを作ったエンジニアにも、限られた責任しか問うことができなかった。 でも、犯罪以外に使いようがないことは、関連した人がすべて知り、それこそ忖度し合いながら、企業秘密として伏せられていた。 二度とこれを繰り返してはならないという決意をもって「システム開発者も牢屋に入れられ得る」という厳しい法制度準備が進んでいるわけです。
・ 翻って、米国にはそういう制度はおよそ存在していません。 欧州では、重い責任とともに、慎重な自動運転の実用化が一歩一歩検討され、致命的な事故はいまだ発生していませんし、米国では気軽に自動運転車の実用化が叫ばれ、今回の事態を含め、かなりの高頻度でアクシデントが発生しています。
・別段「規制緩和はよろしくなく、重い規制がすばらしい」などと一面的に言うつもりはおよそありません。 しかし、この件に関する限り実用化・商品化を焦る米国企業の拙劣さは隠しようもなく、またそうした拙速な開発を煽るベンチャーキャピタルなど、経営主体より後方の加速圧にも、間違いなく道義的な責任はあると言わねばならないでしょう。
・AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います。 関連の推移に注意しつつ、日本での自動システム、その導入と保険商品などを含む制度設計、真剣に考えてみてはいかがでしょうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52645

次に、ジャーナリストの井元康一郎氏が4月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転、業界は足元を見つめ直せ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国でのウーバーによる自動運転実験車両の死亡事故は、自動運転技術の開発競争に大きな衝撃を与えた。今後、開発競争の行方はどうなるのか、あるいはどうすべきなのか。そのポイントを整理してみた。
▽自動運転の開発競争に“冷や水” ウーバーによる実験車の死亡事故
・このところ激化の一途をたどる自動運転の開発競争に“冷や水”をぶっかけるような事態となったアメリカ・アリゾナ州でのUber(ウーバー)自動運転実験車の死亡事故。 捜査の結果、事故自体は人為的なミス、技術パッケージの“見立ての甘さ”などによるところが大きいことが判明しつつある。とはいえ、自動運転の技術開発のペース自体がこの事故によって鈍ることはないであろう。
・一方で、この事故は自動運転車をどう実用化するか、また社会にどうインストールしていくか、といった課題を浮き彫りにした。 「クルマの自律走行技術の開発は、もともとは安全技術の発展形だったのですが、最近は新ビジネスの創出が主なモチベーションになっている観が強かった。自動車メーカー側にとっては他社に先んじて技術を確立して先行者利益を得ることが第一目的なのですが、交通弱者の救済、商業ドライバー不足の解消など、社会的意義を口にしやすい分野だったので、自動運転の開発が正義という風潮が余計に強まった。今回の事故を、自動車業界が『今後何をやっていけばいいのか』ということを、頭を冷やして考えるきっかけにしなければ、犠牲が報われない」 自動運転開発に関わる情報通信系エンジニアはこう語る。
・実際、近年の自動運転に関し、自動車メーカーやITプラットホーム企業が繰り出すアジェンダは急進的なものが多かった。
▽フォードやGMが相次いで将来の完全自動運転車発売を宣言
・アメリカのフォードは2016年に、「2021年までにタクシー向けを想定したステアリングレスの完全自動運転車をリリースする」と宣言。するとGMは、ウチは2019年に発売すると応酬。しかもその自動運転車はシボレー「クルーズ」がベース。シティコミュータなどではなく、本格乗用車で出すというのだ。
・限定エリアでなく、公道であればどこでも走行可能なクルマが実現できればとてつもなくすごい話だ。カーシェアを無人でユーザーのところに送り届けたり、トラックを無人で走らせたり、免許を持たない人がクルマで自由に移動することを可能にしたりといった新ビジネスはすべて、自動運転の「レベル5」、すなわち完全な自動運転車が完成しなければ実現しないものだ。
・安全が担保され、しかも低コストなレベル5カーが出てくれば、それはモビリティにおける壮大なパラダイムシフトになるだろう。 しかし、業界ではウーバーの事故の前からフォードやGMが打ち出したビジョンの実現性については懐疑的な見方が少なくなかった。日系メーカーの技術系幹部は欧米企業が次々に楽観的なアジェンダを発表するのを見て、次のように語っていた。 「不確定要素の多い道路上で完全自動運転を実現するには、オンロードでのデータ収集が不可欠なのですが、その状況は刻々変わる。たとえば季節によって街路樹の枝が伸び、葉をつけたりといった風景の変化ひとつ取っても、それが何なのかをAIが自分で知ることができるわけではありません。そして、その変化が思わぬ事態を引き起こす可能性もある。データを教え込み、それをもとにAIが深層学習で応用範囲を広げたとしても、次に待ち受けている何かを察知できないうちは、自動運転車は社会の中でコンフリクトの火種にしかならない」(前出のITエンジニア)
▽自動運転の開発ブームの中で あおりを食った日本企業
・アメリカでは10年ほど前から自動運転が「未来の高付加価値分野になる」という期待が盛り上がっており、それを実現するための「規制緩和こそ正義」という風潮が強まっていた。リスクについては「機械が時に間違いを犯すとしても、人間よりはずっと着実だ。それに異を唱えるのは馬鹿者」といった物言いで封じ込んできた。 多くのメディアもこのムーブメントに乗った。
・AIの深層学習技術が長足の進化を遂げていることを根拠に「完全自動運転はすぐにでも実用化できる」という論説があふれ、それが実現したときの“バラ色の物語”を流した。 こういったトレンドの中で、あおりを食ったのは日本企業である。 日本陣営は自動運転技術に関する特許保有が世界で最も分厚いトヨタ自動車、早い段階から自律走行の実走行データを鋭意収集していた日産自動車、ロボティクス技術や機械と人間のコミュニケーションに関する研究で先んじていたホンダ――と、ことクルマの制御に関しては世界最先端だった。
・日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない。 最近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ。
▽ウーバーのことは「なかったことにしたい」
・日本陣営のなかで自律走行に最も前向きだったのは日産自動車だ。 DeNAと自動運転技術やコネクテッド技術を使った新サービスの開発で提携したりと、基本戦略は今も大きくは変わっていない。だが、日産のBMI(ブレイン・マシン・インターフェース。脳と機械の間でコミュニケーションを取る技術)開発の中核人物のひとりであるルチアン・ギョルゲ氏は「我々はハンドルのないクルマを作るつもりはない」と断言する。
・「クルマをただ人や荷物が運ばれるためのものにはしない。人間の思考は脳波から読み取ることが可能だと思っている。それができれば人の認知から操作までのタイムラグをなくすることができ、クルマはもっと安全でファンなものになる」(ギョルゲ氏))
・機械が100パーセント、自動的に人間の意思や願いを叶えてくれるということはなく、あくまで人間が主役であるべき、また人間には人間の長所があり、機械と人間が調和することでより高い安全、楽しさを実現させられるという思想だ。人が運転者のいない箱にただ運ばれていくという今日の自動運転の考え方に対するアンチテーゼとも言える。
・日産以外の日本メーカーも、基本的には人間と機械の調和を高めていくべきで、理想的な自動運転はその延長線上にあるという考え方をしている。そのほうが安全で、かつパーソナルモビリティならではの価値を提供できると考えているからだ。その知見に一定の理とバリューがあったことを、ウーバーの事故は“最悪の形”で証明した格好だ。
・記者をやっているアメリカの知人によれば、アメリカではウーバーの事故を境に、自動運転の実用化という名目を唱えれば何でもありという風潮に危惧を抱きながら、これまで抑圧されてきた人たちからの異論が“ここぞ”とばかりに噴出し、業界はほとぼりが冷めるのをじっと待っている状況だという。
・「できればウーバーのことは『なかったことにしたい』という気運を強く感じる。ウーバーがルーズだったから事故が起こったので、本来は起こり得なかったことなのだ、と。だが、できるだけ簡単なシステムで最高のパフォーマンスを実現するというウーバーのアプローチは、技術開発の考え方としては全然間違ってはいない。それだけ難しいことをやっているという自覚が、業界全体として欠如していたのが浮き彫りになっただけだ。なかったことにすれば彼らは一安心だろうが、そのうちもっと大きな問題が起きる。自動運転の技術開発自体は止まらないとしてもね」
▽自動運転はどうあるべきか ポリシーを見直すべき
・テストカーとはいえ、死亡事故が起こってしまった今、自動運転はどうあるべきかというポリシーを今一度しっかり見直すべきだ。 まずは技術的な側面。完全自動運転は人間のほうが得意なことまで全部機械任せにするものだが、人間がリスクに気がついてもハンドルやブレーキがなく操作不能というのは、やはりまずい。
・突発的な事態に対処できる物理的な余裕の有無についてはともかく、少なくともリスクの認知の段階で機械が100%、リスクを察知できないうちは、人間と機械が互いに助け合うことでフェイルセーフを図るのが最も安全だろう。 また、自動運転をどういうところから導入するかについても再考が必要だ。トヨタのエンジニアは「まずは高速道路や決められたエリアなど、リスクが限定された環境で導入すべき」と言う。
・前述のように完全自動運転車の実用化について、自動車業界は交通弱者の救済や物流の無人化といった社会的意義を強調しているが、開発に前がかりになっていた最大の動機は技術の囲い込みや新ビジネス創出といったそろばん勘定だ。不可能へのチャレンジは技術進化に欠かせないが、本音と建前が乖離しすぎると往々にしてトラブルが起こる。投資家へのアピールのために無理なアジェンダを提示するのは少し控えたほうがよかろう。
▽自動運転技術はこれで終わったりはしない
・自動運転の“進化のさせ方”についても決着した観がある。 システムが対処できなくなったらアラートを出してドライバーに操作を渡す自動運転レベル3はやはり危ない。ドライバーがとっさに対応できるとは限らないし、システムがリスクを見逃していた日には目も当てられない。少なくとも一定条件下では無条件にシステム側が事故の責任を負う、いわゆるレベル4が自動運転のマストと考えたほうがいいだろう。
・素晴らしい新技術が萌芽的に出てきたとき、社会は当然その技術の進展に期待を寄せる。モノづくりに矜持を抱くメーカーがその期待に応えようとするのは、国によらず本能のようなものである。が、それがいつの間にか投資家におもねることにすり替わってしまい、無茶なアジェンダの提示合戦を繰り広げてしまうパターンに陥るとまずい。
・数年前の欧州におけるディーゼルの排出ガス不正もそうだったが、正義を振りかざしながら“無理筋”を通そうとしているときに限って、何らかの問題をワンパンチ食らっただけで腰砕けになってしまうものだ。ウーバーの事故でいきなり自動運転関連企業が静かになってしまったのもその類である。
・しかし、自動運転技術はこれで終わったりはしない。 ニーズは確実にあるし、場合によってはまったく新しい交通の景色を見せてくれるようになるかもしれない。そういう技術の開発であるからこそ、プレーヤーは広げた“風呂敷”が実情に沿ったものか、それとも“虚栄心”が勝っているかどうかを常に自省し、本筋を踏み外さないようにする理性を大事にすべきだ。
http://diamond.jp/articles/-/166660

第一の記事で、 『自動運転モードとはいえ、当然ながら試験車には同乗者がありました。しかし、危機回避の適切な行動は取られなかった・・・今回のウーバー事故は、報道される状況証拠から、自動運転車が全く歩行者やリスクを感知しないまま自動的に進行したものと思われます。何も考えずに猪突猛進すれば、前方の物体に衝突するのが当然で、事故は必然的に起きたと言うしかありません』、どう考えてもお粗末過ぎる事故だ。 『テスラの自動運転車事故も、今回のウーバー事故もそうですが、商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている』、というのはさもありなんだ。 『自動運転中とはいえ、その車に乗っていた運転しない運転者、手動モードに切り替えたなら、自分でハンドルを操作して危険を回避できた可能性のある人には、どのような責任がかかるのでしょうか?』、無論、運転者にも責任はあるが、自動運転ということで、気が緩んでしまいがちになるのは、人間の性ともいえる。 『AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います』、日本としては堅実な欧州スタイルでいくべきだろう。
第二の記事で、 『今回の事故を、自動車業界が『今後何をやっていけばいいのか』ということを、頭を冷やして考えるきっかけにしなければ、犠牲が報われない」』、というのは正論だ。 『日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない。 最近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ』、というのいで、必ずしも日本メーカーが立ち遅れている訳ではないことを知って、一安心した。 『システムが対処できなくなったらアラートを出してドライバーに操作を渡す自動運転レベル3はやはり危ない。ドライバーがとっさに対応できるとは限らないし、システムがリスクを見逃していた日には目も当てられない。少なくとも一定条件下では無条件にシステム側が事故の責任を負う、いわゆるレベル4が自動運転のマストと考えたほうがいいだろう』、 『モノづくりに矜持を抱くメーカーがその期待に応えようとするのは、国によらず本能のようなものである。が、それがいつの間にか投資家におもねることにすり替わってしまい、無茶なアジェンダの提示合戦を繰り広げてしまうパターンに陥るとまずい』、などは説得力がある。
タグ:自動運転 ダイヤモンド・オンライン ウーバー 伊東 乾 井元康一郎 BPress (その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ) 「これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国、VWの不正に懲りて法整備を進める欧州」 自動運転実験で事故が発生し、犠牲者が出たのです テスラの自動運転車事故 商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている 危険回避センサー技術という観点では、いまだモノレール程度の自動運転と大差ない代物を、広い国土を利用してあちこちの公道で走らせ始めているわけです EUでは「ロボット法人格」を認める法制度整備が急速に進んでいます AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います 「ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転、業界は足元を見つめ直せ」 日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない 近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ
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電気自動車(EV)(その4)(テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態、窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?、ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る) [科学技術]

電気自動車(EV)については、1月17日に取上げたが、今日は、(その4)(テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態、窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?、ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る)である。

先ずは、2月10日付け東洋経済オンライン「テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態 ロケットのようにうまく軌道に乗らない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界最大の輸送能力を持つ大型ロケットが現地時間の2月6日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから発射された。 成功させたのは、イーロン・マスク氏が設立した宇宙輸送関連会社スペースXだ。ロケットの先端にはマスク氏がやはりCEOを務めるテスラのEV(電気自動車)「ロードスター」が乗せられ、火星の軌道に投入された。現在は同車に搭載されたカメラがとらえた宇宙の様子がネットに配信され、大きな話題になっている。 一方、なかなか軌道に乗らないのは、マスク氏の本業、EV生産だ。
▽2017年度は約2150億円の赤字
・翌7日に発表されたテスラの2017年度通期決算は、最終損益がマイナス19億6140万ドル(約2150億円、前年同期比で約13億ドルの悪化)と、過去最大の赤字となった。高級車の「モデルS」や「モデルX」は好調だったが、昨年7月からスタートしたEV「モデル3」の量産立ち上げに今なお苦戦し、先行投資がかさんでいる。
・モデル3はテスラ初の量産型EVで価格は3.5万ドルから。2017年7月に出荷を始めたが、納入台数は7~9月期がわずか260台、10~12月も1500台にとどまった。週5000台の生産目標は、当初2017年末までに達成する計画だったが、今年6月末までに延期された。延期は今回で2度目になる。
・ボトルネックは大きく2つある。電池パックと車体の組み立て工程だ。 モデル3の電池生産は2017年1月、米ネバダ州に開所した世界最大の電池工場、ギガファクトリーで行われている。作られているのは、パナソニック製の円筒型リチウムイオン電池「2170」だ。パナソニックが作った電池のセルを、テスラがモジュール化(組み立て)する。
・この組み立ては、ロボットを活用した完全自動化ラインで行う予定。しかしこの4つの工程のうち2つの立ち上げを委託していた業者が機能せず、結局テスラ自らが行うことになった。 そのため、当面は手作業での組み立てを余儀なくされた。これには自信家のマスク氏も「われわれがいささか自信過剰になりすぎていた」と肩を落とす。車体組み立ての行程においても、同じく部品の自動組み立てのスピードが上がらない。
・そこでテスラは、2016年に買収したドイツの自動生産設備大手グローマンのチームを動員して、自動化工程に人を配置する半自動化ラインを導入。完全自動化が可能になるまでの「つなぎ」として活用することにした。 決算発表の当日に行われた電話会見でマスク氏は、「モデル3の苦戦はあくまで時間の問題。全体計画の中で現在の誤差は極めて些末なことだ」と強気の姿勢を崩さなかった。だが一方で、自ら「生産地獄」と表現する現状について、「こんな経験は二度としたくない。(11月の)感謝祭の日ですら、ほかのテスラ社員と一緒にギガファクトリーにいた。週7日、みんながバケーションを楽しんでいるときもだ」とも漏らした。
▽パナソニックに「テスラリスク」
・モデル3を巡る想定外の苦戦は、テスラに電池を独占供給するパナソニックにも影を落とす。5日に発表した2017年4~12月期(第3四半期)決算において、同社はこの生産遅延の影響で売上高で約900億円、営業損益で約240億円のマイナス影響を受けたと公表した。この結果、2次電池事業は54億円の営業赤字に沈んでいる。
・業績全体は増収増益で通期計画を上方修正しており、いたって好調。だが、成長事業と位置づける自動車電池事業の最大顧客はテスラだ。その先行きには一抹の不安がよぎる。2017年12月には、トヨタ自動車からの呼びかけで車載電池事業における協業検討を発表したが、それが結果的に「テスラリスク」をやわらげることとなった。
・パナソニックの津賀一宏社長は、1月上旬にラスベガスで開かれた家電見本市への参加後にギガファクトリーを訪問し、「現状を見てテスラ社との打ち合わせをする」と語った。打ち合わせの結果、どのような方針で合意したのかが気になるところだ。
・最終赤字が続く中で、テスラの財務リスクは膨らんでいる。2017年度のフリーキャッシュフロー(企業活動から生み出される余剰資金)は約34億ドルの赤字と、前年の倍以上に拡大。自己資本比率も15%を下回る。  これまでは新モデルの購入予約金と、増資と社債といった市場からの資金調達により「錬金術」のごとく資金を生み出してきたテスラ。期末時点の保有現金も、約33億ドルと前期からほとんど変わっていない。さらに1月末には、モデルXとSのリース債権を流動化し、5億4600万ドルを調達したことを発表した。
▽ツイッターはロケットの話題一色
・ただ同社は、今後もモデル3のための設備投資を拡大する必要がある。さらに今回、現在市場が盛り上がるSUV(スポーツ用多目的車)型の「モデルY」を投入するために、2018年末までに新たな投資を行うことも発表している。その程度によっては、資金繰りが苦しくなる可能性もある。決算発表翌日の株価は、市場が全面安だったこともあるが、2割減と大きく値を下げた。
・マスク氏は、モデル3の週次生産5000台実現を前提に、2018年度中の営業黒字化を宣言する。ただ、市場関係者の中には「生産台数はその半分程度になるのでは」という見方もある。 テスラは長期計画を掲げたうえで、そこから逆算して具体的な計画を立てる。モデル3の量産は、マスク氏が2006年に描いたマスタープランの最終ステップになる。だが、同氏がいうところの「誤差」に消費者や投資家、そしてサプライヤーがどこまで付き合えるかは別の問題だ。
・生産設備の不具合が露呈した10月頃には、ギガファクトリーの立ち上げで工場に泊まり込んだ様子などをツイッターで投稿していたマスク氏。だが、現在の同氏のツイッターはロケットの話題一色。足元における量産化への進捗は、うかがい知ることができない。
http://toyokeizai.net/articles/-/201504

次に、本田技術出身で名古屋大学客員教授/エスペック上席顧問の佐藤 登氏が2月8日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?」を紹介しよう(▽は小見出し、+は①、②などの中での段落)。
・昨年後半から、米テスラの「モデル3」が生産地獄に陥っている状態、すなわち当初の量産計画通りの生産台数には全く届かず四苦八苦している状態が報道されてきた。その中には、自動車業界の競争意識、電池業界のビジネス戦略、そして大きな投資を要求されてきた部材メーカーの悲喜こもごもが盛り込まれている。
・遡れば2017年6月に、テスラは中国の上海市に電気自動車(EV)の生産工場を建設する方向であることを報じた。その場合の条件としては現地企業との合弁が前提とされていたが、果たして順調に進んでいるのか。現在の米国における状況を考慮すれば現実性があまり感じられない。
・CEOのイーロン・マスク氏は、電動車、とりわけEVの最大市場となる中国で巨大工場を建設すると述べていた。2018年の生産キャパは中国巨大工場の稼働分も含め 全世界で年産台数50万台の計画を掲げた。現在の生産台数との乖離が大きいだけでなく、そもそもこのような大量のEVを本当に量産できるのか、根本的な問題があるのではないだろうか。
・テスラは17年3月に中国ネット大手のテンセントから5%の出資を受けている。そして、同年4月にマスク氏が訪中した際には汪洋副首相と会談したとされている。もともとテスラは14年に中国市場に参入した。その後の16年には15年の3倍以上の売上高を記録した。米国からの輸出のため、関税と輸送費が課せられる格好であったが一大ブームを巻き起こしたことになる。だが、一定数が市場に出回った後には飽和感が漂い、頭打ちになったことも記憶に新しい。
・そのような中で、米国からの輸出よりも中国での現地生産に踏み切れば相応のメリットが出ると言う試算は正しい。だが、そこには想定外の誤算があったようだ。それは、35万台のバックオーダーを抱えていると言いながらも、それに見合った量産技術と生産体制の整備が進んでいないままでの生産をしているような実態だ。すなわち、本格的な生産技術が伴っていないという欠陥である。
・米国ネバダ工場だけでの量産台数としては週5000台ペースの生産を計画してスタートしたのだが、生産地獄に至ったことで17年7月に発売開始した直後には、その生産計画を17年末までと一旦延期した。さらに1月に入ると達成時期を18年4~6月期までと2度目の延期をアナウンスした。
▽テスラが陥っている罠
・2017年の第3四半期こそ売上高は前年同期比で8%増加したと言うが、1~9月間の営業損失は売上高の11.5%に達したとのこと。象徴するように、17年12月上旬の日本経済新聞の夕刊には、「テスラ暗雲、冷める投資家」というタイトルの記事が掲載された。 それによれば、17年7月に出荷を開始した量産型EV「モデル3」の生産が計画を大幅に下回っていることが株価に大きく影響したという。17年7月から9月期までの「モデル3」の生産台数は当初計画であった1300台の2割に留まり、260台しか生産できなかったとのこと。しかも納車先は社員または会社関係者にのみだったという。
・17年9月18日に上場来最高値の389ドルを付けた株価は、そういう状況が影響して後に下降を続け、12月8日には最高値から20%を下げた。「モデル3」発表と同時にバックオーダーが35万台に達したと話題になったテスラだが、明らかに量産体制の脆弱さが露呈している。17年10月から販売が開始された日産の新型EV「リーフ」が現在抱える1万6千台、そして仏ルノーのEV「ZOE」が抱える3万台規模(ルノーの知人談)に比べれば、テスラへの期待感がいかに大きかったかは想像に難くない。
・先の日経新聞によれば、テスラの財務は火の車とのこと。時価総額で米ゼネラルモーターズ(GM)やフォード・モーターを超えたと話題になったものの、実態とは大きな乖離があるようだ。17年7月から9月まで1年間のキャッシュフローは約5500億円の赤字、しかも16年12月通期の3倍にまで膨らんだというから火の車と言う比喩が妥当だ。
・決算における巨額の赤字体質に対する補填と設備投資に対する資金は、増資と社債でやりくりしている模様である。17年9月時点での手元資金は4000億円規模であるようだが、一方、負債額は1兆1000億円程度を抱えていると見られている。返済に追われる現状での打開策は、そう簡単ではないように映る。
・現在抱えているバックオーダーは、いつになったら全車納車になり得るのか、現状を踏まえると数年はかかる計算になる。一方、本年から米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規制が急激に強化され、19年からは中国の新エネルギー自動車(NEV)規制が待ち構える。そして21年からは欧州におけるCO2規制が発効することで、世界の自動車各社は否が応でも電動化シフトを実行しなければならない。
▽日米欧の電動化戦略
・これを議論すると、ますますテスラは窮地に追い込まれると筆者は予測するが、同じ意見を有す読者の方々も少なくないのではと察したい。 先週の1月29日から2月1日までの4日間、ドイツ・マインツで自動車の電動化と車載用電池に関する国際会議「AABC(Advanced Automotive Battery Conference) Europe 2017」が開催され、筆者も参加した。予想はしていたというものの驚いたことはまず、昨年の700人規模の参加者が一気に1000人を超えたこと。欧州で開催された本会議の参加者急増加が、欧州自動車業界を始めとする電動化シフトが現実的なものとなってきたことの証しでもある。
・これまでも欧州勢、特にドイツ勢のダイムラー、BMW、そしてフォルクスワーゲン(VW)が数兆円規模の投資を図り電動化へのかじ取りを行っていることは報道されてきたが、その気迫を実感できる良い機会であった。そこにはドイツ勢のみならず、ルノーの電動化に対する積極的な戦略も発信され、まさに欧州で進んでいるEVシフトは言葉だけではない実態が伴う本格的なムーブメントである。
①欧州勢の電動化へのかじ取り
+2015年に発覚したVWのディーゼル燃費スキャンダルが引き金となり、加えてドイツのメルケル首相が発信した将来的なディーゼル車の排除が重なり、ドイツの自動車各社はリベンジの意味も込めつつ電動化には極めて積極的である。リップサービスで建前論的と、周囲には疑問視する意見もあるようだが、現在の各社の取り組み姿勢を考えれば、決して一時凌ぎの発言とは思えない。 ドイツ勢各社による開発投資計画、車種数の具体的発信、日本人エキスパートの積極的人材活用、電池各社に対する求心力の増大――これを裏付ける事例は山ほどある。
+ドイツ勢もフランス勢も昨今、車載電池に対する考え方を大幅に変えてきた。従来、電池は調達部品の1つとしてしか考えていなかった各社は、電池パックシステムをボッシュのようなTier1に委ねる戦略を推進してきたが、それでは競争力や差別化を図れないと漸く気付いた。電池セル単体は調達戦略のもとで受け入れるが、それ以降のモジュール化から制御システムまで包含した電池パックシステムを自社内での自前化にシフトさせている戦略に方向転換した。
+更なる裏付けの1つは、韓国トップ3の欧州拠点構築の動きだ。ポーランドでいち早くリチウムイオン電池(LIB)の生産拠点を構えた韓国LG化学は、第一次の400億円規模投資を終え2017年後半から生産を開始した。今後、さらなる第二次投資計画を進めようとしている。サムスンSDIはハンガリーに400億円規模の投資にてLIB生産拠点を作り、本年中の稼働を目標にしている。
+そして韓国の第3勢力であるSKイノベーションはハンガリーに、850億円を投資し生産拠点を構え、2020年の稼働を目指すと言う。韓国のトップ3の電池メーカーが欧州に拠点を構え、しかも巨額投資を行うという同じベクトル化にあるということをどう考えるべきか。 筆者がサムスンSDIに在籍していた経験から類推するに、マーケティング活動が日本勢より数倍積極的な韓国勢が、当てもなく巨額投資するはずはない。それには電池各社の十分な算段があるはずで、供給契約と言わずとも、それなりの可能性にかけている節がある。
②米国勢の電動化へのかじ取り
+GMもフォードも、ZEV規制、そして中国市場での展開もしたたかな戦略を進めている。欧州勢ほど大々的なEVシフトをしてこなかったのは、欧州勢がディーゼルスキャンダルの解決策で大々的に発信したスタンスとは異なり、じっくり練った戦略を打ち出しているためである。テスラのEV事業とは一線を画し、むしろ自動車の歴史を牽引してきた米国トップ企業の余裕すら感じる。両社にとって、テスラは気にはなるが大きな脅威とは感じていないようだ。
③日本勢の電動化へのかじ取り
+日本勢はまた特有の戦略を有している。特にトヨタとホンダには強力なハイブリッド車(HEV)があるからだ。日本ではもちろん、最近では欧州でも、そして中国でもHEVの販売が伸びていることが象徴している。  ZEV規制、NEV規制においてHEVはクレジットにカウントされるカテゴリーから排除されている。しかし、そのHEVが日本ではもちろん、欧州、そして中国で販売を拡大している事実は何であろうか?
+取りも直さず、消費者にとってHEVが魅力ある製品であることに違いはないからである。ZEV規制もNEV規制でも、トヨタとホンダのみが勝ち組であるHEVであるからこそ、各規制でのHEV排除が行われたこと。一方では、HEVが燃料節減や充電器設備投資が不要なる商品であることから使い勝手の良い電動車として認知を得ていることに他ならない。そういう日本のトップ2でも、いざEVの商品化を実現する段階では、トヨタもホンダもEVは個社のプライドをかけて発信して来るはずだ。
▽テスラの行方は?
・以上のように、量産技術を得意とする日米欧の自動車各社の姿勢は、現在テスラが抱える病とは無縁な状況下にある。 前述した世界のトップブランドメーカーがEVシフトに立ち向かうことで、テスラの行方にも大きな影響を及ぼすことは間違いないだろう。今回のAABC国際会議に参加していた日本人、部材メーカー、電池メーカー、調査会社、コンサル会社の知人達と筆者を含む8人は、会食会の場で今後のテスラの行方を占った。
・そもそも大量生産をしたことがないテスラが、一気に50万台規模の量産を具現化するのは困難で、数年の時間はかかるはず。「モデルS」のような尖った高級路線での存在感はそれなりにあるが、「モデル3」のような普及車カテゴリーでは、真っ向から世界の名だたる自動車各社のEVと直接比較される。そこではテスラの選択肢や存在感は大きなものではなく、むしろトップブランドのEVの方が安全性や信頼性で消費者の関心を惹くだろうと。
・そして、現在の生産地獄が長引けば長引くほどキャッシュフローの改善は見込めず、経営はもっと窮地に陥るはず。シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ。生産地獄から逃れる短絡的な解決方法の手段のひとつのような気がする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/246040/020600068/?P=1

第三に、ジャーナリストの桃田健史氏が2月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿しら「ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽7年ぶりに再びEVバブル到来 再度注目が集まるAABC
・EVシフトについて、ブームの仕掛け人であるジャーマン3(ダイムラー・BMW・フォルクスワーゲングループ〈以下VW〉)の関係者すら「EV本格普及についてはいまだに不透明」という見解を示したことに、日本人関係者の多くが驚いた。 EV用の車載電池の国際カンファレンス、AABCヨーロッパ(2017年1月29日~2月1日、 於・独マインツ)での出来事だ。
・AABCとは、アドバンスド・オートモービル・バッテリー・カンファレンスの略称で、自動車メーカー、自動車部品メーカー、化学メーカー、コンサルティング企業、そして学術関係者など、自動車に搭載する次世代電池に関する研究や市場調査について発表を行う場だ。AABCはもともとアメリカで始まり、欧州やアジアでも開催されており、この分野の世界の最新情報が収集できる場として、産業界で高い評価を得ている。
・筆者は2000年代中盤から世界各地で開催されるAABCを定常的に取材しており、2010年前後の第四次EVブームの際、AABC自体の参加者数もスポンサー数も急増するという「EVバブル」を実体験した。 そんなAABCに再び、脚光が当たっている。 背景にあるのは、VWがディーゼル不正によって世間から食らったネガティブな企業イメージから、V字回復を狙って策定した新規事業計画から派生した、世界各地での「EVシフト」というトレンドである。
▽欧州委員会の新発表あるも…欧州でのEV普及はいまだに不透明
・欧州のEVシフトの構図について筆者の見立ては、VWが仕掛けて、そこにダイムラーがすぐに相乗りし、その流れをBMWが追い、独自動車部品大手のボッシュとコンチネンタルがサイドサポートに回った、というもの。 そうした独企業のマーケティング戦略とほぼ同時に、英国とフランス両国の国内政治の案件として、環境問題の観点から自動車に焦点が当たり、「2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売禁止を目指す」といった「目標値」を公表した。
・さらに、インドでも「2030年までに国内販売車のすべてをEVとする」との野心的な草案が公表された。本件についてはその後、政権内での意見の相違から事態は変化している。詳細については2月中にインド国内での取材を進め、本連載でも情報公開する予定だ。
・こうした、2016~2017年中盤までのEVシフトの流れに、新たなる動きが加わった。EC(欧州委員会)が2017年11月8日、域内で販売される車両に対するCO2規制値を、2030年に2021年比で30%減とする案を示したのだ。
・自動車メーカー各社の技術開発者は、これまで「世界で最も厳しい排気ガス規制は欧州だ」と口を揃えてきた。具体的には、2021年までにCO2レベルが1kmあたり95gだ。これをクリアするためには、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車など、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンにモーターを加えた電動化が必然だと考えられている。ただし、モーターのみで走行するEVについては「EVがなくても、95g規制は乗り切れる」と見る自動車メーカーがほとんどだった。
・それが今回、2030年までに2021年比の30%減という数字がECから出てきたため、「EVの強化の可能性も考慮するべきか?」という空気に変わってきている。 繰り返すが、あくまでも「考慮するべきか?」という段階だ。 なぜならば、ECは今のところ、中国のNEV法(新エネルギー車規制法)や米カリフォルニア州のZEV法(ゼロエミッション車規制法)のように、事実上のEV販売台数規制を考えてはいないからだ。
▽当面の主戦場は中国市場 政策主導で動き、消費者は不在
・そのため、今回のAABCヨーロッパでも、話題がEVに限定されると「中国ありき」という議論になった。 台湾の工業技術研究院の発表によると、2017年の中国EV販売総数は、前年比53.5%増の77万7338台となった。これは2017年の世界EV市場140万台の半数以上を占める。また、2018年には中国EV販売総数は100万台に達する可能性が高く、さらに中国政府は2020年に500万台を目標として掲げている。
・NEV法では、2019年に市場のうち10%、2020年には12%との規制値を設けており、NEVが起爆剤となってEV販売台数における「中国ひとり勝ち」がほぼ確定している状況だ。 もう一方のEV販売台数規制であるZEV法については、ホンダのアメリカ法人の発表にあったように、トランプ政権になってからEVを含む次世代車の普及について、連邦政府とカリフォルニア州が今後どのように擦りあわせをしていくのか「不透明な情勢」である。
・このように、EVについては、政策主導型での普及がいまだに“主役”であり、そこに自動車メーカーが「様子を見ながら、お付き合いする」といった格好だ。 つまり、「消費者不在」の状況が続く。 AABCヨーロッパでの4日間にわたる発表と議論、そしてアメリカ、ドイツ、フランス、ベルギー、スウェーデン、フィンランド、日本、インド、中国、韓国、台湾などからの参加者たちと個別に意見交換する中で、筆者は一抹の不安を感じた。  もし、中国がNEV法実施に失敗したら、再び世界EVバブルは崩壊するのかもしれない。 中国は2010年前後に実施した、公共交通機関を主体とした壮大なEV施策「十城千両」も、当初の普及台数目標に未達の地方都市が続出したことなどを理由に、なんの前触れもなく打ち切った過去がある。
・ジャーマン3が提唱するEVシフト。その動向、日本としてはしっかりと見守っていかなかればならない。
http://diamond.jp/articles/-/159754

第一の記事で、 マスク氏が、『自ら「生産地獄」と表現する現状について、「こんな経験は二度としたくない。(11月の)感謝祭の日ですら、ほかのテスラ社員と一緒にギガファクトリーにいた。週7日、みんながバケーションを楽しんでいるときもだ」とも漏らした』、というのは、いくらマスク氏といえども、量産の世界は思う通りにはいかないようだ。
第二の記事で、 『納車先は社員または会社関係者にのみだったという』、というのは、まだ品質に自信がないためなのかも知れない。  『そもそも大量生産をしたことがないテスラが、一気に50万台規模の量産を具現化するのは困難で、数年の時間はかかるはず』、と量産の壁は予想以上に高いようだ。 『シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ。生産地獄から逃れる短絡的な解決方法の手段のひとつのような気がする』、とのアドバイスは、いざ売ろうとしたら、GMの時価総額を超えたことなど吹き飛んで、厳しく買い叩かれることになるので、そう簡単ではなさそうだ。
第三の記事で、 『当面の主戦場は中国市場 政策主導で動き、消費者は不在』、しかし、 『中国は2010年前後に実施した、公共交通機関を主体とした壮大なEV施策「十城千両」も、当初の普及台数目標に未達の地方都市が続出したことなどを理由に、なんの前触れもなく打ち切った過去がある』、というのでは、 『自動車メーカーが「様子を見ながら、お付き合いする」といった格好』、なのも無理からぬところだ。
タグ:東洋経済オンライン 電気自動車 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 桃田健史 モデル3 佐藤 登 (EV) (その4)(テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態、窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?、ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る) 「テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態 ロケットのようにうまく軌道に乗らない」 量産立ち上げに今なお苦戦 自ら「生産地獄」と表現する現状について、「こんな経験は二度としたくない。(11月の)感謝祭の日ですら、ほかのテスラ社員と一緒にギガファクトリーにいた。週7日、みんながバケーションを楽しんでいるときもだ」とも漏らした パナソニックに「テスラリスク」 「窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?」 テンセントから5%の出資 本格的な生産技術が伴っていないという欠陥 納車先は社員または会社関係者にのみだったという テスラの財務は火の車 ますますテスラは窮地に追い込まれると筆者は予測 現在の生産地獄が長引けば長引くほどキャッシュフローの改善は見込めず、経営はもっと窮地に陥るはず シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ 「ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る」 欧州委員会の新発表あるも…欧州でのEV普及はいまだに不透明 当面の主戦場は中国市場 政策主導で動き、消費者は不在 中国は2010年前後に実施した、公共交通機関を主体とした壮大なEV施策「十城千両」も、当初の普及台数目標に未達の地方都市が続出したことなどを理由に、なんの前触れもなく打ち切った過去がある
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人工知能(AI)(その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない) [科学技術]

人工知能(AI)については、昨年7月1日に取上げた。今日は、(その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない)である。

先ずは、ニッセイ基礎研究所 専務理事の櫨 浩一氏が昨年11月29日付け東洋経済オンラインに寄稿した「AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か」を紹介しゆ(▽は小見出し)。
・日本経済は人手不足の様相を強めている。失業率は2017年9月には2.8%に低下し、特に有効求人倍率は1.52倍と、バブル期のピークだった1990年7月の1.46倍をも超える高さだ。団塊世代が65歳を超えた2012〜2014年以降も、毎年150万人を超える人が65歳を迎えて年金生活に入っていくのに対して、15歳を迎える人口は120万人に満たず、毎年30万人以上ずつ生産年齢人口が減少していく。今後も高齢化による労働力の減少が続き、高齢者や女性の労働参加を考慮しても、しばらくの間は労働需給がさらにひっ迫するだろう。
・しかしもっと先を考えると、AI(人工知能)の進歩で機械が人間の行ってきた仕事を担うようになるという動きが加速し、人間の仕事はなくなっていき、世界的に労働力過剰という事態が出現する可能性がある。 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか~労働力余剰と人類の富』(東洋経済新報社、2017)で、著者のライアン・エイヴェントは、コンピュータは蒸気機関や電気と同様の汎用技術でとてつもない力を持ったものであることや、デジタル革命は人類に多大な恩恵をもたらすので後戻りできない流れであることを指摘し、社会が直面する課題を論じている。以下ではこの議論を参考に影響を考えてみたい。
▽AIの発達で拡大していく格差
・AIが発達していけば、最終的には人間がまったく働かなくても社会全体としては有り余るほど豊富な生産物が供給できるというSF小説に出てくるような世界が実現する可能性がある。 どんなものでも価格は需給で決まるというのが経済学の「キホンのき」であり、空気のように必要不可欠であっても希少性のないものの価格はゼロか極めて低価格だ。英国の経済学者ライオネル・ロビンズは、経済学を希少資源の最適な使用についての学問だと定義したが、誰もが欲しいものを欲しいだけ入手できるようになる世界では経済学は無用になるのだろう。
・しかし、MIT教授の物理学者であるテグマークの "Life 3.0: Being Human in the Age of Artificial Intelligence"(Max Tegmark, Knopf Doubleday Publishing Group, 2017)によれば、そもそもこの夢のような状況が実現可能かどうかや、それまでにどれくらいの時間がかかるのかについては、専門家の間でもコンセンサスはないという。
・少なくとも短期間で実現するとは考えにくく、まだ何十年かの間は、生活を支えるすべてのものは、価格が低下していくものの有料である。必要なものを手に入れるためには、人々は何とかして所得を得る必要があるという状態が続くとの前提で将来を考えるのが無難だ。ところが、AIが発達していくことで機械に仕事を奪われ、所得が得られなくなる人が多数生まれてしまうおそれがある。
・デジタル革命は、社会に非常に大きな利益をもたらすが、プラスの面ばかりではない。 たとえば、シェアリング・エコノミーの拡大によって、多くの人がフリーランスとして、あちこちから単発の仕事を請け負って生計を立てるという選択肢を持つようになったことだ。 会社に所属して規則に縛られて働かなくても、自分が働きたいときだけ働くということが可能になったが、その反面、米国ではこれまでのフルタイムの仕事では、普通の生活をするために十分な仕事量と収入が得られないケースが増えてきている。
・Uberの登場でお客を奪われたタクシー運転手の所得は大きく下がったはずだ。所得の減少を補うためにやむを得ず副業に従事する人が増えており、必ずしも積極的にフリーランスの仕事を選んでいるわけではない。そもそも遠からず自動運転の技術は確立すると見られており、Uberで運転手として自分の都合に合わせて働いて収入を得ている多くの人も、仕事と収入の道を失うことになるだろう。
▽「高等教育で高所得が得られる」は楽観的すぎる
・18世紀半ばに産業革命が起こったときには、織物の職人などが仕事を失ったが、こうした人たちは数のうえでは全体からみればごく一部に過ぎず、農業を離れて工場で機械を操作する職を得て所得が高まった人のほうがはるかに多かった。生産物の供給が増えて価格が低下し、多くの人が購入できるようになったこともあって、社会の平均的な生活水準は大きく高まった。
・近年では、製造業で自動化が進むことで中程度のスキルの仕事が消えたため、職を失って低所得のサービス業の仕事しか見つからない人が増えた。一方で、ITを活用できる人たちの生産性は大きく上昇した。コンピューターや専門・技術的職業を持つ人たちの収入が上昇して所得格差が拡大しているため、高等教育への進学率を高めることが問題の解決策として提言されることが多い。
・しかし、米国では既に大学卒の給与水準は頭打ちとなっていて、高い賃金が得られるのはさらに高度な教育を受けた大学院卒で、修士号や博士号を持つ人たちに限られている。日本では高等教育機関(大学以上)への進学率は50%を超えているが、必ずしもそれに相応しい能力を身に付けていないということが問題とされることがある。誰でも一定の努力をすれば、高度な知識・能力を活用できるようになり、高い所得が得られると考えるのは楽観的に過ぎるのではないか。
・AIが進化して行けば、現在はAIで代替することは難しいとされている仕事に就いている人たちも安泰ではなくなる。少し昔にはコンピューターが囲碁で人間に勝つようになるのはまだ先のことだと考えられていたが、今や世界最強といわれる棋士でもコンピュータにはまったく歯が立たない。人間が必要な分野はどんどん縮小していくだろう。
・AIによる自動化が図られるのは、それが容易な分野だけでなく経済的な利益が大きい分野も、である。企業にとっては、高賃金の仕事ほど機械で置き換えるメリットが大きい。低賃金で機械化の利益が小さいところや、雑多な作業で対応が難しいものが人間が行う仕事として残され、生活を支えるために多くの人がこうした仕事を得ようとして争うことになる恐れが大きい。
▽ベーシックインカムは解決策にならない
・デジタルエコノミーの拡大で生まれる失業者を救済するために、「すべての国民に、生活に必要な最低限の所得を給付する」というベーシックインカムの制度を設けるべきだという人もいある。これについて、エイヴェントは最低賃金の引き上げよりは有望だとしている。しかし、職を失っても生活が保障されるという意味では朗報だが、あくまで最低限度のセイフティーネットに過ぎない。一部の人が現在は想像できないような豊かさを享受する一方で、多くの人の生活水準は大幅に低下してしまうという著しい格差が生まれることを防ぐことはできないのである。
・AIを活用した研究開発が一部の人たちの生活水準を高めることに集中すれば、一部の人だけが豊かになり、多くの人たちの生活水準は大して向上しないということも起こるだろう。老化や癌などを克服するための研究にAIやさまざまな資源を集中的に投じれば、人間の寿命を大きくを延ばすことができ、今の時点では信じられないほど長寿となる可能性もある。
・しかし、こうして開発された先進的な医療技術は著しく高額で、ベーシックインカムに依存して生活する多くの人たちはまったく手が届かないに違いない。例えば、現在免疫細胞を遺伝的に加工して癌に対する攻撃力を高めるという治療方法は驚異的な治療成績を収めているが、1回の治療に5000万円以上もかかると日経新聞は報じている(日本経済新聞夕刊、11月14日付)。
・そもそも資源・エネルギーの制約があるので、誰でも欲しいものが何でも欲しいだけタダで手に入るという世界は永久に実現しないのかも知れない。ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房、2014)が警鐘を鳴らしたように、AIやこれを使った生産設備を保有している人たちとそれ以外の人たちという資産格差が、所得や寿命などの格差を拡大再生産していってしまうおそれもある。
・長期停滞の背景には富の一極集中があるとエイヴェントは指摘する。確かに、20世紀半ばに工業化が進む中で格差が縮小したのは、経済的な必然の結果ではなくソ連などの計画経済国家という脅威の存在や、大恐慌の影響でさまざまな制度の変革が行われたことも大きな要因だったと考えられる。
▽「神の見えざる手」に任せておけば?
・AIが人間の能力を超えていけば、生産を行うためにはどうしても人間が必要だという前提が崩れ、労働者は生産性(厳密には限界生産性)に等しい賃金を得るとか、生産の中から労働者が受け取る割合である労働分配率はほぼ一定であるとかいう世界ではなくなってしまうはずだ。「正統派経済学の終焉」という主張が、現実のものとなるかも知れない。
・ノースウエスタン大のゴードン教授など技術進歩の速度低下を指摘する声は多いが、むしろ社会変化の速度は速くなっているように見える。親の経験は子供たちが将来を考えるにはまったく役に立たず、制度や人々の生活スタイルや考え方、行動が社会変化について行けないほどだ。
・テグマークの言うように、AIの発展を未来の社会にとって良いものにするためには、これをどう受け止めるのかという議論が必要だ。デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/199055

次に、昨年12月25日付け日経ビジネスオンライン「静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「うちのシステムにAI(人工知能)という言い方は使っていません。書き方に気をつけてくださいね」 記者は最近、感情の分析、翻訳、セキュリティーなどの課題に挑むAIに関して取材に当たっていた。その際時折、このような注意を広報担当者から受けたのだ。
・過去にはAIの研究者が冷遇される時代があり、自身ではAIを研究しているつもりでも、研究費を得るために「ロボット」などに看板を架け替えていたことがあった。しかし、空前のAIブームに沸く現在において、同じ現象が起き始めているのだ。
▽バズワードになったAIと深層学習
・その理由のひとつは、AIという言葉が、意味が不明瞭のまま使われる「バズワード」と化し、猫も杓子もなんにでも使われていることへの反感ではなかろうかと思う。自省をこめていえば、これは我々報道機関に責任がある。
・AIの定義は学術的にはっきりとは決まっていないそうだ。手元にある辞書の説明では、ヒトの知的機能を代行できるシステムを指す。では、たとえば1人プレイモードがある将棋や麻雀のゲームアプリはAIだろうか。これはAIでないという意見を持つ人でも、米グーグル持ち株会社、アルファベット傘下の英ディープマインドが手掛ける「アルファ碁」ならAIと呼ぶことに違和感がないかもしれない。両者の大きな違いは、システムが賢くなるための学習機能を備えているかどうかだ。あるいは、アルファ碁ですらAIではなく、すべての機能においてヒトと変わらない能力を持って初めてAIと呼ぶにふさわしいと思う人もいるかもしれない。
・最近の報道はこんな定義を気にもせず、AIと一口に書くだけでその技術的背景や企業間の違いも詳述しない。AIという見出しだけが躍る。そんな報道ばかりでは、開発側も嫌気が差すのではなかろうか。グーグルがAIのフレームワークを公開していることで、簡単なAIならだれもかれもつくれる時代だ。ただただAIと表現されるだけでは、製品の特徴が分からず陳腐にさえ見えることもある。
・そして、推測しうるもうひとつの理由が、「ディープラーニング(深層学習)」への反感。正確に言えば、同じくバズワードと化した「深層学習」という言葉への反感だ。ヒトの脳神経の機能を模した深層学習技術は、アルファ碁をプロ棋士を超える強さに育て上げたことで、報道に頻出するようになった。昨今のAIといえば、深層学習を使うのがスタンダードになっている。しかし、現在のAIブームを巻き起こしたこの深層学習を、ある点ではネガティブな意味に一部の企業は捉えているのだ。ゆえに、深層学習を連想させるAIというバズワードも使いたがらないのではないだろうか。
・深層学習以前のAIは、AIが正解を導くための判断材料の見つけ方や、材料をもとにした判断プロセスを、ある程度ヒトがプログラミングしていた。深層学習は判断材料を探すところからすべてAIに任せている。 たとえば動物の画像をみて、それが猫かどうか判断する課題にAIが挑んだ場合、旧来のAIはあらかじめヒトが「ヒゲに注目しろ」「目に注目しろ」「耳に注目しろ」などとプログラミングをしておく。深層学習AIの場合は、あらかじめ猫の画像を大量に読み込んでおけば、注目するべきポイントを自ら見つけてくるのだ。
・しかし、これは裏を返せば、開発者がAIの判断を検証することが難しいということでもある。翻訳向けに深層学習AIを開発しているある技術者は「変な訳が出てきても、なぜそうなったのかがわからない。微調整ができないのが最大の課題だ」と語る。
・実際、今の深層学習AIの導入事例を見渡してみても、間違えを出しても説明責任を求められない課題ばかりだ。そうなると、例えばセキュリティーの課題に導入するのはハードルがある。 
▽深層学習はブラックボックス
・例えば、深層学習AIを積んだ手荷物チェック用のX線検査機を開発した日立製作所も、用途は旧来得意としていた空港向けではなく、チェック効率がより重視されるイベント向けだという。また、このAIは危険な手荷物に対して警告を鳴らす仕組みではない。「絶対安全」と判断できるものにだけOKを出し、ちょっとでも不審な点があれば、検査員にチェックを促す。検査の効率は40%ほど向上するが、安全を追及するためにはヒトが最終関門を担わなければいけない。
・警備用カメラをチェックして自動で不審者を捜し出すAIの実用化に挑んでいるセコムは、よりはっきり深層学習への懸念を示している。セコムIS研究所の目崎祐史所長は「深層学習にすべて任せると、ブラックボックスになってしまう」と語る。
・深層学習も利用はしている。しかし、画像からヒトの顔の部分を抜き出すなど、一般的に用いられていて信頼性が確立された課題のみに使う。つまり、深層学習AIは不審者を割り出すための判断材料を映像から抜き出すためのパーツに過ぎない。その材料からどう正解を導くかの判断プロセスは、ベテラン警備員の経験知をコンピューター言語にすることでAIに組み込んでいる。敢えて旧来型の手法でAIの判断プロセスを構築しているのだ。
・また、深層学習だけに頼れば、AIの成長に使うデータ量の競争に陥りがちだ。多くのデータ量を読み込むほど深層学習AIは賢くなるからだ。しかし、データの扱いを一つ誤ると、ICカードのデータを外部提供して批判を浴びたJR東日本のように、手痛いしっぺ返しをくらう。
・セコムの場合、AIの成長に使うデータは、エキストラが不審者のふりなどをする映像だけだ。実際の監視カメラの映像は含まれていない。国内では監視カメラ映像のような機微な情報を集めるのが難しい以上、ヒトが判断プロセスを書き込む旧来の方式と深層学習をハイブリッドで使う方法は有用だと記者は考える。
・もちろん深層学習そのものは非常に有効な技術だ。先に挙げた弱点を補い、深層学習AIを進化させようという研究も盛んだ。 富士通やNECが開発しているのが「ホワイトボックス化」と呼ばれる技術。深層学習AIの判断材料や判断プロセスを解析して可視化しようという試みだ。
・もう一つが「GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク)」。2つのAIを競い合わせることで成長させる技術だ。片方のAIは、相手のAIがいかにも間違えそうな「意地悪問題」を出して成長を促す。AIがAIを成長させるためのデータを自動で生成するので、データ量を追い求める競争から脱却できる可能性を秘めている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/122100550/?P=1

第三に、1月24日付け東洋経済オンライン「フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aはルブリュン氏の回答、+は回答内の段落)。
・各国の大企業がこぞって独自開発し、活用に乗り出すAI(人工知能)。日々、膨大な量の写真や動画が投稿されるフェイスブックも、プラットフォーム全体の健全性を維持するのにAIをフル活用しているほか、すぐにはビジネスに結び付かないような先端研究にも力を注ぐ。
・今のAIには何ができて、何ができないのか。AIはこの先、どう進化するのか。同社の学術的研究を担うチーム「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」のエンジニアリング・マネージャー、アレクサンドル・ルブリュン氏に最前線の研究について聞いた。
▽100億枚から不適切な写真をAIが監視
Q:フェイスブックのサービス上では、AIはどのように使われていますか。
A:フェイスブックには、1日約100億枚の写真が投稿されている。そのすべてを人間の目でチェックするのは不可能なので、ここでAIが活躍する。具体的には、タイムラインやメッセンジャーに写真が投稿されると、これは一般に見せていいものか、たとえば暴力的だったり、性的だったりしないかを瞬時に判断する。好ましくない写真をアップしようとしている人は絶えず存在しているので、まずはそれをはじくのがAIの重要な仕事だ。
+もう一つの役割は、AIで写真の内容をより深く理解し、誰が「いいね!」するかを判断すること。たとえばネコ好きの人には、ネコが写っているとAIが認識したものを優先的に見せようとする。一方で友人の赤ちゃんの写真を見飽きている人には、赤ちゃんの写真を見せる頻度を下げようとする。コンテンツの中身を理解して、それを楽しめる人とのマッチングを図っているわけだ。
+写真だけでなく、テキスト、動画、VR(仮想現実)でも何でも、コンテンツの内容をより深く理解しなければ、ユーザーにとってよいセレクションをするのは難しい。特に写真や動画に関しては、テキストと違った難しさがある。どのユーザーに見せるべきか、誰に好まれるコンテンツか、という判断を的確にできるよう、研究を進めている。 それ以外にも、視覚障害がある人のためにAIで写真の内容を把握して音声で説明したり、テロ行為や自殺願望をほのめかすような写真・動画投稿を検知して迅速に対応したりと、あらゆる面でAIを活用している。
Q:さまざまなITサービスの中でも、フェイスブックのようなSNSはAIと親和性が高い分野ですか。
A:フェイスブックに限らず、今日のSNSはどれもAIなしでは存在しえない。なぜなら表示するコンテンツを高度に選択しないと、ノイズが多すぎるからだ。いかがわしいもの、不適切なものを機械的にフィルターにかける機能がない状態では、あっという間に危険なプラットフォームになってしまう。今のソーシャルメディアの規模を考えればなおさらだ。
+残念なことに、悪いことをしようとする人々も、AIの目をどうにかすり抜けようと頭を使って新しい手法を編み出している。10年前には、(テキストの)キーワードを含むものを抽出して不適切性を判断していればよかったが、今はそれだけではまったく不十分。ソーシャルメディアの未来は、質のよい、高精度なAIなくしてはありえないといえる。
▽AIはまだまだ”インテリ”ではない
Q:今のAIの改善点、限界はどこにあるのでしょう?
A:アーティフィシャルインテリジェント(AI)と言われる割に、まだそんなに“インテリ”ではない点だ。今、機械学習は「教師あり学習」という手法が主流だが、膨大な量の例をAIに見せて学ばせる必要がある。たとえば、AIが温度のセ氏からカ氏への変換をできるようにするには、200~300の事例を読み込ませる。AIが「これはネコの写真だ」と認識するには、少なくとも1万枚程度のネコの写真を見せる必要がある。
+人間の子どもならどうか。たとえば、ネコという動物を認識させたい場合、せいぜい5回くらいネコに遭遇すれば、「これがネコだ」という認識が生まれる。熱湯に指を突っ込んでやけどをしてしまったら、一度だけでその先ずっと覚えていると思う。AIは、最先端のものでも何千回と同じ経験をしなければうまく認識できない。
+実はAIの教師あり学習という手法は、1980年代から30年くらい行われている。その間、裏側のアルゴリズムはほとんど変わっていなくて、やっと(収集できる)データの量とPCの計算能力が十分な水準に達し、機能し始めたのがここ5年だ。それと同時に専門家の間では、教師ありの機械学習は数年内に一定のポイントに到達できるという自信が生まれている。限界地点が見えてきた、ともいえる。
+アウトプットの種類を考えても、教師あり学習には限界がある。不適切な写真をはじく、英語から日本語に翻訳する、交通規制通りに自動運転をする、チェスの試合をする、といった、ある程度シンプルなタスクの場合はうまく機能する。でも、感情豊かに人と対話したり、もっと深い推論を行ったりする能力は、今の教師あり学習の延長上にはないまったく新しい分野になる。
Q:「教師なし」の機械学習はどのくらい研究が進んできたのでしょうか。
A:まだ始まったばかりで、最適な解決策の糸口を探している段階だ。その中で一つ、私たちが進めているのが、子ども、乳幼児を生物学的に深く研究し、そこからインスピレーションを得ようという試み。彼らの学び方を観察して、それを機械の学び方に生かせないかという考え方だ。
+子どもは本当にすごい。1日10時間起きているとすれば、そのうち95%は「教師なし学習」の時間。つまり、「これはペンだよ」「これはリンゴだよ」と教え込む作業をしていないにもかかわらず、自分で見て、聞いて、遊んで、探検して、学んでいる。ほんの少量のデータで、一気に賢くなる。われわれの最先端のAIよりはるかに頭がいい。
▽会社が違っても研究コミュニティは一緒
Q:子どもの学び方にヒントを得ようとするのは、AI研究の共通的なアプローチなのでしょうか。
A:研究者のコミュニティはある種の”家族”のようなもので、所属がフェイスブックだろうがグーグルだろうがIBMだろうが、あまり関係がない。皆が同じカンファレンスに出て、とてもオープンな環境で研究しており、この会社だからこの方向性、というものもない。自由度の高い、ボトムアップの世界だ。
+私自身が所属しているAI研究チームも、もっぱら学術的な研究開発を行い、すべての活動をオープンにしている。私たちの第一の目的はフェイスブックの事業を助けることではなく、あくまで最先端のAI技術を追い求めることだ。もちろん、それが時としてフェイスブックのビジネスに直接役立つことはあるが。
+特に教師なし学習の研究は、これから非常に長期戦になるだろう。10年間研究し続けても結果が出るかわからないというレベル。そういう類の研究に投資し続けられる企業はあまり多くないが、長期的かつ抽象的な研究が科学の発展のためには重要だ。
Q:最近では音声アシスタントやスマートスピーカーが盛り上がっていますが、非ディスプレー型製品が普及した先に、フェイスブックはどのような姿になっているでしょう?
A:構図として、(テキストや写真などの)ビジュアルに相対する概念としての音声、という形にはならず、相互補完的になっていくのではないか。たとえば、オープンスペースで仕事をしているときや、すごく複雑で体系的な情報を取得しようとしているときには、テキストや写真、表などのほうが適している。でも運転中や料理の途中にちょっとしたニュースを聞くときなら、音声のほうがいい。どちらか一方ではなく、組み合わせて使うことで便利さが増していく。
+その流れの中で、フェイスブックをはじめとするSNSの使い方に何らか変化が生じてくるのは明らか。スクリーンを見て使う、というだけではなく、聴覚的な情報や付加価値がより重要度を増す可能性はある。一方で、友達と楽しい出来事をシェアしたり、一緒に何かを体感したりといったコンセプトは変わらないはずだ
http://toyokeizai.net/articles/-/205816

第一の記事で、 『AIによる自動化が図られるのは、それが容易な分野だけでなく経済的な利益が大きい分野も、である。企業にとっては、高賃金の仕事ほど機械で置き換えるメリットが大きい。低賃金で機械化の利益が小さいところや、雑多な作業で対応が難しいものが人間が行う仕事として残され、生活を支えるために多くの人がこうした仕事を得ようとして争うことになる恐れが大きい』、他方で 対応策として検討されている 『ベーシックインカムの制度・・・職を失っても生活が保障されるという意味では朗報だが、あくまで最低限度のセイフティーネットに過ぎない。一部の人が現在は想像できないような豊かさを享受する一方で、多くの人の生活水準は大幅に低下してしまうという著しい格差が生まれることを防ぐことはできないのである』、 『デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう』、市場原理に委ねないとしたら、一体どういうことになるのだろうか。
第二の記事で、 『「深層学習にすべて任せると、ブラックボックスになってしまう」』、この弱点をカバーするため、 『「ホワイトボックス化」と呼ばれる技術。深層学習AIの判断材料や判断プロセスを解析して可視化しようという試みだ』、 『もう一つが「GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク)」。2つのAIを競い合わせることで成長させる技術だ』、第一の記事でみた社会的影響を度外視して純粋に技術面だけでみれば、大いに楽しみな技術だ。
第三の記事で、 『アーティフィシャルインテリジェント(AI)と言われる割に、まだそんなに“インテリ”ではない・・・AIが「これはネコの写真だ」と認識するには、少なくとも1万枚程度のネコの写真を見せる必要がある』、機械学習といってもやはり限界もあるようだ。 『子どもは本当にすごい。1日10時間起きているとすれば、そのうち95%は「教師なし学習」の時間。つまり、「これはペンだよ」「これはリンゴだよ」と教え込む作業をしていないにもかかわらず、自分で見て、聞いて、遊んで、探検して、学んでいる。ほんの少量のデータで、一気に賢くなる。われわれの最先端のAIよりはるかに頭がいい』、ということは、AIを過度に恐れる必要はないのかも知れない。
タグ:人工知能 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 櫨 浩一 (AI) その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない) 「AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か」 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか~労働力余剰と人類の富』 ライアン・エイヴェント AIの発達で拡大していく格差 ベーシックインカムは解決策にならない デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう 「静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒」 バズワードになったAIと深層学習 深層学習はブラックボックス ホワイトボックス化 GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク 「フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない」 アレクサンドル・ルブリュン AIはまだまだ”インテリ”ではない
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