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不動産(その5)(100均の家ついに登場 深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題、2022年 タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識、大阪・西成を買い占める謎の中国人) [産業動向]

不動産については、7月17日に取上げた。今日は、(その5)(100均の家ついに登場 深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題、2022年 タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識、大阪・西成を買い占める謎の中国人)である。

先ずは、住宅ジャーナリストの山本 久美子氏が8月1日付け東洋経済オンラインに寄稿した「100均の家ついに登場、深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/294273
・『人口・世帯数の減少や家余り社会の到来で、今後ますます空き家が増えると見られている。空き家が管理されないまま放置されると、その地域に防災、防犯、景観上などのさまざまな問題を引き起こす。 国や自治体も手をこまねいているわけではない。法律の整備などを進めているが、決め手に欠けるというのが現実だ。それを埋めるように民間でも、新しい動きが出始めた。 そこで、空き家問題について、次のような観点から見ていくことにしたい。 1. 空き家が問題になる理由は? 2. 空き家対策特措法の効果は? 3. 空き家対策に取り組む地方自治体は増えている 4. 「100均空き家」にどんな意味があるのか』、興味深そうだ。
・『空き家が問題になる理由は?  総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国に空き家は846万戸(全国の住宅の7戸に1戸)。この5年間で26万戸増加するなど、その数は増加し続けている。 ただし、この調査でいう「空き家」は、何種類かに分かれる。 ・別荘やセカンドハウスなどのように普段は住んでいない「二次的住宅」 ・賃借人を募集中の「賃貸用」 ・売却を予定している「売却用」 ・上記いずれにも当てはまらない「その他」) 別荘など常時ではないが利用しているものは、管理をしている可能性が高い。賃貸や売却を予定しているものなら、高く売ったり貸したりするために管理をするだろう。その他の中でも、建て替えなどで「取り壊し予定」の空き家であれば、いずれ誰かが利用することが期待できる。つまり問題となるのは、「その他」の中でも、使い道が決まっていない、長期間誰も住んでいない空き家だ。しかも、こうした空き家が増え続けていることが、問題を深刻化させている。 さて、空き家が問題視されるのは、建物は人が住まなくなると急速に老朽化が進み、庭の草木が茂ったり害虫等が発生したりして、トラブルの原因になるからだ。 街の景観が損なわれるのはもちろんのこと、はたから見ても空き家とわかるので、誰かが住み着いたり隠れ場所として使われたりすると、犯罪の温床になる。また、ゴミが投棄されるようになると、衛生上の問題が生じてくる。老朽化した建物の屋根材が隣家や道路に落下したり、伸び切った草木が越境したり、ブロック塀が壊れたりすると、近隣にとって迷惑なだけでなく、災害時に被害を増大させる要因にもなってしまう』、「使い道が決まっていない、長期間誰も住んでいない空き家」は確かに大きな問題だ。
・『空き家対策特措法の効果  このような迷惑な空き家が認識されるようになって、まず動いたのが地方自治体だ。地元住人からの相談やクレームを受けて、条例を設けるなどして、空き家問題に取り組むようになった。遅れて国が動いて制定したのが、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空き家特措法)で、2015年5月に施行された。 「空き家特措法」の狙いは2つあり、1つがこれまで説明してきた問題のある空き家への対策だ。法律で問題のある空き家を「特定空家等」と定義して、市町村が立入調査を行ったり、指導、勧告、命令、行政代執行(所有者が命令に従わない場合や所有者が不明な場合)の措置を取ったりできるように定めた。 所有者が命令に従わない場合は、罰則も設けている。また、登記があいまいで空き家の所有者がわからないという問題については、固定資産税などの課税のための個人情報を、必要な範囲で利用できるようにも定めている。 空き家特措法のもう1つの狙いは、活用できる空き家の有効活用だ。市町村に、空き家のデータベースを整備し、空き家や空き家の跡地の活用を促進することを求めている。 一方、空き家を助長するとも指摘されている固定資産税の問題もある。空き家を撤去して更地にすると、住宅用の土地ではなくなってしまう。すると固定資産評価額を1/6に引き下げるといった「住宅用地の特例」が受けられなくなるので、空き家の放置につながるというわけだ。 この点に対しても、空き家特措法の規定に基づいて、「特定空家等」の所有者に撤去などの必要な措置を勧告した場合、この住宅用地の特例の対象から除外する税制改正も行った。 空き家特措法で市町村に求めた「空家等対策計画」について、2019年3月末日時点で全市区町村の約6割(60.4%)となる1051団体が策定し、2020年3月末には7割を超える見込みとなっている。 また、周辺の生活環境などに悪影響を及ぼす「特定空家等」について、2019年3月末日までに市区町村長が1万5586件の助言・指導を実施し、うち勧告を行ったものは922件、命令を行ったものは111件、代執行を行ったものは165件となっている。 加えて、空き家特措法では、空き家のデータベースの整備と情報提供を促している。以前から「空き家バンク」などを整備する地方公共団体は多かったが、それぞれで仕様が異なり、一覧性がなく検索しづらいといった課題があった。 そのため不動産情報を扱う事業者に「全国版空き家・空き地バンク」の構築や運営を委託し、全国の空き家情報をワンストップで検索できるサイトを2018年4月から運用している。2019年2月時点で、LIFULLとアットホームが運営する全国版バンクに603自治体が参加し、延べ9000件(一部重複あり)を超える空き家などの情報が掲載され、成約に至った物件数は、累計で1900件を超えたという』、「「空家等対策計画」について、2019年3月末日時点で全市区町村の約6割(60.4%)となる1051団体が策定」、というのはまずまずだが、「「特定空家等」について、2019年3月末日までに市区町村長が1万5586件の助言・指導を実施」、については、助言・指導をすべき母数がどの程度あるかが分からないので、評価不可能である。
・『「100均空き家」にどんな意味があるのか  こうした空き家問題に対する環境整備を行うことと合わせて、地方公共団体と各種専門家団体などとの連携の動きも活発になっている。とはいえ、空き家を活用したり処分できなかったりする理由はさまざまだ。 空き家の所有者の高齢化によって、自宅から介護施設に移ったり、判断機能が低下したりして、自宅の処分が進まないということもある。また、空き家の相続などを繰り返すことで、今の所有者がわからなくなったり、相続人が多数いて合意形成ができないといったことも理由の1つだ。 もう1つの大きな理由が、「市場性の問題」だ。とくに、人口減少地域で老朽化した住宅の場合、売っても諸費用のほうが高くつく、貸すために修繕しても借り手がつかない、修繕した費用を回収するだけの賃料が得られないといった事例が多くなる。そのために、売ることも貸すこともできない空き家が増えるという構図になっている。 こうした市場性の問題に対して、民間企業でも新しい取り組みが出始めている。不動産会社が空き家を買い取って改修したうえで販売したり、空き家を一定期間借り上げて賃貸住宅や宿泊所として活用したりといった事例が増えている。 そして、ついに「100均空き家」を掲げるところも現れた。YADOKARIとあきやカンパニーが連携して開設した「空き家ゲートウェイ」がそれだ。 使い物にならないと諦めている、売りたいが値がつかないので不動産会社が扱わない、といった空き家を日本中から集めて、それを活用したいというユーザーとマッチングするプラットフォームになっている。 具体的に事例を見ていこう。100均物件として掲載されている「宮城県栗原市花山の築40年の平屋」の売却価格は100円だ。建物面積140m2の平屋に73m2の納屋まで付いている。 現オーナーは、地域おこし協力隊を経て花山に移住し、譲り受けたこの空き家を地域づくりに活用したいと考えている。そこで付けたキャッチが「最寄りは湖 U-30 花山代表求ム!」。つまり、地域に貢献したい30歳以下の若者に100円で売りたいというメッセージが込められている。 「空き家ゲートウェイ」プロジェクトマネジャー川口直人さんに、100均物件を集める理由を聞いた。 「新しいライフスタイルを提案するメディアとして、空き家の問題を解決したいと考えていましたが、空き家をカジュアルに、もっと気軽に見てほしいと思いました。それを端的に表現するのが100均です。資産価値がないと思われている物件でも、自然豊かな場所に安くて広い住まいを手に入れて思い通りの暮らしを実現したいという、そこに価値を認める人がどこかにいると思うのです」』、「空き家ゲートウェイ」とは面白い動きだ。ただ、ネットマッチングだけで、現地調査サービスや仲介業務は原則行ってないので、ユーザーニーズに果たして応えられるのかが、課題だろう、
https://akiya-gateway.com/vacant-house/
・『資産価値のない物件が価値をもつ  プラットフォーム上で売りたい人と買いたい人をマッチングするだけで、仲介業務を行うわけではない。もちろん売却価格100円といっても、売却時の諸費用などがかかるし、DIYやリフォームなどの改修も自分で行う必要がある。それでも、そこでの暮らしをイメージできるようにオーナーの思いも伝えることで、そのストーリーに共感する人に引き継ごうというのがコンセプトだ。 空き家が100均物件として「空き家ゲートウェイ」に掲載可能かを判断する、物件査定ページ「カンタンゲートウェイ」が用意されているが、資産価値のある物件の場合だと「残念!掲載できません」と査定される。通常の査定とは真逆だ。ここでは、資産価値のない物件が価値を持つわけだ。2019年7月1日に空き家ゲートウェイ開設後、10日間で70件ほどの掲載問い合わせが寄せられ、順次検討しているところだという。 空き家を100円でも売りたい、オーナーに交渉しながら100円で買いたい、という人が今後どれだけ多く集まってくるか、注目したいポイントだ。 さて、空き家というと負の面ばかりが注目されるが、空き家をポジティブにとらえることができるようになれば、空き家の利活用も進むのではないだろうか。新しい取り組みに大いに期待したい』、同感だ。

次に、8月17日付け現代ビジネス「2022年、タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56992
・『リタイア世代から外国人家族まで、さまざまな人が住むタワマン。最大のネックは「修繕費」の問題で、見て見ぬふりをしているうちにタワマンが廃墟になってしまった、という可能性もあるのだ』、「タワマンが廃墟に」というのは穏やかではない。
・『「修繕ラッシュ」が来た  都心の最高級リゾートをあなたの手に――。 東京湾を望む一棟のタワーマンション。歯の浮くようなコピーに夢を抱き、当時は購入希望者が殺到した人気レジデンスだったが、いまは見る影もない。 築15年、400戸近いマンションに、現在の居住者は3割にも満たない。外壁に割れが目立ち、エントランス前は雑草が伸び放題になっている。 ジムやバーなどの共用部は閉鎖されて数年が経つ。次のマンションの頭金にもならないほど資産価値は下がり、引っ越すこともできず、逃げ場を失った人たちがただ住んでいるだけ……。 いま、タワマン人気はピークにある。不動産経済研究所の調査によると、'08年から'17年の10年間で、首都圏には341棟もの高層マンション(20階建て以上)が建てられた。戸数にして、じつに11万1722戸にのぼる。 だが、そのタワマンが巨大な廃墟と化してしまう冒頭のような光景が、日本中に現れる事態を想像する人は少ない。 不動産業界ではかねてから都心部の住宅の過剰供給がささやかれてきた。デベロッパーにとってタワマンはまさに「打ち出の小槌」であり、いまだ根強いタワマン人気に応えるように、フロンティア開拓は進んでいる。 これまでタワマンといえば、豊洲や芝浦といったベイエリアか、武蔵小杉や川口など都心にアクセスしやすい郊外が人気を集めていた。近ごろ、デベロッパーは「第三の道」として、都心の再開発地域に目をつけ、新たな購入層の獲得に躍起だ。 たとえば東京下町の代表格・月島の「もんじゃストリート」には低層建築のもんじゃ屋が軒を連ねるが、肩を並べるように地上32階建てのタワマンが建とうとしている。 また、日本有数の商店街がある武蔵小山の駅前にも41階建ての巨大レジデンスが建ち、東京五輪直後の2021年に入居を控えている。 そんなタワマンブームに火が付いたのは2000年前後のこと。当時建てられた超高層マンションは早くも15~20年選手になろうとしているわけだが、ここにきて重大な問題が表面化してきた。 それは、類を見ないほどの大規模で高額な「修繕」をどうするか、ということだ』、「タワマン」で「築15年、400戸近いマンションに、現在の居住者は3割にも満たない」、とは恐ろしいような現象だが、それが次々に顕在化しつつあるとは、大変なことだ。
・『売り手はリスクを伝えない  基本的にマンションは、12年から15年の周期で大規模修繕を行う。最初は外壁の修理などを行い、次にエレベーターや排水などの内部的な不具合を改修する。 これはタワマンも同様で、目下第一次修繕ラッシュに突入しているが、なにぶん戸数が多いため、一棟の修繕計画は10年以上、2ケタ億円のカネがかかることもザラにある。 高層マンションブームの先駆けとなったのが、川口にある「エルザタワー55」だ。 '98年に竣工した総戸数650、地上55階建て、高さ185mのこの物件は、'15年にはじめての大規模修繕工事を開始し、2年がかりで完了した。総費用は約12億円。単純計算で1戸あたり約185万円の負担だ。 修繕にいたる長い道のりを取材してきた住宅ジャーナリストの山本久美子氏は次のように語る。 「超高層の工事は通常の足場だけではできないうえ、エルザタワーは低層・中層・高層でそれぞれ外観のフォルムが変化するデザインになっていて、工事は難航することが予想されました。 そこで修繕は、マンションを建設した元施工会社に工法の提案を依頼するところからはじまったのです」 管理組合に修繕委員会を設置したのは'07年のこと。施工の妥当性や料金を見積もるコンサルタントを募集したのは'12年になってからだった。 「コンサルタント会社を1社に絞り、業務委託契約を締結したのが'13年。マンション所有者への説明会もきちんと開き、'14年に施工業者の決定にこぎつけました」(山本氏) 途中3.11の影響もあったが、修繕完了までに10年。ただし、これは幸せなケースだ。エルザタワーのように投資目的の所有者が少ない物件は、管理組合もしっかり機能している。 だが新しく建てられたタワマンのなかには投資用に購入されているものも多い。最初の修繕時期にあたる築15年を迎えるころには、すでに所有者が入れ替わっているケースが大半だ。 しかも300戸をゆうに超えるようなタワマンでは、実際の入居者も子育て世代から外国人までさまざま。その全員が管理組合に協力的、ということはさすがに考えにくい。 こうした状況をさらに難しくするのが、デベロッパーの態度だ。タワマンの売れ行きが好調な折、あえて15年後に訪れる修繕の難しさなど、口にするはずがない。 オラガ総研代表の牧野知弘氏はこう指摘する。「これまで、デベロッパーは修繕積立金の費用負担を実際の想定以上に安く設定してマンションを販売してきました。 タワマンは高層用のエレベーターやジムなどの共用設備が多く、修繕コストが膨らみやすい構造にあるにもかかわらず、『戸数が多いから一人あたりの負担が少ない』と販売元は説明するわけです。 ところがいざ修繕となると積立金が足りず、住民のあいだで大モメになる。こうした事態がこれから頻発するでしょう」』、「デベロッパーは修繕積立金の費用負担を実際の想定以上に安く設定してマンションを販売してきました」、「新しく建てられたタワマンのなかには投資用に購入されているものも多い。最初の修繕時期にあたる築15年を迎えるころには、すでに所有者が入れ替わっているケースが大半だ。 しかも300戸をゆうに超えるようなタワマンでは、実際の入居者も子育て世代から外国人までさまざま。その全員が管理組合に協力的、ということはさすがに考えにくい」、入居者の責任だけでなく、デベロッパーにも責任がありそうだ。
・『住民の意見がまとまらない  国土交通省は、ガイドラインで12年周期前後の大規模修繕を行うことを推奨している。 大手デベロッパーが販売するマンションの場合は、長期修繕計画書を売り主か施工業者が作成することが多いが、ここに書かれた数字がデタラメだったというケースもある。 管理組合向けコンサルティング会社・ソーシャルジャジメントシステムの廣田晃崇氏は次のような例を挙げる。 「長期修繕計画書では、何年目の工事にいくらかかるか概算が記されていて、そこから積立金の月額を割り出します。 ところが中央区のあるタワマンでは、基礎的な数値に間違いが散見されました。自動ドアの枚数が実際の半分だったり、消火設備の数も少なかったりして、30年間でかかる修繕費が5億円近くも過少に見積もられていたケースがあったのです」 こうした明らかな見積もりの甘さには、デベロッパーの「売らんかな精神」があることは否定できない。住民側が問題に気づくためには、やはり結束力の強い管理組合が必要になってくるが、ことタワマンではそううまくいかない。 首都圏にある総戸数600超の某タワーマンションでは、30年の修繕累計コストは50億円以上におよぶと見積もられている。ところが、その間に見込まれる修繕積立金は半分にも満たない23億円。 今後どうやってその差額を埋めるのか、そもそも15年目の第一次修繕を終えられるのか。管理組合の議論は今日も続いているという。 このマンションで理事の経験がある60代の住民の一人はこう嘆息する。 「私は早期退職で入ったおカネで家を買い、終の棲家と思って住んでいますが、上層階には若いお金持ちや投資目的の外国人もいる。普段の生活では没交渉ですから、理事会での発議も実現しないことが多いです。 たとえば、あるとき立体駐車場の共用部に重大な不具合が見つかり、1億円近くの費用がかかることがわかった。 そこで理事会で一時金の徴収を提案したのですが、想像以上に反対意見が多く、ロクに話し合いも設けられないまま否決されてしまったことがありました。それぞれ、マンションについての見解があまりにも違うと感じましたね」 実際、「私が住んでいるうちだけ大丈夫なら、あとはどうなってもかまわない」と考えたり、一方で共用部の破損で資産価値が下がることに神経質な人がいたりと、「コミュニケーションなき利害関係」がこじれがちなのがタワマンの現状といえる。 さらにいま大量に建てられている新築のタワマンの管理組合は、これまでのタワマン以上に難しい問題を抱えている。 「東京五輪に向けて上昇しているのは地価だけでなく、人手不足による人件費や資材費も同様。ですが、五輪後に地価の高騰が落ち着いたとしても、人件費や資材費は右肩上がりになる可能性が高い。 五輪後、建物に大きなトラブルが露呈すれば、修繕積立金の値上げを余儀なくされますし、修繕しなければ資産性に大きな問題が生じるかもしれません」(前出・牧野氏) つまり、資産価値はこれから下がっていく一方なのに、修繕費は高騰を続けるのだ』、「総戸数600超の某タワーマンションでは、30年の修繕累計コストは50億円以上におよぶと見積もられている。ところが、その間に見込まれる修繕積立金は半分にも満たない23億円」、さらに「人件費や資材費」の高騰で修繕積立金の不足は膨張する可能性が高いのであれば、事態は深刻だ。
・『壊すこともできない  はたしてタワマンを住居として修繕しつつ、維持し続けることは可能なのだろうか。 「じつは、ほとんどの物件で長期修繕計画は30年分しか組まれておらず、その先はどうなるのか、国などでも問題視されています。 30年以降の修繕となると、給排水管や電気系統、エレベーターなどの設備系の大規模改修も必要になってきて、その費用は1回目の比ではありません。 いざ修繕積立金を値上げするとなると、投資目的でマンションを買い、人に貸している人は利回りが悪くなるので、なかなか首をタテに振らない。そうすると修繕の時期になってもおカネが用意できない事態に陥ります」(経済評論家の平野和之氏) 修繕できないのなら、いっそ壊して新しくするという手もあるだろう。しかし、老朽化したタワマンに住んでいるのは、簡単に引っ越すことができない「取り残された人々」。 そうした住民を立ち退かせたとしても、タワマンを壊すには、これまた膨大な費用がかかる。 「大規模修繕ができていないタワーマンションは次から次へと売りが出る可能性がある。値段をどれだけ下げても、高い修繕積立金を肩代わりしなければいけない物件に買い手はつかないでしょう。 結果、修繕されずに放置され続け、壊すこともできず廃墟と化したタワマンの誕生です。 とくに心配なのは、武蔵小杉など、同じような時期にたくさんのタワマンが建った地域です。売りが売りを呼ぶ負の連鎖が街全体で起こる可能性がある。そう考えると、街が一瞬にしてゴーストタウン化するリスクもあります」(平野氏) 一度建てたら、簡単には修理することも壊すこともできないタワマン。その姿はさながら「住む原発」といえる。 ひとたびの建設ピークを迎えた'08年に建てられたタワマンが、15年目になるのは2022年。まさにこれからタワマンの問題は深刻化する。あなたは、それでもまだタワマンを買いますか?』、「住む原発」とは言い得て妙だが、「廃墟と化したタワマン」が次々に出現するとはまさに「現代の怪談」だ。

第三に、8月8日付け日経ビジネスオンライン「大阪・西成を買い占める謎の中国人」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00069/080600001/?P=1
・『“異次元”とも形容された日銀の金融緩和とインバウンドブームが相まって、一部の都市の不動産価格は上昇の一途をたどっている。外国人観光客の増加に沸く大阪もそんな活況を呈するエリアの1つ。とりわけ労働者の町として知られる西成は外国人観光客の増加で注目を集めている場所だ。 日経ビジネスでは、9月2日号(予定)で過熱する不動産市場を分析した特集記事を掲載する。低い調達金利と、他の金融商品に比べて相対的に高い利回りを背景に、一般のビジネスパーソンから日本の不動産を割安と見る外国人投資家まで様々なマネーが国内の不動産に流れ込む。その中では、西成のようにこれまで過小評価されていたような不動産も動き始めた。 今の状況をバブルと見るか、グローバル水準に適正化していく過程と見るかは意見が分かれるかもしれない。その結論を出す前に、全国各地で起きている現象を見てみよう。 大阪市西成区――。地下鉄御堂筋線・動物園前駅を駆け上がると、キリンや象のオブジェが飾られたアーケード街にたどり着く。通天閣やジャンジャン横丁のある新世界の南隣に位置する動物園前一番街である(正式名称は飛田本通商店街)。 今から100年ほど前、にぎわいを見せる飛田遊郭に隣接したこともあり、自然発生的に商店が集まったといわれている。動物園前駅から旧飛田遊郭大門跡まで、およそ500メートルにわたって50軒以上の商店が軒を連ねる』、西成の釜ヶ崎といえば、東京の山谷と並ぶ有名な「ドヤ街」だったが、「過小評価」が見直されつつあるようだ。不動産の「バブル」も来るところまで来たということなのだろうか。
・『真っ昼間から大音量のカラオケが通りに響く  この歴史ある商店街に“異変”が起きている。カラオケ居酒屋に転換する店舗が急速に増えているのだ。飛田本通商店街振興組合の村井康夫理事長によれば、一番街では既に11店がカラオケ居酒屋だという。 商店街をぶらりとしながらカラオケ居酒屋をのぞけば、店を切り盛りしているのは片言の日本語を話す中国人女性。メニューは基本的に中華料理で、客は1曲100円のカラオケを熱唱している。 もともとは隣接する「あいりん地区(通称・釜ヶ崎)」に集まる日雇い労働者らを主に対象としたビジネスだったが、歌って飲んでも2000円程度という値ごろ感もあり、最近は新世界や天王寺界隈から流れるサラリーマンなどの2次会需要でにぎわっている。 真っ昼間から大音量のカラオケが通りに響く様子は、この商店街ならではの情景と言える』、「一番街では既に11店がカラオケ居酒屋」、「店を切り盛りしているのは片言の日本語を話す中国人女性」、「最近は新世界や天王寺界隈から流れるサラリーマンなどの2次会需要でにぎわっている」、変われば変わったものだ。
・『日経ビジネスは2002年に「不動産大革命」と題した特集記事を掲載した。今でこそ将来的に生み出すであろう利益から逆算する収益還元法で不動産を評価するのは常識だが、当時は収益還元法の考え方が浸透し始めたところで、利便性の割に賃料が低く抑えられているエリアがいくつも存在していた。 そこで、弊誌は不動産データサービスを提供しているアトラクターズ・ラボ(現スタイルアクト)の沖有人社長の協力を得て、首都圏の759駅のマンション利回りを算出、それぞれの将来性を「AAA」から「C」の9段階で格付けした。 「2002年7月22日号 不動産大革命 マンション購入安全度」 この時に最高評価のAAAを得たエリアのひとつに江東区豊洲が挙げられる。今でこそ豊洲は高層マンションや大規模商業施設が立ち並ぶ屈指の人気エリアだが、もともとは石川島播磨重工業の工場が広がる準工業地域。1990年代後半にマンション建設が始まったが、当時はららぽーと豊洲もできておらず、住宅地として人気のあるエリアではなかった』、不動産の評価が「収益還元法」に変わったなかで、「首都圏の759駅のマンション利回りを算出、それぞれの将来性を「AAA」から「C」の9段階で格付けした」、「最高評価のAAAを得たエリアのひとつに江東区豊洲」、手法の先見性は確かだったようだ。
・『利回りの取れる掘り出し物をさがせ  だが、銀座まで地下鉄で10分という圧倒的な利便性とリーズナブルな物件価格、日々進化していく町の魅力が相まって、豊洲はファミリー層が選ぶ屈指の人気エリアに発展した。 過去17年を振り返れば、不動産大革命で「AAA」や「AA」の格付けをしたエリアの中古マンション価格は20%上昇した。一方、最低評価の「C」格エリアは31%の下落である。賃料をベースにした収益還元という考え方が一般化したことで、不動産のアービトラージ(裁定取引)が働き、適正な期待利回りまで価格が適正化したのだ。 日銀による異次元の金融緩和以降、利回りを求める投資マネーの流入で不動産価格は高騰している。東京・都心部の大規模ビルの中には表面利回りで3%を切る物件も出ているほど。情報が広く行きわたったことで、利回りの取れる掘り出し物を見つけることは困難だ。 ただ、目をこらせば過小評価されている場所がないわけではない。本記事で紹介してきた大阪の動物園前一番街・二番街や隣接する釜ヶ崎、飛田新地のある山王地区などはそんな割安と見られる場所だ。現に、相対的に高い利回りを求めて様々なマネーが流入している。 動物園前一番街・二番街でカラオケ居酒屋が増加している理由を端的に語れば、中国人による“爆買い”だ。そして、その背景には一人の男がいる。盛龍不動産の林伝竜氏である。来日後、職を転々としながら動物園前商店街で不動産会社を興した苦労人だ』、中国人の不動産屋が仕掛けていたとは、さすがだ。
・『カラオケ居酒屋をつくり、投資家に貸し出す  林氏がここでやっているのはカラオケ居酒屋をつくり、投資家に貸し出すビジネスだ。商店街の空き店舗を購入後、バーカウンターと調理器具、カラオケ機材を設置し、仲間の中国人に貸し出す。実際に看板ママを雇ってカラオケ居酒屋を営業するのは借りた中国人だ。 最近は民泊業にも進出しており、カラオケ居酒屋の2階部分を民泊として外国人観光客に貸している。なかなかアグレッシブに事業を展開しているようで、取材に訪れた6月下旬に盛龍不動産を訪ねると、大阪市違法民泊撲滅チームの名刺を持つ人物と鉢合わせした。聞けば、未登録の闇民泊の調査をしているのだという。 盛龍不動産を筆頭に、中国系の不動産業者が店舗を積極的に取得するため、動物園前一番街・二番街の物件価格は上昇している。「実際の取引価格は3年前の3倍。それを牽引しているのは盛龍不動産だ」。地元の不動産業者からは驚きともやっかみともつかない声が漏れる。 福建省出身の林氏が釜ヶ崎に来たのは阪神・淡路大震災後の1996年にさかのぼる。被災地の復興需要が立ち上がる中で、雇用の機会を求めて釜ヶ崎に引き寄せられたのだ。ただ、国内景気の落ち込みのため、90年代終わりごろになると日雇いの仕事は急速に減少し始める。生活の糧を失った労働者が路上にあふれる中、日雇い家業に見切りをつけた林氏はラーメン屋に転職した。1999年のことだ。 そんな林氏がカラオケ居酒屋という業態を始めたのはリーマン・ショックの少し前。高齢化が急速に進む西成で、生活保護受給者が楽しめる場所を提供しようと考えた。そして、動物園前二番街に最初のカラオケ居酒屋を開業すると、安く遊べると高齢者の人気に。チャンスと見た林氏は空き店舗を次々に取得、カラオケ居酒屋に業態を変えていった。 現在、林氏がつくったカラオケ居酒屋は一番街と二番街に20店ほどある。その大半は日本に住む中国人に貸している。「カラオケ居酒屋を開発したのはボク。そのあとみんなマネし始めた。ボクは店をつくって貸しているだけ。みんなもうかってるよ」』、「日雇い家業」、「ラーメン屋」、「カラオケ居酒屋」と時代に合わせて職業を変えているのもたくましい。
・『星野リゾートもホテルを開業へ  釜ヶ崎周辺はJR大阪環状線・新今宮駅や動物園前駅から目と鼻の先と利便性は抜群。ただ、「昔は駅前で寝ている人も大勢いた」と手荷物預かりサービスを営むダイコクロッカーの岡西義友代表が語るように、外部の人間には近寄りがたい場所だった。林氏が空き店舗を取得できたのも、イメージの悪さから周辺の不動産価格が低く抑えられていたためだ。 それが、インバウンドの増加に伴って状況は変わりつつある。 星野リゾートは2017年に、新今宮駅の北側(浪速区)に「OMO7(おもせぶん)」という観光特化型のホテルを開業すると公表した。南海電鉄も新今宮駅至近のFP Hotels Grand 難波南を取得した。 「新今宮の周辺は心斎橋に近く、神戸にも京都にも楽に行ける。目の前は広い幹線道路で観光バスの横付けも可能。周囲のイメージも観光客には関係ない」。FP Hotels Grand 難波南を含め、新今宮駅周辺で2軒のホテルを運営するフリープラスの柿内将也氏は語る。 インバウンドの増加はビザ発給要件の緩和や円安、LCC(格安航空会社)の就航などが影響している。ただ、釜ヶ崎の構造変化と地元の簡易宿所(簡宿)事業者の地道な努力も大きい。 1960年代、70年代の高度経済成長期に活況を呈した釜ヶ崎だが、バブル崩壊後は日雇いの仕事が激減、労働者向けの簡宿も大打撃を受けた。「2000年ごろの空室率は70~80%。借金もあってどないすんねんという状況だった」。ホテル中央オアシスやホテルみかどなどの格安ホテルを運営するホテル中央グループ会長で、大阪府簡易宿所生活衛生同業組合の理事長を務める山田純範氏は振り返る。 ただ、捨てる神あれば拾う神もある。2000年にホームページを開設したところ、安価な価格に引きつけられた外国人旅行者からの問い合わせが増え始めた』、インバウンドがこんなところにまで影響しているようだ。
・『簡易宿所はバックパッカーシフトで大成功  釜ヶ崎の簡宿の広告を日本人向けに出しても仕方がない――。そう割り切った山田氏は外国語での情報発信を強化。バックパッカーとして世界中を旅していた息子が会社に参画した2004年以降は海外のバックパッカーが利用しやすいように施設を改修したり、ネット販売を強化したり、外国人シフトをさらに推し進めた。 その戦略は奏功した。 労働者の高齢化によって西成の高齢化率は40%に達しており、簡宿に住んでいた労働者は亡くなるか、サポーティブハウスなどの福祉施設に移動している。一方、2004年に9000人だったホテル中央グループの外国人宿泊者数は2018年に20万人まで拡大した。 「労働者の減少分をインバウンドで補うことができている。ウチのホテルだけでなく、同業者全体で取り組んだ結果だ」と山田氏は語る。 住民の顔ぶれが変わりつつある釜ヶ崎。その土地のポテンシャルに目をつけた人が続々と資金を投下している。 例えば、動物園前一番街の阪神高速松原線をはさんだ反対側、山王地区は木造の長屋が目立つ「ザ・下町」という風情の地域だが、路地をぶらりと歩くと、長屋を改造したこぎれいな民泊物件がそこかしこにある。玄関に貼られている緊急連絡先を見ると、中国人と思われる名前も少なくない。 西成区全体にフォーカスを広げても同様だ。西成区役所のある天下茶屋。ここも下町情緒あふれる地域だが、10分も歩けば、古民家をリノベーションした民泊物件をいくつも見つけることができる。 大阪に来る外国人観光客はLCCで関西国際空港に入る場合が多い。その多くは大阪に泊まり、大阪を拠点に京都や神戸などに足を延ばす。その文脈で見れば、天下茶屋は関空となんばを結ぶ南海電鉄の特急ラピートや空港急行が停車する主要駅であり、同駅に乗り入れている地下鉄堺筋線に乗り換えれば黒門市場のある日本橋にも近い。 このように外国人観光客にとっては抜群の立地だが、なんばや天王寺などの中心部に比べれば不動産価格はまだ割安。それゆえに、天下茶屋は民泊オーナー注目の場所になっているのだ。「天下茶屋は狙い目」。民泊オーナーでサラリーマン投資家に民泊投資を指南している新山彰二氏は語る。かつての弊誌特集「不動産大革命」における豊洲のような裁定取引が起きている』、インバウンドや「関西国際空港」が、「不動産価格はまだ割安」の地域を生み出し、「裁定取引が起きている」とはやはりダイナミックだ。
・『「中華街にして、ここをもっといい商店街にしたい」  盛龍不動産の林氏は現在、あるプロジェクトに取りつかれている。動物園前一番街・二番街の北と南、そして商店街の東西に横浜中華街風の中華門を設置、商店街全体を中華街にするという「大阪中華街プロジェクト」だ。この計画を推進するため、林氏は仲間の中国人経営者とともに華商会という団体を設立した。世界のどこに行っても中華色に染め上げる華僑らしい発想だ。 「中国にこんな(アーケードがある)立派な商店街はない。中華街にして、ここをもっといい商店街にしたい」 もっとも、降って湧いた中華街構想に地元は困惑気味だ。「4月に華商会の人々と初めて協議した。東西南北に中華門を建てて一流の中華料理店を北京から呼ぶという話だが、どこまで実現性があるのか疑問。地元としては賛成できない」と飛田本通商店街振興組合の村井理事長は言う。 中華街構想のパンフレットを見ると、2025年に224億円の売上高が見込めると試算、著名中華レストランの参画もうたっている。だが、過去10年でカラオケ居酒屋が増えているといっても、もともと中国とは何の関係もない。地元が警戒するのは当然だろう。 隣接する飛田新地の飛田新地料理組合は中国人による買収を警戒して空き家だった近隣のビルを取得、防災用の備品を備蓄する防災会館に転換した。「彼らはかなりの高値で物件を買う。ここは統率が取れているが、(高値での買い占めに)周囲の人は恐れているのではないか」。飛田新地料理組合の徳山邦浩組合長は語る。 文字通り動かない不動産は基本的に立地が全て。そして、不動産を金融商品と捉えるのであれば、物件の特性に応じた利回りに収れんしていく。それは、過去20年の歴史が証明している。 急激な開発に対する地元の反発もあり、右肩上がりで不動産価格が上がるかどうかは定かではないが、高齢化が進み、釜ヶ崎が労働者の町からインバウンドの町に変わりつつある以上、西成は10年後には様変わりしているのではないか』、林氏の「中華街構想に地元は困惑気味」、地元にすれば無理からぬところだろう。「西成は10年後には様変わりしているのではないか」、どんなになるのだろう。
タグ:不動産 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 現代ビジネス (その5)(100均の家ついに登場 深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題、2022年 タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識、大阪・西成を買い占める謎の中国人) 山本 久美子 「100均の家ついに登場、深刻化する空き家の対処 空き家が増加する日本の見過ごせない課題」 空き家が問題になる理由は? 問題となるのは、「その他」の中でも、使い道が決まっていない、長期間誰も住んでいない空き家だ 空き家対策特措法の効果 空き家特措法で市町村に求めた「空家等対策計画」について、2019年3月末日時点で全市区町村の約6割(60.4%)となる1051団体が策定 「特定空家等」について、2019年3月末日までに市区町村長が1万5586件の助言・指導を実施 「全国版空き家・空き地バンク」 「100均空き家」にどんな意味があるのか 「空き家ゲートウェイ」 「100均空き家」 使い物にならないと諦めている、売りたいが値がつかないので不動産会社が扱わない、といった空き家を日本中から集めて、それを活用したいというユーザーとマッチングするプラットフォームになっている 資産価値のない物件が価値をもつ 売却価格100円といっても、売却時の諸費用などがかかるし、DIYやリフォームなどの改修も自分で行う必要 「2022年、タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか 不動産業界では暗黙の常識」 「修繕ラッシュ」が来た 築15年、400戸近いマンションに、現在の居住者は3割にも満たない。外壁に割れが目立ち、エントランス前は雑草が伸び放題になっている タワマン人気はピークにある デベロッパーにとってタワマンはまさに「打ち出の小槌」であり、いまだ根強いタワマン人気に応えるように、フロンティア開拓は進んでいる そんなタワマンブームに火が付いたのは2000年前後のこと。当時建てられた超高層マンションは早くも15~20年選手になろうとしているわけだが、ここにきて重大な問題が表面化してきた 類を見ないほどの大規模で高額な「修繕」をどうするか、ということだ 売り手はリスクを伝えない 住民の意見がまとまらない 総戸数600超の某タワーマンションでは、30年の修繕累計コストは50億円以上におよぶと見積もられている その間に見込まれる修繕積立金は半分にも満たない23億円 大規模修繕ができていないタワーマンションは次から次へと売りが出る可能性 タワマン。その姿はさながら「住む原発」といえる 「大阪・西成を買い占める謎の中国人」 西成は外国人観光客の増加で注目 西成のようにこれまで過小評価されていたような不動産も動き始めた 真っ昼間から大音量のカラオケが通りに響く 既に11店がカラオケ居酒屋 店を切り盛りしているのは片言の日本語を話す中国人女性 最近は新世界や天王寺界隈から流れるサラリーマンなどの2次会需要でにぎわっている 首都圏の759駅のマンション利回りを算出、それぞれの将来性を「AAA」から「C」の9段階で格付け この時に最高評価のAAAを得たエリアのひとつに江東区豊洲 利回りの取れる掘り出し物をさがせ カラオケ居酒屋をつくり、投資家に貸し出す 星野リゾートもホテルを開業へ 簡易宿所はバックパッカーシフトで大成功 「中華街にして、ここをもっといい商店街にしたい」 降って湧いた中華街構想に地元は困惑気味
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小売業(コンビニ)(その4)(24時間営業問題ほか)(「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由、コンビニ最強から一転 セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった、セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」 深夜閉店でもオーナーは増益) [産業動向]

小売業(コンビニ)については、5月15日に取上げた。今日は、(その4)(24時間営業問題ほか)(「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由、コンビニ最強から一転 セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった、セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」 深夜閉店でもオーナーは増益)である。

先ずは、流通ジャーナリストの森山真二氏が6月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/205871
・『コンビニの大量閉鎖時代は迫っているのか――。コンビニ大手3社の今期の新規出店数が近年にない低水準。「ついに飽和を迎えたか」との指摘も増えている。コンビニを追い込んだのは同じ看板同士が競合するカニバリ(自社競合)などがその要因に上がる。しかし、コンビニ包囲網を築いているのはそれだけではなさそうだ』、どういうことなのだろうか。
・『再び指摘され始めた「コンビニ飽和論」  「(ここ数年は)出店数を追い過ぎた」と話すのはほかならぬ、コンビニ最大手セブン-イレブン・ジャパンの親会社セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長だ。 井阪社長によれば今期は「意志ある踊り場」。新規出店を抑え出店方法を見直す。地区ごとに商圏を見極め、新店は初年度から高い日販を獲得できるように基準を設定していくという。 コンビニはかつて「飽和」といわれた時があった。2000年代初め頃だ。従来のたばこと缶コーヒー、高カロリー弁当という「男の店」のイメージから脱皮できず、女性客が取り込めずにいた。既存店の前年割れが続き、「コンビニ飽和論」が台頭した。 それをセブン-イレブンがシニアや女性客が購入しやすいように商品を開発して品ぞろえを変革、女性客の比率を高めていくことで打破。しかも、入れたてのコーヒーなどを提供することで、缶コーヒーとたばこのイメージを払拭した。 コンビニの父、セブン&アイの鈴木敏文最高顧問は「コンビニは変化に対応していけば飽和なんてことにならない」が口癖だったが、まさに変化に対応してコンビニは変身、現在のセブン-イレブンの位置を築き上げた。 しかし、今回ばかりはそうともいっていられない状況だ』、「二匹目のドジョウ」を見つけるのは難しいようだ。
・『セブン-イレブンはここ数年、毎年のように1000~1500店と大量出店してきたが、2020年2月期の新規出店数は前期の1389店より500店以上少ない850店、これに対し閉店数が750店あり純増数は100店にとどまる。 ファミリーマートやローソンも同じようだ。 ファミマの新規出店数が500店あるが、閉鎖が400店で純増数は100店だ。ローソンに至っては純増ゼロという。 新規出店することで成長しているイメージを作り出し、加盟店を確保してきたコンビニ大手としては大きな方針の転換だ。かつて新浪剛史ローソン元社長が「無理な出店を続ければ大きな閉店がある」と言ったことが思い起こされる』、大手でも軒並み年間純増100店とは時代も変わったものだ。
・『ドラッグストアや自社店舗のほかミニスーパーとの競合  コンビニをこうした状況にまで追い込んだのは巷間いわれているように、ドラッグストアなどとの競争や自社競合があるのは確か。自社競合もすでに、都市部では道路を挟んで向かい側に同じ看板のコンビニがあるということが珍しくない。 セブン&アイの井阪社長はそうした状況を考慮してか今期、出店地区の状況を精査して新店で高い日販を獲得するという。 しかし、コンビニに適した立地が少なくなっていることも事実であろう。あるとしても、日販(1店あたりの1日の売上高)が見込めないような立地だ。 コンビニは小商圏の王者としての位置を脅かされている。 というのも最近、総菜や弁当、コンビニ機能を取り込んでいるドラッグストアばかりではなく、コンビニのシェアをジワジワと侵食している業態があるからだ。 それは生鮮食品や総菜などをそろえた「ミニスーパー」だ。「ミニスーパーっていったって、そんなに店舗がないでしょ」という声も聞こえてきそうだし、まだ市場は黎明期といった様相だ。 だが、大手食品スーパーが相次いで出店し始めており、今後コンビニのライバルとして急浮上しそうなのだ。 ミニスーパーといえばイオンが始めた「まいばすけっと」が勢力を拡大しており、現在東京、神奈川などに700店を展開。今後2000店をメドに店舗数を引き上げる方針だ』、新業態による攻勢は、確かに厳しさを増しそうだ。
・『マルエツの「マルエツプチ」もジワジワと店舗数を増やしている。「まいばすけっと」が目指す2000店といえばコンビニの下位チェーンに匹敵し、侮れない存在となる。 しかも新顔のミニスーパーも出てきた。「ミニエル」「ポシェット」「フレッシュ&クイック」と聞きなれない店名だが、実は最近、続々出現したミニスーパーである。 「ミニエル」はアマゾンの「アマゾンプライム」で生鮮食品などを宅配することになったライフコーポレーションが展開するミニスーパーで、「ポシェット」は関西地盤の近商ストアが出店。また「フレッシュ&クイック」は東京、埼玉などで展開する東武ストアがオープンした。 立ち上がり始めたミニスーパー市場で衝撃的なのは、セブン-イレブンを展開するセブン&アイが「コンフォートマート」という都市型のミニスーパーを8月上旬に東京都品川区にオープンするということだ』、セブン&アイまでが都市型のミニスーパー設置に乗り出したとは、形振り構っていられないのだろう。
・『コンビニでもスーパーでもない新しいフードショップ  コンフォートマートは「コンビニでもない、スーパーでもない新しいフードショップ」をうたっており、店内調理の総菜を量り売りしたり、レジはほとんどがセルフレジ。デジタル化も志向するようだ。 コンフォートマートを運営するセブン&アイの子会社、フォーキャストの社長にはセブン-イレブンの執行役員を務めた有坂順一氏が就任、セブン-イレブン流の店作りが行われる可能性もある。 新顔の多くのミニスーパーが、店内調理で出来立ての総菜や焼き立てパンなどを導入した、もしくは導入する見通しとなっている』、消費者にとっては選択肢が増えるのは有難いが、増え過ぎると混乱を招く懸念もある。
・『大阪市にオープンしたライフコーポレーションの「ミニエル」はオフィス街にある。昼時に行ってみたが、会社員が弁当やパンなどを購入していく姿が目立った。当面、総菜の販売比率を40%にまで引き上げるのが目標という。 ミニスーパー市場は生まれたばかりといってよく、今後大きく発展するかどうかは未知数。「店内調理など重装備で、コンビニのようにシステム化された効率的な運営ができるのか」(あるメーカー)という指摘もある。 しかし店内調理に取り組んだり、出来立ての総菜や品ぞろえの豊富さを売りにしており、これにコンビニ機能を取り込んでくるようだと、コンビニチェーンにとって侮れない存在になることは間違いない。 小商圏で王者だったコンビニの競争相手として、ドラッグストアがシェアを侵食しているのは確かだが、新たな敵がもう1つ出現した形だ。 コンビニに飽き足らなくなっている層が、ミニスーパーを台所代わりに活用していくことも考えられる。これまで近くて便利がキャッチフレーズだったが、それはコンビニだけではなくなりそうなのである』、お互い大いに切磋琢磨してほしいものだ。
・『コンビニは再び「変革」を迫られている  セブン&アイの「コンフォートマート」のように、「スーパーとコンビニの隙間を埋める」という業態が今後、増えていきそうな勢いなのである。そして、コンビニからシェアを食って拡大するということになるのは間違いない。 ドラッグストアに侵食され、ミニスーパーに侵食されるコンビニは、これまでの大量出店ではなく、井阪セブン&アイ社長がいうように「既存店に力を入れる」ことが重要になるし、2000年代の初頭のように、もう一度、変革を迫られているといっていい。 果たして長時間営業の問題なども絡み今後、コンビニの閉鎖時代はやってくるのか。注目されそうである』、「既存店に力を入れる」といっても、これまでから力を入れていた筈なので、新業態との競争激化も踏まえると、なかなか難しそうだ。

次に、人間経済科学研究所・執行パートナーで国際投資アナリストの大原 浩氏が7月13日付け現代ビジネスに寄稿した「コンビニ最強から一転、セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65819
・『「7Pay」問題は人災である  「7Pay」の不正使用および、問題発覚後の責任者達の対応の不手際が取りざたされている。 特にセキュリティ分野を中心とした「7Pay」の欠陥は、突っ込みどころが満載だ。しかし、電子決済分野については筆者が執行パートナーを務める、人間経済科学研究所代表パートナーの有地浩が日本有数の専門家であるので、「7Pay」そのものについては、研究レポート「7pay騒動から学ぶべきはIDの大切さだ」などを参照いただきたい。 筆者は、この問題は、いわゆる「大企業病」に侵され、長期的展望を欠いたセブン&アイ・グループの経営陣によって引き起こされた「人災」だとみている。 「7Pay」の社長が「2段階認証」を知らずに記者会見でしどろもどろになり醜態をさらした。もちろんこの社長の資質には疑問符がつくが、そのような人物を「7Pay」の社長に就任させたセブン-イレブン、セブン&アイ経営陣の責任は重大だ。 しかし、それ以上に大きな問題が、セブン&アイ・グループの「劣化」である』、7Payの問題はこのブログの8月24日に取上げた。「セブン&アイ・グループの「劣化」」を具体的にみてみよう。
・『鈴木敏文のセブン-イレブンがグループを牽引してきた  セブン&アイ・グループのルーツは、イトーヨーカ堂にある。その名の通り、発祥は創業者伊藤雅俊の母親・伊藤ゆきの弟にあたる吉川敏雄が、現在の東京都台東区浅草に1920年に開業した「羊華堂洋品店」にある。 しかし、現在に至るまで、近年のセブン&アイ・グループの業績を牽引してきたのは間違いなくコンビニエンス・ストアのセブン-イレブンである。 セブン-イレブンそのものは1927年に米国で創業された。 日本での展開は、イトーヨーカ堂取締役の鈴木敏文氏が1973年に、周囲の反対を押し切り、セブン-イレブンを展開する米サウスランド社との厳しい交渉の末提携したのが始まりだ。株式会社ヨークセブン(のちの株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を設立し、自らは専務取締役に就任した。 翌1974年に東京都江東区に第1号店「豊洲店」を開業したのが加盟店オーナーの山本憲司氏であり、その後40年間で店舗数2万の巨大企業に成功させたのは「実質的創業者」の鈴木氏の功績である。 もちろん、イトーヨーカ堂のグループとして支援を受けてきたし、鈴木氏も元々はイトーヨーカ堂の社員ではあったが、1991年には、経営不振に陥っていたフランチャイザーである米国サウスランド社を買収し子会社化している。 また、2005年にセブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デニーズジャパンの3社で株式移転により持株会社・セブン&アイ・ホールディングス設立したが、これも当時の収益の状況を考えればセブン-イレブンによる他2社の救済という色彩がつよい。 つまり、鈴木氏が育て上げたセブン-イレブンの高い収益力が、周辺を潤してきたのである』、筆者の鈴木氏への思い入れはかなり強そうだ。
・『鈴木敏文切り離しの後遺症  鈴木氏が、セブン-イレブンを高収益会社に育てあげることができた背景には、ピーター・F・ドラッカーが述べるところの「マーケティングとイノベーション」を忠実に実践してきたことがある。 「マーケティング」は、米国でも日本でも「営業」や「アンケート調査」などと同義語になってしまったが、本来の意味(ドラッカーの意味するところ)は顧客ニーズを汲みとることである。 例えば、セブン-イレブンの商品力の強さは定評があり、コンビニ弁当では「セブン-イレブンが一番おいしい」とか「スイーツはやっぱり、セブン-イレブンだね」という評判をよく聞くし、筆者もそう思う。 また、ローソンなどの他社が有名俳優を使ったイメージ広告を行ったのに対し、セブン-イレブンは販売する商品の内容の訴求に徹した。顧客が求めているのは店の看板ではなく店頭に並ぶ商品であるからだ。 さらに、全都道府県制覇を早期に成し遂げたローソンに対して、セブン-イレブンは効率性にすぐれたドミナント戦略をしっかりと守り、最近やっと沖縄に進出を始めたほどだ。 これも、「全国制覇」などというものは、本部の自己満足に過ぎず、加盟店が求めるのは正確で効率の良い配送仕入れなどの物流体制だからだ。 「イノベーション」においても、他の小売り企業に先駆けて野村総研と二人三脚でPOSの開発・活用を先進的に行ったのは有名だし、比較的最近の2013年にもセブンカフェという画期的システムを導入している。 もちろん、セブン銀行(2001年に株式会社アイワイバンク銀行として設立)というATM専業銀行である画期的金融機関を成功させた手腕も忘れてはならない』、私が鈴木氏を評価していたのは、現場主義を標榜する経営者が多いなかで、データに基づいて仮説を立て、これを実験的に検証することを通じて経営変革を図ったことだ。ただ、それが限界に達していたことも事実なのだろう。
・『目先の利益の追求が悲惨な結果を招きつつある  つまずきは、2005年の3社統合に始まると思う。筆者は、この時、高収益会社のセブン-イレブンを親会社の都合で吸収合併し、株式を希薄化するという行為に憤りを感じた。これは、セブン-イレブンの株式を購入していた一般投資家に対する裏切り行為であるし、セブン-イレブンを手塩にかけて育てた鈴木氏の本意とも思えなかったからだ。 極めつけは、2016年の鈴木氏の「退任」である。 事の発端は、2016年2月15日に鈴木氏がセブン-イレブン・ジャパン社長の井阪隆一氏に対して退任を内示したことにある。いったん本人は了承したものの、その後、態度を変えたので、鈴木氏は3月に取締役候補の指名・報酬委員会を設置し、ここで社長交代を提案した。 しかし、当時のセブン-イレブンの業績が好調であったことから、同委員会委員を務めていた社外取締役の伊藤邦雄一橋大学特任教授及び米村敏朗元警視総監が反対する。 そのため、取締役会にかけたが、投票結果は賛成7票、反対6票、白票2票。結局、賛成が総数15票の過半に届かなかったため否決された 同日記者会見を開いた鈴木氏は引退を表明。「反対票が社内から出るようなら、票数に関係なく、もはや信任されていない」旨を述べた。賛成票の方が多かったのに潔く切腹するというまさに「武士の鏡」である。 社外取締役が「害多くして益なし」であることは、7月8日の週刊現代、井上久男氏による当サイト記事「『社外取締役』が、企業とこの国をダメにする」等でも述べられているが、本ケースでは創業家の視野の狭さも災いした。 前記記者会会見で、創業家の伊藤雅俊名誉会長との確執も示唆されたのだ。 7月2日に、クライスラーの元会長リー・アイアコッカ氏が亡くなり大きく報道されたが、彼が1978年に業績好調なフォード社を解任されたのは、創業家のヘンリー・フォード2世(創業者の孫)との確執が原因であった。 アイアコッカ氏がフォード自動車の花形として活躍することに、創業家の3代目のプライドを持つフォード2世が嫉妬したのは間違いないだろう。 しかしアイアコッカ氏は、フォード自動車を解任された後、つぶれかけであったクライスラーを見事に復活させ一矢を報いたのである。 鈴木氏の場合は、武士としての「二君に仕えず」の精神や、年齢から言って、ライバル会社に移らなかっただけでも幸いだ。 伊藤雅俊氏は、創業家ではあるが高齢であり、鈴木敏文氏のように「次世代」のビジョンを持たず、セブン-イレブンは自分が死ぬまで頑張ってくれればいいと思ったであろうことが、大惨事を招くことになる』、社外取締役や伊藤雅俊氏を説得できなかったのは、鈴木氏の判断に無理があった可能性もある。
・『セブン&アイはガタガタになっている?  鈴木氏から無能の烙印を押され退任を迫られた井阪隆一氏が続投していることが、セブン-イレブンの最大の問題だが、一般的にも概ね4年で交代する雇われ社長は、自分の任期の業績を最大化するために、費用が先行する将来を見据えた大型投資は避ける傾向にある。 例えば、鈴木氏が行った大胆なPOSの導入も、莫大な費用がかかるにもかかわらず成果が現れるのはかなり先のことであり、4年単位でものを考えるような雇われ社長には到底できない決断であった。 ドラッカーは、「新規事業」と「既存の収益事業」は完全に分離すべきだと述べているが、それは既存の収益事業から見れば、「将来収益を生むであろう」新規事業は単なる金食い虫にしか過ぎないからである。 鈴木氏は、その両者を融合させて大成功させる傑出した能力を持っていたが、凡庸な井坂氏にそのような手腕があるはずもなく、「オムニチャンネル」をはじめとする鈴木氏の心血を注いだ「イノベーション」に関する情熱をじゃけんに扱い現在の状況を招いた』、「オムニチャンネル」が「じゃけんに扱」われたのは、「オムニチャンネル」そのものにも問題があったためだろう。
・『サラリーマン社長に野武士は扱えない  セブン&アイのもう1つの大きな問題は「マネジメント」である。マネジメントの手法については7月11日の当サイトの拙稿「人工知能時代に生き残るのは、意外と『こんな上司』だった」の内容を参照していただきたいが、特に加盟店との関係において、一方的に問題を指摘するようなやり方は厳禁である。 そもそも、本部なるものは言ってみれば単なる「処理機械」であって、現場で売り上げを稼ぐ加盟店より偉いわけではない。ドラッカーに言わせれば企業(本部)は、例え営業部であってもコストセンターなのである。売り上げを与えてくれるプロフィットセンターとは、「顧客」だけなのだ。 コンビニチェーンにおいて、本部から見て売り上げを与えてくれる顧客は加盟店に他ならない。1号店から加盟店とともに辛苦を共にしてきた鈴木氏は、骨の髄までそのことが分かっている。 だから、加盟店の日販の数字を上げ彼らを豊にするために「イノベーション」を継続し、弁当・スイーツ類の試食でも鬼のようにダメ出しをして、品質を維持してきたのだ。 しかし、それも3年前の鈴木氏の退任で終わった。 今や、社長以下本部が自己保身に走る人間ばかりで、現場の士気も大いに低下しているであろう。 24時間営業の問題も、経緯を見ると、対応があまりにもずさんだ。筆者もコンビニにおける24時間営業の重要性は認識しておりやめるべきでは無いと思うが、加盟店の経営者も人間である。 保身に走る社長のもと、保身に走る担当者からの「私はちゃんと指導しましたから」と上司に言い訳をするための杓子定規な話が、疲労困憊している加盟店経営者を激怒させたことは想像に難くない。今回の問題は、加盟店が「野武士」の意地を見せたというわけである。 そもそも、24時間営業の問題はすべてのコンビニ共通なのに、セブン-イレブンがことさら取り上げられる状況になったのが、問題の根の深さを示している。 鈴木氏であれば、自ら加盟店を訪問し、膝を突き合わせて話をしながら、打開策を探るくらいのことはしたかもしれない』、最後の部分は鈴木氏ファンの筆者の空想に過ぎない。
・『収益性低下→先行投資もできなくなる  フランチャイズビジネスは、本来濡れ手に粟のビジネスである。 収益事業があるうちに、次の展開をつけなければならない。下り坂になってからではもう遅いが、残念ながらすでに下り坂に入っているのかもしれない。 「今さえ良ければ」というビジョンの無い人々が考えていた「今」が終わりつつあるのではないだろうか?』、「社長以下本部が自己保身に走る人間ばかりで、現場の士気も大いに低下しているであろう」、というのでは、「下り坂」を下りる一方だ。流れを変えるには、強力なリーダシップが必要なようだ。

第三に、8月29日付けダイヤモンド・オンライン「セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」、深夜閉店でもオーナーは増益」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/213239
・『深夜閉店を実施しても、オーナーの利益が必ずしも減るわけではない――。コンビニエンスストア業界2位のファミリーマートが深夜閉店の実験結果を公表し、業界を揺さぶっている。加盟店の約半数が時短営業を検討しているというアンケート結果もファミマは公表。「深夜閉店はオーナーの利益が減る」「時短営業を希望する加盟店は少数派」としてきた、業界王者セブンーイレブン・ジャパンの主張が覆されたことで、セブンの混乱に拍車をかけそうだ』、セブンの「主張が覆された」というのは興味深い。
・『減収でも減益になるとは限らないと結論 ファミマの半分の加盟店は「時短を検討」  コンビニを深夜閉店すると、店舗の売り上げは減少傾向になるが、加盟店オーナーの利益は前年を上回ったケースもあった――。 これは、コンビニエンスストア業界2位のファミリーマートが8月23日、都内で開いた加盟店オーナー向け説明会で明らかにした時短営業実験の結果である。 ファミマが希望する加盟店を募り、時短営業の実験をしたのは6~7月。毎日深夜に閉店する実験に参加したのは駅前、オフィス街、住宅地各1店、ロードサイド2店の計5店だった。 まず、店舗の売り上げは総じて減少傾向だった。とりわけ、住宅地の店は、閉店時間を午後11時~翌午前7時と他の実験店より長くしたこともあり、売り上げが大幅に減った。さらに本部から深夜営業の奨励金も支払われなくなった。 ところが、深夜の従業員が不要になったことで、加盟店が負担していた人件費が減った。オーナーの利益は、6月は前年を下回ったが、7月は増益となったのだ。 他の実験店も同様に、売り上げが下がり、深夜営業の奨励金がなくなる一方で、人件費の削減効果もあるため、オーナーの収益という視点でみると駅前店は2カ月とも増益。オフィス街の店は6月のみ増益、ロードサイドでは2店のうち1店が7月だけ増益だった。 実験結果を分析したコンサルティングファーム大手のKPMGは、この5店の実験について、売り上げは減少傾向だったものの「総収入(店舗の売り上げ)の増減と、営業利益(オーナー利益)の増減に一律の傾向はみられなかった」と結論付けた。 この他に、10店舗で毎週日曜日のみ深夜閉店する実験も並行して実施したが、こちらは売り上げ、オーナー利益ともに一律の傾向はみられなかったとしている。 ファミマはこの実験結果を、全国7会場で約800人のオーナーに説明した。8月23日の都内の説明会は報道機関に公開され、澤田貴司社長や加藤利夫副社長、KPMGの担当者らが出席し、「閉店時間中の冷蔵庫や照明の作動状況は」「深夜に働いていた従業員の雇用はどうしていたのか」といった、加盟店側からの20を超える具体的な質問に答えた。 結果を受け、ファミマは10~12月にかけて深夜閉店の実験を再度実施する計画だ。募集するオーナーは700人と規模を拡大。毎日と週1日の2パターンで深夜閉店の効果を検証する。 加えて、ファミマは6月に全国1万4848の加盟店向けに時短営業に関するアンケートを実施し、その結果を7月下旬に公表した(回答率は98.1%)。 その結果、時短営業を「検討したい」との回答が7039店、うち5193店が「週1日」ではなく「毎日」の時短を検討すると回答した。 時短を「検討しない」と答えた7106店のうち、その理由を「24時間営業に支障なし」と回答したのは1587店に過ぎず、「売り上げに対する影響がある」(3314店)、「店舗開閉作業に負荷がかかる」(1443店)といった理由があった。こうした課題が解消されれば、時短を検討するという潜在的な需要も考えられる。 これらの結果を踏まえれば、ファミマの加盟店の少なくとも約半数が時短営業を検討していること。そして、サンプルはわずかながらも、深夜閉店によって売り上げが減少しても、オーナーの利益が減少するとは必ずしも言えないということは明らかだ。 今回のファミマが公にした実験結果は、「深夜閉店をすればオーナーの利益は減る」としてきた業界最大手のセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の主張を揺るがす“爆弾”になる』、「時短営業の実験をしたのは」「5店」と少ないようだが、全店舗が対象の「時短営業に関するアンケート」で、「加盟店の少なくとも約半数が時短営業を検討」というのはインパクトが大きい。
・『「オーナーの収益確保」を理由に時短を否定 問われるセブンの“言い訳”の根拠  SEJの主張の根拠は、3月に都内の直営店で始めた深夜閉店の実験だ。ところがこの時は、深夜の閉店中にも関わらず、3人の従業員が作業を継続。「閉店中にどれだけ人件費をかけるのか」と、加盟店オーナーの顰蹙を買った。今回のファミマの実験では、閉店中の1店舗のオーナーや社員を除くアルバイト従業員の配置人数は、多い店でも平均で0.9人。0人の店も多かった。 セブン&アイ・ホールディングス(HD)の井阪隆一社長やSEJの永松文彦社長らは記者会見などの場で、「オーナーの収益を守らないといけない」と繰り返し、深夜閉店のメリットを躍起になって否定してきた。だが、店舗ごとの事情はあるとはいえ、ファミマの実験結果はこうした主張を覆した格好だ。 また永松社長は、ダイヤモンド編集部を始めとするメディアのインタビューの場で、「時短営業を求める加盟店は少数派だ」と再三にわたって強調。「実験をしている店、希望している店は全体の1%のレベル」と語ったこともあった。 ▽セブンの時短希望オーナーは“少数派”なのか 前社長の存在が“時短潰し”を後押し!?(だが、本編集部が以前にも指摘した通り、時短営業を希望する加盟店は、SEJの主張よりも水面下でははるかに多いとみられる。なぜなら、「経営指導員」(OFC)と呼ばれる加盟店の窓口になる本部社員や、その上司である各地区の責任者らが、加盟店の時短営業の希望を軒並み阻止してきたからだ。深夜の閉店中にも従業員を残すことを要求したり、特定の商品の納入を止めることをちらつかせたりして、時短実験への参加を断念させる”時短潰し”が横行しているのだ。 セブン-イレブンのある現役オーナーは、「地区の責任者が、嫌がらせのように2時間も3時間も店舗に居座って説得してきた」と怒りと共に振り返る。このオーナーは、約3カ月にわたる交渉の末に深夜の無人閉店実験にこぎつけたることができたが、「時短営業をしたいが、本部の圧力が怖くてできないと、他のオーナーから相談を受ける」と打ち明ける。 あるSEJの関係者は「前SEJ社長の古屋一樹氏を、代表権がないとはいえ会長に残したことで、社内に誤ったメッセージを放ってしまった」と嘆く。「人手不足はわれわれの加盟店にとって問題だという認識はない」などと昨年末に言い放ち、守旧派で知られた古屋氏は、24時間営業問題をめぐる加盟店の"反乱"を抑えられず、4月に引責辞任した。しかしその後も会長職にとどまったことで、一部の社員を"時短潰し"に走らせる理由になったとの見立てである。 全国2万店超のSEJの加盟店のうち、時短を希望し実験に参加している加盟店は、永松社長の語った「1%のレベル」である百数十店にとどまる。7000店超が時短を「検討する」としたファミマのアンケート結果とあまりに大きくずれている。 ちなみにSEJも、深夜閉店などの意向を加盟店に尋ねるアンケートを7月中旬に実施している。あるセブンのオーナーは、「自由記述欄があり、質問内容も充実した、しっかりしたものだった」と振り返る。ところが、このアンケート結果は未だに公開されていない』、「古屋氏は、24時間営業問題をめぐる加盟店の"反乱"を抑えられず、4月に引責辞任した。しかしその後も会長職にとどまったことで、一部の社員を"時短潰し"に走らせる理由になった」、とは酷い話だ。「深夜閉店などの意向を加盟店に尋ねるアンケート」、が未公表なのは、よほどSEJにとって不都合な結果が出たのだろうか。
・『ローソンは深夜営業の自動化実験をスタート 混乱続く王者セブンは方向性が見えない  そんな中、今年2月に自主的な深夜閉店を始めた大阪府東大阪市のセブンオーナーの松本実敏さんは、今度は日曜日を定休日とする考えを本部に表明した。松本さんは自身のツイッターで、日曜日の休業に踏み切った場合は加盟店契約を解除すると記された、本部からのものだとする文書の画像を掲載。「従業員不足は、(松本さんの)従業員さんに対する指導・教育が時代の変化にあっていない」「(松本さんが従業員に対し)研修中の給与未払い、レジの違算の補填など明らかな労働基準法違反行為を行った」と本部側は文書で指摘してきたという。 松本さんは本編集部の取材に対し、これらは労働基準監督署と相談の上で実施したことで、改善を求められたケースはそれに応じて来たと回答した。 8月27日にはSEJ幹部が松本さんの元を訪れて協議。幹部が加盟店の待遇改善に取り組む意向を示唆したことで、次の日曜日である9月1日の休業は“保留“した。松本さんは「加盟店全体への具体的な改善策やその公表期限は示されなかった。あくまでも保留だ」と話した。一般的に人手不足の深刻化と人件費の高騰を考えれば、24時間営業だけでなく年中無休の可否も十分に今後の課題となり得る。 また業界3位のローソンも横浜市内の加盟店の店舗で、深夜の間は、入店から会計までを客が“セルフ”で行う実験を8月23日から始めた。バックルームでは従業員1人がカメラで店内を監視し接客などは行わないが、今後無人化の可否も検討する。 コンビニ加盟店をめぐる苦境や問題の構造は各社で共通しているが、ファミマ、ローソンは少なくとも、なるべく客観的に状況を把握し、解決策を探ろうとする明確な姿勢は見て取れる。だが、王者セブンから漏れ伝わるのは、方向性を失った混乱の様子ばかりだ』、セブンが「混乱」を脱するのはいつになることやら・・・。経営混乱が業績にも影響が出てくるとすれば、大変だ。
タグ:セブン-イレブン ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 小売業(コンビニ) 森山真二 (その4)(24時間営業問題ほか)(「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由、コンビニ最強から一転 セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった、セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」 深夜閉店でもオーナーは増益) 「「コンビニ飽和論」が再び指摘され始めている理由」 再び指摘され始めた「コンビニ飽和論」 鈴木敏文最高顧問は「コンビニは変化に対応していけば飽和なんてことにならない」が口癖 純増数は100店 ファミリーマートやローソンも同じようだ ドラッグストアや自社店舗のほかミニスーパーとの競合 コンビニでもスーパーでもない新しいフードショップ セブン&アイが「コンフォートマート」という都市型のミニスーパー コンビニは再び「変革」を迫られている 大原 浩 「コンビニ最強から一転、セブン‐イレブンの「劣化」が止まらないワケ 鈴木敏文が去っておかしくなった」 「7Pay」問題は人災である 鈴木敏文のセブン-イレブンがグループを牽引してきた 鈴木敏文切り離しの後遺症 目先の利益の追求が悲惨な結果を招きつつある セブン&アイはガタガタになっている? サラリーマン社長に野武士は扱えない 収益性低下→先行投資もできなくなる 「セブンの主張覆すファミマ実験の「爆弾」、深夜閉店でもオーナーは増益」 ファミリーマートが深夜閉店の実験結果を公表 深夜閉店を実施しても、オーナーの利益が必ずしも減るわけではない―― 加盟店の約半数が時短営業を検討しているというアンケート結果もファミマは公表 セブンーイレブン・ジャパンの主張が覆された 減収でも減益になるとは限らないと結論 ファミマの半分の加盟店は「時短を検討」 「オーナーの収益確保」を理由に時短を否定 問われるセブンの“言い訳”の根拠 ローソンは深夜営業の自動化実験をスタート 混乱続く王者セブンは方向性が見えない
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外食産業(中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由、スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない、いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由) [産業動向]

今日は、外食産業(中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由、スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない、いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由)を取上げよう。

先ずは、2月1日付けダイヤモンド・オンラインが東方新報記事を転載した「中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/192631
・『中華料理の世界が今、新たな変化を見せている。ここ数年、中国で創業した飲食チェーンが、次々と日本市場に参入しているのだ。中国語と日本語の2ヵ国語で新聞を発行している『東方新報』が2つのチェーンを取材、中華料理の最前線を追った』、興味深そうだ。
・『中国で創業したチェーンが相次いで日本に進出  一昔前、海外に散らばった中国人の職業は、「三把刀(3本の刀)」といわれていた。これは、ハサミを使う裁縫、やはりハサミを使う散髪、そして包丁を使う料理だ。 そのうち、料理人が手掛ける中華料理は日本で100年以上の歴史があり、広東省や福建省、台湾出身の華僑が日本に持ち込んだといわれている。 彼らは、日本で弟子を募って育て、弟子たちは自立して自分たちの店を持つようになる。そしていつしか日本では、中華料理がいつでもどこでも食べられるようになった。 そんな中華料理の世界が今、新たな変化を見せている。ここ数年、中国で創業した飲食チェーンが、次々と日本市場に参入しているのだ。その結果、日本の中華料理は「モデルチェンジ」と「アップグレード」の新時代に突入している』、世界中、どこへ行っても中華料理の店はあり、かつて海外出張し際には重宝させてもらった。「中国で創業した飲食チェーンが、次々と日本市場に参入している」、というのは楽しみだ。
・『「現地化」と「消費体験」進める火鍋チェーン店が日本市場に参入  そのうち、海火鍋チェーン店「海底撈(ハイディラオ)」は1994年に創業して以降、大発展を遂げた。船に例えるなら、「飲食業界の巨大空母」といっていいだろう。2017年末現在、世界100都市に300店舗以上の直営店を構え、スタッフは5万人以上、年間のテーブル利用回数はのべ1億席にも及ぶ。 12年に初の海外店舗としてシンガポールにオープン、その後、米国、オーストラリア、韓国、日本と立て続けに20店舗をオープンさせた。 『東方新報』の取材に応じた海底撈の張航社長は、「消費者からの評価と支持を得て、日本に進出以来、各店の回転率は1日平均4回転、18年9月現在、各店の来店者数ものべ30万人以上となりました」と話す。 強さの秘密は、「現地化」と「消費体験」だ。 火鍋のもと(スープ)など、一部食材は中国の本部から送るというが、それ以外のものは全て現地、つまり日本で買いつけているという。 「日本に『郷に入っては郷に従え』という言葉があるでしょ。日本で出店する上で、できる限り日本人の好みに合わせようと考えてメニューを開発して提供しました。そのため、材料は日本で調達しています。そうすることで、1人でも多くの日本の消費者を魅了させていきたいと考えてきました」(張社長) ショーやイベントも海底撈の特徴だ。日本の店舗では、「麺打ちパフォーマンス」を始め、一瞬でお面が変わる中国の伝統芸能「変面」のショーといったイベントを開催している。 そうしたパフォーマンスにしても、「単に行うだけでなく、複数の料理人で競わせたり、来店客も参加できるようにしたりして、来店客の“消費体験”を高めていくことにしている」というのだ』、なるほど。
・『一方で、いい業績を残すためには、いい管理体制なくしては語れない。張社長によると、国内外含めた全店舗を直営にし、法務や財務、店舗拡大戦略といった管理部門の全てを本部で統括する体制を取っているという。 後継者育成にもこだわりがある。 「各国で1号店を出すときには、必ず中国人の店長を抜てきする。だが、2号店、3号店と店舗を拡大させる場合には、新しい店舗を出店できるようになるまで師匠が弟子の面倒を見る『師弟制度』を取っている」(張社長) 料理人や接客スタッフなどの選考については、「現地の状況を踏まえた上で、現地スタッフを雇うか、それとも中国人スタッフを派遣するかを考える」と話す。しかし、各地域の店舗のほとんどが現地スタッフで運営され、具体的な業務ポジションは各店舗の運営状況によって決められているようだ。 このように現地化した海底撈は、日本に根づき始めているが、最近では口コミサイトやインフルエンサーによって火がつき、さらに人気を博している』、「各地域の店舗のほとんどが現地スタッフで運営され、具体的な業務ポジションは各店舗の運営状況によって決められている」、という現地化はさすがだ。
・『ミシュラン1つ星レストランが本場の味で香港グルメの風を吹かす  「われわれのターゲットは、本場の味を好むお客さま」 そう語るのは、国内外で中華料理レストランを展開するレストランチェーン「WDI」の清水謙社長だ。18年4月、香港でミシュラン1つ星に輝くレストラン「添好運(ティム・ホー・ワン)」を、東京の日比谷にオープンさせた。 現在、添好運はすでにシンガポール、フィリピン、タイ、インドネシア、マレーシア、オーストラリアなどにも店舗を構え、日本も含めた多くの国に“香港グルメの風”を吹かせている。 清水社長によると、添好運との出会いは8~9年前。海外出張時に、飛行機の機内雑誌に載っていた記事を読んだのがきっかけだったという。当時、創業者である麦桂培シェフは、4年連続でミシュラン3つ星を獲得していたレストランから独立し、添好運をオープンさせたばかりのころだった。 「その記事を見て『添好運』に興味を持ち、実際に香港のお店に行きました。予想通り料理はとてもおいしかった。そこで、2人のシェフに尋ねたのです。『添好運を海外に出店させる気持ちはないか』と。しかし、彼らの答えは、『すでに、あるシンガポール企業と提携し、アジア圏における経営権を渡してしまった』だったんです」(清水社長)。 壁にぶち当たった清水社長は、一度日本に戻り、作戦を練ってから再び香港へ向かった。そして改めて麦シェフに、「どうあっても添好運を海外展開させたい」と、強い気持ちをぶつけたという。 そのかいあって清水社長は、米国とヨーロッパにおける経営権を得ることができた。 「2年前にニューヨーク店を開店させ、その後、アジアで経営権を持っていたシンガポール企業と交渉、彼らの許可によって日本の経営権を得たことで、ようやく日本で開店することができたのです」(清水社長) メニューを決める上で、清水社長はもともとのメニューの中から日本人が好みそうなものを選択するが、味つけの調整はしない。本場の味を楽しんでほしいと考えているからだ。 こうして出店した添好運が、なぜオープンからわずか数ヵ月で行列の絶えない爆発的な人気店となったのか。この質問に対し清水社長は言う。 「100人の日本人がいて、おそらく60人くらいが日本風味の食べ物を好むだろう。残りの40人は海外旅行経験などあって、外国の食べ物を好む人たちだ。もちろん、60人の中にも海外経験者はいると思うが、ただ『日本は最も安心な国』だと考えている人たちだ」。 そしてこう続ける。「日本は島国だからそんな人たちが過半となっているが、私たち添好運がターゲットとしているのは60人の方ではなく、40人の方なのです。60人の方には苦手という人もいるかもしれないが、彼らは私たちの顧客ではないからそれでいいんです。たとえ40人と少なくても、熱烈なファンになってくれれば、リピーターとしてまた店に来てくれるわけですから」』、清水社長の「日本の経営権」取得の粘りや、ターゲットを「本場の味」に絞ったやり方は大したものだ。
・『中国国内でも大変化 地域の料理を集約した系統料理へ  このように、日本における中華料理も変化しているが、本場、中国国内に目を向けても、ここ10~20年の間で大きな変化が起きていた。 以前の料理人は、東北出身の料理人であれば東北料理を、山東出身の料理人なら山東料理を、といった感じで、それぞれの地域の料理を作ってさえいればよかった。しかし、経済発展に伴って料理人たちの流動化も進んだ結果、中華料理は各地の料理を融合させた「系統料理」(北京料理、四川料理など中国八大料理)として発展した。 そうした流れが加速、結果的に料理人の出身地がどこであっても、料理人は中国各地の料理はもちろん、系統料理が作れるようになった。そうした料理人たちが来日したことで、日本に系統料理が“輸入”され、日本においても中華料理は新たな発展を遂げたのだ。 日本における中華料理も今後、こうした系統料理が中心となっていくことだろう』、「系統料理」とは初耳だが、新な発展とは今後が楽しみだ。

次に、経済評論家、百年コンサルティング代表の鈴木 貴博氏が6月15日付け東洋経済オンラインに寄稿した「スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/286377
・『相次ぐフードチェーン店の大量閉店、各社の事情  アメリカから黒船のごとく上陸して一時は日本でも熱狂的な支持を得たフードチェーン店の大量閉店が相次いでいます。最近ではバーガーキングが5~6月で23店舗を閉店することになりました。サンドイッチチェーン世界最大手のサブウェイも過去5年間で200店規模のお店を閉めています。一昔前にはあれほどの長蛇の列ができていたクリスピークリームドーナツも店舗戦略を改めて、新宿駅にあった1号店はすでに2017年で閉店しています。 3つのチェーンの閉店理由は、おのおのの特別な事情が背景にあります。しかし、一段掘り下げると、実は深層レベルではアメリカの有力チェーン店が克服しなければならない共通の問題が存在していたことが見えてきます。日本市場にはどのような落とし穴が潜んでいるのでしょうか。各社の事情を見ながら、有力チェーンの参入を妨げる魔物の正体を探っていきましょう』、「有力チェーンの参入を妨げる魔物の正体」、とは興味深い。
・『バーガーキングは国内99店舗のうちの6月末までに計23店舗を閉店します。もっともバーガーキングを運営するビーケージャパンは、今回の閉店をスクラップアンドビルド戦略の一環と説明しています。今後の成長が望めない店舗を閉店する一方で、今年の下半期までに20店舗の新店舗を開店する計画。それはそうなのかもしれませんが、過去、バーガーキングは何度も苦境を迎えていて、閉店と再チャレンジを繰り返してきています。 バーガーキングは1993年、「アメリカでマクドナルドに急接近する第2位のハンバーガーチェーンだ」という話題とともに西武グループの招きで日本に上陸しました。バブル崩壊後に西武グループの流通ビジネスが整理を行うことになり、バーガーキングの日本での経営権はJTが引き継ぐのですが、結局は業績不振で2001年に日本から撤退します。 2006年にロッテリアが企業支援ファンドのリヴァンプと組んで日本再上陸を試みます。この再上陸でもかなり力を入れて展開を試みたのですが期待したようには業績は伸びず、2010年に韓国のロッテリアに経営権を1400ウォン(約100円)で譲渡します。その後ライバルのマクドナルドが不祥事で業績を下げる中でも事業拡大は見込めず、2017年に香港の投資会社アフィニティ・エクイティ・パートナーズへと経営権が移ります。 今回は経営権が新しくなった中でのスクラップアンドビルドなので計画通り新店舗への投資は実施されると思われますが、バーガーキングがアメリカ本社の思うほど日本で業績を伸ばせていないという状況はこれまで一貫しています。 バーガーキングが苦しんでいる理由はマクドナルドが低価格戦略で成功している市場で、消費者から見てそれほど大きな違いのないバーガーキングがプチプレミアムと呼ばれるやや高めの価格を維持しようとしていることに問題があるといわれています。この点について一段深く掘ると、もう少し複雑な事情が見えてくるのですが、まずは他のチェーンの事情も見てみましょう』、バーガーキングの日本側スポンサーの目まぐるしい変遷は、驚くべきものだ。ただ、「23店舗を閉店・・・今年の下半期までに20店舗の新店舗を開店」、というのはまだ「スクラップアンドビルド」の段階のようだ。
・『バーガーキングと比較するとサブウェイの大量閉店はより深刻です。つい先月も首都圏で20店舗を運営していた大手フランチャイズ運営企業が破産宣告を受けるなど、フランチャイズ側も儲からない。一方で日本法人も赤字が続き、投資をする体力が落ちてきています。ピークといわれた2010年代中盤から見ると200店舗規模での店舗閉鎖が起きています』、本当に深刻なようだ。
・『3社の乗り越えられていない課題とは?  かつてサブウェイは「その場で作る健康的なサンドイッチチェーン」として日本でも急速に店舗数を増やしました。ちなみにサブウェイは世界的には店舗数がマクドナルドを上回る世界最大のチェーン店で、世界で約4万4000店を展開しています。日本では1992年の上陸以降、「野菜のサブウェイ」のスローガンを打ち出し店舗数は急拡大。健康に気遣う女性を中心に業績を伸ばしました。 しかしその売り上げの大半がランチタイムに集中するという弱点があって、かつ、手作りである分オーダーから製品提供まで時間がかかるといった事情もあり、ほかにも健康を標榜する競合が台頭する中で、サブウェイからゆっくりと顧客離れが進んでいきました。価格帯としてはバーガーキング同様にプチプレミアム価格だったことで、ランチタイムの女性需要以外の新需要が開拓できなかったことがマイナスに働いたといわれています。 クリスピークリームドーナツはバーガーキングと同時期に同じロッテリアとリヴァンプが手を組んで日本に上陸しました。1個160円の軽くて甘いオリジナルグレーズドというドーナツが大人気となり、1号店となった新宿サザンテラス店には2時間待ちの長蛇の列ができ、大きな話題を呼びました。このオープン時の熱狂が後の反動減につながったといわれています。全国64店舗まで拡大したあたりをピークとして、店舗数も縮小を始めます。こうして2015年以降、全国で20店舗が閉店されていきます。 2016年にはあれだけ人気だった新宿の1号店も閉店が決まりました。クリスピークリームドーナツはこの一連の大量閉店を戦略転換だと言っています。行列のできる店から、長く愛される店へと転身を図る中で大型店を閉鎖する一方、小型で居心地のいいお店を増やしていく。新宿エリアでは新しい新宿のランドマークになった東宝のゴジラビルの直下にそのような新店舗が開店しています。 さて3つのチェーンの閉店の事情はこのようにそれぞれ違います。しかし事情は違ってもそれぞれにある共通点があるということが今回の記事のポイントです。 アメリカで大成功して、そのコンセプトで日本に上陸して、日本でも当初は歓迎される。しかしプチプレミアム価格帯であることが途中でマイナスに働くようになり、やがて需要が減少していく。起きてきた事象を見てみると、よく似たことが3つのチェーンとも起きています。そしてその後ろには、ある魔物が存在している。ここが3社の乗り越えられていない課題です。 アメリカから上陸した他の有力チェーンでは、この3社のような罠に陥らずに成功している飲食チェーンも存在しています。いちばん目立つのはスターバックスコーヒーでプチプレミアム戦略が功を奏して高収益チェーンの象徴といわれるほど展開がうまくいっています。では大量閉店の3社は何が違ったのでしょうか? 実は3社のチェーンはどれも、アメリカで成功したコンセプトが日本市場に文化として受け入れられていない。ここが共通の深層要因であり、乗り越えられていない魔物の正体です。 バーガーキングがなぜアメリカで成功したのか。その理由はマクドナルドとよく似たメニューをそろえながら、調理の際に網焼きにすることで余計な脂を落として調理したことです。ハンバーガーというジャンクフードを調理のプロセスで少しだけ健康によい食べ物に変えたという点が、そもそものバーガーキングの成功コンセプトです。 アメリカではこのことがCMで強調されていて、全米の父母が「ハンバーガーを食べに行きたい」という子どもを連れて行く店として、マクドナルドよりもバーガーキングを選択した。それがバーガーキングのそもそもの成長の原動力でした』、バーガーキングが「ジャンクフードを調理のプロセスで少しだけ健康によい食べ物に変えた」、というのは私も知らなかった。
・『スターバックスがなぜ日本であれだけ成功したのか  ところが日本のバーガーキングは最初の上陸から20年以上が経つのに、この特徴を日本市場できちんと伝えていません。結果、子どもの顧客は少ないまま。そしてジャンクフードが好きな顧客はマクドナルドに流れ、健康的なハンバーガーが好きな顧客はフレッシュネスバーガーに流れるという形で顧客を奪われ、市場の中でなぜ存在しているのか消費者にもよくわからない。中途半端な存在になっているのです。 サブウェイはそもそもアメリカでは「サンドイッチを夕食としても食べる文化がある」という前提で成長した企業です。細長いパンを真ん中で半分に切ったサイズがランチ用、パン一本分のサイズがディナー用というのが本来望ましい食べ方です。しかしこのコンセプトが日本市場に根付いていない。日本ではあいかわらずサンドイッチは昼食で食べるメニューのままです。 結果売れるのはランチの女性向け需要だけ。その日本市場特有のニーズに20年間フォーカスしすぎて、文化を変えられていない。それ以外の時間帯の需要が創造できていない。しかも男性にとっては量がちょっと物足りない。男性を捨て、夕食を捨てればアメリカの4分の1の業績になるのは当然です。 厳しく言えば、サブウェイは日本の文化を変える投資を27年間怠ってきた結果、本来の強さが刺さらない市場で戦い続けるという苦しい状況を自らが招いてしまっているのです。 クリスピークリームドーナツはアメリカではとても甘くてふわっとしていて「いくつも食べたいドーナツ」を提供し、それを「1ダースを標準サイズとして家に持ち帰る」というコンセプトで伸びた会社です。当初は日本でもこのコンセプトは受けましたが、現在では甘さを抑えたドーナツを開発し、小さな店舗で少ない顧客を相手にビジネスを行っている。これが悪いとは言いませんが、アメリカでウケた成功コンセプトが日本市場向けに変質しているという点では課題は他の2社と共通しています。 スターバックスコーヒーがなぜ日本であれだけ成功したのか。それはアメリカで成功したコンセプトからぶれていないからです。 そもそもアメリカで成功したコンセプト自体もそれまでのアメリカ市場の文化を変えたところから始まっています。イタリアで栄えている、そしてアメリカにはなかったエスプレッソコーヒーの香りと味を愉しむコーヒーショップをシアトル発で展開したい。そうやってアメリカの文化を変えることで成功し、日本でもそれまでの日本の喫茶店文化を変えることでスターバックスは大成功を収めてきました。 アメリカであれだけ成功しているチェーンであるということは、そのコンセプトにはそれだけの強みが存在していることを意味しています。それはどのチェーンにとっても共通点です。しかしこれらの3社はそのコンセプトに投資して、日本の文化を変えていくことに力を入れてこなかった。そのようなチェーンが今、大量閉店を招いているように私には見えるのです』、スターバックスコーヒーが「アメリカにはなかったエスプレッソコーヒーの香りと味を愉しむコーヒーショップをシアトル発で展開したい。そうやってアメリカの文化を変えることで成功」、確かに、文化を変えるほどの強みがないと、定着は難しいようだ。

第三に、8月19日付けダイヤモンド・オンライン「いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/211256
・『・・・今年に入り業績に黄信号 出店拡大による弊害が原因  破竹の勢いで成長してきた「いきなり!ステーキ」が、ついにつまずいた。 運営するペッパーフードサービスは6月、2019年12月期の営業利益を従来予想の55億円から20億円へと大幅に下方修正することを発表。通年の出店計画も210店から115店に減らすなど、成長に急ブレーキがかかった。 いきなり!ステーキといえば、“手軽に食べられる厚切り肉”という売りが消費者の胃袋をつかみ、ここ数年注目を集めてきた。高原価率の商品を提供する一方、客席の回転率を高めることで利益を生み出すという特徴的なビジネスモデルを持つ。 そんないきなり!がなぜ苦境に立たされているのか。 最大の原因は、同店の特徴であった急成長そのものが裏目に出ていることだ。 いきなり!は、1号店を開店して以来わずか6年弱で約500店舗まで拡大。昨年は1年間で200店も出店し、外食業界では常識外れのスピード出店を続けてきた。 だが、その急展開に中身が追い付かなかった。 弊害の一つが自社競合だ。特に、ここ最近力を入れてきた郊外エリアでは店舗の商圏を狭く見積もるなど想定が甘く、自社の店舗同士で客を奪い合う結果となった。 さらに、人材育成にもほころびが生じた。清掃や接客といった店舗サービスの質が悪化したことで、消費者の離反を招いたのだ。 実は、こうしたニュースの動きも、PLと決算数値を使って読み解くことが可能だ。 まず、19年の業績予想を見ると、企業規模を表す売上高自体は右肩上がりに成長しており、一見好調そう。ところが、肝心のもうけの大きさを表す営業利益率は急落しているのだ その要因は、新店以外で集計される「既存店売上高」が落ち込んでしまっているせいだ。 そもそも、営業利益は、売上高から原材料費(売上原価に含まれる)や、人件費・店舗の賃料(販管費に含まれる)といった費用を引いたものであるが、人件費や賃料は固定費と呼ばれ、売り上げが悪くても必ずかかってしまうもの。 つまり、売上高が下がれば相対的に固定費の負担は重くなり、営業利益は必然的に悪化するというわけだ。店舗数が増えたことで決算書上の売上高がいくら増えても、既存店の業績が悪化してしまえば本末転倒なのである。 この新店効果を除いた既存店売上高の動向は、出退店のサイクルが比較的速い外食業界では、企業の実力を反映する数値として決算書の数字と同じぐらい注視される。決算説明資料などに必ず前年比の推移が掲載されているので、分析するときは要チェックだ。 さらに、この間の店舗増加数を追ってみると、18年4月以来、既存店売上高前年比100%割れが続いているが、その直前から月に10店舗を超える出店を続けており、出店拡大と既存店の落ち込みがリンクしていることも分かる。 出店攻勢が既存店の業績に悪影響を与え、PLの利益水準を落とす。これが、同社の不調の構図だ。 「この人手不足の時代に、大量出店すること自体大きなリスクとなっている」と、ある外食アナリストが指摘するように、いきなり!の不調はある意味必然の結果だ』、記事は国内中心だが、海外はもっと悲惨だ。6月15日付け日経新聞によれば、「いきなり!の親会社のペッパーフードサービスは、米ナスダック取引所に上場廃止を申請した。米国内11店舗のうち7店舗を閉鎖、一部店舗は業態転換。2018.12期決算では米国事業不振で25億円の損失を計上」とのことだ。ステーキの本場に殴り込みをかけると意気込んでいたが、とんだ返り討ちに会ったものだ。
・『実は、全く同じ状況にあるのが、焼き鳥チェーンの鳥貴族だ。 「298円均一」でおなじみの同社も、ここ数年メディアへの露出の効果などで注目を浴びてきた。 だが、こうした露出の効果による一時的な客数の増加を「実力」と読み誤った結果、新規出店を加速。既存店の近隣などに出店したものの、いきなり!と同じく自社競合を招く結果となり、既存店の売り上げを痛めた。 さらに、鳥貴族の場合、17年10月に行った280円均一からの値上げもダブルパンチとなった。元々、競合と比べてお得さで人気を博してきた同社だけに、値上げによって価格に敏感な消費者から敬遠されたのが痛手となった。 現在は、新規出店を一時停止。店舗網の再構成やブランド強化などで既存店の回復に努めている。 成長を目指し店舗の拡大を狙うのはもっともなことだが、両社に共通するように、そのスピード感と既存店の維持とのバランスを保つことが、外食企業にとっては生命線となるのだ。 ところで、同じく近年メディアへの露出などで話題を集め、順調に拡大している居酒屋チェーンの串カツ田中はどうだろう。同社は、長期目標として「全国1000店体制」を掲げるが、店舗増加数は安定しており、既存店売上高も平均的に増加している。 昨年6月に導入した全席禁煙化の反動が影を落とすなど別の不安材料はあるが、少なくとも、こうした安定的な出店ペースを維持することが、「1000店」を達成するための一つの鍵となることは間違いない』、「既存店の近隣などに出店」するというのは、恐らく商材の配送、ドミナント戦略などを考慮してのことなのだろうが、反面で「既存店」の苦戦は当然、予想されたことだ。ますます深刻化する人手不足のなかで、外食企業の生き残り戦略が注目される。
タグ:外食産業 クリスピークリームドーナツ 東洋経済オンライン 日経新聞 ダイヤモンド・オンライン 串カツ田中 鈴木 貴博 (中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由、スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない、いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由) 東方新報 「中国発「中華料理チェーン」が相次いで日本進出し大人気を博す理由」 中国で創業したチェーンが相次いで日本に進出 一昔前、海外に散らばった中国人の職業は、「三把刀(3本の刀)」といわれていた 中国で創業した飲食チェーンが、次々と日本市場に参入 日本の中華料理は「モデルチェンジ」と「アップグレード」の新時代に突入 「現地化」と「消費体験」進める火鍋チェーン店が日本市場に参入 海底撈 2年に初の海外店舗としてシンガポールにオープン、その後、米国、オーストラリア、韓国、日本と立て続けに20店舗をオープン 強さの秘密は、「現地化」と「消費体験」 ショーやイベントも海底撈の特徴 各国で1号店を出すときには、必ず中国人の店長 2号店、3号店と店舗を拡大させる場合には、新しい店舗を出店できるようになるまで師匠が弟子の面倒を見る『師弟制度』を取っている 各地域の店舗のほとんどが現地スタッフで運営され、具体的な業務ポジションは各店舗の運営状況によって決められている ミシュラン1つ星レストランが本場の味で香港グルメの風を吹かす レストランチェーン「WDI」 米国とヨーロッパにおける経営権を得ることができた 中国国内でも大変化 地域の料理を集約した系統料理へ 「スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない」 バーガーキングは国内99店舗のうちの6月末までに計23店舗を閉店 スクラップアンドビルド戦略の一環 今年の下半期までに20店舗の新店舗を開店 バーガーキングは何度も苦境を迎えていて、閉店と再チャレンジを繰り返してきています マクドナルドが低価格戦略で成功している市場で、消費者から見てそれほど大きな違いのないバーガーキングがプチプレミアムと呼ばれるやや高めの価格を維持しようとしていることに問題 サブウェイの大量閉店はより深刻 3社の乗り越えられていない課題とは? アメリカで大成功して、そのコンセプトで日本に上陸して、日本でも当初は歓迎される。しかしプチプレミアム価格帯であることが途中でマイナスに働くようになり、やがて需要が減少していく ある魔物が存在 アメリカで成功したコンセプトが日本市場に文化として受け入れられていない。ここが共通の深層要因であり、乗り越えられていない魔物の正体 スターバックスがなぜ日本であれだけ成功したのか アメリカにはなかったエスプレッソコーヒーの香りと味を愉しむコーヒーショップをシアトル発で展開したい。そうやってアメリカの文化を変えることで成功し、日本でもそれまでの日本の喫茶店文化を変えることでスターバックスは大成功を収めてきました 「いきなり!ステーキと鳥貴族の業績に急ブレーキがかかった理由」 成長に急ブレーキ 1号店を開店して以来わずか6年弱で約500店舗まで拡大 弊害の一つが自社競合 店舗の商圏を狭く見積もるなど想定が甘く、自社の店舗同士で客を奪い合う結果 人材育成にもほころび 親会社のペッパーフードサービスは、米ナスダック取引所に上場廃止を申請 米国内11店舗のうち7店舗を閉鎖 2018.12期決算では米国事業不振で25億円の損失を計上 全く同じ状況にあるのが、焼き鳥チェーンの鳥貴族だ 値上げによって価格に敏感な消費者から敬遠されたのが痛手 スピード感と既存店の維持とのバランスを保つことが、外食企業にとっては生命線
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医薬品(製薬業)(その2)(「キムリア」の薬価3000万円超でも保険財政は破綻しない、武田薬品「ホワイト企業認定返納」のお粗末な一部始終 内部資料を入手、医師と製薬マネーのあまり表には出ない大問題 法制化も罰則もなく自主規制に頼る寒い現状、日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳 メディシノバの岩城裕一社長兼CEOに聞く) [産業動向]

医薬品(製薬業)については、3月15日に取上げた。今日は、(その2)(「キムリア」の薬価3000万円超でも保険財政は破綻しない、武田薬品「ホワイト企業認定返納」のお粗末な一部始終 内部資料を入手、医師と製薬マネーのあまり表には出ない大問題 法制化も罰則もなく自主規制に頼る寒い現状、日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳 メディシノバの岩城裕一社長兼CEOに聞く)である。

先ずは、5月15日付け日経ビジネスオンライン「「キムリア」の薬価3000万円超でも保険財政は破綻しない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/051500349/?P=1
・『高額医薬品として注目されていたスイス製薬大手ノバルティスの遺伝子治療薬「キムリア」(一般名:チサゲンレクルユーセル)の国内での薬価が1回の投与で3349万3407円に決まった。厚生労働省が5月15日に開催した中央社会保険医療協議会で、原価計算方式に基づいて算出した案が了承された。5月22日に保険適用され、施設基準を満たした医療機関において治療が受けられるようになる。 キムリアは患者の免疫細胞を取り出して、がん細胞に対する攻撃力を高めるために特殊な遺伝子を導入した後、細胞を増やして患者の体に移植するという製品だ。米国で2017年9月に世界で初めて承認され、日本でも2019年3月に厚労省が承認していた。 臨床試験では、通常の治療では治らなかった難治性の白血病やリンパ腫などの血液がんに対して高い有効性が確認されている。ただし、一定の割合で効かない患者がいるほか、非常に重篤な副作用が生じる場合があることが分かっている。 一方、品質や安全性を確保するために、細胞の製造は特殊な施設において様々な先端技術を動員して行わなければならず、薬価はどうしても高くなる。しかも、米ニュージャージー州にある製造施設で製造しているため、薬価を決めるのには運送コストなども考慮する必要がある。 米国ではあるタイプの白血病に対しては、治療1カ月後の効果に基づいて47万5000ドル(約5200万円)を請求するという、成功報酬払いの薬価が設定された。ちなみに、リンパ腫と呼ばれる別の血液がんにも承認されているが、こちらは37万3000ドルの価格設定で、成功報酬方式ではない。こうしたことから日本での薬価がいくらになるかが注目されていた』、興味深そうだ。
・1回の治療で治る人は治る  日本で承認されたのは、米国と同じく、あるタイプの白血病とあるタイプのリンパ腫に対してだが、2つの疾患に対する薬価は同額。成功報酬払いではない。また、治療のためには医療機関で細胞を採取し、製造施設で細胞を加工して製品を製造した後、再び医療機関で細胞を移植する必要がある。このため、医療機関での技術料として、採取については17万4400円(診療報酬としては10円=1点)、移植については30万8500円の技術料が設定された。治療を受けるにはこの技術料以外に、もちろん入院料や検査料などもかかってくる。 キムリアは5月22日に保険適用され、施設基準を満たした医療機関において治療が受けられるようになる さて、この1回3300万円超という高額薬価をどのように考えるべきか。1回のみの治療で治る人は治ってしまうことを考えると、長期間服用し続けなければならない治療薬の場合と経済負担を同列に議論することはできない。 また、日本の健康保険制度には高額療養費制度というものが存在し、世帯ごとのひと月の自己負担の上限額は所得に応じて一定の金額内に抑えられるため、患者自身が数千万円単位の負担をするわけではない。ただ、「治らなかった人まで費用を負担すべきか。米国と同様に成功報酬払いを検討すべきではないか」といった点は議論の余地があるかもしれない。 患者の自己負担に上限が設けられているということは、残りは保険財政が負担することを意味する。そうなると以前、抗がん剤オプジーボの時に議論されたように、保険財政を破綻させかねないという声も上がりそうだが、ノバルティスはキムリアの対象となる患者数をピーク時で年216人、販売金額を72億円と予想している。 しかも、安全性を確保するため、副作用が生じた場合の対応が取れるなど、実施できる医療施設は限定され、相当慎重に市場導入が図られる見通しだ。もちろん今後、他の血液がんに適応を拡大していけば患者数は増えるが、その場合には薬価を見直す仕組みも既に導入されている。「保険財政が破綻する」と身構えるのは正しくない。 もちろん、今後このような高額医薬品が続々と登場してくるとなれば、誰がどのようにして負担していくか、薬価の決め方なども含めて議論していく必要があるだろう。ただ、今回のキムリアに関しては、約3300万円の薬価で保険適用が決まり、日本でも保険診療の中でこの高度な医療を受けられるようになったことを素直に歓迎すべきだと考える』、確かに、「米ニュージャージー州にある製造施設」との間を往復するので、高くなるのはやむを得ない面はあるが、日本でも「成功報酬方式」の導入を真剣に考えるべきだろう。

次に、6月10日付けダイヤモンド・オンライン「武田薬品「ホワイト企業認定返納」のお粗末な一部始終、内部資料を入手」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/205126
・『国内製薬最大手で世界のメガファーマ(巨大製薬会社)の一つに数えられる武田薬品工業が、経済産業省が制度設計する「健康経営優良法人2019大規模法人部門(通称・ホワイト500)」の認定の返納手続きを始めたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。このまま認定取り消しになる可能性が高く、7月1日付で発表される見通し。 健康経営優良法人(大規模法人部門)は5月1日時点で、820法人もが認定を受けており、認定返納も初めてのケースではない。それでも武田薬品の返納がニュースな点は、判明したそのお粗末な経緯だ。 法人が認定を受けるためには、健康管理に関連する法令について「重大な違反をしていない」ことが必須条件になっていた。具体的には2017年4月から申請日までに「長時間労働等に関する重大な労働基準関係法令の『同一条項』に『複数回』違反していないこと」などが課されていた。ただし自主申告のため、違反の事実を伏せて虚偽申請することも可能だ。 本編集部に6月上旬、現役の武田薬品社員から、「複数の社員が虚偽申請の事実を経産省に内部告発した」「近く認定がはく奪される予定」と憤慨する情報提供があった。本編集部の取材に対し、経産省ヘルスケア産業課は「返納があった」と説明し、経緯は非回答。武田薬品広報担当者は「虚偽申請の事実はない」と明確に否定した。ただそうであっても、後述のように、武田薬品の“残念ぶり”は変わらない』、「内部告発」で発覚したとはお粗末極まる。
・『一時はホワイト企業だとアピール  広報担当者によると、武田薬品は17年4月以降、労働基準監督署から36(サブロク)協定で定めた時間外労働限度時間を超えて労働させたとして、是正勧告を1回受けていた。前出のルール(『同一条項の違反を複数回』)には抵触しないため18年11月に申請し、今年2月に認定を受けた。 武田薬品はニュースリリースを出して、国お墨付きの“ホワイト企業”だと世間にアピールした(写真(2)、現在は削除)。 だが直後に同種の違反事案が発覚。そして4月に是正勧告を受けて『同一条項の違反を複数回』に該当する事態になったため、すぐに経産省に相談。協議の結果、6月5日に認定を自主返納する手続きに入り、同日までに社員向けに経緯を説明したという。 広報担当者は「是正勧告を真摯に受け止める」と強調。“ホワイト企業”認定返納だからといって当然“ブラック企業”に振れるわけではないといい、「コンプライアンス遵守を徹底して参ります」と神妙に話した』、申請した部署が社内の当該部署に確認を取っていなかったのであれば、信じられないような失態だ。
・『実は1年間で是正勧告4件、指導1件  一方、本編集部は武田薬品グローバルHR日本人事室名の内部文書(写真(3)、5月24日付)を入手した。そこには18年9月~19年5月にグローバル本社(東京)、大阪工場、光工場(山口)であった労基署による是正勧告4件、指導1件が記されていた。 36(サブロク)協定の時間外労働限度時間を超えて労働させたケースや、賃金不払いのケースなど。4月の是正勧告(36協定違反)も記載されていたが、加えて5月にも光工場で是正勧告(賃金不払い)があった。つまり“ホワイト企業”認定中も、残念ながら“ブラック企業”な指摘が2回もあったことになる。 武田薬品は近年、激動期にある。子会社や資産の売却、旧湘南研究所(現湘南ヘルスイノベーションパーク)の研究員リストラ、アイルランド製薬大手シャイアー買収など、社員の運命を左右する大イベントが立て続けに発生。一方で経営中枢は元メガファーマの外国人が大半を占めるようになり、年12億円もの報酬を得るクリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)を筆頭に社員との給与格差も大きくなった。 一部社員の間に経営陣への不満がマグマのように沸々と湧いているのは確か。その結果、前出の社員による本編集部への情報提供のような具体的な動きにつながっているのかもしれない。 6月27日にはシャイアー買収完了後初めての定時株主総会がある。財務体質悪化などを理由にシャイアー買収に反対していた一部創業家筋やOBから「クローバック条項」(*将来シャイアー買収による減損などがあった場合、過去に遡って取締役の責任を追及できる条項)の株主提案があり、会社側と提案者の攻防に注目が集まっている。 自業自得とはいえ、その本番を前に会社側に一つミソがついた』、株主総会では「クローバック条項」への賛成は52%になったが、出席株主の3分の2以上の賛成が必要な特別決議のため否決された。しかし、武田のガバナンスに対する投資家の厳しい視線が浮き彫りになったようだ。

第三に、内科医の谷本 哲也氏が7月21日付け東洋経済オンラインに寄稿した「医師と製薬マネーのあまり表には出ない大問題 法制化も罰則もなく自主規制に頼る寒い現状」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/292834
・『「大手製薬会社の薬を宣伝する医師たちの“闇営業”を野放しにしたらダメだ!」 灘校(灘中学校・灘高等学校神戸市灘区)で気炎を上げ会場を大いに沸かしたのは、同校卒業生で現役医師でもある、上昌広氏と岡本雅之氏。 上氏は、医療ガバナンス研究所(以下、MEGRI)を主宰し、東日本大震災・原発事故被災地へ若手医師を派遣するなどの医療支援をする一方、医薬業界のさまざまな不正や問題について積極的に発信している。岡本氏も東大阪市で医院を開業するかたわら、Dr. Masaとしてラジオ大阪でパーソナリティー番組を持つという名物医師だ。 言うまでもなく灘校は全国屈指の有名進学校で、受験界で最難関の東大理III(医学部)にも多くの合格者を出すことで知られている。そこでこの6月末に開催されたのが、MEGRIとジャーナリズムNGOワセダクロニクル(以下、ワセクロ)共催による「灘校で語る『医師と製薬マネー』シンポジウム」だ。 折しも、吉本興業所属の芸人たち、なかでも有名お笑いタレントの宮迫博之が振り込め詐欺グループの宴会に出て100万円もらっていたという闇営業(アルバイト)が発覚して大問題になっているが、さて、「医師の“闇営業”とはなんのことだ?」と不思議に思われることだろう。まずそれについて解説しよう』、「灘校で語る『医師と製薬マネー』シンポジウム」、とは正義感が強い医師たちもいるとは、灘校もさすがだ。
・『医師の闇営業=薬の宣伝活動  医師の本来の仕事は、当然ながら患者の診療を行うことだ。医師免許を持つほとんどの医師が、医療機関で働き収入を得ている。これ以外にも大学や研究機関に勤め、研究職に就いている医師もいる。よく大学病院などでは、診療・教育・研究の3本柱が重要と言われるが、それが医師の本来の職務であることに誰も異論はないはずだ。 しかし、この診療・教育・研究活動以外にも、医師の大きな収入源になりうる活動がある。そのことは、これまで世間一般ではあまり知られていなかった。 芸人用語としての闇営業は、「芸人が所属事務所ではなく、個人的なルートを通して芸能活動を行うこと」を指す。実は、医師の世界にも似た構図があり、所属する医療・研究機関以外からもオイシイ仕事が回ってくることがある。 それは、製薬会社や医療機器メーカーから頼まれる講演会活動などだ。場合によっては、診療業務など本来の仕事で得られる収入よりもはるかに時給が高く、年間1000万円以上に及ぶ製薬会社からの副収入を稼ぎ出す著名医師もいる。すなわち、ここで闇営業にたとえられたのは、医師と製薬会社がタッグを組んで行う薬の宣伝活動のことなのだ。 吉本芸人の宮迫らは反社会勢力から金をもらっていたわけだが、こちらの場合、闇営業といえども、税務申告さえきちんと行っておけば何ら違法な活動ではない。大学など所属機関でも当然認められている。 しかし、なかには年間100件以上もこの活動に精を出す医師がいて、こうなると本来の業務(診療)は大丈夫なのか、と患者も心配になるだろう。 その懸念は当然で、国立病院など公的医療機関では年間500万円まで、大学では本給(大学教授では年間1000万円程度)を超えないこと、という内規を設けているところも多い。逆に内規がなければ、この額を超えて副業にいそしむ医師が珍しくないことを意味している』、「内規」は公的医療機関や大学だけでなく、民間医療機関でも設けるべきだろう。
・『影響力を持つ医療界幹部が闇営業で高収入を得ている  2019年6月23日、新聞2紙が一面トップでこの問題を報じた。 毎日新聞は「製薬謝礼一部に集中処方多い学会理事講演・原稿料」、東京新聞は「薬審議委員に製薬マネー医師ら6割講演料など」という大見出しで始まる記事を目にした人も多いだろう。東洋経済新報社が発行する『週刊東洋経済』も、2019年6月1日号で「クスリの大罪」と題した特集を展開した。 これらの記事では、闇営業で高収入を得ているのが、処方薬の評価や値段を決めるなど国の審議委員についている医師や、一般の医師に強い影響力を持つ医学会の幹部であることを問題視した。 「政治家とカネ」については政治資金規正法などができ、世間の目が厳しくなったが、このような“公職”に就く医師と製薬マネーの金脈問題については、これまで「業界タブー」となっていた。この事情は、拙著『知ってはいけない薬のカラクリ』(小学館新書)でも詳しく記している。 シンポジウムで、上氏、岡本氏らはこのようにも述べた。 上:製薬会社から講演料などの名目でお金をもらっていることが、最近になってようやくマスメディアでも報道されるようになりました。それについて、大学教授や学会理事など有名な医師が反論としてよく口にするのが、《産学協同の必要性》という大義名分です。 岡本:しかし、それは本当に産学協同と呼べる活動なんですか?そもそも患者のためになってますかね。本来の仕事をほったらかして、製薬会社の宣伝マンのアルバイトをやっているだけじゃないですか。 上:東大教授を頂点とするような、官尊民卑の大学病院モデルは限界にきている。東大病院も赤字垂れ流しで、今や東大のお荷物になっている。そんな窮状でありながら患者さんをほったらかしにして、大学教授が年間何十回と講演に出かけ、診療では専門病院に実績で圧倒されている。後進の医師を育成すべき大学教授たちにとっていちばん大切な時間を、ムダに使っていると本当に思います。 岡本:産学協同は詭弁以外のなにものでもないですね。 上:患者のために診療するのが、本来の医師の姿。そして研究。研究費だって、やる気さえあれば製薬会社にたかる必要はありません。まじめに診療をやって研究費を捻出することもできるのだから。 シンポジウムの登壇者は、上・岡本両氏のほかに、ノーベル賞を受賞した本庶佑氏の元門下生で幹細胞病理学の第一人者である仲野徹氏(大阪大学医学部教授)、ワセクロ編集長の渡辺周氏やMEGRI関係者である筆者、若手の尾崎章彦氏(乳腺外科医)と山本佳奈氏(内科医)に加え、加藤晴之氏(編集者、加藤企画編集事務所代表)という顔ぶれで、「製薬マネーと医師」に関わる活発な議論が行われた。 そもそも、先の東京、毎日新聞両紙の1面トップの報道や、今回のシンポジウムの発端になったのは、ワセクロとMEGRIが総力を挙げて調査し、ネット上に構築した「マネーデータベース『製薬会社と医師』」が、2019年1月から公開されたのがきっかけだ。検索窓に医師や製薬会社の名前を入れれば、誰でも簡単に無料で製薬マネーの実態について調べることができる』、「闇営業で高収入を得ているのが、処方薬の評価や値段を決めるなど国の審議委員についている医師や、一般の医師に強い影響力を持つ医学会の幹部であることを問題視」、「国の審議委員」には「闇営業」を禁止すべきだ。「マネーデータベース『製薬会社と医師』」はいい試みだ。
http://db.wasedachronicle.org/
・『医療界の産学癒着を断ち切ることができるのか  「この問題は、どこからお金をもらっているか、どんな利害関係に立っているのか、医師がCOI(利益相反)をきちんと明らかにすべきだということじゃないでしょうか。 最近では国からの研究費はどんどん削られています。大学医局など多くの大学院生を抱えている臨床教室が研究費のために、製薬マネーに頼ることはやむをえないという側面もあるのですから」(仲野氏) 「大学病院にいる同級生に聞くと、2日に1回はお昼や晩に製薬会社からの高級弁当が配られるので、食費がずいぶん助かっているそうです。若いうちから製薬会社のお世話になるのが当たり前になっている」(山本氏) 「世界的な製薬会社ノバルティスファーマと千葉大学、京都府立医科大学や慈恵医科大学などの医師たちの研究不正に司直の手が入ったディオバン事件。その後どうなっているのか追跡調査したところ、不正論文に名を連ねた医師たちが、事件後も当然のようにたくさんの製薬マネーをもらっていた。 ノバルティスがディオバンという薬にありもしない薬効をでっちあげて、累計1兆円以上も売り上げ、一般社会に大迷惑をかけた医療界の産学癒着にいまだ何の反省もありません」(尾崎氏) 高額の製薬マネーを受け取るのは、大学教授などに出世したキー・オピニオン・リーダーやエクスターナル・エキスパートと称される影響力の大きい医師だ。 製薬会社と医師の関係性は、健全な産学協同であればいいが、歪んだ処方で医療費のムダ遣いを生み出す癒着ともなりやすく、世界中で頭を悩ませている大きな問題だ。 昨年も、ハーバード大学の有名医師が「産学の癒着関係は全面禁止すべきだ!」とニューヨーク・タイムズ紙に寄稿すると、元大手製薬会社勤務でベンチャー起業に転じた人物が「産学協同はなくてはならない!」と経済誌『フォーブス』で反対の論陣を張るなど、侃々諤々(かんかんがくがく)、さまざまな議論が行われている。 日本においても、著名医師の講演会が薬を宣伝する「闇営業」なのか、それとも、講演料を受け取った側の反論どおり「患者のためになる真の産学協同」なのか、ファクトを積み重ねて見極める必要がある。 そのためには、数々のメディア報道の基礎となったように、「マネーデータベース『製薬会社と医師』」が果たす役割は大きいだろう。アメリカや一部のヨーロッパ諸国など、製薬マネーの公開について罰則規定のある法制化を行う国も増えてきている。 ワセクロ編集長の渡辺氏は、今回のデータ調査報道の苦労話をこう披露している。 「アメリカでは、サンシャイン法という法律ができて、公的機関がネットで公開(オープン・ペイメンツ・データ)しています。誰でも無料でそのデータをチェックできます。 一方の日本では、業界団体の自主ルールに基づき医師への支払い明細を公開しているといいながら、その実情は公開とは程遠い。なかなか全容がわからないような、形だけの公開になっているのです。そのため今回の調査では、われわれは各製薬会社の数字を丹念に集めてまわり、データベース作成に3000時間の作業と労力を費やさざるをえませんでした」』、「「アメリカでは、サンシャイン法という法律ができて、公的機関がネットで公開しています。誰でも無料でそのデータをチェックできます」、というのは日本でも積極的に取り入れるべきだろう。
・『製薬マネー問題の解決への道は  法制化もされず、したがって罰則もなく、製薬業界の自主的な取り組みに任されている日本のお寒い現状。まだまだ見直しの余地が残されており、世論の後押しが大切だ。このワセクロ・MEGRI共同プロジェクトで中心的役割を果たしている若手医師の尾崎氏が、こう述べたのが筆者の印象に残った。 「医師と製薬会社の利益相反の透明化が、一過性の話題で終わったのでは意味がありません。今後もこの取り組みをずっと続けて、医療や政治、つまり、この社会の何がどう変わるのかを見届けなければならないと思います」 少子高齢化と国民医療費の高騰化が進む中で、高度成長期の1961年に開始された国民皆保険制度は危機に瀕している。医療費のムダ遣いを考えるうえで、製薬マネーの問題はますます無視できなくなってくるだろう。 会場となった灘校は、日本酒の名産地として知られる灘五郷の酒造家、嘉納家と山邑家の篤志により1927(昭和2)年に創立されたという歴史がある。そのため、官に頼らない民の力を重視するという校風が今に受け継がれているようだ。 灘校の創始者たちが実現したように、民間の力で社会的に大きな影響力を持つ成果を出すことは、決して不可能ではない。公を担うのは官だけではないことを改めて認識したのが、今回のシンポジウムだった』、「医師と製薬会社の利益相反の透明化」は何としてでも実現させる必要がある。シンポジウム関係者のさらなる努力を期待したい。

第四に、ラジオNIKKEI 解説委員の和島 英樹氏が7月5日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳 メディシノバの岩城裕一社長兼CEOに聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/289744
・『なぜ日本では世界の3本の指に入るような製薬メーカーが生まれないのだろうか。彼我の条件の差なのだろうか。 メディシノバはアメリカのカリフォルニア州に本社を置く創薬ベンチャーで、日本ではジャスダック市場(外国部)、アメリカではナスダックの両市場に上場している。難病など一定以上の市場規模が見込める分野で新薬の開発を進める企業として注目を集めており、岩城裕一社長兼CEOは業界の情報にも精通している。 同社はここにきてALS(筋萎縮性側索硬化症)、「進行型多発性硬化症」などの難病分野で臨床試験が大詰めを迎えつつある。岩城社長に日本と海外の最新動向や、自社医薬品候補の開発状況について話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは岩城社長の回答)』、「岩城社長」はこの問題を聞くには最適任のようだ。
・『日本が逡巡しているうちに、戦略のある欧米は先へ行く  Q:医薬品について、日本と海外の決定的な違いはどこにあるのですか? A:残念ながら、いまだに日本には「ナショナルフラッグ(国を代表する)」となる製薬会社が育っていませんね。武田薬品工業がその役割を果たすべきなのですが、アイルランドの製薬大手シャイアーの買収によって、ようやく「独自路線」から方向が変わった感じです。 では、なぜナショナルフラッグが必要なのでしょうか。かなり極端な例かもしれませんが、万が一、戦争や大災害などが起きた場合に、国内ですべての薬を賄わなくてはならなくなる可能性があるためです。そのためにも国を代表する「国策企業」としての、製薬会社が必要になるわけです。武田はM&Aで大きくなっても世界ではなお10位レベルです。スイスのロシュ、アメリカのファイザー、英国のグラクソ・スミスクラインなどにはまだ遠く及びません。 国策といえば、「遺伝子組み換え」についての対応などはその代表例として挙げられるのではないでしょうか。アメリカでは遺伝子組み換えによる医薬品が早くから台頭し、アムジェンやジェネンテックといった社員数が2万人もの大企業が育ちました。 これに対して、欧州では大腸菌の遺伝子から作る手法を問題視し、遺伝子組み換え技術に対しては反対に回りました。アメリカのほうは、トウモロコシや大豆など食品分野でも遺伝子組み換えで攻勢をかけているのは周知のとおりです。一方、日本では遺伝子組み換え食品にはなお警戒感が強いですね。 しかし、遺伝子組み換え技術を用いた医薬品が安全性などで問題のないことは、専門家なら常識的に知っていることではないでしょうか。一方、アメリカではG・W・ブッシュ大統領時代、再生医療をキリスト教の見地などから反対していました。しかし、その間に英国では初の哺乳類クローンの羊ドリーを誕生させているように、競争は熾烈です』、「ブッシュ大統領時代、再生医療をキリスト教の見地などから反対していました」、アメリカでも宗教の影響を受けることもあるようだ。
・『欧米では「治療医学」の考え方が徹底している  また、日本の医療が主に、何の病気かを調べる「診断医学」なのに対して、欧米では「治療医学」が徹底しています。治療医学とは、患者さんが治らないと意味がないという考えで、医者も薬の開発に一生懸命になります。一方、日本では患者さんは、新薬開発の過程で臨床試験に参加する場合、「モルモットにされるのではないか?」とのマイナスのイメージを持つようですね。理解はできますが、欧米ではまったく違います。「新しいことをやっているのだから、今よりもいい薬に違いない」と、積極的に参加するのです。 今年、私はDCM(変性性頸椎脊椎症)のフェーズ3臨床試験に向けたシンポジウムで英国を訪れたのですが、その際、ミエロパチー患者支援団体の設立パーティーに参加しました。場所は英国議会の貴族院です。そこには車いすの患者さんも数多く参加していました。そして、熱い視線を送ってくれたのです。本当に身が引き締まる思いでした。 また、薬の認可を担う当局も、欧米では患者さんを救うという意識が高い。もちろん決して日本が低いという意味ではありませんが、FDA(アメリカ食品医薬品局)などは薬の開発段階から親身に相談に乗ってくれますし、臨床試験などでの有効なアドバイスももらえるのです。一緒に薬を開発しているという気持ちさえ感じます。 前述のDCMについても、英国の国立疾病研究センター(NIHR)などが積極的に対応してくれました。ひるがえって、日本の医薬品の有効性や安全性について、臨床試験前から承認までを一貫体制で担っているのはPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)です。われわれも一度PMDAと協議したことがありますが、いろいろな意味で、FDAとの温度差を感じました。まあ、私たちが、アメリカ企業だからなのかもしれませんが。 Q:ここへ来てメディシノバの注目度が上がっていますが、どんな要因があるのでしょうか? A:最近の開発では、小社の松田和子CMO(最高医学責任者)の功績が大きいといえます。彼女はもともと小児科の医師をしていたのですが、私の大学の後輩ということもあり、12年ほど前にお願いして、メディシノバに来てもらいました。 今年の1月に、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療薬として認可されているリルゾール(サノフィ社)と当社のMS-166の2つの薬を用いる併用療法で、ALS だけではなく、多くの変性神経疾患を対象に用法特許が新たに承認されましたが、これは彼女のアメリカ特許庁との交渉の賜物といっても過言ではありません。 一般の読者のためにわかりやすく言いますと、薬の特許の目的は独占性を得ることなのですが、大雑把に言って「自社の独占性を守る」ために、「将来的にライバルが入ってこられないよう特許申請」する場合もあります。つまり、承認されない可能性が高くとも、隙を与えない最大努力の一環で申請するケースです。 こうした大切な事情のすべてがわかって、審査官などとの交渉にも長けることは、製薬企業にとっては将来の命運を左右する大切な仕事です。特許出願人が特許庁と交渉するというのは、私たちのような小さい会社だからできることですね。特許弁護士に丸投げにすると、経費もかかるし、当事者意識が薄れて熱もわれわれほど入らない。 このように、特許戦略では、小さな会社のため、知財担当が不在で、臨床開発の当事者が対応していることが、かえっていい結果を生んでくれています。 松田氏は札幌医科大学大学院で医学博士号を取得した後に渡米、ハーバード大学で公衆衛生学修士を修了。アメリカでの臨床研修を経て、USC(南カリフォルニア大学)の私の研究ラボでの研究、さらにアメリカ企業との共同研究などを経てメディシノバに参加。昨年は、世界で最も権威のある総合医学雑誌の1つである『THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE』に共著論文が掲載されるという快挙を成し遂げた。 医療テレビドラマでも話題になった「インパクトファクター」というのがありますね。これは研究者にとって大きな意味を持つ、ポイントカードでいうところのポイント(点数)なのですが、この雑誌はインパクトファクターが最も高い雑誌として知られます。 新薬の開発を断念したり、既存の薬の中から、再度有望な治療適応症候補を探って開発するという、いわゆる「薬のリポジショニング」、つまり、別の薬効を探ることの重要性を再認識させたという意味で大きな影響を与えた論文でした。現場の医師の経験が、薬の開発に応用されたということは、多くの現場医師も創薬チームに参加できる可能性を示したということからも意義深いのです』、「FDAなどは薬の開発段階から親身に相談に乗ってくれますし、臨床試験などでの有効なアドバイスももらえるのです。一緒に薬を開発しているという気持ちさえ感じます」、ここまで製薬企業フレンドリーなのかと驚かされた。「特許戦略では、小さな会社のため、知財担当が不在で、臨床開発の当事者が対応していることが、かえっていい結果を生んでくれています」、というのはベンチャーの強みなのだろう。
・『中国当局も認めたMN-001の「用法特許」  特許に話を戻すと、当社は2019年4月には中国でMN-001(開発コード)について、高中性脂肪症、高コレステロール血症などを適応症として、用法特許の承認を取得しました。中国ではこれまで物質特許が重んじられ、特定疾患を適応とした用法特許という概念は認められていませんでした。 中国で用法特許が取れたのは画期的なことで、ほとんどは、この重要性に気づいていないのではないでしょうか。世の中の誰もが中国特許庁がそんな用法特許を認めるわけがないと言っていた中で、当社の松田CMOだけが「答えはわかりません。とにかく申請してみましょう」と。結果は取れました。中国政府が大きく舵を切り出したと感じています。 Q:新薬の開発も進展しているようですね。 A:期待の新薬候補「MN-166(イブジラスト)」がいよいよ臨床最終段階(フェーズ3)に入ってきました。さきほども少し触れましたが、領域は「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」「DCM(変性性頸椎脊椎症)」「進行型多発性硬化症」の3つです。このうち、最も早期に上市(販売開始)できそうなのがALSです。 順を追って説明したいと思います。ALSとは、脳や脊髄の神経細胞にダメージを及ぼす進行性の神経変異疾患。ダメージを受けることで特定の筋肉への指令が届かなくなり、筋肉が萎縮して弱っていきます。徐々に体を動かすことが不自由になり、症状末期には全身麻痺に至り、人工呼吸器などの補助が必要になります。 英国の物理学者スティーブン・ホーキング博士がこの病気だったことで、認知度が急上昇しました。 現在、アメリカでの患者数は約2万5000人で、毎年6000人程度が新規にALSと診断されています。当社では今年4月に、ALSを適応とするフェーズ2b/3臨床試験プロトコル(手順)で、FDAの審査を完了しました。今後はアメリカ内の約150人の患者を対象に二重盲検試験(偽薬とMN-166との効き目の差を見る試験)、安全性の評価を行っていく予定です。 期間は9カ月。そう遠くない時期に患者の登録をスタートさせ、順次試験に入っていきます。ALSでは資金が少なくて済むため、自前で開発していきます。臨床試験が成功した暁には、新医薬品としての承認取得のための申請を行う予定です』、「ホーキング博士」が特効薬完成を待たずに亡くなったのは残念だ。
・『手術だけでは治療できない神経細胞の復活に有望視  2つ目のDCM(変性性頸椎脊椎症)とは、頸椎脊髄圧迫によって引き起こされる麻痺と定義されている病気で、麻痺のほか疼きや痛み、しびれなどの症状につながります。さらにバランスおよび歩行困難、腕や肩、手の筋力低下や筋肉硬直、直腸機能障害などさまざまな症状を引き起こすのです。アメリカ神経学会によると、脊髄または神経根の圧迫を緩和するために、毎年20万件以上の手術が行われています。 神経の穴を広げ、圧迫を軽減させる手術が有効なのです、疾患が長期に及ぶと、圧迫が引き金となり神経に変性が起きているのです。つまり、治療は手術だけではだめで、変性した神経細胞を復活させることが重要になります。残念なことですが、現在、承認・認可されている治療薬はありません。このDCMに、MN-166が有効なのではと期待されています。 当社ではNIHR(注)から数億円の助成を受け、2018年9月からケンブリッジ大学病院およびケンブリッジ大学病院財団とフェーズ2/3共同臨床試験を開始しました。ロンドンでこの薬のフェーズ3臨床試験に関するキックオフミーティングとシンポジウムが開催されたのは前出のとおりです。 また、世界で初めて患者支援のチャリティー団体も設立されました。臨床試験は投薬治療が8カ月間継続され、術後3カ月、6カ月、12カ月に臨床症状の評価を行います。頸椎神経機能の部分的または完全な回復が期待されます。 最後の3つ目が進行型多発性硬化症です。まず、多発性硬化症(MS)とは脳や脊髄、視神経に病巣ができ、脳から全身への指令が適切に伝わらなくなる病気です。歩行や視覚、知力などさまざまな身体機能の障害症状が出ます。原因はよくわかっていません。患者数はアメリカでおよそ40万人、全世界では150万人程度とみられています』、NIHRとは、英国のNational Institute for Health Researchのことで、英国の公的機関からも補助金を受けているとは、国際的だ。
・『「二次進行型」の多発性硬化症をターゲットに  MSには再発寛解型と、進行型があります。再発寛解型は症状が急に出たり治まったり(寛解)を繰り返すタイプです。多くの患者が最初に再発寛解型と診断されますが、繰り返しているうちに徐々に症状が進行するようになります。これを二次進行型といいます。一方、初めから寛解を経ずに時間とともに悪化していく場合があります。これを一次進行型といいます。 進行型の場合、約15%が一次進行型で、残りの85%が二次進行型ですが、二次進行型にも2つのタイプがあります。再発を伴う二次進行型と、再発を伴わない二次進行型で、多くの二次進行型は、この再発を伴わない二次進行型です。 進行型の多発性硬化症の薬は限られています。一次進行型にはロシュ社のオクレリズマブという薬が認可されていました。2019年の3月に、ノバルティス社と ドイツのメルク社の薬が二次進行型の薬として認可されたのですが、“二次進行型のうち、再発のある”患者さんだけを対象として認可されたのです。よって現在、進行型の75%を占める“再発のない二次進行型”の患者さんに効果のある薬剤はありません。 今年4月にMN-166の進行型多発性硬化症を適応とするSPRINT-MS(アメリカ国立衛生研究所=NIH=MS支援団体との共同連携プロジェクト)のフェーズ2b臨床試験サブグループ解析で、再発のない二次進行型MSで最も効果がありそうだと判明しました。つまり、私たちの薬剤は、現在は治療法がない75%の二次性の進行型の患者さんへの初めての治療薬になる可能性があるのです。 現在、フェーズ3臨床試験のデザインをFDAと協議しています。詳細な開発計画について、FDA とは、もっと突っ込んだ話し合いをする予定です。この薬はどこかに売ってもらう必要があり、認可の前に導出することになります。ただ、時間はまだあり、時期を決めるのはこれからとなります。 Q:最後に、5月に株価が急落する場面があり、その際リリースを出されましたね。 A:あるアメリカの法律事務所が、当社の役員および取締役によるフィデューシャリー・デューティ(受託者責任)違反の可能性について「調査を進める」ことや「その調査への賛同者を募る」といったことを公表しました。 これが日本語のネット上に書き込まれ、不安を与えたのか、まず日本の株価が下落しました。アメリカでは、このような訴訟をほのめかして示談金を獲得しようとする案件は、よくあることなので、アメリカ市場では、最初は株価に変化はなかったのですが、日本で下落したせいで翌日はアメリカでも影響がありました。 しかし、本件に関して公式な通知や連絡を受領した事実はありません。当社では役員や取締役がフィデューシャリー・デューティ違反に問われるようなことは一切していません。事実と異なることで株価が下落したのは残念です。 アメリカでは公開会社に対して、とくに株主総会前に、このような悪質な行為が多く認められますが、日本の株主の皆さんにこれ以上ご心配をおかけしないためにも今後の動向次第では法的措置を含めた断固たる対応を検討しているところです』、「あるアメリカの法律事務所が、当社の役員および取締役によるフィデューシャリー・デューティ違反の可能性について「調査を進める」ことや「その調査への賛同者を募る」といったことを公表」、さすが法律事務所だけあって、証券取引法違反にはならないように仕組んだようだ。メディシノバの今後の活躍を期待したい。
タグ:医薬品 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 定時株主総会 製薬業 (その2)(「キムリア」の薬価3000万円超でも保険財政は破綻しない、武田薬品「ホワイト企業認定返納」のお粗末な一部始終 内部資料を入手、医師と製薬マネーのあまり表には出ない大問題 法制化も罰則もなく自主規制に頼る寒い現状、日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳 メディシノバの岩城裕一社長兼CEOに聞く) 「「キムリア」の薬価3000万円超でも保険財政は破綻しない」 ノバルティスの遺伝子治療薬「キムリア」 薬価が1回の投与で3349万3407円 米ニュージャージー州にある製造施設で製造 1回の治療で治る人は治る 医療機関で細胞を採取し、製造施設で細胞を加工して製品を製造した後、再び医療機関で細胞を移植する必要がある 米国と同様に成功報酬払いを検討すべきではないか キムリアの対象となる患者数をピーク時で年216人、販売金額を72億円と予想 「武田薬品「ホワイト企業認定返納」のお粗末な一部始終、内部資料を入手」 「健康経営優良法人2019大規模法人部門(通称・ホワイト500)」の認定の返納手続きを始めた 法人が認定を受けるためには、健康管理に関連する法令について「重大な違反をしていない」ことが必須条件 『同一条項』に『複数回』違反していないこと」 複数の社員が虚偽申請の事実を経産省に内部告発した 一時はホワイト企業だとアピール 実は1年間で是正勧告4件、指導1件 「クローバック条項」 谷本 哲也 「医師と製薬マネーのあまり表には出ない大問題 法制化も罰則もなく自主規制に頼る寒い現状」 「灘校で語る『医師と製薬マネー』シンポジウム」 医師の闇営業=薬の宣伝活動 年間1000万円以上に及ぶ製薬会社からの副収入を稼ぎ出す著名医師もいる。すなわち、ここで闇営業にたとえられたのは、医師と製薬会社がタッグを組んで行う薬の宣伝活動のことなのだ 国立病院など公的医療機関では年間500万円まで、大学では本給(大学教授では年間1000万円程度)を超えないこと、という内規 影響力を持つ医療界幹部が闇営業で高収入を得ている 闇営業で高収入を得ているのが、処方薬の評価や値段を決めるなど国の審議委員についている医師や、一般の医師に強い影響力を持つ医学会の幹部であることを問題視 《産学協同の必要性》という大義名分 本来の仕事をほったらかして、製薬会社の宣伝マンのアルバイトをやっているだけじゃないですか 「マネーデータベース『製薬会社と医師』」 医療界の産学癒着を断ち切ることができるのか アメリカや一部のヨーロッパ諸国など、製薬マネーの公開について罰則規定のある法制化を行う国も増えてきている 製薬マネー問題の解決への道は 医師と製薬会社の利益相反の透明化 和島 英樹 「日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳 メディシノバの岩城裕一社長兼CEOに聞く」 メディシノバ アメリカのカリフォルニア州に本社を置く創薬ベンチャーで、日本ではジャスダック市場(外国部)、アメリカではナスダックの両市場に上場 難病など一定以上の市場規模が見込める分野で新薬の開発を進める企業として注目 岩城裕一社長兼CEOは業界の情報にも精通 日本が逡巡しているうちに、戦略のある欧米は先へ行く 欧米では「治療医学」の考え方が徹底している 中国当局も認めたMN-001の「用法特許」 手術だけでは治療できない神経細胞の復活に有望視
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アパレル(アパレル業界を追い詰めた「三度の裏切り」…これではもう売れない 百貨店もSCもECモールも終わった、ユニクロ・しまむらに黄信号!2強を駆逐する「ワークマン」強さの秘密、消費者の「アウトレットモール離れ」が進んでいる理由) [産業動向]

今日は、アパレル(アパレル業界を追い詰めた「三度の裏切り」…これではもう売れない 百貨店もSCもECモールも終わった、ユニクロ・しまむらに黄信号!2強を駆逐する「ワークマン」強さの秘密、消費者の「アウトレットモール離れ」が進んでいる理由)を取上げよう。

先ずは、流通・ファッションビジネスコンサルタント (株)小島ファッションマーケティング代表の小島 健輔氏が昨年9月19日付け現代ビジネスに寄稿した「アパレル業界を追い詰めた「三度の裏切り」…これではもう売れない 百貨店もSCもECモールも終わった」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57499
・『プラットフォーマー(※)の裏切りの歴史  今やECの勢いは留まるところを知らず、店舗販売は存続さえ危ぶまれているが、アパレル業界にとっては人気ファッションECモールの手数料高騰が頭の痛い問題になっている。その状況は『ECモールが百貨店化している』と嘆かせるほどで、“三度目の裏切り”かと業界を落胆させている。 アパレル流通の四半世紀を振り返れば、プラットフォーマー(※)の裏切りの歴史だった。アパレル業界とて、それを原価率の切り下げで穴埋めして来たのだから、結局は業界ぐるみで消費者を裏切ったわけで、バーゲンしてもファミリーセールを繰り返してもアウトレットで叩き売っても過半が売れ残るという破綻に陥ったのもやむを得まい。 ※コンテンツ事業者(アパレル)に販売の場を提供するのがプラットフォーマー(百貨店や商業施設、ECモール)で、在庫リスクは負わず家賃や売上手数料を徴収する』、『ECモールが百貨店化している』、というのはここまで来たかという印象だ。プラットフォーマーとしては、最近ではGAFAなどで使われているが、ここでは伝統的な使い方だ。
・『アパレル流通崩壊の引き金は百貨店が引いた  もう二昔も前の出来事だが、アパレル流通のみならず国内アパレル産地崩壊の引き金を引いた“事件”があった。 バブル崩壊後の売上急落を利幅で埋めるべく大手百貨店は92年から00年にかけて毎年のように取り分(「歩率」と言われる売上手数料率)を増やし、8年間で計13ポイントも嵩上げてしまったのだ。どこの百貨店が口火を切ったか業界の上層部は誰もが知っているが、表立って誹られる事は今も憚られる。 取引アパレルは収益を確保すべく原価率をほぼ同ポイント切り下げ(33%が20%になったと言われる)、コストの高い国内生産から中国生産にシフトして国内産地崩壊の引き金を引き、お値打ち感の急落で消費者は百貨店から駅ビルやショッピングセンター(SC)に逃げ出した。アパレル事業者も我先に百貨店から駅ビルやSCに販路を移したが、そこにも罠が待っていた』、どんな「罠」なのだろう。
・『アパレル業界は駅ビルやSCにも裏切られた  00年前後には経済の活発化を目論んで規制緩和が乱発されたが、流通業界を一変させたのが00年3月1日に施行された改正借地借家法と6月1日に施行された大店立地法だった。 前者によって定期借家契約が導入されて出店の初期費用が激減した一方(基本家賃の50ヵ月分という差し入れ保証金からほぼ五分の一の敷金に軽減)、営業権が無くなって定借期間後の営業継続が担保されなくなり、店は資産から利用権に変質した。 商業施設側は差し入れ保証金の減額分を共益費や販促費等も合わせた実質家賃に転嫁したから、テナントの売上対比実質家賃負担は三年で4ポイント前後も高騰した。 後者によっては営業時間が自由化されて全国の商業施設はおしなべて2時間ほど延刻され、売上は増えないまま運営コストが肥大し、人手不足が恒常化して店舗運営の質も低下してしまった。 希望の地と思われた駅ビルやSCでも運営コストの上昇に加え、出店初期費用の低下と規制緩和による商業施設の開発ラッシュでオーバーストアが急進。00年から17年でSCの総商業面積は64%も増加し、販売効率は年々落下して00年の65%まで落ち込んだ。 アパレルチェーンは収益を確保すべく調達原価を切り詰め、お値打ち感を損なってさらに売り上げを落とすという悪循環に陥った。商品の価値も販売の質も怪しくなって顧客が離反し始めたところに追い打ちをかけたのが、11年頃からのスマホの普及とECの台頭だった。 品揃えも商品情報も限られる店舗販売から、品揃えも商品情報も格段に豊かで購入の手間も持ち帰る労働も強いないECへと消費は急激に移行し、損益分岐点の高い店舗販売は採算割れに陥って閉店が広がっていった』、「00年から17年でSCの総商業面積は64%も増加し、販売効率は年々落下して00年の65%まで落ち込んだ」、という過当競争が背景にあるのでは、苦戦もやむを得ないだろう。
・『百貨店化するECモールと決別する日  運営コストも初期投資も軽く、在庫が多店舗に分散しないからロスも少ないECは店舗販売に代わる希望の地と思われたが、皆が我先に参入して競争が激化し顧客利便が競われるに連れ運営コストが肥大。 流通プラットフォーマーたるECモール事業者も手数料率を年々嵩あげて有力百貨店を上回るほどになり(今や35〜40%と言われる)、『ECモールが百貨店化している』と失望感が広がった。そこに宅配料金の一斉値上げも重なり、ECは他人のプラットフォームに依存する限り低コストとは言えなくなった。 手数料率が高騰する人気ECモール事業者がある一方、仕組みを改善して手数料率を抑制したり利便を高めるECモール事業者もあるが、顧客と在庫、店舗とECを一元一体に運用するにも在庫を抱えないショールーミングストア(発注・決済・物流はECに拠る)に移行するにも自前のECプラットフォームが不可欠で、先行する有力企業はECプラットフォームに投資を集中して店舗網の整理縮小に転じている。 EC受注品の店在庫引き当てと店受け取り・店出荷というZARA(INDITEX社)の決断はその典型で、EC比率が高まった欧州から店舗網の縮小に転じている。 三度もプラットフォーマーに裏切られた挙げ句、アパレル事業者が百貨店や商業施設はもちろんECモールにも見切りを付け、自前プラットフォームに生存を賭けるに至ったのは必然と言うしかあるまい。 アパレル事業者にはその実行スピード、アナログプラットフォーマー(百貨店/商業施設)やデジタルプラットフォーマー(ECモール)にはアパレル事業者を引き止めるコストと利便の革新が問われているのではないか』、『ECモールが百貨店化している』、というのにはいささか驚かされた。アパレル事業者には同情するほかないようだ。

次に、流通ジャーナリストの森山真二氏が3月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ユニクロ・しまむらに黄信号!2強を駆逐する「ワークマン」強さの秘密」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/197251
・『「ユニクロ」や「しまむら」といったカジュアル衣料専門店の先行きに黄信号が点灯し始めている。2社ともに、デフレが生んだ衣料品販売の優等生として成長、カジュアル衣料専門店の1~2位になっている。しかし、最近、国内ユニクロは成長を牽引してきた価格が「安くない」といわれ、商品も「代わり映えしない」という指摘も出ている。しまむらも過度な商品の絞り込みと、高価格への誘導が裏目に出ている。一時代を築いたデフレの優等生、2強体制の終わりの始まりか――』、興味深そうだ。
・『しまむらの凋落が甚だしい ビジネスモデルの転換が裏目に出た  しまむらの凋落(ちょうらく)が甚だしい。3月11日には2019年2月期の連結業績予想を下方修正した。 売上高の従来予想は5700億円だったが、修正では約240億円下回った5460億円、本業のもうけを示す営業利益は前期比40%減の245億円と期初予想を140億円下回った。既存店の売上高も落ち込みが激しく、前期比約7%減だった。 会社発表の業績修正の理由は一言でいうと、「暖冬で冬物が売れず、売り場改革も不発に終わった」というもの。確かに、衣料品の場合は天候に左右されることはある。しかし、業界ではそうした「短期の天候要因だけが理由だけではない」という声が少なくない。 最大の原因はしまむらが2016年から2017年にかけて実施した商品数の絞り込みだ。最大約3割にも及ぶ大胆な絞り込みを実施したことだろう。 いわば売れ筋商品への絞り込みで在庫負担を減らし売り場効率を引き上げて高価格帯商品を拡充するという、まさに従来のビジネスモデルからの転換を図ったのだ。 しまむらは本来、ユニクロと違って数ある商品の中から「目新しい商品」を発掘するのが1つの「売り物」となって、それが「集客力」となってきた。 しまむらはプライベートブランド(PB)も販売しているが、ユニクロのようなSPA(製造小売業)型ではなく、そのため仕入れ商品が多くを占める。そのバラエティ性が支持されてきた』、しまむらが「バラエティ性が支持されてきた」にも拘らず、「最大約3割にも及ぶ大胆な絞り込みを実施」、というのは余りに乱暴な方向転換だ。普通は、いくつかの店舗で試験的にやって検証すべきところを、いきなりというのは信じ難い。
・『しまむらが持つ「強み」が失われた  「しまパト」と呼ぶ、しまむら“公認”のファンがインスタグラムなどSNS(交流サイト)で商品画像とともに「しまむらでこんな商品を見つけました」「自宅の近くのしまむらでこんな商品を買っちゃった」などと投稿、その情報がしまむらのサイトに掲載されたり拡散されたりして顧客が顧客を呼ぶ形で支持を高めてきた。 しかし、商品の過度の絞り込みで商品を発掘すること、購買の新鮮味が薄れたといわれる。整然としているようで新たな商品の発見がある。そんな商品政策、エンターテインメント性が希薄化した。 しまむらでは現在この品目数の絞り込みの修復作業を進めているというが客数の落ち込みは顕著で2019年2月期の客数も前期比2.1%減。商品数削減の弊害が相当深刻だったことを示している。 もう1つ、価格政策だ。しまむらの価格帯は、ユニクロよりも安く、それでいてチープではなく、品質もまずまずだったところが受けてきた。 しかし、こちらも価格帯を上方に移行した結果、値頃感が失われ、相対的にネットの低価格カジュアル衣料サイトなどに比べ優位性が失われている。 しかも、しまむらは本来、二等地戦略で地方都市の生活道路の面した場所に出店してきた。発注など中央集権的で、パートやアルバイトで十分に賄えてきた店舗運営も低コストでできた。 しかし大都市に積極的に出店した結果、販管費比率も上昇(2018年2月期は2017年2月期に比べ1ポイント以上上昇)、これを補完するための品ぞろえの絞り込みなど売り場効率化を急いだことが現在の苦境を招いた一因とも指摘されている。 衣料品通販サイト「ゾゾタウン」への出店など、EC(電子商取引)も展開し、巻き返しを狙う戦略を打ち出したが、アパレルメーカーやSPA型企業と違い、しまむらは仕入れ方式のため、出店料がECの足を引っ張る。戦略が裏目、裏目に出ている形だ。 カジュアル衣料業界の専門家は、しまむらの場合は「しまパトのような店舗とウェブを融合した戦略、へたにECサイトに出店するのではなくウェブルーミングを徹底するべきではないか」と指摘する』、「「しまパト」と呼ぶ、しまむら“公認”のファン」がいたというのは大変な財産だったのに、「しまむらが持つ「強み」が失われた」というのはお粗末極まる。
・『ワークマンプラスに食われているユニクロ  ユニクロの場合はしまむらのように、客離れを起こしているという兆候はない。 しかし、2019年8月期の上期(18年9月~19年2月)の既存店売上高は前年同期比0.8%の前年割れだった。テレビなどにあれだけ大量の広告宣伝を投入しても既存店は水面上には出なかった。しかも好採算の重衣料が売れる上期の落ち込みは響く。 国内ユニクロの売上高は2018年8月期で前期比6.8%増の8647億円。これだけの規模になっても7%近く伸びているのだから立派という声もあるし、国内の売上高で8000億円以上あるのだから、既存店が多少、マイナスになるのは仕方ないでしょうという意見もある。しかし既存店はもはや、成長期から停滞期に入ったといえるのは確かだろう。 この停滞を促している要因は種々あるが、最近の特徴的な例としていわれているのが、「ワークマンプラス」の台頭だ。ワークマンプラスは、従来のワークマンで扱っていたアウトドアウエアなど商品に変わりはない。 だが、ショッピングセンターに出店し、一般消費者にも買いやすいように商品政策を再構築した結果、マスコミにも取り上げられ、一般消費者の来店が増加、かつてのガテン系の現業職中心の顧客から一般消費者を取り込んで、まさにワークマンプラスブームを巻き起こしているのだ。 ワークマンプラスは19年3月末で12店になる見込み。しかし1年後の20年3月までに計68店とする計画である。 ユニクロの店舗数は800店近くあるのだから、まだまだ競争相手にならない。 しかし、国内ではワークマンプラスがアウトドアウエアで、ユニクロよりも大きく下をくぐる価格を設定しており、ユニクロの同じような商品の価格は相対的に魅力が薄れたようにみえる。 いわばユニクロはワークマンという“カテゴリーキラー(特定の商品分野を豊富に品ぞろえして安値販売するチェーン店舗)”に重衣料(ジャケットやコートなどの衣類)など稼げるカテゴリーを食われているといってもいい』、ワークマンプラスの出店計画は極めて意欲的だが、自信があるのだろう。
・『ユニクロの商品は「革新性」を失いつつある  ユニクロはフリースやヒートテックなど機能性のある商品を生み出し「革新性」があった。しかし、そうした革新的な商品も最近なくなっており、ワークマンプラス現象は、この革新性を失ったユニクロ商品の間隙(かんげき)を突いた格好だ。 ユニクロは海外ではとくに東南アジアを中心にまだまだ成長の余地があるだろう。しかし、国内では低成長に転じており、今後はこの踊り場を経て再成長できるかどうかの正念場でもある。 ユニクロ、しまむらといい、カジュアル衣料品業界に新たな息吹を吹き込んできた両雄は衰退の一途をたどるのか。それとも再び輝きを取り戻せるか』、ユニクロも商品開発には注力しているのだろうが、残念ながら成果につながってないようだ。しまむらも含めた「両雄」の復活を期待したい。

第三に、8月13日付けNEWSポストセブン「消費者の「アウトレットモール離れ」が進んでいる理由」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20190813_1424973.html
・『お盆休みに観光も兼ねて大型アウトレットモールで買い物予定を立てている人は多いだろう。1993年に日本で初めてアウトレットモールが開業して以降、大型モールは38店(日本ショッピングセンター協会調べ)まで増え、常に賑わっている郊外施設がある一方で、すでに閉鎖してしまった施設も出るなど、ブームは一服した感もある。ファッションジャーナリストの南充浩氏が、アウトレットモールの現状をレポートする。 日本に初めてアウトレットモールが誕生してから26年が過ぎようとしています。じつは開業当初、業界の中にはアウトレットモールに対して否定的な見方をする人が多くいました。それは流通業界のライバルであるファッションビルや百貨店、総合スーパー(GMS)だけでなく、商品を企画製造するアパレルメーカーの中にも多くいました。 例えば、大手アパレルメーカー「ワールド」のアウトレットモール内での店舗名は、なぜか「ネクストドア」という名前で、ワールドを連想する言葉の欠片すら見当たりませんでした。これはファッションビルや百貨店などへの気兼ねや忖度からこのような名前にしたと言われています。それほどに当時は流通業からのアレルギー反応が強かったといえます。 しかし、開業から26年も経って、すでにアウトレットモールは小売り業態のひとつとして認識されており、変な拒否反応や対抗意識を燃やすファッションビルや百貨店も見当たらなくなりました。 その理由は、アウトレットモールの商品の揃え方、売り方のカラクリが消費者にもバレてしまっているからでしょう。 20年前のアウトレット店は文字通り「売れ残りの在庫品」ばかりだったので、サイズ欠けや色柄欠けがほとんどでした。しかし、今ではどんな種類・サイズの商品も全部ピシっと揃っています。テナント出店している大手各社はアウトレット店専用の新商品をわざわざ作っているからです。 たしかに売れ残り品も入荷しますが、それだけでは売り場は埋まりません。1店舗か2店舗しか出していないような小規模ブランドなら売れ残り品だけでも店を回していけますが、アウトレットだけでも10店以上出店しているような有名店はり品、売れ残だけで埋めることは不可能です。そのため、必然的に専用商品を作らねばなりません。 つまり、現在はアウトレットとは言いながらも、アウトレット品も含めた低価格店舗というのが実態で、大手ブランドになればなるほどその傾向が強まっています。 20年前は郊外に大型アウトレットモールができれば、周辺道路が大渋滞を起こすほど人が押し寄せ、いくつかの施設はいまだに混雑していますが、そうではない施設も出始め、ブームは落ち着いた感はあります。いまでは施設間格差も拡大していますし、閉店となったモールもあります。 例えば、1993年に日本初として誕生した「アウトレットモール・リズム」(埼玉県ふじみ野市)も2011年に閉鎖されています。改装閉店ということでしたがリニューアルオープンした施設はアウトレットモールではないため、必然的にリズムは消滅したといえます。 関西のアウトレットモールも振るいません。大阪・南港にある「タウンアウトレット・マーレ」(大阪市住之江区)は1999年のオープン当初は賑やかでしたが、すぐに閑散としてしまい、今でも一応アウトレットモールとは名乗っていますが、有名ブランドはほとんど出店していません。 また、同時期に大阪・岸和田にオープンしたベイサイドモール「カンカン」も賑わったのはオープン当初だけですっかり寂れてしまい、今ではアウトレットではなく、ユニクロなどのテナントが入店する普通の商業施設となっています。 その一方で好調を維持し続けるモールもあります。御殿場(静岡)、神戸三田(兵庫)などにある「プレミアム・アウトレット(三菱地所)」や、木更津(千葉)、滋賀竜王(滋賀)などにある「三井アウトレットパーク(三井不動産)」の“大手2強”は比較的安定した人気を誇っていますが、その勢いも今後どこまで続くか分かりません』、「アウトレットだけでも10店以上出店しているような有名店はり品、売れ残だけで埋めることは不可能です。そのため、必然的に専用商品を作らねばなりません」、「名ばかりアウトレットモール」に変わってしまったようだ。
・『なにしろ、アウトレットモールは2010年以降、全国に8施設しかオープンしておらず、既存のモールは1990年代~2010年までが開業のピークだったということになります。どうして新規開業にブレーキがかかったのか、いろいろな理由が考えられます。 まず1つ目は、全国の主要な地方にくまなく大型アウトレットモールができてしまったため、これ以上、来店客数を見込める広大な場所が残っていないことが挙げられます。 アウトレットモールは都心に近い立地のほうがいいわけではなく、観光やドライブついでにクルマで郊外を訪れる人たちをターゲットに、近隣や施設内に有名なレジャー施設や豊富なグルメ店舗があることのほうが重要視されています。長島スパーランド(三重)が近くにある「ジャズドリーム長島」(三井アウトレットパーク)などは、その好例です。そうした近隣レジャーと一体化したモールの新規開発は、そう簡単にできるものではありません。 次に考えられる理由としては、わざわざ郊外のアウトレットモールで洋服などを買わなくても、自宅付近にあるジーユーやH&Mなど低価格ブランド店で十分だと考える人が増えたからではないでしょうか。そのため、アウトレットを訪れる人の中には、レジャーついでに立ち寄って食事をするだけで、短い滞在時間で帰るファミリー層も多くみかけます。 ちなみに、近年は同じモール内であらゆる買い物ができる「ワンストップショッピング」を堪能する外国人観光客が増えてきたため、インバウンド狙いのテナントが増えているのも特徴です。 そして、3つ目はネット通販の普及ではないかと考えています。ネット通販にはECモール、ブランド独自店を問わず、常に売れ残り品や値下げ処分品も並んでいます。実際に各サイトでは店頭ではとっくになくなっている去年の商品が値下げされて並んでいることも珍しくありません。これを活用すればわざわざ遠方にあるアウトレットモールに出かける必要はありません。 ZOZOTOWNが、昨年末に打ち出して半年後に廃止となった割引サービス「ZOZOARIGATO(ゾゾアリガトウ)」は業界では物議を醸し、短期間で廃止となりました。有料会員になれば、初回30%オフ・次回以降10%オフで買えるというサービスでその割引分はZOZOが負担するという内容でした。 オンワード樫山やライトオンはこれに反発してこのサービスから撤退しましたが、「ZOZOが自腹で割り引いてくれるのだから、新商品を並べずに在庫処分品を並べてアウトレット的に使えば効果的だ」と言って撤退しなかったブランドもありました。このように、インターネット通販は在庫処分にことのほか適しているのです。 郊外レジャーと一体化した既存のアウトレットモールは、今後も人気テナントの入れ替えや増床などをしながら一定の売り上げや客数を確保していくでしょうが、これから新規のアウトレットモールが次々と開業するということは考えにくくなりました。 単なる「在庫処分の低価格売り場」としての存在価値が薄れるアウトレットモールは、今後は百貨店やショッピングセンターといったリアル店舗を持つ流通業のみならず、ネット通販との戦いも一層激化していくものと見られます。これもまた時代の流れといえそうです』、「郊外レジャーと一体化した既存のアウトレットモール」を除けば、今後は流通業やネット通販との競争激化で、淘汰が進まざるを得ないようだ。
タグ:アパレル ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス Newsポストセブン 森山真二 (アパレル業界を追い詰めた「三度の裏切り」…これではもう売れない 百貨店もSCもECモールも終わった、ユニクロ・しまむらに黄信号!2強を駆逐する「ワークマン」強さの秘密、消費者の「アウトレットモール離れ」が進んでいる理由) 小島 健輔 「アパレル業界を追い詰めた「三度の裏切り」…これではもう売れない 百貨店もSCもECモールも終わった」 プラットフォーマー の裏切りの歴史 アパレル流通崩壊の引き金は百貨店が引いた アパレル業界は駅ビルやSCにも裏切られた 百貨店化するECモールと決別する日 「ユニクロ・しまむらに黄信号!2強を駆逐する「ワークマン」強さの秘密」 しまむらの凋落が甚だしい ビジネスモデルの転換が裏目に出た 最大約3割にも及ぶ大胆な絞り込みを実施 数ある商品の中から「目新しい商品」を発掘するのが1つの「売り物」となって、それが「集客力」となってきた しまむらが持つ「強み」が失われた 「しまパト」と呼ぶ、しまむら“公認”のファン しまむらでは現在この品目数の絞り込みの修復作業を進めているというが客数の落ち込みは顕著で2019年2月期の客数も前期比2.1%減。商品数削減の弊害が相当深刻だったことを示している 価格帯を上方に移行した結果、値頃感が失われ、相対的にネットの低価格カジュアル衣料サイトなどに比べ優位性が失われている ワークマンプラスに食われているユニクロ ワークマンプラスは19年3月末で12店になる見込み。しかし1年後の20年3月までに計68店とする計画 ユニクロはワークマンという“カテゴリーキラー(特定の商品分野を豊富に品ぞろえして安値販売するチェーン店舗)”に重衣料(ジャケットやコートなどの衣類)など稼げるカテゴリーを食われている ユニクロの商品は「革新性」を失いつつある フリースやヒートテックなど機能性のある商品を生み出し「革新性」 「消費者の「アウトレットモール離れ」が進んでいる理由」 20年前のアウトレット店は文字通り「売れ残りの在庫品」ばかりだったので、サイズ欠けや色柄欠けがほとんどでした 今ではどんな種類・サイズの商品も全部ピシっと揃っています。テナント出店している大手各社はアウトレット店専用の新商品をわざわざ作っているからです 現在はアウトレットとは言いながらも、アウトレット品も含めた低価格店舗というのが実態 閉店となったモールも 郊外レジャーと一体化した既存のアウトレットモールは、今後も人気テナントの入れ替えや増床などをしながら一定の売り上げや客数を確保していく 今後は百貨店やショッピングセンターといったリアル店舗を持つ流通業のみならず、ネット通販との戦いも一層激化
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GAFA(その2)(「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強、「GAFA」に吸い上げられる日本のマネーは何兆円くらいか 「デジタル経済の嘘とホント」(6)、「努力義務違反の可能性」 グーグルの対応 国が指摘) [産業動向]

GAFAについては、昨年11月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強、「GAFA」に吸い上げられる日本のマネーは何兆円くらいか 「デジタル経済の嘘とホント」(6)、「努力義務違反の可能性」 グーグルの対応 国が指摘)である。なお、タイトルから「プラットフォーマー」はカットした。

先ずは、ニューヨーク大学スターン経営大学院教授のスコット・ギャロウェイ氏が1月3日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/254834
・『1月3日夜9時より放送されるNHK-BS1スペシャル「欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を越えて~」。資本主義の行きつく先はどこなのか?2017年から続く、大反響の異色経済ドキュメントの第3弾だ(当日は午前10時から2017年版、正午から2018年版も放送される予定)。 今回は、国民国家、すべてを超越して巨大化するGAFA、従来の市場原理を超えて席巻する仮想通貨などを題材に、歴史を彩った思想家ハイエクらの言葉を拠りどころにして、「自由」の形と資本主義社会の行く末を真正面から問う。 22カ国で刊行し日本で12万部のベストセラーとなった『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者で、番組内でも取材されているニューヨーク大学スターン経営大学院教授、スコット・ギャロウェイ氏へのインタビューをお届けする』、「欲望の資本主義2019」はみごたえのある番組だったが、「ギャロウェイ氏へのインタビュー」とは興味深そうだ(Qは聞き手の質問)。
・『GAFAは「神、愛、消費、セックス」  『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社刊)を著したスコット・ギャロウェイ教授は、絶好調なパフォーマンスを見せるGAFAの株を持ち、ニューヨーク・マンハッタンの高級住宅エリアに住み、いちばん稼ぎがいい企業に就職したい野心的な学生を名門校で教え導く。 学生の多くは、アマゾン、フェイスブック、グーグルといった誰もが夢見るテクノロジーの「巨人」に就職する。『GAFA』は、そんな教授が、4強の知られざる本質について分析し、世界に対して警告を発した書だ。 教授は、同著で4強のGAFAをこう例えた。 ヨハネの黙示録の四騎士。地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権威」を与えられている。 Q:4強は恐ろしい「権威」だとするが、現代の人々の目にはどう映っているのか。 ギャロウェイ:グーグルは、私たちの神です。あなたが結婚しようとしているのか、離婚しようとしているのか、何を悩んでいるのかを、グーグルは知っています。 フェイスブックは、愛です。人間は種として、愛されることを必要としているばかりでなく、フェイスブックは、最も大切な、あるいは2番目に大切な人間関係の触媒となり、人間関係を強化するのです。心であり、愛です。 人間はつねに「もっと」と求めるものです。ウォルマートもユニクロもそこそこその欲求を満たしてくれますが、最も満たしてくれるのに長けているのは、アマゾンです。 最後にアップルです。人間は、交尾の相手にとって魅力的に見えなくてはなりません。自分が交尾に値すると見せると同時に、「私は都会に住んでいて、お金もあるし、話もうまいし、才能もある」というのを伝える最も簡単な方法は、iOSを搭載したものを持っているということです。 グーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルはすなわち、神、愛、消費、そしてセックスです』、なかなかユニークな比喩だ。
・『資本主義の大原則「独占企業は分割せよ」  Q:しかし、これら4強には、別の顔もある。グーグルは、検索の93%のシェアを独占し、フェイスブックは民主主義を危うくするほどの影響力があり、『the four GAFA』によれば、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が率いるアマゾンは、州の売上税を免れてきたと指摘している。 ギャロウェイ:4強が、何の抑制と均衡(チェック&バランス)も利かないままに、影響力を強め、巨大になってきたというのは事実で、それは、深刻な病です。 私は、4強を分割する必要があると考えます。資本主義のカギは競争であり、競争のカギは、いかなる企業も過剰なパワーを持たないということです。現在は、検索、ソーシャルメディア、eコマースの分野で1社しかない、つまり基本的に寡占の状況にあります。それを改善するのは、規制でも処罰でもなく、独禁法違反で分割することだと思います。 アメリカには、企業分割の歴史があります。1980年代には、Ma Bellと呼ばれ、長距離電話市場の80%を独占していたAT&Tを8つに分割し、それによって光ファイバー、携帯電話、データサービスといったイノベーションを開放しました。これらのイノベーションはそれまで、電話という独占ビジネスを食わないように(AT&T傘下の)ベル研究所に眠っていたのです。 フェイスブックは、広告やコンテンツを監視することを怠っていますが、もしフェイスブック、WhatsApp、メッセンジャー、インスタグラムの4社に分割されれば、そのうち1社が他社に差をつけるために、「好ましくないコンテンツが一切ないように努力しよう。悪役が、私たちのプラットフォームを武器として使うことがないようにしよう」と思うはずです。同様に、グーグルとYouTubeは分離できます。究極の解決策は、競争であり、資本主義なのです。 Q:資本主義とそのカギである競争が、4強を肥大化することを止め、現在の寡占状態を改善するというギャロウェイ教授。それでは、資本主義は、私たちに何をもたらしてきたのだろう。そして、資本主義経済の中に生きる私たちにとって、何が大切なことなのだろうか。 ギャロウェイ:資本主義経済においては、裕福であるほど、よいヘルスケアが受けられ、ストレスも軽減され、寿命が延びます。選ぶパートナーの幅も広がりますし、よりよい教育を受けられれば、子どもが成功する確率も上がります。より裕福になろうというプレッシャーはつねにありますが、そうした努力は、すばらしいことです。 要は、長期的な将来に対する投資をしているか、いい学校があるか、不幸な人々へのセーフティネットはあるか、ということです。 アップルは宗教のようであり、創業者のスティーブ・ジョブズはイエス・キリストのように思われていますが、私は、人となりではなく、富で判断するのは、大きな間違いだと思います。私には2人の息子がいますが、自分たちが学んできた価値を子どもに教えていくのが、両親の責任だと思っています。 Q:一方で、GAFAという4強の寡占状態が形成された中、資本主義の性質が変貌してしまったことも指摘する。 ギャロウェイ:資本主義にはネガティブな面もありますが、私たちが今向かっているのは独裁主義のようなものです。一握りの人々と企業が強大な権威を持った場合、それは真の資本主義とは言えません。寛容な精神、市民としての責任が伴って実現され、政府も企業が信頼できる、平等な条件で競争していることを確実なものにしたときこそ、資本主義はベストのシステムだと言えるのです。 Q:資本主義を変貌させてしまった4強に囲まれた生活に慣れ親しんでいる若者が、今後幸せを手に入れることは、とても困難なことのように捉えられる。しかし、ギャロウェイ教授は、本質的なものは変わらないと訴える。「幸福とは愛だ」と。 ギャロウェイ:若い人が一生懸命働き、自分と家族のためにある程度の経済的安定を築くこと、そして、夫婦が安全で経済的に安定した家族を築くのは、もちろん大切です。 でも、お金は手段であり、これで十分だということはないのです。それを理解したとき、満足と幸福を得られるのは結局、深く、意味がある人間関係が果たす役割なのです。両親、子ども、友人、同僚といかに親しく意味がある関係を築いているかが肝心です。ハーバード大の「成人発達研究」は、75年にわたり700人を追跡調査した大規模なものですが、その結果は、「幸福というのは、愛だ」、それ以外にはない、というものでした』、「独占企業は分割せよ」との主張には諸手を上げて賛成だ。
・『ギャロウェイ教授から日本へのメッセージ  Qこのような中、日本は、国としてどんなことに気を配ったらいいのだろうか。4強が肥大化する中、その富が、アメリカのように大学や医療機関などに還元されていることもない。 ギャロウェイ:日本の選挙で選ばれた政治家など公職にある人たちは、この問いかけをしなくてはなりません。つまり、大手のテクノロジー企業は、日本社会にいい影響をもたらしているか?という問いです。日本の企業が適正な競争をするチャンスがあるか、ということを確認しなくてはなりません。 自由社会であるアメリカや日本で選挙をする際、選ばれた人物は、有権者の意思を代表しています。企業というのは、わずかな数の株主の意思だけを反映しています。企業が独占を享受し、経済を左右しすぎると、つねに危険な状態となります。なぜなら、彼らは政府をも左右するようになり、政府も健全な国家について長期的視点で考えることをやめてしまうからです。「権力の腐敗」はこうして起きます。経済の多くの部分が、つねに少ない役者の手に落ちた場合にこうしたよくない状況に陥ります。 悪いことに、収入格差というのは、3つの方法で修正されていきます。飢饉、戦争、そして革命です。それらは避けなければなりません。ただ、アメリカでは、緩慢なスピードで革命が起きていると思います。一握りの人に富が集中し、そこに入ることができない人々が、怒りのあまり初めて声を上げて、独裁者のような人物を指導者に選出しました。私は、アメリカは革命を始めてしまったと考えています』、「アメリカは革命を始めてしまった」というのは、トランプ現象の面白い解釈だ。

次に、経済産業研究所/日本生産性本部 上席研究員の岩本晃一氏が5月7日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「GAFA」に吸い上げられる日本のマネーは何兆円くらいか 「デジタル経済の嘘とホント」(6)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/200925
・『日本では、Uberなどのライドシェアは「白タク」だとして許可されていないため、欧米のように低賃金・不安定労働を強いられている運転手や、Uberに仕事を奪われたタクシー運転手の抗議デモを見ることはない。 だが、多くの人々は意識していないかもしれないが、日本でも膨大なマネーとデータがGAFAなどプラットフォーマーに吸い取られている』、興味深い試算だ。
・『家計消費で急増した「通信費」 GAFAに流れる  日本では、1995年が「インターネット元年」とされる。 それ以前の93年から2017年までの24年間の家計の支出(名目)の推移を、総務省家計調査でみると、この一端が見える(図1)。 24年の間に、総支出は14.87%縮小しており、食料、被服履物、教養娯楽などの支出は減って切り詰められているが、保険医療費と通信費(機器を含む)は増加している。 中でも増え方が突出しているのが、「通信費」だ。この通信費の一部は米国のGAFAなどに流れていると考えられる。 日本の消費者がパソコンを購入すると、そのパソコンの外国製の部分(CPU、液晶、半導体など)の代金が海外に流れていく。 スマートフォンを購入した場合でも、その一部代金を通信費に上乗せしている場合も含めて、支払いの一部が海外に流れていく。 グーグルの最大の収入源は、Gmailだろう。 最近の若者が使用するフリーメールのほとんどはGmailといっても過言ではない。若者の間では、「ググる」という言葉がはやるほど、ネット検索はグーグルが使われる。 そのため、グーグルの検索画面から入力できるGmailは、若者にとって最も使いやすいフリーメールである。Gmailのなかに、企業からの広告が届く。これがグーグルの大きな収入源となっている。 また、ツイッターは、他人のツイートをフォローして見ていると、企業からの広告が届く。これもまたツイッター社にとって大きな収入源である。 アマゾンは、書籍、洋服など物資の購入、ネット映画、クラウドサービスなど、多種多様な商品サービスを提供している。そこには必ずといっていいほど企業広告が入っている。 同社の収入源は、販売している商品・サービスの料金の一部と、企業からの広告費だろう。 またパソコンやスマートフォンで使用されているソフト、すなわちウィンドウズ、ワード、パワーポイント、エクセル、そしてウイルス対策ソフトなどがインストールされれば、その使用料が海外に流れている。 またiPhoneの部品を、数多くの日本メーカーが供給しており、その代金は日本に入るが、iPhoneのもうけの過半はこうしたソフトが占めており、日本から吸い上げられるお金の方が多いと考えられる。 吸いあげられるのはマネーだけではない。ネットを使うたびに、その個人の嗜好がわかる「個人情報」が米国本社に流れている。 フェイスブックやツイッターでは、個人が書き込みをするたびに、その人の嗜好に関する情報が米国本社に流れ、またフェイスブックやツイッターの社内では、書き込まれた言葉を収集し分析することで、社会の将来動向を予測し、ビジネスにつなげる研究も行われていると聞く』、確かに、流出ルートは様々のようだ。
・『個人で年間に2.1兆円 日本全体で3.3兆円が流出?  日本からどれぐらいのマネーが「GAFA」などに流れているのか。 全体像をつかむのは難しいが、1世帯当たり年平均1ヵ月間の通信費1万3271円(2017年)のうち控えめに見て、一体、どのくらいが海外に流出しているとみればいいだろうか。 1ヵ月平均の通信費(含む、情報機器購入代を含む)のうち、平均的な家庭では、約4分の3が、国内通信事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)への支払いであり、残り約4分の1が海外に流出していると大雑把な「仮定」をしてもいいのではないだろうか。 すると、 総流出金額=13,271円×12月×1/4×5245万世帯=1年間当たり2.1兆円、となる。 以上は個人が払う金額だけだが、これに各企業・機関が支払う通信費のうち海外に流出する金額を大まかに試算すると以下のようになる。 電子情報技術産業協会の統計によれば、2018年度のパソコンの出荷金額合計は7031億円である。このうち、企業購入分は、少なくとも個人購入分より多いと思われる。 その支払い代金のうち半分以上は海外に流れていると考えられるが、少なく見積もって約3分の1の2000億円が海外流出と考える。 また最近、企業の広告宣伝は、インターネットの普及により、リスティング広告やバナー広告、楽天やアマゾンなどのオンラインマーケットへの出店、検索エンジン上位表示対策、などが有効な手法になっている。 リスティング広告とは、ユーザーが検索するキーワードに連動して表示される広告のことで、ユーザーの関心が高いタイミングで広告を表示させることができる。 リスティング広告の代表的なものとしてはグーグル広告がある。 近年では、旧来媒体よりもインターネットの広告媒体に広告宣伝費をかける割合が高くなっていて、売り上げへの貢献度も高まっているため、ますますインターネットへの広告宣伝費が増えている。 電通によれば、2018年の企業が支出した日本の総広告費は6兆5300億円であり、うちインターネット広告費が1兆7589億円である。 この中には楽天など国内ネット事業者への広告もあるが、いまやネットは外国事業者のほうが優勢だから、このうちの半分以上の約1兆円以上が海外に流れていると考えられる。 こうして考えると、企業からの海外への流出分は、約1兆2000億円となる。 個人と企業分の双方を合計して約3.3兆円程度、おおざっぱにみて約3兆円程度が海外流出分と考えられる。 日本からだけでも、これだけの巨額のマネーを吸い取っているのだから、GAFAが世界中の市場からいかに多くのマネーを吸い取っているか、想像されよう』、「海外流出分」が「個人と企業分の双方を合計して約3.3兆円程度」とは意外に少ない印象を受けた。
・『国内の消費が弱い一因 マクロ経済にも影を落とす  エコノミストの間では、日本の景気がかつてのように盛り上がらない大きな要因として、GDPの約6割を占める個人消費の停滞が長引いていることをあげる人が多い。 「戦後最長」とされる現在の景気拡大も、高成長時代の拡大局面と比べてGDPの伸び率ははるかに低く、好景気といってもとても「弱い好景気」だ。 毎月勤労統計の賃金の伸びがほんの少し下振れしたくらいで、アベノミクスは失敗という声が出てくるくらい、「弱い好景気」なのだ。 筆者は、日本の個人消費が盛り上がらない要因の1つには、家計消費支出で唯一といってもいい高い伸びを示す通信費の一部が、海外に吸いあげられていることがあると考えている。 通信費として使われたお金が、国内の企業の所得になり、さらにそれが投資や消費として国内で使われることが少ないからだ。 日銀がゼロ金利でマネーを市中に大量に供給して、国内の投資や消費を盛り上げようとしているが、企業が国内よりは海外での投資をするように、通信費の一部が米国のGAFAに吸い取られ、日本の経済成長に寄与していないのだ。 GAFAなどのプラットフォーマーと呼ばれる企業に対しては、独占禁止法で規制しようという取り組みが始まっている。 不当にデータを囲い込んだり収集したりする行為や、国内で支配的地位を乱用し、取引相手に自らに有利な条件を押し付けたり、反競争的な行為をしたりしているのでは、という問題意識だ。 またプラットフォーマーの寡占が進む中で、反競争的な行為が技術革新を阻害していたり、日本の企業がGAFAなどの「下請け」化したりして、このままでは日本のイノベーションが衰退するという危機感も強まっている』、「GAFAなどのプラットフォーマーと呼ばれる企業に対しては、独占禁止法で規制しようという取り組みが始まっている」、というのは遅きに失した感があるが、どこまで踏み込んでやるのか、お手並み拝見だ。
・『デジタル革命が生む新たな格差構造  確かにこうした問題への取り組みは重要だと思うが、筆者が考えるプラットフォーマーが生み出す最も深刻な社会問題は、プラットフォーマーが不安定な低賃金労働力を生み出し、またプラットフォーマーに多額のマネーが吸い上げられて、マクロ経済にも影響を及ぼし始めていることだ。 あたかも、産業革命の時代にマルクスが見た「資本家(ブルジョアジー)が労働者(プロレタリアート)を搾取する」格差構造が、デジタル革命の時代に生まれようとしているのだ』、その通りで、放置すれば、資本主義の危機をもたらす懸念もあるだろう。

第三に、7月12日付け日経ビジネスオンライン「「努力義務違反の可能性」、グーグルの対応、国が指摘」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00052/061900004/?P=1
・『個人情報開示請求の対象とした7社の中で、ダントツのデータ量を開示したのがグーグルだ。ネット動画300時間分を優に超える87ギガバイトもの記者の個人データを保有していた。この分量を開示できることは、同社が優れたデータ管理システムを構築していることを意味する。 しかし、データの中身はネットテレビの起動時刻など利用目的が想像しにくいものも多く、グーグル側に正式に問い合わせる窓口もない。個人情報保護委員会は日経ビジネスの取材に対し、グーグルの対応を「法の努力義務に反している可能性がある」と指摘。しかし、グーグルが改善に動く様子は確認できない。 その姿勢は、今回対象になった7社全てに見られた様々な問題の背景に共通するものではないだろうか。「Android TV Launcher」  この英語が何を意味するか想像がつくだろうか。2018年4月、グーグルから開示された個人データの中に含まれていた項目の1つだ。 第3回で説明した通り、筆者はアップルのハードユーザーである。通信端末は同社のものばかりだ。グーグルのOSであるAndroidを利用したことが果たしてあったか、すぐには思い至らなかった』、グーグルが「87ギガバイトもの記者の個人データを保有」、とは膨大さに驚かされた。
・『ネットテレビの起動時刻と一致  思い悩んでいると、「Android TV Launcher」に並んで、「Hulu」という項目があったのを見てはたと気付く。記者はネット動画サービスの「Hulu」に加入し、自宅のネットテレビで利用している。「Android TV Launcher」が意味するのは、テレビに組み込まれているネットワーク機能の起動時刻ではないか。思い起こしてみれば、テレビでグーグルアカウントを同期させた記憶がある。 そこで、ネットテレビの起動を何度か繰り返し、その時刻をメモした上で、再度グーグルから個人データをダウンロードすると、時間が確かに一致した。 テレビのプライバシーポリシーには、グーグルに関する記載は見当たらない。一方、グーグルのプライバシーポリシーには、同社のサービスを利用した際に「リクエストの日時」を収集すると書いてある。 なぜこのようなデータまで収集するのか。データ収集の目的について、グーグルはプライバシーポリシーにサービスの提供・維持・向上・開発、広告の提供、利用状況の測定、ユーザー保護などと列挙しているが、テレビの起動時刻がこの内のどれに当たるのかは結局のところ分からない』、仕事とはいえ、読んでも分かり難い「プライバシーポリシー」を、よくぞ読んだものだ。
・『写真データでわかるアップルとの違い  グーグルが開示したデータは、テレビの起動時刻を含め、87ギガバイトにも及んだ。今回調査した対象の中でもダントツのデータ量だ。 その大半を占めるのが、グーグルのクラウドサービス上に保存していた写真だ。一方、連載3回目で解説したように、アップルはクラウドサービス上の写真データを個人情報とひも付けていない。両社の個人データへの姿勢の違いがここに大きく出ている。 グーグルのウェブブラウザー「クローム」での閲覧履歴、傘下のユーチューブでの閲覧履歴、カレンダーサービスの記述内容、クラウドサービス内の保存ファイル。挙げてもキリがないぐらい様々な項目が含まれていた。 ただし、データ量が多いことで、同社が悪質だというわけではもちろんない。むしろ、ここまでのデータ量を統一的に管理できているその体制は、これまで解説してきたほかの対象企業に比べ優れているといえる』、グーグルのクラウドサービスにはセンシティブな個人情報が多く、万が一、流出した場合のリスクも大きそうだ。
・『質問窓口がない  問題は、開示された個人データに関して疑問を抱いた時、解決の手法が限られていることだ。プライバシーポリシーには、「Android TV Launcher」が何を意味するのかという個別具体的な記載はなかった。この項目がテレビの起動時刻であることを記者が解明した後も「テレビの起動時刻を何に使っているのか」という疑問を解決できなかった。この情報をグーグルに提供しないよう選択する機能は用意されているが、その機能を使うかを判断するために、まずは用途の詳細を知りたい。 こうした疑問が生じた時に質問を投げかける窓口がグーグルにはなかった。あるのはグーグルがユーザーの意見を集めるための「フィードバック送信」の機能、そして、ユーザー同士が疑問に答え合う「フォーラム」だ。 データの詳細や利用方法についてどう疑問を解決すればいいか、フィードバックに送っても返答はない。フォーラムで尋ねると「グーグル本社に聞くしかないのではないか」。しかし、グーグルの拠点紹介ページには本社の電話番号が記載されていなかった。 今度は取材として広報担当者に尋ねてみた。問い合わせ窓口がなぜないのか。回答は「ユーザーはグーグルとシェアしている情報を『アカウント情報』という機能で管理できます」だった。 そもそもダウンロードできるデータは、グーグルが保有している個人情報の全てなのかも同時に尋ねたが、上記の機能で「どんなデータがグーグルアカウントに保存されるか設定、変更ができます」という回答だった。いずれも質問をはぐらかされているとしか思えなかった。 問い合わせ窓口がないことについて、昨秋、個人情報保護委員会の其田真理事務局長へのインタビューで見解を求めると、厳しい指摘が返ってきた。「個人情報保護法第35条の努力義務に反している可能性がある」。同法35条は、企業に対し、個人情報に関する「苦情の適切かつ迅速な処理」、そのために「必要な体制の整備」を努力義務としている。 グーグルの広報担当者に再度尋ねてみた。「個人情報保護委員会からも問題視するコメントが寄せられたが、今のままの回答で問題はないか」と。 答えは変わらなかった。「すでに何度もご返信差し上げている通り、ユーザーが情報を管理する『アカウント情報』を提供しております」 記者が尋ねているのは管理の方法ではない。管理をするために必要な知識を得るための質問の方法だ。実質的な回答拒否ではないかと尋ねると、「回答拒否もしていませんし、すべて誠実にお答えしています。回答があった事実については間違いのないようにお願い致します」と返ってきた』、「質問窓口がない」のはグーグルだけではなく、多くに共通する。「個人情報保護法第35条の努力義務に反している可能性」を指摘されても、努力義務違反程度では、動じない高圧的姿勢には改めて驚かされた。
・『グーグルのプライバシーポリシーは「よくできている」  広報の言葉に従って、グーグルアカウントの機能を色々と試してみたが、質問の答えを見つけることはできなかった。記者の理解力不足が原因かもしれない。結局、グーグルの対応に誠実さがあるかは読者の判断に委ねるほかない。ただ、記者から1つ疑問を呈したい。グーグルの体制は「ユーザー保護」を志していたとしても、少なくとも「ユーザー起点」ではないのではないか。 プラットフォーマー各社はユーザー重視を掲げてはいる。しかし、その施策は「ユーザー起点」ではなく「コンプライアンス起点」のように思えるのだ。つまり、「ユーザーがプライバシー保護体制を充実していると感じるか」を基準としておらず、「プライバシー上の違法行為を犯しているとみなされないか」という考え方に基づいて、施策が組み立てられているのではないだろうか。 分かりやすい例を1つあげよう。グーグルからダウンロードした個人データのファイルをダブルクリックすると、下の写真のように文字化けして表示されてしまった。 これはアップルが提供するウェブブラウザー「サファリ」でファイルを開いたことが一因のようだ。グーグルのブラウザ「クローム」で開くと正常に表示された。 文字化けの解決方法を記者はたまたま思いつくことができた。思いつかない人に対して、質問窓口がなければグーグルはどう対応するのだろうか。 ユーザーにとって不親切な仕組みだ。 「グーグルはプライバシー専門の技術開発者も抱えていて、プライバシーポリシーもよく作り込まれている」(個人情報に詳しいあるコンサルタント)と評価する声もある。しかし、記者にはこのコンサルを含め、プラットフォーマーを巡る業界全体がユーザー起点を見失っているとしか思えない。複雑な個人情報の保護法制に対応することだけにリソースを割いているのではないか』、「複雑な個人情報の保護法制に対応することだけにリソースを割いている」、というのには違和感がある。
・『家族にも「ポリシーを読みなさい」と言える?  グーグルだけが問題なわけではない。フェイスブックとアップルは英語で質問に回答した。アマゾンは記者のパソコンで開けないファイル形式でデータを送ってきた。楽天、LINE、ヤフーは開示を拒んだ。いずれもユーザー側に一定の知識がなければ、解決しない問題ばかりだ。 プラットフォーマーのユーザーは年齢も国籍も職業も関係なく、遍く広がっている。そのユーザー達に何らかの知識を前提としてサービスを提供することは、「ユーザー起点」とはとても言えないだろう。 ユーザー起点を追求するのはコストがかかる。ユーザー起点の保護体制の整備よりも、ユーザーがより利便性を感じる新サービスの開発を追求するのも1つの企業判断かもしれない。 しかし、各国の公的機関も明確に法律だけ守っていればいいという各社の態度を問題視するようになっている。個人情報保護委員会の其田事務局長がインタビューで踏み込んだ発言をしたのはその象徴と言える。個人情報保護の法制度がとりわけ厳しいEUでは、フランスの個人情報保護機関が1月、プライバシーポリシーがわかりにくいというあやふやな理由でグーグルに制裁金の命令を下している。 プラットフォーマーの従業員全てに問いたい。あなたの父母に、祖父母に、あるいは子供に、ITの知識を満足に待たないまま、あなたの会社のサービスを使っている人はいるはずだ。もし彼らから個人情報について質問を受けた時、「プライバシーポリシーを読め」と答えるだろうか。今、あなたの会社はそんな不親切な対応を顧客にしているかもしれない』、日本もフランスに習って厳しい対応をしてほしいものだ。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン GAFA 岩本晃一 (その2)(「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強、「GAFA」に吸い上げられる日本のマネーは何兆円くらいか 「デジタル経済の嘘とホント」(6)、「努力義務違反の可能性」 グーグルの対応 国が指摘) スコット・ギャロウェイ 「「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強」 NHK-BS1スペシャル「欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を越えて~」 GAFAは「神、愛、消費、セックス」 資本主義の大原則「独占企業は分割せよ」 ギャロウェイ教授から日本へのメッセージ 「「GAFA」に吸い上げられる日本のマネーは何兆円くらいか 「デジタル経済の嘘とホント」(6)」 家計消費で急増した「通信費」 GAFAに流れる 個人で年間に2.1兆円 日本全体で3.3兆円が流出? 国内の消費が弱い一因 マクロ経済にも影を落とす デジタル革命が生む新たな格差構造 「「努力義務違反の可能性」、グーグルの対応、国が指摘」 個人情報開示請求 写真データでわかるアップルとの違い 質問窓口がない 家族にも「ポリシーを読みなさい」と言える? 個人情報保護の法制度がとりわけ厳しいEUでは、フランスの個人情報保護機関が1月、プライバシーポリシーがわかりにくいというあやふやな理由でグーグルに制裁金の命令を下している
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ZOZO問題(その1)(前澤社長が火消しに躍起でも「ZOZO離れ」の懸念が消えない事情、背伸びがバレたZOZO「前澤社長」 プロが読みとく経営状況 実際は“赤字14億円”!?、前澤友作を悩ますZOZO離れのウラで もうひとつの「意外な真実」 プラットフォームの引力はさらに強まる) [産業動向]

昨日のECに続いて、今日は、話題になっている ZOZO問題(その1)(前澤社長が火消しに躍起でも「ZOZO離れ」の懸念が消えない事情、背伸びがバレたZOZO「前澤社長」 プロが読みとく経営状況 実際は“赤字14億円”!?、前澤友作を悩ますZOZO離れのウラで もうひとつの「意外な真実」 プラットフォームの引力はさらに強まる)を取上げよう。

先ずは、2月2日付けダイヤモンド・オンライン「前澤社長が火消しに躍起でも「ZOZO離れ」の懸念が消えない事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/192855
・『水玉模様のZOZOSUITをテコにしたプライベートブランド事業が不発に終わり、決算予想の下方修正を迫られたZOZO。前澤友作社長は、順調に伸びているEC事業で年末からあらわになった“ZOZO離れ”の火消しに躍起だが、出店者側の不満はくすぶっている。 「1255ショップ中、42ショップ」――。1月31日に2019年3月期第3四半期決算を発表したZOZOの前澤友作社長は、同社が運営するECサイト「ZOZOTOWN」で昨年末に始めた、定額の有料会員が10%割引となるサービス「ZOZOARIGATO」を受けて、昨年末から年明けにかけて大きく報じられたオンワードホールディングス(HD)のように、値下げを嫌って店舗の撤退や販売停止など、いわゆる「ZOZO離れ」をした同日時点の店舗数をわざわざ冒頭のように、アナリスト説明会の場で明らかにしたのだ。 前澤社長は「ショップ数ベースで3.3%、取扱高ベースでは1.1%。メディアの論調は大丈夫かというものでしたが、業績に与える影響は極めて軽微」と説明。「オンワードHDの取扱高への影響は0.5%」と付け加えるのも忘れなかった。 同社は、顧客に無料配布した水玉模様の体形計測用スーツ「ZOZOSUIT」の費用や、これを用いて購入するプライベートブランド(PB)商品の販売不振により、今期通期の連結売上高予想を19.7%減の1180億円、当期純利益も36.4%減の178億円に下方修正した。一連のZOZOSUITやPB事業による赤字額は、125億円に上る』、「「ZOZO離れ」をした」のは、「「ショップ数ベースで3.3%、取扱高ベースでは1.1%」というのであれば、確かに影響は軽微ともいえる。
・『「実るほど首を垂れる…」の指摘に前澤社長は  そんな中でZOZOARIGATOのスタートは取扱高の増加に貢献しており、前澤社長は「これは良いニュース」と胸を張ったのだ。 しかしそんな姿勢に、出席したアナリストからすかさずツッコミが入った。 例えばドイツ証券の風早隆弘調査副本部長は、ZOZOTOWN事業が出店者であるアパレルメーカーやセレクトショップとの信頼関係によって成り立っているとしたうえで「(撤退店舗数が)取扱高に占める割合が少ないからいいという問題ではない。『実るほど首を垂れる稲穂かな』と言う。今後、彼らとどのようにコミュニケーションをとるのか」と質問した。 前澤社長は撤退を「遺憾で悲しく思う」としながらも、「リアルのショッピングビルは、カードを持っていると何%オフとやっている。なぜ今まで(ZOZOで)やって来なかったのか、という声もあるくらいだ」と反論。 もっとも「ルミネカードで10%オフ」は年数回の期間限定であり、通常時のルミネカード会員の割引は5%オフだが、それはさておく。 前澤社長はZOZOARIGATOの値下げの原資をZOZOが負担していることから「出店者が負担する(値引きの)クーポンよりもいい、との(出店者からの)声もいただく」と強調。値下げのイメージを嫌う出店者については、ZOZOTOWN上で10%値下げ後の価格を表示しないようにできる仕組みを2月中に導入するなどの配慮を示し「ブランド(出店者)の意見に沿う収束モードになっている」と話した。 果たしてそうか』、真相を知りたい。
・『突然、二者択一を迫られたアパレル  「かなり突然で、トップダウンで来た感じがした」――。あるオンワード首脳は、昨年ZOZOからもたらされた、ZOZOARIGATOに参加するか、ZOZOTOWNから撤退するかの二者択一の要請について、こう振り返る。 恒常的な値下げというZOZOARIGATOの仕組みに加え、こうした高圧的とも取れる姿勢がオンワード以外のアパレル各社の反感を買った可能性は想像に難くない。 現時点でZOZOから撤退していないある有力セレクトショップ首脳も本誌の取材に、こうしたZOZOの姿勢を批判し「これからZOZO離れは確実に広がっていく」と言い切った。 ZOZOと出店者の関係については、最盛期の総合スーパーによる値下げ販売でメーカー側が疲弊しつつも、売り上げ確保のために商品を納めざるを得ない構図に例える見方がある。売り上げ減、利益率の低下に悩むアパレル業界で“ZOZO依存”から抜けられないアパレルは少なくないだろう。 しかし、やや異なる問題も生じている。オンワードHDなど強い経営基盤を持つ一部のアパレルやセレクトショップは、自社ECの黎明期こそサイト構築から物流までZOZOの支援を受けていたが、その間に人材やシステムに投資し、ノウハウを吸収して、今ではZOZOに頼らない完全自社ECを実現。同社に依存する必要性は薄れている。そんな中、ZOZOTOWNで自社の商品を恒常的に値下げされれば、利幅の大きい自社ECから客を奪われるため看過できない』、確かに、「今ではZOZOに頼らない完全自社ECを実現。同社に依存する必要性は薄れている」ような有力アパレルが離れていくのは当然だろう。
・『ZOZOより値下げで「客が流れる」と前澤社長  一方で前澤社長によると、自社ECでZOZOTOWNよりも安く売っている出店者もいるといい「うちからお客さまが流れる」と懸念を示した。出店者との“共食い”がすでに始まっている現実を認めたのだ。 セレクトショップの雄であり、ZOZOTOWNの草創期に出店してむしろZOZOの成長を支えたともいえるユナイテッドアローズは、今なおZOZOの支援で自社ECを運営しているが「最近では低価格の商品しかZOZOTOWNに出していない」(アパレル業界関係者)と言われており、やはり距離が感じられる。 「自社で顧客を囲い込みたいという出店者とはいつか、意見の相違が出る。今後の方向性を考えるいいきっかけになったと思う」――。前澤社長はこんなドライな感想も口にした。 さしあたり取扱高を伸ばしているZOZOTOWNだが、ほころびの予兆は消えない。第二の成長の柱となるはずだったPBが「最低でも収支トントンの低リスク中リターン事業へ」(ZOZOの決算説明会補足資料)と一旦縮小を余儀なくされた中、主力事業であるZOZOTOWNでどのような戦略を打ち出すのだろうか』、「出店者との“共食い”がすでに始まっている現実を認めたのだ」、であれば今後の成長戦略が大いに注目される。

次に、2月14日付けデイリー新潮「背伸びがバレたZOZO「前澤社長」 プロが読みとく経営状況、実際は“赤字14億円”!?」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/02140802/?all=1&page=1
・『ファッション通販ZOZOの前澤友作社長(43)にとって会社は打ち出の小槌だ。女優との交際、月旅行、1億円ばら撒きの話題で株価を背伸びさせ、持ち株を売却しては遊ぶ金に。しかし、テナントの離脱や下方修正で株価は更に下げ基調。錬金術の仕掛けがバレ始めた。 去る1月31日発表のZOZOの決算。通期の連結経常利益は従来予想の400億円から265億円に下方修正し、今期の年間配当を36円から24円へ大幅に減額した。その後の説明会に、前澤社長はシャツにニットを重ねた出で立ちで現れ、殊勝な態度に終始。ツイッターでも、誤算があったことを認めた。 翌2月1日の市場では、前日終値2193円から10%超の下げ幅となる1971円をつけたものの、地合いがさほど悪くないことも幸いし、5%弱安まで戻して引けた。時価総額にして6830億円余。それでも、昨年7月の最高値4875円からの下落トレンドが反転する兆しは窺えない』、確かにZOZOや前澤社長は話題性十分のようだ。
・『ZOZOの経営はどういう状況なのか。 「今回の第3四半期の決算短信を見ると、ZOZOは136億円の純利益を上げています。しかし、ちゃんと決算をすると実際には黒字の状態にあるとは言えなくなる。もともと、ZOZOは財務的にはとても健全な会社でした。在庫をほとんど持たず、売掛金も短期間で回収できていました。ところが、新規に始めたプライベートブランド事業などがうまくいかなかったのでしょう。昨年から急激に財務体質が悪くなっています」と話すのは、会計評論家の細野祐二氏。大手監査法人の代表社員を務めていた2004年、粉飾決算事件に関与したとして、東京地検特捜部に逮捕・起訴された。目下、上場企業全ての財務諸表を見て、投資家への啓蒙活動を展開する。 ZOZOで目につくのは営業キャッシュフローの悪化。仕入れや製造、販売など、利益を得るための活動が目減りしていると想定されるのだ。 「今期の決算短信には、キャッシュフロー計算書は掲載されていないので、昨年10月に公表された第2四半期の報告書の数字を元に第3四半期の営業キャッシュフローを試算すると、約40億円になります。最初に触れたように利益は136億円。つまり、だいたい96億円の現金が入金されないままになっているわけです」(細野氏) そのカネは在庫と売掛金に化けてしまった。 「元々ZOZOは売掛金の入金が早く、昨年3月期では売掛金は253億円でした。しかし、今期は387億円。前年度から134億円増えた。要するに、売掛金の回収に時間がかかるようになってしまったのです。私の計算によると、これまでは売掛金を回収するのにかけた時間は3カ月間ほどで済んでいたのですが、今期はそれが5カ月間まで延びている。つまり、差し引き2カ月の間、回収できていない売掛金があり、不良債権化していると言えます。私は、その金額がだいたい100億円に達していると見積もっています」(同) 同様に在庫の回転率も非常に悪化している。自社で商品を生産していなかったから在庫はほぼ0だったのに、今期は一転64億円にまで増えた。1カ月で約50億円の過剰な在庫を抱えている計算になるという』、「今期の決算短信には、キャッシュフロー計算書は掲載されていない」というのは、仮に「都合が悪いから」見送ったというのであれば大問題だが、問題視されてないようなので、何か然るべき理由があるのだろう。
・『実際は14億円の赤字?  「以上の試算を踏まえますと……」と細野氏は続ける。 「不良資産は合計で150億円ほどになる見込みです。136億円の純利益というのはある意味で見せかけの数字であり、実際は、14億円の赤字であると言えるのです。この会社は本来は資金繰りがとても良い会社であって、新規事業に手を出す前は、基本的には無借金経営でした。ところが、第2四半期に銀行から240億円を借り入れて自社株を600万株購入しました。その結果、前年度は408億円あった自己資本が201億円にまで減ってしまったのです。はっきり言って、資本はスカスカの状態。実際には赤字の状態なんですから、これを放置すれば、そう遠くない時期に債務超過に陥ってしまう恐れもあります。監査法人が決算上の問題を指摘しなければいけないのですが……」 銀行借り入れの事実は財務諸表に記載されている通りだし、大量保有変更報告書からも、前澤社長は昨年5月23日、600万株を市場外でZOZOに対して売却していることがわかる。前日22日の終値などから計算すると、前澤社長は税金は別にして240億円ほどを手にしたことになる。 細野氏の言うように「資本はスカスカ」になるにも拘らず、会社は借金をし、前澤社長から株を買い取った。それはなぜか。株式ストラテジストの中西文行氏は、 「オーナー会社の場合、社長が株を売るというのは、通常負のイメージです。自分の会社が成長するなら売る必要はありません。前澤さんが売ったところを見ると“さもしいのかな”というイメージを持ちました。経営者が株を売る場合、経営危機だというのがオーソドックスな見方ですが、この人は遊ぶ金が欲しい。そのお金を使ってかは知りませんが、千葉に豪邸を建てたり、何百億もする絵やプライベートジェットを買ったりしている。マーケットに売ってしまうと株価が下がりますから、市場外買い付けで一発で買って貰ったということです」と斟酌し、こう難じる。「240億なんて大金、普通の人は一生かかっても稼げませんから。それを、たった1年で給料とは別に懐に入れておけるんです。万が一、会社の経営が傾いて株価が下落すると、自社株を売っても入る金は減りますから、高いうちに換金したと言える。宇宙旅行のように、個人で必要な資金があるんじゃないですか。悪く言うと、企業の私物化もいいところですよね。ZOZOは前澤さんにとって金のなる木のようなもので、大幅な株式分割もやらせて、自分の持ち株をどんどん増やしてきた。もちろん、その根底には、会社の規模が拡大しているということはあるにせよ……」』、「経営者が株を売る場合、経営危機だというのがオーソドックスな見方ですが、この人は遊ぶ金が欲しい。そのお金を使ってかは知りませんが、千葉に豪邸を建てたり、何百億もする絵やプライベートジェットを買ったりしている」、前澤社長の保有自社株の売却は、「“さもしいのかな”」というより”さもしい”行為そのものだ。
・『下落を察知していた?  「カタログ通販なども含め、アパレルで自社ブランドが成功しているという話は聞きません。ZOZOは仕入れて売るそれまでのスタイルでの成長は覚束ない、ピークに来たと思ったのでしょう。新たなことをやらないと売り上げが伸びず、また利益を上げるためには、より利益率の高いプライベートブランドを立ち上げる必要があったのです」という中西氏の評価を、先の細野氏はこんな風に受ける。 「前澤さんは、そのプライベートブランドが上半期の段階でマズいなって分かっていたんだと思います。株価が下がってしまうことも同じように察知していた。これまでは、どこでも買えるものをブームに乗って売っていただけの話。今のこの決算ならば、銀行はもっとお金を貸すはずです。決算上は一応、黒字なわけですから。場合によっては、株価を維持するためにもっと銀行から金を借りて自社株を買うことになる可能性もあるでしょう」 ――株価上昇に寄与しない情報を前澤社長が積極的に広報することはない。公開された資料であっても、プロの目に委ねなければベールの存在に気づくことはなく、それに覆われた実態は判然としないものだ。今回、本稿は専門家の慧眼で無理な背伸びを浮彫りにした次第である』、前澤社長が「プライベートブランドが上半期の段階でマズいなって分かっていたんだと思います。株価が下がってしまうことも同じように察知していた」ので、自社株240億円を結果的に「売り逃げた」形になったのは、極めて問題だ。上場企業の経営者に「あるまじき」行動なのではなかろうか。

第三に、ZOZOを支援する立場から、経営戦略コンサルタントの鈴木 貴博氏が5月21日付け現代ビジネスに寄稿した「前澤友作を悩ますZOZO離れのウラで、もうひとつの「意外な真実」 プラットフォームの引力はさらに強まる」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63530
・『「ZOZO離れ」と「ZOZO離れない」  「ZOZO離れ」が経済ニュース的には話題のワードになっています。 ZOZOの株価は昨年7月の高値4875円から急落し、今年2月には1621円と一時3分の1で下落しました。この間、大手アパレルのユナイテッドアローズが自社ECの運営をZOZOから切り替え、12月にオンワードがZOZOでの販売中止を決定。ジーンズのライトオンもZOZOからの撤退を決めるなど、大手アパレルがZOZO離れをつぎつぎと表明しました。 背景としてはこれらのアパレルのブランド方針と相反するとされる安売り施策の「ZOZOアリガトウ」のスタートや、競合するPB商品への進出などが原因だとされています。前澤友作社長の炎上しやすいキャラクターともあいまって、メディアは一斉にこの苦境を書きたてている一方、消費者としてZOZOはいったいどうなってしまうのか心配されている方も多いかもしれません。果たしてZOZOはこのまま失速していってしまうのでしょうか。 結論を先取りすると、じつはZOZOはそう簡単には崩壊しません。今回の記事ではすでにたくさん報道されているZOZO離れを引き起こしている事象とは逆の、「ZOZO離れない」方向に働く別の力について詳しく書いてみたいと思います。そのうえでなぜZOZOが崩壊に向かわないのか、その理由をまとめてみたいと思います。 さてこの「ZOZO離れない」という力とはいったい何でしょう。その正体はプラットフォームの引力です。 ZOZOTOWNはひとことで言えば数千万人規模の顧客と、多数のアパレルメーカーが集まる市場です。主要なアパレルが参加していて、同時に日本最大級の顧客が集まっているから、どちらにとっても非常に便利な場所になっている。これがプラットフォームです。 他にも読者のみなさんがよくお使いの食べログ(飲食店)や楽天トラベル(旅行)、ホットペッパービューティー(美容)といったサービスも同じメカニズムのプラットフォームビジネスです。 このプラットフォームビジネスには一般のビジネスとは違う、経済メカニズムが働きます。たとえて言えば太陽系で普通に見られるニュートン力学が、ブラックホールのような巨大な重力場の近くではゆがんでしまいアインシュタイン力学でないと説明できないのと同じような話です。 私はコンサルタントとしては大手プラットフォームの経営戦略をずいぶんいろいろと経験してきました。その経験で言うと、プラットフォームというものはなかなか簡単には崩壊させることができない性質を持っています』、本当だろうか。言い分を読んでみよう。
・『プラットフォームの宿命  普通の星系では惑星が離れていくとともに星系が崩壊するような現象でも、プラットフォームでは逆の現象が起きることすらあります。実際の例を示しながら、ZOZOの未来に置き換えてそのメカニズムを解説してみたいと思います。 まず第一に「プラットフォームが顧客企業を怒らせる」といったことは、過去の歴史上何度も起きていることです。ZOZOだけが失敗してZOZO離れを誘発しているわけではありません。 たとえば楽天トラベルは、民泊が盛んになってきたことをビジネスチャンスととらえ2018年秋に民泊施設を楽天トラベルに掲載開始すると発表しました。グループ会社で民泊を扱う楽天LIFULL STAYがライバルであるAirbnbを追撃するためには有効な戦略だと考えたわけですが、当然のことながらホテル・旅館業界はこの楽天トラベルの方針に反発しました。 このような現象はプラットフォームの宿命です。 プラットフォームの運営企業がプラットフォームに参加する企業を怒らせる現象は、プラットフォームあるあるといっていいぐらい頻繁に起きます。理由はプラットフォーム企業が成長するためには、どこかで取引条件をプラットフォーム側に有利に変更していかなければいけないからです。 そういった施策は常にプラットフォームの運営企業と参加クライアントの間に軋轢を起こします。ZOZOは企業としての弱点としては、こういった施策を顧客企業に呑ませることが上手くないようで、それが今回のような騒動を起こしているのですが、いずれにしてもひとつめのポイントは「これはよくあることだ」ということです。 次にプラットフォームに怒りを表明した企業についてですが、いろいろあっても最終的にプラットフォームを全面的に離脱する会社は多くはならないという結果になります』、確かに、「プラットフォームの運営企業と参加クライアントの間に軋轢」は、大いにありそうな話だ。さすがプラットフォーム企業へのコンサルティング経験のある筆者だけある。
・『秘密の会合  もちろん力のあるメーカーや飲食店などでプラットフォームと決別する企業は出てきますが、多くのプラットフォーム参加企業はそのプラットフォームの顧客引力のせいで離れられないものなのです。 そしてプラットフォームは顧客企業に対して、不満を起こした原因施策について詫びることが通例です。不明を詫びた上で、顧客企業がもっと儲かるような新しい機能やキャンペーンを提示することで顧客を懐柔する。すると顧客企業はさらにプラットフォームから離れることができなくなる。そういった現象が繰り返されます。 三番目に、このような現象を繰り返しながらプラットフォームはその引力をさらに強めていくものです。引力が強くなるにつれて、今よりももっとたくさんの顧客企業がプラットフォームを悪く思うようになっていきます。 これはある業界をほぼ完全に支配する状況になったプラットフォーム運営企業から聞いた話ですが、その業界には主だった顧客企業が集まる秘密の会合があるそうです。その会の名前は「プラットフォームのない世界」といって、メンバーが集まってはプラットフォームの悪口を言い合うだけの負け犬の遠吠えのような会が繰り返されているといいます。 このようにプラットフォームというものは、顧客と軋轢を繰り返しながら、結局はその巨大な集客力を力に業界を支配していくもので、それを壊すことは非常に難しいものなのです。 さてZOZOの場合はというと、もともと顧客企業である大手アパレルが苦手としている受注後の物流ハンドリングに物凄くいい投資をして成長した企業です。ただのプラットフォームではなく、他の競合がマネできない強みを持っている。ここにひとつの優位性があり、ZOZOの崩壊をさらに難しいものにしています。 さらに10代から30代の女性を中心としたカスタマー(消費者)からダントツに支持されている。この強みはなかなか揺らぐことはありません。 ただこれは前澤友作社長のクセだと思うのですが、プラットフォームでありながら、過度に消費者の側の肩を持つ傾向がある』、ZOZOが「大手アパレルが苦手としている受注後の物流ハンドリングに物凄くいい投資をして成長した企業です」というのは、確かに強みだろう。
・『ZOZOはそう簡単に崩壊できない  たぶん社長の周囲にもそのような社風が好きな人材が集まっている。その分、他のプラットフォームのように、二枚舌を使い分けて顧客企業を懐柔する能力が高くない。ないしはそういったオトナの経営に興味がないのかもしれません。 そのことと前澤社長の特異なキャラクターとがあいまって、マスコミからは恰好の炎上の対象になっている。ただそこはこの問題の本質ではありません。 本質はZOZOTOWNの実態が強大なプラットフォームであり、かつ消費者が強くそのプラットフォームを支持しているという点です。 ですからこの後、よほど大きな失策をしない限りは「ZOZO離れない」側に働く引力の方が「ZOZO離れ」よりも強く働き、思ったほどZOZOは痛手を受けないという結果になると思われます。 あくまで実経験をふまえた経営コンサルタントとしての分析ではありますが、ZOZOTOWNが崩壊するのはそれほど簡単ではないということです』、ZOZOと他のプラットフォームの比較は一言簡単に触れられているだけなので、本当に「「ZOZO離れない」側に働く引力の方が「ZOZO離れ」よりも強く働き」、かどうかは即断できないような気がする。ただ、有力そうな1つの参考意見であることは確かなようだ。
タグ:ユナイテッドアローズ ZOZOTOWN ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス デイリー新潮 ZOZO問題 (その1)(前澤社長が火消しに躍起でも「ZOZO離れ」の懸念が消えない事情、背伸びがバレたZOZO「前澤社長」 プロが読みとく経営状況 実際は“赤字14億円”!?、前澤友作を悩ますZOZO離れのウラで もうひとつの「意外な真実」 プラットフォームの引力はさらに強まる) 「前澤社長が火消しに躍起でも「ZOZO離れ」の懸念が消えない事情」 プライベートブランド事業が不発 出店者側の不満はくすぶっている 定額の有料会員が10%割引となるサービス「ZOZOARIGATO」 値下げを嫌って店舗の撤退や販売停止など、いわゆる「ZOZO離れ」 ショップ数ベースで3.3%、取扱高ベースでは1.1%。メディアの論調は大丈夫かというものでしたが、業績に与える影響は極めて軽微 今期通期の連結売上高予想を19.7%減の1180億円、当期純利益も36.4%減の178億円に下方修正 突然、二者択一を迫られたアパレル 高圧的とも取れる姿勢がオンワード以外のアパレル各社の反感を買った可能性 今ではZOZOに頼らない完全自社ECを実現。同社に依存する必要性は薄れている 自社ECでZOZOTOWNよりも安く売っている出店者もいるといい「うちからお客さまが流れる」と懸念を 最近では低価格の商品しかZOZOTOWNに出していない 出店者との“共食い”がすでに始まっている現実を認めた 「背伸びがバレたZOZO「前澤社長」 プロが読みとく経営状況、実際は“赤字14億円”!?」 第3四半期の決算短信 昨年から急激に財務体質が悪くなっています 会計評論家の細野祐二氏 目につくのは営業キャッシュフローの悪化 今期の決算短信には、キャッシュフロー計算書は掲載されていない 差し引き2カ月の間、回収できていない売掛金があり、不良債権化 在庫の回転率も非常に悪化 実際は14億円の赤字? 第2四半期に銀行から240億円を借り入れて自社株を600万株購入 前年度は408億円あった自己資本が201億円にまで減ってしまった 資本はスカスカの状態 そう遠くない時期に債務超過に陥ってしまう恐れも 前澤社長は税金は別にして240億円ほどを手にしたことに オーナー会社の場合、社長が株を売るというのは、通常負のイメージです 前澤さんが売ったところを見ると“さもしいのかな”というイメージを持ちました。 経営者が株を売る場合、経営危機だというのがオーソドックスな見方ですが、この人は遊ぶ金が欲しい。そのお金を使ってかは知りませんが、千葉に豪邸を建てたり、何百億もする絵やプライベートジェットを買ったりしている 高いうちに換金 企業の私物化もいいところですよね ZOZOは前澤さんにとって金のなる木のようなもので、大幅な株式分割もやらせて、自分の持ち株をどんどん増やしてきた 下落を察知していた? 前澤さんは、そのプライベートブランドが上半期の段階でマズいなって分かっていたんだと思います。株価が下がってしまうことも同じように察知していた 自社株240億円を結果的に「売り逃げた」形になったのは、極めて問題だ 鈴木 貴博 「前澤友作を悩ますZOZO離れのウラで、もうひとつの「意外な真実」 プラットフォームの引力はさらに強まる」 「ZOZO離れ」と「ZOZO離れない」 ZOZOはそう簡単には崩壊しません プラットフォームビジネスには一般のビジネスとは違う、経済メカニズムが働きます プラットフォームの宿命 プラットフォーム企業が成長するためには、どこかで取引条件をプラットフォーム側に有利に変更していかなければいけないから 常にプラットフォームの運営企業と参加クライアントの間に軋轢を起こします 多くのプラットフォーム参加企業はそのプラットフォームの顧客引力のせいで離れられない プラットフォームというものは、顧客と軋轢を繰り返しながら、結局はその巨大な集客力を力に業界を支配していくもので、それを壊すことは非常に難しいものなのです もともと顧客企業である大手アパレルが苦手としている受注後の物流ハンドリングに物凄くいい投資をして成長した企業です ただのプラットフォームではなく、他の競合がマネできない強みを持っている ZOZOはそう簡単に崩壊できない 本質はZOZOTOWNの実態が強大なプラットフォームであり、かつ消費者が強くそのプラットフォームを支持している よほど大きな失策をしない限りは「ZOZO離れない」側に働く引力の方が「ZOZO離れ」よりも強く働き、思ったほどZOZOは痛手を受けないという結果になると思われます
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EC(電子商取引)(その3)(アマゾン:「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか、日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』) [産業動向]

EC(電子商取引)については、昨年3月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(アマゾン:「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか、日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』)である。

先ずは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が昨年10月23日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/182900
・『破産法申請した米小売り大手シアーズの経営破綻  10月15日、米小売り大手のシアーズ・ホールディングスが米連邦破産法11条(通称チャプターイレブン、日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。 著名経営学者のドラッカーが「全米で最も成功した企業の一つ」と称賛するほど、同社は19世紀後半から20世紀中盤に米小売業界の王者であった。そのシアーズが破綻に追い込まれた。 驚きとともに時代の変遷を感じざるを得ない。 同社は“シアーズ・ローバック”の商標で知られていた。シアーズ・ローバックは、19世紀後半から20世紀の中盤にかけて、経営改革=イノベーションによって成功を手にした。新しい市場を自ら開拓し、その需要を取り込むために新しい商品や組織、生産プロセスの整備を行った。重要だったことは、当時の同社は環境の変化に適応し、必要な改革を進めたことだ。 ところが、1980年代以降、シアーズは経済環境の変化に適応することができなかった。特に大きかったのが、IT先端技術の普及だ。消費者は同社の店舗で買い物を行うよりも、アマゾンのEC(電子商取引)プラットフォームでの消費を選んだ。その方が便利だからだ。 それに加え、経営者の問題も見逃せない。特にファンド出身の経営トップには、変化を感じる“センス(感覚)”が欠如していた。かつて栄華を極めたシアーズの経営破綻は、イノベーションの重要性と経営者に求められる根源的な資質を考える格好のケーススタディの一つと言ってもよいかもしれない』、「ファンド出身の経営トップには、変化を感じる“センス(感覚)”が欠如していた」というのは確かに致命的だが、現在ではファンドもその業界のプロを経営者に送り込むファンドもあるようだ。
・『かつて“イノベーション”で成長を遂げたシアーズ  1886年に創業したシアーズは、当時急速に発展しつつあった鉄道や郵便という新しい要素を用いることで、物流ネットワークが浸透していなかった農村の需要を開拓した。これは、既存の要素と新しい要素を結合し、新商品や新しい販売チャネルなどを生み出すという“イノベーション”の好例だ。 19世紀、米国の農村では自給自足を主に日々の生活が営まれていた。都市部では個人商店などが日常の生活を支えつつあったが、農村はそうした経済圏から孤立していた。シアーズはそこに目をつけた。同社は、市場経済が浸透していない農村に対してカタログを用いた通信販売ビジネスを行い、未開拓の需要を取り込むことを思いついた。 また、シアーズは顧客満足を高めることに徹底的にこだわった。「手にしてみたらイメージと違う」といった不満に対応するために、同社は条件を問わずに返金するとコミットした。それは農村の人々からの信頼を獲得するために欠かせない要素だった。 カタログには衣類から農作業の道具、農村で簡単に手に入らない楽器までが掲載された。その結果、当時の米国農村地帯の生活環境は激変した。シアーズは米国の農村に、気に入った商品を買い、使う楽しみを提供した。シアーズのカタログは農村に住む人々にとって生活に欠かせないバイブルと同等に位置づけられたのである。 20世紀初頭、米国では基本的なインフラ整備が進んだ。それに伴い経済は成長し、中間層の厚みが増した。T型フォードの普及によって、農村から都市への移動も容易になった。農村は孤立した存在ではなくなった。都市の人口は増加した。この環境変化を受けて、シアーズは更なるイノベーションを進めた。 それが、通販から小売業へのビジネスモデルの転換だった。小売業では、店舗ごとのマネジメントが重要だ。そのため、第2次世界大戦前からシアーズは店長および売り場主任の育成を体系的に進めた。これが同社の成長を支えるとともに、米国の流通業界に大きな影響を与えた。シアーズは米国の物流・小売業界の革命児だったのである』、「通販」の確立、さらに「小売業へのビジネスモデルの転換」と、確かに「米国の物流・小売業界の革命児」だったようだ。
・『社会のIT化という環境変化 アマゾンの台頭  1980年代以降、シアーズの成長には陰りが見え始めた。ライバルであるウォルマートが“エブリデーロープライス”を掲げ、安売り戦略を強化してシェアを伸ばしたことはその一因だ。2000年代に入ると、ネットワークテクノロジーを駆使してアマゾンがECを世界に浸透させた。 19世紀終盤から20世紀中盤にかけて米国の物流業と小売業を牽引したシアーズは、21世紀型の物流革命を目指すアマゾンの取り組みに対応できなかった。それは、シアーズがIT化という環境の変化に適応できなかったことを意味する。同社は店舗事業の強化にこだわり、2000年代にはカタログ通販事業が閉鎖された。当時の同社には、ITネットワークと自社の強みであるカタログ通販を融合させる発想がなかった。 この意思決定はシアーズのアイデンティティー喪失につながったといってよい。多くの消費者がシアーズに求めたのは、自宅でカタログに掲載されている商品を使うシーンを思い描き、イメージした暮らしを実現することだった。カタログ通販の停止によって、シアーズは顧客のロイヤルティ(信頼、愛着)を失ったともいえる。その結果、同社は特徴のない小売企業になった。 これに対して、アマゾンは独自の物流網を整備して消費者の支持を獲得してきた。ネット上で商品を注文し支払いを完了することはできる。その上で商品を手にして実際に使うためには、効率的な物流ネットワークが必要だ。スマートフォンなどのデバイスを駆使し、アマゾンはネット空間と消費の現場を円滑につなげることを目指している。この快適さ、便利さこそがアマゾンユーザーの増加を支えている。この結果、消費の場が店舗からネット空間に移行し、米玩具大手のトイザラスは経営破綻に陥った。 一方、ホームデポのように店舗での消費体験を演出することで成長を維持する小売企業もある。要は、アマゾンにはない消費体験を創造できるか否かが企業の存続を分ける。それが経営者の腕の見せ所だ。シアーズが行き詰まったのは、経営者に自社の強みを十分に生かし、ネットワークテクノロジーという新しい要素と既存ビジネスを結合させる発想がなかったためと考えられる』、素人目には、ECと相性が良さそうな「カタログ通販」を捨てたのは、IT技術がなかったとはいえ、もったいなく、戦略上の失敗だったような気がする。
・『本当の小売業を知らないファンド出身経営者  2005年、シアーズはエドワード・ランパート現会長が率いる投資ファンド傘下に入った。これは、シアーズの凋落を加速させた要因と考えられる。 金融ビジネスと、顧客との関係性を重視する小売業の発想は根本的に異なる。金融業の発想では、安く買って高く売ることが重要だ。そのためには、競争力のない事業などを売却し、得られたキャッシュフローを用いて他の事業を強化することが求められる。同時に、リストラが進むと企業の強み、特徴が失われる。それが続くと、企業そのものが消滅してしまう。ファンドの傘下に入った小売業やメーカーが経営に行き詰まるのはそのためだ。 一方、小売業における顧客との関係構築には、終わりがない。それは永続的に続く。この点が決定的に違う。 ランパート氏の経営の下、シアーズの店舗では雨漏りやエレベーターの故障が放置されていたという。これは小売企業としてありえない。同社は、顧客に買い物をする喜びを提供するスピリットを失い、顧客の気持ちがわからない企業になってしまった。2016年に入りランパート氏はIT先端技術の導入の重要性に言及し、翌年には自社の家電製品をアマゾン経由で販売し始めたが、これは遅すぎた。 ファンド出身の経営者は、シアーズのビジネスモデル、その強みを全く理解していなかった。IT先端技術の実用化を受けて、経済の変化のスピードが加速化していることを認識する感覚=センスも鈍かった。これは、経営者として致命的だ。 企業の存続に必要な要素は、環境の変化に適応する能力だ。正しいもの、強いものが生き残るわけではない。変化に適応できたものが生き残る。そのためには、新しい取り組み=イノベーションが欠かせない。 例えば、シアーズの商品に愛着を持つシニア世代にアマゾンのダッシュボタンを提供することは、顧客との関係性維持につながった可能性がある。それはIT機器を操作する際に感じるストレス軽減にもなる。そうした新しい取り組みが検討されてもよかった。 アマゾンの成長はシアーズの競争力を低下させた一因ではある。だが、それがすべてではない。シアーズのトップに、変化を感じるセンスが鈍かったことは見逃せない。それが、経営環境の変化に対応する能力を奪ってしまったのかもしれない』、ランパート氏だけでなく、出身ファンドも知恵を絞った筈だが、「経済の変化のスピードが加速化していることを認識する感覚=センスも鈍かった」というのは致命的で、気付いた時には既に「とき遅し」だったのだろう。

次に、富士通出身でデジタルシフトウェーブ代表取締役社長の鈴木 康弘氏が12月24日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/189281
・『レビュー  2017年9月、アメリカの玩具販売大手「トイザらス」が経営破綻に陥った。「アマゾン・エフェクト」を象徴するできごとである。 アマゾン・エフェクトとはなにか。これは、ネット通販「アマゾン・ドット・コム」が進出する業界で、その影響を受け、業績や株価の低迷に悩む企業が増えている現象を指す。影響は百貨店やスーパー、衣料品といった物販、さらにはコンテンツ産業など幅広い業態におよぶ。そして、多くの企業がトイザらスのように追い詰められている。 また、2017年8月、アメリカを代表する高級食品スーパー「ホールフーズ」をアマゾンが買収した。商品調達も管理も高度なオペレーションが求められる、リアルな生鮮食料品の店舗にアマゾンが進出したと、大きな話題となった。そればかりではない。競争が激化する懸念から、競合の食品スーパー各社の株価が軒並み下落した。こうして業界の秩序が崩れていく事態は、「アマゾン・ショック」とも呼ばれる。 こうしたできごとを、日本企業の多くは「流通業界の嵐」などと、対岸の火事のように眺めていないだろうか。アマゾン・エフェクトの背後には、デジタルがもたらすビジネスの本質的変化がある。本書『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』の著者は、この「デジタルシフト」の脅威に気づかないまま、20世紀のビジネスモデルを引きずる日本企業に警鐘を鳴らす。日本でいち早くアマゾン・エフェクトに対峙した著者の危機感は強い。デジタルシフト危機への対処法にぜひ耳を傾けたい』、興味深そうだ。
・『本書の要点  (1)多くの業種の既存の秩序を崩す「アマゾン・エフェクト」。その背後では、「デジタルシフト」という本質的な変化が起きている。 (2)デジタルシフトは、「時間」「距離」「量」「方向」といった制約から顧客を解放する。それをビジネスのチャンスにするために、日本企業はIT人材の育成を急がなければならない。 (3)今後のビジネスのアプローチは、ネットやリアルの垣根を超えて、すべてを顧客中心に組み立てる「カスタマーファースト思考」に移っていく。その先頭を切っているのがアマゾンである』、なるほど。
・『要約本文 ◆アマゾン・ショック ◇日本に押し寄せる4つのショック  いま日本に4つのショックが押し寄せているという。 1つ目は、アマゾン・ショックである。書籍や音楽ソフトに限らず、ファッションや生鮮品宅配サービスにおいても、アマゾンの進出は、業界の既存の秩序を揺り動かし、地殻変動を引き起こす。 2つ目は、クラウド・ショックである。以前であれば、開発・導入に1億円、メンテナンスに月々百万円をかけていたシステムが、いまではクラウトサービスを使えば、月額の使用料数百円ですんでしまう。このクラウドの分野で圧倒的なシェアを誇るのは、やはりアマゾンである。 3つ目は、AI(人工知能)/IoT(Internet of Things)ショックである。すべてのものがインターネットでつながるIoTによって、膨大なデータが蓄積され、それをAIが解析する。アマゾンはデータを制することにより、差別化を図ったサービスを顧客に提供し、ネットとリアルの両面から覇権を握ろうとしている。 4つ目は、IT人材の育成が急務となっている現状、すなわち教育ショックである。今後は、各企業が自前でシステムを開発できることが、スピード・コストの両方の視点からも必要となる。いかに社内にIT人材を確保できるかが競争力を左右する。しかし、そのことに気づいて、社内の人材教育を強化している日本企業は少ない。 いま日本に押し寄せている4つのショックのいずれを見ても、その背後にはアマゾンの姿がある』、確かに「4つのショック」のいずれにおいても、アマゾンの存在感は圧倒的だ。
・『◇ネットとリアルの融合  ネットとリアル(実際の店舗)のシームレスな融合を意味する「オムニチャネル」。この概念は、アメリカの大手百貨店メイシーズが2011年に使用したのが始まりである。オムニとは「すべて」を意味する。そしてオムニチャネルとは、ネットとリアル、すべての顧客接点を連動させて顧客にアプローチする方法である。 著者はかつて、セブン&アイ・ホールディングスからオムニチャネルを立ち上げた経験がある(2015年11月)。そのときに強烈に意識したのがアマゾンの存在であった。著者の陣営は、リアルの店舗からネットに世界を広げた。一方、当時のアマゾンは、ネットからリアルの世界への進出をたくらんでいた。 ここで著者は大きな壁にぶちあたった。リアルからネットに発想を移すことがいかに難しいかという壁である。日本の流通関係者のなかには、アメリカでのアマゾンの躍進についてこうした考えがあった。「国土が広く、もともと通販文化があったから、アマゾンはうまくいく」「日本は国土が小さいから大丈夫」。そして、店舗で買えるのと同じものが、時間や場所に関わりなくネットで注文できれば、利用者にとっての利便性が増したと考える。それ以上発想が広がらないことが、後に大きな制約となった』、確かにセブン&アイの「オムニチャネル」は、「大きな壁にぶちあたった」ためか、鳴かず飛ばずだったようだ。
・『◇アマゾン・ブックスの風景  では、アマゾンによるリアルな店舗はどのようなものか。アメリカで展開している書店販売のリアル店舗、「アマゾン・ブックス」を見てみよう。店舗を視察した著者によると、その特長は商品を絞り込み、圧倒的に在庫が少ないことにある。 それを可能にしているのが「フルフィルメントセンター」と呼ばれる巨大な物流拠点だ。この拠点は、ネットで販売する商品のために膨大な在庫を保管している。店舗のバックヤードが倉庫も兼ねているような既存の書店と比べて、ストックできる品数は桁違いに多い。リアル店舗のアマゾン・ブックスには、そのなかから売れ筋や目を引く商品を選んで並べるというわけだ。 日本の書店に一般的な、本の背表紙を表に向けて並べる「背差し」は一冊もない。すべての本が、表紙を正面に向ける「面陳列」「面展示」である。そのため、一冊一冊の魅力がストレートに伝わってくる。 そこではネット上で見つけた本を実際に確かめて購入することもできれば(ウェブルーミング)、店頭で気に入った本を自宅に届けてもらうように、その場の端末で手配することもできる(ショールーミング)。読みたい本が店頭になければ、アマゾンストアで検索して注文すればいい』、家電量販店は、顧客が来店して商品を見て、店員から説明を受けても、注文はアマゾンでやるというのも、典型的な「ショールーミング」で、小売店泣かせだ。
・『【必読ポイント!】◆デジタルシフト◇アマゾン・エフェクトの本質とはなにか  アマゾンが引き起こしている変化の本質はなにだろうか。それは、アナログからデジタルへの移行、「デジタルシフト」である。つまり、人々は「時間」「距離」「量」「方向」の制約から解放される。 ネット上では24時間いつでも、世界中のどこでも買い物ができる。売り手は数量にしばられることなく、いくらでも商品の情報を掲載できる。売り手と買い手は、インタラクティブにコミュニケーションをとれる。 歴史を振り返れば、人類は制約から解放される世界を自らつくりだしてきた。この観点に立つと、デジタルシフトは必然の流れといえるだろう』、その通りだろう。
。『◇クラウドという衝撃  2000年代半ばより、デジタルシフトに拍車をかけているのが「クラウド」である。クラウドとは、インターネットを経由し、さまざまなITのリソースをオンデマンドで利用できるサービスである。たとえば、コンピューティング、データベース、ストレージ、アプリケーションなどだ。 昔は水を手に入れるために、各家庭が庭に井戸を掘っていた。これに対して、いまではコンピュータ・ネットワークに蛇口をつければ水が出るようになった。クラウドはこうした状況にたとえられる。しかも圧倒的に安価にサービスを利用できる。 その結果、井戸を掘ること、つまりITインフラの構築と保守という力仕事は、人に任せればよくなった。そして、クラウドを活用したビジネスアイデアで勝負する時代が到来したのだ』、日本企業は自社保有にこだわり、「クラウド」活用で遅れを取った筈だ。
・『◇カスタマーファースト思考  こうしたITがもたらすビジネスの変化を、著者は3つの思考の変遷として説明する。 「レガシーファースト思考」:アナログで行ってきた業務のレガシー(旧来の遺産・遺物)をそのまま引き継ぎつつ、効率化を図るためにITを活用する。20世紀的なコンピュータの使い方である。 「ネットファースト思考」:インターネットというインフラを中心に置き、そこでユーザーの利便性や満足度を高めるサービスを提供する。ネット通販やSNSがこれに当たる。 「カスタマーファースト思考」:顧客を中心に置き、ネットもリアルも、すべてのインフラを駆使して、最高のカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を提供する。今後はITの位置づけを、カスタマーファースト思考に大きく転換する必要がある。そして、その先頭を走っているのがアマゾンだ。 社会のデジタルシフトが進み、デジタルの力で個々人の購買行動のデータを収集できるようになった。その満足度を測定することで、アマゾンはカスタマーファースト戦略を加速させている』、日本企業は「レガシーファースト思考」に囚われているところが多いようだ。
・『◇「棚発想」から「事典発想」へ  流通業に限らず、多くの業態では、ネットとリアル、Eコマースとリアル店舗がシームレスに融合されるオムニチャネルの形態に行きつくだろう。その際、品ぞろえについては、「棚発想」から「事典発想」へと転換が求められる。 これまでリアル店舗では、売り場に商品分類ごとの棚があった。売り場面積にしばられ、取引先に依存した自分の経験ベースの品ぞろえが一般的だった。しかしオムニチャネルになると、マーケット全体を俯瞰することが重要となる。そして、まるで百科事典を編集するような発想で商品カテゴリーを分類し、顧客のニーズに合わせて商品を並べていくことが可能になる』、「事典発想」は制約が少なくなるとはいえ、優れた発想力が求められそうだ。
・『◆日本企業の現状◇まだまだ厚いレガシーの壁  残念ながら、こうしたデジタルシフトの本質を理解している日本の経営者は少ない。IT予算の使い道に関する2013年の調査によると、アメリカ企業は、「ITによる製品/サービス開発強化」がいちばん多かった。次に「ITを活用したビジネスモデル変革」「新たな技術/製品/サービス利用」「ITによる顧客行動/市場分析強化」が続く。それに対して日本企業は、「ITによる業務効率化/コスト削減」が突出している。 アメリカ企業は、ITにより新しい価値を生み出そうという「攻めのIT投資」を推進している。しかし日本企業の多くは、「守りのIT投資」にばかり目が向いており、レガシーファースト思考のままだといえる』、「日本企業は、「ITによる業務効率化/コスト削減」が突出している」というのは、時代に乗り遅れたことが丸出しで、恥ずかしい限りだ。
・『◇日本企業におけるIT戦略の欠如  アメリカでは、IT技術者の75%がウォルマートなどの一般企業に属している。日本は正反対で、75%がIT企業に属しており、一般企業に所属しているのは25%に過ぎない。日本企業では、システム開発はアウトソーシングが当たり前である。 ITを効率化の手段と考えれば、外注が妥当といえよう。しかし、自らのビジネスモデルを変え、ネットとリアルをつないで新しい価値を顧客に提供するというカスタマーファースト思考で考えればどうか。積極的に自社内でシステムを開発し、運営できる体制の構築が重要だと気づくはずだ。 しかし、日本企業では経営者がデジタルの力について理解していない。そのため明確なIT戦略が示せず、デジタルの活用が仕事の効率化に留まっている。これが多くの日本企業の現状だ』、「アメリカでは、IT技術者の75%がウォルマートなどの一般企業に属している。日本は正反対で、75%がIT企業に属しており」、「日本企業では経営者がデジタルの力について理解していない。そのため明確なIT戦略が示せず、デジタルの活用が仕事の効率化に留まっている。これが多くの日本企業の現状だ」というのでは、日本企業が追い着くのは、当面、困難だろう。
・『◇デジタルのHOWを体感する  こうした現状をどうすれば変えられるのか。核心は教育にあると著者は考えている。アメリカでは、高校卒業までにコンピュータ・サイエンスへの子どもたちの興味や関心を喚起する目的で、毎年「コンピュータ・サイエンス教育週間」を設けている。ITのスキルを培うことが、個人の将来のみならず国の未来にとっても重要だと認識しているためだ。 ポイントは、デジタルのような新しい技術の場合、HOW(どのように)を知らないと、WHAT(何を)と、なぜそれをするのかというWHY(なぜ)の発想が難しいという点である。すべてのビジネスパースンがプログラマーになる必要はない。しかし、デジタルのHOWを体感的に理解することが、新しい時代のビジネスモデルを創造するためには欠かせないといえる』、日本では来年から小学校でプログラミング教育が必修となるようだが、こんな形式的なことよりも、アメリカの「コンピュータ・サイエンス教育週間」の方がはるかに効果的だろう。文科省や政治家が如何に何も解っていないかを如実に示しているようだ。
・『一読のすすめ  日本企業の経営者の大半は、アナログベースでキャリアを築いてきた世代だろう。それゆえデジタルの役割について、頭ではわかっていても感覚的に理解できていない、つまり肚落ちしていないという面があるだろう。本書はそうした方にとって、とっつきやすい「デジタルシフトを見据えたビジネス」の入門書といえるのではないか。本書を通じて、アマゾン・エフェクトの波にさらされている日本企業の現状・課題をいま一度俯瞰し、次なる一歩を考えていただきたい。最後の「著者情報」は省略』、この記事を読んできた限りでは、問題点を把握はしっかりして信頼に足るようだ。時間が出来たら、読んでみたい。
タグ:EC セブン&アイ 電子商取引 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 (その3)(アマゾン:「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか、日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』) 「「全米で最も成功した」流通大手シアーズはなぜ経営破綻したのか」 破産法申請した米小売り大手シアーズの経営破綻 ドラッカーが「全米で最も成功した企業の一つ」と称賛するほど、同社は19世紀後半から20世紀中盤に米小売業界の王者 “シアーズ・ローバック”の商標 19世紀後半から20世紀の中盤にかけて、経営改革=イノベーションによって成功を手にした 当時の同社は環境の変化に適応し、必要な改革を進めた 1980年代以降、シアーズは経済環境の変化に適応することができなかった かつて“イノベーション”で成長を遂げたシアーズ ファンド出身の経営トップには、変化を感じる“センス(感覚)”が欠如していた 市場経済が浸透していない農村に対してカタログを用いた通信販売ビジネスを行い、未開拓の需要を取り込むことを思いついた 「手にしてみたらイメージと違う」といった不満に対応するために、同社は条件を問わずに返金するとコミット シアーズのカタログは農村に住む人々にとって生活に欠かせないバイブルと同等に位置づけられた 通販から小売業へのビジネスモデルの転換 店舗ごとのマネジメントが重要だ。そのため、第2次世界大戦前からシアーズは店長および売り場主任の育成を体系的に進めた 社会のIT化という環境変化 アマゾンの台頭 シアーズがIT化という環境の変化に適応できなかった 舗事業の強化にこだわり、2000年代にはカタログ通販事業が閉鎖 米玩具大手のトイザラスは経営破綻に陥った 本当の小売業を知らないファンド出身経営者 金融業の発想では、安く買って高く売ることが重要だ。そのためには、競争力のない事業などを売却し、得られたキャッシュフローを用いて他の事業を強化することが求められる。同時に、リストラが進むと企業の強み、特徴が失われる。それが続くと、企業そのものが消滅してしまう。ファンドの傘下に入った小売業やメーカーが経営に行き詰まるのはそのためだ ファンド出身の経営者は、シアーズのビジネスモデル、その強みを全く理解していなかった シアーズのトップに、変化を感じるセンスが鈍かった 鈴木 康弘 「日本企業が知らないアマゾンエフェクトの本質 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』」 「アマゾン・エフェクト」 影響は百貨店やスーパー、衣料品といった物販、さらにはコンテンツ産業など幅広い業態におよぶ 多くの企業がトイザらスのように追い詰められている 業界の秩序が崩れていく事態は、「アマゾン・ショック」 『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』 日本企業に警鐘 「アマゾン・エフェクト」。その背後では、「デジタルシフト」という本質的な変化が起きている デジタルシフトは、「時間」「距離」「量」「方向」といった制約から顧客を解放 今後のビジネスのアプローチは、ネットやリアルの垣根を超えて、すべてを顧客中心に組み立てる「カスタマーファースト思考」に移っていく 日本に押し寄せる4つのショック 1つ目は、アマゾン・ショック 2つ目は、クラウド・ショック 3つ目は、AI(人工知能)/IoT(Internet of Things)ショック 4つ目は、IT人材の育成が急務となっている現状、すなわち教育ショック ネットとリアルの融合 「オムニチャネル」 リアルからネットに発想を移すことがいかに難しいかという壁である。 アマゾン・ブックスの風景 ネット上で見つけた本を実際に確かめて購入することもできれば(ウェブルーミング) 店頭で気に入った本を自宅に届けてもらうように、その場の端末で手配することもできる(ショールーミング) アマゾン・エフェクトの本質とはなにか アナログからデジタルへの移行、「デジタルシフト」 クラウドという衝撃 カスタマーファースト思考 「レガシーファースト思考」 「ネットファースト思考」 「カスタマーファースト思考」 「棚発想」から「事典発想」へ まだまだ厚いレガシーの壁 IT予算の使い道に関する2013年の調査によると、アメリカ企業は、「ITによる製品/サービス開発強化」がいちばん多かった 日本企業は、「ITによる業務効率化/コスト削減」が突出 日本企業におけるIT戦略の欠如 メリカでは、IT技術者の75%がウォルマートなどの一般企業に属している 日本は正反対で、75%がIT企業に属しており、一般企業に所属しているのは25%に過ぎない 日本企業では経営者がデジタルの力について理解していない そのため明確なIT戦略が示せず、デジタルの活用が仕事の効率化に留まっている デジタルのHOWを体感する アメリカでは、高校卒業までにコンピュータ・サイエンスへの子どもたちの興味や関心を喚起する目的で、毎年「コンピュータ・サイエンス教育週間」を設けている
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ネットビジネス(その6)(“ぐるなび離れ”が飲食店で進む グルメメディア頼みで陥る負のスパイラル、グーグルマップ異変の裏にデジタル地図「1強時代終了」の構図、「ネットフリックスは必需品」米国の若者の心理 日本とはちょっと違う 海外ネット事情) [産業動向]

ネットビジネスについては、昨年9月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(“ぐるなび離れ”が飲食店で進む グルメメディア頼みで陥る負のスパイラル、グーグルマップ異変の裏にデジタル地図「1強時代終了」の構図、「ネットフリックスは必需品」米国の若者の心理 日本とはちょっと違う 海外ネット事情)である。

先ずは、昨年11月13日付けダイヤモンド・オンライン「“ぐるなび離れ”が飲食店で進む、グルメメディア頼みで陥る負のスパイラル」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/185209
・『週刊ダイヤモンド2018年11月17日号は「お得×旨い×テック 外食新格付け」です。今、外食産業はITやテクノロジーの浸透で環境が激変しています。そんな中で生き残る外食チェーンはどこか、取材を通して探りました。そんな業界の最先端事情が満載の本特集から、飲食店と「食べログ」や「ぐるなび」などのグルメメディアの関係についてのレポートを、ダイヤモンド・オンラインで特別公開します。 「ぐるなびへの広告費用をかなり減らした。だって、効果がないんだもの」。ある飲食店経営者は冷めた表情で言い放った。 業績で堅調な食べログとは対照的に、ぐるなびは今期、2期連続の減収減益を見込むなど振るわない。その要因として指摘されているのが、送客力というメディアパワーが落ちたことによる、飲食店からの“切り捨て”だ。 消費者の情報取得ルートが多様化する中で、飲食店側も販売促進の手段を多様化させてきている。 フェイスブックやインスタグラムといったSNSが浸透し、飲食店が自ら販促を仕掛けるルートが生まれた。オウンドメディアと呼ばれる自前のサイトの強化も進む。 「予約者の情報は、基本的にグルメサイトのものであり、オウンドメディアを強化しない限り、例えば予約者にメールマガジンを送るといった販促も難しい」と顧客管理システムを提供するTableCheckの谷口優代表。ブランド力を高めてリピーターを増やしていくためには、オウンド化の実行が必然ともいえるのだ。 従来はある程度成果が不透明でもグルメメディアに“お任せ”していたものが、人件費など種々のコストの高騰もあり、そうした意識を持つ飲食店では一斉にグルメメディアの費用対効果をシビアに見直し始めている。 宿泊業で自社サイト予約のベストレート(最低価格)保証が主流となっているように、グルメサイトによらない販促はますます加速していくだろう』、「グルメサイト」から「オウンドメディア」への流れがあり、前者のなかでは、「ぐるなび」が「食べログ」に食われているようだ。ただ、私の実感からすると、「食べログ」は信頼性に欠けるような気がしている。
・『販促費捻出のため食材・人件費削減 常連客つかぬ必然  そもそも、グルメメディアを頼った集客は、従来致命的な問題点を抱える。販促のターゲットがリピーターではなく、新規客に偏っていることだ。 本来、店舗はリピーターを重視しファンをつくりたい。だが、グルメメディアにとっては、自社メディアを経由しないリピーターが増えれば、送客手数料が減り費用対効果が見直されるなど収益が減る。 つまり、飲食店とグルメメディアの利害関係は根本的に相いれないものだ。それでも店舗側は新規送客という“麻薬”から抜け出せずにきた。 例えば、ぐるなびでは、通常の基本料金(正会員で月5万円~)に加えて、表示順位を上げるためのオプションや、特集(「忘年会」や「ビールがうまい」などといったテーマ別の紹介ページ)に掲載するための費用などが掛かる。上位に表示させるためには当然、多くのカネが要る。 激戦区の東京・新宿などでは、「新宿 居酒屋」といった具合に検索して上位に表示されるのは、「月額で50万円は支払っているような店舗がほとんど」(関係者)だという。表示順位が下がれば(一般に3ページ目以降の表示順は集客効果が薄いといわれる)客足が止まるのだから、莫大な販促費を掛けざるを得ない。 こうしてグルメメディアが新規客、つまり“いちげんさん”を集めることで何が起きるか。 新規客を常連に変えるために、店側は味や雰囲気といった魅力で引き付けなくてはいけない。しかし、「少ない利益の中で販促費を掛けようと思ったら、人件費や食材費を削るしかなくなる。つまり、サービスも味も悪い店になっていく」と別の飲食店経営者。「新規を集めたところで、そんなお店にもう一度来ようなんてならない…」とため息をつく。 グルメサイトを絶てば新規送客が減るので、サイトへの費用を掛けざるを得ない。でも、集まった客を常連客にできない。だから、また新規客を集めるために費用を掛ける。そんな負のスパイラルに陥るのだ』、「飲食店とグルメメディアの利害関係は根本的に相いれないものだ」、「グルメメディアが新規客、つまり“いちげんさん”を集めることで何が起きるか。 新規客を常連に変えるために、店側は味や雰囲気といった魅力で引き付けなくてはいけない。しかし、「少ない利益の中で販促費を掛けようと思ったら、人件費や食材費を削るしかなくなる。つまり、サービスも味も悪い店になっていく」、「グルメサイトを絶てば新規送客が減るので、サイトへの費用を掛けざるを得ない。でも、集まった客を常連客にできない。だから、また新規客を集めるために費用を掛ける。そんな負のスパイラルに陥るのだ」、とは確かに難しいバランスの問題だ。
・『飲食店が生き残るにはどうしたらいいのか。 まずリピーターを増やせるような魅力的な店をつ
くる。つまり、業態の力を上げることだ。その上で、グルメサイトの言いなりにならない独自の販促を積極的に仕掛け、費用対効果を見極めながら、グルメメディアを使いこなす。 そのときに必要なのは、ITなどのテクノロジーにリテラシーを持ち、販促手段や店舗における生産性向上の取り組みにおいてこれを味方につけることだ。 変化を厭う飲食店は少なくない。しかし、あらゆる産業が“テック”による構造変化に直面しており、飲食だけが例外であるはずはない。変えようとする意思と実行力が外食産業の経営者、幹部に求められている』、その通りなのだろうが、実際には難しいのに、単に修辞上で逃げた印象も受ける。

次に、4月9日付けダイヤモンド・オンライン「グーグルマップ異変の裏にデジタル地図「1強時代終了」の構図」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/199084
・『「駐車場が道路になった」「自宅がいつの間にか美容院になっていた」「バス停が消えた」――。3月末に起こった“グーグルマップ”ショック。騒動の裏にはデジタル事業の覇権争いを左右する位置情報データをめぐる各陣営のつばぜり合いが垣間見える。 グーグルマップの下から「ZENRIN」の文字が消えた3月25日。グーグルへのデータ提供契約が終了し、同時にグーグルマップのさまざまな不具合が騒ぎとなる中、ゼンリンの株価は一時、前日比で500円も下落しストップ安となった。 マップといえば、2012年のアップルマップ騒動が記憶に新しい。同社が地図をグーグルマップから独自開発のものに切り替えた途端、実在しない地名が表示されるなどの不具合が相次ぎ、世界的な騒ぎとなったのだ。 そもそも、デジタル地図とはどのように作られるのだろうか。 自治体や国などの公的機関が測量したデータを基に、人手を使ってより細部の情報を調べるのが地図調製企業だ。日本でデジタル地図データを扱うのは、最大手のゼンリン、パイオニア子会社のインクリメントP、昭文社、トヨタグループのトヨタマップマスターの4社がメイン。世界でも大手はオランダのテレアトラス、米国のナブテック(現ヒアー)しかない業界だ。グーグルなどのプラットフォーマーは、これまでこうした地図調製企業から地図データを買って使用してきた。 しかし、こうしたビジネスモデルは変わりつつある。その典型が、08年にグーグル社内で秘密裏に始まった「グラウンド・トゥルースプロジェクト」だ。 真の地理情報、という意味のこのプロジェクトは、グーグルが世界で撮りためたグーグルストリートビューやグーグルアースなどの画像データから地図を自動生成するもの。さらに、ユーザーが経路検索を行ったデータから地図を自動生成することも可能になった。今回、日常的に通り抜ける道として利用されてしまっているコンビニエンスストアの駐車場が“道”と認識されたのは、まさにこのためだ。 グラウンド・トゥルースプロジェクトの成果は09年から世界のグーグルマップで順次採用されているが、複雑な地図データが求められる日本がほぼ最後となった形だ。今回、道路網の作成は自動化されたものの、地図に必要な施設名称などの地点データは「引き続きゼンリンと、今回新たにインクリメントPのものが採用されたようだ」(地図市場に詳しい青山学院大学の古橋大地教授)。とはいえ、グーグルは「ローカルガイド」など、地点施設の情報をユーザーに投稿させるサービスを持っている。地点データも自社で賄うことができるようになるのは時間の問題だ。 グーグルが今、地図の内製化を進めているのは、地図調製企業に数十億ドルの規模に及ぶ利用料を払わずとも、自社が蓄積した情報で、地図を自動生成することが技術的に可能になったからだ。 不具合の修正や地図情報の更新も、ユーザーからの通報を自動で反映するシステムで迅速に行われる。現に、新グーグルマップの不具合はかなりのスピードで修正されており、アップルマップ騒動に比べるとはるかに速く収束に向かっている。 内製化された地図データは今後、位置情報と連動するサービスにおける武器として活用できる』、「施設名称などの地点データは「引き続きゼンリンと、今回新たにインクリメントPのものが採用」されたが、「地点データも自社で賄うことができるようになるのは時間の問題」のようだ。グーグルは「ストリートビュー」や「グーグルアース」などに膨大な投資をしてきただけに、全てを自前で済ませたいのだろう。
・『グーグルと袂分かちライバル陣営に参加 したたかなゼンリン  一方、対抗馬も頭角を現している。米マイクロソフトやフェイスブック、日立製作所やトヨタ自動車、ソフトバンクグループなどの日本企業、それにエアビーアンドビー、ウーバー、テスラなどの米テック企業――これらの企業がある共通項でつながりつつある。 オープンストリートマップ(OSM)。ユーザーが地図作りを行う世界的なプロジェクトで、いわば“地図のウィキペディア”だ。04年から英国で始まったものだが、このデータを利用する企業数はすでに数百社に上る。 地図をベースにした位置情報やナビゲーションなどのサービスは、今後の自動運転やMaaS(移動サービス)の根幹であり、戦略上これをグーグルに握られたくない企業が急増しているのだ。 このOSMを基盤に地図サービスを提供する企業として、急速に力を付けているのが、米マップボックスだ。テスラのナビゲーションシステムを担当し、17年にはソフトバンクグループが約180億円を出資。さらに、ソフトバンクグループがトヨタ自動車と共同で立ち上げる次世代MaaSにもその技術が使われるとみられている。 実は、一見グーグルから“切られた”ゼンリンは、ほぼ同じタイミングでマップボックスと提携した。ゼンリンは、トヨタ自動車などが出資するダイナミックマップ基盤にも参加し、米ゼネラル・モーターズ系地図企業の買収にも動いている。 盤石に見えたグーグルマップ1強という“地図”は、実は流動的だ。その覇権を握る勝者は、いまだ見えない』、確かに「地図をベースにした位置情報やナビゲーションなどのサービスは、今後のは、自動運転やMaaSの根幹であり、戦略上これをグーグルに握られたくない企業が急増している」、という意味では、グーグルVSその他の覇権争いは大いに注目される。

第三に、サイバーエージェント次世代生活研究所・所長の原田 曜平氏が5月9日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「ネットフリックスは必需品」米国の若者の心理 日本とはちょっと違う、海外ネット事情」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/277993
・『1981~1996年の間に生まれた、ミレニアル世代と呼ばれる若者たち。人口が多く、デジタルネイティブといった特徴を持つ彼らはいったい今、どんなことを考えているのか? そこで今回、コロンビア大学の学生を中心としたミレニアル世代の若者たちと座談会を行い、アメリカの若者の変わりゆく価値観や実態について議論を行った。 彼らはアメリカのトップクラスに位置する大学の学生らであり、かつ、ニューヨークという超リベラルな土地に住んでいる。つまり、ある意味で偏った層の若者たちだ。しかし同時に、彼らがアメリカの未来の知識階層になり、影響力を持っていくだろうことも事実だ。 前回記事に続く今回記事では、彼らの価値観やライフスタイルについて探っていく』、興味深そうだ。
・『世界の若者が均質化し始めているワケ  原田:僕はここ10年近くグローバルで、とくにこの数年、アメリカやヨーロッパで若者に対する調査を行って来たけど、年々本当にグローバルなマーケティング調査がしやすい時代になってきていると実感しています。 以前は「今、どんなドラマがはやっているの?」なんてところから現地の若者に聞いて、そのドラマの内容の詳細を事細かに聞かないといけなかった。でも、ここ数年は、「今、Netflix(ネットフリックス)で何見てるの?」と聞いて、「ああ、あれね」なんていうやり取りで済んでしまうようになった。 このように、今、世界の若者の間で Netflixユーザーが増え、国が違えど同じコンテンツを見るようになってきています。また、ほかにも主にスマホのアプリやSNSを中心に、世界の若者が画一的な行動をとるようになり、結果、世界の若者が均質化し始めています。 だから、少なくとも対象が若者である場合、グローバルでマーケティングが大変しやすくなってきているわけですが、反面、世界の若者の間で多様性が減ってしまっているとも言えます。 さて、皆さんはやっぱりNetflix を見ていますか? 一同:もちろん!100%の若者が見ているよ! テイラー:120%よ! 原田:日本でも若者のテレビ離れと言われて久しく経ちます。僕の実感では、とくに今の高校生あたりから本当に深刻になってきていると感じています。数年前まではなんだかんだ言って、高校生までは時計代わりに朝にテレビをつけたり、テレビを見る生活が染みついていた。 時間が自由になる大学生あたりになると、家にいないようになったりしてテレビからいったん離れるんだけど、社会人になると朝早く起きる規則正しい生活になるからテレビ生活に戻る、というサイクルが根付いていました。 が、本当に今の高校生あたりからは、時計代わりにさえテレビをつけない子も増えてきているし、新大学生の都会での一人暮らしでテレビを買わないという子も増えてきた。彼ら世代は小さい頃からスマホへの依存が強く、暇な時間はYouTubeやYouTuberや、SNSやアベマTVの恋愛リアリティーショーを見ている子が非常に多くなっています。 過去のメディアの歴史を見ても、若いときになじまなかったメディアは、その後、中高年になった後にその人になじむようになることは本当に難しい。アメリカ人にはきっと理解できないほど、日本は高齢化が進んでいるので、テレビで人口の少ない若者をターゲットにしたコンテンツが大変作り難くなっており、だから若者がよりテレビを見なくなり……という負のスパイラルに完全に陥ってきていると思います。 本当は視聴率を昔ほどとれなくても、若者はそのメディアの未来の中心顧客だと捉え、若者向け番組を意思を持って作っていくべきだと思うんだけども。 そしてこれは、テレビに限らず、超高齢化マーケットだらけの多くの日本企業に同じく当てはまる大きな問題なんです。どの業界も、高齢社会に引きずられて若者を見捨てると、彼らが中高年になったときに振り向いてもらえなくなります。ビールが苦いと、苦手なままで20代を過ごした若者が、30代になってから急にビールを飲み始める確率は高くありません。 話を戻しますが、ちなみに日本でもとくにここ数カ月、Netflixユーザーはかなり増えてきているようです。でも、一説によると中年男性が中心で増加していると聞いたけれど。やっぱり、アメリカの若者の間でNetflixはすごいんだ?』、かつては音楽や映画を通じて均質化したが、現在ではネットを通じて均質化の度合いを深めているのかも知れない。
・『国境を越えて番組が見られているNetflix人気  一同:Netflix の「ストレンジャー・シングス」や「ブラック・ミラー」は多くの若者が見ていると思います。「テラスハウス」を見ている人も結構多いですよ。 原田:日本のフジテレビ制作のコンテンツであるテラスハウスも、アメリカの若者が見ているんだ?テラハメンバーがよく海外を歩いていると、街で声をかけられるというエピソードを番組の中で話しているけど、実際の話なんだね。 こんまりさんもNetflixによってアメリカで大ブレイクしているし、日本企業はグローバルなマーケティング活動において、もっとNetflixを有効活用すべきかもしれないね。Amazon Prime(アマゾンプライム)やHulu(フールー)はどうですか? イラーナ:Huluは広告が入っているから嫌です。 エレン:Amazon Primeは会員になっているけど、あくまでアマゾンの買い物用に会員になったのであって映画は見ません。 一同:皆、Netflixの使い方に慣れちゃっているから、ほかのモノはあまり……。 原田:なるほど、Netflix一極集中に向かっているのかもしれないね。じゃあ、話題をSNSに変えよう。日本のニュースでよくアメリカの若者の間でフェイスブック離れが進んでいるというものを目にしますが、実際はどうなんですか? アダム:個人情報の流出で、かなりフェイスブック離れが加速化したように思います。僕はフェイスブックをSNS機能に使うというより、ニュースを見る場にしています。 キャリス:私はもう投稿はしなくなっていて、イベント情報の詳細や、学生グループの情報を得るためだけに使っています。 通訳:学生たちの中には、政治に関する個人的な見解や政治に関するニュースや記事をあげている人もいて、それがタイムラインにたくさん挙がってくるのが嫌だという話も学生たちからよく聞きます。 原田:まあ、学生たちがSNS上で政治談義をしている点は日本も見習ったほうがいいですけどね。日本の学生たちはツイッターにネタを載せるか、インスタに映え写真を載せることに躍起になっていて、SNS上での政治談義などほぼありませんから。 エレン:おばあちゃんがフェイスブックを使っているから、そのやり取りにだけ使っています。自発的に投稿することはありませんね。 アラン:周りの同世代を見ていると、メッセンジャー機能だけ使っている人がいちばん多いように思います。 ヨータム:僕は友達の情報を収集する場として使っていて、自分で投稿することはありません』、「個人情報の流出で、かなりフェイスブック離れが加速化」、「メッセンジャー機能だけ使っている人がいちばん多い」、「学生たちがSNS上で政治談義をしている」などは参考になった。
・『日本の若者にはフェイスブックは「冠婚葬祭メディア」  原田:日本でもフェイスブックは若者の間で「冠婚葬祭メディア」なんて言われ方をすることもあるようで、要は、おじさんたちが熱心に書き込みを行っている中、若者たちは登録はするものの、人生の大きな転機があるときにだけ書き込みをするようになっている、ということらしいです。アメリカの若者の間では、ニュースを見る場とメッセンジャー機能に集約され始めているのは面白い違いかもしれませんね。 では、日本の若者の間では加工アプリとして使われることもあるSnapchat(スナップチャット)はどうだろう? アンナ:暇つぶしで、ごくたまにいじるくらいかな。 エレン:私たち世代より若い世代がやっているイメージだわ。 キャリス:3、4年前は大学生も使っていましたが、今はもっと若い子たちが使うようになっているイメージです。 原田:Snapchat(以下、スナチャ)は世界でちょっと伸び悩んでいたんだけど、4月23日の同社の発表によると1日当たりのアクティブユーザー数が世界で1億9000万人に増加したようだね。君たちの話を聞くと、アメリカではより若年化し始めたのかもしれないね。 ちなみに、ストーリーという「消える画像・動画」は、日本の若者はインスタグラムで熱心に使うようになっているけど、もともとはスナチャにあった機能をインスタが真似たんだよね。日本はスナチャが普及する前にインスタにこの機能が搭載されてしまったから、インスタのこの機能が若者の間で浸透した。 一応グローバルなメディアになったと言われているTikTok(ティックトック)はどうだろう?日本と中国ではやっていることは間違いないのだけど。 一同:(笑)。 キャリス:1回だけ使ったことがあるけど、それから1回も使ってないわ。 アンナ:聞いたこともないわ。 ヨータム:最近、ネット広告でよくこのアプリの広告を見るようになったけど、周りの友達で使っている人を見たことがないし、ほとんどの人が知らないのでは?ひょっとしたら、私たちよりもっと若い10代くらいの間ではやっている可能性はあるけど……』、「日本の若者にはフェイスブックは「冠婚葬祭メディア」」には笑いを禁じ得なかった。
・『今後、日本の就活でも利用すべきSNSとは  原田:熱心に使っている若者が多いのは、主に日本と中国だけなのかなあ。先日、上海に行って若者たちにインタビューしてきたら、上海の子たちは結構、積極的に使っていました。じゃあ、日本ではあまり普及していないと言われる、海外ではインターンや企業の採用などに使われているSNSのLinkedin(リンクトイン)は? キャリス:最近消したわ。アーティストなどフリーランスの人に興味があるので、私にとっては何のコネクションにもなりませんでした。あと、学内の学生で私が知らない人から就職活動についてアプローチがあり、面倒だったこともやめた理由としては大きいです。 原田:日本の大学生も、この数年で本当にインターンシップをやるようになってきているし、先日、経団連が新卒一括採用をやめると宣言したので、学生たちは大学にいる間、ずっと就活をすることになっていくと思うので、そろそろこうした類いのSNSが普及し始めてもいいタイミングにはなってきているんですけどね。 では、ツイッターはどうかな?ツイッターは日本ではうまくいっているけど、本国アメリカではあまりうまくいっていない、というニュースを日本でしばしば見かけます。僕が数年前にニューヨークとロサンゼルスで行った若者調査では、ツイッターをやっている子がかなり少なかったことを覚えているけど、今はどうなんだろう? エレン:私は毎日投稿しているわ。以前、仕事の情報収集にも使っていたわ。でも、周りのほかの同世代はやっていない。 ヨータム:何年も前に数週間試したことがあるけど、すぐにやめました。 アンナ:人間、そんなに言いたいことってないわ。だから、やる理由がない。 原田:確かに普通の人間には、そんなに発信したいことってないかもしれないね(笑)。それに英語だとつぶやける言葉数も限られるしね。漢字のある日本のほうが、そもそもメディアとして親和性が高いのかもしれないね。俳句の国だし、短文にもともと慣れているのかもしれない。 日本の高校生にインタビューすると、インスタグラムでストーリー機能ができてから、それがツイッターのつぶやきに似ている機能だから、ツイッター離れが進んできている、なんて話も聞いたりするようにはなりましたが。 でも、日本のテレビはトランプ大統領がツイッターで何かをつぶやくと、すぐにそれをあたかもアメリカで大きな影響を与えているように報じるのだけど、それは日本でツイッターの影響力が大きいからかもしれない。 アメリカ社会では全体的に、少なくとも若者たちについてはツイッターの影響力は減ってきているから、ことさらにトランプ大統領のツイッターでの発言を大きく報じるのは、客観的な報道とは言えない可能性もあるかもしれないね』、ツイッターについて、「人間、そんなに言いたいことってないわ。だから、やる理由がない」、「英語だとつぶやける言葉数も限られるしね。漢字のある日本のほうが、そもそもメディアとして親和性が高いのかもしれないね。俳句の国だし、短文にもともと慣れているのかもしれない」、「ことさらにトランプ大統領のツイッターでの発言を大きく報じるのは、客観的な報道とは言えない可能性もあるかもしれないね」、などの見方には納得させられた。
・『報道ニュースを若者にどう届けていくべきか  ところで、先ほど、フェイスブックでニュースを読む、という人がいたけど、ほかの人はニュースはどこから得ているの? アンナ:iPhoneのニュースアプリで見ているわ。(注:iPhoneのニュースアプリで数百という新聞や雑誌、インターネットニュースメディアの記事を読むことができる。好きなメディアやテーマを登録しておけばそのニュースがニュースフィードにどんどん上がってくる) エレン:ツイッターとニューヨークタイムスでニュースを読みます。 538という政治的なサイトを見ている若者も中にはいます。 原田:日本の若者もそうだけど、アメリカの若者もあまりニュースは見ていなさそうだね。報道ニュースを若者たちにどう届けていくかというテーマは、世界中のメディアにとって、本当に大きな問題になってきていますね』、日本のネットでの”炎上”や”祭り”などの傾向が、アメリカでどうなっているかも知りたいところだ。続編で出てくればいいいのだが・・・。
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小売業(コンビニ)(その3)(24時間営業問題)(セブン「ドタバタ社長交代」に透ける王者の焦り コンビニオーナーは「新社長には期待せず」、セブン経営陣 24時間営業を死守する「撤退できぬ病」の重症度、コンビニ「24時間営業問題」 セブンとローソンは明暗を分ける…?) [産業動向]

今日まで更新を休むつもりだったが、更新することにした。小売業(コンビニ)については、昨年10月12日に取上げた。今日は、(その3)(24時間営業問題)(セブン「ドタバタ社長交代」に透ける王者の焦り コンビニオーナーは「新社長には期待せず」、セブン経営陣 24時間営業を死守する「撤退できぬ病」の重症度、コンビニ「24時間営業問題」 セブンとローソンは明暗を分ける…?)である。

先ずは、4月8日付け東洋経済オンライン「セブン「ドタバタ社長交代」に透ける王者の焦り コンビニオーナーは「新社長には期待せず」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/275506
・『突然のトップ交代人事は「吉」と出るのだろうか。 セブン&アイ・ホールディングスは4月4日、コンビニエンスストア最大手である傘下のセブン‐イレブン・ジャパンの社長交代を発表した。4月8日付けで永松文彦副社長(62)が社長に昇格。鈴木敏文名誉顧問(86)の愛弟子・古屋一樹社長(69)は代表権のない会長に就く。 「柔軟なあり方を模索したい」。4日に行われた記者会見の席上、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長(61)は「柔軟」という言葉を6回も繰り返した』、唐突感がある社長交代には驚かされた。多分、東大阪市の加盟店オーナーによる時間短縮営業に対し、本部が違約金をかざして対応したことで、問題が大きくなった責任を取らされたのだろう。
・『「コミュニケーションの目詰まり」でトップ交代  ブン‐イレブンは、1974年に国内1号店を東京都内に出店して以降、チェーンストア・オペレーションを基にした統一された運営を徹底することで事業を拡大してきた。だが、ここにきて全国一律で同じシステムを適用する硬直的な運営では、社会の変化に対応し切れないケースが増加。人手不足で苦しむフランチャイズ店からは「年中無休、24時間営業」の見直しの声が強まっていた。 セブン‐イレブンは経営体制の刷新により、変化に対応できる柔軟な体制の構築を目指す。 今回、トップ交代に踏み切った背景について、井阪社長は会見で「組織的な問題として、コミュニケーションの目詰まりがあった」と語った。セブン‐イレブンの店舗網が全国で2万店を超える中、現場の情報が上がりにくくなっていた。 たとえば、2018年2月に福井県が豪雪に見舞われた際に、本部側が営業時間の短縮を認めなかった。アルバイトなどが出勤できない状況で、加盟店のオーナーが不眠不休で対応せざるをえなかった。井阪社長はこの事実を社内からあがってきた情報で知ったのではなく、報道を受けて知ったという。 こういった加盟店の意見や情報が本部に届きながら、トップまであがらないことに対し、セブン‐イレブンの新社長に就く永松氏は「過去の延長線ではなく、新しい発想で経営を推進したい」と、変革への強い決意を述べた』、「店舗網が全国で2万店を超える」とはいえ、福井県の豪雪災害時にも、「本部側が営業時間の短縮を認めなかった」、しかもそうした情報が持株会社の社長には上がっていなかったというのは、組織の硬直化が酷いようだ。
・『1カ月で昇格のドタバタ社長人事  それにしても今回の人事はドタバタだった。永松氏は今年3月1日付けで人事本部管掌の取締役から副社長に昇格。店舗開発と既存店運営の両方を管掌する営業本部長に就任した。そのわずか3日後に、営業本部長と、既存店運営を統括するオペレーション本部長を兼務する3月18日付けの人事が公表された。そして、それから1カ月で社長昇格の人事である。 セブン&アイの井阪社長は永松氏を選んだ理由について、「事業構造改革のみならず、人事や労務管理、教育に精通している。今の加盟店オーナーの悩みに応えられるとともに、現場の声を適切に吸い上げられる最適な資質を有している」と語った。 永松氏はこれまで、加盟店の経営指導や人事を担当。また、セブン&アイグループの通販大手・ニッセンホールディングスの副社長として同社の再建に携わった経験を持つ。幅広い分野での豊富な経験を活かし、加盟店との連携強化に乗り出す。まず、今年から全役員が全地区を訪問し加盟店と直接話し合い、経営課題を共有する。 加盟店の一部から不満の声があがっている24時間営業問題に対しても、一部見直す可能性を示唆する。「今後は、立地や商圏など1店舗1店舗の状況を見極めたうえで、柔軟に対応していく」(井阪社長)。 ただ、24時間営業を一気に縮小するわけではない。「加盟店の収益が落ちるのは大きな問題なので、シミュレーションしながら話し合うのが基本のスタンス」(永松氏)とする。2019年3月から、直営・FC合わせて12店で営業時間短縮の実証実験を進めている。営業時間を短縮すれば「売り上げは当然下がる」(永松氏)が、その結果を加盟店に説明し、そのうえで営業時間短縮を希望する加盟店と話し合いを進める方針だ。 拡大路線をひた走ってきた戦略の見直しにも着手する。出店数を大幅に縮小する一方で、既存店の強化を打ち出す。2019年度の国内出店数は、2018年度に比べて539店減となる850店を予定。これにより、2018年度616店純増から2019年度は100店純増に大幅に抑制する計画だ』、新社長は、「加盟店の経営指導や人事を担当」してきたのであれば、適任なのかも知れないが、営業時間短縮には慎重なようだ。
・『新店より既存店投資に資金を投下  他方、既存店への設備投資は積極化する。2018年度は年間の総投資額1100億円のうち62%を新店関連費用として投じたが、2019年度は総投資額1450億円のうち6割以上を既存店に投資する計画だ。セルフレジの全店導入などを進める。 変革路線を明確にしたセブン‐イレブンだが、関東地方の加盟店オーナーは「管理部門が長かった永松氏に、現場の苦しみが理解できるのか。その手腕には、まったく期待していない」と冷ややかだ。関西圏の加盟店オーナーも「40年近くオーナーの声を聞く姿勢がなかったのに、その体質を急に変えることができるのか疑問」と話す。 「現場の疲労感は溜まりに溜まっている」と、関西圏の加盟店オーナー。2020年2月期を最終年度とする3年間の中期経営計画では、当初は国内コンビニ事業で190億円の増益を計画していたが、既存店売り上げや粗利率が鈍化し、増益幅は80億円に縮小する見通しだ。 国内コンビニ事業の成長鈍化が目立っている中、画一的システムの限界を迎えつつあるセブン‐イレブンの問題を根本的に解決するには、まずは本部と加盟店との認識のズレを是正する徹底した姿勢が求められる』、加盟店オーナーとの深い溝を埋めていくには並大抵ではないだろう。

次に、ノンフィクションライターの窪田順生氏が4月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「セブン経営陣、24時間営業を死守する「撤退できぬ病」の重症度」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/200203
・『ローソンやファミリーマートに「24時間営業見直し」のムードが広まっている中、頑なに24時間営業継続の道を進んでいるセブン-イレブン経営陣。日本企業、ひいては旧日本軍にも蔓延していた「撤退できぬ病」に冒されているのではないだろうか』、「撤退できぬ病」とは言い得て妙だ。
・『24時間営業にこだわらないセイコーマートとセブンの違いとは  「24時間営業見直し」のムードが高まっている。 ローソンの竹増貞信社長は、もともとコンビニは24時間営業だったわけではなく、時代の求めに応じて始まったルールなので、社会のニーズが変われば店舗ごとに対応してもいい、という柔軟な考えを示しており、実際ローソンではこの5月、「時短営業」の店舗は計43になるという。ファミリーマートも、この6月に24時間営業見直しを視野に入れた実験を行う。約270のFCオーナー店を対象に参加を募っているという。 また、規模を抑えた「持続性重視」の経営にも注目が集まっている。 1971年、日本初のコンビニを開店させて、北海道と関東で1190店舗(2019年3月末現在)を展開するセイコーマートでは、24時間営業店舗は全体でわずか2割しかない。 大手コンビニは、オーナー店からの「チャージ」の収入が柱となるフランチャイズビジネスなので、店舗を開ければ開けるほど儲かるが、セイコーマートはほぼ直営店。商品や輸送も内製化しており、会社全体で収益を上げるビジネスモデルなので、人手不足に対応して、そこまで売上げの立たない店舗は早終いできる、というわけだ。 「24時間営業をやめたらコンビニというインフラは持続できません」と訴えるセブン-イレブンが、その名と似た響きであるにも関わらず、一向に出店しない最北端の礼文島や、奥尻島、利尻島などの離島にもセイコーマートは出店しており、今や島民になくてはならない存在となっている。 「コンビニは地域インフラ」という話と、「ドミナント戦略」や「24時間営業」は、その地域インフラ維持に実は大して関係ないということを体現するセコマから、セブンも学ぶべき点は多いのではという声も少なくないのだ』、セイコーマートが「日本初のコンビニを開店」させ、未だに「直営店」方式でやっているとは初めて知った。
・『セブン経営陣が陥っているのは「撤退できぬ病」  では、このムーブメントの「火付け役」ともいうべき、当のセブンはどうかというと、「24時間営業死守」の構えを崩していない。 4月5日の『セブン、「24時間営業死守」の本音を見せつけた新社長の就任会見』で詳しく解説されているが、なんやかんやと理由をつけて、どうにかして「24時間営業継続」の道を模索しているのだ。 つい最近、話題になった「時短営業の実証実験」も実はその一環で、これまでも24時間営業をやめると売上げがかなり厳しくなるというデータがあり、「それを明確にするためにテストをやっている」と、永松文彦新社長も述べている。 データ主義といえば聞こえはいいが、バイトが確保できず、個人に過重労働がのしかかる「ブラック職場」になっている中でも具体的な問題解決策を示さず、ただ現行の計画を進めます、という姿勢は、現実から頑なに目を背けているようにも見える。 なぜセブンほどの立派な大企業を舵取りする頭脳明晰なリーダーたちが、こんな理解に苦しむ対応をするのか。 「単に収益が減るのが嫌なだけでしょ」「いや、売り上げが落ちればコンビニの質の高いサービスが維持できない!日本のためを考えての苦渋の決断だ!」などなど、皆さんもこの件には様々な意見があることだろう。 だが、筆者の見方はちょっと違う。日本型組織の代表的な病の一つである「撤退できぬ病」に、セブン-イレブンの幹部の皆さんが蝕まれつつあるのではないか、と心配しているのだ。 筆者は報道対策アドバイザーという仕事柄、「問題アリ」の組織を間近に見る機会がわりと多い。そこで気づいたのは、組織外の人間から見れば明らかに無謀に見える計画なのに、変更したり見直すことを頑なに拒むリーダーが、思いのほか多いということだ。この現象を個人的に「撤退できぬ病」と呼んでいる』、確かに、普通の企業にもありそうな話だ。
・『頭では無謀だとわかっているけれど…なぜか撤退だけは頑なに拒む  例えば、組織外からも、中からも「無理じゃないですか」という声が上がるような無謀な話でも、聞く耳を持たずに進めようとする。 「ここまでやってきたのに、そう簡単にやめられるか」「これまではこのやり方でうまくやってきた。無責任な外野に何を言われようとも、これを変えるつもりはない」「先人たちが成長をさせてきたこの事業を、そういう無責任さでやめられない」 なんて感じで、断崖絶壁へと続く一本道でアクセルを深く踏み込んで、残念な結末を迎えてしまうのだ。 頑固だから、独裁者だから、ということとは、ちょっと違う。組織内ではむしろ、現場からの声にもよく耳を傾けるし、調整型リーダーだったりする。しかも頭では、これがいかに無謀な話なのか薄々勘付いている。しかし、なぜか「撤退」という決断だけは、頑なに拒むのだ。 そんな「撤退できぬ病」が、暴走する組織ではちょいちょい見られる。最近では、入居者数を増やすための杜撰な効率化や納期短縮という「創業者の無謀な計画」から撤退できなかったレオパレスが典型例だ。 と言うと、「確かにそういう組織もあるが、日本型組織みたいにひとくくりにするな!」というお叱りを受けるかもしれないが、とにかく数字さえ合えば問題ナシという「員数主義」や、「指導」と言えば、「上」は「下」にどんな理不尽な仕打ちをしてもいいという「新兵いじめ」などなど、日本型組織のベースをつくった旧日本軍も、「撤退できぬ病」で破滅の道をつき進んでいる。 わかりやすいのが、「インパール作戦」である。 およそ3万人が命を落とし、世界中の戦史家から、「太平洋戦争で最も無謀」とボロカスに酷評されるこの作戦は、世間一般的には、軍国主義に取り憑かれた大本営がゴリゴリ押して進められた、というようなイメージが強いが、実態はそうではない。 大本営というエリート集団が総じて「撤退できぬ病」に蝕まれていたため、腹の中ではこれはもう無理だと思いながらも、誰一人として「撤退」を強く主張しなかった。そして、なんとなくうやむやのまま、作戦が進められてしまったのだ』、「インパール作戦」は確かに「撤退できぬ病」の典型なのかも知れない。
・『強すぎる責任感が撤退できぬ病の根幹  そのあたりは、歴史学者・戸部良一氏の「戦争指導者としての東條英機」(防衛省 戦争史研究国際フォーラム報告書)に詳しい。 現地軍の苦境を知った大本営は、当時のビルマへ秦彦三郎参謀次長を派遣した。彼が帰国後、「作戦の前途は極めて困難である」と報告をしたところ、東條英機は「戦は最後までやってみなければわからぬ。そんな弱気でどうするか」と強気の態度を示したというが、実はこれは心の底からそう思ったわけでもなければ、確固たる信念から口に出たことでもなかった。 《この報告の場には、参謀本部・陸軍省の課長以上の幹部が同席していたので、東條としては陸軍中央が敗北主義に陥ることを憂慮したのであろう。このあと別室で2人の参謀次長だけとの協議になったとき、東條は「困ったことになった」と頭を抱えるようにして困惑していたという》(「戦争指導者としての東條英機」より) 東條英機も撤退しなくてはいけないことは頭ではわかっていたのだ。が、わかっちゃいるけどやめられなかった。重度の「撤退できぬ病」にかかっていたことがうかがえる。 では、なぜこうなってしまうのか。病の根幹は「セクショナリズム」と「強すぎる責任感」である。 秦彦三郎によると、《インパール作戦は現地軍の要求によって始まった作戦であるので、作戦中止も現地軍から申請するのが筋である》(同上)という考えが大本営にあった。一方、大本営にいた佐藤賢了は、東條英機を「独裁者でなく、その素質も備えていない」として、こう評している。 「特に責任観念が強過ぎたので、常に自己の責任におびえているような面があった」(佐藤賢了の証言 芙蓉書房)』、「責任観念が強過ぎたので、常に自己の責任におびえているような面があった」というのにはやや違和感がある。責任感があれば、セクショナリズムを超えて作戦中止を命令してもよかった筈ではなかろうか。
・『曖昧な意思決定をしている間に現場のダメージは広がっていく  想像してほしい。誰だって、自分ではない人たちが覚悟を持って始めたことを、簡単に「やめろ」とは言いづらいだろう。それがどんなに無謀で、どんなに悲惨な結果に終わるのかが目に見えていても、「俺らがやりたくてやるんだ、外野が口出しするな」と文句を言われたら黙るしかない。 責任感のある人間であればあるほど、無責任な発言はできないだろう。頭では、無謀な計画だということは重々承知しているものの、計画立案者や、それを遂行する現場への「遠慮」があるので、「もうやめない?」の一言が出ない。信念やビジョンからではなく、「責任のある立場」から関係各位の事情を考慮して、現状維持へ流されていくのだ。 これが「撤退できぬ病」が生まれるメカニズムだ。 全国規模の超巨大組織の「作戦」を決める、という意味では、セブン-イレブン本部は、旧日本軍の大本営とよく似ている。ならば、セブンの幹部も、大本営同様の「病」にかかってしまう恐れはないか。 FCオーナーという現場を知る者から「24時間営業という作戦の前途は、極めて困難である」という報告を受けているにもかかわらず、「そんな弱気でどうする」と檄をとばす。そこに確固たる自信や戦略があるわけではない。「24時間営業」を進めて戦果を上げてきた前任者や、組織内の24時間営業を死守すべきという勢力への「遠慮」からだ。内心、困ったことになったと頭を抱えているが、とにかく「撤退」は言い出せない。みな東條英機のように、責任感の強いリーダーだからだ。 だが、ビルマの戦局同様に、そのような曖昧な意思決定をしている間に、現場のダメージは着々と広がっている。後に歴史を振り返ってみた時に、「24時間営業死守は令和のインパール作戦だった」なんて酷評されるかもしれないのだ。セブンのリーダーたちは大本営の過ちから学び、是非「勇気ある撤退」を決断していただきたい』、その通りだろう。

第三に、経済ジャーナリストの松崎 隆司氏が5月8日付け現代ビジネスに寄稿した「コンビニ「24時間営業問題」、セブンとローソンは明暗を分ける…?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64263
・『24時間営業問題で「セブン社長交代」の大激震  セブン&アイ・ホールディングスは4月4日、都内で会見を開き、傘下のコンビニエンスストア、セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長が退任、後任には永松文彦副社長が就任することを発表した。 きっかけとなったのは24時間営業問題。 大阪府東大阪市の加盟店オーナーが人手不足を理由に営業時間を19時間に短縮したところ、フランチャイズ契約に反し、1700万円の違約金が発生すると本部が指摘したことから両者の間に対立が起こった。 問題はそれにとどまらなかった。 他の加盟店からも火の手が上がり、世論を喚起。こうした加盟店との軋轢が深まる中で、コンビニ業界のガリバーといわれるセブン-イレブンも本部と加盟店の関係を再構築し、ビジネスモデルの抜本的な見直しが求められることから、長い間加盟店と接点を持ち人事労務に強い永松副社長を抜擢したとみられている。 井阪隆一セブン&アイ・ホールディングス社長は、記者会見でセブン-イレブン・ジャパン社長交代の理由について次のように語っている。 「24時間問題に対応できなかったというよりは、コミュニケーションのパイプの根詰まりが組織的な問題としてあった。それは2万店という巨大なチェーンにおいて、一人の社長が情報を吸い上げて対応しなければいけない。とても負荷がかかる。永松が入ることで、社内の情報をしっかりと吸い上げて、コミュニケーションを密にし、素早い戦略立案、課題解決を実行する」 セブン-イレブンの前身は「ヨークセブン」で1973年に創立され、コンビニエンスストアのビジネスモデルを作り上げてきた。 セブン-イレブンが誕生した1973年は、高度経済成長の最後の時期。工業化社会へと突入し、大量生産、大量販売による空前の消費ブームを巻き起こしていた。 こうした大企業の猛攻の中で、中小小売業の経営は厳しさを増していた。 「中小小売業は依然として家族的な労働を中心に営まれており、労働生産性が上がらなかったこと、また新たな人材を確保しようにも、需要も大きく労働条件が整備されてきた製造業に人材が吸引されていたこと、さらに高度成長を経て消費市場自体が『商品をつくって店頭に並べれば売れた売り手市場』から『お客さまが価値を認めた商品だけを買っていく買い手市場』へと変化し始めていたことなどが、その背景にありました」(同社ホームページ「セブン-イレブンの歴史」より) 政府もまた中小小売商業振興法や大規模小売店舗法(大店法)を公布し、中小企業の活性化に乗り出した。 鈴木敏文名誉顧問、(当時イトーヨーカドー取締役)は当時、イトーヨーカ堂出店を進めて行くために地元の商店街などに「共存共栄」を説明して回った。鈴木氏は当時を振り返ってこう語っている。「当時、中小小売店の不振の原因は、生産性の問題であり、大型店との競争の結果ではないと考えて、規模の大小にかかわらず生産性を上げて人手を確保し、きめ細かくニーズに対応していけば必ず成長の道が拓かれ、大型店と中小小売店の共存共栄は可能だと説得し続けていました。しかし、いくら言葉で言っても生産性の上がる中小小売店経営の実例がどこにもないので、商店街の方々の納得を得るのは困難でした」(「セブン-イレブンの歴史」より)』、スーパーと「地元の商店街」との「共存共栄」は、確かに難しい問題だが、全く不可能ではない筈だ。
・『マニュアル経営の光と影  イトーヨーカ堂などの大型店が発展する一方で、セブン-イレブン本部がフランチャイズ・ビジネスを徹底的に追求し、それをマニュアル化して店舗にそれを徹底させるビジネスが生まれてきたわけだ。 鈴木氏は米国のセブン-イレブンの親会社、サウスランドと提携、1973年には「ヨークセブン」を設立。74年には東京江東区に1号店の豊洲店を出店、1975年には福島県郡山の虎丸店で24時間営業をスタートした。 1978年には「セブン-イレブン・ジャパン」に改名。その後1980年には1000店を突破する。1981年には東証一部に上場。1982年にはPOS(販売時点情報管理)システム、EOB(電子発注台帳)による発注を開始、システムを次々に刷新し最新のものを導入した。一方でこれまで小売業が扱うことができなかった商品をいち早く導入、規制緩和の旗手としてその存在感をアピールする。 ドミナント出店によるブランド強化と合理性を追求した物流システムを構築。日販でもファミリーマート、ローソンなど大手3社の中で圧倒的な数字を挙げてきた。こうした成果を上げることができたのもの、いち早くマニュアル化を進めて加盟店を徹底的に管理してきたからだ。 「最初の3カ月は本部の人間が入り、徹底的に指導する」(コンビニ関係者) そして、2018年には2万店を突破した。 しかし、加盟店が増えれば増えるほどマニュアルによる画一化されたビジネスに違和感を持つ店舗も増加していった。 そうした中で浮上したのが、ロスチャージの問題だ。ロスチャージとは、賞味期限切れで廃棄された商品に対して、売り上げがあったものとして粗利を算出し、この粗利に基づいて加盟店がロイヤリティを支払う取り決めのことだ。 これが詐欺に当たる不当な請求だとして、岡山の加盟店オーナーがセブン-イレブン本部を提訴。2005年には東京高裁で加盟店側が勝訴したが、2007年の最高裁判決では逆転敗訴となっている。 その後セブン-イレブン本部が加盟店に制限していた見切り販売が問題となり、独占禁止法違反であると、公正取引委員会がセブン-イレブン本部に対して排除措置命令を勧告。セブン-イレブン本部は廃棄損失の15%分を負担すると発表したが、契約解除をちらつかせて値引きを制限する本部に対して、加盟店オーナーたちからは損害賠償訴訟が続いた』、コンビニ本部が加盟店に対し、優越的地位を振りかざして強要するケースには、公正取引委員会ももっと積極的に排除に踏み出してほしいものだ。
・『「コンビニ加盟店ユニオン」の副委員長が語る  こうした流れの中で 2009年8月にはセブン-イレブンの店主が中心となって「コンビニ加盟店ユニオン」を設立、本部に対して団体交渉を求めたが、本部はこれを拒否。岡山県労働委員会に救済を求めると、「加盟店主は労働組合法上の労働者」と初めて認定された。 こうした動きは、ファミリーマートなどにも波及する。コンビニ業界にとってセブン-イレブンが確立したビジネスモデルがディフェクトスタンダードになっているからだ。セブンーイレブンの真似をすることで“柳の下の二匹目のどじょう”狙うというのが、長い間コンビニ業界を支配してきた構図だったからだ。 ファミリーマートの加盟店オーナーの一部は、「コンビニ加盟店ユニオン」に合流。さらに「ファミリーマート加盟店ユニオン」も誕生し、東京都労働委員会に救済を求めて加盟店オーナーが労働者である認定を受ける。 ところが、その後中央労働委員会が岡山や東京の認定を覆し、加盟店オーナーは労働組合法上の労働者には当たらず、団体交渉の申し入れに応じないことは団体交渉拒否には当たらないと判断したことから、コンビニ本部と加盟店オーナーとの間の溝はさらに深くなっている。 こうした中で急浮上したのが、今回の24時間営業の問題だった。人口減少などによる人手不足で人件費は高騰。店舗運営が難しくなり、セブン-イレブンの大阪の店舗から24時間営業を止めたいという声が上がり、現在は96店の店舗でそうした声があがっているという。 さらに3月には、「コンビニ加盟店ユニオン」がセブン-イレブンに対して24時間営業問題の解決を求める申し入れ書を提出した。 「24時間営業をやめるのは、それによって生活基盤を得ている方がたくさんいるので、リスクを及ぼす可能性があるし、長年培ってきたブランドに対してもリスクがある」(井阪隆一セブン&アイ・ホールディングス社長) セブン-イレブンは当面、実証実験を行いながら一方で経営陣が全国のオーナーの元を回り、関係改善を図っていくという。しかし、問題は構造的な人手不足と人件費の高騰。そのために店舗の収益が圧迫されていることをどう解消するかだ。 セブン-イレブンは「19年度は出店を850店。前年より500店以上抑制」(井阪社長)し、新店開発での投資を抑える一方で、既存店の設備投資を強化。今年度中にはセルフレジを全店舗に導入するという。こうしたセブン-イレブンの取り組みに対して「コンビニ加盟店ユニオン」の副委員長、吉村英二氏は次のように語る。 「社長は変わりましたが、実情は全く変わらないと思います。役員が加盟店オーナーを回って説得するといっていますが、2万店以上の加盟店を回れば、10年かかってしまうのではないですか。説得力がない。コンビニ本部と加盟店との間には24時間問題以外にも廃棄ロスの問題やチャージの問題などまだまだたくさんの問題があるのですが、これまで団体交渉ができなかった。暗雲が立ち込めているとっても過言ではありません。新しい社長には変化に対応してもらいたい」』、吉村英二氏の言い分はもっともだ。
・『ローソンは加盟店オーナーと協調路線  一方で、ローソン本部と加盟店オーナーとの関係はセブン-イレブンをはじめとした他のコンビニとは大きく違っている。 セブン-イレブンが記者会見を開く前日の3日、ローソンの「オーナー福祉会 理事会(前身は加盟店共済会・以下オーナー福祉会)」の理事会が沖縄のホテルで開かれていた。「オーナー福祉会」は全国の各エリアから選出された加盟店の代表であるオーナー理事で構成される組織で、3年の任期で年2回行われる理事会は、オーナー理事と本部との意見交換会だ。 今回は退任する10期12名、新任された11期13名の25人とその家族(計40人程度)、本部4人が出席した。今年は24時間問題、人手不足など課題は山積している。オーナー理事とともに座っていた竹増貞信社長が口を開いた。 「オーナー福祉会の懇談会というよりは、これからはみなさん方がローソン全体のアドバイザリーボードの委員を引き受けてもらいたいと思っています。ですから、この会自体を『ローソン加盟店アドバイザリー委員会』にさせていただきたいと思います。みなさんにはいろいろな意見を出していただきたいと思います。年に2回の理事会に加えて問題が起きたときには力を貸してください。今回を第一回目にしましょう。会議は時間無制限、言いたいことを言ってくださいね」 これに対して加盟店オーナーからも次々に意見が上がる。24時間営業問題も例外ではない。 「時短営業については、人手不足の中でメリット、デメリットがあります。それを踏まえて本部としても対応を考えていただきたい」「銀行のATMコーナーの様に必要以外の売り場をシャッターで閉鎖して、一部売り場だけでの営業といった事は考えられないでしょうか。また、無記名のアンケートでもよいので、全国のオーナーの提案を受け付けてもらえないでしょうか」 このほかにも、「防犯カメラの遠隔管理」「トイレの清掃」「覆面調査の問題」などさまざまな疑問や意見、提案が行われ、中には本部にとっては耳が痛い意見などもあった。 それでも竹増社長は一人ひとり丁寧に答え、さらに「このような場は本部にとっては宝です。みなさんからいただいた意見に対しては必ず回答する会にしていきたいのです。皆さんの意見、エリアで集約した意見をぶつけてください」と質問を誘った』、ローソンが他のコンビニと協調路線をとっている背景は何なのだろう。
・『「腹を割って話そうじゃないか」  ローソンに「オーナー福祉会」が誕生したのは1987年、その後1992年に全加盟店が参加するようになったという。 「ローソンは当初、ダイエーの中内功会長が、ダイエーを退職する社員たちの受け皿のために作られました。だから本部とオーナーは近い関係にありました。当初の3000人のうち1000人はダイエーのOBです。だからチャージ率も他のコンビニよりも安かったし、弁当の値引きなども早くから認めてきた。 オーナー福祉会の前身『加盟店共済会』もまた、加盟店オーナーたちが発足して10年経ったころに健保組合のようなものが必要だと中内さんに直談判。オーナーと本部の折半出資で設立され、その後1992年にオーナー福祉会に移行してからは福利厚生を加え、全加盟店のオーナーと家族、そして店舗のクルー・スタッフを対象にした組織になりました」(ローソン幹部) しかし当時はまだ、他のコンビニ同様、本部と加盟店オーナーの間には埋めきれない溝のようなものがあり、意思疎通は必ずしもうまくいっていたとは言えなかった。 それだけではない。それまでは加盟店オーナーを集めて商品説明会をおこなっていたが、そうした加盟店オーナーの集まるような場所には社長は参加しなかった。加盟店オーナーから本部の社長にクレームがつくというのはよくないという判断からだ。 しかも当時の本部は、加盟店オーナーを『オーナー様』と慇懃無礼に呼びながら、軽視していた。 「はっきり言って当時のローソンは、他のコンビニの本部と加盟店オーナーとの関係に大差はなかったと思います」(ローソン幹部) そのような中で、こうした企業風土を変えたのが2002年に経営再建のために三菱商事から乗り込んできた社長の新浪剛史氏だった。 新浪は自ら「オーナー福祉会」に出席すると、本部の役員たちをたしなめるようにオーナーたちの前で、「『オーナー様』じゃないだろう。一対一だろう。本部も加盟店も同じ立場なんだ、『様』じゃなくて『さん』だろう』。腹を割って話そうじゃないか」と訴えかけたという』、新浪氏は現在はサントリー社長になっているが、ローソン時代に「本部と加盟店オーナーとの関係」を改革したとは、さすがだ。
・『怒鳴りあいの喧嘩で本音をぶつけあった  ここから両者は本気で話し合うようになり、時には大声で喧嘩になったこともあったという。それ以降は「オーナー福祉会」には社長は必ず出席するという不文律が出来上がり、今でも竹増が出席している。さらに、オーナー会議の元理事を集め「OB理事会」を結成。年一回意見を聞いている。 「すでに何百人になるのですが、これまで頑張ってこられた方たちなので、参考になります」(ローソン幹部) さらに、竹増氏が副社長時代の2014年に女子部を設置。竹増氏がトップを務め、女性オーナーたちの意見を集めるようにした。 このほかにも、ローソンは自発的に全国で生まれた近隣エリアでの加盟店オーナーたちの情報交換会をエリアごとにまとめて「エリア会」を2012年に結成。加盟店オーナーや店長と本部の支店長、支店長補佐、スーパーバイザーなどとの意見交換会を結成した。2018年には計3045回開催されたという。 さまざまな形でオーナーと本部との意見交換会をやってきた成果はあったのか。 「人手不足の問題はかなり早い段階から情報として入ってきました。ローソンスタッフという加盟店への人材派遣の会社も加盟店オーナーからの提案です。40店舗を運営する新潟MO(複数店のオーナー)でフュージョンズという会社社長の佐藤洋彰さんが『オーナー福祉会』会議の中で問題提起し、本部も出資し、うちが49%、佐藤さんが51%を出資してこの会社ができました。2014年のことです」(ローソン幹部) このほか、「オーナー福祉会」がきっかけとなって店舗のクレームを引き受けるための「コールセンター」を設置。本部で一括して引き受けるようになった。 さらにローソンは2016年から「1000日全員実行プロジェクト」として加盟店支援に乗り出し、省力化での人件費削減を実施。廃棄ロス削減では2018年度対比で約2割削減。 24時間問題対応としては、41店舗(5月には2店舗が追加)で時短営業を実施。7月からはデジタル技術を使った無人営業の実験を進める』、ローソンは着実に関係改善に務めているようだ。
・『世耕弘成経済産業相は4月5日、大手コンビニ8社のトップを集めて意見交換会を行い、人手不足など加盟店が抱える問題を是正するよう行動計画の策定を要請。コンビニ各社は4月25日、行動計画を発表した。 セブン-イレブンは「出店基準の厳格化と既存店サポートの強化」「ゼロベースでビジネスモデルを再点検する」「加盟店の皆様と共に」という3つの改革の柱を掲げ、①加盟店様への支援策②オーナー様とのコミュニケーション強化③営業時間短縮の検討④加盟店様の売上・利益の拡大ーーを掲げた。 ファミリーマートは、店舗での実証実験などを踏まえ①省人化・省力化への新規設備投資②協力派遣会社からの店舗スタッフ派遣③24時間奨励金の増額④廃棄ロス削減⑤加盟店と本部の対話充実ーーを掲げている。 ローソンは、これまでの施策をさらに強化し「省力化にチャレンジする」という。 労使協調路線を進めるローソンも24時間問題を簡単には解決できないという。 「(24時間営業の廃止というのは)現時点ではありません。24時間営業の背景には弁当工場から物流センターまでそれを前提に非常に大きな仕組みが動いている。基本は24時間で個別にいろいろな事情に対応しているというのが実態です。現状はこの方針をしっかりと堅持したいと思っています。しかし将来的には変化に対応して、変えていく必要があると思っています」(竹増社長) ちなみに、加盟店オーナーとの関係でいえば、「コンビニ加盟店ユニオン」の約8割はセブン-イレブン、2割がファミリーマートという。ローソンは現在業界3位に甘んじているものの、ローソンが協調路線であるのは、間違いない。 協調路線のローソンは、24時間問題でセブン-イレブンとファミリーマートと一線を画せるのか。「オーナー福祉会」との話し合いの今後に注目したい』、24時間問題での対応では、確かに、セブン-イレブンやファミリーマートもさることながら、ローソンには特に注目する価値がありそうだ。
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