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日産ゴーン不正問題(その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題) [司法]

日産ゴーン不正問題については、4月21日に取上げた。今日は、(その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題)である。

先ずは、6月11日付け東洋経済オンライン「ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/284478
・『かつては日本航空などの、最近は東芝の不正会計分析で知られる元公認会計士の会計評論家・細野祐二氏は、現在「犯罪会計学」の研究家を自任する。本書はそのケーススタディーだが、会計とは無縁の冤罪(えんざい)事件に過半が割かれている。村木厚子・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長(後に事務次官)が逮捕された郵便不正事件だ。『会計と犯罪』を書いた会計評論家の細野祐二氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは細野氏の回答)』、検察による冤罪の被害者になった細野氏との対談とは興味深そうだ。
・『キャッツ事件で有罪に  Q:犯罪会計学とは耳慣れない言葉です。 A:オリンパス事件や東芝事件で明らかなように、企業から巨額の金をもらって行う日本の公認会計士監査は機能していない。一方で現行司法は制度疲労が激しく、経済事件に対して有効に機能していない。犯罪会計学は、機能不全に陥る会計監査と経済司法を学際的な研究対象としたものだ。 Q:会計監査とは無関係の郵便不正事件が本書の執筆動機となったそうですが、それはなぜですか。 A:私はキャッツの株価操縦事件に絡み、有価証券虚偽記載罪で2004年に逮捕・起訴された。一貫して容疑を否認し無罪を主張したが最高裁で上告棄却。懲役2年、執行猶予4年の判決が確定し公認会計士の登録を抹消された。 Q:9年前のことですね。 A:キャッツ事件で有罪判決を受けて以降、メディアは会計の分野でも私の話をまともに聴こうとはしなかった。ところが、村木さんが無罪判決を得て、冤罪だったことが判明すると、特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった。これは村木さんのおかげ。だから郵便不正事件はどうしても調べないといけないと思った』、村木さんの無罪判決で、「特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった」、メディアも「現金」なものだ。
・『Q:村木さんは著書『私は負けない』で、無罪判決は6つの幸運に恵まれたからだと書いています。 A:それを読んで私はかちんときた。村木さんは無罪を勝ち得たのだからそれでいいかもしれない。「数々の幸運に恵まれた」と書くのは奥ゆかしくもある。だが、私は有罪判決を食らっている。私は運が悪かった、では納得がいかない。村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった。 村木さんが挙げた6つの運のうち「心身の健康」「安定的経済力」「家族の信頼」「友人等のサポート」の4つは村木さんの個人的優位性であり、これは運とはいわない。「優秀な弁護団」も、村木さんの弁護を受任した弘中惇一郎弁護士の実績は公知のことで、村木さん自身が弘中弁護団を選択しているのだから、これも運ではない。 唯一、運だといえるのは、横田信之裁判長(大阪地方裁判所)という客観証拠を重視する希有な裁判官が担当となったことだ。『私は負けない』によれば、弘中弁護士は当時、「事件が起きた場所は東京で、被告人もほかの関係者も東京周辺にいる人なのだから(公判を)東京地裁に移管すべきだと主張しようと思ったが、評判のいい裁判長だったのでやめた」と語っていたそうだ。 判決文を読む限り、フロッピーディスクの改ざんや(偽の障害者団体代表が村木さんを連れて石井一国会議員を訪ね、厚労省への口利きを頼んだとする日は)石井議員がゴルフをしていて不在だったことが無罪判決の理由となっている。それでも検察官の面前で取られたいわゆる「検面調書」は豊富にあった。客観証拠を重視する横田裁判長が担当しなければ、村木さんは有罪になる可能性があった』、「村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった」ので、独自に調べたというのはさすがに凄い執念だ。
・『弘中弁護士の事務所がリーガルチェック  Q:公判廷では、公判証言よりも検面調書のほうが信憑性は高いとされるのだそうですね。 A:公判証言よりも検面調書を信じるべき状況を「特信状況」という。そして特信状況にあるかどうかを厳格に立証することは、刑事訴訟法が要求していない。「外部的な特別の事情が立証されなくても、特信状況の存在を推知せしめられれば十分である」という最高裁の判例もある。それにもかかわらず、横田裁判長は本件で「刑事訴訟法上の特信状況を客観証拠と整合する範囲に限定して認める」という画期的な判断を示した。 Q:本書は弘中弁護士の法律事務所によるリーガルチェックを受けたそうですね。 A:弘中弁護士は村木さんの事件で無罪判決を勝ち取った当人であり、私はライブドア事件の最高裁審理において会計分析をお手伝いした。それ以来のお付き合いだ。 私は司法教育を受けていない。私の司法論述が「素人の法律論」と揶揄されてはいけないと思い、弘中弁護士に査閲をお願いした。日産ゴーン事件の裁判準備で忙しいにもかかわらず、弘中事務所の査閲を受けることができたのはぜいたくであり僥倖だと思っている』、「特信状況」については、初めて知った。弘中弁護士とは付き合いがあったとはいえ、「事務所がリーガルチェック」してくれたというのは、さすがだ。
・『Q:本書のもう1つのテーマが日産ゴーン事件。人質司法への批判など物議を醸しています。 A:ゴーン元会長の容疑は有価証券報告書虚偽記載と特別背任だ。しかし、どれも犯罪事実が成立しておらず、ゴーン元会長は明らかに無実だ。元会長の役員報酬のうち支払いの蓋然性(probability)の低い報酬を有価証券報告書に記載していなかったが、それは正しい会計処理だ。 発生した費用は支払いの蓋然性が高ければ記載する。これを会計の世界では「発生主義の原則」という。会計士ならば誰でもわかっていることだ。ところがこの会計の基本原則を東京地検特捜部の検事はわかっていない』、信じられないようなお粗末極まる話だ。
・『先物の損だけ取り上げるから変な話に  Q:ゴーン元会長の特別背任容疑についてはどうですか。 A:特別背任容疑についてはサウジアラビアルートとオマーンルートの2つがある。サウジのほうは、リーマンショックの影響により通貨スワップ取引で損が発生。その損を日産に肩代わりさせようとしたというのが発端となっているが、あくまでもリスクヘッジ目的のスワップ取引だ。先物に損が発生したら直物に利益が発生している。全体としてみると損をしていない。その取引を日産に移すことは、損も利益も移すことになる。それなのに先物の損だけを取り上げるから変な話になるのである。 Q:オマーンルートは? A:損失すら発生していないので話にならない。中東日産から流れた資金は借入金として処理されているはずだ。「借金を踏み倒す」と借りた側が明言しているのでもない限り、会計上、損失を計上できない。会計取引には、金銭の貸借である資金取引と、損や利益が発生する損益取引とがある。特捜部はその区別をまったく理解せずに特別背任罪を立件している』、これもお粗末だ。優秀な特捜部であっても、ゴーン元会長をなんとしてでも有罪にしたいとの思いが先走って、肝心の会計面のチェックが抜け落ちたとしか思えない。次の記事は特捜部の内実に迫ったものである。

次に、ジャーナリストの須田 慎一郎氏の著書を6月14日付けJBPressが抜粋・再編集した「泡を食ったフランス政府、ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56661
・『東京地検特捜部は、なぜカルロス・ゴーン氏の逮捕に躍起となったのだろうか? 「時代の空気」を味方につけ、組織の復活を印象づけたいという法務・検察の思惑が見え隠れするが、本事件にはそれだけでは片づけられない複雑な背景があった。日産とルノーの背後で、ゴーン失脚のシナリオを描いた陰のプレイヤーとは? ジャーナリスト、須田慎一郎氏が、日本経済史を揺るがした大事件の裏側を明らかにする。(※)本稿は『なぜカリスマ経営者は「犯罪者」にされたのか?』(須田慎一郎著、イースト・プレス)の一部を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『ゴーン事件と東京地検特捜部  かつて1970年代から2000年代にかけて、東京地検特捜部は「日本最強の捜査機関」という称号をほしいままにしていました。また、特捜部に所属する検事たちも、そのことを強く自負していました。そして、その東京地検特捜部を抱える検察庁も、同部をみずからのアイコンとするかたちで、日本のエスタブリッシュメントのなかにおいて、まさに畏怖される存在となっていたのです。 では、東京地検特捜部の何が「日本最強」だったのでしょうか。その問いに対する答えをひとことでいってしまうなら、「巨悪」に立ち向かうという点で日本では唯一にして絶対の存在、ということになるでしょうか。  その具体例をひとつだけ挙げるとするなら、ロッキード事件捜査にからんで、かつて政治権力の頂点に君臨していた田中角栄元総理をその絶頂期に逮捕・起訴した東京地検特捜部が、その最たるケースだといえます。しかし、現在、その「日本最強の捜査機関」なる金看板は、まさに崩れ落ちそうな様相を呈しているのが実情でしょう。 だからといって、検察サイドがそれをよしとしているわけではありません。むしろ、まさにいま、現在進行形で「日本最強の捜査機関」の復活に向けて躍起になっている最中なのです。そうした一連の動きのなかに日産・ゴーン事件は位置づけられるといえるでしょう。つまり、日産・ゴーン事件は、特捜部復活をかけて挑んだ捜査なのです。したがって絶対に失敗は許されません。 カルロス・ゴーンを何がなんでも有罪に持ち込むことが、特捜部の復活にはどうしても必要不可欠だと検察サイドは考えているようです。とはいえ、ゴーンは果たして「巨悪」でしょうか。 そして仮にゴーンを有罪に持ち込んだとして、国民世論は東京地検特捜部に拍手喝采を送るでしょうか。正直いって、筆者にはどうもそうは思えないのです。いったい、「日本最強の捜査機関」は、どこに向かおうとしているのでしょうか』、手柄とされるロッキード事件捜査も、実際には「田中角栄元総理」の追い落としを図った米国側からの情報提供に支えられていたことが判明している。特捜部も威張れたものではないようだ。
・『「無罪請負人」弘中弁護士の主張  日産・ゴーン事件の本質を理解するうえできわめて重要な動きが2019年4月2日にありました。もっとも、この動きについては、ほとんどのメディアが事実上スルーしているのが実情です。それゆえに、読者のなかにもご存じない方もおられるでしょう。そうした事情を考慮に入れたうえで、ここできちんと振り返っておきます。 その日、ゴーンの弁護人で、「無罪請負人」として知られる弘中惇一郎(ひろなかじゅんいちろう)弁護士が日本外国特派員協会で記者会見を開き、ゴーンとワンセットで金融商品取引法違反の罪に問われた法人としての日産について、両者の裁判を分離するよう、東京地裁に書面で申し立てました。 併せて公判を担当する裁判官の構成も変えるよう求めたというのです。弘中によれば、この申し立ては4月2日の午前に行われたとのことでした。そもそも、この金融商品取引法違反事件に関していえば、被告は以下の三者、ゴーン、ケリー、そして法人としての日産です。 ところが、ゴーン、ケリーと日産では置かれている立場がまったく異なります。180度異なるといっていいでしょう。ゴーンとケリーはこの件に関して全面的に無罪を主張しているのに対し、日産サイドは検察とのあいだで「司法取引」に応じ、その罪を全面的に認めているからです。 弘中は前述の記者会見の席上、こう説明してみせました。 「(法人としての)日産は検察官と一体となってゴーン元会長を追及してきた。にもかかわらず、一緒の席で審理を受けるのは公正な裁判に反する」』、なるほど。
・『地検サイドの狙いは?  つまり、日産サイドは検察側のストーリーに完全に乗るかたちで捜査に協力し、調書を作成していることは間違いありません。その一方で、ゴーンとケリーはまったく逆の立場にいるわけです。利害関係が完全に対立する三者が、公判では同じ被告人席に座るのです。法廷での証言は、ゴーン、ケリーと日産では正反対のものとなるでしょう。 こうした状況を踏まえ、弘中はゴーン、ケリーと日産の刑事裁判を分離せずに併合したまま審理を進めたなら「フェアトライアル(公正な審理)」に反するとしたのです。これはきわめて重要な指摘であると同時に、検察側にとってはきわめて痛い指摘だったといっていいでしょう。 なぜなら、筆者が検察関係者から聞きおよんだところによれば、地検サイドは意識的にゴーン、ケリー、そして日産をひとつの起訴状での起訴に持ち込み、同じ裁判体(個別・具体的な訴訟事件について判断する裁判官から構成される訴訟法上の裁判所を指す)での審理となるように仕向けたからです。 そして裁判所は、そうした検察側の思惑を知ってか知らずか、分離せずに裁判を行うという判断を下したのです。さらに、そのことに関連して、5月に入ってきわめて興味深い事実が明らかになりました』、この裁判の分離については、第三の郷原氏の記事の方が詳しく、信頼性も高そうだ。
・『地検と西川社長との「司法取引」  その“事実”とは、前述の金融商品取引法違反事件に関連して、都内に住む男性が日産の西川廣人(さいかわひろと)社長を同罪で刑事告発していたことの結論が出たことを指します。 結論から先にいえば、東京地検特捜部はこれを4月26日付で不起訴にしました。そもそも事実関係をいうならば、ゴーンが起訴された報酬過少記載のうち、西川は2016年度分と2017年度分の報酬支払い文書にサインしていたのです。 だとすれば、西川もゴーンと共犯関係にあるはずだ、というのが告発者の主張です。筆者としても、そうした告発者の主張についてはもっともだと考えます。仮にこの件に関してゴーンの犯罪が問われるのであれば、少なくとも形式的には西川の共犯性は濃厚だといえるでしょう。 にもかかわらず、東京地検特捜部はそれをいっさい不問に付したのです。その一方で、西川は東京地検特捜部の捜査に全面的に協力しているのです。 このことを考えて、東京地検特捜部と西川とのあいだには事実上の「司法取引」が成立していたと見られています。果たして、こんな状況下で「フェアトライアル」が保障されているといえるでしょうか。はなはだ疑問です。いずれにしても、東京地検特捜部が法の精神を無視し、ありとあらゆる手を使ってでもゴーンを有罪にしようとしているのは明らかです』、最後の部分はその通りだろう。
・『つくられた事件、意外な登場人物  この物語の主人公は東京地検特捜部、それに対立する存在として完全無罪を主張する悪者ゴーンと、彼を守る「無罪請負人」の弘中弁護士がいます。その間に立つ日産自動車の西川社長がいて、さらにほかにも登場人物がいます。それが日本政府です。 最終的に今回の事件の背景にいたのは、経済産業省および官邸だったのではないかという観測が広がっています。 なぜ、官邸かというと、1つ目は、永田町内での次期検事総長の人事をめぐる法務・検察との対立があります。2つ目は、ルノーによる日産吸収をよしとしない経産省が弓を引かせて日産から検察にリークさせたというものです。 まず前者について考えてみましょう。検事総長はまぎれもなく法務・検察のトップで、誰がその座につくかで検察のあり方が決まります。9割方は東京高検検事長になった人物がそのまま検事総長につくという不文律があります。 いまの東京高検検事長は官邸ベッタリといわれている黒川弘務(くろかわひろむ)です。そんな黒川を次の検事総長に据えるべきではないとする動きが法務・検察のなかにはありました。みんな公平な立場で検事総長の座を待っているわけではなく、そこにたどり着くまでのルートがあり、その前の段階から出世をめぐる暗闘があるのです。 2019年1月8日付で法務・検察の一連の人事が発表されました。このとき、東京高検検事長には黒川弘務がつきました。東京高検検事長は法務・検察のトップである検事総長の一歩手前の役職です。東京高検検事長の経験者の8人中7人が検事総長になっています。法務・検察でナンバーツーの存在です。 そんな黒川検事長が次の検事総長の最右翼と見られていますが、そうはすんなりいきそうにない状況もあります。さかのぼって2018年1月9日付で名古屋高検検事長に就任していた林真琴(はやしまこと)という人物の存在があるからです。』、法務・検察内での権力争いとは、ありそうな話だ。
・『次期検事総長は、黒川か?林か?  じつは林と黒川は因縁のライバル関係にあり、おそらく次の検事総長ポストを争うでしょう。黒川は政権与党に近いと見られている人物である一方で、林は法務・検察のエースといわれています。 各省庁において課長、部長、局長を経て次のトップポストである事務次官になるべき人間だと期待がかけられ、同期トップとして出世していく。これが官僚の世界では一般的です。それにあたるのが林でしたが、なぜ、東京高検検事長に任命されなかったのでしょう じつは、黒川のほうは「郵便不正事件」の証拠であるフロッピーディスクの内容を改竄した事件、「大阪地検特捜部主任検事証拠改竄事件」の不祥事が起こった直後、2011年から法務省官房長を5年も務めています。法務省官房長は国会対応のトップという立場です。このあいだ、法務・検察が厳しい状況に置かれたときに政権与党とのパイプ役としてロビイング活動をしてきました。 そのため、政権与党との関係が非常に深いといわれているのです。黒川は共謀罪や入国管理法改正など野党の根強い反対がある一方で、法務・検察サイドからすれば使い勝手がよく強力な武器になるような法案の整備に向けて尽力しました。 一方、ライバルの林は将来の検事総長のエリートコースを歩んできました。役所のなかの期待の星であり、ある種、予定調和的に「林が将来の法務・検察を引っ張っていく」という役人らの価値観のなかから生まれてきた人間でもあります』、官邸の力がこれまで以上に強くなっていることからすれば、黒川氏の方が優位な気がする。
・『官邸と法務・検察、それぞれの思惑  役所側からすると林は将来の検事総長ですから、そのステップをきちんと踏ませたいため、林の事務次官就任を希望していました。しかし、黒川が政権与党の覚えがめでたくなり、「こういう人間が法務・検察の中枢にいれば、われわれも何かとやりやすい」という官邸サイドの強い押しもあって、事務次官というポストにつきました。 事務次官の次が東京高検検事長、そして検事総長と続くため、事務次官に黒川がつくと出世すごろくの流れが狂ってしまいます。ここにひとつ、検察と官邸との軋轢(あつれき)が生まれました。 法務・検察の主流派としては、林真琴が検事総長になるべきだという主張が根強いです。なぜなら一定の独立性を維持するためです。加えて法務・検察の人事という聖域に、政治が内閣人事局を通じて手を突っ込むのはけしからんという役人特有の考えもあります。 その点でいうと、なぜ、わざわざ政権与党を利するような日産・ゴーン事件に着手したのかが疑問です。たとえば検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方もあるでしょう。それくらい法務・検察は検事総長人事をめぐって官邸とすごい緊張関係にあるのです』、「検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方」、には驚かされた。
・『ゴーン事件の裏にちらつく経産省の影  次に経産省が弓を引かせて日産が検察にリークしたという2つ目の根拠についても考えてみましょう。 特捜部があえて日産自動車の下請になった理由について考えると、内閣総理大臣秘書官で経産省出身の今井尚哉(いまいたかや)の存在が思い浮かびます。今井は安倍総理の遠い親戚です。官邸秘書官は財務省、外務省、経産省、警察庁から来るのが不文律となっていますが、そのなかでも内閣総理大臣秘書官はまた別格とされています。 経産省は、日産自動車が完全にフランスの会社となってしまうのは、よしとしません。そこで経営統合をひっくり返すために事件をしかけた。本来ならゴーンの報酬の件で了承し、サインまでしていた西川社長も同罪に問われるはずなのですが、司法取引の対象となって、いまのところなんら罪に問われていません。 日本の大手企業は人事報酬委員会という制度があり、3割から4割が導入しているとされています。人事報酬委員会とは、経営トップが報酬や人事などについて自分で自分のことを決めるのは透明性が低いため、委員会の委員に決めてもらおうというものです。 また、監査委員会設置会社というものもあります。これは監査役が報酬や人事を検査するというものです。これらは会社のガバナンスがきちんと機能しているかどうかの評価基準にもなります。 日産自動車には人事報酬委員会がなく、監査委員会である程度チェックしたうえで最終的に代表権がついている人が決裁するかたちになっています。日産自動車においてはそれがゴーンとケリーと西川の3名になるのです。 ゴーンは自分のことを自分で決め、それを了承したことでケリーも逮捕された。しかし、西川は逮捕されなかった。なぜなら、司法取引があったから、というのがエクスキューズになっています。 今回の事件の端緒はなんだったのか。日産内のクーデター。もちろんそういう側面もあるでしょう。ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す。これなら比較的ありがちでシンプルなストーリーです。 「西川はゴーンの茶坊主で何も決められない」なんてことを話すジャーナリストもいますが、本当にそうだとしたら、そんな人物が事件の先頭に立てるのでしょうか。または日産の独立派の役員につめ寄られて反ゴーンになびいたとも考えられなくもないですが、そんなに小さな話なのでしょうか』、「ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す」、というのは確かにありそうな話だ。
・『慌てるフランス政府、冷静な日本政府  この事件の大きな背景には世界的な自動車業界の再編がありました。自動運転つき自動車や電気自動車の開発が進んでいますが、これには莫大な投資が必要になります。ものすごく技術開発費が必要ですから、ルノーも日産自動車も自社開発だけでは厳しい。 しかもフランスでは2040年にはハイブリッドを含むガソリン車を販売してはいけないという法律が成立しています。つまり、100パーセント電気自動車でなければならないのです。パーキングメーターのようなかたちをした路上のプラグイン充電器などといったインフラも整備されてきましたが、まだ一気に電気自動車化されるわけではありません。 また、規模の利益という面からいっても協力は不可欠です。「ルノー・日産・三菱アライアンス」は車の販売台数では世界第2位ですが、経営がバラバラになれば3位以下に転落してしまいます。そうなると電気自動車を、ルノー・日産・三菱アライアンス基準で統一できなくなるでしょう。 世界で戦うにはある程度のマーケットシェアが必要なため、アライアンスをつなぎ止めておかなければ将来を展望できません。ルノーは43パーセントの日産自動車の株を持っていますから、資本関係上は日産自動がルノーの連結子会社となっています。ただ、3社のアライアンスというかたちで「ルノー日産BV」という統括会社の本社をオランダに置き、その会長をゴーンが務めていました。 ここは日産自動車とルノーが折半出資しています。本来ならそうではなく、そこを持ち株会社にして、その傘下にルノーも日産自動車も入るべきでした。「ゴーンの個人的な影響力によって統括会社を持ち株会社のようにしてアライアンスを保っていましたが、ゴーンがいなくなれば果たしてどうなるでしょうか』、その後、ルノーとの関連では新な動きもあるので、ここでは触れない。
・『日本政府の不気味な冷静さ  いずれにせよ、自動車は日本経済を支える重要な産業です。そのため、アライアンスというかたちでの戦略的提携ならまだしも、ルノーにすべて吸収されるとなると話が変わってきます。日本を代表する大手企業をみすみす手放してしまえば経産省にとって大きな痛手になるでしょうし、アベノミクスを標榜する安倍政権にとっても悪影響をおよぼします。 そこで今井秘書官を中心に官邸、経産省が裏で西川を動かしたのではないかという観測が出てきたというわけです。 その証拠に、事件化したときに少なくとも日本政府はあたふたしませんでした。巨大企業に東京地検特捜部の手が入ったにもかかわらず、ある意味で冷静な対応をしていたのが不思議です。まるで事前にスケジュールがわかっていたかのようでした。 一方のフランス政府はかなりあたふたしており、まさに寝耳に水の状態でした。この差はいったいなんなのでしょうか。少なくとも捜査当局の動きは官邸や経産省サイドの耳にはある程度入っていたのではないか。逆にフランスサイドには何も入っていなかった。情報の偏差があったのでしょう。 自動車産業をめぐる日仏の綱引き。そこに官邸や経産省が介入していく余地があった。 こう考えるほうがスムーズなのです。結果として特捜部の日産・ゴーン事件の捜査は官邸の意向に沿うかたちで行われていますが、筆者は「たまたま両者の利害が一致しただけ」だと見ています。 日産自動車を国益の観点から守りたいという官邸側の思惑、そして平成最後に完全復活の道筋をつけたいという検察側の思惑が、たまたまいいタイミングで交錯したのでしょう。そんななか、この事件を通じていったい誰がいちばん得をするのか。それは結果が出てみないとわかりません』、検察側が敗訴するようなことになれば、検察側のダメージは途方もなく深刻なものになるだろうが、ルノーとの関係は既に決着済になっている可能性もあるだろう。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が5月9日付け同氏のブログに掲載した「「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく、司法取引の問題」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/05/09/%E3%80%8C%E6%97%A5%E7%94%A3%E5%85%AC%E5%88%A4%E5%88%86%E9%9B%A2%E3%81%9B%E3%81%9A%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%81%E6%B3%95%E4%BA%BA%E5%87%A6%E7%BD%B0%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA/
・『カルロス・ゴーン氏、グレッグ・ケリー氏と、法人としての日産自動車が併合起訴された金融商品取引法違反の事件について、平成最後の平日の4月26日夕刻から東京地裁で行われた裁判官・検察官・弁護人の「三者打合せ」の場で、裁判所は、公訴事実を全面的に認める日産の公判と全面否認するゴーン氏らの公判と分離せず、日産についてもゴーン氏らと共通の証拠で事実認定する方針を示した。このことによって、検察は「ゴーン氏無罪判決阻止の最後の拠り所」だった「日産の法人事件の早期有罪決着」という「策略」が打ち砕かれることになり、日産も、公訴事実を全面的に認めているのに、ゴーン氏・ケリー氏と検察との全面対立が繰り広げられる公判に巻き込まれることになった。それが、検察にとっても日産にとっても「衝撃」であること、そして、日本の刑事司法の“激変”をも予感させる出来事であることを、平成の最後の日の記事【「日産公判分離せず」が検察と日産に与えた“衝撃”~令和の時代に向けて日本の刑事司法“激変”の予兆】で述べた』、公判分離は弁護側が求めていたもので、裁判所がそれを認めなかったということは、検察に有利と思っていたが、郷原氏の見方は真逆のようだ。
・『10連休も終わり、令和時代の日本が本格的に動き出したが、今のところ、日産・ゴーン氏事件が話題に上ることはほとんどなく、改元とともに、平成最後の重大問題だったはずのこの事件が世の中の関心から遠ざかっているように思える。 しかし、ゴーン氏逮捕の背景に、日産とルノーの経営統合の問題があり、そこに経産省など日本政府も関わっていたこと、日本を代表する自動車会社の一つである日産が社会的にも極めて重要であるからこそ、今回のゴーン氏の事件が発生したことは、もはや否定し難い事実となっている。その日産が、今回の裁判所の方針決定により、ゴーン氏らとともに、法人として刑事裁判の被告席に立たされ続けることが、同社の経営や経営体制に重大な影響を生じることは避けられない。6月末に開かれる日産の定時株主総会に向けて、ルノーなどの動きにもつながる可能性もある。 それに加え、この事件の今後の展開によって、今回の事件での検察の動きの原動力ともなった「日本版司法取引」の今後に、そして、日本における法人処罰の運用にも大きな影響を与えかねない。今回の裁判所の方針決定が、どのような趣旨で、どのような理由によって行われたのか、「司法取引」と「法人処罰」の関係から解説することとしたい』、興味深そうだ。
・『裁判所の方針決定は「法人処罰」特有のものなのか  「日産公判分離せず」の方針が決まったことを伝える記事のうち、産経は 関係者によると、裁判官は「日産の法的責任は代表取締役だったゴーン、ケリー両被告の行動によるので、別々に判断するのは適切ではない。」として分離しないと決めた。 と報じ(【ゴーン被告公判、分離せず 9月撤回、年明けも】)、朝日は、下津裁判長は、「司法取引が本格的に争点になる、初めての事件。証人の証言の信用性は慎重に判断したい」と発言。「日産の法的責任は2人の被告について判断しないうちは決められない。」と述べた と報じている(【ゴーン前会長の公判、日産と分離せず審理へ 時期は未定】)。 これらの記事によると、裁判所の方針決定の理由は、(1)法人としての日産の刑事責任は、ゴーン氏ら行為者についての事実認定と切り離して判断できない (2)司法取引に関する問題が裁判の争点になるので、証人の証言の信用性について慎重な判断が必要 ということになる』、なるほど。
・『「日産公判分離せず」の判断は「法人処罰の問題」によるものではない  仮に、日産の公判が分離されなかった主たる理由が(1)で、それが「法人処罰は行為者個人の処罰に従属するもので、行為者と切り離して独立して処罰の判断をすべきではない」という趣旨だとすれば、今回の方針決定は、「法人処罰特有の問題」と見ることができるということになる。その場合は、影響は法人処罰の事例だけに限られるし、弁護側が指摘した「フェアトライアルの問題」との関係もあまり大きくないということになる。検察としては、今回の裁判所の方針決定に関して、このような理由を強調したいところであろう。 しかし、それは、確立された判例に基づく法人処罰の「理論」に反する。しかも、最近の実務の傾向は、法人を独立して処罰の対象とする傾向を強めており、それを主導してきたのは法務・検察である。「法人処罰は行為者個人の処罰に付随するので独立して処罰の対象とはならない」などと今更言えるわけがない。 日本の法人処罰は、特別法の罰則の中に設けられている「両罰規定」の、「行為者を罰するほか、法人に対しても本条の罰金刑を科する」という規定に基づいて行われる。「行為者について犯罪が成立し、その犯罪について、法人側に選任監督上の過失がある場合に法人が処罰される」というのが確立された判例であり、訴訟手続上も、「被告会社」として、公判に出廷する義務があり(通常は法人の代表者が公判に出廷する)、被告人である行為者とは独立した立場で訴訟活動を行う。被告法人の公訴事実の認否は、行為者たる被告人の認否とは別に行われ、行為者の「犯罪の成否」についても、「選任監督上の過失の存否」についても、争うことができる。 したがって、行為者たる被告人が公訴事実を全面的に否認し、被告会社の方は全面的に公訴事実を認めている場合に、被告会社の公判を行為者の公判とは切り離して、被告会社に有罪判決を出すことは十分に可能なのだ』、さすが説得力溢れる分析だ。
・『「法人処罰」に関する最近の状況変化  もっとも、法人処罰が行為者処罰とは独立したものであるという考え方は、あくまで、「法人処罰に関する刑法上の理論」であり、古くから日本で行われてきた法人処罰の実際の運用は、必ずしもそうではなかった。日本での法人処罰は、法人の役職員個人が行為者として処罰される場合に「付随的」に行われるものに過ぎず、法人に対する罰金の上限も、昔は個人の上限と同じ500万円程度だった。90年代から、独禁法等でようやく「行為者個人と法人との罰金額の上限の切り離し」が行われ、数億円への引き上げが進められていったが、それでも、外為法の10億円が最高であり、法人に対して数百億円、時には数千億円もの罰金が科されることもある米国などとは大きく異なる。しかし、そのような日本における法人処罰の実務は、最近になって大きく変わりつつある。 2015年3月に発覚した「東洋ゴムの免震装置データ改竄事件」では、同年7月、東洋ゴム子会社の法人のみを起訴し、役員ら10人は起訴猶予となり、法人に対しては、罰金1000万円の有罪判決が言い渡されて確定した。 2017年の電通違法残業事件で、東京地検は、過労自殺した新入社員の当時の上司ら3人の労働基準法違反を認定したうえで、不起訴処分(起訴猶予)とし、法人としての電通を同法違反罪で略式起訴した。電通については、代表取締役社長が被告会社代表者として出廷して裁判が開かれ、罰金刑が言い渡されて確定した。 これらの事案は、いずれも、行為者が処罰されず、法人だけが処罰された例である。 そして、2016年5月に成立した刑訴法改正で日本版司法取引が導入されたことによって、法務・検察が、法人処罰を独立のものとして取り扱う傾向を強めてきた。法務省側は、法案審議の過程で、「法人」にとって、その「役職員」の刑事事件は「他人の刑事事件」であり、法人自体も司法取引の対象となることを明確に説明してきた。 そして、2018年に改正法が施行され、日本版司法取引の初適用事案となった「三菱日立パワーシステムズ」の外国公務員贈賄事件では、同社と東京地検特捜部との間で、法人の刑事責任を免れる見返りに、不正に関与した社員への捜査に協力する司法取引(協議・合意)が成立し、社内調査によって捜査に協力した法人は処罰を免れ、役職員のみが起訴され、有罪となった。この事例では、法人が自社の事業に関して発生した犯罪について積極的に内部調査を行って事実を明らかにし、その結果に基づいて捜査当局に協力することが法人の責任を軽減するものと評価されたのであり、まさに法人の行為を独立して評価する方向の運用の典型と言える(【「日本版司法取引初適用事例」への“2つの違和感” ~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性】)。 このように、法務・検察主導で、法人処罰を行為者処罰から独立したものとして取り扱おうとする傾向は、司法取引の導入もあって、もはや不可逆的なものとなっており、徐々にではあるが日本の社会にも浸透しつつある。 そのような法人処罰の運用を前提にすれば、ゴーン氏・ケリー氏を行為者として、日産自動車が法人起訴されている今回の事件では、法人としての日産は、ゴーン氏らとは独立した立場の「被告会社」であり、被告人と同様の権利が与えられ、訴訟活動を行うことができることは明らかだ。日産が第1回公判で公訴事実を全面的に認め、ゴーン氏・ケリー氏が否認した場合には、公判を分離し、日産の公判では検察官請求証拠が「同意書証」として採用されて、早期に有罪判決が言い渡されるというのが、従来の刑事裁判実務から想定される「当然の対応」であった。ところが、裁判所は、その「当然の対応」を行わないことにした。それは、「法人処罰と行為者処罰の関係」で説明することはできないのであり、やはり、上記(2)の「司法取引」をめぐる問題が主たる理由であることは明らかだ』、豊富な判例を参照しながらの説明はさすがだ。
・『「日産公判分離せず」の方針と司法取引をめぐる問題  本件は、初適用となった上記の三菱日立パワーシステムズの事件に続いて2例目の日本版司法取引の適用事件である。日本版司法取引の導入に関する刑訴法改正案の国会審議の過程で、司法取引による供述には、自己の処罰が軽減されることを目的として、他人を引き込むための虚偽供述が行われる危険性があることが問題にされ、様々な議論が行われた。私も、国会審議の過程で、参考人意見陳述において、この問題を指摘した(平成27年7月1日衆議院法務委員会)。 本件の金商法違反の件で検察と司法取引を行ったとされているのは、ゴーン氏の秘書室長を務めていた人物であり、この秘書室長の供述について、一般的な意味の虚偽供述のおそれが問題になるのは当然だが、本件をめぐる司法取引の問題は、その秘書室長の供述だけの単純な問題ではない。 そもそも、事件の発端は、日産が社内調査の結果を検察に提供したことにあり、その後、日産は、検察と「二人三脚」のような関係で全面的に協力し、検察官立証のための証拠を共同して作り上げてきた。前記の三菱日立パワーシステムズの前例からすれば、その法人としての日産も、検察との司法取引により法人起訴を免れていてもおかしくないが、なぜか法人起訴されている(それが、日産についての有罪判決確定で、ゴーン氏らの無罪判決を阻止しようとする検察の策略である可能性については【検察の「日産併合起訴」は、ゴーン氏無罪判決阻止の“策略”か】)。 また、日産の西川社長は、「ゴーン氏の退任後の役員報酬の支払の合意」についての文書に署名しているとされている上、直近2年分については、CEO社長として有価証券報告書を作成提出したものであり、本来虚偽記載の第一的責任を負う立場にあるにもかかわらず、刑事立件すらされていない。そこには、西川氏と検察との「ヤミ司法取引」の疑いがある(【ゴーン氏「直近3年分再逮捕」なら“西川社長逮捕”は避けられない ~検察捜査「崩壊」の可能性も】)。 下津裁判長が「司法取引が本格的に争点になる」と言っているのは、上記のような、本件における日産と検察との関係全体が「司法取引」的であることを意味しているものと考えられる。日産と検察の「合作」のような形で作られた証拠によって、法人としての日産の犯罪を立証すること自体に問題がある。また、西川氏が起訴されないまま、ゴーン氏らだけが起訴されていることも重大な問題とならざるを得ない。このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう。まさに、弘中弁護士が、4月2日の記者会見で指摘した「フェアトライアルの観点」からの判断だと言える』、「このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう」、との裁判所判断の推測は誠に見事だ。
・『「最大の武器」を失った特捜検察  従来の刑事裁判では、被告人が公判で公訴事実を認めると、検察官請求の書証がすべて採用されて裁判がすぐに終わり、判決が出るというのが原則だった。最近では、裁判員裁判では、書証によらず証人尋問で事実認定が行われることが多くなり、裁判員裁判ではない事件でもそのような傾向が徐々に広がりつつあるようだ。 しかし、特捜事件では、「人質司法」に加えて、以下のような構図があったために、被告人がいくら争っても有罪判決を免れられなかった。 自白しない限り身柄拘束が続くという「人質司法」のプレッシャーによって、共犯とされた者のうち少なくとも一人が自白し、公判で公訴事実を認めれば、検察官調書どおりの事実認定で有罪判決が出される。その判決を出したのと同じ裁判官が、同じ事件について他の被告人に無罪判決を出すことは、まずない。別の裁判官であれば、無罪判決が出ることもあり得るが、その場合は、検察官が必ず控訴するし、殆どの場合、控訴審で逆転有罪判決が出され、司法判断の統一性が図られる。その結果、特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった。 今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる。 こうして、「検察の正義」の象徴であった特捜部の事件における「検察中心の刑事司法」の構造は、音を立てて崩れようとしている。それは、無理筋の事件で強引にゴーン氏・ケリー氏を逮捕したことの結果であり、この事件での勾留延長請求却下、早期保釈決定、そして、今回の「日産公判分離せず」という裁判所の判断は、本来、あるべき裁判所の姿勢が示されたに過ぎない。しかし、「検察幹部」は、未だに、今回の事件が海外から注目を集めたことで、裁判所が「外圧」に屈したという、身勝手な反発をしていると報じられている。検察幹部にとっては、今回の事態を客観的に受け止めることができないようだ。 このような「検察幹部」が、今回の「日産公判分離せず」の裁判所の方針決定を、「フェアトライアルの観点」と切り離すために、無理やり「法人処罰」の問題に関連付けようとすることも考えられなくはない。しかし、そのような受け止め方は、せっかく、司法取引導入とともに進展しつつあった日本の法人処罰の活性化の流れに水を差すことになりかねない。それによって、法務・検察が、組織を挙げて実現させた「日本版司法取引」の企業社会への浸透も阻害することになりかねない。 日産・ゴーン氏事件の今後の展開が、日本の刑事司法の在り方そのものに重大な影響を生じることは避け難い。法務・検察当局は、その事態を正面から受け止めるべきだ。「司法取引」と「法人処罰」の複雑な関係を念頭に置きつつ、今後の公判に向けての動きを注視していく必要がある』、「特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった」、「今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる」、繰り返しになるが、説得力に溢れた分析という他ない。今後の展開がますます楽しみになってきた。
タグ:東洋経済オンライン 細野祐二 郷原信郎 JBPRESS 同氏のブログ 日産ゴーン不正問題 須田 慎一郎 (その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題) 「ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く」 「犯罪会計学」の研究家 『会計と犯罪』 キャッツ事件で有罪に 村木さんが無罪判決を得て、冤罪だったことが判明すると、特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった 村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった 村木さんが挙げた6つの運のうち「心身の健康」「安定的経済力」「家族の信頼」「友人等のサポート」の4つは村木さんの個人的優位性であり、これは運とはいわない 「優秀な弁護団」も 運ではない 唯一、運だといえるのは、横田信之裁判長(大阪地方裁判所)という客観証拠を重視する希有な裁判官が担当となったこと 弘中弁護士の事務所がリーガルチェック ゴーン元会長の容疑は有価証券報告書虚偽記載と特別背任だ。しかし、どれも犯罪事実が成立しておらず、ゴーン元会長は明らかに無実だ 元会長の役員報酬のうち支払いの蓋然性(probability)の低い報酬を有価証券報告書に記載していなかったが、それは正しい会計処理だ 「発生主義の原則」 この会計の基本原則を東京地検特捜部の検事はわかっていない 先物の損だけ取り上げるから変な話に 「泡を食ったフランス政府、ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった」 『なぜカリスマ経営者は「犯罪者」にされたのか?』(須田慎一郎著、イースト・プレス) ゴーン事件と東京地検特捜部 「巨悪」に立ち向かうという点で日本では唯一にして絶対の存在、ということになる ロッキード事件捜査 「無罪請負人」弘中弁護士の主張 地検サイドの狙いは? 地検と西川社長との「司法取引」 つくられた事件、意外な登場人物 事件の背景にいたのは、経済産業省および官邸 次期検事総長は、黒川か?林か? 官邸と法務・検察、それぞれの思惑 検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方もある ゴーン事件の裏にちらつく経産省の影 ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す 慌てるフランス政府、冷静な日本政府 日本政府の不気味な冷静さ 「「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく、司法取引の問題」 裁判所の方針決定は「法人処罰」特有のものなのか 「日産公判分離せず」の判断は「法人処罰の問題」によるものではない 「法人処罰」に関する最近の状況変化 「日産公判分離せず」の方針と司法取引をめぐる問題 本件における日産と検察との関係全体が「司法取引」的であることを意味しているものと考えられる。日産と検察の「合作」のような形で作られた証拠によって、法人としての日産の犯罪を立証すること自体に問題がある。また、西川氏が起訴されないまま、ゴーン氏らだけが起訴されていることも重大な問題とならざるを得ない このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう 「最大の武器」を失った特捜検察 特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった 今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる
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日産ゴーン不正問題(その8)(ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”、ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道、ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?) [司法]

日産ゴーン不正問題については、3月16日に取上げた。異例の4回目の逮捕を踏まえた今日は、(その8)(ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”、ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道、ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?)である。

先ずは、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が4月3日付け同氏のブログに掲載した「ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/04/05/%E3%80%8C%E3%82%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%80%8D%E7%89%B9%E5%88%A5%E8%83%8C%E4%BB%BB%E3%81%AB%E7%AB%8B%E3%81%A1%E3%81%AF%E3%81%A0%E3%81%8B%E3%82%8B/
・『一昨日(4月3日)午後、産経新聞が、ネットニュースで「カルロス・ゴーン被告を4回目逮捕へ オマーン資金流用の疑い」と報じ、翌日の4日早朝、東京地検特捜部は、ゴーン氏を、保釈の制限住居とされていた自宅で逮捕し、同住居内の捜索で、キャロル夫人の携帯電話、パスポートまで押収した。 これまでも、特捜検察による「暴走捜査」「暴挙」は数限りなく繰り返されてきたが、特に、森本宏特捜部長になってからは、昨年のリニア談合事件で「徹底抗戦」の2社のみを対象に行った捜索の際、法務部に対する捜索で、弁護士が捜査への対応・防禦のために作成していた書類やパソコンまで押収し、さらに検事が社長室に押しかけ「社長の前で嘘をつくのか」「ふざけるな」などと恫喝するなど「権力ヤクザ」の所業に近い数々の「無法捜査」が行われてきた。 今回のゴーン氏の「4回目の逮捕」と捜索押収も、常軌を逸した「無法捜査」であり、ゴーン氏弁護人の弘中惇一郎弁護士が「文明国においてはあってはならない暴挙」と批判するのも当然だ。その手続上の問題は、今後、重大な人権問題として取り上げられることになるだろう』、「リニア談合事件で」、「「権力ヤクザ」の所業に近い数々の「無法捜査」が行われてきた」とは、特捜検察の酷さを改めて知らされた。
・『それとは別の問題として、そもそも、このオマーン・ルートと言われる特別背任の事件が、刑事事件として立証可能なのだろうか、という点は、あまり注目されていない。ゴーン氏逮捕を報じるメディアの多くは、「ゴーン元会長による会社私物化が明らかになった」「口座の資金の流れが解明されたことで確実な立証が可能になった」などと検察リークによると思われる情報を垂れ流している。しかし、これまでの捜査の経緯と、経営者の特別背任罪の立証のハードルの高さから考えると、有罪判決の見込みには重大な疑問がある。 今回の検察のゴーン氏逮捕も、追い込まれた末の「暴発」である可能性が強い』、最近の新聞報道はゴーン元会長を悪者に仕立て上げる検察リーク記事で溢れているが、これを正す郷原氏の見解は貴重だ。
・『オマーン・ルートの特別背任での逮捕に至る経緯  報道によると、このオマーン・ルートの特別背任というのは、 ゴーン前会長は2015年12月から18年7月までの間、日産子会社の「中東日産」(アラブ首長国連邦)からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)に計1500万ドル(当時のレートで約16億9800万円)を送金させ、うち計500万ドル(同約5億6300万円)を自らが実質的に保有するペーパーカンパニーに還流させた疑いがある。SBAに送金した資金の原資はCEO(最高経営責任者)直轄の「CEOリザーブ(予備費)」で、「販売促進費」名目で支出された。とのことだ。 「4回目の逮捕」をいち早く報じて捜査報道をリードした産経新聞が、昨日の逮捕後、ネット記事で、ゴーン氏逮捕に至る経緯について【中東「資金工作」解明へ検察慎重派説得 カルロス・ゴーン容疑者再逮捕】と題して詳しく報じている。その中に、検察内部において逮捕が決定された経過について、以下のような内容が含まれている。 (1)検察上層部は、裁判所が特捜部の捜査に厳しい態度をとっていることから、「無理して一部でも無罪が出たら組織が持たない」という理由から、「これ以上の立件は不要」と、オマーン・ルートの立件に「慎重姿勢」だった。 (2)オマーンやレバノンなどに求めた捜査共助では、期待した回答は得られなかった。 (3)特捜部は、中東関係者から事情聴取を重ね、資金支出の決裁文書や資金の送金記録などの関係証拠を積み上げた。 (4)特捜部は、「中東での資金工作の全体像を解明しなければ、サウジアラビア・ルートで無罪が出かねない」と言って検察上層部を説得し、逮捕にこぎつけた。 他社に先駆けて、「逮捕」を報じた産経が、逮捕後いち早く報じたのであるから、検察の現場と上層部との間の動きについて、十分な取材に基づいて書いていると考えてよいであろう』、検察上層部は「オマーン・ルートの立件に「慎重姿勢」だった」が、特捜部が粘ったとはありそうな話だ。
・『検察上層部の「慎重姿勢」と特別背任の「経営判断原則」  この中で、まず重要なのは、検察上層部が、「無理して一部でも無罪が出たら組織が持たない」という理由でオマーン・ルートの立件に「慎重姿勢」だったことである。金商法違反事件、特別背任事件のいずれにも重大な問題があり、無罪判決の可能性が十分にあることは、私が、これまで再三指摘してきたところであり、検察上層部の懸念は正しい。そして、検察上層部が、オマーン・ルートの立件に慎重だったのは、特別背任という犯罪の立証のハードルの高さを認識しているからだと思われる。 会社の経営者は、経営上の意思決定をするうえで、資金の支出について広範な裁量権を持っている。その権限は、取締役会の承認等の手続的な制約があり、その手続に違背すると会社法上の責任の問題が生じる。しかし、経営者の決定による支出が「特別背任罪」に該当するかどうかについては、「経営判断原則」が適用され、その支出が会社にとって「有用性」があるか否か、対価が「相当」かどうかという点から、「任務違背」に当たるかどうかが判断される。 三越の元会長とその愛人が会社を食い物にしたとされて特別背任で起訴された三越事件の東京高裁判決(平成5年11月29日)では、「経営判断原則」に基づいて社長の愛人が経営する会社への支出が「任務違背」に当たるかどうかが判断され、一部無罪とされた。この事件での「経営判断原則」の判断枠組みについては、山口利昭弁護士が、ブログでわかりやすく解説している(【日産前会長特別背任事件-焦点となる三越事件高裁判決の判断基準】)』、特別背任の「経営判断原則」は確かに相当高い壁だろう。
・『ゴーン氏逮捕後の報道は、ほとんどが「SBAに支払われた資金がゴーン氏側に還流した」ことをもって「会社資金の流用」としているが、特別背任罪に問われているのはあくまで「日産からSBAへの支払い」であり、それが「任務違背」に当たらない限り、結果的にその支払がゴーン氏の個人的利益につながったとしても(「利益相反」など経営者の倫理上の問題は別として)、特別背任罪は成立しない。 上記の産経記事で書かれている「検察上層部の慎重姿勢」というのは、まさに、経営判断原則に基づくと、SBAの支払が「任務違背」に当たると言える十分な証拠がないという理由によるものだと考えられる』、「結果的にその支払がゴーン氏の個人的利益につながった」か否かは、特別背任罪とは無関係というのは初めて知った。これでは、壁は本当に高いようだ。
・『オマーン・ルートの特別背任罪の成否  そこで、日産からオマーンの販売代理店SBAへの支払に「任務違背」性が認められるか否かであるが、これについて、ゴーン氏側は、「SBAへの支払は、毎年、販売奨励金として行っているもので、問題ない」と主張しているとのことだ。 上記の通り、任務違背かどうかは、「経営判断原則」に基づき、「有用性」と「対価の相当性」が判断されることになるが、まず、オマーンでの日産の自動車の販売の一般的状況について、「自動車ジャーナリスト」の井上久男氏が、ヤフーニュースの記事【日産とオマーンの怪しい関係 役員に高級時計をプレゼントも】で以下のように述べている。 調査会社によると、オマーンの自動車販売は市場全体で2017年が約14万6000台、18年が約12万4000台とそれほど大きくない。市場規模は日本の40分の1程度だ。その中で日産は17年に2万8000台、18年に2万7000台を売り、シェアは19.2%、21.4%。オマーンではシェア1位がトヨタで、2位が日産、3位が韓国の現代自動車だ。 単純計算して車の卸価格を200万円として、日産のオマーン向け出荷売上高は540億円程度、粗利益は27億円程度ではないか。オマーン市場は将来伸びる可能性があるとはいえ、こんな小さな市場の販売代理店に、日本円で39億円もの大金が流れるのか不思議でならない。 井上氏は、「粗利益27億円」と「39億円」とを比較しているが、年間の「粗利益27億円」と、8年間で39億円の支払いを比較するのはおかしい。1年なら5億になる。通常、販売奨励金は、売上高に応じて算定するはずであり、年間売上高540億円の1%弱という5億円の販売奨励金が特別に高額とは言えないだろう』、井上久男氏の指摘は確かに「お粗末」だが、この点については特捜部はちゃんと分かっているのだろう。
・『上記産経記事では、「資金支出の決裁文書や資金の送金記録などの関係証拠を積み上げた」としているが、オマーンでの日産車の販売に関して一定の実績が上がっていれば、販売奨励金の支払いが、日産にとって有用性がないとは言えないし、対価が不当であったともいえない以上、資金の流れや手続に関する証拠だけでは、「有用性」「対価の相当性」を十分に否定することはできない。 検察は、ゴーン氏が、SBAへの支払のうち500万ドル(同約5億6300万円)を自らに還流させたと主張しているようだ。確かに、正規に支払が予定されていた販売奨励金の金額に、ゴーン氏側への還流分を上乗せして支払ったということであれば、その分は、「経営判断原則」の範囲外の個人的流用となる余地もある。しかし、その点の立証のためには、SBA側から、「当初から、日産が支払うべき販売奨励金に上乗せした支払を受け、それをゴーン氏側に還流させた」との供述が得られることが必要だ。SBA側からそのような供述が得られていないことは間違いなさそうだ(4月5日朝日新聞「時時刻刻」)』、ゴーン氏の強い中東人脈からすれば、SBA側がゴーン氏不利となる供述をする可能性は極めて低いだろう。
・『「15億円クルーザー」は本当か  SBAに渡った約35億円のうち、約15億円がゴーン氏のキャロル夫人の会社に還流し、“社長号”なる愛称がつけられたクルーザーの購入代金に充てられているとしきりに報じられているが、この点に関しても、今年2月の時点で、週刊新潮が以下のようにルノー関係者の説明を報じている(【逆襲の「ゴーン」! 中東の販売代理店が日産を訴える理由】)。 クルーザーは、昨年亡くなったレバノンの弁護士から購入しました。ゴーンは以前からその弁護士と親しかったため、“体調が悪く、もう海に出ることもないから、私の船を買わないか?”と持ちかけられていた。でも、あくまでもポケットマネーで、マリーナなどの契約も引き継ぐためにクルーザーの所有会社ごと買い取って、キャロル夫人の名義にしたとのことでした この説明のとおりだとすると、「15億円のクルーザー」に関する報道も怪しくなる。それは、あくまで新艇の価格であり、上記のような経緯で、マリーナなどの契約も引き継いだ譲受の実際の価格は、大幅に下回っていた可能性がある。 もちろん、事実関係、証拠関係の詳細は不明だ。しかし、産経新聞が報じているように検察上層部が「慎重姿勢」であった理由を考えてみると、現時点においてもオマーン・ルートの特別背任について有罪立証の見通しが立っているようには思えない』、「15億円のクルーザー」は新品ではなく、「亡くなったレバノンの弁護士から購入」したのであれば、「譲受の実際の価格は、大幅に下回っていた可能性がある」というのは確かだろう。
・『そのような特別背任の容疑事実で、敢えてゴーン氏を逮捕し、自宅やキャロル夫人に対する捜索押収を行った特捜部には、再度の逮捕でゴーン氏に精神的打撃を与え、自宅の捜索で保釈条件違反に当たる事実を見つけだして保釈取消に追い込むことや、ゴーン氏側の公判準備の資料を押収して弁護活動に打撃を与えること、そして、最終的には、検察に敵対するゴーン氏を自白に追い込み叩き潰すことが目的だったとしか思えない。 上記、週刊新潮の記事では、SBA側の対応に関して、 オマーンに派遣された日産の調査チームは経営者に対し、取引関係の解消までチラつかせてゴーンに不利な証言を求めました。でも、彼はそれを拒絶し、逆に日産に対する訴訟も辞さずと憤慨している。この代理店は売上実績でかなりのシェアを持っており、中東で強い発言力がある。仮に取引解消となれば、他の代理店も追随して離反するかもしれず、日産側も大打撃を被るのは避けられません と報じている。 検察と日産が結託し、数々の「非道」を重ねている「ゴーン氏追放劇」と「権力ヤクザ」のような捜査は、重大な局面を迎えようとしている』、「日産の調査チームは経営者に対し、取引関係の解消までチラつかせてゴーンに不利な証言を求めました」、こんな見え透いた手を使って、「訴訟も辞さずと憤慨」させた日産のやり方には、呆れ果てた。どうも特捜部の立場はますます悪くなっているようだ。

次に、4月16日付けLITERA「ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2019/04/post-4663.html
・『先日も保釈中に異例の再逮捕されるなど日産自動車元会長カルロス・ゴーン氏をめぐり検察の強引な捜査が続くなか、一連のゴーン事件の背景に日本政府が関与している可能性が濃厚になってきた。 仏紙ジュルナル・デュ・ディマンシュ(JDD)が14日、関係者のメールから、経産省が日産とルノーの経営統合案を阻止するため介入していたことを報じたのだ。 同紙が報じたのは、2018年4〜5月に当時の日産幹部とゴーン氏との間で交わされたメール。同年4月23日に日産の専務執行役員であるハリ・ナダ氏からゴーン氏に送られたメールには、仏国家出資庁長官でルノー取締役のマルタン・ビアル氏らとの会合が言及されていた。これはルノーとの経営統合をめぐって日産と仏政府とで行われた協議内容の報告だが、そこにはビアル氏が日本の経産省から書簡を受け取っていたとの内容が含まれていたという。 さらに、5月21日に別の日産幹部がゴーン氏や西川広人社長に送ったメールには、経産省が用意したという「覚書案」が添付されており、「両者の提携強化は日産の経営自主性を尊重することによってなされること」などと示されていたという。ようするに、JDDの報道が事実であれば、安倍政権はゴーン氏逮捕以前から日産とルノーの経営統合を阻止するように直接介入していたということになる。 安倍首相はゴーン氏が逮捕された直後の昨年12月、マクロン仏大統領との会談のなかで、日産と三菱自動車、ルノーの3社連合に関して「民間の当事者で決めるべきで、政府が関与するものではない」と伝えたとされるが、やはりウソ八百だったのか』、仏紙JDDが報じただけで、日本のマスコミは「後追い報道」をしないのは、安部政権への「忖度」なのかも知れないが、情けない話だ。
・『となれば、本サイトでは以前から伝えてきたように、一連のゴーン氏逮捕は「日産と三菱自動車の海外移転を阻止するための国策捜査」であるとの説も、さらに信憑性を増してきたといえるだろう。 念のため振り返っておくが、そもそも日産と三菱自動車、ルノーの間にはずっと経営統合の計画がくすぶっていた。これは、ルノーの筆頭株主である仏政府が3社を全面的に統合し、日産や三菱もフランスに移転させるという計画だ。そんななか、仏政府と対立しながらこれに異を唱えていたのがゴーン氏だったのだが、昨年2月にルノーCEOの続投が決まると一転、メディアに対して「すべての選択肢が考えられる」と公言。同年3月、すぐさま日産とルノーの機能統合の拡大に着手したように、ゴーン氏は経営一体化を進めたいフランス政府の“名代”さながらに振舞い始めた。 この流れに強い危機感を覚えたのが経産省だったというわけだ。そして同じ年の6月、日本版の司法取引制度が導入される。ここから経営統合を阻むため、“安倍経産省政権”とも言われる日本政府と、そのグリーンサインを察知した東京地検特捜部、一部の日産幹部とがグルになってゴーン氏だけを狙い撃ちした──これが、永田町周辺で囁かれていた“国策捜査説”のストーリーだった。 言っておくが「陰謀論」ではない。事実、ゴーン氏は昨年11月に3社連合の経営統合案を本格協議する予定だったとされており、結果、来日の瞬間に逮捕されたことによって“ゴーン案”は頓挫したわけだが、本サイトも何度も指摘してきたように、その逮捕劇の裏側には安倍官邸と“経産省人脈”がちらついていた』、日本版司法取引制度導入までが、道具立ての1つだったとは恐れ入るが、“国策捜査説”がますます信憑性を増してきたようだ。
・『日産クーデターのキーマンたちと安倍官邸のただならぬ関係  そのひとつが、日産内部の極秘調査チームの中心人物であると様々なメディアで名指しされている専務執行役員の川口均氏。川口氏は菅義偉官房長官と近い関係にあるといわれており、その間、菅官房長官に逐一報告をあげて相談していたとの見方がある。 さらにもうひとり、安倍政権と「日産のクーデター」を結びつけるキーマンとして取り沙汰されたのが、昨年6月に日産の社外取締役に就任した経産省OBの豊田正和氏だ。もともと、日産は経産省の有力な天下り先だったのだが、ゴーン体制になって以降、長らく同省からの天下りを受け入れてこなかった。そんなか、突如として送り込まれたのが、事務次官に次ぐNo.2である経済産業審議官や内閣官房参与なども歴任した豊田氏。安倍首相の側近中の側近で、やはり経産省出身の今井尚哉首相秘書官とも近い関係にあるといわれる。 そうしたことから、日産を取材する記者たちの間では、この豊田氏こそ「ルノーとの統合や海外移転を阻止するために、経産省が送り込んだ人物」ではないかとの見方が広がったのだ。実際、ゴーン逮捕以降、豊田氏は社外取締役という立場であるにもかかわらず、新聞記者が取材に押しかけており、元朝日新聞編集員の山田厚史氏によれば〈今や「夜の広報担当」といった存在〉(ダイヤモンド・オンライン2018年12月11日)になっていたという』、「経産省OBの豊田正和氏」は確かに大物のようで、「今や「夜の広報担当」といった存在」というのも頷ける。
・『今回、JDDが報じたメールのやりとりは、国策捜査説の背後にある安倍官邸と経産省の策謀を裏づける証拠となるだろう。前述したとおり、経産省の介入を示すメールがあったのは、ゴーン氏が統合機能強化に乗り出した直後の4月から5月。ゴーン氏の“豹変”を目の当たりにした経産省が血相を変え、仏政府と日産へ強引に迫っていたことが想像できる。そして、その後すぐに経産省の大物OB・豊田氏が社外取締役として日産に向かい入れられていたのだ。これが偶然などということがあるのだろうか。 こうした状況を踏まえると、安倍政権はかなり綿密に“ゴーン潰し”の計画を練り、着々と実行に移してきたとしか思えないのである。いずれにしても、ゴーン事件は単なる企業内闘争ではない。安倍政権が直接介入するなど、そこには政治権力が蠢いている。その結果もたらされたのが、強引に繰り返されるゴーン氏の逮捕と拘留だ。巨大な政治的思惑によって、簡単に人間から自由が奪われる様には慄然とせざるを得ない』、「巨大な政治的思惑によって、簡単に人間から自由が奪われる様には慄然とせざるを得ない」というのは言い得て妙だ。何年か経ってゴーン氏無罪が確定したら、安部政権はどうするつもりなのだろう。その前に安部は退陣しているのかも知れないが・・・。

第三に、ジャーナリストの時任 兼作氏が4月17日付け現代ビジネスに寄稿した「ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64093
・『「4度目の逮捕」異例の背景  4月4日、東京地検特捜部は保釈中のゴーン被告の4度目の逮捕に踏み切った。 容疑は、会社法違反(特別背任)。日産の資金を中東オマーンに不正送金し、同社に損害を与えたというものだ。 「追起訴はあるかもしれないと思っていたが、逮捕になるとは、まったく予想できなかった」 ゴーン被告の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は、逮捕後の会見でそう述べたが、それもうなずけよう。容疑は前回の逮捕容疑と類似しており、通例ならば追起訴で済むはずだった。 報道陣にとっても予想外の事態であったようで、報道各社はゴーン「被告」の肩書を急遽、「容疑者」と改める慌てぶりだった。すでに起訴されている罪状がある以上、被告であることに変わりはないものの、逮捕後は容疑者としての立場にもなるためだ。 ともあれ、ゴーン被告は約1カ月前の3月6日に108日間の勾留を経て保釈されたばかりであったにもかかわらず、再び逮捕・収監されたわけだが、「特捜部の事件で保釈後、余罪で再逮捕されるのは異例中の異例だ」との批判が絶えない。 いったいこの背景には、何があったのか』、「異例中の異例」の再逮捕の背景とは興味深い。
・『なぜか「イチローの情報収集」…?  その10日ほど前のこと――。 筆者の取材に応じた東京地検関係者が、吐き捨てるようにこんなコメントをしたのを耳にした。 保釈後、ゴーンは自由に行動し、公判対策のためにあちこちで関係者と接触している。しかも、ゴーンと接触した関係者が、ゴーンの指示を受けてさらに多くの関係者にコンタクトしている」 ゴーン被告が保釈されたのは、弁護側が提示した条件に裁判所が納得したからだとされる。すなわち、海外への渡航禁止、住居に防犯カメラを設置し記録を定期的に提出すること、携帯電話はネットに接続できないものを使用し通話記録も残すこと、パソコンは弁護士事務所にあるネットに接続していないものを使う――といった制限のことだ。裁判所は、ゴーン被告がこれらの条件を守るならば証拠隠滅は図れないと判断したとみられる。 だが、元検事の弁護士(ヤメ検)をはじめ、多くの法曹関係者から「この条件では証拠隠滅は防げない」と疑問の声が上がっていたという。 具体的な指摘もあった。「外出先で携帯電話やパソコンを借りれば、第三者と接触するのは簡単だ」といったものだが、どうやら実際はそれ以上の状況だったようだ。ゴーン被告の動きは、それほど活発だったとこの知見(正しくは地検?)関係者はいうのである。 もっとも、東京地検特捜部も手をこまねいていたわけではない。捜査員をフルに動員し、24時間体制で監視や通信傍受に当たっていた、という。 その最中、ゴーン被告と彼の陣営が目論む「抜け目ない法廷戦術」の一端を垣間見たのだという。前出の東京地検関係者が語る。 「ゴーン当人および周辺人物の動きを追い、会話の内容などを確認すると、つい先頃引退した大リーグのイチロー選手に注目し、彼の報酬の受け取り方について、情報収集と分析を綿密に行っていることがわかった。 そこで、どこに焦点を当てているか精査してみると、非常にまずいことが判明した。イチロー氏が選手だった時の『出来高報酬』の例を法廷に持ち出されて援用されると、厳しいということだ。下手をすると、役員報酬の虚偽記載容疑が成り立たなくなってしまう」 イチロー氏と言えば、日産との関わりが深い。数多くのCMに出演しており、ゴーン被告が社長を務めている時期にも起用されているため、イチローサイドとのコネクションがあっても不思議ではないが、それにしてもなぜイチロー氏のことを持ち出されると、役員報酬の虚偽記載が成り立たなくなるというのか』、「イチロー選手に注目」とは意外だ。
・『「イチロー式」報酬受け取り法とは?  この話を聞いた当初は、単純に「後払いならOK」という例としてゴーン被告の無罪立証に資するのか、と思いかけた。だが、よくよく考えてみると、腑に落ちない。 というのも、ゴーン被告の罪状のひとつである役員報酬の虚偽記載についての争点は、東京地検側が「確定報酬を隠していた」というのに対し、ゴーン側は「後払いであって確定していなかった」と主張しているというものである。しかしイチロー氏の場合、あくまでも年棒が確定された上での契約だった。 会計法上の規定からしても、報酬が確定しているならば、有価証券報告書に記載しないのはアウトである。東京地検はこの規定を踏まえ、今年2月、日産にゴーン被告の「引退後の報酬」として約92億円を計上させ、有価証券報告書の訂正を行わせてもいる。 とすると、なぜ東京地検は焦っているのか。 実は、カラクリはイチロー選が大リーグに進出した際、最初に結んだ契約にあった。ポイントは、出来高(インセンティブ)報酬だ。その後の契約では出来高が減っていくが、初回の契約だけは、かなりの出来高報酬があった。 そのしくみを詳しく記すと、こうなる。 200打席を超えると40~60万ドルが支給され、その後、50打席増えるごとに40~60万ドルが加算。450打席を超えた時点で200~300万ドルが支払われる。 また、このほかに、球宴に出場した場合やMVPなどを獲得した場合にも報酬が付く。 この出来高報酬で、イチロー選手は1年目ですら基本年棒を超える額である240万ドルを得ている。金額は事後的に確定するので、仮に怪我などで欠場していれば、これほどの大きな額は受け取れなかっただろう。 ゴーン被告サイドは、ここに目を付けたとみられる』、「出来高報酬」に目をつけたとは、さすがだ。
・『真っ青になった東京地検  筆者がイチロー選手の契約内容をチェックしたのち、東京地検関係者に再取材すると、その関係者はこう言って認めた。 「『私の報酬もイチロー選手と同じく、確定していない、業績に応じたインセンティブ報酬であったから、未記載で構わない』という論理構成をゴーン側は模索しているとみられる。悩ましいところだ」 別の検察関係者も言う。 「報酬は確定してから、要するにもらってから公表するのが当たり前で、そんなケースは世界にざらにある。イチロー選手の場合だってそうだし、いま話題になっている前田(健太)選手もそうだ、とゴーンは主張しようとしている。 こうなると、実はけっこう苦しい。今年2月、日産がゴーンの後払い報酬として92億円を計上した時、ゴーンが『これで本当にもらえることになった』と苦笑気味に漏らした際、東京地検は『ヤバい』と青くなって、訴因の変更すら検討し始めた」 日本の誉である国民的野球選手を引き合いに、ゴーン被告が筋の通った無罪答弁を予定しているとすれば、社会的なインパクトも大きい。 それゆえ、東京地検は訴因変更、すなわち別の罪状での起訴を模索し始めたというのである。 それにしても、さすがは傑出した経営者たるゴーン被告というべきか、あるいは「無罪請負人」弘中弁護士の智恵なのか、ともあれ東京地検は窮地に追い込まれたわけである――。 以上が、4度目の逮捕直前の状況であった。そしてその直後、東京地検は上層部たる最高検に泣きついた。 「もう一度、別の容疑で逮捕しないと、ゴーンは無罪になる」 そう言って、最高検を説得したというのだ。もっとも、その裏では、こうも息巻いていた。 「一度じゃない。こうなったら、何度でもやってやる」 今回の逮捕にあたり、東京地検はゴーン被告の日記や電話などのほか、公判対策用に作成された資料まで押収したというが、ほかの罪状への対応にも念を入れるつもりだとされる。 役員報酬以外の罪状である会社法違反について、「会社に損害は与えていない」「社内の承認は得ている」などとゴーン被告が主張していることも侮れない。今回の特別背任の容疑についても、当然反撃を繰り出してくるとの見方もある。 とすると、追い詰められた東京地検は……場合によっては、さらなる逮捕もありうるかもしれない。 両者の攻防は続く』、第一の訴因である「役員報酬の虚偽記載が成り立たなくなる」恐れが強まったので、東京地検特捜部が今回の逮捕劇で、「ほかの罪状への対応にも念を入れるつもり」とは、なりふり構わずの姿勢になったようだ。しかし、これでは、海外からの批判もますます強まることだろう。一体、どう決着させるつもりなのだろうか。見ものだ。
タグ:郷原信郎 現代ビジネス litera 同氏のブログ 日産ゴーン不正問題 時任 兼作 (その8)(ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”、ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道、ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?) 「ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”」 これまでも、特捜検察による「暴走捜査」「暴挙」は数限りなく繰り返されてきた 森本宏特捜部長になってからは 「権力ヤクザ」の所業に近い数々の「無法捜査」が行われてきた 今回のゴーン氏の「4回目の逮捕」と捜索押収も、常軌を逸した「無法捜査」 オマーン・ルートと言われる特別背任の事件が、刑事事件として立証可能なのだろうか 検察リークによると思われる情報を垂れ流している オマーン・ルートの特別背任での逮捕に至る経緯 検察上層部は オマーン・ルートの立件に「慎重姿勢」だった 検察上層部の「慎重姿勢」と特別背任の「経営判断原則」 特別背任という犯罪の立証のハードルの高さを認識 「経営判断原則」が適用され、その支出が会社にとって「有用性」があるか否か、対価が「相当」かどうかという点から、「任務違背」に当たるかどうかが判断される 特別背任罪に問われているのはあくまで「日産からSBAへの支払い」であり、それが「任務違背」に当たらない限り、結果的にその支払がゴーン氏の個人的利益につながったとしても(「利益相反」など経営者の倫理上の問題は別として)、特別背任罪は成立しない オマーン・ルートの特別背任罪の成否 井上久男氏 井上氏は、「粗利益27億円」と「39億円」とを比較しているが、年間の「粗利益27億円」と、8年間で39億円の支払いを比較するのはおかしい SBA側から、「当初から、日産が支払うべき販売奨励金に上乗せした支払を受け、それをゴーン氏側に還流させた」との供述が得られることが必要 SBA側からそのような供述が得られていないことは間違いなさそうだ 「15億円クルーザー」は本当か クルーザーは、昨年亡くなったレバノンの弁護士から購入 譲受の実際の価格は、大幅に下回っていた可能性 SBA側の対応に関して、 オマーンに派遣された日産の調査チームは経営者に対し、取引関係の解消までチラつかせてゴーンに不利な証言を求めました でも、彼はそれを拒絶し、逆に日産に対する訴訟も辞さずと憤慨している 検察と日産が結託し、数々の「非道」を重ねている「ゴーン氏追放劇」と「権力ヤクザ」のような捜査は、重大な局面を迎えようとしている 「ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道」 日産の専務執行役員であるハリ・ナダ氏からゴーン氏に送られたメールには、仏国家出資庁長官でルノー取締役のマルタン・ビアル氏らとの会合が言及されていた。これはルノーとの経営統合をめぐって日産と仏政府とで行われた協議内容の報告だが、そこにはビアル氏が日本の経産省から書簡を受け取っていたとの内容が含まれていたという 経産省が用意したという「覚書案」が添付されており、「両者の提携強化は日産の経営自主性を尊重することによってなされること」などと示されていた 一連のゴーン氏逮捕は「日産と三菱自動車の海外移転を阻止するための国策捜査」であるとの説も、さらに信憑性を増してきた 日本版の司法取引制度が導入 ゴーン氏は経営一体化を進めたいフランス政府の“名代”さながらに振舞い始めた 日本政府と、そのグリーンサインを察知した東京地検特捜部、一部の日産幹部とがグルになってゴーン氏だけを狙い撃ちした 逮捕劇の裏側には安倍官邸と“経産省人脈”がちらついていた 日産クーデターのキーマンたちと安倍官邸のただならぬ関係 社外取締役に就任した経産省OBの豊田正和氏 経済産業審議官や内閣官房参与なども歴任 安倍首相の側近中の側近 今や「夜の広報担当」といった存在 安倍政権はかなり綿密に“ゴーン潰し”の計画を練り、着々と実行に移してきたとしか思えない 巨大な政治的思惑によって、簡単に人間から自由が奪われる様には慄然とせざるを得ない 「ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?」 なぜか「イチローの情報収集」 イチロー氏が選手だった時の『出来高報酬』の例を法廷に持ち出されて援用されると、厳しいということだ。下手をすると、役員報酬の虚偽記載容疑が成り立たなくなってしまう 「イチロー式」報酬受け取り法とは? 真っ青になった東京地検 東京地検は『ヤバい』と青くなって、訴因の変更すら検討し始めた 東京地検は上層部たる最高検に泣きついた。 「もう一度、別の容疑で逮捕しないと、ゴーンは無罪になる」 そう言って、最高検を説得 ほかの罪状への対応にも念を入れるつもり
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日産ゴーン不正問題(その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”) [司法]

日産ゴーン不正問題については、2月25日に取上げた。ゴーン氏保釈を踏まえた今日は、(その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”)である。

先ずは、3月11日付けJBPressが転載した新潮社フォーサイトへの経済ジャーナリストの大西康之氏による寄稿「ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡」を紹介しよう。これは、傑作で、必読である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55709
・『日本は再び「ゴーン・ショック」に襲われる。1度目は20年前、フランス・ルノーから日産自動車に乗り込んだカルロス・ゴーン前会長が、ゴーン改革で「系列」に代表される日本企業の古い商慣習を粉砕した。次に破壊されるのは、世界から批判を浴びている日本の「人質司法」だ。ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡である』、2度も「ゴーン・ショック」を引き起こした「ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡である」とは言い得て妙だ。
・『世界に晒された日本の刑事司法  3月6日、逮捕から108日目に保釈されたゴーン被告は、作業服に帽子とマスクという奇妙な姿で東京拘置所から出てきた。だが、メガネの奥の目は鋭さを失っていない。「無罪請負人」の弘中惇一郎弁護士という味方を得て、大反撃を始めるつもりだろう。 「新戦略による初勝利」仏紙『フィガロ』はゴーン被告の保釈を電子版の速報でこう伝えた。監視カメラ設置など、保釈後の証拠隠滅が疑われないような措置を提案したことを「より攻撃的な司法戦略」と評価した。仏紙『ル・モンド』は、日本の裁判所が自白を拒む被告の保釈請求をほとんど認めないとした上で、今回の保釈を「日本の司法制度では異例の決定」と伝えた。 弁護士の立ち会いなしに容疑者を長期間拘留する日本の検察のスタイルは、ゴーン被告の逮捕によって海外にその実態が伝わり、「人質司法」と批判されてきた。 勾留理由開示手続きを巡ってゴーン被告が法廷に現れた時には、『AFP通信』が手錠と腰縄を付けてスリッパ姿で入廷したゴーン被告の様子を事細かに描写し、「7週間に及ぶ東京拘置所での生活が活力を奪った」と批判した。 カルロス・ゴーンという世界的に著名な経営者を逮捕したことにより、前近代的な日本の刑事司法が世界に晒された。裁判所は、こうした海外からの批判を当然、気にしていたはずである』、「人質司法」は「日本の後進性を映し出す鏡」で、日本人として恥ずかしい限りだ。
・『「国連」を持ち出された途端、腰砕けに  そこをうまく突いたのが、ゴーン被告の家族だった。家族は3月4日、ゴーン被告の長期勾留が人権侵害に当たるとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行ったことを発表した。 発表後に記者会見した家族側の弁護士フランソワ・ジムレ氏は、「懲罰的な環境で尊厳を侵害する不当な勾留が続いている。今回の事件は日本の勾留制度を白日の下にさらすことになる」とまくし立てた。 その直後、新たにゴーン被告の弁護を引き受けた弘中惇一郎氏らの弁護団が3度目の保釈請求をすると、裁判所はあっさりこれを受け入れた。検察は「証拠隠滅の恐れがある」と準抗告したが、裁判所に棄却された。ゴーン被告の家族を動かしたのが弘中氏だとしたら、大した策士ぶりである。いずれにせよ日本の裁判所は、「国連」を持ち出された途端、腰砕けになった。 「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」幕末の江戸で流行った誰もが知る狂歌で、カフェインの強い上等なお茶である上喜撰は蒸気船にかけて黒船を意味する。四杯はペリーの黒船が4隻だったことを意味し、たった4隻の黒船で徳川300年の泰平が破られ右往左往する幕府を揶揄した歌だ。日本は「黒船」が来ないと変わらない』、ゴーン被告の家族が「国連人権高等弁務官事務所で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行った」とは初耳だが、上手い高等戦術だ。
・『日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来  刑事司法制度の前近代性については、例えば1988年のリクルート事件でゴーン被告と同じ東京拘置所に113日間拘留され、拘禁反応鬱状態になった経験を持つリクルート元会長の江副浩正は、共著『取り調べの「全面可視化」をめざして』(中央公論新社)の中でこう語っている。「てきぱきと働く受刑者の姿を見ながら『羨ましい』と思った」 東京拘置所には刑務所もあるが、「自由に身動きできず、空さえ見えない拘置所での暮らしは刑務所より厳しい」と受刑者の多くは語っている。 しかし有罪率99.9%とも言われる日本では、長期勾留された人間がその非人道性を訴えても、「所詮は罪人の泣き言」と無視されてきた。 言うまでもないが、被告は罪人ではなく、その人権は配慮されるべきである。外国人でしかも超有名人であるゴーン被告の声は、日本を越えて海外に届き、その声が海外メディアで増幅されて日本に跳ね返ってきた。海の向こうから批判されると、日本の権力者たちは途端に狼狽し始めた。それが「異例の保釈」につながったと見るべきだろう。日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来したのである』、近代法の基本原則に「推定無罪」があり、誰でも有罪宣告を受けるまでは無罪と推定されるにも拘らず、日本だけは逮捕されたたけで、罪人扱いを受けるというのは、日本の後進性の典型例だ。
・『黒船ゴーンで鉄鋼業界に激震  ゴーン被告が「黒船」の役割を果たすのは今回が初めてではない。冒頭で触れたとおり、20年前の1999年、筆頭株主になったルノーからCOO(最高執行責任者)として日産自動車に送り込まれた時もゴーン被告は黒船だった。 「コストカッター」と呼ばれたゴーン被告は、着任早々、鉄鋼資材の購入先を「選別、集約する」と言い出した。泰平の眠りを貪っていた日本の鉄鋼業界に激震が走る。 当時、日産の月間の鋼板使用量は8~9万トンで、トヨタ自動車に次ぐ大口ユーザーだったが、そのシェアは新日本製鉄(現新日鐵住金)が28%、川崎製鉄が26%、NKKが25%で、残りを住友金属工業、神戸製鋼所が分け合っていた。共存共栄を旨とする高炉5社は入札で競うわけでもなく、シェアは「不変」とされた。コスト競争力ではNKKが一段劣っていたのだが、日産は同じ芙蓉グループのNKKを「系列」とみなし優遇していた。 ゴーン被告はこうした日本的、馴れ合いの商慣習を一顧だにせず、日本以外の国と同様に競争入札を実施した。その結果、新日鉄のシェアが60%に倍増、川鉄は30%に増え、NKKが3分の1の10%に激減した。鉄鋼業界ではこれを「日産事件」と呼ぶ。 「変わらない」と思い込んでいたシェアの大変動に、NKKの経営陣は言い知れぬ危機感を感じた。その予感はあたり、日産事件をきっかけにトヨタ自動車など他の自動車メーカーも鉄鋼メーカーの選別を始めたのだ。流れは自動車、鉄鋼業界にとどまらず、電機メーカーなども素材、部品メーカーを選別し始めた』、筆者の大西氏は、元日経ビジネス記者で企業もので鋭い記事を書いてきただけに、「日産事件」まで引き合いに出すとはさすがである。
・『「系列」は見事に解体された  「単独では生き残れない」と悟ったNKKは「格下」と見ていた川鉄との合併に踏み切る。JFEグループ(現JFE ホールディングス)の誕生である。合併比率は川鉄1に対しNKK0.75。新日鉄に次ぐナンバーツーを自任してきたNKKにとっては屈辱的な条件だったが、背に腹はかえられなかった。 玉突きで新日鉄が住友金属と経営統合して新日鐵住金が誕生し、鉄鋼業界は3社体制に再編された。 ゴーン被告は日産系列の部品メーカーの持ち株を売却し、世界中から安くて良い部品を調達した。他の自動車メーカーもこれに倣い、日本の自動車産業の高コスト体質の原因だった「系列」は見事に解体された。 ゴーン被告による改革は調達だけではなかった。稼働率の低い工場を閉鎖し、余剰人員を削減し、縦割り組織と上意下達のメカニズムを壊して社内の意思疎通を良くした。これらの改革を一気呵成に進めたことで、日産の業績はV字回復し、ゴーン被告の経営は「ゴーン・マジック」、ゴーン被告自身は「カリスマ」と呼ばれるようになった』、「系列」の解体は、やはり外国人経営者でなければ、手をつけられなかっただろう。
・『なぜ日産は「神様」に祭り上げたのか  だがゴーン被告を知る、ある大企業の元会長はこう指摘する。 「ゴーンさんは普通の経営者だし、ゴーンさんがやったのも当たり前の改革。だが当時の日本人経営者にはそれができなかった。文明人が未開の地で日蝕を言い当てて、原住民に神様と崇められたのと同じ。日本の経営のレベルが低かったため、普通の経営者が神様になってしまった」 ゴーン被告を最初に「神様」に祭り上げたのは日産の役員・社員だ。倒産寸前だった会社が、あっという間に優良企業に生まれ変わったのである。ゴーン氏が普通の経営者なら、会社を傾けた自分たちが怠慢で無能だったことになる。自分たちの非を隠すために、ゴーン被告を「不可能を可能にした神様」に祭り上げた』、「神様」誕生についての、極めて説得力溢れた鋭い指摘だ。
・『その尻馬に乗ったのがメディアである。工場を閉め人員を削減して固定費を減らし、不稼働資産を減損処理してしまえば、バランスシートが軽くなり、期間利益が跳ね上がるのは常識である。しかし勉強不足と読者の関心を引きたい下心が相まって「カリスマ・ゴーン」と書きたてた。 残念なのは、前近代的な日本の企業社会に改革の先鞭をつけたゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったことである。「経営者として当たり前のことをやったまで」と謙虚にしていれば、逮捕はなかっただろう。 しかし驕ったゴーン被告が逮捕されたことで、今度は未開な日本の刑事司法にスポットライトが当たった。1度目のゴーン・ショックで激震が走った鉄鋼業界と同じように、日本の司法も大いに揺さぶられることになる。本人にその意思はないだろうが、結果的にゴーン被告は2度目の「黒船」として、再び日本を救うのかもしれない』、「残念なのは・・・ゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったこと」、というのはその通りで、人間の脆さを物語っている。「未開な日本の刑事司法」を変革する大きな一撃になってもらいたいものだ。

次に、司法ジャーナリストの村山 治氏が3月14日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/196834
・『役員報酬の虚偽記載や会社資金を不正流用したとする特別背任の罪に問われ、東京拘置所で勾留されていた前日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が3月6日、保釈された。 昨年11月19日の逮捕以来、勾留は108日に及んだ。 東京地検特捜部が摘発した事件の否認被告が、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの前に保釈を認められるのは極めて異例だ。 法曹関係者が驚く「異例の判断」の背景に何があったのか』、真相を是非、知りたいところだ。
・『予想外の「変装」姿 保釈を巡るさまざまなせめぎ合い  カリスマ経営者と呼ばれた男は、青い帽子にマスクと眼鏡、作業服といういで立ちで東京拘置所の玄関に現れ、詰めかけた報道陣に対応することなく去った。 ゴーン氏は、勾留理由開示公判や弁護士などを通じ、繰り返し「自分は無実」と訴えていた。 マスコミはじめ多くの関係者は、保釈されたゴーン氏は、カメラの前で堂々と「無実」の根拠を明らかにし、また、捜査の問題点を指摘する、と予想していた。 それだけにこの奇策は「何か、人前に出られない事情でもあるのか」との臆測を呼ぶことにもなった。 3月8日、ゴーン氏の弁護人の1人、高野隆弁護士は自らのブログで「『変装劇』はすべて私が計画した。(略)膨大な数のカメラがバイクやハイヤーやヘリコプターに乗って彼を追いかけたでしょう。彼の小さな住居は全世界に知れ渡ります。(略)頭に閃いたのが昨日(ママ)の方法でした」と明かした。 何のことはない。「メディアスクラム」対策だったわけだが、保釈の2日後にはゴーン氏の新たな住居にはマスコミが詰めかけた』、ゴーン氏にとっては、マスコミへの対応は万全の準備をしてからと考えていたのだろうから、マスコミを一旦は遠ざけたのは、成功だったとも言えるだろう。
・『公判前整理手続きが始まる前では初めて  カリスマ経営者の保釈をめぐり、裁判所と検察、弁護団の間で激しい「攻防」があった。 ゴーン氏は、2010~17年度の日産の役員報酬を約91億円過少に有価証券報告書に記載したとして金融証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)で、また、私的な損失を日産に付け替えて損害を与えたなどとして会社法違反(特別背任)で起訴された。 ゴーン氏の弁護人だった元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士は、起訴後の1月11日と18日の2度にわたって東京地裁に保釈を請求したが、却下された。 1回目の請求では、保釈後にフランスなどに住む条件を提示したとされ、2回目は、住居を日本国内に変更したとされるが、地裁は、いずれも証拠隠滅の恐れがあると判断したようだ。 その後、辞任した大鶴氏に代わって、新たに弁護人になったのが、「無罪請負人」といわれる弘中惇一郎弁護士と、米国流の刑事手続きに通じた高野弁護士だ。 弘中氏らは、同月28日、3回目の保釈を請求。「インターネット接続不可」や「携帯電話のメール禁止」「住居の出入り口に監視カメラ設置」「パソコン作業は弁護人の事務所で」など厳しい行動制限をゴーン氏に課す保釈条件を地裁に提案。 地裁はこれを受け入れ、「罪証隠滅の恐れがある」との検察側の反対意見を退けた。 保釈条件にはさらに、「事件関係者との接触禁止」「住居は東京都内に制限」「海外渡航禁止、パスポートは弁護人が保管」も加えられ、ゴーン氏は、金商法違反に対して2億円、特別背任に対して8億円の計10億円の保釈保証金を納めて、拘置所を出た。 特捜部が摘発した事件で容疑を否認している被告人の保釈は、争点や証拠を絞る公判前整理手続きで検察側、弁護側双方の主張が出そろうまで認められないのが通例だった。 だがゴーン氏の保釈時点では、整理手続きの日程は決まっておらず、検察を含む多くの法曹関係者が、地裁による異例の保釈判断に驚いた』、筆者はどうしても、主な取材源である検察「寄り」になってしまうようだ。
・『検察は反発「証拠隠滅を防げない」  しかし、常識的にみて、この条件で「罪証隠滅」を防げるのかは疑問だ。 住居の入口に監視カメラを付けても、住居の外で関係者と接触すればわからない。他人の携帯を使えば通信もチェックできないからだ。 検察のスポークスマンである久木元伸東京地検次席検事は8日の会見で、東京地裁の保釈決定を、「証拠隠滅を防ぐ実効性はない」と批判。 別の検察幹部は「裁判所は、ゴーン氏側が証拠隠滅しても構わない、と思っているのではないか」と憤った。 検察にとって予想外の事態になる「伏線」はあった。 特捜部は、ゴーン氏の8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け、昨年12月10日に後半部分の容疑で再逮捕したが、東京地裁は、同月20日、検察が求めたゴーン氏らに対する勾留延長請求を却下した。 ゴーン氏らは容疑を否認していたが、地裁は、2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」とし、捜査内容に踏み込んで、勾留延長しなくても捜査は尽くせた、と認定した。 その後、特捜部はゴーン氏側の保釈請求手続きが始まる直前の翌21日、会社法違反(特別背任)容疑でゴーン氏を逮捕。身柄を引き続き確保したが、検察幹部らは、裁判所が勾留判断で従来のスタンスを変えつつあるのではないか、と警戒していた』、特捜部は「8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け」たようだが、余りに見え見えの小細工で、「地裁は、2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」」としたのは当然だ。
・『海外からの「人質司法」批判 地裁の判断に影響の見方  「異例の保釈」の背景に何があったのか。 今回のゴーン氏の事件では、ゴーン氏の勾留が長くなるなかで、罪を自白しないと保釈が認められないという「人質司法」の問題が、海外メディアの報道をもとに大きくクローズアップされることになった。 それが、今回の裁判所の保釈判断に影響したとの指摘もある。 司法制度は国によって違う。勾留や保釈などの刑事手続きの是非についても、日本の制度・ルールのもとで適正に行われているかどうかで判断すべきで、「外圧」によって判断を変えるのは、司法のあるべき姿ではない。 当の裁判所も海外の論調に影響されたとは絶対、認めないだろう。 もっとも、「人質司法」が日本の刑事司法の暗部である、との認識は、かなり前から弁護士会や学会の共通認識だった。 裁判所と検察は、戦後の治安をともにささえてきたという「戦友意識」があり、裁判所側は、「容疑を持たれた被疑者、被告人には、すべからく、証拠隠滅する動機があり、保釈すれば罪証隠滅される恐れがある」との検察側の主張を受け入れがちだった。 高野弁護士は1月18日のブログで、この問題にも触れている。 それによると、最高裁事務総局が『会内限り』という限定付きで日弁連に秘密裏に提供した統計資料では、保釈された人(1万801人)のうち9割以上(9832人)は罪を自白した人で、罪を否認した人(5275人)について見ると、全公判期間を通じて保釈されるのは21.6%であり、公判前に釈放されるのは7.4%に過ぎない。 こうした声の高まりが、裁判所を動かした可能性はある』、「日本の制度・ルールのもとで適正に行われているかどうかで判断すべき」は建前論に過ぎず、現在その「制度・ルール」のあり方が国内からも問われていると捉えるべきだ。
・『裁判員裁判が「改善」のきっかけに  一方で裁判所でも、司法制度改革で国民が司法参加する裁判員裁判制度が2004年に導入されてから「人質司法」の改善に向けた具体的な動きが始まっていた。 大阪地裁判事だった松本芳希裁判官(京都大学大学院法学研究科教授)が06年6月、「保釈基準が厳格化しすぎている」などとして、罪証隠滅の恐れについて、個別具体的に判断すべきと指摘する論文を発表。 その考え方が次第に裁判官の間に浸透し、14年には最高裁が証拠隠滅の恐れについて「具体的な検討」を促す決定を出すに至った。 3月6日の朝日新聞朝刊は「最高裁によると、保釈を請求して判決までに認められた割合は、2000年は47%だったが、17年は66%に上昇した」と伝えた。 ただ、特捜事件だけは例外で、勾留が長期化する例がままあった。 松本論文発表以後でも、大阪地検特捜部が摘発した2009年の郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省元局長の村木厚子さんは164日、17年の森友学園事件で同特捜部が詐欺罪などで起訴した籠池泰典前理事長夫妻は299日に及んだ。 18年に東京地検特捜部が摘発したゼネコン大手4社によるリニア談合事件では、罪を認めない2社の幹部は291日にわたって勾留された』、罪状を否認する被告には、こんなに長く勾留されるというのは、やはり罪状を認めろとの陰湿な圧力で、人権問題だろう。
・『ゴーン氏に対する保釈決定は、特捜事件に対しても例外を認めないとする裁判所のスタンスを示したといえる。 ただ、ゴーン氏に対する裁判所の勾留と保釈の判断には、見過ごせない「ぶれ」もみられた。 東京地裁は、ゴーン氏が1月11日に起訴された後、ゴーン氏に対する接見禁止を解除した。 接見禁止は、共犯者との口裏合わせなどの罪証隠滅工作を防ぐために弁護士や特定の外交官以外との面会を禁止するものだ。それを解除したということは、起訴で捜査は一段落し、罪証隠滅の恐れがなくなったので誰と会ってもいい、と判断したということだ。 接見禁止を解除したのだから、11日に大鶴弁護士から出された保釈請求に対しても、許可するのが筋だったが、地裁は、3月7日までゴーン氏を勾留し続けた。 地裁の接見禁止解除と保釈請求却下の判断は明確に矛盾する。純粋に法律と事実だけで判断したのなら、こういう矛盾は起きない。地裁が勾留を続けた理由は何なのか、説明してほしいところだ。 この接見禁止解除と勾留継続の判断矛盾を裁判官は認識し、そのアンバランスをいずれ解消したいと考えていたはずだ。 裁判所にとって、弘中弁護士らが新たに提示した「ゴーン氏に厳しい行動制限を課す」保釈条件は、渡りに舟だったのではないか。 いずれにしろ、ゴーン氏に対する保釈判断は、前例として今後の裁判所の判断を縛ることになる。 検察は、特捜事件を含め、今後、被疑者、被告人の早期保釈を前提とした捜査への転換を迫られる可能性がある』、やはり筆者の検察への遠慮が目立つ。「転換」すべきだろう。
・『検察の「次の一手」注目される余罪捜査  そうした中で、検察の次の動きとして注目されるのが、特捜部のゴーン氏に対する余罪捜査だ。 3月6日の朝日新聞朝刊は「前会長がオマーンの日産販売代理店オーナーから3000万ドル(現在のレートで約34億円)を借り入れ、数年後に中東の日産子会社からその代理店に計約3500万ドル(同約39億円)が送金された」と伝えた。 「特捜部は、中東各国に捜査共助を要請。関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを進めている」と報じている。 3月中にも、中東の関係国からの捜査共助に対する回答が寄せられるとの情報もある。その証拠に対する評価次第で、捜査の次の展開が決まりそうだ。 毎日新聞(3月9日朝刊)は、8日に地裁では開かれたゴーン氏の特別背任事件に関する裁判所、検察、弁護側の三者協議の後、取材に応じた弘中弁護士が、(協議で)検察側は前会長を追起訴する可能性について、「ないとは言えない」と語ったことを伝えている。 ゴーン氏は12日の日産取締役会への出席許可を地裁に求めたが、地裁は検察の反対意見を入れて許可しなかった。 今後、始まる公判前整理手続きは最低でも数ヵ月はかかるとみられ、実際に公判が始まるのは、早くて年内となりそうだ。 その間も、検察と弁護団、地裁の間では、さまざまな駆け引きが続く』、中東案件で追起訴する場合には、再びゴーン氏を拘留するのだろうか。当面、目が離せないようだ。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が3月12日付け同氏のブログに掲載した「日産、株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/03/12/%E6%97%A5%E7%94%A3%E3%80%81%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E3%81%8C%E9%81%B8%E4%BB%BB%E3%81%97%E3%81%9F%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E3%81%AE%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E4%BC%9A%E5%87%BA%E5%B8%AD%E3%81%AB%E3%80%8C/
・『保釈が許可され、108日ぶりに身柄拘束を解かれたゴーン氏は、裁判所の許可があれば日産の取締役会に出席できるとされたことから、取締役会への出席を裁判所が許可するかどうかが注目された・・・。 3月11日の昼のNHKニュースでは、ゴーン氏が12日の日産取締役会出席の許可を裁判所に求めていることについて、「日産側は出席に反対する意向を検察に伝えている」と報じていた。 しかし、取締役は株主に選任されているのであり、その取締役の出席に、会社(執行部側)は反対できる立場ではない、そのような、会社法的にあり得ない「日産のゴーン氏取締役会出席への反対」を、そのまま報じるNHKに疑問を感じていたところ、同日夕方、東京地裁がゴーン氏の取締役会出席を許可しない決定をしたと報じられた。 朝日新聞ネット記事では、被告弁護人の弘中惇一郎弁護士は11日夕、記者団に対し、「日産から強い反対があった」ことを明らかにした。 弘中弁護士によると、日産側から取締役会の開催の案内を受けたため、ゴーン被告が取締役としての責任を果たすために出席を希望し、証拠隠滅の恐れを排除するため、地裁には「弁護士も同席して出席したい」旨を申し入れた。 一方、日産側は顧問弁護士を通じ、ゴーン被告の出席について「強硬に反対」する意見書を出したという。主な反対理由については、1)現在の日産としては今後のことを決めるのにゴーン被告は出席してもらう必要がない、2)ゴーン被告の出席により、他の取締役が影響を受け、罪証隠滅の恐れがある、3)ゴーン被告が出席すると議論がしにくい――というもの としている。 しかし、日産が上記のような意見を提出したというのは、どう考えても理解できない。 1)の「ゴーン氏出席の必要がない」、3)の「ゴーン被告が出席すると議論がしにくい」というのは、日産の執行部として言えることではない。株主に選任された取締役の出席の必要性は、会社執行部が否定できることではない。会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない。 2)は「他の取締役が影響を受ける」ということだが、日産の取締役の中でゴーン氏が接触を禁止されている関係者は西川廣人社長だけのはずだ。その西川氏が、「ゴーン氏の取締役会出席によって影響を受け、罪証隠滅の恐れがある」という趣旨であろう。 裁判所は、株主に選任された取締役の、取締役会への出席について「必要性」を否定できる立場ではない。しかし、会社が「出席の必要がない」と意見を述べた場合、それは会社として許されることではないが、会社法上の判断を行う立場ではない刑事裁判所としては、その意見を尊重することになる』、「会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない」というのはその通りで、この点を鋭く指摘したのは、私が知る限り郷原氏だけだ。
・『最大の問題は、ゴーン氏の取締役会出席が、関係者の西川氏の公判証言にどう影響するかだ。もし、日産の意見書で、「西川氏は、取締役会でゴーン氏と顔を合わせただけで、心理的圧迫を受け、公判証言ができないと言っている」と述べているのであれば、裁判所としても、公判審理に影響があると判断せざるを得ないであろう。 しかし、ゴーン氏には弁護士が同席し、証拠隠滅の恐れを排除するというのだから、もちろん、ゴーン氏が刑事事件に関する発言などするわけもない。それなのに、「取締役会で顔を合わせるだけで圧迫を受けて公判証言に影響する」と言っているとすれば、西川氏は、今後、ゴーン氏の刑事公判で、ゴーン氏の目の前で証言できるのだろうか。そのような情けないことを言う人間が社長を務めていて、日産という会社は本当に大丈夫なのだろうか。 西川氏は、ゴーン氏逮捕直後の会見で、社内調査の結果、重大な不正が明らかになったゴーン氏に対して「強い憤り」を覚えると述べていた。その時点で西川氏が言っていた「不正」のうち、唯一、検察が起訴事実とした「有価証券報告書虚偽記載」については、西川氏自身が、代表取締役CEOとして有価証券報告書の作成・提出義務を負う立場なのに、西川氏は、逮捕も起訴もされていない・・・。そういう西川氏にとって、ゴーン氏が取締役会に出てきたら「合わせる顔がない」というのはわかる。しかし、そのような「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか。 西川氏は、また、ゴーン氏逮捕直後の会見で、「社内調査によって、カルロスゴーン本人の主導による重大な不正行為が明らかになった。会社として、これらは断じて容認できないことを確認のうえ、解任の提案を決断した。」と述べていたが、その不正の事実を、ゴーン氏本人が出席する取締役会に報告して解職の議案を出すのではなく、検察に情報提供して逮捕してもらってから、本人がいない臨時取締役会で解職を決議したのである。 日産は、ゴーン氏が保釈され、取締役会への出席の意向を示すや、出席に反対する意見書を提出するという、株式会社として「異常な対応」を行い、ゴーン氏の取締役会出席を回避した。しかし、それによって、日産自動車は、会社法上の規律もガバナンスも機能しておらず、もはや株式会社としての「体を成していない」ことを図らずも露呈したことになる。 今日は、日産取締役会の後、日産・ルノー・三菱自動車の共同記者会見が行われるとのことだ。しかし、この取締役会をめぐる動きは、西川社長の下では日産という会社が立ちいかなくなることを示しているように思える』、「「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか」、との指摘は説得力がある。日産・西川社長は会社法を改めて勉強するきだろう。
タグ:郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 弘中惇一郎弁護士 「推定無罪」 同氏のブログ 新潮社フォーサイト 大西康之 日産ゴーン不正問題 村山 治 (その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”) 「ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡」 日本は再び「ゴーン・ショック」に襲われる 1度目 ゴーン改革で「系列」に代表される日本企業の古い商慣習を粉砕した 次に破壊されるのは、世界から批判を浴びている日本の「人質司法」だ 世界に晒された日本の刑事司法 「人質司法」は「日本の後進性を映し出す鏡」 「国連」を持ち出された途端、腰砕けに 家族は3月4日、ゴーン被告の長期勾留が人権侵害に当たるとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行った 日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来 有罪率99.9%とも言われる日本では、長期勾留された人間がその非人道性を訴えても、「所詮は罪人の泣き言」と無視されてきた 被告は罪人ではなく、その人権は配慮されるべき 日本だけは逮捕されたたけで、罪人扱いを受ける 黒船ゴーンで鉄鋼業界に激震 コスト競争力ではNKKが一段劣っていたのだが、日産は同じ芙蓉グループのNKKを「系列」とみなし優遇 ゴーン被告はこうした日本的、馴れ合いの商慣習を一顧だにせず、日本以外の国と同様に競争入札を実施 日産事件をきっかけにトヨタ自動車など他の自動車メーカーも鉄鋼メーカーの選別を始めたのだ。流れは自動車、鉄鋼業界にとどまらず、電機メーカーなども素材、部品メーカーを選別し始めた 「系列」は見事に解体された 鉄鋼業界は3社体制に再編 「ゴーン・マジック」 「カリスマ」 なぜ日産は「神様」に祭り上げたのか ゴーン氏が普通の経営者なら、会社を傾けた自分たちが怠慢で無能だったことになる。自分たちの非を隠すために、ゴーン被告を「不可能を可能にした神様」に祭り上げた その尻馬に乗ったのがメディア 「カリスマ・ゴーン」 残念なのは、前近代的な日本の企業社会に改革の先鞭をつけたゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったことである 「ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由」 勾留は108日 東京地検特捜部が摘発した事件の否認被告が、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの前に保釈を認められるのは極めて異例 予想外の「変装」姿 保釈を巡るさまざまなせめぎ合い 「メディアスクラム」対策 公判前整理手続きが始まる前では初めて 高野弁護士 厳しい行動制限をゴーン氏に課す保釈条件を地裁に提案 地裁はこれを受け入れ、「罪証隠滅の恐れがある」との検察側の反対意見を退けた 検察は反発「証拠隠滅を防げない」 8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け、昨年12月10日に後半部分の容疑で再逮捕 東京地裁は、同月20日、検察が求めたゴーン氏らに対する勾留延長請求を却下 2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」 海外からの「人質司法」批判 地裁の判断に影響の見方 「人質司法」が日本の刑事司法の暗部である、との認識は、かなり前から弁護士会や学会の共通認識 裁判員裁判が「改善」のきっかけに 大阪地裁判事だった松本芳希裁判官(京都大学大学院法学研究科教授) 罪証隠滅の恐れについて、個別具体的に判断すべきと指摘する論文を発表 検察の「次の一手」注目される余罪捜査 特捜部は、中東各国に捜査共助を要請。関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを進めている 「日産、株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”」 日産側 ゴーン被告の出席について「強硬に反対」する意見書 主な反対理由については、1)現在の日産としては今後のことを決めるのにゴーン被告は出席してもらう必要がない 2)ゴーン被告の出席により、他の取締役が影響を受け、罪証隠滅の恐れがある 3)ゴーン被告が出席すると議論がしにくい 会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない 、会社が「出席の必要がない」と意見を述べた場合、それは会社として許されることではないが、会社法上の判断を行う立場ではない刑事裁判所としては、その意見を尊重することになる 最大の問題は、ゴーン氏の取締役会出席が、関係者の西川氏の公判証言にどう影響するか 西川氏は、今後、ゴーン氏の刑事公判で、ゴーン氏の目の前で証言できるのだろうか。そのような情けないことを言う人間が社長を務めていて、日産という会社は本当に大丈夫なのだろうか 「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか 日産自動車は、会社法上の規律もガバナンスも機能しておらず、もはや株式会社としての「体を成していない」ことを図らずも露呈
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